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尚六SS「酔夢」

1一人カウントダウン企画 ◆y8UWMRK39I:2019/08/08(木) 19:37:51
『一人カウントダウン企画』第三弾。

六太に薬を盛って想いを遂げる尚隆。
切ない両片思いのシリアス話。

2酔夢(1):新刊発売まであと65日:2019/08/08(木) 19:40:55
 深夜の正寝で王と宰輔がふたりきりで酒盛りをするのは、この国ではめず
らしいことではない。昔は官に渋い顔をされることもないではなかったが、
宮城から抜け出して行方をくらませることに比べればはるかにましなので、
余人を巻きこんでどんちゃん騒ぎを繰り広げない限りは大目に見られている。
「あのときの朱衡の顔、見たか? さすがにぽかんとしちゃってさ、もう笑
いを抑えるのに苦労したの何の」
 そうやって太陽のようにけらけらと笑いながら、六太はだらしなく榻に寝
そべった。その傍らで尚隆は適当に相槌を打ちながら、かぼすをしぼって
たっぷりと果汁を六太の酒に入れてやる。
 六太が酒を飲むのは、あくまでにぎやかに騒ぐのが好きなだけであって、
別に酒自体を好んでいるわけではない。だからいつの頃からか尚隆が季節の
果汁をしぼって酒に加え、口当たりを良くしてやると喜ぶようになった。
 さらに夜が更けたころ、急に六太はうつらうつらしはじめ、やがて眠りに
落ちていった。これもいつものことだ。
「もうつぶれたのか。仕方のないやつだな」
 尚隆自身も酔ったような口調で六太の肩を軽く揺すった。そして六太が完
全に寝入ってしまったことが明らかになると、彼は不意に真顔になった。さ
らにしばらく様子を窺ってから、六太の小柄な体をそっと抱きあげる。
 彼が盛った薬で眠りこんでしまった六太はともかく、これから何が起きる
かを知っている使令がまったく騒がないのは、王による行為であることはも
ちろん、麒麟の生命にも健康にも害がないからだろう。
 尚隆は六太の体をこわれ物のようにそっと扱った。薬による深い眠りが覚
まされる恐れはなかったが、胸中に広がる愛情と罪悪感とが、いつも彼の動
作をひそやかなものにした。
 安らいだ寝息をたてる六太を臥牀に横たえ、帯を解いて官服を脱がせてい
く。永遠に未成熟なままの白い裸体が、彼の前にさらされた。
 尚隆は自身も装束を脱いで全裸になると、六太の上に体を重ねた。褥に
散った見事な金の髪と、普段の悪戯小僧の面影の消えたあどけない寝顔とが、
彼の心にちくりとした棘の痛みを残す。

3酔夢(2):新刊発売まであと64日:2019/08/09(金) 21:49:54
 聖なる神獣と呼ばれて敬われ、人としても幼い姿を持つこの半身は、本来
ならば無垢なままでいられるはずだった。このように俗っぽい感情の対象と
なる存在ではないのだ。
 ――今さらだ。
 体にみなぎる情欲とは裏腹に、尚隆は空虚な目で六太を見おろした。そし
て片手を六太の頬に添えると、掌でまろやかな線をそっとなぞっていき、髪
に指を通して頭をなでた。躊躇に惑う一瞬。
 やがて彼は六太の小さな唇に接吻すると、その細い肢体をかきいだいて肉
欲をむさぼりはじめた。

 最初はなかなか行為に移せなかった。酒に薬を盛るようになっても、しば
らくは服を着たままの体をそっと抱きしめて長い夜を過ごすだけだった。
 単に体が幼いからか、あるいはいっさい肉食をしないからなのか、腕の中
で眠る六太からは甘い香りがした。柔らかい髪に顔をうずめると、そんな六
太の匂いが尚隆を包んだ。
 ついに帯を解いて服を脱がせた晩は、それでも最後まですることはできず、
なめらかな肌をまさぐったりなめまわしたりするだけだった。だがそこまで
いってしまえば、あとは時間の問題だった。実際、尚隆が六太の肉体を征服
したのは、それからほどなくのことだったのだから。
 もし六太が真実を知ったらどんな反応をするのだろう。人工的な眠りに閉
ざされた体を愛撫しながら幾度も考えたことを、答えは出ないと知りながら
今宵も自問する。軽蔑の目を向けるか、いくら慈悲の麒麟といえど尚隆を憎
むか、あるいは――失道するか。
 自国以外のことに疎くなりがちなこの世界の例に漏れず、他国でのことは
わからなかったが、たとえ異性であっても麒麟と結びついた王の記録は、少
なくとも雁にはなかった。そもそもそういう対象ではないのだ、麒麟は。

