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尚六掌編

11初寝(2/E):新刊発売まであと39日:2019/09/03(火) 20:32:01
「それで、だな」
 服を着た尚隆は向き直ると、やや困った顔になった。
「そのう――おまえ、腰はどうだ? つらくないか?」
「え、え?」
「加減はしたつもりなのだがな、やはりこれだけ体格の差があるとな……」
「だ、大丈夫。なんかちょっと変な感じはするけど」
 体に刻まれた昨夜の情交を意識した六太は、いっそう顔を赤くしながらも
何とか答えた。「そうか」と言った尚隆は明らかに安堵した様子。
「でも、あの……どうしよう。けっこう衾褥を汚しちゃったけど」
「まあ、宿代を余分に包んでおけば問題なかろう」
「う、うん」
 六太はうなずくと、ぎくしゃくした仕草で褥から出た。
「今日は高岫を越えようかと思っていたが、どうする? 何なら今日一日、
この街にいてもいいのだが」
 尚隆が六太に旅の希望を尋ねるなど滅多にあることではない。先ほどの言
葉といい、体を気遣ってくれているのだろう。
 六太は赤い顔のまま考えこんだが、少し迷ってから「うん」と答えた。
「来るときあの小途でやっていた講談も、今日もやってれば聞いてみたいし
……巳門の近くにあった菜館が、表で客寄せに蒸していた饅頭もうまそう
だった」
「そうか。ではまずその菜館に朝飯を食いにいくか」
「うん」
 服を着たことで少し落ち着いた六太は、恋人に寄り添うように立つと、よ
うやく「えへへ」と照れた笑みを向けた。尚隆も笑顔で六太の背を軽くたた
き、そうして連れ立って房間を出ていった。


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