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仮投下スレ

1管理人◆777Wt6LHaA★:2015/04/08(水) 14:21:51 ID:???
作品の仮投下はこちらのスレで。

2 ◆Q47.dLD/uw:2015/04/08(水) 21:33:26 ID:RSyUWU6I
OP案を投下します

3 ◆Q47.dLD/uw:2015/04/08(水) 21:34:37 ID:RSyUWU6I
ざわめきたてる声、怒りを露わにする声、今にも泣き出しそうな声
周囲には様々な人々の声が雑音のように流れてくる。
それが彼の安眠を妨害して、意識が覚醒してゆっくりと目を開けた。

視界には数十人の男女が戸惑いを隠さずに騒いでいた。
全員、首元には首輪が付けられており自分の首にも同様の物が付けられていた。
そこは彼がいた留置場では無い。
パーティーにでも使われるような巨大なホールの中で壁にもたれるように彼は眠っていたのだ。
床には高級感溢れる真っ赤なカーペットが敷かれており、天井には巨大なシャンデリアが吊られている。
全く見覚えの無い場所だった。

彼、空条承太郎は周囲を見渡してから思考を働かせる。
睡眠に入る前、承太郎は自らの意思で留置場にいた。
承太郎の体には悪霊が住み着いている。
知らず知らずのうちに悪霊が他人を傷つけてしまうからだ。
悪霊から他人を守る為に自分を隔離していた。

眠っている隙に、こんな人の多い場所に引っ張り込んだ連中はぶちのめさなければ気が済まない。
我ながら恨みを根に持ちやすいと自覚している承太郎は静かに怒りを滾らせていた。

「諸君!!静粛にしてもらおうか!!」

ホールの上段から全身が黒塗りの男が現れ、マイク越しにその声が響いた。
声を聴くだけで承太郎の怒りは更に込み上げてくる。
特に理由は無いが男の声は承太郎にとって非常に癇に障るのだ。

「不躾なる登場、ひらにご容赦を。さて会場にお集まりの皆様。
 わたくし961プロダクションという芸能事務所を営んでおります、黒井と申します。
 以後お見知りおきを」

「君たちをここに集めた理由を説明させてもらおう……今から君たちには殺し合いをしてもらう。
 言っておくがこれはドッキリでは無いぞ、正真正銘の殺人ゲームさ
 逆らえば……首輪に内臓されている爆弾でBOM!さ」

「ではルールを説明させ「ふざけんじゃねえ黒井!!誰が人殺しなんかするか!!」

周りの参加者を押しのけて前へ出た男が黒井に対して怒りをぶつける。
男の名は天ヶ瀬冬馬、かつて961プロダクションのアイドルグループ『ジュピター』のリーダーである。

「冬馬か……この私が散々目をかけてやった恩を忘れて、よくも私の顔に泥を塗ってくれたな。
 これは私が君に与える罰だよ。まあ安心したまえ、私も鬼ではない。
 他の二人は殺さずに別室で君の姿をモニターで映しながら待機させているよ」

黒井が指をパチンと鳴らすと巨大なスクリーンから画面が映し出され
そこには拘束された伊集院北斗と御手洗翔太の姿があった。

「北斗!?翔太!?……てめえええええ!!」
「心配するな、このバトルロワイアルが終わったら家に帰してあげるよ
 お前の死ぬ姿をその目に焼き付けて一生後悔して生きるがいいさ!
 ハーハッハッハッハッハァ!!」

4 ◆Q47.dLD/uw:2015/04/08(水) 21:35:29 ID:RSyUWU6I
「下郎がァ!!」

黒井の暴虐な振る舞いに激怒した金髪の少女の体は光に包まれ
見に纏っているスーツが青い鎧へと変化した。

「おやぁ?この私に逆らうつもりかね?セイバー君」
「これ以上お前のような外道の好きにはさせない!
 ここで貴様を討つ!!」

セイバーの跳躍で一瞬にして上階にいる黒井の眼前まで接近すると
風王結界によって他者には見えない不可視の剣で黒井目掛けて振り下ろす。
だが、剣が黒井に届く寸前で見えない壁によって弾かれ傷一つ付かなかった。

「何ッ!?」
「無駄無駄ァ!!その程度の対策も考えてない黒井だと思ったかァ?このマヌケがッ!!
 この私に逆らった者はどうなるかよく見ておくがいい!!」

黒井は懐からスイッチを取り出し、押した。
すると首輪からアラームが鳴り点滅を開始した。
狼狽えている群衆の中にいた老人の首輪が。

「ひ、ひぃいいいいいい〜〜〜!!なんでワシがァーーー!!?」
「あ!ごめん、間違えちゃった。こっちこっち」
「あべしっ!!」

パァン!と爆発音と共に老人(グレーフライ)の頭が吹っ飛び
首から血が噴水のように吹き出した。
そしてセイバーの首輪も老人と同じようにアラームが鳴る。

「くっ……このような悪逆非道な行為、決して許される物じゃない!!
 貴様は必ず報いを受けるだろう!そして己が犯した罪を悔いながら
 地獄の業火に焼かれて朽ちるがいい!!」

呪詛の言葉と共にセイバーの首は吹き飛んだ。
死体が光の粒子へと変わり、消滅していった。

「ジャンヌぅううううううううううううううう!!!!
 うぐぐぐ……おのれ!おのれ!おのれ!おのれ!おのれ!おのれ!おのれ!おのれぇぇぇ!!
 よくも我が愛しの性処女ジャンヌにこんな残酷で惨い仕打ちを!それが人間のやることですかぁ!?」
「いやぁ君のやってきた事の方がよっぽど残酷だと思うよ私は」
「黙りなさい!!このジルドレイめがジャンヌの命を奪った憎き悪鬼を討ち倒して見せましょう!!」

キャスターが怪しげな本を取り出して呪文を唱えると
海洋生物の化け物が二匹出現して、うねうねと動き出した。
キャスターのそばにいた参加者達は悲鳴をあげながら逃げる様に距離を取る。

5 ◆Q47.dLD/uw:2015/04/08(水) 21:36:22 ID:RSyUWU6I
「さあ!やっておしまいなさい!」

キャスターの指示を受けて黒井に向かう二匹の海魔。
その時、二発の轟音が鳴り響き、海魔の体に大きな穴が空いて消し飛んだ。

「ここでの戦闘は禁止されている。直ちに攻撃を中止しろ!!」
「長門さん!?」

おそらく女子中学生ほどの年齢である少女が
海魔を撃退した女性の顔を見て驚きの声をあげた。

「よくも邪魔を!!ジャンヌの敵討ちを妨害するなど神をも恐れぬ愚行を
 貴様たちは分かってqあwせdrftgyふじこlp!!!!」
「あーこいつは話の通じない手合いだわ。
 いつまで経っても説明が進まないからこいつだけさっさと島に送るか」

黒井が合図を送るとキャスターの姿が忽然と消えた。
一足先に殺し合いの舞台となる島へと強制送還されたのだ。

「長門さん!どうして……?」
「これは軍上層部及び提督の意思である!!
 吹雪、金剛、加賀に命ずる!!このバトルロワイアルで勝ち抜き、生き残れ!!
 それが三人に与えられた最重要任務である!!」
「そ、そんな……」

力なく地べたに倒れこむ吹雪。
一般人達を殺して生き残れだなんてあまりにも酷い命令。
そんなの夢であってほしいと現実を直視出来ずにいた。

「分かったかね吹雪?軍部の命令に逆らうってことは上司である提督にも責任が及ぶんだぜ。
 そんな真似はしないよな?大事な大事な提督を裏切るような真似はさぁ……。
 詳しい事は軍事機密で教えられていないが君たち艦娘は兵器としてテストを兼ねているそうだからな。
 お前たち気を付けろよ!!こいつら艦娘は見た目はただの小娘だが戦いの為に生み出された生体兵器だからなァ!!」

「さて、それじゃあこの殺し合いゲーム『バトルロワイアル』の説明をしよう
 とても大事な話だから耳の穴をかっぽじってよぉく聞きたまえ。
 ルールは簡単だ。君たち首輪の嵌められた参加者58人を、おっと先ほど一人飛ばしたから57人か。
 これからある島で君たちは殺し合いをしてもらう、転送で一瞬だから移動の手間はかからないぞ。
 場所はランダムだ。危険人物が近くにいない事を祈るんだな
 それと他に三名が既に島に送っておいてある。あいつらは話を聞ける状態じゃあないからな
 つまりここの57人と島にいる4人、合わせて61人で殺し合うのだ」

「島に着いたらすぐ傍に黒いデイバッグが落ちているから確認するといい。
 中には水や食料、島の詳細が描かれた地図に君たち参加者たちの名前が書かれた名簿
 このバトルロワイアルのルールが書かれた冊子。
 時計、懐中電灯、コンパス、救急箱等々のロワで必要なサバイバル道具。
 そして他の参加者を殺害するための武器が入っている。
 武器は人によって強力な物からハズレまでランダムに配られている。
 ハズレが出ても諦めるなよ、他人を騙して殺して奪い取るのも有りだからな」

「もちろんこのバトルロワイアルで生き残ったらそれ相応の報酬を払おうではないか。
 望みの物があれば出来る限り叶える、将来、何一つ気にすることの無い一生安泰した生活を与えよう。
 我々の持つ技術を最大限に使い生存者の支援に全力を注ぐことをここに誓おう」

「おっと言い忘れていたよ生還者の人数は三人だ。
 三人の生存者が確認された時点でこのバトルロワイアルは終了とする。
 本来はただ一人が生き残るルールにするはずだったが、それでは面白味に欠けると思ってね。
 私自身の提案で三人が生き残るルールに変更させてもらった。
 戦闘能力の高い者だけが生き残れるわけじゃあない。
 チームワークを駆使すれば何の力も無い貧弱なアイドル共も生存確率が上がる。
 非力な者たちの配慮を考えた私の慈悲深さに感謝するがいい。ハハハハハッ!!」

6 ◆Q47.dLD/uw:2015/04/08(水) 21:36:57 ID:RSyUWU6I
「それと大まかな時間の流れだが、六時間に一回放送を行う。
 つまり一日四回放送となるわけだ。かなり重要な内容だから聞き逃さないようにな。
 放送で説明されるのは死亡した参加者に……これは特に重要だぞ〜進入禁止エリアの発表だ。
 進入禁止エリアとは?それは地図を見ればわかるが島は線で複数のエリアに区分けされている。
 その中で一回の放送ごとに私が三つ指定し、進入禁止区域とさせてもらう。
 もしうっかり禁止エリアに入った場合は、首輪が作動して死ぬぞ〜怖いだろ〜?
 そんなマヌケな死にざまはこっちとしても望んで無いんでな。
 1分以内に禁止エリアから脱出すれば首輪のアラームが止まり命が助かるから急ぐことだ」

「この禁止エリアは主に一カ所に引きこもって戦いを避けようとするチキンを炙り出すために提案されたルールだ。
 敵を迎え撃つのが目的の篭城戦ならともかく、ひたすら逃げ隠れするだけならつまらんからなぁ。
 あと最後に一つ、君たちは首輪による強制力で無理やり殺し合いをさせられている訳だが。
 万が一、この首輪を外すことに成功し遠隔操作による爆殺の脅威から逃れたとしても……我々に逆らおうとは思わないことだ。なぜなら〜」

黒井がパチンと指を鳴らした。
その瞬間、参加者の周囲を取り囲むように多数の少女達が武装を突きつけながら現れた。
提督の指揮の下、艦娘達がバトルロワイアル運営の為に大量導入されていたのだった。

「我々と敵対するということは一国の軍隊を敵に回すのと同等だからなぁ〜〜!!
 君たちのような貧弱で下等なモンキー共がいくら足掻こうが全て無駄なんだよぉおお!!」

「説明終わるのおっそ〜い!」「くま〜」「にゃ〜」「なのです」「もっと私を頼ってもいいのよ」「一人前のレディなんだから」「ハラショー」「っぽい!」

見た目は少女でも彼女たちは立派な兵器である。
先ほど二匹の海魔を仕留めた威力からして
その身に装着された武装は決して玩具では無いのだと参加者達は理解できた。

「大井っち〜くっつきすぎだよ〜」
「油断は禁物です北上さん!彼ら参加者の毒牙がいつ北上さんに向けられるか。
 想像しただけで恐ろしい……私が命に代えても守らなければ!!」
「大丈夫だよ。この状況なら誰も手が出せないよ。
 それに大井っちに何かあったらあたしも悲しいから無茶はしないでね」
「……ッ!?北上さんが私の心配を……ああ私はなんて幸せなんでしょう!
 この胸の高鳴り……それはまさに愛!!」

「そこぉ!!参加者でも無いのにお前ら二人でどんだけ尺取ってんだよ!!
 もう予定時間過ぎてるんだぞ!!空気読めよお前らッ!!」

「ちっ……私と北上さんのラブラブタイムを邪魔をする黒井こそ空気読みなさいよ……」
「何か言ったかぁ!?」
「いいえ何も」

7 ◆Q47.dLD/uw:2015/04/08(水) 21:37:34 ID:RSyUWU6I
「これから質問受け付けタイムを始める予定だったがスケジュールが押しているのでな。
 名残惜しいが開会式は終了し今よりバトルロワイアルを開始する。
 君たちが奮闘出来るよう武運を祈っているよ」

「待ちな」

「何かようかね?承太郎君」

壁に寄りかかり、終始無言を続けていた承太郎が体を起こし
黒井を睨みつけながら見上げた。
その瞳は冷静さを失わないまま怒りに満ちていた。

「……この空条承太郎はいわゆる不良のレッテルをはられている。
 ケンカの相手を必要以上にブチのめし、いまだ病院から出てこれねえ奴もいる。
 イバルだけで能なしなんで気合いを入れてやった教師はもう二度と学校へは来ねえ。
 料金以下のマズイめしを食わせるレストランには代金を払わねーってのはしょっちゅうよ」

「だがこんなおれにもはき気のする『悪』はわかる!!
『悪』とはてめーのように人の命を虫けらのようにもて遊ぶやつのことだ!!
 てめーがどんな権力や武力をもっているかなんて俺にはわからねえし関係ねえ。
 たとえ神の力をもっていようが、てめーはこの空条承太郎がじきじきにブチのめすッ!!」

多数の砲塔が承太郎に向けられているのにも関わらず
彼の顔には焦り一つ見られていない。
主催者である黒井たちが逆に追い詰められているかのような威圧感すらあった。
それだけの胆力を前にして黒井は邪悪な笑みを浮かべていた。

「ククク……ハハハ……ハーッハッハッハッハ!!!!
 面白い!!面白いよ君ィ!!この状況の中でこれだけの啖呵を張れるとはなぁ。
 私をブチのめすだとぉ?それは楽しみだ!!できるものならやって見るがいい!!この黒井にたいしてッ!!」

黒井の高笑いと共に全ての参加者がテレポートされバトルロワイアルが始まった。

♢♢♢

参加者が全て転送されたのを確認した黒井は飲料水を口にしながら席についた。
隣には軍服の男が座っている。

「やあ提督、君にも解説役をやってもらえると助かるんだがねえ……。
 ……やれやれ、相変わらず提督は寡黙な人だ」

さきほどから一言も言葉を発しない彼は提督と呼ばれる男である。
艦娘を指揮しているらしいが実際に指揮を執る姿は見たこと無い。
提督の考えはまるで読めない。
我々の思考のの及ばぬ深海よりも深い考えを張り巡らしているようで
もしかしたら何も考えていないのでは?とも思える。
黒井にとって提督は雲以上に掴みどころの無い人物であった。

「北上さんおつかれさま〜♪」
「あ〜お疲れ〜大井っち」
「緊急の時に備えて、これから一緒に換装の整備をしましょう〜♪」
「そうだね〜」

「……ってなんでお前らが最後まで尺を取ってんだッ!!
 主催の頭はこの黒井と提督だぞッ!!」


【Fate/Zero@セイバー 死亡】
【ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース@グレーフライ 死亡】
【残り61人】


『主催』
【THE IDOLM@STER@黒井崇男】
【艦隊これくしょん-艦これ-@提督】

8名無しさん:2015/04/08(水) 21:38:44 ID:RSyUWU6I
OP案投下終了です

9名無しさん:2015/04/08(水) 23:14:34 ID:RSyUWU6I
書き忘れがありました

※バーサーカー、シャルロッテ、空母ヲ級の三名は開会式に未参加です。

これを最後に付け足しておきます
投下ミス失礼しました

10 ◆lDV7Hqphtg:2015/04/09(木) 01:14:11 ID:qiu9HJE.
OP案を投下します

11 ◆lDV7Hqphtg:2015/04/09(木) 01:16:04 ID:qiu9HJE.
科学の発展により著しい成長を見せる現代社会。
技術力によって培われた叡智は街並みを合理的に進化させている。

だがその裏では古より受け継がれる『魔術』が蔓延っていた。

事の始まりは宇宙の存命のために地球へ降り立った使者『インキュベーター』の存在である。
白い小動物の姿をした彼らは願いの代償に「魔法少女」システムを地球に齎した。
このシステムにより少女は希望を手に入れやがて絶望を振り撒く存在に「シンカ」していった。
夢を見たかっただけの少女が『魔女』に成り果てる、その力を悪用する者達も現れた。
少女達の生命を利用した邪神と『盗賊王』に裁きの鉄槌を下すべく『ファラオ王』は戦う。
その終焉は己を犠牲にし邪神とエジプトにやって来たインキュベーターを「千年パズル」に封印した。

ファラオ王の生命と引き換えに少女達の憎しみは消えたが新たな魔術が人々の不幸を呼ぶ。

新たに地球へやって来たインキュベーターは封印を恐れ契約システムを『聖杯』へと移していった。
この世に名を轟かせた『英霊』を召喚し覇権を競う『聖杯戦争』を実現させたのた。
少女達に契約を迫り再び魔女が増えてしまえばファラオ王のような人間に目を付けられてしまう。
表立った活動が出来ないインキュベーターは聖杯を創り上げ『アインツベルン』に情報を与えた。
この世界における魔術の血筋は総て魔法少女から始まっている。故に聖杯は彼らによく馴染んでいた。

魔法少女はソウルジェムが砕かれない限り死ぬことはない。つまり永遠の生命である。

インキュベーターが齎した魔法少女システムとは別に新たなシンカを求めていた者も存在する。
不幸を振り撒く魔女の誕生を防ぐため各地では『魔女狩り』と称して少女達を殺す儀式が行われていた。
血で血を洗うその儀式は形を変えて受け継がれ『生贄の儀式』として残っている。
『アステカのとある一族の族長』は一族に語られる魔法少女の不死を体現するため『石仮面』を被る。
魔法少女の血筋を持つ者を殺しその血を浴びることで彼らは『吸血鬼』として永遠の生命を手に入れた。

各地で起こる戦いは歴史に残ることなく、知る者だけが知る一種のお伽話として受け継がれていった。

やがて魔術が影を帯び世界に技術が発展した頃、人類は新たな『兵器』を生み出した。
日本と呼ばれる東洋の島国は幾多無く起きる戦争のために早急な戦力確保が必要だった。
銃弾では多くの者を殺せない。戦車を用意するには金が必要だ。制空権は敵国が有利である。

戦況が不利になり追い込まれていた日本を救ったのは戦力として扱っていた『艦隊』だ。
海の覇者として多大なる戦果を上げていた戦艦達を『人の姿』として転生させることにより『人型兵器』を生み出す禁術。
魔術の血筋は数こそ減ったもののこの世から姿を消さず、『艦娘』を誕生させた。
コストが掛からない兵器である艦むすはその力を大いに発揮し日本を勝利へと導いていた。その力は女神と称される程。

過去に魔法少女が魔女として扱われていた風習はこの世から消えた。そして『少女達の時代』が到来する。

『765プロダクション』の『アイドル』達はその姿と笑顔から絶大なる人気を誇っていた。
彼女達に憧れてアイドルを目指す学生も多く、アイドルの理想像『アイドルマスター』として名を轟かせていた。

舞台で輝く『奇跡』の『シンデレラ』を目指し日本の学生は大いに盛り上がる。
そんな彼女達を目指し世の中は『アイドル戦国時代』へと突入していた。

少女達が輝ける時代の到来、しかし時を同じとして千年パズルの封印が解かれてしまう。

12オープニング ◆lDV7Hqphtg:2015/04/09(木) 01:16:44 ID:qiu9HJE.
千年パズルの封印解除に伴い、世界には目に見えない『闇の力』が広まってしまった。
再び現れる魔女は人々に不幸をばら撒き新たに希望を絶望へと塗り潰す。

人間の中には『狂気』を求め有り得ない『リスク』を賭けてゲームを樂しむ者も現れた。
闇の力が原因かは不明だが、『ギャンブル』によって生命を落とす者が増加傾向になっている。
一部の世界を知る『観測者』達からは『闇のゲーム』と呼ばれていた。
日本の中でも多くの闇が集まる場所『東京・池袋』では『首なしライダー』の都市伝説が噂になっていた。
この首なしライダーの系譜は石仮面の流れを汲んでいる、と裏の人間では言われているが定かではない。
常人よりも多大なる闇を受けた『情報屋』は『ヴァルハラ』を目指すために暗躍し、人間社会はアイドルの裏側で闇に染まりつつあった。

邪神復活の影響により沈んでいった者達の怨念が具現化した『深海棲艦』を倒すために「艦むす』は再び戦場に駆り出される。
魔法少女の成れの果てである魔女を倒し『宇宙を守る』ためインキュベーターは再び契約を行う。
邪神と契約システムである魔法少女、その影響を受けた『勇者システム』と『バーテックス』。
人知れず世界を守るために『勇者部』である少女達は悪に立ち向かう。
『魔法少女』と『勇者』、そして『艦むす』は境遇こそ違えど時には互いに協力し世界のために戦っていた。

幾度なく繰り返される戦い、学ばない歴史、汚される少女。

終わることのない輪廻は何度も何度も因果を束ね何れ来るであろう終焉に進んでいるのか。
答えは何も出ないが『世界』の時は急激に『加速』した。

インキュベーターはこれまでに無い程の素質を持つ『少女』を発見してしまった。
封印を解かれた『ファラオ王』は『記憶』を失いながら惹かれるように世界の核心に向かっている。
魔女狩りの系譜を持つ『石仮面』の歴史は共鳴による『幽波紋』によって『エジプト』を舞台にした。
『艦むす』は己に走る謎の『ノイズ』に悩まされながらも戦いを続ける。
歴史を辿るように『魔法少女』を始めとする少女は争いに巻き込まれ、一部の少女は『アイドル』として世界に羽ばたき出した。
繰り返される『聖杯戦争』は『魔術師殺し』の男を舞台に呼び込み、今宵も戦争の鐘を鳴らす。
『邪神』の影響は闇を産み『都市伝説』や『闇のゲーム』として人々に『不幸/狂気/快感』を齎していた。

インキュベーター襲来によって始まった古代エジプトの『遺産』は『共鳴』するように動き出す。

過去が存在する故に今が在る。だが過ぎた時代を現代へ押し付けるのは如何なものか。
魔法少女もアイドルもスタンド使いも艦むすも決闘者も今を生きている。

今を生きている『伝説』と言えば『両津勘吉』である。

警察官の男、しかしその生き様はアカシックレコードに刻まれている。

金儲けが好きな彼は『とある外国の老人』にイカサマを仕掛けられ大負けを経験している。
懲りずに裏のゲームに参加した彼は『伝説の男』と麻雀を行った。結果はもちろん……。
同僚には御曹司が居る。その繋がりからか『SPW財団』ともパイプを持っておりその力を貸している。
『とある超常現象が起きた学生』の事を考え牢屋に案内したのも彼だ。

一度は『聖杯』なる物を手に入れようとしたがその時期は『深海棲艦』との決戦が控えていた。
司令官である『提督』と友人であった両津は『特殊刑事』と共に作戦に参加し日本を守っていたことも在る。
『ファラオ王』の記憶を受け継ぐ少年の『カードショップ』にはコレクター故に顔を出した事もあった。
また『アイドル』が好きでありその知識は総てのジャンルに置いて頂点を極めている。

過去から続く因縁の中心に存在している両津勘吉。
彼はこれから行われる殺し合いの中でも――。






「川内さーん……夜戦も程々に……ってここはどこ?」


目を擦り夢ではないかと認識させるがこの時間は現実であろう。
夜中の訓練を行っていたはずだが気付けば暗いホールのような場所に駆逐艦吹雪は立っていた。
記憶には先輩である川内と夜戦と称される特訓をしていたのだが何が起きたのだろう。

「あれって天海春香さん……? なんで?」

辺りを見渡せばテレビに映るアイドルが近くに居た。
那珂と呼ばれる艦娘が憧れるアイドルマスターが何故自分の近くに居るのだろうか。
そもそもここはどこなのか、謎しか生まれない。

13オープニング ◆lDV7Hqphtg:2015/04/09(木) 01:18:39 ID:qiu9HJE.
身体が軽い事に気が付くと幾らか装備が外されている。
夜戦では主に体作りが中心だったため問題はない、気が抜けているようだ。

「静まれ――秘書官の長門だ」

自分の周りに居る人達もまた突然この場所にいたかのように驚いている。
その騒がしさを一声で黙らせたのが演台に降臨している戦艦長門だ。
その戦闘能力と頭脳は艦娘の中でも図一であり英雄である提督の秘書官を務めている。

「な、長門さん!」

知り合いが居ることに安心した吹雪は大きな声でその名を呼ぶ。
返ってくる言葉は反比例するように冷たい一言。

「これからバトルロワイアルの説明を行う。駆逐艦吹雪、少し黙っていろ」

頼れる秘書官の声ではなく、まるで機械のように冷たくて感情の篭っていない声。
元は戦艦だと言われればそれまでだが話は違うし問題も異なる。
バトルロワイアル。響きから考えれば殺し合いだろう。

「バトルロワイアル……正気ですか!? 長門さん!!」

彼女は説明の一つもせずにこれから行われるらしいバトルロワイアルの話を切り出したのだ。
順序もなければ守るべき道徳も存在せず、例え存在していても殺し合いの強要など神でも許されない。
正義感の強い長門なら尚更そのような発言はしないだろう。

彼女ならばこの状況に正面から対抗し勝利を齎すだろう。
そんな存在が何故殺し合いの音頭を取っているのか。

「黙れと言ったはずだ吹雪。誰に逆らっている?」

「逆らうも何も今の長門さんはおかしいです……っ」

「提督から授かった指令書にも記されている――が?」

その一言で吹雪の時間は止まってしまった。
最も尊敬している存在が殺し合いの首謀者だと脳内に響き渡る。
有り得ないこれはなにかの間違いだ。夢であり悪夢である。
目が覚めれば川内と一緒に夜戦をしている――そう思いたいが故に現実を拒む。

「て、提督がそんなことを!」

「秘書官であるこの私が嘘をついている……か?」

そんな事は一度もない。
提督が死んだと噂されていた時も長門は絶望の中艦娘達の先頭に立った。
そんな彼女が嘘を憑く理由はなく、ならば事実であるというのだろうか。

それこそ信じられないだろう。

14オープニング ◆lDV7Hqphtg:2015/04/09(木) 01:19:23 ID:qiu9HJE.
吹雪の周りでも戸惑いの声が挙がっている。
戦艦長門と言えば艦娘の中でも大きな知名度を誇っている。
英雄とまで讃えられている彼女の発言に戸惑いを覚えるのも無理もない。

現に同じ艦娘である吹雪もまた混乱の渦中にいるのだ。
何を信じればいいのかわからない。
提督も絡んでくるとなれば出口のない迷路に迷い込んだような。


「うるさーい!! ――ってわしは部屋で寝ていたんじゃ……お、吹雪じゃねーか!
 なんでこんなところに居るんだ? 提督の奴は近くにって長門も! わしにドッキリでも仕掛けるのか?」


長門が一同を黙らせたようにこの男もまた世界を停止させる。
目覚めた両津勘吉はネクタイを緩めながら長門に手を振っていた。
状況が理解出来ていないこの男はパーティが始まるような気分でいるようだ。


「あれって両さん?」
「両津勘吉じゃないか」
「あの男、アイリが言っていた味方ならば頼もしいが敵ならば恐ろしい存在……」
「ばっかもーん!!」
「ククク……」
「あの警察の人は初期の頃からライブに来ていた人と……?」


有名人が故にその一声一動作が多くの人間から注目を集めている。
この会場の中において一番知名度が在ると言っても過言ではないこの男は両津勘吉。
決して挫けない大人、少年の心は忘れない永遠の男だ。


「少し静かにしてくれ両さん」

「お前承太郎! エジプトはどうした、ホリィさんは助かったのか!?」

「この殺し合いは最後の一人が決定される瞬間まで永遠に続く。
 但し七十二時間が経過すれば首輪が爆発しお前たちの生命は糧となる」


大柄な学生が両津勘吉を説得している時。
長門は被せるように殺し合いの概要を発言し総ての関心を己に集中させた。
参加者の多くはこの瞬間、初めて己の首に触り冷たい機械を実感。
この首輪は爆発する、助かるためには最後の一人にまでならないといけない。

「何を言っているんだ長門。今のガキ共はバトルロワイアルなんて知らんぞ」

「重要な事はそれじゃあないぜ両さん。問題はあの女が何を言っているか、だろ?」

「いや殺し合いとかする訳ないだろ。可笑しな事言ってると本当に牢屋にブチ込むぞ! それとジョセフのジジイは金返せ!」

「……やれやれだぜ」

「その学生が言うとおり知っていようが知っていないようが関係ない。
 これから行われるバトルロワイアルに参加するのは提督の残した指令書に記されているからな」

長門が発言を終えると舞台袖から出て来た艦娘睦月は指令書を開示し会場の参加者に見せる。
しかし暗くて遠いため全く見えず馬鹿にしているようにしか見えないのが現実だ。

「睦月ちゃんまで!? こんなの絶対おかしい、なんで!?」

吹雪は叫ぶ。
長門秘書官だけではなく親しい艦娘である睦月までもが向こう側に存在しているのだ。
殺し合いを進めるために艦娘は生まれた訳ではない。
彼女達の力は世界の平和を守るために存在している。これは逆の道を進んでいるだけだ。

「みなさんには支給品として地図や食糧が支給されます。
 また、ランダムアイテムとして一部の道具も支給されますので確認をお願いします」

友の叫びは届かず睦月は殺し合いの説明を行う。
「長門秘書官が言った通りみなさんにはこれから殺し合いを行っていただきます」
再度繰り返される悪夢への誘い。
「殺し合いってなに!? 提督の指令書に書いてあるなんて嘘でしょ!?」
「みなさんがどのように過ごすかは自由ですが生きて帰れるのは一人だけです」
ならば仲間を作っても最終的には殺し合わなければならない。
黙って逃げても七十二時間経過すれば全員が死ぬ、逃げ場は存在しない。
「如月ちゃんがこんなことして喜ぶの!?」
「私達は進行役としてッ……ぅ……一定の時間置きに放送をさせていただきます」

揺らぐ心。
こんな事をして誰が喜ぶのか。睦月の言葉が詰まる。
長門秘書官とは違いまだ彼女には心が残っているらしい。ならば――。

「今ならまだ戻れるよ!? 私も一緒に謝るから殺し合いなんて辞めようよ!!」
私が貴方を正気に戻す。

「……最後の一人には願いを叶える権利が譲渡されます。そのために頑張ってください」
それでも心に届かない。

「願い何て叶えられる訳無いよ! そんな事出来るならとっくに使ってるでしょ!?」
現実を、私だけを見て。

「……」
言葉が無くなる。

吹雪の言っていることは正しく願いが叶うと言われ信じる人間がどれだけ存在するのか。
殺し合いの対価として考えれば有り得なくもないが現実的に実在しないだろう。

「――それではこれからみなさんを会場に案内いたします」

15オープニング ◆lDV7Hqphtg:2015/04/09(木) 01:20:58 ID:qiu9HJE.
睦月の言葉と共に会場にいる人達の下半身が徐々に消え始めた。
粒子化のような現象は下半身から上半身へと移り進行が速い参加者は既に消えていた。

「待って! 待ってよ睦月ちゃん!!」

もう会えなくなるかもしれない。
言葉が正しいなら吹雪、彼女はこれから殺し合いを行うのだ。
生きて帰れる保証はない。もう鎮守府にも戻れないかもしれない。

「悩み……力になれなくてごめんね」

「ッッ!!」

「睦月ちゃんが何を考えているかは知らないけど……ごめんね。
 相談に乗っていればこんな事にはならなかったかもしれない……本当にごめん」

私が心の闇に気づいていれば。
このような暴挙に出ていなかったかもしれない。
そう思うと涙が止まらない。

如月が死んでから彼女の心には闇が誕生していた。
その事実に気付きながらも力になれなかった。
友達して失格だ。

「違うの!!」

「え?」




「長門秘書官は操られているの! その人の名前はD――」




睦月が最後に何を言おうとしたのか。吹雪は解らない。
この会場に来てから何度時間が止まったのだろう。
目の前に起きている現実が受け入れられなくて彼女は気絶してしまう。

最後に聞こえたのは乾いた破裂音。

最後に見たのは友の首が破裂した瞬間。


「言い過ぎだぞ睦月……お前も■■■様を受け入れれば良かったものの」


右手に握り締めたスイッチのような物を見つめながら長門は呟く。
言葉と動作から察するに彼女が睦月を殺したのだろう。
彼女が最後に何を言おうとしたかは不明だが何か長門にとって都合の悪い事だったのだろうか。

その答えは死んだ睦月と進行役の長門だけが知っている。
吹雪を始めとする他の艦娘が知らない秘密を彼女達は知っているのだ。
提督の残した指令書の内容を含め謎が謎を呼んでいる。


「なぁアンタ。今■■■って言わなかったか――言葉がノイズになっていやがる?」


両津勘吉を止めていた学生が長門に向かい話しかける。
その身体は上半身まで消えかかっているが聞いておきたい事があるらしい。

16オープニング ◆lDV7Hqphtg:2015/04/09(木) 01:22:01 ID:qiu9HJE.
承太郎はとある単語が音にならない。一つの疑問が生まれる。
人名である■■■が発音出来ない、まるで何かの魔法に封印されいるかのように。
その言葉は彼の一族が対峙する奇妙な螺旋の様に始まってしまった物語の因縁。

何故その言葉が口に出せないのか。
幽波紋の一種とでも思って納得するしか無い。
加えて操られていると言った睦月の言葉から察するに確認するまでもない。
長門を操る男の正体を彼は知っていた。

「ノイズ……さぁなんのことかな?」

承太郎の問に解を示さない長門は不敵な笑みを浮かべた。
その姿から戦艦である誇りは伺えなく腐った道化師のように薄い笑いを保っている。
答えないならば仕方無い。
舞台がエジプトから移ろうが承太郎のやる事は変わらないらしい。

待っていろ、テメェを裁くのは俺のスタンドだ。

己に再度刻んだ承太郎の身体も他の参加者同様に消え会場に移動した。


「これで最後は貴方だ――両さん」


全ての参加者が消えゆく中最後に残ったのは両津勘吉ただ一人。
しかしその身体も八割は粒子のように消えており彼が会場に移動するのも秒読みだ。

彼が最後に残った理由は不明だ。
強いて言うなら彼のタフさ故か神様の気まぐれとでも言っておこうか。

両津勘吉の表情は言葉で表す事は不可能だろう。
怒り、そんな簡単な言葉では処理出来ない。

「お前がやったことは絶対に許されない。わしはお前を連行しなくてはならん。
 ビックセブンが聞いて呆れる……お前は本当にあの戦艦長門なのか?」

「愚問だな両さん。私は提督の秘書官である戦艦長門だ、知っているだろう?」

「わしの知っている長門は艦娘の憧れで提督にも信頼されている立派な艦娘――人間だった」

その言葉に長門の肩は震えた。
心は操られいるが両津勘吉の言葉は彼女に届いているようだ。
本来■■■の支配は人間の言葉一つで崩される事はない。
両津勘吉の人間としての輝きが吸血鬼の闇に打ち勝ったのだろうか。

「提督が指令書に残した事実もわしには信じられん。だがお前が嘘を憑くとも思えない」

「全て事実だよ両さん。私は提督の秘書官だからな」

「なら■■■の命令に従うなッ! ジョセフのジジイから奴の事は聞いているからな」

ジョースター一族因縁の相手。
宿敵、運命とも呼べる男が長門を操っている。
この説は睦月の最後の言葉、承太郎の反応から間違いないだろう。

邪悪の根源が何を考えているかは不明だが殺し合いを見逃す程両津勘吉は腐っていない。
その心、人間として限界まで挑戦し続ける男は人々の笑顔のために動くだろう。

17オープニング ◆lDV7Hqphtg:2015/04/09(木) 01:22:54 ID:qiu9HJE.
気付けば首の下まで身体は消え掛かっている。
両津勘吉も会場に飛ばされるのだろう。これでバトルロワイアルが幕を開ける。
誰が笑い誰が泣くのか。それは誰にも解らない。
一つ言えるとすれば両津勘吉を始めとする一部の人間は殺し合いを止めるために活動すること。

起きてはならない悲劇を止めるために彼らはその生命を捧げる。
勿論死ぬつもりはない、彼らとて自殺志願者ではない。
運命を打開するために両津勘吉、一世一代の物語が始まろうとしているのだ。

「わしがお前も含めて全員救ってやる。だから待っていろ長門」

「……私はバトルロワイアルを進行するだけだ」

両津勘吉は睦月を殺した長門も見捨てず救うと告げた。
どんな罪を犯そうが死んでいい存在などこの世にはいない。
救える者は全員救う。彼はこれまでそうやって生きてきた、そしてこれからも。



「言ってろ……聞こえるかああああああああああああああああDIOオオオオオオオオオオオ!!」



消える前に渾身の力を込めて彼は叫ぶ。
後ろで笑っているだろう卑劣な愚者に向かって。



「わしが貴様を潰す! 承太郎達だけじゃなくて長門や睦月まで巻き込みやがって……覚えとけえええええええええええええええ!!」



この言葉を最後に両津勘吉の姿は消えてなくなり全ての参加者が会場へと移動した。
始める物語は終焉が闇に覆われ見えない袋小路の行き止まり。


打開するか潰されるか消え去るか。


全ての不安を残しバトルロワイアルは始まりを告げる――。






【睦月@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】



【進行役】
【長門@艦隊これくしょん -艦これ-】

18オープニング ◆lDV7Hqphtg:2015/04/09(木) 01:24:03 ID:qiu9HJE.
投下を終了します

19開幕〜いのちの秤〜 ◆Ju94Ls6/3E:2015/04/11(土) 03:27:56 ID:2qHx2M/.
OP案を投下します。

20開幕〜いのちの秤〜 ◆Ju94Ls6/3E:2015/04/11(土) 03:29:27 ID:2qHx2M/.
両津勘吉が目を覚ました。見慣れない部屋だった。殺風景な部屋。
そしてかなりの数の人が集められている。
座っている者もいれば、立っている者もいる。年代も性別も様々だ。
共通しているのは、皆が悪い夢から覚めたときのように辺りを見回していることだ。

「おい、両津。これはどういうことだ……」

両津の隣にいた大原部長が、不安げな顔で両津に尋ねる。

「知りませんよ、部長。わたしだって起きたらこんなところにいて……」

「せんぱ〜い、何なんですか、これは〜」

「おお、本田か。あっちにはボルボもいるな。海パン刑事まで……。うむ、一体どうなっているんだ」

「両津、今年は夏期オリンピック開催の年ではなかったよな?」

「どういうことです?そうですけど」

「いや、あそこにいるのは日暮じゃないか?」

「ええ、間違いありませんね。どういうことでしょう?わざわざあいつを起こすなんて命知らずな……」

「ところで、両津。わしらにつけられているこの首輪は一体なんだ?」

「ちょっと試してみますか」

両津が思い切り力を込めるが、首輪は外れない。

「くっそー、こんなときにスパークでもいたら……」

両津がそう言い終わったとき、やけに勇壮な音楽が流れ始めた。
そして、その音楽とともに一人の男がせりにのって部屋の前方の床下から現れた。

21開幕〜いのちの秤〜 ◆Ju94Ls6/3E:2015/04/11(土) 03:30:21 ID:2qHx2M/.
「やあ、スーパー貧乏人諸君、元気かな?」


「げっ!あいつは白鳥!」

悪趣味なスポットライトを浴び、紙幣のようなものをまき散らしながら現れたのは、あの白鳥麗次であった。

「おい、白鳥!どういうことだ、これは!」

「口を慎め。僕は今君たちの命を握っているんだよ」

残酷な笑みを浮かべた白鳥。

「スーパー貧乏人諸君、君たちには今から殺し合いをしてもらう!」

一瞬静まり返った。その言葉の意味を理解した者がどれほどいたのであろうか。

「おい、何を言っているんだ!殺し合いだと?お前、ふざけているのか?」

両津が声を荒げる。

「ふざけてなんかいないさ。貧乏人は馬鹿ばかりだからもう一度言うが、君たちには今から殺し合いをしてもらう。
これは命令だ。君たちスーパー貧乏人はスーパー金持ちである僕に従う義務があるんだよ」

「何を言っているんだ、お前?本当に大丈夫か――」

ボンッ、ボンッ、ボンッ、ボンッ、という音がした。一瞬の静寂

22開幕〜いのちの秤〜 ◆Ju94Ls6/3E:2015/04/11(土) 03:31:20 ID:2qHx2M/.
「いやああああああああああああ!!!」
「まどか!見ては駄目!」

「両津!本田!ボルボ!頼む!」
「分かりました!部長!」

両津が答える。4人がそれぞれ駆け寄る。手遅れだと分かっていても、彼らは警察官だった。
頭のない4人の遺体が倒れていた。1人は老人。2人はおそらく中学から高校生ぐらいの女性。もう1人は――。

「部長……」
「両津……これは夢じゃないんだな……?お前の悪い悪戯でもないんだな……?」


毎日のように目にしていた黄色いスーツ。欠かすことの出来ない派出所の一員。


「なかがわああああああああああああああああ!!!!」


叫んだのは両津か、大原部長か。

その近くで目を覆う5人の女子高生たち。


「嘘……なんで……?」
「ほ、穂乃果しっかりしてください……」
「嘘、嘘よね……?これは夢よね……」
「なんやこれ……うちらが何をしたというんや……!」
「あ、あいつ……!殺してやる……!!殺してやるうううう……!!」


彼女と5人との付き合いは1年程度にすぎない。学年も違う。
しかし西木野真姫はかけがえのないμ'sのメンバーであった。その命はあまりに理不尽に奪われた。

23開幕〜いのちの秤〜 ◆Ju94Ls6/3E:2015/04/11(土) 03:32:26 ID:2qHx2M/.
そしてここにも、仲間を失った者たちがいた。

「なんで……?今日はみんなでプロデューサーさんのお誕生日を祝うはずだったのに……」
「なに……これ……冗談はよして……!!」
「プロデューサー……、これ、ドッキリだよね……?自分、今ならまだ許してあげるぞ……」


