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仮投下専用スレッド

1 ◆yxYaCUyrzc:2011/11/26(土) 23:11:12 ID:4IkOmoKg
作品は完成したんだけどいきなり本スレに投下できるほど自信がない……
いろんな人の意見を聞いてもっといい作品にしてから改めて本スレに投下したい!

……そんな人のためのスレッドです。
修正用スレ(本投下した作品をwikiに掲載する時の修正箇所の明記するスレ)
転載用スレ(本投下の最中に規制されてしまって以降のパートを投下するスレ)
これらと混同の無いよう注意してご利用ください。


必要だと思って立てました。不要なら削除してください。

951 ◆c.g94qO9.A:2015/08/03(月) 20:37:16 ID:XJAKOqEo
自分の都合上、投下が出来るかどうかわからないんで 少し早いんですが「第三回放送」案① 投下します。

952 ◆c.g94qO9.A:2015/08/03(月) 20:37:55 ID:XJAKOqEo
これより第三回放送を開始する。調子はいかがだろうか、諸君。
ただいまより、禁止エリアと脱落者の発表を行う。
それではまずは禁止エリアから……。メモの準備はよろしいか? それでは……―――

第三回放送の禁止エリアは

 19時より B-2
 21時より E-7
 23時より G-6

19時より B-2。21時より E-7。23時より G-6。以上三ヶ所だ。
続いてこの六時間での脱落者の発表を行う。脱落者は全部で26名……―――

チョコラータ     ホル・ホース
ヌ・ミキタカゾ・ンシ  グイード・ミスタ
ビットリオ・カタルディ ディ・ス・コ
サーレー        虹村形兆
ウィル・A・ツェペリ   ラバーソール
ジャイロ・ツェペリ   モハメド・アヴドゥル
ドルド         川尻しのぶ
ビーティー       タルカス
ペット・ショップ    ヴァニラ・アイス
マッシモ・ヴォルペ   スクアーロ
ブラフォード      F・F
ジョンガリ・A     花京院典明
東方仗助        DIO

以上の26名だ。

さて、賢い君たちは気づいたことだろうが……ついに残りは30名となった。
ゲーム開始当初の五分の一、20%だ。
段々と傷も増え、心は疲弊し、絶望に足が絡め取られてきている参加者もいるのではないかね?

しかし、怯えることはない、参加者諸君。今の時点では、チャンスはまだ、誰にでもある。
闇夜は襲撃を覆ってくれる最大の味方となるだろう。賢く戦うのだ。
そうさなァ……あえて観戦者として助言を与えるとしたならば……カバンをチェックしたまえ。名簿を見よ、地図を見よ!
さすれば与えられんだろう……おおいなる、勝利の約束がね!

今まさに、このバトル・ロワイアルは大きく動こうとしている。
もはや誰も止めることができないい大きなうねりに飲み込まれ、激しく生まれ変わろうとしている。
君たちとまた、こうやって6時間後に無事会えることを願っている。

それでは、また会おう。スティーブン・スティールが放送を担当した。



―――――― ブツリ





953 ◆c.g94qO9.A:2015/08/03(月) 20:38:23 ID:XJAKOqEo




放送を切ると、スティールは顎の下で手を組み直した。目線の先には壁一面に広がる無数のディスプレイ。
埋め込まれた画面にはリアルタイムで参加者たちの動きが中継されている。
青く、妖しい光がスティールを照らす。スティールは熱心に光を見つめている。まるでその青い光をこの手にしようとしているかのように。


「しゃべりすぎだ、スティール」


彼の後頭部に冷たい金属が押し付けられるまでは。


「…………」
「『うねり』『観戦者』『カバンをチェックしろ』『ヒントは名簿と地図』『スティーブン・スティールが放送を担当した』
 どれも自分が部外者であることを示唆した言葉だ。“我々”の計画を大きく狂わせかねない、重大で意図的な過失だ」
「…………」
「慎重な君にしては……、いや、臆病者の君にしてはあまりに投げやりすぎる態度だ。
 一流のプロモーターが聴いて呆れる……。計画をこんな中途半端な形で放り投げるつもりか?」
「…………―――白々しい」
「……なに?」

後頭部に銃を突きつけられたこの状況で……いや、突きつけられたこその、開き直りだろうか。
スティールのなかで芽生えたのは自棄に近いものだった。

「ジョニィ・ジョースター、ディエゴ・ブランドー、ルーシー・スティール……なによりあの『お方』ッ!
 放り投げる? 計画を狂わす? どうせ私の反乱も計算済みだったのだろうッ!
 最初から途中で告げる気だったのだろうッ! 違うかッ?! いまさらとぼけるのは寄せ、ヴァレンタイン大統領ッ!」

怒りのまま振り向こうとしたが、頭に押し付けられた銃を思いだし、冷静さが戻る。
死への恐怖を思い出したのではない。自分の言いたいことも言えずに死ぬ。それだけは嫌だ!
スティールは自らの『納得』のためにほんの一時だけ呼吸を整えた。


「……お前は、いや―――『お前たち』は一体何をしようとしているんだ?」
「…………」


沈黙はたっぷり一分間は続いただろうか。
不意に後頭部に当てられていた感触が消えた。かわりに労いを込めた、柔らかな手が肩に置かれる。

「……少し疲れているのだろう。ここは冷える。部屋に戻って休息をとり給え」

そう言ってヴァレンタインは肩にかけていた上着をスティールの上に『被せた』。



「永遠の休息をね」



そして再びヴァレンタインが上着を持ち上げたとき、そこには埃一つ残っていなかった。

「『D4C(いともたやすく行われるえげつない行為)』……」

ハンカチを取り出すと、座席を払う。ヴァレンタインは空になった椅子に座り、脚を組んだ。消えさった男のことなんぞ、もはや雨粒一つ興味がなかった。
今の彼に興味があるとすれば……ヴァレンタインはディスプレイに映る参加者たちに熱い視線を注いだ。

「空条承太郎、吉良吉影、ジョルノ・ジョバーナ、ジョニィ・ジョースター。そしてわずかながらディエゴ・ブランドー……」

名を挙げながら手元の名簿をなぞっていく。その手つきには愛情といっていいほどの優しさが込められている。

「『適正者』はこれぐらいだろうが……君の意見を聞こうか」

しばらく黙り込んだ後、突然後ろを振り向くとそう呟いた。視界の先には永遠に続くような闇が広がっている。
ヴァレンタインの呟きは反響し、底なしの彼方へと消えていく。
だがヴァレンタインは知っている。
彼がこちらを見ていることを。彼がこちらに耳を澄ませていることを。



「ミスター・ヒロヒコ・アラキ?」



暗闇から姿を表した東洋人の顔には、モナリザのような美しい笑顔が張り付いていた。




【スティーブン・スティール 死亡】

954 ◆c.g94qO9.A:2015/08/03(月) 20:38:39 ID:XJAKOqEo
以上です。

955 ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:05:26 ID:CstgstFE
c.g氏、投下乙です。感想もろもろは全て終わってから改めて。
では私の方も投下させていただきます。

956暴挙 〜第三回放送〜 (仮) ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:06:42 ID:CstgstFE
……君らには何度か『強さ』とは、『勝利』とは、そういった事について語ってきたな。
で、だ。俺自身も完全に失念してたんだ。君らに話すのを。『敗者』について。

――え?あぁ、確かに話したけども。それとはまた少し違うんだよ。
あくまで俺の中での定義とはいえ“どんなやつを敗者と呼ぶか”は確かに話した。だが――だが。

敗者というのは、一度負けたらもうずっと『敗者』で居るしかないのか?
一対一の決闘ならまだしも、ただひとりの勝者に対して大多数の敗北者が出るような事はザラにあるだろう?だというのに?

これに関して君らにふたつの言葉を紹介しよう。
『飲茶視点』と『モトベが強くて何が悪い』
どちらも一度、あるいはそれ以上に敗北を経験したものだが……

――おっと、時間が来たようだ。始まるぞ。さあ、耳をすまして、彼らの声に耳を傾けよう。

957暴挙 〜第三回放送〜 (仮) ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:07:57 ID:CstgstFE
●●●


時刻は18時、日も沈み、闇が顔を出すこの時間に、第三回放送をさせてもらおう。

君たちも気になるであろう情報をまずは開示しようではないか。
さあ、この六時間で命を散らしていった敗者たちの名を心に刻みたまえ。

チョコラータ…… ホル・ホース…… ヌ・ミキタカゾ・ンシ……
グイード・ミスタ…… ビットリオ・カタルディ…… ディ・ス・コ……
サーレー…… 虹村形兆…… ウィル・A・ツェペリ……
ラバーソール…… ジャイロ・ツェペリ…… モハメド・アヴドゥル……
ドルド…… 川尻しのぶ…… ビーティー……
タルカス…… ペット・ショップ…… ヴァニラ・アイス……
マッシモ・ヴォルペ…… スクアーロ…… ブラフォード……
F・F…… ジョンガリ・A…… 花京院典明……
東方仗助…… DIO……


以上、26名が――敗者となった。

さて……今回は早速の情報開示となったので、今、このタイミングで私の話を聞いてもらいたい。

彼らの名を挙げる際、私は彼らのことを『敗者』と呼んだ。『死亡者』ではなく――それが何を意味するのか。

私はかつて……ある大レースのプロモーションをしたことがある。
そのレースも勝者はただのひとり。その他の3851人はリタイアしたものも、死亡したものも、全てが等しく敗者だった……

――それらの世論と私の考えは少し異なる――いいか、よく聞けッ!

真の『敗者』とはッ!
挑戦の心を忘れ!その結果、何者にも“想いを残せなかった者たちの”事をいうのだッ!

