したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

雑談・感想スレ

238今日にさよなら、明日におはよう。 ◆1GiZbsHFZI:2013/03/26(火) 16:42:14
覚束ない動きで肉を切り分けながら青年が言ったが、学士は呆れた表情で黙り込む。
確かにウィスはゲームだが、カードゲームであってアーケードゲームではない。

「……。聞いたかメルディ。こいつジイニのカジノに行った事があるくせに、ゲームのなんたるかを何も理解してないぞ」
「メルディもダンスしか覚えてないよ?」
「俺はインドアな遊びは苦手なんだよ」
青年がナイフを片手に肩を竦ませた。学士はふぅと息を吐いて箸を置くと、ナプキンで丁寧に口を拭き水を飲んだ。
その動作が何を意味するのか青年は理解すると、逃げるように隣の少女へ視線を配る。
「おいおい、こりゃぁまた始まるぜファラ」
「知らない。リッドが悪いんだもん」
「勘弁してくれよ……」
しかし少女はどこ吹く風。すまし顏でソディを自分の料理へ振りかける。

「いいかリッド。アーケードゲームというのはだな、雷晶霊の力を地晶霊を利用して制作された基盤に流す事で起きる反応を利用した、業務用ゲーム機器の事だ。
 そもそもここで言う“ゲーム機器”という単語が何かというのを一から説明すると、セレスティアの文化と歴史に言及しなければならなくなる」
「いや、もういいからメシ食おうぜ……」
「いいや駄目だ。そう言って逃げるのはお前の十八番だからな。空腹など後で満たせばいいだろう?
 ……そうだな、先ずはお前にも理解できる様にティンシアを中心にして起きた産業革命と、ジイニがその特異な文化を守る為に独自に築いた交易ルートについて話そう。
 そもそも何故ティンシアが職人の街と呼ばれ栄えているかだが、これは意外にも歴史は新しく、自由軍シルエシカ発足の際に多額のーーー……」
「ワイール! ゲームゲーム! みんなでやったらきっと楽しい!」
「きっとそうでしょうね!」
「気分乗らねぇなぁ……」
「大丈夫! イケるイケる!」

胸元のペットを抱きながら晶霊技師の少女がハミングすると、それに合わせて胸元で小動物、クィッキーも踊り出す。
青い毛並みが震えると海賊の少女は泣き出して、青年はそれを好機と海賊の皿からオムレツを盗んだ。
話を聞け、と怒る学士に行儀の悪い青年を怒る少女。夜のラシュアンに響く歌い声と泣き声と、罵声と食器の音。
宴はいつまでも続いて、夢のような時間が流れてゆく。窓の外には満点の星、台所からはシチューの匂い。
遠く森から梟が鳴いた。少し冷たい風が吹いて、暖炉の炎はぱちりと揺れる。
桃色のリボンが揺れて、遠く遠く、笑い声がこだまする。

それでいい。それが青年の守りたかった景色なのだから。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板