「貴様……貴様!!絶対、絶対に……!!」


指がちぎれるのではないかと思うほどに強く拳を握り、わなわなと震える眼鏡の男。
天ケ瀬冬馬は彼が怒ったのを見たことがなかった。
冬馬自身、この不条理な事実に強い憤りを感じていた。しかし、彼の怒りはそれとは比べ物にならないであろう。
水瀬伊織。765プロダクションの大切な仲間。彼女もまた、その命をあまりに身勝手に奪われた。

学ランを着た青年もまた、彼と同じ感情を抱いていた。

「てめぇ……」

空条承太郎は下品に高笑いするスーツ姿の男を強く睨みつけた。激しい感情が承太郎を包んでいた。見る者を気怖じさせるほどに。
ジョセフ・ジョースター。共に旅をし、共に戦ったジョセフは、彼にとっては単なる祖父という存在以上のものだったのかもしれない。

24開幕〜いのちの秤〜 ◆Ju94Ls6/3E:2015/04/11(土) 03:33:27 ID:2qHx2M/.
「わはははははは、分かっただろう?そこの4人は貧乏人というにはいささか無理があったからね。
スーパー貧乏人の集まりにはふさわしくないと判断したわけさ。まあ、中川さんには恩もあったけど、仕方ないね。
他にも気に入らない連中はいるけど、あんまり殺しすぎると進行に影響が出るからこれくらいにしておくことにした。感謝するんだな。
そうそう、海馬くん。君も頭を吹き飛ばしてあげようかと思ったんだが、それじゃあつまらない。
貧乏人の群れで無様にもがき苦しむのも一興かと思ってね。今は殺さないであげるよ」

海馬瀬人は何も言わなかった。ただ、自分に向けられた侮辱に口元を歪ませるだけだった。

「鷲巣さんも自分の立場を弁えた方が良いですよ。昭和の怪物かなんだか知りませんが、今は平成なんでね」

「若造が……!!このわしを舐めおって……!!」

「僕は女の子には甘いから、大道寺ちゃんも生かしておいてあげるよ。僕ってやさしいねえ。ああ、さっきの2人は主に性格が気に入らなかったから」

「……人の命をもて遊ぶなどあってはならないことですわ……!!」

両津が白鳥に向かって突進する。しかし、ゴン、という音と共に阻まれてしまう。硬質ガラスのようなものが白鳥を守っているらしい。
両津は何度か勢いよくタックルをするが、結果は同じであった。

「僕に手出ししようとしても無駄だよ。それともさっきの4人みたいになりたいのかい?」

「くそっ!!」

25開幕〜いのちの秤〜 ◆Ju94Ls6/3E:2015/04/11(土) 03:34:55 ID:2qHx2M/.
「いやあ、親父から勘当された一文無しの僕を助けてくれたうえに、こんな素晴らしいショーまで主催させてくださるとは、本当に頭が上がらないな。
まあいい。スーパー貧乏人諸君、一回しか言わないからよく聴け。君たちには今から外に出て1人になるまで殺し合ってもらう。
一応言っておくが、それぞれ飛ばされる場所はバラバラだ。貧乏人はすぐ群れるからな。タイムリミットはなしだ。ただし、24時間で1人も死者が出なかった場合は全員の頭が吹き飛ぶことになる。
それと君たちにはデイパックが支給される。ありがたく思え。食料や名簿などの必要なものが入っていると考えてもらえばいい。他に何が入っているかは運次第だ。
まあ、貧乏人らしく、良いものが入っているように神にでも祈るんだな。
次に放送についてだ。6時間毎に放送でその時点までに殺された者を教えてやる。そのとき、君たちが持っている地図にあるエリアから3つを指定して禁止エリアにする。
禁止エリアに踏み込んだ場合は、首輪が爆発するから気をつけるんだな。分かったな?
最後に名簿に関してだが、ここにいる者の全員分の名前は書いていない。自分の名前が書いてないからといって慌てないように。
残りの名前は第一回放送開始時に浮き上がることになる。自分の知り合いがいないように願うことだ」

心底楽しそうに語る白鳥。

「それとだな、勝ち上がった人間に何もないというのはちょっとつまらない。優勝者は元の世界に帰してやると共に何でも願いを叶えてやる。
死人を生き返らせるのも、不老不死も、僕みたいなスーパー金持ちになるのも自由だ。どうだ、スーパー貧乏人にもチャンスがある。夢がある。やる気になっただろう?」

もはや答える者はいなかった。怒りに震える者。恐怖に怯える者。歓喜に胸を躍らせる者。葛藤に揺れ動く者。
それぞれの思惑と共に、バトルロワイアルの火蓋が切って落とされる――。

【こちら葛飾区亀有公園前派出所@中川圭一 死亡】
【ラブライブ!@西木野真姫 死亡】
【THE IDOLM@STER@水瀬伊織 死亡】
【ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース@ジョセフ・ジョースター 死亡】

【残り61人】

『主催・司会進行』
【こちら葛飾区亀有公園前派出所@白鳥麗次】

『デイパックの中身』
 地図、名簿、食料、水、メモ帳、筆記用具、ルールブック、腕時計、方位磁石、懐中電灯、ランダムアイテム1〜3

『名簿』
35名の名前が書いてあります。残りの名前に関しては第一回放送開始時に浮き上がります。
(ただしプロデューサーに関しては「プロデューサー」としか書いてありません。
また、海パン刑事、エンヤ婆に関してもそれぞれ本名の汚野たけし、エンヤ・ガイルではなく「海パン刑事」「エンヤ婆」と記載してあります。
見せしめとして殺された4人の名前は35名の中に入っています)

『ルールブック』
白鳥が語ったこととほぼ同様。

『放送』
00時、06時、12時、18時と1日に4回放送が行われます。
放送では前の放送までの間に死亡した人間の名前と禁止エリアが発表されます。
この禁止エリアに立ち入った場合30秒の警告の後に首輪が爆発します。

26開幕〜いのちの秤〜 ◆Ju94Ls6/3E:2015/04/11(土) 03:35:34 ID:2qHx2M/.
投下を終了します。

27 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:03:13 ID:1o/8S7rE
OP案を投下します

28 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:04:04 ID:1o/8S7rE



 薄暗い暗闇の中、一人の少女が目を覚ました。

「うぅーん……、なんだか騒がしい。もう、どうしたの睦月ちゃん、夕立ちゃ…………あれっ!?」

 駆逐艦・吹雪が目を覚ました場所はいつもの鎮守府の宿舎ではなく、どこまで続いているのかもわからない、闇に閉ざされた空間であった。
 闇に包まれているにも関わらず遠くの物まではっきりと見えるこの不思議な空間には、吹雪以外にも老若男女を問わず多くの人間がいた。

「ここ……どこ……? 睦月ちゃん、夕立ちゃん! 赤城さん! みんな! 誰か、誰かいませんかー!」

 訳のわからない事態に混乱し、誰か知り合いはいないかと声を上げて周りを見渡していると、吹雪はあることに気付いた。

「首輪……? え、私にも?」

 自分同様に知人の名を呼ぶ者、未だ寝ている者、気を荒立てている者、怯え震えている者、状況を受け止め沈黙している者。
 この場にいる者の立ち振る舞いは三者三様であるが、みな共通して硬質的な首輪を填められていた。
 自身の首に手を伸ばすと、そこにもやはり首輪のような物が備え付けられている。

「こ、これって――」

 そこそこな大きさの首輪だというのに首の動きを阻害することなく、また、触れてみるまで付けられていたことに違和感を覚えることがなかった首輪に吹雪はあるものを連想した。

(この肌触り……まさか艤装……?)

 新装備のテストかと一瞬考えたが、それでは男性にまで首輪がかけられていることが説明できない。
 深くは考えず、まずは艦隊の仲間がいないか探すために吹雪が動き出そうとしたちょうどその時、背後にあったらしい巨大なモニターから光が発せられた。

 
 黒一色でできていた世界に突如現れた光。停滞していた空間を打破したそれは、当然ながらその場にいた全員の視線を集める。
 吹雪も周りにならって後ろを振り向くと、その大画面には思いもよらない人物が映されていた。


「参加者諸君、静粛に。――――司会進行役の長門型1番艦・長門だ」
「長門さん!?」

 空間全域に響き渡る大音量で発せられたあの声、見事な黒の長髪、引き締まった顔立ちは記憶と寸分違わない。
 司会進行役と名乗った彼女は、吹雪の知る秘書艦・長門その人であった。

29 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:04:53 ID:1o/8S7rE


「長門さーん! なーがーとーさーん! これって一体なんなんですか。特殊な訓練かなにかなんでしょうか?」

 ようやく知り合いに出会えた嬉しさから、吹雪はモニターの長門へ向けて手を振って大声で呼びかけた。

 長門はそんな吹雪を一瞥したが、しかし相手にすることなく口早に言葉を紡ぎ出す。

「参加者諸君はなぜこのような場所に集められたのか。そのことが今最も知りたい事柄だろう。

 単刀直入に言う。諸君は殺し合い――バトル・ロワイアルをするために集められた」

 長門の端的な発言は、この場にいる者のほとんどに衝撃を与えるものであった。
 戦艦の魂を背負う少女も、契約により魔法を扱う少女も、練達の魔術師も、神に選ばれし勇者も、アイドルも。おおよそ正常な思考を持つ者のほとんどはその発言に息を呑んだ。
 そして直後にざわめき。どこからかそんな馬鹿なことに誰が従うんだという声。


 ――しかしこの場に集められているのは、正常な思考を持つ者だけでない。


 人の死を見ることが好きな人間もいる。殺し屋もいる。ただ人が苦しむ様を見たいだけの人間もいる。狂気に憑かれ、死など恐れぬ英霊がいる。
 この場所には、確かに長門の発言を肯定する存在もいた。

 困惑、恐怖、混乱、狂気、狂喜。様々な感情に参加者が囚われている間に長門は早口で言葉を続ける。

「参加者諸君にはこの説明が終わり次第、会場に移動しそこで殺し合いをしてもらうこととなる。
 生きて帰ることが可能な者は一名のみだ。最後の一人になるまで殺しあってもらう。
 ――では、この時点で質問のある参加者はいるか?」

 冗談で言っているようには見えず、吹雪は目の前のモニターの人物が本当にあの長門なのかと疑いたくなった。
 そのことを聞こうかと思って声を出そうとした瞬間、吹雪のすぐ傍にいた熊のような大男が先に長門へ質問を投げかけていた。

「質問があるかないかで言えば、あるとしか言えんのではないか?
 お前さん、いきなり殺しあえと言われて従う馬鹿ばかりいるとでも?」

 赤髪のその男は仮装大会から連れてこられたかのような、古めかしい大層な衣装に身を包んでいた。
 しかし、誰一人としてその服装のことを笑う者や指摘する者はいなかった。
 なぜなら男の放つ圧倒的な存在感が、この場の全員の本能に彼が人間以上のなにかであると明確に訴え、警告していたからだ。

30 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:05:47 ID:1o/8S7rE

 そんな男の質問を受けながら、長門は臆することなく返答をする。

「尤もな質問だ征服王。
 なんの対価もなく殺しあえなどと言われても、それこそ人を殺すことや嬲ることを望んでいる下種しか承諾はしまい。
 なのでこのバトル・ロワイアルを勝ち抜いた者には、その者の望むどのような願いも我々が叶えるという約束をしよう」


 優勝者のどのような願いも叶える。 
 長門がそう約束すると言った瞬間、空間内で先ほどとは異なるざわめきが起こる。

 征服王と呼ばれた男は「なるほど」と呟くと、さらに長門へ問いかける。

「どのような願いも叶えるとは大きく出たな小娘。その願いで世界の覇者にしろと言われたならばどうする。死んだものを蘇らせることができるか?
 叶えることが可能な尺度を提示せんでは、誰もその話を信用することはできんぞ」

 征服王はどこまでの願いならば叶えられるか質問する。
 その様に周りの参加者は沈黙し、ただ祈った。
 もし、彼の要求を満たせるだけのことが可能なのだとすれば、すなわち超常の存在である彼が殺し合いに参加するのではないのだろうか。
 そうならないよう、ただの人間は祈るしかできなかった。

「叶えられる願いの尺度か。
 ――少なくともサーヴァント七騎分の魔力相当の奇跡しか起こせない聖杯よりは多くを叶えることができる。
 今貴様が受肉していることからも、魔術の知識がある者が見れば多少は信用できるだろう。
 他の参加者にわかりやすく言えば、おおよそ想像できることの全てが実現可能であると考えてくれていい。
 恒久的な平和を願うもよし、魂と切り離されゾンビとなった体を元の体に戻すこともできる。滅んだ世界を元に戻すことも根源へ到達することも可能だ。
 
 それだけのことができるとだけ言っておこう」

 男の質問に毅然と応える長門の姿は吹雪の記憶通りで、やはり彼女が偽物であるとは思えない。
 そのため吹雪だけ、優勝して叶えられる願いの内容に他の参加者がどよめく中、その報酬に興味など示せずにいた。


 そして長門の話を吟味している男に視線が集まる。
 果たして彼はこの殺し合いに乗るのかどうか、破格の優勝報酬を前に皆がそのことを危惧した。

 考えるように頭を下げていた男は数秒もしない内にその頭を持ち上げ、「最後にいいか?」と前置きし、再び質問を投げかけた。
 その顔は酷く獰猛で、まさに略奪者のソレ。爛々とした目は自信と凄みに溢れていて――――


「――なぜ征服王である余の前にそれだけのモノを用意して、貴様らを叩き潰し強奪するという選択を取らないと思った?」


 瞬間、男は腰の剣を抜き放ち、同時に炸裂音を従わせた雷光が彼の目の前を迸った。

31 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:06:54 ID:1o/8S7rE

「きゃああッ!?」

 突然の落雷により、近くにいた吹雪は衝撃によって体勢を崩して倒れる。
 闇を切り裂いた光と轟音に目と耳が眩み、数秒してようやく白い闇から視界が正常に戻り立ち上がってみると、そこには先ほどの表情が嘘のように、苦虫を噛み潰したような顔で剣を握ったままの男が立っていた。


「貴様……」

 男はモニターを睨みつける。
 その様子から男がなにかをしようとし、そしてそれを長門が阻止したことが窺うことができた。


「ここで争うことは禁じられている。宝具の使用は会場に行くまで制限させてもらった」

 男の行動を阻止したというのにそのことを誇ることなく、長門は坦々となにが起こったかを説明する。

「参加者に取り付けてある首輪には、装着者本来のパフォーマンスを阻害する機能が備わっている。
 我々に叛旗を翻そうと考えるのは無駄なことだと理解しろ」
 
 長門はそう言い放ち、早い口調でルールの説明を再開する。

「繰り返すが、参加者諸君にはこのバトル・ロワイアルで己以外の全ての参加者を屠り、優勝を目指してもらう。
 優勝者は望む願いを叶えることができ、優勝者がでなければ――――――参加者全員の首輪を爆破する」
「えっ!?」

(首輪を爆破する!?)

「バトル・ロワイアルの開催期間は三日間。本日00:00より開始し、その七十二時間後の00:00までに終了していなければ会場内の全ての首輪を起動、爆破する。
 殺し合いを受け入れないことは自由だが、己以外の参加者が存在すればどちらにせよその者と心中することとなる。よく考えて行動することだ」

 どうあってもこの場にいる人間のほとんどが死ぬように作られている巫山戯たデスゲーム。
 そしてそんなものを平然と説明する長門に、吹雪は我慢できずについに声を上げる。


「待ってください長門さん! こんなのおかしいです! どうして殺し合いなんかしなくちゃいけないんですか! どうしてそんなことを平然と言えるんですか!
 こんなこと提督が知ったらきっと――――」
「このバトル・ロワイアルは提督のご意志でもある」


 長門が口にした言葉を、吹雪は理解できなかった。受け入れることができなかった。
 同じ言語を使っているというのに、脳が聞いた単語の意味を成すことを拒絶した。

32 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:07:53 ID:1o/8S7rE

 だが、そのような現実逃避は状況を悪化させることはあっても好転させる力はなく、そのことをわかってはいるから吹雪は言葉そのものを拒絶した。

「嘘……嘘です! 提督がこんな、あり得ませんよだって提督…………提督は………………っ!」


 そう、こんな、秘書艦の言ったことは嘘に決まっている。
 嘘。そう、嘘なのだ。
 本当の提督は――――――――!

「信じる信じないはお前の勝手だが、今も提督はここでお覗きになっている。そのことを肝に銘じておけ」


 嘘だ。
 そう――嘘だと信じたいのに、カメラが動いて秘書艦の背後を映すと、そこには見間違えるはずのない顔がある。
 初めて出会った、あの時の顔のままで。

 
「質問は以上か、駆逐艦・吹雪。

 では最後に定時放送について説明する。バトル・ロワイアル開始から六時間ごとに放送を行う。
 放送内容は死亡した参加者及び侵入禁止エリアの発表だ。まず――」

 長門が重要な説明をしているというのにその話は頭に入ることなく、吹雪は言葉を失ったまま立ち尽くす。
 最も信頼していた提督に裏切られた――その事実が吹雪を絶望で満たしていた。

「――――以上がこのバトル・ロワイアルの説明だ。最終確認を望む者はいるか」

 吹雪は、長門の説明が終わっていることに気付いた。

(そっか……、もう……本当に、始まっちゃうんだ……)

 先ほど長門に食いついていた大男も沈黙を貫き、誰も長門に質問をしようとするものはいない。

(殺し合いなんて嫌だ……。でも、提督がそれを望んでいて……)

 なによりも、提督がそのようなことを望んでいることが認めたくなかった。


「…………誰も質問はないようだな。では参加者諸君――」
「おい。一つ聞かせてもらおうか」

 長門がロワイアルの開始を宣言する直前、学ランを着こなした2m近い背丈の少年が問いかけた。

33 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:08:56 ID:1o/8S7rE

「……なんだ?」
「なぜ俺たちが殺しあわねばならん」

 至極尤もな、誰もが考えた疑問。
 高校生とは思えない雰囲気を纏った彼は、その事を長門へ問い質す。

「俺たちが殺しあったところで貴様らにとって見世物以上の価値はねえ。だがてめーらはその手の殺し合いを見て楽しむ屑のようには見えねえ。
 …………何を企てていやがる」

(…………?)

「……その質問に応える義務はない」

 長門が一瞬言葉に詰まった。今まで通りの事務的な返しであったが、確かにその一瞬、長門は何かを思った。

「ここに来て答えれないとはどういうことだ? なんでも思い通りになるんならこのロワイアルとやらは娯楽でしかねーはずだ。
 それともまさか、何か裏があって、俺たちを殺し合わそうとしてるんじゃああるまいな?」

 彼が示した可能性に、再び参加者はざわめき出す。
 すべてを叶えられるはずの主催者に、自分達を戦わさなければならない理由があるかもしれない。
 それはすなわち、ここに来て長門たちの発言に虚偽があるという可能性が出てきたのだ。

「……話はここまでだ。参加者諸君には会場に移動してもらう」
「これだけは言っておく。俺はてめーらのことを何一つ信じていねえ。そして必ずてめーらをぶん殴る!
 精々フラスコの中のネズミと油断して、俺たちに寝首を掻かれないように気をつけることだな」



 そうして参加者すべてが闇に溶けるように姿が霞み、消えていく。
 吹雪はそのことすらどうでもよく感じ、会場内でどうしようかと考えていると――――






「――――随分酷い言いようじゃないか。承太郎」




 まさに会場へ飛ばされるというその瞬間、吹雪たちはまた暗い空間へ呼び戻されていた。

34 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:10:15 ID:1o/8S7rE


「これは……」

 承太郎と呼ばれた青年も何が起きたか理解できていないようであった。
 ただ一つ確かなのは、彼の名を呼んだ親しげな声には、聞いた誰もが底冷えするほどのナニカがあった、ということだけだ。


「やあ参加者諸君。私が今回のバトル・ロワイアルを企画した者だ」

 モニターに目を戻すと長門たちは脇へ移動しており、長門がいた場所へ謎の男が座っている。
 その男は電灯の光に照らされているはずだというのに、なぜか顔の部分が黒く塗りつぶされており表情を窺うことができない。


「このロワイアルを開催されたことに疑問を抱いた者がいるようだが、なんてことはない。私の暇潰しだ。
 提督は私の友人でね、司会進行に部下を寄こしてくれたんだ。
 なので彼女らがロワイアルを楽しんでいないように見えたのは仕方のないことで、何もおかしなことではない」


 穏やかな口調で、暇潰しとしてこの殺し合いを企画したと謎の男は告げる。
 友人としてあの男に協力している――どちらにせよ殺し合いを開いたことに変わりはないが、提督が好んで殺し合いを望んだわけではないという話に、吹雪は僅かだが希望を見出た。
 モニターの男をどうにかすれば提督も考えを変えてくれる。その可能性が出てきたのだ。


「てめーが暇潰しでこの殺し合いを始めたってのか。なるほど、顔は見えないがそういうことを平然とする野郎だということはなんとなくだが感じ取れる!」

 承太郎はモニターを指差し、そして打ち倒すべき宿敵として謎の男へ向けて啖呵を切った。

「何者かは知らねーが、てめーのような邪悪は必ず、この空条承太郎がぶちのめす!」

 承太郎の宣戦布告に対し、子供の戯言をあしらうかのように、一切取り合うことなく謎の男は喋りたいことだけを話し出す。
 

「このバトル・ロワイアルを優勝した者の願いは必ず叶える。約束しよう。それが死者の蘇生であろうとなんであろうとだ。
 私は嘘を吐かない。君達にはそのことを信じてほしい」

 無視されたことに腹を立てた様子はないが、嘘を吐かないというその部分をどうしても信じることができないという風に、承太郎は男へ噛み付いた。

「ふんっ、一体誰がそんなことを信じられる? てめーは胡散臭すぎるぜ!」

35 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:11:50 ID:1o/8S7rE


 承太郎の意見に男は「そうだろうな」と初めて頷くと、嬉しそうな声でその指摘に応じる。

「では、私の言っていることが真実であると証明しよう。
 先ほど司会進行が首輪には爆破機能があると説明したが、君達がそれを信じずに無理に首輪を外そうとして爆死してしまっては喜劇にすらならんからなぁ」
「――! お前ら、急いで俺から離れろっ!」

 男の言葉の意味を理解したのか、承太郎は周りの人間へ急いで離れるように声を荒げた。
 その様子から吹雪も直後に何が起きるか、直感的に理解する。

(え、まさか――!)


 次の瞬間、ポンッ、とコミカルな発破音が生じた。
 一拍を置いて、水音がその後を追う。

 吹雪は承太郎の頭が吹き飛んだところを連想し、悲鳴とともにしゃがみ込んだ。
 周りからも悲鳴があがり、遅れて言葉にならない絶叫。


「て……、てめー…………! なぜ!」

 しかし、吹き飛んだと思った彼の声が吹雪の耳朶を叱咤する。
 そして吹雪が顔を上げれば、首輪を付けたままの承太郎が、眼力だけで相手を殺さんばかりにモニターを睨んでいた。


「…………樹?」
「――なぜっ! 関係ねー奴の首を吹き飛ばしやがったぁあああああっ!?」

 承太郎の怒りから、無関係の人物の首が飛んだことがわかった。
 絶叫が続いている方向を見てみると、中学生くらいであろうか、学生服を着ている頭のない体が血の海に倒れこんでいた。

「樹? ねぇ、樹!? 樹ってば……っ!」
 同じ制服を着た少女が、呆然とした表情のまま壊れたように名前を呼んでいた。
 だがその足が血の溜まりに濡れた途端、繰り返されていた声が一度止まり――次の瞬間、決壊した。
「や……あっ……ああ、ぁああぁああああ、あああああぁああああぁぁぁぁああああああぁぁああぁあああああぁあああああああああああああああああああああああ!!!?」
 死体に抱き縋る少女が狂ったように泣き叫び、その姿を直視できず吹雪は思わず視線を逸らす。

「――このようにっ! 我々主催に反抗的な者や進入禁止エリアに居座った者! 優勝者が出なかった場合は君達全員の首輪が炸裂するっ!
 そうなりたくなければ、是非っ! 存分に殺し合いを楽しんでくれたまえ!」
「答えろてめぇえええええええええええっ!!!!」

 
 愉悦の滲んだ声に怒りを爆発させた承太郎がモニターに向かって駆け出すが、しかし謎の男はやるべきことを終えたのか、再び司会進行役の長門へその席を譲って奥へと消えていく。

36 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:13:13 ID:1o/8S7rE

 謎の男から放送を引き継いだ長門も予定外の参加者の死に動揺を隠せず困惑しているようであったが、一度息を吐いて落ち着きを取り戻すと己の役割を続けた。

「……以上で、説明を終了する」
「待てっ! さっきの野郎を出しやがれ!」

 承太郎の要求に長門は耳を貸さず、どこか決意を秘めた顔をすると「艦隊に告ぐ!」と力強い声で、吹雪や、この場にいる艦娘全員に向けて言葉を発した。

「駆逐艦・吹雪、空母・加賀、戦艦・金剛! 必ず生き残れ! これは秘書艦である私からの命令だ!」

 長門が吹雪たちに下した命令は、達成不可能な物であった。一人しか生き残れない殺し合いの場で、三人に生き残れという命令など実現できるはずがない。
 だが、長門は三人ともにその命令を下した。

 その意味を考えている間に周囲の参加者は再び闇に溶けていき、いよいよバトル・ロワイアルが始まるのだと吹雪は理解する。



「――――何時如何なる時も水雷魂を忘れるな、吹雪」
(っ!? 長門さんっ!!)

 そして――最後に会場へ飛ばされることとなった吹雪は、闇に飲まれるその寸前、長門から付け足されたもう一つの伝達事項を耳にした。
 吹雪にのみ届いたその言葉は、バトル・ロワイアル司会進行役の物ではなく――艦隊の秘書艦である長門からの激励であった。










    ◆◆◆


「途中で些か面倒なこともあったが、無事に始めることができた。
 ありがとう提督。これも君と君の優秀な部下の働きがあってこそだ」

 古ぼけた屋敷の中、DIOは友人である提督に喜びを示した。
 DIOに称讃されたことに提督は感動し、その様子を見て長門は顔をしかめる。

「しかし君達の実直な性格から、危うく計画が露見しそうになった時は冷や冷やさせられたよ」

 そうして楽しそうに語るDIOであったが、おそらく闇に塗りつぶされた顔は笑っていないだろう。

「どうかしたかい、長門? 私の顔に何かついているのかな?」

 DIOに見ていた事が気付かれ、話しかけられる。紳士のような語り口の甘い声であるはずなのに、どこか気持ち悪さを感じさせることができるのはおよそこの男だけであろう。

「いえ、なぜ見せしめとして、犬吠埼樹を処刑したのかと。
 反抗的な者を罰するのであれば、ライダーや空条承太郎がその対象だったのでは?」


 その言葉にDIOは嗤った。顔は確認できないが、確かにこの男は嗤ったと、そう感じ取ることができた。

「あれは勇者どもに対する警告だよ。精霊に守られた勇者であろうとこの場では死ぬ。そのことを理解させるには同じ勇者を見せしめにするしかないだろう。
 ――――それになにより、兄弟姉妹の絆とは素晴らしいものだ。君にも確か姉妹艦がいたはずだが、そうは思わないかい?」

 DIOは首の裏側にある星型の痣をゆっくりと撫でると、自然な風に陸奥のことを聞いてきた。
 この男との会話で陸奥が出たことに激しい嫌悪感を覚えたが、顔に出さないように厳しく己を律する。

37 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:14:13 ID:1o/8S7rE

「つまり、犬吠埼風から負の感情を得るために行った、と……」

 DIOは楽しそうに、大仰な素振りでこちらの意見を肯定する。
『邪神』の力が滲み出たことによってDIOの顔に出来た影も、実に愉快そうに渦を巻く。

「承太郎を虚仮にする目的もあったが、勇者からは期待以上の負の感情を得ることができた。
 この調子であればバトル・ロワイアルが終了する頃には『ゾーク』の力も完全に我が物とすることができるだろう!」







 エジプトで復活した吸血鬼DIO。
 古の地にて、運命のように異世界から飛来した恐るべき力の残滓と引き合ったこの悪の帝王は、新たに宿したその力を完全な物とし、さらなる高みへ至るための贄を欲した。

 すなわち邪神へと捧げられる供物――生命あるものの心に巣食う、負の情念を。

 このバトル・ロワイアルは、DIOが神へと至るための儀式。

 そのために帝王は手にした神の力の一端で時空を超え、生贄である参加者達や、舞台を整える手足として長門達を呼び寄せたのだ。


(提督も、DIOに植え付けられた肉の芽によって吹雪たちまでこの殺し合いに参加させてしまった……)


 このままでは悪の帝王はバトル・ロワイアルという悪趣味極まりない見世物を堪能し、そして悪の神へと進化する。
 

 それを阻止するためにも――――――――



(頼むぞ吹雪。必ず生き残り、そして仲間たちと共にDIOの野望を打ち砕け――!)















【犬吠埼樹@結城友奈は勇者である 死亡】
【残り60人】



『主催』
【長門@艦隊これくしょん -艦これ-】
【提督@艦隊これくしょん -艦これ-】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】

38 ◆7CTbqJqxkE:2015/04/11(土) 15:14:50 ID:1o/8S7rE
OP案投下終了です

39 ◆fMt28iuvso:2015/04/11(土) 17:01:52 ID:7OFa5dJI
OP案投下します。

40 ◆fMt28iuvso:2015/04/11(土) 17:02:59 ID:7OFa5dJI

―――地面が冷たい。
眠りから半分ほど覚醒した、寝ぼけた頭で最初に思った事がそれであった。
いや、その地面の冷たさと硬さによって起こされたといったほうが正確だろうか。
まだ半分ほどしか覚醒していない、ぼんやりした頭を抑えつつ辺りを見回してみる。
ここは巨大なホールのようで、周囲では数十人の人々が自分と同じように体を起き上がらせているところだった。

ふと体に違和感を覚え、自分の体を見てみると、寝間着に着替えて就寝したはずが服装がスーツに変わっている。
今日のアイドル達との初顔合わせの為に新調したスーツだ、いくらプロデューサーとしての初仕事で疲れたからといって着替えずに寝ることなどありえない。

41 ◆fMt28iuvso:2015/04/11(土) 17:03:49 ID:7OFa5dJI

不思議な事の連続に混乱していると、突然ホールの奥に位置する壇上から声が上がった。
自然と声のする方法に目を向ける。

「諸君、目は覚めたようだな。 私は戦艦長門だ、突然だがこれから諸君に重大な任務を与える。
一言も聞き漏らさんよう、心して聞け」

そこには、妙な格好をした女性がマイクに向かって喋っている姿があった。
肩に白いぬいぐるみを乗せている事が、凛々しい姿とのギャップで緊張感がいくらか緩和される。

「諸君に与えられた任務は、最後の一人になるまで殺しあいをすることだ」

42 ◆fMt28iuvso:2015/04/11(土) 17:04:19 ID:7OFa5dJI

―――今、なんと言ったのだろうか? 緊張感どころの話ではない。
聞き間違いかと思ったが、周りの反応を見る限り俺の耳に間違いはなかったようだ。
周囲がざわつく中、一人の少女が壇上の女性に問いかけた。

「長門秘書官! 殺し合いって……一体どういうことですか!?」

「吹雪、私語を慎め。 他の者もだ、騒いだものはこの場で死んでもらうことになるぞ!
詳しい説明はこれから行う、説明は一度しかしないから聞き漏らさないよう注意して聞け」

その女性が説明を言った言葉に、声は静まった。
得体のしれないこの状況に、死ぬかもしれないとあれば黙っているしかない。

43 ◆fMt28iuvso:2015/04/11(土) 17:05:17 ID:7OFa5dJI

「よし、いいだろう、ではルールの説明を行う。
これから諸君は【箱庭】と呼ばれる隔絶された空間でバトルロワイアルと呼ばれる作戦を行ってもらう。
協力者達によって作られた【箱庭】は、いかなる超常的な力でも抜け出すことはできない。ちなみに配置は完全にランダムだ、自分の幸運を祈れ。
それと、一部の者はすでに気がついているようだが、諸君の首には約一名を除き首輪が付けられている。
これには爆弾が仕組んである、先ほど死ぬといったのはこれが爆発するということだ。
また、6時間毎に放送を行う、内容は死亡者の読み上げと禁止エリアの指定だ。
エリア分け等は、【箱庭】移動後に支給されるバッグに入っている地図を参照してくれ。
禁止エリアに入ったり、24時間を過ぎた時点で1人も死亡者が出ていないと、首輪が爆発する。
同じ場所に隠れていたり、仲良く暮らすことは死につながるということだ。
特に後者は全員が死ぬ、連帯責任という奴だ、よく考えて行動しろ。
最後の1人になった者には、この世の理を無視して一度だけどんな願いでも叶える資格を手に入れることができる。
積極的に任務に励んでくれ、説明は以上だ」

――全く意味がわからない。 いや、頭では理解できたが、心では到底理解できない。
これ以上ないほど異常な説明を、まるでレクリエーションでもするかのように淡々と語っていた。
というか、なぜそんなことをしなければならないのかが全く触れられていない、いきなりルールの説明をされてもこちらは唖然とするしかない。
周りの様子を見てみると、今度は巫女服のような物を着た長髪の女性が、壇上の女性に詰め寄った。

44 ◆fMt28iuvso:2015/04/11(土) 17:05:55 ID:7OFa5dJI

「長門秘書官、いくら提督の命令だからといって、納得がいかないまま命を差し出す真似をすることはできません。
詳細な説明をお願いします」

「赤城……そうだな、少し説明してやろう。 この場には艦娘の他にも、様々な才能を持った者達がいる。

純粋に化け物じみた身体能力を持つ者・魔術や魔法を使う物・超能力を持つ者・知略に優れた者・英雄や勇者と呼ばれた者・人を惹きつける魅力を持った者

――等々様々だ。 この異なる多種多様の才能が入り混じる中で、起こる事象には全てに価値があるそうだ。
というのも、協力者達の目的はそれぞれ異なるようでな、宇宙だ、天国だと言っている奴らもいたが、私にはよく知らされていない。
だが、これは我が鎮守府史上最も崇高な命令だということは言っておこう、提督からではなく天皇陛下から直々に承った命令なのだからな、光栄に思え」

45 ◆fMt28iuvso:2015/04/11(土) 17:08:00 ID:7OFa5dJI

「……嘘……でしょ」

巫女服の女性が絶望に俯く、彼女もまた先ほどの少女のように壇上の女性と知り合いのようだ。
それならなぜ俺はこんなところに連れて来られているのだろうか?
――考えないようにしていたが、この中に2,3人俺が務める予定の事務所のアイドルらしき少女たちが混ざっているように思える。
765プロはなにか恨みでも買っているのだろうか?
自分の就職先にひどく後悔を覚えていると、壇上から去ろうとしていた女性が、突然振り向き――

「そうだ、赤城。 先ほど私は私語を慎めと命令しておいたはずだな。
本来であればこの程度では罰さないのだが……命令だ、仕方ない。
我々の意思にそぐわない者はこうなる、覚えておけ」

と言いうと、どこからかカチッとスイッチを押したような音が聞こえ――

ボンッ!―――ゴトリ

小さな爆発音の後、巫女服の女性の首輪が吹き飛び、頭部が地面に鈍い音を響かせた。
体は何の支えもなく倒れ伏し、辺りには血溜まりが出来上がりつつあった。

「―――えっ?」
「あ、あっ、あああ」
「赤城さぁぁぁぁぁああああああああああん!!!!!」

初めて間近で見る死体に気分が悪くなり、女性に駆け寄る少女達の声を聞きながら―――俺は意識を失った。

46 ◆fMt28iuvso:2015/04/11(土) 17:09:15 ID:7OFa5dJI



【赤城@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【残り61人】


『主催』
【長門@艦隊これくしょん -艦これ-】
【キュウべえ@魔法少女まどか☆マギカ】

『協力者』
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】


※DIOが天皇を操ったりなど、裏で暗躍している実質主催者は他にもたくさんいます。
同一世界のアニメ未登場キャラを出していいか迷ったので、無難なOPですが、他の書き手の方によって主催者側の人物を増やして貰いたいです。
※参加者には伏せていますが、キュウべえが宇宙のエネルギー回収の効率化を図っていたら、多次元宇宙もしくは平行世界を見つけ、魔力等で宇宙のエネルギーを補う計画を立てているところに主催者達が興味を持って協力し始めたということにしています。

47 ◆fMt28iuvso:2015/04/11(土) 17:09:54 ID:7OFa5dJI
OP案投下終了です。

48 ◆qB2O9LoFeA:2015/04/12(日) 01:10:14 ID:1wocvqsE
ではOPを投下します

49メーデー ◆qB2O9LoFeA:2015/04/12(日) 01:11:28 ID:1wocvqsE



『■■■■、■■■■、■■■‥‥』


 耳障りな雑音が響く。


『■ー■ー、■ー■ー、■ー■ー‥‥』


 ノイズ混じりの音声通信。それが衛宮切嗣の意識を覚醒させた。


『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■』


(ここはいったい‥‥)

 まだはっきりしない頭で周囲を見渡そうとする。だが、動かない。首が何かに固定されているのだ。よく神経を張れば、椅子に座らされて両手両足が拘束され、胴体には圧迫感がある。そして妙な浮遊感。

(落ちている、のか‥‥?)

 微かな揺れとシートベルトのような胸部と腹部の感覚からそう判断する。やがて、ごく小さい音と衝撃とともにそれらの感覚と拘束が無くなった。

「うっ‥‥!」

 慎重に立ち上がろうとしたものの、立ちくらみのような頭痛に襲われ再び席に着いた。と、同時に首にだけ違和感があることに気づく。どういうわけか、首の戒めだけ首輪という形で体から離れないようだ。強引に引っ張ると『ミシり』と音がしたのでひとまずそれ以上手を出さないことにした。


『‥‥デー、メーデー、メー‥‥』


 どうやら、自分は球状の小部屋のようなものにいるらしい。切嗣はおそるおそる手を伸ばしてそう判断すると自分の足元になにかあることに気がついた。
 大きさと形からしてデイパックだろうか。手探りでジッパーを開けると僅かに光点が見える。電子的なその光から通信機器の類いのものだと判断すると、その板のようなそれを取り出した。


『メーデー、メーデー、メーデー、こちらは防災試験センター、 防災試験センター、防災試験センター。 メーデー、防災試験センター。位置 は■■島。島全土が放射性物質に汚染されていてセンターから出られない。電子回路も破壊されている。すぐに救助を。センターには現在1名。メーデー、防災試験センター。オーバー。』

50メーデー ◆qB2O9LoFeA:2015/04/12(日) 01:13:18 ID:1wocvqsE


 デイパックから取り出したことでいくらか音声がクリアになる。どうやら声の主は若い女のようだ。切嗣は、その内容をいぶかしんだ。

 パアッと、突然板が青白い光を発する。驚ろきと眩しさで取り落としかけるのを堪えると、その板、いわゆるタブレットにはワープロのようなものが表示されていた。


『メーデー、メーデー、メーデー、こちらは防災試験センター、 防災試験センター、防災試験センター。 メーデー、防災試験センター。位置 は■■島。島全土が放射性物質に汚染されていてセンターから出られない。電子回路も破壊されている。すぐに救助を。センターには現在1名。メーデー、防災試験センター。オー バー』


「音声を文字として出力するのか‥‥」
 呟きながら、文字に目を通す。まだはっきりしない頭には、早口な通信よりも文字で起こされたほうがありがたかった。もっとも、すぐにその内容に困惑することになるのだが。

(放射性物質に汚染?電子回路が使えない?核でも落ちたのか?)

 そこに書かれた通信内容が、あまりにも切嗣の人生とは無縁のものだったからだ。
 確かに、一部の紛争地帯では劣化ウラン弾などの広義の意味での核兵器が使われることはある。だが、通信はまるで核戦争でも起きたかのようなことを言っている。これらは切嗣の知らない謎の機械と相まって次々と疑問符を生んでいた。

(通信に答えるか‥‥いや、迂闊な行動はよそう。それに、この機械にはマイクらしきものがない。)
『ん?!生存者がいるのか!返事をしてくれ!もっとはっきりゆっくり!』
(!バレたか?)

