＿―＝―＿
,,ィニニニニニニﾆｭ､
ィニニニニニニニニニヽ
|ニニ＝‐ ￣￣ -＝ニニ!
レ ´,,-―＝＝―- ､ ｀ヾ|!
ｊィニニニニニニニニュ､｣
イニニニニニニニニニニニｭ､
イニニ≠ ´￣ ＼￣｀ マニニﾆ ＿＿ を
{ニ／ ヽ ｀マニﾆ! タ ├
｢＼ ﾏ´ ,' ＿ｊ{__ヽ ＼ ､＿＿} マ7 └
ト､ ＼ j ｊ! 八 { ＼ Ｖト､_ ﾊ ｊ }
八 ､＼ i { ｨー､ ヽ ｀ｰァート､} /ｲ
＼ ､＼ { ', ∨ i iヽ､{ / | !ヽ / 八
. ＼ ､＼八 ﾄ ト Ｌ__ｊノ ヽＬ__ｊノｊ/ /}｀ 十つ ..十
＼ ､＼Ｖ＼_{ ￣´ ｀￣ /ｲノ | フ ｰ┼‐
＼ ､＼ 人 ┌― ┐ ｲ从 く__ .人
＼ ､＼ヽﾄ､ ー‐ﾟ 人 ＼{ ｡ノ
＼ ､ '⌒≧ｭ。_-≦ﾑ _ｒ′ は
_＞､ ＼ ｀マＬ / Ｙ⌒ﾄ､
入｢_＞ー＝ｭ＿)､⌒ ｙ（ｒミＹ＿)､-ｭ､..＿＿＿＿＿
/ニムｒ ﾍ //川｢ヽ´７_ｒ彡､7⌒ｰ､ ｒ－､_＿＿ ｀ミ ､
/ニニニ､)ﾍ //_ｲ}{ﾑ__）（{ ｒ=｀マ＞ ､ ｀ ｀ｰ＜ｒっ､ ｀ヽ ハ
ニニニニﾑ八｀マｲ}{ ｢Ｔ ）＿_ ､ ｀ マ＞ ､ ⌒¨￣￣У j}
ニニニニニ}_) i][_! { / , -＜=ｭ､ ｀ マ≧､ ＿＿ ノ
ニニニニニﾑ人 i] [! f j ´／￣ス ｀ヽ ＼_７￣￣｀ｰ ′
ニニニニ≠7 ﾒ { i] [レ´{ ´ア V_ ｊ У ﾏ
ｒ'アニニﾆｲ / ＞=彡' {! （ ミ≠' ⌒y j} ＿＿
リニニ／ﾆV /´ ゝ＿人 ＿＿彡 ´ ノ￣ | ―‐|
ﾑニ≠－⌒ﾊ′ Ｖ/ﾑ |ニニ|
/ﾆ{､_ ｏ ｏ ｏ イ]ニﾊ ｊ ｌ＿,
/ニﾆｰ'エエｫコィ⌒´ニニ､
ｲイニニニニニ}〉ニニニニﾑ. ┼─┼ る
７ﾆｊ!ニニニニﾆ人ニニニニﾆ八 □ﾆ□
/ニﾆマニニニイニﾑﾏニニﾆ７ニ､ |￣￣￣|
ニニニﾆマニ/ニﾏニムﾏニ／ニニ､ ﾉニ| に
ニニニニﾆマ′ヾﾏニイニイニニニﾑ ノ
/ニニニニニニニニﾏ'ニニニニニニニ
/ニニニニニニニニﾆ}!ニニニニニニニﾆ
｀ マニニニニニニニj{トマニニニニニニ｣
￣｢￣ ー＝T´ i ￣ ー7´￣
・安価でゲームをするスレです。
・ルールは真・女神転生TRPG 魔都東京200Xを使います。
・世界観はよくある現代厨二退魔バトルものです。メガテン成分は多めですが、メガテンとは限らない。
・15禁くらいということにしておきます。セクシー系で。
・更新速度は亀の歩みです。
・火曜〜金曜、朝７時ごろに平均５レスの投下を予定しています。
・体調の問題により、連絡なしで休む可能性があります。
・安価は、範囲内の多数決で行います。
・そのため、雑談及び相談をしてください。
・展開先読み、ネタ潰しもどんどんしてください。
┏───────────────────────────────────────┓
・前スレ（上の方ほど新しい）
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1413503559/
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1401668530/
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1391033198/
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1381356590/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/15956/1373002055/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/15956/1369357348/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/15956/1363135694/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12766/1355187068/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12766/1348465861/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12766/1339549392/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1332300939/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1324955599/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1318653965/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1313541378/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1308013310/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1301360524/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1295329382/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1288919010/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1280966604/
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1274484280/
・データ確認用wiki
ttp://www35.atwiki.jp/siwoyumeni/
・月齢カレンダー
ttp://koyomi.vis.ne.jp/moonage.htm
・雑談所
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1413503559/
【これまでのあらすじ】
クリスマス・イヴに校舎の屋上から墜落死したやる夫。
状況から家族も警察も自殺と考えるが、学校に不可解な告発状が届いたことで事態は急変する。
札付きの悪、間桐慎二がやる夫を殺したという告発。
事を穏便に終わらせようとする学校、しかし、打つ手打つ手が裏目に出てしまう。
何が歪みの原因なのかもわからない混沌の中で、ただただ確実なことは一つ。
何が真実で、誰を信じてよいのか。
子供たちだけではない、大人達すらよりどころを失い、姿のない怪物に翻弄されるのであった。
……という話はまた今度にして。
＿＿＿_
／― ― ＼
／（●） （◎） ＼
／ （__人__） ＼
| ｀ ⌒´ |
＼ ／
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| ・ ・ ）
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(YYYヾ Y (YYYヽ |
（_＿＿ノ-'-（'＿＿_）_ﾉ
入即 やる夫
【大目標】
なし
【小目標】
なし
・『血族』をクビになり、あてどなく暮らしている。
・高良みゆきに愛の告白をされてお付き合いすることになった。
・まだ二週間だけど、感情のすれ違いが発生しているぞ。
・伊藤誠との別れを済ませた。
・水銀燈が伯母であると知った。
・水銀燈に後押しされ、『血族』に入れてもらうことを考えていた
・真紅の件を足掛かりに、蒼星石たちとの付き合いを取り戻したいぞ
ﾍ , ィ
ノ-┴／ |
/(__／ _ ├ .､
_Γ ￣ ﾞ ﾉﾄ､:::＼
( ヽ_＿＿ｒ‐く/ ＼:::ヽ
￣7 ＿ｰ┐ ヽ::‘，
ﾉ´ ￣ ! ',::::|
＿＿＿ (_ ｨ::┬' { ∨
／´ ,ｘ-‐┬-. ､ | |::/ ＼ ノﾍ
. // ／.: :,ｲ :|＼: : ＼ | ﾆ / ／ ＞くｰ―'
/ ! /: : :‐７ !:/ ⌒Y: :|ﾘ `ーｘ= _／ / 二≧､
. / | {: : : Ｖ≡ ≡|:八 ,イ|| ∧ / /,ｒ――､ヽ
| ﾊ ＼: :＼''' __, '''ｲ :ｉ:| / |:|ﾚ ∨ /７ ', l、
|／|: | i| ::丁==┬くi |: |:| ﾊ∧ ├| |ハ
|: | iﾚく＼__/＼入: |:|. |: Vﾍ ∨ || ',
. |: i/::::::::ヽ Lﾊ〉|::ヽ |! / Ｖﾍ | 〃
. !:/::::::::::::::ﾊ, ||| |::::::)|i: / ＞i| 〈 ハ
i| ＼＿ﾊ:」 | ||| |::_/:.∧ / ∧ / ∧ |
ｉ|: : | ﾊ::::ヽ!∠＞:::ﾍ: :∧ ノ ＿ 〉 |! / ∧ | |
. i:!: /L,{∧:::::::ﾏ三ﾊ::‐:＼: : ＿＿_{ ≧≠ '´ﾊ ﾊ l |
/ |/:/: レ:ﾍ:´:::ﾍ￣:ﾍ:::::::::}_ﾍ / ―∧ ,ィ ／ ―― ､_ﾉ |
＿ /: /:/／＿_7::::::::;＞､:::Y⌒Yヾゝ、 / ＼＼ l | ／ ＼ __ | |
ｰ=≧／／:／::￣￣}:::::::人／>┴く｀ヽ:＼! | :＼ヽ人/ ＼＼ |
_／(／／:∠=ﾐｘ_::::::::/:／::::::`仏＿ノ‐く￣:::＼ _レ{ i ＼＼
＞=-‐::´::::::::::::::≫======≠彡￣:::::::::::::::::::::::＼ / Ⅴ / K´
__〃⌒ヽ_::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＿＿人 ＿{ i{ L_ 〃 |:|
{彡=ミｘ_::::＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿彡￣￣::::ﾉ| ／ ／＼ ＼ ｲ__ /〉
￣ミ≧ｘ二二二二二二二二二二:ｘ====彡(´丁⌒￣￣￣ヽ==―┘ `ー――― '
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ＼ヽ ﾉ ＿_ノ
`ー ￣
備府 やらない夫
【大目標】
翠星石との幸せな結婚
のための、『血族』『四天王』入り
のための、ニャルラトホテプの痕跡探し
【小目標】
エコービル調査
サーシェスとキンブリーの調査
趙雲 子龍 星の救出
大天使召喚儀式の停止（？）
・麻呂に弟子入りして、しかも班長になったから部下もできたぞ。
・『糖分同盟』が優秀すぎて情報収集も楽チンだ。
・ディオに頼んで中国人と同盟を組んだぞ。
・やる夫がいなくて、正直寂しかった。
__ -=ニ￣ ＼
, -=ニニニニ i!
Vニニニニニ＝=-- _i! {ヽ, /ヽﾍ､＿ __
V／7/////// j! _}＞´ア´{ ァ o { ｀ヽ ｒァ⌒ヽ
＿}ｒ‐＝ニニニニ￣￣￣ ｀i r y´ =ﾆ!三=! {_､ ＼＿ ＞ ´ ´ ｒ､ﾍ
ｒ=ﾆニニニニニニニ | r' / =ﾆﾆl!三三 rｸ o ゝ. ーァ}
Vニニニニニニ＝―――--人 7 ﾑニニﾘ三三ﾆ ｒy-< o ＼_..z＝ T´
〉＝‐ T´￣: : : ヽ: ー=: :＿: : :ﾌ= {ニﾆ ／三三三>ｒァ⌒ﾞo´ ＿ノ
,': : : : : :ﾄ: : : : : : : V: ヽ: :ト: :_人 ／ニ≧´ /三ﾆ／/ （､ ｊ/ ／
i: : : ､: : : :ﾒ､: : : : : :〈｀ヽ: !:rｲ ムニ ﾉ ゞ＝'/ { ｌ ＿彡 ´
i! 、: :ヽ /: :x.ヘ_､: : ∧ .}: {7 /ニ {´ ﾊ ヾ ／￣
{: :＼ : :': ; 代ｙﾟ, Y : : V ｒ､ﾏ{ニニニニﾍ ｊ|h _ イ´
＼: : ヾﾒ ′xxxﾊ: : V ｒ､ ﾏニニニニヽ._｀ー彡,
ヽﾊミヽ! 〉; :∨ﾊ} ﾄ､ニニニニニ≧＝ﾊ ／
￣｀ ､ﾟ´＿ / ヘ!K⌒ヾｭニニニニニニニl{ト . ／ /
｀ヾ≧= /ﾊﾄ､｀ーｲ´ミニニニニニニｊ ≧ｭ､＿ ,ィ /
/ ニ{L_ｊ i}ヽ> ﾊ＼ニニニ＝＝´/////////// /
{ニニ≧ｲ! { レ､ﾒ/ ヽ,////////// /////////__＜
Vニﾆﾆリ r'ﾉ≧ｭ､TＫ7＼//////////|≧＝‐´ ヽ
ヾﾆシ r'ｿ ｊ｀￣｀ヾ､V////////lニニニニ ﾊ
ｒｧ７´ ｲ7 ｢ / 〉7ﾊ////////!ニニニ}ニ }
}ﾘ _ノ´ﾌ }K＿./ V/ハ///////!ニニニ ,
ｲｊ ｒ' ｒイ 彡⌒ 〉 ﾉ//ﾆV/////ﾘニニニﾊ ﾉ
⌒´ ｱ´￣ ﾘ ｲ/／ﾏﾆV///／ニニイニ /
_）｡ﾟ / /／ﾆ／ﾆﾆV／ニニイニ /
ｒvァ＜｡ / ´ /ムニニニニニイニ ｲ
V ,-ｧ､ / ﾑニニニニニニ/ニ
ゞー_ノ ゝ､ / ｲニニニニニニ／ニ
ｒ－´ , ｲ＿フ ﾑニニニ≧ｭ､ニ´ニニ ｚｭ､ー┐
ア´､ （ﾉ／ /｀ーニニニニニ三三三/ _,ィ //ハ }
ｰ'´/ ｲ ｊ , ｀＞＝― ´￣￣ー--- --――― ≦ヽy≠ﾉ ゞ-､
｀ { ﾏｊ///ニミ､ ﾊヽ.
ヽ --―ヾ＝⌒ ｰ､ )/∧ﾊ
￣「ニ＝－-- 。。＿。 -- ― ￣￣ ｀ヾ彡'
L =‐彡´￣￣ ￣｀ー ＿ ＿,,-=､ーヽ
', ￣ ー―― メヾ＼ｒ=y//≧､
ー- ､ ヾ)/イｨﾍ､ ヾﾊ
ー― --- --- --- ￣⌒TK≦////ソ
｀ー'⌒￣
柴崎 蒼星石
【大目標】
アリカを『明神』にする
【小目標】
『蛇身』にネクロノミコンを渡す
間桐桜を人間に戻す
曹操華凛に『万魔』の情報を流す
キオのわがままに対応する
『結社』の情報を集める
・『万魔』に関しては板挟み状態だ。
・やる夫を突き放したのにウジウジしてるぞ。
/｀} }
＿＿ ィ:´:￣: :ミ: 、 / / ｲ
´￣￣ ｀y′: :ー-､: : : : :ヾｰ.､ /） / / ﾊ
／ ィ´: : ､ー--､: ヾ､: : : :＼ :)､ { ' // /
/ /: ; :､: トｰ ＞､}‐ヽ: : : :Y: ﾊ､ ｒ､ / /
{! {: :i､: l､:ヽ {/´ ｚｧミ､ﾏ: : j!､: j] 人Y ｊ /
｀ｰ ﾄ: :{ヽ:{ ￣ / ﾏ_jﾘ l: : ﾘ/ｒ } ＿ ｲ_ ノ ノ /
ﾏ ヾ>'´￣ ﾟ´ ｊ: : ｲ ｲ/ ｲ ⌒ヽ ￣７ゝｰｧ ィ〔
ヾ/ ｒてｒｊ /イ { ｒﾟ´ ／{´ }＞ ´ 彡 {－彡__/
ヽ{ ゞｿ ｀ ／ヽ ´ ! ｲ! / ﾏ_＞ ´ ＿ ゞー'
､ ｲ } _{ｒ‐〈 } ／
／{ 〕､ ｀ ー ﾟ ／イ/ ｒ- ｀ー'
/ ﾉ‐メ ＞- ｒ=イ ,,} V
＿メァ´ Ｖ ＞'ｱ}） ｲ ヽ ／
ｒ―ｧ' ア⌒Y イﾑ彡ﾟ ィア 八 } ／
__ﾉ＞´￣ アﾆｰy´ _/Ｌ ／彡イｨ⌒ヾ＝'
ｨ /／ {￣ ア{ ｀)7イー ´ { / ｀ヽ／ ,,ィ ｊ
ｒ､! ﾄ{ イﾊ ｨ/ ´ ｀´ 个ヾ ／｀} ／{ー’
zﾊ ｒ｀ｰ y ´ Y / /7ｰ' ＼ イ｀ー'
ゞﾑ ｒゝ イ V // /⌒
ヽ{ーｧ / // ′
メ ｀ｒ- ＿/ヽ/ｊ ∧' ／
⌒ｲ￣ ! ﾏ ﾉ ﾏ ／―ァ
ｒ－―- ｙ ´ 人 {´ }__／ ／
／＿ -/＿, ／ ニｺア 人ｊ Ｙ
´ｒ－―≦_ア イ´ ,, ´ ﾉ ﾄ､ ｊ
￣￣ ､＿＿ ／ イ ／ ハ￣
夢宮 アリカ
【大目標】
『明神』になる？
【小目標】
『蛇身』にネクロノミコンを渡す
間桐桜を人間に戻す
『弓兵』と凛に納得してもらう
キオをフォローする
『結社』の情報を集める
・正直『明神』関係のモチベーションは高くない。
・最近ものを考えるようになってきたぞ。
・やる夫とは同棲しているので、別に何も変わってなかった。
ゞヾ ,,.ゞヾ::ゞヾゞ:ヾ ゞ:.y.ﾉヾゞ..ヾ .ゞ,'ヾゞヾゞ ;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞ;
ゞヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞiiiiii;;;;::::: ｲ. ;ヾ ;ゞ ;" "ゞ ; ; ; ゞ ;" "ゞ";ヾ; ヾ ` 新スレです
ゞヾ ; ;" ; ; ;; ;"iiiiii;;;;;::::: :)_/ヽ,.ゞ:,,ヾゞヾゞ__;::/ ` ` ` 楽しく使ってね
ゞヾゞ;＼＼iiiiii;;;;::::: :|;:/ヾ; ;ゞ "ゝゞ ; ;` ﾌ 仲良く使ってね
" ;゛ ; ;" ; ;ゞ "|iiiiii;;;;::: : |:/ ヾゞ ∧_∧ ` ` `
ヾ |iiiii;;;;;::::: :| ` ` (´･ω･｀) ` `
` |iiiiiiii;;;;;;::: :| ` ∧_∧ (つ旦と ）` ` (⌒─⌒)
` ,|i;iiiiiii;;;;;;::: :| ( (・)ω)￣￣（__（＿ 丿￣￣￣ (ω^｀）.)
` |ii,iiiiiii;;;;;;::: ::|（ つ旦と)―{}@{}- ⊂Z⊃(::ﾟ:)(::ﾟ:)と )
..M|M|iMii;;ii:i;;ii;と＿_）__）（＜二：彡）(,,■)(,,■) (＿＿つ ／
／＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿／
ピクシーのつんさんといっしょで最初の仲間の・・・ｗ
→ いないはずの蒼星石と一緒に料理を作っていた
今回の手直し
→ みゆきさんが病んでいる
今の私が書きたいのは一日にメールを三桁、時間が開くごとに電話
勝手にやる夫の携帯を確認し、夜中に「会いたい」等のわがままを言って困らせるみゆきさんではない
ちょっと恋に恋していて、昼間の運動の過負荷で頭がハイで、ルカの影響で発情期に入ってるみゆきさんだ！
本スレ、埋めネタ、ともにもう少しお待ちください。
一体何をしているんですかねぇ
ちょっとそこんところねっとりとお願いします
>>14-15
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/otaku/12766/1348465861/
このあたりですな。
やらない夫仕込みの軍隊式水泳訓練で甲冑水泳だってできるようになっているとか。
それはともかく雑談所の新スレ
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12368/1427166936/
あと前スレに埋めネタのみゆきさん（まだ彼氏いない歴＝年齢だったころ）を投下します。
後日エダの話と悪魔合体があるので、レスはこっちにしていただけると嬉しいです。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1413503559/952-n
見ず仕事は水かな
ラストが安価ならみゆきさんの行動は
無難に「料理の質問をする」に一票
頭の中が
◯が綺麗なピンク色…
つまり次は人妻が親として娘や妹に
「二次には毛は生えないんだよ」と教えるのか
埋めネタ投下しました。
怪異に対してはそのくらいでは意味ない？
前スレの確認をしてきました
悪魔合体は
4ｘ11ｘ13
2ｘ3
詳しくは後日
埋めネタは
3 ここは私に任せて先に行け！
F 先代巫女の生存確認
T まだ未登場のインデックスと大天使召喚祭りの件
の三点で、んがっぐっぐ。
>>28
有るはずです。
そう言えばフリットの会社も物理的、魔術的に最新鋭の防御装置がうんたらとか言っていたはずです。
『十二の封印像』も結界定期メンテのタイミングで狙われましたし、物理的・魔術的シェルターは存在するはずです。
え？ その中でも最高のスペックを誇るはずの善国寺が襲撃を受けただろうって？
アレは相手が悪い。
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ さて、下ごしらえは終わり。
| （__人__） | 後は焼くだけだお。
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 早朝の集会から、三時間以上経った。
| みゆきや水銀燈との約束は11時だ。まだあと少し時間がある。
|
| やる夫は湯を沸かしながら、無心でコーヒーメイカーに豆を入れだ。
| やかんが蒸気を噴き出すのをぼんやりと見ながら、コーヒーにゆっくりと湯を注ぐ。
|
| 大見栄を切った。
| しかし、言いたいことも言った。
|
| 蒼星石は、やる夫の言い草に何も言わなかった。
| ただ、悲しい顔をして目を背けた。
|
| やらない夫とアリカは満面の笑みで大歓迎だった。
| 翠星石は？ 蒼星石とやる夫を見比べていた。
|
| やる夫は携帯を一瞥した。あの後、すぐに誠にメールを入れたのだ。
| 『お前の学校の一年生が巻き込まれてる事件のことで聞きたいことがある』
|
| すぐに電話が来た。
| いかづちの速さで携帯をつかみ取ろうとする不人気から死守し、やる夫が出た。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
. /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
,:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
{:::::::::::::::::::::::::::/:|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
. ':::::::::::::::;.ｨ :::/ |:::::::::::ハ::::::::::::::::::ﾊ}
＿}:::::::::::ー--- z |::::::::/ｨ≦ ::::::::::ﾊ::!
. ＞::::/i : / r乍t7 从: / 乍ﾌ:::::::::/ ﾘ
⌒)斗.|::/ l/└¨ ﾚ' ¨¨ /Vﾊ{
l/从. , /
r}. ‐‐ ／ 『どこまで知ってる？』
/ ＼ ＞ -＜
-=∧ ￣入ﾉ ヾ ､
-=二iﾆﾆ＼ ./xxxxヽlﾆ{ﾆ=-
-=ﾆﾆﾆﾆ|ﾆﾆ∧＼/ xxxx }ﾆ＼二ﾆﾕ､
. /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|ﾆﾆﾆﾊ xxx }.ニﾆ〉ﾆﾆ}ﾆ
. ,ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ≧＜ﾆ∧ .xxxx }ﾆﾆ/二ﾆ}ﾆ
,ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ﾆ∧ xxxx }ﾆ〈ﾆﾆﾆ }ﾆ
|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ< 二二 ﾊ xxxxx|.二＼ﾆﾆ}ニ
. {ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼ﾆﾆﾆ∧ｘxxx} ﾆﾆ/ﾆﾆ.}二
. {ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ=＼ﾆﾆ∧xxx|ﾆﾆ/ﾆﾆ/ﾆﾆ
. /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／二二ﾆﾆ＼ﾆ∧xx|.ﾆ/ﾆﾆ {二ﾆ
/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ 二二二二二＼∧x|=/ﾆﾆﾆ{ﾆﾆﾆ
. /ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ/ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆヾ∨/ﾆﾆﾆ |ﾆﾆﾆ>
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| やる夫は正直に不人気の話をした。
| すると誠は小さく嘆息した。彼も、赤い魔女の行動を把握していたのだろう。
|
|『夕飯時に来い、泊り自宅をしてな。その女も連れてきていいぜ』
|
| スピーカー状態で鳴り響いた声は、いつも通りのものだった。
| つまり、前半は皮肉っぽく。後半は必要以上に下卑た声色で。
|
| 目を三角にして拳を握るマグロが叫ぶ。もっと早くしろだなんだと言う罵詈雑言だ。
| だが、ダメージを受けたのは耳もとで叫ばれたやる夫たちだけで、電話の向こうの誠はどこ吹く風である。
|
|『夢世界の方は、問題が複雑に絡まってる。
| とりあえず木星の問題が片付きゃあ多少変わる』
|
| しかも、正直に木星などというものだから、赤身は瞬間沸騰。
| 木星の問題。誠が死ぬ必要がある話。
|
| やる夫は胸に湧いた感情を押し殺しながら、マグロを慰撫した。
| 誤字ではあるが、「マグロを燻した」だったらおいしそうだとか、今度ベーコンをスモークしようとか。
|
| そんなことがちらりと頭をよぎったりもした。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
:::::::::/ | 三三三三三三三三三
::::::/ | 三三三三三三三三三三
:::/ ﾚ.. - ───── -,.. _三三
/ ／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ三三
, 'ィ:::::::::::::::::: // :::::::::::::::::::::::::::::: |:::::ヾ三三三
/ // :::::::::::::::::// !:::::::::: |:::::::::::::::::::|::::::::::＼ 三三三＼
':::/,' :::::::::::!:::::// |:::|!::::::|:::::::::::::::::::|::::::::|::::::＼三三三三
i:::/ |:::::/::::::|メ.l! |:N!::::::|:::::::::ﾄ!::::: l::::::::|::::::::::::ヽ 三三三
i:::i ﾚｲ:::::!:::!-._,､ヽ,ll ﾞ.:::::,ﾊ ::::| l!::::: ゝ:: |::::::,.:::::::::＼三／
ﾚ ,ｲ ::::::::::V !ﾊ::::ハヽ |:::::| !::::! ﾞヽ,.::::ﾊ::l::::/::::/::::::::::V
/:,ｨ ::::::::: ! ｀ ‐ ′ |:::::| V!二_j::/､ l::V::::, :::/,ｲ::/ ……やる夫。
i:::ハ:::::::::ハ ヾ::l 7r:::::j/､_ハ::::V:::://::l:|' 後悔はしないね？
l:! |::::::::ﾊ ' ヽ. ゞﾆ ′ｲ::::::ヾ.:V:/::::ｲ!
_ l! !::::::::::::ゝ. ‐ ､ ／::::::::::::|!/::::/ l! 本当に戻れなくなるよ。
-v' ´ ﾉ_ ゞ!:::::::/ ＼ ___ー= ' :::::::::::::: メ:::::/ l!
ノ ／'´ !, -､ __ ,ｨ|::::::!== _､ ゝ__ ,∠´__j:1イ:::::::::::::::／:::::,. l!
/ / // ﾉ!,ﾉ} l:::::iト= _､j|_ ／ ´ ﾊﾘ' :::::::::::／::::::／ ﾉ
` // /j／ V'ﾘ {イ |!｢` =====' ::::::::／:::::／ ／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 顔面蒼白の蒼星石の問いかけに、やる夫は鼻息荒くうなずいた。
|
|「とっくに戻れねーお。つーか、前から思ってたんだけどお前のそういう所良くないお」
|
| これを機会にびしっと言おう。やる夫はそう考えた。
| なお、暴れる不人気様はアリカにお任せだ。
|
|「そっちの尺度でやる夫の幸せを決めるんじゃねーお。
| さっきも言ったけど、蒼星石が不幸だったら、やる夫も悲しいお」
|
| 青い顔の蒼星石。その頬が一瞬で紅に染まる。
| やる夫は見逃して正解だっただろう。あまりに急激な変化で、ポケモンショックを起こしそうなほどだったのだ。
|
|「『血族』に入れないなら、入即貸本は全面的に『血族』に協力って形にするお。
| 戦闘だと微妙だけれど、捜査関係で手を貸せるなら外注でもいい」
|
| 現実問題、やる夫は戦士ではない。術者でもない。
| 蒼星石や翠星石にすら、殴り負ける自信があった。
|
|「だから、お前の傍に居させるお」
|「……君は」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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〈///////////////＞ ＜::.::.::.::.::.::.::.::.::.::ヽ::.::.::.::.::.::.:＼
ヽ////////＞＜::.::.::.::.::.::.::.::.::.::＼::.::.::.::.::.:＼::.::.::.::.::.::.:.､
. ＼//7,イ::.:i::.::./::.::./:∧::＼::ヽ::.::.＼::.::.::.::.::.:'.,::.::.::.::.::.:∧
Y::.::.::.::.: |::./::.:::/:/ ヽ::.::＼::.::､::.::＼::.::_＿:}::.::.i::.::l : ∧
|::.::.::.::.::.Ⅳ:_:_/:/_＿_ ヽ::.::.:ヾ: ＼::＜ ヽ::.::|::.::.|::.::!::iハ!
∨::.::.::.::/::.::/:/_＿___ ＼ ＼ｨzﾃ≠ア.|::.::.|::./:/ !
∨::.::./::.::/:r=f芹示ミ ヽ { rｹﾘ_ 从: |/:/
八::/:::イ八 弋:::zリ ゞ=く /:::/:/ｲ
/ ｝ﾊ::.::.ヽ::.＼´￣゛ i / ｲ::.:::ﾊ!
｛ い::.::.:::＼::＼"" ﾉ::.::::八
i::ﾄ::.::.::.ハー -__ ' ,.ｲ∧: / 君は実に馬鹿だな。
|ﾉ ヽ::.::.:::|＞.．_ ..ｲ ./ Ⅴ
/⌒ﾊ: : |＞'¨| ≧ ーイ ＼
/ｺ .∧: ! ∧ ／ ＞.． __
/廴 ./ Ⅴ ./／Yﾍ イ 7/´ ∧ｧ
／:rｿ ./ ／ ﾉ〉〈 ＼ .// 入 (
／::/:::Y / { {／/ | |〉､ ｝ ./ フ':::::::ヽ）
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〈::::::/::::::r' ! .l l | |/ i r'::::::::::: : ∧
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| うっすらと目元に涙をためて。蒼星石は微笑んだ。
|
|「うっせえ」
|「だが、僕ほどじゃない」
|「まったくだお」
|「よし、翠星石たちは一時間ほど席を外すですよ！」
|
| ガッツポーズで叫ぶ翠星石に、やる夫と蒼星石は並んで苦笑した。
|
|「馬鹿言ってないで、君としてはどうなんだ？」
|「え？ 翠星石は蒼星石がやる夫を婿として迎えるなら大歓迎ですよ。翠星石、やる夫が大好きですし」
|
| この言葉の残酷さは、いまだに荒ぶっていた不人気がしょうきに戻るほどであった。
| 小さく嗚咽し、顔を覆う不人気。翠星石の罪深さに一滴だけ落涙した。
|
| さて、当事者たちはそれどころではなかった。
| やる夫と蒼星石は自分の感情に気づいてはいても、相手の感情には確信が無かった。
|
| まずやる夫は、しばらく横恋慕を拗らせた翠星石からの大好き発言に頭が真っ白になっていた。
| 哀れにも、やる夫はいまだに翠星石に未練がある。
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,r'ﾆﾆﾆヾヽ、 //ﾆﾆﾆヽ、
（"´￣￣ヾ）） ＿＿＿__ （（/￣￣｀ﾞ`）
| 、ィ_ﾉと)' ／ "＼, ､／"＼ (つ（_,,ｱ |!
i| ｀ ｲ_／ ／ （‐-､）､ ,（,-‐ ） ＼. ＼_Y |!
┏┓ ┏━━┓.ヽ、 ' （ ／ ｀ﾞ（__人__）'" ＼ / ` /|. ┏┓┏┓
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| 可哀そうなやる夫はまず、翠星石の大好き発言に天に昇るほど喜んだ。
| 彼の感情は正直なものであった。
|
| 色々あったけれど、穿った感情より先にまず喜びがあった。
| だが、それは一瞬のことである。
|
| スカイツリーを飛び越えるほどの喜びは束の間。
| 即座に重力が如き逃れられぬ絶望に捕まった。
|
| 翠星石の「大好き」は、異性としてではない。
| 彼女はやらない夫に完全に惚れこんでいる、他の男性には目もくれない。
|
| そして、ああ、何ということ。哀れなやる夫よ。
| 翠星石の発言で喜んでしまったことへの罪悪感は、即座に蒼星石に対する後ろめたさにシフトした。
|
| やる夫は、蒼星石を親友のように思っている。
| 嘘だ。
|
| やる夫は、蒼星石を異性として特別に意識している。
| 好きか大好きかで聞かれたら大好きだし、異性を意識してドギマギさせられることもしばしばだ。
|
| だが、そこにもまた翠星石という障壁が立ちふさがる。
| 違いも多いが、類似点も極めて多いこの双子。ああ！
|
| 双子の片方に失恋したからってもう片方に恋慕するというやる夫の節操のなさよ！
| 恋人ができたら余ってる異性を好きになるとか聖戦の系譜じゃあないんだから！
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
＞泊り自宅
家を持ち歩けと？（ｽｯﾄﾎﾞｹ
やる夫って確か彼女いたよね？ピンクで眼鏡で最近腰回りが気になってる・・・誰だっけ？
白饅頭、もげてよし
!......................................................._
,--ー ‐─┤:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::` ､
/:::::::::::::::::::::}::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
｝::::::::::::::::::::/:::::::::::: ﾊ::::::::::::::::::::::::ﾍ、:::::::::::::::::::::::::::ヽ
ﾚ '´:::::::::::::/::::::::::::::l.:.:`､::::::::::::::::::::::::ヽ、:::::::|::::::::::::::::`､
／::::::::::::::::,ｲ::::::::::::::::!.:.:.:`､ ─-､:::::＼::::::＼::::!::::::::::::::::::::',
／:::::::::::／γ⌒ヽ、:::::::|.:.:.:.:.:`､:::::::＼:::::ヽ:::::::＼::::::::::::::::::::::,
/::::,ｲ:::::/:::::::::/:::: 八:::::::::::|.:.:.:.:.:＿`､::::::::::::::::::`:::::::::＼::::::::::::::::,
/／｛:::::::|::/::::ｲ ﾚ' __ヽ、::::|.:.:.:.:ｨi弍ミz､::::＼::::::::::、:::::`ｰｚ_::::,'
〃 |:::::::ｌ::|::::::: 小.:.:.:.:.:.:、:::ヽ.:.:.:.:.:/:::::::::ヾ::::::::ヽ::::::::＼:::::＼:::::!
｛:::::::ﾚ1:::::｛.∧i.:.:.:.:.:ヽ:::::＼／|:::○::: 「｀ヽ::::::::::::::::::!ヽ.:::::}:::l
|:::::/ ｛:::::::|| 八.:.:.:.:.:.:.:`／ ヽ:::::丿 }::ﾄ､:::::::::::}:::::Ⅳ:::|
Ⅵ ∨::::!乂ハ.:.:.:.:/! ミ彡 八ﾘ|＼:::::|:::::::::::::|
V ＼| jゝ､L_.:| ' ゝ. ＿__,／ ∧::::八::::V:::::::::::::::!
ﾉ:::::i>､| ヽフ ＿_／:::::ノ:::::ﾉ┐::::::::::::::|
r<::::::／´) ＞...‐-‐／:::::＿_イ＿,ｲ l|::::::::::::::::|
丿 {／ ／ |:::::／／::::／￣￣¨＼＼ └､:::::::::::|
_＿_＿,,.z彡/ ￣ﾞ) ∨／:::::::/ ヽ ヽ ＼::::::|
￣て::::厂ｲ ￣ﾞ）__彡:::／/ `､`､ ',:::卜､
γ'´::::入 ＼＿＿二フーｧ:::::::ｌ | l l:::「`ヽ､__
（:::::::く＼＼ `┬' } ／::::ィ'´{ } } !::::＼_ ￣
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| さて、ここで突如やる夫の心の奥に現れてその胸を刺し貫き苛む三人目の女がある。
| 当たり前だ。
|
| やる夫は、自分の蒼星石への感情を、恋慕を自覚している。
| ああ、やる夫はただの節操なしではない。大変なロクデナシだ。
|
| 蒼星石を想いながら、別の女に愛を囁くのだ。
|
| 翠星石が大好きで、未練があって。
| 蒼星石に恋をしていて。
|
| その上で、別の恋人を作ったのだ。
| そして今だ、失恋した二つの恋を忘れられない。
|
| これをみゆきへの裏切りと呼ばなければ、何と呼べばよいのだろうか。
| やる夫は胸が張り裂けてあばらが爆発四散しそうな痛みを覚えた。
|
| 自分自身のどうしようもなさに泣きそうになった。
| 申し訳なさと情けなさで、膝が崩れそうだ。
|
| みゆきはきっと、やる夫がこんな矮小なクズだと知ったら失望するだろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／: : : /: : :.|: : : : : : : : : : : : : : : : : :.',: : : : : : : :ヽ
/: : : : :/ : : : l: : : : : : : : : : : : : : : : : : :',: : : : : : : : :ﾍ
/: : : : :,′: : : :i: : : : : : : ､: : : : : : :.∨: : i: : : : : : : : :.ハ
′: : : :.j: : : : :.ハ: :.i､: : : :∨: : : : : : ∨: :|: : : : : : : : : : |
i: : : : : : |: : /:./ i: : | ヽ: : : iヽ: : : : : :.∨:.|: : : : : : : : : : |
|: : : : : : i: :/:/ u !: :i ヽ: :ﾊ_,＼＜´: ∨!: : : : : : : ; : :.|
i: : : : ￣`7フ---､',:::', ヽ≦, `ヽ､: : :V: : : : : : :/: i :i
',: :i',: : : /:/ --､ ∨', ヽ:∧zzzz≧t､ﾍ: : : : /: /:/
ﾍ:|.∨/;ｲ_!'､Ⅵ示ヽV:i 〃ヽⅦ汀7∨i:ヾ: : /: :/./
ヾ ヽ:i､! | .i 乂z;ﾝ､/ヾ,//// (`ヽ､ソ | i:.,': : : :7: /ｲ
ヾ| .i l､ , ' y'r-,///// r､ヽ ヽﾉ7/: : : :/i/
', ` / .〃／ ､ ＼ ヽ 〃': : :./__,-t
ﾍ .', -､_,.､ 7 |: : / i ｷ
_,iti___ }- _ _,. { ,-y!: /_ 7´/::∧
∨ ヽ-! ヽ7_i-､ ヽ￣ ノi´V |:/７ } ７::ハ
7 {´ ／_,.-=f:7 7 .!'〈 j (¨:::::::::',
/! ヽ j<:≠／∧:ヽｷ ﾍ__ ∧ ７::::::::::::,
/::i ／ | ヽ≠/ ∨ヾi j ﾊ /:::::::::::::::ﾍ
/::::i ﾊ j /::/ 7 ∨ヾ 7__ ハ_,)::::::::::::::::::ﾍ
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| さて、もう一方の蒼星石であるが。
|
| 彼女もまた激しい罪悪感で押しつぶされていた。
| 蒼星石はやる夫が好きだ。今更こんなところで、自分の感情に嘘をついても仕方ない。
|
| 蒼星石はやる夫が好きだ。愛している。
| もしも本当に可能ならばやる夫を婿に迎えたい。願ってもない。
|
| しかし、ちょっと冷静になってみよう。
|
| きっとやる夫は蒼星石を嫌っている。
| そりゃそうだ、これほどやる夫の意思を無視して事を運んだのだ。
|
| やる夫は蒼星石に酷く怒っていたし、先ほども激しく糾弾された。
| きっとやる夫は蒼星石に失望したし、面倒くさい女だと思っているだろう。
|
| 蒼星石は宗教上の理由から、自分から男性を誘うことはできない。
| みなさんよくご存じのとおり、彼女が信仰する女神はそれで何度か失敗した。
|
| 女性から声をかけ、男性を誘い、女性上位で交合してはいけない。
| それはイザナミと良い子のみんなの約束だ！
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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〈二二二.:.:-‐:.:.:.:.:.:.:.:丶:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
,Ｘ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ト:.:.:.:.:.:.:.:.:＼.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ｉ:
／7.:./.:.:.:.:.:{.:.:.:| ＼:.:.:.:.:.:.:.:.Ｖ:.:.:.:.:.:.:.:.:.|i
i.:/.:.:.:./:∧ 个ー-＼:.:＼:.:}.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ト,
|:l .:.:.:.jノ Ⅵf芹=ミ,＼:.:.:､.:.:.:.:.:.:.:.:.:厂＼
|:|ｉ.:.:.:}k=x ＼似ｿ ﾉ ｝ｰ:＼.:.:.:.:.:.:
i八.:.:.'似｝ , , , , ｕ /.:.:.:.:.:.:.:.:.: / ｝
＼:.｝' ' ､ /.:.:/.:.:.:.:.:.:./ いやいや、ないないない！！
/:.:人 _ 厶イ.:.:.:.:.:∠_
. {:/{.:i个:., ｀ /:.:.:.／:.:⌒:＼
｛ Ⅵ:|.:/:.:. ー┐ 厶.:'′: : : : : : : .
ヾ∧/}/ r } ｒ 7: : : : : : : : : : ｉ:
ｘ-‐ｧ彡.:介{{ { : : : : : : : : : : |i
/: :〃 //ハヽ.} : : : : : : : : : : |i
,: : /7 ｛:{ﾉ }:} }:}: : : : : : : : : : ハ
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| という訳で、一足先に朦朧状態を脱したのは蒼星石だった。
| 彼女は両手を振って激しく否定した。その否定の激しさたるや。
|
| やる夫は完全に二度目の失恋を自覚し、胸を押し上げる熱い感情にくずおれそうになった。
| そして、その恋慕がまた鋭いナイフのようなトゲを持つ茨となってやる夫の心を締め付ける。
|
| お前、恋人いるんだろ？
| なんで蒼星石に否定されてそんなに傷つくんだい？
| え？ お前みゆきにどんな顔向けるの？
|
| やる夫の中の天使が、やる夫の肩を叩きながら煽りに煽る。
| 反対側で悪魔が無言で首を振った。やる夫が悪い。
|
|「翠星石、冷静に考えてみてくれ」
|
| その間も、蒼星石が追撃のための次弾を装填していた。
|
|「やる夫じゃあ役者不足だ」
|
| 蒼星石の一撃は、気恥ずかしさを隠すためのものであった。
| しかしながら、その打撃力は高く、やる夫の頭蓋骨を粉砕して、吹き飛ばされた頭部はスーパーボールのようによく弾んだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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', ,. '´ /
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く . -‐=＝＝＝＝= ー-く
＼ ,. . :"´: : : : : : : : : : : : : : l: : : : : : :ヽ
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i: : : .: : . :. {: : : : : : : :./ /ﾊ: l.: !: : : : : :}
|: : |: :.|: : : |::.:.:.:.:.:.｀メ､ // V: :l: : : l : ;′
|: : |: :.|: : : |::|: : :∠イ_〃＞ Vく: :./}:/
＼|: :.|: : : |:.|: : :`弋夕ｿﾉ｀ tり:.:/ l/
＼|ヽ: :|.:|: : : :.i.:|￣ ヽjⅣ
}ヽ仆ヽ: : : :lN _ _／: :l 僕は翠星石の妹で、
／￣￣｀`ヽ､: レ'´￣｀): : : :l ついでに何か
／ V `ー ﾕヽ.:.| 東京の大怨霊関係の秘密兵器を使えるらしい。
,ん子こ`ヽ | ﾕ､l./
,ん'´: : : : `ヽヽ | l ﾊ'′
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「秘密兵器……必殺の霊的国防兵器ですか！？ いつの間に！！」
|「ごめん、真Ⅳ未プレイなんだ」
|
| でもググったら大怨霊は筆頭でした。閑話休題。
|
|「つまり、蒼星石さんをお嫁にするには、やる夫兄ぃはすごくならないといけないってこと？」
|「『四天王』は二席空いてるんだよな」
|「やらない夫さんと、もう一つは『明神』枠だから冬悟さんかドルキさんだよ」
|
| 外野がきゃいきゃいとうるさい。
| 不人気はようやく落ち着いた様子で、震えた手でお茶を飲んでいる。
|
|「とりあえず、私は今晩やる夫と一緒に誠のところに殴りこみに行くわ。
| あなたたちはどうするの？」
|
| 一瞬で話を変えるマグロ。その口調は強く、素早い返答を求めていた。
|
|「面倒くさいから二人で行くお」
|「それもそうね」
|
| 何が面倒くさいって登場人物が多いと話が長くなるのが面倒くさい。
| やる夫と蒼星石の苦悶を正確に見抜いていた不人気は、話が変わったことに嘆息しながらうなずいた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,.ィ≦三ヽ､_
,..::'´:._j三三三ﾆ廴
／:r'二´三三三三二｝
／:.:.:.:.）三三三三三三く_
rｰ-ｖ一'⌒ヽノj:.:.: , イ ￣￣｀ ＜三三三ﾆ）
|匸7:.:.:.:.:.:.:/_7:.:／:r┘/ ヽ、三〔_
／人/:.:.:.:.:.:.ﾊ７:.:.:.:.:.〈 ′ ､ ヽ三ﾌ
＼V{:.:.:.:.:. /ﾆ7.:.:.:.:.:_:ﾉ, l | ､ヽ ヽ ∨ 〉
└う:.:.:.:.{三{:.:.:.:.:.:ヽ ｌ | lﾄ､＼ヽ ヽ｀ 、｀､Vﾆヽ、
／ {:.:.:.:.:.|三|:.:.:.:.r‐'∥ ｌ | ',丶 ｌ 川 l | ｌ | ! ヽ＼
// ∧:.:.:.:.ｌ三l:.:.:.:ヽ |ヽ｣斗-ﾍ }ノ,ｴZ{ノ/リﾍ＼ ＼ヽ 今日はみんな、私と、私の仲間たちのために
. | l / ヽ、:.:Vﾆヽ:.:r个ﾄ,ｨfｌ圷 ｀ 化ﾉｹハ ｀ヽ＞└′ 集まってくれてありがとう。
ｌ｜,' 「ヽ{ｌＨｌﾘ:{ 小 ` ゞ ′ 八ヽ＼
｜V ,' l| | ｀ ＜7/ | lヽ､ , .′, 仆 ヽ ＼ヽ おかげでやれることがいくつか見えたわ。
｀７ / ,ｲ | l├ヘヽ―ﾍ、__,.:'⌒ヽ ｀､｀､ ヽ＼
/ / |｜ | |:.／ヽ＼::.::rﾍ::.::.::.::.::＼ヽ ＼ ＼ヽ
,' ′ / /|｜ ／ヽ＼::.::.::.) ）{廴r-､__::.:rく ＼ ヽノ /
/ / /ﾊ !／:.:.:._:_;＞=≠-‐､::.f‐ﾐ ヽV ＼ } 〉 /
. / / / 'rﾍヽ:.:.:. ヽ二ﾆ＝=､ ｝:｢｀{ ,ゝ､＿Ｖ_/∠＿
/ , / ,':.:.:.:.ヽ＼:.:.:.:.:.: r‐彡ィ´:::|::.::>‐':.:.:.:.｀)ー‐r≠ﾆ ｝
./ / / /:.:.:.:.ノ:.＼ヽ:.:.:.:.:.ヽ＞:l ::.::|::└r1 :.:.:.:.:.ヽノ/_／ く
／/ | / /:.:.:.f⌒ヽ:.:.ヽ｀､:.:.:.:.:{{ヽＬ 厶-‐'/:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.人 ヽ
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|「蒼星石、後で鷹野に私のことを一報入れておいてちょうだい」
|「どんなふうにです？」
|「悪魔関連で相談を受けたから、紹介したと」
|
| 鷹野三四は悪魔研究の専門家だ。
| そして、彼女の最終目的は人間による神殺し。
|
| それは入即貸本内でもときどき口にしている。
| 神話を破壊、歴史を破壊という意味では、人間はすでに神殺しを終えているという見方もある。
|
| しかし三四が求めるのは、もっと確実な、本当に神を殺害する方法である。
| 異能の世界に身を置いてみると、それが『血族』が闘う悪魔たちを殺す方法であるというのがよくわかった。
|
| さて、そんな三四であれば、刹那らが置かれている状況を打破するカギを握っているかもしれない。
| そう考えての接触だろう。
|
|「わかりました」
|「じゃあ、今日はここまでだな。オレたちは飯頂いたら失礼するだろ」
|「あ、あたしたちも」
|
| 皆、『血族』の仕事で忙しいのだ。
| やる夫は昨晩まで楽しみだったこの後のピザパーティが、急に憂鬱になった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
あんなにも凛々しく、できる女のオーラを放っていた蒼い子はどこ行ったんだ
まったく可愛らしいにも程があるわ
まあこれはサイテーと言われてもやむなしｗ
居なければ悲恋だったのにw
隙間埋めでもOKOK悲劇ごっこさえ始めなきゃなだけどな
, ィ^T‐- _
'=,::::::｀-‐' ｀ヽ:.:.:.:.‐- ､
r=､ﾉ:::::::::::::::::::::(:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ _
し､::::::::::::::::::::::, '＼_:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ::｀ヽ､ _=､
,)::::::::::::::::／.／ ￣):.:.:.:.:.:.|:::::::::::Y:.:.:)
{::::::::::::::::/ / ﾄ､丶{:.:.:.:.: : |::::::::::::|:.:.:ゝ､
ゝ=､::::::///l. l.ﾊ l l ｀ヽ:.:.:|::::::::::::|:.:.:.:.:.)
r'::::l l l､lヽ トﾒ-― ):.:.:|::::::::::ﾘ:.:.:.:.:ﾊ やる夫あなた、極めてうつ病になりやすいタイプよ。
{_:::::l| l =､ Vl 行ﾃT7:.:.:l:::::::::/:.:.:.:.:.:ﾘl 就職しなくて正解だったわ。
｀ヽ ﾊﾋj. ┴ '"´l ｀lﾘr-V:.:.:.:.(￣ |
弋ﾊ ､ ! ﾘ{ ｮ] ):.r-イ | エスイー（サラリマンの一種でタイピング肉体労働を担当する）
|lｨ ヽ. -‐ j /l'"r.ー' l | になっていたら、
/l} ,= '-‐'ィﾌ 人jT' l l l 真っ先に過労死するタイプね。
|7/|ｲ匀ヵ/ ﾉ ｲﾘ .!ヽ､ l l l
/ﾘ;||ﾉ-'ﾄ'.l ｲ／/ .ﾉ:.:.:ヽl ! !
/ l{ ﾘーTY (／ -'┐:.:.:.:ﾍ. l !
人__Y,,) /::::ﾃ-'"´. , ┘:.:.:.:.:ﾊ l .!
,iし彡イ)'::::::::ヽ '"￣|:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ_ | |
r=イ:::>'"´ /:::::::::::::〉‐'"´):.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:￣フ
ヽ _r ､｀-､( ――'"ﾃ‐"´:.:.:.:.:.:r-､_ ,八ﾉ |
.人,ｨ':<＿r‐､ r‐ｧ r‐┐:.:.ィ:.:.:.:.:.:.:.:.:! .|
r'´:.:.:.:ﾉ:.:.:.:.￣.:.:.:.￣:.├'￣7:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾉ ﾊ
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| 帰り際、不人気は極めてまじめな目でそう言った。
| やる夫が半無職であることを良く言われたのは生まれて初めてである。
|
|「何言ってんだお？」
|「あなた、仲間が働いてたら休めないタイプでしょう？」
|
| 極めて的確な指摘に、やる夫はぐうの音も出なかった。
|
|「あなたたち五人とも共通しているけれど、まじめ過ぎるわ。
| もう少しメリハリをつけなさい。言っている意味分かる？」
|
| 休める時に休めという意味だろう。やる夫は曖昧に頷いた。
|
|「そうは言っても真紅さん」
|「アリカ、あなたはプリキュアじゃないのよ。努力は報われるでしょうね。
| でも、結果の前に体を壊しては元も子もないのよ」
|
| この手の訓戒は、子供にはきわめて分かり辛い話である。
| 彼らは過労で倒れたことが無い。死を迎えた人を見たことが無い。
|
| 疲労は寝れば回復すると思っている。それは若い体の特権だ。
| ちなみにプリキュアは根性論で動いているので、出来ないなら出来るまで頑張る。
|
| 人間がまねると死ぬので新社会人は注意してください。
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/ノ´: /: : : : : : : : : : : : : :ｉ: : : ::ｉ: ::ヽ: : : : : :＼ ＼
/": : :/: : : : : : : : : : : : : : ::|: : :|: |: : : ヽ: : : : : : :ヽ ／
/: : : ::/: : : : : : : : : : : : :／:/}: : ｉ: :|: : : : :ヽ: : : : : : :Ｖ
/: : : : :|: : : : : : : ／: ::／:: / /: :/: / ヽ: : : : }: : : : : : :ｌ
｀.{: : : : : :|: : : : : : : : ::／./／ /:／/:/-―--:､; |: : : : : : :|
|: : : :{: : |: : : :,斗ｧ''フ" ／" // ＼ヽ|: : ｉ : : ::|
|:ｉ: : :ｉ: : :ｌ ｒ彡"´ " / }: :ﾉ : : ::|
ｌ: ｉ: : { : : ｌ | __,.. / ''ェ;_＿_,ｪ; /: : : : /∧
. ',ヽ: : : : ヽｌ ,ｒ＝=＝" ￣￣ ./: : : :ノ/ ｌ 真紅が言うと説得力無いですぅ。
＼＼: : : ＼ ! /, ｒ '´ }: : :ヽｌ
|: : : { `ー ＞ /{ ＊ }: : ヽｌ
|:/: : { __ ｉ/ ヽ .／: { }:_:: : : : ｌ
. //: : : :{ "ｉヽ { :ヽ､ ⌒ ／:__ : { ／ ﾉ: : : : :.'.,
ｌ/: : : : : :} ｒ－┘､: ::ｒ`ｖｒ‐ - ´|: : : | _｣_{./ ./: : : : : : : '.,
/: : : : : : : { ｀ヽ、 ヽ.Ｌ._ヽ. レ'Ｖ＿＿ ヽ/: : : : : : : : : :'.,
/: : : : : : : : ｒ ト ＊|ヽ／ ノ ヽ.'､ ／ { （＿__ 〕ｒ､＿: : : : : : : '.,
: : : : : : : : :∧.ｌ.｝ }〔 ´ ／ ヽG＝ニ:|（ ./ｒ'/ｒく: : : : : : : : :',
: : : : : : : ::/ )|.ﾄ} }ヽ へ）|ノ＼.{ |/ｰｉ /`./ ( ヽ: : : : : : : : ',
: : : : : : : / .)|.｢.） .} ∧ ） ７ .ヽ | { フ | ヽ: : : : : : : : ',
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| 正確なツッコミをしたのは翠星石だ。
| なにしろその不人気本人が、現在疲労を隠せていない。
|
| 夢の事件の件で奔走していたのだろう。
|
|「あら、天才は一日三時間の睡眠で十分なのよ。ナポレオンを見なさい」
|
| 自信満々に胸を張るまな板。胡乱な眼で返す一同に、慈母の笑みを向ける。
|
|「冗談よ。ナポレオンは昼寝をしていたらしいし、私も無理をし過ぎているわ。
| でも、だからこそ言えるの。自分の限界を確かめる様な無理はしては駄目。
|
| 休める時に休みなさい。楽しめる時に楽しみなさい。
| 私は入即貸本でのおしゃべりに今まで救われてきたわ」
|
| 無駄で、姦しい三四や誠らとの会話。
| それらの時間が不人気を支えているのなら。
|
| やる夫はまず、蒼星石を想った。
| 一連の事件が始まる前。彼女は毎週のように遊びに来て本を読んだり音楽を聞いた。
|
| あれらの時間は、蒼星石の救いになっていたのだろうか。
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） |
（__人__） | ..／}
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ 仕事も大事だが趣味も大事ってことだな。
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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| 頷くやらない夫に、一同から微妙な視線が刺さる。
| やらない夫の趣味。趣味ね。
|
|「『糖分同盟』も悪魔関係な以上、趣味と仕事が切り離せないんじゃねーかお？」
|「は？」
|
| 困惑を隠せない寿司ヘッド。逆にやる夫たちの方が困惑する。
|
|「Ｌの野郎がすごい悪魔だって話だが」
|「……もう一回殴りに行かないと」
|
| 拳を握る不人気。彼女の周辺に悪魔関係者がどれだけいたのか。
| そして皆、不人気が悪魔や怪異を求めているのを知っていて黙ってきたのだ。
|
|「自力でたどり着かないといけないものなのね。もっと早くカマかければよかったのだわ」
|
| マグロとて、うっすらとは勘づいていたのだろう。
| とはいえ、どっちもこっちも怪しいとなると、周囲ではなく自分を怪しいと思うのは仕方のないことだろう。
|
| 実際には周囲が皆怪しかったのだ。
| おかげで逆に怪しめなかったのか、なんという皮肉。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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まあとにかく、
__.ﾉ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.:.＼__.ィﾍ 楽しむことは悪いことじゃあないわ。
〈:.:.:.:.:.:.:.:.:..． ´ ￣ ゝ:.:.㍉:.:.:.ﾄ､
,ィ:.:.:.:.:.:.:.:/ 弋jll:.:.fく＾ヽ あまり自分に厳しすぎるのは良くないわよ。
ﾌ:.:.:.:.:.:. / ､ｬﾍｒｷ-@介ﾍ ﾄ:メ、 ィ´＼ ／
ﾞ‐ｫ:.:.:.:.:..{ ､ Ｙ ｨｫ:、ﾞ〈川.ゝ.ゝ.三メ ／.:::;ｬ ハ .／
廴:.:.:.:.:ゝ.ｲ ｪｫ _〉､_ヾ ＼ ＼ ／／ ヽ ∧ .／
ｰ‐^…≧､ - ﾉ三三ﾄ､ ＼ ヽ _ ,ｨ彡' x ―‐ﾍ l、 ／ ／
| i¨Τ7三三ﾉ:.:ヽゝ. ﾞ廴.. ｀ﾐｭ…ｧ==≦二.＿. ィ" 彡へ.ﾍ !.ヽ／ ／ ォ
､ Ｙ三!三三{:.:.:.:.:＼ミｘ ＿＿.＞ｨ .メ､.＿＿＿＿.． ´ ﾘjソ .／ ｨ ／
∨Уﾂミ三ｊ:.:.:.:.:.:.:.:ゝ.__.フﾗァ’／ └ｔ一 ／ ．"
/∨ｦ三ヾ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.≧､:.:i'.／ レｲ 厶…==ｧ
/ 矛'i三三厶:.:.:.:.:.:.:.:./:::::::!::!￣￣彡 ´￣￣ ´ ／
.' / /少ﾍｼ＾く:.:.:.:.:.:.:/⌒ヾノ/￣/厶ｫ ｀ヽ
ﾊ .' /三!:i:.:./:.:.:＼:.:.:/:.:.:.:.:.:.:｀ヽ. _ ｀ヽ
.' ｊ ｉ/}シ:.: !:/:.:.:.:.:.:.:｀¨ヽ:.:.:.:.:.く:.:.:i/:.:〉 __ /ヽ
ｉ Ｋ:./:.:.:.:.:.ゝ:.:､:.:.:.:.:.:.:.八:.:.:.:.:.:.:ゝ:.:.:.ヾ ﾔ-､ /:.:.:.:.＼.／ﾉ
| | |￣i:.:.:./:.:.:.:｀:.:.:.:./:::::;才:.て:.:.:.:.:.ノ ｬ’:.＞―― く:.:.:.:.:.:.: y'⌒ヽ
. l!.| | ⌒ﾄ､:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:/:ゝ一ヘ「￣ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .斗:…":.:.:.:.:.:.iヽ
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| そう言い残して、女神のごときキラキラを背負い、傾国兵器はやる夫家を辞した。
|
| やる夫は、あの幼児体型を幾度となく揶揄してきた。
| 不人気で、紅マグロで、バネ。美しき傾国兵器を、口では何度もからかって来た。
|
| だがその実、やる夫は心の奥で、彼女を大人と感じていた。
| 彼女を前にすると、自分がひどく子供じみて思えた。
|
| 年齢は3つも違わないのに、不人気はひどく寛容で、慈愛に満ち、機知に富んでいた。
| 社会人か否かという問題以上に、やる夫は彼女と自分の精神的成熟の差を感じ取っていた。
|
| 不人気は幼い時分に事故で親を亡くし、施設に引き取られ育った。
| その過去が彼女を大人にしているのか？
|
| いや、違う。
| それだけではないのだろう。
|
| 入即貸本の暗がりで、いじけた年月を過ごしたやる夫とは、きっと根本が違うのだ。
| やる夫はあのまな板が背負う光輝をまぶしく思い、自分の卑小さを恥じた。
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／￣￣￣＼
／ ＼
／ ノ ' ヽ､ ＼
| （ー） （ー） u | ……まっず。
＼ （__人__） ／ 淹れなおすお。
/ ｀⌒´ ヽ
ヽ、二⌒)≠ | }
{＿_}（⌒ニノ
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
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| そして今。やる夫は無心で……いや、雑念だらけで入れたコーヒーが気に入らなかった。
| 雑念の数に等しい、雑味だらけのコーヒー。
|
| 本当はもっと上手く入れられるのだけれど。
| けれど。
|
| やる夫はコーヒーを流しにぶちまけるのはやめて、ゆっくりと味わった。
| 今の自分には、それが相応しい気がした。
|
| やる夫はこれから来る来客を想い浮かべ、どんな顔で会い、何を言うかを思い悩んだ。
| そもそも、自分の異能のことをどうするかだ。
|
| ……しかし、先月の戦いがやる夫を躊躇させる。
|
| 異能を知り、異能と出会った人間は異能に目覚めてしまう可能性が高まる。
| それはきっとみゆきを不幸にするだろう。
|
| そして、今のやる夫のように、やる夫が危険の渦中にいる時、きっと彼女は己を責める。
| では、話さない？ それは、やる夫のエゴではないのか？
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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うわぁ・・・・・・
・・・うあぁ
わろす、わろた・・・えない
みゆきと付き合い始めた事が蒼星石にバレて、
そして蒼星石という本命が居る事もみゆきにバレたら、
やる夫も本物の苦味という奴を理解できるだろう
人生初の修羅場だな
＿＿＿_
／ ＼
／ ― ― やっぱりまずいお。
／ （ ー） （ー）'
| （__ﾉ､_,x ,--､
＼. ｀ー< ヾ zヽ ｽﾞｽﾞ…
＿＿__／ ー‐＼／| ｜
| | / / ＿＿ﾉ
| | / / |
| | （ ￣￣￣⌒ヽ. |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|
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| やる夫は、いつのまにかすっかり冷めたコーヒーを飲み下した。
|
| みゆきに話すことは、彼女を危険にさらす。それは避けたい。
| しかし、話さない。秘密を持つということへの罪悪感がある。
|
| 女性関係への罪悪感は、この際後回しだ。
| 問題は、やはり異能のこと。
|
| そうだ、翠星石はやらない夫の嫁だ。
| そして蒼星石にはきっぱりフラれた。もう取り付く島が無いくらいに。
|
| 異性間の友情は存在する。やる夫はそう信じていた。
| というか、信じることで自分を保とうとした。
|
| 思考を元の方向に戻すのだ。そうだ、あれだ。
| 異能のことをみゆきにバラすかだ！
|
| 考えがまとまらない。やる夫はひどく落ち込んだ。
| そう言えば睡眠時間が少ない気がする。
|
| しかし、今から仮眠しては良くない気がする。
| 完全な思考の迷路だ。やる夫の小豆色のはしご状神経索を走るシナプスは迷走していた。
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| 呼び鈴が鳴り、やる夫は正気に戻った。
| 時計を見るともう十一時直前だ。いつのまにか転寝をしていたのか。
|
|「空いてるおー」
|「お、お邪魔します」
|
| しゃちほこばったか細い声が、玄関から聞こえた。
| みゆきが家に来るのは何度めだろうか。恐らく、片手で数えられる程度だ。
|
| やる夫は初々しい恋人の態度を微笑ましく思いながら招き入れた。
|
|「よく来てくれたお。水銀燈さんはもうちょっと遅く来るから」
|
| やる夫のあいさつに、頬を染めるみゆき。
| 今はこの屋内に二人きりだ。
|
| いや、正確には下の入即貸本では長門が店番をし、何人か客がいるだろう。
| だが、少なくともこの二階には二人だけ。
|
| それをみゆきが強く意識していることに気付き、やる夫まで頬に血が上るのを感じた。
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／_ノ ヽ_＼
／（ ●）（ ●）＼
／::::::⌒（__人__）⌒::::: ＼ な、なにか飲むかお？
| （ （ |
＼ `ー' ／
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|「あ、お構いなく……」
|
| 言いながら、ハンドバッグを置くみゆき、腰のあたりで指先をすり合わせる。
| ちょっと落ち着かない風体。
|
| やる夫は彼女が望むことに気付かずに訝しんだ。
| そしてゆっくりと凝視し、ようやくその可能性に気がついた。
|
|「か、かわいいお」
|「えあ！？ あ、ありがとう……ございます……」
|
| 火が出るほど真っ赤になって、みゆきは蚊の鳴くような声で礼を言った。
| 初めて見る服だ。髪の毛も編みこんでいる。
|
|「上手く言えないけど、新鮮な感じがするお」
|
| やる夫のボキャブラリーではみゆきの服を表現できなかった。
| 女の子の服に対する知識なんて全然ないのだ。
|
| それにそもそも、作者が全力でコーデしてもAAが無いのだ。
| ああ、何と素晴らしい言い訳！ AAの都合よ！
|
| というか、そもそもみゆき自身がファッションへの興味の薄いタイプであった。
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,. -‐ ´| ｀丶、
／ , ∧ ＼ ＼
／ / | ﾄ､ ＼ ヽ
, ' / | l | ﾚN ＼ ､ ',
. / / / / /ｌ l ｲ │ |｀ ､ ＼ ヽ i
{ / / / /7Tト/八 l ヽ ＼ ヽ `､￤
. V / / / /|ノ ﾚ′∨ x==ミ､` ', }│
{ l | / ｲxf芍抃 ﾄ' 廴}ハ l l |V |
|、 川 { { {ｙ ﾄ'' り-､ / V辷ﾘ YNﾚl l |
∨ﾚﾍ从lﾊ. ゞ='' }⌒､ ,,, `='´ ,ﾉ}ﾉ ∨ |
} | 圦､'_'_'_ノ `ｰ--‐'´/ / } | そ、そうですか？
,' l />､ `ｰ ' イ,/ / / | えへへ。
. / |/,/ヽ-＞ .__ '´ {ﾆﾐ､/ / ！
/ 人/ / /７／,ｲ /::::::｀丶、 |
. / /ミ､`＜∠ノ7ｰ─-､ ／:::::::::::::::::::＼ |
/ ∧: ヾﾆﾐ､: ∨ ／::::::::::::::::::::::／⌒ヽ
／ / ＞‐ ､ ＼/ ／::::::::::::::::::::::／ ∧
. ／ / ＼:/} ,/:::::::::::::::::::-‐'´ | l
./ ,ｲ }:| /:::::::::::::／::／ | |
/ ｌ ∧ﾚ'-‐=＝'´:／ / | |
. / /::::|￣:ヽー‐'´ ,/ L.ﾉ
/ ／}::::::|::::::::::l / / / |
〈 /:::::/::::::::::| ,/ / / , |
AAの都合により制服です。
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| そもそもみゆきにとって服とは、みすぼらしく膨らんだ胸を隠すためのものであった。
| 容姿にも体型にも自信のないみゆきは、衣服に気を使ったことは一度もなかった。
|
| 胸を少しでも小さく見せるためにぶかぶかの服を着て、結果太って見えてしまい、
| それがコンプレックスを加速するという悪循環。
|
| それはいつしか体の線を出すことに対する激しい拒絶となっていた。
|
| それが今日！
| みゆきは勇気を振り絞り、体のラインの出る服を選んだ。
|
| 購入したファッション誌のモデルのコーデを丸々パクったと言っては人聞きが悪いが、
| 実際にはそれは大きな一歩であった。
|
| とは言っても、見る人が見れば付焼き刃は丸わかりだ。
| 胸が大きすぎるから上着は窮屈そうだし、ふとももも太くてスキニーなパンツが似あっていない。
|
| ちなみにスカートではなくパンツを選んだのは、今日はお部屋デートだからだ。
| みゆきの買ったファッション誌のモデルたちは、皆一様にスカートの丈が短かった。
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/: : : : : : : : : : ！: : : : : : : : : : : : : : : :` :.、
/: : : : : : : : : : :.:.|: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
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,: /: : : : : : : :./ : : :|: : : : :.l: j: : : l: : : : : ',{ l.: : : :ﾊ
l/: : : : : : : :./: ,: :-1: : : : :l: l V: :l: : : : : : ゝｲ.: : : : :',
/: : : /: : : : /／: / !: : : : : :' V: l｀: : 、: : :V:.: : : : :.l
/: : : :/: : : : /: : : / l: : : : :l:,l V: lV: : `: : : ﾍl: :.l: : :l
. /: : : :,': : : : :,': : : / !: : : : l:.! V:l ﾏ: : : : : : : Vl: : :l
,: : : : :l: : : : : l: :_/__ V: : : :.!! _ヾ!_ ヽ: : : : : : V: : ,'
!: : : :,ｲ: l: : : :l:ｧ丐牛示ｫV: : : :.! ｧ牟示芯':、.: : : : :V:.!
V: :./ l: l: : :/ .)弋゜しぅｿ ヽ: : :l Vしぅ:::ｿ YV : : : : l: l
. V:.l V:! V , '‐ ､ゝ- '´ }-マ! ゝ-゜'´_ .l l: : : : :l:.:l （こ、これは……）
V! 〉: l/ rイヽ_／／／ ,／ゝ／／_ ( V }ハ: :/: !
l: :.'{ ゝ Ｖ / ￣ , 、 ￣ ゝ } V: : :}:/: :l
,': :.ハ {:.､、 _‘_’_ ,ィ／ ./x V/.: :.{
/: /:/》Zzx、 ﾉ::::::l‐' }::::::/ ///::ﾊ: : : :',
/:,:': :/ } ミ、::へ、!::::l l:≫’-‐:::'´:::}:::/ V: : :ﾊ
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| おうちデートで短いスカート。
| ちょっとしたことで、中身が御開帳ってなったら困る。
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| いや、本当は困らないのだ。
| むしろ穴があくほど見て来て触って嗅いで舐めて欲しいくらいだ。
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| でも、そこはさすがにみゆきの羞恥心が勝った。
| 今日は水銀燈もいる。家族がいる前でそんなはしたないことはできない。
|
| だから自制した結果がパンツ姿なのである。
|
|「あ、ええと。ズボンって珍しいお」
|「に、似あいませんか？」
|
| なんとか褒めようとするやる夫を余所に、みゆきは勝手な未来予測で落ち込んだ。
| やる夫は大慌てで両手を振る。
|
|「いや、珍しいってだけだお！ もしかして、手伝ってくれる気かお？」
|「へ……？」
|
| まったくそんなつもりはなかったのだが、みゆきは空気を読んで強くうなずくことにした。
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|「は、はい！ 可愛いスカートでお料理の邪魔になっちゃ困りますし！」
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／ / ｀ヽ､
／‐ // l ｀ヽ
, ‐´ ／ ,/ / l ､ ヽ
／ , , / / /l l ﾊ ヽ ヽ
／ / / / ／'´7/ l / -Lll ヽ l ヽ
/ ／ / / / / l l l / l. l ﾄ､ V. l
l ／l / / / _,/､」│ l/ ヽl l ` ヽ l
l/ l l l / 〃､フ:､∧ l ﾆ=ﾐl､ヽ ヽ l
l l ハ〈/:::::::::ll ヽ l ´,､/`:､ヽヽ l l
l ∧ l ∧ l:､: :ｄ l _〉l l:: :::::::::〉,l l ､ l l
ヽ Nゝ､ |l l `─' ﾗ´F l: : ´,､/N､ l l ﾘ
ヽ ヽl｀l＼｀ﾄ､＿ ,ノ ' l ` ‐' ' / ﾊ. ﾄ l ll
ll `l,､ 。 ヽ､_ _ノ// l N ｲlﾉ l そ、そういえばピザパーティーって、
l 〃 ｀ ‐､_ ￣ ィﾌ' W l／l l l 先輩が作るんですか？
l l 丶 ヾ ＞,‐ ´ ﾚ/ ﾊ ヽl l
l / l＿,＿ ,〉, ノ ／' ノミ､l ll l
_ ,､ l / /川 / ／´ ／´´ ヽ ヽ l
(_r‐､- l. ﾄ ､. l / l 川 /‐-ｙ´´ ／/´ ヽ ヽヽ
, -､. l l 丶｀´ヽヽl /l 川 / ／/ ／´/´ l ヽl
.(_, -‐-｀_ ／〃､/ l 川 l 〃l / 〃 l ヽ
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| やる夫家の台所はきれいなものだった。
| 洗った食器も片付けてあり、まるで料理前に見える。
|
| しかし実際には違う。時間をもてあましたやる夫はすべての準備を整え、
| すでに具材は冷蔵庫の中にあった。
|
|「下準備はすんでるから、好きな具材を乗っけて焼けばいいお」
|
| やる夫が訓えを受けるべく、師匠（センセイ）の元を訪れたのは一昨日であった。
| マスター・ロストスキルのインストラクションは丁寧で簡潔、彼は戦士であるが、教育者としても超一流であった。
|
| 病室を訪れた時、彼はベッドに正座し、思わず見とれるほど美しくオジギをした。
|
|「ドーモ、やる夫＝サン。ロストスキルです」
|「こんにちわ。入る前に気付いてらしたんですかお」
|
| 病院にお邪魔することは事前にメールで伝えた。
| しかし、律義にその姿勢で待ち構えていたわけではないだろう。
|
| 姿かたちはいつぞやのうだつの上がらないマケグミ・サラリマン風だ。
| しかし、雰囲気と口調はその時とは違った。
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/ { /／ ｀ ｰ-､ ∧
l ､ ＿ゝ、 ／ ヽ V lﾍ
|/ / ￣ ＿ V}ハ
l { /, ‐-＼V〈 } 私のニンジャ聴力は実際猟犬の三倍以上だ。
lハ ､ { // _ ィ〉 |/ / これほど静かな病院内ならば、
ヽ } /ヽ ＿_ -‐' /＞'′ }_/ 近づく者の身長体重、殺気の有無、
〈ﾑ￣ 二´ﾊ '´ /! 一部の持病まで判断できる。
ヽヽ =＝' l |
〈＼ ´ ｣l 〉 _ イ ハ
}／｀ ー-､´-‐'__'ノ / } ＼
／ , --､___, |￣ l / l￣＼
＿,／ --､ ＼ / -´￣ l / l l￣＼＿
＿＿／.／ -､＼ _ハ､＿＿／/ l l ￣＼＿_
/ / __ ＼〉 ＼ ／ l l
| l /_〉 /l /´｀ヽ l | /
l l _.ｲ＿_／ l / ＼ / l /
｜ /´＼ l | l / /＼l| l /
! /＼ ＼.∧ l ∨＼ / / ｌ /
| ,' ＼ ｀/ l l ＼___/ / } l
l / ＼ /ﾍ l ／ ｌ / ＼ ∧ ／ l
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| 他の誰かが言ったなら冗談として流すが、相手は他ならぬ元『九鬼』筆頭だ。
| やる夫は正直に彼の言を信じた。ニンジャ恐るべし。
|
|「ロストスキルさん、いや師匠。本日はピザのレシピを教わりに来ましたお」
|「概ねは水銀燈＝サンから聞いている……どこから始める？」
|
| やる夫はすでに過去二回、ロストスキルのインストラクションを授けられてきていた。
| その際、暗黒ではないスシカラテの一端を教わった。
|
| やる夫はニンジャではない、モータルである。
| ニンジャ審美眼も、ニンジャ嗅覚も持ち合わせていない。
|
| それでも可能な目利きの術を教わり、そして素早く的確な包丁の扱いや、
| 柔らかく美しい、ふわふわで口腔でほどけるが、投げても崩れないシャリの握りを教わった。
|
|「今回は実技ができませんお」
|「故に口頭でインストラクションする……しかしピザか」
|
| ロストスキルが口元を綻ばせた。
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| l ／⌒ヽ l l|
l , ヘ、 / ト-z､＼ l l l|
,ﾚ ﾍ ∨/ ､丶 ゞﾍ ｀/ /-=ﾆ､}
{ / / l ― {‐ｔﾃ､/
lヽ く j ＼‐｜
∨ l / - r／ /
/ l ト--- ､＿ /
＿＿／/ ﾊ 丶-- ､__}ノ´ﾉ / オヌシが私の弟子だったら叱責していた。
/ | l l ヽ ー ､ ／
' | ヽ l ヽ /
l ヽ. l ＼ /
l ＼l ＞----く
ｌ ＼ ／/ | l ＼
l ＼ / | l 丶 ＿
l ／＾＼ | l ＼
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|「何でですかお……いや、ちょっと待ってください。考えますお」
|
| ピザ作りについても、ロストスキルはやる夫に教えてくれる約束があった。
| では、何を叱責する？
|
| やる夫は今までのインストラクションを思い出した。
| スシについての基礎を二回。その最初の最初に、ロストスキルは何と言っていたか。
|
|「ピザ作りは、スシカラテの応用技なんですかお？
| そしてやる夫はまだ基礎をマスターしていない」
|「スゴイ」
|
| 満足そうにうなずくロストスキル。
| そう、誰だって考えればすぐに分かることだ。
|
| ピザの名産地はイタリアだ。そしてイタリアの原点はローマである。
| 賢明な読者諸君には当たり前すぎて申し訳ないのだが、スシの原点はローマである。
|
| 古代ニンジャがローマのコロッセオで殺戮の技を磨き古代ローマカラテを練り上げたことはご存じだろう。
| ロストスキル本人は古代ローマカラテの使い手ではない。
|
| しかし、その古代ローマカラテの基礎はマスターしており、
| 何よりもより近代的で応用的な暗黒スシカラテのタツジンである。
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／ ＼
／ ─ ─＼ ローマ人が魚を生で食したという伝承は、
／ （●） （●） ＼ 実は当時のローマニンジャが
| （__人__） | エネルギー補給のために行っていた
./ ∩ノ ⊃ ／ 行為だったという話ですかお。
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「然り。当時はスシではなくサシミであった。
| そして時代の流れによりニンジャもサシミも進化した。それがスシの源流だ」
|
| 古代ローマニンジャ文明が滅びた際に、多くの技術や知恵が、無思慮な侵略者によって失われた。
| しかし、スシの絶大なエネルギー熱量とパフォーマンスははるか東、極東で生き残った。
|
| そして独自の進化を続けた結果が、今に至る暗黒スシカラテの技術である。
|
|「それとは別に、古代ローマから脈々と受け継がれ続けたのがピザだ。
| 当時のローマでは皿の代わりに薄焼きのパンを使用していた。わかるな」
|
| やる夫は頷いた。シャリの代わりに、パンの上に並べられたサシミ。
| それが当時の古代ローマニンジャの栄養補給に使われていたのだ。
|
|「この歴史を知らずしてピザに手を出すとアブナイ」
|
| 神妙な口調のロストスキル。
| やる夫はピザがどれほど歴史深く、闇の世界と密接にかかわっているかを実感し身震いした。
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／ ＿ ､ ノ-―-､＼
/7´ ￣ ｌ ヽﾊ
/ l l lい
い / , -､ Vl
|〈 /ﾆ=‐一 〉 `￣ｨｆﾃ‐､ ﾚ､
_j | ィ ｆテﾐ l ｀ ´ |/ | シャリを握る手の力が、
lﾍ｀l ´ l ｲ〉 l 拳を握る力加減であるとは訓えたな？
l ｌト､ 〈! _ lﾉ/
ヽ.ﾊ ' ┐lノ
ｰl ､＿, -―_ｲ l
ヽ 丶----― ' /l
l＼ ￣´ //l
/lﾍ ヽ. ＿＿＿／/ lﾍ、
／/ l ﾍ / / ﾍ＼
／ / ＼ ／ l ＼
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|「はい。教わりましたお」
|「当時の古代ローマカラテでは、スシからカラテの基礎を学ぶ」
|
| 先日のインストラクションによれば、サシミを切る精密な動きや、素材の断面を破壊しない切り方
| 包丁を鋭く研ぐことそのものが修行の基礎だったのだと言う。
|
|「ピザからも同じ。やる夫殿はピザ生地まわしをご存じか？」
|「はい」
|
| ピザ屋などで行われる、ピザ生地を回転させ、遠心力を持ってその生地を均一にさせるパフォーマンスだ。
| あの行為もまさか、ニンジャの修行の一環なのか？
|
|「指先だけで生地の均一さを測り、バランス感覚を鍛える。
| ピザ生地まわしをマスターすれば、どんな姿勢や足場でも関係なく、精密なスリケン投擲が可能となろう」
|
| やる夫は納得し頷いた。なんて含蓄ある話なのだろう。
| 読者諸君も当然ご存じだろうが、これらの話はフィクションです。
|
| スシとピザにはそのような関係はありません。悪しからず。
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正直かつての俺もそうだったし、ネギトロ粉末でワインをやるカリン様になんだかなぁとおもっていたが・・・
きがついたら物理書籍をよみあさってしまっていたぜ・・・
実際、マスター・ヒトヅマ＝サンのかもす忍殺アトモスフィアはスゴイ！
/ ＼
f_ ｀l } というわけでやる夫＝サン。
l l l -―' , -―― ､ 「 バジルは植えたか？
',､l l ／, -―――-＼ }
ﾊｆｬ｀} { ｔ---'／ |
/ ヽ}/ ￣´ ー-- /
l / - イfﾃ￣ テ l -- ､
l / 丶-- ￣ / ／ -､ |／
ｒ'´ -､ / ／イ⌒ヽ } |
＼ - , ---- '´￣｀` ー‐ ､ハ
, イ´￣￣￣ l 丶 ＿_／ ､ ＼ ＼
／ / l ､二._ / ＼ ヽ
/ / ', ￣｀ ＝=一/
/ / } ￣ / l
, / / / 人
| , 丶-- ､ ＼ }｝
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|「植えましたお」
|
| バジルなどのハーブ類は頑丈で、放置に近い形でも結構生える。
| やる夫はホームセンターで購入したプランターにバジルの種を植え、育てていた。
|
| 新鮮なバジルを摘み、刻んで振るだけで香りが段違いである。
|
|「オーブンの大きさは？ これが重要な問題となる」
|「一般的な家庭用電子レンジですお」
|
| ピザを一枚焼くのに何分かかるだろうか。5分？ 10分？
| 生地が生の状態から始めるなら、20分は見るべきだ。
|
| 20分に一枚のペースでしか焼けないピザ。
| やる夫は舌を巻いた。ロストスキルの見識は確かに深い。
|
| スシならば、握る人間が一人専業となれば問題ない。
| だが、ピザは客を待たせ過ぎる可能性があるのか。
|
|「やる夫＝サンのワザマエならば、時間をかければ何もかもをすばらしいの出来に仕上げられるであろう。
| しかしオーブンに関しては買い足すわけには行くまい」
|
| では、どうするべきか。やる夫は考え込んだ。
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＿＿＿
／ ヽ､_ ＼
／（● ） （● ） ＼
／:::⌒（__人__）⌒::::: ＼ 薄焼き生地で作るべきですかお？
| ｌ^l^lｎー'´ |
＼ヽ L ／
ゝ ﾉ
／ /
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|「それも悪くない。しかし手間もかかるし修練も必要となろう」
|
| 悔しいが、ロストスキルの言うとおりだった。
| 薄焼きピザ生地を焼いたことはない。
|
| そして、入院中のロストスキルから実技を習うのは難しそうだ。
| つまり妥協が必要となる。やる夫は必死に妥協案を巡らせた。
|
|「前準備して、冷凍する？」
|「サスガだなやる夫＝サン。私が考えた方法はそれに近い」
|
| ロストスキルは恭しく頷くと、やる夫の目をしっかと見つめた。
|
|「生地が生でなければよいのだ」
|「……先に焼いてしまえばいいのかお！」
|
| これは目から鱗！ 確かにその方法なら、具材に火が通ればすぐに食べれる。
| 生肉や生エビを使用しなければ、5分でチーズは溶けて食せるに違いない。
|
|「ピザパンという食べ方をご存じだな？」
|「あー、なるほど同じだお」
|
| そう考えると、対して驚くべき方法ではない気がしてきた。
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-――- ､
／ ／ゝ _、 /,､ヽ
/ イ l ￣ v| 上を目指せばきりがない。
| /l| ノ fl
V ｲ /＼ l l /ヽ| 手を抜くところで抜くのだ。
/ﾍ| ＿ｰ､ {ｲ＿ l
〈ﾍ 卜 ￣- |-￣ | , ｧァ┐ ソースさえこだわれば、
ヽ l r / / ┌､ ////７ 味はぐんと良くなる。
Tl 「r-､＿＿, l | l ／/// /
｜ヽ ヽ ＿＿｣ / l / / /
r「｣ l ＼ ー ／l /／ ／ /
＿／ V ＼ l ￣ /!＼ | / ／
￣ ＿/ l ＼ ／｜ l＼ ﾍ / /
￣ | ヽ /⌒ヽ. | l＼＼ﾑ ＿_厶
| ＼ ∧ jノ| | ヽ|｀ ー一' |
| ／l' Y＾Yﾞ |、 | /＼＿＿人
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| 元より、チーズやサラミ、生ハムは市販品を用いる予定だったのだ。
| 変なこだわりでみゆきや水銀燈を待たせるべきではない。
|
|「勉強になりますお」
|「ついでに言うならば、焼いておいた生地に客と一緒にトッピングする楽しみもある」
|
| やる夫は頷き、想像を膨らませた。
| まず一枚焼き、それを待ちながら二枚目を皆でトッピングすればよいのだ。
|
| 絶対楽しい。待ち時間もない。ワクワクしてきた。
|
|「生肉をのせるなら牛であるべきだな。生の魚介は水が出る。
| 可能ならば先に火を通しておけ。ポテトもだ」
|
| とまあこんな感じに、昨日の妄言垂れ流しとは別に、やる夫はロストスキルのインストラクションを授かった。
| なお、同様のインストラクションを、筆者は義理の母から授かった。
|
| 幼女二人も一緒にピザ作りを楽しめる。
| 大変便利な方法だったのでピザパーティにはぜひ。
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_ ,.へ、
/::`:ー: :-: :./: : : : : : ` :ー - ...、
/: : : : : : : :./: : : : : : : : : : : : : : : :｀ヽ、
/: : : : : : : :./: : : : : : :l: : : : : : : : : : : : : ＼
/／: : : : : :./: : : : : : : j!: : : : : : : : : : : : : : :.ヽ
,. :':´: : : : :/: : :,': : : : : : : :ﾊ: :l: : : : : : :.Λ: : : : : :.ﾍ
／: : ,: : : : : : : : :/:l: : : : : :l:/_l:_.:V: : : : : : : :ﾊ.: :l : : :. ﾊ
／: :／: :/: : :.,':.‐:7!:.ﾊ:.l: : : : ,' V :l`ﾏ: :､: : : : :ﾊ:.l: : : : : :,
,:': :,ｨ: : : :/: : : /: :./ l:,' l: l: : : l,' V:.l V: : : : : : : :ﾊ: : : : : :.!
/／/: : : ,': : : /: :./ l:'ｧｵ､: : : l ,ｧ牟､V: : : : : : : :.ﾍ: : : :.:/
' ,': : : ,:l: : :.,': :.ﾊ 〃んハV:.:.l 〃 ん心ﾐ: : : : : : : : :.V:: :,'
. l: : : .ハ: :l: :.,': :'Y, ﾄ､ﾉ::} 丶:', i ﾄ､ノ::ﾊヽ: :l: : : : : : ﾊ:.{
l: :./ V: :.l: :ハ V::::ｿ f-{ V:::::刈 Y: :l: : : : : l: :l:.! ピザ生地……。
V:,' ヽ: l: ':,: } `¨´ ﾉ, ', ﾞﾟ‐- ' l: V: : : : :ﾊ:/:.l これも先輩が？
｀!: : :ゝ -‐ ´ 丶、 ノ l: /Vハ:リ: : : l
l: : : :l丶、 ｒ-.、 ￣ ,ｨ/: : ﾘ:.}:/: {.: : l
l: : : :j:!: : ｀＞:.. - __ イ,::,:': :/ : :/: : :V :.l
ﾊ: : ./:ﾊ: : :_:_:_／:::} /,:´: :./:.:X´ : : : V:.l
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|「世の中にはホームベーカリーという素晴らしい製品があるんだお」
|
| ホームベーカリーでこねた生地をフライパンで焼いてためておくと言う方式であった。
| なお、余った分は夜にでもアリカに食べさせればいい。
|
| 今度、本格インドカリーに挑戦した際にナンの代わりに食べてもよかろう。
|
|「で、ここにソースを塗って」
|「ああ、好きな具材をトッピングするんですね！」
|
| 流石はみゆき、話が早い。
| やる夫は冷蔵庫から複数のバットを取り出した。
|
| 最初のバットにはウィンナーやサラミ、生ハムを盛り付けてあり、
| 隣のバットは生肉とアンチョビ、オイルサーディンなどの素手では取り出せない類だ。
|
| 他にもピーマンや玉ねぎ、輪切りトマト、アボカドにコーン。
| シーフードミックスなどが積んであり、大変豪勢に見えた。
|
|「こ、こんなに食べるんですか？」
|
| おずおずと尋ねるみゆき。彼女は思いのほか小食だ。
| 彼女の目からすれば、この分量はあまりにも多く見えた。
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(ヽ三/) ））
＿＿ ( i)))
／⌒ ⌒＼ ＼
／（ ●） （●）＼ ）
.／:::::: ⌒（__人__）⌒::::＼ 余ったらアリカの夕飯や
| (⌒)|r┬-| | お弁当に回るから安心するお。
,┌､-､!.~〈`ー´/ ＿/
| | | | __ヽ、 /
ﾚレ'､ﾉ‐´ ￣〉 |
｀ｰ---‐一'￣
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| ほっとするみゆき。ほとんど運動しない女子高生は、びっくりするほど小食なのだ。
| しかも、彼女らの多くはダイエットをしており、必要以上に食事をしない。
|
| みゆきもまた同様の存在で、特にその胸周りの肉が気になっていた。
| しかし、残念ながら運動は続かず、食事制限は上手くいかない。
|
| その上何とか頑張っても、脂肪は胸からは消えてくれないのであった。
|
| 対して、並みの運動部以上に動くアリカは、一日に五食食べる。
| 早朝食と夜食をやる夫に用意してもらい、朝食はやる夫のお弁当だ。
|
| 昼食と夕食、おやつは班員と一緒に食事をしている。
| 多くはコンビニ弁当かファーストフードだ。
|
| それでも太らないのは、全身が火力発電所のように食料をエネルギーに変えるからである。
| そして、変わったエネルギーは訓練や戦闘で消費している。
|
| さらにはその輝くような若さも味方をし、太る理由が無いのだ。
| なお、よく数えると一日六食だった。
|
| アリカはおやつにも弁当を必要とするのだ。
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脂肪が減る順番って胸が早めだったような？一番遅いのが胎だったと思う
推薦も決まって余裕ちゃきちゃきとか出会いた時間バイトとして通う…という名目だったはず
出会いだと！？
ぺろっ、これは浮気フラグの味
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／ とりあえず、高良が食べたいのを作ればいいお。
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| 言いながらやる夫は電子レンジのオーブン機能を作動した。
| オーブンはブゥンと低く唸りをあげ、余熱を開始する。
|
| 始まってしまった余熱に焦るみゆき。
| 急にタイムリミットができてしまったような状況だ。
|
| 慌てる様子を笑うやる夫、彼の手には、ラップのかかった大皿。
|
|「最初の一枚は時間がかかるから、ここに用意の終わった焼くだけのピザがあるお」
|
| なんといい手回し！ みゆきは舌を巻いた。
| 焦る必要はないのか。やる夫の用意周到さに、みゆきは良い印象を覚えた。
|
| 先輩は、ちょっとみゆきの心境について無頓着で、ときどき温度座を感じる。
| しかし、頼りになる大人の男性だ。
|
| 気遣いができて、やさしくて。
| みゆきは、やる夫のそういう所が好きなのだ。
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r-､
rｰ―― !: : `´￣｀. .' . ､
,!: : : : : : :!: i : i､: : : : : : : :ヽ、
/: : : : : / /|: | : l:!ヽ : : : : ヽ : :ヽ
/ : : : : : ,': ,' .! l: : !| l: i、: : : ヽｉ : ',
/ : : : ,: : ,!-!‐ !,ｌ: : l:! !‐!- ､ : : ヽ : !
. ,': i: : : i: : :l :l lﾉ!: : !! |/ ヽ : : i: ',: |
l : |: : : !: : :N ＿! : ﾘ ' ＿ ヽ: :|: :V
|: /!: : :|: : l. ,´＝= `r‐{. =＝ミ!i: :ｈ: !
l/ !: : i、:ｉ'{ '''' ﾉ ,.ヽ ''''ﾉ,ﾊ:ｌ,ﾊ,!
ヽ: l ヽ!:`iｰ‐‐' r‐┐`''''",!,! :i' :|:i 一枚が、あまり大きくないんですね。
ヽ! ,|: |:i`'ｰ- `_‐',., イ: !': : !: :!:!
r ､ /|: :!|: : |, '^'、 ,ハl:/: : :,! : ',|
ヽ ヽ_r_v r! :ヾ―l, Ｖ /: : : ハ: :ヽ
Y,. -{ Y!:',: :ヽ:.:.V´,ﾌ､ヽ/ : : /:.:｀i,: : :',
l、/´）ﾊヽ'､ :ヽ:.ヾｲ|.!|､! : :, ':.:.:./ ! : : ヽ
/ `ｭ,ノ }i 〉ヽ :ヽ:ヾ|,|,!'l: :/:/:., ' !: : : : ヽ
ト´、 ノ l':.:.:.:ヽ:}:.:.::.:.:.:|/:.:i／/ l: : : : : : i
! ` !:.:.:.:.:lﾉ:.:.i:.:.:.:.:.:.,' / ｌ: : : : : : |
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|「一枚だけじゃ、ものたりねーんじゃねーかお？」
|
| 生地一枚の大きさは、直径で20センチ以下だ。
| 具材の種類を考えると、確かに一枚しか食べれないのは物足りない。
|
|「たしかに、それでも迷っちゃいますね」
|「三枚くらい食べるって考えりゃあいいと思うお。
| ちなみに今から焼くのはサラミとトマト、バジルのピザ」
|
| みゆきは喉を鳴らした。なんておいしそう。
| シンプルなピザを楽しんでもいいし、具材を山盛りにしてもいいのか。
|
|「それとやる夫は、いまから揚げ物をするお」
|「え？ 揚げ物ですか？」
|
| 新たなバットが冷蔵庫から現れる。
| 粉を振られた白身魚。魚のフライか？ しかし何故。
|
|「水銀燈さん、イギリスの方の人らしいお」
|「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国ですか？」
|「正式名称を言えるなら話は早い」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿
／）／ノ ' ヽ､＼
／ .ｲ '（●） .（●）＼ ぐぐったところ、北アイルランド系の人らしいお。
. /,'才.ﾐ). （__人__） ＼
. | ≧ｼ' ´ ⌒｀ |
. ＼ ヽ ／
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|「ぐぐった？」
|「こっちの話だお」
|
| おばのことを調べるのに、グーグル先生にお手を借りたとは誰も思うまい。
| やる夫はモリガンというと、まずは某格闘ゲームのセクシーな夜魔を想像する。
|
| あれの元ネタがおばであると考えると、変な笑いが出てきそうだった。
| ちなみに、そのゲームのセクシーなそれをやる夫は嫌いだった。
|
| 格闘ゲームの上手い下手ではなく、もっと根本的な部分。
| ある時期のそれは、なぜか眼帯をしていたのだ。
|
| 何とまあ納得のいく生理的理由！
| 当時は納得できなかったが、現在なら頷いて終わりだ。
|
| 同様に、某エヴァンゲリオンの色素欠乏系ヒロインも嫌いだった。
| ついでに、新エヴァンゲリオンではドイツヒロインも嫌いになった。
|
| こうやって考えていくと、やる夫がアニメなどのメディアにそれほど造詣が深くないのは納得がいく。
| 小説で隻眼などと書かれても、挿絵が無ければ何とかなるのだ。
|
| だが、それがイラストであっても、ひとつ目への忌避感は大きかった。
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／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ なにはともあれ、
| （__人__） | 北アイルランド系の料理なんてしらねーから、
＼ ｀ ⌒´ ,／ とりあえず有名なあれを作ることにしたんだお。
r､ r､／ ヘ
ヽヾ 三 |:l1 ヽ
＼>ヽ/ |｀ ｝ | |
ﾍ lノ `'ｿ | |
/´ / |. |
＼. ｨ | |
| | |
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| フィッシュアンドチップス。
| 白身魚の唐揚げとポテトフライである。
|
| 本来のフィッシュアンドチップスは味が薄く、本場では各自好きな調味料を使って食べると言う。
| しかし今回やる夫は、調味料を用意できなかったので味付きにした。
|
| 魚の味は、鳥の唐揚げと同様の醤油系で、ポテトはコンソメであった。
| 水銀燈が許容するかは分からないが、苦肉の策であった。
|
| 何が苦肉なのか。
| やる夫の手料理を楽しみに来る水銀燈は、お好みトッピングピザが気に召さない可能性がある。
|
| であるならば、手料理も用意しておこうという考えである。
|
|「ちなみにサラダもあるから」
|
| なお、やる夫の中ではサラダは料理に含めない。
| 野菜を洗って切ったりして盛り付けるだけだ。
|
| チーズ盛り合わせやらと同じ分類という考え。
| 料理できる人間の傲慢である。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/: : : : : : : : :! : : : : : : : : : :｀ '. 、
/: /: : : : : : : :!: : : : : : : : : : : : : : : ヽ
,': /: : : : : /: : | : : : i .:i : , : : : :, : i: : : ',
. l./ ./: : : | : : : |:/! : !: : : : ', :,l: : : :',
/. . : : : :/ : ,. ｧl : : : |:| l:` l､.: : : : ﾊl. . , !
. / : : /: : ,'／: / l: : : :l:! 、:'､＼: : `' !: :!: :!
/: : : ,': : .:ｌ: : :/＿_l: : : :l| _ヽ_lヽ、.: .: ヽ |: :|
,': : : :l:i : : |: :/, 〒.､! : : :! ,〒 ﾐ ヽ.: : : ヽ: :!
l: : : /!ｌ: .: ,L/トi':::Nヽ: : :l トi':::Nヽ_ヽ.: .: :',:l
ヽ: :l. ｌ|: :/ ﾑ弋二ﾉ !`-l 弋二ﾉ l. ｌl.:〉、: l:! 先輩って、まめですよね。
ヽ! ヾ {「 rｲヽ二 .ノ , 丶､ 二（ ヾ 〉 : l: /l
,'.:〉! ヽ V ,/ ｏ ヽヽｩ 〉: : l/ l!
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//.:/.{￣｀ ''くl:.:.:.| l,. ┴ ''' ´l / ヽ: : :',
//.: :|,/ミミ､､、 ヽ:|´￣ { ,. ,., 彡!' !:ヽ :',
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|「見た目に似あわずってよく言われるお」
|
| 自嘲的な笑みを浮かべるやる夫。
| それこそ、耳にたこができるほど言われてきたのだろう。
|
| みゆきは、胸の奥に熱い塊がうごめくのを感じた。
| やる夫を抱きしめたい、愛おしい。そんな気持ち。
|
|「私は好きですよ」
|「え？」
|
| 思わず口を衝いて出てしまった言葉に、みゆき自身困惑した。
| 顔面が瞬間沸騰する。湯気が出そうだ。
|
| 見るとやる夫も、白い顔をピンク色に染め上げていた。
| 告白した時以来かもしれない。こうやって、好意を言葉にするのは。
|
|「え……ええと」
|
| 何かフォローしようとして、みゆきはやめた。
| だって、二人は恋人同士なのだ。
|
| ここは、先輩も同様に気持ちを伝えてくれれば最高だ。
| 最高なのだが。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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男の子とは嫌いじゃない相手に告白されたら、とりあえず「うん」と言ってしまう生き物なのだ！と…
SAN値が減る弁当だって食えるしな
やる夫の返しは期待薄よの（残念だが
.. ＿＿＿_
／ ― -＼
. . ／ （○） （○）
／ （__人__） ＼
| ｀ ⌒´ |
. ＼ ／
. ノ ＼
／´ ヽ
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| やる夫も、みゆきが好きだった。
| 彼女の愛らしさ、素直さ、天真爛漫さ。
|
| それらがやる夫の心を慰めてくれる。
| やる夫は己の弱さを知っている。やる夫は己の醜さを知っている。
|
| だからやる夫は、みゆきをこう考える。
| みゆきは自分より弱くて、自分より愚かである。
|
| みゆきはやる夫にとっては生徒のようなもので、やる夫は彼女の前では常に優位に立っていた。
| その優越感が、それこそが、やる夫がみゆきを好きな理由に違いないとやる夫は分析していた。
|
| 二人の関係が、先輩後輩から恋人同士になっても、それは変わらない。
| みゆきからの距離は近づいた。だが、やる夫は歩み寄っていない。
|
| 何故って？
| やる夫はみゆきに、今以上の関係を望んでいないのだ。
|
| やる夫にとってみゆきは完璧な生徒だ。
| 生徒以上ではない。心慰める愛玩動物に近いが、それ以上ではない。
|
| 愚かにもやる夫は、己をそう分析していた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,. : :´: : : : : : : : : : : : : : : : : : l: : : : : : : Λ
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l: : :/: : : :/: : : : ´/ , : / ,: l: : : :l : l V: T: :l: : : : : : : ハ
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l:,′,: : ﾊ: : : : :/ ,':/_ﾆ- Ⅵ: :/!: :,__ l:ハ: :.V: : : : ﾊ: : :.l
l': :/l: :.l: : : : :,' ,ｧ孑乍z l::l:/ l :/弐ｫ、 !: : l: : : : : :}: : :!
l: ,': :V:l: : : : ﾊ,.ィ:℃:しｿ j:〃 j/じぅ叭 !: :j: : l: : :.ハ: ,'
V{: : :Λ: : : l: l Vこ:.ﾝ }-{ ﾋこ::ｿ /:l: ﾊ: :l: : / }/
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.l: : l: : :l:マ!: l、ヽ、 _ ／ ゜ 、__ ィ': : :l /／
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|
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| いままでは。
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／￣￣￣＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ 高良ってすごいお。
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ／
／ ＼
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| やる夫は素直な気持ちを口にした。
| 好きと言われた瞬間、やる夫の心臓がスパークした。
|
| 心臓から血管を通って血液とは別の熱さが全身に広がる。
| 冷たく冷え切っていると思っていたやる夫の心が、一瞬で温まる。
|
| ああ、なんてことだろう。
| この場でみゆきを力いっぱい抱きしめたい気分。
|
| 胸が締め付けられ切ないような、胸がいっぱいで叫び出したいような。
| 理性で制御できないこの感情。
|
|「はい？」
|「やる夫は素直には、その、言えないお」
|
| 言外に同じ気持ちだと伝えようとして、やる夫は遠回り過ぎたと反省した。
| ああ、同じ気持ちなのだ。
|
| やる夫はみゆきが好きだ。大事にしたいと思った。
| それは、優越感や慰めといった、やる夫のマイナスを司る好意ではない。
|
| ただひたすら単純に、やる夫はみゆきという人間が好きだ。
| 理屈とか、そういう部分を無視して、やる夫はみゆきが好きなのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/: : : : : :.,': ／:: : : : : : ,.:': : : :ｨ:.!: : : : :,': : : :.::|
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l: : : : ,イ: : : : : : : : :/‐:7:フ |: :l: : : :,':_: : :|: :.ﾊ
|: : :/: :,ｨ: : : : : : :.,:': :.:／ |:.:l: : : :ﾊ:.:｀: :l: : :ﾊ
': :/: :/: : :／: : :/: :／′ｪ_ !:.l: : :.,'_ V: : :l: : : :ﾍ
. l:.l: :ｨ: : :,': : : :./:／ィチ芹ﾐ j/: :.:/ｧｪ､,!: : l: : : :,:ハ
. |:.V: 〉､:{: : : : ﾊ ｲ, んr:ﾊ′ﾉ: .:,:ｲんﾊ |: : :.l: : : :ﾄ:;: }
. |: :./: :.V:!: : :,': :l 弋:ぅソ f＝ｌ 弋:ｿ ﾊ: :/: : : :j リ
. |:./: : : :i:.V:.,' _: l ゝ :::::::::::ノ:::::'.::::::::: ﾉ:}:/:／}:./
. !/: : : : ﾊ: V: : ::ゝ､ ` ー ´ - ＞イ:,/ﾘ /′ それは……その……？
,:': : : : /: :l: : ::ﾊ: :j ｀ r -..=ァ:´: : :/:|
,.ｲ: : : : :/＝ﾏ: : : :.:ヽ l Y///,: : : :i':.:!
〃 j: : : : / マ: : : : :ﾊー - }///!: : : :l:.ﾊ
/' ,': : :.:,ｲ ヾ;＼: : : :ﾊ |/,ｲ{: : : : }: :ﾊ
〈〈 l: : :/:.:| ヽ ヽ: :: l |／ｨ!: : : : |: :.:ﾊ
ヾ:ヽ!:.:/:.: :l ＼ l: :,lﾊ_,j／ヽl: : : :.:l: : :.:l
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|「ええと……」
|
| 決定的な言葉が欲しくて追撃するみゆき。
| 潤んだ目で、上目遣いに。やる夫のエプロンの裾をつかむ手は震えていた。
|
| その震えが、どのような感情から来たものなのか、やる夫には分からない。
| だが寒さであるならば暖めてあげたい。そんな気持ちは強く有った。
|
| とはいえ、やる夫は照れ臭くなって視線をさまよわせた。
| 言わなきゃならんのか？ 誰か助けてくれ。
|
| やる夫の気持ちに応えるかのように、玄関のインターフォンが鳴った。
| 水銀燈だ。救いの女神だ。
|
| バネ人形のような動きで、みゆきがやる夫から離れた。
| お互いの鼓動すら聞きとれそうな距離だったのだ。
|
| 恋人同士だと言うのは伝わっていても、いちゃついているのを見られるのは大変気まずい。
|
|「や、やる夫は玄関行くから、高良はピザを作ってるお」
|「わわ、私も行きます」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿/:／l:.| /l | l l| l ヽ ＼
'´￣ｲ:ニ:ｲ l/＿ヽﾄ、l_ lﾍ | l | ヽ
／/ j:| l l ヽ-ヽ｀ヽ卜、 l j｜ ト l
/:l /:l l | ､＿.二 _ 「 ＼l /イ/ｌ l｜ l
.:/ /:/ l | ￣￣ヾﾐ ﾚ_⌒ヽ} l |｜
,' l:::l ヽ l /// { =ﾐ /／| | l こんにちわー！
「´ l＼ ', r - ._ / ,,,, /ｲ /ﾚ' ちょっと早かったかしらぁ！？
/ | l ＼ ! ｀ ７ l/ //
ノ| l ! '、 ／ ／ イ:|
l ! ! ＼ ヽ. _／ ７¨´ | ﾊ::l
,l ! |_, - ≧ ､ ＿ _, ｲ l | L! /|
/ ! l | 〃￣ ﾌ水ﾍ＼ | ｌ l / }
ヽ l | ヽ＼// l ヽ_〉:〉 l /! | / ／ ＿_ - '´
￣＼ﾊ l |、 ￣l:| l:ト-ｲl ! / l l／ /／／ ∠
Vﾍ l ＼＿ |:l l:|＼＿/ /＿／￣＼
｝ ＼! |:l l:| ∨ ／ ＼
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 満面の笑みの水銀燈が、ぴょこぴよこジャンプしながら挨拶した。
| 興奮と喜びが抑えられずに体を動かしているのだ。なんて素直なのだろう。やる夫は感服した。
|
|「いえ、大丈夫ですお」
|「よかったぁ。はいまずこれ」
|
| 差し出した花束を、やる夫は恐々としながら受け取った。
| どうしよう、花瓶なんて持ってない。
|
|「途中にある花屋さんに寄り道したら、たくさんお花があるじゃない？
| 可愛いのを見つくろってもらっちゃたわぁ。あ、花瓶が無いならこれを使いましょ」
|
| 言いながら、反対の手で持っていたエコバッグをゆする。
| 鈍く高い音。赤い液体の入ったビンが数本。
|
|「それは？」
|「ワインよ。高そうなのを持ってきたからたぶんおいしいわ」
|「ワインですか」
|「ええ、早速一本空けてしまいましょ。私のギロチンカットをお披露目しちゃうわぁ！」
|
| 水平チョップをして見せる水銀燈。
| みゆきは冗談だと思ったようだが、本気だろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
どんな組み合わせでもこんなもんだろう
_＿,、
, __-,=＝=＝=〔{〈匀ﾍ
／_f〆::::::::::::::::::::::弋之ｿ::::＼
/ ｊf７::::::::／￣￣￣￣￣ ＼:::::＼
/ {i7:::::／ i ＼:::::ヽ
;′ {|::::/ l i | ヽ:::::
ﾄ、 ,′ {|:/ ｌ | |｜ i | | | Ｙ|
|:::＼ ｜ {|| | |｜l | | ｌ /| | | あら、この
＼＼:::＼ | ﾞ| | | l/ﾚ十ﾒ.,|| /| ｊ | || フィッシュアンドチップス
::::::＼＼:::＼. | | | | ===ミ ﾘ| ／ﾅﾒ､| | ハ おいしいわねえ！
::::::::::::＼〉 ::::＼ | ｜ | ヽ ＼"" -=、ﾚ | ,∧｜
:::::::::::::::::::::::::::::::＼| ｜｜ .＼ ＼ , "/! |〃ハ_! -― 味がするわぁ！
::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ｌ | ￣ ‐- /｜/″ ／::::::::::::::::::::..
::::::::::::::::::::::::::/ 厂￣＼ ｌ ｌ＼ イ｜l/ーく::::::::::::＜￣￣
:::::::::::::::::::::::/ /::.::.＼ ＼ l l:::::::::r‐＜ﾍ ｌ 〈::.::.::ヽ＼::::::::::::＼
::::::::::::::::::::: | ｌ::.::.::.::.::.＼__ ヽ ｌ ｌ::::::::ﾄ＼__∧ Ｙ::.::.:ｌ ＼::::::::::::＼
￣＞::::::::::::| ｌ::.::／::.::.::.::.::＼|::ｌ ｌ:::::/￣ ＞ﾍ ｌ::.::.j＿ :::::::::::::::
::::::／￣￣ｊ ｊ／::.::.::.::.〈￣￣}ﾚﾍ ∨ ﾍ ｌ::.l::.::.::〉 〉:::::::::::::
／ 〔 Ｌ::.::.::.::.::.::.ｊ＿__ﾉ::::::ﾍ ',＿___ ＿jﾍ V::.::./ /＼[＼::::
｀ ト ／::.:: ヘ :::::::∧ ∨ｰ┴;ヱ、::', ';:.:/ /
| i く::.:／::.::.::.＼/:::::', ｉ 匸{〈匀}くl| |〈 〈
| i ＼ヽ .::.::.::.::＼:::| |―-ゞｰﾍ/〉| |ヽ:i ,
| i ＼＼.::.::.::.:ヽ| | ...::.::.::＼/:| / /:l |
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| 大はしゃぎの水銀燈は、ハムやサラミを贅沢に乗せたピザを作った。
| 一緒に笑いながらピザを作りながら、みゆきの心はどこか冷めていた。
|
| 正直言って、水銀燈がやる夫の血縁だと言うのは信じがたい。
| 外見的にも性格的にも、二人の共通点はない。
|
| 家族に紹介してもらえるというのは嬉しい気もするが、何故水銀燈なのだろうという部分もある。
|
| やる夫は父親を悪く言うが、彼の口から母親のことが上がったことはない。
| 詳しくは聞いたことが無いのだが、そのあたりに何か、確執があるのだろう。
|
| みゆきが思うに、やる夫にとって一番家族なのはアリカだ。
| やる夫のお隣さんで、祖母を失ってから同居している快活な少女。
|
| 彼女にこそ、きちんと紹介してほしいと思うのだが、件のアリカは学校と部活動とアルバイトが忙しいらしい。
| 朝から晩まで家にいない。
|
| とにかくみゆきは、今回のピザパーティを、やる夫の『ポーズ』のように感じていた。
| みゆきの恋人というポーズを、他ならぬみゆきに見せるための催し。
|
| 恋人になっても何一つ変わらないやる夫からの、恋人であるかのようなアピール。
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/'´￣`ー-/ ｀ヽ-‐─-.､__
,ノ´ ,/ ｉ: ｀ヽ、
／ / :| |:: ､ ､ ﾍ
／ :: / ;|､ : |:|､ |:: ヽ､. ﾍ
／ : : / / |∨ : : |:| ∨.|::: ｀ヽ.ﾊ
/ ／ : : :; | ,ィ⌒ | ∨ : : |:| ⌒|ヽ ､ ﾊ.}
/ ,ｲ / : ::/ ,| / __､| ∨ : :|ｊ ,_ﾚ'ヽ、 |: ||
〈 / | :ｊ: : ::ｉ / |/,ｨﾁ心､ ヽ､::| ,ｨﾁ心､∨ |:: }|
ヽ| | :|: : ::| ∧ ,ｲ ﾄ-':;;:}｀ }冖{` ﾄ-':;;:}ヽ∨ }::: ,/| ピザはソースがおいしいですね。
ヽ| : :::ヽ､ {:::ﾊ.`､V:t;;ﾘ ,ﾉ ､ V:t;;ﾘ ,,'∧ /ｊ;ノ | バジルの香りがすっごくさわやかで！
∨: ::|::|::`::.:::j｀ ｰ-‐'" __'__ ｀ｰ-‐"´ {::::ｊ,/::|: |
｀ヽ:|| |:::::::|｀l:.､ V ,ﾉ ,.ｲ|:::´::: |::: |
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ﾘ: |::::;ﾉ ,ﾆュ､ | ´ ` } ヽ|ｊ:: : ｊ:: |
,ﾉ:,ィ´{ -‐y 〕 |,-─‐-ｊ ﾉ:: /:::: {
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| 少なくともやる夫は、みゆきにキスの一つもしていない。
|
| 映画館で手が触れたり、頭をなでてくれたことはあった。
| しかし、やる夫はみゆきの抱きしめることはおろか、手を握ろうともしない。
|
| みゆきの肉体は隅から隅までやる夫のもので、求められれば捧げる準備はできていた。
| いつでも、どこでも、やる夫を受け入れられる。そのつもりでいた。
|
| なのにやる夫は、みゆきの肉体を欲しない。
|
| 前はちょっとセクハラじみた冗談を言うこともあった。
| いつの間にか、それすらなくなっていた。
|
| みゆきは、自ら男を催促するほどふしだらではないつもりだ。
| であるから、羞恥から何も言いだせない。
|
| そうすると、やる夫は何もしない。
| せっかくのデートでも、指一本触れない日すらあるほどだ。
|
| みゆきは自分に魅力が無いのかと悩んだ。
| しかし、埋めネタではあんなにも大胆になれたのに、いざとなると二の足を踏んでいた。
|
| 開放的で、淫らな、誘惑するような服装は出来なかった。
| みゆきは胸にコンプレックスを抱いていたし、腰回りも引き締まっていないと思い込んでいた。
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, -,r'´ / / l i ｌ ド l_ , -､ /:l
水// i /l ,/ _/＿/l / ヽ‐z‐'- ､_ /:./
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、 l ! l lj '´ゝ 'ﾞ ―…' / , ｌi ＼ ,.':.:.:.i /:.'´:.:.:.:.:
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:.:.:.: : : : :.:.:.:.:丶:.:.:.ヽ ／ヽ ﾄ､ ￣‐ /| l ヽ /:.:.:.: : : .: : : : : : : : : 次は何を焼こうかしらぁ。
: : : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.:／ ＼l ゝ 、 .／ ,l l /:.:.:. : : : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : : : :.:.:.:/ , ／ / ＞‐-ｚ::ﾆｼﾍ./ // ;:-‐'´:. :ヽ: : : : : : : : : : アンチョビもいいわね。
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| みゆきは基本的に能動的な人間ではない。
| 自分に自信が無いので、強く出れない。
|
| 今回の告白のことだって、後から考えるとどうしてあんなことが言えたのか分からないくらいだ。
|
| であるから、鬱屈は彼女の内側に溜まる一方だった。
| 恋人同士になれば決定的に変わると思っていた。
|
| 夜毎に自分自身を慰める指が、やる夫のものになると思っていた。
| しかし、切なく枕を濡らす日々は変わらず。
|
| いいやむしろ、お預けを食らっているせいか、激しくなった。
|
| みゆきは思う。先輩は本当に私のことが好きなのだろうか。
| みゆきは思う。本当は、好きでもなんでもないんじゃないんだろうか。
|
| 夢にやる夫を見て、肉体の緊張と緩和を繰り返すたびに、みゆきはひどい虚無感に浸される。
| 自分がひどく醜く、汚れた存在であるかのように思ってしまう。
|
| 誰かに相談をしようにも、あまりにプライベートすぎて、口にするのははばかられる内容だった。
| 虚しさに耐えかねて、胸が張り裂けそうだ。
|
| けれど切なすぎて、己を慰めねば気が狂いそうだった。
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/: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
|: : |: : : : : |: / ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
|: : |: : : : /!/ -=o=-| :/ .|:/ Ｖ: |.: : : | V
＜ : _: : : / |/ ﾚ-=o=-|:./ヽ: : |
＜:: |. 小{ ﾚ{: :|ヽ:|
厶ﾍ ﾊ ､ {ﾊ/ V
＼_! ' ! 年齢＝彼女（彼氏）いない歴の
ヽ ∠7 ／ 童貞と処女でくっつくなんて
___,ｒ| ＼ ´ヽ '´ ﾍﾟｯ 上手くいくわけねーだろ。
／:/::::| ＼ ヽ ｀_ ィ ´ ＼
／::::::/::::::| ＼ ´ ∧＞､ ヾ)
／:::::::::::/::::::::| ＼ / !＼::`ｰ- ､
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| みゆきにとっての最大の不幸は、伊藤誠の不在である。
| みゆき自身は下品な揶揄をする誠を嫌っていたが、実際には目的が合致する仲だ。
|
| やる夫を女性慣れさせたい誠は、常々やる夫を乱交パーティに誘っていた。
| 一か月ほど、飽きるまで朝から晩までセックスしておけとか言っていた。
|
| 当然やる夫は断っていたし、みゆきは眉をひそめていた。
| しかし、誠から見ればやる夫が女性経験を経てしまえば何でもよかったのだ。
|
| 恋愛とセックスを切り離して考え、女性の肉の誘惑に耐える。
| もしも本気で『血族』がやる夫を籠絡する気なら、その手を使って来ただろう。
|
| 女をあてがい体を重ね、情を移す。
|
| 話を戻す。
| やる夫の最大の問題は、誠の教えを歪んで覚えていることだった。
|
| 恋愛とセックスは別物であるという話。
| やる夫は性欲を完全に抑制し、みゆきに対して獣欲を向けないことを心に決めていた。
|
| これは凄まじい忍耐と精神力を必要とする行為であったが、やる夫は実行していた。
| しかしやる夫の優しさと心遣いは、完全に逆効果であった！
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∩＿
〈〈〈 ヽ
＿＿＿_ 〈⊃ }
／⌒ ⌒＼ | | 甘いのが欲しかったら
／（ ●） （●）＼ ! ! バターと砂糖とシナモンとかも結構いけるお。
／ :::::⌒（__人__）⌒:::::＼| l
| |r┬-| | ／ ジャムとチーズもオススメ。
＼ ｀ ー'´ ／／
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| やる夫がみゆきを、非常に魅力的なこの女を、蹂躙したいと思ったことは正直一度や二度ではない。
|
| たわわに実った二つの膨らみは、どんな服を着ても激しい主張をしているし、
| 腕や脚は本人が思っている以上に細い、先日見た脇腹のラインは芸術的な曲線を描いており、
| 抱きしめれば折れてしまいそうな華奢さと、エロチックさを兼ね備えていた。
|
| 当然恋人になったのだ。
| 友人や先輩後輩では出来ないあれやこれやの行為は妄想した。
|
| やる夫の家は基本独り暮らしだし、連れ込めば何でも出来てしまうのだ。
|
| けれど、やる夫を抑制するものがあった。
| まずはみゆきへの欲望が、『血族』から追い出されたことのストレスの発散にすぎないのではないかという想像。
|
| そしてそれ以上に、やる夫とみゆきの出会いのそれが、強力なブレーキとなっていた。
|
| こればかりは仕方のないことと言える。
| 未遂ではあるがレイプ経験者の女性に、性的な臭いをさせない紳士。
|
| 完全なコミュニケーション不足である！！
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だから私の分まで「やらない夫と黄昏のミレニアム」さんを見てください。
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/15956/1427025726/867-n
明日の15時から、最終回だそうです。
仄いrく艾艾艾艾癶、
r巛Uj〉j〉j〉::::::::::::::::::::辷う、 ､
. ｎrｎrｎrｎrｎrｎrｎ:::::::::::::::::::辷う、 ＼
／乂乂乂乂乂乂乂ｎrｎ:::::::::::::::辷う、 ヽ
／￣ 乂乂ｎrｎ::::::::::辷う、
＼ 乂乂ｎ::::::::::rう)、
/ :.＼ ＼ 乂ｎ:::::::::rう) ′
ｉ : : ::::::. ヽ :.＼ 乂辷辷く ′
::|:. ￤ :...:|....: i :::| _}L.:. 艾艾艾＼
::|:: |:::::ｌ|:.. . .::::::|:: 斗r七' |l ￤ Y⌒Y^ ＼ |
::|:: |:: 八:::::::::::::|ｌ::ｌ::| 〕斗ぅ弌7. |ｌ |: V⌒ト､ ＼＼ |
: |:八:. ､:::: ヽ :::::::八乂{ｱ乂`ｰク |l ﾊ:. | |ｌ ＼ ＼＼ ごちそうさま！
: |::::: ＼＼⌒＼/ ''¨゛´ 八Λ|:: | |:) 八. ＼ |
八::::::::::|＼ 托笊! ./ .:/ ..:|:: ﾊ! ,.:代＿＿___＼＿＿
:. ＼ : |＼＼`ｰ1 /／〉..:/|. / 「 ::|ｌ |. ) )
＼ 丿:::::ヽヽ込、 ｧ /／ ′/ :|ｌ | (
＼ 乂__込、 ィ_ノ ./ / |ｌ ﾄ､
. （ |:l ＼ ＼ ｢ヽ ./ /:/... 八|: |:::＼
＼|:l:: |:ﾊ ヽ } }. イ..::/ /:/ /|:: |: |:::::::::＼
|:l:: |/Λ 个ヲ 厂 ハ/ 厶仏:::/＾|:: | . ├――=ミ
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| 結局やる夫が四枚、水銀燈が五枚、みゆきが二枚食べた。
| 水銀燈はアルコールも入って真っ赤な顔だ。だらしなく椅子に座っている。
|
|「ごちそうさまでした」
|「お粗末さまでしたお」
|
| 食後に緑茶を入れるやる夫を見ながら、みゆきは寂寥感に苛まれていた。
| きっとこのまま、今日はお開きになってしまう。
|
| なにもないまま、何もしてもらえないまま、このままおしまいになってしまう。
| それがみゆきにはひたすらに切なかった。
|
| 傍から見ればかわいらしい恋心だ。
| しかし、それをうまく伝えられない。素直に一緒にいたいと言えない。
|
| その結果、やる夫を束縛し、重しをつけて水に沈める様な形になっている。
| みゆき自身、そんな自分の卑しさが嫌であった。
|
|「みゆきちゃん」
|
| ふと名を呼ばれ、みゆきは自然とうつむいていた顔を上げた。
| 赤い顔の水銀燈が、とろんとした目でみゆきを見ていた。
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〃 |:::::::ｌ::|:::::::小 ｲ旡ﾐ、:::ヽ lて_)`ヾ::::::::ヽ::::::::＼:::::＼:::::!
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Ⅵ ∨::::!乂ハ ｀ｰ'厂! ｀ｰ'ﾉ 八ﾘ|＼:::::|:::::::::::::|
V ＼| jゝ､L_ノ ' ゝ. ＿__,／ ∧::::八::::V:::::::::::::::!
ﾉ:::::i>､ ﾟ ＿_／:::::ノ:::::ﾉ┐::::::::::::::| はい。
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|「やる夫さんのどこが好き？」
|
| 怯えたように答えたみゆきへの問いかけは、ごくありきたりなものだった。
| しかし、それは同時に酷く答えづらいものでもあった。
|
|「優しくて、気配りできるところですね」
|
| であるから、みゆきは当たり障りのない答えをした。
| 実際、みゆきはやる夫の優しさに救われた。心配りに助けられた。
|
|「ほんとに？」
|
| だが、水銀燈の蕩けた瞳はそれを許さない。
| そんな、適当な答えを許容しない。
|
|「ならぁ」
|
| 水銀燈の粘つくように甘い声が、みゆきの心臓をギュッとつかんだ。
| 蛇に睨まれた蛙のように、みゆきは身動きとれなくなった
|
|「何でそんな顔をしてるのぉ？」
|
| 呼吸すらままならない。許してもらえない。
| みゆきは返答に窮した。答えることができるまで、解放してもらえない。
|
| そんな確信があった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | 好きって、理由がいるのかお？
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| やる夫の助け船は、果たして逆にみゆきに突き刺さった。
| 好きには、理由はいらないのか？
|
|「いるわよぉ」
|「そうなのかお」
|「ええ、例えば」
|
| 水銀燈はアルコールで上気した顔を綻ばせた。
| 大輪の花が咲き乱れるかのように、それだけで部屋が華やぐ。
|
|「わたしがやる夫さんを好きになったのは、会った時よぉ」
|「それって長くなるかお？」
|「ならないわぁ」
|
| 興味のなさそうな相槌であったが、やる夫流の冗談なのだろう。
| みゆきは、いつの間にか呼吸ができていることに気がついた。
|
| それと同時に、水銀燈が何を欲していたかも理解した。
| 彼女は、あんな表面的な理由には興味が無いのだ。
|
| 聞きたいのは、みゆきの本当のキモチ。
|
|「やる夫さんは命乞いしなかった。まずあの時に一目おいたのよぉ」
|「思いっきり命乞いしたお」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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l ,|: l: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : `:.-:'´: : :.ﾊ,-.、
,l.::|:.:!: |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : l: : ',
.ｨ |: |: |: |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ',: :.Λ
,|: |: |: |: |: : : : : : : : : : : : : : : : :./: : : : : : : : : : : : : :.l: : :.',: : :ﾊ
:|: |: |: |: : : : : : : : : : ::.Λ: : : :.:/: : : : : : : : : : : :.,': : :l: : : :',: : : ',
:|: |: : : : : : : : : : : : : :/ V: : :/: : : : : : : : : : : : ,j: : : l:: : : ﾊ.: : :.',
:: : : : : : : : : : : : : : : :ゝ-.': :,:': : : : : : : : : : : : :/:;!: : :l.: : : : ﾊ.: : ::',
:: : : : : : : : : : :U: : : : : : : :/: : : : : : : : : : : : ./:::::!: : :j: : : : : ﾊ.: : ::',
:: : : : : : : : : :l: : : : : : :.ﾊ/: : :.:/: : : : : : : : :/:::::::l: : :ﾊ: : : : : :.ﾊ: :. ﾊ
:: : : : : : : : : :l: : : : : : :{_,}: : :./ : : : : : : : :,:'::::::::::l: :.,':::ﾊ.: : : : : :l: : :Λ
:: : : :./:: : : :.,': : : : : ./: : : :,/: : : : : : : : /::::::::::::;':::/::::!:.:V: : : : :l: :.i: :.!
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／:: : : : : /: : : : : : !: :./ l: :./ : : : :,ｲ:.l::::::::::::/ｲ:::::::{: ,' :.l: : :./: : ﾊ:..,'
:: : : : : : /: : : : : : :.l:. ﾊ {_',: .l.: : : :/:.:.::l:|: |:|/::::l:::::::::v: : :l: :./: : / jﾉ
:: : : : : /: : : : : : : : V: ':, V: : : /: : :. l:|: |:| :::::ゝ- 'l: : /j:./!: :,:'
:: : : : /: : : : : : : : : : : : j: `:-V: :{: : : :.:l !. ! V/ '´/／ ……え？
:: : : ,': : : : : : : : : : : : :/: : :.ﾊ:.ヽ;l: : : :.', , ―-, ﾉ '′ どういう状況です？
:: : :,: : : : : : : : : : : : :/: : :./ V: : : : : : V:::::::::/ ／ , - 、 ／￣_)
:: : ,: : : : : : : : : : : :./: : :/ﾐxzxV: : : : : :ﾍ - ' ´ { }／ ／／ ｀ヽ
:: : l: : : : : : : : : : :./: : :/ ￣ ヽV: : : : : :ﾊ ！ ′ ´ '′_,ｨ`‐'
:: : l: : : : : : : : : :./: : :/ ＼: : : : : ', l ￣` 、
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 水銀燈とやる夫のやり取りが意味不明すぎて、みゆきは思わず尋ねた。
| 命乞い。何らかの隠語か暗号であろうか。
|
|「水銀燈さん、クソ親父を殺したいらしいお」
|「知ってます」
|
| 前にも、放火未遂やら何やら物騒なことは何度か口にしていた。
|
|「だから名乗った時に、首を絞められながら宙づりにされたんだお」
|
| ネックハンギングツリー！ 両手を使って相手の首を基点に持ち上げる大技である。
| 当たり前であるが、腰や下半身を利用せずに腕の力だけで相手を持ち上げる必要がある。
|
| 見た目以上に、非常にパワーを必要とする技だ。
| 想像できない人は、米袋を片手で持ちあげてみるといいだろう！
|
| さて、この話、みゆきは酔っ払いのたわごとと聞き流した。
| 当たり前である。水銀燈の細腕で、重量感たっぷりのやる夫を吊るとかありえない。
|
| きわめて正しい判断であった！
| 誰もみゆきを責めることはできない！
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,: : : : : : : : : :.:!: : : : : : : : : : : : : : : : : :`:. 、
/: : : : : : : : : : |: : : : : !: : : : : : : : :V: : : : : : ヽ
,: : : : : : : : ,: : :;|: : : : : l:V: : v: : : : : :ﾏ: : : :',: :ハ
/: : : : : : : :/: :./|: :l: : : :|:l 、:_:',: : : : : : :ヽ: : :l: : : ',
,:': ,: : : : : : : ,':_:ｧ' !: :!: : : :l:l ﾏ: : :',:｀ヽ: : : : :＼:l: : : :l
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/: :/: ,: : :,': : : :l: :,' _!: l: : :.:l:! _,＼;!ﾏ: ',: : : :.ﾊ :ﾍ: :l
,': :,:': /: : ,′: : :.V{ z=,: V: : :{ ｱ牙ミz､マ、: : : :l : :V;!
. !: /l: ,': : : l: : : : : l X_.ﾉnV:ﾍ: :.:', ｈ_ﾉ:'ヘ､:ト.、: :.l: : :.Y
. l:.,' V!: : : :',: : : : ;l,{ﾊvしΛ＼:ヽ:x､ {し:刈 l:!: :V: : :ハ: : }
!′`!: : : : :V: : :lﾍ Vこ;ﾘ }-={:ﾍ、 Vこ;ｿ .!: : :}: /,ノ}: / 勇気に、
. V: : : :.{ヽ: :l{:.', ｀＾´ ! ゝ、 `¨' ,ィ: :.,'/:.!: :l/:.| 先輩の勇気に助けられたんです。
マ: : :! Y`:=}、__ '´ r- ┐ー‐ ´.!: :/: : :.|: : l: :|
＼:ﾊ.、! : : :＞ .､、 _｀ ´ , ィ´z,:': : : : l: : :.l.:l
｀` ,:l: : : :l: : : :l: : :≫丁 y:/: : : : :.,'!: : : l:!
/: |: : ::,': : : :}:ノ//>' /,/: : : : : /:V: : : :',
/: : l: : /z≦////,!-‐- ｧ'//: : : : : /ﾐz:v: : : :l
. /: : : ',:.:ﾊ{l{;!/////l ///,: : : : : /／/≫x: : |
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| だからみゆきは、水銀燈の妄言は置いておいて、自分がやる夫を好きになったきっかけを口にした。
|
|「怖い人に襲われたときに、先輩が助けに来てくれたんです」
|「ありゃ、やらない夫だお」
|「いいえ」
|
| みゆきはかぶりを振った。
| やる夫だ。みゆきを救ってくれたヒーローはやる夫だった。
|
|「先輩は、自分が敵わないのを理解したうえで助けに来てくれました。
| やらない夫先輩を呼んで、その上で、私に危害が及ばないように」
|
| そう、やる夫は自分が犠牲になることで、時間稼ぎをしてくれたのだ。
| 理不尽な暴力にさらされる覚悟を、一瞬で済ませて、飛び込んできたのだ。
|
|「やらない夫が来るのが分かってたからだお」
|「でも」
|
| それこそがみゆきのヒーローだった。
|
|「先輩が勇気を出してくれたから、私は無事だったんですよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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をやる夫に突きつけたいなw
今夜は不人気とお泊り会でウハウハ（予定）、やる夫さんってサイテーｗ
. __-‐= ≠ =,‐- .
／ﾉ〈く,)〉｝ ‐ - _`ヾ ＼
,√/〔_ヾﾉ斗≠≠‐ｚ､_ ＼ ヽ
,〈/ゝ＾／ﾉ'⌒´｀⌒´ ヽゝ､ﾊ{｀ヾ かわいいのね、分かるわ。
〈/ ／ﾉ´ 〈_ﾉゝ-'
〈{／ノ´ :i } ｉ ||,ハ
r（{ノ´ | i :l斗‐ｊﾉヽ| |ｊ {
ゝ'| ｉ :i | |´},ﾉｘ≠ァ} / '， } ム
ヽ ）＼_〉ヽ | { ‐|- 八 {丿 '乂シ/ / ｉ '，_ﾉ｛ｚ≦ﾆﾆﾍ
_≧ﾆﾆﾆﾆﾆヾ ト 、 ＼,斗≠ミ＼ｊ '''彡ｲ /! Vﾆﾆﾆニﾆﾆニ≧=-
／⌒ﾆニﾆﾆニ∧ ; ,＼ ヽ弋:ツ ､ /'）ｊ′/ :l ∨ニニニニニﾆヽ
. /二ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ / / /＼__ゝ''' ｰ_ ' / // / : :| ∨ニニニニニﾆ（
ｊ/ﾆニニニﾆニニﾆ′/ 厶---:..个o｡ __ 厂'_〈′/'´:￣￣::｀ヽﾆﾆﾆﾆニﾆﾆニﾐ
{ﾆニﾆﾆﾆﾆﾆニ７ /::::::::::::::::// /::｀∧-‐ 〉/:::::::::::::::::::::::::‘，＼（ ￣⌒ヽ ヾ
ｊﾉ⌒/⌒ ｊ／ / /::::::::::::::::// 人:::::{ У / {:::::::::::::::::::::::::::::::ﾟ，
/ ,／::::::::::::::::// / ヾ∧＿// | ::::::::::::::::::::::::::::::::〉
,: 〈 ::::::::::::::::::::{ {/⌒{⌒{ ∧ _V勹 ::::::::::::::::::::::::／ヽ
／/ ,/ ヽ :::::::::::::::| | { ヽ〃' く 厂}::::::::::::::::／ ヽ
/ / ,/ / ＼::::___:{ ヽﾍ /ヽ__厂 ｝__ﾉ_丿_::_:::ｧ´ﾍ ﾟ，
. / / ,/ / くﾉ{ﾌ:::::::∨ ゝ{ｰ ﾉ__く }::::::::《_}{_》 ﾟ， :} }
′ ′/ , ﾉ{ ::::::::::::::〉__ﾉ__厂 ／｝ /::::::::/::儿' }
{ / ′ :{ '/:::::::-‐／ ヽ厂￣〕￣｀}ヽ:::::/ / / ,′ ′/
ｊ/ { ヽ {::::´:::::/ ‐-z__/ ﾉ _」 ＼,/ / / / ′
{ ﾟ， ::::::::::/＿ 〈 厂￣〔｀ ∨ ／ ,/／
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| 艶然と微笑む水銀燈を余所に、みゆきとやる夫はそれぞれ愕然としていた。
| 自分が口にした言葉に、今まで気が付いていなかったかのようで。
|
| ああ、二人は声も出せずに立ち竦んでいた。
| 今ようやく、気が付いたかのように慄然として。
|
|「やる夫はヒーローじゃねーお。怖かったから。怖いからこそ飛び出したんだお」
|
| 好きに理由はいらない。自分の言葉が、やる夫に突き刺さる。
| そんなにはっきりと断言できるなら、なんで今まで堂々巡りをしていたのだろう。
|
|「でも」
|「襲われてる高良に気付いて、知ってしまった以上、あれが一番楽だったんだお」
|
| 理由とかを考えずに、ただひたすらに、好きだけを突き詰める。
| 目の前にいるみゆきのことは確かに好きだ。
|
| だが、その好意はどこから来た好意なのだろう。
| みゆきの好意が、やる夫の好意を呼び覚ましただけじゃあないのか？
|
|「見ないふりして耳をふさいでも、やる夫はずっと気に病むお」
|
| もしかしてやる夫は、みゆきのことがそんなに好きじゃないのかもしれない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （○） （○） ＼
| （__人__） | あそこで高良を見捨てたら、
＼ ｀ ⌒´ ,／ やる夫は一生、
r､ r､／ ヘ 高良の悲鳴を悪夢に見たお。
ヽヾ 三 |:l1 ヽ
＼>ヽ/ |｀ ｝ | |
ﾍ lノ `'ｿ | |
/´ / |. |
＼. ｨ | |
| | |
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|「それになにより」
|
| そして何よりそれ以上に。
| やる夫は、やる夫の目指すやる夫は見過ごすことを甘受できない。
|
| 今でも、目を閉じればあの瞬間が思い出せる。
| 昼寝をしていたら女子の悲鳴と男の怒号が聞こえた。
|
| その場にはやる夫しかいない。誰の助けも得られない。
| だからまず、やる夫はやらない夫に助けを求めた。
|
| 震える指でやらない夫にメールをし、彼が来るのをひた待った。
|
| しかし、ドア越しに聞こえるくぐもった声は、やらない夫の到着前に最悪の結果を招きそうで。
| やる夫は怯えながら、歯を打ち鳴らしながら、選択した。
|
|「あそこで逃げたら、やる夫は、好きな子に顔向けできなかったお」
|
| 最後にやる夫の背中を押したのは、柴崎姉妹の顔だった。
|
|『女の子が泣いてるんですよ？ 行かなきゃ男が廃るですぅ！』
|『君自身が危険に晒されるぞ、見ず知らずの女子のために体を張る必要はないよ』
|
| 自分はいかずに相手を煽るような翠星石と、冷たく止める蒼星石。
| あの双子なら、そう言うだろう。そして結局、どちらも自分で助けに行こうとするだろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_,.. -－ ''" i ｀、
,. :'" l ﾞ'､
／ ／ ,/ |! l ヽ
/ ,.' /l l |.! l ヽ ＼
,' ﾚ′ ./ ,! ,'| | | ﾄ、 ｀、 ヽ
,' / / _,∠. ,!/ | i | ｣_| l、 ｀、 ヽヽ
| / / /／,/ // ! | ! ｀!｢`ﾄ､ ﾞ、 lﾞ､ﾞ､
/ / / / l/ ｜｜ / l| l. ｀、 l ヾ:､
. ,' j ,' ./ ,r:==ﾐ. | .,' 作ミﾄ､ ｀、 i. | ﾘ
j ｲ l /,ｨ | ｌ/ / ! ヾi. ﾞ、 l | ｜
l !｀、 l l {ﾍ. i /,∠, l :ﾍ /! l. ∧ !
ヽl ｀、 l. l | ヾ-‐'' '"厂{ ﾞ‐-'′,! l ,' ./ !/
| ＼ ﾄ! | 、. , ' ヽ、 ｲ /!/./ ,!' ……好きな子。
|. ,' l ｀ヾ:..ﾄ､` ｰ‐ '′- ｀ ¨´,.ｨ .l/':ｲ
l ,' ！ l. | ｀＞: ､. ___ ,... r＜´ ! .|｜.|
| / ! ｀、l ／´,! l､ヽ!、 | .l ! !
. l/ ! ｀､l′〈′ ｀| ヽ l ! l. |
/ ﾞ! ﾞi、 l ＿ |. ｀| ,l ! !
/ ∧ ヽ. l￣ ￣| V l l
. / / ヽ ヽ！ l / ,l l
/ ∧＼ ｀､ ｀､l ! / ハ l
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| みゆきが硬い、冬場の鉄柵よりも冷たい声を出した。
| 己の内面を見つめているやる夫はそれに気付かず、水銀燈は静かに視線を向けた。
|
|「やる夫は、そんなくだらないプライドのために体を張ったんだお？」
|「それで」
|
| みゆきは固くこわばった声で、ゆっくりと小首をかしげた。
|
|「その人のことがまだ好きなんですか？」
|
| しわがれ、乾燥した声に、ようやくやる夫は自分の失態に気付いた。
| 恋人に、別の女が好きだなんて言われて嬉しいはずがない。
|
| やる夫の中で、静かに熾きが燻った。
| やらない夫への嫉妬が、ゆっくりと鎌首をもたげる。
|
|「それは……」
|「正直に答えるべきよ、やる夫さん」
|
| コップにワインを注ぎながら、水銀燈がくちばしを挟んだ。
|
|「みゆきちゃんも、最後まで聞いた方がいいわ……ねえ、考えてみて」
|
| 赤い液体で喉を潤しながら、水銀燈が悪魔のように微笑む。
|
|「みゆきちゃんは、まだやる夫さんが本当に好き？」
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_,.. -――― - ､ ＿_
／ ｀′ ｜
, ': : . . . . . ,' / |￣ ｀`i.
/ . . :./: : : : . /,ｲ ｜ ｜ !
j . : : : : :/: : . . ,/:/｜ ! l ! l. |
l: : : : .l / _,,.ム'- | ,′ ,j l l.|
!: :. |/ ´／／ |,' /| ! ﾞi
! ,! / ／,ｨﾆミ` l' / ｀iヽl l
l ! / ,.',ｨ'ﾞ'´し! l ムミ l ! i l
｜| j/ ／|个-'＾::| 〈 ,.ｲЧﾞ}!,!./ | !
{ ! ! /！.l ゞ二/ ∠ｨく, |`ｿﾉ',!/ l l.i !
|,! !. ∧ ﾍ !＼_ ／ !.ヾ' /,!/ﾉ / / ! ,l
l' ∨ .ﾍ ｀! ￣ ,，｀ ｀ ｰ{,ｲ'゛ /／ !/
. / l! ∧ ヽ｀丶,､ ,,. -:'ﾞ| / ／ / ……好きですけど。
/ / l! ,ﾉ ヽ ＼〔､_￣il l l／
. / / ,lﾚ' ＼ ヽ-､ヽ|｜ |
, ' ／ /三ミ`ヽ､ ヽ ＼>ｰ'! !
, '／ ,〈ﾆ＝ﾆミ｀ﾐヽ `､ ヽ. ｀、 l
／'′ ﾞ!′ ｀ヾﾐヽ、 ヽ ｀､丶 ｜
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| 挑むように答えたみゆきに、水銀燈は嬉しそうに肯いた。
|
|「なら、最後まで聞いてからぶん殴るなりすればいいのよぉ。
| 自分だけを見て欲しいなんてわがまま言って困らせると、うふふふふぅ」
|
| 笑いながら、ワインを煽る水銀燈。変なスイッチが入った様子。
|
|「後で泣くわよ」
|「はぁ」
|
| 気の抜けた返事をするみゆきから、鬼気もまた抜けていることを確認し、
| やる夫は水銀燈のすごさに驚きを隠せなかった。
|
| 何でこの人あんなにポンコツなのにコイバナだとこんなに頼りになるの？
| それもこれもダヌ神族のフラれ女王として、魔界に名だたる失恋経験者だからである。
|
| そして水銀燈は、その中から戦闘能力と女子力だけを抽出した分霊だ。
| 言い方を変えるなら、これしか能が無いのだ。
|
|「こないだは失恋したって言ったお」
|「はい」
|
| そして、完全に吹っ切れてはいないとも。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ＼
／ ＼ やる夫はいまだに翠星石が好きで。
| ＼ ,＿ | だから高良には申し訳なく思ってるお
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「ふーん」
|
| 興味なさそうに水銀燈がコップを傾けた。
| 対して、みゆきは名前を聞いてすぐに相手が誰なのか理解した。
|
| 翠星石、やる夫の同級生。
| やらない夫の……彼女。
|
|「みゆきちゃんのことは嫌い？」
|「いや、好きだお！」
|「うわーやる夫さんサイテー」
|
| 揶揄しながらも、水銀燈は優しい視線をみゆきに向けた。
|
|「どこが好き？」
|
| やる夫の顔が朱に染まった。
| みゆきは、意外なほど冷静にやる夫を見つめていた。
|
| やる夫の本心を聞きたい。聞ける。
| そう思うと、興奮した。
|
|「こんなやる夫のことを好いてくれて、一緒にいて心が休まる所だお。
| 高良を守りたいって……素直に思うお」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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これはやる夫さんの決め台詞になる（過去を思い出しながら
親友の彼女である以上やる夫は最後の最後に選べない
だから自分が側にいることができると
だが…その後に蒼星石があるんだよな…
＿＿＿
／ ＼
／ノ ＼ u. ＼ 正直言うと、
／ （●） （●） ＼ 高良を『女の子』として見てなかったお。
| （__人__） u. |
＼ u.｀ ⌒´ ／
ノ ＼
／´ ヽ
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| やる夫の告白は、みゆきの心にズドンと響いた。
| ヘビー級のパンチのように強力で、眼中になかった宣言はみゆきを打ちのめした。
|
|「あるいは、見ないようにしてたお。
| たぶん高良は、あの時のことをだれにも相談できなかったはずだお」
|
| やる夫の指摘は的を射ていた。そう、あの夏のレイプ未遂。
| あの激しい恐怖と混乱の日。
|
| みゆきは、両親にも教師にも、誰にも相談できなかった。
| 両親を信用していなかったわけではない。教師が嫌いだったわけではない。
|
| ただ、親を心配させたくなかったし、特別親しい教師がいなかっただけだ。
|
|「高良に安心を与えられるのがやる夫だけなら、
| やる夫は自分の感情を高良に見せるべきじゃないと考えたんだお」
|
| どこまでも優しく、気遣いし、しかし好意を見せない。
| 見返りを求めない庇護を与えることで、みゆきの心の傷を癒そうとしたのだ。
|
| そう、やる夫はその状況を悪用できた。できたのに、しなかった。
| みゆきの傷に付け込んで、好き放題できただろう。思っている以上に簡単に。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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〃///ヾ i ll i ! l i l | l ヽ ヽ
. i:|//i::i 》 /| li !ﾒ l l ! i | ', ',
〆i !:Ｌ〃 i ', | ! | l ﾄ, ! / l ! i } !
// / |:|'" i 斗弋Ｔ､‐- ', | ヽ ! /i /! /! ! l. } |
/ i |:l ', i弋ゝ‐-Ｙ=､丶｀ ',.| /_.!ﾑ､/_l / / ﾊ !
. | !:l ∧. ! ﾋ_q ）＿ヽ ﾚ' ﾚ' 7 ﾒ .ｲ / l !
