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紬「みんな、私のお家に来てみない?」

1 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/07(金) 22:21:35 0IKOHYMM0
・企画概要

 テーマは「ムギちゃんの家」。
 今までほとんど明らかになってないムギちゃんの家、
 または琴吹家のお仕事なんかを想像しちゃいましょう。

 今回の企画では採点による順位づけをおこないます。詳細は後述。

・期間

 作品投下期間 … 3月8日〜10日
 採点期間 … 3月11日〜17日

・採点について

 今回の企画ではアンケートサイトを利用した採点を実施します。
 参加したか否かに拘わらず、採点に参加していただければ幸いです。
 また当企画の採点では“どこが評価されたか”を明確化するため、
 より詳細な採点方式を採用します。基準は具体的には以下の五点です。

 1、作品の雰囲気
 2、作品の冒頭
 3、作品の展開
 4、作品の読後感
 5、作品の読みやすさ

 全てについて1〜5点の間で点をつけてください。
 結果発表時には各部門と総合部門、両方における順位を発表します。

・参加方法

 トリップを必ずつけましょう。
 作品を投稿する前に、他の人とタイミングが被らないよう、
 書き手交流スレで一言言っておきましょう。
 終わったらもう一度、書き手交流スレでその旨を書いておきましょう。

 これだけ守ってもらえれば、ジャンルも形式も不問です。
 自由に参加してください。


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2 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/07(金) 22:23:21 0IKOHYMM0
まずは私から、ちょっとしたオープニングSSを。


3 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/07(金) 22:23:56 0IKOHYMM0


 □SCENE01‐音楽準備室


唯「ねえムギちゃんのお家って、よくこんなお菓子貰ってるんだよね?」

紬「そうよ〜」

梓「それ並大抵な家じゃないですよね。並大抵じゃないことは、よくわかってるつもりですけど」

律「だけどムギの家ってどんなとこなのか、私たち知らないんだよなあ」

澪「なんかこう、西洋の豪邸ってイメージがあるんだけど……」

紬「ふふふ。それなら……」

紬「……みんな、私のお家に来てみない?」


4 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/07(金) 22:25:14 0IKOHYMM0


 □SCENE02‐琴吹邸内某所


菫「……え、今から家にお友達を、ですか?」

菫「いえ、今日は予定入ってなさそうですから……はい、大丈夫です!」

菫「はい。わかりました。お待ちしてます。それでは」

菫「ふう……」

菫「……あっ。えーと……」

菫「……み、皆さんこんにちは! 斎藤菫、琴吹家に仕えるメイドの一人です!」

菫「今回の企画では、進行を勤めさせてもらいます」

菫「至らぬ点も多いかと思いますが、よろしくお願いしますね!」

菫「……私も、お嬢様の家がテーマだと聞いて、ドキドキしてます」

菫「えへへ……といっても、私が仕える琴吹家と皆さんが考え出した琴吹家」

菫「その二つは似て非なるものか、全く似つかないものなんでしょうね」

菫「ええ、大丈夫です! だからといって、なにも恐れることはありません!」

菫「……ですから、皆さん」

菫「その琴吹家の門を、私に叩かせてもらえませんか?」


5 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/07(金) 22:25:44 0IKOHYMM0


 □SCENE03~‐あなたの作品


 さあ企画の始まりです。最初の投稿者さん、どうぞ!


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6 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/08(土) 10:40:55 mjOELuAM0

唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」


7 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/08(土) 10:43:42 mjOELuAM0

紬「みんな、わたしのお家に来てみない?」

唯「え、いいの!?」

律「よっしゃー!」

澪「じゃあ、お言葉に甘えて今から皆で行くか」


〜〜〜


唯「おじゃましまーす」

澪「お、お邪魔します」

律「おじゃまします!」



梓「お邪魔します」

憂「おじゃまします」

純「おジャマします」

和「お邪魔します」

さわ子「お邪魔します」

恵「お邪魔します」


晶「お邪魔します」
菖「お邪魔します」
幸「お邪魔します」
直「お邪魔します」
菫「お邪魔します」
香奈「お邪魔します」
千代「お邪魔します」

堀込「お邪魔します」
聡「お邪魔します」
淳司「お邪魔します」
紀美「お邪魔します」
川上「お邪魔します」
マキ「お邪魔します」
綾「お邪魔します」
詩穂「お邪魔します」
サヤカ「お邪魔します」
エリ「お邪魔します」
ルイ「お邪魔します」
ひとみ「お邪魔します」
デラ「お邪魔します」
ジェーン「お邪魔します」
ミホコ「お邪魔します」
ケイスケ「お邪魔します」
陽二「お邪魔します」
とみ「お邪魔します」

慶子「お邪魔します」未知子「お邪魔します」潮「お邪魔します」春菜「お邪魔します」多恵「お邪魔します」しずか「お邪魔します」文恵「お邪魔します」つかさ「お邪魔します」三花「お邪魔します」英子「お邪魔します」夏香「お邪魔します」曜子「お邪魔します」アカネ「お邪魔します」圭子「お邪魔します」俊美「お邪魔します」ちずる「お邪魔します」響子「お邪魔します」よしみ「お邪魔します」風子「お邪魔します」エリ「お邪魔します」姫子「お邪魔します」春子「お邪魔します」愛「お邪魔します」信代「お邪魔します」とし美「お邪魔します」ちか「お邪魔します」キミ子「お邪魔します」美冬「お邪魔します」一子「お邪魔します」アキヨ「お邪魔します」ますみ「お邪魔します」いちご「お邪魔します」まき「お邪魔します」

太郎(仮)「お邪魔します」
二郎(仮)「お邪魔します」
三郎(仮)「お邪魔します」
花子(仮)「お邪魔します」
オカルト研の眼鏡「お邪魔します」
オカルト研のハマーン様「お邪魔します」
囲碁部の人「お邪魔します」
トンちゃん「お邪魔します」

その親族あるいは血縁者達「お邪魔します」

〜〜

唯「これだけ人が集まってもまだ余裕があるなんてムギちゃんの家ってすごいんだね!」

さわ子「だから言ったでしょう」ドヤ


8 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/08(土) 10:45:07 mjOELuAM0
おわり
すいませんでした


9 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 11:58:32 mjOELuAM0


 「我らツムギュダーの光の導くままに!」


10 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:00:08 mjOELuAM0


   1、


 ここ桜が丘に、近所ではそれなりに名の知れた女子校がある。
 その名を私立桜が丘女子高等学校。
 桜高としばしば略されるその学校には、今日も多くの生徒が通い、
 勉学に励み、また部活に勤しんでいた。中野梓もその一人である。

 今年入学したばかりの梓は軽音楽部という部活の扉を開け、
 そこにいた四人の少女の輪へと自然に入っていった。
 実にアットホームな環境である軽音部に彼女が馴染めたのは、
 本人こそ意識していないが、順応性の高さに所以しているといっても相違ないだろう。
 また言い方を変えれば、染まりやすい、ということなのかもしれない。

 ところで、この軽音部には秘密がある。

 彼女たちは放課後になると楽器の演奏を放り投げ、お茶を嗜む。
 そのため既に、彼女たちは軽音部ではなく、お茶部である。

 などという秘密ではない。もっと重大なものだ。

 さらに言えばこの秘密は、新参者の梓も知らされていないことなのだ。
 それもそうであろう。いくら順応していようとも、秘密は軽く共有されるものではない。
 しかし梓は意識せず、その核心に触れることになってしまう。


 「そういえば、ムギ先輩のお家はどんなことをしているんですか?」


 彼女の素朴で当然の疑問が、柔らかな空気を硬直させてしまう。
 突然のことであったが、梓はその空気を敏感に感じ取った。しかし肝心な対処法が思いつかない。
 他の先輩たちを見回し、助けを求めてみる。
 ところが硬直したのは空気だけではなく、また質問された紬だけでもなく、
 四人ともが全く同様の状態であったのだ。

 梓は疑問に思う。これは一体、どうしたことなのか。
 ムギ先輩の家のことを、三人の先輩は知っている。
 だというのに、私にそれを教えることは出来ないようだ。

 そこで梓は朝に見た、家のカレンダーを思い出す。今月は六月。
 秘密を共有するには、少し短すぎる期間じゃないだろうか。
 この硬直した空気の中で梓はそう判断した。


 「あ、あの、無理に聞こうとか、そういうんじゃないんで。
  もし話しにくかったら、話さなくても結構ですから……」


 紬の顔色を窺いながら、梓はしどろもどろに言う。
 ところがその硬くなった表情に、いつもの柔らかな笑顔が戻ることはなかった。

 この空気を変えたのは、不意の来訪者であった。


 「ちょっといいかしら」


 真鍋和。生徒会役員の一人で、やや鈍感なところはあるが、機転のきく性格。
 通常、緊迫状態における外部からの来訪者は歓迎されるものでない。
 ところが今回に限っては、彼女の微妙な空気の読めなさが功を奏した。


 「あら、またお茶してるの?」


 開けっ放しの扉から吹き込む空気と混じり合い、
 部屋を支配していた重みが流れ出していく。
 初めに笑顔を取り戻したのは彼女の幼馴染、唯であった。


 「いつも通りの活動中だよー」

 「そうね。書類の提出忘れについても、いつも通りなんだけど。ねえ、律?」


 和が睨んだ先には、視線を逸らす律がいた。
 律の頭上から鉄槌と怒号が落ちるのは、当然時間の問題であった。


 「お前はいつもいつも……!」


 澪はまるで和の代弁者のごとく、律を叱り付ける。
 すっかり萎れてしまった律を、今度は和が生徒会まで引っ張っていく。
 こんなの自業自得だ。律は姿を消す直前、そう叫んでいた。もっともである。


 「あれ、なんて言いたかったんですかね」

 「わからないけど、絶対言いたいことと違うことを言ってたよな」


 いつもの光景の中、梓は自然と澪に問い掛けていた。
 澪も自然と返答している。どうやら杞憂だったようだ。
 そう安心したのも束の間、一人いつもの空気に馴染めていない者の方を、梓はちらりと見やる。
 紬の表情から硬さは抜けていたが、今度はなにかを考え込んでいる様子であった。


11 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:01:34 mjOELuAM0

   2、


 ここは琴吹家邸。いわば紬の家であった。
 その庭の一角に備え付けられた白色の椅子に、四人は腰掛けていた。
 四人が取り囲む丸テーブルの上には、いつものティーセットが置かれている。
 神妙そうな表情で紅茶を一口啜った澪は、沈黙を破るように口を開く。


 「やっぱり梓を軽音部に勧誘したのは、リスクが高すぎたんだと思う」


 それはまるで誰かを咎めるかのような語調であった。
 咄嗟に反応したのは、唯と律であった。


 「澪ちゃんだって、最終的に賛成したじゃん」

 「そうだぞ。新規の人員が確保できるかもって」


 澪はその意見をさらりと受け流した。ここで喧嘩することに、意味を見出していない。
 無駄であることを次に受け入れた唯は、溜め息を一つ吐く。


 「ムギちゃん、どうする? あずにゃんは本当に協力してくれると思う?」


 一応断っておくと、軽音部の部長は律である。
 しかし当の律は、最後の意志決定権を紬が持っているかのような発言に対し、なにも異議を唱えない。
 これはつまり、ここにいる四人が“表の軽音部”ではないことを意味している。
 紬はすっと立ち上がり、空を見据えた。
 彼女の目にはどこまでも広がる青い空と、そこを無限に翔ける雲が映っていた。


 「もう実行に移すしか、ないと思う」


 そこにいる誰もが彼女の発言に度肝を抜かれた。
 目は飛び出そうなほど見開かれ、彼女に向けられる。
 三人の視線が集まっていることを感じつつ、彼女は続ける。


 「そうでしょ。もう一年間も準備はしてきた。だったら一つの不安要素でくよくよして、
  一年の準備を無駄にするより、もう実行して、全てを巻き込んだ方がいいと思わない?」


 三人にとって、初めそれは意外性を伴った発言に思えていたが、
 話を聞くにつれて現実性を帯びたものに思えてきていた。
 そう感じるや否や、彼女たちは心でも通じ合ったかのように、ほぼ同時に立ち上がった。
 次に各々が特徴的、またどこか煽情的なポーズになる。そして口を揃えて、こう言い放った。


 「我らツムギュダーの光の導くままに!」


12 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:02:56 mjOELuAM0

  3、


 帰り道、梓は親友の憂と純と並んで歩いていた。
 二人の親友のうち憂は、唯の妹。梓は憂に、先輩たちの隠し事について尋ねた。
 軽音部の秘密についてなにか知っているのではないかと、
 淡い期待を寄せてしまうのも無理は無い。
 しかし憂が首を振ったことで、淡い期待は呆気なく泡沫へと消え、
 そのまま諦めと入れ換えられてしまう。


 「そういえばお姉ちゃんって、ムギさんのお家の話をしたことないんだよねえ。
  行ったことは何度もあるみたいなんだけど」

 「えっ、そうなの?」

 「おやおや、梓だけハブられてるのかなー?」


 純が、その髪に似てお調子者らしく、梓をからかう。
 しかし梓は、同じ部活の後輩だから全てを教えてもらえるというのも、
 少し違うのではないかという気もしていた。

 私はまだ入って二ヶ月ほどしか経っていない。これが半年なら変わっていたかもしれない。
 そうだ、私には時間が決定的に足りないのだ。こればかりは努力で埋められない。
 いかに軽音部の色に染まった私でさえ、時間の壁を越えることはできない。きっとそうだ。
 特に明確な答えを出さない考えが、梓の頭をぐるぐる回る。

 ところで、純のからかいは完全にスルーされていた。


 「大丈夫だよ、梓ちゃん。お姉ちゃんも隠し事は上手いほうじゃないから。
  きっと時間が経てば、わかってくることもあるよ」

 「うんうん。私を見習って、どっしり構えてるといいよ」


 憂の言葉に励まされた梓は、一度考えることをやめた。
 あっちへこっちへ傾いていた心は、真っ直ぐに立て直される。
 純の発言は真っ先に無視されている。


 「そうだね、時間、時間だよ。ありがと、憂」

 「どういたしまして」

 「あれれ、私にお礼の言葉はないの?」


 特になかったという。


13 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:08:28 mjOELuAM0
   4、


 六月が終わりを迎えようとした日の、お昼休み。
 突然それは学校中に響き渡り、ある者は心酔し、またある者は耳を疑った。
 梓は後者の人間であったが、それも人一倍のことであったことは容易に想像できる。
 教室のスピーカーから流れる音声は、紛れも無く、軽音部の先輩のものだった。


 『えーえー、マイクのテスト中。オッケーかな、唯ちゃん?』

 『オッケーだよ、ムギちゃん!』


 あの人たちはなにをしているんだ。不安と呆れと、少しの恥じらいが梓を襲う。


 『……私はムギエイラ! 学園征服組織ツムギュダーの総帥である!』


 恥じらいが数倍に膨れ上がる。
 やけに楽しげな声が、それをより一層強めていた。
 教室の隅で、純は笑いを必死に堪えていた。


 『我らツムギュダーの光に従いなさい! 従う者には、永遠の救いが約束されるのよ!
  でも、従わない者には罰を与えるわ!』


 その、悪の組織のボスになりきれていない紬の声が、
 今の梓にとっては最大の凶器となっていた。
 それが耳に入るたび、恥ずかしさで身悶えてしまう。
 しかし幸いにも、この声が軽音部員のものであると気付いている人はいないようだった。
 なお純にとっては、笑いの意味で最大の凶器であった。
 勿論声の主が誰であるかなど知らないのだが、そんなことは純にとってどうでもよかった。

 止めるなら、早いほうがいい。

 梓はそう心の中で数回呟いてから、教室を飛び出した。
 一年二組の教室から放送室は近い。職員室、生徒会室の次が放送室である。
 しかしそう、勢いよく走らなくても良かったのだ。

 ちょうど生徒会室前を通り過ぎようとした瞬間、そこから人影が現れる。
 視界にそれが飛び込む。頭では反応こそしたものの、身体が間に合わなかった。
 勢いよく衝突したお互いの身体は、宙を舞う。

 身体が廊下に叩き付けられる。咄嗟に目を瞑った梓は、
 その倒れたままの体制で、思考を巡らせていた。
 まず目覚めたら、相手に謝ろう。その後に放送室に突入しよう。
 相変わらず耳に入り込んでくる悶絶ものの放送を遮りつつ、
 考えを一段落つけた梓は、ゆっくりと目を開けていった。

 仮面舞踏会でつけるような、白いマスクで目元を隠した女性が、
 こちらを見下ろしているのが見えた。白いマントに、白い衣装。一応の統一感はあった。
 ところで正確には、この者が女性であるかどうか現時点ではわからないのだが、
 この時の梓にとって男女の差など、大した問題ではなかった。
 目の前のその存在自体が問題だったのだ。当たり前である。


 「大丈夫ですか? 私はホワイトウイン。正義の味方です」


 ひどい頭痛に襲われる。放送とマスク女子によって、聴覚と視覚を支配されていた梓は、
 追い討ちをかけられた感覚に陥っていた。ぐにゃりと世界が歪んでいくようだ。
 だが、そうなるのも尤もである。恐る恐る梓は目の前の白マスクに尋ねる。


 「ねえ、なにしてるの憂」


 発せられた声は紛れもなく、親友のものだったのだ。
 こればかりは疑いようもない。間違えようもない。
 よくよく見れば、髪は黄色いリボンで後ろにまとめられているではないか。


 「私はホワイトウイン。その正体を明かすことは出来ません」


 梓は諦めた。現時点で正常なのは、客観的に見れば梓の方であった。
 一方ホワイトウインは、生徒会室の方へ振り向いている。
 もしかしてと悪い予感が頭の中で浮かぶと、案の定同じような者がもう一人出てきてしまった。
 今度も見覚えのある、ショートカットの女性である。


 「どうしたのホワイトウイン」

 「実は梓ちゃんとぶつかっちゃって……」

 「梓ちゃんも急いでいたのね。悪の組織から、ここを守るために」


 声は、あの赤縁メガネの生徒会役員のものだった。
 唖然とし続けている梓に気付いたもう一人の正義の味方は、
 まだ廊下に座り込んだままのこちらに手を差し延べる。


 「ごめんなさい。私はホワイトノードカット」


 やや発音しづらい名前である。
 キットカットの方が発音のしやすさで優れていると梓は思った。
 とりあえず、正義の味方らしい人の手を借りて立ち上がる。
 ありがとうございますと短く礼を言うと、ノードカットは微笑みを浮かべた。
 ああ、外見はこれでも中身はまともだ。梓は少しだけ安堵し、ため息を吐いた。


14 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:10:01 mjOELuAM0

 しかしそれも束の間のことだった。白い二人組の背後から、声が聞こえる。
 それはスピーカーを通して聞こえてきたものと、同じ声だった。


 「来たわね、ホワイトガールズ!」


 ホワイトガールズと呼ばれた二人が身を翻す。
 梓も背伸びし、その向こうにいる者の姿を確認しようとした。
 再び梓は愕然としてしまう。

 人数は四人。全員それぞれ奇怪な格好をしているが、顔を隠していることは共通している。
 三人が仮装用の黒いアイマスクで目元を隠し、一人はガスマスクで顔全体を覆っていた。
 服装は制服ではない。それぞれコートやマントやパーカー、全身タイツなどの違いはあるが、
 総じて黒で統一されているようだった。

 ああ、先輩たち。全員お揃いでしたか。

 消え入るような声で発せられた言葉は、当然誰にも届かない。
 届いたところで意に介さないのはわかっていたから、それ以上声を出そうともしない。
 金髪の女性がリーダーのようだということは、なんとなく立ち位置から推測できた。
 これもムギ先輩のお遊びの一つなんだろうか。

 金髪の女性は言葉を続ける。


 「我らツムギュダーの光を、妨げようというのね?」

 「はい、そのつもりです!」

 「下がっていてください、ムギエイラ様。ここは私、ミオーミャが相手をします」


 そういって出てきたのは、黒髪の美しい女性であった。
 梓の中で何かが音を立てて崩れた。なにせこの先輩、ノリノリなのである。


 「気をつけて、ウイン中尉。彼女の戦闘能力は確かなものよ」


 ノードカットがそう警告する。しかしウインは怯む様子を見せない。
 そう、彼女たちもノリノリなのである。


 「待って、ミオーニャ。ここで戦う必要はないわ」

 「しかしこの二人は、早く始末しておいた方が……」

 「私は無駄な戦いなんて嫌いよ。彼女たちも説得すればいい」

 「……ムギエイラ様がそうおっしゃるのなら」


 下がったミオーニャの代わりに、今度はムギエイラが一歩踏み出す。
 さっきは少しも怯みを見せなかったウインも、敵の主将相手には気圧されていた。
 彼女の力はそれほど強大なものであったのだ。


 「ホワイトウイン。ノードカット。あなたたちが誰なのか、私にはわからない」


 梓には一目瞭然であった。


 「私もそれは同じよ、ムギエイラ」


 同上。


 「そう、私には、あなたが善人か悪人かわからないの。
  だから最後にチャンスをあげる。ツムギュダーと共に、学校を征服したくない?」

 「お断りね」

 「残念。それなら、あれを起動しちゃって、リーツ教授」

 「合点だ!」


 リーツ教授と呼ばれたカチューシャの少女は、
 懐に隠してあったリモコンを取り出し、ボタンを押す。
 次の瞬間、あらゆる教室、また廊下の至る所の天井に大穴が空いた。
 そこから白い煙が学校中に流れ込んでいく。白煙は学校中を掌握すると、すぐに色を失った。

 なにも起こらないじゃないか。

 そう思った次の瞬間、梓は辺りに甘い香りが漂っていることに気が付く。
 甘い香りは一瞬で学校中を包み込んでいた。
 この、人の心身に癒しを与える上品な香りは、まるで紅茶のものだった。


 「なにをしたの、ツムギュダー!」

 「これは紅茶式人間洗脳煙幕……。
  わかりやすく言えば、紅茶のような甘い香りで、人の心を掴んでしまうのだ!」

 「くっ、なんて卑劣な……!」


 張り詰める空気と心落ち着く香りの中、梓はふと疑問に思っていた。
 私はなんともないのだけれど。これ失敗してないか、と。
 だが先程まで騒がしかった教室が、異様なほど静かになっていることに、
 梓は少し違和感を抱いていた。答えはすぐに示される。


15 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:10:36 mjOELuAM0


 「結果報告!」

 「やっぱり全員に聞くもんじゃないですけど、
  学校内にいる八割の人間に洗脳効果を確認しましたっ!」

 「ご苦労さま。一年を要した甲斐があったわね」


 自分は二割の人間だったようだ。
 とはいえ八割の人間が洗脳されたのだとすれば、充分征服成功といえるのではないか。
 だがツムギュダーの主将ムギエイラは、それを良しとしなかった。
 それを察したリーツ教授は次なる仕掛けを起動していた。
 先程まで恥ずかしい放送を発していたスピーカーから、今度は違う音が鳴り出す。


 「な、なにこの音は……!」


 それは非常に甘ったるく、聞いているだけで痒みが止まらないポエムだった。


 「ふふ、味方ながら強烈だなあ、ミオーニャのポエムは」


 梓も今回は他人との差もなく、同じく音が聞こえていたのだが、
 この甘さに対しては耐性があったので多くの影響を受けずに済んでいた。
 一方でミオーニャは今すぐ逃げ出したい気持ちに駆られていた。


 「でもこの音がなんだっていうんですか。
  私たちより、そちらの味方の方がダメージ大きいと思いますけど」

 「わかってないなあ。このポエムはただ甘ったるいだけじゃない。
  それこそ信じるやつらにとっちゃ、強烈な催眠でもあるんだぜ?」

 「どういうことですか……?」


 ウインは辺りに注意を払った。ふと、後方から聞こえる轟音に気付く。
 猛獣に追われているバッファローの群れの如く、それは力強い。
 さらにその音はこちらに近づいている。場の緊張感が増していった。
 ノードカットは冷静に、その音源を突き止めていた。

 人だ。人の群れであった。

 それも一般の生徒なのであるが、
 ノードカットはその先頭に立っている人間を見て、愕然としていた。
 一年生から三年生までの幅広い世代の生徒をで率いているのは他でもない、
 あの曽我部恵。この学校の生徒会長なのである。


 「何故先輩が……。いや、考えるのは後。ここは一旦退くべきね。ウイン!」

 「わかりました。さあ、梓ちゃんも一緒に」


 呆気にとられていた梓は了解も得られず、ウインに手を取られる。
 あ、私、この人たちに連れさらわれてるんだ。
 そう気付いたのは、湿った外気が肌の上を滑り出した頃のことであった。


16 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:12:05 mjOELuAM0

   5、


 梓が連れてこられたのは、真鍋和の自宅だった。
 まさかこの白い格好のまま二人は家に入るのかと思っていたが、
 ノードカットはそのまま正面から入ろうとせず、裏手へと向かう。
 庭に生い茂る雑草を掻き分け、隠されていた取っ手を引くと、地下に続く階段が姿を現した。
 不覚ながら、まるで秘密基地のようだと、梓は心が躍っていた。

 階段を下りた先は薄暗く、明かりが足りていないようだった。
 梓の目が暗さに慣れると、部屋の全貌が見えてくる。
 畳と真ん中に置かれたちゃぶ台と、そこに置かれた急須と湯呑み。
 その空間は近未来的な秘密基地とは程遠く、梓は少し落胆していた。


 「普段飲んでる紅茶と比べると、物足りないかもしれないけど」


 肩を落とす梓を気にせず、ノードカットは湯呑みにお茶を注いでいった。
 衣装は相変わらず脱がない。まずは気持ちを落ち着かせようと、梓はお茶を口に含む。
 紅茶とは違い、緑茶特有の苦みが舌にへばりつく。
 苦々しい顔のまま、梓は二人に問いただした。


 「一体なにが起きたのか、説明してください」

 「そうよね、いきなりのことだものね。ちゃんと説明するわ」

 「その格好のままで、ですか?」

 「私たちは正体を明かしてはいけないの」


 ここが和の家であることを、梓は今にも言い出したくなった。
 だがそれを言って何になる。事態は何一つ好転しない。
 次の瞬間、梓はそれを諦めていた。


 「じゃあ、そのままでいいです」

 「そう。助かるわ」

 「どれから話せばいいかな?」


 ウインの問いかけに、梓は戸惑った。
 どれから聞けばいいのかすら、梓には決められないでいた。


 「……じゃあ、あの四人について話すね」


 梓を見かねたウインが自分から話を切り出す。


 「あの四人は学園征服組織ツムギュダー……。
  世界征服組織として有名な“琴吹グループ”と関係の深い組織だよ」


 今、梓には重要な情報がさらっと流れていた気がしてならなかった。
 さすがにこれは聞き逃せないと思い、その琴吹グループについて尋ねる。
 しかしウインの答えは非常に簡素なものだった。

 つまり琴吹グループは、表向きには多種の事業を展開する企業グループだが、
 裏では世界征服を企んでいる組織なのだそうだ。
 ツムギュダーはそれの兄弟的組織で、どういう繋がりなのかは一切不明。

 しかしツムギュダーの所在を、桜が丘高校まで絞った“正義の組織”が、
 この二人に正義の役目を与えたのだという。
 あの白い衣装は一見ふざけているように見えるが、
 着ている者の運動性を向上させる、れっきとした戦闘服である。
 二人に役目を与えた組織が支給したのだ。

 ここまで話を聞いて、内容こそ飲み込んだものの、未だ信じ切れていない梓であった。
 しかしあの学校での出来事は、決して“おふざけ”ではなかった。
 さらに思い出してみると、逃げる際にちらりと見えた教室の中はどこも異様で、
 それこそ“征服”されたようにも見えてしまっていた。
 信じる道以外になにがあるのか。梓は悩みながらも決心した。


 「大体話はわかりました……。二人の話は信じます」

 「そう。それなら、次の話に進めるわね」


17 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:13:17 mjOELuAM0

 「次の話……?」

 「これを見て貰えるかしら」


 梓が渡されたのははがきサイズの厚紙であった。
 片面に文字が書かれており、そこにははっきりと、

 【私のお家に来てみない? by ムギエイラ】

 と、書かれていた。
 何故か筆で書かれており、やけに達筆だった。


 「これは私たちが逃げる際、投げ渡されたものよ」

 「挑発されてるんですか?」

 「そうね。挑発とも取れるし、話し合いに誘われてるのかもしれない」

 「でもツムギュダーに話し合いは通じないって、もうわかりましたから……」


 ウインがため息を吐くとともに俯く。和は同情するように首を振った。


 「私もそう思うわ。だからこれは、決着をつけようという意味合いなんでしょう。
  話し合いが無理なのだから、当然力の差で、ね」

 「だったら白い衣装でパワーアップしてる分、こっちが有利なんじゃ?」

 「あなたも見たでしょう。ツムギュダーの科学力を。
  あの黒い衣服にも、それなりの科学力が集結していると見ていいわ」


 梓は学校の征服に使われた煙とポエムを思い出し、
 次にあの黒い衣服を思い浮かべた。


 「まあ、モノは見た目に寄りませんからねえ……」

 「ねえノードカット。そういえば私たち、ムギエイラの家を知らないよね?」


 梓は言葉に詰まった。


 「そうね」


 同上。


 「あ、あの。本気で言っているんですか」


 恐る恐る梓は二人に尋ねた。二人の鋭く刺すような眼光が、マスク越しにでも伝わってくる。
 いかにも私たちは本気だと言っているようだ。空気がぴんと張り詰める。
 嫌な予感はしていたが、やはりこうなってしまったと、梓は後悔していた。


 「だって琴吹グループですよ? ツムギュダーですよ? ムギエイラですよ?
  もうそれって、ムギ先輩しかいないんじゃ……」


 梓の至極当然の答えに、二人は首を振った。


 「それはないよ、梓ちゃん」

 「どうして」

 「あの温厚な紬さんが、そんなことするわけないもん」


 ここに来て持ちだされたのは、感情論であった。
 それもそうなのだけど、どう見てもあの緩やかで美しい金色に染まった髪はムギ先輩だった。
 そう反論すると、今度はノードカットが言葉を挟む。


 「ムギエイラの正体は、まあいいわ。でも琴吹グループに直接乗り込むっていうのは、良い案ね。
  流石は三人目の正義の味方ってところかしら」


 ノードカットは感心した様子でそう言っていた。
 ウインにも異論はないようだった。唯一、梓だけが疑問を呈する。


 「三人目の味方って、どういう意味で言ってるんですか?」


 この流れは非常にまずい。梓の経験がそう語っていた。
 なんとしても流れをこちらに引き寄せようと、言葉を紡いでいく。
 ところがノードカットは常に冷静で、また微妙に空気が読めない。
 梓のなんとなく断りたいという空気も、読めないのは当然である。


 「梓ちゃん、あなたがこれを着るのよ」


 そう言って奥の箪笥から持ち出してきたのは、
 二人が来ているものと同じような衣装だった。
 案の定ではあったものの、梓は絶句せずにはいられなかった。

 確か、これを来てる人は正体を明かしちゃいけないんじゃ。
 でも私思い切り正体明かしているんですけど、そこら辺大丈夫なんですか。
 限りない数の疑問が梓にのしかかる。
 しかし既に正体がバレバレの二人のことを考えると、それもどうでもいいことのような気がしていた。


18 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:44:50 mjOELuAM0

   6、


 琴吹邸の敷地内に緊急事態を知らせるサイレンが鳴り響く。
 普段は大人しい使用人たちも、途端に顔色を変え、辺りを警戒する。
 その手には各々なんらかの武器が握られていた。

 一方で普段通りのお茶を楽しんでいたのは、ツムギュダーの四人であった。
 招き入れたのは当人たちであるのだから、この事態も想定済みなのであろう。
 だがそれを琴吹邸の当主に知らせていないところを見ると、
 また彼女たちも企んでいることがあるに相違ないのであった。

 リーツ教授が西洋風の趣きに溢れた時計をちらりと見た。


 「どれだけの時間でやつらがここに来るか、賭けようぜ」

 「アホらしい。じっと待ってればいいだけのことだろう」


 ミオーニャは一方的に、その提案を捻じ伏せた。
 つまらないやつだとも言いたげに、リーツ教授は肩を竦める。
 彼女たちのリーダーは口を開かない。


 「それにしても、あの二人組は何者なんだろ?」


 黒の全身タイツにガスマスクを装着したユヴィー。
 彼女は一番最後に加入したせいもあってか、階級でいえば下っ端であった。
 だが下っ端といえど、彼女たちの間には信頼関係が結ばれている。
 よってこの問いにリーダーのムギエイラが直々に答えることも、自然であった。


 「私たちの学校に潜んでいた誰か、ということになるわね」

 「しかし一年間、私たちは学校の中を探し続けていたのにも拘わらず、
  何一つ情報を手に入れられなかった。
  それでも本当に学校にいると思っているのですか?」

 「ええ。そうでもなければ、あの放送に気付くこともないでしょう」


 ムギエイラの指摘も、尤もであった。
 その妥当性もあって、調査を主導してきたミオーニャの心持ちは、
 決して穏やかではなかった。
 今にも恥ずかしさと悔しさで、腹の内側を掻きむしられるようであった。

 その時、床がかすかに揺れたのを、ムギエイラは敏感に感じ取った。
 地震が起きたわけではなく、下の階で戦闘が起きていることを、
 また同時に察していた。


 「いつものお茶の時間は終わりよ。さあ、始めましょう」


 ムギエイラが立ち上がる。すると三人に電撃が走ったかのごとく、
 背筋は伸び、完全な直立不動の姿勢となった。
 三人の視線を受け止め、ムギエイラは言葉を続けた。


 「私たちの“お・も・て・な・し”を!」


 モーション付きである。


19 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:47:05 mjOELuAM0


   7、


 屋敷の一階では多種多様の武器を持った老若男女が、三人の少女を囲んでいる。
 ナイフなどの刃物から大小様々な銃器など、
 一般家庭が持っているものから到底持ち得ないようなものまであったが、
 三人の少女が持つ武器に比べれば、それらは幾分か現実的であった。

 彼女たち三人が持つ剣の刃は白く蛍光灯のように輝き、
 見た目だけで言えば、子供の憧れるヒーローの武器を模したおもちゃのようだ。
 だが名刀と呼ばれる刀たちと比べても遜色ない切れ味を誇っており、
 向かってくる銃弾ですらマシュマロと大差なかった。

 使用人の一人が刀を目の前の少女に容赦なく振り下ろす。
 ウインはそれを自身の剣で受け止める。すると、そのまま刀身を斬ってしまった。
 使用人の手が震える。折れた刀が手から零れ落ち、顔が圧倒的な力を前にぐしゃりと潰れる。

 他方では銃を構えた使用人が、他の少女、ノードカットに狙いを定めていた。
 だがノードカットは恐れず、使用人に駆け寄る。焦り、引き金を引くものの、まるで当たらない。
 狙いが合ったかと思えば、銃弾は真っ二つに斬られていた。
 もはや現実の話とは思えない。使用人の中に武器を持ちながら、茫然と立ち尽くしている者が目立ち始めた。
 残り一人の少女についても、それは同様であったに違いない。

 彼女の名前はホワイトアズニャー。正体もバレバレの正義の味方である。

 二人の圧倒的な戦闘を前に戦意を喪失した使用人たちを見て、
 アズニャーはふと思った。もうこれ二人だけでいいんじゃないかな、と。
 戦闘経験のほとんどないアズニャーにとって、無理もない話である。

 多くの使用人たちを越え、三人はついにツムギュダーが潜むと思われる部屋の前に辿り着く。
 ノードカットが周りを確認し、用心深くドアノブに指を近づけた。その時。


 「痛っ!」


 ノードカットの指に電撃が走る。静電気だろうか。
 しかし六月に静電気が発生するということは、滅多にあり得ない。
 なにが起きたのか、三人には皆目見当ついていなかった。


 「ホワイトノードカットよ、我がツムギュダーの誇る、
  “静電気並みの電撃を食らわせるドアノブ”の威力、恐れ入ったか!」


 そんな三人のもとに近づく影があった。リーツ教授だった。
 部屋の中にいると思われたリーツ教授は、悠々と廊下を歩いている。
 つまり、この部屋には誰もおらず、罠が仕掛けられていただけなのだ。


 「引っ掛かったお前らが悪いんだよ。
  それと、ここで私の相手をするお前らの運も悪いんだよ!」


 リーツ教授がそう叫ぶと、廊下の壁からタコの足のようなものが伸びてきた。
 タコ足はリーツ教授を囲むように伸び、それぞれが意思を持ったように自由に動いていた。
 これがリーツ教授の使う武器であった。


 「……ここは私に任せて、二人は先に!」


 剣を構えるウイン。襲い掛かる八本の足を一つ一つ切り刻む。
 だが切り刻んだ箇所はあっという間に修復され、また新しい攻撃へと繋がっていく。


 「これは大阪人の容赦ない値“切り”にも対応できる、凄い発明……なんやで!」


 取ってつけたような関西弁だった。
 しかし攻撃のえげつなさ、まさに大阪のおばちゃんの値切りを上回る勢いである。
 残念なことに、ウインはそのような根性を持ち合わせていない。
 彼女は人一倍の母性と知性を持ち合わせているものの、
 このタコ足とは相性が悪いと言えるだろう。

 ノードカットは咄嗟に判断した。


 「……任せたわよ、ウイン」

 「えっ、いいんですか!?」

 「私たちは主将を討ち取ればいいの。行くわよ!」


 ウインの口元は笑っていた。二人のためになれて、嬉しいのだ。
 それを目にしたアズニャーは息を呑みながらも、先を行くノードカットの背中を追った。


20 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 12:56:44 mjOELuAM0


   8、


 しばらく走っていると、今度は二人の間に閃光が走った。
 正確には剣の発した残光であった。しかし速すぎて、それが捉えられない。
 ノードカットはアズニャーを制止させ、辺りを警戒する。
 再び二人に閃光が襲いかかろうとした瞬間。

 ノードカットの剣がそれを受け止める。

 生半可な剣であれば、真っ二つになっていたことだろう。
 しかしノードカットの持つ剣、それと交わるミオーニャの持つ剣はそうではない。
 一つもひびが入らず、互角といっても過言ではなかった。

 睨み合う二人の距離は拳二つか三つ分ほどしかなかった。
 声をあげれば相手の鼓膜を激しく揺らす。
 眼光を鋭くすれば、相手の瞳に反射し、それを自身で確認することが出来る。
 あるいは両者の息遣いが聞こえる。鼓動が聞こえる。


 「やるじゃないか、ノードカット」

 「あなたもね、ミオーニャ」


 剣がぎりぎりと音を立てながらずれていく。それを戻そう人間が動く。
 この剣が離れたとき、隙を作った人間が負けるのは、既に定まっていることだ。


 「今度は仲間を増やしてお出ましか?」

 「彼女は正義の味方に自ら志願したわ」


 大嘘である。

 だが今のアズニャーはそれを意に介さない。
 ノードカットを助けることが先決であると、今のアズニャーにはわかっていた。


 「アズニャー、ここは私に任せなさい!」


 しかし、ノードカットは先へ行くようにと叫ぶ。
 信じられない様子のアズニャーに対し、言葉を続ける。


 「悪の親玉を倒すの……それが私、そして私とあなたをここまで連れてきてくれた、
  ウインの意思なのよ!」


 ノードカットの強い言葉に秘められた思いは、梓の心を揺らした。
 その意味を噛みしめ、アズニャーは無言のまま走り出す。
 二人の思いを受け止め、背負い、征服を阻止するべく、
 そして自らの正義に応えるべく、アズニャーは走り出したのだ。


21 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 13:02:05 mjOELuAM0


   9、


 屋敷の奥に辿り着いたアズニャーの前には、異彩を放つ扉が立ち塞がっていた。
 また静電気の走る罠だろうか。それとも何万ボルトもの電撃が自分を襲うのだろうか。
 様々な不安が心をよぎるが、アズニャーは止まらなかった。

 扉は何の問題もなく開き、アズニャーは部屋へ足を踏み入れる。
 部屋は薄暗く、数多くのディスプレイが煌々と放つ近代的な光がよく映えていた。
 一際大きなディスプレイの前に、二つの人影をアズニャーは見つける。
 間違いない。ツムギュダーの主将ムギエイラと、その部下である。

 二人はこちら側と反対、目の前のディスプレイの方をじっと見つめていた。
 これ以上ないチャンスだ。剣を取り出し、アズニャーは二人に駆け寄る。
 刀身の届く範囲にムギエイラを捉えたアズニャーは、その手に持った武器を振り上げ、
 首元に斬りかかる。直前、ユヴィーがこちらの姿を捉えるものの、既に手遅れだ。
 ムギエイラの首に刃が達しようかという瞬間。

 首まで残り数センチのところで、アズニャーは剣を止めていた。


 「抵抗しないでください。すぐに首を落としますよ」

 「新人は過激な正義の味方なのね」


 ムギエイラは極めて冷静であった。
 一方で、アズニャーの心臓は胸の中を跳ね回るようであった。
 アズニャーは、ムギエイラの正体について確信がある。
 だからこそ首を落とすなんてことは、絶対に出来ない。
 だが、世界征服組織の娘だからといって、学校を征服されては適わない。
 これはつまり暴力的で、またアズニャーにとって平和的な交渉であった。


 「命は貰いません。学校だけは返してください」

 「もう征服しちゃったもの」

 「まだ遅くはありませんよ」


 二人に対しユヴィーは慌てふためるだけで、何の役にも立たないでいた。


 「ツムギュダーは学園制服組織なんですよね。もう満足でしょう。
  これ以上、なにをしたいというんですか」

 「私は学校を征服するだけじゃ満足しないんだもの」


 唐突な発言に、アズニャーは次の言葉を見失ってしまった。
 代わりに、ムギエイラ自身が言葉を補う。


 「私たちはこれから琴吹グループすら巻き込んで征服を達成しようとする、
  真の“世界征服組織”として生まれ変わるのよ」


 愕然としてしまう。そういえばここに来たとき、
 琴吹家の使用人は大分焦っていたことに、アズニャーはやっと気付く。
 招待していたにしては準備が成っていないとは思っていた。だが、これではっきりした。
 あれは琴吹家に対する宣戦布告でもあったのだ。


 「世界征服なんて、本当に可能だと思ってるんですか?」


22 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 13:03:26 mjOELuAM0

 「私たちの科学力を見てもまだ、それが言えるのかしら」


 アズニャーは不覚にも、その点については納得していた。
 人を香りとポエムで操る技術。タコ足。閃光のごとく繰り出される剣。
 どの技術も更なる発展を重ねていけば、世界の征服も夢ではないのではないだろうか。
 しかし正義の味方は屈しない。少しでも食らいつき、反論してみせる。


 「しかしこれらの技術力も、琴吹家の資金力があったから。
  ツムギュダーだけじゃ、なにも出来ないはずですよ」


 アズニャーは核心をついたと思っていた。しかし慢心であった。
 ムギエイラは憐れむように微笑んでいたのだ。


 「私たちの技術は独自のものよ。
  そこまで後先考えずに、作戦を立てたりしないわ」


 それもそうである。もしムギエイラとその部下の正体が、
 アズニャーの想定している通りであれば、間違いなく無謀な選択はしない。
 一番冒険的でありつつも堅実な選択をする。
 あの四人が一緒になったとき、道は自然とそう形作られる。


 「私たちは独自に新しいエネルギーの生成方法を編み出したの。
  それはこの≪TAKUAN≫を使う方法よ」


 従来のたくあんとは違うの、でもご飯とあわせても美味しいの。
 ムギエイラはそう付け加えたが、アズニャーにその言葉は届かなかった。
 今までは夢中になっていたが、その夢から覚まされるほどの現実離れした夢物語。
 現実が対面しているエネルギー問題と直轄しているぶんだけ、この衝撃は大きいものだった。

 話によれば≪TAKUAN≫は超エネルギー生命体であり、
 それを独自技術により栽培し増やすことで無限に近いエネルギーを、
 ツムギュダーは得ているということなのだ。


 「私たちの武器のエネルギーは全て≪TAKUAN≫が、まかなっているのよ。
  そう、これからは≪TAKUAN≫が世界を支配する時代なの〜!」


 ≪TAKUAN≫が支配する世界。この衝撃は、アズニャーにとって
 隙を作らせることに十分足るものであった。
 その隙を逃がさなかったムギエイラは自身の首を捉えていた剣を、
 一瞬のうちに弾き飛ばしてしまった。


 「なっ!?」


 アズニャーの視線が武器の方へと自然に移ってしまう。
 その隙も、ムギエイラは見逃さない。アズニャーの胸を正面から突き飛ばした。
 宙を舞ったアズニャーの身体は背中から叩き落される。
 遅れて、飛ばされていた剣が虚しい金属音を鳴らし、床に落ちた。
 

 「形勢逆転ね、ホワイトアズニャー」


 地に落ちた武器を踏みながら、ムギエイラはアズニャーを見下ろす。
 主導権を握ったかに思えたアズニャーであったが、決してそうではなかった。
 世界征服組織の主将を名乗る人間の前で油断してはいけない。
 今となっては遅すぎる後悔を、アズニャーは心の中で何度も繰り返した。


 「いいや、まだです……まだ二人が戦ってくれています……!」


 だが、思いが潰えたわけではない。
 アズニャーは歯を食いしばり、二人の様子を思い浮かべる。
 笑って送り出してくれたウイン。思いを託してくれたノードカット。

 しかし、その言葉を聞いたムギエイラは不気味なまでに無表情であった。
 悲しんでいるのか。憐れんでいるのか。無感情であるのか。
 その答えは、開け放たれた扉にあった。

 倒れたままアズニャーは、近づく足音の方へと首を回す。


23 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 13:03:55 mjOELuAM0

 嘘だ。

 アズニャーが思わず零した言葉は、無情にも空間の闇へ溶け込み、
 誰の耳に届くこともなく同化した。
 部屋へ入ってきたリーツ教授が背負っていたのは、ウインであった。
 傷は見当たらない。しかしぐったりと四肢を垂らした状態は、
 彼女が決して無事でないことを物語っていた。リーツ教授はゆっくりとウインを床に下ろす。
 アズニャーは目を見張り、動かないウインに這いながらも近づいた。


 「ねえ、ウイン……どうしちゃったのさ、ウイン!」


 返事はない。これが、あれほど圧倒的な戦いを見せた彼女の最期なのか。
 アズニャーはそれを認められないでいた。
 誰にも問われていないというのに、首を振りつづけることしか出来なかった。
 嫌だ。嫌だ。嫌だ。無意識のうちに言葉が漏れつづける。
 そんなことでしか自分の感情を吐き出すことができなかった。

 そんな時、アズニャーにさらに追い討ちをかける足音が聞こえてくる。

 扉を開け、部屋に入ってきたのはミオーニャであった。
 彼女もまたなにかを持っているようだった。
 リーツ教授のようにゆっくりと、ミオーニャはそれを床に置いた。

 それは壊れた赤縁の眼鏡だった。


 「そ、そんな……なんでですか、ノードカット……!」


 彼女の目はマスクで覆ってあった。
 しかしアズニャーは直感的に、これが彼女のものであると悟っていた。
 もはや眼鏡はノードカットの存在証明であり、
 眼鏡が彼女の九割を占めているといっても過言ではないだろう。

 アズニャーは悲しみと恐怖で、身体が縛り付けられていた。
 いまや頼りにしていた二人は打ち負かされてしまった。
 自身の唯一の武器も、敵の主将に踏み躙られている。
 四方は敵の組織に囲まれていた。これ以上の恐怖があるだろうか。
 身体の奥から絶望に蝕まれていくのがわかる。彼女にこれ以上戦える力は残っていないのだ。

 そんな彼女に声をかけたのは、役立たずのユヴィーであった。


 「ねえホワイトアズニャー。一緒に来ない?」


 その提案に誰もが言葉を失ってしまった。


 「もう行くアテは無いんだよね。だったら、私たちと一緒に世界を征服しようよ」

 「バカ! こいつは敵なんだぞユヴィー!」

 「敵だろうと関係ない。だって私たちは世界を征服するんだから。
  敵の一人や二人、征服できないでどうするの」

 「そういう話で片付けられるものなのか、これ……?」


 ミオーニャは突飛な発言に呆れ、肩を竦めた。
 代わってリーツ教授が説得を再開させる。


 「だけど正義の味方を名乗ってたやつだ。
  味方になったフリして、いつ裏切るかわかったもんじゃない」

 「それは私たちの力が足りないだけだよ。征服失敗ってこと。
  その程度の力じゃ、世界征服なんて出来ないと思う」


 リーツ教授も説得の方法がないと判断し、ついに匙を投げた。
 ムギエイラは端から様子を見守っているだけだった。
 元々規則にはうるさくない。ユヴィーは自分を信じ、アズニャーに言葉をかけた。


 「ホワイトアズニャー。自分勝手で悪いけれど、お願い。私にあなたを征服させてください」


 アズニャーは訳がわからないでいた。一般の高校生が正義の味方になり、
 今度は悪の組織の一員になろうとしているのだから、混乱するのも当然である。
 しかしなによりも、ガスマスクの裏の顔を知っているアズニャーにとって、
 この言葉に込められた真剣さには驚くより他がなかった。
 一体どんな顔でこの言葉を紡ぎだしているのか。彼女は今どんな顔をしているのか。
 興味は尽きることなく、どんどんと膨らむ。
 そしてアズニャーは、先程の言葉を頭の中で繰り返した。

 私にあなたを征服させてください。

 何も意識していなかったはずだった。
 しかし何故かこの言葉一つで、アズニャーの胸は抑え難いほどに鼓動していた。
 または締め付けられていた。胸の熱さが血管を伝い、身体中へと巡っていく。


 「あっ、あの……うっ……」


 踊りまわるような胸、締め付けられるような痛み。
 それが何度も行き来を繰り返しているうちに、
 彼女はついに限界を超え、意識を飛ばしてしまったのだった――。


24 : ◆NzKvjMYglE :2014/03/08(土) 13:05:05 mjOELuAM0


   10、


 ――……ああ、長い夢を見た。


 “私”は上半身だけを起こし、夢の内容を思い出していた。
 疲れて熟睡していたためなのか、非常に長い夢を見ていたようだ。
 だが夢は記憶にほとんど残らない。時間の経過に応じて、それは顕著になる。
 こんなごちゃごちゃの夢となると、それは尚更のことだった。

 朝ご飯を食べながら、ふと憂と和先輩のことを思い浮かべていた。
 もう夢の内容には靄がかかり始めているものの、確か二人は戦いに敗れていた。
 役割は正義の味方だったか。私もその一員になっていたような気がする。

 もう思い出せないことが多いのは残念だけれど、
 今も元気なあの二人を勝手にボロボロにしてしまうのはよろしくない。そんな気がする。
 あと、和先輩は眼鏡と二アリーイコールにしてしまってごめんなさい。

 朝ご飯を食べ終え、出掛けるための身支度をする。
 私たちの日常は何一つ変化がない。
 今日のこの朝ご飯も身支度も、変化のない幸せで溢れている。

 そうですよね、唯先輩。


 「ほえ?」


 私が一通りの支度を終えても、唯先輩はまだ朝ご飯を食べているところだった。
 遅い。さすがに遅すぎる。集合時間は八時。
 現在時刻は七時四十五分。もう置いていってしまおうかと思った。


 「ちょ、ちょいとお待ちを〜!」


 それなら急いで食べてくださいね。
 ムギエイラ様は優しいお方ですけど、時間を大切にしない人は嫌いですから。


 「自分の彼女とどっちが大切なのっ!」


 そりゃ唯先輩ですよ。でも約束を守らない唯先輩は、あんまり好きじゃありません。
 唯先輩は涙目になりながら、沢庵とご飯を口の中へかきこんでいった。

 私がお気に入りの文庫本を十ページほど読み進めた頃、
 ようやく唯先輩はご飯を食べ終えていた。時間もギリギリだ。
 そろそろ出ないと本格的にマズイ。時計と唯先輩を忙しなく交互に見る。

 やっと準備を終えたと玄関に駆けてきた唯先輩は髪も整えていなく、
 到底人前に出れるような格好とはいえなかった。
 靴を履いている横から、櫛で髪を整える。


 「ありがと、あずにゃん」

 「さあ急いで行きますよ。今日は征服達成一周年の式典が行われるんですから」

 「うん、そうだね!」


 私たちは二人揃って、我らがツムギュダーの征服した世界へと踏み出した。

 車通りの少ない狭い道を歩く。
 緩やかな川に跨ぐ橋を渡る。
 綿菓子のような雲の漂う空を仰ぐ。

 何一つ変わらない日常。

 これが私たちの征服した世界。
 この世界、この時間が未来永劫続かんことを。

 我らツムギュダーの光の導くままに!


