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仮投下スレ

909Girls Murder License ◆NiwQmtZOLQ:2017/09/28(木) 23:28:15 ID:6C.hKJws0
 
「……やめ、ろ」

と、そこで。
余りにも頼りなく、か細い声が、流子の耳に届いた。
それと同時に、立ち塞がるように現れたのは──紫の髪の、少女だった。
先程承太郎に守られていた、如何にも何も出来ない一般人ですと書いてあるかのような外見の少女。

「あァ?何だテメェ、テメェから先に殺されてえのか?」

鐵の切っ先を突きつけながら、嘲るように言葉を放つ。
下らない義憤とやらでここまでやるというのは大したタマだが、しかしこうして目の前に死を提示してやってもそれが保つものか。
惨めに引き下がって後で殺すか、さもなくば両断してやろうか──そう思いながら、ゆっくりと歩み寄っていく。

「……そうだ。殺すなら、先に私を殺せ」

それでも尚、理世が退くことはなかった。
ほぼ無駄な行為だろうと理解しているだろうに、無様な立ち姿を続けていた。
その哀れにすら見える様に、

「その胆力だけは認めてやるよ。わざわざゴミが出しゃばりやがって、何で死に急ぐかねえ」

──それは、問いかけですら無かった。
答えなど求めていない、ただ独りごちることと何ら変わらない言葉。
けれど、それに確かに、天々座理世は反応して。

「──私は、人を殺したから」

ぽつり。
唐突に零れ出たそんな言葉に、流子は不意に立ち止まる。
歩みを止めた彼女とは反対に、堰を切ったように、理世の口からは言葉が漏れ出す。

「私は、人を殺したんだ。謝らなきゃいけなかった人を」

先の承太郎とのやり取りの時のように、ゆっくりながらも詰まるところ無しに。
ただ滔々と、目の前の化け物に向けて、理世は言葉を吐き出してゆく。
兎にも角にも、言わずにはいられない、とばかりに。
承太郎に話した時と何も変わらないかのように、止まることなく。

「だったら、罰を受けなきゃいけない。こうやって殺されることで、それで罪が償えるなら……それなら、安いものだから」

──だから、そうして語ることに夢中の理世は気付かない。
纏流子が纏う気配の変化も、その感情の変化も。
何もかもに気付かぬまま、延々と、理世は己の罪を告白し。

「──償わなきゃ、いけないんだ。遊月を殺した私は、裁かれなきゃ──」

そう、言いかけたところで、理世の言葉は止まる。
否、止まらざるを得なくなった。
彼女の首根っこを、流子がつかんで持ち上げたから。

「──何を、ほざいてやがる」

締め上げられ、文字通り息が詰まる感覚。
辛うじて呼吸こそ出来るが、ただ掴んでいるだけの流子の右手から伝わるありのままの力が、逃げられないと彼女に告げていて。
そして、何より、理世はその瞬間、真正面からその時の流子の表情を直視してしまって。

「テメェの勝手で殺したからなんだってんだ。それが私やアイツに関係あんのか、えぇ?」

そして、その瞬間、理世は──初めて、明確に恐怖した。
纏流子の、その表情に。
嘲りでも、怒りでもない、彼女が未だ見たことも無いその表情に。
──『■■』の、表情に。
その表情が真に意味するところを、理世は理解できていなかった。
ただ、分かることは──きっと、自分が、彼女の何よりの地雷の、その一端を踏んでしまったこと。
そして、このままいけば取り返しのつかないことになるような、そんな予感。

けれど、彼女に為す術などなくて。
纏流子がその言葉を発するのを止めることなど、出来なかった。


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