 切嗣は思わず身を固くする。

『‥‥駄目か‥‥やはり、この放射線では通信は無理か‥‥いや、一応言っておく。もしかしたら、ラジオかなにかで聞いてる者がいるかもしないからな。』

 どうやらバレたわけではないらしい。安堵のため息を吐いた切嗣をよそに、通信は続く。

51メーデー ◆qB2O9LoFeA:2015/04/12(日) 01:17:15 ID:1wocvqsE

『こちらは、防災試験センター。現在この島は非常に高い放射線の影響下にある。そのため、通信ができるのはアンテナから1kmの範囲内でしかない。』

『この通信が聞こえるということは、首輪が起動している生存者だろう。現在こちらでは、約60の首輪の起動を確認している。その首輪は、生きている者が着けると特殊な力場によりある程度の放射線に耐えられるようになっている。』

『もっとも、その機能はアンテナから1km以内でないと使えないようだ。アンテナから発信されるエネルギーをそれ以上は受信できないようだな。くれぐれもその首輪を外さないでくれ。その首輪が機能しなくなれば、一時間と経たずに放射性障害で死ぬだろう。』

『今その首輪のエネルギーは、全員できっかり24時間分ある。今日の2350から、防災試験センターのゲートを開けるのでその間に入ってくれ。ただ、2350までセンターの周囲1kmに入らないでくれ。センターのアンテナは島の各部のアンテナにエネルギーを供給している。出力が通常のものより強いので、首輪が耐えられずに爆発する可能性があるようだ。気をつけてくれ。』

『それと、島の各所にあるアンテナには核爆弾が仕掛けられているようだ。起爆と同時に中性子を発する。範囲は1kmと狭いが、首輪では防ぎきれないうえに首輪そのものを破壊してしまう。なにかのひょうしに暴発させてしまう可能性もあるので、なるべくアンテナには近づかないようにしてくれ。』

『核爆弾の起爆の順番と時間は■■■■■、また通信が‥‥また六時間後に■■■■■。詳細は、回線から島の電子機器に送っておく。地図なども添付するので参考にしてくれ。それと機器には名前をつけておいてもらえると助かる。■■■■■■■■■■■■いいな、2350に島の中央の防災試験センターに来てくれ。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■』

52メーデー ◆qB2O9LoFeA:2015/04/12(日) 01:23:20 ID:1wocvqsE


 耳障りなノイズと画面の文字化けを残して通信は途絶えた。その内容を吟味しようとして、切嗣はまた眩しさに目をとられる。ゆっくりと四角い光が拡がっていき、それが飛行機のハッチのようなものだとわかると外を伺う。

(‥‥どうやら、そうとう面倒なことになったみたいだね。)


 それは虫だった。
 一匹や二匹ではない。何匹かの虫がひっくり反っていた。

 離れたところ見る。一羽のカラスが落ちている。少し離れたところだが、外傷はないように見えた。

 後ろを振り返る。自分が入っていたのは無骨な金属製の球体だったようだ。さきほどデイパックのようだと思ったものは予想どうりデイパックだったが、オレンジ色に反射材の持ち手なのを見ると非常用の物なのだろう。中には非常食や水やメタルマッチなどに方位磁針などが入っていた。それと内容物のリストもあったが、なぜかいくつかリストに無いものもある。そのことに違和感を覚えていると。手が振動を感じた。

(バイブレーション機能か。)

 手に持っていた板、タブレットを見る。画面を何気なく触ると、ワープロ画面は消え、いくつかのアイコンのある画面が出てきた。そのうちの『New!』とあるアイコンをタッチすると地図などが記されたpdfファイルが開かれた。

(なるほど、島の端から起爆していくのか。しかし、なぜこんな情報が載ってるんだ。それに、この板じたいも随分と先進的だ。)

 扱い方に困りながらページをなんとかめくっていく。その手が一つのページで止まった。

(この仕様を見ると、複数首輪を着けても一つしか首輪は作動しないのか。まて、作動していない方の首輪は、エネルギーを溜めておける?。これだと、24時間が過ぎたときに生き残るためには‥‥)



 アアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ‥‥

 どこからかサイレンが鳴り響く。タブレットの隅には『00:00』と表示されていた。

「━━まずは、この球をもう一度確認しよう。」
 切嗣はタブレットをデイパックにしまうと球体の内側をあらためる。

53メーデー ◆qB2O9LoFeA:2015/04/12(日) 01:29:01 ID:1wocvqsE



 生けるものは約60名。死地と化した孤島で、誰も『殺し合え』などとは言わない。
 それでも、戦いを広めようという悪意は既に動き出した。

 そして、その悪意は。

「‥‥な、なぜ‥‥」

 防災試験センター。核攻撃にも耐えられる巨大なその建物の一室で、一人の少女がコンソールに突っ伏している。
 目や鼻や口から血を吐きながら、必死に手を伸ばし。

「‥‥これも‥‥なにか考えが、あっての‥‥そうか!私がこの役目になったのは‥‥」

 誰に看取られることもなく、悲しみと絶望で凝り固まった鬼の形相で、その少女は息することをやめた。


 コンソールだけが、目に悪い光で彼女を照らしていた。

54メーデー ◆qB2O9LoFeA:2015/04/12(日) 01:47:35 ID:1wocvqsE



【???@???????? 死亡】

【主催、後援】
不明。



※首輪が外れる、首輪が機能しなくなる、首輪にエネルギーを送るアンテナがなんらかの事情で働かなくなるとあらゆる生物は一時間以内に放射性障害で死亡します。また電子機器も高い放射線により確実に破壊されます。
※2Lの水と三食分の非常食、メタルマッチ、方位磁針、タブレット、ホイッスル、左記の共通支給品が書かれたリスト、デイパック内に入る範囲のランダム支給品1~3が入っています。共通支給品だけで最低でもデイパックは4kgあります。またデイパックの推奨される耐荷重は12kgです。
※タブレットには島の詳細な地図やその他の情報、また核爆弾の起爆時間などがpdfとしてまとめられています。核爆弾は1時間に一発ずつ起爆します。
※会場内のものは防災試験センターなどの地下にあるもの以外全て放射線による汚染を受けています。
※放射線の影響であらゆるものが著しい減衰を受けます。
※放射線の影響で無線は1km以上通じません。
※首輪が放射線の影響を押さえられるのは首輪の半径3m以内です。

55 ◆qB2O9LoFeA:2015/04/12(日) 01:48:05 ID:1wocvqsE
以上で投下終了です。

56 ◆kdN026sJVA:2015/04/12(日) 08:17:28 ID:nEDsb4nI
OP案を投下します

57 ◆kdN026sJVA:2015/04/12(日) 08:18:05 ID:nEDsb4nI
目を覚ますとそこは真っ暗闇だった。
動こうにも微動だに出来ない。
薬などにより身体の自由を奪われたのではない。
物理的にここは狭すぎた。
おあつらえ向きに肩幅いっぱいである。目の前にも壁?いや板のようなものがある。
ふとその目の前の板に光がともる。
否、パネル、モニターであろう。
どうやらどこぞの動画サイトであるらしく、残り分数とシークバーが下部に表示されている。
モニターいっぱいに5秒前4秒前とカウントダウンされ、そして始まった。

画面には男が映っている。
おそらくはアジア系であろう。簡素で機能的な作業服に身を包んでいる。
見る者が見ればそれが囚人服であろうことに見当がつくかもしれない。
頬はこけ、目の下にクマを作り、水もろくに飲んでいないであろう干からびた唇で男は喋りだす。

「ようこそ『参加者』の諸君。これから君たちには殺し合いをしてもらう」

抑揚もなく無感情に。いや顔に浮かぶのは諦観であろうか。
そして時々下に目を移す。なにかを読み上げているようだ。

「この動画が終了したとき…つまり午前0時、24:00が『ゲーム』の始まりだ。以降君たちは最後の一人になるまで殺しあってもらう。
 生き残った者が『優勝者』となる。『優勝者』にはそのままご自宅に至るまでの移動手段ならびに命の保証をしよう。
 途中で棄権することはできない。『優勝者』が出るまで『ゲーム』は続行する」

男は淡々と続ける。

「君たちの居る、その棺の中に背嚢がある事を確認してほしい。
 その中には二日分の食料と水、懐中電灯に筆記用具、『参加者』名簿に『会場』全体を示した地図、他に3つの『ランダム支給品』も入れてある。
 それは武器であったり防具であったり道具であったり、何の役にも立たないものもある。
 各自『ゲーム』開始後に確認しておくことを勧める」

58 ◆kdN026sJVA:2015/04/12(日) 08:18:39 ID:nEDsb4nI
「6時間ごとに放送をかけ、『ゲーム』の『脱落者』を一度だけ読み上げる。
 6時間『脱落者』が出なかった場合、参加者の中から無作為に1名を『脱落者』とする」

そこで男は自らの首にかけられた金属製の物体を指さす。

「放送終了後、即座に『脱落者』の『首輪』が爆発する。どう手段を講じようと回避するすべはない。
 『首輪』の爆発は『首輪』を故意に外そうとした場合、『会場』の範囲外に出てしまった場合も発生する。
 地図に描かれているのが『会場』の範囲となる。
 また、放送では『立ち入り禁止エリア』の発表もする。発表された区域は放送終了後2時間で『会場』の範囲外と同じ扱いになる。
 すなわち、『立ち入り禁止エリア』に一歩踏み入った時点で『首輪』が爆発する、ということだ」

男は顔を上げる。

「以上。質問事項などあるものは『会場』の各所にある郵便箱に質問を書き込んだ紙などを投函すること。
 放送で答える事もあるだろう」

誰かの笑い声が漏れ聞こえる。
銃声が鳴る。
笑い声は消えた。

その間、男は身動き一つ表情一つ変えなかった。
カメラが引き、パイプ椅子に座った男の全身が映る。
膝の上に置かれた書類、そして、その上に置かれた手には何本かの指が無かった。
残った指にも爪はなくなっている。何か細い物体が爪の間に差し込まれた形跡もある。

「これで説明を終える。
 動画の終了をもって『ゲーム』の始まりとする」

動画の残り分数もわずかとなった。
男の肩が震え、書類を握る手も大きく揺れる。

59 ◆kdN026sJVA:2015/04/12(日) 08:19:24 ID:nEDsb4nI
「私はこんなモノの為に君たちを選出したわけではなかった。
 すまない。
 いや、君たちには謝っても謝り切れない事を私はしてしまった。
 君たちは未来を切り開く力がある。運命を変える力がある。
 そう見込んで私は君たちを選出した。
 それがこんなことになるだなんて、思いもしなかった。
 だってそうだろう! わざわざ君たちを集めて、こんな事をするだなんて誰だって考え付かない!
 殺し合いだと?! 馬鹿げてる!」

男からは冷静さが完全に失われた。

「吹雪、吹雪!愛している!!
 そしてすまない! せめて君だけでも生き残ってくれ!
 そして未来を変えてくれ! 頼む!
 こんな馬鹿げたことを、そしてこんなことを考える奴らを許してはならない!
 生き残って、そして必ずや連中を…」

そこで男の首から上が消し飛んだ。
画面に血が飛び散り、首のない身体が前のめりに倒れる。
モニターがブラックアウトし、文字が浮かぶ。

***

 追記
『主催』に反抗する旨が明白となった者は、任意で『脱落者』とする 

***

残り3秒。2秒。1秒。
【バトルロワイヤル開始】

60 ◆kdN026sJVA:2015/04/12(日) 08:20:58 ID:nEDsb4nI
【提督@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】

主催:不明

※参加者が装着している首輪が爆発した場合、どのような特性があろうと、その首輪を装着している参加者は死亡します。
※動画終了まで参加者は自らの棺から出ることは一切出来ません。
※動画終了まで自らの棺の内部から外部に向かって攻撃・通信なども不可能です。
※6時間おきの放送において主催側は参加者からの質問事項に答えたり答えなかったりします。

※背嚢(ディパック)には筆記用具と会場全体を記した地図、参加者の名前を記した名簿、 2日分の食料と水、3つのランダム支給品が入っています。
※会場内で主催側から死亡したと判断された者は『脱落者』と認定されます。

※ゲーム開始から6時間ごとに放送がかかります。
※放送では『脱落者』の読み上げと、立ち入り禁止エリアの発表、稀に質疑応答がなされます。
※放送と放送の間の6時間に一人も『脱落者』が出なかった場合、参加者の中で生存している者の中から主催側が無作為に一人を選出し『脱落者』とします。
※『脱落者』の首輪は放送終了後に爆発します。一度爆発した首輪は跡形もなく消滅し、2度と爆発することはありません。

※首輪は主催側が任意で即座に爆発させることができます。
※首輪は会場の範囲外に出た場合も自動的に爆発します(多少の時間差はあります)。
※立ち入り禁止エリアは放送で発表された2時間後に会場の範囲外になります。

61 ◆kdN026sJVA:2015/04/12(日) 08:21:28 ID:nEDsb4nI
以上です

62名無しさん:2015/04/14(火) 01:30:31 ID:x7IyoVag
とりあえず地図が完成したので投下するのはここでいいのかな?
ttp://www22.atpages.jp/gcamkg/tizu.png

63名無しさん:2015/04/14(火) 01:51:55 ID:aIuM6vRA
地図来た!乙です!

64名無しさん:2015/04/14(火) 06:08:23 ID:QzXTCLZg
折角なので地図をつくってみました
フレーバー的なので見辛いかもしれませんが…
ttp://download1.getuploader.com/g/spark/170/ANI4MAP.jpg
青文字が大体の地形、黒文字が施設名です

65名無しさん:2015/04/14(火) 06:41:03 ID:QzXTCLZg
すいません、誤字を見つけたので修正しました
ttp://dl1.getuploader.com/g/spark/171/ANI4MAP.jpg

66 ◆nCGiUVaSaU:2015/04/14(火) 23:28:02 ID:DU5opMG2
みなさんOP&地図投下乙です
私もOP案を投下します

67第一回 バトルロワイヤル実験 ◆nCGiUVaSaU:2015/04/14(火) 23:28:52 ID:DU5opMG2








・『第一回 多世界異能力者の戦闘力実験』
・『第一回 閉鎖空間作成実験』
・『第一回 極限状況における人間の倫理観測定実験』
・『第一回 異能力制御実験』
・『第一回 新技術実用性実験』
・『第一回――――
・『第一回――――
・『第一回――――
・『第一回――――
・『第一回――――
・『第一回――――
・『第一回――――






以降、これらの実験全てを統合し『第一回 バトルロワイヤル実験』と呼称するものとする。

68第一回 バトルロワイヤル実験 ◆nCGiUVaSaU:2015/04/14(火) 23:29:42 ID:DU5opMG2

『第一回 バトルロワイヤル実験 オープニング 報告』

司会進行 岸谷 森厳
記録 矢霧 波江



『1 テーマ説明』

※司会進行役たっての希望のため、一部台詞を抜粋。
 今後の計画におけるマニュアルになればとのこと。

森厳(以下、Sと呼称)「おはよう諸君!」


S、大部屋に設置されたモニター越しに今実験の参加者とコンタクトをとる。
概ね参加者の意識がモニターに向いたことを確認。説明に移る。


S「早速だが、これから君たちには殺し合いをしてもらう!」


実験のテーマを説明。
様々な実験を同時に行うため、閉鎖空間内における殺し合いを行ってもらう旨を説明する。
また、我がネブラ社が開発に成功した異世界転移装置の説明も同時に行う。


S「私たちはこの装置の発明、そして他世界の技術を取り入れた超技術発展により人知を超えた力を手に入れた。
もはや、この程度の実験を行うことに何の躊躇いも持たぬほどにね!」


ネブラがもはや1企業の枠を超えた力を手に入れたことを説明。
力の差を誇示し、参加者に対して実験の承諾を要求。


『2 見せしめ爆破』


しかし、多数の参加者に否定される。
場の空気も悪く、このままでは満足のいく実験が行えない可能性が浮上した。
よってプランBを発動。
首輪の説明も兼ね、2人の見せしめを以て反抗の意志を削ぐことと相成った。
なお、この時の見せしめは62番ジョセフ・ジョースターと63番秋本・カトリーヌ・麗子。
指定の理由としては、特に反抗的な態度を取ると予想されていた1番空条承太郎と7番両津勘吉への制裁。
また、老人や女性でも容赦しないという意志を見せ、参加者に我々の本気度を提示するためである。


S「……さて、少しは話を聞いてくれる気になってくれたのならば嬉しいのだが……。
私たちとて貴重な実験材料……おっと失礼、参加者をこれ以上減らしたくはないのでね」

69第一回 バトルロワイヤル実験 ◆nCGiUVaSaU:2015/04/14(火) 23:30:50 ID:DU5opMG2

『3 ルール説明』

改めて参加者へ詳しいルールの説明を行う。

実験終了条件は『参加者が残り一人になること』もしくは『当社の求める実験結果が得られた場合』


S「そう、何も最後の一人になるまで殺し合えというわけではない」


S「私たちが君たちに求めているのは戦闘データや極限状態における行動、心理状態。
満足のいくデータが得られた場合、君たちの解放を約束しよう。
ついでに異能力の制御実験や新技術の実用性実験が成功すれば更に良しだがね」


S「言い忘れていたが、今回の実験においては君たちの持つ力に制限をかけさせてもらった。
いつもよりも力が出ない。本来は見えないはずのものが見える。死なないはずの身体が死滅する。ギャグ補正が通用しない。
私たちにもどこまで制御できているかは定かでないが、この殺し合いをある程度は平等に進められるように実験ごほんごほん努力させてもらった」


S「また、逆に私たちの新技術を生かした面白い支給品もあるぞ!
戦う力のないものでも、それを使えば超人相手に大金星の可能性ありだ!」


S、参加者の反応を窺うが彼の期待していたものは得られなかった模様。
咳払いをしながら他項目の説明に移る。


参加者に配られる共通支給品(地図、筆記用具、名簿、食料と水)、ランダム支給品(1~3)の説明。
6時間ごとに行われる放送内容。並びに禁止エリアについて説明を行う。


最後に褒賞の説明を行う。


三人殺した参加者は、首輪に申告すれば会場内にて褒賞を与える。
追加支給品(ある程度は自由が効く)、他参加者の情報、治癒の三つの中から選択可能。


実験終了まで生き残った参加者は貢献度に合わせて最終褒賞を与えるものとする。
最も貢献した参加者には万能の願望器、聖杯を進呈。
他貢献者にもそれ相応の褒賞を与えることとする。


S「信じられないかね?その気持ちは分かる、大いに分かるぞ諸君!」


S「だが、逆に考えてもみたまえ。ここまで大規模な実験を行える私たちが、その程度の褒美も与えられないと思っているのか?と」


S「安心したまえ、安心して殺し合いたまえ。
力を用いて生き残りたまえ。
頭を使って生き残りたまえ。
強者を利用しろ。
弱者を踏みつぶせ。
……その先にきっと、君たちの求める希望がある※」


S「私から言えることは、それだけだ※」


※は岸谷森厳本人により後日削除済み

70第一回 バトルロワイヤル実験 ◆nCGiUVaSaU:2015/04/14(火) 23:31:32 ID:DU5opMG2


『4 参加者移動』


異世界転移装置を用いて参加者を会場へ転移。


なお、これまでの各参加者の反応は別紙レポートにて提出する。
D、T、他協力者に対しての報告も順次行うこととする。


以上。




それでは、これより『第一回 バトルロワイヤル実験』を開始する。

71 ◆nCGiUVaSaU:2015/04/14(火) 23:32:16 ID:DU5opMG2
投下終了です

72 ◆EAG5DsvliU:2015/04/16(木) 05:16:22 ID:ihv9CmkY
投下します

73 ◆EAG5DsvliU:2015/04/16(木) 05:17:52 ID:ihv9CmkY
誰一人として、この場が何処か分からなかった。
突如として意識を失い、気づけばこのような何もない場所へと連れてこられた。
それが、この場に居る者たちの共通の認識だった。

「お前達には殺し合いをして貰う」

それは女性の声だった。
声の主を探すと、その主は壇上の上に居る。
その女性が纏う、露出度の高いコスプレ染みた衣装。
だが衣装とは別にそのスタイルは非常に女性らしく整っている。
世の男達から見れば、非常に魅力的に見えることだろう。その台詞に目を瞑るのであれば。

「は、ハラショー」
「そんな長門さん、どうして!?」
「吹雪、静かにしろ。これは提督からの命令だ!」
「嘘……」

金髪の女子高生は堪らず言葉を漏らし、吹雪と呼ばれた黒髪の少女は提督という名を聞いた瞬間、火が消えたかのように黙り込む。
長門はそんな二人を一瞥しながら壇上から淡々と言葉を紡いでいく。

「今から、別の島にお前達を移動させる。その島に着いた瞬間から殺し合いの開始だ。
 殺しは何でも良い。方法は問わない。最後まで生き残った一人が優勝者だ」
「おい、主催者さんよぉ」

長門の説明を遮り、銀髪を逆立てた褐色肌の男が顔面に血管を浮かべながら口を挟む。 

「殺し合う。そいつはいいぜぇ? 血生臭いデスゲームは嫌いじゃねぇ。
 頼まれなくたって、俺が全員闇に葬ってやるよ。
 ……だが、俺の千年ロッドがないのはどういうことだ?」
「それを含め、説明の途中だ。黙って話を聞け」
「チッ」

「この男の言うとおり、お前達の所持品…というより武器は一時的に没収させてもらった。
 これらの武器は、お前達に支給品として配布する。
 殺し合いの島に着いた時、お前達のそばに必ず一つのディバックが落ちている筈だ。
 その中に食料、水、地図、コンパス、殺し合いのルールブックなどの基本支給品とランダムで1つ、多くて3つまで支給品を入れておく。
 運がよければ、その中にお前達の武器が入っているかもしれない。だが外れの支給品もある。こればかりは運だ。
 ただし、性質上どうしても外せない武器はお前達に直接配布という形で没収はしない。
 だがそれらは支給品一つ分としてカウントしディバックに入っている支給品は2つから最低0だ」

男は説明を聞きながら納得しない素振りを見せ、何かまた苦言をもらそうとした時、また別の男が大声を張り上げた。

「ふざけるな! 殺し合えと言われて殺し合う馬鹿が何処に居るー!!」

青い制服――警察官のものだろう――を着た小柄の親父が長門の食い入るように叫ぶ。

「もちろんタダでとは言わん。優勝したものには何でも願いを叶えてやる」
「何ィ!? 口からでまかせ言いやがって、ドラゴンボールでも集めてんのか!? だったら金を寄越せ!」
「そんなものはないが。……そうだな前金として一億ほど出してやろう」

言うが早いか、突如現れた少女がアタッシュケースを運び長門に手渡す。
長門はそのアタッシュケースを開けその親父に中身を見せつけた。

「か、金だ……本物の……」

親父は長門からアタッシュケースを引ったくり札束を数え始めた。
もちろん偽札である可能性も考慮に入れ確認は怠らない。

「このように叶えられない願いはない。何だって叶えてやる」
「な、ならもっと金が欲しいと言えば……」
「叶えてやる」
「よし! やってやるぞ!!」

アタッシュケースを大事そうに抱えながら親父はガッツポーズを決める。
その目は完全に\。
絵に描いたような金の亡者だ。

74 ◆EAG5DsvliU:2015/04/16(木) 05:18:42 ID:ihv9CmkY

「バッカモーーーン!!! 両津!!!」
「げえ!? 部長ォ!!?」

両津と呼んだ男と同じ制服を着たちょび髭親父が、何処からともなくロケットランチャーとマシンガンを持ち出し飛び出してくる。
そのままトリガーを引き、両津へと鉛弾をぶっ放す。だが両津も人間離れした神回避で逃げていく。
こうして、某派出所ではお馴染みの鬼ごっこが始まろうとしたところで、二人の姿が一瞬にして消えた。

「あの二人は説明の邪魔になるので先に島に送らせてもらった」

ざわついていた群集が静まり返る。
誰かしら、少なからず目の前で起きた現象に目を奪われた。

「さて、気づいている者も少なくないだろうが、お前達には首輪をつけさせて貰った。
 これはある一定条件を満たすと爆発する。
 一つは禁止エリアに入ること。禁止エリアは6時間ごとに放送を流しそこで指定する。それまでの死亡者の名前も流すので聞き逃すな。
 二つ、我々に従わない者は問答無用で首輪を爆発させる。このようにな」

軽い爆発音と共に一つの頭が弾け飛んだ。

「こ、ことりちゃん……?」
「う、うそ」
「いやああああああ!!」
「ハラショー……」

ことりと呼ばれた少女の首から上は無くなっていた。
変わりに赤い血と肉片の残骸、その肉片と一緒に悪臭を醸し出しながら、ところどころ焼き焦げた髪の毛が無残に散らばっている。
生前は目を引くような美少女であったであろう顔は、今はただの趣味の悪い見世物にしかならない。

「分かったな。お前達の命は私が握っている。
 下手に逆らおうとは考えないことだ」

長門とことりの死体以外、この場にいる全ての者達の体が透けていく。
この現象は前にも起こった。あの両津と部長を一瞬にして消したものだ。
そのことから、彼らは薄々これから殺し合いが始まるのだろうと理解し、この場から姿を消し去った。




【南ことり@ラブライブ! 死亡】


【主催】

【長門@艦隊これくしょん -艦これ-】
【提督@艦隊これくしょん -艦これ-】


※両津勘吉と大原大次郎は首輪、禁止エリア、放送についてのルール。及び見せしめを見ていません。
※両津勘吉は一億円の入ったアタッシュケースを持ったまま島に送られました。
※大原大次郎のロケットランチャーとマシンガンは島に送られた際に没収されました。

75 ◆EAG5DsvliU:2015/04/16(木) 05:19:19 ID:ihv9CmkY
投下終わりです

76 ◆777Wt6LHaA:2015/04/16(木) 14:11:11 ID:wO4TF4PI
地図投下します
ttp://download4.getuploader.com/g/spark/172/ani4cizu.jpg
青線はモノレールです

77名無しさん:2015/04/17(金) 02:02:40 ID:IptqtqDI
MAP案を投下します
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org268691.png

78 ◆a1H5ynvB6A:2015/04/17(金) 18:55:42 ID:fRipwHbk
OP案投下します

79 ◆a1H5ynvB6A:2015/04/17(金) 18:57:01 ID:fRipwHbk
「突然だが今から君達にはゲームをしてもらおう」

全体的に薄暗いホールの前方にある壇上。
そこにだけスポットライトが浴びせられていて、白髪頭の初老の男はそう告げた。
そしてホールに集った者達は皆一様に唐突に投げかけられた言葉を理解しようとしていた。

(ついに始まるか、正真正銘のデスゲーム――殺し合いが……)

ただその中の一人、大田宗一郎は今から行われるゲームの内容について知っていた。
なぜ元海馬コーポレーションの重役ビッグ5の一人であるビッグ4の大田がそれを知っているのか。
それは大田がある目的からこのデスゲームを開催した主催者に協力しているからだ。

「君達にはこれから外界から孤絶された会場で最期の一人になるまで殺し合いをしてもらう、つまりはデスゲームだ」

ある種のざわめきを除けば、現在皆の不安で満ちたホールには先程から壇上の男の声しか響いていない。
そもそもここにいる参加者として集められた者達はついさっき多少の時間差はあるものの意識が戻ったばかりだ。
そのため現状を理解できずに戸惑って、現状を飲み込めず迂闊に口を開く事が出来ないのかもしれない。
だがそれにしてもいきなり理不尽なゲームに無理やり参加させられるところなのだ。
罵声や怒号の一つや二つ上がっても不思議ではないが、奇妙な事に誰からもそういった発言は出てこない。
それどころか皆一様にその場に突っ立ったまま壇上の男の話を聞いている。
異常な事に誰も動かず誰も喋りもしない。
だがその理由を知っている大田にとってはこの状況はただ単に想定されたものだった。
もっとも担当外の分野なので詳しくは知らないのだが。

「では詳しくルールの説明をしておこう。
 まずこのデスゲームだが、警視庁はもちろんスピードワゴン財団、聖堂教会、インキュベーター、765プロダクション、月峰神社、ダラーズ、大赦、ラブライブ!運営本部、鎮守府、共生の協力で開催される。
 また警視総監である私自ら説明している事からも、このデスゲームの重大さを実感してもらいたい。
 次に君達をそのまま殺し合わせるのは実力差から不都合があるので、こちらの方で多少手を加えさせてもらった。
 その代わり君達にはこのデイパックが支給される。
 この中には水や食料など様々なものが入っている、それこそデスゲームを有利に進められるような武器などのようなものもだ。
 そして君達に装着されている首輪についてだが――」

その瞬間、場の空気が一瞬緊迫した。
まるで歴戦の騎士の気迫に当てられたかのように。

「――ッ、このような令呪で私がいつまでも縛ら」

だがそれはすぐに霧散した。
今しがた壇上以外で初めて声を上げた高潔な騎士王の首と胴体が分かたれると共に。
そして次いでもう一つ首が飛び、無情にも説明は続けられた。

「では説明を続けよう。
 この首輪の前では誰もが平等に死ぬ事となる。
 今目にした通り、この中でも指折りの実力者であるセイバーでも、不死の吸血鬼であるDIOでも変わらない。
 その事を心に留めておいてほしい。
 この首輪が作動する条件は二つ。
 まずデスゲームを著しく妨害する行為を取った場合。
 次に開始から6時間ごとに行われる定期放送で指定されたエリアに入った場合。
 またその定期放送時にはそれまでの6時間で死んだ者も告げる事になる」
(早合点だったな、セイバー。
 これはお前たちの知っている令呪ではない。
 それにしても効果が弱まってセイバーが動くタイミングは予定通りだった。
 首輪の仕上がりは想定通りといったところか)

これこそデスゲーム開催にあたって大田が協力したもの、つまり首輪だ。
軍需産業時代の海馬コーポレーション兵器製造工場の元工場長として「工場の鬼軍曹」と呼ばれていた彼には様々な兵器に関するノウハウがあった。
それを今回の首輪開発に提供したのだ。
そしてそれはここまでほぼ予定通りの結果をもたらしていた。

80 ◆a1H5ynvB6A:2015/04/17(金) 18:58:06 ID:fRipwHbk
「最後にこのデスゲームで最期の一人となった者にはどんな願いでも叶える事を約束しよう。
 先程述べたように様々な組織が協力している私達ならばそれが可能だ」

このホールに集められた者達はデスゲームに参加するという手段を経て最期の一人という目的を達成しなければならない。
一方の大田もある意味では似たような立場にあると言える。
なにしろ大田が目的を達成するためには、この首輪が正常に作動する事が必要条件だったからだ。
そのためにわざわざ参加者の中に紛れて首輪の最終チェックを見届けているのだ。
他の参加者に手を出されないと知っていたが、それでも不安はあった。
だがそれももう終わりだ。
大田の見たところデスゲームのオープニングセレモニー的なイベントは予定通り滞りなく進められていた。
あとはある程度の経過を見守ったところで目的の報酬は与えられる事になっている。

「ではこれよりデスゲームを開始する。君達の健闘に期待している」

その言葉と共にホールにいた者の姿が一人また一人と消えていった。
大田はそれがデスゲームの会場に参加者が送られているためだと知っている。
そして同時にそれはデスゲームの本格的な開始を意味していた。

(それにしても協力組織に聞き覚えのないものがいくつかあったが……)

大田の知らないところで協力を申し出てきたのか、または参加者を殺し合いに仕向けるためのブラフか。
その真相がどこにあるのか太田は知らない。
だが今は目の前にまで迫った目的達成の瞬間が待ち遠しい。
そのために大田はこれまで苦労を重ねて――。

ボンッ

次の瞬間、壇上の警視総監が見守る中、ホールに響く虚しい爆発音と共に大田の首が宙を舞った。
次いで力を失った身体が床に倒れ込み、程なくして首が鈍い音を鳴らして落下した。
自分の死に関して何故という疑問を抱く暇さえなかった。
ただ死ぬ直前、ふとした拍子に見た光景が頭に残っていた。

(あれは、確かに……笑って……)

それは首輪の力を見せつけるために見せしめとして胴体から離れた生首。
不老不死の吸血鬼である悪のカリスマ、DIO。
その生首に張り付いた表情はまるでまだ生きているかのように笑っていた。
少なくとも大田にはそう見えて仕方なかった。

【バトル・ロワイアル 開始】
【残り61人】

【主催・進行】
【警視総監@こちら葛飾区亀有公園前派出所】

81 ◆a1H5ynvB6A:2015/04/17(金) 18:58:39 ID:fRipwHbk
投下終了です

82 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 20:56:11 ID:zErdc7jM
投下乙です。
OP案投下します。

83 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 20:57:05 ID:zErdc7jM
         ア・ア・アニロワ見るときは〜部屋を明るくして離れて見てね♪



闇の中に彼等はいた。

此処は何処なのか、自分は何時からこの場所にいるのか、何故こんな場所にいるのか、何も分からない。
状況を確かめようと周囲を見回してみても、この闇の中では朧げな人影を確認するのが精一杯である。
乏しい光から辛うじて判るのは、少なからぬ数の人間がこの空間に集められている、ということだけだった。

その場の誰もが自分の置かれた状況に困惑し、何らかの行動を起こそうとしていた、その時――

「諸君、目は覚めたかな?」

嘲りを含んだ声とともに、闇の一角が眩く照らされる。
突然出現した光の中では、巨躯を奇妙な衣装で包んだ男が一人、笑みを浮べて立っていた。

「ようこそ、私の『世界』へ」


美しい男だった。黄金の髪、怖ろしいほどに白い肌、その整った貌と隆々たる筋肉を纏いつつも均整の取れた肉体は
まるでイタリア・ルネサンス時代の巨匠が最高級の大理石から彫り出したような、完璧な『美』をこの世に顕現させている。
だがその場にいる者達が男から感じ取ったのは、美しいものが与える感動とは全く異なる『邪悪さ』――
心にドス黒い闇を持った悪人を惹きつけ、逆に正しい者や善良なる者を戦慄させる、禍々しい妖気だった。
その場の誰もが理解する。この男はただの人間ではない、魔人であると。言うなれば『闇の帝王』、あるいは『邪悪の化身』――

「テメェは……」
闇の中から、男のいる光へと近づく者があった。
光に近づくにつれ、闇に学生服と学帽、そして光の中の男に劣らぬ堂々たる体躯が照らし出される。

「テメェはDIO!!」
「そういう君は空条承太郎」

光の中に立つ金色の男・DIOは笑みを崩さぬままに
闇の中に立つ学生服の男・承太郎は怒りを秘めた無表情で
両者は光と闇の狭間で対峙した。

地響きのような轟音が聞こえそうな圧倒的なプレッシャーが、両者の間に流れる。

――しかし、その緊張を爆発させることなく、承太郎は口を開いた。
「何のつもりだ……」
「ほう……流石にこの状況で戦いを挑まないだけの冷静さはあるか」
承太郎の問いに嘲るような調子で返すと、DIOは彼を無視して他の者たちへと向き直る。


「失礼、自己紹介が遅れたね。
 私の名は『DIO』。君達『参加者』をこの世界へ招待した者だ」

闇の中に巻き起こる微かなざわめき、それを手で制し、DIOは言葉を続ける。

「諸君らをこの場に招いたのは他でもない。実は君達にちょっとした『頼み事』をしたいんだ。
 なに、そう難しいことを頼もうってんじゃあない……」

しばし芝居がかった短い間を挟んだ後、悪の帝王はその邪悪に満ちた目的の核心を口にする。


「つまり――これから君達には『殺し合い』をしてもらいたい」


その言葉に、場は静まりかえった。

84 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 20:57:47 ID:zErdc7jM
沈黙に自分の言葉が沁み込むのを悦しむように、DIOは笑顔で喋り続ける。

「なあ、全然大した事じゃあないだろう?
 世界中で誰もがやっている、『ありふれた行い』さ――それをしてもらいたい。
 私が君達に望むことは、ただそれだけなんだ――」
「DIO様!」

まるで神を拝跪するかのように、DIOの足元にしわくちゃの小さな影が身を投げ出した。

「なんだいエンヤ? 私の話に何か異存があるのかね?」
「めっ、滅相もない!DIO様の御為とあらば、この婆は命も惜しくはありませんですじゃ!
 じゃが……じゃが殺し合えというのは――」

エンヤと呼ばれた老婆はブルブルと震えたまま床に這い、汗みどろになって縋るようにDIOを見上げている。
その老婆に、DIOは不気味なほど優しい声で語りかけた。

「わかっているともエンヤ……深く愛しあっているお前たち母子を殺し合わせるなんて残酷な真似、私がするわけ無いじゃあないか……。
 だからこうしよう。『二名』だ」

そう言うとDIOは足元のエンヤ婆から目を離し、再び参加者全員を見渡す。

「二名……きっかり二名だ。参加者のうち生存者が残り二名になった時点で殺し合いは終了とする。
 つまり今から行う殺し合いより生還できるのは、最後に残った二名だけ――ということだ」

再びざわめきを取り戻した闇に向かって、DIOはいかにも楽しげに『殺し合い』の説明を続ける。

「二人が生還できる――どうだい? 『希望』の持てるルールだろう?
 愛する者を護ってもいい。信頼できるヤツ同士で組んでもいい。
 あるいはコバンザメのように強い奴に張り付いていくってのもいいかもしれないなァ――」

そう言いながら、DIOの目は少年少女を、戦友と共に連れて来られた娘達を、そして嘗て自分に忠誠を誓った男を
その場に集められた参加者達を蛇のように舐め回していく。

「おい!いい加減にしろ!」

だがそんな傲慢な帝王の独演に、割って入る者がいた。



「さっきから聞いてりゃ好き勝手なことばかり言いやがって!何が殺し合いだ!」

そう言いながらズケズケとDIOに近づいたのは、小柄だが厳つい身体に厳つい顔、角刈り頭に繋がり眉毛という
強烈なインパクトのある見た目の男だった。だが一見粗雑なその姿からは、何とも不思議な愛嬌が感じられる。

「……何か問題かね? 両津勘吉巡査長」
「問題しかないだろうが!」

DIOの放つ圧倒的な闇の妖気、プレッシャー――そんなものはどこ吹く風で、両津勘吉はがなり立てる。

「殺し合えといわれて殺し合うバカがどこにいる!こんなアホなことは今すぐやめてワシらをここから開放しろ!
 ついでにこの首輪も外せ!」

そう言う両津の首には、銀色に光る首輪が嵌められていた。いや両津だけではなく、この場にいる『参加者』のほぼ全員に首輪は嵌められている。

「ふむ、気に入ってもらえなかったかな?」
「当たり前だ!ワシに男に首輪つけられて喜ぶ趣味はなぁ〜い!」

85 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 20:58:22 ID:zErdc7jM
鼓膜を破らんばかりの両津の大声に、DIOは平静なままの声で冷たく応える。

「申し訳ないが両津巡査長、まだ説明が途中でね……静粛にしてもらいたい」
「なにぃ〜〜!?」

両津が一発ぶん殴るためにDIOに詰め寄ろうとしたその時、DIOのすぐ隣に蟠っていた闇の空間が明かりで照らされた。

「なっ……!」

思わず両津の足が止まる。
新たに照らされたその空間には一脚の椅子と、その上に座らされている幼い少女の姿があった。


「桜ッ!?」

闇の中で、顎鬚をたくわえた身なりのいい紳士が少女の名を叫ぶ。

その声に反応するように少女――遠坂桜――今の名は間桐桜――は俯いていた顔を上げる。
紫の髪に紅いリボン、仕立てのいい紫色のワンピースを纏った少女の愛らしい顔にはしかし
その年頃の子供にある溌剌とした表情も、それどころか人間らしい表情の一つも浮かぶことなく
ただ壊れた人形のような空虚がその瞳の中に映し出されているだけだった。

「貴様ぁ!その子供に何をした!!」
「おい誤解するなよ……この娘は連れてきた時からこうだったんだ」

両津の今までとは比べ物にならない怒りに満ちた怒号にも冷笑を崩さぬまま、DIOは少女の座る椅子の背後へと回る。

「全く困ったものだよ。これでは殺し合いにおいて使い物にならない……
 ――だが、君達が黙って話を聞いてくれるための人質程度にはなるんじゃあないか?」

次の瞬間、DIOの背後に人ともロボットともつかない異形の影が出現した。
その姿と突然の出現に、参加者達が大きくざわめく。

「な、何だそいつは!? お前の仲間か!?」
「これは私のスタンド『ザ・ワールド』
 『スタンド』とは生命の作り出すヴィジョン……まあ、超能力が可視化したものだと思ってくれればいい」
「超能力ゥ〜!? お前日暮の同類か!?」

両津の叫びに応えず、『ザ・ワールド』は拳を手刀の形にすると桜の座っている椅子へと振り下ろした。
まるでバターのように椅子の背もたれの上部分が切り飛ばされて床に転がる。
その手刀がもう少しずれていれば、背もたれごと少女の頭を切断していたことは誰の目にも明らかだった。

「では両津巡査長、そして暗がりの中にいる『正義の味方』の諸君も――
 今しばしお静かに傾聴願えるかね?」

倣岸に笑うDIOを睨みつけながら、両津は闇の中へと後退する。それと同時に暗闇の中からも悔しげな声が漏れ聞こえた。
その間、椅子に座らされた壊れた少女――間桐桜は自分の命が危機に瀕したというのに、身動き一つしなかった。

「……さて、今説明した『スタンド』だが――これは本来同じスタンド能力を持つもの同士にしか視認できない。
 だがこの会場においては全ての参加者がスタンドを目視することが可能になっている。見えないものに襲われて全滅――なんてのは味気ないからな。
 スタンドだけじゃあない。特殊な能力を持ったもの、強力すぎる力を持っているものには、ある程度の『制限』をかけさせてもらったよ。
 ――おい、どうやってかなんてのは聞くなよ。そこは重要な部分じゃあないんだから――
 全ては殺し合いの『公正さ』のためだ。『公正さこそルール』であり『ルールこそパワー』を生み出すんだからな……」

「今から君達『参加者』は殺し合いの『会場』へと送られる。
 送られた先には各々に食料等の活動に必要な基本支給品と『特殊支給品』の入ったデイパックが置かれている。
 『特殊支給品』は殺し合いの上で役に立つもの――武器や特別な性能を持った物品などで一人につき最大三つまで支給されている。
 もっとも、どの支給品がどのデイパックに入っているかは完全にランダムだがね……。役に立たない道具も混ざっているかもしれないが
 まあそれを引き当てたとしても腐らずに頑張ってくれ」

「君達が嵌めている『首輪』に内蔵された発信機で、君達の現在地と生死の如何は常にチェックさせてもらう。
 そして殺し合いの中で発生した『死亡者』は、6時間ごとに行う『定時放送』でその名前を読み上げる。
 パックの中には『参加者名簿』が入っているのでその都度チェックするといい……。
 参加者のうち生存者が『残り二名』になった時点で殺し合いは『終了』。生存者は『会場』より『帰還』できる。
 ――――どうだろう。大体のところはわかってもらえただろうか」

86 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 20:59:27 ID:zErdc7jM

最早反抗する者はいないと確信しての余裕か、DIOは桜の座る椅子の隣に立ち、微笑みながら滔々とおぞましい殺人ゲームの説明を続ける。
希望はないのか――参加者の中で心ある者達がそう絶望しかけた。その時だった。



「――少しいいかな」

「…………何かね」

DIOの説明を遮り、一人の男が闇の中から薄明かりへと姿を現す。

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

彼の姿を見て、その場に集められた誰もが仰天した。

オールバックに整えられた艶やかな黒髪。
大人のシブみを感じさせる、男前と呼んでいいマスク。
DIOや承太郎ほどの上背は無いが、鍛え抜かれた強靭な肉体。

そう強靭な肉体――その強靭な肉体を、彼は人目に惜しげもなく晒していた。
何故なら、彼は赤と黒の縞ネクタイと腕時計、そして股間部を覆う黒い海パン以外の何物をも身に付けていなかったからである。

海水浴の途中で紛れ込んだか――そう考えるにはネクタイが異様すぎる。
故に、その姿を目にした誰もが彼のことをこう考えざるを得ない。

(変態だーーーー!!)

と。


「君の名はDIOでいいのだな……。それなら私も名乗らせてもらおう。
 
        股間のモッコリ伊達じゃない!
          陸に事件が起きた時
         海パン一つで全て解決!
         特殊刑事課三羽烏の一人
          
            海パン刑事
                   只今参上!!」


(刑事かよ!!?)

