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(゚、゚トソン人ひとでなしのようです(´・_ゝ・`)

1ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:14:29 ID:???
いろいろな意味で閲覧注意

45ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:55:53 ID:MEHWP0s6


( 、∩トソン


(´・_ゝ・`)「そろそろ、屋敷が騒がしくなる頃かな」


( 、 ;∩トソン

(´・_ゝ・`)「少しは落ち着いたかい?
      君があまりにも必死だから、俺もつい本気になってしまった。
      すまなかったね、トソン」


( 、 ;∩トソン「……ぁ」


(´・_ゝ・`)「だけどね、トソン。これは君が望んだことだよ。
      みんな、みんな滅んでしまえばいい――君はそう願った。
      だから、俺は君のかわりに、君が望む滅びをもたらした」

46ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:58:30 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「そうだね、次はどうしようか」


( 、 ;∩トソン「……つ、ぎ」


(´・_ゝ・`)「そうだよ、トソン。
      この程度じゃどうして、滅びなんて言える?」


( 、 ;トソン「や」


(´・_ゝ・`)「子は宝だ。まずは、この宝から消していくことにしよう。
      次は、土地だ。土地を枯らそう、水を枯らそう。川には毒を流し、提を切ろうか。
      俺の力の及ぶ領域全てに災いをまこう。そうしたら、次は血族の命だ」


(゚、゚;トソン「やだ」

47ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 00:59:00 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「契約の放棄は死を意味する。君だけじゃない、血に連なるもの全員だ。
      君はミルナを、ミセリを、罪のない者たちを殺せと言っているのだよ?」


(;、;トソン「――あ」


(´・_ゝ・`)つ(;、;トソン


(´・_ゝ・`)「可哀想に、泣いてしまって。
      大丈夫だよ、君が約束を違えない限りはそんなことはしない」


(´・_ゝ・`)「わかるよね、トソン。いとしい君。君は、優しい子だ」


(;、;トソン


(´・_ゝ・`)「君は全てを犠牲にすることなんかできない。
      それができないのは、君が一番わかっているだろう?」

48ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:01:01 ID:MEHWP0s6

・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


盛岡の一族は、でみたす様を祀り続けた。


でみたす様に従えば、土地は肥え作物が実った。
山からは珍かなる宝が見つかった。


だけど、でみたす様は同時に災いももたらした。


でみたす様に逆らえば土地は枯れ、水は干上がった。
貢物が絶えた年は、赤子が死んだ。
社が壊れた年には、流行病が起き、山崩れが起きた。
でみたす様が求めた大切な役目が果たせなかった年には、本家の人間が全て病や事故で死に絶えた。


でみたす様は、従わぬものへ祟りをなす。
それがわかっていながら、一族はでみたす様を祀り続けた。


でみたす様は力をつけすぎていた。
でみたす様との契約を破ろうとする者には、ことごとく死がもたらされた。


かつて交わされた契約は、破ることができなくない絶対の掟になっていた。
一族はでみたす様に怯えながらも、崇め祀り続けるしかなかった。

49ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:01:47 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


