したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

作品投下スレ

1 ◆rgg2/UGNQg :2016/03/03(木) 22:17:29 ID:Y2q7WhB.
本スレ転載用スレが1000ちかく、ロワの進行がしたらば進行になったので必要かと思って立てておきました。
2chスレで進行になった場合、または議論等でこのスレが不必要になった場合は削除してください。

88 ◆LvAk1Ki9I. :2018/01/23(火) 21:26:00 ID:sROjq4tQ
ジョナサン・ジョースター、ジョニィ・ジョースター、ルーシー・スティール
本投下開始します。

89 すれ違い ◆LvAk1Ki9I. :2018/01/23(火) 21:27:38 ID:sROjq4tQ

――D-2、倒壊したサン・ジョルジョ・マジョーレ教会の跡地にて。
後二時間ほどで日付が変わろうかという深夜、瓦礫の中に佇む一組の男女の姿があった。
辺りを見回して人を探す彼らの名は、先ほどDIOの館から脱出したジョニィ・ジョースターとルーシー・スティール。

「……やっぱり、誰もいない?」
「ああ、伝言でもあればと思ったけれど、本当に何も残っていなかった……
 こんな場所にいつまでもいたくないっていう気持ちはわかるけれど」

彼らの目的は第三放送直前、ジョニィが教会地下で遭遇した『ジョースター』との合流。
共通の仲間たるマウンテン・ティムは所在不明、ルーシーが呼びかけたトリッシュ・ウナもここまで来る間に遭遇せず。
そうなるとせめて、この教会跡でジョニィが遺体の中心と語るジョースターとの接触を試みたかったのだが……

「ジョニィ、わたしはその……ジョースター?
 その中の誰とも会ったことがないのだけれど……本当に信頼できる相手なの?」
「全員がそうかはわからない……けど、話が分かりそうなのはちゃんといた……
 それにぼくたちが会ったDIOという男は、似ていたディエゴと一緒で間違ってもいい奴じゃあなかった……
 だったら、ジョースターの側はぼくらの味方になると考えてもいいんじゃあないか?」

結果はまたしても空振り――目的の男たちは一人も残っていないどころかその足取りすら掴めない有様。
ムーロロの情報網、そしてその基盤であろうスタンド能力を考えると、このタイムロスは非常に痛かった。

「……聞きたいのは憶測でなく事実よ。実際会って、私が決めるしかなさそうね……
 あのムーロロが既に他の全員を私たちの敵に仕立てあげている可能性もある以上、油断はできないッ!
 …………他のジョースターはあなたよりかはましだといいのだけど」
「……わかったよ、今はそれで構わない……で、どうするんだ? ぼくにはこれ以上の案内はできない……
 地図を頼りに遺体を探す……いや、それより遺体の所有者に呼び掛けてここに来させられないのか?」

――『遺体』と『ジョースター』のどちらを優先させるべきか。
どちらも現在はわからないことが多く、しかも感覚だよりというのがなおさら不明瞭。
セッコを送り出した後二人は多少の口論を経て、結局ジョニィがルーシーを説き伏せてここまでやってきたが……
それが何の成果も得られなかったとあらば多少不機嫌にもなろうというもの。

「そんなに便利なものじゃあないわ……呼びかけても相手が聞いてくれるか……
 いえ、そもそもこちらの声がきちんと届いているのかすらあいまい……
 ただ、どこかにいることがわかるだけ…あなたこそどうなの?」
「ぼくも同じ…というより、さっきまではまるで誰かが呼んでいたようにだいたいの方向がわかったけれど……
 あの時だけが特別だったのか、今は何も感じない……
 この会場のどこかに何人かいる……それだけで、どこにいるのかは全くわからない」

不確かすぎる感覚では人探しに有力とは言えず、お互いに小さくため息を吐く。
……だが、次の瞬間ジョニィが目線を外す。

「いや、訂正する……『今』『ここに』誰かが来た……」

言いつつ一歩前へと出る――繋がりを感じるとはいえ、それが『味方』であるかは別問題なのだから。

90 すれ違い ◆LvAk1Ki9I. :2018/01/23(火) 21:28:49 ID:sROjq4tQ

#


「きみは、ジョニィと……そちらの女性は?」
「そういうきみはジョナサン、だったな……」

やってきたのは黒髪に精悍な顔つきの青年――ジョナサン・ジョースター……!
エア・サプレーナ島で目覚めた彼は仲間と合流すべく、川沿いを北上してようやく教会へと戻ってきたのだ。
他に誰かいないかと辺りを見回しつつ歩み寄ろうとする彼に対しジョニィは――



                                  ドン!!




                       ――――何の前触れもなく『タスク』を構え、発射したッ!!



「うわっ!!?」

不意を突かれたジョナサンは録に回避すらできなかったが……爪弾はどうにか体ギリギリを掠めるだけに止まった。
反射的に掠めた箇所を確認――『穴』は、無い。
次いで驚きの表情を浮かべるとともにジョニィの方へと向き直るが……
視線の先にはジョニィが殺意の表情とともに、相も変わらず構えていた。
――下手な動きをすれば即座に再攻撃するといわんばかりに。

「質問に答えるのは構わない……だが、それ以上近づくことは許さない……
 彼女こそルーシー・スティール、あの時話したスティール氏の婚約者そのひとだ……
 さあ答えたぞ。今度はこっちの質問に答えてもらう……
 さっきここの地下にいたきみたちはいったい、どういう繋がりなんだ?
 そしてあの後、ここで何があったんだ?」

まだ困惑顔のジョナサンに冷え切った声で要求、回答、そして質問が矢継ぎ早に浴びせられる。
初対面の時と同じ、あるいはそれ以上か。
一度対話した相手――加えて、ジョナサンは知らないが先の会話内容――からすれば過剰すぎる警戒だったが……

「……わかった! 望むならこの距離で、そちらの質問に答えよう!
 その上で撃つなら撃て! ただし撃った瞬間ぼくの丸太のような足蹴りが君の腕を折る、それでもいいのなら!」

そこはジョナサン、困惑こそすれどこれしきでひるむような男ではない。
むしろ知りあいとはいえ状況がわからない中ひとりで現れた相手に対しては当然の反応。
婦女子を守りながらとあらばなおさら慎重にもなると勝手に納得、負けじと覚悟を見せつけていた。

「あの場にいた者たちは、簡単に言えば血の繋がりがあるぼくの子孫たち!
 彼らはぼくの子供に孫に、そのまた子供……皆、ぼくから見て未来から連れてこられたといっていた……
 今ならはっきり言える……ぼくらの姓が同じなのは偶然などでなく、きみもおそらくそうだからだ……!」
「……なるほど、ね。やっぱりそういう繋がりか……血統についてはやはり心当たりはないが…………?」

思うところはあったが納得まではいかず、その指先はジョナサンの方を向いたまま……
ジョニィは一瞬ちらりと明後日の方向を見てすぐに視線を戻し、ジョナサンの言葉の続きを待つ。
対するジョナサンも相手を見くびってはおらず、いざとなれば本気で相手の懐に飛び込む覚悟だった。

91 すれ違い ◆LvAk1Ki9I. :2018/01/23(火) 21:29:53 ID:sROjq4tQ

「もう一つの質問の答えだが……ぼくらはあの後地上に出て、ディオ――きみが撃ったあの男と決着をつけた……
 教会が崩れたのは戦闘の影響……そして戦いの後、ぼくだけが川に流されてようやく戻ってきたところだ……
 気絶していたため放送も聞き逃してしまったし、ほかの皆がどうなったかはわからない……」
「………………」

返答が終わっても彼らの距離は変わらず、また向けられた指先にも動きはない。
どちらもまるで相手の次なる発言を待ち続けているかのような、長い沈黙が訪れる。
数分はそんな状態が続いただろうか……先に口を開いたのは、ジョニィだった。

「……放送を聞き逃したといっていたが、よければ教えようか?」
「いいのかい? ぜひともお願いする」
「……ジョニィ」

こちらは疑いまでは持っていないのか、狙われたままとは思えない口調でジョナサンが答える。
一方ルーシーは咎めるようにジョニィの方を見るが、彼は向き直りもせずに続けた。

「彼が答えた質問はふたつ、ぼくはひとつ……それくらいはいいだろう?
 ……それにひょっとしたら、彼は知らないのかもしれない」
「…………わかったわ」
「……?」

その様子を見てジョナサンは訝しむ。
ジョニィのみならず初対面のルーシーまで――どころか、むしろ彼女の方が――自分を警戒していることを。
そして『知らない』とは何のことか……と考えるうちにジョニィの口から第三放送の内容が告げられる。
ジョナサンにとっては悪夢……いや、夢ならどんなに良かっただろうかとさえ思える悲報が。

「そんな……ツェペリさん……それにF・F、花京院、仗助まで……
 いったいあの後何が起こったというんだ……それにほかの皆はどこへ……?」

同じ情報でも、聞く者が変われば当然反応も異なる。
スティーブン・スティールの死もジョナサンには優先度が低く、そこに対する反応はさほどでもなかったが……
話が先へ進むにつれ、ジョナサンの表情は驚愕に困惑、そして悲嘆に染まっていく。
加えて、教会近辺には仲間たちの姿が一人も見当たらなかったという事実もそれに追い打ちをかけていた。

「死者を悼むのも、仲間を心配するのも結構……だが、あんたが今やるべきことはそうじゃあないだろう?」
「……すまない、その通りだ」

さすがに見かねたのかジョニィは未だ指先を向けたままながらも彼に言葉をかけ……
ジョナサンもその不屈の精神力で顔を上げ、あらためて二人へと向き直った。

「きみらは、これからどこへ行くんだい? ……よければぼくも一緒に」
「それは――――――」

顔を見合わせた後、二人は同時に言った。


                              「「教えられない(わ)」」

92 すれ違い ◆LvAk1Ki9I. :2018/01/23(火) 21:31:38 ID:sROjq4tQ

#


――先程の対話からしばらくして。
ジョニィとルーシーは同行を断ると何処かへと去っていき……残されたジョナサンはその場に留まっていた。
ひょっとしたら皆が戻ってくるのではないかという希望を込めて……現実は非情であったが。
そんな彼に声をかける者は誰もおらず――――



