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しずく「コトネと駆け落ち」

1名無しに変わりましてSS銀河がお送りします:2014/04/24(木) 05:06:09 ID:MACeHTK6

しずく「(楽しかった高校生活も今日で最後となった)」

ゆず「とうとう卒業式かぁ」

楓「私達が卒業したらもうこの学校閉校するって考えるとちょっとさみしいねー」

ゆず「そうだね」

コトネ「しーずくちゃん!」

しずく「なに?」ムス

コトネ「もうー高校生活最後の日くらい笑ってくれてもいいじゃーん」

しずく「別に」

しずく「(だいたいなんでコトネはいつもと同じテンションなのよ……)」

しずく「(私達にとって、卒業は)」



しずく「(もう、一緒に居られなくなることを指すのに……)」

2 ◆hrBR6tpC7Y:2014/04/24(木) 05:09:14 ID:MACeHTK6

「あーおーげばーとおーとし」


優「春香ぁーとうとう卒業だよー」

春香「そうだね。優ちゃん」メソメソ

ゆず「おーい。打ち上げにでも行かない?」

優「いくー!」

春香「ちょっと、優ちゃん! さっきのしんみりした感じは!?」

優「もう、春香は湿っぽいんだよ」

楓「コトネとしずくちゃんはどうする?」

コトネ「私達も」チラ

しずく「……」ムス

コトネ「ごめん、私達はちょっとパス」

楓「……わかった。それじゃあ、また今度」

コトネ「うん。今度ね」

3 ◆hrBR6tpC7Y:2014/04/24(木) 05:22:42 ID:MACeHTK6

しずく「今度って、いつ会うのよ」

コトネ「家が近いんだし、いつでも会えるでしょ」

しずく「でも、コトネは高校卒業したら、許嫁のところに……!」

コトネ「そうだね」

しずく「やだ! 私、コトネと離れたくない!!」

コトネ「ふふ、しずくちゃんようやく本音を言ってくれた」

しずく「ごめん、でもやっぱり言わない方がよかった……私のせいでコトネは」

コトネ「いいんだよ。元々、親に決められた許嫁なんかと結婚するつもりなんてなかったし」

コトネ「しずくちゃん。駆け落ちしよう」

しずく「え?」

コトネ「幸いにも今荷物は、しずくちゃんの家に全部おいてある」

コトネ「だから、今日一回も家に帰らずに逃げることができる」

しずく「で、でも」

コトネ「そうだね。しずくちゃんにはしずくちゃんの家族もいる」

コトネ「だから、無理にしようなんて言わないよ」

コトネ「だけど私はもう覚悟出来てるから」

しずく「そ、そんな」

しずく「……ずるいよコトネ。私だってコトネと一緒にいたいに決まってんじゃん」

コトネ「ふふ、じゃあ決まりだね」

しずく「バカ」

そうして、私達は、必要なお金と荷物を詰め込んで、家を発った。

第一部 出発 終わり

4 ◆hrBR6tpC7Y:2014/04/24(木) 05:35:58 ID:MACeHTK6
第二部 知らない街

しずく「ねぇ。コトネ、どこに行くの?」

コトネ「そうだね。できるだけ遠くに、今まで行ったことのないような、名前も知らない街に行ってみよう」

コトネ「しずくちゃん、この電車の終点まで行ったことはある?」

しずく「前に一度だけ」

コトネ「じゃあ、この電車の終点から発車する電車の終点は?」

しずく「さすがにそこまでは行ったことはないなぁ」

コトネ「そうだよね」

しずく「でも、終点の終点まで行っても60キロくらいしか私達の住んでる街から離れられないよ」

コトネ「じゃあいっそのこと、終点の終点のそのまた終点くらいまで行っちゃう?」

しずく「あはは、そうだね。うん」

私達は、電車を何回も乗り継いで、できるだけ遠くの街を目指した。

5 ◆hrBR6tpC7Y:2014/04/24(木) 05:47:15 ID:MACeHTK6

電車に乗っている内に日が落ち、それでも乗り続け、どこの地方かもよくわからない駅についたころには終電の電車になっていて、帰りの電車などもう存在しなかった。

こうなってくると、どこかに泊まるしかない。

しずく「で、ここはどこ?」

コトネ「さぁ」

しずく「なんだか周りに何もないけど」

コトネ「知らない街というより、知らない過疎地だね」

