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仮投下専用スレッド
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作品は完成したんだけどいきなり本スレに投下できるほど自信がない……
いろんな人の意見を聞いてもっといい作品にしてから改めて本スレに投下したい!
……そんな人のためのスレッドです。
修正用スレ(本投下した作品をwikiに掲載する時の修正箇所の明記するスレ)
転載用スレ(本投下の最中に規制されてしまって以降のパートを投下するスレ)
これらと混同の無いよう注意してご利用ください。
必要だと思って立てました。不要なら削除してください。
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先日、『欲望』を題材にしたカメン・ライダーのテレビを見たんですがね。
あれが欲しいだとか、強くなりたいとか。本当に人間の欲望ってのは様々なもんです。
ですが――それを究極まで突き詰めていくと、人間の、と言うより生物の欲望・欲求ってのは――
『睡眠欲』と『性欲』そして『食欲』
と……この三つに絞られるそうです。
では、ここで質問。欲望の対義語ってなんだと思います?
俺はね、『意思』だと思うんですよ。欲望の逆ってのは。
自分の本能的な欲求を確固たる意思で押さえ込む、あるいは、固く決意した意思に反して本能的な行動をとってしまう、と。
で、今回はその『欲望と意思』に関わる話を一つ、みなさんにお話しましょう。
この対極に位置する二つの言葉。何が一番厄介だって、そりゃあ『欲望と意思が同じベクトルを向く』ということ。そんなお話。では――
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彼の名は東方良平。職業は警官。だけども出世とは無縁の、警察官というよりはお巡りさん。
右手には懐中電灯。肩にはデイパック。道路の真ん中を堂々と歩いています。
まあ当然といえば当然でしょう。殺し合いなんか肯定できません。職業柄、その心に宿る正義、あるいはその両方。
とにかく誰か人間……被害者を見つけて保護、また殺し合いに肯定的な人間は説得する。そのために宵闇の中を一人行きます。
主催者に対する法的措置はその後。犯人を逮捕するために人質の安全は二の次、そんな事は絶対にできません。
彼が飛ばされた場所は地図でいうとE‐7。どういう運命か杜王町に――杜王町に限りなく近い場所に飛ばされたのです。
まずは支給された物品の確認。だってそうでしょう、行動方針なんか考えるだけ無駄。分かりきってますから。
地図を見てしばし呆然。『ドノヴァンのナイフ』と書かれた紙を開いて唖然。自分の常識からは想像できないことが立て続けに2連発。
いや、殺し合いという場に放り込まれたこともカウントするなら3連発ですか。まあとにかく驚きっぱなし。
それでも疑問はとりあえず置いておこう、今は目先の被害者を保護しよう、そう考えられるあたりは流石という所でしょうか。
ナイフはデイパックにしまいました。犯人を、あるいは被害者を刺激するような原因は少しでも減らすべきですから。
人っ子一人いない大通りを抜けてたどり着いたのは杜王駅。彼にとってもなじみ深い場所です。
で――見つけました。参加者を。
いや、言い直します。デイパックを見つけました。つまりその周囲に参加者がいる、少なくともいた、ということです。
もちろん警戒はします。だってそこに死体が転がっているかもしれないし、あるいはその死体を作り上げた犯人がいるかもしれないし。
でも、警官がそんなところで立ち止まる訳にはいきません。
まずはデイパックそのものを。そしてその周囲を懐中電灯で照らします。人影や足音はありません。
慎重に、それでいて忍び足というコソコソした感じはなく、一歩一歩近づきます。
と――その時。チクリとした感触が左ふくらはぎを襲います……襲うというと大げさですが。とにかくちょっとチクッとしたんです。
最初は何も思いませんでした。極度の緊張などから筋肉が不意に伸縮したりして痛みを発生することは珍しいものではないのです。
だけど、その傷口がだんだんと痒くなってきました。足も心無しかフラついてきました。こうなるといよいよ無視し続けてはいられなくなります。
周囲への警戒はそのままに、膝を折りたたんでしゃがみ、痒みの発生源に目を向けました。
するとどういう事でしょう?身体だけならまだしも、ズボンまで溶けたようにグズグズになっているではありませんか。
傷口にライトを当てるとかぶれたように皮膚が爛れて嫌な臭いが鼻に届いてきました。
えっ!?どういうことだ?と、そう思う間もなく次の『チクリ』がありました。まさに不意打ち。一瞬の出来事でした。
場所は顔……多少格闘技に精通している人なら『人中』と言えばわかるでしょう。
顔面の正中線上、鼻の下と上唇の間に存在するツボであり急所。ここを正確に、思いっきり殴ると最悪の場合命に関わります。
もっとも、東方巡査はそんなことを知る前に顔が、脳が溶けきってしまってこの世を去ってしまったのですが……
彼の黄金のような意思は、ゲーム開始から一時間もしない内に消え去ってしまったのです。
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彼には名前がありません。特徴としては右耳に大きな傷があること。
彼には意思もありません――というのは大きな間違いです。確かに彼の意思はちっぽけなもんですが、厄介なことに本能と同じ方向を向いています。
つまり自分の欲求を自分の意思で満たそうとしているのです。すなわち、行動に迷いがなくなる訳です。もっとも彼に『迷う』なんて縁のない言葉ではありますが。
デイパックは必要ありません。中に入っていた小さなパンを食い尽くしたあとにその場に放置しておきました。
ですが彼はバカではありません。このデイパックを『餌』として『釣り』をしていたのです。獲物に針を引っ掛けるところまで釣りそっくり、なんて。
最初に引っかかった獲物は脂乗りは良くないですが肉付きはほどほど、食べごたえのあるサイズ。
対象が絶命したのを確認した上でもう5、6発と針を打ち込んで食べやすいようにその肉を溶かします。
1〜2分も待てばもう食べごろ。消化にも良いトロ〜リとしたペーストの出来上がり。早速彼は目の前のご馳走にむしゃぶりつきます。
もう一度言いますが、彼は決してバカではありません。むしろそこらの人間より頭がいいかもしれません。
主催者の話は聞いていました。人語を理解できるわけではありませんが、周囲のざわめき、血の臭い。ちゃあんと把握していました。
要するにここにはざっと百食を超えるご馳走が転がっているということです。きっちり理解できました。
警戒するのは『白コート』と『変な頭』だけ。その二人の人間にだって決して負ける気はしません。
ですが……ここで『よし、やってやるぞ』と思わないあたり、いかに彼の欲望が大きく、意思がそれを的確にサポートしているかがよくわかります。
要するに、腹が減れば食うし、眠くなれば寝る。ちょっといいメスが入れば襲う。それだけなのです。
彼が持つ強力な欲望は、ゲーム開始から一時間もしない内にその第一歩を踏み出してしまったのです。
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いかがでしたか、欲望の行き着く先。そんなお話でした。
え?……ああ、そういえば自己紹介がまだだったか。
えーと、はじめまして――いや、『久しぶり』という挨拶はここですべきではないと思う。
俺の名前?そんなもんはどうだっていいだろ。そこを聞きに来たんじゃないでしょ?
俺は……そう、ただの語り部だよ。
コウイチ君、いや――広瀬じゃなくて麦刈の方の。そう、そんな感じで考えてくれれば。
で、もう一度言うけど。ただの語り部なんだ、主催者とも参加者とも関係はない。だがこのバトル・ロワイヤルには大きく関わっている。
君たちだってそうだろう?ま、このへんの話はまたいずれ、ね。
近いうちまた話をしよう。まあ俺の話を聞くかどうかも君たち次第さ。それじゃあ――
【東方良平 死亡】
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【D‐8 杜王駅・改札前 / 1日目 深夜】
【虫喰い】
[スタンド]:『ラット』
[時間軸]:単行本35巻、『バックトラック』で岩陰に身を隠した後
[状態]:健康。食事中
[装備]:なし
[道具]:自分のデイパック(パンを食べた以外は手つかず不明支給品1〜2)、良平のデイパック(不明支給品残り0、他は手つかず)
[思考・状況]
1:食う……サーチ・アンド・デストロイ
2:寝る……適度に休む
3:子供を産む……縄張りをちょっと広げてみようかな
[備考]
杜王駅改札前にデイパックが2セット、放置されています。内容は以下のとおり
1:虫喰いの支給品:不明支給品1〜2、パン消費、その他は手つかず
2:良平の支給品:基本支給品一式、ドノヴァンのナイフ、不明支給品の残り数は0です。
まだ虫喰い本人(?)が近くにいるので所有している道具として表記しています。
東方良平の参加時間軸はアンジェロのニュースを見た直後からでした
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以上で投下終了です。
ズガン枠の使用、まさか自分がやることになるとは。
今回のタイトルはシンプルに二字熟語。そして『語り部』として『俺』が登場しています。
2ndでは似たSSを書いた際に『語り部=荒木』でしたが今回はその線を最初から否定していますので、文章表現の方法としてのみ受け取ってください。
1〜2日待って誤字脱字、矛盾等の指摘がなければ本スレに投下します。
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投下乙
感想は本投下時に
指摘は特にありません
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投下乙です
>>4
ちょっといいメスが「入れば」襲う→「いれば」
他は特になしです
自分も感想は本投下時に。早く書きたいなw
鎮魂歌スレについてですが、27日24時までは
参戦キャラクターのいない外伝作品からも支給品を出せるが
支給品が登場した作品内で使い切る(修復不可能まで破壊される)こと
という提案があったルールについて意見を鎮魂歌スレで募集しています
vv氏「3rd第一部スレ立ててね」→4e「OK!すぐやるぜ!」
鎮魂歌が埋まる前になってからでいいに決まってるじゃあないですかこのタコス
2nd鎮魂歌スレは残り500レスほど。埋めようがないですね…
で、結論として、
鎮魂歌スレで意見を募っている議題は「問題議論用スレ」に場所を移し
これから投下される方は3rdの本投下を鎮魂歌の方でしていただいてもいいでしょうか?
2nd鎮魂歌が埋まるまで3rd第一部は保守進行で
相変わらずのグダグダ。4th議論をするときの反面教師としてやってください…
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>>7
投下乙です
そのままでも問題は無いと思うけど、結局『俺』はロワに関係あるのかな無いのかな
荒木作品のキャラってわけじゃなく、作者の代弁って意味?
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誤字の指摘ありがとうございます。本投下時に修正します。
えーと、『俺』に付いてですが『作者の代弁』と捉えてください。
3rdでは『目撃者は語る』風なSSを書いていこうと思っておりますのでこの『俺』はいろんなところに出てくると思います。
で、『君たち』はロワの書き手、読み手のこと。どこかの誰かがこのジョジョロワを知って、その話を聴きに来た、そんなイメージです。
このようなSSを2ndで描いた(オインゴの話だったかな)時には「語ってた人は荒木でした、聞いてた人はテレンスでした」と繋いでいただいたのですが……
とりあえず今回はそういうのは無しだよ、という意味で>>7のように表記しました。
その他の修正点がないようでしたら22:00〜23:00頃に鎮魂歌スレに投下します。
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>>11 リロードしてみてよかったー 投下楽しみに待ってます
エンリコ・プッチ、ホット・パンツ 投下します。
投下初体験&作中で微弱かつトンチンカンだけどホット・パンツがD4Cについて考察しているのでこちらに。
内容で気になる点や誤字、脱字等ありましたらご指摘お願いします。
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目の前にあるのは見慣れたサンピエトロ大聖堂。
『聖なる遺体』をすべて集めるまでは、ヴァチカンには戻って来られないと思っていたのに…
あたしはどうしてこんなところにいるのかしら?
いえ、自問するまでもなくこれは『スタンド攻撃』に違いないッ!
ここは、そう、強いて言うなら『隣の世界』だ。
大聖堂に来るまでのことを整理しよう。
Dioと協力関係を結び、ヴァレンタイン大統領をあと一歩の所まで追いつめたこと、
ルーシー・スティールの身に変化が起きていたこと、
それに気付いた時あたしは列車から落ちて…
たぶんその時に大統領のスタンド能力でこちらの世界に来たのだろう。そうに違いない。
その後は薄暗いホールでスティール氏に趣味の悪い一人舞台を見せられ、気が付いたらここに…
つまりこちらの世界では『SBRレース』の代わりに『バトル・ロワイアル』が開催されている、と言えるはず。
そして先程Dioが言っていた通りならあたしたちは遺体ではなくダイアモンドを集めているんだわ。
ここが遺体の無い世界なら、早く元の世界に戻らなければいけない…
そうだ、モノとモノの間に挟まれば元の世界に戻る事ができるんじゃあないかしら。
早速試してみよう。地面に寝そべり、いつの間にか背負わされていたデイパックを身体の上に置いてみる。
…あたしの身体を地面とデイパックで挟む形になったが、何も起きない。
…それにしても、この大聖堂の前で寝転がるなんて初めてだわ。
夜風が少し生温かいが、背中に当たる石はひんやりして、緊張で火照った身体を冷ましてくれる。
懐かしいヴァチカンのニオイがする。辺りは静まりかえっている。
あたしはまたここに清い心で戻って来ることができるのかしら。
遺体を集めれば、すべて許して貰えるかも知れない……
弟を殺してしまった後では家族と一緒に暮らせないと思って修道女になったけれど、
あたしの『罪』について忘れたことなんて一度もなかった。今でも夢に見る。
森の中。二人。グリズリー。震え。心臓の鼓動。
弟。弟の温もり。弟の背中。弟の顔。弟の視線。弟の涙。弟の声。弟の悲鳴。
血のニオイ。落とした靴。逃げた。一人。父さん。母さん。ああ、神様……
駄目だわ、また罪の意識に押しつぶされそう…!
列車から落ちる直前もそうだった。ゲティスバーグでスタンド攻撃を受けた時もそうだった。
ああッ! なんでこんな時に…! 大聖堂から誰か出てくる…
どうしよう! 『クリーム・スターター』は手元にあるけれど…
今もし攻撃されたらあたしは…! 落ち着け、落ち着くんだッ!
一人の… 男かしら? ああッ! でも、良かった!
よく見たら心配することなんて何もなかったわ! あの人は大丈夫!
こんなところで出会えるなんて、神の御加護に感謝致します…
「あの…神父様でしょうか?」
-
*
目の前の女は少し錯乱しているように見える。
訳のわからない『ゲーム』に巻き込まれたのだから無理もないだろう。
私だってあの空条承太郎が死んだことに驚いているのだから…
大聖堂から出てきた私に話しかけてきた、ホット・パンツと名乗るこの女は修道女らしい。
デイパックの他には、腰の辺りにスプレー缶のようなもの以外何も持っていないようだ。
年齢は20代くらいか。それにしても最近じゃああまり見ない服装だが…
名前も職業も嘘かも知れないし、それに何か隠し事をしているようにも見える。
しかしわざわざ記憶DISCを見る程でもなさろうだし、
DISCに命令を書き込むことなぞしなくてもコイツを利用することなど容易いだろう。
現に今、自分の身の上話で精一杯になっているじゃあないか。
『アメリカ』『SBRレース』『ヴァレンタイン大統領の不思議な力』『隣の世界』
…何を言っているのかよく分からないな。それに今の大統領はヴァレンタインじゃあないぞ。
アメリカからここに連れて来られた、と言うのなら私と同じだ。
『スティール氏』
…あの妙な演説をした男を知っているのか、後でまた詳しく聞いてみよう。一度話し出した女を止めるのは面倒だからな。
『ジャイロ・ツェペリ』『ジョニィ・ジョースター』
…コイツの知り合いか? 『ジョースター』と言う名字が気になったが、
あのジョースター家にそんな名前のヤツがいただろうか?
『Dio・ブランドー』
…DIO!? コイツDIOの知り合いなのかッ!? いや、後で話を聞こう。落ち着いて話を聞くんだ…
第一今すぐに私がDIOの親友だと打ち明ける義理なんてないのだから。
DIOの知り合いなら、手荒なマネは出来んかも知れないが、取るに足る人物なら利用するのも手だ。
この『ゲーム』の主催者はおそらくスタンド使い。そのスティーブン・スティールが何らかの理由で開始したものだろう。
殺し合いに乗るにしても、優勝を狙うにしても、この女が言うところの『元の世界』に戻るにしても
手駒は多ければ多い方が良いに決まっている。ところでコイツはスタンド使いなんだろうか?