あまりにも思いがけない彼――海パン刑事の正体に、ほとんどの参加者が再び驚倒する。

しかし当の海パン刑事本人は自分に向けられる奇異の視線など気にもせず、その眼光は一線に桜の傍にいるDIOへと向けられていた。
再び地響きのような轟音が聞こえてきそうな圧倒的プレッシャーが、両者の間に流れる。

「DIO、君と話し合いがしたい」

スッと――あまりにも自然な動きだったので誰も認識できないほど自然に――海パン刑事の両手が動いた。
右手は海パンの右側の縁に、左手は海パンの左側の縁に
そして、そうであることがあたかも当たり前のように
次の瞬間、海パン刑事は一切の躊躇無く海パンを脱ぎ去っていた。

「きゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
「うわあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

闇の中の参加者達から絶叫が上がった。
海パンを脱ぎ捨てた海パン刑事は勿論モロダシ。股間のダーティーハリーまで全てを臆すところ無く天上天下に曝け出している。
女性の悲鳴と男性の一部感嘆嫉妬混じりの驚愕、それらを背に受けながら
海パン刑事はフルチンのまま、一歩、また一歩と、ゆっくりDIOに近づいていく。

87 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 21:00:48 ID:zErdc7jM

「恐れることはない。私は見ての通り、武器の類は一切持っていない丸腰だ」

股間に残っている武器を揺らし、雄雄しい筋肉を何らかのオイルでてらてらと輝かせながら
海パン刑事は静かに少女を人質とした凶悪犯に語りかける。

「裸の心で話し合おう。
 心を裸にして話せば、きっと理解し合えるはずだ」

それは身体まで裸になる必要があるのか。
一歩、また一歩とゆっくり近づく海パン刑事に対して、DIOは倣岸に構えたまま無言でいる。
その姿は、圧倒的優位に立って殺人ゲームのルールを説明していた先程までと全く変わりがない。


(違う……)

だが、百戦錬磨のギャンブラーや決闘者など、あるいは死線を潜り抜けてきた戦士や英雄などの
勝負の『流れ』を読むのに長けた参加者たちは、場の空気が確実に変化したことに気づいていた。
圧倒的だったDIOの邪悪なオーラに、僅かだが、しかし確実に『動揺』が走っている。
DIOの放つ妖気が、ただ静かに歩むだけの変態に切り拓かれているのだ。

(DIOが……DIOが引いている!!)


「さあ、君も服を脱ぎたまえ」

一歩、一歩、一歩
ゆっくりと、だが確実に、海パン刑事はDIOに接近する。

そして

「お互い、生まれたときは何も着ていない素っ裸だったはずだ――」

射程圏内に――

「さあ、裸になって話し合おう。生まれたままの裸の心で――」

――入った!!


「トウッ!」

目にも留まらぬ速度で、海パン刑事は常人を遥かに超えた高度へと跳躍した。
そのまま中空で超高速前転し、その勢いを乗せたまま股間を大開脚し、DIO目掛けて流星の如く落下する。
まるで熟練の波紋使いのような身のこなし!そして開脚された海パン刑事のデンジャラスゾーンの軌道は、確実にDIOの顔面を捉えていた。
これぞ海パン刑事の必殺技の一つ、ゴールデン・クラッシュである。

全ては一瞬の出来事であり、DIOが気づいた時にはもう遅い。
DIOの眼前には海パン刑事のリーサルウェポンが既に迫っていた。
なすすべも無くDIOの顔面にゴールデン・クラッシュが叩きつけられ、意識を刈り取られた悪の帝王は床にぶっ倒れる。


そうなると、誰もが予想していた。


「『世界(ザ・ワールド)』ッ!!」



何が起こったのか誰も理解できなかった。

結論から言おう。海パン刑事のゴールデン・クラッシュは空しく宙を切るに終わった。
そして、その直撃を受けるはずだったDIOは――

「なッ、なぜだッ!?」


┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨ ┣¨┣¨……


「一体何が起こったんだァーーーーーーーー!?」

一瞬のうちにッ!海パン刑事の背後へとその居場所を変えていた!

88 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 21:01:26 ID:zErdc7jM

DIOの顔は無表情で何も読み取ることが出来ない。その背後の中空にはザ・ワールドが衛兵の如く控えている。

誰も、何も認識できなかった。
催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなものでは断じてない。
もっと恐ろしいDIOの『能力』、その片鱗を目にして、誰もが息を呑む。


そう――――彼等以外は。

「今だ両津!」
「おう!」

DIOがスタンドもろとも椅子の傍から離れたその瞬間、両津勘吉は動いていた。
超能力に驚いてる暇などありはしない。
彼等の目的は最初からただ一つ、人質の少女――間桐桜の救出だった。

ほとんど野生動物的なスピードで椅子に駆け寄ると、両津は桜を抱き上げてしっかりと抱える。
そして矢のような速さでDIOから距離をとり、安全圏へと脱出した。
ごつい見た目からは想像もできないほど俊敏に行われた一連の救出作戦に、他の参加者達はしばし呆気に取られる。
だが一拍後、その場にいる誰もが理解した。悪党は倒せなかったものの、その魔手から人質の少女は助け出せたのだと。


「嬢ちゃん!大丈夫か!おいしっかりしろ!」

両津は腕に抱きかかえた人形のように無反応な少女に、大声で話しかける。
どうしようもなくダミ声で、耳を聾するようにうるさく、そして切実なその声に
今まで無反応だった桜がはじめて顔を上げ、両津を見た。

「おじ――さん――?」
「おう!お嬢ちゃん、もう大丈夫だ!もう心配いらねえぞ!」

そう言ってガハハと笑う、そのあまりに無骨で明け透けな両津の笑顔を見て
曇った硝子玉のようだった少女の瞳に、長らく失われていた輝きの光が再び灯った。




ピ――――――――――――――

耳障りな電子音の後に爆発音が続き、頚部を爆破された桜の頭部が床に転がった。
首の切断面からは血が噴き出し、抱えている両津の腕を赤く染めている。

「な――――――――」

何が起こったのか理解できない両津を光が包んだ。
まるで悲劇役者を、あるいは喜劇役者を映し出すように
呆然とする両津勘吉と、その腕に抱きかかえられた間桐桜の首の無い死体
そして流れ出る血の海に転がった、リボンを結わえた桜の首が、闇の中に照らし出されていた。


一瞬の静寂の後、再び悲鳴が巻き起こる。
だがそれは、先程とは比べ物にならない恐怖と絶望の絶叫だった。

悪魔の手から救い出されたと思った少女が、目の前で無惨に殺された――
照らし出された惨劇にただ叫ぶ者、涙を流す者、堪えきれず嘔吐する者、怒りに震える者、喜悦の声を噛み殺す者、あるいは何も感じない者

「桜――――」

その喧騒の中、眼前で娘の命を奪われた魔術師――遠坂時臣は小さく娘の名を呟いただけだった。
決して取り乱すまいと超人的な精神力で自分を律してはいたが、暗闇の中で彼の姿を観察している者がいたとすれば
彼が奥歯を砕けんばかりに噛み締め、その両手を爪が掌を突き破るほど固く握り締めていることに気がついただろう。

89 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 21:02:15 ID:zErdc7jM

「ククク…………」

そんな人々の恐慌を鎮めたのは、魔人の哄笑だった。

「アハハハハハハハハハハハハ―――――――――!!!!!!!!!」

DIOは笑う。目の前で起こった出来事が、愉しくて悦しくて仕方がないと言うように。

「クククク……失敬失敬。すっかり言うのを忘れていたが――
 君達の首輪には追跡装置以外に爆破装置も仕掛けてある。
 そして何時だろうと何処だろうと、私の意志一つで自由に爆破できるのさ……ご覧の通りにね」

三度起こった悲鳴を、DIOはまるで心地良い音楽でも聴くかのように楽しむ。

「さて、この首輪が爆破されるのは以下の三つの場合だ。

 ① 主催者に対して反抗的な態度をとった場合。
 ② 脱出しようと、地図に記された『会場』以外の場所に出た場合。
 ③ 我々が定めた禁止エリアに入った場合。

 禁止エリアについては詳しく説明しよう。
 『定時放送』の際、死亡者の名前と一緒に禁止エリアに指定される場所と禁止エリア化する時刻を発表する。
 つまり時間の経過につれて禁止エリアは増えていく――逃げたり隠れたりすることは難しくなっていく、ということだ。
 だから『定時放送』は聞き逃さないほうがいいぞ? 知らぬままウッカリ禁止エリアに入って爆死するなんてマヌケの死に方だからな……」

「それと――自分には首が無いから大丈夫、なんて思うヤツがいるかもしれないが、そういう考え方はしないほうがいい」

DIOの言葉に、ネコミミ型のフルフェイスヘルメットを被った影が微かに反応する。

「首輪を付けられない者にはそれ以外の特殊な処置が施してある。
 また自分達は首を千切られた程度では死なない――と思ってるヤツもいるかもしれないが君達も同じだ。
 諸君ら全員に、必ず死に至るような仕掛けが施されている。ハッタリだと思うなら試してみるかい? お奨めはしないがね……フフフ」

冷酷極まる邪悪な帝王の笑いが、それが嘘やハッタリでないことを何より雄弁に物語っていた。
既に、DIOに歯向かおうとする者はいない。
少なくとも、今、この場では。



「――ただ説明するだけだったはずが、少々長くお付き合いさせてしまったね。
 では最後に――『褒賞』の話をしよう」

そう告げると、DIOは再び参加者達を睥睨する。

「ただ殺し合え、生き残れと言われても気乗りのしない者もいるだろう。
 だからほんのささやかではあるが『生還者』に対しては『褒賞』を出すことにしたよ……。
 『どんな願いでも一つだけ叶えてあげよう』。
 無論、土くれの偽物なんかじゃあない。本当にどんな願いでも叶えてあげるよ、ただし『一つだけ』ね……」

「生還を許されるのは『二人』だが叶えられる願いは『一つだけ』――
 済まないね、こちらとしても願いを叶えるのは一つで精一杯なんだ。
 もしも『二人』の生還者の願いが異なるものだった場合は――『何らかの手段』で一つに決めてもらうしかないな」

まるで玩具を見下ろすかのように、DIOはその冷笑を止めない。

「『一つだけ』――だがその『一つだけ』は必ず叶えよう。
 たとえそれがこの世界の条理に反するものだとしても、だ。
 信じられないかい? だがそれが可能になるのさ。
 この殺し合いが終わる頃にはね――――」

90 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 21:02:57 ID:zErdc7jM
「この場に集められた者達は皆、特別に選ばれた『強いパワーを持った魂』の持ち主だ。
 全部で62名、そのうち60名の――おっと、さっき娘が一人首輪の爆破で死んだから残り59名か――の魂が捧げられることによって
 どのような願いでも叶えることが可能になるのさ。例えば――」

DIOの声がまるで囁くような、親しげなものへと変わる。

「死んだ人間を、既にない愛する者を甦らせたい――そう願ったことはないか?」
母を亡くした少女に、弟を亡くした少女に、恋人を失った男に、聖なるものを失った狂人に、DIOは優しく語りかける。

「あるいは、変わってしまった自分の身体を元に戻したい――普通の人間に戻りたい、なんてのはどうかな?」
戦うために、祈りによって、呪いによって、過酷な運命を背負わされた少女達に、その声は妖しく響く。

「至高の美を、不老の肉体を、世界の全てが自分に跪く絢爛たる永遠を手にしたいとは思わないかね?」
若く美しいアイドル達の耳を、誘惑の言葉が撫でる。

「もっと大きく出てもいい。『いかなる戦争、いかなる脅威をも根絶された、恒久的に平和な世界』――そんな夢を実現することも不可能ではないのだよ」
くたびれた無精髭の男に、戦うために存在する少女達に、邪悪な視線が向けられる。


「――まぁ、『信じられない』と言うのならそれでもいいさ。
 いずれにせよ君達が生きて還るためには、最後の二人になるまで殺し合わなけりゃならない。その事実は変わりはしないんだからな……
 長々と話してしまったが、これで説明は終わりだ。何か質問は――」

闇の中、一人の男が前に出る。学生服の偉丈夫、空条承太郎だった。

「――何かな? 承太郎」
「俺達の魂が目的なら、何故わざわざ殺し合わせる必要がある。
 テメーが全員の首輪を爆発すれば済む話だ――それなのに何故こんな回りくどい真似をする?」

生殺与奪を握られた――そんな状況においても、承太郎に揺らぎはない。

「それはな承太郎、『殺し合い』の中――命を奪い合う『戦い』の中でこそ、『もっとも強いパワー』が生まれるからだ」

DIOの言葉は相変わらず嘲りを含んでいるが、その中に偽りはない。

「“新しい時代の幕開けには必ず『試練』があり、それは必ず『戦い』と『流血』を伴う。
  『試練』は『供え物』だ。りっぱであるほど良い――”

 確かアメリカ合衆国23代大統領ファニー・ヴァレンタインの言葉だったか……よく言ったものだ。
 諸君らがこれより行う『殺し合い』とは、この『試練』に他ならない」

「しかし『試練』という言葉は少々大時代的過ぎるかな?
 それならばこの『殺し合い』は何と呼ぶべきか――

 命をチップにした『狂気のギャンブル』――
 あるいは『闇のゲーム』のほうがいいかね――

 いや、矢張りこう呼ぶのがもっとも相応しいだろうなぁ……」

今や全ての準備は整った。
邪悪の化身は選ばれし『参加者』達に宣告する。
死ぬよりも恐ろしい悪夢の開始を。

「では諸君、ゲームを始めようじゃないか。
 ようこそ『バトルロワイアル』の世界へ!!」


次の瞬間、空間を照らしていた光は全て掻き消え
世界は、血の匂いのする闇に包まれた。



【間桐桜@Fate/Zero 死亡】

参加者――【残り61名】

主催者【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】

         
         【バトルロワイアル 開始】

91 ◆M4XZIlxfsw:2015/04/17(金) 21:03:29 ID:zErdc7jM
投下終了です。

92 ◆YMrTHmirjk:2015/04/17(金) 22:12:21 ID:VdP2boIQ
OP案投下します

93ぼくと契約して、バトルロワイアルをしようよ! ◆YMrTHmirjk:2015/04/17(金) 22:13:32 ID:VdP2boIQ

「あなた」は暗闇の中で目を覚ます。
縛られているのか、身体は動かない。息はできるが、声も出せない。
唐突に訪れた束縛の中、なんとか状況を把握しようとした「あなた」の目の前に小さな猫……のような獣が現れた。

「やあ、目が覚めたね。突然で申し訳ないんだけど、君にはこれからあるところで殺し合いに参加してほしいんだ」

暗闇の中に赤い双眸が輝く。その獣は人の言葉を喋った。

「ぼくはキュウべえ。この殺し合いを円滑に進めるための調整役と思ってくれればいいよ」

キュウべえは小さな口で背後に置いてあったデイバッグをくわえ、引きずってくる。

「この中には数日分の食事と水、地図やライトなんかの基本的な道具が入ってる。
 それと一人ひとりに特別なアイテムも入れてあるよ。武器だったり乗り物だったり、まあ何かと役に立つものさ。
 君にはこれらを活用して、ぜひ最後の一人になるまで頑張ってもらいたいんだ」

キュウべえはデイバッグを「あなた」の足元へと押し付ける。
何かを問い返そうにも、言葉は喉元でせき止められたかのように発することができない。

「ごめんね、質問はできないようにしてあるんだ。
 これは君以外の他の参加者も同様でね、余計な情報を与えないためなんだ
 これから君を会場へ移動させるんだけど、向こうについたらそのバッグの中にルールを書いた本が入ってる。
 詳しいことはそれを確認してほしい」

キュウべえは短い前足で首を掻く…それは何らかの仕草に見えた。

「ここ、首のところにね、首輪があるのがわかるかい? ぼくじゃないよ、きみのね」

キュウべえがそう言うと、「あなた」は自分に首に金属の首輪が嵌められていることに気づく。

「その首輪には爆弾が仕掛けられているんだ。ある程度の緊張感がないと誰も真面目にやってくれないからね」

キュウべえがそう言うと、闇の中にパッと光が灯った。
「あなた」は思わず目を細める。その光の中心には、椅子に座らされ縛られた男性がいた。

「き、貴様ら! 私をロード・エルメロイと知っての狼藉か!? 私にこんなことをして、魔術協会が黙っていると思うなよ!」
「よく見ててね。もし君が首輪を外そうとしたり、後で指定する禁止エリアに入ったりすると……」
「おい、貴様! 聞いているのか! 私は時計塔の」

94ぼくと契約して、バトルロワイアルをしようよ! ◆YMrTHmirjk:2015/04/17(金) 22:14:05 ID:VdP2boIQ

キュウべえはどこからともなくボタンの付いた小さな機械を取り出して、前足で押した。
ボンッ!
爆竹が弾けるような音がして、縛られていた男がゆっくりと倒れた。
その首から上はなくなっていて、血が噴水のように吹き上がっていた。

「こうなるから、気をつけてね」

キュウべえの言葉が遠く聞こえる。
「あなた」の意識は、転がってきたロード・エルメロイと名乗った男の生首に釘付けになっていたからだ。

「もちろん、ぼくも無茶なことを言ってると思うよ。でもこれは、君にとっても得のある話なんだ。
 もし君が最後の一人になったら、ぼくは君の願いを何でも叶えてあげるよ!」

キュウべえはにこやかに言う。

「ぼくの言ってることが信用できないかい? それも当然だね。じゃあひとつ証拠を見せよう」

キュウべえはまた新たなスイッチを取り出して押す。
すると、転がっていた男の生首がひとりでに転がりだして、胴体に戻っていく。
「あなた」の見ている前で、男のまぶたがゆっくりと開かれる。

「……う、うう? 私は一体……?」
「この通り、死んだ人間だって生き返らせることができる! ぼくらは既に時間と因果を支配しているからね。不可能はないよ」
「お、おい貴様! いま、私に一体何をした!?」
「やれやれ、うるさいなあ。ケイネス、君は先に次の人のところに行っておいてよ。あと60回同じことを繰り返すんだから手間を取らせないでほしいな」

キュウべえが煩わしそうに言うと、男を照らしていた光が消え、男の気配もなくなった。
キュウべえが「あなた」に向き直る。

「これで一通りの説明は終わりかな。さっきも言ったけど、詳しいルールは配布した資料を読んでくれればわかるよ。
 ……さて、そろそろ時間だ。君を会場に送るね。他の参加者とは同時にスタートするから、時間的な有利不利はないよ」

キュウべえはふるふると前足を振った。それは別れのサインであるようだった。

「それじゃあね。君の願いがエントロピーを凌駕することを祈っているよ!」

それを最後に、「あなた」の意識は途絶えた。
こうして、バトルロワイアルの幕が上がった。



【ケイネス・エルメロイ・アーチボルト@Fate/Zero 死亡】
主催者【キュウべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
         
【バトルロワイアル 開始】

95ぼくと契約して、バトルロワイアルをしようよ! ◆YMrTHmirjk:2015/04/17(金) 22:14:52 ID:VdP2boIQ
投下終了です

96 ◆kdN026sJVA:2015/04/17(金) 23:55:42 HOST:KD124211244016.ppp-bb.dion.ne.jp
投下します

97 ◆ur4vKVfv.g:2015/04/17(金) 23:56:38 HOST:ZM012197.ppp.dion.ne.jp
OP案投下します

98 ◆kdN026sJVA:2015/04/17(金) 23:56:46 HOST:KD124211244016.ppp-bb.dion.ne.jp
 「目覚めよ」
黒髪の男が語り掛けると、そこにいた数十名の男女は一斉に目を覚ました。
みな不思議そうに辺りをきょろきょろ見渡し状況の確認を急いでいたが、間髪入れずに続けられた言葉に思考を停止する。
 「これから君たちには殺し合いをしてもらいます」
男はとても愉快そうに、非常識な事を言う。
 「名乗り忘れていました。 私の名はクロウ・リード。 魔術師です。 それでは殺し合いのルールを語らせていただきます」
一同が呆然とする中、クロウは続ける。
 「ルールは単純。 最後の一人になるまで殺しあっていただくだけです。 無論、優勝者には賞品を用意してます。
 三つだけ、願いを叶えて差し上げましょう。 どんな願いでも結構です。 まぁ私を殺したいという願いでもお受けしますよ?」
そして男は首輪を指さす。
 「皆さんが付けている首輪。 それが枷です。 殺し合いの会場から出た時点で爆発します。
 あと六時間ごとに放送を掛けます。 そこで死亡された方を発表させていただきます。
 さらに禁止エリア、というものも発表します。 そこに一歩でも踏み入っても首輪は爆発しますのでご注意を。
 あぁ、放送から30分は無事なようにしますのでご安心を。
 このホールから順番に出て行ってもらいますが、ホールから出た時点で殺し合いのスタートです。
 その際にディパックをお渡しします。 中には筆記用具と水と食料が入ってます。
 あと便利なアイテムが三つ入ってますので、ご利用ください。
 えぇっと、なにかご質問はありますか?」

そこで猶予が与えられて一同がざわつく。
困惑するもの、泣き出すもの、そして…憤慨する者。

 「てめぇ! ふざけんじゃねぇぞ!」
 「待って、城之内くん!」
 「でもよ、遊戯! 殺し合いさせるだなんてトンチキなこと言い出す奴、許せるかよ!」
城之内と呼ばれた少年はまっすぐクロウを指さし言い放つ。
 「おまえを倒して、こんなふざけたこと、辞めさせてやる! 俺のターン、ドロー!」
そういっていつの間にか持っていたカードから一枚を抜き出す。 次の瞬間
 「レッドアイズ・ブラックドラゴン!」
 「ワンターン召喚?!」
 「そうだぜ、海馬! お前との戦いの為に編み出したとっておきだ!」
 「凄いよ、城之内君! 早すぎて全然見えなかった!」
 「おうよ! さぁクロウ・リード! これでもくらって目を覚ましやがれ黒炎弾! プレイヤーにダイレクトアタック!」
突如、何故か出現した巨大な竜が猛烈な炎を浴びせる。 しかし
 「なるほど。 この会場内でカードが使えるように実体化するようにしていることを察知していたとは流石です。 ですが」
巨大な鏡が突如出現し、あっさりと炎は打ち消された。 打ち消された。
 「な、なにぃ?!」
少年に驚愕の暇はあまりなかった。 間抜けな音がして城之内の首から上が消し飛ぶ。

 「城之内くぅぅうぅぅぅぅぅぅん!」
遊戯と呼ばれた少年の声が空しく響く。
 「残念ながらこのホールの中での攻撃行為、ならびに運営に対する攻撃は即座にBANです。
 おや、もう聞こえてないですかね。 注意し忘れていました。 すみません」

99 ◆kdN026sJVA:2015/04/17(金) 23:57:24 HOST:KD124211244016.ppp-bb.dion.ne.jp
反省する様子もなくクロウは続ける。
 「質問などはもうないですね? まぁ私自身への文句や苦情はここでおっしゃられても、はぁそうですかとしか返せません。
 あとこの殺し合いの運営・管理は他の方に委託しております。
 私が直接管理してもいいのですが、それでは紅茶が飲めませんからね。
 ご紹介しましょう。 共生の方々です」

ぞろぞろと現れた黒服サングラスの面々に一同の中で一際異彩を放つ老人が驚愕の表情を浮かべる。
 「おまえたち!? なぜわしを裏切った!」
黒服の一人が申し訳なさそうに口を開く。
 「見せられたのです、鷲巣さま!」
 「見せられただと?!」
鷲巣はなおも驚愕の表情を浮かべる。
黒服の男は恐る恐る、しかし確実に言葉を紡ぐ。
 「そうです! 鷲巣様が息絶え、そしてアカギめがあろうことか鷲巣様の後頭部を踏みつけている姿を!」
 「なんじゃとおお?!」
鷲巣はぐらんと揺れ、そして倒れそうになるも踏みとどまった。
 「鷲巣様は東京大空襲の中、ごく普通に歩かれていても無傷でおられましょう! それほどの強運! それほどの豪運!
 なれど、そのアカギめには勝てないのだと、このクロウ・リードの予言に出てしまったのです!」
老人は怒りの表情を浮かべながらも、しかし恍惚として顔を緩める。
 「そうかそうか。 ここでなら、アカギをアカギの奴を…フフフ…殺れるということ!」
 「その通りでございます、鷲巣様!」
主従の微笑ましい一幕は幕を閉じた。

 「よろしいですか? では彼らにこれから先の運営はお任せしました。 
 参加者の皆さんはこれから名簿をランダムに読み上げますので、呼ばれた方は出口に向かってください。
 扉を抜けた先は各人違う場所になりますので、扉の先で待ち伏せしても効果は薄いと思いますよ?」
クロウの最後の付けたしに、幾人かが当てが外れたようにため息をつく。
 「それではお願いしますね」
クロウは黒服たちにそういうと、舞台から立ち去った。

100 ◆kdN026sJVA:2015/04/17(金) 23:58:33 HOST:KD124211244016.ppp-bb.dion.ne.jp
舞台を降りたクロウは、いや、もはや姿を少年のそれに変えていた。
その黒髪の少年に、白い、なんとも奇妙な動物が人語で語り掛ける。
 「お疲れ様、いや、これからが本番かな?」
赤い瞳で見つめる。
 「えぇ、これからです。 柊沢エリオルとして、参加者としてのバトルロワイヤルはね」
 「それにしても面倒なことをしたものだ。 そのまま主催としてさくらという少女を見守ればいいものを」
 「それが出来ないと判断したから、クロウはこのような場を設けたのですよ」
エリオルはそう答えて、「扉」の前に立つ。
 「影武者の方が扉を通られた後に、僕がここを通る。 それでバトルロワイヤルスタートです」
少年は扉をくぐった。

バトルロワイヤル
スタート

101 ◆kdN026sJVA:2015/04/17(金) 23:59:21 HOST:KD124211244016.ppp-bb.dion.ne.jp
投下終了です。

102 ◆ur4vKVfv.g:2015/04/18(土) 00:02:25 HOST:ZM012197.ppp.dion.ne.jp
【1】

『生きている人、いますか?』

【2】

『詰まる所、お前たちは異分子である』

タールを流し込んだかのような暗闇に声が響いた。
どこからでも通ってくる抑揚のない男の声は、現在の状況を極端に表している。
一mm先も見通せない、どこまでも広がる闇。

『異分子とは言葉通りにとってくれて構わない。多数のものと違う思想、種類、性質、体質。ジグソーパズルは知ってるか? 一枚の絵をいくつかの欠片に分けて、ばらばらにしたものを再度組み直すゲームだ。

ここでいう一枚の絵とはお前たちの世界であり、欠片とはそこに存在する者たちーーそう、お前たちのことだ。
欠片は欠片でも、意味合いは全く違うがな。

余分な欠片はゴミ箱に。当たり前のことだ、廃棄しないでいたらいつかは溢れちまう。
瞬きする間もなくお前たちは終わっていた。否、終わらされてしまった、の方が正しいか。
だが、人間であれ動物であれ世界に存在している以上、文句の言えない出来事はある。

大気中の空気や来襲する地震に、理不尽だとケチはつけられない。生まれてきたことを後悔することはあっても、在ることは否定してはならない。
いわば今回お前たちに起こった現象は、偶然、たまたま、運悪く、起こってしまった不慮の事故みたいなもんだ。

さて、前置きが長くなったがルールの説明といこう。
お前たちにはこれから、七十二時間ーー三日間の間生き残りを賭けたゲームをしてもらう。
なに、別に難しいことを言ってるんじゃない。社会にも生存競争という言葉があるだろう。生きているということは、それだけで他者を食い命をかけている。

もっとも、この場所に限って言えば少し意味合いが違う。
揚げ足を取るのは好きではないんでな。俺の言葉に言霊なんて便利なものはないが、この地この場所で生き残れれば、無事元の世界へ戻れることを保証しよう。

まぁ、これはただの伝言だがな
俺はゲームを円滑に進める進行役でしかない。謎解きならお前たちだけでやってくれ。
そんなものは俺の役目じゃない。

103 ◆ur4vKVfv.g:2015/04/18(土) 00:04:25 HOST:ZM012197.ppp.dion.ne.jp
参加者にはデイパックが支給されている。
中には、会場の地図に参加者名簿、三日間を過ごすのに最低限必要なものと、その他不明な支給品が入っている。

不明な支給品の類にはもちろん武器などといった物も入っている。
どう使うかはお前たち次第だがな。他者を蹴落とすなり、害ある者から自身を守る正当防衛の道具として使用しても構わん。

会場である場所は時間の経過と共に崩壊していく。
地図にはエリアが振り分けられている。六時間ごとに指定したエリアが消えていく。
眠っていたら放送を聞き逃してエリアごと消失しました、なんて阿呆なことにならないようにな。

ゲームである以上ルールが存在する。
生き残りをかけた、とは言ったが、な。十人でも二十人でも構わん。最悪、いや最高か。誰も死ぬことなく全員生存なんて未来の可能性もゼロではない。

そう、ゼロではない。

三日間だ。始まりから家に篭っていても、ひたすら逃げ続けるのも構わん。
だが、しかし、な。働かざるもの食うべからず、という言葉がある。
停止していても状況は変わらん。生き残るためには行動は必須だ。

十人でも二十人でも、全員生存可能とは言ったがな
それを掴めるのはお前たちが脱出出来たらの話だ
勘違いをしないよう先に言っておくが、この場所から脱出出来るのは一人だけだ

これは変えることのできない絶対のルールだ
馬鹿なことは考えるなよ。生き残れるのは一人だ

世界は崩壊していくぞ
希望なんて観測的なものは消し飛んで行く。奇跡という言葉は砂の城のごとく崩れていく
死にたくないのならただ生き残れ。そう、最後の瞬間までな

自己紹介が遅れたな。俺の名は、提督とでも呼ぶがいい。
随分と昔に捨てた名前だが、お前たちが呼ぶ分にはこれ以上ないだろう。
最後に
俺はただ語るだけだ。物語の結末などに興味は微塵もないが、お前たち自身には関心を持っている。
故に激励の言葉を送ろう。

ーー死ぬ気で足掻けよ』

【3】

男にとって『彼女』たちは家族のような存在であり、同時に羨望の対象でもある。
長い時間を共にし、数々の戦場を駆け回った戦友でもあった。
嬉しいことも、悲しいことも共有してきた。男の人生は決して夢のような人生とは言えなかったが、後ろを向き後悔だけはしなかったことがただ一つの誇りであった。

ーーそんなものは虚像に過ぎなかったわけだが。

「まるで出来の良い人形劇だな。
お茶会を開くにも趣味が悪すぎる。
死者蘇生だと言うは易いが……下らん。
ままごとをしたいのなら、ひとりで遊んでいればいいものを……化物が」

心底嫌そうに顔を歪めながら、男は椅子に大きく腰をかけた。
これは自らを提督と名乗る男の始まりの話。

進行役【提督@?】


※六時間ごとにエリアが消えていきます
※六時間ごとに死者の放送をしていきます
※名簿には五十一人の名前が載っています。残りの十名は六時間ごとにランダムで表示されていきます
※元凶はQBです

104 ◆ur4vKVfv.g:2015/04/18(土) 00:05:20 HOST:ZM012197.ppp.dion.ne.jp
投下終了です

105 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:51:57 ID:rHFmitM.
補完SS書き終わったので投下します

106 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:52:29 ID:rHFmitM.
○月○日

この日、鎮守府に極秘任務が下された。
軍上層部はある島において、何者かによる不穏な実験がされているという情報を掴んだ。
どうやら核を用いた実験をしているらしく核実験を止めさせ、解体して無力化するが我々に与えられた。
メンバーは機械工作に長けた技術者16名、護衛の海軍中隊24名
深海凄艦の出現に備えて長門、陸奥、大井、北上、赤城、睦月の小隊6名
それを指揮する役割として選ばれた提督、合わせて47名が目的の島に向け旅立つことになった。
場所は艦娘の燃料では到底たどり着くことの出来ない場所にあるため
長距離移動用の大型船を用いて移動する。
非常時に備えて水や食料、補給用の燃料や弾薬は多めに用意された。


○月×日

出発してから二週間後、目的地である島に到着した。
報告者の通り、大気は放射能によって汚染されていたので、防護服を装備して上陸した。
艦装を外すことになるが、それでも軍人として勤めを果たすために艦娘の同行も許可された。
島を探索している内に、戦闘が起こったと思われる形跡が至る所に発見する。

民宿を発見した我々は内部への調査を始めた。
そこでも戦闘の傷跡が残されており、窓ガラスがいくつも割れ、一部の壁が破壊されていた。
一室にて白骨死体を発見、胸元に銃創の痕あり。
衣類はぼろきれのように朽ちており、死後から相当の年月が経っていると推測される。
遺体の傍で落ちていたバッグからは何かの名簿と地図が記されていた。
両方とも風化が進んでおり、名簿は読み取れなかったが地図はこの島の物であることが分かった。

民宿での調査を終えた頃、日が沈みかけていたので今日の調査は中断し船に帰還した。
明日から地図の情報を頼りに他の施設の調査を進める。
銃殺された死体を見たせいか、同行者の中に不安の声を出す者もいる。
迅速に調査を終える必要があるだろう。
この島に来てからというもの、なんだか空気が非常に重苦しい。

107 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:53:35 ID:rHFmitM.
○月△日

廃村へ調査を行った所、白骨死体が三つも発見された。
一つはナイフを持った死体、もう一つは拳銃を持った死体、最後は首を吊って自殺した死体。
自殺した死体の近くで放置されていたバッグにはメモ帳が発見された。
『ころすのもころされるのもぼくはいやだ さきにあのよへいってきます みなさんさよなら』と書かれていた。
もしや、この島で人間同士の殺し合いを強要されていたのだろうか?

次々と死体を見たショックで睦月と軍人二人がホームシックにかかった。
睦月はまだ幼く、軍人二人もまだ10代の若い人間である。
凄惨な光景を見て、不安で心が押しつぶされたのだろう。
提督の配慮により、三人は調査が終わるまで船内での休息を命じられた。

島にいくつも点在しているアンテナを調査した所、恐るべき事が分かった。
アンテナには核が仕込まれていた。
もし島に点在するアンテナ全てに核が仕掛けられているとしたらかなりの数である。
我々はいつ爆発するかも分からない核の排除を迅速に進めた。

一つめの核は無事に無力化出来た。
解除した技術者の話では設置した人物の技術不足か、それとも急いで設置したのか。
非常にシンプルな構造であり、それほど時間を労せずして解除が可能だという。

核の解除は技術者と軍人達に任せ、提督と艦娘は島の謎を解き明かすための調査をする事になった。
技術的知識の無い艦娘は未探索エリアの調査に回した方が効率が良いとの提督の考えだ。
その案に隊員達は納得し、二手に分かれて行動することになった。


○月□日

船で待機している三人の容体はまだ安定していない。
本人達は大丈夫だと言って皆を心配させないよう振る舞っているが
ろくに眠っていないのか目の下にくまが出来ており、若干やつれ気味だ。

島の中央にある防災試験センターへの調査を開始した我々は
電子機器が生きており、使用できる事に気が付いた。
この島で何が起きていたか残されているデータを一つ一つ読み上げた。

『第1回バトルロワイアル 参加者72名 優勝者○○○○○ 一族の永遠の繁栄を願いとし帰還する』
『第2回バトルロワイアル 参加者68名 優勝者無し 最後に生き残った一人が隠し持った爆弾を使い主催者を道連れに自爆』
『第3回バトルロワイアル 参加者56名 優勝者○○○○ この技術力を全て自分の物にしたいと願い、次の企画の主催者となる』
『第4回バトルロワイアル―――』

『バトルロワイアル』という単語がデータの中にいくつも浮かび上がった。
このバトルロワイアルによって島の中で殺し合いを続けられていたのだ、それも何度も繰り返されて。
ページを進めていくと、最後に作成された項目に『この島に連れてこられた者たちへ』と書かれたファイルを見つけた。
そのファイルを開くと殺し合いで生き残った人間らしき者のメッセージが記されていた。

108 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:54:17 ID:rHFmitM.
『俺たちはバトルロワイアルという糞ったれな殺し合いゲームに巻き込まれた人間だ。
 みんなで力を合わせて、殺し合いを企てた連中を何とか打倒する事に成功した。
 だけどそれだけではバトルロワイアルは止まらないんだ。よく聞いてほしい』

『この島にはバトルロワイアルを繰り返してきた歴史がある。
 その歴史は運命による力で強制されていたんだ。
 突拍子も無い話で信じられないかもしれない。
 それでもバトルロワイアルを繰り返させようとする力は確実に働いているんだ』

『主催者を殺害してバトルロワイアルは一度終了させた。
 俺たちは10人生き残った。そして脱出するための算段も付いた。その時だ
 この島に眠る超技術を見つけた仲間の一人が突然狂いだして、他の仲間たちを殺しまわった。
 島はバトルロワイアルの破壊を許さなかった。生き残った10人で再び殺し合わせようとした』

『……結局生き残ったのは俺一人だ。
 この異常な技術を使って、逆に殺し合いを妨害してやる。それが俺に出来る運命に対する復讐だ。
 超技術を使い核を作り出した俺は島全土を放射能で覆った。
 参加者同士の殺し合いがお望みなら、参加者以外によって死をもたらされる環境に変えてしまうんだ。
 こんな発想が思いついて実行してしまう時点でもう俺の正気は失っているのかもしれないな』

『いいか?この島に来た人間は一刻も早く立ち去るんだ。
 核が残っている限り、殺し合わせようとする修正力は弱いはずだ。
 殺し合いを望む運命は核の脅威を取り除くために修正が働く。
 体内の免疫が進入した病原菌を除去しようと活動するようにね。
 もし、核の脅威が全て取り除かれたらその時、再びバトルロワイアルは必ず始まる。
 まるで初めから殺し合いを目論んでいたかのように、誰かがバトルロワイアルを運営するだろう。
 そういう運命を背負わされてしまうんだ』

『俺はもう限界だ……。
 沢山の人間の血が見たい。絶望が見たい。死が見たい。
 そんな心の闇が俺の精神を徐々に蝕んでいくのが分かるんだ。
 俺はそんな悪鬼になりたくない。
 人の命を弄びながら生きる怪物になるぐらいなら俺は人間として死を受け入れることにした。
 どうか、こんな悲劇が二度と起こらないよう祈りを込めながら引き金を引こう。
 さよなら愛する者よ。愛する故郷よ。最期にもう一度会いたかった……』

109 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:55:02 ID:rHFmitM.
非常に信じがたい内容であった。
もしや核を解除させないようにと夢物語を並べているのでは?とも思える。
だが妙に信憑性があった。
過去に参加したMI作戦でも歴史通りに繰り返そうとする修正力は確かに感じ取れたからだ。
このバトルロワイアルを繰り返す島の話も本当なのかもしれない。
我々は一通り室内を調べた後、船内にて隊員達にこの情報を伝える事にした。


○月▽日

隊員達を防災試験センターへ集合させた。
実際に彼らにデータを見せることで島の現状をより理解してもらうためだ。
半信半疑だった隊員達も監視カメラによって撮影された過去の殺し合いの映像をモニター越しで目の当たりにして
実際に行われていたことは全員理解できた。
だが歴史の修正力という存在に関しては馬鹿馬鹿しい迷信であると否定する者も少なくなかった。
引き続き核の機能停止を行うべきだと主張する意見と
殺し合いが再び始まる可能性があるから迂闊に解除するべきでないと主張する意見に別れた。

それぞれの意見を聞き入れた提督は、核の無力化を行った後に、回収したデータと共に速やかに本部に帰還する方針を立てた。
軍人として、物理的証拠の無い現状で歴史の修正力を真に受けるわけにはいかない。
仮に歴史の修正力が真実であったとしても素早く撤退すれば、殺し合いが始まるより早く抜け出すことが可能だろう。
きっと提督はそう考えていたのだろう。

倉庫の中にある首輪が発見された。
本来は参加者の首に装着され、中に仕込まれた爆薬で従わない人間を殺害する為に作られていたらしいが
この首輪は爆薬を取り外され、放射能から身を守る力場を発すると説明書に書かれていた。
島に点在するアンテナの一キロ以内にいる限り効力を発揮し、核の機能を解除してもそれは失われないという事が分かった。

これがあれば防護服無しでも活動が可能となり、我々艦娘は艦装を装着する事ができる。
だがもしそれが偽りであった場合、放射能が自らの体を蝕み死が訪れる。
あまりにもリスクが大きい行為であるため、装着を見送ろうとした時
提督は首輪を手に取ると、防護服を外し自らの首へと装着した。
周囲が危険だと静止の声をかけるが、提督は一切迷うことなく地上へと出ていった。
放射能に汚染された大地にその身を晒した提督は大きく深呼吸を数回繰り返す。
軍人達は冷や汗を掻きながら提督の姿を見守った。

数分の時間が流れた、提督の体に一切の変化は見られない。
首輪の効果は真実であった、提督が自ら体を張って真偽を確かめたのだ。
その提督の覚悟に報いるために艦娘達も後に続いて首輪を装着した。
軍人達は最初は拒否を続けたが数十分の時間が流れても
誰一人不調を訴える者がいないと知るや、殆どの人間が首輪を付けての行動を選んだ。
防護服の窮屈さから解放されたのが嬉しいのか、笑顔を取り戻す兵は少なくなかった。
4人ほど警戒を解かず、防護服を徹底して脱ぎたがらない技術者もいたが強要するべきでは無いと彼らの意思を優先させた。

110 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:55:37 ID:rHFmitM.
△月○日

それから二日が経ち、島に設置されたアンテナの核全てを無力化する事に成功した。
艦装が装着可能になったことで水上にあるアンテナも
艦娘達の引率により技術者を効率良く運び出せるようになり短時間で核の解除が可能になった。
その甲斐もあって予定より早く任務を終える事ができた。

あとはこの島から脱出し、得られた情報を本部に報告するだけだ。
島から帰れると知ると、ホームシックにかかった軍人二名と睦月は随分と喜んでいた。
それだけ心細い思いをしていたのだろう。

船が動き出し島から遠ざかり始めたその時、激しい爆発音が起きて船が火の海に包まれた。
弾薬庫に積まれた火薬の数々が爆発を起こしたらしい。
船内の破壊や浸水が激しく、船は1時間足らずで海の底へと沈んだ。
決死の救助を行ったが技術者2名、軍人4名が事故により命を落とした。
提督も人命救助のために単独で燃え盛る通路を突き進んだまま行方不明に。

あの提督が死んだとは思えない。
提督がいつでも戻ってこられるよう最善の行動を取り迎え入れられるように。
生き残った我々は島に再上陸して救難信号を出して、救助を待つことになった。

軍人達の精神状態が非常に不安定になっている。
核を解除したせいで自分たちはこの島に閉じ込められた。
バトルロワイアルが始まろうとしているんだと、嘆く者が後を絶たない。
特に帰りを楽しみにしていた睦月と若い軍人二人は涙を流しながら帰りたいと呟いていた。


△月X日

次の日、一人の技術者が案を持ち出した。
核の解除が原因でバトルロワイアルが始まろうとしているなら
もう一度、装置を起動させれば殺し合いが起こらずに済むのではないだろうか?と。
生き残りたい一心で賛同する者と、迷信のために更に危険を犯すべきでないと否定する者に二分された。
提案した技術者は装置の起動を行うのは自分一人でも構わないと話した。

無力化した核の装置を再起動する案は賛同しかねるが
このままでは隊員達の精神はどんどん悪化するのみだ。
彼らの精神の安定を兼ねて脱出の目途が立つまで、エリア一つ分のみの核を再起動する方針で進められた。