. l |:|. ,ﾍﾍ ,r‐‐tｧ/ ／| ,/ ﾚ
. l l｣ i ヽゝ:::::::::::.. ゞﾟノ/／ﾉ |,ｲ
! ﾄ､ ! .:::::..´ソ" l:｣ ,-'´ どうして？
i |. 丶 ､_ ,､_ ´ ／', , ／／
. ', ﾄ､ ゝ . ‐/ ﾌ_,, ｨ ´ !,〃 ,..-'´:∠＿
. ', |::::｀:‐-.､｀＞ . _ / /l´ ﾞ!i lｲ/:::::::::::::-= 二､_
､_＿_ﾍ !::::::;ｨ;=＝,‐､ ;_/ / ! !| |::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::ｆf《ﾍ i::≪::::::〃!,ｨ´｀‐-ヾ､l_／_il l､::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::ゞ》 ﾍ. ﾄ､::::ﾞ彳/ゞ/r‐---､i／´::::| /:::＼:::::::::::::::::::::::::::
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|「え？」
|
| 水銀燈の問いかけに、やる夫は虚を突かれたようだった。
| どうして？ 何がどうしてなのだ。
|
|「どうして、感情を隠そうとしたのぉ？」
|
| 水銀燈の問いの意味を、やる夫は理解できない様子だった。
| そうするべきだと思ったから、特に理由はなかった。
|
| だから答えあぐねた。
| 言葉に詰まっている間に、見た目と違い案外優秀なやる夫のあずき色のはしご状機関が正解を導きだす。
|
| だが、やる夫はひどく狼狽した。
| その回答は、やる夫の望んだものではなかった。
|
|「……」
|「言えない？」
|
| 獲物を追い詰める蛇のように、ゆっくりと、やる夫を強迫する水銀燈。
| みゆきは怖気を覚えながらも何も言わなかった。
|
| 聞きたかった。理由があるなら知りたかった。
|
|「みゆきちゃんも、聞きたいわよね？」
|「はい」
|
| だから即答した。
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/´｀ ‐- ､ _＿ _/´｀＼_＿__
/ / ｀゛‐-.､_
jノ / :| ｉ ､. ｀ヽ、
／ ./ ./ ,| ｉ | | ＼ :::ｉﾍ
／ ::::/ .| / | ::| λ |､ ＼:ｉ }
／ :::::/ | | | ::| |. | | ∨ ＼ｊ
／ ﾉ ::::::/ γ⌒ | ::| | | :| '⌒ヽ ﾍ
/ ,.イ :::::::/ | :| ∨ ::|.| | | ∨ ｉ:: ∧
| / ｊ ::::: j /ヽ|___ ∨ :|| |ｊ ∨: |::: ﾊ
| :{ | ::: ,ｨ || /,ｨｆﾁﾃｵ ヽ､:{ ｵ:ﾃ心､∨ |::.:ｉ､ |
ヽ:| | ::: / | |:| ﾊ´ {ﾉtｨ:;ｊ }--{ {ｨ'ｔﾒ:;7`.ﾊ. |::;ｊ|｀ヽｊ
| | | |ｉ| {:::} `-‐" ,ﾉ ヽ ゛‐- ' ´.ﾊ:∨,j;ﾉｉ|
｀ヽ| |ﾘｉ:|､ |::::j ｀‐--‐´ ' `‐--‐´,{:::ｉ:∨: || 私なんか、先輩の目から見たら
| | |::ヽ{::::ヽ、 ー' ,.ィ´:ｉ::|: | || 可愛くもなんともなくて
| | :| :::::::ｆ|`ｖ^ｉ‐,､‐-〟 -‐＜´::::ｉ:::|::|: | || 興味なかったっていうこと……ですか？
| | :|::::::::|| .ｊ |::ｊ |:,ｨ':j {ｱ ｀ヽ､:|::ｊ: | !|
| :| :|::::::::{ ｀ ｀ ｊ | | |;/ ,ﾉ: |
| | ヽ::::::ヽ ﾉ |-‐‐-| /´ 人:__ |
| ,! ｀/´￣￣ ｀ヽ.| | / / / λ:: |
| / ｀ヽ./二二ﾆﾆ==ﾉ|. | ./ /／／ }::: |
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| それはみゆき自身の弱気の吐露であった。
| みゆきは常に自分に自信が無く、卑屈であった。
|
| だからきっと、やる夫も。
| それは極めてみゆきらしい思い込みであった。
|
|「いやその……逆だお」
|「逆……ですか？」
|
| 水銀燈がにやにや笑いながらコップにワインを注いだ。
| やる夫の本音が出たので、ある種の満足を覚えているのだろう。
|
|「あー、高良はその」
|「えっちな体してるわよねぇ」
|「げ、げェー！？」
|
| 言いにくいことを代弁した水銀燈に、やる夫はつぶれた蛙のような声を出した。
|
|「正直に言って、みゆきちゃんの裸を想像したことは？」
|「勘弁してくださいお」
|「あるってみゆきちゃん！ 示威行為に走ってるって！」
|
| 否定しないということはそういうことだ。
| はしゃぐ水銀燈を余所に、若い二人は真っ赤になって俯いた。
|
|「す、すまんお」
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◯ j /::::/ /: : :| ｊ/ｒ='､ jﾘ: / ｊﾉ ｒ='､ }: ｊ |:::::: | },/
| ﾊ::::ｊ {:::::ｉ::| |:l l:| ﾉ__,ノ |:l l:| ｊ/ } |ﾍ;::: ｊ い、いえ。
ヽ､{ ﾍ::{ |:: :|: :| i:Ｕ:j .／/...}＝{／i:Ｕ:j ﾊ: ﾉ: ｊ }::: / ◯ その、私も……。
} ＼. |::: |:.:|.:::｀~／:::/:::;ﾉ:／､::／:´:{:ﾉ:} ,ィ:| ｊ,ノ
ｊ ::::＼{::: |::|｀ ‐--‐ ´ _＿ ｀‐-‐ ｊ::::ｊ／:::ｉ::|
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◯ / ::::::/:/ ヽ￣:｀＞､ ｀ヽ.,ｨ'⌒ヽ.| |:|:: λ |:::{ |/ ,/＾ｊ ０
／ :::::::/:::| ｀ヽ:::::::::〉 ﾉ、 | |ｊ::: |::| |:::ｊ. ´ 〈,/｀Yヽ 。
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|「え？」
|
| 思わず毎晩の日課について言いかけて、みゆきは慌てて手を振って誤魔化した。
|
|「い、いえ、嬉しいです！」
|
| 極めて私的な感想ではあるが、どんな人間だって他人に褒められるのは嬉しい。
| かわいい、いいおっぱいしてる、切れてる、この外道などと言われたら、そりゃあ喜んでしまうものだ。
|
| ただし、性的なそれになると嬉しいよりもヒくことの方が多い。
| だが、好意を持つ相手から言われた場合は？
|
| 実はなかなか嬉しいものなのだ。
|
| ここで重要なのは、みゆきは自分の魅力について懐疑的であるということ。
| 性的な接触の一切が無いやる夫からの、魅力への言及は悦び以上の何者でもない。
|
|「な、なんでしたらその、実際に触れてみてもぉ！！」
|「アテレコすんなお」
|
| 声真似して煽る水銀燈を、やる夫が冷たく見る。
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. |: :./: :.V:!: : :,': :l 弋:ぅソ f＝ｌ 弋:ｿ ﾊ: :/: : : :j リ
. |:./: : : :i:.V:.,' _: l ゝ :::::::::::ノ:::::'.::::::::: ﾉ:}:/:／}:./
. !/: : : : ﾊ: V: : ::ゝ､ ` ー ´ - ＞イ:,/ﾘ /′
,:': : : : /: :l: : ::ﾊ: :j ｀ r -..=ァ:´: : :/:| な、なんでしたらその、
,.ｲ: : : : :/＝ﾏ: : : :.:ヽ l Y///,: : : :i':.:! 実際に触れてみても？
〃 j: : : : / マ: : : : :ﾊー - }///!: : : :l:.ﾊ
/' ,': : :.:,ｲ ヾ;＼: : : :ﾊ |/,ｲ{: : : : }: :ﾊ
〈〈 l: : :/:.:| ヽ ヽ: :: l |／ｨ!: : : : |: :.:ﾊ
ヾ:ヽ!:.:/:.: :l ＼ l: :,lﾊ_,j／ヽl: : : :.:l: : :.:l
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|「ぐ、卑怯な！」
|
| 悪乗りするみゆきから、やる夫が目を逸らした。
| 両腕で己の体を抱きしめ、豊満な胸を押し上げ強調するポーズ。
|
| 完璧な美貌の水銀燈が横にある以上、ちょっと色気を出しても無駄。
| みゆきはそう思っていた。
|
| だが逆、逆なのだ。
| 水銀燈は美に関しては圧倒的だ。
|
| 不朽の彫像や、傑作の名画でも及ばぬ完全美の具現だ。
| それゆえに肉体的現実的な、性の臭いがきわめて少ない。
|
| その点みゆきはたいへん肉感的で、不完全。
| 若さと生命力とエロスが溢れて大洪水状態である！
|
|「か、完全に吹っ切るまで申し訳ないから触らない約束だお！」
|「そんなのどうだっていいから、冬のせいにして暖めあえばいいじゃなぁい？」
|「おいバカやめろ！」
|
| 危険なことを口走る水銀燈。やる夫は悲鳴のような声を上げた。
|
|「そ、そうですよ、そういうのは……その」
|「あらぁ？ 色々教えてあげるわよぉ？」
|
| 血縁者とはいえ、超が付く美人が一緒では恋人であるみゆきが霞んでしまうではないか。
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直接的暗喩です。
私はけんぜんな淑女なので、男性の自慰行為を言及とかむりですぅ。
>>162
え？ 嬉しいよね？
・第二試合
・対戦チーム：グラディエーターズ
グラディウス・レッド 短柄 LV10
グラディウス・ブルー 短柄 LV10
グラディウス・イエロー 短柄 LV10
グラディウス・ブラック 短柄 LV10
(>>135-158)
アトラトル「命中です。《盾破》！
鉄鎖「イエローを転倒させたぞ。
アトラトル「追打ち！
ランス「盾が邪魔で倒しきれんか。ブルーに命中。戦意喪失だな？
打ち刀「流石は特大威力か。ブラックに二回命中！ 重傷だ。
スパイクロッド「二回命中。これでレッドとイエローは重傷だ！
『第二軍』
ランス 槍 LV10 【軽傷】
特大威力x1 重鎧盾 《騎馬》《盾破》《龍殺》
打ち刀 並柄 LV09 【負傷】
大威力x3 素肌 《必中》《集中》《狂人》
スパイクロッド 短柄 LV06 【負傷】
中威力x3 軽鎧 《威圧》
鉄鎖 待伏 LV08 【負傷】
転倒x2 軽鎧 《威嚇》
アトラトル 投擲 LV09
大威力x1 素肌 《必中》《盾破》《龍殺》
『敵軍』
グラディウス・レッド 短柄 LV10 【重傷】
グラディウス・ブルー 短柄 LV10 【負傷】
グラディウス・イエロー 短柄 LV10 【重傷】
グラディウス・ブラック 短柄 LV10 【重傷】
・勝利！
・MVP：ランス
・LVUP：ランス、アトラトル
・休憩で小回復
・進軍します
(>>159-160)23
・第三試合
・対戦チーム：麗しの三姉妹
『敵陣』
ハルバード：穂先 槍 LV10
ハルバード：斧刃 槍 LV10
ハルバード：尖嘴 槍 LV10
(>>161-179)
アトラトル「これって、《鎧通》いないと怖いような。穂先さんに命中。
穂先「負傷しました。
鉄鎖「正念場だな……斧刃と尖嘴を転倒！
斧刃「やーん、触手で縛っていやらしいことするきなのね！
尖嘴「エロマンガみたいに！ やったー！
鉄鎖「い、いや、鎖だから触手じゃないし。
アトラトル「せっかく二人倒れましたけど、攻撃回数敵に追い打ちは一回なのですぅ。
アトラトル「斧刃さんを負傷。
ランス「すかさず斧刃にチャージ！ 88ダメージ！
斧刃「やーん、二本差し！ 重傷なのぉ！
穂先「お、お姉さま。そろそろお控えに。
斧刃「やだー。うふふ《薙払》。打ち刀にだけ命中。
打ち刀「98。死んでないぞ。
尖嘴「だが重傷だろ？ ランスに命中。嫌がってもおっきいのが入るわよぉ！
ランス「盾で止めて……《鎧通》か！ 負傷！
穂先「では私が、スパイクロッドに《集中》。
スパイクロッド「て、鉄鎖の《威嚇》が無けりゃ死んでたよ。重傷。
穂先「勝ちましたね。
打ち刀「ところがぎっちょん！！
・打ち刀は《狂人》だ！！
打ち刀「尖嘴に命中！ 《集中》で命中、重傷！ 三発目！
穂先「かばう！
『第二軍』
ランス 槍 LV10 【負傷】
特大威力x1 重鎧盾 《騎馬》《盾破》《龍殺》
打ち刀 並柄 LV09 【重傷】
大威力x3 素肌 《必中》《集中》《狂人》
スパイクロッド 短柄 LV06 【重傷】
中威力x3 軽鎧 《威圧》
鉄鎖 待伏 LV08 【負傷】
転倒x2 軽鎧 《威嚇》
アトラトル 投擲 LV09
大威力x1 素肌 《必中》《盾破》《龍殺》
『敵陣』
ハルバード：穂先 槍 LV10 【重傷】
ハルバード：斧刃 槍 LV10 【重傷】
ハルバード：尖嘴 槍 LV10 【重傷】
・勝利！
・MVP：打ち刀
・LVUP：鉄鎖
・休憩で小回復
・決勝戦に進みます
やる夫さーん、
露出○なにーはらめぇよぉ ＞ 示威行為
ナイスバルク バリバリッ
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／ ノ ＼＼
／ （●） (●）＼ まあ、冗談は置いておいて。
／ ∪ （__人__） ＼
| ｀ ⌒´ |
＼ /⌒)⌒)⌒) ／/⌒)⌒)⌒)
ノ | / / / (⌒) / / / /
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| ｌ | ノ / ） /
ヽ ヽ_ヽ /' / ／
ヽ ＿＿ ／ / ／
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|「え？ 本気よぉ？ 血が濃くなってよりスゴイ子供が生まれるかもしれないわぁ」
|「頼むから黙ってくれお」
|
| 本気か冗談か分からない水銀燈。
| みゆきは戦々恐々とした。え？ なに？ そういうことなの？
|
|「冗談よぉ。んふふ〜。
| 私はあの子の代わりだから、お嫁さんじゃなくてお母さんになりたいの」
|
| みゆきは一瞬躊躇した。
| あの子。やる夫の母親だろうか。代わり。どういうことなのか。
|
| 聞いていいのか、聞くべきでないのか。
|
|「水銀燈さんはやる夫の死んだカーチャンの姉。家族だけどカーチャンじゃねーお。
| つーかカーチャンよりも感覚的には妹に近いお」
|
|「じゃあエッチなことしていいのぉ？」
|「ちょっと日本語でお願い」
|「？」
|
| 神話の時代の魔女に、近親婚の是非を尋ねても是と言われるに決まっている。
| 完膚なきまでのジェネレーションギャップである。
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,l.::|:.:!: |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : l: : ',
.ｨ |: |: |: |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ',: :.Λ
,|: |: |: |: |: : : : : : : : : : : : : : : : :./: : : : : : : : : : : : : :.l: : :.',: : :ﾊ
:|: |: |: |: : : : : : : : : : ::.Λ: : : :.:/: : : : : : : : : : : :.,': : :l: : : :',: : : ',
:|: |: : : : : : : : : : : : : :/ V: : :/: : : : : : : : : : : : ,j: : : l:: : : ﾊ.: : :.',
:: : : : : : : : : : : : : : : :ゝ-.': :,:': : : : : : : : : : : : :/:;!: : :l.: : : : ﾊ.: : ::',
:: : : : : : : : : : :U: : : : : : : :/: : : : : : : : : : : : ./:::::!: : :j: : : : : ﾊ.: : ::',
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:: : : :./:: : : :.,': : : : : ./: : : :,/: : : : : : : : /::::::::::::;':::/::::!:.:V: : : : :l: :.i: :.!
:: :.／: : : :.:,': : : : : :,': : :,:'-': : /: : : : :,:ｲ:::::::::::::/:/:::::,' : .;}: : : ::,': :j: : l だ、ダメです！
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:: : : : : : /: : : : : : :.l:. ﾊ {_',: .l.: : : :/:.:.::l:|: |:|/::::l:::::::::v: : :l: :./: : / jﾉ
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| インターセプトに入るみゆきに、水銀燈は含みある笑みで返した。
| 余裕しゃくしゃくな態度である。
|
|「そうよね〜、ところでやる夫さぁん。私飲みすぎたか眠くなっちゃったぁ」
|「アリカの……いや、やる夫のベッド貸してやるお」
|
| 心遣いを完全に無視した回答に、水銀燈も思わず苦笑。
|
|「え〜？ でも、使うんじゃあないのぉ？」
|「いや、今夜は出かける予定があるお。朝まで使っていい」
|
| 水銀燈が輝く瞳をみゆきに向けた。
| この世のどんな宝石よりも輝く、魔性の眼光を向けられたみゆきは、無言で頭を振る。
|
| 色素の薄い毛髪が、動きの後を追うようにゆっくりと揺れた。
| 出かける約束も予定もない。少なくともみゆきは知らない。
|
|「……みゆきちゃんと？」
|「いや、不人気と」
|
| 次の瞬間何が起きたか、みゆきは理解できなかった。
| それまで液状になったかのようにダレていた水銀燈が、突如高速で動いたのだ。
|
| 彼女は絹よりもなめらかな銀髪をなびかせ、やる夫の豊満な腹に顔をうずめた。
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､.__... ＝'''""＼￣ヽヽ:.:.l＼ヽ:.:.:l. :.|.:.: .:! :|:.: .|:.:
',＼｢ _＼ト､＼:.:.!:.:.|:.:.: .:.:| :.!: ｌ.:.:
:.! ヽ /:,:.! ヽヽ＼:.:.!:.:.: ..:.:./:./: ./.:.:
ヽ. ゝ l:.// トゝ.ヽヽ:.:. ..:.:.:.:///l:rｲ':´ ,:
ヽ ､ヘ ｰ' ヽヽ':.:.:.:／/イ'T, !:.: ..:./:
｀ -丶-_-- ――-_- ヽ',:／ ／,ﾘ ,ｲ/:.:.:／／
ヽ ｀￣ ￣｀ '′/' '' //:.:／/´:
ヽ:＼ l`￢'イイl:.:./:.:.:
＼ ヽヽ ', ,'.: | !:/:.:.:
:.:.. ＼｀`丶 ／ /:.: .!/:.:.: なんでよ！！
丶､:...ヽ､ ,. '´ , ':.:.: /:.: /
｀丶､ ,ィﾆ二二.._‐ .._ ／.: :.:./: ／／
〈 ､ 丁:.:ア´ ,. イ:.:.:.: ／,. ィ"／
ヽ二...__‐..二!／ ,.ィ:´:.:!:.:!:.:-'‐:.´ l |
,...:.':´:.:.l:.:.:.:l:.:.!:.: : / /
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| 片手で収まりきらない白く柔らかな腹のふくらみに、水銀燈が両腕をかける。
| 抱きつくような姿勢から、即座にブリッジ。
|
| 白い残像を残して、やる夫の巨体がマットに沈んだ。
|
|「何でよりによって今日この日に他の女と約束してるのよぉ！！？
| 生きたまま肉も骨も木端微塵にして串刺しで晒してカラスの餌にするわよぉ！」
|
| 鼻息荒く、物騒なことを叫ぶ水銀燈。
| 一瞬のバックドロップに、みゆきは声も出ない。
|
| そして、受け身もできずに脳天を強打したやる夫は弁明どころか意識もない。
|
|「三秒で答えなさぁい、でないと殺す」
|
| ぬるりと立ち、視線だけで相手を殺せそうな目つきでやる夫を見下ろす絶対美女。
| 一息ついて大きく息を吸う。
|
|「さんにいち！！」
|「早いです早いです早いです！！」
|
| 思わず止めに入るみゆき。止めなければ、やる夫の頭は石榴のように砕かれていただろう。
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-‐ ￣￣￣ 、
イ ハ l 、
∠∠、 /| | | { ヽ＼
__ ｨ≠￢:::i l /ｰト ｌ l ヽ ＼ '. ＼
／ｲ;小ヽノ::/ | | ｜ ＼ ヽ ＼ ﾞ, ｌ l ヽ
〈:{_/:/ |:|`ー' | |､rr==≧ﾐﾒ、 ＼ i ｲ | j '
ヾ:/ |:|｜ | ｌ `＿ゝ'ノヾｰ | ／ |/|.′ l
// |:|∧ | ｀''"￣` lイ=ﾐﾒ､lﾉ ′| |
/::/ |:| ヽ '、 、 ヽ'_ﾍ / / /| |
. /::/ |::| ＼ ヽ ／ ゛''/ イ／ jﾉ 止めないで、みゆきちゃん！
/{:::{ ﾚ′ |｀ ＼ r＝ｰ ､ ハ ﾉ } 女の敵よぉ！
､ / ￣ /| ｜ ￣`ー' / ／ ｲ
::::V / | | ｰ ニ´- ' ノ
―‐ 、 ､ / ！ | イ ｜
::.::.::.:..＼＼′ / ｌ ｜ ＿＿_ ＼ , i´ l |
.::.::.::.::.::...＼＼/ | |７/::.::.::.::＞ﾄ二. | ｜ |
::.::.::.::.::.::.::.:..＼＼_,l |/.::.::.:／ ´ 小:ﾄ＼｜ ｌ |
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|「え、ええと、私も困惑していますが、まずは話を聞きましょう」
|
| 実際、みゆきとしてはやる夫に裏切られたような気分になっている。
| 何で、今日に限って。しかも夜に？ 朝までってどういうこと？
|
| やる夫と真紅が、どんな理由で、どんな雰囲気で朝を迎えるのか。
| 想像するだけでみゆきの胸の奥に黒くて熱いマグマが煮えたぎり焦げ付いて行く。
|
| 水銀燈がコップに水を汲み、それをやる夫にかぶせた。
| 床と絨毯が濡れるが知ったことではない。掃除するのはやる夫だ。
|
|「う……ううう」
|「目覚めたわね、さあ、弁明なさぁい」
|
| 頭痛をこらえるように頭を振るやる夫。
| 後頭部を強打したのだ。頭が痛くないはずはない。
|
|「べ、べんめい？」
|「そうよぉ」
|「あー、ええと」
|
| 朦朧としているのだろう、こめかみをもみながら、やる夫はゆっくりと答えた。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ＼
／ ＼
| ＼ ,＿ | 不人気の問題をどーにかしてやるために、
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／ まずは誠をなぐらねーと……。
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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| そこまで呟いて、やる夫は正気に戻ったようだった。
| 目を見開き、狼狽した様子で水銀燈とみゆきを見比べる。
|
|「どういう意味です？」
|「……」
|
| 問い詰めるみゆき。問題？ 真紅が何か問題を抱えているのか？
| そのために、あの伊藤誠を殴る？
|
|「あんにゃろうを殴るのは賛成よぉ、一緒に行ってついでに殺していいかしらぁ？」
|「ダメだお、話がややこしくなる。それに誠は……」
|
| 喋りすぎそうになり、やる夫が口を閉ざした。
| みゆきは目一杯その双眸を見開いていた。何も言えなかった。
|
| むしろ口は閉じていた。歯を食いしばり、なにかに耐えていた。
| 何に耐えているかは自分でもわからなかった。
|
| だが、耐えていないと叫び出しそうなほど、胸の奥で黒いマグマが暴れていた。
|
|「確認だけど、あの真紅を助けるのね？」
|「そうだお」
|「ふぅん」
|
| 水銀燈が、思案深く目を細めた。
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みゆきさんでなくても助けるってばれちゃったーｗｗｗ
恋する乙女の法則が発動するのか・・
おい最後がおかしい。普通は幻滅してやる夫をボロクソに言って別の男をゲットしにいくｗｗｗ
みゆきさんが普通かどうかは知らぬ、知らぬ・・・
そもそも「生かしておけない」になる「恋する乙女」なら、この場で台所に飛び込んで包丁ひっつかんで刺しますな。
たぶん自分の太ももとかに。
石槍か。ふむ、上がりますな。
（なんだこいつエスパーか？ スーパーハカーか？）
鍛錬は経験点+30、金銭-30、糧秣-30ですよ。
なお、他のアルバイトは経験点+10の模様。
生まれてこのかたアルバイトのみを続けてきた投げ縄も本日の開墾でレベルアップですｗ
ちなみにレイピアとカトラスも訓練すればレベルアップするんで勝手に訓練しておきます。
『第一軍』
出撃コスト：120
大弓 弓矢 LV06 闘夜森船
大威力x1 重鎧 《騎乗》《必中》《盾破》
鉄鎖 待伏 LV09 闘夜森船狭
転倒x2 軽鎧 《威嚇》
竹槍 待伏 LV08 闘夜森船
低威力x3 素肌 《必中》《龍殺》《隠密》
アトラトル 投擲 LV10 闘夜森船
大威力x1 素肌 《必中》《盾破》《龍殺》
フンガムンガ 投擲 LV09 闘夜森船王
特大威力ｘ1 軽鎧 《鎧通》《威圧》《隠密》
・出陣します
・敵スパルタ人の夜営地を強襲します。
『敵軍』
スパルタ人A 並柄 LV15
スパルタ人B 並柄 LV15
スパルタ人C 並柄 LV15
スパルタ人D 並柄 LV15
スパルタ人E 並柄 LV15
・スパルタ人はドラゴンだ！
(>>192-213)
大弓「命中！ Ａを負傷させたでござる。
フンガムンガ「スマン外した！
アトラトル「マンモス殺すべし！ 命中！
フンガムンガ「マンモス？
鉄鎖「スパルタ人の【マンモス】だろ？
アトラトル「ち、ちがいますぅ！
鉄鎖「《威嚇》！ しかし並柄の回避修正が大きいな。命中24％か。
竹槍「オラは《必中》《隠密》で65％あるべ。ABに命中。Bにはクリティカルだべ！
アトラトル「追打ちでAを討ちました！
鉄鎖「さて、敵のターンだが。
竹槍「なむなむ。
鉄鎖「お前、《隠密》だから自分は安全だって思ってるだろ？
『第一軍』
大弓 弓矢 LV06 【壮健】
大威力x1 重鎧 《騎乗》《必中》《盾破》
鉄鎖 待伏 LV09 【死亡】
転倒x2 軽鎧 《威嚇》
竹槍 待伏 LV08 【壮健】
低威力x3 素肌 《必中》《龍殺》《隠密》
アトラトル 投擲 LV10 【壮健】
大威力x1 素肌 《必中》《盾破》《龍殺》
フンガムンガ 投擲 LV09 【壮健】
特大威力ｘ1 軽鎧 《鎧通》《威圧》《隠密》
『敵陣』
スパルタ人A 並柄 LV15 【死亡】
スパルタ人B 並柄 LV15 【死亡】
スパルタ人C 並柄 LV15 【壮健】
スパルタ人D 並柄 LV15 【壮健】
スパルタ人E 並柄 LV15 【壮健】
・戦術的勝利！
・MVP：鉄鎖
・LVUP:鉄鎖、竹槍、大弓
・我、昼戦ニ突入ス！
もういい！ 知らぬ！ 次の投下は5/7だ！
,. -ｭ,ﾆニ弌垳ト､
／r'^ _rﾍ-ﾍ/＾ヽr宀､
/!７ト､7′ 〃 ｌ ヽ ヽ
、 / l//L｣| ∧ｌ | ! |l ｜ ! ヽ
|:l / 〃 ||丁l トH､lV| |l /l } l |
ヾヽ / 〃 |l | ｌ抔卞｀ヽ{ /-ト/ //ﾘ
＼ ヽ:∨ |」 /ｌ| ｌﾄヽ￣ ﾚ'戎ｼ' ／ ′
⌒ヽ!ヽ._j＼＼ / 八 |ヽ __ ' ∠r1=彳
::..::..::..::..::..｀::..::ヽ/ ﾊ ヽ‐ >､ ,. イ| }::..｀ヽ、 手助けは要る？
::..::..::..::. ／⌒ヽ､ヽjノヽ.∨r 芥､/:./ /::..::..::.､＼
::..::..::.::./:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾ⌒Tlヽ｝l,ハ/-/ 〈::..::..::.｀ヾ＼ヽ
::..::..／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∨_ || ヽ:ﾚ':.:ヽ::..::..::.くヽ.j
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仆､ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ∨_l〉 ri心:.:',:.:.:.:.:ヽ｝
′ ＼_.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ∨_ ゞ=仆ヽ.:.:_ノ
, 〉个､:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.∨_ ｌ }〉:.}'´
| く_/^ﾄ､>:.∧:.:.:.:.:.:.:.:.:. ∨_ﾘ 〈|:.ハ
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|「……もしかしたら知恵を借りることになるかもしれないお」
|「そう」
|
| それだけで、水銀燈は納得した様子で口を閉ざした。
| 視線がみゆきに向く。私はもういい。そんな視線。
|
| みゆきは理解できなかった。なんで引き下がってしまうの！？
| 水銀燈さんは、私の味方じゃあなかったの！！？
|
|「先輩は……」
|「みゆきちゃん、ストップよ」
|
| 私と真紅さんとどちらが大事なんですか？
| みゆきの問いかけを、水銀燈が静かに遮った。
|
| 有無を言わせぬ強い眼差しに、しかしみゆきは怯まない。
|
|「それはダメ。それだけはダメよぉ」
|「？？」
|
| みゆきが何を言おうとしたのか、やる夫は分からないようだった。
| だが水銀燈は、すべて理解したうえでみゆきを止めている。
|
| やっぱりこの女は、私の敵だ。
| やる夫さんを、私から奪う気なのだ。
|
|「それ以上は、みゆきちゃんのやる夫さんを殺すわよ」
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__ ,ｨ⌒ヽ
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/: : : : : : : : : : : : : : : `:ヽ、
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,. :'´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
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l, ´l: : : l: : .::. : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : l
|: : /{: : : l: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ::!
V:l' l:V: _l;l:: : : :.l: : : : : : : : : : : : :.,: : : : : :l
ﾏ! ',:Y l:!.: : : :l: : : : : : : : : : : : .;l : : : :l::,' ……なにがです？
ゞ_,|: : : :/: : : : : : : : : : : : ,' : : : :.l:′
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| 出来るだけ冷静に、怒鳴り散らしたい勢いを抑えて。
| 絞り出すような声で、みゆきは尋ねた。
|
|「>>135を思い出して、まだ舌の根も乾いていないはずよねぇ」
|
| そんな程度のメタでは、みゆきの怒りは抑えられない。
| それどころか、シリアスにメタを入れてくることに対する激しい怒りすらあった。
|
|「だからなんですか？」
|「ヒーローなんでしょ？ やる夫さん」
|
| ドキリとして、みゆきは言葉を失った。
| 臆病だけれど、勇気を振り絞って助けに来てくれる。みゆきはそんなやる夫に恋をした。
|
|「……」
|「やる夫さんは困ってる人を放っておけない人よね」
|「……知ってます」
|
| よく知っている。だから好きになった。
| 札付きのやらない夫も、実際そうなのだと言う。
|
| おかげでやる夫は学内で悪名高かった。
| 具体的な何かがあったわけではないが、後ろ指さされていた。
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／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／ どーせやる夫は馬鹿ですお。
r､ r､／ ヘ
ヽヾ 三 |:l1 ヽ
＼>ヽ/ |｀ ｝ | |
ﾍ lノ `'ｿ | |
/´ / |. |
＼. ｨ | |
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|「でも大好きです」
|
| みゆきの言葉に、やる夫が瞬間沸騰した。
| そんな言葉をかけられるとは思っていなかったのだろう。
|
| 逆に冷却されたみゆきが、寂しさが溢れないように慎重に言葉を選ぶ。
|
|「先輩、真紅さんのこと聞いてもいいですか？」
|「……」
|
| 沈黙し、視線を逸らすやる夫。
| みゆきは落胆し、しかしそれを見せないように努力した。
|
| みゆきは馬鹿ではないつもりだ。
| 水銀燈の考えも理解していると思う。
|
| ここでやる夫を止めたら、みゆきは矛盾を抱える。
| みゆきの好きなやる夫を、みゆきの言葉で死なせてしまう。
|
| どれだけ胸の奥で黒いマグマが暴れても、燃え上がる想いに狂いそうでも、
| これ以上はいけないのだ。
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仄いrく艾艾艾艾癶、
r巛Uj〉j〉j〉::::::::::::::::::::辷う、 ､
. ｎrｎrｎrｎrｎrｎrｎ:::::::::::::::::::辷う、 ＼
／乂乂乂乂乂乂乂ｎrｎ:::::::::::::::辷う、 ヽ
／￣ 乂乂ｎrｎ::::::::::辷う、
＼ 乂乂ｎ::::::::::rう)、
/ :.＼ ＼ 乂ｎ:::::::::rう) ′
ｉ : : ::::::. ヽ :.＼ 乂辷辷く ′
::|:. ￤ :...:|....: i :::| _}L.:. 艾艾艾＼
::|:: |:::::ｌ|:.. . .::::::|:: 斗r七' |l ￤ Y⌒Y^ ＼ | 苦しい？
::|:: |:: 八:::::::::::::|ｌ::ｌ::| 〕斗ぅ弌7. |ｌ |: V⌒ト､ ＼＼ |
: |:八:. ､:::: ヽ :::::::八乂{ｱ乂`ｰク |l ﾊ:. | |ｌ ＼ ＼＼
: |::::: ＼＼⌒＼/ ''¨゛´ 八Λ|:: | |:) 八. ＼ |
八::::::::::|＼ 托笊! ./ .:/ ..:|:: ﾊ! ,.:代＿＿___＼＿＿
:. ＼ : |＼＼`ｰ1 /／〉..:/|. / 「 ::|ｌ |. ) )
＼ 丿:::::ヽヽ込､ /／ ′/ :|ｌ | (
＼ 乂__込、 _ ｰ ./ / |ｌ ﾄ､
. （ |:l ＼ ＼ ./ /:/... 八|: |:::＼
＼|:l:: |:ﾊ ヽ イ..::/ /:/ /|:: |: |:::::::::＼
|:l:: |:: |: |: 个ヲ 厂 ハ/ 厶仏:::/＾|:: | . ├――=ミ
|:l:: |:: |: |: | ﾉ/: 厂＼彡く／|..../: : |:: |: |
|:l:: |:: |: |: ｜}/ 厂￣ ,ィ__八/: : : |:: |: |
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| 水銀燈の問いかけに、みゆきは無言でうなずいた。
| やる夫が口を開いたが、かける言葉が思い浮かばないのか黙り込む。
|
|「好きの気持ちは容易く嫌いに変わるわ。ことわざにもあるでしょう？」
|「はい」
|
| 可愛さ余って憎さ百倍。
| みゆきは、やる夫が好きだ。それだけに、その可能性を突き付けられると胸が痛んだ。
|
| 好きではなくなってしまう可能性。嫌いになってしまう可能性。
| 考えたくはない。だけれど、目の前に。いや、胸の奥に。
|
| 黒いマグマが渦を巻いている。
|
|「気の利いたセリフを言いなさぁい」
|「え？ 無理だお」
|
| みゆきが自身の暗黒を見つめている間に、水銀燈が矛先をやる夫に向けていた。
|
|「いいから」
|「え、ええと？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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.. ＿＿＿_
／ ― -＼
. . ／ （●） （●）
／ （__人__） ＼ やる夫は高良といると安心するし、心休まるお。
| ｀ ⌒´ | だから絶対に高良のところに戻ってくる。
. ＼ ／
. ノ ＼
／´ ヽ
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|「みゆきちゃんは今が寂しいのよ！！」
|
| 水銀燈の両手チョップがやる夫の左右の鎖骨を強打した。
| もんどり打つやる夫を一瞥もくれず、水銀燈はみゆきを振りむいた。
|
|「ほら追打ちタイミングよぉ！」
|「え？ でも」
|「殴らなくても言いたいことを言えばいいのよぉ」
|「……」
|
| ここでの水銀燈の行動は悪手であった。みゆきは、暴力の味を知ったら抜けられないタイプである。
| 一度やる夫を殴り始めたらだんだんエスカレートしていつかは酔って酒瓶で頭を殴ること間違いなしだ。
|
|「寂しいから、時間が空いたら会いに来てください。私の都合はいいですから。
| 先輩より大事なことなんて、私にはないですから」
|
| みゆきの言葉に、やる夫は神妙にうなずいた。
| 水銀燈はみゆきの中の暴力という獣を起こすことは失敗した。
|
| しかし、別の怪物を目覚めさせる結果となった。
| これが、まだ幼い恋人たちの関係を大きく狂わせることになる。
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そういうものなのか…
この手の感性だけはまるでわからんぜ…
よくわからないけど
暴力を利用すれば相手は屈服すると思い込んでしまう危険があります。
たとえばこの状況でやる夫にビンタして要求を飲ませたとすると、
『やる夫が要求を飲まない場合は暴力を振るえば要求が通るかもしれない』という無意識が生まれます。
結果、ビンタはパンチになり、食器の破壊やガラケーの逆向き折り曲げなどに変化していきます。
この手のパターンは暴力を知らずに育った人間が、暴力の限度を知らずにエスカレートさせていった結果発生します。
暴力を知っている人間は、そもそも人間関係に暴力を持ちこまないか、あるいは適切な痛みで屈服させ、必要以上に打撃しないことを好むのです。
私は被害側の経験者であり、
私自身は格闘技経験者ゆえに戯れと個人的嗜好のために痛みを与え愉しむことはあっても、
エスカレートした必要以上の暴力は振るったことがありません！
＞個人的嗜好
＞個人的嗜好
なにか？
それとも・・・急所に攻撃するのが個人的嗜好なんだろうか？
好奇心と欲求だよ！
ギガライン＆プロバイダ変更記念カキコ
|「じゃあスシかな。なにか食いたいものがあるなら聞くぜ」
|
| 余裕綽々の態度でやる夫たちを招き入れた誠。
| 不人気はそのムカつくニヤケ面をボコボコにしてやると息巻いていたが、
| 実際に会ってしまうとそうは行かないようだった。
|
|「くっ……タダメシで釣るなんて卑怯な……絶対に寿司なんかに負けたりしないのだわ！」
|「返事がないならスシでいいな。特上を……高校生なら結構食うよな。七人前」
|「はぅッ、特上！？」
|
| その外見からトロだ赤身だ軍艦だと揶揄されることもある不人気は、
| 特上寿司の魔力に膝を折った。
|
|「誠、不人気は欠食児童だから八人前で頼むお」
|「共食いじゃねーか。八人前だな。酒は？」
|
| 顔を見合わせる刹那と委員長。
|
|「教育者が生徒に酒勧めてんじゃねーお」
|「いいんだよ、オレが飲ませたなら退学も停学もないし、警察に捕まっても揉み消してやる」
|
| 大変教育に悪い。
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ というわけで高良と恋人になったお。
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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|「待ちなさいやる夫。ええと？ 恋人との時間を打ち切って来たと？」
|「約束だし」
|
| 夕方五時過ぎ、やる夫と不人気は駅前で落ち合った。
| まだ日は明るいが、だんだんと傾いてくる時期だ。
|
| 夕方になると急に冷え込むし、傾きだしたら日が沈むのは早い。
| そんな時間に、見た目は小学生の人形じみた少女と連れ立って歩くのは
危険だ。
|
| などと危惧していたやる夫は、彼女が男連れで現れたことにこっそり安
堵した。
|
|「お譲ちゃん、お兄ちゃんたちとお出かけかお？」
|「二人ともいい男でしょう？」
|
| 片方とは顔見知りで、もう一人は初対面だ。
| 二人とも、硬い視線をやる夫に向けている。
|
|「入即貸本の入即やる夫。アリカのお隣さんだお」
|「そこまでは知っている」
|
| 顔見知りの方が鋼のような目を一時も逸らさぬままに言った。
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`＝=. ､
l､＿＿__ ´￣￣＼`ｙ一 ＝‐
` ー‐ｯ ￣｀ ､
, ´ ＼
／ｧ , ⌒ ｙ― ､, -､ _ ＼ ノ}
. ´ ／､ﾚ' / ／ ノ´ ） ｀¨¨´ /
l､__／ ／ ∠ ／ ／ イゝ_／ ‐＜
へ.` ー‐ ク ｀てゝ≦｀¨´｀ヽ.∠ __ |＼ ／￣｀ヽ
＼ ／ ／ ン´ , ､--< ﾑ | ､三ソ まあ、自己紹介が先だな。
ヽ ⌒ ＿＿＿＿ ィl /ｨ心| ﾚﾉ/｜|ヽ オレがガンダムだ！
∧ , ＜| l_ゝ l`ﾚ=l'´)ツ//__/イ ∧!ｚ
VTｌ| || 代心ゝ- ‐彡ｆ Vｊ ﾊl ⌒)＿
ｖﾉ' /||＼ ＼ﾂ l , {'⌒l |l′／/⌒Y ＼
＿_ｊ/ / ゝ ｆ｀ヽ ≧ 丶,. -‐ 'l l／ ' !
-‐＜ ア _ ﾍ V‐く ＞ __／| | 」 |￣ _
ー―-- '⌒ 一'´/ ∧ Vゝ ／| V | ｜＿/ V
＼ ＼ / ' へ ＼＼ ／ ｜ V | |ニ/ }
― ､V / l ＼ ＼ ﾑ V∧ ｌ l l
／ / | /ヽ. ＼_彡ﾞl ＼! ｖ l |
/ / ｜ /＼∧ l Vl |
＿＿＿/ / / ｀ヽ ヽ `| ｛
. / /／￣￣｀丶､ ｝ ＿＿ V
/ / ゝ-―- ､ ｀¨¨¨´ ＼ ､ |
| / / ＼ ＼＼ ｜
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|「いつもアリカがお世話になってるお」
|「いや、こちらこそ真紅が迷惑をかけている」
|
| 聖永刹那。自称ガンダム。
| 紅マグロと同じ境遇の少年。『バス事故』で家族を失った孤児の一人だ。
|
| 『バス事故』の際に、『獣のような怪物』と『それを斃す天使』を両方見た人物であり、
| 獣を倒したのはガンダムであると主張する狂人である。
|
| であるが、それは狂気が見せた幻覚だとは言い切れない。
| 悪魔や異能の世界に踏み込んだやる夫は、少なくともそう思う。
|
|「はじめまして、おれは「委員長だ」
|
| もう一人の少年。ひょろりと高い背にざんばら髪。三白眼。
| なんらかのスポーツをやっているのだろう。身のこなしが軽い。
|
|「え？」「委員長だ」
|「だそうよ。彼はAAのないモブも同然だから名前を覚えなくていいわ」
|
| 哀れ委員長は名乗る権利すらなく、肩を落とした。
| しかし、とやる夫は思う。
|
| メガネでも七三でもない。どちらかと言えば快活なスポーツマンタイプ。
| それで委員長とは。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼ 面倒見の鬼で、
／ ‐=・=‐ ‐=・= ＼ こいつらの厄介事に巻き込まれた系かお？
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／
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|「御明察っす」
|
| やる夫の同情をこめた視線を、委員長は頭をかいて受け止めた。
| 首から肩にかけての筋肉の張りと、シャツの下の胸の盛り上がりが見てとれる。
|
| 首を鍛えている。スポーツだったらサッカーか？ あるいは格闘技だろうか。
|
|「刹那はいいとして、委員長は親御さんには？ 泊まりの準備云々聞いてるかお？」
|「親、いないんで」
|
| 何事でも無いかのように答える委員長、おかげでやる夫は大いに狼狽した。
|
|「悪いお」
|「いいえ、今はおばさんちで居候です」
|
| おば。やる夫はある種の共感を覚えた。
| やる夫の父親はクソッタレなことに生きていやがるが、家には寄りつかない。
|
| そして、今の家族と言ったら水銀燈とかアリカになる。
| あるいは……誠か。
|
|「ところでなにか武器持ってるかお？」
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_,.＿
, -ｲ'´ ｝
, =' r‐､ノ しﾍ
／ _ j 丿
／ 「 └'／ └ i
/ r:ﾉ -=― - . ｣
__ /｀=へ／! Ｌｲ ､ 丶 {._
l￣｀ヽ! /.:::/ __〕l ｜ ! ヽ. ＼ _｝
／l二二lツ ｰｌ.::::l /! ノ: l ! : Y
ヽ /／|_ l:::::{ ' L}｜ l |! l! l |
ヽイ ｌj｣ !:::::l ｒ ｿ !-―l:. lｽ ﾉ｣ ﾉ!'
/' | ｌ|_ l::::::', ﾊﾉヽlゝ.:ｫｔ￢ﾐ ヽ'ｨｫ!ｲ ええ、ビール瓶を用意してるわ。
,ｲ , l|::!.j iｲﾊﾇｌ_） :l ゞ= ' ヾｉ l
l::| / :/!:| ヽﾍゞこｿ:::i l:!、 _,' ! ',
ｌ::|' .:l |｣ l::ﾄ､ー'ヾj l ｌ:＼ ´ /ヽ i
ヽ! ｌ｜ l_j! lｰ-/ l≧:::::V:ｚ.--イ＼|ヽ:
/ , l | :l ｉ. /.::::|::::::::::{kﾁ}::::::::.ヽ |
/ , ,: / :l/｣ /､:::::.ヽ:::'´::'tｲ:.'::::::::/__, へ:-―- ､_
/ ,: l , ／ / Ｌ. ヽ::ｔ:_｝::::::::l|::::::::.ｲヽ, ｒ' ｀'ー'-ｰ_､
/ /! ｌ j/ _ 二＞｀二. ７.／.ｌト､:/ー=ゝ /￣ ト--ｔZﾌﾉ┘
/ , ｉ l ＿, -i' ｀丶- '´／‐'´l.:::::::iヽ/ 〃 '´＿｣.｣
// ,' l | _/ └ｧ ﾑ::::::.∨ / i |ヽﾉ
// l ｌ| !、 /ー､ ｢´ , ´￣! /ノ
/' / l: i ￣ヽ、l＿､__i i:| ／i / l' ｲ´入
,ｲ l l ! i ´ ｌ i : ﾌ´ l ヽ二ノ _, ∠.こノ
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| これから誠の家に殴りこみである。
| だが、本気でカチこんだら真っ赤なシミが四つ残るのは目に見えていた。
|
| 何しろあの家は罠の家だ。
| 呪文を唱えれば敷物が動くとか言っていたし、槍衾や落とし穴があってもおかしくはない。
|
|「一応アーミーナイフぐらいは持ってますけど」
|「最近の高校生はアーミーナイフ持ち歩いてんのかお、コワイ」
|「まあ物騒。こわいのだわ」
|
| 大人二人に胡乱な目を向けられて、困惑の委員長。
| 刹那は無言で首を振った。
|
|「オレはガンダムだからな。武器は必要ない」
|
| 非武装のガンダムなんてアストレイ・アウトフレームじゃないんだから。
| というツッコミ以前の問題として、ガンダムは兵器なので刹那そのものが武器と言うことになる。
|
|「じゃあ行きましょう」
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二ヽ,,..::"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀:..､
／::::::::｀`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::ヽ
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/:::::::::::::::i:::::i!::::::::::::::::ヾ:::::,,∠,､_:::::＼::::＼:::::',
i::::::::::::::::!:::::i i:::::::::l::::::::イ＼＼＼:::::::::＼:::＼::',
l:::::::i::::::::!::::i,,ゞ;::::::::i:::::::::l >≧r､＼::::::ヾ＼_::＞
ｌ::::::i!:::i::::l;/i ._,,＼::::!､::::::l 辻ヾ〉 ＼:::ヾ）::::＞
i:::::ﾊ::::|::::l:::i〈｀（ﾍ＼! ＼:', ゞ-′ ラ∨/"´
l:::i l:::|::::lヾ､ 弋i;） ヽ ＼ ┌::ソﾉ よーし、まずメシにするか。
∨ l::::l::::l:::＼ " ﾍ::::/ なにがいい？ ピザでも頼むか？
＼|＼!＼ ′ ∨
ヾ ヾ ､ ｰ ´ , ゝ､
｀ ､ , ′ ／ ＼＿
｀ ｰ ＜ ／´ ／:::::￣｀ｰ-
_ノ´∧_∧ ／::::::::::::::::::::::
:::::´￣／ /〈::ヾ∧ /:::::::::::::::::::::
:::::::／ / ﾉ::::〈 ヽ /::::::::::::::::::::
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|「ピザは昼間たらふく食ったから別のモンで頼むお」
|「じゃあスシかな。なにか食いたいものがあるなら聞くぜ」
|
| 余裕綽々の態度でやる夫たちを招き入れた誠。
| 不人気はそのムカつくニヤケ面をボコボコにしてやると息巻いていたが、
| 実際に会ってしまうとそうは行かないようだった。
|
|「くっ……タダメシで釣るなんて卑怯な……絶対に寿司なんかに負けたりしないのだわ！」
|「返事がないならスシでいいな。特上を……高校生なら結構食うよな。七人前」
|「はぅッ、特上！？」
|
| その外見からトロだ赤身だ軍艦だと揶揄されることもある不人気は、
| 特上寿司の魔力に膝を折った。
|
|「誠、不人気は欠食児童だから八人前で頼むお」
|「共食いじゃねーか。八人前だな。酒は？」
|
| 顔を見合わせる刹那と委員長。
|
|「教育者が生徒に酒勧めてんじゃねーお」
|「いいんだよ、オレが飲ませたなら退学も停学もないし、警察に捕まっても揉み消してやる」
|
| 大変教育に悪い。
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追い詰めてはいけない。
『第一軍』
出撃コスト：100
トライデント 槍 LV03 闘夜森船王
中威力x2 軽鎧 《水戦》
マカナ 長柄 LV04 闘夜森船王
中威力x3 軽鎧 《狂人》《隠密》《出血》
七支刀 並柄 LV06 闘夜森船狭王
中威力x3 軽鎧 《龍殺》《威圧》《出血》
レイピア 並柄 LV08 闘夜森船路狭王
中威力x2 素肌 《必中》《反撃》
フンガムンガ 投擲 LV09 闘夜森船王
特大威力ｘ1 軽鎧 《鎧通》《威圧》《隠密》
・悪逆非道の皇帝を打破せよ！
・出陣します
(>>335)3皇帝親衛隊と遭遇！！
『敵軍』
ロングソード LV12 並柄
メイスA LV6 短柄
メイスB LV6 短柄
トライデント「がんばれ♥ がんばれ♥
マカナ「がんばれ♥ がんばれ♥
フンガムンガ「がんばれ♥ がんばれ♥
七支刀「簪の出番のような気がいたしますわ。
レイピア「海女さん、ジャガー娘、アフリカン娘。褐色肌祭りだな。
(>>336-353)
七支刀「三発命中、かすり傷すぎて出血効果が。
レイピア「メイス二人に命中。盾で鎧相手だとなあ。
七支刀「ロングソードの攻撃をよけました。メイスも回避。回避強化のおかげですわね。
レイピア「ロンソくらった。メイスはよけたぞ。
レイピア「反撃！ ふ、負傷にはした。
『自軍』
七支刀 並柄 LV06 【壮健】
中威力x3 軽鎧 《龍殺》《威圧》《出血》
レイピア 並柄 LV08 【負傷】
中威力x2 素肌 《必中》《反撃》
『敵軍』
ロングソード LV12 並柄 【軽傷】
メイスA LV6 短柄 【軽傷】
メイスB LV6 短柄 【負傷】
・引き分け！
・MVP：レイピア
・LVUP：トライデント
・撤退します…
出陣コスト：100
治療コスト：5
. /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : : |: : : : :|: : : : :|: : | ,: : : ',: : :ヽ : :!
|: : |: : : : : |: / ＼: : /|:.: :: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
|: : |: : : : /!jニﾆｺ| :/ |:./iﾆニＶ: :|.: : : | V でだ。
＜ : _: : : / 〈fｴ:ｴi |/ ﾚ fｴｴ) |./ヽ: : | 出前が届くまでは水で我慢しろ。
＜:: |. 小{ ﾚ{:.| ヽ:|
厶ﾍ ﾊ ＞ {ﾊ/ .V 茶なんかねーし。
＼_! !
ヽ !ー―‐r ／
___,ｒ| ＼ ｀ー―' ／
／:/::::| ＼ ヽ _￣ ィ ´ (⌒)
／::::::/::::::| ＼ ´ ∧＞､ ﾉ ~.ﾚ-r┐､
／:::::::::::/::::::::| ＼ / !＼::`ｰ- ､ ノ__ | .| | |
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| この家の冷蔵庫はアルコールの類とつまみしか入っていない。
|
|「チーズとナッツ出すから皿出せお。あと、炭酸水ならある」
|「わお、なんでお前オレより詳しいの？ キモチワルイ」
|
| 先日酒盛りした際に、冷蔵庫の中身は確認させてもらっていたのだ。
| 器を取りに行く誠を尻目に、やる夫は冷蔵庫から取り出した瓶の炭酸水を三人に配った。
|
|「ああ、お前らのことは生年月日から本籍、初体験の日時まで知ってるが、
| お前らはオレのことよく知らねーよな？」
|
| 女性含むメンバー相手に、初っ端からセクハラ発言の誠。
| 狼狽する委員長と、鋼鉄の眼差しを細める刹那。しかし唯一の女は微動だにしない。
|
|「お願いするわ。あなたのこと、ただの女好きで博識なカルト教祖だと思っていたの」
|「大体あってる」
|
| クツクツと嗤い、誠が大皿にミックスナッツをぶちまけた。
| やる夫がチーズ類を皿に盛り付ける。
|
| 立派な台所はあるが、誰も使わないのだろう。
| シンクも包丁も新品である。
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／:::／:::::::::::::::::／:::::::／:::::::／::::::::::::::::::ヽ::ヽ
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/:::イ::/:::::::::::::::::/:/／:::::::／:::/:::/:::::ヽ::::::|::::::::::l:∧
/::/./:/::::､＿＿_l／＿::イ:::::::/:::/!::::::::∧:::l:::::::|:::V∧
. |:/. ':::|:::::::::￣￣「:Ａｌ‐Ⅵl::::::::!::/_ｊ:ｨ／―Ⅵ::::::|::::::V::`ー
. l:| |::ｌ|::l:::::::|:::::::::ﾄｌ万汀lﾍ::::::|::|´ﾅ万ﾃ汀ﾘ:::::::'::l::::::::`=≦
. `l ⅥⅥ::::::Ｖ::::::| ､)ｔ乏 ヽヽ:|::| _)ｔ乏ﾉ/::::::/:;:ト≧z―‐
｀l Ⅵ:::::::V:､:ヽ ,|Ⅵ ／:::／/:ｌ:|
`l::::|::|:ヽヽ:＼_ {| , ‐彡 ｧｌ::::/l/l′
ｊ::∧ﾄ､:､:::≧￣ _ _ ／:/l::/ ′ うちの理事長だと聞いた。
/´ l ヽA::::ｌ>、 ´ － ｀ ｲl:.从ｊ/
ｒ‐┤ ヽ!＼ヽ､＿ ィ／_!'⌒ｌ､
＿ｒ‐/ , 人 ＞┴‐┴＜ ∧＼― ､
_／ , / l∧ ＼ ／ lﾉ ) ＼
. ／/ l / ｛､ ＼ ` ー--一 ／ ／ ／ ) |― ､
. / | | !､｀ ≧＝―― ´― ´￣ .∠ /
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|「その通り。と言いたいが、正確にはちょいと違う。
| あの学校を創立したのもオレで、理事会は全員オレの別名義だ」
|
| 無茶苦茶である。だが、それ以上に理解に苦しむ発言であった。
| なぜなら、彼らの通う高校は、設立50年を越えている。
|
|「その見た目は偽物なのか？」
|「いや、本物だぜ委員長。老いないだけさ」
|
| 誠にまであだ名で呼ばれ、委員長は渋面を作った。
| その表情に気付いたのか、誠はニヤついた顔で何かを呟いた。
|
| やる夫の知らない言語、委員長の顔色が変わる。
|
|「どっちの名前で呼ばれるのがいい？」
|「テメェ……！」
|
| 燃える様な怒気を放ち、委員長が椅子を蹴り立ち上がった。
| その横で、刹那がゆっくりと姿勢を変える。不人気は見ないふりだ。
|
|「やる夫、紅茶を出しなさい」
|「ねえお」
|
| 誠は挑発するような嘲りの笑みを浮かべ、委員長の怒りを正面から受け止める。
| 若造の憤怒など、痒くもないといった風情。
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..::´::::::::::::::::〃⌒ヽ､
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ｊ/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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､__Ⅳ::::/:::i:::::ﾒ__!::::::::::::匕ヽ:::::::::::::ハ:| ナイフを出しても構わんぜ、言ったろ？
ﾌ::l::ｒ'l:::/!::/ｾﾐl::::::ﾊ:::尨_ハ::::::i:::ﾄ､`! 『初体験』の日時も知ってるって。
´￣]八!/i」:i ￣ !／ Ⅳ 小ハl －､_
／ ｊ､八i ´ ｊ〉 爪i:::::::::::::::::::::::::ﾊ それどころか相手も……。
／:::::::ハ::::ｊヽ､ ｔ ＝ヽ ｨ:::::::!:::::::::::::::〉:::::,:: !
／:::::::::::::::｜:::::{ ＞ __／ ,!:::::::!:::::::::::〈:::::::/::::{
, :::::::::::::::〈::::l::::::::ｔ/ ∨;;;;/ヽ !:::::::i:::::::::::::::ｖ::/:::::｛
. /::::::::::::::::::::::::,:::、:::::＼ {::::::} ':::::::::!:::::::::::::::ﾚﾞ:::::::::i
{:::::::::::〈｀ヽ:::::ｊ__::＼::::::::ヽ::::} /:::::::::::〉:::::::::::::{:::::::::::::ヽ
. 〉::::＼::ヽ ∨ )::}:::::>= ､::,｀=ｖ:::::::::/::::::::::::_′::::::::::::::ﾞ,
|:::::::::::丶} ;' 厶_/ // /!:::::::/:::::::::::::! {::::::::::::::::::::!
|::::::::::::::::∨ / / // ,..::!:::::/:::::::::::::::}！::::::::::::::::ⅰ
{::::::::::::::::..′/、 / 〃丶,′!::::.ﾞ::::::::::::::::ヽｊ:::::::::::::::::::｛
ヽ::::::::::::〈 ﾞ ｙ / /､丿ｲ:::::::::::::::::::::::〉::::::::::::::::::ム
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|「！！」
|
| 高そうなテーブルに、華麗なジャンプで飛び乗った委員長。
| 魔法のように手の中に収まったアーミーナイフ。使いこまれた鈍い輝き。
|
| 紅マグロが素早い動きでつまみの皿を確保。
| テーブルの真ん中に生けられていた花瓶を、委員長が誠に蹴り飛ばした。
|
| やらない夫以上に荒事慣れした動き。
| やる夫が茫然とする間に、委員長があおむけに転倒した。
|
| 彼の脚の間に、刹那の取りだしたビール瓶が挟まっている。
| そして、委員長がテーブルから落下し、背中から絨毯に落下するまでの一瞬に、刹那は身を翻していた。
|
|「それぐらいにしてもらおう」
|
| 滑るように誠に肉薄する刹那。
| アリカややらない夫の動きを見慣れたやる夫でも惚れ惚れするような滑らかな体重移動。
|
| だが誠は一切の抵抗もせず、見下したような視線のままで。
| まず顔面で花瓶を受け止めた。
|
|「ぐェっっ！！？」
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ヽ､.........＿
__,.ﾆｰ_､::::::ヽヽ
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| のけぞり椅子ごと倒れる誠。
| 落下した委員長が、衝撃で目を白黒させる。
|
|「刹那。いいからやっちまいなさい、そいつはギャグ時空人だから殺しても死なないわ」
|「いや、死ぬぜ？ マジで死ぬ。生き返るけどな」
|
| 鼻声で誠が言い返す。結構固い花瓶だったようだ。
| 花瓶そのものは傷一つなく、誠はぼたぼたと赤い鼻血をこぼしていた。
|
|「よっこらしょ」
|
| 立ち上がった時、誠の鼻血は止まっていた。
| しかし着ていたお高そうなブランド服は水と血でまだらに染まっている。
|
|「おい紅マグロ、狂犬どもの躾はちゃんとしてくれよ」
|「あら？ あなたの生徒なのでしょう？」
|「違いない」
|
| 殺意でギラつかせた視線のままで、しかし怒りの放出は止め、委員長が立ち上がる。
| 誠に対する強い敵意。悪い癖だなと、やる夫は思った。
|
| コミュニケーション手段として、相手の嫌な所を衝いて敵意を煽る。
| そして攻撃を制圧して見せて、優位をもぎ取る。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ お前、嫌な奴に見えるから
| （__人__） | あまりその癖好ましくねえお。
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「いいんだよ、オレは嫌な奴だから」
|
| 悪徳の外套を見せびらかすように着込む誠。
| その本質が、善とは言えないが邪悪ではないことをやる夫は知っていた。
|
|「それにな、やる夫。オレはそいつに落胆してるんだよ。
| せっかく与えてもらった平和の中で、仮面かぶって笑ってるくせに……」
|
| 瞬間、委員長が口を開く前に刹那の手が誠の襟をつかんだ。
| 少年の目は鋼鉄のように冷たく、一切の慈悲がなかった。
|
| 刹那は警句も述べなかったが、完全な威嚇であった。
| これ以上何か言ったらタダでは済まさない。そう、その眼が語っていた。
|
|「ようやくやる気になったんだろ？ 今更」
|
| せせら笑う誠に対し、拳を握りかけた刹那が、虚を突かれたように委員長を見た。
| だが、三白眼の少年もまた、誠の言葉の意味を取りかねていた。
|
|「え？ ちょっと待て」
|
| 二人の態度に、誠もまた知ったかぶりの仮面を投げ捨てた。
| なにかが決定的にずれている。それは誰もが感じていた。
|
|「寿司が届いたのだわ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=50324263
せんでん せんでん なのだ。
:./ f: : : : : ヾ三三三!: : :〔__l ヽｌﾐ} lヾﾐx
/ ヽ ヽゞ‐' ヽ: : ヾ〃 y '}: : : : :} ,lミ!. l ヾﾐ}
l ヽ ヽ ヽく:__ﾊ:.ヽ辷 ﾉ!: :r‐ 'l lミ} ! lﾘ
/ ! ヽ /',ィ了（: :_:ヾ三l}: : :） ′ ゞ' l 誠、その無様な服を着替えてらっしゃい。
! l ,' /::::ﾊ, l く:_ﾐ三!:r' / ', ', それとあなたたちは頭を冷やしなさい。
l ! l l弋:ツ l l三/ｰ-､, -t l !
l ', ､ ､ l ′ ! l lﾐ/ ,ィ´: : : : ゝ-､! ! ……やる夫、財布。
ヽ ヽ ヽ ＼ﾄ､l l l! l/´: : : : : : : : : : :l l､
｀ヽト､｀ｰ` ヾj l lィ´: : : : : : : : : : : :..:l l: ヽ
ト ´_ /: : : : : : : : : : : : : : :..ｌ l: : ∧
| l ,ｨ'/: : : : : : : : : : : : : : : : :ｌ l: : : ∧
l l三l: : : : : : : : :/: : : : : : :..:.ｌ l: : : : ∧
l ﾄミ!: : : : : : : :/: : : : :..: : : :.ｌ l: : : : : :.ヽ
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| 立ち上がる紅マグロ。直後、インターフォンが押される。
|
|「自己紹介は終わったし、詳しい話は食後にしましょう」
|「ったく……やる夫、カードだ」
|
| 暴れる男たちを侮蔑するように見つめ、不人気はうきうきした足取りで寿司の受け取りに向かった。
| それに随伴しながら、やる夫は高校生男子二人が気になって仕方ない。
|
| とはいっても、やる夫はそのあたり部外者だ。
| 詳しい話を聞くのも躊躇われる。
|
|「不人気お前」
|「不躾ね、何を聞きたいの？」
|
|「家の前で止まったバイクが、新聞配達とかだったらどうするつもりだったんだお？」
|「恥ずかしくてあなたの顔が三倍になるまで殴ったと思うわ」
|
| ビール瓶片手に言われると冗談ではすまない。
|
|「他に聞きたいことは？」
|「寿司が楽しみなのは分かるから、もうちょっと落ち着くべきだお」
|
| 殴り合いを前に完全に上の空だった。
| 長い付き合いのやる夫なら分かる。
|
|「あら」
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__.ﾉ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.:.＼__.ィﾍ
〈:.:.:.:.:.:.:.:.:..． ´ ￣ ゝ:.:.㍉:.:.:.ﾄ､ 私は冷静よ。
,ィ:.:.:.:.:.:.:.:/ 弋jll:.:.fく＾ヽ
ﾌ:.:.:.:.:.:. / ､ｬﾍｒｷ-@介ﾍ ﾄ:メ、 ィ´＼ ／
ﾞ‐ｫ:.:.:.:.:..{ ､ Ｙ ｨｫ:、ﾞ〈川.ゝ.ゝ.三メ ／.:::;ｬ ハ .／
廴:.:.:.:.:ゝ.ｲ ｪｫ _〉､_ヾ ＼ ＼ ／／ ヽ ∧ .／
ｰ‐^…≧､ - ﾉ三三ﾄ､ ＼ ヽ _ ,ｨ彡' x ―‐ﾍ l、 ／ ／
| i¨Τ7三三ﾉ:.:ヽゝ. ﾞ廴.. ｀ﾐｭ…ｧ==≦二.＿. ィ" 彡へ.ﾍ !.ヽ／ ／ ォ
､ Ｙ三!三三{:.:.:.:.:＼ミｘ ＿＿.＞ｨ .メ､.＿＿＿＿.． ´ ﾘjソ .／ ｨ ／
∨Уﾂミ三ｊ:.:.:.:.:.:.:.:ゝ.__.フﾗァ’／ └ｔ一 ／ ．"
/∨ｦ三ヾ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.≧､:.:i'.／ レｲ 厶…==ｧ
/ 矛'i三三厶:.:.:.:.:.:.:.:./:::::::!::!￣￣彡 ´￣￣ ´ ／
.' / /少ﾍｼ＾く:.:.:.:.:.:.:/⌒ヾノ/￣/厶ｫ ｀ヽ
ﾊ .' /三!:i:.:./:.:.:＼:.:.:/:.:.:.:.:.:.:｀ヽ. _ ｀ヽ
.' ｊ ｉ/}シ:.: !:/:.:.:.:.:.:.:｀¨ヽ:.:.:.:.:.く:.:.:i/:.:〉 __ /ヽ
ｉ Ｋ:./:.:.:.:.:.ゝ:.:､:.:.:.:.:.:.:.八:.:.:.:.:.:.:ゝ:.:.:.ヾ ﾔ-､ /:.:.:.:.＼.／ﾉ
| | |￣i:.:.:./:.:.:.:｀:.:.:.:./:::::;才:.て:.:.:.:.:.ノ ｬ’:.＞―― く:.:.:.:.:.:.: y'⌒ヽ
. l!.| | ⌒ﾄ､:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:/:ゝ一ヘ「￣ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .斗:…":.:.:.:.:.:.iヽ
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| 前髪を指先で弄び、ザビ家の四男のようにさわやかな笑みで、傾城傾国の魔女は微笑んだ。
|
|「でも、腹が減っては戦は出来ぬ。まずは腹ごしらえが急務でしょう？」
|
| と言う訳で食事を挟む。
|
|「寿司には炭酸だと思う訳だよ。やっぱコーラか、サイダーだよな」
|「誠、頼むからそれ以上しゃべんなお」
|
|「えー？ 寿司ってピザ並みのジャンクフードだし」
|「嘘だ！」
|
|「まあ、シャリが炭水化物の塊ですものね」
|「そう言えば委員長は生魚は食べれるのか？」
|
|「抵抗はあるけどな。だが食えるものなんだろ？」
|「カルビ軍艦とかのほうが良かったかしら？」
|
|「いや、海苔は腹下しやすいんだわこれが」
|「それは仕方ないわね」
|
| 日本人に見えるし、日本語も流暢なのだが日本人ではないのかもしれないな。
| やる夫はふとそんな風に思った。海苔を消化できる酵素は、白人は持たないとかなんとか。
|
| 誠の挑発の意味を俯瞰考えかけ、やる夫は思考を打ち払った。
| くだらない好奇心だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼ つーわけで司会進行のやる夫だお。
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ この殺伐とした会合を円滑に進めるために、
| （__人__） | 彼女との楽しいひと時を打ち切ってやってきたお。
＼ ｀ ⌒´ ／
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノﾞ-､. 異議がある場合は挙手して叫べ。
: | '; ＼_____ ノ.| ヽ i
| ＼/ﾞ（__)＼,| i |
＞ ヽ. ハ | |｜
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|「異議あり！」
|
| 水平に手を振りながら、刹那がやる夫を指さした。
|
|「オレたちはオレたちの戦いをしてきた。理事長が関係者なのは認めよう。
| だが、お前はなんだ？ 正直、ここにいる理由が見えない」
|
| 刹那の異議は道理にかなっていた。不人気が口を開くのを手で制する。
|
|「異議を認めますお。やる夫はお前らの学校の卒業生で、誠とも不人気とも親しい。
| ついでに言うと、お前らの巻き込まれている事態の専門家でもあるお」
|
| 正確には『専門家とも親しい』だ。
| 蒼星石や鷹野三四、がんばればシックスあたりも手を貸してくれるだろう。
|
|「だからアドバイザーで、誠が自分にだけ有利なことを言わないようにする監視者で、司会進行」
|「なるほどな」
|「私が頼んだというのもあるのよ」
|
| 委員長は納得が行ったようだった。
| その横で、紅マグロが口添えする。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ゝ _ _...L ヽ ヽ ）
（ __ ´ ` ） | | _ｲ:ヽ
「 / 「 __ | | (::､::. ＼
ゝ _ / / V´___) | | ）ヾ＼ ヽ
'/ .′ | （ _ | | イヾ::: ヽ:.ヽ |
// ! | 「.:.:.:..:)ヽ.._ _j レ' （ ハ: |: :| |
ｲ ! . ..:.:.:.（ __ ,| ＿ | ､＿__ .） |::|::. |: :| |
∥| |: | / /. ィ :/ ) ､γ, －､Y _.) |::|::. |: :| |
i! | |: │ ,ィ 升j/_j/ | |ゝし { { fひj j √.:.: |::| | |: :| |
i! N. | ､ 从ヾ/ j/勿fぅ/ | | |ゝゝr_少':.: .:.:.:..:: |::| | |: :| |
ヽﾄ ..._ ゝﾄ-ゝ ゝ' | | |:.:./ /:.:／::.:., 人| | ~~ | 私が、やる夫に助けを求めた。
. | | | / /／ ／ . ' │ ! ……不服かしら？
/ , ｲ |' /-‐ｧィ' ／ │ !
ヽ / | | / ,'イ_＿_ | i
/ ＼ ､っ / | |,/ - ‐ ¨ / | i!
'/ | :＼ i!＿_.| |´ _.. ー > | i!
i| |:::::::|＞‐┤ | |＼ . ´ ＼ | i!
i|＿|::／ | │ ! ＼ . | i!
「 r| │ ! / /! ＼ i!
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| 刹那が目を伏せ首を振った。
| 姉のような母のような存在である、この天使の肖像のような美少女に、彼は頭が上がらないのだ。
|
|「よしじゃあ、まずは誠からしゃべってもらうお。聖永たちの事件をどこまで知ってる？」
|
| 水を向けられた誠は、まず指を組み、次に唇を曲げた。
| 半分楽しんでいるような表情。どこから始めるか悩んでいるのだろう。
|
|「じゃあ講義を始めるぜ、普遍的無意識についてはどれくらい理解している？」
|
| そして選んだ言葉が講義と来たものだ。
| 刹那の視線が鋭くなり、委員長の双眸に怒りが燃えた。明らかに反感を買った。
|
| しかし当然どこ吹く風だ。
|
|「ユングの集合的無意識ね？ 人間の無意識深層には、個人の意識とは別の意識構造が存在する」
|
| 答えたのは巻き毛の美少女だった。彼女はオカルトの専門家、得意分野であろう。
|
|「人格や意識は経験から形造られているわ。刹那や私はとある事故のせいでずいぶん歪んだし、
| やる夫は父親のせいでずいぶん偏屈に育ってしまっているわよね」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_r‐=､ヽ‐¨￣ヽ
./::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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|:::/:::::::::Ｘ V:l::ﾚ､::::::::| 異議あり！
|/|::/:::ｲｾﾐヾlVｨﾃヽi:::ｲ やる夫はこれで意外と社交的です！
|/lﾈ､| ､ 〉）::>
V'ﾍ､ ｒ= ､ ,ﾉﾘ"
ﾉ`､ _ ,イ
_ ._,,イ＼ ／ヽ､__
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|「異議は却下するわ。だってやる夫、必要以上に自分に近寄せないために社交的でしょう？
| 防壁のための社交性を持ってすべての他者を拒絶している人間が偏屈と言わず何と言うの？」
|
| めった切りである。しかも百発百中。やる夫は奇襲で致命傷を負ってしまった。
|
|「い、異議あり。他者すべてではないと思うぞ」
|「異議は却下するわ。やる夫が『内』と認めたごく一部だけが、特別扱いよ。見ればわかるわ」
|
| さらにとどめが降ってきて、やる夫は欠片も残らず蒸発した。
| というか、律義に異議を申し立ててくれる誠に、やる夫は要らぬお節介であると思わざるを得なかった。
|
|「や、やる夫の人格攻撃は置いておいて、話を続けてくれお」
|「異議あり！ 実は関係するんだな、これが」
|
| まだ追撃するつもりか、やる夫は泣きそうだった。
| しかも異議は誠からだった。お前は誰の味方だ？
|
|「こんな歪んだやる夫でも、お前らでも、深層心理では繋がっている。
| 生まれた土地も人種も関係なく、親も育ってきた環境も関係なくだ」
|
| 話が戻ったようだ。やる夫は豊満な胸をなでおろした。
|
|「だが、それらの繋がりは無意識だ。深層心理の奥の奥。ボルチオより奥だ。
| 分かるか短小ども？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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となりに平坦な胸があるのになんてことだ！
これは豊満な胸の方は例の紐不可避ですね？
! ! | ヽ l / ! !
l l、 lヽ ! !/ ｌ /-┼┐
､ l !ヽ ! ! /／l／! / ! //
ｌ ＼ ､!＼ | ｌ＼ / l／!／- ､l/ ! /l
|l ＿＼!≧‐- 人_ノ ､ ヽ _/_／／! r三、ヽ l/::::!
､＼ 〃r三､ヽ＼::::＼_／.::::::/ ヽゞ=’ノ〃::::::::::j/ む、無駄に卑猥にしないでちょうだい！
ヽヽ ヽ ゞ=’ ﾉ ..::::::::::::::::::::::::::::::＜´三彡"
!＼ ｀三三 彡:::::::::! :::::::::: ＿
ヽ、ヽ ￣￣ ヽ ／ l ヽ、 /
￣ ﾊ /´/￣ jノ ヽ /＼
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| 誠の言っていることが理解できたのは、四人のうち一人だけ。
| ボルチオとは女性の子宮手前にある性感帯である。
|
| つまり、平均的な男性器でも刺激できる部位である。
| はっきり言って全然奥ではない。
|
|「異議を認めます。おい誠、無意味なエロワードは慎めお」
|「お前分かってないだろ。今度やりかた教えてやるよ。女は大洪水でガックガクだぜ？」
|
| やる夫の脳裏に浮かんだ女性が誰であったかは、各自の想像に任せる。
|
|「普遍的無意識は本能に近い概念だ。壮大な存在に圧倒され、美しいものを美しいと思う。
| 好みの女がいたらヤりたいし、いい男の種が欲しい。
|
| 生まれや育ちは関係なく、一切の知識がなくとも参照できる記憶。
| 性知識がなくとも、その気があればなんとか最後まで出来るもんなんだぜ？」
|
| 随分なこじつけである。やはりエロを絡める必要はなさそうだった。
|
|「で？」
|
| 不機嫌そうに続きを促す委員長。この話の着地点が見えないのだ。
| だが、やる夫は理解した。やる夫の『やる夫の中の入即貸本』とは違う形。
|
| 別の夢システム。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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､__Ⅳ::::/:::i:::::ﾒ__!::::::::::::匕ヽ:::::::::::::ハ:|
ﾌ::l::ｒ'l:::/!::/ｾﾐl::::::ﾊ:::尨_ハ::::::i:::ﾄ､`! 普遍的無意識の分野からいじれば、
´￣]八!/i」:i ￣ !／ Ⅳ 小ハl －､_ 複数の人間が同じ夢を見ることも可能だ。
／ ｊ､八i ´ ｊ〉 爪i:::::::::::::::::::::::::ﾊ
／:::::::ハ::::ｊヽ､ ｔ ＝ヽ ｨ:::::::!:::::::::::::::〉:::::,:: !
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|「それって、全員に同じ無意識を刷り込めるってことかお？」
|「ぶっちゃけそこまでやるのはオレでも無理だね」
|
| 誠でも無理ということは、超一流の魔術師でも無理だということなのだが、
| 高校生二人とその引率は理解できていない様子だった。
|
|「しかしながら、普遍的無意識の海を通じれば夢を繋げるくらいのことはできる。
| 夢は意識と無意識の狭間だ。物理法則を無視できるクソみたいな世界だ」
|
| 誠は魔術師の癖に科学信者なのだろうかとやる夫は訝しんだ。
| 高度に発展した化学は魔法と区別がつかないというが、そんなはずはない。
|
| 正確には、『どちらも知らぬものから見れば』という前置きが必要になるだろう。
| その上で誠は明らかに魔術師だ。
|
|「夢はあのクソ忌々しいシュブ＝ニグラスの領域だ。知らないよな？」
|
| 頷く一同。聞いたこともない名前だ。
| 聴衆の反応に満足したように、誠は頷く。
|
|「そいつは早い話が未然形の神だよ。しかも、人類からしたら不利益でしかない」
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／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ ……未然形の神？
| （__人__） |
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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| やる夫には馴染みのある表現だ。
| ニャルラトホテプの天敵ともいえる、ノーデンスもまた未確認の未然形であった。
|
|「絶対に観測しようなんて考えるんじゃねえぞ？ 『人類には解き明かすことができない』」
|「ああ、なるほど、いや、わけがわからんと言うべきかお」
|
| 理解できないということが理解できたが、何故理解できないかが分からない。
| そしてそういう存在であるなら、絶対に観測できないし、観測してしまったら頭がおかしくなりそうでもある。
|
|「まあくわしい魔術論理とかは置いておく。理由もいい。
| で、うちの高校の一年五組は普遍的無意識を魔術的にいじりやすいようにしてある」
|
| その発言に、全員が言葉を失った。
| いつのまに、どうやって、なぜ？ いや、それについては誠自身が不要と切って捨てていた。
|
|「理由だけは聞いていいかしら？」
|「ああ、うん。怒るなよ？」
|
| 怒るようなことをしているわけだ。
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:::::::!::::::::::!:::::::::::::::ﾒ´::/ ',:::::::l;:::::::::::::::::::i ',:::::::/ ヾ;::::::::l::::::::::',
::::ﾊ:::::::::ﾊ::::::::::::::,' ';:;' _,,,､､,,,_ ヽ':,::::lヾ;::::::::::::::!_,,,､､,,',::/ ';:::::::!::ヾ;:::i
::;' !:::::,'::::l::::::::::::i 彡""´｀ﾞﾞﾞ`ﾞ'' '.;:! ＼:::::::ヾ"´｀｀ヾミr､ 〉::::ﾊ:::::入ゝ
/ i::::i',:::::!::::::::::ﾄ `" ヽ ＼::: ｀´ /ヾ:::) // 人体実験。
',::i ',:::::';::::::∧ :::::::::::::::::::::: ヽ::::::::::::::::::::::,'ｿ:ｿ',ソ::::::＞
ヽ ':,:::';::::iﾍ', :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ､ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,///ヾ＜ 『何らかの素質がありそうな奴』を、
∨∨＼ ,ソ::::!/""´´ 『なにか発生しやすい環境』に集めて、
', ｀∀￣￣￣￣∀´ /へ;:::| 一年間放置するだけの余興みたいなもんだ。
ヽ ', ,' , ' ヾ
｀ ､ ', ,' , ´
＞ ､ ', ,'_ ＜く__
＜:.:.:.:.:.:| ＞二 二＜ |:.:.:.:.:.:.＼
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
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| 次の瞬間、ビール瓶が空を舞った。
| 男たちが立ち上がるよりも早く、麗しの不人気が投擲したビール瓶が誠の額を割っていた。
|
|「一応言っておくと、創立からずっとやってるぜ」
|
| やる夫は唸った。つまり、最初から実験場なのだ。
| 目を剥く高校生二人、だが、卒業生二人も慄然としていた。
|
| なぜなら、赤身もやる夫も同じクラスだったのだから。
|
|「二年以上はどうなるんだお？」
|「一年間だけだよ。二年からは進路と選択科目のクラス分けだろ？」
|
| やる夫は吐き気をこらえた。
| そしてもはやぼんやりとしている自分の一年生当時を思い出す。
|
|「あれ？ 翠星石たちは？」
|「柴崎の双子はとっくに『血族』の仕事してたよ。あんな奴らはイラネ」
|
| なるほど、素質が開花しているなら不要と言う訳か。
|
|「……待て、では夢宮アリカは？」
|「そんなことしたら夢宮のババアに殺されるだろうが！ ふざけんな！」
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r‐,ｨ': : :｀ヽ_,.x=ｯ'´: : : : : : :{::::l;ノ:::::::::ﾉ
,ｨ'/: : : : : :/三ﾐ/: : : : ￣:fﾊ: 〉:::::::::::::::｀i
《 _ﾉ=-: : : /三l/:__: :-:‐: : 〈 ｰ' ヽ::::::::::r‐'
〈:_: ; -‐: ;三ミ!:ﾆ:=:-‐: /}:ﾉ ヽ::_;ﾉ
{: : : : : l三ﾐ}:-:‐: :.r‐､）´ i ';〉
lヾ: : : :.l三ﾐ!: : : :.ﾘゞ'l l ! l l l
l〃lｰ､_:l三ﾐ!: : r‐' l l /ﾑl ///
! ,' ヽ {薔}:ノ l､__ヽlﾄ､ /,ﾑ／'l/
,' , l ヽヾﾐ! '弋ツ ゞ'/l ′ ……念のために聞いておくけど、
! ′ l l｀ヾx ヽ ' , ' !l 成功率は高いの？
. / / , ',/:｀ヽ ヽ､ _´ィ´! l ､',
/ / ', ,ｲ: : : :.} ヽ三三! ! l l
. / / ／: : : : : :｀ヽ､ ヾ､三! '､l l __
/ / _ /: :/: : : : : : : :l: ｀ヽ_,＞ゝ-､--′
./ / /: :.｀ヽ／: : : : : : : : :.l: : ',ヽ＜´_,＞>
. / {:ｰ:-､: ´: : : : : : : : : : :.l: : :ﾍ< < ヽ7
/ ヾ: : :l｀ヽ､: : : : /: : : : :l: : : : ヽﾉ '´
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|「いんや、すげー低い。現に備府やらない夫みたいな特異点も、悪魔を引きつけまくったくせに異能には目覚めなかったろ？」
|
| やる夫は苦笑した。まったくその通りだ。
| そしてやる夫自身を省みても分かる。やる夫が死の夢を見るようになったのは、二年の冬からだった。
|
|「あのビンカー野郎がいやがるから、今年も何事もないと思ってたんだがな」
|「ビンカー？ また心理学者？」
|
| 眉をひそめる紅マグロ。やる夫の知らない名前だ。
|
|「いや、スティーブン・ビンカーの生得論はオレ好みだが、そこじゃない。魔法の国ザンスだ」
|
| そっちの名前は、やる夫はよく知っていた。
| 逆に傾国の魔女と高校生は顔を見合わせる。彼らは海外ファンタジーなど読まないのであろう。
|
|「……ビンカー？ ビンクにerかお？」
|「そうだ、アンチサイ系能力の総称だよ。よく言うだろ？」
|
| そんなもの聞いたこともない、やる夫は苦笑した。
|
|「まあともかく、今年の一年五組にゃあ因果律すら無視するビンク級のアンチサイがいやがったのさ」
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>>247
そのとおりです。
ありがとうございます！
-=≡ｴ二::::::::::::::::::::::::::::::／,'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;フ
, イ::::;:::::::::::::::::::::;::y' /:::::::::y:::::::::〃::::/:i:::::::7',::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼,,＿
,.ｨ:,斗'／:::::::::::::::::／ヽ､,/:::::::／/::::y'/:::::/ i:::::7 i::i',:::::::::::::::::::::::::::::::六ト＼
/:::::::::::::::::::::i .'i, `ｯ､:::／ ./::／/ レ' __,7:::/‐'' |:! ',::::::::::::::iヽ::::::::::::::::＼
〃 ＜:::y::::::::/i ヽゞ_ﾍ', /／ _,,,≠ﾃィ7≠-､ .i:| ｊ::::::7i::j ヽﾊ:::::::',＞-ヽ
i 7 7::::Z!/::i i´ ￣ ´ ､,ヽ-' ,ノ .i! .7::::7 i:7_ノ/:::::::::ﾍ .',
,.イ', !/／, i′i', ::l ￣,,__ 〃::/,／ ／:::::::',`ヽ,', ',
, -'" .', ','ﾍ, ', .ィﾊ ::,' ¨￢＝;;/.i:/__,∠:::::iﾍ',ヽ', ',
,-'" i ﾊ ヽ∠ .ﾍ ::〈 / .∨ﾍ:i 7 ',
. イ i 7 〃 .ヽ ヽ 丶 ／:::::,' ヾ .j ',
〃 , -,'"-‐ 'i,_ ./ , ｨ‐‐､ヽ ヽ= ----､ ,イ::::::::::: /! ',
,ｲ , ィ' / , イ ∨ヽ,ﾍ -､｀￣￣ . .＜::::::::::::::::/ /7 __ i
／ .j_ﾉ 〃イ ヽ ',ヽ __ . ＜7ヽ::::::ヽ:::::::::/ ≠' .7 〃 ヽ ﾊ
〃 ﾉ ＼', ',---､,,,,ﾊ//ヽ;::::::::::::::::＞::y' ./ イ ヽ i
i ､ , ｘ' ', ',＿_ ヽ､/////////／ ./. イ ＼ i
| ,ｨi! 7〆 ー-､ ＞､ ＼/////／ 〃 ＼!
ヽ､_ﾉ､,ノ ノ ｀ﾞ'-､ ｀ヽ､ヽ/／ ／
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|「興味で聞くが、誰だ？」
|
| 表情を変えない刹那の問いに、誠はいやらしいニヤニヤ笑いで応じた。
|
|「そいつは縁もユカリもない小娘のために犠牲になることを選んでな、
| いや、苦労したぜ？ 科学的には何でもないが、魔術的には手も足も出ないアンチサイだ」
|
| 刹那と委員長はその人物の知己なのであろう。
| とても親しいのだろう。二人とも激怒していた。
|
|「誠、やめとけお」
|「だからまず魔法を一切絡めない事故を仕掛けて、腕を物理的に破壊してな」
|
| ここでそれまで静観していたジャーナリストの顔色も変った。
| 彼女もまた、その人物を知っているのだ。
|
|「斬り落としちまえという声もあったんだが、馬鹿だよな？
| 落としちまったら、完全に失っちまったらそれこそ、手の付けようがなくなる」
|
| 血の気の失せた顔で、不人気が息を飲んだ。
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彡r手ｲ ＞:./:.:.:/ il il .il .V:.:｀ｰっｷ .|
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|.| .// V ｲ:.:.:.| ﾄ il -升弋-､ il i ヽ /│ .ﾊ il |ﾊ:.:.ノ 小
|.| //i ﾄ V-､ヽﾄ､ .il､ ≧ｧ=-､ﾊ,､ ヾ /-ナ‐升- ､ .il ir'´ｿ/ ﾊi
|V/ | .ﾊヽ 廴::::|ゝ川 ﾜ示芯゜ ｀',v/ ≧＝ﾅ_ /.il ﾘ::ハ | || 『あれ』は、あなたがやったの？
. // .| .| ll 弋.{ .|ト､ゞ─'´ ｛辻り >/ノiﾊ i /ﾘ|::| i | ||
/ ﾊ .| .| i｝ >/ .|ヽ｀'､ , ゞ-ィ / イﾉﾊ/ﾚ .|::| / | ||
.//廴| .| .| |｝ /ﾊ |∧ ヽ _ ./i l .|/ |::|| | .||
./ | | |} / .| Vr＞ ） ｀ .ｲ/ .| .| .V/i .:| .||
｝ | | .|｝ / 小 V/>/＞ , -＝-≦ | | .| 人 > | .il
| | V/」 / <::::::|ヽ ヽ/:::::::r'=ミ入:::::/:::::｀-ｲ 小.| | | | |/
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＼ ./ 川 .人:::/廴∧ / V::ｨ:示::ヾ::::::::.:.::./ /ﾉ ＼ | | | |
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|「そうだ。上条当麻の右手を物理的に破壊し、現代医学では治せない状態で癒着させ、
| 『もう二度と動かない状態』であると念押しすることで、奴のアンチサイを完全に封じた」
|
| 友人の不幸の原因を作り出したのが、目の前の怪人であると理解した高校生二人は、ゆっくりと動いた。
| 二人の目は、これまでにないほど殺伐としていた。
|
| 冷たく、許容も慈悲もなく、どんな手段を講じてでも目的を達成する。
| そんな目だった。
|
|「ガン……ダァム！」
|
| 押し殺すような声で刹那が叫ぶ。
| その瞬間、赤熱する粒子が彼の手から噴き出した。
|
|「やめなさい！」
|「いや、せっかくだから見せてくれよ！」
|
| 制止する姉代わりの悲鳴を無視し、全身を白い甲冑で覆われた刹那が、空中を走り誠を目指す。
| 次の瞬間、やる夫は首筋に冷たいものを感じて身をすくめた。
|
| いつの間にか背後に回った委員長が、やる夫の首にナイフを突き付けていた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,.ィ｀tﾉ: : :..） _
_ f): : : :l: : : :｀´: ｀ヽ
（: ｀i: : : : : : : :.:/:l: :/廴
/｀'j: :,:ィ´ ￣ ｀ヽ､:/: : : :〉
{ｰ､:./ ヽ,ヽ:/:{_
）ﾉ;' ｉ l ヽ ヽ､ ', '; :r ′
{: :.! ｌ ',､ l.ﾄ､ ,ヽ ', }:ﾉ＿
_ゝ;ヽ ヽ,xｭ｀ｰ 'ｨｭ'ゝ‐` :ﾘ三ﾐ}＝＝== 二人とも！！
{ ∨ヾゝ'ゞ' , ゞ' l､∨:fヾ彡'≧ｭｪｪｮ
(`ヽ_ヽヽミヽﾍ r ; ,ｲ ヽヽ ＼ ＼
_,＞ ｀ ｀,フ,ﾍ:ヽｰ'､::::::::::ヽヽ__｀ヽ､｀ ー ‐ - .....＿＿
. ゝ-ｸ ,.ィ ´: ﾉヽ､ヽ::ゞツ:::::::::}ヽ ヽ:ヽー､￣ ￣r.､｀ ー- ､ ｀ ｰ-､
｀´ゝ‐'´: :ヽ: ヽヽl:::ヽ￣:｀:ヽ｀ヽ｀ヽ､_ゝ‐t l ﾊ /´〉 ｀ ｰ ､ ｀ヽ
// /ヽ: :/: :ヽ: ヽヽ::::',＼:::::::::>: :｀ー-｀＝=ヽ{ ,' /､ ヽ ヽ
／/ 〈: : : ´: : : :ヽ: :l＼＼:.:ヽ／; -､／: : ｀ヽ､ ｀´ ｀′ r‐‐- ､ﾍ ﾍ
/ / ＞､_:_;=-<: : : ｀<二,≧y´: : l ＼: : : : : r'≧､ ヽー- ､｀ ヽ､}
/ / l: : : : : : :/: : ヾ:､: : ゝ'廴ﾌ: :｀ヽ､｀ー-.ヽr‐'´ , -‐ '´ヽ ｀ヽ ｀ヽ､ ヽ
/ / . '; : :.／:/: : :ヽ: : : : : : : ヾ: : : : : :.￣r≠f￣: : _;､: : : : l> r‐ゝ‐-､ヾ ､>
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| 悲痛な叫びに少年たちは反応しない。
| ただ、友人のために手段を選ぶ気がないのだ。
|
| やる夫を人質にし、誠からその、アンチサイの少年を治す方法を聞き出すつもりなのだ。
|
|「やる夫死にたくないから聞くけど、念押しが必要だったってことかお？」
|「わかってるじゃねーか」
|
| 誠の首筋に、粒子で形造られた長剣が付きつけられる。
| 刹那の異能だ。アリカの『蒼天の青玉』に似ているなと、やる夫は冷静に思った。
|
|「何を言ってるんだ？」
|
| やる夫の耳元で、委員長がどすの利いた声を出す。
| 大変おそろしい。やる夫はおしっこちびりそうだった。
|
|「あんたらのお友達は、魔術ですらない暗示で『もう駄目』って思いこんでるってことだお」
|「まあ、実際ダメだけどな。ブラックジャックなら鼻歌交じりで治せるが」
|
| 少年たちの動きが止まる。彼らとて、ブラックジャックは知っているのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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￣／／:::::::／::／l:::::l::|:::ヽ::::::::ヽ::::::ﾊ
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|「すぐには無理だね」
|
| にべもない誠に、少年たちの気配がまた険呑になる。
|
|「いつならいいの？ あと、この子たちを挑発するのをやめなさい」
|「ケツの穴が小さいなマグロ。処女だからか」
|
| 代わりに不人気を挑発する。やる夫は大仰にため息をついた。
|
|「準備が要るし金も要る。オレは仕事として頼まれたことをやっただけだ。
| まあ、てめえらの可愛い紅マグロとは知らない仲じゃあないからな。
|
| コネを使って治せる医者と施設を手配してもいい。
| だが、サービスじゃない。仕事としてだ」
|
| 医者への報酬と施設利用費は出さない。完全なビジネスだ。
| そしてそれは、子供には通じない論理である。
|
|「オレはこういう存在だから、殴っても切ってもまあ何とかなる。
| だがやる夫は普通の人間だから血が出るし死ぬぞ」
|
| 少年たちの取った、人質と言う選択肢を責める誠。
| 人質を人質にするとはいい度胸だ。やる夫はぶん殴ってやりたい気分になったが、委員長が怖いのでやめた。
|
|「それは脅しか？」
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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ヾヽ
_,.-‐'´￣￣ヽノﾉ-､
／:::イ::::::::::::::::::::::::::::::::＼
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_,ノ:::/／j:/ 乂:::7 ` /:::イ/ｲ`ヽ:::::|､i､:i
＞､::::::∧,′ ` 彳´ 7心､ ',:::从| そうだ。
￣ﾑ::;_::::i 冫 ヽｿ〃i/:::| やる夫を傷つけたらお前ら二人はダルマだ。
´ ',:::〉 ヽ- ＿ /!:::::::j
j′､ `‐-､ソ /:ハ::::7 悪いが真紅、その上でお前は狂うまで犯す。
_,-､ィ､ ヽ ...イ::〃 j:::/ その上で脳改造して聖永を犯してもらおうかな。
_,.ィ´＼::::＼ `ヽ､ `:y‐ ´ j:::::/ i/
,ィ´､:::::::::::::::ヽ::::::ヽ y<', iイ
i/::::::::＼::::::::::::::ﾍ::::::ﾍ人:::::iヽ､ ＿
j::::::::::::::::ﾍ::::::::::::::::::フ:ﾍ j::ﾊ i::::＼ jﾆ,）
/::::::::::::::::::::::',::i:::::く::::::::::ハ!::::',ﾍ:::<:ヽ i .i,-､_
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i´:::::::::::::::::::::::::::7ﾉ:::::::::::ﾍ::::::::::',:::::',.i::::::|:::ハ i´ ,r-</_/ﾉ!
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|「いや、勘弁してくださいお」
|
| 最初に懇願したのはやる夫だった。
| ちょっとそれは冗談ではない。きっと誠は本気でやる。
|
|「理性を保たせたまま体だけ支配してってのもいいな。
| まあ、お前らの周りにいる女全員壊すんだ。ゆっくりやるさ。
|
| お前らが狂ったら魔術で治してやるよ。
| もちろん男も壊すぜ。無関係の奴を連れてくるのもいい」
|
|「意固地になるからやめなさい……それより誠、本当にお金だけの問題？」
|「あ、気付いた？」
|
| 意地の悪い笑みを浮かべる誠。
| 自分の末路を想像したのか、不人気の顔は白い。
|
|「聖永みたいにペルソナ発現してたら、それを失わないと難しいな」
|「……どうやればいい？」
|「知らん……いや待て待て」
|
| どこ吹く風で笑い飛ばそうとした誠は、委員長の目つきが狂気じみていることに気付いて慌てて止めた。
|
|「オレが知ってるのは、上条当麻が能力を失ったおかげで普遍的無意識経由の接触がしやすくなって、
| その関係で一年五組の夢世界が構成されてるっぽいってことまでだ」
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やる夫を孫可愛がりするフィクサーポジ大好きなんだろうなｗ
ごめんなさい。
ママさんがたはお茶をするのが大好きだからな！
いや、私も嫌いじゃあないんですがね。
r‐,ｨ': : :｀ヽ_,.x=ｯ'´: : : : : : :{::::l;ノ:::::::::ﾉ
,ｨ'/: : : : : :/三ﾐ/: : : : ￣:fﾊ: 〉:::::::::::::::｀i
《 _ﾉ=-: : : /三l/:__: :-:‐: : 〈 ｰ' ヽ::::::::::r‐'
〈:_: ; -‐: ;三ミ!:ﾆ:=:-‐: /}:ﾉ ヽ::_;ﾉ
{: : : : : l三ﾐ}:-:‐: :.r‐､）´ i ';〉
lヾ: : : :.l三ﾐ!: : : :.ﾘゞ'l l ! l l l
l〃lｰ､_:l三ﾐ!: : r‐' l l /ﾑl ///
! ,' ヽ {薔}:ノ l､__ヽlﾄ､ /,ﾑ／'l/
,' , l ヽヾﾐ! '弋ツ ゞ'/l ′ つまりあなたは、
! ′ l l｀ヾx ヽ ' , ' !l 『カイの迷宮』の事は何も知らないの？
. / / , ',/:｀ヽ ヽ､ _´ィ´! l ､',
/ / ', ,ｲ: : : :.} ヽ三三! ! l l
. / / ／: : : : : :｀ヽ､ ヾ､三! '､l l __
/ / _ /: :/: : : : : : : :l: ｀ヽ_,＞ゝ-､--′
./ / /: :.｀ヽ／: : : : : : : : :.l: : ',ヽ＜´_,＞>
. / {:ｰ:-､: ´: : : : : : : : : : :.l: : :ﾍ< < ヽ7
/ ヾ: : :l｀ヽ､: : : : /: : : : :l: : : : ヽﾉ '´
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|「少なくとも説明して貰えりゃあ何か分かるかもしれないが、今は知らないな。
| 上条当麻がどうやってペルソナを得たのかも、あるいは、得ていないのかも知らないぜ」
|
| 少年たちと美女は顔を見合わせた。
| 特に、反感ある二人は眉唾で、誠が信用ならない様子。
|
|「順番に説明するわ……まずは七月。
| 終業式の日に、私はこの子たちと、後四人あつめて儀式をしたの」
|「ああ、倉庫代わりになってる空き教室だな」
|
| 不人気の言葉に、誠は気軽に相槌を打った。
| 学内のことは把握しているアピール。少年たちに戦慄が走る。
|
|「Ｌから教わった『ペルソナ様召喚儀式』だけれど、Ｌはご存じ？」
|「ロキの甘味調達用分霊だろ？ オレはニュクスには行かないが、奴らとは顔見知りだ」
|
| 甘味処ニュクスを中心に活動する、悪魔たちのスイーツ探求結社『糖分同盟』。
| やる夫はやらない夫に連れられて、何度かニュクスを訪れたことがある。
|
| 赤貧にあえぐ赤身が、どうやってあのグループと接触したのかはよく分からないが、
| 不人気もまた『糖分同盟』と繋がりがあった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : : |: : : : :|: : : : :|: : | ,: : : ',: : :ヽ : :!
|: : |: : : : : |: / ＼: : /|:.: :: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
|: : |: : : : /!jニﾆｺ| :/ |:./iﾆニＶ: :|.: : : | V
＜ : _: : : / 〈fｴ:ｴi |/ ﾚ fｴｴ) |./ヽ: : |
＜:: |. 小{ ﾚ{:.| ヽ:|
厶ﾍ ﾊ ＞ {ﾊ/ .V それってアレだろ？
＼_! ! 真っ暗の中で四隅に立って肩を叩く奴だろ？
ヽ !ー―‐r ／
___,ｒ| ＼ ｀ー―' ／
／:/::::| ＼ ヽ _￣ ィ ´ (⌒)
／::::::/::::::| ＼ ´ ∧＞､ ﾉ ~.ﾚ-r┐､
／:::::::::::/::::::::| ＼ / !＼::`ｰ- ､ ノ__ | .| | |
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 有名な怪談と言うか、度胸試しと言うか、交霊術というか。
| 早い話がオカルトの噂話である。
|
|「Ｌが教えてくれたのは亜種ね。暗くする必要はなく、肩を叩くときに呪文を唱えたわ」
|
| オリジナルでは部屋の四隅に立った人間が、一人ずつ移動して次の隅にいる人間の肩を叩く。
| 当然、最初の一人が動いたため一か所空席となり、最後の一人が叩ける肩はない。
|
| ないはずなのだが、肩を叩くことになる。あるいは、最初の一人が叩かれるという話だ。
|
|「私と、高校生六人でそれを行って、一周したところでの子たちは倒れたわ」
|「部外者が入りこんで集団昏倒事件、不祥事ですな」
|
| 茶化す誠。紅マグロは押し黙った。
| 返す言葉を持たないくらいに正論だった。
|
|「いいことしたな」
|「何を言っているの？」
|「フィレモンに会わせたんだろ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. . . : : ／{
. : r ､ . : : : / |
. . : :| ＼ : : ,'
. : : :| ＼/ }
. . : :人 ヽ / ,
: ｀> } /／
. . : :〃 _∨⌒
. . . : : : } 厂{_/
. . : : ／ヽ／⌒´
. . : }
. . : :
. . .
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「誰だ？」
|「普遍的無意識内の肯定的面を司る爺さんだ。蝶か鳥を見たろ？」
|
| 刹那と委員長が顔を合わせた。
| その時、意識を失わなかったジャーナリストを除く二人は、それを見ていた。
|
| 暗い夜の海を舞う、月の光を浴びて輝く蝶のような何かを。
|
|「それが事件の発端よ」
|「違うね」
|
| 誠は、不人気の信じていた事実を切って捨てた。
| 彼女にとっては痛恨の出来ごと。自分自身は異能の領域から押し出され、少年少女のみを危険にさらした事実。
|
| それが。
|
|「フィレモンは『異変に立ち向かう力』を与える」
|「それは聞いていたけれど」
|「なんだよ、知ってるなら受け入れろよ」
|
| 誠が肩をすくめた。
| 不人気はこれで、まだ二十三歳だ。若さゆえの視野の狭さもある。
|
|「でも」
|「お前は、こいつらに立ち向かう機会を与えたんだよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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_,,,..-.ｰ.─.-.-....､._
二ヽ,,..::"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀:..､
／::::::::｀`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::ヾ:::::＼:::::::::', さっき言った通り、
/:::::::::::::::i:::::i!::::::::::::::::ヾ:::::,,∠,､_:::::＼::::＼:::::', 一年五組は術式で
i::::::::::::::::!:::::i i:::::::::l::::::::イ＼＼＼:::::::::＼:::＼::', 普遍的無意識に接触しやすい。
l:::::::i::::::::!::::i,,ゞ;::::::::i:::::::::l >≧r､＼::::::ヾ＼_::＞
ｌ::::::i!:::i::::l;/i ._,,＼::::!､::::::l 辻ヾ〉 ＼:::ヾ）::::＞ そして、上条当麻が止めていた因果が
i:::::ﾊ::::|::::l:::i〈｀（ﾍ＼! ＼:', ゞ-′ ラ∨/"´ 洪水のように流れこんだ。
l:::i l:::|::::lヾ､ 弋i;） ヽ ＼ ┌::ソﾉ
∨ l::::l::::l:::＼ " ﾍ::::/ お前さんが介入しなかったら、
＼|＼!＼ ′ ∨ 楽しい悲劇のオンパレードだ。
ヾ ヾ ､ ‐- , ゝ､
｀ ､ , ′ ／ ＼＿
｀ ｰ ＜ ／´ ／:::::￣｀ｰ-
_ノ´∧_∧ ／::::::::::::::::::::::
:::::´￣／ /〈::ヾ∧ /:::::::::::::::::::::
:::::::／ / ﾉ::::〈 ヽ /::::::::::::::::::::
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|「……」
|「委員長や聖永が、他の四人が、お前の手助けを感謝しているなら、それで十分だろ？」
|
| ニンジンのようにぶら下げられた免罪符を、しかし美女は受け取らなかった。
| 彼女の責任感とプライドが、縋ることを許さなかったのだろう。
|
| だが、信頼する女傑へ見せた誠の優しさに、少年たちの警戒はようやく解けた。
| いつの間にかやる夫の喉首に突き付けられていたナイフも消えている。
|
|「まあ、どーでもいいが、とりあえず必要以上に自分を責めると良くないぜ。
| 鬱病になって拠り所が欲しくなっちまう。
|
| 委員長でも上条当麻でも聖永でもやる夫でも、誰かに一発ヤラれてみろよ。
| 肉体的接触による刹那的充足感に酔って抜けられなくなるぜ」
|
|「だったら薦めないでちょうだい」
|「まったくだ」
|
| 下品な手つきでげらげら笑い、誠は刹那と委員長に目を向けた。
| その視線の意味を理解したのか、委員長が口を開き、顔を赤らめて下を見た。
|
|「お、不人気ったら大人気！ 委員長はお前を抱く想像してやがんぜ！」
|「し、してねーよ！」
|「知ってるんだぞロリコン！」
|「ちちちちげーよ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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:::::::／ ':::::::::::::::lヽ ヽ ヽ ﾍ ヽ ＼ .ﾞ:::ヽ
─" .|:::::::::::::: | 〉、ヽ ﾍ _,,,_ ヽ ﾚ′
_ |:::::::::::::: | / .＼／＼ ~ i_ ﾍ .| i l
: : ∠_|::::::::::::::::|/__,,-"＼ .＼`'',< i 〉| |ｲ/ ,
｀ て_ |:::__ :::::: | _,,＿ ` -'" ﾉﾉ |',::/|ﾉ| /
. '' 丁γr､ヽ::::| .／ｿ:| ` `' ',|/彡.|／
. ヾ ゝﾒjク:::::|<_i':::ノ .、 | " そうなの？
. | ＼`ー".::::| ￣ ' ./
. | ヽ ＼::::! ﾊ 〉/ ああ。私で不純な妄想をしているかどうかではなく、
. | |` ーゝ ヽヽ ／| ロリコンかどうかよ。
. | ! ヽノ^ﾞ | |ﾄ ＼＿＿,,.| |
. | |ヽ /ゝ | ヽ.＼ ヽ __./ |ヘ
. ヽヽノ L ＼ヽ ヽ / ト,ヽ＼
／ イ ハ ヽ. ＼＼/ .| ', .ﾉ
/ /::::: ｀ー､ ｀ー ､ヽ ﾍ /
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 汚物を見る目で傾国の美女が委員長を睨んだ。
| 彼女は己の美貌を知っている。
|
| だから男性からどんな目で見られるかも分かっている。
| けれど、幼女愛好と言ったら話が違う。本当にそうなら見下げた野郎だ。
|
|「いやノーマルだし！」
|「上条とは遊びなのか？」
|
| ここで想定外の場所から援護射撃。
| 粒子の剣を下げた刹那が至極真面目な表情で尋ねた。
|
|「一緒に食事に行き、食事を分け合う姿を見たとか」
|「あーんしてたとか」
|
|「待て！ 待って！ 事実だけどそう言うんじゃないから！」
|
| 事実なのか。やる夫の委員長を見る目が変わった。
| さっきから刹那ともやけに親しいし。うん。まあ、いるよねそう言う人も。
|
| 阿部さんのことを思い出し、やる夫は生温かく見守ることにした。
|
|「違う、違うから！」
|「じゃあロリコンか」
|「それも違うってば！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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ショタっ娘とか業が深いな・・
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::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::::::::::::! ';:::::i
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／:::::::／ヘ|::::::::::::::::::::::::::! ';:::l
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::／ |:::::／ |:::::::::::::::::ﾄ::::/ !:!
::::::::::{:/:::::::::/::::::/ !::/三三三|::::/ﾚ:::::/ |/ ﾘ
:::::::::::i:::::::::/ |:::/ i/ |:∧ |:/ ′
:::::::::::::::::::/ |/ ﾞ ヽｿ
:::::::::::::::::∧ ＼
:::::::∧:::/ ｀ｰ ／ ……待て、さっきから気になってたんだが、
:::::/ ∨ ∠二 7 / お前もしかして主人公じゃない？
／ﾍ , '
＼ ＼ ＿ /
＼ ＼ / ｀ ー - ′
＼ ＼__ /
￣＼ ＼
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|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
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|「何言ってんだアンタ、アサギの同類か？」
|
| 朝霧アサギは同じ一年五組の人間で、委員長と同じくクラス委員だ。
| が、極めて不遇な星の下に生まれており、主役になりたいと望むもそこにたどり着けない。
|
| そしてついには『主人公殺し』に覚醒した『主人公絶対殺すマン』なのだが、
| まあその話は置いておく。
|
|「キチ☆ガイと一緒にすんな」
|「わ、悪い奴じゃないんだぞ！」
|「そうだ、悪人ではない」
|
| 伏せ字が機能していないが、仕様であった。
|
|「あなたたち……狂ってるってところを否定できないの？」
|「事実だ」「比較的」
|
| 二人とも至極真面目に、級友の狂気を肯定した。
|
|「あいつに関しては『カイの迷宮』関係なく、元からだよ」
|「つーか話を続けてくれ」
|
| 引っかき回したはずの誠の催促に、少年たちの表情がこわばる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿
/: : :ヽ:ｰ､ _
ゝ:､_: :ヽ__:_r‐':.lヽ
, -､ノ: : : : : : : : ｀: :|: :.ヽ､ __
. く: : : ｀: : : : ; -― ‐{`: : : :ヽ´: :.〉_ -､
'; : : :.,ｨ'´ ゝ‐-､:-:'ﾐx:´: : : 〉
r‐': : ; ' ﾉ: : :}ミ}: : :ﾉ
廴:../ l l ,': : : :}三!: :ゝ,x=ｭ､
ﾉ;' l ! l ヾ_: : l三!: : : 〉｀ヾ
ヾ! !ﾑ斗 / l‐l-､l / 〉: l三!:r‐'ミｭ､
lﾄ､ lｨｭヽ,/ l/ /／l/l f´: :..l三!:ヽ三}ヾ 『ペルソナ様』から一週間くらいした朝。
ヽ l じ' ｨ示云x! ゝ､: :l三:.ノﾐ} }}
l ! , 弋:ツ/ l /:{薔}/三} ﾘ 蘇芳から連絡が入ってね。
l人 ､_ / / /彡イ ,ｨ彡'´
! ,ヘゝ' / l l' l ｲ/}ﾐ}
/ l {三ミ二三l ﾄ､ ヽ ヽ{ﾐﾄ､ﾐ}
. / /l /三ﾐ薔三ﾐ! l三ヽ_ヽヽゞ=ﾐ}
/ ///:.{三ﾘ寸三}ヽ ヽ〃: ヽ ヽ
. / / /: : :ゞ〃 ヾ三三ヽ ヽ: :/ /}
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
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| 登場人物が多くなってきたのでそろそろ説明は省く。
| 蘇芳（すおう）＝パブリチェンコは六人の一人で、不人気の弟子だ。
|
| カメラマンを志しており、数か月前にやる夫は彼女に写真を撮られている。
| 撮られているが、本人たちも読者も憶えていないだろう。
|
|「毎晩変な夢を見るっていうのよ。刹那に確認を取ったら、刹那も」
|「ついでにオレと上条、他の二人もだったな」
|
| 委員長が補足する。なるほどと頷き、誠が眉をしかめた。
|
|「それだけか？」
|「ああ、それとなく数人に確認したが」
|
| つまり巻き込まれたのは六人だけか。
| やる夫は不人気が自分を責めるのも分かる気がした。
|
|「本当に？」
|「いや、全員に遭遇したわけではないが、恐らくクラス全員だ」
|
| 刹那が、鋼色の目を光らせる。
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｀ﾞﾞフ:/:::::::::::::/:::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!
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{::! !:::::::::F,ﾋミ､:::::/ノ'ﾌKP}'〉:::::,:_::::::::::三ﾞ￣
l| V::::::::ﾍ.弋!＼' ' ｀¨'ﾉ/:://:::/￣
ヽ Vﾍﾞﾍ`｀ ﾉ ／ｲ::::/'
ﾉ 〉､ ｀ _ ﾉ:!!| 『雪の女王』を知っているか？
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| アンデルセンの童話である。
| 近年ディズニーの映画で有名になったが、原作は手に取られていないだろう。
|
|「悪魔の鏡に目と心臓を貫かれたか？」
|「そうだ」
|
|「すると、名前から考えて、迷宮で自分のシャドウと追いかけっことかか」
|「そうだ」
|
|「で、セクターごとに罠が張ってあって、それを知恵と勇気で乗り越えにゃならんと」
|「本当に夢世界の情報を持っていないのか？」
|
| 誠の推測に、刹那が訝しむ。
| やる夫には何がなんだかよくわからない。
|
|「雪の女王を知らないやる夫に、あらすじを教えてくれる優しいお方はいませんかお」
|「物語はまず悪魔が存在し、鏡を作るところから始まる」
|
| すかさず答えたのは委員長であった。
|
|「映ったものが何でも邪悪で、歪んで見えるその鏡は、しかし天使によって割られる。
| だが割れた鏡は人間世界に降り注いでしまった」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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::::ﾊ:::::::::ﾊ::::::::::::::,' ';:;' _,,,､､,,,_ ヽ':,::::lヾ;::::::::::::::!_,,,､､,,',::/ ';:::::::!::ヾ;:::i
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ヽ ':,:::';::::iﾍ', :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ､ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,///ヾ＜
∨∨＼ ,ソ::::!/""´´
', ｀∀￣￣￣￣∀´ /へ;:::| 流石天使ｗｗｗｗ
ヽ ', ,' , ' ヾ 碌なことしねーｗｗｗｗ
｀ ､ ', ,' , ´
＞ ､ ', ,'_ ＜く__
＜:.:.:.:.:.:| ＞二 二＜ |:.:.:.:.:.:.＼
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| 茶々を入れる誠。彼が言うと、実感がこもっているというか。
| 天使が実在する世界に住んでいるのだ。感想も違うのだろう。
|
|「で、運悪く鏡の欠片が目と心臓に刺さった男の子がいて、その子が行方不明になる。
| おさななじみの女の子が、彼を探して旅に出るのさ」
|
| 誠の言葉を無視して委員長が続けた。
| そのあたり、やる夫の頭に何となくイメージがあった。
|
| 囚われの少年と、冒険する少女。
| 一般的なおとぎ話とは逆のイメージ。
|
|「鏡の刺さった少年の名が『カイ』。
|
| 彼は目に刺さったせいで何もかもが醜く歪んで見えてしまい、
| 心臓に刺さったせいでものを美しいと思う気持ちや喜びを失ってしまったの」
|
| 委員長の言葉を引き継いだのは不人気だった。
| 少年に刺さった二つの欠片。何もかもが歪んでしまい、喜びを見いだせない。
|
| それは、ひどく悲しいことに思えた。
|
|「心を歪ませて、そのカイは……自分から姿を消したのかお？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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Ⅳ::::rｲ /,; ﾊ / /i // ,;/ ,;i;' ,l i::::::::::::::::／
i｝ｿ:ノ ,;/i /ﾊ,; i ,;/i l /.;i ｨ,;/ /; ,;' l:::::::::::::｛
Yノ i il il 升- /_/,;ﾊ /,;' i ,;' /,; ,; , i:::::::r─'
ﾉil il ,;i≧＝-ミ;;, ヽiﾊ ,;i il / /,;' / ,; / ,;'::::ノ
i il il i! i/::芯:::ケﾐ､ i;,ハ;;, ,;/_;/;;' .; ｲ /〃ﾉ￣
i il il i! ゞ､:z=ン｀;, iﾚ,;;/=､￣,;ヽ,;; /,; ./.;/''
川 i i! ￣゛ ｨ,;:烈ゞ,,;/〃ｲ,;' ｲ／
小.; i ,;::ｔ::ｨ ｱ /,,;;i.小イ i
ｲ i li ｀ｰ''´／il ,;i川,;;il l
.i il ﾄ ､ ' 人 ,;i i l,lﾐ ,i
.i il |: ｀: , ｀ ＿ _ イ i,; il ,;i 小;;..il やる夫は優しいわね。
.| il;;, i: :- :､:>､_ , , ;': : : : : ｀:￣: Y i; i;;.';, ';,
:| ;;. i: :-=Y rｲﾐil｝=-: : : : : : :: : :.::i ,;i l;,ﾄ, ;,
:i ;, i: :イ人廴Yｿ､: : : : : : : : : : : ,i il;, ,ﾊ ﾐ, ヽ
:i il i: : :/: : Y小ミ､-: : : : : : : : : :i川 i..i il､ ＼
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| 突然の慈愛に満ちた表情に、やる夫は心臓が跳ねるのを感じた。
| いきなり何を言い出しやがるのだ。
|
|「カイは自ら町から出て、その場の思いつきで自暴自棄的な旅に出る。
| そこで雪の女王と言う存在に遭遇し、彼女に記憶を消され、連れ去られるんだよ。
|
| 真紅さんの解釈では、カイは醜く歪んだ自分に耐えきれなくなって死を求め、
| 雪の女王は彼を庇護したことになっている」
|
|「甘い考え方だなおい。だが絶望の荒野に立ったガキが、自ら死を選ぶのは納得いく」
|「カイを探して、おさななじみの少女ゲルダは旅をする。一途に、無欲に」
|
| 肩をすくめる誠。委員長は彼を蔑むように見ながら言葉をつづけた。
|
|「雪の女王は、ゲルダがカイを見つけ出し、女王の宮殿に近づいた時に迎撃する。
| しかし、彼女の愛と信仰が雪の怪物を撃破する」
|「何言ってるか分かんないお」
|「安心しろ、読者も分からない」
|
|「これまで無力だったゲルダは、ここでいきなり愛と信仰の歌で天使の軍勢呼んじゃうのよね」
|「つまりゲルダはガンダムだ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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レベル7の複合型ESPで、氷の怪物を精神汚染で破壊したのか、はたまたサイキックに目覚めて消し飛ばしたのかかと思われます。
（言われてみると、花園の魔女も最も賢い女王も山賊の娘も正解一不幸なトナカイも、そしてクリストフもニンジャじみている）
カイが普段から鬱屈したものを抱えても仕方ない気がしてきた
「私は、お前達全員をジゴクへ送り返す。私があの日、お前達を解き放ったのだから…」
-─ ､ , -──- ､
, - ─｀＜::::::::::::::::::::::::ヽ
／::::::::::::::::::::ヾ::::::::::::::::::::::::::｀- ､
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/:.:.:.:.:.::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
/: : : : : : ::::i: ::::ﾊ:: :::::::: : :::ﾄ:::::::: : i: : :::::::::::ヽ
/: : /: /: ::::::|:::/ .V::ﾄ::::::: :::| ＼::: :V: : :::::::::::|
|: :/: /: :/:::::|/ _ノ .V| ヾ:::::::| ∨::i::::::::::::::::::}
ﾚ.|:.::::|:::i:::::/| ､ﾊi ＼::::|｀^ｰV::ﾄ::::::::::::::::ヽ ゲルダは天使じゃねーよ。
. |::::::|:::l::/|::i ヾ| Vﾊ::::::::::::::::ﾊ 人間だからこそ、一途に頑張れたのさ。
|::::::|:::K .V ≡≡′ `≡≡' .ﾊ::::::::::::ﾄ;;ゝ
|::::∧:r-､ i .ﾋ V:ﾊ::::i::＞ ただカイを信じて、危険を顧みず。
|::/ |:|ﾚヽ 丶 レｲ/'ﾘ::::::＞
ヾ. | ヽ∧ ､ r‐ム::ﾊ／
V:::/ ヽ､ ｰ､―‐ノ ／'´
ヾi }＞ ￣ イ
| ｀ - ´_ -┴┐
r‐'V/￣ /::＼
/ /:::::入 ./::::::::::|""＼
／:/ /:::::::::::∧ /::::::::::::|::::::::::::" - ､
／/:::::|V∧::::::/ ＼/::::::::::::::|::::::::::::::::::::::
／:::/:::::::| /:=:::i /::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::
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| 誠が自嘲するような笑みで呟いた。
| 少年たちには、その嘲りが何処へ向いているかは分からないだろう。
|
| だがやる夫には、自嘲にしか見えなかった。
|
|「そんでお前らが集まる夢世界がカイの迷宮か。そこにゲルダはいるのか？」
|「いる」
|
| 誠の眼が細まった。唇が皮肉に歪む。
|
|「ゲルダの名を騙り、お前らを導く妖精か何かか？
| そして、そろそろ信憑性が無くなってきているような」
|「……」
|
| 少年たちが目くばせした。不人気が茶に手を伸ばす。
| 図星なのだろう。やる夫は胡乱に誠を睨んだ。
|
|「お前知ってること全部吐けお」
|「え？ 単純な推測だぜ。夢世界を作った奴の目的を考えりゃわかるだろ」
|
|「それが分からないから困っているのだけれど？」
|
| 不服そうなジャーナリストに、誠は肩をすくめた。
| 挑発的なしぐさだが、誠にとって挑発は日常だ。
|
|「ならそこを突き詰めようか。オレもまだ推測の域を出ちゃいない」
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/::::::::::::::::::;;::''::::::::::::::::¨ヽ
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Σ;;;;;;;;;;;/;r'i;;;;;;r'i;;;/_''ﾄ;;/;;!;;i;;;l
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!;;;;_;;l;/! ｀ l_ﾚ!/
_r＜ ヽ - ／ '′
/:::`ヽ､`ヽ､ i´` ､／ お前らの世界について
f:¨::ヽ::::::::`..､ `7､ 分かってることを羅列するぜ。
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i:::;;::--::;;:::::`ｰ-､;ﾄ､:l
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i:/::::::::::::::::::::::i::::/:::::::::!:l
. i:i:::::::::::::::::::::::::l;;;:ヽ::::::::l.:!
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!;;;!::::::::::::::::::;;;!;;!::::::::::ヽ::::l
!;;;!::::::::::::::::::;;;!';;:::::::::::::ヽ:l
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|「１．同じ夢をクラスメイト全員が見ている
| ２．アンデルセンの『雪の女王』がモチーフ
| ３．『ゲルダ』によって目的を提示される」
|
| 少年たちが頷いた。ゲームみたいだ。誠も同様に思っているのだろう。
| やる夫の顔を見てにやりと笑った。
|
|「ゲームみたいだな。障害物を避けて、いくつかの目的を達成するとイベントアイテムがもらえる。
| それをたくさん集めたらクリアで合ってるか？」
|「そうだ」
|
| 苦々しく、委員長が応えた。図星だからか。いや、それだけではなさそうだ。
|
|「クリア報酬は、そうだな。『望みをかなえる』とかでどうだ？
| あのクラスの奴らは現状に苛立ってる奴が多い……打開を餌にしたらついてきそうだ」
|「……」
|
| 無言の委員長。沈黙が、誠の言葉が正しいことを語っていた。
|
|「質問だ。夢世界の記憶は現実の生徒とリンクしているのか？」
|「いいえ」
|
| 不人気の答えに、やる夫は不思議に思った。
| 記憶がリンクしていない？ では、刹那たちは？
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:::::::::::::::::::::::::::::::::::::／ |:::::／／IIj:|:::::::::::::::::ﾄ::::/ !:!
::::::::::{:/:::::::::/::::::/ !::/ ヽ |;iｊ |::::/ﾚ:::::/ |/ ﾘ
:::::::::::i:::::::::/ |:::/ i/ ヽ7 |:∧ |:/ ′ なら
:::::::::::::::::::/ |/ ﾞ ヽｿ
:::::::::::::::::∧ ＼ 夢での記憶は現実には持ち帰れず、
:::::::∧:::/ ｀ｰ ／ 現実の記憶は夢に残る。
:::::/ ∨ `ｰ=ニﾌ /
／ﾍ , ' 違うか？
＼ ＼ ＿ /
＼ ＼ / ｀ ー - ′
＼ ＼__ /
￣＼ ＼
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|「その通りだ」
|
| 刹那が固い声で、警戒するように答えた。
| 彼の声色には、何故わかるかが含まれている。誠は満足げにうなずいた。
|
|「その方が『不満が溜まる』からだよ」
|
| 誠は笑い、立ち上がった。
| ケラケラと小癪に笑いながら、彼は窓際に立つ。
|
|「夢世界で願望充足したとして、現実側ではその記憶がないとしよう。
| 現実でその記憶があるならば、夢世界を希望にするだろう。
|
| 現実で記憶がないならば、夢世界の彼らは現実に絶望するだろうよ」
|
| 言いながら、誠は委員長と刹那に意味ありげな視線を送る。
|
|「お前らが記憶を持ち越せるのは、そのマグロのおかげだろ？
| フィレモンとの儀式で、前もってペルソナを有していたからだ」
|
| 頷く刹那、だが委員長は何か言いづらそうに視線を逸らした。
|
|「あ、オレはペルソナを持ってない」
|「は？」
|
| 誠が茫然とした声を出した。完全に想定外だったのだろう。
| 笑えるほどの間抜け面だ。
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／ ｒ":.:.:V∧ :.:.:.:}ヾ¨＼ヽ
／ ーｫ:.:∨ﾊ:.:.〈 ､ ヾ〉
./ ,ｨ 7 / {:.:.:!//!:.:.:.} ヽ
.′ / {ｼ /l / /, ｲ ゝ:ｌ//l:.:.:.ﾊ i
ﾚ1 / ' / ./ }! /７イ/ | 1 /:.ｌ//l:.:ｲ ﾞ. !
l/ | xi/! ,〈`ﾒj≧x／ / _厶-ｲ / j/ ）:.ｉ//r:ｼ } |
l/ ﾄ:l/.∧ rｔ=ミ / / ｨ=lｲｫ/ {:.:{薔}/ ! !
／／ｆ ﾍ弋ソ 弋ソ,ｲ /yY⌒i l／ ヽ|
∧ __／／//ゝ-ﾍ 丶 ／／!./,":/ ./ゝ／ ノ:! 詳しくは昔のスレを参照してちょうだい。
〈 ヾ´.x≦__.ノ ゝ ‐ ‐ / ./ﾞソ//:./ ./;／ イ - ､
ヽ ヾ￣ .ｨ≦////＞-{ /ｲｆ:.:.:.:./ く´.斗 " ﾉ
＜ミx__」 〈//////∧｀ ー‐＜:.:.:ノ ｒ一彡
} 〉 .x＜:.:.∨//////￣iア‐一 ´ ヾ. |
___.ノ/}ミｰ＜:.:.:.:_x≦ﾍ.///////１ゝ-- イ:.ｰ一:.:.､＿＿ ＼
{::!:.:.:.:.:.:.i///////∧//… ７ - ､/彳:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾉ! ＼__.ﾉ
ﾞﾘ:.:.:.:.:.:.}/////////.イ/∠.ノ///!:.:＼:_:_:_:_:_／:.:| | |
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フ:.:.:.:.:.:.ヾ:´:.:."ｰく//////ｘ-､!:/:.:.:.＼f´ ￣ ´ .! |
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|「え？ でもお前……『エア』はどうした？」
|「……何で知ってる？」
|
| この時の誠の胸をなでおろした顔。
| やる夫は殴った時よりも胸がすっとした。
|
|「だがオレの『エア』は、ペルソナのなり損ないだ。
| そこにあるだけの、柄までの、刀身のない剣……」
|「おおいぃぃ！！ ちょｗｗｗｗおまｗｗｗｗｗ」
|
| 激しく動揺する誠、委員長に掴みかからんばかりの勢い。
| だが、すぐに考えを改めてやる夫の襟首をつかんだ。
|
|「どういうことだよ！！」
|「やる夫が知るわけねーお！！」
|
| がくがくと揺すられるたびに、顎肉と腹肉がたゆんたゆんと激しく揺れる。
|
|「つーかオメー、『エア』なかったらどうやってビスケットハンマー壊すんだよ？
| 上条を宇宙空間に連れてく？ 訓練に何カ月かかるんだよ！！」
|
| 他のメンバーには聞かれたくないのか、意味不明なことを囁き声で叫ぶ誠。
|
|「誠お前器用だな！」
|「馬鹿お前ニビル止まらなくなっちまうぞ！！」
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ ……にびる？
| （__人__） |
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「いや忘れてくれ、多分泉の娘が木星何とかすりゃユピテルが止めてくれる」
|
| やる夫の腹肉をたぷたぷと揉みながら、錯乱状態から戻った誠がため息をつく。
|
|「おいおい勘弁しろよ、あのクラスの魔術的波長がおかしいって聞いて、
完全にそうだと思ってたのによー」
|「何のことだ？」
|「いやこっちの話」
|
| 誠は頭を掻いてため息をついた。
| 少年たちと不人気の不審な視線が向けられる。
|
|「ちなみにやる夫も意味不明のことをわめかれて困ってるお」
|「でしょうね」
|
| やる夫の言葉に、不人気が優しく頷く。
|
|「話を戻すぜ。希望と絶望からだ。
| おい不人気、お前夢の世界で毎晩好きなものをたらふく食えるって聞いたらどう思う？」
|
|「私をハラペコキャラみたいにしないで頂戴……夢でも嬉しいわね。
| 毎晩の食事で第三のビールを飲んでもいいみたいな？」
|
| マグロの上げた例に、誠はポロポロと涙を流した。せめてビールと言ってくれ。
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| |. ､__Ⅳ::::/:::i:::::/__!::::::::::::匕ヽ:::::::::::::ハ:|
,-〈｀ヽＪ | ﾌ::l::ｒ'l:::/!::/ｾﾐl::::::ﾊ:::尨_ハ::::::i:::ﾄ､`! それがひどく現実感のある夢であったなら、
. /´⊂´￣ヽ | ´￣]八!/i」:瓜ﾘ !／ Ⅳ 小ハl 人間はそれを楽しみに日々を過ごすことができる。
. ヽ_弋 入 ｀ } ｊ､八i ´ ｊ〉 爪i
/ / / ｊヽ､ ｔ＿ｱ .ｨ それと、もう一点。
| { / _＿／/| ヽ __／/ |＼ コミュニケーション回数の問題がある。
ヽ _丶 ,--－゛:::::／::::| 〈 ／ .|::::＼ﾞ''ｰ-::､_
|_,.．-´ /::} /::::i:::::::::/:::::::::/∧。V￣＼ |:::::::::＼:::::::::::::｀ヽ,
,zi_,.．-´:::::::| |::::/::::∠:::::／::|/＼丱／/ ヽ/|:::::::::::::::ゝ::::::::::::::::|::}
|。|::::::::::::::::::| ／:::::|:::::::／:::::::::| |＿/. |―ー＜::::::::::::::::::::|::::i
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|「回数？」「ああ、なるほど」
|
| 聞き返したやる夫の脇で、美女が納得し頷いた。
|
|「夢世界での接触で仲良くなった誰かとは、現実世界では無関係だったりするのよね。
| 特に、夢世界は危険に溢れた冒険世界であるから、吊り橋効果も高い」
|
|「ちなみに吊り橋効果というのは、見るからに危険であっても、吊り橋がかかっている以上
| 他の道はないと思い込んでしまう心理的視野狭窄のことだ」
|
|「吊り橋のように危険な状況で異性と行動を共にする場合、
| その興奮が危険に対するものか異性に対する者かを脳が誤認識するというものよ。デタラメを教えないで頂戴」
|
| 表情を変えずにホラを吹く誠。少年たちは知っていたのだろう。苦笑で返す。
|
|「そういえば夢世界では肉体ダメージはリセットされるのか？」
|「毎回リセットだ。そして、現実の病気や怪我は持ち込まれない」
|「ただし、夢世界開始前の怪我は別だけどな」
|
| 上条の腕のことだろう。
|
|「それじゃあ処女と犯ったら毎回処女か。めんどくせえな」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ 死ねお。
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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|「え？ 高校生だろ？ ヤりまくりじゃね？」
|「それはともかく、確かにそういう問題は発生していてもおかしくないな」
|
| 委員長が小さく唸った。
|
|「夢の中で成立したカップルでも、現実では他人だ。
| それどころか、現実では別の誰かと恋人同士になっていてもおかしくはないな」
|
| 納得したように呟く刹那。何か思い当たる節があるのか、委員長が目を逸らした。
|
|「なになに？ エロいこと？」
|「いや、島津に夢の中の調子で話しかけたことを思い出した」
|「ちょっと違うが、備府と糸川の関係もそうだな」
|
| 備府。聞き捨てならない名前だ。刹那へのやる夫の視線を誠が敏感に読み取る。
|
|「アフロの方だよ。備府アフロ」
|「ああ、やらない子ちゃんね」
|
| やらない子。やらない夫の妹だ。
| やらない夫に似て超人的な精神を持つ狂人で、やらない夫に似ず外見は可愛い。
|
| しかして凶悪なレベルのダイエッターであり、絞り込まれた筋肉はアリカよりも上である。
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＿ ﾉ ≧:::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾ::::::::::::::::::::::::::::::::: ノ:.:.:.:.:.::::::::::,'´_
/::.::.｀ｰy､_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＞' ´ ￣￣￣ ｀ - ､::::::ー=───')
／::::::::::::r─':::::::::.:.:.:.:.:, - '´ / ｀ ､:::.:.:.:.:.:.::::::::ﾚ､
＞</´｛:::::::／:.:.:.:.:.／ ／ il ､ ヽ:.:.:.:.:.-=､:.:.:｝
｛::::::::::i />:.:.:.:.:.::.:.:./ / il il V:.:.:.:.:.:.::ｿ-､
ヾ:::::::|./i:::::::::.:.:.:.:./ / il .il Vヽ:.:.:.:ゝ､ ｀,
彡r手ｲ ＞:./:.:.:/ il il .il .V:.:｀ｰっｷ .|
// | 小:.:./:.:.V il il il ､ V､:.:.:.:.:）Xゝ
.. |.| ｿ人ミ>/:.:| il 小 il .il 升 il iミ､:.:< フ｝
|.| .// V ｲ:.:.:.| ﾄ il -升弋-､ il i ヽ /│ .ﾊ il |ﾊ:.:.ノ 小
|.| //i ﾄ V-､ヽﾄ､ .il､ ≧ｧ=-､ﾊ,､ ヾ /-ナ‐升- ､ .il ir'´ｿ/ ﾊi
|V/ | .ﾊヽ 廴::::|ゝ川 ﾜ示芯゜ ｀',v/ ≧＝ﾅ_ /.il ﾘ::ハ | ||
. // .| .| ll 弋.{ .|ト､ゞ─'´ ｛辻り >/ノiﾊ i /ﾘ|::| i | ||
/ ﾊ .| .| i｝ >/ .|ヽ｀'､ , ゞ-ィ / イﾉﾊ/ﾚ .|::| / | ||
.//廴| .| .| |｝ /ﾊ |∧ ヽ _ ./i l .|/ |::|| | .||
./ | | |} / .| Vr＞ ） ｀ .ｲ/ .| .| .V/i .:| .|| やらない子がどうしたの？
｝ | | .|｝ / 小 V/>/＞ , -＝-≦ | | .| 人 > | .il
| | V/」 / <::::::|ヽ ヽ/:::::::r'=ミ入:::::/:::::｀-ｲ 小.| | | | |/
ヽ / v i レヽ::::>､ X:::.::ｨ｛rj｝ｿ::::::ヽ::::::::/ .| ヽ │| | |
＼ ./ 川 .人:::/廴∧ / V::ｨ:示::ヾ::::::::.:.::./ /ﾉ ＼ | | | |
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| やらない夫の妹だから、不人気も知己ではある。
|
|「現実では夏休み前から喧嘩して、糸川とずっと冷戦状態なんですよ。
| 夢世界だと……うん」
|
|「ｷﾏｼﾀﾜｰ！」
|「あのブラコンはねーよ、黙ってろ」
|
| やる夫の知る限り備府やらない子は兄を異様に愛していた。
| 口では嫌いだなんだと言っているが、その好意は常軌を逸していた。
|
|「え？ 兄妹仲悪いんじゃないのか？」
|「休日一緒に登山に行く程度には悪いお。ついでにキャンプして天体観測するぐらいには」
|「ちょっと意味が分からないな」
|
| 困惑をあらわにする委員長。彼は正常だ。
| 普通、高校生の兄妹が一緒に出かけるって言っても街へショッピングがいいところだ。
|
|「まあとにかく、現実だと喧嘩が続いているのに、夢の中では仲直り出来ているのね？
| 本人たちがどう考えているかはわかるかしら？」
|
| 不人気の問いに、委員長も刹那も頭を振った。
| 夢世界が広くて、早々会えないのか。それとも別の事情があるのか。
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､＿_ ,,. ＜ ／ ヽ l
｀ ー―／ l／ ／ / ＼ ＼ ヽ
/ /l | ／ イ / l ＼ ＼ ｀二ﾆ≠
/ /十 T ´ ｌ ｌ｜l ｌ /| /l /l ＼ ＼ ／
l , l l l≧ミｌ l | l/ナ≦| ＼ ＼ ／
|l l ､ ﾄ弋ﾊ、 l/ 弋ｿ! / /｀ﾌﾅﾉ´
|! l l＼＼ ﾉ＼{_ ／ｲ /／/ﾚ
｜ l /l :l: :トヽ丶 / ｲ /′ ストレスにはなりそうだな。
|/ l/|: :!＼ r== ､ -=彡'ﾊ /＿_ それが？
/ ヽ|｀l: :>、ニ´ ／ }ﾉ ＼＼
ﾚ' ﾉ ＞‐r '´／ ／￣´ |
／､＿｣∠-‐ ´ ＿|ー ､
_〈 ー＿ ／￣ ＿ ｣＿＿
／ |＼ ／ ／ ／ ＼
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|「それが『敵』の目的だ。若くて感情的な怒りを集めて煮込んで煮込んでやがるのさ」
|
| 誠が窓際に近づき、ゆっくりとカーテンを引いた。
| そして空を見上げる。日は大分短くなった。もう月が浮かんでいる。
|
|「何人見える？」
|「ナニをだお？」
|「空に浮かぶ絶望の具現。この世界の《終末体現》」
|
| やる夫には理解できない。
| だがふと、心に囁くものがあった。
|
| もしも仮に『やる夫の中の入即貸本』を通して空を見たら？
| そこには、誠の望むものが見えるのだろうか？
|
|「雨宮が言っていたな」
|
| クラスメイトなのだろうか。やる夫の知らぬ名だ。
|
|「この惑星の上には、一撃で世界を破壊できる凄まじい何かがあると」
|
| 不人気が眉を寄せる。そして、悲しそうに、落胆した顔で首を振った。
| 彼女にも見えないのだろう。今回もまた、この美女は蚊帳の外なのだ。
|
|「ビスケットを割るみたいに簡単に、惑星を砕く巨大なハンマー」
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／／
へ ／／
／ ＼／／
＼ 丶
＼ ＼
＼ ／
＼／
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|「そんなもの認めない」
|
| 刹那の目は、確かにそこに何かを見ていた。
|
|「カイの迷宮で溜まった不満が、アレの原動力だってことか？」
|
| 委員長は、存在を認めたうえで眉をしかめた。
| 即座に対処法に頭を巡らしているのだろう。
|
|「まあ、アレを最終的に発動させるには、影世界の『惑星ニビル』が来なきゃならん。
| だがそのニビルは、木星の重力網で捕らえて曲がってもらう」
|
| 赤身が顔を上げた。
| 木星。電話で言っていた部分にようやくたどり着いた。
|
| しかし、まださわりもさわりだ。
|
|「ニビルって、パラウェイブ研究会が言っていた？」
|「流石プロ、良くご存じで」
|「つーか誠、その。ハンマーって観測させちゃいけないんじゃないのかお？」
|
| 前の誠の説明では、虚無は光より早い。
| 『観測した』という事実から逆算して存在してしまうのではないのか？
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/: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
|: : |: : : : : |: / ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽＶ: |.: : : | V 世界中が観測できるようになる前に、
＜ : _: : : / 〈 ノ |/ ﾚ ヽ }|:./ヽ: : :| 『絶望を抱いた人間』だけが、
＜:: |. 小{ _,,.. - ､-.,_ ﾚ{: :.|ヽ:| その片鱗を観測できてるのさ。
厶ﾍ ﾊ ､ {ﾊ,;' （(
＼_! ' ! ( ( ヽ) ﾎﾜ〜ｯ 『ニビル』が実際に到着した際に、
ヽ 'ー―-- ／ ヽノζ 夢側の物質を現実界に反映させるための
___,ｒ| ＼ ／ |￣￣￣|(^) 質量が『ビスケットハンマー』だ。
／:/::::| ＼ ヽ _ , ィ´ | ''..,,''::;;⊂ニヽ
／::::::/::::::| ＼ ´ ∧＞､ .| .,,:: ;;;;ン=- )
／:::::::::::/::::::::| ＼ / ! ,ｒ-''⌒＾ニ);;;;ヽニノ ヽ
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「ニビルが到着しなけりゃ問題はない。
| 夢世界を作って何か企んでる奴も、晴れて作戦失敗だ」
|
| 肩をすくめる誠。時間が解決してくれる。
| いや、正確には、泉こなたと仲間たちが自分たちの目的を達成するついでに、結果的に解決する。
|
| そういうことなのだろうか。
|
|「まあ、そんな後のことより大事なのは今現在だよな」
|
| 誠の視線が刹那に向いた。急にシリアスになる眼差しを、刹那は無表情に受け止める。
|
|「夢からのフィードバックだが、影響は五人だけか？」
|「まだ分かっていないわ」
|
| 誠の問いに、不人気が目を逸らした。
| だが五人？ やる夫は首をかしげる。どの五人だ？
|
|「委員長は問題ないんだろ？」
|「そうだよ、良くわかったな」
|
| 不服そうに答える委員長。やる夫は理解した。
| 彼はペルソナを持っていないと言っていた。
|
| ペルソナがなんなのかいまいち理解できていないが、それが重要なキーなのであろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ 他の生徒は現実に夢世界の記憶を持ち込めないから、
| （__人__） | フィードバックはないってことかお？
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「そうだ。ついでに言うと、夢世界の人格はビスケットハンマーを発動させるための蟲毒めいた生贄さ。
| 本体は傷つかない方が都合がいいはずだ」
|「それは……ひとまず安心ね」
|
| 嘆息する紅マグロ。だが、委員長以外の五人はいまだ危険ということになる。
|
|「誠、聖永さんらの危険はどれくらいだお？」
|「現実でペルソナを使いこなせるってことは、それだけ影響を受けやすいってことだ。
| 刹那、お前さん夢で死んだら死んでもおかしくないぜ」
|
| 死の可能性を指摘され、しかし刹那は冷静に頷いた。
|
|「オレが一番ガンダムだ」
|「現実でのペルソナ能力は、自分が一番だと主張してるぞ」
|
| 舐めらかに翻訳する委員長。頷く刹那。日ごろの苦労を窺わせる。
|
|「一応、一週間以内に健康診断をねじ込むか」
|
| わけのわからないことを真剣に言いだす誠。
| 健康診断をねじ込む。理事だから出来る荒業か。
|
|「オレが医者になってやるよ。女子高生のおっぱい揉み放題だぜ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
ｽﾞﾄﾞｰﾝ! . /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
ノ￣￣｀ヽ、―ニ : |: : : : : |: / ＼: : /、―ニ 二、―ニ 二|
／ ´｀ヽ _ 三,:三ー: |: : : : /!/ _ | :/ 三,:三ー二三,:三ー二
.ノヽ--/￣ , ｀＜ : ｣_: : / ノノ ｀￣￣￣￣￣
} ...| /! ＜:: |. 小{ _ﾐ }
}｀ー‐し'ゝL _ 厶ﾍ ﾊ 」_}｀
ﾍｒ--‐‐'´} ;ーー- ＼_! _,:ﾍヽ-------------
｀ヾ---‐'ーｒ‐'"＝＝ ヽ ／ ｀t ／"＝＝-
___,ｒ| ＼ { / ／
／:/::::| ＼ ヽ ｀_⌒ ィ ´
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| 無言の右ストレート。
| 振り抜いた姿まで美しい不人気。誠はもんどりうって倒れた。
|
|「とりあえず、魔術的縁の状態と、傷の有無。あとはペルソナを現実で出せるかは測定できるぜ」
|「最初からそう言いなさい」
|
| 殴った拳をハンカチで拭いながら、美女が言い捨てた。
| 誠は立ち上がって肩をすくめる。
|
|「で、ついでに黒幕もあぶり出せるかもな。殺しとくぜ」
|「は？」
|
| 委員長が唖然とした声を出した。理解が追いつかないのだろう。
| 健康診断で、何故黒幕があぶり出せるのか。
|
|「殺しは無しにして頂戴……それより、何故黒幕が分かるの？」
|「夢世界の原因は、あのクラスの誰かだからだよ」
|
| 刹那と委員長の眉間にしわが寄る。
| クラスメイトの誰かが、世界を滅ぼす陰謀を企てたというのか？
|
| 受け入れがたい。二人の目がそう燃える。
|
|「お前らは高校生だからな、つまらんことで自暴自棄になって世界を滅ぼしたいと思っちまう」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣￣＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | ……あー、うん。
＼ ｀ ⌒´ ／
／ ＼
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| やる夫は否定できずに頷いた。
| 翠星石とやらない夫が付き合いだしたとき、やる夫は世界そのものを呪ったりもした。
|
|「夢世界はその程度の、その場の勢いが産んだ結果だっていうのか？」
|「そうだ」
|
| 誠は意地悪く目を細めた。
|
|「お前らの巻き込まれてる事態は、『その程度』だよ。まあ、高い確率で唆した奴がいるな。
| ロキもオレもアベルもルシファーも、このカルパじゃあ穏健派だ。
|
| するってぇと、『結社』関係者かニャルラトホテプだな」
|
| ここでニャルの名前を聞くとは、やる夫は苦虫を噛み潰したような表情を自覚した。
| いや待て？ そこでもう一つの問題に気付く。
|
| ニャルラトホテプは複数個体いる。先日退場願ったあいつとは限らない。
| そしてもう一つ。やる夫はニャルラトホテプに心当たりがあった。
|
|「『結社』が絡んだりすんのかお？」
|「そりゃあするさ。関係者だって通ってるし」
|「……マジかお」
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.′:i::::::::::::::::::::::::::::::〈⌒ヽ:::::::､:::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾚｧ ああ、『大丈夫』だ
|::::::|:::::::::::::::Α:::ﾄ､::∧ ｆ芹ト､{ヽ:::::::i、::::<＼::::::::::ﾆ=- そいつはいざこざあってドロップアウトした
|::::::}:::::::::::::{ｆ'芯:| ＼ﾊ. ヒj ｀ ＼::| ヽ::ﾊ .}::; - ﾐ､ 元『結社』だ。
Ｖ::ﾊ::::/:::::::“.ﾏﾘ! ｀| ｰ一 ｀| ハ::| // ｀
..V V:::|､::::::}-‐ __ツ:/
V:| V{ﾊ < ／^ヾ::{
V! ｀|. ヽ ｬ‐ ､ / >^ヽ＿＿＿__
＼. ｀¨´ ／／´:::::::::::::::::::::::＼
＼ _. '´ .／／:::::::::::::::::_:::::-‐''´￣｀ヽ_
ｰ ´ ＼ .／／:::::::::;::-‐::´::::::_::-､ー--:､::::ヽ
／入/／::::::::イ:::::;::::::-＜_:::::::｀ー--::ミＹ
／:::::|ァｲ::_::イ:::::::／:::::::::::::::::::｀丶::::::::::::::::｀ヽ
ﾊ:::::::/;:::イ:::::::::::／:::::::::::::::::::::::::::::::::｀丶::::::::::::::〉
{::|:::/ｲ::::::::::::::／:::::::::::／:::::::::::::::::::::::::::::::}:::::::::/
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| 誠の大丈夫は、やる夫にしか通じなかった。
| 『血族』と『教会』の『結社』撃滅作戦の対象にはならないという意味なのだ。
|
|「そいつは『九鬼』の高弟でな。先代が耄碌する前に後継者を決めるはずだったんだが、ちょっと修羅場って。
| そいつを残して関係者は全滅した」
|
| ちょっとしたいざこざレベルではない。酸鼻極まる殺戮の嵐だ。
|
|「藤木か」
|「ご名答。そこで空いた席に、自分の妹をねじ込んだシスコンがいたりするわけだが、
| まあ、そのあたりは余談だ」
|
| 『結社』内部でも最強の殺し屋集団に同じ名字の人物が二人、名を連ねていることにやる夫はさしたる疑問を持っていなかった。
| しかしまあ、兄は『死神』の名にふさわしい化け物らしいが、妹はそうでもないとも聞いていた。
|
| 『死神兄妹』朽木某。
|
| その情報を聞いたのは三ヶ月前だったろうか。
| 屈木頑之助を追う中で、ミスリードとしてデュランダルが提示したのだ。
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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世界をいったん崩壊させて、そっから上がりをいただくとなると
インドというかディーヴァ辺りが噛んでそうだが
○ ロキもオレもカインもルシファーも、
てへりこ。
しかし、やる夫さんは相変わらずいるだけですな。スキル的にしょうがないけど！
ヽ､.........＿
__,.ﾆｰ_､::::::ヽヽ
-―‐_‐- ､::::｀ヾヽ::::::)--
,..‐'ﾆ-::'´:::::｀ヽ､:::::::;ニﾆ''-､
,r'ｨ,r';r::´::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ､ヾヽ
,/' //:::::::::;::::::::::::;:ィ:::::::::::::::::::::::ヽヾ､
＿//_ノ:::'::::::;::ィ'::;／::::::ﾍ:::ヽ::::::､:::':::lﾞ'
｀ﾞ''ｧ:;=--ｧ‐;;::ィ:´:::::;:rヽ::ﾍ:::､ゝ､::ヽ:::|
i::l:::::｀l:l::l::::i:/::,r'::ｨ::;:ｲ〉､ゝ､'ｰ､'ｰ:::乂
l::l::i::::lllt､:::l:::::i://ノ__,:ノ l':::-､;_::i::､::ゝ
'､l::l::::ll|tj:､l:::iT''ｱ',rj:┬ヽl:::::::;ｸ}:ｲ}
ヽ:::､::lﾄ乂ヽ､ ´ ゞﾉｨｲ':/::/ /ノ
ヽ::ヽ ﾉ _,ノ;:ｨ':´/
ﾉi::ﾍ ｀ ＿_ , ｲ:::::{ だが藤木は陰謀とかいう性格ではない。
ゝ｀i ､ ｰ ｀ ,／ lﾑ:::l 正義漢だ。
' >イﾑ-‐''´ l;＞ヽ_
,r‐t..f:´rﾞゝﾚ ,..‐:´::::::;::::ク､
,r‐'''ヽ:::＼::::::｀ヽ‐::':´:::::::;:ィ'::::::::::::::|
./.l ﾉ::::::::::‐=ー::::'''';:‐::´:::::::::::::::::/ ヽ
/ ! l:::､:::::::::::::::‐:'::´::::::::::::::::::::::::ノ ヽ
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|「そうかね？ 自分を構成する人間関係すべてが血の海に沈んで、その上でそう言えるか？」
|
| 刹那の問いに、誠はせせら笑った。
| やる夫は蒼星石、やらない夫やアリカ、そして入即貸本の常連たちが全員消えてしまうのを想像し、胸が悪くなった。
|
| やる夫に関しては冗談ではない。
| その気になれば、本当にそうなる時が分かってしまうのだ。
|
|「あのクラスの全員が、何かしら滅びを望んでいる。
| だが、藤木源之助ほどストレートに、すべての怒りを飲み込んで、やる場ない荒野を歩いてる奴はいないぜ。
|
| いいか？ あいつは狂ってる。確実にだ。
| すべての希望がついえた絶望の荒野を、無意味に歩く屍だ」
|
| やる夫はそんな高校生を想像し、想像できずに首を振った。
|
|「まあ、藤木かどうかはともかく、『黒幕』は現実世界で夢世界を望んだ誰かだろう。
| その場合、高い可能性でそいつは夢世界の記憶がある」
|
| なるほどと、紅マグロが唸った。
| 健康診断ついでに魔力云々を調べれば、夢世界からのフィードバックがある人間は簡単にあぶり出せるのだろう。
|
|「でも、殺して解決すんのかお？」
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:::::::!::::::::::!:::::::::::::::ﾒ´::/ ',:::::::l;:::::::::::::::::::i ',:::::::/ ヾ;::::::::l::::::::::',
::::ﾊ:::::::::ﾊ::::::::::::::,' ';:;' _,,,､､,,,_ ヽ':,::::lヾ;::::::::::::::!_,,,､､,,',::/ ';:::::::!::ヾ;:::i
::;' !:::::,'::::l::::::::::::i 彡""´｀ﾞﾞﾞ`ﾞ'' '.;:! ＼:::::::ヾ"´｀｀ヾミr､ 〉::::ﾊ:::::入ゝ
/ i::::i',:::::!::::::::::ﾄ `" ヽ ＼::: ｀´ /ヾ:::) //
',::i ',:::::';::::::∧ :::::::::::::::::::::: ヽ::::::::::::::::::::::,'ｿ:ｿ',ソ::::::＞
ヽ ':,:::';::::iﾍ', :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ､ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,///ヾ＜
∨∨＼ ,ソ::::!/""´´
', ｀∀￣￣￣￣∀´ /へ;:::| ああ、『夢世界でも』
ヽ ', ,' , ' ヾ 殺さないと難しいだろうな。
｀ ､ ', ,' , ´
＞ ､ ', ,'_ ＜く__
＜:.:.:.:.:.:| ＞二 二＜ |:.:.:.:.:.:.＼
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
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|「ちなみに、願望が夢世界を作り出した場合、本体が無意識の可能性もある。
| その場合は見つけにくいな。外部接触で儀式とかしてるなら確実に記憶はあるが」
|
| つまり、発見は確実ではないということか。
|
|「そういえば、夢からのフィードバックの原因は何なんだ？」
|「ん？ ああ、イタリア人どもの仕業だな」
|
| ここでイタリア人である。やる夫は眉に唾を付けた。
|
|「木星云々の問題で暗躍してる連中がいてな。
| 分かりやすく言うと木星の主神ユピテルにご帰還頂いてローマの神々の復権を図ろうっていう」
|
|「ごめんわけ分からんお」
|「まったくだわ」
|
| 少年たちも胡乱な表情でうなずく。
| 誠は一同を理解の悪い無能を見る目でぐるりと見回し、面倒くさそうに嘆息した。
|
|「クスリと音楽で木星の夢を見せて、信心を集めようとしてるんだよ」
|「夢に見るくらいで信心が集まるなら、神々クリーチャー化に苦労しないと思うお」
|
| やる夫の言葉に、誠はいやらしいにやにや笑いで応えた。
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､__Ⅳ::::/:::i:::::ﾒ__!::::::::::::匕ヽ:::::::::::::ハ:|
ﾌ::l::ｒ'l:::/!::/ｾﾐl::::::ﾊ:::尨_ハ::::::i:::ﾄ､`! そうでもないんだな、これが。
´￣]八!/i」:i ￣ !／ Ⅳ 小ハl －､_ まあ、詳しいことは省くが。
／ ｊ､八i ´ ｊ〉 爪i:::::::::::::::::::::::::ﾊ
／:::::::ハ::::ｊヽ､ ｔ ＝ヽ ｨ:::::::!:::::::::::::::〉:::::,:: !