ああ、身の上話が終わった途端に罪の告白か。ここは懺悔室でもないだろうに。
まあ、こんな所で『弟を殺した罪』について懺悔を聞くなんて思ってもいなかったな。
…いや、余計なことは考えないでおこう。今の私は懺悔を聞く神父だ。
迷える子羊の話が終わったら、まずは先程挙がった人物等について詳しく聞いてみるとしよう。
【C−1 サンピエトロ大聖堂 / 1日目・深夜】
【ホット・パンツ】
[スタンド]:『クリーム・スターター』
[時間軸]:SBR20巻 ラブトレインの能力で列車から落ちる直前
[状態]:健康、精神的に不安定
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
1.元の世界に戻り、遺体を集める
【エンリコ・プッチ】
[スタンド]:『ホワイト・スネイク』
[時間軸]:(あとの書き手の方にお任せします)
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
1.ホット・パンツを利用する
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投下終了です タイトルは『修道女の告白』(の予定)
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投下乙です。
特に問題ないと思います。
初めてとは思えない素晴らしい出来だと思います。
感想は本投下後に……。
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投下乙です
また新しい書き手の登場だッ期待が募るぜ
>>14
>しかしわざわざ記憶DISCを見る程でもなさろうだし、
→しかしわざわざ記憶DISCを見る程でもなさそうだし、
かと思われます。
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ご指摘ありがとうございました 修正し次第投下します
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『事実は小説よりも奇なり』って言葉があるじゃないですか。
知らない人いないとは思いますが一応、どんな物語も事実の奇妙さには適わない、って意味の言葉ね。
で、俺の個人的な見解を付け加えるなら、そんな『事実』こそ最高のエンターテインメントだよ、って意味なんだと思います。
では……万人の興味を引く物語、これはどういう事だと思いますか?だって『物語は事実には適わない』んでしょ?
違うんですよ、それが。
それらの『スゲェ物語』ってのは作者が実際に体験した『現実』を物語にしてるから面白いんです。奇妙なんです。
例えば最近だと、女子高生が経営者の理念について書かれた本をもとに弱小野球部を甲子園に導く物語。
有名どころでいくなら、己の血液を賭けた狂気の麻雀対決の物語。驚異の戦闘民族が不思議な七つの宝玉を求めて戦う物語。
どれも間違いなく作者の体験談さ。まぁ、この世界で体験したのかどうか、と聞かれると返答に困っちゃうけども。
とにかく……俺の知る限りでもこのくらいはあるんだから実際はもっとあると思いますね。こういう物語、いや、体験談は。
さて、勘がいい人なら気づいたかな?事実を作品に生かそうとする漫画家がバトル・ロワイヤルに参加してること。
今回はその人が誰と出会い、どこに向かうかの話をしよう――
***
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私の名前は双葉千帆と言います。
職業は学生。通っているのはぶどうヶ丘学園の高等部。現在一年生です。
将来の夢……と言うと笑われそうだけど、小説家になりたいと思ってます。
自分の書いた作品が書店に並んで、遠く離れた家族がそれを手にとってくれる、かつて過ごした日常を思い出してくる。
それはとっても嬉しいなって――そう思って本気で小説家になりたいと思うようになりました。
私の家族は……まぁ、いろいろあって、今は父と二人で暮らしています。
それと、私には彼氏がいます。それは私が勝手に思っていることかも知れないけれど、大切な男性です。
その人に私の想いを言葉にして伝えることは出来ないままの状況でしたが、その想いを身体に乗せて彼とひとつになりました。
しばらくして、半ば冗談っぽく提案したら、彼はすんなりと婚約をオーケーしてくれました。
ある冬の……終業式の夜、私は彼を自宅に招き、父に紹介しました。
そして、晩ご飯を食べた彼を送った後、父は私が彼から貰ったばかりの首飾りを見て「暗闇だ」と言いました。
その後のことは、正直言ってよく覚えていません。父が全て話したんだったか、私が全て察したんだったか。
『彼』は『兄』で、『父』は『鬼』でした。
私は台所に走りました。シンクの脇に掛けてあった、さっきのシチューを作るのに使ったであろう包丁を手に取りました。
この人だけは許せない、家に火をつけてでも全てを終わらせてみせる、そう思って振り返った瞬間でした。
振り返って見た場所はリビングではありませんでした。
目の前に立っていたのはメガネをかけたお爺さんでした。
そして説明を聞いて……ライトがあたった男の人たちの首輪が爆発して。
お爺さんの掛け声がかかって、目の前が真っ白になったと思ったらある家の玄関前にいました。
標識を見て、地図を見ました。そこに書いてあった名前と、その家の主の顔はよく知っています。
コンビニに並んでいた単行本、何気なくめくったそのカバー裏に自分の顔写真を載せていて、漫画家にしては珍しいなと思ったから印象に残ってたんです。
失礼かなとは思いましたが家に上がらせてもらいました。
誰かが先に忍び込んでいるかもと思ってひと部屋ひと部屋、ドアを開けて調べていきました。最後に到着した場所がこの作業部屋です。
そこで露伴先生が漫画を書いていたんだなぁ、と思ったとき、私はひとつ決意をしました。
作品を書こう、と。
こんな場所に放り込まれる前の自分の境遇。
そして、まだ実感はないけど始まってしまったこの最悪の殺し合い。
そんな中、自分はどう動いて、誰と出会って、何を感じたか。どういう会話をして、どこでどういうケガを負ってしまったか。
もちろんそんな呑気なことをしていたら人殺しの犯人とか、そういう人にあっさりと刺されて死んでしまうと思います。
でも、やらずにはいられない。なにか『私が生きた証』を残したい。そう思いました。
きっと、蓮見先輩……いえ、琢馬兄さんのように頭がいい人なら生き残れるかもしれない。
私なんかはきっと生き残ることは出来ないだろうと自分のことながら、そう思います。だから作品はきっと未完成のままどこかに放り出されてしまうでしょう。
それでも、一秒でも長く、一文字でも多く、この『現実』を『物語』にしたいと強く心に誓いました。
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「なるほどね……実に面白い考え方だ」
ふう、と息をついて椅子に座り直すのは岸辺露伴その人である。
「いえ、そんなことは」
「そう謙遜するなよ。決して間違った行為だとは思わない。
そこまで話してくれた君には『もうちょっと突っ込んだ取材』も……いや、今すぐにする必要はないかな。
いいよ、不法侵入の件は勘弁してあげよう」
「あ、ありがとうございます」
なんの気まぐれか岸辺露伴、己のスタンドを行使せずに相手からの取材をやってのけたのだ。
もちろん千帆自身が全てを包み隠さず話してくれたというのもあるが。
「じゃあこうしよう。君が作品を書き上げることができたなら、僕がそれをコミカライズしてあげようじゃあないか。
原作・双葉千帆、漫画・岸辺露伴って訳だ。よしよし、面白くなってきたぞ」
テンションが上がって話を続ける露伴を千帆は止めない。
彼女自身にも経験があるが、書き続けている、あるいは喋り続けているといった行為に夢中になっている時は時間を忘れられるし、何より邪魔されたくないものなのだ。
「……ふう、それじゃあ改めて君、うーん、千帆と呼んでいいかな?
千帆はこういう境遇に遭った、だが行動の方針は決定した、そこで今後はどうする?
簡単なようで難しい質問だぞ。作者は考えなきゃあいけない。『作品の主人公はこの状況でいったいどんな行動が可能だろうか?』とね……
手元にある情報は主催者側から与えられた物品と、質問をしている岸辺露伴、そしてこの状況だ。
これらのヒントから適切な答えを導き出せるかな?『LESSON1』だ。いい答えを期待しているよ」
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――と、こんな話だ。
千帆が書き、露伴が描く『事実をもとにした奇妙な物語』実に興味深い。きっと万人受けすること間違いなしだ。
是非読んでみたいもんだと思うね、俺は。読む用、保存用、布教用と3冊は買うだろうな。映画化されたら見に行きたいな、ハハ。
もっとも、その作品が千帆の言うとおり未完のまま終わってしまうのか、露伴の言うとおりコミカライズされるのか。
ここから先は、もう少し状況が動いてから話すことにしようか、それじゃ、また――
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【E‐7・岸辺露伴の家、作業部屋・1日目 深夜】
【二人の作者】
【双葉千帆】
[スタンド]:なし
[時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本的思考:この現実を小説に書く
1:岸辺露伴の質問に答える
2:ゲームに乗る気は現在はない
3:積極的に行動して『ネタ』を集めたい
4:琢馬兄さんもこの場にいるのだろうか……?
【岸辺露伴】
[スタンド]:『ヘブンズ・ドアー』
[時間軸]:ハイウェイ・スターに「だが断る」と言った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本的思考:千帆が書いた作品を漫画に描く
1:双葉千帆の答えを待つ
2:ゲームに乗る気は現在はない
3:積極的に行動して『ネタ』を集めたい
4:承太郎さんが死んだ……?
※千帆よりは幾分冷静に状況を把握していると自負しています
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以上で投下終了です。
さて3rd2作目にして早くも裏話。
今回は『俺』の言葉が真っ先に浮かんで、そこにキャラと行動をくっつける手法で執筆しています。
欲望のライダー(オーズ、見てないんだけどね)も事実は小説より〜も。
この手法がいつまで続くかはわかりませんが、今後ともご贔屓に。
誤字脱字、設定の矛盾等のご指摘ありましたらご連絡ください。ではまた本投下の時に。
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投下乙です。感想は本投下の時に。
指適というかいちゃもんというか、とにかく気になった点をひとつ。
露伴は自分の話に付き合ってくれる人は『君』『さん』で呼びそ―な気が。
まぁ、自分の感性なんで戯言程度に。
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投下乙です。
この手法だと毎回メタネタから始まることになりそうですねw
指摘はとくにありませんー
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私の名前は『吉良吉影』。
年齢33歳。
自宅は杜王町東北部の別荘地帯にあり、結婚はしていない。
仕事は『カメユーチェーン店』の会社員で、毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。
『心の平穏』
それこそ私が最も重視する『人生の価値観』だ。
出世したい、金が欲しい、威張りたい…。勝ち負け、だの、刺激的な事件、だの、そんなのはテレビのドラマか映画の中の連中にでもやらせておけば良い。
ただ日々安心して過ごし、悩みもなくくつろいで熟睡できること。
それこそが、私の求めているものだ。
しかし ――― どうした事だ?
今、この状況!!
爪を噛む。
心の平穏とはほど遠いいこの状況に、私は闇雲に爪を噛む。
おそらくは深夜。普段ならホットミルクを飲み、30分の軽いストッレッチを済ませて安眠している時間だろう。
しかし、あの眼鏡の初老の男。
それから起きた惨殺ショー。
そして今こここの場所で、私が窮地に陥っているという事実!
アーチ状で高い天井に、ステンドグラス。正面に掲げられた十字架。
その暗闇のさらに奥。質素だが頑強な長椅子の陰に這い蹲るように隠れている事実に、歯噛みする。
まずこの状況がいったいどういう事か、という問題もある。
それは確かに最重要ではあるが、今当面の問題ではないのだ。
問題は、『奴ら』だ。
刺激的な事件なんてのは、テレビのドラマか映画の中の連中にでもやらせておけば良い。しかし、だ。
今さっき見た『奴ら』…。
そして今、この私を追い込もうとしている『奴ら』…。
まったく、冗談じゃない……!
あんな化け物どもは、それこそ映画の中だけの存在じゃあないかっ…!?
そう、化け物だ。
ドブの底で腐った鼠の死骸のような鼻につく腐臭。
人間を潰して再びこね合わせてたかの様な異形。
なんというタイトルだったかな…? そう、『ナイトオブリビングデッド』だとか…『バタリアン』だとか…。
つまり、『ゾンビ』…って奴だ。
生ける屍! 何だっていうんだ!? そんな馬鹿げた奴らが、私を襲おうとしているというこの狂気の沙汰…!?
勿論…私は無力なただのサラリーマンではない。
どんな逆境、苦境に陥っても、それを文字通りに『消し飛ばせる』だけの特別な力がある。
ただし…相手が人間であれば…だ。
あいつらが本当に生ける屍、映画やゲームに出てくる様な『ゾンビ』だというのなら、私の『能力』が、どれほど効果的に使えるかが分からない。
映画などで見る限り、あいつらはたいてい、腕や足をちょいと吹き飛ばしたくらいでは戦闘不能状態にはならない。
痛みや恐怖で怯えたり逃げ回ったり、戦意喪失したりもしない。
うう〜、だの、ああ〜、だの、ぼぐわぁ〜、だの喚いて、感情も知性もなく、ただひたすら人間を襲い続ける。
勿論、ここにいる『奴ら』が、映画そのままの化け物かどうかは分からない。
しかし、人間相手ではないという事それ自体が、私の不安を煽る。
確実に…。
そう、確実に、『奴ら』を吹き飛ばし、始末できるという状況。確証。
それが欲しい。
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◆◆◆
『見ィつけたぞ〜〜…人間〜〜〜ッ!!』
不意に上空から声がした。
上空…いや、天井だ。
声の主、異形の化け物は、腐敗した肉をつなぎ合わせて作った醜悪なオブジェの様に、礼拝堂の高い天井に貼り付いていた。
『血ィ〜をぉぉ〜〜〜…』
破壊音と共に、横の壁が突き破られ、運河の水の匂いが鼻につく。
『ズビュルズビュルと啜ってェ〜〜〜〜!!』
長椅子を吹き飛ばし、
『ズタズタのギッタギタに引き裂いてやるうぅうぅぅ〜〜〜!!』
四方から濁った声がする。
請われた壁の穴から入る月明かりに、くっきりと起立した4つの異形。
「…何だ、話せるのか…?」
つい、私はそう口にしてしまった。
『むん?』
化け物の一体が、そう怪訝そうな声を出す。
「話せる…それに今、私の言葉に『反応』をしたな…?
という事はつまり、『知能』があるという事だ。そして疑問を感じるのならば、『感情』もある…んじゃないか…?」
『そ…それがどうした、人間…!?』
「…おい、まさかまさか、今ちょいビビらなかったか…? ゾンビのくせに…?
人間をビビらせて喰い殺してやろうとしたのに、その相手がビビってないから、逆に戸惑い…ビビってる…?
『まさかこいつ、何か切り札があるんじゃないか…?』 って考えて…?」
『何だとォ…、ふざけるなこの血袋がァァァァ〜〜〜』
今度は、激高。
間違いない。こいつら化け物だが、中身は人間に近い! 知能も感情もある!
ならば…。
『俺の名はペイジ!』
『ジョーンズ』
『プラント』
『ボーンナム』
おいおい、周りを取り囲んでいた化け物共が自己紹介までしてきたぞ?
『血管針攻撃!』
一応頭部といえるカ所から、一斉に管を伸ばして突き刺そうとしてくる。
なんだ、この程度の攻撃…。
バシュッ!!
腐臭をまき散らし、化け物共が消滅した。
-
◆◆◆
「危ないところだったな…」
長い黒髪に黒装束。しかもマントをひらひらとさせた様などこの国の民族衣装かも分からぬ服を着たその男が言う。
「…有り難う御座います、助かりました」
一応はそう言う。ここは、無力な被害者を装うのが、妥当なところだろう。
危ないところ…そう、たしかに危ないところだったかもしれない。
私は先程、我がスタンド『キラークイーン』を発動させて、四体の化け物を消し飛ばしてやろうと、そう考えていたところなのだ。
しかし、そこに現れた乱入者。
ストレイツォと名乗った優男が、ロープを投げて奴らを絡めとると、ほとばしる黄金の輝きと共に消し飛んだのだ。あの化け物どもが。
危ない、のは、奴ら、ではなかった。
この男。この男に、私が奴らを消し飛ばす現場を見られていたかも知れないという、その事だ。
実際に、あの化け物どもはたいした脅威ではなかった。今ははっきり分かる。
私は直接対峙する危険性や、奴らの性質や能力の得体の知れ無さを考えて、キラークイーン第二の爆弾、熱源感知による自動追尾型爆弾シアーハートアタックを放って隠れていたのだが、爆弾は奴らに反応せず、逆に奴らに私の居場所を嗅ぎつけられてしまった。
その事から、奴らは正しく死人の如く、体温を持っていないことが分かったのだが、同時に話しかけ会話をしたことから、化け物ではあるが中身は人間と大差ないことも分かった。
感情がある。知能がある。ならば、駆け引きも使える。
即座にシアーハートアタックを戻して、キラークイーンがいつでも新しい爆弾を製造できる状態にする。
爆弾一発で消し飛ばせなくとも、その威力を見れば奴らにも恐怖や隙が出来る。
つまり、ただの人間を消すときと、要領は変わらないのだ。
ストレイツォ曰く、彼は化け物退治の専門家、なのだという。
山奥で長年修行を積み、心身を鍛え上げ、波紋法と呼ばれる特殊な呼吸法を会得した彼は、その波紋エネルギーにより、亡者や吸血鬼を消滅させる事が出来るという。
吸血鬼!
