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単発SS投下スレ
1
:
名無しのスタンド使い
:2014/10/06(月) 13:43:29 ID:BYToOsO.0
単発SSの投下はこちらへどうぞ
244
:
「ムダ死に無き報復」
:2016/07/04(月) 23:11:07 ID:1J4REPSs0
>>243
のタイトルは文字化けしましたけど『慧 -kei-』です
「ムダ死に無き報復」
沫坂「今度こそてめえの息の根を止める……麻雀で!」
朝比奈「できるんですかね? 俺の能力を持ってすれば、集中を欠かせることなんてたやすいことですよ」
クリーム「フフフ……そのために私がいるってものよ、集中力に関しては誰にも負ける気はしないッッ!」
小早川「何故このメンツに俺がいるんだ」
甲斐谷「朝比奈に復讐するんだ……そのために俺が君をここに呼んだ」
小早川「えっ誰あんた」
――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
――――――――――
東四局 親小早川
カチャッ タンッ カチャッ タンッ カチャッ タンッ
クリーム「いくわよ……(六索)」タンッ
沫坂「ポン!」カッ
クリーム「これっ!(八索)」タンッ
沫坂「ポン!」カッ
クリーム「そらっ!(發)」タンッ
沫坂 「ポンッ!!」カッ
朝比奈「……くそっ」
小早川「下家から上家へのバックアップ……すぐにクリームに手番がまわるから対処しようがねえ!」
クリーム(『エロティカル・クリティカル』……敵の当たり牌に必ず当ててしまってはダメだけど、味方の有効牌にも必ず当てることができる! さあ……勝って!!)
甲斐谷(俺が居ぬ間にこんなコンビネーションを身につけるなんて……沫坂!)
コズミック・ケイオス
小早川(クソッ……このままじゃまた『 緑 一 色 』を決められて引き離されちまう……ニ三四索はもちろん、他の緑一色に必要な牌は絶対に切れねえ)
クリーム「……(六筒)」タンッ
小早川(これ以上の援護はなしか……だが有効牌を切ってはいけないことに変わりはねぇ)
小早川「(九筒)」タンッ
朝比奈「はは、あはははははははは! それロォン!!」
小早川「何ッ!?」
沫坂「…………」
朝比奈「沫坂さん……アンタがいい目くらましになってくれた。おかげで無警戒のままアガることができたよ」
クリーム「くそっ、してやられたわ」
小早川「振り込んだのは俺なんだけど」
ディプレッション&ラジィ
朝比奈「『平和 純チャン 三色同順 一盃口 ドラ2』!!!」
ドォ―――――――z__________ン!!
小早川「ぐわぁぁぁああああああーーーーーーっ!! アガリの衝撃で体がフッ飛ばされるーーーーッ!!」
コズミック・ケイオス
沫坂「くそっ、俺も負けてられねえ!! 『 緑 一 色 』!!」
ドォ―――――――z__________ン!!
小早川「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ロード・トゥ・ディプレッション
朝比奈「『国士無双十三面待ち』!!」
ドォ―――――――z__________ン!!
小早川「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
最終結果
沫坂 59700点
朝比奈 47300点
クリーム 4400点
小早川 -11400点
245
:
「ギャングのひとりごと」
:2016/07/04(月) 23:28:48 ID:1J4REPSs0
毛玉「お゛お゛お゛らっ!!(五萬)」ダンッ
ルカ「フフフ……それ、あがりだよ」パタン
毛玉「何ィィ……ッ!!」
ルカ「もうキミは残り3100点……僕がキミをトバして昇天させてあげる。それが僕の天使の仕事だから……」
李(今日のルカちゃんノッてるなあ)
アルスーラ「……ちょっと待ちなさい」
ルカ「んん?」
アルスーラ「ルールはダブロンなし、頭ハネだったわよね? 私もアガってるの、クスクス……」パタン
ルカ「なっ……!!」
毛玉「ま、ま゛たデメエかよ!!」
李「これで終局……アルスーラさん以外だれもアガれないなんて……『焼き鳥』っていうんだっけ、こういうの」
※焼き鳥……1半荘の間に1度もアガれないこと。
アルスーラ「クスクス……一度トップに立ってしまえば、私の影を歩くあなた達は『ファイヤー・アンド・ザ・サッド』の炎に焼かれるしかない、勝負は最初から決まっていた」
毛玉「ぐっそお゛お゛お゛お゛お゛お゛!! 俺が焼き鳥だとおおおお゛お゛お゛!?」
アルスーラ「あなたは焼き鳥っていうより……焼きイノシシね、クスクス……」
ルカ「くっ……僕はッ、また……煉獄の炎に焼かれ……」
アルスーラ「あなたは……そのまんま鳥っぽいわね、トサカついてるような頭してるし」
李「ははは、じゃあ私は焼き鳥じゃなくて……焼き豚かなあ」
アルスーラ「…………」
ルカ「…………」
毛玉「…………」
李(な、なんでみんな黙りこんだの? 冗談で言ったのに)
ルカ「李、気にすることないよ、君はそんなに太ってないよ」
李(いきなり素に戻ってフォローすんなよ! 腹立つ!!)
最終結果
アルスーラ 69800点
李 21100点
ルカ 11200点
毛玉 -2100点
246
:
「荒牌」
:2016/07/04(月) 23:47:23 ID:1J4REPSs0
グリシア「……(東)」タンッ
耶樹「それや、ロン!!」パタン
グリシア(……あなたは、私に『放銃』させた。それがスタンド能力発動の条件……!)
ドォ―――――――z__________ン!!
ドン「な、なんだこの異様な雰囲気は!」
ソーシン「耶樹さんがアガった瞬間、空気が変わった……」
グリシア(『ゴースト&ダークネス』……あなたは牌を……喰いたくなる)
グリシア「……(四筒)」タンッ
耶樹「っ、チー!!」カッ
グリシア「……(七萬)」タンッ
耶樹「ポ、ポン!!」カッ
ドン「これは……」
ソーシン「さっきまでめったに鳴かなかった耶樹さんが……めっちゃ鳴きまくってるじゃん!」
耶樹(なんやこれ……何故か……どんどん、牌を『喰い』てェ……ッ!!)
グリシア「……(五萬)」タンッ
耶樹「ポンッ!!」カッ
ドン「…………」
ソーシン「……ってアレ? 耶樹さん手ェめっちゃ進んでない?」
ドン「しかもドラ鳴かせてるんだが……」
グリシア「……っ!(二萬)」
耶樹「ロン!! タンヤオ、ドラ3、7700点や!」
ドン!
ソーシン「……振り込んだし」
グリシア「くっ…………!」
耶樹「あんた……なんて悲しい目をしてるんや。相手の捨て牌には目もくれず、必死でアガリを目指そうとしている目や……」
ソーシン「ただの超初心者だ」
耶樹「『バッド・バード・ラグ』……ハコ『割れ』や」
ドン「…………」
ソーシン「…………」
グリシア「……さようなら」
最終結果
耶樹 44000点
ドン 37200点
ソーシン 25700点
グリシア -6900点
247
:
名無しのスタンド使い
:2016/07/04(月) 23:47:53 ID:1J4REPSs0
以上、お粗末さまでした
248
:
名無しのスタンド使い
:2016/07/05(火) 10:25:08 ID:hv27JDew0
おもしろかった
249
:
名無しのスタンド使い
:2016/07/05(火) 21:29:31 ID:VTAhPsao0
これはよく出来てるなぁ
個人的には荒牌が好き
凄いわ��よく考えられてるスタンド能力で麻雀するとこうなんのねー
楽しかったですありがとうございます!
