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梓「とろけるチョコの隠し味」

1 : いえーい!名無しだよん! :2015/02/13(金) 21:10:12 lHSgFBXw0
私はムギ先輩の事が好き
先輩として好き?友達として好き?どれでもないと思う

だって、朝も昼も夜も、夢の中でもあなたの事が片時も頭から離れない

紬『梓ちゃん、好きよ』

紬『梓ちゃんにお弁当作ってきたの、あーんして?』

紬『梓ちゃん…キスしよ?』

最近はそんな夢ばかり見ます、大分重症でしょうか?
ムギ先輩の事が…好き、好きです、一人の女として、あなたの事が好きです

先輩達のことはみんな大好き

でも更にあなたは、あなただけは更に特別に大好き

特別だから、ほかの先輩より贔屓しちゃいます
唯先輩澪先輩律先輩、ごめんなさい

トン…トン…トン

どくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくん

今部室に向かってる階段は天国への階段でしょうか?それとも死刑台を上る階段でしょうか?

もし私の手作りチョコをあなたが受け取ってくれなかったら、もし受け取ってくれたとしても、その先…その先の関係に進めるでしょうか

階段を上る音はゆっくりなのに、私の小さな心臓は今までにないくらいはやく脈打っています

がちゃ

部室のドアを開ければ、すぐに窓際で佇むあなたを見つけられました

さっきまで他の先輩達と一緒に雪降る窓の外の景色を笑いながら見つめてたあの場所で

ムギ先輩はさっきとはうって変わって、私が今まで見たこともない、どこか物憂げな横顔で、雪が降り続ける空を見上げていました

ムギ先輩、あなたは今何を考えているのですか?何を思って、この光も吸い込んでしまいそうな暗く寒い空を見上げているのですか?

私はあなたの横顔に見とれて動けなくなってしまいました


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2 : いえーい!名無しだよん! :2015/02/13(金) 21:11:09 lHSgFBXw0
紬「あ、あら、梓ちゃん」

先に声をかけたのはムギ先輩、いつものやさしげな響きの声で私の名前を呼んでくれました

梓「あっ…」

紬「どうしたの?そんなところで?」

梓「な、何でもないです…////」

紬「うふふ、変な梓ちゃん」

私を見つけたあなたは、いつもの包み込むような優しい笑顔を私に向ける

ああ、私はあなたのその花のような笑顔が大好きで、海のように青い瞳も大好きで、
その笑顔を見ると、自分の顔が自然と笑顔になってるのがわかる、不安が僅かですが和らいでいるのがわかります

梓「すみません、待ってもらっちゃって」

紬「いいのよ、それで用ってなにかしら?」

あの後、他の先輩たちが帰るときにムギ先輩だけをひき止めて部室に残ってもらいました
ムギ先輩、あなたに渡したいものがあるんです、特別なあなただけに受け取ってもらいたい、私の特別な気持ちを、手作りチョコに込めました

紬「まあ…これ私に…?」

梓「はい、ムギ先輩のためだけに作ったチョコです…どうぞ受け取ってください」

紬「ありがとう、梓ちゃん、とっても嬉しいわ…!」

ムギ先輩はまるで宝石を扱うようにその暖かな掌に、私が空色にラッピングしたチョコを受け取ってくれました

それだけで、私の気持ちまですくいとってくれたみたいな気がして、受け取ってくれただけで涙が出そうなくらい嬉しいです…

いや、チョコを渡してそれで終わりじゃない!私はムギ先輩と…ムギ先輩と…!

梓「あ、あの…ムギ先輩…!」

紬「…!なあに梓ちゃん?」

梓「あ、あうあう…すす、すす…」

怖い
初めて好きになったあなたに拒絶されるのが怖い、自分のありのままの気持ちを伝えるのが怖い、あなたに拒絶されたら、もう私の心の大部分を支配してるあなたがいなくなってしまったら、ぽっかり空いてしまった私の心を、誰が暖めてくれるのでしょうか?