しずく「笑えないって」

しずく「どうしよう」

コトネ「まぁどうにかなるって」

しずく「泊まる場所どうしよう」

コトネ「ここから一番近い宿泊施設は……」

コトネ「って、圏外だ」

しずく「うん、私も圏外」

コトネ「どうしようもなくなったら、この駅舎に泊まろう」

しずく「うん」

コトネ「とりあえず、ここを目印にして、歩こう」


付近には山しかない。道も真っ暗

しずく「コトネ」ギュッ

コトネ「しずくちゃんもしかして怖いの?」

しずく「だって、暗くて周り見えない」

ガサガサ

しずく「ひっ!」

コトネ「風だよ風、しずくちゃん可愛い」

しずく「もう……」

ギュッ

コトネ「これで、怖くない?」

しずく「うん」

コトネ「あ、しずくちゃん。こっちに展望台があるみたいだよ」

しずく「展望台?」

6 ◆hrBR6tpC7Y:2014/04/24(木) 05:51:15 ID:F/ID1XF2

展望台まで、200m

しずく「えー、ここ入るの?」

コトネ「いいじゃんいいじゃん。展望台に上がれば近くに何があるのか見渡せるかもしれないよ」

しずく「うん」

ガサガサッ

コトネ「足元をよく見ながらあるかないとね」

しずく「あっ」

ガシッ

コトネ「行ったそばから」

しずく「ありがとう」

しずく「うぅ……」

コトネ「どうしたの? 怪我した?」

しずく「怪我はしてない」

コトネ「もしかして、また怖いの?」

しずく「そりゃ、怖いよ! 夜の山に入って怖くないコトネの方が異常だって!」

コトネ「私はしずくちゃんと一緒なら、どこに行っても怖くないよ」

コトネ「はい、しずくちゃん」スッ

しずく「ん」ギュ

コトネと手をつなぐと、不思議と怖さはなくなっていった。手のぬくもりが伝わる。

7 ◆hrBR6tpC7Y:2014/04/24(木) 06:01:27 ID:MACeHTK6

しばらく歩くと展望台に出た。

しずく「わぁー。綺麗……」

開けた視界に満天の星空。視線より下は、真っ暗な森が広がりつつも、遠くの方で街の明かりがきらめいている。

ドサッ

しずく「コトネ?」

コトネが地面に寝っ転がる。

コトネ「こうすると、星がよく見えるよ」

コトネ「ほら、真上に北斗七星がよく見える」

しずく「ホントだ」

コトネ「昔の人は星を見て、自分たちが進む方角を決めたんだってさ」

しずく「私達は、何を見て進めばいいんだろうね」

コトネ「少なくとも」

コトネは、街の光を指しながら言う。

コトネ「あっちではなさそうだね」

向こうは私達が来た街の方角だ。

しずく「そうだね」

しずく「ふふ、はは」

コトネ「はは、ははは」

しずく「ははははは」

しばらく、私達は、星を見ながら笑っていた。

第二部 知らない街

8 ◆hrBR6tpC7Y:2014/04/29(火) 22:11:24 ID:sJKs.rdE
第三部 駅舎

しずく「……寒い」

コトネ「そうだね。さっきまでは動いてたから感じなかったけど寒いわ」

コトネ「今日寝る場所探さないとね」

しずく「うん」

私達はしばらく道路を歩いた、しかし、家1つない上に外灯すらない。
段々曇ってきてこのままでは月明かりすら失ってしまう。

コトネ「やっぱりあの駅舎しかないね」

しずく「……」

私達は再び駅舎へと戻る。
無人駅だけど待合室のようなものはある。

ガラガラ

入った途端に埃っぽい臭い。

しずく「ゴホッゴホッ」

コトネ「しずくちゃん大丈夫?」

しずく「うん、ちょっとむせちゃっただけだから大丈夫」

コトネ「ごめんね。こんな場所しか用意出来なくて」

しずく「大丈夫、私はコトネと一緒ならどこでも平気」

コトネ「ふふ。ありがとう、嬉しい。でも、しずくちゃんはお姫様だから、こういう場所で寝るのに慣れてないでしょ?」

しずく「何そのイメージ」

しずく「大体お姫様って言うんならお嬢様のコトネの方がそうなんじゃ」

コトネ「私は姫って柄じゃないよ。どっちかといえば、王子様がいいかな」

しずく「自分で言って」

でも、今のシチュエーションを考えると王子様なのかも。私を連れ出したのもコトネの方だし。
あれ、でも結婚するのはコトネの方、これじゃあ、どっちが連れ出したのかわからないや。