/ ,' 3 「トソンお嬢様。
     ミセリお嬢様がお越しですが、お通ししてもよろしいですか?」


(゚、゚トソン「……」


/ ,' 3 「トソンお嬢様?」

(゚、゚;トソン「……! 通してください」


ミセ*゚ー゚)リ ヒョコッ


ミセ*゚ー゚)リ「トソンおねーちゃんー!!」

(゚、゚;トソン「ミセリ。あなた無事ですか? 怪我とか、してませんか?」

ミセ*゚ー゚)リ「どうしたのおねーちゃん? それより、あそぼー」


( 、 ;トソン「よかっ……た」

50ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:03:44 ID:MEHWP0s6

ミセ*゚ー゚)リ「おとーさんも、おかーさんもあそんでくれないの!
      ひどいでしょー、おねーちゃん」

(゚、゚トソン「そうなんですか?」


ミセ*゚ー゚)リ「みーちゃんは一人であそんでだって!
      おとーさんもおかーさんも、モナーおじさんたちとおはなししてるのにズルイよね!」

(゚、゚;トソン「モナー、叔父さん?」


ミセ*゚〜゚)リ「赤ちゃんしんじゃったんだってー。
      ねぇ、おねーちゃん。しんじゃったら、あそべないの?」

( 、 ;トソン「……」

ミセ;゚д゚)リ「どうしたの、おねーちゃん?」


( 、 ;トソン「……ごめんなさい」

ミセ;゚ー゚)リ「おねーちゃんなかないで。
      ミセリだいじょうぶだから、ね?」


(;、;トソン「……ごめんなさい。ごめんなさい。ミセリごめんね」

51ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:04:59 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


( ゚д゚ )「……トソン」

(゚、゚トソン「……」

( ゚д゚ )「……わかって、いるな」

(゚、゚トソン「……伯父様」

( ゚д゚ )「モナーは怒っている。
     お前が役目を果たそうとしないから、祟りが起きたのだと……」

(゚、゚トソン「……」


( ゚д゚ )「お前には、本当にすまないと思っている。
     だけど、お前をかばい続けるのはもう限界だ」


(゚、゚トソン「……」


::( д )::「すまない、トソン。本当に……」


(-、-トソン「……」

52ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:06:04 ID:MEHWP0s6






――私は、きっと逃げられない。







.

53ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:06:43 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(゚、゚トソン「……」


人目が途絶えたところを見計らって、戸棚から小瓶を取り出した。


山に生える青い花。その根を乾燥させて作った小瓶の中身。
いつか料理に入れたことを、思い出す。
でみたす様は美味しいといっていたが、きっとおいしいものなんかじゃないのだろう。


(-、-;トソン「……」


水と一緒に飲み干した。
口に走るしびれは、やがて苦しみとともに私の命を奪うだろう。


( 、 トソン「もっと早く、こうしていればよかったです」


なかなか踏み出さなかったのは、きっと自分がかわいかったからだ。
それでも、 もう、    いい




                        これで、 ぜんぶ おわる



        から


.

54ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:07:33 ID:MEHWP0s6














.

55ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:08:04 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


(´・_ゝ・`)「――おはよう、トソン」


(゚、゚トソン


(´・_ゝ・`)「ミルナが動かない君を連れて駆け込んできた」


(゚、゚トソン


(´・_ゝ・`)「明日は、約束の満月だ」


(゚、゚トソン


(´・_ゝ・`)「最後の夜が近づくとこういうことが起こるから、ミルナには目を離すなと言っていたのだけれどもね」


(゚、゚トソン


(´・_ゝ・`)「可哀想に、ミルナも真っ青になっていたよ。
      娘の――ミセリの命だけは助けてくれと言っていたな」

(´・_ゝ・`)「ああなっては当主の威厳の欠片もないね。
      でもまあ、そちらの方が人間らしくて面白いのだけど」

(゚、゚トソン「……ミセリは。伯父は」

56ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:08:54 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「ようやく口を聞いてくれたかと思ったら、それか。
      気分はどうだい? 毒を抜いて、治療はしたけれどもう大丈夫かい?」

(゚、゚;トソン「ミセリは関係ないのです。伯父だって悪くない!」

(´・_ゝ・`)「君がそういった感情を向けるのは、俺だけにして欲しいのだけど。
      ……まあ、それだけ話せるなら体も大丈夫だね」

(゚、゚;トソン「二人はどうなったのです?」

(´-_ゝ-`)「無事だよ。かわいそうだったから、今回は見張り役だけにしておいた。
      ミルナはあれでも俺の孫だからね。それに、君を育てた働きもある」

(゚、゚;トソン「……見張り役?」

(´・_ゝ・`)「君をお嬢様と呼ぶ奴がいただろう?
      守るふりをして、じっと君を見張ってきた役立たずが」


              / ,' 3


(゚、゚;トソン「……荒巻の、お爺さん?」

57ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:10:19 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「自死は契約に反すると、君は知らなかったのかい。
      本当に死んでいたら、あの老人程度では済まなかったよ」