 ‐ お し ま い ‐


25 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 17:57:02 IKvlPVPI0

菫「わたしとお姉ちゃん」


26 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 17:57:37 IKvlPVPI0
部室

純「そういえばさ、スミーレはムギ先輩と一緒に暮らしてたんだよね?」

菫「あっ、はい。でも、暮らしていたというよりは居候させていただいている、と言うべきかもしれません」

純「細かいことはまあいいよ。とにかく、小さい頃からずっと一緒だったんだよね?」

菫「はい、そうですよ。それがどうしたんですか?」

純「いやあ、ちょっと」

ガチャ

純「あっ、三人とも来た」

憂「遅れてごめんね〜」

直「掃除当番してました」


27 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 17:58:05 IKvlPVPI0
梓「……どうしたのよ、純。そんなにニヤニヤ笑って……」

純「ニヤニヤって失礼でしょ! あのね、スミーレとムギ先輩の昔話を聞こうと思ってさ!」

憂「あっ、わたしも聞きたーい!」

梓「二人の昔話は私も気になるなあ……」

菫「そ、そうですか?」

直「気になりますね。新しい歌詞の参考になるかもしれません」

純「だってさ!」

梓「まあ、菫がよければだけどね」

菫「話すのは別に構わないですよ。 ……そうですね、順を追って話しましょうか」


28 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 17:58:47 IKvlPVPI0
~~~

わたしは小さい頃、遊園地で迷子になったことがありました。
観覧車を見上げるのに夢中になっていると、いつの間にか一人になっていたんです。どれだけ周りを見渡しても、わたしの知っている人はもういませんでした。
怖くて泣いていると、どこからかお姉ちゃんが駆けつけてくれました。

紬「迷子になってたの?」

菫「……うん」

お姉ちゃんがわたしを見つけてくれたのがうれしくて、また大声で泣いたのを覚えています。

紬「もうだいじょぶだからね。泣かないで、菫」

そう言ってから手をつないでくれて、なんとかみんなのところへ帰ることができたんです。
いつまでも泣いているわたしの頭をお姉ちゃんは優しく撫でてくれました。
結局、わたしたち二人が迷子になったと大騒ぎになってしまって大変でした。わたしもお姉ちゃんも二人揃って怒られてしまいました。わたしが怒られて落ち込んでいると、お姉ちゃんはいつも優しく慰めてくれます。
あの時のお姉ちゃんの握ってくれた手はあたたかかったです。


29 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 17:59:22 IKvlPVPI0
次に、小学生の頃の話になります。
今もそうですけど、わたしは金髪です。低学年の時だったんですけど、髪の色でからかわれたことがあります。
わたしも一人だけ目立ってしまうので、髪の色について気にしていました。

菫「この髪の色、からかわれるからいやだなぁ……」

紬「気にしなくていいわ」

菫「お姉ちゃんは気にしてないの……?」

紬「うん。気にならなかったわけでもないけど、これがわたしたちだから!」

菫「わたしたち……?」

紬「そうよ、これがわたしたちの自然なんだから。もっと堂々としていいわ!」

後から聞けば、お姉ちゃんもからかわれたことはあるそうです。
けど、胸を張って堂々としていれば何も言われなくなっただけでなく、「綺麗だね」とまで言われるようになったと話してくれました。
事実、わたしも同じようなことを言ってもらえる時があります。
そのことをお姉ちゃんに言うと、髪を梳いてくれました。それから、わたしのこの髪の色は少し自慢です。


30 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 18:00:04 IKvlPVPI0
~~~

菫「ふう……」

憂「はい、お茶淹れたよ!」

菫「あ、すいません。いただきます」

憂「はい、直ちゃんも!」

直「ありがとうございます」

梓「やっぱりムギ先輩は昔から変わらないんだなあ……」

憂「紬さん、ぽわぽわして優しいもんね〜!」

純「ちょっと不思議なとこもあるけどね」

直「どんな人なのか一度会ってみたいです」

菫「まあたしかに、根本の優しさは変わってないかもしれません。けど、高校に入ってお姉ちゃんは変わりましたよ」

純「そうなの?」

菫「はい。じゃあお姉ちゃんが高校生になった時のことを。わたしが中学一年生の時です」


31 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 18:03:02 IKvlPVPI0
~~~

わたしが中学一年生の時、お姉ちゃんはこの高校に入学しました。
高校を卒業するまでは自分たちのお父さんの言う通りにすると私たちは決めていたんです。

菫「お姉ちゃんは何か部活に入るの?」

紬「うん、合唱部にしようかなって」

菫「そっか」

紬「明日、部室に行ってから決めようと思うの」

菫「いい部活だといいね」

紬「うん! 高校の部活がどんなものなのか楽しみ♪」

翌日、お姉ちゃんが学校から帰って来ました。とてもうれしそうな表情でした。どうしてなのか気になったので、何かいいことでもあったのか訊いてみました。


32 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 18:03:47 IKvlPVPI0
菫「合唱部そんなによかったの?」

紬「菫! 私、軽音部に入ることにしたの!」

菫「えっ! 合唱部じゃなかったの?」

紬「軽音部の方が楽しそうだったから!」

菫「そっか……」

本当に楽しそうな笑顔でした。お姉ちゃんは普段からにこにこと笑っています。でも、あんなによろこんでいるお姉ちゃんの顔は久しぶりでした。
それからは卒業まで毎日、その日に何があったのかを聞かせてくれました。
友達の楽器を買うためにバイトをしたとか、友達の家に行ったとか、合宿に行くことになったとか、学祭の練習が楽しいとか……。
たぶんお姉ちゃんにとって、高校生活は本当に楽しかったんだと思います。


33 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 18:04:34 IKvlPVPI0
~~~


純「それからムギ先輩はN女子大に行って、スミーレがここに入学したと」

菫「はい」

梓「ムギ先輩、そんなに楽しかったんだなあ……」

純「梓は楽しくないの?」

梓「楽しいよ! じゃなかったら、わざわざ毎日部室に来てお茶しないよ!」

純「そ、そっか」

梓「私が言いたいのは、人一倍楽しんでたんだなってこと」

憂「いつも笑顔で楽しそうだったよね」

梓「あ、そういえば……。思い浮かぶムギ先輩の表情はいつも笑ってるかも……」

純「スミーレと直は軽音部に入ってよかったと思ってる?」

菫「はい、もちろん」


34 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 18:05:12 IKvlPVPI0
直「毎日いろんな人間模様が楽しいですね。先輩方はどうですか?」

憂「ここに来ればみんなと会えるし!」

純「ジャズ研からこっちに来たけど、後悔はしてないよ」

梓「かわいい後輩にも会えるしね」

菫「みなさんが楽しんでいるのならよかったです」

梓「菫はムギ先輩に誘導してもらう形で入部したわけだけど、他の部活じゃなくてもよかったの?」

菫「いえ、ここが一番ですよ。お姉ちゃんが毎日あんなに楽しそうに話してくれた軽音部にわたしも入部できてうれしいです!」

純「私も軽音部後輩として、早く澪先輩たちにも会いたいな〜」

憂「わたしもお姉ちゃんに会いたいな〜」

直「もし会ったら、演奏の披露とかあるんですか?」


35 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 18:06:08 IKvlPVPI0
純「おっ、もし会うならどこかのスタジオでやりたいね……スミーレの家ってスタジオとかあるの?」

菫「わたしの家じゃなくて、琴吹家です……スタジオはありますよ。一ヶ月くらい前からちゃんと話しておけば、なんとかなるかと思います!」

純「おっ、じゃあ決まりだねー!」

梓「だとしたら先輩たちに聞かせても恥ずかしくない演奏をしないとね!」

菫「え〜! そんな急に無理ですよ〜……」

憂「だいじょうぶだよ、スミーレちゃん! それまでにしっかり練習すればいいんだから。ね、直ちゃん?」

直「はい、新しい曲も考えておきます」

純「おおっ! というか、せっかくだから直にもボーカルやってほしいなー。 ……梓だけじゃ不安だし」

梓「ちょっとそれどういう意味よ!」

菫「ふふ……」


36 : ◆gOEl3XmF6U :2014/03/08(土) 18:07:02 IKvlPVPI0
お姉ちゃんへ。
しばらく会っていないけど、お元気ですか?
わたしは軽音部で楽しい時間を過ごしています。お姉ちゃんも先輩たちと同じ寮に暮らしているから、今まで以上に楽しんでいるのかな? もしそうなら、わたしもうれしいです。
わたしたち『わかばガールズ』はこれからもお姉ちゃんたちに負けないくらい楽しく部活をしていくつもりです。
冬休みの間、もし時間があれば『放課後ティータイム』のみなさんの演奏を聞きたいです。その時に、わたしたちの演奏も聞いてもらえたら、と思っています。
もしできるなら、琴吹家のスタジオを使わせてもらえれば……と思います。迷惑だろうけど、お姉ちゃんの方から話してくれれば幸いです。
返信待ってます。

わたしを軽音部まで連れていってくれてありがとう、お姉ちゃん。




おわり


37 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:20:52 pIb2EK6Y0
ウィーンの百合


38 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:21:51 pIb2EK6Y0
梓「ムギ先輩、聞きたいことがあるんですけど」

紬「なあに、梓ちゃん?」

梓「斉藤家は昔、琴吹家がオーストリアから連れてきて改名させたって、菫が言ってました」

紬「うん、そうよ〜」

梓「それ、もう少し詳しく聞かせてくれませんか?」

紬「長くなるけど、いいかな?」

梓「ええ、是非!」

紬「それは今から100年ほど前…」

梓(そんなに昔…!?)

紬「オーストリア=ハンガリー帝国で起きた、ある事件がきっかけなの…」


39 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:23:24 pIb2EK6Y0
……

琴吹家は、当時からフィンランドを拠点としてビジネスを行っていたの。
その当時の当主の娘、シルキが、オーストリア=ハンガリー帝国の都市、ウィーンに父の付き添いで行ったときの話よ。

「お父様、少し街を散歩してもよろしいですか?」

「…まぁよいが、気をつけなさい。ヨーロッパ情勢は緊迫している、治安も悪い。すぐに戻りなさい」

「はい、わかりました」

シルキは庶民の生活を見るのが大好きで、すぐに下町に繰り出して菓子などを買っては食べてを繰り返していたから、父親も困っていたそうよ。
当時はまだ衛生状態もあまり良くなかったから、お腹を壊しちゃうことも多くて。


40 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:24:16 pIb2EK6Y0
「わあ、あそこが市場ね!行ってみましょう」

そこでシルキは、運命の出会いをしたの。
市場に着いた娘の目に入ったのは、たくさんの売り物ではなく…
一人の、金髪碧眼の少女。

「…きれい…」

市場に買い物に来ていたその少女は、決して裕福には見えない服装だったそうだけど、その美しさにシルキは心を奪われ、しばらく見とれていたの。

「…あ、あの、どうかされましたか?」

「…えっ!?あ、いえ、お綺麗ですね」

「ええっ!?」

突然綺麗ですねなんて言ってしまったものだから、少女は真っ赤になってしまったわ。
少女が落ち着いたころに話を聞いてみると、その子はこの辺りに住む富豪の家のメイドとして働いていて、食材を買いにきていたそうよ。


41 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:25:39 pIb2EK6Y0
「メイドさんなのね。ねぇ、あなたのお名前は?」

「…フィオラです」

「フィオラ…いい名前ね」

「えっと…あの…」

「こわがらないで。私とお友達になりましょう?」

「…うん」

フィオラはシルキより3歳年下で、とある庶民の家の娘。まだ若いのに、家が貧しいからメイドとして働いて家計を支えていたの。
同年代の友達を作る時間もあまりなかったフィオラは、最初は戸惑っていたけれど、すぐにシルキに懐いたわ。
それに、同年代の友達があまりいないのは、フィンランド系日本人のシルキも同じ。2人はすぐに、本当の姉妹のように仲良くなった。


42 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:26:38 pIb2EK6Y0
「シルキお姉ちゃん!」

「あ、フィオラ!お待たせ」

それから2人は、市場で待ち合わせて何度も会うようになったの。
シルキが父の仕事の合間に抜け出して市場に行くと、そこにはいつもフィオラが待っていた。
フィオラはメイドの仕事を頑張って、待ち合わせの時間までに終わらせて、こっそり抜け出してきたんだって。たまに家主にバレて、怒られちゃうこともあった。

「フィオラ、今日はどこに連れていってくれるの?」

「今日はあっちに行こう?かわいい小物がたくさんあるよ」

シルキは、ウィーンの街に詳しいフィオラにいろんなところを案内してもらうのをいつも楽しみにしていたわ。
市場だけでなく、町外れにある隠れ家的なお店とか。音楽の都だけに、楽器工房とか、街中で演奏する人達を見たりもした。


43 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:27:33 pIb2EK6Y0
「わあ、かわいい髪飾りね!こんなお店が町外れにあったなんて」

「お姉ちゃん、きっと似合うよ」

「いいえ、これはあなたに似合うわ、フィオラ」

「わ、私は…釣り合わないよ」

フィオラはあまり自分に自信がないみたいで、きれいなアクセサリーや服を身につけるのをためらっていた。でも、シルキはフィオラの綺麗さを知っていたから、それを引き出すような服やアクセサリーを買ってあげてたの。

「ほら、とてもかわいいわ!」

「そ、そうかな?えへへ…」

「これ、買ってあげるから!」

「い、いいよ!?悪いよ…そんな贅沢できないよ」

「いいの。フィオラは綺麗なんだから、もったいないわ」

「…あ、ありがとう」

こうしてるうちに、フィオラはどんどんかわいく、綺麗になっていった。少し自信もつき始めて、内面もどんどん美しくなっていった。
シルキとフィオラの姉妹が市場で買い物をする姿は、地元のちょっとした名物になっていたのよ。
でも…


44 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:29:49 pIb2EK6Y0
「…フィオラ、どうしたの、その服…?」

「…ごめんなさい」

「髪飾りは…?」

「…ごめんなさい、お姉ちゃん。お父様に、こんな高いものどこで買ってきたって怒られて…取り上げられちゃった」

「…そう…フィオラ…ごめんなさい、私が舞い上がっていろいろ買ってしまったから…」

「ごめんなさい…ごめんなさい…せっかく、お姉ちゃんに綺麗にしてもらえたのに」

「ううん、いいの。ごめんね、フィオラ。あなたは何も飾らなくても綺麗よ」

「お姉ちゃん…」

シルキが優しくフィオラを抱きしめると、フィオラの頬が染まったの…
フィオラは自分に自信がなかった。でも、シルキがいろいろコーディネートしてくれたおかげで自信が持てた。それがなくなった今、また自分はみすぼらしい頃の自分に戻ってしまった…そう思っていたの。
でもシルキは素のままの自分を綺麗といってくれた。よくよく思い出してみれば、初めて出会ったときも綺麗って言ってくれてた。
フィオラは、初めて自分を受け入れてくれた人に…


45 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:31:21 pIb2EK6Y0
「…お姉ちゃん、戻らなくていいの?」

「…たぶん…フィオラこそ、戻らなくていいの?」

「戻りたくない…」

シルキとフィオラはその日、日が暮れるまで、ドナウ川のほとりでずっと抱きしめあっていた。
シルキは近頃遊びが過ぎて、フィオラも服のことで怒られたばかりなのに帰りが遅くなって…2人ともこの後親に怒られるのは目に見えていた。だからこそ…時間を止めたくて、ただひたすらに抱き合って、2人だけの時間に浸っていたの。

そして、日も沈んだ頃…

「…帰りましょう。大丈夫、明日があるわ。明後日もある。フィオラがいれば、怖くない」

「いや…いや…」

「…わがまま言っちゃダメ…ほら、顔を上げて」

「…え?」


46 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:32:13 pIb2EK6Y0
涙で濡れたフィオラの顔を上げると、シルキは、優しく口ずけをしたの。

「……フィオラ……」

「…おねえ、ちゃん」

「私、初めてあなたに逢ったときから…ずっとあなたのとりこよ」

「…うれしい…!」

「だから、また明日も、明後日も、その次も会いましょう。明日が来るように、今日は帰りましょう」

「…うん、わかったよ、お姉ちゃん」

…でも、それは叶わなかった。


47 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:33:06 pIb2EK6Y0
翌朝、たっぷり怒られてふて寝していたシルキは、また父の怒号で起こされたの。

「シルキ!起きなさい!」

「…?は、はい、何でしょう、お父様」

「…大変なことになったぞ。シルキ、そこに座りなさい」

父から聞かされた話は、こう。
なんと、フィオラがメイドとして働いている家に住む富豪は、父の仕事のお客さんだった。
そして、その富豪の奥方が、昨夜のシルキとフィオラの逢瀬を目撃していたの!
「うちのメイドを誑かしたレズビアン」と、奥方はクレームをつけてきたそうよ。

「シルキ。お前は最近よく外出しているが、そういうことだったのか?」

「………」

「本当ならそうと言いなさい」

「………はい、本当です」

「………わかった。取引は中止だ。フィンランドへ引きあげる」

「…そんな!!」

「わがままを言うな!」

「……っ……はい……」


48 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:34:09 pIb2EK6Y0
シルキはその日の午後、いつもの市場へと行ったけれど、フィオラは現れなかった。
また、日が暮れるギリギリまで待っていたけど、ついにフィオラは現れなかった。
やはり、フィオラも大目玉を食らっていて、外出禁止になっていたそうよ。

そして、失意のシルキは、帰り道…周囲の人の視線を感じた。
もう、噂は広まっていたの。ウィーンの名物の美人姉妹は、実は「デキて」いた、と。

シルキは、悔しさで涙を流しながら、ひたすらに走って家に向かった。
家に着くと、引越しの手伝いをしないことを怒る父の怒号を無視して、ベッドに直行した。
そして、一晩泣き明かしたの…


49 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:35:10 pIb2EK6Y0
でも、事態はまた急変した。
翌日、渋々引越しの手伝いをしていたシルキと父親の元に、衝撃的なニュースが舞い込んできたの。
オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者、フランツ・フェルディナントがサラエボで暗殺された…サラエボ事件よ。

「これはまずいことになったぞ…戦争が始まるかもしれん」

国内は混乱に陥って、フィンランドへ帰る手立ても一時的に失われてしまった。なんとか、父親は帰る手段を探していたのだけど、なかなか見つからずに日が過ぎていった。
その間、シルキはフィオラを探し続けたわ。フィオラが働いていた富豪の家に、恥を忍んで直接訪ねてみると…

「何しに来たんだい!あのメイド?気持ち悪いから追い出したさ。さあ、あんたもさっさと消えな、気持ち悪い!」

シルキは、フィオラの家の場所を知らなかった。市場に行けば絶対に逢えると信じていたから。何で聞いておかなかったんだろうと、とても後悔したの…

来る日も来る日も、シルキはウィーンの街を駆け巡ってフィオラを探した。国内は緊迫した状況で、度々兵隊に止められることもあった。それでも、めげずに探し続けた。


50 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:36:48 pIb2EK6Y0
そして、サラエボ事件から一ヶ月後…
シルキは、ドナウ川のほとりに座り込んでいるフィオラを、ついに見つけた。

「…!!フィオラ!フィオラ!!」

「…え…!!」

フィオラは、痩せ細って、ボロボロの服を着ていたの…

「フィオラ!!逢いたかった!!!ああ…ごめんなさい、フィオラ…!!」

「お姉ちゃん…お姉ちゃん…!!」

2人は強く抱きしめあった…いえ、フィオラは弱々しくシルキを抱きしめた。

「フィオラ、あなた…こんなに痩せて…」

「お姉ちゃん…私…どうしたらいいの…」

フィオラはメイドを辞めさせられた。家族も、差別を受けて仕事を失ってしまった。そこへ追い打ちをかけるような国内の混乱。フィオラの家族はみんな、ここ数日何も食べられていなかったの…

「ごめんなさい…私のせいで!!」

「お姉ちゃんの、せいじゃないよ…」

「いいえ…私が…私が…責任を取るわ」

「…え?」


51 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:38:01 pIb2EK6Y0
シルキはある決心をすると、フィオラとその家族分のパンを買い与え、一緒にいたい気持ちを抑えて一旦家に帰した。そして、自分の家に帰ると…

「お父様!」

「シルキ!どこをほっつき歩いていたんだ!今は兵隊が…」

「お願いです!フィオラとその家族を、うちで引き取らせて下さい!!」

「…な…?何だと?」

「フィンランドに帰る手立てが整ったら、フィオラ達も一緒に連れて行ってください!お願いします!!」

「…シルキ!一体お前はどれだけ勝手なことを…!!」

「お願いします!!」

シルキは必死で頭を下げた。そのあまりの気迫に圧倒された父は、しばらく黙ってしまった。


52 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:38:57 pIb2EK6Y0
すると…そこへまた、ニュースが飛び込んできた。
いつも、悪いニュースは畳み掛けるように来る。

「宣戦布告…ついに来たか…これは世界大戦になるぞ!」

オーストリア=ハンガリー帝国がセルビアに対し宣戦布告。第一次世界大戦の始まり。

「もはや時間はない。シルキ、実は今しがた、フィンランドへ帰る準備が整ったところだ」

「!!」

「今夜、出るぞ。開戦してしまった今となっては、早く動かないと手遅れになりかねん。用事があるなら、早くしなさい。日付が変わるまでに帰らねば、お前といえども置いていくぞ?」

「…お父様!ありがとうございます!」


53 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:39:57 pIb2EK6Y0
シルキはすぐに、ウィーンの街へと駆け出した。夜とはいえ、辺りは兵隊がたくさんいて物々しい雰囲気だったわ。
兵隊に怪しまれないようにこっそりと移動して、先程聞いておいたフィオラの家に向かう。

「フィオラ!フィオラ!!私よ!!」

家の戸を叩くと、出てきたのはフィオラの父親。

「貴様…貴様が娘を誑かした女か!貴様のせいで一家はこの様だ!」

「…はい、全ては私のせいです…申し訳ありません…ですから、どうか私に責任をとらせてください!」

「黙れ!もう二度と顔も見たくない、帰れ!!」

「やめて、お父様!!」

後ろから、フィオラが出てきた。少しは元気を取り戻したようで、顔色も良くなっていて、それを見たシルキは安心したの。でも、問題はここから。


54 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:41:52 pIb2EK6Y0
「お父様!シルキお姉ちゃんは、私達にパンを…」

「うるさい!元はと言えばこの女のせいで…」

「お姉ちゃんのせいじゃない!私が、私が…」

「いえ、私の責任です…ですから、私と一緒に、安全なフィンランドへ来てください!!」

それをきいたフィオラの父親はポカンとしていたわ。何を言っているのかわからない、という顔だった。
シルキは一から説明した。シルキの家は実業家であること。フィンランドから来たこと。迷惑をかけてしまったせめてもの罪滅ぼしに、フィオラの一家を保護し、戦火の中から救い出したいこと。

「な…何を勝手な…」

でも、このままウィーンにいても、飢え死にするのと戦死するのとどちらが先か、という状況。
ほとんど選択肢のない状況につけこんでしまった罪悪感はあれど、フィオラとその家族を救いたい思いで、シルキは必死に頭を下げた。


55 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:42:36 pIb2EK6Y0
「お父様…私、シルキお姉ちゃんと一緒に行きたい」

「……」

「ご迷惑をかけた罪は一生かけて償います。どうか、お願いします!」

「……このまま野垂れ死ぬよりはましか。仕方あるまい」

ついに家族の承諾を得たシルキとフィオラの2人は、その場で抱きつきたくなる衝動を抑えながら、家族を誘導してシルキの家へと向かった。
そして深夜、11時ごろ。家に到着すると、シルキの父親はフィオラの家族に頭を下げ、すぐに準備を始めて、みんなでウィーンを出た。

「フィオラ…もうすぐ、もうすぐよ。あと少しで、2人でいつでも逢えるようになるの」

「うん…楽しみだね、お姉ちゃん」

そして2人は、長い旅に出た。国境付近でセルビア軍に襲撃されたりもしたけれど…それでも2人は一緒に、歩みを続けた。
そして、ついにシルキのふるさとへと、たどり着いた。


56 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:43:27 pIb2EK6Y0
………

紬「その後、フィオラの家族は、シルキの一族に引き取られて、第一次世界大戦の戦火の外だったフィンランドで幸せに暮らすことができたの。そのまま、斉藤家になったのよ〜」

梓「…なんか圧倒されちゃいました。そんな壮大な話があったんですね。その、シルキとフィオラはその後結ばれたんですか?」

紬「ええ。永遠に…」

梓「よかったです…あ!もうこんな時間!すいません、これで失礼します。いろいろ聞かせてくれてありがとうございました」

紬「うん! またね、梓ちゃん」


紬「……あれ?私、何してたんだっけ…あ、梓ちゃんは?もう帰ったの?」


57 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:44:29 pIb2EK6Y0
………


梓「やっば、遅れちゃう遅れちゃう」

梓「…そうだ、ちょっと菫に聞いてみよ」

梓「あ、もしもし菫?」

菫『もしもし、梓先輩?』

梓「あのね、ムギ先輩から菫のご先祖様のこと聞いたんだ!すごいね、戦争が始まる寸前のオーストリアから斉藤家を連れ出したんだってね」

菫『あ、はい。実は私もよく知らなかったんで、あの後父に詳しく聞いたんです』

梓「そっか! それで、えーと…フィオラとシルキ、幸せになれたんだよね!」

菫『え…?何の話ですか?』

梓「え? 菫のご先祖様のフィオラとムギ先輩のご先祖様のシルキが…えっと、その、恋に落ちて」

菫『ええっ!?そんな話があったんですか!?』

梓「ええっ!?詳しく聞いたんじゃなかったの?」

菫『古い資料とかも持ち出してきて全部詳細に聞いたはずですが…そもそもフィオラとかシルキとかの名前すら初耳ですよ。おかしいな、お嬢様だけが知ってる話なんでしょうか』

梓「あれ…そうなのかな」

菫『あ、フィンランドへの移動中にセルビア軍の襲撃を受けて何人か亡くなられたというのは聞いています』

梓「え…!?それまさか…いや、おかしいな、2人は永遠に結ばれたってムギ先輩が…」

菫『帰ったらもう少し詳しく調べてみますね』

梓「あ、うん…じゃ、またね」


梓「…ま、いっか。いい話だったし…」


58 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/08(土) 23:45:32 pIb2EK6Y0
………

…フィオラ。よかった、あなたにはたくさんの大切な人ができたのね。
私の夢だったの。フィオラは綺麗で可愛くて、みんなが大好きになってくれる人だから、私だけで独り占めしちゃうのは悪いな、と思ってたわ。
だから、あなたにはフィンランドでたくさんの友達を作って欲しかった。それが叶って、本当に嬉しい。
私にも、かけがえのない人がたくさんできた。こうやって、2人で今を生きていけることが、幸せ。
……たまには、あの頃みたいに熱いキスを交わしてみたくなるけど……ふふ、思い出したら、ね。
永遠に一緒よ、フィオラ。


シルキお姉ちゃん…ずっと見守っててくれたんだね…ありがとう。
大好きだよ!

菫「…はっ!」

菫「あれ…?寝ちゃってた。調べもの、調べもの!」

菫「おかしいな…梓先輩が言ってた話、全然出てこない…もうお姉ちゃんに直接聞いちゃおう」

菫「…あ、もしもしシルキお姉ちゃん?」

紬『もしもし、どうしたのフィオラ?』


おわり!


59 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:26:14 JxOIuNdY0
菫「私とお姉ちゃんの日々」


60 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:29:04 JxOIuNdY0
紬「菫?すみれ〜?」

菫「はい、紬お嬢様」

こんにちは、斉藤菫です。
私は琴吹家に仕えるメイドです。

今日も紬お嬢様がおっとりとした声で私を呼んでいます。

紬「すこし相談があるの」

菫「どういったご用件で?」

紬「あのね、学校の部活でお茶がしたいの」

菫「学校の部活でお茶…ですか」

紬「うん!だから学校に置いておけるティーセットを一式、用意できないかしら?」

菫「承知しました。手配させていただきます」

紬「ありがとう、菫」

こうやって見てみると、私達はただのメイドとお嬢様だけど

紬「あ、そうそう」

紬「この前の漫画、続きが気になるの!」

紬「あとで部屋に行ってもいいかしら?」

菫「うん、いいよ」

紬「お茶とお菓子を持って行くわね!」

菫「わかった。ありがとうお姉ちゃん!」

私達は、それ以上の関係です。


〜 私とお姉ちゃんの日々 〜


私のお姉ちゃんはよく思いつきで行動します。
それはたいてい、良からぬ思いつきで…

紬「ねぇ菫、私も給仕がしてみたい!」

菫「え、ダメだよ。もしもお父様に見つかったら…!」

紬「そうそう、そのお父様がね…」

紬「お父様は最近、私の事ほったらかしだから…すこし驚かせようと思って!」

菫「お、お父様にお給仕するの!?」

紬「えぇ、お父様が書斎にいるときはいつもコーヒーを持ってこさせるでしょ?」

紬「それを私がメイド服を着て持っていくの〜!」

菫「うぅ…でもそんな事したら私たち怒られちゃうよ」

紬「大丈夫、私が一人でやった事にしておくから!」

菫「でもぉ…」

紬「協力してくれたら、この間菫が欲しがってたお洋服、お父様に頼んで買ってもらってもいいわよ」

菫「え、ほんとに!?」

紬「うん、私もすっごく似合うと思うから」

菫「う、うーん…」

紬「ダメかな?」ワクワク

菫「わかりました。じゃあついてきて」

紬「やった、やった!」

・ ・ ・


61 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:32:09 JxOIuNdY0

メイド長「とってもお似合いですわ、お嬢様」

紬「ありがとう」

メイド長含め、他のメイドたちは皆お姉ちゃんに口答えできません。
だから基本的に、お姉ちゃんの思いつきにはいつも快く対応しています。

あとでお父様に怒られることになるけど、でも…

メイド「3回ノックしたら、“失礼します”で、ドアを開けて…」

メイド2「お辞儀はこうですよ、お嬢様!」

紬「うん、うん!なるほど」

でもみんな、そんな事気にせず楽しんでるみたい。

チリリリリリ

メイド長「あっ、いよいよですよお嬢様」

紬「よぉし!」

・ ・ ・

コンコンコン

紬父『入れ』

紬「失礼しま〜す」

メイド「(お嬢様、大丈夫でしょうか?)」

菫「(多分…。紬お嬢様はああ見えてしっかりしている方ですから)」

メイド2「(でもちょっと心配ですわね)」

メイド3「(転んでお父様にコーヒーをぶちまけたりして!?)」

菫「(それはないと思いますけど…)」

紬『お父様のバカ〜〜!!』

紬父『な!?…つ、紬!?』

菫「!」

メイド「なにやら騒がしくなってますね…」

ガチャン!

紬「すみれぇぇ〜〜!!!」タタタタ

菫「おねぇ…じゃなくて、紬お嬢様!どうなさいました!?」

紬「菫、聞いて!お父様ったらひどいのよ!?」

紬「お父様ったら、最後まで私を私だと気づかずに、コーヒーを…!」

紬父「紬!悪かった、悪かったから!」

紬「来ないで!私は見損ないました!」タタタタ

紬父「こら、紬!待ちなさい!」

紬父「あぁもう…だれか!だれか紬を捕まえてくれ!」ドタバタ

メイド「は〜い、ただいま!」

メイド長「ふふふ、お嬢様がカンカンだわ」

菫「………」

お姉ちゃんが良からぬことを思いついた時は、いつも屋敷が騒々しくなります。


62 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:34:09 JxOIuNdY0
別の日・・・

紬「すみれ〜?」

菫「なぁにお姉ちゃん?」

今日もお姉ちゃんがソワソワしながら私の部屋に来ました。
また何か相談事でしょうか?

紬「ラーメンって食べたことある?」

菫「ら、ラーメン?」

菫「それはまぁ、あるけど…」

紬「今日ね、学校で澪ちゃんたちがラーメンのお話しててね?」

紬「私が食べたこと無いって言ったら、りっちゃんに笑われちゃった…」

菫「お姉ちゃん、ラーメン食べたこと無かったんだ…」

紬「うん」

紬「ねぇ、菫!ラーメンが食べたい!」

お姉ちゃんのお願いごとには時々驚かされます。

紬「しかもしかも!お店のラーメンじゃないとダメなの!」

菫「お店?」

紬「うん、りっちゃんたちが一番美味しいって言ってたラーメン屋さん」

紬「そこのラーメンを食べてみたいの!」

菫「お父様に頼んでみては?」

紬「実はお父様にはこの前頼んでみたの。でも…」

・ ・ ・

紬父『ラーメン?なんでまたそんな…』

紬『おねがいします!一度でいいから食べてみたいの!』

紬父『じゃあ今度の夕食に出すよう言っておくよ』

紬『あ、そうじゃなくて…行きたいお店があるんです』

紬父『店?ん〜…連れて行ってやる暇はあるかな?』

紬『最近は特に忙しいのでしたね』

紬父『うむ。来月まで待ってくれないか?』

紬『来月……?』

紬父『来月なら紬の好きな店に連れて行ってやるから。な?』

紬『うぅ……』

・ ・ ・

紬「来月なんて待てないわ!」

菫「部活動の人たちとは行かないの?」

紬「頼んでみたけど、週末は全員都合が悪いんだって…」

紬「ねぇ、菫…私とラーメン食べに行かない?」

菫「お姉ちゃんと?」

紬「二人で」

菫「う〜ん…」

紬「お願い!」

菫「………」

他でもない、お姉ちゃんの頼み事です。
断る理由なんてありません。

菫「うん!」


63 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:35:57 JxOIuNdY0
休日・・・

菫「駅に着いたよ、お姉ちゃん?」

紬「………」ジー

菫「どうしたの?外に何かあるの?」

紬「ううん、珍しい景色だから」

菫「確かに、ここに来るのは初めてだよね」

紬「うん。さて、行きましょ菫」

菫「あ、ちょっとまって!」

はしゃいでる時のお姉ちゃんに着いていくのはなかなか大変です。

・ ・ ・

カランカラン

店主「あ、いらっしゃいませ」

紬「こんにちは〜」

菫「こ、こんにちは」

店主「開いてるお席へどうぞ」

紬「ここがラーメン屋ね!すっごく狭いわね!」

菫「カウンター席しか無いね」

紬「こういう小さなお店のラーメンが美味しいのかしら?」

菫「ここが軽音部の方たちのおすすめのお店なんでしょ?」

紬「うん。ここらじゃ一番だ!って」

紬「さぁ、早速注文しましょ」

菫「どれにするの?」

紬「えぇと、りっちゃんが言ってたのは…」

紬「これ、チャーシュー麺!」

紬「炙ったチャーシューが美味しいんですって」

菫「あ、じゃあ私もそれにしよう」

紬「うん、一緒に食べよ?」

菫「じゃあ注文するね」

菫「すみません、チャーシュー麺2つお願いします」

店主「チャーシュー麺2つですね、はい」

紬「どうしよう…!?私ちょっとドキドキしてきちゃった!」

菫「あはは、落ち着いてお姉ちゃん。ラーメンは逃げないから」

紬「………」ソワソワ

菫「………」

真剣な顔でソワソワしてるお姉ちゃんはなんだかかわいいです。

・ ・ ・


64 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:38:51 JxOIuNdY0
店主「お待たせしました、チャーシュー麺です」ゴトゴト

紬「わぁぁ〜綺麗…」

菫「綺麗?」

紬「うん、とっても」

紬「よし。じゃあ…」

菫「えへへ」

紬菫「いただきます!」

紬「ところで、ラーメンってどうやって食べるのかしら?」

菫「ラーメンの食べ方?」

紬「うん、りっちゃんが言ってたの」



律『ラーメンにはちゃんと食べ方があるんだぜ〜』



紬「って…」

菫「あぁ〜…私も詳しくは知らないけど、まず初めにスープを一口飲むといいらしいよ?」

紬「スープを…わかったわ!」

紬「ふーふー!」

菫「………」ズズズ

紬「………」ズズズ

紬「わぁ〜…!」

菫「おいしい」

紬「とってもまろやかで優しい味ね!こんなの初めて!」

紬「それで、次は麺を食べればいいのかしら?」

菫「ふふふ、食べ方なんてそこまで気にしなくていいと思うよ?」

菫「好きなように食べれば、それで」

紬「うん!」

菫「………」チュルチュル

紬「………」モソモソ

菫「?」

紬「う、うまくすすれない…!」

菫「レンゲに乗せてスパゲティみたいに食べたら?」

紬「ううん、がんばる!」チュ…チュル…

菫「あはは…」

・ ・ ・

店主「ありがとうございました〜」

菫「おいしかったね」

紬「うん、ラーメンってこんなに美味しいのね」

紬「これでりっちゃんたちと対等に張り合えるわ!」

菫「よ、よかったですね」


65 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:40:54 JxOIuNdY0
次の日・・・

コンコン

紬父『紬、菫、いるか〜?』

紬「あら、お父様?」

菫「はい、今開けます!」

ガチャ

紬「どうかなさいました?」

紬父「お前たち、昨日の昼はどこに行っていたんだ?」

紬「お昼ですか?ちょっと菫とお食事に」

紬父「そうか。なら別にいいんだが…」

紬父「出かけるときはメイドでなくてちゃんと私に言ってから出かけなさいといつも言ってるだろう?」

紬「あ、ごめんなさい…」

紬父「菫がついていたからまだよかったが、何かあったら大変だ」

紬「はい…」シュン

紬父「菫も、こういう時は斉藤か私にちゃんと報告しなさい」

菫「はい、申し訳ありませんでした」

紬父「さて、それはそうと…」

紬菫「?」

紬父「紬がこの前言っていたラーメン屋を家へ呼んだぞ」

紬「えっ…!?」

紬父「ということで、今夜はラーメンだ!ははは!」

菫「………」

紬「お父様…」

紬父「驚いたか?はっはっは!」

紬「お、お父様…?」

紬父「ん?」

紬「昨日、お昼に菫と食べてきたのですけど、そのラーメン…」

紬父「え、えぇぇぇ〜…!?;」

菫「………」

お嬢様とお父様、思い立ったらすぐ行動に移すところはよく似ておられます。


66 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:43:32 JxOIuNdY0
別の日・・・

紬「銭湯に行きましょ!」

菫「銭湯…ですか?」

さぁ、また始まりました。
今度は銭湯をご所望らしいです。

紬「うん、銭湯!ところで銭湯ってお風呂屋さんの事よね?」

菫「よくわからないのにそんなに張り切ってたの…」

紬「うん、昨日お父様が言っていたの」

・ ・ ・

紬父『私が幼い頃はな、まだこんな暮らしじゃなかったんだ』

紬父『そりゃもう貧乏で貧乏で、部屋にトイレすら付いていない小さなボロアパートに4人で暮らしていたんだ』

紬父『その頃の楽しみといえば近所の悪ガキ共と暗くなるまで悪さをしてまわる事くらいだったが』

紬父『暗くなってからもう一つ、楽しみがあってな』

紬父『それが銭湯だ』

紬『銭湯…?』

紬父『あぁ。紬、銭湯は知らんのか?』

紬『はい…』

紬父『風呂屋だよ、風呂屋』

紬父『週に何度か、親父…つまり紬のお爺ちゃんに銭湯に連れて行ってもらってな』

紬父『そこで飲む瓶のフルーツ牛乳が楽しみで楽しみでしかたなかったんだ!』

紬『まぁ…!』

・ ・ ・

菫「なるほど。私も銭湯には行った事ないなぁ…」

紬「行ってみない?」

菫「私は構わないけど、つい最近お父様にお叱りを受けたばかりでしょう?」

紬「実はね、もう手は打ってあるの!」

菫「え…?」

・ ・ ・


67 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:45:26 JxOIuNdY0

キキー

斉藤「到着いたしました」

紬「おぉ〜!」

菫「ここが…」

紬父「銭湯だ!」

紬母「ふふ、張り切っちゃって」

紬父「それじゃ斉藤、車は頼んだぞ」

斉藤「かしこまりました」

紬「さ、行こ?菫」

菫「うん!」

ガラガラ

紬「こっちが女湯ね!」

菫「あ、待ってお姉ちゃん。靴は下駄箱に」

紬「あら、はいはい」

紬母「下駄箱のカギをかしなさい。持っておいてあげるわ」

紬「はい、お母様」

菫「ありがとうございます、お母様」

紬母「あらあら、今はそんなに畏まらなくてもいいのよ、菫」ナデナデ

菫「あぅぅ…///」

紬「ふふふ」

紬母「じゃああなたは一人男湯でゆっくりしてきてね」

紬父「くっ……」

紬父「おーい、斉藤!」

斉藤「はい」

紬父「一緒に入るか」

斉藤「喜んでご一緒させて頂きます」

・ ・ ・

カポーン

紬「わぁ〜!ウチのお風呂よりも広いわね!若干」

菫「古そうだけど、綺麗なところだね」

紬「それで!?どうすればいいのかしら!?」

紬「どこのシャワーを使えばいいのかしら!?」

紬母「どこでもいいから、まずはお湯に浸かる前に体を洗ってしまいなさい」

紬「はぁい!」

菫「あ、お姉ちゃん。椅子忘れてるよ」

・ ・ ・


68 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:47:32 JxOIuNdY0
アワアワアワ

紬「なんだか昔にタイムスリップしたみたい」

紬「とってもいい雰囲気だわ」

菫「よかったね、お姉ちゃん」

紬「うん、菫とお風呂に入るのは何年ぶりかしら?」

菫「そういえば…」

紬「小さい頃は毎日一緒に入ってたものね」

菫「そうだね」

紬「菫ったらすっかり大きくなっちゃって」

菫「ど、どこ見て言ってるのお姉ちゃん!」

紬母「うふふ、紬ったら」

キャッキャウフフ

紬父「いい湯だな、斉藤…」

斉藤「はい」

・ ・ ・

紬「なぁにこれ?電気風呂…!?」

菫「えっ…電気が流れてるの?」

紬「大丈夫なのかな?」

紬母「少し浸かってみたら?」

菫「うぅ…なんか怖い」

紬「私、ちょっと入ってみる!」

菫「え、入るの!?」

紬「ちょっとだけちょっとだけ」ソー

紬「きゃっ!」

菫「だ、大丈夫?」

紬「よくわかんなかった」

菫「はぁ……」

紬「もう一回」

紬「いたたた!?」

菫「やっぱり痛いんだ!」

紬「うーん…痛いというより…?」

紬「よくわかんない」

菫「えー…」

紬「ほら、菫もおいで」

菫「え、私はいいかな…」

紬「大丈夫、大丈夫」

菫「え、でもこれ…」チャポン

菫「うわっ…ピリピリきた」

紬「ね?思ったより平気でしょ?」

菫「え、う〜ん…」ソー

菫「あっ…!あんっ!だめ!これやっぱりダメ!」

紬「え〜…すぐに慣れるわよ、ほら」

菫「ちょ、お姉ちゃん!だめだってばぁ!」

紬母「うふふ」

キャッキャウフフ

紬父「………」

斉藤「………」

・ ・ ・


69 : ◆IDiYMzl2Ls :2014/03/09(日) 18:51:25 JxOIuNdY0
紬「楽しかった!」

菫「すこしはしゃぎ過ぎちゃったね」

紬「久しぶりの菫とのお風呂ですもの」ギュー

菫「お、おねえちゃ…///」

紬「あ、そうだ!」

菫「?」

紬「すみません」

番台の人「はい」

紬「フルーツ牛乳はありますか?」

番台の人「あぁ、そこの冷蔵庫にありますよ」

紬「あ、あった。でもひとつしかないわ。最後の一本かしら?」

番台の人「110円ね」

紬「はい」チャリン

紬「菫、フルーツ牛乳!」

菫「あ、おいしそう」

紬「はい、どうぞ」

菫「あれ、いいの?」

紬「これが最後の一本だから。あとでお姉ちゃんにも半分ちょうだい?」

菫「うん、ありがとうお姉ちゃん!」

・ ・ ・

紬父『おーい、そっちはもう済んだかー?』

菫「あ、お父様が…」

紬母「もう少し待ってちょうだい」

紬父『はやくしなさーい』

紬母「菫、紬を起こして」

菫「はい、お母様」

菫「お姉ちゃん?風邪引くよ〜?」ユサユサ

紬「んん…zzz」

紬母「あなたー?もう少しだから、先に外で待ってて」

紬父『わかった』

菫「もう、お姉ちゃ〜ん?」

紬「えへへ…菫〜zzz」

菫「まったくもう」

紬「菫、ありがとう…zzz」

菫「………」

お姉ちゃん、今日もお疲れ様。

http://up3.viploader.net/jiko/src/vljiko099236.jpg

・ ・ ・

・ ・ ・

・ ・ ・

紬父「寒いなぁ、斉藤」

斉藤「はい」



おわり


70 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 21:52:49 u2TGvuTE0
紬「かくれんぼ」


71 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 21:54:23 u2TGvuTE0
 ―――琴吹邸前―――


唯「………………」

梓「………………」

澪「………………」

律「……すげえな」

澪「ま、まあ、あれだけ大きな別荘をいくつも持ってるんだから

  家も相当なものだろうと思ってはいたけど……」

唯「あっ!あずにゃん、あそこに監視カメラがついてるよ〜。ピースピース!」

梓「や、やめてください!恥ずかしいですよ……」

律「とにかくいつまでも門の前で突っ立っててもしょうがない。澪、チャイム押してくれ」

澪「えっ?わ、私!?律が押せばいいだろ!」

唯「はいはーい!私押したい!」フンスフンス!

律「よーし、唯隊員!二人で一緒に押すかー!?」

唯「了解です、りっちゃん隊員!」


 ピンポーン


梓「澪先輩……なにか手土産みたいなもの買ってきたほうが良かったでしょうか……?」

澪「いや、まあ友達の家に遊びに来ただけだし……」



 ―――玄関―――



紬「いらっしゃ〜い。ごめんね?今日はわざわざお家に遊びに来てもらっちゃって」

澪「ひゃっ、ひゃい!ほ、本日はお招きいただきまして……」カチコチ

律「落ち着け、澪」

梓「ムギ先輩、お邪魔します」

唯「やっほームギちゃん!おじゃましまーす♪」


72 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 21:55:37 u2TGvuTE0
?「あっ、い、いらっしゃいませ!」ペコリ

唯「はわわ、が、外人さんだ……えっと、あ、あいきゃんすぴーくいんぐりっしゅ!」アタフタ

梓「喋れることになっちゃってますよ、唯先輩」

?「す、すいません!わ、私、英語はあまり得意じゃなくて……!

  あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅです……」アタフタ

澪「あの、ムギ?こちらは……?」

紬「この子は斉藤菫っていうの。私の……妹みたいなものかな?」

梓「妹……」

律「……みたいなもの?」

澪(律、あんまり突っ込んで聞くなよ?複雑な家庭事情とかあるかもしれないんだから)ヒソヒソ

律(わ、わかってるよ!)ヒソヒソ

唯「そうだ、自己紹介しなきゃ!私、平沢唯です!」

菫「あ、知ってます!平沢唯さん、田井中律さん、秋山澪さん、中野梓さん……ですよね?」

唯「おぉう!私達、有名人……?」

律「ほほぅ……放課後ティータイムの名声はムギの家にまで伝わっているか……!」ニヤリ

菫「い、いえ、その……お嬢様が軽音部のみなさんの話をよくしてくれますから……」

紬「菫?みんなの前で『お嬢様』はやめて?」

菫「あ……うん。ごめんね、お姉ちゃん」

梓「菫ちゃんはいくつなの?」

菫「14歳…中学三年生です」

律「じゃあ来年高校かーどこいくか決めてるの?」

菫「はい。桜が丘を受験しようかと……」

唯「おぉ!じゃあ私達の後輩になるんだー。楽しみー♪」

澪「唯、来年は私達卒業してるんだぞ?」

唯「あっ、そっか……残念……でも、あずにゃんがいるから大丈夫だね!」

梓「なにが大丈夫なのかわかりませんけど……まあ、その…よろしくね?菫ちゃん」

菫「は、はいっ!よろしくお願いします!」ペコリ

紬「さあ、こんな所で立ち話もなんだし……私の部屋に行きましょうか」

菫「あっ、じゃあ私はお茶の用意を……」

紬「お茶はもう私の部屋に用意してあるわ。菫も一緒にお喋りしましょう?」


73 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 21:56:52 u2TGvuTE0
菫「え、でも……」

紬「ねぇみんな、菫も一緒でいいでしょ?」

律「おうよ!」

唯「もっちろん!」

紬「さあさあ、いくわよ、菫♪」グイグイ

菫「わゎっ!ちょっとお姉ちゃん、そんなに引っ張らないで……」



 ―――廊下―――



唯「ふわー…すごーい…部屋がいっぱいあるねー」キョロキョロ

梓「キョロキョロしないでまっすぐ歩いてください唯先輩。迷子になっちゃいますよ」

澪「冗談抜きでホントに迷子になりそうだよな」

唯「でもすごいよねー。これだけ広いとかくれんぼとかできそう!」

紬「あ、私ちっちゃい頃、菫とメイドのみんなでやったことある!懐かしいわー♪」

律「かくれんぼか……確かに懐かしいなー……唯、ムギ、やるか?」ニヤリ

澪「お、おい律!人の家でなに勝手に……」

紬「受けて立つわ!りっちゃん!!」ヨシキター!

菫「お、お姉ちゃん!?」

唯「よぉーし!負けないよ〜!!」フンス!

梓「ホ、ホントにするんですか?」



 じゃーんけーん、ぽん!あいこでしょ!!



唯「よし勝った!菫ちゃんがオニだね!」

律「ふふふ…!かつて『かくれんぼの鬼』と呼ばれたりっちゃんの実力を見せてやるぜ!」

梓「『かくれんぼの鬼』って……それただの探す人じゃないですか」

澪「やれやれ……受験生が友達の家でかくれんぼとは……」

紬「じゃあ菫、100数えたら探しにきてね?」

菫「う、うん。わかった……」

律「よっしゃー!みんな隠れようぜー!!」

唯紬「「おーーっ!」」

澪梓「「ぉ、ぉー…」」


74 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 21:58:19 u2TGvuTE0
 


 _________




澪(よし、ここならオニが来たらすぐに見えるし、逃げ道もある……まずはここに待機だな)

?「あれ、澪?」

澪「うわぁっ!……ってなんだ律か…吃驚させるなよ」

律「なんだよ……いい場所だと思ったのに、お前もここに隠れてるのかよ」

澪「かくれんぼはオニの動きを確認しながら一箇所に留まらないのが鉄則だからな。

  まずはここにいるのがベストだ」

律「……ぷっ……くく…ふふふ……」

澪「な、なにがおかしいんだよ」

律「だってそれ、昔私が澪に教えたかくれんぼの極意じゃん」ニヤニヤ

澪「なっ……///」



 ___
 ______
 _________




 じゃんけん、ぽん! 

 あっ!みおちゃんがオニだー!かくれろー!



りつ「みおちゃん、かくれんぼ初めてでしょ?オニになっちゃったけど、だいじょうぶ?」

みお「う、うん……だいじょうぶ……」

りつ「じゃあ、あたしもかくれるね?がんばって探してねー」


 _________



りつ(うーん…けっこう長いあいだかくれてるのにみおちゃんぜんぜん探しにこないな……

   ちょっと見にいってみようかな……)

 ガサゴソ……

りつ(あれ?あんなところにしゃがみ込んじゃってる……どうしたんだろ?)

りつ「みおちゃん。もっとあちこち探さないとダメだよー」

みお「グスッ……あ……りっちゃん……」

りつ「どうしたの?なんで泣いてるの?」

みお「だって……みんないなくなっちゃったから……グスッ」

りつ「いなくなってないよ?みんなかくれてるだけだから!」

みお「……探したもん……探したけどみんないないんだもん……ヒック」


75 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 22:00:15 u2TGvuTE0
りつ「こういうしげみの中とか探すんだよ……ガサガサ……あ、ほら!けんちゃんみーつけたー!」

けん「なんだよズルイぞー!りっちゃん今オニじゃないだろー!」

りつ「いーじゃん、みおちゃんかくれんぼ初めてなんだからさー。次はけんちゃんがオニやってよ」

けん「ちぇっ。わかったよ……」


 _________

 

りつ「いい?みおちゃん。かくれるときは一箇所にじっとしてちゃダメだよ?」

みお「う、うん……」

りつ「オニのうごきを見ながらいどうするんだよ!あたしについてきてね!」

みお「うん。わかった!」



 _________
 ______
 ___


 

澪「あの後、ずっと見つからなくて日が暮れるまで隠れてたからママに凄く怒られたんだよな」

律「そうだっけ?」

澪「お前なぁ……遊んでる最中に子供が二人行方不明になったって、

  ちょっとした騒ぎになったんだぞ?憶えてないのか?」

律「んー……全然憶えてない!」

澪「はぁ……まったくお前は……」

律「いやーそれにしても子供の頃の澪ちゅわんは可愛かったですなー♪

  いっつも私の後ろについて歩いて……」

澪「べ、別について歩いてなんか……///」

律「小、中、高とずっと一緒だったけど、さすがにそろそろ終わっちまう……かな?」

澪「もうちょっと……」

律「ん?」

澪「もうちょっとだけ、後4年だけ……」

律「澪……」


菫「あっ!律さんと澪さん。見つけました!」


律澪「「……へ?」」

律「あぁぁぁぁぁ!澪のバカ!話し込んでてオニの接近に気づかないなんてぇぇ!!」

澪「お、お前が昔話なんかしだすからだろ!バカ律!」


76 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 22:02:02 u2TGvuTE0
 


 _________




唯「……おっ!あのタンスと壁の隙間……隠れるのに良さそうだね……」

 ゴソゴソ……

唯(うっ……ちょっと狭いけど……ここなら見つからないね!)

