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テストロールスレッド

1名無しさん:2015/08/25(火) 00:34:05 ID:ZjpwQfrA0
ひとまずのテストロール場所です
テンプレ未定、試運転用

2名無しさん:2015/08/28(金) 01:18:50 ID:h0ZuHOXM0
『E-4からG-2までの閉鎖及び民間人の退避を完了』

『カバーストーリー40298を流布。順調に浸透中』

『逃走ルートの予測を完了、随時更新を続けます』

『特務機動部隊Ε-13急行中。アウラ・ミューリライネン特務大尉の援護を目的とします』

『特務機動部隊Κ-2の被害状況は死者3、負傷者12。既に交戦は終了し、後退中』

『ミューリライネン特務大尉より通信。"一般市民の避難を優先すべし"。繰り返す、"一般市民の避難を優先すべし"』

『了解。特務機動部隊は交戦及び支援戦闘を第二優先に、一般市民の避難及び保護を第一優先に』


『アウラ・ミューリライネン特務大尉は"聖遺物"の奪還を続行せよ』


露西亜連邦、モスクワの端。封鎖された道路上には車は一台も通らず、それらの全てがロシア軍によって封鎖されていた。
上空にはヘリコプターが何機も飛び交い、主要道路の端には装甲車と武装した兵が立っている。
そうして無人となった街中を、駆ける二つの影があった。一人は、厚いジャケットを着た東洋人の男だった。
それは空いた道路を駆け抜けていた。何か道具を使うでもなく、ただただ、"走るだけで"。本来そこに走っている筈の乗用車達と変わらない速度を出していた。
そしてそれを、追いかける者もいた。紺色のコートを羽織り、白いハットに白いスーツの上下、手袋を身に着けて、一匹の軍馬に乗って、その少女はそれを追いかけていた。
距離はぐんぐんと縮まっていた。男の速さも相当なものであったが、軍馬自体も、馬が出す事の出来る速度を遥かに超えて、街中を駆け続けていた。
それでも、距離は数百メートルはあった。追い付くには未だ時間はかかる距離……そこで少女は、軍馬の手綱を手離し、背負っていた長い小銃へと手にかけた。
男が、脚を止めて振り向いた。その手を迫る軍馬と少女へと翳していた。その掌の中に何かが収束し、そして歪んでいくのが分かった。
少女は、長大なモシン・ナガン狙撃銃――――――――――――それを構えた。スコープすら取り付けられていないそれを、馬上から。男へと照準を合わせて。引き金を引く。
鳴り響く銃声、300m先ではじけ飛ぶ一人の男の頭。倒れ込む身体、さも当然とばかりに眉ひとつ動かさずアイアンサイトから目を離すと、再度軍馬の手綱を掴む。

「こちらミューリライネン――――――――――――作戦は終了したわ、回収部隊を」

死体の傍に駆け寄って、馬上から少女……アウラ・Y・ミューリライネンは連絡すると、狙撃銃の槓桿を引いて排莢を行う。
もう一度、その血を垂れ流し続ける頭へと照準を合わせ、引き金を引いた。
乾いた炸裂音と共に鉛玉が頭を弾けさせて、軍馬の足にぴしゃりと付着した。アウラ・ミューリライネンは、その様を冷めた目で、見つめ続けていた。

/こんな時間ですが投下ー

3名無しさん:2015/08/28(金) 05:33:12 ID:symddq1E0
>>2
1人の少女と、そして1人の男。"聖遺物"……その神秘をめぐるモスクワの争いは、ここに決着を見せた。
しかし聖遺物を持つ者なら、感じ取れるだろう。それは先にここにいたどちらのものでもない。もう一つの聖遺物の気配が、静かにしかし確実に、それら二つがある場所へと近づいていることに。
この封鎖された街で、彼らに近寄れるものがあるはずはない。だがしかしひとつだけ、その突破口がある━━━━━
それは飛び交うヘリコプターよりも、はるか上からやってきた。

「……二つか……無人では……ない」
「……この包囲網……そういうことか……」

やがて少女と、そして屍体となった男の側に、突如"何か"が落下した。
立ち昇る煙の中。霧の向こうから姿を現したのは、1人の青年だった。真っ赤な布を羽織り、黒い帽子には鎌と鎚……亡びたかつてのこの地を現す紋章が、金色に輝いていた。
彼が手にしているのは一対の"聖遺物"。左手に握る鎚と、右手に握る鎌……彼は着地するなり、紅に光る異相の右眼でもって、二つの聖遺物の気配を交互に眺める。
その光景を見て何か察したような顔をすれば、すかさず少女に話しかけた。

「……ここに来るまでに見てきたぞ。"あの"青十字……」

その語調には、明らかな敵意が含まれている。いつでも臨戦態勢といった風に、彼は両手の聖遺物を握りしめる。
そして彼は声を張り上げて、今度は周囲に人とは思えぬ声量で、展開する軍隊へと宣告するかのように叫んだ。