111 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:56:39 ID:rHFmitM.
不慮の事故が起こった場合を想定して、陸地から離れた海上であるМ1の核を再起動する方向へ話が進められた。
起動を行うのは、先ほど案を考えた技術者1名と目的地へと引率するために北上が自ら立候補を挙げた。
大井は北上の動向を強く反対したが、北上本人による真摯な説得を受け渋々と了承した。

我々は海岸にて待機し目的地であるМ1へ向かう二人を見送った。
船内事故で既に6名の命が失われている。
これ以上の犠牲者が出ないようにと神頼みしている兵達もいた。
息の詰まるような緊張状態の中でひたすら二人の返りを待った。
一瞬、思わず目を覆うほどの眩い光が水上から放たれた。
光の後に続いて轟音が響き渡り、押し寄せてくる大波が海岸を飲み込んだ。

М1で設置されたアンテナが消滅している。
核の起動に失敗し爆発が起こったのだ。
死体を確認するまでもなく既に二人の命が失われたのは明白だった。
大井は北上の名を何度も呼びながら、爆心地へ向かおうとした。
М1のアンテナが消滅した今、あそこへ向かえば首輪の効果が発揮されずに放射能をその身に受けることになる。
我々は大井を押さえつけ、冷静さを取り戻すよう説得をした。
大切なパートナーを失ったのは分かるが、だからこそ今は落ち着いて対処しなければならない。
隊員達も落ち着いて考えようと言葉に出して周りをなだめている。
いや、正確には自分自身に言い聞かせているのだろう。
この場にいる全ての人間が恐怖と不安で押しつぶされそうになっているのだ。

船が沈んだ今、寝泊りする場所を失った我々は、廃村へ向かいそこで寝泊りすることになった。
建築物は古いが雨風を凌げる場所はここが一番近く、心身共に疲弊した状態で遠出するべきではないと判断された。
大井は一人にしてほしい。と小さな一軒家に閉じこもった。
一人で落ち着く時間が必要なのだと考え、我々は彼女の意思を尊重した。
現在の死者は8名、これ以上増やすわけにはいかない。
必ず生きて帰らなければ。


△月□日

黎明まで時間が経った時、次々と銃声が鳴り響き、隊員達が目を覚ました。
外へ出ると何者かが銃を乱射して隊員を一人、また一人と命を刈り取っているのを発見した。
暗闇で顔がよく見えない、誰が撃っているのか。
銃口から放たれる一瞬の火が持ち主の顔を僅かに照らし、その謎を明かした。

それは返り血を浴び、狂気の笑みを宿した大井だった。
彼女は対応の遅れた兵士達を次々と射殺し続けた。
凶行を止めるべく威嚇射撃をして説得しようとするが
大井は高笑いを繰り返し、こちらに向けて銃を放った。

陸奥は私を庇い、銃弾をその身に大量に浴びながら艦砲射撃を放ち
大井の胸に風穴を空け、彼女の行動は停止した。
陸奥は致命傷を受けていた、涙を流す私の手を優しく握ると
自分の分まで長く生きてほしいと言い残して、息を引き取った。

多大な犠牲が起こった。
外では大井に射殺された軍人11名、技術者2名と
大井の泊まっていた一軒家に一番近い家の中には
眠っている状態で射殺された軍人8名の死体が発見された。
大井、陸奥を合わせて23名が闇の中で命を失った。

112 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:57:17 ID:rHFmitM.
だがこれで終わりでは無かった。
狂気はまるで流行り病のように伝染していった。
一人の軍人が叫んだ。バトルロワイアルは始まっている。相手を殺さなければ俺たちは殺されると。
銃口を私に向けた。大井の凶行を目の当たりにして、人間よりも力を持った艦娘を恐れたのだ。
赤城は狂乱に満ちた空気を静めるべく説得を始めた。
皆さん運命に負けないで、呪われた歴史を繰り返してはいけない、そう懇願するように叫んだ。

しかし無常にも軍人達の心には届かなかった。
軍人の放った銃弾が赤城の体を撃ち抜いた。
撃たれてもなお赤城は抵抗することなく、説得を続けた。
銃弾が赤城の頭に命中した。脳漿を撒き散らしながら赤城が倒れた。

他の軍人が雄叫びをあげながら赤城を射殺した軍人を撃ち殺した。
それに呼応するように軍人達が次々と銃を構えて無差別な撃ち合いが始まった。
説得が不可能な状態だと察した私は、泣き叫ぶ睦月の腕を掴み逃走しようとすると
一軒家の隅で震えている二人の人間を発見した。
彼らはホームシックにかかった若い軍人達だった。
大井の銃声を聞いてからずっと室内で震えていたのだ。

彼らを見捨てるわけにはいかない。
私が声をかけると最初は警戒していたがなんとか説得に応じて、行動を共にすることが出来た。
二人の若い軍人を連れて廃村から脱出しようとしたところで、背後から銃声が響いた。
廃村で殺し合っていた軍人の一人が私たちを追撃に来たのだ。
このままでは睦月達が危ない。
私が殿として相手を引きつけてる間に、三人は先に逃走するよう指示を出した。
灯台を待ち合わせ場所として伝えた後、威嚇射撃を逃走の合図にして撃ち放った。

威嚇射撃に怯むも軍人は攻撃を止めようとはしなかった。
こちらに戦う意思は無いと伝えるも、全く聞き入れようとしない。
命を奪うしかないのか、決断を迫られた時、軍人が背後からの銃撃で倒れた。
軍人が息絶えるのを確認してから、撃った人物が姿を現した。
彼らは生き残りの技術者だった。
廃村から脱出した技術者の一人が長門を探して追いかけていたのだ。

技術者は、首輪だけでは危険だと言って防護服を渡し着る様に薦められた。
私は技術者の言う通りに艦装を外して防護服を着ると、技術者は伝えたい事があると言って
防災試験センターへと連れてこられた。
睦月達の事も伝えるが技術者が言うには緊急の用事なので最優先して欲しいとのことだった。

113 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:58:16 ID:rHFmitM.
防災試験センターのモニターを覗くと新たな事実が発見された。
地上の大気が時間が経つごとに徐々に浄化されていくのがデータで明らかになっていた。
現段階では首輪や防護服が無ければ、すぐに命が奪われる状況だが
そう遠くない未来で放射能の消えた島になるのは確実であった。

だが良い情報ばかりではなかった。
そんな嬉しいニュースを台無しにして絶望を与えるほどのデータも映し出された。

『第○○回 バトルロワイアル 開始予定 参加者 61名』

今まで無かった項目である。
参加者の欄を覗くとそこには吹雪、金剛、加賀の名前があった。
今までの出来事からして情報は偽りでないと分かる。
この三人が次の殺し合いの参加者に選ばれたのは明白であった。
なんとか止める手立ては無いのか。

核を出来るだけ再起動させよう、と技術者が言い出した。
また爆発を起こすかもしれないが、起きないかもしれない。
どの道、脱出が不可能ならやれるだけのことをやってみたい。
技術者は強い意志で私に言い聞かせた。

私もそれに賛同をした。
途中で諦めていては歴史の流れを止める事など絶対に不可能だ。
私はバトルロワイアルの打破に全力を注ぐ。
このレポートを見ている者は絶対に殺し合いに乗らないでほしい。
そして出来れば、この情報を軍に伝えてほしい。
君たちの無事と勝利を願っている。


「レポートの作成はこれで終わりにしよう。あとは生きて帰れたら続きを……ん?」

新たな情報がモニターに表示された。
そこにはこう書かれていた。

『参加者1名 先行投下開始 世界の意思を阻もうとする者を速やかに排除せよ』

「なんだ……これは……?」

不穏な文章が流れると同時に近くから落下音が響いた。
外へ出た長門が目にした者は巨大な球状の金属の塊であった。

(世界の意思を阻もうとする者、それは私達のことか?ならば、あれは……敵)

防護服を脱いだ長門は艦装を取り付けて戦闘態勢に入り様子を伺う。
すると金属の塊の扉らしき物が開かれ、内部が露わになった。
内部には椅子が有り、それに座っている人物がいる。
その者がゆっくりと起き上がると長門を睨みつけて、憎しみに満ちた唸り声をあげた。

114 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:59:13 ID:rHFmitM.
「――――――■■■■■■■■■■!!!!」
「これは……!?」

全身から邪気に満ちたオーラを放つその者は、黒いフルプレートを全身に着込んでおり
頭部にある視界を確保するスペースからは赤い光を発していた。
明らかに普通の人間ではない。

「■■■■■!!」

言葉にならない唸り声と共に鎧の男は、大地を蹴り一瞬にて長門の眼前にまで迫る。
右腕を使って思いっきりぶん殴る。それは何の技術も込められてない単純な暴力。
ただ圧倒的な身体能力の差によって長門はその攻撃を防ぎきれない。
辛うじて間に合った両腕でのガードすら弾いて腹部へとめり込ませた。

「ガハッ!……くっ、こんなところで私はァ!!」

戦艦級を遥かに凌駕するパワーを持つ存在。
今まで出会ったことの無い強敵だが諦める訳にはいかない。
この負の連鎖を断ち切るまで絶対に倒れない。
砲撃を鎧の男に向けて撃ち放った。

鎧の男は機敏な動きで砲撃を次々と回避した。
相手は力だけではない。
スピードも圧倒的であった。

砲撃を避けながら鎧の男は、球体へと下がっていった。
逃亡を図ろうとするのかと長門は一瞬思った。
それは間違いであるとすぐに気付いた。

「……ッ!?まずい!!」
「――――■■■■!!!!」

鎧の男が球体から取り出したのはМ202ロケットランチャー。
手に取ったそれは、徐々にどす黒く変色していった。
長門は直感で、黒いロケットランチャーは異常であると理解した。
ロケットランチャーが長門に向けられるよりも速く、森の奥へ向かって駆け出した。
木々に囲まれた場所なら、直撃だけは避けられる、そう判断しての行動だった。
間違った判断では無い、普通のロケットランチャーであればの話だが。

放たれたロケット弾は障害物に当たる事無く、慣性を無視した変則的な動きで
木々を躱しながら長門に向かって突き進む。
その弾道は持ち主の意思によって自在に動き回る。
回避しようとも、目標に当たるまで追い続けるのをやめない。
なぜロケットランチャーにそんな超常的な力が備わっているのか。

全ては鎧の男による能力によってもたらされた力であった。
彼は聖杯戦争によってバーサーカーのクラスで召喚されたサーヴァントである。
サーヴァントには宝具と呼ばれる切り札がある。
このバーサーカーが持つ宝具の一つに『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』がある
その効果は自らが手にした物を、己の宝具として支配する事で通常の武器ですら常軌を逸した力を与えることが出来る。

115 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 02:59:58 ID:rHFmitM.
ロケット弾が木々の隙間を縫うような動きで長門の眼前へと迫った。
直撃は避けられない、と長門が心の中でつぶやいた。
その瞬間、弾頭は空中で爆ぜた。
爆風が長門を包み、衝撃に煽られて彼女の体は吹き飛ばされた。
ロケット弾が長門に直撃することなく、爆発した原因は第三者からによる襲撃だった。

「くたばれぇッ!!!!」

廃村から生き延びた軍人が視界に移ったバーサーカーを敵と見なして銃弾を撃ち放ち
鎧に被弾してバーサーカーの集中力を阻害し、ロケット弾の制御力を奪ったのだ。
軍人は長門支援したのではない。
もし先に見かけたのが長門だったら彼女に銃口を向けていたであろう。

「■■■■■■――!!」

軍人の方へと視線を向けたバーサーカーは攻撃対象を変えた。
銃弾を浴びつつも傷一つ付かないバーサーカーは軍人のいる方向へゆっくりと歩く。

「銃が効かねぇ!?く、くるな化け物ォオオ!!!」

懇願に近い叫び声を挙げながら銃弾をバラめくが、弾薬が空となり
バーサーカーの進行を止める手立ては無くなった。
男は背を向けて逃げようとするがバーサーカーの左手が彼の肩を押さえつけ
強制的にうつ伏せにされる。

「おねがいだぁ……命だけは助けてくれ……殺さないでぎ、ぎゃああああああああ!!!!」

バーサーカーの右腕は軍人の頭部を鷲掴みにして。そのまま上に引き上げた。
頭部は脊髄ごと、胴体から引き抜かれて首から大量の血が噴出した。
右腕に持った頭部を道端に投げ捨てると、長門が逃走した方角を見つめたあと立ち去った。
長門の殺害は後回しにされたようだ。


数時間後……


日が沈み、辺りが薄暗くなっていく中でアンテナに設置された核を再起動している人物がいた。
防災試験センターにて長門と別れて行動していた技術者である。
今の所、核の暴発が起こる事なく一人でいくつもの核の起動に成功していた。

116 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:00:37 ID:rHFmitM.
「これで8カ所目か。これでバトルロワイアルを封じる事が出来ればいいが……ん?」
「■■■■■■!!」
「誰だお前は!?来るな……うわああああああああああああ!!!!」

道中で角材を手にしたバーサーカーは技術者の頭部に向かって振り下ろし
頭蓋骨を砕き、肉片を地べたにバラまいた。
バーサーカーは長門よりも核の再起動を進めている技術者の命を優先して狙わせたのだ。
もっともバーサーカー本人からすれば闘争本能に身を任せているだけに過ぎないのだが
この島でバトルロワイアルを繰り返そうとする歴史の修正力が
無意識の内に、バーサーカーを突き動かしていた。

核を暴発させれば汚染の浄化に更に時間を費やす事になり
参加者同士を殺し合わせる時間が長引いてしまう。
それを解決するためのテコ入れとして一足先にバーサーカーをこの島に投入した。
本能で動き回るバーサーカーは、歴史通りに事を進めるのに御しやすく。
不要な行為を働こうとする人間の駆除を優先させた。
自我の無い怪物達が参加者として呼ばれたのも、それが理由となっている。

「■■■■■■」

技術者を殺害したバーサーカーは歩きだす。
残りの邪魔者を始末させようとする歴史の修正力の流れに引きずられて。


その頃、長門は森の中で意識を取り戻した。
ロケット弾の爆発を受けて吹き飛んだ長門は、後頭部を強く打って
数時間ほど眠っていたのだ。

「……くっ、頭が痛い……意識を失っていたのか」

長門が辺りを見渡すと日が沈みかけていた。
周辺には襲撃者の姿は無い。
何とか逃げ切れたのだと理解は出来た。

肉体の負傷状況を確かめる。
中破しているが艦装は正常に働く。
戦闘の続行は可能だ。

「―――!?睦月達が危ない……」

もし、あの襲撃者が灯台に向かえば待機している若い軍人と睦月の命が狙われる。
長門は急ぎ、灯台へと向かった。
無事でいてほしいと心の中で強く願いながら。

117 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:01:12 ID:rHFmitM.
「はぁ……はぁ……よかった………無事か……」

息を切らしながらも灯台へと着いた長門は
灯台で戦闘が行われた形跡が一切無い所を見て安心した。
睦月達がロケットランチャーを持った鎧の男と遭遇せずに済んだのは不幸中の幸いだった。

彼らの無事を直接確かめるべく、長門は灯台へと入った。
ドアを開けても三人の姿は見えない。
どこかへ行ったのか?それとも奥の部屋で待機しているのか?

「心配するな長門だ!お前たち無事か!?」

返事は無い。
一階にはいないようだ。上の階へ向かい探す。
室内の明かりが二階の部屋にある隙間から漏れている。
三人はそこにいるのか?長門はドアをゆっくりと押して部屋の中へ入った。

「―――ッ!?お……お前たちぃ!!」

そこは無残な光景が広がっていた。
若い軍人二人は、全裸になって睦月を犯していた。
一人は睦月の膣内に挿入して、ひたすら腰を振り続け
もう一人は自らの陰茎を睦月の口内に向け喉元まで押し当てていた。
睦月の意識は朦朧としていて、セーラー服はビリビリに引き裂かれており
服としての役目を果たしておらず
体中に擦り傷や痣が見られ
陰部には大量の血と精液が溢れた跡が惨たらしく残っていた。

彼らは嫌がる睦月にひたすら暴行を加えて
抵抗する気力を奪ってから強姦を繰り返していた。
その睦月の変わり果てた姿を見て、長門は怒りに震えた。

「お前たちが何をやったか分かっているのかァ!!!!」

長門は二人の軍人を思いっきり殴りつけた。
戦艦級の拳をまともに受けた二人は意識を失って倒れる。
怒りに飲まれながらもぎりぎりの所で理性を残していた長門は
彼らを殺さずに気絶させるだけに留めた。

118 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:01:46 ID:rHFmitM.
「すまない睦月……私がもっと速く駆けつけていれば……」
「……………………」

睦月は答えない。
光を失った瞳は、彼らが装備していたアサルトライフルを見つめていた。

「……?何をしている睦月!?」

アサルトライフルを拾い上げた睦月は
気絶している軍人二人に銃口を向けると、そのまま引き金を引いた。
放たれた銃弾は軍人達の体に着弾して命を奪った。

「止めるんだ睦月!!……ぐっ」
「…………うごかないでください」

睦月は牽制するように長門に銃を向けた。
長門に銃を向けたままゆっくりと睦月は部屋を出た。
睦月の後を追う長門、睦月の行き先は灯台の屋上だった。
まさか……と不安がよぎる。
長門は屋上への扉を開けた。
足元にはアサルトライフルが捨ててあった。
睦月は屋上の柵を越えて身を乗り出していた。

「死んでは駄目だッ!!睦月!!!!」
「…………ごめんね………吹雪ちゃん…………」

睦月は柵を握っていた手を放して、身を投げ捨てた。



「………さよ…………なら………」



どさりと命を散らす小さな音が、長門の心に深く大きく突き刺さった。

119 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:03:00 ID:rHFmitM.
「うぐっ……うわああああああああああああ!!!!!!!!
 どうして……どうしてこんなことになってしまうんだぁ!!
 私は……私は皆をたすけたかっただけのにぃいいい!!!!」

今まで気丈に振る舞っていた長門だったが、ついに心に限界がきた。
守ろうとしてきた仲間たちが次々と死んでいく地獄のような世界に
長門の精神も崩壊寸前であった。

「たすけて……たすけてください提督………うう……
 ……まだ挫折するわけにはいかない……吹雪たちを助けなければ……」

涙を流し続けたあと、まだ守らなければならない人物がいる事を思い出した長門は
防災試験センターに向かった。



23時30分 バトルロワイアル開始まであと30分


防災試験センターに到着した長門は、新たなメッセージが届いてるのに気づきそれを開いた。

「まさか……これは提督の……」

メッセージの送信者に提督の名があった。
内容は0時00分にバトルロワイアルの参加者がこの島に搬送されてくる。
私は参加者達に指示を与えて、導いてほしいとのこと。
伝える指示は同封されたメッセージの中に記されている。
そのあとは提督が引き続き、私に指令を出すと書かれていた。

「さすが提督だ。我々から離れた所でそこまでの考えを張り巡らしていたとは……」

もうすぐで0時になる。
今度こそ守り抜いて見せる。


0時00分 バトルロワイアル開始

120 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:03:37 ID:rHFmitM.
「……ふう、彼らに通信は届いたのだろうか?いや、提督の指示に間違いはない。必ず上手く行くはずだ」

今の長門にとって唯一の心の支えは提督だった。
提督を信じることで、精神のバランスが保っていられる状況だった。
長門はもう己のみの力を全く信じられなくなっていた。

その時、防災センターのゲートが轟音と共に破壊された。

「なにごとだ!?」
「――――■■■■■■!!!!」

ロケット弾を撃ち、ゲートを破壊したバーサーカーが現れた。
歴史の修正力が長門を抹消させようとしていた。

「貴様ぁあああああああああ!!!!」

バーサーカーの姿を見た長門は憎しみを露わにして艦砲射撃を放った。
宝具と化した角材を使って、バーサーカーは砲撃を受け止めるも直撃と共に粉砕され吹き飛ぶ。

「お前さえいなければッ!!睦月は死なずに済んだぁああああああああ!!」

バーサーカーが起き上がる隙も与えずに次々と砲撃を放ち続けた。
長門はこの島で初めて、本気で相手を殺害しようとしている。
殺意を込めた攻撃がバーサーカーの肉体に傷を増やしていく。
このままおめおめと倒されてくれるバーサーカーでは無かった。
ダメージを受けつつも起き上がると、長門へ向け走り出し
長門の喉元へ向けて手刀を放った。

長門は体を反らす事で首を掠める程度に抑え
カウンターでバーサーカーの頭部を殴りつけて怯ませた。
これが原因となり勝敗が決まった。

「ぐぐっ……ごほっ!!」

長門の敗北である。
バーサーカーの手刀が長門の首輪に掠り、機能を停止させたのだ。
目や鼻や口から血が溢れ、零れ落ちる。

その時、新たなメッセージが届いた。
提督からである。
長門は助けを求めるようにコンソールに向かい、メッセージを開いて目を通した。

『長門よ 任務ご苦労 ゆっくりおやすみ』

「‥‥な、なぜ‥‥」

提督は知っていたのか?
私があいつと戦い、命を落とすのも。
そんなはずは無い、提督は私たちを助けるために奮闘しているはずだ。

「‥‥これも‥‥なにか考えが、あっての‥‥そうか!私がこの役目になったのは‥‥」

まさか提督はこのバトルロワイアルの主催者になったのか?
主催者である提督に捨て駒として切り捨てられて殺されたのか……。

 誰に看取られることもなく、悲しみと絶望で凝り固まった鬼の形相で、その少女は息することをやめた。


 コンソールだけが、目に悪い光で彼女を照らしていた。

121 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:04:16 ID:rHFmitM.
バーサーカーはゆっくりと長門の死体に近づいた。
長門の体を起こすと、指を長門の胸から体内へと差し込み
ある物を掴み取って引き抜いた。
それは長門の心臓だった。
バーサーカーは長門の心臓を食らい、魔力を補充した。
そして艦装を引き剥がすと、自らの武器として持ち出し
防災試験センターから立ち去った。

【G-5/防災試験センター/1日目/深夜】

【バーサーカー@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(小)、ダメージ(小)
[装備]:М202ロケットランチャー2/4 長門の艦装
[道具]:無し
[思考]
1:本能のままに行動する
※歴史の修正力によって無意識の内に動かされています。
核の脅威が完全に消えない限りは本格的な殺し合いは制限されます。
ただしバトルロワイアルの破綻に関わる行為をした参加者は積極的に狙います。

【主催】

【提督@艦隊これくしょん -艦これ-】

※舞台は『歴史の修正力@艦隊これくしょん -艦これ-』によって殺し合いの歴史を繰り返している島です。
※島には超常的な技術力が眠っており、誰もが主催者になりうる可能性をもっています。
※現在は参加者同士を殺し合わせようとする力は働いていませんが、放射能の汚染が浄化され
島のどこかのエリアにある8カ所の核が全て無力化された時、参加者を殺し合わせようとする修正力が働きます。
※前回バトルロワイアルの参加者及び調査に向かった軍人達の死体が島に放置されています。

 技術者16名 死亡
 海軍中隊24名 死亡

【長門@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【陸奥@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【大井@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【北上@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【赤城@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】
【睦月@艦隊これくしょん -艦これ- 死亡】

122 ◆/ebAZhNPSM:2015/04/25(土) 03:05:00 ID:rHFmitM.
投下終了です
展開の都合上、見せしめ枠を少し増やしました

123名無しさん:2015/04/25(土) 03:11:27 ID:1rSSqo5Y
投下乙です。
スゲーことになってんゾ〜これ〜(賞賛)

124 ◆777Wt6LHaA:2015/04/25(土) 03:39:26 ID:YEb88iWY
投下乙です

まさか核と放射線がロワを止める救世主だったとは……
核の総数が8個ということは、バトルロワイヤルの本格的な始動は08:00以降か

125名無しさん:2015/04/25(土) 03:44:34 ID:65kfErB.
アンテナの範囲外に出ると首輪が機能しなくなって死ぬので、アンテナがあるエリアを繋げないと移動できずに8時間以内に全滅する事になりますね。

126名無しさん:2015/04/25(土) 07:12:16 ID:kRi9Ctok
こんな濃くて面白いOP(+補完)を見たのは初めてです
すごい

127 ◆qB2O9LoFeA:2015/04/25(土) 10:10:28 ID:69ZfG7ic
投下乙でした

こういう話好きです、そりゃもう
倒しようのない主催というのもドンピシャです

ただ、睦月のPTSD・レイプ・自殺というコンボは企画的にセーフなのかが課題になるかと
ある意味見せしめの一人ですが、ここは議論は必要になるのではないでしょうか

128名無しさん:2015/04/25(土) 10:22:16 ID:kRi9Ctok
>>125
アンテナはたくさんあってそのうち8個だけ核つきってことじゃね?

129名無しさん:2015/04/25(土) 10:24:00 ID:z4JFCKJU
漫画版バトルロワイヤルではレイプ描写あるけど、キャラを「合法的」に
陵辱する連中が続出しそうな気がするから、個人的には修正するのがいいんではないだろうかと思う。

130名無しさん:2015/04/25(土) 16:33:16 ID:kRi9Ctok
児ポ法等で規制が厳しくなるとリアルで予想されるなか最後の砦であるネット創作物にも自主規制の波が!ただただ悲しい。

131 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 10:13:03 ID:I39YXPGs
投下します。

132 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 10:13:47 ID:I39YXPGs
プロデューサー.1
「あの、すいません。ここがどこか知りませんか?」
「……………………………」
「………あの…」
「……………………………」

懐中電灯片手に深夜に少女にしつこく話しかける男性とそれを無視して歩き続ける少女
まるで悪質なスカウトマンかナンパのような光景だが、話しかけているスーツにメガネの男性
通称「プロデューサー」はいたって真面目であった。
記憶では事務所で仕事を片付けていてそろそろ帰ろうとしていた気がする。
その時、うたた寝でもしてしまったのか一瞬意識が暗転してしまったと思ったら、
気が付け見知らぬ丘に飛ばされていた。見える範囲の周囲には建物はない。標高は低く、遠くに海が見える。
まるで冗談のような現象。自分自身でもこれが現実なのか信じられない。自分は夢でも見ているのか。
あの一瞬のうたた寝のように感じたのは実はもっと長い時間でその間ここまで連れてこられたのか?
現実感が湧かず、酔っているわけでも眠いわけでもないのに、足元はふわふわと感じ、
眼は冷めているのに思考は鈍くなっている。

タブレットを見ると様々な情報が映し出された。曰く「正午になると一つ目の核爆弾が爆発」だの
「近くにいると放射性障害で死に至る」だの、現実離れした言葉も頭によく入ってこない。
ただ首につけられた、外し方もわからない「首輪」だけは妙に冷たい感触を伝えてくる。
そしてタブレットに表示された名簿に載っている765プロのアイドルたちと、かつて961プロにいた天ヶ瀬冬馬。
本当にこんな状況にアイドルたちも巻き込まれているのか?だとしたらなんとかして会って安心させなければ。
すぐにポケットに入っていた携帯も使ってみたが…圏外で全くどうにもならない。
出会う方法も分からず、ふらふらと夜の島(なのだろうか。)の道を歩いていると、
最近の青い街夜灯のような光を見つけ、誘われるようにふらふらと引き寄せられていった。
そこにいたのは、真っ白な顔に鬼火のような光を左目に灯した少女だった。

空母ヲ級.1
彼女の最後の記憶は轟音と光、そして直後に訪れる静寂と闇だった。
彼女は沈んだ。艦を憎悪し沈めることが使命の彼女はその役割を果たせることなく沈んた。
ただ沈む瞬間は憎悪も後悔も、達成感も満足感も彼女は感じなかった。
的確に打ち込まれた駆逐艦の魚雷は、苦しみも伝わる間もなく彼女の意識を暗い海の底へと沈めた。
もしかしたら最早何もできずに沈みながら、苦しむ必要も無くなった彼女はある意味救われたのかもしれない。

意識が戻る
昏い静寂から叩き起こされたにも関わらず、頭は事務的に周囲の状況から拾い集めた情報を処理していき、
ここは島らしいことや、放射能というものが蔓延していることを理解する。
おそらく他の深海棲艦達との通信が通じないのもそれが原因だろう。
だが、そのように拾い集めた情報の他に、彼女はある確信を持っている。
「艦むす」はどこかにいる。
なぜ轟沈したはずの自分が修復しているのか分からないが、自分が再び存在している以上、倒すべき艦むすもどこかにいる。
それは根拠も理屈も何もない、盲信とでも言えるようなものだったが、とにかく彼女はその前提を行動に組み込んだ。

海上戦闘に特化した自分の体は陸上では十分な性能を発揮できない
艦むすを沈めるために彼女は海へ向かって進路をとった。
海では艦むすも陸地より性能が向上するので単純に有利になるわけではないのだが、
これは殆ど海に棲むモノの本能による選択だった。そういうものなのだ。
その彼女に接近する何かを発見し、彼女は一瞥だけする。
「あの、すいません。ここがどこか知りませんか?」
発見した時から感じていたがやはり艦むすではない。艦むすに宿る艦艇の魂を感じない。
 人類。おそらく成体。多分オス。艤装・武装の類なし。
 結論―――脅威なし
彼女は気に留めることなく歩き続ける。
海上を制圧し人類社会にとっての脅威である彼女達だが人間自体に特に興味はない。
彼女達が憎悪(興味)を向け沈めようとするのは艦やその魂を持つ艦むす、その基地等のみ。
彼女達はそういう存在だった。

133 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 10:14:26 ID:I39YXPGs
プロデューサー.2
(もしかして俺、勘違いしてる?この子、恰好が変なだけでこの状況とは関係ないのか?)
そう。勘違いである。
例えばデパートや量販店の売り場で、スーツ姿の客を店員と間違えて声をかけてしまった経験はないだろうか。
また、京都で街中を歩いてる舞妓におおはしゃぎして写真を撮ると、実は舞妓体験をしているただの一般人だったりする。
人は服装や外見に惑わされやすい生き物であり、特に馴れない場所でそれっぽい人をその場に関係ある人物として思い込む事がある。
異常な状況に奇抜な格好で現れた少女に対し、何か知っているのではないかと過剰な期待を抱いてしまったのだ。
少女が無口で迷いもなく歩いていることも、ここに慣れた地元住民のようなものだと思っていたのだが…。
(それにしてもすごい格好の子だなこの子。水着みたいなスーツ着て、顔も真っ白で、油の匂いがするし
 めちゃくちゃ大きな帽子被ってて、目のあたりがライトみたいなので光ってて…。何かのコスプレかな。
 というかこの状況、俺すごく不審者っぽいな…夜だし、警察に会ったら捕まるかも…。)
何も返事をせずズンズン進んでいくヲ級に、今まで5分ほど熱心に、時にはたどたどしい英語も使って話しかけ続けていたのだ。
普段なら最初に無視された時点で話しかけるのを諦めただろう。
だがあまりに異常な状況に彼女を唯一見つけた手がかりのように思って必死になってしまったのだ。
冷静に考えれば単に気味悪がられて無視されているのかもしれない。知らない土地で動揺していたとはいえ、恥ずかしくなる。
もし彼女も自分と同じように巻き込まれたのだとしたらなおさらだ。
他の人を探すか、明るくなるまで待つか、どこか街にまで行く方法はないか…と足を止めて距離をとったところで
少女も、ピタリと立ち止まった。

そしてふらり、とよろけると、
そのまま路上に倒れこんだ。

「どうしました!」

少女の帽子が地面に当たると「ゴン!」という硬い音が鳴り響いた。
どうやら帽子だと思っていたものはヘルメットのようなものだったらしい。
慌てて傍にかけより声をかけるが呻き声がするだけで、懐中電灯で照らされた少女は片側しかない表情で
苦しげな表情を浮かべていた。

空母ヲ級.2
海を目指し歩行していると人類のオスがついてきて何か話しかけてきたが、彼女の眼中にはなかった。
こういうことは海上でもよくあることで、背びれのついた哺乳類が並走してきたり音波を飛ばしたりしてきたものだ。
移動を妨げるべく前に立ちはだかるわけでもないので、特に何もせずに放置して思考に没頭する。

彼女は考える。
海に辿り着くにはまだ時間がかかる。
それまでに自分の身を守るために艦載機の製造を始めるべきだと。

空母ヲ級型の深海棲艦は体内の各種資源を原料に、武装を持ったドローンを帽子のような部分で生み出す能力をもつ。
それぞれ自動的に戦闘や索敵をこなす便利な兵器だが、一体一体は非常に弱いため通常の戦闘では何十体も製造する必要がある。
製造した艦載機は頭上に溜めておき、戦闘時には出撃させるのだ。

艦載機の製造を開始して、まず製造速度が遅いことに気づいた。
一度轟沈した影響がまだ残っているのかもしれない。それでもまず一体を生み出す。
続いて二体目の製造を開始。一体目の時より更に製造速度が遅い。
やはり艦載機を生み出す部位になんらかの障害が発生しているのだろうか?
その時、彼女は何かに気づいた。何か、が具体的に何かは分からない。
おそらく身体に異常が発生しているのだろうが、一体どのような異常が発生しているのか全く判断できない
今までに体感したことのない未知の感覚だった。
二体目が、一体目より時間をかけて完成する。
僅かな時間だけ彼女は違和感の原因のわからないまま三体目の製造を始めるか否かについて逡巡する。
原因も不明、体の不調も多数で対応もできない
この感覚の正体を掴もうとする。艦載機が製造や艤装での移動の際に資源や燃料が枯渇した時の感覚に似ている気がするが、
艦載機の原料は20体は製造できるほどあり、艤装はそもそもこの地に来てまだ使っておらず、燃料の消費などない。

彼女は、得体のしれない違和感より、艦載機が足りないという確実に存在するリスクを減らすことを選んだ。
彼女は知らなかった。その初めての感覚が、一体どのような意味を持つのか。
どれほど危険なサインだったのかということを。

三体目の製造を開始
まるで徐々に体が締め付けられ潰れるような感覚と同時に体の内側が空っぽになっていくような、矛盾した不快感が彼女を襲う
二体目より更に時間をかけて三体目の製造が完了したとき、
浮上と轟沈の感覚が混ざったような感覚が加わり
彼女の意識は飛んだ

134 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 10:15:20 ID:I39YXPGs
プロデューサー.3
「もしもし!大丈夫ですか!」
突然倒れた目の前の少女を道の端に寄せ声をかける。
息はしている。動悸もある。だが突然倒れてぐったりとしたままだ。
少女の体調に対応するかのように、左目の位置で輝く光も遭遇した時と比べて弱弱しくなっている。
貧血だろうか。寝かせた方がいいと思い頭の帽子を外そうとしたが、
どうしても外れないので仕方なくそのまま地面に寝かせる。
携帯で救急車を呼ぼうとするが、
「やっぱり圏外か…。」
その時、うっすらと少女が目を開ける。
「大丈夫ですか?今から人を呼びに行きにいくので、ここでじっとしててください。」
こんな夜中に女の子を一人放置していいか少し迷ったが、この少女、服のせいかもしれないがかなり重い。背負ることは無理だし、
自分1人で誰かを呼びに行ったほうがすぐに人と出会えるだろう。

そうして立ち上がろうとしたプロデューサーの腕を、いきなり少女はガシッと掴んだ。
「痛っ!?」
その力は倒れている少女と思えないほど強い。ひょっとしたら大人の男ぐらいあるかもしれない。
道路脇の乏しい街灯以外に光源の無い闇の中、まるで顔の片側が存在しないように見える少女の眼光を直視し
プロデューサーは一瞬その眼差しになぜかゾクッとした悪寒を感じる。
まるでこの世のものではない、幽霊のような存在を見たような。バカバカしいが例えるならそんな感じ。
目を逸らせなくなったプロデューサーと少女はそのまま見つめ合い


 ぐーーーーー

少女の腹の音が盛大に鳴った
先ほどからの気まずい沈黙(気まずさを感じているのはプロデューサーだけなのだが)は依然そのままだが

 ぐーーーーーーーーーーーーーーー

多分気のせいだと思うのだが、少女の無表情の瞳が何かを訴えているように感じるのは全くの気のせいだろうか。
なんとなーく、事務所に帰ったらラーメンがなくて落ち込んでいる貴音を思い出す。

 ぐーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

空母ヲ級.3
なぜその人類の手を掴んだのか
彼女にも論理的な説明は不可能だろう
ただ、もし彼女が言葉を話せたら、こう言っていたかもしれない。

 ハラ…ヘッタ
 ナンカ…クワセロ…

【深夜:L4。なだらかな丘で北、東に海が見える】
【プロデューサー@THE IDOLM@STER】
[状態]:健康。いまいち状況を理解しきれていない。
[服装]:いつものスーツ姿
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 ポケットに入ってた携帯(通話機能使用不可。首輪のおかげで故障はしていない)
[思考]
基本:765のアイドル達と合流して元の場所に帰る。
1:倒れた少女(ヲ級)を心配。
2:誰か状況がわかる人に会いたい。
3:アイドル達と元の場所に帰る
[備考]時期はアニメ終了後


【空母ヲ級@艦隊これくしょん -艦これ-】
[状態]:無理やり艦載機を製造し、空腹のあまり倒れる。隻眼、初めて感じる空腹に困惑、制限に困惑
[服装]:なし(杖、艤装は体の一部)
[装備]:杖、艤装(体の一部)、艦載機×3(上に収納)、艤装の燃料満タン、艦載機の材料約20体分
    無理をして艦載機を製造したため、早朝まで製造ができません。
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:艦むすを沈める
1:空腹に困惑
2:海に行く(深海棲艦の本能)
3:艦むすを沈める
[備考]時期は吹雪に轟沈させられた後
制限:艦載機の製造は1時間に1つ程度。数は最大で約20まで。
   肉体に制限がかかり、艦載機の製造に大きく体力を消耗し、空腹になる。

爆弾:正午(12:00)にどこかで最初の核爆弾が爆発します。

135名無しさん:2015/04/26(日) 10:17:17 ID:I39YXPGs
投下終了です。
プロデューサーの口調が迷いましたが、女の子でも初対面の人なら普通に敬語だろうと思ってそう書きました。
爆弾を設定しました。

136 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 11:43:50 ID:2tGByUo2
投下乙です。
プロデューサー、空母の餌食にならなくてよかったね。
投下します。

137 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 11:47:40 ID:2tGByUo2
「なんでこんな目に遭わなきゃならねえんだよ」
この俺、ホルホースが溜め息と共に発した第一声はこれだった。
『バステト女神』のマライアと『セト神』のアレッシーがジョースター一行に敗北したことをDIOに報告しに行き、奴にいい加減にジョースター一行を殺しに行ってこいと脅され、奴らのもとへと向かうために準備して眠りについたらこの様だ。
暗殺しに出かけようとしたらいつの間にか放射能だらけの島に隔離されていた。
確たる証拠はねえが、こんなこと出来るのはDIOの野郎くらいしか心当たりはねえ。
殺しに行けと命令された奴にこんなことされりゃ、文句の一つは出るさ。
とにもかくにも、どうやら生き残るためにはこの首輪が必要となるわけで。もし24時間誰も救助に来なければ確実にオダブツで。
「いったいぜんたい、どうしろっつーんだよ」
あまりのどうしようもなさに、またも溜め息をついちまった。

いくら愚痴を零しても仕方ないので、配られたデイパックの中身を確認する。
(非常食と水に、メタルマッチに方位磁針、それにホイッスルと...なんだこりゃ、板?)
この薄っぺらい板は何に使うんだ?機械みてえだが
とりあえず適当にイジッてみると、急に板が光りだした。
「うおっ!な、なんだこりゃ?」
なんだかよくわからないので、しばらく触らずに観察していると、やがて明かりは消えてしまった。
「なんだ、ただのライトか。こんな形にするなら、普通の懐中電灯でも配ればいいものを」
光る板は置いておき、もう一度デイパックの中身を探ってみる。
「おっ、こいつは」
デイパックの奥底で見つけたのは、一本の禁煙パイプ。
ラッキー、ちょうど気分的に禁煙してみようかと思っていたんだ。
「...とはならねえよなぁ。せめて、もう少し食糧があればなぁ」
荷物を詰め直し、何度目かの溜め息をつき、この建物を捜索することにした。

138 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 11:52:46 ID:2tGByUo2
(ちぃ、こうも暗くちゃロクに捜索もできねえぜ)
先の板盤のようなライトを使ってみるが、精々見えるのは手元くらいだ。
ちと勿体ない気もするが、メタルマッチを擦り合わせ、火を起こす。
普段はライター派だからあまり使うことは無いが、一回で無事成功した。
俺の部屋は最上階の三階だったようで、階段は下りしかねえ。
とりあえず片っ端から部屋を探し回っているが、あるのは精々医療器具だけ。その医療器具も放射線のことがあるので、うかつには触れない。
そして、どの部屋も電気が通っていないようで、スイッチを押してもウンともスンともいわない。
そうこうしている内に、俺が辿りついたのは一階の院長室。
そしてこの部屋も探し回るが、やはりなにも無し。
諦めてここから出ようと、火を消そうとしたときだった。



ギシ...ギシ...