先に挙げた名は――確かに死亡した者たちだ。その中に何人の『敗者』が居るのか……私には決めかねる。
ゆえに全員をそう呼んだ。もちろんそうではないことを期待しており……

そして、この私、スティーブン・スティールは絶対にこのゲームの『敗者』にならないことを此処に宣言するッ!

この殺戮の舞台に渦巻く意思、戦い、犠牲、そして勝者たちを纏め上げ――


全てを己の手中に収めようとせんアメリカ合衆国大統領、ファニー・ヴァレンタインを打ち倒すために皆の

958暴挙 〜第三回放送〜 (仮) ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:08:48 ID:CstgstFE
●●●


たった今――カエルをひっぱたいたような音を立てたのは、ついさっきまで喋っていたスティーブン・スティールの頭だ。私の横で潰れている。


さて――紹介に預かった、ファニー・ヴァレンタインだ。
こんなタイミングで諸君に私の存在を明かすことになったのはいささか不本意ではあるが、仕方あるまい。
すでに我々と接触した参加者もいることだし、いずれこうなることは分かっていた。とも言える。

先のスティーブンのセリフだが……確かにそうだ。こんな大々的に皆に思いを伝えて死んでいったのだ。
彼を敗者と呼ぶべきではない。とても良い死に方をしたといって良いだろう。

そして同時に私の立場を著しく危険なものに変えた彼を私は許しはしなかった。ゆえに私が自ら手を下したのだ。


それから。


私の立場が危うくなったように、君らにもこの6時間は危険な綱渡りをしてもらおう。


次回の放送までの6時間で設定される禁止エリアを明かさないことにする。


いや――厳密に言うなら、私も知らないのだ。
実は、この放送は『禁止エリア設定と承認』をスイッチの一部に組み込んであってな……ゆえに禁止エリアが発生しない放送というものは存在しない。放送できないのだ。
そして、それを一手にになっていたのがスティーブン・スティールだったというわけだ。
無論、調べればすぐにわかる。だがそれはこの放送が終わってから一人でゆっくりとさせてもらおう。

今から1時間後、3時間後、5時間後の3箇所。確実に作動はする。スティールのこと、意味のない位置を設定することはしなかったろうが――
6時間後の放送で“事後報告”をさせて頂く、とだけ伝えておこう。


次回の放送には誰か代役を考えておく。楽しみにしていたまえ。


【主催者:スティーブン・スティール 死亡】

959暴挙 〜第三回放送〜 (仮) ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:09:29 ID:CstgstFE
●●●


――いやぁ、まさかこんなことになるとは思っていなかった。君らに話そうと思っていたことをまんま彼らが話すとは。

そう。敗者と一口に言ってもだ。要は『負け方』こそが重要だと。そういうこと。

先に挙げた二つの言葉に話題を戻すけど……
一度敗北を味わった自分に限界を見つけてしまい、強さのインフレについていけなくなったもの。
たった一度の敗北に甘んじることなく自分の強さを大勢に、強烈に印象づけることができたもの。
前者は“想いを伝えられなかった”ものだし、後者は“伝えられた”ものだと俺は解釈している。

いや待てよ――想いを伝えるだとかいう表現だと少々語弊があるか?
要は『みんな見ろよ、俺はこの場にしっかりと立っていたんだぞ』と言えない奴が敗者だということ。かな。


さて、この放送で名の上がった者たち、無論主催者たちを含め、という意味だが。
一体何人の『敗北者』がいただろうな?……君らも考えてみてくれよ。


しかしなんだな。この話は放送のタイミングではないところでしておきたかった。
だって、俺が彼に話したこと、一言一句おんなじように言うんだもん。自分のセリフのように。悔しいったらありゃしない――

960暴挙 〜第三回放送〜 (仮) ◆yxYaCUyrzc:2015/08/04(火) 04:11:05 ID:CstgstFE
以上で投下終了です。

タイトルの『暴挙』は、放送で全てを暴露しようとしたスティーブン。それを始末し、自ら名乗りを上げた大統領。
そして――禁止エリアの設定をぶん投げた私自身の三者にかけてありますw

もちろんこの『エリア設定無視』は議論の対象になるでしょう。投票するまでもなく反則だとなれば素直に身を引かせていただきます。
・・・が、まさか主催者が死亡するネタがかぶるとは思いませんでしたなあw

諸事情で数日感PCを触れなくなるのですが、皆様のご意見、お待ちしております。

961葛藤 その1 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:48:26 ID:6nNkAgf.
さて、君らに質問するのは何度目になるかな――おいおい、聞く前からそういう顔をするなよな。
とにかく聞くぞ?今回の問題は……

『君らは何かに“迷った”ことはあるか?』だ。

――え?「今この答えになんて言うか迷ってる」?
それは違うだろ。俺に言わせるなら、それは“悩んでる”んだ。
答えが全くないところから導き出す『悩む』と、
いくつかの答えがあり、そこから選択する『迷う』じゃあ、結構違うと思うぞ、俺は。

ま、とにかく今回はそういう話だ。迷わずに聞いていってくれると幸いだな。
もう一つ聞いておきたいこともあるが――まあ、それは後にしようか。


●●●


「まったく――いつまでそうしているんだ?」
指をこちらに突きつけたまま動かないジョニィに対しため息混じりにそう呟いた。

「お前を倒すその瞬間まで、だ」
瞳に映る漆黒は『倒す』よりむしろ『殺す』と、そう言っている。しかし――

「だったら早く撃てばいいじゃあないか。
 このDioを殺して上の戦いに加勢するんだろう?
 ジョナサン・ジョースター。
 ジョセフ・ジョースター。
 クウジョー・ジョータロー。
 トウホウ・ジョージョ――ん?ヒガシカタ・ジョースケだったか?ククク……
 ジョルノ・ジョバァーナ。
 クウジョー・ジョリーン。
 どいつもお前と同じじゃあないか。なあ?『ジョジョ』ォッ?」

「僕のことをその渾名で呼ぶんじゃあない。
 大体、お前が黙って撃たれるとも思ってないからな……」

安い挑発には乗らないか。まあ知ったことではない。そして今のやりとりでハッキリと理解したことがある。
『コイツは“今すぐに”撃つ気はないらしい』。

「ほう――それは褒め言葉として受け取っておこうか。だったらオレは、その“信用”を逆手にとって、少しノンビリさせてもらおう。
 ここでお前と戦っても負ける気はないが、そのせいで直に始まる放送を聞き逃しちゃあたまらないからな。
 上での戦いの決着、オレは放送を介して知るとしよう」
そう言ってワザとらしく伸びをしてみせる。ジョニィの警戒の眼差しは変わらないが、指先が少しだけ下を向いたのを見逃す俺ではない。

「悔しいが、放送を聞き逃したくないのは僕も同じだ。
 だが、そう言って隙を見せるフリをするのもいいが、狙われてることを忘れるなよ」

「ああ、肝に銘じておくとしよう」


●●●

962葛藤 その2 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:49:40 ID:6nNkAgf.
オイ――

「ホウ、どうやら決着はジョースター一行の勝利だったようだな。おめでとう。なぁジョジョ――っと、この渾名はタブーだったか?フフ」

オイオイ――

「しかし驚いたな。いや、これはマジだ。貴様がジャイロ・ツェペリの死に全く動揺を表さないとは」

オイオイオイ――

「もっとも、問題なのは禁止エリアか。こればっかりはこのDioもお手上げだな。さてどうしたものか」

オイオイオイオイ――

「なんとか言ったらどうだ?指先がすっかり見当違いの方を向いているぞ?ジョニィ?」

……――

「貴様が動かないならこちらから動くとしようか、どれ」

「――動くんじゃあない。動いた瞬間に撃つ」
やっと絞り出すことができた一言は随分と在り来りなセリフになってしまった。

「おっと、やっと整理がついたかい?それにしちゃあ、随分間抜けな顔をしているぞ、ジョ――」
「ジャイロの死は僕がこの目で確かめた。そしてその『意思』は今僕のこの手の中にある。
 そして、お前こそ『ディオ』の死に驚いてないようだ。最初からこうなることがわかってたんじゃあないのか?」
「まさか。そんな訳ないだろう?さっき言ったとおり、オレはお呼びじゃあなかった。だからその先は知ったこっちゃあないのさ」

短い会話の中でもチラチラと視界に入るディエゴの牙がワザとらしい。
だがそれを気にしている場合じゃあない。問いたださなければならないことがある。
「それからもう一つ……お前はさっき『放送を待つ』と言ったな?
 それは“こうなること”を知っていたのか?」

……ディエゴはこれまたワザとらしく大きなため息をついた。
「スティール氏が殺されて大統領が表舞台に顔を出したことについて言ってるのか?それこそまさか、だ。
 ま、オレに言わせれば遅かれ早かれ“こうなること”は目に見えていたってところだな」

たしかに大統領ならやりかねない。しかしそれを放送の場で、つまり自分自身を危険にさらすような真似をしたことになる。
それが何を意味するのか、ディエゴを警戒しつつも頭の中で考えがぐるぐるとループする。

「ともあれ、だ。こうなった以上オレにはこの場にいる理由がなくなった。
 もし貴様がオレを撃つ気がないのなら――いや、いずれにしてもと言うべきか。サッサとしてくれ。
 オレには『行って、確かめるべきこと』が出来たもんでな」

思考を遮ったのはそんなディエゴの一言だった。
今コイツは何と言った?確かめる?まるで明確な目的地があるかのような言い方だ。

「どういう――意味だ?」


●●●

963葛藤 その3 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:50:22 ID:6nNkAgf.
たまらずジョニィのやつが質問してきた。そりゃあそうだろう。
オレが自分からその考えを話そうとしていること、その意図が分かりかねると言った感じだ。
もちろん、文字通りにその考えそのものを知りたいということもあるだろうが。