                          『随分と嫌われたものだなあ、ジョジョ?』



――――いや、いた。
『リンプ・ビズキット』の能力で蘇り、いまや彼の『そばに立つもの』―――DIO。
その胸中こそ不明だが……結局ジョナサンは、DIOとの同行を選んでいたのだ。
先ほどの対話の際、別段何かするでもなしに終始黙ったままだった彼が……ここにきて喋りはじめる。

「……誰もが会って間もない他人を手放しで信用できるわけじゃあない、彼らにも事情があるんだろう……
 それよりディオ、ここであの後何が起こったのか、きみはどう思う?」
『おや、過去のことを調べるのはおまえの専門分野だったはずだが……?
 まあいい、俺の推測でよければ聞かせてやる』

……忘れがちではあるがこの二人、数時間前お互いの全てをかけて戦った宿敵同士。
それが今、様々な意味でかりそめに近いとはいえ昔のような友人に近い立場で現状を相談している。
――本人たちの自覚通り、これほど奇妙な関係も他にないだろう。

『おまえも見ているだろうが、鐘楼にいた俺の部下――ジョンガリ・Aというが――おそらく奴が『何かした』……
 そうでなければ最後に見てから放送までの短い間に、少なくとも怪我が軽かった花京院が死ぬとは思えん』
「……!」

他二人――自らが致命傷を与えたであろう者――については一言も触れず、さらりと述べた。
良く言えば客観的、悪く言えば他人事な見方であるが、それでも自分が見えていなかった箇所を指摘してくる。
思わず耳を真剣に傾けるジョナサンだったが、さすがのDIOにもそれ以上の考えはなかったようであり……

『後は正直俺にもわからん……教会の崩落を見てやってきた何者かの対処か、他に何か理由でもあったのか……
 ともあれ生き残り全員でどこかに移動した、と見るべきだろうな。いずれにせよ確かなのは、ジョジョ――――――』


                        『おまえはあいつらに『見捨てられた』ということだ』


聞き終えたジョナサンはわずかに嘆息する。
単なる嫌味かそれとも現実を突きつけられたのか……彼ら以外には判別できない奇妙な友情もまた健在だった。

「ディオ、理解しろとまではいわない……だがわからないわけではないだろう? 彼らはそんな人間ではない」
『ほう? ではおまえが目覚めてからここに戻る途中、あいつらの誰とも出会わなかったのをどう説明する?
 まさか偶然行き違いになったなどという答えで俺を失望させないでくれよ?』
「………………」

93 すれ違い ◆LvAk1Ki9I. :2018/01/23(火) 21:33:33 ID:sROjq4tQ

DIOの見解にうまく反論できないのが癪ではあるが。
現在地である教会跡にメッセージすら残されていない以上、可能性は限られる。
仲間たちは自分がここへ戻ってくることを想定していなかったか、あるいは急いで移動する必要があったか……
ジョナサンの出した答えは後者だったが……全く手がかりがない不安からか、やや自信なさげであった。

「その時点でぼくよりも優先すべき、なおかつ急を要する事態があったんだろう。
 重症を負った者もいたし、彼らを急いで治療するためにいったん場所を移したのかもしれない……
 ぼくは見捨てられたのではなく、ひとりでも大丈夫だと信用されていたんだ……たぶん」
『信用ときたか……その信用とやらであれだけ痛い目を見てまだそう言えるとは見上げた精神だ、敬意を表させてもらおう』
(………………承太郎)

そのやり取りでジョナサンの頭の中にひとりの男の姿が浮かぶ。
自分の想像よりもずっと危うかった彼は、無事なのだろうか。
おそらく生きてはいる、だが自分が最後に見た限り彼は相当の重傷、さらには一緒にいた花京院が――――

(いや……覚悟はしておくが、ぼくがいま考えるべき事ではない)

彼は一人ではない――生き残ったジョセフとジョルノがいる(アナスイもいるけど)。
DIOと戦う中承太郎の胸中を知った彼らが一緒にいる以上、最悪の事態は免れているはずだと自分を納得させる。

『さてジョジョ、このままでは何も進まんぞ……いい加減動くべきではないか?』
「……そうだな、それじゃあ空条邸へ向かおう。
 確かそこで第四放送時に仲間たちと待ち合わせをしたと聞いたし、皆もそこへ向かったのかもしれない」

それでいいかい、と目配せして意見を求める。
DIOはそんなジョナサンの順応性の高さに呆れつつ、面倒そうに答えた……が。

『好きにしろ、どのみち俺に選択権などないのだからな……
 ところであらためて思ったのだが――ジョジョ、おまえに隠しごとはやはり向かんようだ』
「……それは、どういう意味だ?」

……手を当てた口元はその時、笑みを浮かべていたのか不機嫌そうに結ばれていたのか。
DIOは一瞬だけ沈黙したのち、彼らの去った方角を眺めながら言った。


                         『――――あの二人、明らかに俺が『見えていた』』

                                 「……えっ?」


衝撃の発言にびくり、とジョナサンが震える。


                           ――――それ以上近づくことは許さない……


DIOの言葉が本当ならば、先ほどのやり取り全てに説明がつく……ついてしまう。
――いきなり撃たれたのも、近づくことすら許されなかったのも、行先も目的も教えてもらえなかったのも。


                         ――――ひょっとしたら、彼は知らないのかもしれない


DIOは透明ゾンビ、つまり普通なら相手に見えないということはなんとなく理解できている。
彼らに話さなかったのはそのためだが……そこから誤解が生まれたのかもしれない。
『知らない』とはすなわち、そばに立つDIOの存在を自分が認識していないということだったのではないか。

94 すれ違い ◆LvAk1Ki9I. :2018/01/23(火) 21:34:37 ID:sROjq4tQ

                              ――――教えられない(わ)


さらに理解する……
彼らは知り合いである自分と、敵であったDIOが並んで立っているのを見て……
そして自分がそのことに一言も触れようとしないのを見てさぞ葛藤していただろうことを。
あの程度の対話では到底足りぬほどに聞きたいこと、言いたいことがあったであろう事実に。

「…………本当、なのか?」
『俺は『見られている』感触には特に敏感でな……そしてあの出会い頭の一発……
 あれの狙いが俺でなければおまえはとうに地面に転がっていただろうよ……
 何より話の途中、大げさに目線をそらせば奴らも一瞬そちらを見た以上、ほぼ確実だ……』

どちらも言われなければ偶然で済ませられる、というよりそう思っていた。
だがあらためて考えてみれば確かにその通りであり、半信半疑だったジョナサンも信じざるを得なくなる。

「…………一体、何故ッ!」
『……見えた理由か? ――――さあな。
 おまえは俺の状態について理解しているからいいだろうが……
 他のやつらに今の『俺たち』はどう映るのか、一度その無い脳みそでよく考えてみることだな……』

混乱するジョナサンはDIOの言葉が意味ありげな間を置いたことにも気づかない。
無駄だとわかりつつ彼らの去った方を向くも、既にその姿は見えなくなっていた。
状況が好転するはずもないのに呆然と立ち尽くしてしまうのは、後悔という人の性であろう。

『追うか? 今ならまだ間に合うかもしれんぞ』
「…………いや」

相手の目的地がわからない現状では合流できる可能性は低い。
例え合流できたとしても、今のままではまた撃たれるのが関の山だろう。
先程DIOについて言わなかったこともあり、どう説明すべきかジョナサンには良い考えが浮かばなかった。
結局進路は最初の考え通り、空条邸――東のままとなる。

『しかし昔を思い出すなあ、ジョジョ?
 主導権を握っているようでその実、俺に全てを奪われていき……気付けばおまえはひとりきりだ……』
「ディオ、きみというやつは……いや、ぼくは絶対に屈したりなんてしない……
 きみもぼくももう、あの時のような子供じゃあないんだ」
『フフフ、黙って立っているだけでこれでは、実際俺が口出しを始めたらどうなることやら……
 まあ安心しろ、俺はお前に逆らわん――黙っていろ、あるいはいっそ消えろと命令すれば、従ってやるさ』
「……命令なんてしない。もしおまえが人に害をなすというなら……
 その前にぼく自身の手で、今度こそ完全に消滅させてやる」

はっきりと最後の言葉に返すと、しっかりとした足取りでジョナサンは再び歩き出す。
傍目には一人で、その実傍らに一人の男を伴いながら…………

(ジョジョ、気付いていないようだな?
 おまえが俺を連れていくことを選択した時点で、その決意が全く意味などなさないことを……
 本当に度し難い甘ちゃんよ――それこそ、子供の頃から全く変わらず、な…………
 まあ、その甘さゆえに先ほども見逃してもらえたのだろうが……)

かつて死闘を繰り広げた宿敵と共闘する――聞こえとしてはこの上なく良い響きだろう。
だが、それは同時に事情を知らぬものに対して巨大な爆弾を抱えるということにもなり得るのだ。
これから彼らが出会う者たちの誰が味方となり、誰が敵となるのであろうか…………?

95 すれ違い ◆LvAk1Ki9I. :2018/01/23(火) 21:36:37 ID:sROjq4tQ


【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会跡 / 1日目 真夜中】

【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:波紋法
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:左手と左肩貫通(応急処置済)、疲労(中〜大程度に回復)
[装備]:リンプ・ビズキットのスタンドDISC、透明なDIOの死体
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒
1.第四放送までに空条邸に向かい、そこで仲間と合流したい
2.蘇った(?)ディオと共に行く、ただし何かあれば即座に対処
3.ジョニィたちと再会したらディオのことを説明したい

※ジョニィから第三放送の内容を聞きました。
※DIOとどの程度情報交換したかは次の書き手さんにお任せします。

【透明になったDIOについて】
0.能力は原作に準拠。スタンドビジョンはなく、死体を透明ゾンビとして復活させ使役する。
1.あくまでもリンプ・ビズキットによって生み出されたものなので『世界』は使用できない。
2.同様の理由で吸血もできないと予想されるが、ゾンビの本能での『食らいたい衝動』はある。ただしDIO自身の精神力で抑制中。
3.原作の描写から、遺体が動いているわけではないが、透明DIOにダメージがあれば遺体にフィードバックする模様。つまり大統領が回収したDIOの遺体に変化がある。
4.リンプ・ビズキットに課せられた制限は『使役できる人数』のみ。ただし詳細は不明。
5.DIO自身はなかなかハイな状態。しかし尊敬するジョナサンの命令には(能力を抜きにしても)従うつもりなので、彼が死ねといえば喜んで自殺するだろう……