／:::::::::::::::｜:::::{ ＞ __／ ,!:::::::!:::::::::::〈:::::::/::::{
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{:::::::::::〈｀ヽ:::::ｊ__::＼::::::::ヽ::::} /:::::::::::〉:::::::::::::{:::::::::::::ヽ
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|:::::::::::丶} ;' 厶_/ // /!:::::::/:::::::::::::! {::::::::::::::::::::!
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|「なんにせよ、『普遍的無意識』野を通してるからな。フィードバックは偶然だよ。
| 夢領域が力を増すと、時に感受性の高い人間が兆しを嗅ぎ取る。
|
| その前段階だ。『普遍的無意識』の世界と現実を行き来しているペルソナ使いは、
| 夢と現実の境界線が曖昧になった時に最初に影響が出る」
|
| 分かりにくい様な分からない様な説明だ。
| 結局理解できない。やる夫は唸った。
|
|「夢と現実の境界を曖昧にしようとしている奴らがいて、その影響で刹那たちは曖昧になったってことかお？」
|「そう。だから偶然だ」
|
| 苦虫をかみつぶしたような表情の不人気。
| 彼女の不安と苦悶は、偶然の副産物にすぎなかったと。
|
|「解決策は？」
|「とりあえず三つ」
|
| 誠は性格が悪いが有能で、それなりにサービスが良いのが困る。
| 意地悪で邪悪なら、好きなだけ殴れるってものなのに。
|
|「まずはイタリア人どもの解決。一月以内になんとかなる。
| ついでに警察も動くから、クスリも摘発されておしまいだ」
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／/, -―……――----;ｯ'
＿___{ 〃ｒ__ ――‐≦三´
／ｧ…‐ ｀ ⌒ ､
／ 丶､
／ ＼ニ＝‐ ′
, , 、 ､ ＼ ＼
／ ／, | Vﾍ V l 丶 丶
､ ー≦― / / / / / | Vへ. ヽl Ｖ∧
ヽ.三 ／ ／/ / / / ﾍ lヽ V ＼＼ l | Ⅳﾊ
ミ≧三 イ ｲ ′, ｌ /´￣ヽｊ、 V | ｀ ‐＼｜｜Ⅵ
ヽ ー=彳,l |l l l / 勹ｬｘ､ﾐ＼Ｖ |｜ .ｲ | ｜｜ ﾘ
Ⅵ Vﾍ |l l | ｛ 「しｿ｀ヽヽ Ⅵ | ∠/ , ′' 丿
N ゝⅦ| l∧{ ｀弋 ﾉﾞ|/ｨｊｧ７ / / !
. Ⅵ l从|ﾄ､l ＼ ー 彳乏ｧ , ﾍ |
N l|| ﾞｌ ＼_ ヽ / ｨ ／ ヽl その前にオレが死ななければ問題ないな。
| | 从 丶,ｒ 'ﾞ/／´ `‐
/ /ﾚ ＼ ´､=ｭ ｨ{
l // | ､ イ ｀`
ノ´ , ｀ ー ´
ヽ /
＼ ﾄ､
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| 他人事のように冷たく、刹那が頷いた。
|
|「次は？」
|「おいおい、マグロの癖におねだりかよ」
|「死ねお」
|
| 今の誠の冗談は極めて下品なので解説は省く。
|
|「お前らの夢世界は、永遠じゃない。絶対に終わらせ方がある。それが夢って奴のルールだ。
| そんで、終わっちまえばフィードバックもないだろ？」
|
| 誠の回答が記述式のテストだったら、減点が凄まじいものだろう。
| 終わらせ方の手がかりも無しに、『終わらせればいい』と来たものだ。
|
|「健康診断で黒幕が見つかれば一発だわな」
|「見つからなかったら？」
|「そこまで面倒見切れるかよ」
|「まったくね」
|
| 不人気が頷く。健康診断次第で、彼らの冒険は終わりを告げるということか。
| いや、黒幕が見つかったからと言って簡単に終わるわけでもないのか。
|
| やる夫は先ほどの殺す殺さない論を思い出した。
| 本当に見つかったら、不人気はどうする気なのだろうか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ 最後の一つは？
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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|「縁とか魔術的絆に詳しい奴を連れて来て、施術してもらえ」
|「あなたじゃダメなの？」
|
| 誠は不人気の言葉を噛みしめるように吟味し、満足そうにうなずく。
|
|「あなたじゃなきゃダメと来たか。オレサマのモノにメロメロらしいな」
|「実際、交友関係が狭いのよ。あなたが役立たずなら三四を頼るわ」
|
| 鷹野三四は入即貸本の常連で、世界的に有名な悪魔研究家だ。
| 彼女を頼れば良い結果は出そうだが、同時に実験動物扱いされる恐れもあった。
|
|「聖永刹那は、オレの施した術は信用できないだろう？」
|「できないな」
|
| 刹那はきっぱりとした口調で断言した。
| その鋼色の双眸は誠への不信感でいっぱいだ。
|
|「ならやめておいた方がいい。この術はプラシーボ効果が極めて高い」
|「それ言っちゃダメだ奴だお」
|
| プラシーボ効果とは、偽薬効果とも言われる現象だ。
| 偽の薬、たとえばただのサラダ油でも、効果があると信じて飲めば効果を発揮するというものである。
|
| それはつまり、ここで最初から嘘であるなんて言ってしまっては無意味なのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＼､.._ ＿＿ ヽヽ
丶::;;_￣ ::::::::::: ｀＞.j: :}
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ゝ-――::':´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾞ､
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＿ .. - '´:;ｨ:::::::::_/:::::'":::::＜::::::::::::::::::::::::::::::::.∧.
｀ ー ' /:::::::/｀T::ﾁ:::!:::::::::::i::::::/:::i::ﾊ:::::∧:::::: ＼
/: :i: :ｉ::::::ト廴ﾊ::::::::: ｉ:::/!::/!少!::::::::i::::::::::::::｀::ア
i::::ﾊ:::i::::::ｉ xz≧:::::::::::;/ｨ≦zx i:::::::::i:::::::::::::＜.,.
. Ⅵ V:V:::ﾊ 弋ｿ＼::::{ 弋ｿ /:::/::/::::::::::彡'´
Ⅵト:ゞ ￣ ﾉ｀ ゝ. ￣/:::ｲ::/::::厂´
ハ:::八. ｀ '"／:::::ク だが、真紅がお前を信じるなら、
リ ＼ ´ ｀ イ:::／" オレもお前を信じることができる。
ヾ ＼ __,.イ. |ー-､
i ｀ ー―― '"´￣ L_
, -‐ィ j．.._ ,. - L＿
. ,. ./ i / i ､￣ ー ..,彡' ／ ＼ _
. i´: :i i .i ､ ｀ ￣ ／ .／: :｀:ヽ
|: :! ! i ー― ｧ '´ 彡'´: :./: : : :.!
|: :! | |_ ｀ミｰ=＝ニ 彡.:'´: : : :.:./: : : : :.!
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 表情を動かさず、感情を見せず。
| 不人気への信頼を口にした刹那を、しかし誠はせせら笑った。
|
|「自分の人生を左右するような問題を、簡単に他人に預けていいのかよ？」
|「他の誰かならともかく、真紅ならいい」
|
| けれど、至極真面目に刹那は答えた。誠が眉間にしわを寄せる。
|
|「そいつは、兵士の考えだと思うんだがね」
|「そうだ。オレは『カイの迷宮』に行けない真紅の剣であり目だ。
| その間だけは、オレは本当にガンダムでいられる」
|
| 刹那は自称ガンダムだ。自分をガンダムだと断じている。
| はずだ、はずなのだが。
|
| 彼の口ぶりは、まるで己がガンダムでは無いかのようであった。
|
|「刹那はガンダムじゃあないのか？」
|
| 驚いたように問いかける委員長に、刹那は憂鬱そうな視線を向けた。
| 鋼鉄の意思の乗らない、柔らかな瞳に、逆に委員長も不人気も怯んだ。
|
|「ガンダムは人々を守る、『正義を行うもの』だ。
| 言い方を変えれば、悪が栄えなければガンダムはガンダムたりえない」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. ―― ､ヽ::ヽ )ヽ ､
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､ ／_.- ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::´ニﾆ.ヽ
｀､ ― ´_::::::::-‐:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
. ｀フ´::／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
／´ア::::／::::::::::／:::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::l
／ .'::::／／:::::／/:::::::/:::::|::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::l/＼
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ノ::ｨ::::ィ:::'::l/:::/:／:::::::::: /:|:::l＼::ヽ::::::::::::l::::::､:::::::
´￣ l::/ |:::|::l:／彳::::::/::ｲ:/l/l≦≧|::l:::::::ム､:::≧ｚ
. |:ｌ |:::|::::ヽ从l､:::l::/ﾉ'´ﾅ弋ｚﾘ |::|::::/ノ ﾉ:/
. |:l ゝ:ヽ::::ﾍ弋ｆﾄN 一”ｿ::l::/_／::/
. `l ヽ:l＼:≧” ﾉ ／‐ナ |:::::Ｎ 『カイの迷宮』においては、オレは闘う必要がある。
ｿ }:∧ ヽ. , ﾉl::::| 真紅のためにも、オレ自身のためにも。
l´ ＼ ｆ―-､ ／ ´ /:ｌ::|
丶. ´ l八:|､ オレは初めて、そこでガンダムになれた。
. , -―― ｀¨{ , ′ ｀ ＼
/ ヽ ヽ / ＼
/ ＼ .:｝ / ＿
l ヽ _ｒ――--- , ´
｜ ′ ｿ {
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 妄言なのか、まじめなのか、ガンダム発言のせいで判断が付き難い。
| しかし、刹那の中ではひどく大事なことのようであった。
|
|「オレはお前さんが狂ってると思ってたんだが」
|「ある意味ではそうだろう。オレはガンダムを目指している。
| オレにとっては極めて現実的な考えだが、これを狂っているとみなす者もいるだろう」
|
| 誠の酷な言い草に、刹那は相変わらず真面目くさって答えた。
|
|「だが現実、オレはガンダムになれない。
| オレがガンダムになれるとすれば、ガンダムが必要な世界が必要だ」
|
| 先ほどの繰り返し。刹那のその冷徹さは、自分のに夢すら向いていた。
|
|「ガンダムは『正義を行うもの』ではあるが、その正義は個人の信じるそれであってはならない。
| 正義は概念だ。時と場合、立場によって相反してしまう」
|
| 誠の顔からせせら笑いが消えた。
| 委員長が眉を寄せる。その表情は、苦しそうにすら見えた。
|
|「この世に絶対の正義は無いが、オレの知る限り、絶対に間違えない人間ならいる」
|「それがこのまな板の上のマグロだっていうのか？」
|「そうだ」
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＿
/: : :ヽ:ｰ､ _
ゝ:､_: :ヽ__:_r‐':.lヽ
, -､ノ: : : : : : : : ｀: :|: :.ヽ､ __
. く: : : ｀: : : : ; -― ‐{`: : : :ヽ´: :.〉_ -､
'; : : :.,ｨ'´ ゝ‐-､:-:'ﾐx:´: : : 〉
r‐': : ; ' ﾉ: : :}ミ}: : :ﾉ
廴:../ l l ,': : : :}三!: :ゝ,x=ｭ､
ﾉ;' l ! l ヾ_: : l三!: : : 〉｀ヾ
ヾ! !ﾑ斗 / l‐l-､l / 〉: l三!:r‐'ミｭ､ 刹那。
lﾄ､ lｨｭヽ,/ l/ /／l/l f´: :..l三!:ヽ三}ヾ
ヽ l じ' ｨ示云x! ゝ､: :l三:.ノﾐ} }} 悪いけれど私はただの人間よ。
l ! , 弋:ツ/ l /:{薔}/三} ﾘ 間違いもするし失敗もする。
l人 ､_ / / /彡イ ,ｨ彡'´ 神様じゃないの。
! ,ヘゝ' / l l' l ｲ/}ﾐ}
/ l {三ミ二三l ﾄ､ ヽ ヽ{ﾐﾄ､ﾐ}
. / /l /三ﾐ薔三ﾐ! l三ヽ_ヽヽゞ=ﾐ}
/ ///:.{三ﾘ寸三}ヽ ヽ〃: ヽ ヽ
. / / /: : :ゞ〃 ヾ三三ヽ ヽ: :/ /}
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| すこし狼狽した様子で、不人気は弁明するように弟分に話しかけた。
| 刹那はその言い分を至極当然と言った顔で受け入れる。
|
|「オレは真紅がコンソメが無いからという理由でミートソースににぼし出汁を入れたのを知っている」
|「なにそれこわい」「和風になるのか？ 悪くないかも」「え？ 何が問題？」
|
| 怯えるやる夫、メモをとる委員長。そして、料理には興味が無いのか首を傾げる誠。
|
|「カレーを運ぶ途中にすっ転んで床にぶちまけたことも見ているし、
| ブラシに髪の毛が絡まって泣きながら一時間かけてほどいた姿も知っている」
|
|「ねえ」
|「酔った勢いで部屋を間違えた揚句に、吐瀉物をまきちらされたこともある」
|「お願い」
|
| 気がつくと、不人気は懇願状態だった。
| 二人は同じ施設で十年近く育ってきた。
|
| 本当の家族のように近しい。
|
|「オレはそんな真紅を崇拝はしない」
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, "´
／ ／
／ ／ ／
－＝三 ／ ／ ／ | l
／／ ／ ／ ハ |
ー＝ニ ィ ／ ィ / ﾍ|
/ l |／´￣. ﾊ / / / ,l l |
' |. l | ヽ ﾄヽ| ゝ / .ｲ／l／‐V ,'
l l|. ｖ｜ ﾄlｆｊﾏl≧V /ﾉ≦ｆ汀テl/
| 八 Vゝ l弋ｔッ｀ ゝ{ 弋ｔッ / / オレは、真紅ならば
ｌ′ Ｖ Ｖ ヽ.￣ }` ￣ / ∠} オレという武力を
V V ﾄ`＼ 〈 , ノイ¨´ 正しく扱えると信じている。
| ∧ ｛＼ ＿_ ／
ﾉ ´ ヽl∧l＼ ´ ー ｀ ｲ l＼
' ゝ ､__ . ´ {/
} ｛
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| それは、愛の告白じみた力強い信頼の言葉で。
| 不人気は不意を打たれて頬を赤く染めた。
|
|「んじゃあ、決まりだ。必要なものは用意しておく。
| お前ら六人には、健康診断の時に術式を施すぜ」
|
| 誠はまじめな顔で頷いた。そうしていると、彼は驚くほどにハンサムだ。
| だがすぐにいつもの下卑た笑みを浮かべる。
|
|「つーかやっぱり狂ってんな。予想以上に」
|「誉めているのか？」
|「ああ、珍しいぜ」
|
| なんだかうちとけてしまった刹那と誠に、委員長が困ったような視線を向けた。
|
|「そうだお前ら、この後はどうするんだ？」
|「え？ 泊まるんじゃねーのかお」
|
| 首をかしげるやる夫。誠が指さしてげらげら笑う。
| なんてムカつく奴だ。やる夫はとりあえず殴りかかり、あっさりとかわされた。
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_,,,..-.ｰ.─.-.-....､._
二ヽ,,..::"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀:..､
／::::::::｀`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::ヾ:::::＼:::::::::', 刹那と委員長はお泊まり確定だ。
/:::::::::::::::i:::::i!::::::::::::::::ヾ:::::,,∠,､_:::::＼::::＼:::::', せっかくだから魔術と科学の両方で測定するぜ。
i::::::::::::::::!:::::i i:::::::::l::::::::イ＼＼＼:::::::::＼:::＼::',
l:::::::i::::::::!::::i,,ゞ;::::::::i:::::::::l >≧r､＼::::::ヾ＼_ r ､ うちの地下には色々機材があるからな。
ｌ::::::i!:::i::::l;/i ._,,＼::::!､::::::l 辻ヾ〉 ＼:::ヾ） (ヽ､｀＼
i:::::ﾊ::::|::::l:::i〈｀（ﾍ＼! ＼:', ゞ-′ ラ∨/＼ ＼ ＼
. l:::i l:::|::::lヾ､ 弋i;） ヽ ＼ ┌::ソﾉ ＼ ＼ ＼_
∨ l::::l::::l:::＼ " ﾍ::::/ r--‐-､>､ ｀ヽ
＼|＼!＼ ′ ∨ ` ‐-､ ｀` `､
ヾ ヾ ､ ｰ ´ , ヽ､ -＼ `､
_, r ´:｀ ､ , ′ 、 | !:.:ヽ : ヽ ヽ
_, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.....｀ ｰ ＜´ ヽ | |::.:.:ヽ: : ﾍ `､
_, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.| .ヽ -､ー_'/ !::.:.:.:.:ヽ: : ` ､ ____＿__i_
/ﾞ: : : : : : : : : : : : ヽ:.:.:.:.:.:.／i! | ﾍ i. / 入 |＼.:.:.:.:.ヽ;,r'`‐´_,, ..---┴‐,
l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼／:.:.:.:!'! /ヽ､ヽrk'´:_,r､ ｲ:.:.:＼／ _>-‐'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.l ﾞ' ! ! ﾍ/|:.:.:.:.:.:＼/::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
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| フィードバックについての確認だろう。
|
|「ちなみにここで調べた方が、後日の施術の効果が高まるぜ」
|「わかった」「……あまり楽しくなさそうだな」
|
| 頷く刹那と、嫌そうな委員長。
|
|「大丈夫、痛いのは最初だけだぜ」
|「おいバカやめろ」
|「全身麻酔で注射の瞬間はチクっとするが、後は朝までおねんねだ」
|
| 案外普通だった。
|
|「誠がいたずらしないように、私が見張っていればいいのね」
|「じゃあ、誠が不人気にいたずらしないように、やる夫が見張ってればいいのかお？」
|「しねーよ。オレは性別も種族も年齢も超越して愛せるが、相手は選ぶ」
|
| にやりと笑う誠。その視線が自分に向いていると知り、やる夫は思わず一歩下がった。
|
|「つーか、徹夜になるからやる夫は早めに寝てろ。
| ついでにこいつらに朝飯でも作ってやれ」
|
| そういうことになった。
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ゆこう。
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ つーわけで、世界滅亡の方の情報が出たわけだお。
| （__人__） |
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 『惑星ニビル』と『ビスケットハンマー』。
| 地球を粉々に粉砕する巨大な質量の衝突。世界は物理的に破壊される。
|
|「『小惑星』と『天変地異』、ついでに『恐怖の大王』も同じ枠で、
| さらに言うなら『悪い気の爆発』こそが『ビスケットハンマー』なんじゃねえのかお？」
|
| ファストフード店裏のごみ臭い路地に腰を下ろし、やる夫は曇天を見上げた。
| バカバカしすぎて臍で茶がわく話だ。
|
| 今年末に世界は滅ぶ。
| そう言われてから二カ月。
|
| あまり気にせず生きてきたが、そいつの予言はムカつくほどに的中していた。
| やる夫はむせる様なごみ臭に辟易し、手にしたハンバーガーを袋に戻した。
|
|「おｗｗｗ食べねーなら頂くっていうｗｗｗｗｗ」
|「好きにすりゃいいお」
|
| やる夫の横にちょこんと腰を下ろすのは、子犬サイズの緑色のトカゲ。
| 目に鮮やかな新緑のグリーンの鱗と、純白の腹。曲線で構成されたフォルム。
|
| 炎のように赤い舌が伸び、ハンバーガーを器用に掴んだ。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ 誠の話じゃ、【女神の娘】が
| （__人__） | 『小惑星』をどうにかしてくれるらしいお。
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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|「言った通りｗｗｗｗっていうｗｗｗｗ」
|
| このトカゲは、路地を大草原に変えるつもりだろう。
| やる夫は胡乱にそいつを見つめた。見られてると気付いたそれは、慣れた調子でウィンクする。
|
|「俺様にｗｗｗ惚れるとｗｗｗやけどするｗｗｗっていうｗｗｗっていうｗｗｗｗｗ」
|「ウゼェ」
|
| そいつの名前はでっていう。
| 分かりやすく言うと未来から来た警告者。
|
| 小難しく言うとこの世界線と近似するものの時間軸的に若干ずれた別世界線から来た存在。
| たった一人の少女を救うためだけに、危険な次元渡りをしてきた来訪者。
|
| 今から二か月前、やる夫は子供と犬に襲われているでっていうを助け、
| その狂った警句に耳を傾けた。
|
|「てめえの『予言』を思い返すお」
|「俺様ﾃﾗﾐﾗｲｼﾌﾄｗｗｗ憶えてた読者ｗｗｗいたら挙手しろっていうｗｗｗｗ」
|
| やる夫はでっていうの小馬鹿にしたしぐさと、この路地の悪臭に辟易していた。
| しかし、当時は眉唾だった彼の言葉は、今や現実味を帯びてきている。
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(ヽ (ヽ ( i))) /) /)
(ヽ(((i (ヽ((/ﾆＹﾆヽ ( i)))/) /)
((i(ヽ(((i )/（ ﾟ )( ﾟ ）ヽ ( i)))/) i)))
(ヽ (((i ) ／::::⌒｀´⌒::::＼ ( i))) だが、俺様の予想よりも、
.(((／∠_| ,-）＿＿＿（-，|＿ゝ ＼/) この世界線は平和だっていう。
( ＿＿､ |-┬-| ,＿ ）
((＼＼ | `ー'´ /´ ／／＼)
(/ (((i )| / ( i)))( i)))
(/ ＼) ＼)
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| でっていうは、「三か月以内に、東京は死体が転がっててもだれも驚かない街になっている」とも言っていた。
| 期限までにあと一カ月あるが、やる夫の知る限り、東京はそこまで荒廃していない。
|
| でっていうは、原因については言及しなかったが『政府が街を放棄する』と言っていた。
| いや、言及する必要が無かったのだろう。
|
| 悪魔だ。
|
| 先月の満月に、翠星石がアマテラスを降臨させていなかったら、この東京はひどい有様だったはずだ。
| もし結界の要である護国寺が守り切れなかったら、ああ、目も当てられなかっただろう。
|
| だが、その事態は避けられた。
| 偶然なのか、努力の結果なのかはよく分からないが。
|
| でっていうは、『悪魔を滅ぼすために核ミサイルを使う』とも言っていた。
| 恐らく使うのは、米軍。『教会』の中でも攻撃的な奴らだろう。
|
| やる夫は『野良犬』の話を小耳にはさんでいた。
| 戦争のための戦争を行う狂人たち。彼らが上陸すれば、東京は焦土化すると。
|
| さらに、『北と寒い国が勘違いして核ミサイルで反撃し核戦争勃発』とも言っていたが、
| これはその前提が覆っているので問題あるまい。
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/ ノ Ｙ ヽ
(ヽ /（ ﾟ )( ﾟ ）ヽ /)
(((i ) ／::::⌒｀´⌒::::＼ ( i))) 一応言っておくがｗｗｗ
／∠_| ,-） （-，|＿ゝ ＼ まだ核の脅威は消えてないっていうｗｗｗｗ
( ＿＿ l ヽ＿＿ノ ,＿＿ ）
＼ |r┬-| ／´
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`ー'´
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|「なんでだお？」
|「合衆国人は核大好きだから、撃てるタイミングがあったら撃ちこんでくるっていうｗｗｗ」
|
| 個人的な感想です。効果には個人差があります。
| しかしまあ、なんとはた迷惑な人種なのだろう。
|
| 友好国の首都に核ミサイルを撃ち込みたいとか、正気の沙汰ではない。
|
|「つーか、小惑星衝突やニュクスの到来は人類どころか生物が全滅するから確実に防がれるっていうｗｗｗ
| 問題は、ヒャッハーな世紀末が避けられない現実だっていうｗｗｗ」
|
| つまり？ やる夫は陰鬱な気分になった。
| 何とかなりそうだと思っていた部分は、でっていう的には必然だということか。
|
|「ヒャッハーな世紀末とかマジ勘弁願うお」
|「今に訪れる最終戦争で、ロウとカオスの勢力が争うっていうｗｗｗ
| そしてカオスが勝てばヒャッハー世紀末、ロウが勝てばモアのユートピアが訪れるっていうｗｗｗｗ」
|
| ロウとかカオスとか、初めて聞く言葉であった。
| しかしやる夫は、どっちにしろ碌でもない世界であることは理解した。
|
|「モアのユートピアって、共産主義の最終形態、完全管理社会じゃねーかお」
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/ﾆＹﾆヽ
/(●)(●)ヽ
／::::⌒｀´⌒::::＼
| ,-）＿＿＿（-、|
| l ｍj |┬-| l | うはｗｗｗ
＼〈＿_ﾉー'´ ／ よく知ってやがるｗｗｗｗ
| ノ ﾉ |
｜ |
ノ l l|
Ｙ;´ ／ ﾉ|
l ＹΣ彡／ |
ゝ､ ,ﾍ,__ ｨ （ ﾍﾟﾁﾍﾟﾁ
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（ ,（ (,＿（
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|「……そういうでっていうはどっちから来たんだお？」
|
| やる夫の問いに、でっていうは肩をすくめた。
| その丸い双眸が邪悪に光る。
|
|「世紀末はさらに深まり、大洪水で押し流されて、残ったわずかな人間がユートピアを築くっていうｗｗｗｗ
| 俺様の来た歴史は、カオスの後ロウが勝って、さらにまたカオスっていうｗｗｗｗ」
|
| しかし人類は滅びていなかった！
|
|「そもそもその、ロウとカオスってなんだお？」
|「悪魔における勢力の話っていうｗｗｗｗこの世界的には『教会』がロウｗｗｗ
| んで『結社』がカオスだっていうｗｗｗｗ」
|
| 『血族』はどちらなのだろう。
| ふとよぎった考えに、やる夫はすぐに結論を付けた。
|
| 『血族』は『教会』の下位組織だ。ロウ勢力って奴なのだろう。
| だが、今のまま『血族』が存在した場合、世紀末もユートピアも訪れない。
|
| どちらも、『血族』の望む形ではないのだから。
| やる夫にはそう思えた。
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/ﾆＹﾆヽ
/（ ﾟ )( ﾟ ）⊂）
.／::::⌒｀´⌒::::⊂）
.／| ,-）＿＿＿（-⊂）
.／ | l |-┬-| l | 『血族』ががんばれば、どちらの未来も来ないとかｗｗｗ
／ ＼ `ー'´ ／ もしかして思ってるっていうｗｗｗｗｗｗ？
（ ＼
＼＿ | ＼
(＿）￣￣＼ ／ |
） ししし |＼ ／ ／
（＿⊃＼ ＼ ／
/ ＼ ／
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/ ./
./ /
/ / /
./ 人 ＼
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| でっていうの容赦のない煽りは、やる夫の心に突き刺さった。
| 実際そんな風に考えていた。希望的観測だ。だが、そう願いたかった。
|
|「『血族』は真っ先に滅びるっていうｗｗｗ」
|「なんでだお？」
|「うはｗｗｗｗ自分で考えろｗｗｗｗっていうｗｗｗｗでっていうｗｗｗ」
|
| やる夫は苛立ちをおぼえながら、でっていうの緑色の頭部にチョップを放った。
| 大変気色悪い弾力、ぬらつく油か粘液が手に付着して、余計に気分が悪くなる。
|
|「『結社』も『教会』も、民草を食い物にするのに『血族』が邪魔ってわけかお？」
|「つーか、大抵はその前の最終戦争を防ぐために動いてタコ殴りっていう」
|
| まあ待て。やる夫は嫌な予感を覚えて身をすくめた。
| タコ殴り？ 『血族』が？ 『結社』だけではなく『教会』からも？
|
| いや、それどころか守るべき存在であるはずの人々からも糾弾される可能性が高い。
| だってそうじゃないのか？
|
| 世界が危機的状況になって、悪魔が恐ろしいのならば。
| 人々が怒りをぶつけ、責任を追及する先はどこになる？
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／）／ノ ' ヽ､＼ つーかおめー。
／ .ｲ '（●） .（●）＼ 『クーデター』とか言ってやがったのを思い出したお。
. /,'才.ﾐ). （__人__） ＼
. | ≧ｼ' ´ ⌒｀ | 日本でかお？
. ＼ ヽ ／
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|「他のｗｗｗどこの国のｗｗｗ話だっていうｗｗｗｗ」
|
| 現代日本において、クーデターなんぞをたくらむ輩がどこにいるのだろう。
| もっと陰湿な攻撃なら想像がつく。
|
| だが、武力を用いての政変？
| まず最初に頭に浮かんだのは、女の子みたいに優しい顔の少年。
|
| 正確にはその祖父。フリット・アスノ氏。
|
|「クーデターについて詳しく聞いてもいいかお？」
|「一介の小悪魔が人間の政治経済をそこまで詳しく知ってると思ってんのかっていうｗｗｗｗ？」
|
|「聞いたやる夫が馬鹿だったお」
|「知ってるっていうｗｗｗｗ俺様ｗｗｗﾃﾗ優秀ｗｗｗ」
|
| 知っているなら最初からそう言ってほしかった。
| が、まあこういった迂遠な言い回しはでっていうの交渉術だ。
|
| 仕方ないと聞き流すしかないだろう。
|
|「……聞いてどうする？」
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／￣￣￣＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ お？
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ／
／ ＼
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| 急に真顔になったでっていう。
| その眼が意地悪く細まり、邪悪に笑う。
|
| 止めるに決まっているだろうに、彼は何を言って……やる夫は、でっていうの邪悪さに身震いした。
|
|「殺さなきゃ止まらないっていうのかお？」
|「その通り。そして、クーデターを起こしたがってる奴は一人じゃないっていう」
|
| つまり、複数のお偉い様を殺して、殺して、殺さなきゃいけない。
| でっていうはそれができるかを問うていた。
|
|「やる夫ｗｗｗお前ｗｗｗどちらを選ぶｗｗｗ？」
|
| やる夫は答えられなかった。心が負けていた。
| 大事の前の小さな犠牲を、許容出来そうな自分に反吐が出そうだった。
|
|「世界の平和のために、誰を犠牲にするっていうｗｗｗｗ？」
|
| そして何よりも、選択できない己の卑小さが、涙が出るほど悔しかった。
| 自分はその程度なのだ。やる夫は、そんな程度の人間だ。
|
|「蒼星石は『最小の犠牲を選ぶ』お」
|
| だからやる夫は、友達の顔を順繰りに思い浮かべた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ でも、蒼星石はその犠牲の最後に
| （__人__） | 自分の名前が連なるべきだと考えるお。
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「間桐さんも『犠牲を選ぶ』けど、あの人は自分が犠牲になるつもりは毛頭なさそうだお」
|
| 間桐慎二は、蒼星石が持っているような自己犠牲の精神を持たない。
| その代わりに、彼は生き抜くことへの強い執着がある。
|
| きっと、世紀末な世界においては彼は必要な人間になるだろう。
| 必要ならいくらでも冷酷にも優しくもなれるのだ。彼みたいな人間は、人が生きていくのに必要な活力を与えてくれよう。
|
|「アリカが犠牲を許さないのは確かだお」
|
| 彼女の祖母なら何と言うだろうか。
| アリカは、その言葉を引用するだろう。
|
|「翠星石も、犠牲は絶対に許さないお」
|
| あの子に関して言うなら、そこに理屈はないだろう。
| 理由も何もなく、激しい感情を持って、翠星石は拒絶するはずだ。
|
| 理由や否定には「ごちゃごちゃうるせーです！」の一喝でおしまいだ。
| 一番子供みたいで、一番無茶苦茶な論理だ。
|
| だが、ああ。
| やる夫は翠星石のそういう所が愛おしいい。
|
| そしてなにより。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ＼
／ ＼
| ＼ ,＿ | やらない夫は誰も犠牲にならず、
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／ 世界を救う方法を探すお。
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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| そうとも、やらない夫なら必ずそうする。
| そして、やる夫も、蒼星石も、文句を言いながらそれに従うだろう。
|
|「まだ時間があるなら、説得も可能だお。分かる範囲で教えて欲しいお」
|「でっていうｗｗｗｗ」
|
| でっていうがやる夫をあざ笑う。
| 貴様ごときに可能か？ その目が語る。
|
| 可能か不可能かではない。やるかやらないかだ。
|
|「もしかして実は知らないのかお？」
|「いや、最有力候補は陸上自衛隊のゴトーとか言う特務の青二才だっていうｗｗｗｗ」
|
| ゴトー。どこかで聞いたことがある気がした。
| しかし、思い出せない。
|
| 恐らくスレ本編中では初めて出る名前だ。前世での因縁？
| いや、前世でも遭遇しなかった。
|
| 『やる夫は東京封鎖に巻き込まれたようです』もよろしくね。
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どうして大抵の作品で役に立たないのだろうか
それを証拠に！
宮下さん率いる（？）０課は活躍目覚しく・・・！！
他に見せ場作れねえのかよとか両立させろよとか言ってはいけない
, '´ ￣￣ ` ､
i r-ｰ-┬-‐､i
| |,,＿ ＿,{|
Ｎ| "ﾟ'` {"ﾟ｀lﾘ
ﾄ.i ,__''_ !
／i/ l＼ ー .ｲ|､
,.､- ￣/ | ｌ ￣ / | |` ┬-､
/ ヽ. / ト-` ､ノ- | l l ヽ.
/ ∨ l |! | ｀> | i
/ |｀二^> ｌ. | | ＜＿_,| |
＿| |.|-< ＼ i / ,イ_＿__!／ ＼
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＿_{ ＿__|└―ｰ／ ￣´ |ヽ |＿__ﾉ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_|
｝／ -= ヽ__ - 'ヽ -‐ ,r'ﾞ l |
＿_fﾞ/／￣￣ ＿ -' |＿＿＿＿＿ ,. - ￣ ＼＿＿__|
| | - ￣ ／ | _ |￣￣￣￣ ／ ＼ ￣|
＿__`＼ ＿＿ ／ ＿l -￣ l＿＿_ ／ , / ヽi＿__.|
￣￣￣ | _ 二 =〒 ￣ ｝￣ ／ l | !￣￣|
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| 思い出した。
|
| 入即貸本の常連で、警察内部の悪魔関係部署に所属している阿部さんが口にしていた名前だ。
| 五島ムスカ。陸上自衛隊の佐官だったはず。それがクーデター？
|
|「それってスゲーヤバい気がするお」
|「ゴトーがやらない場合は、合衆国のトールマンが別の奴をたぶらかすっていうｗｗｗ」
|
| そっちは知っている。合衆国の大使とか何かだ。
| だが待て？ ということはまたひとつ繋がったのか？
|
| やる夫は小さく呻いた。何もかもでっていうの思いのままみたいで大変気分が悪い。
|
|「そのトールマンは、【胸に七つの傷を持つ男】が貸しを作ったお」
|「マジかよｗｗｗｗｗ」
|
| つまり、ムスカの方さえ対策すればクーデター問題は何とかなるかもしれない？
| いや待て。やる夫は先ほどのでっていうのセリフを深く吟味した。
|
|「え？ トールマンって日本に核落としたいのかお？」
|「野郎はｗｗｗ黄色い猿どもが大嫌いっていうｗｗｗｗ」
|
| 自滅を誘い、思想に無いならマッチポンプで潰す。
| なんて恐ろしいお話だろうか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ノ ＼＼
／ （●） (●）＼ つーか、相手が大きすぎて、
／ ∪ （__人__） ＼ やる夫が何か出来るとは到底思えないお。
| ｀ ⌒´ |
＼ /⌒)⌒)⌒) ／/⌒)⌒)⌒)
ノ | / / / (⌒) / / / /
／´ | :::::::::::(⌒) ゝ :::::::::::/
| ｌ | ノ / ） /
ヽ ヽ_ヽ /' / ／
ヽ ＿＿ ／ / ／
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|「最小被害だったら、暗殺すりゃ済む。簡単だっていう」
|
| 簡単じゃねーお。と突っ込みを入れ用としてやる夫は思い直した。
| 暗殺、暗殺か。やる夫が上手く死を見れば可能かもしれない。
|
| そして、マッチポンプ。やる夫は顔も知らないトールマンを警戒した。
| これから行う『結社』撃滅作戦で、なにか仕込んできてもおかしくないだろう。
|
| トールマンが日本を滅ぼしたいなら、『血族』は確実に邪魔だ。
| で、あるならば、『結社』を攻撃する過程で、『血族』に対する大義名分を用意するだろう。
|
| たとえば、『血族』と『結社』の癒着の証拠とか？
| やる夫は邪悪に笑う華琳を思い出し、暗澹とした気持になった。
|
| わお、『血族』真っ黒だ。
| そこら辺を理由に『教会』の過激派が『独断専行』とかしてもおかしくない。
|
| 一発殴られたらどうなる？ 『血族』は『教会』の下部組織だ。泣き寝入りをしてもおかしくはない。
| おかしくはないが……。
|
| やる夫は『血族』の指導者である五人の『元老院』の顔を思い出した。
| そして、中間管理職のようにいつも板挟みの大首領様を。
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／ ／ イ ´ 个 ､ ､ ＼
/ / ／ ／ / ハ
/ / / ／ /ｊ ! ',
! ′/ ｨ ／/{ .
| ! ﾘ / | ／ ィノ!∧ ｊ |
iﾊ| ｊ/ｧ､!／ ／,ィ ／ｊ/ V i !
ｊﾊ个ｷｭ_／ｚフ⌒＞ ､ | ﾄ､ ｌ !
〉Lｿ ´斤ｙｒ‐､_ | | 彡⌒} ! j|
イｊ ｌ / ゞ:;ソ ^´ | | 八 ｊ | ｲ!
/ ｊ八 ヽ ￣~ j | ィ_ イ ハ八
（ ｒ7 ｊアヽ､__ , /｢ ｊ ! ＼｀ー ､
} ﾘ / /⌒ﾟ ｀ ｲ ! / 人 ｀ヽ ハ
イ / / ⌒ ーｒ 彡´ | ｊ ! /｀ー ´￣ ＞､ ｊ
/⌒７/≧=ｭ､ ヽ |/ | { ムヽ
/ニ７/ニｭ､ ヾ┬ ﾊ ヾ､ﾊ ヽ ムニﾑ
{ニ7/ニニニｭ､｢{ ﾄヾ､＿ X､ヽ :. イニニﾆｊ
ﾏﾆ {ニニニニｊ! ゝー┴ 八 ｀ ハ } ｊ } ィニニニニﾘ
ﾏﾑiニニニフ{_ j!ハ / ,リ/ ﾉ_ ィニニニニニﾆﾄ
ﾏヽ､ニニ｢ニ≧、 ィﾊ ﾊ ｊノイ /ニニニニニニニﾆ! ヽ
ハﾆム､ニｊニニ≧≠ニﾆ!≧ｙ´イ7 /ニニニニニニニニ| }
/ ﾊニﾆ Vニニニニニﾆ7≠（(_⌒ヽ {ニニニニニニニﾆﾆ|! ﾘ
{ / |ニﾘ /ニニニニニﾆ ｒｌヽ ヾ!ニニニニニニニニ|‐´
ヾ |ﾆ7 /ニニニニニニ′ {Ｌﾑｊ/ !ﾏニニﾆﾆﾑニニニﾆ|
. ｊ/ /ニニニニニニ7 ｀ｰ个､__ノ ｊニニニﾑﾆ7ニニニ､
ｨ } 个ァニニニニニ７| ﾑﾆ ヽ＿ノｊニニﾆｊニ/ニニニ|! ＼
/（ ノ ｊ/ /ニニニニニニ!ﾑ ノニﾑ /ニニィニニニニニ|! ﾘ
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| もし志摩子さんを殺されたら？
| 穏健派のキュゥベぇはすでに零落したし、フリットは悪魔を殺すためならという理由で操れそうだ。
|
| 臓硯はどう動くか分からないが、組織よりも自己保身だろう。
| しかし、ロージェノムは『教会』と事を構えてもおかしくはない。
|
| なお、頭のおかしいぜったいあくは勘定に入れない。
|
| この時点でも、『血族』は大いに割れる。
| だがスレ上の怪しさを余所に、志摩子さんの人気は高い。
|
| セーラー服美少女大首領だ。歳下は慕い、年上は庇護欲をそそられる。
| 彼女が殺害されたら、『血族』の多くは黙っていられないだろう。
|
| そう考えて、やる夫は慄然とせざるを得なかった。
| 一笑に付すには、ちょいとばかり想像しやすい。
|
|「やる夫ｗｗｗｗいい顔だっていうｗｗｗｗ」
|「ぶっ殺すお」
|「ｳﾊｗｗｗ愉悦ｗｗｗ」
|
| 平手でたたきつぶそうとするやる夫の打撃を、でっていうはひらりとかわした。
| 何処までもムカつく奴である。
|
|「そういえば、【胸に七つの傷を持つ男】ってのは『どっち』だお？」
|「でっていう？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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おっと文字数を変えた間抜けはっけーん。
阿部さん！よろしく！
, -─ ７7ｰ- ､
／;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::＼
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::: i
λ ':;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::: | /!
i::::', .|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::| ./! /::|
|::::::, ∧ |从z､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,z从ｿ| ./::| /::: |
|:::::ﾍ /::::! .i从入{＿＿,＿__ｿ从爪 /::: | ./:::::::| .／}
|_,,,,,,∨__,,|_ノゞミ廴亙_j人亙ノ从ﾝ 廴/:::::: |/::::::::::|／::::/
＿, イ´::::::::::::::／:.:/从}::! !::! !::::! !::::! !::! !:.:.:.:.:.⌒￣｀ヽ:::::/:::::::/
≦´＿_::::::::::::::::／:.:.:.∧| J::| |::| |::::| |::::| |::| し!_;.:.:.:.:.:.:.:.７:::::/:::::::ム-
, イ´ r'"｀ーy‐-､＿ノ i l ｀ ヾ ﾍ/ ソ' ∨ | ＼.::.:.:.:/:::;ィ-‐==- ､:::
./:::::::::/ー- ､/ .} ｀ー､ｚ＿八 ∧j＿＞-‐'"｀Y´￣}::::::::::＿＿
::::::::::/ー- ､/￣｀/ ｀ヽ ／~´ レ-‐i─'":::::::::::::
:::::: /ー- ､/￣｀ﾉ | て ィ 廴＿}＿y-──
:::::/ー- ､/￣｀ﾉ そ´{ | ∠´;;＞ {＿_l:::::::::::::::::
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／::::::::::::i! ⌒ ` | ￣二二´
／::::::::::::::::::ﾍ | ゝ､__, 〉:::: l
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|:::::::::::::::::::::::i! ｀ー‐- ..＿_ , ィ´匆}ヽ､＿＿＿＿＞‐"ヽ:::::::::::::: ﾄ､
|:::::::::::::::::::::::l| ゞ､ ゞ 〉:::::::::::: | ヽ､＿
|:::::::::::::::::::::::l| ヽ ｀ｰt'"ー─一'" ｀ー─一イ＿ノ ／//:::::::::::|
|:::::::::::::::::::::::l| '.し i く伊 i ／.://:::::::::::: |
|:::::::::::::::::::::::l|ﾍ ＼ ヽ､＿＿ノ ヽ､＿＿ノ ｀ー'" //::::::::::::::::|
|:::::::::::::::::::::::l| rゞ ｀ｰz く星＞.人三ｿ´ノ//:::::::::::::::: |
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| やる夫は【胸に七つの傷を持つ男】を二人知っている。
| 同じ流派の兄弟で、二人とも実力者だ。
|
| 北斗ケンシロウと北斗ジャギ。
| やる夫はどちらとも知己だ。蒼星石は、より親しい。
|
|「二人いるのかっていう？」
|「二人いるお」
|
| でっていうは白い顎に小さく吸盤の付いた指を当てて悩むそぶりをした。
| いや、実際に悩んでいるのだろう。
|
| 外見が完全にトカゲなので、人間の醜悪なカリカチュアにしか見えないだけだ。
|
|「じゃあｗｗｗどっちかｗｗｗもうすぐ死ぬっていうｗｗｗｗ」
|「なんかそのつもりだったって聞いたお」
|
| そう、二か月前のことだ。
| ケンシロウが蒼星石に特別な感情を抱いていることを知っていたジャギは、蒼星石を自分の家に招き、一晩を共にした。
|
| ジャギはもともと蒼星石の許嫁だった。
| しかし、彼が諸事情により『結社』に編入し、裏切り者と後ろ指さされたことでその関係は終わった。
|
| その関係で、蒼星石はジャギを問い詰め、彼の根城に乗り込み。
| そして―――。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ヽ､_ ＼
／（● ） （● ） ＼ （あのスシは美味かったお）
／:::⌒（__人__）⌒::::: ＼
| ｌ^l^lｎー'´ |
＼ヽ L ／
ゝ ﾉ
／ /
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| ―――という設定だったとさ。
| ジャギはそのあともケンシロウを挑発し、甘さを捨てきれない弟を本物の戦士にするつもりだった。
|
| そのためには蒼星石を利用し尽くし、最終的には自らが犠牲になる。
| 予定を、蒼星石がやめさせた。
|
| そもそも、件のお泊まりも、やる夫同伴でのことだった。
| その上ジャギの家には、『結社』の元『九鬼』筆頭ロストスキル＝サンやら、
| 悪魔を倒すために悪魔と契約して『教会』を追放された元『武僧』のルカやらがいた。
|
| 皆で楽しく飲み会をし、今後の方針を相談した。
| ジャギはジャギなりに『血族』と『北斗』の家を心配しており、
| そのために身を寄せていた『結社』と決別し、『血族』へと戻ったのだ。
|
| やる夫はその時に見た『夢』を思い出す。
| ひどい頭痛がした。思い出したくないのだろう。吐き気がする。涙もにじむ。
|
| だが、思い出さねばならない。思い出さねばならない。
| まず頭に浮かんだのは指先の感触。
|
| しっとりと、指に吸いつくようにきめの細かい肌の柔らかさ。
| そしてうっすらと漂う汗の体臭。
|
| 違う落ち着け。なんでルカの寝姿が先にくる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ＼
／ (●） （●） ＼
| （ﾄｪｪｪｪｪｪｪｪｲ） |
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｜| / ｜
｜| /｜｜
(＿| ｒ / (＿）
ヽ ｜／
>__ノ;:::......
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 次に浮かんだのは、怪物じみた姿の男。
| 子供のような体躯に、蜘蛛のように細い手足。
|
| 飛び出すほどの目玉と、唇もほほ肉も無く露出した歯。鼻も無い。
| 全身はぬめるように青白く、体毛の類は一切ない。
|
| 現実で見た記憶はない。だが、それが誰なのかやる夫は知っていた。
| 『ロストスキル』。元『九鬼』筆頭のニンジャ。変装の達人。
|
| その『変化袋』のジツを使い、常に本来のものではない姿をしている男。
| やる夫にとっては料理の師でもある。
|
| あの姿を見た夢を……やる夫は、頭にくぎを打ち込むかのような鋭く激しい頭痛とともに思い出し、
| ……そしてすぐに忘れた。
|
|「……東京が戦場になるのが、来月以降で……世界の終わりはいつだったかお？」
|「年末だっていうｗｗｗｗｗ」
|
| 土気色のやる夫に、でっていうは小首をかしげた。
| 急に体調が悪くなったように見えたのだ。変なものでも食ったのか？
|
|「変なものでも食ったのかっていうｗｗｗ」
|「食ってねーお」
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∩＿
〈〈〈 ヽ
〈⊃ }
/ﾆＹﾆヽ .| | それにしちゃ、
/（ ﾟ )( ﾟ ）ヽ ! ! 顔が悪いっていうｗｗｗｗ
／::::⌒｀´⌒::::＼| /
| ,-）＿＿＿（-，| ／
､ |-┬-| ／
/ ＿ `ー'´ /
(＿＿＿） /
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「顔が悪いのは生まれつきだお……七つの傷を持つ男の一人は、さっき言ったトールマンにコネができた奴。
| もう一人は……『ファットマン』とかいう奴を殺すお」
|
| でっていうの表情が変わった。やる夫自身、『ファットマン』が何なのかいまいちわかっていない。
| 肥った男？ イメージが難しいコードネームだ。
|
|「おまえ、どこまで知ってるっていう？」
|「占いみたいなもので何となく出て来て、お前の話並みの信憑性だお」
|「『リトルボーイ』は？」
|
| やる夫は首を振った。知らない名前だ。
| でっていうは小さく嘆息した。しかし、やる夫には大きな収穫だ。
|
| 『リトルボーイ』。憶えておこう。
|
|「通常、類似の英雄が存在する場合、どちらかしか生き残らないっていうｗｗｗｗ」
|「七つの傷がある男は、世界の終わりで活躍すんのかお？」
|「人類が滅ぶのを食い止めるタイプだっていうｗｗｗ」
|
| ならば。やる夫はそれがケンシロウの方だと思えた。
| ジャギは、あの偽悪野郎は強く、信念があり、そして何よりも犠牲精神にあふれている。
|
| ジャギはきっと、命がけで東京を守り散るだろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ﾆＹﾆヽ
/ （0)(0）ヽ
／ ⌒｀´⌒ ＼
| ,-） （-、.| おもったよりｗｗｗ
| l ヽ＿＿ ノ l | 悪くないかもしれないっていうｗｗｗｗ
＼ ｀ ⌒´ ／
（⌒`:::: ⌒ヽ
ヽ:::: ~~⌒γ⌒）
ヽー―'^ー-'
〉 │
/ _ i
| / ﾉ
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∠__／ ￣´
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|「つってもｗｗｗたとえば東京中のニャルを焼き尽くすためにｗｗｗｗ
| クトゥグアが下りてきたりしたらｗｗｗｗｗどうしようもないっていうｗｗｗｗ」
|
| 前に言っていた話だ。
| ニャルラトホテプを打倒する方法の一つ。
|
| 敵対する強大な神を召喚し、周辺一帯ごと焼け野原にするとか言う話。
|
|「ねーお、そもそもニャルはもういねーし」
|「冗談だっていうｗｗｗｗｗ」
|
|
|
|
| だが、クトゥグアは今現在も、東京を目指して移動している。
| 到着は……クリスマスを予定していた。
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クリスマスが来るより前に色々有りそうだぬ
それじゃ死ね！
ゞ:ヾゞ゛;ヾ;ゞ ,',;:ゞヾゞ;ゞヾ.: ヾ:ヾゞヾ., .ゞヾゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ ` ``
,,ゞ.ヾ＼＼ ゞヾ:ゞヾ ﾉﾉ ゞヾ . ゞヾ ゞヾ .ゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ `
ゞヾ ,,.ゞヾ::ゞヾゞ:ヾ ゞ:.y.ﾉヾゞ..ヾ .ゞ,'ヾ ゞヾゞ ;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;ゞゞ;ゞゞヾゞ; `
ゞヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞiiiiii;;;;::::: ｲ.ヾゞ, .,; ゞヾゞ___// ;ゞ ゞヾゞ;ゞ ヾ;ゞゞ;ゞ `
ゞヾ ゞ;ゞ iiiiii;;;;;::::: :)_/ヽ,.ゞ:,,ヾゞヾゞ__;::/ ゞヾゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ
ゞヾゞ;ゞ iiiiii;;;;::::: :|;:/ ヾ;ゞゞ;ゞ ヾゞ , `
ヾ;ゞゞヾ;ゞゞ |iiiiii;;;;::: : |:/ ヾゞ `
ヾ |iiiii;;;;;::::: ::| ` ` ` `
` |iiiiiiii;;;;;;::: :| ` ` ` ` ,
` ,|i;iiiiiii;;;;;;::: :| ` ` ` ` ` ` `
` |ii,iiiiiii;;;;;;::: ::| ` ,
,|iiii;iiii;;;;:;_ _: :| ` ` `, ← 落ち葉
` |iiiiiii;;;;;;((,,,)::.::| ` ` ,
` |iiiiiiii;;ii;;;;;;~~~:|` `
, |iiiiii;iii;;;;i;;:: :: ::| ` ` ,
` |iii;;iiiii;::;:;;;;::: :::| `
,,.,.. ,..M|M|iMiiii;;ii:i;;:;i:i;;:;ﾍヘ ,.,.. ,...... ,....〜,,,.,..,,,.,.. ,.. ,.. ,,.,..,.,.. ,.... ,,,.. ,.... ,,,.,..
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| 暦は九月も終わり、外を歩くと季節の移り変わりが実感できた。
| 真昼のうだるような暑さはだんだんと消極的になってきたし、朝晩はことのほか冷える。
|
| 冷え性の蒼星石は、ズボンの下にタイツを履いたし、どこに行くにも羽織ものが欠かせない。
| 寝具も悩み所で、暑いと毛布を跳ねのけてしまう姉に、何を使わせるかは悩み所であった。
|
| 軽度の風邪ぐらいならば、魔術的に病魔を『祓え』ば退散できる。
| しかしそれらの行為は先人から戒められていた。
|
| 『魔術に頼り過ぎると肉体の本来の能力が弱まる』。
| 一見、科学的根拠のない精神論だが、鷹野三四に言わせると事実らしい。
|
| 魔術という外的要素に頼り過ぎると、肉体の免疫能力は下がってしまうのだとか。
| とは言っても、治療に魔術は欠かせないし、いざという時に不調では困る。
|
| 故に、ちょっとやそっとの体調不良や肉体疲労では、魔術に頼るべきではない。
| 『血族』の古くからの教えだ。
|
| このあたり、「信仰心があれば病気にならない」とか「使えるものは使え」という
| 『教会』や『結社』とは正反対だが、そこは文化の違いなのであろう。
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｜ ＼
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. ／／´ ､ ､ /
{ / , -‐ァ＝＝=‐- .._ ヽ ∨
＼／ ／ /, { ｀ヽ !
, ' , ' ／/ ﾊ ｜ ﾄ､ |
/ /＿, ／ //∠=ヽ､ } lハl しかしこれは、
l / { ,ィf´ ノノ 7ｆ_ｊ｀ゞV } | 未病だな。
j∧ 「{kﾂ ﾞｰ' / ,′i
ヽ{ ｀ u. ノ / /
八 ´｀ ｰ=イ ｆl /
ハ＼ ...::::::| ｊハ{
＼{` ー‐､.:::::::::::| /
｀ ｣::::::／ｊ /＼
／x＝く ´ _ｆ〜､
ｆ＾ｱ 〃ﾉﾊ ヽ ﾉﾒ〜ヽ
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| 疲労が溜まり、朝は目覚めてから体を動かすのに苦労した。
| 睡眠時間は六時間近く取ったが、目の下の隈が酷い。
|
| いまだに夏バテみたいな体調で、体が重く、食欲がわかない。
| 今朝も、朝から元気に肉を食べる翠星石を横目に、蒼星石は味噌汁と梅干しで済ましていた。
|
| ぼんやりとした痛みを頭の奥に覚えながら、蒼星石は心内で舌を打った。
| 適当な所で少し早めに休んで、体調を整えたいが、なかなか難しい。
|
| 風邪薬や栄養剤を飲むぐらいなら魔術に頼るのが『血族』だ。
| なにしろ魔術を使用すれば効果はバツグン勇気リンリン。
|
| 精力もバリバリで、目も頭も冴え渡り、感覚は澄んで鋭敏化する。
| 肉体は完全な仕上がりになり、病魔は副作用も無く狙い撃ちにされ消滅。
|
| とは言っても、生活習慣病は改善されるわけではないし、筋肉もつかないし脂肪も落ちない。
| それどころか精神的な病気については成す術がないときた。
|
| 『血族』は毎年の一般的健康診断を義務としている。
| 当然メンタルの診断も欠かせない。とはいっても、『血族』は万年人手不足だ。
|
| どれだけ性格がひねくれ、感情の上下が激しく、精神的に問題があっても。
| 他の『血族』との折り合いも最悪で、常に攻撃的で不満を口にし、それどころか現実と虚構の境界が時に曖昧であっても。
|
| 彼は多くの仕事を任されていた。
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＼、__ﾄ.、
,､r=＝＝＞:.｀ヽ｀ヽﾄ、
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ）:.:.:i:.ﾚｰ-
. _＿,.､＜:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノヽ:.:.:ノ:.:.:⌒ヽ､
＞〃:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:ﾍVｲ:.:ﾍ:.:｀ヽ:.:.＼
／イ:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ヾｲ.:.:.:.:.:ヾ:.ヽ:＼ゝ
／ 〃:.〃:.:.:.: /:.:./:.:/:.i!:.:|:.! ∨:.:.:.:}:.:.:ﾍj
/:.:./.:.:/:./:.:イj:.ﾘ:.八:.リ j:i:.:.:.:.:ﾄ:.ヾヽ
!／:.:イ:./≧x､lハｊ _,,ﾘ≦二ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_ しかし何年たってもこの国の気候には馴れませんね。
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧､_＿_} ､＿__,ﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ
|:.∧ﾊ｀￣¨j ｀￣´イ:.:./ソ:/ こんなにもアトリームと日本で
ﾚ' ﾘ八 <、 /ｲ/ﾊ:.:/ 気温の差があるとは思わなかった……！！
ﾄ､:ﾍ _＿ /ｲ |｀ヾヽ
／ﾘ;;;;＼´ - ｀ ′ !;;;;ｿ;｝}
///／;;;;;;;ﾍ..___..／ / レｸ:ﾉ.:|
_..,,,,,///´;;;;;;;;;;;;;ﾉ! / ／::／ ..:j＞,､_
_.,､＜://:::{:{:{;;;;;;;;;／´ j { / ／::／ /ト.,､＜⌒＞,､_
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:::::::::{｛ 〃∧ヽソー-- 、 __人__{;;;;{ ｲ ｛::::／´::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
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| ミスト・レックス。亡国アトリームから来た『血族』の客将である。
| 『教会』製の肉体改造を施した体は完全にワンオフで、血縁による異能の遺伝は一切ない。
|
| 継続的平和を尊び、牙無き無辜の民を守ることを誇りとする『血族』。
| 彼らからすれば、ミストのような改造は唾棄すべき存在だ。
|
| なぜならミストの設計思想は、『異能を持たない人間が悪魔を制圧できる』であり、
| それはすなわち、守るべき無辜の民を兵器に改造するという有り方だからだ。
|
| 当然、改造されたミスト自身に罪はない。
| しかしながら、一般的な『血族』の思想からすると、ミストはいびつで気味の悪い存在だ。
|
| 故に彼は、『血族』ののけものとして後ろ指さされ、村八分にされている。
| 蒼星石自身は、ミストの境遇に同情していた。しかし彼の頓狂な性格には閉口していた。
|
| 必要のないことに必要以上に不満を募らせ、言うべきではないことを正しく指摘する。
| しかもそれが時に脈絡なくだ。例えば。
|
|「エアコン使ったらどうです？」
|「……でも、原因の解決にはなりませんよね？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＼三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三/
＼三三三三三三≧-''´ヾ＼￣ヽ￣￣￣ゞ=-､-､三三三三ﾆ/
＼三三＞''´/:.:.::i:.:.:.:i:.＼:.:＼:.:.:.}:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.ヾ:.:.:＞-､三ﾆ /
V／/:.:.:./:.:.:.:.:l:.:.:.:l .ヾ:.:.ヽ:.:.V:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:.:V/
/:.:.:/:.:.:.:.i:.:.:.:.::.|:.:.:.:| .＼:.:.:. ハ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.:.i'
./:.:.:.:i:.:.:.:.:.:l:.:.:.:.:ハ:.:.| _ ,, -匕ヾゞ,:.:.:.:.:.::.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:/
i:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:ﾉ:.i:.:.レ='´ ＞ｲ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:/
|:.:ﾊ:.:.|:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.i:.|:.:.:ﾚ' ,, - ィ彡行てi:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.{
ヽい:.:|:.:.:.:.:._＿:.:|ﾉ:.:.ﾉ イi {廴::::::..ｱ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:ﾊ ミストさんのために
i ,､ヾ:.:.:.:.:≧=､/ 弋及ン }:.:.:.:.:.:.:.::/:.:.:.:.ハi 日本の気候を変えるわけには行かないでしょう。
ヾ ＼:.:.:.:.:.:.:心 ) |:.:.:.:.:.:.:人:.:.:./
ヽ ＞＼:.:.:i/ |:.:.:.:.:.:.ハヾ:.:ゝ
｀´|:.ト､ヽ .|:.:.:.::/ ＞∧､_
|:.ハヽゝ､ - ､ ∧:./ / / ＼-=r-,､
ﾚ ＼:.:.| ＞､ ／ 廴＿／ ／ .// てヽ )-､
ハ.i/::::{ ｀ ´ ヽ ∧＿＿ // ん:::::::::V
>:::::{ { [￣＼V ー─ﾍヽ .// {':::::::::::::::::ヽ
/::::::/ il ＞､ ∧ヽ＿＿// .// }'´::::::::::::::::::::::＼
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/:::::::::::} || /∧∨ // 及::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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|「これじゃあ、俺……東京を守りたくなくなっちまうよ」
|
| 気温に対する愚痴がなぜ東京守護に繋がるのか。
| 蒼星石は苛立ちを抑え笑顔を繕った。
|
|「季節の変わり目は体調を崩しやすいから、ミストさんも風邪ですか？」
|「俺は健康そのものですよ」
|
| では何の愚痴なのだ。
|
|「とは言っても夏場の暑さと湿度には閉口しました。
| いやあ、日本の夏は強敵でしたね」
|
| こんなミストと蒼星石が何故連れ立っているかというと、二人して志摩子に呼び出されたのだ。
| 現在はエアコンの効いた会議室で待機中だが、何故この二人なのか。
|
| 蒼星石は肌寒さを覚えてパーカーを羽織りながら考える。
| 少し前までは、蒼星石は連絡係兼防御・治療の術者として志摩子の命に応じていた。
|
| 『血族』内でのけものという点では、蒼星石もなかなかのものだった。
| なにしろ、『北斗の裏切り者』ジャギの婚約者で、捨てられた女だ。
|
| 少し前までは腫れものだった。
| ついでに、歳が近いという理由で大首領様と親しくしているのが気に食わない輩も多かった。
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＿ ﾄ､ﾄ､
､ー‐ ＞ ⌒ヽヽ }ﾉ
x≧´: : : : :'i:i:W: :ミ ､
,ィ7 : : : : : ; :/ ｀_ }: : :ヽ＼
/: ｲ: : :メ}:/,ィｯｧ; : : : :ﾄ､ r-､ _
{/{: ! :<rｯ{:' ¨´/: : :ム'ゝ rくヽ}ｰﾄ､}‐､
|:ﾊ: :|、 ヽ__ /ｲ: /: / _ン/へ/ﾊ /
' l:ﾊ!ヽ `ｰ ' 彡'ィ＝=x､ム/ヽ／ヽ/〉つ
j r― `iー ´{i{ ／////r.､ヽ／ヽ
ィ7//|｀!:.:.:.:| |i| <///'⌒ヽV}¨｀ヽ/} そういえば最近元気ですか？
r 7/{/＞'ヽ}Yノ＿__/｀ヽ)ﾊY }/ﾘ_｀ !/} 俺たちは変わりませんよ。
八//|/ r,イY:弋ﾝ { // ﾊ//ヽ }/
_r┤ r=＝≠ |: : i! l ｨ/ , , ヽ//ム}' 体調管理は防衛隊時代から馴れていますし。
ﾊⅥ 弋 ゝｲi| ﾄ.､ |: : i! l ﾊ{ 〈 } //´ }
//∧`ｰ ≧xﾊ //ﾊ｜: :i! l/ ヽ 乂 //乂_ノ
」///∧ . ィ∨/' ヽ!: : i! { ｒっ乂ー ≦イ‐’
八/////`77≦} ｒっ|: : :i! | ￣ {≧x
/ ヽ/////r ´ ｨ ｒっﾉ; : :i! '. ｒっ ノ///
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| しかし、今では立場も変わった。
| ミストは志摩子の直属として、戦闘班の一つを任される班長だし、
| 蒼星石は別の班で班長補佐をしている。
|
| 人を使うなら、班単位で扱った方がいろいろと便利だ。
| なにしろ、両班が歯抜けになってしまう。通常業務に支障が出るなら、大変非効率的だ。
|
| その上で、ミストと蒼星石を使う。
| 班長のアリカではなく蒼星石をである。
|
| つまり、志摩子と繋がりがあり、かつ適度に……いや、極端にひねくれ者が欲しいのだ。
| 恐らく志摩子は、ミストのこの性質を利用するつもりだ。
|
| 驚くほどに空気を読まず、言葉に重みが無い。
| 相手にその実力や知能を侮らせる目的ではなく、素でそうなのだから始末の悪い存在を。
|
|「……四ツ眼氏は大丈夫ですか？」
|「案外と冷静ですよ。俺と違って彼は冷静沈着だ。つまらない挑発なんかに乗ったりしないさ」
|
| 四ツ眼。悪魔交じりの元テロリスト。
| 『教会』の殺し屋集団『武僧』と、因縁のある男。
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湿気と気温のダブルパンチな日本の夏はキツイらしいしなあ
大丈夫か？東京オリンピック
,, -- ー-- 、
,, "´ ,,､､ ヽ
／ ／ '', ﾞ､
/ｨ ,,/ /,,ィ rｰ､ ﾞ､
ｲ ﾞ" ./ __,;;:: '',,l ｲ､} ﾐ
! l ｌ_,ィ_ソ ´! 〉{ ﾐ
! ,＞ｨr-ゝ-ｰ三ヽ ､_ﾉl ｼ
｀ｌｰｼ三三,ニ=＝' ヾ{
∨ｿ_..::; / ヽ
｀ ! ＿＿ /:: :. ,,,ゝ-ｰ ､
ヽ ´ __ ｀ /;; ,;イ ', {
ヽ ,,i''ｰ-､､イ ', ' , ', ヽ
｀フ､´ ', ' , ' ,_ -ーゝ､
ィ ' , ', ,, - ´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:’-､
<´o ' , ' , ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
｀）0 ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
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| 四ツ目は、元テロリストであると再三言って来た。
| しかし正確な意味では、彼はテロリストではない。
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| 彼は、テロリストを支援する戦術コンサルタント。
| 武器を調達し、戦術を授け、訓練を行い、実戦で指揮を執る。
|
| 戦争屋だ。
|
| 国際的に指名手配された四ツ目が、どんな経緯で『血族』に身を寄せることになったのか、蒼星石は知らない。
| ただ、事故で悪魔の一部が体に融合してしまったことと、それまで行動を共にしていた仲間の全滅。
|
| そのどちらかあるいは両方に、『武僧』のパプテマス・シロッコが関わっているとの噂であった。
|
| 蒼星石は四ツ目に強い警戒心を抱いていた。
| なにしろ彼は、両手で数えきれない数のテロに関わってきていた。
|
| 当然のように、人命への尊重はなく、容赦もない。
| 罪もない一般人を巻き込んでも呵責の欠片もないし、誰が死んでも無感動だ。
|
| そんな男ではあるが、優秀で有能なのもまた事実。
| ミストと組まされ、多くの汚れ仕事を片付けて来ていた。
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l /／ ,. - ｀ヽヽ. ',
i l/ /r= ､ ヽ_j
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! ィ ! l ヽ、 ',
l /l ｀ヽ _,__-‐ !' !
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| !ヽ ﾍ _ ,. /.7i | l
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ヽヽヽ |ヽ '' ／ !ィ' / ノ
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ヽ ｀|｀ヽl r,ﾆ ‐'" l .ﾉ ／
ヽ r.| l || ／ ／!
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| 四ツ目の宿敵、シロッコが日本入りしたのはつい先日。
| 現在日本で活動中だった三人の『武僧』の応援として、中隊規模を率いてのことであった。
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| 二か月前の新宿で、ニャルラトホテプが邪悪なる『落とし子』を作ろうとした『歌舞伎町事件』。
| その苛烈な戦いで、多くの『武僧』が命を落とした。
|
| シロッコは指揮官として現場入りし、不可視の狙撃種『マンハッタン・トランスファー』の狙撃を受け負傷していた。
| あの戦いでは、多くの指揮官を失った。
|
| 『血族』も複数の戦闘班の班長を失っており、先月は戦場における前線指揮官の不足に苦しめられた。
| とはいえ、ミストにとってはそれは追い風の結果であった。
|
| なにしろミストも四ツ目も、『血族』に入る前はそれぞれの場所で優秀な指揮官として活躍していた。
| である以上、それまでのけものとして扱われえていたミストや四ツ目が注目されたのは必然。
|
| もちろん、口さがないものたちは陰口を叩いたが、それまで日陰にあった身からすれば、
| 大したものではなかった。
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| 蒼星石はミストや四ツ目を快く思っていないが、その能力は認めていた。
| 彼らの行動の速さと決断力、柔軟な対応力、そして実力。
|
| 四ツ目もミストも、よほど高位の悪魔でなければ危なげなく退治したし、
| なにより彼らの胡乱さや適当さ漂う時に必要以上に粗雑な言動に似あわぬ知性を理解していた。
|
| 多くの『血族』が彼らを侮っているが、ミストも四ツ目も……。
| いや、四ツ目は蔑まれているが、ミストほど侮られてはいないだろう。
|
| 実際誰もが、ミストの突発的で軽はずみな言動には眉をしかめる。
| しかし。
|
|「俺達の班を動かすんじゃなくて蒼星石さんを呼ぶということは、やっぱりシロッコ絡みだと思いますか？」
|「あるいは、ミストさん関係かもしれない」
|
| ミスト自身、『教会』関係の組織によって改造された人間だ。
| その技術はもはや時代遅れらしいが、試作機故の強力さを秘めている。
|
|「今更俺を利用はしないでしょう」
|「今回は『武僧』と『異端審問官』だけじゃなくて、『十字軍』も来ているらしい」
|
| 『十字軍』の名を聞いて、ミストが神妙に頷いた。
| 神の名を借りた掠奪者。布教をするために元の土地を焼き払うものたち。
|
| 『十字軍』は悪名高きならず者の集団だ。
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!／:.:イ:./≧x､lハｊ _,,ﾘ≦二ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧ぐｾｵ} 弋ダﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ ああ、なるほど。
|:.∧ﾊ j ／イ:.:./ソ:/ 新兵の扱い方なら
ﾚ' ﾘ八 <、 /ｲ/ﾊ:.:/ 防衛隊時代に馴れましたよ。
ﾄ､:ﾍ ､_ ＿ , /ｲ |｀ヾヽ
／ﾘ;;;;＼ - ′ !;;;;ｿ;｝}
///／;;;;;;;ﾍ..___..／ / レｸ:ﾉ.:|
_..,,,,,///´;;;;;;;;;;;;;ﾉ! / ／::／ ..:j＞,､_
_.,､＜://:::{:{:{;;;;;;;;;／´ j { / ／::／ /ト.,､＜⌒＞,､_
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| 唯一神以外の神を信仰するすべての存在を毛嫌いする、トールマン兄は、
| 東京や『血族』がどうなろうと知ったことではないという態度だ。
|
| 対して、日本との関係を友好的でありたいと考えるトールマン弟は、
| 今回の『十字軍』の来訪を極めて煙たがっている。
|
| しかし、彼らを上から押さえつけたくても、トールマン兄が邪魔だ。
|
|「トールマン弟は、やらない夫から面倒事を頼まれてるらしいからね。
| 代わりに何かを要求してきた可能性はある」
|
| 蒼星石の言葉に、ミストは愕然とした様子で拳を握る。
|
|「下っ端の頼みに対して志摩子さんに代償を求めるなんて、
| こんなにも俺と合衆国で意識の差があるとは思わなかった……！」
|
|「可能性だよ」
|「というか、『十字軍』を暴走させないように抑えつけるという仕事は難題ですからね」
|
| 先ほどの怒りのしぐさを忘れた様子で、ミストは呆気らかんと答える。
| こういう所が一緒にいて疲れるのだと蒼星石は苦笑した。
|
|「備府君はニャルラトホテプ関係で忙しいですからね。
| こんなにも意識の差がないとは思わなかった……！」
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|: : |: :.|: : : |::|: : :∠イ_〃＞ Vく: :./}:/
＼|: :.|: : : |:.|: : :`弋夕ｿﾉ｀ tり:.:/ l/
＼|ヽ: :|.:|: : : :.i.:|￣ ヽjⅣ 意識の差が無いならいいじゃあないですか。
}ヽ仆ヽ: : : :lN _ _／: :l
／￣￣｀`ヽ､: レ'´￣｀): : : :l
／ V `ー ﾕヽ.:.|
,ん子こ`ヽ | ﾕ､l./
,ん'´: : : : `ヽヽ | l ﾊ'′
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|「いやあ、ニャルラトホテプは強敵でしたね。きちんとそのことを話すのは初めてな気がします」
|
| 先月の戦いの後、昇進やら仕事やら『結社』撃滅作戦やらでごたごたしていた。
| 確かに、ミストと顔を合わせるのも随分久しぶりな気がする。
|
|「強敵と言ったら、『猟犬』でしょう。僕らでは……いや、他の『血族』では誰も勝てなかったでしょう」
|「最大功労者は先代ですよ。俺達だけじゃ倒しきれなかった」
|
| 『血族』殺しに特化した呪いの化身『猟犬』は、最近『血族』として扱われているだけの超能力者も狩り潰した。
| いや、正確には超能力者は練度が足りなかったので、『血族』でなくても全滅だったが。
|
|「あまり大きな声じゃあ言えないけれど、先代の容態は落ち着いたよ」
|「やあ、そりゃめでたいじゃあないですか！ なんで言わないんです？」
|
| 『猟犬』との戦いで負傷した先代巫女は、蒼星石にとっては神道の姉弟子にあたる。
| そして、ミストから見れば戦友でもある。
|
| それゆえに『猟犬』の攻撃を受け、かすり傷ながら『血族』ころしの呪いを受けた
| 彼女の容態を伝えることは、蒼星石は必要だと考えた。
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｜::.::.::.フ７￢‐､ヾ､:＼>､:|-ﾍ::.::.}::!:|
{::.::／代了圷ﾐヽ. ＼行‐t予l:ﾉ/::|
!::.::.::.:| ゞ-'′ ＼ 辷ｼ '/:/::./
|::.::.::.:ゝ , 厶ﾉ::.;′
ヽ.::.::l|ヽ、 r-､ ／::.::/
＼:ﾄ､:j＞ ､ _,.ィ:´::;:l:: / 『結社』側の手を借りて治療を施したんです。
ヽ ｀ ,.ｲ ｀¨´ ﾄ､ﾚ'|/ |:/
__,. '´＿＞v＜ ｀ヽ、′
┌イ ／／了,ﾊ＼＼ヽ ｀┬ｧ
／7 | { く／ノ/引ヽヽノﾉ | }-､
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/:.:.:.:.:.{ | // ]弓ﾄ､ヽ |「 :.:.|
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| ミストは口を滑らせがちだが、愚かではない。
| 現在敵対しているはずの『結社』側の手を借りたという噂だけでも、先代には痛いはずだ。
|
|「……そんなんじゃ俺、『教会』のために戦いたくなくなっちまうよ」
|
| 蒼星石は、正直ミストを甘く見ていたことに気が付いた。
| わざわざ『結社』の手を借りたということはつまり、『教会』が手を貸してくれなかったということだ。
|
|「『結社』側も、必死なんだよ」
|「本当に戦いたい奴なんて声の大きい一握りしかいないんだ」
|
| ミスト自身はどうだったのか。その問いを蒼星石は飲み込んだ。
| 彼は防衛隊だったのだ。闘争は望まぬとも、暴徒を鎮圧する必要があった。
|
| やりたい、やりたくないではなく、義務だったのだ。
| では、今はどうなのだろう。
|
|「秘密だよ」
|「ええ、口は固い方です」
|
| ミストの軽薄な返事に、蒼星石は苦笑した。
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. ｀､::.::.::. |::ｌ::.∠イ::.| ＜ V弋ｽ┤ ヽ └- ' ﾘ::/ /
｀､::.:: ｌ::|::.::.::.:|::.:ﾄ、 ヾﾆ-‐' イｨ′
ll::.::.|::|::.::.::. |::.ｌヽ＼ / /l:|
||::.::l::.|::.､::.::l::.｀､｀ヽ , ／::Ｎ
lﾄ､:ﾚﾍ::.|::.::.＼::ヽ、 ￣ ／::.::.;′ 一部の『結社』幹部は、
＼ ヽl::.::.::.::|ヽ:＞ 、 ／!::.::.: ,′ 『血族』に友好的な態度を示している。
|::.::.::.:l ｀ヽ､ ｀¨￢ｰ-‐'´|/|::.::.:/
ヽ::.::.:｢ ー- ､ ト､ !::.:/
／ヽ::.| ｀丶､|∠＼ |::/
r─＜´ ∨ ／,.ｲ {_}｀ヽ｀ﾒ/_
r┬イ^ヽ、 〉 ／／/ /}{|＼ ＼ ｀くヽ
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|「そりゃあそうでしょうね。今まではずっと均衡を保っていたのに。
| ニャルラトホテプのせいで無関係な奴らまで暴徒扱い。とんだとばっちりです」
|
| ミストはすでに五年以上『血族』にいる。
| ここ最近の事件より前から、『血族』と東京を見てきた。
|
| 具体的には知らないが、『結社』の機械関係あたりと繋がりがあっていてもおかしくはない。
| そこまで考え、当のギルバード・デュランダルが、華琳の功績にされる予定なのを思い出して苦笑した。
|
|「『教会』側にもマトモなやつは一握りしかいないんだ」
|「『結社』と拮抗状態を保って平和を維持するのは、『教会』的にはまともじゃあないけどね」
|「こんなにも俺と『教会』で意識の差があるとは思わなかった！」
|
| 正確には、『教会』内部の好戦的な一派だ。
| ニャルラトホテプ関係の区切りがついて、これを機会に『結社』日本支部を潰し、
| それを自分の派閥の功績にしたい輩だ。
|
| 彼らが日本を、東京を戦場にしようともくろんでいる。
| 『結社』はともかく『血族』は、完全にとばっちりだ。
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: /: :.:.:.:. :/:/. V:N::. V: ::.／,,ィ行:刋 ' :.:.|v:.:|: :
/: :/: : :.,:.:/ _ヾ从:. ヾ:::. ゞ ´ !:j |:.:|:.:: アトリームにも立派な礼拝施設がありました。
:.:.:,:.:.:.:. _,/≠伝示 ヾ.､ `＼ /' |: |:.:: 日本とは比較にならないほどの巨大なものがね。
:.:.ﾊ:.:.:.:!:.:.|. {゜ゞ夕 ヽ 八!: :
:ﾉ|:.!:.:. |:从:.､ i , |:.::
|ﾊ:. :.|:.|:.:.:!:ヽ. ゝ ノ .|:.:/
V:.N ヾ:.:.:.ヽ - ´ /|/
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| こころなしか寂しそうに呟くミスト。
| だが、彼は祖国を失う戦いの中で信仰に疑問を持った。
|
| いや、正確には信仰を捨てたわけではない。
| ミストが疑問を持ったのは『教会』という組織だ。
|
|「東京の『教会』はシンプルで好きでしたよ」
|「え？ う、うーん」
|
| 派閥争いよりも平和維持を大事にしていた。
| 確かに、下につく身としては、上の都合で振り回されるよりもはるかにいい。
|
| いや、正確には派閥争いはあったのだが『教会』の日本支部は
| 本来の業務である悪魔退治を『血族』に丸投げしていたので関係なかったのだ。
|
| そういう意味でも、ニャルラトホテプのせいで東京は大わらわ。
| 不意に、蒼星石は二か月前のことを思い出した。
|
| ニャルラトホテプは派閥争いに忙しい『元老院』を抹殺すれば、現場の無駄死にが抑えられると囁いてきた。
| あの誘惑が、現状を予期しての言い草だったら……いや。
|
| そうだったのだろう。
| 奴は、『教会』が本格的に乗り出してくることを想定していたのだ。
|
| そしてそうなってしまったら、『元老院』や志摩子の立場でも思うどおりに動けない。
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| 二度と来ないでほしい。蒼星石は心からそう思った。
|
|「……誰か来ましたね」
|
| ふと、かすかな物音に気付いてミストが顔を上げた。
| 機械的に強化された彼の五感は、人間より鋭敏だ。
|
| 二人は居住まいを正し、会議室のドアが開くのを待った。
|
|「入るぞ」
|
| ドアを開けた後でそう言った男は、予想外の人物であった。
| 地味な色の和服に特徴的な禿頭。しわで埋まった顔は見る者を不安にさせる。
|
| 双眸と口は顔に空いた虚無にも見える。いやらしく笑う姿に、蒼星石は嫌悪を覚えた。
| 間桐臓硯。『元老院』の一人。
|
| 最近急に親『教会』派になった男だ。
|
|「蒼星石、ミスト。あなた方にお願いがあります」
|
| 彼の後ろから現れたのは、ゆるりとした髪をなびかせたセーラー服の少女。
| 物憂げな瞳。顔色は悪く、少し痩せたようだ。目の下の隈が、疲労を物語る。
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,. -‐_ ニﾆニ￢‐-r‐-､
／ , '´, -‐_ ニフ 7 ﾆヽ ＼
／ ／ ／ ／ ／／´/ ヽ ＼ ＼
. / / / / / / / / }i＼ ヽ ヽ
/ / / / / / / / ハ ＼ ',
ｌ ! l l l l l / ,ｲﾊﾍk ヽ l
. │ ｌ {ｉ│ l l ｲ /l ,.ｲ ﾘ ヽ}} | l |
. │ ｌ ﾘ-l‐ﾊ‐辻ト/ / ナ士ｪ‐-{{/ﾚ-! |
{ ハ lィ¨｢ス下l/ノ'´ イ「スTヾ}Y/｀} |
Ｙ ﾄ､{ ､ ド り ' ､ド り , }}〉ﾉ/ |
} ｌ lヽ｀￣´ ｉ ｀￣´ ﾊ／!l | 『教会』の一派が予定している
| l ﾊ l! /´}} l l | 儀式の補助と護衛をお願いします。
. j l l ヽ _＿ ,.ｲ ﾘ/ l {
. ,ｲ { l {＼ ｰ ／ ﾉ ｛{' { ﾊ
/´ﾉ ,ﾊ ヽ ! i ｌヽ、 ／! { { ﾊ{ ヽ!､＼
｛ / / ヽ V ノ_| ｀´ |_ﾊ ヽ/ !l / ヽ ヽ
. / / ∧、 `< j ﾘ冫 {､ !l { ﾉ }
{ 〈 〈_,.} ! ハ ハ ヽ ｿﾉ､{ / ノ
ヽ ＞ ´ ハ / L__ __」 ヽ. Ｙ{ ` ＜{
_,, イ 「 / j/ l ｀ ´ ｌ ＼ ヽ） 7 r-､_
,r'´.:.:.:.:ヽヽ. / ,ィ′ l l ） / / /.:.:.:.:.｀ヽ
|.:.:.:.:.:,:.:.:.:＼＼{ノ ﾊ | | ／ / ／／.:.:.:,:.:.:.:.:.|
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|.:.:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:.:.:.:ヽ ヽｰ-- ､_ヽ /_,. -‐‐ヽ `＜.:.:.:.:.:.:.:,'.:.:.:.:.:.:.:|
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|「こんなにも俺と『教会』で意識の差があるとは思わなかった……！」
|
| 立ち上がるミスト。その反応は想定していたのだろう、志摩子は平然としている。
| 対して臓硯は侮蔑を隠さない。言動が胡乱で、すぐに激するミストを良く思っていないのだ。
|
|「『教会』内部のほとんどの派閥が、その儀式を好ましく思っておりません」
|「そも何の儀式なんです？」
|
| 尋ねる蒼星石。志摩子は苦しそうに顔をゆがめた。
|
|「……天使召喚です」
|「はぁ？」「そんな儀式をする奴らを守る価値があるのか……？」
|
| 志摩子自身、疎ましく思っている様子だった。
| 何故このタイミングで、しかも他の派閥に反対されてまで、天使の召喚？
|
|「ニャルラトホテプとは完全に無関係ですよね」
|「だと良いのですが……」
|
| ミストが顔をしかめた。しりすぼみになる志摩子の言い方に、何か引っかかるものを感じたのだろう。
| 蒼星石も同様である。とすると、問題は間桐臓硯か？
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| ＼ / ヽ
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∨ ＼ :::..':,│ ,:':,:' ／ ,::.:.:.:.:.:/
〈 ｀丶::::..:::::／ __, !.:.:.:.:./´'.
{:ミ＼ 〉::f ''"´ ヽ.:./ 7/ ことの発端は、
_У ゝ=` ､∧ r＼__,,,.. -rrrｧ::'’'' / わしと個人的に付き合いのある『教会』幹部じゃ。
／::小 '"::} r''ヾﾐ¨三¨´:ミ、 /ｲ:､
＿__／/:.:.:/: }:, r‐r‐< / | :、 ／/:.:.:l: :＼
／ : :.:.:.: ':.:.:./: .ﾊ.!ﾄ､_ ヽ__／ ｀7''>:､ / /:l:.:.:.:!:.: :..＼
／: : : :.:.: : i:.:.:.' : . : l＼ ｀ ー======イ / ｨ: . |:.:.:.:!:.:.: : : :＼
´: : : : : :.:.: : :! :.:.l : . : .! lヽ´￣￣｀ヽ イ´ /: .│: : l.:.:.: : : : : :＼
: : : : : :: : : : :! : :.!: . : . l l:.:.:.｀ー― '":.:.:.:./../: . :.:| : : :l :.:: : : : : : : :＼
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| つい先日までは完全な親『結社』派だった臓硯と、個人的に知り合い？
| その時点で完全にきな臭いが、蒼星石は追及しなかった。
|
|「間桐さんは人間より悪魔に近いから『教会』からは嫌われるんじゃないのか？」
|「抜かしおる」
|
| しかし、当たり前だがミストは空気を読まない。
|
|「昔、そんな理屈をこねて因縁つけてきた女がおってなぁ」
|
| それ以上は聞きたくない。蒼星石は嫌悪感を露わに臓硯を睨んだ。
| 志摩子も、青ざめた様子である。
|
|「やっぱり『教会』にはマトモな人なんて一握りしかいないんだ……」
|「いやいや、どんな不感症もわしの虫を味わったら」
|
| 臓硯の事だ。女性を凌辱した話を喜ぶはずが無いのは分かっているだろう。
| 嫌がる蒼星石と志摩子を楽しんでいるのだ。
|
|「それはどうでもいい。そんなことはどうでもいいんだ！
| その人物が間桐さんを頼るほど切羽詰まっている儀式ってのはなんなんですか！？」
|
| こういうとき、ミストの空気の読まなさは大変ありがたい。
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:.:.〃:.:.:.:.:.|:.:.:､:.:.:.ヽ、ﾄ、 , - '´
／:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.ﾄ､:.:.:.:.:!:| ､フ´ ……『十字軍』が東京に来ているのはご存知ですか？
:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:l:|＼:.:.:.ヽ、 /
:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:l:.l /:>、:.:.ヽ`r-ｧﾘ
:.:.:.:.:.ノ/:.:.:.:.:./:ﾉ／ ）:.:.:.:）:l l.::(
‐_'´＿, -‐＜´/ /:.:.:.ノi:.:l l:.:ヽ、
｀! ノ:.:.／ノノ ヽ:.:ヽ
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| 答えたのは志摩子だった。ミストと蒼星石は頷く。
| 先ほど、そのことも話題に上がった。
|
|「『十字軍』の大義名分は、基本的に『布教』です」
|
| 『十字軍』は『教会』の宣教師軍団だ。
| 悪魔汚染の広がりそうな地域に派遣され『正しい信仰』を広めるのがその役割。
|
| だがその際に、現地の信仰は徹底して根絶し、偶像は打ち砕き書物は焼き払う。
| 大義名分をかさにきた汚らわしい掠奪者である。
|
|「『血族』は首領が『教会』の髪を信仰し、恭順の意を示すことで存続を許されております」
|
| 滑らかに、感情を交えず、志摩子がその事実を口にした。
| 志摩子自身の屈辱、『血族』の屈辱。
|
|「日本の『教会』は、そのままの形での均衡に納得をしていました。
| ですが、本国の『教会』はそうではないのでしょう」
|
| これを機会に、日本の土着信仰を打ち砕く算段か？
| 蒼星石は失笑した。『教会』は日本人を分かっていない。
|
| もはやこの国に土着の信仰など無いに等しい。
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＞＜￣¨≧s。
／ ｀＞‐、
. _/ ／ ＼
} ＿_ }
/ == ‐-- > r=ﾐ /
ヽ／ 、 l＿___ｭ 〃 }}/
{ ‐=彳 ¨二 ｨ' Y´ 〃 あの女、本来は夢宮を頼りたかったようじゃが、
ハ｀¨入___,ｨ ‐- 辷ノ{__ クソババアはくたばったからのう。
{ Y ∧ ｌ／,ｲ//ハ
. ｀¨¨{i: Ⅵ_＞＜ / ////∧
￣| 守ﾄ､ / //////il}
ﾊ/∧ V ////////}
{i///∧ /}///////i!
込///i}/ :}i///////
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| 臓硯がつるりとした頭をなでながら呟いた。
| 戦士としても、論者としても、凄まじく優秀だった老婆。
|
|「夢宮が死んだせいで、馬鹿どもがさわいどる。
| わしは面倒くさいからずっと傍観しとったんじゃが……そろそろそうもいかんじゃろ？ ん？」
|
| 彼女の喪失がこの一連の事件での一番の痛手だと、臓硯の表情が語る。
| 夢宮は強力な抑止力だった。そして、彼女の代わりに『血族』を守る盾はどこにもいない。
|
| 他の『元老院』では、彼女の役割を引き継ぐのは不可能だった。
| 頭のおかしいシックスや、死人であるキュゥベぇは当然として、
| 体臭だけで異性をよがらせる螺旋王も、自分の目的だけに固執するフリットも役に立たない。
|
|「せめてあの淫獣が生きておったら丸投げできたのだがな」
|
| 蒼星石は、謎がひとつ解けた気がした。
| 先日から、それまでの親『結社』派から立場を180度変えた臓硯。
|
| 今までの彼の役割はそれだったのだろう。
| だが、夢宮が死んだことで、キュゥベぇが死んだことで、『教会』を抑制する立場にならねばならなくなった。
|
| それゆえのあの身の替りよう。
| 『教会』に尻尾を振り媚を売るような態度。
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,': :/: ｌ: i: : :l: : :./: : :/,: : : , ' ': : : : llヽ: :.l : :!: : : !
!: :.! : l: |ｌ : |: : :l: l: /.,': : :/ ,': : : :./|l. ヽ!: :.l : l: :l
!: :|l : l: l l: :l l: :l/l/ i: : / /: : ／ ﾘ ll: : l : l: :l
!: l:l : l: l l:.l. l: l-‐‐ l: / /: ／‐,,''‐‐- ､lﾄ､: : :l : l
l l: ',: :', l ﾘ _!..!...._ l/ /／ _.........._ l| ﾚ'"'i : l
!l: :ヽ: ヽ '"l:.:.:.:.Ｃ｀` '"l:.:.:.c:.lﾞヽ l| / !: :l
l : : l丶: l ､ヽ:.:.:.ﾉ_ _ヽ:.:.ノ_.. l /: : !
l : : l : :.l、 ￣ i ￣ / ノ:l: : :l
}: : l: : :.lヽ ' /:.l| /l : :,' 今回の儀式は『教会』日本支部が提案した、
/l: : l: : : !: :＼ --‐- ／ /l//! : l 『十字軍』を抑制するための消極案です。
/:/ : /!: : ｌ: : :| ｌ丶、 ￣ ／:l :/l.l:/l : : ',
,':./: :./:l: : :!: : : リ: 〉:|丶、 イｌ: : l/:l l:/:l: : : :ヽ
l/: ／: :l: : l: : : :.l / : l ` ‐ '´ l: l: :.l:/l l: : :ヽ: : : :＼
l: /: : : :.〉､:ヽ: : : l/: :.l |: l : l: :.l l: : :／ヽ: : : :i
',:{: : : : {: : ゝ:.ヽ: :ﾚ'"ﾉ !ﾞ`ｿ:l: /:ヾV: : :/: : : ノ
>ヽ: : :_ヽ-ﾉ:l: l: :.l { 〉l: :l l: : /ヽ: :/: : :(
/: ,､ '" /: /: : :/ ! / l: :.l: : 〈 ';,` ‐ .._ヽ
_､ ｬ ;;;, /: /:ノ／ !-- 、 _..../ ヽ:ヽ: :.l 〃 ,;;i‐‐､
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|「ショウキョクアン？」
|
| ミストが首をかしげた。すぐに言葉が理解できなかったのだろう。
| 蒼星石も同じだ。消極。積極的ではないということか？ 儀式までして？
|
|「……本当に必要なのは天使より『聖人』なのでは？
| アトリームにも来ましたよ。神の奇跡というパフォーマンスで民衆を扇動する『聖人』がね」
|
| ミストの言葉に、志摩子は首を振った。臓硯は皮肉っぽく唇を歪ませる。
| 蒼星石はミストの言葉を咀嚼した。彼は儀式の目的を理解したのだろう。
|
|「……まさか、天使を召喚までして、日本国民の信仰を『教会』寄りにするだけだとか？」
|「アトリームは元よりイスラムでしたから、『聖人』が来てしまえば簡単でしたよ」
|
| 自嘲的に笑うミスト。その瞳は、後悔という暗い炎を揺らしていた。
|
|「でも、それは破滅の始まりです。俺は承諾できません」
|
| 蒼星石は理解した。
| ミストは、東京がアトリームと同じ道を進むことを恐れている。
|
| そして、『教会』による布教活動がその第一歩だと考えている。
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イ ミイ ヽ
／ ／ イ ´ 个 ､ ､ ＼
/ / ／ ／ / ハ
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! ′/ ｨ ／/{ .
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iﾊ| ｊ/ｧ､!／ ／,ィ ／ｊ/ V i !
ｊﾊ个ｷｭ_／ｚフ⌒＞ ､ | ﾄ､ ｌ !
〉Lｿ ´斤ｙｒ‐､_ | | 彡⌒} ! j| 『十字軍』を野放しにしては、
イｊ ｌ / ゞ:;ソ ^´ | | 八 ｊ | ｲ! 東京は無法地帯になるでしょう。
/ ｊ八 ヽ ￣~ j | ィ_ イ ハ八
（ ｒ7 ｊアヽ､__ , /｢ ｊ ! ＼｀ー ､
} ﾘ / /⌒ﾟ ｀ ｲ ! / 人 ｀ヽ ハ
イ / / ⌒ ーｒ 彡´ | ｊ ! /｀ー ´￣ ＞､ ｊ
/⌒７/≧=ｭ､ ヽ |/ | { ムヽ
/ニ７/ニｭ､ ヾ┬ ﾊ ヾ､ﾊ ヽ ムニﾑ
{ニ7/ニニニｭ､｢{ ﾄヾ､＿ X､ヽ :. イニニﾆｊ
ﾏﾆ {ニニニニｊ! ゝー┴ 八 ｀ ハ } ｊ } ィニニニニﾘ
ﾏﾑiニニニフ{_ j!ハ / ,リ/ ﾉ_ ィニニニニニﾆﾄ
ﾏヽ､ニニ｢ニ≧、 ィﾊ ﾊ ｊノイ /ニニニニニニニﾆ! ヽ
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| 志摩子の声は冷たかった。緩やかな破滅か、目の前の危機か。
| その選択で、志摩子は後者を選んだのだ。
|
|「こんなにも俺と志摩子さんの間で意識の差があるとは思わなかった」
|「日本人に天使を使って布教するとして、本当に効果はあるのでしょうか」
|
| 蒼星石はそもまず、前提がおかしいと考え疑問を呈した。
| 日本人は信仰を持たない。信仰に対して極めておおらかなのが国民性だと言えるほどに。
|
| 八百万の神々への適当な感謝も、仏様への念仏も、
| 天皇への隔意を含めた尊敬も、救世主の誕生日のお祝いも抵抗が無いのが日本人だ。
|
|「夢と幻視を使うそうです。依頼人は日本人を理解していますよ。
| 一発屋の芸人程度の、一瞬のブームでも起こせればいいと言っていました」
|
| つまり、天使を召喚する大規模な儀式を行って、天使ブームを作り出し、
| 『教会』に布教の必要なしと言いくるめる土台を作ろうというのだ。
|
| 何とまあ消極的で、ばかげた作戦であろうか。
|
|「本気ですか？」
|「残念ながらそうらしいです」
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髪！！
>>398
対比！！
. -―― .
/ l ﾟヽ
〈 ﾞｰ､ ,. ´ , }
! ヽl / { |
ﾊゝ-､_)(_, - く ﾊ
,ゝﾍ' 二!ｌｌﾞ二 ﾞ,r/|＼
.．イ|//|´､{ｪｪｪｪｪj,ｨｉ.:.:|//|`ー-,､ 本気になれば、
/////,|//|:.:.:|i> --< ,||.:.:|//|/////ヽ 一時的ブームを作るなど造作もないことよ。
|////∧,'∧:.:ヾ､y____〃.:|//|////i//}
//i////∧,'∧/´ｰ┐〉〉〉|//|///////!
j/∧////'∧＞'´,二｀-‐､＼/|//／//∧
///,'∧/／「!´ ,巛;i;i;i;､;i;ﾉ＼「|＼'////,'∧
!////／//| |／/|｀{;i;i;i;iY{:.:|/,| |//＼////,}
∨'／////| |/,|/,|:./｀ヽ;i;i∨/,| |////＼'/V
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ヽ///////| |/,|/,|､:.:.:{;i;i;i;/|/,i| |'////////
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| 『普遍的無意識』が関係する事柄になるが、『幻視』の天使が夢を通して民衆の心に天使への信頼感をしのばせたとしよう。
| それと同時に、メディア的に信仰的なものへのプッシュをかける。
|
| 『教会』関係の小説をベストセラーにして喧伝したり、
| 集客数ある監督や俳優を使ったドラマ、映画で好意的小道具に使う。
|
| メディアだけでは露骨な押しを嫌がるグループも出てこよう。
| しかし、天使の『幻視』が後押しする以上、抵抗は少なくなる。
|
| 穿った見方や批判をする人々が『ブームに乗れなかった』と扱われる程度には。
|
|「こんなにも俺と間桐さんの間で意識の差があるとは思わなかった……」
|「何か文句があるのか？」
|「いや、儀式をして大天使召喚するのが、造作も無いのかという」
|
| 先日の翠星石によるアマテラスの顕現が特殊なのであって、基本的に高位の悪魔や神を召喚するのには十分な準備が必要になる。
| 召喚に必要なのは、対象から見れば本来不可能なはずの場所に呼び出すための親和性だ。
|
| イメージとしては、トーンとユニコードががいっぱいで１レスに収まらないAAを、
| チマチマと改変し低コストで１レスに収める作業に似ている。
|
| やっぱり似ていない。
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＼、__ﾄ.、
,､r=＝＝＞:.｀ヽ｀ヽﾄ、
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ）:.:.:i:.ﾚｰ-
. _＿,.､＜:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノヽ:.:.:ノ:.:.:⌒ヽ､
＞〃:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:ﾍVｲ:.:ﾍ:.:｀ヽ:.:.＼
／イ:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ヾｲ.:.:.:.:.:ヾ:.ヽ:＼ゝ
／ 〃:.〃:.:.:.: /:.:./:.:/:.i!:.:|:.! ∨:.:.:.:}:.:.:ﾍj
/:.:./.:.:/:./:.:イj:.ﾘ:.八:.リ j:i:.:.:.:.:ﾄ:.ヾヽ
!／:.:イ:./≧x､lハｊ _,,ﾘ≦二ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧ぐｾｵ} 弋ダﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ それにそもそも、
|:.∧ﾊ j ／イ:.:./ソ:/ 天使を召喚しても
ﾚ' ﾘ八 <、 /ｲ/ﾊ:.:/ 根本的な解決にはなりませんよね？
ﾄ､:ﾍ ､_ ＿ , /ｲ |｀ヾヽ
／ﾘ;;;;＼ - ′ !;;;;ｿ;｝}
///／;;;;;;;ﾍ..___..／ / レｸ:ﾉ.:|
_..,,,,,///´;;;;;;;;;;;;;ﾉ! / ／::／ ..:j＞,､_
_.,､＜://:::{:{:{;;;;;;;;;／´ j { / ／::／ /ト.,､＜⌒＞,､_
:::::::::://＞｛ii{;;;;;;/ / ｛;;;;;{ ／ / {::::::::::...,､:＜⌒＞:.､_
:::::::::{｛ 〃∧ヽソー-- 、 __人__{;;;;{ ｲ ｛::::／´::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
::::::::::::｝ ____,,ゞ:::::＞､,,_____,,,､ｒ=＝」k;;j_ ノ ﾉ/:::::::::::::::::::::::::＞"⌒ヽ:j
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| 対象を召喚するのに親和性を上げるといったが、具体的には以下のようになる。
|
| まずは親和性の高い触媒を用意し、場を整理する。
| 対象となる神性に象徴となるカラーや道具があれば、それを揃えるのだ。
|
| 続いては人員を集め、正しい方法で正しい祈りをささげる。
| ここで必要に応じて生贄をささげたり酒を飲んだりセックスに耽る必要も出てくる。
|
| 祈りが最高潮になったところで、ため込んだ魔力を放出し、召喚したい対象に捧げる。
| そうすれば一時的な肉体を与え、現世での行動が可能になるという訳だ。
|
| しかし、親和性が足りなければ電車賃が足りないのと同じだし、
| 儀式の手順を間違えると、おかけになった電話は現在使われておりませんになってしまう。
|
| これらのことをなすのに、それはそれは面倒くさい。
| 『教会』がどの程度の天使を召喚する気なのかは知らないが、１ダースの人間が一週間は働かせることになるだろう。
|
| 一週間の地下活動でブームが作れるなら、確かにそれは『造作も無い』かもしれない。
| しかし、少なくとも『血族』はその手の行為を自粛している。
|
| 悪魔を使っての普遍的無意識野の操作は、人間に悪影響を与える『可能性があるという噂』なのだ。
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|: : |: :.|: : : |::|: : :∠イ_〃＞ Vく: :./}:/
＼|: :.|: : : |:.|: : :`弋夕ｿﾉ｀ tり:.:/ l/
＼|ヽ: :|.:|: : : :.i.:|￣ ヽjⅣ
}ヽ仆ヽ: : : :lN _ _／: :l
／￣￣｀`ヽ､: レ'´￣｀): : : :l なんにせよ、あまり歓迎できないな。
／ V `ー ﾕヽ.:.|
,ん子こ`ヽ | ﾕ､l./
,ん'´: : : : `ヽヽ | l ﾊ'′
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|「しかし、『十字軍』を自粛させる必要があります」
|「そこでなんじゃが……内密の話がある」
|
| 臓硯が嗤った。異様には並びの良い口が耳まで裂ける。
| 吐き気を催す異様な笑みに、しかしミストも蒼星石もたじろがなかった。
|
|「『結社』との戦いの際に殺せとでもいうのなら、お断りいたします」
|「何故じゃ？」
|
| きっぱりと、氷のような拒絶を示すミスト。
| 聞き返す臓硯に、蒼星石が怒りを抑えた口調で応える。。
|
|「『教会』はすでに多くの人員を東京で失っている。
| これ以上失うことは、彼らの威信に関わることになるのではないですか？」
|
| そう、本当ならば『十字軍』なぞ、月の無い晩に皆殺しにしてしまいたいところだ。
| しかし、それを行ったらより一層の問題が発生する。
|
|「『結社』の『九鬼』はすでに下っておると聞く。奴らを使えば雑作もあるまい」
|「『九鬼』を使ってしまっては、『教会』が『九鬼』を許さないでしょう」
|
| それでは、約束が違えてしまうのではあるまいか。
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/ﾍヽ ﾉ ｀ー-- .ヽ /／ ´ イ
!ヽト､ 〈 ｀〉〈 ,..ィ´ }/;i＼
｀ヽ､ヽ ＼_＿＿＿__ /ハ入／≡ﾞ'′'ﾍ;i;i;i;i;i丶 やはりこ奴らなら問題ないな。
;i;i|::ﾞ､ヽ ´, ＼三,ゝ'"ﾌヽ ' /ー-､´ ﾉ;i;i;i;i;i;i;i;ヽ そういうことじゃよ。
;i;i|:::::::.ﾍ / "／ ´／ Y | ､ ヽ ,ｲ;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i＼
;i;i|::::::::::::ﾄ. ヽ ,ｲ｀ ｌ | ﾉ ｀ｰ┐/ !;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i丶
;i;i|::::::::::::| i ヽ ／､ ￣｀ヽ-', /, | ﾚ´;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i
;i;i|::::::::::::| |＞ ､! ! ‐- ,. -－ 二ヽ ／::|;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i;i
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| 臓硯がクツクツと嗤った。ミストと蒼星石は、臓硯に自分たちの有用性を示したようであった。
|
|「天使召喚儀式には『十字軍』も護衛につく。ミスト班はそのさらに護衛じゃ」
|「戦うなら勝手にやってくれ！ 俺は艦を降りる！」
|
| 拒絶するミスト。蒼星石は胸をなでおろした。
| 当然のことながらそんな仕事はやりたくない。
|
|「蒼星石たちには、ミストらの援護をお願いしたいのです。彼らに融通を効かしてやってほしい」
|「そもそもミストさんがすごく嫌がってるんですが」
|「ミストに頼みたい理由は三つあります」
|
| 志摩子が指を立てた。騒いでいたミストが黙る。
| 彼は『血族』内でのけもの扱いだ。しかし志摩子は、そんなミストらを大切な部下として扱って来た。
|
| 志摩子の存在が、ミストを『血族』に繋いでいると言える。
|
|「まずは、ミストが活躍をし過ぎているので、うるさい連中の目を逸らしたい」
|「抜かしおるｗ」
|
| いきなり激しいことを言いだす志摩子。
| だが、それは事実だと蒼星石は知っていた。
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.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:::::::::::::::::.:.ヽ::i:::i::::::', |:|
i.:::::::::/::::ﾊ:::::::!::::::::::::::::',:i:::i:::::::l.|:|
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l::/.:::;ｨ:/＝-ヽ＼ヽ,.ｨイ1!::!::/ ′
l/:／ /-‐ 〈tfｼﾉ::!::!′
K ,.ィﾃﾃ'ヽ `´1://
::::', V弋ｿノ ､ l::::|
::::::', ¨¨´ / /::::| 蒼星石救出でも、『猟犬』でも、
::::ﾄ､ヽ､ _ ,.ｲ::::ﾊ! ミストさんたちは失敗なく功績ばかり。
::::i `'／l:::::/
:::::i ｀`ｰ┬一'´ |::/ 疎んじている連中は多いでしょうね。
:::::L ＿ __/ |/
＼|＿_ _ ユ_＝=ァｧ
＼//
＼
＼__
. .: .: :／￣,.-､入
.: .:. :. :.／ ヽ_ソ.::::::::::.`､
.: .:. :. ／ ヽ_ソ.::::::::::::::::::::.ヽ
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|「支えてくれる人が傍にいれば俺だって成長しますよ、蒼星石さん！」
|「二つ目、『結社』撃滅作戦でパプテマス氏と四ツ目を鉢合わせさせたくはありません」
|
| これには、ミストも納得の様子だった。
| 『武僧』のパプテマス・シロッコに深い恨みを持つ四ツ目だ。
|
| そして彼は、『血族』ののけものであり、恐らくミスト以上に『血族』に愛着を持っていない。
|
|「最後に、無法者を押さえつけるのは、ミストならば防衛隊時代に馴れているのではないかと」
|「もちろんです」
|
| 志摩子のヨイショに、ミストは上機嫌で乗っかった。
| ミスト自身、『十字軍』を鎮圧あるいは訓練することは想定していた。
|
| だが、自分で考えるのと志摩子に頼まれるのは話が違うのだろう。
|
|「それと蒼星石」
|
| ふと思い出したかのようなタイミングであったが、志摩子の声はひどく緊張していた。
|
|「儀式は『結社』撃滅作戦とは別の日に行われます。当日は、備府を伴って護衛をお願いします」
|
| 志摩子が何を危惧しているのか、蒼星石は言わずとも分かった。
| そう。
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＿ ＿ /::/:::j::::::::| ､ /::/::j ﾊ ｊ
´￣｀ー' ｀´ /::::i::ノ:::::::::l !::｀ｰ':::ﾊ∨ｊ:::} /
_,,j::::j´::::::::::::j |::::/::::ｲ:j r':::/´
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｀ ＜::::::::::::::::::::::://:::::::::::/ /:::::::ﾍ:::::::::!' j::/
圭≧=､ヽ::::::::::::/{::::::::::::/ /:::::::::::::::｀ー<ノ
圭Ⅳi三>ｭ＼:::::::i|:;-､/ /:::::::::::::::::::::::::/
圭!/三/i三ﾊヽ:::::l| /:: ｀ｒ､::::::::::::::/
圭三ﾆ|/三三ﾊ:::::!i ﾉ::i{ Y-'｀ヽノ
圭王三三Ⅳ|ﾊ !::::｀':::::/｀ｰ'
圭≧=､三=|/ハ}｀ヽ:_/ r-―::::-ー::ヽ
王王王≧三三ゝ-､ ゝァ―ー､::::::＼_
圭/王王王≧=三三ヽ ｒ-(´￣:::｀ヽ:j:ヽ::::::::ヽ
王王王王王王王≧､三≧､ ｀ー＞ ､:::::::｀ｰ､:::::＼ヽ
王王王王王王王,ィ≦王≧三ニ=､ ,ｲ:::;::::::::::::::::::::__:::＼
王王王王王王,ｲ王王王王王三三ヽ /::::/7::ヽ-:::;ィ＞ ＜ヽ､
王王王王王Ⅳ王王王王王王王三ﾆヽ i::::ﾉ ｀-ヽ／イ-, ト王≧ｭ
王王王王|Ⅳ王王王王王王王王三三ﾊ ｀´ ,ｲ王王ノ ｀ー､王!
王王王王王王王王王王王王王王三三i ,ｲ王!／ ｀ !
王王|i王王王王王王王王王王王王三三ｌ ＼／ _ ｌ
王王i|!王i|王王王王王王王王王王三三l|ｌ｀ヽ ﾍ ,イl|l_ L≧ｭ|
王王=|! ｲ王王王王王王王王王王三三三ﾄ ＼ ∨／王ﾆ＼ イ三!
王ヽ王|!l王王王王王王王王王王三三三|lﾊ王≧<￣＞=-≦￣ ヽ ∨王王王ｌY´王ﾆｌ
三ヽヾl||!王王王王王三三三三三三三ノ王ハ,王王Y ヽ ＼ |三王王王王王il|
三三王ヾ!王王王王王三王王王王王王王王ﾍ＼王ﾊ _ゝ Y三王王Ⅳ/王三!
三三王王l|!王王王王三王王王王王王王 王ハ三＼王王王ヽ ヽ ｊ三三王//王王三l
王三三ヾl|l|ﾊ王王王王三王王王王王王三王王i三三ヽ王王lハ ＼ノ三三王//王王王|li
王王三三ヾｭヾ,､王王王 l|l王王王王王王三王王､三三三ヽ王l|l〉´王三三Ⅳ/王王王王|
王王王王三≧､l|lヽ,王王l|li王王王王王王三三王ヽ三三三ﾍ|Ⅳ王王三三//王王王王ﾆｌ
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| ニャルラトホテプだ。
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>>402-404
どうもありがとうございます。申し訳ない。
>>405
まったくですね。
自分でいまさら言うのもなんですが
このプッチ神父のAAってなんつうかこう、雰囲気あってバッチリですよね
すげー悪そうなので、大変気に入っています。
特にあの手。抱き寄せる様な、掴み取るような手の位置が、邪悪な陰謀を彷彿とさせるのでたまりません。
いつも感謝の念が絶えませんわ。
>>407
「１ダースの人間を」か「人間が働かせられる」どっちかな、「こなすのに〜面倒くさいも」違和感ありますが
>>408
「異様に歯並び」
†
||
／'i,ヽ
／ ..;;;i:::::;＼
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| l⌒l | l⌒l |
| |...::l | |;;;;;l |;;:ヽﾐゞ;; ゞ;:;:ヽ
ﾐゞ;;;| ￣ | ￣ |;:;ミ__ヽﾐゞ,,＿;;:ヽ_;:ゞ;;＿＿＿＿.＿＿＿＿ ﾐゞ;;ﾐゞ;;
ヾ;:;:ヽﾐ;;| l⌒l | l⌒l |;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;; ゞｿミゝﾐゞ;;ヾ;:;;:
ﾐゞ;;;| |....:l | |;;;;;l |;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;ヾ;:;;:ヽﾐゞ;;ｿゝﾐゞ;;
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ヾゝｿ | __ | __ |;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;;;;;;i;ゞゝヽﾐ;ｿミゝﾐゞ;;
ﾐゞ;;;| LLｌ | LL;;;| __ .__ __ .__ .__ |ﾐゞ;;;:;ｿｿミヾ;:;;:
|i| | LLｌ | LL;;;| i_i_l i_i_l i_i_l i_i_l i_i_l | |iｿ ヾ;:;;:i;i
|i| | LLｌ | LL;;;| i_i_l i_i_l i_i_l i_i_l i_i_l | i;i;:ヽ_;:ゞi;i
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| 集合場所を聖アンジェラ修道院に指定したのは、やらない夫にとってはアウェイになるからである。
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| 約束の三時よりも30分ほど早く、やらない夫はその教会に到着していた。
| 一見して、どこにでもあるような教会。だが規模は大きく、中庭もある。
|
| 敷地内には孤児院と保育園があると聞いた。
| 相手がどんな人物でも、ここでの荒事は避けたがるだろう。
|
| 実際に周辺を散策して見て、やらない夫は子供たちが走り回る姿に目を細めた。
| まだ走り方もおぼつかない幼児たちが、ボールを追いかけてきゃっきゃと笑っていた。
|
| ここの孤児院では、悪魔関係の事件で親を失った子供もいるという。
| やらない夫は彼らのように、悪魔によって家族を失う人間が一人でも減ってほしいと、心から願った。
|
| よく間違えられえることではあるが、やらない夫は平和主義者で、性善説の信奉者だ。
| 話し合いで解決できることには暴力は持ち込みたくないと考えている。
|
| しかし、彼自身の望みとは裏腹に、一度暴力に身を浸した彼の周囲では、
| 暴力で考えを通そうとする人間ばかりが目に付いた。
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_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） |
（__人__） | ..／} 話して分かるといいな。
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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| やらない夫は間抜けなおろか者だ。
| 話して分かると、どんな罪を背負ってもやり直せると、本気で信じているのだ。
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| 世界中の人間が善人で、誰もが他者に優しく、過ちに寛大であればいい。
| なんとまあ狂った論理か。
|
| 残念ながら、人間は常に善人ではない。
| 優しく出来るのは余裕がある一瞬だけで、おのれの過ちには寛大でも他人の過ちにはひどく不寛容だ。
|
| そして、理不尽に傷つけられた人間は、傷つけた相手を絶対に許さない。
| たとえ表面上は妥協したとしても、心の奥でのわだかまりは消えない。
|
| そういった感情の多重構造を、やらない夫は理解できない。
|
| さらに言うならば、子供を傷つけたがる人間はいないと、やらない夫は無邪気に信じている。
| しかし世の中には、自分より明らかに弱い子供を殺害することでしか自分の価値を感じられない狂人もいる。
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| そして、これからやらない夫が会う予定の男たちは、そちら側。
| 狂人の類に他ならない。
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, 、
/ ヽ_____
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/ ヽ:.:::::::::::::::ノ ノ
' ｀ ‐-‐ ' 「
', _ ｀¨` _ !
> - ､_x _, ｀¨ ﾚﾍ
／: :＼ }ノ´ ニ ノ y'
, '. : : : : ＞--‐‐, ___.. ' / 結界が張ってあるのう。
/. : : : _. へﾆ①-' ／ わしらの侵入は難しそうじゃ。
,: : : : ´ '.
{: : : '
/!: : }
{ ',: , ､ ,
ヽ._ヽ /ﾟo} 〈
＼ _. -‐--`
｀ ｰ---‐ ´
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| 敷地内に入ろうとした時、やらない夫の肩でニャンコ先生が毛を逆立てた。
| 冬場の静電気のように、近づいた瞬間拒絶するような衝撃を受けたのだ。
|
|「わかった。三人は周辺の警戒を頼む」
|「本気ですか？」
|
| ニャンコ先生、墨目、ねずみ男。
| 三匹の悪魔を使役するやらない夫本人の戦闘能力は、一般人に毛が生えた程度のもの。
|
| 悪魔たちに外への警戒をさせた場合、彼を守るものはいなくなる。
|
|「どうせ、中に連れて行っても召喚は難しいんだろ？」
|「恐らくは」
|
| 結界の内部で召喚が可能か。
| 恐らく麻呂のような熟達の術者ならば可能なのであろう。
|
| だが、やらない夫のように技術ではなく契約だけで悪魔を縛っているのでは、そうもいくまい。
| しっかりとした魔術や手順が無い以上、結界内部での召喚には著しい障害があるだろう。
|
| そしてやらない夫は、召喚ができないなら警戒に扱うべきだと判断したのだ。
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/:入ヘ.丶、
.|/,-.、,-＼∨／
/||／| |＼|:＼ヽ∠
＿ / | `-', ,.￣ 彡|:＼
─.|-.|ミ ;＼ヽ, へんに集中力削ぐのはやめとけよ。
／|:.| | .|:/ヽ どーせ『教会』の結界があるんだろ。
/ ; ヽ、 ／￣）/ ./＼
＼ヽ、 Y￣ /;ヽ/:/ , .＼
（ ￣ /|: /:/ |／ ..|
く ／ ;/ |:/:/ / >
＼ ／ ./ / ヽ
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| 警備なんてしたくない。怠惰に惰眠をむさぼりたい。
| ねずみ男の声からは本音が漏れていたが、言葉は正鵠を射ていた。
|
|「さすがにあそこで修羅場はないだろ？」
|「あるね」「あるじゃろうな」「警戒を怠るべきではないと思います」
|
| 最近、ツッコミがステレオからサラウンドになった。
| 不可解な顔を浮かべるやらない夫。脳裏で複数の舌うちが鳴り響く。
|
|「失礼ですがサマナー。我々の召喚ができないように、『教会』の結界内部では『血族』の異能は効果が低いはず」
|「仲介人の実力は分からんが、やらない夫を殺すならあそこは最適じゃな」
|
| やらない夫は苦笑した。自分は、暗殺されるような重要人物ではない。
|
|「そうかねぇ」
|
| だが、ねずみ男は小さく肩をすくめる。
| ニャンコ先生も墨目も、やらない夫とは反対意見のようであった。
|
|「お前さんの『目』はやっこさんにとっちゃ脅威なんじゃねーのかい？」
|
| ニャルラトホテプとのパスを簡単に見抜けるのなら、奴の協力者から見れば宿敵だ。
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rヽ ／ ノ ＼ ＼
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r;r‐r/ |. | （__人__） | 縁を見るのはユニークじゃないって聞いてるぞ。
〈_L (｀ヽ .} | ｀ ⌒´ ﾉ
l｀ （ ｀`/ . | }
ヽ l . ヽ }
|,. l /⌒ ー‐ ｨ ヽ
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|「お主の目はわしの力で常動じゃ」
|
| 一般的に魔力の流れを視覚で判断できるような人間はいない。
| 五感から外れた感覚は、異能者を狂わせる原因になりえる。
|
| だが、やらない夫はその感覚を適当に受け入れていた。
| 彼の精神が人並み外れて狂人なのか……今の誤字は誤りではなさそうだ。
|
|「つまり、サマナーは他よりも些細なアレを気が付きやすいってことか」
|「そして何よりもニャルラトホテプとの接触が多かった」
|
| やらない夫とニャルラトホテプの接触は、都合三回。
| やる夫や蒼星石ほどではないが、『血族』内ではトップクラスだ。
|
| そしてその回数は交戦回数とイコールで結ばれる。
| 最初の一回は撹乱止まりで、二回目は満足に攻撃もできなかった。
|
| 三回目は？ 他の敵と交戦していた。
| それでも、やらない夫はニャルラトホテプをそれだけ見たし、攻撃を受けた。
|
| さらに言うならば、『原初の軟泥』で負傷したニャルラトホテプが、
| 上次元干渉を起こして別個体に『裏返る』瞬間も目撃していた。
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人を守るために人を捨ててる蒼星石よりも
やらない夫ってよっぽど狂ってるといつも思うわ
/ ＼ ＿＿＿＿
,′ {: : :＜ ｀＜＞:.｀ヽ ＿＿＿＿
{ '､: : ＜＞､ ＞:.:.:.:.:} /
〃､ ＼: : : : :.:.:.:.:.:.:.／ /
/､` ／丁:::ｧ、 ￣￣￣￣ / わしがニャルラトホテプ関係者なら、
Y ￣⌒'ヽ ヽ ,.-‐r::.x、_,. { まずお前を殺す。
{ 二 ､, -‐┴-'､ヽ ﾆ |¨:.:.、
, ‘-‐'^ヽ._) ｰ‐ j:.:.:.:..＼
∧ ￣ 八:.:.:.:.:.:.＼
/. : ＼ ,〃.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
,′ {:ﾐx、 _..x<:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Y
｛ ＼:::三ﾆｧ=‐r-----‐=彡'′ ＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
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|「例の、トールマンが言っていた『天使召喚の儀式』もありますでしょう？」
|
| 墨目が口にしたのは、トールマン弟が危惧していた問題だ。
| あまりにもタイミングの悪い天使召喚。何かをたくらんでいるとしか思えない。
|
|「天使が存在するのは物質界じゃねーもんな、サマナーじゃなきゃ、その儀式が呼びかける先がニャル向きかなんて分かんねーよ」
|
| ニャルのメールアドレスを知っているやらない夫でなければ、
| 儀式に寄って呼び掛ける先のアドレスが間違っていないかを見抜けないということだ。
|
|「……でも暗殺はないと思う」
|「注意は必要じゃ。それに、話し合いをするにしても、わしらがあった方が有用じゃぞ？」
|
| それは頷けた。
| やらない夫は相手の言い分を信じてしまいがちだ。
|
| その分、ニャンコ先生やねずみ男が脳内であーだこーだ言ってくれた方が怖くない。
| やらない夫は小さく嘆息した。
|
|「わかったよ、オレの負けだ」
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ﾚ.::／ ⌒ヽヾヽγ´⌒ヽ＼::::::::',
//:;' ,∠´￣｀ヾ∨ﾆミヾ ｊ、 ｀!:::::',
//::;'./／ｲ/__ノ ヽ-iﾊjﾑヽ､j:::::::;
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ﾘi::/ヘ::ﾘ::::::::::ノ⌒ヽ::::::/::::::}イｊ:::::::::l
,ﾘ/∧ ￤¨¨´ j:、 ｀７￣ / ﾊ::::::::l
i::{/:::ﾍ ∧:}::::::::l 一人で来たのかよ。
l:::｛:::::i;ﾍ /;;l:ﾉ:::::::::l 命知らずだな、オイ。
l:::::::::::j;;i;ヽ ___＿____ ｲ;;;;l::::::::::::::!
l::::::::::::i;;;l;;;ヽ、 ´ ￣￣ ｀ ／;;j;;;;;l::::::::::::::l
l:::::::::::::!;;;l;;;;;;| ＼ ／;;;;!;;i;;;;;;l:::::::::::::::l
,':::::::::::::j;;;;l;;;;;j `二´;;;;;;;;;;l;;l;;;;;;;l::::::::::::::::l
ノ:::::::::::::::l;;;;i;;ノj }ヾ;;;;;;;;;;;;ｿ､;;;;;l:::::::::::::::::ヽｰ､、
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| やらない夫を出迎えた尼僧は、一見してカタギには見えなかった。
| というか、やらない夫のイメージするシスターとは違うタイプの人間だった。
|
| 鋭角なサングラスは見るものに近寄りがたい、攻撃的な印象を与える。
| 口を大きく開け、タバコの煙を噴き出した。ここは禁煙ではないのだろうか。
|
|「なにボサッとしてんだ？」
|「いや別に、備府やらない夫だ」
|
| シスターの視線はサングラスに隠されてわからない。しかし、腰に手を当て丸めた背中が。
| タバコ片手にグネグネと動く顔の動きが。彼女がやらない夫を威嚇し、値踏みしているのは理解できた。
|
|「身のこなしは悪くね―が、なんかシロウト臭えな」
|「素人なもんで」
|
| 鼻を鳴らすシスター。見くびられただろうか。
| 彼女は顎をしゃくり、奥へ行くように促した。やらない夫は頷いて敷居を跨ぐ。
|
|「……備府か。チッ」
|
| 何が癪に障ったのだろうか。
| シスターはやらない夫の名字を呟いて舌を打った。
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／ _ノ ＼
| （ ●）（●
| （__人__）
. | ﾉ なんだ？
| ∩ ノ ⊃
／ .／ ＿ノ
(. ＼ ／ .／_ノ │
＼ “ ／_＿_| |
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|「なんでもねーよ」
|
| ぶつくさ呟きながら前に立ち、形の良い尻を振り案内するシスター。
| やらない夫は『教会』にあまり知り合いがいない。
|
| 誰かの知り合いだろうか？
| アリカややる夫、そして麗しのジャーナリストの知己だとは思いつきもしない。
|
| やらない夫は、目の前のコーカソイド女の脚に注目していた。
| この尼僧は『教会』のエージェントだろう。
|
| しかし、戦士ではない。
| ヒールの高い靴が居丈高に存在を主張する。その靴では、荒事は出来まい。
|
| あの諌山冥ですら、靴はヒールの無いものを選んでいた。
| それを思い出し、やらない夫は少しだけ懐かしい思いがした。
|
| 彼女は元気だろうか。
| いま彼女は、ケンシロウの副官だ。
|
| 相変わらず、嫁の貰い手には不自由しているかもしれないが、ケンシロウは『教会』に目をかけられている。
| きっと冥は『のけもの』の立場からは取り除かれたであろう。
|
| 素直に祝福したいが、きっとあの面倒な女性はそれを許してはくれないだろう。
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', ＼ ／ -‐=ﾆV: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
',ヽ ＼＼＿＿＿＿＿V: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
. /ヽ ＼} |ヽ ヽ＿ , V: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
/ ＼ { ／ ＿＿＿＿＿_ V: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
. / ／ / | _/／ _,丐￣￣￣￣ V: : : : : : : : : : : : : : : : : : :
/ /| /{ .| { ノﾔノ V: : : : : : : : : : : : : : : : : :
| | .| { ヽ }ヽと`ｰ 〉: : : : : : : : : : : : : : : : : :
| | ! ! V（ﾉ {: : : : : : : : : : : : : : : : : :
{ { ＼ / ／j j: : : : : : : : : : : : : : : : : :
. ＼ ヽ ＞､ ／ ./ ./{: : : : : : : : : : : : : : : : : :
. ヽ ／.ｒ､)`ｰｒ-‐' ./: :| : : : : : : : : : : : : : : : : :
{ { ｨ ィヽ /: .: :｀､: : : : : : : : : : : : : : : : この部屋だ。
〉 ヽヽｰ} .／: : : : : :ヽ : : : : : : : : : : : : : :
V ヽ | ／: : : : : : : : : ＼: : : : : : : : : : : : :
V ヽ _／: : : : : : : : : : : : : ＼ : : : : : : : : : :
V !ヽ￣￣ヽ : : : : : : : : : :.＼: : : : : : : : :
／ ＿＿ _ |: : : : : . ＼: : : : : : : : : : :＼ : : : : : : :
／ ﾉ: : : : : ／ : : : : : : : : : : : :. :＼: : : : :
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| 無造作に部屋を指さされ、やる夫は思考を中断した。
|
|「ボディチェックとかはしなくていいのか？」
|「してほしいのかよ」
|「武器を持ってる」
|
| やらない夫は肩をすくめた。ニャンコ先生のひげ槍を、数本隠し持っていた。
| ひげ槍は金属ではない。悪魔の体毛なのでかすかに魔力を帯びているが、それだけだ。
|
| 今まで考えたことも無かったが、暗殺には最高に向いている。
|
|「そうは見えないな……足の間にぶら下げてる武器をチェックしてほしいってんなら、コレ次第だぜ？」
|
| コインの手つき、続いてそれを、口の前で前後させる尼僧。赤くぬるりと舌が光る。
| やらない夫は白けた気分で首を振った。
|
|「そういうのは結構だろ」
|「ジョークだよ、つまんねー奴だな。……武器なら奴さんも持ってるだろうよ」
|「平和的に話し合いがしたいんだけどな」
|
| やらない夫の言葉に、尼僧はクツクツと嗤った。
| 馬鹿にしたような笑い方だ。話し合いは難しいのか。
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／ _ノ ヽ､_ ＼
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| ｀⌒ ´ | コレ次第か？
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. ヽ /
ヽ /
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| やらない夫が指で丸を作った。
|
|「だが話し合いだ、金もケツも出す気はない」
|
| その言葉に、シスターは一瞬キョトンとして、次にげらげらと笑った。
|
|「安心しろよ備府、ああいう奴らが欲しがるのは尻より棒だぜ」
|「ムリムリムリ」
|
| やらない夫が流儀に従ったジョークを言ったのが、よほどお気に召したのだろう。
| シスターは肩を組み、タバコ臭い息を吹きかけてきた。
|
|「上手くいかなかったら泣きついて来な、後でベッドで慰めてやるよ」
|「穴の毛までむしられたらそれこそ涙も出なくなりそうだ」
|「アリカのダチだろ？ サービスしてやる」
|
| そう言われて、なるほどとやらない夫は頷いた。
| 何度か名前を聞いたことがある。そうか、彼女がシスター・エダか。
|
|「約束の時間まで、まだ30分はあるな」
|「あ？ なんだよ。マジになったか？」
|
| 彼女の噂は聞いている。
| やらない夫は財布の中身を思い出しながら、にやりと笑った。
|
|「アンタを買いたい」
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唐突にやる夫が出て吹いたｗ
エダはこんなこと言って実は処女とかなら萌える
ゲェっ！？
ほんとうだ。やらない夫を書いてるとなぜかまれにやる夫と書き間違えてしまうぅ
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ﾚ.::／ ⌒ヽヾヽγ´⌒ヽ＼::::::::',
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//::;'./／ｲ/__ノ ヽ-iﾊjﾑヽ､j:::::::;
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ﾘi::/ヘ::ﾘ::::::::::ノ⌒ヽ::::::/::::::}イｊ:::::::::l うわー、シケてんな。
,ﾘ/∧ ￤¨¨´ j:、 ｀７￣ / ﾊ::::::::l これしか持ってねーのかよ。
i::{/:::ﾍ ∧:}::::::::l
l:::｛:::::i;ﾍ /;;l:ﾉ:::::::::l
l:::::::::::j;;i;ヽ ___＿____ ｲ;;;;l::::::::::::::!
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|「ツケがきくならいいんだが」
|「帰る前にホトケになられちゃ売り損だ。証書を書きな」
|「『教会』でホトケって……」
|
| 金銭に関するサインをしながら、やらない夫はその値段に頭を抱えた。
| やらない夫がエダに頼んだのは性欲処理ではない。二人の人物の情報だ。
|
| 10万、100万、1000万と言われ、やらない夫は少し悩んで100万のコースを選んだ。
| 出血大サービス、二人でそのお値段だそうだ。
|
|「10は対外用、最低限の情報だけ。異能や性格について知りたいなら最低100だな。
| 1000払われたら秘密のネタまで話してやるが？」
|
|「2000あったら家が建つぞ」
|「建たねーよ」
|
| 土地なしなら建ったりもします。
|
|「じゃあまず確認だ。『教会』所属のヌケドナルド・トールマン直属、
| 対悪魔殲滅部隊『黒手組』のアリー・アル・サーシェスとゾルフ・J・キンブリーの情報だな」
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） |
（__人__） | ..／}
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __ そうだ。
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ そしてその二人は、オレがこれから会う予定でもある。
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／ まあ、面会前の下準備だよ。
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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|「順番に説明する。知ってる内容があったら言っとくれ。スキップするから」
|「情報が歯抜けになっても困るし、何よりオレは物知らずでね」
|「オーライ」
|
| 時間はそうあるわけではない。
| エダは栓抜きでソーダの封を二本開けた。
|
| やらない夫はありがたく受け取り口に含む。アルコールではない。
| エダは、同じ冷蔵庫にあったビールに未練を残している様子であった。
|
|「まずは基本情報。トールマン兄弟だ。まず兄のサンダース・トールマン。
| 『教会』幹部で合衆国大使。元海軍で最終的な階級は中将。56歳。
|
| しかし未だにグリーンベレーとは親しく、最も活躍した当時が忘れられない懐古主義者だ。
| 通称は『カーネル・サンダース』。将官になる前の、好き勝手暴れていた時期が絶頂だったのさ」
|
| カーネル……大佐という意味だ。やらない夫は頷いた。
|
|「びっくりするほどのレイシストで、白人男性至上主義。
| 奴の頭の中では白人男性の下に奴隷として白人女性。その他有色人種は虫けら扱い」
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,、＿_
/ヽ ``ヽ
//￣'￣￣ヽ.＼
`i |,＿, ,＿,、 i .>
ﾄ|,:ﾆ/ヽ二|'ー!イ.
|￣,.レ,..、 ）7
! ''=＝=i /'.
