唯「ほぇ？」
律「なんだよ梓、急に？」
梓「私に『あずにゃん』って付けたのって唯先輩だったじゃないですか。
ムギ先輩の『ムギ』もやっぱり唯先輩が付けたのかなって思いまして」
唯「んーん？違うよ？ムギちゃんは私が入部した時にはもう『ムギ』って呼ばれてたもん」
梓「そうなんですか……じゃあ律先輩が？」
律「いや、私じゃないぞ。ムギってあだ名は澪がつけたんだ」
唯「えっ？そうなの！？」
梓「てっきり律先輩かと……澪先輩は人にあだ名を付けるタイプじゃないような……」
澪「そ、そうか？そんなことないぞ？私だってあだ名ぐらい……」
唯「でも言われたら『つむぎ』の下二文字を取って『ムギ』っていう
可愛らしいセンスは澪ちゃんっぽいね！」
梓「あー、確かにそうですね。律先輩にはないセンスですよね」
律「えっ！？お前ら、『ムギ』って『つむぎ』の『ムギ』だと思ってたのか？」
唯「………………」
梓「………………」
唯梓「「ええぇぇぇぇぇぇぇっ！！？」」
梓「ち、違うんですかっ！？」
唯「私なんてもう二年以上ずっとそうだと思ってたよ！？」
"
二人に話そうか。………そう、あれは唯の入部前、まだ軽音部が三人だった頃だ……」
―――――――――
律「いやー！琴吹さんが入部してくれて助かったよ〜♪」
澪「これであと一人だな」
紬「はい。頑張ってあと一人入部してもらいましょう」
澪「でも琴吹さん、ホントに良かったの？律が無理矢理誘って……」
律「なんだよ澪ー。無理矢理なんて人聞きの悪い……
琴吹さんは自分の意思で入部を決めてくれたんだぞ？」
紬「………あ、あのっ！！」
澪「は、はいっ！」ﾋﾞｸｯ!
律「どーしたの？琴吹さん……突然大きな声で……」
紬「私のことも、苗字じゃなくて名前で呼んで欲しいです！」
澪「え……？」
律「えーっと、琴吹さんの下の名前って……紬だっけ？」
紬「はい！お二人みたいに名前で呼び合うような親しげな関係に憧れてて……
できればあだ名とかもつけて欲しいんです！」
律「急に言われてもなー。とりあえず今は『紬』って名前で呼ぶってことでいい？」
紬「はい♪うふふ……」
律「よし！じゃあ、澪、紬！明日から最後の部員勧誘がんばろうぜ！」
紬「おーーーっ♪」
澪「ぉ、ぉーー…」
翌日
律「うおぉぉぉっ！紬っ！なにこの高そうなティーセット！！」
澪「お茶もすごくいいヤツじゃないのか……？ど、どうしたんだよこれ！」
紬「父の仕事の関係で頂いてくる物なんです。家に置いていても余らせてしまうから……」
律「そ、そういうことなら……ｲﾀﾀﾞｷﾏｰｽ……うぉっ！この紅茶めっちゃ美味いぞ！！」
澪「ホ、ホントだ……普段家で飲むのとは全然違うな……」
紬「うふふ♪喜んでもらえて嬉しいわ。明日からはなにかお茶請けも持ってきますね？」
律「マジで！？サンキュー、紬！！」
澪「お、おい！ちょっとは遠慮しろよ！……紬、ホントにいいのか……？」
紬「ええ♪気にしないでください」
翌日
紬「今日はお茶請けにボラを持ってきたの〜♪」
律「………ボラ？」
澪「………ボラだな」
律「私、食べた事ないんだけど……」
澪「まあ割と外道扱いされる魚だからなぁ……」
紬「ちゃんと調理すれば美味しいんですよ♪」
澪「確かに……いけるな」ﾑｸﾞﾑｸﾞ
紬「うふふ♪」
翌日
紬「今日はメナダを持ってきたの〜♪」
律「聞いたことないものがきた！」
澪「昨日のボラの仲間だよ……私も食べた事ないけど……」
律「あ、確かに昨日のやつに似てるな！結構美味い」ﾓｸﾞﾓｸﾞ
澪「………うん」ﾑｸﾞﾑｸﾞ
紬「うふふ♪」
紬「今日はナンヨウボラを持ってきたの〜♪」
律「……………うん」
澪「…………………」
紬「今日はワニグチボラを持ってきたの〜♪」
律「…………………」
澪「…………………」
紬「今日はマウンテンマレットなの〜♪」
律「」
澪「」
紬「チックリップグレイマレットなの〜♪」
澪「……その、紬？毎日お茶とお茶請けを頂いている身としては大変
言い難いんだけど……なんで魚ばかりなんだろうか？」
律「お、おい……澪……」
紬「え……お気に召さなかったかしら……？父の仕事の関係で今の時期
魚がよく届くものだから………」
ボラボラボラボラ……！！なんだ？紬はボラの申し子なのか？生まれ変わりなのか！？
もう紬のあだ名は『ボラ』だ！英語で言うなら『Mugil cephalus』だ！！」
―――――――――
澪「………と、言うわけでな？」
律「『Mugil cephalus』がいつしか省略されて『Mugi』になったわけだ」
唯「………………」
梓「………………」
澪「まあ、あの時はついカッとなっちゃってムギには申し訳なかったけど
次の日から今みたいなお菓子を持ってきてくれるようになったんだ」
律「唯、梓……お前らがムギの美味しいお菓子を食べれてるのは
ある意味、澪のおかげなんだぞ」
唯「…………はぁ」
梓「………どうも」
ガチャッ
紬「ごめんなさいみんな、遅くなっちゃって。
今日は久しぶりにアンピンボラを持ってきたの〜♪」
おわり
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