?「にゃっ!」

唯「わわっ!」

?「ゆ、唯先輩ですか……?」

唯「びっくりしたぁ……暗くてよく見えないけど……あずにゃんだね?」

梓「はい。あの、ここは私が先に隠れてますんで………どっかいってください」

唯「ひ、ひどいよあずにゃん!別に一緒に隠れててもいいじゃん!」

梓「だってここ狭いですし……それに一緒にいたら二人まとめて見つかっちゃうじゃないですか」

唯「それにしたって『どっかいけ』なんて……」ショボン

梓「ど、『どっかいけ』なんて言ってないです!『どっかいってください』って……」

唯「おんなじだよそんなの……」ショボーン

梓「わ、わかりました!ここに居ていいですから!」

唯「えへへ、ありがとうあずにゃん♪」

梓「それにしてもこの歳になってかくれんぼをすることになるとは思いませんでした……」ハァ

唯「あずにゃんかくれんぼ得意そうだよね!ちっちゃいから色んな所に隠れれそう!」

梓「ちっちゃいは余計です!それに……私はかくれんぼより鬼ごっこの方が得意です」

唯「そうなの?私は鬼ごっこ苦手だな〜。走るの遅いし」

梓「唯先輩なんてどこに逃げてもすぐに追いかけて捕まえてやります」

唯「ぶー、そう簡単には捕まらないもん!」

梓「……捕まえますよ」

唯「……あずにゃん?」

梓「……唯先輩は私より先に卒業して大学に行っちゃうし、その大学も私より先に卒業

  しちゃいますけど……絶対に追いかけて捕まえますからね」

唯「………あずにゃん………うん!絶対に追いかけてきてね!」


77 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 22:03:34 u2TGvuTE0
梓「あ、でも唯先輩、浪人するかもしれないし、大学でも留年するかもしれないから

  案外すぐに追いついちゃうかもですね」

唯「な、なんてこと言うのさあずにゃん!さすがに笑えないよぅ……」

梓「じゃあそうならないように、しっかり勉強してください」

唯「うぅ……厳しいっす……。あっ!……あずにゃん……」モゾモゾ

梓「な、なんですか?狭いんだからあんまり動かないでくださいよ」

唯「シーッ……静かにして……」モゾモゾ

梓「な、なんで近づいて来てるんですか!?か、顔が近いです!!///」ドキドキ

唯「……あずにゃん……」


梓「ゆ、ゆゆゆ唯先輩!こ、こんな所でダメですーーー!!!///」


菫「唯さんと梓さん見つけましたー」


梓「……え?」


唯「もう!あずにゃんがおっきい声だすから見つかっちゃったじゃん!」

梓「そ、それは……先輩が急にあんなことするから……///」

唯「菫ちゃんが近づいてきたのが分かったから、あずにゃんだけでも見つからないように

  体を張って隠してあげようと思ったのにー」

梓「う、うぅ……///ま、紛らわしいんですよ!唯先輩のバカ!///」

唯「え?えぇーっ!?怒られた……?」


78 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 22:04:56 u2TGvuTE0

 

 _________




唯「あれー?りっちゃんと澪ちゃんも見つかっちゃったの?」

律「おう。澪のせいでなー」

澪「律のせいだ」

梓「後はムギ先輩だけですね」

菫「はい。じゃあ私お姉ちゃんを探してきますね。

  すぐ戻りますから皆さんはお姉ちゃんの部屋で待っててください」

律「おっ?その言い方は……ムギの隠れ場所の見当がついてるな?」

菫「はい。多分あそこかと……」



 _________




菫「……お姉ちゃん、みーつけた」

紬「………ふぁ……あ、あら?菫?私、寝ちゃってた……?」

菫「ふふ、昔からかくれんぼしたら絶対このクローゼットの中に隠れて、

  隠れてるうちに寝ちゃうんだよね」

紬「だってここ暖かくて気持ちいいんだもん♪」

菫「もう……そろそろ寒くなってきたんだからこんなとこで寝てたら風邪ひいちゃうよ?」

紬「はーい……ところで他のみんなはもう見つけたの?」

菫「うん。今はお姉ちゃんの部屋で待ってもらってる。

  律さんは澪さんと、唯さんは梓さんと一緒にいたよ」

紬「うふふ♪さすがは仲良し二組ね」

菫「みなさん仲良さそうだよね。ちょっと羨ましいな……」

紬「………菫も学校帰りに誰かのお家に遊びにいったり、友達をお家に呼んだりしてもいいのよ?」

菫「そんなわけにいかないよ……学校終わったら家の仕事手伝わないといけないし、

  琴吹の家に私の友達呼んだりしたらお父さんに怒られちゃう」

紬「斉藤には私から言っておくから……」

菫「……お姉ちゃん、もしかして今日みなさんをお家に呼んだのはそのため?」

紬「えっ?」

菫「お姉ちゃんが友達を呼ばないと、私が呼びにくいって思ったから……?」

紬「………菫は私や琴吹家に気を遣いすぎてるの。もっとやりたい事をやればいいのよ?」

菫「うん……でもよかったの?お姉ちゃん今まであんまり友達を家に呼びたがらなかったじゃない」


79 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 22:06:10 u2TGvuTE0
紬「そうね……昔、友達をお家に呼んだ後、ちょっと距離を置かれるようになった気がして……

  あんまりお家に友達を呼んだら私の望む『普通』じゃいられなくなるって思い込んじゃって

  それからは控えてたんだけど……でも軽音部のみんななら大丈夫だって思ったから」

菫「そっか……みなさんいい人だもんね」

紬「そうなの!みんなすっごくいい人なの♪」

菫「……お姉ちゃん」

紬「なに?」

菫「中学は今年で卒業だから無理だけど……高校生になったらお父さんにお願いして

  なにか部活を始めようと思うの」

紬「それならお薦めの部活があるわ。可愛くて頑張り屋さんの部長がいてすっごく楽しい部活なの!

  きっと素敵なお友達もできると思う!」

菫「ふふっ、そうだね」

紬「……さて、随分待たせちゃってるし、そろそろ行こうか?みんなでお茶しましょう。

  りっちゃんや唯ちゃんのお話しは私なんかよりずっと面白いのよ?」

菫「うん!」



 _________




 ガチャッ


菫「お待たせしました」

紬「待たせてごめんね?お茶にしましょう♪」

唯「あ、ムギちゃんも見つかっちゃたんだ〜」

律「この『かくれんぼの鬼』より長時間隠れるとは……やるな、ムギ!」キリッ

梓「律先輩、それはもういいです」

澪「でも確かにさっきの菫ちゃんの言い方だとすぐに見つかるかと思ったけど、

  結構時間かかったんだな。何してたんだ?」


紬「うふふ、未来の新入部員を勧誘していたのー♪ほらほら、ご挨拶は?」


菫「え?えっと……来年入部予定の斉藤菫です!よろしくお願いします、先輩方!」




 おしまい


80 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/09(日) 22:08:44 u2TGvuTE0
最初にif設定だという注釈をいれるつもりで忘れていました
すいません


81 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:26:47 HRzKXqaw0

紬「コトブキ・サクラメント」


82 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:27:25 HRzKXqaw0


紬(あれ、あそこにいるのは…?)


大学が春休み中のある日のこと。
帰郷していた紬が街をブラついていると、見覚えのある二人の後姿を見かけた。


紬「唯ちゃん、澪ちゃん?」

唯「え? あ、ムギちゃんだ! やっほーい!」


唯が振り返り、紬の姿を確認し、挨拶もほどほどに飛びつく。この間約3秒。早業である。


澪「おはよう、ムギ。珍しいな、長期休暇にこっちで会うなんて」

紬「おはよう、唯ちゃん澪ちゃん。せっかくこっちに帰ってきたんだから足を運んでおきたくて」

澪「ああ、確かに、久しぶりな感じするよな」

紬「うん。それとちょっとした買出しね。二人は何をしてたの?」

唯「へっへーん、これですよ、これ!」


紬の身体から離れると同時に唯が掲げたのはデジタルカメラ。大学生になってからバイト代を貯めて買った例のアレだ。
その隣では澪も高校時代からの愛用のデジカメを手にしている。


唯「澪ちゃんに教えてもらいながらいろいろ写真に撮っておこうって思ってね」

澪「まあ、そんなに教えられるほどのことはないんだけど」

唯「またまた〜謙遜しちゃってもーこの子ったらー」ツンツン

澪「ひゃっ!? つつくな!」ビクン

紬「確かに、私達の中で一番デジカメ使いこなしてるの澪ちゃんだもんね〜」ツンツン

澪「ムギまでぇぇえ!?」ビクビクン

紬「ねえねえ、見せてもらってもいい?」

唯「うん、いいよー。まだあんまり撮ってないけど。ほい」

紬「ありがと。ええっと……」

澪「………そこのボタン押して一覧表示、これで選択して拡大、そしてこっちで次の写真に」


二人の切り替えの早さに振り回されつつも振り切られずついていくあたり、澪も慣れたものである。


紬「ありがとうございます、先生!」

澪「先生って」

唯「デジカメ師匠!」

澪「師匠って」


83 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:28:45 HRzKXqaw0


ピッピッ

紬「一枚目は……唯ちゃんの家?」


デジカメの画面には、陽も登る前の薄暗い明かりの中に建つ平沢家が写っていた。
薄暗いとはいえ見難いわけではなく、早朝だと一目でわかる風情のあるものである。


唯「へっへーん、上手く撮れてるでしょ?」

紬「うん、すごいわ!」

澪「それ、テイク10くらいだけどな」

紬「あら……」

唯「師匠の力です!」ペコリ

澪「……でも、唯のセンス、私は好きだよ」

唯「し、師匠ッ!!!」ヒシッ

紬「美しき師弟愛!」

澪「そ、そんなんじゃない!」


実際のところ、他にもカメラを持っている友人はいるにも関わらず唯が澪を選んだのは前述の理由以外にも似通ったセンスをしていることを直感で感じ取っているからかもしれない。
澪もまた、そんな唯に自分の知識を貸すことを厭わない。そうすればもっと素晴らしいものを唯は自分に見せてくれる。それを同じように直感で感じ取っているから、かもしれない。


ピッ

紬「二枚目は……うーん?」


そこには山の端から顔を覗かせる美しい朝日が写っていた。
これまた朝の空気の湿り気まで伝わって来そうな、山の木々に滴る朝露まで見えるのではないかと錯覚しそうなセンスあふれるものではあるが、あまりにも場所を特定できる要素が無い。


唯「さぁ、どこだかわかるかなー?」

紬「あっ! これ、二年の時に初日の出を見に行った場所!」

唯「おおっ、よくわかったねぇムギちゃん」

澪「さすがムギ」

紬「唯ちゃんが穴場って言うだけあってすっごく綺麗だったから。忘れたくても忘れられない思い出とでも言うのかな」

唯「でへへ。でしょでしょ?」

紬「それにしても、ずいぶん朝早くから写真撮ってるんだね? 唯ちゃん起きれたの?」

唯「もー、ムギちゃん、私だってもう大学生なんだよ?」

紬「…でも大学寮でもいっつも晶ちゃんに起こしてもらってるじゃない」

唯「ばりたか」

澪「……私が起こしたんだよ」

紬「やっぱり。じゃあ澪ちゃんはだいぶ早起きだったのね、お疲れ様」

澪「あ、うーんと……」

唯「私の部屋に泊まったからそんなに私と変わらないよ?」

澪「あっ」

紬「あらー……あららー……」

澪「さ、先に言っとくけど何もヘンなことは無いからな!? 唯がどうしてもって言うから!」

紬「うん。うんうん。大丈夫、わかってるから」

澪「その笑顔は絶対わかってないだろ!?」

紬「本当に何もなかったの?」

澪「なかったよ!」

紬「…そう」


紬は一切余計なことは言わず、視線を手元のデジカメに戻した。
字面だけ見るとそっけなく映るかもしれないが、少なくとも今のやりとりに彼女は失望の意思は込めなかった。
ムキになって否定する澪に、それを察する余裕があったかは定かではないが。


唯「……?」


会話に一切ついていけていない者も約一名いたが。


84 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:29:44 HRzKXqaw0


ピッ

紬「三枚目は…憂ちゃん?」

唯「朝ご飯の時のだねー」

紬「あ、ホントだ。次のには朝ご飯が写ってる」ピッ

澪「食べものブログに乗せる写真みたいだな」

唯「桜が丘…の私の家ではこんな素敵なご飯が出ますよー、って伝わるじゃん!」

紬「次は……あっ、ここの風景だ」ピッ


写真はそれ以上は撮られていない。


澪「早起きが響いたのか、唯がさっきまで寝ちゃってて。朝ご飯のすぐ後に」

唯「澪ちゃんも寝てたじゃん」

澪「唯が起きてないと意味ないんだから仕方ないだろ……」


桜が丘、とわざわざ口にした唯と、唯が撮らないと意味が無いとでも言いたげな澪の言葉。
それを取っ掛かりに、紬はそもそもの疑問をぶつける。


紬「そういえば、そもそもなんで写真を撮っておこうって思ったの?」


故郷を大事にする気持ちや懐かしむ気持ち、そして遠ざかっている時に無性に見たくなるあの寂しさのような気持ちを紬が理解できていないわけではない。
ただ、唯の行動はいつも突飛に見えて大なり小なり必ず何かしらの契機がある、それをよく知っているだけのこと。


唯「うんとね、休みのうちに晶ちゃん達を呼ぼうと思ったんだよね、桜が丘に。さすがに急すぎて断られちゃったけど、でも考えとくって言ってくれたから」

紬「うんうん」

唯「だから、丁度デジカメ買ったし桜が丘がどんな感じか伝わるように写真撮っておこうかなぁって。興味持ってくれるように」

紬「いいわね! 素敵だと思う!」

唯「あとはまあ、自分用なのもあるけどね。例えば憂のご飯が恋しい時にご飯の写真を見れば……」

澪「余計恋しくなるだろ」

唯「そうかもね……」

紬「ま、まぁまぁ。でもそういうのホントに素敵だと思うから!」

唯「写真っていいよねぇ」

紬「うん!」

唯「私も、デジカメ買ったの澪ちゃんの影響だしね。澪ちゃんの写真趣味、いいなぁって思ってたんだ、ずっと」

澪「そ、そう……」


気の利いた言葉を脳から引っ張り出す前に、頬が熱くなるのを自覚して顔を逸らしてしまう。
そんな澪を、唯は出会った時から変わらず可愛いと思っている。もちろん紬も、この場にいない幼馴染の律も。


紬「それじゃあ、これからも撮って回るの?」

唯「うん! とりあえず澪ちゃんの家とかりっちゃんの家とか、思い出の場所とか、景色が綺麗なところとか」

澪「あ、律の一家は今日いないから勝手に撮らない方がいいかも」

唯「え、そうなの?」

澪「うん。この時期はいつもいないんだ」

唯「そうなんだ〜。詳しいですねぇ幼馴染さん?」

澪「な、なんだよその言い方……」

紬「ねえねえ、私も一緒に行っていい?」

澪「え? でもムギ、買出しとか言ってなかった?」

紬「Just a moment please」

唯「へ?」

紬「ちょっと電話して断るね!」サッ

唯「う、うん」

澪「……なんか、似たようなやり取りを律から聞かされたことがあるような」


その後、背中を向けた紬女史が電話を終えるまで5秒。


紬「行きましょう!!!」

唯「お、お〜!」

澪(いいのかな……)


85 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:30:38 HRzKXqaw0


3人パーティーがまず足を運んだのは、やはり全ての始まりの場所だった。
もっとも、そこに辿りつくまでにも唯が目を奪われた景色や可愛い動物達などに何度かシャッターが切られているのはご愛嬌。


唯「やっぱりここは外せないよねー」パシャッ

澪「そうだなぁ。ずいぶんと密度の濃い3年間だった気がするよ」

紬「2人とも〜」タッタッ

澪「ん?」

紬「今日は校内の撮影はダメな日だって」

唯「え〜、残念……」

澪「まあ、最近はいろいろ厳しいらしいし仕方ないよ。「今日は」ってことはタイミングが悪かっただけかもしれないけど」

唯「ぶーぶー」

澪「……また今度一緒に来てあげるから」

唯「……それならいっか」

紬「私は?」

澪「も、もちろんムギも都合が合えば!」

唯「当たり前だよムギちゃん!」

紬「うふふ、次に行こっか」


校舎の写真を一枚だけ撮り、一向は次の場所へと向かう。


唯「あ、ムギちゃんがバイトしてたハンバーガー屋さんだ」パシャリ

澪「これはそういう説明をつけないと写真だけじゃわかりづらいな……」

唯「いっそここの制服のムギちゃんを撮ったほうがいいかもね」

紬「ごめんなさい、あの制服レンタル制で……」

唯「そっか……」シュン

澪「……いや、しんみりしてるけどそもそも本来は桜が丘の景色を撮るのが目的だからな?」


ここでも遠目に外観の写真を一枚撮り、次へ。


唯「楽器屋さんに到着!」

澪「ここは撮影どうなんだろう? 撮れれば晶達に効果的だろうけど」

紬「聞いてくるね!」ダッ

澪「あっ、待って、ムギが行ったら……」

唯「行っちゃったね」

澪「……ムギが行ったら断ろうにも断れないじゃん、店員さんも……」

唯「まあ、私達も顔覚えられてるかもしれないから誰が行っても一緒かもよ?」

澪「そうかな……」


実際のところ、唯は悪い意味寄りで顔を覚えられているのだが、知らぬが仏である。


紬「澪ちゃん、オッケーだって!」

澪(……店員さん、すみません)


楽器店の写真を(店員に気を配りながら)沢山撮った後、そのまま流れで商店街の写真も撮って回る。


澪「ここの商店街はまだまだ活気があるな」

唯「写真からでも伝わりそうで助かるよ〜」パシャ

紬「近くに大型ショッピングモールが出来て寂れる、っていうのもよく聞く話だからね。そうならないように頑張らないと」

澪「……ムギが頑張るのか?」

唯「あっちこっちに手回しして桜が丘にジャ○コが進出できないように!?」

紬「……なんちゃって」

澪(……冗談か本気かわからないんだよな、ムギの言う事は……)


86 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:31:47 HRzKXqaw0


それからも3人はいろいろなところを撮影して回った――


唯「これがこのお店のオススメメニューです!」パシャ

澪「本当にブログに載せる用の写真みたいだな」

紬「そういうのに理解あるお店でよかったわね」

唯「だねぇ〜」

澪「まあ、こういうのはシンプルにアピールに繋がるからじゃないかな。晶達だって「うまそう」くらいは言ってくれるだろうし」

唯「ところでそろそろ食べていいよね!?」

澪「いや、撮ったなら早く食べろよ……」

唯「やった! いっただっきまーす!」

澪(あ……)

唯「んー! おいちー!」

紬(あっ……)

唯「…ん? 2人ともどうしたの?」

澪「ああ、いや……」

紬「なんでもないのよ、なんでも……」

唯「……?」

澪(言っていいのかな、食べ物の写真そのものよりも)

紬(唯ちゃんが食べてる顔のほうが美味しさが伝わって来そう、っていうのは)


――喫茶店やライブハウス、神社などの地図に名前が載りそうな所から――


唯「ここは夕陽が綺麗なんだよねぇ」

澪「じゃあもうちょっと後に来ようか」

唯「だねぇ」

紬「あ、唯ちゃん、あれなんてどうかな!? 駄菓子屋さん!」

唯「もー、ムギちゃんはしゃぎすぎだよー。今行くー!」

澪(……人のこと言えないけどな、唯も)


――演芸大会の行われた場所やその練習をした河川敷、果てはマラソンで走ったコースなどの細かな思い出の地まで色々なところを。
彼女達は時間を忘れて歩き回った。だから、というのも変な話だが、気づいた頃にはもう陽がほとんど沈みかけていた。冬の夜は早い。


唯「こうして振り返ってみるといろいろあるんだねぇ。忘れてるところもまだまだあるんだろうけど」

澪「ま、3年間の思い出を1日で回ろうって言うだけでもよくよく考えれば無茶だよな。それに加えて唯個人の感性に任せていろんな写真も撮ったし」

唯「えへへ、面目ない」

紬「ううん、悪いことじゃないわよ」

澪「うん。そういうつもりで言ったわけじゃないから」

唯「ありがと。でも……」


ちょっとだけ言い淀み、紬のほうを見る唯。


紬「どうしたの?」

唯「できればムギちゃんだけが知ってるところとかも教えて欲しかったなぁって。せっかくたまたま会えたんだから」

澪「あ、それは確かに。こんな機会、滅多になさそうだし」

紬「…今から別荘まで行く?」

唯「そ、それはさすがに……」

澪「時間的にはギリギリいけるかもしれないけど、さすがに暗くなりつつあるからなぁ……写真に撮って映えるかどうか」

紬「……あ、そうだ!」


ひらめいた!といわんばかりに両手を合わせる。
直後、2人と出会ってすぐの時のように振り返ってどこかに電話をかけ、再び5秒後に満面の笑みを見せる。


紬「いい場所があるの!」

唯「え、ホント?」

紬「うん。というわけで2人とも――私のお家に来てみない?」


87 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:33:04 HRzKXqaw0


……そうして数十分後。3人は琴吹邸の前に立っていた。


紬「どうやって来たのかは内緒よ?」

澪「は、はい……」

紬「家のことも喋っちゃダメよ? 写真もNG」

唯「はひ……」

紬「ごめんね、セキュリティの面からあまり大っぴらにはできないの」


とのことなので、結局我々が知りたい点はこの場では明らかになることはないだろう。
残念である。


唯「で、でも、家の写真とかがダメならさっき言ってた「いい場所」って…?」

紬「うん、この家の敷地内にね、とっても素敵な場所があるの! そこだけ許可を貰ったから、どうかな?って」

唯「いいの!?」

紬「もちろん!」

唯「わーい、楽しみー!」

澪「まったく……はしゃぎすぎ」


と呆れたような物言いをしつつも、澪も妙な高揚感は自覚していた。
始めて訪れる所謂『豪邸』に属するであろう家の敷地内を歩き回り、その家の住人も認める『素敵な場所』へ、おそらくは特例であろう許可を得て撮影に行く。
……高揚しないはずがない。


紬「ちょっと歩くけど大丈夫?」

唯「もちろん!」

澪「どんな場所なんだろう……」

紬「じゃあ行こっか。あ、そうだ……斉藤!」パンパン


紬が声を張り上げながら手を叩くと、いつの間にか執事服の初老の紳士が傍に立っていた。


斉藤「お呼びでしょうか」

澪「うわっ!?」

唯「び、びっくりした……いつの間に…」

斉藤「お嬢様自身が我々を遠ざけない限りは、お呼び立てから5秒以内に必ず辿り着く。これがこの家の敷地内での暗黙のルールなのです」


どうやら琴吹家は5秒にうるさいらしい。


斉藤「してお嬢様、何用でしょう?」

紬「懐中電灯を3本貸して欲しいの。そして、しばらく私達だけにしてほしいんだけど……」

斉藤「承りました。旦那様や奥方様はご存知で?」

紬「はい。許可は得てあります。あの時のように世話をかけるようなことにはならないわ」

斉藤「ふふ、懐かしいですな」

紬「あの時はありがとうね」

斉藤「なに、当然のことをしたまでです」


2人にしかわからない会話を繰り広げる傍らで、どこからともなく取り出した懐中電灯をそれぞれ配る斉藤執事。


唯(いつも持ち歩いてるのかな?)

澪(いや待って、どんな状況にも対応できるプロ執事なら常備しててもおかしくない…かな?)


思考をシンクロさせながら、しかし2人の会話に割って入りながらそんなことを質問できる空気でもなく、唯と澪はただ「ありがとうございます」と礼だけ返した。
紬と会話しながらもその言葉に微笑を返すあたり、斉藤執事もプロである。


紬「あ、あと、私の合図でアレができるように菫を待機させておいて。電話入れるから」

斉藤「わかりました。では行ってらっしゃいませ。足元にお気をつけて」ペコリ

紬「はーい。じゃあ唯ちゃん澪ちゃん、行きましょっか♪」

唯「うん!」

澪「唯もだけどムギも楽しそうだな」

紬「うふふ、そう? 家にはあまり皆を呼べないけど、今から行く場所はいつか絶対皆に見せたいなって思ってた『琴吹家のとっておき』だからね!」

唯「へー、楽しみー!」


意味深な言い回しだが、澪は不安などは感じていなかった。
むしろあの紬が自分の家を持ち出してでもここまで言い切る場所だ、期待の方が大きくなろうというもの。
胸を躍らせながら、そして普段は目にすることもないレベルの豪邸を眺めながら紬の先導で歩いていく。
だが、徐々にその豪邸からは遠ざかっていき、周囲も薄暗くなっていく。


88 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:34:13 HRzKXqaw0


紬「そろそろ懐中電灯を点けて。足元に気をつけてついてきてね」

澪「わかった」

唯「ほへー……」


歩きながら唯が間の抜けた声を出すが、澪にも理由はわかる。
一般にイメージするお金持ちの豪邸の敷地内とは程遠い、まるで登山道のような雑多な植物に溢れたデコボコな道を歩かされているからだ。
もっとも、同時に結構な距離を歩かされていることもわかるので、琴吹家の敷地面積に驚いている面もあるのだが。


澪「む、虫とか出ないかなぁ……」

紬「大丈夫。そのあたりはちゃんとしてるから。あえて道はこのままにしてあるんだけどね」

唯「よ、よかったぁ……」

紬「ふふっ。はいっ、とうちゃーく!」


紬がタンッと小さく跳び、振り返って両手を広げる。
2人が周囲を見渡せば、そこは一面が開けており、小規模の円形になっている不思議なスペース。
そして中央には、


澪「これは…樹……?」

紬「――菫、よろしくっ♪」


携帯電話を開いて紬が一報を入れた瞬間。


唯「わあっ……!」


周囲にあたたかい明かりが灯り、中央にある樹を淡く儚くライトアップする。
照らし出された、その樹は……


澪「桜の樹…!」

唯「夜桜! 夜桜だよ澪ちゃん! すごいよ!!」

澪「………」

唯「……澪ちゃん?」

澪「ふわぁ……」

唯「おーい、澪ちゃーん?」

澪「……はあぁ……」

紬「唯ちゃん。そっとしといてあげましょう」

唯「……そうだね、すっかり心奪われちゃってるよ」

紬「ふふ、喜んでもらえてなにより」

唯「うん、すっごい綺麗。いいなぁ、ムギちゃんの家にはこんな絶景スポットがあったんだ」

紬「今度は皆で来ようね。ずっとずっと、絶対、皆にもいつか見せたいって思ってたんだ」

唯「うん!」


幻想的、としか言いようがないその光景に唯も当然心奪われながらも、それでもふと、当然の疑問を思いつく。


唯「……ところでムギちゃん、桜にはまだちょっと早くない?」

紬「そうなのよ、不思議でしょ?」

唯「えっ、何か理由があるんじゃないの?」

紬「ううん、謎なの。あのね唯ちゃん、この樹はね………伝説の『万年桜』じゃないかって言われてるの」

唯「……まんねんざくら? あ、もしかしてあの……?」

紬「そう。一年中花を枯らさず、一万年でも咲き続ける、そんな桜の樹」

唯「す、すごいじゃん! 実際にあったんだ!」

紬「もちろん、世間には知られてないけどね」

唯「なんで? もったいない……」

紬「……悪い人に見つからないため、よ」

唯「……ゴクリ」

紬「なんちゃって〜」

唯(お、重い!)


紬の言う事が嘘か本当かわからないままの唯だが、これはおいそれと他人に漏らしていい事ではないんじゃないか、と思った。これは紬からの自分達に対する信頼の現れでもあるのではないかと。
実際のところはわからない。この桜は琴吹家が国からの依頼で管理しているものかもしれないし、それ故に世間の目や悪人の目から隔離しているのかもしれないし、
そんなのは関係なく散る花と咲く花による四季の風情がなくなるから世間に知らせないだけかもしれないし、でももしかしたらこれが世界で最後の1本の万年桜なのかもしれない。
わからない、が、唯は自身の直感を信じることにした。


89 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:35:23 HRzKXqaw0


紬「そういえば、祖父の代あたりは「この桜を守る為に働いてるようなもんだ」とか言ってたような気もする。もっと前の代では、そもそもこの桜の近くに家を構えたことが琴吹家の始まりだって伝承もあるらしいけど」

唯「へ、へえ〜……本当に写真撮って大丈夫なの?」

紬「大丈夫大丈夫。そうやって連絡したし、たぶん大丈夫よ〜」

唯(たぶん!?)

紬「……でもね、今の家族があるのはこの樹のおかげなのは間違いないの」

唯(やっぱりこの樹には何か重いエピソードが!?)

紬「聞いた話だけどね……」

唯「ゴクリ」

紬「……私のお父さんとお母さん、この樹の下で告白したらしいの!」

唯「……へっ?」

紬「ね!ね!素敵だと思わない?!こういうの!」

唯「う、うん、そだね……」


もちろん唯も年頃の少女だ、そういうのに目を輝かせる気持ちはわかる。単に拍子抜けだったというだけのこと。
そんな唯を置いて紬が恋愛への憧れを語り、暴走を始める……とまではならなかった。紬の手が第三者によって握られたからだ。


澪「……すごい!すごいファンタジーな光景だよ!ありがとうムギ!」ギュッ

紬「あ、澪ちゃん」

唯「帰ってきたんだね」

澪「なあ唯!すごいよなこれ!!」

唯「う、うん、そうだね」


私も散々言ったじゃん、という言葉を唯はもちろん飲み込んだ。
少し優しくなれた気がした。


澪「写真!早く写真撮ろうよ!あっ私もデジカメ持ってたんだ!それっ!」パシャシャシャシャ

唯「すごい連写だ」

紬「唯ちゃんは撮らないの?」

唯「そうだね……えーっと、このあたりかな……」


と、唯がシャッターを切ろうとした時だった。


紬「あ、あれ?」


万年桜を囲い、ライトアップしていた照明が、徐々に明かりを落としていき……終いには消えてしまった。
そしてすぐに紬の携帯に着信が入る。


紬「どうしたの菫? 不具合? うん、待ってて、私も行くわ」

唯「どしたの、ムギちゃん」

紬「しばらく使ってなかったから何かトラブルがあったみたい。ちょっと様子を見てくるね」

唯「1人で行くの? 危ないよ?」

紬「斉藤が迎えを寄越してくれるから大丈夫。それに、これは誘った私の責任だから……すぐに戻るわ、5分くらいで」

唯「あ、でも……」

紬「……そろそろ遅いし、一緒に戻る?」

唯「ん……」


唯は、隣に立って未だに桜を見上げている澪に目をやり、少し悩んだ後、答えた。


唯「ううん、ムギちゃんを待ってるよ」

紬「わかった。すぐに戻るからね!」


懐中電灯片手に走り出した紬の背中に気遣う声をかけた後、唯は澪に向き直る。


唯「……写真、撮れなかったや」

澪「……私は撮れた、けど……」

唯「けど?」

澪「なんか、不意に終わってしまうっていうのは、どうも寂しいなって」

唯「………」

澪「ムギを責めてるわけじゃないよ。こんな素敵な光景をあれだけの時間見せてくれたんだから。ただ、なんか、ね」

唯「……近づいても大丈夫だよね、この樹」

澪「え?」


90 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:36:57 HRzKXqaw0


懐中電灯で足元を照らすこともせず、暗がりの中を唯は歩を進めていき、万年桜の樹の幹に背中を預けた。
ふう、と一息つき、次の瞬間には笑顔で澪を呼ぶ。澪ちゃんもおいでよ。


澪「……いい笑顔しちゃって」

唯「もう暗いけど、見えた?」

澪「なんとなくわかった。よっ、と」


澪も同じように樹に歩み寄り、唯の隣で背中を預け、それ以上の言葉を発しなかった。
背中に樹の胎動を感じた気がした。
隣の唯に目をやると、唯も同時にこちらを向く。少し笑い合った後、またも同時に上を見上げる。
夜の空の青の中に、確かに桜はあった。


唯「……ねえ澪ちゃん、さっきのムギちゃんの話、聞こえてた?」

澪「えっ、どんな話?」

唯「ムギちゃんのお父さんとお母さん、この樹の下で告白したらしいよ」

澪「そ、そうなのか、聞いてなかった……。ロマンチックでいいな、そういうの」

唯「だよね。というわけで、私達もあやかってみない?」

澪「え、えっ、唯、告白するのか!?」

唯「告白っていうか、誓うっていうか」

澪「な、なにを誓うんだ?」

唯「そんなの決まってるよー」


そっと、澪の左手を握りながら。


唯「――ずっとずっと、一緒にいられますように、って」


91 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/10(月) 13:37:38 HRzKXqaw0
おわり


92 : ◆6nSiQG3K46 :2014/03/10(月) 14:54:36 QHITf4Pg0
律「許嫁?」


93 : ◆6nSiQG3K46 :2014/03/10(月) 14:55:38 QHITf4Pg0
律(澪の家で遊びすぎちゃった。もう外こんな暗いし)

律(そういや見たいテレビあったんだ!早く帰らないと)

律「フフフフ〜ン♪」

律「……ん?あそこ何やってるんだろ?」


ギャル1「ねぇ、今仕事帰り?おじさん金持ちそうだね」

ギャル2「私たちお金困ってるの〜だからお金貸して〜」

男「いや、そういうのはちょっと困るので……」

ギャル1「キャハハハ!おじさんキョドってるwww」

ギャル2「どーでもいいから、早く金出せよ」


律(あれ、オヤジ狩りとかいうやつ??)

律(やばい!誰かに助けを……でもここ人通り少ないから)

律(ど、どうしよ!?しょうがない、こうなったら……)


律「オイ!てめーら何してんだよ!!」

ギャル1「は?誰こいつ?」

律「おっさん嫌がってるだろ。やめろよ」

ギャル2「あー?お前痛い目あいたいの?」

律「ちなみにもう警察呼んでるから」

ギャル1「……チッ、うっぜぇ」

ギャル2「覚えてろよ」


律「はぁ……なんとかなった」

男「君、は…?」

律「おじさん大丈夫だった?」

男「おかげで助かったよ。なんてお礼すればいいか……」

律「いいっていいって。ここら辺暗くなると危ないからこれからは気をつけてね!」

男「ありがとう。ちょっと散歩してみようと思ったのがいけなかったかな」

律(散歩…?スーツで?変なおっさん)

男「もしよければお礼に……」

律「あ!!見たいテレビあったんだった!じゃあねおじさん!!」

男「あ……」


男(少々ガサツだが良い子だったな。それにあの制服、もしや……)


94 : ◆6nSiQG3K46 :2014/03/10(月) 14:57:28 QHITf4Pg0
次の日

紬「ねぇりっちゃん、今日暇だったらうち遊びにこない?」

律「え!?ムギんち行っていいの??」

紬「昨日お父様にりっちゃんの話したらすごく興味持ってて、是非話したいなんて言うから」

律「ムギのお父さんが??うひょーなんか緊張するー!」

紬「うふふ、大丈夫よ。じゃあ放課後部活終わったらね」

律「おう!楽しみにしてる!」


帰り道

律「ムギとこうやって一緒に電車で帰るって新鮮だな」

紬「本当は学校まで車で迎えにきてもらってもよかったんだけど……」

律「いやいや、さすがにそこまでしてもらうと悪いって。ムギの家の車とかめちゃくちゃ緊張しそうだし。運転手さんとかもいるの?」

紬「一応ね」

律「わぁ、家はメイドさんでいっぱいだったり??」

紬「もう。そこまで大勢じゃないわよ〜」

律(でもいるんだ……)

紬「あ、次の駅で降りるね」


95 : ◆6nSiQG3K46 :2014/03/10(月) 14:58:41 QHITf4Pg0
琴吹家

律「お、おお……門でけー!!」

ぴっ

律「それは??」

紬「指紋認証で開くようになってるから」

律「へ〜初めて見た〜!」

紬「りっちゃんも押してみる?」

律「私押していいの??」

紬「家全体に警報ベルが鳴っちゃうけど」

律「ダメじゃん!!」

紬「えへへ」

律「それにしても玄関までも長い…!庭綺麗だな〜」

紬「お庭はお母様の趣味でね。季節ごとにいろいろなお花植えてるの」

律「ほへー。お、ここ玄関か」

紬「うん、どうぞ〜」


ぴっ


律「中も広い!!おじゃましまーす」

メイド「お帰りなさいませお嬢様」

律(わ、メイドさん!!)

紬「ただいま。今日お友だちがきてるから私の部屋で遊んでるね。お父様にも伝えといて〜」

メイド「かしこまりました」


律「私メイドさん見るの初めてだよ」

紬「執事もいるのよ」

律「知ってたけど、ムギって本当お金持ちなんだなぁ。家の中も部屋ありすぎて一人だと絶対迷うって!」

紬「ふふ、りっちゃんたら大袈裟なんだから。ここが私の部屋」

律「どれどれ……」

紬「なんもないけどね」

ガチャ

律「お姫様ベッド!?家具もいろいろすげー」

紬「私は普通がいいって言ったんだけど……。でもこの本棚だけは特注で私が考えたのよ」

律「ん…?普通に教科書とかが並べてあるだけな気が……」

紬「ここを引っ張るとね……」

律「後ろに隠し本棚!!」

紬「これはお父様も知らない秘密なの〜」

律「すっげぇ!!漫画本いっぱい!」

紬「私恋愛ものが大好きで見かけたらついつい買っちゃって」

律「ムギらしいな〜。あれ、でもこの漫画男キャラあんま出てなくない?」

紬「女の子同士も素敵よ〜!」

律「??」


トントン

「紬、入っていいかな?」

紬(あ、お父様だ!りっちゃん隠して!)

律(うん…!)


紬「どうぞ」

紬父「やぁ。お友だちがきてると聞いて」

律「……あ!!おじさん昨日の…!!」

紬父「昨日はお世話になったね」

律「ムギのお父さんだったんだ…!」

紬「え?りっちゃんお父様と会ったことあったの??」

紬父「そこらへんの話もしながら、どうだい?今夜一緒に夕食でも」


96 : ◆6nSiQG3K46 :2014/03/10(月) 14:59:34 QHITf4Pg0
夕食

紬父「……というわけで昨日は律さんに助けられて」

紬「あぁ、だからお父様昨日りっちゃんのこと私に聞いてきたのね」

紬父「どうしてもお礼がしたくてね。いきなり飛び込んで私を守ってくれたヒーローに」

紬「りっちゃんほんとすごい!」

律「いやいや……たまたま運良く追い払えただけで」

紬父「でもああやって勇気を出すのはなかなか普通の人じゃできないことだよ。ありがとう」

律「へへっ、どうしたしまして」

紬父「今の若者は弱そうなやつばかりで、会社の経営をしていても困ることが多くてね。君みたいな人だったらうちの会社も任せることができるんだが」

律「そこまでじゃ……」

紬父「紬もあとを継いでくれないと言うし、将来が不安だな……」

紬「もう、今はそんな話いいじゃない」

紬父「……そうだ!律さん、紬の許嫁になってくれないか?」

律「え……」

紬「そんな冗談を…」

紬父「いやいや、本気で律さんになら琴吹グループを託してもいいと今思ってね。どうだい?律さん」

律「そ、そそそんなこと急に言われても……」

紬「りっちゃん困ってるよ!それに女の子同士で結婚なんてできないじゃない」

紬父「海外にでも行けばいいだろう」

紬「話がいきなりすぎるよ…!」

紬父「ふむ。確かにいきなりじゃ心の準備もできないだろう。落ち着いて律さんの気持ちを決めたら教えてくれないか」

律「へ?は、はい」

紬父「ありがとう。いい返事を期待してるよ。では私はお先に」



律「……はぁ、すげぇびっくりした」

紬「ごめんね。お父様ってば勢いで行動する癖があって」

律「さっきの話まじで言ってるのかな??」

紬「お父様自分で言ったことだけは絶対守るからたぶん……」

律「ふへぇ……」

紬「どうしようりっちゃん??」

律「とりあえず断るにしても早すぎたらもっと考えろとか言われちゃいそうだし、なんて言おうか一晩じっくり考えてみるよ」

紬「本当ごめんね……」

律「ムギが謝ることじゃないって!あ、もう遅くなったから帰らなくちゃ」

紬「そうね!りっちゃんの家まで車で送るわ」

律「大丈夫!歩きながら考え事したい気分だし。今日は夕食までごちそうになっちゃってありがとな!」

紬「ううん。じゃあ気をつけてねりっちゃん」

律「おー!また明日学校で!」


97 : ◆6nSiQG3K46 :2014/03/10(月) 15:00:10 QHITf4Pg0
夜道

律(今日はいろいろすごかったな〜)

律(ムギの家広すぎだし)

律(もしムギと結婚したら玉の輿だな!)

律(……なんて、ないけどね〜)


紬父の部屋

紬「お父様、なんで急に許嫁なんて」

紬父「仕事に必要な手段だ」

紬「…!」

紬父「それと、昨日紬が律さんの話をしているの聞いてて思ったのだが、紬……律さんのこと好きなんだろ?」

紬「え……//」

紬父「一応これでも父親だからな。娘の気持ちくらい分かる。どうせお前のことだから何も言わずに終わりにするつもりだったのだろう。昔からしたいことをさせてあげられないことが多かったからその癖がついたのか……ちょうどいい機会じゃないか。一歩踏み出すための」

紬「お父様……」

紬父「今日はもう遅いから寝なさい」

紬「……はい」


98 : ◆6nSiQG3K46 :2014/03/10(月) 15:00:57 QHITf4Pg0
次の日
部活

唯「そういえば昨日りっちゃん、ムギちゃんちどうだった??」

梓「あ、私も気になってました」

律「すごかったぞー!ドカーンとしてババーンとして!」

澪「それじゃ伝わらないだろ……」

律「とにかく広かったってこと!」

唯「いいなぁ。りっちゃんずるーい!」

律「ムギのお父さんに気に入られてたからな」

澪「律ってムギのお父さんに会ったことあったのか??」

律「まぁね。そんでムギの許嫁にならないかなんて言われちゃったよ」

梓「え、え〜〜〜〜!?!?ムギ先輩それ本当ですか??」

紬「そうなの。お父様結構本気で」

唯「りっちゃんとムギちゃんが結婚!?」

律「いや、決まったわけじゃないから」

唯「結婚したらりっちゃんが社長!?」

律「それちょっといいかも!」

梓「でも本当に結婚するなら海外とか行かなきゃいけないんじゃないですか…?」

唯「え〜二人に会えなくなっちゃうのやだよ〜!」

律「だからまだ決定じゃないって〜」

澪「……話してるのもいいけど、そろそろ練習するぞ」

律「ちぇー。ま、時間なくなっちゃうか。それじゃやるかー」


♪♪


帰り道

唯「じゃあね!」

梓「お疲れさまです!」

紬「またね〜」

律「おぅ、じゃあな!」

澪「また明日」


てくてく

澪「……なぁ律、さっきの話」

律「ん?ムギの許嫁ってやつ?」

澪「うん……あれ律はどうするつもりなんだ??」

律「そりゃもちろん断るって〜。琴吹家を背負うなんて荷が重いよ」

澪「そっか……でも……」

律「澪…?」

澪「……私今日ちょっと寄ってく場所あるから!じゃ!」

律「??じゃあな」


99 : ◆6nSiQG3K46 :2014/03/10(月) 15:01:54 QHITf4Pg0
律(澪のやつどうしたんだろ)

律(まぁいっか)


紬父「律さん」

律「わっ、ムギのお父さん!どうしてこんなところに!?」

紬父「また散歩がしたくなってね。大丈夫、今日は執事も一緒だから」

斉藤「どうも」

律「はぁ」

紬父「それで、答えはもう出たかい?」

律「え、いやまだ考え中で……」

紬父「まぁあせらずゆっくり考えてくれ。私は本気ということだけ知っといてほしい」

律「……分かりました」

紬父「ところで律さんは紬のことが好きか?」

律「はい…!もちろん」

紬父「それは恋愛感情で?」

律「そこまでは……考えたことがなかったので」

紬父「そうだろうね。私も同性の友人に、なんて考えもしないからな。だけど、私の娘は……」

律「??」

紬父「紬は君に恋してるんだ」

律「え……?」

紬父「律さんには紬の気持ちもしっかり考えた上で答えを出してほしい。いろいろ押し付けてばっかで本当すまないと思ってるが、私も娘には幸せになってもらいたいんだ……」

律「……」

紬父「じゃあ、また会おう。行くぞ斉藤」

斉藤「はい。律さんお気をつけてお帰りくださいませ」

律「あ、さよなら……」


律(ムギが、私に恋……?)


100 : ◆6nSiQG3K46 :2014/03/10(月) 15:02:34 QHITf4Pg0
次の日
放課後

紬「どうしたのりっちゃん?二人きりで話がしたいなんて」

律「その、許嫁のことで……」

紬「それ私もお父様にどう断ればいいか考えてみたんだけど」

律「昨日ムギのお父さんに会ったんだ」

紬「へ…?」

律「まだ返事はしてないんだけど……お父さんからムギのことちゃんと考えてほしいって言われた」

紬「お父様が……」

律「なぁムギ、ムギは私のこと、さ……」

紬「……」

律「ごめん、なんでも…」

紬「…………好きだよりっちゃん」

律「ムギ……」

紬「でもだからと言ってりっちゃんに無理してもらいたくはないの」

律「……」

律「私、は……」


ガタっ

律紬「!?」

澪「ご、ごめん…!盗み聞きするつもりはなかったんだけど……」

律「澪、いつから……」

澪「本当ごめん!!」タッタッタ


律「澪……」

紬「りっちゃん……澪ちゃんのこと追いかけてあげて」

律「なんで…?」

紬「命令♪」

律「え、えぇー」

紬「……きっと、行けば分かるから」

律「うーん……分かった!澪のことは放っておけないしな」

紬「うふふ」

律「じゃ、行ってくる!」

紬「行ってらっしゃい」



紬「……りっちゃんごめんね」


101 : ◆6nSiQG3K46 :2014/03/10(月) 15:03:42 QHITf4Pg0
律「澪!」

澪「…………どうして追いかけてくるんだよ」

律「分からん!」

澪「はぁ??」

律「なんかムギに澪を追いかけてって言われてさ。澪機嫌悪いみたいだけど大丈夫かよ〜?」

澪「……それならムギのとこ戻ってあげて。大事な話をしてたんでしょ」

律「そうだけどさー」

澪「律……」

律「んー?」

澪「……ムギの許嫁になるって決めたの」

律「それは……」

澪「海外、行っちゃうんだろ……そしたら会えなくる」

律「まだ決まっても先の話だよ」

澪「準備のためにいろいろあるかもしれないじゃないか…!」

律「まぁHTTはおろそかにしないって」

澪「社長さんは大変なんだぞ!」

律「う、うん」

澪「ムギとの間に子供が生まれたら育児だってしなくちゃいけない!」

律「ちょっと待て澪…!」

澪「授業参観には忙しくても行ってあげるんだぞーー!!」

律「お、落ち着けっ!」

澪「私だって、律のこと……」

律「澪……?」

澪「…………そばにいてよぉ」

律「……!」

澪「……ぐすん」

律「澪………………ごめん」

澪「っ!」

律「……ムギの気持ちも、全然分かってなかった。私、本当ばかだよ」

澪「律……」

律「いかなーい」

澪「へ?」

律「私、今回は許嫁になりにいかない!」

澪「どうしたんだよいきなり」

律「なんかね、今大事なこと分かった気がする。ムギのため、ムギのお父さんのために……そんなふうに考えていろいろ見失ってた。こんな状態で許嫁になったとしてもムギもきっと喜ばないよな……。本当にしたいことはいつだって一つだったのに……。私はこれからもみんなと、澪とずっと一緒にいたい!!」

澪「律…!」

紬「瞬間移動!」

紬父「私も!」

律「えっ?」

紬父「実の事、我々は代々引き継がれてきた忍者一家なのだ。今風に言えばスパイと言ったところか。今回は澪というひとからの依頼であなたを試させてもらったんだ。お金に釣られてここを去るか、そして情で浮気する癖があるかということをね」

澪「全部演技でした」

紬「全部演技でした」

紬父「全部演技でした」

ギャル1「全部演技でした」

ギャル2「全部演技でした」



律「えっ?」




102 : ◆udPNnC.01I :2014/03/10(月) 16:18:56 YM1tVfx60
唯「そっくりさん!」


103 : ◆udPNnC.01I :2014/03/10(月) 16:19:39 YM1tVfx60
※if設定です


琴吹家

唯澪律梓「お邪魔しまーす」

紬1「ウフフいらっしゃいみんな」

紬2「よく来たわね〜」

唯澪律梓「!?」

紬1「どうしたの?」

梓「ム、ムギ先輩が二人…」

紬2「ふふ、どっちが本物でしょう」

律「ちょ、ちょっと待ってな」

律「ムギが二人…そっくりな姉妹がいたなんて聞いてないぞ!」ひそひそ

澪「前、一人っ子だって言ってたしな」ひそひそ

唯「じゃあドッペルゲンガー?」ひそひそ

梓「それじゃ会った時に死んじゃいますよ」ひそひそ

律「よし対抗しよう。私はカチューシャを外す」

唯「私はヘアピン外すよ」

梓「私はツインテール解きますね」

「せーの」

唯「どっちが平沢唯でどっちが田井中律でしょー」

律「どうだ、どっちが澪で梓だかわからないだろう!」

梓「どんなもんです!」

澪(大丈夫かな〜)

紬1「ふふ、どっちがどっちだかわからないわ〜」

紬2「本当ね、わからない〜」

唯「どっちがどっちか先にわかった方が勝ちね!」

紬1「ええ」

律(くそうこんなときにさわちゃんがいれば…ん、さわちゃん?これだ!)

律「おいムギ、乳見せろ」

紬2「えっ!」

律(修学旅行で見たムギの巨乳、私は覚えてる!)

澪「セクハラするな」ポカっ

律「いてっ」

梓(片方はムギ先輩でももう片方は他人ですもんね…)

唯「そうだムギちゃん、お茶入れてよ」

律(なるほどムギといえばお茶か。やるな唯)

梓(単にお茶したいだけでしょうけど…)

紬1・2「「はーい」」

紬1「今日はジャスミンティーよ」

唯「ありがとう。ムギちゃんのお茶はいつもおいしーよ」

紬2「あっ、ちょっと零してしまいました。すみません…」

梓「いいですよこれくらい」

律「でもこっちのムギのお茶もおいしーな」

澪「勝手に人のを飲むな」ポカッ

紬1「わかったわ!」

唯「へ?」

紬1「このやり取りからして、どっちが澪ちゃんでりっちゃんなのかは一目瞭然!」

梓(まあそうですよね…)

唯「負けた〜」

紬2「…」

梓(ん?)

梓「待ってください。ムギ先輩はわかったかもしれませんが、『もう一人の』ムギ先輩はどうなんでしょうね」

紬2「!」

唯律澪「あ…」

梓「もう一人のムギ先輩、私達の名前言えます?あ、ムギ先輩は教えちゃだめです」

紬2「え、えーと…」

律「ということはここにいるのは」

澪「私たちの名前すら知らない偽物?」

紬2「す、すみませんでした!はじめまして。私斎藤菫です。琴吹家でメイドをしています」

紬「ごめんなさい。血縁関係はないけど似ているでしょ。私そっくりさんでみんなをからかうのが夢だったの」

唯「へーよろしくね。それにしてもそっくりだねー」

律「まったくだ。じっくり見てもちっとも区別がつかないな」

紬「私もりっちゃんや澪ちゃんたちの区別がつかなかったわ〜」

紬唯律澪梓「アハハハハハ…」

菫(いや、名前はわからなかったけど、胸の大きさとか背の高さとかいろいろ違ったよお姉ちゃん。あれでそっくりさんなの…?)

菫(それに私達だって普通眉毛の太さで分かりそうなものだと思ったけど、気づいてないし…)

菫(軽音部って人の区別のできない部活動なの?)

紬「菫、貴方も桜ヶ丘に受かったら軽音部に入らない?」

菫「えーと、考えておきます」

おわり


104 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:42:52 FpA8AbNg0

純「突撃!隣の一軒家」


105 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:44:08 FpA8AbNg0

〜放課後の部室〜


律「よーし!今年もひなまつりやろうぜー」

澪「何だよ急に!?てか今年もってなんだよ『も』って!いつの間に恒例行事になったんだよ!」

律「まー細かいことはいーじゃんいーじゃん。実はもうチラシも作ってあるんだ。ホラ」ピラッ

梓「どれどれ……。……だ、第33回軽音部ひなまつり開催のお知らせ…」

澪「思いっきり嘘じゃないか!!いつ32回やったんだよ!」

律「こまけぇことはいいんだよ!」

澪「いくらなんでも大雑把すぎるだろ!」


106 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:45:06 FpA8AbNg0


唯「むむ。会費もかかるの。えーとどれどれ……、…1143円?」

梓(めちゃくちゃ中途半端!!)

律「交通費やらお菓子代やらを厳密に考慮した結果だ」

澪「何でそういうところはしっかりしてるんだよ!」

澪「まったくあきれた……。で、場所はムギの家か。大丈夫なのかよ勝手に決めて」

梓「そういえばムギ先輩の家って予約が必要なんじゃありませんでしたっけ?」

律「いや。事前に聞いたんだがなんかその日はオーケーらしい。なぜなら……」


107 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:46:10 FpA8AbNg0


紬「なぜならその日は女の子同士の日だからよ!!」ガチャッ

唯「ム、ムギちゃん!?」

梓「び、びっくりした……てか来てなかったんですか」

澪「そして『同士』は明らかに余計だろ」

紬「何言ってるの澪ちゃん。3月3日と言えばひなまつりを口実にして女の子同士で色んなことを楽しむ日でしょう、常識的に考えて」

澪「いやいやその解釈は絶対おかしいって!」

紬「とにかく!ひなまつりには私は大賛成です!はい、賛成の人は挙手をおねがいしまーす!」

唯律「はい!!」バッ

梓「唯先輩たちすごいやる気ですね……」


108 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:46:57 FpA8AbNg0


唯「だって女の子の日なんだよ!その日を楽しまないでどうするのさ、あずにゃん!」

梓「まあ確かに……たまにはいいかもしれませんね」

梓「ムギ先輩、私も賛成です」

紬「うふふ。よかった」

律「よーし、これで全員賛成だな。では集合時間を……」

澪「おいちょっと待て」


109 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:48:07 FpA8AbNg0


律「? 何だ澪?かまってほしいのか?うりうり〜」ツンツン

澪「ひあっ!/// ……って違う!なんで私には賛成か反対か聞かないんだよ!」

律「…だってどちらにしろ強引に参加させるし?」

澪「……私に拒否権はないんですか」

律「そんな権利このりっちゃん様の前で乱用するなんて許されないのですわよ?」

澪「どっちが権力乱用だよ!」


唯「とにかく、集合時間とか場所とか決めよ〜。あ、そうだ!おやつは500円以内ですか!?バナナはおやつに入りますか!?」

梓「いや遠足じゃないんですから……」

紬「ちなみに個人的な意見ではバナナはおかずに入ると思うわ」

梓(…すごくどうでもいい情報だ!)