4酔夢(3):新刊発売まであと63日:2019/08/10(土) 09:48:58
 それ以前に、六太自身が色恋に対する興味を持っていないようだった。長
く生きた神仙でも、実年齢より肉体年齢にひきずられがちではあるのだが、
たとえ肉体が十三歳という幼きにとどめられているとはいえ、只人ならば異
性に対して興味津々という頃合いだ。しかしこれまで六太の口から女の好み
が語られたことはなかったし、尚隆の妓楼通いに呆れたことはあっても、自
分も興味を持つとか、逆に嫌悪を見せることもなかった。当然ながら、自分
が性的な欲望の対象としてとらえられているなど、夢にも思ったことはない
だろう。
 だから尚隆が六太を抱けるのは、こうして薬で眠らせたときだけだ。気づ
かれたあとに訪れるだろう破局を思えば、万が一にも悟られることはできな
かった。
 それでも彼は夢想する。尚隆の激しい腰の動きにもまったく気づかずに静
かに眠っている六太が、甘い声で彼の名を呼ぶことを。尚隆にしがみついて
快感にあえぎながら、さらなる愛撫をせがむことを。
 六太へのこのひそかな執着がどれほど危険か、彼自身にもよくわかってい
た。いつか彼の王朝が滅びることがあるとしたら、この妄執が原因かもしれ
ないとさえ考えたこともあった。六太はもちろん、他の者は想像すらしたこ
とはないだろう。しかし本当の自分がどれほど女々しくて不甲斐ないか、ど
れほど後悔ばかりをしてきたか、他の誰が知らずとも彼自身はそれをよくわ
かっていた。武断の王だの辣腕家だの、そんな形容は単に、内心をほとんど
面に表わさないたちゆえ、周囲が彼の本性を見誤っているからにすぎない。
 六太の中に身を沈め、幾度も深々と貫くたびに、彼は禁断の快楽にうめい
た。荒い息の下で六太の名を繰り返し呼びながら、絶え間なく腰を動かす。
 夜のとばりに包まれたひそやかで激しい行為はこうして、誰にも知られな
いまま、尚隆が何度も達するまで続いた。

 最初のうちは六太も気づかなかった。尚隆と酒を飲んでいると急に眠気を
覚えて眠りこんでしまうようになったときも、心のどこかで違和感を覚えた
のは確かだったが、かといってそれ以上深く考えることはなかった。