なんとも馬鹿げた話、と、ここに連れてこられる前の私なら、一笑に付しただろう。
しかし今なら分かる。いや、実際に亡者に襲われていたのだから、分かるとか信じるとかいう話ではない。
とにかく、亡者は居た。人の血を啜る、動く死体。異常な身体能力や、血管を伸ばして攻撃するという奇妙な技を使うが、知能も感情もある。
ネタが割れればなんということはない。又襲われたとしても、難なく対処できるだろう。
だが ―――。
「吉良…と言ったね?」
「…何か?」
聖堂の片隅。掲げられた十字架が月明かりを微かに反射するその広間で、ストレイツォが改めて聞いてくる。
「あの壇上で演説をしていた眼鏡の男に見覚えは?」
「いや…皆目」
実際、何も分からない。
「…私もだ。
しかし、予想できることはある」
少しばかり悩ましげに眉根を顰め、ストレイツォが続ける。
「私はここに来る直前、ウィル・A・ツェペリという古い友人に請われ、同じく波紋戦士であるダイアー、老師トンペティと共に、ある男を倒そうと旅立っていた。
男の名はディオ・ブランドー。
石仮面の力を使い、さっき倒した亡者たちを生み出す邪悪の化身、吸血鬼となった男だ」
波紋戦士! 石仮面! 亡者たちを生み出す邪悪の化身!
普段なら当然笑い飛ばす類の言葉の数々。
「しかし目的地に着く前に、こんな状況に陥った。
どういう手を使ったのか…我らが来るのを察知して、ディオが罠を貼ったに違いない…。
あの眼鏡の男も、亡者には見えなかったが、それでもディオの手下の1人と見て良い。
多くの人間を巻き込み、混乱に落とし込んで、我らを分断して倒そうというつもりなのだろう」
まったく、ハリウッド映画ばりの妄想だ。
言っていること全てが子供じみてばかばかしい。
と、いつもなら相手にしない。こんな、漫画か映画の見過ぎでトチ狂った様なことを言うイカレ男なんか、無視するのが一番だ。
しかしこの男に波紋法というパワーがあるのも、亡者が動き回っているのも事実。
ならばどこまで真実でどこまでが妄想かなど分かりようがないし…この言葉に真実が多く含まれている可能性だって低くは無い。
勿論他の可能性もある。
例えばさっきの亡者とやらが、実はこのストレイツォという男のスタンドか、或いはスタンド能力で作られた化け物で、私を騙すための芝居であった、という様な可能性も、だ。
あるにはあるが……その推測は、まだ保留でよい可能性の一つだろう。
-
「私はまず、彼らと合流したい。
ダイアー、老師、ツェペリ。…そして、まだ会ったことはないが、ツェペリの新しい弟子だという、ジョナサン・ジョースターという青年に」
波紋戦士。つまり先程の化け物を消滅させた波紋エネルギーを操り、そして山奥に篭もって修行したという体術を操る筋肉男たちとの合流。
「亡者やディオの手下がどこに居るか分からない以上、君を見捨てることは波紋戦士の誇りに賭けて出来ない。
一緒に来るかね? 無理にとは言わないが…」
「…分かった、同行させてもらうよ」
さて、私の性質、目的は、『平穏に暮らしたい』…。ただそれだけだ。
殺し合いをしろだとか、吸血鬼退治だとか、そんな馬鹿げた騒ぎは御免被りたいのが正直なところ。
しかし現状、それはどうしようもなく叶わないことくらい、私にも分かる。誰にだって分かる。
だとしたらどうするか…?
まずとにかく、目立たぬように、自ら強者と思っている正義漢についてまわり、面倒ごとをそいつに全部引き受けて貰う。
これは、そんなに悪くはない指針だろう。
いざとなれば、波紋戦士だろうと亡者だろうと、私の『キラークイーン』を使えば簡単に消し去れる。
出来るが、極力そんな真似はしたくない。自分の手の内がバレるかもしれない、そんな真似は。
ストレイツォについていって、こいつやこいつの仲間が、厄介な化け物や吸血鬼やらを退治してまわり、最期に残った者を纏めて爆発してやれば、言われたとおり「殺し合って最後の一人になる」なんて事も、不可能じゃないだろう。
ただ、このストレイツォ。やはり一つ考え違いをしている。
これを仕組んだのは、吸血鬼なんかじゃない。
十中八九、スタンド使いだ。
あの眼鏡の男か? それとも別の誰かか?
それは分からないが、何らかのスタンド能力を使って、私や化け物や、波紋戦士とやらを集めてきているのだろう。
だとしたら ――― この会場の中には、私以外のスタンド使いも、紛れているかもしれない。
しかし、だ。
今まできっちりと証拠を「消し飛ばして」きた私をスタンド使いだと知る者は、父以外に誰も居ない。
勿論、杜王町で何人もの人間を、密かに殺めてきた殺人鬼だという事を知る者も居ない。
その点で言えばいつも通りに目立たぬようにしていれば、それでいいのだ。
気がかりなのは ――― 私がここに連れてこられる前に買ったサンジェルマンのサンドイッチ。
その袋の中に入れていた『彼女』――― 美しい手首の持ち主だったが、そろそろ匂いがきつくなり始めていた彼女 ――― の指に、私がプレゼントした指輪が填められている、という事だ。
あれはどこにある? 誰かがあれを手に入れていたら―――なんとかして始末しなければならないし ――― 眼鏡の男か、私たちを浚ったスタンド使いが持っているというのなら、やはり当然、始末しなければならない。
◆◆◆
殺人鬼は密かに笑う。
この会場の中に、彼が連れてこられたより未来の時間において、彼と戦い、彼を打ち破った『黄金の精神』を持った男達が居るという事実を知らずに。
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【サンジョルジョマジョーレ教会(D-2)・1日目深夜】
【吉良吉影】
[スタンド]:『キラークイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品、不明支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:静かに暮らしたい
1.些か警戒をしつつ、無力な一般人としてストレイツォについて行く。
2.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
※外見は『川尻浩作』ではなく、初登場時の『吉良吉影』のままです。
また、4部主要キャラのうち、杉本玲美以外と面識はありません。
【ストレイツォ】
[スタンド]: なし
[時間軸]:JC4巻、ダイアー、トンペティ師等と共に、ディオの館へと向かいジョナサン達と合流する前
[状態]: 健康
[装備]: マウンテン・ティムの投げ縄@Part7 STEEL BALL RUN
[道具]: 基本支給品、不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:対主催(吸血鬼ディオの打破)
1.ダイアー、ツェペリ、ジョナサン、トンペティ師等と合流する。
2.吉良吉影等、無力な一般人達を守る。
※ペイジ、ジョーンズ、プラント、ボーンナムの支給品と首輪は、いくつかは壊れた壁から飛び散って運河に落ち、
いくつかは壊れ、いくつかはサンジョルジョマジョーレ教会の床などに転がっているかもしれませんが、吉良、
ストレイツォ共にそれらを確認しては居ません。
-
以上、
【吉良吉影】 【ストレイツォ】
のSSでございます。
予約スレの方でうかつにも見落としていたため、
(ペイジ)(ジョーンズ)(プラント)(ボーンナム)
の該当部分に関しては、本投下するとした場合別のキャラを予約し直して差し替える、
という前提で、ひとまず置きまして。
問題点、は、吉良の参戦時期です。
吉良の初登場回を参戦時期設定した場合、彼はまだ承太郎達に追いつめられ、
エステ・シンデレラで通りすがりの川尻浩作の顔を手に入れ成り代わっていません。
つまり、『時は止められても』 において、川尻しのぶが「見た」と言っている、夫、
川尻浩作の姿は、少なくともこの吉良ではない、という事になります。
この点に関して、「それはどーかと」「いや、やりよーはあるしOKじやね?」
等々、ご意見を頂ければ、ということでの、仮投下で御座います。
一応、僕は僕なりに、この展開を踏まえた上でのネタは、ちょっと考えては居ます。
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血管針四兄弟人気すぎワロタww
は置いておいて、
川尻吉良についてですが、「やりよーはあるしOKじゃね?」という意見です。
◆ZAZEN/pHx2氏も特に展開を強制しようという意図はないと思いますし、
最悪見間違いとかでもいいんじゃないかなーとか言ってみたりして
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川尻吉良については問題ないと思います
血管針の代役はワンチェンかドゥービーが適任?ていうか吸血鬼人気すぎるだろw
吉良について指摘です。その時期の吉良なら、『スタンド』『スタンド使い』等の知識はほぼありません。
自分以外のスタンド使いと出会ったのは重ちーが初めて、スタンドという言葉を知るのもその時です。
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ご意見有り難う御座います。
吉良参戦時期についてはこのまま、血管針四兄弟の部分の差し替えと、 >>34 氏ご指摘のスタンド関連の部分など、
いくつかを修正してから、改めて追加予約&投下させていただこうと思います。
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ファニー・ヴァレンタイン。
第23代アメリカ合衆国大統領にして、スティール・ボール・ランの影の支配者である。
『聖人の遺体』を集めてアメリカ合衆国を繁栄させる、という目的で『遺体の一部』を持つ人間を付け狙っていた。
奴自身、スタンド使いである。
スタンド名は『D4C』。
無数の平行世界を作り出し、逃走はもちろん、平行世界の俺と『基本世界』の俺が出会えば消滅するという一撃必殺のスタンド能力だ。
もちろん、俺、『Dio』ことディエゴ・ブランドーも『左眼球』を持っていたおかげで奴に狙われることになってしまった。
だが、ホット・パンツとの共闘の末に、奴は列車の中から突き落とされて死んだ。確かに俺は殺したはずだ。
その時に俺は真っ二つになって死んだはずだったんだが……
見ての通り、俺は生きている。完全な健康体だ。
どうやって俺の体を治したかは知らないが、この世界自体は大統領、そして『D4C』の能力に違いない。
奴が俺を平行世界、それもかなり遠い世界に引きずりこんだらしい。
ということは、ホット・パンツ、ジャイロ・ツェペリ、そしてジョニィ・ジョースターもいる可能性も高いだろう。
俺は『基本世界』に帰ってレースに優勝しなければならない。
ジョニィ達を見つけ、いや、あの会場にいた人間達の中にもスティーブン・スティールを殺したいと思う奴はいるだろう。
あの見せしめ3人は、俺は知らないがかなり影響力の有る人間なのだろう。
そいつらを利用し、大統領の居場所を暴く。
きっとこれがラストチャンスだ。
さて、俺も行動を始めるか……
★
-
「一体ここはどこなんだよッ!クソッ!訳わかんねーよ!クソッ!クソッ!」
俺はヴェネツィアに向かってたはずなのによぉーッ!
向かってたはずだっつーのに一体ここはどこなんだぁ!?
全く何もかもが訳が分からねぇ!
…異常事態だ!……クソッ!
「……クソッ。ムカつくが仕方ねぇ……。地形把握だけはしておくか……。」
『ホワイト・アルバム』を使う案もあったのだが、肝心の時に解除されたのでは意味がないと考えた彼は、歩く、という選択肢を取った。
もちろん、冷静になる意味も込めてである。
彼はこのような閑静な住宅街は見たことも無かった。
それもそのはずである。
ここは、日本のM県S市杜
王町、つまり、彼が普通に生活する上で来る事などあるはずも無い『極東』であるのだから。
彼は1つの気配を感じ取った。
暗殺者の危険察知は時に恐ろしい物である。
「ん?後ろを付いてきてるのは誰だ?止まれ!……止まれっつってんだよボケが!」
彼がここまで自信に満ち溢れている事には理由がある。
彼は、自身のスタンド、『ホワイト・アルバム』の防御性能と移動性能の高さを把握しているのだ。
暗殺者たる者、自身のスタンドの性能くらいは把握しておかなければならない、というのは『その業界』では常識である。
だが、それは驕りではない。
『ホワイト・アルバム』の耐久力、持続力、そういったマイナスの面まで全て把握している事が彼の自信へと繋がっている。
「勝手に尾行したのはすまない。俺は君と話がしたいんだ。」
「あぁ!?コソコソ尾行してきて『話がしたい』!?虫が良すぎんだろーがよぉ!」
「すまないと言っているだろう。唐突だが、俺に協力して欲しい。君からは人を殺してきている雰囲気がするんだ。人を1人殺すのを手伝って欲しい。」
「人殺しねぇ。俺に俺にメリットさえあれば、考えてやらなくもねぇな。」
★
-
元々、果たすべき目標が無かった彼に対して、この協力要請は良い道楽になる。
彼の心の内は決まっていた。
「君へのメリットか。難しいな。」
「ん?何だあの壁はよぉ!おい!お前!その話はいったん保留だ!走るぞボケ!」
「ん?何を言っているんだ?」
「良いから走るんだよ!」
やはり、彼の暗殺者としての危険察知は正しかった。
“ガオン”
「クソッ!スタンド攻撃だ!周りの民家が抉られていく!」
「君のスタンド能力は走れるかい?」
「あぁ!?当たり前だボケが!」
「それなら構わない。」
「こいつから逃げる!」
「そのために協力する。」
「「利害は一致した」」
「ホワイト・アルバムッ!」
「スケアリー・モンスターズッ!」
“ガオン” “ガオン” “ガオン”
走った。
辿り着いた先は……
……ドレス研究所
「そういえば君の名前は?」
「ギアッチョだ。お前は?」
「『Dio』だ。よろしく。」
『Dio』が殺そうとしている人物の強大さをギアッチョはまだ知らない……
町を抉り取っていった敵の崇拝する人物が、自分と同じ名を冠する者だという事を『Dio』はまだ知らない……
【C-7・杜王町路地・1日目 深夜】
【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:???
[状態]:???
[装備]:???
[道具]:???
[思考・状況]
基本的思考:???
【B-6・ドレス研究所・1日目 深夜】
【ギアッチョ】
[スタンド]:『ホワイト・アルバム』
[時間軸]:ヴェネツィアに向かっている途中
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本的思考:Dioを手伝う
1:何なんだよあの敵はよぉッ!クソッ!クソッ!
2:Dioは信用してもいいかも…
【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本的思考:大統領を殺す
1:あの敵には会いたくないな
2:ギアッチョは信用してもいいかもしれない
3:ギアッチョのスタンドェ……
-
やはり勝手がわからない……
ご指摘どんどんお願いします
-
すみません
追加です
【備考】
ギアッチョはファニー・ヴァレンタイン大統領の容姿とスタンドを知りました。
ディエゴ・ブランドーは暗殺チーム、ミスタ、ジョルノの容姿とスタンドを知りました。
あと、状態に疲労小を追加したいと思います
-
内容は全然問題ないと思う
ただ、「何だあの壁は?」について、壁がガオンされているのは脳内補完できますが、
実際に壁に穴が開いていることを描写したほうが、読者に状況が分かりやすくなると思います
別にそのままでも勢いで読めるので参考程度に。
逆に文脈で判断できなかったのは、ディエゴの状態表の思考3です
ギアッチョのスタンドに対してどのような気持ちを持っているのか、明記するのが無難かと思われます
氏の真摯な姿勢には敬意を払えます
日をあけて見直してみると書き直した方が良い所等が見つかったりするので、仮投下したあと数日たってから本投下でも良いと思いますよ
-
ありがとうございます
やはり難しいですね
改良してきます
-
>>36
ディエゴの考えてることの転換が早すぎ。
・主催(のふりをしている)スティールと大統領の間には確執がある
・(大統領と殺しあっていたのに)体が治っている
・ディエゴは大統領を殺したと思っている
・一度に大勢が巻き込まれた(D4Cの能力とは矛盾)
→実際、黒幕は大統領だけどそれに気づけるほどの知識がディエゴにそろっているとは思えない
状態表と備考に関して
二人とも簡単に他人を信用する性格とはいいがたいです
どのような会話を経て信用するに至ったか、
(相手の頭の回転が速いところ、とか、的確な表現をするところ、とか、なんでもいいんです)
どの程度までの情報を伝えたのか、その辺りの描写を増やした方がいいと思います
ディエゴの説明を考えると「大統領を殺し俺も死んだと思っていたが、殺し合いに巻き込まれていて、黒幕は殺したはずの大統領なんだ」です
ギアッチョにしてみたらつっこみどころ満載でしょw
ギアッチョも仲間である暗殺チームの情報をどのように伝えたのでしょう?
「こういう見た目の奴は仲間だから殺さないでくれ」?
ミスタとジョルノについても「即、殺していい」と「敵だから警戒するように」では情報を伝えるにしてもディエゴの受け取り方が変わります。
ジョルノは見せしめで死んでるはずだし
詳細を省いて後続の方に幅を持たせるのも大事ですが、
「なぜそう考えるに至ったか」(知識の幅、信条、他人の影響等)
これだけはきっちり描写した方がいいと思います
-
やはり批評スレも立てましょうか
長くなるかもしれないですし
氏の作品を通して感じたのは、少し会話文のみでのストーリーの進行が多すぎる気がします
もう少し地の文を追加して、描写に幅を持たせては?
三人称の客観視点でも、一人称の主観してんでもいいので
-
「ブッ立てる」と心の中で思ったならッ!
そのときスデにスレ立ては終わっているんだッ!
……ということで作品批評スレ立ち上げました。不備がありましたらご意見ください
-
「ブッ立てる」と心の中で思ったならッ!
そのときスデにスレ立ては終わっているんだッ!
……ということで作品批評スレ立ち上げました。不備がありましたらご意見ください
-
『自作自演』って言葉があるじゃない?