110 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:49:23 FpA8AbNg0


律「……ふっふっふ。安心しろみんな。実は集合時間やらなんやらは全てそのチラシに記載されているのだよ」

梓「え?そんなの書いてありましたっけ?……あ、本当だ書いてある」

澪「へえ全然気づかなかったよ。まさか書いてあるなんて夢にも思ってなかったからな」

梓「まあ律先輩が集合時間とかを しっかりと記載しているって考えがまずありませんでしたからね」

律「私の扱いひどすぎるだろおい!!」

唯「…じゃあ3月3日はこの時間に集合だねー。えーと集合時間はっと…。 ……『9時47分 そしてバナナは主食に入ると思う』」

梓(また中途半端だ! そしてどうでもいい情報!)


梓(あれ……? …そういえばムギ先輩の家って初めて行くな。普通だと予約が必要なくらいだし、きっとすごいんだろうなぁ)


111 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:50:56 FpA8AbNg0


・・・・・・・

3月3日 9時47分 

大きな家の前


唯「はぁー!みんな揃ったね!」

梓「てっきり唯先輩は遅刻するかと思ったんですが……。まさか一番早く来てるとは。見直しました」

唯「えへへぇ。早めに来られるように目覚まし時計をいつもより1時間早くセットしたんだー」

澪(……多分セットする時間 間違えただけだな)

律「それより見ろよこのでっけー家!!やっぱりムギん家はすげーぜ!都庁ぐらいあるんじゃねーか!?」

梓「いや流石にそれはないです。……でも確かに大きな家ですね。見てるだけで圧倒されてしまいそうです」

唯「お庭とかもすごい広そうだよねー。隅から隅までゴロゴロしてみたいよ」

澪(……多分そんなことしたら日が暮れちゃうだろうな)


112 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:51:58 FpA8AbNg0


律「とにかく呼び鈴押してみるか」ピンポーン

インターホン『はーい。どちら様ですか?』

梓(あれ……?ムギ先輩の声じゃない? …でもどこかで聞いたことあるような……)

律「あ、あのー。ここって琴吹さんのお宅ですか?」

インターホン『あー、琴吹さんのお宅なら隣ですよー。ちなみに私の名前は鈴木です』

律「え…。お、お隣なんですか……?」

唯「で、でも隣の家って……」

澪「……いかにも普通そうな一軒家だな」


113 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:52:45 FpA8AbNg0


律「…あ、分かった。ひょっとして佐々木さん、冗談を言って私たちをからかってるんでしょう、違いますか?」

インターホン『ちがいますよ!!あと鈴木ですってば!』

梓「と、とにかく一度行ってみましょうか?なんだかにわかには信じられませんけど」

唯「……だね」

律「…ってことで宇津木さんありがとうございました」

インターホン『だから鈴木ですって!』


澪「……とりあえず隣の家の呼び鈴、おしてみるぞ」ピンポーン

インターホン『今うかがいますねー。しゃらんらしゃらんら〜』


114 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:53:51 FpA8AbNg0


梓「……どうやら間違いないみたいですね」

唯「い、意外すぎて言葉が出ないよ……」

律「いや、待てみんな。外見は普通の家だけどきっと中はものすごい豪華なんじゃないか?全部金でできてるとか」

澪「さすがにそれは……あ、ありえるかも」

梓「確かに通常は予約が必要なくらいですからね。も、もしかしたら本当にそうなのかも……」ゴクリ

インターホン『みんな〜、準備ができたわー。玄関で待ってるわね』プツッ


唯「……なんか緊張するね」

澪「あぁ…」ドキドキ

律「では、意を決して! お邪魔しまーす!!」ガチャ


115 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:54:42 FpA8AbNg0


紬「うふふ。みんなよく来たわね。さあ上がって上がって」

梓(……中も思いっきり普通の家だっ!!!)

律(ど、どうなってるんだ……?)

紬「……?みんな玄関で突っ立っちゃってどうしたの?」

澪「!! あ、いや!なんでもないんだ!あはは…」

紬「そう? じゃあ私のお部屋に行きましょうか」


116 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:55:37 FpA8AbNg0


紬「私の部屋はお2階なの。階段気を付けてね」ギシィッ

唯「か、階段も私のうちのと同じようなのだ…」

律(おい、澪どうなってるんだよ、コレ)ヒソヒソ

澪(知るかよ。私だって正直驚いてるんだから)ヒソヒソ

梓(あ、分かりましたよ先輩方。きっとこれは高度なカモフラージュなんじゃないでしょうか)ヒソヒソ

律(カモフラージュ?何の?)ヒソヒソ

梓(要するに、普通の家だと見せかけておくことでギャップを強調させるためではないかと)ヒソヒソ

澪(ギャップ……?)ヒソヒソ

梓(例えば一見普通な家と見せかけて自室はすごい豪華にして驚かせるためとか)ヒソヒソ

澪(あ、ありえなくはないな)ヒソヒソ

律(いや。それだ、きっとそれに違いない!てかそうであってほしい)


117 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:56:38 FpA8AbNg0


紬「……?みんなさっきからどうしたの?こそこそして」

律澪梓「! い、いやなんでもありません!ご心配なく!」

紬「そう? まあいいわ、ここが私の部屋よ。さぁみんな入って入ってー♪」ガチャ

唯「お、お邪魔しま……ってうわぁっ!?」

律「ど、どうした唯!?」

唯「いや、そのあまりにもその普通のお部屋で逆に驚いちゃった」

澪「ほ、本当だ……」

梓「私の部屋と大差ないです……」


118 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:57:47 FpA8AbNg0


紬「よく分からないけどご、ごめんなさい……」

唯「いやムギちゃんが悪いわけじゃないよ!変な期待してた私たちが悪いだけであって!」アセアセ

律「そ、そうそう!悪いのは強欲な私たち!な、梓?」

梓「それは律先輩だけでしょ」

律「…ひどい」


紬「うふふ。それじゃあみんなで遊びましょ。何して遊びましょうか」

紬「人生あてもんゲームする?あ、それともマ○オカートしましょうか!?」

唯「!やろやろ!!」

律「よーし、とりあえず梓をはったおすとするかー。日ごろの恨みを晴らしてやるぜ!!」

梓「それはこっちの台詞です!! 覚悟してくださいよー、律先輩!!」

唯「どっちも頑張れー!!」


119 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:58:44 FpA8AbNg0


澪「ゲーム機、とられちゃったな…」

紬「まあいいじゃない。私たちは人生あてもんゲームで遊びましょ」


澪「……でもなんだかこうしてみると、ムギが段々身近な存在に思えてくるよ」

紬「あら?まるで今までは身近だとは思ってなかったかのような言い方ね」クスッ

澪「い、いやいや!!そういうわけじゃないんだけどさ!」


澪「……でも正直、ムギのことは私たちとはちょっとかけ離れてるな、と思うときはあった」

澪「部室にティーセット持って来たり、別荘持ってたりしてたからさ。やっぱり私たちとは少し違うのかな、って思ってた節はあったな」


120 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 18:59:55 FpA8AbNg0


紬「……ねぇ澪ちゃん」

澪「……なんだ?」

紬「正直、幻滅しなかった?こんな家で。割と普通の家だし……」

紬「だからあんまりみんなには知られたくなくって……。実は予約が必要っていうのは嘘だったの」

澪「ムギ……」

紬「で、でもね!みんなには本当のことを知ってもらいたかったから!今日はみんなを誘ったの!!」

紬「だから、そ、そのぅ……こ、これからも……」

澪「……バカだなぁ、ムギは」ペシッ

紬「!? み、澪ちゃん!?」


121 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 19:02:22 FpA8AbNg0


澪「ムギは心配しすぎだよ。大体、そんなことで私たちの友情が崩れると思うか?」 

澪「それに、私たち5人がずっと友達であるっていう事実は、例え家がどんなものであったとしても変わるわけないだろ?」ニコッ

紬「……!」

紬「……そうよね。いや、絶対にその通りだわ!!」

紬「……ありがとね、澪ちゃん」

澪「いやいや。それに、そう思ってるのは私だけじゃない。なぁ、みん……」クルッ


律「くらえっ、梓!!赤コウラ3連発だ!」

梓「ふふん。私がスター持ってるの忘れたんですか?残念ですが無効にさせてもらいますよ」

律「……こちょこちょ〜」コチョコチョ

梓「って!!な、ひゃにするんへす!あ、足の裏はやめ、あはははは!!」

唯「おーっと!ここでりっちゃん選手盤外戦術で勝負に出ましたー!!この勝負、まだまだもつれそうです!」

澪(…みんな聞いてませんでした)


122 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 19:03:17 FpA8AbNg0

・・・・・・

律「くそっ!負けた!!」

梓「あんな卑怯な手使うからです!!正義は勝つ!」

唯「おめでとう、あずにゃん。ごほうびにほっぺにチューしてあげるね」

梓「さてと。澪先輩とムギ先輩と一緒にゲームしよっと」

唯「ガン無視!?」ガーン



ピンポーン

唯「あれ……?誰か来たみたいだよ、ムギちゃん」

律「え、私たちのほかにも誰か来る予定あったのか?」

澪「私たち邪魔になっちゃうんじゃ……」

紬「大丈夫よー。みんなにも紹介しようと思ってた人だから」

唯「へぇ。ムギちゃんのお友達?」

紬「うん♪大切なお友達よ。じゃあ私、迎えにいってくるわね」


123 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 19:05:26 FpA8AbNg0


・・・・・・

紬「みんなお待たせ〜」ガチャ

律「おー、けぇったか、ムギ。……で、お友達っていうのは?」

紬「紹介するわね。のっぺらぼうさんよ」

のっぺらぼう「どうもー」


唯律梓「……はい?」

澪「……ふぇ?」


124 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 19:06:16 FpA8AbNg0


澪「ってうぇえええええ!!?か、かおかおかおがががが!!!!」

律「な、なんじゃこりゃああ!!本物か!?本物なのか!?」

唯「私のっぺらぼうさん初めてみたよ〜。よろしくね!」

梓「唯先輩は少しは怖がってください!!」

紬「あらあら。みんなこんなに喜んでくれるなんて」

のっぺらぼう「照れるわ///」

梓「どんだけポジティブシンキングなんですか!!」


125 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 19:07:13 FpA8AbNg0


紬「さて、のっぺらぼうさんも来たことだし。ゲームの続きをしましょうか」

律「んなことやってる場合か!!」

梓「そうですよ!!大体、妖怪なんているはずがないんです!!よってこののっぺらぼうはニセモノです!」

澪「そ、そうだ!!騙されないぞ!!ドッキリかなんかなんだろ!?」

トントントン……

澪「ほら、誰かが階段を上がってくる音がする!!きっとドッキリ大成功の札を持った執事さんが誰かが……」

ろくろっ首「ゴメーン、ムギちゃん。遅れちゃた☆」ガチャ

澪「」バタッ

律「みおーっつ!!!」


126 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 19:08:14 FpA8AbNg0


そうだ

これは悪い夢なんだ

私は今、夢を見ているんだ

目が覚めたとき、

まだ3月3日の朝

起きたらママにおはようを言って

朝ご飯を食べて、律たちとムギの家に行って、

ムギの家ではみんなとおもいっきり遊ぶんだ・・・
      

澪「ふっ……。なんだ夢だったのか、まったく驚かせてくれるよ…」


澪「ママ、おはよう」ガバッ

妖怪たち「「「「「「ママ?」」」」」」ニヤニヤ

澪「さっきより増えてるんですがそれは」


127 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 19:10:03 FpA8AbNg0


紬「……ごめんね、澪ちゃん。隠すつもりはなかったんだけど…。やっぱりみんなのこと驚かせたくって」

紬「それに、みんなもすっかり馴染んだみたいだし…。だから澪ちゃん、許して?」

唯「あー、ろくろっ首さんかわいいよーっ!」ギュー

律「こ、これは本当に現実なのか……?」

梓「悪霊退散悪霊退散悪霊退散……」ブツブツ

澪「とても馴染んでるようには見えないよ!! 唯以外は!」

紬「ごめんね、澪ちゃん。でも私、澪ちゃんが例え家がどんなものであったとしても、私たちは友達だって言ってくれたのがあまりにも嬉しくて///。
つい、呼んじゃったわ」

澪(めちゃくちゃ軽いノリだ!!)

紬「その……私の家、確かに予約は必要ないけど結構お客さまは来るから♪」

澪「お客様っていうか妖怪だろ!!」

紬「だから澪ちゃん、ちょっと私の家は妖怪さんがよく遊びに来るけど!これから毎日一緒に遊びましょうね!!」

澪「そ、それだけは勘弁してくれー!!」


おわれ


128 : ◆ym58RP.VtE :2014/03/10(月) 19:10:42 FpA8AbNg0
おわりです


129 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:22:54 NLZMALRg0
律「ああっ紬さまっ」


130 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:24:13 NLZMALRg0
「……まだ待つのか?」

「待ぁつ!」……勢いよくそう言ったはいいものの、私にはなんのアテもなかった。

澪は早々に帰りたがっている。

自信のなさを悟られてはならない。隙を見せれば逃げられる。
逃げられるわけにはいかない。けいおん部を作るために!

「早く帰りたいんだけど」

「あと5分…あと5分だけ!」

「……それ、さっきも言ってたぞ」

私の5分は通常の10倍なんだ。

とにかくマズいぞ。なんとしないと…。

高校に入ったらけいおん部でバンドをやる。そう決めていた。

そのはずが、入部するつもりのけいおん部は廃部状態。

けいおん部なんてクラブ活動の花形のはず。なんで廃部になってるんだ…

「ジャズ研に入る人が多いらしいな」

そうなんだ。
近年同じ音楽系クラブでは圧倒的規模を誇るジャズ研究部。
音楽やバンドに興味を持つ子達はみんなそっちに流れていく。

「律もジャズ研に入ればいいだろ」

私はけいおん部がいいの!…なぜかって?そりゃ、今なら私が部長になれるからなっ!


しかし、思った以上に人が集まらない。

部成立の条件は部員を4人集めること。あと2人足らない。
文芸部に入ろうとした澪を無理矢理確保したけれど、なんだか今ひとつやる気がないんだ、こいつ。まあ逃がすわけないけど。

とにかく2人!あと2人!

「実はな、律。
 …昨日、文芸部の見学に行ってきたんだ」

「なんだソレ。聞いてないぞ」

「言ってないからな」

「裏切るのかぁ!…約束…約束、したじゃないかっ!」

「…いや、約束なんてしてないし。
 で。見学したら雰囲気もよくてだな…熱心に勧誘されたんだ。私も随分心が動いたよ。
 …なぁ律。バンドは別にクラブじゃなくてもできるじゃないか」

「……そりゃあ、そうだけど、さ・・・」

「律がバンドをやりたい気持ちも、部員勧誘をすっごく頑張ってるのもわかる。
 正直、人数が集まるなら、私も律といっしょにけいおん部やりたい」

澪…さすが私の幼馴染。泣かせるなぁ…。

「でも、だーれも来ないだろ。毎日ビラを配っても、毎日音楽室でこうして待っていても。
 人っ子一人来やしない」

・・・その通りでごさいます。ぐぅの音もでねぇ・・・。

「今日を入れて4月もあと残り2日だぞ。さすがにもう…無理だよ。
 文芸部の入部期限も迫っているんだ。悪いけど、今日誰も来なかったら、私は文芸部に入る」

これ以上澪を付き合わせるわけにはいかない。
澪は精一杯頑張ってくれたんだ。私のワガママを聞いてくれたんだ。

「わかった。今日まで。今日誰も来なかったら、あきらめるよ」

…あきらめられる…のか?

「お、残すところあと1分だな」

「うえあっ!ちゃんとはかってたのか!?」

「まあな」

くそっ!きっちりしてる澪の性格が憎い。

…もう、無理か?無理なのか??

……あきらめる…あきらめる…あきらめ…る…あきら…め……られ………ねー!
無理!あきらめられねえ!

だって夢だったんだぞ!高校生になって、けいおん部に入って、澪と一緒にバンドやるって!

やっぱりけいおん部じゃなきゃだめだっ!私はけいおん部でバンドやりたいんだっ!

「あと30秒」

「あああああああ…」

無情にも時間は過ぎてゆく。

せめて1人でいい。今日は1人で!このまま誰も現れなければ、澪は文芸部に入ってしまう。
誰か1人だけでも現れて、けいおん部に興味を持ってくれさえすれば…

お願いだ!誰か来てくれ!この部屋の扉を叩いてくれ!

私は祈った。

神様!お願いします!どうか!どうか!

けいおん部に部員を!!お願いします!!!

そのとき、奇跡は起こった。神様っているんだよ、本当に。
いや、これは大げさな物言いじゃない。本物の奇跡だ。だって現れたのは……





本物の女神様だったのだから。


131 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:24:48 NLZMALRg0


空高く、雲の上にもさわやかな風が吹いています。
花美しく咲き乱れ、小鳥の囀りも聞こえてきます。

穏やかな春の日。

誰か、私を呼ぶ声が聞こえました。

強い強い想い、願い。天まで届く祈りの力。

私は行かなくてはなりません。

「それじゃあ、いってきます♪」

「忘れ物はありませんか?」

「うん、大丈夫よ。何回も確認したから」

「気をつけてね、お姉ちゃん」

「うん、ありがとう菫」

菫が心配そうな顔で私を見つめています。

「お嬢様、何事も気を引き締めて…」

「斎藤、わかってるわ」

「ならばよいのですが。どうしても心配なものでして」

子供の頃から私の面倒を見続けてくれている斎藤。
彼にとって、私はもう一人の娘のような存在なのかもしれません。

「そんなに心配することでもないでしょ。
 下界に行くのだって初めてじゃないもの」

「いやいやお姉ちゃん…遊びに行くのと仕事は違うよ…」

「大丈夫大丈夫!下界のことはいっぱい勉強して詳しくなったもの!」

「お姉ちゃんの知識は偏ってるからなぁ…」

菫は私の下界に対して抱いているイメージを偏っていると言うけれど、私が読んだ下界について描かれた漫画や小説や映画やドラマは、みんな菫が教えてくれたものばかりじゃないの。

2人の心配をよそに、私はわくわくしていました。
だって、下界ってとっても楽しそうなんだもの!
ずっとずっと、この日が来るのを楽しみにしてたの!

「じゃあ、もう行くわね。初仕事から遅刻するわけにはいかないから」

「では、最後にもう一度だけ確認です」

斉藤はしつこい。心配してくれるのはわかるけど、私だってもう、大人よ。

「むやみに力を多用してはなりません」

耳にたこ。
何度同じ話を聞いたかしら…。普段の私は温厚な性格をしていると思うけれど、小うるさい斉藤の前でだけ、ちょっと無愛想な態度になってしまいます。

「聞いてますか?お嬢様。女神の力はとても強力なものです」

はいはい。聞いてます。

「時に、その力の強大さは世界のバランスを崩してしまいかねません。
 危険だと判断された場合、当局によって女神の力が制限される場合があります」

そんな話をいくら聞かされたって、新しい世界へ踏み出す胸のワクワクに比べれば大した意味をもちません。

「最悪の場合、力を剥奪されることもありえます。
 女神として、相応しい力の使い方を心がけてください」

そう、私は女神。私を必要とする人を助ける、救いの神。
心の底から助けを求め、私を呼ぶ人のもとにかけつけ、願いを叶える女神。

そしてこれが私の女神としての初仕事。
いったい、どんな人が私を呼んだのかしら?
その人のために何ができるかしら?

私は、女神としての初仕事に心を踊らせながら、背中の翼を大きく羽ばたかせ、下界に向かいました。


132 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:25:22 NLZMALRg0


律には悪いけど、いつまでも未練たらしくしがみついているのはよくない。
けじめが肝心だ。

いいじゃないか。音楽は個人的に2人でやれれば。

あと10秒。
律は合わせた両手高く上げ、頭を下げて祈りだした。

神頼みか。困った時のナントヤラ、だな。

5、4、3、2…

「…残念だっt」

コンコン



私が律に声をかけようとした刹那、扉を叩く音がした。

「…」

「…」

「…今、誰かノックした?」

「…たぶん」

私たちは顔を合わせた。

ガチャ。

ゆっくりと扉が開かれる。

「こんにちわ♪」

現れたのは金髪碧眼、まるで人形のように美しい外国の少女だった。


133 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:26:15 NLZMALRg0


「…あ、あの〜」

挨拶を返すことなく呆然として立ち尽くす私と澪。
そんな2人に対してどうしたらいいかわからず、来訪者は困ったような顔をした。

ハッとして我に返った。
現れたのは外国人?だ。しかし喋った言葉は日本語。
まさか本当に誰か来るなんて思っていなかった。

神様に私の祈りが届いたのか…?

この際、日本人か外国人かなんてどうだっていい。
とにかく入部させる!どんな手段を使っても!

「も、もしかしてけいおん部に興味があって来てくれたのっ!?」

「え?けいおん部…?」

ぐ!ち、ちがうのか…いや、あきらめるな。あきらめたらおしまいだ。

「けいおん部に入りませんかっ!」

私は金髪少女ににじり寄り、両方の二の腕を掴んで言った。

「オイ律!初対面の人にそんなことしたら失礼だろっ!」

澪が私をひっぺがす。

「…ごめんなさい。悪いヤツじゃないんだけど、ちょっと興奮してて…」

私に代わって謝る澪。

「い、いえ…大丈夫です」

「ごめん、いきなり…でもけいおん部どう?興味ない?」

「…けいおん部……ですか?」

「そう、けいおん部!」

「実は…私たちけいおん部に興味のある人を探してて…」

私に代わり、私たちが今ここで何をしていたか説明する澪。
うーん、説明うまいな。さすが澪。私じゃこうはいかない。

「なるほど〜」

うんうんと頷く金髪少女。

わかってくれたのかな?

少女はちょっと考えるようなポーズをとった後、私の方に向き直り、瞳をジッと見つめた。

たじろぐ私。

「あなた?」

「え?」

「私を呼んだのは、あなた?」

私は神様に祈った。
誰でもいいから入部してくれ、この部屋の扉をノックしてくれ、と。

でも特定の誰かを呼んだわけじゃない。

「…ちがうの?」

「いや…わたしだ!」

「おい!呼んでなんかいないだろ!いい加減なことを言うな!」

澪はそう言って怒るが、この際手段は選んでいられない。
私は断言した。

「私が呼んだんだ!お願い!けいおん部に入ってくださいッ!」

「…わかりました」

…え?

「それがあなたの願いですね?」

「あ、ああ…」

「私がけいおん部に入部すれば、あなたの願いは叶うのですか?」

「え、あ、いや…」

しどろもどろになりながら私は答えた。

「私の願いは…」

「あなたの願いは?」

「けいおん部をつくること…4人部員を集めてけいおん部を作って…
 バンドをやりたいッ!それが私の願いだッ!」

「……わかりました」

彼女はそう言ってにっこり微笑んだ。

「じゃあ、入部…してくれるってこと?」

「はい♪」

「…よっしゃぁぁぁぁぁ!!!!!」

私は感極まって大声で叫んだ。
こんな風に大声を出せば、いつもの澪なら怒りそうなものだけど、そのときばかりはそうじゃなかった。

澪は優しい表情で私の肩をぽんと叩いただけだった。


134 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:27:00 NLZMALRg0


「あと1人。必要なのですね?」

「ああそうだ。しかも今月中に」

そう、猶予は1日。

「わかりました」

ニッコリと微笑むムギ。
…いや、笑顔は素敵だけど、事態の大変さを理解しているのだろうか?
1日、あと1日しかないんだぞ?

ここはMAXバーガー。桜高生御用達のファーストフード店だ。

ムギはやたらと楽しそうにしている。
聞けばファーストフードの店に来るのは初めてらしいけど…今時そんな女子高生がいるなんてな…

そんなことはいい。
残る1日の間に最後の1人を獲得しなければ、けいおん部は作れない。
そのためにどうしたいいのか、私たちは相談をしているのだ。

琴吹紬。
先ほど音楽室を訪れ、入部してくれた子の名前。
ムギ、と言う呼び名は早々に律が名付けた。
リボンの色からすると私たちと同じ一年生みたいだけど…見覚えがない。

「…えっと、ところで琴吹さんは何組…なんですか?」

「『ムギ』でいいですよ、澪さん」

「あ、じゃ、えっと・・・ムギ…は、何組なの?」

勇気を振り絞ってあだ名で問いかけてみる。

「う〜んと、じゃあ律さんと澪さんと同じクラスってことにしますね」

「『じゃあ』ってなんだよ…クラス違うだろ。さすがにクラスメイトを忘れやしないよ」

そりゃそうだ。
お世辞にも律は頭がいいとは言えないが、クラスメイト、しかもムギのような金髪碧眼の目立つタイプのことを忘れるほどバカじゃない。

「はい、こちらをご覧ください」

訝る私と律に対し、ムギが一枚のプリントを渡した。クラス名簿だ。

「え?」
「…あ」

名前が…ある。『出席番号○○番 琴吹紬』。
私たちと…同じクラス。そんなバカな!?

「…なあ澪」

「なんだ?」

「…私がうっかり忘れてただけなのか…?」

「いや…」

さっきまで部員獲得に浮かれていた律が、額に冷や汗を流し、顔面を真っ白にして私に問いかけてくる。
目の前にいる人物、3人目のけいおん部員、琴吹紬という存在を理解しきれず、頭がパンクしそうになっているのだろう。

それは私も同じだった。

琴吹紬なんてクラスメイトは存在しない。
存在しなかった。
少なくとも今日の放課後までは。

でも彼女は目の前にいる。
存在している。
クラス名簿にもその名は記載されている。


私は夢を見ているのだろうか。

「あ、あのぅ…落ち着いてくださいお二人とも」

動揺を隠せない私たちに対し、ムギが口を開き、説明を始めた。

「お二人の記憶に間違いはありません。私は今日の放課後までこの学校にはいませんでした」

ん?てことは転校生?ああそうか。それなら納得だ。

「私は律さんに呼ばれて音楽室に来たんです。
 とても強い願い…祈りの心を感じて」

雲行きが怪しくなってきた。

「私がここに来たのは、私を呼んでくれた律さんの願いを叶えるためです。
 律さんの願いがけいおん部を作ることなのでしたら…そのために私はなんでもします」

なんでもって…なにする気だ。

「あの…」

律が使い慣れない丁寧語でムギに尋ねる。

「あなたは一体…何者なんです…か?」

「あれ?言ってませんでしたっけ?」

「うん、名前は聞いた…けど…」

名前とかそう言う問題じゃない。存在自体が怪しい…というか理解を超えているように思えてならないんだ。

「ごめんなさい。では改めて自己紹介しますね。
 私の名前は琴吹紬。天界からやってきました。女神です」



・・・・え?



「これが初仕事ですから、正確に言うと『女神見習い』ですけど…私を呼んでくれた律さんの願いを叶えるために天界から地上にやってきました♪」

一体何がどうなっているんだ。


135 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:27:56 NLZMALRg0


私は言葉を失った。
ムギはニコニコと笑っているが、決して冗談を言っているようには見えない。

頭いっぱい夢気分、脅威のファンシーポエマー秋山澪でさえ、この現実を受け入れるのは難しいらしく、呆然としている。

けれどここで私までぼけっとしてるわけにはいかない。
ここがけいおん部設立のための正念場だ。

ちょっと冷静になれ、私。

「なあムギ」

「はい?」

「…本当にムギが女神様だったとして…
 クラス名簿に名前があったってことは、この学校の生徒で間違いないってことか?」

「ええ。桜高の生徒でないとけいおん部に入れないのでしょう?
 入部できなければ、律さんの願いを叶えることができませんから」

そう言ってムギは生徒手帳を見せてくれた。
なるほど。どうやったのかは知らないが、どうやらウチの生徒であるらしい。

「…便宜上は転校生、ということにしておきました」

「なんでもあり、なんだな」

「まぁ女神ですから〜♪」

「じゃあ、あと1人の部員も女神の力でなんとかしてくれるのか…?」

「もう手は打ってあります。楽しみにしていてください♪」

ホントかよ…この時点では私も澪もそんな力のことなんて、信じていなかった。
けれど、期限最終日の放課後、入部希望者がやってきたのである。

今まで何をしたって1人も集まらなかったのに、ムギが入部した途端あっという間に…これは偶然か、それともやはり女神の力なのか…。

私は少しづつ信じ始めていた。ムギが女神である、という事実を。


136 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:28:41 NLZMALRg0


せっかく高校生になったんだし、何かクラブに入ってみようかな。

、と思っているうちに今日は4月30日。入部申請書の提出期限日です。

「…で、アンタ。結局どこのクラブにも入らないつもりなの?」

「う〜ん、どこに入ればいいのかわかんなくって…」

「やりたいこととか、興味あることとかなかったの…?」

「…よくわかんない」

「ハァ…ものの見事にニートになっちゃったわね…」

「いいよ〜ニートで〜
 だって授業終わったらすぐに帰れるし、おうちでたくさんゴロゴロできるんだよ〜」

私がそう言うと、幼馴染の和ちゃんは呆れたようにため息をつきました。

「ま、それも唯らしくていいかもしれないわね」

そうです。大事なのは自分らしさなのです。
無理して興味のないクラブに入部するくらいなら、どこにも入らない。それも選択です。

そう、私のやりたいことは、家でゴロゴロすることです。
いろいろ考えた結果、自分がやりたいことを見つけられたのだから、私はこれでよかったと思っています。

「ゴロゴロもいいけど、授業はちゃんと聞いてなさいよ」

「わかってるよぉ」

そうこう言ってる間に先生がやってきて、朝のHRのはじまりです。
あと数日すれば大型連休。楽しみだなぁ!HRの先生の言葉も、和ちゃんの注意も、すっかり忘れて上の空でした。

「…そうだ、平沢さん。ちょっといい?」

(ほーげー)

「平沢さん?」

(ほーーげーーー)

「平沢さーん!」

「……はひっ!?」

ボケーッとしてるうちに、HRが終わっていました。

どんな連休を過ごそうか(結局ゴロゴロするんだけど)、ぼんやり妄想していたせいで、先生に声をかけられたことに気づいていませんでした。

「はい、なんですか?」

「入部申請用紙の件でちょっと話があるから、昼休み職員室に来てくれる?」

「え…?あ、はい…」

…なんだろう。私は申請用紙を提出していない。だって、どこのクラブにも入らないし。

この学校は、絶対どこかのクラブに入らなきゃいけないわけじゃないはず。
入らない場合でも提出しなきゃいけなかったっけ?
普段人の話を半分も聞いていない私には確信が持てませんでした。

ま、いいか。提出しろと言われたら「帰宅部」と書けばいいんだし。


137 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:29:13 NLZMALRg0


「今朝、机の上に置いてあったけど、これ、間違いないわよね?」

そう言って先生が私に見せたのは、入部申請用紙。


『私、 平沢唯 は、 軽音楽部 に入部します。』


なに?これ…

「今日が申請書の提出期限だったから、ギリギリセーフね」

「いえ…私、こんなの書いてません…」

「え?これ平沢さんが書いたんじゃないの?」

全く身に覚えがない。

誰がこんなタチの悪いいたずらを…でも申請書に書かれた文字は、私の字にそっくり。
一瞬、寝ぼけてこんなことをしてしまったのかも…と自分を疑ってしまうくらいでした。

「私、“けいおんがくぶ”なんて何をするクラブかも、どういう字を書くのかも知らないくらいです…」

「じゃあ、本当にこれを書いたのはあなたじゃないのね」

「はい…取り消し、できますか?」

「それは…まあ、できるんだけど。
 ん〜、でも困ったわね」

「なにか?」

「いや、ね。今朝、これを見たものだから、てっきり入部希望者だって思うじゃない?
 それでけいおん部の子に言っちゃったのよ。『入部希望者が来たわよ』って。
 そしたら喜んじゃってねえ…その子」

「はぁ…」

「…ちょっと悪いことしちゃったわね」

ぬか喜びさせちゃった、ってことかぁ。

「…私、放課後謝りに行ってきます」

「あなたが謝る必要なんてないわよ」

「でも…」

「…私も一緒について行くわ。1人じゃ行きづらいでしょ?」

「先生…ありがとうございます」

こうしてその日の放課後、私と先生は一緒に音楽室へ行きました。

入部申請書の間違いを伝えるために。
それなのになぜか、どういうわけか。



私はけいおん部に入ることになってしまったのです。


138 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:30:04 NLZMALRg0


「一体、何をしたんだ?魔法か?」

「えっと、ですね…一応女神なので『神通力』と言った方が正しいですが、『魔法』と呼んでくださってもいいですよ」

殺風景な音楽準備室に並んだ素敵なティーセット。

飲んだこともないような華やかな香りの紅茶。

とろけるように甘く、けれども甘すぎず、上品な味わいのケーキ。

「ごめんなさい、女神は力を保つために毎日のお茶とお菓子が欠かせないんです。
 1人で食べるのも何ですし…みなさんとご一緒できれば」

「いいよいいよ全然オッケー!こんな美味しいもの毎日飲み食いできるなんて夢みたいだぜー!」

「ありがとうございます。喜んでもらえて私も嬉しいです♪」

無邪気にはしゃぐ律。
おい、バンドやるためにけいおん部作るんだろ!お茶飲んでおしゃべりするためじゃないぞ!

「まあまあ…澪さんもお一ついかが?」

…おいしい。

「う〜ん、今日のケーキもおいしいねぇ♪」

もぐもぐとケーキを頬張りながら至福の表情を見せる唯。4人目のけいおん部員。

入部を取り消すためにやってきたはずが、お茶を飲んでケーキを食べて私たちの演奏を聴いて…心に響くものがあったようで、部に入ると言ってくれた。
ついでを言うと、付き添いで一緒にやってきた山中先生は顧問をしてくれることになった。

「…本当に女神…なんだな?」

「ええ♪」

「唯が入部したのも女神の力なのか?」

「いえ…唯ちゃんが入部したのは、唯ちゃんの意志です。
 私はあくまできっかけを作ったに過ぎません。
 女神と言っても人の心を操ることはできないんです」

お茶とお菓子を使って操ってるんじゃ…
私はそう思ったけれど、黙っておくことにした。

「ほえー、ムギちゃんって女神様なんだー、すごいね!」

…この超現実をすぐに受け入れることができる唯も凄いよ…。

「モグモグ…じゃあ例えばどんなことができるんだ?」

「律、ものを口に入れながら喋るんじゃない。品がないぞ」

「空飛んだりできる!?」

「けいおん部を維持するために必要、と認識されたことでしたらどんなことでも
 あ、空は飛べますよ。でもびっくりさせちゃうからやめておきますね」

『認識』っていうことは、ムギの行為を監視・管理して、力の行使を許可する存在がいるってことだな。

「そういえば、私、楽器まだ持ってないや」

「お、じゃあムギ!唯の楽器を用意してくれぃ!」

「わかりました〜♪」

…とムギが言うやいなや、まるでずっとそこにあったかのように、唯の机の横にはギターが置かれていた。

「おわわっ!ぎ、ぎたーが…」

「す、すげぇ…」

「お安い御用です♪」

いや…安くないぞ。これめちゃくちゃいいギターだ…

「だ、ダメだよムギちゃん」

「え?」

「こんな高いものもらえないよ…」

「いいのよ、唯ちゃん。気にしないで。けいおん部のためなんだから」

「大丈夫!私、バイトしてお金貯めるから!」

「よぉし!じゃあみんなでバイトだぁ!」

「え?え?…バイト?」

「アルバイト…楽しそう!私アルバイトするのが夢だったんです!」

どんな女神だ。
ともかく私たちはアルバイトをすることになった。



………さて。



私たちが選んだのはティッシュ配りのアルバイト。
時給ではなく、決められた量を配布したらその分バイト代が貰える。
簡単そうに見えて難しい仕事らしいのだけど…

通常の10倍以上のスピードでノルマをこなしてしまった。
もちろんそれはムギの…女神の力。

そしてさらに追加で配る、配る、配る…。

人見知りの私にとって、ティッシュ配りのバイトはハードルが高いものだった。
けれど、いくら女神の力を使っているとはいえ、こうもテンポよく仕事が進むと気持ちがいい。
なんだか少しだけ、人見知りを改善できた気がした。少しだけ、だけど。

休日2日間をティッシュ配りに費やした結果、唯のギター代はあっという間に貯められたのだった。


139 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:30:49 NLZMALRg0


夏だ!海だ!空だ!

私たちけいおん部は、ただいま絶賛夏合宿中です。


ムギちゃんの力はすごい。本当にすごい。

毎日、この世のものとは思えないおいしいお茶とお菓子を用意してくれたり、全く勉強せずに臨んだ私のテストの点数を、全科目赤点より1点上に調整してくれたり(あとで澪ちゃんに怒られて勉強合宿しました)…

学校から帰るときもすごい。

「じゃあね」って言って視線を外すともういなくなってる。まるで神隠しみたい。…そりゃあ女神様だしね。空飛ぶとこ、見たかったなぁ。


演奏技術もすごい。

ムギちゃんの担当楽器はキーボード。
それは素人の私にだってわかるくらいうまい。私たちの中でダントツにうまい。
それなのにキーボードを触ったのは初めてだっていうのだ。

これも女神の力かぁー・・・。

夏合宿だって、高校生でお金のない私たちのために、プラベートビーチ付きの豪華別荘に連れてきてくれたんです。(本当はお忍び下界観光用の、神様の保養地らしいです。)



「そうだ、2学期になると学園祭があるんだけど…」

「喫茶店やりたい!」
「お化け屋敷やりたい!」

「私たちはけいおん部だろ!ライブ!ライブをやるの!」

最初の頃、りっちゃんに流されてけいおん部に入ったはずの澪ちゃんですが、今や部でいちばん練習熱心。

「…それで、できれば…
 
 オリジナルの曲作って演奏できないかなって…」

やる気もまんまんです。

「おー、いいじゃんそれ!」

「でも自分たちで曲を作るって、できるの?難しいんじゃない?」

「まぁ、確かに唯の言う通りだ…
 でさ、ムギ。なんとかならないかな?」

「わかりました。じゃあ、2学期が始まるまでに用意しておきますね」

「あんまり難しすぎない曲にしてね」

「ええ♪でも唯ちゃんならきっと大丈夫よ。すっごく上達してるんだもの」

「ドラムがカッコいい曲にしてくれよなっ!」

「…律。いくら曲がよくても、お前がヘタだったら何の意味もないんだからな」

「澪しゃんしどい…」

「フフ…」
「アハハ…」

私たち4人はけいおん部を楽しんでいました。
2学期の目標も決まり、やる気もいっぱい!何の不安もないはずでした。

ただ…この頃までは、どこかムギちゃんに対して遠慮があったような気がします。
だってムギちゃんは女神様。私たち3人は人間です。

そのくせに…。
私たちはムギちゃんの力に慣れすぎてしまっていたのです。
どんな困ったことが起こっても、ムギちゃんがいれば大丈夫。だって女神様なんだから。
そんな風に都合のいいことを考えていました。

神様の力に頼りきっていた私たちは、そのことで1人の大切な友人を追いつめることになるなんて、全く思ってもいなかったのでした。


140 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:31:18 NLZMALRg0


「紬様、紬お嬢様」

「何?斎藤」

「お嬢様はいつになったらこちらに戻ってこられるのですか?」

「…毎日帰ってきているじゃない?」

「いえ、そうではなく…毎日高校に通っておられるでしょう。
 こんな生活をいつまで続けるおつもりですか?」

斎藤が小難しい顔をして、私に問いかける。

通常、願いを叶え終えた女神は直ちに天界に戻ってくる。
願いの性質によって時間がかかることはあるけれど、今の私のように長々と下界に通い続ける例は数少ないはずだ。

女神としての初仕事が、こんなイレギュラーな形になってしまったことを、斎藤はあまりよく思っていないようだ。

「…けいおん部を作りたい、その願いを叶えるために行動しているのだけど?」

「確かに。田井中律様の願いは『軽音楽部の設立』です。
 それはもう叶ったではありませんか?」

「私が抜けたら部員が足らなくなるわ」

「でしたら他の部員をお探しになられては?」

「…2学期直前のこんな時期に、そんな生徒はなかなかいないでしょう」

「それはそうですね。ではもう1つ」

「なによ…」

いつまでたっても子供扱い。
心配してくれているのはわかるけれど、少しは私のことも信じて欲しい。

「力の濫用が目立ちます。本来、1人の人間に対し、1つの願いしか叶えてはならないはずが、お嬢様はそれを大きく逸脱しておられます」

「だからそれは、『けいおん部を作る』ために必要なことだから…!」

「多少のことなら、当局も目を瞑ってくれます。
 なにせ琴吹の家は天界でも由緒正しい名家です。
 あちら様も琴吹家とあまりもめ事は起こしたくないはずです。
 
 ですが」

「言いたいことがあるならはっきり言いなさい」

「では遠慮なく。
期日の問題があってお嬢様自らがけいおん部に入られたことは理解できます。
 平沢唯様の入部に力を使ったことも必要性がありました。
 しかしそれ以後は」

斎藤は続けた。

「ギターを買う資金を貯めるのに力を使う必要はありません。時間がかかっても個人でお金を貯めればよいことです。ギターがないからといって部がなくなることはありません。
 次に…赤点をとれば部活動停止になる、とはいえ、ズルをしたことはあまり誉められたことではありません。平沢様ご本人のためにもなりません。
 夏合宿は必ずしなくてはならないことですか?部の存続とは無関係でしょう。そのために天界の保養所を使うのは越権行為です。

さらに」

私は何も言い返せなかった。斎藤の言うことは正論だ。

「オリジナル曲を作るのは構いません。
 ですが自分たちの力ではなく、ハナから神通力をアテにしていることは感心できません。
 自分たちは何の努力もせずに、女神の力に頼るなど…神への冒涜、言語道断です」

「言い過ぎよ!みんな、頑張って練習してるもの!」

「…失礼致しました。
 けれどもお嬢様の力の濫用は目に余るものがあります。
 お父様もお母様もご心配されていますよ。少し、お控えください」」

私は毎日が楽しかった。だからりっちゃんの願いを叶えること以上に、みんなの喜ぶ顔が見たくて、つい力を使い過ぎていた。それは自分でもわかっていた。

だけど怖かった。力のなくなった私なんて、みんなから必要とされなくなっちゃうんじゃないかって。

「願いの性質上、お嬢様がしばらくの間下界に通わなくてはならないのは、仕方のないことです」

「わかってくれるのね」

「はい。但し願いは『けいおん部の設立・維持』、このためだけにしか使用できないように制限をかけさせていただきます」

「それはどういうこと?」

「申し上げた言葉通りの意味です」

「…わかったわ」

とにかく、桜高に通うこと自体は認めてもらえた。私はそれだけでほっとしていた。

これから大きな問題が自分に降り掛かってくることに気づくこともなく。


141 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:32:02 NLZMALRg0


指が全く動かない。

メロディが全く思い浮かばない。

2学期が始まってもう1週間が経つと言うのに、曲作りは全く進んでいなかった。

「ムギ、どう?曲作りの方は?」

「え?あ、うん…まあまあ…かな…」

「ま、ムギにできないことなんてないからなーなんてたって女神様だし!」

「ムギちゃ〜ん!今日のお菓子なぁに〜♪」

「唯ちゃん…今日はマドレーヌよ」


『けいおん部の設立・維持』以外の用途で力を使うことができない。

学園祭ライブで演奏する曲は、オリジナルである必要はない。
演奏してライブを行ったという実績さえ残れば、廃部になることはないだろう。


「オイ!今日こそ練習するぞ!」

「え〜いいじゃぁん。夏合宿頑張ったしぃ」

「だからってサボってたら、上達しないだろっ!」

「じゃあ、あと5分!5分だけお茶させて!」

「お前はいつもそれだな…」

「まぁまぁ澪ちゃん、まだムギちゃんの曲もできてないんだし。
 今日のところはのんびりしようよ〜」

「むぅぅ…」

「ごめんね澪ちゃん。まだ曲、できてなくて…」

「あ、いいんだムギ。ゆっくり曲作りしてくれれば。
 それに曲ができてなくたって、練習はできるだろ!
 ほらほら!もうお茶はたくさん飲んだだろ!練習するぞ!練習!」

曲ができないならできないと早く伝えなくてはならない。
ライブに合わせてそろそろ本番の練習を始めないと、オリジナルであれコピーであれ、間に合わなくなる。

ライブで演奏できなくなってしまうのが、最悪のシナリオだ。

「今日は…今日のところは…今日だけは勘弁してくだせえ…!」

「おねえげえですだお代官さまぁ!」

「…お前達…そんなに練習したくないのか…まったくもう。
 なあ、ムギからもなんと言ってやってくれよ」

「え?」

「どうしたムギ?ぼーっとして」

「な、なんでもないわ!澪ちゃん!」

「…そうか?
 とにかくムギからも言ってやってくれよ。練習しようって」

困ったことはもう1つ。
キーボードが弾けなくなった。

これについてもさっきの原則が影響しているのだろう。
部員でありさえすれば、音楽経験者である必要はない。

今さら言えない。演奏できなくなったことを悟られてはならない。

「きょ、今日はいいんじゃない…かな?」

「え!ム、ムギ…」

「よーし決まりっ!今日はお茶の日!」

「やったー!練習は休みだぁ!」

「うう…今日のところは仕方ないか…
 でも明日!明日はゼッタイ練習するんだからな!」

ごめんね澪ちゃん。ごめん。ごめんなさい。


142 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:32:32 NLZMALRg0


9月下旬。
学園祭ライブまであと1ヶ月。

曲はまだできていない。
頑張って独力で曲作りに挑戦してみたけれど、にっちもさっちもいかない。
それどころからキーボードの演奏ができないのだから、少しでも弾けるようにと練習する毎日。

最近はお茶の用意だけして、すぐに帰るようになった。

「ムギちゃん、最近忙しいの?」

「う、うん。ちょっと…ね」

「あんまり無理するなよー」

「ありがとう、大丈夫よ」

「曲作り、うまくいってないのか?」

「大丈夫…大丈夫よ!とっても素敵な曲にしたいから、ちょっと時間がかかっちゃって…」

うそ。
ちっとも大丈夫じゃなかった。
みんなが心配するのも無理はない。どうしよう…なんとかしなくっちゃ…。


どん。


「ご、ごめんなさいごめんなさい!」

考え事をしてよそ見していたら、廊下で誰かとぶつかった。

「あらあら大丈夫?ケガはない??」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

「…違う意味で大丈夫じゃなさそうね」

ぶつかったのは顧問の山中さわ子先生だった。


143 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:33:20 NLZMALRg0


「…なるほどね」

私は全てを打ちあけて、先生に相談することにした。

「先生…私の代わりに曲を作ってもらえないでしょうか…?」

「・・・」

先生は黙ったまま答えない。

「お願いです。どうか…」

私は両手を合わせ、祈るようにお願いした。
女神が人間に祈るような仕草をむけるなんて…お笑いぐさだ。斎藤はなんていうだろう。あきれるかしら?

でももう体面にこだわってはいられない。なんとか曲を作りたい。私の中にある気持ちはそれだけ。

「本当にそれでいいの?私が作った曲を学園祭ライブで演奏しても」

「…今の私じゃ曲を作れないんです。誰かに作ってもらわないともう、間に合いません」

「悪いけど断るわ」

先生はにべもなくそう言い放った。

「そ、そんな…おねがい!おねがいです!」

「ムギちゃん落ち着いて。けいおん部のライブでしょ。オリジナル曲を演奏するって決めたなら、自分たちで作らなきゃだめよ。
 オリジナルを作れないなら、メジャーな曲のコピーをやればいいじゃない」

「でも…」

「言いづらい?本当のことをいう勇気がない?」

言えるわけない。

「…怖いんです。
 特別な力がなくなった私なんて…
 けいおん部に必要ないんじゃないかって…
 みんなに嫌われちゃうんじゃないかって…」

こらえきれずに瞳から涙がこぼれ落ちた。

「グズッ…みんなに…りっちゃんに…澪ちゃんに…唯ちゃんに…きらわれたく…ない…ヒック
 ライブを楽しみにしてるみんなを…頑張ってるみんなを…ガッカリさせたく…ないんです…」

「ムギちゃん…私ね。
 実は、あなたが女神だろうが人間だろうが、そんなことはどうでもいいのよ」

先生は私の頭の上に手を乗せると、やさしく撫でてくれた。

「え?」

「私にとってのあなたは、大切な生徒。けいおん部の可愛い後輩。ただそれだけよ」

「先生…」

「だからね、あなたに女神の力がなくなったって、何にも変わることなんてないの。
 嫌いになんて…なるはずないわ」
 
私の頭を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめながら先生は言った。

「ムギちゃん。
 みんなのこと…りっちゃんのことも澪ちゃんも唯ちゃんのことも…大好きなんでしょ?」

「はい…グスッ…だいすき…です」
 
「あなたに女神の力がなくなったからって嫌いになったりする?
 みんなそんな子たちじゃないでしょ。
 曲が作れなくたって、不思議な力が使えなくたって、あなたはあなたじゃない」

「あなたはそんなことで変わらないわ。ムギちゃんはムギちゃんでしょ?
 ま、お茶とお菓子がなくなったら、ちょっとだけ悲しいけどね」

そう言って先生はイタズラっぽく笑った。

「…大丈夫です。お茶とお菓子はなくなりませんから」

私も笑って答えた。

「やっと笑顔になったわね。
 …ほら、私がついていってあげるから。いきましょ。善は急げよ」

「でも…やっぱり…」

「あら、まだうじうじしてるの?」

「い、いえ。言います。本当のことはちゃんと伝えようと思います。
 でも、オリジナル曲をどうしてもあきらめられなくて…」

どうしても曲を作りたかった。
けいおん部だけの…私たちだけの…世界でひとつだけの曲を演奏したかった。

真実を明かす決心はついた。でも、曲作りをあきらめるのはつらかった。

「曲?作ればいいじゃない?」

「だって力が…」

「女神の力なんかなくたって曲作りはできるわ。私が力を貸してあげる!」

「え?せ、先生…さっき、曲は作らないって…」

「私が作るんじゃないの!あなたたちが4人で作るのよ!
 基本的なことやわからないことは私が教えてあげる。
 これでも一応、けいおん部の顧問だしね!!」

「先生!!」

「わっ!ちょ、ちょっとムギちゃん!」

今度は私が先生に抱きついた。
先生…先生…先生は最高です!さわちゃん!だいすき!!


144 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:34:08 NLZMALRg0


私は部長失格だ。

部長は部員のことにしっかり目を配らなきゃいけない。
なのに私ときたら…

ムギの様子がおかしいことにはそれとなく気がついてはいたんだ。

でも特に心配してるわけじゃなかった。
だって女神だぜ!女神様が悩んでたとしたら、私たち人間がどーこーしたってどうしようもねーこったろ。

…バカ。大バカ。私は大バカだ。

なんて薄情なヤツだったんだ。

女神だとか人間だとか。カンケーねえ!
同じけいおん部の仲間じゃないか!?

仲間が…友達が悩んでるのに助けてやれなかったなんて…サイテーだ。

「ごめんムギ…いつの間にか私、ムギの力をアテにしてて…自分たちで頑張ることを忘れてた気がするよ…部長なのに、ダメダメだな…」

「律は悪くないよ…私だ…元はと言えば私がオリジナルやろうって言い出したんだ。…ハナからムギに曲作ってもらおうって思ってた。ゴメン…」

「あ、謝らないで!悪いのは私なんだから…
 力を制限されてすぐに言わなかった私が悪かったんだから!」

「違う!悪いのは、部長の私だ!」

「何言ってんだ!オリジナル曲を作ろうって言い出したのは私だぞ!」

「私よ!曲を作れなくなった私が悪いの!」

「私!」
「わたし!」
「ワタシ!」

「フフ…
 アハハ…アハハハハ!」

な、なんだ唯。真面目な話をしてるんだぞ!?