250
:
名無しのスタンド使い
:2016/07/08(金) 18:36:10 ID:hBHfX.Bg0
やっぱり毛玉たんとグリシアたんかわいい
251
:
RSP‐106 望まぬ守護者
:2017/08/17(木) 21:44:02 ID:leiWeIPk0
アイテム番号:RSP‐106
スタンドクラス:safe
特別収容プロトコル:RSP‐106はその性質上、本体であるRSP‐106‐1から引き離すことは不可能です。
level2以上の戦闘型スタンドを有するセキュリティ職員が常に1人以上監視している状態で、サイト����の寄生型RSP収容区間に収められます。
RSP‐106の詳細な活性化条件は未だに不明であり、如何なる場合であっても担当職員によるRSP‐106‐1への叱責、悪口、反論、その他の粗暴な会話の試みは認められていません。彼女の問いかけを無視することなども同様です。
現在、SCP‐106‐1に対する実害を伴った敵対的な行動は����博士の指示により禁止されています。
これらに違反した職員は即時の当該プロジェクトからの除名、又はlevelの降格を含む懲戒処分がなされます。
説明:RSP‐106は鳥のような姿をした寄生型独り歩きスタンドです。
頭部には日輪のような環が形成されており、一般的な生物が持つ双眸の代わりに大きな一つ目の絵が描かれているのみとなっています。
発話能力は無く、各種実験結果からも明確な自我は認められませんでした。
活性化状態に入る直前にのみ、キジ科の鳥類に近似した甲高い鳴き声を発します。
RSP‐106は[データ削除済み]によって発現した可能性が高く、しかし初期に行われたRSP106‐1に対する聞き取り調査ではそれと断定できるまでの証言を得るには至っていません。
RSP‐106‐1は����才の、コーカソイドの女性です。身長は148cmで体重は����kgであり、希少な金髪碧眼の風貌である以外は一般的な児童のそれと変わりありません。
これまでの経緯から軽度の鬱病を発症しており、普段の職員とのコミュニケーションには消極的です。
財団の戸籍調査の結果、イタリアのラツィオ州������の出身であることが分かっています。彼女の両親は離婚しており、同居していた母親は[編集済み]。
そのため、記憶処理を含めたあらゆる情報操作は必要としません。彼女はありふれた行方不明者の1人として公的機関に登録されています。
RSP‐106は何れかの生物がRSP‐106‐1に対して敵意ないし、敵対的な行動を取ることで活性化します(この敵対的な生物を以後、対象と記述)。
RSP‐106は対象に対して嘴を利用した攻撃を繰り返します。これは対象が意識を失うか死亡するまで継続して行われ、その後は非活性状態に戻ります。
対象が複数存在する場合は、より敵対的な個体を優先して攻撃する傾向にあるようです。また、優先対象を攻撃中に別の対象であった生物から敵意が消失した場合、それが対象から除外されることも分かっています。
RSP‐106を無力化する試みは全て失敗に終わりました(資料106‐25‐A参照)。この事例に於いてRSP‐106は自身を直接攻撃してきた職員には全く反応せず、偶発的に対象となった職員にのみ攻撃を繰り返していたことに留意してください。
第1回作戦行動時にRSP‐106‐1に部屋の隅で蹲ってるように指示を出したエージェント・��������が対象となり、[編集済み]。
他、計��人のエージェントと職員がRSP‐106によって頭部の骨折、四肢の裂傷などの重傷を負いました。
第3回作戦行動時、モニター越しにそれを観察していた研究職員1名が対象となった事例については現在調査中です。
RSP106は������州��������で起きた小規模犯罪グループの壊滅事件が警察内部に潜入していた財団エージェントの注目を引いたことで発見、回収されました。
この事件唯一の生存者である[データ削除済み]に対して行われた財団による尋問では、��������駅のホームに1人でいたRSP106‐1を仲間と共謀して誘拐し隠れ家へと連れ帰った後、彼女に[編集済み]しようとした全員が突然"見えない何か”に襲われたと供述しています。
これを受けて事件の関係者全員に財団のエージェント・����によるスタンドを用いた記憶処理を行いました。その後に流布されたカバーストーリー「同業者との抗争」は現在まで有効です。
補遺1:以下は、財団の回収前に事件現場で放心していたRSP‐106‐1と警察官として任務に当たっていたエージェント・グラントンの会話記録の抜粋です。
252
:
RSP‐106 望まぬ守護者
:2017/08/17(木) 21:45:07 ID:leiWeIPk0
〈録音開始〉
録音開始から数分間は何人かが水溜りを歩くような音と呼吸音のみが聞こえる。
その後にエージェント・グラントンと同僚の警察官との短い会話があるが、重要度の低い内容のため省略済み。
グラントン:ここは特に酷い有様だ……床が血で染まりきってやがる。[罵倒]、皆死んでいるようだな。[3秒間の沈黙]
グラントン:ちょっと待て、部屋の真ん中に女の子がいる……まだ生きてるぞ! ジョフリー、皆を呼んできてくれ! ああそうだ、早くしろ!
RSP‐106‐1:わたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだ……[6秒間、譫言のように繰り返している]
グラントン:大丈夫か!? 怪我は……無いようだが。落ち着いて深呼吸して……ああ、私達は君を助けに来たんだ。この家の人間から通報があってな。君はここの家族の身内か?
RSP‐106‐1:近付かないで、近付かないで近付かないで貴方も襲われる『アイツ』に襲われちゃう!
[15秒間、エージェント・グラントンがRSP‐106‐1の言葉を受けて部屋の隅々を探ったと思われる雑音が記録されている]
グラントン:いや、少なくともこの部屋に犯人はいないようだ。俺の仲間もこの家を見回ってるし安心していい。それで……『アイツ』ってのは、君達を襲った犯人のことか? まだどこかに隠れているのか? 何か知っているなら詳しく教えてくれ。
RSP‐106‐1:違うんです、わたしのせいなんですごめんなさいごめんなさい……わたしが怖がったから皆殺されたんですごめんなさいごめんなさい……。
グラントン:おい、わたしのせいってのは、どういう意味───
RSP106‐1:ああああ! やっぱり、わたしのせいだ……ああああああああ……。
以降の記録はハンドガンの発砲音と駆け付けた警察官による怒声と悲鳴、少女の啜り泣く声が大半を占めており、個々の発言は殆ど判別できないか意味の無いものになっています。
����博士は彼がRSP‐106‐1を敵性スタンド使いと認識したことで対象になったと結論付けています。
エージェント・グラントンはlevel1の装備型スタンド使いであったためにRSP‐106を視認できたと考えられますが、他の警察官は非スタンド使いの一般人であり、どういった経緯で対象となったのかは不明です。
補遺2:
・事例記録106‐E‐1 2����/����/��
対象:[データ削除済み] 21歳 男性 RSP‐106の教育係として新規雇用されていた。
事例内容:食事中、RSP‐106‐1の生活態度に対し冗談交じりに苦言を呈する。また、対象は事例発生の1ヶ月前から彼女との交流を図っており2人の関係は比較的良好であった。
結果:RSP106は活性化、[データ削除済み]は上半身に13箇所の刺し傷と脳の一部に損傷を受けた。
植物状態になるも一命は取り留め、現在は財団の療養施設にて治療中。
メモ:同じ失敗を繰り返してはならない。私達の保護下にある限り、彼女はこのような悲劇から常に守られねばならないのだ ―����博士
・事例記録106‐E‐2 2����/����/��
対象:[データ削除済み] 32歳 男性 RSP‐106が壊滅させた犯罪グループの生き残り 財団での治療後、警察機関には引き渡さずlevel0職員として採用していた。
事例内容:[編集済み]
結果:[編集済み]
メモ:[罵倒]、1週間の休暇を申請する。―����博士
補遺3:2����/����/��現在、RSP‐106‐1の精神状態は概ね安定しておりRSP‐106の活性化事例もおよそ����週間に於いて発生していません。
しかしながら、これ以上のRSP‐106の活性化及びそれに伴う事例の発生はRSP‐106‐1の破滅的な精神崩壊を引き起こす可能性が指摘されています。
RSP‐106担当職員は引き続き特別収容プロトコルに則り、また彼女のメンタルケアに万全を期すことが望まれます。
彼女を甘やかすのではなく、全てを受け入れてください。注意や叱責するのではなく、より良い大人へと成長できるように導いてください。それが今の私達にできる彼女への精一杯です。―����博士
253
:
RSP‐106 望まぬ守護者
:2017/08/17(木) 21:48:00 ID:leiWeIPk0
使用スタンド
No.8114 【ディフェンダー・オブ・ザ・フェイス】
SCP風のSSを書いてみたかっただけ。
絵師様案師様ありがとうございました。
254
:
名無しのスタンド使い
:2017/09/24(日) 00:30:58 ID:.98JN28Q0
ごめん今気付いた
SCPってよく知らないけどこういうケースファイルというかカルテ風の創作をするんやろか
こういうのが蓄積されると世界が深くなって面白そうやなあ
255
:
名無しのスタンド使い
:2017/09/26(火) 20:20:06 ID:xgYH2lfw0
SCP財団は怪奇創作サイトですね。最近動画などでも紹介されてます。
報告書と言う体での創作となる為にメインの記事は上記のような書き方になります。
実は最近のスタンド案の中にもちらほらSCPを元にしたものが見受けられており…
財団職員、貴様、見ているなッ!(爆)
256
:
名無しのスタンド使い
:2017/09/26(火) 22:34:17 ID:ELjibPQs0
幼女かわいそう路線いいぞ(変態)
257
:
名無しのスタンド使い
:2018/04/07(土) 05:47:57 ID:ef7YIr320
https://i.imgur.com/vDMneSv.png
幼女!幼女!