5名無しさん:2019/08/10(土) 12:36:02
な、なんかすごいのが来てた(;゚д゚)…

6酔夢(4):新刊発売まであと62日:2019/08/11(日) 08:43:31
 初めておかしいと思ったのは、朝目覚めたとき、帯の結びかたが微妙に
違っていたときだ。榻で眠りこんだはずなのに、牀榻の内にいたことは特に
問題にしなかった。尚隆が「しょうのないやつだな」とぼやきながらも、気
遣って臥牀に運んでくれたことは何度もあったからだ。
 ただそれ以来、尚隆のもとで眠りこんだ夜にかぎって、見る夢は妙に淫靡
なものになった。夢の中で六太は尚隆に体中をなめられ、なでまわされ、つ
いには激しく犯された。途切れ途切れに残るそんな記憶は、翌朝、服を着た
まま尚隆の牀榻で目覚めたとき、彼を羞恥でいたたまれなくさせた。
 傍らにはたいてい尚隆が、これまた服を着たまま酔いつぶれて寝ていたか
ら、夢で見たような光景は絶対にありえない。おそらく尚隆の王気を感じな
がら眠ったことが、普段は抑えこんでいるひそかな願望を投影した夢を見た
のだろう。
 そう結論づけた六太は、羞恥と狼狽でいつも耳まで赤くなるのだった。尚
隆のことは大好きだったし、実際のところ恋しているとさえ言っても良かっ
たが、麒麟の身で、しかも同性たる王に対してそんなことが許されるはずも
ない。なのにあんなふうにされることを自分の本心は望んでいるのだと思う
と、絶対に誰にも知られてはならないと思った。
 とはいえ尚隆のもとで酒を飲むと決まって眠りこんでしまうようになると、
さすがに本格的に不審を覚えるようになった。記憶をたぐってみて、尚隆が
酒に果汁を入れて勧めてくれるようになった頃からだと思い当たり、不穏な
推測に我ながら血の気が引く思いがした。
 麒麟の生命は王の生命とつながっている。それだけに毒を盛られていると
は思わなかったものの、尚隆の意図がわからず恐怖を覚えたのは事実だった。
と同時に、あの淫靡な夢の記憶が蘇り、まさか、と思った。
「俺が寝ている間、尚隆がなんかしたか?」
 使令に尋ねると、「お答えできません」という思いがけない返答が返って
きた。愕然とした六太がさらに「尚隆に命じられたか?」と尋ねると、使令
はそれを肯定した。

7名無しさん:2019/08/11(日) 18:27:16
あー悲劇の匂いしかしない展開ですがワクワクさて待機しております!

8酔夢(5):新刊発売まであと61日:2019/08/12(月) 11:56:32
 六太はめまいのようなものを覚えながらも、自分でそれを突きとめるほか
ないことを悟った。それで次に尚隆に酒盛りに誘われ、いつものように果汁
を加えた酒を勧められたとき、その大半をひそかに床にこぼして使令に始末
させ、自分は飲んだふりをして酒量を抑えたのだった。
 もっとも酔って眠りこんだふうを装ったのは、完全に芝居というわけでも
なかった。いつもの半分も飲んでいないのに体が重くなり、急速で不自然な
眠気に襲われたからだ。尚隆がだまされたのはそのためだろう。実際に眠く
てたまらなくて横になっただけに、見た目もごく自然だったのだ。
 六太が榻の上で丸くなって目を閉じてしまうと、尚隆はしばらくひとりで
酒をあおっているようだった。やがて、「またか。しょうのないやつめ。寝
るならちゃんと臥牀で寝ろ」というつぶやきが聞こえたかと思うと、尚隆の
力強い腕が背に回されて六太の体が浮いた。どうやら牀榻に連れていってく
れるつもりらしい。
 自分の思い過ごしだったかと、うつらうつらしながらも六太は安堵したが、
それでも体が妙に重いのが気になった。だが薬を盛られたとしたら、最初か
らではあるまい、最後の二、三杯だろうが、眠り薬か何かだろうか。はたま
た果汁と酒の組み合わせが思いがけない作用をもたらしただけだろうか。
 眠りの一歩手前でかろうじて踏みとどまり、そんなことをぼんやり考えて
いると、尚隆に帯を解かれ、服を脱がされていくのがわかった。妙に感覚も
鈍くなっていたが、それでも全裸にされるのだということはわかった。だが
眠りと覚醒のはざまにいる体は金縛りにあったかのように重く、指一本動か
ないどころか、声も出せなかった。
 同じく全裸になった尚隆に組み敷かれ、接吻されたかと思うと、首筋から
胸元、腹にかけて舌を這わされる。さらに脇腹や腰や太腿をなでられ、さす
られる。ついには股間を愛撫され、そればかりか口に含まれてなめまわされ
ては吸われた。体の自由が利いたなら、間違いなく転変して逃げているとこ
ろだ。だが実際は眠りこけているかのように体は動かなかったし、徐々に強
くなる眠気のせいで、幾重にも張りめぐらされた紗幕ごしに室内をようやく
覗いているような鈍い感覚のまま、尚隆の意のままになぶられているだけ
だった。