「お、おい唯…」

「…フフ…ゴメンゴメン。なんだかみんな謝ってばっかりでおかしくなっちゃって」

「そういえば…そうだな」

「…そういえば、そうね…」

唯のおかげで場がしらけた、というか空気が変わった。

「ムギちゃん、ごめんね。
 私たち気がつかないうちにムギちゃんのこと追いつめちゃってたんだね…ホントごめん。
 でもね、私、実はね。こんなこと言うと怒られちゃいそうだけど…
 今のムギちゃんの話を聞いてちょっと嬉しかったんだ」

「唯ちゃん…」

「ムギちゃんってやさしいし、美人でかわいいし、髪の毛はふわふわしてきれいだし、キーボードもすっごくうまいし、勉強もできるし、持ってきてくれるお茶もお菓子もとってもおいしいし…なんでもできちゃうでしょ」

「…そんなこと、ないわ」

「あるよ。だからね、私、ちょっとだけコンプレックスだったの。
 私って、楽器は初心者だし、勉強もできないし、ドジだし…何の取り柄もないから…
 だから、ムギちゃんが本当は楽器を弾けないってわかって嬉しかったの。私と一緒だ、って」

唯…。

「りっちゃんも澪ちゃんも経験者でしょ?初心者がもう1人いるってわかったらなんだか心強くって…。
 それにね、私、気づいたよ」

唯はいつになく真剣な顔をして喋り続けた。

「ムギちゃんが美人だとか、髪がきれいとか、キーボードがうまいとか…そんなこと本当はどうでもよかったんだよ。
 
 ムギちゃんはね。ムギちゃんであればいいの。それでいいんだよ。他にはなにもいらない。
 女神様だとか人間だとか、そんなことどうだっていいことだよ」

「唯ちゃん…ありがとう」

「ムギ。私だって唯と同じ気持ちだ。女神とか人間とか。曲が作れるとか作れないとか。そんなこと関係ないぞー!難しいことはわかんないけど…ムギはムギだからな!」

「もちろん、私も…な」

「唯ちゃん…りっちゃん…澪ちゃん…ありがとう……グズッ」

「あらあら。また泣いちゃったわね」

「泣いてる暇なんかないぞ、ムギ!さあ今日から曲作りだ!」

「澪ちゃんの言う通りだよ!
 さわちゃん先生!ご指導よろしくお願いします!」

「任せておきなさい!私がばっちり教えてあげる!覚悟しなさいよ!」

盛り上がってきた!よぉし学園祭ライブまであと1ヶ月!みんな飛ばして行くぜぇ!

「あ!みんなちょっと待って!曲作りの前に肝心なこと忘れてた!」

「な、なんだどうした唯!?」

「今日まだお茶飲んでないよ!!」

…一気に力が抜けた。
まあいいか。これもけいおん部、だ。

(ありがとう…ありがとうみんな。私、みんなに出会えてよかった…)


145 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:38:03 NLZMALRg0


今日はとっても寒い1日だった。

一年中春のような天界とちがって、下界には四季がある。
聞いてはいたけれど、冬ってこんなに寒いのね。

あの日から本番までの一ヶ月。
さわ子先生がつきっきりで指導してくれたおかげでなんとかオリジナル曲は完成。
特訓に次ぐ特訓で、なんとか本番に間に合った。

みんなで力を合わせて作った曲。
みんなで一生懸命練習して臨んだライブ。

あの瞬間、ステージで演奏している数分の間、私たち4人は1つになっていた。

今まで生きてきて、こんなに嬉しかったことも楽しかったことも、達成感を感じたこともなかった。

もし、女神の力で簡単に曲を完成させていたら、こんな気持ちにはなれなかっただろう。

ライブを終えて、私たちはお互いをもっと近くに感じられるようになった気がする。


天界に戻ると、下界の寒さが嘘のように暖かい。私は首に巻いたマフラーを外した。

「お帰りなさいお姉ちゃん。寒かったでしょ?」

「ありがとう、菫…。あ、ちょっといいかしら」

カバンを持って先を行こうとした菫を呼び止める。

「なあに?どうしたの?」

「斎藤に…紅茶を淹れて部屋に来るよう伝えて」

菫は笑顔で頷いた。

部屋に戻って制服姿のまま、椅子に腰掛ける。

コンコン、と扉をノックする音。さすがに斎藤は仕事が早いわね。

「どうぞ、開いてるわ」

「失礼致します。紅茶をお持ちしました」

けいおん部でのお茶淹れ役がすっかり板についてしまった私としては、誰かに淹れてもらうお茶を飲むのは不思議な感じがする。
ちょっとこそばゆい。

「…お味はいかがでしょうか?」

「…おいしいわ。悔しいけれど、私が自分で淹れるよりずっとおいしい。斎藤の淹れた紅茶には、勝てないわね」

斎藤の淹れた紅茶を飲むのは久しぶりだ。
おかしな意地を張り続けて、このところずっと自分で淹れた紅茶しか飲んでいなかった。

「私が琴吹の家にお仕えして、どれだけ紅茶を淹れたとお思いですか?まだまだお嬢様に負ける気は致しません」

そう言って斎藤は少し笑った。私も笑った。

「斎藤、ありがとうね」

「恐れ入ります。お嬢様さえよろしければ、いつでも紅茶をお淹れ致します」

「違うわ。紅茶のことじゃなくて」

「なんのことでしょうか?」

「…わかってるくせに」

トボケた顔しちゃって…。

「なんのことやら。お嬢様から感謝の言葉をいただく理由など…身に覚えがございません」

「そう。ならいいわ」

「では、失礼致します」

「ちょっと待ちなさい」

斎藤を呼び止める。

「…はい。なんでしょうか」

「斎藤。私、子供だったわ。大人になるってことがどんなことなのか考えたこともなかった。
 下界に降りて女神としての仕事を始めれば、それで大人だって思っていたの。
 でもそうじゃなかったのね。
 大人になる、ということは…自分の足でしっかりと立つこと。
 そうしてまわりの仲間…友達と力を合わせて何かを成し遂げることなのね。
 女神の力が使えなくなって、初めてそうだって気づいたの」 

斎藤は何も言わずにただ私の言葉を聞いている。

「ごめんなさい斎藤。私、あなたのことただの嫌なうるさい使用人だって思っていたわ。
 でも違った。あなたは本当に私のことを考えてくれていた。
 それなのに…気がつけなくてごめんなさい。こんなんじゃ私…女神失格ね」

「そんなことはございません」

斎藤が口を開いた。

「失格など、とんでもない。お嬢様はちゃんと願いを叶えておられるではありませんか。
 琴吹の家の家訓では16歳になる春、女神として初仕事に臨むことが義務づけられています。
 それは、『女神の力に頼りすぎない』ことをこの年頃に学ぶ必要がある、ということなのです。
 逆説的ですが…立派な女神になるには、女神の力に頼りすぎない、それをきちんと知る必要があるのですよ。
 お嬢様はその意味に気がつかれた。それは女神として立派な一歩を踏み出したという確かな証明です」

私が…立派な…女神…?

「自信を持ってください」

「斎藤…」

「おやおや…」

最近の私、泣いてばかりだわ。ダメね。子供みたい。


146 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:39:14 NLZMALRg0

「こうして泣いておられるお姿を見ると、まだまだ子供ですな」

「…うるさい」

泣かせたのは誰よ。
私はなんとか涙を止めようとしながら、自分の本心に気がついた。

そうだ、私認めてもらいたかったんだ。誉めてもらいたかったんだ、斎藤に。

他の誰でもない、斎藤に誉めてもらいたかったんだ。

「お使いください」

斎藤が差し出したハンカチで涙を拭う。

「…ありがと」

「では、今度こそ失礼します」

「ちょっと待って!」

「まだ何か?」

「あのね…斎藤。1つだけお願いがあって…女神の力を使いたいのだけど」

「原則に反しない使い方でしたらどうぞ」

「そ、それがね、ちょっと…違反しちゃうかもしれないんだけど…どうしても使いたいの」

斎藤が渋い顔をする。
それはそうだ。さっきの話とまるで逆のことをしようというのだから。

「お願い斎藤!今回だけ!今回だけでいいから目を瞑って!」

「…わかりました。最近お嬢様は頑張っておいでですから、それに免じて。
 但し、一回だけですよ」

「ありがとう斎藤!大好きよ!」

あ、つい本音がこぼれちゃった。

思わず斎藤に飛びついて、首の後ろに腕を回し、ぎゅぅっと力強く抱き締めた。

勢いに押されて2、3歩後ろに下がる斎藤。

「…お、お嬢様。
 少し落ち着いてください」

努めて冷静なフリをしているけれど、真っ赤になった顔は隠しようもない。

「ご、ごめんなさい…わたしったら…つい」

な、なんだか私まで恥ずかしくなってきちゃったじゃないの…
二人して顔を真っ赤にして…なにしてるのかしら、私たち・・・

「……コホン。それで、何の為に力を使いたいのですか?」

「あ、えーっと、あのね斎藤…実は…」


147 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:40:15 NLZMALRg0


私にはささやかな願いがあります。ねえ、願いごときいてくれる?

「もちろんだ!元々は私がムギに願いを叶えてもらったんだ、
 今度は私がムギの願いを叶える番だぜッ!」

りっちゃんは、もうたくさん私の願いごと叶えてくれてるよ。

「そうだっけ?まあなんでも言ってくれよ」

「なになに〜ムギちゃんのお願いって??」

「律だけじゃ不安だからな。私でよければ力になるぞ」

「澪しゃんしどいッ!」

ありがとう、みんな。
私、クリスマス会をしたいの。友達といっしょにクリスマスを過ごすのが夢だったの。

「いいじゃーん!やろうよクリスマス会!」

「やろうやろう!」

「いいんじゃないか、楽しそうだ!」

「場所はどこにする?」

それでね、前々から誘いたいなってずっと思ってたんだけど…

「みんな、私のお家に来てみない?」

おしまい。


148 : ◆ZPguhvsw0A :2014/03/10(月) 23:44:25 NLZMALRg0
ぎりぎりの時間に長々とすみませんでした。
以上です。企画とは別に同じ世界観で2年生編3年生編も書くかもしれません。


149 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:30:01 L21ysC6E0

唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」


150 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:30:39 L21ysC6E0

 - 砂漠 -

梓「まさか登下校にラクダまで使ってるなんて・・・」 パッカパッカ

唯「びっくりだよね。ムギちゃん苦労してるんだなあ」ぎゅー パッカパッカ

梓「唯先輩? あんまりこっちに体重かけないでくださいよ」 パッカパッカ

唯「だってあずにゃんに掴まらないとふたりとも落ちちゃうよー?」にやにや パッカパッカ

梓「はぁ・・・オアシスまだかなー。って、おなか触んないのっ」ばしっ パッカパッカ

唯「あぅ! あずにゃんのいけずー」パッカパッカ



律「……いや、おかしいだろおい?!」


澪「律。後ろであんまり動くな、足場悪いんだからちゃんと掴まって」パッカパッカ
律「アッハイ」パッカパッカ


151 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:31:12 L21ysC6E0

すうじゅうじかんまえ!

唯「それじゃあムギちゃんの家に、いこーっ!」

律「おおーっ!!」


梓「すみませんムギ先輩、いきなり流れで押し掛けちゃう形になって…」

紬「いっいいの全然っ!ぜんっぜん! 友達をうちに呼ぶなんてなかなか無いもの!」

澪「ムギ、ほんとに大丈夫?」

紬「大丈夫、澪ちゃんっ!
  ああっでもね、ちょーっと時間かかるかも、そのね、うん・・・」てくてくてく…


 <ピッ プルルルル
 <サイトー?! イマカラ ワタシノ イウトオリ ジュンビ シテ! ハヤク!!


紬「うん!もう大丈夫! 私、先に行って支度しておくからっ!」


律澪((ほんとに大丈夫なのか・・・))


152 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:32:14 L21ysC6E0

ぶろろん

律「げっ、本物のリムジンじゃん」

梓「わたし肉眼で見たの何年ぶりだろ・・・」


斉藤「皆様、迎えに参りました」

唯「わあーい! じゃあ私助手席!」ピョンッ

梓「ちょ、大人げないですって!」

澪「あのー、服ってこのままでよろしいんですか? 正装とかしないと…」

斉藤「お召し物はこのままで構いません。それよりも」

律「よりも?」


斉藤「パスポートの方をご用意いただく形になるかと」

澪「……Pardon?」


153 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:33:02 L21ysC6E0

 - 成田国際空港 -

律「私ら、友達の家に遊びに行くんだよな・・・?」

澪「そうだろ律。……たぶん。きっと。そう願いたい」


唯「さいどびじねす!」ビシッ

梓「あーもうイギリスの時から学習してないんですか!」

唯「にっぽん人はにほんごでいいんだよー!ぶーぶー」

梓「はぁ・・・あ、せっかくだし免税店みてこよっかな」


律「あいつら適応はえーな?!」

斉藤「それでは皆さん、こちらに」

澪「あのー、どのくらいで紬さんのお宅に着くんでしょうか?」

斉藤「そうですね……十数時間、」

澪「じゅうすうじかん?!」

斉藤「…か、数十時間かと」

律「その差はでかいって?!」


154 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:33:41 L21ysC6E0

 - Су́здаль -


梓「……さっむ!」ブルッ

唯「あずにゃんさむいよぉ」ぎゅー

梓「あっ……いや、今だけ許可します。冷えるんで。合理的に考えて、です」ぎゅ

唯「わぁい♪ ほっぴすべすべ」ちゅー

梓「なっ、そこまで言ってません!」バシッ


澪「ふふっ、いつもと同じ光景。まるで高校の帰り道みたいだ」ブルッ

律「落ち着けみおー?! ここロシア! 北半球のさらに北だからっ!?」

斉藤「ではここから、ツンドラ地帯を犬ぞりでの移動になりますので…」

律「あいつ通学中にどんな冒険してんだよ!?」

 Prrr…

斉藤「おっと失礼」ぴっ


 <ハイ、ヨテイドオリデス オジョウサマ・・・
 <ツキマシテハ、 12カイ ノ オオソウジガ オワルマデ デスネ、

斉藤「……では行きましょう」

澪(苦労してるんですね…)

唯「えっ犬ぞり? そんなの初めて!」きらきらっ

律「お前らは状況を疑えー!!」


155 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:34:30 L21ysC6E0

 - الربع الخالي -


唯「あずにゃ…ふへぇ……あーじゅーいー・・・・・・」 パッカパッカ

梓「くっつかないでくださいよ…うぅ……」 パッカパッカ


律「……」

澪「……わ、わぁい。ふたこぶラクダに二人乗りなんて、はじめてー」

律「無理しなくていい、澪、状況を受け入れて楽になろう・・・」

斉藤「見えましたぞ、次のオアシスが! おっと」Prrr

ピッ

 <シカシ オジョウサマ、 コレイジョウハ ゲンジツテキニ・・・
 <ナッ ハナレノ ゾウカイチク ?! ハァ・・・ オオセノママニ


斉藤「……次のオアシスがっ!」カッ

律「斉藤さんも、無理なさらず…」


156 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:35:59 L21ysC6E0

 - กรุงเทพฯ -


律「まず何語だよこれ?!てかどこだよここ!」

澪「ムギの通学路だ。斉藤さんはそう言ってる」

律「私の知ってる通学路じゃねーよ…」


唯「うっわあたかーい!」のっそのっそ

梓「ラクダよりも安定感があって乗り心地良いかもです!」のっそのっそ パオーン

唯「ねえりっちゃんたちも早くゾウさんに乗りなよ! たのしいよ?」のっそのっそ


律「だから適応がはえーんだよお前らはっ!」

澪「今日だけで乗り物のレパートリーがだいぶ増えた…」

律「ムギの通学だけで2時間ドキュメンタリー撮れるわ、これ」


157 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:36:35 L21ysC6E0

 - 琴吹邸 玄関 -


紬「いらっしゃい、みんな♪ ここまで長かったでしょう?おつかれさまっ♪」きゃるーん☆

律「はぁ………………………………」

澪「ま、まあまあ! ムギだって部屋の片づけや支度もあったんでしょ?!」

紬「そ、そうよ! ごめんねりっちゃん、ちょーっと時間がかかっちゃって」

律「だからって通学に37時間はおかしいだろ?!」

紬「ひっ?! ば、ばれた?」きゃるーん

律「37時間て! 丸一日超えてんじゃん! 騙すなら他に何かあるでしょ?!」

澪「学校通えてないしな、この設定だと…」

紬「みんなごめん!ちょっと部屋のおかたづけと、あと驚かせたくって、」


唯「すっごーい! 玄関からシャンデリアがみえるよ?!」

梓「うわあ…トラのじゅうたんってほんとに敷くものなんだ・・・・」


律「無邪気だなあおい!」

澪「二人の将来が心配になってきた」


158 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:37:26 L21ysC6E0

律(そんなわけで私たちはムギの家を案内され、夕食をいただいた)

律(渡り廊下の窓から私や唯の等身大フィギュアらしきものが見えたのは忘れよう)

律(トイレ行こうとしたら澪のファンクラブ会報が落ちてたのも忘れよう)

律(というかここ新築すぎるし洗面所にまだフィルム貼ってあったのも忘れよう)

律(ついでにソファーのクッションが猫耳梓のぬいぐるみだったことも…忘れ……)


律「忘れることばっかじゃねーか!」

澪「なんだいきなり! ……いや、気持ちは分かるけど。うん」


159 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:38:19 L21ysC6E0

紬「それでね、いつもここでお茶をいれてるのよ♪」ちゃぽん

唯「わーすっごーい! ホンカクテキってかんじ?」きらきらっ

梓「わたしにも教えてくださいっ! 次の部員に飲ませてあげるために!」めもめも


律「……ま。楽しそうだしいっか。あいつらには隠し通せてるっぽいし」

澪「成長したなあ律も」


Prrrrr

梓「先輩、鳴ってます」

唯「あ、もしもし? お母さん?」

律(えっ今なんでつながったの? てかここ日本の携帯つかえんの?)


160 : ◆K0TON1AIBg :2014/03/11(火) 00:38:44 L21ysC6E0

ぴっ

唯「う、憂がカゼひいて熱出しちゃってるんだって〜! 38度も!」

紬「ええっ?!」

律「うわっ重症だな」

梓「そしたら早いところ帰って、みてあげた方が」

澪「でも、ここからはさすがに遠いよな」

唯「うん・・・どうしよう・・・」


紬「唯ちゃん、それなら大丈夫!ここからなら駅までタクシーで15分だからっ!」

唯梓「「えっ」」

紬「あっ」


紬「……ああぁあーっ///」プルプル


律(どんまい、ムギ)





161 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 00:55:45 cr0HGFFw0

紬「失われた時を求めて」


162 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 00:56:36 cr0HGFFw0

「ムギちゃん、大丈夫?」

「え?」

平沢唯の心配そうな声に、ムギと呼ばれた少女は小さく驚きの声を上げて固まった。

「何だか調子悪そうだけど……」

お昼の教室、いつものように唯の机に集まり食事をしていた田井中律、秋山澪、真鍋和もムギと同じく驚いたような顔をする。

「おいおい、いきなりどうしたんだよ、唯」

「私にはそんな風には見えないけど……和はどう思う?」

「ムギ、どこか身体の具合でも悪いの?」

和の問いかけで我に返ったのか、ムギはやわらかく微笑んだ。

「ううん、平気。大丈夫よ」

「ということらしいわよ、唯」

「だって、ムギちゃん今日あんまりご飯食べてないし、顔色もいつもより赤い気がして」

確かに、普段から量が多いと感心するほどのムギのお弁当箱の中身は、ほとんど箸が付けられていなかった。


163 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 00:57:46 cr0HGFFw0

「んー。……そう言われてみるとちょっと疲れてるっぽいかもなー」

「この前の日曜日は六科目模試だったから、そのせいとか?」

眉をひそめる律に同調するかのように、澪や和も心配げな表情を浮かべる。

「もしよかったら、私が保険室まで付き添うけど」

「えっと……」

自分に集まった視線がまぶしいかのように、ムギは下を向き、頬を染めてはにかんだ。

「……実は、今日二日目なの」

ムギのその一言で、場の空気が一気に弛緩する。
多少の差はあるものの、月に一度やってくるお客さんに対する感覚を共有しない女子高生はまずいない。
どうやらこの中でも重めな方らしい澪などは、自分の時のことを思い出したのか、お腹に手をあてて顔色をうっすらと青くしている。
そんな親友の様子を横目で見ながら、律が頭を掻きつつ謝る。

「あー、なんだ。その……すまん」

「いいの、私の方こそ心配かけてごめんなさい」

律と同様、少しだけ気恥ずかしげにする和たちに笑顔を向けると、ムギはお弁当を包み直して立ち上がった。

「私、ちょっとお手洗いにいってくるね」

「ムギちゃん」

自分の席に行こうとしたムギに、唯が再び声をかけた。
振り返り見ると、唯の眉尻はまだ下がったままだった。

「ほんとのほんとに大丈夫?」

自分でも、しつこいかもしれない、と思っているのだろう。
気おくれしながらも、問題が無いことを確かめるかのように尋ねる。
そのことがムギにはとても嬉しく感じられた。

「うん、ありがとう、唯ちゃん。
ほら、このとおり元気だから」

ふんす、とばかりに小さくガッツポーズをしてみせると、ようやく安心したのか唯は笑顔になる。
それにつられるように、律たちも表情をやわらげた。

(――あぁ、やっぱりみんなといるのは楽しいな)

身体の痛みを軽くする胸の温かさを感じながら、ムギはもう一度笑った。


164 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:00:13 cr0HGFFw0

(まるで教会かお墓みたい)

頭の中にそんな連想が浮かぶ。
しかし、ムギは実際にはどちらも行ったことはない。
この静けさと脳内にある知識が、なんとなく結びついただけだ。

ともかく、施錠され外部から切り離されていたそこは、ムギがさっきまでいた日常からはとてもとても遠い場所だった。

ムギは左の壁伝いに進み、ピアノの横を抜け、舞台の下手袖へと続くドアを開けた。
さらにその奥、下手と上手を繋ぐ通路まで進むと、階段の一番上の段に腰をおろす。

瞬間、まるで腹部を殴られたかのように、身体がくの字に折れ曲がった。
――耐えきれなくなったのだ。

「く……ぅ……」

苦痛を絞り出すように息を漏らす。
膝を抱え、なんとか抑えつけようとするが、身体の内側からあふれ出る激痛は、今にも爆発し、自分という存在すら破壊してしまいそうなほどに大きかった。

「はぁっ……はぁ……んっ……」

耐えきれず声が出る。
ぽろぽろと零れる涙を拭くこともできず、ただただムギは汗を流しながら痛みと戦う。


165 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:01:13 cr0HGFFw0

「大丈夫、じゃないみたいね」

いつの間にか、ムギの後ろに人が立っていた。
普通ならば驚いたり、緊張して身体が強張ったりするはずなのだが、声をかけられてムギは逆に弛緩する。

(――来てくれた)

誰なのかは確かめるまでもない。
講堂の入口の鍵はかけてきたし、いくら弱っているとはいえ、一般人が近づいてくればムギには分かる。

第一、その人の音――足音や呼吸音、それに心臓の音をムギが聞き間違える訳がなかった。
ハンカチを取り出すと、痛みでぎこちない動きながらも涙と汗で濡れた顔を拭き、後ろを振り向く。
見上げる視線の先、山中さわ子が綺麗な眉をしかめ、腕を組んで立っていた。


166 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:02:13 cr0HGFFw0

「いつからそんな状態なの?」

「昨日の……帰り、からです」

「薬は?」

「……昨日までに、全部飲んでしまって」

「そう」

(――あぁ、この子はもうダメなんだ)

さわ子は心の中で呟いた。
彼女の身体はガタが来ている。
おそらくいくつか、あるいはほとんどの臓器が機能不全に陥っているのだろう。
もしくは細胞の寿命が尽きようとしているのかもしれない。

『時間切れ』だ。

さわ子にはそれが分かった。
学校におけるこの二年以上の間、それは何度となく繰り返されてきたのだから。

そうならないために薬を飲むのだが、一定以上摩耗した身体には余り効果がない。
きちんとした施設でしかるべき処置をすればいくらかは改善するとは思うが、それにはコストがかかる。

――彼女をまた『造る』のと同じか、それ以上のコストが。

だから、最初に渡された薬を飲み終わってしまえば終わりなのだ。


167 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:02:55 cr0HGFFw0

「これ、予備の薬だから量は少ないけど飲むといいわ。気休めにはなるはずよ」

「ありがとうございます……えっと」

「いいのよ、無理してそっちの名前を使わなくても。
あなたが今いる場所は学校なんだから、さわちゃんでもさわ子先生でも好きなように呼んでちょうだい」

「……はい、ありがとうございます。さわ子先生」

「いいから、早く飲んじゃいなさい」

さわ子がそう言うと、なぜか彼女は嬉しそうに笑った。
薬とともにペットボトルの水を渡そうとするものの、彼女の手は痛みで震え、赤子のように頼りない。

「ちょっとごめんね」

さわ子は階段に腰かけた彼女の横にしゃがみこみ、ペットボトルの蓋を開け、彼女の口許に近づけた。
自分一人で姿勢を維持するのも難しいのか、ムギはさわ子にもたれかかってくる。

ムギの身体は灼けるように熱かった。


168 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:04:04 cr0HGFFw0

「甘えん坊ね」

彼女の身体が触れている部分から感じる火傷に似た痛みを隠して、さわ子は優しく言った。
最初にムギの口内を軽く湿らせ、薬を含ませてから、もう一度水を飲ませる。

「吐き出さないようにゆっくりとよ」

熱のせいで喉が渇いていたのだろう、彼女はコクリコクリと喉を鳴らしながら、ペットボトルの中身を減らしていく。

(――これではまるで母親ね)

むせたりしないよう、送る水の量を調節しながらそんなことを思う。
というより、この子が赤ん坊のようだと言った方がいいかもしれない。
可愛らしく、純真で、そして愚かだ。

(――本物《オリジナル》のこの子もこんな風なのかしら)

さわ子は会ったことのない『琴吹紬』のことを考えた。
孵る時を忘れた卵のように眠り続けているという少女のことを。


169 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:04:44 cr0HGFFw0

琴吹紬は幸せだった。

彼女の家は国内でも有数の名家、資産家だったし、両親は紬のことを心から愛してくれた。
少なくとも中学校に進級するまで、紬はこの国で指折り数えるほどに幸福だったのではないだろうか。

13歳になってすぐ、原因不明の奇病にかかるまでは。

紬を襲った病魔は、発作的に全身に激痛が走り、内臓機能がパニック症状を起こすというものだった。
原因すらも分からず、唯一分かっているのはその痛みが『成長痛』のようであるというものくらいで、当然治療法も確立していなかった。

紬の両親はその財力や名声をもって方々に手を尽くし、最後に娘をある『病院』に入れることが出来た。
都心から少し離れた郊外の山の中腹に建つというそこで紬は治療を受け、奇跡的に快復し、学校にも復帰した。

――と世間的にはそういうことになっている。

実際には、病気自体は発症が前触れもなく突然だったように、やはり唐突に消え去った。
しかし、紬の身体にはその爪痕が深く刻まれていた。
多数の臓器は機能を失いはしなかったものの衰弱し、意識は最も酷い発作に襲われた際に失ったまま戻らず、今も生命維持装置をつけたまま、眠り続けている。

琴吹紬が今現在、幸せかどうかは誰にも分からない。

それでも、いつかは目覚めるかもしれないという希望が残されており、来るかどうかも分からない『いつか』を待つことが出来ることは幸せなのだろう。


170 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:05:33 cr0HGFFw0

ただ、紬の家が富と名声を有しすぎていたこと、そして彼女の両親が娘を愛しすぎていたことは――『ムギ』にとって不幸だった。

どうやら、彼女の両親はこう考えたらしい。

「意識を取り戻さないのが傷ついた臓器のせいだとするならば、それを交換すれば良い」

「他人の臓器が拒否反応を起こす危険性があるというなら、同じ人間から移植をすれば良い」

「もしも、これらが上手くいかないのであれば、娘と同じカタチをした健康な人間に娘の魂を移し換えれば良い」と。

琴吹家はその妄想染みた考えを実行出来るほどの力があった。

いや、そういった需要を満たす供給者――人間を造り出す技術の研鑽、記憶の移項、大量に造られた生命のコピーがオリジナルと同じ価値を持つかどうか、ということに興味を持つ者たちと協力関係を結べるだけの影響力があったというべきだろうか。

ともかく、様々な目的が合致したことにより、琴吹紬《オリジナル》からムギ《コピー》が造られた。

――とさわ子は聞いている。

事実かどうかは分からないし、知りようもない。
間違いなく言えるのは、その供給者から学校におけるムギの監視と管理を命じられたさわ子が、既に30人以上のムギを見てきたということだ。


171 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:06:51 cr0HGFFw0

(――ただ)

果たして両親は知っているのだろうか。
コピーとは言え、娘と同じ顔かたちをしたムギの身体を用いて、様々な実験が行われていることを。

例えば、存在する筋肉量でどれだけ効率良くその性能《パフォーマンス》を発揮できるか、その性能の限界は、限界を超えた場合の時間制限は、などと言ったものだが、中にはただでさえ短いコピーの寿命を削り取り、実験中に死亡してしまうこともあったらしい。
 
事実、さわ子は前日別れた時とは明らかに違うムギを何人も見ている。

それを両親たちはどう考えているのだろうか。
まさか、無断で行われているとは考えにくい。
ならば「我が子にはより健康な身体を与えてやりたい」とでも考えているのだろうか。

「何度も作りなおす試作品なのだから有意義に活用しなければならない」

「ひょっとすると、その器に娘の魂を入れることがあるのかもしれない。
ならば、完璧なものであるべきなのだ」

「どうせコピーがどうなろうと、所詮はコピーなのだから」と。

(――最少費用による最大効用? 本当に糞《マジでファック》ね)

怒りをこめてそう吐き捨てたくなる。

けれど、自分もその一端を担っていることをさわ子は自覚していた。
お涙ちょうだいのドラマのお約束のような、切実で、現実的な理由から、さわ子には今の状況から得る利益が必要だった。
彼女を酷い目にあわせている連中に利用され、彼女が流す血や汗や涙を利用することで得る利益が。

(本当に……糞だわ)


172 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:07:59 cr0HGFFw0

「はぁ……」

水を飲み終わったムギの息でさわ子は我に返った。
穏やかな呼吸と表情からも、少しは痛みが治まったことがうかがえる。
まだ普段以上に高いとはいえ、あの灼けつくほどの熱も治まっている。

それでも、先ほどの痛み――物理的な痛みに対して耐性のあるこの子が表面化することを抑えられないレベルの痛みに襲われるということから、限界を超えているのは間違いない。
まもなく、先ほどよりも、さらに大きな痛みに襲われて気絶するか、体温が上昇して、意識を失うだろう。

そして、この子は死ぬ。

さわ子はムギに気付かれないよう、ポケットの中の通信機を操作した。
内容は、コピーの活動限界がほんの僅かなことの報告とその死体の回収の要請だ。

「……先生、私死んじゃうの?」

自覚していたのか、それとも今の動きを気付かれたのか、小さな声でムギが呟く。

「大丈夫よ。痛みを感じさせないようにする薬があるから」
答えにならない答えを返すさわ子の声は、思った以上にはかすれていなかった。

「あの……もう少し、もう少しだけでいいんです。
なんとか放課後までもちませんか?
私……今日、手作りのマドレーヌを持ってきたんです」

「みんなと食べるつもりで、その、ずっと家で練習していて。
唯ちゃんや梓ちゃんたち、みんな……!みんなが好きって、言ってたから……
昨日、初めて上手にできて……
だから、今朝、ひとっ……ひとりで……焼いて……」

嗚咽で徐々に聞き取りにくくなるムギの呟きをさわ子は黙って聞き続ける。

「私……お友達と手作りのお菓子でお茶するのが夢だったの……」

「さわこせんせいとも」

それ以上は言葉にならなかった。
さわ子はそっとムギの頭に手をおいて抱き寄せると、彼女の瞳から零れる涙が止まるまで、その髪を撫で続けた。


173 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:09:23 cr0HGFFw0

やがてムギは泣き終わり、さわ子の顔を見て、少しだけ恥ずかしそうに笑った。
さわ子はポケットからハンカチを取り出し、ムギの顔を拭いてあげた。
拭き終わった後、もう一度ムギは恥ずかしそうに笑った。
さわ子もようやく微笑み返すことができた。

その後、二人はぽつりぽつりと話をした。
話と言っても、ムギが話し、さわ子はもっぱら聞き役だった。

ムギは色々なことを教えてくれた。
学校の授業のこと、部活のこと、家で過ごしているときのこと。
唯のこと、律のこと、澪のこと、梓のこと、和のこと。

さわ子のこと。

さわ子の授業が面白かったこと、ティータイムの時に律がさわ子の分のケーキを食べて澪
に怒られた時のこと、一度だけ夜中にさわ子から私的な通信を貰えて驚いたこと、その返
事を考えるのにいっぱいいっぱい頭を使ったこと、さわ子の車に乗ってみたかったこと、
さわ子の部屋に遊びにいってみたかったこと、もっとさわ子の好きなケーキを知りたかっ
たこと、変なコードネームではなく名前で呼ばせてもらえてうれしかったこと、「ムギちゃ
ん」って呼んでもらえてうれしかったこと……

ムギは、何度も何度も「ありがとう」と言った。

どれだけそうしていただろうか。
一時間ほどにも思えたし、十分も経っていないようにも思えた。
心地よさそうに目を閉じ、さわ子の肩に頭を預けていたムギの身体は再び熱を帯び始めていた。
それでも、ムギはしゃべり続け、さわ子はムギの身体を受け止めていた。
ほんの少しだけ後に、ムギが声にならない声で「おねがいします」と言うまでは。

最後にムギは、小さなワガママを言った。
さわ子は少しだけ躊躇ったあと、それに応えてあげた。


「おやすみなさい」と一言だけつぶやいて。


174 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:11:09 cr0HGFFw0

「おいおい! 聞いたかみんな!」

翌日のお昼の教室、いつものように唯の机に集まったメンバーに向かって、購買から戻って来た律が興奮して話しかけた。

「ほうほう! なんですかな、りっちゃん!」

「こら、唯。 いきなり立ち上がったら机が揺れるわよ」

「律も帰ってきて早々騒がしいぞ。 食事時なんだから静かにしろよ」

「ほらほら、りっちゃん、座って座って」

三者、もとい四者四様の反応に迎えられた律は、とりあえず席に着いた後、仕切りなおすかのように、明るく声を上げた。

「ふっふっふ、今日はなんと!
さわちゃんが、あのさわちゃんがお菓子を持ってきてくれるんだってさ!!」

「へぇ、さわ子先生がお菓子持ってくるなんて珍しいな」

「りっちゃん隊員、して、そのお菓子とは?」

「な、な、な、な、なんと!! マドレーヌだってさ!!」

「……マドレーヌ?」

「どうかしたの? ムギちゃん」

その声に何かを感じ取ったのか、唯が不思議そうに尋ねた。

「ううん、別に。 なんでもないわ」


175 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:12:25 cr0HGFFw0

本当になんでもない、はずだ。
ムギはその言葉を聞いた時に、自分の中に生まれたものを理解することができなかった。

特に自分はマドレーヌが好きな訳でもないし、特別な思い入れがある訳でもない。
当たり前だ。 何しろ、ムギは昨日目覚めたばかりなのだから。

ひょっとして、と脳内のデータを探してみるが、ムギに最初から焼きつけられているこれまでの個体たちの主な経験の記憶が蓄積されたデータベースにも、管理担当者から貰った報告書等にも、マドレーヌに関係するものはなかった。

ならば、この感覚はなんなのだろう。

現在、製造されるムギたちの記憶は、死亡した後に一度全てをデータとしてコピーされる。
そして、実験等の苦痛の記憶などはふるいにかけられ、『オリジナルの人生』となるべき部分のみを記録し、それ以外は破棄される。
新しいムギに移されるのは、データベースに記録されたものだけだ。

しかし、オリジナルの人生に関わる部分であっても、まだ完璧にコピー出来る訳ではなく、まれにムギの記憶の断片が混じり込むことがある。

ああ、そうだ。
そういえば、ムギが所属する軽音楽部の部員たちが好きだと言っていたっけ。
そんな情報が記憶の海の中から浮かび上がる。


176 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:13:14 cr0HGFFw0
 
……これは誰の記憶なのだろうか。

これまでのムギたちのことを、今のムギは考える。
もしかしたら、この誰のものか分からない記憶が、『ムギ』という自分の存在に刻まれた、『ムギの人生』としての記憶なのかもしれない。

――「おはよう。ムギちゃん」

昨日、目が覚めたときに初めて見た女の人――変なコードネームでなく、『山中さわ子』と呼んでほしいと言ってくれた人に対して抱いた感覚と同じように。

そうであったら、とてもうれしい。

「あ……」
その時、別の記憶も浮かび上がって来た。

「ん?どうかしたの、ムギ」

「私ね、みんなとマドレーヌでお茶するのが夢だったの」

「大袈裟だなぁ、ムギは」

律の言葉に、唯も澪も和も笑った。

そしてまた、ムギも笑った。


177 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/11(火) 01:14:04 cr0HGFFw0
終わりです。


178 : ◆SPYbqROGM2 :2014/03/11(火) 01:45:19 kBx7m9960
「聖童女よ、門を越えて行かん」


179 : ◆SPYbqROGM2 :2014/03/11(火) 01:46:30 kBx7m9960

唯「ムギちゃんのうちに行ってみたい!」

律「唐突にどうした」

唯「だって気にならない?どれだけリッチな家なのか?」

紬「別に普通よ〜」

澪「まあ、確かに」

梓「ちょっとだけ、いえすごく気になります」

紬「だったら、今からみんなで来る?」

律「あっさりと!いいのかよ!?」

唯「やったー!」

紬「た・だ・し……私の家は知っての通り古い歴史を持ってて、色々としきたりがあるの」

澪「それをちゃんと守れってことだな?律、大丈夫か?」

律「見くびるなよ!余裕余裕!」

紬「ふふ、それじゃあ行きましょうか」


180 : ◆SPYbqROGM2 :2014/03/11(火) 01:47:19 kBx7m9960
琴吹家正門前

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

梓「想像以上に和風ですね」

唯「私、お城みたいな感じだと思ってた」

澪「まあ正月は着物で客を迎えてるって前に言ってたしな」

律「さっそく上がろうぜ!」

菫「みなさまようこそいらっしゃいました。私は琴吹家の侍女、菫と申します」

梓(わあ、綺麗な娘)


181 : ◆SPYbqROGM2 :2014/03/11(火) 01:48:25 kBx7m9960

紬「あとはよろしくね、菫」

菫「はい、紬お嬢様」ペコリ

律「あれ、ムギ先に行っちゃうのか?」

紬「うん。みんなも無事に中に入れることを祈ってるわ」スタスタ

澪「なんか怖いことを言い残して去っていったな……」

菫「さて、質問です。みなさんは既婚者ですか?」

梓「いやいやいやいや」

唯「みんな既婚どころか彼氏もいないよ〜」

律「はっきり言うなよー、事実だけどさ」


182 : ◆SPYbqROGM2 :2014/03/11(火) 01:49:29 kBx7m9960

菫「琴吹家は神武開闢以来この国を支え続けてきた由緒正しい聖なる家柄です。よって既婚者以外の女性は、汚れなき清らかな者しかその土地に立ち入ることは許されません」

澪「そ、それってまさか///」

唯「へ?なに?」

菫「そうです。処女でなくてはこの家に上がることはできません!」バァァーン

澪律梓「」

菫「ちなみに、琴吹家の超技術によって門には処女探知機が仕掛けられています。万が一非処女が嘘をついて中に入ろうとすれば警報が鳴り響きますのでご注意を」


183 : ◆SPYbqROGM2 :2014/03/11(火) 01:50:23 kBx7m9960
律(大変なことになってきたな……私は男と付き合ったことなんてないからもちろん処女……なんだけど)

澪(この場合の処女の定義はどうなんだ……あれはアウトなんだろうか……)

律(いやいや、あれは単なる一夜の過ち……あれくらいのことで非処女とみなされるわけないよな……セーフだセーフ!いやでも)

澪(やはり律も迷ってる……しかし唯と梓も動かないのは何故だ?まさか)

唯(あれ?なんでみんな動かないの?男の人と付き合ったことがなければ処女なんだよね?ハッ!みんなもしかして私に嘘ついて彼氏作ってたの!?)

梓(ひとりでした行為はカウントされるのかな……)

唯(こうなっちゃうと私だけいないなんて恥ずかしくて言えないよー)


184 : ◆SPYbqROGM2 :2014/03/11(火) 01:52:00 kBx7m9960
菫「どうされました?みなさん……もしかして」

律「あ!ちょっと私予定思いだしちゃった!」

澪「そ、そういえば私も急用があった気がする!」

梓「わ、私もこれから急用ができる気がします!」

唯「え?じゃ、じゃあ私も用事を探しにいくから帰らないと!」

律澪梓唯「おじゃましました!」

スタコラサッハ




菫「あ!みなさん!……もう、お姉ちゃんの冗談に品がなかったのかな……これで百合的絆がより深まる!とか言ってたんだけど……」




紬「……誰も来ない……だと……」


おわり


185 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/11(火) 11:49:36 A2hmfALI0
紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」


186 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/11(火) 11:50:15 A2hmfALI0
 ―――部室―――


紬「突然ごめんなさい。今日、誰かの家に泊めてもらえないかしら……?」

唯「あ、私の家いいよー。今日も憂と私しかいないし」

紬「ホント!?ありがとう唯ちゃん!……あの、言いにくいんだけど

  できれば三日程泊めてもらいたいの……」

唯「え?うん。別に大丈夫だよー」

澪「ムギ……なにかあったのか?」

律「まさか家出じゃないだろうな?」

梓「そんなまさか、ムギ先輩に限って……」

紬「ううん、家出とかじゃないの!……そうね……みんなにはホントの事を話すわ……

  私達が一年生の時のクリスマス会のこと憶えてる?」

澪「ああ、確か唯の家でやったんだよな」

唯「おもしろかったよね〜♪」

梓「………………」

律「拗ねるな拗ねるな。今年は梓も盛り上がろうぜー♪」

梓「べ、別に拗ねてなんかないです!」

紬「そのクリスマス会の場所を決める時、最初は私の家ってことになってたの」

澪「そうそう、律がムギの許可もとらず勝手に決めてたんだよ」

梓「昔からそんな人だったんですね、律先輩は」

律「でも確かムギんちは予定が詰まってて無理ってことになったんだよな」

梓(スルーしやがった……!)

唯「うん。ムギちゃんが『一ヶ月前に予約とらないといけないの』って言って

  すごい家だな〜って思ったんだよ」

紬「………そう、その予約が……とれなかったの」

澪「………え?」

紬「琴吹家は完全予約制なの……それは家族といえども容赦なく……!」

唯「………………」

律「………………」

澪「………………」

梓「………………」

紬「年間予約の更新をついうっかり忘れてて……キャンセル待ちしてたんだけど

  この三日間は結局キャンセルもでなくて……」








 コンコン ガチャッ


斉藤「失礼致します。私、琴吹家の執事の斉藤と申します。

   大変申し訳ございませんがどなたか本日、泊めて頂けないでしょうか?」


紬「斉藤!?あなたも?」




 おわり


187 : ◆H2u4HYHizs :2014/03/11(火) 22:55:24 aXcwOvR20
それは、僕が小学校三年の頃。
仲が良い友達がいて、その友達の家はちょっと遠かったが、自転車で初めて遊びに行った。

その通り道に、とても大きな家があり、僕はその家を見てこんな家に住んで見たいと思いながらペダルを回していた。

その家は庭には噴水があり、ロールスロイスの車がよく噴水近くで洗車されていた。

門もかなり大きくて形もいかにも豪華な形をしていた。

この家は普通の人が大金を手にしたらこう言う家を建てるという想像の結晶だ。

僕にはこんな家建てる事は到底無理だろうなぁと子供の僕は現実を見せ付けられた。


188 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/11(火) 22:58:57 aXcwOvR20
秋のある日、僕よりも何歳か年上の女の子が大きな門に捕まり空を見上げていた。

彼女の目は見上げてた空を反射しているかのように青く。

肌は雲のように真っ白で、金色の髪は日光を反射し彼女は輝いてた。

大きな眉毛もチャームポイントの一つだ。

一目惚れをした。
僕の胸は大きく高鳴り、彼女とお話をしてみたい。

彼女がどんな声をしてどんな声をしていて、どんな性格をしているのか知りたい。

僕は彼女を長い時間見つめていた。
彼女は僕の目線に気付き、こちらを見た。

もっと彼女の瞳に僕を写していたかったが、不意に目を逸らしてしまい。
なんだか、恥ずかしくなって僕はその場を去った。

それから、僕は毎日友達の家へ遊びに行った。

勿論、友達が目当てではなく彼女を見る為だ。
彼女のおかげでこの友達とは親友になった。

春のある日。
その日、雨が降っていて僕は片手で傘を差しながら自転車を漕いで彼女を見る。

雨の日も彼女は傘を掲げて空を見上げていた。

彼女は僕を見て、ニコリと笑った。

いつの間にか、彼女は僕を見て笑うようになった。


189 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/11(火) 23:08:30 aXcwOvR20
それは、僕に興味があって笑っているのか、それともただ何も興味が無く毎日家を通る人だから挨拶のつもりで笑っているのかわからない。

けど、彼女の笑顔を始め見た瞬間。
僕の心臓は高鳴りドンドンと身体中に響いていた。

ひょっとしたら彼女は僕のことを好きになったんじゃないか・・・。
そんな、甘い期待が思考を遅らせ目線も彼女から離れず。

僕は電信柱にぶつかった。

自転車に放り投げられ、濡れたアスファルトの地面に強く倒れる。

まずは痛みが走り、その次に服越しに冷たい感触を感じる。

すぐ近くで自転車が倒れる音。
それでもまだ車輪は中を走り続け、回っている。

傘をボロボロでもう使い物にならない。

僕は立ち上がり、擦りむいた腕を見れば腕中が真っ赤で何処に傷があるのかもわからなかった。


190 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/11(火) 23:25:24 aXcwOvR20
大丈夫?

綺麗な声が聞こえた。
声がした方向を見ると、彼女とスーツを着たおじさんいた。

今度はスーツのおじさんが声を掛けてきて、傷の手当てをするから中へどうぞ。
そう言って、僕はお城に招待された。

おの大きな家はやっぱり中もすごく大きくて、見た事のある絵画や銅像が玄関に飾られていた。
凄くボロいギターもあり、何故かそれだけはガラスのケースに厳重に入れられていた。

「大丈夫?」

また彼女が僕の傷をマジマジと見た。

「痛そうね。凄く」

僕は緊張して何も答えられない。

まさかこんな形で、彼女の声を聞けるとは思わなかったし、家に招待されるとも思ってなかった。

「こちらです。どうぞ」

小学生の僕にも丁寧に敬語で話すこの人は彼女の執事なのか?
執事はドアを開いて僕を招き入れた。

「今、傷の手当てをします」

「斎藤、私やりたい!」

彼女は目を輝かせてそう言った。

「そうですか、紬お嬢様は何にでも興味をお持ちで偉いですな」

彼女の名前が紬と言う事がわかった。

「そうね。何事も経験しておかないと後から損しちゃうかも」

「では、終わったら呼び出して下さい」

「えぇ」

そう言って斎藤と言われた執事はドアの向こうへ去って行った。

「さぁ、やるわよ!」

彼女と二人っきり・・・。
何も考えられない。彼女に頭や体を支配されたみたいだ。


191 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/11(火) 23:38:23 aXcwOvR20
「まずは消毒ね!」

そう言って彼女は消毒液を僕の腕にぶち撒ける。

「あっ・・・!」

「あ、ごめんなさい。痛かった?私、保健室の先生がちょっと染みるわよーって言ってたけど・・・言うの遅かったわね。って言うか忘れてた。それ言いたかったのに・・・」

彼女はしょんぼりしてガーゼを幾つか取ると僕の腕を掴んだ。

白く柔らかい腕は暖かく心臓はこれ以上に無いくらいに飛び跳ねた。

「じゃあ血を拭き取るわね」

彼女は優しく腕の血を拭う。

痛みは感じたが、それよりも彼女の手の温もりの方が強い。

「後は、包帯巻くだけね!」

傷なんかもうどうでも良く、恥ずかしくてずっと外を見た僕は彼女がどんな顔をして手当てをしてくれてるのか見たかったので、恐る恐る彼女の顔をを見る。

「・・・ん?」

「あっ・・・」

目が合った。
また心臓が飛び跳ねた。
でも、また見たいと思った。

そして、この状況に少し馴れて来たせいか、僕は考えた。

もしかしたら、これはチャンスなのではないかと。
今を逃したらまた何時ものように空を見上げる彼女を見る生活に戻るのではないのか?

勇気を出し僕は彼女に話し掛ける。

「あ、あの・・・いつも外を見てましたよね?」

「えぇ、見てたわ。そしてあなたは私を見てだわね」

彼女はいたずらっぽく笑った。


192 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/11(火) 23:56:48 aXcwOvR20
その一言で僕は再び黙り込んだ。
あぁ、彼女は僕の事気持ち悪いと思ってたんだ。

「あ、嫌味で言った訳じゃないのよ?」

「あ、はい。その・・・お綺麗だなと思ったから・・・」

「ふふ。ありがとう。ねぇ、私がいつも空を見ているって言ったよね?何でだか分かる?」

「あ、空が好き・・・だから?」

「そうよ。正解!でもね鳥も好きなの。凄くベタなんだけれど私は鳥なの。籠の中の鳥」

「・・・」

「私は空は上手く飛べない。大きく羽ばたきたいけど羽の使い方も知らない。この家は籠で私は鳥。ずっと私は籠の中に閉じこもってる。自由が無いって訳じゃないの。ただ私が臆病なだけ、だからいっつも待ってるの。私よ籠を開けてくれる人。あ・・・ねぇ、知ってる?鳥は歌うのよ」


193 : ◆WNo46kS79A :2014/03/11(火) 23:56:51 377uA7N20
プロメイド---斎藤菫


とある県のとある都市。
閑静な住宅街の一画。
ここに一軒の豪邸がある。
プロメイド斎藤菫の仕事場である。

世界でも有数のプロメイド。
彼女らの仕事は決して世間に知らされるものではない。

我々は、プロメイドの一日を追った。

Q.朝、早いですね?

菫「えぇ。朝のお掃除は大切ですからね。お嬢様の一日のスタートがどう幕を開けるのか、は私どもの仕事にかかっていると言っても過言ではありませんから」

日が登る前、人々が行動する前から菫は動き始める。

菫「私がここで働けているのはお嬢様の支えがあるからなんです。だから誰よりも早く動き始めないと」

そう語る菫の目は何よりも真剣だ。
プロに一切の妥協はない。
菫の誇りはそこにあるという。

「お嬢様は私の生きがいですから」

菫のお嬢様---琴吹紬の靴を磨きながら、菫の口角は緩んでいた。

Q.これもお仕事ですか?

「いえ、違います、あ、いや、そうなのかな?もう公私混同しちゃって(笑)」

紬の制服と今日付けていく下着にに手アイロンをかけながら、我々の質問にも笑顔は絶やさない。

「体が資本なところがありますからね。大切なんですよ、これ」


朝五時半。
手アイロンを終えた菫は真っ先にテレビをつける。

Q.休憩ですか?

「いえ、お嬢様が真夜中に予約しておられたアニメの録画の確認を」

Q.アニメ...ですか?


194 : ◆WNo46kS79A :2014/03/11(火) 23:57:49 377uA7N20
「はい。なにやら今期は女の子がキスをするアニメがやっておられるらしくて」

Q.!?

「私もお嬢様に勧められて一緒に見てるんですが、なかなか面白いんですよ? キスの大安売りって感じで。 よし、今回もちゃんとキスしてる」

五時五十分
菫がテレビから離れ、キッチンに向かう。
取り出したのは手動のコーヒーミル。
手馴れた動きで豆の分量を図り挽き始める。
目線の先は飾られたお嬢様の写真から離れない。
同時進行させることで、1つ1つの作業はどんな些細なものでもお嬢様に繋がっているということを魂に刻む。
隠し味の唾液混入も忘れない。

Q.大変ですね?

「やはり挽きたての方が美味しいですからね。すべてはお嬢様のためです」

Q 月並みな質問ですが プロメイドになろうって思ったきっかけは?

「んー 何でしょうか。私はもともと紬お嬢様の幼馴染をしてまして。
というか今もなんですが。

幼い頃から父がこのお屋敷で務めをしておりましたから、必然的に紬お嬢様とも幼馴染のような関係で、でもそれって自分の力でなったわけじゃないですか。
ある日ふいにそんな中途半端な自分にものすごい腹がたってきちゃって。
お嬢様に相談をしたら、『それなら菫、私のメイドになって私に一緒仕えなさい』と言われちゃいまして。
でもそんなの自分じゃなくなる気がして....すごいジレンマですよ。だったらいっそのこと本格的にプロになっちゃおっかな?みたいな(笑)
紬お嬢様とでしか私は生き方知らないし」

六時。
菫は急に慌ただしく動き始めた。

Q.どうされました?

「お嬢様の起床時間です!!!」

Q.早くないですか?

「お嬢様は電車通学なんです。すみませんが、ここからは集中力を使うので」

お口チャクの動作をされた。

我々の質問最中にもその手の動きに迷いはない。

湧いたお湯を片手にコーヒーを淹れながら
トーストを焼く。
その傍らでは熱されたフライパンにペーコンが2枚、
その上には玉子が投下され
とても美味しそうである。

すぐに出来上がるコーヒーと焼きたての食パン。
ハウルのムービング城を見てお嬢様が食べたいとリクエストして以来作っている
目玉焼き&ベーコン。

朝食のタイミングはプロメイドを始めた頃から変わらないという。

「効率の面もありますけど、これを食べることで朝を迎えた、っていう紬お嬢様の笑顔が私の朝食です」

一切の抜かりはなく、素早く食べ終わる菫。
時刻はまだ、六時半だ。

Q.これから学校ですか?

