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仮投下・修正スレ

7 ◆mNgbHRqG2.:2012/05/22(火) 05:06:48 ID:g..N7v1.
『One place to one person』の修正になります。
本スレ〉〉71




「悪い配牌、ね」

ディパックを開けて中身を確認した美穂子はそんな言葉を発していた。
苦味を抱えながら、机に置いたものを見下ろす。

「こんなもの、いらないのに」

ディパックに入っていた中で、特徴的な物は二つ。
そのうちの一つを、月明かりに翳してみせる。

黒い、拳銃。

漆黒を反射する。
それは人を殺す道具。
大人でも、子供でも、男でも、女でも、
向けて撃てば、簡単に、誰でも誰かを殺せる道具だった。

「怖いな」

ただ触れているだけで、そこから冷たさが体内まで流れ込んでくるようだと、美穂子は思った。
弾丸は一発も装填されていないけれど、それでも一秒すら触れていたくない。
怖い、と。自分が今どんな場所に居るのかを、痛感する。

耐え切れなくなって机の上に銃を戻す。
それでも、冷たさと重さが手の平に残された。ずしんと重い銃だった。
長く持っていたら手が痺れてしまうかもしれない。
けれどその重さが、果たして人の命の重さに釣り合うだろうか。

好きだった人たちと。
自分の好きだった、あの学校、あの部室、あの戦いの場所にいた、人たちと。


『――キャプテン』


そう、呼んで慕ってくれた。
暖かく、いまの自分を支え、包んでくれていた、大切な仲間達と。
誰の命とも、比べるまでもない。

「うん……負けちゃ駄目、だよね。みんな」

これっぽっちの重さで、つりあう筈がないのだから。
「いかなくちゃ」

人を殺したりなんて、しない。
強く、人として生き抜くと、福路美穂子は決めていた。
未だ状況はよく掴めなくて、恐怖は体を縛って、自分が弱い存在だと知っていて。
けれど、大切な物が何か、分かっている。

「生きなくちゃ」

この残酷を、許しては駄目だと、当たり前のことを知っている。
守るべきものがある。
それは、福路美穂子の大切なもの。
汚してはならない物がある。
それは、福路美穂子の大切な気持ち。
誰もがひとつ胸に抱える、帰るべき場所だ。


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