「我らの『偉大なる首都(モスクワ)』に何の用だ?ここにある聖遺物はこれよりソヴィエト・ロシアの名において、我らが接収させてもらう」
「わざわざ我が国の獲物を仕留めてくれたのは喜ばしいことだ。早速、国に帰ってもらおうか。貴様らが愛してやまないスオミにな!」

彼はかつてのこの地を叫び、相手に返答させる間も与えず、剥き出しの敵意をあらわにしながら、さらに言葉を重ねてまくしたてる。

「……出て行かぬのなら戦争だ。……どちらにしろ、生かして返すつもりはないがな」
「なあ、"聖遺物持ち(イレギュラー)"?」

最後の言葉は、目の前の少女に向けて。
モスクワへと降り立ったソヴィエトの亡霊は、再び、フィンランドへと牙を向けた。

/かなり遅れてですが、絡ませていただきます。お好きな時間にお返しください。

4名無しさん:2015/08/28(金) 08:13:03 ID:hEh11g2M0
>>3
//申し訳ありません、フィンランド軍と勘違いしていました。書き直して参ります

5名無しさん:2015/08/28(金) 08:46:07 ID:4Iu1pbgU0
>>2
1人の少女と、そして1人の男。"聖遺物"……その神秘をめぐるモスクワの争いは、ここに決着を見せた。
しかし聖遺物を持つ者なら、感じ取れるだろう。それは先にここにいたどちらのものでもない。もう一つの聖遺物の気配が、静かにしかし確実に、それら二つがある場所へと近づいていることに。
この封鎖された街で、彼らに近寄れるものがあるはずはない。だがしかしひとつだけ、その突破口がある━━━━━
それは飛び交うヘリコプターよりも、はるか上からやってきた。

「……二つか……無人では……ない。そして、この厳重な包囲網……」
「……"先客"か……」

やがて少女と、そして屍体となった男の側に、突如"何か"が落下した。
立ち昇る煙の中。霧の向こうから姿を現したのは、1人の青年だった。真っ赤な布を羽織り、黒い帽子には鎌と鎚……亡びたかつてのこの地を現す紋章が、金色に輝いていた。
彼が手にしているのは一対の"聖遺物"。左手に握る鎚と、右手に握る鎌……彼は着地するなり、紅に光る異相の右眼でもって、二つの聖遺物の気配を交互に眺める。
その光景を見たのち、すかさず少女へと話しかけた。

「……我が国の軍隊は、貴様に味方しているようだな」

その語調には、明らかな敵意が含まれている。いつでも臨戦態勢といった風に、彼は両手の聖遺物を握りしめる。

「……だがな。ВСРФが許しても"我ら"は許さん。栄光貴き赤軍は貴様のような、一人の"強い存在"をな」

そう言って、亡国ん示す奇妙な人物。彼は、名を"グスタフ・エフセエヴィチ・アバルキン"という。
彼はロシア政府と直接の繋がりを持つ"無差別聖遺物奪取役"━━━━━だが、政府上層部でもない軍隊はそれを知り得ない。突然の乱入者に、たじろぐ様子を見せるだろう。
彼はちらりと死体を見て、聖遺物の気配が確かにそこにあることを確認し、声高らかに宣言する。

「……そこの「聖遺物」は、"我々"が接収させて頂く。……そして!」
「……貴様の「聖遺物」もまた、接収するとしよう。我らがソヴィエト・ロシアの名の下にな!」

そして彼は再びもってはっきりと亡国の名を示し、敵意を剥き出しにして、少女へと迫る。
鎌と鎚をきりりと握りしめ、今にも少女へ襲いかからんという勢いだ。

//修正しました。>>3は無かったということで、改めてこちらの文でよろしくお願いいたします。

6アウラ・Y・ミューリライネン:2015/08/28(金) 13:38:47 ID:h0ZuHOXM0
>>5
「何か……来る……!?」

何か嫌な気配を感じていた。
フィンランドは未だロシアから属国扱いを受けている。アウラ・ミューリライネンが今、此処で聖遺物の回収を行っている事も大半の理由がそれだった。
その支配から抜け出そう、という動きはある……だが、その関係は、"ソビエト"から続く長い長いものだ。そう簡単にはいかない。
そしてその感覚は……自分達を見下すロシアの高官や……いや、もっともっと、それ以上の何かを、アウラへと訴え、そしてその正体は直ぐに理解した。

「……ソビエト、ですって?」

それは既に滅びた国である筈。目の前に突如として現れた聖遺物を携えた男は然し、さも当然であるかのようにそう言った。
ロシア軍からの返答は一切ない、通信すらも無い。あくまで白を切るつもりであるのは明白であり……チッ、と小さく舌打ちをして、モシン・ナガンの槓桿を引いた。
相手が何処か狂っているのは間違いないが、そして同時に脅威でもあった。聖遺物を持っている時点で、それは明確な脅威に他ならない。
そして、男が言うとおりに。その槌と鎌の通りの思想を持っているのならば――――――

「ふん、何言ってるのかよく分からないのだけれど。とっくに滅びたソヴィエトの名を騙って、何ごっこのつもりかしら」
「言っておくけど、"スオミ"はもう貴方達には屈しない……いいわ、相手してあげる。"フィンランド陸軍"に喧嘩を売った事、後悔しなさい!!」