だってこんなの初めてだから、今までオトコノコを好きになったことすらないのに
同じオンナノコを好きになってしまうなんて、もちろんあるわけがなくて

情けない、学園祭で大勢の人の前に立ってむったんをかき鳴らすより、たった一人のあなたへ、一対一で気持ちを伝えるのがたまらなく怖い、私は一人じゃなにもできない臆病者だ、もう首にロープがかかってる、あとは床が抜けるだけ

紬「梓ちゃん…」ぎゅう

梓「あっ…」

紬「落ち着いて、大丈夫よ…深呼吸…深呼吸」

気がつくと私はムギ先輩の腕の中に抱き寄せられていました
暖かくて優しい温もりがじんわり伝わってきます、気持ちいい…安心して、身を委ねてしまいます

梓「あっ…」

とくんとくんとくんとくんとくんとくんとくんとくんとくんとくん

ムギ先輩も、凄くドキドキしてる…私と同じなんだ…とても、とても、愛しいです、ムギ先輩…!

すーはー…すーはー…

紬「…落ち着いた?」

梓「はい…!」

あれだけ恐れていた心が、ムギ先輩のお陰で落ち着いてる、今なら言えるような気がする、イヤ、言わなきゃ!

梓「ムギ先輩」

紬「なあに?」

梓「私…私、ムギ先輩のことが好きです、大好きです!付き合ってください!」

ああ、言っちゃった、言っちゃったよ!

もう後戻りはできない、ムギ先輩…どうか、チョコと一緒に私の気持ち、受け取ってください…!

紬「…梓ちゃん、ごめんね」

ぎゅっ

梓「えっ」

紬「後輩に先に言わせるなんて、先輩失格だよね」

梓「あ、あの…せ、先輩」

紬「梓ちゃん、私も梓ちゃんのこと大好きよ、私で良ければ、付き合おう?」

…………………これは私が見てる夢なのでしょうか?
とうとう白昼夢までみるようになってしまったのでしょうか?

梓「ムギ先輩…ほっぺつねってもらって良いですか?」

紬「うふふ、夢じゃないわよ?」

むぎゅうう

梓「いひゃい、いひゃいでひゅ…」

紬「ね?」

ああ夢じゃないんだ、本当なんだ…!

梓「ムギ先輩ああい!」グスッグス

ぎゅむうう

紬「梓ちゃん…これからよろしくね♪」

ぎゅううう

梓「はい!ふつつかものですがよろしくお願いします!」


3 : いえーい!名無しだよん! :2015/02/13(金) 21:14:03 lHSgFBXw0
私が泣き止むまで、ムギ先輩はずっと抱き締めててくれました…落ち着いたら、二人で一緒にチョコを食べることにしました

紬「はい梓ちゃん♪」

梓「こ、これは?」

紬「えへへ、私が梓ちゃんのために作った手作りチョコよ、受けとってくれるよね?」

梓「あ、ありがとうございます!」

ムギ先輩…彼女からの手作りチョコ…嬉しくて死んでしまいそうです…!

紬「ごめんね、梓ちゃんから告白させちゃって」

梓「えっ?」

紬「本当はね、私から梓ちゃんを誘って、梓ちゃんにチョコを渡して、梓ちゃんに告白するつもりだったの、なのに、全部梓ちゃんにやらせちゃったね、不安な思いをさせて、ごめんね?」

梓「いいんです、こうして私とムギ先輩が恋人同士になれたんですし、私は嬉しいです♪」

紬「梓ちゃん…じゃあせめて、最初のキスは私からさせて?」

梓「へ?」

紬「んっ…」

チュッ

ムギ先輩が、ムギ先輩手作りの生チョコを口に含んだかと思ったら、綺麗なムギ先輩の顔が目の前まで迫ってきて…

瞬間、瑞々しくて暖かくて、柔らかなムギ先輩の唇が私の唇に押し当てられました

これがはじめてのキス、これが恋人同士のキス…これが、ムギ先輩の唇…

紬「んん…んっ…」

梓「んん…!」

舌で唇をノックされて、ムギ先輩の舌がぬるりと入り込んでくる

同時に、溶けたチョコがトロリと私の口の中に流し込まれる、甘い…甘いチョコレートの味が広がる、でも…これは、ウィスキーの味?

こくん…って、飲み込む

紬「…どうだった?」

梓「んあ…」

…どっちの意味で聞かれてるのかな?チョコの味?それともはじめてのキスの味?どっちだろう?

