したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

テストロールスレッド

9アウラ・Y・ミューリライネン:2015/08/28(金) 23:30:28 ID:h0ZuHOXM0
>>8
撃った弾丸は男を抉るに至らなかった。聖遺物が齎す常軌を逸した力……男には、それが異常なまでの身体能力として現れている。
弾丸を撃った後に避ける程のそれ……驚異的なものではあるが、一応アウラ自身はそれに匹敵する物は何度か見ている。そう珍しいものでは無い。
それよりも、恐ろしいのはその聖遺物の出所……どれが本体なのか、鎌か、槌か、それともその眼なのか。分からないが、男のそれが何を元にしたものかは大体が予想がついた。
スターリンか、レーニンか……いや、それとも。その右眼に在る通りに、亡国そのものが遺した膨大なものか。何れにせよ、アウラ・ミューリライネンの聖遺物とは。絶対に、"相容れない"もの。
馬の手綱を引いて、それを避けようとしたが一瞬遅れた。軍馬の前足が、赤熱した鎌によって刈り取られていった。無論、それはバランスを崩し、アウラも背から落ちようとしていく。
その寸前に、馬の背を蹴り、其処から飛び降りた。向きは男の後方、両手に握った拳銃を向け乍ら。

「再現するのは一九九一年の十二月の方よ、もう一回崩壊を楽しみなさい!!」

両手に握る拳銃の引き金を、空中で一度ずつ引く。狙いは腹部に一発、そして頭部に一発。
それから、着地した先ですぐさま態勢を立て直し、両手に握った銃の弾倉が空になるまで撃った。残る弾丸は二丁とも五発、その全てを彼へと狙いを定めて撃った。
明確に何処を狙う、というものは決めなかった。その目的は、その拳銃二丁を"撃ち切る"ところにあった。

「でもそうね、貴方の"聖遺物"が脅威なのは認めてあげる――――――――――――だから、今回は特別よ」

両手に握った拳銃を捨てる。それから、右手を覆う手袋の人差し指を摘まんで、脱ぎ捨てた。
其処に刻まれているのは"鉤十字"。かつて、ソヴィエトが対峙した国が掲げた幸運の証。そして、それは……この、ロシアの地へと、掲げられる。
"聖遺物"の力が解放される。その、"世界"に割り込むように、もう一つの"空間"が形成されていく。荒れ狂う吹雪。凍てつく極寒の世界――――――七十年前の"フィンランド"。
それが、其処に出現した空間の正体であった。右手でハットを深く被りなおすと、背負っていたモシン・ナガン狙撃銃を再び握り締めた。

「私達の祖国、七十年前のスオミへようこそ。……歓迎するわ、さぁ――――――――――――」

アウラ・ミューリライネンの姿かたちは、吹き荒れる吹雪の中に溶け込んでいく。聖遺物の一つの力……視認性が、著しく低下する。
そしてこの状況において、また一つの聖遺物の力として、この寒さを苦とせず全力で動けるだけの身体性能を有していた。
モシン・ナガンを構える。光学照準器を持たない、ただのアイアンサイトだけでありながら正確に対象を撃ち抜く英雄の力――――――それは、今も健在だった。

「此処はきっと、殺戮の丘になるでしょう」

引き金を引く。正確の彼の頭部を狙って、弾丸は飛んでいく。
まだ、アウラはその場から動いていない。位置を把握すること自体は容易であろう。そして視認性を阻害すると言っても、完全に見えなくなるわけでは無い。
槓桿を引いた。はじき出された薬莢が、音も立てずに雪の上へと落ち、その熱で僅かにそれを溶かしていった。

/こちらこそ、なかなか合わず申し訳ありません……お返しします


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板