ロシア軍からの情報提供は何もない。逆を言えば、これを殺してしまっても、幾らでも言い訳は出来るという事。最悪聖遺物さえ残っていれば、何とかなる。
故に、迫りくる敵意を、真正面から打ち砕かんとした。モシン・ナガンはこの距離では少々取り回しが悪い――――――それを、再び背負い直し。
二丁の拳銃を腰から引き抜いた。両手に握るはラハティL-35。9mmパラベラム弾を使用した、嘗てのフィンランドの正式採用拳銃である。

「所詮は共産主義の亡霊でしょ、古いのよ、そういうの!!!」

銃声が二つ、連続して響いた。それらは正確無比に馬上から、彼の両脚を狙って撃ち出された。もう一度、連続した炸裂音が響くと、今度は彼の両腕を狙って弾丸が飛んでいった。
二丁拳銃、と言うのは扱いが如何にも難しいものである。まず片腕で拳銃を御し、利き腕でも無い腕も使うのだから生半可な力では出来た者ではないが。
アウラ・ミューリライネンは、ソヴィエト・ロシアを名乗る彼へ、少女の細腕で、二丁拳銃を以てして、正確無比な射撃を行って見せた。
嘗てソビエトと勇敢に戦った英雄たち。それこそが、アウラ・ミューリライネンの聖遺物であり……その一部である銃撃の技術が、アウラ自身を介して再現されていた。

7名無しさん:2015/08/28(金) 13:44:43 ID:h0ZuHOXM0
/こちらこそ宜しくお願いしますっ!

8名無しさん:2015/08/28(金) 20:49:57 ID:4Iu1pbgU0
>>6
彼は彼女の反応に対して、少しばかり眉をひそめる。

「"ごっこ"とはな……同志たちの魂を愚弄するか?」

彼は紅い光を放つ右眼を彼女へ向けながら、武器を構える。
その眼の中には見えるだろうか、赤い光の中にはうっすらと、ソヴィエトを表すマークが浮かび上がっているのだ。
明らかに尋常ではない━━━"聖遺物"は彼に対して、少なからずの影響を与えている事を、何となく察する事ができるだろうか。

「貴様の聖遺物は押収だ。人々が、真に手を取り合う世界のためにな!」

彼は彼女の言葉をかき消すように、滅びた、しかしかつて確かに存在した国の名を、敬意と信奉のこもった声で叫んだ。

「ソビェエエエエエエエエツキィ、ソユゥウウウウウウウズ!!!!!」

彼は銃を見た。空を切り裂くような音が鳴り響く瞬間、彼は横へと飛び退く。
常人には不可能な高速移動━━━━聖遺物の力が、彼の身体能力を上昇させているのだ。
彼は再び鎌と鎚を構えて、今まで言葉で示すだけだった敵意を、今や少女に向けてはっきりと睨みを効かせていた。

「よろしい、開戦だ……おとなしく従っておけばよかったものをな!」

彼の言葉は、ソヴィエトの人間であると取るには少し違和感が生じるだろう。まるで、彼自身がソヴィエトであるかのような。
彼の聖遺物はまさしく、ソヴィエトの人間たちの遺した意志の結晶。彼はその意志を介して、"ソヴィエトそのもの"の亡霊と化しているのだ。
彼女が聖遺物の意志で勇気を得ているなら、"彼"は聖遺物の意志に狂わされていた。
ソヴィエトにとって、"彼"は誰でもいいのだ━━━━無論、ロシアにとっても。

「70年前の戦争……ここに再現するとしよう!」

彼が手に持つ聖遺物が、赤く熱を帯びていく。次の瞬間、彼は少女へと飛び付き、まずは右手の鎌を振り抜いた。
その斬撃は少女ではなく、少女の乗る馬に対して。……まず足を奪おうという魂胆だ。

/申し訳ありません、諸事情で返レスが遅れております。ご迷惑をお掛けします。

9アウラ・Y・ミューリライネン:2015/08/28(金) 23:30:28 ID:h0ZuHOXM0
>>8
撃った弾丸は男を抉るに至らなかった。聖遺物が齎す常軌を逸した力……男には、それが異常なまでの身体能力として現れている。
弾丸を撃った後に避ける程のそれ……驚異的なものではあるが、一応アウラ自身はそれに匹敵する物は何度か見ている。そう珍しいものでは無い。
それよりも、恐ろしいのはその聖遺物の出所……どれが本体なのか、鎌か、槌か、それともその眼なのか。分からないが、男のそれが何を元にしたものかは大体が予想がついた。
スターリンか、レーニンか……いや、それとも。その右眼に在る通りに、亡国そのものが遺した膨大なものか。何れにせよ、アウラ・ミューリライネンの聖遺物とは。絶対に、"相容れない"もの。
馬の手綱を引いて、それを避けようとしたが一瞬遅れた。軍馬の前足が、赤熱した鎌によって刈り取られていった。無論、それはバランスを崩し、アウラも背から落ちようとしていく。
その寸前に、馬の背を蹴り、其処から飛び降りた。向きは男の後方、両手に握った拳銃を向け乍ら。

