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尚六SS「酔夢」

10酔夢(7):新刊発売まであと59日:2019/08/14(水) 10:14:23
 傍らでぐっすりと眠っている尚隆をちらりと見た六太は、震える手で帯の
結び目を検分した。前夜はわざと、いつもとは異なる結びかたをしていたの
に、今はそうなっていなかった。
 臥牀の上で茫然と座りこんだ六太は、しばし瞑目した。これまで幾度とな
く見た淫靡な夢が、決して夢ではないことを知った。酒に果汁を加えて勧め
るようになったのは、口当たりを変えて薬の味を誤魔化すためか。
 ――どうして。
 泣きたい思いで、傍らの尚隆に無言のまま問いかける。
 あんなことをしなくても、自分が欲しいならそう求めてくれれば。王と麒
麟が深い仲になったという話は聞かないし、ましてや自分たちのように同性
の主従の場合、誰もそんなことを想像もしないだろうが、麒麟はもともと王
のものだ。たとえ倫理に反していようと、恋い慕う王のものになれるのなら、
たいていの麒麟は悦びに震えるだろうに。
 そこまで考えて、ようやっと尚隆が求めているのが別の者である可能性に
思いいたる。
 考えてみればこれまで何でも自分の思い通りにやってきた尚隆が、こんな
ことでひるむはずがないのだ。そもそも自他ともに女好きを認める尚隆が、
幼い少年の外見を持つ六太を欲するというのもおかしなことだ。
 ――他国の麟にでも懸想しているのか。
 ふと思いつき、筋道が通っているような気がしてどきりとする。六太の金
の髪に、その麟の面影を重ねているのか。それならばわからないでもない。
金の髪を持つのは麒麟だけ。いくら他の女を抱いたとて、麒麟を抱いた気分
にはなれないだろうから。
 考えれば考えるほど想像が当たっているように思えて、六太はますます暗
い気持ちになった。尚隆にだまされていたことよりも、知らずに犯されて無
体を強いられていたことよりも、誰かの代わりであろうという想像が何より
も六太を苦しめた。
 こんなに近くにいるのに、六太の想いは尚隆には届かないのだ。そして尚
隆の想いも、見知らぬ誰かには届かない――。


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