9 ◆hrBR6tpC7Y:2014/04/29(火) 22:18:33 ID:sJKs.rdE

しずく「でも、私コトネが駆け落ちしようって言ってくれたとき嬉しかった」

コトネ「ん?」

しずく「本気で私のこと考えててくれたんだなって」

コトネ「そりゃー私はいつでも本気だったよ」

しずく「ホントかなぁ」

コトネ「ホントだよ」


しずく「コトネ」ギュッ

コトネ「しずくちゃん」

この子の腕を引っ張ったら、コトネは私のことを抱きしめてくれた。

しずく「ありがと」

上を見るとコトネの唇。私はそのまま唇を寄せた。

コトネ「しずくちゃんからしてくれるなんて珍しい」

しずく「コトネ、好き。んっ」

コトネ「んっ、私も好きだよ」

しずく「すき……すき……」

私達はその夜、少し埃っぽい駅舎でお互いの愛を確かめ合った。

第三部 駅舎 終わり

10 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/01(木) 19:00:32 ID:L/qvA.zQ
第四話

チュンチュン

しずく「んん」

コトネ「おはよ」

しずく「いつの間にか寝ちゃってた」

コトネ「ゆっくり寝られた?」

しずく「うん、コトネが温めてくれたから」

コトネ「しずくちゃんも温かかったよ。お人形さんみたい」

しずく「人形は体温ないでしょ」

コトネ「そうだね」

ぐぅ〜〜〜〜

しずく「///」

コトネ「お腹減った?」

しずく「大丈夫」

ぐぅ〜〜〜〜

コトネ「でもお腹なってるよ」

コトネ「昨日の夜から何も食べてないからね。何か食べに行こう」

しずく「でも、どこに?」

コトネ「そりゃー街でしょ」

しずく「電車いつ来るんだろ」

コトネ「もうすぐ始発が来るみたいだよ」

11 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/01(木) 19:09:21 ID:L/qvA.zQ

しばらくするとワンマン電車が来た。運転手さんはこんなところで始発で乗ってくる女子高生にびっくりしているみたいだ。
あ、もう女子高生じゃなくなるのか。そんなことを考えていると

コトネ「しずくちゃん、街に行ったら何食べる?」

しずく「うーん、なにか甘いものがいいかなぁ」

コトネ「ドーナッツでも食べる?」

しずく「でもこの時間に売ってるかな?」

コトネ「確かにまだ早いかもね」

コトネ「朝は、コンビニか、ファーストフードで済まそうか?」

しずく「うん」


私達は、中規模の地方都市についた。

ファーストフード店

「いらっしゃいませー」

コトネ「しずくちゃんは何にする?」

しずく「ホットケーキセットにしようかな? 甘いものが食べたかったし」

コトネ「じゃあ、私はチキンバーガーセットで」

「お飲み物は何にしますか?」

しずく「オレンジジュースで」

コトネ「ホットコーヒーでお願いします」

「かしこまりました」


しずく「……」

コトネ「あ、しずくちゃんが今なに考えてるのかわかるよ」

しずく「何?」ムス

コトネ「自分だけオレンジジュースにして子供っぽいって思ったでしょ?」

しずく「思ってない」

コトネ「もー思ってるくせにー」

しずく「うるさいなぁ」

コトネ「本当は子供っぽいしずくちゃんかわい」

しずく「うるさい」

12 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/01(木) 19:13:00 ID:L/qvA.zQ

しずく「おいしー」

コトネ「」ニヤニヤ

しずく「は……」

コトネ「美味しそうだね。ちょっと頂戴よ」

しずく「コトネは私のことバカにした」

コトネ「えーいいじゃんいいじゃーん。ちょーだいよー」

しずく「わかったわかった。はい」

コトネ「え? あーんしてくれないの?」

しずく「えぇ!? ここで?」

コトネ「うん」

しずく「……」

しずく「……はい、あーん」ドキドキ

コトネ「あーん、むっおいし」

しずく「よかった」

コトネ「はい、しずくちゃんもあーん」

しずく「え、私も!?」

コトネ「うん」

しずく「…….///」

しずく「あむっ」モグモグ

コトネ「どう?」

しずく「美味しい」

コトネ「よかった」

第四話 終わり

13 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/05(月) 04:58:55 ID:MKX8yfQo
第五話