「再現するのは一九九一年の十二月の方よ、もう一回崩壊を楽しみなさい!!」

両手に握る拳銃の引き金を、空中で一度ずつ引く。狙いは腹部に一発、そして頭部に一発。
それから、着地した先ですぐさま態勢を立て直し、両手に握った銃の弾倉が空になるまで撃った。残る弾丸は二丁とも五発、その全てを彼へと狙いを定めて撃った。
明確に何処を狙う、というものは決めなかった。その目的は、その拳銃二丁を"撃ち切る"ところにあった。

「でもそうね、貴方の"聖遺物"が脅威なのは認めてあげる――――――――――――だから、今回は特別よ」

両手に握った拳銃を捨てる。それから、右手を覆う手袋の人差し指を摘まんで、脱ぎ捨てた。
其処に刻まれているのは"鉤十字"。かつて、ソヴィエトが対峙した国が掲げた幸運の証。そして、それは……この、ロシアの地へと、掲げられる。
"聖遺物"の力が解放される。その、"世界"に割り込むように、もう一つの"空間"が形成されていく。荒れ狂う吹雪。凍てつく極寒の世界――――――七十年前の"フィンランド"。
それが、其処に出現した空間の正体であった。右手でハットを深く被りなおすと、背負っていたモシン・ナガン狙撃銃を再び握り締めた。

「私達の祖国、七十年前のスオミへようこそ。……歓迎するわ、さぁ――――――――――――」

アウラ・ミューリライネンの姿かたちは、吹き荒れる吹雪の中に溶け込んでいく。聖遺物の一つの力……視認性が、著しく低下する。
そしてこの状況において、また一つの聖遺物の力として、この寒さを苦とせず全力で動けるだけの身体性能を有していた。
モシン・ナガンを構える。光学照準器を持たない、ただのアイアンサイトだけでありながら正確に対象を撃ち抜く英雄の力――――――それは、今も健在だった。

「此処はきっと、殺戮の丘になるでしょう」

引き金を引く。正確の彼の頭部を狙って、弾丸は飛んでいく。
まだ、アウラはその場から動いていない。位置を把握すること自体は容易であろう。そして視認性を阻害すると言っても、完全に見えなくなるわけでは無い。
槓桿を引いた。はじき出された薬莢が、音も立てずに雪の上へと落ち、その熱で僅かにそれを溶かしていった。

/こちらこそ、なかなか合わず申し訳ありません……お返しします

10名無しさん:2015/08/29(土) 03:11:15 ID:9RS1rY/60
>>9
馬は倒れたが、少女は直前に脱出していたようだ。あわよくば倒れた馬に巻き込ませて足を潰そうと思ったが、なかなかに戦い慣れているらしいことを察する。
しかしそれは彼も同じことだ。二発の銃弾は、馬を斬ると共にその場から離脱して回避。残る5発の銃弾は、鎌と鎚を交差させて防ぎきる。聖遺物でなければ破壊される心配はない。

彼はその防御で自然と象られたソビエトの紋章を解き、顕となった少女の右手を睨んだ。

「鉤十字(スヴァスティカ)……ファシストの証を彫るか、反動者め」

スウェーデンやナチス・ドイツの紋章。最終的に勝ちはしたが、大いに苦しめられ、また多くの同志を失った憎むべき標に、彼は自然と忌々しそうに凄んだ。
ソヴィエトにとっては悪運の証。彼は忌々しいとばかりに、すかさず少女に飛びつき、右手を切断してやろうとしたが……
展開されたもうひとつの世界に押しのけられるように、彼は吹き飛ばされた。

「ぬうっ!?」

突然の環境の変化に、彼は腕で顔を覆う。そして再び目を開けた時。
そこには白銀の、そして確かに覚えのある世界が広がっていた。

彼はジャミングされた視界を見回し、全方位に注意を払いながら、ピリピリとした感覚に駆られていた。

「ああ━━━━━━感じるぞ、4000人の同志たちの勇気が……恐怖が、怒りが!」
「ここが戦場だ、白い死神(ベーラヤ・スメルチ)!我らは今、怒りに燃えているぞ!」

彼は頭へ飛んできた銃弾に対し、首を曲げて避ける。肩をかすめて、一筋の血が流れ出る。
どこに居るのかわからなければ……彼は聖遺物を赤熱させ、空へと上げて交差する。
そして二つの聖遺物は、ひとつの紋章となり……彼はそれを掲げたまま、声高らかに宣言する。

「格差は資本の下に!平等は社会の下に!」
「我らはソヴィエトの旗の下に!手を取り合って立ち上がれ!すべての場所で讃え歌うのだ!」
「首都よ!ウォッカよ!革命の灯火よ!」

「赤き祝祭(クラースナヤ)!!」

頭上に作られたソヴィエトの紋章が、突如赤い光を帯びる。
次の瞬間、ひとつの聖遺物は……鮮烈なまでの炎の波を、あらゆる方向へと広がらせた。
それは雪を溶かし、吹雪を燃やす。進むほどにその炎は弱まるが、少女をあぶり出すには十分だろうか。