アレって、なぜか知らないけど悪いイメージで使われることが多いんだよね。
あまりやりすぎると、『えっやっぱりこれって自演合戦だったの?』なんて言われるし。あ、心当たりあるなら気を付けてよ。
でそれが……あ〜、いやいやその話じゃなくて。なぜ自作自演が悪いイメージになってしまうのか?って事だ。話が脱線するところだった。
多くの人が『そうだよ悪いイメージだよ』と言うと思うけども、この解釈は間違ってると思うんだよ俺は。
だってホラ、生物界を見てみたらどうよ?石に、木の枝に、あるいは死体となった自分を演じて敵を欺く。そういう生物たくさん居るでしょ?彼らは悪い?
最近なんかはこの『自作自演』を名前に入れた格闘家も……あぁ、今はプロレスラーだっけ、いるじゃん。彼に非はあると思う?いや八百長とかじゃなくて……ないでしょ?
で、まあ何が言いたいかってぇと、つまり『適材適所』だと思うのよ、俺に言わせりゃね。
さっき話した……あ、枝に擬態の方。アレなんかは進化の結果そうなったんだから一生をかけて自作自演するんだろ。やめろって言ったってやめられないし、やめたらすぐに死んじゃうだろうね。
で、まあ『適材適所』って言えばみんなも分かるでしょ、スタンドの強い弱いの概念。アレとまったく同じさ。そんなもんは無いって事。
生き残るために、勝つために必要なら迷わず自作自演するべきだ。時にはそれが最強にもなりうる。もちろん使いどころが悪ければ最弱の一手だけども。
あ……この『最強』の話もまたいずれするつもりだから。とにかく今回は『自作自演』についての話をしよう――
***
「ハァーッ……ハァッ……」
肩で息をする少年の名はジョルノ・ジョバァーナという。
なぜ彼はバトル・ロワイヤルが始まって間もない内からここまで疲弊しているのか?
答えは数十分前に遡る。と言っても、このゲームに巻き込まれ、且つそれが開始される前……という奇妙な時間が原因だ。
スティーブン・スティールがゲームを開催したあの場において、幸か不幸かジョルノは集団のほぼ先頭にいた。
悪魔の所業と言っても過言ではない彼のゲーム説明を聞きながらいつでもスタンドを叩き込めるように構えていたジョルノの目が一瞬にして驚愕の色に染まる。
スポットライトの下、目の前に現れたのは間違いなく自分自身であった。頭脳ではなく、体感で理解できた……理解してしまった。
そしてその直後、ボスッともボムッとも言えぬ音で自分の身体がまるでスポンジのようにちぎれ始めたのだ。吹っ飛んだ身体の部品は塵となって消えていった。
『目の前の』ジョルノに変化は無いように見えるが背中の部分からちぎれているのかも知れない。一方自分の方は足元から。たまらず崩れ落ち、スタンドも出せなくなる。
説明を聞き終え、全く違う場所に飛ばされるまで傷を負いっぱなしでいたにも関わらず意識を失わなかったあたりは流石ジョルノだと言ったところか。
さて、集団の先頭にいたことを不幸とするなら、ジョルノに存在した幸運はこのあとに起こる。それでプラスマイナスゼロとでも言いたいのだろうか、主催者は。
まずは這いつくばっているよりは遥かに楽な姿勢で飛ばされたこと。そして、コップにスプーン。その気になればテーブルまで、ありとあらゆる物品が――つまり身体の部品の元が大量にある場所に飛ばされたこと。
彼はあるカフェの――地図で言うならばB‐2、ダービーズカフェの――座席、その一つに飛ばされていた。
自分の身に起きた状況はどうあれ、現在はこの幸運を生かさない同理はない。早速治療を開始する。まずは足から。次いで血液の補充、腕に肩。切り飛ばされた身体はすっかり元通り。
とはいえ、いきなり大量の怪我を負い、その状態でスタンドを行使したジョルノは疲弊した……と、こういった経緯があったのだ。
「ハァーッ……ふう……」
「よう、ケガはもういいのか?」
-
呼吸が落ち着いてきた頃、不意に背後から声をかけられた。治療に専念していたから周囲の警戒を怠っていた、なんてのは言い訳にしかならない。
命の危険を感じたが、相手が声をかけてきたことから視界に入った相手を無差別に殺す人間ではないことがわかる。そして――
「その声は、ミスタですか?」
「おっと、振り向くな。いくつか質問に答えてもらってからだ」
「わかりました……質問をどうぞ」
声の主は彼の同僚、今では部下のグイード・ミスタに他ならなかったが、彼は即在の再会を拒否。いくつかの尋問を要求してきた。
当然といえば当然の権利。生殺与奪は自分にあるという有利な立場をキープしたままの質問が始まる。気付けば彼のスタンドが周囲に浮かんでいるのも確認できた。
「あまり視線を動かすな。さて質問その1。お前の名前とスタンド能力は」
「ジョルノ・ジョバァーナ。ゴールド・エクスペリエンスと言う名のスタンドを持っています。能力は生命を生み出すこと」
「動きはゆっくりだ。その位置で出してみせろ――スカートをまくるようにゆっくりとな」
「はい、『ゴールド・E』……どうですか」
「よし、ひっこめろ」
スタンドの出し入れに疲労は感じなかった。つまり疲弊したのは単純に体調の問題であり、精神面でも問題はないと自己分析するジョルノ。
その冷静さをミスタが確認できたのかどうかは定かではないが、彼は即座に次の質問に移る。
「では質問その2。さっきお前は俺の名をミスタだと言ったが、その理由は」
「当てずっぽうではない、という証明ですか」
「余計なことはいいんだ、さっさと答えな」
「イタリアのギャング組織・パッショーネに所属するブローノ・ブチャラティ、僕はそのチームの新入りとして入団しました。
その際にブチャラティに紹介されたチームの仲間、その中にグイード・ミスタがいました。その声を覚えています」
その後自分達がどうなったかを説明するのは省いた。今話すべきでは無い、と感じたのは尋問されているからというのもあるし、ゆっくり話す機会など後でいくらでも設けられるからだ。
「なるほど、確かに俺のことを知っているジョルノだと分かった――おいまだ振り向くな。
質問その3。ゲーム開催とかいうあの場で死んだ3人のうち、金髪だったアイツは誰だ。一緒に死んだ二人の男との関係は」
「まず、帽子とリーゼントの男について。あの二人の事は僕も知りません。
そして金髪。あれは……ジョルノ・ジョバァーナです。理由は分かりませんが僕がもう一人いた、ということになります。
鏡とか変身とか、そういう能力やトリックではないと思います」
「そこまで聞いてねえ。というか今から聞く……なぜあれが自分自身だと思う」
重要な質問である。自分に分かりうる、あるいは感じた全てを話さなければならないし、かと言って推測ばかりで話を進めるとそれが間違いだったときに問題になる。
まして相手はミスタだ。判断力や行動力はあれどお世辞にも頭が切れるとは言いにくい。ジョルノは慎重に言葉を選ぶ。
「僕が僕を――死んだほうの僕を――目で見た瞬間に『あれは僕だ』と感じました。頭で、というよりは心で。
そしてその瞬間、僕の身体がスポンジケーキの様にちぎれ始めたんです。向こうの僕に異変があったかは確認できませんでしたが。
これは推測ですが、例えば時間を行き来できるスタンド使いが『未来の、あるいは過去の僕』を連れてきた場合『今の僕』と出会ったらその存在が吹っ飛んでしまうとか――そういった理由で身体がちぎれたんだと思います。」
「なるほど。それで今までスタンド使って治療をしてたって訳か。よし振り向け」
振り向いた先にいたのは間違いなくジョルノの知っているミスタだった。その指の間にはカフェから拝借したであろう皿が何枚か挟まっている。銃は持っていなかった。
「ふむ……正面のツラもジョルノだな。では最後の質問――ジョルノ・ジョバァーナならこの状況、どうするッ!?」
言うが早いか、彼は持っていた皿をブン投げる。スタンドを行使して対処してみせろということか。
皿の起動は様々。もともと投げるために作られたものではないし、ミスタに皿投げ選手権優勝者というスキルがある訳でもない。
だが、その起動を正確にスタンド・セックスピストルズが補佐する。狙いも威力も申し分ない凶器の食器がここに完成した。
「ジョルノならッ!」
「こんな皿全部ッ!」
「蛙とか花とかッ!」
「そういう物にッ!」
「変えれるだろッ!」
「やってみろよッ!」
「「「「「「イイイイィィィィィーーーーーーーハアァァァッッッ!!!」」」」」」
-
一斉に蹴り出された皿が六枚。本体のミスタはジョルノの挙動を見逃すものかと凝視して姿勢を崩さない。
一枚目、右拳で叩き落とす。床に小さな花が顔を出す。
二枚目、振り抜いた右腕を戻す勢いで裏拳。壁に叩きつけられたカエルがゲッと小さい悲鳴を上げる。
三枚目、左手で払いのける。空中でハエに変化したそれはかつて置かれていた棚に到達すると元の皿に戻った。
四枚目、腰を捻った勢いを乗せ右手でひっぱたく。皿が『イテッ!』と呻き声を上げる――え、声を?
慌てて五枚目と六枚目の皿は左右の手でそれぞれ受け止めた。ミスタの方も驚きの色を隠せない。
「これも……なにかのテストですか、ミスタ?」
「い、いや――俺はテーブルにあった皿をひっつかんで投げただけだが……」
「スぅイぃマぁセぇンンン……そぉれぇはァァァワぁタぁシぃぃでぇ……すゥゥ」
ゆっくりと……皿が喋り出す。この症状はゴールド・エクスペリエンスの能力によって感覚が暴走しているためだ。ジョルノが本物だという証明でもある、がそれどころではない。
ギャングの二人はその様子を黙って見守る。もちろんすぐに攻撃できる体勢で。やがて皿に手が生え足が伸び――ひとりの人間が完成した。殺気を感じたのか、両手を高く上げたまま話し始める。
「ハァハァ……失礼しました。私の名前はヌ・ミキタカゾ・ンシと言います。
能力……あなたがたはスタンドと呼んでいましたがそれで良いのでしょうか、物品に変身することができます。
私はここで隠れて知り合いの方を待っていようと思ったのですが……そちらの方に投げられてしまって」
それからはジョルノとミスタがミキタカに対し先と同じような尋問をすることになったのは言うまでもない。
待っていた仲間の名前、能力の詳細、この場において自分がどう行動するつもりなのか。そして――
「で、お前は結局なんなんだよ」
「ですから……何度も言ってる通り私は宇宙人なんですって」
「まあまあ。とにかく全員の疑いがもう少しハッキリと晴れるまでじっくり情報交換しましょう。尋問というよりは自己紹介ですね。
そういえば皆さん支給品はどうでしたか?僕はまだ見てないんですが――」
***
自作自演の話、どうだった?とは言っても『自作自演』と言い切ってしまうと少々語弊がありそうだけど。
主催者によって呼び出され、自分が役者ではないかと疑われたジョルノ。
物品を演じて、あるいは自分が宇宙人だと演じて――ん、こっちは本当か?――突如現れたミキタカ。
それを混乱しながら見てきたミスタ。
どの人間もとった行動に間違いはないと思う。このうち誰かが抜けた二人でのやりとりだったらもう少し話し合いがスムーズだっただろうな、そんな程度の話だろう。
もちろん、『自演』をしていくのはこの三人、この一瞬だけに限った話じゃないだろう。それはまたその時にね、それじゃ――
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【B‐2 ダービーズカフェ店内 / 1日目 深夜】
【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
[スタンド]:『アース・ウィンド・アンド・ファイヤー』
[時間軸]:JC47巻、杉本鈴美を見送った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(ランダム支給品1〜2、確認済、未開封)
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない、ただし未確定
1:目の前の二人(ジョルノ・ミスタ)との自己紹介・情報交換をする
2:仗助サンが……死んだ?
[備考]
基本的思考『ただし未確定』とは、ゲームには乗らないけど明確な行動方針(行き先など)を決めていない、という意味です
【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(ランダム支給品1〜2、確認済、未開封)
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない、ただし未確定
1:目の前の二人(ミキタカ・ミスタ)との自己紹介・情報交換をする
2:死んでいった自分は何者なんだ?
[備考]
基本的思考『ただし未確定』とは、ゲームには乗らないけど明確な行動方針(行き先など)を決めていない、という意味です
【グイード・ミスタ】
[スタンド]:『セックス・ピストルズ』
[時間軸]:JC56巻、「ホレ亀を忘れてるぜ」と言って船に乗り込んだ瞬間
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(ランダム支給品1〜2、確認済、未開封)
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない、ただし未確定
1:目の前の二人(ミキタカ・ジョルノ)との自己紹介・情報交換をする
2:死んでいったジョルノは、目の前にいるジョルノは何者なんだ?
[備考]
基本的思考『ただし未確定』とは、ゲームには乗らないけど明確な行動方針(行き先など)を決めていない、という意味です
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以上で仮投下終了です。一応ageときます。
ご意見いただきたい部分は主に状態表。
・ジョルノが5部終了直後からの参戦
→成長するスタンドを描きたい人がいる?ならもっと早いうちが良いか?
→レクイエムは?(個人的にはレクイエムは必要に応じて矢を刺して発現するものだと思っていましたので)
・ただし未確定 ……という3人
→これから次の彼らのSSまでの間に議論するでしょうと言う脳内補完を読者に強制してるのではという懸念
→乗らないの確定なんだからわざわざ書かなくてもよくね?と言われないだろうか
・早くもメインキャラ(と宇宙人)が合流
→もう少しキャラ減らす方が先じゃない?と言われそうで不安。ミキタカは1stではブチャと一緒だったしギャングと縁があるとか、そのへんも
→情報交換したことを明確に描写しておくべきか否か(把握してるスタンド使い、参戦時間軸のずれの考察等)
その他の指摘、誤字脱字等々、ご意見お待ちしております。それではまた本投下の時に。
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投下乙です
別にメインキャラの合流はいいと思います。
100%他人同士のみのエンカウントというのは違和感ありますし、こういうのも必要でしょう。
参戦時期等についても問題ないかと。
ミキタカの状態表ですが、仗助サンは死んでないですよ。
俺もプロット練っている間に同じ勘違いしてしまいます。
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ジョナサンとナランチャで予約した者です
書き手になるのは始めてで、自信が無いのでこちらに投下しようかと思います
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「ツェペリさんの死……遥かな国からの3人……蛇を操る屍生人……殺し合い……」
闘士達が戦った建造物を背に、1人の青年が立っていた。
190センチを越えるがっしりとした体、それでいて穏やかな目元は、彼を「紳士」と呼ぶには充分だろう。
何をする訳でもなく呆然と立ち尽くし、うわ言の様に自分の身に起こった事を口にしていた。
そして思考は、最初に殺された3人の元にたどり着く。
自分とよく似た青年、白いコートを着た男、金髪の少年
彼にはあの3人が他人の様には思えなかった。好みの音楽どころか、名前も知らない筈なのに。
彼の中に流れる『血統』が、そう告げていたのだ。では、一体誰なのだろう?
頭の中を何度も反芻させ、記憶の糸を手繰るが、答えは出てこない。
そして3人の首から、赤い花が咲き、血が止めどなく溢れる。
彼はある事情で、数多くの血を見てきた。大事な人を何人も失った。
悲しみに涙を流す事はあれ、それでも戦わなければならないと、己を奮い立たせてきた。では何故だろう
その血を見た時、彼の心は深い悲しみに包まれていたのだ。
心にポッカリと穴が空いた様な、自分の一部を引き千切られた様な、そんな感覚がしたのだ。親や師を殺された訳ではないのに、知人の間柄でも無いのに。
それでも、彼の『血統』は、深い涙を流していた。
そして告げられた、『殺し合い』―――
揺れる心を抑えようと努めつつ、彼は現状を纏めようとする。
「あの初老の男性……石仮面に関わりのある者だろうか?
だとすればこの殺し合いの黒幕はディオ?
それとも、全く別の何か?」
いくら考えても、答えは出る筈もなかった。
水面に映る月の様に、つかむ事はない、蜘蛛の糸を這い回る思考。
「断定は出来ないが、スピードワゴンやダイアーさん達もこの場にいるかもしれない、エリナさえも……」
背中を冷たい物が伝う。また大事な人を失ってしまうのか ……恐怖が彼を襲った。
しかし、青年の内に宿る『黄金の精神』は、決して揺るがない。
「人が人を殺していい道理はないッ!
吸血鬼であろうと人間であろうと!決して許される物ではない!