. ヽ `! !' ,//＼_
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_/ _/ /`―「_!―'./ / `―::、
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ﾉ | i i' ! | | / ・'／ i' イi
> | | | | | | / /===i | ／|
「 | i | | | ﾚ' ／ :| |
「`i | ヽ | フ ／ | ﾉ
iｸ `i‐| ＼／ ／┌::..、 ,‐、」 、 !|
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!＼コ'./ / ／ E＝= ） ヽ ! |
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|「そこまで行くと逆にすごいな」
|「未だに日本人のことをイエローモンキーだとかなんだって言ってやがる。
| そんな奴が対日大使だ。笑えるだろ？」
|
| 笑えないな。当の日本人として、やらない夫は嫌な気持ちになった。
| 日本人であることに強い誇りを持つ訳ではないが、差別主義者には眉をひそめる。
|
| 極めて日本人らしい反応だ。
|
|「噂じゃ大統領選挙に出馬直前に、黒人候補者の肌を揶揄したそうだ。
| ほとぼりが冷めるまで身を隠し、ついでに人種的差別をしないことをアピールせにゃならなくなった。
|
| 親日家の仮面をかぶり、人の良いおっさんのふりをして、大使を務めてるが、
| そーとー鬱憤は溜まってる……日本に核を持ち込む画策をしてるって噂だ」
|
| やらない夫は青ざめた。冗談じゃない。
| トールマン兄は非核三原則を知らないのか。
|
|「そんな兄貴を支える本当の親日家で、結構前から日本で活動していたのが、
| ヌケドナルド・トールマン。ピエロ野郎だな」
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＿,亥＿,亥＿,亥＿,亥_亥_亥亥亥亥亥亥_亥_亥__亥_＿_亥_＿_亥＿_亥
亥＿,亥＿亥＿亥´ ＿＿ _＿＿_ ｀亥_＿亥__＿亥_＿亥
＿亥＿亥＿亥´ ／￣￣￣｀ヽ ∠ィ￣￣￣＼ ｀亥＿_亥_＿亥_＿亥
亥＿亥＿亥´ _｣_ _｣__ ｀亥＿亥＿亥_＿亥
＿亥＿亥´ ,ィﾆ代ﾑﾆx､ _,ィﾆ代ﾑﾆx, 亥＿亥＿亥_＿亥
＿亥＿亥 ／ | ｀ i´ | ｀ヽ 亥＿亥＿亥_＿亥
＿亥＿亥 | 亥＿亥＿亥_＿亥
＿亥＿亥 ,rーく 亥＿亥＿亥_＿亥
亥＿亥_衣 ／ ,ｲ ﾄ､＼ 亥＿亥＿亥_＿亥
亥___亥___衣 ト､＿＿,≧====≦､＿＿＿,ｲ 亥＿亥＿亥_＿亥
___亥___亥__衣 |Y^TﾆTニTニTニTニTニT寸 亥＿亥＿亥_＿亥
亥___亥___㍉,_,ﾑ ｌ Kニ! lニ| x亥__亥＿亥_＿亥
＿亥＿亥＿㍉,j ',Kニ! ,ィ二Y二二ヽ ｌニｌ ,x亥__亥＿亥＿亥
㍉＿_亥＿_亥__ﾄ､ ',kﾆl / ＞----＜ﾑ ｌﾆｌ ,x亥_亥___亥＿亥'
｀㍉,___亥___亥| ﾑ VlﾆlニlニlニlニlニlニlﾆlV / 亥__亥＿亥´
｀㍉,___㍉__| ', ＼二二二二二二二／ / ｜,㌢ ,㌢´
｀㍉㌫| ヽ ｀ー‐------一'" / |㌫㌢
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| ＼ / ﾄ､
／| ｀￣￣￣￣￣´ ﾄﾑ
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|「そっちとは何度か会ったことがある。今回も彼の紹介だ」
|「飛ばすか？」
|「いや」
|
| やらない夫は首を振った。トールマン弟。やらない夫は彼を詳しく知らない。
|
|「ヌケドナルド・トールマン47歳。歳の離れた兄弟だが、兄とは母親が違うそうだ。
| 父親の若い再婚相手との間の子供ってんで、兄弟仲は表面上は良いが、実際には極めて悪い。
|
| 父親も元軍人の『教会』幹部で政治家。兄弟仲は悪くとも、絶対君主には逆らえなかったわけだ。
| 兄は軍人から政治家という親と同じ道、そして当のヌケドナルド・トールマンはCIAって噂だぜ」
|
| 複雑そうな家庭環境。だが、やらない夫は不思議な気分になった。
| CIA？ 合衆国中央情報局だと。
|
|「つまりトールマン弟は軍人ではないと？」
|「そもそも、CIAだって噂の立つCIAなんざいねーよ」
|
| 当たり前だ。やらない夫は納得した。
| CIAは合衆国の対外諜報機関。スパイ大作戦の世界の住人だ。
|
| スパイの可能性があるなんて噂が立つ時点で、その可能性は極めて低いだろう。
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::| ! /-| | ヽ ヽ ヽ ﾄ､ヽ
::|: ／|. | |. | /ﾊ ', li i ', i
:::!. ／ ! | ,l. |=＝―` | !_ - ￣}i li |. i |
:::|´ i |／ l | .i _.v:イ:.:.:.:./ |. | !. | i|
::::!. ／i.| _.斗- ﾏ￣:.Y´ `くﾊ:.:./ | | i. | |
::::| _ -i|二 -‐七ﾁ`:.:.fﾉ ` く_ .| ! |/
:::::|=＜_:.:.:.:.i|´`:.:.:.´i|:.:.:.／ ノ !|
::::::! ―|――- - ´ r ｲ / だが、CIAじゃなくとも
::::::| > 諜報活動はしている。
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|「その諜報員こそがヌケドナルド・トールマンの私兵集団『黒手組』さ。
| まあ、表向きは兵隊としての色合いが強いな」
|
| やらない夫は、『黒手組』とやらを悪魔狩りだと聞いていた。
| だがエダは彼らを諜報員だという。
|
|「悪魔狩りのついでに諜報活動をしているってことか？」
|「逆だよ、諜報活動の隠れ蓑として悪魔を狩ってる」
|
| 『教会』が……いや、トールマンが諜報活動を行う相手とは誰か。
| それを考えて、やらない夫はすぐに納得した。
|
| なるほど、『血族』と『教会』内部が相手なのか。
| 兄に嫌われるのもよく分かる。監査組織は煙たいものだ。
|
|「『武僧』や『異端審問官』に会ったことはあるか？」
|「ある。アンデルセンさんたちと、モズグスさんたち」
|「なら話は早いな。『黒手組』は奴らみたいな狂信者じゃない」
|
| え？ 『教会』の人間が狂信者とか言っちゃうの？
|
|「そもそも備府、お前『黒手組』の由来を知ってるか？」
|「いや」
|
| やらない夫の返事に、エダは音高く舌を打った。
| それくらい常識だということだろうか。
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・・・今は分からん子の方が多そうだなー
ドナルドもキモイとか言われて仕事ほされ気味らしいし・・・
／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ ●）（●
| （__人__）
. | ﾉ 黙阿弥の黒手組助六くらいしか。
| ∩ ノ ⊃
／ .／ ＿ノ
(. ＼ ／ .／_ノ │
＼ “ ／_＿_| |
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|「は？」
|「歌舞伎の」
|「は？」
|
| 黒手組助六は歌舞伎の演目だ。
| 助六というのは、江戸当時の人気演目で、早い話が粋な江戸っ子で実は義侠の助六が主人公。
|
| そしてその助六にちなんだ弁当が、現在で言う助六寿司。
| 助六の愛人である花魁、揚巻の名前にちなんだとかなんだとか。
|
| 揚巻の好物がお稲荷（性的な意味）だったとか、そういう意味ではけしてないので注意しよう。
|
|「『黒手組』の由来は第一次世界大戦を引き起こしたテロリスト組織だよ。
| さらに由来はイタリアン・マフィア」
|
| やらない夫は眉をひそめた。嫌な所でいやな風に繋がって来た。
| マフィア？ イタリア人とトールマンが繋がっているのは正直困る。
|
|「トールマンの『黒手組』はマフィアの方が由来だな。
| 悪魔を葬る際にトレードマークとして黒い手形のマークを残す。
|
| そして、悪魔関係に手を出した一般人にも同様のマークで脅迫する。
| 都市伝説の類さ」
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／￣￣＼
rヽ ／ ノ ＼ ＼
i ! | （●）（●） |
r;r‐r/ |. | （__人__） |
〈_L (｀ヽ .} | ｀ ⌒´ ﾉ つまり、現在のイタリア人は無関係？
l｀ （ ｀`/ . | }
ヽ l . ヽ }
|,. l /⌒ ー‐ ｨ ヽ
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|「無関係だね。あっちの陰謀はどっちかって言うと『結社』側だ」
|「それは助かる」
|
| しかし、悪魔に関係あるやつに送られる黒い手形のマーク。
| 確かに都市伝説じみていた。
|
| 詳しくはあの紅マグロが良く知っていそうだな、今度尋ねてみよう。
| やらない夫は、件の本人が、100メートルも離れていない孤児院の方にいるなど、露にも思わず考えた。
|
|「だがトールマン弟は、なんでそんな組織を率いてるんだ？」
|
| 表向きは悪魔狩り、本業は諜報。そして、悪魔関係の一般人を脅す。
| やらない夫にはその目的がまったく見えない。
|
|「あの野郎はあの野郎で平和主義者なのさ。すべての戦争は鉄のカーテンの向こうってのが奴の理想。
| 適度な緊張感を保った平和的均衡がお好みっつう、ある意味兄貴以上に面倒な奴だ」
|
| だが、その冷戦のごとき均衡が東京の平和を守ってきた。
| とすると、トールマン弟は現在の状況を、『結社』撃滅作戦を快く思っていないのだろう。
|
| 実際会った時も、文句だらけだった。
| だが、やらない夫は彼から、東京への愛着を感じていた。
|
| トールマン弟は、彼なりの方法でこの町の平和を守っていたのだ。
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//////// .人 | | } j /_/|
,'/////// |ヽ | |/ , ／ | ./.:.:.:.)
|//////{. | | 乂|ﾆ=‐- -' / ／ﾚ'.:.:.／|
|//////|. | |≦ﾍ{ ＿＿_ ノ¨{（:.:.:.:.:／ |/|
|//////|. ﾄ､ |_:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:ﾉ ﾍ ￣ i/|
|//////|. |/,V ‐- ─ ', }/l
|//////ﾊ. |//ﾍ / _ //|
}///////∧ !///ﾍ _＿ -‐''/ ///| で、サーシェスとキンブリーか。
. //////////,V/////ﾍ､ ｀ヽ-‐''~ ////|
//////////////////∧＼ /////|
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|「お願いします」
|
| トールマン弟の私兵。先ほどの話では、スパイでもあるという話だ。
| そして、悪魔狩りを信仰や忠義のためではなく、ビジネスで行っているという噂。
|
|「まず二人とも偽名だ。通り名に近い。経歴は抹消済み。普通に調べたらわからねーわな」
|「『教会』絡みで隠してるなら手も足も出ないな」
|
| 別に、二人の経歴にまでは興味が無い。やらない夫は軽く流したつもりだった。
|
|「『アリー・アル・サーシェス』。イスラエル生まれのアラブ系イスラエル人。
| 年齢は44歳。偽造国籍での結婚歴三回。いずれも相手の家族を利用して、最後はドカン」
|
| だが、エダは淡々と言葉を並べた。
| 普通に調べたら分からないが、エダ様の手にかかれば問題ないということだ。
|
|「八年前まではイスラエルを中心に宗教と社会の敵をやっていた」
|「え？ なにそれ」
|
| それは職業なのだろうか。やらない夫は困惑した。
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ノ : : :__ ﾉ : : /: : : : : : : : : : ,′: : : : : : | : : : :|: : :|/ｲ:／⌒ヾ.: :ヽ : : ヽ : : ヽヽ::',
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|「孤児をマインドコントロールして訓練し、従順な兵士に仕立て上げてテロリストに売ってたのさ」
|
| やらない夫は、聞き間違いであることを祈った。
| しかし、エダは訂正しない。ただ鬼気を放つやらない夫を一瞥するだけ。
|
|「『血族』に四ツ目っているだろ？」
|「うん？ ああ」
|
| 元テロリストという噂の人間だ。やらない夫の知己である。
|
|「一時期はアレと組んで武器商人をしていた。二人とも武器の取り扱いも訓練も上手い。
| 戦術アドバイザーとしても共通してやがる。
|
| まあ、その共通点が摩擦になったらしくて、後々決裂したがな。
| 理由は商売上の考え方の違いだそうだ」
|
| あまり気持ちの良い話ではなさそうだと、やらない夫は思った。
|
|「四ツ目は自分の安全のためなら依頼人も売るタイプだ。
| 対してサーシェスは危機を楽しむスリルシーカー。まあ、喧嘩になるわな」
|
| 思ったより残虐な話では無くてやらない夫は胸をなでおろした。
|
|「ちなみにケンカ別れの後にアレがあった」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ 一）（●）
| （__人__）
| ｀⌒´ﾉ アレ？
| ,.<))／´二⊃
ヽ / ／ '‐､ﾆ⊃
ヽ､ｌ ´ヽ〉
''"::l:::::::/ __人〉
:::::::::|_/ヽ. /|||||ﾞ!:ﾞ､-､_
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:::ｙ′.: ',ゝ､_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
／: :／/: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i::|
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|「『武僧』と四ツ目の衝突だ。知ってるか？」
|「噂だけなら」
|
| そう、噂では聞いたことがあった。
| 四ツ目は『武僧』に部下と仲間を皆殺しにされたと、一人逃れた後に、紆余曲折あって『血族』に流れ着いたとも。
|
|「……まさか？」
|「その直後、サーシェスはトールマンの配下になった。
| だがそれは無いな。サーシェスが四ツ目を売った可能性は低い」
|
| エダは、にやにやと笑いながら首を振る。
| だが、状況はそうにしか見えない。サーシェスは四ツ目にとっての仇なのか？
|
|「サーシェス本人はこう言ってたぜ『オレなら生き残りを出すなんて馬鹿なミスしねェ』。
| そして、四ツ目も同意見らしい。東京に来てから何度か共同戦線を張ってるはずだ」
|
| そう言うタイプか。やらない夫は何となくぼんやりとしたイメージを作った。
| 四ツ目ほど気難しくないが、容赦も慈悲も無いタイプ。
|
|「サーシェスは武器の扱いにも秀でているが格闘戦も悪くない。
| そして何より機に敏く、危険に対する嗅覚が鋭い。その上舌が三枚ある」
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・敵将を発見！！
・マンモスに乗った蛮族王
・交戦状態に入ります
『敵軍』
マンモス王 LV15 投擲 【壮健】ボス
石槍A LV5 並柄 【壮健】
手斧A LV5 投擲 【壮健】
手斧B LV5 投擲 【壮健】
戦太鼓 LV0 特殊 【壮健】
・マンモス王は《ドラゴン》だ！ すべてのダメージは半減する！！
・敵の行軍に合わせて戦太鼓が鳴り響く！
・《鼓舞》によって敵軍の士気が上がった！
(>>484-507)
点穴針「マンモス王を毒にしたアル、手斧が刺さって死亡ネ。
スリング「石槍と手斧Aに命中したよ。
投げ縄「F●CK！！ また外した！
戦斧「あいあい。一網打尽に……してやるのね！ マンモス王以外に命中。
七支刀「マンモス王には命中ですわ。重傷。
『第二軍』
戦斧☆ 長柄 LV02
大威力x1 重鎧 《騎馬》《薙払》《重装》
七支刀 並柄 LV09
中威力x3 軽鎧 《龍殺》《威圧》《出血》
投げ縄 待伏 LV04
転倒x1 素肌 《騎乗》
点穴針 暗殺 LV08 【死亡】
中威力ｘ1 素肌 《毒》《隠密》
スリング LV05
中威力x2 軽鎧 《必中》
『敵軍』
マンモス王 LV15 投擲 【失血死】
石槍A LV5 並柄 【死亡】
手斧A LV5 投擲 【死亡】
手斧B LV5 投擲 【負傷】
戦太鼓 LV0 特殊 【壮健】
・勝利！
・MVP：点穴針
・LVUP：点穴針、戦斧☆
出撃コスト：160
治療コスト：10
／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） |
（__人__） | ..／}
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ 三枚舌か。
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／ 狡猾な詐欺師ってことか？
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
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|「そうだ。極限状況の子供に信仰と優しさと食事と寝床、訓練を与えることで
| 親すら殺す程に仕立て上げる。
|
| 弁が立つし指導者としてのカリスマもある。
| 情報を使って火の無いところに煙を立てるのはお手の物」
|
| やらない夫とは気の合わなさそうな相手である。
|
|「サーシェスのヤバさは、猫を被るのが異常に上手いことにもある。
| 奴はスーツを着るだけでビジネスマンになるし、ネクタイを取るだけでナンパ男に変身する。
|
| しかも恐ろしいことに、身のこなしや呼吸、姿勢まで変える。
| サーシェスは凄腕の暗殺者でもある。気配を消すのも上手いが、一般人のフリが異様に上手いんだよ」
|
| エダの話しぶりからは、サーシェスへの嫌悪感が溢れていた。
| その変身能力を使って人をたぶらかすのが、サーシェスのやり方なのだろう。
|
| そう、『黒手組』は一般人を強迫すると言っていた。
| 極めて役立つ能力だろう。
|
|「異能じゃないのか？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. , ':i:i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii|i|i|:i:i:i:i:i|′ {|ｉ|i { ￣
, ':i:i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii|i|i|i|:i:i:i| _ ＿!|ｉi ', ああ、サーシェスは異能を持たない。
. /i|i|i|i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii|i|i|i|i|i|i| `７￣|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|j '， 信仰も無い。
. /i|i|i|i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii|i|i|i|i|i|､＼_/ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|i| '， .
/i|i|i|i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii|i|i|i|i|i. ＼ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|| ' V ただのヒトだ。
. /i|i|i|i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii|i|i|i| ＼ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ| V
/i|i|i|i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii:i:i:i:i:i:i:i:i|i|iヽ ヽｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|| '， .
|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i|i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii| | |i|i|ｉ|ｉ|i|ヽ_∧ .
|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ii| | ; }i|i|ｉｉ||| / ∧ '，
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| やらない夫は神妙に頷いた。
| 他の『血族』や『教会』のエージェントが聞けば、それは侮りを産む言葉だろう。
|
| だが、やらない夫は違った。
| やらない夫は異能を持たない凡人で、そしてわずかな幸運と、ニャンコ先生の庇護で生き延びて来ている。
|
| だがサーシェスは違う。実力で、人間としてのスペックだけで、この世界を渡り歩いてきたというのだ。
|
|「厄介だな」
|「悪魔相手より対人戦が得意な奴さ。
| 一切の異能は持たないが、奴は呪具を使うぜ」
|
| マジックアイテム的なアレだろう。やらない夫も『血族』の呪符を何枚か持っていた。
| 治癒と、防御。攻撃用の符はニャンコ先生がいるから必要を感じていない。
|
| 先月の戦いでは、やる夫が購入した呪符を駆使し、『万魔』の下僕と闘っていた。
| やらない夫も、実力が足りないからもっと道具に頼りたいのではあるが、
| 性格的に符で攻撃するよりもひげ槍で殴る方が向いていた。
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/ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉﾄ､
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{ｉ|ｉ| |¨/ヽ ／¨｀¨ヽ.|ｉ|ｉ|
|ｉ|ｉ|_j_{ ヽﾊ ＼ｉ|ｉ
ji込､＿Y__Y´二} i }ｉ|ｉ| 次はキンブリーか。
/ｉ|ｉ|ｉ|! ﾉ_ ノｲ} | ハｉ| ……『キンブリー』で進めるぜ？
, 'ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|〕､ ー ‐ .／从/ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|
,ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|┼`ｰ‐＜ └┬ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ
,ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|! ヽ } .! |ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ
,ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ ＼ { } i|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ
,ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ| ＼ } ,' |ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ
,ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ ＼ / i|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ
,ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ! V |ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ
,ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ| ┼ i|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|}
. ,ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ| | .|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|以
/ ＼ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|≧=‐- __ -‐=≦ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|／ ヽ
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/ 〈 ￣￣￣ヽｉ|ｉ|ｉ|ｉ| {ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|}¨ .{ ,'
{ ＼ ￣¨ }ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|ｉ|{ ,' /
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| エダの言い方に引っ掛かるものを感じて、やらない夫は首をかしげた。
| 偽名だと言っていたが、キンブリーという名前に何かいわくがあるのだろうか。
|
|「ゾルフ・Ｊ・キンブリー。本名はリュウセイ・ノワキ。日本人38歳独身」
|
| 日本人。やらない夫はそれには驚きだった。
| いや、日本人でも信仰厚い人間はいる。『教会』に所属していてもおかしくはない。
|
|「六年前までは『血族』所属。戦闘中に一般人被害を顧みずに行動した結果、破門になった」
|
| 破門された元『血族』。
| やらない夫はエダの最初の発言の意味を理解した。
|
| なるほど、キンブリーは『黒手組』としての名前なのだ。
|
|「『狂死』を知ってるか？」
|「ああ、前『四天王』の」
|
| 『狂死』という通り名の達人的サマナー。正確に難あり。
| 親しい相手ではないが、その実力で『血族』内部で有名だ。
|
|「ドルキは？」
|「班長の」
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,,ﾍ,
__,,,;;;;ﾞ¨/¨¨￣¨¨i::ヽ,
／/ ｜ ／￣ ﾞ;::::ﾍ,
, ′/. /／-=示ｱ ヾ:::ﾍ,
/ {￣歹}/ ヾ:::i
/ ヾ ,ｲ .!/¨`，
/. |／ ヾ::. ζ/
∧ , -一ー‐‐-‐′ ／
/ ， ′ ,’ト､
ﾞ, / {::::::`，
λ ／ |彡¨
，-‐＝≡三二=≧､_＿ ,,;;≦//.斥￣￣＼
／;;;;旡三≡イ 〃∨/////// || || |
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/／ ＿ ，-‐==ゝ＝ヘ ∨//. || ゞｰ=＝彡 ’￣￣＼
,厶ヒ¨ / ¨¨フ _＿厶マ´ ＼
／ｉ / ＼／ ＼＼ i. ハ
. / |. / て二孑￣￣￣｀) ＼＼. i. / ヽ
/ { / 厶-‐¨￣ ｰ＜￣￣￣`ｰxｉ_| ｉ / ∧
､ヘ, ﾍ /_，,-＜￣ } ヽ ￣￣¨＼. /. ＼
/ ーλ ／ }´ ヽ,, ,, γ⌒’， ﾍ γ⌒ヽ Ⅹ Tー-fマ¨~` ﾍ
＿,斗‐=＝=‐- ／ | ｀ｰ- ´ λ ◎ } {｀ { ▽ } ､ λ `| | | ｀ヽ, ﾍ
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|「どっちもキンブリーの兄弟弟子だよ。『鴉』は……知らねえか」
|「『鴉』？」
|
| 聞き覚えのない名前だ。やらない夫は首をかしげた。
| エダは小さく嘆息した。説明してくれるのだろう。
|
|「『血族』の前世代の術師だよ。爆弾使いの『鴉』。上杉謙信の先代『四天王』だ。
| すさまじい戦闘能力を持っていたが、頭の中身もイカレてた」
|
| 戦闘中の相手に執着し、髪の手入れを心配したりする変態であった。
| 俗に言う「トリートメントはしているか」発言である。
|
|「ついでに言うと、『鴉』の秘術はイカレてる奴ほど強いという持論でな、
| 『狂死』もドルキも、キンブリーも三人とも負けず劣らずのイカレポンチだろ？」
|
|「『狂死』さんは常識的だろ？」
|「あいつ、殺した女の手を持ち帰って恋人ごっこする変態だぞ」
|「知りたくなかった……」
|
| がっかりするやらない夫に、エダは左手を差し出した。
|
|「なんだ？」
|「『鴉』の料金、10万でいいや」
|「金取るのかよ！！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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. ／////// { { | |-‐ミﾉ } }/|
//////// .人 | | } j /_/|
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|//////{. | | 乂|ﾆ=‐- -' / ／ﾚ'.:.:.／|
|//////|. | |≦ﾍ{ ＿＿_ ノ¨{（:.:.:.:.:／ |/|
|//////|. ﾄ､ |_:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:ﾉ ﾍ ￣ i/|
|//////|. |/,V ‐- ─ ', }/l
|//////ﾊ. |//ﾍ / _ //|
}///////∧ !///ﾍ _＿ -‐''/ ///| バーカ。
. //////////,V/////ﾍ､ ｀ヽ-‐''~ ////| あたしに追加情報を尋ねる時点で、
//////////////////∧＼ /////| そうなるのは当たり前だろ？
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| やらない夫は先ほどの証文にハンコを押し、100万の部分を110万に訂正した。
|
|「『鴉』の弟子どもに共通した点として、爆破に美学を求めている。
| キンブリーもそうだ。一見礼儀正しい紳士だが、中身はマジキチ。
|
| 奴の厄介な所は、自分が異常者であることを自覚していて、
| その上でその異常を楽しんでやがる事だ」
|
| サーシェスもキンブリーも、大変面倒くさい相手なのは分かった。
| やらない夫は、この頭のおかしい異常者は、悪魔狩りたちとの会見が大変憂鬱になった。
|
| 外から見れば五十歩百歩なのだが、本人の中では違うのだ。
| 明らかに気が違っていて、そしてそれを自覚しているという点でも、やらない夫は彼らと同類であった。
|
|「大体こんな感じだな……つーか、遅えな」
|
| 壁に掛けられた年代物の時計は、すでに約束の時間を五分ほど過ぎていた。
| 三十分前に来たやらない夫は、へりくだった態度だからまだいい。
|
| しかし、トールマンに呼び出されたはずのサーシェスとキンブリーが遅いのはおかしかろう。
| やらない夫は嫌な予感に眉をひそめた。
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>>457
正確に難→性格に難
.,ィ:i:i:i:i:i:i:i:l:x､、
／:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i＞．.
／:i:i:i:i:i:＞ "´￣￣￣｀ヾ＞"´￣｀ヽ
／:i:i:i:i:i／ ／／≪´￣｀ヽ Ｙ
/:i:i:i:i:i:i:ｉ| __,,xイ＼ /／イ￣ミヽ ﾍ!
从:i:i:i:i:i:i:|,ｘｨ//// :/｀ヾV⌒｀ヾﾊ ヽﾊ j
|:i:i:i:i:i:i:ｉ:ｉ//////i / ___ﾘ Ⅵ:| |
|:i:i:i:i:i:i:i///// ハ:i _｝ j´ ＿ヽﾊ小!
i:i:i:i:i:i:iﾊｨ! !|廾ー辷彡ﾍ. /ﾑｱ:.://ｲiﾉ ……遅えな。
i:i:i:i:i:ｉ/ //ﾊ!从ィ代ｱ:.:.:.八ヽ:.:.:.:イメｊ}
i:i:i:i:i:〈 l { ハｊ八.:.:.:.:.:／ ヽ 八!|
i:i:i:i:i:ｉ∧j Ｋ くミヽ `" ∧i:!| ,- 、
,i:i:i:i:i:i:i:i∧j ヽ ヾﾉﾉ ∠ _ア ∧r:､У ﾉ}
_,､イ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ヽ ＼ " ∧ Yヾｰく ム-､
rf壬:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i＼ ` ､、__ ｲ | ｝ Y ＼二ヽ
i:i:i＞'"´ ｀`'＜:i:i:i:i:ト 八ﾍ| / .::| ｛ ｊ へ＼丿ヽ
／:i:/ `Y/ // .:|: / .:| ヽ / / ヽ;;)ゝ丿
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| さらに十分が経過した。タバコをふかしていたエダも、腕時計を一瞥する。
|
|「奴らはクズだがプロだ。交渉の手段として遅れることはあるが」
|
| 交渉の手段。やらない夫は首を振った。
| 正直に言って好ましい方法ではない。しかし、はじめて会う相手だ。
|
| やらない夫はトールマン弟がどのような方法で二人の悪魔狩りを呼び出したかを知らない。
| 合う相手が『血族』であると伝えたかも定かではない。
|
| しかし、『聖アンジェラ教会』は彼らにとっては仕事で使う場所。いわばホームだ。
| 『血族』から見ればアウェイ。実際やらない夫も少なからず居心地の悪さを覚えていた。
|
|「なるほど、オレを焦らして優位に立とうという腹か。納得いくな」
|「どーすんのさ」
|
| やらない夫は逡巡した。しかしまあ、時間はある。
|
|「あと十五分ほど待って、来ないようならトールマンに連絡するさ。ありがとうエダさん」
|「何がだよ」
|
| やらない夫は苦笑した。
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼ ,.:┐
.（ ●）（ ●） ..| ／ ｜
（__人__） .|./ / 見張りが必要ならともかく、
i⌒ ´ .r－､ |/ ／ そうでないなら勝手に待ってるから
{ ヽ, ',. .,/ :/', 放っておいてくれて構わない。
.ヽ .| l_/_, -‐､',
.ヽ . | / , -－'i|
/ { V , -－ﾍ
| ヽ Ｌ| r= |
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|「オーケー、じゃあ、頑張りな」
|
| 言いながら、エダは部屋を後にした。
| やらない夫の目には、彼女は極めて抜け目ない人物に移っていた。
|
| その眼前で、心の中に問いかけるのはよくないという判断だった。
| 十五分。やらない夫はその間に考えをまとめるつもりだった。
|
| 相談相手はニャンコ先生たちだ。
| 外に置いてこないで本当に良かった。
|
|「というわけなんだよ」
|『楽しそうな連中じゃな』
|
| ニャンコ先生の感想は意外なものだった。
| もっと常識的な批判が来ると、やらない夫は思っていたのだ。
|
|『特にキンブリーには興味がある。わしは信念を持つ者を好む』
|「ああなるほど」
|
| 得心行った。一途な、狂気にも似た感情をニャンコ先生は尊ぶ。
| やらない夫との関係もその類だ。やらない夫の狂気に、ニャンコ先生が興味を抱いた。
|
|『しかし、性格を想像するに、彼らはニャルラトホテプに協力してもおかしくはなさそうですね』
|『どうだろーな』
|
| 墨目の言葉に疑問を投げかけたのはねずみ男だ。
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／ ￣￣￣＞
//ニヽ/ニヽ ヽ
. // / ･| |･ヽ | |
＼ {___/ ヽ__} ／
ニ ¨ ニ
／ ＼ 『ニャルラトホテプって奴は、
// | | 相手を精神操作でたぶらかすんだろ？』
. / ! | | ＼
| | └rｪｪ――:､ / }
＼＼ . └―――' / ／
/ ` ―――― ' /
. / ＼
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|「そうみたいだな」
|
| やらない夫は今までの被害者たちを思い出していた。
| 華琳への思慕を利用された屈木頑之助。
|
| 悪魔的ロックバンド『ロード・エルリック』は、なぜニャルラトホテプに靡いたのだろうか。
| 『異端審問官』達は、己の信仰に疑問を持ち、絶望していた。
|
| そして次々に死ぬ仲間たちを助けたいならと、ニャルラトホテプは蒼星石に囁き。
| 最愛の娘の魂を救いたいのならと、麻呂にも交渉を持ちかけた。
|
| ニャルラトホテプは、心の闇に巧みに囁きそれを暴く。
|
|『キンブリーはよく分からんが、サーシェスはビジネスで動いてるんだろ？』
|
| ビジネスライクな人間は、ニャルラトホテプの誘惑に乗らないのではなかろうか。
| それがねずみ男の考えである。
|
|『キンブリーは乗りそうじゃな。狂気の美学を有するなら』
|『いいえ、私はサーシェスこそ乗るのではないかと考えます』
|
| しかし墨目は、自分の考えを曲げなかった。
| そこには、何らかの確信があるのだ。
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ｒ=ｭ､_ -ー＝ﾆ´ ＿ ﾉ
_ゝ´彡z ＿≧､＿ 彡´
人_イ´ ｰ仆芯)ヽミー=-'
ｒﾉ^~ヽｧ､ {ア≧ーミｰゞﾆﾆﾆ》_)ノ´ ￣ ｀ヽ
ﾏ､ ヾ｡ ﾏｰﾆ三ー ァ´⌒ミー≦＝ｭ､_ｨ ／:7
ヾｭ ｒ≦＞ミｭ､ｪィ三ｒイ⌒ヽ＿＼≧ｭ＿ノ7ー. . イ: : :オ
Y{ 7≧ｭ､＿: : : : : : :ﾑｰイ:{ _ﾌ: ー＝彡: : -､:＿／
ｒﾘ ｲニニｊ￣ヾ マ､＿シ⌒ヾ:_￣´⌒＞､ 『サーシェスは思想を持たぬテロリスト。
xｿ´ ｲニニK_ ヽ ﾏー-ｭ､ ｀ヽ ｀ マー': :／ 戦争狂いの類なのでしょう。
ｒｲ´ ムイ⌒ヽｱ ムｊ_ﾉ ニニﾑ :. ｊXﾊ｀ T≧ｭーｧ＿
/{ ｚy/ )ｧ⌒ﾏニニニニニﾆゝ､ jイX7‐┴'⌒マ/ｊ､ ￣ヽ ならば、彼らは身に秘めた衝動を
{ｲ ､ ﾏ!v′ / Vニニ≧ｭニニﾆノﾆ_ノ ⌒ｰュ_ｦ 宥めるためにビジネスにしているにすぎません』
ﾏ､ ﾏ{ ｰｙ ゞ,ニニィ￣ ´￣｀{ _ztzｭ､
Yｭ ﾏ/⌒! └!ﾆ{´ ｀､__ｒ {! ｀ヾ7ftfttj7tjftｭ､_ノ
｀(ﾒ, Yｱｭ{ ｊニヽ ;: ﾏォー-ｚｭ､
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|『彼らは本当は、世界を滅ぼしてしまいたいのです』
|
| 墨目らしくない物騒な断言。
| やらない夫は心中で首をかしげた。
|
| やらない夫の知る墨目は食べることが好きで、創造力が豊かで、芸術を愛する。
| 上品で礼儀正しく、忠義に厚く、意外と欲張り。
|
| 寝るのと食べるのが好きなお嬢さんだ。
|
|「見てきたように言うな」
|『経験則です……最近稀に、昔のことを思い出しまして』
|
| 墨目の口調に、自嘲じみたものだ浮かんだ。
| なるほど、とやらない夫はわずかに頷いた。
|
| 『十二の封印像』の『貪獣』として封印される前の墨目について、やらない夫は詳しく知らない。
| 聞いているのは概要ぐらい。
|
| そう、『鼠を媒介に呼ばれ、すべてを食いつくす病の化身として世に放たれたということ』。
|
|「言いたくないなら言わなくてもいいんだぜ？」
|『そうですか？』
|『聞きたいなら聞きたいって言えよ、スカしやがって』
|
| ねずみ男の悪態に、やらない夫は失笑した。
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ ●）（●
| （__人__）
. | ﾉ 興味はある。
| ∩ ノ ⊃ でも、嫌なこと無理矢理ってのは趣味じゃない。
／ .／ ＿ノ
(. ＼ ／ .／_ノ │
＼ “ ／_＿_| |
. ＼／ ＿＿＿ /
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|『いい人ぶってんな』
|『というか、そのせいで翠星石がやきもきしとるって知らんのじゃろうな』
|
|『ですよね。朴念仁すぎて。たまには男らしくリードされた方が』
|『あ？ お前リードしてほしいのかよ？』
|
|『よらないでください。実は私綺麗好きなんです』
|
| ギャーギャーとわめく使い魔たち。
| やらない夫はちょっとだけ自分の行動を顧みた。
|
| たしかに、朴念仁であった気もする。
| やらない夫は小さく嘆息した。自分の意思か。リードか。難しいな。
|
|「難しいぞ」
|『例えば、帰ったら自分から手を握って抱き寄せてみい』
|
|「えー？ 汗臭いって嫌がられるぞ」
|『でも口だけで抵抗しませんよ、絶対！ キャー！』
|
| 最近墨目の女子度が上がってきている気がする。
| やらない夫は苦笑した。
|
|『さっき言った人は、世界を憎んで、国を憎んで、自分を生贄にして私を呼んだのです。
| 尼寺に監禁された貴人の娘……不義の子だったのですよ』
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＿＿
／ ￣-―- ｀ヽ
/ ／´
/ /ィ三￣≧－-
{ ﾚ´ｒｚ≦ニーミヽ
＿ゝ-ｭ､ ´￣⌒ヽ､
z'-ィ≦ヾ/ム ー､ヾ ＼
,,ィ≦ニ=‐´￣ ﾏ/ﾑ ﾊ ヽ､＿
r'/////ム 彳⌒ﾐｧ/ﾑ ヽ ＼
|///////ﾑ ゞ‐ ｨ＾!//}⌒ ￣ｱ､
∨///////ヽ. ´ ｊト/ｊ ｒ了 / 『皇族で、尼寺に監禁されたその娘は、
｀マ///////ﾊ ｒ-〈 ﾉ' ﾊ￣ ヽ 同様に送られてくる
｀ー＝ニ彡7Y { ＼ ＼ 行く当てのない娘たちを利用しました』
ｒ'ｰ≧=､ ヽ. / ｲ } ヽ ヾ､
/´ ,ィ､} レ'ﾍ_八 〉. ﾊゝ､
,,ィヾｭ.＿＿ ﾏ/≧ｭ ィ }ｌ ハ_ j,,ィ
ｒ=＜ ノ≦=////r'/////77ｭ_､ﾘz≦/////
,人 ７´////////人////////////／////
__/´ヾ＼{///////／ ヾ＿＿///ィﾍ´⌒､///
.ｒｱ､ ＼ゞ////// , ア>､ ﾒ X ハ//
,ﾉ7 ＞=≦7个/､//7 / ｨﾍ∧ X ｲ ﾒ l}ﾏ
ﾏ⌒ヽ イ }/////ﾑ { , ィ´＞´ Y ｀メ. ﾉ!ｆｶ
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| 墨目は静かに、何でも無いことのように言う。
| その声色に浮かぶのは哀れみか。
|
|『彼女らを利用して、利用して、位の高い男どもを脅迫し、
| いつしか宮廷を影から支配してやろうともくろんでいたのでしょうね』
|
| だが失敗した。
| やらない夫の頭の中で、顔の無い少女の尼が自嘲の笑みを浮かべた。
|
|『利権の関係で、そうそう暗殺するのも難しそうじゃな』
|『ですから、ならず者を使ったのですよ』
|
| ニャンコ先生の言葉に、墨目は苦笑した。
| 政治的に守られている、手出しの出来ないはずの場所からの一方的な攻撃に対し、
| 貴人たちは大掛かりな手段に出たのだ。
|
| 表立って手出しができないのなら、誰とも関係の無いものたちが襲えばいい。
| 利害や、血縁とは無関係な、ただの野盗の集団。
|
|『たった一人逃げ延びた女は、憎悪の果てに魔術を使った。
| 魔術そのものは、それまでの生活の中で知りえたものだったのですが、
|
| それを本当の意味で行使した』
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／＼
/:入ヘ.丶、
.|/,-.、,-＼∨／ 『そして生まれたのがアンタか。
/||／| |＼|:＼ヽ∠ するってーと、アンタのその人格は
＿ / | `-', ,.￣ 彡|:＼ その尼さんが元になってんのかい？』
─.|-.|ミ ;＼ヽ,
／|:.| | .|:/ヽ
/ ; ヽ、 ／￣）/ ./＼
＼ヽ、 Y￣ /;ヽ/:/ , .＼
（ ￣ /|: /:/ |／ ..|
く ／ ;/ |:/:/ / >
＼ ／ ./ / ヽ
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|『そうなりますわね。名前も知らぬ召喚主は、ただひたすらに飢えておりました。
| 尼寺には何もなかったのです。娯楽も、満足な食事も。
|
| 押しつけられた信仰は苦痛にすぎず、しかし他に熱中できるものも無い。
| 何もかもに飢えていて、ただその無聊を慰めるために宮廷に混乱を投げ込んでいました』
|
| やらない夫の理解の外に、その女はいた。
| 自分の本来のやりたいことが出来ない、心の中に閉じ込めたものがある。
|
| そこまでは分かる、分かるが。
| 何故、他人の迷惑になるような行為で己を慰めるのだ？
|
|『出来たからじゃろ』
|『すくわれねーなー』
|
| だが、ニャンコ先生とねずみ男はその女に理解を示した。
| 可能だったから、飢えを満たすことができるなら、やってみようと思ったのだ。
|
|「そして最後は世界を滅ぼす悪魔を呼んだのか……墨目って悪魔だったんだな」
|『なんだと思ってたんですか？』
|
|「女の子」
|『……はぁ？』
|
| 心底呆れたような声がした。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／￣￣＼
rヽ ／ ノ ＼ ＼
i ! | （●）（●） | 甘いものが好きで、
r;r‐r/ |. | （__人__） | 音楽や絵画、詩歌が好きで、
〈_L (｀ヽ .} | ｀ ⌒´ ﾉ 実はファッションにも興味があって、
l｀ （ ｀`/ . | } 案外おしとやか。
ヽ l . ヽ }
|,. l /⌒ ー‐ ｨ ヽ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|『どどどど、どーしてそんなに分析してるんですか！？』
|「翠星石のデートを楽しんでるだろ？」
|
| 食事に行き、買い物に行き、翠星石の一人ファッションショーを眺め、
| 映画やカラオケに行き、おやつを食べる。
|
| そのすべてが、墨目にとっては喜びであるとやらない夫は知っていた。
|
|『わしは家で本を読んでいたい』
|『うまい儲け話が無いかとブラついたりの方がいいな』
|
| 他の二人のあまりにも『らしい』言葉に、やらない夫は口元を綻ばせた。
|
|「とりあえず、墨目の見立てではサーシェスはその尼さんと同じタイプなんだろ？」
|『はい』
|
| なら、気をつけねばなるまい。
| やらない夫はそう考えながら時計を見た。
|
| あれから十分たっていた。連絡はない。来る気配も無い。
| 巌流島の武蔵作戦か、あるいは別の何らかの事故でもあったのか。
|
| 事故か事件の場合、厄介なことになるとやらない夫は考えていた。
| 『教会』の悪魔狩りが来れなくなるほどの『事故や事件』。
|
| つまり、最高あるいは最悪のパターン。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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{ '､: : ＜＞､ ＞:.:.:.:.:} /
〃､ ＼: : : : :.:.:.:.:.:.:.／ / 『逃げたか』
/､` ／丁:::ｧ、 ￣￣￣￣ /
Y ￣⌒'ヽ ヽ ,.-‐r::.x、_,. {
{ 二 ､, -‐┴-'､ヽ ﾆ |¨:.:.、
, ‘-‐'^ヽ._) ｰ‐ j:.:.:.:..＼
∧ ￣ 八:.:.:.:.:.:.＼
/. : ＼ ,〃.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
,′ {:ﾐx、 _..x<:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Y
｛ ＼:::三ﾆｧ=‐r-----‐=彡'′ ＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
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|「かもな」
|
| サーシェスとキンブリーが、何かを察してやらない夫との接触を避けた可能性がある。
|
|『逃げたとしたら厄介じゃな』
|「なんでだ？ 指名手配すりゃイイだけだろ？」
|『そう簡単じゃあないぜ？ 悪魔狩りはトールマン弟の部下だろ？』
|
| トールマン弟は体面を守るために、サーシェスとキンブリーの件を極力内密に終わらせたがるだろう。
| その場合、やらない夫たちは高い確率で駆り出される。
|
|『表ざたにされても厄介でしょうね』
|
| その場合、やらない夫と懇意のトールマン弟の権威が失墜する。
| 兄に嫌われているのなら、より一層のことであろう。
|
| トールマン弟が『血族』に友好的である以上、彼に消えてもらっては困る。
| ただでさえ、『十字軍』だなんだと現在の東京は物騒なのだ。
|
| それにトールマン弟がいなくなってしまうと、『九鬼』との約束も守れなくなるだろう。
| 『結社』との争いが泥沼になった場合、最も被害を受けるのは一般市民のはずだ。
|
| それだけは避けねばなるまい。
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―― ､
／ 〉 ´ ＼
／ ／' __ ノ ゝ.__ ヽ
/ /／〉 ( ー) (ー ) ｌ
ｌ ´ イｌ (___人___) ｌ
. ｌ ｉYｌ ｀ ⌒ ´ ｌ ……時間だな。
. / ﾊ !.! !
. / / ' ヽ /
ｌ ／/ ､ゝ ／ ヽ_
´｀ ー‐ '｀./ ｀ー､ ,－´ / ＼
. ｉ ｉｉ / ｀:.ｉ ｉ´ヽ. / ｀ ､
. , 'ｌ ｌ.! / ｌ ! ﾊ / ＼
/ ,:| | ヽ/ !＿' V , , ヽ
. / / ｌ | /:.:.:.:ヽ / / ／ ｉ
. !/ ! ｌ＼. ｉ:.:.:.:.:.:.ｉ ／ / / ｌ
/ ! ヽ. !:.:.:.:.:. ! ´ ! / !
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| やらない夫は時計を確認し、小さく嘆息した。
| トールマン弟に連絡をしなければ。最悪の可能性を考えて。
|
| もしも、何の問題も無ければ、渋滞などの交通機関の不具合で済めばいい。
| やらない夫は蒼星石とは違う、常に楽観的な考えも同時に保てた。
|
|「いつもお世話になっております。やらない夫です」
|『ランランルー♪ オレは忙しいんだよ』
|
| 不機嫌な声。だが、やらない夫はトールマンの状況に注意を払わなかった。
| 少なくとも、電話には出れるのだろう？
|
|「サーシェスとキンブリーが来ない」
|『……30分か』
|
| 時計を確認したのだろう。わずかな間の後、トールマンは小さく舌を打った。
|
|『一時間待て。マックデリバリーで素敵なバラエティセットをお届けするぜ。
| ……もしも捕まらない場合は、後の処理はこちらでやる』
|
|「おねがいします」
|
| トールマンはピエロだ。だが同時にキレ者でもあるのだろう。
| 電話は切れた。やらない夫は手持無沙汰の一時間を過ごさねばならなくなった。
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＿⊂三ニニ⊃＿＿_＿ ウーーーーーーーーーーー！！！！
, -'＿＿＿＿ ,-'＿＿ ''-,,
／_,,''⌒'',,. ７/''⌒'',,_.i;|;i￣"''ヽ,ヽ,
／ （・∀・) ） .//￣,_√）|;|;| |ヽ,ヽ,
[／＿_⊆⊇_ヽ__）_/[;;;]y＿つ_|;|;|.＿＿.|__ヽ, ''―-,,,
_,,,.-'￣'￣'￣'￣/;,,.-―''''"_ |＿＿警_=.|視＿庁__=_|＿＿_|]
._/二ゝo=*=o/二ソ;;/⌒ヽ ;;;;;; |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; |;;;;;;;;;;;;;;;;/⌒ヽ;;;;;;;;;;;;〕
ヽロ＝[ニ]＝ロヽ....,ii:: ０ i| ;;;;;;_|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; |;;;;;;;;;;;;;;;ii:: ０ i|;;;;;;;;;;ノ ≡3
￣ゞ;三ノ￣￣￣ゞ___ノ￣￣￣ゞ;三ノ￣￣￣￣ゞ___ノ
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| 10月×日昼ごろ、渋谷区にある公園で男性が刺されたという110番通報があった。
| 警察が駆けつけたところ、男性はすでに死亡していた。他にけが人はいなかった。
|
| 警察によると、被害者は持ち物から都内在住の会社員、野分龍生氏（38）と見られるとのこと。
| 野分氏は頸部をナイフのような鋭利な刃物で刺されたらしく、即死だった。
|
| 白昼であったが、公園内のことで目撃者はおらず、凶器も発見されていない。
| 争った跡が無いため、顔見知りの犯行として捜査は進められている。
|
| 警察は凶器を鋭いナイフのようなものであると発表、
| 目撃者と事件の経緯を調べている。
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ 一）（●）
| （__人__）
| ｀⌒´ﾉ
| ,.<))／´二⊃ これだけか。
ヽ / ／ '‐､ﾆ⊃
ヽ､ｌ ´ヽ〉
''"::l:::::::/ __人〉
:::::::::|_/ヽ. /|||||ﾞ!:ﾞ､-､_
:::::::/´∨/`ｰ'〉ﾞ||i l＼>::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.: ',ゝ､_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
／: :／/: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i::|
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| それだけの記事であった。
|
| あのあと、5分で電話が返って来た。
| 苦り切った声のヌケドナルド・トールマンは事の次第を端的に述べた。
|
|『サーシェスがキンブリーを殺して逃げやがった』
|
| きっかけはやらない夫の訪問である。
| そこから判断できることはいくつかあるが、残念なことがひとつ。
|
| サーシェスがやらない夫と会いたくなかったのは確実だが、理由までは判別がつかないことだ。
| サーシェスがニャルラトホテプの協力者だった場合、話は簡単になる。
|
| 彼を探して殺せば、ニャルラトホテプ復帰が一歩遠のくのだ。
| そして同時に、今まで何の成果もあげていなかったやらない夫の探索行に、ようやくの区切りができる。
|
| そもそも、現状までのやらない夫は遊んでいるのと変わりがない。
| 何の成果もあげていない。それでは部下となる班員たちに申し訳が無い。
|
| だが。サーシェスがニャルラトホテプに関係していたならば、誰もが認めざるを得ない。
| 結果を出し、大手を振れる。
|
| 逆にいえばやらない夫は現在、肩身の狭さを感じているのだ。
| まだ何も成せていない。なのに、麻呂に指導を受け、部下を貰った。
|
| やらない夫自身はどうでもいいのだが、麻呂と皆に申し訳ない。
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／ _ノ ⌒ ＼
| （ ●） （●） |
. | （__人__） |
| ｀ ⌒´ |
_入 | }人
, イ / ヽ } l＼
／ | |ヽ ノ! | ヽ.
| ヽ、 | .V::::` ー ':::::.;. | ∧
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/ ____ | ＼_／ r/ ∧
. 〈ィ´ ｀ヽ｣j ｢ {以イ´￣｀ヽ、
r' ｀¨￢-､_ | r‐‐-ｨﾁ´ 〉
｀ゝｭ,,＿_ ｀¨亠'"´￣￣ﾍ __,ｨ=≦ヽ
f´ i . . .:｀寸=ー----ｭ､,_＿_ ,、 , , 〉ｬ'´／.: : : i ',
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| やらない夫は待ちぼうけから解放され、『血族』での通常業務に戻った。
| そして追加情報を待った。
|
| だが、連絡はなく、やらない夫がサーシェスとキンブリーについてを知ったのは翌朝のことだった。
|
|「やらない夫、ニュースになっておるぞ」
|
| 朝食や身支度をしている間、ニャンコ先生はスマートフォンを操作し放題なのだ。
| そして彼は朝から日経新聞を読み、２ちゃんねるまとめサイトを渡り歩く。
|
| その流れでニャンコ先生が見つけたのが、先ほどの情報だった。
| キンブリーは死んだ。殺された。そして、犯人は逃亡中だ。
|
|「そもそも、ニュースになってるってヤバくないか？」
|「じゃろうな」
|
| トールマンとしては事件を隠蔽したいはずだ。秘密裏に解決したいはずだ。
| だが、警察沙汰になり、一般ニュースで報道されている。
|
| これは大きな問題だ。
|
|「やっぱりサーシェス本人の通報かな」
|「可能性は高いですね。しかし、警察で情報が無いからと言って『教会』でもそうとは限りませんよ」
|
| やらない夫は頷いた。すでに解決している可能性もある。
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三|三
イ `＜ ,.．-──- ､ _|＿
￣ ／. : : : : : : : : : ＼ |＿ ヽ
∧ /.: : : : : : : : : : : : : : ヽ （j ）
/ ＼ ,!::: : : :,-…-…-ミ: : : : :',
{:: : : : :i '⌒' '⌒' i: : : : :} _ヽ＿∠
└┼┘ {:: : : : | ｪｪ ｪｪ |: : : : :} ｌニl ｌ ｜
. |＿|＿| , ､ { : : : :| ,.、 |:: : : :;! l─| l 亅
_＿ ヽ ヽ. _ .ヾ: :: :i r‐-ﾆ-┐ | : : :ﾉ _
／ } >'´.-!、 ゞイ! ヽ 二ﾞノ ｲゞ‐′ l ｀ヽ 『ああ、通報者はサーシェス本人。
´⌒) | －! ＼` ｰ一'´丿 ＼ l/⌒ヽ しかも足取りが掴めねえ。
-' ﾉ ,二!＼ ＼___／ /｀丶､ _ノ
/＼ ／ ＼ /~ﾄ､ ／ l ＼ なんか分かったら教えろ』
/ 、 ｀ソ! ＼/l::::|ハ／ l-7 _ヽ
/＼ ,へi ⊂ﾆ''ー-ゝ_`ヽ、 |_厂 _ﾞ:、
∧ ￣ ,ﾄ｜ >‐-￣｀ ＼. | .r'´ ヽ、
,ﾍ ＼_,. ' | | 丁二＿ 7＼､|ｲ _／￣ ＼
i ＼ ハ∟ |::::|`''ｰ-､,_/ /＼＿ _／⌒ヽ
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| トールマン弟は、受話器越しでも分かるほどに不機嫌だった。
| さもありなん。彼は今や土壇場である。
|
|「サーシェスは、ニャルラトホテプ関係者だろうか？」
|『バーカ、そうに決まってるだろ？ もう、奴は見つけ次第殺すよう『教会』と『血族』で手配済みだ』
|
| まだ証拠はない。やらない夫も確認していない。
| そう言おうとして、やらない夫は口を噤んだ。
|
| 『そうに決まっている』のだ。
|
|「そうだな」
|『他に用が無いなら切るぜ。ワンミニッツチャレンジ中だ』
|
| 乱暴に切られる電話。やらない夫は腑に落ちない部分を飲み込んだ。
| 『そうに決まっている』。トールマン弟の立場上、それしかない。
|
| 状況証拠しか残っていないが、それが最善手なのであろう。
| サーシェスとニャルラトホテプにすべての咎を負わせる。
|
| でなければヌケドは責任を問われる、それはやらない夫としても避けねばならない。
| その上、やらない夫自身も求めていた結果を出すことができる。
|
| 歓迎するべき事態であった。
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| （ ●）（●）
| （__人__）
| ｀ ⌒´ﾉ
| } ……納得いかない。
ヽ }
ヽ､.,＿＿ __ノ
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|「では如何にする？」
|
| ニャンコ先生の問い。やらない夫は静かに頷いた。
|
|「サーシェスを探し出し、確認をとる」
|「危険じゃぞ」
|
| そう、すこぶる危険だ。そして、手がかりも無い。
| 現実的ではないのは分かっていた。
|
|「だが、気持ち悪いだろ？」
|
| やらない夫は首を振った。
| キンブリーを殺し、逃げたとして……サーシェスはどこへ行くだろう？
|
| 日本国外への逃亡は難しかろう。『教会』まで目を光らせている。
| だが、逃げるだろうか。
|
|「逃げませんわね。諦めていないはずです」
|「だろうな」
|
| サーシェスが本当にニャルラトホテプ関係者なら、彼は諦めないだろう。
| きっと、協力者を見つけて世界を滅ぼす方法を探るだろう。
|
| あるいは、すでに目星がついているのかもしれない。
| ニャルラトホテプを、再召喚する方法を。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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現状じゃまだ判断出来んよな（明後日の方を見ながら
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| ___'___ | ちょっといいですか？
＼ `ー'´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| ある日の昼下がり、『血族』本部の食堂で、食後の休憩時間に声をかけてきたのはできる夫だった。
| アリカは首をかしげ、並んで座る杏子を一瞥した。
|
| しかし、できる夫が見ているのは明らかにアリカで、しかも二人で話がしたいとその眼が語っている。
|
|「パフェ」
|「これでおいしいものでもお食べください」
|「お、千円じゃん！ 太っ腹！」
|
| あっさり買収された杏子が席をはずす、できる夫は憤然とした様子でアリカの正面に座った。
|
|「この幕になってからすでに二週間、折り返し地点です。お分かりですよね」
|「ええと、たぶん」
|
| できる夫の言うことはときどきよく分からない。
| しかし、『結社』撃滅作戦が近いのは分かる。つまりそう言う話なのだろう。
|
|「なのにアリカさん、あなたはまだデートの一つもしていない。おかしいでしょう！？」
|「え？ なにが？」
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,---､ ＼ ／＼ ― 、
.l ｌ （●） （●） ＼ | なにがじゃあないですよ！
.| | ____'___ | | 全国のイケメンとの恋愛を求める乙女ゲーマーに謝れ！
.| | |!!il|!|!l| ／ /
ゝ |ｪｪｪｪ| ノ
＼ ／
/ |
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|「いいですかアリカさん！？ あなたの周りには素敵な男性が溢れています」
|「ああ、やる夫兄いとか」
|「あれは攻略対象外です。それにイケメンではない」
|
| ズバッと切って捨てられるやる夫。アリカは不満だった。
|
|「やる夫兄い素敵だよ？」
|「でも恋愛対象じゃあないですよね？」
|「うん」
|
| 頼りになる兄であり、父のような存在だとアリカは認識していた。
|
|「ギャルゲーで多種多様な性質のヒロインが跳梁するように、
| 乙女ゲーでは多種多様な性質のイケメンが跋扈します」
|
| イケメンとは便利な言葉だ。本来はイケてるメンズ。あるいはイケてる面から来たギャル語というかはやり言葉だ。
| 意味としてはハンサムの類義語で、主に外見的特徴を指す時に使われる。
|
| しかし流行に流行を重ねた結果、一般語として世間一般に流布した。
| なので、ギャルゲーヒロインに対する乙女ゲーの攻略対象を指すのに、これ以上ないほど当てはまる言葉となっていた。
|
|「へえ」
|「気の無い返事ですね」
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／'´￣ __｀ヽ __ ＿
〃 ／.:.:.:.::｀´.:.:.:.＼:.:｀ヽ―ｧ
|! /:/.:.l:.ヽ:.:＼:.:.:.:!:.:ヽ:.:.:.ヽ:ヽ
l /:l:{:.:.:l＼ﾄ､:.:.ヽ:.:|:.:.:.l:.-‐ハく
{:.ﾑト-` '⌒｀丶l､!:.:.:.|:.:/.:.:.:ﾄ､〉
ヽlr;=､ r;=､ ノ j:.:.:/.:.:.__:./!〈:〉、
l lj {j /／/.:/r､V ハ:〉
/! ' ､､ '´ 'l:.f l-'/ ∨〈〉 だって興味無いもん。
|/ヽ ＿ U ,ヽ!ｨく 〈:〉〈:〉
,r‐ｧ‐_-＼ﾞｰ' ／ ,ﾊ_ 〈:〉 〈:〉
//´/´／ﾉ__＞‐＜＿ ／ /:!ｰ―'-､':〉
〈 ' / /´: /: : | ／ヽ /: :| : : : : : ヽ、
ヽ ヽ :/-一!:::|::::::ヽ/＼: ! : : , -‐-､!
,.-‐i _,.⊥:|: ／::::l:::::::::!: : : :〉: ／ : : : : j
!ｰ-｀ﾆ´┐ l／＿::::|::::::__|: : /:r' : : : : : : /
|: : : : : : :l !ヽ￣ヾl_/,r‐'!: //: :／ : : : /
!: : : : : : L_!: :｀ﾄ､_|::::::, ┘'/／: : : : : /
l : : : : : : : |: : : !_ T´: : :／／´: : : /
j: : : : : : : : !-‐'l:ヽ｀|｀T/／ : : : : : /
/: : : : : : : : j : : |: :} l lﾉ' : : : : : : :/:!
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|「なんて奴だ。だが、そう言っていられるのはいまのうち。以下のリストを見なさい」
|
| ・意地悪系年上：慎二
| ・天然系年上：ミスト
|
| ・ほっとけない系歳下：キオ
| ・やんちゃ系歳下：横島
| ・内気系歳下：ヴァイジャヤ
|
| ・影のあるライバル：冬悟
| ・熱血ライバル：ドルキ
|
| ・陰険教師：『狂死』
| ・頼りになる大人：『弓兵』
| ・禁断の花園：杏子
|
|「どうですか！！」
|「なにそれきもちわるい」
|
| 醒めきった反応のアリカに、できる夫が分かってないとでも言うかのようにため息をついた。
|
|「わかってませんねアリカさん。あなたは今、人生に一度のモテ期に居るんですよ？
| 周りには魅力的な男性がたくさん。まさに世の春。謳歌してくださいよ」
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rｱ.:..:. :..: :.:..:...:.:｛:.:..:|!:.:..:.:. :.:.:. :.:..:.:.
ノ/:.ヽ :::.: :..::.:::ﾐ´ ＼ｌヽ:.:..ﾄ:..:.:､.: :.:.:..:.
ノﾀi:.: :.:.: :.:.:..:ト´ ,x=＝=＼､＼ｌ＼:.: :ﾊ
ｲﾉ |.: ::ヽ:.::.:.:.}´ , ､ -xl:. :.:i
ｲ { }:.: :.:. :..:.:.ﾐ / 札! l:.: :}
ﾉ／ { ﾄ.:.:: :.:.ﾐ { ﾄｨﾉ ' 仭ｲ:.:/
{Yi }ﾄ ヽ「ミ｀''‐-､ , ｰ レ'
ﾉノ )〈 { 〈 ヽ __ | でも、これはないと思うよ。
{Y} {Y} ゝ ､ ＼ ／ ∨ 丿
iタ }〈 l丶 { _／ ／ ＼
{r} {y} l ` . ／
}ﾀ 〉| l Ｔ
{y} ﾏ! ノ ___ ト ._
ﾏ｝ {i}_ - ´／ ヘ l! ｀ ‐ 、
{ﾍ , ´ ｒ´ -┤ -‐ l! ハ
ﾏ! / l -┤ l! ｌ
ｔ} ′ l ｲノ l! |
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|「間桐さんは嫌いじゃないけど、妹さんが大好きで、多分口ではああ言ってるけど本当はお嫁にしたいと思うんだよね。
| ミストさんは昔の恋人が忘れられないし、ロボットの中に魂があるんじゃなかったっけ？
|
| キオ君は『蛇身』さんとらぶらぶでしょ？
| 横島さんはそもそもあたしをストライクゾーン外として見てるみたいだし。
|
| チー坊は会ったばっかりでよく分かんない。
| 冬悟さんとドルキさんはライバルというよりも、鍛錬が違いすぎるから目標とか先輩とかそんな感じかな。
|
| それに『狂死』さんとは接点が無いし、杏子ちゃんは女の子だよ」
|「一人抜けてますよね？」
|
| できる夫の鋭い指摘に、アリカは口ごもった。
| 視線を逸らし、頬を染める。
|
|「それは、ええと……ごにょごにょ」
|
| アリカは言い訳じみたことを口にしようとし、しかしすぐに顔を伏せた。
| 数秒の逡巡の後、目を泳がせながら小声で呟く。
|
|「エミ……『弓兵』さんは奥さんいるしー」
|「それがどうしたぁ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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, (⌒ ⌒)
(⌒ ( ) ⌒)
（ ) )
（＿ヽ＿ﾊ从人＿ﾉ＿ノ
| || | |
ﾉ Ｌ,l ,|| |､l、
⌒::::＼:::::､ノ＼
／:::（○）三（○）＼
／）し __'＿ ＼ 女房と畳は新しい方が良い！！！
| ⌒ |: :::| ノ（ |
＼ l;;; ;l ⌒／l!| !
／ `ｰ ' ＼ |i
／ ヽ !l ヽi
（ 丶- 、 しＥ |そ ドンッ！！
`ー､＿ﾉ ∑ l､Ｅ ﾉ <
ﾚY^Ｖ^ヽｌ
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|「じゃなかった、別に肉体関係にならなくてもラブラブにはなれるんですよ！」
|「ええー」
|「嫌いなんですか！？」
|「いや、そう言う訳じゃあ……」
|
| 煮え切らないアリカの襟首をできる夫が掴んで揺する。
|
|「他はどうです？」
|「う、うーん。何でミストさんが入ってて四つ目さんが無いの？」
|「四ツ目さんの方が良かったですか？」
|「いや、そういうわけじゃ」
|
| 正直言って、あののけもの二人をアリカは好ましく思っていた。
| だからと言って恋愛対象とかそんな風には全く思えないのだが。
|
|「横島はどうです？」
|「彼はいい奴だよ」
|「恋愛対象では？」
|「ちょっとエッチで、女の人が大好きだけど、話してて面白いし気づかいもできる。楽しいよ」
|
| それ以上でも以下でもない。
|
|「やはりカクリコンがいけないのか」
|「どうしてカクリコンさんの名前が出るのかな。それよりアンデルセンさんが入ってないんだけど」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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アリカもダヌーさん所の娘さんみたいにタワー建てて喪ーラを纏いそうだなぁ
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| __´ _ |
＼ ￣ ,／ アンデルセン神父は攻略対象から外れました。
r､ r､／ ヘ マイケル小原と似たようなもんですし。
ヽヾ 三 |:l1 ヽ
＼>ヽ/ |｀ ｝ | |
ﾍ lノ `'ｿ | |
/´ / |. |
＼. ｨ | |
| | |
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|「えー？ ぜんぜん違うよ？」
|
| アリカにとって祖父のごときマイケルと、立場のはっきりしないアンデルセン。
| アンデルセンがアリカにとって友好的存在なのは確実だ。
|
| しかし、彼が友好的なのはアリカが『夢宮の孫』だからであろう。
| ずっと仲良く過ごしてきたマイケルとは違う。
|
|「あんなにデレさせておいて何言ってるのこの子は」
|「デレてないでしょ」
|「よく言う。デレデレですー」
|
| 分かって無いなと言うように、首を振って肩をすくめるできる夫。
|
|「ちなみにジェリド君は最初から攻略対象じゃないんで」
|「じゃあ最初の『女の名前かと思ったら』はなんだったの？」
|「ミスリードです」
|
| 無茶苦茶言う。
|
|「男の子としてはともかく、あたしジェリドさん好きだよ？」
|「異性として見てないでしょう？」
|
| 図星である。
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／､＼
,. -‐´―‐-＜ﾆヽ_
／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾄ､＼:.:ヽ._
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＿:.:.:.l:.|:.:ﾍ:.:.ﾏY:ﾍ._
. /:.:.:/⌒:Y:´:.:.:.:＼!:|:|:|:.ﾍ:.ﾍ ｀Yﾍ._
_/:/.:.:.:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:.:.:.:∨:.!:.:.:ﾊ:ﾑ=ミY:ﾍ_
／ 7:.;|:.:|:.:.:.:.:.:.:.ﾄ､:.:＼:.:.:∨:.:〃 ,辷f7ﾇ
〃 !:/:!:.:!:.:.:.:.:.:.:.!:!:ﾊ:.:|ヽ:.:.:Vf{{ ＿__{_／ }} ら、ライバルとしてかな。
〃 .|:|!:|:.:ﾍ:.:.:.:.:.:.|:|:| ':! |ﾍ:.|_ｌﾘ/::::::::::::＼__ﾉﾊ＿
|| |:lﾍ',:.:.:ヽ:.:.:.:.|:|:|､_ﾑ斗イ（_/::::::::::::::::::::ヽ{辷ァﾍ
|! |:| ﾊ:.:.:.:.＼:.!ﾊ! t::ﾃ／::::::::::::::::::::::::::::ﾉ::ヽ }}
ヾv!:/＼:.＼ド=- {:::::::::::::::::::::::::::::::::|:::::::::Ｖ/
「ﾒ､ ｀ 下､ ｀ -廴::::::::::::::::::::::::::::::!:::::::::::ﾏ__
/:ﾉ ／:＼入了ア´:::＼:::::::::::::::::::ノ:::::::::::::ﾊ:.:L_
. ,レf´::￣／´￣ヽ＼::::::::::／￣￣下､__:::::::::::::::::|｀Y:.}
/ ,ﾑ‐ｧ'´￣｀＼_､ ヽ|:::／ ､＿_ ＼::::::::::::!＼｀辷:､
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|「ですよねー」
|
| ジェリドが聞いたらなんというだろうか。
| 歳下の女子にライバル扱いを受けては、怒りを隠せないのではなかろうか。
|
|「そもそもジェリドさんはルカさんでしょ？」
|「え？」
|
| 小首をかしげるアリカに、できる夫が絶句した。
|
|「そうなんですか？」
|「たぶん……『というかできる夫さんって、どこまでメタ存在なの』ってばっちゃが言ってた」
|
| アリカの問いに、できる夫は逡巡した。
|
| アリカがネタの場合のみかつ、ばっちゃの名前を借りて口走った時限定のメタ存在であるように、
| できる夫もまた限定的メタ存在なのか。
|
| それは大きな問題だ。
| アリカ達は知らないが、できる夫は上次元干渉を行う存在だ。
|
| 下位の不定の混沌を束ね、ニャルラトホテプに対抗してきた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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{ ! 、,ゝ=＝=く:::: _ 、,ゝ=＝=く:::: ! }
ｨ彡三ﾐヽ ｀ヽγ ｀ヾ, 、 γ ｀ヾ, /｀ ｨ彡三ﾐヽ
彡'⌒ヾﾐヽーく( r,J三;ヾ )> く( r,J三;ヾ )> ー彡'⌒ヾﾐヽ
ヾ､ ; {三●;= } ,= ′ ヽ;{三●;= } ,=ｿ /
＿ ｀ー―'ゝ≡三＝ノ ゝ≡三＝ノ ｀ー―'
彡三ミﾐヽ 彡三ミﾐヽ
彡' ヾ､ ＿ノ ＼＿ ヾ´ ´ミ
｀ー ' ＿＿＿_ ｀ー ´
,ｨ彡三ﾆﾐヽ ＿_ノ ／::::::::::::::::::＼ ,ｨ彡三ﾆﾐヽ
彡' ／::::－::::::::::::－:::＼ ミ'
＿ ＿＿ ノ ／ （ ）:::::（ ） ＼ ＿
,ｨ彡' . | :::::::__´___::::::: | ,ｨミ'
ﾐ三彡' ／⌒ ＼ :::::::::::::::::::: ／ ﾐ三ミ'
ｨﾆﾆ=- ' ./ ::::::::::::::::::::::::::::::: ＼ ｨﾆﾆ=- '
,ｨ彡' |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ｀ミｨ,
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|「そろそろメタな話はやめにしましょう……真面目な話ですが」
|
| できる夫が露骨に話を変えるのを、アリカは黙って受け入れた。
| 真面目な話か。ここからどう真面目な話になるのだろう。
|
|「これを見てください」
|
| できる夫が差し出したメモには、アルファベットの羅列が書かれていた。
| URLの様だが、アリカにはどうしようもない。
|
|ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/otaku/15956/1413503559/11
|
|「何これ」
|「前スレのテンプレです」
|「『メタな話はやめじゃなかったのか？』ってばっちゃが言ってた」
|「それはそれです」
|
| できる夫が指さしたのは、スケジュールであった。
| アリカは眉をひそめる。てっきり、そう、勘違いをしていた。
|
| 九月満月
| ・九月三週
| ＞『蛇身』との約束の日
| ・九月四週
| ＞『武僧』シロッコ、『異端審問官』ジャンヌ、『十字軍』到着 ←now
| ・十月一週
| ＞『結社』撃滅作戦実行
| ・十月二週
| ＞十月満月、大天使召喚儀式
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,. -- ､
＿＿ / 丶
,. "／ ｀ヽ- ､ ﾉ
/Z / ｀ ヽ ´
.i r┬‐┐.. ﾊﾘ
{/＼_/´:: :: .─-_.. /|
V:: :: :.ﾊ: :: :: :: :: f'´|ヽ
/ﾊ:: ::.〈 〉:: :: :: ::ハ ﾊ ! あれ？
{ } ＼:l {_:_:_:／ ／ 『結社』撃滅作戦は月末だと思ってた。
〉{ ,⊥ﾊ--T"
/｀＼へ! 〉-'＝〈 /=-､＼ _ .. -‐r ､
|: . `!/ﾊ ハ ｨ 〃 （: . }
⊃:_:_.〈 | ﾐﾍ ヽ/ r彡::/ﾆ 厂Jr┘
「 .ハ ＾ /ﾊ＾ / {:.:.T ﾍ
ヽ -＝{ } ヽ/ . :/-─rJ: . |_ノ
｛´ 〉{ ハ ;|__:_:_{: .. |
Y´{. } ヽ } l|_て: .: |
|: ハ /ヽ l|:.:.|: .: |
「￣{ ﾉ. : : : . l ﾉ. . |/ヽ:. . |
/ / } : : : : :ハ .ﾆ〈 /: .. |
／ー'|〈 .: : ヽ/ /| 〉: . |
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|「だと思いましたよ。来週です」
|
| アリカは急に焦りを覚えた。そう言われても何の準備もしていない。
| キオや『蛇身』のこと、慎二と『弓兵』と『万魔』のこと。
|
| どちらも急ぎの問題だった。
| アリカはこれらの問題に取り組んだことに後悔はない。
|
| だが、『結社』撃滅作戦が目前に迫っていると聞くと当然焦る。
| 来週か。テスト前のような落ち着けない感じ。
|
|「どうして焦るか分かりますか？」
|「テスト前なのに勉強をしてなかったからです」
|「テスト……？」
|
| アリカは比較的頭のいいクラスメイトから張ったヤマを聞き出す勢いで掴みかかった。
|
|「お願い！ 勉強教えて！！」
|「どうどう！ まだ間に合います！ いいですか。僕はそれを教えに来たんです」
|
| アリカは不信の視線をできる夫に向けた。
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,ィ⌒
_ .ｨ'亠.-..､
,イ::ﾊﾉ＼ﾊ!ヽ:ヽ
r={:::ﾊ! i:::} そうするとできる夫さんに何かいいことあるの？
〃=ry rｭ‘ ‘ rメ 具体的には千円より。
〃 !}Y_. ヮ ﾉﾊ
{i {i ヽ_/ヽｪ/i┬=く´ ﾉ
/i i} ｣ （__ ._） ､ L
` ﾑ iヽﾉ::::::r' i _/
|::::::::::/ イ:|
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| 先ほど杏子に渡した千円。あれ以上の見返りが無ければ、気軽にお金は渡せまい。
|
|「前から疑問だったけど、できる夫さんはどういう立場なの？」
|
| 先ほどと同様の、メタな質問ではない。
| 極めて平静にアリカは尋ねていた。
|
|「どういう意味です？」
|「麻呂さんの弟子で、あたしと同じ繰り上げの班長。でも、向上心に欠けるよね？」
|「今時の若者なものでして」
|
| 薄っぺらく笑うできる夫を、アリカは不審そうに見つめた。
|
|「あるでしょ、目的」
|「秘密と言う訳にはいきませんか？」
|
| ある。できる夫の返答はそう示唆していた。
| あるが、聞くな。それができる夫の回答だ。
|
|「なんで？」
|「そこも含めて。アリカさんの聞きたい情報と交換で」
|
| アリカは考え込んだ。これはいつの間にか交渉になっていた。
| しかもできる夫はかたくなだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ゴキブリならば高温に弱いはずだ
,,. -―/´ｧ―-..、 ＼、
／´: :￣｀: ´ : : : : : ＼ ヽ､
,.ｲ: : : : : : : l: : : :{: : 、:＿:ヘ }:}
/: :{: :|: {: : : : |{: : :下￣ヽ:.十-i 〃
| : ハ.ﾄ ヽ: : : ﾄ＼: :ヽ＼:ﾄ: :| : :|ｰ ´
ﾄ: { ＼ヽト :_＼ ｀ ｰヽ__ﾊ:.}: : }
∧.:{ ￣｀ヽｰｭフ､ｨ／´ j/: :/
{_A:{ ,z=＝ミ , z＝=/:./＿
／ﾉ:{ jr , z- , ,z-ノイハ、｀ヽ
/ jノ‐ト-､ __ __ .小ヽ}}
! ／{{ {:..{ ヽ /..{. } //:.:} ﾉヽ それはダメだよ。
/ ＼ヽ{i＼ {.__.ノ ｲﾚ':./ i 踊るのがあたし一人ならいいけど、
ﾉ ＼:ヽ､｀ ー‐_´-':／ | 蒼星石さんや班員のみんなも危険にする可能性があるし。
{ ﾄ､｀ -｀二.. - ´ ｲ / 丶
ヽ ヽ. ヽ-＼ 人 ／ｲ { }
ト､ j ｀ ーz) ｀'´(r‐ ´ | ,.ｲ
ヽ:.｀:ー_.:| /―:.:／
| ￣ ﾊ ノ- /― 7
| l / ´ 〈l |
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| アリカは己を、上に立てる器ではないと思っている。
| 故に、明らかに怪しいできる夫の口車に乗って、手のひらの上で踊ることに抵抗が無かった。
|
|「秘密を教えてくれなきゃ協力できないなぁ」
|
| ちらり。アリカはできる夫の様子を一瞥し、噴き出しそうになるのを堪えた。
| ダメだ。壊滅的に交渉に向かない。自覚から笑いだしてしまいそうだ。
|
|「では、僕から教えることは何もありません」
|「えーケチ」
|
| つまり？ 秘密は頑として答えられない。
| 秘密について追及しないなら、情報をくれる？
|
|「それに、僕から情報を収集した方が危険は減りますよ」
|「……どうして？」
|
| アリカは尋ねながら、ちょっと考え込んだ。
| なんて巧妙な奴だろう。条件が良すぎて断る理由が無い。
|
|「考えても見てください……」
|「じゃあちょっと待って、考えてみる」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿
／ ＼
／ _ノ ~ー ＼
／ （〇） （〇） ヽ
| ' | ……はい？
＼ ー- ／
/⌒ヽ ｨ ヽ
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| 虚を突かれたできる夫をおいて、アリカは状況を整理した。
|
| できる夫は情報をくれる。理由は教えてくれない。
| 理由を聞こうとするなら、情報はくれない。
|
| 情報の対価は不明。なんだ、極めて簡単な話だ。
| 謎の対価を支払うなら、情報をくれる。
|
|「できる夫さんの利益は、あたしたちの不利益になる？」
|「……たぶん、僕らの目的は一致しています。危険はあっても不利益は少ないでしょう」
|
| アリカたちが目的を達成した場合、できる夫が有利になると。
| アリカの目的は？ 『明神』になることではない。
|
| 『四天王』も、アリカにとっては遠く感じる。だってアリカは借り物だから。
| うそっこの戦士にとって、スゴイ称号は重荷にすぎない。
|
| だが……？
|
|「あたしが『明神』になるとできる夫さんが得をするとする。
| それって派閥ってことかなぁ……でも、あたしだしなあ」
|
| 悩むアリカ。アリカが偉くなって、できる夫はおこぼれを頂戴する？
| それを喜ぶできる夫か？
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ― ― ＼
／ （●） （一） ＼ 一応言っておくと、派閥としては十分ですよ。
| __´___ |
＼ `ー'´ ／
/ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
. ＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「そうなの？」
|
| 小首をかしげるアリカ。どんな派閥になるのか、想像もつかない。
|
|「現在の『元老院』と、その後継者を思い出してください」
|「えー？」
|
| そう言うのは苦手だ。アリカは順繰りに思い出した。
|
|「フリットさんとキオ君」
|「キオ君とは仲良しですよね」
|
| 仲が悪いわけではない。比較的いい。
| キオも、アリカを『偉大な人物の孫』という同輩として慕ってくれている。
|
|「間桐さんは慎二さんかな。キュゥベぇさんは杏子ちゃんでしょ」
|「そうですね。特に間桐は先月の『万魔』の強襲で血縁が根絶やしです」
|
| 残った間桐は慎二と雁夜のみ。であるなら、後継者は慎二であろう。
|
|「さらに言うなら佐倉杏子は『狂死』の弟子でもあります」
|「だね……でもシックスさんとロージェノムさんは分かんないな」
|
| お手上げのアリカに、できる夫は含み笑いで応える。
|
|「よくご存じのお二人ですよ」
|「えー？」
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∩＿
〈〈〈 ヽ
＿＿＿_ 〈⊃ }
／⌒ ⌒＼ | |
／（ ●） （●）＼ ! ! 読者のみなさんも考えてみてください。
／ ::::: __´___ :::::＼| l 正解はこのレスの中で！
| `ー'´ | ／
＼ ／／
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(＿＿＿） /
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|「大首領様は抜かすよね」
|「志摩子様は『元老院』にはならないでしょうからねぇ」
|
| とすると？ アリカは螺旋王ロージェノムと狂人シックスのことを考えた。
| どちらもよく知らない。
|
|「蒼星石さんとやる夫兄い？」
|「分かってるじゃあないですか」
|
| 螺旋王と蒼星石が懇意なのは知っていた。だが、後継者とは。
| ちょっとしたショックを受け、立ち直れないアリカに、できる夫は追い打ちをかける。
|
|｢『四天王』側はどうです？｣
|「ケンシロウさんと、麻呂さんはやらない夫さんで、『狂死』さんは杏子ちゃん……」
|
| そして、上杉謙信はまだ二十代前半の若さだ。
| 彼女は次世代を考えるには早すぎる。
|
|「そこにアリカさんが『明神』になったら？」
|「なにそれこわい」
|
| 想像していたよりも、派閥としては大きい。
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／'´￣ __｀ヽ __ ＿
〃 ／.:.:.:.::｀´.:.:.:.＼:.:｀ヽ―ｧ
|! /:/.:.l:.ヽ:.:＼:.:.:.:!:.:ヽ:.:.:.ヽ:ヽ
l /:l:{:.:.:l＼ﾄ､:.:.ヽ:.:|:.:.:.l:.-‐ハく
{:.ﾑト-` '⌒｀丶l､!:.:.:.|:.:/.:.:.:ﾄ､〉
ヽlr;=､ r;=､ ノ j:.:.:/.:.:.__:./!〈:〉、
l lj {j /／/.:/r､V ハ:〉
/! ' ､､ '´ 'l:.f l-'/ ∨〈〉
|/ヽ ＿ U ,ヽ!ｨく 〈:〉〈:〉 というか、
,r‐ｧ‐_-＼ﾞｰ' ／ ,ﾊ_ 〈:〉 〈:〉 これはいけないんじゃないのかな。
//´/´／ﾉ__＞‐＜＿ ／ /:!ｰ―'-､':〉
〈 ' / /´: /: : | ／ヽ /: :| : : : : : ヽ、
ヽ ヽ :/-一!:::|::::::ヽ/＼: ! : : , -‐-､!
,.-‐i _,.⊥:|: ／::::l:::::::::!: : : :〉: ／ : : : : j
!ｰ-｀ﾆ´┐ l／＿::::|::::::__|: : /:r' : : : : : : /
|: : : : : : :l !ヽ￣ヾl_/,r‐'!: //: :／ : : : /
!: : : : : : L_!: :｀ﾄ､_|::::::, ┘'/／: : : : : /
l : : : : : : : |: : : !_ T´: : :／／´: : : /
j: : : : : : : : !-‐'l:ヽ｀|｀T/／ : : : : : /
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|「いけなくはないですとも。僕にも都合がいい」
|
| 大首領様は蒼星石と懇意だ。
| そして、ケンシロウも蒼星石と家族ぐるみで付き合っていたはず。
|
| 完全に、派閥どころか仲良しグループが中枢に食い込んでしまう。
| そこまで考えて、それを懇切丁寧に教えてくれたできる夫の顔を見た。
|
| じっと見つめる。
| その派閥に食い込む？ できる夫が？
|
| 麻呂の弟子であるできる夫は、暗躍する必要はないだろうに。
|
|「でもこれって、できる夫さんの目的とは無関係だよね」
|「そうですね」
|
| ではなんだ？
| 『結社』撃滅作戦関係の情報をアリカに教えて、できる夫は何が嬉しい？
|
|「……『結社』か『教会』に嫌いな人がいて、その人を排除したい？」
|「ノーコメント」
|
| できる夫の言葉は、裏腹に正解を意味していた。
| できる夫はアリカたちを殺し屋に仕立てたいのか。
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,ｨ'´ ｀ヽ
,. ----{{ ､ ヽ.
,. '´.:.:.:.:.:.:.:.―‐一- ､ l!
__ ,.-_､_ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀＼:.＼ ﾘ
,r_ﾆ´ｧ='´_ノｿ.:.:.:.:.:.:.:/,ｨ:.:.:.:.＼:.:.:.:.＼:.ヽ:ﾍ
_,rァ'´__ノ.:ノ´ ﾊ.:.:.:.:.:.:.:|:| !:ヽ.:.:.:.:.＼:.:.:.:ヽ.:.!:.:!
_/ノ _/.:ノ´ ﾄ､ヽ:.:.:.:.ｲヾ ＼!`ー--＼:ﾄ､ﾍ!:.:|
r'ノ r'´/´ ﾄ､`__:.:.:ｲ｀`''ー‐---ノ _,斗ﾍ:|:.:l
f/ r‐'/´ __ ﾍ:/fゝV､ ｨ云ﾊヽ 伝ﾊlﾘ:/
. fl ﾉ／ {{ ｀ヽ＼ヾ !ﾄヽ弋zｿ ｀´/ｲ/
!|f.:j ,. -､__!ヽ__ /! jﾞｰ||､ ' /､ やな感じだなぁ。
ﾝ:〈 / L_／／:::::ヾ＜＼ ﾘ ＼ ^ ／}} i
!.:/､ / /:::::::::::::::ヽ_7ヽヽ.＿_＞ - '´┐ ﾘ ﾉ
ハヾヽ L_-一'!::::::::::::::::::::::::}ｰ} ﾊY ／ {,. -､
|:/ ヾヽ._)／|::::::::::::::::::::::::に | /ﾞ=ﾍ!'_,. ‐''´ ヽ
}:ヽ ｀{ l::::::::::::::::::::::::::}¨}-く::山:ﾊ _ _ﾉ
ﾍ:〈 ﾞｰ､,ﾊ::::::::::::::::::::::::!ｲﾍ ヽノ l|,. ‐''´ (´
{:.} /ﾉ!:::l:::::::::::::::::::::::::7! ヽ ＋ ||￣＿_ﾉ
ヾヽ ヾi|::::|!::::::::::::::::::::::::| ヽ ヽ._ ,!jﾍ´(:l
ヽ:! //!:::::!:l:::::::::::::::::::::::l ｀ｰJ ﾚ |‐':l
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|「近くて遠い感じなんですよ。大局的に見れば僕には有利。
| でも、特定個人を即座に抹殺させたいわけじゃあないんです」
|
| アリカは眉に唾を付けた。
|
|「言い方を変えると、できるだけ『血族』の損耗を少なく『結社』撃滅作戦を終わらせたい……
| これって言っちゃってるも同然だなぁ」
|
| 苦笑するできる夫。アリカは眉を寄せた。重大なヒントっぽい。
|
|「でも、単純に『血族』の使命感に燃えて牙無き人々を守りたいってわけでもないんでしょ？」
|「そうですね。僕はもっと利己的です」
|
| できる夫とアリカの最終的な目的は違っても、利害は一致している。
| 損耗を少なくしたいということは、味方の死傷者を減らしたいということなのだろう。
|
|「意地悪な質問していい？」
|「答えられるとは限りませんが」
|「『教会』のそんもーは？」
|
| できる夫は意味ありげに笑った。そして答えは無い。
| なるほど。アリカは理解した。
|
| できる夫は『教会』を警戒しているのだ。
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＿＿＿_
／⌒ ⌒＼
／（ ●） （●）＼ じゃあ話を変えましょう。
／ ___'___ ＼
| |r┬-| | アリカさんは『結社』撃滅作戦前最後の行動で、
＼ `,. -'"´´￣｀ヽ 誰かとデートしてください。
／ （＿＿＿ |
／ |
（￣ |
￣￣￣| |
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|「デートってどうやるの？」
|「相手を誘って同行の約束を取り付ければいいんです」
|
| なるほど、簡単だ。だがアリカの知りたいのはそこではない。
|
|「誘うのはいいよ。デートって何するの？」
|「ランチして商業施設か娯楽施設などを回り、夕飯後にホテルに行き一発キメてください」
|「夕ご飯はやる夫兄いが用意してるから後半パス」
|
| 握りこぶしの人差し指と中指の間から親指を出す。
| できる夫がそんな卑猥な手つきをしているのをアリカは一瞥した。
|
| 彼女はその手つきの意味を知らない。
| 代わりに、拳を握って『一発キメる』行為はよく知っている。
|
|「というか何でホテルなの？ 『血族』の支部とかじゃダメなの？」
|「アリカさん勇気ありますね」
|「？」
|
| 完全にかみ合っていない。
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,イ::ﾊﾉ＼ﾊ!ヽ:ヽ
r={:::ﾊ! i:::}
〃=ry rｭ‘ ‘ rメ
〃 !}Y_. ヮ ﾉﾊ 決闘でしょ？
{i {i ヽ_/ヽｪ/i┬=く´ ﾉ
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` ﾑ iヽﾉ::::::r' i _/
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|「あー……？」
|
| 一瞬困惑したできる夫。そしてすぐにアリカがすで言っていることに気が付いて赤面した。
|
|「ごめんなさい」
|「なんだか分からないけど許すよ」
|
| ついつい、もっと年上の奴らと話しているつもりで話していたのだろう。
| アリカに卑猥なジョークは通じないのだ。
|
|「でもなんでデートするの？ 情報収集じゃなくて」
|「読者が喜ぶかなって」
|「ごめん聞こえない」
|
| アリカは小首をかしげた。できる夫の発言は周囲の雑音にまぎれてしまっていた。
|
|「なんでもないです。それより耳寄り情報です」
|「あー、結局あたし決めてないよ」
|
| そう、聞くか聞かないか。最終的な回答をしていない。
| できる夫と決裂するか否か。その答えをアリカは出していなかった。
|
|「聞いてくださいお願いします」
|「……」
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〃 ,. -一'´ ｀＼
〃 ./ l ｀ヽ ヽr---‐､-､
{{. /./ / / ! | | '￣/ ﾉ /__
| l l | Ｎ＼ _,L. |./ ｀Y--〈
| |ｰ|､-|＼| Ｘ´ ハ |{ 「 ,ゝ- ､
__厂八_Ｎｨﾃ抃、 ｨﾁ坏, ﾊ｀Y´ ＼ わかった。
厂_/´:,r‐{ ﾍ. Vｔﾘ Vtﾘ| // :｀Y ＼ いいよ。
:/厂 / 厂:ヽﾑ:::::::: ' ::::::ノｨく ::廴 | ＼
ﾚ' ﾚ' | ヽ、 ｰ‐' ／ :| | ＼ | ＼
. /l￣／⌒＼￣! l￣ ≧ｰ-- '´ﾑ、ﾉ 厂__/￣｀ヽ :＼ / ヽ
ﾚ' |＼ ヽ ／{ ＼_／ }＼＿|/ ／jー-}＿__ 〈 ｉ
/| |: ＼ /7´ |＼,.ｲ ﾄ､／| ! ! ／ ／ ／ l ＼ |
ﾚ' / f ｆ 丶人ﾞｰ'人_ノ | |´ ｀７ | ＼. |
/| { ー― | | ∧ {__〈 〉__} ∧ l｜￣￣/ __/
ﾚ' ／＼___ | | 廴＼ V ／ _」 ! ! r一′ ＿＿,.ィ ´
/／ 厂 ｜! ｀'J _」L_ し'´ | | ￣}_,. -‐ ´
／ 〈 | | ｀l「 :| | /
/ ／⌒丶ﾊ.____ Y､ ＼ | | 丁
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|「よかったよかった。ここいらで情報を出しておかないと」
|「何の話？」
|「こっちの話です」
|
| できる夫は眉を吊り上げ、真面目っぽい表情を作った。
| アリカはコップの水を飲み、空になったコップを一瞥した。
|
|「お代わりしてきていい？」
|「ジュースでもなんでもどうぞ！」
|
| 野口英世が出てきた。催促したつもりはなかったのだが、アリカは喜んでパフェを注文する。
|
|「教えておきたいのは冬悟君とドルキ君のことです」
|「ああ、『結社』側じゃなくて」
|
| そのあたりは想定外であったが、さっきのデートうんぬんを思い出すと納得もできる。
|
|「二か月前の『歌舞伎町事件』で、前の『明神』が死亡したのはご存知ですよね」
|「うん、少数精鋭で異界に侵入したんだよね」
|
| その戦いには先代巫女、冬悟、ドルキも同行していた。
| 『狂死』も現場にいたが、彼は『先生』こと鷹野三四の護衛が任務で、周辺に沸く雑魚悪魔の掃討を行っていた。
|
| そして、侵入した異界で悲劇が起きる。
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／ ＼
／ ─ ─ ＼ 異界は魔王マーラの性質、
／ （●） （●） ＼ 誘惑と混乱に満ちていたそうで。
| ___'___ |
＼ `ー'´ ,／ 結果、『明神』は同士討ちで死にました。
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| それは初耳である。
| 瞠目するアリカに、できる夫は静かに続ける。
|
|「先代さんは他のメンバーを治療中で、決定的瞬間を見逃しました。
| 『明神』さんが致命傷を受けたことで、指揮権は先代さんに移動。
|
| メンバーの半数が死傷してましたし、探索を断念して撤退しました」
|
| 歌舞伎町は地獄だったと聞いていた。
| アリカ達のいた恵比寿が天国だったという訳ではないが、味方の死者は無し。
|
| 対して歌舞伎町は『血族』と『教会』の死体が山積みだった。
|
|「『明神』さんを殺害したのは冬悟君かドルキ君のどちらかです。
| 事実を知っているのは本人たちだけ……そしてその日から、二人は壊れました」
|
| アリカの知っている冬悟とドルキは、それ以降の二人だ。
| だから、ドルキが壊れたというのは何となく理解できる。だが冬悟は？
|
|「ドルキ君は先制攻撃と破壊力に、異常に拘るようになりました。
| 無差別で周辺への配慮に欠けた攻撃に執着しています。
|
| そして冬悟君は……攻撃を、回避するようになりました」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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特に頭髪が炎になるシーン。フェニックスの召喚もするし。
>>212
(>>77-79)433暗殺アンコモン3
古代ペルシア風女貴族。髪の毛をターバンに入れ、薄衣を纏っている。腰に牙の様に歪曲したナイフを下げている
「アラビアのナイフ、ジャンビーヤでありますわ。
身分をあらわす高貴な刃物ですわ。以降よろしく。
ジャンビーヤ 暗殺 LV01 夜森船路狭王
中威力x2 素肌 《鎧通》
>>213
実際前回は治療費が500近くかかりましたからね。
>>214
ネタキャラと言うけど、今まで麗しの三姉妹戦は一勝二敗。負け越してます。
そもそも奴ら三人とも重鎧だし、連携で命中上がってるし、スキルも《薙払》《集中》《鎧通》と痒いところに手が届く編成だしで、結構厄介なのです。
>>215
ほう、重装・庇う・鉄壁あたりで無類の強度になるかと思いきや。
ショートソード☆ 短柄 LV01 闘夜森船路狭
中威力x3 鎧 盾 《疾風》
「ご存じのとおり、私は主役にはなれない。常に予備軍として忍んできた。
だが閣下、あなたは私をここまで鍛え上げてくれた。その恩に報いよう。
そして願わくば、今後もあなたの懐刀として傍においてくれ。
>>216
(>>80-82)835体心300 槍コモン5
チェインメイルに盾をもった女。抱えているのは2mほどの槍。先端は刃のみのシンプルな作り、バランスも良い。
「ロングと比べたらショートになるけど、短いってほど短くも無いスピア。参上しました。
合戦場では長槍ほど活躍できず、だけど、警備の歩哨が持つにはお手頃でしょ？
スピア 槍 LV01 闘夜森路
中威力x2 鎧盾
>>217
いえいえ、遅くなってしまいました。
>>218
フンガムンガコワイ。奴は実際異常に強い。
>>219
ありゃ本当だ。申し訳ない。ありがとうございます。
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〃=ry rｭ‘ ‘ rメ
〃 !}Y_. ヮ ﾉﾊ 回避？
{i {i ヽ_/ヽｪ/i┬=く´ ﾉ
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|「そうです、元来の彼は戦いを楽しむ性質を持っていました」
|
| 戦いを楽しむ。
| そう聞いて脳裏に去来したものを、アリカは首を振って振りはらった。
|
| 『蒼天の青玉』の囁きは、このところ強くない。
| それは、アリカが強くなっているからなのか。それとも逆か。
|
| アリカには判断が付かない。だって たたかいは たのしいもの。
|
|「戦いを楽しむって？」
|「相手の強さを味わうことに喜びをおぼえていたんです。具体的には大技を受け止めて耐える。
| 相性と防護点とHPで耐え抜く。スーパー系だったんですね」
|
| その点は、アリカとは逆だ。
| 『蒼天の青玉』は頑丈だが、中身のアリカが伴わない。
|
| 先月の戦いでも、内側のアリカばかりが破損していた。
|
|「相手の強さを身をもって受け止め耐えきることで、相手を威圧する効果もあります。
| 例えば、最初の攻防で攻撃をノーガードで受けられたらどう思います？」
|
| アリカは想像した。『蒼天の青玉』の拳は戦車砲だ。
| 人間なんて簡単に吹き飛ぶ、粉微塵になってしまうだろう。
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i |: : : /: /: /: :!: :!: :!: : : :ヽ: ､: : : : : ヽ / ＼
i | : 〃: :!:！: :!: :!: :|: : : : : !: :ヽ: : : : : ヽ/ ',
| l :〃: :i!: :|: : |: :ｌ : ﾄ､: : ! :l: : : !: : : : : : ヽ }
| !/ : r介:.|､: :!; :ヽ:|_,ヽ l: :! : : ﾄ: : : : : : : ! /
| !: : :|:| { :| ヽ{ ＼: ＼ |ﾊム: :/_ヽ:: : :!: : ! ./
| !: : ﾊ{ ゝ!-‐=､、 ￣｀' ﾉ ∨ ｀| : /: : :| ./
| ! : l/ r仞か ´ -_二.ヽ /イ : : ｲ /
| | : | いじり ｆィかi Ｙ i: : // /
| ﾄ､:{ ‐'＝´ 弋ﾑｼ ﾉ／: :ｲ/ /
! |: ヽゝ / ｀"／.;ィ´〃 /
! ﾄ､､ :} ´￣ ∧ ´ /
! ト|: Y r‐ ┐ lｊ ∧ ', / 心配する。
! l: !:.:ト､ ｀￣ ／ l :l /
.i ﾊ:!:八 丶 _ ´ /:/ /
i ﾄｆ: :| ｀ ー‐／ ／´ /
.i | ! : ＼ ／ヽヽ ./
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|「で、怪我しながらも笑いながら立ち上がったら？」
|「正直怖い」
|
| 想像して、アリカは身震いした。
| 全力全開の必殺の一撃ではなかったとしても、アリカの攻撃は必殺となりうる。
|
| それを防がれたら？ アリカが思い出したのは半月前の満月の晩。
| 深夜のオフィス街での攻防だ。
|
|「そこで精神的優位を取ります」
|「うん、尻込みしちゃうね。まだやれるとは思うけど」
|
| ロストスキルとの戦闘を終えた直後、恐るべきタツジンニンジャとの攻防で、複数の負傷をしていた『弓兵』。
| 彼はアリカは打撃のほとんどをいなし、避けた。
|
| そして最後、最強にして必殺の一撃を、化勁で容易く受け流して見せたのだ。
|
| あの瞬間、役者の違いを見せつけられたアリカは敗北を悟った。
| そして『弓兵』が放った本気の殺意の前に戦意を失った。
|
| 完敗であった。
|
| もしも攻撃を耐えきられたら？ プライドが傷つき、精神的衝撃を受けるだろう。
| そしてそれは、アリカの動きから精密さを奪うこととなるだろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ⌒ ⌒ ＼
／ （●） （＜） ＼
| ___'___ | そんな冬悟君が、戦術をガラッと変えたのです。
＼ ｀ ｎ´ ,／ 理由は分かりませんが。
／ | | ＼
.. ﾉ .ュ
{ ..ﾆj
. | "ﾂ
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| とはいうものの、原因は目に見えていた。
| 間違いなく『歌舞伎町事件』だ。
|
| たった三人の生き残り。そのうちの二人が、戦闘スタイルを変えた。
| どちらも黙して語らないが、二人が前『明神』の死に関わったのは明らかだ。
|
| 最期の瞬間、どちらが、何をしたのか。
| 冬悟もドルキも口をつぐんだまま。
|
|「ただ二人とも、『自分のせいで死んだ』とだけ……今のままでは危険ですよ」
|
| 何が危険なのか。できる夫は邪悪な笑みを浮かべる
|
|「ドルキ君は放っておけば無謀な戦いをして死ぬでしょうね」
|「何とかならないの？」
|
|「だからアリカさんにデートを頼んでるんです」
|「その言い方だとできる夫さんとデートするみたいだよね」
|
| アリカの返答に、できる夫はあからさまに嫌な顔をした。
|
|「傷つくなぁ」
|「御冗談が上手い」
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ まあ、とにかく。
| __´ _ | 僕は頼まれてもアリカさんとデートなんかしませんよ。
＼ ￣ ,／
r､ r､／ ヘ
ヽヾ 三 |:l1 ヽ
＼>ヽ/ |｀ ｝ | |
ﾍ lノ `'ｿ | |
/´ / |. |
＼. ｨ | |
| | |
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|「『え？ なに？ フラグ立った？』ってばっちゃが言ってた」
|
| いまのできる夫の発言は、聞き様によってはツンデレのツン発言だ。
| 後々デートをするための伏線の様である。
|
|「いや、僕とデートする時間があったら他の人を救ってあげてください。
| 僕が救われるとすれば、ゲームなら二週目以降。小説だと二次創作。
|
| 完全に無いです。僕のルートは存在しない」
|
| 自嘲気味に首を振るできる夫の言葉を、アリカは聞き逃さなかった。
| 他の誰かであれば、空気を呼んで追及しなかったかもしれない。
|
| だが、アリカはアリカであった。
|
|「できる夫さんは救われたいの？」
|「……！」
|
| 虚を突かれ、視線を泳がせるできる夫。
|
|「喋りすぎましたね……」
|
| 急いで立ち上がる彼を、アリカは止める言葉を持たなかった。
| 救われない。救われたい。できる夫も、このメタな存在も何らかの悪夢の中に居るのだろう。
|
| それが何なのか、聞きだすことは難しそうだった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／'´￣ __｀ヽ __ ＿
〃 ／.:.:.:.::｀´.:.:.:.＼:.:｀ヽ―ｧ
|! /:/.:.l:.ヽ:.:＼:.:.:.:!:.:ヽ:.:.:.ヽ:ヽ
l /:l:{:.:.:l＼ﾄ､:.:.ヽ:.:|:.:.:.l:.-‐ハく
{:.ﾑト-` '⌒｀丶l､!:.:.:.|:.:/.:.:.:ﾄ､〉
ヽlr;=､ r;=､ ノ j:.:.:/.:.:.__:./!〈:〉、
l lj {j /／/.:/r､V ハ:〉
/! ' ､､ '´ 'l:.f l-'/ ∨〈〉 えと。
|/ヽ ＿ U ,ヽ!ｨく 〈:〉〈:〉
,r‐ｧ‐_-＼ﾞｰ' ／ ,ﾊ_ 〈:〉 〈:〉
//´/´／ﾉ__＞‐＜＿ ／ /:!ｰ―'-､':〉
〈 ' / /´: /: : | ／ヽ /: :| : : : : : ヽ、
ヽ ヽ :/-一!:::|::::::ヽ/＼: ! : : , -‐-､!
,.-‐i _,.⊥:|: ／::::l:::::::::!: : : :〉: ／ : : : : j
!ｰ-｀ﾆ´┐ l／＿::::|::::::__|: : /:r' : : : : : : /
|: : : : : : :l !ヽ￣ヾl_/,r‐'!: //: :／ : : : /
!: : : : : : L_!: :｀ﾄ､_|::::::, ┘'/／: : : : : /
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|「いいですかアリカさん、次はメンバー集合会議です。
| 久しぶりにやる夫さんも含めた主人公四人集合回。
|
| その後安価で、『結社』撃滅作戦前、最後の行動を選びます。
| アリカさんは誰かとデートしてください。
|
| 冬悟さんやドルキさんである必要はありません。
| でも、デートは必要なんです。あなた自身のためにも」
|
| 矢継ぎ早に言い捨てるできる夫。
| 心なしか傷ついたその横顔に、アリカはひとつだけ、言葉を投げた。
|
|「そうすれば、できる夫さんも救われるの？」
|
| 視線を避けるできる夫。
| アリカは直感的に理解した。
|
| できる夫は、救われないのだ。救われようが無いのだ。
| だからその上で、なにかを目的に動いている。
|
| それがなんなのかは、きっとどれだけ聞いても教えてくれない。
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そうきたかｗｗｗｗｗｗｗｗｗ
あしたお休み了解です！！
ピンク「は？何いってんですか人の彼氏に？処しますよ？」
_ ,, ....,,、__
ｒ:ｉ州Ⅵ彡三≧､
, ',!ﾉﾉﾊｨ//r''^`ﾐⅥﾐ'､_'
/Ⅵ!ﾘl|l|/,イ ヾﾐ'､ﾐ､_ヽ 宴会でも悪だくみでも乱交でも好きに使えばいいよ。
{i|l|Wfﾘ/} _ノ ｀ヽllﾄヾﾐゝ､_ あ、でも乱交の場合はちゃんと交配状況をレポートにしてね。
）洲从|i{f ● ●ｌﾊﾐ!ﾄ､ﾐヽ
,川h{ﾐ ⊂⊃ ､_,､_, ⊂}l洲ヾ' でないと『血族』的に面倒くさいから。
ﾘﾉ|i⌒ヽ'､. （_.ノ ﾉⅥ／⌒) じゃあ、ぜったいあくはごはんたべるから。
ノｨｼi|ヽ ヽﾐ､､ __ .,;ｨi{l|::::ヽ ／
.彳 ∧__,/::ﾄlt洲Wjﾘ;/:::::::::::ﾊ
ヾ::::::::::lヽ０００/:::::::::::/ >
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|「ねえ花京院、お昼御飯はまだかい？」
|「ジェニュインです。一昨日召しあがったでしょう。何度食べる気ですか？」
|
| パツキン美人秘書の尻を撫でて、振り払われる絶対悪。
| ここは彼の店の奥にある広大な道場であった。
|
| 『血族』の結界の張られた空間。本来の土地面積よりも広く感じる。
| そこに、やる夫とその他関係者が適当に集められていた。
|
|「シックス、そういう下品な冗談は相手と状況をわきまえてから言うんだね。
| 平均年齢はどれぐらいだと思っているんだ？」
|
| 棒飴をくわえた佐倉杏子の肩の上で、キュゥベぇが苦言を呈する。
| 当のシックスは海藻のような癖毛を振り振り、一同を見渡した。
|
|「少なく見積もって百歳？」
|「少なく見積もりすぎじゃ……わしらだけで6000パワーはあるぞ」
|
| 空間の一か所だけが、華やいでいた。
| まるで光輝を背負っているかのように、純粋な美のエネルギーが放射されている。
|
| 人間の姿でワンカップを傾けるニャンコ先生と、その横に立つ美の女神が原因だ。
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／;;;;r'￣´ ｀￣ゝ､;;;;;;;;;;ﾊヽ
／ソ´ (ﾍ;;;;;;;ﾊ）ﾊ
/／´ / (ﾍ;;;;;;;|） ﾊ
ﾚ' /| ヽヽ ヽ （ﾍ;;;;|） ﾊ
/ / /│ |＿＼|__|＿_ (ﾍ;|）） ﾊ
l / l | | r'| | ﾊ ｀ ((!!)) |
| | | 」-ﾄ､ﾄ､ | _x===| }（（ﾄ､ヽ | 6000万パワーズ！
| レ|´| | | ヽ | ｒテ´ | / ハヽ__」〉| 強そうねぇ！
＿| | | | |_==ヾ､ ∨ |/ / {{￣￣||
〈l￣〉ﾊﾊ ＼＼xﾞ , /／/ / llヾ〉 |||
ヾ_'-'∧. ヽ ＼＼ _ ノ jﾉ ,ｲ /| ll |ヾ_ | /
/||ゞ´∧ ＼_＼ゝ ／// | {{| | | /;;;
/／´|| 〉〉､_ ヽ￣ヽ､ ／ｲ‐,,/ ﾞ| | |∧／;;;;;;
// ﾞ |_| /＼＼＿|｀ - -､- ＜￣;;;;;/l } /｀│＿;;;;;;;;;;;
/＼ー─-､ / /￣/| || |;;;;;;;|;;;;;;;;;;;//| |＿／;;;;;;;;| ;;;;;;;
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／/ ／ ヽ/く;;;;;ヽ |;;;;|》 |/ ／ 《/;;;;;;;;;;;／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
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| そう手を叩いて喜ぶ美女。銀を伸ばした細工のような美しくもしなやかな髪が揺れる。
| 動かず、喋らず、考えなければ最高の美の化身。水銀燈だ。
|
|「しっかし、その……本当に？」
|
| 彼女を指さし、首をかしげ、困ったように周囲を見るのはキオ・アスノ。
| この場に居る、もっとも『封印像』の悪魔たちと親しい少年。
|
| 苦虫をかみつぶしたような表情の何名か。逆に興味深そうな何名か。
|
|「これで『封印像』の悪魔は出揃ったな」
|「いやあ、『猟犬』は強敵でしたね」
|
| 三ヶ月前、『血族』から流出した『十二の封印像』の悪魔たち。
| 長らく『血族』を苦しめてきた存在も、ようやくすべて居所が分かったことになる。
|
|「後は『万魔』と『傾国』の処理か……『蛇身』は大丈夫なんだろうな」
|
| キオに向かって横柄な口を聞いたのは間桐慎二。
| そしてその前に発言したのは北斗ケンシロウとミスト・レックス。
|
|「その『万魔』はいないのかしら？」
|「警戒しているのだろう。この面子に囲まれたら奴と言えどただでは済まないだろうからな」
|
| 取り澄ました顔で、周囲に目を配る遠坂凛と、その夫。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,､ ──r -、 .._
,､ '": : ￣￣ ` Llヽ: ` 、
／: : : : : : : : : : : : : : : : ＼へ: ＼
,.': : : : : : : : : : : : : : : : : : : :∧-ﾄ: : :ヽ
/: : : : : : : : : : : : : : : / : /l: : : ヽLヽ: : :.',
/: /: : :iヽ: : : : : :.,': : :/l: / l: : : : l-┴i: : :',
. ,': :/: : : l..._ヽ: :l: :/: :./'"l/＿ l: : : : ﾚ'"liヽ: :.!
. !: /l: : : :l ＿ヽl/l: :/ ｨ::::::i〉: : : :.l:::::li:lｉ} : l
l: :l l: : :i l〈 i::::ヽ l/ ヽ- 'i: : /: :!::::li:lｉ:}: :l
. ', l. ',: :.ｌ: ﾊ` ‐' l: / : 人:::li:lﾘ: :.l
ヽ! ヽl/:ハ. ' ﾚ': :/: : ヽlｉ/: : :l
l: :i: ,ﾍ - ‐- lノ : : : :/: :/: : : l ……らんこう。
. l: :l/ : ヽ. ,､＜ /: : : :/: :/: : : : :l
', l: : : : : :＞＜Pi＝/／l: /: :/: : : : : i:!
ヽ: : : :/: : /7 く::::::::::::::l/:／: : : : : : l:.',
` -'⌒/V /::::::::::::::::/: : : : : : : :.l: :.',
,､イ７─‐┴､::::::::::/: : : : : : : : /ヽ: ',
r7::::::l/ / / /:::::::, ': : : : : : : :／ ', ',
//:::::::し〈∧__/:::::／: : : : : : : ,.' i: ',
／:::::::::::/_/:::::::::::, ': : : : : : : : :ｲ !: :',
ｲ:::::::::::::::/ /:::::::::::/: : : : : : : :/ヽl＿_０ ３ ﾊ: :.',
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|「おいバカしょうきにもどれ。でないと強制退場だぞ」
|
| 豊満な乳房に指を食いこませ、荒い息で自分を抑えようとするのは、元『武僧』の巡音ルカ。
| 彼女の保護者たる北斗ジャギが面倒くさそうにため息をついた。
|
|「実際ルカは下がらせた方が安全」
|「そもそも何でうちの班だけフルメンバーなの？」
|
| 腰の低いサラリマン姿に扮したロストスキルと、巫女服の少女、博麗霊夢。
| 彼女はこのメンバーで最年少だが、肝は座っている様子である。
|
|「色々あるけど、やる夫の知己あるいは共犯者ってことでメンバーを集めたからだお」
|「おい待て」「共犯者ってなんだ」「そもそも誰だっけ？」
|
| やる夫のセリフに、喧々囂々ヤジが飛ぶ。
| 想定通りの状況だ。
|
| この広間に集められたのは20人程の男女＆悪魔。
| 彼らを招集したのはやる夫である。目的はまず三つ。
|
|「えー、全員の自己紹介は後にして、まずは飲み物を配りまーす。
| ビールかコーラか麦茶を用意しました」
|
| トレーにプラスチックのコップを乗せたものを押して無表情な青年がコップを配る。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿ ＿_
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／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ.
イ::::::::::::::::;::::::::::::::::::､::::::::::
ｊ:::::::::/_/_!::､:::l_ヽ_|_!::::::::::l
/!:::::/ ﾘ _ハ!ヽ:|__ﾏ ｌ::::::::|｀ なお、オレは戦闘にも陰謀にも
′::::{￣V￣ ￣V￣ ﾘハ! 一切関係の無い非戦闘員なんで
八! !′ この場を仕切ります。
ﾄ ＿ ノ
≧ｒ __ ィ 異論は認めません。
人≧ｙ ｒｲ人
{__ ヘ_７ ｀ヽ
ｒ ´ T ＼
ｲ ! !
! | ハ
ｌ |! { ! {
} ヽ＼ |! ｊ |
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|「偉そうだぞ東田ぁ！」「黙れ」
|
| 異論を挟もうとした慎二の側頭部を、麦茶のペットボトルが打ちすえた。
|
|「じゃあ全員行きわたりましたね。やる夫さん前に」
|「何でこんな人数になってるか分からないけど、入即やる夫ですお」
|
| ぐるりを見渡し、冷や汗をかきながらやる夫が立ち上がった。
| 視線が集まる。訝しげな雰囲気。
|
|「やる夫くん、『血族』やめたんじゃなかったの？」
|「ああ、それの関係で御挨拶が」
|
| 鷹野三四の問いは核心であった。
|
|「まず、皆さんに発表したいことと命乞いがございますお」
|「いきなり命乞いか！」「引っ込め！」「間桐さん、静かに」
|
| やる夫は覚悟を決め、息を吸い、ゆっくり吐いた。
|
|「私、入即やる夫は『血族』の客将で『結社』および『教会』から高額の賞金首にされている男、
| 通称『脳噛ネウロ』の実の子供で、母親はイギリスあたりの女神だそうだお」
|
| 野次が止まった。数名の鋭い視線がやる夫に突き刺さる。
| その中でも、最も殺意に満ちていたのは、他でも無いシックスからのものであった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＿＿＿_
／ ＼ で、こちらがやる夫の母親の姉。
／ ─ ─＼ 水銀燈さんです。
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | 彼女はクソオヤジに誑かされた妹を助けるために日本に来て、
＼ ｀ ⌒´ ／ クソオヤジと誠死ねの罠にはまって
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノﾞ-､. 『血族』とカチ会った挙句に封印されたまぬけだお。
: | '; ＼_____ ノ.| ヽ i
| ＼/ﾞ（__)＼,| i |
＞ ヽ. ハ | |｜
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「ちょっとホントのことだけど、もっと優しく言ってくれるぅ！？」
|「憎めないドジっ子ですお」
|「なのよぉ！！」
|
| 豊満な胸を張る水銀燈。
|
|「で、水銀燈の命乞いと同時に、やる夫は『血族』に客将として参加したいという意志を表明するお」
|「……水銀燈君の方は？ 参戦してくれるのかな」
|
| 質問の声を上げたのはキュゥベぇだ。やる夫の視線に、水銀燈が首を振る。
|
|「降りかかった火の粉は振り払うけど、私はアンタ達の手先になる気はないわ。
| お願いがあるならヤクルトのギフトセットを包んで持ってくるのね」
|
| 随分安い報酬だが、少なくとも積極的に敵対もしない様子。
| キュゥベぇは納得した様子で頷いた。
|
|「こう言っては失礼かもしれないが、入即君は何かできるんですか？
| 防衛任務に向いているとは到底思えないのだが」
|
| 『血族』に入るのはいいとして、きっと審査もあるだろう。
| だが、やる夫は何ができる？ どんな異能がある？
|
| ミストの疑問は当然のものであった。
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うーむ、ついにやる夫も覚悟完了したか
「誰でも殺し方わかります」
とは言えないよなあ
PC的にはアイテム使いだし、ふんいきふんいき
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | 死の予言ができますお。
＼ ｀ ⌒´ ／
,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノﾞ-､.
: | '; ＼_____ ノ.| ヽ i
| ＼/ﾞ（__)＼,| i |
＞ ヽ. ハ | |｜
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|「死の予言？」
|
| 最初に食いついたのは、それまで沈黙を保っていた男であった。
| 浅黒い肌に白髪、いい年して真っ赤なコートを着込んだ男『弓兵』。
|
|「はい。死の予言ですお」
|「死の予言とは……異能でおじゃるか？」
|
| 同じく、部屋の隅で様子を見ていた麻呂が尋ねる。
|
|「はい、そして遺伝ですお」
|「え、遺伝？」
|「はい。遺伝です。遭遇した全員の死を観測できますお」
|
| 驚くシックス。異能の遺伝。『血族』としては当然のあり方。
| しかし、死の予言？ そんなマイナーな能力を遺伝するなど聞いたことはない。
|
| 異能の遺伝は基本的に、神族や種族との親和性程度だ。
| 間桐慎二が、その始祖の血を引き、間桐の呪術の才能を持つように。
|
|「……で、その死の予言は『血族』で働く上で何のメリットがあるとお考えかな？」
|「おい、キュゥベぇ。その言い方は無いんじゃねぇのか？」
|
| 揶揄するようなキュゥベぇの質問に、杏子が口を挟む。
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＿__
.| -、 ＞ 、, -─- 、 , -─‐┐
!i >、 ／ i !
i／.／ < .｀ヽi
/ / V ヽ---ミ、 正直信じがたいんだよ。
, ./ i ﾊ ヽ, 死の予言？ 未来視の一種かな？
., , , 、 ! i .ヽ
i .i. （.' ) r,¨ヽ | ! Y 遭遇した全員の死を観測？
/ .人 ¨ .ゝ-.' ! 八 | わけが分からないよ。
, - ﾉ iゝ、 ゝ^-' .ｲ| .ヽ--ﾐ ,
,( （ / ≧- ＿＿＿ -- ノ ! フ.ﾉ、ノ
と" ヽヽ、 .∧ / .> "¨ Y.ﾄ、 - "／ .ヽ
∠, ゝxﾆ_ノ .i / ゝ-r‐ " 、 Y"
ゝ--- " 人_u_.u__L ---── 'ゝ ＿}--'
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| それがどれほどの異常な事態か。キュゥベぇがゆっくりと説明する。
| 『弓兵』や凛の夫婦、シックス、麻呂などは理解しているようだが、若いほとんどは把握できていない。
|
| その異形を。
|
|「そもそも、特定の未来を確認するだけでもかなりの神格や儀式が必要だ。
| 未来視に特化した神に仕えても、正確で遠いな未来を確認するのは難しい。
|
| 死のみと限定するにしてもだ。更に言うには、未来視の正確さも問われる。
| 精度と期間によっては、ただの出任せと違いがない」
|
| まったくもってその通り。やる夫は頷いた。
|
|「僕も信じがたい」「私もですぅ」「えー、やる夫が嘘をつくとは思えないだろ」
|
| お気軽に感想を言い合う友人たちを横目に、やる夫はキュゥベぇに続きを促した。
|
|「更に言うなら、死に触れるのは禁忌だ。
| 何故禁忌なのか、コストパフォーマンスが悪いからだよ。
|
| 死に触れて、死に近づきすぎると、基本術者は発狂するか死ぬ。
| 穢れに触れすぎて病にかかる者も多い。そうだろう、柴崎蒼星石」
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! ,. -‐── ────┴ ─‐┐
', ,. '´ /
> ´ /
く . -‐=＝＝＝＝= ー-く
＼ ,. . :"´: : : : : : : : : : : : : : l: : : : : : :ヽ
>'´ .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: ./ハ: :.l: :!: : : : : :l
i: : : .: : . :. {: : : : : : : :./ /ﾊ: l.: !: : : : : :}
|: : |: :.|: : : |::.:.:.:.:.:.｀メ､ // V: :l: : : l : ;′
|: : |: :.|: : : |::|: : :∠イ_〃＞ Vく: :./}:/
＼|: :.|: : : |:.|: : :`弋夕ｿﾉ｀ tり:.:/ l/
＼|ヽ: :|.:|: : : :.i.:|￣ ヽjⅣ そうですね。
}ヽ仆ヽ: : : :lN _ _／: :l 僕も『ハサザマノヒメ』の穢れを負っています。
／￣￣｀`ヽ､: レ'´￣｀): : : :l
／ V `ー ﾕヽ.:.|
,ん子こ`ヽ | ﾕ､l./
,ん'´: : : : `ヽヽ | l ﾊ'′
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|「たとえばやる夫がこの場に居る全員の死を観測したとしましょう。
| 次の瞬間彼はよくて死亡、悪くて発狂しています」
|
| 逆ではない。最悪の発狂は、外から見てその狂気が観測できない状態だ。
| 穴と言う穴から血を撒き散らして死んだら、それだけで害はない。
|
| しかし、狂気で歪んだ予言は、聞いた人間を危険にさらす。
|
|「順番にお答えしますお。まず先月のニャルラトホテプ戦以降、やる夫の未来視は稼働しておりませんお」
|「オイそれは詐欺じゃねーのか！？」「ですよねー」
|
| ジャギのヤジは正鵠を射ぬいていた。
|
|「やる夫が死を見るのは、当時は自分の意思で選択できましたお。
| ただし時々勝手に見てしまいました。これを使うと即座に体調が悪化し、よくて嘔吐しますお」
|
| 嘔吐と聞いて、蒼星石の眉が上がった。
| 三ヶ月前のお台場で、やる夫は常に顔色悪く何度も吐いていた。
|
| それを思い出したのかもしれない。
|
|「期間に関しては……恐らく一番遠くて今年の終わりを見ましたお」
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／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
./::::::::::::::;ﾊ:/ゝ、::::::::::__:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
i::::::::::::;ﾍl ヾ ,,'ﾆ¨--¨ﾆ､‐-''´ヽ:::::::::::::::::!
!:::::::::::l ﾞ ..:.:.:7"::;:::::＿::､ヾﾞi:: :.: ,.ヾ､:::::::ﾊ
::::::::::::iゝ. .:.:.:.:.l::::k'_´_o__ﾞ,!:::7 7;:::＼ﾞ¨" ,!
::::::::::::lゝ :.:.:.:.:ﾞー───‐'.:.:.:.: k'^ヽ、ﾞi ﾉ 年末。
::::::::::::ゝ :.:.ｧ''''":::￣￣::''ー'':::ヽ｀ﾟ'-ﾞ_,! 丿 三カ月か。微妙な所だな。
:::::::::::::::〉.:.: ,ｎ :.: rャ:.:.:: z､ :.:.:. .:.:ヾ､:.:.: ,ﾉ で、誰の死かは聞いていいのか？
l:::::::::::::i.:.: |:::| .:.:.|::::| :.: i:::::|.:.:.:.;ﾍ.:.:.:. ,ヾ }
|::::::::::::l:.: _レﾍ:.:.|:::::!:.:. !:::::|.:.:.:l:::;!.:.:./::i 〉
}::::::::::::!:.: ´ .: ,}:.:|:::::l:.:. !::::::!.:.:,!::;!.:.:,'.:.:,',!
!::::::::::::l.:.:......:.: /:l.::l::::::!:: l:::::::|:.:,!::;!:.:,'.:.:7.! ,ﾊ
:::::::::／i :.:.: ,/::::ゝl::::::し':::::::i.::,!::;!.:;',!:/ ｀ー‐'" }
:::／ ｀ー､"::::::::::::::::::::::::::::::｀´:::ﾚ':!;/:.:.:.:......:.: ,/
:::l : : :: ゞ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｿゝ.;,;＿,,,,／
:;' ; : :: ｀ヽ、::::::::::::＿::::::::/ l
; ,' ; : :: ￣￣:::: ,' ￣ ; i､
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|「死を直接記憶してると、やる夫自身が狂うので、残るのは曖昧なイメージだけなんですお」
|「ダメじゃねーか」
|
| だが、回避する方法は確信できる。
| 『やる夫の中の入即貸本』の『守り』は死そのものを記憶させない代わりに、別の記憶を用意する。
|
|「ちなみにジャギさんですお」
|「なにが？」
|「見えたのが」
|
| 鉄仮面の下の双眸が剣呑に光る。酷く苛立たしげな雰囲気。
|
|「一応聞くが……どうして見た？」
|「思い出したのは最近ですけど、見たのは先日の飲みですお」
|
| うつろな視線を虚空にさまよわせていたルカと、存在感を薄めていたロストスキルが顔を向ける。
| そして、蒼星石もまた。
|
|「やる夫が昏倒したところに魔術的媒体食を次々入れられた結果、見えたんですお」
|「……なんだそりゃ」
|「スシか」
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/ ／ { j l:|
/ // / , ｌ|
{//／/ ／⌒ヽ 〉 l __ l|
ﾚ'二ヽ! /'´￣｀丶二ニﾔ {ｰﾆ´-､〉}
l /ﾍ. | 丁ft::ﾃー / ft::ﾃァ/
l / ＼ ￣￣ ｛ ￣ l
､ ゝ l ､ /
l＼ 〉 ｲ ジャギ。
V/｀1 _ ´ ／ l あの時握ったスシが異能を刺激した可能性がある。
l| l ´ , --- ､＿__ ｝ / 実際スシはズバリより効く。
! 、 〈´￣｀ ー―〉 /
,| l ＼ ￣￣￣￣ ／
／{ l ＼ ￣ /
／〈 ＼ l ＼＿＿＿_/
,／ ＼ 丶.l / /
／´ヽ. ＼ ＼ / /＼
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|「それよりミスタ入即。あなたもしかして私も見た？」
|
| どろりと、血の色の瞳をぐつぐつと煮立たせながら、巡音ルカが首をかしげた。
| 肉襞色の頭髪が風も無いのに揺れる。
|
|「見たお」
|
| 水銀燈が一歩前に出た。ルカとやる夫の間に割り込む位置。
| ルカは定まらない視線でやる夫を追う。やる夫は恐怖を覚えた。
|
| 彼女の病状は悪化していた。前に合った時は正気の時間が長かった。
| しかし今は、明らかに狂気の側に傾いていた。
|
| 自ら望まぬ色情魔とは、なんて哀れな存在なのだろう。
|
|「どうやれば死ねるの！？」
|
| 『堕ちた尼僧』は、頭髪をひくひくとわななかせた。
| とろりとした分泌液が溢れ、薄紅色の頭髪を艶めかしく濡らす。
|
|「ねえ、どうすればいいの？ 私もう嫌なの。死にたいの。
| 辛いのよ、何もかもが嫌。もう救われなくてもいいから自殺したいくらい。なのに体が死なせてくれない。
|
| 人間に戻る希望も無いし、戻ったとしても帰る場所も無い。
| そんな私はどうやったら死ねるの？？？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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銀ちゃま豹変と一瞬勘違い
rへ
ｒ7´ ｀ヽ､-,. ─-､ ,.へ_､
ｒ7 ｧ'"＞'-─｀-＜ ヽ!_
r7' >'´::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ. ﾊ へ
,くi ヽ/:::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::Y i_{ ／／〉
ヽ.／!/::/::::::/:::/:::::i:::::ﾊ:::i:::::::;::',」 ／／〉〈〉
/:7 ,':::i::::::/:ﾊ,ゝ､ﾊ/ !:ハ::::i::iヽ. ／／〈〉〈〉
くｋ__!::::::L:ﾊ/〈 !_ｿ｀ ｫ'r7!/!」 ! ／／ 〈〉 〈〉 はいそこまでー！
|::ﾊ:::::::}__.| " _____└' i__{ヽ､! _,,. -/⌒ヽ／／ 〈〉 〈〉 困ってるわよ。
ﾉ:::!ﾊﾍ::|::::iヽ､ ( ｀i ,.ｲ:::|,.-'"´ l l i しゝ' 〈〉 〈〉
/:::::ﾊ::::!::ﾊ::::!;:イ＞ｰｒ＜ﾊ:|::/! | lY__ノ´
i:::/:::::!::::::rｨ';:|´ |／､ /」|:/ !- ヽヽゝ'i
ﾚ'i::::::!;:へ､ヽ!／ムヽ､_/_i ｨ,ﾍ､ Y /
ヽ/⌒i､._ Y:::::/ i」::::::::::!-/ﾚ' ｀ヽ. i/
! iﾉi 7:::く__ﾊ|:::::::::::Yiﾊ| ｀'ー-'
/iヽ-ｲ| .i::::::::::ﾊ:::::::::::::ﾊ!
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 両手と頭髪で縋りつくルカの後頭部を、霊夢が玉串で殴打した。
| しめ縄をくくりつけて塩をまく。
|
|「ああっ！ ダメぇ！ 浸透圧がぁ……体液搾り取られちゃうぅ！」
|
| 過剰に艶めかしい声をあげ、ルカが激しくのけぞった。
| 四肢から指先まで震えが走り、細かい けいれんと連動して喘ぎが漏れる。
|
| だらしなく開いた口腔からは唾液が顎に伝い、舌先が何かを求めるようにヒクついた。
|
|「教育に悪い！」
|
| しめ縄がたすきのように掛けられ、豊かな双球を締めあげ強調する。
| やる夫やケンシロウ、慎二、キオらの若い男性は居心地が悪くなり目を背けた。
|
| もちろん、杏子や蒼星石も、もじもじしながらそっぽを向く。
| だが性的なイメージを感じていないアリカは興味津々で『内なる悪魔の調伏』を見つめていた。
|
| 慣れっこのジャギや、大人たちは白けた視線を送っている。
| いや、哀れみと呼ぶべきなのだろう。
|
| ルカが、あの哀れな『武僧』が、悪魔を身に宿していることを知らぬものはこの場にいない。
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, ．-=＝＝= - ､
∠ `^`^~^`ヽ､ ＼ ──-/ヽ ヽ:／ /
,∠ -‐……‐- ､ ＼ ＼ ＼ /｀ ー‐--‐'}
／ .::.::.::.::.:..;.:.:.:..:.:..`ﾄ､ ＼ ＼ ＜´￣:｀ ー─-イ
/ . .::/.:/::.::.:/.::.::.:://.:l.:|:ヽ i ＼. ./｀ヽ ノ::::::::::::/
/ . ::./::/:.:::.:/.::.:::,.ｲ/.:::l.:|.::..ヽ i ＼ /::: :::::::::::,. v'＞
i.:i.:.:l.l.::l「.｀メ.:.:／//∠ l.:|.::i.::.ヽ i __´＿＿/:::::::::::::::::{ ＼
|::|.::|:l:::lﾚ{!､,／ // / ルｰ'ﾘ:.::.〉 i ／ ＼ }:::::::::::::::::７￢ｰ‐`
|::|.::|:l:::li ﾞヽ ,ｲ'~__,./ .ﾌ:/ ﾚ'´ .:/ ＼ ノ::::::::::::::､./
lﾊ:::ﾄ､::l｀'''"~ ｀ﾞ /:/ ,f.: .: .:.:i /{ ）:::::::,/
rｿ ﾊ､ ＿,,..-ｰ^ヽ, .,ｲ .,f: : : : :::､──'::::::::::::::::::,/ つーか、何見てやがるんですか！！
rｿ ﾉ.:i:.｀ﾞ-}__..ニニｿ~´｛ ｛.: : : : : : ＼ ノ／ヽ:::::::/
rｿ ﾉr'77´ 二`ﾆ´ ￣｀｛ ｛ : : : : : : | /`::::| /:::,ヘ、
rｿ ﾉr'77 /^ﾌ介ﾄ､ ｛ ｛ : : : : : :./:::::::::{／:::厶__ ＼
,f ノ.:r'77＼ //j,｡l l〉〉 ,r.｛ ﾄ､ : : i /:::::::::::::::::::/ ￣
,f ノ.:.:｛ ,′ // j,｡.l l/ ,rｼﾊ い: : :l.i:::::::::::::::::ノ
{ ,f.:.:.:.｛ .′ // j｡ ﾄ､ ,r ｼ( :.:.`ヽい: .:l }::::::::::ｲ´
{ f.:.:.:.:.{ L 」」 j,｡ ヽl ,r ｼ( .: .: .: .: ぃ､::ﾑﾐｙ
/{ f .:. :.:ゝ こ L..j,｡ `ヽｼ( .:. :. :. :. :. .:.:.:｛ﾐ/ﾄ､
/i.:{ { .: .: .:1三7＞＜L j ( .: .:. :. :. r'"`''‐-、.:ヽ
, .イ. :.:｛ ｛.: .: .:1三l＞＜7三ミﾐ」/ i .:. :. :. :.V´,r‐ l: : :.＼
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| 翠星石の怒号とともに、アリカに並んで興味津々だったやらない夫の首がゴキリと音を立てて曲げられる。
| 常人なら無事では済まない。しかし相手はやらない夫だった。
|
|「え？ いや気になるだろ普通！」
|
| 悪びれもせずに言いながら、やらない夫はルカに近づき、うねる肉襞色の頭髪の一部を掴んだ。
|
|「はぅうぅ……っん！」
|
| 切ない声を上げるルカ本人には興味を示さず、やらない夫は指先に吸いつく髪の毛を観察する。
| それは、毛髪の形をした別の存在であった。
|
| やらない夫の指先に、ルカの髪は完全に『吸いついて』いた。比喩ではなく。
|
|「ほら、髪の毛の途中の部位がささくれ立って皮膚にくっ付いてる。しかも、束単位でだ。
| もう少し量が多かったらヒルみたいに皮膚に穴を開けられて血を啜られるんじゃないのか？」
|
| やらない夫の発言は、女性陣からドンビキされた。
| しかし、三四や麻呂、シックスら研究者組は大喜びで観察する。
|
|「浸透圧で体液が出るとかも言っていたでおじゃるな」
|「もしかして魔王マーラは軟体動物なのかしら。海綿体だとばかり思っていたわ」
|「ねーねー、この子埋めネタで海に居なかった？ 大丈夫なの？」
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. ',ｨx＞ ´ ｀ヾゝ、
//7´ } i!_ ﾑ､＼{ヽ、
' l7 ﾊ ´ﾊ从 } ｀} ﾏﾑ
| {' ィ7Ｔ{ ﾊ /ィ示ﾊゝ' }ヽ} あっ……らめぇ……。
| | {,ｨﾊ圦 { ﾘ ｀¨ ´ / ///!
| | {`¨´ ｀ ､ ｲ /// |
l八 }ﾄ､ 厂ヽ ﾉｲﾑ' !
| ヽ､ﾄ、＼ Y ﾝ ／{ l
| ＞‐=ﾐ､ヽ ､´ ∠ミ ﾄ,、_ |
| , ´ Vﾊ}r=＝=ミ》》》ﾍヽ|
, { ヽ}＞ゝ=しﾍ ン_ミ'ﾑﾊ｀ヽ
/ ｌ , ´ ｀V´￣ ヽ ￣￣｀ ､
, ∧03 .ィ{ ､ :. ＼
/ / >ｲ/ﾊﾍﾉ ヽ
' ' / /{//人ヽ :. ﾄ ､
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| 寄ってたかって髪の毛を観察されるルカ、そのたびに艶めいた声が漏れ出る。
|
|「悪いけど散って散って！ ルカの髪の毛は性器みたいなものだから！
| 何としても触りたいならお金を用意しなさい！ 一分間一万よ！」
|「はい」「安いわね」「麻呂はもういいでおじゃる」
|
| 肉の壁になる霊夢の手のひらに、ぜったいあくが財布ごと乗せる。
| その横で、三四がカードを取り出して困惑した目。
|
|「支払いは現金のみかしら」
|「……カードでも承りまぁっす！」
|
| 両目を『￥』マークにして、揉み手をする霊夢。
| 仲間に売られたルカは、恨みがましそうに、しかし同時に切なそうに周囲を見た。
|
|「当て身」「うっ」
|
| 彼女を救ったのはロストスキルだった。気配なく忍び寄り、背後から延髄を一撃。
| 気分良く昏倒したルカを優しく抱きとめ、床に転がす。
|
|「やる夫＝サン。話を戻してください。その流れだと、我々三人の死を見たということで間違いありませんね？」
|「その通りですセンセイ」
|
| やる夫は安堵の息をもらしながら頷いた。
| ようやく桃色空間が終わりを告げる。
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／）／ノ ' ヽ､＼
／ .ｲ '（●） .（●）＼ ジャギさん、ルカさん、ロストスキル＝サンは、
. /,'才.ﾐ). （__人__） ＼ 雪の日の東京で、悪魔と闘い、相打ちになりますお。
. | ≧ｼ' ´ ⌒｀ |
. ＼ ヽ ／
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| その言葉に一番衝撃を受けたのはケンシロウで、次が霊夢のようであった。
| ケンシロウは、あのいかつい体の青年は、心配そうに兄を見た。
|
| だが、当の鉄仮面は興味なさそうに目を細めるだけ。
| そして、ロストスキルもまたその運命を容易く受け入れたようだった。
|
|「……わたしは？」
|
| 暗い声で尋ねたのは小学生巫女。霊夢は、どうだったろうか。
| やる夫は彼女の死を見た記憶がない。
|
| そもそも、彼らの死すら曖昧なのだ。雰囲気と、敵と……。
|
|「彼らの最期を見とってましたお」
|「……そう」
|
| 悔しそうに下を向く霊夢。仲間の三人が死ぬ。四人チームの一人だけおいて行かれる。
| その言葉が、彼女を苛んだのだろう。
|
|「テメーだけでも生き残るんなら上出来だ。もしそん時が来たら後始末を頼むぜ。経の一つも唱えてくれや」
|「絶対イヤ、そもそもあたし巫女だし」
|
| 頭を乱雑に撫でるジャギの手を振り払い、霊夢が噛みついた。
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, -―- 、
/l /⌒ヽ ﾍ_
. l ｣__/ ヽ V ﾍ ＿
. |｢ ､_厂 -､ｌ| ／ / ＼ しかし、年末となると実際遠いですよ。
ヾl ﾉ-､ ==' 〕＿__／ ／l ヽ
└､=' ｌV _ | l＼＼/ V l もうちょっと近い死は無いですか？
＼ ｀ _/, /｜ ', ＼ | l
,不>ーく..⊥＿| / ヽ ＼
. r‐' ／ | ＼ ├〈＼ ∨＼ | ＿ ＼
. |ｰく_ |＿_｣＞ vハ| /／＼ ,＞=､ ヽ
. l ＼く ￣＞＼ | ／ ＼ / /
. ＼ r‐r―-､ ∨ / ／
l ∨'￣ ＼-∠ -ｰ ／ ／ ＼
＼ ＼ r'´￣ ∠ -‐ ´
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|「待て、ロストスキル＝サン。先に君たちの死ぬ状況を確認するべきではないか？」
|
| 割って入る『弓兵』。やる夫は頷いた。
| 知っている言葉を伝えなければならない。
|
| むしろ、ここにこれだけのメンバーに集まってもらった理由の一つはそれなのだ。
|
|「東京は戦車とかが走る、紛争地帯みたいになってたお。
| そしてお三方が倒す悪魔の名前は『ファットマン』」
|
| その名前を告げた時、キュゥベぇとシックスが反応した。
| 知っているのか？ 『元老院』の二人に関係する悪魔なのだろうか。
|
|「知ってんのか、キュゥベぇ」
|「最後まで話を聞いてから答えるよ」
|
| ガラス玉のような両目を光らせて、キュゥベぇは緊張した声で応える。
| 知っているのだ。少なくとも、心当たりがあるのだ。
|
|「なんか、天使っぽい超美系で羽が二対だか三対生えてる感じですお」
|
| やる夫の持っている情報はそこまでだ。考え込むキュゥベぇ。逆にシックスは興味を無くした様子だった。
| 知っている訳ではないのかもしれない。やる夫はふと、でっていうを思い出した。
|
| 彼は何と言っていた？
|
|「『リトルボーイ』」
|
| シックスが目を剥いた。
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推理小説の推理シーンにも似ててワクワクするよね
_ ,, .... ,,、＿_
＿l ／ｨ彡彡彡'三三≧､
＼ .fr'ﾉｨ//r''^`ミﾐﾐﾐﾐヽﾐﾐヽ 待て待て待て待て！！？
＜ ｿﾉ八l U ヽ!l|l|lﾄﾄゝﾐ なんだよその名前、ぜったいあく許さないぞ！
／ 〃 {_{＼ ／!l|l|lﾄﾄゝﾐ
li':./ﾉ○ ○uﾄ'ﾘl|l|l|l|lﾄ そんな名前の悪魔が出てきたら、
川|l ､_,､_, |l{lﾘﾊﾄl|l|､} 関係者一族郎党皆殺しにしちゃうぞ！
l|i /⌒l, ゝ._） ﾘ}}iliﾘﾄ､',ﾐ
./::| ￣|ｿ/ﾊﾂﾉﾉWl::::::::ヽ
|;:::| l ヽ０００/ l::::::::::::|
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|「落ち着くんだシックス。
| とりあえず相手は最低の下種に間違いないけれど、アレが関係するとは」
|「ぜったいわかってやってる。ぜったいあくが嫌がらせするならわかった上でやる」
|「だよねー」
|
| 興奮するシックスとたしなめるキュゥベぇ。やはり若者たちは理解できない。
| だがここで、思案深げにニャンコ先生が前に出た。
|
|「念のために聞いておくが、一般的な意味での『リトルボーイ』と『ファットマン』でよいのか？」
|
| 訳すると『チビスケ』と『ふとっちょ』。
| だが、そこには目を背けたくなるような由来が存在する。
|
|「そうだよ。1945年8月6日に、人類史上初の実戦で使用された核兵器。
| ガンバレル型ウラニウム活性実弾。通称『広島型原子爆弾』のコードネームこそが『リトルボーイ』さ」
|
| こともなげに答えるキュゥベぇ。彼の親切な解説で、やる夫をはじめとした全員が理解し、確信した。
| であるならば、『ファットマン』とは何かを。
|
|「そして長崎に投下されたインプロージョン方式プルトニウム活性実弾こそが『ファットマン』だよ。
| さすがのぜったいあくも核は許せないなァ」
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ 一）（●）
| （__人__）
| ｀⌒´ﾉ そもそもニャンコ先生はよく知っていたな。
| ,.<))／´二⊃
ヽ / ／ '‐､ﾆ⊃
ヽ､ｌ ´ヽ〉
''"::l:::::::/ __人〉
:::::::::|_/ヽ. /|||||ﾞ!:ﾞ､-､_
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:::ｙ′.: ',ゝ､_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
／: :／/: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i::|
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|「ダテに新聞を読んではおらんわい」
|
| 毎朝時間をとっては新聞を読み、ニュースを検索するニャンコ先生。
| 知識欲と現代に適応するための行為ではあるが、結果的に現代人のやらない夫よりも近現代にも詳しくなっていた。
|
|「ちなみに『リトルボーイ』と『ファットマン』には廃棄された『ティンマン』という計画もあってね」
|
| シックスが指を立て、自慢げにうんちくを披露した。
|
|「日本語訳すると『ガリガリ』になるんだけど、それはともかく『ティンマン』という名前が素晴らしいね。
| ティンでマンだよ。このごろ流行りの男の娘って奴だ！」
|
| 最低なことを言いだすぜったいあく。周辺の白眼率が大いに上がる。
|
|「待つんだシックス。そんなの絶対おかしいよ！」
|「お尻の小さな男の娘が？ こっちを剥いてよハニー！」
|「わけが分からないよ！ その内上次元干渉されるよ」
|「だってだってだって、だってだってなんだよ？」
|
| 狂人の言うことに律義に付き合うキュゥベぇに、やる夫は哀れみを覚えた。
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＼: : : : : : :｀ヽ---､ _________ --,.／: :/: : : :/: : : : : : : : : : : : : : : : :|: : : :ヽ: ヽ: :l:|
＞､: : : : : : : :____ : : : : ,／: :,. /: : : : /:／: : : : : : //}: i: : : : : : |: : : : :ヽ:l: :|:|
／: : : : : : : : : : :,. --,v: : /: : : :／: : : : /:/:／: : :／// |:|ヽ: : : : :lヽ: : : : : : :l: :|
／: : :/ ￣￣￣ ヽ ヽ￣/: ,: : : : //: : : : イ:,イ:/ |:| }: : : : ハ: : : : : : : ri:|
／: : : : :| ヽ ヽ/:/:/: ／/: : : :／ / ﾚ' l:| }: : : / ,.r | ､: : : : | |:| そーいやさ。
: : : : : : :| ヽ /: ｨ:／ /:z|:／｀ ヽ ､ / |:__/_イ=t―,l: : :/:} |:| ふと思い出したんだけど。
: : : :- -:| } /,/,'´ /{r ｲ ヽ ち;;;｀trヽ |//っ;;; ,ﾘ / |: /l/ヽ--､
- - - -:| |＼ /＼ ヽヽ} 丶ゝ__ﾘ ゝ―' ヒﾉ ,r'´ ＼
: : : : : : :| ト､ ＼ ＼ ＼i , /,'´ .}
ー―- ､| |: :｀ヽ ＼ ヽ ヾ､ ___ ノ ／｀ヽ
／: :l |:'´: :,.;＞ ､ヽ ヽ ヽ,＞ ､ ヽ - = ,'-､_r_' ´ _ ,.／ ヽ
／:／: | |: : : : : : : :,.,< ､i ヽ ヽ ヽ| ｀ ヽ ､r- '´ __,. - -､ ,. ' ´ ヽ
/:／: ／:| ヽ: :,. -'´ |､ ヽ ヽ ＼ / ,.r'r_,r--､ Y ,)､
:'.: ／: : :.| ,. --- ､ ヽ, .| ＼ ＼＼ Y,.／ ,.／ ,-=､ ヽ / / ヽ
: : : : : : :,{ ,. '´ ニニニ,Y | ｀ヽ､､y' >'__,..--､_ | ,| ／ ,ト､
: :,. -'´: : :ゝr',彡=,/´｀ヽニ=.| ヽ ヾ ヽ ｀ヽ--､__ |ミヽ<ヽ､ ヽ
: :,. --'´ |,r/ r'| ト-､__ヽt ゛､ ヾ:::|::ヽ | | | | | }￣￣￣￣ ｀ ヽ ､ ヽ
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| キャンディをかみ砕きながら、騒ぐキュゥベぇの下の杏子が挙手をした。
|
|「新宿衛生病院も、『ソレ』かい？」
|
| 一同の視線が杏子と、そしてやる夫の二人に分散する。
| 新宿衛生病院。先月の満月の戦いの際に、キュゥベぇの本体があった場所。
|
| 集中治療室にいたキュゥベぇと、結界を張って彼の護衛をしていた杏子。
| 彼らを殺害するために、ニャルラトホテプは人間もどきを放っていた。
|
| 刺客の名は『ヨーヨーマッ』。
| 範囲内の人間を無差別で殺戮する広域殲滅型。範囲内に呪いをばらまく端末を無数に散布する強敵であった。
|
| 『ヨーヨーマッ』の呪いは防御不能の呪殺であり、カタに嵌れば不可避の必殺であった。
| 呪いの発動条件は『端末と二人だけになること』。
|
| しかしやる夫、やらない夫、慎二の三人はまるですべて知っているかのように対応した。
| 『ヨーヨーマッ』の発動と同時に行動を開始し、即座に一般人を集め孤立させなかった。
|
| さらに、一般人に擬態した本体を探し当て、ほぼ被害なく討ち取ったのである。
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.〈:::::|:::::::f:::::::::;;''')::::人::ﾊミ:::::::::::::::::从
i:::|::::::::ﾄﾐ'' 〈::::{ ／}::L ミ::y-ミ::ヽ
|::|::::::::::::::ヽ ):）fイ:丁 ｿr}k ）:| ）
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{ ヾ:::::::::t k夕 r':::::jゝ ああ、あれか。
￣ゝ(ﾍ < ＿ ヾﾘ
（ ヽ ´ ／ ヽ
＞ ､___／---──ゝ.
z-≠─- ､ ヽ へ─--ﾍ
| ＼ ｀ ゝ､
| ＼ ＼
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| 慎二がやる夫に困惑の視線を向ける。
| やる夫は頷いた。慎二の言いたいことはよく分かる。
|
| 実際死を見ていたなら、敵の対処方法が分かるのも当然である。
| 殺され方を見ているのだ。『ヨーヨーマッ』のような初見殺しにとっては宿敵となりえる。
|
| やる夫の能力で、敵を見抜き、キュゥベぇを救出したのであるなら、これは誇るべきだ。
| 信じてもらうことも容易かろう。
|
| やる夫の能力であったなら。
|
|「残念だけど、アレはちひろさんだお」
|「『傾国』か」「ちひろじゃ仕方ねーよなァ」
|
| やる夫をフォローするつもりだったのだろう。杏子は頭を押さえて嘆息した。
| やる夫自身も予知していた可能性はあるが、『ヨーヨーマッ』を丸裸にしたのは完全にちひろだった。
|
| あの時は確か、やらない夫がサイフを差し出して情報を買ったのだ。
|
|「近い未来の予測がないと、実際判断が付かない」
|「だいたい潰しちゃったお」
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／,;:;:;;;;;:;:;:;:;:｀ヽ
,'.:..:.:.:.;;;;;;rrrr､:.:.:ヽ
l::;ｨ'´;;;;' ｀ヽ｡-､ヽ.::! たとえば？
{ﾐﾚ'"´. ,.. ¨¨｀,ｨ;;彡. 言ってみろよ。オラ。
{ﾐ!. i i::i l.:::! l:l .l:! l;;彡
iﾄ､i i:::iﾉ:::l/::l/::!ﾉ:::|
ヽ入 ｀VⅥ /l /l
ﾄ､ `1 ﾐヽﾆﾆ彡'´ L､､､,,_ _./ ﾚ' ..!
ﾄ､. ! Vl ,..ィ´.:j! ',::,,,,,/ ,::′ ,' `ヽ`ヽ`Y´.:./l ｀`ヽ
| ヽ| 〃／.:.:.:.j!...',;,,/ ,::′,,,,,........ﾘ ﾉ.:::l / .l.:.:.:.:.／ﾄ､
,.ィ´ヽ ﾉ／ / ;;;'''ﾞﾞﾞﾞ｀,.''''ﾞﾞﾞ´ {: :i i!.::! ゝ ' ／.ィ´ `ヽ
ﾄ､/ ﾄ､, ´/ ./:::'' .人 ..:;;′ .人 .:i: :.! i!:::!.:.;.ィ彡'´ ;; .ﾞ､
l ﾊ V.:.:.i / ,:: ｀Y´.;;;′ ｀Y´ .!,..ィ"´`ヽ〃;;;:;:;:;:;:;;:;ﾞﾞﾞ´: .
l/.::',.:./.:.:.:j. /''"´ ....;;;;; 人 (,,､､`Y.. ):::V´ : : :
{ V「88j/ ...;;;;;;; .:.:｀Y´ (´ _ﾉ(.. )::::::',､､､,,,__....: : : :
〉;; ぃ.::.i l..... ........:.:.:.;;;)｡k､ﾐヽ (´ _ﾉ(.. ).::::::!: : :.:.:.:.;;;;;;;｀`
/;; .い.::i l;;;;;;;;,､､ '''ﾞ""´ ..｀ﾞﾞﾞﾞﾞ'''''''''´( _ﾉ(.. ).::::ﾉ: :.:.:.:;:;;;;;;;;;;;;;;;
,′ﾉ人 jりi ;: : : : :''''';;;;ゞ ::;; ...:.:.:.: .: .: .;;:i1 i爪ﾂ"´.:.:.;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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|「今日あたり、女の子を人質に取った男がショットガンで弟を殺害する案件が」
|「なんだそりゃ、悪い奴だな」
|「ちなみに返り討ちに合う確率の方が高かったみたいですお」
|「人質まで取って？ 根性ねーな」
|
| 笑いながら、ジャギはふと思い出したようにケンシロウを見た。
| 微妙な表情のケンシロウ。彼はいまだに、兄とどう接すればいいか分からないのだ。
|
|「オレかよテメエ！！」
|
| 鉄仮面を震わせて怒るジャギ。霊夢と蒼星石が指を指して笑う。
|
|「笑うなてめーら、犯して埋めるぞ！！」
|「それができるなら君はここにいないだろ、せっかくだから君の目論見もバラしてはどうだい？」
|
| 微笑む蒼星石。顔を逸らすジャギ。
| 二人の間に流れる、他者には入り辛い特別な空気。
|
| やる夫は小さく息を吸った。まるで酸素が足りないかのように、胸が苦しい。
| 同様の顔をケンシロウもしているのを見て、やる夫は複雑な気持ちになる。
|
| 目を伏せ、かわいい恋人を思い出そうとし。
| 瞼の裏に浮かんだのは蒼星石と翠星石で、やる夫の胸はさらに痛くなった。
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|三三三三三三三三三三三三三三!|
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.l: : :ヽ:､: : ＼: : ﾍ: : ヽ: : : : : : l: : : : : :l: : :.:l
.i!: : : :ヽヽ､: ヽ`､:ﾊ:l:l:ヽ: : : : : l: : : : :.:l: :.i:.:l 君だって分かってるんだろ？
i!､: l: : ヽ＼`'ﾔﾃﾘﾌi!: :/: : : :l:l: : : : : l: :.l:.:l
l! ヽ!: :.ﾉ ゞﾂノ/:/: : : : :.l!: : :.: :.l!:.//l:l ジャギ、もはや君は用無しだ。
.ヽ:.ヽ //l: : l: : : l: : :/: /:/!/ i! ならばくだらないプライドは
|ﾄ､'ｰ､-､ ／ .l: /: : :/!: /／／.|! | 捨てたほうが身のためだと思うね。
.| ヽ!､ヽ´ ,､ｨ'´ l/: : :./ |/´／
ヽ!:l:`´:i!/i |: : :/'´´ ヽ､
i!.|: :/|!'´!／!:./ `r‐､rﾍ__
ｨﾍl:/ ,ｨｮｭ .|/ r-'`/`ｰ'､_`!