「すいません、静かに」

我々クルーを諌める菫。

「耳を済ましてください。声がほら、きた、きたきたきた、ほら声がするでしょう?かわいい声が」


195 : ◆WNo46kS79A :2014/03/11(火) 23:58:40 377uA7N20

確かに遠くにかわいい声がする。

「紬お嬢様は登校される時、近所の皆様に朝のご挨拶をされるんです」

この声を聞くことで紬と社会とつながっている、そして紬と接している自分もまた紬を介して社会と繋がっている実感をもつ、と菫は語る。

「ほら、こんな仕事でしょう?社会に切り離されてるんじゃ無いかって不安になってるころに、この声に気づいてね、それからは日課なんですよ」

こうして登校や出社する人々と挨拶をする紬の声や足音を聞くことで
登校した気分になる、と言う。
プロならではの、技である。

七時四十五分。

「ふぅ、もういいかな」

沈黙を破ったのは、菫であった。

「これ以上は危険ですからね。見極めが大切なんですよ」

あまり深く聞き入ると、紬の世界にひきづりこまれる。
プロの生命をたたれる可能性がある危険な作業なのだ。

Q.怖くは無いんですか?

「怖いといえばこわいですね。あと何年紬お嬢様のお側にお仕えできるのかわからない。その時どうなるのかも。ただ、続けたいですね。生きてる限りは」

そう笑う菫には、確かに、
プロメイドの面影が見えた。

八時。
汗を流すために菫は風呂にはいる。
風呂と同時に掃除も兼ねる。

「こうして朝に洗えば、紬お嬢様がお入りになられる夜には乾くでしょう?」

熟練の技が、光る。

八時半。

風呂から上がってきた菫は、
おもむろに学生服を着出した。

Q.これから外出ですか?

「違いますよ、紬お嬢様の急な学生服リクエストが来た時に、だせるでしょう?昼なら早退。夕方になれば早く帰宅できた雰囲気が」

この気配りこそがプロならではの続ける秘訣である、と菫は語る。

九時。
紬お嬢様の洗濯を終え、干した菫が部屋に戻ってくる。

Q.これからのご予定は?

「そうですね。まずは読書かな。今日読む本は、これです」

『ゆるゆり 1〜11』

Q.これは?

「日々勉強することだらけですよ。マーケティングの知識だって、何かに活かせるかもしれない」

プロメイドを続けるという覚悟は、決して譲らない。
菫の気持ちは選ぶ本にも現れていた。


昼、一時。

レンタルしてきたDVDを取り出しセットする。
一つ一つの動作が洗練されて無駄の無い動きだ。

「毎日、この時間になったら見てますからね。コツっていうか、慣れですよ。慣れ」

本日見るタイトルは
『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's』

「胸をね......打つんです」


196 : ◆WNo46kS79A :2014/03/12(水) 00:00:14 gFHUwS860
長いプロメイド期間の間に、過去の名作はほとんど網羅したという菫。

選び方にも、プロのセンスが光る。

午後三時
エンディングのスタッフロールを見終わり、菫は自身の部屋の布団に入る。

Q.早いですね?

「いつもこの時間になるとすこし疲れが出ますからね。お嬢様のためにも休憩をきちんと取らないと」

休憩の時すら、次を考える。
プロとしてひと時も気が休めないと言うと、菫おもむろにまぶたを閉じた。

「科学的にも証明されていますが、昼寝は体にいいわけですし。それでは、おやすみなさい」

枕下に紬お嬢様の写真を入れるのを我々は見逃さなかった。

Q.ちょっと待ってください。その写真は?

「これは、夢の中でもお嬢様に会えるように」

頬を染めながらそう囁く菫に我々は微笑みを禁じ得なかった。

午後四時半

布団から起き上がり、パソコンを起動する。
デスクトップのあるアイコンをクリックすると、動画が現れた。

Q.これは...??

「お嬢様の所属される部活動の部室の様子です。昔は選択肢がなかったけど、今はお嬢様の様子を見る手段はたくさんありますからね。恵まれてますよ。おっ」

早速、気になるものを見つけたらしい。
目つきが、鋭くなる。


「ふーん、なになに……最近はマカロンばっかでチョコ分が少ない?」

「......バナナケーキは必須......」

「この紅茶は……。なるほど、あの茶葉をお持ちに。そろそろなくなるでしょうから発注をかけておかないといけませんね」

「卒業旅行はロンドン……と」

ものすごい早さでシャーペンがノートに打ち付けられる。
プロのメモ、本領発揮だ。

Q.いろいろ書き込んでますけど?

「だいたいは他の方の体験談、趣向や紬お嬢様の生きた意見ですよ。把握しておくことは大切なことですからね」

Q.それが、今に生きている、と?

「はは、まあそうですね」

そうして、二時間。
午後七時。

モニタから顔を離すと、玄関に向かう。

「先ほど電車から降りられたはずなので、すぐですね」

「きた」

菫の声と共に玄関の重たい扉が開く。
紬お嬢様の帰宅である。
さっと荷物をお持ちし、コートを受け取り制服を脱がせる。
歩きながらも、笑顔はやめない。

これもまた、効率の果てだという。

「これはまあ、アマチュアの(メイドの)人たちもやってる技ですからね。自然体って奴ですよ」

午後八時。

お嬢様の食事もようやく一段落ついたらしく、菫は紬とおしゃべりの時間を得る。

エプロンのポケットにいれてあったハンディレコーダーをオンにする。

「お嬢様の声は永遠に、ね」

Q.もしかして日中にイヤホンをしながら聴いていたのは?

「ふふ、秘密です。では、お嬢様が待っているので」

二時間。
紬とのひと時に我々の取材の許可は降りなかった。
この扉の向こうで彼女たちは一体どんなことを話しているのだろう。


Q.なぜ、録音を?

「建前をいえば世間体ですかね。お嬢様が趣味、といえば、許容されやすいですから。もっともワーホリですから仕事が趣味みたいなところがあるんですけど(笑)」

午後九時。
またもパソコン前でメモにいりびたる。

Q.今度はどこを?

「これはお嬢様の部屋です。防犯対策は万全ですが、万が一のこともあるので」

夜になろうとが鳴り止むことは無い。
衰えないどころか勢いはさらに増す。

「この時間は、本当に勢いがありますから。つい熱が入っちゃって」

この日、メモは、十一時まで続いた。

時刻はとうに十一時半。

風呂に向かう菫だが、休む気配は無い。

Q.休まないんですか?

「お嬢様からのお風呂のお誘いがありましたので。
一緒に風呂に入って頭と目を覚まさないと。まあご飯食べて4時間たってるから寝てもいいんですけど」

食事は寝る四時間前には済ませる。
これもプロの譲れない流儀だ。
紬からのお呼びがかからない時はこのまま寝てしまうこともあるという。

「さて、お風呂か」

菫は真剣な表情で紬お嬢様を眺める。
膝にはパソコンにつながったキーボードの姿が。

「メモしながら。これが最高なんです」


197 : ◆WNo46kS79A :2014/03/12(水) 00:01:12 gFHUwS860
お風呂と同時に、キーの音は風呂場中に広がる。


「もともと、シャンプーを作る仕事に就こうか迷ったこともあるんですよ、でも今の(プロのメイド)をとった。後悔は無いですね」

そう語った菫。
志していただけに見る目も厳しい。

「あー、紬お嬢様、天使の輪っか!!決まってますよ!さすがですね!!今日も髪がお綺麗です!」

「ここカット、いつもより短めにしておきますね」

「おっおっおっ、ぶひいいぃぃぃ!!」

「あー、やっぱリンスはフランス製ですね。今度からそういておきます」

「あ、はなぢ」

お嬢様と別れ自身の部屋に戻りメモをまとめ直す。


時刻は朝の三時

菫はこれから寝るという。

Q.睡眠時間短く無いです?

「確かにね。でもお嬢様のために体調管理は気をつけているし、昼寝も効果あるからね。むしろ眠く無いよ(笑)」

Q.これを365日、つらくないんですか?

「正直、はじめのうちはやめたいと思ったこともある。毎日、溜め込まれる知識の行き場所もこれでいいのか。ってね。ただ、プロとして譲っちゃいけないラインを考えた時、アマとプロの違いは何だろうって考えて。それからかな。ふっきれて専念できる様になったのは(笑)」

Q.プライド、ですか?

「なんていうのかな。私にはこれが向いてる!っていう確信めいたものがあって。ほら、昔はプロどころか、メイドって、なかったじゃないですか」

Q.確かにありませんでしたが

「それが、今、プロになれる。だからこそ頑張ろうって。それが今の私で。プロを維持するのは大変だけど、お嬢様のために毎日この決まった生活は満足してます」

午前四時

消灯し、菫の部屋は闇に包まれたが、布団には明かりがあった。
手元にあるiphoneで、アプリを起動し
絶え間なくお嬢様の様子をチェックする。
待ち受けでは紬と菫のツーショットがまばゆく彼女を照らす。

画面を見つめ真剣に見つめる姿。
紬お嬢様のプロはそこにいた。

プロメイド、斎藤菫。
彼女は明日の朝もまた、六時には起きるという。

おわり


198 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/12(水) 00:09:58 iDaOTrUU0
「そ、そうなんですか」

「たまに、鳥の声に耳を傾けてみてそうしたら素敵な歌が聞けるわよ。はい、終わったわ」

「あ、ありがとうございます!」

「ううん。ねぇ、最後に・・・私の籠を開けてくれる人は見付かると思う?」

僕は彼女の籠を開けられない・・・それを感じ取れるような質問だった。
勿論、彼女にはその意味を込めて言ったんじゃないと思うけど、僕は彼女の籠を開けられない。

理由は分からないが、彼女は何だか凄く遠い。
一生歩いても無理だ。

「はい、居ると思います」

「ありがとう・・・私、あの二年で高校生なの。凄く楽しみ!あ、ごめんなさい。一通り治療はしたから、もう大丈夫よ!また会いましょうね!」

「はい・・・」


僕は彼女と執事に見送られながら友達の家へは行かず帰宅した。

それから、僕は彼女の家の前を通らなくなった。
遠い道を避けて近い道を行く事にしたのだ。

そして、現在。
彼女が僕の家に来た。

姉ちゃんの友達みたいで彼女は昔よりもずっと輝いていた。
籠を開けたの姉ちゃんかよ・・・。
そう感覚的に感じた。

僕は姉ちゃんに挨拶しろと言われ挨拶する。

あの日の事を覚えていると思い始めましてとは言わず澪姉と彼女にだけこんにちはと言った。

「始めまして」

遠い道が音を立てて消えた。


おわり

タイトル
聡「初恋」です


199 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/12(水) 00:20:37 j.GY/.MY0
>>161-177を投稿した者です。
投下ミスで、>>162>>163の間の1レスが抜けてしまったため、
企画者に許可を頂き、以下のリンクで外部に全文を公開させていただきました。

https://docs.google.com/document/d/1D9xp3kMAN89e9a6TQjh6x1DKVjmlJIuKMJT_B7CTGkc/edit?usp=sharing

グーグルドキュメントですが、アカウント等をもっていなくても閲覧できるように設定してあります。
お手数ですが、こちらをご覧ください。


200 : ◆agqlNoYF4o :2014/03/12(水) 00:47:24 j.GY/.MY0
見れない方もいらっしゃるとのことなので、こちらにも該当部分を追記させていただきます。
>>162>>163の間に以下の文が入ります。


教室を出たムギが向かったのは、講堂だった。

一階へ降りて下駄箱の横を通り、渡り廊下の方へゆっくりとムギは進む。
昼休みも半ばを過ぎていることから、わざわざ用もなしに校舎と講堂を結ぶこの場所を訪れる者などいなかった。
そもそも講堂は施錠されており、基本的に生徒の立ち入りは出来ないのだ。

入口に着くと、ムギは下腹部をかばうように押さえつつ、目を閉じて耳をすまし、周りに何の気配がないことを確認する。
そして、ポーチから取り出した合鍵で中に入った。

扉を閉め、内側から鍵をかける。
カチリという音が、やけにムギの耳には大きく響いた。

当然のことながら、無人の講堂は静寂によって満たされている。
ムギの記憶の中にある学園祭や新入生歓迎会のライブ、入学式、始業式、終業式などの様々な行事が本当にここで行われたとはとても思えない。

――当たり前だ。
そのどれもムギは直接体験していないのだから。


201 : ◆udPNnC.01I :2014/03/12(水) 01:15:13 uzU207Wo0
横レスすみませんが、>>163>>164の間ではないでしょうか?


202 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/12(水) 12:50:08 OPQRE/kY0
■作品リスト


一番手 … ◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」 >>6-8

二番手 … ◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」 >>9-24

三番手 … ◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」 >>25-36

四番手 … ◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合 >>37-58

五番手 … ◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」 >>59-69

六番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」 >>70-80

七番手 … ◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」 >>81-91

八番手 … ◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」 >>92-101

九番手 … ◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」 >>102-103

十番手 … ◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」 >>104-128

十一番手 … ◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」 >>129-148

十二番手 … ◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」 >>149-160

十三番手 … ◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」 >>161-163 >>200 >>164-177
 ※>>200は投稿の際、抜けてしまった一レスです。完全に繋がった形は>>199にあります(ガラケーは閲覧不可?)

十四番手 … ◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」 >>178-184

十五番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」 >>185-186

十六番手 … ◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」 >>187-192 >>198

十七番手 … ◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫 >>193-197


■アンケートサイト … http://enq-maker.com/jm7IQZf


203 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 00:39:23 cxkfTTQs0
企画の感想です。

1番手 唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」

スンナリと読めた。
が、読んでも特になんの気持ちもわかない。

雰囲気と冒頭の掴みは良い。

展開に関して
ラストは
『唯「これだけ人が集まってもまだ余裕があるなんてムギちゃんの家ってすごいんだね!」

さわ子「だから言ったでしょう」ドヤ』

で終わるけど、最後がさわ子のセリフで終わるなら律にでも
律「さわちゃんまで!?」
みたいな、原作の「呼んでないのになんでいるの!?」なノリで締めてあげられれば良かったんじゃないのかなと。

『だから言ったでしょ!』と言われても、冒頭に言ってる箇所ないから、「ん?」ってなる。
律「いや、いってねーし!」でも
付け足しがあればスンナリと行くけど......オチが弱い。


2番手  我らツムギュダーの光の導くままに!

2→スレタイバーン→1の方が本当に話の流れがスッキリするし、ミステリアスが増すよなと思えた。
(この流れなら1での『ところでこの部活は秘密がある〜』での説明と2での梓以外の4人での会話で内容が重複することがない)
結論として、1はいらない。


ツムギュダーなのかムギエイラなのか。

戦闘部分
→いきなり戦闘しててなんかイマイチわかんない、いや、わかるんだけどさ、1人1人相手していって、あずにゃんが唯だかムギの相手をするのは。
でも、せっかくのムギハウスようこその企画なので、そこは戦闘部分の描写で終わるんじゃなくて『ここは〜〜の間! 相手は私だ!!!』というポケモンのジムみたいな説明でさ、つらつらとムギルーム@ムギハウスの様子を描写してても良かったのではないかな、と。

あずにゃんが「学校を守る」ために戦う理由がない。
→先輩たちを正気に戻してヤルデス!!!!
なら、まだわかるけど(いや、でもこの醒めたあずにゃんという設定がヤルデスあずにゃんになるのを邪魔してて無理だな。高2年あずにゃんならカムバック私にゃんで乗り切れるけど、高1年の6月にゃんだしな。そもそもこの6月指定は何か意味があるのだろうか)、流されるままにコスチュームを渡されて、ムギハウス行って戦って。
いや、コスチューム渡されただけで、ここまで役になりきれるあずにゃんはむしろノリノリなのかも。

夢の受け取り方。
・あずにゃんが征服にノリノリであり、学校乗っ取り作戦の前にムギたちの仲間になっていた場合
夢は完全に寝る時の夢で、冒頭からのストーリーは完全にあずにゃんの夢の話。憂と和の夢の中での扱いに反省する、ムギへの服従心に矛盾がない

・あずにゃんが征服にノリノリであり、学校乗っ取り作戦後にムギたちの仲間になっている場合
夢は夢である。冒頭からのストーリーは事実上となる。
憂と和との関係に矛盾が生じる。

これこんな風に4パターンやってたらめんどくさいっ。書いててそもそもどっから夢になったのかな、と思ったけど学校内で紅茶式人間洗脳煙幕撒き散らしてるとこを思い出して推測をやめた。
『自分は二割の人間だったようだ。とはいえ八割の人間が洗脳されたのだとすれば、充分征服成功といえるのではないか。』
ここで既に梓は洗脳されていて、この部分から夢から覚めるところまでがすべて夢の内容だとしたらもうこの話はオールオッケーになりそう。

どこからどこまでが夢の中なのか推測することができない書き方でモヤモヤ終わり、リドルストーリーでもないため、読後感が若干悪い。


204 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 00:44:53 cxkfTTQs0
3番手 菫「わたしとお姉ちゃん」

台本調で、ラストのみ手紙の形で地の文。、
冒頭の入り、雰囲気、読みやすさ、展開、すべて普通なんだけど、その普通さがけいおんの雰囲気のウリなんですよね、偉い人。
ということで、終わりの手紙もよくあるパターンだけど、この話はやっぱこの終わり方でないと!
良かった。


4番手 ウィーンの百合

シルキとフィオラでベタだなー、と思いつつ、
シルキでググる。

--Wikipediaより引用
シルキー(英:Silky)は、何世紀にも続く旧家に現れる幽霊のこと。亡霊の一種だとも考えられている。イングランドの伝承では、シルキーはシルクのドレスを着ていて、シルキーが動いたときにそれが擦れてさわさわと音を立てる。そこからシルキーと呼ばれているとも言われる。家事などの手伝いをしてくれ、わりと美人の姿をしていると言われている。しかし、怒らせてしまうと嫌がらせをしたり怖がらせたりしてその家から住人を追い出してしまうと言われている。
--引用終わり

フィオラは花という意味らしいのでまあまあまあまあ。

亡霊が取り憑いているのか、それとも生まれ変わりで「くっ......血が疼く......」なのかは置いといて、
最後の電話のやり取りで互いをシルキお姉ちゃん、フィオラって呼んでいるからイマイチぼんやりとした終わり方になったなぁと。
いや、亡霊取り憑きが濃厚になった終わり方だったのかな。



5番手 菫「私とお姉ちゃんの日々」

この冒頭の書き方!!!!!
これなのよ!!!!すきぃ!!!!!
ただ、『私達は、それ以上の関係です。』という但し書きのわりには話がワガママお嬢様と困るメイドの関係だったかな、と。

展開はラーメンの下りで、ラーメン二郎に間違えて入ったらクソ面白いのに、と思ってたけど、普通のラーメン屋でしたな。
あと、「こんなに美味しいのね!」って言った後にレストランっぽくシェフに挨拶しようと厨房に入ったら、コンビニの冷凍ラーメン置いてあったりとかねwww

でも、紬パパンがオチとしてラーメン屋を家に呼ぶってのは、ムギハウスしてます。
むしろ、この話の流れの方がムギハウスしてます。

最後に挿絵が入ってたけど、やっぱ絵の情報量ってのは、文章に勝るものがあるなぁと。
他の人が挿絵なしでこれだけ挿絵ありは、文章のみの他のSSがかわいそうになるくらい。
挿絵の縛りとかなかったし、企画者も挿絵書いてくる人は想定外だろうし、挿絵の有り無し叩いているわけではない。本当にそこら辺はどうでもいい。
言いたいことは、絵の情報量ってすげーってことだけ。
だって、この絵1枚でこのSSに書いてあること終わるもの。
オチとして、父と斎藤のやり取りも書かれてて王道でした。

展開としては、山無し谷無しだけど、台本調によるテンポのよさ読みやすさのため雰囲気と読みやすさはよかった。



6番手 紬「かくれんぼ」
  
6番手にして、初めてムギハウスに普通に遊びにいくSS。
幼女のみんなひねくれすぎっ。
律澪:唯梓:紬菫=6:3:1の比率かな。
6人だとカップリングからあぶれなくていいね。
あー、ムギ、録画係りかぁとならなくていい。

区切りの使い方がやや、うるさいかな、と思った。
そこ分けるの入りますかね?と。


205 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 00:50:14 cxkfTTQs0
7番手 コトブキ・サクラメント

三人称の文章なんだけど、自分はちょっと違和感があった。
一人称の文章の主語だけ変えて三人称にしたような文章だという印象を受けた。
『ちょっとだけ言い淀み、紬のほうを見る唯。』
も『少しだけ言い淀み』とか、あまり口語表現を使わないようにするともっと三人称っぽい文章になると思う。
三人称に限らないのであれば、唯、澪と紬で視点変換して話を進めて行くのも面白いかもしれない。
最後の桜の場面は紬以外の唯か澪視点になるように考えて。

あと、語尾で『直感で感じ取っているから、かもしれない。』を同じような箇所で2回も使ったり。

途中の『紬女史』という表記。
■ 大辞林 第三版の解説より
じょし【女史】

見識や教養が豊かで,社会的に活動している女性。また,そういう女性に対する敬称として名前の下につける語。

律令制の女官の一。後宮で,文書の事をつかさどった。

古代中国で,王后の礼事,後宮の記録などをつかさどった女官。

うーん、女史なのかな。
そこまで多用しないほうが良さげなイメージが僕の中にはありましたがどうなんでしょう。

この桜の木の下で私が出来たの!
とかいうオチかと思ってました、ごめんなさい。

最後に唐突に唯澪しだしたからもう少し序盤になにかあると良かったかもしれない。


8番手 律「許嫁?」

全体的に男っぽいりっちゃんっすな。いやぁ、オチwww
冒頭で律に「あの眉毛......どっかで......」とか言わせておいたらよかったかもしれないけど、......いや、なくてもいいか。

紬父がぶっ飛びすぎてて、あまり話に入っていけない。
昨日助けてもらった女の子に自分の会社をねぇ。しかも紬との結婚をね。ぶっ飛んでますなぁ。

オチを読むと澪と律の関係がイマイチわからないね。
付き合ってるのなら、浮気調査として成り立ってるけど、付き合ってないのに調査か。


9番手 唯「そっくりさん!」 

よくぞ、1レスに......。
2レスに分けてもよかったのよ。
謎解きレスと解決レスみたいな。

全員まるで催眠術にかかっているかのような。
そんなに一緒にいるのになぜ見分けがつかない......!!!!

あんまり紬家に行った意味もないし。これ部室でできるよ!


10番手 純「突撃!隣の一軒家」 

冒頭の、この律と澪のやり取りはうまいなぁと思う。
原作ネタをうまく使いつつ、ムギ家に行けるようにストーリーを流れやすくしてる。

ものすごく関係ないけど、消費8%になったら147円のペットボトルジュースは151円と半端になって大変だよな、ということを思い出した。

澪と梓がツッコミを思っても口に出さないの、いいと思う。

あまりにも他のメンバーに家を見せたくないから、佐々木さんの家をレンタルしたのかと思ったら斜め上を行ってた。



11番手 律「ああっ紬さまっ」

この三点リーダーの...と・・・の使い分けはなにか意味があるんだろうか。

律→紬→澪→
律→澪→律→
澪→唯→唯(区切る必要あった?)→
澪→唯→紬→
紬→紬→紬→
律→紬→紬

場面転換の際に視点が変わるってのはよくあるけど、
あまりうまく視点転換出来てないとバサバサと慌ただしく視点が変わって読みにくいな、と思った。

18のうち
律視点4
澪視点4
唯視点3
紬視点7って割り振りだし
最初から最後までムギ視点で一貫していた方が良かったんじゃないのかな、と思う。

斎藤の『自分たちは何の努力もせずに、女神の力に頼るなど…神への冒涜、言語道断です』
このセリフはこの話の女神のあり方を全否定してる気がwww

最後の「みんな、私のお家に来てみない?」は3人の魂を言ってしまえば天国っぽいところに昇天させるってことなのかしら。


206 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 00:55:53 cxkfTTQs0
12番手 唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」 

梓「はぁ・・・あ、せっかくだし免税店みてこよっかな」
あ、このあずにゃんAB型してる!ってなった。
成田国際空港→スーズダリ
→ルブアルハリ砂漠→バンコク?

自分のモノわかりが悪いせいだけど、オチがわかりづらい。
律や澪にでも、説明っぽいことを言わせて終われば良かったと思う。


13番手 ムギ「失われた時を求めて」 

全体を通して読み終わった後だと、
(まるで教会かお墓みたい)な講堂に自由に出入りできる合鍵を持ち、施錠をするムギという設定がキてるな、と思う。

このムギは生と死を行き来する存在であり、協会とお墓という場所は生と死の気配が濃厚になる場所だからだ。

そんな場所に自由に立ち入ることができ、自ら鍵をかけることができるというのは本当にいいと思う。

冒頭は生理の話から始まるけど、それも月1でムギが入れ替わってるってことの暗示であると思える。

『 孵る時を忘れた卵のように眠り続けているという少女のことを。』という文章からも、生理の話がムギオリジナルとムギコピーの暗示であるということがうかがえる。
→言っててイマイチ自分でも意味はわかってない。
卵子がムギオリジナルの暗示で、
生理という現象(腹痛、痛みを伴う、月1という周期的なモノ)がムギコピーの暗示......とか


生理の話と講堂の場面を結びつけるとなると、講堂の果たす役割は子宮ということになる。
卵子が
成長するか、流れるか。
生か死か。
という対比関係は子宮の中でも起こっているからだ。

さわ子=助産師
ムギコピー=水子
という捉え方でなんでかあのムギの語りの部分を読んでしまったんだけど、それはちょっと飛躍しすぎな読み方だろ、と思う。

プルーストを読んだことがないから、どういう感じで話が似ているのか、それともタイトルだけなのかわからないが、
「失われた時をもとめて」は紬ではなくムギじゃないとダメなのは
これが、
ムギオリジナル(紬)が意識を取り戻す話なのではなくて、
ムギコピーが引き継いでいないはずの「マドレーヌ」に関する記憶を思い出すという終わり方であるからだ、ということはわかりました。


14番手 「聖童女よ、門を越えて行かん」 

一体どんなしきたりがあるのかと思えばwwwwww
いやー、いいオチでした。



15番手 紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」

すんなりと読めて、オチもちゃんとしてて良かったです。



16番手 聡「初恋」

最初から最後までとても少女漫画。

所々で文章に違和感があった。
「その家〜」と書かれた次の文章で「この家〜」だったり。

『僕は電信柱にぶつかった。』
ここまで少女漫画らしい雰囲気を醸し出していたんだから、もうちょっといい怪我の仕方なかったのか。

最後の場面はアニメでみんなで律の家に遊びに行った場面に繋がるのかと思ったけど、澪とムギしか遊びに行っていないのかね。


17番手 プロメイド---斎藤菫

書いた本人は面白く書いたんでしょうかね。
最後、菫が起きる時間、6時になってるけど、それだと冒頭と矛盾があるよな。


書かれた方、お疲れ様でした。
上から目線ですみません。
ブーメランはしっかりと受け止めます。


207 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 01:18:33 fVxBQ4ow0
ほとんど酷評だな、偉そうに

まあ俺も正直微妙なのが多くて斜め読みしてる有り様だけどね

って、書かなかったゴミが通りますスミマセンスミマセンでも微妙なんだから仕方ないよね


208 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 01:36:45 17j5fBcw0
感想乙
詳しい内容で面白かった

>>207
偉そうなんて言ってたら実のある意見なんて出せないだろ
無難なほのぼのSSを身内で無難に褒め合うだけでは面白くない


209 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 01:45:36 VJgUsmNs0
え?
この界隈って、否定意見をされると、やれ荒らしだのアンチだの寒いだの偉そうだの不満毛に言って聞き入れないんでしょ?

そりゃあ全てがそうじゃないって言うのは分かっているけど、感想書く身としては、ああいう反応されると馬鹿らしくなってくるのよ、こっちだって暇じゃない、相応の対応をとるまでさ


210 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 02:50:41 GLLq3iWQ0
感想おつおつ!

>>203-206さんもだけど、もし差支えなかったら、感想書いた人の各作品の各評価基準による点数も教えてほしいかも。
せっかく5つの評価基準でやってみよう、って企画だし、感想がどんな感じに点数に反映されているか、とかも知りたいなぁ。


211 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 06:17:08 8fxMIw5A0
感想乙
よく読んでるなー


212 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:51:43 Wqu2dEew0

純(……三月十四日、私のもとに一通の封筒が届いた)

純(中身はパーティーの招待状)

純(一応言っておくと、私は平均的な一般人だ。
 知り合いにそんな招待状を送るような、大層なパーティーが開ける人間なんていない)

純(とある後輩を除けば)

純(まあ、後輩の好意を無為にするわけにいかないし?
 私もそんな嫌ってわけじゃないんだし、こうして赴いたわけですよ)

純(そうしたら……)

梓「あ、純だ」

憂「純ちゃんも招待されたの?」

純「結局いつものメンツかーい!」

梓「なにか不満?」

純「いや、下手に知らない人ばっかよりはマシだけどさあ」

憂「私は満足だけどな〜」

純「それで二人とも、どうして先に行かないの? 私より先に来てたんでしょ?」

梓「ほら、この扉を見てよ」


 【これらの作品を読み、感想を述べた者のみに扉は開かれる】


純「ストレートだわー。超ストレートに感想言わせようとしてるわー」


213 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:52:23 Wqu2dEew0

憂「というわけで、感想です!」

憂「まずは一番手◆IxdIiBIF62さんの、“唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」”です」

梓「初っ端は軽く読める作品から。短くまとまってていい感じだね」

純「ムギ先輩の家の広さも実感できる、良い作品だと思うなー」

憂「私もくすりときちゃった。そんな人まで呼んじゃう!? みたいな人も多かったよねー。
 ところでオカルト研のハマーン様って、どっち?」

梓「さあ……」

梓「あとデラであっちの鳥を彷彿させたのは、私だけかな……?」

純「まあ私ほどの記憶力をもってすれば、
 どれが誰でどんな顔なのかちゃんとわかるけどね!」

梓(なんでこんな根拠なしにどや顔できるんだこいつ)


214 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:52:58 Wqu2dEew0

梓「次は二番手、◆NzKvjMYglEさん……というか自作の、
 “「我らツムギュダーの光の導くままに!」”だね」

憂「そこまで難しく読まない作品だよーって、作者は言ってたみたいだね」

純「なにも考えずに読む、シュールなナンセンスコメディを目指したってこと?」

憂「うーん、そういうことかな。どちらかといえば、
 “コメディ”じゃなくて“ファルス”と呼んでほしいとも思ってるみたいだけど」

梓「途中で私の夢でしたー、みたいなことになってるのはどういうこと?」

憂「あれは現実世界で一人称になってることに注目して欲しかったみたい。
 つまり、三人称で書かれていたことは“全て夢”なの」

憂「ただその夢が、本当にただの夢なのか、過去のことを思い出して見た夢なのか、
 それをどう思ってくれるかは……読者次第なんだって」

憂「まあ今やってるアニメに感化されて書いただけのものだから、作者自身もよくわかってないらしいけどね〜」

純「……あ、代理で投稿してくれた方、ありがとうございました。
 まさかこのタイミングでパソコンを修理に出すことになるとは思いませんでした」

純「台本形式ならまだしも、地の文形式をスマホから投稿するのは
 ちょっとやりにくかったのでかなり助かりました!」


215 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:53:25 Wqu2dEew0

憂「次は三番手◆gOEl3XmF6Uさんの、“菫「わたしとお姉ちゃん」”だね」

純「ほのぼのしてたねー」

憂「二人の成長していく姿が微笑ましいね〜」

梓「でもちょっと淡泊すぎると思った。起伏に乏しいんじゃないかと」

純「あー、会話の合間にくすりとくる掛け合いとかいれて、
 テンポよく展開していけばよかったんじゃないかなあ?」

梓「ほのぼのと淡泊は表裏一体? いえ、そここそ克服して欲しい作品でしたね」

純「まあ私ほどに裏表のない人間をもってすれば、
 どちらか片方の面のみを見せることが出来るわけなんだけどね」

梓(意味がわからん)


216 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:53:53 Wqu2dEew0

純「次は四番手◆GGEU0vsSgcさんの“ウィーンの百合”だ!」

梓「歴史には詳しくないけど、オリジナリティに溢れていて私は好印象」

憂「名前の元になった人がいるのかな?」

純「さあ……ま、仮にいたとしても、こうして作品として仕上げられれば、
 作者の勝ちだとは思うね」

梓「最後の掛け合い、あれはどう受け取った?」

憂「私は二人に幽霊が乗り移っちゃったんじゃないかな〜って」

純「あ、私はムギ先輩とスミーレが二人の生まれ変わりで、
 この話をきっかけに潜在意識が覚醒したんじゃないかなって思ってるよ!」

梓「やっぱりわかれるよね。この作品の場合、これは明かさなくてもアリだと、私は思いました」

純「まあ私ほどのスピリチュアルな術をもってすれば、
 潜在意識を覚醒させつつ降霊術をすることも可能なんだけどね」

梓「いっそ呪われて、その口閉ざされればいいと思う」


217 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:54:48 Wqu2dEew0

憂「次に五番手◆IDiYMzl2Lsさんの“菫「私とお姉ちゃんの日々」”だね!」

梓「こっちはコミカルに日常が展開されていて、
 読んでいる人を飽きさせない工夫がこらされていたね」

純「良いほのぼの、ってやつ?」

梓「うん」

憂「私、紬さんもスミーレちゃんも可愛いと思うけど、
 この作品で一番可愛いのってお父さんだと思う!」

純「それは確かに」

梓「お茶目でいいキャラしてるよね。なんだかんだで娘に優しいってところも良い」

梓「あと挿絵には驚いた。思わず保存しちゃったよね」

憂「ただオチが弱いような気がするんだ」

憂「ここまでの流れはとっても良かったから、こう、ぐいっとくるようなオチがあれば、
 さらに良く仕上がってたと思います!」

純「まあ私ほどのお風呂マスターをもってすれば、
 お風呂を使った一発芸で最後を綺麗に締めることができたでしょう」

梓「言ったね? 確かに言ったね? ボイスレコーダーに録ったからね?」


218 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:55:48 Wqu2dEew0

梓「次は六番手◆XksB4AwhxUさんの“紬「かくれんぼ」”だね」

憂「これもまたほのぼのでいいのかな?」

純「だね。それもif設定だ!」

梓「ifは二次創作の醍醐味の一つでもあるね。こういった作品は好きだな」

憂「随所に読者を飽きさせない掛け合いを織り込んでもいるよね」

梓「まだちょっと淡泊に近いかなっていうのが私の感想だけど」

純「梓、厳しくない?」

梓「うるさいな。それなら純がなにか言ってよ」

純「まあ私ほどの豊かな心をもってすれば、
 今の梓みたいにイライラすることは無いんだろうけどね」

梓「話題逸らすな!」


219 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:56:32 Wqu2dEew0

純「次は七番手◆IxdIiBIF62さんの“紬「コトブキ・サクラメント」”だよ」

梓「なんといっても綺麗だね」

梓「大学に進んだ三人が桜が丘の風景を写真に収める。
 これだけでとっても綺麗な画が頭に浮かび上がっていくよ」

純「そこに桜が添えられて、まさしく画に花を咲かせてくれているって感じ!」

憂「紬さんの粋な計らいも良いよね! 応援してくれてるんだね〜」

梓「ただ“他にもカメラを持っている友人はいるにも関わらず唯が澪を選んだのは前述の理由以外にも似通ったセンスをしていることを直感で感じ取っているからかもしれない”
 というところなど、やや読点が少ないことが気になりましたね」

梓「あと偶然にも同じ三人称を使ったものだからか、細かいことが気になってしまいました。
 “とのことなので、結局我々が知りたい点はこの場では明らかになることはないだろう”の“我々”、
 これは作者と読者を指しているのだろうと思いますが」

梓「この話で先輩三人の他に“その話を覗く我々”が現れてしまうのは、
 空気を損ねることに繋がってしまっていると、私は感じますね」

梓「三人称の文章では確かに“語り手を想定した文章”もアリですが、
 この作品に関しては、私はナシだったなあと」

梓「それ以外の話の展開などは、概ね良かったと思います」

憂「万年桜かー……すごくロマンチック……」

純「まあ私ほどの努力キャラがする鍛錬の積み重ねをもってすれば、
 その桜も品種改良で作り上げることも不可能ではないんだけどねー」

梓「そんなキャラ設定初めて聞いたわ」


220 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:58:31 Wqu2dEew0

梓「次は八番手◆6nSiQG3K46さん“律「許嫁?」”だね」

純「正直途中まではお父さんのやり方に、ちょっといらっときてた」

梓「あんたの豊かな心どこ行った」

梓「……それはさておき、最後のオチは全てを持っていったね」

憂「この作品はそれに始まり、それに終わるよね〜。まさにそれに尽きる!」

純「ただそれでも間の展開、もう少しなんとかならなかったかなあとは思う。
 ここを面白く見せて読ませていけば、最後のオチも強烈になるのにって」

梓「最後だけを見てても良くない、そんな具合かな?」

純「まあ私ほどの予見能力をもってすれば、
 最後の展開を先に知り、ベストな道を選択することができるけどね」

梓「それで何度でも失敗して何度でも繰り返せばいいんじゃない」


221 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:58:57 Wqu2dEew0

純「次に九番手◆udPNnC.01Iさんの“唯「そっくりさん!」”!」

憂「私、この作品のスミーレちゃんに送りたい言葉があるよ」

純「私も!」

梓「奇遇だね、私もだよ」

憂「じゃあいくよ。せーのっ」



憂・純・梓「そりゃそうだ」



純「……だよねえ」

梓「といった具合に、スミーレの最後の一言がパンチきいてて良かったです。
 前にあったif設定とは逆の未来が見えてきますね」

憂「あんまり望ましい未来じゃない気がするけど……」

純「さっきも言ったけど、私ほどの予見能力をもってすれば、
 それを回避する手段だって選択できるんだけどね」

梓「さっきも言ったけど、もう何度でも繰り返せ」


222 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:59:33 Wqu2dEew0

憂「次に十番手◆ym58RP.VtEさんの“純「突撃!隣の一軒家」”だよ〜」

梓「いやあ、良かったです。純の出番がそこだけで」

純「おい」

純「……どうせ私はタイトルに採用されても、すぐに消えていなくなるネタキャラですよーだ」

憂「すねちゃった……」

梓「えー、純のことはさておき、これはギャグものですよね。
 最後の妖怪大行進がありますし」

梓「ただそれにしては、作品に入り込めませんでした。
 読者を流れに乗せ、夢中にさせることがギャグもので大切だと思うので、
 そこで失敗してしまったのは痛かったと思います」

憂「それにしても、あの妖怪たちは一体……」

純「……まあ私ほどの寛容な人間をもってすれば、
 妖怪の一つや二つ、友達にすることだって簡単なんだけどね!」

梓(今度日本一怖いお化け屋敷に連れて行ってやろう)

純(あ、悪寒が……)


223 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 11:59:59 Wqu2dEew0

純「次は十一番手◆ZPguhvsw0Aさんの“律「ああっ紬さまっ」”だよ」

憂「素敵な世界観だよね」

純「うーん、まさにムギ先輩は女神! だね」

梓「なんというかムギ先輩のキャラもあって、
 女神という設定がなんの違和感もなくすんなり受け入れられた」

梓「お嬢様ではなく女神だから用意できた代物というところ、その活かし方には素直に感心しちゃったよ」

純「最後をスレタイでびしっと締めたのも、綺麗に決まってたね」

憂「二年生編、三年生編も待ってます!」

純「あーあ、私も天界行ってみたいなー」

憂「雲の上を歩けるのかな? それで、家はやっぱり西洋の神殿風?」

純「まあ私の想像力をもってすれば、
 その更に上をいく……そう、想像を絶する世界が容易に想像つくね!」

梓「想像を絶するのに容易にできる想像ってなに」


224 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 12:00:43 Wqu2dEew0

梓「次は十二番手◆K0TON1AIBgさん“唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」”だよ」

梓「うん、これは良いね。ギャグものとして完成してる」

憂「序盤のラクダで読者を引っ張り、どこかぶっとんだ展開で夢中にして、
 最後のオチを見事に決める……申し分ないギャグものだと私も思うよ」

純「ここどこ!? って思い切り笑っちゃったよねー」

梓「あと人物ごとの役割が適役」

憂「どこか悟ってる澪さん、ツッコミ役の律さん、
 どこまでいっても自然体のお姉ちゃんと梓ちゃん……皆、面白かったよ!」

梓「あと最後のドジっ子ムギ先輩が可愛かったです。今回投稿されたギャグ系では一番好きでした」

純「まあ私ほどの適応力をもってすれば、
 地球一周の旅だろうがなんだろうが簡単にこなしてみせますけどね」

梓「是非とも純には地球規模でサイコロの旅させたいなあ」


225 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 12:01:17 Wqu2dEew0

憂「次は十三番手◆agqlNoYF4oさんの“ムギ「失われた時を求めて」”だよ」

純「どっかでタイトルだけ聞いたことあるなあ」

梓「私も原作未読。まあそこはどうでもいいんじゃないかな」

梓「こういう切なくて心が痛いお話、私は好き」

憂「さわ子先生の優しさが染み渡るよね〜」

純「“マドレーヌでお茶するのが夢だったの”の意味を、この“ムギ”先輩がわかる時は来るのかな……」

梓「断片的な記憶が積み重なれば、あるいは……って感じ。
 でもこのお話は最後にムギ先輩が“ただ笑った”ことで終わりなんだよ」

憂「切ないね……」

梓「……あ、“「こら、唯。 いきなり立ち上がったら机が揺れるわよ」”はちょっと違和感を感じました」

梓「律先輩がふざけた口調で言ってるのかな、とは思いましたけど、
 それにしても字面はすさまじく違和感を醸し出してます」

純「まあ私ほどの正義の心をもってすれば、
 絶対にこんなことは許さなかったわけだけど……ねえ……」

梓(さすがの純も気持ちが沈んでる……!?)


226 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 12:01:57 Wqu2dEew0

純「次は十四番手◆SPYbqROGM2さんの“「聖童女よ、門を越えて行かん」”だよー」

梓「古来より伝わる家柄と荘厳な香りを漂わせながら、
 探知機とかいうやけに近代チックなアイテムが顔を出したときはギャップにやられたね」

憂「読みながら、なんでそこは科学的なの!? ってツッコミたくなっちゃった」

梓「それと律先輩、澪先輩はなにしてるんですかねえ」

純「梓もなにしてるんですかねえ」

梓「うぐっ」

憂「これもオチが怒涛の展開、というかお茶目な感じだったよね」

梓「オチ良かったね。そういえばムギ先輩、誰も来なかったことどう思ってるんだろ……」

憂「きっと、そういう風に思っちゃってるよねえ……」

純「まあ私ほどの古来より伝わる風習を大切にする意識をもってすれば、
 時として人を許すこともやぶさかじゃないわけだけど」

梓「純に許されてもなあ……」

純「不満だっていうのか!」


227 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 12:02:56 Wqu2dEew0

憂「次に十五番手◆XksB4AwhxUさんの“紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」”だね!」

梓「これもまた超短編だ。これも短くまとまってるのかな」

純「衝撃の事実だったね」

梓「ね。まさかの事実だった」

梓「ただ正直言わせてもらうと、印象には残りづらかった。
 超短編なんだから仕方ないことなのかもしれないけれどね」

憂「下手すればこれ野宿になるのかな……」

純「まあ私ほどの生活スキルをもってすれば、
 野宿の二日や三日程度じゃ、すぐにはへこたれないんだけどね!」

梓「じゃあちょろっと行ってきてよ」

純「やだよ死んじゃうじゃん」

梓(どうしろと)


228 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 12:03:57 Wqu2dEew0

梓「次に十六番手◆H2u4HYHizsさんの“聡「初恋」”だね」

憂「切ないお話だよ〜……」

梓「うん、切ない。最後の言葉も残酷だ」

梓「……その残酷さは好みだけど」

純「ただ即興だったのかな? そのせいで文章の粗さが目立っちゃってるね」

梓「うん、あんまりそういうの気にしないで読もうと、
 最近は心がけてるんだけどね。ただこれが気になった」

憂「どこ?」

梓「“「いつも外を見てましたよね」”“「いつも空を見てるって言ったよね」”の部分。これは致命的」

憂「あ、そこは私もちょっと詰まっちゃった。流れが途切れちゃうもんね」

純「まあ私ほどの早業をもってすれば、
 どんな作業だって正確に素早くこなすことができるわけだけどね?」

梓「それなら夏休みの宿題も手伝わなくて大丈夫だね」

純「ごめんなさい私が悪かったです!」

憂「あははは……」


229 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 12:04:28 Wqu2dEew0

純「……最後! 十七番手◆WNo46kS79Aさんの“プロメイド---斎藤菫”だよ!」

梓「こういうQA形式っていうのかな。この形は好き」

梓「ただこれも話に入り込みづらい。ところどころ読みにくい感じがあるね」

憂「改行の仕方、時間の区切りの入れ方、どれも決まってないからかな」

梓「質問者がいて、それに回答しつつ話を進めるタイプのものって、
 ある程度“型”を決めておいた方がいいと思います」

梓「例えば雑誌のそれも乱雑な形式ではないように、ですね」

純「まあ私ほどの鋭い質問を繰り出せる能力をもってすれば、
 回答者の素性を丸裸にする回答だけで全部が埋まっちゃうわけだけどね!」

梓「性格悪い記者になりそうだなあ……」


230 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/14(金) 12:04:58 Wqu2dEew0

憂「……ふう、全部の感想を言い切ったね」

純「まさかたった四日に十七も作品が集まるなんて、思ってもいなかったよ」

梓「そうだね。さて、感想も言ったことだし、この扉は開けてもいいんだよね?」

純「あ、扉のこと忘れてた」

梓「……まあそれなら置いていくだけだけど」

純「勘弁してくだせえ!」

憂「大丈夫だよ〜。純ちゃんだって扉を開けられるんだから!」

純「憂ー……!」

梓「えー……というわけで、感想はこれで終わります。ありがとうございました!」



 ‐おしまい‐



憂「じゃあ扉開けるよー……えっ?」

純「うわっ、なにこれ」

梓「どういうこと……?」



 ‐おしまい?‐


231 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 12:15:07 rb3p60v20

感想を書きます
点数を公開するか考えたけど、それに他の人の評価

が引っ張られそうな気がするので止めておきます。


一番手 … ◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギ

ちゃんの家に行く話」 >>6-8

まさにスレタイまんまだった


というかそれしか無かった



二番手 … ◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダ

ーの光の導くままに!」 >>9-24

読者を引き込みやすい地の文と構成だと思う。
読みやすい地の文を書けるというのは、それだけで

得だ。
あとは少しの工夫で、読者を易々と引き込むことが

出来るのだから。
安っぽい秘密結社ノリに薄ら笑いを浮かべながら読

んでいた。

が、ネタSSかと思いきやガチ過ぎてちょっと付い

ていけない。
温度差の切り替えが早すぎる。
ぬるま湯に浸かっていたと思ったら、塩水に氷が散

りばめられた水風呂に早変わりした気分や。

幼馴染の和と実妹の憂はあっさりと蹴散らしておい

て、出会って2か月そこらの後輩(梓)だけ
仲間にする意味が分からない。
やるなら徹底した方が分かりやすくてまだ良い。
中途半端な印象を受けたため、読後感はあまり良く

なかった。

というか、作者自身がよく分かっていないくらいな

ら、いっそやらない方が良い。
読む人はもっと分からない。
想像する楽しみと、考えなきゃならない苦痛は、別

物だ。




三番手 … ◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉

ちゃん」 >>25-36

普通。

でも、“わたしを軽音部まで連れていってくれてあ

りがとう、お姉ちゃん。

の下りがあったせいか、読後感は良かった。"



四番手 … ◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合 

>>37-58

スミーレのルーツを題材にした伝記系。
サラエボ事件など、実在の事件を取り入れることに

より、臨場感が増していいと思った。
もっと掘り下げてもいいと思ったが。

ただ、後半が雑。
姉妹同然に仲がよくて家族ごと琴吹家に引き入れた

のなら、姓を琴吹にさせんじゃねえの、
なんでわざわざ斉藤姓にしたのよ、とか、フィオラ

がなんで100年後のスミーレになっちゃってんの


生まれ変わりなの? 電波なのちょっとした諧謔な

のなんなの?


232 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 12:15:36 rb3p60v20

五番手 … ◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃ

んの日々」 >>59-69

>紬「ねぇ菫、私も給仕がしてみたい!」
>
>菫「え、ダメだよ。もしもお父様に見つかったら…

!」
>
>紬「そうそう、そのお父様がね…」
>
>紬「お父様は最近、私の事ほったらかしだから…す

こし驚かせようと思って!」

ここでいうお父様って紬の父親なんだから、菫は“

旦那様”、もしくは“ご主人様”、と言うのでは?

 
いくら娘たちは姉妹同然に打ち解けあっているとは

いえ、使用人の娘と雇い主ではまた話が違うんじゃ

ないのか。

話そのものは、紬家のハートフルコメディ、という

感じで微笑ましく面白い。
紬父と斉藤氏のリアル神田川にワロタ。……別に石

鹸はカタカタ鳴ってないか。


SS企画で絵を描く奴は何なの?
別に表現の一手段として否定はしないけど、そんな

暇あったらSSを磨けよ皆それで勝負してんだよ、

と思う。
文章能力と絵を描く能力は別物だと思う。
文章で表すだけの力が無いか、努力不足にしか思え

ず、ガッツリ減点した。
絵は上手いし努力してるんだろうな凄いな、とは思

うけどね。



六番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」

 >>70-80

キャラの言動がそれっぽい。
皆の前ではお嬢様呼びを嫌うムギとかね。
卒業を目前に控えた4人と、追いかける2人の胸中

が、かくれんぼによって浮かび上がってくる。
隠れた想いを見つけ出したのは、他ならぬ大切な友

人たちか。

短いながらも各キャラを深く掘り下げており、全体

的に良い雰囲気で纏まっている。
これは愛が無いとできない芸当だ。地味ではあるが

、良作だと思う。



七番手 … ◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サ

クラメント」 >>81-91

ツンツンでビクビクンとなっちゃう澪ちゃんマジ敏

感ハァハァ



八番手 … ◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」 

>>92-101

律がおやじ狩りからおっさんを助けたとき、スレタ

イと繋がって展開が読めた。
別に減点するようなアレではなくて、逆に今後の展

開に期待していた。
“展開を読まれる”、というのは、そういうメリッ

トもありそうな気がする。

クラスメートの前ではお嬢様扱いを嫌うムギは、車

なんて手配しようとはしないのでは?
電車を使うのが自然な気がするが。

オチの扱い方が雑過ぎる。
もう少しなんとかならんかったのか。

忍者なら忍者でも良いし、“やらせ”なら“やらせ

”でも良い。
そういうオチ自体は否定しないが、せめてそれらし

い“違和感”なり“伏線”なり用意できなかったの

か。
唐突過ぎて展開についていけない。
せっかく盛り上がってきたのに、一気に白ける。

それに律が澪と紬の間で悩むとすれば、この場合、

友情とお金の天秤では無く、
自分の意思と友情の天秤になるのではないか?
少なくともお金に関して葛藤した様子は無い。

あとついでに、所々の文章に助詞が欠けており読み

づらい。



九番手 … ◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん

!」 >>102-103

うん




うん(言うことが思いつかず困った時にありがちな

反応)


233 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 12:16:07 rb3p60v20
十番手 … ◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一

軒家」 >>104-128

有り得ない第32回とか、ウザがれるレベルで計算

しちゃった1143円とか、
ぶっとんだ(?)数字ネタは個人的に大好き。
コメディタッチな冒頭はそれでも軽音部らしく、導

入としては申し分ないだろう。

このりっちゃんは随分と段取りが良いな、仕事の出

来る子は大好き。

あと、なんだこのバナナ主食推し。バナナはおや、

おや……主食だよね。(´・ω・`)

なんでお金持ちの琴吹さんが、普通の民家、それも

いわく付きのホーンテッドマンションに住んでんの


いや別に住んでても良いけど、その変膨らませて伏

線にすれば、オチが強調されて面白くなったと思う





十一番手 … ◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さ

まっ」 >>129-148

入学したばかりの女子高生が、“軽音部”をわざわ

ざ“けいおん部”とするのは不自然。
でも、置かれた状況や律の焦りがつぶさに伝わって

くる描写は良いと思った。

天界より下生なさる女神さまからは、どことなく聖

おにいさん的な雰囲気を感じる。
スレタイから察するに、元ネタがあるとすれば別作

品なのだろうが。

便利な力があると、人間はついそれに頼り切ってし

まう。
紬が能力の制限を受けるのは仕方のないことで、そ

して物語はここから面白くなる。
ここからは、自分で苦労し、乗り越えなければなら

ないからだ。
そこにドラマが発生する。
毎回なんらかの理由で、道具の使用に制限が掛かっ

てしまう劇場版ドラえもんみたいな。

自分の無力さを知った紬の苦悩、さわ子のフォロー

、そして力が使えないと打ち明けた時の軽音部の反

応が良かった。

が、肝心の“特訓”部分が時間の関係かしらんがオ

ミットされており、これでは成長した証というもの

が、
見えにくくなるのでは無いか。

終盤はとくに紬の精神的な成長に重きをおいている

のだから、学園祭部分をもっと膨らませて、
皆と協力し合って自分たちの出来る最高のライブ、

最高のバンド仲間を創り上げた、
的な結果を示せば、より強力な説得力をもって収束

するのでは無いだろうか。

最後に企画スレタイを回収するなど、話としてはよ

く纏まっている方だと思う。お疲れ様でした。


十二番手 … ◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃん

の家は遠いなあ」 >>149-160

>- 砂漠 -

 確かに遠いなww 

>すうじゅうじかんまえ!
 