コトネ「はぁー美味しかった」

しずく「ファーストフードだけどね」

コトネ「なに? しずくお嬢さんはファーストフードはご所望じゃなかった?」

しずく「そうじゃなくて」

しずく「自分の方がお嬢様のくせに……」

コトネ「私は、しずくちゃんと食べればなんでも美味しいんだよ」

しずく「またそういうこと言う」

コトネ「しずくちゃんは違うの?」

しずく「……私も同じ」ボソ

コトネ「もー! しずくちゃん可愛い!」ギュッ

んむっ

しずく「コトネ!?」

コトネ「ごめんごめん。でも我慢できなかったの。ほら、まだ人通りも少ないし、いいでしょ?」

しずく「んっ」

コトネ「んむっ」

しずく「んんん」

「ちょっと君たち」

コトネ「!?」

しずく「!?」

バッ

14 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/05(月) 05:09:16 ID:f6yCbtAQ

黒服「コトネお嬢様」

コトネ「まっず! しずくちゃん!」

バッ

しずく「ちょっと、コトネ!?」

黒服「お嬢様!」

コトネ「予想外に速かった」

しずく「はっはっ」

しずく「コトネ!」

コトネ「しずくちゃん、走って! 全力で!!」

コトネ「こっち!!」バッ


黒服「くっ見失った。はい、コトネお嬢様が○○市で……」




コトネ「はぁはぁ」

しずく「はぁはぁ」

コトネ「もうこんなところまで追ってが来てる」

しずく「はぁはぁ……」

コトネ「ごめんねしずくちゃん。走らせちゃって」

しずく「ううん。いいよ、コトネ」

しずく「気にしないで、わかってたことだから」

コトネ「それにしても、なんでここがわかったんだろ」

しずく「たぶん、駅とかに監視カメラがあるでしょ?」

しずく「後。ICカードリーダーとかの履歴でどこで下りたかもわかっちゃうんだと思う」

コトネ「そっかー。じゃあ電車移動と街中はもうダメか」

しずく「……」

コトネ「しょうがない。歩きで移動しよう」

しずく「うん」

この生活が長続きしないことは最初からわかってたことだけど、それでも悔しかった。

第五話 終わり

15 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/10(土) 06:29:18 ID:tzMlOsmY
第六話

コトネ「駄目だ、キャッシュカードも使えなくなってる」

コトネ「しずくちゃん、今いくら持ってる?」

しずく「5000と820円……」

コトネ「私は、8000円」

しずく「定期もここまで来るのに、ほとんど使っちゃった」

コトネ「うん、私も」

残金14000円程度、それが私達に残されたお金。そして、たとえ見つからなかったとしても逃亡できる期間が限られていることを指す。

コトネ「はぁーこんなことなら、いっその事ガバっと100万くらいおろしておけばよかったわー」

しずく「え!? コトネそんなに持ってたの!?」

コトネ「将来の積立金って言ってちょっとづつためてくれたの」

しずく「そうなんだ(それって普通なのかな?……)」

しずく「ねぇ、やっぱりもう!」

コトネ「……」

コトネの眼差しの先には、雑貨屋が

コトネ「しずくちゃん」

しずく「……! コトネ! それは駄目だよ!!」

コトネ「帽子欲しくない?」

しずく「欲しいけど、それは駄目だよ! 犯罪になるって!!」

コトネ「え?」

しずく「え?」

コトネ「あぁ。いや、普通に服を買おうと思ってたんだけど」

しずく「そ、そっか。勘違いしちゃった私。ごめんねコトネ」

コトネ「いいよ。確かに今の状況ならそう想像しちゃうよね」

しずく「お金ないし」

コトネ「うん」

しずく「そうだよ。お金ないから帽子買えないじゃん」

コトネ「そんな高いやつ買わなくてもいいって」

しずく「?」

コトネ「うーんそうだなぁ。これとこれと、後このサングラスかな」

コトネ「これで、700円」

しずく「貴重な700円が……」

コトネ「まぁこの700円は必要経費だって」

しずく「?」

16 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/10(土) 06:41:43 ID:tzMlOsmY

