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僕の望み

1 名無しの作家さん :2018/02/28(水) 11:26:31 ID:lka/LTy2
『理想の姿』と同世界観の話ですが、主人公は異なります。

2 名無しの作家さん :2018/02/28(水) 11:45:57 ID:lka/LTy2
注;R-18です。

「えっ、翔太が?!」
職場で働いていた私こと涼子の元に届いたのは、婚約者が大事故に巻き込まれたという知らせだった。
急いで彼のいる病院へと駆けつけたが、ICUの中で面会謝絶状態。
どうやら彼が有給休暇中、レストランへと車を走らせている時、偶然にも起きた震度4ほどの地震によりバランスを崩した無人重機に車が潰されてしまったという。
こんな不幸すぎる悲劇に見舞われた彼の快癒を、来年結婚する相手として私は願っていた…。

だが、なぜか一週間たっても1か月たっても彼と面会することは出来ず、私が不安を募らせていた時、
「ごめん、婚約は解消する。君は自分で幸せになってくれ」
そんな突然の手紙が届いた。
曰く、彼は事故で整形をしても完全に治らない程の顔の損傷と言語障害を負ってしまい、
しかも運動機能も四肢に麻痺が残り、完全にはもう治らないという。
「こんな僕では、結婚しても君の負担になるだけだ…。事故に遭う2日前、君と初夜を過ごした時は本当に良かったけど、だからこそ君を僕に縛り付けることは出来ない。
僕を恨んでもいい、忘れてもいい、でも、離れるのが僕のエゴだとしても、君は幸せになってくれ。それが、僕の願いだ。」
そう手紙は結ばれていた。

…例えそうだとしても、もう彼を忘れる事なんて出来ない。
だって私は、もう彼の子供を身ごもっているのだから。
事故後判明したこの事実は、彼と再会した時言おうとずっと手紙にもしなかった。
だからこの手紙を貰った後即この事を彼に手紙で伝えたが、もはや彼から手紙が帰ってくることはなく、それきり行方も分からなくなった。

…3年後、私はシングルマザーになっていた。
彼との娘に「翔子」とつけ、子供を保育園に預けながら過ごしていた私の元に、ある日突然巨大な箱が届いた。

「万能ハウスキーパードール『れん』…?」

3 名無しの作家さん :2018/02/28(水) 12:10:23 ID:lka/LTy2
箱に書かれていた品物の名前はよく分からなかったが、差出人の名前に驚いた。

「翔太」
その名にすがるように思わず開けてしまった箱の中には、白い梱包材に包まる「何か」、説明書らしき冊子、そして…手紙が入っていた。
「キミの子供はもう3歳になっただろうか。前に君に告げたように、もう僕は君とは一緒にいられない。でも、子供には本当に申し訳ない事をした。
詫びになるとは思えないが、君と僕の子供をいつも見守ってくれる人形を送る。「れん」と呼べばすぐ起きるよ。後他の取り扱い方は説明書にあるから。」

…相変わらず、勝手な人。たとえどんな姿でも、あなたがいてくれればそれでいいのに。
そう憤りながらも、梱包材を開けた私の眼に入ってきたのは、アニメ顔をした「メイド」だった。
説明書には次のようにある。
「万能ハウスキーパードール『れん』は、水とサプリメントだけで動く、生体型人形です。
命令すればご主人様の仰せの通り動き、ご主人様の家と家族をお守りします。
お手入れも大丈夫。ご主人さまの留守の間に自分で行います。
メイドの外見に飽きても大丈夫!弊社に依頼すれば即別な外装をお届けします。
ご相談は私共『着ぐるみや』へどうぞ」
といったことが記されていた。なおサプリメントはミキサーにかけた野菜などでもいいらしい。

