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尚六掌編

13夢を見た:新刊発売はいよいよ明日!:2019/10/11(金) 01:01:50
『一人カウントダウン企画』ラストはちょっとシリアス。六太視点。
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 夢を見た。
 尚隆と手をつなぎ、ふたりで歩いていた。平坦な歩きやすい場所はほとん
どなく、険しい山道やぬかるんだ泥土を、苦労しながら進んでいく。
「あっちがいい」
「阿呆、こっちだ」
 時に諍う俺たちの前に道はなく、だが振り返ると歩いた跡に道ができてい
た。その道を無数の人々が同じように歩いてついてくる。
 何とはなしに尚隆を見上げると、てっきり脇目も振らずに歩いていると
思ったのに、彼としっかり目が合った。ふ、と笑われて赤面していると、彼
は背後にもちらりと視線を投げ、何やらうなずいた。ついでふたたび前方を
見据える。
 世界は尽きず、俺たちが踏みしめる大地は永遠に続いていくのだろう。

 ふと目が覚めると、暗い牀榻の中で尚隆が顔を覗きこんでいた。腕に抱き
こまれていた俺は、ひやりとした頬の感触に、涙を流していたことを知った。
「どうした」
 低い声が俺の耳を優しくなでる。
「……夢を見た」
「良い夢か?」
「たぶん」
 泣き笑いのような顔になって答えると、尚隆は微笑して「そうか」とだけ
言った。
「官が起こしに来るにはまだ時間がある。もう少し寝ておけ」
「ん」
 俺は冷たい頬を袖でぬぐうと、尚隆の胸元にしがみつくようにして顔を埋
めた。温かな体温が眠りを誘う。
 道なき世界を俺たちは連れ立って歩いていく。時には喧嘩をしながらも、
しっかりと手をつないだまま。


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