.〈 ゝ.i!,ｨﾅﾐﾐﾄ, ´ ゝ/ヽ,::::::::::ヽ
ｲ 〈 〃ij! |三! /´ﾉ i´::::::::::::::::ヽ
ｨ ノ.《 ij! .|三! 〉 i 〉:::::::::::::::::::ﾍ
.!`ｰ､ ゞ! ゞｸ ゝ./ /::::::::::::::::::::::::ﾍ
// ,ｲ ij! ij! i´ .l .ﾉ::::::::::::::::::::::::::::ﾍ
/.i ﾉ .ij! .ij! _ﾉ ﾘ´:::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ
.!_.| `j_r-ij! ij! _ ゝ /,ゝ:l:::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ
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|「ちょっとアンタ。黙って聞いてれば……！」
|「いや待て霊夢」
|
| 蒼星石の挑発に激したのは、ジャギ本人ではなく彼のお目付け役の方であった。
| 鉄仮面の怪人は、逆にひどく冷たい声で小学生巫女を制した。
|
|「最後まで言わせてやる」
|「いいんだな？」
|
| 蒼星石とジャギは険悪ににらみ合ったまま、視線をわずかもブレさせない。
| 二人とも、ケンシロウを一瞥すらしない。
|
| 事情を何となく理解しているやる夫としては、二人の動きに感嘆しか出なかった。
| やる夫ならば、ケンシロウに目を向けてしまうだろう。
|
|「ケンはもう大丈夫だろう？」
|
| そして蒼星石は、ケンシロウに意識すら向けずに言い放った。
|
|「なに？」
|
| 思わずうめいたケンシロウを、ジャギが見る。
| 壮健なる弟と、悪名を背負う兄の視線が交錯する。
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|::::::::::::: 「イ三三≧x､{/{/八ハ::: /
|:::/{::::::/ <￣弐{¨¨` x≦三{|: /
|: | ∨{ ￣三= { 坏)「Ⅳ どういう意味だ蒼星石。
八乂V!: ＿| ′
/:::::::/｀l| ￣｀ /
. /::::／ 八 ∠二ｱ /
/::厂 { ＼ ヾ /
-=イ⌒{ / { ＼ /
. ／ﾆ＼ﾆﾆﾆ＼ { ＼ ＿＿/|＼
／ﾆﾆﾆﾆ_＼ﾆﾆﾆ＼ { /{ |ﾆ=＼
￣}ﾆﾆﾆﾆﾆ=丶ﾆﾆﾆ＼八 //{ 八ﾆﾆﾆ≧=- ＿＿＿ ィ7
} ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼＼ /八 ＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ7
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 低い声で、北斗の名を継ぐ漢が盟友を問い詰める。
| 蒼星石は、一瞬冷たく彼を見つめるとまた視線をジャギに戻した。
|
|「北斗ケンシロウは押しも押されぬ『四天王』候補者だ。
| 『血族』でも『教会』でも評価が高い。君が障害になる必要はないんじゃないのか？」
|
|「確かにケンシロウは恵比寿の人間もどきを倒し、五色不動でも人間もどきに勝利した。
| その上に大使館で『騎兵』と戦いやがった……だが、オレはまだ足りないと思ってる」
|
| 数ヶ月前、ケンシロウは二人の兄を一度に失った。
| 北斗の名を継ぎ、『四天王』として『血族』を支えるのは、長兄ラオウのはずであった。
|
| だがラオウは魔王マーラとの戦いで片腕を失い、肉体は呪いに汚染されていた。
| 現在は善国寺内で厳重な封印を施され、呪いを浄化するべく謹慎中だ。
|
|「ジャギ兄さん」
|「オレを兄と呼ぶんじゃねえ！！」
|
| ジャギは凄まじい剣幕でケンシロウを怒鳴りつけた。
| 野太い指を突き付け、ケンシロウと距離を置く。
|
| 現実の距離ではない心の距離を。
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,,､-ｰ ―- ､,
,､ '" つ ｀ﾞ' - ､
／ と ヽ,
／ "" ｰ ヽ
/ ,ｨ rニ ', いいか！ オレはまだテメーを認めちゃいねえ！
,, ,'/lrﾚ"(ﾞ（"（ l 北斗を継ぐのはオレ様だ！
/:| ,'| （,,（ﾞ,,r--ｰ―-==;z ､ r､r､ |
/.::| ,'lﾞﾐo 〈" :,,､-ｰ ､;;Y /:|｀ﾞ''ｰ､ノ ﾉ .jY､ | 兄より優れた弟なんざいねえんだ！
|:', / ::::| l|ﾞﾐｏ ヽミ::ﾞ' ﾞﾞｰ-ﾉ :/ /::,､;;; ､｀' ､ｿ ノﾘr } それをオレが証明してやる！
|:: ',. / :::::::| lヽ(｡/-yｰｰ-ミﾆ;;"ノ', :}::ﾞ -穴,,ﾞi,l::::ﾞl"彡 ﾘ
|:::. ', / ::::::::::| ,':::| |::::: | ､:::| ,,､::〉:::::''ｰﾞ'､''- ､;;彡'",,,／ｲ
|;;;;;,,', /::::,､- ､| ,'::::| |: l| l: | | l:: |;;/ :/ r,ｧ":::｀ﾞ＞ｰｰｲ) ,, ｲ /ｌ
|;;;;;;. ', ,,''ｰx三＝､-＼' ::::|ll| |;|.l |;;| l: |;;;/ / ./;;/ / /ﾌ::: ::イ:::/ /::,'
＿,,;;;:;:;:;,,,_彡"´￣ ヽ:ヽヽlﾚl |;|.l |;;| l |;;;/ / /;;/ / /// /〉 :::/ ::/ /::: ,'
:::::,､- ,'"V .N'''"/-ｰ-､"ﾞ } l|::|ヽ: ', |;|.l |;| l |;;/ / /;/ / /// // :: /::::/ /| /::::: ,'
:::／´ ,,､ﾉ _/::l :/ｰ '''''''ﾞ .::| ::ﾉ:/::ﾘ:::ヽ:ﾞj;|.l |;j l |;/./ /;/ /,///:/;/ /::: / ./::| /:::::: ,'
/ ／ノ',／:::::::| { .::j-彡"::ノ::l|:: l'':::ヽ|:ヽ;|;| l /;/ ,／/::／/／|ｲl|::/ /::::| /:::::::::,'
j／ :::', ...::::| ::' ､,,,,,,,,,､-'===彡'"::/::: ',::::::::::'ｰ-､ﾞ::::::ﾞ''::∠／;;ｨ'": //;;|ﾉ ./::::: | /:::::::::/ ／/
:::.........Y ..:::::l ,,;;;| :: :::::::::::|~ヽ:::"／"" 三ﾐ ',::::::::}}::::::::::~''ｰ'''"´::::::::ヒノ:/ノ /::::::: | /::::::::::/ ／:::/
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|「うそつき」
|
| 暗い声でジャギを糾弾したのは、早くも目を覚ましたルカであった。
| 彼女の肉襞色の髪はすでに落ち着いており、淫猥な気配はなりをひそめている。
|
|「どういう意味だ？」
|「北斗を継ぐ気なんてないくせに」
|
| ルカの瞳は哀れみを浮かべていた。
| それは、自分自身への嘲笑を含めている。
|
| やる夫は何となく理解した。蒼星石も何かを察した様子である。
| シックスが眉をひそめ、なにか茶化そうと口を開いた。
|
| だが、それより早く割り込んだものがある。
|
|「それは確たる証拠も無く口に出していいことではありませんよ」
|「どういう意味？」
|
| それまで傍観していた男の言葉に、周囲は胡乱な視線を向ける。
|
|「『血族』は『教会』とは違うという意味です。俺は防衛隊時代の経験から、色々学びましたけれど」
|
| 言葉を濁すミスト。
| だが察しの良くないケンシロウも、彼の口調から何かを読み取った様子であった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ミﾐゝミ ﾐミ＼ミミﾐ/
⌒ミ yミミ ミミミミゝ≧|
､ ⌒ヽ、,ｲミミミ ミミミミＺミ|
ミ、ﾄﾐｚ､弋ミミミﾐ r=≠::::::::::| まさか兄者。
ﾉ｝ヾミミ、ミミﾐ,r彡ノ＿::::::::|
//ミミミミﾐｚゝ{彡´/戉ノ.:::::::ヽ
｛｛ミミﾐ r=≠ 彳.:::::.... .:::＼ ,＿＿_／
)ルﾐz､´ r介j} .::::::::::.. .::::..}ノ彡ミミ
弋ﾐゝミ、 ´ | ＿ ) .:::.|彡´-三
￣ヽ≠、 ｀⌒ｔ'::::::＿ .:::.|彡 -三
＼ 〃´￣ .::::/ }:. -三／
Ｏ ＼ ' ミ::.. .::::/ :|::. ／
| ヽ ＼ ﾐzｲ／ |:: / ニ
| /⌒ヽ―< j:: / 三
イ / 三/ ヽ ゝ/ / ＿三
／厂 / 三/ ／⌒彳/／￣￣´
： ／ 三/／ /´r彡´
イ ： ,. -/ ＿-三/ / 彡
／厂 ／ 〈／＿_＞ ﾄ､＿＿＿_| ≠
. ： ／ ／ -三/ | 彡
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|「あー、うっせえなあ畜生！ なんか証拠があんのか！？」
|
| 逆切れするジャギに、ルカが艶然とした流し目を送る。
| 男ならば、思わず息を飲むほどの艶めかしさ。
|
|「ジャギはいつも私に優しいでしょ？」
|「誤解を招きそうな言い方だな」
|
| だが、ルカの言葉を少なくとも霊夢は正しく理解した様子だった。
|
|「もうそろそろ諦めなさい。見苦しいわよ」
|「ゲェーッ！？ 『先生』まで裏切りやがったァ！？」
|「『血族の裏切り者』に裏切り者扱いされるなんて皮肉よね」
|
| 『血族』における悪魔研究の権威、鷹野三四の言葉がとどめであった。
|
|「すまないが分かりやすく教えてくれ」
|「頭は使えるうちに使っておかないと、脳まで筋肉になるぞ」
|
| 解説を求めるケンシロウに、無暗に偉そうな慎二が観覧席からヤジを飛ばした。
|
|「僕の記憶が正しければ、北斗ジャギは『結社』に行く前に、
| ケンシロウに負けて秘孔を突かれ、顔面をぐちゃぐちゃにされたことになっているなぁ」
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, r ー .､
i! /.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ だが、その噂は真実か？
ｔ､ ,i.i, ._／.:.:.:.:ゞ､_:.:＿i 違うよなぁ？
'i,ヽ__,i,,,,i,/_>'i.:.:.:.:>｀ミァii/,ri'
.＿_ ,》´ー- ､ ヽ-!､i'.:.:Z//∠'_/ ,r､ ,r､
｀' .i´.i ＿__ヽ_ ト､｀Y´ﾄ､.:.:.:} _/ i /' ~!
.l.:.:ヽi ´ _,,,,X,,,,_i .|.:ヽ-|￣/＿ / ./､､,,//)
i.:.:.:.:!､ ､ ／＞ラ--/~.i ⊂ﾌ,＞-ァ--ｧ､､_ /三i¨¨/
》,.:.:.:.:ヽ､ヽ__ i.:.:/.:.:.:/.:.:/.:.:,i .// ' /.:.:.:,i.:.:.:.:i'｀7.:.ヽ:.:i
ハ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀7ーヽ＿＿, r'ー ←' ､,, |.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i___/-'
/_.:.:ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ ト-+‐个.:.:| ｀¨''' ー-‐''''¨´
￣｀iヽ､.:.:.:.:.i_ >-+-|'-､.:.:|
|!!!|||ヽ､/ ［￣|￣］ ｀ i!
.i!.:.:.:.:￣ミミ ￣￣i
i.:.:.:.:´｀¨ヽ､.:.:.:.:.:,.:｀¨'' - ､､,,_
.|,.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ、'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ､
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| 違う。怒りに満ちたケンシロウの視線が雄弁に語る。
|
|「噂を流したのはジャギ本人だろう？ 理由は、『結社』についた時の大義名分」
|「うわ、すげー腹立つ。オイ間桐、後で体育倉庫に来い」
|
| ドスの利いた声で脅迫するジャギに、調子に乗っていた慎二は冷や汗を垂らした。
| 周囲を見、とりあえず東田の陰に隠れて続きを口にする。
|
|「顔を破壊されたのは真実なんだろ？ だとすると理由は呪詛汚染。
| 隠居もせずに『血族』から去った所から考えると、汚染濃度がかなり高いんじゃあないのか？」
|
|「図星なのがさらにムカツク。おい鉄仮面、今すぐそいつ貸せ」
|「本当に鉄の仮面を被っている人に鉄仮面呼ばわりされる日が来るとは」
|
| 愚痴をこぼしながらも表情を動かさず、東田は疲れ切ったため息を吐いた。
| そして慎二の襟首をつかむと、ジャギに差し出す。
|
|「オイやめろ！ 裏切り者！」
|「慎二君の推測は完璧よ。全身の汚染を確認したのは私。
| 倒した悪魔の残した呪いで、ジャギ君の性器は機能を停止したわ」
|
| 彼らに付き合っていては話が進まないと考えたか、三四が髪を掻き上げながら引き継いだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
・・・この汚染。螺旋王に押し付けたいなあｗ
頭はまだ性欲が残るからスゲーもどかしくなるらしいな
／ ＼
／ ／ ヽ
/ .／／ ヽ
/ ./ ／ , ' ﾊ
i // , - ／ ,イ l ﾊ
l // ／ ／ ／ // i | i
i〃 ﾆZ ／ - ' // / : :l l
Vｲﾌ／' ´`丶 i,ｲ / . : : i l
/〉 ` -ﾐヽ`ﾄl.l / . : : :i l
/ r '´ ､じ,､.l llヽ / . : : : :/ l
/ l ヾ ,ゝ､l./ : . : : : :/ i 排尿は問題ないのだけれど、
/ lヽ、 l ｿ . : . : : : : ｲ ! 精巣の方は完全にアウト。
/ / : :l ` / . : : : . : : : : :/l /
' ｲ : : :l / . : : : . : : : : :/: l l/ 勃起不全にも陥ってるし、
.,' /l : : : :丶 ､ / . : : : : : : : : :/: : :l :l l 精神的にも性的興奮しなくなってるんじゃないかしら。
.l / l : : : : : :/: :7 ＞/ . : : : : : : : : : /: : : :l: l l
l / .l : : : : : /: :/〃/ . : : : : :/: : :／.: : : : :i: l: l
l/ l: : : : :./: /〃/ . : : : : :/: :.∠ﾍ: : : : : l: . l :ﾄ; l
l l: : : :〃/ 〃/: : : : :／: ∠.......ﾍ.: : : : l: . l l l: l
l l: :.//ノ /,=i: : : :／: ／-－-ﾆﾍ.: : : :l: . .l :l l: l
l /i/ ／ l: : :／: ／ ﾍ: : : l: . l . : :l l: l
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
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|「何故だ『先生』！ 何故そんなことに！！」
|
| うめくケンシロウ。うめきたいのはジャギの方だろう。
| 仮面で顔を隠しているから表情こそわからないが、誰とも視線を合わさずに下を向いていた。
|
|「悪霊インフェルノの最期の呪いね」
|「ああ、インフェルノなら仕方ないよね」
|
|「『最初はジャギパーティは霊夢じゃなくて嫉妬マスク（悪霊インフェルノ）がメンバーだった』ってばっちゃが言ってた」
|「え？ わたしいらない子だったの？」
|
| 色々考えた結果、はぐれ者感を増やすよりも、お目付け役を用意した方がバランスが取れるという判断である。
| また同時に、頭のおかしい悪魔よりも将来有望な小五ロリの方がジャギの目的にマッチしていたのだ。
|
|「ご、ごめんなさい。アンタはクズで卑劣で皮肉っぽくて、正直言って嫌な奴だけど、
| 班長としては頼りになると思ってるわ。
|
| でも、その……ごめんなさい」
|「なんでオレがこのクソガキに告ってもないのにフラれる体になってんだァ！！？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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r- ､_
jヽ|.:.:｀`ｰ-､
「｀7.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼ _, -─- ､
ﾆ! 〉.:.:.:.:.:.:.:.:.:_＿ヽrｨｰ' ´.:.:.:.:.:.:.i 「{
ｶヾヽ ,､ ' ´ ｀´￣｀`ヽ､.:.:.:.:! |〈
r‐-「ヽ,ゝ'´ / ＼」//
,ゝ＜_ _」' / / / ! ､ ヽ ｀ゝ-､
／, /,r/ /l ,! / _,! ,! l ,! ! ､ , ヽ､＼
／, '´ // ,! ｲ | i_i ,/イ/l /l/j｀/l/、, ,! i ﾞi＼ヽ
/／ _ノ´ l/ l/i l,.ｲl辷ｲ|/ /,ｲj㍉ヽ ,!| ﾄ､ ,! ヽj
// ／ ／ | ﾄ､l/ ゝ-‐' '´ 辷/ ﾉ ! | ﾄ､! ′
. // / ,ｲ / l j､ ｀､ ｀ ｀ /ｲ / ,! ! !
//i / / ! ,/| ,/l ,/i´｀iﾄ､. -‐ ／ l// /l j/
l/ | ! /l ,!l/ ,|/l/l/ | / ｀,‐r -‐＜ ! i,/ / |/ﾘ 違うの？
|! i | V |,/ ,ィ´ ヽl Λ i ｀ヽ｀ヽｲ | /| V
| l ,i!/ /ﾆﾆー-､|/ i ,! | / | ,!,! j i あ、でもお値段次第でデートぐらいなら。
|/ ゝ'´7ｰ-､ ゝｰ|/ !r-} ,! /!ヽ! /
<´￣｀`ｰ-ryｰ-､// ヽ / / j |,ノ
/-‐一 ‐'´/ ヾj,! ｀,r'´ ｀ヽV､
／ / ゝノ |ｰ--‐j!ゝ'´ j ＼
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|「しねーよ！ つーかオレにそういう性癖あったらあのアネさんが貸すわけねーだろ！」
|
| 霊夢は、先代巫女の指示でジャギ班に参加した。
| 『血族の裏切り者』ジャギの監視と、気が付けばルカの保護者役として。
|
|「僕の予想だと、霊夢は『バックアップ』なんじゃないのか？
| ジャギの『研究』を途絶えさせないための弟子なんだろう？」
|
| 蒼星石の予想に、驚きの声を上げたのは霊夢だけだった。
|
|「なにそれ知らないわよ！」
|「実際知らないのは霊夢だけだ」
|
| しめやかに頷くロストスキル。その横で、ルカが自嘲的に笑う。
|
|「薬物的、魔術的に人体実験されてるのが目の前に二人もいて、
| 助手もしてるし記録もとってるじゃない」
|
| 愕然とした表情の霊夢。まだ十歳になったばかりの少女だ。
| 人体実験に加担させられていた？ 激しいショックを受けた様子で、怒りに満ちた視線をジャギに投げつける。
|
|「落ち着け。我々はそれを受け入れている」
|「キルの方は、経過が順調だものね……」
|
| ルカの血の色の目が不安と虚無感で揺れる。
| ふと、やる夫の横で水銀燈が手を打った。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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' l | !_／ｲl |, l ', | ﾍ. l / | ;ｉ , | l
,l/,r‐'´!.| ',|ヽ | ヽ ｌ ヽ ｜ l l /ｌ l, ｌ｜
/ / ',| 十' 寸 二ﾏＴ´ ヽ.|! / ┼/-l､_,| /! !
,/ /ｌ | 丶 ＼ ＿＼ '|l ／ ‐ﾅ'´ |/lj ／ /'ﾞ
. / |'、 ', ‐､―r┬ｬ､` i／ ‐/_‐__/ /-‐'i /
/ ! ヽ. ﾍ ≧=一' ´ ゝ'-彡ﾏ´ / /'ヽ 『わたし』が言ってた大口の注文って、
! l ＼ ヽ 〃 /! / | もしかしてそれかしらぁ！
l | l ＼ ＼ / ／ ／i｜ / /
ｌ l｜ | ト￣´ 、＿, ＿, - '´-‐イ ｌ|. / /
ー ､ l l | /＼＼ ´ 二´ ／ ｜ ｌ / /＿＿, --ー
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::::::::::::l｜ !:::: ::::::::－＿天 ! | l／´::::::/ /´ﾄ-､------
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::::::ヽ:::/:::::ﾄ V＼:l＿_｣| lＹ､::l>|＼::l /:::::::::/ , !､_/__/ ﾉ|
::::::::::V:::::::::ｌ＼ ヽ‐ﾄ､:::/| ヽ＼!>ーｌ| /ｌ::::::::::l , ー',ｰｲｿ
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| 『わたし』と言っても、水銀燈本人ではあるまい。
| 恐らくは『社長』だ。やる夫は彼女の言葉足らずを脳内で補完した。
|
|「『血族』の強い人が、腕を欠損してついでに呪われてるんでしょぅ？
| 今開発中の『経絡内蔵型義手』のテストに成功したら、その人につけるかもとか言ってたわぁ」
|
| 恐らくは『モーリアン・コーポレーション』の機密をぺらぺらとしゃべる水銀燈。
| 何気なく写真に撮るだけで賞をもらえそうなほどに無邪気な笑顔。
|
| ジャギが顔を覆っていた。予想外の方向からバレたのだ。
|
|「つまりジャギ兄さんは、ラオウ兄さんを治すために？」
|「う、うるせえ！ 一騎当千の『武僧』とニンジャを手下にすりゃあ怖いもんねーだろうが！！
| 『血族』で成り上がるために決まってんだろ！！」
|
|「そろそろ諦めた方がいい」
|「そうでおじゃる、男のツンデレは気色悪いだけでおじゃるよ」
|
| ジャギも麻呂にだけは言われたくなかったのだろう。
| 周りからも失笑を買う。指をさして笑う慎二の頭部を、東田が無表情に殴打した。
|
| 目クソ、鼻クソを笑うである。
| なお、麻呂が突っ込みを受けないのは立場的理由だ。慎二には守ってくれる地位など無い。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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.,:'::ヽﾍ､___!:::rﾄ､:;_;!. `'ｰ , `´ノi/!:.:.:', ……ええと？
/::::::/`ｰ^ｰ';::`i｀ーi '"'" _ ,., ﾚ^ヾｺ
,':::::::;':::::::::::::::ﾊr!____,ﾄ.､ '´┘ ,ﾊi ラオウ様を治すための実験をルカとキルでやってて、
.i::::::::i::::::::::::::,':::i`rｰ‐i':::::｀i. ､., _,. イ_,ﾑ! その研究成果をあたしに伝えてるってこと？
!::::/!:::::::::;:ｲ::::::::|:::::::|r'イ｀ヽ､ ｀"T"´i:::::;|:::::::|
V ';:::::/:::!::::rく|:::::::| ヽ ＞rｨ'^ヽ､:::::!:::::;'
V '､::ﾚ'´ヽ';::::::ﾄ､.,_____,.イムヽ >:|:::/
r7 ヽ;::!:.:.:.:.:.:.:./ / ハｰﾍﾊ､|/
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|「ノーコメントだ！」
|「何で最初から言わないのよ！」
|「金になるからだよバーカ！」
|
| 信用されていなかった。そのことが少なからずショックだったのだろう。
| 声を荒げて追及する霊夢に、ジャギは決定的な一言を放った。
|
| 驚愕に言葉も無い霊夢。
| それほどまでに、わずかも、彼らの間に信頼関係は無かったのか？
|
| 霊夢は一瞬うつむき、そしてうつろに周囲を見回した。
|
|「ああ……ちょっとシックス様、あるいは『先生』。いくら出せます？」
|「概要だけでまず百万」
|「機械の方はいらないわ。悪魔封じだけで、月に100万＋必要経費」
|「何で最初から言わないのよ！」
|
| ジャギに食ってかかる霊夢。その両目は金にくらんでいた。
|
|「だが知ってんだろ？ キルはともかくルカはいい結果が出てねえ」
|「それには反論があるわ」
|
| 霊夢が指を三本立てた。
|
|「まず、ルカを戦場に出し過ぎよ。戦闘に参加させるたびに浸食度が上がってる。
| それにルカ自身が希望を持っていない。これは致命的よ」
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__ __
从＞ ､ ／￣￣i入
斥.ソ ; ; ; ＼ ／; ; ; ; ; ; ｲハ
くり; ; ; ; ; ; ミ ;ヽr ―‐ｖﾍ彡; ; ; ; ; ; {イi
从; ; ; ; ;__;＞ :" ￣￣: ｀: ＜ ; ; ; ; ;ﾍ 入
そﾊ ; ／: ／:/: : :/l : : ヽ : : : ＼; ; ;んイ
>入/ : / : /: : :/ !: : : :',: : :l: : :ヽ/んへ,
／/::７: :.,' : : l : : / l : : :.:|: : :|: : : :∨l; ; ;ﾍ,
／; /: : {: l: |: lr: l‐:､| !: ,ｒ/‐:.､.|: : : :.|: |; ; ; ﾍ,
／; ; /: /: ﾊ:ヽl´lヽ:|人| |:／ﾍ∧ﾉ!:..: :.:|: :! ; ; ; ;l
/; ; ; /: ｲ: : :へ:ﾍ:ﾍ |7ｲ: : /:.∧; ; ; ;|
/; ; ;./: :/ : : : : :ﾍ!;ﾊ´￣ﾞ , ´￣`l;;;;|: /: :,' |.; ; ;/ そして最後にお金が足りない。
|; ; ;/: :/ : : : : : ぇﾄ小、 ┌‐┐ ,.辷!/: :ｲ l ; / お金！ もっとお金を！！
|; ;/: :/: : : /: : : ７:７:.:.＞ ､ヽ_ ' ,＜ｲ : | : : :|. |;/
|;/: :/: : : /: : : :/: /ｭ-ｪ-ﾉｿ l¨ヾ|:.:.:|: : : |
/: :/: : : /: : :.:/: :/ﾄl ; ; ; ; ヽ .／;.; ;.;.|:.:.:|そ:.:|
/: :/: : : /: : :.:/: ://￣二二二二二二ｉ l ∧: |＼
/: :/ : ／∠_/: : // /三三三三三三三ｌ l ∨ >'ヽ
!/: / |: :__,ヽ┴'´ , / /三三三三三三三三! ! ヽ;ヽ
/. /レ'´ ∧￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣!､ ' ',
/ ,. く / ぐ!_￣￣￣￣￣￣￣￣￣_|ヽ! i |
,' | .／ 小‐冫 奉 納 〈二} | i.|
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j /´ ＿＿/┴┬‐┬┬─‐┬─‐一/───く ノ
| /' /' ; ; ; ; ; ; ; ; ;.:;.:;.:;.／;.:;.:;l; ; ＼
. |./ ／; ; ; /;.: ; ; ; ; ; ; 彡; ;.:;.:;.:;.:l; ; ; ＼
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|「少し黙れ、な？」
|「そうですね、それに今はそれは大事なことじゃあない」
|
| ジャギに同意したのはミストだった。
| 彼は、彼にしては悲痛な表情でジャギを見つめていた。
|
| 『血族』において、『血』を残せないということはどれほど大きな問題なのか。
| ミストは身をもって知っていた。
|
|「おい、バカ野郎。オレを憐れむんじゃあねえぞ。
| どーせオレは『血族』の裏切り者なんだ。嫁もこねーよ」
|「養子とって技術を伝授とかじゃあダメなの？」
|
| 口を出した赤い悪魔は、まず霊夢を、次にアリカを見た。
| 彼女の視線の意味を理解できるのは『弓兵』のみ。
|
| 他の全員は、アリカが夢宮の実の孫だと知っている。
| 同時に、十五年以上前に頓死したはずのアリカの父が、いまだに健在だとは夢にも思っていない様子。
|
| 『弓兵』が夢宮士郎であると見破ったものはこの場にいない。
| いや少なくとも、気づいても感知された者はいない。
|
|「つーかそんな面倒しなくても、ケンが居るからいいんだよ！！」
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はやく有用性を証明しろｗ
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／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
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./::::::::::::::;ﾊ:/ゝ、::::::::::__:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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::::::::::::iゝ. .:.:.:.:.l::::k'_´_o__ﾞ,!:::7 7;:::＼ﾞ¨" ,!
::::::::::::lゝ :.:.:.:.:ﾞー───‐'.:.:.:.: k'^ヽ、ﾞi ﾉ
::::::::::::ゝ :.:.ｧ''''":::￣￣::''ー'':::ヽ｀ﾟ'-ﾞ_,! 丿
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:::::::::／i :.:.: ,/::::ゝl::::::し':::::::i.::,!::;!.:;',!:/ ｀ー‐'" }
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:::l : : :: ゞ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｿゝ.;,;＿,,,,／
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| 凛の言葉への返答で、ケンシロウへの信頼を叫んでしまったジャギは頭を抱えた。
| 早い話が、ケンシロウを北斗の後継者だと認めていると言ってしまったのだ。
|
|「この話はこれで終わりにしてくれ。ジャギが実際哀れだ」
|「もっと石を投げてもいいわよ」
|「投げるのがお金ならもっと嬉しいわ」
|
| 優しい仲間たちの慰めに、ジャギは膝をついた。
| しばらく立ち直れないだろう。
|
|「……そのことは個人的な話になるだろう。後で詳しく教えて欲しい」
|
| 煩悶で眉間に深い縦じわを刻むケンシロウ。彼の鋭いまなこがやる夫を見据える。
| 一見いかつく、全身を暴力に浸した人種に見えるケンシロウだが、基本その性質は温厚だ。
|
| 故にやる夫は、彼からそれほど鋭いまなざしを受けたことがなかった。
| 正直に言って震えた。蛇に睨まれた蛙のごとく、緊張で舌が動かなくなった。
|
|「入即さん、一つ疑問がある」
|「な、なんれすかお……？」
|
| ろれつの回らないやる夫に、ケンシロウは静かに尋ねる。
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_,.ｙﾄｰゞｒッヽｖ,､_,.
,rk´ﾐ､''ﾅ;;爻'､ｰ;;〃彡;,.
vf戈ﾊﾄｼ〈'"ﾘﾞ､ヾ､;;jﾘ､〃､
Ｙﾒ从k;;､;;ij;;;ii;ヾ;ｯ;仆､ヾくｿ
}ｿﾘ"i!;;;;;l;;i;;､;;:;:;;:;';;;};;iﾘドｼゞ, 恵比寿の人間もどき。
ﾂ;;;;;;;;;;ﾄ､;;_ﾘ;;;i!;;ﾄ;=;､t;;;ｌ;;ﾋ' アレの対処は？
ｦ;i!､:::r',;､=;'､;"ﾘ,､=;''"ﾘ;ij´
};lヾ;;j ￣´.〃ｌﾞ￣´ ,';ｨ′
ｒ‐､ 7;;;;|', =､j,. /仆､
} ,! _ ゞ;|:ヽ ,:ニ> /:: ﾚ ｿ＼,.､- ' "´;;￣::
j _,!ﾉ ）"￣＞.ﾆﾄ､:＼` "'' /／／,r／:::::::_,..､''' ..,,
ﾌ ,､'-‐'ｌ"￣ﾘ;/::;;/::} `:::｀:ー'／'∠;:／｀ﾞヽ・．‐´
‐' 冫‐i '"フ:;/::;;;{! `ｒ‐'"フ´〃ｼ:;;/ " ヽ､. ﾘ'" ,､_,
. '",.ィ/￣_:;/::;;ｲ `'ー ''／ｦﾘ/;/r'/,r─‐-､ (∴,､-''"
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| 二か月前、『翠星石救出作戦』で恵比寿のライブハウスに踏み込んだ。
| 表から陽動のはずだったやる夫たちとは別に、裏からケンシロウの班が隠密行動をとった。
|
|「やあ、あの人間もどきは強敵でしたね」
|
| 当時のケンシロウの班は、ミストと四ツ目、そして冥の三人だった。
| ライブハウス内部をうろついていた人間もどきの名は『ハイウェイ・トゥ・ヘル』。
|
| 精神に異常をきたした個体ではあったが、近づくものを無差別に呪殺する強敵であった。
|
| 『ハイウェイ・トゥ・ヘル』は己の死を周辺に同調させる。
| 早い話が、自分が死んだ方法と、同じ方法で殺すのだ。そしてその上で、自身は異常な回復力で再生する。
|
| ケンシロウの様な戦士が『ハイウェイ・トゥ・ヘル』と相対した場合極めて危険である。
| 物理攻撃で相手を殺害したとして、『ハイウェイ・トゥ・ヘル』は同じ死に方を周囲に伝播する。
|
| 銃で撃たれたら銃で撃たれたという『結果』が、近くにいる誰かにも適用されるのだ。
| 白兵戦を得意とする戦士には天敵である。
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-――- 、
_Λ_ . ´ 丶
｀Ｖ´ ／ ＼
/ / ヽ
/ / i | ',
,' ,' /.. --|､ |i l＿ |
l i イ´ / l .! | .,'| j、 | l ありゃワシじゃ。
| .l .| ./ l/ l / l ./ ヽ | |
＿.', r | l.／z=＝s |ノ ,z＝x l ﾊ ,'
!::::::ヽ| l | ､､､ ､､､|〈 ｜/
ヽ::::::::ヽ.| l r―, / lｲ
ヽ￣ .l |._ ｀ ´ . ' | | _Λ_
l ／:| l.:/l ― ＜i´ l l ｀V´
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＼:／.::| l へ＼ ｌ' .ヽ ｌ::/ | |
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| 霊視を飛ばして内部を偵察していたニャンコ先生が、『ハイウェイ・トゥ・ヘル』の呪殺を目撃したのだ。
| 狂気の人間もどきはいたずらに、近くに居た犠牲者を殺害した。
|
| 当初は対策を口にするのを嫌がったニャンコ先生であったが、
| 人間もどきと相対するのがやらない夫ではないと知って素直に対抗方を伝授した。
|
|「ちょっとやる夫、君もしかしてその能力を役立てていない？」
|「そ、そんなことは……」
|
| あるかもしれない。やる夫は慄然とした。
|
|「やる夫自体、この能力を信じてなかったから仕方ねーお」
|「じゃあ、なんで有用性を証明しようとか言いだしたのやら」
|「うーん」
|
| やる夫は一同を見回した。誰か引っ掛かるだろうか。
| 呆れた様子の蒼星石に始まり、呆れた様子の翠星石まで見る。
|
| そこで気が付いた。
|
|「二か月前の恵比寿で『サイコメトリー』を称して死体の持ち物から記憶を辿ったフリをしたお」
|「初耳」「詳しく」「責任問題ですよ！」「ぜったいあくは黙って」
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／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ やる夫が見たのは持ち物からではないし、
| （__人__） | その前の晩に、翠星石が死をばら撒くのを見たお。
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | | やる夫の能力の中には『死』限定ではあるものの
.＼ “ ／＿＿| | 『サイコメトリー』も含まれてんだお。
＼ ／＿＿＿ ／
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| 蒼星石の留守中に、翠星石が誘拐されたのが事の始まりであった。
| 誘拐者の数名は近くに潜んでいたミストによって撲殺された。
|
| 脳改造された一般人のなれの果てと、そのわずかな所持品が事件の足掛かりで、
| やる夫は彼らの持っていたカードを手がかりに『ロード・エルリック』を割り出した。
|
| という体であったのだが。
|
|「パフォーマンスが始まったライブ会場で、洗脳されてるっぽい翠星石がアイドルみたいに祭り上げられて、
| その上で『根の国の巨人』が召喚されて観客は死の瘴気で全滅するっつう夢だったお」
|
| そう、その夢を見たのがきっかけだった。
| バカバカしい夢だと笑い捨てるには生々しく、やる夫は焦燥に狩られたことを思い出す。
|
|「つっても、これよりももっと有用性を示す方法を思い出したお」
|「え？ やる夫さん何かできることあるの？」
|
| 邪気のない水銀燈の言葉が胸に突き刺さる。
| やる夫はは戦場においては無能な足手まといだという自覚がある。
|
| しかし、この方法は他でもない水銀燈が教えてくれたのだ。
| ……違った。正確にはヴィヴィアンだった。
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, -､ ヽｰ､
{ ｒ｀ ｒ' }
,ゝ､ヾｭｲ_,,ィｭ､_
Yｿ´アｰｿｭ ﾉｰ､ ヾ)_
ｒ',ｨ ｒｼゝ〈//7lゞ )ヽ V
〈!ｭ(/ <//|i/そ ｀Yﾍ}〉,-､
ｒ-‐' ゞYr' ヽ|!V ゞﾉ ゝ
７ __ノ 7 ヾｰ7j |ｰｲ , Y｀ ､＼
'-ｧ=､ ｲ ､ト､＿/ｲ! ﾘ{ノｲィﾍﾊ,､__{､ヽ,
イ／ ／7/ﾊ|ヽ/ﾊ/ ' ´'ｲ!/ﾘ////＼ ヾ､
イ／ ／//／ヽ!/ゝ｀ｰ= ﾆ彡ｲ/////////＼ ＼
イ''´ ／//／///////ｿ≧ｭ=ｒ≦ｲ´ﾍ///////ヽ＼ 丶､
イ'´ ／//／///////／: : : ｀ﾌﾊ': : : : : ＼///////ヽ＼ ヾ:､
／'´ ／//／/r､/､///!r'-―ァ／ｲﾊヾ､_:_:_:_:_;ゝ///////＼＼ ＼ヽ
,ｲ´ ／/／///|｀ー' ヽ__ﾌ7´ { ７ｲｊ ｀ V￣ﾍーﾍ＼///////ヽ/＼ ＼丶.
/' ／/∧///r-{: : : : :ｲ -'_ﾉ: :人 〈ﾊｌ V: : ﾍ: : : ヽ ｀ー-ィ-､/ヾ/ヽ Y}
/ ///∧////ゝ7: : : //￣: :／ｊ: :ヽｒ ､＿ _ノ＼: : ｀ヽ: : : : : ｒ､__く///ﾊ/ﾊ V!
! ///∧// ｲ-'´/: :_: : ヾ､o / _ﾉ: : / ヽ_: : :ィ: / ｊヽo,ィ ｒ-､'/i///////ﾊハ V!
///∧／ ｀´ ヽ7 ,､｀_ノ: : : : : : : : ゝ: :´ {_ｲヾ＼_,ｲ ｀ ヽ!|/////i/ﾊ ﾘ
.//∨/ /｀'__>: :ヾ､: : :,ィヽ_ｒヽ: : ﾊ '´∨ i ヽ///////l
ｌ//// /: : ７ｧ-ｒ: : : :´￣Ｙ': : : : : : ヽ､ ｌ : :! ∨/!///l|
!/// r-,〈=≦／, ７: : ; : /ヽ!´!ﾍ:_;/＼ヾ _ｊ､: :ﾄ Y|////l
|// アｼﾉ''´ ／ //｀ ': :ﾞ/==ﾍ: : : : : :ヽ＼ ヾjﾉィ_ ヽ///|
lIY ｒ-=＝', イ ／ //: : : : / ､＿_,∨ : : : : ＼ヾ´ ヾ､ Y//l
!| ノ/ ／ / .// _:_ : / _ｊ_ ｊ__∨: : : : : :ヽ ＼ ヽ._ V/|
｀ イノ ／/ / //: ;ｲﾊ ,'´Tｨ::| }::ｨﾍ: : : :<ｨ-, ＼ ヽ､_ ヾ. ﾉｲｊ
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|「やる夫は『十二の封印像』の一柱『白鬼』を使役しているお」
|
| 彼女に遭遇したのも、恵比寿であった。
| 『ロード・エルリック』のボーカル『ヨハネス・クラウザーⅡ世』に授けられた武器。
|
| 『永遠の戦士』の『黒い剣』……白子のエルリックの『ストームブリンガー』！！
| ……ではなく、その姉妹剣である『モーンブレイド』の。
|
| 更に言うとこの世界に残った微かな残響と言うか、残り香的な微弱な存在である。
|
|「『白鬼』は霧散したのでは無かったのかい？」
|「ああ、全体に配布した資料じゃあそこまでよね」
|
| キュゥベぇの問いに、面倒くさそうに三四が頭を掻いた。
|
|「先月の戦いの折、入即は『モーンブレイド』を媒体に蒼星石と連携。
| 『国創り』の『始原の軟泥』をニャルラトホテプにぶつけたでおじゃるよ」
|
| 『モーンブレイド』以外は誰も認識していないが、上次元へ退避しようとしたニャルラトホテプを、
| 『黒の剣』らしく次元干渉で追撃した。
|
| やる夫が彼女を使役していなかったなら、ニャルラトホテプにあれほどのダメージは与えられなかったのだ。
| 誰も認識していないが。
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〈 | _ _ ヽ , - ' | }
＼ { ! ｀ ｀ ｀´ } ＼}
{＼ { __ ヽ }
∨. 〉 __ ／_ ｝ヽ. l }
ﾏ / ￣ ヽ ,__ ／ィ モラ ノ } |ﾘ
ﾏﾑ く モソ_ヽ ￣ '⌒}リ
Ｙヽ l （ |
{ :. | ／ヽﾉ
ﾏ ∧ ト イ つまり君は『黒い剣』を顕現できる。
ヽ.ﾑ ｲノ/ 『永遠の戦士』だとでも？
ｰ､ r ￣ _ヽ / |从
＼ ￣ :|
|ヽ ／ :l
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| __ ー ' rｰ―――┐
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| 『弓兵』の問いに、やる夫は首を振った。
|
|「モーンちゃんはニャルラトホテプに名前を押しつけられ無理やり支配されていたお。
| で、その仕返しのためにやる夫に手を貸していた。
|
| 恐らくもう、彼女はやる夫の中にはいねーお」
|
| また有用性の証明から外れた。周囲の困惑の空気。
|
|「だけれど、『モーンブレイド』の類似品なら、やる夫は作ることができるお」
|「……そうなの？」
|
| 素直に関心する水銀燈に、やる夫はずっこけた。
|
|「ちょ、ちょっと待ってくださいお。『剣の貸与』ができるって」
|「え？ ああ！ うんうん！ できる、たぶんできるわぁ！」
|
| 思い出したかのように手を叩く水銀燈。やる夫は冷や汗ものだ。
| 当然周囲は疑惑の目を向けてくる。
|
|「やる夫の母親はケルトの戦乙女だお。兵士に武器を授けた伝承も残ってる。
| そして、やる夫の父親は『あの』脳噛……わかるかお？」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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r‐ ┐
＿ |: │
└‐.ヽ |: │
rー───────一'ノ |: │
￣￣￣￣￣￣￣（>､￣ ├‐┤__
ヽ＼ t=i===＜ ＿
∨＼ﾉ（●） ￣￣ ／
｛ ＞―‐rー一 '´
>､ ｀＞──r‐ｧ
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/＼／丶{__ﾉ
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| ／´ ￣¨てx-─'
__ / (
ゝ｀／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 正直、やる夫自身はあのクソオヤジがどれほどの人間なのか分かっていない。
| しかし『血族』で倦厭されながらも一目置かれているのは確実だ。
|
|「もしかしてあなた、ルーン方向にも縁があるの？」
|
| 眉根を寄せて尋ねたのは遠坂凛だ。天才魔女は、あの怪人のルーツをご存知の様であった。
| しかし、ちょいと違う。やる夫は首を振った。
|
|「あのクソオヤジは、上位神格に枷をはめられてたお。
| で、その枷だけをやる夫に遺伝させた……ある種の神格への絶対服従」
|
|「えー？ ドワーフはバルログに逆らえない感じ？ それって信用置けなくなるよね」
|
| ぜったいあくの比喩は大変マイナーであった。
| トンネルズ・アンド・トロールズ的なお話である。
|
|「やる夫の中でその枷は変質し、枷と同時に該当神域への接触権となってるお」
|
| 一同の顔に不信が走る。つまりやる夫は、ある種の神々の走狗だとでもいうのか。
| 違う。断じて違う。
|
| 少なくともやる夫は彼らに遭遇したことも、指示を受けたことも無い。
| ただ、そう。
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／.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:{:.{ ＼:.`ー-:.:｀:.ー---:.､:.:.:.:.:＼:.:.:.:.ヽ:.__:
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. /.:/.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.!:.:.|l:.:.| ｀￣ _,z彡' ,. ＼:.:.:.:.:.＼{r‐
/.:/.:/.:.:/.:.:.:.:.:.:.!:.:ハ:.| _z彡-‐_二ィ :!{ } .＼＼:.:.＼'
ノ:.:.:.:/.:.:/.:/.:./.:/|:/ jﾉ ,彡ﾃ ／-､ / //Y _ﾉ ヽ:.＼:.:ﾍ
/.:／.:.:.:.:.f:.:.ｉ.:〃|:| |{ {{ _z彡ア／{::O:／ ／/{ } f,ハﾄ､＼
. /.:/.:/.:.:.:.:.:|:.:.|:.|:| l:{ ヾ、 ヾ￣／ノニニ´-‐' ／ノ~´ （_） i.:|
.f.:/.:.:l:.:.:.:.!:.ﾊ:.ﾊ:lヾ.ヾ、､ _, ´ _,. -――一'´ｰ‐' ￣￣｀ ()f }ﾊ
.|∧:.:.!:.:.:.:|:ｌ| |! ＼ ヽ ﾉ´ ,. ´ ￣(__) ー―‐￢ー-- ､_ Yヽ
V:.:＼:.ド､ヾ_,ｫ彡__/ ／ ￣ ｀) _ ｀ f_)廴}
∨:.:.{｀-彡ヌ.ｰr1Yﾍ f⌒ / _,. -―￢ア/ {
. Ｖ:.:∨,ｲ{:O:}/ //}｜ r‐ } ／´ ノ}´ ,′ (_) ､_丿
. Y:.:.ゝ｀ニ´ /// ﾊ._, ｰ'_ノ ,.r‐'´ｰ'´ / __ {_ﾉ廴ﾉ
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ヾﾊ:.:ヽし(_){ f.) / ,.イ_,ノ ／ ,.--､ {__ﾉ /
ヾド≧ｰ､ | | ∠ ‐' ,. ´ ゝ._ノ_ {_/／
ﾄ､ ヽ く._ __,. '´ -'､ ,/廴.イ
,ハ ＼J(__)￣ (__) ア´
/ ＼ ヽ._廴r__Y(つ､__(__) ⊂_ア´ ￣｀＼
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ノ､＼ ｀丶、 ､＿_,. -―7⌒＼＼__
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|「やる夫は縁ある英霊の技術を、そこからダウンロードできる。
| ……まあ、今のところやる夫のエインヘイヤルは屈木頑之助だけだけれど」
|
| 屈木頑之助。元『結社』の怪人物。
| 特別な才能も師匠も無い、三下の十把一絡げから『九鬼』まで上り詰めた不屈の剣鬼。
|
| やる夫達にとって、いや、多くの者にとって因縁深い敵だった。
| やる夫、やらない夫、アリカ。三人がこの世界に足を踏み込んだ原因。
|
| ニャルラトホテプに誑かされて、『十二の封印像』を盗み出した張本人。
|
| 扁平でイボだらけの顔に、前面に張った大きな目。大振りの口に潰れた鼻。
| 頭はやたらと大きく、小太りで背が低い。姿勢も悪く脚も短い。
|
| 両生類のごとき醜悪なこの男は、哀れにも高嶺の『華』に恋をしていた。
| 『結社』幹部、曹操孟徳華琳。死人で同性愛者である。
|
| そして、報われぬ恋心をニャルラトホテプに弄ばれた頑之助は、
| 『血族』を敵に回し、『結社』を敵に回し、揚句に『怪魚』の像の媒体にされ、死んだ。
|
| その道程において、やる夫は屈木頑之助の死を見た。
| 草むらに残された彼の愛剣を拾った。
|
| そして、怪物と化した頑之助の最期を見届けた。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼ ……そういえば、
／ （●） （●） ＼ 七月のお台場で頑之助の『膝丸』を拾ったのは、
| （__人__） | 死を見た結果だったお。
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| 頑之助が利用され、死に至る瞬間をやる夫は夢に見たのだ。
|
|「『それ』は蒼星石さんの手柄ではなかったので？」
|「屈木頑之助を黄泉兵として行使したのは僕だけれど、『膝丸』を見つけたのは確かにやる夫だったな」
|
| 怪物と化した頑之助は、すでに頑之助ではなかった。
| 屈木頑之助の魂を閉じ込めてはいたが、頑之助本人の命はすでに潰えていた。
|
|「それで？ 私は最近日本に居なかったが、屈木頑之助は剣の腕で『九鬼』になったバケモノなのだろう？
| まさか入即、君はその体で彼の技を行使できるとでもいう気か？」
|
| 猜疑の視線を隠しもしない『弓兵』。
| 屈木頑之助の『蝦蟇剣法』は、一撃必殺の狂気の魔剣だ。
|
|「『弓兵』殿、先日のイクサを憶えておいでか？」
|「キミとのか？ もちろんだ」
|
| ロストスキルの問いかけに、『弓兵』は頷いた。
|
|「最後の攻防。奥方を拘束した後の動きは思い出せますか？」
|「……も、もう離婚は成立していると……」
|
| 当然ロストスキルもそんなこと分かっている。
| 相手を精神的に追い詰めるニンジャ交渉＝ジツの基礎、『テンドン＝ジツ』だ！
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(⌒Y⌒)
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| 『テンドン＝ジツ』は日本食の天丼の語源である。
| 天丼とは、ごはんのうえに天ぷらをのせた一種の丼もので、多くの場合メインの具材はエビとなる。
|
| テンドン＝ジツは言葉や行動を重ねて行うことで効果を高める行為だ。
| 天鈍、あるいは天曇と書き、一つ一つは薄衣のごとき言葉でも、重ねればおてんとうさまを隠すほどとなるということが語源だ。
|
| それを踏まえ、天丼は天ぷらの衣と天ぷらが、ご飯を覆い隠す。
| テンドン＝ジツと天ぷらの名称が似ていることからのダブルミーニングである。
|
| なお、空を覆うほどとなった曇をひっくり返すのが、テンドン＝ジツの応用、奥義『ドンデンガエシ』である。
| 曇天を返すという言葉の通り、積み重ねの魔法により雲を突き抜け天を拝むほどの効果を期待できる恐るべき戦術だ。
|
| 当然、ロストスキルは『ドンデンガエシ』すらも極めている。
| 必要となればいつでも言葉で『弓兵』を封殺できる。
|
| というか、『弓兵』程の達人相手は、この場に居る誰もが手に余る。
| それゆえに、いざという時のためにロストスキルはテンドン＝ジツで備えているのだ。
|
| なお、各駅停車の電車を『鈍行』と呼ぶのも、テンドン＝ジツの重ねがさねする様からもじった言葉である。
| ただし諸君、これらのことを事実だと思って話すのは大変危険だ。気をつけて欲しい。
|
| ニンジャの世界は一般人には奥ゆかしく秘されている。
| 狂人と思われても実際おかしくない。
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とにかくスゴイ・ジツだ！
エビが２匹乗ってるからじゃなかったんだっけ？？
君は慈悲深くも隠されたニンジャ的真実を知ってしまった。
忘れる方が身のためだ。
/ ＼
f_ ｀l }
l l l -―' , -―― ､ 「
',､l l ／, -―――-＼ } 私が『飛竜剣』に対し行った動きは分かりますな？
ﾊｆｬ｀} { ｔ---'／ |
/ ヽ}/ ￣´ ー-- /
l / - イfﾃ￣ テ l -- ､
l / 丶-- ￣ / ／ -､ |／
ｒ'´ -､ / ／イ⌒ヽ } |
＼ - , ---- '´￣｀` ー‐ ､ハ
, イ´￣￣￣ l 丶 ＿_／ ､ ＼ ＼
／ / l ､二._ / ＼ ヽ
/ / ', ￣｀ ＝=一/
/ / } ￣ / l
, / / / 人
| , 丶-- ､ ＼ }｝
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|「……あれには意表を突かれた」
|
| 先月の戦いの最後の攻防。
| 『弓兵』が罵倒と挑発でロストスキルの冷静さを奪い、反論に口を開いた瞬間に奇襲。
|
| 投擲と白兵戦を同時に行い、相手の対処を遅らせる必殺二刀流『飛竜剣』である。
| ロストスキルは這うほどに体を倒し投射をやり過ごした。
|
| そのがら空きの背中に『弓兵』が剣を振りおろしていたならば、彼はここに立っていられなかっただろう。
| 一瞬の判断で攻撃を退避に切り替えた『弓兵』は、すんでのところで両膝の寸断を免れた。
|
| ロストスキルはさらに追撃で恐るべき妙技を見せたのではあるが、度重なるニンジャの動きに義手が耐えきれずに敗北した。
|
| 問題は最後の手ではない、投擲をやり過ごし、地に伏せるごとき体勢から必殺の一撃を放った動き。
| それこそが屈木頑之助の必殺魔剣、『蝦蟇剣法』である。
|
|「あの屈伸運動を、その体型で行う？ 筋肉が断裂するぞ」
|「恵比寿では体が耐えきれずに失敗してたな」
|
| 『弓兵』の揶揄に、平然とやらない夫が答えた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_ -＝＝= ､、
／' r二_'―- ..＿＿
／' _ ゝ、_￣ ｀ - ﾆ_Ｙ⌒ヽ
〃 ／ ｀r_ｰ､ _,ゝ､ ヽ＿＿＿＿
〃 / / / ﾄ､ヽｰﾆ_ｰ .__/ ヽ ｀¨ ‐- _
（( // | | ハヽ､ ヽ｀＞‐ヽ .从_r ￣ ＼
｀ｰ || | ヽ!-‐ ｀ ￣ ´ . -V_ ! _∠_ 丶
ヽ V ﾄゝ､ ´ 心ﾉヽ/ ¨ﾉ >､＿ /
|Ｙ rひ) ┴‐'´/_∠_ ／_| .べ丶 /
＿＿」 ,,ヽ' ヽ ＿_ 〃'´ ￣￣／／ ｀ ‐- /
_-=-´_二ﾆ=! ﾏ´ l ∧ ／／ /
〃 〃 ヽ V / ｜ ＼_/／ /
´ ヽ ＼ ｰ ' ／￣ヽ ） ／
_､ ＿ 丶、／ ﾉ >' ／ でも、やる夫兄いは
ゝ ゝ-､ ＿ ／ ヽ_ ィ _ - ｲ ,.ｲ ニャルるんに一撃与えたよね。
￣｀丶､ゝ- ､＿／ ヾ _∠-ｵヽ< // ／{ ヽ
｀' ーｙ' _ ゝ'´ 〃一' / i ／ Y |
_（ ／ 〃 / l ／ 〉ﾍ
_ -‐ ´ r'⌒'/ 〃 / ｜ ／ ヽ,ｲ
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|「そういうこともあったお」
|
| 目撃者である仲間たち以外は、何と無く胡乱な表情。
| そも、屈木頑之助の『蝦蟇剣法』は必殺の魔剣である。
|
| その剣を向けられて生き残った者はそうそういないだろう。
| 知った上で術理を解しているものはどれだけいるだろうか。
|
| 例えば、共に工夫を凝らし、『蝦蟇剣法』を完成させた『九鬼』とか。
|
|「ちょっとやって見せればいいんだよ！」
|「今はMPが足りないみたいだお」
|「『イオナズンコピペは何レス前だよ』ってばっちゃが言ってた！」
|
| ともかく、『やる夫の中の入即貸本』に没入し難い現状では、やる夫が実演するのは難しい。
|
|「じゃあ、あたしがやる夫兄いのマネする」
|「大丈夫か？」
|「やらない夫さんがやる？」
|「ムリ」
|
| 即座に首を振るやらない夫。彼の身長とでは難しい。
| それに、柔軟でしっかりした下半身が必要だ。
|
| やらない夫もまあ悪くはないが、実演するのは難しかろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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.. ....:.r:.:..:‐-.:..::.:::...、
....:..:.: :.:.:..::.:|:.:..:.:.:..:..: :.:..:...:ヽ
rｱ.:..:. :..: :.:..:...:.:｛:.:..:|!:.:..:.:. :.:.:. :.:..:.:.
ノ/:.ヽ :::.: :..::.:::ﾐ´ ＼ｌヽ:.:..ﾄ:..:.:､.: :.:.:..:.
ノﾀi:.: :.:.: :.:.:..:ト´ ,x=＝=＼､＼ｌ＼:.: :ﾊ
ｲﾉ |.: ::ヽ:.::.:.:.}´ , ､ -xl:. :.:i
ｲ { }:.: :.:. :..:.:.ﾐ / 札! l:.: :}
ﾉ／ { ﾄ.:.:: :.:.ﾐ { ﾄｨﾉ ' 仭ｲ:.:/
{Yi }ﾄ ヽ「ミ｀''‐-､ , ｰ レ' よし、じゃあ『弓兵』さん。
ﾉノ )〈 { 〈 ヽ __ __ | そこに立って。
{Y} {Y} ゝ ､ ＼ 丶 / 丿
iタ }〈 l丶 ヽ_ノ ／ ＼
{r} {y} l ` . ／
}ﾀ 〉| l Ｔ
{y} ﾏ! ノ ___ ト ._
ﾏ｝ {i}_ - ´／ ヘ l! ｀ ‐ 、
{ﾍ , ´ ｒ´ -┤ -‐ l! ハ
ﾏ! / l -┤ l! ｌ
ｔ} ′ l ｲノ l! |
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| アリカは道場の端に備えてあった木刀を二本取ると、片方を『弓兵』に投げ渡した。
|
|「ん？ ああ、構わんぞ」
|「おい、危なくないのか？」
|
| 注意を促すジャギに、アリカは白い歯を見せて微笑んだ。
|
|「『弓兵』さんなら平気だよ」
|「それは防御が上手いという意味か？」
|
| 憮然とした表情を作る『弓兵』。
| だが目の奥は隠しきれない喜びに輝いている。
|
|「一回見てるんでしょ？ 見てない人相手だと危ないよ」
|「言えてるが、ならば受け役はロストスキル＝サンでも構わないのでは？」
|
| 頷くロストスキル。だがアリカは首を振った。
|
|「ロストスキル＝サンは病み上がりだし、外から見てもらった方がいいと思うんだよ」
|「オレもお前とあいつに結構ボロボロにされてたんだがな」
|
| その傷は、もうとっくに治っている。
| ロストスキルに関しては、肉体的負傷より改修型の義手の適合が問題なのだ。
|
|「ほんじゃあ、行くよ！」
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_ ノ／ ￣ ￣＞―´‐｀‐ ､＿ _ ＿_ __
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ｨ' ７´ r_{┴_ミ{ ｀ヽ!_-‐ヽ7
'′ ,／ﾍヽf7:ぅﾄｰ ´ィ:ｫjゝﾊヽ
//-― ﾊ ￣ i ￣ /ｧ‐-l!
l! l ヽト ,-､ ／/ ヽ 見たか！！
| ヽﾄ｀ ー ７／ }
i l l ￣ / /
l ヽ! ／ ｨ /
（⌒ヽr- 、 ヽ ／ / /
rｰ-ヽ.＿＼ ｀ ーｧ=､‐- ' ／ /
｀ ー-- 二｀ ーヽ ￣ ヽr＜!＿/＿ __. -―- 、
＿ ノ｀ ー ｀二_ ﾉ ￣r―‐-､- ､ ｀ ｰｧ
(_ _ - ―-_┬ ´!l ーく _ -- ､-_、＼-､￣
￣ }ｰ^T７十i_ ＼ -‐-- ､_-､ ＼ ー' ´
/ 丶､Y´j i｀ ー＜￣｀ ー' ｀ー'
/ / / ヽ
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|「「「セリフが早い」」」
|
| 踏み込みと同時の叫び。
| それに不満を述べたのは、やる夫、蒼星石、ロストスキル。
|
| だが、蛇のように地を這う突撃には感嘆の声を漏らした。
| 左脇に構えた木刀。普段使い馴れぬ長物のせいか、少しのぎこちなさ。
|
| だが、その異形の動きはまぎれもなく『蝦蟇剣法』。
|
|「……」
|
| 『弓兵』は中段に構えた切っ先を震わせた。
| 思わず打ち込もうとしたのだろう。だが、それは抑えて一歩下がる。
|
| アリカの恐るべき踏み込みと屈伸が、驚異的な射程を持って『弓兵』の膝を狙った。
| 異様な構えからの想定外の速度と飛距離。たしかに、機知でなければ防ぐのは難しい。
|
| ケンシロウやジャギすらも唸る動き。
| やる夫は、いつも夢中で行っていたので、アリカの見よう見まねに驚嘆していた。
|
| 確かにこれは膝を壊す。やる夫の体重だと酷いことになりそうな動きだ。
|
| 木刀の切っ先は『弓兵』の下段防御に阻まれる。
| そこで、彼は苦笑した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,,/
／ / ノ|
／/ ' レ´￣￣￣ ∠＿＿
／ ./ ／ ／ ￣＞
| / ＜
. |ヽ| / ／ ∠__／ ― ＼
| / /| ／/／ | ＿ ＼
|ヽ| / ´ '´ レ ´ ゝ― ＼
|￣｀' / ＿ノ ￣ ≦､ ､――｀
} / ,,ｨ'´ ＜ヽ __ |
/ / ∠/ ＿__ノ ｀ｰ´ - ヽ |
〈=ヽ ￣ ( __, | ＼
代ﾊ ' | |￣
ヽV| ｒ‐'／ |
|ノ /｀〈 |ヽ| ロストスキル＝サン程の鋭さはさすがに……。
ヽヽ ＿＿ ノ V |
＼ / ∨
＼ / / |
｀､ ／ / |
＿＿＿ ｰ ┬ ´ {三三三三三;}
／::::::::::::::::::::::＼＿＿＿__「￣￣￣二|三三三彡;;|＿
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| 次の瞬間、『弓兵』は驚異的な危険感知能力を見せた。
| 木刀を手放し、素早くブリッジ回避。
|
| 一瞬でも躊躇していれば、彼の鼻は道場の天井にへばり付いていたことだろう。
|
|「待て、アリンコ。話が違うぞッ！」
|「……へ？」
|
| 脂汗を垂らす『弓兵』。アリカは小首をかしげた。
| アリカの知る『蝦蟇剣法』はこれが正しい。
|
| 膝を断ち、鼻を削ぐ。
| 魚雷のごとき超低空斬撃の直後に、すぐさま体を翻し相手の頭部割断を狙う。
|
|「なるほど。確かに。君は『蝦蟇剣法』を知っている」
|
| 『弓兵』を無視して太鼓判を押すロストスキル。
| そもそも彼は、『弓兵』相手に完全な『蝦蟇剣法』を使用しなかった。
|
| 下段攻撃でキャンセルし、『鏡像剣』という別の奥義に移っていた。
| で、あるため。『弓兵』は本当の『蝦蟇剣法』を知らなかった。
|
| ロストスキルは、アリカがなぜか仲の良い『弓兵』からその話を聞いていた可能性を考えたのだろう。
| 故に、『弓兵』に告げず、事態を見守った。
|
| 『弓兵』が達人でなければ鼻を失っていたが……それは些細な問題である。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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しかし死を見れるのを証明するって大変なんだな
機知→既知かな
アッ、ハイ！
何も見てませんし聞いてもいません
明日も投下がなかったら夏風邪の仕業なのねそうなのね？ です。
／ ＿ ､ ノ-―-､＼
/7´ ￣ ｌ ヽﾊ
/ l l lい
い / , -､ Vl
|〈 /ﾆ=‐一 〉 `￣ｨｆﾃ‐､ ﾚ､ 『蝦蟇剣法』は簡単に真似できる技ではない。
_j | ィ ｆテﾐ l ｀ ´ |/ | 伝聞でも難しかろう。
lﾍ｀l ´ l ｲ〉 l
l ｌト､ 〈! _ lﾉ/ 私は入即氏が何度もそれを行い、
ヽ.ﾊ ' ┐lノ 夢宮氏が見てきたという事実を認めよう。
ｰl ､＿, -―_ｲ l
ヽ 丶----― ' /l
l＼ ￣´ //l
/lﾍ ヽ. ＿＿＿／/ lﾍ、
／/ l ﾍ / / ﾍ＼
／ / ＼ ／ l ＼
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「私はジャギ班を代表し、彼は有用性を示したと判断する」
|
| ロストスキルは興味深そうな笑みを浮かべて頷いた。
| その横で、ルカが遠くを見ながら髪を掻き上げる。
|
|「金を積んでもらえればそれくらいいくらでも太鼓判押したのに」
|「お前じゃ意味ないだろ？」
|「あ？」
|
| 無意味に喧嘩を吹っ掛ける慎二。
| 霊夢が肩を怒らせて威嚇するが、小学生女子に威嚇されて慄く男はそうはいない。
|
|「ちなみに私は、今までのサイコメトリーと、一般事務手伝いだけでやる夫君の能力は買っているわ。
| まあ、推薦できるのは後方支援の事務方だけれどね」
|
| そろそろ潮時と考えたのか、三四が援護射撃をする。
| 彼女は最初からやる夫の味方だったのだろう。先月、異能関係なくやる夫を登用したのは彼女だ。
|
|「どうでもいい。それよりこれからの女の子五人ぐらい見積もってよ」
|「なんでだお？」
|
| ぜったいあくが取りだしたのは卒業アルバムのような冊子であった。
| 証明写真のようなものが並んでいる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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圭圭圭圭圭圭圭主主主王王王三三三三三三三ﾆ,. -―- ､_
圭圭圭圭主主主王王王三三三彡彡彡彡彡彡彡彡三ミヾ三≧､、
圭圭圭圭主主主王王王三三彡彡彡彡彡彡彡:ｨｲ彡=ﾆ三ﾐヾ三三ミｰ､、
圭圭圭圭主主主王王王三彡彡彡彡彡彡彡彡彡//ィ彡三ミﾐヾ彡三三ﾐ
圭圭圭圭主主主王王王彡彡彡彡彡彡彡彡彡://ｨ彡彡イ三ミヾ彡三三
圭圭圭圭主主主王王彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡ｨイ三テzﾐ'､'三三、
圭圭圭圭主主主王彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡ｨ彡ｱ／￣ `ヾﾐヾﾐ
圭圭圭圭主主主彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡´ ,:'´ ﾞ!ﾄ'、
圭圭圭圭主主彡彡彡彡彡彡彡彡／￣ ＼三三//// |l|li
圭圭圭圭主彡彡彡彡彡/⌒ ＜´ ／＼ミ工メ､、 ﾘ!l|l
圭圭圭圭彡彡彡彡彡／ ヽ ､ { , -tｯﾘ｀ヾ':.:.:.:.:.ｨ＝=/..jl|l 可能なら別ページから選んでね。
圭圭圭圭彡彡r─ 'ヽ __＼ .ｨ＼ ｀ ノ ヾ三ｼ''" | /ｨtfiメy'ﾘﾉ! 神族別のデータベースだから。
圭圭圭彡彡/ ＼ __ヽ { ヾ/////三彡' !l:.:`'テﾗf//ｲ
圭圭彡彡／ ヽ ＼ ｀ー ' ﾉ//////彡 |:.:.:/:.ﾉ八{｛|
圭圭彡彡./ ＼ ＼ レ' ｀- イ////イ ',:.:,ﾘ'ﾉﾉﾉﾊl|l
主彡イ´/ ヽ ヽ ', ヽ/////, '､__ --彳'////八lﾉ
王/ ,ｲ! ', 人 { ).} ヾ ﾘ{、 丶｀`＝==ｧ,ｲﾉﾉｲ////f{
./ /!::! ≧､ ∨ ＼－' ﾉ ＞-､'､丶､｀二二´ｲｼｲﾉﾉﾑfｲ |l|
{ l |:::! ヽ { j i ,￣ ＿＿ ＞ ､ﾃrッﾁ/ｲ/ﾉ/／|i{ |l!
l ヾヽ::､ 丶二.ﾉ イ.t──＜⌒:ト､ }jｲjﾉﾉ////ﾊ{ ,ﾉﾍ ,jﾘ
ヽ ヽ＼ト ＿ イ:/ノ:/ l. 丶 ＿＿／,ｲfr彡∧ムヾ、 /´
＼ヽ｀::ー'::￣イ / ﾘ j／￣ ￣｀ヽ {!
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|「各神族から一人ずつぐらい選んで、子供を作ってよ。
| 上手く能力遺伝させたいけど、相性があるから。
|
| ちなみにぜったいあく的にはそうやって種馬になってくれればそれ以上は望まないよ」
|「なにそれこわい」
|
| とはいったものの、ぜったいあくは前からこんな感じだ。何も変わらない。
| しかし、完全に神の異能を持つのなら、やる夫が半神であるのなら、何としてもその血を『血族』に取り入れたいのだろう。
|
| 言っていることはあけっぴろげすぎて冗談で済むが、しかし。
| その眼は、本気でやる夫を種馬にすることを考えている。
|
|「入即さんとは、結局肩を並べてはいない。だが、信頼できると思っている」
|「信頼してくれる人がいれば誰だって成長できますよ、入即さん！」
|
| 蒼星石を一瞥し、微妙な視線を向けるケンシロウ。
| 彼なりに思う所はあっても、蒼星石の信頼を信じると言ったところなのだろう。
|
| そしてその横で返答に困る叫びをあげたのはミスト。
| やる夫のことは結局よく分からなくても、今後を期待するという意味だろうか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿
｢ ＼ ＿＿ ／⌒ｧ ） ｀丶
ヽ ´ ｀ / / ヽ
＼ く ／ ）
∨ ● ● Ｙ ﾉ
_|{ ､_, ､_, 八 ,′ ボクもミスト･レックスと同意見だ。
／ 八 ｲ 丶. / 入即やる夫、正直ボクはキミを信じきれない。
⌒＼/ , / ｰｧ Ｔ´ { ＼／＼
（ （⌒>く.／ / . : / ',: :ヽ 〈） ）
＼{／ : : :/ : : / ヽ-ﾍ . : : ／／､
／＼＼＿∧: : ,′| ｉ ｉ | ∨∧／／ : : :＼＿_
（＿ﾟ: :｡ ーｧ‐' : ; | | | | ー‐く: : : : :｡: ﾟ : _ノ
/ . : : ｡人: : :.:| | | | | } ＼: ｡ : : : :）
（_／{:_:/ ＼: iヽ 丶ソ 丶ソ ノ ＼_ﾉ￣
￣⌒ ⌒￣
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| ポケットから取り出したあたりめの封を切る杏子の肩で、赤い目の獣が静かに言った。
| キュゥベぇは、慎重で冷静だ。贔屓目も無い。
|
|「……食うかい？」
|
| 周囲の目を集めた杏子が、恐る恐る当たり目を前に出す。
| 誰にと言う訳ではない。
|
|「佐倉杏子、注目されているのは君ではないが、とりあえず何か食べていないと落ち着かない癖は直すべきだ。
| 理由は三つある。自己抑制が脆弱だと侮られる。行儀が悪い。そして食べ物がない時に困る」
|
| 保護者らしいことを言いながらも、キュゥベぇの感情を感じさせない目はやる夫に向いたままだ。
|
|「あー、悪かったよ」
|「だが佐倉杏子。キミはもっと大きく考えるべきだ。
| 食べている状態で集中できるというならいい。だが君は違う。
|
| 食べていない状態は散漫で、口に何か入ってようやくニュートラルになる。
| これは弱点になりうる。即刻改善を図るべきだ」
|
| いつの間にか、キュゥベぇの話はお説教になっていた。
| 嫌そうに顔をしかめる杏子。キュゥベぇはガラス玉のような双眸を光らせる。
|
|「どう思う？ 入即やる夫」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＿＿＿_
／ ＼
／ ＼
／ ＼ ……正直。
| ＼ ,＿ | 今のやる夫は目が使えないから分からないですお。
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「いつなら分かる？」
|「回復をさせたいなら、専門家に頼むのが一番だと思ってますお」
|
| やる夫は三四に目を向けた。
| だがその間も、キュゥベぇの視線はやる夫を捕らえたまま離さない。
|
|「答えが出るまで、キミへの態度を保留しよう」
|「……ありがとうございますお」
|
| そこもまた、ミストと同じという訳だ。
| キュゥベぇは経過観察を選択した。
|
|「麻呂も何か言うべきでおじゃるか？」
|「言ってやれですぅ」
|
| 『元老院』二人の態度が分かったので、あとは『四天王』であろう。
| やる夫は麻呂を見た。
|
| 白塗りの老人は血走った眼でやる夫を見下ろす。
| あまりいい印象を与えていない様子。おなじ真っ白なのに。
|
| ここだけの話、やる夫も麻呂にいい印象を受けていなかった。
| やる夫としては、やはり翠星石壮星石との関係が後を引いているのだとも思う。
|
| 翠星石の婚約者で、父親のごとき男。
| やる夫にとって翠星石は、恋い焦がれた女だ。
|
| 結果、嫉妬や不満、羨望が黒い渦を巻き、やる夫は虚しさで息を詰まらせた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/"'-..,;;;;;;;;;;;;;｀''-..,,_;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;..|
ﾄ:::::::::｀''- ..,, ;;;;;;;;;;;;｀'' -...., . .- ''´|
i:::::::::::::::::::三 ｀'' - ..,,;;;;;/;;;,,..-'イ;,
/ﾆ､::::::::::::::::三 ､;;;;;; ｀"´ ,,,,, i;;;i
{ ( _',::::::::::/ "" |/
', '<i ヾ:::::::i ､､,,三、 ,,.-、 i
',､ヾヽi:::::i '-ヽソヾ /,'ｯﾌ､i
ヽ__.. i::::i ､ ￣ﾉ | ;ﾆ ノ.i
ﾉ,.-| i::i | i 先月の功績から考えると、
. i,ｨ''"', ／､_ :::: / そもそも入即氏を手放すのはおかしいでおじゃる。
/',',', ', ／ ヽ_ノ /
. ｲ',',',',', ', ', ( ,.---::;;;;､_,. } /
/ '',',',',',', ', ',- ､ ,.__`ｰ´ノノ
,.-イ ''',',',.',', ',:', ,ノ ／､,,、
( {´ ',',',',', :',.','---─ '´ﾘ ', ヽ
''´´ヽ((''- .., ',',',',', .',.',ソ ./ / ',) }ｰ..,,,
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「本人が望んで出て行ったならともかく、そうでないならさっさと向かい入れるべきでおじゃろ？」
|
| 麻呂の視線が物言いたげに蒼星石に注がれる。
| 蒼星石は何事も無いかのように受け流す。だが、麻呂は分かっているのだ。
|
| 蒼星石がやる夫に平穏な日常を過ごしてほしくて追い出した。
| やる夫がそれをよしとせずに帰って来た。
|
| ならばわざわざ有用性の説明など必要ない。
| それが麻呂の判断であった。
|
|「では後日、入即やる夫には適当な班に入ってもらおう。
| 戦闘向けなら夢宮班でもいいが、探索向けなのだろう？ 備府班を手伝えばいい」
|「お？」
|
| 話をまとめたのは懐疑的視線を送っていたキュゥベぇだった。
| 首をかしげるやる夫に、キュゥベぇは首をかしげた。
|
|「引き続き気味の有用性を示せとボクは言っているのさ」
|「ありがとうございますお」
|
| 頭を下げるやる夫。やる夫が顔を上げるとほぼ同時に、東田が口を開く。
|
|「では次の議題に移りましょう。北斗ジャギの謀について―――」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
引き続き気味の→引き続き君の
ジャギのことも議題になるのか〜
翠星石壮星石→翠星石蒼星石
壮とか元気そうだがｗｗｗ
＿ ＿_
ィ::::::::::::::::::::｀::::､
／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ.
イ::::::::::::::::;::::::::::::::::::､::::::::::
ｊ:::::::::/_/_!::､:::l_ヽ_|_!::::::::::l
/!:::::/ ﾘ _ハ!ヽ:|__ﾏ ｌ::::::::|｀
′::::{￣V￣ ￣V￣ ﾘハ!
八! !′
ﾄ ＿ ノ ―――は、さっき決着がついたのでおしまいです。
≧ｒ __ ィ つぎ、『死鳥』について。
人≧ｙ ｒｲ人
{__ ヘ_７ ｀ヽ
ｒ ´ T ＼
ｲ ! !
! | ハ
ｌ |! { ! {
} ヽ＼ |! ｊ |
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 水銀燈が鼻息荒く前に出た。
| 豊満な胸を拳で叩き、やあやあ我こそがと言った風情。
|
|「やる夫さんの伯母の水銀燈よぉ！ やる夫さんをいじめたら承知しないんだからねぇ！！」
|「では、神名と神族、出身と所属、日本に来た目的と、封印に至る過程をお願いします」
|
| 無意味にテンションの高い水銀燈と、トーンが一切変わらない東田。
| 案外、いいコンビかもしれないとやる夫は思った。
|
|「アイルランドから来ました。トゥアハ・デ・ダナーンのモーリアンです。
| ビデオに出たきっかけはぁ……」
|
|「すいません、時代はブルーレイなんで」「そもそも、撮影してないし」
|「というかどこで知ったんだ？」「水銀燈さんの考えることは斜め下すぎて……」
|
| 媚びっこびの角度で自己紹介を始める水銀燈。
| しかし、場を和ませるためのジョークのつもりだったのだろうか。
|
| 東田、慎二、やらない夫やる夫が白けた視線を送る。
|
|「そもそもなんでインタビューを入れるんだ？」「絡みの時間を減らして撮影コスト削減が目的だろうね」
|「パッケージには60分と書いてあるのに、イメージ画像とインタビューが半分を占めているというサギか」
|「詳しいのね、士郎」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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丶､ ヽ ﾚ'/ ,
,. -‐ ､ヾ＼｀ヾ ＼ ﾄ､i' | /イ
/ r‐ ､ヽ _z--‐‐‐' ヽ | , ,ｨ'
/ 〈 ヽ 〉-ｰ'" ヽ、 ヽ/ ,／
| {´ ,. ' } ∨
,. - " l ヽ l iヽ./ /
''" ヽ Y |r':j| l
〉 Y´L ﾉj
＼ / ′ / 待て
: : :＼/ { {
: : : : :＼ l u ＼ まあ待て凛。
: : : : : : :＼､ r'ﾆ‐-､ ....::;:: ゝ 一般論だ。
: : : : : : : : :ヾ、 ｀ヽ＼＼_」'´
￣￣｀ヽ､:.:::::ヽ ､ ｀Y´
::::::::....: : : :＼::::ヽ ,rﾞ'´
::::::::::::::..: : : : ＼::l /
:::::::::::::::::..: : : : : ヾ ノ
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| ジャギ、ロストスキルの話に口を挟んでしまった『弓兵』を、赤い悪魔が威圧する。
|
|「その一般論的知識をどこで入手したのかから聞きましょうか」
|「は、話せば分かる」
|「とりあえず後で実家に電話して、あなたの部屋を家宅捜索しないとね」
|「おい馬鹿やめろ！」
|
| じゃれあう二人を横目に、そのほかの男性陣は遠坂凛の恐ろしさに身震いしていた。
| 夫婦間と言えど、踏み込んではならないプライベートは必要だ。
|
| 特に性癖とか一人のお楽しみとか、そのあたりは、
| 関係したプレイを楽しむのでもない限りはそっとしておいてあげるべきである。
|
| ……が。
| はっきり言って、妻が夫の性癖に興味深々なのは仕方のないことである。
|
| 妻は夫のいない間隙を突いて、その手の本やポルノムービーの中身を確認し、
| 場合によっては無言の抗議を持って机の上に放置してもおかしくはないのだ！
|
| 健全な夫婦関係のためならば、それぐらい当たり前なのである！！
| ここに論理の破綻は一切ない！ 破綻はしていないのだ。
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_ .ｨ'亠.-..､
,イ::ﾊﾉ＼ﾊ!ヽ:ヽ
r={:::ﾊ! i:::}
〃=ry rｭ‘ ‘ rメ
〃 !}Y_. ヮ ﾉﾊ なになになんの話？
{i {i ヽ_/ヽｪ/i┬=く´ ﾉ
/i i} ｣ （__ ._） ､ L
` ﾑ iヽﾉ::::::r' i _/
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| だが、さしもの赤い悪魔も、無垢な瞳で本当に何も知らないアリカに問われては言葉を詰まらせた。
| そろってごまかす一同を、アリカは不信に見つめる。
|
|「あとでやる夫兄いに聞くよ」
|「せ、せめて蒼星石に聞いてくれお」
|「おい、僕に投げるな」
|「やる夫が説明するのは……気まずいお」
|「あ〜……」
|
| がっくりうなだれる蒼星石。諦めて受け入れてくれた様子。
|
|「で、なんだったかしらぁ？ 初体験の年齢？」
|「ちがうちがうちがう」
|
| 見事なテンドン＝ジツで『弓兵』を追打ちする水銀燈。
| 全方位無差別爆破に見せかけた指向性ある打撃。ロストスキルが舌を巻いた。
|
|「20年ちょっと前にうちの神界にニンゲンが来てね、口先だけでダヌ様を丸めこんだのよ。
| 詳しくは『ナイトテイル』シリーズを読んでね」
|
| こなたの父、大学教授で魔術と神々の専門家、泉教授。
| 彼は母なるダヌーの世界に迷い込み、ある契約を結んだ。
|
| 人間界に帰してほしくば子供を差し出せという要求を承認し、
| しかし自分には妻子がいないからとダヌに求婚。女神との間に子供を作ったのだ。
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,. -ｭ,ﾆニ弌垳ト､
／r'^ _rﾍ-ﾍ/＾ヽr宀､
/!７ト､7′ 〃 ｌ ヽ ヽ
、 / l//L｣| ∧ｌ | ! |l ｜ ! ヽ
|:l / 〃 ||丁l トH､lV| |l /l } l |
ヾヽ / 〃 |l | ｌ抔卞｀ヽ{ /-ト/ //ﾘ
＼ ヽ:∨ |」 /ｌ| ｌﾄヽ￣ ﾚ'戎ｼ' ／ ′ で、泉教授の同行者の一人が、
⌒ヽ!ヽ._j＼＼ / 八 |ヽ __ ' ∠r1=彳 彼のやり方から別のアプローチを思いついたのよ。
::..::..::..::..::..｀::..::ヽ/ ﾊ ヽ‐ >､ ,. イ| }::..｀ヽ、
::..::..::..::. ／⌒ヽ､ヽjノヽ.∨r 芥､/:./ /::..::..::.､＼
::..::..::.::./:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾ⌒Tlヽ｝l,ハ/-/ 〈::..::..::.｀ヾ＼ヽ
::..::..／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∨_ || ヽ:ﾚ':.:ヽ::..::..::.くヽ.j
::.r'´.:.:.:..::.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∨_ ||ｰrﾍ.:.:、:.:.＼ヽヽ:〉
仆､ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ∨_l〉 ri心:.:',:.:.:.:.:ヽ｝
′ ＼_.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ∨_ ゞ=仆ヽ.:.:_ノ
, 〉个､:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.∨_ ｌ }〉:.}'´
| く_/^ﾄ､>:.∧:.:.:.:.:.:.:.:.:. ∨_ﾘ 〈|:.ハ
| //:.:.:||:.:./ ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∨┐r':.:{ ､ヽ
!| //:.:.:.:||:./ ｝:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∨.:.:.:.| l |
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|「おのれ泉、今度会ったら脳を切り取って中身解析してやる」
|
| ぶつぶつと邪悪なことを呟いているのは、ぜったいあくだ。
| 彼は人間と神の混血を作り、『血族』に混ぜることで『血族』の異能を強化させたいと考えて（？）いるのだ。
|
| なのに、20年も前？ しかも知人だ。
| 裏切られたという気持ちが強いのだろう。
|
|「いやその前におめでとうしてあげないと」
|「続けるわよぉ。そいつは女神の低位分霊を介して子供を作ることで、
| 子供に女神の能力を遺伝させようとしたの」
|
| 一同が黙る。先ほどまでとは雰囲気から違う。急にシリアスになった。
|
|「不完全で不安定、魔力絶対量も肉体性能も脆弱な人間に、神技級の異能を遺伝させても、
| 使いこなせないし簡単に壊れちゃう。宝の餅腐れだわぁ」
|
| 宝の餅腐れとは、正月に配られる祝福された神餅を大切にし過ぎて余らせてしまうことである。
| 『妖怪エリクサー余らせ』の仕業とも言われているが、詳しくは分かっていない。
|
|「ってばっちゃが言ってた」
|「ちょっと黙ってなさい」
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,ｫｪ､＿__
,.f込ｔﾝ:::::::::::｀ ヽ、
／::::;. -‐ ´￣￣｀丶＼
〃::／ ＼ヽ、
. ll::/ l 、 ヽY ＿
ll::l} ｌ | l | l lイﾆ}|
ll;;l} l､ | | ｌ、 -l‐七/ｖ' lミ彳、
. _,'Vｉ l,x tT二ｔ,|ヽ,ノ,ｨT}｀'j ｌ ||〃へ.､ と思ったら、そのクズは他神族との混血を作ってたのよぉ。
／<//l､ ヽヽｨf_lｊ` ¨ ∠ノlﾉ.|| l ヽ> 死に関係する意能力をうまく噛み合わせて、
ヽ／/{∧ ＼＿. __'_, ,ｨ′l ﾚ. l 僕だけの最強の主人公を作るつもりだったみたぁい。
. / //'l | ＼__＜. ､ __`_´.ｲ,ヽ ＼,__ l
/ l_| |_! ｌ ｌ l'ー--,＜└vヽ ＼＼!
. / ,ｨｰ-.‐| |'′ //lＹﾐヽ|l ハ 、 ヽ:.＼
/ /.::::::::::::{ ＼ｰtfﾉｌi 斤 l:::::|j＼ l:::::::.＼
/.:::::::::::::::ヽi＼ ヽ ￣l｣ |/ |::.Ｙ :::`'::::::::::/
. /.::::::::::::::::::::::|:::l ヽl_,､_ｒ､,_,､r､l'|:::::', :::::::::::::/
〈:::::::::::::::::::::::::l:::::＼ﾞ ' | l / ' ,}::::/ :::::::::::ハ
. ＼:::::::::::::::::::i､:::::::::＼ 仍} ,/:::::ｌ｀ヽ:::::::::::::',
T :::::::::::/ ＼:::::::::::` - ､／::::::::l ヽ:::::::::..ヽ
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|「そして完成したものをこちらに用意してありますお」
|「自分の有用性すら証明しきれない無能！ 自分の有用性すら証明しきれない無能じゃないか！！」
|
| やる夫の皮肉に、強烈な煽りで畳みかけるぜったいあく。
| とりあえず、自分抜きで話しを進めた泉教授と脳噛への悪意で、シックスは髪の毛を逆立てていた。
|
|「ちなみに、出産の際にフィードバックで女神の分霊は死亡。
| 死の深淵からの衝撃が本体へも波及したわ。
|
| 私はぁ、妹にそんな危険なことをさせたゲス野郎が許せなくて殺しに来たの」
|「だけど口下手だから上手い説明を『血族』にできずに売り言葉二回言葉でケンカになったんだよね」
|
| ここで補足に入ったのはキュゥベぇであった。
|
|「うんまあ。でも、暴れる高位悪魔相手何だから仕方ないとも思うわ。
| 少なくとも私は『血族』を恨んでいなし、分霊仲間でも同じよぉ」
|
| 麻呂が目を細めた。童女のように笑う水銀燈の真意を測りかねているのだろう。
|
|「お主を信用するには理由が足りぬでおじゃる」
|「私の心は二つの感情に支配されているわ。まず入即への憎悪」
|
| もう一つは？ 聞き返す必要もないだろう。
| 水銀燈は意味ありげな流し目をやる夫に送った。
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＞場合によっては無言の抗議を持って机の上に放置
持って→以って
＞死に関係する意能力をうまく噛み合わせて
意能力→異能力
＞「うんまあ。でも、暴れる高位悪魔相手何だから仕方ないとも思うわ。
何だから→なんだから
＞売り言葉二回言葉で
二回言葉→に買い言葉
それと、細かいけれど
＞魔力絶対量も肉体性能も脆弱な人間に、神技級の異能を
神技級→神業級
調整もあって３年前後はかかる計算だ、と火輪で言ってた
＿/:／l:.| /l | l l| l ヽ ＼
'´￣ｲ:ニ:ｲ l/＿ヽﾄ、l_ lﾍ | l | ヽ
／/ j:| l l ヽ-ヽ｀ヽ卜、 l j｜ ト l もう一つは甥っ子かわいい！ よ！
/:l /:l l | ､＿.二 _ 「 ＼l /イ/ｌ l｜ l
.:/ /:/ l | ￣￣ヾﾐ ﾚ_⌒ヽ} l |｜ やる夫さんの味方をしてあげたいから、
,' l:::l ヽ l /// { =ﾐ /／| | l めんどくさいけど『血族』にも
「´ l＼ ', r - ._ / ,,,, /ｲ /ﾚ' ごめんねしてあげてもいいのよぉ。
/ | l ＼ ! ｀ ７ l/ //
ノ| l ! '、 ／ ／ イ:|
l ! ! ＼ ヽ. _／ ７¨´ | ﾊ::l
,l ! |_, - ≧ ､ ＿ _, ｲ l | L! /|
/ ! l | 〃￣ ﾌ水ﾍ＼ | ｌ l / }
ヽ l | ヽ＼// l ヽ_〉:〉 l /! | / ／ ＿_ - '´
￣＼ﾊ l |、 ￣l:| l:ト-ｲl ! / l l／ /／／ ∠
Vﾍ l ＼＿ |:l l:|＼＿/ /＿／￣＼
｝ ＼! |:l l:| ∨ ／ ＼
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| 胸を張って謝罪を口にする水銀燈。
| キュゥベぇと麻呂が顔を見合わせた。
|
| どう判断するか測りかねているのだろう。
|
|「そういえば、前から思ってたけど分霊（わけみたま）ってなんだお？」
|
| 分霊……ぶんれい、あるいはわけみたま。
| 高位悪魔を語るに際して、よく耳にする言葉ではある。
|
| しかし具体的にはどんなものなのかやる夫は知らない。
|
|「諏訪神社とか八幡神社とか、日本中に分社のある神社があるだろ？」
|「ちょ、ちょっと待ちなさい！」
|
| 一般的な知識を説明しようとしたやらない夫を、霊夢が焦った様子で止めた。
|
|「あんた神道系じゃないでしょ？ そういう専門知識はプロに任せなさいよ！」
|「でも君に任せるとお金請求されるだろ？ オレ、ちひろさんへの支払いで結構カツカツなんだよ」
|
| 先月末の戦いで、やらない夫はニャルラトホテプを倒すために多大な犠牲を払った。
| そのひとつがスクラップになった愛車『フェニックス・ホーク』で、それとは別に恐ろしい問題があった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ミ ヽ
/ ､ ヾ､
/ ハ ＼ ハｊ八
′ / / |ーキ＝!ー-- ヾ ＼
/ /_ 斗７{ i ! ﾊ | ＼ ヽ. ! ﾊ
, ７´ ハ ｌ ｊ /-ヽ ハ ＼ﾊ从{ j
; / ｊ ! ノzミ､ , ｊ/ チ=テ三トヾ
/ ,ｲ i ｲテ≠天 V {/´ケニニトﾐ !
ｊ / ﾊ| ｊ7/ｲニﾆﾊ ｀ヾx ' {ニニﾆﾊ Y |
/ ｲ ! ｊ/| /ｊ/ {ニニ｣ ｀ヽ{ !ニニニi ! ト､
/ 八 ｊ! ｊ ハ| i ﾏニフ ｊ ゞ＝―┘ l ｊ }
／ ヽ{|从 / ｊ ^冖´ ｀ ｊ i / ./
| |ﾊ ｊ｣ / ./ /_ノ
' V八 ＿ ｡＿_ / / /
ﾄ､｀ヾゝ､ ｀マ＿ ア イ /ノ
/｀ヾ､_}ﾊ」〕s｡､ ,,｡ィ i! ／
{ ｌ ｀{トーリ ｊ/ﾘ ≧＝≦ ! イ
i V |//´/ﾘ / ｲ{/ /ﾊ _ノﾍ -≠彡
､ ﾄy{//_ノ 彡イz ｒ┴､-= ￣ ＼ー ´
ﾒ､ゞ/イ イ,／ /: : : ﾊ -＝ｭ､＿_
ｲハｊア￣彡' イ: : : : :ハ ／ , ィ￣
i ﾘ７ ／ リ=ｭノ 〉_／ ／/
V 八,ィ＿彡ィア: : : j/ ／ / /
∧ .／} ヾ/ア´ ／_/: : : / ＞´ / /{
/ } ／ ﾉｰ､ {/ ＿.ノ: : : :/＞ ´ ヾｰ' ﾘイ
. / / ´ ／ ィ｀ｰｭ ィ７ : :_;／ ﾏ i!
′/ ｲ ／ ﾉ > /{_:／ ,, ィ´ |/
! ｊ i / ,イ / ﾊ／ /｀ ＜＿ ﾊ
. ｊ′ /ｰァ´ノｊ / ./ メ ｧ __ ＜_ ､
i 〈 ｊ／ /ハ! { ィ〈 ､_) {_ノ｀ ＜ /
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| 『傾国』こと千川ちひろは金銭を媒介に因果律すら捻じ曲げる。
| 正当な対価を支払えば、彼女に用意できないものは無い。
|
| 物も、情報も、ほしいままに手に入れられる。
|
| そしてやらない夫は、彼女を何度も利用したのだ。
| ちひろはどのようなシステムかは不明だが、前借りが可能であった。
|
| かくしてやらない夫は先月の戦いの報奨金の大半をむしり取られた。
| 最後に頼んだ一畳分の姿見（税込138,240円）こそ、星に支払いを頼めたが、金銭的にはかなりの負担があったのだ。
|
|「本社でない場所で祭神を祀るとき、神霊を分けて祀るんだ。
| それが分社。その際、神霊を分割したものを指すのが分霊」
|
|「支社長みたいなもんかお！」
|「その本社じゃあねえですぅ！」
|
| 蒼星石の説明に頷くやる夫に、すかさず翠星石のツッコミが入った。
| 本社と言っても会社の本社ではなく、神社としての本社である。
|
| しかし、言いたいことは極めて近い。
| 神社が祀る神の一部を分割し、分社においてもその威光を知らしめるのだ。
|
| 支社長が二号店てマーケティングに奮戦するのに似ていなくもない。
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.... ,,、＿_
／ｨ彡'三三≧､
, 'ィ///ィ彡'三三ミ≧､
,!ﾉｲｨﾉﾊf/r''^`ミﾐヾミ'､_'、
/!/fｗﾘ八 ヾﾐ'､ﾒﾐ､_ヽ、
{i |l|W小f l|l｛{ﾄミヾﾐゝ､__,
）!l|l|fﾘfﾓﾘﾐ;ゝ:ｨ'tiﾃ!lﾄﾄﾐｿ}｝ ヽ｀`ヽ
,川h{i洲{´ l:{:｀~尢',l|l|巛 ＼ '､
ﾘﾉﾉ八ｲ ':,:.:.ﾊﾐﾘ!ﾄ､ﾐヽ、 ヽ
ノｨｼｲ卞ミ}＿ｰ_',:./ﾊ｝}l{ ヾミ'、 以上が辞書的な意味だね。
,.彳｛{/ﾘﾄﾐ'｀ﾆﾆ,´ｨi{l｛lﾄ't'､ ｀',ﾘ 業界的には違う。
,. '´:/:::::|jﾂ ﾘ}}iliﾘt洲Wjﾘﾂ}｝ﾘﾄ､',ﾐヽ
::::::::/:o::::|{ヾﾊﾘﾊ{ゞ'､' 'fｼ'､//{｛!ヾﾐミ',
:::::/:o:::::::|:.:.:｀ﾒ'､(ヽ丶 j入::ヾﾘゞ,ﾉﾘヾj
::/:o::::::::::|:.:.:.:{:.八} | ）〈:.:ヽ:/o､fﾂ'ﾘﾄ､＼
/:o::::::::::::|:.:.:.:V､_ﾘ |::. ヾ:.ヽ:::::{il､::::::::::::::ヽ
ヽ:::::::::::::::|:.:.:.:.:∨|｀` ‐::、.:}:..:'､::jﾘoヽ:::::::::::ゝ
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|「まず呼び方が『れーぶん』。業界用語だからね」
|
| シックスの妄言には誰も耳を貸さなかった。
| ノシイカをしゃぶる杏子の頭上で、キュゥベぇが前足を上げる。
|
|「我々が住む物質界は、悪魔の世界と隣接している。
| 悪魔の世界は極めて特殊でね、物質としての特性よりも、情報としての特性の方が色強いんだ」
|
|「情報？ 悪魔はデータ的存在って認識でいいのかお？」
|「構わない。意志や怨念と言った精神的エネルギーを物質化したものが悪魔だ。
| これについては異論はないね？」
|
| キュゥベぇの言葉に、やる夫は考えながら頷いた。
| 精神エネルギーの物質化。信仰を物理エネルギーに変える。異能もまた同じ。
|
|「悪魔は情報体だから気軽に体を切り分けられる。といっても、高位悪魔に限られた能力だ。
| 高位の悪魔は基本的に多量の『信仰』や『畏れ』を持っている。
|
| 低位の悪魔はそれらを持たない。まあ、その代わりにイデアがあるんだけどそれは置いておこう」
|
| ここでキュゥベぇの言うイデアは、初期イデアが持つ根源的な知ではない。
| 後期イデアが示す鋳型的な存在似型のことである。
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-‐ﾆ ┤
＿ -‐ ´ ／ }
＿＿ ／´ ｀ヽ､ j
_ -‐二 ─ｧ (:.r:.) ヽﾉ 悪魔は自分を分裂させて
く ￣ / (:.r:.) ヽ＼ もう一人自分を作ることができる。
＼ / / ､＿, } ヽ
ヽ/ { ｰ´ ﾉ ヽ と言ったら理解できるかい？
/ ﾊ ｲ ヽ
,′ | ゝ ／ l ヽ＿┐
＿ l ├─｀ｰ ┬- l´ l ヽ //
＼ヽミヽ/ ! l ! l ／ﾍ
／⌒ ヽ＼〃ミヽ､ j ,' l＼ ∧_ ／／ ﾟ ＼
/ ( ｀ノ ＼､ l ＼/レ-＜ ､ ﾟ､＿ ＿ )
/ ＼ ／o ﾉヽ＼ ハ i ヾ､:..ヽ ＼ﾟ｀ヽ､ ＼
{ r‐｀￣ ／ o o ／ ｀ｰ┘ { { | ｀"ヽ ｀ヽ､_)｀ｰ--'
､ ゝ-／ ／ ／ ! 丶 { ヽ
＼ 'ｰ─／__ ／ ／ l ∨ / }
＼ ´ _ -‐ ´ l { ∧ ﾉ
｀ ｰ─-- -─ ´ ((l, H ト､ゝ─ ´ ／
〉 ハ / (r , '´
ゝノ/ ノ ￣'
￣
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|「あんまり」
|「だよね」
|
| 正直想像を超える話だ。自分がもう一人とか、意味が分からない。
|
|「それが低位悪魔の感覚だよ。入即やる夫。
| もう一人作ることなんて不可能。自己の概念が分割されて、曖昧になる。
|
| しかし、高位悪魔はそうはならない。
| 彼らは己の概念を自意識ではなく外側から補強しているからだ。わかるかい？」
|
| キュゥベぇが小首をかしげる。
| 信仰や、畏れという奴だろう。外からの意思で、存在を確立しているのだ。
|
|「アイドルみたいなもんだよ。外向けのキャラと信仰が合わさってキャラができる」
|「シックス、意味不明な例を上げるのはやめてくれないか」
|「意味不明じゃないよ」
|
| 不服を垂れるキュゥベぇに、ぜったいあくは肩をすくめた。
|
|「分霊って言うのは、AKO49から松の廊下走り隊が分離するようなものなのさ」
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申し訳ありませんが今日はここまででお願いします。
てか禿のやるやらじゃ【毛】を吹いて分身作るなんて考えもせんか
※なお、アレンジャーが多すぎる
まんじゅう化や恐竜化やニンジェル化しても同一存在だと認識可能
低位分霊は元祖と本家が分かれるようなもの
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼ 何でアイドル。
／ -=・=- -=・=- ＼
| （__人__） U |
＼ ｀ ⌒´ ／
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| 胡乱な視線を送るやる夫に、ぜったいあくは溜息をついて肩をすくめた。
| なんてムカつく仕草。しかしやる夫はぶん殴りたい気持ちを押しとどめた。
|
| 皆さんご存じの国民的アイドルユニットグループAKO47。
| 赤穂浪士をイメージしたグループで、47人以上のメンバーが存在する。
|
| メンバーは年に一回人気投票を行い、人気ごとにその年の「クラノスケ」やら「ノブユキ」やらを決める。
| それはともかく、グループ内で小さなグループを作ることがある。
|
| 人気のあるメンバー数名で作った少数ユニット「松の廊下走り隊」は、その手の内部グループでも有名なユニットだ。
|
|「『本体』の高名がなければ、分離した端末は存在維持が難しい。
| これってアイドルも同じだよね？
|
| 無名の奴らがいきなりグループ立ちあげるのと、人気グループ内から分離する。
| スタート時点でネームバリューが違うって思わない？」
|
| 馬鹿にした口調でそれっぽいことをまくしたてるぜったいあく。
| やる夫は助けを求めるように白い淫獣に視線を向けた。
|
|「なるほど、確かにその発想は正しい。アイドルだけではない話だけれどね。
| 最低限のブランド保証というイメージは分霊の原理を極めて分かりやすく表現しているよ」
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／ .:/
／ ＿＿__ .::/
／ VＺﾆ=-＞──- ,._＿__
/ ア^／ r＝=≧:､ そしてAKOという本体と、
.: / / ● ｀ヾ二ア… 、 松の廊下走り隊が本質的には同じでも、
| .′ :. ● ｉ:. Y´ ＼
ｌ ,.-=#==ｘi＼ `^ｰ' .::从 | '. セールスやグループとしては
. ＼`ｰ=i {ゝ::≧ｧ---‐r＜/_＿ｌ__:::::. } 別の存在であるという点も同様だ。
¨¨ | 人¨¨ :′ Vく{「￣ 「_≫:::. /
| 。 ｡ ﾟヽ i ＼j ＼ヾ:::: ′
ｌ ﾄ､ |`ﾇ | ｕ し ヽ。､｡､ﾟ＼:／
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|「自分であると同時に自分でないってことかお？」
|
| やる夫の問いに頷いたのは水銀燈である。
|
|「多くの神格にとって、分霊を使う理由は二つよ。ひとつは人間世界に直接介入したいから」
|「え？ そうなの？」
|
| 驚きの声を出したのはまたしてもシックス。
| 悪魔側の事情と、人間としての知識の差とでも言うべきなのだろうか。
|
|「その通りじゃな。神々の多くは物質界に顕現できる体を持っていない。
| 物質界は、分かりやすく言うと深海みたいなもんでな」
|
| 水銀燈の言葉を引き継いだのはニャンコ先生だった。
| 深海。深い海の底。光も届かないほどの水のした。
|
|「くわしく」
|「物質界は雑多なアレこれが多すぎて、水圧でペチャンコじゃ」
|
|「つまりイヌガミノスクネ。君が言いたいことをまとめると。
| 神々には生きにくい世界だから、分霊と言う探査端末を使っているということかい」
|「然り」
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＿
, -― 二＿ ￣｀ヽ
,ィ´'´￣ ｀ヽ ）
,ｲ´ } ノ
/ , -ー'´ｰ ￣￣｀ヽ､ r､
/ ／ ヽ. |ﾊ
,' , ｲ ､ ＼. ﾄ'´
! / ', ヾﾄ､.!|
ヽ , / i ', i ', V|j|
｀ー' ,' ｌ ｌ ﾊ ﾄ、 ', !|ﾉ
, | ! ｌ ', !__ヽ＿ ｌ Y
ｌ | ｌ ｊ-‐ヾ´ l ＼ ￣ｌ | そう考えると
! ｌ ｊ ゝ ､ ', ｀ i i ｌ 深海より宇宙が近いな。
| i ! i _＿_ ヽ', ', ´_＿_ jヽ i| !
ｌ | ! ゞ＝=＝ !＼_{ ＝=＝ﾂ ! ﾊ ! どちらも人類から見たら不可侵じゃが、
! |i ! ｌ , , , , , , , ,ｊ /ｲ‐ﾘ 絶対真空という『不足』の方が分かりいい。
', i ゝ', i ,' / ﾉ//∧
ｒﾍ ｌ/ﾊ ﾊ ､_ ＿,｡ ﾉ /ｲ/////ﾊ
!/ﾊ!//ﾊ ',ヽ､ , イ/ ////＿//
Y＿＞-| ､ V/ ＞ ､ ィ // , ﾊ￣ ＿/
ヽ＿＿ｌ ﾊ ゝ'/ﾊ イィ /|/77//
V///ﾘハ Vｊ´ / ﾊヾ､＿{｀ヽ,､
, ﾟ￣￣７７ﾊ ﾘ｀ヽ イ´! ｌ///ﾊ./i￣ ｀ヽ｀≧ｭ､
// /ｌ ! l |ｧ-ｭ､ハl| Y//ﾊ
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|「神々にとっては物質界の魔力不足は致命的なんじゃよ」
|「なのよねー。必要なパワーが振るえないくらい」
|
| ニャンコ先生の比喩に、水銀燈が乗っかる。
|
|「ホントはもっとパァっと使いたいけど、低予算でレギュに合った分霊じゃないと自由に動けないどころかスライム化しちゃう。
| そう考えると、分霊ってマシンに似てるかもぉ」
|
| 水銀燈が脇を締め、両手をグーにした。親指がグニグニ動く。
| それが何を意味するのか、誰も理解できない。
|
|「あれ？ ラジコン。誰も知らない？」
|「何で悪魔がラジコンしてるんだお」
|
| やる夫のもっともな突っ込みに、水銀燈は小首をかしげた。
|
|「会社で作ってるのよぉ。面白いわよ」
|「と言うかアンタ、フルスクラッチしてるってことだろ？ ヒマなのか？」
|
| 怖い物知らずな慎二の問いかけに、水銀燈は力強く頷いた。
|
|「だってあのバカは見つからないし、やる夫さんにベッタリベッタリしてたら迷惑だし。
| やること他にないんだものぉ！」
|
|「と、まあ。これが戦闘用に特化した分霊じゃ。
| 本体はもっと知性レベルが高い。同様に、分霊は何かに特化していることが多い」
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ 一）（●）
| （__人__）
| ｀⌒´ﾉ
| ,.<))／´二⊃ ああ、スイーツを楽しむ専用とか。
ヽ / ／ '‐､ﾆ⊃
ヽ､ｌ ´ヽ〉
''"::l:::::::/ __人〉
:::::::::|_/ヽ. /|||||ﾞ!:ﾞ､-､_
:::::::/´∨/`ｰ'〉ﾞ||i l＼>::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.: ',ゝ､_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
／: :／/: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i::|
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|「なんだそれは？」「下手な冗談だ」「バカか？」
|
| 四方八方からの罵詈雑言に事情を知るキル夫や麻呂が苦笑する。
| やらない夫は何故冗談扱いされるか不思議な様子で首をかしげる。
|
|「そう言えば、もう一つの理由ってなんだお？」
|
| やる夫の問いに、水銀燈が不敵な笑みを見せた。
| あまりいい気分のしない笑いだ。やる夫は、水銀燈の好戦的な姿をあまり好きではないのであろう。
|
| やる夫にとって彼女は、まるで妹のような、お人よしの伯母なのだ。
|
|「神格の神性をより高めるための布教活動よ」
|「布教？」
|
| 今度は、シックスもキュゥベぇもさもありなんと頷くばかり。
| 疑問を呈したのはやる夫だった。
|
|「時に神々はヒトの子供に分霊を流し込んで生まれついての超人を作りだすのだ。
| そしてその人物が偉人となった場合、彼への信仰はどこにたどり着くと思う？」
|「あー、本体？」
|
| ずいぶん偉そうにシックスが頷いた。
| ふと、やる夫は昔々シックスをニャルの端末ではないかと疑った時のことを思い出した。
|
| 彼は確か、逆だとかなんとか。
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!::::::／´ ﾉ三三三三三三三二:::
ゝ'rｧ '‐-､_三三三三三三三:::
/ ＼三三三ﾆ::: イニ.､
i :::rｪ､_ 1三二::::／::ヽ ､
ゝ, .|ﾂ'´ i三ニ::/ t_ヽ ｀
./ !;;:' i三ﾆ::i い ﾌ 分かりやすく言うと、
/ : |三:::::!:::＿_,,／ 上杉謙信でおじゃる。
/ __ :. ヽニ::!:::]ヽ_:-'"
ヽれ; '_=ノ ::::): : : ::;
i ::;:;:;;:/ ::;;
c,,,,,___ ::::::::::::;;;:;;/ ::;::
冫゛ :::::::::::;;.／ ＼ ,,..
ヽ_::::. ::::::::;;:;;::/ .／ ／ __
｀i :::::::::::;;;;;/ ／ ／ ／__,,
ヽ＿ﾉ;;;::l:::;;:;/／ ／..-'‐"
｀´｀´ ゞz,／ ヽ__,,.-‐'"
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|「それは戦国武将の方で？」
|「両方ともでおじゃるよ」
|
| 毘沙門天の生まれ変わりとして、東京を守護する『血族』の『四天王』上杉謙信。
| 彼女はつまり、毘沙門天の分霊なのか。
|
|「分霊と言ういい方よりも、『転生者』と言ういい方が好まれるね。
| 生まれついて神の恩寵を受けていて、多くの場合は何らかの宿命を帯びている。
|
| 上杉謙信でいうならば、彼女は東京の守護のために生まれたと自分で言っている。
| 今回のニャルラトホテプの件もそうだが、数年前にも彼女は活躍したよ」
|
| 活躍と言っても、結界の守護ばかりという地味な活躍であったが。
| 数年前の『結社』内部分裂の際、すでに謙信は今と変わらぬ力を有していたのだという。
|
|「ちなみに『転生者』の性格は環境によるものが大きい。
| 更に言うと才能を開花せずに野垂れ死ぬ可能性も高いので、かなりのギャンブルじゃぞ」
|
| そう聞くと、上杉謙信はかなり幸運だったのだろう。
| 才能を開花しまくって、活躍する場を与えられている。
|
| そこでふと、気になることがあった。
| ……あのクソオヤジは？
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暑さに負けず元気に行きましょう！
いえーい！！
／￣￣￣＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ あのクソオヤジは転生者なのかお？
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ／
／ ＼
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|「そうよぉ」
|
| 頷いたのは水銀燈で、逆に周囲は色めきだった。
|
|「はぁ！？」「え？ そうだったの？」「初耳だね。詳しく頼むよ」
|
| 額に血管を浮かせる凛、きょとんとするぜったいあく。そしてキュゥベぇは何か考え込む。
| 心当たりがあるのかもしれない。
|
|「あのアホが北欧関係の異能者なのはご存知ですかお？」
|「ああ、ルーンを使いこなし、『泉の知識』が脳内にあると豪語していたな」
|
| ルーン魔術はラテン文字の普及前にゲルマン人らが使っていた言語である。
| 古代ルーン文字は呪術や儀式にも利用され、神秘性を纏うこともある。
|
| 良く分からない知識を無数に持つあの男のことだ。
| ルーン文字くらい知っていてもおかしくないとやる夫は考えた。
|
|「『泉の知識』？ おいおい。入即のオヤジさんとやらは根源に接触できるって言うのか？」
|「いや、恐らく比喩でおじゃる。奴は知識欲の塊で、好奇心を満たすためだけに生きている。
| 忘れることができないのが唯一の欠点だというのが口癖の傲慢な男でおじゃった」
|
| 驚く慎二に、麻呂が首を振る。傲慢。奴にぴったりの言葉だ。
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ヽ///////ヽ/:::::::::::::::::::::::::_:::,､:::::::::::::::::::::::::ヽ///／:|
＼//////::::::::::::::::,:::::::::lミ､ｲ､::::::､:::'，:::::::::ﾑ/＼::::|
'＞､//::/:::::::::::/:::::::: | ﾏ::::|::::|::::|:::|:::::{///＼
}／/ｲ::l:::::{::::: |::: |!::: | |::::}::::}|:::|!::!:::::|//ｨTﾑ だから私たちは、
. ,ｨ/// |: |:::: !::::::|ﾏ:|Ⅵ:| |::/ｨ7 }:ﾘ-|:::ｲ_//::::{::::. 脳噛ネウロはただの魔術師であると
/>ｰ､/ {:::| :: |::-ﾘ-::|-ﾏ{ }ｲ,ｨて㍉､}:/ﾘ,::::::::::ﾑ:::::､ 考えていたんだけれど。
|:{/∧{ﾏ: |::{ ｨ斥㍉ 之z ｿ/ｲｨ }:::::::::::::ﾊ:::::＼
}:::::::::::::{从､ 弋zソ ¨´ ﾑ /::::::::::::::::ﾑ::::::: ＼
j!::::::::::::::ト､ ﾑ , /-':::::::::::::::::::::::}ヽ::::::::::::.
,::::::::::::::::|:::::ゞﾊ _ ｲ!:::j::::::::::::::::::::::;':.:.:.ヽ::::::::::.
,::::::::::::::::::!:::::::::::::ヽ、 ´ ／:.:{Ⅵ::::::::::::::::::::/:.:.:.:.:.:.，:::::::i
. j::::::::::::::::::|:::::::::::/´:.ヽ＞ _ ..::'／:.://:::::::::::::::::::,.:':.:.:.:.:.:.:.:}:::::::: !
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ﾏ:.:.:｀ー:i´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.r,:.:.:./:::,'::::::{::://:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,'::::::::::::|
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|「……口さがない、自我の肥大した男だったな。
| 自らを天才と称すのに何の躊躇いもないし、即席で作りだした魔剣に神話の名を与えることを躊躇しない。
|
| しかし、腹立たしいことに彼の言うことは常に正確で、誤りがない。
| そして実力と態度が一致していた」
|
| 元妻の言葉を引き継ぐように『弓兵』が呻いた。
| 悪い思い出があるのだろうか。やる夫には無数にある。
|
|「『泉』云々はともかく、彼は知恵者で『魔匠』だった。
| 魔力のこもった武器を精錬し、生み出す名人だったよ。それも、神話級のものをね」
|
| キュゥベぇの言葉に、やる夫は不思議な気分だった。
| やる夫は良く考えると、あの男のことをほとんど知らない。
|
|「自分の手を汚さないクズ野郎よ」
|「相手にとって最高の武器を作り上げる天才だった」
|
| キュゥベぇから父親への評価がきわめて高い。それが不愉快で、やる夫は顔を伏せる。
| あれが褒められるのは胸が苦しく、恥ずかしい気分になる。
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／´￣￣｀ヽ、
/ ヽ
{ ,. --‐┴…ｰ- ､
ヽ ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ、
/.:.:.:.!:.:.!:.:.|:.:.:.:.:l:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.ヽ
l:.:.!:|:|l:.:|ヽ:＼:.:.:!､:.:.:.:ヽ:.!:.:.:.ﾍ マイケルおじじとどっちがすごいの？
|:.ﾊﾊ!ヽl ＼lヽl__＼:.:.l:|:.:.:.l:.:l
＿ rﾍ!/f,心ヽ /f心ヽヽﾘ.:.:./.:ﾊ
,.--く ,斗-| ﾋzｿ ﾋzｿ } }:.:/:/ヽﾊ
{ ｀ﾒ､ ﾍ._! , , ' , , /ｨく｀),.-'┴ｧ
ヽ,r‐､―- ､ ヽ ､＿_,. /_／-}―‐!｀!__
／´￣｀丶r‐┬-＼ ,. '´{,. -―-､人_|/ｿ
／::::::::::::::::::::::::＼ {::｀ ｰ--‐ '´:::::／:::::::::::::::::::::::} /
::::::::::::::,. -- ､::::::::`,ﾆ´-‐'' ´￣￣￣￣￣￣｀`丶､! }
::::::::／／ ヽ∠::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}'
ヽ::{／／ く::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／
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| アリカの無邪気な問いに、周囲の大人たちが顔を見合わせた。
|
|「センセイだ。あの人は本物だ」
|「マイケルでおじゃる。格が違う」
|「マイケル小原を理性の天才だとするなら、脳噛ネウロは感性の天才だね」
|「脳噛だよ。最高傑作を比べると分かる」
|
| 『弓兵』、麻呂は手放しでマイケルを誉め、キュゥベぇは曖昧な返答。
| そしてぜったいあくは完全に脳噛を上と見ていた。
|
|「どういうこと？」
|「分かりやすく言おう。オレは武器を即時練成できる」
|
| 『弓兵』が言うと、青白い光が走り、一本の日本刀が現れた。
|
|「これは使い捨ての一時的な武器だ。魔力で作った物質。本物の武器ではない。
| いうなれば『分霊』に近いかもしれないな」
|
| 『弓兵』の魔力で生み出す武器。そして、それを投射するのが彼の戦法だ。
| やる夫たちは、先月の戦いでいやというほど思い知らされた。
|
|「オレが作れるのは構造を把握している武器だけでな。種類は多くない。
| 武器としての質も量産品程度だ。さて。
|
| しかしオレは凛の実家の工房に鍛冶場を持っていてな」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ﾍ ヽ
ト ∨ l |
｀ヽ ､ | ＼ ∨ .} /≧=
_ 彡 ｀ ､ / ／
､ 彡' ｀ ､ _ .., '
..∨´ ｀ ≧=‐ ､_ l //
｀‐ ,､ ｲ
`ヽ ミﾆ ' ｀Y
こ u l､___ / そこで、必要な素材を集めて、
| | / 半月ほど鍛練に励めば
. ﾑ. _ / 異能を有した魔術的武器を作ることも可能だ。
心 ヽ｀ .ｰ ､ ／
｀≧ｭ､＼ ￣ ／
: : : : : : : ≧ｭ､ ｲ
: : : : : : : : : : : :｀＞､
｀: ー=≧_: : : : : : :./
: : : : : : : : :｀＞=-/
: : : : : : : : : : : : : :＞､
: : : : : : : : : : : : : : : : : ｀ ー. --- _
: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 先ほど『弓兵』はマイケルをセンセイと呼んでいた。
| 彼の武器作成技術は、マイケル小原から教わったものなのだろう。
|
| 彼の横で、ちょっと誇らしそうに凛が胸を張った。
| アリカややる夫にはそれがどれほど凄いことなのか分からないが、
| あのプライドの高い魔女が誇れるレベルなのだろう。
|
|「センセイは同様の武器を二日で作る」
|「はぁ？」
|
| 奇妙な声を上げたのは凛だった。
|
|「物理的に不可能よ！」
|「だができるんだよ、凛。それどころか過去作ったものだったりするとさらに期間が短くなる。
| アンデルセンの『銃剣』を一本作るのに半日かからないそうだ」
|
| 凛が頭を押さえた。やる夫には実感がわかない。
|
|「脳噛は、そのセンセイが一月掛かりで作るレベルの超大作を即時錬成できる」
|
| 『弓兵』が使い捨てる武器と同じように、魔力で作る武器だ。
| 現実の物質ではないので長持ちしない、使い捨ての武器。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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, -‐ ､ _
{ , ／ ヽ
. . , _ (_／ ｀ヽ .}
. , / ｉ ﾉ .ﾉ
, / .} ／／
. , ' , ／／
, - _､＿ . ／／
. , ／ ‐ _´‐ / ／／
. }／ ' _ ' ' .／／
. /／ ／､ . ／／
{' {.|.{}.| _/ -‐=-‐ 7￣／／ｯ
. ､ ｉゝｲ , -‐ " ;ノ _ -'／ '
` -} ,; ﾉ´ ／ ／'
ノ ,;j｀´ / ／ｲ
. ／ ,;}´ ｉ ﾞ ´ﾒ
. ／ ;-!´| ヽノ
ゞ､, ; ,､',‐' ´ { ｡{ ,
ノ` ´ノ! { .{
. (_-, ´､_' .!o ｉ ､
' , ._{ .
. ｉ ／ ＼ _､
{ / ー―一 ´ ヽ
{- ― ´ _ - ､ ヽ
{ / ＼ ヽ
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|「奴はそれを『エクスカリバー』『ミョルニル』『グングニル』などと呼ぶ」
|「つまり、似てるようで方向性が違ってて、『弓兵』さんはどっちの足元にも及ばないってこと？」
|
| アリカの放った矢は性格に『弓兵』の心臓を穿った。
| 彼を殺すのに刃物はいらぬ、血縁者からの心ない言葉さえあればいいのだ。
|
|「そ、そのとおりだ」
|「だが、二人とも『弓兵』＝サンほどは動けまい」
|
| 致命傷を受けた『弓兵』を、ロストスキルがフォロー。
| 先日のイクサの因縁からか、刺すような皮肉を続けていたロストスキルからの手助けに、
| 『弓兵』はイクサで芽生えたユウジョウを感じた。
|
|「どう思う、奥方？」
|「そうね。とりあえず士郎が詳しいのがポルノムービーだけじゃあないってことが証明できたからいいと思うわ」
|
| しかし、それらはすべて裏切りのための準備にすぎなかった。
| ロストスキルと凛の、間髪いれぬテンドン＝ジツに『弓兵』は轟沈。
|
| ナムアミダブツ！
|
|「なるほど、そうか。ロキだったのか！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
いろいろ溜め込んでそうだ、確かにｗ
スキル効果的に
魔力で編む、いずれ霧散する→□財力
気合で作る、物として残る →□大地の声、□特別公務員
こ、公務員ってスゴイ！？
-‐ﾆ ┤
＿ -‐ ´ ／ }
＿＿ ／´ ｀ヽ､ j
_ -‐二 ─ｧ (:.r:.) ヽﾉ
く ￣ / (:.r:.) ヽ＼ なるほど、そうか。ロキだったのか！
＼ / / ､＿, } ヽ
ヽ/ { ｰ´ ﾉ ヽ
/ ﾊ ｲ ヽ
,′ | ゝ ／ l ヽ＿┐
＿ l ├─｀ｰ ┬- l´ l ヽ //
＼ヽミヽ/ ! l ! l ／ﾍ
／⌒ ヽ＼〃ミヽ､ j ,' l＼ ∧_ ／／ ﾟ ＼
/ ( ｀ノ ＼､ l ＼/レ-＜ ､ ﾟ､＿ ＿ )
/ ＼ ／o ﾉヽ＼ ハ i ヾ､:..ヽ ＼ﾟ｀ヽ､ ＼
{ r‐｀￣ ／ o o ／ ｀ｰ┘ { { | ｀"ヽ ｀ヽ､_)｀ｰ--'
､ ゝ-／ ／ ／ ! 丶 { ヽ
＼ 'ｰ─／__ ／ ／ l ∨ / }
＼ ´ _ -‐ ´ l { ∧ ﾉ
｀ ｰ─-- -─ ´ ((l, H ト､ゝ─ ´ ／
〉 ハ / (r , '´
ゝノ/ ノ ￣'
￣
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| 手（？）を打つキュゥベぇ。
|
|「男でありながらルーン魔術を弄び、武器を授ける知恵者。
| あの皮肉屋をオーディンが守護するのかと思っていたけれど、ロキなら納得できる」
|
| ロキ。北欧神話におけるトリックスターであり、誘惑者である存在。
| 主神オーディンの義兄弟とも義理の親子ともされる存在で、元来敵対者である巨人族でありながら、神々と友好関係にある。
|
| 北欧神話内の時節により、彼の立場は異なる。
| 前半は道化めいた知恵者で、中盤にその立場を失い、後半は罪人となる。
|
| 面白いことに、ロキは神々と極めて仲が良い。
| 冗談や皮肉を投げ、からかい、時にいたずらで悩ませるが、いざというときは頼りになる仲間なのだ。
|
| 北欧の神々の中でも、極めて有名な雷神トールがいる。
| トールは無骨な武人で、武勇に優れ、よく食べる。
|
| 最強の英雄とコメディレリーフを足したような大男と、性悪ないたずら者。
| 文字通り古の時代から、現代まで受け継がれた、王道のコンビである。
|
| あ？ メガテンにおいてトールといったらトールマンだろうって？
| ありゃあトルーマンと掛けたジョークで、トール的な部分少ないし。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ｲ
{∧
ゝ ヽ
, -‐＝≡≦´=- `ー- .
／ ．＜ : .
／ ヽ
／ ／ { ﾍ {ﾐ}
/ ｨ ./ ∧ ﾄ ' , ハ ||
. / 〃 / //::V i |∨ ヽ ', }.||
. ,' / ,' ,' //::::::V l |::::＼∨ ＼ i !||
i ,' i i i ＝=―--t. l |--―=＝ ＼! i.||
|i | ', i l iN::__::_:::::', ｉ.|:::::::_::__:ヽ＼ ｿ.||
|! ' N -ｚ≧ヒテﾐ::ﾍ. !! 彡=ヒテZ У77
{ ＼ { ＼ ≡=＝‐'::::::ヽﾘ::‐≡=＝' ﾊ7/
ヽ〉∨ヽ}::::::::::::::::::::::j:::::::｀¨:::::::::::/ } |
_＿＿_V i / / :| ……ロキ？
＼三三| .込. r―‐ｭ ,ｲi / | ゲェッ。
＼オ|ﾊ ∨ ＞ ． ＿ ,. イヽ!l / ,'j
下|∧ ∨ z} !ヾ∨i ∧!
iﾆ| ∧ i :{´ }.| / |
イ| ∧|！＿__:. i＿ j !∧: !＞．
Y´ | / : : ∧ ｀ ´ / {∧jﾘ ｀ヽ
| .|/＞=-∧ . / -=＜ !
| /＼ : : ∧ ヽ .〃 /: : : ／ヽ |
. | ./: : : :＼: :∧ Y /: : ／: : : :∨. |
. | /.: : : : : : :＼∧ ！ / :／: : : : : : :∨ DTl|
{=＝=,': : : : : : : : ∨ ∧ /〃/: : : : : : : : ',=＝=}
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| 何か言いたそうに、ニャンコ先生がそわそわと周囲を見た。
| 彼はロキを知っているのだ。忘れられがちだが、ニャンコ先生は神話的存在である。
|
| 千年単位で封印されたせいで実力こそ大幅に減算されたが、恐るべき悪魔なのだ。
|
|「知っているのかニャンコ先生！？」
|「まあ」
|
| 言葉を濁すニャンコ先生。
| ロキは神話序盤でトールと世界を漫遊し、その知恵を持って何度も彼を助けた。
|
| だが物語中盤で、主神オーディンの息子バルドルを殺害。
| その上さらに酒宴の席で集まった神々を罵倒して回った。
|
| 秘密を暴露され罵倒された神々は怒り狂い、逃げたロキを捕縛して監禁した。
| ロキは息子の内臓を加工した鎖で縛られ、常に毒液が顔に滴る状態で固定される。
|
| あまりにも残酷な刑罰は、ロキと神々の間の溝を決定的なものにした。
| 神話の終盤『ラグナロク』と呼ばれる世界の終わりに際し、すべての縛めや封印が消えてなくなる。
|
| ロキと彼の息子たちは神々の国に攻め込み、壮絶な戦いの末に神々の屍が山と積まれる。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿
／'⌒ ｀
__( /
⌒へ〈＞ﾍ、
／ ヾ
. // |
/: 八 } }
ﾚ′／｀ー‐. Λ }l }
. ＿_/ ／ |「巧列､ ｛__｀ー八 ﾒ、
｛//ﾚｸ{、 ｌ| ￣ ヽ{巧列 | ｀ヽ_)__
｛////Λ八 ' ｀＾'人| ////｝
｛￣￣￣ﾚ个 ￢ u くl}: 八/￣￣｝
V77＞‐ |l.l!/) 〕ｌ爪 [￣}/ﾄ ミ 7777 ……む、昔契約したデクノボーのダチでのぅ。
. ∨ .／ﾚ/厶 ] | |ヽ V// あ、あの頃はわしも尖ってたんじゃ。
{ ／=ﾐ{ ′ ,ﾊ ]／| |ヽ〉 }
｡ レ'⌒{ J }丿{、 }
,′/ ,＞| / / {＼/
. {___レ{//{ /＼ ﾉ、／ } }}
/7 / 人'Λ ////〉彡__＿__／ /}
. ///{////≧=--イ竺７_______＿ノ〈
////{//////////[/__]>'´￣ V///〉
＼///////////_ノ[.__]＿＿ノ{///′
＼///////厂 [___] {///}
￣￣}￣ [.___] {//八
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| 神話は神話。実際に闘い抜いた神話存在にとっては別の見方もそこにあるのだ。
|
|「元彼の元彼ですか？」
|「気持ちの悪い言い方はやめよ……やる夫が人を殺して『血族』に喧嘩を売ったとしよう」
|「え？ 何でやる夫が？」
|
| たとえ話とはいえ、微妙な立場のやる夫である。そこは正直困る。
|
|「で、死んだ方がマシみたいな拷問で生き地獄状態にされたらどう思う？」
|「なにそれこわい」
|「たとえば？」
|
| やらない夫の問いに、ニャンコ先生はちょっとだけ考え込んだ。
|
|「邪魔な手足もいで、脳に電極刺されて、死の運命見るためだけの端末にされる。
| 点滴で生命維持されて糞尿まきちらしながら『血族』のために死を見続けるとか」
|
|「なにそれこわい」「許せないな。助けようとするだろう」
|「一応言っておくけど、しないからね！」「ぜったいあくもやらないよ！」
|
| 鷹野三四とシックスが、それぞれそっぽを向きながら弁明した。
|
|「だって、その状態で正しい予見ができるか分からないでしょ？」
|「ぜったいあくなら下半身改造して種馬にもするー」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ＼
／ ＼
| ＼ ,＿ | 気持ち悪くなってきたお。
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「落ち着けやる夫。ハーレムだと思えば何とかならないか？」
|「ムリ」「だよねー」
|
| 無駄に想像力豊かなのがやる夫の悪いところだ。
| しかしお客様の中に気分の悪い人が出ても困るので、これ以上の描写は控えさせていただく。
|
|「まあ、そんなこんなでちょっと縁いじって封印解除して回って、
| 集団脱獄した連中と意気投合してアース神族殺して回ったこともあったんじゃ。
|
| やんちゃだったのぉ……」
|
| やんちゃとか、そういうレベルでは済まない気もするが、過ぎた話である。
|
|「ちなみにロキは、本来女性のみが使えるルーン魔術を理由も無く使える。
| 彼自身が女装をしたり、女性に変身したりすることから、女性であった可能性もあるのではと言われている。
|
| そして、北欧神話の主神たちが持つ象徴的な武器は、ロキが小人をだまして作らせた。
| 彼から与えられたものであると言える」
|
| ニャンコ先生の若さゆえの過ちもそこそこに、キュゥベぇがロキの解説をまとめた。
| ルーン魔術に、武器の貸与。なるほど、やる夫の父親と同じタイプのようだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿
／ ＼ ちなみに一つ目に弱いとか言う
／ノ ＼ u. ＼ 弱点があったけど、
／ （●） （●） ＼
| （__人__） u. | すでにやる夫に押し付けたんで
＼ u.｀ ⌒´ ／ 神話的弱点は無いお。
ノ ＼
／´ ヽ
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「……何で弱点ついてるのよ」
|「なんでも行動を抑制するためだとか」
|
| 凛の呟きにやる夫は答えた。
| どこで聞いたかは霧の彼方だが、確実な話だ。
|
| あのクソオヤジは、主神オーディンによって戒められた状態で生まれてきた。
| 『転生者』として、好き勝手しないようにと言うことなのだろう。
|
|「本当に弱点があったのか？」
|「らしいお。まあ、すでにないけど」
|「信じられん」
|「……やる夫を入れたくない部屋の入口に一つ目巨人の顔石膏を置いておくくらいだお」
|
| 人が嫌がることを嬉々として行う。
| そんな姿を、脳噛を知る者たちは即座に思い浮かべることができた様子だった。
|
| 何人かの口から、諦めのような嘆息が漏れる。
|
|「ちなみにロキの分霊だったら東京にも一人おるぞ」
|「え、誰？」
|
| ニャンコ先生の言葉に、やる夫がおっかなびっくり質問する。
| あんな嫌な奴がもう一人いるのか？
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿
, " ゛ーヘ- 、_ 、
rﾆ;, ／ !ヾヽヽ、 )ヽ.
{ｒ､｝ / / | ＼ヾー--- " ｊ
ヾ.'､ / /j / ! ＼ヽ｀ ー-- "
ヽ｀､j // ! /! j ﾍ ﾊ
. ヽr=! ! i! i! | ,ｲ ﾊ }! |
{::::ﾍ}|! | ,ﾊーｔ--ｒ' | i!ート, i| !i
_＿__ ;ヾ=ｪi| i|/ｨｵﾃミ!ｿ ! ,!xｬｧｊ! ﾊ. ! i !
. {::::::::::::::｀ヽゞﾐj| |《{ﾟし:::） i. /fo::｝ｲ j | | j !
ヽ::::::,;;;-----;| | ー '" j/ ゝ-' ﾊ ｲ.j/ﾉﾉ Ｌじゃよ。
. ｀く ＿;;ー| | "" , "/ i / j,／
>´::::::::::::::| |＼. -= ｲ 'イ |
. _,,ゝ、:::;;;;;;;r| |_ ｀ ーｒ＜.´jﾉ | |
. ／／::::/7;;;;;;;},.! | ＼__ .{ ｀!'､ | |
. / /:::::::/'／ ヾ! | ¨ﾊ ｀ヽ{! {ー‐| ｜
{ /::::::/./ }! i! { ヽ、 i} ｀7､ | i|ヽ.
ヽー '¨｀{ }! |＼ jヾ､ 7 ヽ〈＼,| i| |
. ＼ ﾍ ｿヽﾊ! ｀ ＼ヽ. ｀ヽ }> 〉 ＼j |
＼. ヽ }y' ヾニﾆ{ ｀ｒ' ＼|
､ ） ﾊ ／/ ｀ヽﾄｰ;' ヽ.
i｀ー '" / < { i} ﾍ }
. ヽ、_＿__ ノ ｝ ∧ .ｲ! } ﾉ
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| Ｌ。甘味処『ニュクス』の常連と言うか、一日中いる男。
| 東京中の甘味の類を味わいつくすことを目的とした悪魔による秘密結社『糖分同盟』の盟主的存在だ。
|
| 毎日甘いものばかりを食べ、メンバーと情報交換をして過ごす。
| その交友関係は広く、『教会』幹部にして合衆国大使のトールマン弟から、
| 『結社』幹部であり『九鬼』首領の黄泉まで。
|
| ついでに方々の高位悪魔の甘味用分霊の方々とお知り合いだ。
|
|「ああ。ずっといるね」「うん。三十年以上かな」「そういえば居たでおじゃるな」
|
| 『血族』の幹部たちが名前を聞いて頷く。
| Ｌは、高位の悪魔でありながらその存在を許容されているのだ。
|
|「ちょっと待ってください！ 何でそんなに冷静なんですか！？」
|
| 発言自体が少なすぎて、存在を作者に忘れられていたキオが驚きの声を上げる。
| 祖父から受け継いだ『悪魔皆殺し』の意思はぐらついているが、東京に普通に悪魔が棲んでいると言う事実が受け入れられない様であった。
|
|「悪さをしない悪魔は、結構いるよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ { ／ | i ＿＿＿
,ｲ ヽ / ﾄ-'― ー--＜二 ￣｀ ､
ｌ i ､＿ ｀ー ﾆ´ └ ､ ￣｀ ､ 丶
! 'ﾊ＼ ￣｀ー- ´ , -c ヽ ｀ ､ ヽ
', ゝ' ヽ ヽ-' ヽ ｀ ､ ちなみにＬは、
ゝ´ ｊ. , -c } ヽ ｀ー--‐ 流河旱樹という名前で住民票すら持っている。
,ィ ,ｲ ヽ-' __ﾉ ｊ ＼
. / ｊ ｀ｰ' ﾉ ＼ : : : 偽造だと思うけれどね。
/ ハ _ ＜＿ ヽ : : : :
. / ! ヽ ヽ ￣￣｀ ､ ｀ヽ : : : :
/ ! ｀二ー┐ ヽ ヽ ｀ー . : : : :
/ l (￣ ｀´ ヽ ー : : : : :
. i ! ￣｀ ー --┐ i ＼ ', ￣￣
l. . l ', j ヽ }
. l: : : . . :l ', l / ヽ /
i : : : : : . . : : : : i ,ｲ ヽ l i ヽ､＿＿ ノ ／
!: : : : : : : : : : : : i i ヽ j ＼ ／
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|「偽造は悪いことでしょう？」
|「悪魔である証拠を見つけないとダメー。バレなきゃイカサマじゃあないんだな」
|
| 嬉しそうに頭を振るシックスに、キオは困惑の表情を向けた。
|
|「『教会』の『異端審問官』なら、間違いなく殺しに行くわね」
|「日本でそれやっても、もみ消せないわよ。失敗したら特に」
|
| ルカの言葉に、霊夢がトゲが透けて見える軽い口調で肩をすくめた。
| そう、失敗。霊夢の言葉の意味に、キオはすぐに気が付いた。
|
| 失敗とは、その悪魔を倒せなかった場合ではなく、その悪魔が人間だった場合だ。
|
|「そもそもＬって、高位悪魔の分霊にしては戦闘能力低くないか？」
|「あれは、感覚と知識に全振りしたタイプじゃな。コストの割に厄介じゃぞ」
|
| やらない夫の問いに、ニャンコ先生が邪悪に笑う。
|
|「そうなのかよ？」
|「当然だけど、悪魔は高位の方が知識が多い。その知識を大量に持っているって言うのは、それだけで厄介さ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_ ,, ....,,、__
ｒ:ｉ州Ⅵ彡三≧､
, ',!ﾉﾉﾊｨ//r''^`ﾐⅥﾐ'､_'
/Ⅵ!ﾘl|l|/,イ ヾﾐ'､ﾐ､_ヽ
{i|l|Wfﾘ/} _ノ ｀ヽllﾄヾﾐゝ､_ 聞いた！？ 今のセリフ。
）洲从|i{f ● ●ｌﾊﾐ!ﾄ､ﾐヽ すげー自慢だよ！ 自分がどれだけすっごいかを自慢してる！
,川h{ﾐ ⊂⊃ ､_,､_, ⊂}l洲ヾ'
ﾘﾉ|i⌒ヽ'､. （_.ノ ﾉⅥ／⌒)
ノｨｼi|ヽ ヽﾐ､､ __ .,;ｨi{l|::::ヽ ／
.彳 ∧__,/::ﾄlt洲Wjﾘ;/:::::::::::ﾊ
ヾ::::::::::lヽ０００/:::::::::::/ >
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「恥ずかしいからやめてくれ」
|「やめない！ 知識だけ集めて使い魔にしたものを他人に譲渡した伊集院は、
| 俺TSUEEE！ って言いたくてたまらないってツイッターで拡散しちゃう！」
|
| キュゥベぇは早い話が分霊に近い。
| が、本体はすでに死んでいるので、自我の件に関しては問題がない。
|
| そして、戦闘能力そのものは低くても、彼の知識と見解は目を見張るものがある。
| なるほど、やる夫は思った。
|
| 分霊にもいろいろあって、戦闘能力が低いからと言って侮れないということか。
| しかし、それは同時に、やる夫にとってはある問題を意味していた。
|
|「あー、でっていうって言う悪魔を誰かしらねーかお」
|
| 顔を見合わせる一同。誰もが首を振る。
|
|「そいつの代行分体強行偵察型って奴と会ったことがあるお」
|「何者だい？」
|
| これまで誰にも話していなかったことだ。蒼星石の問いに、やる夫は少し考え込んだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | 並行世界から来た時間旅行者だお。
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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| 複数の人間が眉に唾を塗った。
| やる夫も気持ちはよく分かる。でっていうは存在そのものが信じがたい。
|
|「ええと、自分の世界線では死んじゃう予定の大事な人間が幸せになる世界線が欲しくて、
| 世界の滅亡を防ごうとしているらしいお……」
|
| 自分でいいながら、だんだん自信が無くなってきた。
| やる夫自身、でっていうの妄言は話半分以下で聞いている。
|
|「本気でそれを信じてるですか？」「正直ほとんど」「ですよねー」
|
| 疑念一色の翠星石に、やる夫は正直に答えた。
| 周囲からも胡乱な視線が飛んでくる。
|
|「話半分だけど、ウゼーことに奴の言っていたことは一部あってたお」
|「ほう」
|
| 興味を持ったキュゥベぇが、ガラス玉のような赤い瞳を光らせる。
|
|「『ビスケットハンマー』『ニビルの到来』『軍部のクーデター』『核ミサイル』」
|
| やる夫が聞いている、破滅の足音はそんな感じだ。
| ニャルラトホテプを殺しにクトゥグアが来るなんてのは冗談だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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､
-ミ＼:≧-: ､ヾ.|
,. . : :≦: :`:.ヽ: ＼ : ﾉ!彡￣ミ: . .、
＿＿/: : : : : : ／: : : : : У: :彡: : : ミ:､ヾ
＞: : : : : : :._: : -:ミ: : : : : ／: : : : : :.ヾ＼
／7': : ／: : : : : /: : : : }: : :/: : : _: : : : 八::ヾ
＿ 彡': :／: : /: : : :/: :/:/从:.:/r‐:.': :.ﾊ: : : : : ::.
〃:／ : 彡': : : : ,: :.从iゞゞヾ:.i:|: : : : : ＼: : ::≧=-
-=≦: :／:ﾉ: :.:.:ｨ:i: :,|:! ﾉ|!: : : : ヾ:.､≧ー::.
_|:/ 彡:.ｧ‐ミ＜!从 i.!:! __'__! :.!: : : :ﾊ: :≧ー: :＼
|ﾊ:///: :i:.弋弐 Nヾ=ｧ示≦､厂｢: : 小:.､: : :､: ＼ヾ
{ { i/ !从:! / `ヾ'-イ//!: :.j !ヽ.:＼: :＞-ヽ
| { 八 ､' ／'〃/,.:.:./ﾘ} !: :∠
!ﾄ ヽ ノ' /:ｲ':/.ノ彡 ⌒ クーデター？
_|i.‐ヽゝ=- ノ' ノ- ゞ'' !ミ. 、
,x≦ニニハ ≠ .|=j. ＼
__i彡≦＞≦ﾆ≧z r≦ 〃 .ﾉ=:! 弋≧.､-､
Yﾆ/三三三三三={. // ,;仁/ ヽi |!
.ﾉ|ﾆ{!:三三三≫ ´.:iヾ , / ,,仁ｼ ! ! !/
／ fiⅦ!三:≫ ´ ﾉ .// ,.ｲ=.／ / :/ ,x≦
.. i .f==〈/:.:i ヽ､ / ../ ,,:仁／ , ../,:仁二
/! / ./:.:.:ﾊ ヽ __.r≦彡 ' ／ /,:仁ニニ
_V .,: ../:.:.:/:ハ. ´ iﾆ:{ ｲ{ .//ニニニﾆ
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| 酷く動揺した様子で、ミストが尋ねた。
| いつもの彼らしい、無駄口も無い。
|
|「陸上自衛隊の佐官らしいお」
|「この平和な国で？ そんな、冗談じゃない。そんなんじゃ俺、東京を守りたくなくなっちまうよ！」
|
| 震えるほどに拳を握って吐き捨てるミスト。
| 急な激昂に、数人が奇異の目を向ける。だが、彼の故国は滅んでいる。
|
| 地図上から抹消されるまでの詳しい流れは知らないが、恐らくクーデターは大きな要因となったのであろう。
|
|「落ちつけよレックス。あんたの大好きな意識の差じゃあないか」
|
| 挑発的な慎二の揶揄に、ミストは血走った視線で応える。
|
|「気をつけなきゃならないのは『教会』だろうな。いまの自衛隊は『血族』とがっつり繋がってる。
| それがクーデターを起こすということは、『血族』を敵に回すつもりってことだ」
|
| 慎二が馬鹿にするような口調のままに推論を続ける。
| ミストの表情から激怒が薄らぎ、代わりに視線を泳がせ思索を巡らせているようであった。
|
|「『悪魔が野放しにされている状況で、現状の防衛隊はぬるすぎる。
| もっと根本的な改革をしなければ』……か」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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こういう羅列はやっぱワクワクする
そのどれかが誰かにとって致命的な情報だったりするの眺めるの気持ちいいｗ
￤
＼、__ﾄ.、
,､r=＝＝＞:.｀ヽ｀ヽﾄ、
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ）:.:.:i:.ﾚｰ-
. _＿,.､＜:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノヽ:.:.:ノ:.:.:⌒ヽ､
＞〃:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:ﾍVｲ:.:ﾍ:.:｀ヽ:.:.＼
／イ:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ヾｲ.:.:.:.:.:ヾ:.ヽ:＼ゝ
／ 〃:.〃:.:.:.: /:.:./:.:/:.i!:.:|:.! ∨:.:.:.:}:.:.:ﾍj
/:.:./.:.:/:./:.:イj:.ﾘ:.八:.リ j:i:.:.:.:.:ﾄ:.ヾヽ ふふ。
!／:.:イ:./≧x､lハｊ _,,ﾘ≦二ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧､_＿_} ､＿__,ﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ アトリームにも有りましたよ。
|:.∧ﾊ｀￣¨j ｀￣´イ:.:./ソ:/ 東京のとは比較にならないほどの、
ﾄ､:ﾍ _＿ /ｲ |｀ヾヽ 巨大なクーデターがね。
／ﾘ;;;;＼´ - ｀ ′ !;;;;ｿ;｝}
///／;;;;;;;ﾍ..___..／ / レｸ:ﾉ.:|
_..,,,,,///´;;;;;;;;;;;;;ﾉ! / ／::／ ..:j＞,､_
_.,､＜://:::{:{:{;;;;;;;;;／´ j { / ／::／ /ト.,､＜⌒＞,､_
:::::::::://＞｛ii{;;;;;;/ / ｛;;;;;{ ／ / {::::::::::...,､:＜⌒＞:.､_
:::::::::{｛ 〃∧ヽソー-- 、 __人__{;;;;{ ｲ ｛::::／´::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
::::::::::::｝ ____,,ゞ:::::＞､,,_____,,,､ｒ=＝」k;;j_ ノ ﾉ/:::::::::::::::::::::::::＞"⌒ヽ:j
∨::::://O / /:::::::l:.:.:{:::}{:::}:::::::/:.:/⌒/ｰ-､ ノﾉ:::::::γ⌒ー"´ }｝
j::〆K / /:::::::::l:.:.:.:｀7´::::::/:.:/ / O ∨ｲ::::::::::ノ ;j
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| 自嘲的に笑うミストの目は、今ではなく、過去を見ていた。
|
|「治安の悪化は破滅のスパイラルの一歩目です。
| 俺たちが暴徒を鎮圧し、水際で抑えなくちゃあなりませんよ。
|
| 入即さんの言っていた『ハンマー』と『ニビル』は知りませんが、後の二つは連鎖します」
|
| 東京の魔力密度が高まり、悪魔の出現が日常化してしまったら、もう歯止めが効かない。
| ミストはその経験者なのだ。
|
|「ってえと、クーデーターが起きて、それを鎮圧するついでに例の奴らが来るって感じだろうな」
|「誰？」
|
| 復活したジャギが首をさすりながら笑う。
| 首をかしげる霊夢は、頭に乗せられた手を邪険に振り払った。
|
|「オレたちの死神だよ。原爆の名前を持つ悪魔だ」
|
| 『リトルボーイ』と『ファットマン』。
| 日本の治安が悪化した先に、核ミサイルが落とされるのなら。
|
| それは『教会』が派遣した滅びの悪魔である可能性がある。
| アトリームのように。
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.... ,,、＿_
／ｨ彡'三三≧､
, 'ィ///ィ彡'三三ミ≧､
,!ﾉｲｨﾉﾊf/r''^`ミﾐヾミ'､_'、
/!/fｗﾘ八 ヾﾐ'､ﾒﾐ､_ヽ、
{i |l|W小f l|l｛{ﾄミヾﾐゝ､__,
）!l|l|fﾘfﾓﾘﾐ;ゝ:ｨ'tiﾃ!lﾄﾄﾐｿ}｝ ヽ｀`ヽ
,川h{i洲{´ l:{:｀~尢',l|l|巛 ＼ '､
ﾘﾉﾉ八ｲ ':,:.:.ﾊﾐﾘ!ﾄ､ﾐヽ、 ヽ
ノｨｼｲ卞ミ}＿ｰ_',:./ﾊ｝}l{ ヾミ'、
,.彳｛{/ﾘﾄﾐ'｀ﾆﾆ,´ｨi{l｛lﾄ't'､ ｀',ﾘ ぜったいあくおもうんだけど、
,. '´:/:::::|jﾂ ﾘ}}iliﾘt洲Wjﾘﾂ}｝ﾘﾄ､',ﾐヽ 核爆発級の爆発を『何らかの事故』と
::::::::/:o::::|{ヾﾊﾘﾊ{ゞ'､' 'fｼ'､//{｛!ヾﾐミ', 見せかけることもできなくもないよ。
:::::/:o:::::::|:.:.:｀ﾒ'､(ヽ丶 j入::ヾﾘゞ,ﾉﾘヾj
::/:o::::::::::|:.:.:.:{:.八} | ）〈:.:ヽ:/o､fﾂ'ﾘﾄ､＼
/:o::::::::::::|:.:.:.:V､_ﾘ |::. ヾ:.ヽ:::::{il､::::::::::::::ヽ
ヽ::::::::::::::|::::::::∨|｀` ‐::、. :}:..:'､::jﾘoヽ:::::::::::::|
:／::::::::::::|￣￣ ｀ヽ .|.::..:.:.ヽ::::::::::::::::::::|
:､:O:::::::.:::|::::::::::::::::. |:.:.::..:.:..ヽ::::::::::::::::|
::ヽ:O::::::::|:::::::::::::::::::. .|:.:..::..:.:.:..:ヽ::::::::::::|
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|「たとえば悪魔に対抗するための武器庫とか、ヤクザが集めた危険物とか。
| 特殊な薬剤の倉庫とか、そういうのを『偶然』近くに集めて。
|
| その上で『運悪く』どれかが爆発したら、核爆発級の威力になってもおかしくないと思うんだよね。
| ちなみにぜったいあく、『教会』の『異端審問官』ならやってもおかしくないと思う」
|
| 大変危ない話をしているようだが、作中は2013年である。
| 未来の爆発事故のタイムリーない陰謀説など、一切関係しない。
|
|「『ニビル』は新城が何か言っておじゃったな」
|「新城直衛か。彼が動いているなら心配はなかろう」
|
| 新城直衛は入即貸本の常連で、胡散臭い私立探偵である。
| 現在、泉教授とともに、誠に敵対してニビル阻止の活動をしていたはずである。
|
|「新城って、泉の相棒の？」
|「そうだお」
|
| 小首をかしげる水銀燈。彼らは入即貸本で何度か顔を合わせているはずだった。
|
|「と言うことは、ダヌ様の娘も関わっているということね」
|
| ダヌの娘。泉こなた。ある意味、やる夫の元ネタとでも言うべき存在だ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | 『ビスケットハンマー』については
＼ ｀ ⌒´ ,／ ちょっと面倒くさいんで最後の議題に出す予定だったお。
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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|「つまり何にせよ、まず治安維持が大事ってことですね！」
|
| 拳を握る翠星石。やる夫は、彼女の拳をじっと見つめた。
|
|「あ？ なんか文句あるですか？」
|「でっていうの話だと、東京は今月当たり、死体が転がってても普通な治安になってたらしいお」
|
|「げ、江戸時代並ですか？」
|「江戸時代なめんな」
|
| 顔を青くする翠星石の後頭部に、やらない夫のチョップがめり込んだ。
|
|「……興味深いね。しかし、その状況はありうるものでもあった」
|
| キュゥベぇが足を組み直す。ぜったいあくが楽しそうに肯いた。
|
|「防衛任務に失敗していますね。この国の防衛隊は何をしているんですか？」
|「例えばだ。お前たちが『猟犬』と闘わなかったらどうなってた」
|
| 憤懣やるかたないミストに、慎二が癖毛を指にからませながら尋ねた。
| それは、想像もしたくないような悪夢である。
|
| 上杉謙信は『猟犬』に勝てない。
| 東京の結界は破壊され、悪魔が跳梁跋扈する現在。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿
｢ ＼ ＿＿ ／⌒ｧ ） ｀丶
ヽ ´ ｀ / / ヽ
＼ く ／ ）
∨ ● ● Ｙ ﾉ ついでに、柴崎翠星石だ。
_|{ ､_, ､_, 八 ,′ 彼女がアマテラスを召喚しなければ、
／ 八 ｲ 丶. / 東京は今ほど安定していなかっただろうね。
⌒＼/ , / ｰｧ Ｔ´ { ＼／＼
（ （⌒>く.／ / . : / ',: :ヽ 〈） ）
＼{／ : : :/ : : / ヽ-ﾍ . : : ／／､
／＼＼＿∧: : ,′| ｉ ｉ | ∨∧／／ : : :＼＿_
（＿ﾟ: :｡ ーｧ‐' : ; | | | | ー‐く: : : : :｡: ﾟ : _ノ
/ . : : ｡人: : :.:| | | | | } ＼: ｡ : : : :）
（_／{:_:/ ＼: iヽ 丶ソ 丶ソ ノ ＼_ﾉ￣
￣⌒ ⌒￣
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|「もっと褒め称えてもいいですよ？」
|「すごい！」「さすが！」「かわいい！」「天才的！」「ちくわ大明神」「いらんことしぃ！」
|
|「おい今の誰ですか！？」
|「やる夫だお。お前が一人で無茶するからなんかい死にかけたと思ってるんだお」
|
|「最初だけ！ 七月だけですぅ！ 恵比寿も歌舞伎町も翠星石の責任は一切ないです！」
|「麻呂は翠星石がニャルに挑んだ時、心臓が止まるかと思ったでおじゃる」
|
|「ほら」
|「そもそも今だから言えるけど、観覧車に『旧き印』って無理がありすぎだろ常識的に考えて」
|
|「ほら」
|「ごめん翠星石。妹の僕も擁護できない。あのとき一人で突っ走って無かったらもっといろいろさ」
|
|「翠星石の味方はどこにもいないんですか！！」
|
| 荒れ狂う翠星石。アマテラスの件で、彼女が東京を救ったのかもしれない。
| でも、その前の暴挙が記憶に残りすぎていて、素直に感謝できるものはいなかった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,r―-､
|/⌒ヽ !
