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ヤンデレ小説投下スレ

28甘えた:2019/08/14(水) 15:49:29 ID:???0
召喚スレの高スペ甘えたヤンヤンが好きな属性だから書きたかったけどセリフだけは難しすぎたのと長くなったのでこちらに
2スレほどです





気持ちがはやりすぎて周りが全く見えない。
 電車に乗り込む時、降りる時の二度にわたり扉に額をしたたかに打ち、しかし痛みを気にする余裕もなく、階段は一段どころか二,三段飛ばしで駆け下りた。改札にICカードをかざす一手間すらもどかしい。はやくはやくはやくと気ばかりが焦り、あまりの愛おしさに、恋しさに、走りながら叫び出してしまいそうだった。
 日が落ちたというのにむわむわと熱気の篭もる道をひた走り、ああそう言えばここから先には何も店がないということに気が付きあわてて駅前のコンビニへ戻った。
 どうしてこんなに不便なところに住んでいるのだろう。駅前にはコンビニや小規模のスーパーマーケットはあるが、あとは住宅が並ぶだけの面白味もない街だ。駅から家までも離れている。毎日の通勤、買い物はさぞかし大変だろう。
 僕はこの街が嫌いだと、来る度に思う。彼女に住処として選ばれたこの街が妬ましくて、羨ましくて、大嫌いだ。
 彼女の好きなものをいくつか購入し、振動で中身が駄目にならないようコンビニ袋を両腕で大事に抱えてまた走る。
 僕の家に住んでくれれば良いのに。駅から徒歩5分という好立地のタワーマンション。その上階だから見晴らしは抜群だし下界の音も聞こえない。
 駅周辺にはもちろん各種のコンビニが立ち並び、スーパーマーケットには高品質の物だけが置かれている。彼女の好きなオシャレなカフェも、時間をつぶせる書店も、凡そ彼女が満足してくれる全てが揃っている。だからこそ選び購入した僕の家に、しかし彼女は住んでくれない。彼女のためだけの家なのに。
 少し悲しくなってきたので走りながらスマートフォンを取り出し、先ほど彼女からもらったメッセージを読み返す。

 『会いたいです』

 ああ!!
 彼女が僕に会いたがっている!!
 叫び出したいほどの歓喜が僕を支配する。実際、走りながらもしかしたら叫んでいたかもしれない。
 嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しい!!
 僕も会いたい。いつだって会いたい。
 朝も昼も夜も彼女しかいらない。他の何もかもどうでもいい。彼女と四六時中一緒にいてずっとずっと体のどこかを触れさせていたい!!
 はあ、はあ、はあ。彼女の住むアパートの前で息を整える。こんなに乱れた姿を見せるわけにはいかない。
 流れる汗をぬぐい、人目につかないよう影になる場所で常に持ち歩いている糊のきいたシャツに着替えた。いつ彼女に呼び出されても良いように常備している衣服は、嵩張るが役立つので手放せない。
 ほんのり香る程度に手首や首筋にロールフレグランスをつける。彼女の好きなにおいだ。
 濡れた髪だけはどうにもならないがこの暑さで全力疾走したのだから仕方がない。せめてセットだけはと鏡を出して、せっせと前髪を整える。額が赤く変色しているのは、電車の扉で打ち付けたせいだろう。前髪で隠しておけば彼女に気付かれることもない。こんなみっともなくてダサいものを彼女には絶対に見せたくない。
 準備ができたので、深呼吸してチャイムを押す。緊張で、指が震えた。もう何度もこうして会っているのに何かミスをして嫌われてしまわないか、彼女に好きだと思ってもらえる言動をちゃんと取れるか、心配と不安に僕の心臓はばくばくと音を立てる。同時に、やっと彼女と会える喜びに制御不能の狂喜が体中を駆け巡る。

 『はい』

 インターフォン越しの彼女の声も好きだ。

 「こんばんは、会いに来たよ」

 『えっ』

 驚いて少し高くなる声も好き。

 「あがらせてもらってもいいかな? 駄目なら、ここで少し話すだけでも……」

 会いたいとは言ってもらえたけど、会う約束を取り付けたわけではなかったので、控えめな提案をした。本当は問答無用で、こんなやり取りもなく、合鍵で彼女の部屋へ押し入りたい。

 『あ、あの、待ってもらえますか。今、部屋着で』

 恥ずかしそうな声も可愛い。ああもう好き。大好き。感情が抑えきれない。
 部屋着で全然かまわないよ、むしろ見たいよ、見せてよ。
 早く会いたい、もう待てないよ。ほら僕いますごく動揺して地団駄踏んじゃったよ、かっこ悪い。見えてないよね? このインターフォンにはモニターついてないし、大丈夫だよね?

 「待ってるからゆっくりでいいよ」

 努めて冷静に優しく声をかけられた自分を表彰したい。
 もし本能のままに行動してよければ、強引に中に入り涎をだらだら垂れ流しながら部屋着の彼女に抱き着き柔らかな体を余すことなすベタベタと撫で回し、頭皮や首筋のにおいを嗅ぎながらもちろん舌も這わせて、いきり立つものをぐりぐり押し付け……やめよう。嫌われてしまう。
 数分後、ガチャリとドアが開けられて、昨日ぶりの可愛い可愛い可愛い僕の彼女がそろりと姿をのぞかせた。


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