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尚六SS「六太、猫になる」

8六太、猫になる(5/E):2019/08/05(月) 20:50:26
「執務室には猫じゃらしを備えつけておくか」
 そんなことを言って満足そうに六太の腹をなでる尚隆自身、やがて眠く
なってあくびをもらしたのだった。

「――ご起床の刻限でございます。どうぞお目覚めくださりませ」
 牀榻の外からやわらかく声をかけられ、尚隆は目を開けた。政務の途中か
ら記憶がなかったので、いつの間に寝たのだろうと不思議に思っていると、
妙に腹が重い。衾をめくってみると、六太が彼の腹に頭を乗せて平和に寝こ
けていた。猫形ではなく人形だが、被衫を乱して腹を出しているだらしのな
いかっこうは、猫形での寝相を彷彿とさせた。
「おい、起きろ。朝だ」
「んー……」
 六太はうなるように応えてから目を開けた。褥の上で座りこみ、大きく伸
びをして「うーん」とうめく。
「今日は猫ではないのだな」
「はあ?」
 伸びを途中で止めた六太が、目を見開いて伴侶を凝視した。尚隆は苦笑し
た。
「いや……。昨日はずっと獣形だっただろうが」
「昨日? そうだっけ?」
「ああ、なかなかの見ものだった。これからは執務室に猫じゃらしを備えつ
けておくとしよう」
「はあ?」
 六太はまじまじと尚隆を見ると、相手の額に手を当てた。
「熱はないようだな……」
「おまえは猫ではないのか?」
 ぱちぱちと瞬いた六太は、憐れむような顔で「ボケるにはまだ早いと思う
ぜ」と言い残して牀榻を出ていった。
 残された尚隆は、ようやくあの出来事が夢だったことを悟った。そうして
しばし固まったあと我に返り、「どうせならもっとなでておくんだった」と
くやしそうにつぶやいた。


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