コトネ「それと、このホワイトボードとマジックを買って」

コトネ「合計で1200円」

しずく「貴重な1200円が……」メソメソ

コトネ「これも必要経費」

しずく「?」

しずく「でも、そんなホワイトボードとマジックなんて買ってどうするの? 麦わら帽子とサングラスは変装用だってことでまだわかるけど」

カブッ

コトネ「うん、似合う似合う。これも掛けてみて」

しずく「え、なんで私!?」

コトネ「うん、いい感じ。それじゃあ私も」

しずく「なんでサングラスは私だけ!?」

コトネ「だって、サングラスが似合うのはしずくちゃんなんだもん」

しずく「でも、私よりコトネの方が変装してたほうがいいんじゃない?」

コトネ「? これは別に変装が目的じゃないよ」

しずく「??」

また、しばらく歩き、郊外の一本道に出た。

コトネ「しずくちゃん、この街の次の駅調べてくれる?」

しずく「うん。いいけどなんで?」

コトネ「いいから」

しずく「○△駅」

コトネ「わかった」キュッキュ

しずく「……」

コトネ「ココらへんでいいかな」

しずく「……」

コトネは次の駅が書かれたホワイトボードを胸の前に掛けながら信号機の近くで立ち止まった。

しずく「これって?」

コトネ「うん。ヒッチハイク待ち」

しずく「やっぱりーーー!!!」

コトネ「あっはっはっは」

第六話 終わり

17 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/11(日) 10:07:57 ID:ncavnZkc
第七話

しずく「大体ヒッチハイクなんてやったことあるの?」

コトネ「いや、全然」

しずく「止まってくれるわけないじゃん」

コトネ「しずくちゃん可愛いから止まってくれるかもよ」

しずく「そんな馬鹿な」


「お嬢さん方、ヒッチハイクかい?」

「あなた、またヒッチハイクの子拾うの?」

しずく「(えぇ!?)」

コトネ「(ほらきた!)」

コトネ「ハイそうなんです。よかったら乗せて行ってもらえませんか?」ニコッ

「いいよ、後ろ乗りな」


私達を拾ってくれたのは、老夫婦だった。

「お嬢ちゃんたち、ホントはどこまで行くんだい?」

コトネ「あ、わかっちゃいます?」

「ヒッチハイクで隣駅までなんてことないだろ」

コトネ「実は行き先決めてなくて、そうだ。おじいさんたちどこ行くんです?」

「私達は、山の向こうにある温泉まで」

コトネ「あ、じゃあそこまでお願いします」

しずく「(ちょっとコトネ、それはいくらなんでも)」

コトネ「(大丈夫だってしずくちゃん)」

「よし、わかった。こんな若いお嬢さん方と温泉に入れるなんて極楽だからなぁ」

「もう、いつまでスケベなんですかあなたは。それに男は女湯入れませんよ」

「そうだったわ。あっはっはっは!」


温泉

しずく「あの、本当にいいんですか? 温泉代出してもらっちゃって」

「いいのいいの! 気にしなくて」

コトネ「ありがとうございます」

「それにしても、やかましかったでしょう?」

コトネ「いえ、素敵な旦那さんだと思います」

「そう? 一緒に暮らしてるとあーだこーだ毎日うるさいわよ」

しずく「(おばあさん幸せそうだな……)」

「あら、あなた達よく見ると別嬪さんじゃない。モテるでしょ?」

コトネ「あはは、わかりますー? 特にしずくちゃんはよく街歩いてるとナンパされて」

しずく「ちょっとコトネ! 嘘言わないでよ」

コトネ「あははは」

「ふふふ。仲がいいのね」

コトネ「はい!」

18 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/11(日) 10:17:00 ID:mC3DhDjo