(、 ;トソン「……」

(´・_ゝ・`)「確かめてくるかい? 葬式はまだのはずだよ」

(、 ;トソン「……そんな。そんな」

(´・_ゝ・`)「可哀想に。また死んでしまったね、君のせいで」

(、 ;トソン「荒巻の……お爺さん、が」



(´・_ゝ・`)「ああ。でも、本当にかわいそうなのは君か」

(、 ;トソン「……」


(´・_ゝ・`)「――君は本当に死程度で逃れられると思っていたの?」


(、 ;トソン「……っ」


(´^_ゝ^`)「俺は君が死んだとしても、また捕まえるよ。
      何度でもだ。死んだって、俺は君を見つけられる」

58ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:11:55 ID:MEHWP0s6

(、 ;トソン「……私、は」

(´・_ゝ・`)「トソン、かわいそうに」


(´・_ゝ・`)「契約の破棄は出来ない。
      君は、ミセリやミルナの死を本気で望んでいない。だから、君は逃げることができない。
      自死することもギリギリまでためらった」

(、 ;トソン「……」


(´・_ゝ・`)「そして、君は俺を殺すことも出来なかった。
      残された時間を全て使って、俺を殺すための研究をしてきたのにね」

(゚、゚;トソン「ならっ……っ、あなたが勝手に死んでください!
      死んでください! 私は、あなたに死んで欲しいのです!」


(´・_ゝ・`)「そう必死にならなくても、俺だっていつかは死ぬよ。
      ……まぁ、君が死ぬよりも先の事になるだろうけど」

( 、 トソン「困ります! 今すぐ、死んでもらわないと困るのです」

59ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:12:31 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「どうして?
      何も命をとろうというわけではない。君が従うだけで盛岡が栄えるのだ。安いものじゃないか。
      君がお役目を果たせば、誰も死なない。君が心を痛めることはないんだよ」


(>、<;トソン「そうじゃない!」


(´・_ゝ・`)「なぜ、君は嫌がるんだろうね。
      これまでにも君のようなお役目はいたけど、ほとんどの者は素直に従ったよ」


(゚、゚;トソン「……嫌です」


(´・_ゝ・`)「聞き分けのない子だね。そんなに嫌なのかい?」

60ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:13:18 ID:MEHWP0s6


(゚、゚;トソン「嫌です。嫌なんです」



(゚、゚トソン「……だって、あなたが死なないと」



(゚、゚;トソン「わたしはっ、      の」



( 、 ;トソン「お嫁さんになってしまうっ――」



.

61ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:14:58 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


子孫代々に続く繁栄をもたらそう。


――ただし、約束を守るなら。


でみたす様は、盛岡の最初の当主に言いました。
でみたす様は、当主に二つの条件を出しました。

一つは、己を神として祀ること。
もう一つはでみたす様の定めたお役目を果たすこと。


盛岡家にかされたお役目。
それは、でみたす様が定めた娘を、妻として捧げることでした。


でみたす様は定めた娘に、印をつけました。
印のある娘は十五になると、お役目としてでみたす様に捧げられました。


そして、それは私も同じ。


――私は、やがてでみたす様に捧げられる生贄だ。

62ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:15:47 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・



(´・_ゝ・`)「お嫁さんか。そう言うと存外に可愛い響きだね」

::( 、 ;トソン::「……なんで、私なのですか」


(´・_ゝ・`)「それは君に印があるからだよ」



(´・_ゝ・`)つ( 、 ;トソン::


(´・_ゝ・`)「君のその目。湖のように美しい青い瞳。これが印だ」

( 、 ;トソン::


(´・_ゝ・`)「ああ」


(´・_ゝ・`)「こんなに震えてしまって、可哀想に」

63ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:16:53 ID:MEHWP0s6

( 、 ;トソン::「どうして……」


(´-_ゝ-`)「君がどうしてと言うのなら、少しだけ話をしようか……」


(´・_ゝ・`)「俺がまだ何者でもなかった頃、一人の女を見つけた」


( 、 ;トソン「……」


(´-_ゝ-`)「きれいな髪の、色の白い女だった。
      まっすぐとこちらを見る目が印象的だったよ」


(´・_ゝ・`)「女は美しい見目をしていた。でも、それ以上に魂が良かった。
      青い、湖のような魂の色。
      ――俺はどうしてもその女が欲しくなった」