手札を切るべきは今、このタイミングだ。間違ったらこのオレとてただではすまない。無論、負けはしないが。

「聖人の遺体」

たった一言、というより単語一つ口にしただけでジョニィが思い切り目を細める。実にわかりやすい。

「おっと――その前にその物騒な爪の回転を止めてくれないかい?
 せっかくこのDioが今回の放送を踏まえての考察を話してやろうと言うんだ。対等な状態での会話をしたいもんだな。
 もちろん恐竜たちに襲わせるような真似はしない。もっとも、この場にはさっきお前が撃ち殺した以外の恐竜はいないが」

ジョニィは顔を動かさず視線だけで左右を確認し、ゆっくりと手を下ろす。
「話を聞く間だけだ。聞き終わったらその瞬間襲ってくるような真似をお前はやりかねないからな」

「フン――どう思おうと勝手だが、そのピリピリの警戒心でマトモな思考ができるものか。
 まあいい。話してやろう。

 聖人の遺体。さっき俺はそう言ったな?
 どうも『上で戦ってた方のDIO』はそれを“この会場内で見つけた”らしいぞ?
 そしてこう言ったのさ。
 
 『あえて助言を与えるとしたならば……カバンをチェックしたまえ。名簿を見よ、地図を見よ!
  さすれば与えられんだろう……おおいなる、勝利の約束がね!』

 ……とな。そこで俺はピンときた。
 主催者は――いや、大統領はと言うべきか。奴は聖人の遺体を支給品に紛れ込ませている、と」

反論やら何やらを挟ませず一息に言い切り、ジョニィを見下ろす。
立ったままのジョニィを座っているオレが見下ろすというのも妙な表現ではあるが、この場ではオレが『上』だ。
無論、自分が今『左目』を持っていることなど言うわけがない。言う必要がない。

「つまり、大統領はこの殺し合いを介して聖人の遺体を参加者に集めさせている」
ジョニィの顔にじわりと汗が浮き出すのがよくわかる。しかし――

「ハズレだマヌケ……いや、半分は正解という方が正しいかなァ?
 お前ほどの男ならすぐに気付くと思ったぞ。もっと根本的なことに。
 もう一度言うぞ。大統領は聖人の遺体を支給品に紛れ込ませている。
 
 つまり――

 奴は『一度全ての部位を集めきり』、そして『もう一度それをバラバラにして』支給品にした。

 ――そういうことだろう?まさかこのゲームを始めたら勝手に混じってましたなんて事はあるまい?
 スティーブンのやつにできる芸当だとも思えない。話が逸れるが、スティーブンが消されたのも、そういった部分を知りすぎたということも要因じゃあないかと思う」

964葛藤 その4 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:50:49 ID:6nNkAgf.
細められたジョニィの目が今度は大きく見開かれる。オイオイ、マジで気付かなかったのか。
まあ、オレ自身もこの推測に至ったときは自分で自分の考えに冷や汗をかいたものだが……

「か、可能性の一つでしかないッ!なにより大統領の意図が読めないッ!
 そして……それがお前の『行って確かめる』に繋がるとは思えない!
 僕相手に交渉したかったらもっとハッキリ言ったらどうだ!?」

「フン、ハッキリ言ったら言ったで何かと疑うだろう、貴様らは。
 そして大統領の意図なんかオレにだってわかるものか。そんなものは本人に聞け。しかしせっかくだから言ってやろう。

 『ルーシー・スティールの身柄を確保している』

 安全は保証してある、何しろ恐竜というボディーガードがついているんだからな」

ジョニィがハッとしたように腕を持ち上げ、再びオレに指先を向ける。
爪は……まだ回転していない、か。
「ルーシーだと……?
 スティール氏が殺された現状、彼女に向けられる視線と攻撃はどうなるんだ?まさかお前の恐竜が守るとは僕には思えない」

「話は最後まで聞くんだな。
 たしかに俺の可愛いペットたちを危機に晒してまで敵の攻撃からルーシー・スティールを守る気はないさ。
 だが――みすみす死なすのも勿体無い。お前がどこまで知ってるかは疑問だが、彼女は一度は遺体に見初められた存在だからな」
話をやや深いところまでシフトさせる。言いすぎたなどとは思っていない。
ここまでくればジョニィのヤツは勝手に俺の言い分を推測し、それを口にしてくる。

「遺体が彼女のもとに集まると言いたいのか」

まったく――まったくもって予想通りの回答だ。

「好きに解釈してくれて結構だが、ここから先は貴様の決断だ。
 このまま放っておけばルーシーは死ぬだろう。敵の攻撃はともかく、少なくとも禁止エリアの危険が(ま、これは参加者全員だが)ある。つまり何が言いたいかというと……

 お前が合流すべきは、

 『上でディオとの戦いを終え、満身創痍にしてるジョースターの連中』なのか。

 それとも、

 『このディオの下にいて、危険にその身を晒すルーシー・スティール』なのか。

 ……さあ、どうする、ジョニィ・ジョースター?」


●●●

965葛藤 その5 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:51:22 ID:6nNkAgf.
さて。ここで君らにもう一つ質問しよう――まあ、この話を聞いてる以上はわかると思うけど。

『迷ったとき、君達なら一体どうするか?』

結論から言うと――ジョニィ・ジョースターはディエゴ・ブランドーを撃たなかった。撃てなかった訳ではないのに。

つまりはそういうことさ。ジョニィの精神の――心の中には一つのルールがある。

『迷ったら、撃つな』
それこそ遺体である“お方”から直々に言われたんだ。守らなきゃあバチが当たるってもんだ。

あの瞬間、間違いなくジョニィの心は迷った。ゆえに撃たなかった。
そして現在――ジョニィはディエゴの後を付いて地下のある場所を歩いている。
余裕綽々で無防備な背中を晒すディエゴも流石だが、これはやはり彼なりの確信があるんだろう。

だが戦況とは刻一刻、というより一瞬先には状況が180度ひっくり返ってることだってある。
つまり――この先、ルーシーと合流したら、あるいはそれ以前だろうと。どこでジョニィの迷いがなくなるかは誰にもわからないってことさ。


ちなみに――俺は迷ったら、迷いながらも前に進もうとするだろう。結果として失敗することや後悔することばかりだけどな。
迷った時に『進む』でも『来た道を戻る』でもなく『立ち止まる』選択ができる人たちが羨ましいよ、本当。

――え?聞いてない?あ、そう……

966葛藤 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:51:49 ID:6nNkAgf.
【D-3 南西部(地下) → ??? / 1日目 夜(放送数十分後)】

【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1 → Act2 → ???
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(ほぼ回復)、困惑&驚愕、ディエゴに対する疑念
[装備]:ジャイロのベルトのバックル
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロの無念を――
0.ディエゴに同行、ルーシー・スティールと合流する
1.しかしディエゴは信用できない。同行は監視を兼ねたもの、迷いが晴れたら撃つ――?
2.ジャイロ……すまない。 バックル、貸してくれ
  そして放送、一体今どうなってるんだ!?
3.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
4.ジョナサン!?僕の本名と同じだ。僕と彼との関係は?
[備考]
1.Act3が使用可能かどうかは次の書き手さんにお任せします。
2.また、ジョルノの蛍から目を離したのでAct2の使用がやや困難かもしれません
  (抜け目なく蛍を確保しているのか、ディエゴの恐竜を見るのか、または……?以降の書き手さんにお任せします)
3.空条邸にてジャイロの死体を確認。そこからベルトのバックルを入手しました。


【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』+?
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康、自論(仮説)に自分で驚愕
[装備]:遺体の左目、地下地図
[道具]:基本支給品×4(一食消費)鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球
    ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2
    カイロ警察の拳銃(6/6) 、シュトロハイムの足を断ち切った斧
    ランダム支給品11〜27、全て確認済み
   (ディエゴ、ンドゥ―ル、ウェカピポ、ジョナサン、アダムス、ジョセフ、エリナ、承太郎、花京院、犬好きの子供、仗助、徐倫、F・F、アナスイ、ブラックモア、織笠花恵)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰り、得られるものは病気以外ならなんでも得る
0.ジョニィを言葉でねじ伏せたぞ、ククク……
1.ルーシー・スティールのところに行き、遺体の情報、その真相を確認
  放送の件も含めてルーシーから情報を聞き出す。たとえ拷問してでも
2.なぜかわからんがDIOには心底嫌悪を感じた、特に遺体なんて絶対渡したくなかった。死んでくれてなによりだ
[備考]
1.ルーシーには監視役の恐竜を付けて別行動中です。居場所は(何事もなければ)常に把握しています。
  (※ジョニィをまっすぐルーシーのもとに連れて行くとは言っていない)
2.DIOから部下についての情報を聞きました。ブラフォード、大統領の事は話していません。
3.協会地下に散乱していた支給品は全てディエゴが『奪い』ジョニィは自分の持っていた道具以外何も手にしていません。


[二人の備考]
・現在、ディエゴが場所を知っているというルーシー・スティールのもとにたどり着くため地下通路を移動中です。
 移動経路、合流場所等はのちの書き手さんにお任せします。
・とは言っても、お互いがお互いを信用している訳ではないので、いつ崩れるかわからない同盟関係です。
・二人が立ち去ったことは教会で戦っていたジョースター一行には気づかれていないようです。少なくとも二人は伝言や書置きなどを残してはいません。

967葛藤  ◆yxYaCUyrzc:2015/10/14(水) 19:52:09 ID:6nNkAgf.
以上で仮投下終了です。
◆HAS氏が遺体について多少の言及をするそうなので、それを踏まえ先に私の投下とさせていただきました。
私のSSにもチラッと遺体の話題が出てきましたが、いかがでしょうか。
そのへんの内容、あるいは作中の矛盾等等、ご意見、ご指摘ありましたらコメントください。お待ちしております。