【D-2→??? / 1日目 真夜中】

【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1 → Act2 → ???
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:右頬に腫れ
[装備]:ジャイロのベルトのバックル、遺体の右目
[道具]:基本支給品、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロの無念を――
1.ルーシーと共に行動。当面の目標はジョースター一族と合流すること。ただしDIOは避ける。
2.遺体を集める

※Act3が使用可能かどうかは次の書き手さんにお任せします。

【ルーシー・スティール】
[時間軸]:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
[状態]:処女懐胎
[装備]:遺体の頭部
[道具]:基本支給品、形見のエメラルド、大量多種の角砂糖と砂糖菓子
[思考・状況]
基本行動方針:??
1.ジョニィと共に行動し、遺体を集める。身の安全を最優先。DIOは避ける。


【備考】
・ジョニィとルーシーは透明ゾンビのDIOが視認できていました。
 一度全ての遺体を取り込んだり遺体の『眼球』を所持していたからなのか、部位関係なく遺体を所持していたからかは不明です。
・この後二人がどこへ向かうかは後の書き手さんにおまかせします。

96 ◆LvAk1Ki9I. :2018/01/23(火) 21:44:35 ID:sROjq4tQ
以上で投下終了です。
反対意見は結局なかったため文章は仮投下時からほぼそのままです。

仮投下スレで感想、ご意見くださった方々、ありがとうございます。
感想等はいつでも、どれだけでも大歓迎です。

透明DIOの件だけでなく、ジョナサンがDIOと一緒に行くと決めた理由もぼかしていますが
不明瞭、ということは後で好きに書いていいということ……と逃げ道を作ってます。
スタンド側の制限は特に考えていませんでしたが、いいアイデアがある方がいたらぜひとも読んでみたいですね。

進行はゆっくりなので収録も数日待ってからする予定です。
意見等は引き続きお待ちしております。
それでは。

97 名無しさんは砕けない :2018/01/24(水) 23:11:50 ID:7V.LbkhA
投下乙です!
ジョニィとルーシー、DIOのこと普通に見えてた!?
死んだはずの敵がジョナサンの横に平然と立ってたらそら怖いわな
しかし深く追求せずに立ち去るとか本当7部勢は人を信用しない奴ばかりだw

一点指摘ですが、ルーシーはスティールの婚約者ではなく妻ですよ

98 ◆LvAk1Ki9I. :2018/01/25(木) 19:57:03 ID:xRZdzv3Y
感想、ご指摘ありがとうございます。

婚約者については164話 血の絆でジョナサンがそう発言しているためそれに倣っています。
とりあえず補完として>>94の結局進路は最初の――の後に以下のような文章を追加する予定です。


『謎のジョースターに今は亡き主催者の妻……
 ひょっとしたら、おまえは今とんでもない大物を逃がそうとしているのかもしれんぞ?』
「……その時になれば、きっとぼくらはまた巡り合えるさ……あの教会の時のように――
 ――待て、妻だって? ぼくは婚約者だと聞いたが」

――この食い違い、原因はジョナサンとジョニィが初めて会った直後の情報交換まで遡る。
14歳の女性が妻と言えばスティール氏が妙な印象を持たれかねないためジョニィはそこをぼかして伝えた。
その結果、ジョナサンが勘違いしたというのが真相である。

『いつどこでそれを耳にしたのかは知らんが、俺の場合は本人から直接聞いた……
 ふむ、これも時間の違いというやつか?』
「それはわからないが、なるほど……ルーシーときみは、既に会っていたか……
 通りで彼女のほうも、あんな態度をとるわけだ」

とはいえ違いとしては些細なこと、特に大きな影響があるわけでもなかった。
一応、ここにきてDIOから情報を引き出せたという意味では有意義だったかもしれないが。


これでいかがでしょうか?
他にも意見などありましたら遠慮なくお願いいたします。

99 ◆LvAk1Ki9I. :2018/02/04(日) 23:57:49 ID:sRzHI2ec
ひとまず新しい意見は無いようですが
ちょっと時間が取れないため収録はもう少しお待ちください。
だいたい水曜あたりにはwikiの方に収録する予定ですので、それまでなにかありましたら意見お願いいたします。

100 名無しさんは砕けない :2018/02/06(火) 10:25:23 ID:SJbUPRWA
補完文章読ませていただきました。読んでみた感じ問題はなさそうです。
しいて言うなら
通りで(どおりで)は、道理で(どうりで)
の誤字ではなかったでしょうか。・・・どっちだったっけ?
ともあれDIO見える現象についてはのちの話の伏線にもなるでしょうから慌てて修正することもなさそうですし、ここまでの補完もしていただければ充分だと思います。

101 名無しさんは砕けない :2018/08/12(日) 20:05:35 ID:RyMvmr.g
更新 ペース遅いよ

102 名無しさんは砕けない :2018/08/28(火) 01:32:55 ID:AGbA/CI.
最近読み始めたんだけど更新止まってる?

103 名無しさんは砕けない :2018/09/09(日) 12:33:51 ID:vXBkTCAE
更新遅すぎる

104 名無しさんは砕けない :2018/09/09(日) 19:50:06 ID:sYjgAZGU
楽しみにしてる

105 名無しさんは砕けない :2018/09/23(日) 14:03:31 ID:YzDEEtdk
更新ペースをあげるための策を練るべきだと思われる

106 名無しさんは砕けない :2018/10/10(水) 09:57:06 ID:PtJ8rw6g
管理人は生存報告をしなさい

107 名無しさんは砕けない :2019/01/08(火) 23:44:35 ID:LDhwTByw
wiki読んだけどあくまで透明ゾンビのDIOはDIO本人ではないから追跡表には入らない、って扱いなの?
ジョナサンを追跡すればいいといえばまあそうなんだけどDIOを追おうと思った時ちょっと面倒臭くって

108 名無しさんは砕けない :2019/01/09(水) 19:47:52 ID:ptrFuGT.
本人ではないというより、生存している間の追跡をするのが追跡表だからでは、と推測。
仮にこの後ジョナサンがDISC取り出してディオの主が変わったりすればあるいは追加しても良いかもしれないけど・・・

109 ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 22:58:00 ID:pwqg9dZk
ジョセフ・ジョースター、ジョルノ・ジョバァーナ、カンノーロ・ムーロロ
本投下開始します。

110 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 22:59:41 ID:pwqg9dZk


――ボスが姿を現した。

その噂はギャング組織、パッショーネ内を電撃のように駆け巡り、多く……いや、ほぼ全ての者に驚愕をもたらした。
さらにその正体が若干15歳の少年とくれば、すさまじい混乱の渦が巻き起こったであろうことは想像に難くない。

そんな混乱を意にも介さず……むしろそれに乗じたというべきか。
若きボス――ジョルノ・ジョバァーナは大胆に、且つ迅速に組織を統率していったのだが……
その手腕を見てなお、全員が納得したわけではなかった。
わかりやすい例を挙げれば、組織の設立は何年前で当時彼は幾つだったと思っているのか、といったもの。
そんな声が密かに、しかしあちこちで上がるのもある意味当然なほどジョルノは『若すぎた』。

そのような声が『不信』に変わり、真実か否か探ろうとする者が現れるまで時間はかからなかった。
無論、組織においてボスの正体を探ることが何を意味するかは周知の事実。
だがこの一件はそれを踏まえてなお、調べる価値があると判断されたのである。
万が一ジョルノが『偽物』だった場合、個人の立場どころか組織全体がひっくり返りかねないのだから。

飛び交う噂やその出所から真実を突き止めようとした者。
部下や情報屋に金や権力を使って探らせた者。
自らボスへと近づいて探りを入れた者。
手段は様々だが、ボス側に悟られぬよう密かに……それだけは共通して、決して少なくない人数が動き出した。
しかし、彼らの『調査』は早々に行き詰る。

――ジョルノ・ジョバァーナ、これはイタリアで名乗っている名前であり本名は汐華初流乃。

   現在ネアポリス地区の高校に在学、同学校の寮に住む15歳の学生。

   一見普通の少年だが裏では『いろいろ』やっており、他ならぬパッショーネに目をつけられたこともある。

   母親は日本人、父親はイタリア人だがこちらは義父。

   どちらも碌に面倒を見なかったため親でさえ彼の細かい行動についてはよく知らない――

そんな公言されている当たり障りのない事実だけで満足できるはずもないが、そこから先が出てこない。
手掛かりといえそうなのは「理由は不明だが、彼は幼い頃からギャングと関わっていた」という程度。
結局、深入りを避けた者は関係あるんだかないんだか……そんな宙ぶらりんな情報しか入手できなかった。

ならば、と幾人かは別方面からの調査を試みた。
彼のルーツ……本来の父親から何か足取りを掴めないかとはるばる海外まで足を運んだのである。

だが、この父親も父親でまた謎の存在であった。
単にネアポリスでの聞き込みだけで、顔も名前も住んでいた地域もあっさり判明する。
にもかかわらず、現地の人間からも記録からも何故かその父親の情報がまったく出てこない。
そして、手間取っているうちに彼らはその地で妙な集団に囲まれ、こう質問されるのだ。

                    「――何故、『彼』のことを調べているのですか?」

その相手が最近組織と提携した、とある財団の人間だとわかればそこまで……泡を食って逃げ帰るほかない。
即座に身を隠す、あるいは依頼主へ調査結果と「これ以上は無理だ、オレもあんたもヤバイ」という言葉だけ残して去っていった。

111 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:00:53 ID:pwqg9dZk

……とまあ、だいたいの者は何の成果も得られずに終わったのだが、これらはあくまで一般的な調査の範疇。
組織の一部において重要視されていた『スタンド能力』を扱う者たちを忘れてはならない。
無論ほとんどの者はそもそも動かないか、または能力的、立場的に独力で動かざるを得なかったのだが……

カンノーロ・ムーロロも動いた人間、そのうちの一人。
自分の命すら惜しくない彼は大胆にもそのスタンド能力でジョルノ本人をマークするという手段に出た。
物陰や地面、壁の隙間から……気づかれないようにではあったが、逐一彼の行動を監視させたのである。

結論から言えば、ムーロロもまた決定的な証拠は得られなかった。
それどころか逆に暗殺チームに情報を流していた事実をつかまれ、後に彼はボスから呼び出される。
そこで「ぼくにもプライベートはある」と告げられたことで彼の監視は終わりを迎えるのだが……
その対峙が行われたのはこの殺し合いが起こらなかった、まったく別の世界での話。