(´・_ゝ・`)「だから俺は言ったのだ。あの女を寄越せと。
      女を捧げ神として祀るのならば、盛岡の血族は永遠に栄えるようにしてやろう」

64ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:17:29 ID:MEHWP0s6


(゚、゚;トソン「……私は、関係ない」


(´・_ゝ・`)「関係はあるよ、一番最初の女は君だ。
      俺は手に入れた女の魂に印をつけて、盛岡の血族に産まれてくるように輪廻を歪めた」



(´・_ゝ・`)「印は、目にした。
      あのまっすぐな目に、美しい魂の色が映るようにと」


(´・_ゝ・`)「最初のお前は空といった。次は、緋糸、愁、来雨、久都……。
      君の曽祖父の代では、貞子という名だった。あの子は弱かったが、空に似たまっすぐな目をしていた」


(゚、゚トソン「……」

65ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:19:09 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「みんないい娘だった。
      俺が惹かれた魂の色は、何度生まれようと変わらずにあった。
      盛岡の家などどうでもよかったが、娘の魂とあの目はとても良かった」


(´・_ゝ・`)「そして、都村。君が産まれた」

( - トソン「……」


(´・_ゝ・`)「君は貞子と同じで、体がそう強くはなかったね。
      いや、貞子の血と魂を引き継いだからこそと言うべきか」


( - トソン「やめて」

                                              キ ミ
(´・_ゝ・`)「君が死んだ時はとても悲しかった。だけどね、都村は俺に新しいトソンを残してくれた」


(´・_ゝ・`)「トソン。愛しい俺の――」




( д トソン「もうやめて!」

66ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:20:26 ID:MEHWP0s6







「――おとうさんっ!!」





.

67ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:21:13 ID:MEHWP0s6

・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


でみたす様に最後に差し出された女は、私の母だった。


都村。


私と同じ名前をした、私の母。
曾祖母と同じく体の強くなかった母は、私を産み落とすと同時に息絶えた。



産まれた赤子――私は、黒い瞳だった。


私はお役目には選ばれなかった。
だけど、年を経るうちにその瞳は母と同じ青へと染まっていった。


今でも思い出す。
瞳の色が変わっていく、恐怖。
私が私ではないものに変わっていく、恐れ。

両目を潰そうとした手は、伯父によって止められた。


でみたす様が次に選んだのは私。
母の次の花嫁として選ばれたのは、でみたす様と母の血をつぐその娘だった。

68ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:21:48 ID:MEHWP0s6


でみたす様の定めたことは、一族にとって絶対だ。


違えれば、一族が死に絶える。
当主である叔父は、でみたす様に従えと言った。
曽祖父であり父でもある人でなしの神へ嫁げと、叔父は言ったのだ。

そして、私はお役目を果たすことになった。


十五になってから、最初に迎える満月。
――明日の晩。

それが叔父の定めた、約束の日。


私の婚礼の日だ。

69ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:23:47 ID:MEHWP0s6
・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・