遠すぎるわwww
ってなるほど、時間稼ぎか、にしても酷過ぎるwww

>澪「学校通えてないしな、この設定だと…」


! ?  

全体的におバカなノリで楽しめた、乙!



十三番手 … ◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた

時を求めて」 >>161-163 >>200 >>164-177

いや、同じ臓器を痛めるであろうムギを大量生産し

たところで、結果が似通い進展しないのは、
想像に難くないはずだ。
いくらお金持ちであっても、それほど愚かではない

と思う。
例えそれが、表向きの理由であり、裏では様々な思

惑が交錯していたとしても、だ。

が、心理描写は見事で、さわ子の苦い感情が伝わっ

てきて没入しやすい。

“知るはずの無い”記憶と想いを求め、独りでマド

レーヌを焼くムギと、
そのマドレーヌを部室に持ち込むさわ子の心情を思

うと、胸に迫るものがある。

しかしながら、そもそもクローンを作る必然性が上

記のように見いだせず、ただのデウスエクスマキナ

にしか思えなかった。


234 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 12:17:17 rb3p60v20


十四番手 … ◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」 >>178-184

澪⇒オナニーで“破った”?
律⇒聡☆きゅんと一晩の過ち?(残念ながら本番は無かったっぽい)
唯⇒男と付き合っていない=処女という認識か
  付き合っていないだけで、実はヤリマンだったしても、唯ちゃんの中では処女なので問題なし
  よかったなお前ら、唯ちゃんは処女やで(ニッコリ)
梓⇒あー、これはもう玩具使ってますわ、完全に挿入ってますね、仕方ないよねムラムラ



十五番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」 >>185-186

琴吹家はホテルかwww
オチもワロタ

ん? 琴吹家はホテルであり、ホテルなら予約さえすれば俺でも入れる、三段論法より……


    良 い 事 思 い つ い た 



十六番手 … ◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」 >>187-192 >>198

>この家は普通の人が大金を手にしたらこう言う家を建てるという想像の結晶だ。

>
僕にはこんな家建てる事は到底無理だろうなぁと子供の僕は現実を見せ付けられた。



この聡は無駄にませていて悲しいな。

多くの子供は現実を知らない。
大きな挫折も無く、苦労もほとんどした事が無い。
だからこそ、現実離れしたような、理想と希望に満ちた大きな夢を描くものなんじゃないか、と思っている。
それは、ともすれば大人の押し付けめいた考えかもしれない。
でも、とても
素敵なことだと俺は思う。
大人は現実を理解しつつある分だけ合理的で、無駄にペシミストと化してしまう。
この聡は小三ながら大人よりのネガティブさで、お兄さんはちょっと悲しい。

とはいえ、年上のお姉さんにドキマギする聡は初々しくて可愛かった。
初恋は実らないものだと言うし、終わり方については否定しないが、
終始ネガティブな聡についていけず、読後感は悪かった。


というかね、企画締切近くになって即興で書く馬鹿なんなの? 
駆け込みで人が殺到するって分かんないの? 
初参加で企画の事よく知らないならまだ分からんでもないけど、
書き手スレみれば自分が何やってんのか察するだろ常識的に考えて。
なのに、謝罪の一言も無いとか、SS以前に人間性を疑ってしまう。

書き手の批判はあまりするべきでは無いのだろうが、それがSSにも滲み出ているようにしか思えない。
他の参加者を待たせるくらいなら、書き溜めてからでも遅くは無いだろう。
少なくとも、1時間以上も待たせるレベルの出来でもないし、内容でもない。



十七番手 … ◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫 >>193-197

斉藤菫女史のプロ意識と愛情が伝わってくる珠玉のドキュメンタリー。
仕事の流儀パロSSは大好きだから楽しめたのだが、菫が学校に行かず仕事していたり
(中学生なら義務教育だろ、行かなくていいのか? また取材班も聞かなかったのか?)、
他の人も感想で書いているが、菫の起床時間が違っていたりして、粗が目立っているのが悲しい。

シャンプーを作る仕事に就こう、て、だから貴女中学生でしょうが! 時間無くて焦った?


235 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/14(金) 12:17:42 rb3p60v20

以上です
書いた人、お疲れ様でした。


236 : >>231-235 :2014/03/14(金) 12:32:25 rb3p60v20
追記

感想が不自然な箇所で改行されているのは、メモ帳が右端で折り返したからです
僕は悪くありません、メモ帳が悪いんです

確認してから投下しますごめんなさい


237 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/14(金) 21:35:26 HxRoEtu.0
みなさん感想ありがとうございます
しかし作品への感想を逸脱した発言が見られます
作者への非難などはお控えください


238 : 236 :2014/03/14(金) 21:44:00 HfEeQc6g0
非常識な行動をとっても誰も責める人がいなけりゃ、また誰かが同じことを繰り返すだろまた誰かに迷惑をかけるだろ何言ってるんだ

行き過ぎた発言があるのは認めますがね、間違っているとは思ってないよ

そもそも原因がなけりゃ結果はないのだからね、今貴方が忠告したみたいにね


239 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/16(日) 16:44:26 PWM9eLzM0
全作品読みました。
作者の皆様お疲れ様です。ありがとうございました。
作品それぞれの個性を楽しませて頂きました。同じテーマでもいろんな作品が書けるものですねー。
以下、感想です。作品によって長短はありますが、ご容赦ください。

1.唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」

アイデア勝負の作品。企画のトップとしては勢いがあって相応しいと思いますが、それ以上でもそれ以下でもない。
ラストのさわちゃんのセリフはアニメから引っ張ってきていることはわかりますが、これで落とすなら冒頭でしっかり伏線を張っておいた方がよりオチが際立つのでは?

2.「我らツムギュダーの光の導くままに!」

バカバカしさに包まれた世界観、面白かったです。
練り込んで力を入れて書かれたということがとても伝わりました。
4あたりから作品の特長であるアホらしさに勢いが出てきて、笑わせていただきました。
ただ、中盤の面白さに対して、冒頭の掴みがちょっと弱いかも。もっと最初から飛ばしていって欲しかった。
三人称の地の文がちょっと読みにくく、なんとなく不慣れな感。でも冷静で淡々とした調子は作品の笑いを引き出していたと思います。
この作品を読んでいて面白かったのは所謂「ナンセンスギャグ?」なところだったので、ラストはちょっと拍子抜け。こういうエンドもアリだと思うのですが、最後までギャグの調子で突っ走って欲しかったです。
中盤の面白さには引き込まれたのですが、冒頭とラストが少し私の好みとズレていました。

3.菫「わたしとお姉ちゃん」

かわいらしいお話だなと思いました。ただもう少しインパクト、読者の心に引っかかるアクセントが欲しかったです。

4.ウィーンの百合

琴吹家と斉藤家の馴れ初め、という題材は面白いなと思いました。
20世紀初頭の欧州の雰囲気はこのふたりにぴったりですね。
ただ、シルキとフィオラが惹かれ合う部分の描写をもっと膨らませて欲しかったです。お互い好き合っているんだ、という部分が今ひとつピンとこなかったので、感情移入しきれず、以後の展開が入ってきませんでした。
余談ながら、第一次大戦は、開戦当時まさかこれほどの規模になるとは予想されていなかった、と聞いたことがあります(記憶違いでなければ)。ですので、「宣戦布告…ついに来たか…これは世界大戦になるぞ!」というセリフに引っかかりを覚えました。
野暮なことを言ってすみません。ですが、実際の事件を素材にとる場合、下調べをしておかないと、些末なところで足を引っ張られてしまうので少し注意をした方がいいかと思います。

5.菫「私とお姉ちゃんの日々」

ラーメン、銭湯、とムギが楽しみそうな素材。
読んでいて映像が何となく想像できる展開でした。
原作・アニメで登場のない紬父を登場させて斉藤と絡ませるのも二次創作ならでは面白さで、設定作りがうまいなと思いました。
イラストについては賛否両論あるようですが、私は問題ないと思います。作者さんがどういうイメージで文章を書かれているかもわかって面白いですし。

6.紬「かくれんぼ」

キャラクターの特長をうまく捉えていて、皆のセリフがコミカルで面白い。
如何にも「言いそうなセリフ」「やりそうな行動」で、5人の個性を上手に表現していると思いました。
ムギテーマでも、5人全員を出演させると「けいおん!」らしくなっていいですね。律澪のエピソードなんて本当にありそうですし。唯梓の絡みもうまい!
作品のことをしっかり理解して、それを上手に表現されているのでまさに二次創作のお手本のようなSSだなあと感服しました。


240 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/16(日) 16:46:32 PWM9eLzM0
7.紬「コトブキ・サクラメント」

「万年桜」というのがいいですね。絵的にロマンチックなので、映像で観てみたいなあと思わせるラストでした。

8.律「許嫁?」

さすがに無理のある展開だなぁって思っていたら、最後のオチでそういうことですか、と。律澪はよかったです。

9.唯「そっくりさん!」

最後の菫のモノローグツッコミがよかった。おかしい人たちの集団の中にいる1人だけの常識人っていいですね。
この菫は軽音部に入らなさそう…雰囲気に圧倒されて入部を断念した1期7話の純ちゃんを思わせますね。

10.純「突撃!隣りの一軒家」

冒頭の飛ばし方はとてもいいと思います。一気に作品世界に引き込まれました。
1143円って税込1200円ですよね。だから中途半端どころか、商売人としてはよくやる値段設定。作者の方は小売業?こういう小ネタだいすきです。
5人の動かし方がうまくて、梓の律に対する当たりのキツさや唯をスルーする様子も笑えました。
最後の落とし込みはちょっと無理矢理過ぎる気もしましたけど、澪の現実逃避が面白かったのでいいのかなーと。
白眉はタイトルに名前があるのに大した扱いを受けてない純ちゃんですね!
素晴らしいコメディでした。

11.律「ああっ紬さまっ」

ムギの初見のイメージがベルダンディーだったところから思いついた作品。
どうせならもっと事件を起こしてもよかったかも。展開に意外性がなかった。

12.唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」

意図的に掴んでやろうという冒頭。いきなりラクダって…うーん面白い!
唯梓と律澪の役割分担もうまい。家に着いてからのりっちゃんのツッコミもいいですねー。
こういうお話ってこち亀なんかにありそうですよね。
しつこいですが冒頭のラクダにやられました。めっちゃ面白かったー!


241 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/16(日) 16:51:56 PWM9eLzM0
13.ムギ「失われた時を求めて」

プルーストはもちろん未読。どこまで元ネタとリンクしているかわかりませんでした…が、それとは関係なく読めました。
ムギがよく口にする「夢」にどれだけの想いが込められているのか。素晴らしいラスト。何げない日常、何げない言葉に秘められた想い。原作・アニメにもどこか通じるようなところもあり、けいおん!の二次創作らしい作品と言っていいかもしれません。中盤以降は涙腺が緩みっぱなしでした。
地の文も読みやすく、文章力も抜群。間違いなく傑作!

14.「聖童女よ、門を越えて行かん」

自慰行為についてもっと掘り下げたら、面白かったかも。おそらく時間的に厳しかったのでしょうが。

15.紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」

アイデア勝負の作品。原作設定をうまく生かした面白いアイデアだなと思いました。

16.聡「初恋」

初恋物語。ラストが切ないですね。
お姫様みたいなムギは、年下から見たら憧れのお姉さんって感じなんだろうなーって思います。少年の日の思い出ですねえ…
全体的な印象としては、やや作りが粗いように思えました。
作ろうとした世界観が急ごしらえで骨組みが弱いような。
締め切りがあるのでやむを得ないですが、作品の持つ雰囲気がよかっただけに、もっと練り込んで欲しかったです。

あと細かいところすみません。ムギは「ベタ」っていうかな?ちょっと違和感を覚えました。

17.プロメイド---斎藤菫

こういう発想はなかった。他の作品と比較して異彩を放っていると思います。ただ、後半で菫の口調にやや違和感。

以上です。
作風に違いありますので、どれが一番?と言われると難しいのですが、特に印象に残った作品は…

2.「我らツムギュダーの光の導くままに!」
6.紬「かくれんぼ」
10.純「突撃!隣りの一軒家」
12.唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」
13.ムギ「失われた時を求めて」

以上5作品でした。
もちろん、上記以外の作品も楽しませて頂きました。

最後にもう一度、作者の皆様お疲れ様でした。


242 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/17(月) 11:24:21 vr4FtkE60

点数はまだつけてないので、点数に繋がりそうなポイントを自分で忘れない為に、も兼ねた感想投下。
読み込み浅いので不快に思われる作者様読者様方いるかもしれません、申し訳ない。


企画SS一覧 >>202



零番手 … 企画 ◆8d05h6G8ts オープニングSS >>3-5

最近恒例になってる気がするプレリュード。
進行の菫ちゃんは実際はこれ以降のSSでも沢山出番あるわけで、要するに働きすぎ



一番手 … ◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」 >>6-8

自作。三郎(仮)くんへの愛を込めました。
三郎(仮)くんのあの一際異彩を放つ外見は奥田4兄弟の中でもオンリーワンだと思います。
アニメ三期でもあの4兄弟は奥田さんの中の人がちゃんと演じ分けているわけですが、三郎(仮)くんの声質が一番ストライクでした。
次点で二郎(仮)くんが好きです。あの面倒見の良さがいいですよね。



二番手 … ◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」 >>9-24

if設定の唯梓…というか単にアニメパロディか。見てないけど。
元ネタ知らない人と知ってる人では採点基準も批評のポイントも違ってくるだろうから、これは知らない人側の意見として垂れ流したいと思う。
地の文は三人称視点でありながら堅苦しくなく、ギャグも挟んでくるので読みやすさに一役買っている。序盤は特に。
展開的にも悪と正義の対決なので、基本的に勝つか負けるかの二択。流れに無理はなかったと思う。
しかし、感想を書くに当たって真剣にオチを考えてみようとしたらどちらに転んでも不満が残る気がして一気に読後感が悪くなった。これは何も考えず答えを出さないのが正解なのだろう。
答えを出さないことで読後感や作品の雰囲気がどうなるかは別の話だが。それを狙った作品なのかもしれないしね。



三番手 … ◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」 >>25-36

正統派ほのぼの。
全般的にほのぼのらしいほのぼのであるところが長所か、上手く言えないけど。
ほのぼの系はほのぼの系であるからこそ読みやすさと雰囲気に高得点付きそうな気がする。
重箱の隅をつつくようなケチをつけるなら、少しひっかかったところは、
>菫「いえ、ここが一番ですよ。お姉ちゃんが毎日あんなに楽しそうに話してくれた軽音部にわたしも入部できてうれしいです!」
のところ。そのセリフの『お姉ちゃんが話してた軽音部』はいまや梓とさわ子しか残っておらず、実質名前だけの別物のはず。
言いたいことはわかるし、菫もこのSSの最後の手紙では友人あってこその楽しさだってことも察しているのでただの言葉のあやに違いないんだけど。
あともう一つ、直にボーカルやらせようとするなんて純はどういう心境の変化があったんだろうか。



四番手 … ◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合 >>37-58

シルキとフィオラ、名前に下地があるのだろうか。
このSSの場合、冒頭と呼ばれる部分は梓と紬のやり取りなのか、それとも紬による時代背景の説明部分までなのかどちらだろう?
なかなかにドラマチックで作中の梓の言う通り壮大な話だけど、本編での斉藤家は琴吹家の忠実な従者である点に対して、この話では琴吹家が一家総出で斉藤家に償いをしているような感じの設定。
このあたりの違いはいかにもif設定、といった感じだろうか。本編設定と辻褄を合わせることによる説得力よりも、現実の事件とまで掛け合わせるアイデアの壮大さで圧倒する作品っぽい。
紬の説明語りとして綴られる地の文も、読みにくいということはなくスラスラと頭に入ってきてよかった。
ただ、オチは二転三転しすぎて意味がわからない。結局何なの?
フィオラの一家にはビジネスの拠点であるフィンランドに来て!と言い、紬の台詞で語られる後日談でもフィンランドで暮らしている。しかし語りの地の文では、シルキとフィオラの2人はシルキのふるさとへ辿り着いた、となっている。
このあたりが意味深…? でも結局わからない。読後感ちょっと、うーん、といったところ。


243 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/17(月) 11:25:15 vr4FtkE60

五番手 … ◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」 >>59-69

紬菫、かな? SS中で『それ以上の関係』と言われているけど、読んだ限りではどの程度の関係なのかわからず、ほのぼのとして読んでしまった。
琴吹家企画の中で、琴吹家の中にいる人達のやりとりに焦点を当てた若干変化球なSS。琴吹一家SSとでもいうべきか?
地の文は最低限に留められていてほとんど台本形式で進み、場面転換なども普通の形で行われ、擬音も使われ、スタンダードに読みやすいと言える。
紬父や斉藤執事までもが可愛く書かれているため、雰囲気の点でも可愛さのよる加点が望めるか。
絵は個人的にはこの採点の5項目には当て嵌まらないので加点も減点もしないと思うけどかわいくていいね!



六番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」 >>70-80

梓のツッコミが好み。
唯梓、律澪、紬菫とそれぞれのカプの描写は飛び出た物こそないけれど安定している感じ。
菫のことを紬の手前もあって菫ちゃんと呼ぶ梓、軽音部4人のことを先輩ではなくさん付けで呼ぶ菫が見れるのはif設定ならではの新鮮さがある。
全体的に丁寧で、綺麗に丸く収まってる感じがした。
あえて言うなら安定して綺麗にまとまりすぎてて印象に残らない感じがあるのでどこかに飛びぬけたところが欲しかった気もする。
というかツッコミが好きなのでギャグが読みたい。と思ってたら十五番手に来た。やっほーい



七番手 … ◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」 >>81-91

自作。1点入れたいけど作者は3点を強いられているんだ



八番手 … ◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」 >>92-101

オチに声出して笑った。極端に乱暴な丸投げオチだからギャグと割り切れて読後感は良かった。
この急展開からの落差で終わらせるやり方は、『冒頭』からマジメな『雰囲気』をさせておいてそのまま引っ張る『展開』をさせてから落とす、という手順が必要になるので、
つまりだいたいの評価項目と密接に関わるやり方……なのかもしれない。ごめん適当こいた。
人によっては徹底した騙しっぷりが不快に映るかもしれないとも思う。遠回しに紬父が圧力をかけているようにも見えるしね。



九番手 … ◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」 >>102-103

このSSにより、そっくりさんネタを使ったすべてのSSが過去になった!
とまでは言わないが、メタギャグとして受け取るべきなのか作者がそっくりさんネタにたいして一言物申したかったのかは判断が難しいかもしれない。
読みやすさや展開、雰囲気などは1レス台本形式であることから極端な点数は付きづらいと思う。
ただ、琴吹家である理由が薄いか。菫がいるからなのだろうけど、逆に言えば菫さえ居ればどこでも出来るネタ…かもしれない。
HTTが在学中に菫と出会ってしまい、そのせいで菫が軽音部を敬遠しだした…という設定のifとして見れば可。



十番手 … ◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」 >>104-128

ギャグSS。
散りばめられた小ネタギャグ、そしてキャラのボケとツッコミのノリが絶妙で軽快に読み進められる。
ただ、問題は話があっちこっちに行ったり来たりしているところ。ひなまつりの話かと思いきやムギの家が予想外だった、という話……かと思いきや、まさかの妖怪大行進。
投げっぱなしも二度続くと妙な不安を覚えてしまい、作中の澪のように「ドッキリであってくれ」と願いながら読んでいた。結局そんなことはなかったが。
ギャグなんだからそれでも構わないはずなのだが、何故かこれに限っては夢オチとか妄想オチであってほしかったと思ってしまった。純が豪邸に住んでいるせいだろうか。関係ないね。


244 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/17(月) 11:26:24 vr4FtkE60

十一番手 … ◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」 >>129-148

どこかで聞いたようなタイトルだけどこれまた未読なのでこれもそういう立場からの感想。
読みやすさは普通だろうか。ここまでコロコロ視点を変える必要性は感じないものの、読めないわけではないので。ちょっと言葉遣いがオラオラすぎる気もするが。
中盤、澪がオリジナル曲をやりたいと言ったことが切っ掛けで結果的に紬は追い詰められていくのだが、それを抜きにしたって澪の頼み方は図々しすぎやしないだろうか。唯が女神の力で赤点回避した時は怒ったような人なのに。
それだけ女神紬との接し方に慣れてきたのかもしれないが、その後の唯の地の文で「みんなムギちゃんに遠慮していた」とか言われてるのでさらに違和感。
(とはいえその更に次の地の文で「ムギちゃんの力に慣れていた」「頼り切っていた」と言われているからおそらくそちらが正しいのだろうけど)
展開そのものは良い意味で先の読みやすい王道展開。さわちゃんがちゃんと先生していて唯が主人公していて、「ムギちゃんはムギちゃんだもん」みたいな感じのことまで言わせたのは個人的に評価高い。
☆マークが視点変更の印だとしたら、最後の☆はどういうことなんだろう? 少し謎が残る。



十二番手 … ◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」 >>149-160

コメディ。時系列は卒業旅行後ではあるようだ。新キャラが出てこないことから新年度にはなってなさそうだが…?
梓がアホの子寄りなのが少々珍しい気がする。律と澪がだいたいツッコミ役なので雰囲気を作るのは唯と梓の微笑ましいやり取りと斉藤執事の苦労人っぷりだろうか。
ギャグも笑えるものが多く読みやすいが、オチだけは弱い気がする。他にやりようがあるかと言われると難しいが。
Су?здаль=スーズダリ、????? ??????=ルブアルハリ砂漠、????????=バンコク、か? ググりにくいわ!



十三番手 … ◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」 >>161-163 >>200 >>164-177

ムギさわ?
元ネタは知りませんすいません。
スレタイが紬ではなくムギであること、地の文も他のキャラは本名なのにムギちゃんだけムギであること、
それらに何かの意図があることはもちろん言うまでもなく明白であり、それはつまり冒頭における我々読者への目に見えたアピール。
冒頭のつかみとしてバッチグーだし、先の展開も嫌が応にも気になる。奇抜な手法というわけではないし目玉が飛び出て返ってこないほど絶妙な伏線というわけでもないが、短めの作品だしストレートに効果的だったと思う。
読後感も前向きに切なくてたまらなくて雰囲気の良さにも繋がるくらいに悪くはないんだけど、ややテーマから遠いか? 
琴吹家の仕事もテーマに含まれてはいるがこれは仕事というより業だし、琴吹家族の話と見ようにも実験に使われているいう設定があるためクローンムギが家族として扱われているようには受け取れない。
こういう業の深い愛の形こそが家族、というメッセージなのだろうか? 考えすぎかな。
さわ子のバックグラウンドも気になる。あと、このムギが異様に耳がいいのはどういう意味があったのだろうか?



十四番手 … ◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」 >>178-184

他の皆より一歩前の知識だけで戸惑う唯の純真さが光る。それで上手い具合に皆と行動が噛み合ってるのが面白い。
これは律澪だろうか。だと考えた場合、律澪が一夜の過ちを犯したことを紬は見抜けていなかったことになるわけで、百合に対する嗅覚が異様に鋭いことが多い二次創作の紬らしくなくて新鮮な展開かも。
そして冒頭の唯の言い分が唐突であることから、いくらか前から既にこの冗談が準備してあったことになるわけだが、いつから菫に仕込んでいたのだろうか。



十五番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」 >>185-186

琴吹家、娘にも容赦ねぇ…! これもお金持ち流の教育の一環か!?
これや1つ前のみたいなテンポのいいショートギャグは好き。どちらも明らかに自分のSSより遥かに一番手向きだと思う。
スレタイからしてそうだが、本編設定を織り交ぜて説明しながら話をちゃんと展開していき、「スレタイはこういう意味か!」と来たところで更に斉藤さんを重ね、唯律澪梓は一切の言葉も発せず終わる。実に見事。
でも花のJKの家に斉藤さんを泊めるのはさすがに気まずくないかな。


245 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/17(月) 11:31:04 vr4FtkE60


十六番手 … ◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」 >>187-192 >>198

ちょっと文末に「〜た」が多い。タイプミスや脱字も目立つ。なんとなく、聡視点ならいいか、って気にもなるけど。しかし読みやすさに影響するかもしれない。
聡自身のセリフが最低限に抑えられており、地の文で雰囲気の大半を形作る作品。残りは紬のセリフか。
展開の面では思ったより早く終わったような気もするし、聡の心情を思えば仕方ない気もするし、難しいところだ。
ただ、そのせいで読後感がやばい。バッサリと、ぐはぁって来る。スレタイを最後に持ってきたのも作戦だったのだろうか。初恋はそういうものだ、という作者の言い分。憶測だけど。



十七番手 … ◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫 >>193-197

これはパロディに分類されるのだろうか。
これも誤字や脱字が多少目立つ。稀に菫らしくない口調になるのは元ネタのせいだろうか。
ツッコミを完全に読者に任せて突き進むスタイルは読み進ませる力があるように感じる。反面、雰囲気を感じさせにくいのは難点か。
個人的には書くのが難しそうな形式なので尊敬に近い読後感があった。この形式であること自体が冒頭の掴みとして際立っているとも思う。



総評としては相変わらず多種多様な作品が集まり、前回に引き続き結構な数があり、それでいてどれも読みごたえがあって面白かった。
皆さん素敵な作品をありがとうございました。お疲れ様でした。


246 : ◆udPNnC.01I :2014/03/17(月) 14:10:27 0b9DMexI0
私感想書くのが夢だったの。というわけで書きます。
今回のSSは大体以下の3種類に分けられると思った。

ギャグ…1、8、9、10、12、14、15、17
日常…3、5、6、7、16
非日常設定…2、4、11、13

異論はあるだろうし微妙なのも多いけど、自分はこのように分けた。
とりま感想を。


247 : ◆udPNnC.01I :2014/03/17(月) 14:12:05 0b9DMexI0
一番手 … ◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」
シンプルイズザベストな話。
>菫「お邪魔します」
あんたは琴吹家のメイドじゃないんかい!

二番手 … ◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」 
今回無名さんがいないと思ったらこれだったのね。道理で純ちゃんの弄り方が上手いと思った。
ツムギュダーとムギエイラは私もややこしいと思った。ツムギュダーが何とかレンジャーみたいなグループ名で、ムギエイラがムギなのね。
> 「あの温厚な紬さんが、そんなことするわけないもん」
これはムギじゃないフラグだなと思って、でも金髪→スミーレだ!と推理したのは私だけでしょうか。違ったけど。
ほかの人も言っていた通りガチ過ぎてついていけない部分があったけど、その分≪TAKUAN≫は笑った。
あと、今回たくあんネタが殺到するかと思ってたらこれだけだったのがちょっと意外。

三番手 … ◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」
普通。

四番手 … ◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合
最後のはちょっとしたおふざけだと解釈してます。
シルキとフィオラは紬と菫の先祖だとして、子孫が生まれているということは結局男と…すみませんでした。
五番手 … ◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」
三番手さんとタイトルがちょっとかぶってる。
面白い。紬も菫もかわいい。あと紬父も。
貧乏だったってことは紬父は婿養子だったのかな

六番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」
みんなかわゆす。if設定だけどほのぼのしててけいおんらしくていい。
唯梓、律澪といった王道カプを押さえているのもいい。
あと◆XksB4AwhxUさんを参考にして注釈をつけたけど、他のif設定の話は注釈がなかったので必要なのかと考えました。

七番手 … ◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」
掛け合いはけいおんらしいし、最後の桜のシーンは幻想的な光景が浮かび上がってくるし、全体的に綺麗な話。
ただ地の文がちょっと読みにくい。句読点が少ないせいだろうか。
あと他の人も言ってたように唯澪フラグが欲しかった。
って一番手さんと同じ作者…だと…?

八番手 … ◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」 
最後のぶん投げっぷりがひどいwww


248 : ◆udPNnC.01I :2014/03/17(月) 14:13:30 0b9DMexI0
九番手 … ◆udPNnC.01I:唯「そっくりさん!」
自作。私けいおんSS企画に参加するのが夢だったの。
みんなでムギの家の設計を考える話とか童話パロとか拷問パロとかいろいろ考えたけど、結局前から温めてたネタで。1レスでどれだけ書き込めるか試したい気持ちもあったんです。
>これ部室でできるよ!
げ、元々は部室が舞台だったはずのネタを持ってきたのがばれたか?
憂と風子が出せなかったのがちょっと残念?

十番手 … ◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」
>でもどこかで聞いたことあるような
友達の梓に忘れられるなんて、純の扱いはどうしてこう不憫なのが似合うんだろう。
夢オチか八番手さんみたいな芝居オチかと思ってた。

十一番手 … ◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」
非日常設定ながらもいい話だったし最後も締まってたし文句なし。
是非二年生編三年生編、大学編も見たいな。

十二番手 … ◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」
世界一周しちゃったのね、お疲れ様。唯梓可愛い。

十三番手 … ◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」
元ネタ知らないですごめんなさい。
でも星野之宣の『スターダストメモリーズ』の中の一話、「セス・アイボリーの21日」をちょっと思い出した。
クローンといえど自我のあるムギ、「琴吹紬」のために生きざるを得ないムギ、さわ子にしか「自分自身」を見てもらえないムギがひたすら切ない。
こんなに悲しい「夢だったの」は初めてだ。

>「こら、唯。 いきなり立ち上がったら机が揺れるわよ」
これは律じゃなく和の台詞じゃないのか?律のほかに四人いるみたいだし、唯の机ってことは梓がいないと考えられるし。

あと、1レス追記の時レス番号が間違っていたので「このままでは文章が間違ったところに入れられてこの良作が損なわれてしまう!」という使命感に駆られて訂正したのは私だけど、
書き手交流スレだとレス番号が正しいし、しかも作品のURLが張られていたので、余計なことしたのかもしれない。すみませんでした。

十四番手 … ◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」
これ、律と澪がやったということでいいんだよね(女同士だから微妙ってことで)。
女の子同士はムギちゃん的にはノープロブレムどころか大歓迎だよね!

十五番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」
これもまたシンプルイズザベストな話でよかった。

十六番手 … ◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」
レスの時間間隔を見て即興だと分かった。
そのせいでほかの人の心象を悪くしてしまったようだ。
内容はいいのにもったいない。次から気を付けよう。ってこれも逸脱した発言か。
毎日ムギを見るために友達の家に通う聡かわいい。はやみねかおる「都会のトムソーヤ」の「フェアリー」のエピソードを彷彿とさせた。

十七番手 … ◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫 
スミーレちゃん貴方学校は?
アイデアも変態菫も面白いのに、ほかの人の言ってるような粗が見られて惜しい。
是非ともリメイクしてもらいたい。


249 : ◆udPNnC.01I :2014/03/17(月) 14:14:26 0b9DMexI0
全体的に良作が多くて面白かった。
予想はしてたけどスミーレの出てくる話多いな。スミーレが登場する前だったらどうなってたんだろう、と思ったら以前にもムギ企画あったんだな。
企画初参加だったけどいい思い出になりました。また参加したいな。


250 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/17(月) 14:43:10 X4CI7SVo0
感想

・一番手 唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」

もったいなかった。ごちゃごちゃしてでもなんでもいいから、その次のステップがほしかった。


・二番手 「我らツムギュダーの光の導くままに!」

「お家」って言葉が目にとまった。「お」を付ける人っているのかな。映画で梓が「おウチに電話しないと……」とかなんとか言ってたか。
あと、梓が和の性格を判断するには時期が早すぎると思う。話の秘密よりも早い。
決めゼリフの、
>「我らツムギュダーの光の導くままに!」
「の」が二回あるとちょっと語感が乱れる。けど「光の導くままに」はかっこいい。
形式は基本三人称でたまに一人称。
一瞬間違ってるのかなって勘違いして驚いた。どちらかに統一してた方がよかった。なんか行ったり来たりみたいな感じだった。
地の文改行が多かった。これは読みやすい、になるのかな。形から入ったとしたらおもしろい試み。効果出てていい感じ。
戦闘描写はわかりやすかった。イメージしやすい。これは強いポイント。けど、戦闘の緊迫感が損なわれていたのでこの両立は難しい。より重厚にしたらSSとしては読みづらいくなってしまう……。小説ならいいけどね。
結論、多少無駄描写があっていいのかも。ある意味一番のテーマ。
夢オチか。「2」の会話も夢だったのか……。地の文梓一人称でもよかったのかな。それとも、(最後以外)基本三人称だからこの清々しい読後感なのかどうか。SSは軽い方が人気だな。
長いけど、さらっと読ませてくれたのはありがたい。シリアスとも言えるような言えないような。夢オチじゃなかったら……と気になる作品。
よかった。


・三番手 菫「わたしとお姉ちゃん」

自作。残念。もはや逃げたと言うべき。


251 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/17(月) 14:44:02 X4CI7SVo0
・四番手 ウィーンの百合

一番好き。
内容の細かさに惹かれた。三点リーダーとかをきっちりすればもっと昇華する。
語り地の文は語尾に同じのが連続して来ることが多発するけど、このSSでは特になかった。違和感のない言い回して進めてくれる。
実際にある歴史の出来事と結び付けると緊迫感が溢れる。文章にも勢いがのっていたので、また違った意味ですらすら読むことができた。
百合に関してはあれなので、友情に変換して読み進めた。その方が現実的のような……。
オチがよくわからなかった。
設定とかジャンルがうまくマッチしていた。


・五番手 菫「私とお姉ちゃんの日々」

お嬢様呼びか……と思ってたらお姉ちゃん呼びの場面も出てきてほっこり。
オリキャラが出ると、場合によっては冷めることもあるけどムギの奮闘ぶりがかわいかったので気にしなくてもよかった。
あたふたとうろたえる紬父がなぜか愛おしい。あと意外に言動が軽いので親しみやすい。
これは他のSSでもそうだけど「……///」以外で表現できないかな。もったいないと思う。


・六番手 紬「かくれんぼ」

琴吹邸を見て逆に何も言葉が出てこないのはなんだかリアル。
隠れる人は逃げてよかったのか。場合によってはすごいことになりそうだ。
唯梓・律澪となったわけだけど、ムギが一人ってのがちょっと寂しかった。菫が察して見つけることによって紬菫の仲のよさがわかる……んだろうけど、先の二組がストーリーに大きく混じることによって紬菫が薄らいでしまった。
紬菫に絞ってよかったのでは。ただ、菫がムギを見つけるのはベタだけど好き。


七番手 紬「コトブキ・サクラメント」

律梓が出てこない。
唯と澪がカメラってのは、あの一枚絵を思い出すな。夏っぽいやつ。
文章は桜のとこまでさらっと読めた。というか、ただ今回のさらっとは印象に残らない流し読みのようなものになってしまった。頭から抜け落ちるとも言える。読み直しても同じ。
これは「読みやすい」とはまた別物だと考える。
一転して、桜の木からは情景が思い浮かんだ。これがもしピークに合わせていたとしたら、すごい。


八番手 律「許嫁?」

ムギの瞬間移動説をここで使ってくるとは思わなかった。
ところどころ、シリアスな場面で律の口調がちょっとくだけていたので、少し真剣味に欠けていた。推敲をさらに重ねたり、他のSS書いていけばさらにすごい丁寧なSSになると思う。
オチで安心した。


252 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/17(月) 14:44:53 X4CI7SVo0
九番手 唯「そっくりさん!」

原作のかきふらいは意外と気にしてるっぽいなこのネタ。特に澪梓が。
見分けるのは身長かなーと思っていたら、律がストレートでワロタ。あと一捻りほしかった。


十番手 純「突撃!隣の一軒家」

純ちゃんは犠牲になった。澪がいいセリフをしゃべってるところは「おっ」ってなった。まったく誰も聞いてないのはちょっとあれだけど。寝てたとかだったら微笑ましかった。
澪が幽霊に取り囲まれてたら二回くらい平気で失神するんじゃないかなあ。
某コピペで「律たち」と述べられてたのは注目すべし。


十一番手 律「ああっ紬さまっ」

大胆な設定でいきなり惹かれる。これはウィーンと一緒。
地の文ありとなると、やはり「軽音部」でいってほしかった。どこかふやける感覚になる。けど、そのこだわりは否定しないので使ってくれればいいなと。あと三点リーダーと斉藤の統一も。
全体的にあったかいSSなので、難しい感じはひらがなにすると、よりとっつきやすくなる。
視点が変わっていくのはよかった。特に混乱は起きなかった。
斉藤とムギの会話は説得力があったので「へえ」と思った。
続編は楽しみである。はたして今作を上回るか。


十二番手 唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」

梓のそっけなさがちょびっと珍しい。ツッコミボケの嵐でよかった。
このSSの時系列が気になるな。何語かわからない表示はおもしろい。下手に地名を書くより、曖昧にした方がいろいろ想像がふくらむ。
それと同時に今はこんな服装なのかなとかも妄想できる。
駅まで車で十五分も微妙に遠いね。ボロ出しムギかわいい。


十三番手 ムギ「失われた時を求めて」

序盤からなかなか緊迫したSSだった。地の文も読ませてくれる。が、ほんの少しト書きっぽい部分もあった。
さわちゃんも普段があれだから、こういうかっこいいことすると映えるんだと思う。そのギャップがうまく効いていた。
最後の二行は内容がシリアスなだけに輝いてた。


253 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/17(月) 14:47:29 X4CI7SVo0
十四番手 「聖童女よ、門を越えて行かん」

数が多ければこのぐらいぶっとんでるのがあるだろうし、あった方がいいよね。
やはり「///」を使わずにいってほしい。
最後のセリフワロタ。


十五番手 「一ヶ月前に予約とらないといけないの」

無慈悲な琴吹家。これもう一捻りあったら1レスじゃなくて短編になったと思う。
もったいない。


十六番手 聡「初恋」

少し淡々としているように思えるが、このSSの場合それがよかった。
一人称なのもよかった。あまり起伏はなかったけど、穏やかな心地だった。
あと半捻り何か欲しかった。二回くらい推敲すればもう少し違っていたのでは。


十七番手 プロメイド---斎藤菫

これはレアなSSでおもしろかった。Q&A形式なのもより際立っている。
起床から就寝まできっちり書いていて実に丁寧。けど、最後の起床時間がムギの時間だったから惜しい。
真面目な内容かと思いきや、随所にシュールな展開が散りばめられている。
よかった。


お気に入りの作品があったので満足
自分の駄目なとこがわかった。お疲れさんま


254 : ◆IxdIiBIF62 :2014/03/17(月) 21:37:31 vr4FtkE60
>>244
文字化けしてんじゃん欝


255 : ◆GGEU0vsSgc :2014/03/19(水) 00:06:57 4prIB0Ms0
ひとこと感想をアンケートに書くの忘れたのでこちらに投下します。

一番手 … ◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」 >>6-8
ケイスケって誰だっけ?
発想の勝利でしょうか、面白かったです。勢いがあってよかった。

二番手 … ◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」 >>9-24
律が教授ポジションなのが意外。
最初はツッコミだった梓が、だんだん本気になってくのがアツい。最後、唯に誘われるとこはどきっとしました。悪堕ち百合みたいな?

三番手 … ◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」 >>25-36
各人のセリフや掛け合い方が自然で、よいほのぼのでした。
直ちゃんボーカルフラグ立てちゃって大丈夫か…?

四番手 … ◆GGEU0vsSgc:ウィーンの百合 >>37-58
これは自作です。
シルキはフィンランド語で絹です。
フィオラはドイツ語圏に実在する女性名で、菫を意味します。

五番手 … ◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」 >>59-69
エロス。のほほん日常の極み、いいですね。紬父と斉藤が仲良しなのもよい。あと、エロス。

六番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」 >>70-80
かくれんぼの鬼にワロタ。この唯梓はloveなんですか。これも良いほのぼのでした。

七番手 … ◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」 >>81-91
ムギメインの企画で唯澪メインに持ってくる勇気もすごいですね。いや、これはムギメインか?ムギのサポート力のすごさというか。さすがです。

八番手 … ◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」 >>92-101
なんというラスト。律がいない時のムギと紬父の会話まで演技?自分自身を催眠にかけるレベルの演技なんですかね。

九番手 … ◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」 >>102-103
律唯、澪梓、紬菫の区別がつかないとは…しかも眉毛違いもわからないとは。細かいこと気にしない凄まじいのほほんキャラ達なんでしょうかね。


256 : ◆UwUOv4/shU :2014/03/19(水) 00:10:23 4prIB0Ms0
十番手 … ◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」 >>104-128
純ちゃんまさかの。純に頼んで一時的に交換してもらってるのかと思いきやガチですか。ムギは別荘持ってるし、ある程度金持ちには違いない?

十一番手 … ◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」 >>129-148
とてもいい話でした。唯の一人称がですます調なのはアリだと思いました。どのキャラもらしさが出ててよかったです。

十二番手 … ◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」 >>149-160
この家は新築の偽物?梓が騙されてるのが意外だけどあんだけ過酷な旅行したら判断力も鈍るのかなぁと思いました。

十三番手 … ◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」 >>161-163 >>200 >>164-177
こういう話は好みです。私の上位変換のようなストーリーと地の文でとても面白かったです。私なんぞと一緒にするなって思ったらすみません。

十四番手 … ◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」 >>178-184
スミーレ、よく恥ずかしがらずにババーンと言えたな…百合的絆とは何でしょう、というか百合は処女でいいんでしょうかむずかしくてわかりません

十五番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」 >>185-186
斉藤さんセクハラ発言になりかねないですよ!

十六番手 … ◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」 >>187-192 >>198
始めまして、初めまして、どっちもあり得るんだ、とつい調べてしまいました。NL来るかとやや期待してしまいました。

十七番手 … ◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫 >>193-197
スミーレガチすぎてわろた。2時間睡眠、死ぬぞ…面白かったです。


簡単ですが以上です。感想文は大の苦手なので短いですがどうかお許しください。
みなさんお疲れ様です。


257 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/19(水) 00:29:43 wViZ2yLA0
採点期間終了です!
皆さんお疲れ様でした
結果発表は本日中に出来るように努力したいと思いますが、企画者は寝ますので、寝ないで待つようなことはしないでください

採点は締め切っても、感想投下はいつでも受け付けています
間に合わなった人も焦らないで大丈夫ですよ

それでは発表のときにまた
おやすみなさい


258 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/19(水) 23:28:20 fYM19HF.0
努力はしましたが今日には間に合いそうもありません
申し訳ありません
結果発表は明日に行います


259 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/20(木) 23:35:15 uhRezUwU0
まだ?


260 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/20(木) 23:48:06 lSLfcUb20
もう今日も終わるんだが?


261 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/20(木) 23:53:04 KnySCrPU0
今日はまだ終わってません
お待たせしました


262 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/20(木) 23:53:43 KnySCrPU0


 □SCENE20‐琴吹邸内某所


菫「結果発表ー!」

直「はっぴょー」

菫「ついに待ちに待った結果発表の時間です!
 今回の企画では各部門ごとにランキングを発表して、最後に総合優勝作品を発表します!」

菫「初めての試みなので、色々心配ですが……」

菫「……でも頑張っていきたいと思います! はい!」

直「数値にミスが無ければいいんだけどね」

菫「有難いことに十七作品も集まったからね。さらに採点も十一人。
 企画者としても嬉しい悲鳴をあげながら、数値を入力していたぐらいだよ」

直「でもその集計は私に任せっきりだったよね?」

菫「えっ」

直「菫はなにもしてなかったよね?」

菫(完全に任せっきりにしたこと怒ってる……)

菫「そ、そうだ直ちゃん! 私、美味しい和菓子持ってきたんだよ!」

直「和菓子一つで私の苦労は拭えないんだけど……」

菫(一層沈んじゃった……)

直「けど食べる」

菫(食べるんだ)


263 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/20(木) 23:54:27 KnySCrPU0

直「まずは雰囲気部門から発表するよ。菫、プロジェクターを」

菫「うん!」


 天井から白いスクリーンが下りてくる。
 そこに、直のパソコンと繋がったプロジェクターで、映像が映された。


直「雰囲気部門の平均合計点は37.1点だったよ」

菫「あれ、結構高いんだね?」

直「雰囲気の平均点は他の部門の中でも一番高かったよ。ちょっとこの数値を見て」


 【37.1、34.3、34.8、33.2、35.7、175.0】


菫「これは?」

直「雰囲気、冒頭、展開、読後感、読みやすさ、合計点のそれぞれの平均。
 これを見ればわかるように、雰囲気は他と比べてずば抜けているんだよ」

直「触れやすい空気の作りやすさ、それがけいおんSSの特徴でもあると、
 このデータから言えるかもしれない」

菫「へえ〜」

直「でも全国の読者と比較すれば、十一人なんて人数は僅かなものだから、
 全てに当て嵌めるのはよくないね。あくまで参考程度に、ってことで」

菫「わかったよ。じゃあ、順位発表しちゃって!」


264 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/20(木) 23:55:10 KnySCrPU0


 【雰囲気部門ランキング】

 1位 …… 十三番手◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」 

 2位 …… 十二番手◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」

 3位 …… 四番手◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合
 3位 …… 五番手◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」
 3位 …… 七番手◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」
 3位 …… 十一番手◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」

 7位 …… 十七番手◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫

 8位 …… 六番手◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」

 9位 …… 二番手◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」

10位 …… 十番手◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」

11位 …… 十六番手◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」

12位 …… 三番手◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」
12位 …… 十四番手◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」

14位 …… 九番手◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」

15位 …… 一番手◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」
15位 …… 八番手◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」

17位 …… 十五番手◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」


菫「というわけで雰囲気部門第一位は十三番手◆agqlNoYF4oさんでした!
 おめでとうございます!」

菫「……それにしても、三位に四作品も固まってるんだね」

直「詳しい点数の内訳は、総合発表の時に言おうと思うよ」

菫「こうやって見てみると、上位は地の文ありの形式が多いのかな?」

直「雰囲気を作るのは地の文のほうが直接的にやりやすいからね。
 勿論、会話で雰囲気を作ることも出来るから、台本形式が一方的に不利ってわけじゃないけど」

菫「なるほど……」


265 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/20(木) 23:55:44 KnySCrPU0

直「それじゃ今度は、冒頭部門。冒頭部門の順位はこんな具合になったよ」


 【冒頭部門ランキング】

 1位 …… 十二番手◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」

 2位 …… 十七番手◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫

 3位 …… 十三番手◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」

 4位 …… 五番手◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」
 4位 …… 十番手◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」

 6位 …… 六番手◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」

 7位 …… 四番手◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合

 8位 …… 十一番手◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」

 9位 …… 二番手◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」

10位 …… 十四番手◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」
10位 …… 十五番手◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」

12位 …… 七番手◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」
12位 …… 十六番手◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」

14位 …… 三番手◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」
14位 …… 八番手◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」

16位 …… 一番手◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」

17位 …… 九番手◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」


菫「よって、冒頭部門第一位は十二番手◆K0TON1AIBgさんでした! おめでとうございます!」

直「冒頭の一位はコメディが取ると思ってたけど、その通りになったね」

菫「掴みは大切だもんね」

直「うん。きっとギャグはこう、掴みだよ掴み。ふんっ!」


 直が唐突に菫の手を掴む。


菫「わわっ! どうしたの直ちゃん!」

直「掴みの練習」


266 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/20(木) 23:56:19 KnySCrPU0

直「次は展開部門のランキングを発表するよ」

菫「うん、お願い!」


 【展開部門ランキング】

 1位 …… 十三番手◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」

 2位 …… 十二番手◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」

 3位 …… 十一番手◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」

 4位 …… 六番手◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」

 5位 …… 四番手◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合
 5位 …… 十四番手◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」

 7位 …… 二番手◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」
 7位 …… 五番手◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」

 9位 …… 十五番手◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」

10位 …… 七番手◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」
10位 …… 十番手◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」
10位 …… 十六番手◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」
10位 …… 十七番手◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫

14位 …… 一番手◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」

15位 …… 八番手◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」

16位 …… 三番手◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」
16位 …… 九番手◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」


菫「結果、展開部門第一位は十三番手◆agqlNoYF4oさんです! おめでとうございます!」

直「展開部門ってことは、読者に飽きを来させない展開を
 用意してくれた作品ほど、上位に来ているんだね」

直「……飽きない展開か」

菫「どうしたの直ちゃん?」

直「そろそろこの結果発表も展開を変えようかな、と」

菫「あはは、確かに全部含めちゃうと長いもんね……。いつか飽きちゃうかも」

直「どうしようかなー……」

菫「うーん……」

直「……あっ、思いついた」

菫「ん?」

直「結果発表に飽き飽きしている皆さん」

直「実は今、菫はスクール水着を着用しています」

菫「直ちゃん!?」

直「よし、これで掴みはオッケー」

菫「嘘は良くないよ! 私、メイド服だよ!」

直(それはそれで……っていつも通りすぎるか)


267 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/20(木) 23:57:06 KnySCrPU0

直「次に読後感部門。結果はこちら」


 【読後感部門ランキング】

 1位 …… 十三番手◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」

 2位 …… 十二番手◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」

 3位 …… 十一番手◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」

 4位 …… 六番手◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」

 5位 …… 十四番手◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」

 6位 …… 五番手◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」
 6位 …… 十六番手◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」

 8位 …… 三番手◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」

 9位 …… 七番手◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」

10位 …… 四番手◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合
10位 …… 十五番手◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」
10位 …… 十七番手◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫

13位 …… 二番手◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」
13位 …… 八番手◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」

15位 …… 一番手◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」

16位 …… 十番手◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」

17位 …… 九番手◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」


菫「またまた一位は十三番手◆agqlNoYF4oさんです……って、これで三部門制覇!?
 素晴らしいです、おめでとうございます!」

直「読後感は最終的な評価を決める、重要なポイント。
 なにより読んで良かったと思われたいなら、ここを重視してもいいかもね」

菫「ところで展開部門とランキングが似通ってる作品が多いような?」

直「うん、丁寧な展開をさせてる作品は、最後もほぼ綺麗に決まるのかもしれない」

直「一方で大きく順位を伸ばした作品、落とした作品もあって、
 一概にも言えないっていうのが本当のところだけど」

直「それと、この部門の平均点は他の部門と比べて最低点なんだ」

菫「雰囲気の平均点が37.1点なのに、こっちの平均点は33.2点だ!」

直「大きな課題の一つとして捉えてもいいかもしれないよ」


268 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/20(木) 23:57:45 KnySCrPU0

菫「じゃあ部門別最後だよ、直ちゃん! 読みやすさ部門の結果発表!」

直「んっ」


 【読みやすさ部門ランキング】

 1位 …… 十二番手◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」

 2位 …… 六番手◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」

 3位 …… 五番手◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」

 4位 …… 十四番手◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」

 5位 …… 二番手◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」
 5位 …… 三番手◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」
 5位 …… 十番手◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」
 5位 …… 十三番手◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」
 5位 …… 十五番手◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」

10位 …… 一番手◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」
10位 …… 四番手◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合
10位 …… 十一番手◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」

13位 …… 十七番手◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫

14位 …… 八番手◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」
14位 …… 九番手◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」

16位 …… 七番手◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」

17位 …… 十六番手◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」


菫「読みやすさ部門一位は十二番手◆K0TON1AIBgさんでした!
 こちらは二部門制覇ですね、おめでとうございます!」

菫「……これ順位の固まり方がすごいね」

直「うん。とはいえ悪い意味じゃないよ。
 平均点も35.7点、部門ごとの平均点では上から二番目だし」

直「それより私が思うのは、この部門が地の文のものだけじゃなくて、
 台本形式でも適用されているってことかな」

菫「確かに同じ台本形式でも差が出てるもんね」

直「読みやすさが指すものは人によって大きく違うと思うけど、
 だとしても台本形式で度外視することなんて出来ない」

直「それがよくわかる結果といえるね」


269 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/20(木) 23:58:31 KnySCrPU0

菫「……よし。じゃあ今度は総合順位の発表だね?」

直「うん。細かい点数分布まできっちり展開していくよ。
 ついでに菫のスク水も徐々に展開していくよ」

菫「展開するスク水ってなに!?」

直「卑猥なもの」


菫「えーっと、ここからは一つ一つ発表していきたいと思います」

直「おー」


 菫と直の前には、「17」と書かれた扉が二人の道を塞いでいた。


菫「……それじゃ、お邪魔します」


270 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/20(木) 23:59:36 KnySCrPU0


 □SCENE21‐琴吹邸内≪17の部屋≫


菫「突然だけどここは総合部門、十七位の作品の世界」

直「えっ」

菫「琴吹グループが総力をあげて作ったの」

直(……お金も時間もあるんだなあ)


 そこに突如、菫と同様、金髪の少女が現れる。


直「あれ、あなたは……」

菫?「というわけで、総合部門第十七位の作品はそっくりネタを活用した……」


菫?「九番手◆udPNnC.01Iさんの“唯「そっくりさん!」”です!」


菫「そういうことなんだよ、直ちゃん」

直(やっぱり眉毛が違いすぎるような……)

直「あっ、合計点は145点でした。そしてこちらがデータです」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:32点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 8 / 4点 * 1 / 5点 * 0)
冒頭:28点 … (1点 * 0 / 2点 * 5 / 3点 * 6 / 4点 * 0 / 5点 * 0)
展開:28点 … (1点 * 0 / 2点 * 5 / 3点 * 6 / 4点 * 0 / 5点 * 0)
読後感:26点 … (1点 * 2 / 2点 * 4 / 3点 * 4 / 4点 * 1 / 5点 * 0)
読みやすさ:31点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 7 / 4点 * 1 / 5点 * 0)

合計:145点
平均:29点


直「括弧内は点数の内訳を示しています」

菫「一レス系だからある程度仕方のない部分があるのかな」

直「限られた中でどれほどのものを仕上げるのか、その一発性が一レス系の良さであり、
 同時に弱点でもあるんだね」

直「点数を見る限り、全体的に低評価といえるね。
 特に読後感ではそれが顕著に表れているみたいだよ」

菫?「私は最後の菫のツッコミ、良かったと思うわ!」

菫「お、お姉ちゃん……!」

直(隠す気ゼロですか琴吹先輩……)

直「まあ、そうですね。菫が映えていた作品だったと思います」

菫「あ、そうだ直ちゃん」

菫?「どっちが菫でしょう!」

直「ほら次の部屋行くよ、菫」

菫「わわっ、ちょっと待ってよー!」

菫?「……面白いお友達が出来たのね、菫」


271 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:00:34 f/dNdDEo0


 □SCENE22‐琴吹邸内≪16の部屋≫


直「今度はどんな部屋を用意したの?」

菫「えっと、確かねー……」


 そう言いながら扉を開けた先に広がっていたのは、結婚式場であった。


直「ああ、なるほど……」

直「私と菫が結婚しろと」

菫「えっ、あ、そういうことじゃなくて」

直「大丈夫。菫を不幸になんかしないから」

菫「いや、ただそういう部屋にしただけで……」

直「菫は嫌?」

菫「そ、そんな……嫌ってほどじゃないんだけど……でも……」

直「まあ全部演技なんだけど」

菫「えっ」

直「というわけで第十六位の作品は、全部演技だったという衝撃展開で最後を締めくくった!」


直「八番手◆6nSiQG3K46さんの“律「許嫁?」”です!」


直「合計点は152点でした」

直「詳細は以下の通りです」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:31点 … (1点 * 1 / 2点 * 0 / 3点 * 10 / 4点 * 0 / 5点 * 0)
冒頭:30点 … (1点 * 1 / 2点 * 2 / 3点 * 7 / 4点 * 1 / 5点 * 0)
展開:30点 … (1点 * 2 / 2点 * 1 / 3点 * 6 / 4点 * 2 / 5点 * 0)
読後感:30点 … (1点 * 1 / 2点 * 4 / 3点 * 4 / 4点 * 1 / 5点 * 1)
読みやすさ:31点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 7 / 4点 * 1 / 5点 * 0)

合計:152点
平均:30.4点


直「琴吹先輩のお父さんが田井中先輩に色々とどうなのかと思うこと等をするも、
 結局は全て仕組まれていたことだった……という作品だね」

直「どの部門も高評価とはいえなさそう。
 特に5点があるとはいえ、読後感に2点が集中していることがわかるよね」

直「最後の終わり方が評価を大きく分けたみたい」

菫「……」

直「菫?」

菫「……次の部屋行くよ」

直(怒ってる?)