9酔夢(6):新刊発売まであと60日:2019/08/13(火) 10:48:17
 やがて尚隆は六太の脚を両肩にかけることで六太の腰を軽く持ちあげた。
固く猛った熱い先端があてがわれる感触がし、圧倒的な質量をもったものが
すぐに六太の中に侵入してきた。
 自分が犯されていることにやっと気づいた六太は、ひたすら茫然としてい
た。尚隆はしばらくゆるやかな動きで六太の中を行き来していたが、次第に
その動きが早くなっていった。それと同時に、彼の口から漏れる快感のうめ
きも激しくなる。
「六太――六太――」
 そんなふうにうわごとのように繰り返し六太の名を呼ぶ。六太の腰をしっ
かりとつかんでは、幾度も幾度も根元まで深々と身を沈める。
 六太のほうは声も出せずになされるがままになっているしかなかった。感
覚が鈍っているせいか、彼自身は痛みも、逆に快感も感じなかったものの、
何をされているのかまったくわからないほどではない。猛った一物を奥まで
激しく挿入されているとなればなおさらだ。
 六太の目には尚隆が女遊びをする回数が減ったようには見えなかったが、
まさか妓楼の女の代わりのつもりだろうかと動揺のままに考える。しかし。
「六太――」
 うわごとめいた尚隆のうめきは情欲に満ちていたが、妙な哀愁も帯びてい
て、それは動揺しきりの六太にもわかった。そんな気配はどこにもなかった
のに尚隆が泣いているような気がして、なぜだか六太自身も泣きたくなった。
おかしなことに自分が犯されているという事実よりも、尚隆がまとっている
哀愁の気配のほうがはるかに切なくてたまらなかったのだ。

 いつの間にか眠りこんでしまったのだろう、次に六太が目覚めたときはも
う朝だった。尚隆の臥牀で、いつものように服は着たままであることを確認
する。

10酔夢(7):新刊発売まであと59日:2019/08/14(水) 10:14:23
 傍らでぐっすりと眠っている尚隆をちらりと見た六太は、震える手で帯の
結び目を検分した。前夜はわざと、いつもとは異なる結びかたをしていたの
に、今はそうなっていなかった。
 臥牀の上で茫然と座りこんだ六太は、しばし瞑目した。これまで幾度とな
く見た淫靡な夢が、決して夢ではないことを知った。酒に果汁を加えて勧め
るようになったのは、口当たりを変えて薬の味を誤魔化すためか。
 ――どうして。
 泣きたい思いで、傍らの尚隆に無言のまま問いかける。
 あんなことをしなくても、自分が欲しいならそう求めてくれれば。王と麒
麟が深い仲になったという話は聞かないし、ましてや自分たちのように同性
の主従の場合、誰もそんなことを想像もしないだろうが、麒麟はもともと王
のものだ。たとえ倫理に反していようと、恋い慕う王のものになれるのなら、
たいていの麒麟は悦びに震えるだろうに。
 そこまで考えて、ようやっと尚隆が求めているのが別の者である可能性に
思いいたる。
 考えてみればこれまで何でも自分の思い通りにやってきた尚隆が、こんな
ことでひるむはずがないのだ。そもそも自他ともに女好きを認める尚隆が、
幼い少年の外見を持つ六太を欲するというのもおかしなことだ。
 ――他国の麟にでも懸想しているのか。
 ふと思いつき、筋道が通っているような気がしてどきりとする。六太の金
の髪に、その麟の面影を重ねているのか。それならばわからないでもない。
金の髪を持つのは麒麟だけ。いくら他の女を抱いたとて、麒麟を抱いた気分
にはなれないだろうから。
 考えれば考えるほど想像が当たっているように思えて、六太はますます暗
い気持ちになった。尚隆にだまされていたことよりも、知らずに犯されて無
体を強いられていたことよりも、誰かの代わりであろうという想像が何より
も六太を苦しめた。
 こんなに近くにいるのに、六太の想いは尚隆には届かないのだ。そして尚
隆の想いも、見知らぬ誰かには届かない――。

11酔夢(8):新刊発売まであと58日:2019/08/15(木) 09:23:36
 あの哀愁の気配。まるで泣いているようだと感じたこと。だから尚隆は自
分を抱くのだと、六太はやっと思いいたった。きっと尚隆はそうせずにはい
られないのだ。自分自身でいるために。王であるために。
 目から一筋の涙がこぼれ、それを袖でぐいとぬぐった六太は、もう一度尚
隆を見やった。
 自分を抱くことで、尚隆が慰められているのなら。ならば自分は何も言う
まい。気づくまい。
 それから六太は二度と酒をこぼすことはなかった。注がれるままにすべて
干して、自分の身に起こることを受け入れた。