？ //
,r ´￣￣`⌒ヽ､
？ ／ r ,r i ヽ､ そう言えば『先生』。
!/ r! !/ | !A A ! ヽ 魔力密度が高まるとどうなるの？
!!/ |/^ ヽ/ V ハ|
/ ○ ⌒ヽ! / 悪魔が出てくるって言うけど、
,r=={ :::: ' ○ ﾉ／/ 具体的にはどんな感じ？
f r"ハ. ｰヽ_ :::∠= /
V !!￣`ヽへ ィ
ﾉ ／＼ 〉―― ´
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| アリカの問いは、話を本筋の方向に戻した。
|
|「『血族』は魔力汚染をアルファベットでＡ〜Ｅのランクに分けているわ。
| 通常はＥ＝異常無し。次がＤ＝残存魔力注意。Ｃ＝悪魔出没注意」
|
| Ｃで悪魔が出没するのか、それ以上とはどのような状態なのだろうか。
|
|「Ｂ＝異界化。そしてＡ＝魔界化よ。Ａの状態だと高位悪魔が儀式もせずに出入りできたりするもうどうしようもない状態ね。
| 八月の歌舞伎町の異界かＢ、先月までの歌舞伎町がＣ、それ以外の東京がＤだったわ」
|
| しかしながら、九月を『血族』の手伝いで奔走していたやる夫は知っていた。
| Ｄでも、結構悪魔が出た。
|
|「やる夫くん、結論を急がないでほしいわ。重要なのはこの先よ。
| 汚染度が高い場所で人間が強い悪意を放つと悪魔が寄ってくる。
|
| 悪魔の自然発生はＣでも稀よ。人間が存在しない地域ではね」
|
| やる夫はキオの顔を見た。
| 途中までは難しそうな顔をしていたが、だんだんと青ざめて来ている。
|
| つい先日まで悪魔が諸悪の根源だと信じ切っていたのだ。
| 悪魔も悪いが、それ以上に人間が悪いなんて説明、聞きたくないのだろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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酸素なしだと存在できなくて
ｃぐらいだとおっかなびっくりのぞきに来る
ｂだと普通に歩きだして
ａだと住みだす
なるほど、うまい。 ニャンコ先生の宇宙説ともかみ合う。
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ,
/::::::::::::::::::ﾄ,::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
':::::::::::::::::::::!ハ,::::::::::::::i:::::::::::i::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ
'::::ヽ,:::::::::::ﾄ=ィﾍ:::::::::::i!:::::::::!:::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'
＼::ヽ,:::::::{ｫアキ,ヽ::::{ヽ,::::!:::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
ヾﾘ ヽ’,例 〉 `’ ﾍj:::::::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
_ ,.｡ ' j夕 ．″ ノ::＞j’::::.ィﾆｬ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
l ` ” ¨’ }::::/.ィ , ;,::::::::::::::::::::::::::::::::/
} ､ ﾚ' 〈 i i::::::::::::::::::::::::i::::/ に、人間の悪意と悪魔の出現の
l u. .。ｨ ｿ ﾉ:::::::::::::::::::::::::i/
; r- ､ ﾚ' ”. ＜ i::::::::::::::::::::::ﾑ ……因果関係は確認できて
', ￣ ヘｧイ j::::::::::::::::::::::::ﾊ いるんですか？
. . ィ / /:::::::::::::::::::::::::::ヽ,
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| 震える声で尋ねるキオ。
| 鷹野三四は嗜虐的に目を細め、形のいい唇をゆがめた。
|
|「『教会』のレポートによると、悪意ある人間が多い場所では悪魔の出現が顕著になるそうよ。
| ところで、『悪意』って何かしら？」
|
| 三四は明らかに、『教会』の指す『悪意』を揶揄していた。
| レポートの『悪意ある人間が多い場所』には、根拠がないのか。
|
| あるいは、一方的な差別的判断なのか。
|
|「というわけで、私のとった統計によると、学校や繁華街などの人間の多い場所では確かに悪魔の発生率が高いわ。
| 人口密集地ほど高くなるし、悪意云々はともかく、人間との因果関係は認められる」
|
| 三四の表情が喜悦に歪む。間違いなく悪いことを考えている顔だ。
| 放っておいたらずっとしゃべり続けるだろうと、やる夫の経験が告げていた。
|
|「詳しくは実験を繰り返す必要があるんだけど、魔力の多い場所に人間を押しこめるわけにもいかないでしょう。
| それで悪魔が発生して被害が出たら目も当てられない」
|
| やる夫の脳裏に、邪悪な笑みを浮かべる誠が浮かんだ。
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|: : |: : : : /" _,=､ | :/ |:./,=､ Ｖ: ..|:.: : : | V えｗｗｗｗｗ？
＜ : _: : : / ((;･.,;)|/ ﾚ((･.,;) |:./ ヽ: : | 人体実験ｗｗｗ？ してるしてるｗｗｗｗ
＜:: |. 小{ ￣ ￣ ﾚ{: :.|ヽ:|
厶ﾍ ﾊ ､ {ﾊ/ ／⌒ヽ_ノ） ) ）
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ヽ ＼ｰｪｪｪｪｧt ／ | i| (⌒)
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| 三四は誠の実験を知らないのだろう。
| 『ビスケットハンマー』関係の時に、三四に何を追及されるのか、想像するだにおそろしい。
|
|「だから人道的に動物実験をしたのよ。
| 具体的には、まず魔力濃度をＤ〜Ｃにした実験室にラットを１ダースずつ入れた水槽１ダースを用意してね」
|
| ニコニコと楽しそうな三四を横目に、何人かが嫌な想像をして顔をしかめている。
| 蟲毒めいた殺し合いや邪悪なソレコレを考えているのであろう。
|
|「動物嫌いの人間と動物好きの人間を10名ずつ集めて、一日数回、ラットの様子を観察してもらったの。
| あ、もちろん見てもらうラットは別よ。
|
| 動物嫌いの人が見るラットの水槽と、動物好きの人が見るラットの水槽。
| そして、誰もも似たしないラットの水槽……違いが大きく出たわ」
|
| キオが、不安そうに周囲を見た。不服そうな数名と、興味深々のその他大勢。
| とくに凛などは、国外にも雷鳴とどろく鷹野三四の実験結果に目を輝かせていた。
|
|「『好意』を向けられたラットは、他より若干つやが良く、健康になったわ。
| これは因果関係の証明が難しい程度」
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. ,ｨ/// |: |:::: !::::::|ﾏ:|Ⅵ:| |::/ｨ7 }:ﾘ-|:::ｲ_//::::{::::. 好意は魔力と関係ないということなの？
/>ｰ､/ {:::| :: |::-ﾘ-::|-ﾏ{ }ｲ,ｨて㍉､}:/ﾘ,::::::::::ﾑ:::::､
|:{/∧{ﾏ: |::{ ｨ斥㍉ 之z ｿ/ｲｨ }:::::::::::::ﾊ:::::＼
}:::::::::::::{从､ 弋zソ ¨´ ﾑ /::::::::::::::::ﾑ::::::: ＼
j!::::::::::::::ト､ ﾑ , /-':::::::::::::::::::::::}ヽ::::::::::::.
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|「いいえ違いますよミセス。しょせんアルバイトで雇った『動物好き』ですから。
| どれだけ好きで可愛くても、仕事で『見なければならない』なら好意を向け続けるのは難しい。
|
| 最初からこの実験の『好意』部分は破綻していたんです」
|
| 想像し、やる夫は大いに頷いた。
| たとえうどん大好き香川県民でも、毎日夕飯をうどんだと『義務』づけられては反発もするだろう。
|
| どれだけうどんがおいしくて、食べてしまえば満足でも、
| やはり自由意志の剥奪に対して、人間は反射的に嫌悪を示すものなのだ。
|
|「ではなぜ？」
|「それでも一週間の実験で、『好意』の水槽で死んだラットはゼロ。
| 観測者なしの水槽では五匹。その程度の効果はあったということですよ」
|
| 五匹。それが多いのか少ないのか、やる夫には判断できなかった。
| だが一週間、１ダース×１ダース÷３。４８匹か。
|
| 一割の死亡は、多く感じる。
|
|「『悪意』の水槽は？」
|「聞きたい？」
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／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／ 聞きたかねーお。
r､ r､／ ヘ
ヽヾ 三 |:l1 ヽ
＼>ヽ/ |｀ ｝ | |
ﾍ lノ `'ｿ | |
/´ / |. |
＼. ｨ | |
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|「ええ〜！？ イケズぅ！」
|
| この茶番は、三四とやる夫の中ではいつものことであった。
| 入即貸本では当たり前の行為。
|
|「言いたいなら言えばいいお」
|「生存が三匹。すごかったわよ」
|
| 先ほどのやり取りなど嘘のように、三四は邪悪な笑みを浮かべた。
| 翠星石が顔の前で手を振る。グロは勘弁と思っているのだろう。
|
|「二日目に一匹死んだんだけど、回収前に共食いがあってね。
| それを観測されちゃったからもう大変！」
|
| 嘘だ。やる夫だけじゃないだろう。皆そう思ったようだ。
| 三四は共食いをアルバイターに観察させた。観測の際に悪意が芽生えるように。
|
| そしてその結果が、45匹死亡という結末なのだろう。
|
|「面白い実験ね！
| つまり、悪意や信仰はそれを持った者の現在地の魔力でなく、対象のいる場所の魔力が参照されると」
|
| 凛が嬉しそうに肯いた。そう言われるとそうだ。
| 魔力がある場の感情ではなく、他の場所からの感情が、ラットたちに作用したのか。
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! .! ! ./ / ,! / ! ! !
! ! ! / ／ / ﾊ ! ! !
| | ! / , ／ / ./ ! ! | .! |
| | .!/ _ ,, ∠, / .／ ﾍ.|! .! .! |
| | .| ' "〆 ゛ /／ ' '' ト 、!.! ! ! !
| | .| ,／=＝＝t、 ／ ,ｨｪ,,_ .! ! ! / .!
! .! <.K ﾚ:.,ii,.:ﾘ ／ ´て ﾐc㍉、',! / .!
! ! !゜‐ゝ‐ ′ ゝ ',ﾂ ／ ! / !
| ! ! ゜ / / ! ちなみにその先だけれど、
| λ .!. | / ./ ! 餌は不足していないのに、
| ! ! ,! /〆 | ! 複数のラットが別のラットを殺害、
| ! ! !、 t――ｯ / ! | ! 共食いをし始めたわ。
| ! ! ! ' 、 , " ! ! !
| ! .! ! ゛ ,, , " ! ∧!
! ,! ! ! 、 '' -ヒ、 ! ! |!
! ! .! ! ゛ト ,, .| Ｙ / ! | |
.! ,! ! ! .∧ ∧ ! .! | !
/ ／ ヽ ! /.! V !／ヽ ! ! !
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|「四つの水槽のうちの一つは全滅、残り三つは勝利した一匹以外全滅よ」
|
| 蟲毒ではないと見せかけて、本当は蟲毒だった！
| やる夫は正直げんなりした。
|
|「残った三匹の様子は？」
|「通常のラットに比べて極めて凶暴。肉体性能も高めだったわ。
|
| ただし、常識的な範囲を超えない程度ね。この程度で限界突破できたら苦労しないわ。
| ちなみにアルバイトのうち二人が途中でやめたわ」
|
| グロ映像を見過ぎて気分が悪くなったのだろう。やる夫は同情した。
|
|「結論から言うと、たかが10人程度の悪意でラットが発狂するぐらいの効果があったわ。
| 途中からはアルバイトの子たちも本気で嫌がっていたし、早く終わってほしかったでしょうね。
|
| これで証明したことにしてもよろしいですか、キオ様」
|
| キオ・アスノは絶句していた。
| 人間の悪意が、恐るべき結果をはじき出す。
|
| 『蛇身』はキオを『悪魔が全部悪い教』と言った。
| それが間違いだと、キオは学んだつもりだった。
|
| だが、人間が諸悪の根源だとは思っていなかったはずだ。
| その茫然とした表情が、それを物語る。
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＞誰も「も似たしない」ラットの水槽
字の並び的に「見たりしない」かな？
卵焼きが先かフライドチキンが先か…
_ ,, .... ,,、＿_
, '/ｲ,ｨ/彡'三ミ≧'、､
ｲｨﾉﾊfr'ｨ/r''^`ミiliiﾐ'.ヾ'、
/!/fｗﾘ八l|l ll;ヾﾐ'､ﾐ_ヽ、
r!f;/ｗl|l|/,イ li_｛{ﾄミヾﾐゝ､_,
{i |l|W小fﾘﾘ}; i /:::ｨ'|tiﾄﾄﾐｿ}ミ≧､｝ ヽ｀ 『だが悪意は悪魔が囁くからという教えもある
）!l|l|fﾘﾉﾊfifﾘ: i `|F彡ﾊﾐﾘ!ミ≧､ﾄ､ﾐヽ 卵焼きが先かフライドチキンが先か……』
川h{i洲{liliiﾘ |:: li /ﾊ｝|巛}l{ ヾミ'、
ノｨｼｲミﾐヾ/ - ;; /ﾄﾐ｝}lﾄﾐ{ﾄ' ｀',ﾘ って>>682も言ってるよ。
,!ﾉｲｨﾉﾊfr' ー―― ″jﾘﾂ}｝ﾘﾄ､',ﾐヽ
彳｛{/ﾘﾄﾐ',,i|､ ＝_::: ｨi{l｛lﾄ't'､｛{ﾄミヾﾐゝ､
ﾘ}}iliﾘｿﾉﾘfr洲Wrッﾁ/ll;ヾﾐ''三三ミﾐ､_ヽ、
＿ﾉ',:./ﾊ,!ﾉ :::ﾊfr'ﾉｨ// /::: `ミﾐヾミ'､_'、
,、＿,;;;;;/ i ヽiil ::::::i / / ヽヾﾐゝ､__,
／ ／ ｜ ヾ / / / ヽ
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|「誰だよ」
|「ぜったいあく思うにちくわ大明神の一種」
|「だから誰だよ」
|
| シックスの妄言に、ジャギが辛辣な疑問を投げかける。
|
|「そもそも魔力汚染が無ければどっちも無いんじゃないの？」
|「それより卵焼きもフライドチキンも子孫繁栄できないし」
|「なら卵を産んでから焼かれるので、卵焼きが先だね！」
|
| アリカの叫びは結論として間違っていないが、話の流れはせきとめられていた。
| そもそもの問題はシックスであるが。
|
|「残念だけれど、シックス様の話しは今回の実験には無関係よ。
| だって、『悪意』を放ったのは魔力汚染とは関係のない人間なのだから」
|
|「だが鷹野よ、『共食い』の発生は現場発生でおじゃろ？」
|「それは認めるわ。魔力汚染って、こっわーい」
|
|「所で、その……悪魔が囁くとは、どのような状態なのですか？」
|
| キオの積極的な質問に、三四が目を光らせた。
| 洗脳に近い教育を受けてきたのだが、それでも、だからこそ。
|
| 真実を知りたいのだろう。
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_,. --==､､ ,. -一…ｰ- ､
／´ __ﾝ'´ -‐-､ ｀ヽ、
／ /´r ヽ ､ ヽ ヽ、 『探偵は一人だけの証言は信じない』
/ / | ､＼ ＼ ヽﾆ ,lゝ ってばっちゃも言ってた。
l l ヽ ＼ lヽ､ ＼ l ', / |,〉
| ', | |＼ | ｀,.-―`ｰ-ヽ! !_,. ﾉ! キオ君が、誰の言うことを
ヽ._ ＿,r‐ｧ_ヽl,ゞ-__｀` ィﾃ心 ﾘ l,=､/ 信じていいか分からないなら、
,r‐ｧ'一'二r_ァﾍ. /f:心 弋zｿ ﾉノ ﾊ}} いろんな人に聞いてみるのがいいと思うよ。
,r_ァ'´ __/,. '´ ,rﾍ. ﾋzﾘ 〃o_/
_,r‐ｧ'´ _/／ //__ﾍ、 ' ＿__ {{/!/
／ /´ f ノ ﾊ! ヽ＞ ､ ヽ._ﾉ ／ヾ|-､ _,. -‐ァ､
__/ ／ / j / ヽ __l≧=r ' ´ ,. '´ `!__／´ / /
/ /´ { / ヽ-､ 人 `r‐''´ /// ＿＿ ', /_
. ／ /´ ハ ,.-r' ＼ /／ `Tﾆ()ﾊ ／//´ ／ } / !/!
_/_／ 〈 }_ l ｀`ー ﾝ f7 ｲｲ,Yl〉ﾍ ／ //､ l--､/‐'_/
/ ! l _!_ ／L__ , ' l´l ! ヽｲﾆ!}-‐`´ ﾊ // ｀丶ﾞl |､ /､
〈 ,ノ ｀,L__,ゝ､ ｀!_/ ヽ!| ╋|! || ／,.ｲl ! /､ L| |_二l
{ミ} ／ }'´ヽ /´ l ＼ (.) ,r‐ '´ﾆ-‐' ||､＼{_､｀¨ !
／ ! ,. '´ ＜ノjノ ヽ、ﾍ 丶、 ＼ﾞｰ'´ |! ＞､ } l
. ! | /
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|「……はい」
|
| 珍しくまともなことを言うアリカに、キオは蒼い顔で微笑んだ。
| 彼の笑みは、気丈にふるまっている訳ではない。
|
| キオの、少年にとって師と呼べる存在に、同様のことを言われたのだ。
| そいつは、『蛇身』。キオを誘拐した『十二の封印像』の悪魔。
|
| イスラームの高位精霊マリードの中でも、名前を持つ一柱であるという魔女であった。
|
|「悪魔を呼ぶときに『高位悪魔』って呼称をよく聞くでしょう」
|「はい」
|
|「逆に言うと、『低位悪魔』や『中位悪魔』と言った呼称はあまり聞かない。
| それってつまりこのスレに登場するのが危険な悪魔ばっかりなんじゃね？
|
| などという無粋なツッコミは無しにしていただきたい！
| 逆に言うならば、『高位悪魔』ばかり並ぶので、悪魔の実力が測りにくいという作品的問題が発生しているのだ！！」
|
|「なあキュゥベぇシックス様は何を叫んでるんだ？」
|「いつもの病気だよ、佐倉杏子。彼と付き合う以上は黙殺することを覚えるといいよ」
|「なるほど」
|
| チータラを口に運ぶ杏子に、キュゥベぇが優しく答えた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ｀ヽ
/ ',
/ / ,、 、 基本的に悪魔の階級は
/ / ／ ! ! 感覚的に決められているわ。
. / / / ／ / ∧ l | }
| / / ／ / / !:. |: | | ./ﾞ｀〉ｰ- ､
| |: /ｰ フﾞ｀ /／ ｰト- |､ :| | ,' / / ￣ ｰ-- ､
| |: / ィ夭示 ／ ﾁ示ミヾ;.:.:| | / ./ / ＼
| | メ ゞ- ' ゞ-'ﾞ ｀ﾄ ': ｌ ｌ / / /
| ∨ i !:.:. ! ! / / /
| .:.:|ヽ |.:.: ｌ ! / / ／ 〉
ｌ .:.:|.:.:.＼ ｀ _フ ／ｌ.:.: | | / / < ／〉
〉 .:.:.|.:.:.:.:.:.ヽ , イ.:.:.:.|.:.: | ﾚ / ／／
∧ .:.:|.:.:.:.:.:.:._个ｰ '´ ト､.:.:.:!.:.: ! / / 〆__〉
/ ', .:.|.:.:.:.:.:/ ｀ヽ rｰ' {.:.:.:|.:.: ｌ / / (二ノ
/ ｌ .:.:|.:.:.:./ / ｢ !ﾍ ヽ;.|.:.:. // / ∧
. / ! ｌ :.| ／ヽ | ｜| ', /,'.:.. ハﾞ｀ゝ､ / .!
/_ -─从 .:! ＼/ | .! ヽ／/.: / /ソヾ´｀}｀ ｰ- ,_ / |
ィ´￣ ヽ|＼ { .! /／ ／/ | ! ￣￣ !
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| 三四の口から放たれた衝撃の事実。
| 強さ評価はフィーリングであった。
|
|「大まかに分けると『名前』『自我』『肉体』の三つが評価基準よ」
|
| 三四が豊満なバストを揺らし、胸ポケットから油性ペンをとりだした。
|
|「色気は振りまかなくていいです」「ムリしないで！」
|「ちくわ大明神」「患者の容態が急変しました！」
|
| 無駄なセクシーに生唾を飲み込むルカの後頭部を、玉串が打ちすえる。
| 急変した患者は後頭部にたんこぶを作って、恨みがましそうに小学生巫女を見た。
|
|「いくら私でも」「アンタの中のそれはどっちもオッケーでしょ」
|
| ぐうの音も出ない霊夢の正論に、ルカは黙り込んだ。
|
|「とりあえず、前々から言ってるけど、
| 誰かこの誰もが認めるナイスバディのインテリ美女に支援絵を頂戴。
|
| そしてこいつらを見返してやらないと！」
|（実際に描かないでください）
|
| 三四はグチグチと文句を垂れながら、板張りの道場に油性ペンを走らせた。
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／ｨ彡彡彡'三三≧､
fr'ﾉｨ//r''^`ミﾐﾐﾐﾐヽﾐﾐヽ
ｿﾉ八-‐悪｀‐-ヽ!l|l|lﾄﾄゝﾐ
〃 {_-- , ,.-‐‐!l|l|lﾄﾄゝﾐ
li':./‐-‐' ｀‐-‐'ﾄ'ﾘl|l|l|l|lﾄ ぜったいあくの道場……。
川|l ､r‐-､ |||| l{lﾘﾊﾄl|l|､}
l|i /⌒l,｀ﾆ｀ ﾘ}}iliﾘﾄ､',ﾐ
. /::| ￣|ｿ/ﾊﾂﾉﾉWl::::::::ヽ
|;:::| l ヽ０００/ l::::::::::::|
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| シックスの呻きは油性ペンを走らせるキュッキュという耳障りな音にかき消される。
|
|
| 高位>>>名前の壁>>>中位>>>自我の壁>>>低位>>>肉体の壁>>>それ以下
|
|
|「個体が有名な神名を持つ場合、それを高位悪魔として認識するわ。
| 例えば『ケルトの魔女モーリアン』『トウテツ』どちらもそうね。
|
| 『封印像』の悪魔は基本的にこのレベルよ」
|
| なお、物事には例外がある。
| 蒼星石が根の国に還した『巨魔』こと『ヨモツツワモノ』は個体名を持たない。
|
| それどころかこの国でも無名の存在だ。
|
|「例外として、『巨魔』は個体名を持たないわ。
| ただし黄泉比良坂を守る軍勢の一角で、強大な存在よ。
|
| 『イザナギ・イザナミ』に登場し、黄泉の軍勢としてイザナギを追い立てる。
| この国の人間の根底生死観に関わるもので、現象に近いわ」
|
| 更に言うなら『ヨモツツワモノ』は日本全国に伝わる大巨人『ダイダラボッチ』の原型の一つでもある。
| 存在するだけで死の瘴気をばら撒く身の丈一町の大巨人だ。
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／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | 中位悪魔は名前が無いってことですかお？
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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|「種族名を持つ悪魔は高位悪魔と呼ぶことが少ないってこと」
|
| 重ねて言うが『巨魔』は例外である。
|
|「例えば先月、夢宮・北斗ジャギ班が渋谷で交戦した悪魔がいたわね」
|
| 暴徒たちを扇動していた悪魔だ。
| セクシーな女性の姿をしていた。
|
|「あれは『リリム』。多分中位悪魔よ。
| 中位と下位の違いは『自我』と書いたけど、『個性』って言い変えてもいいわ」
|
| 種族内で個性や自我を持つそれを、『中位悪魔』と呼ぶ。
| 慎二が召喚する戦闘用使い魔ミッシェルは、完全に『中位悪魔』だ。
|
| 性格的に個性を持たないハンコ的な存在は、『低位悪魔』ということだ。
|
|「『低位』の悪魔は感情や知性を持っているように見えても、
| 最低限の行動ルーチンで動いてるだけのロボット同然よ」
|
| ゾンビや、使役される手伝い妖精などがそれに当たる。
|
|「ちなみにこの肉体もボクの知識がインストールされているだけで、
| 区分としては低位悪魔になるね」
|
| キュゥベぇの猫だか狐だか分からない白い使い魔を指してそう言った。
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,!ヽ.
＿ ノ i
, ´￣ |
／ / . ｫ
. ／ / ／ , :
, ′ ,. '"´ r─ - ､ ,. ─‐'- ､i !
. / ,. '" '､｀＞ｫ ｀ ｀ヾ.
/ ,.′ 冫 .′ ● i 単純に使役し、目に耳にするなら
,′ ヽ{ / .ｉ ● ,!'. 自我を持たない悪魔の方が都合がいいものさ。
: ∧ .′ .!、 ､_,_, / '.
| | r ,′ : ` ､＿＿_,. " i. X
| ､ | ゝ、 ｉ / | レ ﾞ:.
: ヽj. / ＞'／ i! '. ＼
∨ ｀ ､／ У l il '. ﾟ ﾟ ﾟ ヽ
＼ r'__ﾟ ﾟ ,. ﾟ / l l. /i ゞ-'´ゝ '｀ｰﾞ
. ヽ. _,.イ ゞ-'"^^ヽ i i / ,'
`ー‐ '"´ ! i : :,ｲ /
∨ ﾉ _,!. lf._j
ヽ.＿＿＿ﾞｵ'´ ﾞ^´
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| キュゥベぇの使い魔は病院から動けない本体の代わりであった。
| それこそ、自我などあっては困るのだろう。
|
|「だが、使役する式神との関係を構築し、主従として信頼を作るには、
| 中位以上の悪魔でなければ難しいでおじゃる」
|
| 麻呂の言葉に、やらない夫はねずみ男を思い出した。
| 彼こそまさに中位悪魔だ。
|
| 麻呂からやらない夫に授けられた式神は、特殊な神格のそれではない。
| 長生きしたどぶ鼠を媒介に作りだした悪魔である。
|
| おかげで野生に近い性質で、性格も悪く品も無い。
| しかしながら直観力に優れ判断も早い。
|
| ケチで強欲で怠け癖がある所を除けば、優秀な悪魔である。
|
|「それに複数の悪魔を並行して利用する場合も、個体の判断力が大切になるな」
|
| 慎二のミッシェルも典型的な中位悪魔で、間桐が作り上げた戦闘用妖虫である。
| 彼女は皮肉にも『大天使』という名前をつけられているが、実は戦闘に特化している訳ではない。
|
| ああみえてインテリで、複数ヶ国語を操るバイリンガルなのだ。
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x ￣￣ x
／ / ＼
/ / ハ ’
,: / ／ ' V ’
|＿/ ／ ｰ＝ﾅ.V l l ｜
|ヽY殺）-く / 意>ﾌ |、 |
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、__ _／ _ .| |、 ゝ ',」ｿ / ij
/ ー | |∧ r 、 ii 〕 ,| /
＿_/ ＿＿ | | .∧ ｀¨´ -= / / /
￣｀ ／、｀ ｀/⌒ --- 从 ﾏ ｰ ´ , ' ／、
八 .ｿ ' /ﾆﾆ>ﾍ -==ﾊ / ／ /ハ
／,, < .＿/ 'ﾆﾆﾆ／ﾆﾆﾆ/｝ ./ ／ /ﾆﾆﾆ＞、
ハ | 。 'ﾆﾆﾆiﾆﾆﾆﾆ// ´ ,:ﾆﾆﾆ／￣￣＼
｀ - ｀ |>ﾆﾆｊﾆﾆﾆ.// x 〈 /ﾆﾆﾆ'ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾊ
￣ ﾏﾆイ |／ V ,:ﾆﾆﾆ'ニﾆﾆﾆﾆﾆﾆ|
iﾆ/ ヒ ／ﾆ V./ﾆﾆﾆ|ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ!
/ﾆ| / ／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆｊニﾆﾆﾆﾆﾆﾆ｜
/ﾆﾆ'／ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ人ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ |
/ﾆﾆ"ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ ﾄ、ニﾆﾆﾆﾆ 、
〈ﾆﾆ ｝ニﾆニﾆニﾆニﾆニﾆｊ∧ﾆﾆﾆﾆﾆ ハ
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| 人間変身も可能で、その際は大柄な金髪美女に化身する。
| もう一度言う。美女だ。いいね？
|
|「ちなみに『万魔』の下僕は並みの中位悪魔より強いけれど、扱いは低位。
| 先月、新宿衛生病院に出た奴が中位になるわ」
|
| 三四の説明に杏子が頷いた。
| 新宿衛生病院を襲撃した『万魔』の下僕たち。
|
| やらない夫や慎二、杏子は彼らを辛くも退けた。
| そしてその先頭に立っていたのが、人を食い、自我を得ると同時に狂気に苛まれた『万魔』の下僕。
|
| 『魔人』トミーロッドであった。
|
|「『邪悪帝国』っつう所に、無数の雪だるまがいたけどあれらは低位悪魔なのかお？
| はっきり言って、個性的だったけれど」
|
|「それはイデア的な枝葉よ。些細な違いだわ」
|
| バッサリと切り捨てる三四。やる夫は小首をかしげた。
| イデア。専門用語であろうか。
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／￣￣￣＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼ そのイデアは後期イデア論の、
| （__人__） | 類型化による分別的な
＼ ｀ ⌒´ ／ それとして考えていいのかお？
／ ＼
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|「そうよ。やる夫クンが見た雪だるまは個性的だったかもしれないけれど、
| イデア的な似姿からはみ出さない程度の差だったはず。
|
| 下位悪魔と言っても画一的な存在ではなく、個体値や性格による誤差が生じるわ。
| ゾンビや『万魔』の下僕みたいな精神を持たない悪魔では差異が見えにくいけれど、
| それくらいの違いは普通にあるのよ」
|
| ポケモンの話ではない。一般論である。
| 異様な性格と会話ぢから、そして自ら頭脳派と言わしめる天才的知能を持つ金糸雀は、もちろん中位だ。
|
|「特別な個体は自我を確立して中位悪魔になるけれど、案外少ないのよね」
|
| やる夫は地下冷凍庫に無数に転がる雪だるまたちを思い出した。
| あの中で、中位悪魔はどれだけいたのだろうか。
|
| それは極めて珍しい存在なのかもしれない。
| 例えば、浅草の土から生まれた泥人形の中で、名前を持つものが生まれる程度に。
|
|「『真女神転生Ⅲは12年も前のゲームだからあまり参照するな』ってばっちゃが言ってた」
|「なんですと！？」
|
| 真女神転生Ⅲが分からないみんなは◆AdVoHBYtEQさんの『やる夫が悪魔になるようです』を読もう！
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／￣￣＼
／ _ノ ヽ､.＼
| （●）（●） |
| （__人／,〉.|
{ ´フ´ ./._ } そういえば、
ヽ .／,二ニソ} 下位の下に『肉体の壁』があるけど
_ヽ/ ,-― ､}ﾉ どういう意味だ？
／:;:{' ノｰﾍJ:;:;ヽ
／:;:;:;:;:;| _,イ{:;::;:;:;:;l:;:;}
/:;:;:;:;:;:;:;:;:＼＿/:;:;:;::;:;i:;/＼
{:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;〈:;:;:;:;:＼
ﾍ:;:;:;:;:;:;:;:;／:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:i;:＼:;／ヘ、
￣￣7:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l;:;::;ゝ、`ｰj
/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l:;:;:;:;:;:＼~
/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|ヾ:;:;:;／
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| やらない夫が道場の床に描かれた図を指さした。
| 下位悪魔の下に、もっと下の悪魔があると、そういう意味なのだろうか。
|
| だが、肉体の壁？
|
|「肉体を持っていない悪魔ってことかお」
|「そうよ。魔力が足りずに肉体を維持できない。
| あるいは肉体を持つに至っていない悪魔ね」
|
| その二つでは持つ意味が大きく違う。
| 前者は、悪魔としての能力が高すぎて現在の魔力濃度では物質化できない高位悪魔。
|
| たとえば、アリカの祖母と相打ちになった魔王マーラ（スライム状態）。
| あるいは三ヶ月前のお台場で暴食のメルトダウンを起こしかけた邪神トウテツ。
|
| ついでに、ここにいる誰にもその存在を認知されることなく、
| 人間もどきフー・ファイターズを打ち滅ぼし散った魔王マーラの欠片。
|
| なお、その欠片はしぶとく生き残り、死にかけたルカと契約して彼女の力になっているが、
| それはまた別……ではない。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿＿_
.x≦ム＞―＜≧x
. ',ｨx＞ ´ ｀ヾゝ、
//7´ } i!_ ﾑ､＼{ヽ、
' l7 ﾊ ´ﾊ从 } ｀} ﾏﾑ
| {' ィ7Ｔ{ ﾊ /ィ示ﾊゝ' }ヽ}
| | {,ｨﾊ圦 { ﾘ ｀¨ ´ / ///! （舐めたり嗅いだりしたいなぁ）
| | {`¨´ ｀ ､ ｲ /// |
l八 }ﾄ､ 厂ヽ ﾉｲﾑ' !
| ヽ､ﾄ、＼ Y ﾝ ／{ l
| ＞‐=ﾐ､ヽ ､´ ∠ミ ﾄ,、_ |
| , ´ Vﾊ}r=＝=ミ》》》ﾍヽ|
, { ヽ}＞ゝ=しﾍ ン_ミ'ﾑﾊ｀ヽ
/ ｌ , ´ ｀V´￣ ヽ ￣￣｀ ､
, ∧03 .ィ{ ､ :. ＼
/ / >ｲ/ﾊﾍﾉ ヽ
' ' / /{//人ヽ :. ﾄ ､
/ / /∧////ヽ＼ :: l } 〉
/ Vf ヽ ヽ////＼ヽ ;: ///＼
' '.ヽノ ノヽ、///ヽ＼ 人 .://∧ ＼
/ 乂彡≦'. ＞/_//＼ヽ ／: : ､ . :〃´ヽ ヽ ＼
/ / / ∧, ´／⌒ヽ.､く: : `: . イ/ '. ＼ ＼
, / / {_/ . - 、Vヽ＼ //!´ '. ヽ ヽ
/ / / <／ ∧ ∨＼ヽ .///{ ﾄ､ } |
' / / /l {⌒} ∧ ∨/ヽ＼ /// ﾑ } ∧ | }
/ ムイ ＞! .! ! ∧ ∨//≧ﾒﾑィ´ 、 / ∧ﾉ /
, ' ／ ﾉ ／ ! | | .∧ ∨´ }／ .イ ﾝ }､/ ∧ .′
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| ルカ自身の肉体に対して、魔王マーラの力が強すぎるのだ。
| おかげで彼女の中でその魔力が暴走している。
|
| 結果、むやみやたらと秋波を垂れ流し、同時に本人も欲求不満の塊のようになってしまっているのだ。
| これが人間にとりついている状態でなかったら、完全にスライムである。
|
| さて、後者である。
| 悪魔になれない悪魔。肉体を持たない、持てない。
|
| それこそシックスの言っていた『囁く』それだ。
| 彼らは魔力の塊ではあるが、人間の感情にほんの少しだけ触れる程度しかできない。
|
| 僅かに触れ、その心に楔を打つ。邪心を吹き込み、惑わし唆す。
| 俗に言う、『魔が刺す』状態の原因である。
|
|「と、されているけれど、実際には観測できないのよね」
|
| ついでに言うと、異能者や悪魔関係者は耐性を持ってしまう。
| 基本ただの人間にすぎない三四でも、その影響を受けるのが難しいほどに弱い存在なのだという。
|
|「『教会』みたいに全部悪魔のせいにしたい奴らのでっち上げかもしれないのよね」
|
| 観測できないなら、立証できないなら、ないも同然だ。
| 不確定な情報を疑ってかかる。三四らしい見方である。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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アッハイ
あの筋肉はすばらしい
ほんき なのか
もう わからんね
そういう事さ
/ノ´: /: : : : : : : : : : : : : :ｉ: : : ::ｉ: ::ヽ: : : : : :＼ ＼
/": : :/: : : : : : : : : : : : : : ::|: : :|: |: : : ヽ: : : : : : :ヽ ／
/: : : ::/: : : : : : : : : : : : :／:/}: : ｉ: :|: : : : :ヽ: : : : : : :Ｖ
/: : : : :|: : : : : : : ／: ::／:: / /: :/: / ヽ: : : : }: : : : : : :ｌ
｀.{: : : : : :|: : : : : : : : ::／./／ /:／/:/-―--:､; |: : : : : : :|
|: : : :{: : |: : : :,斗ｧ''フ" ／" // ＼ヽ|: : ｉ : : ::| まあその高度汚染状態も、
|:ｉ: : :ｉ: : :ｌ ｒ彡"´ " / }: :ﾉ : : ::| この翠星石様のおかげで
ｌ: ｉ: : { : : ｌ | __,.. / ''ェ;_＿_,ｪ; /: : : : /∧ 随分と清浄化したですけどね。
. ',ヽ: : : : ヽｌ ,ｒ＝=＝" ￣￣ ./: : : :ノ/ ｌ
＼＼: : : ＼ ! /, ｒ '´ }: : :ヽｌ この翠星石様のおかげで！！
|: : : { `ー ＞ /{ ＊ }: : ヽｌ
|:/: : { __ ｉ/ ヽ .／: { }:_:: : : : ｌ
. //: : : :{ "ｉヽ { :ヽ､ ⌒ ／:__ : { ／ ﾉ: : : : :.'.,
ｌ/: : : : : :} ｒ－┘､: ::ｒ`ｖｒ‐ - ´|: : : | _｣_{./ ./: : : : : : : '.,
/: : : : : : : { ｀ヽ、 ヽ.Ｌ._ヽ. レ'Ｖ＿＿ ヽ/: : : : : : : : : :'.,
/: : : : : : : : ｒ ト ＊|ヽ／ ノ ヽ.'､ ／ { （＿__ 〕ｒ､＿: : : : : : : '.,
: : : : : : : : :∧.ｌ.｝ }〔 ´ ／ ヽG＝ニ:|（ ./ｒ'/ｒく: : : : : : : : :',
: : : : : : : ::/ )|.ﾄ} }ヽ へ）|ノ＼.{ |/ｰｉ /`./ ( ヽ: : : : : : : : ',
: : : : : : : / .)|.｢.） .} ∧ ） ７ .ヽ | { フ | ヽ: : : : : : : : ',
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| 鼻息荒く胸を張る翠星石。話しが戻った。
|
|「ちなみに下位以下の悪魔の存在を証明する手段として、私は信仰による異能の強化を提唱しているわ」
|
| 翠星石の言い分を完全に無視し、三四が話をまとめに入る。
| 華麗なスルー力に翠星石も二の句を告げない。
|
|「アンデルセンさんとかの言う、『信仰の盾』ってやつ？」
|「そうよ。実は信仰による強化は完全に魔力が遮断された場所ではほとんど効果を持たないの」
|
| 大儀そうに肯くキュゥベぇ。そしてにやにや笑いのシックス。
| 二人を見比べながら、杏子が恐る恐る口を開いた。
|
|「間違ってたらアレだけっさ、もしかしてあたしらが東京で張ってる結界って、
| 魔力汚染を抑えるんじゃなくて高めるために張ってんの？」
|
| 訝しむやらない夫の視線、しかし、意を得たりと凛が頷く。
|
|「『血族』関係の魔力濃度のみを高めて、それによって他を抑制する？
| でもそれって無茶苦茶な魔術構造になるわよ。
|
| そもそも、『血族』だけで何系統の魔術を扱っているのよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ｌ/ｌ／ '" ム'"/__
N ´｀ﾞヽ、
| ／
| /｀ヽ、 'フ
| _! ｀ﾞ゛ヾ'"￣￣￣｀7 ｀＞
!'" ＿ ! ／
,ﾍ ￣ ＼ヽ、 ヽ ｀＞
〈,rｌ ヽ＿≧ﾄ、 !r==≦ﾆ- i__彡
. ヽi '". | ﾋﾃ ｎ !
ｌ. | ././
ヽ ,イ´ 神道、仏教、陰陽道。
＿>、 ー―‐-- /_ ! そして北斗は道教系で、間桐の呪術か。
/:::::! ヽ ／ ﾉ.）;i,r┐
＿ ,-―'ｌ:::::::::〉 !＞―‐ '" ／ /「:::::::|、
, -‐――'"::::::::::::::::::ヽ::::/_'" , r―-.、 ' .／;;;|:::／::ヘ、
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:ﾍヽ:::V:,-―ﾄ'ﾉﾑ'"::::::::::::〈/'":::::::／´;;;;;;;;;;i:::::i'r７/:::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ
::::ﾍヽl::i__ニ/／::::::::::::::::::::::::::::／l.i;;;;;;;;;;;f｀＼f,ｌ//::::::::::;::::::::::::::::::::::／ﾉ!
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| 指折り数える『弓兵』。そんな彼をキオがむっとした顔で睨みつける。
|
|「超能力もです！」
|「ついでに言うと、神道系でも霊夢や翠星石のような天津神系列と、
| 僕のような黄泉の国系列に分けられる」
|
| 補足を加える蒼星石。小さく肩をすくめる『弓兵』。
| その姿は「極東の島国の系統など知るものか」とでも言うようだ。
|
| が、それは明らかにポーズであった。
| 『弓兵』は夢宮の弟子だ。『血族』の系統を知らぬ訳がない。
|
|「八系統。そして、『教会』との折衝もあるわ。
| それだけの系統の魔力を維持させたまま、それ以外を抑制するなんて無理ね。絶対無理！」
|
| 噛みつくように断言する凛。
| 遠坂凛。四十前という若さで英国の魔術結社の首領という傑物だ。
|
| 彼女の類まれな魔力貯蓄量と、恐るべき知識量。
| 天才の名を欲しいがままにしている訳だが、そこに否を唱えられる者もいない。
|
| 遠坂凛の厄介な所は、フィールドワークを好むという所でもある。
| 家の守りと後進の育成を父に任せ、家の未来は娘がいる。
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′j:.:.:.:.:ﾉ_ !:::|/三ア´_,Ⅵ::. |＼::::::| ゞミ／￣ｉヾ::::::::::::.. j l!
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Ⅵ: :.l:.:.}ﾃ ヾ!＼::., リ !/ |:.:.:. V:＼:::::::::::,
ﾘ ゞjヾ/ ｀ ﾌ:.:/ ﾉ::::::::::::::::/
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| 結果、恐るべき身軽さで世界中を駆け回り、新発見の術式や、
| 異能が関係する紛争に積極的に介入、悪名を投げ売りしていた。
|
| その凛が絶対無理と言うのだ。
| それは、太陽が西から上るよりも難しい。不可能の同意語であった。
|
|「言うけどねオバサン」
|「まあ待て凛落ち着け」
|
| 杏子が反論しようとした瞬間、『弓兵』が元妻の肩を掴んだ。
| 彼の卓越した危険感知能力が正常に働き、速やかに危険の排除にかかったのだ。
|
|「放して頂戴。私は冷静よ」
|
| 前髪の下の双眸は透過光で爛々と輝いている。
| その口から洩れた声は、内容とは裏腹に低音で、冷気に満ちていた。
|
|「それともナニ？ あなたの部屋に隠してあるポルノはローティーンを対象にしたものばかりかしら？」
|「落ち着くんだ奥方。今はそれは関係ない」
|
| 邪悪な意図に満ちた、ロストスキルのテンドン＝ジツ！ タツジン！
| 凛の怒りを鎮め、『弓兵』をフォローすると見せかけた爆弾の投下！
|
| 分かるだろうか、ここで『違う』と断言してしまっては、
| 凛は否応も無く己の年齢を突き付けられることになる！
|
| 進退きわまる『弓兵』は、ロストスキルに怒りの視線を向けるしかできない。
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ヽ 、 . -‐ ―
＼ヽ /' ／
／￣￣ ﾊ/ ／―z
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／∨/〆⌒ ｘヘ、ヾ// ＼
/ ／厂｀ ト､ 〈 }￣｀
/ 〆 .′〃/＼ j | | ',｀ヽ
. |／√ | 77/ ｝/l⌒j i} | /
. // N┬､ ﾉ' ィ㍉｝ ハ | /⌒し
/人 八 U U ムﾉ } ｝
／ 个ｘ｛｀ ノイ /
ﾉ≧￢ｮ云ｧ≦| ! / ん？ ああ、悪ぃ。
. / / `､,「|_,く｀ヽ, 八 / アタシは佐倉杏子。おネーさんは？
ノ' 〔＼＿} ﾐ ｋ'ヽ ＼
. , ´ /〉‐-人_,ｲ ', 〉＼‐ ゝ
/ ／ :/λ r' /| /〈 丶、
./ ／/ / ﾊ} l 厂} { ﾄ､ ヽ
{ / l ｊ { jヽ__ノ { | | } ）ヽﾉ
｛ 八 {ヽ / | | |ノ _ノ ´
ゝ く | { |´
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|「遠坂凛よ……」
|「じゃあリンねーさん、蒼星石さんを見てごらんよ」
|
| 水を向けられた蒼星石は、何をいきなりと驚きを隠せない。
| だがすぐに、杏子の意図に気付いて頷いた。
|
|「僕は神道・黄泉比良坂系列の巫女でもありながら、僧でもあります」
|「神仏融合って奴？ それで一本化した術者ほどの安定性が維持できるの？」
|「正直無理ですね」
|
| 凛の指摘は正鵠を射ていて、蒼星石は素直に頷いた。
| 蒼星石の魔術は複数系統に跨っているため、酷くいびつで、半端なのだ。
|
|「でしょうね」
|「ただし、現状の結界については佐倉の言が正しいです」
|「はぁ？」
|
| 凛は苛立ちを隠さなかった。不可能だ。
| どうあがいても無理だという確信がある。よほどの裏ワザが無ければ。
|
|「……！」
|
| 誰に言われるでもなく、凛は『可能』という結論にたどり着いた。
| 邪悪に笑うシックスや素知らぬ顔のキュゥベぇを睨みつけ、誤りを指摘しなかったことの八つ当たり代わりにする。
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ヽ:::/ ／::::::/_,,... -‐‐‐- ､ _
>! l:::::シ´ _,. -‐ ''"￣｀ ｀ヽ、
／;' ...!::::::ヽ、´ , ヽ ｀ヽ、
く::::::! . .:::|____r' / ／ ／ ﾊィ⌒ヾ、
>::! : ::::l::::::l / ///､,ｨ' /! /､,,:;!i ヽ
ヽi : ::::ﾚ'ヽ/ l/_L/,_ﾄ/ ! ,ｲ l l:l: ,｀､‐-､
l : ::::l l 〉' '｀７-ヽ.｀iＸ !| / , ;i. i:.. l::::::::>
| : ::l ( ｀ヾ;シ^' __,ノ_ノ/::! , l::::レ'´
l :.: :::し, ´ｨ=z､_7／//:::/!
l: :: ::::::!i ､ ゞ-',.゛イ〃:／::l
! :::. ::::| ヽ、 _ ...._ ´ / i :l ::!￣´ 『弓兵』あなた知らなかったの？
/ l :: .::::| ＼ ｀ ｰ ' , ｲ | .| :|
/ / : ::::::| ＼ ,. イ::::| l .l ::!
/ / .: :::「￣￣￣￣￣￣!::::::l:::i:::..: l .l ::l
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/ ..:::/ :: ____,;;ｼ':::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ＿＿／ /::::l
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|「そうは言ってもだな……オレが『血族』を離れて何年になると」
|「大好きなティーンエイジャー女子よ？ 『弓兵』」
|
| それ以上の言葉はすべて言い訳に聞こえるだろう『弓兵』はあえて沈黙を選んだ。
| しかし、凛のような人物相手には、その選択は致命的誤りだと言わざるを得ない。
|
| ヒステリックな女性の多くは、沈黙を自分の都合のいい結果と判断するのだ。
|
|「とはいえ、『血族』首領、藤堂志摩子の噂は聞いたことがある。
| キクリヒメの転生者であるとも」
|
| キクリヒメは、古事記中イザナミの死からその後のイザナギの黄泉下りに登場する神だ。
| 彼女は死したるイザナミが地上に帰るよう説得する。
|
| いうなれば、生死において不可能を可能にする説得者であり、
| 信仰については異なる物を結び付ける、縁結びの神として崇められている。
|
| そして、この東京、『血族』においては、無数の魔術系統を編みこみ、
| 無類の結界を結い上げる中心人物であった。
|
|「すっかり失念していたわ。キクリヒメの主導なら仕方ないわね」
|
| そう、不可能を可能にする。
| 凛の『絶対』すらも、志摩子の前では屈服する。
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何年越しだ一体
いや、お飾りだと思ってたけど
_ _＿__ _ -=ﾆ７
､＿＿__ _,:‐:y:´: ∠:_: : : :_＞く: :.ヾﾆ/
ヽﾆﾆﾆヽ:,r‐:-:´: : : : :∠ﾆﾆﾆｌ: : :.:Eヲ
＼ﾆﾆ/: : : : : : : : : : : :.｀;>ﾆ!: : : ﾄ,
くﾆr': : : :ﾄvwハ: : :.:ﾄ.く三ｵ: : : !::. でも『弓兵』。
ﾒ{: : : : | '; :!: |_刈: :.|: : : |:.| あなた案外詳しくないのね。
Ⅶ;ﾍ;刈､ ,j斗fr示}rﾘ|: : : |:.|
|: : :k'Tﾊ ゞ-' |: : : |:ﾍ _＿__
|: : :ハゞ' 、 l!:..: :.ト'////,ハ
|: : : : :ゝ、 , ､ l|: : : |///////ﾊ
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| 氷点下の視線を送る前妻に、『弓兵』は口ごもった。
| 彼女の機嫌はすでに落ちるところまで落ちている。
|
| いや、まだマシか。呼び方が捨てた名字＋くん付けになったらもうおしまいだ。
|
|「それ以前はどうしていたの？」
|「門外漢に言うと思うかい？ 遠坂凛」
|
| 質問で返すキュゥベぇに、凛はそれ以上取りすがらなかった。
| 当然の返答である。
|
|「ぜったいあく思うに、遠坂の天才びしょうじょが手伝ってくれるって約束するなら教えて上げてもいいよ」
|「勝手なことを言われては困るよ」
|「でもでも」
|
| 縋りつくような視線を麻呂に向けるシックス。
| 邪気のない子犬のような瞳。絶対悪だくみしていると断言できる。
|
|「そもそも伊集院もう死んでるからぜったいあくに文句言える立場じゃないし」
|「あ、コイツ」
|
| それは禁句である。キュゥベぇは確かに死人で、佐倉杏子の魔力で残存知識を参照しているだけにすぎない。
| だが、それを指摘するのは反則であろう。
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_, - ― 、_ , -―― - 、 , -―､
< ｀―＝、／;;;;;;;;";;;;;;";;;;￣;;∨''￣￣￣>
|;､＿ -/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;ヽr' ／l
|;;／ //;;/;;/;;/;;､;;;､;｀i;;;i;｀､;;;;｀i^ヽ;;;;;;|
K ｲ;;;;;i;;;;i;;;;i;;;i " i;;;i;;;i;;;;;i;;;;;;i ＼i
. l;;;Y l;i;;;;i;;;;i;;;;;i;;;i i;;ii;;ii;;;;i;;;;;ﾉ ､ イ;;l
|;;;;;｀‐ﾚ;;;;ii;;ii;;;;ii;;i ,､ ､ i;;i_i;i;i;ﾉi;;/;ヽﾉ;;;;;|
|;;;;;;;;;i '; i,=＝, r"ﾉ !/=＝=ｲ;､;;;;;;;;;;;;|
l;;;;;;;;;ヽ, i ハ / / ,r ┐ //i;;;;;;;;;;;;;l あの、
. |;;;;;;;;;;;;;;;Y ｲ/ / , ／ ／ //;;|;;;;;;;;;;;;;| そこまで何としても知りたいわけじゃあ。
. |;;;;;;;;;;;;;;;;| ' ´ t', -‐ ' フ;;;i;;;;;|;;;;;;;;;;;;;|
. !;;;;;;;;;;;;;-ﾄ ､ ﾆニ' l_;;;;|;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;|
ィ´: ＼;;;;;/::::○::｀::丶､ィ―― "l;l;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;i
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ｲ::::::::::::::/::::::::::::::::::::::,:l:‐ｉ ｉ----'::::::::::::::::::i::::::::::::::::i;;;;;i
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|「東京タワーを中心に結界を張っててね」
|「ちょっと勝手に話し始めないで！！」
|
| 東京が合衆国の空爆で焼け野原になる前は、もっと大規模な結界が張ってあったとか。
| 関東大震災前に弱まっていた物を強化したとか。
|
| そして戦後は当時の天才が東京タワー中心に無数の魔法陣を編んで作ったとか。
| だから怪獣が東京タワーに惹かれるのは、当然であり正しい戦術だとか。
|
| 凛の耳元で妄言だか何だかわからないものを垂れ流すシックス。
| 見るに見かねた『弓兵』が、その襟首を掴んで引っぺがす。
|
|「た、助かったわ士郎」
|「いや」
|
| 転がったシックスはタコを思わせるグロテスクな動きで立ち上がり、小首をかしげた。
|
|「知りたがったのはそっちだよ」
|「代わりにナニをさせる気なのよ！？」
|
| 邪悪に笑う『元老院』に、警戒をあらわにする凛。
| かの名高き遠坂の魔女もこの怪人の前では赤子のようにあしらわれている。
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,.ィ'´,ｨィィ三≧ｰ､
,イ////,イ//l/ﾉﾊミヽ
{ﾊl/lﾉﾉ//ｲ川lﾉl_,Vﾘl|
. Wﾊ{｛lｲﾉﾊl|ljﾘfti'〈川、
ﾉﾘ八ＷｲﾊW{f｀~ ヾﾐ、 志摩子ちゃんがいなくなっても
,:'ｲf{i{lﾘﾊ､!ｿﾉﾊﾘ､＿rfﾘﾊ 東京は守んなきゃならない。
!ｿﾉﾉﾉｼノ'ｲ/l|l|{ﾄ,､了ﾘﾉ｛
彡彳≦､ノﾊlili｛tﾘ洲}i! (_ 違う？
::::::::l｡ヽ:.:｀l!ｿli|》ｼﾊｼﾊ､
:::::::::l｡::ヽ:ノ:.:ﾘ/少<ﾊﾐ}）
::::::::::l｡::::ヽ:.,ｲ}!:.:｀ヽ|jﾘﾒ,、
:::::::::::|｡::::::',{l/:、:.:.:.||`'（
:::::::::::|_:_:,:::ヾ､:.',:.:.:ﾉ:〉
:::::::i:::::/:::::::::l:.:.:.;:./:/
:::::::|::〈:::｡::::::|:.:.:.;｛l_ﾄ、
:::::::|::::ヽ:｡:::::|:.:.:.:.ヾ}!:'、
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::::l::::::::::::|:。::|:.:.:.:.:.:.:lj:.:}
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| シックスの黒瞳は、底なしの奈落よりも黒々としていた。
| それは何処までも空虚で、一切の熱を持たない。枯れた大穴。
|
|「魔術結社としては当然よね」
|「だから君を雇いたい。天才魔女を擁する遠坂の家を」
|
| シックスは肩をすくめ、胸ポケットからくしゃくしゃの紙を取り出した。
|
|「悪魔に関しては『血族』の三四は世界有数だろう。だが魔術論理だと一歩劣る。
| 高度な結界を編むには、卓越した魔術論理が必要だ。
|
| 本当はぜったいあく、脳噛の息子に期待してたんだけど、彼は一芸術師であって研究者じゃない」
|
| いきなり矛先がやる夫に向いた。
| 魔術理論云々、やる夫にはチンプンカンプンだ。
|
|「信頼できて、可能ならば世界中の龍脈を調べたことがあり、ベテランならなおいい。
| 脳噛本人を頼れればいいのだけれど、アレと『信頼』という言葉は水と油だ。
|
| ……そこで、だ」
|
| シックスの出した紙は、契約書だった。
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､ ＿＿_ ､__
＼ ｀＼｀ヽ､
∠ニ二￣ ヽ､ ＼ ＼| ヽ∧
／ ＼ | ' /!
∠ ／ V |
/ ／ ヽ､ヽ |
/ ／ ミ､ ﾐ ミヽﾙ 彡 |
|// ミ ｒ ―－－ミΥ彡＝‐┐ |
/／ 彡 | ｀´ l ﾘ 『血族』の呼び結界および
'| 彡' ∨ 龍脈管理論理の魔術論理顧問として、
| ｨ,､ / へニヽ ＿, ｨ＝彡'/ 遠坂家を招きたい……？
|∧ ゝV ミ=彡ー' ' ＝彡'/
ﾄ ) | l 貴様、どこまで本気だ？
∨ヽ | |
└ Y / /
Ｖ|＼ ＿＿ _ , ／
|ヽ ＼ ― ／
┌┴－－t ､ ＿ ／ﾉ ＞､
／::::::::::::::::::::::〉＿＿＿|:::::::::ト
＿／::::＼:::::::＿:::::| |::::::ノ:::::::＼
＿＿／:::::ヽー－::::´:::::::::ヽニヽ ￣ l _) ::::::::::::::::::::＼ ＿＿＿
´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∩:::::|ミヽ ｰ' ノﾐ､:::∩::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ､
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|「ぜったいあくは超本気。独断だけどね」
|
| いつの間にか、冗談が商談に変わっていた。
| 杏子の肩から飛び降りたキュゥベぇが、シックスの脚から背中を駆けあがる。
|
|「なるほど。たしかに遠坂凛ならばオブザーバーとして最適だろう。
| 遠坂凛ほどに卓越した使い手はそうそういない。
|
| シックス、キミは彼女の論文を読んでいるのかい？」
|「発表されてるのは大体。ぜんぶわすれたけど」
|
| 考え込むキュゥベぇ。シックスの独断だ。
| 他の『元老院』に握りつぶされる可能性は高かろう。
|
| なにしろ、凛らは先月まで『結社』側だったのだ。
|
|「でもさ、遠坂凛とゆめ……へい？」
|「ゆ、『弓兵』でお願いします」
|
| やけに腰の低い『弓兵』。シックスはワカメのような髪を揺らして鷹揚に頷いた。
|
|「二人はこの契約を仮でもサインした方が、色々動きやすいんじゃないかなーって。
| ぜったいあく思っちゃうなぁ〜？」
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..／////.::l::::ヽ;;;;ヽ::＼＼::＼::》 ///∨ヾ;;;＼;;;::::::::::ﾊ
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//.|;.|:;;|;:;.;;ﾄ、 ﾚ ﾍ, -=ヤlﾘ ｨ j;;;;;;;;;|ヽ|:::::::::|:| ……渡りに船ね。
/／|::|;:ヽ;;;;l- ﾘ 弋ｲ乂 リ / , ';;;;;;;;;| /:::::::::l;;| アンタの手のひらの上で
ヾヽ;;＼弋z ｀´ ィｌ;;;;;;;;;;;| /.:::::::::.// 踊らされてると言うのは癪だけど。
ヾ|;;ヽ;ヾﾗ l / .|;|;;;;;;;;;;;ﾚ:::::::::././
|;;;;;;|;;;;ﾍ ヽ __ .／ .|;|;;;;;;／:::::/::://
|;:;;;.l;;;;;|;;;,＞ _ イ ,. ﾚ／.:::;;;／::::l/
/;;;;/;;;;;ﾘ;;;;;;;;;;;;, jr -=彡／::;;;;.／,::::／
/:::;:/;;;;;/l;;;;;;;;;;;;;j ,イ;;;;;;;／ , ＜;;;ヽ
. /:::::/;;;／ム::㌢´ ,イ;;;;;;;.ィ＜´ ｀ ヽ、＼
...／::／／ '´ イ;;;彡'´ ヽ;;;;;ヽ 、
／::.／／/ ィ´;;;メ ／ lヾ、;;;;;｀ヽ 、
:::::/／ / ,' ／;;:;;;;/ ｲ ／ |;;:::＼` マ;;;｀ヽ、
.／ ノi .ｙ／:::;;;;;;;/ i.,／ ト、;::::ヽ、｀ヽ;;;;;::ヽ、
／::::ﾊ.,'.f::::::::;;;;;〈 / ./;;;;;ヾ;;::.l;::Y .〉;;;;ﾄ., ;;
..／::::;;./ ,' ﾏ; :::...::::.ヽ、 / /;;;;;;;;;;;|;;/;;:.ﾉ /;;;;;ﾉノ;/
'::;;;／;/. i 弋;;;;;;;;;;;;;;` ｰ=ﾆﾅ=-..、 /;;;;;;;;;;;;;;|/;;;:/ ';;l／´;.ノ
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| ため息をひとつ吐いて、凛が契約書にサインをした。
| シックスがそれを丸めて胸ポケットに入れる。
|
|「丸めんなお！」「何やってんのよ！」「ボケ老人！」
|
| 周囲からの総突っ込みに、シックスの手から契約書が奪われる。
| 代わりにそれを掴んだのは麻呂であった。
|
|「……麻呂が上に話をつけておくでおじゃる。先月の借りもある」
|「え？ なに？」
|
| まったく分からない様子で首をかしげる凛。『弓兵』は苦笑した。
|
|「アレはあんた達への援護じゃない」
|「そうであったでおじゃったか？」
|
| 先月の満月、歌舞伎町の戦いの終わり間近。
| 生き残った『異端審問官』の『医者』ことシレーヌ。
|
| 彼女に翻弄されるアリカへの援護射撃を、『弓兵』は行った。
| その一射がアリカの心を奮い立たせ、勝利へのカギを掴ませた。
|
| だが、『弓兵』はそんな事実は無いかのように振舞う。
| 格好つけてるな。と、アリカは思った。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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あとゆめへいｗｗｗｗｗｗｗ
予備なのか集めるのか転職
: : : : : : : : : : :/:/i:.:.:y ,/:/i:.;.;. : : : / __ //ヽ /:: : :／// /:,i:. : : :/: : : : : :.|
: : : :i: : : : : : ::ｲ:.:i:.;// iﾍY:.; : : : / ち＞-､ ゞ､: / / /:'/: : : /:.: : : : : :.|
: : :.l: : : : : ::.;./:､:.i:| i/ i:.:.: : : :/ |イ//ｿ｀ヽ: .X _ / // /: : ｲ:.;.;. : : :/: /
: : :i: : : :i: : :.:/:.A:.i:i ヽr i|:.:. : :/ 弋-,ノ ,リ｀ / /:／ /:.:. : : :/: /
: : i: : : :l: :.:.:l: :/ ヽ:､ヽヽ}:.:. : .! ､´ チｿ￣ 7:.:. : : /: /
: :i: : : : l: :.:.i: / ヾ:.ヽ､ i: i:i::: ｀´ ,JY｀> /: ': :./:./
:/: : : :.:i: :.;i:.:/ _ヾ:. : : |::::: ヽヽヽ /J/ / /: : : ノ／
: : : : :.:.i :.;.i:.;| ／￣,/ ヾ:::::. ､ し' ,/:.: :／ '
: : : :.:.:.:i:.:.:i.:.i / ::::. ヽ,／イ ´
: : : :.:./:i:.:.i―-- ､, / ＼ , ― ｧ ヽヽ /
: : :.;./;.;.i:.:| ヽ ヽ､ ＼ ー ' /
: :.;.;/:.:/i:.;|＿_.＼ ＼ ,.へ､ _ ＿ , ' ´ そういえば話戻すけど、
:.;.;/‐'´ l:| ｀ ヽ ､ヽ ゝ､ ／ ￣￣ 大首領様を誑かせば、
.:./ l:| ｀ヽ､ ＼/ 魔力濃度を自由にできんのかね？
/ , l , -- .､ ＼ A
,ィ'´ ｀ ヽ ､ ＼ ヽ,
／／ , ＼ ＼ヽ
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| 杏子の問いは、純粋な興味であったのだろう。
| だが、シックスやキュゥベぇ、三四の瞳があやしく輝いた。
|
| 冗談にならない、軽口では終わらない問題なのだ。
|
|「できないわ。いくら藤堂志摩子の能力が図抜けていても、結界を編むのが単独で無い以上不可能よ。
| でもたとえば芦屋道満麻呂や上杉謙信が協力をした場合はその限りじゃあないわね」
|
| ぴしゃりと否定する凛。不可能。だがその不可能は条件入りだ。
| 誑かされるのが一人で無ければ不可能はなくなる。
|
|「藤堂志摩子の神格は橋渡しや仲裁を得意としている。
| 完全な自由ではなく、『途中参入』なら、関係術者がいれば可能だよ」
|「……私が藤堂志摩子と協力すれば、遠坂の魔術も仲間に入れてもらえるってこと？」
|
| 凛の質問にキュゥベぇは頷いた。断言である。
| 推測ではないという事実が、やる夫の胸を騒がせた。
|
| ニャルラトホテプが志摩子様を誑かしたら、どうなってしまう？
|
|「どうして断言できるんです？」
|
| キオの問いに、失笑が漏れた。
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_ ｡ -‐ ‐ｭ,
,.｡ '":::::::::::::::::::::::::::::`丶
.イ:::::::::::::::､::::::::::::::::ヽ,:::::::::::＼
.ｨ:::::::::::::::‐- ｡.ヽ,::::::::::::::',::::::::::::::ﾍ
/:::::::i:::::::ヽ,_:::::::::::'ｰx､:::::::::i::::::::::::::::::ﾑ
,'ｲ:::::ｿ＼:::::ﾍ ア＞=ｬ, ﾍ:::::ﾘ::::::::::::::::::::ﾊ
}:::::::ﾘ `'＜ﾍ仏ハﾗ′ `ﾍ::::::::::::::::::::::::i!
V ﾑ'¨＞､ ヾ ソ Ⅵ.ィ:｀Ⅵ::::ﾘ 誰ですか？
ヽハ代ﾘ 〉ﾍ.i ﾍ l 失礼ですよ！
`i ヽ ､ .ｲ ソ:::::::::::`ヽ,
i _＿ l{｀´::::::::::::::::::::::l
' . ﾞ ` .ｨ {:::::::::::::::::::::::::::i
/ヽ. . '" ｲｱ ﾉﾍ. ヘ ノ｀
∨i:::ヽ. _ .イ .ィ´ ﾍノ ＞'ｰ‐──一ｭ､
∨ヽ,ｨ¨ 〉 jﾊ ／ ＞'´ ￣ ￣｀丶,
ハ ／＞' ヽ. / ／ ﾑ
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|「いやいや、おかしいだろ？ みんなもっと笑えよ。ナイスジョークだ。
| キオ・アスノ、お前はお笑いのセンスがある」
|
| 嘲笑する慎二に、キオが不信の視線を向ける。
|
|「どういう意味ですか？」
|「伊集院とシックスが当然という顔をしてるんだぜ？ 前例があるんだよ」
|
| 志摩子がキクリヒメの能力を行使し、東京の結界の効果を書き変えた。
| そんな前例がある？ やる夫は一瞬首をかしげた。
|
| だが、答えは慎二がすでに出してくれていた。
| 超能力者、キオ・アスノ。なるほど、確かに冗談じみている。
|
|「志摩子さんはフリット・アスノと超能力について結界に書き込んだのかお？」
|「当時は、まだ東京タワー中心の結界だったけれどね」
|
| 言い方を変えると、志摩子本人が組み上げた結界でなくても、志摩子は組み換えが可能と言うことである。
| それがどれだけ異様なことなのかは、やる夫は凛の顔を見て判断した。
|
| 青ざめた魔女の口が「ありえない」の形に動く。
| 大首領は伊達ではない。
|
| ずっとお飾りだと思っていたけれど。
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼ ,.:┐
.（ ●）（ ●） ..| ／ ｜
（__人__） .|./ / やらない夫
i⌒ ´ .r－､ |/ ／ 志摩子さんを暗殺したら結界はどうなる？
{ ヽ, ',. .,/ :/',
.ヽ .| l_/_, -‐､',
.ヽ . | / , -－'i|
/ { V , -－ﾍ
| ヽ Ｌ| r= |
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|「はっきり言って変化はないでおじゃ。今後の結界関係の労力が百倍になるくらいで」
|
| 麻呂の返答には苦笑が漏れた。
| 冗談じみた言い方であったが、大げさであったのか。
|
|「百倍ｗｗｗｗ少なく見積もりすぎｗｗｗｗｗ」
|「イメージの問題でおじゃるよ。千倍は大きすぎる」
|
| 笑うシックスの様子を見るに、千倍でも言いすぎではない可能性があった。
|
|「志摩子さんに頼めば半日で終わる作業が一年かかるくらいですよね」
|「七百倍強じゃねーか」
|
| 無茶苦茶な数字に呻きながら、やる夫は改めて志摩子さんの素晴らしさを知った。
| 胡散臭いとか怪しいとか思ったことも無かったような気もするが、それが申し訳なくなるほどの偉大さだ。
|
| そして、その優秀さを考えると、『教会』が志摩子を飼い殺しにしているのも頷けた。
| 彼女を自由にしては様々なパワーバランスが崩れかねない。
|
| ならば東京で釘づけにし、異能ではどうにもできない諸問題の相手をさせた方がいい。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ﾄ､‐- ､ , - ―.ォ
|: ＼ ＼ ／ ／: : :.|
l: : : ヽ ｀ ￣￣ ´ /: : : : /
': : ／ ＼: : / 藤堂志摩子はまだ幼い。
У , ｀く おかげで政治的にはめっぽう弱い。
/ / ﾍ ヽ
/ / γ::o, γ::o, ﾊ ヽ
,､ / i ヽ::ノ ヽ::ノ .i ﾍ‐- ､__
ヽ＼, ､ ､ _ , / ﾍイ/,＞ ,
ヾ_｣ /＼. ｀´｀ ´ ／ﾍ ／イ ＞､
／ ヾ,.､ λ ｀ー‐ｧ---- r一 ' 入／" i＼ ＼
＿＿ ／ ｀>く}ﾍ / ﾍ ／厶へ ＼＿＿ ヽ
, -‐" ＝ ／ ｀´ i | ／ ＼ ＝二ァ
￣フ二__二, _・ ／ j l' ｀ｰ-｀､_三――" ’
/ ￣ / | / ヽ、 ￣ /
, -､ / / ､| | , ├‐- ､ |
（{ ./ | ﾍ ｜.i / | ｀ 丿
ヾｰ--‐' ´ ,＞ '￣￣| ﾊ l.｜ ｛ .j ／
｀ｰ- ＿＿＿ ＞ ' ヽ i | | ﾉ 人 ／
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| キュゥベぇが嘲るかのように志摩子を評した。
| だが、その嘲笑は己の上司となる大首領に向けたものではない。
|
|「だけれど、藤堂志摩子は優秀だ。『教会』にとっても簡単に切り捨てられる存在ではない。
| だからあと少しだ。あと十年ぐらい」
|
| 十年。百近く生きたキュゥベぇにとっては少しなのかもしれない。
| しかし、いまだ十六歳の可憐な乙女には長すぎる年月だろう。
|
|「十年経ったら？」
|「政治的にも異能的にも成長した、大首領名にふさわしい傑物になってるだろうね。
| まあ、それまでに誰かに唆されたり、心を病まなかったらだけれど」
|
| そうして成長した志摩子が、『教会』の圧力にも屈さずに東京の平和を維持するのがキュゥベぇの願いなのだろう。
| だが、三四が否定的に肩をすくめた。
|
|「でも伊集院様、たったの十年で傀儡政権が復権できますかね」
|「そこは心配ないよ、鷹野三四。『教会』は藤堂志摩子を……いや、キクリヒメを甘く見ている。
|
| アレは死人を説得して黄泉がえりを決意させる神格だよ。
| 交渉事に関しては文字通り神懸かり的だ。
|
| 本当は指導者よりも補佐こそ向いているんだが、なんにせよ。
| 彼女以上に政治家向きの異能を持つ者はそうそういない」
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rv ／｀!
「＼ ＿ ＿ ＿_ !.:.V´.:.:.:.:.}
┌‐‐┘..:.:.ヽ／ ｀ヽ|.:.:.:r‐-ノ!
＼___」.:.:.:.:.! 、 L ﾉ !｀ヽ、
/ /ヽ,.:.:ノ / / /ヽﾍ i l ﾚ::ハ ',.:.:.:.:＞
ﾉ! i /.:Y | i i i | i ', i l |.:.:.:.:':, Y´
＜」 i /.:.:. | i |i | i| i | i | レ〜┘ ヽ 政治的能力も神格的加護がある以上、
/ レ〜〜1 」L.!iﾘi メ´ﾙﾚﾘ i i ヽ 才能が無いわけがないということね。
/ / /,' ﾊ rテtv イ心Y |ﾊ i ﾄ、 ヽ
/ / / ヽj ヽZｿ ー'´ ﾚ' i | ':, ヽ
ノ / / i ヽ. _’__ /i | || i ヽ ヽ
／ ,イ / i| ｀ .,_ ,イ ; | i i ヽ ＼ ＼
_ -‐ ´ ／ / / i i rくi ￣ ﾉ! :! !ヽ、 ヽ ｀ヽ ヽ、
, ´ _ -‐ ´ / / i i 」::::￣￣:::{! | ヽ ヽ 丶 ｀ヽ ｀ヽ、
/ , '´ / / , /￣ 。 }{ 。 ｀ i ＼ ヽ ヽ、 ｀ヽ、 ｀ヽ、
i / / ／ / ／.:.:.:.:}=== ==={.:.:.:.ヽ ヽ 丶、｀ヽ、 ｀ヽ ）
|/ ／ ／ / , ´ /. :.:.:.:.:.:.:.:||.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:丶 ＼ _ノ ／
_ -‐ '´/ ,´ , ´／.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:||.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.＼ ｀ヽ、 ／ r '´
_..-‐.:.:.:.:.:..:.:.:.:/ / ／／_, -‐ 〈:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.j」.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,.:.:.:.:.:｀￢、__ ヽ （ ヽ..
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:i / ／イ ／ ハ:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:.:∧.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i ｀ヽ、ヽ ｀ー‐- _｀ヽ、
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. i , / i , / |: : : : : : : : : : : : : : :./ ハ.:.:.:.:.:.:.:.:.:! i ｀｀
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| そう、志摩子はキクリヒメの異能と性質を強く引き継いだ『分霊』なのだ。
| 仲裁や橋渡しが神格の特性である以上、最高の弁論者になる素質はあるに決まっていた。
|
|「まあ、問題はまだ右も左も分からない女子高生だということだね。
| ボクが今懸念しているのは、彼女をたぶらかすべく近づいてくる悪い大人の存在だよ」
|
| 才能が開花する前に、逆らえないほどに操られては問題なのだ。
| やる夫は考えた。それを行おうとしているのは誰だ？ 『教会』？
|
| いや、ヌケドナルド・トールマンは違うだろう。
| 兄の方は類まれな日本人嫌いで、弟は東京や民を守ることを誇りとしている。
|
| では、他の『教会』幹部か？ そのあたりの情報は無いから何とも言えない。
|
|「……じいちゃんのことですか？」
|
| 恐る恐る尋ねるキオ。しかし、キュゥベぇは首を振った。
|
|「僕のじいさんの方じゃあないかな？
| 先日の会議で、親『教会』葉に鞍替えしたってえ言うじゃあないか！」
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虫だけにってかｗｗｗ
やらない夫じゃなくて麻呂かな
フリットへ擦り付けたりと色々とやってるから、無能ではないよねｗ
／::＼,,__
┌ーヽi::::::::::::::::::ヽ￣｀',
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ﾉ::/::/:/:::!:::::∧∧:::::::::::::::::i､:::＼
/ /:/::/::::i:::::/ ｝:::）:::ﾍ::::ﾍ::ヾヽ
{ ｛:く;;｛:::∧:（ （:::(ヽ:::::）:::ヾ::｝ }
ﾍ::)::）ﾉ￢）) ):）フ::ﾊ::::）:/
{ﾍ!:（丁;;jゝ ´「;;;j厂ﾚ!iﾍ
｛∧ ￣ ￣ / ソ 今までずっと親『結社』派だったじいさんだ。
ゝﾍ ' /ノ あの人が気に敏いのは分かっちゃぁいたが、
ﾘヘ ´ ￣｀ ／!!′ 今回は手の平返しが過ぎる。
＼|＼ __ ／ |/!
┌‐┴─ｒr─‐‐┴!
___ __＿＿＿r=┤: : : : : |||: : : : : ├､,,
/: : : :: : : : : : : : : : : : : : : : 〃/: : : : : : : : :｀:ｰ:-:.:.､,,,__
/: : : : :: : : : : : : : : : : : : : : :i ! |: : : : : : : : : : : : : : : : :: : :｀ヽ
/: : : : : :: : : : : : : : : : : : : : : i ! i: : : : : : : : : : : : : : : : :: : : : : ',
/: : : : : : ;;: : : : : : : : : : : : : : i | i: : : :r＝＝===ｭ: : : :;;: : : : : : i
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| 慎二が唇を自嘲気味にゆがめ、唾を飛ばして演説する。
|
| 間桐臓硯。悪魔化している問い噂もある、『血族』切っての怪人。
| 『元老院』の一人で、慎二の祖父で、そして凛と『弓兵』にとっては仇となる存在。
|
| それが、『結社』派から『教会』派になった？
| 凛と『弓兵』は色を失った。想定外の事態だった。
|
| なにしろ、臓硯が悪魔化しているのであれば『教会』と友好的に接するのは難しいはずだからだ。
|
|「ニャルラトホテプの関係で『血族』が落ち目だからと考えていたけれど、
おそらく『それ』も理由だな。
| あの狸、大首領様に近づく隙を見計らっていたんだろう？」
|
| 尋ねられたのは、キュゥベぇだ。
| 白い獣はガラス玉のような赤い眼球を光らせる。
|
|「何故ボクに聞くんだい、間桐慎二」
|「お前が死んだからだよ、伊集院九兵衛太」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,. :´__: : : : : : :': l: :ヽ/// ∧: : :＼:＼
,. ´: : : : :＼: :/: : : : : : :∨,ｲ: :',: : : ､:ヽ ＼
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/ｲ:{ﾑ/,.ｲ}､:.,､: :| ､_,ｲ/:/: /:': |: : |: : |: :| ',|､:} !
{:,:､:ﾊﾋj ﾘ }/ , 从/: /:/: :l: : |: : |: ,' } ∨ あ？
从ﾘr' / .: }/ｲ: :八: : , : |/ / }
ヽ,r / ／'￣ ｀ヽ､:,: : ,: { ／
｀ _,.ｲ- ､/ / ∨: :八
＿/ ｲ ,: : :､:}
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{_,'／ ､_ ,: : : ＼
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〈 ､＿ , ヽ ∨: :.＼: :＼
}l { 、 ∨ | ∨:l｀＼
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| 佐倉杏子が目を細め、眉間に縦じわを刻んで慎二を睨んだ。
|
|「番犬の躾はしておけよ伊集院」
|「アタシさァ、前からアンタを気に食わなかったんだよね」
|
| 肩を怒らせる杏子。慎二は髪をかきあげ、彼女に一瞥もくれない。
| その馬鹿にした仕草が、怒りに油を注ぐことを熟知している動きだった。
|
|「僕も、お前の名字が気に食わない」
|「そこまでだ」
|
| 仲裁に入ったのはケンシロウであった。
| ２ｍ近い巨体に、さしもの慎二と杏子もひるんだ。
|
| このままでは乱闘沙汰だ。慎二が鼻血と前歯を撒き散らしてシックスの同情を汚すのは明々白々であった。
| しかし、大人たちはだれも止めようとしないので、ケンシロウが動いたのである。
|
|「佐倉。最後まで聞くんだ。間桐は無暗に挑発的な物言いはやめろ」
|「……あいよ」「そうは言うがな、ケンシロウ」
|
| 不満を見せつつも引き下がる杏子と、食い下がる慎二。
|
|「防波堤が一枚無くなったんだ。死ぬ前に手を打ってあるかを問い詰めたいだろ？」
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|ヽ、 ハ
|｀,>｀ー―‐' ﾘ、
ﾊ ）ヽ
/ i :::::::::::::／ ./
＿＿,,＝ｙ' ﾉゝ.＿ ,',´⌒ヾ,' そんなこと言っても
(＿o＞￣ l|／ _ﾉ／'0'o}/ﾉ' ボク『結社』派だったし。
（,-´'o≧=ﾉ' （_,（＿,し'´|´
－'´ ´ ／ |
／´￣｀ヽ、 / '⌒ヽ| || lヽ
| ⌒ヽ. ￣＞i ﾘ. || | ,!
ヽ ＼_ノ| ゝ.＿_'´,,).,j.,.,j'´)
＼＿＿＿＿ノ
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| プイッ。と、かわいく顔を背けてキュゥベぇが言いきった。
| 珍しいほどに完璧な責任逃れである。
|
|「だと思ったよ」
|「ボクは離れた位置から志摩子さんを守る。近い場所はロージェノムの分担だよ」
|
| そして今度は責任転嫁。
| 振り返った杏子の氷点下の視線。
|
|「大首領様にじいさんが目を付けたのは、他のメンツより遅かったんじゃあないのか？
| アンタと螺旋王が完全に周囲を固めてからじゃあ、じいさんは動かない」
|
| 対して慎二は、煮立たせた怒りを内包しながら、声だけは静かに問い詰めた。
|
|「じいさんは臆病で狡猾だからな、どっちかが死ぬのを待っていた。
| ついでに『結社』がコケて、ウザいアスノの尻馬に乗れば大義名分も立つ」
|
| 祖父をウザい扱いされてキオがむっとしたが、彼の気持ちに共感できるものは他にいなさそうであった。
|
|「じいさんは大首領様に何をさせるつもりだ？」
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_,.ィ'三三二ﾆ二三ミー ､、
,ｨ'´ィィィィ彡三ﾆｴﾆ二三ミミヽ
,ｨf//ｨ'ｨ'ｨ'ｨ'／ィｼ' ｀`ヾヽﾐﾐﾐヽﾐﾐヽ
ノｨ'//,'ｲ///,ｲ!lj/ l|lﾄﾐﾐﾐtゝ､ミ'、
//ｲ{|{lh{lilililil|l| |i,' li八ﾐヾ｀ヽヽﾐ':、
ﾊ{｛{N､',',',､{（(li| |l ,.........||＿!l|l|lﾄﾄゝﾐヽ丶、
!|l{lﾄi､',ﾐﾐﾐ','ji|l|l!:||:.i /:.:.,:'ｨﾘftiﾐkjljljlj|j|トミミミ≧ｭ､、
､ヾミﾐヽヽ',',}｝l|:.||: | ,':.:.: ｀`lF彡ﾄ'ﾘl|l|l|l|lﾄ､liトミ三ﾐﾐヽ
ハ',',}｝}iﾄＮ|}|ljj|:.|! !:.:.. |l ｛l|l{lﾘﾊﾄl|l|､}〉| ｀ヾヽヽ
. ﾊﾘﾄﾐ',W八ﾘﾉﾂ'.:.ﾘ ,..、 |l |ﾄﾄWl|l|l|lNjljl| ヾｿ}
. {{{{｛lﾘﾊﾘllﾂﾉ/.:.:/: '―' '、.:ﾘト､{｛､',NNhﾄ、 ﾉﾘ′ ぜったいあくは、
,）}Ｗ/}｝ﾘﾉ,ｲ:,､'＿＿＿＿＿,.ﾒｨﾘj}j＞､{（(NﾄV、 ,ｲjﾘ 何もさせなくても十分だと思ってるよ。
. ｲﾉﾘ//ﾊ}l//ｲ/｀ ―----― ´ /ﾘﾉﾊﾉﾊﾄﾐヾミﾐﾐゝ､/ﾉ/
//ｲﾉﾊﾘﾉｲﾉﾄi{、｀:.:.‐;,-;,‐.:.:´ ｲﾂﾉ八ﾄﾐﾐト｀ヾヽ、ﾐ｛{{/ー- 、
｛{{i{i{i{(({i{i{i|l|l|ﾘﾊﾄi､,ｲi{,,,}iﾄ､ｨﾂ{fﾘｲ ﾊliliﾄミヾヽ',iﾄﾐヾWト､ ヽ
,}）}）}lﾄiﾄl|l|l|l|| `ﾂﾉﾘ{｛{M}｝lﾘｨfｲヾ! LlLlレ‐=ﾐ)}lト}|l|liヾ'、ヽ、
､__,.ノｨﾒｲﾄ'､',',lililili|::..'´,ﾝiﾒ!ﾙｲl/lｲ八`/ {´￣/ Ｗ!,ﾘﾘﾊ ヾﾐ､i}
｀ﾆ彡'´ 'ﾘ ヾ',lNi|l:.:.:、 ´jﾂ ヾ' / ,':: '、::/ ヾﾐ彡小、_, ﾘ
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‐ '´ ／ ,':| ',iﾘ .::ﾉ /::: / ∧`ー-、
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／ /::::::| ,ノﾉヾ、ヽ /:: ／／:｀`丶、 ∧ヽ、
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|「三十年もすればにフリットとロージェノムは死ぬ。
| ぜったいあくだってあと五十年もたないと思う」
|
|「何歳まで生きるつもりだお？」
|「え？ ギネス記録？」
|
| シックスが笑いながら答えた。
| こう言っては何だが、耄碌か狂気か、あるいはその両方をこじらせているこの男が、お迎えは一番早いだろう。
|
|「そしたら臓硯の天下だよ」
|「あー、なるほど」
|
| 慎二が大変不愉快そうに肯いた。
| 臓硯の在り方を考えたのだ。あの老人は、安全性を大事にし過ぎる癖がある。
|
|「敵対させなければ十分だっていうのが、じいさんの考え方か」
|「それは困るな」
|
| 断固とした口調で、感情を押し殺した声色で。
| 『弓兵』が口を挟んだ。
|
|「奴には安寧と手を切ってもらう」
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／.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
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.: : : : : : : : : ::/l: ;ｲﾊ: : : : : ﾄ : : : : : : : :i
i : : : : : :;ｲ_|/__| :/ | : /ﾘ_ｊ_!_ｊ:::/|! : : ; ;
! : : : : :/!|::/ ..|/ .|::/! .i ; ｌ/ﾊ|: : : : ;
.ﾊ : : : ;li.ｉ.i/x≠ミ ﾚ x≠ミ、iﾉ!;ｨ: : :!
|;ﾍ:i'ﾘﾊ.' !;i）ﾘﾚ
ｌ/;ﾊ ,'ｿﾍ/
!ぃ ` ,.'ﾊﾚ' ではここで、次の議題に移りましょう。
｀''丶 ` ￣ ’ ., ｸ'
从ト .必 ´
ｿﾊ:: ＞ ＜ ﾄ､
ｒ{ .{ .ﾉ {7
‐≦´ } ゝｰﾍｒ‐‐ ´_ . ハ＼
ﾊ`, ._,,.-‐''" `（:::::::r:::r'´::::::）ﾉ. `'ｰ-､
ﾉ l. } _≦´ };;;;;;ﾄ-ﾍ;;;;;;;;{ .≧、
./ / ﾚ. ） _ ﾏ/ ﾍソ ﾍ/ ≧、
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〈 ./ / ./ ｨ' .ﾉ li ／ ノ /ﾊ..}
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| 割り込んだ東田に、『弓兵』が険呑な視線を向ける。
| 泣いたり笑ったりできない青年は、冷めた表情でそれを受け止め、手帳を開く。
|
|「次の議題は『蛇身』とネクロノミコン、ネクロノミコンと『万魔』、『万魔』と間桐臓硯様。
| そして……間桐臓硯様と遠坂様について」
|
| 『弓兵』が慎二を見た。慎二はやる夫を見る。
| やる夫は頷き、視線を蒼星石に向けた。発案はやる夫だが、主導は蒼星石となる。
|
|「そのあたりは複雑に絡み合った状況でね。状況を順番に説明したい。
| そしてその上で今後の行動と対策を練りたいわけだ。
|
| 『蛇身』、『万魔』。そして間桐臓硯に対するね」
|「えー？ 臓硯と敵対するの？ 死ぬよりひどい目に合うよ？ ね！」
|
| シックスに同意を求められたが『弓兵』はあえて無視した。
| 死ぬよりひどい目か。その通りだ。
|
| そしてだからこそ、間桐臓硯には報いを与えてやらねばならぬ。
| それが『弓兵』と、凛の望みであった。
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∨三三三三三三三三三三ﾆ/
＿_ ｌﾆ＞‐ '´￣￣￣｀ ｰ＜三三/
〈三三二ﾆ―‐- ､ ＿＿＿ ｀ヽ|
∨三三三三三三三三三三三三二二ニ￢
ヽ三三二ニニﾆﾆニ二二三三三三三／
Ｙ´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:＼::.:｀ヽ::＜三／
. ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::､::.::.ヽ、::.｀、:l:T
｜::.::.::.フ７￢‐､ヾ､:＼>､:|-ﾍ::.::.}::!:|
{::.::／代了圷ﾐヽ. ＼行‐t予l:ﾉ/::|
!::.::.::.:| ゞ-'′ ＼ 辷ｼ '/:/::./
|::.::.::.:ゝ , 厶ﾉ::.;′
ヽ.::.::l|ヽ、 r-､ ／::.::/ 簡単な問題から解決していこう。
＼:ﾄ､:j＞ ､ _,.ィ:´::;:l:: /
ヽ ｀ ,.ｲ ｀¨´ ﾄ､ﾚ'|/ |:/ まずは『蛇身』だ。
__,. '´＿＞v＜ ｀ヽ、′
┌イ ／／了,ﾊ＼＼ヽ ｀┬ｧ
／7 | { く／ノ/引ヽヽノﾉ | }-､
. /:.:.:.:{ | ｀ｰ'´//l弓| |｀ｰ′ | } :.:l
/:.:.:.:.:.{ | // ]弓ﾄ､ヽ |「 :.:.|
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| 蒼星石は視線を三四に向けた。
| 鷹野三四は悪魔研究の第一人者だ。当然だが『封印像の悪魔』についても詳しい。
|
|「『蛇身』は江戸時代初期に日本に流れてきた外国の悪魔ね。
| 記録によると『血族』とは最初交渉から始まったみたいよ。
|
| その前に日本中を探索していて、すでに日本語はマスターしていたみたい。
| 本格接触の前に何度か接触があり、そのほとんどで接触したものが殺害されたわ」
|
| 当時の情勢はよくわからないが、大陸から渡って来た悪魔が日本中を練り歩いていたとする。
| それを『血族』が察知した場合どうするだろうか。
|
| まず交渉する？ いや、攻撃するだろう。
| そして返り討ちに合った。
|
|「当時の混乱した情勢から行って、『蛇身』は各藩で幕府のスパイか何かと勘違いされた様ね。
| ちなみに当時は服を着ていたみたいよ」
|
|「い、今だって平時は着てますよ！！」
|
| 赤い顔でキオが叫んだ。
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／:::::::::::::::::::::｀ヾ}/ ｊ´ ﾘ
ｲー:::-::＿::::::::::::::::::｀ヽ ｊ´ ﾘ
ﾊ 三~￣￣三彡! ｊ´ ﾘ
⌒ｊ:::|､＿ / ｊ´ ｲ!
＿＿イ:::::::::::::::7⌒ﾏ:ァ--ー＝ｒ ｊ´ ﾊ}
ィ ＞ ´￣￣ マﾑ_ ｀ヾ::l > ＿/⌒ｊィ
ィf／´ ヽ{⌒ヽ} _/ ｀ マ/７＞
ィf _／ ＼＿} ７ _///ｒY
ィf _イ7 ､ ヾー ｊ/ﾘ´ ｒ'
ィf イ7 ./ ＞.. ｀iヽ ｒ‐v//⌒ﾘ
/ｊ ／ /７ V V ＞ . |//＞＜ﾑ_ﾏ /
/ ／ /V / ト >､＞ . |/////≧､7 7
ノ＿／ / ﾘ ノ 」 ＼ ｲﾆ＞ ⌒L////////ヽ7
/:::::／ / イ 彡 ´ }＞ ｀ヾ//////＼
::::/ 人' ｊ /´￣ ｊ ｢ 个/////ヽ
::ﾉ ヾ::{ l! / ／ / l＿! T＝///＼__
＿＿ｊ__ ＿ ）－､ ｲ! l ￣ ､ ￣マフ }
r┤ /|i|ニニニﾑ ﾏﾑ／ i ! ､ ｀ｰ＜ﾍ
Lｊ / ｊ７!ニニニニ／ ／ ｌ ＿＿ｊ､ :. }//ﾊ
人_ノ ﾘハニ≠ ／ ／ ｢///////| |!八∧
７ // ＞ ´ ¨ ﾍ///////| ＿_}､ ｀ ｀ｊハ
{ //X ／ ／ ﾏ//////|ヾ77///ハ ´
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 『蛇身』はどういう理由かは定かではないが、ほぼ全裸で行動していた。
| 目隠しとアクセサリー、ロングブーツとガンベルト。以外全裸。
|
| 形の良い乳房やツンと尖った乳首は当然ながら、鍛え上げられた腹筋と、その下の陰毛まで惜しみなくさらけ出している。
| しかしながら、平時も戦闘時も、目隠しは外さない。
|
| 視覚で行動していないからか、あるいは別の理由かは不明だが、
| その目隠しが逆に背徳的な淫靡さを煽っている。
|
|「非常に高い知能と戦闘能力を持っていたけれど、態度が居丈高で、交渉は決裂。
| まあ、その前に攻撃的接触が何度も有ったせいで、『蛇身』の警戒心は最高潮だったんでしょうね。
|
| 交渉決裂後、その場にいた『血族』を半分殺して尾行、当時の『血族』本部に押し掛けたわ」
|
| 話しを聞いて、何人かが顔を覆った。
| そして、蒼星石が先日の状況を思い出して冷や汗をかく。
|
|「無能ばかりだったのね」
|
| 聞えよがしに辛辣な独り言を呟く凛。蒼星石は耳が痛かった。
| 先日、『蛇身』に尾行とやらにしてやられたのだ。
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ:::::::::::ハ
/:::::::::::i:::::::,::::::::::::::::::::､:::::::､::::::::::::::::::::i!::::::::::::::',
/:::::'::::::::i:::::::::ﾍ::::::::::::::::::＼::::＼::::::::::::::::l::::::::::::::::l
′':::::::::/ヽ:::::::::＼ヘ､:::::::::::＼::::＼:::::::::::i::::::::::::::::!
|::::l:::::::::′ ＼:::::::ヽ, ＞=ﾆ＜｀ヽi:::::::::/::::::::::::::::!
V i:::::::ﾄ=ｰ ｭ, `'ｰ一` 仏.き 7 ,}:::::/i::::ｨ:::::::::::l
ヽ!:::::{ ,.rｪｫ, '弋少 ' /／ ﾚ'´｀ヽ,ﾍ{
＼{ : 心ﾘ “¨ ′ .ｨヽ l::::ﾄ､ ……影にひそまれたら、
iゝ` ” , ノ ﾉ:::::::::ヽ, 正直僕にも感知できません。
i ヽ ｀ ィ’ ノ:::::::::::::::::ﾑ
. ､ー‐- . r=≦:::::::::::::::::::::::ﾘ
ヽ ￣ /{::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
〉､ i.,:::::::::::::::::::::::::ノ
i:::::＞ ､ _,. ,.｡ィ ∨ . ヘ∧／
ヽ,:::::::::::::￣ i ,. ≦ ∨ｭ,
∨ヽ r.イハ /ハ / ≧rｭ｡_
_,.｡≦ﾊ j r’.ﾉ ∧ / ≧rｭ｡_
_,.｡≦’ /／ ヽ,ィ ィ’ ∧／ ≧ｭ
ｨ仁 / / / ´ ﾑ
/j / / / ／ ',
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| 同じく、恐るべき隠密能力にだまされたキオ。
| キオの能力は周辺の生物無生物を空間ごと把握する類のそれだ。
|
| 彼にはいかなる隠密も奇襲も通じない、はずであった。
| だが『蛇身』は容易くキオの陰に潜み尾行してきた。彼女自身が動くまで、キオは気づきもしなかった。
|
|「正確にはその際に襲われたのは『血族』ではなく、彼らが使っていたイガ＝ニンジャだ。
| 当代のハトリ・ハンゾーが命がけで戦い、敗北した記録がある」
|
| ロストスキルが慎み深く発言した。
| その後故あって、ニンジャたちは『血族』から『結社』側に移った。
|
| だが当時のニンジャは、ようやく終わった戦乱を治める、天下泰平のための尖兵だったのだ。
|
|「……ねえ士郎、その人強いの？」
|「戦国時代を生き抜いた怪物ニンジャだよ。本物の英雄だ」
|
| ただし、対人戦に特化していた可能性があるという考えを『弓兵』は口にしなかった。
| 人間相手に無類の強さを発揮するタイプは、必要以上の打撃を好まない。
|
| 乱戦の中、無駄なエネルギーを使っては逆に殺される可能性があるからだ。
| そう考えると、高位悪魔相手には火力が不足していた可能性もあった。
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／ ヽ
,/ ／ ヽ ヽ
/ ./ ／ | ヽ ヽ
// ./ / l ヽ i
. i / /./ ／i .ｌ i l
| i i / ／ / /l ｌ |
. | | l/ ／ / / |.| | |
| | / ー- ､／ / ./ l l .| l
ｌ .! i _ ／_`ヽ /./ l .|i i | |i とにかく、
. i |l .| ヽ戈ゥ,ミ ./／ '''ーl､|.i. | ! .|l 伊賀屋敷が壊滅的打撃を被ったりした中、
i l.l l / ー―'／ '`ヽ i iヾ､ .| .| | l 『血族』はこりゃあ勝てないと考えて
. li .i |/ﾊ ／ i ´弋ｚ､ヽ＼.| | |l i 罠にはめて封印した。
| i ﾊ ./ ＼ﾆヾヽl l l l ｌ
ヽ ﾊ. ヾ| ` / | | 以上が封印前の状況よ。
>i ＼ ､ | / .| |
/´ | ＼ ` ー-- | ./ | |
/ | i |.＼ ,, - | /ヽ .| .|
. i .| .| | //|` -､'' l / ヽヽ、 i i
l | | |// | i´|＿,,,,-l / / ヽ､ヽ i i
| | | |l .i .| ／!/ ｌ / / ＞-､ i i
| l li | .| |.／i i | l | /／ ／ ` ､ i i
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「『蛇身』の正体は高位マリード。これは当時本人が名乗っている記録があるわ。
| でも、日本じゃマリードなんて通じないわよね」
|
| マリードとは、イスラム教の精霊ジンの一種である。
| 精霊を総称してジンと呼び、その中でも高位の、あるいは悪辣なものをマリードと呼ぶ。
|
|「さっきの説明だと、マリードなイナミさんは中位悪魔ってこと？」
|「いい質問ね。奴は例外に含まれるわ」
|
| アリカの疑問に三四が頷く。
|
|「恐らく『蛇身』は自分でも高位のと言うあたり、かなり高位の存在ね。
| 天使でいうなら大天使、堕天使なら侯爵とかかしら」
|
| ヘブライの天使や悪魔（堕天使）も、大きなくくりの中の一種族だ。
| 『蛇身』はマリードでありながら、特別な名前を持つ大悪魔である可能性があった。
|
| いや、そうに違いないと三四は考える。
| でなければ、遠い異国で、いとも容易くその地の守護者を倒して回るなどできるはずがない。
|
| かなり高位の、力の入った分霊であると考えるのが妥当であった。
|
|「ちなみに当時から『ネクロノミコン』を要求していたらしいけれど、
| 誰も名前も聞いたことが無かったみたいね」
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／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ.
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ｊ:::::::::/_/_!::､:::l_ヽ_|_!::::::::::l
/!:::::/ ﾘ _ハ!ヽ:|__ﾏ ｌ::::::::|｀
′::::{￣V￣ ￣V￣ ﾘハ!
八! !′ では蒼星石さん。
ﾄ ＿ ノ 『蛇身』との接触についてをお願いいたします。
≧ｒ __ ィ
人≧ｙ ｒｲ人
{__ ヘ_７ ｀ヽ
ｒ ´ T ＼
ｲ ! !
! | ハ
ｌ |! { ! {
} ヽ＼ |! ｊ |
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| 封印前の情報は十分だ。東田に促され、蒼星石が口を開く。
|
|「先月の満月の七時前、僕とアリカ、そして後述の『傾国』の三人は、
| 『傾国』から得た情報でキオの祖父が経営する会社にある『超能力開発機関』に行った。
|
| 『蛇身』の攻撃を受けるという予定があり、『先生』からの情報を聞く限り、
| 『蛇身』とは対話の余地があると判断したからだ」
|
| ここまで話して、眉をひそめたのはミストだった。
|
|「蒼星石さんは、その『傾国』とかいう悪魔のタレコミを信じたんですか？」
|「『傾国』は、金銭で物や情報を取引する悪魔だ。彼女の情報は極めてフェアであると判断した」
|
| 納得した振りをするミスト。
| 口が達者で、人間をだまして思いのままに操る悪魔などごまんといる。
|
| 例えば、ニャルラトホテプとか。
|
|「なんにせよ、『傾国』の情報は正しく、『蛇身』は『超能力開発機関』似殴り込みをかけてきたよ」
|「一応聞くけど、結界とかは？」
|「パンチ一発でＫＯだったよ」
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『蛇身』に尾行とやらに→『蛇身』の尾行に
か？
【取引を公正に行う】【裏切った場合のみ、協力な権能を発揮する】
とかのスタンドのような条件がある気がするの
支払うべき対価が罪罰から財産に変わっただけで
連絡せずに申し訳ありません。
! ,. -‐── ────┴ ─‐┐
', ,. '´ /
> ´ /
く . -‐=＝＝＝＝= ー-く
＼ ,. . :"´: : : : : : : : : : : : : : l: : : : : : :ヽ
>'´ .: .: .: .: .: .: .: .: .: .: ./ハ: :.l: :!: : : : : :l
i: : : .: : . :. {: : : : : : : :./ /ﾊ: l.: !: : : : : :}
|: : |: :.|: : : |::.:.:.:.:.:.｀メ､ // V: :l: : : l : ;′
|: : |: :.|: : : |::|: : :∠イ_〃＞ Vく: :./}:/
＼|: :.|: : : |:.|: : :`弋夕ｿﾉ｀ tり:.:/ l/ 正確には、物理的・魔法的な障壁があったらしいのだけれど、
＼|ヽ: :|.:|: : : :.i.:|￣ ヽjⅣ 『蛇身』が刀でシャッターを切り開いた時に、
}ヽ仆ヽ: : : :lN _ _／: :l ついでに破壊されたみたいだった。
／￣￣｀`ヽ､: レ'´￣｀): : : :l
／ V `ー ﾕヽ.:.|
,ん子こ`ヽ | ﾕ､l./
,ん'´: : : : `ヽヽ | l ﾊ'′
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| アリカの言葉の曖昧さを、蒼星石が正確にする。
| 『血族』の無様を鼻で笑う凛を、キオが敵意に満ちた目で睨んだ。
|
|「『蛇身』は大胆不敵で傲慢な口調でしたが、その実は慎重で油断を見せませんでした。
| 封印された過去から、『血族』を侮らなくなったか、本来の性格かは不明です。
|
| こちらの交渉に対して、常に不信感を露わにし、出方次第では容赦をしないという姿勢を崩しませんでした。
| しかし、『傾国』の情報で『ネクロノミコン』が『血族』には無いことを伝えると納得しました」
|
| そう、『蛇身』が納得したのは『傾国』の力だった。
| 彼女は、蒼星石たち『血族』を一切信じようとしなかった。
|
| 嘘情報に惑わされる気はないと、最初から疑ってかかって来た。
|
|「はっきり言って、かなり危険な行為だったね。
| しかし高位悪魔と戦闘を避け、説得で事を収めたのをボクは高く評価しているよ」
|
| キュゥベぇが珍しく蒼星石を誉めた。
| 無駄な戦闘や被害を抑えた。それは評価に値するだろう。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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j､ﾉ ,.--､r‐
f:.:/ ,. ‐!ー'´￣
,.-=＝＝=､、 ﾉ!′ ,.ｲ‐'´
／ |l __ {:.} _f_ﾉ
／ __,r‐'.:.:.:｀ヾ⌒丶f:ﾉ
/ ,r／.:.:.:.､:.:.､:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:＼､
/ //.:.:./.:.|:.:ヽ:.:ヽ､:.:.:.!:.:.:ヽ:.ヽ＼
/ //:/.:ﾊ.:.:.!＼l＼|__ヽ:|＼:.:.|:.:.:l:.:|', あたしたちはイナミさんに、
i |:|:.ﾄ､:|-ヽ| ´,r==､｀ ヽ|:.:.:|:.:!ﾊ 『ネクロノミコン』を用意するから
| |:.!:|´ ,r=､ fﾊ ヽ }:.:./:/:/| 暴れないでくださいってお願いしたよ。
＼ ヽN / fﾊ ﾋﾘ /,.ｨ=rく/l
ﾊ. ﾋﾘ , , ´// .ﾉ }/
,.-‐{‐! , , ､ /l:| └/
/ /ハ{ r‐┐ ! ヾ／ ,、
{ |:| ＼ ﾞｰ' ,.ｲヽ /: :ヽ
ヽ ヾ=- ｀ 、 ,. '´ |=彳: ／:￣｀
＿＿｀_丁´ l／／: : : : : :
/ : : : : /: ﾊ ／: : l: : : : : : : :
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 蒼星石としてはこの時、大荒れのアラミタマを鎮める様な気分であった。
| 生贄か供物を以て、カミに暴れるのをやめてもらう。
|
| 『蛇身』はやたらと殺戮や血を求める類の悪魔ではなかったので、
| 『血族』としても闘わないで済むならそれで十分だという判断であった。
|
|「『蛇身』は一週間の期限を定め、その間は人間に一切危害を加えないという約束をしました。
| しかし、約束を破った場合は我々の首を貰うと」
|
| ケンシロウが険呑な気配を放った。同時に、ジャギから怒りの波動が立ち上る。
| 蒼星石が、首を。そう聞いて、二人の男は静かに立っていられなくなったのだ。
|
|「見苦しいわよ、落ち着きなさい。何とかなったんでしょ？
| 約束よりも、もう一週間過ぎてるんだし」
|
| 霊夢が肩をすくめて笑う。だがその眼は蒼星石に固定されていた。
| 大人ぶって問題ないと余裕を見せたが、実は心配なのだろう。
|
|「保留中だよ。『ネクロノミコン』入手に時間がかかることを信じてもらった」
|「どうやって？」
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.,、
//.＼
//＼ , - ==イ ⌒ ヽ l
///, '::::,-////// Y::::::::::::::::ヽﾄ.
, ソ|//::::::::ヾヽ///////l. ::.. .:::::. ::ヽ/
ソ´フ::::ヽ::ヽ:::ヽ::::＼///´∧:＼::::...: ::.＼
／///:/::::＼ヽ::＼::＼:∠//ﾉ ∧::: ＼;;;:::::::::＼
..／////.::l::::ヽ;;;;ヽ::＼＼::＼::》 ///∨ヾ;;;＼;;;::::::::::ﾊ
.￣＼/l |:::|:;;;;.l´｀ヽ＼ ＼＼ヽ｀T弋´ Y;;;;＼ヽ:::::::::l:l
//.|;.|:;;|;:;.;;ﾄ、 ﾚ ﾍ, -=ヤlﾘ ｨ j;;;;;;;;;|ヽ|:::::::::|:| 『蛇身』は『血族』に不信感があるんでしょう？
/／|::|;:ヽ;;;;l- ﾘ 弋ｲ乂 リ / , ';;;;;;;;;| /:::::::::l;;|
ヾヽ;;＼弋z ｀´ ィｌ;;;;;;;;;;;| /.:::::::::.// それがどうやれば約束を破って
ヾ|;;ヽ;ヾﾗ l / .|;|;;;;;;;;;;;ﾚ:::::::::././ 期限延長なんて許してくれるの？
|;;;;;;|;;;;ﾍ ヽ __ .／ .|;|;;;;;;／:::::/::://
|;:;;;.l;;;;;|;;;,＞ _ イ ,. ﾚ／.:::;;;／::::l/
/;;;;/;;;;;ﾘ;;;;;;;;;;;;, jr -=彡／::;;;;.／,::::／
/:::;:/;;;;;/l;;;;;;;;;;;;;j ,イ;;;;;;;／ , ＜;;;ヽ
. /:::::/;;;／ム::㌢´ ,イ;;;;;;;.ィ＜´ ｀ ヽ、＼
...／::／／ '´ イ;;;彡'´ ヽ;;;;;ヽ 、
／::.／／/ ィ´;;;メ ／ lヾ、;;;;;｀ヽ 、
:::::/／ / ,' ／;;:;;;;/ ｲ ／ |;;:::＼` マ;;;｀ヽ、
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 凛の言い分は至極もっとも。蒼星石はキオを一瞥した。
|
|「その説明はキオ様に頼みましょう。
| まず前提として、キオ様は最初の遭遇時にその場にいました」
|
| 満月の晩に、攻め込んできた『蛇身』と最初に出会ったのが蒼星石とアリカ、そしてキオだった。
|
|「キオ様は、最初の約束に関して異議を申し立てました」
|「蒼星石さんや夢宮さんは命をかけるのに、イナミさんは口約束だけ、それってフェアじゃないですよ」
|
| キオの極めつけの正論に、複数の苦笑いが浮かぶ。
| 『蛇身』側としては、約束は方便に近い。その場で暴れないことこそが一番大事なはずだ。
|
|「何度か皆の前でも説明しましたが、僕はイナミさんに勝手について行ったので、
| 蒼星石さんたちには何の非も有りません！」
|
| 凛やジャギらから、同情的な視線が蒼星石に投げかけられた。
| キオ自身が何と言おうと、問題は周囲の大人である。
|
| フリット・アスノの面倒くささは内外に知れ渡るほどである。
| 凛も『弓兵』も、蒼星石たちがキオのせいで面倒事を背負わされたのを察した。
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_ ｡ -‐ ‐ｭ,
,.｡ '":::::::::::::::::::::::::::::`丶
.イ:::::::::::::::､::::::::::::::::ヽ,:::::::::::＼
.ｨ:::::::::::::::‐- ｡.ヽ,::::::::::::::',::::::::::::::ﾍ
/:::::::i:::::::ヽ,_:::::::::::'ｰx､:::::::::i::::::::::::::::::ﾑ
,'ｲ:::::ｿ＼:::::ﾍ ア＞=ｬ, ﾍ:::::ﾘ::::::::::::::::::::ﾊ 一週間、僕はイナミさんたちと
}:::::::ﾘ `'＜ﾍ仏ハﾗ′ `ﾍ::::::::::::::::::::::::i! 寝食を共にしました。
V ﾑ'¨＞､ ヾ ソ Ⅵ.ィ:｀Ⅵ::::ﾘ
ヽハ代ﾘ 〉ﾍ.i ﾍ l
`i ヽ ､ .ｲ ソ:::::::::::`ヽ,
i _＿ l{｀´::::::::::::::::::::::l
' . ﾞ ` .ｨ {:::::::::::::::::::::::::::i
/ヽ. . '" ｲｱ ﾉﾍ. ヘ ノ｀
∨i:::ヽ. _ .イ .ィ´ ﾍノ ＞'ｰ‐──一ｭ､
∨ヽ,ｨ¨ 〉 jﾊ ／ ＞'´ ￣ ￣｀丶,
ハ ／＞' ヽ. / ／ ﾑ
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|「約束があるので、詳しい場所は明かせませんが、彼女らの隠れ家です。
| 一緒にいたのはイナミさん、ターニャさん、ちひろさん」
|
|「ターニャは『万魔』の、ちひろは『傾国』の名前です」
|
| 蒼星石が、念のために固有名詞を補った。
| 一週間、高位悪魔に囲まれた生活。
|
| 元々『教会』の人間であるルカが露骨に顔をしかめた。
| 他の面々も、複雑な表情である。
|
|「キオって、フリット・アスノの孫だよね」
|「それがなんです？」
|
| 突っかかるような杏子の質問に、キオは張りあうように答えた。
|
|「悪魔は皆殺し！ って感じじゃないんだ」
|「……」
|
| キオの祖父が度を越した悪魔排斥主義者なのは有名だ。
| だが、それを正面切って指摘する度胸ある人間はそういない。
|
| 杏子に関しては、若さがそれを後押しした。
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.｡= 二 ￣ 二ﾆｭ，
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j::::′::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
}::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
Ⅵ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
Yﾍiy::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ 僕はイナミさんたちと会い、
i ｿ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ 悪魔のすべてが悪ではないと知りました。
y':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ム
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ヽ人::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,ﾍ {
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| 祖父だけを信じていた少年時代は終わり。
| 他の見方から、本当は何を信じればいいのか、今のキオは手探りで探す最中だ。
|
|「その手始めに、僕はイナミさんと約束を守りたい。ターニャさんを助けたい」
|「後者に関しては少し待ってください」
|
| 『万魔』の件はあとでじっくりと。今は『蛇身』だ。
|
|「『蛇身』はキオ様を弟子のように扱い、哲学的な疑問を投げかけ、
| 体術を習わせ、超能力を鍛えました」
|「え？ そうなんですか？」
|
| 蒼星石の言葉に誰よりも驚いたのがキオであった。
| そして、すぐに納得したように頷く。自分とイナミの関係が師弟とは、今まで考えたことも無かったのだろう。
|
|「悪魔に関して、人間の悪に関して。何が正しいか。何が悪いか。
| そもそも悪いとは何か。ならばどうすればいいか。そんな問答をして時間を潰しました。
|
| 意見が合わずに、殴り合いのケンカはしょっちゅうでした。
| と言っても、イナミさんは手加減をしていました。
|
| それと、簡単な賭けをしては、お互いを制限しあいました。
| 僕は目隠しや拘束をされた状態で日々を過ごしました」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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お大事にー
『超能力開発機関』に殴り込み
＿ ＿＿ /::::|
ｨ=､----v'::::;⊥--ﾍ:::::::::::ヾ／;＞―‐､
/ :}｀￣:＞ '´ メ |:::::＼::|＾￣⌒ヽ .:.ヽ
. / ﾄ､／／ '´ ＼__:::::| :. . ::|
. ｜ i/ ./ .// ,､}r、 /:∧::.. :. ::|
. | / ./ :/.;' ﾄﾍi'ﾍ :| .|. ＼::ﾍ:::. ::. :|
ヽ. | .:| |:| :|:| ! .|:| :| || |:.|::::| ::. :::: .:| ちょっとそれ！ 捕虜虐待じゃない！
| | | |:| :||!:.:|. |:| :|:.小::j!:ﾊ;ﾊ :: :.:::.i. .:| 憲兵さん！ 憲兵さんはどこ！！
| ヽ:|ﾊﾊ:||＼! ,_jﾊィ升:jﾒﾊ/Yﾞ| :: :::::'. |
. | ｀ヽli. '＝- ┴`-' /j/ﾊ| ::: ::' : :|
. |!: | :|:!. , u ,ﾆ.ｲ i:| :::.,' : .:| ／〉
ﾊ: | /i:＼. ｬｰ-、 / |::ﾉ.:.ﾘ:::/ .:.::/ /./7
/ :| ﾚｧ:､＿ ＞､ー ',. イ ,ﾉ7!_;j／. .::::i| /-'./―;、
. / ﾚ' { ハ｢ ,／ ／ ..: .:::::/| | 〈:r! ﾉ,ﾊ
/ ／ 〈 ! ￣ ／ .: .::::/: | _|. } ^ドr'′
／ .::｜ ..::: o:i^!.. ,.ｲ .: ＿_;人_:| _ﾉ `ー-::イ
_,/ :. :.|..:: <ヽﾉ/ o￣ | : / ____〉 厂L ＿_ _,人
. ／ ;､_/ //ヽﾆ> |...: ｜ .／ ｝ | :| 〉 〉
＼ __/::/ :// __r' . :_丿/ { | :| :/ /
|ヽ ー '´ {./ :`′ /:r一'´ / ヽ,j ｜ .' /
| :. .:.:.{:... . . .:. : ヽ{ く / :| /
ヽ :.:.:.:. ヽ:.:.:.:.:.:.. :: :.:.:ﾚ1: :. / |
＼ |.:.:.:.:.:.. :.:. . : :.:i:::::;ﾊ: :.:. / |
|:ヽ. | .:.:.:.. :.:.:.:.:. . . .:.:.:.:.:.:i,:ｲ:::::i:.:.:.:./ /
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|「落ち着いてください奥さん。同様の訓練を、ニンジャも行う」
|
| 錯乱する凛を、ロストスキルが奥ゆかしくなだめた。
| ニンジャは感覚を鋭くするために、他の感覚を閉じる訓練をするものなのだ。
|
|「それに僕は超能力者で、見えない手を使えます。
| それまでは細かい作業や並行作業はできなかったんですが、今はプルトップを開けながらリフティングとかもできます」
|
| 本来の手足と同様のことができるという意味だが、本来の手足でも、器用な人なら軽くこなすだろう。
| そんな胡乱な視線を集めていると気付いたのか、キオは慌てて両手を振った。
|
|「手、足、そして見えない手を別のことに使えます。
| 見えない手は全部、左手ぐらいには器用なんですよ」
|
| ものは掴めるし力加減も可能だが、文字を書いたり箸を使うのは難しいということか。
| やる夫はその分かりやすい不器用さの指針に唸った。
|
|「左手を右手同様に扱う訓練は？」
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Ⅵ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
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|「今日からやるべきだ。右手を縛って左手で日常の作業をこなすといい」
|
| ロストスキルのインストラクションに、キオは一瞬虚を突かれた様子で目を見開き、
| すぐにふっと微笑んだ。
|
|「おい、カナリ・シツレイだぜ？」
|「ああ！ ごめんなさい！」
|
| ジャギの一睨みに、キオは弾かれたように頭を下げた。
|
|「イナミさんにも言われていたのを思い出しました。時々やってるんですけど、じいちゃんがうるさくて」
|
| キオの祖父フリットは、反悪魔の急先鋒だ。当然いい顔はしないだろう。
| それどころか禁止するし、彼の目の届くところで行った場合は厳罰を下すだろう。
|
|「すごく実践的で、役立つのは確かなんですけれど」
|「フリット・アスノは超能力を作り出し、しかも成長方法まで確立した天才でしょう？」
|
| 凛が、不思議そうに口を挟んだ。
| 彼女の言い分は事実だ。フリット・アスノはそういう点で前代未聞の天才と言える。
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| なにしろ彼は、歴史上類を見ない、新し異能を開発した存在なのだ。
| しかも、そこには何の神族も関係しない。『人間の隠された才能』という分野からの異能である。
|
| 異能と信仰は、極めて密接に関係する。
| 基本的な異能や魔術は、信仰から成り立っているといっても間違ってはいないほどだ。
|
| だがそこに一石を投じたのがフリット・アスノである。
| そして彼は、世界中に後ろ指をさされ嗤われながらも成し遂げた。
|
| 不撓不屈の大天才である。
|
|「はっきり言って、フリットのやり方が正しいと考えるのが普通よね」
|
| 先駆者であり、いまだ最強の超能力者であるフリット・アスノ。
| 彼異常に超能力を知る者はいない。である以上、彼のやり方は常に正しいと考えるべきだ。
|
|「いや、フリット・アスノは『開花』技術に関してなら最高の教育者だ。
| だがその先の『訓練』はずぶの素人だよ。
|
| 彼の知己の十人が十人頷く話だけれど、フリット・アスノは天才肌だ。
| 自分が感覚で行えることを他人に説明する際のは上手くない」
|
| キュゥベぇが口を挟んだ。少し、ため息交じりの言い草である。
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/ { ／ | i ＿＿＿
,ｲ ヽ / ﾄ-'― ー--＜二 ￣｀ ､
ｌ i ､＿ ｀ー ﾆ´ └ ､ ￣｀ ､ 丶
! 'ﾊ＼ ￣｀ー- ´ , -c ヽ ｀ ､ ヽ 具体的に言おう。
', ゝ' ヽ ヽ-' ヽ ｀ ､
ゝ´ ｊ. , -c } ヽ ｀ー--‐ 箸を使って豆を掴む際、
,ィ ,ｲ ヽ-' __ﾉ ｊ ＼ フリットはこう言うだろう。
. / ｊ ｀ｰ' ﾉ ＼ : : :
/ ハ _ ＜＿ ヽ : : : : 「箸で豆の重心、
. / ! ヽ ヽ ￣￣｀ ､ ｀ヽ : : : : 円の中心の対角を掴むんだ」
/ ! ｀二ー┐ ヽ ヽ ｀ー . : : : :
/ l (￣ ｀´ ヽ ー : : : : :
. i ! ￣｀ ー --┐ i ＼ ', ￣￣
l. . l ', j ヽ }
. l: : : . . :l ', l / ヽ /
i : : : : : . . : : : : i ,ｲ ヽ l i ヽ､＿＿ ノ ／
!: : : : : : : : : : : : i i ヽ j ＼ ／
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| やる夫をはじめ、全員がそれを想像した。
| まるくて滑りやすい物を、箸で掴むのはコツがいる。
|
| 各自が無意識に行うそのコツを上手に言語化しているとやる夫は判断した。
|
|「それのどこがいけないんですか？」
|「うん、今の説明は間違っていないと思うかい？」
|
| やる夫が言う前に、キオがキュウベェに噛みついた。
|
|「もしも、もしもだよキオ・アスノ。
| 君がまだ、箸の持ち方もおぼつかないとしたら？ それでも正しいと思うかい？」
|
| キュゥベぇの言葉にキオは唖然とした。
| そして、納得いったように深く頷く。誰よりもフリットに近しいのがキオだ。
|
|「まずフリットは左手で箸を持つコツや、持ち方を説明するべきなんだ。
| あるいは箸を使うための補助具や子供箸の用意をね」
|
|「あるいは、訓練について知識ある誰かに頼るべきなのだろう。
| すべてが初めての訳ではない。よく似た技術ぐらいいくらでもある」
|
| フリットの頑なさが、彼の偉大さを打ち消しているのだ。
| やる夫は少しだけその老人を哀れに思った。
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_,.ィ'三三二ﾆ二三ミー ､、
,ｨ'´ィィィィ彡三ﾆｴﾆ二三ミミヽ
,ｨf//ｨ'ｨ'ｨ'ｨ'／ィｼ' ｀`ヾヽﾐﾐﾐヽﾐﾐヽ
ノｨ'//,'ｲ///,ｲ!lj/ l|lﾄﾐﾐﾐtゝ､ミ'、
//ｲ{|{lh{lilililil|l| |i,' li八ﾐヾ｀ヽヽﾐ':、
ﾊ{｛{N､',',',､{（(li| |l ,.........||＿!l|l|lﾄﾄゝﾐヽ丶、 まあ、フリットへの不満はみんなたくさんあるから
!|l{lﾄi､',ﾐﾐﾐ','ji|l|l!:||:.i /:.:.,:'ｨﾘftiﾐkjljljlj|j|トミミミ≧ｭ､、 はじめたら悪口大会で夜が明けちゃうよ。
､ヾミﾐヽヽ',',}｝l|:.||: | ,':.:.: ｀`lF彡ﾄ'ﾘl|l|l|l|lﾄ､liトミ三ﾐﾐヽ
ハ',',}｝}iﾄＮ|}|ljj|:.|! !:.:.. |l ｛l|l{lﾘﾊﾄl|l|､}〉| ｀ヾヽヽ
. ﾊﾘﾄﾐ',W八ﾘﾉﾂ'.:.ﾘ ,..、 |l |ﾄﾄWl|l|l|lNjljl| ヾｿ}
. {{{{｛lﾘﾊﾘllﾂﾉ/.:.:/: '―' '、.:ﾘト､{｛､',NNhﾄ、 ﾉﾘ′
,）}Ｗ/}｝ﾘﾉ,ｲ:,､'＿＿＿＿＿,.ﾒｨﾘj}j＞､{（(NﾄV、 ,ｲjﾘ
. ｲﾉﾘ//ﾊ}l//ｲ/｀ ―----― ´ /ﾘﾉﾊﾉﾊﾄﾐヾミﾐﾐゝ､/ﾉ/
//ｲﾉﾊﾘﾉｲﾉﾄi{、｀:.:.‐;,-;,‐.:.:´ ｲﾂﾉ八ﾄﾐﾐト｀ヾヽ、ﾐ｛{{/ー- 、
｛{{i{i{i{(({i{i{i|l|l|ﾘﾊﾄi､,ｲi{,,,}iﾄ､ｨﾂ{fﾘｲ ﾊliliﾄミヾヽ',iﾄﾐヾWト､ ヽ
,}）}）}lﾄiﾄl|l|l|l|| `ﾂﾉﾘ{｛{M}｝lﾘｨfｲヾ! LlLlレ‐=ﾐ)}lト}|l|liヾ'、ヽ、
､__,.ノｨﾒｲﾄ'､',',lililili|::..'´,ﾝiﾒ!ﾙｲl/lｲ八`/ {´￣/ Ｗ!,ﾘﾘﾊ ヾﾐ､i}
｀ﾆ彡'´ 'ﾘ ヾ',lNi|l:.:.:、 ´jﾂ ヾ' / ,':: '、::/ ヾﾐ彡小、_, ﾘ
, - ､_,. -'´ ／ /| ヾ',W :. / ' ,':: ∨ X` ,ﾉ '′
‐ '´ ／ ,':| ',iﾘ .::ﾉ /::: / ∧`ー-、
／ /:::| }ﾄ、 / ,':::: / ∧､ 丶､__
／ /::::::| ,ノﾉヾ、ヽ /:: ／／:｀`丶、 ∧ヽ、
／ /.:.:.:.:l ,ｨﾂ′ 丶、 ノ::./ /:::::::::::::::::::::`丶、 ∧ ヽ、
／ , ':. -‐|=彡' /^ヽヽ .:.:. /ノ:::: 〈丶、ﾍ ＼
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| そもそもまだ日が沈んでいない。
| しかし、シックスが言うと冗談には聞こえない。
|
| いや、狂人の言うことだ。冗談のつもりはないのだろう。
|
|「とにかくその話の続きを教えてよ。ええと？
| 『高位女悪魔に喧嘩売ったら拉致されて、美女悪魔ばかり三人とひとつ屋根の下で暮らすことになった件』
|
| だっけ？ うん。そうだよね」
|「おいキオ、否定しないとそういうことにされるぞ！」
|
| 困惑し、まごつくキオに対して、慎二が必要以上に不機嫌に苛立ちをぶつけた。
| 字面だけ追うと羨ましいとかそういう話ではなく、単純に心配しているのだが、それを表に出したくないのだ。
|
|「わーキオくん、ふけつ！」「ど、どこまで行ったの……ｺﾞｸﾘ」
|「女悪魔三柱vsショタ一人……」「え？ 何？ あいつらセックスできるタイプ？」
|
| アリカ、凛、ルカ、三四が勝手なことを言い出す。姦しいどころの話ではない。
|
|「マリードである『蛇身』は普通にできると思うけど、問題は『万魔』と『傾国』よね。
| 結構重要な情報だから、本当に交渉したなら詳しく知りたいんだけど」
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同族だけか他種族も行けるかどうかわからんけど同格のが増えるとかマジやばい
以上？
/ y y ／ / Y
./ ! ! / ｲ / ! !
! .! ! ./ / ,! / ! ! !
! ! ! / ／ / ﾊ ! ! !
| | ! / , ／ / ./ ! ! | .! |
| | .!/ _ ,, ∠, / .／ ﾍ.|! .! .! |
| | .| ' "〆 ゛ /／ ' '' ト 、!.! ! ! !
| | .| ,／=＝＝t、 ／ ,ｨｪ,,_ .! ! ! / .!
! .! <.K ﾚ:.,ii,.:ﾘ ／ ´て ﾐc㍉、',! / .!
! ! !゜‐ゝ‐ ′ ゝ ',ﾂ ／ ! / ! 特に『傾国』ね。
| ! ! ゜ / / ! あいつは概念系の悪魔だと思っていたから
| λ .!. | / ./ ! 肉はあってもイメージでしょう？
| ! ! ,! /〆 | !
| ! ! !、 t――ｯ / ! | ! もしもセックス可能だとしたら、
| ! ! ! ' 、 , " ! ! ! そこから本体情報を知る足掛かりになるかもしれないわ。
| ! .! ! ゛ ,, , " ! ∧!
! ,! ! ! 、 '' -ヒ、 ! ! |!
! ! .! ! ゛ト ,, .| Ｙ / ! | |
.! ,! ! ! .∧ ∧ ! .! | !
/ ／ ヽ ! /.! V !／ヽ ! ! !
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|「ご、ごごご、ごめんなさい！！」
|
| タコのように真っ赤になって、キオは大声で謝った。
| その状態から、彼が三柱の『封印像』悪魔とそう言った交渉をしていないという事実が窺えた。
|
|「でもさ、お金払えば性交渉できそうだお」
|「むむ、でもその場合大切なのは『お金を払ったから可能になったのか否か』よね」
|
| 本気で考え込む三四。それを余所に、蒼星石がケンシロウに視線を向ける。
| 熱い視線に促され、ケンシロウはゆっくりと口を開いた。
|
|「満月の戦いで、オレの班は合衆国大使館を襲撃した『騎兵』を撃退した」
|「ああ、『騎兵』は聖書に出てくる黙示録の四騎士の一柱『レッドライダー』よ」
|
| 脇から注釈を入れる三四。
| 『傾国』と性行為については悩んでも分からないので棚上げしたようだ。
|
|「オレたちは『武僧』のアンデルセン氏らと肩を並べ、奴を撃退した」
|
| 具体的には、アンデルセンが張った結界でレッドライダーを束縛。
| 正面からケンシロウが打ち合い、叩きのめしたのだという。
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､ ,r("' "､､､ "''"t;;;ヽ匁､､ｰ､､)）〉;;;;;;;;三彡"
_ｿ"从 了ミミi ,,｀ヽ､;;;;ヽ､､､､ｰヽ;;､''''-､ノt,,,,,
it（ （;;ﾉ （;;;;|､t シヽ;;;;ヽ､､）､ ヽ;;;;;;;jjj'|ii､"""ノ
､,,t,｀ﾚ 从ii|ヽ､ｰ''"iii､ヽ;;;;;ﾘ|;;;;从i ､､､从､､t;;;;ヽ'ｰ､ヽ
メ''""/;;;;;从,,､､ ､ i;i||j;;;;r"t;;;（ ｿ､t;;;;ヽ |;;;;;tヽミ ､）,
､ゝｲ |;;;;ij|从;;;;ヽ|;;i |､",,,,iiii､,,,,､i､ｿi t;;;;|ヽ;;;;;ヽ､ ヽ''''"
t､,女 t（ツ||i;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;";;;;;;;;;;;;;;;;;;;|ﾂ;;;i､､､i;､~'-､;;;;;､)）
､､ノ（iﾂM;;;;|;;;;;;;;;;;;ii;;;;|i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､;;;;;;;|;;;i |;;;t'ヽ三彡
// り";;;;;;;;;;;;;iヽ;;;;;;;;tiii;;;;;;;;i|;||;;;;ii;;;;itｿ;;;;ﾘ;;;;"ヽ;;;;;ir'"
ヽﾂｷ;;;;;;;;;;;;;;;;;;ミ人､､､ﾐ;;;;;;;;tヽ､;;ヽ二ﾘ;-､t;;;;;;;ﾚ;;;;|''"
ｰ7;;i|､;;;;;;r､ﾐr'";;;;;;;;;;;;;;;~~' ﾘヽ|i";;;;;;;;;;;;;;;シi;;;;;;､i|）
ﾘ;;;;||t;;;;〈 ﾐ 彡=ﾓ丐ｧ､r;;; "ﾘ､zﾓﾁﾃzｰ' ﾘ;;;;ii|j
（;;|;;;ヽ､;;;;i ｀~ '''' "::: |~::''-￣ｰ ﾘ; ｲ
ﾌ;;;;;ヽ;;;i, "" | ,'r';;;i
,r''ヽ ｀（;;;;;;;;i~t ,,,,, j ,, /"彡|､ 奴は強敵だった。
. ii i t;|;;;;;i ::t ヽ:::｀" / {{ヽt ヽ
. i ﾘ 't;;;;i :ヽ ,,､-_~-,, /:: j ﾉ ;;ﾘ''ヽ､
i '"| r'~ヽ, ヽ､i ::ヽ "''ニﾆ" ,':: y" "ﾉﾉ ﾌ
ﾘ i ,,/ i''''""￣￣￣＞'''"~t |i ::ヽ, ''~~~""" /:::::､-'" ,r"／zr'
_,/ :::::"i" / '-､ノ,,,,,,､ﾆ､ ,､-'";;;r''"::::入 ii;;::::::::ヽ, /::: '" , ,r､" /"／""
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| 北斗拳士の厳かな物言いは、万の言葉を並べるよりも敵の実力を如実に語っていた。
|
| そもそもレッドライダーは、概念的悪魔である。
| 彼女は切っ先から馬の尾まで戦争そのものの概念でできている。
|
| その能力は大まかに分けて二つ。
| 『戦争の恐怖と狂気の伝染』と『破壊できないものはないという結果』である。
|
| レッドライダーが解放されたのは、運よく合衆国大使館前であった。
| 何がどう運がいいのか。
|
| 幸運にも、合衆国大使館を守る私兵たちは戦闘経験者で、レッドライダーという明確な敵が見えていた。
| 場所が場所。例えば暴徒が更新していた渋谷であったならば、大惨事はまのがれなかっただろう。
|
| なにしろ、誰が敵で誰が味方か分からない。
| 敵がどこにいて、どこから攻撃してくるか分からない。
|
| そんな状況で、すべてに恐怖した人間のとる道は二つだ。
| 怯えて逃げるか、震えながら障害を排除するか。
|
| そして、暴動によって気の大きくなった人間は後者を選ぶ。
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r‐ｧ ∧ ﾞi`i ､_
rｸ / .!_,､-'''i.:|''""i }‐-､i ﾞi -,.､
// ,r〈:.. 〉 .l::| ヽ/ 〈 ／ﾞ> 〉
ヽ;:｀7 V `' ,.. -;;ヽﾍ=＼,､__
／ {ミﾐシﾞ ＼:::＼ ﾞヽ､ せんそうは……やめよー……
| ____,,, ,∠,, -‐''''''ヽ､ ヽ ﾟ `ヾ:i i | ､__
/__,ゝ=し〒ｸi`i､;;;;;;;;::: :::i''` ::::ﾞ| | | ＼｀ﾞ''- ､
//;;;;::ｰl;|;;l:lヾﾐ:､く;;;;;:::::. .:ﾉ:::il 0:::| | |､. ﾞi i l､
,..-ｲ''" ﾞi,l;;;:::. /〈;l::iヽ:}ヽ ￣ﾞ''ー‐'" `''- ､,,,......:::::::::ﾉ | |､ヽ,. | | ﾞi,ﾞヽ､
,､-'" ／ .ﾉ{;;／lゞ;べ'ﾞ/ ,,,,,,_ ,..--／￣｀フﾞ ／ヽ､|;i i|. | | .!ﾞi l,
| i i´_,.. -''"／ | i`"´_｀´__ _ lミミﾐi rミi;| | ／ ／｀ﾞ''-､／ _| | | l,
/ l | l r'ﾞ />-ｨ'r'i´Y Y＿l, Y｀Y'Tヽ;､||ミﾐ/ ﾚ' ／ミ三r'" ／ ` ,ﾉ ﾞ! l,
/ l .! | | | .| i |::ﾚ'T´i￣l | Y´ﾞT''TヽLl/ﾐ// ヽ. ／;;ﾐ;ミ三|''" ／／ヽ l
! l `'ヽl レ'⌒`| | |:::l､ﾉ`'''''^'''''^''^''''^''^ｰﾞr'::::// `〈三ミﾐ}}三ﾞ､ ,.イﾞi´ ,.イ′
{'":::::ヽ､ `'-､. i :|_|__|:::| ` ''" ￣￣ :::::::::/ ﾞヽ､ﾐﾐ|,三,,ヽﾆ|,,,,,,l,,,,／rス
ﾞヽ､::::::::ﾞヽ､ | :l |;:;:;:;:;:;:} __,,,.-------==／ __,,,､-‐'''" -──=≡三三三｀ﾞ'''ヽ
ﾞヽ､::::.:.:./:. l,l,;:;:;:;:;:`ｰ''";:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;／ ,,､-‐''"´ `＝三三 ﾞ､
/ヾ;:/::::: ヾ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:／ _,,.-| ｀ﾞ''- ､
/ :::::: ヾ;;､;:;:;:;:;:;:;:;:_,..-'"__,,､-‐'",､==|
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| なお、本人の本来の性質はアポカリプスである。
| そして、世界中に勘違いされているが、アポカリプスは単なる世界の終わりではない。
|
| アポカリプスは『隠された真実の暴露』である。
| 人々が目を逸らし、否認してきた事実を眼前に突き付ける行為。
|
| 今まで知らなかった無知なる人々への啓蒙。
| 別の言い方をするならば、二度目の楽園追放である。
|
| レッドライダーら、黙示録の四騎士は、世界中の人々に誰がどのように死んでいるかを突き付ける存在である。
|
| ホワイトライダーは無能な為政者と、政治による死者を。
| ブラックライダーは飢餓による死者を。
| ペイルライダーは病による死者を。
|
| そしてレッドライダーは戦争による死者のリストを持ち、現在の世界がどれほどに傷ついているかを
| 人類に叩きつける存在なのであった。
|
| なお、『やる夫の気持ちは恋なのでしょうか』という中編がありましてね！
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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ミﾐゝミ ﾐミ＼ミミﾐ/
⌒ミ yミミ ミミミミゝ≧| その時の功績で、
､ ⌒ヽ、,ｲミミミ ミミミミＺミ| 『教会』日本支部が保管していた
ミ、ﾄﾐｚ､弋ミミミﾐ r=≠::::::::::| 『ネクロノミコン』を融通してもらえることになった。
ﾉ｝ヾミミ、ミミﾐ,r彡ノ＿::::::::|
//ミミミミﾐｚゝ{彡´/戉ノ.:::::::ヽ
｛｛ミミﾐ r=≠ 彳.:::::.... .:::＼ ,＿＿_／
)ルﾐz､´ r介j} .::::::::::.. .::::..}ノ彡ミミ
弋ﾐゝミ、 ´ | ＿ ) .:::.|彡´-三
￣ヽ≠、 ｀⌒ｔ'::::::＿ .:::.|彡 -三
＼ 〃´￣ .::::/ }:. -三／
Ｏ ＼ ' ミ::.. .::::/ :|::. ／
| ヽ ＼ ﾐzｲ／ |:: / ニ
| /⌒ヽ―< j:: / 三
イ / 三/ ヽ ゝ/ / ＿三
／厂 / 三/ ／⌒彳/／￣￣´
： ／ 三/／ /´r彡´
イ ： ,. -/ ＿-三/ / 彡
／厂 ／ 〈／＿_＞ ﾄ､＿＿＿_| ≠
. ： ／ ／ -三/ | 彡
. ／ ／ ―三{ | 彡
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「正確には、さらに来週行う『結社』撃滅作戦への参加が条件だね。
| ケンシロウを筆頭に、『血族』全体での支援を『教会』は要請している」
|
| ケンシロウの言を蒼星石が引き継いだ。
| でないと、すぐに『ネクロノミコン』が手に入ってしまいそうだったからだ。
|
|「『血族』内部でも意見が定まりきっていない部分があるのだけれど、
| 基本的に『蛇身』への対応はこれで締めの予定よ」
|
| 三四がキオを一瞥した。
| 『ネクロノミコン』を渡してお引き取り願う。
|
| もっとも平和的な解決だ。『蛇身』は強大な悪魔だ。戦わないに越したことはない。
| キオにとっては師に近い存在でもある。
|
| 少年のつぼみのように閉じた心を開花させた。
| 世界の本当の姿を見せた、暴露者。
| 祖父の下での安寧を破壊した、まさに蛇。知恵のリンゴを与えた誘惑者である。
|
| ……まあ、それはともかく三四がキオを見たのは、他でもない彼の祖父こそが、
| いかなる犠牲を払っても『蛇身』と交渉せずに撃破するべきだと叫ぶ本人だからである。
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∨三三三三三三三三三三ﾆ/
＿_ ｌﾆ＞‐ '´￣￣￣｀ ｰ＜三三/
〈三三二ﾆ―‐- ､ ＿＿＿ ｀ヽ|
∨三三三三三三三三三三三三二二ニ￢
ヽ三三二ニニﾆﾆニ二二三三三三三／
Ｙ´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:＼::.:｀ヽ::＜三／
. ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::､::.::.ヽ、::.｀、:l:T
｜::.::.::.フ７￢‐､ヾ､:＼>､:|-ﾍ::.::.}::!:|
{::.::／代了圷ﾐヽ. ＼行‐t予l:ﾉ/::|
!::.::.::.:| ゞ-'′ ＼ 辷ｼ '/:/::./ で、問題はその『ネクロノミコン』です。
|::.::.::.:ゝ , 厶ﾉ::.;′
ヽ.::.::l|ヽ、 r-､ ／::.::/
＼:ﾄ､:j＞ ､ _,.ィ:´::;:l:: /
ヽ ｀ ,.ｲ ｀¨´ ﾄ､ﾚ'|/ |:/
__,. '´＿＞v＜ ｀ヽ、′
┌イ ／／了,ﾊ＼＼ヽ ｀┬ｧ
／7 | { く／ノ/引ヽヽノﾉ | }-､
. /:.:.:.:{ | ｀ｰ'´//l弓| |｀ｰ′ | } :.:l
/:.:.:.:.:.{ | // ]弓ﾄ､ヽ |「 :.:.|
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| 蒼星石がため息交じりにその名を告げた。
| 凛と『弓兵』が、そしてやる夫とやらない夫が。
|
| 同じ人物に視線を向ける。
| 彼はようやく自分の出番が来たとばかりにゆるくウェーブした髪を掻き上げた。
|
| 皮肉っぽく、本人は格好いいと思い込んでいる角度で笑う。
| だが、外から見ればその笑みはまったく違うように見えていた。
|
| 弱い己を鼓舞するための、格好をつけてやせ我慢するための、笑いという鎧。
|
|「全員知っていると思うけど、改めて自己紹介させてもらおう。
| 僕の名は間桐慎二。『血族』『元老院』の一人、間桐臓硯の孫で、その後継者になる男さ」
|
| 無駄に偉そうに胸を張る慎二。
| 必要以上に高慢な物言いに苛立ったのか、霊夢が口を開く。
|
| だがそれを、ジャギが制した。
|
|「何よ」「黙って聞いてろ」
|
| 鉄仮面の男は、何かを感じ取ったのだ。見栄っ張りな張り子の虎の、精一杯の虚勢から。
|
|「間桐の家は先月の満月の晩、『万魔』の襲撃で一族郎党皆殺しになった」
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＞暴徒が更新
暴徒情報が新しくなって逝ってたのか（ｽｯﾄﾎﾞｹ
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/:::::::::::::::::::::::::::ゝ､
......::::{::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ::ヽ
〈:::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ミヽ
>;;:::::::::::::::ヽ:::::ヾ::::::|ﾐ::::::::::::::::::::ヽ､ 生存者はじいさんと、僕。
.〈:::::|:::::::f:::::::::;;''')::::人::ﾊミ:::::::::::::::::从 そしてミストの班に所属していた
i:::|::::::::ﾄﾐ'' 〈::::{ ／}::L ミ::y-ミ::ヽ 叔父と妹の合計四人だけだ。
|::|::::::::::::::ヽ ):）fイ:丁 ｿr}k ）:| ）
|::|::::::::::Y}::|__ ~ ¨´ Y/:::l
{ ヾ:::::::::t k夕 r':::::jゝ
￣ゝ(ﾍ < ＿ ヾﾘ
（ ヽ ´ ／ ヽ
＞ ､___／---──ゝ.
z-≠─- ､ ヽ へ─--ﾍ
| ＼ ｀ ゝ､
| ＼ ＼
| ＼ ＼
| ＼
| ｲ }
f＼ ﾉ ﾍ }
{ ＼ｲｨ´￣ ﾍ }
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| 慎二の目が皮肉にぎらつく。
|
| 彼の叔父は呪術との相性が悪く、肉体を蝕まれていた。
| 彼の妹は正確には血縁者ではなく、義理の妹だ。
|
| 結果、血を継ぐ存在は慎二しか残っていない。
| 消去法的後継者。しかし、それにそぐわぬ哀れな弱者。
|
|「おじさんは病弱、妹は養子。僕は悪魔恐怖症。間桐の家に未来はない。
| まあ、それはとりあえず置いておこう。僕と『ネクロノミコン』の関係についてだ」
|
| 今までは、彼のプライドが邪魔をしてきた。
| 間桐慎二の肥大した自尊心が、己の苦境を訴え、助けを求めるのを許さなかった。
|
| だが、いつまでもそうはいかない。
| 自分の目的を話し、賛同者を募る必要があった。
|
| 何故？ 障害となる相手があまりにも大きすぎるがゆえに。
|
|「僕の妹間桐桜は、僕の妻として優秀な子どもを産むために養子になった」
|
| 正確には違う。だが、そのおぞましい慎二妻で口にする必要はあるのだろうか？
| 慎二は一瞬の躊躇の後、すべてを暴露することを心に決めた。
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.: ／ - ､ / |:: ::/Ａ..,;;__j! / ∨ :::::. ﾘ | | :ﾊ. │ | .! ＿ｌ ‘, __‘, ‘,
::／/ ⌒i v彡!:: .::// Ⅵ.ハ｀l ‐- ..,Ｖ :::::::.. l | :.∧ |___,| .! ｌ ｌ |:¨`}
／ / /｀ヽ 彡∨.::ﾊ{ ｌ:|:| | |----､｀ヽ :::::ﾊ l |､ ﾊヾﾍ | ! | | | |: |
｛ { / ∨| ≡ ﾘl| | |`守!ヽ ∨:::..::: ゝ-ﾘ-ﾐ:.}r-.､ | l | | | |: |
.: ＼ ! ヽ 彡ヾ､ ﾘ ゞﾍ ｀ヽ 乂:::::::. ヽ ﾘ|j :, | ’,ﾉ ｀j´ ｀ '.