――――結局、少なくない人数が動いたにもかかわらず『真相』にたどり着いた者はひとりとしていなかった。
だが逆にその事実でこれまで通りの『謎のボス』に箔がつき、次第に本物だ偽物だという声も消えていった。

カンノーロ・ムーロロは、これからそんな謎のボスと『初めて』顔を合わせることになる―――


#



C-3、DIOの館……その門前。
D-2から近くの橋を渡り、そのまま北東へ進んできたのはジョルノ・ジョバァーナとジョセフ・ジョースター……
彼らは先ほど探知した『敵の敵』と接触するべく、回復も兼ねてやや時間を掛けつつもここに来ていた。
完全に同時というわけではなかったが、C-3とD-3の境目にある橋を南下したジョニィ達とすれ違って。

「――――よう、待ってたぜ」
「「……!」」

だがいざ館内へ入ろうとした矢先に彼らは出鼻を挫かれる。
中から無造作に門を開け、姿を見せたのは彼らの来訪を既に察知していたカンノーロ・ムーロロ。
目的の人物があまりにも堂々と登場したことに二人は一瞬気を取られ、相手に口を開く隙を与えてしまう。

「あー、言いたいことは山ほどあるだろうが、堂々と密会ってのもアレだ、こいつの中で話そう」
「……それは」

差し出されたのはムーロロ自身がここまで持ってきた『亀』。
説明しようともせず、さっさとその中へ吸い込まれるように入っていく。
返事すら待たない一方的、されど断れない提案により即座に会話のペースはムーロロに握られた。
……しかし。

「いかにも罠ですってカンジだが……脳ミソ足りてねーな。ケケケ、それじゃあさっそく亀ごと――」
「待ってくださいジョセフ、ぼくはこの亀を知っている……入るだけなら何も問題ないでしょう。
 彼についてはまだわかりませんが――周囲には誰もいませんよね?」
「ん? おう、そりゃあ問題ねーぜ」
「……では、ここはあえて相手の懐に飛び込んでみましょう。
 おそらくですが、相手がこうして姿を見せたこと自体追い詰められている証拠でしょうから」

残された二人だったが、これしきのことではうろたえない。
頭脳派な彼ららしくまずは意見交換と周囲の警戒、同時にそれでいて迅速に行動を決めようとする。
……それすら、ジョルノは亀を知っているという事実を逆手に取ったムーロロの策とも知らず。
さらに、続くジョセフの言葉が思考をより複雑にしていく。

112 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:02:29 ID:pwqg9dZk

「いや、そうとは限らねえぜ……おれ、あいつと前に一度会ってる」
「……前に、ですか?」

ジョセフにとってはあまり思い出したくない出来事ではあったが……
無念な結果に終わってしまったものの、負傷した祖母エリナを救うため助言をもらったのは事実。

「夜が明けた頃だ……名乗りもしねえで勝手なこと言ってたが、おれを助けてくれた……ことには一応なる。
 おかげで仗助たちとも会えたし、ちっとばかし借りが出来ちまってんだよな……
 それとあいつはおめー……いや、おめーだけじゃなく仗助やDIOのことまでよく知ってるようだったぜ」
「成程……ぼくらを『待っていた』ようですし、あなたの借りも含めて一筋縄ではいきそうにないですね……
 ですが、そうなるとなおさらここで退くわけにはいきません。さあ、僕についてきてください」
「出たとこ勝負ってわけか、チト不安は残るが……よーし、乗ったぜ」

自分たちの素性も、ここへ来ることも知られていた――情報戦に関しては既に完敗。
さらにこのまま交渉に入ってもジョセフの借りがある以上最初から不利であることは否めない。
しかし、だからこそ敵か味方かもわからぬ彼を放置しておくわけにはいかないと二人は決断した。

まずジョルノが亀の中へと入り、真似してジョセフが続く。
中に広がる空間にジョルノは多少の警戒、ジョセフはそれに物珍しさも合わさって視線を動かしていたが……
すぐに彼らの視線は正面のソファーにどっかりと腰掛ける伊達男――ムーロロへと移る。

「ようこそ……ここには上座も下座もねえから席はご自由に。
 飲み物は……あー、さすがに飲んでる場合じゃあ――」
「おれはコーラで」
「………………おう」

互いに臆すような気配など微塵も見せず、ジョルノとジョセフは揃ってソファーに腰を下ろす。
まずはどちらも沈黙……ムーロロの出方を待っていた。

「もう知ってるかもしれんが、フェアということで一応名乗らせてもらうぜ。
 オレはカンノーロ・ムーロロ。組織の情報分析チームを任されてる……あー、この辺の説明はいらねえかな」
「「……」」

返事すらせず、黙って睨む……というより胡散臭い目で見ているといった感じだろうか。
亀の外での話し合いで、ジョルノもジョセフもこの相手に自己紹介など必要ないと理解していた。
それを裏付けるかのように、ムーロロ側に警戒は最小限しか見られない。
何もしないうちにいきなり自分が殺されはしないという確固たる自信があるかのようだった。

「さっそくだが本題に入らせてもらうぜ……カーズを倒すのに手を貸してほしい」
「理由は」
「残る参加者の中で、積極的に殺しまわってるのはもうあいつひとりだけ……
 つまりあいつさえなんとかしちまえば、あとは全員で協力して……わかるな?」
「戦略は」
「まず、やつは第四放送時に会場の中央に現れる――こいつは確かな情報だ。
 そして戦力の提供はできるんだが、策はない……むしろそっちにあるんじゃあないか、なあジョセフ?」
「……え、おれ?」

ジョルノの無駄を削ぎ落した質問と、予測しているかのようにすらすら返すムーロロ。
そんな二人が織りなす超スピードの会話の最中、突如話を振られてジョセフは面食らう。
だがそれでも、カーズの話題となれば自分以外に語るものはいないということで頭に手を当てつつ喋り始める。
柱の男についてほとんど知らないジョルノも一旦口を閉じ、そちらに注意を向けた。

「……あいつは、ひとをだますのが得意なスンゲー悪趣味なやつだぜ……
 だから事前の戦法は決めねえ方がいい……決まった動きしかできねえんじゃあ速攻やられちまう……」
「もう少し具体的に……弱点とかねえのか?」
「そりゃ簡単、あいつはズバリ太陽の光に弱いぜ…もっとも、この時間じゃあ無いものねだりだけどよ……
 おれの波紋はそれと同等のエネルギーだから、そいつを叩きこめりゃ有効だ……叩きこめりゃ、な」
「……オメー、質問の意味わかってるか? 結局オレたちにはどう戦えってんだ?」

あれも駄目、これも駄目……素か挑発かは不明だが建設的な意見が出てこない。
うんざりした声で問われたジョセフはしばし逡巡する。
一度は勝利した彼といえど、カーズ相手に楽勝!となるような方法などまったく思い浮かばなかった。

113 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:05:23 ID:pwqg9dZk

「そこなんだよなあ……なあ、こっそりあいつの首輪爆破できたりしねえ?」
「……それができるなら、わざわざオメーらにこんな話持ちかける必要なんざねーだろ」
「ケッ、偉そうにしといて結局人任せかよ……
 はっきり言っとくけどあいつに波紋無しで挑むのは無謀だぜ、触っただけでアウトだからな……
 そっちが提供する戦力に波紋を使えるやつは?」

ジョセフの質問に、ここで初めて考え込むようなしぐさを見せるムーロロ。
今現在ジョセフを除けば残る波紋使いは二人、彼らの居場所もだいたいわかっている。
だがジョナサンはムーロロ側が提供するわけではないし、シーザーはそもそもフーゴの味方で協力は難しい。
それらを正直に言うこともできない以上、ムーロロの回答は――

「…………いねえな、今のところひとりもいねえ……残念ながらな」
「では、正面からの接近戦は避ける方向で――」
「オイオイジョルノくん、だれかお忘れでないかね? 具体的にはきみの目の前にいるナイスガイとかねぇ……」

……一瞬の沈黙。

「……何?」
「……ジョセフ、それは――」
「心配ご無用! 知ってんだろ? こう見えてもボクちゃん、あいつに一度勝ってるもんねぇ〜」

ジョセフの提案を理解したうえで、なお納得しかねるムーロロとジョルノ。
彼は単なる(で片づけるにはいささか疑問だが)吸血鬼であるDIO相手にすら苦戦している。
今度の相手はより上位の存在である柱の男、しかも今はジョナサンを欠いてひとりきり。
過去の実績は聞いているものの……やはり、実際見るのと聞くだけなのでは受け止め方が違うのだ。

「なんだねその目は、ひょっとして疑ってる? 自慢じゃあねーが、元々柱の男は四人とも俺が倒したんだぜ!
 それに今なら奥の手もあるし、ダイジョーブよぉ〜ん」
「…………奥の手ってのは?」
「チッチッチッ、わかっちゃいないねえ……秘密だからこその奥の手だぜ?」
「……やれやれ、まあだいたい予想はつくけどな……今はそれに賭けるしかねえか」

見ている方が不安になるほど軽い態度に疑惑のまなざしが突き刺さるが、ジョセフは意に介さない。
何か言いたそうなジョルノに対しムーロロは先手を取り、言った。

「それじゃあ後の細かいことはこっちで話し合っとくから……
 ジョセフ、オメーは外に出てこの亀を持って会場の中央に向かってもらおうか」
「……オイ待て、なんでおれが――」
「カーズの時間指定は第四放送時、あと一時間ちょっとしかねえ。
 ところがこの亀は自力じゃあ文字通り亀の歩みなのさ……
 オレはジョルノと策とか連携とか話し合わなくちゃならねえし、亀をもって走れるのはオメーだけってわけだ。
 ほら、急がねーと間に合わねえぜ? さっきの情報提供と合わせて貸しのひとつは無しにしてやるからよ」

さっさと行け、とばかりに手で追いやるような仕草を見せるムーロロ。
当然そんな扱いにジョセフが黙っているわけもなく――

「てめー、このおれを顎で使おうって――」
「ジョセフ、言う通りにしてください」

――横から口をはさんだのはジョルノ。
相手の思惑はともかく、下手すると時間どころか全てが『無駄』になるのは彼としても避けたかった。

114 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:06:20 ID:pwqg9dZk

「カーズが現れるのは第四放送時の会場中央、つまり空条邸の近く……この意味が分かりますね?」
「……チッキショ〜! 揃って澄ました顔で労働強制しやがってっ!
 これから敵と戦いますって人に無駄な体力使わせんじゃねーッ!」
「おう、落としたりすんじゃあねーぞぉ?」

