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仮投下スレ

907 ◆D9ykZl2/rg:2017/09/28(木) 23:22:02 ID:6C.hKJws0
  



「──じょ、承太郎さん!」
「なんだ、天々座」

森の中、木々を蹴って飛び続ける承太郎に対し、いきなり連れ去られたに等しい理世は只管に混乱していた。
そのまま吹き飛んでいく景色に気を取られそうになるが、辛うじて理性を取り戻した彼女は承太郎に呼びかける。

「逃げる、って、アイツはまだ──!」

そう、承太郎は流子を完全に、何ら制約をすることもダメージを与えることもなく放置したまま離脱したのだ。
これまで見てきた彼のスタンスとはあまりにかけ離れた行動。流子をそのまま放置すれば、被害が出続ける事は予想出来る。
それに、彼女は智乃の仇でもある。願わくば相応の報いを受けさせたい、という気持ちも全くなくなった訳ではない。

「安心しな」

しかし、そんな理世の言葉を奪うように、承太郎が呟く。
その言葉に込められたのは、確かな力強さ。
聞くものすらも立ち上がらせるような勇気を底に秘めた、ジョースター家の男の言葉。

「ヤツを放っておく気はさらさら無え。キッチリと、俺とスタープラチナでブチのめさせてもらうぜ」

──ジョセフ・ジョースターに曰く、戦闘から逃げたことはあっても、戦闘そのものを放棄したことは一度も無い。
それと同じく、承太郎もまた、纏流子との戦いそのものを放棄してなどいない。
彼の胸に宿った正義の光は、彼女を見逃すなどということを許すつもりはさらさらないのだ。

「じゃあ、何で……」

しかし、それでは今の行動はどういう事なのか。
事実として、今二人はこうして流子に背を向け、森を駆けているのだ。
どういうつもりなのか──そんな視線を察し、承太郎は一言、簡潔に答える。

「お前を巻き込む訳にはいかねえ」

その言葉で、理世はう、と言葉に詰まった。
あくまで一般人の範疇を出ない彼女が、先の戦闘に於いても承太郎にとって足枷となっていたのは、庇われる側だった理世自身が良く理解していた。

「どうせヤツは俺を追ってくる。だが、ヤツの狙いは思い切り虚仮にしてやった俺に移っているはずだ」

承太郎の判断からするに、流子はやはり感情に任せることが少なくないタイプだと踏んだ。
理性的な部分も決してないというわけではなかろうが、少なくとも、あのような巫山戯た真似をした相手をわざわざ見逃すほどに寛大な心を持っているようには見えなかった。
だからこそ、理世の近くに寄るまでの時間をあそこまで掛けたのだ。彼女が「ハメられた」という事に気付いた時、よりその精神を刺激できるように。
そうでなくとも、今逃げているのと同じ方法を用いれば、承太郎はあの近辺まですぐに舞い戻れるのだが。
そして、それをする理由は明らか。

「それなら、お前を逃した上で、俺も周囲を気にせずヤツをブン殴れる」

理世に対する不意打ちや、戦闘の余波を考慮して戦う──そこまでのことを手負いの身でやるには、あの纏流子が持つ個人戦力は規格外に過ぎる。
針目縫との戦闘において、衛宮切嗣に気を払いつつ戦ったのとは訳が違う。バッドコンディションに加えて森の中という立ち回りづらいフィールド、何より不穏な行動にさえ気を配れば良い「見張る」と全ての条件を考慮して立ち回る必要がある「守る」には天地の差があるのだから。

「……承太郎、さん」

そんな承太郎の真意を知り、理世は言葉に詰まる。
自分なんてどうだっていいのにという思い、足手まといになっているという罪悪感、そして承太郎のことを少しでも疑った自分への嫌悪。
それらを一先ずは飲み込むと同時に、承太郎から言葉が飛んできた。

「──もう少しで下ろす。一旦城に戻れ。ヤツを倒したら俺もあそこに戻る」


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