/ ヽ ≡ :,::::::::::::.. '. / j | i
! ゝ_j :,｀ヽ:::r ､ } ｆ -={ ′ ＿_ ,、 |
≧ｭ､_: : : : | 彡 :, )ﾉ jﾉ | ∨ ｀¨ヾァ /ヾ､ ,ｨ |
ﾆﾆﾆﾆﾆ≧ｭ..,,__ _ 〉 | ;′ }| く ､_,,.＼ｱ'′ !
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ≧ｭ､ ／ │ ! /lL..,,r ＼ !
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼ -―‐- .,,__j :, r=ｧ==≠ .′
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ丶 -―‐- ﾉ´ ヽ ﾏ ,
ﾆ==- ´￣￣￣｀ ＜ﾆﾆ＼ ／ , l! ′
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ﾆﾆﾆﾆ／l : : : ∨ﾆﾍ 丶 {
ﾆﾆ／ﾆﾆ| : : : : lﾆﾆ∧ ＼ |
／ﾆﾆﾆﾆ| : : : :.!ﾆニ∧ | |
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|「より正確には僕の叔父、間桐雁夜の妻になる予定だった」
|
| ここで、数人の頭に疑問符が浮かぶ。
| 当たり前だ。病弱な雁夜はすでに40代。親子ほどの年齢差があるはずだ。
|
|「桜はある魔術に優れた家計の次女で、政略結婚で間桐に嫁ぐ予定だった。
| だが魔術特性的な問題があってな。しばらく養子として間桐の魔術を学んだらしい」
|
| このあたりについて曖昧なのは、慎二がそれを事実として見た訳ではないからだ。
| それは、彼が生まれた頃の出来事である。
|
| 慎二が視線を魔女に向けた。赤い魔女。遠坂凛は静かに瞑目し、嘆息する。
| 彼女自身、口にするのも考えるのも気が重い話なのだ。
|
|「だがじいさんは『ただの有能な魔術師』に興味が無かったようでね。
| 桜の身体を改造し、悪魔化した……そうだよな遠坂？」
|
| 悪魔化。人間を悪魔に改造した？
| 衝撃を受けるキオやケンシロウ。他にも何も知らぬ若者たちの反応は激しい。
|
| 杏子は咥えていたあたりめを取りこぼし、ミストは形相が変わるほどの怒気を放つ。
| 霊夢は気遣わしそうにルカを支え、そのルカは息を飲んで震える我が身を抱きしめた。
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ヽ///////ヽ/:::::::::::::::::::::::::_:::,､:::::::::::::::::::::::::ヽ///／:|
＼//////::::::::::::::::,:::::::::lミ､ｲ､::::::､:::'，:::::::::ﾑ/＼::::|
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}／/ｲ::l:::::{::::: |::: |!::: | |::::}::::}|:::|!::!:::::|//ｨTﾑ
. ,ｨ/// |: |:::: !::::::|ﾏ:|Ⅵ:| |::/ｨ7 }:ﾘ-|:::ｲ_//::::{::::. そうよ……私の話は後でいいわね。
/>ｰ､/ {:::| :: |::-ﾘ-::|-ﾏ{ }ｲ,ｨて㍉､}:/ﾘ,::::::::::ﾑ:::::､
|:{/∧{ﾏ: |::{ ｨ斥㍉ 之z ｿ/ｲｨ }:::::::::::::ﾊ:::::＼
}:::::::::::::{从､ 弋zソ ¨´ ﾑ /::::::::::::::::ﾑ::::::: ＼
j!::::::::::::::ト､ ﾑ , /-':::::::::::::::::::::::}ヽ::::::::::::.
,::::::::::::::::|:::::ゞﾊ _ ｲ!:::j::::::::::::::::::::::;':.:.:.ヽ::::::::::.
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. j::::::::::::::::::|:::::::::::/´:.ヽ＞ _ ..::'／:.://:::::::::::::::::::,.:':.:.:.:.:.:.:.:}:::::::: !
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∨ rヽ::::::::｀::::/:.:.:.:.:.:.:.:｀:.:.:.:.:.:.::.:.:.:,:'::/::::/:::／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:::::::::{
ﾏ:.:.:｀ー:i´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.r,:.:.:./:::,'::::::{::://:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,'::::::::::::|
ヽ:.:.:.:.::.'，:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.o:. ||:.r/:::::{:::::::∨':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,:::::::::::::::＼
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|「そうしてくれ。悪魔に改造された桜を見た僕のおじさんは、じいさんに反旗を翻した。
| あの人はかわいそうに普通の人間だからな」
|
| 心優しく弱い叔父を憐れむ慎二。
| ああ、だがそれは皮肉でもある。慎二もまた、他の『血族』とは違い、異常な精神を有していない。
|
| 極めて健全で、一般的な心を持っているのだ。
|
|「妹の様に可愛がっていた女を悪魔化され、自分の嫁だと言われたんだ。普通なら拒否するさ」
|
| 哀れな間桐雁夜を弁護したのは『弓兵』だった。
| 男たちはその状況を想像し、顔をしかめた。
|
|「雁夜おじさんが拒否したから、計画は先延ばしになり、僕にお鉢が回って来たんだ。
| 酷い話だろ？ 当然僕も拒否したね。売れ残りの処理なんざ冗談じゃない！」
|
| 皮肉っぽく唇を歪ませながら、異常な熱気をこめて慎二が叫ぶ。
| その言い草から醜悪さがにじみ出て、女たちが眉をひそめる。
|
|「じいさんは何を考えたか、桜を妹として僕に紹介した。
| 妹と結婚なんか気持ち悪い。それになにより！」
|
| 口角泡を飛ばす慎二。その眼は怒りに燃えていた。
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ｒ::::::::::::::::::彡´:::::::::::::::::::ゝr-ー- - 、
l:::::::::::::::、::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::::::)
＿_ﾉ:::::::::::::::::＼:::::::::::::::＼:::::::::::::::＼:::::::〈
ｒ´::::::::::ゞ::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::＼::::::::::::::::ゝ、｀ヽ、
',::::::::ゞ、:::ヽ::::::::::::::::::＼:::::::::::::::＼::::::::::::::::}:::::::::ヾ 僕より優秀な妹と結婚して、
ｒ::l:::::::ヽ人 （::::::::ハ、::::::人::::::::::::::):::::::::::::::):::::::::::::) 優秀な血を残す道具になる？
（:::j:::::::::l ｀ヽ:( ノ.ヽ::） ｀ヽ:::::ﾊ::::::::,___、::::::::::/:l
.）:i:::::::/ ）:）´-ー´、 .ソ {::::/ ｒk.ヽ::::::/::::l ふざけるな！
ノ:ﾉ:::::::lー - 、:::::::::::{ 0 } .ン ｒｌｋ 〉:/:::::::l 兄より優秀な妹なんざいるか！
{::::l::::::::::l斗ー.:::::::::::::::ミニ 彡 .Yﾉ /ﾘ::::::::::l
｀ゝﾄ（:::::l::{ 0 }::::::::::::::::::::::::: ./:::::::::::::::l
(::::::::/:::ミ 彡 ,:: __ γ´Y:h:::::::::l
ゞツ l __,,,,,--=''-‐''''ゝ / {:l ゝ:::ｿ、
':, ＼''(′ ＿,,-) ,:' li : :＼. ＿ ＿＿
ゝ、`ー==＝-‐''′ / ／.: : : : :/: : :＞-ー・´: : : : :
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＞、 ＿ ._／ ／ : : : : : : :/: : : : : : : : : : : : :／::
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|「まったくその通りだ！！ 気に入った！」
|
| 拳を振り上げるジャギ。決めゼリフを取られたことは問題ないらしい。
|
|「というわけでバカ面下げて運命を受け入れる気でいる妹を人間に戻して、
| 兄の偉大さって奴をその身に刻みつけてやることにした」
|
| ふいに声のトーンがダウン。
| 慎二の言葉の意味を理解している数名が笑みをこぼす。
|
| 汚い言葉や狂気を演じることで、妹への気遣いを自己満足へと貶めている。
| そうしないとプライドが許さないのだ。なんて面倒くさい男だろう。
|
|「だがいくら調べても悪魔を人間に戻す方法は見つからず。そんなさなか、『傾国』に遭遇した」
|
| 先月の満月の話だ。
| 慎二がやる夫たちと行動を共にしていたのは、『万魔』につけ狙われていたからだった。
|
| しかし、それが思わぬ結果を呼んだ。
| 慎二は『傾国』に対価を支払い、桜を人間に戻す方法を突きとめたのだ。
|
|「『ネクロノミコン』に書いてあるそうだ」
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|::::::::::::: 「イ三三≧x､{/{/八ハ::: /
|:::/{::::::/ <￣弐{¨¨` x≦三{|: /
|: | ∨{ ￣三= { 坏)「Ⅳ
八乂V!: ＿| ′ ……それは大丈夫なのか？
/:::::::/｀l| ￣｀ /
. /::::／ 八 ∠二ｱ /
/::厂 { ＼ ヾ /
-=イ⌒{ / { ＼ /
. ／ﾆ＼ﾆﾆﾆ＼ { ＼ ＿＿/|＼
／ﾆﾆﾆﾆ_＼ﾆﾆﾆ＼ { /{ |ﾆ=＼
￣}ﾆﾆﾆﾆﾆ=丶ﾆﾆﾆ＼八 //{ 八ﾆﾆﾆ≧=- ＿＿＿ ィ7
} ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ＼＼ /八 ＼ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ7
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| 『ネクロノミコン』は、読んだ人間の精神を蝕み狂わせるという。
| それを読み解き、解除法を探すのは簡単なことではないだろう。
|
|「『傾国』からのサービスで、必要なページを開くしおりがある」
|「信用性は？」
|「『傾国』だからな」
|
| 慎二は、あの夜を戦い抜いた少年は、金銭を対価に願いをかなえる悪魔を信用していた。
| 『傾国』は非常に胡散臭く、足元を見てくるものの、その取引は誠実であった。
|
|「『蛇身』はどうなのさ？」
|「多分大丈夫です」
|
| キュゥベぇの問いに、キオが答えた。
| 曖昧な言葉と裏腹に口調は極めて強い。断言であった。
|
|「イナミさんはターニャさんを友達だと思っています」
|「……そこに何故、『万魔』が出てくるでおじゃるか？」
|
| 麻呂の問いに、キオは困惑した。説明が長くなるのだ。
| 慎二が小さく嘆息する。そして三四を一瞥した。
|
|「え？ なに？ 私の魅力に気付いちゃった？」
|「『先生』、『万魔』についての解説をしてくれよ」
|
| 取り付く島も無かった。
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慎二妻で → 真実まで
IME仕事ちょっとサボれｗ
全力ですっぽかして帰ってきたんだよな、懐かしいｗ
／ ヽ
,/ ／ ヽ ヽ
/ ./ ／ | ヽ ヽ
// ./ / l ヽ i
. i / /./ ／i .ｌ i l 『万魔』は江戸時代中期から後期の悪魔ね。
| i i / ／ / /l ｌ | 幽鬼の大軍を率いて村々を壊滅させた。
. | | l/ ／ / / |.| | |
| | / ー- ､／ / ./ l l .| l 倒し方は不明。
ｌ .! i _ ／_`ヽ /./ l .|i i | |i ほとんどの魔力を吸収し、逆に強くなるわ。
. i |l .| ヽ戈ゥ,ミ ./／ '''ーl､|.i. | ! .|l
i l.l l / ー―'／ '`ヽ i iヾ､ .| .| | l 当時の『血族』がこれは敵わぬと封印したらしいわね。
. li .i |/ﾊ ／ i ´弋ｚ､ヽ＼.| | |l i まあ、倒せないなら封印する。いい判断よね。
| i ﾊ ./ ＼ﾆヾヽl l l l ｌ
ヽ ﾊ. ヾ| ` / | |
>i ＼ ､ | / .| |
/´ | ＼ ` ー-- | ./ | |
/ | i |.＼ ,, - | /ヽ .| .|
. i .| .| | //|` -､'' l / ヽヽ、 i i
l | | |// | i´|＿,,,,-l / / ヽ､ヽ i i
| | | |l .i .| ／!/ ｌ / / ＞-､ i i
| l li | .| |.／i i | l | /／ ／ ` ､ i i
| .|| i | i|/ i i | l .| /´ ／
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|三三三三三三三三三三三/ /＿. / /￣ / ,ィ | 7 /ﾝ ） / /＿. / /￣ 7 /ﾝ ）. // 〉 〉 // // / /三三三三三三三三三
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| 自分の魅力を目の前で切り捨てられたにも拘らず、三四は『万魔』の解説をした。
| 慎二は満足行ったように頷く。
|
|「ここから先は確証の無い話なんだがな。『万魔』は当時、何らかの魔術実験で生まれたものらしい」
|「江戸時代に？ 悪い魔術師もいたもんだな。幕府転覆でも謀ってやがったのか」
|
| ジャギはからかい口調であったが、その視線は三四に向いている。
| 『血族』の資料はどうなんだと、その眼が尋ねる。
|
|「発生理由は不明ね」
|「握りつぶされたんだよ。『傾国』と同じさ」
|
| 詳しくは不明だが、『傾国』は当時の権力者に接触し、国家の財政をひっ迫したらしい。
| 故に『傾国』の名が与えられ、しかし何を起こしたかは記録に残されなかった。
|
|「少なくとも、『万魔』が元人間だったことは本人の口から確認されています」
|
| 先日『万魔』と話す機会があり、蒼星石はその言葉を引き出していた。
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／三;ヽ､´ ヽ三三三､二二二＼
|三三三ｌ ヽ三三三＼二二二＼
／´!三三三ヽ ヽ三三三三＼;二二ヽ
／: : : : ヽ三三三ヽ ＼三三三三三ｰ ､_）
i: : : : : :ｨ ヽ;三三三＼ ＼三三三三三/
ｌ: :,.: : / |: :i ＼三三三三､ ｀ ー 三,イ
. | ｌ l: :/: :| ﾄiヽ ＼三三三三＼_ ｌ|
! ､ l ｿｌ;| |;|＼､､＼;三三三三｀ﾞヽ--ｯﾌ′
. | ! 「 !| ｀i;:;:ｯ､｀ｰ-＝､三三三三:シ
ﾞ i ｀ﾞ'''‐/::. :. : : : :.￣￣￣「
ｌヽ ／ﾉ: :＿＿:: : : : : :: ::/ そして、『万魔』本人が望んでいるのは
｀ー―､///::.::.::.::.:｀ヽ ノ/ 間桐の家への復讐ではなく、
ム}ｒ'￣iｯﾚﾉｨi::.::.::.::.:..:..::├'ノ 間桐臓硯個人への復讐です。
ム{/ ,.-―ｦ ノ!!::.::.::.::.::.::.::.:ｌ
ム┘/ ×_/ /::.::.::,::.::.::.＞､::〉
ム} （／ / /::./::.:;;ヽ／:;:;ｼヽ＼
(ﾆ} 彡 ﾂ _,-―:::＿_;:;/:;:;:;:;:;:;:;フ::.::.､
＿/ﾞｰ､_ L_{ i,. "ｰ-､ :;:;:ｬﾞi ｀ ｰ≦- 」
ﾆ三ｌミ ┼ ｀ｰ"ｫ､＞､:;:;:;:;:;:／ | 「
三三､ ﾐ 三三三三 ヽ:;:ﾉ {ミ､ |
三三三ヾ 三三三;／二.-―´ ミヾ ｌ
三三三三三ヾ /,. ´ ヽ、 ﾞ i
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| この時点で、勘の鋭い数名が眉根を寄せた。
| ジャギの言う悪い魔術師とは誰なのか、目星が付いたのだ。
|
|「江戸時代って、何世紀？」
|「300年くらい前だったはずよ」
|
| ルカが小学生に歴史を訪ねる。名字こそ漢字だが、ルカは日系なだけの合衆国人だ。
| 日本の歴史には極めて疎い。
|
| 催促するように向けられた手のひらには何も置かれない。
| この程度で金をもらえるとも思っていないのか、小学生巫女は文句も言わず手を引っ込めた。
|
|「間桐臓硯がその時代から生きているというの？ そんなの」
|「『万魔』を作り出した魔術師が、同じ技術で自分を悪魔化していたとしたら？」
|
| 慎二が皮肉っぽく尋ねる。それがどんな意味を持つのか、ルカが青ざめて受け入れた。
|
|「……元だけれど、『教会』の人間として言わせてもらうわ。そんなの許されることじゃあない」
|「だが残念ながら証拠が無いんだな。これが」
|「そうなんだよねー」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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.... ,,、＿_
／ｨ彡'三三≧､
, 'ィ///ィ彡'三三ミ≧､
,!ﾉｲｨﾉﾊf/r''^`ミﾐヾミ'､_'、
/!/fｗﾘ八 ヾﾐ'､ﾒﾐ､_ヽ、
{i |l|W小f l|l｛{ﾄミヾﾐゝ､__, 臓硯が顔を出すようになったのは
）!l|l|fﾘfﾓﾘﾐ;ゝ:ｨ'tiﾃ!lﾄﾄﾐｿ}｝ ヽ｀`ヽ この二十年ぐらいでさ。
,川h{i洲{´ l:{:｀~尢',l|l|巛 ＼ '､
ﾘﾉﾉ八ｲ ':,:.:.ﾊﾐﾘ!ﾄ､ﾐヽ、 ヽ 桜ちゃんを養子にした時期と被るんだよね。
ノｨｼｲ卞ミ}＿ｰ_',:./ﾊ｝}l{ ヾミ'、
,.彳｛{/ﾘﾄﾐ'｀ﾆﾆ,´ｨi{l｛lﾄ't'､ ｀',ﾘ
,. '´:/:::::|jﾂ ﾘ}}iliﾘt洲Wjﾘﾂ}｝ﾘﾄ､',ﾐヽ
::::::::/:o::::|{ヾﾊﾘﾊ{ゞ'､' 'fｼ'､//{｛!ヾﾐミ',
:::::/:o:::::::|:.:.:｀ﾒ'､(ヽ丶 j入::ヾﾘゞ,ﾉﾘヾj
::/:o::::::::::|:.:.:.:{:.八} | ）〈:.:ヽ:/o､fﾂ'ﾘﾄ､＼
/:o::::::::::::|:.:.:.:V､_ﾘ |::. ヾ:.ヽ:::::{il､::::::::::::::ヽ
ヽ::::::::::::::|::::::::∨|｀` ‐::、. :}:..:'､::jﾘoヽ:::::::::::::|
:／::::::::::::|￣￣ ｀ヽ .|.::..:.:.ヽ::::::::::::::::::::|
:､:O:::::::.:::|::::::::::::::::. |:.:.::..:.:..ヽ::::::::::::::::|
::ヽ:O::::::::|:::::::::::::::::::. .|:.:..::..:.:.:..:ヽ::::::::::::|
:::::ヽ:O:::::|::::::::::::::::::::::. ｜:.:.::..:.:..:.:.:.ヽ::::::::|
::::::::',::O:::|.:.:.:.::.:.:..::..:6ヽrﾍ:.:.:.:..::..:.:.:.:.:.:.:ヽ::::|
::::::::::',:::O|.:.:.:.::.:.:..::..:ヾｿt9ﾄ､:.:.:.:.::..:.:..:.:.:.:.:}､|
::::::::|:::l:::::|.:.:.:.::.:.:..::..::.:.ヽ/:｝:〉:.:.:.::..:.:..:.:.:.:./::ヽ
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| 悪びれる様子も無く、シックスが肩をすくめた。
| それまではどうだったのか、『血族』としてはどう考えているのか。
|
| そういうものは窺い知れない。
|
|「まあ、誰もが怪しい怪しいと思ってたんだけど、憶測でしかないんだよ。
| そもそも『間桐臓硯』は間桐の当主が継いでいる名前でね。
|
| 『先代』臓硯は病気がちで家の地下から出て来なかった。
| そして、彼の補佐をしながら実際に家を動かしていたのが今の間桐臓硯さ」
|
| キュゥベぇの説明にシックスがうんうんと頷く。
|
|「見たこと無かったよね」
|「基本的に支持とかは使い魔を通していたよ。当時から存在しないかと疑われていたね」
|
| 誰かさんによく似ていると、キュゥベぇはいけしゃあしゃあと言ってのけた。
| いや、その誰かさんは己の死を表明し、記憶だけ悪魔として残しているのだ。
|
| 隠匿しているものとは違う。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ .:/
／ ＿＿__ .::/
／ VＺﾆ=-＞──- ,._＿__
/ ア^／ r＝=≧:､
.: / / ● ｀ヾ二ア… 、 彼は戦後のどさくさでどうにかしただけかもしれないけれど、
| .′ :. ● ｉ:. Y´ ＼ 戸籍もしっかりしているし、家系図もある。
ｌ ,.-=#==ｘi＼ `^ｰ' .::从 | '.
. ＼`ｰ=i {ゝ::≧ｧ---‐r＜/_＿ｌ__:::::. } 昔から頭は剃っていたし、
¨¨ | 人¨¨ :′ Vく{「￣ 「_≫:::. / 肌もつやがあるから外見もあまり変わらない。
| 。 ｡ ﾟヽ i ＼j ＼ヾ:::: ′
ｌ ﾄ､ |`ﾇ | ｕ し ヽ。､｡､ﾟ＼:／
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|「その上組織内の重鎮だろう？ 手を出す危険なんて犯せなかったよ」
|
| キュゥベぇの含みある視線が『弓兵』を抉った。
| だが、歴戦の傭兵はまだ痛む胸の傷を隠し、視線を逸らしただけであった。
|
|「じいさんの目的は、間桐の魔術を繋げることだ。
| そんな体になっても、自分自身ではなく末裔の繁栄を望んでいる」
|
| 慎二の皮肉な物言いは、自分自身の無力と、皆殺しにされた家族たちに向いていた。
| もはや間桐の繁栄は難しいだろう。それこそ、慎二と桜の子供に夢を託すくらいしかあるまい。
|
|「しかし、じいさんは焦ってるみたいでな。なにしろ間桐の家からは最近碌な子供が生まれない。
| 血が濃すぎるのか逆なのか、魔術の才能が無かったり、あっても別の部分が欠けていたりする」
|
| 慎二の叔父、雁夜は完全な才能不足だ。
| それでも魔術を行使するために体を酷使した結果、術を使用する度に死にかけることになっている。
|
| そして慎二自身は完全な後者だ。
| 慎二は優秀な子供だったはずだ。普通の、魔術とは関係の無い家ならば。
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￣｀ ‐- ､
／ ヽ
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∧ |_． _｀ ｬ / ‐- ､i/i/'ミ三./:iﾉ､ヽ
,' ヽ､|乂i:::::i､ヽ| -t-..._｀ {‐-彡i::':ｉi::i::::i
,' i ｀ ' ､i:::_:升}.,-i´ iヽ'||::i`'
,' ∧ 〈 ‐-, 「/./ ,'::::i i::i
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i i i /⌒'｀=＝´‐‐‐'､ i::::::i i::::i
| | i ,ゝ|､i::::/::::::::i::::::/::i i::::::i ヽ::ヽ
i .i ii:::::ﾉ::i::::ii:::::::::ii:_:-=-､ iゝ､i ヽ::ヽ
| 入 ii::ゝ:::i:::/-‐:´:::_:::／｀'､ i ｀ iヽi
....‐::::::::ゝi::::::::/::::::::::::／::::::ゝ=:‐:＼ .i､ i
ゝ´::::::::／:::::::::::::/::::ヽ::／::::::::/::::::::ゝ=‐;ヽ .|ヽ i
／::::::::::::/:::::::::::::::::/:::::::::∧:::::::::/:::::／::::::::ii::/ | ヽ .i
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∨:::::::::ii::::::::::::::i i::::::::::::i:::::::::::::i:::i::::::::i::::ii::::::ii::i /
ヽ::::::::::､::::::::::::i'::::::::::::::{::::::::::/::::ii:::::::i::::ii::::::ii:::i/
. i｀‐- _､:::::::::ii::::::::::::/::::::::/:::::::::>,::::i::::ii::::::ii:::i
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|「じいさんは新しい血を取り込むと同時に、その器に間桐の基礎とも言うべきものを植え付けた。
| それにより桜は悪魔化したってわけだ……」
|
| つまり臓硯と桜は同じタイプの悪魔である公算が高い。
| いや、臓硯が悪魔であるという確証はないのだが。
|
| だが、この話をまとめるとある結果が見えてくる。
| 『万魔』と臓硯と桜は同じタイプの悪魔で、『ネクロノミコン』があれば桜を人間に戻せる。
|
| つまり、臓硯と『万魔』もまた、人間に戻せる可能性があるということだ。
|
|「一応言っておくが、間桐慎二。どのような命乞いをしても『万魔』は滅ぼさねばならない。
| ボクはもはや『元老院』伊集院九兵衛太の残影にすぎない。
|
| だが奴がこの東京で殺した無辜の民を考えた場合、その首を取らねばならないと思うよ」
|「でも……」
|
| いつになく真剣に、そして冷酷に語るキュゥベぇに、キオが縋りつく。
| だが、杏子が少年を押しのけた。
|
|「あたしも同意見だよ。まだ殺しをしてない『蛇身』とは違う。
| 人をたくさん殺した危険な悪魔は、滅ぼさねーと」
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※やったね、ノイエ！と同じイントネーションで
ネクロノミコンは横断的に色々な題目についての解説や他の本への参照が書いてある百科事典的な所が特異な本であるらしい
/::::::::::::::::::::::::::::::_::イ: : : : : : : : : ＼: : : : : : : :＼: ヽ: : : : :ヽ
. /:::::::::::::::::::::::::ィ'´: : : ﾄ: : : : : : : : : ::::＼: : : : : : : :';: :i: : : : : :.i
/::::::::::::::::::::／: : : : : : :从: : : : : : : : : : : ::＼: : : : : : ',: :';: : : :i: l
｀ ー - ､::/: :i: : : : : : : :i. ヾ:＼ミ､: : : ＼: : : ＞＜:´: :V:i: : : ::ｿ
i: : :l: : : : : : ::/ ＼.＼:.ミｰ ､:.=''´:.ﾄ≠.＼:.:/:.:.:i:.:.:.i
|:.:.:..l:.:.:.:.:/_:/───弋ヽ｀ー- ≧テ忘ｱ .Y: : :l: : /
ヾ: : ヽ: /:./ _≦彡ﾐ ＼＼ 乂::....ﾉ /: ::/: :/
',: i: :乂K ＜ {芯切 ｀ー ￣｀ /: :イ: :/
Vｲ: : : ::＼ ゞ_ソ .i ｲｲ: : : / 『結社』幹部、曹操 華琳も『万魔』を狙っている。
}: : : : : : :＼ ￣ , ､ ｲ: : :/ 奴はもう手遅れだ。
ﾊ: : : : :ﾄミヽ＞ ｀-´ ／ﾊi: :/i
ﾄﾊ: : :i:} ヾ ＞ ､. ／i:八 l:/:/
V: ﾄi ,､ ﾌi｀ ー ' ´ト ､ .|:/
＼:V /∧ヽ''´ ﾉ ／ ＼ﾘ
／{ ヾ ノ ', ／ ￣＞'⌒iｭ_
/:{⌒ ｹｲ 〃VⅦﾐ ノ } ／,廴ハ
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| 尻馬に乗るかのように、蒼星石は追打ちを繰り出した。
| だがとも、でもとも言わない。完全に切り捨てるかのように。
|
|「さて、人間に戻す云々はこの際後回しにして、現在ですが」
|
| 蒼星石が凛に視線を走らせた。
| 赤い魔女は頷きもせず、興味なさそうな流し目で応える。
|
| そして己の横にいる元夫を不愉快そうに睨みつけ、鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
| それで十分だった、意志の疎通はできた。
|
| 先週、蒼星石や慎二、キオ、凛や『弓兵』は『万魔』と話し合いをした。
| その際に『弓兵』がした提案を、蒼星石はしっかり覚えている。
|
| 凛の視線の動きから、彼女もまた賛成していることは明らかだ。
| ただ、この場で口にするのはまずいことをキオやアリカが理解しているかどうかだけが心配だった。
|
|「せっかくだから、『万魔』を討つのは我々に譲ってくれるとありがたい」
|
| 釘を刺すように鋭く、『弓兵』が低いが通る声で意志を発した。
| 睨みつける元妻、余計なことをという目つき。素晴らしい演技だ。
|
|「ああ、もちろん首自体は譲る。だが、我々は『同じ悪魔』と闘う予定があるからな」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿
ィ;ヘ:::::´:jト､ミ::::､
,ィ:::::´::::::::＼/:l::::::＼::::
ｒ:j::::::::ハ:::::::ト:;ィ!:::ヽ::::＼::､
ｊ/::::::/:::::}:::::ﾉ~´ |::::ｲ:::::::;ｲ〈
/::::::人::メ::::( {:〈,{::ﾊ:/:ﾊ::ヽ_ おい、お前！
ト:::（:::::｢ト-y' :::::､)斗ﾁj:r-:::Y それは『どっち』のことだ？
从ﾊ个}ﾉTエ´:::::::::┴'-从 ｊ:リ
｀⌒ヾ{ﾊ u ｀ ｒｲ::{
｢￣､￣｀ヽﾑ ,,ィ＝ぅ ノ人:ﾊーｧ ､
| ヽ ﾄ≧'ーｒｒ-≠ イ ｊ
} Y ヽ ﾏ{ 彡 / /
ﾊ ｊ｢ ー ｣ﾑ ﾊ {
/ 7 川 V ヽ
/ ｊ{ | i ! } ､
′ ハ ｌ | ! ハ !
ミ､/ } ! iｊ {! Ｖ
{ イ／⌒ーｫ | ｌト イ ≠⌒ヾ |
―┤ ア´⌒ヽ――┴┴ ｆ￣｀マ ｊ―――
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| こめかみに血管を浮かせながら慎二が怒りを湛えた声で尋ねる。
| しかし、歴戦の傭兵から見れば、慎二の怒りなど小型犬が吠えているのと同じだ。
|
| 『弓兵』は冷笑し、肩をすくめた。
|
|「オレたちは哀れな妹を弔い、彼女を地獄に落としたものへ報いを与えるためにここにいる。
| どっちという問いは正しくないぞ、もう少し考えてから口を出すんだな愚か者め」
|
| 『弓兵』の挑発的な罵倒にあいた口のふさがらない慎二。
| 右手が白くなるほど握りしめ、左手を『弓兵』の襟首に伸ばす。
|
| だが、この場で最も身のこなしに長けた戦士に、慎二ごときでは届くはずがない。
| 最小限の動きで避けられ、足をかけられ無様に転倒した。
|
|「弱い者いじめはみっともないわよ」
|「なんだと……！？」
|
| 元夫を嗜め、転んだ慎二に手を差し出す凛。
| 魔女の気まぐれな優しさは、少年のプライドを引裂く類のものだった。
|
| 慎二は手を払いのけて自力で立ち上がる。
| そして恨みのこもった眼差しを『弓兵』と凛に向けた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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ヽ、 ／i.／´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀＼
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＼｛:.:.:.:.:.!:.:i:.:|:.:.〃 ｀''ミ::::::／ ヽ::::::::::＼|
＼,__ヾヘ::::i:::ﾚ:レ′ ／ ミ{ （､ )｝:::::::ヾゝ
＼｀:.:.:ヘヾ" ,､＜,rｬソ ) ﾉ!::::::!:::i
｀＼ﾍ _／＜弋歹 ソ::::::::iﾍゝ
ヾ、 ヾ彡"´` iヽ::::::::', （案外演技力あるな）
弋心 ! ﾍ!ﾚﾍ
`'" } , ﾙヘ
ヽ !､_,,,､ _／ / >ﾍ､__
` ､ ｰ " / ,､'´;;;;;;;＼＞.､
＼ ／ _,､-';;;;;;;;;;;;,､-'´::::::ﾍ_
___＞ 〈 ┌''´;;;;;;;;;,､-'":::::::::::::_,､;'´｀ヽ
／::::::i;;工),,,L;;,､-'":::::::::::::::_,､;'´:::::__＿
∧::::::/7´:.:.:.:.:.:.:!:::::::::::::::::／::／／´:::::::::
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| なお、すべて茶番である。
|
| 『弓兵』はこの少年を案外と気に入っており、凛はそれ以上に馬が合うようだった。
| 慎二もまた一回り以上歳の離れた傑物たちを憎からず思っており、三人の中は極めて友好的であった。
|
| そして、先週『万魔』と話し合いの際に、『弓兵』は慎二や『万魔』にある提案をしていた。
| それは殺害の難しい間桐臓硯の、一番大切なものを奪うという提案であった。
|
| あの魔人が何に執着をしているかは一目瞭然で、そして慎二はその対象に興味はなかった。
| そう、間桐臓硯から後継をすべて奪う。
|
| 慎二と桜、人間に戻った『万魔』を連れて東京を去りイギリスにもどる。
| 遠坂の家で慎二を凛の弟子として育てるというのが『弓兵』の考えである。
|
| だがしかし、間桐臓硯だけではなく『万魔』を滅ぼしたい他の『血族』も障害となりうる。
| である以上、ここでその話を微塵も見せたくはなかった。
|
| という訳で、こと桜や臓硯の処遇に関しては、『弓兵』らと慎二は対立している。
| という構図を見せつける必要があった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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んｿ.|:|:.:.:.|:.:.|:.:.:.:.ん∨':.:.| ﾘ从-ﾃ=ミﾘi!刄`ｰ ﾉﾘ:.:.:|:.:.:.:|:.:.}:.:.}ヽ、
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ﾉ:|!:.:.:|.:.:|!:.:.:.:.: トﾐ 乂ﾐ ﾇ ﾉ/ ノ沙 ､ソノ.:.ｲ´l:.ﾉ
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/:.:!|:.:.:.:|:.:.:.|!:.:.:.:.|-〈 ヽ ヾ_' .:.:..:.:.:.ﾉ
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:.:.:.:.,ｲ:.:.:.:.:|:.:.:.|!:.:.:.ﾄ-ﾑ ﾑ:.|:.:.ﾉ
:.:.:/:!|:.:.:.:.:.:|:.:.:.|!.:.:.|!:.:.:|ヽ ' -｀ ..:|:.:.:|:.:| （とはいえ、あの子が人間に戻れるのならともかく、
:./:.:.!|:.:.:.:.:.:ヽ:.:.ミｭ.|!.:.:| ヽ .::.:.:.:|:.:.:.|:.| そうでないなら殺すことに躊躇いはないわ。
:.:.:.:.:!|:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.ム}.:.} ..::.:.:.ﾄ.:.:|.:.:.:.|ﾉ そのために私たちは東京に戻って来たのだもの）
.:.:.:.:.!|:.:.:.:.:.:.:.:. ＼:.:ムﾉ＿ ミｭ、 ,.::.:.:.:.:.:.|.:.:.|.:.:.:.||
廴.:.:.ヽ. .:.:.:.:.:.:.:.:.:＼.ム ￣ ｀ヽr'.¨:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.ヾ:.:.:.∨
. ｀ ヾ、ミｪ､.:.:.:.:.:.:.:＼:.ヽ Y.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾ.:.:.:ヾ:.:.∨
ヾ、.:.:.ヾ:.:.:.:.:.:.:.＼.:ヽ. |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼.: Y:.:∨
ヾ.:.:.:.:.Y:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.:.} 人＿:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾ|:.:.:.:}
}:.:.:. |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}:.| ￣￣￣ ヽ:.:.:.:.|
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| だからこれは茶番であるが、同時に本気でもあった。
| いや、『弓兵』は。あの甘ちゃんは違うのだろうと凛は考える。
|
| 彼は、桜が救える可能性があると聞いたら、それまでの覚悟などかなぐり捨てて、どれほど細い藁でも縋るであろう。
| どれ程にかそけき希望であっても、それを掴もうと努力する。
|
| 凛は、彼のそういう部分が愛おしく、同時に酷く憎かった。
|
|「桜の話しをしましょうか」
|
| 凛は意識的に冷たい声色で呟いた。
| 呟き。であるが、それはその場にいる全員の耳にスルリと入り込んだ。
|
| 遠坂凛は才能だけで名高き魔術結社の頂点に立っているのではない。
| 彼女は為政者であり経営者でもあった。そしてそれは才能ではなく、努力して培ってきたものである。
|
|「遠坂桜は、幼いうちから魔術の才能を見込まれた天才だったわ。
| 普通なら、その才能だけで遠坂を継ぐことができたわ」
|
| 卓越した魔術才能と、それ以外の雑事も努力ですべてこなしてきた才女。
| 遠坂の魔女は傲岸不遜な笑みを浮かべ、揺らめくツーテールを振り払った。
|
|「この私さえいなかったならね！！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＜―――‐--＞、 ＼l＼ ｌi
＼ ｀ヽ＼ i.ﾍ. ,
_ , -‐'"´￣｀ ｀ヽ ﾍ /!
＼ ﾍ / l
_ ,≧ ＿ ゛ i
＜ ｒ――- ヽヽ、 , ｌ
｀ﾐ、 ｌ ｀ﾞ´ ｀ヽ'"'￣フ┐ !
ヽ i ｀Yｌ
ヽ r'"´,,＿＿__ ｌ |.!
ヽ,__、 ｌ ｀≧x´＼ | ＿_. ﾘ あー。
i fヽ｀ 弋 ｿ｀ ｀ヽ' /f_x≦ﾆ｀ﾞ! 大変信じがたいかもしれないが事実だ。
ヾ r' ｌ !-' / 凛の魔術の才能は卓越している。
トヽ,. ｌ /
i ´ ｌ ｌ /
ｌ ﾄ、 ' /
＿ ｌ ﾍ ,r―┐ ／
i';;;;;;;｀ヽ、 ヽ. ＼ ￣￣ ／ '"｀ヽ、 、
r‐┴―-、;;;;;｀ﾞヾ,,、_.＼ ／ ヽノ
/::/:::::::::::::::￣ヽ、＿;;;｀i＿｀￣´i"＼
_/:/__:::::::::::::::::::::::::::::::::｀! ￣￣｀ヽ;i＼
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|「実際、死ぬと思った」
|
| 『弓兵』の半端なフォローを、ロストスキルが補強する。
| この場において、遠坂凛の本当の恐ろしさを知るのは彼だけである。
|
|「ちょっと、なんか急に嘘っぽくなったじゃない！」
|「桜の才能も、凛に比肩しうるものだった。これは一般的な家庭では喜ばれる類のものだったのだろう」
|
| だが違った。遠坂は魔術の家系だ。
| 卓越した天才が二人、それは決して喜ばしいだけの事態ではなかった。
|
|「もうちょっと人間の損耗率が高い時代なら、良かったんだがな」
|
| 現代の医学の発達は、ヒトの生存率を飛躍的に高めていた。
| それの何が悪いのか。いや、喜ばしいことなのだろう、一般的には。
|
|「死に易い時代ならスペアとして大切にした？ それが良いことだとはぜったいあく思えないね」
|
| シックスが嘲笑う。だが、しょせん感傷だ。もしもの話に意味などない。
|
|「この私が死ななきゃ脚光を浴びないのならば、別のどこかで。
| あの子が幸せになる、才能を開花させられる場所で……皮肉でしょう？」
|
| そうして遠坂桜は間桐桜となり、悪魔に改造された。
| 善意の街道が、地獄へと繋がっていたのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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≦￣￣ ヽ＼‐、
／ ヽ/|
７ /
/ ﾄｲ 桜は間桐で人間でない存在に改造された。
ﾘ r v'' | 悪魔の胎と、人間の種で、
ﾚ /.l {. 〈 より強靭な一族を作るためだ。
リ / ﾄ / ___
∧,, - ' ∧ / , .イ : : : : : : :ヽ
l===7‐≠フ ヽイ: : :/: : : : : : : : : :.ヽ
r-fﾆﾆﾆﾒ イ:´: : : : : : :./: : : : : : : : : : : : :.
|ノﾆﾆ/´: : : : : : : : : :.:/: : : : : : : : : : : : : :.|
.／|ﾆ| /.|: : ／: : : : : : : :{ : : : : : : : : : : : : : :.:|
／: :/..//ﾆl／: : : : : : : : : :.|: : : : : : : : : : : : : :.:.}
/: : :ノ＞´ |: : : : : : : : : : : :ヽ: : : :＼ : : : : : : : :.}
／: : : | ___.イ: : : : : : : : :＼: : :ヽ : : : :.＼: : : : : :ﾒ、
ｲ: : : : : :トイ lﾆ=ﾑ: : : : : : : : : :.:＼: : ﾄ : : : : : : : : : : : : Y
/:/: : : : : : }.ﾆ| .|ﾆﾆ=ム: : : : : : : : : : ヽｲ: : : : : : : : : : : : : :}
l: :|: : : : : : /二| .|ﾆﾆﾆｱ .ム : : : : : : : : :ヽ: : : : : : : : : : : : : }
/: :|: : : : :.:ﾑﾆﾆ| .ﾄ ﾏｱ ムﾆ≧ｭ､:.: : : : : ∧: : : : : : : : : : : :.|
.|: : :∨: : : :ト.=ﾆ| .|ﾆﾑ マﾆﾆﾆﾆﾆ≧ｭ､ : : : ∧: : : : : : : : :l : :.|
.{: : : :ヽ: : :.| ﾐﾆ| .|ﾆﾆム マﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ≧==-ヽ: : : : : : : :ヽ: |
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| 感情を交えず、『弓兵』が語る。
| その内容は吐き気を誘うものであった。
|
| この場にいるほとんどが眉をしかめている。
|
|「なんだ、『血族』にもまともな人は結構いるんですね」
|
| ミストの場違いな、安心するような独り言がやけに大きく響いた。
| そんなミストを汚いものでも見るように睨むキオ。彼はまだ希望を失っていないのだ。
|
|「えー、なんでぜったいあく誘ってくれなかったのかなぁ」
|「君は主導権を握りたがるし、それに黙っていることもできないだろう？」
|
| ぷんぷんと自分で擬音をつけるシックス。残念ながらこれが『血族』のトップだ。
| そして、キュゥベぇも臓硯のやり方にわざわざ異を唱えはしない。
|
|「ほんとだぁ」
|「そもそも元人間だからって人間と交わって子供が作れるのかしら」
|
| 納得して唸るシックスの横で、三四が唇に指を当てた。
| 研究者どもは、道義や倫理など犬に食わせているのだ。
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/ ./ / / ヽ ヽ ヽ
/ .i ./ ／| i l ヽ ヽ ヽ
/ / .i / .／ l .ﾊ |. ヽ i. i
i / l./ .／ l / ! | l l |
. l i |! .／ l. / l |i l l |
| | ||. ／ / / ｌ |i＿ | ｌ |
| | |! ,,,-ナ''''''- / / ''￣ｌ lヽ ｀`| l |
| | | | ''' / -ー-､ / / "￣ヾ'''- .| | l
. l | | |. /,,o-''jTヽ /./ "`６ヾ-､ | .| | 才能の塊だった遠坂桜を悪魔化して、
l | | .| ＜弋-;;ソ // 弌ﾆ乂 ＞ | .| それで失敗したら大損よね。
l .| l| |/ ` .〃 ヾ､|. | | |
. l | !|. l ヽ ／ l | | | | しかもテストも難しいし、
. l| | ﾄ､ヽ. ! l |. |.l ギャンブルにもほどがあるわ。
| .| |. ヾ､ ＿＿＿ | ! |!
. |. | ヽ ヽ､,,,,,／ ノl / l
l. | 丶 ／! .l / |
/l | `i ､ ,, ´ l .l | / .| |
. i l l .r､ーl ｀'' - " .lｺ l / |i |
| l l / `-!､,, _ ,, - ''' .l l/ |i |
. | l l. ／ /ヽ-/ i l / l .i |
| l ヽ Ｋ / l l ｌ .l /､,,,,,, l ｌ |
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|「ぜったいあくなら十回ぐらいは試したいなぁ。
| こういうとき、法治国家って不便だよね。よそ者が不意にいなくなっても大丈夫な街に住みたい」
|
| 三四の、確率を考えた指向はぎりぎりセーフだろう。
| だがシックスの言葉は完全にアウトがった。周囲の白眼率が上がる。
|
|「え？ だれだってそうでしょ？ 人体実験できるならするって。ねえ？」
|「それで無暗に敵を作るのは嫌よ」
|
| 無暗にふさふさのワカメ髪を振り乱して同意を求めるシックス。
| しかし、彼の正直な意見に賛同者は見当たらなかった。
|
|「『教会』が殺すつもりの異能者を融通してくれたりするって言うんなら、喜んで実験するけど。ないでしょう？」
|「ありえないわ」
|
| 肩をすくめ、流し目でルカに尋ねる三四。
| 元『武僧』としては、冗談でも口が汚れる様な話だと言わんばかりに吐き捨てる。
|
|「そうですよ『先生』！ 『教会』は人体実験なんて許しません！」
|
| ルカに援護射撃を出したのは、意外なことにミストであった。
| 『教会』製の強化人間が、どの口で言うのか。
|
| 三四の皮肉な視線を、ミストは不敵に受け止める。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／: : :,イ: : : : : :／: : : : {: : : : : : :|: : ∧: : ∧: :}: : : : i : :
／: :／／: :/: : : /: : : : : :/: : /:.: : :.|: /i:i:i}:/:i:i:}: :!: : : : : : :
. /:イ/: /: : :./: : : /: : : ／: {: : /: : : : ﾊ:}`ヾ/ ""!:,' : : : }: ヽ
/:./:.: : /, : : /: :.／/:／l : {i: ﾊ: / }| !': : : : :|: : :＼
. -／７: : ／/: : /: :.ﾑz≠彡': :从{ .仁≧i.､ ＿＿,/: : : : : !: :ヾ
/: ／ :/: : /{/,ィ竓斥ミ､乂 ,ィ彡芋斥ﾄ､.': /:/: : :i :{ : :＼
. /／ ／{: : :ハ ` ()jc)_, ヽ 、 ､__ ()zc) ,》:/:/ : : : !ヽ、: 彼らが使うのは
/' /イ: /|: :/: : } ｀¨二彡 .::ﾉ `ー== ￣"7:/:/ : : /:/ }:＼ 『志願者』ですよ。
. /:/;;;;!/{: : : ! ￣ 《 ￣ ./ｲ:/}: : /:/ 〉.ﾉ: }
{/};;;;;/;;l : : ﾊ ` 、 ,ィ ﾉ' !:./:/ .／:／ 人体実験ではなく
／./. ｀¨¨´|: }: :∧ r ､_＿＿＿_ ..イ} /:/:/‐': ／ 『尊い犠牲』です。
´ 乂!/: {丶 ∨ー―――‐彡' /:/i/: /}/
_. ∨:i ＼ ヽ二二二二.／ ／:/ / ＿
_＞-､. __Ⅵ-､ ＼ ‐― ／;;乂f:￣:/ ￣ ＼
. /: : :.＼＿_ / }ﾘ: :}`ー-:ヽ、 ＿＿ ／;;;;; /} : : { ＿＿_ ＼
/: : : ／: : : : :{ }: : /: : : : :}、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:'' / :!: : :.! `ー― "
: : : /: : : : : : :i i: /: : : : : :ﾊヽ / ./ :|: : : !
: : /: : : :r‐'¨¨! ｛:{ : : : : ＿_} { ／ :ﾉ: : :.|
: :.{: : :./ 〉'⌒ヽ.／ー― ､ ｀ , -- /￣￣: ｀ー:､＿＿
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| ミストの毒気たっぷりの言い草に、さしものルカも言葉を失った。
| そしてすぐに、それが『教会』への痛烈な批判であると同時に、激しい自嘲であると気付いた様子だった。
|
|「ただし、『教会』の実験体はエッセンスの損耗が激しいので、
| 人間とは別の種族になってしまい、交配できないらしい」
|
| ミストの言葉は、悪魔の枠にならなくとも子供を作れなくなった自分を指していた。
| 一代雑種の能力は一代のみなので、継ぐことができない。
|
| それゆえにミストは『血族』ののけものなのだ。
| なのに、悪魔でも子供を成せる？
|
|「狐狸の類や雪女のように、ヒトの妻になるパターンはあるわ」
|「神がヒトと交わって、半神の英雄を作ることもあるわね」
|
| 三四の言葉に、珍しく水銀燈が口を出した。
| そう、彼女はその甥っ子に視線を向けていた。
|
| 半神の英雄。やる夫には過ぎたるものに感じる。
|
|「そのあたりとは少し違うとは思うが、間桐臓硯が桜と同じタイプの悪魔であるなら、
| すでに交配させた経験がある可能性は高いな」
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| ＼ / ヽ
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／::小 '"::} r''ヾﾐ¨三¨´:ミ、 /ｲ:､
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／ : :.:.:.: ':.:.:./: .ﾊ.!ﾄ､_ ヽ__／ ｀7''>:､ / /:l:.:.:.:!:.: :..＼
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|「なるほど！ 間桐の一族が最初から悪魔化した臓硯の血を継いでいるのなら、
| 確かに同種の悪魔にした場合はテストは不要ね！」
|
| 興奮した様子で三四が手を打った。
|
|「男女の差はあれど、そもそも間桐の一族が、臓硯様が実験した結果生まれたのなら、
| 同種の悪魔と子を成す可能性は極めて高いわ。
|
| なにせその悪魔との親和性が高いし､魔術的にも突き詰めているのですもの」
|
| なお、ここでいう臓硯の実験とは、複数の女性に対し子供を作れるかを試してみるという類のそれである。
| 実際にどれほど非人道的で恐ろしいことが行われたのか。
|
| それは想像にお任せしたい。
|
|「僕と桜が交配した場合……ちょっと待て、想像でも胸糞悪い」
|「どういう意味よ！！」
|
| 何か言おうとして、胸を押さえてかがんだ慎二。
| その前髪を凛が鷲掴みにした。
|
|「アンタあの子の何が不満なの！？ 返答によっては容赦しないわよ！」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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,､ヘ、 ,,,､-ｰｰ､
＿_／::::::::::::ヽ､／::::::::::::::::ﾍ___
「:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',::::｀i、
}::::::::::「:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',:::::',:ﾍ
/:::::::::::!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',:::::',::!
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ノ:::::::::::ﾉ:::/::/:::::!ヾヽ:／ﾍ::::ヽ::::::::::::::}:::::ヽ
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{ !::::::）::）)::／ ）::) ヽ;:）ヘ:く::::(::::::::ハ!
ヾ＝/7::!＼ （::/ /:/／ﾉノ）::）:::/
/ゝ(（ヾミ三ﾐゝ′ ヾ（(彡三ﾐ∠ﾉﾆヽ
∨ﾍ / /｀` i i /ノﾉ
∨ﾍ 〈 ノ ､,, し / ノ 痛い痛い痛い！！
` ）:.､ Fニ二二ｊ /ソ
ﾘヾﾄ、 |::::::::::::::::::! ／り
_ヾｌヽ L二ニﾆ┘／iｿﾉ
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|「ちょっと！ 言い訳の一つも無いの！？」
|
| 赤い悪魔のルール無用の残虐ファイトに、男たちが色を失う。
| 誰の目にも、慎二の生え際柄の被害が増大なのは明らかだった。
|
| なにしろ、引き倒した少年の頭部から物悲しい音がしたし、
| 怒り心頭のままに魔女が投げ捨てた毛髪の量は、なかなか結構なものであった。
|
|「ぜったいあくの道場に大量の縮れ毛がぁ……」
|
| シックスの妄言は無視される。
|
| しかし、何ということだろう。
| 思春期の少年が肉感的な妹分の淫らな姿を想像し、鼓動を速めつつもそれを否定して自分を保とうとしたのに。
|
| あの赤い悪魔は突然の打撃である。
|
|「他の人間が交配するよりも、可能性は高いな。だが……」
|
| 少年を哀れに思ったのか、『弓兵』が顔を赤らめもせずに話を引き継いだ。
| 睨みつける前妻の視線から、努力して顔を背け、歴戦の傭兵は少年を見た。
|
|「間桐の一族の始まりが、臓硯と『万魔』という可能性もあるのでは？」
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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三人の中は極めて友好的
仲かしら。
申し訳ありません。
| i _. -: | | . : : : / / . :/ |: i: : i : : : : : :|: : : : :
|. ィ : :! ! : : : /7' . :７￣￣ ┤|: : | : : : : : :|: : : :
| ﾊ : : '. l : : : j/ : ／＞､ :l: ﾄ､ | :| : : : : : :!: : : : その場合、人間が生まれない……。
| | | : : '. | : : / :／,≧＝ ､__ :l: :!: : ! :| : : : : : :|: : : : 『万魔』が悪魔で臓硯様が
| | l. : : ﾍ V: /／ 7_r`＝ｌ: :|!: l : ! : : : : : : !: : : : 人間だった可能性もあるのね。
l, ! ﾍ : : : :＼: :/ ｀ ーゝ≠'"ﾍ: :ｌ､| . : | : : : : : : j!: : : :
l,| ﾍ : : : : : 〉' '. : ! : : | : : : : : :'l: : : : : だとしたら完全にテストは不要と考えそうね。
| ヽ. : : :／ ∨| : : | : : : : : :': |: : : : : 臓硯様は自分の子孫の無能さを認めないし
ト ／ V : : l . : : : : : ': :!: : : : :
i ｀＼ i . : :l . : : : : : ' : |: : : : :
l : :ヽ i : : :! . : : : : : ': : :|: : : : :
| : : : i､ ′ . : : .' . : : : : :,': : : |: : : : :
| : : : : ｀ゝ-- ､__ , ,′ . : : :.′ : : : : : /: : : : !: : : :
| : : : : : ヽ ￣￣ / . : : :/: . : : : : : /: : : : : |: : : :
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| 唐突に毒を吐く三四。
| 無能な子孫が何気ない狙撃で心臓を射抜かれる。
|
|「ちょっと待て『先生』！ 無能とはどういう意味だ！！」
|「ここ三代でまともに戦える間桐縁者は二名。まともに戦えないのが三名。
| 異能の才能が無いのが半数以上というありさまよ。データは正直ね」
|
| なんとか逃げ延び、前髪を気にしながら無能は抵抗。
| だが肩をすくめる三四に、ぐうの音も出ない。
|
|「ねえねえ鷹野さん、もちろんだけど間桐さんはその数少ない二名の片方だよね？」
|「いいえ、三名の方よ」
|
| ここで言うまともに戦えないというのは、異能や術そのものは使えるが、何らかの大きな欠陥があるということである。
|
|「悪魔恐怖症とか、術の拒絶反応で死にそうとか、命令が無いと微動だにできないとか」
|「生きてる三人じゃあないか」
|
| 慎二、雁夜、桜である。
|
|「ハイッ！」
|
| ふと、シックスが背筋を伸ばしてピンと挙手した。
| 周囲の胡乱な視線にさらされ、発言権を得たと勘違いしたか笑顔を見せる。
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圭圭圭圭主主主王王王三三三彡彡彡彡彡彡彡彡三ミヾ三≧､、
圭圭圭圭主主主王王王三三彡彡彡彡彡彡彡:ｨｲ彡=ﾆ三ﾐヾ三三ミｰ､、
圭圭圭圭主主主王王王三彡彡彡彡彡彡彡彡彡//ィ彡三ミﾐヾ彡三三ﾐ
圭圭圭圭主主主王王王彡彡彡彡彡彡彡彡彡://ｨ彡彡イ三ミヾ彡三三
圭圭圭圭主主主王王彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡ｨイ三テzﾐ'､'三三、
圭圭圭圭主主主王彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡ｨ彡ｱ／￣ `ヾﾐヾﾐ
圭圭圭圭主主主彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡´ ,:'´ ﾞ!ﾄ'、
圭圭圭圭主主彡彡彡彡彡彡彡彡／￣ ＼三三//// |l|li
圭圭圭圭主彡彡彡彡彡/⌒ ＜´ ／＼ミ工メ､、 ﾘ!l|l
圭圭圭圭彡彡彡彡彡／ ヽ ､ { , -tｯﾘ｀ヾ':.:.:.:.:.ｨ＝=/..jl|l
圭圭圭圭彡彡r─ 'ヽ __＼ .ｨ＼ ｀ ノ ヾ三ｼ''" | /ｨtfiメy'ﾘﾉ!
圭圭圭彡彡/ ＼ __ヽ { ヾ/////三彡' !l:.:`'テﾗf//ｲ ぜったいあくおもったんだけど。
圭圭彡彡／ ヽ ＼ ｀ー ' ﾉ//////彡 |:.:.:/:.ﾉ八{｛|
圭圭彡彡./ ＼ ＼ レ' ｀- イ////イ ',:.:,ﾘ'ﾉﾉﾉﾊl|l ゆめ……ゆみへい？ くんや凛ちゃん、
主彡イ´/ ヽ ヽ ', ヽ/////, '､__ --彳'////八lﾉ あと慎二君はなにしたいの？
王/ ,ｲ! ', 人 { ).} ヾ ﾘ{、 丶｀`＝==ｧ,ｲﾉﾉｲ////f{
./ /!::! ≧､ ∨ ＼－' ﾉ ＞-､'､丶､｀二二´ｲｼｲﾉﾉﾑfｲ |l| 臓硯ぶっ殺したいの？
{ l |:::! ヽ { j i ,￣ ＿＿ ＞ ､ﾃrッﾁ/ｲ/ﾉ/／|i{ |l!
l ヾヽ::､ 丶二.ﾉ イ.t──＜⌒:ト､ }jｲjﾉﾉ////ﾊ{ ,ﾉﾍ ,jﾘ
ヽ ヽ＼ト ＿ イ:/ノ:/ l. 丶 ＿＿／,ｲfr彡∧ムヾ、 /´
＼ヽ｀::ー'::￣イ / ﾘ j／￣ ￣｀ヽ {!
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|「殺せるもんならね」
|「僕はじーさんを殺したいほど憎んじゃいない」
|
| 憎悪に目をギラつかせる魔女とは逆に、慎二は冷静だった。
|
|「『万魔』あたりについて証拠を掴めれば、失脚は可能だろう。
| それ以上となると、正直あのバケモノ相手にどこまでやれるか」
|
| 弱気なことを言う『弓兵』。だが、それは彼の真意だ。
| 彼は臓硯相手に一度敗北した。
|
|「奴と戦った場合、まず大切なものを奪いに来る。
| 奴の力は強大だ。攻めているはずがいつの間にか攻められることになる」
|
| 苦い記憶から、『弓兵』は呻いた。
| もう大切なものを奪われるのは御免だ。彼はまず凛を見て、次にアリカを一瞥した。
|
| その視線に気付いたのはシックスだけで、しかし狂人は言及しなかった。
|
|「えらく弱気だな」
|「本当は殺したいほど憎んでいる。
| だが、桜を救える可能性があるなら、間桐慎二の意見を優先させるつもりだ」
|
| ロストスキルの言葉に肩をすくめる『弓兵』。
| 一瞬放たれた殺意は冷たく、臓硯への恨みの深さが窺えた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿_ ｌﾆ＞‐ '´￣￣￣｀ ｰ＜三三/
〈三三二ﾆ―‐- ､ ＿＿＿ ｀ヽ|
∨三三三三三三三三三三三三二二ニ￢
ヽ三三二ニニﾆﾆニ二二三三三三三／
Ｙ´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:＼::.:｀ヽ::＜三／
. ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::､::.::.ヽ、::.｀、:l:T
｜::.::.::.フ７￢‐､ヾ､:＼>､:|-ﾍ::.::.}::!:|
{::.::／代了圷ﾐヽ. ＼行‐t予l:ﾉ/::|
!::.::.::.:| ゞ-'′ ＼ 辷ｼ '/:/::./
|::.::.::.:ゝ , 厶ﾉ::.;′
ヽ.::.::l|ヽ、 r-､ ／::.::/ 保留にしてもらっています。
＼:ﾄ､:j＞ ､ _,.ィ:´::;:l:: /
ヽ ｀ ,.ｲ ｀¨´ ﾄ､ﾚ'|/ |:/
__,. '´＿＞v＜ ｀ヽ、′
┌イ ／／了,ﾊ＼＼ヽ ｀┬ｧ
／7 | { く／ノ/引ヽヽノﾉ | }-､
. /:.:.:.:{ | ｀ｰ'´//l弓| |｀ｰ′ | } :.:l
/:.:.:.:.:.{ | // ]弓ﾄ､ヽ |「 :.:.|
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|「しっかりと決めておくべき問題だとぜったいあくおもう。後でゴタゴタするよ。間違いなく」
|
| 時にいけしゃあしゃあと正論を吐く。厄介な老人だと、蒼星石は舌を巻いた。
|
|「先に決めたら流血沙汰になるお」
|「というか、すでになりかけていたな」
|
| するりと、やる夫とやらない夫がフォローに入った。
| 凛の心の引き金は軽い。口と同時に手が出て、相手をタコ殴りにする。
|
| シックスは床に散らばった慎二の前髪をチラ見し、自分の頭部を庇った。
|
|「ぜったいあく地毛なのが自慢だから！ 『元老院』でも優位を保ってるから！」
|「訳わかんねーお」
|
| 完全に禿げあがった臓硯や螺旋王と比べたら、確かに優位も保たれよう。
| やる夫はシックスのふさふさなワカメ頭を凝視した。
|
|「そもそも、間桐臓硯殺害を大々的にうたっては、貴様らは我々に協力するまい」
|「それもそうだね、だがゆめ……ええと？」
|
| 『弓兵』を肯定しつつ、反語を用いようとしたキュゥベぇが小首をかしげた。
|
|「ゆ、『弓兵』で頼む、伊集院殿……」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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', ';:.:.:.:.:.＼ ／.:.:.:.:.:;' ,'
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, ´￣∨.:.:／ ＼:.:.∨￣｀ 、
／ .: :. ＼
. ; ' / ': 丶: .
. : / ; , .::;;;;::. 、 , .::;;;;::. 、 ; ヽ: .
.:.:.:/ ｉ: ｲ .;'⌒しﾊ ｲ .;'⌒しﾊ .:ｉ ':.:.:.
:.:/ :|:. 人:ヽ...ノ.:ﾉ 人:ヽ...ノ.:ﾉ .:|: ':.: では『弓兵』殿。
/ :.|:. ｀''ｰ ´ ｀''ｰ ´ :|.: ' ボクらが間桐臓硯を排除することに
.:.:.|;: .:;|.:.:. 極めて好意的であると言ったらどうするかな？
.:.:.:.ｌｌ:. .:ｌｌ.:.:.:.
.:.:.:.:八: . . :八:.:.:.:.
.:.:.:./.:.:..＼: . 'ｰ‐'＾'ｰ‐' . :／.:.:.ヽ:.:.:.:.
.:.:.:/.:.:.:.:.:.:. ＼ : : . . . . : : ／ .:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.
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| キュゥベぇはいつものようにガラス玉のような赤い眼球を光らせ、
| 感情を感じさせない表情のままで言葉をつづけた。
|
|「別に殺してしまっても構わないだろうと、そう言ったら？」
|「信じられないな」
|
| 淫獣の甘言を、『弓兵』は切って捨てた。
| その眼には強い警戒が見える。
|
|「ぜったいあくも、ぜったいあくも！」
|「転ぶと危ないからやめておけお」
|
| 両手をあげてピョンピョン跳ねるシックス。案の定ずっこけた。
| 顔面から床板に激突し、静かになる怪人だがどうせ勝手に復活するからとだれも興味を示さない。
|
|「勢いでフリットも殺してくれないかなぁ」
|「何言ってるんでだすかぁ！！」
|
| シックスの言葉にキオが爆発する。
|
|「じーちゃんの何が悪いんですか！？」
|「ぜんぶー」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿
,.ィ'´,ｨィィ三≧ｰ､
,イ////,イ//l/ﾉﾊミヽ
{ﾊl/lﾉﾉ//ｲ川lﾉl_,Vﾘl|
. Wﾊ{｛lｲﾉﾊl|ljﾘfti'〈川、
ﾉﾘ八ＷｲﾊW{f｀~ ヾﾐ、
,:'ｲf{i{lﾘﾊ､!ｿﾉﾊﾘ､＿rfﾘﾊ はっきり言って『元老院』の三人が親『教会』派で、
!ｿﾉﾉﾉｼノ'ｲ/l|l|{ﾄ,､了ﾘﾉ｛ 一人死んでてぜったいあくはぜったいあくじゃん？
彡彳≦､ノﾊlili｛tﾘ洲}i! (_
::::::::l｡ヽ:.:｀l!ｿli|》ｼﾊｼﾊ､ バランス悪い。ころして減らそう。
:::::::::l｡::ヽ:ノ:.:ﾘ/少<ﾊﾐ}）
::::::::::l｡::::ヽ:.,ｲ}!:.:｀ヽ|jﾘﾒ,、
:::::::::::|｡::::::',{l/:、:.:.:.||`'（
:::::::::::|_:_:,:::ヾ､:.',:.:.:ﾉ:〉
:::::::i:::::/:::::::::l:.:.:.;:./:/
:::::::|::〈:::｡::::::|:.:.:.;｛l_ﾄ、
:::::::|::::ヽ:｡:::::|:.:.:.:.ヾ}!:'、
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|「いや、その論理はおかしいお」
|
| やる夫の言葉に、シックスはごろりと仰向けに転がった。
| そして手品じみた動きで、膝を屈伸させずに立ちあがる。風も無いのに髪が揺らめく。
|
|「どこがだい？」
|
| 挑発的に嗤う怪人は、老人とは思えぬ生気に満ちた目で、ぐるりを睨めた。
|
|「このままではバランスが悪い。余りにもだ。
| フリットは元より『教会』とベッタリ、臓硯はその方向にシフト中。
|
| ロージェノムも何となく『教会』寄り。しかも前二人は志摩子ちゃんを大事にしていない。
| 『血族』が今後も『血族』として有り続けるには、『教会』とは適度な距離が欲しいんだよ。
|
| 無敵の戦闘能力と政治手腕を誇った夢宮の鬼ババアは死んじゃったし、
| 『結社』と『教会』のパワーバランスに介入してた野郎は即身仏になっちゃった」
|
|「オニババアって何よ」「即身仏にはなりたかったな」
|
| シックスの言葉に、アリカとキュゥベぇが不満を垂らした。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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AA出てたっけ？
_ ,, .... ,,、＿_
／ｨ彡彡彡'三三≧､
, 'ィ//ﾙｲ,ｨ/ィ彡'三三ミ≧､
,!ﾉｲｨﾉﾊfr'ﾉｨ//r''^`ミﾐヾミ'､_'、
/!/fｗﾘ八l|l|/,イ ヾﾐ'､ﾒﾐ､_ヽ、
{i |l|W小fﾘﾘﾉ/}_|_ l|l｛{ﾄミヾﾐゝ､__,
）!l|l|fﾘﾉﾊfi{fﾓﾘﾐ;ゝ:ｨ'tiﾃ!lﾄﾄﾐｿ}｝ ヽ｀`ヽ
,川h{i洲{｛ﾘ丁´ l:{:｀~尢',l|l|巛 ＼ '､ 今後の『血族』において一番大事なのは、
ﾘﾉﾉ八ｲﾄﾐメ、 ':,:.:.ﾊﾐﾘ!ﾄ､ﾐヽ、 ヽ 優秀な志摩子ちゃんや謙信ちゃんを守ること。
ノｨｼｲ卞ミﾐヾ,､}＿ｰ_',:./ﾊ｝}l{ ヾミ'、
,.彳｛{/ﾘﾄﾐ',',i|､l｀ﾆﾆ,´ｨi{l｛lﾄ't'､ ｀',ﾘ そう考えると老害はさっさと死ぬべきだよね。
,. '´:/:::::|jﾂ ﾘ}}iliﾘt洲Wjﾘﾂ}｝ﾘﾄ､',ﾐヽ ゝ
'´::::::::/:o::::|{ヾﾊﾘﾊ{ゞ'､' 'fｼ'､//{｛!ヾﾐミ',
:::::::::/:o:::::::|:.:.:｀ﾒ'､(ヽ丶 j入::ヾﾘゞ,ﾉﾘヾj
::::::/:o::::::::::|:.:.:.:{:.八} | ）〈:.:ヽ:/o､fﾂ'ｰ'- 、
:::/:o:::::::::::::|:.:.:.:V､_ﾘ |::. ヾ:.ヽ:::::{il､::::::::::::ヽ ,. -‐､
:::ヽ:::::::::::::::|:.:.:.:.:∨|｀` ‐::、.:}:..:'､::jﾘoヽ::::r‐､:ゝ-､ -‐ '´ ／
:／:::::::::::／￣￣ ｀ヽ |:.:.:.ヽ::::::くr‐'､ﾌヾ_ﾌ ＼ ､_, '´
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| 自分を老害と考えていないのか、あるいは盛大なブーメランを楽しんでいるのか。
| 悪意を感じさせないシックスの満面の笑み。
|
| 無邪気なはずなのに、吐き気がするほどの暗黒を感じ、やる夫の背筋に鳥肌が浮く。
|
|「『結社』を潰したら今度は内部抗争か？ 大忙しだな」
|「こんなにもオレと『元老院』で意識の差があるとは思わなかった……」
|
| 痛烈な批判を投げるジャギと、不快感をあらわにするミスト。
| 杏子も批判的な眼差しでキュゥベぇを睨み、キオも言い足りない様子だった。
|
| だが、蒼星石ややる夫は違うことを考えていた。
| シックスもキュゥベぇも、きっとそれが本心ではない。
|
|「生憎だが、皮算用で動く気はない。目の前のニンジンが本物かの判別もつかない小僧と侮るなよ」
|「半世紀も生きてない癖にい！ 昔は良かったな！ みんな目上を敬ってた！」
|
| 両手を振り回して口角泡を飛ばすシックス。
| やはり全部確信的な言動のようだ。年齢によるハラスメント。テンプレートを自分でなぞるスタイルだ。
|
|「まあ、話し合いにもならないのでこれくらいで区切りましょう」
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／.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
/.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.
.: : : : : : : : : ::/l: ;ｲﾊ: : : : : ﾄ : : : : : : : :i
i : : : : : :;ｲ_|/__| :/ | : /ﾘ_ｊ_!_ｊ:::/|! : : ; ;
! : : : : :/!|::/ ..|/ .|::/! .i ; ｌ/ﾊ|: : : : ;
.ﾊ : : : ;li.ｉ.i/x≠ミ ﾚ x≠ミ、iﾉ!;ｨ: : :!
|;ﾍ:i'ﾘﾊ.' !;i）ﾘﾚ
ｌ/;ﾊ ,'ｿﾍ/
!ぃ ` ,.'ﾊﾚ'
｀''丶 ` ￣ ’ ., ｸ' 先月まで『結社』の客将だった
从ト .必 ´ 遠坂師および『弓兵』氏は、
ｿﾊ:: ＞ ＜ ﾄ､ 現在『血族』のアドバイザーとして行動してくださる訳ですね。
ｒ{ .{ .ﾉ {7
‐≦´ } ゝｰﾍｒ‐‐ ´_ . ハ＼
ﾊ`, ._,,.-‐''" `（:::::::r:::r'´::::::）ﾉ. `'ｰ-､
ﾉ l. } _≦´ };;;;;;ﾄ-ﾍ;;;;;;;;{ .≧、
./ / ﾚ. ） _ ﾏ/ ﾍソ ﾍ/ ≧、
/ / / ./ ( .ｉ !i ／ / .冫、
〈 ./ / ./ ｨ' .ﾉ li ／ ノ /ﾊ..}
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|「そうだな。だが、前の依頼人の情報を気軽に話すとは思わないでいただきたい」
|「『結社』撃滅作戦とやらには参加できないわ。孔明様には義理があるもの」
|
| 東田の確認事項に、『弓兵』が鷹揚に頷く。
| 感情を感じさせない、東田の無機質な視線がやる夫に向く。
|
| 一週回って戻ってきた。やる夫の話。
| 嘘みたいだけど、妄言としか思えないけれど、多方向から裏付けされてしまったこと。
|
| 『世界の滅び』。
|
|「そんじゃあ最後の議題、『ビスケットハンマー』と『冥王ニビル』についてはじめるお」
|
| でっていうの予言した終末の一つ。誠が防ごうとする破滅の形。
| あるいは、あの不人気なジャーナリストが関係する事態。
|
| どこから話すべきか。どこまで話すべきか。
|
|「木星の話かい？」
|「いきなりさよならジュピター計画から始めても、誰もついてこねーお」
|
| 一足とびのキュゥベぇに、やる夫は苦笑で返した。
| そう、やる夫自身にわかには信じられなかった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ,／ 最初から話すお。
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| 最初とはどこだろうか。やる夫は少し考え込んだ。
| でっていうか、誠か。それともあの不人気か。
|
|「まずは伊藤誠からはじめるお。あのクズ野郎を知らない奴もいると思うから、奴の紹介から。
| 誠は噂によると中世の錬金術師で近代の科学者、現代の魔術師らしいお」
|
| 極めて端的に、誠の肩書きを並べてみた。
| この眉に唾をつけたい感じ！ 突っ込み所が多すぎて困る。
|
|「質問、そいつ悪魔じゃね？」
|「やる夫もそう思うお」
|
| 訝しげなジャギの言葉にやる夫は素直に頷いた。
| 年齢不詳、自称不老不死。実際、記憶にある限り一切老けていないのだ。
|
|「アイツは悪魔ではないわ。分類上は人間かどちらでもないかよ」
|
| 本物の悪魔である水銀燈の保障に、やる夫は首をかしげた。
| どちらでもない？
|
|「悪魔を悪魔と呼ぶにも分類的な問題があるのよね」
|「アイツは、賢者の石を錬成して不老になってるわぁ」
|
| やる夫は水銀燈を見て、次にとりあえずシックスを見た。
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彡彡彡彡彡∨ノノﾉ//ﾉﾘ川l/ｲiミミ
ノｲ彡彡彡イｨﾝ/イ彡彡彡ﾉノｲトﾐﾐ
／ィ彡彡/ｨｆイ/ｨ彡彡彡彡ﾉ川ﾄﾐミ
ｨ彡彡彡ﾉﾉ//ィ彡彡彡彡(,ｲiﾘｲ ヾi
三彡彡ﾉノィ彡彡彡彡彡ｧ'ﾉﾉ/ {i|
三三彡イ彡彡ミメ＜´ ,ｲ;ｼ'ノ `
彡彡彡彡イfｦ}fﾍヾ::／／:/:.......
彡彡彡ｿﾉ/ミ王ﾆｼ':／:.メ:.:,ｨ二ミ､
彡彡ﾉﾑｲ,! / ﾘテ／ ／ } /ﾐ.ﾟti入ヾ
ｿﾝﾉ/ / liﾘ' //,'′/ | l::::｀`ヽf´i
//ｲY ,ﾉﾘ／// ,' ! !:: !l|!
///{ｨ彡'" ,'iﾘ / 、 /ﾘ} え？
/ｲ{彡'´ l{/ ノ ヽ /l|lﾘ マジだよ。
iｲﾘ/ ,.､ ﾘ／ _ ,....::::::ノ/ﾘl|li
ﾉﾉｲ, ヾﾐﾞﾅ!､＿＿ ｀`;:‐ '´ /ﾉﾊl/!
ﾘｲijｨ, l/` ‐ ､‐ミ＝==ｧ' ///ﾘﾉ,
ﾉﾉﾉﾊ} / ､、 ｀^ー- ' ,/ｲﾊﾉﾉ/
ﾉﾉﾉﾂィﾘ{!、 ｀`,―-‐',.ィﾊ}｝////,
ﾉﾉﾉｲﾂｲ}｝!,、,ｨｼi}ｨﾘ､,ｲﾘﾘ｝}////,ｲ
{´'シイﾘﾉｿ{ﾂ//ﾉｲNｲﾘ洲}｛{l｛{｛{ﾘ}
ゝ'´ 'ﾍｼﾂｲﾉﾉﾉｲ!ﾘﾘ/ﾘ'ﾉハ!l|liﾘﾒｿ
/ {/ｲｼ{｛/ﾉｲイjﾘ//ﾉﾊN!Wﾄ、
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|「与太と思ってるお」
|「ちょっとぜったいあくを信じてよ！ この目が嘘ついてるように見える！！？」
|
| 面白さのため、嫌がらせのためなら何でもしてやろうという、いたずら心に満ちた目をぎらぎら輝かせるシックス。
| 誰の目にも、彼の信頼性のなさは明らかだった。
|
|「水銀燈さんを信じてるけど、シックスはちょっと」
|「ちょっと？」
|「いやすごく。ものすごく信用置けないお」
|「しょっきんぐ！ おん ぜったいあく！」
|
| 適当な英語を叫ぶシックス。
|
|「賢者の石の不老性というか、魔術を極めて神性に近づいた場合は、悪魔ではないわね。
| このあたりは曖昧なんだけれど、『教会』だと『聖人』とか呼ぶし、中国だと『昇仙』かな。
|
| ちなみに日本だとあまり聞かないわね。仏教的にはホトケになるのは摂理だし」
|
| 中国文化の流入の関係で、仙人になるパターンは多い。
| 浦島太郎など有名な話だろう。
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／:::::::::::ヽ
＿＿＿ﾉ;;;::::::::::::::::::ヽ
|:::::::::::::/;;;:::::::::::::::ヽ::::::＼_
ﾄ|::::|:::::::;;;;;;:::::::::ヽ:::::ヽ::::::::::ヽ､
|:|:::j:::::::|ヾY''´):::::）::::::::):::::ﾊ::j
j:|:::{:::::::ヽ (::::（::(ヾ::从ミ:::ヽ じゃあ、うちのじいさんも、
|:{:::::ヽ::::人 ）ｲｨt7ﾊﾉ/^i:::ヾ 不老性を保った人間かもしれないのか？
`ﾄ(::::::j:::汽ｿ ゝ' ¨ /::/
(''ｿヽ｀¨ , ﾊ;）
',. r-ｦ / .l)
丶､ ￣ ／ |､
|｀==.´-一ﾞﾞ:.:t＿
＿＿＿＿＿,,-一'.:.:.:.:.:|:l:|:.:.:.r.yヽ:.:.:｀ｰ───､
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| 尋ねる慎二の声からは、確認的な要素しかなかった。
| 彼は自分の祖父が人間ではないと思っている。悪魔であると確信している。
|
|「『万魔』と同じ性質なら悪魔になるわ。人間の定義ってものすごく曖昧なんだけれど」
|「誰が定義付けしてんだお？」
|「『教会』」
|
| 三四の答えに、誰もが納得＆仕方ないのため息をついた。
| というか、『教会』による分類であるなら、仙人はよく人間扱いしてもらえるものだ。
|
|「きょ、『教会』もヘブライの神以外はすべて邪教だとまでは言っていないわよ！」
|
| 誰に聞かれた訳でもないのに弁護じみた言い訳を叫ぶルカ。
| それはつまり、彼女自身がそう感じたということだろう。
|
|「極端な話、それこそ悪魔変身能力などをもつ異能者の境界線は本当に曖昧だ。
| 北欧や、ネイティブ・アメリカンなどのトランスして異能を発現する戦士は、『教会』の扱いじゃ悪魔さ」
|
| キュゥベぇが皮肉な調子を一切交えずに説明した。
| 完全に胸三寸というところか。
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ぜったいあくのせいで真剣な話し合いの空気さんがちょくちょく息をしなくなって困る
＿＿＿
／ ヽ､_ ＼
／（● ） （● ） ＼
／:::⌒（__人__）⌒::::: ＼ 判断基準が『教会』だと、
| ｌ^l^lｎー'´ | 野郎はやっぱり悪魔だと思うお。
＼ヽ L ／
ゝ ﾉ
／ /
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| やる夫は苦く笑った。誠は非人道的な魔術師だ。
| 区別するなら確実に『結社』側だろう。だが、一応独立の魔術組織の首領らしい。
|
| そういう意味では、立場は遠坂凛と似ているのか。
|
|「何見てんのよ、見料とるわよ」
|「どうしてお前さんが見料とるんだ」
|「大丈夫、本人に分け前を分配すればお互いwin-winよ！」
|
| 脇で霊夢とジャギがじゃれ合っているが、とりあえず放置。
|
|「あいつは『黄金の』……何だっけ？」
|「もー、やる夫さんったら『タレ』よ『タレ』。魔術結社『ゴールデン・スープ』」
|
| むき立て卵のように艶やかな唇で、水銀燈が大変美しく発音した。
| 違う。絶対違うとやる夫は確信する。
|
|「『黄金の夜明け』のアレイスター・クロウリーでしょう」
|
| 苛立ちを隠さずに凛が正解を口にした。
| ギュッと寄せた眉、への字に曲げた口。あまりいい印象はないようだ。
|
|「商売敵かお？」
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ヽ///////ヽ/:::::::::::::::::::::::::_:::,､:::::::::::::::::::::::::ヽ///／:|
＼//////::::::::::::::::,:::::::::lミ､ｲ､::::::､:::'，:::::::::ﾑ/＼::::|
'＞､//::/:::::::::::/:::::::: | ﾏ::::|::::|::::|:::|:::::{///＼
}／/ｲ::l:::::{::::: |::: |!::: | |::::}::::}|:::|!::!:::::|//ｨTﾑ 中立の魔術結社としては最大手よ。
. ,ｨ/// |: |:::: !::::::|ﾏ:|Ⅵ:| |::/ｨ7 }:ﾘ-|:::ｲ_//::::{::::. 協力体制にあるわ。
/>ｰ､/ {:::| :: |::-ﾘ-::|-ﾏ{ }ｲ,ｨて㍉､}:/ﾘ,::::::::::ﾑ:::::､
|:{/∧{ﾏ: |::{ ｨ斥㍉ 之z ｿ/ｲｨ }:::::::::::::ﾊ:::::＼ 本人の人となりは嫌いだけど。
}:::::::::::::{从､ 弋zソ ¨´ ﾑ /::::::::::::::::ﾑ::::::: ＼
j!::::::::::::::ト､ ﾑ , /-':::::::::::::::::::::::}ヽ::::::::::::.
,::::::::::::::::|:::::ゞﾊ _ ｲ!:::j::::::::::::::::::::::;':.:.:.ヽ::::::::::.
,::::::::::::::::::!:::::::::::::ヽ、 ´ ／:.:{Ⅵ::::::::::::::::::::/:.:.:.:.:.:.，:::::::i
. j::::::::::::::::::|:::::::::::/´:.ヽ＞ _ ..::'／:.://:::::::::::::::::::,.:':.:.:.:.:.:.:.:}:::::::: !
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ﾏ:.:.:｀ー:i´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.r,:.:.:./:::,'::::::{::://:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,'::::::::::::|
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|「あら！ 仲良くなれそうじゃなぁい！」
|
| 手を叩いて喜ぶ水銀燈を、凛が胡乱に見つめた。
| 四十近いという実年齢よりも、十歳は若く見える美魔女であるが、
| 本物の美の化身を前にしては己の老いを意識せずにはいられないのだろう。
|
| 実際筆者も三十を前に白髪を発見し、戦々恐々した。
| 年齢から考えるとなにもおかしいことは無いし、覚悟はあったつもりだが、
| いざ実際に己の老いを視覚で確認すると、動揺せざるを得ない。
|
| 同じように、美とは何ぞやを追求し続けた芸術家たちが、ついぞたどり着けなかった回答。
| 不朽にして完全なる美を前にしては、さしもの魔女も己を顧みざるをえなかったのだ。
|
|「とにかく誠は魔術結社首領で、日本でも怪しい宗教法人経営していて、
| 毎週著名人を集めたいかがわしいパーティーを開いている、私立の学校理事だお」
|
| その例のパーティがいわゆる乱交であるという話は控えた。
| この場には女性も多いし、わざわざ言う内容でもない。
|
|「最後の一つだけまっとうだな」
|
| 慎二の言葉に、やる夫は苦笑する。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | 学生を使って人体実験してるお。
＼ ｀ ⌒´ ,／
r､ r､／ ヘ
ヽヾ 三 |:l1 ヽ
＼>ヽ/ |｀ ｝ | |
ﾍ lノ `'ｿ | |
/´ / |. |
＼. ｨ | |
| | |
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|「人体実験と聞いて！」
|「アンタじゃねえ、座ってろ」
|
| 立ちあがったシックスを、杏子が大人しくさせる。
| キュゥベぇや皆の対応から、ここに来るまでは対処に困っていた『元老院』に、
| 案外と雑な扱いをしても問題ないと悟ったのだろう。
|
| おとなしく正座するシックス。しかし、ぬめぬめした前髪の下の双眸は爛々と輝いていた。
| 人体実験に興味深々なのだろう。
|
|「何らかの素質がありそうなメンバーをなにか発生しやすい環境に集めて、
| 一年間放置する余興とか抜かしてやがったお」
|
| この時のシックスの表情を分かりやすく説明すると『ガッカリ』であった。
| 顔だけではなく全身でそれを表現し、足は崩れ体はだらりと板の間に横たわった。
|
|「そーれーしってるー」
|「誤解の無いように言っておくと、伊藤氏の実験は『教会』の許可を得ているんだ」
|
| 杏子の頭上で、キュゥベぇがかぶりを振った。
| ルカが大きく目を見開き、白い小動物とやる夫を見比べる。
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＿
｢ ＼ ＿＿ ／⌒ｧ ） ｀丶
ヽ ´ ｀ / / ヽ
＼ く ／ ）
∨ ● ● Ｙ ﾉ 動きとしては『異端審問官』のそれに近いね。
_|{ ､_, ､_, 八 ,′ 東京近辺で異能を持ちそうな異常な子供を集める。
／ 八 ｲ 丶. /
⌒＼/ , / ｰｧ Ｔ´ { ＼／＼ 一部はボクらがスカウトし、手に負えないのは殺処分だ。
（ （⌒>く.／ / . : / ',: :ヽ 〈） ）
＼{／ : : :/ : : / ヽ-ﾍ . : : ／／､
／＼＼＿∧: : ,′| ｉ ｉ | ∨∧／／ : : :＼＿_
（＿ﾟ: :｡ ーｧ‐' : ; | | | | ー‐く: : : : :｡: ﾟ : _ノ
/ . : : ｡人: : :.:| | | | | } ＼: ｡ : : : :）
（_／{:_:/ ＼: iヽ 丶ソ 丶ソ ノ ＼_ﾉ￣
￣⌒ ⌒￣
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|「あ？」
|
| キュゥベぇの細い首に、下からにゅっと伸びた指が絡まった。
|
|「おい、テメー。今なんつったよ？」
|「待て待て、佐倉杏子。キミは幸運な少女だ。『教会』の殺害対象予備になってはいたが、
| その前にボクら『血族』が保護をした」
|
| 心当たりがあるのだろう。氷のように冷たい目でその細い頸椎をへし折らんばかりに力を込める。
| 近くにいたやらない夫が肩に触れ、杏子は乱暴に振り払った。
|
| それで多少は冷静さを取り戻したのだろう。
| 解放されたキュゥベぇは、逃げ場を求めてやらない夫の肩に上る。
|
|「乱暴だな、佐倉杏子。だが安心して欲しい。ここ二十年は誰も処分されていない」
|「つまり二十一年前に処分があったってことか？」
|
| やらない夫のトゲある言い方に、しかしキュゥベぇは頷いた。
|
|「仕方が無いことなのだけれどね」
|「『魔神皇』か」
|
| 中空を見据えて眉をしかめる『弓兵』。ちょうど彼と前妻が高校生の時分だ。
| 『女神転生 if』1994年発売です。
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_ ,, .... ,,、＿_
, '/ｲ,ｨ/彡'三ミ≧'、､
ｲｨﾉﾊfr'ｨ/r''^`ミiliiﾐ'.ヾ'、
/!/fｗﾘ八l|l ll;ヾﾐ'､ﾐ_ヽ、
r!f;/ｗl|l|/,イ li_｛{ﾄミヾﾐゝ､_, なんにせよ、ぜったいあくも
{i |l|W小fﾘﾘ}; i /:::ｨ'|tiﾄﾄﾐｿ}ミ≧､｝ ヽ｀ 『血族』も『教会』も『結社』も
）!l|l|fﾘﾉﾊfifﾘ: i `|F彡ﾊﾐﾘ!ミ≧､ﾄ､ﾐヽ そのことは知ってるよ。
川h{i洲{liliiﾘ |:: li /ﾊ｝|巛}l{ ヾミ'、
ノｨｼｲミﾐヾ/ - ;; /ﾄﾐ｝}lﾄﾐ{ﾄ' ｀',ﾘ 『血族』関係の子供は
,!ﾉｲｨﾉﾊfr' ー―― ″jﾘﾂ}｝ﾘﾄ､',ﾐヽ あの学校に入れば仕事があっても
彳｛{/ﾘﾄﾐ',,i|､ ＝_::: ｨi{l｛lﾄ't'､｛{ﾄミヾﾐゝ､ 出席日数関係ないし。
ﾘ}}iliﾘｿﾉﾘfr洲Wrッﾁ/ll;ヾﾐ''三三ミﾐ､_ヽ、
＿ﾉ',:./ﾊ,!ﾉ :::ﾊfr'ﾉｨ// /::: `ミﾐヾミ'､_'、
,、＿,;;;;;/ i ヽiil ::::::i / / ヽヾﾐゝ､__,
／ ／ ｜ ヾ / / / ヽ
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| ズッブズブの関係のようだ。だが『結社』も？ やる夫が眉をしかめる。
|
|「あの学校なら外から手出しできない。
| いくら『結社』がアウトローな組織でも、教育はおろそかにできないからね」
|
| キュゥベぇが何事も無いかのように語る。
| おのれ誠め、そうならそうと言ってくれれば。
|
|「じゃあ、それはいいや。とりあえず、そこのクラスで今年問題が発生してんだお」
|「聞いてない」
|「問題発覚から一週間たっておりませんお。恐らく事実確認の途中」
|「……どんな問題でおじゃるか」
|
| 針の筵のキュゥベぇに代わり、麻呂が質問役に回って来た。
| 彼もまた、誠の実験については知っていたのだろう。
|
|「なんでも夢の世界で戦ってるらしいですお」
|
| やる夫の言葉は、この場にいた八割の人間を呆れさせた。
| 異能という超常現象の世界に住まう彼らでも、信じられるものとそうでないものが存在するのだろう。
|
|「夢鏡に中の世界なんてありませんよ……ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから」
|「妄想乙」「夢の中となると再現性が無いなあ」「証明できないと無理ね」
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_,. --==､､ ,. -一…ｰ- ､
／´ __ﾝ'´ -‐-､ ｀ヽ、
／ /´r ヽ ､ ヽ ヽ、
/ / | ､＼ ＼ ヽﾆ ,lゝ
l l ヽ ＼ lヽ､ ＼ l ', / |,〉
| ', | |＼ | ｀,.-―`ｰ-ヽ! !_,. ﾉ! あ、夢の中の能力を現実で使える人がいるよ。
ヽ._ ＿,r‐ｧ_ヽl,ゞ-__｀` ィﾃ心 ﾘ l,=､/
,r‐ｧ'一'二r_ァﾍ. /f:心 弋zｿ ﾉノ ﾊ}}
,r_ァ'´ __/,. '´ ,rﾍ. ﾋzﾘ 〃o_/
_,r‐ｧ'´ _/／ //__ﾍ、 ' ＿__ {{/!/
／ /´ f ノ ﾊ! ヽ＞ ､ ヽ._ﾉ ／ヾ|-､ _,. -‐ァ､
__/ ／ / j / ヽ __l≧=r ' ´ ,. '´ `!__／´ / /
/ /´ { / ヽ-､ 人 `r‐''´ /// ＿＿ ', /_
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_/_／ 〈 }_ l ｀`ー ﾝ f7 ｲｲ,Yl〉ﾍ ／ //､ l--､/‐'_/
/ ! l _!_ ／L__ , ' l´l ! ヽｲﾆ!}-‐`´ ﾊ // ｀丶ﾞl |､ /､
〈 ,ノ ｀,L__,ゝ､ ｀!_/ ヽ!| ╋|! || ／,.ｲl ! /､ L| |_二l
{ミ} ／ }'´ヽ /´ l ＼ (.) ,r‐ '´ﾆ-‐' ||､＼{_､｀¨ !
／ ! ,. '´ ＜ノjノ ヽ、ﾍ 丶、 ＼ﾞｰ'´ |! ＞､ } l
. ! | /
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| アリカの言葉に、野次が停止した。
| しかしそれでも夢の中の世界などという妄想じみた言葉の説得力はない。
|
|「夢は人間の脳信号だけれど、人間が睡眠時に魂が肉体から離れて、異界に迷い込むケースはあるわ」
|「証明することができないのが難しいでおじゃる。
| 『夢の中の異能』が、『現実の異能』に『夢の中で気がついた』だけなのか否か」
|
| 三四と麻呂の、希望を持たせる否定的意見。やる夫は頷いた。
| こういう時、本当に誠は頼りになる。
|
| 彼は伝えてくれたのだ、ハッタリの効いた、専門用語の羅列という奴を。
|
|「普遍的無意識を悪用した共有認識による刷り込みで夢を介した特定異界への肉体を介さない接触」
|「メモを見ないで言えたら完璧だったな」
|
| 嘲笑う慎二。しかし、彼自身小難しい単語の羅列を理解していないようだった。
|
|「とりあえず後半は理解した」
|「それより普遍的無意識なんて悪用できる訳ないじゃない」
|
| 腕を組んだ魔女が考え込見ながら否定した。
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ﾄ､ ,、
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从:.:|:.| ヽ| リ´ |:.:/ ｀:.:/.:.:.:/.::.:.:.:.:.::.:.:i.:.:.:.:.:.:|
. |.: 丁j￣ 丁j￣ V レハ:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.|
. |:.| ｀ ´ ｀ ー ミ:.:.:.:.:.:.:.i .:.:.:.:.:| アレは人類が正気を保った状態で
. |:: ､:: ヾ ⌒Y:.: } :.:.:.:.:| いじくるには『根源』に近すぎるわ。
|::! )⌒ /:.:/.:.:.:.:.:.:|
/:人 /____ノ:./.:.:.:.:.:.:.:.| ああでも、クロウリーか。
/ :.:.:.:.＼ － ｲ:.:.:.:.:.::/.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
.′:.:.:.:.:.:.:.:ゝ . イ:.:.:|.:.:.:.:.V.:.:.:.:.:.:.:i.:.:.:|
. ,.::.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:/_ー_＿＿＿|__:.:|:.:.:.:V:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.ﾘ
. /.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:./「: : : : : : : : : : : :|:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:. ﾚ人
. . .:.:.:.:.:.:.::./.:.r―＜_: : : : : : : : : : :ﾉヽ_(:.:.:.::.:.:.:.:.::.:.ヽ.:. ＼
. /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ: : : : : : :ー: :―: : : : : : : : ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.:.:ヽ
. 〈:.:.:.:.:.:.::.:.:.／: : : : : : : : : O :∩: :O: : : : : : : :＼:.:..:.:.:.:.:.:.:.::):.:.:.:.〉
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|「クロウリーならおかしくないわね」
|
| あっさり認める凛。この魔女に認められているとは、誠はどれほど大物なのだ？
| 今更ながらにやる夫は自分の兄貴分を小さく見積もっている可能性に気がついた。
|
|「だが、インクィジター＝サンの襲撃は免れんぞ」
|「誰それ？」「コトダマ空間の門番だ」
|
| ロストスキルが神妙な顔で呻いた。
|
|「一部のニンジャは薬物と呪文でトランス状態に陥り、未来予知などを行う。
| 彼らユメアルク・ジツの使い手は実際発狂しやすい。
|
| プロイセンの哲学ニンジャのコトワザは有名であろう？」
|「ニーチェはニンジャだったと？」
|
| 然り。厳かに頷くロストスキル。
| 『おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ』。
|
| 『善悪の彼岸』においてニーチェが語った言葉である。
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_,,.. ..,,_
, ＜´ ｀＞ 、
／-― ≧ニ=- 、＼ ＼
/ ／´ ＼ヽ / ノヘ
/ , / | ｀¨´ |l
; ／ 〈 ﾉ |l
|／ ﾉ , - ､ |l
| ｨ’ ／ ＼ l 〈
レく | ､＿ ＼ _ | ノﾍ/
〃へ ヾ ､ o ￣`ヽ｀ ｨ≦ ｨ /
{ } | ￣￣彡 |°-' |
、 ヽ ＼ ! |｀ / 未来という狂気を覗き続ければ、
＼ｰ' | | ｌ | ／ いつかはその者自身が狂気に犯される。
_ﾉノ`ｰ/ ∟、 _ﾉ /
厂` ＜ ｛ ＿＿ _ / 我々ニンジャは幻視の向こう側でこちらを除く、
ノ ｀丶l＼ ´ ＿＿ ｀ / 狂気の怪物の存在を確信しそう呼んでいる。
｀ﾌ冖￢ｰ-､ ＼ `丶、 {
／ ー―- ＼ ＼ ＼ 〉
/ ――――- 、丶 丶 _ ト-----‐'
＼ｰ- ｀二丶
＼ ￣`＼
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| やる夫はふと、『やる夫の中の入即貸本』を思い出した。
| あの『世界』を作り逃げ込むまでの、強烈な死の寒さがフラッシュバックし身震いした。
|
| 『鏡と茨』に外套を借りなければ、ロストスキルの言う『インクィジターの犠牲者』になっていただろう。
|
|「そもそも、普遍的無意識ってなーに？」
|「お前は知ってるって顔に書いてあるお」
|「知らないけど聞けない恥ずかしがり屋さんのためにぜったいあくが質問したのです」
|
| やる夫は蒼星石を見た。蒼星石も首を振る。
| 専門分野ではないから詳しい説明ができないのだ。
|
| ではだれに？ ふと気がついて、やる夫は三四を盗み見る。
| 彼女は悪魔や神の第一人者だ。が、何とそっぽを向いている。
|
|「鷹野先生頼めませんかお？」
|「ユングなんて専門外よ」
|「えー」
|
| ではシックスしかいないのか？ 心底嫌そうなやる夫に、老人はしたり顔で頷いた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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_ ,, .... ,,、＿_
／ｨ彡彡彡'三三≧､
fr'ﾉｨ//r''^`ミﾐﾐﾐﾐヽﾐﾐヽ ｷﾘｯ
ｿﾉ八l ヽ!l|l|lﾄﾄゝﾐ
〃 {_{＼ ／!l|l|lﾄﾄゝﾐ
li':./ﾉ● ● ﾄ'ﾘl|l|l|l|lﾄ
川|l ､_,､_, |l{lﾘﾊﾄl|l|､} 頼ってもいいよ。
l|i ﾘ}}iliﾘﾄ､',ﾐ
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|「人間の無意識には階層があるんだ。そしてその深層には、個人の意識とは別の意識構造が存在する。
| ユングはそれを集合的無意識、あるいは普遍的無意識と呼んだ」
|
| ドヤ顔で笑うシックスを無視し説明を始めたのはキュゥベぇであった。
| 先ほど株が急下落したのを取り戻すためだろうか。
|
|「個人的経験や確執、自我から発生する個人的無意識の逆で、
| 人生や好き嫌い、トラウマなどとは無縁の無意識さ。
|
| 国籍や言語を超越した人類全体の共通分野、例えば神話や言語、道具の類似性かな。
| 原始的人類が無数の天才的発明をして文明を作り上げる過程を想像してほしい。
|
| イライシャ・グレイとグラハム・ベルの逸話は知っているかい？
| ダイムラーとベンツは？
|
| 世界中に存在するドラゴンの姿が似ている理由を説明できるかい？
| マンモスを駆逐したアトル・アトルは？ 製鉄技術は？」
|
| とりあえずグレイとベルは電話の発明者だ。
| ほぼ同時期に二人は電話を発明したが、特許申請時間の差で、現代まで語り継がれる名はベルになっている。
|
| 同様に、ダイムラーとベンツもほぼ同時期にガソリン自動車を完成させた。
| まあ、彼らに関しては二人とも己の名前の車会社が今も残っているので知らぬ者はいまいが。
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／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ 誠によると、
| （__人__） | 件のクラスは普遍的無意識を
./ ∩ノ ⊃ ／ 魔術的にいじりやすいようにしてあるそうだお。
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| それこそが誠の言う、『何か起こりやすい状況』だ。
| やる夫の言葉に、三四や凛が考え込む。
|
|「魔術論理に関しては本人を問い詰めないと難しそうですね」
|「でも、十年二十年の話じゃあないんでしょう？
| だったら積り積った儀式結果があるわ。塵も積もれば山よね。歳月には敵わないわ」
|「素質のある子供を普遍的無意識下で接触しやすくしておくんですか？」
|
| やる夫はふと、ちょっとした想像をした。
| 早い話が無意識でクラスの誰かを考えやすくなっているみたいなものだろうか。
|
| 無意識、夢の世界で。クラスメイトの夢を見やすいということだろうか？
|
|「なんか思春期の子供たちがお互い意識し合ってドキドキしそうだお」
|「え？ 例のクラスのカップル成立率は300％を越すよ？」
|
| いきなりシックスが怒濤の数字を叩きだしてきた。
|
|「ちなみに300％っていうのは、一年間の間に一人平均三名と恋人状態になるって言う意味だよ」
|「やる夫ゼロだったお」「安心しろ、オレもだ」
|
| 視線をさまよわせるやる夫とやらない夫。
| 生々しく衝撃的なデータに頭がクラクラした。
|
|「だいじょうぶ。ぜったいあくのデータは絶対。100％嘘」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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(>>465)8 なにごともなかった
(>>466)9 なにごともなかった
・敵勢力のアジトを発見！
・踏み込みます
『敵陣』
屠殺刀 長柄 LV015 ボス
ナイフA 投擲 LV10
ナイフB 投擲 LV10
ボーラA 投擲 LV10
ボーラB 投擲 LV10
・敵ボスは卑怯なことに街中で大きな剣を振り回している！！
(>>467-515)
メディチリング「この構成……え？ 私、狙われてますの？ あ、攻撃は失敗。
メディチリング「ナイフはよけて、よけて、ボーラもよけて、よけて。
メディチリング「……無傷ですわ！
さすまた「ガードのおかげで盾が削れただけでい！
ショートソード「無傷。
鉄棒「あ、転んだ。ナイフが二本刺さって……負傷止まり。
棒手裏剣「屠殺刀が《とどめ》持ちだったら死んでいたな。屠殺刀にクリティカル。
さすまた「ナイフBを転ばせたぜい。
棒手裏剣「追い打ち！
鉄棒「転んでるから当たるかな……ナイフBに命中。
屠殺刀「ぐぐ、毒のせいで外れだ。
ショートソード「三発命中。屠殺刀とナイフAを重傷だ。
『第三軍』
鉄棒 槍 LV08 【負傷】
中威力x3 軽鎧 《鎧通》
ショートソード☆ 短柄 LV05 【壮健】
中威力x3 鎧 盾 《疾風》
さすまた 待伏 LV09 【軽傷】
転倒x2 軽鎧 盾
メディチリング 暗殺 LV07 【壮健】
極小威力ｘ1 素肌 《出血》《必中》《鎧通》
棒手裏剣☆ LV06 【壮健】
小威力x1 素肌 《射撃連携》《毒》《隠密》《強打》
『敵陣』
屠殺刀 長柄 LV015 【死亡】
ナイフA 投擲 LV10 【重傷】
ナイフB 投擲 LV10 【重傷】
ボーラA 投擲 LV10 【壮健】
ボーラB 投擲 LV10 【壮健】
・勝利！
・MVP：メディチリング
・LVUP：棒手裏剣☆、鉄棒、ショートソード☆
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./::::::::::::::;ﾊ:/ゝ、::::::::::__:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
i::::::::::::;ﾍl ヾ ,,'ﾆ¨--¨ﾆ､‐-''´ヽ:::::::::::::::::!
!:::::::::::l ヽ. 7"::;:::::＿::､ヾﾞi _ヾ､:::::::ﾊ
::::::::::::i丶. l::::k'_´_o__ﾞ,!:::7 7;:::＼ﾞ¨" ,l,
::::::::::::ｌ丶 ﾞー───‐' . k'^ヽ、ﾞi ﾉ
::::::::::::ゝ ,ｧ''''"￣￣￣''ー''¨ヽ｀ﾟ'-ﾞ_,! 丿 今更だけれど、確認していいか？
:::::::::::::::〉 ,.'",ｎ. rャ ,-､ ﾞヽ､ ,ﾉ その、信じられねーが
l:::::::::::::ｉ |:::| |::::| .i:::::| ;ﾍ _ヽ.,!
|::::::::::::ｌ _,レﾍ. |:::::! !:::::l ,l:::;! i:.:i 〉 『夢の世界』に関わってんのは何人だ？
}::::::::::::! '´ ,} |:::::l !::::::! ,!:::;! ;': 7,!
!::::::::::::l ,/l. !:::::! ｌ::::::l ,!:::;! 〃.7.l ,ﾊ
:::::::::／i. ,/::::ゝ.l::::::し'::::::i. ,!:::;!.〃,/ ｀ー‐'" ,}
:::／ ｀ー､":::::::::::::::::::::::::::::::¨:::::ﾚ'!_/ ,/
:::l : : :: ゞ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ゝ.,,,＿,,,,／
:;' ; : :: ｀ヽ、::::::::::::＿::::::::/ l
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| 半信半疑のジャギの言葉に、やる夫は人数の話しを忘れていたことに気がついた。
| シックスの出任せに付き合っている場合ではない。
|
|「デマじゃないよ。正確には恋人じゃなくて肉体関係を持った確率が」
|「クラスメイト全員が『夢の世界』に迷い込んでいるらしいですお」
|
| 更に激しい打撃力の右ストレートを、やる夫は無理やりに回避した。
| クラスが30名だったからいやダメだ、考えてはいけない。
|
| やる夫とやらない夫を抜いて28名。幸運にも蒼星石翠星石は別クラスだ。
| クラス内部で平均三人と肉体関係を？ 考えるな。負けるぞ。
|
| やる夫は意識を別方向に向けることでシックスの妄言を打ち消した。
| そういえば例のクラスのメンバーほとんどは、夢世界の記憶を持たないらしい。
|
| やる夫がしばらくの間『やる夫の中の入即貸本』を認識していなかったようなものなのだろうか。
| いや、そもそも完全に記憶していないというのなら、ちょっと違う。
|
| 夢の中の人物Aと、現実の人物A。
| 二人はある特定時期までは全く同じだが、その先が全然違う。
|
| 果たして二人は同一人物と呼べるのだろうか。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／::＼,,__
┌ーヽi::::::::::::::::::ヽ￣｀',
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
ﾉ::/::/:/:::!:::::∧∧:::::::::::::::::i､:::＼
/ /:/::/::::i:::::/ ｝:::）:::ﾍ::::ﾍ::ヾヽ
{ ｛:く;;｛:::∧:（ （:::(ヽ:::::）:::ヾ::｝ }
ﾍ::)::）ﾉ￢）) ):）フ::ﾊ::::）:/
{ﾍ!:（丁;;jゝ ´「;;;j厂ﾚ!iﾍ
｛∧ ￣ ￣ / ソ 30人くらいか。
ゝﾍ ' /ノ
ﾘヘ ´ ￣｀ ／!!′
＼|＼ __ ／ |/!
┌‐┴─ｒr─‐‐┴!
___ __＿＿＿r=┤: : : : : |||: : : : : ├､,,
/: : : :: : : : : : : : : : : : : : : : 〃/: : : : : : : : :｀:ｰ:-:.:.､,,,__
/: : : : :: : : : : : : : : : : : : : : :i ! |: : : : : : : : : : : : : : : : :: : :｀ヽ
/: : : : : :: : : : : : : : : : : : : : : i ! i: : : : : : : : : : : : : : : : :: : : : : ',
/: : : : : : ;;: : : : : : : : : : : : : : i | i: : : :r＝＝===ｭ: : : :;;: : : : : : i
/: : : : :;: : ;;: : : : : : : : : : : : : : i | i: : : : : : : : : : : : : : : ;; : : : : : : i
/: : : : : ;: : :;; : : : : : : : : : : : : : i l l: : : : : : : : : : : : : : : ;;: : : : : : : |
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| そういえば委員長も、夢の中の知人と日常で同様に接して、変な顔をされた話をしていた。
| でっていうの言う、並行世界の存在と近いのかもしれない。
|
|「夢の世界とかいうものの原因は？」
|「まだ割り出せてないみたいですお。誠自身、先週まで知らなかったし」
|
|「では、どうやって知ったのさ」
|「夢の世界関係の人物から相談を受けたんですお」
|
| 周辺を目配せが行きかう。状況を判断しかねているのだろう。
|
|「正直な話、やる夫も半信半疑になってきましたお。
| でも、少なくとも六名が夢と現実世界で記憶を共有している」
|「六人だけでおじゃ？」
|
| 麻呂の疑問はもっともだ。巻き込まれたのがクラス全体なら、何故六人だけが記憶を持っている？
|
|「事件発生前に、ロキに唆されて変な儀式をやったらしいお」
|「それ特記案件でおじゃるが」
|
| こめかみに血管を浮かべ、麻呂が大仰にため息をついた。
|
|「あ、ロキはロキでもクソオヤジじゃなくて銀座の方だお」
|「Ｌの奴か」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ { /／ ｀ ｰ-､ ∧
l ､ ＿ゝ、 ／ ヽ V lﾍ
|/ / ￣ ＿ V}ハ
l { /, ‐-＼V〈 }
lハ ､ { // _ ィ〉 |/ / Ｌ？
ヽ } /ヽ ＿_ -‐' /＞'′ }_/ ああ、『糖分同盟』の。
〈ﾑ￣ 二´ﾊ '´ /!
ヽヽ =＝' l | 彼は人畜無害な悪魔だと思っていましたが。
〈＼ ´ ｣l 〉 _ イ ハ
}／｀ ー-､´-‐'__'ノ / } ＼
／ , --､___, |￣ l / l￣＼
＿,／ --､ ＼ / -´￣ l / l l￣＼＿
＿＿／.／ -､＼ _ハ､＿＿／/ l l ￣＼＿_
/ / __ ＼〉 ＼ ／ l l
| l /_〉 /l /´｀ヽ l | /
l l _.ｲ＿_／ l / ＼ / l /
｜ /´＼ l | l / /＼l| l /
! /＼ ＼.∧ l ∨＼ / / ｌ /
| ,' ＼ ｀/ l l ＼___/ / } l
l / ＼ /ﾍ l ／ ｌ / ＼ ∧ ／ l
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
|「普通はな、Ｌに言わせると『危機に立ち向かう力を得られる儀式』らしい」
|
| 苦虫をかみつぶしたような顔で、やらない夫がフォローする。
| だが、Ｌもまたシックスややる夫の父と同種、早い話が好き勝手して物事をひっかきまわすのが好きな性質だ。
|
|「誠の話では、Ｌが儀式をさせなければ、現実に夢世界のことを警告する人間がおらず、
| この世界の危機は見過ごされたまま警戒されず、不意打ちみたいに襲ってきていただろうと」
|
| そうだ。そう考えれば、あの不人気なジャーナリストは救われるのではなかろうか。
| あの、すべてが自分の責任だと思い、背負いこんでいた女にも、許しの光が見えるだろう。
|
|「夢世界は危険なのかよ？」
|「30人分の若い不満が蟲毒みたいに煮詰まってるらしいお」
|
|「30人分の若い獣じみた欲求不満がぐつぐつ……」
|「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ！」
|
| 単語だけで想像力と脳天を刺激され、ゾクゾクと体を震わせるルカ。
| 体の中枢部分の昂りに吐息を洩らすも、ジャギに秘孔を突かれ失神する。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
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´: : : : : : : : 、: : : : :＼ヘ: :＼
-=彡 ｲ: : : : : : : : : }: : : : : : :ヽへ: ヽ
／/: : : : : !ﾊ: : : : : : : /: : : : : : : : :Vjﾍ: ﾊ
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んヘ( ハ´ 丶 ﾉノ 人ゞ l;li | : : : .
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|「いつもの病気だから気にせず話を続けてくれや」
|
| 平然と抱きとめるジャギと、ルカの頭上で玉串を振る霊夢。
| 彼らには日常茶飯事なのだ。
|
|「ええと、30人分の不満や憤り、とにかく熱いパワーを凝って作るのが、
| 『影の惑星ニビル』を現実に顕現する魔力収束媒体らしいお」
|
| それを、誠や少年たちは空に見ていた。
| 道場の中では空は見えない。そもそも、やる夫には見えなかったのだ。
|
| あの時見えなかったものが今、急に見えるようになっているなんてありえない話だ。
|
|「『ニビル』って、パラウェイブ研究会のよね」
|
| 確認と補足のために、三四がその名を出した。
| 『ニビル』。その名前だけでは誰もが聞いたことあるような、無いような止まりだろう。
|
| だが、パラウェイブ研究会の名前と、白装束の集団というヒントを出せば多くの者が思い出す。
| パラウェイブ研究会は宗教法人であり、狂信的カルトであった。
|
| 教祖は寒い方にある赤い国家が危険な電磁波を使っているとか、
| 冥王星の裏側にある遊惑星が降ってくるとか騒ぎたて、メディアとインターネットで有名になった。
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／ ＼
／ ／ ヽ
/ .／／ ヽ
/ ./ ／ , ' ﾊ
i // , - ／ ,イ l ﾊ
l // ／ ／ ／ // i | i
i〃 ﾆZ ／ - ' // / : :l l
Vｲﾌ／' ´`丶 i,ｲ / . : : i l
/〉 ` -ﾐヽ`ﾄl.l / . : : :i l
/ r '´ ､じ,､.l llヽ / . : : : :/ l
/ l ヾ ,ゝ､l./ : . : : : :/ i
/ lヽ、 l ｿ . : . : : : : ｲ !
/ / : :l ` / . : : : . : : : : :/l / スカラー波って言うのは、
' ｲ : : :l / . : : : . : : : : :/: l l/ サイコトロニクス（精神工学）による感知できない電磁波よ。
.,' /l : : : :丶 ､ / . : : : : : : : : :/: : :l :l l
.l / l : : : : : :/: :7 ＞/ . : : : : : : : : : /: : : :l: l l 当然感知できないから仮説的な電磁波で、
l / .l : : : : : /: :/〃/ . : : : : :/: : :／.: : : : :i: l: l そもそも電磁的な力ではないから、
l/ l: : : : :./: /〃/ . : : : : :/: :.∠ﾍ: : : : : l: . l :ﾄ; l 仮説的に波と呼んでいるだけの意味不明のパワーね。
l l: : : :〃/ 〃/: : : : :／: ∠.......ﾍ.: : : : l: . l l l: l
l l: :.//ノ /,=i: : : :／: ／-－-ﾆﾍ.: : : :l: . .l :l l: l
l /i/ ／ l: : :／: ／ ﾍ: : : l: . l . : :l l: l
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| 三四による滅多打ち。関係者が誰もいないのをいいことに容赦なしだ。
|
|「電柱のコイル的な部分から発しているとか、白い色を嫌がるから白装束で防げるとか、
| 渦巻き模様の護符で退けられるとか言っていたみたいだけれど、ちゃんちゃらおかしいわよね」
|
| 腹を抱えて笑う三四。やる夫はふと気になった。
| 一般的な科学で解明できない波であるなら、本当に防げてもおかしくはない。
|
|「『見えない手』は色で防げるものじゃないわ。
| 当然、ただの渦巻き模様でもダメ。きちんと魔術的防壁を張らなきゃ無理よ。
|
| 共産圏が開発した『鉄のカーテンの向こうの秘密兵器』って言うのも大ウソね。
| 正確にはエリア51で日本人と共同で開発されていた超兵器ね」
|
| エリア51は合衆国にある秘密軍事基地である。
| 墜落したＵＦＯを運び込み、宇宙人について研究しているとか言われるトンデモ基地だ。
|
|「……詳しいんですね」
|「あなたほどじゃないわよ」
|
| なお、実在の人物・団体とは一切関係がありません。
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左手からフバーハ
合体魔法 スカラー波！
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/::::::::::::::::::ﾄ,::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
':::::::::::::::::::::!ハ,::::::::::::::i:::::::::::i::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ
'::::ヽ,:::::::::::ﾄ=ィﾍ:::::::::::i!:::::::::!:::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'
＼::ヽ,:::::::{ｫアキ,ヽ::::{ヽ,::::!:::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
ヾﾘ ヽ’,例 〉 `’ ﾍj:::::::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾘ
_ ,.｡ ' j夕 ．″ ノ::＞j’::::.ィﾆｬ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
l ` ” ¨’ }::::/.ィ , ;,::::::::::::::::::::::::::::::::/
} ､ ﾚ' 〈 i i::::::::::::::::::::::::i::::/
l u. .。ｨ ｿ ﾉ:::::::::::::::::::::::::i/
; r- ､ ﾚ' ”. ＜ i::::::::::::::::::::::ﾑ
', ￣ ヘｧイ j::::::::::::::::::::::::ﾊ え？
. . ィ / /:::::::::::::::::::::::::::ヽ,
i '" i /:::::::::::::::::::::::::::::::::::}
`'ｰ=ニ _＿¨ ,.｡・'ヘ: /::::::::::::::::::::j:::::::ソﾚ'
ヽ, ,.｡ '" ヽ∧::::,ィ::_.＞ｲレ'´
r'¨’ 〉く . ＞=ハ
ﾘﾊ i 1 .＞'" ',
/ _」 :i ,.ィ'’ ﾊ
〈__ / .ｲ! ／ - ─ - . ﾊ
/ / ` .｡ '´ ｀丶 ﾊ
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| キオは、超能力者キオ・アスノ少年は虚を突かれ間抜け面を晒した。
| そこでやる夫他、数名の勘のいい人間は理解した。
|
| パラウェイブ研究会が言う『スカラー波』とは、超能力のことなのか。
|
|「その、よく知らないんですが超能力者に対抗しようとした人たちがいたんですか？」
|「知らないのかよ」
|
| 挑発的に嗤うジャギを、そっと弟が手で制した。
| 不愉快そうに振り払う兄に、ケンシロウは険しい表情でうめく。
|
|「すまないがジャギ兄さん。それは俺が小学生だった頃の話だと思う」
|「ちなみにやる夫も小学生だったお」
|
| 言われて気付いたのか、ジャギが足元の巫女小学生に視線を向ける。
|
|「悪いけど知らないわよ」「アタシも」「はじめて聞きました」
|
| 霊夢、杏子、キオのような中学生以下にとって、十年前は大昔だ。
| 物心つく前後のオカルトなど、知っているはずがない。
|
|「パラの教祖はフリット様の部下だったのよ。
| 超能力で『強化されすぎて』頭がおかしくなったって噂があるわ」
|
| 皮肉っぽく笑う三四。だが、苦り切った顔の麻呂が横槍を入れる。
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,彡ニ三三三三三三三ﾆ=ヾ;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:i;:;:;:i'
,彡ニ三三三三ニ三三ニﾆ;〃ヾ､;:;:;:;:;:;::;:;::;:::;:/;:;:/
,彡彡,'',ﾆ=ﾐﾐミ三三三三ニﾆ彡 ｀ﾞﾞ''ｰ-､;:;／;;:;/
',彡'/ r' ﾉヽヾミ三三三三三彡' _,,,,,,､ヽ;:;ｨ''|
彡'|.|（‐'''" 'iﾐﾆニ三彡"´￣ ｀ﾞﾞｰ' ;;;:|
. 彡i､ヾ (' ヾミﾆ三' __,,､ ....ﾉ /
彡ゝ ｀'' " |ミﾐﾐ' ,;'´ ,, ｧ'
'彳｀ー‐i |ﾐﾐﾐ' ｀ﾞﾆｼ' |､ﾆ'
--､/ i |ミﾐ .,,r‐''" | ﾉ
く'ﾉ :i ミﾐ ´ ., ' |'
､＼ .l ヾ .ﾉ（_,,､. |
:＼ヽ, ヽ ／ ｀t‐一' それは噂で、
::::ヽ ヽ ｀::. ,; ' .:i 現実的には超能力と
:::::::ﾍ ヽ ｀::. ''"⌒ﾞ''一ﾉ 別に有していた
::::::::::ﾍ.ヽ ヽ､ ｀ ー'ｰﾉ 異能の相性が悪かったでおじゃる。
::::::::::::::ヽﾍ ｀ｰ┬‐一;;''""´
＼､:::::::::ヽヽ /::ﾍ ） ｀ﾞ'ｰ､_
〃｀ﾞｰ､;;;;＼＼ /i:::::::丿 ' , ' , '｀ﾞヽ､
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|「幻視者だったのか？」
|「そうでおじゃる」
|
| ロストスキルの問いに、麻呂はしめやかに頷いた。
| 深淵を覗く者の未来は暗い。その教祖とやらもそうだったのだろう。
|
|「彼は超能力に明確な『弱点』を植え付けたかったのよね」
|「植え付け？」
|
| キオの問いに、三四が頷く。
|
|「新参の異能である超能力には、明確な弱点が無いわ。
| 白い装束や渦巻き模様を弱点として『固定』することで、逆に強度を増そうとしていた感があるわ」
|
| 三四の説明は、やる夫の理解を超えていた。
| なにか重要な前提条件が欠けている。そんな気がした。
|
|「都市伝説などの新型の怪異によくあるシステムなんだけれど、
| 何らかの『回避方法』を用意しないと『絶対に』抵抗できないんだ」
|
| やる夫だけではない、他数名の疑問の表情を感じ取ったのか、蒼星石が解説を買って出た。
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∨三三三三三三三三三三ﾆ/
＿_ ｌﾆ＞‐ '´￣￣￣｀ ｰ＜三三/
〈三三二ﾆ―‐- ､ ＿＿＿ ｀ヽ|
∨三三三三三三三三三三三三二二ニ￢
ヽ三三二ニニﾆﾆニ二二三三三三三／
Ｙ´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:＼::.:｀ヽ::＜三／
. ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::､::.::.ヽ、::.｀、:l:T
｜::.::.::.フ７￢‐､ヾ､:＼>､:|-ﾍ::.::.}::!:| Ａという方法をもってすれば回避できるけれど、
{::.::／代了圷ﾐヽ. ＼行‐t予l:ﾉ/::| それをしないと『絶対に』。
!::.::.::.:| ゞ-'′ ＼ 辷ｼ '/:/::./
|::.::.::.:ゝ , 厶ﾉ::.;′ 超能力は新しい分もろさが目立つからね。
ヽ.::.::l|ヽ、 r-､ ／::.::/ 同様の方法で強化できるならと思ったのだろう。
＼:ﾄ､:j＞ ､ _,.ィ:´::;:l:: /
ヽ ｀ ,.ｲ ｀¨´ ﾄ､ﾚ'|/ |:/
__,. '´＿＞v＜ ｀ヽ、′
┌イ ／／了,ﾊ＼＼ヽ ｀┬ｧ
／7 | { く／ノ/引ヽヽノﾉ | }-､
. /:.:.:.:{ | ｀ｰ'´//l弓| |｀ｰ′ | } :.:l
/:.:.:.:.:.{ | // ]弓ﾄ､ヽ |「 :.:.|
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|「例えば、『白い物質は透過できない』というルールは、
| 別の言い方をすると『白くなけりゃ何でも透過できる』になるわ」
|
| 三四が含みある視線をキオに向けた。
| 対するキオは、ちょっと申し訳なさそうに首を振る。
|
|「物体の色は関係ないですけど、構造物が複雑だったりぶ厚かったりすると透過は難しいです。
| あと、生物相手も無理ですね。じいちゃんの説明だと生物は魂の輝きが強くて中身が見えないんだって」
|
| 超能力を利用した覗き（犯罪的な意味）はできない。
|
|「つっかえねーな」
|「それは言わないお約束ですよ。ジャギさん」
|
| ジャギとミストが残念そうに肩をすくめる。
| なお、彼らは女体の観察に使えないことを揶揄しているのではない。
|
| 超能力を使い、肉体内部を透視できるのなら、医療分野での活躍が期待できる。
| 特別な機械を使用せずに肉体内部を精査できるのだ。
|
| むろん、術者にはかなりの医療的知識を求められるが、現在の半端な戦力としてよりも、
| 医療分野で活躍できた方が社会的に見て大きな意味がある。
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,r―-､
|/⌒ヽ !
？ //
,r ´￣￣`⌒ヽ､
？ ／ r ,r i ヽ､
!/ r! !/ | !A A ! ヽ
!!/ |/^ ヽ/ V ハ| そういえば、
/ ○ ⌒ヽ! / 超能力と『ニビル』に関係はあるの？
,r=={ :::: ' ○ ﾉ／/
f r"ハ. ｰヽ_ :::∠= /
V !!￣`ヽへ ィ
ﾉ ／＼ 〉―― ´
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|「わからないわ」
|
| 三四が珍しく言葉を濁した。
| 狂人の妄言なのか、それとも別の理由か判断付かないのだろう。
|
|「冥王星の裏側にある影の惑星『ニビル』は、物質界よりも魔界に近い性質の存在だとされているわ。
| パラウェイブ研究会の教祖が、超能力を持ってそれを感知したのか、
|
| それとも別の理由で狂気に陥り、知識として有していた『ニビル』を、
| 分かりやすい破滅のモニュメントにしたかったのかは分からないの」
|
|「そもそも、当時は例の世紀末から数年だ。まだ『ノストラダムス』の影響もあったんだよ」
|
| ここまでくると、やる夫もお手上げだった。
| 18〜19歳にとっての14年前は幼稚園児。1999年の破滅の予言なんて知ったこっちゃない。
|
| 1999っていったら『1999JU3』の正式名称が『RYUGU』に決まりましたね。
|
|「いやあ、『ノストラダムス』は強敵でしたね」
|「勝手にオレのセリフを取らないでくださいよ、シックスさん！」
|
| じゃれるミストとシックス。
| ミスト本人は当時まだ故郷アトリームで暮らしていたはずだ。
|
| だが麻呂やキュゥベぇらは、その世紀末の何か相手に激しい戦いを繰り広げたのだろう。
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, -=ﾆニﾆ≧ ､
／ ´+ ※ ※ +ヽ＼
// +_r冖^::丁:｢:ﾄﾐヽ､＼ヽ、
〃 ／:l:::l::j::.::l|:::|::|::.:ヽ::.＼}〈
. ﾊ/::.::.:|::.|::l::.::l|:: ﾄ:ﾚく::.::､::.:lハ 今回と当時とどっちが大変だったですか？
l {::.::.::.ｌ|::|::|:::/|l:::| l|ｘ=ｬ､|::.:l}::.ヽ
| l::.l::､::Vｨ7厶ｌﾊ:j ﾍ:::ﾉ!|ﾊﾉ|::.::.:＼
｀T:ﾄ､:ヽヽれ:::〉 , "ﾘl ﾉ:_::_::_:::ヽ、
. ヽ:::ヽ::＼ﾐ｀ﾞ <__} ,.仏 ﾄ{ r'´: :｀丶ﾐー--冖､
｀ヽﾄ､｀丁≧┬r彡' _｣/ ヽ: : : : : : : :｀: : :八:_ヽ-ｭ /^h
j:::} }:｣ rｰ≠()く⌒ヽ ＼: : : : : : : : :／ｲ ｌ｢ ｀ ー--―rv､ ／ //
/:::| /: r1V／ﾉｌﾄ､＼_}＼ >r ￣､l ,‐┐ヽV | | { l|冫´-ｸノ
/::.:｢//: r1ｲ / |:ﾄ､＼ ｀丶、 /|ヽ }_:_:;:ィ! Y￢ｰ- ､ }||廴／
/::.:rく: : : >}｛// |::Vﾍ } r-vﾊ￣｀ヽﾉ::.::∨ﾄ､ﾊ＼ ￣
／::.::厶: ヽ:勹 ,'::| ヽ:∨乙ﾍﾉ, ｲ::.:丶､ ::.:::＼::.:|: : /〉 〉
／:::_r1{＞<＼/:7::::ﾄﾍr-ﾍ:＼r-'´≧ヽ､__::｀ヽ、::.｀ | :〃:/
／r‐'´※ ハ|: : ハ{:_:_广:;ゝ二ﾆこr'′: : : :Y＞､::｀丶､V／ﾄ､
. ／::.::;ヘ _／ ヽ/: : ∨_／: : ｀ヽ｢∨: : : : : : : : ＼}＼::.::.::丶、::ヽ
,.イ::.::／::.:rﾍ、 ／: ; :-'´／: : : : : : : : : :／: : : : : : : ヽ〉:｀ ｰ- ､:丶､＼
,.:'´::.::.／::.::.:r=ﾐ､ _／::}／ r彳 : : : : : : : : : ∠: -:'´: : : : : : : :＼: : : : : ｀丶､:_ヽ ＿
./::.::.:∠::r-r'´ ／ヽ＞'´: :r‐' /: : : |: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : / 〉: : : : : : : : : : ｀T￢ー―く ｝
-―┴‐::｀ﾆニ＞'´: : : : : :〉 /: : : :！: : : : : : : : :/: : : : : / : : :.:/ノ: : : : : : : : : : : : : ヽ }: : : : : ヽ ｝
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|「そりゃニャル公だよ！ アイツ、アポ無しで来たもん！！」
|
| 翠星石のちょっとした好奇心に、シックスが湯気を立てながらがなり散らした。
|
|「『ノストラダムス』は年単位での準備が可能だったでおじゃるよ。
| どれほど強大で恐ろしい相手でも、研究時間と対策儀式ができれば怖くないでおじゃる」
|
| その研究と対策がどれほど大変だったのか。
| 遠くを見る麻呂の疲労した眼差しから感じ取れる。
|
|「そういう意味では、『ニビル』も対策はできているんだけれどね」
|「それが木星……かお」
|
| やる夫の問いに、キュゥベぇは頷いた。
|
|「ではここで、木星がこの太陽系でどのような仕事をしているかを説明しよう。
| まずは基礎。木星は太陽系第五惑星で、大きさ、質量ともに最大。
|
| 金属水素とヘリウムでできたガス惑星であり、表面温度は-140℃以下。
| 大気層による縞模様と眼球のような大赤斑が特徴だ。ちなみにあの斑点は2万キロ以上ある。
|
| 地球の十倍以上の磁場と無数の衛星、四層の環をもつ。
| ここまでは知ってるな。常識的に考えて」
|
| やらない夫の問いに、自信満々で頷いたのはシックスだけであった。
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|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
火星より内側の惑星のどれかは重力の関係で軌道が狂いまくって
太陽系外に放り出されるらしいな、何億年かけてそうなるか知らんが
／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼
（ ●）（ ●） |
（__人__） | ..／} ご存じの通り
_ ヽ｀⌒ ´ | / / __ 木星は『太陽系の掃除屋』のあだ名がある。
(＾ヽ{ ヽ { ./ / . ／ .ﾉ
(￣ ヽ ヽ i ヽ / 厶- ´ ／
.(二 ヽ i i |,r‐i ﾉ. ヽ / ／
ヽ ／ ノ ／ r一'´ ー ､ ￣￣￣）
i { ｲ―イ / .`ー―. ､＿_ .〈￣￣
ヽ. `ｰ '/ / /＼ ＼
`ー ' ￣￣! | ヽノ
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| やらない夫の常識は、一般的に常識ではなかった。
| この場で天体に対して特別な興味を持つ者は他にいない。
|
| だが、全員面倒くさいのか、細かいツッコミは無しだ。
|
|「分かりやすく言うと木星は重力井戸で、その掌握範囲は極めて広い。
| 火星以下の内惑星に近い宙域までカバーしている」
|
| そもそも重力井戸が分かりやすくない。
| それと内惑星というのは、木星よりも太陽に近い惑星群、地球や火星のことであろうか。
|
|「つまり内惑星に向かう予定の隕石やデブリを引き受ける盾、防護柵の役割をしてくれてるんだ。
| ちなみに、木星が無ければ地球へ衝突する隕石の数は一千倍にも及ぶそうだ。
|
| 2008年には、この数値が誤りではないかという研究が発表されたが、
| 木星守護神説はなかなか覆されないらしく物議を呼んでいるだろ」
|
| 最後、おまけのように追加の知識も流れてきたが、やらない夫の説明は十分なものであった。
| 隕石から内惑星……地球などを守る防壁。それが木星なのだ。
|
|「正常に機能していれば、小惑星などの大型天体の衝突も回避できる。
| 木星の衛星には、そうやって木星の重力に引かれ、衛星軌道に乗った星もあるんだ」
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::::|丨 ｀ヽ{ヽ::/ ﾍ ｀つ:::/ ｀¨´ lﾊ/
. ＼ ＼ ヽ }7 ゛ ｀¨¨´ ヽ .
}ﾊ::＼ ー ） 〉 /
. }/ ヽ¨´}:lﾑ, ｨ
八:::| ﾍ _ - ﾉ , ’ ……え？
. Ⅵ ＼ ｀ー… ´ ／ 木星は正常に機能してないのか？
「´ﾍ ≧ｭ.、 ./
. | ＼ ≧ｭ.、 ｨﾍ
. | ｀≧ｭ _＿ ＿ ＿ー.＿Lﾉl＼
/ ￣l 、 |:::l:::|￣ | ｀ー
斗七´. ＼. |:::l:::| l
｀ﾐ、 |:::l:::| ﾉ
｀ミ 、 . |:::l:::| ／
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| その結論に最初に達したのは誰だろうか。
| だが、質問として口にしたのは慎二だった。
|
| 『太陽系の掃除屋』が仕事をこなしていたのなら、『惑星』ニビルが地球に衝突などしない。
| やらない夫の話はそこに帰結しそうであった。
|
|「NASAとかJAXAとかの情報見ても、そんな話は無いんだなこれが」
|「科学的には正常に機能しているんじゃあないかな」
|
| シックスが肩をすくめた。『ニビル』が一般的な、物理的な天体であるならば問題はない。
| だが、残念ながら違う。『ニビル』は現実の天体ではない。
|
|「誠曰く、『ニビル』は影の天体らしいお」
|
| やる夫は誠からもらったメモを取り出した。
| あの時、誠と二人で飲んだ時に詳しい説明はしてもらったが、正直説明するには理解が足りない。
|
|「『惑星ニビル』は冥王星の外側を極端な楕円で回る惑星で。惑星サイズの長周期彗星？」
|「公転周期が200年以上の彗星だろ」
|
| 公転周期とは太陽を回る天体が、太陽の周囲を一回転するのにかかる年数である。
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／￣￣＼
_ノ ヽ、 ＼ ,.:┐
.（ ●）（ ●） ..| ／ ｜ ちなみにご存じの通り地球は一年。
（__人__） .|./ / 木星は11.8年で冥王星は247年だ。
i⌒ ´ .r－､ |/ ／
{ ヽ, ',. .,/ :/',
.ヽ .| l_/_, -‐､',
.ヽ . | / , -－'i|
/ { V , -－ﾍ
| ヽ Ｌ| r= |
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| やる夫は素直に感心した。
| よくもまあすらすらと数字が出てくる。
|
|「『ニビル』は冥王星の裏側、地球からは観測できない位置にあるとされてきた遊惑星だ。
| つまり公転周期は247年以上ってことになるな。
|
| ちなみに『観測できない位置にある惑星』としては、アンティクトンが人気だが、
| すでに科学的に証明されちまってるらしいな」
|
| 急に震えだすシックス。
|
|「ちょっと待ってよ！ そのランダマイザ付きメギドラオンっみたいなのはなにさ！？」
|「え？ アンティクトンはアンティクトンだろ？」
|
| 口角泡を飛ばす老人に、困った様子でやらない夫は応じた。
| やる夫もシックスが何をそんなに慌てているかは分からないが、とりあえず助け船を出すことにする。
|
|「太陽の向こう側、地球と同じ公転周期に地球同様の惑星があるっつう、都市伝説だお。
| 天文学的にはかなり昔から、ついでにSFでも大人気の概念だお」
|
| 日本語だと『対地球』あるいは『反地球』と表記します。
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＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼ この感じだと、
| （__人__） | アンティクトンっつう魔界が
./ ∩ノ ⊃ ／ 存在するってこたあなさそうだお。
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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| 『ニビル』も、『存在しない架空の天体』のはずであった。
| だが実在する。
|
| 同様にアンティクトンがあってもおかしくは無かろうというのがやらない夫の考えである。
| これが実在する場合、たいへん楽しいもとい大変なことになるが、無いのならば問題は無い。
|
|「話を戻すと、『ニビル』は主に氷とダークまた―で構成されているらしいお」
|「彗星は氷と塵によって構成されている。『ニビル』が惑星であるということは、
| 少なくとも重力で球体になれるだけの質量があるってことだな」
|
| 彗星ではなく『惑星ニビル』と呼んでいる以上、一定以上の質量をもつはずだ。
| 例えば、月ぐらいの。
|
|「ちなみに正確に惑星と呼ぶ場合、公転軌道上の他の天体を一掃する必要がある。
| 木星が強力な重力網を放って周辺一帯の彗星や小惑星を残らず飲み込むみたいに」
|
| やらない夫が、不意に遠い目をした。
| 何か悲しいことを思い出したのだろう。
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／￣￣＼
／ _ノ ＼
| （ ー）（ー） 冥王星はそれが判断できなかったために
. | （__人__） 準惑星に格下げされたんだろ。
| ｀ ⌒´ﾉ
. | ｎｌ^l^l そこから考えて、多分『ニビル』も準惑星だ。
. ヽ | ﾉ
ヽ ヽ く
/ ヽ ＼
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|「科学的な基準はこの際どーでもいいわよ」
|「いや、重要なことかもしれんぞ。準惑星に格付けされていれば、主星であるより力が弱まりそうだ」
|
| ぶつぶつ文句を言う前妻をたしなめる『弓兵』。
| 魔術的に見れば、確かに惑星よりも準惑星の方が大幅に弱そうだ。
|
|「『ニビル』の質量の大半は、魔界『ダアト』に繋がってるらしいお」
|「『ダアト』は『存在を証明できない』魔界ね。夢と繋がっているらしいわ」
|
| 今度の補足は三四だった。
| ようやく話しが彼女の専門分野に戻って来たのである。
|
|「その『存在しない』の部分が厄介らしいお」
|「不在証明ができないってこと？」「未然形の神である以上、強さ評価ができないとか？」
|
| 周辺で喧々囂々と、疑問が巻き上がる。
| やる夫は何となく納得はしているが、これを説明するのは気恥ずかしいと思った。
|
| だってそうだろう？
| どの角度から見てもただのこじつけなのだもの。
|
|「『存在しない』から光を超える速さで動くらしいお」
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「昔はやる夫も付き合ってくれたのに、最近は断られるだろ」
とか言ってやる夫の煩悶増やしてそう
／.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾊ
/.: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.
.: : : : : : : : : ::/l: ;ｲﾊ: : : : : ﾄ : : : : : : : :i
i : : : : : :;ｲ_|/__| :/ | : /ﾘ_ｊ_!_ｊ:::/|! : : ; ;
! : : : : :/!|::/ ..|/ .|::/! .i ; ｌ/ﾊ|: : : : ;
.ﾊ : : : ;li.ｉ.i/x≠ミ ﾚ x≠ミ、iﾉ!;ｨ: : :!
|;ﾍ:i'ﾘﾊ.' !;i）ﾘﾚ
ｌ/;ﾊ ,'ｿﾍ/
!ぃ ` ,.'ﾊﾚ'
｀''丶 ` ￣ ’ ., ｸ' それは三段論法ではありませんかね。
从ト .必 ´ どう考えてもおかしい。
ｿﾊ:: ＞ ＜ ﾄ､
ｒ{ .{ .ﾉ {7
‐≦´ } ゝｰﾍｒ‐‐ ´_ . ハ＼
ﾊ`, ._,,.-‐''" `（:::::::r:::r'´::::::）ﾉ. `'ｰ-､
ﾉ l. } _≦´ };;;;;;ﾄ-ﾍ;;;;;;;;{ .≧、
./ / ﾚ. ） _ ﾏ/ ﾍソ ﾍ/ ≧、
/ / / ./ ( .ｉ !i ／ / .冫、
〈 ./ / ./ ｨ' .ﾉ li ／ ノ /ﾊ..}
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| 笑顔で否定する東田。
| 何となく納得していたやる夫は、もう一度考え直してみる。
|
|「おっけー。間違えていたお」
|「『ツイッターで呟いてたのが正しい』ってばっちゃも言ってた」
|
| 正確には『「光より早い物は存在しないから虚無が光より早くてもおかしくない』である。
| 可能性の議論。不可能とは言い切れないというレベルの話だ。
|
|「いや、無理だろう」
|「誠によると、『光より早いものは存在しない』というルールは当時の魔法使いが世界に律した呪いらしいお」
|
| 魔術師と科学者は紙一重。
| 高度に発達した科学的考察は、魔術論理と区別がつかないのだ。
|
| 素粒子ニュートリノと魔術についての考察は、また別の機会にしたいとおもう。
|
|「存在しないものは光より早くても構わないということか？」
|「それって言葉遊びじゃないの」
|
| 文句を垂れる凛。魔女の不満は過半数を代表していた。
|
|「言葉遊びは最古の魔術の一つだよ。
| ボクらが言葉を弄びだしたとき、明らかに世界は変化した」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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|「でもボクはその原初の魔術をよく使うよ」
|「それが詭弁論なんだよ」
|
| シックスは重く深くため息をついた。
|
|「伊集院さ、希望を騙って絶望を覆い隠し、絶対不可能でも何とかなるように見せかけるのはホドホドにしなよ。
| 良いことばかりを並べたてて、代償を秘密にしてると、いつか詐欺師扱いされるよ」
|
|「失礼な。ボクは最初から相手を言いくるめて意のままにする詐欺師のつもりだよ」
|
| それは自慢にならない。
| というか、やらない夫は二人の会話を聞いて苦笑した。
|
| 弥勒菩薩の『末法少女』として、やらない夫を救世主という名の人身御供にするつもりだったキュゥベぇだ。
| あれは日常的な行為だったということなのだろう。
|
|「しかし、存在しないものが光よりも早い可能性があるという論理は同意せざるを得ないね。
| 超高速に達した物質は時間を逆行するとされている」
|
| これは光速を超えることは不可能という前提により成り立つ定義だ。
| やる夫や、やらない夫には慣れ親しんだ話である。
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,イ::ﾊﾉ＼ﾊ!ヽ:ヽ
r={:::ﾊ! i:::} なんで？
〃=ry rｭ‘ ‘ rメ
〃 !}Y_. ヮ ﾉﾊ
{i {i ヽ_/ヽｪ/i┬=く´ ﾉ
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` ﾑ iヽﾉ::::::r' i _/
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| 科学を嗜まない者にとっては当然の疑問だ。
| 何故速度と時間逆行が関係するのか。
|
|「まず基本的に、目で見える情報をはじめとして、感覚を脳が認識するのは全部電気信号だお」
|「うん」
|
|「つまり光の速さで脳に伝わってるお」
|「……うん」
|
| すでに怪しくなってきた。やる夫は説明してアリカが理解できるか危ぶんだ。
| もしかしたら無理かもしれない。
|
|「時間静止した世界では光も動かないために真っ暗らしいお」
|「時よ止まれしても何も見えないってこと？」
|
|「らしいお。で、光より早く動くと、電気信号の結果より先に動くことになるお」
|「……うん？」
|
| アリカの返答は疑問系だった。
|
|「光より早く動いたら、結果が後から来る？
| 言葉はともかくどういうことになるのかさっぱり分かんないよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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､_
ヾ＼ i
ヽ､__＼:.:｀¨"'ｰ､_i＼. |:l
＼￣: : : : : : : :ヾ｀＼l:ﾍ.､ i､
`=ニ二￣: : : : : : : : : : : : : : ﾍ: ヽ |:!
／´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヾﾊ /
､_,,,／´: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ﾚi ／
￣ノ: : : : : : : : : : : : :!ヾ: : : : : : : : : : : : : : レ′
＜二: : : : :, ヘ: : : :;;;;ﾐ ヘ: : : : : : : : : : : /
＼: : : :（(ﾍ i彡"" ﾍ!: :;: : : : :ﾉｿ/
ゝ: : : i:し ｿ ＼, `ヾﾍ:,:／/′
∨: : 〉Ｙ 弋ftミ､､ ﾉ
）ｿ" 7 ´｀´ ヾ´" ,,､≦"
ｿ ﾍ iヾｿ
__ ／ ____' , ∨ アリンコ、音でイメージしろ。
//´￣￣7/::::::::∧ ー- ､_ ／
// __＿ノノ=＝二∧､､,,,､､-／´､_
ノﾉ´￣／::::::::::::::::::::::::::::::,::'':::´::::¨"｀`ヽ.