床の軋む音が聞こえる。
おいおい、俺以外にも誰かいるってのか?
俺としたことが、考え無しに火を使ったのは迂闊だったか。
反射的に、右手から『皇帝』...拳銃のスタンドの像を出す。
床の軋む音は、院長室の前でピタリと止まった。
考えられるのはふたつ。一つは、俺と同じような被害者。もう一つは、俺をこんなところに連れてきやがった野郎ってことだ。
この際、どっちでも構わねえ。とっ捕まえて情報を手に入れてやる。
扉に向けて『皇帝』を構え、扉が開くのを待つ。
しかし、来訪者は一向に扉を開けない。
気のせいだったのか?いや、そんなはずはないと気を入れなおす。
(なぜ出てこねえ...いいぜ、出てこねえならこっちから向かってやらぁ)
俺が引き金にかけた指に力を込めた時





「あ、あの、誰かいるんですか?私、暁美ほむらって言います。わけがわからないうちにこんなところにきてて、その..」
コンコンと、ドアを叩く音と共に聞こえたのは、可愛らしく幼い声だった。

139 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 11:55:25 ID:2tGByUo2



「暁美ほむらちゃんね。お互い災難だったな」
長い黒髪で、丸眼鏡をかけたこの女の子は暁美ほむらというそうだ。
ふむ、子供とはいえ、なかなかの別嬪さんじゃあねえか。こりゃ、将来に期待だな。
「はい。わ、わたし、病院で寝てたはずなんですけど、いつのまにかあんな球の中に」
「俺も似たようなもんさ。けどまあ、他にも人がいるってのは安心できるぜ」
「そ、そうですよね。友達も巻き込まれてしまったのは残念ですけど、みんなで力を合わせればなんとかなりますよね」
「おおそうさ。だからなにも心配はいらねえよ」
彼女を安心させるための言葉とは裏腹に、俺はとてつもない不安感に駆られていた。

(他に人間がいるだけでなく、この子には知り合いが巻き込まれていただとぉ?いよいよもって胡散臭くなってきたぜ)
もしも自分一人だけなら、最初の通信の言葉から判断して、なにかの事故であることが、納得はできないが理解はできる。
だが、こうも何人も、それも人によっては知り合いが巻き込まれているとなると、もはやただの事故とは思えなくなる。
おまけに、ご丁寧に俺たちを一人ずつあの球体に押し込めた挙句、食糧やらを配る始末。どう考えても人為的なものだ。
それだけじゃあねえ。この首輪、こいつは確かに俺たちの生命線だが、これがまた厄介なシロモノだ。
この首輪は外せば機能を停止する。24時間ぶんしかエネルギーが無いコイツだが、言い方を変えれば、外しちまえば24時間ぶんのエネルギーを確保できるっつーことだ。
と、なるとだ。もし時間切れが迫っても状況が好転しなかった場合、他にいる人間の首輪を奪っちまえば、残った時間だけ生き延びることができるわけだ。
もちろん、時間ギリギリだといくら首輪を回収しても、一分や二分じゃ焼石に水だ。他の首輪が必要かどうかはなるべく早く決断した方がいい。
この島にいったい何人送り込まれてきたのかは知らねえが、俺のような勘のいいやつはこの事実に気付いているころだろう。
ほんと、とんでもねえことに巻き込まれたもんだぜ。

140 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 11:58:06 ID:2tGByUo2
ここまで思考重ねていると、ふと、一つの疑問が生じた。
「ところでほむらちゃん。なんで、友達がここにいるってわかったんだ?」
冷静に考えれば当然の疑問だ。俺もお嬢さんも全く別のところで目が覚めた。なら、なぜ友人がこの島にいると言い切れるのだろうか。
「デイパックにタブレットが入っていたので、それでわかりました。ホル・ホースさんのデイパックにはありませんでしたか?」
「タブレット?」
「これです、これ」
ほむらちゃんが取り出したのは、俺のと同じ機械の板。
「ああ、そいつか。あるにはあるんだが、俺のはただのライトらしいんだ。ほら見てくれよこれ」
横のボタンをカチリと押し、光をつける。その行程を何度か見せつけると、ほむらちゃんは理解したかのように、ポンと手をうった。
「ひょっとして、タブレットを知らないんですか?」
「...えっ?」


「これをこうすれば...はい」
俺のタブレットなるものを、彼女は説明を加えながらいとも簡単に使いこなしてみせた。
「すげえな。ほむらちゃん、こういうものには強いのか」
「そういうわけじゃないんですけどね。結構流行ってますし」
彼女の手際には素直に感心したが、同時にまた些細な問題が浮かんできた。
(妙だな...いくら最新の機械とはいえ、俺が知らないはずはないんだがな)
そう、俺はホルホース。世界中にガールフレンドがいるし、殺し屋なんてやってるもんだから、かなりの情報網はあると自負している。
なのに、この少女が知っていて、俺が知らないとはどういうことだろうか。
「えと、この名簿ってファイルにみんなの名前があったんですけど」
「どれどれ」
そんな疑問も、名簿を見た瞬間に見事に吹き飛んでしまった。

141 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 12:00:08 ID:2tGByUo2
「なんじゃあこりゃああ!?どうなってんだよこいつはよぉ!?」



思わず、そんなことを叫び出してしまったほどのびっくり仰天ニュース。
「ど、どうしたんですか?」
「い、いやあ、慣れない機械だからよ、つい驚いちまって...最近の機械はスゲエんだなぁ〜」
「は、はぁ...」
なんとか誤魔化したが、内心はめちゃくちゃビビッてた。
この名簿を見る限り、俺の知る名前は全部で5人。
空条承太郎とJ.P.ポルナレフ。
まさか、俺が狙うべき敵であるこいつらも巻き込まれていたとは。この二人、特にポルナレフには会いたくねえ。
生きていたとはいえ、目の前でアヴドゥルを撃ったことは忘れてねえだろうし、なんといっても、俺はポルナレフの妹を殺した男の相棒だった。ポルナレフは俺と出会えば、即座に殺す気でかかってくるだろう。
ラバーソウル。
確かこいつは、承太郎に再起不能にされたはずだが、なんでいやがるんだ。
こいつは強さは本物だが、まず信用できねえ。奴も殺し屋の端くれだ。おそらく首輪のことは勘づいているだろう。一時的には協力できるにしても、俺たちの首輪やら食糧やらを奪うために、隙を突いて殺しに来ることはほぼ間違いない。
そして、最もここにいちゃいけねえ奴らがいる。
それは、俺の元相棒J・ガイルの旦那とその母親エンヤ婆だ。
J・ガイルは強姦だの殺人だのを好き放題やる男だ。そんな奴と組んでいたことが知れれば、俺の立場はかなり悪くなる。それに、奴の性格上、助けに行くのが間に合わなかったことを逆恨みして俺を殺しにきても不思議じゃねえ。
エンヤ婆に至っては、俺がJ・ガイルの手助けをしなかったと勘違いしているため、俺を必ず殺そうとする。事実、一度殺されかけたし、疑いを晴らそうにも話が通じねえ。
だが、J・ガイルは既にポルナレフに殺され、エンヤ婆も肉の芽の暴走で死んだはずだ。
それがここにいるってことは...間違いねえ。疑惑は確信に変わった。
なにが目的かは知らねえが、この件に関してDIOは必ず一枚噛んでいる。

142 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 12:05:32 ID:2tGByUo2
奴は吸血鬼だ。今はほとんどやっていないが、昔は屍生人を作っていたと聞かされたことがある。館にいた"ヌケサク"とかいうあだ名の自称吸血鬼がいるが、おそらくやつがそうだ。
J・ガイルとエンヤ婆がその屍生人ならば、ここにいることも矛盾はない。だが、"ヌケサク"がそうであるように、自我までは完全には無くならないようだ。
結論、俺の知り合いはほぼ全て敵。協力なんてできるわけがねえ!
ほむらちゃんと違って信頼できるお友達がいねえんだよ、俺には!
かといって、奴らと遭遇した時に勝てるか?いや、無理だ。
タイマンならほぼ無敵といっていい承太郎。肉を己の身に纏わりつかせれば物理攻撃に対して実質無敵のラバーソウル。光速で動くスタンドを使うJ・ガイル。実体の捉えられない霧のスタンドを使うエンヤ婆。
どいつもこいつも俺とは相性が最悪だ!かろうじてポルナレフには勝機があるが、奴も奴でかなり手強い。接近されればまず勝てないし、俺のスタンドのタネも見られちまってるしで、少なくとも無傷ですむとは考えにくい。
こういう状況をなんつーんだっけ?ああ、そうだ。昔の言葉でいう、四面楚歌ってやつだ。
...い、いや、まだ希望がないわけじゃあねえ。
こうなれば、俺が生き残る手段はひとつ。どうにか周囲を利用して、目立たず地道に行動し、23時50分を待つしかねえ。放射能さえやりすごせば、あとは正義感の強い奴らを言いくるめればなんとか...
とはいえ、連れが女の子一人じゃ心もとない。なにより、俺は女には誰よりも優しい男。美人だろうがブスだろうが尊敬しているからだ。利用もするし、嘘もつくが、なるべく女は死なせたくはない。
災難に縁も所縁もない砂漠のオアシスなら喜んでエスコートするところだが、生憎この島は猛獣だらけのジャングルでさえ裸足で逃げ出すほどに危険な島だ。女の子を矢面に立たせるのは論外だが、俺が先導するのもマズイ。
どうにか頼れる男を探し出し、俺たち二人のリーダーとしたい。行動しているのはあくまでそいつで、俺たちはついて行っているだけ。そうすりゃ、あまり目立つこともないだろう。
俺は誰かと組んで初めて真価を発揮できる男。№1より№2。それが俺の人生哲学だ。文句あっか!


「あ、あの、ホル・ホースさん」
「なんだ?」
「ここ、病院なんですけど、近くにアンテナがありますよね」
「そうだな」
「一時間ごとに島の端からアンテナが爆発するって書いてあるんですけど、ここが一番最初みたいです」
「...にゃにいいいい!?」


あ、危なかった。タブレットの使い方を教えて貰ってなけりゃ何も知らずにうろついてオダブツの可能性は大だったぜ。
まったく、ツイてるのかツイてねえのか...ああ、どうにか生き延びてえなぁ。



【I-8/病院/一日目/深夜】

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]健康
[服装]普段のカウボーイスタイル
[装備]禁煙パイプ(支給品)
[道具]支給品一式
[思考]
基本:どうにかして生き延びてこんな島からオサラバしたい。死にたくねえんだよ、俺は!
1.知り合いには遭遇したくない。(特に承太郎、ポルナレフ、エンヤ婆)
2.ほむらと共に、頼れる『相棒』を探す。また、ほむらと行動することによって自分は無害であることを周囲にアピールする
3.余裕があればほむらの知り合いも探す
4.女はなるべく死なせたくない。


※参戦時期は、DIOの能力を見せつけられてから、ジョースター一行を倒しにいくために移動している最中からです。
※この島での出来事は、DIOが一枚噛んでると疑っています。
※J・ガイルとエンヤ婆については二人とも屍生人だと思っています。

143 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 12:08:17 ID:2tGByUo2
魔女...それは絶望を撒き散らす災厄の使い。そして、絶望に沈んだ魔法少女たちが最後に成り果てる呪われた姿。
かつて私は幾度となく同じ時間を繰り返し、その残酷な運命に抗おうと戦った。
そして最後は
一人の少女の犠牲によって
希望と絶望を巡る残酷な連鎖は断ち切られ
世界は新しい理へと導かれた
...そう、導かれたはず、だったのに...




ど う し て こ う な っ た。


気が付いたら、いつの間にか黒い球体に押し込まれていて、核がどうのとか首輪がどうのとかわけのわからないことになっていた。
消える直前に、まどかがリボンを託してくれたのは憶えている。そしてまた会おうと約束したことも憶えている。
その結果がこの様だ。
とりあえず状況整理をするために、荷物の整理をして、入っていたタブレットを弄ってみれば、上がってきたのは多くの名前。
調べてみると、なんとこの島には61人もの人間が集められていた。
そして、その中には見知った名前が4つ。
美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子...そして、鹿目まどか。
まどかがここにいることは、胸が締め付けられる想いだったが、同時に疑問も湧いてきた。

144 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 12:14:33 ID:2tGByUo2
世界の改変が進む最中、インキュベーターの声は、『まどかは全ての時間軸から消え去り、誰も認識できないし干渉することもできない』と告げた。
つまり、誰もまどかを知るものはいないはずなのだ。
なのに、ここにいるというのはどう考えても矛盾している。
...いや、この『鹿目まどか』が私の知る『鹿目まどか』と同一人物だとは限らない。
魔法少女とも見滝原市ともなんの関係もない『鹿目まどか』という同姓同名の人間かもしれない。むしろ、そちらの方が可能性は高い。


とにかく、いまは情報がほしい。
とりあえず辺りを散策すること約10分。見えてきたのは、年季が入った古病院。
MAPを見返してみると、ここの近くにはアンテナがあるようだ。
一時間ごとに島の端からアンテナは爆発を起こすと書いてあるが、どうやらここが一番最初に爆発するらしい。
とはいえ、この情報を信じれば、爆発までにはまだ時間があり、15分もあれば余裕で爆発圏外に出れるので、今の内に調べれることは調べておくことにした。
だが、病院へと入る前に気付いたのだが、棟内三階がわずかに明るくなった。
どうやら、中にいる何者かが火を使ったようだ。
私は近くの木に身を潜めながら、その灯りの主のあとを目で追うことにした。



灯りの主は、どうやら片っ端から部屋を探し回っているようだ。
と、すると、あの通信の主が生存者を探し回っているのか、それとも他に巻き込まれた被害者の60人の内の一人か...
なんにせよ、接触する価値はありそうだ。灯りの主が一階に下りた頃合いを見て、私も病院へと足を踏み入れる。
とはいえ、今までの時間軸とは一味もふた味も違う。今までの接し方だと、あの優しいまどかにさえ警戒されていた。今までで一番警戒されなかったのは...
その結論に辿りつき、溜め息をつきながらデイパックを探る。
(まさか、またあの頃に戻る必要があるなんてね)
取り出したのは、誰の物かは知らない丸眼鏡。掛けてみると眩暈がした。度が合っていないぶんは、魔力で補おう。
今の私は、無力でなにもできない、大嫌いなあの頃の私だ。
意を決して、院長室のドアを叩く。

「あ、あの、誰かいるんですか?私、暁美ほむらって言います。わけがわからないうちにこんなところにきてて、その..」



【I-8/病院/一日目/深夜】



【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康
[服装]:見滝原中学の制服
[装備]:ソウルジェム(指輪形態) 寺井洋一の眼鏡@こちら葛飾区亀有公園前派出所
[道具]:支給品一式  その他不明支給品1〜2
[思考]
基本:とにかく情報を集める
1.とりあえずまどかを保護する
2.無力な少女を装い、ホル・ホースを利用してとにかく情報を集める。



※参戦時期は、最終話で概念となったまどかにリボンを託された直後からです。世界が改変しきる前です。
※現在、まどかのリボンは持っていません。会場内のどこかにあるか、他者の支給品に紛れている可能性はあります。
※まどかの存在に疑問を抱いています。シャルロッテに関しては、名前を『お菓子の魔女』と認識しているため、魔女だということに気付いていません。
※使える魔法は時間停止の盾です。制限の為、時間を撒き戻す能力は使えません。また、停止できる時間にも限界があります。

145 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/26(日) 12:19:42 ID:2tGByUo2
投下終了です。
タイトルは『ホル・ホースと暁美ほむら』です。
>>142の一部が文字化けしていますが

�・1より�・2→ナンバー1よりナンバー2 です。

最初の起爆場所を設定しました。
誤字・脱字・その他問題があればご指摘お願いします。

146名無しさん:2015/04/26(日) 13:07:13 ID:CwsCJBRU
投下乙です

ヲ級は一体どうなるんだと思ったが艦娘限定マーダーか
最初の爆発は12時からって事だけど「1時間ごとに爆破する」と明言してるOPと矛盾してない?


>ホルホースと暁美ほむら
確かにホルホースはビックリするぐらい四面楚歌だな
でも首輪のエネルギーに頭が回る辺り流石殺し屋と言ったところか

147名無しさん:2015/04/26(日) 13:53:14 ID:Jr4PnYUs
投下乙です

艦むすと遭遇しない限りはヲ級もおとなしくしてるだろうし、プロデューサーはひとまず安全そう
ほむらとホルホースは実はほむらのほうが危ないのか

爆発は一時間に一発と言っているので、では最初の爆発を二つの投下話から【I8病院付近で12時に爆発】としてそこから一時間に一発ずつ爆発していくのはどうでしょう
こうすると参加者に【半日以内に島の中央部に移動する】という目的を持たせられますし

148 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 14:48:37 ID:I39YXPGs
>>146
1時間ごと、というのがいつからなのかわからなかったので12時から1時間ごとに、13時、14時…19時にしました。
参加キャラが状況を理解したり、話し合ったり、または戦ったりする時間があったほうがいいかと思ったので。

149名無しさん:2015/04/26(日) 15:21:46 ID:CwsCJBRU
>>148
なるほど
てっきり1時から爆破だと思い込んでました
となると早速作品同士の矛盾が起こってしまったけどどうしたものか……

150 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 16:17:51 ID:I39YXPGs
まだ仮投下の段階ですので変えるのは可能です
(私の場合1文消すだけですし…)
とりあえずもう1日様子を見たい…
予約していらっしゃる方は爆破にどのくらい触れていらっしゃるのか…
できるだけ全員のつじつまが合うようにしたいところです

151 ◆0STfKvIzq6:2015/04/26(日) 23:48:22 ID:I39YXPGs
爆発時間への言及を削除して投下しました。

152 ◆dKv6nbYMB.:2015/04/27(月) 02:20:12 ID:oePjqcqg
仮投下スレに投下したものに微修正を加えて投下しました。
あってもなくてもいい程度の修正ですので、気にしないでください。
例)ホル・ホースの状態表の思考欄の追加
などです

153 ◆fuYuujilTw:2015/04/27(月) 19:33:52 ID:RG0vsj1k
投下します。

154オリンピックにゃまだ早い ◆fuYuujilTw:2015/04/27(月) 19:35:59 ID:RG0vsj1k
「なんなんだよ……」

日暮熟睡男はこの訳の分からない状況に戸惑いを覚えていた。

目が覚めたら民宿のような建物の中にいて、首には首輪がつけられている。
確か最後の記憶は、火星で眠りについたものだった。
両さんだったら、中川さんの力を借りて自分を起こしにくることは容易いだろう。
とりあえず、今の状況を知ることが先だ。

「……おかしいな」

うまくいかない。
起きたばかりだから、なまっているのだろうか。
気を取り直し、ディパックの中を確認する。

「なんだこれ……」

見覚えのない機械。
透視を試みたところ、非常に複雑な構造をしているようだ。

「よく分かんないや……」

水に食料、メタルマッチ、方位磁石、紙切れ。
まるで遭難したみたいだと思った。

そしてなぜか週刊誌。随分と美人な人が表紙を飾っている。
どうやら歌手のインタビューらしい。
中身を見てみる。
自分が知らない間に政権も交代したらしい。

「!!」

ある箇所に目が止まる。

155オリンピックにゃまだ早い ◆fuYuujilTw:2015/04/27(月) 19:37:52 ID:RG0vsj1k

「……またか……」

怒りがふつふつと涌き起こる。
ここがどこなのか、そんなことはどうでもよくなった。
ただ怒りだけが心を塗りつぶしていくのだった。
オーラが体を包んでいく。
大きな音と共に、日暮のいる部屋が滅茶苦茶になっていった。


つけるだけで治る?新薬認証まであと半年!本当に効くか、と題された記事は
日暮に大きな勘違いを生んだ。
今が2011年であるという勘違いを。

【G-3/民宿内部 /一日目/深夜】

【日暮熟睡男@こちら葛飾区亀有公園前派出所】
[状態]:暴走
[服装]:パジャマ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、週刊現代の真実@THE IDOLM@STER
[思考]
基本:怒り
1:怒り
2:怒り
3:怒り
[備考]
*参戦時期はアニメ第357話以降。
*火を見ると瞬間移動します。
*ギャグ補正は解除されています。

能力の制限について
・修正力の影響で未来の予知は出来ませんが、
 誰かが近づいてくることを察知する程度の能力はあります。
・テレポーテーションは最大5m程度です。
・念力は本気を出せば人をバラバラにすることの出来る程度の威力です。
・エネルギー光線の射程は10m程度。雷に撃たれる程度の威力があります。
・地面から最大で1m程度浮くことが出来ます。
・首輪を透視することはできません。

作中の年代について
こち亀第357話の年代は2004年となっています。
アイマス第1話では2011年のカレンダーが登場しており、第22話がクリスマスの話であることから、
「週刊現代の真実」が登場した第21話時点ではまだ2011年であることが分かります。

156オリンピックにゃまだ早い ◆fuYuujilTw:2015/04/27(月) 19:38:30 ID:RG0vsj1k
投下を終了します。

157名無しさん:2015/04/27(月) 21:20:52 ID:yPNuVyi.
投下乙です
やっぱりオリンピック前から参戦かー
にしても能力はがチート過ぎて笑うわwwww

158 ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 00:03:47 ID:qTWNeUvc
李小狼、キャスターを投下します

159リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 00:08:14 ID:qTWNeUvc



 李小狼は頭を振った。

 気絶していたのか寝過ぎたのか、それはわからないが、微かな衝撃と音を感じて目覚めたとき自分が真っ暗い空間にいることに気づいた。
 立ち上がろうとしてよろける。立ち眩みのような体のダルさと自分がおかれている状況をいぶかしんでいると、今度は扉のようなものが開かれた。

(‥‥なんだ‥‥これ‥‥?)

 意味不明。

 全くわけのわからない状況にとりあえず自分の頬をつねってみる。痛い。

(‥‥夢じゃない、のか、それなら。)
「クロウカード‥‥?」

 とりあえず最初にクロウカードを疑ってみる。意識を集中させれば、幻や結界の類いに近いものは感じる気がする。だがしかし、同時に何かが違うとも感じた。

(周りを調べるか。)

 足下にあったハデなデイパックを掴んでドアから外に出る。オレンジ色のそれはいかにも『非常用』という感じがして、なにか災害にでも巻き込まれたかのような感じがした。

 と、そのときだった。
 足にあたるデイパックの感覚に思わず足を止める。そのまま外側から確かめると、それが一度は触れたことのあるもののように思われた。独特なラッパのような形のそれに、足を止めてしばし考える。頭に思い浮かんだのはある道具だ。もしこれが小狼の想像どうりの物ならば、それはこの状況にうってつけのアイテムと言える。

「開けていい、よな‥‥?」

 しかし小狼は迷った。
 気がつけば見知らぬところにいた自分。その側にあったそれは、あまりにも怪しかった。ハデなオレンジ色もどことなく毒キノコや毒ヘビを連想させる。そもそも自分の物でもないカバンを開けるのはどうかというのもある。

 手に取り考えること一分弱。「非常時だから」と自分を納得させて、意を決して開けた。

「ふぅ‥‥やっぱりこれか。」

 どことなく声に安堵が交じる。予想どうりの形をしたそれ����拡声器を手に取ると、小狼はトリガーを引いた。

160リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 00:11:11 ID:qTWNeUvc



 李小狼は頭を振った。

 気絶していたのか寝過ぎたのか、それはわからないが、微かな衝撃と音を感じて目覚めたとき自分が真っ暗い空間にいることに気づいた。
 立ち上がろうとしてよろける。立ち眩みのような体のダルさと自分がおかれている状況をいぶかしんでいると、今度は扉のようなものが開かれた。

(‥‥なんだ‥‥これ‥‥?)

 意味不明。

 全くわけのわからない状況にとりあえず自分の頬をつねってみる。痛い。

(‥‥夢じゃない、のか、それなら。)
「クロウカード‥‥?」

 とりあえず最初にクロウカードを疑ってみる。意識を集中させれば、幻や結界の類いに近いものは感じる気がする。だがしかし、同時に何かが違うとも感じた。

(周りを調べるか。)

 足下にあったハデなデイパックを掴んでドアから外に出る。オレンジ色のそれはいかにも『非常用』という感じがして、なにか災害にでも巻き込まれたかのような感じがした。

 と、そのときだった。
 足にあたるデイパックの感覚に思わず足を止める。そのまま外側から確かめると、それが一度は触れたことのあるもののように思われた。独特なラッパのような形のそれに、足を止めてしばし考える。頭に思い浮かんだのはある道具だ。もしこれが小狼の想像どうりの物ならば、それはこの状況にうってつけのアイテムと言える。

「開けていい、よな‥‥?」

 しかし小狼は迷った。
 気がつけば見知らぬところにいた自分。その側にあったそれは、あまりにも怪しかった。ハデなオレンジ色もどことなく毒キノコや毒ヘビを連想させる。そもそも自分の物でもないカバンを開けるのはどうかというのもある。

 手に取り考えること一分弱。「非常時だから」と自分を納得させて、意を決して開けた。

「ふぅ‥‥やっぱりこれか。」

 どことなく声に安堵が交じる。予想どうりの形をしたそれ━━拡声器を手に取ると、小狼はトリガーを引いた。

161リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 00:21:11 ID:qTWNeUvc



(使わなきゃ良かった‥‥)
「少年、怖がらなくていい。私もこのような異常な状況には少し心得がある。今は、あの声の言うとうり島の中央へと向かうのが賢明だろう。」

 廃村で拡声器を使い周囲に呼びかけた小狼。それから数分で一人の男に遭遇した。長身でオールバック、そして目と目が離れすぎている独特な顔。そしてなりより、剣呑で異様な雰囲気の男。

「おお、名乗りを忘れていた‥‥私は、青髭。こちらの名前で呼ばれるほうが多いので、君もこの名で呼んでくれたまえ。」
「‥‥リ‥‥レイ・シウラァン。」
「レイ‥‥いや、東洋なのでシウラァンが名前か‥‥よろしく、シウラァン。」
「よ、よろしく‥‥」

 青髭、ことジル・ド・レィ。第四次聖杯戦争においてキャスターのクラスで召喚され、中盤で脱落しながらも冬木市を混乱に追いやったサーヴァント。
 その男が小狼が、この不可思議な状況で巡りあった人物だった。

(なんなんだコイツ‥‥人間か?)

 思わず小狼は心の中で愚痴を言った。否、それは本人にもわからない嫌悪感の現れだった。男からでる雰囲気、佇まい。その全てが小狼に、最大限の警戒を強いていた。
 突発的に偽名を名乗る━━もっともそれは、単に読み方の違いではあるが━━という、普段ならまずしないような行動。
 それをせずにはいられないほど、全身全霊をかけて男に相対していた。

162名無しさん:2015/04/29(水) 00:23:39 ID:l9x/zq42
いやよく読め、飛ばしてないよ
すげえわかりづらいけど

163名無しさん:2015/04/29(水) 00:34:12 ID:2CeLpKYI
ジル・ド・レェですよ

164リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 01:13:21 ID:qTWNeUvc
すぃません最後のレスが投下されていませんでした。キャスターの部分と共に投下します。

165リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 01:14:50 ID:qTWNeUvc



(使わなきゃ良かった‥‥)
「少年、怖がらなくていい。私もこのような異常な状況には少し心得がある。今は、あの声の言うとうり島の中央へと向かうのが賢明だろう。」

 廃村で拡声器を使い周囲に呼びかけた小狼。それから数分で一人の男に遭遇した。長身でオールバック、そして目と目が離れすぎている独特な顔。そしてなりより、剣呑で異様な雰囲気の男。

「おお、名乗りを忘れていた‥‥私は、青髭。こちらの名前で呼ばれるほうが多いので、君もこの名で呼んでくれたまえ。」
「‥‥リ‥‥レイ・シウラァン。」
「レイ‥‥いや、東洋なのでシウラァンが名前か‥‥よろしく、シウラァン。」
「よ、よろしく‥‥」

 青髭、ことジル・ド・レェ。第四次聖杯戦争においてキャスターのクラスで召喚され、中盤で脱落しながらも冬木市を混乱に追いやったサーヴァント。
 その男が小狼が、この不可思議な状況で巡りあった人物だった。

(なんなんだコイツ‥‥人間か?)

 思わず小狼は心の中で愚痴を言った。否、それは本人にもわからない嫌悪感の現れだった。男からでる雰囲気、佇まい。その全てが小狼に、最大限の警戒を強いていた。
 突発的に偽名を名乗る━━もっともそれは、単に読み方の違いではあるが━━という、普段ならまずしないような行動。
 それをせずにはいられないほど、全身全霊をかけて男に相対していた。

166リトルボーイfat.‥‥ ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 01:16:25 ID:qTWNeUvc



(こんなに怯えて‥‥まあこのようことになっては無理もないか‥‥)

 一方のキャスターは怯えている理由が自分にあるとは気づかずそんなことを考えていた。
 もちろん、普段の彼ならば自分に向けられるその感情を察しないはずがない。だが、それは小狼に対しては当てはまらなかった。

 理由はいくつかある。

 一つはキャスターから見れば、肉付きから小狼が子供という範疇に入らないと判断されたこと。
 一つはやはりキャスターから見れば、その精神性が子供とは言いがたいものがあるということ。

 ようするにストライクゾーンから微妙に外れているのである。

(しかし、常人なら震えて何もできなくなるのか‥‥?それなら、仮のパートナーとしては、合格か‥‥私の目も曇ってはいないようだ‥‥)
「シウラァン、実は私はまだこの鞄を改めていないのだ。互いに何を持っているかを、ここで確認するというのはどうだろう?」
「(何が狙いだ)!‥‥いや‥‥(断るのは怪しいよな)‥‥わかった。やろう‥‥」
「うむ、それではさっそく。」
(ここは年長者が先導せねばな。)

 小狼が自分を警戒していることに気づかず、キャスターは話を進める。
 小狼もキャスターの言っていること事態はおかしいと言えるようなものはなく、従うしかない。

(落ち着け‥‥怪しいけど、怪しいけどいい人かも‥‥)
(リュウノスケ、あなたも巻き込まれているかもしれませんね‥‥確認する手がないのがつらい‥‥)

 全く心が噛み合わないまま、二人は手近な廃屋に入り支給品を確認し始めた。


 と、その時だ。

 小狼とキャスターはほぼ同時にあるアイテムを手に取った。見覚えのないそれに、思わず互いに顔を見合わせる。

「あの、これって‥‥」
「シウラァン、一ついいかね?」
「「この板はなんだ?」」

 同時に取り出したタブレット。
 それについての疑問が、二人が初めて心を通じさせたものだった。



【I3/廃村/1日/深夜】

【李小狼@カードキャプターさくら】
[状態]:キャスターへの生理的な嫌悪と無自覚な怯え、強いストレス。
[服装]:制服。
[装備]:なし。
[道具]:デイパック一式(内ランダム支給品の一つは拡声器)
[思考]
基本:この男(キャスター)は信用できない‥‥
1:どうしてこんなことに‥‥
2:出来ればキャスターと離れたい。
[備考]
●出展時期は少なくとも四年生の頃よりあとです。
●キャスターとの接触が心理的な悪影響をもたらしています。
●キャスターの名前を『青髭』で認識しています。
●タブレットがなんなのかがわかりません。
●最初の放送を聞き逃しました。

【キャスター@fate/zero】
[状態]:魔力パスなし
[服装]:いつものアレ
[装備]:なし
[道具]:デイパック一式
[思考]
基本:まずは状況確認。
1:これ(タブレット)は一体?
2:リュウノスケが巻き込まれていないといいのですが‥‥
3:とりあえず、島の中央へ行きますか。
4:李小狼はとりあえずの同行者たりえると判断。
[備考]
●李小狼の名前をレイ・シウラァンと発音します。
●タブレットがなんなのかがわかりません。

167 ◆qB2O9LoFeA:2015/04/29(水) 01:19:42 ID:qTWNeUvc
投下終了です
キャスターの真名を間違えたこと、ならびに投下の遅延を発生させてしまい申し訳ありませんでした。

168 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 13:52:50 ID:Z.vv4No2
仮投下します

169 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 13:53:44 ID:Z.vv4No2
「マミさん!」

少女は沈んでいた顔を一気に明るくしてマミに抱き着いた。
豊満な胸に少女の顔が沈み込む。

「まどかちゃん、よかった…」

マミはまどかの頭を一撫ですると、ほぅっと一息をつく。
とにかくもマミは不安であった。
目が覚めればいきなり森の中。
しかも核爆弾が投下されたことを放送され、放射線から身を守る首輪のバッテリーは残り一日分。
冗談としか思えない、夢だと信じたい。
そんな言いようのない焦燥と恐怖、叫びだしてどこかへ飛んでいきたいとさえ思った矢先の邂逅である。
我儘すぎるが、誰かとこの恐怖を共有したかった。
孤独を紛らわせ、忘れたかった。
そしてそれが叶ったとき。
巴マミは鹿目まどかを絶対に守ると、そう誓った。

「もう絶対にマミさんと離れないから! だから…」

自分の心を見透かされたように、それは自分の台詞じゃないかと思うほどに。
まどかの言葉はマミの心を代弁した。
ただ、まどかの目には恐怖ですがる者とはまた違う感情が込められていたのだが、マミにそれに気づく余裕は無かった。
暖かく、やさしく強く抱きしめあっていた二人であったが、不意にまどかの体がぶるっと震えた。

「…あの、マミさん」

前言を撤回することの恥ずかしさか、生理現象を告げる恥ずかしさか。
マミはなんとなく本意を察してまどかを解放した。

「あぁ、うん、ほっとしたからね」
「あ、はははは…すぐ戻りますから!」

言ってまどかは森の茂みの中へと駆けていった。
夜の森にまた一人取り残されたマミではあったが、先ほどまでとは全く違う安定感を持っていた。
だから多少待たされていても立ち続けられていた。
だからどれだけ時間が経っていたのか分かっていなかった。
やがて茂みが動く。
待ち人来る。
そう思って振り返ったマミが観たのは山のように大きな男の姿であった。

170 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 13:55:21 ID:Z.vv4No2
「やぁお嬢さん。 俺の名前はラバーソール。 あなたは?」

茂みから出てきたのは、オールバックのやや残念なハンサム顔の男である。
自信たっぷりに表情豊かに聞いてくるフレンドリーさはナンパでもしてるかのようだ。
異様なのはその身長。 ヒグマかと思うが程のデカさ。 パースが狂ってるとしか言いようがない。

「わたしは巴マミ。 …まどかさんを、女の子を見かけませんでしたか?」

マミは突然、大男がやってきた方向へと駆けて行った少女の消息が急に気になってきた。
いやな予感がする。
安心したからと言って目を離すべきではなかった。
そればかりではなくそっぽを向いて安心感に浸っている場合ではなかった。
焦燥はある意味で裏切られなかった。

「まどかさん? 鹿目まどかさん! 見滝原中学校二年生の14歳! 四人家族の長女で美樹さやかが友人の鹿目まどかさんですね?!」

すらすらと、マミでもあまり知らないパーソナルデータが語られる。

「なぜそれを?!」
「学生手帳ってなこと細かくデータが書かれてるもんだなぁ〜?
 こんなもん詳細に書き込んだところで、誘拐犯に情報を与えるだけだって分からんのかねぇ? んん? 」

そういって取り出したピンク色の手帳をぺらぺらとめくる。

「ほら見ろよ、こんなに写真がたくさん貼られてるぜ〜? 交友関係丸わかりだよなぁ〜? 便利でたまらねぇぜ〜!
 んん〜だけどお前の顔は見当たらんなぁ〜?! あんたお友達じゃなかったのかい?」

もはや取り繕うしぐささえ見せずに男は手帳を読み上げ続ける。
マミの冷静さは脆くも崩れ去った。

「まどかさんをどうしたの?!」
「あぁ〜間抜けにも一人で目の前に現れたからよぉ〜? 食っちまったよ。 頭からな」

銃声が鳴り響いた。 大男の顔に一発。 瞬時の抜き打ちである。
だが男は崩れ落ちない。 悠然と立ち尽くしたまま。
マスケットを構えるマミに驚愕の表情が浮かぶ。

「危ねぇなぁ〜!? 死んだらどうするんだよ、巴先輩よぉ〜!」

顔の下半分を失いながらもマミを見つめる視線は外さない。
いや、ダメージを受けたように見えない。

171 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 13:57:10 ID:Z.vv4No2
一発、二発、三発。
ならばと続けざまに発砲。
男の体はその都度波打つが、身体が大きく弾けるが、倒れない。

「効かないんだよ、スカタンがぁ〜! 俺のスタンド、イエローテンパランスはすべての衝撃を無効にする!
 お前の攻撃なんて、赤ん坊の屁のように無力なんだよぉ〜〜! 」
「なら!」

マミの手から放たれたリボンが大男の崩れ去りつつある身体を縛り付ける。

「動きを止めて数を撃つ!」

無数のマスケット銃がマミの周囲に浮かび、その全てが火を噴く!
しかし硝煙の晴れた先に見えたのは、ややスケールが縮んだ男の姿であった。 縮んだと言っても180はある。

「だから効かねぇっていってんだろうが、糞ガキがぁ!」
「それがあなたの本当の体ね?」
「だからどうした! お前の攻撃はすべて受け切った! 今度は…」
「ティロ・フィナーレ」

呟くように宣言したマミの正面に巨大なマスケットが出現する。
口径はマミの頭を超える。
直撃した際の威力に関しては言うまでもない。

「痛っ!」

唐突にか細い悲鳴が上がる。
ラバーソールのものでも、マミのものでもない。
少女の声。


「あーぁ、あんなメクラに打ちまくるもんだから、あたっちまったじゃねぇか…鹿目まどかちゃんによぉ〜?」

ラバーソールがニヤリと笑うと、体を覆う肉の塊、スタンド・イエローテンパランスからもろりと少女の体が抜け出る。
まどかである。

172 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 13:58:58 ID:Z.vv4No2
「そのまま撃ってみろ! 鹿目まどかも死ぬことになるぜ? えぇ? 巴先輩?」

まどかを前に押し出し、男のハンサムな顔が凶悪にゆがむ。
躊躇するマミを見たのか、それとも咄嗟に叫んだのか。

「マミさん! 私のことはいいから! わたしのことはいいから撃って!」

その一言がマミを縛り付けた。 
…そんなことは出来ない。

「こんな事言ってるぜぇ? 巴先輩よぉ〜。 なんなら逃げてもいいんだぜ?(そうしたら俺は詰むけどな!)」

そうである。
ラバーソールは防御力こそ堅牢であるものの、スピード、攻撃力においてあまり得意ではない。
全力で逃げられたら追い付けない。
もし承太郎などに泣きつかれたら迎撃されるだろう。
タイマンなら負ける気はしないが、仲間を引き連れられたら確実にとは言えない。
いや、むしろ圧倒的に不利!
ゆえにここで決着をつけたいのだ。
ゆえにここで巴マミを殺しておきたいのだ。
24時間の命の担保である首輪と、食料を奪うためにも。

ラバーソールは金で雇われた男である。
こんなところに連れ出されて命の危険性に立たされて、しかも一銭にもならないとかやってられないのだ。
一刻も早くここから出て行きたい。 しかしそれには時間が必要だ。
その猶予がもたらされる首輪はぜひとも数を抑えておきたい。
なるべく早い段階で、大量に。
だから目の前にまどかが飛び込んできたのは僥倖であった。
捕まえたときに視線がある一点を見つめたのはラッキーだった。
その先に仲間がいると直感できたから。
しかしこんな体力を浪費する相手だったとはアンラッキーだ。
だからここで始末する。
確実にッ!

そして…マミは銃を降ろした。
マミはまどかを犠牲にするなんてできなかった。
一人に戻るなんて耐えられなかった。
得たものを失うなんて考えられなかった。
それが決定的な損失を意味するとしても。
出来なかった。

「マミさん!」

まどかが叫ぶ。 まただ。
また止められない。 また目の前で死んでしまう。

「よく決断できたな、巴マミ。 よく出来ましたと褒めてやるよ」

ズカズカとまどかを抱えながら歩を進める。
そしてゼロ距離。
荒い鼻息をぶつけながら宣告する。

「そして、死ね」

マミの頭からスタンド・イエローテンパランスが襲い掛かる。
マミは観念したかのように目を閉じ。
そしてその顔は身体から失われた。

173 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 14:06:55 ID:Z.vv4No2
ラバーソールは高笑いを挙げる。
まどかはマミの名を絶叫する。
駆け寄ろうとするまどかをラバーソールは苦も無く引き止めた。

「おまえにはまだまだ働いてもらわないとなぁ? この美樹さやかっての、お前の友達だろ?」
「さやかちゃんも?!」

ラバーソールの言葉にまどかは振り返る。
それに当然の答えを浴びせようとした、にやにやしたハンサム顔を、ラバーソールは一瞬にして引きつらせる。
ラバーソールの異変にまどかもその視線の先に振り向く。

そこには首を失ったマミの姿。
倒れていない。
立ち上がった姿がそこにあった。
ゆっくりと腕を上げ、ずるずると足を引きずりながら前に。
ラバーソールの居る所へ歩いていく。

「ば、化け物がぁ!」

余裕なんて吹き飛んだ。
ラバーソールは四方八方からスタンドでマミの体を包む。
イエローテンパランスは包み込んだ対象を消化・吸収するっ!
そっくりそのままスタンドに包まれたマミの体くらいならあっという間に消化できるはずである。
だが、出来ない。

黒い光が上がり、イエローテンパランスの消化能力に並ぶ再生能力で、マミの体は復元していく。
いや、完全な復元ではない。
マミの体が復元するたび、異様な肉の塊に変換されていく。
とにかくも再生に全力を傾けているのだ。
ゆえに元の形など形成することなど後回しなのだ。

(まどかちゃんだけは守る!)

そんなマミの意思だけが、マミの体を突き動かしていた。
ソウルジェムの限界などとうに過ぎている。
ただまどかを守りたいがために、少女は限界を超え、人としての姿を捨てた。

174 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 14:12:53 ID:Z.vv4No2
ソウルジェムが高速で黒く鈍る。
彼女の体を包む光も、神聖さからは遠く離れたおぞましい瘴気にも見える。
光と同様、彼女の体自体も人間とは遠く離れた姿。
そう、それはもう魔物。
そこまでしても闘い続けるマミの姿に、まどかは叫ぶしかなかった。

「もうやめて、マミさん!もう、やめて…」

止めなくてはいけないのに、またここで死なせるわけにはいかないのに。無力な自分を悔いていたのに。
涙でもう、それ以上言葉を続けることは出来なかった。

一瞬、それをみたマミであったものは優しい表情を浮かべたように見えた。
顔などとうの昔に無くなったのに。
そして最後の抵抗を始める。再生能力はついにラバーソールのそれを超えた。
あとは膨張すれば勝てる。
それはラバーソールにも理解できた。

「糞がぁ!」

なんの意味もない言葉を上げるしか出来ない。
この先の絶望は彼にすら予想できた。

だが、天使が現れた。

175 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 14:17:02 ID:Z.vv4No2
光の塊。
そうとしか言えない輝度。
しかしまどかもラバーソールもそれを天使としか見えなかった。
そして、おそらくはマミであったものにしかその本質はつかめぬであろう。
それはまどかであった。

アルティメットまどか。
魔女を救済するもの。

アルティメットまどかはマミの体をやさしく抱きしめる。
もういいんだよ、と。
もう闘わなくてもいいんだよと。

それで、マミは止まれた。
魔女にならずに済んだ。
そのまま命を果てることができた。
少女のままの魂で。

真夜中の森の中に星が現れたかのような光の柱が浮かび。
そして消えた。

176 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 14:29:59 ID:Z.vv4No2
光が収まった時、そこにはラバーソールとまどかしかいなかった。
マミであったものもマミもそこにはいない。
まるで存在自体が抹消されたかのように。
いや、確かにそこにいたことも激闘を繰り広げていたことも記憶にある。
マミだけがそっくりそのまま消え去ったのだ。

数瞬、呆気にとられていたラバーソールではあったが、そこに落ちている首輪…おそらくはマミが身に着けていたものであろう…を
同じく呆然としているまどかに放ってよこした。

「おまえのものだ。 とっておけ」
「え…?」

それ以上何も言わず、ラバーソールはへたれこんでいるまどかの腕を取って強引に立たせた。
そのまま歩を進める。
あまりに目立ちすぎたからだ。
光の柱など浮かび上がったのだ。 だれかが襲撃してくる危険性がある。
少なくとも自分なら襲うだろう。
その前に場所を移動しなくてはならない。
首輪を渡したのは…おそらくは毒気を抜かれたためだろう、と彼は思いこんだ。

まどかも、振り返ってマミが居た場所を見つめると「ごめんね」とつぶやくのみで、もう二度と振り返らなかった。


【F6/森/1日/深夜】

【鹿目まどか@まどかマギカ】
[状態]:健康
[服装]:制服。
[装備]:なし。
[道具]:デイパック一式、巴マミの首輪
[思考]
基本:生きる
1:マミの分まで生きる
2:とりあえずはラバーソールの言う事を聞く
[備考]
●四話以降からの参戦

【ラバーソール@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康(軽い疲労感)
[服装]:スタンド一丁
[装備]:なし
[道具]:デイパック一式、食料・水二日分
[思考]
基本:脱出
1:美樹さやか等を始末し首輪を回収する
2:まどかはエサなので生かして連れまわし利用する
3:出来れば承太郎を倒したいが優先順位はかなり低い

177 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 14:36:07 ID:Z.vv4No2
さて、アルティメットまどかが降臨したということは魔法少女が救済されるという事である。
しかし修正力がそれをさせない。
これ以降の干渉は許さない。
つまりこれ以降、魔法少女がソウルジェムを曇らせても魔女になる事を回避できないという事である。

それはこの一瞬において魔女であった存在が救済されるという事でもある。
この島におけるただ一人の魔女、シャルロッテ。
彼女も救済の対象である。
救済されると魔女になった事実が因果律の根底から開放される。
ゆえに魔女であったものが居たということ自体が消去される。

しかし修正力がそれをさせない。
そうしてシャルロッテの存在はそのままに、しかし救済は実行された。

そう
魔法少女シャルロッテの顕現である。

【??/??/1日/深夜】

【シャルロッテ@まどかマギカ】
[状態]:呆然。 魔法少女形態。
[服装]:
[装備]:不明。首輪も着用している。
[道具]:デイパック一式
[思考]:???