258
:
名無しのスタンド使い
:2018/04/07(土) 07:18:49 ID:rvpCnG6w0
これはペロペロ案件
259
:
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/09(月) 09:05:29 ID:qO7NV.0o0
午前2時。
人気のない深夜の国道を、一台の車が疾走する。スピードでいえば、時速100kmは軽く超えていた。
運転席の男は、呪詛めいた恨み言をぶつぶつ呟きながら、アクセルペダルを踏み込んでいた。
しばらく走っている内に、ガコン、と車体後方で物音がした。
男がルームミラーで確認すると、トランクが開いていた。
不審に思い、減速しようとペダルから足を離したその瞬間だった。
「!!」
突然、握りしめていたハンドルも、自分の身体を預けたシートも、シートベルトも、何もかもが"なくなった"。
運転していたはずの車が跡形もなく消え去り、男の身体は虚空に放り出された。
全く状況を理解できないまま、男はアスファルトに全身を打ち付けて、そのままごろごろと車道を転がった。
ザラザラした地面ががりがりと肉を剥いでいく。右腕の骨も砕けてしまった。
痛みを感じるよりも、ただ単純に全身に浴びせられる衝撃だけしか把握できなかった。脳の処理が追いつかない。
やがて勢いは収まり、男は車道に伏した。
男からこぼれ落ちた血と肉片が、アスファルトに生々しい横転の跡を描いている。
男は立ち上がることができなかった。
「あらら、お兄さーん。大丈夫ですかー?」
人通りのなかったはずのその場所に、突然、若い声が木霊した。
女子の声にきこえたが、それにしてはハスキーで、声変わり前の男子の声という可能性もあった。
薄れ行く意識の中で、男は思った。"聴いたことのある声だ"と。
声の主が男に近づき、ぐったりとした身体を起こし上げ、その顔を覗かせた。
あどけない、中性的な顔つき。
その顔をみて、男は大きく目をかっぴらいた。
声の主、阿須名 彗(あずな けい)は、汚物を見るような冷たい視線で、男を見下ろしていた。
「あ、勘違いしないでね。『大丈夫ですか?』って『頭大丈夫?』って意味だから。
お兄さんは私の想像以上にオツムが弱いみたいだね。こないだ言ったこと、わかってないみたいだからもっかい言うよ」
阿須名は男の胸ぐらを掴み上げた。
「奏 璃乃(かなで りの)に構うな。もしまたアンタの痕跡を見つけたら、次はマジで殺すよ。いいね?」
そう告げて、阿須名は胸ぐらを離した。男はどさりと倒れ込んだ。
阿須名は立ち上がり、そのまま来た道を戻るように踵を返した。
オリスタトナメスピンオフ「私だけの女」
260
:
私だけの女 1/2
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/09(月) 10:20:48 ID:qO7NV.0o0
国道での事故の少し前
「ねーねー。イタリア行こうよ。ローマいきたいなー。ツアーでもよくない?」
黄色い革張りのソファにごろんと寝転がりながら、旅行のパンフを開いた阿須名 彗が言った。
「えー? 行きたいけどだめだよ。お店はどうするの」
その隣に腰掛けて、商品のポップを作りながら、奏 璃乃は答えた。
二人は、現在璃乃が経営するアロマテラピー専門店、店舗二階部分の住宅スペースで生活を共にしていた。
もともとは、オリスタトーナメント第16回決勝戦の対戦相手として二人は知り合った。
璃乃は阿須名の実姉である真木野 美彩(まきの みさ)の親友だったために、阿須名を知っていたが、彼女の方は璃乃を知らなかった。
そのため、阿須名は璃乃の想いを汲み取れず、試合の中で、危うくその命をうばいかけてしまった。
にもかかわらず、璃乃はその全てを許し、阿須名のために献身してくれた。
阿須名は彼女の姿に強く胸を打たれ、閉ざしていた心を開いた。
そうして強い友情を結ぶまでに至り、現在は一緒に暮らすまでの関係となった。
261
:
私だけの女 1/2
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/09(月) 10:22:44 ID:qO7NV.0o0
「一週間くらい休んだって平気だよー。人気あんだからさ。そんなんで潰れたりしないって」
阿須名が身体を起こし、悪戯っぽく笑った。
冗談のような言い回しだったが、まず、それは事実だった。
店の収益だけで言えば、一週間休んだ程度で生活に響くようなレベルの被害は発生しなかった。
というよりそもそも、店の売り上げなど微々たるものだった。二人の生活費は、ほぼ阿須名の資産運用によって賄われていた。
株や為替、ファンドへの投資で、阿須名は二人がそこそこ不自由なく暮らせるほどのお金を稼いでいた。
262
:
私だけの女 1/2
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/09(月) 10:23:18 ID:qO7NV.0o0
「そういうことじゃないでしょ? 楽しみにしてくれるお客さんがいるんだもん。待たせるわけにいかないよ」
そしてこれも事実だった。璃乃は利益の追求など全く考えずに店を開いていた。
高品質なアロマをウソみたいな安さで販売していた。すべては、「すべてのお客さんに良い香りを届けたい」その一心からだった。
当然、店は開店当初からずっと赤字だった。阿須名の投資マネーの補填がなければ、とっくに店を畳んでいてもおかしくない状態だった。
263
:
私だけの女 1/2
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/09(月) 10:23:56 ID:qO7NV.0o0
店の帳簿をつけるたびに、阿須名は「私がいなかったらどうなるんだ」と何度も頭を抱えた。
璃乃に商売の才能がないのは、いやというほど身にしみて理解していたが、当の本人は、のほほんとしていた。
けれど、阿須名にはそれでよかった。
たとえ破産したって、璃乃は生き方を変えることはないと確信しているし、だからこそ彼女のことが好きだった。
故に、璃乃のやりたいことが全てにおいて優先なのは、仕方のないことだった。
「へいへい。その通りです。わかりましたー」
阿須名はいじけた様に言い、旅行パンフを閉じてテーブルに放った。
「……怒った?」
作業の手をとめて、璃乃が伺う。阿須名はぼすん、とソファに顔を埋めている。
「別に怒ってない」
それは本心だったが、阿須名は、なんとなく不機嫌そうに答えてみた。
「……そっか」
そう呟くと、璃乃は黙ってポップ作りを再開した。
言葉を発する人がいなくなったので、部屋はしんと静かになった。阿須名は、そのまま寝入ってしまった。
264
:
私だけの女 1/2
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/09(月) 10:29:31 ID:qO7NV.0o0
*
しばらくして、目を覚ました阿須名は、知らぬうちにかけられた毛布にくるまりながら、むくりと身体を起こした。
璃乃の姿はなかった。作業を終えて、出かけたらしいことを机の上の書き置きから知った。
知り合いとの飲みに出かけたらしい。
「……絶対合コンだろ。まーた呼ばれたんかよ」
とは書いていない書き置きを読みながら、阿須名はふーんと小さく唸った。
阿須名 彗にはいくつか悩みがあったが、大半は奏 璃乃に起因するものだった。
あまりにも利益を度外視しすぎている店の経営も悩みの一つだったし、中でも"これ"は特に悩ましい問題だった。
奏 璃乃は性別を問わず、周囲の人間を惹きつけすぎるところがあった。
以前より人気者だったが、開業してからは更に頻繁に色々な人から誘いを受けるようになった。