11アウラ・Y・ミューリライネン:2015/08/29(土) 23:24:38 ID:joo1aeEE0
>>10

幸運の証、ハカリスティ―――――――――――― それが、アウラ・ミューリライネンに勇気を与えていた。
例え目の前の敵が圧倒的な存在であろうとも。ソビエト人民そのものであろうとも。その右手に宿る英雄達の力が、アウラに戦う力をくれていた。

「くぅ、うぅッ!!!!」

吹き荒れる熱が、白銀の世界を溶かしていく。真白の雪を溶かしていく。平等を謳い、燃やし尽くそうとしていく。
鎌と槌とを重ね合わせた、紅く燃え盛るかのような旗。七十年前、自分が産まれてすらいない祖国が戦った国と同じ。
けれども、アウラ・Y・ミューリライネンの右手に宿る英雄たちは、全員がそれらに勇敢にたたかった者達だ。赤色の旗に、幸運の鉤十字を掲げて立ち向かった者達だ。
ならば、ここで自分が負ける訳にはいかない。アウラはそう思っている。だから全力で―――――――――――― 走った。
モシン・ナガンを握り締め、溶けようとする雪の向こう側へと駆けていった。聖遺物は焦りを齎す事は無かった。ただ、その心が逸脱するのを留めていた。
―――――――――――― 自分なら、出来る。過剰な自信でも何でもなく、これは、自分の明確な意思として。

「何が共産主義よ。結局のところ、上の方が美味い汁啜ってただけで、下の人達は貧しいままだったじゃない」
「少なくとも、アンタ達の手の中に!! 本当の平等なんか有るわけないのよ!!!」

モシン・ナガンの引き金を引いた。彼の左側頭部を狙って銃弾が飛んでいく。
この殺戮の丘で戦った、白い死神の加護がアウラ・ミューリライネンにはあった。それはこの吹雪の中、視界を遮るそれらを物ともせずに、雪を砕きながら飛んでいき。
そして、それを投げ捨てた。もっともっと、決定打が必要だ。この雪の中でなら―――――――――――― 英雄達が、その力を貸してくれる。
何も恐れる事など無い。戦争に負けたとしても、結局のところソビエトは滅んで、スオミは生き残った。それが事実だから―――――― 何も、恐れることは。

「何が平等よ、何が社会よ! アンタ達のそれは平坦にしようとしてるだけじゃないッ!!」
「そんな事でこの世界が続くかぁッ!!! 一回失敗してんでしょ!! それで納得しなさいよ!! この――――――――――――ッッ」

そして、駆け抜けた。今度は前に前に、明確な敵へと向けて。サーベルを鞘から引き抜いて白刃を晒した。
形振り構わず走り抜けた。もうこれ以上、何がどうなろうと知った事では無い―――――――――――― 例え全てを焼き尽くす焔にだって、英雄の心は負けたりしない。
雪を思い切り踏み締めて跳んだ。大上段に、サーベルを掲げ――――――――――――

「分からず屋のアカ共ぉっ!!!!!!」

アウラ・ミューリライネンは―――――――――――― 彼の、背後から斬りかかっていた。
思い切り飛び上がって、自分の体重と、落下速度を併せた重い一撃。文字通り全身全霊を賭けた斬撃。
無論、その姿は隙だらけではある。あるが―――――――――――― その一撃自体は、少女が今まで放ってきたどの銃撃よりも重いものである。

/遅くなって申し訳ないです……

12名無しさん:2015/08/30(日) 09:49:18 ID:.CrNSHCI0
>>11
「見つけたぞ(リージョ)」「敵の(ヴラージェスキィ)」
「狙撃手(スナイペェエエエエエエエエル)!!」

彼は吹雪の向こうから突っ込んでくる少女を、喜びの笑みと叫びでもって迎え入れる。
その声は、まるで複数人のように聞こえた。
冬の戦争。殺戮の丘、"彼"が殺した戦士たち。その恐怖と嘆き、そして憎しみの応報は今、それを体現する少女へと向けられていた。

彼は紋章を解く。溢れ出る熱は静まり、再び冬が訪れる。

「「大いなる平等」……そのためには、一人だけが力を持ってはならん」
「だが、それを制御する者は━━━大いなる力を持つ必要があった!」

彼は空へと槌を振る。潰れた鉛玉が雪へと埋もれ落ちた。

「それは今も同じだ、フィンリャンディヤ!ソヴィエトは世界を懲罰する!世界に名だたるこの強国は、恭しき挨拶を捧げるのだ!」
「消えてもらうぞ白い死神(ベーラヤ・スメルチ)!大袈裟な伝説も今日で終わりだ、完全なる"平等"のためにな!」

