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鏡の世界の迷子の旅路 無断転載

460 名無しさん :2018/12/09(日) 23:26:16
15.結末(その1)


 訓練室に展開されたレイヤーである高層ビルの屋上を緩やかな風が吹き抜ける。
 模擬戦で加熱した思考と火照った身体を冷ましてくれる風の心地良さにクロノは目を細めて広がる青空を見やった。

 思いの外、短時間での決着だった。
 いや、恭也との戦いであれば勝敗の如何に係わらず短期決戦か、ひたすら索敵と潜伏に終始して時間切れでの引き分けのどちらかしか思い浮かばないからこんなものだろうか?

 空を仰いでいた顔を前方へと戻すと、視線の先、50m四方ほどの屋上の対角にいる恭也の姿が見えた。
 一戦交えた直後とは思えないほど疲労感を滲ませる事の無い超然とした立ち姿を見せられると、直ぐにでも座り込んでしまいたい誘惑に駆られているクロノの心に悔しさが首をもたげてくるが、その姿が弱みを隠すための演技に過ぎないという冷静な判断を下す自らの理性に従い溜め息の様に大きく息を吐きだすことでやり過ごす。そうやって平静を取り戻した後、クロノは改めて恭也の様子を窺った。
 クロノの居るその場所から恭也の表情までは読み取れないが、静かに佇む姿からすると先程の模擬戦を反芻しているのだろうか? 
 そんな事を考えながら歩み寄っていくと、こちらに聞かせるようなタイミングで、しかし実際には恐らく単に聞こえる距離まで近づいた時だっただけという偶然のタイミングで、恭也の口から言葉が零れた。

「・・・ああ、土星の環、か」

 あれ?模擬戦関係なかった?

 それが悪いとまで言うつもりは無かったが、恭也が模擬戦直後に他事を考えていると言うのも考え難いと言うのが正直なクロノの感想だ。となると、戦闘とは無関係そうなその『土星の環』とやらに何か意味があるのだろうか?
 この第97管理外世界である地球に来る際に基礎知識として馬鹿正直に勉強して覚えてきた単語の一つに含まれていることを思い出したクロノは、そのまま関連する知識を引きずり出してみた。

土星
 恒星である太陽とそれを中心に公転する天体で構成される太陽系の惑星の一つ。
土星の環
 土星はたくさんの氷や岩石などを衛星として持っておりそれらがリング状に配置されているため、地球から恒常的な環として観測される。

「・・・恭也。
 さっきの魔法は、構想にかなりの期間を要したし、実用レベルにするためのブラッシュアップにも物凄く労力が掛かってるんだ」
「・・・?
 いきなり苦労話を聞かされても反応に困るんだが。自慢話にでも繋がるのか?」
「違う。
 凄く苦労したんだから、一度見ただけで本質を言い当てるのは止めてくれ、と言ってるんだ」
「知るか。知られたくないなら、模擬戦なんぞで使うんじゃない。
 どんな技だろうが、一度でも見せれば対策を立てられると思っておくのは当然の心構えだろうが。だから、昔の剣術家は戦闘を見られた相手は必ず殺すし、殺せない相手や不特定多数の目がある状況で技を出すことはなかったんだ」
「物騒な事を言うな!」
「地球ではそう言うもんだったんだよ。
 そもそも、俺相手にしか使い道のない魔法など労力を掛けてまで開発するな。暇人かお前は」
「ウッ・・・
 別に、あの魔法は他の相手にだって使えるさ」
「見え透いた嘘を吐くな。あの魔法、魔法抵抗力ゼロだろ」
「・・・な、何を根拠に・・・」
「あそこまで複雑な構造にしておいてあの短い詠唱時間と発動速度を達成するのはいくらお前の魔導技能でも無理がある。それが出来るなら誘導弾の球数か精度か速度がなのはよりも圧倒的に高いはずだからな。となれば、俺を相手にして必要ない機能を削るしかない」
「・・・」
「相手が俺以外の場合、具体的に言えば、Cランク以上の魔導士なら拘束された時に最初にするのは単純な魔力での抵抗か破壊の筈だし、解呪が出来るほどのエキスパートであれば魔法抵抗力ゼロなんてあからさまな弱点は瞬時に見抜けるだろう。魔導士ではない一般人が相手ならそもそもそんな特殊な魔法を使う必要すらない。
 何か反論があるなら聞くが?」
「・・・さて、そろそろ模擬戦の反省会を始めようか」

 あからさまに話題を逸らしに来たクロノに、呆れたように息を吐きだしてから恭也が応える。


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