怪しい、怪しすぎる。…でも、これが彼の最期の誠意なら、信じたい。
しばらく逡巡した後、私は「れん」に初めての「命令」を下した。
「れん、起きて挨拶をしなさい。

そういった途端、メイド人形は動き出した。
「始めましてご主人様、私は「れん」といいます」
「あなたは誰?」
「私は翔太様の命令で、ご主人様とご主人様の娘をお守りするために使わされた人形です」
「あなたはロボット?」
「私はハウスキーパードール、汎用型人形用素体「れん」です」
「『着ぐるみや』とは何?」
「汎用型人形用素体を扱う会社です」
「汎用型人形用素体って?」
「私はそれを言う事を禁じられています」
「あなたは何が出来るの?」
「家事と護衛が出来ます」
…等等、自己紹介をしつつも、「自分の出自」については隠し続けた。
ハスキーヴォイスな彼女の正体はよく分からないが、彼の贈り物で、私たちに害意を持たないのなら、とりあえず家に置いておくか。
「なら「れん」、私の娘「翔子」を守りなさい。後、「動くメイド人形」なんておかしいから私と翔子の前以外では、有事の時を除いて動いては駄目。後その外見も目立つのだけど…」
「大丈夫です、そんなこともあろうかと、私はソファー型外装も用意しております」
「気になっていたのだけど外装って何?」
「私たちの本質は「骨組み」であり、任務によって多種多様な外装を纏います。実演しますか?」
「じゃあお願い」

4 名無しの作家さん :2018/02/28(水) 12:23:08 ID:lka/LTy2
そう告げると、「れん」は服を脱ぎ始めた。
メイド服を脱ぎ捨てて、人形じみた肌を晒した彼女はおもむろにその「肌」をも脱ぎだした。
まるで全身タイツを脱ぐように体中から肌を外した後露わになったのは…真珠色で、つるつるとした、のっぺらぼうの様な何か。
身長は160cmほど、体には胸も股間の膨らみもなく、関節さえあればマネキンの様な姿の「れん」は、自分が包まれていた梱包材からもう一つ何かを出した。
「それは…椅子よね」
「ええ、私はこの椅子に入ります」
「大丈夫なの?」
と思わず聞くも、彼女はそれ以上説明せず、椅子を組み立てだした。
そして完成した後、背もたれに出来た裂け目から、つるつるの「れん」は体を滑り込ませ、内側から封を締めた。
「いつもはこのようにご扱いください。できればご主人様に座ってもらえればうれしいです!」

…その様子、その動きは、どう見ても「人形」ではなく「人間」にしか見えない。
だが本人が「人形」と言うのなら、そして…もし彼女が翔太について何かを知るかもしれないならしばらくは家に置いてやるか。

そう思い、夜なので寝ていた翔子の元へと彼女を連れていき、
「これから翔子のおもちゃになりなさい。でもあなたは人形なんだから、その事をわきまえなさい」
「はい、そうしますご主人様」
「私のことは涼子さんと呼びなさい」
「はい、涼子さん」

5 名無しの作家さん :2018/02/28(水) 12:38:22 ID:lka/LTy2
それから1か月ほどたった。
「れん」は家のメイドとしてよく働いている。
翔子の良い遊び相手にもなっているが、幼い娘が「動く人形」のことを迂闊に話されても困るので、
あの後命令で「翔子の前では喋らない、受動的にしか動かない」とルールを定めた。
よく働く彼女の姿を見ると、不審な存在なのに妹の様に見えてしまうときも出て来た。
後誰かがいる時は椅子に入っているのだが、その時は殆ど身じろぎもせず、本当にイスとして私の重みを良く支えている。

だが彼女の正体は未だ謎だ。
定期的に風呂場で「メンテナンス」を行っているようだが、いつも彼女は私たちの留守の時にしかそれをしない。
あの真珠色の「肌」の下には、何があるのか。
本人はドールというが、その言葉動き振舞い食事、全ては彼女を「人間」と指している。
ならその中身…本物の「れん」は誰なのか。命令すれば何でもするのに、外装交換だけはどうしても命令に応じない彼女は何なのか。

そう思った私は、ある日翔子が保育園に行っている時有給休暇を取り、家にこっそり帰ることにした。もちろん「れん」には内緒だ。
静かに家に帰ると、タイミングのいいことに彼女は風呂にいるようだった。
忍び足でそこに向かいひっそりとそこを除くと…

「見ないで!」

脱がれたメイド外装、そして、やはり衣服だった真珠色の肌、
そして、その中にあった「れん」は
まるでマネキンの様に全身脱毛された裸体、
股間に男女を示す何者もない異形、
その素肌を彩る、何重もの醜い傷跡、
そして…
「翔太?」
その顔は傷にまみれ、無毛であったが、間違いなく翔太以外の何物でもなかった。

6 名無しの作家さん :2018/02/28(水) 12:56:22 ID:lka/LTy2
そういえば翔太も同じくらいの、男性としては小柄な体だった。
声は違うのに、性別も不明なのに、顔もズタズタなのに、どうしてもその裸体こそ、翔太だと確信できてしまう。
驚く私を見ていた「れん」…いや翔太は、「…ごめん、ずっとだましてて」と、静かに呟きながら、座り込んだ。