彼は二つの聖遺物を握りしめる。赤き炎を加熱させ、頭上を駆け抜ける少女を迎え撃とうとする。
そして━━━━━━━━━━

「ぐ━━━━━━━━━━」

次の瞬間。彼の背中には、少女の白刃の傷、フィンランドの英雄たちの結晶が、深々と刻まれていた。

「━━━━━━━━━━これ……は……」

彼は目を見開き、その場に立膝を付く。
流れ出る血と、強烈なまでの痛みが、彼を襲った。普通であれば、もう動けない程の傷の深さだ。
だが彼はゆっくりと、その場から起き上がる。強化された身体でさえ、その足取りは限界が近い事が見て取れる。
今彼を動かしているのは、ただ一つ。ソヴィエトへの信奉、忠義、そして執着だけだった。
その紅き瞳は一層に輝いて見える。70年間にわたって積み上げられてきた、人など簡単に蝕んでしまう、「意志」という呪い。
彼は彼女の言葉を反芻する様に、静かに語り始めた。

「……ここに極まれりか……資本主義者め……結果しか、見えていないのだ……」
「СССРに公用語はない……ファシストから世界中のすべての労働者を護り……救い……助けるためにな!」

彼は立ち上がったのち、ゆっくりと体勢を立て直す。
次第にその声量は大きくなる。しかし背中の出血は、未だ止まってはいない。
彼は再び、二つの聖遺物を重ね合わせる。傷は彼にダメージを与え続けている。次なる彼の攻撃は、最後の一撃となるだろう。

「重要なのは過程だ!人々が立ち上がり、団結し、世を打ち倒す革命だ!」
「今一度、そこで見ているがいい。貴様の遺物が小賢しいフィンの魂なら、これは我らソヴィエトの魂だ!」

彼は交差させた聖遺物を、頭上へ思い切り掲げる。
赤い炎がゆっくりと収束していく。彼の信念と、亡国の強固な意志。それが生み出す革命の炎━━━━━━
彼は先程とは異なり、昔を懐かしむかのような母国の言葉で、優しく静かに、しかし確かな語調で宣言した。

「Пролетарии всех стран, соединяйтесь(万国の労働者よ、団結せよ)」

「……Красная(赤き祝祭)」

充填された炎が解放される。
ゆっくりと、だが激しく、確かに対象を焼き尽くしてゆく炎。
広がる火はフィンランドの異空間を再び蝕む。彼はその中心で、糸が切れたように両膝を付いた。
今の状態なら、攻撃はたやすい。……360°に拡がる炎を、かい潜る余裕があるならば。

/いえ、こちらこそ予定が合わず申し訳ない……

13アウラ・Y・ミューリライネン:2015/08/30(日) 22:46:50 ID:8bbWws/U0
>>12

「はぁッ……はぁ……」

それはまさしく呪いだ。自分が今、勇気を貰っているそれとは違う。自分の物が正であるならば、それは負だ、と。
ソビエト人民の呪い。机上の空論を真実と崇めた労働者たちの怨念。殺戮の丘の怨嗟。それが、その男を支配しているのだろう。
刃が食い込み、鮮血が噴き出し、倒れ込もうとしていた筈だ。それだと言うのに、動かしているのは、信じられないほどの執念、執着。
お互いに。ソヴィエトなんて経験していない年齢である筈なのに、彼の意思は蝕まれている。最早問答など無意味であり。どうしようもない"怪物"だ。
だから、ここで打ち倒さねばならない。これはフィンランドの敵だ。これは――――――――――――今を生きる全ての人民の、敵である。

「だからそれは……失敗したって言ってんでしょうが……」

だから前に進む。この、焼き尽くす焔の前に、退く訳にはいかない。ソヴィエトの支配を、もう一度再現する訳にはいかない。
サーベルを握り締める。白刃より滴る鮮血を振り払う。古いフィンランドの大地に、露西亜人の血が点々と鮮やかに映える。
今度こそ、完全に叩き切ると心に決めた。逃げる事は出来ない。雪原は溶けていく、自分の体を覆う吹雪たちは、共産主義の焔に溶かされていった。
これ以上、小細工は出来ない。真正面からいくしかない。大丈夫、この雪原は―――――――――――― 白い死神が戦った殺戮の丘、英雄たちが立った大地。

「行くわよ、クソったれな平等主義者!!! 幻想に倒れた、バッカみたいな共産主義者ぁ!!!!!」

そして、駆け出した。其処にいる彼らを、"今度こそ斬り捨てんと立ち向かっていった"。
頬を焼く焔。圧倒的な焔。亡国それ自体の意思。ほんのちっぽけな少女の身体で対抗するには、余りにも膨大過ぎる熱量に。その歩みは、ゆっくりと落ちていった。
髪を焼いて、服を焼いて、剣を焼いて。肌を焼いて、肺を焼いて、一瞬で、其の身体は限界にまで追い込まれていた。そこで斃れる、はずであった。
彼と同じく、聖遺物で強化された身体でも耐え切る事の出来ない焔に、焼かれて死んでいく。その運命は決して変わる事は無いと言うのに。

「……負け、るかぁ」

「アンタ達が台頭したら……またみんな、貧しい思いをしなくちゃならない……そんなのは、駄目なのよ……」
「私は、聖遺物を持った、エリートだ……聖遺物部隊の……特務大尉……誰にもできない事を、私がする……私がやらなくちゃいけない事を……」