彼女のスマホは一日中鳴り止まない。
ひとたびコンパに登場しようものなら男たちのテンションは5割増しくらいになり、彼らの興味関心を一手に引き受けてしまう。
「それってむしろ女子勢から総スカンでは?」とも阿須名は疑問に思うが、そうでもないらしい。
毒気と欲がないため、むしろメンバーとして重用されているとの噂もきいていた。
とうとう最近では、陰で「合コンの女王」とまで呼ばれるようになったらしい。
「友達は狭く浅く」がモットーの阿須名にしてみれば、璃乃の人望の厚さと広さは、本当に同じ人間なのかと疑わせるほどだった。
困ったのが、彼女は誰にとっても、いともたやすく"特別な人間"になってしまうことだった。
本人にそのつもりはないのだが、周囲は勝手に舞い上がる。
勝手に璃乃を特別な存在にして、璃乃からも特別に想ってもらえると勝手に期待してしまう。
そのせいでトラブルになることも少なからずあった。
「基本無防備なんだよねぇ……。あの子バカなのかな?」
蛍光灯に羽虫を引き寄せられるように、璃乃にも悪い虫はたかった。
その中でも、【黒田】という名の男は、最悪と言っていい害虫だった。
265
:
私だけの女 1/2
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/09(月) 10:35:03 ID:qO7NV.0o0
*
【黒田】とは、どこかの合コンの席で知り合ったらしい。
璃乃は黒田のことをまったく覚えていなかったが、黒田は彼女をいたく気に入ったらしく、頻繁にSNSでメッセージを送ってきていた。
コンパから帰ってきたあとの璃乃のスマホは、大抵バカになったんじゃないかと思うくらいに鳴りまくる。
しかしこの黒田と連絡先を交換したときは、いつも以上にスマホがやかましかったので、阿須名もなんとなく彼の名前は覚えてしまった。
璃乃は返事を返したり返さなかったりだったが、向こうにはそれは御構い無しだった。
一通送れば三十通くらい送り返してくる。それが黒田という男だった。
「う、またきてる…」
朝、璃乃がスマホを片手に困惑していることが増えた。
「黒田?」
「うん……」
トーストをかじりながら、阿須名も画面を覗き込む。
寝ているうちに、黒田からのメッセージが捌き切れないほどに溜まっていた。
内容は「これから風呂に入る」だの「本を読んでいる」だの、何のためか誰のためか一切わからない謎の行動報告が大半だった。
その他には仕事の愚痴だったり、璃乃へのプライベートな質問だったりするが、いずれにせよ受け取る側からしてみれば答えようのないものばかりだった。
「うわー、気持ち悪くねコイツ。ブロックしとこうよ」
画面をスクロールしながら、阿須名が言った。
「うん……でもブロックはちょっと酷くないかな……?」
「え? 全然酷くないでしょ。こんなの受信しまくる【りぃ】のスマホが可哀想」
阿須名は璃乃を【りぃ】と呼んで、彼女にスマホを返した。
「そ、そうかな……」
璃乃はスマホを不安そうに握りしめた。
「まあ気が引けるのはわかるけどねー。じゃあもうすこし様子見てみる? 酷くなりそうだったブロックしようよ」
「そうだね……そうする。ありがとう、ケイちゃん」
二人は、当面メッセージを気にしない方向で決めた。
スマホをしまって席に着き、朝食をとった。
そのときの阿須名の提案は、まるで予言だった。単に取り留めのないだけだった黒田の文章は、次第におどろおどろしいものに変容していった。
266
:
私だけの女 1/2
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/09(月) 10:42:18 ID:qO7NV.0o0
*
しばらく返信をしないでいると、黒田のメッセージは、徐々に攻撃的なものに変わっていった。
口汚い表現が増え、文章の中に璃乃を中傷する言葉が多く盛り込まれるようになった。「殺す」といった脅迫するようものもあった。
返事をしないことに怒りを感じているらしいというのは、璃乃にもわかった。
しかし返事を返さないということが、こんなにも人のプライドを傷付けるのだとは、彼女は知らなかった。
この頃から、通話の着信も増大した。彼女は昼夜を問わず、一日中通話とメッセージで黒田から攻撃されるようになった。
顔もろくに覚えていないような相手から、である。
既読無視もそろそろ限界だった。
「りぃ、スマホ貸して。私がブロックするから」
沈んだ表情の璃乃を見ているのも、阿須名には限界だった。
ブロックできない璃乃からスマホを半ば強引に受け取り、阿須名は黒田をブロックした。
「これで大丈夫。こんなくだらないことに悩まなくていいんだよ」
「ありがとう……。ごめんね、心配かけて」
「全然平気だよ。もう心配しなくていいから」
暗い顔の彼女を安心させたくて、阿須名はいつものように冷静であろうと努めた。
本当は少しだけ懸念があった。
今回のことで、黒田の行動がエスカレートする可能性があった。
しかしそれを口に出す必要はなかった。
とにかくこれでもう問題は解決したのだと、阿須名は璃乃に思わせたかった。
次の日の朝、事務所のポストに、差出人不明の封筒が届いていた。
最初に手に取ったのは阿須名だった。
「ーーいッ!」
封を切ると、鋭い痛みが指先に走ったので、思わず阿須名は封筒を落とした。
ポタポタと、赤いものが地面に滴り落ちた。
人差し指がパックリと裂け、血がどくどくと溢れ出していた。
封の部分を調べると、カミソリがしかけられていた。
「いったぁ……。くそ、なんだよこれ」
封を開けたのが璃乃じゃなくてよかったと、阿須名は心からそう感じていた。
そして傷をハンカチで抑えながら、封筒の中身を確認する。
中には写真が、10枚ほど入っていた。
「うわっ!」
写真をみて、思わず阿須名は飛び退いた。
男のものと思われる手首が、ずたずたに切り裂かれた写真だった。
リストカットというやつだ。
手首にカミソリの刃をあて、肉を裂いていく様子が10枚に渡って記録されていた。
阿須名は、恐ろしさに言葉を失った。思わずその場にへたりこんでしまった。
とりあえず、もっと調べようと考えた。写真をなるだけみないように、封筒の中を探ってみた。
写真の他にはなにも入っていなかった。
差出人を特定できるものはなにもなかったが、阿須名には心当たりがあった。
「……絶対黒田だろ、これ」
直感だったが、阿須名は確信していた。
こいつはやばい、と思った。
そして、このことは璃乃には知られたくなかった。
今後起こるであろうことはすべて、彼女に知られる前に私が処理をしよう。
阿須名はそう決めた。
「【アイス・エイジ・4】!」
彼女がそう口にすると、その背後に人の形をしたエネルギーが発生した。
阿須名 彗のスタンド、【アイス・エイジ・4】である。
【アイス・エイジ・4】が写真に触れて、しばらくするとそれらは跡形もなく消え去った。
「触れたものを無敵化し、数秒後にこの世界から抹消する」。その能力を行使したのだった。
「こんなもの、りぃには絶対見せられない。黒田め、覚えてろよ……!」
じんじんと痺れる指先を握りしめて、阿須名は腹わたをグツグツと煮え繰り返していた。
267
:
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/09(月) 10:43:54 ID:qO7NV.0o0
いったんここで切ります。続きは後日
268
:
名無しのスタンド使い
:2018/07/12(木) 23:46:01 ID:ZZk7DABg0
https://dl1.getuploader.com/g/orisuta/2825/20180712_234455.jpg
ケイちゃん!