968 ◆HAShplmU36:2015/10/15(木) 14:04:55 ID:SZ2KNnHA
仮投下乙です。
また、こちらの話へのお気遣もいいただきましてありがとうございます。
遺体の描写については特に矛盾もなく、むしろよりスムーズに繋がりそうですので問題ありません。さすがです。
こちらのルーシーはもう少し時間が進んでいますが、まさかジョニィとディエゴが連れ立って行動するとは思わなかったので
その辺を踏まえた描写を加筆したのち仮投下させていただきます。
散らばりまくった支給品をディエゴは一体どうやって奪ったのか。いちいち拾ってる間ジョニイが黙って見てたとしたら
それはそれで面白いですねw

969名無しさんは砕けない:2015/10/15(木) 23:02:55 ID:wMj8v57c
久々の投下だけど、めちゃくちゃ面白かった
やっぱ投下があるというのはいいなあ

970 ◆yxYaCUyrzc:2015/10/16(金) 22:59:18 ID:mhh421zU
ご意見ありがとうございます。
支給品のくだりは「余裕綽々で背中を見せる」に繋いでいただければ・・・w
もう少し皆様のご意見やご指摘を待った後に本投下させていただこうと思います。

971名無しさんは砕けない:2015/10/17(土) 14:48:01 ID:e4hFQyiM
ジョニィアカーン!完全に術中に嵌まってるー!
まあ感想は本スレにとっておくとして、特に矛盾などはないと思います。
誤字で>>966のディエゴの状態表の備考3のところで「教会」が「協会」になってます

972ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:23:53 ID:EHvDMBUc

ベッドの上で聞いたその結末に少女は泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、やがて泣き疲れて少しだけ眠り―――――




――――――……そして目を開けた。



◆ ◆ ◆



「え〜DIO死んじまったのか〜」
「お? DIOなんかシラネって感じですぐ興味なくすと思ってたけど案外未練あるんだな」
「おれDIOんトコ戻ったらもっかい死体集めて、でーっかい作品作りたかったんだよう。それにDIOは頭イイし、色々教えてほしかったんだよなあ」
「……」
「なら次はここから近いDIOの館ってとこに行ってみるか。お前の興味を引くものもあるかもしれんぜ」
「死体?」
「あるかもな」
「角砂糖は?」
「たぶん台所には」
「ならいこーぜ!」
「……」
「お前もいいだろ? ああ別にここで別れてもいいんだぜ、妹ちゃんを確実に探し出せるのも監視できるのも俺だけだろうがな」
「……」
「んじゃ決定な」



三人の男たちは西を目指す。



◆ ◆ ◆

973ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:24:48 ID:EHvDMBUc
どうやら眠ってしまっていたようだ。トリッシュは顔にかかった数本の髪を手で払うと傍らに置いていた時計を見て、反射的に飛び起きた。

「もう18時を過ぎちゃってるじゃない!! 放送は? どうなったの!?」
「安心しなよ、俺も玉美もちゃんと聞いてる。トリッシュこそ起きて大丈夫なのか?」
「私ならもう大丈夫よ。それより放送は……」

こちらに、と放送内容の書かれた紙をうやうやしく差し出してくる玉美。さっと目を通そうとして―――4人目の名前に視線が強張る。

(ミスタ……何てこと……)

ショックだった。あまりにも生々しいショックが身体を貫き、トリッシュは再びソファに沈み込んだ。

(彼がいつの時間から連れてこられたのか、私と同じ世界の彼だったのか、わからない……わからないけど)

誤解を恐れずに言うならばアバッキオやブチャラティは既に死んでいる人物で、ブチャラティとの再会と別離は神様が与えてくれた奇跡とでも
美しく飾る事だってできる。だがミスタは他の二人と違う、トリッシュと同じ『今』を生きている人物だったのだ。明日会いに行こうと思えば会えるはずの
人間がいつの間にか死んでしまった。もう会えない、声も聞けないのだ。トリッシュにとっては三度目の仲間との永遠の別れ。慣れる訳が、ない。

「早く読みなよ、続き」

ナランチャが硬い表情で促してくる。
急いで読み進めようとしてミスタの名前以降の筆跡が違う事に気付いた。きっと最初はナランチャが、続きは玉美が書いたのだろう。
そうだった、彼はまだここに集められた人たちの時間や時空の差異を理解しきっている訳ではない。自分以上にショックを受けていてもおかしくないだろうに
取り乱しもせず、ただぎゅっと引き締められた口元が余計痛々しい。
幸いミスタ以外の知り合いは名を呼ばれてはいなかったが、その代わりにスティーブン・スティールの死とファニー・ヴァレンタイン大統領の存在。
更に次の放送までの禁止区域が発表されなかったことと合わせて、衝撃に次ぐ衝撃に別の意味でくらくらしてくる。


「……どうでもいいんだ」
「え?」
「死んだジジイも、大統領ってやつも俺にはどうでもいいんだ」

ナランチャは俯き気味に、自らに言い聞かせるように言葉を噛みしめてゆく。

974ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:25:37 ID:EHvDMBUc
「いきなりこんな変な所に連れてこられて、いろんな奴らが現れてはどっかに消えちまって、未来だとか過去だとかもう訳わかんないことだらけでさ……
 ハハッ、俺今、本当は不安で一杯なんだ。身体のどこかしこがブルっちまってる」

気持ちを吐きだした直後、ナランチャは意を決したようにトリッシュの手を取って立ち上がらせ、そのまま視線を真っ直ぐぶつけてくる。
弱気な言葉とは裏腹に両の腕を掴んでいる手のひらは熱く、震えてはいなかった。 

「俺頭悪りぃから一体何がどうなってるのかさっぱりわかんねえけど、今やらなくちゃいけない事は知ってる。
 俺の任務はトリッシュ、君を守ることなんだ」

ともすれば年下の悪ガキくらいにしか思えなかったナランチャがギャングの、男の顔をしていた。ほんの少し自分より高い目線に、
自分より背が高かったのだとトリッシュは初めて意識した。

「これでチームの中で生き残ってるのは俺とフーゴとジョルノ。今トリッシュの傍には(玉美もいるけど)俺しかいない。
 ブチャラティ程頼りにならないかもしれないけどさ、少しは頼りに、てか信頼して欲しいんだ。だから……今度こそ教えてくれよ。
 俺の知らない事、フーゴとトリッシュが隠してたこと、全部さ」

ナランチャは決して愚鈍な少年ではない。分かりやすく言葉にする術を持たなかっただけで、仲間が自分に隠し事をしていたことも、
自分への態度にぎこちないものがあることも感じていたのだ。もしかしたらその僅かな違和感が疎外感に変わり、彼を弱気にさせてしまったのかもしれない。
ナランチャが本来辿るはずだった結末を受け止めきれるのか計りかねて口を閉ざしていたが、今の彼ならもうその必要はなさそうだ。
フーゴもきっとそう言ってくれるだろう。

「ありがとうナランチャ、あなたの事は信頼してるし隠し事をしていたことも謝るわ。でも私どちらかというと、
 守られるよりも仲間として一緒に戦いたい気分なのよね。それでよければ……改めてよろしく」
「トリッシュ……」
「はーいはいはい! ちょっと通りますよー!!」


サラリーマンよろしく手刀を振り回しながら二人を引き離しにかかった玉美。身体が自由になったトリッシュのヒールが顔面に沈み込んでも
ヘコたれずナランチャに食って掛かる。

「てめー放送んときメッチャ落ち込んでたから人がせっかく気ぃきかせて黙っててやったのとゆーのに、
 さっそくトリッシュ様にベタベタしてんじゃねーよこのボケガキが!!」
「何だとこのクソチビ野郎! おめーなんかに気を使われなくたって俺はいつでもバッチリハイテンションだっつーの!!」
「ハン! トリッシュ様が起きるまでぽけーっと口開きっぱなしでブルってたくせに!」
「言ったなこの野郎ー!」

(この二人……意外とかみ合ってるのかしら)


それはそれで頭が痛いのだが、とりあえず取っ組み合いを始める前にナランチャに説明だけはしないといけない。
少しだけ考えたトリッシュは玉美をスタンドで殴って柔らかくしカーペットで簀巻きにして転がすと、見てはいけないものを見てしまった顔のナランチャに
手短に事情を話したのであった。



◆ ◆ ◆

975ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:26:33 ID:EHvDMBUc
――――――トリッシュ達と時を同じくして



『至急帰還しろ』という事だったが、ジョースターご一行より早く到着しろとは言われていなかったので少しばかり遠回りしながら
急いでいたムーロロの元に届いたDIOからの最後の指令は『ジョースター共が到着したようだ。奴等を片付けるまで教会に近づくな』だった。
異論はあるだろうが、ある意味ムーロロは最後までDIOに忠実に従ったと言えるだろう。DIOに預けていたジョーカーも
サン・ジョルジョマジョーレ教会内で途中まで戦闘の様子を中継していた。建物が倒壊する直前に手元に退避させたので
結末は放送で知る事となったが、あの場にいた約半数が死んだ事実も特にムーロロの心を動かしはしなかった。
むしろ生き残りの人数と面子を考えると依然油断はできないというのが結論だ。

(DIOが消えたのは相当大きいが、まだカーズ、ワムウが残っている。ジョースターの内一人しか道連れにできなかったってのも痛いな。
 そろそろ俺も本腰入れて主体的に動かないとヤバい頃合いだ、遺体の検証と、まずは現状の把握もしたいとこだが……)