「私がぁ……守るんだぁ!!!!」

立ち止まった。けれどその顔は前を向いた。見開かれた瞳は焼かれながらも爛々と輝いていて、男を睨みつけていた。
剣を、振り上げていた。決して彼に当たる距離では無いと言うのに振り上げて――――――――――――全身全霊の力を籠めて、その剣を彼へと投げつけた。
最後の足掻き。気力だけで振るった……正真正銘、アウラ・ミューリライネンの、命を振り絞った一撃だった。それが、彼へと突き刺さるかどうかは。

「……ちく、しょう」

アウラ・ミューリライネンは、見届ける事は叶わなかった。
フィンランドの大地に倒れ伏す。そうすれば、アウラの意思と聖遺物によって成り立っていたこの世界は終わりを迎える。
全身を負った傷は、確かに致命傷であった。そしてその通りに――――――――――――アウラ・ミューリライネンは、振り絞って、最後にそう呟いて。
その動きを、止めた。

14グスタフ・E・アバルキン:2015/08/31(月) 16:13:30 ID:0qL03RZw0
>>13
「…………」

銀の白刃が、白銀の世界に一際輝く。その後、ドスリと鈍い音が、モスクワの街に響き渡った。
少女の最期の一撃。真の全霊の剣。それは聖遺物を持ったまま、最早動かぬ彼の心の臓を、完璧に貫いていた。……即死だった。

彼は目の前で倒れ伏す彼女の近くに、同じ様に斃れた。既に彼から命の灯は消えていた。
━━━━━━だというのに。彼の右目の光だけは、未だに消えていなかった。

「━━━━━━━━━━━」

彼は倒れたまま、目の前の少女の右手を掴む。まったく生気のない腕、しかしそれと対照的にギラギラと光る右眼で、炙られた十字の紋章を見……笑った。
彼は既に、剣に貫かれ絶命した。それなのに笑い声を上げた。何千人分とも思えるほどの、大きな笑い声を。
彼を蝕む呪いはあまりにも大きかった。グスタフ・エフセエヴィチ・アバルキンという人物は、ずっと前に殺されていたのだ。
彼が聖遺物を手にしたその時から、意思も肉体も、存在すらも、そのすべてが聖遺物(ソビエト)に取って代わられていた。
あの力は、共に戦った戦士たちに。その思想は、理想を夢見た人民たちに。そして彼の存在理由は、その実情に。
人の皮を被ったСССРの意志は、仕留めた青十字を見るや、歓喜の笑いを上げていた。

「ハハハハハハ!」「ハハハハ!」「ハッハッハッ!!」「ХАХАХАХХАААА!!!」
「掴んだぞ」「フィンの愚か者め」
「同志の仇を!」「粛清だ」「粛清だ」「粛清だ」
「粛清だ!」

赤き瞳の輝きは最高潮に達する。それぞれ違う声が、口も開かぬ彼から響き渡る。
ソビエトを形作った者たち。一人一人の怨念は集積し、彼という殻を被って、そして次なる世界を作ろうとしていた。
彼は少女の右手を掴みながら、鎌を持つ彼の腕を動かし、憎き十字紋章を抉り取ろうとする。

「Это(我等)……」「…… наша(の)」「победа(勝ちだ)!」

しかし、それは叶わなかった。"意志"の力のみで、生命活動を停止してなおその殻を動かすなど、いかに強大な呪いと言えど、長く続きはしない。
右目の光は、次第に弱まっていく。鎌を持った手から力が抜けていく。
人の皮を被ったソヴィエトは代弁者を失くした今、ただ意志として散りゆく最期に、この世への執着を呟いた。

「……馬鹿な━━━━━ここで━━━━終われるものか━━━━━━」
「━━━━━━━まだ━━━いけるだろう━━━━」
「━━━━━ルーシに━━━━━━━━━━━━平和を━━━━━」

やがて右目の光は消え、その声は鎌へと吸い込まれていく。意志は鎚へと飲み込まれ、彼は今度こそ、少女の右手を握ったまま、「ロシア」の大地に命を散らす。
その手から、呪われた遺物がこぼれ落ちる。その鎌と鎚は、かつての労働者たちの団結の証。かつての戦士たちの勇気の証。そして、ねじ曲がった狂気の証だった。


モスクワの空。飛び交う軍用ヘリコプターの一機。"それ"は、この戦いのすべてを映し出していた。
その映像はロシア政府の本部。聖遺物を知る、政治の最高官たちの部屋へと繋がっている。

『……終わったか』『……見込みはあったのだがな』
『まあいい。また新たな"殻"を着せてやればいいさ……"あれ"にはな』
『……代わりを探すのは、骨が折れるがね……』

このロシアの中心に渦巻く、聖遺物を巡ったどす黒い陰謀。ソヴィエトから続く暗い謀略の下で、亡国の意志は再び崩壊する。
首都の中心。屍と化した彼を弔うかのように、ソヴィエトの象徴は静かに燃えていた。