ジョルノの最低限のフォロー――自分たちが間に合わなければ待ち合わせをした仲間たちが危険に晒される。
それを理解したジョセフは文句を言いながらも亀の外へと出ていった。
……残ったのは、二人のギャング。

「――――あー、話はまとまった。今現場に向かってる……オメーも第四放送までに来い」
「…………盛り上がってるところすみませんが」

ムーロロは帽子からトランプのカードを取り出すと、それに向かって喋る……勿論一人芝居ではない。
もはや能力を隠そうともせず、おそらくは先ほど言った『戦力』の誰かに連絡しているのだろう。
ジョルノはそんな彼を黙って眺めていたが、連絡が終わったのかカードを離したムーロロに向かい――


           「――――ぼくらはまだ、あなたに協力するなんて言った覚えはありませんよ?」


――平然とそう言い放った。

「…………おいおいおい」

さすがにムーロロも驚くが、確かにジョルノもジョセフも協力を承諾などしていない。
だがなし崩し的とはいえ、どう見ても協力する流れだったのも事実。
このタイミングでの拒絶は完全に予想外……でもなかった。

(やりかえされた……ってわけか)

今はちょうど仲間に「交渉がうまくいった」と連絡した直後。
このまま何もせず交渉がご破算になれば……少なくとも仲間内でのムーロロの面目は丸つぶれになる。
退くに退けない状況を作り出し、相手を強制的に同じテーブルにつかせる……まさに先程彼が使った手だった。

(有効ではあるが、嫌らしいやり方だ……計算高いうえに最初から人を信じていねえな……
 正直、こんな状況でもなきゃ相手にしたくねえタイプだが……)

必然、ムーロロもまた同じように会話の主導権が相手に奪われたと感じつつも反論せざるを得ない。
……だが、同時に彼にはこの先の展開もある程度予測がついていた。
ジョルノが「あるもの」を要求するであろうことが。

「……ここまできて、そりゃ無いんじゃあねえか? あんたは柱の男を知らないからそんな事が――」
「いえ、協力してカーズを倒す……その考え自体は悪くありません。問題は――――」

一呼吸置くと同時にジョルノの目つきが変化する。
今までも鋭く睨みつけるようではあったが、さらに険しく――『敵』を見る目へと。

「あなたを信用していいのかどうか、です。自分のケツに火が点いているのはわかっていますよね?」
「あー、やっぱりそう来るよな……当然、理解してるさ」

115 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:07:13 ID:pwqg9dZk

持っている情報の異常なまでの多さと新鮮さ――情報収集能力に長けているということ。

これまで一切戦闘などしたことのないかのような小奇麗な身なり――後方支援に徹してきただろう証。

そしてたった今見せた、離れた相手への情報伝達が可能なスタンド能力。

全ての情報が以前ジョナサンから聞いた『DIOの部下』へとつながっていく。
会場のほとんどの参加者の位置を知ることができる者とはこの男だと、ジョルノは確信していた……!

「それは、認めるということでいいですね」
「……ああ、オレは嘘もつくし隠し事もするが、いくらなんでもあんたや承太郎を騙しきる自信はねえ」

『裏切り者』……DIOが死亡した以上その表現は過剰かもしれないが、鞍替えしたのは事実。
いざというときに裏切られ、スマンありゃ嘘だったでは済まされない――
ジョルノの言葉にムーロロは大きく息を吐くと、やはりすらすらと話し始めた。

「確かにオレはDIOの野郎に脅される形で手を貸して、あんたらの情報を喋っちまったさ。
 オレのスタンドはお世辞にも戦闘向きとは言えねえ。
 コウモリ野郎と思うかもしれないが、そうしなきゃオレが殺されてたからな……
 許してくれなんてありきたりな言葉じゃあ納得できねえだろうが――――」
「……おい」

――走りつつも聞き耳を立てていたのか、ムーロロが言い終える前にジョセフの声が降ってくる。
先程までの調子の良いそれとはまるで異なる、底冷えするような声。
外にいなければおそらく相手の胸倉をつかむくらいはしていただろう気迫だった。

「てめえ……それじゃあ……てめえのせいで仗助たちは……!」
「ジョセフ、制裁は後回しです……口だけなら何とでも言えますよね」
「…………」

バッサリと切り捨てるジョルノに悪態すらもつかずに外の声は止む。
だがジョセフの怒りをそのまま示すかのように彼の移動スピードは上がっていた。
そのやり取りを見届けると、ムーロロは再び口を開き言葉を続ける。

「DIOが死んだ今、オレがあんたらと敵対する理由はねえ。
 持ってる情報は包み隠さずやるし、気が済まないってんなら何発かブン殴ってもらってもかまわねえ……
 罪滅ぼしなんて大層なもんじゃあねえが、オレはあんたらと『協力』したい……
 オレは、生きてここから出たいんだよ……」
「……フゥーッ」

……無念そうではなく、また自嘲するようでもない喋り方。
先のジョセフとは対照的に、声から感情が全くと言っていいほど読み取れない。
ムーロロの声は、よほど心理に長けた者でなければ真実か否か判別できそうもないほど無機質だった。
聞き終えたジョルノは静かに息を吐き……


                            「今の話は、本当ですか?」



――――そう質問した。

116 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:08:13 ID:pwqg9dZk

それは一見何の変哲もない質問であった。
だが言ってしまえば、この質問こそがある意味この話し合いの全てを決定づけたといってよい。

まずはジョルノ、彼にとってこの質問は彼らしからぬことに、無駄を多分に含んでいた。
答えが返ってくればいいな、とその程度の気持ちでした質問。
気の緩みとかではない、傍から見れば本当に些細で、同時に重大な質問をしてしまったのだ。

一方のムーロロは、まさにこの質問でジョルノを『見限った』。
彼としては、今すぐ潔白の証明として何かけじめをつけさせられるとでも考えていたところにこれである。

(こりゃダメだな、甘さに付け込んで利用してやるつもりではあったが……いくらなんでも度を越してる)

この質問、答えなど最初から決まりきっている。
例えるなら相手に「前のボスを殺して組織を乗っ取ったんじゃあないのか」と聞いたとして。
真実がどうであれ、「ええそうです」なんて答えるやつがどこにいるというのか。

(質問自体が『罠』の可能性は……ねえな)

一時的に彼の上司だった男、ブローノ・ブチャラティは相手の汗を見て嘘を見抜けたそうだが……
もしジョルノがそれに類する何かを持っているのなら、自分の本心などとうに見抜かれているはず。
ならばこの質問に裏はない……つまりは、この状況でそんな程度の駆け引きしかできない男だということ。

ジョルノが組織のボスかどうかなどもはや興味すらなかった。
確かに感じるものはなくはない、だがそのカリスマはDIOに遠く及ばない……
この殺し合いにおいて自分を導きたるボスの器ではなかったと、顔には全く出さずとも失望していた……!

とはいえ質問に質問で返したり、あるいは答えないわけにはいかないと思考を戻す。
返された答えは、どこまでもシンプルな一言だけだった。







                                 「嘘だ」

117 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:09:16 ID:pwqg9dZk


――次の瞬間、ムーロロは吹っ飛んでいた。
体ごと部屋の壁に叩きつけられ、そのままずるずると床に崩れ落ちる……!

(――――!!? ッ……ぁ……な……く……やら………れ…………)

自分が攻撃を受けたことに今更ながら気が付く。
殴られたのは腹……! 防御するどころかそんな思考をする暇さえなかった。
まるで内臓ごとブチ抜かれたような……あるいは本当にブチ抜かれたのかもしれないすさまじい痛みに動けない。
だがそれすら気にならないほど、頭の中はある疑問でいっぱいだった。
その疑問とは…………



                      (――――今……『答えた』のは誰だ……!!?)


自分ではない。
ジョセフでもない。
ましてやジョルノであるはずもない。

それなのにどこからか声が聞こえてきたという、不可解極まりない現象。
誰がどうやって、そして何故あんなことを言ったというのか……?
状況を知るべくどうにか顔を上げたムーロロの目に、疑問の答えはすぐ飛び込んできた。

(なん……だと?)

それでも信じがたい……直接現場を見たわけではないが、彼は既に死んでいるはず。
その死体でさえ、今ここにあるわけがない。
だが事実、その人物はそこにいた――――



                        (――――こいつの名は……そうだ……)











                     (――――ジャン・ピエール・ポルナレフ……ッ!!)






                     ――――片目に眼帯を付けた、銀髪の男が……!

118 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:09:58 ID:pwqg9dZk




――ボスが姿を現してからしばらく後、その正体云々とは別の噂が流れたことがある。
組織には『秘密のナンバー2』がいるのではないかという噂が。

いわく、ボスは若すぎる、交渉などの際表に出る代理人あるいは相談役となりうる年長者がいるはずだとか。
実質的な副長であるはずの拳銃使いがふと「ナンバー2はオレじゃない」と言ったとか言わなかったとか。
そんな小さなことから出てきた、出所さえもはっきりしない噂。
結局噂のナンバー2が姿を見せることは一切なかったため、すぐに立ち消えていった……その程度の話。

ボスを調査する際、ムーロロもその件について調べてはみた。
だがジョルノの外出時、いくら尾行させてもそれらしき人物とコンタクトをとっている様子はない。
直接会わずに指示しているとも考えたが、使用した電話にもメールにも記録がまったくない。
最終的には周囲と同じく、そんなナンバー2は存在しないという結論に達していたのだが……

(ありえねえ……こいつは第一放送前に死亡して、しかも承太郎に埋葬されたはず……
 死んだ後に発動する能力……? だとしても、いったいいつ……この亀の中に……?)

亀の入口は一か所のみ、しかも入るときはトランプのサイズだろうと必ず内外両方から丸見えになる。
つまりさすがのウォッチタワーといえど亀の中までジョルノの追跡は無謀と判断。
ジョルノが留守の際に侵入を試みたことはあったが、中には誰もいない……そうとしか確認できなかった。
招かれざる客には決して姿を見せない者がいるなどとは夢にも思わずに。

結果、実在した噂のナンバー2――ポルナレフの存在にはたどり着けなかったのだ……!