しばらくして、「彼」はぼつぼつと事故後の事を話し始めた。
確かに彼は事故で重傷を負い、治らぬ傷跡を負った、
だが他に負ったのは「運動機能・感覚機能の喪失」ではなく、生殖機能の喪失だった。
男性機能をサオごと失った彼は、私との未来に絶望していた。そんな時だったのだ。『着ぐるみや』が声を掛けたのは。
着ぐるみフェチや世捨て人を「汎用型人形用素体」として改造・派遣する裏会社である『着ぐるみや』は、彼の心に滑り込んだ。
「人形として『男』を取り戻してみないか」「いっそ性別をなくして人形として過ごしてみないか」と。
あの「別れの手紙」、嘘を入れつつも私を案じて書いた遺書を綴った時は、まだ「素体」になる事をためらっていた。
だが、皮肉にも私と彼の子供がいると知った時、彼は決断してしまったのだ。
「男として、人としての未来を捨て、私と子供のそばにいる人形になる」と。
『着ぐるみや』での改造時、あえて声と性別を捨てる手術を受けた彼は、「素体」として各地にレンタルされ功績を積むことで、私の元に来られる権利を勝ち取り、メイド人形として現れた。
「僕はもう男じゃない。君を満足させてあげられない。でも人形なら、ものなら君の傍にいられる。
それに『着ぐるみや』で働くうちに目覚めたんだ。本当の僕に。
どんな形でも君の傍にいる事。それが、『僕の望み』で、もうそれ以上はいらない」
そう言い終えると、彼は放心したように、裸体のまま崩れ落ちた。

本当に勝手な人。そう思うのなら、人として、セックスできなくても傍にいてほしかったの。
…でも、ここまで体を変えても私たちを好きなのなら、翔子を愛しているのなら、
私は…

7 名無しの作家さん :2018/02/28(水) 13:20:00 ID:lka/LTy2
翔太の事故から、10年がたったある日。

朝早く目覚めた私は、薄暗いベッドの中で目覚めた。
そばにいるのは翔太…いや「れん」
物も言わずに静かにかれを起こすと、上にいる翔子をベッドごとに揺らし、娘を起こした。

「おはよう、パパ・ママ」
そういって娘がベッドから起きて部屋から去った後、私たちはベッドから出た。
傍に立つ「れん」の真珠色は昔と変わらないが、私の姿は昔と違う。
灰色の全身タイツ、彼と同じくマネキンの様な体。
これが今の私、「素体」の「りょう」だ。

あの後、私は悩みに悩み、それでも彼が好きだという結論に達した私は、思い切って「彼と同じ」になることを決めた。
『着ぐるみや』に依頼したら娘と「着ぐるみ」として共にいられる家もサービスしてもらえた私は、体を作り変え「素体」となった。
会社は気前がいいのか、私たち夫婦にいつも「一緒」でいられるような仕事をくれた。それは…。

ある会社の門に、一対のガーゴイル象がある。
その中に入り、生きた見張りとなるのが私たちの仕事。
無茶苦茶きついし狭いし視界も狭いが、着ぐるみについたセンサーでそれはフォローされる。
それに彼がいつもとなりにいてくれるなら、それ以上望むことはない。

たまに家に帰る時も、娘のベッドに二人で入って寝たり、交代で椅子に入ったり、
可愛い着ぐるみに身を包んで家族サービスしたり充実している。

「ごめんね、僕の望みに突き合わせて」
そう「れん」は時々謝るけど、でもあなたも私をだましたからおあいこよね。

そして、いつか娘が自立した時、二人でこう望むのだ。
「私たちを、2人で一つのオブジェクトにしてください」と。
そうすれば私たちは死ぬまで本当に一緒にいられるし、「骨組み」が老いたって外見には関係ない。
彼と薄暗がりの中久遠を過ごせるのなら、もう…それ以外いらない。
「『僕の望み』は私に新しい世界を教えてくれたわ」
そう私は呟くのだった。

終わり

8 名無しの作家さん :2018/03/02(金) 13:58:28 ID:jGwXSDEg
おつ!

9 名無しの作家さん :2018/03/09(金) 01:01:24 ID:L4KDdOqQ
女性自身が野菜着ぐるみでPRする小説や食材着ぐるみでPRするのがあれば、書いてくださる人はいますか!?


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