この殺し合い、必ず打ち砕く!」
それは、紛れもない宣戦布告。
数奇な因縁の始まりを握る青年、ジョナサン・ジョースターは、高らかに声をあげた。
「それにしても……」
振り返り、背後の建物を見つめる。
古代ローマの象徴たる闘技場、コロッセオは、考古学者であるジョナサンの興味を惹くのに十分な物だった。
「なんと巨大な建造物だ……
まわりの継ぎはぎの様な地形に違和感はあるが、歴史を感じさせる……」
無論、他の参加者を探すというのもある。
しかしながら、僅からながらの知的探求心も否めない事実。
一歩ずつ、一歩ずつ……ジョナサンはコロッセオに入っていった。
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「畜生ッ……ジョルノオオオオオオオ!!」
一片の光も無い暗闇。1人の少年が顔を腫らして泣いていた。
名をナランチャ・ギルガという。
あどけない少年にも見えるが彼は『ギャング』だ。尤も、昔の映画の様な、スーツにボルサリーノ帽子を被り、銃弾の雨あられをくぐり抜ける物とは少し違うが。
端的に言えば彼は『組織』を裏切った。己と似た境遇を持った少女の為に、信ずる仲間達と共に。
彼は、信頼した者に強く心を寄せる。例えそれに裏切られた過去があったとしても、それが揺らぐ事はない。
しかし、大事な人を失う―――考えたくも無い事だった。
人が死を間近で見てきた。殺した事もあった。それでもだ。
「組織」のボスへと迫る旅、その最中で大事な仲間の1人である レオーネ・アバッキオを失い、面白い新入り―――ジョルノ・ジョバァーナの首が目の前で爆ぜた。
彼は、こみ上げる悲しみを抑えられなかった。
「畜生ッ!畜生ッ!」
乱暴に、何の考えもなく、壁を何度も蹴り続ける。
元来、考える事が苦手な彼は他に思いつかなかったし、なにより他の事を考えたくなかったからだ。
悲しみから逃げる為に、忘れる為に、彼の足は、この不毛な行為をやめようとしない
ガンッ! ガンッ! ガンッ!
足に赤みがさし、 痛みが思考に干渉する様になった頃に、その行為は終わりを告げる。落ち着きを取り戻した思考は、状況を纏めようとする――
殺し合い――望みを叶える――アバッキオの胸に空いた穴――ジョルノの残骸――
駄目だった。いや、最初から不可能だった。
仲間を家族に――拠り所にしていた彼の頭は、その死を処理しきれなかった。
「うあわああああああああああああ」
動物的な、考えの無い行動。心の負荷を抑えようとする本能。
スタンド、「エアロスミス」も精神の消耗で出せず、半狂乱になったナランチャは、勢いのままに走り出した。
-
「本当に素晴らしい……こんな時で無ければもっとゆっくり回りたいくらいだ……」
結局のところ、ジョナサンはコロッセオを堪能していた。
勿論、水を使った波紋による警戒は怠らなかったが
考古学者の血がさせるのか、目線は様々な場所に飛び交う。
意中の人、エリナと一緒に行きたい。そんな事を考えだした矢先、水に波紋が起こった。
「このスピードは……走っているのか?」
怯えているだけかもしれない。まともな思考を持たない屍生人かもしれない。戦わねばならないのであれば……
ジョナサンの目が、鷹の様に鋭くなる。父親や師の死を背負い、吸血鬼ディオと戦う、『波紋戦士』ジョナサン・ジョースターの目だ。
襲われても対処できる様に、両の腕に力を込めて、波紋を練る
それから何分もしない内に、激しく地面を踏みならす音が聞こえてきた。
果たしてそれは、あどけなさの抜けない少年であった。
罠かもしれない。そんな事は一瞬も考えなかった。
『紳士』としてのジョナサン・ジョースターは、何の躊躇もなく少年の真正面に踊り出る。
「頼む!止まってくれッ!」
「退きやがえれええええええええええ」
「頼む!」
「退けて言ってんだぜオレはよォーッ!ブッ殺すぜこの野郎ォオオオーーーーッ」
精一杯の力をこめての体当たり、しかし、ジョナサンの丸太の様な巨体は動かない。
「畜生ッ!はやく退けよォーーッ!
ブチャラティもミスタもトリッシュも殺される!俺はヤダよオオオオオオオオオ」
この時ジョナサンは全てを悟った。この少年はすでに「被害者」なのだ。
恐らくはあの3人……どこかで会った気がするあの3人の中に、知り合いがいたのだ。
少年の悲しみは、想像を絶する物だろう。ジョナサンは、改めてこの悪夢を引き起こした主催者に対して怒りが沸いた。
それでもまずは目の前の少年と話をしなければならない。
ジョナサンは、意を決して口を開いた
「僕は父を殺された事がある……師を殺された事がある……
とても悲しくなった……今の君みたいに、何をしていいかわからなかった……」
心に刻み込む様に、ゆっくりと
「それでも、僕は戦った。悲しみを力に変えて、精一杯に……
それしかなかった。と言った方がいいかもしれないけど……」
重く、それでいて穏やかに声を震わる。
「悲しい時は思い切り泣いていい、人間として当たり前の事だ
ただ、これだけは信じて欲しい……」
ジョナサンが波紋を流す。
太陽の様に暖かく、体を駆け巡ったそれは
黄金の輝きを持っていた少年を思い出させるのに充分な物だった。
「僕は……君の味方だ」
「う……うわあああああああああああ」
――凍えきった心に、太陽の光が射した――
-
「本当に辛かっただろう……大丈夫かい?」
「最初はスゲー悲しくなった。死んでもいいと思っちまった……
でも、今は違う!生きる為に戦うぜ!」
ジョナサンと意気投合したナランチャは、波紋の影響も手伝い、自分を取り戻す事が出来た。
そこから行われた情報交換。
互いの知人。能力……
名前だけならまだしも、仲間のスタンド能力まで話しているのは、ジョナサンにジョルノをダブらせたナランチャが大きな信頼を寄せているからだ。
ナランチャの方も、屍生人や吸血鬼といった話に最初は半信半疑であったが、拉致されての殺し合いという非現実的な状況下に置かれていることと、ジョナサンの真摯な姿勢を前に、全てを信じる事にした。
「『恐怖を我が物せよ』僕の師が言っていた言葉だ……
人間の素晴らしさは勇気の素晴らしさにある……恐怖と向き合い、僕を信じてくれて本当にありがとう」
「俺、頭悪いから今の言葉の意味はよくわかたねえけどよォー
ジョナサンに助けられたって事だけはよくわかるんだ。だから恩返しがしてえ……ブチャラティ達の事も心配だけど、俺はあんたに着いていくぜ!」
その後は、取り留めない話が続いた
ワキガ臭い男がいるとか、カエルにストロー突っ込んで膨らませたとか、そんな他愛も無い話。
時間にすれば数分程度だが、彼らの仲を深めるには十分な物だった。
宴もたけなわと言わんばかりに、ナランチャが話を切り出す
「取りあえずさァー、これからどうすんのォ?
まさか冬眠したクマみたいに動かないって訳にも行かないだろ?」
「そうだね……僕たちがいるのは、地図でいうところのF-7、コロッセオの内部だ。僕も君も知り合いがいるかもしれない。とすれば人の集まりそうな市街地から探そうかと思う。
まずは、ここから近い町……杜王町というところに行こうと思っている……ついてきてくれるかい?」
「さっき行ったろ?あんたに着いていくってな!」
「そう言ってもらえるだけで嬉しいよ。それじゃあ、行こうか」
こうして、志を同じくした二人が集まった。
目指すは、殺し合いの破壊
向かうは、東の町
「そういえばさ……」
「なんだい?」
「さっきの『波紋』ってやつもそうだけどさ……
似てるんだ……髪の色も体格も全然違うのに、
ジョナサンはジョルノに、なんか似てる」
「不思議だね……僕も彼は面識が無い筈なのに、何故だか知っている様な気がした……
そして彼の首が爆ぜた時、とても寂しい気分になった……案外、君と僕も、どこかで知り合っているかもしれないね」
「ジョナサンがいたのって一体どこのイギリスだよ?
聞いた事無いぜオレ」
彼らは知らない。ジョルノがジョナサンの、厳密に言えば「首から下の」息子である事を
死んだ筈の仲間達がこの場にいる事を
そしてジョナサンの体にある星の痣。そこに秘められている 長い長い因縁の物語を
彼らは、何も知らない
-
【コロッセオ内部(F-7)・1日目深夜】
【私とあなたは友達じゃないけど私の宿敵とあなたの友達は親子】
【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者の打倒
1.他の参加者を探すため、杜王町住宅街へと向かう
2.力を持たない一般人を守る
3.(居るのであれば)仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒
4.ジョルノは……僕に似ている……?
※見せしめで死亡したジョセフ、承太郎、ジョルノに何かを感じている様です。
勿論、面識はないので、「何か引っかかる」程度の認識です
【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:エアロスミス
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
1.ジョナサンについていく、仲間がいれば探す
2.もう弱音は吐かない
3.ジョナサンはジョルノに……なんか…似てる
※確認した2人支給品の中に、波紋に役立つアイテム(リサリサのマフラー等)は無かった様です
※軽い情報交換を行いました。具体的には、1部の主要メンバー(ディオ、スピードワゴン、ツェペリを始めとした波紋使い達)
5部の主要メンバー(護衛チーム+トリッシュ、ナランチャの参戦時期の段階でわかるディアボロの情報)また、死んでいると思っているので、暗殺チームや、屍生人等については詳しい情報交換を行っていません
※味方について話しただけなので、それぞれの物語については断片的にしか話しおらず、時間軸のズレに気づいていません。
お互いの出身地程度くらいしは把握した様です
-
以上で終わります
始めてなので、勝手のわからない事ばかりですが、御指摘頂ければ幸いです
-
>>59
投下乙です。
チーム名はギャグ漫画日和でしょうか? おもしろいですね。
初投稿とは思えないウマさだと思います。
内容面に関しては問題ないと思いますが、文末に句点がない所が少し目立ちましたね。
地の文は特殊なケースを除き、「。」「!」「?」「……」「――」のいずれかで終わらせた方がいいと思いました。
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◆Osx3JMqswI氏は批評待ちなんでしょうか?
ならば少し辛口になってしまいますが、意見します。
>>36と>>37の中盤まではまったく問題ないと思いますが、二人が出会ってからの情景の描写が少なすぎると思います。
会話文のみでの進行でスピード感はあるのですが、あまりにも情報が少ないので何が起こっているのか理解しづらい場面が多いです。
お互いの心理描写がほとんど描かれていないので、なぜ協力関係になったのかもよくわかりません。
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>>60
ありがとうございます
チーム名は、その通りです。ジョジョは複雑な血縁関係多いから、出来る気がしたんですが、微妙に違います
仗助とジョルノとかなら、当てはまるかもしれませんが、どうでもいいですね。
ご指摘頂いた部分を修正し、本投下しようと思います
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仮投下します。
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◇ ◇ ◇
ら、らら、れろれら、れ、らら――
◇ ◇ ◇
-
夢であって欲しい。
そう願えど願えど、一向に目が覚める気配がない。
よもやこれは現実なのだろうか――考えかけて、私は首を振った。
そんなはずがない。
殺し合いなど夢で、起きればまたいつも通りの生活が待っているに決まっている。
疑いかけている頭を無理矢理に納得させようとしても、勝手に記憶が蘇ってくるのは抑えられない。
ありふれた一日が変わったのは、あの瞬間だ。
働いている食器屋の扉を破って、血塗れの男性が突っ込んできた。
腹部に穴が開き、左足が半ばから千切れているというのに、男は何食わぬ顔で声をかけてきた。
そのときの言葉は、一言一句違わず思い出せる。
「おい……女、そこにある俺の脚を拾って持ってこい」
状況が理解できず悲鳴を上げるしかできなかった私に、男は畳み掛けた。
「早く持って来いッ!! スチュワーデスがファースト・クラスの客に酒とキャビアをサービスするようにな…………」
次の瞬間には、視界が切り替わっていた。
周囲にたくさんの人がいて、ステージの上にはメガネをかけた初老の男性。
殺し合えなどと命じたかと思えば、三人の男性の首が飛んだ。
そしてまた周りの景色が変わり、気付けば見知らぬ街にいた。
いつも暮らしているカイロと違い、整備された道に石レンガ造りの家が立ち並んでいる。
混乱しながらもどうにか路地の外れに身を隠すと、そこで私はくずおれてしまった。
いつの間にか背負わされていたデイパックを開いてみれば、地図や食料などが出てきた。
そこからは、いままで繰り返しだ。
夢ではないのかもしれないと思いかけて、即座に否定する――ひたすらにそれだけ。
「――――っ」
危うく声をあげそうになったのを、どうにか呑み込む。
大通りに、人影が一つ見えたのである。
壁に隠れながらも、少しだけ顔を出して確認してみる。
長身に長髪で、鼻筋が細く整っている男性だった。
声をかけたくなったが、必死に自分を抑える。
一人でいることは非常に心細く、とても人恋しい、が――
本当に殺し合いが始まっていて、彼が人を殺す決意をしているのかもしれない。
そんな考えが浮かんでしまい、呼び止めるなど到底できなかった。
にもかかわらず、長髪の彼は不意に立ち止まった。
切れ長の瞳で、ある一点を見据えている。
なにをしているのだろうか。
私が抱いた疑問に答えるように、長髪の彼が睨み付けている方角から声が響く。
-
「ほう……いきなりとは、さすがに驚いた」
これまた男性の声である。
ほんの短い言葉だというのに、ひどく魅力的に思えた。
鼓膜を揺らしただけで、身体が痺れる気配がある。
怯えている心に染み込んでくるかのような、そういう感覚だ。
しかしこの声には、なぜだか聞き覚えがあった。
声の主を一目見ようと、壁から顔をもう少しだけ出して――私は今度こそ声をあげそうになった。
両手で口を押さえて、強引に自分自身を黙らせる。
声は抑えられても、心臓が高鳴るのは止められなかった。
「君は、普通の人間にはない特別な能力を持っているそうだね」
驚愕する私をよそに、男は言葉を続ける。
血塗れで私の眼前に落下してきた――あの男は。
「一つ……それをこのDIOに見せてくれると嬉しいのだが」
◇ ◇ ◇
「なぜ、知っている」
言い終える前に、マッシモ・ヴォルペはミスに気付いていた。
この質問では、自分がスタンド使いであると認めたのと同義である。
相手がなにを言っているのか分からないといった様子で、スタンド使いではないかのように振る舞うべきだった。
そんな当たり前の対応が叶わなかったのは、ひとえに動揺してしまっていたからである。
DIOと名乗った男の佇まいに、ヴォルペは目を奪われてしまっていた。
長身のヴォルペよりももう一回り背が高く、さらに肉体は鍛え抜かれている。
金色の華美な装束は、しかしDIOが纏えばとても自然に美しく思える。
ところどころに散見するハート形のアクセサリーにも、不思議と違和感がない。
衣服と同じ金色の髪は艶やかで、大きな二つの瞳は生き血のように鮮やかな真紅。
そのどれもが目を引くが――何より。
全身から放たれている気配が、とても印象的だった。
辺りに広がる夕闇よりも、さらに光がない。
暗いという単語では足りない。どす黒いと言うべきだろうか。
「なぜ、か。ふむ……どう返事をするべきか。まあいい」
ヴォルペのミスに勘付いているのか、いないのか。
DIOは口元に手を当てて思考したのち、なにか思い付いたかのように向き直る。
次の瞬間には、DIOの傍らに黄金の巨躯が出現していた。
思わず、ヴォルペは目を見開いてしまう。
間違いなく、あれこそがDIOの精神のヴィジョン――スタンドだ。
それは明らかだが、どうして自ら曝け出したのか。
ヴォルペには、まったく想像もつかなかった。
-
「やはり見えているようだな。
スタンドは、スタンド使いかその素質があるものにしか見ることができない。
こんなものは説明するまでもなく、スタンド使いならば誰もが知っていることだとは思うが……
まあなにはともあれ、だ。なにはともあれ、これでなにもおかしくはないだろう?