269
:
名無しのスタンド使い
:2018/07/13(金) 11:57:56 ID:QF2IRhEo0
ケイちゃんカッコカワイイ!できる子オーラすごい
IA4もカッコイイな!
270
:
名無しのスタンド使い
:2018/07/13(金) 20:52:16 ID:7r6iB6VI0
>>268
はぁんカッコイイ
271
:
私だけの女2/3
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/17(火) 21:42:46 ID:s6iQaLQw0
*
その後も、黒田からの不審な郵便物はほぼ毎日届けられた。
送りつけられるものは日に日にエスカレートしていく。
カミソリは当たり前のようになり、精液の入ったコンドームや、陰毛らしきものを張り付けた璃乃の写真が届けられたこともあった。
毎朝、阿須名は璃乃よりも先に起きてポストの郵便物を確認することを日課とした。
差出人不明のものは、片っ端から【アイス・エイジ・4】の能力でなかったことにした。
防犯カメラを設置したり、警察に相談することは考えなかった。
店が盛り上がってるところで変な噂を立てたくはなかったし、とにかくいまは璃乃を余計なことで疲れさせたくなかった。
ある日、宅配便で部屋に小箱が届けられた。
知らない名前だったが差出人の記載があった。不審物はいつもポストに投函されていたので、阿須名は思わずそれを受け取ってしまった。
怪しくはあったが、璃乃の交友関係の広さを考えると、自分の知らない誰かからの贈り物である可能性は否定できなかった。
璃乃がいない内に、阿須名は箱を開封した。
「……うぅっ!」
箱の中身は、ぎっしりと詰められた子犬の死骸だった。
黒田は、複数匹の子犬をご丁寧に分解して、その肉塊を隙間なくぴっちりと箱に収めていた。
それは、彼女にとっては想像もできないほどのおぞましさだった。
とっさに顔を背けたが、異常すぎるその光景はフィルムのように、一瞬で目に焼き付いてしまった。
阿須名はトイレに駆け込み、嘔吐した。
その後差出人の住所を調べたが、案の定、存在しない適当なものだった。
「……くそっ」
阿須名は、いちいち黒田の郵便物に驚いたり、慄いたりする自分に腹をたてていた。弄ばれているようで悔しくて仕方がなかった。
小箱を【アイス・エイジ・4】で消し去ると、阿須名はスマホを取り出し、意を決したようにどこかへ電話をかけはじめた。
「……もしもし」
彼女にはこれ以上、受け身でいるつもりはなかった。
272
:
私だけの女2/3
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/17(火) 21:53:45 ID:s6iQaLQw0
*
第16回トーナメントで立会人を務めた少女、春奈(はるな)・モーティマーは、普段は隆星学園の生徒として、太平洋のど真ん中に位置する島で日々を過ごす。
この日、彼女が本土にいたのは、近日開催予定のトーナメントに向け、立会人らが招集をうけたからであった。
春奈は都内某所のビルで行われた学習会に参加したあと、宿泊先のホテルに戻ろうとしたところで、阿須名に声をかけられた。
「やぁ。お久しぶり。忙しそうだね」
春奈は阿須名をちらりと見て、それから少しばかり顔をしかめた。
「……何の用ですか?」
「頼みたいことがあるんだ。この男の住所を調べてほしい」
そう言って、阿須名は一枚の紙を春奈に差し出した。
春奈はそれを一瞥するが、受け取ろうとはしなかった。
「……探偵事務所にいかれては?」
「ダメ? 美味しいケーキをご馳走するよ。頼れる友達は君だけなんだよね」
「私がいつ貴女の友達になったんです?」
美味しいケーキは知りたかったが、春奈は乗らなかった。
はっきりと拒絶したはずだったが、それでも阿須名は全く意に介していない様子だった。
彼女に諦める気がまるでないことを察すると、春奈ははぁ、とため息をついた。
「……で、何か手がかりはあるんですか」
渋々と言った様子で、春奈は紙を受け取った。
阿須名はうっすら笑みを浮かべた。
「なんにもないよ。そこにSNSのアカウントは書いといたけど」
「充分です」
春奈はかばんからタブレットを取り出し、その場で運営のシステムを起動した。
阿須名から手渡された情報を、システムに入力していく。
「助かるよ。わかったら連絡ちょうだい」
「はい? ちょっと、どこへいくおつもりですか? 10分くらい待ってられないんですか、貴女は?」
阿須名が颯爽と去ろうとしたところを、春奈が呼び止めた。
「え、まさか10分で調べられるの?」
「当たり前です。こんなことに時間はかけません」
「マジ? 超カッコいい」
両目をキラキラと輝かせて、阿須名は春奈のタブレットを覗き込む。
外部の人間に運営のシステムを見せるのは厳禁だったが、抵抗するのも面倒なので、春奈はそのまま放っておいた。
273
:
私だけの女2/3
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/17(火) 22:02:05 ID:s6iQaLQw0
「……あの」
検索を進める中で、春奈がふと声を出した。
「ん?」
「蘇亜橋 真座利(そあばし まざり)さん……覚えてますか?」
彼女はタブレットに視線を落としたままで訊いた。
蘇亜橋 真座利。春奈が立会を務めたトーナメントの試合で、阿須名の対戦相手だった少女。
彼女は試合で、不幸にもその命をおとした。
「……もちろん。忘れる訳ないよ」
阿須名にとっても、一生忘れることのない名前だった。
「そうですか」
「なんで?」
「……いえ、別に」
そう言ったきり、春奈はなにも話さなかった。
しばらくして、検索が終了し、黒田の個人情報が画面に表示された。
春奈はてきぱきと画面の保存とデータの送信を行った。
「貴方のスマホにデータを送りました。確認してください」
阿須名はスマホを取り出し、春奈から受け取ったデータを確認する。
「……確かに。助かったよ、ありがと。ケーキはまた今度ね」
「ひとつ、お聞きしても?」
突然、春奈が言った。
「あの大会に出場していた、奏 璃乃さんと一緒に暮らしていると聞きました。この件は、彼女の関係ですか?」
「なんでそう思うの?」
「なんとなく。貴女に試合の時のような余裕を感じないので」
「へえ?余裕なさそうに見えるんだ?」
「ええ、そう見えます。なりふり構ってられないから、私を頼ったんでしょう?」
自分では余裕のあるつもりでも、周りの人間にはそう見えていないことを、阿須名は知った。
いつも飄々とした態度で、本心を隠すように立ち回ってきた。
それが彼女の生き残る術だった。
春奈の指摘通りだとすれば、上手く立ち回れていないことになる。
「大切な人なんですね、奏 璃乃さんは」
一言、春奈が呟いた。
「……まあね。私の唯一の友達だし」
「はい? 貴女、私のことさっき友達って……」
「ああ、そうだったねごめんごめん……あれ? 意外と気にするんだ?」
「ぐっ……」
意地悪な顔で笑みを浮かべる阿須名に、春奈は思わず反応してしまった。
やっぱりこの人は苦手だ、と春奈は改めて感じた。天邪鬼とはウマが合わなかった。
阿須名はタクシーをとめて乗り込み、データをもとに黒田の住所へ向かっていった。
春奈は、小さくなるタクシーを眺めながら、そこまで想える相手がいることを、「うらやましい」と、ただそう思った。
274
:
私だけの女2/3
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/17(火) 22:08:08 ID:s6iQaLQw0
*