 あるとき尚隆がからかうように言った。「礼をするなら、女どもはもっと
感謝の意を表わすぞ」と。
 尚隆が城を抜けだして半月ぶりに帰ってきたとき、彼はささやかな手みや
げを六太にくれた。市井の素朴な菓子。尚隆はいつも六太のことを「おまえ
は色気より食い気だな」と言って、そのとおりのみやげをくれるのだ。
 六太が「わーい」と無邪気に喜んでみせ、ひったくるようにして尚隆から
菓子の包みを奪ったところ、尚隆は苦笑してそう言った。
「感謝の意って何?」
「そうだな。――たとえば接吻をするとか」
 六太は吹きだした。
「接吻ひとつで済むなんて、ずいぶん安上がりな感謝じゃねーか」
「そう言うなら、おまえもたまにはその程度の感謝はしてくれても良いので
はないか? 日頃から主を主と思っていないようだしな」
 人の悪い笑みを浮かべて六太をうながす。
 ――ああ、まただ。
 六太は思った。尚隆が泣いている。どう見ても、単に相手を困らせようと
しているとしか思えないのに、いつものようにふざけた笑みを浮かべている
のに、なぜだか六太はそう感じた。

12酔夢(9/E):新刊発売まであと57日:2019/08/16(金) 09:59:57
 彼の視線が、六太を通りすぎて誰か別の人間に注がれているのだろうこと
を知りながら、その視線をつなぎとめることができたらと願った。もし、尚
隆が少しでも核心に触れる言葉をほのめかしてくれたら。背後の見知らぬ誰
かではなく、六太自身に視線がそそがれていると思うことができたら。もし、
もし――。
 しかし尚隆はふざけた表情を崩さなかったし、それは六太も同様だった。
 六太は唇を尖らせて、すねたように言った。
「もー、わかったよ。麒麟の口づけなんぞ、滅多にもらえるもんじゃねーぞ。
ちゃんとありがたがれよ。俺の初めての接吻なんだからな。本当なら王ごと
きにくれてやるもんじゃねーんだぞ」
「わかった、わかった」
 六太は不承不承といった体で、腰をかがめて苦笑する尚隆の肩に手を置い
た。そうしてそっと相手の頬に唇をよせる。ありったけの想いをこめて。
「唇にはくれんのか?」
「そーゆーのは女にやってもらえ。妓楼の馴染みのねーちゃんとかさ」
「ああ……。そうだな」
 相変わらず人の悪い笑みを浮かべたまま、尚隆は言った。その言葉に、ほ
んの少しだけさびしげな響きが混じっていると感じたのは気のせいか。
 だが六太は呆れたように首を振ってみせただけだった。何も変わったこと
はなかったとでもいうように菓子の袋を覗きこみ、ついで官が王を探してい
たと言って彼を内殿に追いたてる。
 何も気づかなければいいのだ。六太はいつものように、そう自分に言い聞
かせるしかなかった。尚隆の想い人が誰かなど、考えても得るものは何もな
い。たとえこれがかりそめの平穏に過ぎないとしても、この日常が壊れるこ
とを考えるのは恐かった。

 そして今夜も六太は杯を飲みほす。身も心も、すべてを夜に委ねるために。

13一人カウントダウン企画 ◆y8UWMRK39I:2019/08/16(金) 10:03:08
というわけで、最後まで両片思いのままでした。

でも大丈夫。
誤解と紆余曲折を経て、将来はきっとラブラブになるから!

14名無しさん:2019/08/16(金) 13:41:34
尚隆の意気地なしーっ!
と叫びたいところですが、将来的に両想いになるのなら、そうなるまでおとなしく待ちます。
頑張れ尚隆…

尚隆が自覚あるのに六太に手を出せない理由があるとしたら(この話では手出してるけど)男だからじゃなくて麒麟だからだろうなあ…


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