(……ち…き……しょう……)

手足に力が全く入らず、反撃どころか逃げることすら叶いそうもない。
それを理解したうえでとどめをさすつもりもないのか、既にジョルノたちはムーロロに見向きもしなかった。
……映画のワンシーンか何かだったか。
壁際にてライトで照らされ、追い詰められたスパイが撃たれて斃れる場面が自分の状態に重ねられる。
ただひとつ、異なるのは――



                ――――自分には、何のスポットも当てられていないことだった。




#



「よかったです……あなたがここにいてくれて」

多少ながら緊張が解けた顔でジョルノが言う。
わかってみれば単純……彼が先ほどした質問はムーロロではなくポルナレフに向けたものだったのだ。
時間のずれなどでポルナレフが亀の中にいなかった場合、無駄どころか信頼を失いかねない危険な『賭け』……
だが、ジョルノは見事それに勝利した……!

119 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:11:00 ID:pwqg9dZk

「確証まではなかったのか? だとすると少々、危うい質問だったな……
 もしわたしの答えがなかったら、どうするつもりだった?」
「その時は見限られていたでしょうから、実力でねじ伏せる……やることは同じです。
 同盟を組みたかったのは事実ですが、彼を本気で信用するつもりなんてありませんでしたから」

いつも通りしれっとした顔で物騒なことを言うジョルノだが、ポルナレフが嫌悪感を示すことはない……
長い付き合いとまではいかないがジョルノのことはよく知っていたし、彼はずっと『見ていた』のだから。

「それが正解だ……ヤツは裏で密かに厄介な連中と組んでいるしな。
 まずはDIOによく似た、恐竜を操るディエゴ・ブランドー……
 それに蓮見琢馬……こいつはミスタともう一人、ミキタカという者の殺害に関わっている」
「……!!」

早速出てきた新たなる情報……ジョルノ自身はどちらも関わったのはチラッと程度。
だが同時に因縁深い敵の存在に彼の眉がピクリと動く。
とはいえ口振りから察するに今すぐその二人と何かあるわけではないと判断し、話の続きに耳を傾ける。

「幸い、この部屋をよく使っていたおかげでヤツの持っていた情報はすべてここにある。
 カードを会場中に散らばらせることによる情報収集能力は大したものだが……
 ただ一点、すぐ傍にいたわたしの存在に気づけなかったのが致命的となったな……」
「灯台もと暗し、というやつですか――――んっ?」

唐突に亀が微妙に揺れる。
二人が見上げると、いい加減様子がおかしいことに気づいたジョセフがのぞき込んでいた。

「ジョセフ、どうかしましたか?」
「いや、ちょっと寒気が……じゃなくてそっちだよ、なんか知らねーおっさん増えてるし、何が起こってんだ?」
「おっさん、か……フッ、心配ない。わたしは味方だよ……『ジョースターさん』」
「???」

怪訝な表情のジョセフを見ながら、微かに笑ってポルナレフはジョルノへと向き直る。

「しかし、本当に待ちわびたぞ……
 この亀は開始からずっとヤツが持っていたし、信用できそうな者はひとりとして中に来なかったからな……
 DIOと出会ってしまったときには正直、既に肉体がないというのに背筋が凍るような感覚すら覚えたよ……
 まあ、そのあたりの話は後にして――――ム!?」

言葉途中で表情が変わったポルナレフにつられ、ジョルノも彼の視線の先へと振り向く。
そこにいたムーロロが――――


                「ジョルノ! ヤツが……いないッ!! どこに行ったッ!?」
                             「……なっ!?」


                      ――――忽然と姿を消していた。



「……ジョセフ! 鍵を外してください!」
「え……鍵? こ、これかッ!?」

中から飛ばされた指示にほぼ反射的に亀の背中についている鍵を外すジョセフ。
すると目の前に、ジョルノが引きずり出されてきた……ジョルノひとりだけが。
周囲を素早く見渡し、次いでジョセフに目を向けるジョルノ。
その目は、先読みに長けた彼でなくてもすぐわかるほど質問の内容を雄弁に語っていた。

「……い、いや、さっきから他には誰も出てきてねーぞ……?」
「……!!」

近くにムーロロの姿はない――つまり亀の中に隠れていたわけではないし、外のジョセフも見ていない。
何をどうやったのか、手段はわからないが彼らは完全にムーロロを見失った……!
ここに来て初めてジョルノの額に汗が浮かぶ。

「まずいぞ……! 今ヤツに逃げられたのなら、ヤツの仲間も全員敵にまわるのは時間の問題……
 そうなったら、一時的な同盟どころの話じゃあないッ!」


なぜならそれは、この一件におけるジョルノの唯一の誤算だったのだから……!

120 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:11:34 ID:pwqg9dZk



【C-3とC-4の境目 橋上 / 1日目 真夜中】



【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:『隠者の紫(ハーミット・パープル)』AND『波紋』
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前
[状態]:全身ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:ブリキのヨーヨー
[道具]:首輪、基本支給品×3(うち1つは水ボトルなし)、ショットグラス、念写した地図の写し、ココ・ジャンボ
[思考・状況]
基本行動方針:チームで行動
1.どこかに消えたムーロロを探す?
2.それともこのまま空条邸に向かって仲間と合流する?
3.悲しみを乗り越える、乗り越えてみせる
4.第四放送時に会場中央へ行き、カーズを倒す
5.リサリサの風呂覗いたから念写のスタンド、ってありえねーからな、絶対

※『隠者の紫』の能力を意識して発動できるようになりました。



【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(小)、精神疲労(中)、両腕欠損(治療済み、馴染みつつある)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、地下地図、トランシーバー二つ、ミスタのブーツの切れ端とメモ、念写した地図の写し
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える
1.どこかに消えたムーロロを探す?
2.それともこのまま空条邸に向かって仲間と合流する?
3.ポルナレフと情報交換したいが……時間がない
4.第四放送時に会場中央へ行き、カーズを倒す

※先に念写された『アイテムの地図』は消されてしまいましたのでメモ等はないですが、ジョルノのこと、もしかしたら記憶している・か・も



【備考】
・亀の中にムーロロの所持品(基本支給品、無数の紙、図画工作セット、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、角砂糖、
 不明支給品(1〜8、遺体はありません))が放置されています。

【ポルナレフについて】
 参加者とは別のポルナレフ。
 ココ・ジャンボが五部終了後の時点で支給品にされたため、最初からずっと亀の中に幽霊として潜んでいました。
 ムーロロの行動を始め、亀の中の出来事及び亀から見えたものは全て彼も見ています。
 ひょっとしたら主催者に連れてこられて支給品にされるまでの出来事も見ているかもしれません。

121 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:12:31 ID:pwqg9dZk


#


(ここは……オレは……いったい)

同時刻、ムーロロはどこかの街中にいた。
先程壁に叩きつけられた時と同じ体勢のまま、無数に並ぶ電柱のひとつ……しかもそのてっぺんに腰掛けて。

何故?という疑問が真っ先に出てくることだろう。
今のムーロロは動くことすら困難な状態。
そんな彼がどうしてこんなところにいる――もとい、移動できたというのか……しかも一瞬で。
本人すらも理解していないその理由は、彼の背中にあった。

遺体の脊椎部分、それが奇跡を起こして彼を瞬間移動させた……純然たる事実だけ言えばそうなる。

とはいえ、それでもなお疑問は尽きない。
確かに敵から逃れられたという意味ではムーロロにとって有益と言えるだろう。
だがジョルノは攻撃を行ったものの、敵と認識していたにもかかわらずムーロロにとどめを刺さなかった。
つまりあのまま殺されはしない――どころか、彼を『利用』するために治療していた可能性まである。
こんな人気すらない場所にわざわざ移動させられ、果たして助かったといえるのだろうかという話だが……

(どうする……まずオレの腹はどうなってる……?
 助けを呼ぶか……そうだとして、誰に……治せそうな奴は…………
 くそっ、駄目だ……声が……出せねえ……)

当のムーロロにとっては現状把握とその打破で精一杯……理由まで考えている余裕はなかった。
あるいは、どうにか逃げられた……その程度くらいは頭のどこかにはあったかもしれないが。
だが、彼は大きな勘違いをしていた。


     『君の無敵さは実のところ、無駄だ。どんなに強くとも、君は禁止エリアに入っているんだから。無駄無駄……』


苦難は終わらない……それどころか、さらなる試練がすぐさま襲い掛かることを……!

(……ッ! ウソだろ!? おい!)

誰もいないとすっかり油断しきっていた所に浴びせられる静かで、それでいて威厳を感じさせる声。
だが今の彼にとっては単に耳障りで、しかも聞きたくない事実を告げる声にしか感じなかった。

今のムーロロはまともに歩けないほどの重体。
しかも自分が会場のどこにいるのか、どちらにどれだけ移動すれば禁止エリアから逃れられるかもわからない。
おまけに大半の道具はデイパックと共に亀の中に置き去りという三重苦。

何かの拍子にもう一度場所が移らないものか、などとは考えもしなかった。
遺体が起こす奇跡のことをムーロロは知らないし、知っていたとしても不確かなものをあてにはできない。
ムーロロが助かるには運と……彼自身の生への執着力に賭けるほかなかった。

(……冗談じゃあ……ねえ!)

122 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:13:24 ID:pwqg9dZk

失って困るものは命すら含めて持っていないはずの彼だったが、この時ばかりは『目的』があった。
それが、この土壇場における行動につながったのかもしれない。

(どうにか……しねえと……)

電線――通電の有無に関わらず、移動経路とするには無謀が過ぎる。
そうなると電柱からなんとしても降りなければならず、事実ムーロロはそうしようとしたのだが――

(う……グッ……!)

腹に受けたダメージのせいでうまく手足にも力が入らず、彼の場合はスタンドで踏ん張ることもできない。
結果、碌に動かぬうちにバランスを崩し、あわや爆死を待たずして転落死かと思われたが……

(いや……これでいい……これしかねえ……)

ムーロロはあえて上半身から、スカイダイビングのごとく大の字の体勢で空中に身を投げ出した。
見ようによってはまるで自殺するかのように、胸から地面に飛び込む形で。
そして……激突の瞬間。


                         ボ  ヨ  ヨ  オ 〜 ン


間の抜けたようにも聞こえる音と共に、ムーロロの体が弾き飛ばされる。
垂直ではなく、低めの角度で……なるべく遠くへ離れるように。
当然、着地地点にはまたしても地面への激突が待っていたが……一切逆らおうとせず、思いっきり転がったッ!
少しでも距離を稼ぐための、いわば悪あがき。
幸い建物などにぶつかることはなく、勢いも体力もなくなり本当に動けなくなったところで地面に寝転がる。

(…………どうだ……?)