「それじゃあ、こっからも旅頑張ってね」

「本当にいいのかい? 私達はこれから街に帰るんだが」

コトネ「大丈夫です! ここで」

しずく「ありがとうございました」

「そうかい、じゃあがんばれよ」

コトネ「はい!」

そうして、私達は老夫婦と別れた。

しずく「あの人達、いい人だったね」

コトネ「うん」

それまでの笑顔が消え、急に真面目な表情になるコトネ

コトネ「……そうだしずくちゃん。携帯の電源って入ってる?」

しずく「ううん、電池節約のために電源切ってる」

コトネ「うん、しばらく付けないほうがいいと思う」

コトネの言葉の意味を推し量る

しずく「……あぁ、なるほど。位置特定されるってこと?」

コトネ「うん。行方不明になって二日目、もう私の家は追ってきてるし、しずくちゃんの家族にも連絡行って警察も動いてると思う」

しずく「じゃあ、さっきのヒッチハイクも危なかったんじゃ」

コトネ「ホントはね。だからもう出来ないと思う」

しずく「そっか」

コトネ「今日も野宿になるかも。ごめん」

しずく「いいよ。また空き家見つけよう」

コトネ「ふふ。しずくちゃんもだいぶたくましくなってきたね」

しずく「なにそれ、今まで弱かったみたいな言い方」

コトネ「うん、そうだね。しずくちゃんは今も昔も強かった」

第七話 終わり

19 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/14(水) 23:27:07 ID:p6gbhqWs
第八話

しずく「それにしても、徒歩で行ける範囲となると限られるんじゃ」

しずく「大体どっちに行けばいいのかわからないし」

しずく「携帯は電源入れられないし」

コトネ「じゃーん」

しずく「地図!? いつ買ったの?」

コトネ「雑貨屋に入った時に」

しずく「気付かなかった」

コトネ「ここは、四願温泉。ここから西に行くと湖があるみたい」

コトネ「逆に東に行くと、元北町に戻ることになる」

コトネ「どうする?」

しずく「じゃあ西に行こうか」

しずく「今まで西に進み続けてたし、もう行けるところまで行きたい」

コトネ「そっか。じゃあ、コンビニで買いだめしておこう。食料と水は必要になる」

しずく「うん」

私達は、持ってきたリュックサックがパンパンになるほど食料と水を買い込んで、それと、余ったお金で寝袋とテントを買った。

ちょうど、日が沈む時間、私達は西に向かい歩き始めた。

第八話 終わり

20 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/16(金) 19:09:37 ID:BhGfDeHc
第九話

しばらく歩いて行くと山道になってきた。もう日は暮れている。

しずく「コトネ大丈夫?」

コトネ「ん?」

しずく「テント重くない?」

テントはコトネが持つといって聞かなかった。しかし、しばらく山道を歩いていたため、もう顔に疲労の色が見える。

コトネ「少し重いかも」

しずく「そろそろ変わろうか?」

コトネ「か弱い女の子のしずくちゃんは持てるかな?」

しずく「自分だってか弱い女の子でしょ」ムッ

コトネ「あはは、そりゃそうだ。じゃあ変わって」

しずく「うん」

21 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/16(金) 19:25:09 ID:BhGfDeHc

ズシッ

しずく「うっ」

意外と重い。

しずく「コトネこんなの今まで持って歩いてたの!?」

コトネ「ねっ? 重いでしょ?」

しずく「ぐぐぐ」

コトネ「やっぱりか弱い女の子には無理か」

しずく「だ、大丈夫……」

コトネ「ホントかなぁ」

しずく「うん」

しずく「……」

しずく「や、やっぱり無理」

ズシン

コトネ「あははは」

しずく「笑わないでよ」

しずく「どうせ私はか弱い女の子ですよーっだ」

コトネ「!!」

しずく「コトネは」

コトネ「しっ!」

しずく「え? 何?」

コトネ「こっち!!」

コトネに引っ張られて茂みに入る。

茂みから眺めていると、赤い点滅が向こう側がら近づいて来た。

コトネ「しずくちゃん、走るよ」

しずく「え!?」

コトネに引っ張られ、闇雲に山道を走る。

コトネ「やっぱり追ってきてる」

しずく「私達を?」

コトネ「多分、そろそろじゃないかと思ったんだよね」


コトネ「さすがに、これを背負って走るのは無理だ」

そう言って、テントを捨てる。

しずく「こんなところまで追ってくるって、警察ってこと?」

コトネ「分からない。ごめん、ちょっと黙って走って」

しずく「ごめん」

しばらく走るともう追っては来ていない。年のため岩陰に隠れる。

コトネ「はぁはぁはぁはぁ……」

しずく「はぁはぁ……」

しずく「大丈夫かな?」

コトネ「うん。多分大丈夫」

22 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/16(金) 19:49:52 ID:BhGfDeHc