館に辿り着いてから一階をざっと探索し終え、ムーロロと琢馬の二人は二階へ上がる階段の前に立っていた。
ここに来ることを提案したのはDIOに未練を残すセッコを駒として引き留めておくためでもあり、一度落ち着いて体制を整えるためでもあった。
琢馬は妹の事がよっぽど堪えたらしく、あれから一言も口を利かなくなってしまった。使い物にならないなら捨てるか処分するのがセオリーだが、
千帆が生きている限りは多少のリスクを負ってでも手駒に加えておく方がマシだと判断して、アヌビス神も持たせたままにしてある。

(面倒だが、落ち着く前に掃除が必要なようだ)

一度来た場所だし血なまぐさい戦闘の痕跡が残る場所などに腰を落ち着ける輩などいないと踏んでいたのだが、どうやら物好きな奴、
いや獣が二階のギャラリー一帯を陣取っているらしい。
抱えた亀にそこらで千切った葉っぱを与えながらのんびり待っていると場違いな声が響き渡る。

「おいスゲ〜〜ぜ恐竜がいた!! 」

柱の中を通って偵察に行っていたセッコが戻って来るなり突拍子もないことを言い出したのだ。

「恐竜ねえ。何匹いた?」
「でっかいのが二匹だ。あんなん噛まれたらマジ一発だぜ!」

言いながらもなんだか嬉しそうな顔をしている。念の為ウオッチタワーも一枚忍び込ませていたが、間違いないようだ。
さらにセッコは気付いていないが、恐竜たちは好き勝手に動いている訳ではなく、あるドアを守るようにのろのろと往復している。
恐竜を使うのはディエゴ・ブランドーだが、奴はDIOの傍にいたはず。教会から離れる理由があるとしたら遺体絡み。
遺体は場合によっては人体に取り込まれる。琢馬もそうだ。なら遺体を取り込んだ人物を戦闘に巻き込まぬよう移動させたのだろう。
おそらくドアの奥にいるのは――――

976ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:27:40 ID:EHvDMBUc
「あれブッ倒すのかムー……お? ムーロロどこ行った?」









世界は滑らかに一変する









(ドアの奥にいるのは―――――――――…………)


瞬きすらしていなかった。ただ思考を内側へと向けた刹那、ムーロロがいたはずの固い廊下は毛足の長い絨毯に、
目の前の階段は天蓋付きのベッドに変わっていた。あまりにも自然に変わる世界に思考が追いつかない。

「ここは……どこだ……」

それが軽率な事だと気付いた時にはもう、ベッドを挟んで奥側の端に腰かけた誰とも知れぬ少女に声を掛けてしまっていた。


「怖がらなくても大丈夫よ、私にも経験があるわ」

暗がりの中、こちらに背を向けたまま優しい声色で返してくる。
怖がってなどいるものか。と憤慨しかけて我に返り、素早く周囲を見渡す。壁の質感や内装からいってここはまだ館の中。
更に扉の向こう側から聞こえる重々しい足音も合わせると間違いない、恐竜に守られたあの扉の内側に自分はいるのだ。

「遺体は遺体と引き合おうとしているの……あなた達がこの館に向かっていた時から『感じていた』」

少女はおもむろに立ち上がると窓の方へ向かい、カーテンを開けた。
差し込む月明かりに照らされた腹部は若い身体には不釣り合いに大きく緩やかな弧を描き、どこか背徳的な淫靡ささえ感じさせる。

「遺体の全てを得るのに最もふさわしいのは私。大統領でも、他の誰でもない……私」

「ルーシー・スティール……」

ゆっくりとこちらを振り向いた少女の視線がムーロロを捕えた。
唇をうっすらと開いた表情はルノワールの描く少女のように可憐で、フェルメールのように神秘的で……
ムーロロは微笑んでいるようにも見えるルーシーの瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚えながらも、その奥についぞ感情を見つける事が出来なかった。



◆ ◆ ◆

977ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:29:09 ID:EHvDMBUc
なるべくナランチャの頭から湯気が出てこないように易しい言葉を選んで話したつもりだが、チームのメンバーがそれぞれ別の時間から
連れてこられたこと、少なくともトリッシュの認識ではアバッキオだけでなくブチャラティ、そしてナランチャはボスとの戦いで命を落としている事を
納得してもらうのは何とも骨の折れる手間で、フーゴの気持ちが痛いほど理解できた。

「じゃあ俺は別に幽霊って訳じゃないんだよな。んで、大統領をぶっ殺したら全部元に戻るし俺はサルディニアに戻ると。
 こっちじゃボスが死んでるけどあっちでは死んでないからまた戦わなくちゃいけないってのは面倒だよな……うんうん」

自分の言葉だけで喋っているのでかなり分かり辛いが、内容は何とか詰め込むことに成功した模様だ。
独特の理解の仕方をしているような気がしなくもないがトリッシュはとりあえずこれで良しとすることにした。

「トリッシュ様、さすがにそろそろ移動した方がいいですぜ。19時まであまりありやせんし」
「禁止区域のことよね。でも、こればかりはどこにいたって変わらないんじゃない? 運を天に任せるより無いわ」
「それについて、あっしに考えがありやす。とりあえずついて来て下さいませ」

もう敬語についてツッコむ気は無いが、玉美が珍しくマトモな事を言いだした。確かにトリッシュ自身禁止区域への対処方なんて
考えもしなかったのは事実なので物は試しとついて行ってみる。



「で、あと5分もないけどこれで助かるの?」
「少なくとも被害は最小限に済みますよ。ほら、地図を見て下せえ」

やって来たのはとある交差点。少し歪んでいるので正確に東西南北に分かれている訳ではないが、地図と照らし合わせると
E-4・E-5・F-4・F-5、四つのエリアの丁度境目にあたる。三人は今、道で分けられたエリアにそれぞれ一人づつ立っていた。

E-4にはトリッシュ。
「なるほど、これなら万が一爆発しても犠牲はひとりで済むって訳ね。考えたじゃない」

E-5には玉美。
「ト……トリッシュ様からお褒めのお言葉! 玉美もう死んでもイイ!!」

F-4にはナランチャ。
「げ、気持ち悪ぃなーお前が爆発すりゃいいのに」

また口ゲンカが始まったが、トリッシュも止めに入らない。実際三人とも内心気が気ではないのだから。そうこうしている内に残り10秒を切った。
もうできる事は両手を合わせて祈ることだけだ。静寂の中トリッシュはギュッと目を閉じて全員の無事を祈る。

978ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:30:07 ID:EHvDMBUc
「9、8、7……」
「6、5……」

(4、3、2、1………………0!)





『禁止区域にくせ――ゴミはいらねェ――スからねェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜どーにか処理しねーとよォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ』


「あ!? あわっ、あわっ、アワワ〜〜〜〜〜!!」

首輪からメッセージが響き渡り、玉美は慌ててトリッシュの方へと猛烈な勢いでダッシュする。
すると道を越えた辺りで繰り返されていた音声がぷつりと止まり、さらに勢い余った玉美が建物の壁に勢いよくぶつかった音が響き渡った後
再び辺りはしんと静まり返る。ようやく緊張から解き放たれたナランチャも急いで駆け寄ってきた。

「おい大丈夫かよ玉美! トリッシュもさあ、こういう時くらい避けずに黙って受け止めてやっても罰は当たらないんじゃないかと思うんだけど」
「だ、だって思いきり私の胸を目指してたから……それより今のってもしかして、禁止エリアに入ってもすぐには爆発しないの?」
「そういう事になりヤフね……ガクッ」

これは大きな収穫だ。これなら禁止エリアが設定される時刻毎にエリアの境界上に立ってさえいれば簡単に避けられる。
けれども良い事ばかりじゃない、と地図のE-5に大きく×をしながらナランチャが言った。

「地下に入ったらどこが境目かわかんなくなるじゃん。あと5時間は移動できる場所が地上だけ。半分になっちまったってことだぜ」
「確かに地下道で迷ってしまう可能性も考えたら地上にいるのが無難かもしれないわ。大統領が禁止区域を秘密にしたのは
 殺すためというより私達の行動範囲を抑制して出会いやすくする、なんて目論見だったりしたのかもしれないわね」
「いーや、あの野郎単純に俺らを馬鹿にしてスカッとしたかっただけだと思いやすよ」
「そうなのか? まあ怒ってはいたけど馬鹿丁寧だったし、い……インキンプレーな奴としか思わなかったけどなあ」
「慇懃無礼だろ、ホントお前って低能だよなー。いやド低能か」
「んだと玉美〜お前ちょっといいアイデア出したからって調子こいてんじゃねーぞ!」

979ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:30:54 ID:EHvDMBUc
またまた何やら始まった。怒鳴りつけようかとも思ったが、爆発の恐怖から解放された安心感から余裕の出てきたトリッシュは
少しばかり微笑ましいとさえ思いながら見守ることにした。

「はっ、嫉妬かよ。まあ俺はトリッシュ様の為に何度も命を張ってるし? お前より断然トリッシュ様の護衛に相応しいけどな」
「ビビッて逃げただけのくせに命を張っただなんてよく言えるよな〜俺だったらもっとヤバくなるまで堪えて制限時間を調べるくらいするぜ?」
「ビ、ビビッてねーし俺だってその位できるわ! 丁度今やろうかなーなんて思ってた所だし!」
「じゃあどっちが長く禁止エリアに入っていられるか勝負な、負けた方は護衛失格だぜ!」
「望むところだああ!!」
「やめなさあぁぁぁぁぁぁぁぁあああい!!」



そんなこんなでグダグダとしていた三人だったが、遠く聞こえる急ブレーキと再びスピードを上げてゆくエンジン音によって、弛んでいた空気が
一気に緊迫したものへと変わる。

「ナランチャ、レーダーは!?」
「さすがに遠すぎるぜ。ただ音は……南に行っちまった。ど、どうするよ?」
「どうするも何も車に追いつけるわけねーだろ! それより気付かれてないならさっさと離れるべきだぜ。ね、トリッシュ様?」
「そうだな。フーゴも探さなきゃいけねーし、一旦戻ろうぜ!」

これからの行動方針をまさに考えようとしていた所だけに面食らってしまったトリッシュだったが、やはり最優先すべきは仲間である
フーゴとの合流だ。自分たちが知り得た禁止エリアとその対処法を伝えなければ。それに彼に会えたらその頭脳で考察して欲しいこともある。

「そうね。車の事は気になるけど今はフーゴたちを探しましょう。とりあえず彼が向かったらしいサン・ジョルジョ・マジョーレ教会へ――――」

『北ヘ……』

(え、なに?)