/これで終わりでしょうね、お疲れ様でした。
/長らくお付き合いさせて申し訳ない

15ロエディア・シャーロット:2015/09/01(火) 00:43:14 ID:I6PhUV7I0

――――20XX年A月B日 日本。

 ガコン、ガコン、と砂利道を揺れる大型トラックの荷台に乗る少女。
 頬を刺激する冷たい秋風に思わず不機嫌そうな表情を浮かべた。
 彼女の名前は、ロエディア・シャーロット。純粋なフィンランド人であり、聖遺物と呼ばれる兵器めいた遺物を扱う人間の一人だ。

【→荷台に乗っているシャーロットだが、バックミラーに姿が写らない様に姿勢を低くしている。それから察するにどうやら、無断乗車中のようだ】

「――――っとやっと着いたわね」

 どうやら目的地に到着した様で、シャーロットはこっそりと荷台から飛び降りた。
 ズシャッ、という砂利を踏んだ音が響き思わず大型トラックに目を向ける。
 運良くトラックの運転手はこの音に気が付いていない様でそのまま先へと進む。

【→周囲一帯は不規則に生い茂った雑草と砂利だらけ。人が住んでいる様な建築物はない。それどころか建築物すら見当たらない】

「たまーに、こんな辺境の地に嫌な施設やらなにかがあんのよねぇ……」

 水色の髪をかきあげると周囲を見渡しながら、足を前に運んでいく。
 どうやら、此処にやって来た目的は聖遺物関係の嫌なタイプの施設があるか若しくは、聖遺物関係の嫌な人間がいるかどうかを探りに来たらしいが――――。

【→シャーロットの目には未だ其れらしき人間や施設は確認されていない。
 取り敢えず人間ならば、話し合い。施設ならば進入といった計画だろう】

16アウラ・Y・ミューリライネン:2015/09/01(火) 00:55:14 ID:aBJGlet20
>>14
それは正しく狂気であった。それが最初のどんな感情を以てして翳されたのかは、今となっては知る由も無かった。
だが、今ではそれは狂気だった。狂気へと変質した、ただの狂気であった。滅びた今も、世界に食い込み続ける呪い以外の何物でもなかった。
一人のフィンランド人の少女は、その炎に焼かれて息絶えた。最早その狂気に抵抗する事も出来ず―――――――― しかし、それはきっと幸運だったのだろう。
掲げるハカリスティは幸運の証であり。それは少女を、救った。危うく、千切れかけた糸を、ほんの僅かな部分で留まらせた。……確かに、それは繋がれていた。

「……う、ぁあ」

その少女は、確かに一度死んでいた。けれどもフィンランドの英雄がその命を繋ぎとめた。三つの旗の下に戦った、一人の英雄の聖遺物が、少女を救った。
顔の右半分が焼け爛れていた。白かった服はボロボロに焼け焦げて、下に見える肌も酷い火傷を負っていた。だが、そこに致命傷となりうる傷は存在しなかった。
否……再生、されていた。ほんの僅か、命を繋ぎとめるだけの再生。立ち上がる事は出来ないが、生きることは出来るだけの。
右眼の視力は失っていて、左眼を細めて転がる死体を見つめた。血だまりの中に倒れた男は、アウラの手を握り締めたまま死んでいた。
剣は突き刺さっている。この聖遺物を抉り出そうとしたのだろうが、よくもその状態でそこまで出来たものだと、アウラは関心すらしてしまった。
聖遺物がそこにあるのは、見えていた。だがそれを回収するのは、余りにも恐ろしかった。それに触れたらどうなるか……自分も、それに呪われるのではないか。

「……と、に、かく……こ、こから……離れ……スオミの……回収……を……」

ずるり、ずるりと身体を引き摺ってその場から脱する事にした。
ソビエト・ロシアの聖遺物……ロシア側から何も説明が無い辺り、それにはきっと現ロシアの陰謀が大いに絡んでいる。
そのままそこに倒れ続けていたら、いったいどうなるか分かった物では無い。機動部隊も信頼できない以上、フィンランドの回収部隊が来るまで隠れるしかない。
這いずり、路地裏へと入り込む。ゴミ箱の横に背を預けて、其処にアウラは一旦留まる事とした。

「ソヴィエト、ロシアの聖遺物……亡国の、意思……。
 一体、ロシアは……何を……考えているの。何か……恐ろしい、ことが……」

あの聖遺物の性質が、自分が感じたとおりならば……いずれ、"彼"の代わりが現れたとしてもおかしくは無い。
何か、恐ろしいことが起きている、と思った。馬鹿げた話、映画や何かの中の話を再現するような……例えば、あの社会主義国の再建なんて、大それたことがあるとしたら。
だが、それ以上の事を考える余裕は無く。其処でアウラは、意識を手離した。

数分後、アウラ・Y・ミューリライネンと共にモスクワへと入国していた特務部隊がアウラを回収し、速やかにフィンランドへと帰国した。
ロシア側からのアウラ、およびフィンランドへの説明はされないまま。その謀略を、アウラは、今はまだ、歯を食いしばって見つめるしかなかった。

/絡みありがとうございました、お疲れ様でしたー!
/こちらこそ長引かせてしまって申し訳ありません……楽しかったです!


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