コトネ「ごめんしずくちゃん。テントも置いてきちゃったし、今日寝るとこ多分作れない」

しずく「……まぁしょうがない。とりあえず、もう追ってきてないみたいだからここから早くでよう」

コトネ「……迷った」

しずく「え?」

しずく「地図があるじゃない」

コトネ「しずくちゃん、方位磁針持ってる?」

しずく「え? 持ってないけど」

コトネ「じゃあ、地図があっても方角がわからないよ」

しずく「確かに……」

コトネ「……うーん、困ったなぁ」

しずく「!! コトネ!」

コトネ「ん?」

しずく「星だよ星」

しずく「昨日言ってたじゃんコトネ。昔の人は星を見ながら歩いたって」

コトネ「なるほど、しずくちゃん頭いい!」

コトネ「北斗七星があっちにあって、うん、北極星が彼処だから、西はこっちだ」

しずく「結局西に行くの?」

コトネ「うん。西の方に行けば湖があるから、ここから進んで行けばいづれ見えると思うし」

しずく「なるほど」

第九話 終わり

23 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/17(土) 19:33:26 ID:L8BB8.oA
第十話

暗い山道を月明かりと星を頼りに進む。
コトネが手をつないでくれるからもう怖くない。

コトネ「ねぇ、しずくちゃん」

しずく「?」

コトネ「無事逃げ切れたら何したい?」

しずく「うーん、そうだなぁ」

もちろん、無事に逃げ切れることなんてない。
お金も無ければ、食料も水も3日も持たない。
そして、こんな山の中まで追われている身だ、街に出たら確実に捕まってしまう。
それでも

しずく「コトネと一緒に暮らしたいかな」

コトネ「ふふ。そっか」

しずく「コトネは?」

コトネ「私もしずくちゃんと同じ」

満面の笑みでそういうコトネ。

コトネ「私も諦めが悪いな。高校生活の間だけで我慢しようって思ってたのに」

しずく「それは私だって同じだよ」

しばらく、山道を歩くと視界が一気に開けた。

しずく「湖だ!」

コトネ「うん。ついたね」

私達は湖のほとりまで移動した。月光が湖面に反射して、光の筋ができている。
まるで、こちら側から湖のあちら側へ行く道のようだ。

しずく「月も結構明るいんだね」

コトネ「うん、普段は意識しないからわからないけどね」

コトネ「なんだか、向こう岸まで渡れそうな気がする」

しずく「私も今同じこと考えてた。月明かりが道みたいだよね」

コトネ「ふふ、しずくちゃんと以心伝心だ」

しずく「まぁ、コトネとずっと居たんだもん。考えが似てくるのは当たり前だよ」

コトネ「そうだね」

コトネ「あ、しずくちゃん。船があるよ。向こうに」

コトネ「本当に渡っちゃう?」

しずく「……」

月明かりで照らされているけれど、湖の向こう岸までは見通せない。

しずく「いや、やめとく」

コトネ「そっか」

コトネの長い髪が風でたなびき、月明かりで照らされた横顔は憂いを帯びていた。

しずく「(そんなに船に乗りたいのかな?)」

しずく「やっぱり!」

「おい! そこで何をしている!!」

コトネ・しずく「!?」

気づいたときにはもう遅かった。2,3人の捜索隊が私達を取り囲んでいた。
第十話 終わり

24 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/18(日) 22:14:32 ID:A1yRhD7U
第十一話

行方不明者として届けられていた私達は、その後"保護"された。
そして、心身ともに問題ないことを確認された後、事情聴取され、それぞれの家へ帰された。

今回の逃避行に対して、私の父親は、なぜこんなことをしたのだと嘆き、母親は、私とコトネの仲にうすうす感づいていたらしく、それでも向こうの事情もあるのだからという理由で、コトネとはもう会うのをやめなさいと説得された。

部屋の電気を消し、ベッドで1人横たわる私、ついこの間までは、コトネと一緒に暮らしていた部屋だ。
下弦の月の明かりが窓から差し込む。

しずく「やっぱり、私諦められないよ……コトネ……」

しずく「(もし、あの時湖を渡っていたら結果は変わっていたのかな?)」



1週間後、今日はコトネの結婚式だ。母は親戚ということもあり、コトネの結婚式に出席しに行った。
私は、自宅待機を命じられた。

しずく「ごめん。お母さん、お父さん」

25 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/18(日) 22:15:17 ID:R5Za6cv.