これで駄目ならもはや打つ手なし、覚悟を決めて耳を澄ます。
はたして首輪は――











                        ――何の音も発していなかった。

(……………………)

そのまま寝転ぶ彼の懐から転がり落ちたのは、ボヨヨオンの文字が書かれた岩のかけら。
ジョルノたちと戦闘になった場合を考え、保険として心臓を守るため胸に忍ばせておいた支給品。
惜しむらくは相手が狙ったのが仕込んだ胸でなく腹だったことだが。
役目を果たした文字はそのまま消え去ってしまったが、ムーロロは見てもいなかった。

123 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:14:32 ID:pwqg9dZk

(……………………)

ひとまず禁止エリアからは脱出した……とはいえ、助かったとはまだまだ言い難い。
それでも一息だけはつける状況だったが……そうはしなかった。
彼の精神は、そんなことすら忘れるほどに乱れていたのだから。

(…………クソッ!!)

ジョルノは何故自分を殺さなかったのか……答えは簡単、利用価値があったからだ。
おそらく交渉の早い段階から自分を動けず喋れずの状態にして『戦力』だけ乗っ取るつもりだったのだろう。
そう考えればあのタイミングでの協力否定も納得がいく。

(どいつも……こいつも……)

そして自分を現在の状況に追い込んだ、もう一人の『犯人』。
こんなところに自分を連れてきたのは何故なのか。
何か用があった――だとしても何故、姿を見せない?
禁止エリアで始末するため――ただでさえ瀕死で、今まさに無防備な自分を放置して?
いくら考えようとも答えの出ない不可解な現象に苛立ちばかりが募る。

(……ナメやがって……ッ!)

無性に腹が立っていた。
自分をまるで相手にしなかったジョルノたちにも。
無責任にワープさせ、自ら手を下さずしかも死すら見届けようとしない『誰か』にも。
誰からも相手にされない……今までの人生において当たり前だったはずのそれに、彼は酷く腹を立てていた。
数秒後、ムーロロはふっ、と息をつく――――



            (ああ、わかったよ……そんなにオレの相手をしたくないなら……



                            相手にしないまま殺されても、文句はねえよなあ…………?)



                                          ――それは、ひとりの暗殺者が誕生した瞬間だった。



もし、ムーロロがDIOに味方したりしていなければ。
もし、ムーロロがジョルノに『敵』とみなされていなければ。
そうすればジョルノとの対面により、彼は真に『恥』を知っていたかもしれないのに。
たったひとつ、出会う順番が違っただけでムーロロの運命は変わってしまった。


彼の人生は、目先の怒りや苛立ちを晴らすことだけがすべて……『恥知らず』のままなのだから――――

124 Tangled Up ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:15:48 ID:pwqg9dZk


【B-1とB-2の境目付近 / 1日目 真夜中】


【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ)
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降
[状態]:腹部ダメージ(大)
[装備]:トランプセット、フロリダ州警察の拳銃(ベレッタ92D 弾数:15/15)、予備弾薬15発×2セット
[道具]:遺体の脊椎
[思考・状況]
基本行動方針:目先の怒りや苛立ちを晴らす
1.他のことなんて知ったこっちゃない、ジョルノたちに「復讐」する

※腹部のダメージは肋骨が折れて腹筋を傷付けている程度で、それに伴い声が出せません。
 長く放置しすぎると死ぬかも。
※現在、手元に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。
 会場内の探索はハートとダイヤのみで行っています。 それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。


【備考】
・23時に設定された禁止エリアはB-1でした。
・ムーロロが誰かに「第四放送までに(会場中央に)来い」と連絡しました。
 具体的な相手や人数は不明です。


【支給品】
ボヨヨン岬の岩のかけら(第四部)
元はペットショップの支給品。

広瀬康一のスタンド「エコーズ」のしっぽ文字ボヨヨオンが張り付けられた岩のかけら。
原作では尖った大岩に張り付けられていたが、ロワ仕様で手のひらサイズ程度の大きさ。
何かが激突するとすごい勢いで弾き飛ばすが、弾かれたもの自体は無傷。
ロワでは弾くのは一回きりで、使ったらただの岩に戻る。

125 ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/20(日) 23:20:01 ID:pwqg9dZk
以上で投下終了です。
仮投下から大筋に変更はありませんが
亀に入る前のジョセフとジョルノの会話に追加、他数か所追加・修正しています。
結果としてちょっと冗長になったかも……
ご意見、矛盾などありましたら遠慮なくお願いいたします。

ジョジョロワの宣伝ってどこでやればいいんでしょうかね……
ツイッター上で投下されたと呟いてくれる方々には本当に感謝です。

126 名無しさんは砕けない :2019/01/21(月) 15:30:07 ID:qgpHXtmw
投下乙です!

感想ですが、まずは、まさかのカメナレフw
ありそうでなかった発想に驚かされましたし、原作(と恥知らず)の時点で「そういうもの」として存在している以上これはアリだと思います!
謎のボスの正体を探る者たち、という導入も、こちらは原作に描写がなくても自然に感じ取れる内容でしたし、
そこにDIOがホンノリ絡むあたりも血縁の妙という感じで、読んでいて緊張感が伝わってきました。
今までワルい連中とばかり付き合っていたムーロロがいよいよ正義の心を持つものとの関わり合い。
脊椎でのワープを行ったのは誰なのか?ジョルノたちはムーロロを放置してカーズの元に向かうのか?
早くも次の話の期待をしたくなる一話でした。

追加された部分については、読んでいて不自然にも感じませんでしたし、冗長とも思えませんでした。

改めて乙でした!

127 名無しさんは砕けない :2019/01/27(日) 03:09:03 ID:bn8EIRCc
うわあああ
投下が来てるゥ〜〜〜〜ッ(JOJOが生きてる的な勢いで)

いやほんと久しぶりにジョジョロワssが読めて感無量です
しかも面白い!文句なしです
ジョルノの組織掌握期への考察、知略派ジョジョの的確な立ち回り、
対カーズ体制への協力交渉、心理的なマウントの取り合い、ポルナレフの登場、
そしてムーロロがゲスの心に落ちる展開、どれも「ジョジョらしく」、そして「ロワイアルらしく」まとまっていたと思います

◆LvAk1Ki9I.ッ!
あなたの素晴らしい作品投下、ぼくは敬意を表するッ!

128 ◆LvAk1Ki9I. :2019/01/27(日) 20:12:40 ID:MIf7VzdY
>>126 >>127
感想ありがとうございます。
久々の投下でしたがこうして面白いと言っていただけると書いた甲斐があるというものです。

導入部分はアニメでここまではやらないだろうと思い切って入れて見ました。
裏(ジョジョ的には表)事情を知っていればニヤリとできるようにしたつもりので楽しんでいただけたのなら幸いです。

ポルナレフについては以前ロワ内にジョージⅡ世が二人いるとかいうレスを見ていつかやりたかったネタだったりします。
今後どう絡んでいくかは私も楽しみです。

修正が必要そうな箇所を見つけたので収録はちょっと遅れるかもしれません。
だいたい一週間を目安に意見など待ちつつのんびり行く予定です。
引き続き意見、感想などお待ちしております。

それでは。

129 化身 その1 ◆yxYaCUyrzc :2019/05/21(火) 22:15:54 ID:WOEZGFfY
ある漫画家がこういうセリフを言っている。
いわく、『キャラクターにはシンボル化が重要だ』と。
なるほどなるほど。確かにその通りだ。
黒い丸を三つ並べれば何故だかネズミに見えてくるように。
あるいはギャンブルをするときの心境といえば“ざわ・・・”であるように。

――という前置きをして、次の説明をされたら、それは『何』だと思う?

まずは顔。上下の唇は鋭く長く伸び。
後頭部には舟の舵を思わせる大きなトサカ。
わき腹から手首まで、身体の側面に伸びた一対の薄い膜は翼を思わせる。

さあ、一体これは『何』だ?

多少の知識がある人ならそれを『プテラノドン』と呼ぶだろう。
仮にそんな専門的な固有名詞を知らなくとも、多くの人が『怪獣』とか、あるいは。
『恐竜』と――そう言うだろう。

では、地面に潜る彼がなんでまたこの姿になってしまったのか。
“根拠”を問われたのなら……まあ、飛ぶように泳ぐ姿から、といったところだろう。
“原因”を問われたのなら……それは彼がこれから会う男にある。

130 化身 その2 ◆yxYaCUyrzc :2019/05/21(火) 22:17:54 ID:WOEZGFfY
「よう」


それは返事を求めて発したモノじゃあない。発言した男自身が――ご存知、ディエゴ・ブランドーが――よくわかっている。
相手がまともに言葉を発するとも思っていない。

ただ、ほんのチョッピリの反応があれば充分だった。

――皆は知ってるだろうけど、一応補足をしておこう。
これはディエゴ・ブランドーがスタンド使いだから云々といった理屈ではなく、持って生まれた才能だ。
農場にいる暴れ馬たちを手懐けていた彼にとっては、たかだか頭の弱い恐竜一匹の言わんとしていることくらい容易に分かる。
動揺と警戒をしつつ、若干の威嚇を含んだその姿勢を見て、また方角と時間から察するに――作動した未知の禁止エリアに迷い込んだといったところだろう、と。

――ちなみにもう一つ補足するなら。
さっきのスキルとは違い、こちらはディエゴ・ブランドーが身に付けたスタンド能力で成しえたことだ。
夜のジョギングというにはいささか速すぎるペースで“同族”の匂いをたどっていけば、他者に遭遇することなく相手を追跡することも容易も容易だろう。

もっとも、こんなことをドヤ顔で解説してやるような相手も近くにはいないのだが。
いや、いた――あ、いや、解説するかどうかという意味でなく、“相手が”という意味で。
その正体はどこからともなくひょっこりと現れた一枚のカード。