私のスタンド『世界(ザ・ワールド)』を視認したのだから、もはや疑うまでもない。
君は『他の人間にはない特別な能力』、すなわちスタンドを持っている。そうだろう、マッシモ・ヴォルペ?」
「――――ッ!」
スタンド名に、ヴォルペの名を知っているという事実。
それらまで、DIOは明かしてしまう。
なにを考えているのか分からない。
優位性を自ら捨てているのか、はたまたその程度で己の優位が覆らないと確信しているのか。
定かではないが、ヴォルペにはもはやどちらでもよかった。
元より、行く当てなどなかったのだ。
マッシモ・ヴォルペは、死に行く最中に殺し合いに呼び出された。
唯一信頼していた麻薬チームの仲間は、一人を除いて殺されてしまった。
生き残った一人だって、他のメンバーが死んだと知って黙っていられるタチではない。
おそらく、いまごろ始末されていることだろう。
麻薬チームの始末を命じたギャング組織『パッショーネ』に復讐するべく、当初は最後の一人を目指すつもりであった。
だが、最大の復讐対象であるパッショーネのボス『ジョルノ・ジョバァーナ』は、もう殺されてしまったのだ。
目標を失ったヴォルペは、ただ彷徨うしかできなかった。
ゆえに、DIOがなにを考えていようとどうでもいい。
八つ当たりをして憂さ晴らしができれば、もう満足だ。
仮に死ぬことになろうとも、すでに目標がないのだから悔いがあるはずもない。
「『マニック・デプレッション』ッ!」
呼びかけに応えるように、ヴォルペのスタンドが姿を現す。
そのヴィジョンは、筋骨隆々の『世界』とは対照的な外見をしていた。
筋肉などなく、かといって贅肉や脂肪に覆われているのでもなく、単純に痩せ細っている。
その痩躯にはところどころ包帯のようなものが巻かれ、一部白骨化している箇所もある。
身長が低いのもあって、十分な食事を与えられなかった子どもの行く末じみていた。
『マニック・デプレッション』が甲高い奇声をあげると、全身から鋭利な棘が飛び出す。
そして、『マニック・デプレッション』は跳躍した。
身体を覆う棘でもって肉体を貫いてやるべく。
――主たるマッシモ・ヴォルペのほうへと。
「ふむ……?」
眉根を寄せるDIOに構わず、『マニック・デプレッション』はその能力を行使する。
ヴォルペの体内で、肉が弾ける音が響いた。
ぐぁぁぁふ――と、異様な呼吸音がヴォルペから漏れる。
未だ合点がいっていない様子のDIOへと、ヴォルペは跳んだ。
ほんの一跳びで十数メートルの距離を詰め、拳を振りかざす。
『マニック・デプレッション』の能力は、生命力の異常促進。
肉体に効果を発動させれば、本来出すことのできない力を出すことも可能とする。
まさしく、『人間を凌駕する』能力である。
-
「生身のようでいて、スタンドパワーを纏っているようだな」
ヴォルペの拳を『世界』で捌きつつ、DIOは頷く。
使用者が触れようとしない限り、スタンドはスタンド以外に接触されることはない。
ただし『マニック・デプレッション』で強化したものは、能力攻撃に含まれる。
ゆえに、スタンドで触れることができるのだ。
だからこそ、ヴォルペはあえて『世界』を狙った。
スタンドに、強化させた拳の対応をさせるために。
棘を出したままの『マニック・デプレッション』が、DIO本体へと飛びかかっていく。
ヴォルペの攻撃を捌いている『世界』は動くことができず、『マニック・デプレッション』の棘がDIOを貫いた。
「終わりだ」
『マニック・デプレッション』の能力には、タガがない。
能力を調節しなければ、どこまでだって生命力を促進させることができる。
心臓を過剰に働かせて破裂させることも、内臓を過剰に働かせて消化液で内臓自体を溶かすことも、筋肉を過剰に働かせて肉体を弾け飛ばすことも――可能なのだ。
DIOの身体が波打つように蠢き、傍からでも肉体が膨張しているのが見て取れる。
しかし、それだけだ。
身体が振動するだけで、DIOの肉体が弾け飛ぶことはない。
呆然とするしかないヴォルペの前で、DIOは自分の身体を擦りながら呟く。
「なるほど。生命力を過剰に与えているワケか。
どんな相手であろうと生物であるなら、一度刺せば必ず勝てる能力だな。
だが……相手が悪かったな。私は生物ではなく、いわば君のスタンドの天敵だ」
服についた虫を払うかのような動作でいとも容易く、DIOは『マニック・デプレッション』を取り外す。
棘が刺さっていた箇所から血が噴き出すが、すぐに傷口が塞がってしまう。
ここに至ってようやく、ヴォルペはDIOの正体を悟ることができた。
「ふん……そういうことか。お前、『石仮面』を使ったな」
「ほう、アレを知っているとは。なにからなにまで驚きの連続だな」
言って、DIOはデイパックから封筒を取り出す。
封筒から一枚の紙を取り出すと、ヴォルペへと投げ渡した。
その紙には、ヴォルペの写真と経歴が纏められていた。
またスタンドについても、あくまで能力の一部に過ぎないものの記されていた。
「なんでも『パッショーネ』というギャング組織のトップが、君を始末するために用意した資料らしいが……私には関係ない。
私が惹かれたのは、そこに書かれている君の能力だ。
『麻薬を生み出す』と記されているだろう? それがとても気になってね。
実際は麻薬を作るだけの能力じゃなかったようだが、別に構わない。それでもいい。
あの能力ならば、たしかに麻薬を生み出すことも可能だろう。ならば、君に尋ねねばならない。
麻薬とは――人に『幸福』をもたらすものだと、私は思っている。
私は使用したことがないし、この身である以上は効力を実感することもできないだろうが……
それでもいくつもの文献において、麻薬とは人に多幸感を与えるものとして記されている。
だとすれば、である。だとすれば麻薬使用者とは、無敵の肉体や大金を持たず、人の頂点に立つこともなく、『幸福』を得ていることになる。
『幸福』とは、すなわち『天国』に到達することだ。『幸福』をもたらす君のスタンド能力が、その鍵になりうるとは思わないか?」
そこまで一気に言うと、DIOは頬を緩める。
鋭く尖った白い歯が、露になった。
「俺には、『幸福』など分からない」
これまで生きてきたなかで幸福を感じたことなどない。
そんなヴォルペの思いを、DIOは即座に否定した。
-
「スタンドとは、使用者の精神が形になったものだ。
実感がなくとも、幸福を願っているのかもしれない。
自分の幸福か、はたまた他人の幸福か……
もし心当たりなどなくても、そいつは君のスタンドだ。
君の精神あってのそれだ。他のなにが裏切ろうとも、スタンドは裏切らない」
ヴォルペの脳裏を過るのは、もうこの世にいない仲間の姿だった。
生まれて初めて、心を許した三人。
麻薬チーム所属の彼らのなかにも、ヴォルペが生み出す麻薬の中毒者がいた。
はたして、彼女は幸福だったのだろうか。
ふと、そんなことをヴォルペは考えてしまった。
そして彼女が幸福であったことを願う自分に、少ししてから気がついた。
「ある種……ある種だが、人を幸福に導く君の能力は『魂を操作する』能力と言える。
私に必要なのは、その能力だ。
三十六の悪人の魂を一つの身体に詰め込む。
生命力を操作する君のスタンドと、魂を抜き取る彼のスタンド。その二つがあれば、あるいは……」
自分の考えに没頭し始めたのか、DIOは一人でぶつぶつと呟いている。
しばらくして何らかの結論が出たのか、ヴォルペへと向き直る。
「私には君が必要だし、君には私を殺せない。
いいじゃないか、なにも問題はない。友達になろう」
逡巡したのち、ヴォルペは伸ばされた手を握った。
先ほど蘇った麻薬チームの三人が、幸福であったのか。
ただ、それを知りたかった。
「ではさっそく見せてもらおう、君の麻薬の力を」
DIOが真紅の瞳を路地裏へと向けると、か細い悲鳴が響いた。
そちらに誰かが潜んでいることに勘付いていたヴォルペには、特に驚きもなかった。
『マニック・デプレッション』が麻薬を作り出すのに必要な塩は、DIOのデイパックに入っていた。
付属の説明文によると、イタリア料理店『トラサルディー』御用達の逸品だという。
その一文にヴォルペは実兄のことを思い出したが、すぐに人違いだと判断した。
トラサルディーという姓は、別段珍しいものではない。偶然に一致しただけだろう。
とうのむかしに別れた兄とこのような場所で再会するとも、ヴォルペには思えなかったのだ。
塩に生命力を浸透させてから水に溶かしこんで、支給された注射器に入れる。
-
「静脈を出せ」
DIOが捕えてきた女性は、文句一つ言わずに腕を伸ばす。
彼女の額には、親指大の肉片が蠢いている。
DIOが自分の肉体を抉りとって、彼女に埋め込んだのだ。
肉の芽というそれは、取りついた相手の脳を支配して忠実な僕としてしまうらしい。
麻薬漬けにしてしまう前に、知っていることを洗いざらい吐かせたのである。
有益な情報はなかったのだが、血塗れのDIOをかつて目撃したという発言にDIOは眉をひそめた。
なんでも、彼に心当たりはないらしい。
見間違いで片付ける気はないようだが、かといってDIOはなにをするでもなかった。
女性が背負っていたデイパックの中身を確認したのち、ただ地図をしげしげと眺めている。
ただの地図ではなく、ヴォルペに支給された地下施設について詳細に描かれた代物である。
「準備ができたぞ、DIO」
「ふむ。見せてもらおう」
「それにしても、そんなに地下が気になるのか」
「なんと言うべきかな。
君も知っていたあの仮面なんだが、副作用があってね。太陽光アレルギー体質になってしまうんだよ。
日中は適当なところに身を潜めているつもりだったのだが、こうも入り組んだ地下道があるのなら、と思ってね」
「……そうか、運がよかったな。それは渡しておこう」
ヴォルペは女性の静脈に注射器を刺して、塩水を体内に注入する。
その様子を眺めながら、DIOは口角を吊り上げた。
「おもしろいヤツだな、ヴォルペ。
太陽光アレルギーというのを信じたのか?
単に、この地図が欲しいから出まかせを言ってるのかもしれないだろう」
中身が空になった注射器をデイパックに戻しつつ、ヴォルペはDIOのほうを振り返る。
「地図が欲しいだけならそう言うだろう。
俺はお前には敵わないんだから、文句なんて言うワケがない。
もしつっかかってきたとしても、力ずくでブン取っちまえばいいだけだ」
くっくと笑ってから、DIOは目を細めた。
「奇妙だとは思わないか?
君は私にとって必要な能力を持っていて、私は君の能力の天敵となる身体を持っている。
そして君は私が必要な地下の地図を配られ、私は君が麻薬を精製するのに必要な塩を配られていた。
君は石仮面のことが気になっており、私は資料に目を通して君のことが少し気になっていた。
そんな二人が、この殺し合いの舞台で偶然にも出会うなど――なにかしらの力が、働いているとは思わないか?」
「…………」
ヴォルペには、返答することができなかった。
目標を失った自分を必要とするものと早々に遭遇したことに、彼自身も違和感のようなものを抱いてはいた。
だからこそ、どう反応するべきか分からない。
麻薬中毒者と化した女性の言葉になっていない呻き声だけが、深夜の街に木霊している。
見れば、女性の膝は激しく痙攣しており、体重を支えきれずにへたり込んでいる。
地面に顔をつけて唾液を垂れ流しながらも、虚ろな瞳でDIOのことを見つめていた。
完全にトリップしているというのに、肉の芽による信奉心だけは鮮明に残っているらしい。
ヴォルペはDIOの問いには答えず、ずっと抱いていた疑問を口にすることにした。
-
「ところでDIO、どうして俺には肉の芽を使わないんだ?」
「友達に、あんなものを埋め込む理由はない。
と、そういうことを聞きたいんのではなさそうだな。
うむ。いまのが最上の理由であるのだが、他にあるとすれば――
あれは脳に触手を伸ばして侵入することで、宿主の自我を弱める。
スタンドとは、精神の力だ。
自我を弱めてしまえば、当然ながらスタンドは弱体化する。
かつてスタンド使いに埋め込んでおいた肉の芽を抜き取られたことがあるのだが、やはり肉の芽から解放されたあとのほうがスタンドパワーは上であった。
つまるところ肉の芽による支配は、スタンド使い相手に限っては好ましくないのだよ。
特に君の『マニック・デプレッション』のような、細かくスタンドパワーを制御せねばならないタイプはな。
元よりこのDIOに従う意思のあるスタンド使いに保険として埋め込んでおき、ヤツらが敗北した際になにも漏らさぬよう暴走させる――という使用法ならば、肉の芽も役に立つのだがね」
ヴォルペは、DIOを冷酷だとは思わなかった。
人の上に立つ人種とは、こういうものであると考えている。
パッショーネの先代ボスたるディアボロも、自身の情報が漏洩しないよう最善の注意を払っていた。
しかし頂点に立つ人種だというのなら、なぜ最後の一人を目指そうとしていないのか。
ヴォルペが尋ねてみると、DIOは当たり前のように言った。
「このDIOが、七十二時間以内に死ぬものか。私が生き残るのは確定している。
決まり切っているのだから、『殺し合い』における行動方針などない。
最後の一人を目指すつもりなどない……まあ、結果としてなっているかもしれないが。
『殺し合え』などと言われたから、君のように勘違いしているものも少なくないだろうが……
別に、あの老人は『最後の一人になれ』などとは一言も言っていない。
最長でも三日生き残ればよいだけだろう。率先して他者を殺して回る理由なぞ、どこにも存在しない」
ヴォルペはハッとして、バトル・ロワイアルの説明を思い返してみる。
たしかに『殺し合え』と命じてこそいたが、一度も『最後の一人を目指せ』などとは言っていない。
『優勝者』に褒美を与えると宣言していたが、その優勝者の定義も告げられていない。
『最後の一人』が優勝者なのか、『三日間生き残ったもの』が優勝者なのか。
なぜ、このようなはっきりしない物言いをしたのか。
主催者は、はたしてなにを考えているのか。
まったく、定かではない。
「だが――」
ヴォルペの思考を遮るように、DIOは切り出す。
「かといって、穏やかに三日間すごすつもりもない。
幾度となく私の邪魔をしてきた『ヤツら』の生き残りがいる。
間違いなく、ヤツらも殺し合いに巻き込まれている。
ならば確実にッ、このDIOの前に立ちはだかってくるということだ!
たしかにジョジョと承太郎の死をこの目で見たが……終わりでないことを察している、他ならぬこの肉体がッ」
左手で首筋を押さえながら、DIOは女性に右手を伸ばした。
親指の爪を立てて、女性の首に突き刺す。
ポンプが動くような音が、辺りに響き渡る。
見る見る女性の肌が渇いていき、全身がしわ塗れになる。
血液を吸っているのだとヴォルペが理解したときには、女性はミイラと化していた。
「君の力は、十分見せてもらった。
彼女は幸福を味わいながら死んでいったよ。
血を吸われる感覚も恐怖もなく、夢見心地のまま……な。
生命力を操る……やはりいい能力だ。すごくいい。とても理想的だ」
-
【スチュ略 死亡】
【F−3 フィラデルフィア市街地/一日目 深夜】
【DIO】
【時間軸】:三部。細かくは不明だが、少なくとも一度は肉の芽を引き抜かれている。
【スタンド】:『世界(ザ・ワールド)』
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×2、麻薬チームの資料@恥知らずのパープルヘイズ、地下地図@オリジナル、ランダム支給品1〜2(確認済み)
【思考・状況】基本行動方針:帝王たる自分が三日以内に死ぬなど欠片も思っていないので、『殺し合い』における行動方針などない。
なのでいつもと変わらず、『天国』に向かう方法について考えつつ、ジョースター一族の人間を見つければ殺害。もちろん必要になれば『食事』を取る。
1:適当に移動して情報を集める。日が昇りそうになったら地下に向かう。
2:マッシモ・ヴォルペに興味。
【マッシモ・ヴォルペ】
【時間軸】:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
【スタンド】:『マニック・デプレッション』
【状態】:健康
【装備】:なし
【道具】:基本支給品、大量の塩@四部、注射器@現実
【思考・状況】基本行動方針:特になかったが、DIOに興味。
1:DIOと行動。
【支給品紹介】
【麻薬チームの資料@恥知らずのパープルヘイズ】
DIOに支給された。
パッショーネの上層部が、麻薬チームの始末を命じた三人に支給した資料。
麻薬チームの構成員四人の写真など、彼らに関する情報がまとめられたもの。
ただしその情報はあくまでパッショーネが把握している範囲だけであり、四人が持つスタンドの詳細などは不明である。
【大量の塩@四部】
DIOに支給された。
杜王町の外れにあるイタリア料理店『トラサルディー』にて使われている塩。
味にこだわる店主が取り寄せたものなので、食通たちの間では名の知れた塩であるのかもしれない。
【注射器@現実】
マッシモ・ヴォルペに支給された。
なんの変哲もない、よくある注射器。
【地下地図@オリジナル】
マッシモ・ヴォルペに支給された。
バトル・ロワイアルの会場に存在する地下通路や地下施設について描かれた地図。
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仮投下完了です。
問題点がなければ、本日中に投下したいと思ってます。
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投下乙ッ
詳しい感想はまた後で
ただ一言言うと……めっっっちゃ面白かったですッ
本投下全裸待機しときます
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仮投下乙です
さすがDIO様基本行動方針が長い長いwww
内容も『天国』に合わせてきて面白かったです
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作品自体は問題ないと思いますが、これってかなりOVER HEAVENに影響される内容ですよね
すでに先行掲載分からの引用もありますし……
俺は別にいいんだけど、OVER HEAVENの内容は一切入れないって意見も前あった気がするし……
あと、スチュ略についてですが、、wikiのデータページとかではその名前で扱うとして、
本文中は【スチュワーデスがファースト・クラスの客に酒とキャビアをサービスするように足を持ってくるよう指示された女性 死亡】
でいいんじゃない? その方が面白いし
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では、本文ではそうしときますねw >スチュ略
OVER HEAVENについては時分でも気になっていたのですが……ただ、DIOとして参戦させて天国の話を書くとどうやっても触れてしまうんですよねえ
ひとまず本投下してきます
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ちなみにOVER HEAVENの先行掲載分からの文章(設定)てどこ?