( - トソン「……おかしい。あなたは、おとうさんはおかしい」


( 、 トソン「なんで、私をお嫁にするなんて言うんですか。
     なんで死なないんですか、なんで人間じゃないんですか」


(´・_ゝ・`)「おとうさん、か」

( - トソン「……っ」


(´・_ゝ・`)「そう呼ばれたのは、随分久しぶりな気がするね。
      ここ最近の、あなたというのも良かったが。うん、悪くない」


(´・_ゝ・`)「……」


(´-_ゝ-`)「――なんで、と言ったか」

70ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:24:51 ID:MEHWP0s6


(´・_ゝ・`)「都村が死んだとき、俺はまた何年も待つのかと思った。悲しかった。
      だから俺は、君の魂を産まれたばかりの赤子に移した」


(゚、゚トソン「……」

(´・_ゝ・`)「流石に無理かと思ったが、君は大きく育ってくれたよ。
      君は黒い瞳だった。都村の魂を持っていても君は、都村ではなった」


(´・_ゝ・`)「俺は次の君を待とうと思った」


(´・_ゝ・`)「だけど、それは間違っていた。
      どんな形で引き継がれたとしても、君はやはり君だったんだ」


(´・_ゝ・`)「君のその目が、青く染まった時。俺は歓喜した。
      俺の愛しい魂は失われずにここにある。俺の願いは届いたのだ」

71ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:25:31 ID:MEHWP0s6

(´・_ゝ・`)「トソン。愛しい都村。
      明日になれば、君は俺の花嫁だ。血も、肉もすべてが俺のものになる」

(; ;トソン「……なぜ母を、そのまま死なせてくれなかったのですか。
      なぜ私に、母と同じ役目を負わせるのですか!!!」


(´・_ゝ・`)「なぜ、死にゆく愛しい人を手放さなければならないの?」



人でなしが、心の底から不思議だという様に笑った。



(´・_ゝ・`)「トソン。いとしい私の都村」


人でなしが、人でなしの言葉を告げる。
人ではないそれには、父が娘を犯す異常が、罪がわからない。

72ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:26:32 ID:MEHWP0s6

私の母は、でみたす様の妻だ。
私の曽祖母もまた、でみたす様の妻だ。
その前の先祖にも、前の前の祖先にも、でみたす様の妻となった女達の血が流れている。


私の半分は人でなしの血で出来ていて、残りの半分も人でなしの血でできている。


この血が流れているかぎり、きっと私はどこにも逃げることなど出来ない。
それがおぞましくって。だから私は、殺してしまいたかった。


(゚、゚トソン「人でなし」

(´・_ゝ・`)「はじめから、人ではないよ」

(゚、゚トソン「大嫌い」

(´・_ゝ・`)「俺は君を愛しいと思っているよ」


私の父であり、曽祖父であり、何代も前の先祖であるそれが笑う。
仕方のない子だねと、なだめるように。
それはなんでもない父親のように笑って、人でなしの言葉を吐く。

73ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:27:27 ID:MEHWP0s6

(゚、゚トソン「私を放して」

(´・_ゝ・`)「俺は君を捕まえたつもりはないよ。
      放す気もこれっぽっちもないんだけどね」

(゚、゚トソン「逃して」


(´・_ゝ・`)「君がどうしてもと望むのなら。
      君の一族を殺して、災いを振りまいて、そして、君も殺そうか?」


人でなしが笑う。
獣のような耳、三つ指の尾、瞳孔のない真っ暗な瞳がこちらを見据える。


(´・_ゝ・`)「そうしたら俺は、産まれ落ちる新しい君を迎えに行こう」

( 、 トソン「いやだ」

(´・_ゝ・`)「次はどんな君だろう。
      今の君や、これまでの君たちように、まっすぐな目をしているといい」

74ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:28:19 ID:MEHWP0s6

( 、 トソン「やめて」

(´-_ゝ-`)「それなら未来の話をしよう」


夢見るように人でなしは笑う。
私の言葉は、届かない。
それでも私は、聞き分けのない子供のように泣き叫ぶ。


(´・_ゝ・`)「君の産む子は、どんな子だろうね。
      男でもいいが、女のほうがずっといい。君みたいなまっすぐな目をした娘だ」

(、;∩トソン「聞きたくない」


(´・_ゝ・`)「その子の魂は、どんな色をしているだろうね。
      君のような、青い湖の色をしていればいい」

( 、; トソン「やだっ!!!」

(´・_ゝ・`)「――君はいつもそう言うね」


唇が落とされる。
冷たい感触が、ぞわりと私の皮膚を撫でる。
背に回される太い手と、三指の尾。
私を覗きこむ瞳は、真っ暗な光の見えない目だ。

75ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:28:55 ID:MEHWP0s6

ぱさりと、髪が落ちた。


(´-_ゝ-`)「トソン。いとしい魂を持つ、俺の娘。
      俺の末裔にして、最も濃い血を引き継ぐ子よ」

(、 川「……嫌だ」


(´・_ゝ・`)「もし君が望むのなら。
      俺の力が続く限り、その生命が続くようにしてもいい」


(- ;川「……嫌だ」


(´・_ゝ・`)「トソン、愛しい娘。