『教会カラ北ヘ…………DIOノ館ヘ、私ヲ助ケテ…………トリッシュ!!』


ナランチャと玉美の方を見るが何も変わりがない。この声はトリッシュだけに、トリッシュの脳内に直接響いたのだ。
地図を取り出して確認する。DIOの館といえば先刻トリッシュが倒れた際にカーペットに現れた地図上で星が『4個』固まっていた場所だ。
そして星よりも重大な事がある。あの声の主はよくわからないが、口調からしておそらく女性。そして自分に助けを求める可能性のある女性は
一人しか思い浮かばない。





(ルーシー……あなたなの?)





◆ ◆ ◆

980ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:32:11 ID:EHvDMBUc
【E-4(移動中)/一日目 夜】

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:健康
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
0.トリッシュ様のお役に立てた!バンザーイ!!
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.ナランチャは気に食わないが、同行を許してやらんこともない

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)
    不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.誰も爆発しなかったぜ、ラッキー〜
1.早くフーゴとジョナサンを探しに行こう
2.玉美は気に入らないけど 、まあ一緒でもいいか

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:健康
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服、遺体の胴体
[道具]:基本支給品×4
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
1.今の声……ルーシー!?
2.フーゴとジョナサンを探しに行きたいけど、DIOの館に行くべき?
3.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく

[備考]
※19時に設定された禁止エリアはE-5でした。
※トリッシュを中心とした地図は他の遺体の点在箇所を示しています。部位は記されておらず、持っている地図に書き写されました。
  DIOの館以外に星が記されているかどうかは以降の書き手さんにお任せします。



◆ ◆ ◆

981ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:33:11 ID:EHvDMBUc
(そうよ……あの男がやっていたのと同じ。私にだってできて当然だったのよ)

ベッドの上で少女は腹部を一撫ですると、いとし子に語りかけるように口を開いた。





『心が迷ったなら……やめなさい。ここで立ち止まるのは……カーズ、貴方にとって敗北ではない』




(あの化け物は神なんて信じてなさそうだけど、どんな声で聞こえているのかしら)

自分の時は大統領の仕業だと会うまでわからなかった。まあ、いかにも『それらしい』声で聞こえるのだろうと勝手に解釈して
手に持っていた『右眼球』を両手で包み込む。開いた時には先程までシーツの上に映っていた映像は消え、ただの干からびた遺体の一部に戻っていた。

「ありがとう。お返しした方が良いのかしら?」
「いや、俺はどうやら遺体に嫌われてるみたいなんでね。お前が持っていろ」

そう、トリッシュの遺体が生み出した地図は間違っていなかった。この場には遺体の部位が『4つ』あったのだ。

(DIOへの交渉カードとして隠し持っていた右眼球だったが、あっさり見破られちまった。この女、一度遺体の全てを取り込んだというのも頷けるな)



扉の外で足音が増えた

982ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:34:14 ID:EHvDMBUc
時刻は19時を少し回ったところ。
ムーロロは少し前から館周辺を数枚のカードに警戒させると参加者への監視を一旦全て解き、可能な限りのエリアにカードを飛ばして
次の禁止エリアを探っていた。会場の端から追い込んでゆくこれまでのエリア設定からして、このC-3が設定されている可能性はかなり低いと見ていたが、
結果はE-5と少し内側に食い込んできた。これを踏まえ今後の予測に脳内で修正を加えてゆく。

早くも回避策を編み出したグループがいたが、ここまで生き残った人間なら何ら不思議な事でもない。
むしろトリッシュ・カーズという二人の遺体所有者が新たに判明したことの方が重要だ。だが彼等の顛末を見届けたのは
薄っぺらいトランプの目ではない。ルーシーが右眼球を通して『見て』『話しかけた』のだ。

「お前が俺に大統領についての情報を洗いざらい吐いたのはこの為か」
「そうでもしなきゃ右眼球を渡して貰えそうになかったもの。でも、これでわかってくれたでしょう?」
「ああ。しかし犠牲を出し過ぎたな。もう少し早くカーズを見つけていれば良かったが、残りが逃げたなら良しとするか」
「片方だけだからかしら、視界が悪くて見辛かったわ……あの化け物は邪魔以外の何物でもないわ。どこか遠くへ誘導できたらいいのだけど」
「同感だ。まあおいおい考えればいい」



ステップを踏んで飛び回る足音と、重厚な足音、時折唸るような咆哮が混じる



途切れていた会話は新たな情報を得たムーロロから再開した。

「ジョニィとディエゴを捉えた。偵察用の恐竜を想定して遠巻きに追跡しているから会話は聞き取れないが、おそらくこちらに向かっている。
 まああの辺りは随分崩落しているし、真っ直ぐ来ようと思ってもそれなりに時間がかかるだろうがな」

禁止エリアの確認と同時にトランプたちを再度参加者たちの追跡へと戻すと早速と言おうか、案の定近くにいたディエゴが一番に補足できた。
ジョニィが同行している理由は不明だが、一度は大統領を倒した男と大統領の後継たる器を認められた男の組み合わせは中々に面倒だ。

「それは大変ね。ねえムーロロ、あなたはこれから私をどうするつもりかしら」
「無意味な質問はよせ。今のところ俺達の利害は一致している、利用でも協力でも名目は何でも構わん」



咆哮は次第に甲高く、苦しそうなものへと変わる。時折金属音も響く。

983ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:36:00 ID:EHvDMBUc
どうやら自分は思った以上に今回のゲームの真相に近づいているのかもしれない。
遺体と深く関わり合った以上、最悪対大統領も視野に入れてディエゴとジョニィ、どちらかと協力関係を築きたくはあるが、
敵対している二人と同時に交渉するとなると必ずその場でどちらかと決裂しなければならない。
できれば一人とだけ交渉したい。どちらかが死んだ後ならなお望ましい。ならば今はルーシーを連れて奴らを避け、遠くから時に誘導しつつ
つぶし合いを眺めるのが最上と言えるだろう。
ディエゴから離れるという選択はルーシーも同じはずだ。既に彼女の行動が全てを物語っている。

「お前、トリッシュをディエゴに差し出す気だな」
「彼女は遺体を所有しているんですもの、出会ってくれればあの男の気を十分引いてくれるはずだわ。殺されはしないでしょう」
「餌を与えて時間稼ぎ、奴からより遠ざかる寸法か。大したタマだな」

一時は交流し、同世代の女同士通じるものもあっただろうに。何も知らない者を躊躇なく利用する姿は悪と呼べるかもしれないが
三人がこちらに来るならジョースターやフーゴ達に近づくことにもなるし、何気に後でカーズと鉢合わせしないルートをもう一度伝えていた。
仲間との合流のチャンスを作ってやったという点では善と呼べなくもない。



「ムーロロ、『幸福』とは何だと思いますか? 『天国』とはどこにあるのでしょうか?」




ひときわ大きな断末魔が響き、巨体が倒れ伏す音が聞こえてきた



◆ ◆ ◆

984ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:37:57 ID:EHvDMBUc
唐突な質問にムーロロが答える事は無かった。代わりに切り裂かれた扉が音を立てて倒れ、
血塗られた洋刀を持った男と、口元を真っ赤に染め上げた男が二人の眼前に立ちはだかった。

「ムーロロみ〜つけた! おめー迷子かよダッセ〜な〜」
「……」

二人の後ろに恐竜の姿は無い。ただ血の海の中、身体を何か所も食いちぎられた白人男性と輪切りにされた黒人男性の二人が転がっていた。

「聞いてくれよ〜こいつら死んだら恐竜じゃなかったんだぜ! これってカラスだろ―……? インコ? スズメ?」
「サギだろ」
「そうサギだぜサギ! あれ、その女の子なんだー!?」
「私はルーシーよ。セッコ……よね。DIOから話は聞いていたわ」
「おーDIOの! じゃあ殺しちゃだめだよな。あれ、何でだったっけ?」

がぜん騒がしくなったが、琢馬が無言で新しい角砂糖の袋を差し出してくる。とりあえず放り投げて黙らせた。
琢馬の方もまだ別の世界に逝ってしまった訳ではないらしい。

「これじゃあなた達、まるで東方の三賢者ね」
「まだ産まれていないだろ。お前から産まれると決まった訳でもない」
「いいえ、遠からず産まれるわ。今に私の元に全てが集まり、産まれて……そして……―――」



(狂った訳でも自棄になった訳でもなさそうだが……危ういな。次の一手はしまっておくか)

遠くを見つめるルーシーの瞳は善と悪、聖と邪、それらの境界を越えた遥か遠くを見据えているようで、未だ捕えどころが無い。
それがムーロロには不可解で、彼女を確実に揺さぶるだろう『スティーブン・スティール』について追及するのは避けた。