178 ◆kdN026sJVA:2015/05/02(土) 14:37:11 ID:Z.vv4No2
仮投下終了します。

シャルロッテの処遇について、不安になったのもあり
仮投下とさせていただきました

179名無しさん:2015/05/02(土) 14:39:56 ID:mmjdpLb2
投下乙です。
マミさんのまどかの呼び方は「鹿目さん」だったかと。

魔法少女シャルロッテ…ってことは劇場版のなぎさなのかな…?

180名無しさん:2015/05/02(土) 15:39:04 ID:mmjdpLb2
あえて問題になりそうなところを探すと、女神まどかはマミさん浄化されたところをみると初めから法則として存在していたようなので、
シャルロッテはマミさんが浄化された瞬間でなく、ロワに放り込まれた時点で魔法少女に戻ってた、ということにしといたほうがいいのかもしれません。
途中からもう浄化されなくなるのは、修正力さんが数回の干渉により免疫的ができたとかアプデしたとかでなんとなりそう。
契約前のまどか(変身してないし多分契約前だと思う)と契約後のまどかが同時にいることについては、参戦時期だの概念のあるパロロワではよくあることなのであんま問題にするほどではないと思います。

181名無しさん:2015/05/02(土) 16:11:26 ID:mmjdpLb2
あとパロロワのルール的にバトロワ関係者(主催、参加者、ジョーカー、意思持ち支給品、外部勢力など)以外のキャラを気軽に登場させていいのかという問題もあるかも
多次元に存在するまど神なら艦これとよく似た世界のパロロワ世界の魔女も消し去れる可能性もギリギリあるかもしれませんが
バトロワで死んだ太公望@フジリュー封神の魂も封神台に基本飛ばないように普通に死ぬべきなのかも

182名無しさん:2015/05/02(土) 16:16:24 ID:mmjdpLb2
長々書きましたが多数のクロスオーバーではやっぱり矛盾とかいろいろ出てくると思うのでギリギリありえそうならセーフでいいのかもしれません
連レス失礼しました

183 ◆Sumbb1w5Ew:2015/05/03(日) 00:29:49 ID:CIZe.FUI
投下します

184 ◆Sumbb1w5Ew:2015/05/03(日) 00:30:43 ID:CIZe.FUI
怒りと孤独#リベリオンズ


「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す……。」

静かに呪詛のように繰り返されるその言葉には、殺意と苛立ちが渦巻いている。
平和島静雄は先程まで自身を拘留していた球体の傍らで、
鬼の形相を浮かべながら、タブレットを操作していた。

「訳わかんねえとこ連れてきて、核だ、首輪だ突拍子もねえ事ゴチャゴチャ抜かしやがって!
 しかも俺だけじゃなく、セルティまで巻き込みやがって……。
 どこの阿呆か知らねえが、この落とし前はきっちりとつけてもらうからなぁああーーー!」

獣のような雄叫びを上げて、金属の球体を蹴り飛ばす。
人一人を納めるには十分すぎるほどの容積を持ち、
相応の重量を持つ金属球体ではあったが、
彼にとってはサッカーボールも同然の存在である。
激しい衝突音とともに、蹴り上げられた球体はロケットのように吹き飛び、
ロングシュートは夜空の闇の中へと吸い込まれていく。

- 歩く『暴力』
- 池袋で最も「喧嘩を売ってはいけない男」
- 自動喧嘩人形
- 怪物
- 最強


平和島静雄を揶揄する言葉はどれも破壊的かつ物騒なものばかりであるが、
静雄本人は、周囲からの第一印象とは異なり、
争いとは無縁な平穏な生活を望んでいる。

だからこそ彼は怒っている。
自分が置かれている圧倒的理不尽な状況に対して。
その理不尽な状況に数少ない友人であるセルティが巻き込まれていることに対して。
そして・・・。

「つまりこれはアレだろ?自分が生き残るために、この名簿に載ってる他の参加者の首輪を奪えって事だろう。
 舐めやがって!誰が手前らの思惑通りに動くかよぉ!」

自身への生存への必須アイテムである首輪を奪い合えと、遠回しに示唆する第三者の存在。
その悪意に対して反逆を宣言する。

タブレットの情報によると、現在自分のいるG7エリアは核爆発の対象外ということがわかった。
また、名簿にはセルティの他にも見知った名前が二つあった。

・園原杏里 - 確か新羅のとこにいた眼鏡を掛けた女の子だっけか……?
・折原臨也 - …………とりあえず見つけたら、殺しとくか。

185 ◆Sumbb1w5Ew:2015/05/03(日) 00:31:44 ID:CIZe.FUI
「何にせよ、まずはこのエリアでセルティの奴を探すか。」

とりあえずの行動方針を口にしたその瞬間、

♪♪♪〜♪♪♪〜

軽快な音と共に、自分が手にするタブレットが突然発光した。
目を丸くし、タブレットにタッチすると、
TOP画面に先程までは存在していなかった
新しいアイコンが表示されていた。

「何だこりゃ・・・メールか・・・?」

アイコンをクリックすると、「New」というポップアップとともに
1件のメッセージが表示された。


----------------------------------
Title: No Tilte

突然のメールごめんなさい!

私、高坂穂乃果って言います。
音ノ木坂学院の2年生で、スクールアイドルをやっています。

今私はG-7の学校に一人でいます。
説明書によると、このメッセージは同じエリアにいる人、
皆に届くみたいです。

私の友達がこのメッセージを見ていると期待して、
メッセージを送ります。

海未ちゃん!、絵里ちゃん!、にこちゃん!、希ちゃん!
もしこのメッセージを見ていたら、学校まで来て!
穂乃果は学校にいるよ!

何だかよくわかんないことに巻き込まれちゃったみたいだけど、
皆で、皆で…一緒に帰ろう!

------------------------------------


「学校か……。」

スクールアイドルという単語は聞き慣れないが、
どうやら女子学生が学校に一人でいるらしい。

内容から察するにこのメールは身内に宛てたもののようなので、
赤の他人である自分が学校に行く義理はどこにもない。

しかし、セルティなら…。
世話好きな彼女なら、このメールを受信したら、
発信者を保護しに学校に向かう可能性は大いに考えられる。

それに、首輪の強奪を考えているどこぞの馬鹿がメッセージを見て、
この発信者を襲撃する可能性もある。
そう考えると、放置するにはばつが悪い。

「行ってみるか…。」

バーテンダーは進行方向を学校へと定め、その歩を進める。

【G-7/ 南端 / 1日目/ 深夜】
【平和島静雄@デュラララ!!】
[状態]: 健康、
[服装]: いつものバーテン服、いつものサングラス
[装備]:
[道具]: 支給品一式、不明支給品 X 2
[思考]
基本: この島に拉致してきた犯人を見つけてぶっ殺す!
1: 学校に向かう。
2: セルティを探す。
3: ノミ蟲野郎(臨也)はぶっ殺す!

[備考] 参戦時期はアニメ1期終了後からとなります。

186 ◆Sumbb1w5Ew:2015/05/03(日) 00:32:30 ID:CIZe.FUI
--- 同時刻 G7 学校3階教室 


「これで…送れたのかな?」

薄暗い教室の中、椅子に座りながら高坂穂乃果は発光するタブレットを見つめる。
その机の上には説明書とUSBメモリが置いてある。
このUSBメモリは彼女の支給品の一つである。
USBメモリに同梱されている説明書には以下の内容が記載されていた。

・メール送信ソフト利用方法
- このソフトウェアは同梱のUSBメモリをタブレットの端子に接続することで、
 自動的にインストールされます。
- インストールされた当該ソフトを利用することで、利用者と同じエリア内にいる
 全ての参加者にメッセージを送信することが出来ます。
- メッセージは3時間に1回しか送信できません。

・メール閲覧ソフトについて
- メールの閲覧ソフトに関しては、予めタブレットにインストールされていますが、
 通常はTOP画面でソフトを確認することは出来ません。メッセージを受信することで
 TOP画面に表示される仕様となっております。
- メッセージの受信者は、メールに返信することは出来ません。

「はぁ〜………どうしてこんなことになっちゃったんだろう………。」

大きく溜め息をつき、机にうつ伏せる。


「絵里ちゃん…。
 にこちゃん…。
 希ちゃん…。
 海未ちゃん…。
 誰か来て…淋しいよぉ…。」


【G-7/ 学校3階教室 / 1日目/ 深夜】
【高坂穂乃果@ラブライブ!】
[状態]: 健康
[服装]: 音ノ木坂学院制服
[装備]:
[道具]: 支給品一式、USBメモリ(メール送信ソフト)、不明支給品 X 1(本人確認済み)
[思考]
基本: μ'sのメンバーと合流して島から脱出する。
1: 怖い…淋しい…。
2: 学校でμ'sのメンバーを待つ。
[備考] 参戦時期はアニメ第2期、ラブライブ予選の直前からとなります。

※ 穂乃果のメッセージはG7にいる全ての参加者のタブレットに送信されました。

187 ◆Sumbb1w5Ew:2015/05/03(日) 00:33:10 ID:CIZe.FUI
投下完了です

188 ◆JdI4UF1wGo:2015/05/03(日) 00:55:18 ID:CIZe.FUI
誤ってタイトルとトリを本文に含めてしまったので、トリを変えます。

189 ◆/BLqsN1tl6:2015/05/03(日) 02:55:41 ID:PMn7M0aY
投下します。タイトルは「蘇生率Zero」です。

190 ◆/BLqsN1tl6:2015/05/03(日) 02:56:14 ID:PMn7M0aY
 衛宮切嗣は身近な岩陰に隠れながら情報の分析をしていた。
 己の限界を知り、出来ることと出来ないことを知っていれば戦いの中では強いアドバンテージとなる。

(体に異常はない。疲労もない。筋力も……)
 太い枯れ枝に力を入れる。すると、少ししなった後、音を立てて折れる。
(大丈夫だ。次は魔力)
 体に魔力を巡らせる。

(……やや、巡りが悪い。何かされたか? いや、この環境によるものか)

(原因は何にせよ、魔術に頼った戦いは今は避けるべきだ。武器を手に入れる必要がある)

 戦闘準備は急がねばならない。2350がセンターの入り口が開放される時間。そして2400が首輪のエネルギーが切れる時間。
 その間わずか10分。何かしらの不具合で首輪のエネルギーチャージ量が少なかったり、エネルギーの消費スピードが早まったら、そのわずか10分の振れ幅からこぼれ落ちてしまう。
 そうなると人間はどう考えるか? それは他人の物を奪おうとする。
 極限状態となったとき、1人では使い切ることの出来ない量の食料、武器、弾薬を頑なに得ようとする人間は沢山見てきた。
 
 今回もそんな奴は必ず出現する。
 
 ならば自衛の……時には他者から奪うための武器が必要だ。

 武器、手に入れる可能性はここにある。デイバッグだ。
(良い物が入っていてくれ)
 切嗣はささやかな願いを込めてデイバッグを開けた。

 まず最初に手にとったのは3枚のカードだった。
 サイズ的にはタロットカードに近い。
(っ! 1枚1枚に魔力が込められている。それも生半可な量ではない)

 魔術師の切嗣はすぐにカードの価値を理解する。
 これは並の魔術師では一生を掛けてもつくり上げることの出来ない生きたカードだ。

(キャスターの宝具か? いや、これほどのものを作れる英霊は記憶に無い。誰だ……?)

 数秒悩み、考えを放棄した。どうあれ、このカードの所有権は今、切嗣にある。

(魔力はあまり使いたくないところに魔具か……)

 わがままは言ってられない。切嗣は使い方の把握を行う。
 カードの絵柄を読み精霊召喚魔法とすぐに当たりが付いた。

(「THE WATERY」、水の精霊か)

 島という環境下では海岸にたどり着けばすぐに水を得ることが出来る。活用する場面は多そうだ。

 そこまで確認した時、切嗣の耳に鈍い打撃音が届いた。

(――近い、崖の方だ)
 切嗣はカードを胸の内ポケットにしまうと、音の方へ向かった。

               〆

191 ◆/BLqsN1tl6:2015/05/03(日) 02:57:48 ID:PMn7M0aY
 切嗣が到着したと同時に勢い良く水柱が上がった。

(誰かが落ちたのか?)

 近くの岩肌には大量の血痕が付着している。
 おおよそ人一人が破裂した分の量だった。

(投身自殺か……? いや、待て)

 泡立った海が波で透明度を取り戻す。
 2人の女性の姿が目にはいってきた。

 1人は岩肌の血の持ち主だろう。頭部と腕部、背部が潰れ、大量の血を海に流している。
 だが、もう一人は目立った外傷は見られなかった。ただブクブクと海底へと誘われている。

(転落だ。恐らく1人がもう一人をかばって落ちたんだ)
 異様なまでの損傷の偏りはその証拠だ。

(まだ助かるかもしれない)

「来い、ウォーティ!」

 切嗣は胸の内ポケットからカードを取り出すと魔力を込めてそれを掲げた。
 風が巻き起こり、ウォーティが実体化する。

 青い透明感のある人魚、それがウォーティの姿だった。

「ウォーティ、あの子を引き上げろ」

 ウォーティは頷くと手を前に掲げた。同時に少女の体が海面ごと持ち上がり、海岸へと運ばれた。

 すぐに切嗣は少女の脈を取る。
(――心肺停止。水を多く飲んでいる。呼吸が止まって既に5分は経っているだろう……くそっ!)

192 ◆/BLqsN1tl6:2015/05/03(日) 02:58:29 ID:PMn7M0aY
 呼吸が停止して3分で蘇生率は75%まで減少し、8分経過すると0%へ限りなく近くなる。
 切嗣は心臓マッサージを開始した。

(くそっ! 生き返れ!)

 切嗣の努力も虚しく、時計は吹雪が呼吸を止めてから8分を経過した。

               〆

 切嗣は手を合わせ、精一杯の追悼を行っていた。
 赤の他人であったが、目の前で少女の命が失われる。それが切嗣の大切なところに痛みを走らせる。

(――行こう)

 何が何でも聖杯を手に入れてこのような悲しいことが起こらない世界を作るために……
 最後にもう一度顔を見ておこう。そう思って振り返った時、少女の持っていた四角い箱がわずかに動いたことに気がつく。

(何だ?)

 胸の内ポケットからウォーティのカードを取り出し、身構える。
 箱が内部から小窓が開かれ何やら白いモノがもそもそと出てきた。

(――妖精!?)

 体長わずか10cm足らずの2頭身の人だった。
 妖精は吹雪を悲しげに見つめている。

「お前のご主人は死んでしまった。すまない……」
 切嗣は謝ることしか出来なかった。
 すると妖精は首をブンブンとふった。どうやら許してくれるらしい。
 それどころかお辞儀をした。吹雪を助けようとしてくれたことに感謝しているようだ。

「だが、結果的に僕は彼女を助けることが出来なかった。そして、彼女の体を君たちの家に連れて行くことも出来ない。まだ戦いは続く」

 妖精は頷いた。妖精も現状を理解しているのだろう。

 妖精は覚悟を決めたかのように大きく頷くと、彼女の背後に着けられている装置を外した。
 そして、それを指さして切嗣に目で訴える。

「……それを僕に使えってことかい?」

 妖精は頷いた。

               〆

193 ◆/BLqsN1tl6:2015/05/03(日) 02:59:23 ID:PMn7M0aY

 妖精が入っていた箱をよく見るとこれは戦闘艦が搭載する砲によく似ている。
 足に付けられたヒレみたいなものも船の舵だ。
 太ももに着けられている箱なんて魚雷が見えている。
 間違いない、この子は船を模した兵器を身につけている。
 妖精曰くこれで海を滑ることが出来るらしい。半信半疑だった。

 切嗣は自分の体のサイズに合わせるべく、戦闘艦を模した兵器”艤装”の改造に着手する。
 少女の装備だけでは自分の体に合わせることは難しかったが、少女が持っていたデイバッグに似たようなものがもう一つあった。
 恐らくこの子をかばった女性のものだろう。

 工具はやたらと精巧なドライバーやニッパーが入った工具箱が支給されていたため、それを使った。

 作業は程なくして完了する。
 大型艤装の中の妖精たちが手伝ってくれたおかげだ。

 完成品のボイラーを腰に装着し、ストックと照準器を着けた12.7サンチ連装砲を右手に持つ。
 長い脚の腿の部分には鈍く輝く3連装魚雷があり、革と金属が混在するゴテゴテとした靴をはく。
 1基の2門の35.6サンチ連装砲の砲身が左肩から覗いている。

 これを動かすのは重油(燃料)と魔力のハイブリッドだ。

――魔導戦艦 切嗣。抜錨!

194 ◆/BLqsN1tl6:2015/05/03(日) 03:00:43 ID:PMn7M0aY

【I-2/ 崖下 / 1日目/ 深夜】
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
[状態]: 健康、魔力消費(微)
[服装]: 魔導戦艦切嗣
[装備]: 吹雪&金剛近代化改修艤装、クロウカード(ウォーティ)
[道具]: 支給品一式 X3、不明支給品(1〜7)、クロウカード X2
[思考]
基本: 正義の味方
1: 己の力を把握する。
2: 情報収集を行う。

※クロウカード残り2枚は不明です。
※吹雪&金剛の艤装を無理やり改造し、切嗣に合わせました。
 よって本来のスペックを出すのは難しく、魔力で補っています。
 兵装は金剛主砲1基(背部)、吹雪主砲1基[ストック+照準器](右腕)
 3連装魚雷発射管 X2(脚部)です。

195 ◆/BLqsN1tl6:2015/05/03(日) 03:01:18 ID:PMn7M0aY
以上です。

196 ◆/BLqsN1tl6:2015/05/03(日) 03:04:15 ID:PMn7M0aY
忘れていました。
道具に「両津勘吉のプラモ作成工具」を追加します。

197名無しさん:2015/05/03(日) 16:59:15 ID:b8baXV.s
投下乙です
吹雪達が死んだのが黎明だから時間設定が矛盾してますよ

198 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 18:07:06 ID:t1lAL0eI
仮投下します。タイトルは「魔術師とスクールアイドルの夜」です

199魔術師とスクールアイドルの夜 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 18:08:36 ID:t1lAL0eI


夜の森が平気な人間は、あまりいないだろう。
あの通信の内容が確かならば、ここは放射能によって生物が全て死に絶えている静寂の森。
時折吹く風によって、葉の擦れる音がするだけで、後は自分が踏みしめる足音だけ。
彼女、園田海未は暗い森の中を一人歩いていた。

(こ、怖すぎます)

自分の記憶が確かならば、いつもと同じようにμ'sの仲間達との練習を終えて帰宅し、
パジャマに着替えて、眠ったはずである。
それが気づけば、狭い球の中に入れられ、放射性物質に汚染されたという島にいるのだ。
おまけに、一定時間ごとに核爆弾が起爆するとのこと。
古典的に海未は頬をつねり、夢かどうか確かめてみたが………痛かった。
首に付けられている首輪の存在もあり、紛れもない現実であることに絶望した。

ゆっくりと足元や周りを探りながら海未は歩いていく。
さて、何故彼女は夜の森を歩いているのか?
彼女は実のところ、日が昇ってから、
通信にあった島の中心にあると言う防災センターに向かうつもりであった。
放送を聞いた限り、24時間で首輪の機能は失われるらしい。
助かるには、センターで放射能から身を守らなくてはならない。そう、海未は考えていた。

(ですが、あそこで火を起こしているのは誰でしょうか?)

つい先ほど、自分のバックの中身を確認し終わり、何気なく森の様子を体操座りで見ていた。
すると、凡そ五百メートルほど先だろうか。
木々の間で火が揺らいでいるような灯りが見えたのだ。
確認した名簿の中には、穂乃果を始めとしたμ'sの仲間達の名前もある。
もし、あそこで灯りをともしている人物が穂乃果達なら………
そんな期待をしつつ、海未は夜の森をゆっくりと歩いて近づいているのだ。

「きゃっ!」

近くの木から何かが飛びだした。
慌てて、その場で海未はしゃがみこむ。
ホゥーホゥーと、鳴きながら灯りの方へと飛んでいく何か…どうやらフクロウのようだ。
安心してから、彼女の目にうっすら涙が浮かぶ。
だが、同時に海未はある違和感に気づく。
なぜ、今のフクロウは放射能の影響を受けて動くことができたのか?
恐る恐る顔を上げてみる。
当然、フクロウは飛びさったあとで、目指していた火の灯りが見えるだけ………では、なかった。

「待っていたよ、君もこの島に連れてこられた内の一人だね?」

いつの間に目の前にいたのだろうか。二メートルほど先に赤い目立つスーツを着た男性が立っている。
ハーフだろうか?両目は碧眼だ。
彼が右手に持っていた松明の明かりで、その風貌を確認することができた。

「多分そうですけれど、あの…あなたは?」

海未は立ちあがり、声をかけた。
知らない男性ではあったが、彼の柔らかな頬笑みによって、
警戒心はあまり抱かなかった。

「私は遠坂家五代目当主の遠坂時臣という。君の名前を伺ってもいいだろうか?」
「あ、私の名前は園田海未といいます。その、音ノ木坂学院という高校の2年生です」

仰々しい肩書が付いていることに少々海未は委縮する。
そんな彼女の様子を気にしないで、遠坂時臣は彼女について考察する。

「ふむ、女子高生とは…どうやら私のような人間以外にも、ここには多種多様な参加者がいるようだ」

新たな発見を得た喜びから、時臣は僅かに抑揚を上げつつ語った。

「参加者とは…いったい何のことでしょうか?」
「知りたいかね?まだ私も全ての現状を理解はできていない。が、調べて分かったこともある」

ミステリアスな雰囲気のする時臣の話し方に、海未は次第に引き込まれてゆく。

「できれば、君と情報交換をしたいのだが構わないだろうか?」

時臣は松明を持っていた右手を後ろに向け、奥に見える火のある場所へと、
彼女の視線を誘導しながら問いかけた。どうやら海未が目指していた灯りは、彼の拠点のようであった。

「えっと…遠坂さん、こちらこそよろしくお願いします」

初めて出会えた同じ境遇の人。
ほっと一息ついた表情で、軽くお辞儀をして彼の誘いを了承した。

「ありがとう。園田嬢」
「…普通に海未と呼んで貰って結構ですよ」

200魔術師とスクールアイドルの夜 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 18:10:20 ID:t1lAL0eI



***


連れられてきた場所は、森の中でも少し開けた空間だった。その空間の中心には焚き火があり、
このような状況でありながらも、海未はキャンプに来ているかのような場違いなことを思った。
地面に倒れていた倒木に座る海未、焚き火を間に挟み彼女の反対側に立つ時臣。
今更だが、海未は一度落ち着いたことで、かなり年上の男性と一対一で対面している状況に緊張する。

(こんなとき、穂乃果なら自分から話しかけられるのでしょうが………)

自分の友人を思いつつも、海未はなかなか自分から時臣に声を掛けることができず、悶々とする。
すると、彼女から見て背を向けていた時臣が振り向き、語りかける。

「さて、まず君は魔術について、どの程度聞いたことがあるだろうか?」
「ま、まじゅつ。ですか?」

正直戸惑った。もしかして遠坂さんなりの場を和ます冗談………では、ないようだ。目が真剣である。
スクールアイドルとして活動していることを除けば、一般的な女子高生である海未は反応に困った。

「ええっと、漫画やアニメに出てくる想像上の技術のことでしょうか?あ、もしくはオカルト的な…」
「いや、もう結構だ…秘匿が正しく為されているとわかっていても、頭が痛い」

時臣は、こめかみに手を当て嘆かわしいと言わんばかりに顔を歪める。
女子高生に聞いておいてこの態度である。その動作に不満げな表情の海未、
ふうっ。と、一息吐いた時臣は改めて彼女へと視線を合わせた。

「海未。これから話すことを理解する為には、まずは私のことを知ってもらう必要がある」

先ほど、森の中で使っていた松明を再び手に時臣は持つ。すでに火は消されていた。
いったい何をするのか?疑問に思う海未。
時臣は目を閉じ、何か呟いた様子であったが、彼女の耳にはなんと言ったのか、聞き取れなかった。

「えっ!?」

そんな彼女の目の前で、一瞬で松明に火が灯った。
松明の火は次第に強まり、時臣の頭を軽く越す。
そして、まるで意思を持った炎のように、時臣の体を回り始める。
時臣が、松明ごと焚き火の方へと向けると、
釣られるように回っていた炎は勢いよく焚き火の中へと飛び込んで行く。
一瞬、焚き火が激しく燃え上がった。

(今のは…火を操った…?)

海未は目の前でおきたことに驚きを隠せない。

「にわかには信じ難いだろうが、今見せたのが魔術のほんの一端。私は魔術師と呼ばれる人間なのだよ」
「魔術師………」

放心状態の海未に、時臣は松明を置き、魔術の説明を始める。
この島へと着いてから時臣は、魔術で強化した方位磁針を使って周辺の警戒をしていた。
凡そ1キロメートル程度にいる生物に反応するようにしたのだ。
だが、自身が得意とする宝石等の、魔術に使える触媒が無い状態の為、
自分の魔術回路と魔術刻印による魔力の精製で、魔術の行使をしなければならなかった。
時臣は数分おきに発動させることで、魔力の消費を抑えつつ周囲の様子を探っていた。

そして、反応があったのが海未であった。
ただ、この時点では、どういった生物であるのか詳細は分からなかったため、
放射能によって死んだフクロウの遺骸を利用して、これを使い魔として海未の下へと放った。
視覚の共有で監視を行い、海未が自分の方へと向かっていることが分かったので、
途中で人目につかなくする結界を張った上で待ち伏せていたのだ。

「ずっと、見られていたのですか…」
「何か不都合なことでもあったかね?」

いや、監視されていい気分のする女性はいないだろうが、
自分の魔術を語り聞かせることに少々熱くなった時臣には、察すことができなかったようだ。

「何でもありません!遠坂さんが魔術師だということは納得しました」
「うむ、海未は理解が早くて助かるよ」

201魔術師とスクールアイドルの夜 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 18:11:33 ID:t1lAL0eI

満足した様子の時臣は、海未から見て右手にある金属球に近づく。
火の灯りに照らされることで初めて金属球の全体像が見えた。
それは思ったより大きく、周りの風景から浮いた異質な存在であった。
これはおそらく時臣が入っていた物のようである。
時臣は、左手でその球へと触れながら語り始めた。

「まず私が試みたのが、魔術による金属球の解析だ」

解析ということは、魔術を使って構造を読み取るということだろうか。

「魔術的に調べた限り、この金属製の球体には我々を転移や召喚、あるいは記憶操作を施すといった魔術は仕組まれていないことがわかった」
「…えっと、それはつまりどういうことでしょうか?」

海未は話を促す。

「つまり、この金属球には魔術の痕跡はなかった。参加者を入れるための、単なる入れ物に過ぎないというのが私の推測だ」

そこまで話を聞いても、ああ、そうかもしれませんね。と海未は思うくらいだった。
正直、あの通信にあった核、とか放射能が本当なのか?そちらの方が重要に思っていたからである。
しかし、時臣は金属球を擦りながら、自分の調べた成果を話すことに夢中な様子である。
ひょっとして、聞き役が欲しかっただけではないかと思う海未であったが、
次の質問で意識が変わった。

「では海未、質問だ。我々は“どうやって”この金属球に入った?」

どうやって?この金属球が単なる入れ物であるとするなら、
海未は自分から入った記憶など、もちろんありはしない。だから答えは、

「それは“誰か”が私達を入れたのではないでしょうか?この球の中に………あれ?」

一瞬、海未の中でカチリと何か意識がズレた気がした。
さっきまで、穂乃果達に会いたい気持ちや、生きて帰りたい気持ちで一杯だった心に、
別の視点が生まれた。いや、違う。目を背けていたことに気付かされたのだ。
海未の様子を観察するように目を向ける時臣。

「現状を正しく認識できたかね?」
「あれ、そうですよね……誰かって…いったい誰ですか?私、何をされてこの島に………」

寒気がした、なぜ、こんな簡単なことに気付かなかったのだろうか。

「無理もない、人は無意識のうちに理解が及ばないことから逃れようとするものだ」

決め手となったのはあの通信だと、時臣は言う。

「分かりやすい現状の説明と生存のための行動指針の提示、だが、その裏には参加者達から余裕を奪う思惑がある」
「余裕ですか?」
「生き残ることに必死にさせ、そもそも何故この島にいるのかという根源的問題から目を背けさせようとしているのだよ」

ごくりと、海未は唾を飲み込んだ。
時臣の語る推測が自分の状況にピタリと嵌まっていたからだ。
私達をこの現状に引き入れた何者かの思惑が、この島には存在している。
それが、私達の意志など関係なくこの金属球にいれ、この島へ連れてきたと、時臣は補足した。

「いいかね、私達は断じて、災害に巻き込まれただけなどという“生存者”ではない。何者かの思惑によってこの島へと連れてこられた“参加者”なのだ」

202魔術師とスクールアイドルの夜 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 18:12:36 ID:t1lAL0eI

焚き火の中の炭が燃え尽き、甲高い爆ぜる音が響いた。
ここで一息ついた時臣は、海未の様子を観察しながら、
彼女を中心にゆっくり時計回りに歩きながら話を続ける。

「そして、魔術師である私からすると、この何者かはとても興味深い存在だ」
「興味深いですか?」

海未とは対照的に時臣は興奮した様子である。

「ああ、そうだとも。なぜなら、ここに来る直前の記憶では、私は殺されたはずなのだよ」
「えっ!?こ、殺されたってどういうことですか!?」

今度の発言には純粋に驚いた海未。
どうやら時臣は、ここに来る以前は、聖杯戦争と呼ばれる儀式に参加していたのだという。
概要を説明してもらったが、海未は恐ろしいと感じた。
本当にそんなことが日本で起きていたのか、と。
その聖杯戦争の終盤で彼は魔術の弟子に…裏切られ、
刺された所で意識を失い、気がつけばここにいた。ということらしい。
何といったらいいのか分からない海未だったが、
時臣の「君も死んでここに来たのかね?」という発言は、断固否定した。

「じゃあ、遠坂さんはこの島に連れてこられて………生き返った、ということになるのでしょうか」
「おそらくそうだろう。魔術において、死からの肉体、魂を含めた完全蘇生など最早魔法の領域だ。それを成した存在とは…矮小の我が身では測ることすら適わないだろう」

しかし、自分がその成功例だというのに、何も分からないというのは、
魔術師として腹立たしい。と、時臣は言う。
やはり、その観点は一般人からするとおかしい。そう海未は思わずにはいられなかった。

203魔術師とスクールアイドルの夜 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 18:13:51 ID:t1lAL0eI


***


「…なるほど、君と同じ高校の友人達も、巻き込まれているとは…心中穏やかではないだろう」
「はい…私は遠坂さんと出会えて幸運でしたが、みんなも無事だといいのですけれど…」

あれから海未が友人を探していることを時臣に伝えると、
「なぜ、友人がこの島にいると分かったのかね?」と聞いてきた。
不思議に思いつつも、彼女はタブレットを操作し、名簿を見せると時臣はひどく驚いた様子だった。
………ひょっとして、時臣さんは機械が苦手な人かもしれない。そう思うと、海未はちょっとおかしかった。
魔術師で一見すると完璧人間に見えるこの人にも苦手なことがあるのだと、気が楽になる。
名簿を慣れない操作で動かしながら、時臣は確認していく。
すると、その手が止まった。
おそらく時臣さんの関係者ではないだろうか。海未はそう当たりをつけた。

「これは………まずいな」

名簿から目を離した時臣は鋭い目つきでそう呟いた。

「何か名簿を見て分かったのですか?」
「うむ、私が考えるに、この島の参加者達は大きくニ種類に分けられる」

右手の人差指を伸ばして、一つ目を示す時臣。

「一つ目は“生存”を第一に行動する者達だ」
「防災試験センターで救助を待つ人達ということでしょうか」

確かに、あの放送を聞いた人間ならまず考える選択肢であるといえるだろう。
それに島の中央ならば、仲間たちに遭遇する可能性が高くなる。

「大多数はそうだろう。ただ一部の人間は港や軍事基地等で、船などがあれば、独自にこの島を脱出しようとするかもしれない」
「なるほど」

問題なのはもう一つのグループということだろう。
右手の中指も伸ばして、二つ目を示した。
時臣はゆっくりと口を開く。

「二つ目は…自分の“願望”を第一に行動する者達だ」
「願望、ですか?それは、生きてこの島を出たい。ということではないのでしょうか?」

違う。と、時臣は否定する。
名簿を見て確信した者達を、時臣は指差した。

「キャスターとライダー、そしてバーサーカー。彼らは本来なら聖杯戦争にサーヴァントとして呼ばれる英霊達のクラス名だ」

先ほど聞いた聖杯戦争の情報を思い出しながら、
海未は名簿の名前を凝視した。

「最も重要なことは、英霊にとって、生きることよりも優先される願望をそれぞれが持っている可能性が高いということだ」
「生きることよりも優先される願い…ですか?」

大雑把にしか英霊と呼ばれる存在について、海未は理解ができていないが、
かつての英雄であるならば、逆に、私達を助けてくれないのか。
純粋にそんな感情を抱いていた。

「例えばだ、第四次聖杯戦争において召喚されたキャスターは、自分たちの存在を一般に隠そうともせず、児童の誘拐・殺人などの凶行を繰り返した」

断じて許されない行いだ。と、時臣の表情は苦虫を潰したかのように歪む。
海未もその情報に驚く。時臣が危惧しているのはこのことであった。

この島にいるとされるサーヴァントが、
自身の経験した第四次聖杯戦争に召喚されたサーヴァントであるという確証は時臣にはない。
しかし、キャスターを含め、サーヴァント達にはそれぞれが叶えたい願いがあって、
聖杯戦争に招かれるという共通点がある。
他者の魔術師と英霊を倒してでも叶えたい、死後の願い。
この島で彼らが行動を起こす際に基準となるのは、核や放射能から逃れるということではなく、
その願いにあるはずだと、時臣は判断した。

「海未。バーサーカーとはどんなクラスなのか想像がつくだろうか?」
「言葉どおりの意味なら狂戦士といった意味でしょうか」
「その通り、聖杯戦争においてバーサーカーとは、狂化のスキルによって全体の能力を上げる代償に、英霊の理性を狂わせ、ただ戦いのみに特化させたクラスだ」

理性が狂っている?
それはつまり、本能のみで動く存在ということなのだろうか。

「間違いなく危険な存在だ。普通の人間はおろか並みの魔術師では、襲われれば殺されるという選択肢しかない」
「そんな人物がこの島にいるのですか………」

海未にもようやく時臣の言いたいことがわかった。
つまり、この島には生存を求める者達とは別に、他者を害する可能性のある者がいるということだ。
タブレットに表示されている名簿の中の知らない人物達。
この人たちが何を考えて行動しているのか。
もし、μ'sの仲間達が、悪意ある人物に出会っていたとするならば………
想像すると、海未の不安はこれまで以上のものとなった。

204魔術師とスクールアイドルの夜 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 18:15:20 ID:t1lAL0eI



***


時臣は焚き火に追加の薪を入れた。
火が爆ぜる音が再び鳴り、それが今の沈んだ気持ちの海未には少し心地よかった。

………色々な情報を聞いた。
私たちをこの島へと連れてきた何者かの思惑。魔術。参加者の中に危険人物がいること。
常人ならば尻込みしてしまうような事態に置かれていることを認識してなお、海未は絶望していなかった。
それは、スクールアイドルとして諦めず努力を続けた経験のおかげかもしれない。
事の大きさは違えども、決して自分が望んだ状況でなくとも、挫けたくはない。

(今、穂乃果は何を考えているのでしょうか…)

彼女の持ち前の明るさと行動力が、今、無性に羨ましく感じた…みんなに、会いたい。
一人ぼっちは嫌だった。結局、彼女の一番したいことは決まっている。
俯いていた顔を上げる。海未の覚悟を決めた表情を見て、時臣は感心したと同時に、望郷の念を抱く。

(高校生となれば凛も、きっとこんな表情をする日が来るのだろう)

魔術師である時臣は、この島からなんとしても帰還を果たさねばならない。
自身の体にある遠坂家の魔術刻印、これを娘である凛に継承して貰わなければ、
遠坂家は没落してしまうこととなる。
冬木の地で死んでいれば、凛に移植される可能性はあったが、この島でそれは叶わないからだ。
徹頭徹尾、自身の成すべきことは決まっていた。

「………遠坂さんはこれからどうされるおつもりですか」
「当面の目的は、この地の詳しい調査。そして別分野の知識、情報をもった参加者との接触が妥当なところだろう」

先に口を開いたのは、海未からだった。
時臣の返事には、やはりという気持ちが大きかった。
この人は私と違って一人でもきっと、前へ進める人なのだ。でも、私ではだめなのだ。
時臣に仲間探しを手伝ってもらうことは、迷惑、いや足手まといになると、
これまでの会話で海未は判断していた。

「そう…ですか………」
「ふむ。もしよければ、君の友人の保護と並行して行おうと考えていたのだが…何か都合が悪いだろうか?」

ところが、時臣の口から出た言葉に海未は意表を突かれた。
なぜ?そういった気持ちが強かった。
ただの高校生に過ぎず、何の役にも立たない人間をそばに置く理由が無いはずである。
しかし、当の本人は、顎に手を当てて、当てが外れたかな?と考えるしぐさをしていた。

「でも、私みたいな普通の高校生が、遠坂さんのお役には立てません。いいえ、むしろ迷惑なのでは…」

視線を泳がせながら海未は答える。
その答えを聞いた時臣は、ああ、と納得した様子で海未を見ていた。

205魔術師とスクールアイドルの夜 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 18:16:01 ID:t1lAL0eI

「常に余裕を持って優雅たれ」
「え?」

流暢な声で目を瞑り微笑みながら、そう呟く。

「我が遠坂家の家訓だよ。このような危険な状況で普通の女子高生をそのまま放任するなど…遠坂の人間として恥ずべき行いだろう」

呆気に取られた表情の海未に対して、
まるで、娘に語りかけるような優しい口調であった。
確かに、多くの魔術師は、魔道を知らぬ一般人からすれば、
魔術の探求のために非道な行いをする人種にみえるだろう。
事実、時臣は聖杯戦争において、監督役の神父とともに、
巻き込まれた一般人の被害よりも魔術という神秘の秘匿に重点を置いていた。

だが、聖杯戦争とこの島で行われていることは違う。
海未は自分のことを一般人と言ったが、時臣にとっては同じ参加者であることに重点を置いていた。

(この島全体を使った61人による大規模儀式、集められた多様な参加者に何をさせたいのか。それを見極める必要がある)

だからこそ、普通の女子高生に自身の魔術の一端を見せ、彼女の状態を観察していた。
極端な話だが、彼女自身は何も特別ではないと思っていても、ここに送られた時点で、何か影響を受けている可能性があったからである。
もちろん家訓を理由に挙げたのも本当ではある、が。

「常に余裕を持って優雅たれ…ですか。ふふっ、素敵な言葉ですね」
「そうだろうとも。海未、君はなかなか聡明なようだ。この地で最初に君に出会えたことは、私にとっても僥倖だったようだ」

海未はもう遠慮はしなかった。それに今まで話した中で、
この人は自分の家名に誇りを持っていることはよく分かった。その家訓を理由にしたのだ。
信じられる。μ'sで作詞をしている海未からして、その言葉はあまりに綺麗で憧れた。
この紳士的な魔術師が言って初めて似合う言葉ということかもしれない。
一方で、家訓を賞賛された時臣は気分が良くなり、お互い笑顔になった。





―――夜の森に、焚き火の灯りが一つと、魔術師とスクールアイドルの影が一つずつ。
   混迷の夜は過ぎてゆく、やがて訪れる困難を覚悟しつつ、二人は語り合った―――

206魔術師とスクールアイドルの夜 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 18:16:39 ID:t1lAL0eI

【J5/金属球近く/一日目/深夜】
【遠坂時臣@Fate/Zero】
[状態]:健康
[服装]:いつもの赤スーツ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、アゾット剣@Fate/Zero、
    ブラック・マジシャンのカード@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ
[思考]
基本:自分達を連れてきた存在の調査。冬木市へ帰還して魔術刻印を娘の凛に継承させる。
1: 島と参加者の調査 
2: バーサーカーを含めた危険人物への対抗手段の確保
3: 園田海未と友人達の捜索と保護
[備考] アニメ第17話で殺された後からの参加、うっかり属性。


【園田海未@ラブライブ!】
[状態]:健康
[服装]:音乃木坂高校の制服
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、封印の杖(鍵の状態)@カードキャプターさくら、
    海パン刑事の海パン@こちら葛飾区亀有公園前派出所。
[思考]
基本:μ'sの仲間達と生還する
1: 時臣さんに協力してもらい仲間達を探す
2: この島で起きていることを知りたい
3: ………魔術って私にもできるでしょうか?
[備考] 時期はお任せします

207 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 18:18:25 ID:t1lAL0eI
仮投下終了します

208名無しさん:2015/05/03(日) 20:15:31 ID:jy.vNgMg
投下乙です
やっぱ回るのかw

209名無しさん:2015/05/03(日) 20:35:33 ID:jy.vNgMg
道具なのですが本文中で存在を描写するか不明にしたほうがよいのではないでしょうか

210 ◆YD4qd4xJMs:2015/05/03(日) 20:58:27 ID:t1lAL0eI
>>209
ご指摘ありがとうございます。
当初、道具を含めて話を書くつもりでしたが、文章が多くなりそうだったので、泣く泣く削った名残でした。
本スレに投下する際には、道具の欄は二人とも不明に変更します。

211 ◆dKv6nbYMB.:2015/05/04(月) 01:08:08 ID:EjRjQcUI
投下します

212 ◆dKv6nbYMB.:2015/05/04(月) 01:10:02 ID:EjRjQcUI
どうしてこんなことになったんだろう。
決まっている。これは、あたしへの罰だ。

『あなたは、その人を助けたいの?それとも、その人を助けた恩人になりたいの?他人の願いを叶えるのなら、尚のこと自分の望みをはっきりさせておくべきだわ』

先輩からの忠告を蔑ろにして、勝手に奇跡を願ってしまった。

『私、もう自分に嘘はつかないって決めたんですの。さやかさん、あなたはどうですか?本当の気持ちを向き合えますか?』

勝手に嫉妬して、自分の身体を言い訳にして、本当の気持ちに向き合うことから逃げ出した。

『痛くないから傷ついていいなんて、そんなの駄目だよ。...それで勝っても、さやかちゃんのためにならないよ』
『...だったら、あんたが戦ってよ』


勝手に自暴自棄になって...大切な友達を傷付けた。


あたしはマミさんみたいにはなれない。あたしには正義の味方なんて無理だったんだ。
あたしなんか、消えちゃえば...