ﾉｿ: : : //::;;;:::::::::::::::::::::::::::;':::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼
ノ!: : ／´""l::::::::::::::::::::::::::::;'::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾍ
//」'"´: : : : :.l::::::::::::::::::::::::::,:';;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::::ﾍ
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i/: : : : :／´::::::::;;;;:::::::::::::::;:'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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|「何言ってんの？」「はぁ？」「イメージできないから困っているのでは？」
|
| 集中砲火を食らう『弓兵』。
| だが、やる夫は娘のような年齢のアリカや前妻からつつき回される哀れな男の言わんとする所を理解した。
|
|「超音速で動くと、爆音が後からやってくるお」
|「ああ、うん」
|
| 『蒼天の青玉』を起動したアリカは、やすやすと音の壁を突破する。
| 足だけで超音速行動し、発生した空気の壁を『足場』にした空中軌道変更を行うほどだ。
|
|「おなじこと。光でも同様に、音だけじゃなくてすべての結果が後から来るお。
| だから超光速で動いた場合、時間を逆行するみたいになるんだお。
|
| 光速移動者から見れば、結果と行動が逆順になる。
| それ以外から見れば、光速移動者が結果を知って行動してるように見えるんだお」
|
| アリカは周囲に視線を投げ、うつむいて考え込んだ。
| 先ほどよりも分かりやすいのだろう。音速突破は彼女にとって茶飯事だ。
|
|「やる夫兄いの『死を見る』のも同じ原理？」
|「これはたぶんちがう」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
|三三三三三三三三三三三＿7 /〈 〈＿_ ./ /７｜./ ∧＼ ./ /＿_〈 〈＿_ / ∧＼ 〈〈 / / 〈〈.∧∨,/三三三三三三三三三
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
仄いrく艾艾艾艾癶、
r巛Uj〉j〉j〉::::::::::::::::::::辷う、 ､
. ｎrｎrｎrｎrｎrｎrｎ:::::::::::::::::::辷う、 ＼
／乂乂乂乂乂乂乂ｎrｎ:::::::::::::::辷う、 ヽ
／￣ 乂乂ｎrｎ::::::::::辷う、
＼ 乂乂ｎ::::::::::rう)、
/ :.＼ ＼ 乂ｎ:::::::::rう) ′
ｉ : : ::::::. ヽ :.＼ 乂辷辷く ′
::|:. ￤ :...:|....: i :::| _}L.:. 艾艾艾＼ 神格のユニーク能力だから違うわぁ。
::|:: |:::::ｌ|:.. . .::::::|:: 斗r七' |l ￤ Y⌒Y^ ＼ |
::|:: |:: 八:::::::::::::|ｌ::ｌ::| 〕斗ぅ弌7. |ｌ |: V⌒ト､ ＼＼ |
: |:八:. ､:::: ヽ :::::::八乂{ｱ乂`ｰク |l ﾊ:. | |ｌ ＼ ＼＼
: |::::: ＼＼⌒＼/ ''¨゛´ 八Λ|:: | |:) 八. ＼ |
八::::::::::|＼ 托笊! ./ .:/ ..:|:: ﾊ! ,.:代＿＿___＼＿＿
:. ＼ : |＼＼`ｰ1 /／〉..:/|. / 「 ::|ｌ |. ) )
＼ 丿:::::ヽヽ込、 ｧ /／ ′/ :|ｌ | (
＼ 乂__込、 ィ_ノ ./ / |ｌ ﾄ､
. （ |:l ＼ ＼ ｢ヽ ./ /:/... 八|: |:::＼
＼|:l:: |:ﾊ ヽ } }. イ..::/ /:/ /|:: |: |:::::::::＼
|:l:: |/Λ 个ヲ 厂 ハ/ 厶仏:::/＾|:: | . ├――=ミ
|:l:: |/: Λ V /: 厂＼彡く／|..../: : |:: |: |
|:l:: |:::/::Λ Ｖ/ 厂 ィ::::八/::::::::|:: |: |
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| 未来視という所のみを突っ込んできたアリカを、水銀燈が優しくキャッチ。
| 話を元の方向に戻すべく、やる夫に目くばせする。
|
|「今の説明で、多分分かってもらえたと思うけれど、誠曰く『観測＝情報＝光』だお。
| 虚無を観測したとたん、虚無は超光速で時間を逆行して『そうだった過程』に書き換えるそうだお」
|
| 観測してはいけない。認識してはいけない。
| そう言われて、周辺の誰もが首をひねった。
|
|「無いものをどうやって観測するんだ？」
|「『木星がニビルの軌道を曲げて地球に衝突しない結果』があれば何の問題も無いらしいお」
|
| 木星が仕事をしなかった場合、『ニビル』は観測される危険がある。
|
|「その木星の方は、誠と、新城さんたちが何とかしてるらしいからたぶん平気だお」
|
| だがここで、もう一つ問題がある。
| 『ニビル』という結果を、すでに観測してしまっているものたちがいる。
|
| 夢世界が作り上げた憤怒の結晶。
| それはすでにこの地球の上にある。
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哲学者が延々議論する基本的議題やね。
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | ようやく『ビスケットハンマー』に戻るお。
＼ ｀ ⌒´ ,／
/⌒ヽ ー‐ ｨヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ ／ r─--⊃、 |
| ヽ,.ｲ ｀二ﾆﾆうヽ. |
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| やる夫にはそれが見えない。
| きっと見えない方が良いのだ。観測できない方が、幸せなのだ。
|
| 世界破滅という結果がそこに見えていて、『覚悟』しながらの生活が幸せだと言えるのは、
| 破滅を前に自暴自棄にならない狂人だけである。
|
| 結果が目に見えていたら、人々は過程を重視しなくなるだろう。
| 結論が分かっているのに、どうして努力をするのだろう。
|
| ああ、世の中にある有象無象の敗北者よ。
| 結末可視の世界は彼らを駆逐する殺戮装置だ。
|
| そして、やる夫はその一員だ。
| 地球上にはびこる敗北者の一角で、一度も何かを成しえたことのない、完全なる失敗者だ。
|
| だからこそ、やる夫は世界の終わりを観測し、それを確定させるなど許せない。
| いつだったか、有希ともそんな話をした。
|
| 過程だけを重視していては、結果に足元をすくわれるのだ。
|
|「誠によると『ビスケットハンマー』は、『ニビル』を観測した状態らしいお」
|「つまり、まだないのか」
|
| 『弓兵』の言葉に、やる夫は返答に詰まった。
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: : : : : : : : : : : : : : : : : 彡 ＼ /.／
-ﾗ: : : : :ｒ - 、: : : : 彡. ヽ ヽ彡´７ ／
./: : : : / ヽ ソ´ ｀ ＼ / /
.|: : : : 7 l ヽﾞフヾﾒ 、 l./
ソ´|: : | ﾉ 弋ゾ冫＼ ___ /
/|: : 〉ヽ ｿ ｀ メ升 /
. |: : : 〉 ヽしソ/
. ﾚ: :/ ｀-´l l /
| / | .| /
|/ | ／/
ヽ / | ＼ --= 、 ／
｀ヽ ｀ ヽ 、!. ＼ ／
: : : :｀ヽ 、 ｀ヽ、. ＼ ／ 例の『夢の世界』経験者達に『事前観察』させることで
: : : : : : : : :｀ヽ;;;;; ｀ヽ ＼ ／
: : : : : : : : : : /;;;;;;;;;ﾒ、 フ 『ニビル』という結果を
: : : : : : : : : /;;;;;;;;/ ｀ く 冫____ 『あったことにする』こじつけなのだろう。
: : : : : : : : /;;;;;;;/ //: : : 冫-,
: : : : : : : : ﾄ;;;;;/ //: : : :/ /
: : : : : : : ＼ ＼ .//: : : :/ /
: : : : .f ﾆヽ: : : ７.|;;;;;;;;;;冫----ｲ /、
: : : : | |: : l l: : : | l;;;;;;;;;l i￣ ´: : : :.＼
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| 『弓兵』の理解にやる夫は感服した。
| さすがは高名な傭兵というべきなのか。
|
|「なるほど、形や名前はこの際問題なく、世界を破壊できるものが頭上に存在する。
| 絶望的な状況を見せつけ、それを目撃者から他者に伝播させることで、終末思想を流行らせると。
|
| ついでに目撃者の存在が、因果逆転の矛盾に対する緩衝材になっているのね」
|
| 凛が納得したように頷いた。
| 魔術的に詳しい面々も各々頷いている。
|
| やる夫は最初聞いた時さっぱりだった。だが分かる人間は分かるのか。
|
|「そもそも今年2012年12月22日はマヤの滅びの年だ。
| ノストラダムスで経済的利益を得た奴らが二匹目のどじょうを狙って流行らせようと頑張っているよ」
|
| なお、作中は2012年です。
| ちなみに、後世の研究の結果、2015年だ2020年だと情報が錯綜しています。
|
| しかしこの作品中ではマヤ歴の終わりは2012年という扱いです。
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／ ＼
／ ＼
／ ＼
| ＼ ,＿ |
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／ クリスマス直前じゃねーかお。
( ＼ ／ ＿ノ | |
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＼ ／＿＿＿ ／
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| 世界の滅びは年末だ。
| でって言うの言葉を思い出し、やる夫の背中に嫌な汗が流れた。
|
|「ちなみに、マヤ暦の終わりは世界滅亡と絡んで考えられているでおじゃるが、
| 実はマヤ暦がそこまでの計算しかしていなかっただけでおじゃる。
|
| そもそも500年も前に滅ぼされた文明で、500年も先まで暦の計算をしていたこと自体が脅威で、
| かつデータを用意する必要のないことでおじゃる」
|
| 来年のことを話したら鬼が笑うと言うが、マヤの学者は500年後まで考えていたのだ。
| たしかにそれが途切れたら悪いことが起きそうな気にもなろうものだ。
|
|「その『ビスケットハンマー』っていうのは、結局『ニビル』が来なかったらどうなるんだ？」
|「木星の重力井戸で『ニビル』を捕らえても、『ビスケットハンマー』の観測率によっては引っ張られる可能性があるらしいお」
|
| 慎二の問いは明快であった。そして、懸念材料でもあった。
|
|「つまり両方対処しないといけない？」
|「でも、木星側の能力を魔術的に補佐すれば並大抵のことじゃあ突破できないとも言ってたお」
|
| そのために、泉教授は妻を生贄に捧げられ、それを防ぐために泉こなたは木星へ向かう算段をしている。
| そして、その道半ばで誠は殺害され、だが彼の死が道となり、万事うまくいく予定だとか。
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l三｀ｰ ､_;:;:;:;:;:;:j;:;:;:;:;:;:_;:;:;_;:〟-三三三三三l
l三 r＝ﾐ''‐--‐';二,_￣ ,三三三彡彡l_
lﾐ′ ￣ ー-'" '＝ミﾆ彡彡/‐､ヽ
l;l ,_-‐ 、 __,,.. - ､ 彡彡彳､.//
∥ `之ヽ､, i l´ _,ｨ辷ｧ-､、 彡彡'r ノ/
1 ￣ﾌ/ｌ l::. ヽこ~￣ 彡彳~´/
ヽ ´ :l .l:::. 彡ｨ-‐'′ 木星は新城らが
ゝ、 / :. :r-､ 彡′ 何かしてるはずでおじゃる。
／ ｨ:ﾍ ｀ヽ:__,ｨ='´ 彡;ヽ､
_,,..-‐'7 /:::::::ヽ _: :_ ヽ ｨ´.}::ヽ ヽ、
_,-‐'´ { ヽ:::::::::ﾍ ｀'ｰ=＝=ｰ-- ' ／ﾉ /::::::ﾍ, ヽｰ､
‐'"´ ヽ. ＼::::::::＼ ｰ-‐‐' ／ //:::::::::::::} ） ｀''ｰ-､
／ ＼ ＼:::::::::ゝ､＿＿_,,.. ‐ " //:::::::::::::::l ,' ｀''ｰ-､
'´ ＼ ヽ､;:::::ﾍ ､ ／/::::::::::::::::ﾉ / ヽ
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|「となると、問題は『ビスケットハンマー』側だね。
| 教えてくれ入即やる夫。ボクらが可能なアプローチはあるのかい？」
|
| 極めて素直に、キュゥベぇはやる夫に教えを求めた。
| 不足を認め、情報提供を求める。余りに素直すぎて拍子抜けするほどだ。
|
|「ぜったいあくは何でも知ってるけど、伊集院はそうじゃないからね。
| 見栄も張らないし必要なら頭も下げる。すごい奴だよ」
|
|「知ってンならアンタが教えてくれてもいいンだぜ？」
|「ぜったいあくが教える義務ないし」
|
| シックスと杏子が戯れる。
|
|「誠が『ビスケットハンマー』破壊方法をいくつか提示してくれたけど、
| 一番現実的なのが、『夢世界』の破壊だお」
|
| ゲーム風味に味付けされた夢世界突破。
| 誠が言うには、最終目的があるなら、到達すれば夢世界を終わらせられるらしい。
|
| だが、やる夫も周囲の皆も、それが現実的であるとは思えないようだった。
|
|「つーわけで、現実側から夢世界の核になる人物を探し当てて殺害する方法は失敗したらしいお」
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:::::::i::::::::::i::::::::::::::::i:::::::::::,'､=＝ミ::::::l::::::::::::::::::彡＝ゞ､::::::::i::::::::::::',:::::::',:::i
:::::::l::::::::::l:::::::::::::::::l:::,／ ',:::::::::!::::::::::::::::::::l ',｀"ヾｿ;::::::::::::i:::::::::',:!
:::::::!::::::::::!:::::::::::::::ﾒ´::/ ',:::::::l;:::::::::::::::::::i ',:::::::/ ヾ;::::::::l::::::::::',
::::ﾊ:::::::::ﾊ::::::::::::::,' ';:;' _,,,､､,,,_ ヽ':,::::lヾ;::::::::::::::!_,,,､､,,',::/ ';:::::::!::ヾ;:::i
::;' !:::::,'::::l::::::::::::i 彡""´｀ﾞﾞﾞ`ﾞ'' '.;:! ＼:::::::ヾ"´｀｀ヾミr､ 〉::::ﾊ:::::入ゝ
/ i::::i',:::::!::::::::::ﾄ `" ヽ ＼::: ｀´ /ヾ:::) //
',::i ',:::::';::::::∧ :::::::::::::::::::::: ヽ::::::::::::::::::::::,'ｿ:ｿ',ソ::::::＞
ヽ ':,:::';::::iﾍ', :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ､ :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,///ヾ＜ 上手くいかなかったぜ！
∨∨＼ ,ソ::::!/""´´ メンゴメンゴ！
', ｀∀￣￣￣￣∀´ /へ;:::|
ヽ ', ,' , ' ヾ
｀ ､ ', ,' , ´
＞ ､ ', ,'_ ＜く__
＜:.:.:.:.:.:| ＞二 二＜ |:.:.:.:.:.:.＼
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| 先日、不人気らと話していた誠の計画は見事に失敗に終わった。
|
| 全校で、臨時健康診断を行い、ペルソナ適性や夢世界記憶の探査を行うという話だ。
| これにより、現実世界の生徒に『黒幕』が存在しないというのが誠の結論である。
|
| であれば『黒幕』たりえるのは何者か。
| 次の候補者は教員と卒業生である。
|
| 教員の中には何名か、高めのペルソナ適性が認められたという。
| 現在の担任や、元担任など、件のクラスに出入りが多い人物だ。
|
| しかし、卒業生側への確認は上手く撮れていないという話だ。
| 黒幕候補としては、卒業後も学校に出入りするほどの人物。
|
| 何らかの部活動で、積極的に後輩の育成をしている卒業生などが対象となる。
| しかし対象の幅が狭すぎて、逆に、相手が見つからないのが現状らしい。
|
| 学校に稀に訪れる卒業生の中で、例のクラス出身で、いまだにあのクラスに現れる。
| そんな都合のいい相手がいないのだ。
|
| これによる誠の結論は次の通り。
|
| 『黒幕はすでに死んでいるか、夢世界でしかその記憶を有していない』
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まったくですね！
中止にしないでくれ（泣）
数多の男女が淫欲の饗宴に乱れ狂う口にするも憚られる悪しき冒涜的な祭日のことですね
⌒＞ ／ ／ ／ .ｲ八 ヽ |人
／ ／ / :／ / ' / /从ﾊﾊ i| ｉ|从 乂__
,__ ／, / /: :/: :/: : / /: :/. ｲ: :〃 刈 : :| ｉ| | ＼乂__
ニニ=ー/∠/ /: :/: :/ / /:/: :/ '. :|: :i| | : : i| i| |: :＼ 乂 __
.ニニﾆ./Ⅵ/ : : : : / :/ / |/| ' /／| 从 」| : : '|: : i|八: : 乂ニﾆ
ニニﾆ/ﾆ|/ : .ｲ: : ' ｲ弍≧ﾄ.」/ / Ⅵ｣L斗i≦ |: :/ |: : i|＜/∧ーニﾆ 殺人は犯罪ですよ！
ニニニﾆ/／/,|: : |: :| 弋ﾋツﾄ､ 」x代ﾁツ. ﾘ/: : : :八/| | |ﾆﾆﾆニ
ﾆニニﾟ/| | |//|八| ∧ ｀¨¨´ ノ}:::. ｀¨¨´ ｲ/: ://∧//| | ﾄ、ﾆﾆﾆ こんなにもオレと入即さんの間で
ニニ::/ :| | |//| | ｉ|∧ ノ/ｲ/ｲ/////| | |∧ニニ 意識の差があるとは思わなかった……！
ﾆﾆﾆ/: ::| | |//|/∧ |i |ゝ r -== ､ ｲ// / |////| | |: :‘，ニ
ニ-/ : : | 八///] ﾊ八い＼ ｛ :.:.:.:.:.:.: ｝ ｲ/' ∧'/// //:|: :‘，ﾆ
二｛. .: :::|《/∧//l ＿ 丶｀ ー‐‐ .イ ___ ∧/// //:| |:.|: ｝ニ
ﾆﾆヽ : : ∨/,∧/| ＼｝ ｀ ー'’ ｛／ ∧/／ //: :| Ｌ|.ｲﾆﾆ
ノ ｀ヽ :∨/,∧ト， ｀ ´ / ／//／}:: :|イ´i|ﾆﾆ
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|「人を殺すなんて……」
|
| キオが言いかけた正論より早く、ミストが叫ぶ。
| やる夫は忸怩たる思いで、言い訳もせずに受け入れた。
|
| 見つけて殺すという方法には、やる夫も否定的だったが、誠は強行するつもりだったのだ。
| なにしろ、直接犯人捜しをしたのも誠で、生殺与奪権を持つのも誠だ。
|
| 学園内での死亡なら、いくらでも揉み消せる準備が彼にはあった。
|
|「『黒幕』を確定したらすぐに殺す、二〜三日行方不明になってもらう。
| その間に培養したホムンクルスを本人そっくりに作り、治安の悪い界隈で見つけてもらう。
|
| そのあと一か月ほど『人が変わったかのように』不良になってもらって、
| 悪い異性とお付き合いさせ、素行不良で今年中には退学処分にする。
|
| で、来年頭にでもニケツノーヘルで峠でも攻めてトラックと正面衝突してもらおっかな。
| ……ちょっとセンス古いか？」
|
| 誠自身そう語っていた。
| そして、その準備や実行に何の抵抗も無いことは、彼の口調から明らかだった。
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／ニニニニニニニニニニニニニヽ
’ニニニニニニニニニニニニニニ ﾊ
ｉニニニニニニニニニﾆ}ヽｨニニニニｉ| 『そういうのはオレたちの仕事です』ってか？
|ニニニニニニニニ /}/ /∨ヽニニﾆ| 水臭えなあ『のけもの』さんよぉ。
. ﾄ.!ニニニニニニ==─…ﾐｘ 0 ／》ﾆﾆﾆ│
Ⅳ≧ー…ｬ77//--｡-ｫ///l} 0 彳ニニﾆ|
》 f77ﾊ ∨/≧==彡//ノ 《ニニニl| ﾄ
｀7 V//} ∨////厶イ==ﾐ iニニニ| |∧
⌒i￣ ＿＿￣￣´ 》//∧ lヽﾆﾆﾆl| |/∧
ﾄ ∨ .//| ﾄ. {7∧ ∨///i| ∨＼ニゝ ＿＿ | ∧
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|/∧ }ヽ/| |/∧ ∨∧ ∨/l| ﾘ }////|∧三≧| ∧.=
| ∧ ､|__i/| |//∧ 》/∧仆ー=彡' '/// l|/∧三 i| 三
| /∧ ≧彡. 》====≦/// l i '//三| ∧三| 三
＼ | ∧イ三／三》 ∨//// j ｌ //三 i| /∧ .乂＿_ノ三
/∧.| /∧.／三 ィ/∧∨/// / '//三三| //∧三三三三
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| 鉄仮面の下の双眸を愉悦に歪め、ジャギが嗤う。
| ミストが彼に冷たい視線を送る。
|
|「東京にまともな人なんか一握りしかいないんだ。
| そういう人たちを守るのが、オレの仕事なんだよ」
|
| やる夫はむずがゆいような、申し訳ないような気持ちになった。
| ミストは案外とやる夫らを買っていて、手を汚させる訳にはいかないと判断しているのだ。
|
| それほどの価値が自分にあるのか、やる夫には自信が無かった。
|
|「え？ そういう話じゃなくて、人を殺すのは！？」
|「暴走した異能者も、悪魔召喚して民間人を傷つけたサマナーも人間だよ。汚れ仕事ってあるよね」
|
| 困惑するキオを、シックスが邪悪な笑みで威圧する。
| 悪魔がすべて悪いという教えに従って来たキオには、まだ受け入れがたいことなのだろう。
|
|「そもそも、今度攻撃するつもりの『結社』も人間の組織だぜ？」
|「彼らは悪魔を自分の欲望のために利用する集団だからな」
|
| 容赦のないジャギと『弓兵』の追打ち。
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!＼ ヽ _ ヽ. ヽ | , ' ヽ ､ ＿ ヽ
＼ { ￣｀ヽ ' ミ _ ヽ｀ヽ}
∨ ヽ ／ ミ / ヽ ∧
. ∨ :} ／ __ ミｨ / 〉 }: ∧
＼! ／ , ィ;j７ l r１ ﾊ＼ ∧
､ ＼ __ ／,ィ弋彡' ) ノ ｲ､} ＼}
_三ミ,ヽ ¨ У/ |
. ムヽ 乂ツ r ' | だが少年よ、
. ム l |＼| 今のうちに悩むだけ悩んだ方がいい。
. ﾑ | ∧ |
/ ｀l__ もしも戦場で躊躇が生じたら、
ヽ 丶 , }ﾆﾑヽ その時死ぬのはお前かお前の仲間になるぞ。
ｰ ィﾆﾆｱ. :ヽ
＼ ｨﾆﾆﾆｱ. : : : :}｀ー
／{ﾆﾑヽ ／ ,ィﾆﾆニア. : : : : :/. : : |: : : :
: : : : ヽ -‐―― ／. : : :ヽ,ム > --‐ ―┐- ' . : : : : : : :ｲ: : : : }: : : :
: : : : : : : : : : : : :{: : : : : : : }ﾆl |: : : : : : : : ／/. : : : 〈: : : : :
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|「何格好つけてんのよ」
|
| 『弓兵』の重いインストラクションに感銘を受けそうになったキオは、
| 彼の元妻がその尻を蹴り上げたのを見て正気に戻った。
|
|「でも人間同士殺し合うのは」
|「何がいけないんだ。キオ・アスノ」
|
| 慎二が嘲笑いながらくちばしを挟んだ。
| 獲物をいたぶる猫のように残忍に、その口角が上がる。
|
|「この地球上で、もっとも同族殺しが得意なのは人間だぞ。
| 人間は同族を殺すために進化をしてきたし、これからも進化を続ける。
|
| 人間はそういう生き物だろう？」
|「わかるー！ ぜったいあく的にその考えイエスだね！」
|
| シックスに肯定されると、どうしてこうも白けるのか。
| 慎二が肩をすくめて目を逸らした。
|
| 対するキオは、いい返す言葉も無く拳を握った。
|
|「人間同士が殺し合わない方法を模索しているのが現代社会だよ、間桐慎二。
| 諦念は未来を殺す。未来の無いボクが言うのもなんだけれども」
|
| キュウベェがキオの肩を持つような発言をした。
| だが、彼の酷薄さにはキオも抵抗があるのだろう。一瞥しただけであった。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/ { ／ | i ＿＿＿
,ｲ ヽ / ﾄ-'― ー--＜二 ￣｀ ､
ｌ i ､＿ ｀ー ﾆ´ └ ､ ￣｀ ､ 丶
! 'ﾊ＼ ￣｀ー- ´ , -c ヽ ｀ ､ ヽ 話が前後するけれど、
', ゝ' ヽ ヽ-' ヽ ｀ ､ 汚れ仕事を気軽にミスト・レックスに
ゝ´ ｊ. , -c } ヽ ｀ー--‐ 頼める状況は終わったよ。
,ィ ,ｲ ヽ-' __ﾉ ｊ ＼
. / ｊ ｀ｰ' ﾉ ＼ : : :
/ ハ _ ＜＿ ヽ : : : :
. / ! ヽ ヽ ￣￣｀ ､ ｀ヽ : : : :
/ ! ｀二ー┐ ヽ ヽ ｀ー . : : : :
/ l (￣ ｀´ ヽ ー : : : : :
. i ! ￣｀ ー --┐ i ＼ ', ￣￣
l. . l ', j ヽ }
. l: : : . . :l ', l / ヽ /
i : : : : : . . : : : : i ,ｲ ヽ l i ヽ､＿＿ ノ ／
!: : : : : : : : : : : : i i ヽ j ＼ ／
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| ふと、キュゥベぇがミストに目を向けた。
| 驚いた様子のミスト。そして、ジャギが思案深げに目を細めた。
|
|「オレ様の出番てぇ訳かい？」
|「そうだね北斗ジャギ。最悪の場合はキミたちに頼むだろう」
|
| 自嘲的に肩を揺らすジャギの前に、立ちはだかるようにケンシロウが動いた。
|
|「お言葉ですが伊集院殿、我が兄ジャギは北斗の名にふさわしい豪傑です。
| 云われの無い汚名は早々に晴らし、表立った地位に立ってもらいたいのです！」
|
|「馬鹿かァ？ ケンシロウ、オレは『北斗の裏切り者』だぞ？」
|「それはスパイ行為だった。それに今も影ながら俺を支えてくれている」
|
| 音高く舌を打つジャギ。
| ケンシロウがこれほどの弁を打つのは稀有なことだ。
|
|「口ばっかり上手くなりやがってよォ」
|「ジャギ兄さんほどじゃあない」
|
| 周囲から、失笑の気配が漏れる。
| 蒼星石や霊夢などのジャギに親しい女性らからだ。
|
|「ンだテメーら！ 犯して煮て食うぞ！」
|「君の負けだよ、ジャギ」
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ヽ 三_,. - " 三三三三__三三_三_三三三ヽ
,V´三三三,. -─' ´ :.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.ヽ 三 ﾉ
|_三三 ,. イ,:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.::.::.:＼:.:.:.:Y
l _三:: ':.:.:.:/:.:.:.:.:.:l!:.:.:.:.:.:.､:.:.:.:.:＼:.:.:.:.ヽ:.::.ﾞ
ゝ三 |:.::./:.:.:./.:.:.ﾊ:.:l!:.:.: i -.- .､::ヽ:.:.:.:.!:.:.:|
ヽll !:.ｲ::.!: ,. -,‐‐l:.i! :.: | ヽ.:.:.::.:ﾊ:.:.:|:.:.:|
Y:.|!:.:.|:.:|:./_ !:|!､:.:.| ,._=ー,､:.:ヾl:.:.:l
l:.ｲ!:.:.l.:.ﾚ ＝_.､ゝ ゝ! ｫ::::ﾘ !:.:.:..|:.,ﾘ 君がケンの成長を願うように、
∨ V:.:ｲ! フ..ﾉ ￣"ｲ:.:.:ﾚ ケンは君の失地回復を祈っているのさ。
_ゞ.:.:ゝ" ､ ｲ:.:/
イ ハ:.:ﾊ!-､ ー ' ∠:l:/
/: :.l r'{ ﾚ l ´`ｰ-､ ＿_ イ l!' `ーr⌒ヽ
, : : : :フ! ゝ. _ ＼ ／ ヒ ハ
|: : : : ゝゝ _＞ ノr=＝=,､ iﾄ､〈: : ヽ
人: : : : : ＼r‐'/´ ￣ `＜.li! |:! !|_ノ : : :.1
／: : : : : : : :「ヽ./ ｏ ヽヾ_ ノj ノ`! } : : : :|
（: : : : : : : : : :: ン' /!|￣ r'__,-_､フ: : : : :.|
ヽ: : : : : : : : ::L7 / !| r ´. .! : : :!｀ ! : : : |
＼: : : : : :ｲ /. !| |ゝー!`:‐::!: :| : : : :!
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| 蒼星石にたしなめられて、ジャギは顔を背けた。
| 傲岸不遜なこの鉄仮面も、彼女には逆らえないのだ。
|
|「……ああ、よく考えると、ジャギに頼むのも難しいな」
|
| ふと思い出したようにキュゥベぇが呟いた。
| 一同の視線が胡乱な白獣に向く。
|
|「今度の『結社』撃滅作戦で、『九鬼』らがこちらについてくれるという話はしっているよね」
|
| 『九鬼』首領 甲賀氷雨黄泉と、トールマン弟による密約だ。
| もちろんほとんどが知らない。
|
| 現場にいたやらない夫や麻呂、そしてやらない夫から聞いたやる夫たち。
| あとは『九鬼』側からの情報なのだろう、ジャギ一党は驚かなかった。
|
| だがそれ以外には飛び上るほどの衝撃である。
|
|「待って待って！ ぜったいあく初耳！」
|「言ってなかったっけ？」
|「聞いてない！」
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｢ ＼ ＿＿ ／⌒ｧ ） ｀丶
ヽ ´ ｀ / / ヽ
＼ く ／ ）
∨ ● ● Ｙ ﾉ まあシックスは置いておいて、
_|{ ､_, ､_, 八 ,′ 現状ミスト・レックスら『のけもの』は特別な位置にある。
／ 八 ｲ 丶. /
⌒＼/ , / ｰｧ Ｔ´ { ＼／＼ 皆知っているだろう？
（ （⌒>く.／ / . : / ',: :ヽ 〈） ） 『一代限り』だ。
＼{／ : : :/ : : / ヽ-ﾍ . : : ／／､
／＼＼＿∧: : ,′| ｉ ｉ | ∨∧／／ : : :＼＿_
（＿ﾟ: :｡ ーｧ‐' : ; | | | | ー‐く: : : : :｡: ﾟ : _ノ
/ . : : ｡人: : :.:| | | | | } ＼: ｡ : : : :）
（_／{:_:/ ＼: iヽ 丶ソ 丶ソ ノ ＼_ﾉ￣
￣⌒ ⌒￣
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| 機械化改造で異能に近い能力を得たミストや、悪魔との融合で超感覚を持った四ツ目。
| そして呪いのせいで遺伝子情報を破壊され子孫を残すことが難しいジャギなど。
|
| その能力を次世代に継げない異能者は、『血族』においてはひどく粗雑な扱いになる。
| その結果が、『血族』の『のけもの』というミストらの扱いである。
|
| 『血族』の客将として席は置いてあるものの、本当の意味では『血族』ではない。
| 組織内部の最下層民扱いだ。
|
| それ故に『血族』であるという理由だけで異能すら持たぬ者にも蔑まれ、
| 汚れ仕事や雑事、危険な役割ばかりを押しつけられてきた。
|
| それでもミストは不平を……不平不満だらけだがまじめに仕事に従事してきた。
| それは恩と、他に行く当てが無いゆえである。
|
|「俺から仕事を奪ってどうするつもりです？
| 防衛に関してはプロですが、他の仕事は素人同然ですよ？」
|
| ミストの言葉にキュゥベぇは首を振った。
| 違う、違うのだ。
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', ';:.:.:.:.:.＼ ／.:.:.:.:.:;' ,'
', ';:.:.:.:. ／ ＼ .:.:.:.:;' ,'
, ´￣∨.:.:／ ＼:.:.∨￣｀ 、
／ .: :. ＼
. ; ' / ': 丶: .
. : / ; , .::;;;;::. 、 , .::;;;;::. 、 ; ヽ: . 逆だよミスト・レックス。
.:.:.:/ ｉ: ｲ .;'⌒しﾊ ｲ .;'⌒しﾊ .:ｉ ':.:.:.
:.:/ :|:. 人:ヽ...ノ.:ﾉ 人:ヽ...ノ.:ﾉ .:|: ':.: ボクはキミたち『のけもの』に
/ :.|:. ｀''ｰ ´ ｀''ｰ ´ :|.: ' 新たな可能性を見ているんだ。
.:.:.|;: .:;|.:.:.
.:.:.:.ｌｌ:. .:ｌｌ.:.:.:. キミ達だからこそできることがある。
.:.:.:.:八: . . :八:.:.:.:. そう考えているんだよ。
.:.:.:./.:.:..＼: . 'ｰ‐'＾'ｰ‐' . :／.:.:.ヽ:.:.:.:.
.:.:.:/.:.:.:.:.:.:. ＼ : : . . . . : : ／ .:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.
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|「アレが嘘を言っている目に見えるかい？
| ぜったいあく知ってる。こいつは信じた傍から裏切る目だ」
|
| キュゥベぇが「信じてよ」とも「嘘を言っているように見えるかい」とも言っていないのに、シックスが先制攻撃を入れる。
| だが、元よりまったく信じていないミストにとっては同じことだ。
|
|「いやいや、ボクは本気だよ。
| よく考えてほしい。『血族』の血統による異能遺伝の組織体系は問題だらけだ。
|
| 排他的で、増長が円満している。
| これが百年前なら問題は無かったよ。少数の特権階級とそれ以外に国民が分けられる世界なら」
|
| 淡々と、当たり前のように、キュゥベぇは『血族』を批判した。
| そしてこの批判は『血族』の血統至上主義に寄り掛かって来た人間に不満をもたらす。
|
| 慎二や、そして霊夢が眉を寄せた。
|
|「お言葉ですけれど伊集院様。異能が発現しなかったとはいえ、血の力はあるわよ。
| 私の両親は異能は無いけれど、私自身はこんなに才能に溢れているわ」
|
| 金銭的ではない話を霊夢がするのは極めて珍しく思えた。
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__ _／ ヽゝ,
_ _,.r--､_r'´___iｧ'___ |(__
)「 ｀＞'::::::::::::::::::::::｀ヽ､ ＼;｀ヽ
ﾉi_／ ....::::::::::::::::::ヽ」(:::ﾊ
}y'::::::::::/:::::i:::::::i:::::::::i::::::ヽ､::::iヽ;:!
/:::::::::/:::i:::ﾊ:::::ﾊ:_,ニ_ﾊ:::::ﾊ::::| ＼
/:::/::::ﾊ-ｪ:;! V'´{ ,ﾊ!､!:::|:::::ﾄ､ ,.ｲ(
ｲ::::i::::::!Y'{ ﾊ ｀ｰ''´ 「_i:::::::i､_/(| 血筋を大事にしなかったら、
L.へﾚ:::i 'ｰ' . "" ﾄ┤イ:::::´ﾊ 今後の『血族』はどうなっちゃうの？
L.ﾍ." - ,.ｲ|::7､:::|::::::::|::|
. |:::|::｀7'ｧ‐--r''´ .i／ﾚ'⌒ヽ;:::!::|
＼ |:::|ﾍ.|::::::!ｲ7 .／/:::/ ﾊ::i:::i
＼.＼ ,..､ |/ !::::::ヽiY[]､__/,./ /|::::|:::|
＼./ /ヽ._ ﾊ:::::|/i/ .ﾊ::i^ヽ､__ /､|:|::ﾊ::|
! ' r !__Y:::!/ム__」/ ｀ - ｀ヽ7:ﾉ| |/
｀ヽ､ｲ ＼'li／7::ﾊ,. '"-‐ ヽ ｀>'
| !::＼,へ､/::／ /!
', ヽ.,__>､ >'´ヽ､ヽ ..::: ,'」
ヽ､___ Y ,ﾊ_ l i:ﾊ
／/>ヽ,__rへ! /::::ヽ.
／:::/::::7 ＼ >､. /:::::!:::::ヽ､
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|「大事にしないとは言っていないさ。
| だが、現代社会に即していないのは否めない。
|
| 博麗霊夢。キミは偉大なる『血族』のために40代バツイチ土建社長と結婚してくれと言われたらどうする？」
|「Ｙさんは資産家なら愛せるわ。月だって買ってるし。金の切れ目が縁の切れ目になるかもだけれど」
|
| なんでや！ 『千葉県のＹさん』関係ないやろ！
| 『千葉県のＹさん』はニセコイの登場人物です。
|
|「テメーが愛してんのは銭子だろうが」
|「正直言うとピンと来ないのよね」
|
| 小学生の巫女の視点では、結婚云々は感覚的に難しいようであった。
| 少女は呆れと諦めの入り混じった視線を、板張りの床に横たわる相方に向ける。
|
| 不意を打たれ気を失ったままの巡音ルカは、しどけない寝姿を晒していた。
| 白いうなじと大胆に肌蹴られたふともも、切なく開いた桜色の唇が艶めかしい。
|
|「『血族』の結婚って動物の交配と同じでしょ？
| 血統書あるの同士を番えて、より優秀な子供を作るんでしょ？
|
| 夢も希望もあったもんじゃないわ」
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, ' ´ ｀ ' - _
, ' ´ , -v─x＝､ _ _ ｀ヽ､
_ _イ ／｀. . . . . . . . . . . . .ヽ-､ ＼
r‐ '´ ／. . . . . . . . . . . . . . . . . . . ｀ヽ ＼
＼ /. .>=-､＿人_ィ-'ー''ゝ＿ ,. . . . '-､ ＼
＼ _ ｨ:::/::::::::::::::::／::::::::::::::::::::/:::ﾊ::::ヾ. . . .ヽ /｀ｰ ､
｀─'' ７:::::/::::::::::_:／::::::::::::::::;;ィ::/:::/ .i::::::::::廴. . ｝ ／
/:::::ｲ::ー=イ:::::::::::::::::ィ':::::/:::/ .:|::::::::::::::｝. ｛ / .／
ﾉ::ｨ:::i:::::／＞ ､:- ' ´./:::::/／ _ 」:::-::::::::∧. i r ' ´
/／i!:: ﾚ｛／::r7=-､7 i:::./ー彡= _ﾊ::::::::::::ﾍ:Ⅵ/
／i!:: |:::i::::V（;;;...::ｹ /ノ イ;;;...:::ﾏ､:::::::::::::＼:｀ｰ- _
,..ィ:::::::::Vﾊ:::l:::::i ゞ=ｿ 廴z:ン升≧:､::＿::::＞￣
_..ィ:::::::イ::::::::::ﾊ ゝ-::､::_ﾌヽ丶 ､ ヽヽヽノ:::/:::／/ヾ::::::｝
_...-:'::´:::／:::::::／:::::/::/ ヾ. . . ヽ / ー -､ -=ﾌ./／. /i!:i:｝:::::ﾊ
. ,r::'::´::, '´／::::::::／:::::: /::/ ｝. . . ト､ヽ＿＿ ） イ∠/. . ..ﾉ::人i:::｝::::i す、翠星石はやらない夫と結婚したいですぅ！
/::::::／ /:::::::::／:::::::::イ::/ ｛. . . . ｝ ＞- - r;;´ﾉﾍ /. . ..ノ ';:::i/:/:::/
i:::::/ ./::::::::/::::::::／:::::/ ゝ. . . ｛ i＞ ＞'´r=≧､/. : .:ノ ',/::/:::::{
|::::| ｲ::::::::::/:::::::/::::::::/ ｛. . . . ｝ / ／ ,-ーｲ. . : .:厂ト､:/::;':::ﾊ
|::::::V::/:::::::::/:::::::ｲ:::::: / ｛. . . . ｝ / ' ∠_゛._. . . :{_/ / 〉ｲ::::::::i!
.V::/:/i::::::::/:::::://::::::/ ...:::::::....::.. ｛. . . .｛ ｛ _, -─' : . . :-'､/ﾉ ::::::::::ﾊ
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| 真っ赤になって、両手を振り回しながら翠星石が叫んだ。
| 恋愛結婚の大切さを語りたいのだろうが、単純にわめいただけである。
|
| だが、そのひたむきで飾りない感情が、彼女の思慕の深さを物語っていた。
| もはやまったく関係ないはずなのに、やる夫は深く傷つき、そんな自分に自己嫌悪した。
|
|「柴崎翠星石のような考え方が、『血族』内部でも広がりつつある。
| つまり、自由恋愛だ。大変嘆かわしいが、時代の潮流だね。
|
| 自由とやらの弊害で、政略結婚への忌避感が若者の間に広がりつつある。
| これは由々しき事態だ。『血族』の在り方として大問題だ」
|
| 政略結婚が、『血』を残すための配合が無くなっては、異能が潰えてしまうかもしれない。
| そんな危惧を語るキュゥベぇに、シックスが身震いした。
|
|「子供の意思なんてどうでもいいから、ぜったいあくに任せてよぉ！
| 最高の配合を繰り返して、最強の人類を作ってあげるのに。
|
| ぜったいあくの6Vメタモンは君の合体を待ってるよ！」
|
| 血走った眼で唾を飛ばして叫ぶシックス。いつも以上に迸る狂気に、良識人はドンビキだ。
|
|「それがやりたいなら試験管で作ればいいと思う」
|「作っていいの？」
|「ダメ」
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／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ）:.:.:i:.ﾚｰ-
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／イ:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|ヾｲ.:.:.:.:.:ヾ:.ヽ:＼ゝ
／ 〃:.〃:.:.:.: /:.:./:.:/:.i!:.:|:.! ∨:.:.:.:}:.:.:ﾍj
/:.:./.:.:/:./:.:イj:.ﾘ:.八:.リ j:i:.:.:.:.:ﾄ:.ヾヽ
!／:.:イ:./≧x､lハｊ _,,ﾘ≦二ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧ぐｾｵ}≧=≦弋ダﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。
|:.∧ﾊ j ／イ:.:./ソ:/ 重要な事じゃない
ﾚ' ﾘ八 <、 /ｲ/ﾊ:.:/
ﾄ､:ﾍ _＿ /ｲ |｀ヾヽ
／ﾘ;;;;＼´ - ｀ ′ !;;;;ｿ;｝}
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_..,,,,,///´;;;;;;;;;;;;;ﾉ! / ／::／ ..:j＞,､_
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| ミストの言葉に、じゃれていた狂人二人が顔を見合わせる。
| 特にキュゥベぇは、思わせぶりに話を始めて一向に進めていなかった。
|
|「これ以上俺たちに何をやらせようっていうんですか！？」
|「志摩子さんの直属かな」
|
| ミストの眉間に縦じわが刻まれる。
| これまでも、その立場であった。きっとこれからも。
|
| それがいったいどうしたというのだ？
|
|「大首領様にはくだらない派閥争いとは別の手足が必要だと感じたことは？」
|「常日頃から、俺たちと『元老院』でこんなにも意識に差があるとは思わなかった」
|
| いや、その意識差は仕方ないと割り切るしかないだろう。
| やる夫はキュゥベぇの言いたいことが理解できはじめてきた。
|
| キュゥベぇは『元老院』の立場を失い、今や一介のアドヴァイザーだ。
| これまで見えていなかったものが見えて、それをどうにかしたいと思っているのだろう。
|
|「派閥争いとは無縁の親衛隊を作り、大首領様の直属にすれば、志摩子さんも動きやすいし、
| 周囲も彼女の邪魔をさせにくい。違うかな」
|
| キュゥベぇはお飾りの大首領に、名目ある手足を与えようとしているのだ。
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血統自体が目減りして血族の屋台骨が軋みを上げかねないし
FA制度を確立させたいって目論見もあるんだろうか
血肉を分けるとか腹の中で育てるとか魔術的に意味がありそう
純粋なクローンじゃ意味なさそうだけど
古いホムンクルス作成の方法とか使えそうよね
（水晶製の容器に精○をいれて40日間熟成させ〜）
排他的で、増長が円満している。
排他的で、増長が蔓延している。 かな？
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,ﾊ::｀丶､:::::::::::::::::::::::|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_,, -‐:〈
{;;;;ヽ､:::::｀丶､:::::::::::::l:;:;:;:;:;:; ィ";:;:;:;:;:;:;:}
,l;;;;;;;;;ｼ丶､:::::::｀:`:ー'‐::'':"::::::::_, ィ"´;;l
fうl;;;ミミ、 ｀`丶 ､::::::::,: - ''"´ ﾘ;;;;;;f-､
{ l l;;;;;ｯ=` (三> ｀^´ (三ｼ ム;;;;;;ｿl}
t !;;;ﾘ _,,...,,_ _,,..,,_ l;;;//
ﾞl ヾ;l :'ｨﾃﾍ9ﾝﾐ ,: ',ｼﾋ9ﾝ､ l;//
`ｰll! ｀''==ヲ' l:.:^''==彡'" ,!ﾘﾉ 危険でおじゃる。
ll ` '' " l:.:.:` '' " ,i;;l´
li, ,r .: :.ヽ､ ,:,り
t、 / ﾞｰ､ ,r 'ﾞヽ /,K′
ゝ、 ,:' :~: } // /ヽ、
/{lヽ ,ィ＝=ﾆﾆ=＝,ﾉ,ノ7 /:.:.:.:ヾﾆヽ
, ィ/:.:い ヽ ｀` ー一 ''"／,/,/:.:.:.:.:.:.:.:ｿ }- ､、
/ /:.:.:.:ヽヽ `' ー‐ -- '"／／:.:.:.:.:.:.:／ / ｀ 丶､
,, - { ヾ:.:.:.:.ヽ丶 ／／:.:.:.:.:, -'" ,／ ｀ 丶 ､
,, - ''" 丶､ ｀` ーゝ､ヽ.,＿,,ｨ"ェくユ- ''" , ｨ"
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|「僕もそう思います。ミストさんたちへの向かい風が強くなる」
|「今はね。けれどじきに風向きも変わるだろう」
|
| 自信満々のキュゥベぇは、たしなめる麻呂と蒼星石の言葉を聞き流す。
|
|「言ったろう？ 『九鬼』はこちらと協定を結んだ。
| 彼らのほかにも、『血族』に下る『結社』勢力は多かろうだよ。
|
| 彼らは外様だ。『血族』での風当たりは『のけもの』以上になるだろう。
| だが、志摩子さんの右腕として、ミスト・レックスや北斗ジャギがいたらどうなる？」
|
| 一代止まりと、裏切り者が高い地位にある。
| それは新規で流れ込んでくる荒くれの元『結社』どもの星になる。
|
| どれほどの風当たりがあっても、実力を示せば高い地位に登用される。
| そんな希望の星が必要なのだと、キュゥベぇは考えているのだ。
|
|「だからボクと契約して『血族』幹部」になってよ！」
|「お断りします」「オレもごめんだ」
|
| ミストとジャギの返答は即断で、そして予想できるものであった。
|
|「どうしてだい？ こんなにもメリットだらけなのに。訳が分からないよ」
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､
-ミ＼:≧-: ､ヾ.|
,. . : :≦: :`:.ヽ: ＼ : ﾉ!彡￣ミ: . .、
＿＿/: : : : : : ／: : : : : У: :彡: : : ミ:､ヾ
＞: : : : : : :._: : -:ミ: : : : : ／: : : : : :.ヾ＼
／7': : ／: : : : : /: : : : }: : :/: : : _: : : : 八::ヾ
＿ 彡': :／: : /: : : :/: :/:/从:.:/r‐:.': :.ﾊ: : : : : ::.
〃:／ : 彡': : : : ,: :.从iゞゞヾ:.i:|: : : : : ＼: : ::≧=-
-=≦: :／:ﾉ: :.:.:ｨ:i: :,|:! ﾉ|!: : : : ヾ:.､≧ー::.
_|:/ 彡:.ｧ‐ミ＜!从 i.!:! __'__! :.!: : : :ﾊ: :≧ー: :＼
|ﾊ:///: :i:.弋弐 Nヾ=ｧ示≦､厂｢: : 小:.､: : :､: ＼ヾ
{ { i/ !从:! / `ヾ'-イ//!: :.j !ヽ.:＼: :＞-ヽ そのメリットは、俺たちのメリットじゃあない。
| { 八 ､' ／'〃/,.:.:./ﾘ} !: :∠ それどころか志摩子さんのデメリットにもなりかねない。
!ﾄ ヽ ノ' /:ｲ':/.ノ彡 ⌒
_|i.‐ヽゝ=- ノ' ノ- ゞ'' !ミ. 、
,x≦ニニハ ≠ .|=j. ＼
__i彡≦＞≦ﾆ≧z r≦ 〃 .ﾉ=:! 弋≧.､-､
Yﾆ/三三三三三={. // ,;仁/ ヽi |!
.ﾉ|ﾆ{!:三三三≫ ´.:iヾ , / ,,仁ｼ ! ! !/
／ fiⅦ!三:≫ ´ ﾉ .// ,.ｲ=.／ / :/ ,x≦
.. i .f==〈/:.:i ヽ､ / ../ ,,:仁／ , ../,:仁二
/! / ./:.:.:ﾊ ヽ __.r≦彡 ' ／ /,:仁ニニ
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| ミストは深々とため息をつき、視線を泳がせながら口の中で悪態をついた。
| そんな彼の姿を、ジャギが面白そうに見つめる。
|
|「いいですか伊集院さん、信じてくれる人がいれば俺だって働きますよ。
| 汚れ仕事でも、危険が伴おうと。
|
| 志摩子さんは他に頼る相手がいないから俺たちを使ってるんです。
| 非公式で頼まないと立場上危ういからです」
|
| ミストや四ツ目は、志摩子の直属だ。
| だが、一代限りの彼らは、扱い的には戦闘員というよりもメッセンジャーだった。
|
| 優秀な指揮官の不足から、先日から班長に格上げされたものの、正式な仕事を任されることは極めて少ない。
| そして、今までの仕事の手柄は、ほとんどを関係した別の班に譲って来た。
|
| 今更手柄や実力を云々言っても、組織内に波風が立つばかりだ。
|
|「俺は東京と志摩子さんを守るために『血族』にいるんです。
| そんな俺を利用したいって言うなら、勝手に画策してくれ！ 俺は船を下りさせてもらう！」
|
| 激怒するミストに、キュゥベぇは観念したように肩をすくめた。
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ﾄ､‐- ､ , - ―.ォ
|: ＼ ＼ ／ ／: : :.|
l: : : ヽ ｀ ￣￣ ´ /: : : : /
': : ／ ＼: : /
У , ｀く
/ / ﾍ ヽ 訳が分からないよ。
/ / γ::o, γ::o, ﾊ ヽ
,､ / i ヽ::ノ ヽ::ノ .i ﾍ‐- ､__
ヽ＼, ､ ､ _ , / ﾍイ/,＞ ,
ヾ_｣ /＼. ｀´｀ ´ ／ﾍ ／イ ＞､
／ ヾ,.､ λ ｀ー‐ｧ---- r一 ' 入／" i＼ ＼
＿＿ ／ ｀>く}ﾍ / ﾍ ／厶へ ＼＿＿ ヽ
, -‐" ＝ ／ ｀´ i | ／ ＼ ＝二ァ
￣フ二__二, _・ ／ j l' ｀ｰ-｀､_三――" ’
/ ￣ / | / ヽ、 ￣ /
, -､ / / ､| | , ├‐- ､ |
（{ ./ | ﾍ ｜.i / | ｀ 丿
ヾｰ--‐' ´ ,＞ '￣￣| ﾊ l.｜ ｛ .j ／
｀ｰ- ＿＿＿ ＞ ' ヽ i | | ﾉ 人 ／
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|「キュゥベぇはさァ、自分の考えてることが正しくて、合理的で、
| 他の人もみんなすぐに分かってくれるって考え方やめた方がいンじゃね？」
|
| ロリポップを口にくわえて、杏子が白い獣を肩の定位置に乗せた。
| 呆れたような嘆息。周辺からの総スカンを食らう彼に同情し、自分の怒りは収まったようだ。
|
|「ぜったいあくは、伊集院の言いくるめはレベル高いと思うよ」
|「『言いくるめは説得と違って冷静に考える時間があったら間違いに気づく』ってばっちゃが言ってた」
|
| 観念したようにキュゥベぇが押し黙る。
| 言いくるめ。その通りかもしれない。
|
| その場の勢いと、前押しされるメリットに目がくらむだけかもしれない。
|
| いや、目がくらんでいるのはキュゥベぇ本人も同じか。
| 目先の理想論におぼれていたのかもしれない。
|
|「仕方が無いから今回は引き下がっておくよ」
|
| しかし、キュゥベぇは死人で、彼の記憶は悪魔に内蔵されたデータにすぎない。
| 故に、変われない。変わらない。
|
| であるなら、ミストらを重用しようという考えは、彼が死ぬ前から温めていたものなのかもしれなかった。
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/:::::::::::::::::::::::::::ゝ､
......::::{::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ::ヽ
〈:::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ミヽ
>;;:::::::::::::::ヽ:::::ヾ::::::|ﾐ::::::::::::::::::::ヽ､
.〈:::::|:::::::f:::::::::;;''')::::人::ﾊミ:::::::::::::::::从
i:::|::::::::ﾄﾐ'' 〈::::{ ／}::L ミ::y-ミ::ヽ
|::|::::::::::::::ヽ ):）fイ:丁 ｿr}k ）:| ）
|::|::::::::::Y}::|__ ~ ¨´ Y/:::l それぐらいでいいか？
{ ヾ:::::::::t k夕 r':::::jゝ
￣ゝ(ﾍ < ＿ ヾﾘ 僕は『ビスケットハンマー』対策を
（ ヽ ´ ／ ヽ どうするかを知りたいんだが。
＞ ､___／---──ゝ.
z-≠─- ､ ヽ へ─--ﾍ
| ＼ ｀ ゝ､
| ＼ ＼
| ＼ ＼
| ＼
| ｲ }
f＼ ﾉ ﾍ }
{ ＼ｲｨ´￣ ﾍ }
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| 焦れたように慎二が言い捨てた。
| 話が横道にそれていたが、まだその途中。
|
| 『黒幕』の発見に失敗した所までであった。
|
|「誠が示唆した方法としては、観察者がいなくなればいいそうだお」
|「さすがに30人近く殺すのはちょっと抵抗あるわね」
|
| １クラス全員のお命を頂戴すれば、確かに観測者はいなくなるだろう。
| だが、即座に皆殺しから考えた三四に、やる夫は戦慄を禁じ得なかった。
|
|「……『夢世界』の踏破だそうだお」
|「『夢世界』には明確な目標があるってことなの？」
|
| やる夫は刹那と誠の話を思い出した。
| 『夢世界』はまるでゲームのようだと。大きい目標と、それに付随する小さい目標の連続。
|
| 段階を踏んでの成長と、近づくクリア目標。
|
|「まるでゲームで、クリアすると願いがかなうらしいお」
|「『願い』ね」
|
| 『弓兵』が皮肉っぽく口元を歪めた。
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_ -=≦ ヽ_ ト､
＜_ ヽヽ
彡 _ l ﾚ'/
／ l ｀ - ､ ! ,
７ ／. ヽ､ -v
/, , ､/ 弋ﾓﾒ､ __l
l { ﾋj7 万能の願望器など有るはずがない。
レヽ､ ∨ 誰かの願いをかなえるという言うことは、
从 / ヽ. ― - 因果律そのものに対する反逆に等しい。
ｲ. へ ／
j ＿_┌――三l
r―「「 }ﾆﾆ「￣. .ヽ,,_
_ ｒ . . ./ﾆL __＿ }┌' . : : : : : : : : : :｀: : : ､
r . : : : /. : : : : :/ﾆl l ／/ﾆﾆl : : : : : : : : : : : : : : ／. : ヽ
l : : : :/. : : :.｛i｝ﾑﾆﾑ ／ﾆニﾉ｛i｝: : : : : : : : : : ／. : : : :
, : : : /. : : ∈※∋ﾆl lﾆﾆニ∈※∋: : : : : : : /. : : : : : : :
, . : : .{ : : : : ﾉ川ﾆニ.iﾑﾆﾆﾆニ川 : : : : :i: : : /. : : : : : : : :
l: : : : l : : ／ﾆﾆ=- ´ ｀ -=ﾆﾆニﾑ : : : : l: :./. : : : : : : : : :
./. : : :.:| :/ﾆﾆﾆﾅ , ﾑﾆﾆﾏｭ,｀ ー---.＼. : :∨. : : : : : : : : : :
/. : : : : :∨ﾆ ﾑア ﾑﾆﾆﾆﾆﾆ} ﾏﾆﾆ ﾏﾆﾆヽ. : ヽ. : : : : : : : : :
.../. : : : : : : {ﾆ,' ﾑｱ {ﾆﾆﾆﾆﾆﾆｱ }ﾆニ ｱﾆﾆム. : : ヽ. : : : : : : :
/. : : : : : : : .lﾆ {ﾆム マﾆﾆﾆア ムﾆア ムﾆニム. : : :〉: : : : : : :
: : : : : : : : : :|ﾆ〉ｱｱ ムﾆﾆﾆﾆ} アﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ}: : / ﾍ. : : : : :
: : : : : : : : . ﾊｱムﾏ ﾑﾆﾆﾆﾆｱ ｱﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニ∨ ヽ. : : :
: : : : : : : : / } ﾏﾆﾆｱ ﾑﾆｱ ﾑﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆニﾆl ＼: :
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|「そこまで言う必要があるのかい」
|
| 得意の言葉を奪われたキュゥベぇに、『弓兵』は首を振った。
|
|「あるとも、伊集院殿。死人に会いたい。誰かに好きになってほしい。
| 後は金か？ 病気を治すとか？ それとも嫌いな人間の排除？」
|
| 『弓兵』の並べた願いは、いずれも想像のつくものだった。
| 誰だって持っている願いである。そして、願うだけでかなう類ではない。
|
|「死をキャンセルする。誰かの思考を書き変える。肉体を改竄する。
| 世界のいずこからか大量の質量を移動させる。時間を跳躍するというのもあるな。
|
| どれも儀式や異能さえあっていればできなくもないだろう。
| だが、どれも同時に可能な異能など、あるはずがない」
|
| やる夫の脳裏に、代償次第で全部可能な存在がよぎったが、口を挟まないことにした。
|
|「その『願い』とやらは、確実に、ある特定方向に歪められて叶うぞ」
|「ご高説は聞かせてもらったけれどね」
|
| 不意に、彼の前妻が氷点下の声色で割って入った。
|
|「そんなのみんなすぐに分かってるわよ。
| 要は『ビスケットハンマー』発動条件こそがその『クリア』である可能性が高いって話でしょう？」
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代償が苦行かそうでないかの違いこそあれ
どうしようもない願いを払える（ここ重要）対価で叶えてくれる所。
誰だよ、ちっひの事鬼とか悪魔とかちひろとか言った奴
∠ヽ . =:
/{/∧.:∨//}
―'＜.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀.:.:.､ r‐┐
／／.:.:.:.:.:.:.:＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .⌒77/∧
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.--.:.:.:.:.:.:.:.:〈////,厂.:.:.:ヽ
//./.:.:.:/./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀.:､.:.:.:.>///.:.:.:.:.:.:.:.:.
ﾉ'{ :!.:.:.:.ト.ｉ､.:.:.:/^⌒!.:.:.:}.:.:.:.:.:.:.:.:＼{///.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
人l.:.:|.ｉ|.:从ヽ:{ |.:.:/.:.:.:.:}.:.:.:.:.}.:}//{.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｉ}
r ､ 乂|.ｌ|/^汽八 ､｣.:/L.}.:./.:.:.:./.:ハ/!.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ﾘ
＼丶 , ┐ 八ﾘ ﾋﾘ ﾉj厶!/!/}.:.:./}/.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ それで入即やる夫、聞かせて頂戴。
丶 ＼ { | .:.:.:.:{ ｝ {‐'圦_!イ}厶.:.:.:.: !:.:.:.:.:.:.:.:.:.: 『夢世界』に介入する方法があるのよね。
厂￣＼八 {.:.:.:∧ 丶∨ツ^ }.:.:.:.: !.:.:.:.:.:.:.:.:.:{
｝ 二 ヽ_} ∨.:.:.∧ ｛ ヽ ,､＿,人.:.:.:八.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
〈 -､＼( } }.:./厂〉 二 -=≦´ {)｛.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:丶.:＼
＼ `￢ / {/ // ｝ ／ }/.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼.:}
∧ ／} ハ| { `ー――'^ /.:/＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.
/ }／ / / } / ＼＿＿＿／冖7.:/ ＼.:.:.:ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:}＼
{ ｛/ {/ 〕_ ￣／ /.:.{ _＿ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧.:.:`==ミ
| ｢＼ / .o / / }八.:､ / ∧.:.:.:.:.:.:.:.:.:{.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}
| 八. / ┌ / / O ( ヽ) 、 ､.:∧.:.:.:.:.:.:.:.:}.:.:.:.:.:/
| { ﾘ `￢ `￢ 〃 {＼＼＿___＼}.:.:.:.:.＼/.:.:.:.:.:{
| | { / / ￣ ＼}＼＼＿ ｀L、.:.:.:.:.:ミ==ｧ.＼＿)
| ∨〉 ｛ ｛ 人 ＼.:.:.:.:.:.:./.:.:＼二≧
|lニニニニ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ニニニニ
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| 赤い悪魔に水を向けられ、やる夫は一瞬チビりそうになった。
| だが、よく考えると怒られる理由は無い。落ち着け。大丈夫。
|
|「方法を三つほど教えてもらってあるお」
|「確実性の高い方法から教えなさい」
|
| 誠からはダメな方から教わっていた。
| やる夫は頭の中で説明をちょっと予習し、小さく頷いた。
|
| 別に逆でも問題は無い。
|
|「まず、協力者を育てる方法ですお」
|「……そいつに『クリア』させるって言うの？ 確実性の高い方からって言ったわよね」
|
| 凛の怒りはもっともだとは思う。とはいえ、彼女はその協力者を知らない。
| 聖永刹那を知らないのだ。
|
|「せっちゃんは、強いよ」
|「……」
|
| 力いっぱい断言するアリカ。
| 彼女の経歴を知らない凛は、とりあえる保留の様子。
|
| なにしろ、アリカはこの世界に入っていまだ三カ月程度。
| アリカの言う強さは、一般人の中では強いという意味である。
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∨三三三三三三三三三三ﾆ/
＿_ ｌﾆ＞‐ '´￣￣￣｀ ｰ＜三三/
〈三三二ﾆ―‐- ､ ＿＿＿ ｀ヽ|
∨三三三三三三三三三三三三二二ニ￢
ヽ三三二ニニﾆﾆニ二二三三三三三／
Ｙ´::.::.::.::.::/:l::.::.::.::.::.:＼::.:｀ヽ::＜三／
. ,'::.::.::.::.::.〃∧::l::ヽ::､::.::.ヽ、::.｀、:l:T
｜::.::.::.フ７￢‐､ヾ､:＼>､:|-ﾍ::.::.}::!:|
{::.::／代了圷ﾐヽ. ＼行‐t予l:ﾉ/::|
!::.::.::.:| ゞ-'′ ＼ 辷ｼ '/:/::./
|::.::.::.:ゝ , 厶ﾉ::.;′
ヽ.::.::l|ヽ、 r-､ ／::.::/ 聖永刹那は暴力教会で10年ほど前から
＼:ﾄ､:j＞ ､ _,.ィ:´::;:l:: / 『教会』戦闘員候補として訓練を受けているそうだ。
ヽ ｀ ,.ｲ ｀¨´ ﾄ､ﾚ'|/ |:/
__,. '´＿＞v＜ ｀ヽ、′
┌イ ／／了,ﾊ＼＼ヽ ｀┬ｧ
／7 | { く／ノ/引ヽヽノﾉ | }-､
. /:.:.:.:{ | ｀ｰ'´//l弓| |｀ｰ′ | } :.:l
/:.:.:.:.:.{ | // ]弓ﾄ､ヽ |「 :.:.|
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| なんて思っていたら、蒼星石から衝撃発言である。
|
|「軍隊格闘術と、『武僧』の初歩動作。『教会』の対悪魔戦術。
| 『黒手組』から銃器や刃物の基礎や、戦場での心得を叩きこまれている」
|
| 誠ややる夫に対する容赦のなさや、刃物を突き付ける動きがなんかやけに手慣れていると思ったら。
|
|「え？ そうなの？」
|「本人から聞いたよ。孤児院に預けられてすぐにサーシェスに頼み込んだそうだ」
|
| サーシェス。アリー・アル・サーシェスは『教会』の工作員だった男だ。
| ヌケドナルド・トールマンの手先として悪魔狩りの尖兵を担っていた達人であった。
|
| しかし、相棒のキンブリーを殺害し出奔、行方不明である。
| 現在はニャルラトホテプ内通者の可能性が高いと目され、『血族』『教会』の両組織から追われている。
|
|「『教会』のお固い感じの子なの？ ぜったいあくニガテだな〜」
|「もっとフランクでとっつきやすいよ」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／ ＼
／ ─ ─＼
／ （●） （●） ＼
| （__人__） | やる夫はシックスと同系列だと思ってるお。
./ ∩ノ ⊃ ／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
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| 刹那は自称ガンダムである。
| 幼いころ、悪魔に襲われガンダムに助けられたと信じている少年を、狂人の類と呼ばずに何と呼べば良かろうか。
|
|「アイエ狂人！？ ぜったいあくキ○チガイ嫌いなんだけど」
|「どの口で言ってんだお」
|「このくちー」
|
| とりあえず、刹那がフランクでとっつきやすいことは全くない。
| 無愛想で無口で、表情の変化の見分けが難しい。
|
|「ぜったいあくって繊細だから、キチガ○イとかマジ勘弁だよ。
| 伊集院とか臓硯とかフリットとかロージェノムとか、さっさと死なないかな」
|
| 自分以外の『元老院』全員を、いけしゃあしゃあと狂人扱いするシックス。
| むっとする杏子の肩の上でキュゥベぇは興味が無い様子だ。
|
| 『弓兵』や凛は該当人物の当たりで深く頷き、キオが大好きな祖父をけなされ唇をとがらせる。
| 霊夢がまだ目を覚まさないルカを一瞥した。
|
| 周囲に性的魅力ビームをばら撒くという意味で、ルカとロージェノムは同様に厄介者だ。
|
|「それは同族嫌悪かお？」
|「THE正気と名高いぜったいあくを捕まえて何を言ってるかな」
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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＿＿__
／´￣￣｀ヽ、
/ ヽ
{ ,. --‐┴…ｰ- ､
ヽ ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ、
/.:.:.:.!:.:.!:.:.|:.:.:.:.:l:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.ヽ ちなみにせっちゃん、
l:.:.!:|:|l:.:|ヽ:＼:.:.:!､:.:.:.:ヽ:.!:.:.:.ﾍ 『教会』の孤児院だけどクリスチャンじゃないよ。
|:.ﾊﾊ!ヽl ＼lヽl__＼:.:.l:|:.:.:.l:.:l
＿ rﾍ!/f,心ヽ /f心ヽヽﾘ.:.:./.:ﾊ
,.--く ,斗-| ﾋzｿ ﾋzｿ } }:.:/:/ヽﾊ
{ ｀ﾒ､ ﾍ._! , , ' , , /ｨく｀),.-'┴ｧ
ヽ,r‐､―- ､ ヽ ､＿_,. /_／-}―‐!｀!__
／´￣｀丶r‐┬-＼ ,. '´{,. -―-､人_|/ｿ
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::::::::::::::,. -- ､::::::::`,ﾆ´-‐'' ´￣￣￣￣￣￣｀`丶､! }
::::::::／／ ヽ∠::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}'
ヽ::{／／ く::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／
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| 彼は唯一絶対の彼だけの天使『ガンダム』を崇拝する『ガンダム教徒』だ。
| 日々ガンダムになるために研鑚を積み、ガンダムの素晴らしさを聖典のように語る。
|
| どう考えても『教会』の人間ではないと、やる夫も思った。
|
|「刹那に直接ぶん殴られた誠曰く、普通に強いそうだお。
| で、第一の方法は、刹那に『血族』に入ってもらうこと」
|
| 懐疑的な視線が集中する。
| やる夫は、誠からその回答を聞きだしていた。
|
| 刹那をどう使えば良いのか。
|
|「聖永刹那の異能は、『自己の信じる救世主に自分の能力を近づけること』だそうだお。
| 誠曰くここで重要なのは、『救世主』の能力上限だそうだお」
|
| 途中まで眉唾だった凛の顔色が変わる。
| 世界有数の魔術師で首領級の人物が、こんなに顔に出dていいのかとやる夫は不安になった。
|
| だが、その脇の『弓兵』のポーカーフェイスに、バランスは取れているんだろうと納得する。
|
|「でもその子、『教会』の訓練を受けているんでしょう？」
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ｨ=､----v'::::;⊥--ﾍ:::::::::::ヾ／;＞―‐､
/ :}｀￣:＞ '´ メ |:::::＼::|＾￣⌒ヽ .:.ヽ
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. | / ./ :/.;' ﾄﾍi'ﾍ :| .|. ＼::ﾍ:::. ::. :|
ヽ. | .:| |:| :|:| ! .|:| :| || |:.|::::| ::. :::: .:| 『武僧』や悪魔狩りの初歩訓練を受けているなら、
| | | |:| :||!:.:|. |:| :|:.小::j!:ﾊ;ﾊ :: :.:::.i. .:| それに見合った知識はあるはずよね？
| ヽ:|ﾊﾊ:||＼! ,_jﾊィ升:jﾒﾊ/Yﾞ| :: :::::'. |
. | ｀ヽli. '＝- ┴`-' /j/ﾊ| ::: ::' : :|
. |!: | :|:!. , u ,ﾆ.ｲ i:| :::.,' : .:| ／〉
ﾊ: | /i:＼. ｬｰ-、 / |::ﾉ.:.ﾘ:::/ .:.::/ /./7
/ :| ﾚｧ:､＿ ＞､ー ',. イ ,ﾉ7!_;j／. .::::i| /-'./―;、
. / ﾚ' { ハ｢ ,／ ／ ..: .:::::/| | 〈:r! ﾉ,ﾊ
/ ／ 〈 ! ￣ ／ .: .::::/: | _|. } ^ドr'′
／ .::｜ ..::: o:i^!.. ,.ｲ .: ＿_;人_:| _ﾉ `ー-::イ
_,/ :. :.|..:: <ヽﾉ/ o￣ | : / ____〉 厂L ＿_ _,人
. ／ ;､_/ //ヽﾆ> |...: ｜ .／ ｝ | :| 〉 〉
＼ __/::/ :// __r' . :_丿/ { | :| :/ /
|ヽ ー '´ {./ :`′ /:r一'´ / ヽ,j ｜ .' /
| :. .:.:.{:... . . .:. : ヽ{ く / :| /
ヽ :.:.:.:. ヽ:.:.:.:.:.:.. :: :.:.:ﾚ1: :. / |
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|:ヽ. | .:.:.:.. :.:.:.:.:. . . .:.:.:.:.:.:i,:ｲ:::::i:.:.:.:./ /
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|「残念ながら一般人として、候補生程度の訓練だけらしいです。
| 僕がエダに確認したところ、悪魔関連は教えていないそうです……まだ未成年なので」
|
| エダの所は、案外未成年の権利とかを重視している。
| おかげで刹那は軍隊格闘術やらを叩きこまれながらも、使う場所については考えていない状態だった。
|
| 戦う力、立ち向かう力を有していれば、それが必要な状態になった時に誰かを守れる。
| 刹那にとっての訓練は、そういった類のものであった。
|
| 故に、彼にとって強大な力とは人間レベルの存在だった。
| であるなら。
|
|「刹那は、夢世界で今伸び悩んでるそうだお。
| でも、こっちの世界でトップクラスのバケモノの力を知ったら。
|
| 自分にとっての救世主の強さが例えばニャル公に勝てるまで言わなくても、
| 上杉謙信さんを目標に出来れば」
|
| 毘沙門天の化身であり、その強大な能力を余すところなく扱える上杉謙信は、『血族』では最強の使い手だ。
| そしてそれは、世界でも有数の実力者ということになる。
|
|「ついでに知識とかも詰め込んでもらえりゃあ、
| 『ビスケットハンマー』を単独で叩き子わえても不思議じゃあないってのが、誠の考えだお」
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かな？
せっちゃん恐ろしっすw 乙乙
「了解、デビルシフト！」
,!ヽ.
＿ ノ i
, ´￣ |
／ / . ｫ
. ／ / ／ , :
, ′ ,. '"´ r─ - ､ ,. ─‐'- ､i !
. / ,. '" '､｀＞ｫ ｀ ｀ヾ. 上杉謙信に弟子入りさせるというのかい？
/ ,.′ 冫 .′ ● i
,′ ヽ{ / .ｉ ● ,!'.
: ∧ .′ .!、 ､_,_, / '.
| | r ,′ : ` ､＿＿_,. " i. X
| ､ | ゝ、 ｉ / | レ ﾞ:.
: ヽj. / ＞'／ i! '. ＼
∨ ｀ ､／ У l il '. ﾟ ﾟ ﾟ ヽ
＼ r'__ﾟ ﾟ ,. ﾟ / l l. /i ゞ-'´ゝ '｀ｰﾞ
. ヽ. _,.イ ゞ-'"^^ヽ i i / ,'
`ー‐ '"´ ! i : :,ｲ /
∨ ﾉ _,!. lf._j
ヽ.＿＿＿ﾞｵ'´ ﾞ^´
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|「誰でもいいけど、できれば圧倒的な奴がいいお。
| そして凄まじい敵を圧殺するのを見せられれば最高だお」
|
| シックスが考え込んだ。キュゥベぇも小首をかしげる。
| 自分らの一存で、その刹那を、どこかの班にねじ込めるかを考えているのだ。
|
|「あのド変態に頭下げてやろうか？」
|
| 杏子が目を泳がせながら吐き捨てた。
| 本人がいないとはいえ、体に染みついた恐怖は拭いきれない。
|
|「『狂死』は嫌がるでおじゃるよ、今でさえ拝み倒しているでおじゃ」
|「だったらさっさと家族の元に帰ってくれねーかな」
|
| 肩をすくめる杏子。『狂死』に師事して、彼女の動きは抜群によくなった。
| 危険への嗅覚が鋭くなったというか、致命的な攻撃を見極める眼力がついたというか。
|
|「麻呂はどうなんです？ ムルタニとかすげーですよ」
|
| 自分のことではないのに無暗に嬉しそうに、蒼星石が麻呂を見上げた。
| 隻足の陰陽師は婚約者の期待に応えられぬ己を恥じるように、小さく嘆息した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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l三｀ｰ ､_;:;:;:;:;:;:j;:;:;:;:;:;:_;:;:;_;:〟-三三三三三l
l三 r＝ﾐ''‐--‐';二,_￣ ,三三三彡彡l_
lﾐ′ ￣ ー-'" '＝ミﾆ彡彡/‐､ヽ
l;l ,_-‐ 、 __,,.. - ､ 彡彡彳､.//
∥ `之ヽ､, i l´ _,ｨ辷ｧ-､、 彡彡'r ノ/
1 ￣ﾌ/ｌ l::. ヽこ~￣ 彡彳~´/ 強大な個と言う意味では、
ヽ ´ :l .l:::. 彡ｨ-‐'′ 麻呂は四天王でも最弱。
ゝ、 / :. :r-､ 彡′
／ ｨ:ﾍ ｀ヽ:__,ｨ='´ 彡;ヽ､ 麻呂の力は軍団でおじゃる。
_,,..-‐'7 /:::::::ヽ _: :_ ヽ ｨ´.}::ヽ ヽ、
_,-‐'´ { ヽ:::::::::ﾍ ｀'ｰ=＝=ｰ-- ' ／ﾉ /::::::ﾍ, ヽｰ､
‐'"´ ヽ. ＼::::::::＼ ｰ-‐‐' ／ //:::::::::::::} ） ｀''ｰ-､
／ ＼ ＼:::::::::ゝ､＿＿_,,.. ‐ " //:::::::::::::::l ,' ｀''ｰ-､
'´ ＼ ヽ､;:::::ﾍ ､ ／/::::::::::::::::ﾉ / ヽ
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 麻呂の『ZIP術』は同時高速式神運用である。
| 奇襲的に五柱の式神を展開し、速攻で敵を封殺する。
|
| 数の暴力こそが麻呂の強みであり、結果麻呂の式神個々は特別強力とは言えない。
|
|「麻呂弱っちいですぅ？」
|「おじゃ？ 個では最弱というだけでおじゃ！ 上杉謙信でも封殺できるでおじゃるよ！」
|
| 唾を飛ばし拳を握る麻呂。運用次第という話である。
|
|「しかしその子供に力を見せるのであれば、ケンシロウ班かジャギ班が良いやもしれん。
| 夢宮かラオウがいれば悩むこともなかったでおじゃるが」
|
| 名前を出されたケンシロウがうろたえたように下がり、逆に自信満々のジャギが一歩踏み出した。
|
|「オイオイオイオイ、わかってんじゃァねえかよ！ この北斗ジャギ様の実力を！」
|「そうよ、実はジャギは『血族』随一の使い手で、ニャルだってパンチひとつでイチコロなんだから！」
|
| 便乗して叫ぶ霊夢、不信そうに振り返るジャギに、彼女は片手を差し出した。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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::::::::::::iゝ. .:.:.:.:.l::::k'_´_o__ﾞ,!:::7 7;:::＼ﾞ¨" ,!
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}::::::::::::!:.: ´ .: ,}:.:|:::::l:.:. !::::::!.:.:,!::;!.:.:,'.:.:,',!
!::::::::::::l.:.:......:.: /:l.::l::::::!:: l:::::::|:.:,!::;!:.:,'.:.:7.! ,ﾊ
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:::l : : :: ゞ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｿゝ.;,;＿,,,,／
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|「欲しいのは現ナマよ」
|「ざけんな」
|「さっきの発言はキャンセルで」
|
| 霊夢は舌を出し、小さく肩をすくめる。
|
|「で、真面目に言うとうちはダメよ。ドクターストップかけさえてもらうわ」
|
| 小学生巫女は、まずは足元にノビている美女を、次にサラリマンめいて皮肉に笑うニンジャを見た。
| ジャギは小さく鼻を鳴らした。鉄仮面をうつむかせると彼の表情はだれにも読めなくなる。
|
|「『教会』で『武僧』的な技術を習ってたんなら、その方向をルカが伸ばせるわ。
| それに、『結社』最強の『九鬼』筆頭の実力を間近で見せるのはいいことでしょうね。
|
| でも、うちの主戦力は半月前に無茶したせいでまだポンコツなのよ」
|「オレは元気ビンビンだぜ？」
|「黙ってろ」
|
| この期に及んでまぜっかえすジャギを、霊夢は一喝。
|
|「オイなんだ。まるでオレが主戦力じゃねーみてーな」
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,rへ､__ ____ __,.イ iﾝ
r7 _ゝ-'=-'─--､__ ゝ)､
)!, .'"::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ､_,.!(:::',
, ':::::::::::::::::::::::::::::､::::::、:::::::::', ヽ､!
,':::::::,'::::::::ﾊ:::ﾊ:::::ﾊ__!__ヽ::::::::', _ゝ､
ﾉ_ﾆ/=γ-ﾚ' !:」,.rr--!､::::',::::i /γ 主戦力はキルでしょ？
i:::,'::::::ﾊ「iﾞヽ ´ ﾄ _!〉ゝ:l::」ﾝ:::i アンタ、『弓兵』さんと殴り合えるの？
ﾚl::::::|:::l ﾋ_} ﾞ'-'',,, [__]::|::::::|
ヽﾊ|从" ´ /::::i::l::::::::|
[ |ゝ、 ー ,.ｲ:::ﾊil::::::::::|
,'|::ﾉ::::!::｀:'r-,-=rﾆ'"ﾚ>ヽ!::::l::::|
/.'Vヽﾊ ,.-i i / ,.ｲ/＾ヽ､;;;;::ﾝ
i:::!,.へ / λ／ ,' ／ ヽ /＾i／⌒ヽ
',/ ヽｲ く,､」 ヽy´ /ヽl ヽ ﾉ
／ / ム___ゝ i l/ゝ __ン
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|「無理言うな殺す気か」
|「でしょ」
|
| じゃれる二人に、凛が眉をひそめた。
| 半月前、渋谷の街で行われたロストスキルと『弓兵』のイクサ。
|
| 結果的には『弓兵』の圧勝であったが、ロストスキルが機械化義手ではなく、
| 全盛期の生身であったなら結果は違っていたものになっていたかもしれない。
|
| いや、凛は愛する男の勝利を疑いはしない。
| だけれども、タツジン二人の戦いに介入しようとした凛は、赤子の手をひねるよりも容易く無力化された。
|
| あの屈辱が、凛の胸の奥に燻っていた。
|
|「ケンはどうなんだい？」
|「俺はまだ、そこまで持ち上げられる程の実力者ではない」
|
| 謙遜であった。
|
| ここ数カ月でメキメキと実力を上げ、先月の合衆国大使館襲撃の際も、
| 『封印像』の悪魔『騎兵』レッドライダーとまともに打ち合ったのだ。
|
| 途中駆けつけたアンデルセンら『武僧』がいなければ命は無かったとケンシロウは思っている。
| だが、トールマンやアンデルセンは、援軍がいなくても勝って居たやもしれぬと語っていた。
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!／:.:イ:./≧x､lハｊ _,,ﾘ≦二ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧ぐｾｵ} 弋ダﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ ケンシロウさん。
|:.∧ﾊ j ／イ:.:./ソ:/ 卑下はあなたの欠点ですよ。
ﾚ' ﾘ八 <、 /ｲ/ﾊ:.:/
ﾄ､:ﾍ ､_ ＿ , /ｲ |｀ヾヽ ジャギさんと足して二で割ると
／ﾘ;;;;＼ - ′ !;;;;ｿ;｝} ちょうどいいかもしれませんね。
///／;;;;;;;ﾍ..___..／ / レｸ:ﾉ.:|
_..,,,,,///´;;;;;;;;;;;;;ﾉ! / ／::／ ..:j＞,､_
_.,､＜://:::{:{:{;;;;;;;;;／´ j { / ／::／ /ト.,､＜⌒＞,､_
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j::〆K / /:::::::::l:.:.:.:｀7´::::::/:.:/ / O ∨ｲ::::::::::ノ ;j
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| ケンシロウの謙遜は、ミストが軽口を叩くほどのものだった。
| だが、ジャギを始め知るものから見れば、ケンシロウの考えは理解できる。
|
| 刹那とは逆なのだ。
|
| 彼は、北斗ラオウを知りすぎている。
| 彼の兄は想像を絶する力の極致にあった。
|
| そしてもう一人の兄、北斗トキ。
| 北斗神拳史上最も華麗な技の使い手と称される、至高の技の使い手だった。
|
| ラオウがいなければトキが北斗を継ぐことは確実と言われていた。
| 不幸なことは、二者が同じ時代に生まれたことであろう。
|
| だが幸運なことに、トキは争いを好まず、兄を尊敬していた。
| 最強で無敵のコンビとして、兄弟仲良く北斗の家を守っていた。
|
| その二人があまりにも偉大すぎて、ケンシロウは自分を認めることができないでいるのだ。
|
| 凛はそのあたりの詳しくを知らない。
| しかし『弓兵』と比べられ、今世代最強と言われた男の話は知っていた。
|
| そして今ならば、今の士郎ならば、歳下の自称覇王ごときには負けないと信じていた。
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〃:.:.:._:._:У-:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼三三三}三!:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ三ソ
/＞三ア:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼三以三|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|爪
ィ升三三/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ｨﾍ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∨三三 {:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|三》
＼三三ﾏ:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:|＞ﾍ:.:ヽ:.:.:､:.:.ﾑ三三允:.:.:.:.:.:.:.:.:|夕
｀}＞/:.:.:.|:.:.:|:.:|:.:.:{ ヽ:.}:.:.:ﾊ:.ﾙ:.:.∧ｿﾆ|:.:.:.:.:.:.:.:.|
ｿ三!:.:.:.:|:.:.:{:.:.､:.:.', }ﾊ:/_}:升ﾉj ﾚ}ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:|
/三｛:.:.:.:.|:.:.:ヽ: ﾄ､:.{ ﾉ ﾉ ｿ / __,,/|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. | うちの『弓兵』を貸してあげてもいいわよ。
←┬ハ:.:.:ヽ:.:从乂卞ﾐ､ ≠"￣ |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.{ /⌒
|:.:.:.:.＼:.:＼ﾑﾁ夭;爿 ||:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∨ |
|:.:. .: :.:|＼∧､ ゞ= ’ ､ ﾘ|:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.f ﾉ
|:.:. :.:.:.|:.:.:.|:.:.ヾ､ _ ノ ∧|:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:/ .'
ﾉ:.:.:.:.:/|:.:.:.|:.:.:.:|:.＞.. , ' |:.:.!:.:.:.:.:.:ノ /'⌒ヽ＿
／:.:.:.:.:.// :.:.:|:.:.:.:|:.:|:.:.:.|夂r‐---≦===|:.:j:.:.:.:／ ､ ノ } ヽ
／:.:.:.:.:.／〃:.:.:.:|:.:.:.:|:.:|:.:.:.|:厶｀￣￣ ノ:/＞' ＿ / ; , ＼
／:.:.:.:.:.／ 弋＞＝ﾆﾆ)'ー┴ﾍ} (￣￣￣￣ ＼/ ,′ j ｝
／:.:.:.:.:.／ /´| /)`ー‐ｧ‐＝ー‐、 / / ,′ !
,イ:.:.:.:.:.:.／ / ! ＿__o//_o_／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.)ｰ-､ ヽ＿_ノ ノ ノ
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ヽ:.:ヽ:/ | ｜ / // 〃:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／ |
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|「おい、凛」
|
| 前妻の思わぬ発言に、『弓兵』が狼狽の声を上げた。
| この場にあって、実力者と聞き『弓兵』という考えが浮かばなかったものがあろうか。
|
| 『弓兵』は名声、実力ともに世界的な人物だ。人類としての限界を超えている。
| ロストスキルは『腕を落とす』前に北斗のラオウと打ち合ったことがあるという。
|
| ジャギが、そんな忍者に視線を向けた。
| 多くの達人と手合わせをしてきた人物に評価を頼む目つきであった。
|
|「わざわざ私が太鼓判を押す必要は無いでしょう。完敗でした。
| 腕を落とす前の私なら？ 無意味な問いです。
|
| こちらが半端な隠身をしたからこそ、『弓兵』氏は私を侮った。
| 腕を落とす前ならば前提が覆る、奇襲の一撃でカタは付いていた」
|
| ロストスキルは油断ならぬ目で『弓兵』をねめつけた。
| 侮辱と受け取り、凛は眉を上げる。
|
|「どういう意味よ」
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/ ＼
f_ ｀l }
l l l -―' , -―― ､ 「 七対三。
',､l l ／, -―――-＼ } 必殺のアンブッシュをあなたの夫が防ぐのが七。
ﾊｆｬ｀} { ｔ---'／ | その場合即座の返り討ちで終わる。
/ ヽ}/ ￣´ ー-- /
l / - イfﾃ￣ テ l -- ､
l / 丶-- ￣ / ／ -､ |／
ｒ'´ -､ / ／イ⌒ヽ } |
＼ - , ---- '´￣｀` ー‐ ､ハ
, イ´￣￣￣ l 丶 ＿_／ ､ ＼ ＼
／ / l ､二._ / ＼ ヽ
/ / ', ￣｀ ＝=一/
/ / } ￣ / l
, / / / 人
| , 丶-- ､ ＼ }｝
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|「だが、それも私が『弓兵』殿を知らなかったが故」
|「大きく叩くな、小僧」
|
| 三割の勝利を、過剰な自信であると『弓兵』は笑う。
|
|「実際キサマの弱点を三つは見つけた」
|「詳しいな」
|「一つは奥方で、一つはポルノの件だ……オレは詳しいぞ」
|「ちょっと待て、落ち着け。一つ目はともかく二つ目は誤解だ」
|
| 疑う側から見れば、その狼狽すら怪しく見えるもの。
| 氷点下の視線が、周囲から降り注ぐ。『弓兵』は臍を噛んだ。
|
|「それらはイクサには関係なかろう！」
|「本気で殺すなら、その件で奥方と不仲にさせ、ストレスで睡眠不足になったタイミングで討つ」
|「エグいな……」
|
| ジャギすら慄かせるロストスキルのニンジャのイクサ。
| 罵倒や精神攻撃は基本である。
|
|「冗談は置いておいて、実力としては申し分ない。しかし……」
|「そ、そうだ凛。我々は客将で、しかも『結社』撃滅作戦には参加しない契約だ」
|「参加すればいいでしょ」
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{｀_ヽ､
l! ＼｀`ヽ､ _, -≠ニ了
! ＼ ヽ、 , - ' ´＜ ./
' ＞ ￣￣￣￣ `￢ ／ /
', ／ ＼ヽ /
∨/ ' ,∨ /
// ＿ ＿ ', ∨
// / rz0, / rz0, ', ﾍ
i { 乂塁ﾉ 乂塁ﾉ i ', 参加してくれるのかい？
l :｛ ::｝, ﾍ
l l::.', .::/:::, ',
. l l::::::＼ ヽ-'ヽ-'ﾞ ..::::/:::::::', i
l l::::::::::::≧､_ ......::_::; イ::::::::::::',. i
l l::::::::::::::::l ￣ 7￢＝＝￢ ￣i´ .l:::::::::::::::', l
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ゝ､_ ＝ニ￢l l:::::::::::::::::::l l::::::ﾍ::::::::::::l .i ﾄ､ .}:::::::::::::::::l├￢冖冖つ ﾞ >
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| キュゥベぇの問いに、凛は不承不承という様子で頷いた。
|
|「さっきから考えてはいたのだけれど、うちの拠点を日本に構えるメリットがあるのよ」
|
| 凛が顎に手を当て視線を走らせた。
|
|「孔明様には恩義はあるけれど、『結社』とはそれほど友好的ではないのよね。
| 『結社』に近づいたのも、神算鬼謀と名高い孔明様に師事するためだけだったし。
|
| うちは比較的クリーンな魔術結社だから、『教会』とも積極的に敵対していないわ」
|
| アフガンでは『結社』側について戦闘機などを叩き落としたことは、この際言及しない。
| そもそも仕事でやったことだ。罪を問うほど『教会』上層部は野暮ではない。
|
|「それだったら鷹野三四やシックスとコネクションを持っていた方が、後々便利だと思うわ。
| ついでに『教会』側の手伝いを形だけでも行える。
|
| 更に言うなら、超能力者の理論を研究してみたいというのもあるわ。
| 新しい魔術に興味の無い魔術師なんていないもの」
|
| なるほどと、キュゥベぇが頷いた。
| シックスも強く頷く。麻呂も最後の探究心に理解を示す。
|
| だが、すべて嘘である。
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／::＼,,__
┌ーヽi::::::::::::::::::ヽ￣｀',
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
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ﾉ::/::/:/:::!:::::∧∧:::::::::::::::::i､:::＼
/ /:/::/::::i:::::/ ｝:::）:::ﾍ::::ﾍ::ヾヽ
{ ｛:く;;｛:::∧:（ （:::(ヽ:::::）:::ヾ::｝ }
ﾍ::)::）ﾉ￢）) ):）フ::ﾊ::::）:/
{ﾍ!:（丁;;jゝ ´「;;;j厂ﾚ!iﾍ （雌狐め）
｛∧ ￣ ￣ / ソ
ゝﾍ ' /ノ
ﾘヘ ´ ￣｀ ／!!′
＼|＼ __ ／ |/!
┌‐┴─ｒr─‐‐┴!
___ __＿＿＿r=┤: : : : : |||: : : : : ├､,,
/: : : :: : : : : : : : : : : : : : : : 〃/: : : : : : : : :｀:ｰ:-:.:.､,,,__
/: : : : :: : : : : : : : : : : : : : : :i ! |: : : : : : : : : : : : : : : : :: : :｀ヽ
/: : : : : :: : : : : : : : : : : : : : : i ! i: : : : : : : : : : : : : : : : :: : : : : ',
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| 慎二は心中で舌を巻いた。
| そして魔女の本心がどこにあるかを疑った。
|
| 前もっての談合では、桜と『万魔』を人間にしたら、彼女らと慎二を誘拐して国外逃亡する予定であった。
| であるなら、『血族』との協調など行える訳が無い。
|
| つまり、慎二が考えられる可能性は二つ。
| 凛は計画を事前に察知されぬために、『血族』を裏切ることを前提とした協力を提案している。
|
| そしてあわよくば、夢宮アリカ推薦の素質に溢れた戦士を引き抜こうと考えているのだろう。
| いや、慎二はその可能性をすぐに否定した。
|
| 凛は、『血族』内部での同情票を買おうとしているのかもしれない。
| 間桐臓硯は正直快く思われていない。
|
| 対して将来を期待されるアリカや、同様に素質あるという刹那。
| その他にも何人かの幹部を味方につけておけば、追手がかかることも無いだろう。
|
|「私と『弓兵』が拠点攻略をしてあげてもいいわ」
|
| そしてこの意味を正確に理解したのはロストスキルだけである。
| 他の誰も、凛の噂は知っていても、真の実力までは目にしていない。
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＿
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（火力イメージ）
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| 凛の操る魔術は常識外れの燃費と出力を誇る。単純に火力だけでもミサイル以上だ。
| そして彼女をエスコートするナイトは、世界有数の機動力と隠密性を誇る。
|
| 彼らはイラク戦争で合衆国軍のステルス戦闘機を叩き落とし、機械化師団を殲滅した。
| 歩兵の姿をした戦略兵器。それが遠坂の魔女と『弓兵』であった。
|
|「しかし凛」
|「黙らっしゃい。あなた以上の人材がいるなら、考えてあげてもいいけれど？」
|
| これが決まり手だった。『弓兵』は言葉を失い目を伏せる。
|
|「彼ら以上の適任者はいないとは思うね」
|「なら決まりね」
|「アンデルセンは？」
|
| 案の定、まぜっかえしたのはシックスであった。
| そして彼が出した名は押しも押されぬ最強の『武僧』。
|
|「……あの方と一緒に行かせたらその子、死ぬわよ」
|
| いつ目覚めたのか、青ざめた顔でルカが笑った。
|
|「あのバカやカクリコンは、よくアンデルセン様の部下で居られるわ。普通死ぬ。絶対死ぬ。
| あの方は睡眠不要のワーカホリックなのよ？ 体が持たないわ……」
|
| 何らかのトラウマスイッチだったのだろう。震える肩を抱き、ルカはうわごとのように呟いた。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:...... : .:.:... :.. : .:.:. .: .:.:/ /
∠ - ﾉ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:| ヾ 、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. : : : .:.:... イ ./
／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:| ヾ 、 、 ソ ´ |::/
￣ フ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ ｀´ .ﾚ
l:.:.:.:.:.:./ ヾ:.:.:.:.:./ j
|:.:.:.:.:/ /ヽヾ／ ＼、 ,／/
レｿ l ヽ 丿 ヽﾐ =_- 、 ,ｨﾆ''ﾞ /
レイヽ弋, ヽ _ ____ ヽノ ∠==- ' l
ﾉ:.:.:＼ j. ￣ ,
ﾚ' |:.:.:.ゝ i i ,
ﾚ'∨| l , ' そう言えばその少年は夢宮アリカの知己だったな。
_ ゝl ヽ / , ' ……恋人、か？
/ｌ::::::f;;;;| ｌ ＼ , '
/＼:::l;;;;;;＼ ＼ ＼ ￣￣ , ' ＼
/:::::::::＼;;;;;;;;;;＼＿___.＼ /::::::::::介
- ':::〈::::::::::::::::＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ＼ヽ、_ _ '::::ﾍ:::イ:::| ヽ ＿ 、
::::::::::i::::::::::::::::::::::::￣￣ 〉;;;;┌─────l::::Y::::::|::::::::::::::::::::::ヽ
:::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::l;;;;;;;;;| .|:::::|:::::::|ヽ:::::::::::::::::::::
::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::ト;;;;;;;| . ┘ レ´:::::i:::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::＼ |￣￣ 弋;;;;;;;;; 厂 ／::::::::::::|::::::::::::::::::
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 一切の表情なく『弓兵』が尋ねた。
| 張り詰めた緊張感。この緊張は、他の誰にも理解しかねるものであろう。
|
|「違うよ」
|「聞いたか奥方？ やはり『弓兵』殿は女子高生にご執心の様子」
|「ぶっ殺す」
|
| 拳を握る凛を『弓兵』が手で制した。
| 落ち着き払い、あたかもそれが当然であるかのように振舞う。
|
| 娘に恋人がいないかを尋ねた父親の顔は一切見せない。
|
|「恋愛関係にないなら変な甘さも出ない。ついでに夢宮もしごいてやろう。
| 我々とその少年は、夢宮班に入らせてもらう。覚悟しろ」
|
| 元々の知己である点と同じ夢宮の弟子であった点。
| そのあたりを踏まえて、断る理由は無いだろう。
|
| 凛も、アリカが夢宮の名を継いでいる故に『弓兵』が彼女を特別視しているのは知っていた。
| その視線が、実の娘に向けるものに近い柔らかさなのも気が付いていた。
|
| だが凛は同時に誤解もしていた。
| アリカが『弓兵』の実子である可能性など露ほども思わず。
|
| 死に目に会えなかった母が育てた後継者に、同門として訓えを与えることこそ、
| 『弓兵』の後悔と罪悪感を埋める術であると勘違いをしていたのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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／' r二_'―- ..＿＿
／' _ ゝ、_￣ ｀ - ﾆ_Ｙ⌒ヽ
〃 ／ ｀r_ｰ､ _,ゝ､ ヽ＿＿＿＿ よろしくお願いします。
〃 / / / ﾄ､ヽｰﾆ_ｰ .__/ ヽ ｀¨ ‐- _
（( // | | ハヽ､ ヽ｀＞‐ヽ .从_r ￣ ＼
｀ｰ || | ヽ!-‐ ｀ ￣ ´ . -V_ ! _∠_ 丶
ヽ V ﾄゝ､ ´ 心ﾉヽ/ ¨ﾉ >､＿ /
|Ｙ rひ) ┴‐'´/_∠_ ／_| .べ丶 /
＿＿」 ,,ヽ' ヽ ＿_ 〃'´ ￣￣／／ ｀ ‐- /
_-=-´_二ﾆ=! ﾏ´ l ∧ ／／ /
〃 〃 ヽ V / ｜ ＼_/／ /
´ ヽ ＼ ｰ ' ／￣ヽ ） ／
_､ ＿ 丶、／ ﾉ >' ／
ゝ ゝ-､ ＿ ／ ヽ_ ィ _ - ｲ ,.ｲ
￣｀丶､ゝ- ､＿／ ヾ _∠-ｵヽ< // ／{ ヽ
｀' ーｙ' _ ゝ'´ 〃一' / i ／ Y |
_（ ／ 〃 / l ／ 〉ﾍ
_ -‐ ´ r'⌒'/ 〃 / ｜ ／ ヽ,ｲ
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|「ああ、任せろ」
|
| 妻と腹の中の子を同時に失い、致命傷を負い、記憶障害も起こしていた『弓兵』。
| いまでは記憶こそ戻っているが、後悔のない日は無いだろう。
|
| 凛は、毎晩の悪夢にうなされる彼の隣で、ずっとそれを見続けてきた。
| あの少女に夢宮の技術を教えることで、少しでも『弓兵』が救われるのなら。
|
|「手を出したら酷いことになるわよ」
|「なあ凛。本当に誤解だ」
|
| やはり燃え上がる嫉妬には勝てない。
|
|「あっちは置いておいて、入即。残りの方法を一応教えろ」
|「残りは上手く行く要素が極めて少ないから期待すんなお」
|
| 慎二に促されて、やる夫は話に戻ることにした。
| 『ビスケットハンマー』を砕く方法として、誠が提示した三つの手段。
|
| その１が、刹那を育てて『夢世界』を踏破してもらうこと。
| そしてその２が。
|
|「『夢世界』に行ける能力者を探して協力させることだお」
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ﾄ､‐- ､ , - ―.ォ
|: ＼ ＼ ／ ／: : :.|
l: : : ヽ ｀ ￣￣ ´ /: : : : /
': : ／ ＼: : /
У , ｀く
/ / ﾍ ヽ 今の『血族』にはいないなあ。
/ / γ::o, γ::o, ﾊ ヽ
,､ / i ヽ::ノ ヽ::ノ .i ﾍ‐- ､__
ヽ＼, ､ ､ _ , / ﾍイ/,＞ ,
ヾ_｣ /＼. ｀´｀ ´ ／ﾍ ／イ ＞､
／ ヾ,.､ λ ｀ー‐ｧ---- r一 ' 入／" i＼ ＼
＿＿ ／ ｀>く}ﾍ / ﾍ ／厶へ ＼＿＿ ヽ
, -‐" ＝ ／ ｀´ i | ／ ＼ ＝二ァ
￣フ二__二, _・ ／ j l' ｀ｰ-｀､_三――" ’
/ ￣ / | / ヽ、 ￣ /
, -､ / / ､| | , ├‐- ､ |
（{ ./ | ﾍ ｜.i / | ｀ 丿
ヾｰ--‐' ´ ,＞ '￣￣| ﾊ l.｜ ｛ .j ／
｀ｰ- ＿＿＿ ＞ ' ヽ i | | ﾉ 人 ／
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|「サイコダイバー？ 『結社』にならいるかも新宿とか30年後ぐらいに」
|
| シックスが一人うんうんと頷いた。
|
|「誠の言い分によると、『結社』か在野から探すべきだって」
|「仏教的には夢は啓示を与えてくれるけれど、夢世界行きは難しいね」
|
| キュゥベぇが嘆息し、麻呂に視線を向けた。
| 熟達の陰陽師は小さく肩をすくめた。夢の領域は妖怪変化の類が跋扈する空間。
|
| 麻呂は得意分野のはずであるが、そういった技術は持たないようだった。
|
|「在野って言っても……あら？」
|「知っているのか鷹野！」
|
| 三四が目を泳がせ、しかし苦笑した。
| 何か思いついたのかもしれないが、同時に自分の中で却下も出たのだろう。
|
|「新城さんところで『銀の鍵』を借りれば」
|「新城直衛は木星だね……」
|
| 泉こなたとその一行は『夢世界』の専門家とでも言うべき存在だ。
| 星辰の彼方に繋がるマジックアイテム『銀の鍵』を使い、何度も夢と現実のはざまに旅をしている。
|
|「借りれないかな」
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＿,ｨ侈''"´,.ｨfﾘ洲洲洲洲洲洲i}
,.r'"`ﾞ" ｒ'"ﾞヾ洲洲洲洲洲洲洲ﾘ
＿,〈￣￣ }洲洲洲洲洲洲ﾂ
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,ｨiｌ} ｉ|洲洲洲洲ｉ/{i{ ,;
,il洲ヽ ll洲洲洲洲i{._li! ＿ ,;;;;
. ｨ彡ﾆ=彡洲ili} .llﾘ'l洲洲洲!ヽゞァ ､ヾ ,;;;;;;
. ,.．_,/" ,..〃彡ﾉ ｌ| .ﾘ洲洲ili lilｰ}i!=彡 i;;;;;;
'" ,ィﾋマ彡ノ { .|ｲ洲洲洲{. }l! ,ﾘ .l;;;;;; あそこ一種のラストダンジョンだよ。
＿,.ﾉ" ，''" ／ ' i.l洲洲洲il!}/'.〃 |;;;;;; 階層ごとにマフィア・サマナー・魔神・ドラゴンが守護していて、
'"￣_ノ´ ,ィ-/.:::::::::.:.:.::: !洲洲洲〃 {ｉ |;;;;;; 時間制限まであるんだから。
,√ノ / { }:.:::::::::.:.:.:: l洲洲洲洲ｉ ） |;;;;;
"´ ／し ' ,!:.:.:.:.:::::::::: !; '´ ヽ洲ililﾑ .l;;::'
.／ ,ｉ.:.:.:.:.:.:.:.:.:: ｌ }洲洲小 ､
./i ,／ ｌ::::::.:.:.:.:::: ﾘ ｨ洲洲ｉ}l!{从 _ ヽ､ ｰ---
ﾞ､ ／ ' ヽ:;;;;;;;;::／' ￣;. ー―''"(´ .ﾉi,､ ￣￣
/ / ,. '" ､ ＿_,. イ刈仆从ﾄ､,ｨi
. ,ｲ ,' ／ ＿ -‐ ￣'､ '.） 乂ﾘ{从乂i从
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| なお、大げさではない様子。
| 詳しくは原作リプレイを……もう入手困難でしょうねぇ。
|
|「もっと友好的に！」
|「向こうも木星関係で使うだろうからなぁ」
|「たしか『私』が知り合いだから、お願いしてあげましょうかぁ？」
|
| 水銀燈が目も眩むほどあでやかに口を挟んだ。
| 彼女の言う『私』とは、『モーリアンC.O.』代表取締役の銀次氏である。
|
| ただし、『モーリアンC.O.』と対象の関係までは知らないようだ。
| 『モーリアンC.O.』にとって、件のビルの面々は厄介者である。
|
| 何度も非合法の仕事でカチ合い、辛酸を舐めさせられた相手。
| お願いできる間柄ではなかった。
|
|「じゃあ、その方向で。後は『結社』に同様の能力者がいないかどうかだね」
|「魔術的には夢は論理組みがされていないから不可能ね。ユニーク異能者から探すべきかしら？」
|
|「『結社』の下っ端なんて誰も把握してないよ」
|「『九鬼』は武芸者の集まりだから、そう言った補助系異能者に心当たりはありませんね」
|
| 頭を悩ます数名。彼らを横目に、小学生巫女が鉄仮面の男の太ももを小突いた。
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ｒz､── - ､ , .-‐zｨ
＼ヽ: : : : : _＼＿＿_ ,,／ : : : lｼ
} },＞''´:::::::::::::::::::::::::ヽ: : : : ｌｲ
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／／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽl ｊ
_,,ノ::/::/::/:::/::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::ll 〉ー-..､
￣//::::i:::::l:::|ヽｉ:::､::::l::::!:::::l:!::ｌ::::ｉ::::|ﾐｊ::::::::::::::ヽ
ｌ::|::ｌ::|:::::|Vｰｌﾄ､::ヽﾄ､|ヽ从:ｊ_;ﾉ:::::!､ー-､::::::::l
l/VVト=|/Yﾊ ＼ｊ "´ｆ":Yi:::::ヽ,ゝ |ヽ::/
ｊ:}: :} 込ﾉ ー‐'' |: : !ｊ::::|::::| |::::i|
//ゞﾞﾍ 丶＿ ,'iｰ'ｆ::::::ヽ::ヽ l:::::ヽ_
ﾚl/:::::::|＼ ｀ー' ／/:i:::|:::i::::::〉V ヾ三ﾆ= ジャギ、何か言いなさいよ。
〈/:::::;'ｒ‐ｨ｀i ー''_´ｊｧl::/:::!::ﾉ:::/
, -l::::/ﾉ〈 ノY､´ ﾚ'::/ｲ ∨
ｒｆ ￣｀／ /∨厶イﾉ⌒i ＼イノ∨:７ ､
| ヽ／ /: : : /_,,ノTヽｊ ∨┘: / ＼
＿ｒ┤ ｀ ー/: : ／／ / ヽ＿/ : : : ,' _,, ゝ─┐
＜_,,,丿 |､ ,′:ｊゞ′ / ! ＼ : : : : ! ゝ´ l
／ ､＼ |: : }〈 / l >ｧ: :│/ ,ｲ─ - ､
／ ヽイ´l: : :ヾ＝ﾄ, |,ｒ-ィノ´: : : ﾚｊ＿,ノ ／｀ｿ}）､ー ''´
/ ￣￣｀ヽ 〉┘ |: : : : : : ヾz=ゝ⌒´: : : : : :/ ヽ'´￣ ＼
' ｀} ﾉ: : : : : : : : : : : : : : : : : : :/ 〉 ヽ
/ ヽ〈: : :＼ : : : : : : : :＿: : ／:/、 , '_￣￣ ｀ヾ l
,′ !ﾉ､ : : : ヽ: :＿: : : : : : : : : : :l ／´ |
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|「なんでだよ」
|「『結社』の知識で役立てなかったら何の役に立つのよ」
|「え？ そこまで言う？」
|
| 口ほど傷ついた様子も無く、ジャギが爪で鉄仮面の表面を掻いた。
| 泥だか油だか、得体のしれない汚れが爪の隙間にもぐりこむ。
|
|「いるとしたらカミナん所だな。あいつの『グレン団』は吹き溜まりだ。
| だがあいつ自身が『結社』に恩義を感じてるし、『血族』はともかく『教会』への反発が強い。
|
| そんでもって『グレン団』の連中はそんなカミナを信じてる。侠客の義って奴だな。
| つーわけで、カミナは簡単には転ばないし、殺したら全員決死隊になるぜ」
|
| そしてそれは、運よく対象の能力者を見つけ出し、生け捕りに出来たとしても
| 味方につけるのは困難であるということを意味していた。
|
|「あれ？ 『グレン団』の寝返りに関しては自信満々だった男がいた気がするんだけど」
|
| シックスの皮肉は、今月初めのことである。
| 幹部の首を取ることを、ジャギは確実にできるかのような口ぶりであった。
|
|「案外頑固でなぁ。一度言い出したらきかねーしよぉ」
|「じゃあ、向こうのルールに合わせてみようよ」
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こっちは埋めネタで使います。
おまけで七福神の宝船の帆に獏とか書いてあるぐらいですかね？
夢の世界、があるとしてもそれは世界の裏側なのか普遍的無意識の浅い層なのか
それともそれを模しただけの悪魔の異界なのか最後にひっくるめた全部なのかの検証が進まないジャンルだろうし
それなりに議論は尽くされて蓄積するものがあっても不思議じゃないと思うんだが、劇中では専門家のオカルティストでも
夢世界の存在可能性にすら半信半疑みたいな反応というのは違和感があるなと。
まあ誠は普通に知ってるようなので血族がそっち方面に疎いだけなのかもしれない。
討論できるようなジャンルだったらそれもできただろうけどさ
魔術で悪魔が絡む、って時点でその前提も無意味どころか災害の源になったりもしたんじゃなかろうか
研究した結果制御不能で神出鬼没、常に敵対的な悪魔が新しく登場するようになりしました、とか笑えんし
ある意味クトゥルフ神族とかがそれだけど
あ、みゆきさんは筆が乗らないので先代とインなんとかさんを。
みゆきさんは時間軸的に違う方向でこじらせてるので、この頃の頭悪い方向に戻すのは努力が必要でね。
ビックリするほど動かなくなった！
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ﾉ-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.ゝ.
ﾉ=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.-.=.ゝ､
ｷIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIﾔ.
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| 善国寺に張られた東京守護の結界は、傍目にはひどくいびつに見えた。
| 神道、仏教、陰陽五行。複数の魔術系統を重ね合わせることは、自殺行為だ。
|
| しかし、この結界は規格外だった。
| 古事記において随一の仲裁者たる、キクリヒメの化身・藤堂志摩子が指揮をとって練られたもの。
|
| 一見するとまだらでいびつだが、実際に近づけば、上質な絨毯のように芸術的に編みこまれていた。
| それら三つの魔術系統が、最初からこうやって編みこまれるのが正しい形であるかのように。
|
| 足りない部位に、ぴったりのパーツがはめ込まれていた。
| その防御効果は完璧と呼んでも差しさわりあるまい。
|
| あのニャルラトホテプや、『蛇身』でも、この結界には手を焼くだろう。
| 並の悪魔では近づくこともままならない。
|
| 並の悪魔なら。
|
| だが、つい先ほどまでこの善国寺は悪魔の襲撃に合っていた。
| 襲撃者は『血族』殺しの悪魔、『猟犬』。
|
| 三十人以上の『血族』が詰める中、無類の強さを発揮した『猟犬』は、
| 七名の死者と三名の重傷者を出しながら退治された。
|
| とどめを刺したのは『血族』ののけもの、ミスト・レックス。
| 『血族』の客将である改造人間である。
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／ 〃:.〃:.:.:.: /:.:./:.:/:.i!:.:|:.! ∨:.:.:.:}:.:.:ﾍj
/:.:./.:.:/:./:.:イj:.ﾘ:.八:.リ j:i:.:.:.:.:ﾄ:.ヾヽ
!／:.:イ:./≠x､lハｊ _,,ﾘ≠￢ｲ:j.:.:i:.:ハヽ＼_
ノﾚ´ﾑ:ｲ∧ィ＝ｭ} ｨ＝zﾉｲ:.:.:ﾘ }｝ｿヾ やあ、『猟犬』は強敵でしたね。
|:.∧ﾊ j ／イ:.:./ソ:/
ﾚ' ﾘ八 <、 /ｲ/ﾊ:.:/
ﾄ､:ﾍ ､_ ＿ , /ｲ |｀ヾヽ
／ﾘ;;;;＼ - ′ !;;;;ｿ;｝}
///／;;;;;;;ﾍ..___..／ / レｸ:ﾉ.:|
_..,,,,,///´;;;;;;;;;;;;;ﾉ! / ／::／ ..:j＞,､_
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| 涼しい顔、さわやかな笑みを持ってミスト・レックスは死線を乗り越えた仲間たちを振り返った。
| 周囲は阿鼻叫喚の惨状である。
|
| 巨大な剣と手裏剣だけではなく、腕に仕込んだ旧式機関銃に炸裂弾。
| そして戦車砲まで搭載した『猟犬』は、旧日本軍の歩兵隊を撃滅して術師を殺すための存在だ。
|
| ミストの相棒である自走戦車『レヴリアス』は、アームを粉砕され、
| 脇腹に戦車砲の直撃を受け沈黙していた。
|
| 寺の入り口には、機関銃と炸裂弾で無残な肉片になった超能力者五名。
| 境内には、不幸にも流れ弾が命中した巫女が二名。どちらも普通ならば致命傷ではない。だが苦悶の表情で絶命していた。
|
| ミストのもう一つの相棒、彼と同じ客将の四ツ目は、『猟犬』との格闘戦で殴打を受けていた。
|
| 『血族』ではない異能者である四ツ目は、左腕を骨折、あばら数本ヒビ。
| その後応急処置で戦線復帰したために腕を痛めていた。重症である。
|
| 少し離れた場所には、血反吐の海に沈むコートの男。
| 九月にもかかわらず厚着を重ねた半白髪の男は間桐雁夜。
|
| 彼は『猟犬』の攻撃を受けた訳ではなく、ミストを援護するために大量の使い魔を召喚、
| 反動で血反吐を吐いて昏倒した、いわば自爆である。
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(ヽ、００ ∩
⊂ニ、ﾆ⊃ ⊂ ⊃
,, -‐- ＼ | |／⌒ヽ
（ ⊂ニニ / ／⌒) ） (ヽ、００ ∩
｀ｰ――'′ し∪ （ノ ⊂ニ、ﾆ⊃ ⊂ ⊃
／￣ー―‐ 、 ,, -‐- ＼ | |／⌒ヽ 〇 〇
:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ （ ⊂ニニ / ／⌒) ）
:::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ ｀ｰ――'′ し∪ （ノ 先代！
:::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ::::i ., -―- 、 ___
:::::::::::::::::::_＿_ノ､/〉' ／::::::::::::::::::て/::_:::ヽ
:::::::::::::::/ u て;/7 /::::::::::::::::::;ｧ､､:::「ｪ ヽ::〉 __ 先代殿！！
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:::::::::::j u ､ ´_}ヽ.|::::::iｵ/u ﾆi < iヽｧ/:::::r----J .r:´二ﾆヽ
::::::::::i （二７´_.L., ､ハ 〉 _ _ﾏ/ﾝ::::r ' ;tr /;j i::/r-､r-| r一ー､
::::::::::|、 .r ' c ／､:.:.:ヽ ヽ ｰ」: : : : ii ヽu.___､/ ＿ん' ｀´ム.' |:::r―┤
:::::::::／￣ ´」ｰ／:.:.:.:.＼:.:.＼＼__j: : : : : ヽ ヽフ｀ヽ´ | | ヽ'ｰン､ _/ﾊu.'_' |
i:i i:::i:iヽi ´ !':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.:.',:.:i: : : : : : : :「=| : : : |: ! ７!｀:´|< ７ﾏ.ヽー'
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|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
| 四ツ目や雁夜は、『血族』の中でものけものだ。
| 四ツ目は客将だし、雁夜は間桐の座敷牢に軟禁されていた狂人という触れ込みである。
|
| だがそれ以上に、三人目の重傷者は多くの『血族』にとって重要な人物だった。
| 神道系の術者の中で術も格闘も五指に入る。総合力では間違いなくトップクラス。
|
| 人品もよく、目上を立てることを忘れず、部下には厳しくも優しい。
| 大首領志摩子からの信頼も厚く、公式の場における礼儀も政治も知っている。
|
| 本人にその気があれば、過度な謙遜さえなければ
| 『四天王』入りも間違いなしとまで言われる女傑、博麗先代である。
|
| その肩に、『猟犬』が投擲した手裏剣が突き刺さっていた。
| かすり傷。本の数センチの刃物が刺さっただけ、騒ぐほどの傷ではない。普通ならば。
|
|「落ち着け……」
|「しかしッ！！」
|
| 血の気が無くなり土気色の顔で、しかし至極落ち着いた声で先代は他の巫女たちをたしなめた。
| だが、巫女たちはパニック状態であった。
|
| 巫女たちは多重の『祓い』をもって先代に突き刺さった呪詛を清めようとしていた。
| 明らかに混乱した、無駄な努力であった。
|
| 『血族』の術で何とかできる相手なら、『猟犬』は脅威ではないのだ。
|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
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⌒＞ ／ ／ ／ .ｲ八 ヽ |人
／ ／ / :／ / ' / /从ﾊﾊ i| ｉ|从 乂__
,__ ／, / /: :/: :/: : / /: :/. ｲ: :〃 刈 : :| ｉ| | ＼乂__
ニニ=ー/∠/ /: :/: :/ / /:/: :/ '. :|: :i| | : : i| i| |: :＼ 乂 __
.ニニﾆ./Ⅵ/ : : : : / :/ / |/| ' /／| 从 」| : : '|: : i|八: : 乂ニﾆ
ニニﾆ/ﾆ|/ : .ｲ: : ' ｲ弍≧ﾄ.」/ / Ⅵ｣L斗i≦ |: :/ |: : i|＜/∧ーニﾆ
ニニニﾆ/／/,|: : |: :| 弋ﾋツﾄ､ 」x代ﾁツ. ﾘ/: : : :八/| | |ﾆﾆﾆニ
ﾆニニﾟ/| | |//|八| ∧ ｀¨¨´ ノ}:::. ｀¨¨´ ｲ/: ://∧//| | ﾄ、ﾆﾆﾆ
ニニ::/ :| | |//| | ｉ|∧ ノ/ｲ/ｲ/////| | |∧ニニ こんなにもオレと巫女の人たちで
ﾆﾆﾆ/: ::| | |//|/∧ |i |ゝ r -== ､ ｲ// / |////| | |: :‘，ニ 意識の差があるとは思わなかった！！
ニ-/ : : | 八///] ﾊ八い＼ ｛ :.:.:.:.:.:.: ｝ ｲ/' ∧'/// //:|: :‘，ﾆ
二｛. .: :::|《/∧//l ＿ 丶｀ ー‐‐ .イ ___ ∧/// //:| |:.|: ｝ニ
ﾆﾆヽ : : ∨/,∧/| ＼｝ ｀ ー'’ ｛／ ∧/／ //: :| Ｌ|.ｲﾆﾆ
ノ ｀ヽ :∨/,∧ト， ｀ ´ / ／//／}:: :|イ´i|ﾆﾆ
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| 自分の反吐で窒息しかけていた雁夜の気道を確保しながら、ミストが叫ぶ。
| だが、巫女たちは先代にかかりきりで、他の重症者たちには見向きもしない。
|
| 年嵩の巫女が愚かにも、手裏剣を引き抜こうと手を伸ばした。
| だが触れる直前に、その両手は干物のようにどす黒くしおれてしまう。
|
| 痛覚もないのだろう。彼女は、手裏剣に触れた指先が灰のように脆く崩れたのを見て悲鳴を上げた。
|
|「どけ！ 見ちゃあいられない！ 『血族』の術じゃあどれだけやっても根本的解決になりませんよね！」
|
| 荒々しく巫女たちを押しのけ、ミストが件の手裏剣を引き抜いた。
| 『血族』ではない者の手にはただの刃物だ。簡単に引き抜かれ、どす黒い血がどろりとあふれた。
|
|「幹部を切り落として呪詛が広がるのを防ぎましょう」
|「そんなことをしては！」
|
| ミストの提案を巫女たちが感情的に退ける。
| 意識の差と呟くミストの腕を、濁った目の先代が掴んだ。
|
|「やって……くれ……心臓に達したら……」
|「ぎゃあああああああ！！？」
|
| 混濁した意識が、先代の力加減を誤らせた。
| ミストの腕の肉が爆ぜ、重傷者が一人増える。
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//: : : : :.i: : : : :i: :j: : : : : : :i: : : : :＼
. //: : :/: : :|: : i:i: |: :i ＼: : : :.|: : : : : : : ､ 腕より……
. / Ⅵ:/i: : : :l: : l:l: |: :l ／}: : : :|: : : : : : : :.ヽ 命……だ……
i |: : :|: : :仆､从iﾊﾉｨ赱ｱ: : :|〕.:イ´￣｀ミヽ､
| j: : :|: : :|===:::l::::...｀￣ |:i: :lj:.:/ ヽ
| /: : :j: : 人## __... .:从: :|:.:i:::::::. ＿i_jヽ
| /: ／:|: : : :iト､;;;;;z==ｦノi: :.从:.:､::i::ー／:.:.＿_ヽ'､
|，:/::::::|: : : :|:r'ア´￣￣￣ ヽﾐ､{_j /:.:.／, -―ミヽ
. /:./{:::::::|: : : :{:Уj , ＿,ノ､:::. / ΓK／ ─┐rﾆ}ヽ
/: :{:.ヽ::::从: : l:.｀{__<i こ ﾆﾆﾆ＼:/ }:.:l ＼'´ ==]: :､
. /: : /ゝ､ 二 Ⅳ､}:.:.iﾆﾆﾆ´ Yﾆﾆﾆ{i └┘ ｀ ＜ ＿｀ 〕:､
/: :_斗 ―――＞(米)ー― iﾆ彡'´| r‐z ､ ー―ﾐ､
. /: : :j--i にﾆ / i||:.||:.:.:.:.:.:.:l:.:.:.:.:.: | |:.:| ::. ＼ i
/: : :ﾉ〉イ ′ }||:.||:.:.:.:.:.:.八:.:.:.:.:.l |_」 :::. :::. |ヽ
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| 口元の泡を、巫女の一人が拭った。
| 黄色く濁った双眸に光は無い。先代は強靭な生命力と魔力で呪詛に抵抗していた。
|
| しかし、負け戦なのは目にも明らか。
| 今すぐ患部を切除しても、間にあう保証は無かった。
|
|「誰か、清潔な刃物をください！！ 先代さんの命がかかってるんです！」
|
| 肉の爆ぜた腕を治療されながらミストが叫ぶ。
| その時である、これまで微動だにしなかった人物が素早く動いた。
|
| 巫女たちが悲鳴を上げる。２メートル以上の巨体で、肉食動物のように機敏に、
| 『バーサーカー』。ミストの班の最後の一人、間桐の人形である。
|
| それが巫女達を押しのけ、先代に覆いかぶさった。
| しかしそいつもまた、完全な『血族』製だ。『猟犬』の呪詛にはあらがえないはず。
|
|「ギ……ギ…………」
|
| 『バーサーカー』は呻くと声にならない咆哮を上げた。
| 面頬と面甲がざわざわと蠢き、キチン質がこすれ合うような音を立てて跳ねあがった。
|
| 異様な光景に巫女たちが悲鳴を上げる。
| だが、更に恐るべきことに、面甲の下から現れたのは桜色の唇に白い頬の少女であった。
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,f´ ,' i i ヽヽ‐ - - ,,_lヾヽ、
i /,' i ,' l li l､ l､ｰ - - !:,:.`!:ヽ
l,!i l i /ﾚ'_,V,_ﾚ';,ヽ___,,rl:.;:.:.ﾄ､:ヽ
!l l､ ! l ,r'´l:.:ヽ′';'' f¨,!.:,:.:l､:.:./
l,ﾄ、lヽ､!′ヽ `,,´,,, ;, ｰ'´!TT’Tヽ ギ……ググ。
l ;ヽrヽ ; ,,;;, ,;' ｰｺノ i !:.:l'i:.ヽ
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/ , ヽ ';,,,;; '';,,;,,;;_,ｿ. └┘└-!
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| 焦点の定まらぬ目で、『バーサーカー』……いや、その中身間桐桜は先代にのしかかった。
| 小ぶりな口が限界まで開かれ、次の瞬間頬をキチン質のカギ爪がつき破った。
|
| 五センチ以上の幅のムカデが数匹、桜の口腔から顔を出していた。
| それが殺意を持って先代の腕に食いつく。
|
| 突然の凶行と目を覆わんほどの異形に驚いていた巫女たちが、正気に帰った。
| 桜を止めようと手を伸ばすも、ミストによって阻まれる。
|
| ムカデは次々に紫色の炎を吹きながら消し飛んだ。次に桜は鎧の隙間から無数の蠅を放つ。
| ウンウンと騒音を放つ黒い闇が先代の腕に食いついて、食いついて、食いついて、無残な屍を晒した。
|
|「早く！ 刃物を！」
|
| その間にも、桜は大人の拳ほどの大きさのウジ虫を口からこぼしていた。
| 真っ白なウジは先代に近づくにつれて膨らみながら黒い斑点を浮かべ、
| 触れると同時に水風船のように破裂した。
|
| どす黒く、刺激臭漂う液体が撒き散らされ、巫女たちが逃げ惑う。
| 彼女らは桜の行為を理解していなかった。
|
| 次々に分身を作り出し、呪詛に食いつくことで呪いを肩代わりしようとしているのだ。
| ミストは桜を一瞥し、力づけるようにその甲冑の背中を叩いた。
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:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:/:.:.:.! ヽヾ:.:.:.:ヽ:.:.:＼:.:.:.
:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ヾ-.､:.:.:.:.:.:.:.:＼
:／:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.!:.:.:ﾊ:.:.:. 斗‐V:.:.:i:.:.:.:.:
:.:.:/:.:.:.:.:.:.:./:/!: !: :|v:.::. ｘ≦,,≦-､V:.:|: : : :
: /: :.:.:.:. :/:/. V:N::. V: ::.／,,ィ行:刋 ' :.:.|v:.:|: :
/: :/: : :.,:.:/ _ヾ从:. ヾ:::. ゞ ´ !:j |:.:|:.::
:.:.:,:.:.:.:. _,/≠伝示 ヾ.､ `＼ /' |: |:.:: アトリームにも貴女ほどの人はほとんどいませんでしたよ。
:.:.ﾊ:.:.:.:!:.:.|. {゜ゞ夕 ヽ 八!: : 自分の身を挺して、他人を助けようなんて人はね。
:ﾉ|:.!:.:. |:从:.､ i , |:.::
|ﾊ:. :.|:.|:.:.:!:ヽ. ゝ ノ .|:.:/
V:.N ヾ:.:.:.ヽ - ´ /|/
ヾ::. ＼:ヽ:. ､ ´ /
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／／ .＞ _ イ
ｘ≦ ア／ ハ
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| ミスト流の最大級の賛辞に、しかし桜は無反応で次の虫を吐きだした。
| 次々と生まれては死ぬ蟲。そのおぞましい光景に、巫女たちは動けない。
|
|「……『 』ちゃん」
|
| だが、先ほどまで己が撒き散らした吐瀉物の海に沈んでいた男が、その背中に寄り掛かった。
| 顔色は紫色で、両目は出血しそうなほどに真っ赤だ。
|
| 呪いによって相手の名を呼ぶことこそできないが、間桐雁夜は『バーサーカー』間桐桜を呼んでいた。
| 次の瞬間、桜の動きが停止し、電撃が走ったようにのけぞった。
|
| そして、電柱ほども動周りのある巨大な怪虫を吐きだした。
| 雁夜が桜の魔力を増幅させているのは目にも明らかであったが、同時にそれが雁夜の負担になっているのも確かだった。
|
| 白髪交じりだった髪は総白髪になり、両目は白濁し、歯茎はどす黒く痩せた。
| 体はミイラの様に痩せ細り、穴という穴から黒胆汁を流し、それでも雁夜は笑った。
|
|「キミは……先代ちゃんを……可愛がっていたね……」
|
| そう言う年齢だった。そういう間柄だった。
| 今ではもう、すべては過去のことであったが。
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／: : : : : : : : : : : : : ヽ: :＼｛ ヽ i＿＿ノ
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| ミスト班の懸命な救護により、先代は一命を取り留めた。
| しかし左上腕の肉はごっそりと抉られ、骨も一部削った。
|
| 先代は二週間ほど入院したが、無事退院。
| 『血族』の仕事の戻った。
|
| 呪詛汚染個所は完全に除去されたが、それでも肩へのダメージと呪いは残った。
| 抉った部位は高位の術でも完全に治療されず、それどころか左半身が弱ったようにすら感じる程であった。
|
| 戦闘班を率いることを諦め、以降は後方支援と治癒の術に専念。
| そういう形となった。
|
| そして、先代を助けるために強い力を使った間桐雁夜は、彼女以上の重症で入院。
| 戦線復帰は絶望的であるとされた。
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肉や呪いの後遺症はどうにもならんわなあ
仕事の戻った。⇒仕事に戻った。
しかしおじさん病弱なのに丈夫すぎ
イワーク隊は泣いていいと思います
猟犬のこと知らなかったとか？ ＞巫女達
ﾄ､ ﾄ､ |＼ ∧
＿|:.:.:＼|:.::ヽ!:.:.:.＼/:.:.|
＿＞:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|／|
＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.へ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.¨フ
弋´:.:.:.:.,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.く
＜:.:.イ:.:.:.:/.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.!:.:!.:.:.:.ヽ:.:_,＞
弋´.:.:.:.:.:.:/.:.:.:./ |:.:.!:.:.:.:!:.ﾊ.!.:.:.::.:＼
＜:.:./.:.:/:/T ト､∨:.:.:/!レ小:.:!:.小､>
rｲ!.ハ , j 八 ＼
/ V ヽ ｰ : -' ｲ ＼_
,. -へ. ＼ >､ _, ィ ＼ /¨｢￣￣ `ー ､
/ ヽ ＼ / ', ＼ ! }、
/ / ! ＼ |＼ソ | ／ ＼
. / / , /マニ/ / ,厶 ∠、 ヽ、
/ / ', ∧ G〉/ / / ＼／ ＼ ＼
厶-―-､ / |.／ ∨|/ ｒ' つ ノ Ｙヽ ＼ ＼
| ＼ ! |イ| {レ '´ ｨク ) ｀ ､ ＼
| ヽ ! |d | ' ／ ） ＼. ＼
∨ ＼ |/ | ! 〉 ' , ィ } ＼ ＼
∧ ＼/ ! / ,. -―' ヽ ヽ、
ｉ ヽ } ／ ／ | !
| ,. --- ∨ ／ ∠、 ! ,__ ﾉ
/ー‐ 彡' ￣¨ 弌 ／ ／ ヽ ＼＿＿_ ヽ_ﾄ― ´
`ｰ＜_∧ }／ , '| ! / |
| ∧ / ／ | ∨ |
ヽ ∧ ／ | / |＼
| ＼ ／ |G 、 !::::::＼
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| ―――とある、少年がいた。
|
| 少年の名は、憶えていない。
| ただ『私』を助けるために奔走していた。
|
| 彼は特殊な、極めて特殊な異能を持っていた。
| 常在型で、制御不能。ただそこにあるだけの、単体では何にも影響しない異能。
|
| そいつは……少年は……最強クラスの『アンチ能力』を持っていた。
|
| 神性、魔力、呪詛、加護、縁起物。
| 触れた端から消し飛ばす。本人の望む望まぬに関わらず、すべての異能を無に帰す異能。
|
| 彼はその影響ですべての偶然的加護から、神仏の守りから見放されていた。
| しかし、右手一つで生きていた。生きていけた。
|
| 『私』は少年の名を憶えていない。
| 少年は『私』を助けるために、そう、助けようと足掻いてくれた。
|
| そして『私』はわずかな蜜月を過ごし。
| 少年は異能を失った。
|
| そして、煉獄をさまよっている。
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_.イ ＼
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/ r'´ ヽ ﾍ
,' ｜ ｜ ',
j | ＿＿＿＿＿＿_.」 l
| |__. -‐ ７ ￣:/ |: /十‐-ﾄ､: l: ＞ |
| /: : /_ 斗-‐ { ﾚ ィfﾃぅｭ､∨.:＼ | あのこの名は
| ./: : :l ,.ィてぅ､ ト-r ﾘ∨|: :ト ヽ | なんだったのだろう。
| /イヽ{/ トｰr ﾘ 弋_zノ } !: :! |
| |.:∧` 乂zノ ハ| ｜
| |: :ハ , ﾊﾉ:| ｜
| l:/ : ﾍ /|: : | ｜
. 人 ヽ: : 个 、 ´｀ ／Ｖ|: : | ｜
/ ） ＼: ヽ|V ≧- __ イ 〉 /l!: : ﾄ、 !
/ / |＼: ∨＼､＿＿,厶/ l |: :/｜ ﾄ、
{ l | l: :ト､ ＼ / | |:/l | | ﾍ
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/ ｜ | |: :| | ＼ /ヽ ｨ′ | / l .! ｝
/ ヽ 丿 ﾍ:.l ハ ７-Oﾍ ﾚ / j /
｛ ＼ ／l ﾍＶ ヘ ヽ / / ／ 〈
} ） 丿 ＞＝r─ Ⅳ──=く. ／ ヽ
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| 『私』の名前は『インデックス』。本名ではない。コードネームだ。
| 『目録』という名前の通り、特殊な記憶能力を持って、十万と三千冊の魔道書を記憶する生ける魔道書図書館だ。
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| その異常性と危険性から、『私』は『教会』の最高機密の一つであり、
| 数年ごとに違う『里親』の元に出され、記憶をリセットされる。
|
| 境遇に不満は無い。不満を憶える感情もない。
| ただ、前回の記憶リセット前。
|
| 数ヶ月前の記憶が、未だに『私』の中にたゆたっている。
|
|「『インデックス』」
|
| 名を呼ばれ、振り向く。
| 今の『里親』。『私』の庇護者にして、金庫番。
|
| 本当は、彼女に伝えなければならない。
| リセットされたはずの記憶が残っている。
|
| 名前を知らない少年の顔を憶えている。
| 知っていてはならないはずの自分の境遇に自覚がある。
|
| 本当は、彼女に伝えなければならない。
| リセットが不完全で、記憶の残滓が残っている。速やかに再起動するように要請を出せと。
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| だが、言えない。『私』は狂ってしまったのだろうか。
| 定期リセットをしないと記憶容量が過剰となり発狂すると、私の中に知識がある。
|
| ああ、ならば。
| あの少年と過ごした間に、『私』は狂ってしまったのだろう。
|
|「東京で大天使召喚儀式を行います。目標は次の満月。
| 十万と三千冊の魔道書から、適切なものを探し出しなさい」
|
|「はい。検索条件が少なく、参照できる記述が膨大となります。
| 検索条件を追加してください」
|
| 『私』の中の魔道書図書館は、『私』が手を伸ばせば簡単に開く。
| 常人ならば数行で気が触れるほどの魔道書も、脳内検索であれば無限に参照できる。
|
|「大天使レミエルを」
|「大天使レミエル……？」
|
| ふと、『私』は彼女の隣に立つ若い男に視線を向けた。
| スーツ姿の、粗野な雰囲気の男だ。
|
| 『私』はそいつが『里親』だけでなく『私』にまで、好色の視線を向けているのを感知した。
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/へ{_,ィﾑミ､ﾆミ!
j「 / }三ｽ
. |＿{ _厶ﾆ7
}f乏 r=ﾆ、マf⌒}
l ﾉ ｀^く 込ﾉ 何故レミエルだ？
厶 ー' レ’
ーく f'f＝ァ ／爪
7八ー _∠.ノ 仄ヽ
〃 ,仁二三=彡' /,rへ
/へ≧＝一厶ィイ7⌒ヽ
Y´ ￣ヽ {广ヽノ
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|「レミエルは『神の雷霆』。悪しきものを払う、稲妻の天使よ。
| そしてレミエルは『幻視』をつかさどる存在で、預言者に黙示を伝えるわ」
|
| 『里親』の説明に、男は不服そうに鼻を鳴らした。
| 恐らく彼は、レミエルのもう一つの姿に不満があるのだろう。
|
| レミエルは『エノク書』においては、女性と交わり堕天したグリゴリの一人として描かれる。
| どれほど、今必要な存在だとはいえ堕天使だ。
|
| 好ましくない結果を出す可能性は、排除するべきなのであろう。
|
|「女の色香に迷って堕天する、俺への皮肉か？ あ？」
|「皮肉で大天使を召喚できるなら、あなたごときッ」
|
| 『私』は『里親』が、やむにやまれぬ理由でこの男と肉体関係にあるのを悟っていた。
| 男は何らかの暴力的な部隊を率いていて、彼らが彼らの思うがままに行動するのを止めているのだ。
|
| 『私』の常識に照らし合わせると、この男は外道の類だ。
| 不意に少年の顔が、憤怒に歪み拳を握る顔が浮かぶ。
|
| 彼なら絶対に許さないだろう。そう考えるだけで、胸の奥が暖かくなる。
| ああ、物理的に温度は変わらないはずなのに。何故であろうか。
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｀7: : : : : : : :イ '.
{: : : : : : : : : } }
,.イ: : : : : : : ﾉ ー-_､ x≦
￣｀V⌒ヽ : { ヾ赱ィ {ﾔ|
}ヽ て }ﾉ ヽ } いい表情だ。
|: : >ーﾍ _＿＿´! そそるな！
＿＿|: :ﾊ ヽ ｀ ¨¨´ '
´ ニニミ｀ヽ ＞ .. ＿_.}
´ ｀ヽ Vー- ミ // ｀ヽ
二≧ｘ ､ } } ｀ヽ ﾐ､ヽ'＾ヽ ＼
｀ ＜≧x.ﾄ､ } } ヽ ＼ﾑ _ ､
ヽ｀＜≧xr――＜:: :｀ヽ .}
三≧ｘ ､ ＼ r┬｀ ＜:: :: ::ヽ:: :: ＼/
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| げらげらと下品に嗤う男。
| 『里親』と、そしてその他数名のシスターが、男とその部下たちの慰み者にされている。
|
| 少年ならどうするだろう。
| いや、どうするにしても、『私』ならしない。
|
|「そう言えばこの娘の『味見』はしていないな？」
|「……この子は女じゃない、人間の脳をベースにした書庫よ。乱暴して破損でもしたら文字通り首が飛ぶからね」
|「はーん」
|
| 『私』はもう少し危機感を覚えるべきなのだろう。
| 男は明らかに、『里親』の脅迫を聞き流し、より一生情欲を高めた。
|
| やってはいけないと、禁止されると一層にやりたくなるのだ。
| 子供よりも性質が悪い。
|
|「あんたの相手ならいくらでもいるでしょう。でもこの子はダメ。絶対にダメ。
| 聖遺物級の道具なのよ。弁えて」
|
| 『里親』が言葉を重ねる。逆効果だ。いや、煽っているのかもしれない。
| 『私』は『里親』の心中を想像する。
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,. ´ , ＿＿___ ｀ ､
／ /,ィ ／, * ／ ＞ ､ ＼
, / ／ (__／-' * ／ * / ,ﾊ }
/ ､_{＿,. : : : ￣￣￣: ｀: ＜／ | |
' ,ィ: :,: : :,: : : /:/: |: :|: |: :∧: !: :ヽイ,.ィ
: ｀7: : /:,: :/:ｲ｀}7ヽ:/}:/ |: |:} : : ､＜
.' / {ｲ:/:/ｨ 下｢::r;ﾐ、 /' }77ヽ: ∧ ｀
, / }ｲ:/: | Vzり ｲr;Y}:∧} （きっとこの人は、
/ / 八|: : | :, Vﾘ{j/ :. 疲れ果てているのだろう）
, , ／ /､,:|: : | |:､ ,
／ / '´ /:.ｰ/: : , ‐ _ 、 八:. ,
／ ー ´ , : : :/: : 人 ｲ:. ＼ }
{ / : : /: : /: :| ::.. . ::´: : : :, ＼
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＿／ -- ´ ／: :,: :/: : /＞ 、 ＼__|＼: : : : : ,: : : ::. ＼
／ ／: ／:_./: : /_ ＼＿＿_,∧_: : : : 、: : : :､ ＼
／ イ: :,: :／ /: : /､_)｀ヽ､ (_()＼--/｀ヽ} ､: : ＼: : : ＼ ＼
, ´ ＿,. : : :´: : : : :／:/ /: : /イ ｀ ､ ｀/＼´ | ＼ : : : : : : : .、 ヽ
, ´ ／: : : : : :／: : ／ :, /: : / ヽ ｀∨_,〈 〉､! }ヽ: : : : : : :＼ ､
´ ／: : : : : :イ: : :／ : :/ , : : / , } ＼ } ∧ ∨ '，: : : : : : ＼
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| きっと、自分の行っていることの意味も、見失っているのだろう。
|
| 『私』は、『里親』がこの男以外の男にも慰み者にされているのを知っていた。
| 正確には、別の男に性的に支配されていた。
|
| 快楽の虜となり、『血族』に情報や品物を横流ししていたし、
| 『私』に知識の一部も、利用されているのは知っていた。
|
| きっとこの人は、もう希望も何も持っていないのだ。
| 『私』が少年を待っているように、何かにすがることはできないのだ。
|
| きっと『里親』は、男が言いつけを破り『私』を犯して壊すことを望んでいる。
| だってそうすれば、憎い男の一人は、想像を絶する苦痛を与えられて死ぬのだろうから。
|
| だから、レミエルなのだ。
|
| 『私』はその可能性に思い至り、『里親』を憐れんだ。
| 快楽を理由に堕天した。それは男ではなく、自分自身への皮肉だ。
|
| そしてもしかしたら、ああ。
| 『里親』が東京に撒き散らしたいのは幻視による奇跡などではなく。
|
| 皆殺しの雷霆なのかもしれない。
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| その光景を。滅びの光を想像し。
| あるいは何時からか見える、あの空を覆う巨大なハンマーが振り下ろされるのを想像し。
|
| ああ、『私』は。
| そんな救いがあるといいなと、はらわたの奥を熱く……ちがう。
|
|「何を笑っているの『インデックス』」
|「え？」
|
| いつの間にか、『私』は笑っていたようだった。
| ああ、ほんのちょっとだけ、想像してしまったのだ。
|
| 少年が。
| 『私』という『第一宇宙速度』に乗って宇宙に至り、あの巨大なハンマーを打ち砕く姿を。
| 『里親』の捨て鉢と状況を変えるために、外道どもを殴り、雷霆を消し飛ばす姿を。
|
| ああ、それが真実ならどれほどよいだろう。
| だが少年は、力を失い煉獄をさまよっている。
|
| 『私』は『私』の最初の記憶を思い返した。
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| ＼ , // / ／_{_∧_j〉 .}〉 |/∧（に! ﾄ､ /! |
| ＼／ // /／（に[ 〈_,.ｲ / /j′ i | | / | /
ヽ ＼! !./ ／￣￣ヽ_j_/´ | | | 〉 / /
| | | ! ／ ／ ＼ ! | j! |′/ /
| | | ! ./／ ＼ ／ | | / /
| | |」/ ,. -‐ ‐-､. V | ! / !
| | !＼／ j ＞‐ ‐＜l｀ヽ / | |/ |
| | ! ＞'´ ｀ ＜. ! i! !
| || |／ ｀ヽ | i| |
| i|.!/ -‐ 一 V ! |
| i |/ Ｖ | /
| | | }) V| |
| | N! _,. -､ ､V∧ /
ヽ| ﾄ､ 《 f'´r℃ f r℃}ﾚｲ V | |
| ＿_|＼| ∧ヾ込_ゞりレ 込ゞ彳 / 」 /￣＞
| ｀ヽ ＼ ｰＶﾄ､下＜ヽ ／/ﾚ' L/'´ j / ／ |
ヽ ＼ ヽ | ＼T＝ﾐ､＼ / /7 T ７′ / |
| |≧- .j_ ＼ ヽ. Ｖ ﾚ' / /_,. -≦/| |
| |´⌒) ≧=-- ┴┴ -=≦〉 * ／ | |
| | * ／ *（＿__／ ／／ / / * ,.| !
| ＼＜ (__／／ * ／* / / ＞ _j /
ヽ ヽ ` ＜__（＿＿／）_ ＞ ' ´ ／
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|「こんなところに私の探していた『鍵』があるとは。私は運がいい。
| 君は鍵だ。天国に至る道は、今は残念なことに閉ざされている。
|
| しかし君が望めば、君の中の十万三千冊が望めば、君は、そして人類は天国に至れるだろう。
| 方法は君の中にある。足りないのは推力さ。
|
| 『第一宇宙速度』って知っているかい？
| 物質が地球の重力を振り切って宇宙に到達するための速度だ。
|
| でも、実はそれだけじゃあ衛星軌道に到達するだけ。
| 重力からは逃げ切れないって知っているかい？
|
| 君だけでも、天国行きの第一宇宙速度は出せる。
| でも、推力が足りない。第二宇宙速度に達しない。
|
| もしも私の言う天国にたどり着きたいなら、私を待っていてくれないか。
| 君を押し上げ、地球の重力を振り切る推力を探して来よう。
|
| 私を信じてくれるのなら、私を待っていてくれないか？」
|
|
| どうでもよかった。リセットされたばかりの『私』には、本当にどうでもよかった。
| だが、やはり『私』は狂っていたのだろう。
|
| その出会いを誰にも告げず、ああ。
| 『私』は天国を待っている。
|
| 少年が天国に至れるように。
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´￣｀ー' ｀´ /::::i::ノ:::::::::l !::｀ｰ':::ﾊ∨ｊ:::} /
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圭≧=､ヽ::::::::::::/{::::::::::::/ /:::::::::::::::｀ー<ノ
圭Ⅳi三>ｭ＼:::::::i|:;-､/ /:::::::::::::::::::::::::/
圭!/三/i三ﾊヽ:::::l| /:: ｀ｒ､::::::::::::::/
圭三ﾆ|/三三ﾊ:::::!i ﾉ::i{ Y-'｀ヽノ
圭王三三Ⅳ|ﾊ !::::｀':::::/｀ｰ'
圭≧=､三=|/ハ}｀ヽ:_/ r-―::::-ー::ヽ
王王王≧三三ゝ-､ ゝァ―ー､::::::＼_
圭/王王王≧=三三ヽ ｒ-(´￣:::｀ヽ:j:ヽ::::::::ヽ
王王王王王王王≧､三≧､ ｀ー＞ ､:::::::｀ｰ､:::::＼ヽ
王王王王王王王,ィ≦王≧三ニ=､ ,ｲ:::;::::::::::::::::::::__:::＼
王王王王王王,ｲ王王王王王三三ヽ /::::/7::ヽ-:::;ィ＞ ＜ヽ､
王王王王王Ⅳ王王王王王王王三ﾆヽ i::::ﾉ ｀-ヽ／イ-, ト王≧ｭ
王王王王|Ⅳ王王王王王王王王三三ﾊ ｀´ ,ｲ王王ノ ｀ー､王!
王王王王王王王王王王王王王王三三i ,ｲ王!／ ｀ !
王王|i王王王王王王王王王王王王三三ｌ ＼／ _ ｌ
王王i|!王i|王王王王王王王王王王三三l|ｌ｀ヽ ﾍ ,イl|l_ L≧ｭ|
王王=|! ｲ王王王王王王王王王王三三三ﾄ ＼ ∨／王ﾆ＼ イ三!
王ヽ王|!l王王王王王王王王王王三三三|lﾊ王≧<￣＞=-≦￣ ヽ ∨王王王ｌY´王ﾆｌ
三ヽヾl||!王王王王王三三三三三三三ノ王ハ,王王Y ヽ ＼ |三王王王王王il|
三三王ヾ!王王王王王三王王王王王王王王ﾍ＼王ﾊ _ゝ Y三王王Ⅳ/王三!
三三王王l|!王王王王三王王王王王王王 王ハ三＼王王王ヽ ヽ ｊ三三王//王王三l
王三三ヾl|l|ﾊ王王王王三王王王王王王三王王i三三ヽ王王lハ ＼ノ三三王//王王王|li
王王三三ヾｭヾ,､王王王 l|l王王王王王王三王王､三三三ヽ王l|l〉´王三三Ⅳ/王王王王|
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|
|
| その純粋な願いは、踏みにじられる定めにあった。
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こっちのスレは埋めちゃってくだされ。
久々に来たな、神父が
どこもかしこも誰かを幸せにしない悪意と善意に満ちてるな
リアル大事に
乙