      空の魂を引き継ぐ、一番新しい君」

76ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:29:38 ID:MEHWP0s6



もう何も聞きたくなくて、私は目を閉じた。



.

77ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:30:36 ID:MEHWP0s6






                   「愛しているよ」





.

78ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:31:07 ID:MEHWP0s6


・  ━  ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━  ━  ・



かみさま。


人でなしの、いでみたすかみさま。でみたす様。


わたしのおとうさん。



もしあなたが本当に、かみさまならば。



魂のかけらも残さずに



わたし、を



.

79ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:31:47 ID:MEHWP0s6




殺してください。







(゚、゚トソンひとでなしのようです(´・_ゝ・`)        了

80ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:34:05 ID:???
スレタイミスしました
(゚、゚トソンひとでなしのようです(´・_ゝ・`) が正しいスレタイです

気づいたらこうなっていた。大いに反省したい

81ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 01:34:35 ID:???
おおお乙

82ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 02:01:02 ID:???
凄く好みだ
おつ

83ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 03:24:45 ID:???
ドツボにハマるくらい引き込まれた。デミトソとは珍しいなと思ったが初代の目の持ち主はあの人か…乙

84ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 03:39:46 ID:???
>>83
え 誰ヨダレよ

85ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 04:05:15 ID:???
ケータイが反旗を翻して「もしかして」が抜けてた。「もしかしてあの人か」って打ちたかったんだ…髪をおろしたトソンがある女性AAに見えて…ごめん…ごめんよ…

86ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 09:06:28 ID:???

なかなか人でなしだった

87ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 09:35:13 ID:???
面白かった
まさかこの絵がこんなホラーな話になるとは

88ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 13:06:08 ID:N31DJudA
ぞくぞくした


89ブーン系の名無しさん:2014/03/23(日) 15:23:01 ID:lyvMsWYs
おつ

90ブーン系の名無しさん:2014/03/27(木) 20:53:31 ID:???
遅まきながら乙でした。

http://imepic.jp/20140327/748440

91ブーン系の名無しさん:2014/03/28(金) 01:16:09 ID:???
>>90
(゚、゚トソンと(´・_ゝ・`)の表情がとても素敵

イラストを使わせてもらえただけでもありがたいのに、作品絵まで描いて貰えるとは…
本当にありがとうございました

92ブーン系の名無しさん:2014/08/03(日) 02:33:42 ID:???
酉なしで本人証明ができない上、ものすごく今更ですが>>70を下のレスに差し替えてください

93ブーン系の名無しさん:2014/08/03(日) 02:34:35 ID:???



(´・_ゝ・`)「都村が死んだとき、俺はまた何年も待つのかと思った。悲しかった。
      だから俺は、都村の魂を産まれたばかりの赤子に移した」


(゚、゚トソン「……」

(´・_ゝ・`)「トソン、それが君だ」


(´・_ゝ・`)「君は大きく育ってくれた。
      俺は喜んだ。だけど、君の瞳は決して青にならなかった。
      君は都村の魂を持っていながら、それでも都村ではなかったんだ」


(´-_ゝ-`)「悲しかった。俺は次の君を待とうと思った」


(´・_ゝ・`)「だけど、それは間違っていた。
      どんな形で引き継がれたとしても、君はやはり君だったんだ」


(´・_ゝ・`)「君のその目が、青く染まった時。俺は歓喜した。
      俺の愛しい魂は失われずにここにある。俺の願いは届いたのだ」

94ブーン系の名無しさん:2014/08/03(日) 02:35:58 ID:???
感想やレス等、本当にありがとうございました


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