未読でも違和感は感じなかったけど、問題になりそうなのか?
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>>78
「ある種……ある種だが、人を幸福に導く君の能力は『魂を操作する』能力と言える。
私に必要なのは、その能力だ。
三十六の悪人の魂を一つの身体に詰め込む。
生命力を操作する君のスタンドと、魂を抜き取る彼のスタンド。その二つがあれば、あるいは……」
「友達に、あんなものを埋め込む理由はない。
と、そういうことを聞きたいんのではなさそうだな。
うむ。いまのが最上の理由であるのだが、他にあるとすれば――
あれは脳に触手を伸ばして侵入することで、宿主の自我を弱める。
スタンドとは、精神の力だ。
自我を弱めてしまえば、当然ながらスタンドは弱体化する。
かつてスタンド使いに埋め込んでおいた肉の芽を抜き取られたことがあるのだが、やはり肉の芽から解放されたあとのほうがスタンドパワーは上であった。
つまるところ肉の芽による支配は、スタンド使い相手に限っては好ましくないのだよ。
特に君の『マニック・デプレッション』のような、細かくスタンドパワーを制御せねばならないタイプはな。
元よりこのDIOに従う意思のあるスタンド使いに保険として埋め込んでおき、ヤツらが敗北した際になにも漏らさぬよう暴走させる――という使用法ならば、肉の芽も役に立つのだがね」
この2か所ですね。
まあこれくらいなら大して影響ないと思うし、なんやかんやで発売1週間前です。
来週の今頃には他の書き手さんがたもOVER HEAVENネタを入れたくなっている事でしょうし、議論はその後でもいいでしょう。
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トリ外し忘れだらしねぇし…
ちなみに>>79はコピペした部分すべてが先行分というわけではなく、
バレ防止のために多めに拾ってます。
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蓮見琢馬、大神照彦、飛来明里 一次投下します
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現在時刻…… 西暦2000年3月17日、20時35分17秒(日本時間)。
4分38秒前―――― 千帆の書いた小説を読んでいる。
4分37秒前―――― 小説のページをめくる。
4分36秒前―――― 千帆の書いた小説を読んでいる。
4分35秒前―――― 千帆の書いた小説を読んでいる。
4分34秒前――――
――――――――見知らぬホールのど真ん中。
ここだ。このタイミング―――― 何度読み返しても、異常だ。
あの瞬間、周囲の状況は一変した。瞬きをする暇もないその一瞬で、視覚情報が激変したのだ。
いや、視覚だけではない。
図書館特有の古い印刷の臭いも、突如消えてしまった。
手に持っていたA4サイズの紙の束が指先に振れる感覚も 手放した記憶は無いのにいつの間にか無くなっていた。
かわりに、背中に現れたデイパックを背負わされていた。
そして、図書館内の椅子に腰かけていたはずが、ホールでは立たされていた。
身体の重心を移動させた記憶も無い。膝の関節を伸ばした記憶もない。
胸ポケットに差した万年筆も、内ポケットに仕込んだスローイングナイフも、左手首に付けてあった腕時計も、何処かへ行ってしまった。
琢馬の長い人生を綴ったこの【本】にも、今回のような異常な事態は一度も記録されたことは無い。
読み返すだけで、気分が悪くなりそうな【記憶】だ。
【禁止区域】に指定した方がいいかもしれない。誰かに読ませれば、立ち眩みを起こさせることくらいできるのかもな。
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辺りの景色を見渡す。
日本とは異なる造りをした町並み。足元の自動車用道路の車線は、右側を進むように描かれている。
星空を見上げると、日本からは見たことがない角度に星座が見える。
そして、道路を挟んだ向かい側に広がる薄黄色の高い壁と、入口であろう門の上に書かれた『MVSEI VATICANI』の文字。
この光景を【記憶】の中から【検索】する。
……間違いない、『ヴァチカン市国』だ。
ヴァチカンに限らず海外など一度も行ったことは無かったが、世界の主要都市の地図は何となく脳内で全てデータ化していた。
そのデータに従うのであれば、ここはイタリア・ローマ市内の『ヴァチカーノ通り』―― 世界最小の国ヴァチカン市国の北側の国境のようだ。
通常、観光客はここからヴァチカン内を見学し、「ヴァチカン美術館」、「システィーナ礼拝堂」を経て、サンピエトロ広場に抜けるコースを辿るらしい。
ホールから、「ここ」へ飛ばされた時も、最初と全く同じ現象が起こった。
杜王町の図書館で読書をしていた俺は、ものの数分のうちに、9700km近く離れたローマの地に立たされていた。
全てが一瞬の出来事であった。
謎のホールでの、【記憶】。
殺し合いを行え、だと?
何が起こっている。こんなイカれたゲームになぜ俺が?
人の読書を中断することくらい重い罪は無いのだぞ?
その場では自体を飲みこめず、すぐに周りの状況を確認することはできなかった。
だが、琢馬には大して関係ない。
ホールで見た【映像】を再生し、周囲にいた人間の顔を片っ端から検索。
ほとんどが東洋人ではなく知らぬ顔ばかりであったが、中には検索に引っ掛かった顔もあった。
遠目で確認できたのは、『岸辺露伴』。
町で何度もすれ違ったことがある、コソコソした所があるイケ好かない漫画家だ。
本屋で小学生と本を取り合っているのを見た時は、本気で頭のおかしい奴だと思った。
クラスメイトと話を合わせるために奴の漫画を読んだこともあるが、何が面白いのか全く分からなかったな。
ほかには、『レストラン・トラサルディー』の店主トニオ氏。
街中で見かけたことは無いが、杜王町霊園の近くのレストランの料理人で、一度千穂と食べに行ったことがある。
あれは美味い料理だった。今でも記憶を頼りに『食べ直す』事も多い。
彼の料理を食べた時、何故か風邪がよくなった。彼の能力だったのだろうか。
ここからは自信がないが、『虹村形兆』。
ぶどうが丘高校1年、虹村億泰の兄。だが彼は去年の4月に死んだはずだ。
そして、アメリカ合衆国の『フィリップス上院議員』。
以前、10年前にエジプトで事故死したと本で見たが、彼とよく似た人物がいた。
既に亡くなっているはずの2人を含め、俺が見た人物たちが本人である確証は無い――――
だが、得体の知れない何かが起こっていることだけは確かなようだ。
-
そして――――見せしめとなった、2人目の帽子をかぶった白コートの男。
彼も杜王町ですれ違った覚えがあった。
半年以上前、去年の6月末―――― 駅前の広場付近を歩いていた男だ。
当時、気にもしていなかった会話の内容を【再生】する。
『あ、こんにちは 承太郎さん……』
なるほど、名前はジョータローか。
『見た所クツ屋のようだが… 杜王町近くの洋服屋は全て聞いたが、こーいったところには聞き込みを見落としていたぜ』
なにか調べ物をしていたようだな。
『そのボタンの聞き込みですか?「重ちー」のハーヴェストが拾ってきたヤツの証拠品!』
その後は店内に入ってしまったな。
『重ちー』…… 『矢安宮重清』…… 噂を聞いたことがある。行方不明になった中学生だな。
彼らはその行方不明の少年の足取りを追っていたのだろうか?
今となっては分からないな。街中で見かけたのはその一度だけだ。
いや、まてよ? 「ジョータロー」か。
昨年、杜王町のヒトデに関する論文で博士号を取った海洋学者がいた。
名前は「Jotaro Kujo」…… 彼のことか? 海洋学者が何故、杜王町の行方不明者を探していたのだ?
そして、彼と一緒に歩いていた少年。あれは広瀬康一だ。
ぶどうが丘高校1年、あの東方仗助たちの友人で、今年1月から織笠花恵の事件を追っていた人間の一人。
やれやれだ。「コイツ」のせいか?
琢馬は手のひらの上の『本』を一瞥する。
万年筆を治した『東方仗助』、どういうわけか犯人の手首に傷があることをかぎつけた奴ら一派。
この殺し合いとやらに参加させられている人間は、全員なにか特殊な『能力』を持っているのだろうか。
この俺と同じように――――ならば――――――
「――――――あの男も、ここにいるのか?」
『××××××××! ××××××××××!!』
『×××××××××××××! ×××××××××!』
!? 今の声は―――?
どこかで男女の言い争う声――――ッ!?
現状の確認も記憶の整理も放りだし、脊髄反射のように、琢馬は走り出していた。
普段の冷静な彼ならば、こんな無鉄砲な行動を取ることなどなかっただろう。
【感覚】を【記憶】と結び付けてしまう彼には、分かってしまったのだ。
男の声が、彼にとってこの世で最も醜悪な存在である男の物であることを……
そして女性の声が、この世にもう存在するはずのない、大切なヒトの物であることを……
★ ★ ★
-
ここは死後の世界というやつだろうか?
だとしたら、閻魔様も趣味が悪い……
いや、これは私に与えられた、当然の罰なのかもしれないな。
この17年間、ずっと悪夢を見ていた。
自分の過去に隠された罪の重圧の影響だ。
私は一人の女性の人生を終わらせた。
もし私が死んだら、自分は天国には行けないだろうという実感はあった。
この悪趣味なゲームは、その結果なのだろうか。
雨が降り始めた。
そういえば、ここはどこだ?
石を基調とした建物のつくりは西洋独特の物――――
いつだったか、見たことあるような景色だ。
「あの日も、こんな風に雨が降っていたわね。あなたは覚えているかしら?」
背後から声をかけられた。
女性の声だった。
「結果的に雨でぬかるんだ段ボールのお陰で助かったけど…… 寒かったのよ。
この一年間で、一体何回雨が降ったかなんて、あなたにわかる?」
振り返るのが怖かった。
存在するはずのない人間の声だった。
「最期に見る夢にしては随分なものだと思ったけれど、『殺し』合いの舞台であなたと再会できるなんて、神様の粋なことをしたものね……」
生涯、私に悪夢を見させ続けた女の声だった。
★ ★ ★
-
琢馬が現場に辿り着いた時、事態は既に終結を迎えていた。
何故かここら一帯のみに発生している雨に打たれ、暗い路地で取っ組み合う二人の男女。
男の年齢は40代の半ば、部屋着に使っているようなトレーナーを着こんだ中年の日本人。
あごひげを蓄えた顔は歳の割には若く見えたが、その表情は苦痛に歪んでいる。
女の年齢は20代の後半。手入れのされていないボサボサの長い黒髪。
泥だらけになったボロボロの衣服に、やせ細った手足。
偏った栄養のみを摂取してきたであろう弱弱しい両手に握られた包丁は、男の胸へと突き立てられていた。
「母さん――― なのか?」
そんなわけは無いと思いつつも、琢馬はそう声をかける。
2人の男女は琢馬の存在に気が付き、同時に彼の方へ振り向いた。
男の顔はよく知っている。
つい数十分前まで、彼の作った暖かいビーフシチューを食べながら話をしていた。
彼が生涯をかけて復讐すると誓った男―――――― 琢馬の父親・大神照彦だった。
そして女の方の顔は―――― 直接会ったことは無い。
彼女の両親から、写真を事が見せてもらったことがあるだけだ。
彼女の両親の家を何度も訪れたことがある。彼女の両親は、突然失踪した彼女の行方を、生涯探し続けていた。
琢馬が家を訪れると、一人娘を失った老夫婦はまるで本当の『実の孫』が遊びに来てくれたかのように、たいへん喜び歓迎してくれたものだった。
彼女の顔は頬が扱けていてやせ細っており、その目からは生気が感じられない。
しかしそれでも、写真の中の若々しく美しい女性の面影は隠しきれなかった。
大神照彦という悪魔のような男によって絶望の底に突き落とされ、半年以上も地獄のような生活を強いられた末に死亡した琢馬の母、飛来明里だった。
「誰……? 嘘――でしょう――? まさか――― わたしの赤ちゃん――――なのッ?」
飛来明里の両手から力が抜け、カランという音を立てて包丁が地面に落ちた。
明里の方は、琢馬のことを知る由もない。
なにしろ明里にとっての息子は、つい数日前に生まれたばかりの赤ん坊である。彼女が人生を懸けて守り抜いた、大切な宝物だ。
目の前にいる少年は、17〜18歳ほどの高校生だ。この少年が、自分の大切な赤ちゃんであるはずなど、ありはしないのだ。
-
「私の……赤ちゃん―――――? そう……なのね――――――ッ!?」
にもかかわらず、明里には何故か、少年が自分の子であることが一目でわかった。
少年の黒い学生服姿が、何度も夢で見た成長した我が子の姿と瓜二つだったのだ。
そしてそれ以上に、母親と息子にしかわからない絆のようなものを感じ取ったのかもしれない。
明里は信じられないといった風に口元を押さえ、腰を抜かしてしまった。
刺された照彦は腹から血を流しながら、冷たい目で自分を見据える琢馬を見た。
琢馬は自分から興味を亡くしたかのように目を逸らし、明里のそばに歩み寄ろうとする。
そんな琢馬を妨げるように最期の力を振り絞って、照彦は琢馬に向かって叫んだ。
「娘が―――――― 千帆がいたんだ――――――ッ!! さっきのホールにッ!!!」
その言葉に、琢馬の表情が曇る。
死にゆく父に再び目線を戻した。
千帆―――――― 彼女も……、いるのか?
この「殺し合い」の場に――――ッ!?