黒田 翔(くろだ しょう)。
都内出身の36歳。IT関連の大手企業に勤めており、住まいは職場近くのマンション。
結婚歴なし。同居人もいない。金と時間を持て余した単身者、いわゆる独身貴族。
これが、春奈の調査で判明したストーカーの正体だった。
「ここか」
春奈の情報をもとに、阿須名は黒田のマンションを訪れていた。
黒田は10階建てマンションの7階に暮らしていた。
エントランスのオートロックは、住民が出てくるタイミングを見計らって突破した。
黒田の部屋の前にたどり着いた阿須名は、さも当然であるかのような表情で、【アイス・エイジ・4】の能力を使い玄関の施錠を消滅させた。
「おじゃましまーす」
中へ聞こえるように言い、反応がなかったので、阿須名は靴を脱いで部屋に上がった。
これといって特徴のない部屋だった。量産されたどこでも買えるような家具、新しくも古くもない家電。
小綺麗に片付いた部屋だったが、生活感を感じさせないほど物がないわけでもない。
阿須名はしばらく、リビングや寝室を物色したが、ストーカー行為の証拠になりそうなものは何一つ見つからなかった。
部屋に侵入してから数時間後、阿須名が勝手に淹れた紅茶でくつろいでいたところに、仕事帰りの黒田が帰宅した。
「おかえり、お兄さん。紅茶いただいちゃってまーす」
「 なんだお前!?」
黒田は鞄をその場に落とし、阿須名をみて思わず後ずさりした。
阿須名は、ようやく対面できた黒田の姿を注視する。短く切った黒い髪に、既製品のグレースーツ。中肉中背。
街を歩けばいくらでもすれ違える、ごくごく一般的な社会人の男がそこにいた。
外見や仕草にまったく面白味がないので、阿須名は少しだけがっかりした。
ストーカーの素顔はどんなものかと期待したのに、思ったよりもつまらなかった。
「この顔に見覚えがあるんじゃない? 変態ストーカーさん」
そう言って、阿須名はくいと顎を上げた。相手が自分を知っているであろうことは、よくわかっていた。
「お前……璃乃の周りをうろちょろしてる子どもか。何しに来た」
黒田は侵入者から目を離さずに、少しづつキッチンに歩み寄る。
「『璃乃』? ずいぶん馴れ馴れしいじゃんか」
阿須名が紅茶に視線を落とした一瞬の隙をつき、黒田はキッチンに駆け込んだ。包丁のホルダーに手を伸ばすと、細長い刃の得物を一本抜きとって、切っ先を阿須名に向けた。
「俺の女を呼び捨てに何が悪い。そこを動くなよ、今警察を呼んでやる!」
「本気で言ってる? アンタ完全に病気だね」
立ち上がり、阿須名は静かに【アイス・エイジ・4】を発現させる。
それを自身の傍に置きつつ、刃物など見えていないかのように、黒田との距離を詰めていく。
スタンドの拳が届くまでに近づくと、【アイス・エイジ・4】の手が黒田の包丁をはたき落した。
「!??」
黒田には、【アイス・エイジ・4】のヴィジョンは見えていないらしく、何が起きたのか理解していなかった。
阿須名はそのまま、【アイス・エイジ・4】の右手を黒田の首へまわす。ぐっと掴み上げて、ふわりと持ち上げた身体を壁際に押しやった。
「うっ……ぐっ……!? な、なにをした……」
「さぁ、なんだろうね。それよりもさ、通報なんかしたらやばいよ。お兄さんがストーカーでパクられちゃうでしょ」
「なにをバカな……! 俺はストーカーじゃない! 璃乃とはケンカをしているだけだ!
なにがストーカーだ、ふざけるなあのバカ女が……。学歴もないバカの分際で、俺をストーカーだと! バカ女、アバズレ、クソ女!」
足をバタつかせ、トマトのように顔を真っ赤にしながら黒田が叫んだ。その目は血走り、怒りと憎しみで普段の顔を塗りつぶしたようだった。
阿須名は、見ず知らずの他人に対して、こうまで憎悪を抱けるものなのか、とわずかばかり戦慄した。
275
:
私だけの女2/3
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/17(火) 22:12:42 ID:s6iQaLQw0
「ねえ、よく聞いて。りぃはアンタの恋人でもなんでもないただの他人だよ。
もう嫌がらせはやめて、どっか他所へ消えてくれないかな? 引越し費用なら私が全部出してあげるよ」
「ションベンくせえガキが、大人の話に口を出すな!バカガキが!」
阿須名の提案に、黒田は彼女を見下ろしながら、絶叫に近い怒号を浴びせた。
「はぁ?」
阿須名は右足を上げ、足裏で黒田の股間を壁面に向かって押し込んだ。アレを押し潰すように、ぐぐぐ、と力を込めていく。
怒りに染まっていた黒田の表情が一転、苦悶に歪む。
「ぐぁっ! や、やめてくれっ!」
「関わりたくないんだよね、アンタみたいなのとは。私たちの前から消えると言ってくれる?」
阿須名には、黒田の悲鳴は届かない。
彼女は眉ひとつ動かさず、足にかける圧を増していく。
「ぐぁぁっ、いっ、いだいいぃぃ」
「言ってよ」
「わっ、わかった! わかったぁっ! もうやめる! 消えるからぁぁっ!」
目当ての言葉を引き出したので、阿須名は足をそこから離した。
このまま黒田がただ呻くだけだったなら、彼のアレを本当に踏み潰すつもりだった。
すると、黒田の股が突然濡れ出し、彼の両足を伝って液体がちょろちょろと流れ出した。
「……あーあ」
阿須名が【アイス・エイジ・4】を解除して、持ち上げられていた黒田の身体が床に落ちた。
彼は顔を床に伏して、決して目の前の少女をみようとはしなかった。
その両肩が震えるのをみて、阿須名は胸がすくように感じ、冷笑を浮かべた。
「ションベンくさいのはお兄さんの方だったね」
ポンポンと黒田の肩を叩いて、阿須名は愉しそうに呟いた。
そうして彼女は満足気に、黒田の部屋を出て行った。
276
:
私だけの女2/3
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/17(火) 22:19:18 ID:s6iQaLQw0
*
それからの二週間ほどは、黒田からの嫌がらせはぱったりと途絶えていた。
最初は不気味にこそ感じ警戒を強めたが、一週間が過ぎた頃には、黒田について考える時間が極端に減っていた。
阿須名の行動が相当に効いたらしい。二人の生活スタイルは、元に戻りつつあった。
日中、璃乃は店を切り盛りし、阿須名はPCに張り付きデイトレードで金を稼いだ。
その日、いつものように取引を終えた阿須名は、店を手伝おうと一階に降りた。
すると、店の様子が普段と異なることに気がついた。
いつもよりも、男性客の数が圧倒的に多かった。
「……?」
見慣れない顔ぶればかりだったので、地元の常連が集まっているわけではなさそうだった。
男性がいないとは言わないが、女性向けのアロマテラピーの店に、新規の男性客が殺到している光景は、それなりに異常だった。
阿須名は男性客らを観察した。彼らは、商品に全く興味がないようだった。手元のスマホばかりをチェックしながら、時折璃乃をちらちら目で追っていた。
すると大学生らしき三人組が、スマホを片手にニヤニヤ笑いながら璃乃へ歩み寄る。
「あの、すみません。ここの店長さんですよね」
「あ、はい。そうですけど……」
「うわ、やった! めっちゃ美人!」
璃乃がそう答えると、三人の男は満面の笑みで、仲間同士ハイタッチをした。
大学生の一人がスマホの画面を、璃乃の眼前に掲げた。
「このお店で買い物したら、だれでもヤラせてくれるってほんとですか!」
大学生は、大きく身を乗り出して、悪怯れる様子もなく、わくわくした顔でそう言った。
おおっ、と店内がざわめく。嬉しそうな男たちとは対照的に、璃乃の表情は凍り付いていた。
「は、はぁっ!? そんなワケないじゃん!」