「ここの恐竜が死んだことはディエゴにもすぐ伝わるはずだ。早速だが移動するぞ。セッコ、また頼む」
「どこ行くんだ?」
「さて、どこへ行こうか……」



血まみれの歯をむき出しにして笑うセッコ
ルーシーの口から出た『幸福』『天国』というキーワード



(やれやれDIOめ、遺体だけでなく面倒なものまで遺してくれたもんだぜ)



◆ ◆ ◆

985ブレイブ・ワン ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:38:45 ID:EHvDMBUc
【D-3 DIOの館/一日目 夜】


【ルーシー・スティール】
[時間軸]:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
[状態]:処女懐胎
[装備]:遺体の頭部
[道具]:基本支給品、形見のエメラルド 、遺体の右眼
[思考・状況]
基本行動方針:??
0.ディエゴから離れる
1.ムーロロ達を利用し遺体を集める

※遺体の右眼をムーロロから譲渡されました。(サンタナの不明支給品でした)
※遺体を通してトリッシュ・カーズに声をかけています。(カーズに対しては『あの方』を装っています)
  トリッシュをディエゴの元まで誘導し、二人が出会うよう目論んでいます
※その他の遺体所有者を把握しているか、話しかけられるかは不明です

【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中
[状態]:健康、精神的動揺(大)
[装備]:遺体の右手、自動拳銃、アヌビス神
[道具]:基本支給品×3(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、
不明支給品2〜3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み、遺体はありません) 救急用医療品、多量のメモ用紙、小説の原案メモ
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。
0.??
1.自分の罪にどう向き合えばいいのかわからない。
2.ムーロロ、セッコと行動。隙があれば始末する?

【備考】
参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。

また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
ミスタ、ミキタカから彼らの仲間の情報を聞き出しました。
拳銃はポコロコに支給された「紙化された拳銃」です。ミスタの手を経て、琢馬が所持しています。
※スタンドに『銃で撃たれた記憶』が追加されました。右手の指が二本千切れかけ、大量に出血します。何かを持っていても確実に取り落とします。
 琢馬自身の傷は遺体を取り込んだことにより完治しています。

【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ)
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、遺体の脊椎、角砂糖、
     不明支給品(2〜12、全て確認済み、遺体はありません)
[思考・状況]
基本行動方針:自分が有利になるよう動く
0.遺体を揃えるためルーシーと行動。ただし警戒は怠らない
1.ディエゴに気付かれる前にこの場を離れる
2.セッコ、琢馬を手駒として引き留めておきたい

【備考】
現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。
会場内の探索はハートとダイヤのみで行っています。 それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。


【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、血まみれ、興奮状態(小)
[装備]:カメラ(大破して使えない)
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:??
0.角砂糖うめえ
1.DIOが死んでしまって残念
2.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。新しい死体が欲しい。
3.吉良吉影をブッ殺す

【備考】
『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。
千帆の事は角砂糖をくれた良いヤツという認識です。ですがセッコなのですぐ忘れるかもしれません。

※扉を守っていた恐竜はポコロコ・スループ・ジョン・Bの遺体でした。ディエゴが本来監視に付けていた恐竜は現在ディエゴの元に向かっています。

986 ◆HAShplmU36:2015/10/17(土) 22:40:34 ID:EHvDMBUc
仮投下は以上になります。
意見を伺いたかった点ですが、今回ルーシーが遺体の右眼のみでトリッシュ、カーズの姿を確認、声をかけています。
原作では両目とも揃っていましたが、左眼には固有の能力『スキャン』があり、右眼球はディエゴのスタンド能力を引き出していました。
両目揃った場合のみ使用可能な能力であるという解釈が多勢でしょうが、断定はされていませんでしたので
片方だけだと視界が悪くなるという条件を付与した上での描写となりました。
賛成・反対共にご意見があればお願いします。

987名無しさんは砕けない:2015/10/19(月) 21:12:21 ID:0z0SvL2U
投下乙です。
眼球に関しては問題ないかと思います。
トリッシュ、玉美、ナランチャの三人組に癒されました。
本投下待ってます。

988名無しさんは砕けない:2015/10/21(水) 00:05:44 ID:erVPSOYU
仮投下乙です。
私も遺体の能力と制限には異論ありません。原作中でも結構曖昧な設定だった気もしますしw

989接触 その1 ◆yxYaCUyrzc:2015/11/25(水) 01:19:06 ID:IUUm3ozE
……え?いや、そりゃあ俺にだって知らないことはあるよ。
君らが俺に教えてくれたこともあるし、仮に知らないことがあれば知ろうと努力くらいはするさ。
ほら、最近だと『カリカリ梅が大好きな天才ギャンブラー』とか。
彼に関しても俺は持ちうる手段を用いて調べ尽くした、はず。あまり突っ込み過ぎると消されそうだからね……

で、調べてるうちに感じたことは、彼はただ頭がいいだけじゃあない。
彼が得意なのは『賭け』ではなくて『駆け引き』だと思うのさ、俺の解釈だけど。
同じ『カケ』という読みでも随分違うんじゃあないか?この二つは。
ハッタリをかまし、道化を演じ、相手を観察し、押すときはトコトン押す。


――そういう参加者は、この場にもいるだろう?


彼が放送を聞いても特に思うことはなかった。
せいぜいが、自分の危機は去らないという事実を改めて痛感した、という程度だろう。

できるだけ多くの参加者と接触しなければ自分は実験台として人柱になる可能性が。
そして逆に参加者と接触すればするほど、乗っていた人間に殺される可能性がある。

でも、それすらどうでも良くなってきていた。
一口に『自由』といっても、それを明確にどんなものか説明できる人間はいないし、百人に聞いたら百人それぞれの答えが返ってくるような質問は質問と言わない。
先に接触した二人組に取り入ろうとせず、半ばヤケクソで与えられた命令をこなし退散したことも、その辺りが彼の胸の奥にモヤモヤと巣食っていたのが原因だろう。

ゆえに、次に出会った参加者にも特に思うところはなかった。

「サラリーマンまでいんのかよ――くそったれ。なんだってホント」

そりゃあ悪態の一つも付きたくなるだろう。
目の前に突っ立っている男は、そんな彼のことを、警戒するでもなく、憐れむでもなく、疑うでもなく、訝しむでもなく。
あるいはそれらを全て混ぜ合わせたような目を向けていた。

「ハァ……参加者たちに『カーズ』ってやつからの伝言。
 『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』だとさ。まあ、来ても来なくても自由だけど」

ため息混じりに言うべきことだけを言い、踵を返す。
直後にいきなり走り出さなかったのは、疲労なのか、思うところがあったのか。彼自身にもわからない。
そんな背中に声がかけられた。

「君は――」

静かに、しかしよく通る、それでいて気にしなければ聞かないで済むような、その声は。

「『エニグマの少年』宮本輝之助、だね?」

静止を求めるものではなかった。

990接触 その2 ◆yxYaCUyrzc:2015/11/25(水) 01:22:15 ID:IUUm3ozE
***


『どうして自分の名前を知ってるんだ?』って顔をしてるな――少し私の話をしよう。

私の名は『吉良吉影』。年齢33歳。自宅は杜王町北東部の別荘地帯にあり……結婚はしていない……
仕事は『カメユーチェーン店』の会社員で毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。

そしてあるとき、これは全くの偶然だったんだが……“写真のおやじ”を知っているか?彼が私のことを『弓矢』で射った。
いわく「得た能力をもって『あるスタンド使いたち』を始末しろ」ということだ。
その時に君の名を知った。鉄塔の『鋼田一豊大』とかの名前も聞いた。もっとも、知っているのは名前と容姿だけだが――とにかく。
わかるかい?私と君はある意味で“同志”だってことになる。


……フム。君の言い分もわかる。ならば君の不安を取り除くために言うが、私の能力は『ない』。
矢に刺されて死ぬほど痛い思いをしておきながらなんの能力も生まれなかった。写真のおやじも驚いていたよ。要するにハズレだったんだからな。
だが、頭を切り替えたおやじは、それゆえに出来ることがあると私に言ってきたよ。
それは『取り入ること』だ。
強いものに、弱い者に。賛成派、反対派。多数派、少数派。数というのは目に見えて効果を発揮するからな。
無力な人間なら尚更だ。足を引っ張るのも、思いの外に役立つことも自由自在という訳さ。


……理解が早くて助かるよ。
『私は君と同行し、カーズの話に乗った人間を演じることで効率よく参加者と接触する』


しかし――そう、カーズと言ったな?そいつにそんな芸当ができるのか?
もしその話が本当なら私自身もぜひ首輪を外してもらいたいもんだが……
大体、未だに宮本君、きみが首輪を装着している以上は『まだ外せない』んじゃあないのか?

どれ、見せてみろ。実はカーズにナニカサレタとかないか?
というか、その耳も。止血してやろうじゃあないか。ほら、後ろ向いて。

……ふむ。君からは見えない首輪の後ろ側にも特に変わったところはないな。
指でなぞってみた感じ、溝や段差の感触もない。私が自分で触ってるこの首輪と変わりないようだ。
つまり、君がカーズと接触したその際には、カーズによって首輪に何かしらの細工を施されたという心配はなくなったわけだ。


だが、現状でこの話を信じれる奴はどのくらいいるのかな、疑問に思わないか?
先の放送を聞いたろう?最初の舞台に立ってたカリメロ頭の男が死んで、大統領だと?
禁止エリアがわからない?次回には代役?まったくもって理解が追いつかない。

そして――もしかしたら。
主催者が死んで首輪が機能停止したとか、あるいは存在する意味を失ったとか――監視役がいなくなったという意味で――
そういう可能性を浮かべる奴もいるんじゃあないか?