「あー、話はまとまった。今現場に向かってる……オメーも第四放送までに来い」


簡潔極まりないそのセリフに対してフム、と小さく漏らすディエゴ。
今、このタイミングでの報告は互いにとってどう影響するものなのか。言葉の内容とその裏に潜む意図はどうなのか。
わざわざムーロロが(ジョニィとルーシーはともかく)自分を放ってセッコだけを尾行をしていたとは思えないし、かといってこの“合流”を無視するようなマヌケを晒すこともまたないだろう。
言うことだけ言っていつの間にか視界から遠ざかっていくトランプを追うべきか追わざるべきか。あのトランプは最初から自分の速度についてきていたのか?それとも他で何かを見てから此処へ来たのか?
などなど――考えるべき問題は決して少なくない。

だが、ここで急にディエゴは思考を遮られることになる。
つい先ほど自分の呼びかけに反応し、それ以来ずっと俯いていたセッコノドン……変なネーミングだな、やっぱり素直にセッコ恐竜と呼ぶか。
とにかく――そいつが今このタイミングで、低い声で唸りながらぶつぶつと呟き始めたのだ。

「……タイ……アマ……
 クイ……タ……ツク……イ……」

131 化身 その3 ◆yxYaCUyrzc :2019/05/21(火) 22:20:34 ID:WOEZGFfY
何言ってんだコイツは、と目線を向ける。
恐竜化してなお喋ることは決して珍しい現象ではないが、その言葉は本当に文字通りの意味で『何言ってんだ』だったから。


ここで、先ほどの漫画家からもう一つ言葉を借りよう。
いわく、『キャラクターの行動には何かしらの動機が必要である』と。
たとえ“なんとなく”であろうが、キャラクターが動くということは、そこに何かしらの動機がなければならないそうだ。

――という前置きをして、今のセッコの動機は、一体『何』だと思う?

だらしなく開かれた口からは止まることなくヨダレが溢れ。
指先は柔らかな肉を揉みほぐすような手つきで握り、開きを繰り返し。
ギョロギョロと動かしていた視線がディエゴのそれと一瞬だけ交錯し、瞳孔が一際大きくなった。

さあ。彼の『動機』は一体どこにある?

“根底”を考えるのなら……まぁ、彼自身が生み出した好奇心、といったところだろう。
“原因”を考えるのなら……それは彼がかつて出会った男にある。


「ディ……っディDIOオオォォオッッ」


それは返事を求めて発されたモノじゃあない。
――セッコの言う“ディオ”は自分の事ではないのだろう。
話にこそチラリと聞いていたがディエゴ自身は直接セッコと関わった時間など僅かも僅かだったのだから。
そういう意味では、ルーシーのところから呼び寄せておいた名も知らない恐竜のほうがよっぽど付き合いが長い。

さておき。いくら突然のことと言えど、猛獣使いのスキルがあろうと、いくら素早く反応が出来ようと。
この顛末を予め想定出来無かったのは迂闊だった――いや、言い直そう。ディエゴ・ブランドーほどの男が想定していなかったわけでは、決してない。
純粋に、ただただ純粋に。ディエゴの想像以上だったのだ。

『DIOの残したモノ』の大きさが。異常さが。

132 化身 その4 ◆yxYaCUyrzc :2019/05/21(火) 22:21:47 ID:WOEZGFfY
「――おいッ!」
予備動作もなく着水……おっと、着地かな?羽根を器用に使って泳ぎ出すセッコを逡巡ののちに追うディエゴ。
護衛を先に動かすあたり、まだディエゴにも戦略的余裕が見受けられるが、それでも動揺は彼の腹の中にだって少なからずある。

直感だがアレを放置したらヤバい。
恐竜化したキッカケこそ自分ではあるが、その火の粉が降りかかってくる可能性が僅かにでも存在するのなら。
自分が悪だと思ってもいない、最もドス黒い悪。そんなヤツの!ブレーキが!壊れてしまったのならッ!


『飼い主』のなくなったセッコの能力は
――もはやとどまる所を知らない!


暴 走 “スタンビート” す る ッ !


「クソッ……一体『DIO』は何をしたのか!何なのだあの“置き土産”は!
 あんな“邪悪の化身”をほっぽり出したまま死にやがって!
 ムーロロの野郎もッ!何が『DIOの事は完全に忘れた』だッ!
 ――あれじゃあ俺が“思い出させてやった”みたいじゃあないか!
 『クズどもを上から支配する』なんて存在はこのDio一人で十分だッ!クソッタレどもめッ!」

そんな悪態をついてやる相手は今度こそおらず――三頭の恐竜が街中に消えていく。


……今のディエゴには考えてる余裕なんかなくなってしまったが。
『ハッキリ言うぞ――――おまえの考えてるようにはいかない』
そうムーロロに言い放った自分自身にも、まさかこんな展開が待っていたとは。
まったく、なんという皮肉だろうかね。自分の生み出した恐竜が原因という意味ではある意味ムーロロ以上かもしれないな。

そして。その余裕のなさが一つ、決定的なことを見落とした。
『話はまとまった』ってのは、実際には全く『まとまって』いないことを。
ディエゴ自身だけでなく、ムーロロもまた抜き差しならない状況に陥り、そして“ブチ切れた”ことを。

――え、一つじゃないじゃあないかって?まあ、そういうなよ――

133 化身 状態表 ◆yxYaCUyrzc :2019/05/21(火) 22:23:13 ID:WOEZGFfY
【E-3 川沿い / 一日目 真夜中】

【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』+?
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康、なかなかハイ、動揺(小)
[装備]:遺体の左目、地下地図、恐竜化した『オール・アロング・ウォッチタワー』一枚
[道具]:基本支給品×4(一食消費)鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球
    ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2、カイロ警察の拳銃(6/6) 、シュトロハイムの足を断ち切った斧
    ランダム支給品11〜27、全て確認済み
   (ディエゴ、ンドゥ―ル、ウェカピポ、ジョナサン、アダムス、ジョセフ、エリナ、承太郎、花京院、
    犬好きの子供、仗助、徐倫、F・F、アナスイ、ブラックモア、織笠花恵)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰り、得られるものは病気以外ならなんでも得る
1.暴走したセッコに何かしらの対処をせねばヤバイッ!
2.ムーロロを利用して遺体を全て手に入れる
3.ルーシーたちを追う?カーズ討伐同盟のもとに向かう?支給品確認するタイミングはあるのか……?
[備考]
※DIOから部下についての情報を聞きました。ブラフォード、大統領の事は話していません。
※装備とは別に『オール・アロング・ウォッチタワー』のカード(枚数不明)が監視についています。
※ディエゴが本来ルーシーの監視に付けていた恐竜一匹が現在ディエゴの手元にいます。

【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、恐竜化(進行:ディエゴに近づいたためほぼ100%)
[装備]:カメラ(大破して使えない)
[道具]:基本支給品(元はジョニィの所持品)、死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:??
0.暴走状態。喰いたい、作りたい、角砂糖ほしい
1.ルーシーのところへ戻り、甘いのいっぱいもらう……?
2.禁止エリアに引っかからない誰かに変な自分の体、いったいどうなってんだ?
3.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。新しい死体が欲しい
4.吉良吉影をブッ殺す

※ディエゴと接触したためほぼ完全に恐竜化しました。見た目はプテラノドンのようです(空を飛べるかは不明)
 →このため思考力がほとんど低下し、本能のままに自分の欲望を叶えるモノになりました。
※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。
※千帆の事は角砂糖をくれた良いヤツという認識です。ですがセッコなのですぐ忘れるかもしれません。
 DIOのことは完全に忘れ去りました。
 →DIOに与えられた影響は精神の根底に残っています。
  見た目が似たディエゴを見て(プラス恐竜化の思考力低下で)フラッシュバックした……?
※ルーシーから不明な禁止エリアを調べてくるよう頼まれていました。
 それに伴いジョニィの基本支給品一式を譲り受けました。
 ルーシーたちとどこで待ち合わせしているかなどは次回以降の書き手さんにお任せします。
 →セッコ自身が覚えているかどうかは不明です。
 →恐竜化した感覚で匂いをたどって彼らの元へ向かえる、かも?

134 化身 ◆yxYaCUyrzc :2019/05/21(火) 22:25:29 ID:WOEZGFfY
以上で投下終了です。

……SS書くのってこんなに難しかったっけ?w
相変わらずの短い繋ぎ話ではありますが、どんどんキャラ動かしてフラグ立てていければなあと思っております。
5部アニメも盛り上がってますし読み手も書き手も増えてくれると良いですね。

誤字脱字や矛盾点などありましたらご連絡ください。それでは。

135 名無しさんは砕けない :2019/05/22(水) 00:13:26 ID:NMug7uSM
投下乙ゥ!
こういうつなぎ話を着実に書いていける書き手様は尊敬しております
ディエゴの悪のくせして地味に孤立無援&苦労人っぷりに吹いた
セッコをどうやって抑えるのか、そもそも抑えられるのか
場合によってはこのまま他の誰かとの遭遇もありとか
そしてムーロロの言った待ち合わせ場所に行けたとしてもお先真っ暗感にはさすがに同情を禁じ得ないw
本当に先が気になって面白かったです

矛盾点は特にみられませんでした
誰かに見つかるなとかのセッコへの細かい命令についても、思考力が低下しているなら無理はないと思います
…もともとセッコだし

136 名無しさんは砕けない :2019/05/22(水) 01:25:58 ID:pozshcCc
投下乙です!いつもありがとうございます!
セッコ恐竜がプテラノドンでスタンドオアシス・・・もはやモンスターですな!理性的な意味でも
展開・文面的にも問題はないと思います

137 ◆yxYaCUyrzc :2019/05/23(木) 21:00:38 ID:2uWpwF5Q
早々のレスありがとうございます。
ジョジョの敵はたまに小物っぽいところあるから動かしやすくて気に入っておりますw

セッコなのですが、状態表にも以前から書いてあった通り「DIOの事は完全に忘れた」ということになっていたので、
それを否定しちゃっていいものかと悩みもしましたが、何かしら大きなフラグを立てないと過疎が進行していきそうなので思い切って暴走させてしまいました。
個人的にはその辺が矛盾点として指摘されないだろうかと思っておりましたが、おおむね好評のようでありがたい限りです。

もうしばらく皆様のご意見をいただいたらwikiに持っていこうと思います。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

■ したらば のおすすめアイテム ■

嫌な顔されながらおパンツ見せてもらいたい写真集 - 青山 裕企


この欄のアイテムは掲示板管理メニューから自由に変更可能です。


掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板