梓「とっても、よかったです、美味しかったです…」ポヤーン

紬「良かった♪さあ、次は梓ちゃんの番よ…」

唇をつき出すムギ先輩
私は、今の甘い口づけの感触を思い出して、もっともっと味わいたくて、ムギ先輩にプレゼントしたチョコを口に含んで

梓「んっ…」

紬「んんっ…!」

ふたたび味わう、柔らかな唇を割り開いて、口の中で噛み砕いたチョコをムギ先輩の口の中へ流し込みました

紬「んっんっ…」

手を握りながら、夢中でムギ先輩の唇を求める
さっきのムギ先輩のチョコに含まれてたウィスキーで、私は酔ってしまったのかな?
ドキドキが止まらない、心も体も熱い…違う、酔っているのはきっとムギ先輩にだ…

紬「ん…////」トローン

梓「ぷは、ムギ先輩…大丈夫ですか?ごめんなさい、つい夢中になってしまいました////」

紬「いいのよ、梓ちゃん…ねえ、もっともっとキスしましょう?」ひょいぱく

梓「は、はい…////」

そのあと、私たちはお互いの唇を夢中で求めあいました


4 : いえーい!名無しだよん! :2015/02/13(金) 21:15:53 lHSgFBXw0
紬「むあ…////」ちゅぽ

梓「ふあ…////」トローン

あれからどれくらい時間がたったでしょうか…私がムギ先輩にプレゼントしたチョコはなくなって、残るは、私のもらったウィスキー入りのチョコ1つだけ…

夢のような時間でした、夢にまで見たムギ先輩とのキス、とっても気持ちよくて、酔いしれるような素敵な時間でした

もう時間的にこれが最後のキスになるかな…さあムギ先輩…来て下さい…

ガチャっ

紬梓「!!」

さわ子「あなた達まだいたの?早く帰りなさい…って、二人ともどうしたの?顔真っ赤よ?」

結局さわ子先生に促されて、部室を出ることになりました

…本当にタイミングの悪い人ですね

紬「えへへ、梓ちゃん、一緒に帰ろ?」

梓「は、はい!」

でも嬉しそうなムギ先輩の笑顔をみてたら、気持ちがほっこりしてしまいます

紬「うわあ、凄く積もってるね」

梓「はい…」

もう校舎に残ってるのは私たちだけみたいで、校庭には運動部の人たちもいなくて、雪で一面白く染まり、しんと静まり返っていました


紬「さあ、帰ろうか」

梓「はい」

誰の足跡もついていない雪の上に、一緒に踏み出します

滑らないように、お互いの腕に捕まりながら、寄り添いながら一歩一歩踏み出していきます

紬「……」

梓「……」

さく…さく…さく…さく…

肌に刺さるような寒さも、凍えるような風も、ただムギ先輩と一緒にならんで歩いていると全く気になりません、繋いだ手から伝わる温もりが、私を満たしてくれるからです

梓「ムギ先輩…」

紬「梓ちゃん、先輩は禁止よ?」

梓「えっ」

紬「ムギちゃんって、呼んでほしいな…二人きりの時は…////」

梓「はい、ムギ先…ムギちゃん…////」

幸せです…この幸せな時間がずっと続けばいいのに

でも、遠くない未来に私とムギ先輩は離れてしまいます

梓「ムギちゃん…ムギちゃんは卒業しても私と恋人でいてくれますか?」

紬「梓ちゃん…?」

梓「私は、ムギちゃんが卒業しても、その先もずっとずっと一緒にいたいです」

紬「…私もよ、だから梓ちゃん」

ぎゅううう

梓「あっ」

紬「大学を卒業したら、一緒に暮らしましょう?おばあちゃんになっても、ずっと一緒に…」

梓「は、はい!」

紬「だからね、梓ちゃんも私と同じ大学を受けて、追いかけて来て?」

梓「はい!えへへ、その前に先輩達が受かってるといいですね」

紬「大丈夫よ、みんな一生懸命勉強したもの♪」

ムギちゃん…私…絶対に一緒の大学に行きます、もっともっと、あなたと一緒にいたいから

紬「それじゃあ、梓ちゃん、またね」

梓「はい、お気をつけて」

チュッ

紬「うふふ♪」

梓「あうあう…もう、電車に遅れますよ!」

紬「はーい♪」

ふう…あれっ

がさごそ

ムギちゃんからもらった最後のチョコ…

ひょいぱく

梓「甘い…」

終わり


5 : いえーい!名無しだよん! :2015/02/14(土) 00:51:34 xqeeqIE20
長編百合SSってこんなに圧縮できたんだな


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