……おい、落ち着きたまえ、私は可能性の話をしただけだ。なんでそこで君がビビって目を閉じる必要があるんだ。
まてまて、急に走り出すと心臓に良くないぞ。……ん?毒薬?それなら尚の事だ。深呼吸して、そう。


……うむ。早速君の役に立てて何よりだ。
なら、役立ちついでにもう一つ私から提案させてくれ。

『今私が言った可能性について、今からカーズに意見を伺いに行くのはどうだ?』

ビビるな。大丈夫だ。私も同行する。“さっそく一人くいついた”とでも言えば良いだろう。
天才カーズ、とやらのことだ。どこかで私の姿を目撃しているかもしれないが、些細なことだ。相手の素性は問わないと言ったんだろう?
途中で他の参加者に接触したってそれも問題にはならない。私がなんとかする。
なんせ『無力な人間』を地で言ってる私なんだからな……自分で言うのもなんだが、フフ。


決まりだな……ん、アテがない?
じゃあとりあえず、さっきまでいた場所に戻ってみるか。

991接触 その3 ◆yxYaCUyrzc:2015/11/25(水) 01:22:45 ID:IUUm3ozE
***


さてさて。こうして吉良と宮本が合流してカーズのもとに向かおうとしてるわけだが。
一応……一応ね、君らにこの交渉における吉良の真意を解説して終わりにしよう。

吉良の思考はもはや――って表現は少し違うか。ずっとそうだった、『自分に危害を加えうる存在の排除』に尽きる。
趣味の『手首』ももちろん重要な点ではあるが、自分が生き延びないことには手首もヘッタクレもない。
さて、そうなれば削除する対象だが。現在での最優先は空条承太郎およびファニー・ヴァレンタインで、その下に僅差で存在するのが、もちろんカーズ。
そこに都合よく現れたエニグマの少年。聞いた話じゃ『爆発する首輪を解除しよう』としてるそうじゃあないか。

ところで。『嘘を付くときには真実に織り交ぜると良い』とはよく言ったものだ。
年齢や勤務地も、写真の親父の持つ弓矢で射られたことも、その力で敵対する存在を排除しようとしていることも。
カーズに会うという目的も本当にやりたいことだし、見た感じ首輪に異常がないことも本当だ。
むしろ、嘘は『能力がない』と言った、そのひとつだけだろう。
ほとんど真実の話にほんの一滴の嘘を垂らすだけで――と。まったくよくできている。

さて、偽った吉良の能力だが。もちろん首輪を“ただ指でなぞって感触を確かめた”なんて事はない。
『現在宮本輝之助の首輪は爆弾になっている』――この事も、まあ本当だな。むろん、キラークイーンの能力ゆえの爆弾、という意味だけど。

首輪に触れたカーズが消し飛べば万々歳。
仮にその方法での暗殺が失敗したとしても、『アレほど外すと言ったカーズがやっぱり失敗して宮本が爆死した』という事実があればそれもそれで良し。
前者の方法でイクなら今すぐにでもカーズと接触すべきだし、後者をメインにしたいなら指令通りに多くの参加者を引き連れて、カーズに大恥をかかせてやるという訳だ。
しかも“カーズを探すあてがない”現状だったらどちらに転ぶも自然な展開にできる。

『自分の正体を知るうちのひとり』であるカーズが死ねばとりあえず一安心と。
承太郎やヴァレンタイン、あるいはジョニィ・ジョースターとの接触はその後でも構わない。
――まあ、同時に全てがうまく進行すればそれが理想だが。そうならないと感じたなら一つずつ問題を解くしかないからな。

最初に言ったな、ハッタリをかまし、道化を演じ、相手を観察し、押すときはトコトン押す。
まさに吉良吉影そのものだ。
主催者に接触した事実を隠し、それでいてほとんど自分の正体を晒し。
弱者を演じ、宮本の反応をよく観察し。押すとなれば右手のスイッチをためらわず押すだろう。

しかし最後に一言付け加えるなら……

『吉良吉影。コイツ、嘘つきだね』

992接触 その状態表 ◆yxYaCUyrzc:2015/11/25(水) 01:23:13 ID:IUUm3ozE
【C-2 路上 / 一日目 夜】


【宮本輝之輔】
[能力]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前
[状態]:左耳たぶ欠損(止血済)、心臓動脈に死の結婚指輪、動揺
[装備]:コルト・パイソン、『爆弾化』した首輪(本人は気付いていない)
[道具]:重ちーのウイスキー、壊れた首輪(SPW)
[思考・状況]
基本行動方針:???
1.吉良とともに行動する。カーズのもとへ戻る予定
2.体内にある『死の結婚指輪』をどうにかしたい

※思考1でカーズのもとに戻るとしましたが、カーズとの接触方法は第四放送時の会場中央以外に存在しません。
 自分の歩いてきた道を引き返す予定ですが、具体的にどうするかは次の書き手さんにお任せします。
※第二放送をしっかり聞いていません。覚えているのは152話『新・戦闘潮流』で見た知り合い(ワムウ、仗助、噴上ら)が呼ばれなかったことぐらいです。
 カーズのもとに向かう道中に吉良に聞くなど手段はありますが、本人の思考がそこに至っていない状態です。
 第三放送は聞いていました。
※カーズから『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』という伝言を受けました。
※死の結婚指輪を埋め込まれました。タイムリミットは2日目 黎明頃です。

【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左手首負傷(大・応急手当済)、全身ダメージ(回復)疲労(回復)
[装備]:波紋入りの薔薇、空条貞夫の私服(普段着)
[道具]:基本支給品 バイク(三部/DIO戦で承太郎とポルナレフが乗ったもの) 、川尻しのぶの右手首、
    地下地図、紫外線照射装置、スロー・ダンサー(未開封)、ランダム支給品2〜3(しのぶ、吉良・確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
0.自分の存在を知るものを殺し、優勝を目指す
1.宮本輝之助をカーズと接触させ、カーズ暗殺を計画
2.宮本の行動に協力(するフリを)して参加者と接触、方針1の基盤とする。無論そこで自分の正体を晒す気はない
3.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい

※宮本輝之助の首輪を爆弾化しました。『爆弾に触れた相手を消し飛ばす』ものです(166話『悪の教典』でしのぶがなっていた状態と同じです)
※波紋の治療により傷はほとんど治りましたが、溶けた左手首はそのままです。応急処置だけ済ませました。
※バイクは一緒に転送されて、サン・ピエトロ大聖堂の広場に置かれています。ポルポのライターも空条邸から吉良と一緒に転送され、回収されました。
※吉良が確認したのは168話(Trace)の承太郎達、169話(トリニティ・ブラッド)のトリッシュ達と、教会地下のDIO・ジョルノの戦闘、
 地上でのイギー・ヴァニラ達の戦闘です。具体的に誰を補足しているかは不明です。
※吉良が今後ジョニィに接触するかどうかは未定です。以降の書き手さんにお任せします。

993接触  ◆yxYaCUyrzc:2015/11/25(水) 01:24:01 ID:UwkBNQXE
以上で投下終了です。最近ハマりだした嘘喰いのフレーズを盛り込んでみましたw
タイトルの接触は『吉良と宮本』『吉良と首輪』『(将来的には)爆弾首輪とカーズ』の接触という意味合いです。
さてさて、放送聞いてのリアクションSSにしようと書き出したはずが、いつの間にか交渉SSに。
アレ?前のジョニィの時もそうだったなあ……

吉良がすんなり自分の名前を明かしたことなど、多少無理矢理感は否めませんが、ちょうどいい具合に宮本との距離が近かったのでこういう話になりました。
誤字脱字、矛盾点等等ありましたらご連絡ください。それではノシ

994名無しさんは砕けない:2015/11/26(木) 03:36:07 ID:y.aFrnN2
投下乙です
そういやこの二人、顔合わせたことはないけど接点あるといえばあるんだった
宮本はどんどん深みにハマっていくな・・・

2点ほど気になることが
・空条貞夫の私服に着替えた吉良はサラリーマンに見えるのか?
・吉良は参戦時期的に宮本(と鋼田一)を知っているのか?
です


そしてジョジョロワ3rd四周年おめでとう!
記念に何もできませんがいつも応援しています

995 ◆yxYaCUyrzc:2015/11/26(木) 21:58:58 ID:NP.r1znE
適切なご指摘ありがとうございます。
どちらもプロットに大幅な変更を加えないように、会話を修正したいと思います。

・・・と、本投下はどうしましょうかねえ。この進行速度ならむしろしたらばを本拠地にすべき・・・?

996名無しさんは砕けない:2015/11/28(土) 01:50:40 ID:Ngit5OB6
遅ればせながら投下乙です。
直接やり合ってはいなくともあれ程の人外っぷりと乱闘を見せつけられといて尚カーズを殺す気満々の吉良の精神力ぱねぇw
吉良がいまだに無力を装うのは逆に不自然かとも思ったけど、そこにツッコむこともできない宮本の動揺を
利用した辺り最初から敵かどうか見分ける作戦だったのか?だとすれば策士だな…

本投下は正直どちらでもいいと思います。2ちゃんしか見ない人はほとんどいないでしょうし
いっそしたらばに収束した方が分散しなくていいかも

997 ◆yxYaCUyrzc:2016/01/06(水) 20:01:33 ID:soYmm1Eo
投下に先駆けてこのスレを埋め、新スレ立てようと思います。以下埋め行為

998 ◆yxYaCUyrzc:2016/01/06(水) 20:01:56 ID:soYmm1Eo
埋め埋め

999 ◆yxYaCUyrzc:2016/01/06(水) 20:02:09 ID:soYmm1Eo
埋め

1000 ◆yxYaCUyrzc:2016/01/06(水) 20:02:32 ID:soYmm1Eo
勝った!仮投下スレ第1部完!




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