咄嗟に叫んで、阿須名は璃乃と大学生の間に割って入った。
「え? でもこのサイトにそうだ、って……」
大学生のスマホの奪い取って、阿須名は内容を確認する。
開いていたのは、住民同士の情報交換を目的とした地域の掲示板サイトだった。店の名前をタイトルにしたスレッドが立てられ、そこには大学生の言った通りのことがつらつらと記載されていた。
おおよそ口にするのも躊躇われるような、人権無視の内容だった。
阿須名は、スマホを壁に投げつけたい衝動を必死に抑えて、大学生にそれを突き返した。
「……便所の落書きを鵜呑みにしないでくれる。全部デタラメに決まってるじゃん。常識的に考えてよ。ウチのアロマに興味がある人以外は帰って!」
店内全員に聞こえるように語気を強めて、阿須名は周囲をぐるりと睨み回した。
一部の客を残して、ぞろぞろと男性客らが店を出て行く姿に、阿須名は歯を食いしばった。
途方もなく悔しくて、悲しくて、胸が押し潰さそうなほど軋んでいた。
自分ですらこれほど傷ついたのだから、璃乃の痛みは相当だ、と思った。
阿須名は人払いをすませて、璃乃のもとへ駆け寄った。
「りぃ、平気?」
「……うん。大丈夫。ちょっとびっくりしただけ……。ごめんね、代わりに全部言わせちゃって。あんなの、信じる人もいるんだねー、あはは」
璃乃は力なく笑った。
気丈に振舞ってはいるが、彼女の瞳が潤んでいたのを阿須名は見逃さなかった。
その日、店を早仕舞いした二人は、床に就くのも早かった。
夜、唐突に水が飲みたくなって、阿須名はベッドから起き上がった。
キッチンに向かうついでに、璃乃の寝室に立ち寄った。ベッドには、すうすうと小さく寝息を立てて眠る璃乃の姿があった。
その寝顔を覗き込むと、目の周りは真っ赤に晴れ、枕は湿っていた。
阿須名の胸が、ズキリと痛む。
店は璃乃の生き甲斐だった。一朝一夕で生まれた店ではない。相当な苦労と試行錯誤を、日々重ねていたことを、阿須名は知っていた。
それをあんな風に荒らされれば、深く傷つくのは当然だった。
あれは間違いなく黒田の仕業だったし、ヤツを増長させた原因は私にある……と阿須名は自分を責めた。
「……ごめんね。私がなんとかするから」
一言呟いて、阿須名は璃乃の髪を撫でた。
柔らかな手つきとは裏腹に、彼女は胸の内に恐ろしい決意を固めた。
全身の血が冷えていくような感覚を覚えた。トーナメント出場を決断したとき以来の感覚だった。
阿須名は璃乃の寝室を静かに立ち去ると、さっと着替えて、外へ出て行った。
277
:
私だけの女2/3
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/17(火) 22:26:37 ID:s6iQaLQw0
*
午前1時。
阿須名はタクシーを乗り継いで、黒田の自宅マンションまで訪れていた。
彼女は黒田の部屋ではなく、マンション地下の駐車場へ向かい、そこで黒田の車を探した。
車種とナンバーは、事前に春奈から貰ったデータで確認していた。
やがて阿須名は、黒田の愛車である、黒の高級セダンを発見した。するとポケットからスマホ大の一台のデバイスを取り出した。
そのボタンを数回押すと、セダンの施錠はあっさりと解かれた。
デバイスは、車のオートロックの解除装置だった。100円ショップとPCパーツショップで部品を買い揃え、組み上げた阿須名のオリジナル品だった。
「ちょろすぎる」
ぼそりと呟き、阿須名は運転席側のドアをあけた。
彼女はロボットは大好きな割に、車にはそれほど関心がないが、その車が発売されたばかりの新車であることはなんとなく知っていた。
毎日のようにTVCMをみているし、新車特有の清潔なシートの匂いがした。割と好きな匂いだった。
匂い。
以前はほとんど気にしたことのなかったもの。
彼女が匂いを意識するようになったのは、璃乃と店を始めてからだった。
『例えば、汗と制汗剤の匂いがすれば、その人は身体を動かしてきたんだってわかるでしょ?
良い香水をつけているなら、身嗜みにお金をかける余裕がある人だとわかる』
『行動や生活習慣は匂いに表れるんだよ』
いつか、璃乃はそう語っていた。
彼女は匂いを知れば、全てが見えると考えていた。相手の生活リズムや考え方、未来の行動を読み、その人に適した匂いを提供する。人生が少しだけ、より良いものに変化するように。
"日々に少しだけ魔法をかける"。
それが、璃乃が店を開く理由だった。
(りぃ……)
璃乃の考えは阿須名にとっては斬新そのものだったが、いまでは彼女も多くの匂いを知り、それらを嗅ぎ分けるまでに学びを深めていた。
店は、新しい視点と生き方を与えてくれた場所。璃乃だけでなく、阿須名にとってもかけがえのないものだった。
だからこそ、あんな風に店を汚した黒田が許せなかった。
(……りぃ、私がケリをつけるから)
ふと、阿須名はあることに気がついた。
(……ん? この匂い……)
新車の匂いではない"別の匂い"を、微かに感じたのだった。
(……まさか)
そうして、阿須名はある可能性を頭に浮かべた。
ふと視線を助手席側の足元に落とすと、赤い円筒状の物体を発見した。
それは、緊急時に利用する発煙筒だった。
「なるほど、これは使えそうだ」
そう思い、阿須名は発煙筒をホルダーから外し、ポケットの中にしまった。
そして車から降りると、今度は背後に周り、トランクを開けた。
小柄な女子高生の一人や二人、十分に入る広さだった。
阿須名は持参した毛布に包まりながらトランクに入り、身体をすっぽりそこに収めた。
トランクを内側から閉め、スマホで電話をかけ始めた。
「……お兄さん。夜遅くに悪いけど、いますぐC県のS埠頭にきてよ。
来なかったらアンタのしたこと全部、警察に話す。証拠はそろってるんだからね」
彼女は、電話越しの黒田に対し、一方的にそう告げた。
後半の言葉は全てウソだった。証拠などなかったし、脅しはしたが警察に話すつもりもまるでなかった。
阿須名はただ、黒田を車に乗せたかっただけだった。そして彼女の言葉は、黒田を動かすには充分効果的だった。
思惑通り、10分ほどで黒田は地下駐車場へやってきて、愛車に乗り込んだ。
車体が大きく揺れる。阿須名は、黒田が乗り込んだことをトランクの中で察する。
二人を乗せた車は動き出し、阿須名が指定したポイントに向け、夜の街道を駆けた。
278
:
◆4aIZLTQ72s
:2018/07/17(火) 22:31:15 ID:s6iQaLQw0
二回で終わるつもりでしたが三回にわけます。いったんここできります。
次でおわりです。次はスタンドバトルもありますさすがに。
>>268
すごいかわいいしかっこいいし尊い…。
279
:
名無しのスタンド使い
:2019/03/18(月) 05:55:33 ID:2/bV7Kbw0
この続きまだ待ち焦がれてもいいですか?
280
:
◆4aIZLTQ72s
:2019/03/24(日) 09:47:33 ID:1JuxeBwA0
お待たせしてすみません!
来週中にはなんとか上げたいと思います。
281
:
名無しのスタンド使い
:2019/03/24(日) 20:55:19 ID:7GPqlWjY0
おお!待ってます!!
282
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/15(水) 21:10:20 ID:lynLe7ww0
このスレにラントナの妄想試合ss投下してもいいですかね?
283
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/15(水) 21:41:48 ID:CVLiEpMA0
是非見たいです!