千帆には『能力』は遺伝していなかった。
俺やこの大神照彦とは違い、彼女は何の力も持たない、ただの一般人だ。
武力を持ち合わせない、そんな無力な彼女までが、ここにいるというのか――――
「蓮見くん―――! いや、『琢馬』ッ!! 千帆の父親として……そして君の父親として、最期の頼みだ―――― 千帆を、守ってやってくれ――――――
あの子は、喧嘩なんかしたことがない子なんだ…… 人と争うなんて、できない子なんだ……
あの子が、『殺し合い』なんかで生き残れるわけがない――――!! 君が……守って、やってくれないか………」
琢馬は何も答えない。真夜中の暗闇と強い雨のお陰でどんな表情をしているかもわからない。
照彦はそれでも続ける。もはや自分を刺した飛来明里のことなど頭にない。
最愛の娘を救う方法は、もはやこの『息子』に全てを懸けるしかなかった。
「頼む――――ッ! 琢馬――――ッ!! 千帆を――――ッ!! 頼む――――ッ!!」
応えない琢馬に対して、何度も何度もそう声をかける。
そのまま照彦の意識は薄れていき、やがて永遠の眠りへと堕ちて行った。
一度最愛の娘に殺された男は、悔いる暇もなく過去の罪に再び喰い殺され、それでも娘の身を案じながら、彼を最も憎んでいた息子に看取られ、死んだ。
-
「初めまして………母さん。あなたの息子の蓮見―――― いや、『飛来琢馬』です」
父親の屍から目をそむけ、琢馬は自分を見上げる母親に声をかける。
思えば琢馬の人生は、決して会う事が出来ないこの母親のために存在していた。
とっさに、自分の名前を、母親の姓で名乗る。
自分の彼女が、本当の親子であることを、自分たちに言い聞かせるために。
「琢馬…… 琢馬というのね………… あなたが、わたしの赤ちゃんなのね…………」
雨が降っているせいでよくは分からないが、彼女の顔は涙で濡れている。
本当に、神様は粋な事をしたものだ。
金を引き渡し、赤ちゃんの命を助けてもらった後も、私は助けられることは無かった。
完全に衰弱しきり、もう死を迎えるだけだと思っていた。彼女自身、それを受け入れていた。
それが、目を覚ましたら殺し合いの舞台に立たされ、大神照彦への復讐の機会を与えてもらっただけではなく、自分の成長した息子と再会させてもらう事ができるだなんて……
これは夢なのかもしれない。でも、彼女にとって夢か現実かなんてことは大した意味もない些細なことだ。
「琢馬…… 大きく、立派に成長したのね…… よかった…… 本当によかったわ……」
泣き崩れる明里に、琢馬も歩み寄る。そして、子供のように母の胸の中に抱きかかえられた。
心臓の音が聞こえる。何度も何度も読み返した、【生まれたばかりの記憶】と同じ――――――
この音を聞いていると安心した。
思えば自分の能力は、人生でたったの3日間だけしか感じたことのない、この【感情】を――― 決して忘れないための、能力だったのではないか。
琢馬も涙を流していた。
父への復讐を誓ってから、泣いたことなど一度もなかったにも関わらず……
「琢馬―――! 私のせいで、辛い毎日だったでしょう? 母親らしいことも…… 何もしてあげられなくて、ごめんね………」
「……そんなことはありません。俺は、産まれてくることができて、幸せでした―――
母さん…… 俺を産んでくれて…… ありがとう――――――!!」
心からの言葉だった。
あふれる涙と嗚咽を堪え、決して伝えることができないと思っていた母への感謝の言葉を告げた。
父は絶望して死んでいった。自分と母との、『2人がかり』で、復讐を遂げたのだ。
もう、誰かを憎み続ける日々は、終わったのだ。
「ありがとう――――― 琢馬。優しい子に育ってくれて、お母さんは嬉しいわ――――――――
―――――――――これで、安心して逝けるわ」
-
ふと、琢馬は自らの手に握らされている感触に気が付いた。
いつのまにか、自分の両手には、先ほど父の命を奪った包丁が握らされていた。
そしてその包丁の刃先は、そのまま最愛の母の身体に深く突き立てられていた。
「母さん―――――ッ!!! なんてことをッ!! 何をしているんだァ!!!」
再び包丁が地面に転がる。
くずおれる明里を琢馬は抱きとめる。
腹からの出血が止まらない。母は自ら刃を突き立て、死ぬつもりだったのだ。
「……琢馬ッ!! 最期にあなたに会えて、嬉しかった――――――」
「母さんッ! なんでだ―――― なんでだよォ――――!!」
母の体温が低下していく。
激しい雨にさらされ、出血の止まらない母の身体は急速に力を失わせていく。
「あなたが『あの男』への復讐のためだけに生きてきたことくらい、黙っていても分かるわ―――― 母親だものね――――
本当にごめんなさい。辛い毎日だったでしょう――――――
でも、これで―――― 私とあの男の【因縁】は消えてなくなるわ――――――
もう、あなたは関係ない、自由の身よ――――――
これからは、自分のためだけに―――― 幸せに―――――――― あなた自身の未来へ――――――」
「母さん――――――――ッ」
「イキナサイ――――――――――」
生まれおちたばかりの記憶を読み返した。
母の胸に頭をくっつけていると、心臓の音が聞こえてきておちついた。
願いを本能で察したのだろう。自分は【忘れない能力】を手に入れた。
-
母の亡骸を抱え、建物に入った。
1年もの間、屋根もないビルの隙間に閉じ込められていた母を、これ以上野ざらしにしておきたくはなかった。
17年以上の時を越え再会した親子は、たった数分の間に、再び別れることとなった。
【記憶する能力】を持つ琢馬だが、今日この時感じた母の愛とぬくもりは、能力を用いること無くとも決して忘れることはないだろう。
「父に、復讐を――――― それだけを考えて、生きてきた」
父、大神照彦は死んだ。
『頼む――――ッ! 琢馬――――ッ!! 千帆を――――ッ!! 頼む――――ッ!!』
父の、最期の言葉だ。
妹が…… 千帆が、ここにいる。俺は――――――
『これからは、自分のためだけに―――― 幸せに―――――――― あなた自身の未来へ――――――
イキナサイ――――――――――』
母は―――――― 俺は――――――
これから、どうすればいい。
母が何故、自ら命を絶ったのか。
最期の言葉に、どんな思いを琢馬に込めて、母はこの世を去って行ったのか。
今となっては誰にもわからない。
琢馬は【本】を取り出した。
【本】には、ついさっきまでの嘘のような物語も、一遍も欠けることなく記されている。
琢馬はページを走らせる。
無限に続く未来へのページ。
今まで過去を振り返ることしかしてこなかった琢馬にとって、未来に思いをはせることはほとんどなかった。
明確な目標を失った琢馬の未来に、どんなページが記録されていくのか。
それは、他ならぬ琢馬が決めてゆくこととなる。
建物を出ると、雨は上がっていた。
琢馬の新しい、そして真の人生が始まった。
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【双葉照彦 死亡】
【飛来明里 死亡】
【A-1 南東/1日目 深夜】
【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力(名前はまだない)』
[時間軸]:The Book 2000年3月17日 千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中。
[状態]:健康、???
[装備]:双葉家の包丁(飛来明里の支給品)
[道具]: 基本支給品、不明支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:???
?.父の遺志の通り、千帆を守る。
?.母の遺志の通り、自分自身のために生きる。
?.それとも……? 琢馬自身の意志に従う。
行動方針に順位は無く、定まっていません。
これからどう行動するかは、これからの琢馬の意思次第です。
[参考]
参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。
また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります(例・4部のキャラクター、大成後のスピードワゴンなど)
双葉照彦の参戦時期は千帆に刺された後です。参戦時期の関係上、大神ではなく『双葉照彦』です。
飛来明里の参戦時期は1982年 琢馬が救いだされた後の衰弱死する前です。
明里のランダム支給品は双葉家の包丁でした。つまり照彦は同じ包丁で二度刺されたという事になります。
明里の基本支給品、照彦の基本支給品、照彦のランダム支給品(1〜2)はA-1南東の路地、照彦の遺体のそばに放置されています。
作中に登場した雨は、023:悪魔が首を傾げるな にてウェザー・リポートがスタンドを用いて降らせていた雨です。
雨はA-1エリア一帯のみに降っていたようです。
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一時投下完了。
前作より短いですが、前作より執筆時間はかなり長いです。
何度も書きなおしてますが、それでも100%の『納得』は得られませんでした。
琢馬は完璧すぎるがゆえ、ものすごく書きづらいです。
億泰、アヴドゥル、ポルナレフとは大違いです(失礼w
なのでこちらに投下しました。プラス、作品批評スレでの評価を頂き、それを踏まえての本投下に臨みたいと思います。
よろしくお願いします。
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>>85
>「最期に見る夢にしては随分なものだと思ったけれど、『殺し』合いの舞台であなたと再会できるなんて、神様の粋なことをしたものね……」
神様“も”の誤字かと。
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感想は本投下時に
>>82
指先に振れる ⇒ 指先に触れる
>>83
千穂 ⇒ 千帆
>>86
写真を事が見せてもらった ⇒ 写真を見せてもらった
内容面や琢馬の認識面で間違っていると感じた箇所はありません
氏のおっしゃる通り、完璧でなければならないキャラなので、
チェックしたつもりで見逃している可能性はあります
つまり、他の方もチェックよろ
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批評は本投下の後の方がいいようですね。
それでは現在までに上がっている点を修正し、22時頃本投下いたします。
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『長所』と『短所』は表裏一体、ままならぬものだ。
って有名なスタンド諺があるんだけど――え、諺じゃないの?まぁとにかくあるんだよ。
で、コレって何もスタンドの法則に限った話じゃないんだよね、俺が思うに。
みんなの周りにもいると思うけど、例えば勉強も運動も得意だけど歌だけはどうしても苦手なクラスメイト。
あとは――気軽に出会える身近な存在ゆえか、パッと見が一般人と大差ないアイドルグループとか。
オールA、全てが長所の人なんてゲームで作ったプロ野球選手くらいしかいないって、普通はね。
さて、あんまり話してると今回のテーマからそれちゃうからこのへんにして。
みんなに考えて貰いたいのは『如何にして長所を短所にしないか』『如何にして短所を長所へ変換させるか』
ってことだ。ちょっと発想を変えるだけで劇的に変わると思うからね。だって表裏一体の存在なんだから。
じゃ、俺の話を聴きながら、ちょっと考えてみてくれよ。
***
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「なるほど……君は、この状況で生き残る力がないから早々に死んでしまおうと、そう考えたのかね?」
目の前で咳き込む男性のズボンに、それまで首に巻かれていたベルトを丁寧に戻してやりながら、私は訪ねた。
彼がこんな洞窟の中で首を吊るまでに追い込まれた理由を知りたかったのだ。
彼は名をサンダー・マックイイーンと言い、曰く、突発的にというか……衝動的に首を吊っていたらしい。
「あぁ……俺は何やってもダメだ。不運に取り憑かれてんだよ」
先に済ませていた自己紹介の中でもそうだったが、彼は非常に後ろ向きな発言しかしていない。
無論、こんな殺し合いに巻き込まれたら不安にもなるだろう。しかし、彼はどうも違う。
本当に落ち込んでいるのなら声なんか出ないはずだ。それがどうだろうか、ハッキリと、むしろ生き生きしているかのように自分の不幸を語っている。
口調こそネガティブな感じではあるが、誰かに聞いて欲しい、そんな話し方。言うなれば不幸自慢。
最初こそ深い情けを持って聞いていたが、次第にそれが許せなくなった。私の中に怒りが湧き上がってくるのが感覚として分かった。
「――そんな言い方をするもんじゃあないッ!」
「?」
急な大声を聞いたせいか、マックイイーン君は半開きの口を閉じようともせずぽかんとした顔で私を見る。
さすがに声を張り上げたのはまずかっただろうか……私は心の中で深呼吸をし、諭すように話し始めた。
「すまない、大声を出してしまって……だが君がやっているのは逃避だ、立ち向かってみる気はないのか?その意思が伝わってこないから私は怒ったのだ」
「いや怒るのはいいけど……それが出来てれば端からまっとうな生き方が出来たさ。法廷で自分の無罪を証明することだって」
確かに私は謝罪を求めるつもりで言ったわけではない。だが、何かしらの期待はしていた。しかし聞こえてきたのは情けない言い訳。
これが自分の息子の言葉だったなら鞭で手の甲を打っていただろう。しかしここで再び声を上げるのは素直に考えを述べた彼に対し失礼だ。
「なぜ過去を悔いているんだ?私だって過去に何も後悔がないかと言われればそうではない。だがしかし、こうして今を生きている。
君もそうだ。今生きていることを、未来を生きることを見ていこうじゃあないか」
「そうか……そうだよな」
項垂れるマックイイーン君。だが意見に対する後ろめたさに視線を逸らしたのではない。私の言葉を受け止めてくれたのだ。
やがてゆっくりと歩き出す。うんうん、と呟いているのは彼なりに私の言葉を解釈しようとしているのだろう。
私はその様子を嬉しそうに眺め――ハッとしてマックイイーン君を押さえ込む。
「言ったそばから何をやっているんだッ!今君はこの崖を飛び降りようとしただろうッ」
「いや、だってほら、俺がいたらあんたに迷惑を」
「かけんっ!そんなものは思い込みだ!
……君にも親がいるのだろう?私も人の親だ、息子を死なせたくない。この場にいるかもしれんのだ」
私が人を死なせたとあらば、息子たちも悲しむだろう。いや、息子がどうこうではない。ひとりの紳士として目の前の命の火を消すことはしたくない。
いつの間にか、私の方が彼に悩みを相談する立場になっていた。
自分のこと、妻のこと、自分のことを出会って間もない相手に吐き続けた。それは最早悩みだとか愚痴と言えるものではない、ただの思い出話。
それでもマックイイーン君は嫌な顔一つせずに黙って聞いてくれている。
どれほどの時間をそうやって過ごしたのだろう、やがて話し疲れて声を出さなくなった私に代わるようにしてマックイイーン君がその口を開く。
「あんた、いい人だなぁ」
「――ありがとう。ずいぶん支離滅裂な話になってしまったが、君の心に何かしら伝わってくれれば」
「うん……伝わったし良くわかったよ。あんたの言うことは理解できた。じゃあ俺と一緒にいこう」
-
私の顔は笑っているのだろう。やっとマックイイーン君が生きることの尊さを理解してくれた。
早まる鼓動を抑え切れない。
頭に血が登っている気がする。
心無しか呼吸も早くなってきた。
私の喜びに身体まで反応しているかのような錯覚を覚えた。
彼のもとに歩み寄り、手を差し出す。そして――
「ああ、一緒に行こうではないか」
――とは口に出せなかった。
血が上っているのも呼吸が荒いのも決して気のせいではなかった。
私の額からは実際に血が溢れ出している。
心臓の大きな鼓動だと思っていたのは頭蓋が鍾乳石に叩きつけられる振動だった。
彼は『私と一緒にいく』気だったのは確かだ。だがしかし私の思う『いく』とは違う。
『行く』ではなく『逝く』……マックイイーン君は現在、鍾乳石の先端に何度も頭を叩きつけていた。
彼の痛みが私にも伝わる。額から流れる血が目に入った。その痛みに思わず目を固く瞑る。
うっすらと見える視線の先。マックイイーン君は狂ったように頭を振り、叫ぶ。
「一緒に逝こうぜ、ジョースターさんッ!みんなで一緒に逝けば怖くないってッッッ」
***
-
「――ハッ!?」
ガバッ、と目の前のおじ様が起き上がった。どうやら無事みたい。
きょろきょろと視線を泳がせたあと、わたしの肩を勢い良く掴み、聞いてきた。
「君は?……彼はッマックイイーン君はどうしたッ!?」
「えーっと……まず、わたしの名前はアイリン・ラポーナといいます。
わたしがこの場に来たのは、あの人、マックイイーンさんと言いましたか?
彼の叫び声を聞いたからです。一緒に逝けばなんとか、と。
駆けつけた私が見た光景はこうです。頭を岩に叩きつけている彼と、頭にプロペラのようなものを生やしたあなた。
すぐに状況を理解しましたわ。彼はあなたを道連れにして死ぬ気だったのです。
ですから、わたしは彼の動きを止めました。彼は今手足を動かせず、頭の出血で朦朧としています」
丁寧にそう話すと、おじ様は慌てるように肩から手を離し、マックイイーンという男の手当を始めた。
なぜ?あの人は自分を襲った人間を助けようとしている?もとに戻ったらまた殺されてしまうのに?
「やめてください。その悪人はこの場で……殺してしまうべきです」
素直に自分の気持ちを伝えた。するとおじ様は驚いた表情で振り返り、そしてわたしの頬を思い切りはたいた。
「なんてことを言うんだッ!殺すだとッ!?」
はたかれた理由もおじ様が言いたいこともよくわかる。でもそれは間違っている。言わなければ、伝えなければ。
「彼は悪人です。それに――」
「それに、なんだ!?」
「わたしは……わたしは人を殺すことしかできないの。ほかの方法は知らないの」
本当なら絶対に人に話すべきではない事。それをなぜかこのおじ様には話してしまった。なぜだろう。言いたいことはそんな事じゃあなかった筈なのに。
私の言葉を聞いたおじ様は、大きなため息をついたあとマックイイーンの頬を何度か軽く叩く。
そして、目が覚めたマックイイーンとわたしを交互に見て、こう言った。
「いいか、君たちは間違っている。
マックイイーン君は『死ぬことしかできない』と。
そしてきみ、アイリン君は『殺すことしかできない』と。そう言ったな。
その考え方は間違っている」
そして、言い終わるやいなや、両手を地につき、頭を下げた。
「君たちのその力で、どうか私を守ってくれないか」
何を言われているのか分からなかった。わたしは今怒られているの?謝られているの?頼まれているの?あるいはそのいずれも?どれでもない?
「――な、何言ってんだよジョースターさん。俺があんたを守るって」
マックイイーンがわたしの気持ちを代弁してくれた。同調するのには少し気も引けるけど、その言葉に続く。
「そ、そうです。死ぬことと殺すこと、これしか出来ないわたしたちがどうやってあなたを守るのですか?」
おじ様――ジョースターさんは目を細めて話し始めた。
「良いか。君たちの『これしかできない』ということを否定はしない。私にはない素晴らしい才能だと思う。
だから、逆に考えるんだ。『これだけは誰にも負けない才能なんだ』そう考えるんだ。
マックイイーン君。君は死ぬことしかできないと言った。ならば『死ぬほど本気になるに値する目的』を見つけてくれ。
アイリン君。君は殺すことしかできないと言った。ならば『弱者を守る牙』としてその力を使ってくれ。
そしてその『目的』は、『弱者』は、このジョージ・ジョースターだと。
そう心に留めて、私と一緒にこの殺し合いに反旗を翻そうではないか」
優しく差し出された右手。マックイイーンはおずおずとそれを握り返した。
そして私も。大きな暖かいその手に包み込まれた時、不意に二人の人物が頭の中にフラッシュバックした。
私の身の回りの世話をしてくれて、私に尽くしてくれた爺や、その面影。
私のことを何も知らないまま、それでも私のことを守ってくれたマイケル、その優しさ。
ああ――だからわたしはおじ様に秘密を話してしまったんだわ。
そして、ええ。このおじ様をわたしがお守りしましょう。わたしの持てる全てをもって。
ぴちょん、という音が洞窟の中に響きわたった。
それは鍾乳石から滴った水なのか、頬から滴った涙なのか、その時のわたしには分からなかった――
***
-
と、このへんでやめておくか。あんまり話しちゃうとつまらなくなるからね。
本人の精神を具現化したスタンド能力。受け継いだ異能を使いこなす純朴な少女。
そんな長所をもった二人を説得できたのは何も特異な才能を持っていないジョージ・ジョースターだったと。そんな話でした。
そんな奇妙な三人組が向かう先は果たしてどこか!?次回、こうご期待!なんてね。
……え?
ジョージさんの逆に考えるのはもはや能力だ?それで邪悪の化身を倒す?
オイオイやめてくれ、そんな話は聞いたこと無いぞ?
いやホントに知らないって!愛と夢?何言ってんだよ?待ってったら、知らないったら知らないって――
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