真っ白なウェディングドレスに身を包まれ、教会の壇上に登る私。
相手は、父の取引先の会社の息子、財閥の御曹司である。
随分と昔から、この結婚は決まっていたみたいで、俗に言う政略結婚であり、当人の意向など完全に無視である。

野田父「え〜本日は天候にも恵まれ〜このような日に結婚を執り行えることは〜」

無事に今日結婚式を執り行えたことで父はごきげんだ。1週間前は、鬼のような形相をして怒っていたのに。
私達の駆け落ちは、私の気持ちの整理が付かず、一時的に不安定な状態となり、逃げ出したが今では気持ちの整理が付いているとのことで先方に伝わっていた。

御曹司「コトネさん、それでは」

コトネ「はい……」

私の結婚相手は、悪い人ではない。中学のときや高校のときに何回か会わされて、話したが、優しそうな人だと思った。
きっと、この人と結婚しても私の人生はそれなりに幸せなものになるだろう。

それでも、私はしずくちゃんと一緒になりたいと今でも思っている。

神父「新郎〜〜 あなたは、病めるときも、健やかなるときも、愛を持って、生涯支えあうことを誓いますか?」

御曹司「誓います」

神父「新婦〜〜 あなたは、病めるときも、健やかなるときも、愛を持って、生涯支えあうことを誓いますか?」

この言葉を誓ってしまえば、もう後戻りは出来ない。

コトネ「……誓います」

新婦「それでは、誓いのキスを」

コトネ「……」

御曹司「……コトネさん?」

コトネ「……ちゃん、しずくちゃん」

御曹司「え?」

バンッ! 教会の扉が勢い良く開く。そこには

しずく「コトネ!!」

コトネ「しずくちゃん!!」

26 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/18(日) 22:34:08 ID:R5Za6cv.


一心不乱にしずくちゃんのところに駆け寄る。

しずく母「ちょっとしずく! 何やっているの!!」

コトネ父「おいコトネ!! 貴様は何をやっているのかわかっているのか!!」

コトネ父「おい! 誰か取り押さえろ!!」

私達の前を阻む、黒服達。

御曹司「待て」

御曹司「通してやりなさい」

御曹司父「おい! 何を言っている」

黒服達は誰の言葉に従えばいいのか混乱している。その隙に、しずくちゃんに手を引っ張られ間を縫うように抜ける。
後ろで関係者達がギャーギャー騒いでいる。だけど、もうそんなものは聞こえない。

御曹司「……やっぱりそうでしたか。どうかお幸せに、コトネさん……」




コトネ「しずくちゃん! どうしてここに!!」

しずく「やっぱり私諦められなかったよ!!」

しずく「だから、コトネ。駆け落ちしよう」

コトネ「あっはっはっはは。うん、そうだね!!」

通りのバス停から市営バスが発車する寸前だった。しずくちゃんが慌ててバスにしがみつき扉を開けさせる。

コトネ「やるじゃんしずくちゃん!」

しずく「コトネの強引さがちょっと移ったよ」

バスが発車する。周りの客はウェディングドレス姿の女ともう一人の少女が慌てて乗ってきたことにびっくりしている。

しずく「コトネ、今度はあの湖の先まで行こう! そしてさらに遠くまで!!」

コトネ「うん、そうだね!」

コトネ「しずくちゃん」

しずく「ん?」

コトネ「ありがとう」

しずく「どういたしまして」

他の誰かじゃない。私はしずくちゃんと一緒になるのが、一番の幸せなんだ。もう誰にも邪魔されない、出来ない。
しずくちゃんとの2人だけの時間を作っていきたいと私は思った。

第十一話 終わり

27 ◆hrBR6tpC7Y:2014/05/18(日) 22:34:32 ID:R5Za6cv.
以上で しずく「コトネと駆け落ち」 は終わりです。

28名無しに変わりましてSS銀河がお送りします:2014/09/24(水) 16:02:42 ID:OYlbBHS6
おつ
コトしずは作品随一のシリアスの宝庫


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