「なにをそんなに悲しんでいるんだね、お嬢さん」

213 ◆dKv6nbYMB.:2015/05/04(月) 01:12:24 ID:EjRjQcUI
背後から声をかけられた。その低い声音からして、男性のようだ。
「怖がらなくてもいい。私は見ての通り刑事だ。さあ、こちらを向いて事情を話してくれたまえ」
「刑事...?」
刑事。それは、市民の味方...つまりは、正義の味方だ。あたしが憧れて...でも手の届かない人たちだ。
その事実が、心優しくも心配してくれる人に対して、あたしを強く反発させてしまった。
「うるさい...放っておいて」
「そうもいかない。こんな危険な状況だ。一般市民を見捨てるわけにはいかない」
だというのに、刑事さんは一歩もひいてくれない。それどころか、あたしを見捨てないとまで言ってくれている。
「あはは、なら大丈夫だよ。だってあたし人間じゃないもん。あたしなんかに構ってるひまがあるなら他の人を探しに行ってあげてよ」
「...いまの私の目には、か弱い女子中学生しかうつっていないがな」
刑事さんの優しい言葉が、あたしの心を抉ってくる。そして、そのぶんだけあたしの心は妬みで汚れていく。
人の都合も知らずに―――!
そう言いかけてふりむいたとき、あたしは言葉を失った。
なんでかって?だって考えてもごらんよ。刑事さんだと思って振り向いたらさ


海 パ ン 一 丁 の 変 態



がいたんだよ?そりゃ思考の一つや二つ、フリーズもするわ。

214 ◆dKv6nbYMB.:2015/05/04(月) 01:14:45 ID:EjRjQcUI
い...いやいや。落ち着け美樹さやか。ここは島だよ。ひょっとして、海水浴かなんかでたまたま来てて巻き込まれただけかもしれない。
それで、着替える時にネクタイから先に着けちゃったうっかりさんなだけかもしれない。
それを変態扱いは...

「む。そういえば自己紹介をしていなかったかな。私としたことが、これは失礼した。では改めて名乗らせていただこう。
股間のモッコリ伊達じゃない!
陸に事件が起きた時、
海パン一つで全て解決!
特殊刑事課三羽烏の一人
海パン刑事、ここに参上!」


どうやらこれがデフォらしいよチクショウ。どうみても変態です、本当にありがとうございました。


「さあ、きみが悲しんでいた理由を話してくれるかね?」
変態のかけてくる言葉で、ハッと我に返る。同時に、またも心が歪んでいくのがわかる。
ああ見えても、この人は刑事なんだ(本当かどうかはわからないけど)。あたしなんかとは違う、本当の正義の味方なんだ...
「何度も言わせないで。あたしなんか放っておいてよ」
「言葉を返すようだが、それは無理だ。私は市民の安全を守る刑事なのだからな」
(違うんだよ、刑事さん。あたしは卑怯で、汚くて、どうしようもない屑なんだよ)
あたしたちの間に、沈黙が流れ、代わりに風が木々をざわめかせる。
「...どうやら、警戒は解いてもらえないようだ」
しばらくすると、刑事さんは両手を腰に当て
―――スルルルル
あまりに自然な流れで、何の躊躇いもなく海パンをずりおろした。
あたしがその行為を認識できるまでにかかった時間、約3秒。
「!?」
「恐れることはない。これで私は、正真正銘の無防備状態だ」


海パンが下ろされ、露わになった男の勲章。
普段は見慣れないそれを見たあたしは叫んだ。
「ぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」
...ええ、それはもう清々しいくらい叫びましたとも。

215 ◆dKv6nbYMB.:2015/05/04(月) 01:16:23 ID:EjRjQcUI
なにが刑事よ!こんな正義の味方がいてたまるか!
「いいかい、今からそちらに行くが...落ち着いて私の話をきいてくれないか?」
股ぐらのキノコをぶらつかせながら、変態はあたしにゆっくりと歩みよってくる。なんかもう色んな意味で泣きたくなってきた。
「むかし...むか〜しのことじゃった。あるところにお爺さんとお婆さんが...」
人はどうやって産まれるかって話!?この状況にかこつけて手を出そうなんて...この変態ロリコン刑事!
「こ、来ないで!」
あたしは、魔法で剣を作り、変態を牽制する。
「......」
「ち、近づいたら、その粗末なものブッた斬るからね。この変態!」
言葉に出して、馬鹿らしく思う。
(あたし、この期に及んでまだ自分が可愛いの?...ほんと、どうしようもないよ)
あたしが一瞬目を伏せた瞬間、変態が信じられない速さで駆けだしてきた。
「とうっ!」
そのまま、空高くジャンプ!あたしは反射的に剣をふるってしまう。
だが、変態は空中で開脚し、あたしの両手首を蹴りつける。その衝撃で剣を落としてしまう。
(こ、この体勢は...)
変態のカメさんがあたしとコンニチワする。おそらく1秒後には、この子とキスすることになるだろう。
(おわった...)
全てを諦め、目を閉じる。あたしに押し付けられるのは、変態の生暖かいキノコ


「ようやく、わかってくれたようだね」


ではなかった。

216 ◆dKv6nbYMB.:2015/05/04(月) 01:22:25 ID:EjRjQcUI
変態のゴツゴツとした逞しい手の平が、あたしの頭に乗せられる。
フルチン丸出しの変態なのに、不思議と嫌悪感がわかなかった。むしろ、優しい温もりに包まれているかのようだ。
この人は、やましい心無しに、あたしを純粋に心配してくれていたんだ
だからこそ、疑問に思う。
「...して」
「ん?」
あたしは、この人に対して剣を向けた。罵声も浴びせた。なのに、この人は憶せず裸で向き合ってくれた。
「どうして...あたしなんかを気にかけてくれるの?」
彼は、大人の渋みを漂わせる笑顔で答えた。
「私は特殊刑事課三羽烏の一人、海パン刑事だ。刑事たるもの、困っている市民は見捨てれん」
もう三度目になるこの返答。でも、今までとは違い、彼の言葉を素直に受け止めることができた。
「何も隠すことはない。さあ、心を裸にして全てを吐きだせばいい。そのための私だ」
何も隠すことは無い。全てを吐きだせばいい。その言葉で、あたしの溜まっていたものが蠢いていく。
気が付けば、涙が頬を伝っていた。
「あ、あれ?なんで...」
目を擦り、涙を止めようとするが、その手を刑事さんに止められる。
刑事さんは、それでいいと言わんばかりに、微笑んでくれた。


―――気が付けば、あたしは、涙と共に刑事さんに全てを吐きだしていた。
その行為になんの気恥ずかしさも感じず、むしろ、全裸でお風呂へ跳びこんだときのような清々しい解放感すら感じていた。

217 ◆dKv6nbYMB.:2015/05/04(月) 01:26:56 ID:EjRjQcUI
刑事さんは、あたしの独白を同情も批難もせず、ただ黙って聞いてくれていた。
いまのあたしには、それがとてもありがたかった。
「...よく、話してくれたな」
再び、頭に手を乗せられる。
なんだか、自分が思ったより子供だってことを思い知らされてこそばゆく感じた。
「それで、きみはこれからどうしたい?」
「あ、あたし...」
さっきまでは、なにをどうすればいいのか頭の中でこんがらがってた。
でも、全部吐き出してからは強く思える。
「あたし...みんなに謝りたい。謝って、みんなと一緒にいたい」
自分勝手に皆を振り回してきたのは自分だ。そんなことが許されるはずもないかもしれない。
でも、刑事さんは力強く答えてくれた。
「ならば、私が力になろう。きみを必ずこの島から脱出させると約束する」
「あ、ありがとう...みんなとまた、仲直りできるかな」
「なあに、最初はわかってもらえなくても、このように裸になって伝えれば、必ず解りあえるさ」
「それはちょっと勘弁」


あたしがやるべきことは決まった。
まずは、この場を生きることを考えよう。生きて、ちゃんとみんなに謝るんだ。
そして、もう一度あの日常へ...



「ところで、刑事さん。そろそろアレを...」
「むっ?ああ、すまない。ネクタイが緩んでいたか」
「そっちじゃなくてもっと下!」


【B-7/一日目/深夜】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康、だいぶスッキリ
[装備]: 制服、ソウルジェム
[道具]: 支給品一式、その他不明支給品
[思考・行動]
基本方針: 生きて帰って、みんなに謝る。
1: 海パン刑事と行動する。
2: とりあえずパンツを穿いて

※支給品一式には目を通していません。そのため、まどかたちがいることを知りません。
※魔法少女のことについてだいたい話しました。
※心を裸にすることに喜びを憶えました。ただ、全裸自体にはまだ抵抗があります。
※参戦時期は、8話でまどかを罵倒して別れた後です。

218 ◆dKv6nbYMB.:2015/05/04(月) 01:27:48 ID:EjRjQcUI

うむ、いつも通りうまくいったようだ。
検挙率100%の私にかかれば、傷心の少女を説得することなど容易い。
全裸になって全てを曝け出すことにより、誠意を持って相手と接し、我が汚野家に伝わる秘伝のオイルで相手の気持ちを落ち着かせる。
やはり私のやり方は合理的だな。
(それにしても、魔法少女か...)
両津が聞いたら利用して金儲けに使おうと考えるかもしれんが、私は違う。
いくら不思議な力を持っていようと、やはり彼女は一般市民なのだ。保護しないわけにはいくまい。
そう...私は、刑事として市民を保護しなければならないのだ。
おそらく、巻き込まれた者の中には、この異常事態に錯乱してしまう者もいるだろう。
そんな状況で皆を纏めあげることは普通の刑事には不可能かもしれない。
だが、この島には私と両津たちがいる。
私と奴らが力を合わせれば、どんな困難もたちどころに解決できる。
しかし、私としたことが、ネクタイが緩んでいたことに気が付かなかったとはな。
気が緩んでいた証拠だ。反省しなければ。



【海パン刑事@こちら葛飾区亀有公園前派出所】
[状態]: 健康、全裸
[装備]: いい匂いのするオイル@こちら葛飾区亀有公園前派出所(支給品)
[道具]: 支給品一式、その他不明支給品1〜2、海パン
[思考・行動]
基本方針: 島からの脱出。
1:刑事として市民を守る。
2:怯える者・錯乱する者には全てを曝け出して語り合う。
3:両津たちと合流する。
4:気を引き締める

※支給品には目を通してあります。
※海パンからは何も出せません。
※魔法少女のことはだいたい把握しました

219 ◆dKv6nbYMB.:2015/05/04(月) 01:30:28 ID:EjRjQcUI
投下終了です。
タイトルは『人魚姫の涙』です。
誤字・脱字・その他問題などあればご指摘お願いします。

220名無しさん:2015/05/04(月) 05:14:18 ID:pGk4rATE
投下乙です
変態だあ…(どん引き)

221名無しさん:2015/05/05(火) 09:22:34 ID:mxantBIg
マミ、まどか、ラバーソールを投下した人は指摘もあるようですが説明や修正などの意思はありますか?

222 ◆/ebAZhNPSM:2015/05/05(火) 10:52:42 ID:cv7oMdag
没SSを投下します

223 ◆/ebAZhNPSM:2015/05/05(火) 10:53:42 ID:cv7oMdag
目が覚めると犬吠埼樹は謎の乗り物に乗せられて島に運ばれていた。
思考を働かせるが、自宅のベッドで眠りに付いた所までは覚えているが
それからの記憶は無い、気づいたら乗り物の中に乗せられていた。

(どうして私はここに入れられてるんだろう?)

何かの目的を果たすために大赦が与えた指令なのだろうか?
乗り物の中を見回すとデイバッグが収納されており
中を見てみるとさまざまな道具が入っていた。
道具の一つから光っている物を見つけるとそれはタブレットだった。
からの情報では島が放射能に汚染されていて
アンテナには核が設置されていると書かれていた。

どうしてこんな事になっているのか。
樹には到底理解出来なかった。
タブレットには島に集められた人達の情報も載っていた。
その中には勇者部の仲間達の名前も記載されていた。
会いたい、皆と会いたい。
しばらくすると外部へ出るための扉が開かれた。
乗り物から抜け出した樹は皆に会いたい一心で歩み始めた。

(……そうだ!携帯で連絡を……)

制服のポケットに手を入れると、樹が普段愛用している携帯電話が入っていた。
さっそくお姉ちゃんに向けて電話をかけるが一向に繋がる気配が無い。
他の部員へかけても同様に繋がらなかった。
この島では携帯での連絡のやり取りが出来ないようだ。

(どうしても繋がらない……それにこれは……)

携帯を操作している時にあるアプリがダウンロードされているのに気付いた。
勇者アプリ、樹が勇者へと変身する時に必要になるシステム。
これはバーテックスとの戦いが終わり、勇者を引退した時に削除されたはず。
なぜこの機能が追加されているのか。
謎は解けない、けど連絡が取れない今はお姉ちゃん達との合流を優先したい。
携帯を制服のポケットへ入れた樹は再び歩いた。

224 ◆/ebAZhNPSM:2015/05/05(火) 10:55:44 ID:cv7oMdag
「ここは………学校……?」

夜道を進んでいった先に木造の大きな建築物が視界に入った。
明かりが点いていない所から、今は使われていないのだろうか。
でももしかしたら中に誰かがいるかもしれない。
不安と期待が入り混じった不安定な感情を胸に秘め
樹は廃校舎の入口へと入っていった。

(く……暗いよ……)

犬吠埼樹は人一倍怖がりであった。
夏休みの合宿中に怪談話を聞かされた時は、真っ先に姉のいる布団の中に潜り込んでしまうほどに。
それだけ今の廃校舎は不気味だった。

校内は非常灯すら付いておらず、窓から差す月明かりによって
辛うじて明るさが保たれている薄暗さ。
床はかなり古く、歩くだけでギシ……ギシ……と木が軋む音が
静寂に包まれた旧校舎に鳴り響く。
まさに肝試しをするにはうってつけのホラースポットと呼べるだろう。

「すいませーん!誰かいませんかー!?」

今すぐにでも逃げ出したい怖さだが、それ以上に誰かに会いたい想いが強い。
樹はデイバッグから懐中電灯を取り出してライトを付けた。
怪我をしないよう周囲を明かりで照らしながら廃校舎の探索を開始した。

教室を一室ずつライトで照らして確認していく。
机と椅子が散乱したまま放置されていて凄く荒れていた。
誰かが暴れていたのか砕かれている物もある。
4つ目の教室に入り、明かりを照らす。
そこには窓の方を向いて椅子に座っている人の姿がライトに映った。
校内に人間は残っていたのだ。

「……あ、あのー!………」

樹は心臓のドキドキを抑えながら声をかけるが反応は無い。
座ったまま眠っているのか、頭が下へ向いたまま動かない。

「すみません……聞きたいことがあるんですが………」

樹は椅子に座る人物にゆっくりと近づく。
申し訳ないと思いつつも背中を擦って起こそうとした。

ドサリ……。

ほんの少しの力で背中に触れただけで相手は椅子から倒れた。
床に叩きつけられた衝撃で顔の向きが変わり
相手の顔が樹の視界に入った。

225 ◆/ebAZhNPSM:2015/05/05(火) 10:56:51 ID:cv7oMdag
「ひっ……いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

恐怖で一瞬青ざめた後、樹は悲鳴を出して教室から飛び出した。
教室に座っていたのは腐敗した死体だった。

「うう……お姉ちゃん、お姉ちゃん……会いたいよぉ……」

涙目になりながら廊下を走っていると樹の体に生理現象が襲い掛かる。
恐怖のせいで体が縮み上がり、急に尿意が催してきた。
丁度目の前に女子トイレを発見した樹は迷わずトイレの中に向かった。

「……はぁ」

和式トイレの便座の上で屈んで下着を下げると
秘所からチョロチョロ……と黄金色の尿を放出した。
最後の一滴まで出し切り、一呼吸置いてから紙へと手を伸ばした。

「な、ない……」

ここは廃校舎、とっくに使われていない学び舎である。
そんな場所にトイレットペーパーの補充などあるはずも無く
とっくに紙など切らしていた。

紙で秘所を吹くのを渋々諦め、下着の位置を戻した樹。
だがそれだけではない。
トイレのレバーを押しても反応が無かった。

もちろん水道もとっくに止められている。
樹が出した黄金水は流される事なく、便器の中に留まり続けるのだ。
自分のおしっこが流せずに放置するのはとても恥ずかしい。
しかし水道が使えないなら諦めるしかない。
樹は羞恥心で顔を赤くしながら便器から離れた。

「……はぁ、やっぱり出ない……」

試しに手洗い場の蛇口を捻るが水は出ない。
トイレの後の手を洗う事すら出来なかった。
年頃の少女には酷な環境である。

樹は暗い気分で手洗い場の鏡を見た。
落ち込んだ自分と、背後から近づくミイラ男の姿……ミイラ男!?

226 ◆/ebAZhNPSM:2015/05/05(火) 10:58:06 ID:cv7oMdag
「―――ッ!!?」

鏡に映るミイラ男に驚き、樹は後ろへと振り返った。
そこには誰もいない、気のせいだったのか。
教室で死体を見たショックで幻覚を見ていたのだろうか。
落ち着くよう自分に言い聞かせた樹は振り返るのをやめて再びを鏡を見た。

「きゃあッ!!」

幻覚ではなかった。
鏡に映るミイラ男は樹のすぐ傍まで迫っていた。
現実の世界ではミイラ男の姿を認識できない。
鏡の中でのみ、その姿が映し出されていたのだ。

『おまえ……おれの姿が見えているのか?スタンド使いか?』
「だ、誰なの……?」

鏡の中からミイラ男が語りかける。
聞きなれない単語が出てくる。
バーテックスとは全く質の違う怪物の出現に、樹の理解は超えていた。

『まあいい……どのみち、おまえはここで死ぬのだからなぁ〜〜〜ッ』
「―――ッ!?」

ミイラ男の手首に装着されたナイフが樹の胸元に向かって振り下ろされる。
ナイフが胸に突き刺さる瞬間、植物の種を連想させる精霊が出現した。

『なに……ッ!?スタンドだと……いや、腕から伝わるこの感じはそれとは別、この能力は……』

自らが盾となってミイラ男のナイフを受け止める精霊。
それは勇者になった樹が与えられた『木霊』と呼ばれる精霊であった。
勇者の身に危険が訪れた時、本人の意思とは関係無く自動的に精霊が命を守ろうと行動する。

(……今のうちに逃げないと)

空中で攻撃を受け止めて、火花を散らしながら防ぎ続けている隙に
女子トイレから出ようとする。

『させるかッ!!』

精霊の防御を強引に突破したミイラ男は樹に向かって飛びかかった。
ナイフが背中に届く寸前で樹は女子トイレから抜け出す。
ミイラ男は自分がいる鏡に映らない場所までは攻撃できなかった。

227 ◆/ebAZhNPSM:2015/05/05(火) 10:59:04 ID:cv7oMdag
(はぁはぁ……早く学校から出ないと……ッ!!)

ミイラ男の襲撃から逃れようと樹は玄関に向かって走る。
すると鋭い痛みが足に伝わり、バランスを崩して倒れる。
右足のふくらはぎが、刃物でぱっくりと抉られていた。
これでは走ることが出来ない。

『クククッ……逃げられると思ったかぁ〜〜〜?』
「ひぃっ!」

廊下のガラスにミイラ男の姿があった。
鏡だけではない。
光が反射する物、全てが鏡の中の世界でありミイラ男が行動できる範囲内である。

「……逃げ………ないと、はやく……」

目の前に保健室がある。
片足を引きずりながらも体勢を整えなおした樹は
保健室の中に入り、急いでドアを閉じて鍵をかけた。

「これで……きゃぁぁぁ!!」

ミイラ男が保健室の窓に張り付き樹の様子を伺っていた。
樹はドアの鍵を外して廊下に出ようとするが
ミイラ男の歩みの方が速い。

『おまえはもうここから生きて出られることは無いッ!!』

樹は反射的にデイバッグを盾代わりにしてかざす。
ミイラ男のナイフがデイバッグを切り裂いて中身をぶちまける。
樹に支給された愛用のタロットカードが勢いよくバラまかれ
カードの一枚がミイラ男の傍に映るように舞った。

それは『吊るされた男』

暗示は『無意味な犠牲』『無駄な我慢』『固定概念に縛られる』

228 ◆/ebAZhNPSM:2015/05/05(火) 11:00:43 ID:cv7oMdag
ミイラ男が樹の喉元を掴んだ。
樹の両足が床から離れて、首の締め上げが強くなる。

「ぐぐっ……お姉ちゃん……」
『んんっ?おまえ、姉がいるのか?なら丁度いい。おまえを殺したあとで、姉の方も殺しといてやるよ』
「……いや……おねえ……ちゃんは……やめ、て……」
『あの世で姉妹仲良く報告するんだなぁ〜〜〜おれにどうやって殺してもらったかをなぁ〜〜〜ヒャハハハッ!!』

殺される?
お姉ちゃんが殺される?
私の大事なお姉ちゃんがあの怪物に?
……それだけはさせない。
世界で一番大切なお姉ちゃんをあんな怪物なんかにッ!!

『なんだッ!?』

樹の体から緑色の輝きを放ち、ミイラ男を怯ませた。
緑の花びらが舞い散り、樹の姿が変化した。
一度は勇者システムを手放し、引退をした。
だが新たな地で、最も大切な人達を守るべく
犬吠埼樹は再び勇者になる。

「あなたなんかにィ――ッ!!お姉ちゃんをッ!!殺させないッ!!」

樹の腕に装着された武器からワイヤーを飛ばして保健室の窓ガラスを全て切り裂く。
廊下のガラスに移動したミイラ男は一瞬、呆気にとられた表情をしたがすぐににやけ面へと変わる。

『ククク……驚いたぞ。まさかそんな力を隠し持っていたとはな
 だがおまえは鏡の中に入れない。鏡を壊すことは出来てもおれに攻撃することは不可能なのさ』

ミイラ男のナイフが樹の右肩に突き刺さる。
以前、樹が劣勢であることには変わりない。
それでも樹の瞳には闘志が消えていなかった。

勇者部五箇条『なるべく諦めない』

例えどんな困難が目の前にあろうとも最後まで足掻けばきっと乗り越えることが出来る。
勇者として活動してきた樹は臆病だが、その信念は本物である。

229 ◆/ebAZhNPSM:2015/05/05(火) 11:02:04 ID:cv7oMdag
樹の放たれたワイヤーが廊下のガラスを次々と破壊する。
それでもミイラ男の体には傷一つ付かない。

『ハァッ!!』
「くうっ……まだまだァ!!」

左脇腹が切られる。
反撃にワイヤーを飛ばすもガラスが細かく砕けるのみ。
ミイラ男の居場所が増え続けるだけであった。

『もう、諦めて大人しく―――ッ!?』

樹の体が再び輝きだす。
先ほど変身した時とは大違いの輝きで。
樹の背後に巨大なユリの花が咲き誇り、更に進化を遂げた。
樹は満開ゲージが溜まるのを待っていた。

満開、それは勇者が使う最強の切り札。
溜まったゲージを消費して新たな姿に変わり
更なる力を得る事ができる。

『何度も姿を変えようが結果はかわらんぞッ!!』
「そんなのやってみなくちゃ分からない!!」
『は、速いッ!?』

樹はミイラ男のスピードを凌駕した動きで攻撃を躱し校舎の外へ出た。
上空へ飛んだ樹は大量のワイヤーを放出し、廃校舎全体を包み込んだ。

『おまえッ!!まさか〜〜〜ッ!!?』
「これでぇぇぇ!!終わりぃぃぃぃぃ!!!!」

大量のワイヤーが廃校舎を内部まで切り刻み、倒壊が始まる。
校内にある全てのガラスが砕け散り、ミイラ男の頭上に瓦礫が降り注いだ。

『ぐぅおおおおおおおおおおおッ!!!』

樹の目の前で廃校舎が崩れ落ち
空高く舞い上がる粉塵が瓦礫の山を覆い尽くした。

230 ◆/ebAZhNPSM:2015/05/05(火) 11:03:12 ID:cv7oMdag
「………………………………」
(やったよ……お姉ちゃん……)

変身が解除されて元の制服姿に戻った樹は
廃校舎跡からゆっくりと立ち去った。

満開を使った者は代償を支払うことになる。
それは満開を使用した後に散華と呼ばれる現象が起こり
身体の機能の一部を失うことになる。

それでも樹は悲しみはしない。
姉の命を狙う怪物を倒すことが出来たのだから。

【J3/廃校舎跡/一日目/深夜】

【犬吠埼樹@結城友奈は勇者である】
[状態]:疲労(大) 声帯の機能の損失、右肩裂傷、左脇腹裂傷、右ふくらはぎの一部欠損
[装備]: 無し
[道具]: 樹の携帯
[思考]
基本: 勇者部の皆に会いたい
[備考]
※アニメ最終回終了後からの参戦です。
※散華によって声帯の機能を失いました。
※樹の所持品は廃校舎跡の中で埋まっています。
※制限により精霊の自動防御は連続で行えません。
※散華の後に精霊の追加はありません。
※バトルロワイアル中での散華の回復は不可能です。







廃校舎跡の瓦礫の中で砕け散ったガラスの中でミイラ男はほくそ笑む。

『ククク……』

まさか俺が再び生を受けるとはな。
板のような機械から『君を生き返らせた。好きなだけ殺戮を行え』と命令されたのは癇に障るが
せっかく貰った命だ、やりたいことを楽しませてもらうぜ。
だが俺を殺した連中には用心をしておこう。
あの時は油断した俺が独断専行をしたから敗れたのだ。

この島には相棒やお袋が来ているらしい。
連中と組んで共同で仕掛ければ俺たちが負けることは無いだろう。
今度は逆に俺たちがてめえらを地獄に送ってやるぜ。

『ククク……ハハハ……ハァーハッハッハッハッハッハッ!!!!』


【?????@??????????】
[状態]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考]
基本:殺戮を楽しむ。
1: 逃げた少女(犬吠埼樹)を追い詰めて殺害する。
2: 相棒(?????)やお袋(?????)と合流する
3: 自分を殺した連中には用心して挑む。
[備考]
※状態表の一部が隠されています。
※本体の存在や能力を看破することで隠された情報が提示されます。
※主催者から個別で指示を与えられています。

231名無しさん:2015/05/05(火) 11:04:47 ID:cv7oMdag
没SS投下終了 タイトルは『犬吠埼樹は再び勇者になる』です

232名無しさん:2015/05/05(火) 18:26:21 ID:2kNV1Lwo
え?

233 ◆qB2O9LoFeA:2015/05/13(水) 15:56:17 ID:a0NJ6wa6
投下します

234embryo&incubator ◆qB2O9LoFeA:2015/05/13(水) 16:03:08 ID:a0NJ6wa6







「もう一度言う、動くな。」

 そう言うとマリク・イシュタールは、千年ロッドを『人質』に突きつけた。
 その杖の先があと数センチ動けば、どうなるかわかったものではない。

「テメェ‥‥汚ぇぞ!」

 悔しそうに叫んだのは佐倉杏子だ。マリクから離れること5m強。『人質』を挟んで向かい合っている。

「汚い?オイオイ冗談キツいねぇ。先にふっかけたのはどっちだぁ?」
 コツン、とマリクはロッドで『人質』を叩く。
 それを見た杏子は踏み出しかけていた足を止めざるを得なかった。

235embryo&incubator ◆qB2O9LoFeA:2015/05/13(水) 16:11:29 ID:a0NJ6wa6



 卵である。
 最初にマリクが球体から出て見たものは、まさしく卵としか言い様のないものだった。

(‥‥なんだアレ‥‥)

 傍らのデイパックを漁り中の物を確認し、とりあえず球体から出ようとしたところで発見した卵。
 なにか台座のようなものに乗せられているそれは、懐中電灯で照らすとまだら模様の黒い部分で鈍く光を跳ね返しながらでんと鎮座している。

(で、上には鉄塔と。)

 マリクは懐中電灯を上に向けた。
 見れば、アンテナのようなものが付いた鉄塔が建っている。どうやら、自分が最初に入れられていた玉は鉄塔の敷地にあったらしい、そうマリクは理解した。

 ドン。

 理解して、心臓を貫かれるような感覚を覚えた。
 なにか、とても嫌な、とても嫌なことになりそうな予感がする。
 それはマリクが決闘者として磨かれた勝負勘のようなものかまたは本能的なものか。それはマリク自身にも解らなかったが、予感にしたがって警戒するのに変わりはなかった。

(鉄塔、アンテナ、卵‥‥なんだ、なんだこの嫌な感覚は!)

(落ちつけ、ヒントはある‥‥!)

 マリクはデイパックを開けた。
 千年ロッド、ペットボトル‥‥タブレット。
 目当てのタブレットを見つけると引っ張り出して操作する。その時間は数十秒から一分弱といったところか。その僅かな時間にマリクの顔はひきつりにひきつっていた。

(まさか‥‥いや、アレが‥‥)
「核、か?!」

 マリクは懐中電灯で『卵』を照らした。
 アンテナのようなものが付いた鉄塔と、アンテナの近くにあるという核爆弾。この鉄塔がもしアンテナならば、あれが核である可能性はある。

 マリクは『卵』に近づくと子細にあらためた。よく見ればところどころ土で汚れ、それをこそげおとすと金属でできているような黒い部分が現れる。まだらに見えたのは付着した土のせいだろう。ダチョウの卵ほどの大きさ、というのはマリクには解らなかったが、それが『核爆弾』としては小さいというのはマリクにも思えた。
 次に、マリクは台座に目を向けた。『60』と表示されたディスプレイを除き『卵』と同じ材質でできているようだ。

(いや、いやいやいや、いくらなんでも核って)
「こんなもんがか‥‥?」

 ツン、と『卵』をマリクはつついてみた。
 特に異常は見られない。
 コン、と『卵』をマリクは叩いてみた。
 特に異常は見られない。
 ガン、と『卵』をマリクは蹴ってみた。
 ビイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ。
「うおォ!?」

 ぐらり、と『卵』が台座の上で傾くと同時にけたましくブザーが鳴り響いた。同時に台座のディスプレイがカウントダウンを始める。
 ズンと『卵』が自重で戻ると、二つとも収まった。

「なるほど‥‥」

 マリクは、ニヤリ、と舌なめずりをしながら笑みを浮かべた。

「━━ひょっとしたら、使い方次第で楽しめそうだな。」

236embryo & incubator ◆qB2O9LoFeA:2015/05/13(水) 16:45:18 ID:a0NJ6wa6



「あ?」

 佐倉杏子がその音に気がついたのは風向きのせいか、鋭敏な聴覚のせいか、それとも他の巡り合わせか。
 金属球の扉が開いてすぐに移動を開始し、開けた荒野から手近な建物を目指した彼女は、すぐに目当ての廃墟へとたどり着いていた。

 しかし、入ることはためらわれた。

 廃墟から起きたブザーのような異音。
 建物の中庭からだろうか、突き出た鉄塔。
 そしてその鉄塔に付いているアンテナ。

(あれ?ヤバくね?)

 杏子が思い出したのは先程の放送だ。体のだるさを覚えながらも、『聞いておかないとマズイ』と感じて頭に叩き込んだそれは、くしくもマリクと同じようにある可能性に気づかせた。

「アンテナの近くに核爆弾とか言ってな‥‥」

 すっ‥‥、と廃墟の入り口に張り付く。中からは僅かに人の気配がした。

「核か‥‥まあ魔法少女なら‥‥」

 が、慢心。
 慎重に内部へと歩みを進める。
 幅の狭い通路を挟んですぐに中庭が見え‥‥同時に一人の人影を見つけた。

(デイパックは持ってるみたいだな、よし。)

 クラウチング。
 低く体勢を取ると、狙いをつける。
 なんと言うことはない、彼女がこれからしようとしているのは略奪。このような、まさしく食うのに困る異常事態で最初にすべきは自身の安全と衣食住の確保。

(ま、殺しはしないけど━━)

 魔力を足に集める。いつでも飛び出せる。

(━━頂く━━なっ!?」

 そして飛び出し、二歩目で横への移動へと変える。音をたてて飛来した礫を交わすと杏子はマリクと向かい合った。そして。

(?なんだあの卵みたいなの?棒なんか突きつけて。)
「動くなぁっ!!動けばこいつを爆破する!」
(‥‥!?まさか、おい‥‥!)

 ニヤリ、とは言えない異形の笑みを浮かべてマリクは叫んだ。


「この核爆弾が人質だァッ!」

237embryo & incubator ◆qB2O9LoFeA:2015/05/13(水) 17:08:48 ID:a0NJ6wa6



「もう一度言う、動くな。」

 そう言いながらマリクは、内心安堵のため息を吐いていた。彼が杏子の接近に気がついたのは、杏子が飛び出す寸前のことだ。放射線により感知しがたいとはいえ、千年ロッドは魔法少女の強い魔力を嗅ぎ付けたのだ。とはいえ、それもたまたまマリクが礫を持っていたからこそ活きたことだ。さすがに千年ロッドで『卵』を叩くのには抵抗のあった彼が何気なく持っていたそれが、彼の立場を大きく変えた。

「テメェ‥‥汚ぇぞ!」

 一方の杏子はそう叫びながら、マリクとの会話を試みようとしていた。今すべきことは、あの『人質』が果たして本当に核爆弾なのか。それとも違うのか。そして。
(アイツの持つ杖‥‥とりあえずアレを弾き飛ばす。)
 集中する意識はマリクの持つ杖、その下の地面。自分から離れたところに正確に槍を生み出すために魔力を調整する。

「汚い?オイオイ冗談キツいねぇ。先にふっかけたのはどっちだぁ?」

 コツン、とマリクはロッドで『人質』を叩く。



 故に、それを見た杏子は方針を変更決定した。

(アレが核爆弾って証拠はない。)

(もしアレが核爆弾でもあんぐらいならぞんざいに扱ってもセーフ。)

(なにより、コイツはなんかヤバい!)

 杏子は踏み出しかけて止まっていた足を戻す。マリクはそれを見て薄く声をあげて笑う。僅かに意識がそれる。足を戻して。


 千年ロッドが光ると同時に飛び上がった。

「何ぃ!」

 千年ロッドの異変に気づいたマリクの腕に衝撃が走る。荒れたコンクリの地面から、確かに『槍』が生え、千年ロッドをあらぬ方へ向けさせていた。

(弾き飛ばせなかったか、ま)
「終わりだよ。」

 壁を蹴っての三角飛びで上をとった杏子は倒れこむようにマリクを押さえつけた。

238embryo & incubator ◆qB2O9LoFeA:2015/05/13(水) 17:29:51 ID:a0NJ6wa6



「ナメるなァァァッッッッッ!!!」

 吼えるマリクを無視して杏子は腕を極めにかかる。うつ伏せの状態で腕を抑えられて拘束されている以上、もっともいくらマリクの上背があるとはいえ魔法少女に敵うはずがないが、杏子の優位は揺るがない。

「静かにしな、男だろ?」
「ぐぅ‥‥っ‥‥!」

 腕を極めると今度は喉を抑える。叫べなくすると同時に、杏子はマリクを落としにかかった。

「手こずらせやがって、落ちろ!」

 だから油断した。
 千年ロッドを弾き飛ばせなかったことを軽視し、千年ロッドに集められた『力』を見落とし、その光が弾き飛ばそうとしたときから増しているのが視界に入らなかった。


 ばき。


「落ちた、なあ!?」

 杏子は首に衝撃を感じながら、奇妙な解放感を感じた。と、同じくして自分が乗っている男、マリクの背に妙な機械が落ちているのを見た。それはちょうど、マリクの首にはまっている物と瓜二つだ。

「もしかしてこれっ。」
「形勢逆転、って言うんだったかァ。フハハハハハァ‥‥」

 ゴフゴフと咳き込みながら、マリクは哄笑を上げると、首だけ向けて杏子に目を合わせた。

「その首輪似合ってなかったんでなぁ‥‥外してやったよ。」

239embryo & incubator ◆qB2O9LoFeA:2015/05/13(水) 17:49:41 ID:a0NJ6wa6


「ざっけんな!!!」
「グガアッ!!‥‥ゴフ、フフ、フハハハハハ、アァハハハハハハハハハハハッッ!!」

 杏子は怒りに任せてマリクを叩きつけた。魔法少女のそれも半ば加減なしの力である。普通なら気絶するか、痛みで息ができないか。その一撃を受けて。

「フハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!」

 マリクは狂ったように笑っていた。自分へと一撃をくれた杏子の行動が、おかしくておかしくてたまらないといった具合に高笑いを響かせた。

 ビイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ‥‥

 そしてマリクの哄笑に合わせるように、ブザーが鳴り響いた。マリクにぶつかられころころと転がった卵。そしてその台座はけたましくブザーを鳴らしてカウントダウンを進める。

(ヤバい。)
 高笑いとブザーの二重奏が廃墟に鳴り響く。
(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。)
 刻一刻と終焉がやってくる。
(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい)

 カウントダウンはあと20。

240embryo & incubator ◆qB2O9LoFeA:2015/05/13(水) 18:06:30 ID:a0NJ6wa6



【C6(とD7の境)の核爆弾設置地点/廃村/1日/深夜】

【マリク・イシュタール@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
[状態]:闇マリク、ハイテンション。
[服装]:いつものアレ。
[装備]:千年ロッド。
[道具]:デイパック一式(内ランダム支給品の一つは千年ロッド)
[思考]
基本:とりあえずはこの状況を楽しむ。
1:いいねぇ‥‥その顔。
2:もう少ししたら『卵』を『台座』に設置する。
[備考]

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:呆然自失から立ち直った?首輪なし(マリクとほぼ同位置のため放射線障害はまだ起きない。)
[服装]:魔法少女。
[装備]:なし。
[道具]:デイパック一式
[思考]
基本:死にたくはないしとりあえず島の中央に向かう。
1:首輪が、いやまず核を、てかあれ核爆弾か?それとも‥‥
[備考]
●首輪が取れました。
●『台座』の横に『卵』が転がっています。あと二十秒以内に戻さないと起爆します。また『卵』内部の核爆弾になんらかの影響があった可能性があります。

241 ◆qB2O9LoFeA:2015/05/13(水) 18:11:19 ID:a0NJ6wa6
投下終了です

242名無しさん:2015/05/13(水) 20:36:27 ID:dI1XTh8o
投下乙です。
ただ首輪が外れたあたりがよくわからないのですが…
千年ロッドで切れ目がついて外れた?
それとも元々、簡単に外れるようになっていた?
OPのバーサーカーは殴った衝撃で首輪の機能を止めた感じでしたがそんな感じでしょうか

243名無しさん:2015/05/13(水) 21:18:31 ID:N.QKPXwg
投下乙です
今のところマリクさんに何の非も無いな
マリクさんが楽しそうで何よりです

244名無しさん:2015/05/14(木) 11:19:16 ID:AsqoVoMg
投下乙です。ちなみにキャスターと子狼のSSは本投下されないのでしょうか?

245 ◆qB2O9LoFeA:2015/05/18(月) 23:44:45 ID:JHsxIBTw
>>242
返信が遅れてすいません
マリクが杏子の首輪を破壊したくだりは、アニメ遊戯王デュエルモンスターズの王国編より、バクラがペガサスから千年眼を奪おうとしたときのレーザーの打ち合いの描写から千年アイテムに共通する能力として判断しました
腕を極めようとしている間にレーザーが首輪を直撃した感じですかね


まず先に小狼とキャスターの話を投下してきます

246 ◆11MEKbPvno:2015/07/25(土) 18:21:24 ID:nVr/BNVA
こちらにも投下とあったので投下します

247 ◆11MEKbPvno:2015/07/25(土) 18:22:08 ID:nVr/BNVA
「死ねっ・・・死ねっ・・・アカギ・・・!!!」

鷲巣が発射した無数のミサイルが次々と島に降り注ぐ。
それに巻き込まれてアカギに加えて何人もの参加者が何も分らぬまま散っていった。
皆それぞれ何かを為そうとしていた。
この状況下で何とかしようと模索していた。
だがそれは全て爆発に消えていった。
そしてミサイルの爆発は核爆弾の爆発を誘発していき--。

ドンッ

――ついには島の火山を噴火させるまでに至った。
この島は火山の影響で出来た島であり、島の中央の山はまさにそれだった。
もう長い間休火山化していたが、今回の多大な爆発で火が付いてしまった。
その二次災害によって辛うじて生き残っていた参加者達も、島の地下に本拠を置いていた鷲巣達も、全て死んでいった。
元々島の監視・緊急時の干渉を目的に本拠地は島の地下にあったが、それが裏目に出た結果となった。
誰にも何も出来ぬまま人の作りだした兵器と自然の脅威によって島は跡形もなく消え去った。

こうして歴史の修正力に踊らされたバトルロワイアルは島ごと消滅した。

宇宙の中に浮かぶ一つの星。
地球という名の星の何処かの島で起きた出来事。
奇妙で不可思議とも言える最後を知る者はいない。
理由なき見えざる意思によってもたらされた結果がただそこにあった。

【全参加者 死亡】
【全主催者 死亡】

【アニメキャラ・バトルロワイアル4th 完結】

248 ◆11MEKbPvno:2015/07/25(土) 18:22:55 ID:nVr/BNVA
投下終了します

249名無しさん:2016/03/04(金) 00:04:42 ID:roob1M9Q
感動しました


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