284
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/15(水) 22:04:33 ID:lynLe7ww0
ありがとうございます
初めてなので拙い部分もあると思いますがよろしくお願いします
285
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/15(水) 23:26:26 ID:lynLe7ww0
「ここら辺か…」
一人の男が夜の廃墟の街に佇んでいる。
「ここまで来るのに結構な金がかかったんだ…本当に来るんだろうな?」
独り言を言いながら辺りをぐるりと見回す。
周りに人気はなく、時折吹いてくる夜風だけがこの街の音を支配していた。
「…?」
ふと、その風の中に聞き慣れない音が混じっていることに気付く。
シュッシュッ…シュッ…
なにかを激しく振っているような音。
「ふむ、相手の方は律儀な奴のようだ。早めに出たつもりだったのだがな…」
腕時計に目をやると「7:40」と出ている。
「開始の時間は8:00ジャスト…だがまぁ、早めに始まってもいいだろう」
男はニヤリと笑い、音の方向へと歩き出した。
男は戦いを求めていた。
血湧き肉躍るような興奮と身が凍るような緊張を…
(確かこの辺りに…)
音の方向へ行ってみると、少し開けた大通りに辿り着いた。
そこには何も無い空間へ拳を振るっている異様な人影があった。
(…何をしているんだ、アレは?)
少し迷った挙句、近づいて見ることに決めたらしく、男は音をたてないようにソロリソロリと忍び足で近づいて行った。
シュシュッシュッ…シュシュシュシュッ…
近づく事に男は人影の異様な点に気付く。
まず目に付いたのは、ジャンプ力。
人影は拳を空間へ打ち込んだ後、前や後ろにステップで移動しているのだが、そのステップの高さが異常だった。
軽く30cmは浮いている。
次に気付いたのは、長く伸びた顔。
縦に長いのならばまだいいが、この人影は鼻の部分が前に突き出しており、横に長いのだ。
そして最後に、『尾』。
その人影には尾が生えていた。
(な…なんなんだ…コイツは!)
男の額から汗が吹き出す。
すると人影が男に気づいたように打ち込む拳を止め、ゆっくりと男の方へ顔を向けた。
その時、月を覆っていた雲が吹かれ、人影の姿が月明かりに照らされる。
「…!?…そんな…バカな…」
長い尾、発達した足、そして腹にある袋。
「な…何故!?何故ここに!?」
そう、それは動物界 脊索動物門 脊椎動物亜門 哺乳綱 有袋上目 カンガルー形亜目 カンガルー科の動物。
俗に言う…
「何故ッ!何故ここにカンガルーがッ!」
カンガルーである。
オリスタランダムトーナメントより
第1試合
【 ラスト・ヤング・レネゲイド vs レクィエスカト・イン・パーケ 】
STAGE:廃墟
286
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/15(水) 23:32:28 ID:lynLe7ww0
とりあえず入りの方を載せました。
戦いの様子は少しずつ上げていこうと思います。
287
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/16(木) 00:06:06 ID:d9fQCKKM0
まさかのカンガルー戦キタ━(゚∀゚)━!
これは期待ッ!!
入りからもう面白い!
288
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/16(木) 00:09:00 ID:0LEdKl020
早速乙!
このトナメ感久しぶりだ
289
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/16(木) 00:32:53 ID:F/bVV.Qs0
どのマッチ書いてくれるんやろ……からの
カンガルーかいwwwww
290
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/16(木) 00:45:35 ID:q6ll5R160
流石の自称死神さんもカンガルーには困惑
291
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/16(木) 22:13:37 ID:uHDFhVvM0
続きです
(コイツかな?対戦者って)
カンガルーのジョーはシャドーボクシングを中止し、目の前の男を見ながら考えた。
男は汗をダラダラと流してこちらを注意深く観察している。
(うーん、全然敵意を感じられないな…一般人?いや、こんな所に来る訳ないか…でもどうなんだろう…)
ジョーは頭を掻きながら目の前の男が対戦者なのかを考え、そしてとある天才的な案(カンガルー基準)をひらめいた。
(そうだ!スタンドで殴ればこの人が一般人か対戦者かが分かる!)
そう思い至るとジョーは一気に臨戦態勢に入る。
(もしも一般人でもまぁ、大丈夫だよね!軽く殴るだけだから!そうと決まれば…)
ジョーがボクシングの構えを取る。
するとジョーの後ろからもう1匹のカンガルーが現れた。
いや、それはカンガルーに似ているが機械のような体になっている。
そしてそのカンガルーのような物はジョーの隣に立つとジョーと同じ構えを取った。
(『ラスト・ヤング・レネゲイド』!1発キメるぞ!)
「ウソだろ…」
男は困惑した。
当然である。
目の前のカンガルーがボクシングの構えを取ったと思ったら2匹に増えたのだから。
(動物にもスタンドを操れるようなやつがいたなんてな…)
男がそんなことを考えていると、突然カンガルーのスタンドが殴りかかってきた。
「…!『レクィエスカト・イン・パーケ』!」
男は咄嗟にそう叫び、スタンドを呼び出す。
男の体から浮き出た黒い人型は男を守るようにカンガルースタンドの前に立ち、その拳を防いだ。
「躾がなってないな…いきなり殴りかかるのは失礼だと飼育員さんに教えてもらわなかったのか?」
ジョーから距離を取りながら愚痴る。
この言葉がジョーに伝わっているかどうかは定かではないが、この非現実的な状況に愚痴のひとつでもこぼさなければやっていられなかった。
(とりあえず、スタンドは見た感じ近距離型のスタンド、能力の方はまだ分からないが余程のことがない限り安心だろう…)
そこで男はため息をついた。
(コイツも…俺を満足させることは出来なさそうだな…せめて暇つぶし程度になればいいのだがな…)
そう考えるとジョーを一瞥する。
ジョーは既に次の一撃の為の準備を完了している。
男は『レクィエスカト・イン・パーケ』を出してジョーに向かい合う。
数秒後。
ジョーが仕掛ける。
カンガルーの脚力を活かしたステップであっという間に男に近づき、スタンドが顔へのフックを放つ。
「スピードは申し分ない…パワーも良い…」
そう言いながら男はフックを受け止めるのではなく、軽く押して受け流した。
「だが…経験が足りない…『戦い』の経験が…」
そのままがガラ空きになった『ラスト・ヤング・レネゲイド』の腹へ拳を叩き込もうとした瞬間、男の腹部に鈍い痛みが走った。
「アガッ!?」
男はすぐさま攻撃を中止し、『ラスト・ヤング・レネゲイド』から離れる。
男が腹部を確認するとそこには何かに殴られたような痣が残っていた。
(スタンドの拳か?いや、あの時確かに俺はスタンドの拳を受け流した。あそこから拳を打つことは不可能…)
男は呼吸を整えながらジョーを見る。
ジョーはどこか男をバカにしているような顔を浮かべ、煽るように鳴き声を上げている。
(つまり…これがアイツのスタンド能力?どういう原理かは分からないが、思った以上に厄介だな…)
そう考えてから男はニヤリと笑った。
(そうだ…この感覚だ…久々に感じる…これが戦いの興奮だ…!)
(クックックッ…今頃、今の攻撃はスタンド能力だ〜って考えてるんだろうなぁ…クックックッ…)
ジョーは男の方へ顔を向ける。
(お前はさっき、俺に経験が足りないと言った。だが、ソイツはちょいと早計だな…)
ジョーは構えを作り、『ラスト・ヤング・レネゲイド』を出した。
(俺と『ラスト・ヤング・レネゲイド』は最強だ!その理由を今、見せてやる!)
===To Be Continued…→
292
:
名無しのスタンド使い
:2019/05/16(木) 22:15:39 ID:uHDFhVvM0
追記:このssで登場した人物(動物も含め)の名前は公式設定とは全く関係ありません。
293
:
名無しのスタンド使い
:2025/05/06(火) 15:38:17 ID:93xxC9hU0
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