272 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:01:22 f/dNdDEo0


 □SCENE23‐琴吹邸内≪15の部屋≫


 二人が入った部屋は、ただひたすらに広大な部屋だった。


直「……なんだろう、ここ」

直「菫、ここはなんの部屋なの?」

菫「広いだけの部屋だよ。琴吹家最大の部屋で、
 学校の一つのクラスとその親族、知人が入っても大丈夫なんだ」

直「へー……。あっ、つまり第十五位の作品は、
 大勢の人をなだれ込ませて琴吹家の広さを強調していた……」


直「一番手◆IxdIiBIF62さん“唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」”!」


菫「……」

直「……えっと、合計点は156点でした。内訳は以下の通りです」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:31点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 9 / 4点 * 0 / 5点 * 0)
冒頭:29点 … (1点 * 2 / 2点 * 1 / 3点 * 7 / 4点 * 1 / 5点 * 0)
展開:32点 … (1点 * 2 / 2点 * 2 / 3点 * 3 / 4点 * 3 / 5点 * 1)
読後感:28点 … (1点 * 1 / 2点 * 4 / 3点 * 5 / 4点 * 1 / 5点 * 0)
読みやすさ:36点 … (1点 * 1 / 2点 * 1 / 3点 * 4 / 4点 * 4 / 5点 * 1)

合計:156点
平均:31.2点


直「琴吹家に招き入れられた人が雪崩のように増えていって、
 最終的にはここまでになるのか! という作品だね」

直「これも一レス系だから仕方ない部分が多いよね。
 読みやすさは比較的高評価のようだけど」

直「あと気になったのは、展開の点数が大きく分かれているところかな」

菫「……そうだね」

直「菫……」

菫「ふんっ」

直「怒ってるところ悪いんだけど、次の部屋に案内してくれる?」

菫「直ちゃんデリカシーなさすぎるよっ!」


273 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:02:02 f/dNdDEo0


 □SCENE24‐琴吹邸内≪14の部屋≫


直「ここが今度の部屋? ……なんだろ、この香り」


 直の鼻腔をくすぐるのは、切ない色を含んだ甘酸っぱい香りであった。


菫「直ちゃん、一応言っておくけど私まだ怒ってるからね」

直「……そんなにあれを本気と捉えちゃったの?」

菫「うっ」

直「冗談を本気と捉えちゃったんだ?」

菫「も、もう! 早く次の順位発表するよ!」

直「人の気持ちは難しいなあ」

直「……ということで第十四位の作品は、
 そんな難しい気持ちの中の代表、初恋をテーマにした!」


直「十六番手◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」です!」


菫「……合計点は162点でした!」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:35点 … (1点 * 1 / 2点 * 1 / 3点 * 5 / 4点 * 3 / 5点 * 1)
冒頭:31点 … (1点 * 0 / 2点 * 4 / 3点 * 6 / 4点 * 0 / 5点 * 1)
展開:33点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 6 / 4点 * 1 / 5点 * 1)
読後感:35点 … (1点 * 1 / 2点 * 1 / 3点 * 5 / 4点 * 3 / 5点 * 1)
読みやすさ:28点 … (1点 * 1 / 2点 * 3 / 3点 * 7 / 4点 * 0 / 5点 * 0)

合計:162点
平均:32.4点


菫「珍しく田井中先輩の弟を主役に、一目惚れと失恋を書いた作品。
 最後の胸にくる切なさが強烈だね」

直「そのこともあって、全体的には低い評価なんだけど、
 読後感では比較的高い評価を得ているよ」

直「ただ、読みやすさでは最低点。
 即興で書いていたみたいだから、ある程度は仕方のないことなのかもしれないけど」

直「そういえば菫の初恋の相手って誰?」

菫「と、唐突だね……」

直「気になって」

菫「……じ、じゃあ次の部屋に行こう!」

直「あ、逃げた! 待って!」


274 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:02:35 f/dNdDEo0


 □SCENE25‐琴吹邸内≪13の部屋≫


菫「ふー……直ちゃんの足が遅くて助かった……」

直「ぜーはー……ぜーはー……」

菫「ついでに体力も全然無くて助かった」

直「こ、この部屋……は、なに……?」


 四方の壁に貼られているのは、金髪の少女二人が並んで映る写真だった。


菫「あ、えっと。この部屋は私とお姉ちゃんの思い出が詰まった部屋だよ。
 二人の成長記録といえばいいのかな」

直「二人の成長……」

菫「そう」

菫「そんな、私とお姉ちゃんの成長を微笑ましく書いた第十三位の作品は!」


菫「三番手◆gOEl3XmF6Uさんの“菫「わたしとお姉ちゃん」”です!」


直「ご、合計点は163点でした……!」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:34点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 8 / 4点 * 2 / 5点 * 0)
冒頭:30点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 8 / 4点 * 0 / 5点 * 0)
展開:28点 … (1点 * 2 / 2点 * 1 / 3点 * 8 / 4点 * 0 / 5点 * 0)
読後感:34点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 6 / 4点 * 3 / 5点 * 0)
読みやすさ:37点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 5 / 4点 * 5 / 5点 * 0)

合計:163点
平均:32.6点


菫「お姉ちゃんが私とどんな道を歩んできて、
 一体どんな言葉を交わしてここまで来たのか、それを書いていた作品だね」

直「……ふー……」

直「冒頭と展開が低評価だけど、読後感で盛り返してる。
 一方で読みやすさは比較的高評価……まあほのぼのにありがちな点数分布かもね」

菫「……あれ、十四位の人と一点しか違わないんだ!」

直「でもどこが評価されたか、そこは大きく分かれているよね?
 それがこの採点方法の醍醐味ってやつだよ」

紬「楽しそうね、二人とも」

菫「あ、お姉ちゃん!」

直「さっきはどうも」

紬「なんの話?」

直(あれで誤魔化せると思ってるの……?)

紬「まだまだ先は長いけど、二人とも頑張ってね。応援してるから」

菫「うん、ありがとうお姉ちゃん」

紬「……二人のこと、応援してるから!」

菫「う、うん?」

直「菫、そろそろ次の部屋に」


275 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:03:03 f/dNdDEo0


 □SCENE26‐琴吹邸内≪12の部屋≫


菫「ふう、いきなりお姉ちゃんが出てくるなんてびっくりしたよ」

直「私としてはさっきのあれで誤魔化せたと、未だ思ってる二人にびっくりだよ」

直「それで、この部屋はどんな部屋なの?
 見た感じは普通の豪邸のお部屋って感じがして、特徴が少ないんだけど」

菫「貸し切りのお部屋。予約を取った人が利用できる、特別な部屋なの」

直「あ、つまり第十二位の作品は、
 琴吹家に元々あった“予約必須”の設定を上手く使ったあの作品……」


菫「そう、十五番手◆XksB4AwhxUさんの“紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」”です!」


菫「合計点は165点でした!」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:30点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 8 / 4点 * 0 / 5点 * 0)
冒頭:32点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 6 / 4点 * 2 / 5点 * 0)
展開:35点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 6 / 4点 * 2 / 5点 * 1)
読後感:31点 … (1点 * 0 / 2点 * 4 / 3点 * 5 / 4点 * 2 / 5点 * 0)
読みやすさ:37点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 8 / 4点 * 2 / 5点 * 1)

合計:165点
平均:33点


菫「そう……琴吹の人間でも、予約をとらないといけないのは同じ……。
 当然、斉藤家の人間だって……! という作品だね」

直「読後感がやや低評価のようだけど、冒頭、展開では安定した評価という感じだね。
 雰囲気が低いのは一レス系の宿命なのかな」

菫「一レスでいかに雰囲気を作れるかも、それを書く人の課題なのかも?」

直「その一方、読みやすさは比較的高評価で固まってるね。
 これも一レス系の強みといえるのかもしれない」

直「ところでこんな発表のためによく部屋を貸せたね?
 常に一杯なんじゃなかった?」

菫「この企画は何年も前から計画されたのものだから、
 部屋の予約なんて済んでいて当然なんだよ」

直「へー」

菫「うん」

直「……」

菫「……」

直「……よし、次に行こう」

菫「あ、冗談なのに一つもツッコんでくれないんだね!?」


276 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:03:55 f/dNdDEo0


 □SCENE27‐琴吹邸内≪11の部屋≫


直「今度の部屋は暖かいね」

菫「そうでしょ? そして、これを見てよ」


 直の眼前を、桃色のなにかがひらりと舞う。


直「……まさか、これ」

菫「そう。桜だよ」

菫「というわけで綺麗な第十一位の作品は桜咲く風景が自然と思い浮かぶ!」


菫「七番手◆IxdIiBIF62さんの“紬「コトブキ・サクラメント」”です!」


菫「合計点は168点でした!」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:41点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 4 / 4点 * 3 / 5点 * 3)
冒頭:31点 … (1点 * 1 / 2点 * 2 / 3点 * 6 / 4点 * 2 / 5点 * 0)
展開:33点 … (1点 * 1 / 2点 * 1 / 3点 * 6 / 4点 * 3 / 5点 * 0)
読後感:33点 … (1点 * 1 / 2点 * 1 / 3点 * 6 / 4点 * 3 / 5点 * 0)
読みやすさ:30点 … (1点 * 1 / 2点 * 2 / 3点 * 7 / 4点 * 1 / 5点 * 0)

合計:168点
平均:33.6点


直「写真を撮りに出掛けた先輩たちと桜が、ともに美しく咲いている作品だね」

菫「中身の三要素、冒頭、展開、読後感では安定した評価が出ているね」

直「若干冒頭が低めに出ちゃってるけど、
 この作品で特筆すべき点はやっぱり雰囲気の評価の高さかな」

菫「他の項目に比べて十点近くの差を出しているね」

直「雰囲気作りは上手くいったと言っていいね。
 だから問題は読みやすさ。これが結構低評価になってる」

菫「この人は一番手としても作品を書いてくれた人だね! 感謝感謝!」

直「……それにしても桜かー……」

菫「桜だねー……」

菫「……はっ! わ、私は他の娘とは絶対しないことをするつもりはないからね!」

直「なんの話をしてるの?」


277 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:04:46 f/dNdDEo0


 □SCENE28‐琴吹邸内≪10の部屋≫


直「あれ、ここの部屋、雰囲気違うね?」

菫「うん。だって琴吹家じゃないもん」

直「えっ?」

純「……人の家に勝手に穴開けおったのはお前らかー!」

直「あ、純先輩。こんばんは」

純「挨拶なんてしてる暇じゃないから! ねえ一体なんなの、この穴!?」

菫「というわけで隣の人がちょこっとしか出てきていないのに、
 タイトルに何故か出てきてしまっていた第十位の作品は……」


菫「十番手◆ym58RP.VtEさんの“純「突撃!隣の一軒家」”でした!」


菫「合計点は172点でした」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:37点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 6 / 4点 * 3 / 5点 * 1)
冒頭:38点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 4 / 4点 * 3 / 5点 * 2)
展開:33点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 8 / 4点 * 0 / 5点 * 1)
読後感:27点 … (1点 * 0 / 2点 * 7 / 3点 * 3 / 4点 * 1 / 5点 * 0)
読みやすさ:37点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 7 / 4点 * 1 / 5点 * 2)

合計:172点
平均:34.4点


直「隣の純先輩のことは置いておいて、
 ムギ先輩の家の色々な秘密に迫っていった作品だね」

直「冒頭が高評価なんだけど、展開、読後感と進むにつれて評価が低くなっているね。
 特に読後感は他の作品と比べても、結構低めだよ」

直「一方で雰囲気と読みやすさでは比較的高評価で、十分な水準に達してる。
 これは改善点が結構見えやすい結果といえるよ」

純「改善はいいから、私の家の修繕はどうしてくれるのかな?」


 純が怒りを交えた疑問を呈すと、突如眼前に初老の男性が姿を現した。
 彼は琴吹家に代々仕える斉藤家の最高責任者であった。


斉藤「その点は大丈夫です。我々が完全に元に戻しますので」

純「あ、そうですか……」

直「それじゃ次の部屋に行こー」

菫「うん!」

純「君ら先輩のことに無関心すぎないかね?」


278 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:05:24 f/dNdDEo0


 □SCENE29‐琴吹邸内≪9の部屋≫


菫「次からはついに一桁に突入だね」

直「うん。そして九位は十七作品のちょうど中心。折り返し地点でもあるよ」

直「そんな折り返し地点ではあるんだけど……」


 直の目に映ったものは、数えきれないほどのモニターと、
 なにやら怪しい機械と、妙なコスプレをした紬の姿だった。


直(うわあ……)

紬「……そう」

紬「というわけで第九位の作品は、私が主導する謎の組織が活躍している」


紬「二番手◆NzKvjMYglEさん……は代理だから、
 無名 ◆4xyA15XiqQさんの“「我らツムギュダーの光の導くままに!」”でした!」


紬「合計点は175点です」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:38点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 7 / 4点 * 3 / 5点 * 1)
冒頭:34点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 6 / 4点 * 0 / 5点 * 2)
展開:36点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 5 / 4点 * 3 / 5点 * 1)
読後感:30点 … (1点 * 0 / 2点 * 4 / 3点 * 6 / 4点 * 1 / 5点 * 0)
読みやすさ:37点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 5 / 4点 * 5 / 5点 * 0)

合計:175点
平均:35点


菫「お姉ちゃん率いる謎の組織ツムギュダーと、正義の味方が戦う様子を書いた作品だね」

直「冒頭から展開にかけて若干取り戻してるけど、読後感で評価を大きく低下させている。
 あの終わり方はすっきりしなかったという人が多いってことだね」

直「一方で雰囲気、読みやすさは比較的高評価。
 中身をもっと整えてあげれば、また評価は変わっただろうね」

紬「そういえばこの175点って、合計点の平均ね」

直「まさにど真ん中に位置している作品ってところですかね。
 ……で、そのコスプレに対して、私はどうすればいいんですか?」

紬「ツッコミちょうだい!」

直「菫、次の部屋を」

紬「しゅん」

菫「……そ、その格好変だね!」

紬「菫……!」

直(これでいいんだ……)


279 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:06:10 f/dNdDEo0


 □SCENE30‐琴吹邸内≪7の部屋≫


直「あれ? この部屋、番号おかしくない?」

菫「直ちゃん、その前に一つ」

菫「この部屋に入るには、条件があります」

直「えっ?」

菫「それは穢れなきことの証明……そう」

菫「処女でなくてはこの部屋に入ることはできません!」

直「……」

菫「ちなみにそのチェックはプロメイドこと、この私……斉藤菫が担当します」

直「えっと、それってつまりどうやって?」

菫「直ちゃん」

直「菫? 目が怖いよ?」

菫「大丈夫、怖くないよ。怖くないから、そっと私に身を委ねてごらん?」

直「はい怖いから順位発表! というわけで第十七位の作品は二つ!」

直「一つは琴吹家の立派そうな雰囲気から、うまく設定を作り上げた作品!
 もう一つは菫のベクトルが変な方向に向いているプロっぷりが書かれた作品!」


直「十四番手◆SPYbqROGM2さんの“「聖童女よ、門を越えて行かん」”と、
 十七番手◆WNo46kS79Aさんの“プロメイド---斎藤菫”です!」


直「両者とも合計点は177点でした。まずは十四番手さんの作品からです」


280 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:07:01 f/dNdDEo0


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:34点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 7 / 4点 * 1 / 5点 * 1)
冒頭:32点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 7 / 4点 * 0 / 5点 * 1)
展開:37点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 3 / 4点 * 3 / 5点 * 2)
読後感:36点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 5 / 4点 * 3 / 5点 * 1)
読みやすさ:38点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 7 / 4点 * 3 / 5点 * 1)

合計:177点
平均:35.4点


菫「厳しいチェックを起点としたコミカルな勘違いが広がっていく作品だね。
 そのチェックもお姉ちゃんの冗談だったんだけど」

直「冒頭では伸び切らなかった点数も、展開と読後感で取り戻している。
 話が進んでいくにつれて、読者の心を掴んでいったことがわかる評価だね」

直「読みやすさでもきっちりと高評価を得ているね」

菫「それじゃもう一つ、十七番手さんの作品を!」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:40点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 3 / 4点 * 6 / 5点 * 1)
冒頭:40点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 5 / 4点 * 5 / 5点 * 1)
展開:33点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 7 / 4点 * 2 / 5点 * 0)
読後感:31点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 7 / 4点 * 1 / 5点 * 0)
読みやすさ:33点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 7 / 4点 * 2 / 5点 * 0)

合計:177点
平均:35.4点


菫「私がメイドに対するプロ精神を、質問に対する答えで語っていく作品だね」

直「見てわかると思うけど、十四番手さんの作品と大きく内訳が違うね。
 これは冒頭で大きく評価を伸ばしているけど、展開、読後感と評価が低くなっている」

直「読みやすさ、雰囲気の評価も前者とは全然違う。
 こっちは雰囲気のほうできっちり高評価を得た形みたいだよ」

菫「同じ点数でも、これだけ変わってくるんだねー」


281 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:07:48 f/dNdDEo0


 □SCENE31‐琴吹邸内≪6の部屋≫


直「さっきの部屋ではえらい目にあった……」

菫「あれも部屋の影響だからね、仕方ないよ」

直「一気に琴吹家の作り出した部屋が怖くなってきたんだけど、
 今度の部屋はどんな部屋なんだろ……」


 恐る恐る直が見たその部屋は、アンティーク家具で統一された、
 いかにもお嬢様の住まう所であった。


菫「どうかな? なかなか趣きのある部屋だと思うんだけど」

直「なるほど……つまり第六位は、あの西洋の雰囲気に包まれた作品」


菫「四番手◆GGEU0vsSgcさんの“ウィーンの百合”です!」


菫「合計点は181点でした」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:41点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 2 / 4点 * 7 / 5点 * 1)
冒頭:36点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 4 / 4点 * 5 / 5点 * 0)
展開:37点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 7 / 4点 * 1 / 5点 * 2)
読後感:31点 … (1点 * 1 / 2点 * 3 / 3点 * 5 / 4点 * 1 / 5点 * 1)
読みやすさ:36点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 4 / 4点 * 5 / 5点 * 0)

合計:181点
平均:36.2点


菫「琴吹家と斉藤家の出会い……時を遡って語られる物語と、不思議な最後を残した作品だね」

直「シルキとフィオラ、この二人の人物が出す雰囲気は絶大だね。
 雰囲気の点数の伸びが良い」

直「ただ読後感で点数を落としている。評価が見事に分かれてるから、
 この最後をどう捉えたかで、作品の見え方が大きく変わったと思われるね」

菫「この最後はどういう最後なのか……謎だね」

直「そういえばうちの学校ってオカルト研究会があったよね」

菫「何を試そうとしてるのかな直ちゃん」


282 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:08:50 f/dNdDEo0


 □SCENE32‐琴吹邸内≪4の部屋≫


直「あれ、また部屋番号が飛んだ」

直「そしてこの部屋は、これまた異様な……」


 直が異様と評価したこの部屋は、雲の上にあるような部屋。
 美しい花が一面に咲き誇り、見るものを圧倒するのは、その中心に位置する湯船だった。


直「どういう取り合わせなの、これ」

菫「組み合わせたらこうなっちゃったみたい……」

菫「……こほん。というわけで、第四位の作品は二つ」

菫「一つは私とお姉ちゃんの日常が描かれた作品。
 そしてもう一つは、日常とはかけ離れた、ファンタジーな作品」


菫「五番手◆IDiYMzl2Lsさんの“菫「私とお姉ちゃんの日々」”と、
 十一番手◆ZPguhvsw0Aさんの“律「ああっ紬さまっ」”です!」


菫「二つとも合計点は189点でした。まずは五番手さんの作品から」


283 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:09:33 f/dNdDEo0


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:41点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 4 / 4点 * 6 / 5点 * 1)
冒頭:38点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 4 / 4点 * 3 / 5点 * 2)
展開:36点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 6 / 4点 * 1 / 5点 * 2)
読後感:35点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 7 / 4点 * 0 / 5点 * 2)
読みやすさ:39点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 4 / 4点 * 5 / 5点 * 1)

合計:189点
平均:37.8点


直「二人と琴吹家の微笑ましい日常が、話ごとに区切られて広がっていく作品だね」

直「全体的に安定した評価を得ている。
 ちょっと下がっちゃった読後感だけど、そこまで低いわけじゃないし」

直「そして完成度の高い日常系は、雰囲気と読みやすさで見せてくれるね」

菫「それじゃもう一つ、十一番手さんの作品を見ていこう!」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:41点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 3 / 4点 * 5 / 5点 * 2)
冒頭:35点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 7 / 4点 * 0 / 5点 * 2)
展開:39点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 4 / 4点 * 5 / 5点 * 1)
読後感:38点 … (1点 * 1 / 2点 * 2 / 3点 * 2 / 4点 * 3 / 5点 * 3)
読みやすさ:36点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 4 / 4点 * 5 / 5点 * 0)

合計:189点
平均:37.8点


菫「こっちはお姉ちゃんが女神として、軽音部を導きつつ、
 自らがぶつかった困難をその導いた軽音部で乗り越えていく様子が書かれた作品だね」

直「こっちも全体的に高評価だね。ここまで来ると、どの作品もそうだけど。
 目を引くのは、雰囲気の高評価もそうだけど、読後感の評価のばらつき具合かな」

直「冒頭では他と比べるとやや遅れた感じだったけど、
 展開で取り返し、そして読後感で……と思ったら三点の人が二人しかいない。これは面白いよ」

菫「まさに二分割されてるんだね」

直「両者の捉え方の差とはなにか、興味深いね」

菫「……ところで直ちゃん、お風呂入っていく?」

直「あ、ほんとにここ入れるんだ」

直「じゃあ企画発表が終わったら考えるよ」

菫「えへへ、それじゃあお泊りだね!」

直(なんでこんなに嬉しそうなんだろ)

菫「さて、次からは大台のトップスリーだよ!」


284 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:10:03 f/dNdDEo0


 □SCENE33‐琴吹邸内≪3の部屋≫


直「さて、次の部屋はどんな部屋かな……ってなんの変哲もないね」

直「菫、ここはどんな部屋なの?」

直「……あれ、菫?」


 部屋のどこを見ても、菫の姿が見当たらない。


菫『さて直ちゃんに、問題! 私はどこに隠れてるでしょうか?』

直「えぇー……」

直(……探さなくても、まあいいかな)

直「というわけで第三位は、可愛いかくれんぼを披露してくれたこの作品!」


直「六番手◆XksB4AwhxUさんの“紬「かくれんぼ」”でした!」


直「合計点は192点でした」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:39点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 4 / 4点 * 2 / 5点 * 3)
冒頭:37点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 7 / 4点 * 1 / 5点 * 2)
展開:38点 … (1点 * 0 / 2点 * 2 / 3点 * 4 / 4点 * 3 / 5点 * 2)
読後感:37点 … (1点 * 0 / 2点 * 3 / 3点 * 4 / 4点 * 1 / 5点 * 3)
読みやすさ:41点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 5 / 4点 * 4 / 5点 * 2)

合計:192点
平均:38.4点


直「かくれんぼを通して二人きりになったペア同士のエピソードが展開される、
 実にスタンダードなほのぼの作品だね」

直「そのスタンダードさが出たのか、やっぱり雰囲気と読みやすさが他項目と比べて高評価。
 他の項目でも高評価がずらっと並んでいるね」

直「展開、読後感と続くに連れ五点や四点が増える一方で、二点も増えているんだよね。
 これは読み進めるごとに評価が割れていったということかもしれない」

直「……さて次の順位発表で、ついに待望の一位も同時にわかってしまうんだよね」

直「心して次の部屋への扉を開くよ……」

菫『えっ、もう開くの!? ちょ、ちょっと待ってよー!!』


285 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:11:02 f/dNdDEo0


 □SCENE34‐琴吹邸内≪2の部屋≫


菫「置いていくなんてひどいよ……」

直「だって早く次の部屋が見たかったんだもん」

菫?「そうよね」

直「……」


 直の前に立っているのは、菫の格好に似ているような気もする、眉毛の特徴的な女性だった。


菫?「私は菫のクローンよ」

直「同じ手を何度も使わないでください琴吹先輩」

菫「というわけでクローン技術というちょっぴり怖いものに触れた、
 第二位の作品は……」


菫「十三番手◆agqlNoYF4oさんの“ムギ「失われた時を求めて」”です!」


菫「合計点は203点! 来ました、大台の200点越えです!」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:43点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 3 / 4点 * 6 / 5点 * 2)
冒頭:39点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 7 / 4点 * 2 / 5点 * 2)
展開:42点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 4 / 4点 * 2 / 5点 * 4)
読後感:42点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 5 / 4点 * 3 / 5点 * 3)
読みやすさ:37点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 8 / 4点 * 2 / 5点 * 1)

合計:203点
平均:40.6点


菫「異様な執着心から生まれるクローンの悲劇、少し寂しげな最後が描かれた作品だね」

直「さすが平均点が40を超えると、どれも高評価なんだね」

直「中でも驚異的なのが、二点以下の数。
 なんと一つしか二点以下が入れられていないというのは、驚くしかないよ」

菫「高い水準での安定感を見せてくれた作品だったってことだね!」


286 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:11:50 f/dNdDEo0

菫「……さて、ついにあの一位の作品だね」

直「消去法でもうわかっちゃってるけど、うん。やっとたどり着いた」

紬「二人とも、本当にこの先へ行ってしまうの? なにがあるかわからないのよ?」

菫「大丈夫だよお姉ちゃん。私には直ちゃんがついているから」

直「そんな頼りにされても、困るんだけど……」

紬「ふふっ。それじゃ、最後の扉は二人が開くのよ」

菫「うん。……いくよ、直ちゃん」

直「……わかった」

菫・直「せーのっ!」


287 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:12:45 f/dNdDEo0


 □SCENE35‐琴吹邸内≪1の部屋≫


菫「……ついたね」

直「うん」

直「ただ……」

菫・直「あっつい!!」


 二人が立っているのは、ラクダの行き交う砂漠であった。


直「喉乾いたー……水ー……」

菫「……というわけで輝かしい第一位の座を獲得した作品は」


菫「十二番手◆K0TON1AIBgさんの“唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」”でした!
 おめでとうございます!」


直「合計点は209点。企画者も予想だにしなかった点数です」


■各部門の合計点と内訳
雰囲気:42点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 4 / 4点 * 5 / 5点 * 2)
冒頭:43点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 4 / 4点 * 1 / 5点 * 5)
展開:41点 … (1点 * 0 / 2点 * 0 / 3点 * 5 / 4点 * 4 / 5点 * 2)
読後感:40点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 4 / 4点 * 4 / 5点 * 2)
読みやすさ:43点 … (1点 * 0 / 2点 * 1 / 3点 * 4 / 4点 * 1 / 5点 * 5)

合計:209点
平均:41.8点


菫「琴吹家に軽音部の皆さんを呼ぶことになったけれど、
 とある事情で壮大な時間稼ぎをすることになってしまう作品だね」

直「点数は全項目で40点台というのは本当驚き。
 極めて高い水準での安定した面白さがある作品だ」

直「なんといっても冒頭の五点の多さ。
 あのラクダでどれだけの人を惹きつけたか、容易に想像がつくね」

菫「実に完成度の高い作品でした!」

直「改めて、おめでとうございます!」


288 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:15:00 f/dNdDEo0


 □SCENE36‐琴吹邸内≪0の部屋≫


菫「ふう……これで結果発表も終わったね。直ちゃんはどうだった、今回の企画?」

直「初めは不安、特に採点基準ではそうだったけど、
 終わってみれば十七も作品が集まっていて、結構面白い企画だったなあと思う」

直「アンケートサイトについては、やっぱり面倒だったという意見はあったけど、
 やっぱりあの記述形式がベストなんだよね思いつく限りでは」

菫「多少の手間はとらせちゃう形になっちゃったね」

直「でもこうして無事に最後まで走りきれたんだから、良かったよ。
 この企画を通して作者と読者の間で互いに利益が生まれるよう、祈りたいものだね」

菫「うんうん。寄せられた感想も、参考になりそうなものを抽出して、
 自分で分析してみるのも面白いかもね」

直「まあ全部の感想を受け止める必要はないと思うけどね。
 私なんかこの企画とは限らないけど、感想では参考にならないようなことばかり言ってるし」

直「……さて、そろそろお開きとしようか」

菫「そうだね。それじゃ、最後にごあいさつを」


直「えー、この企画は進行補助の奥田直と……」

菫「進行役、斉藤菫がお送りしました」


菫・直「この度はけいおんSS企画“紬「みんな、私のお家に来てみない?」”を、
 応援していただきまして、ありがとうございました!!」


 おしまい


直「……あ、最後に一つ」

直「菫の着ている水着がついに展開しきりました!」

菫「直ちゃん!?」


 本当におしまい


289 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:16:23 f/dNdDEo0
以上です、お疲れ様でした
そしてありがとうございました


290 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/21(金) 00:19:07 SsogB5Vw0
乙!
よおし!感想頑張ろう!!


291 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:25:14 f/dNdDEo0
■作品リスト


一番手 … ◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」 >>6-8

二番手 … ◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」 >>9-24

三番手 … ◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」 >>25-36

四番手 … ◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合 >>37-58

五番手 … ◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」 >>59-69

六番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」 >>70-80

七番手 … ◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」 >>81-91

八番手 … ◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」 >>92-101

九番手 … ◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」 >>102-103

十番手 … ◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」 >>104-128

十一番手 … ◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」 >>129-148

十二番手 … ◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」 >>149-160

十三番手 … ◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」 >>161-163 >>200 >>164-177
 ※>>200は投稿の際、抜けてしまった一レスです。完全に繋がった形は>>199にあります(ガラケーは閲覧不可?)

十四番手 … ◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」 >>178-184

十五番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」 >>185-186

十六番手 … ◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」 >>187-192 >>198

十七番手 … ◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫 >>193-197


■アンケートサイト … http://enq-maker.com/jm7IQZf
■結果発表 … >>262-288

■感想リスト
1人目 … >>203-206
2人目 … >>212-230
3人目 … >>231-234
4人目 … >>239-241
5人目 … >>242-245
6人目 … >>246-248
7人目 … >>250-253
8人目 … >>255-256


292 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:26:33 f/dNdDEo0
数が数なので、何度も確認はしたのですが、集計ミスがあるかもしれません
見つけたら遠慮なく指摘してください


293 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/21(金) 00:28:43 D/CeZK060
企画者さまありがとうございました。
とても面白い企画でした!


294 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/21(金) 00:29:42 f/dNdDEo0
このスレは一週間経った後、削除依頼を出します
ですので、それまでは企画に関することなら語り合いも感想も何でもありです

というわけで>>290さんの感想、お待ちしてますね


295 : ◆udPNnC.01I :2014/03/21(金) 09:37:11 voH9QONw0
最下位覚悟してたけどやっぱり最下位だった


296 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/21(金) 10:36:32 6vW8V.PI0
結構な量だな。企画者おつかれ
1位予想外れたぜ


297 : ◆XksB4AwhxU :2014/03/21(金) 19:22:13 7wEUvJpI0
紬「かくれんぼ」と紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」
を書いたものです。
企画者さま並びに感想を書いてくださった方々、採点してくださった方々
ありがとうございました。
企画には初めて参加させてもらったのですが楽しかったです。


298 : :2014/03/22(土) 00:20:43 Cc87JA8MO
とても良い企画になりましたね!読んでいて楽しかったです!


299 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/22(土) 02:25:04 4FujksJo0
部門別で採点する試みはすごく良かった
同じ順位でも内訳が違ったり、自分の作品がどう評価されるのがわかったり

企画者さん、参加者さん、お疲れ様でした


300 : 無名 ◆4xyA15XiqQ :2014/03/23(日) 23:55:20 4Mb3x/vs0
みなさんお疲れ様でした
感想の最後を濁らせたのは点数晒しに繋げるためだったのですが、
アンケート結果を見ると一目瞭然だったので意味なかったですね


301 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/25(火) 08:28:34 ZGQ1QfC.0
企画者さま、楽しい企画をありがとうございました。
たくさんの作品が集まって、読むのにも時間がかかりました。
一言ずつですが、感想を書きます。


1.唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」
みんながムギちゃんの家に来るお話。作品に登場した全てのキャラクターが来たのでしょうか。
さすがムギちゃんの家、100人乗っても大丈夫!?


2.「我らツムギュダーの光の導くままに!」

ノードカットたちがやられても平然としているユヴィー。ムギエイラ様の力の源泉やTAKUANエネルギーの
正体、ミオーニャ達の本心、わからないことがたくさんある中で、世界征服の目的は、「何一つ変わらない
日常」だったとわかります。純ちゃんの活躍シーンがなかったのは個人的に残念です。



3.菫「わたしとお姉ちゃん」
子どもの頃の「ちょっといい話」を回想したり、わかばガールズが先輩たちを想うSSはいくつかあるけれど、
このSSはそこで終わらずに、わかばのメンバーが「自分たちも、今、そんな時間を過ごしてるんだ」と
再確認しているところが素敵です。


4.ウィーンの百合
フォイラとシルキが本当にムギちゃんとスミーレの先祖だったのか、それはあまり関係ないような気がします。
厳しい時代の中で、絆を深めた女の子2人がいて、現代にはムギちゃんとスミーレがいるなら、それ以上を
語ることなく、このお話は充分に繋がって、満たされています。
シルキの一番の願いは、フィオラがたくさんの人から愛されて生きることでした。
そんな「お姉ちゃん」の願いは、現代で叶えられています。


302 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/25(火) 08:29:16 ZGQ1QfC.0
5.菫「私とお姉ちゃんの日々」
ムギちゃんはお金持ちでも、立場的にはみんなと同じ普通の同級生でした。
でも、ムギちゃんと菫ちゃんの関係、「お嬢様とメイド」には、どうしても、立場や境遇の違いを感じて
緊張します。原作の設定にはその点で、少し消化不良を感じていました。
このSSは、琴吹家で、2人がどうやって立場の違いを超えた姉妹のような関係を築いてきたか、作者さんの
優しい視線が「姉妹」の姿を浮き彫りにしていきます。
ムギちゃんの悪戯心と、初めて食べるラーメンとの格闘、両親や斉藤さんも一緒になって、琴吹家の家族
みんなで入った銭湯の温もり。みんなの温もりに包まれて眠るムギちゃんを支える菫ちゃんもとても幸せ
そうで、ちょっと泣きそうになりました。
優しい2人のイラストも相まって、いつまでも心の中に留めておきたいSSです。


6.紬「かくれんぼ」
高校三年生にもなってかくれんぼをしてしまう、けいおん部のみんな。不思議に違和感がないのは、
ムギちゃんの菫ちゃんへの愛情のせいでしょうか。
菫ちゃんが自然とけいおん部に出会えるようにと画策した原作高校編でのムギちゃんの企みは、
ムギちゃんの優しさと気遣いがあふれるエピソードでした。


7.紬「コトブキ・サクラメント」
キー・アイテムはカメラ。
SSは、写真と似ていると思います。
内容の殆どが台詞で、回りくどい表現は無くて、必要最小限の台詞だけで象ってしまう。
写真は、流れていく時間に対して無力だけれど、ただその一瞬だけはありのままに切り取る。
思い出の場所をまわって懐かしい風景を切り取っても過ぎ去った時間は取り戻せないけど、
今この瞬間なら捉えられるかもと思って、澪ちゃんは追いすがるようにシャッターを切る。
澪ちゃんは、一年中姿を変えることのない万年桜に、一生変わらない夢を見たのでしょうか。


8.律「許嫁?」
紬父の考えはあまりにも強引すぎるなぁ…と思ってたら、実は全部演技でした!
最初にりっちゃんが警察を呼んでなくて、良かったです。
りっちゃんが大事なことに気づくのはいいけれど、律澪以外の世界ももう少し見たかったです。


9.唯「そっくりさん!」
この展開だと、菫ちゃん軽音部に入ってくれなさそうな…それは困ります。
テンポ良く会話が続いていたので、そっくりに見えてもそれぞれが別々の魅力を持った女の子たちなんだ、
というのを菫ちゃんが感じて、自分もいつかこんな軽音部に入ってみたいと夢見る、そんな展開に繋がって
いくともっと楽しかったと思います。


303 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/25(火) 08:30:13 ZGQ1QfC.0
10.純「突撃!隣の一軒家」
てっきり、ムギちゃんがみんなを驚かせるために純ちゃんに協力してもらって家を入れ替わってる、
そういう話だと思って読んでだけど、声の出演だけでした、純ちゃん。
ムギちゃんの家が庶民的でもみんな何も変わらないと思うけど、妖怪たちはいったい何だったんだろう?
タイトルも純ちゃんなのに、純ちゃんファンの私としては、登ったはしごを外されたようです。
純ちゃん分をもっとください!


11.律「ああっ、紬さまっ」
企画SSでは珍しいクロスSS。ムギちゃんは確かに、女神さまのイメージに近いかも。
原作を知らないのでどこまでクロスかは分かりませんが、けいおん!のストーリーとうまく噛み合っていると
思います。
さわちゃんやりっちゃんの優しさも丁寧に描かれていて、企画の中で終わらせるのはもったいないほど
世界観がしっかりしています。この企画後もお話が続くなら、ぜひ読んでみたいと思いました。


12.唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」
ムギちゃんの家が遠すぎるお話。作中のタイトルの付け方やアラビア語?小気味よい台詞のまわし方、
あちこちにコメディのセンスを感じます。
コメディの中にけいおんらしいほのぼのを感じ取れるところも魅力だと思います。悪戯しきれない
ムギちゃんの可愛さを感じられるお話でした。


13.ムギ「失われた時を求めて」
SF短編小説なけいおん? ストーリーもキャラクターもよく練られていて、台詞や世界観にも違和感が
ないです。なにより構成がしっかりしているので、安心してお話を読むことができました。
作者さんが作家を目指している、と聞いても違和感を持ちません。
個人的にはもっとムギちゃんの笑顔を見たかった。一層の感動を呼ぶのは、ふだんのムギちゃんの
天真爛漫な笑顔の裏にこの真実(このSS)を重ねてしまうからでしょう。



14.「聖童女よ、門を越えて行かん」
前の作品が重いテーマだっただけに、気軽に読めるコメディ短編。
処女=汚れがなく清らか、という考えはちょっと違うと思ったけど、そんなこと気にせず読むべきなの
でしょう。この手のSSで梓ちゃんがやたらおませなのは、定番なのでしょうか。


304 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/25(火) 08:32:51 ZGQ1QfC.0



15.紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」
原作の台詞をネタにしたコメディ短編。
斉藤さん、お嬢様の友達の家に泊めて貰おうとするのはどうかと思います!
このドジっ子のムギちゃんは、スヤスヤ眠る菫ちゃんが入ったバッグを抱えて「この子も一緒にお願い!」って
みんなにお願いしそう。ムギちゃんたちが、みんなの家に一晩ずつお泊まりするエピソードも読んでみたいです。


16.聡「初恋」
初恋は恋と知らない間は幸せで、恋と知ると自分を苦しめるものに変わる。
そんなどこかで見た映画のような、聡くんの初恋と、初めての失恋。
もう少し、ほんの少しの勇気があれば、籠を開けられたかも知れないのにね。
そのほろ苦さもまた、初恋の味。
このSSは、最後の1レスまで間があいてしまったので、読みやすさで減点されているのだと思いますが、
それがなければ1位でもおかしくない雰囲気を持つSSだと思います。


17.プロメイド---斎藤菫
ドキュメンタリータッチの、メイドのお仕事。
こういうSS、以前にシスコン分過多の唯憂で読みました。面白いのだけど、インタビューされている
菫ちゃんのキャラがよくつかめないところもありました。
とはいえ、いつもは控えめな菫ちゃん、本当にムギちゃんのことが大好きなんでしょうね。


今回の企画は、いろんな部門別で採点するところも新鮮でした。
「SSの楽しさはひとつじゃない」という企画者さんの思いが表れていて、けいおんSSのいろんな魅力を
再確認することができた、楽しい企画でした。ありがとうございました。


305 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/28(金) 23:14:45 4rOF8HqM0
そういえば、今まで感想書いた人たちは点数晒しとかしないのん?


306 : >>231-235 :2014/03/29(土) 20:59:46 p8EncCZQ0
>>305
ほれ

一番手 … ◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」 >>6-8
 作品の雰囲気   … 2点
 作品の冒頭    … 1点
 作品の展開    … 1点
 作品の読後感   … 2点
 作品の読みやすさ … 1点

二番手 … ◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」 >>9-24
 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 5点
 作品の展開    … 2点
 作品の読後感   … 2点
 作品の読みやすさ … 4点

三番手 … ◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」 >>25-36
 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 1点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 3点

四番手 … ◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合 >>37-58
 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 2点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 1点
 作品の読みやすさ … 2点

五番手 … ◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」 >>59-69
 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 2点
 作品の読みやすさ … 3点

六番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」 >>70-80
 作品の雰囲気   … 5点
 作品の冒頭    … 4点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 5点
 作品の読みやすさ … 4点

七番手 … ◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」 >>81-91
 作品の雰囲気   … 2点
 作品の冒頭    … 2点
 作品の展開    … 1点
 作品の読後感   … 1点
 作品の読みやすさ … 1点

八番手 … ◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」 >>92-101
 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 2点
 作品の展開    … 1点
 作品の読後感   … 1点
 作品の読みやすさ … 2点

九番手 … ◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」 >>102-103
 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 2点
 作品の読後感   … 1点
 作品の読みやすさ … 2点

十番手 … ◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」 >>104-128
 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 5点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 4点


307 : >>231-235 :2014/03/29(土) 21:02:04 p8EncCZQ0
採点晒し続き

十一番手 … ◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」 >>129-148
 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 2点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 3点

十二番手 … ◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」 >>149-160
 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 4点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 4点

十三番手 … ◆agqlNoYF4oさん:ムギ「失われた時を求めて」 >>161-163 >>200 >>164-177
 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 2点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 3点

十四番手 … ◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」 >>178-184
 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 2点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 3点

十五番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」 >>185-186
 作品の雰囲気   … 2点
 作品の冒頭    … 2点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 3点

十六番手 … ◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」 >>187-192 >>198
 作品の雰囲気   … 1点
 作品の冒頭    … 2点
 作品の展開    … 2点
 作品の読後感   … 1点
 作品の読みやすさ … 2点

十七番手 … ◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫 >>193-197
 作品の雰囲気   … 5点
 作品の冒頭    … 5点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 4点

はいはいドン引きだろ、ワロスワロス


308 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/29(土) 21:27:42 PiiJp6AQ0
投票サイトの結果発表をよくみれば順番で丸分かりだけどな

全項目に3点を付けてるのが採点者本人の作品だとして
それが上から7番目なら、全作品の7番目はそいつの付けた点数となる
自分の点数を明かしたくない人もいただろうに

>>306
お前まだいたのかw
このツンデレめ


309 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/29(土) 21:51:10 x7DQWkPI0
投票結果を晒すのはどうかと、俺も思ったけどね
今回の採点形式を晒すなら、>>308の言う通り特定しやすくなるからね

まあ、晒さないと、順位付けとかが証明不能になるし仕方ないね


310 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/29(土) 22:12:12 PiiJp6AQ0
もし参加して投票してたら
「自分のSSはしょぼいくせに人様には偉そうに2点1点付けるんだなwww」
なんて言われたかと考えるとうすら寒い

>>309
コピペして順番を入れ替えておけばよかった
今回は作品数も多くて企画者もそこまで気が回らなかったんだろうが


311 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/29(土) 22:25:22 knoZdzCo0
あれはアンケートサイトの方で記録しているデータをそのまま晒す仕組みになっているから、コピペして順番入れ替えなんかは出来ないよ
だからこそ、証明に使えるというメリットもあるが


312 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/30(日) 13:21:18 7mlpWZN60
参加者は投票するべきじゃなかったと思う
自作品は全項目無条件で3点なんて公平な審査でもなんでもない
まあ投票禁止なんて言ってもするやつはするだろうから
他にいい方法があったかって言われると反論もできないけど


313 : いえーい!名無しだよん! :2014/03/30(日) 13:25:41 RiF0lOU60
書き手の投票をやめたら投票数が激減するだろ
ここに純粋な読み手がどんだけ残ってるっていうんだ


314 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/03/31(月) 16:15:44 O.lR2RwA0
書き手スレで感想を書くと言った方
今日か明日に削除依頼を出そうかと思うのですが、まだ書けていないのでしょうか


315 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 11:46:54 mzKGaGFI0
随分、経つね


316 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 16:17:46 30/ZnBTM0
もう削除依頼出していいんじゃ?


317 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:20:12 WlleIaxY0
梓「暖かくなって、寒くなって」

澪「また暖かくなって、寒くなって」

ムギ「やっと桜が咲いて……」

律「下手すりゃもう散ったところもあるんじゃないか?」

唯「月日が経つのってはやいねー」

梓「『いっかげつご!』なんてのが冗談にならないくらい、あっという間でしたね」

ムギ「気づけばもう四月だもの」

律「そういや、春休みもそろそろ終わり。高校や大学も新学期がもうすぐ始まるな」

澪「週明けから、ってところも多いんじゃないか?
  パ……お父さんたち社会人は当たり前のように1日から働いているけどさ」

梓「とはいえ、何かを始めるためには、何かを終わらせなければですよね。
  ぐだぐだのままでは良くないですし」


318 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:21:54 WlleIaxY0

澪「企画開始から1カ月も経ってるしな……」

律「そ、それはもう触れるなって!」

梓「ともかく、これ以上ご迷惑をかけるわけにはいけません!」

唯「うん!やっぱり、そこはちゃんとしないとだよ!」

ムギ「ふふふ。それなら、この企画のタイトルの通り……」

ムギ「みんな、私のお家に来てみない?」

唯「え?!いいの?」

ムギ「もちろん!」

澪「37時間……とかかからないよな?」

梓「それはさすがに……」

ムギ「お話しながらでも、歩けばすぐよ」

律「よし!じゃあ、作品の感想についてでも話しながら行くか!」


319 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:23:39 WlleIaxY0

一番手 … ◆IxdIiBIF62さん:唯「みんなでムギちゃんの家に行く話」 >>6-8

律「1番最初の作品だな!」

澪「ああ、千客万来って感じだ。
  こんなに参加者が来てくれたのも、◆IxdIiBIF62さんのおかげかもしれないな」

梓「短くて読みやすいし、見た目も、ぞろぞろって感じで面白かったですよね」

律「特に、慶子の後の団子状態。 ありゃビジュアル的にもすごく面白かったな」

唯「こんなに横に長くても入るなんて、ムギちゃんのおうちってすごいんだね!」

澪「いや、そういうことじゃないと思うけど」

ムギ「この登場の順番が、移動中に唯ちゃんたちのパーティーに加わった順なのかしら?
   そうだったら、会話とかも想像出来て楽しいかも」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

さわ子「あのね、本っ当にムギちゃんちはすごいのよ?」

律「さわちゃん、その話何度目だよ……」

唯「あずにゃん、本当にムギちゃんの家はどんなんだろうね」わくわく

梓「そうですね……って、このやり取り、一体何回繰り返せばいいんですか……」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ムギ「こんな感じだったのかしら」


320 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:24:52 WlleIaxY0

澪「いや、先生までは分かるけど、次は恵先輩だぞ?」

律「次が晶たちだから大学つながりなんじゃないか?」

唯「でもその次は堀込先生だよね?」

梓「そして聡くんに、純のお兄さんですから……」

澪「まあ、考えてもしょうがないかもしれないな。
  想像してみるのは面白いかもしれないけど」

律「想像、と言えば、ラストのさわちゃんの得意げなドヤ顔は目に浮かぶようだわ……
  多分渾身のドヤ顔だな」

ムギ「ふふっ、さわちゃんは、前に一度うちに来たことあるものね」

律「んじゃま、そろそろ私らも行くとしますか」

梓「はい!」

唯「みんなでムギちゃんの家に行こう!」

唯・律・梓・ムギ「おー!」

澪「……お、おー!な、なんか恥ずかしいなこれ」

 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 4点

 ひとこと感想:団子状態の文章表現がすごくよかった!


321 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:26:33 WlleIaxY0

二番手 … ◆NzKvjMYglEさん:「我らツムギュダーの光の導くままに!」 >>9-24

律「どんとしんく!ふぃーる!(考えるな!感じろ!)」

唯「ふぃーる!」

ムギ「ふぃーる!」

梓「あきらかにバレバレな先輩方悪の組織とやっぱりバレバレな正義の味方の憂たちとの
  どこかごっこ的な闘い。
  頭からっぽにして、考えずに読んだけど面白かったです!」

澪「すらすらと読めるから、足を止めずに一気に最後まで読めちゃったよ。
  ただ、感想を書くにあたって、何度か読み返したら、惜しい部分も結構見える気がするな」

梓「どの辺りですか?」

澪「一番に思いつくのは、三人称の地の文における視点の距離かな。
  こういう非日常ものって、日常から始める場合読者の視点を添わせる存在が必要だと思うんだ。
  この作品の場合は、間違いなく梓がそれなんだけど、少し地の文が梓の視点から遠い気がするん
  だよ」


322 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:30:21 WlleIaxY0

唯「視点の距離?」

澪「ああ、カメラが撮るもの(地の文)と梓が見ているもの差というか。
  一人称が梓の主観で、梓の目とカメラが一致しているとすると、三人称だから梓の目よりはカメラ
  の位置が離れるだろ?
  それは当たり前なんだけど、ちょっと梓から遠すぎる位置にカメラがある気がするんだ。
 
  例えば、この作品の冒頭はナレーションから始まって、梓の最初の台詞で物語が動き出すだろ?
  梓の台詞で場がピーンと緊張して、その緊張が高まって、和の登場で緩む。
  それはすごくいいと思う」
  
澪「これを映像で考えると、梓の台詞のタイミングで、俯瞰から梓の近くにカメラが寄るイメージだ。
  このカメラの移動は、読み手の視点ともリンクしている。
  
  ただ、カメラが梓の最初の台詞で寄った時に距離がどこかまだ梓から遠いんだよ。
  
  もちろん、三人称だから梓の目と一致する訳じゃないんだけど、カメラの位置が梓の頭の後ろとい
  った近い距離というより、部室のドアの辺りまで離れている気がするんだ。

  ここは、読者の視点を添わせる梓にカメラがもっと近づかなきゃいけないというか、もっと梓に『添
  わせるため』の文章がいるんじゃないかな」
  
ムギ「つぎの>>11の『2』では、梓ちゃんは出てこない場面に移ってしまうから、ここで作品を通じて
   読み手の視点が添うであろう梓ちゃんの視点に読み手の視点を添わせられるかは結構大きいものね」

澪「断っておくけれど、これは地の文中心でいくことが前提だからな。
  元の作品通りのカメラの距離でも、台詞のやりとりを前面に出せば、全然いけると思うしさ」


323 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:31:58 WlleIaxY0

律「そんじゃ、ちょっと実際に見てみるかー」


>「そういえば、ムギ先輩のお家はどんなことをしているんですか?」


 >彼女の素朴で当然の疑問が、柔らかな空気を硬直させてしまう。
 >突然のことであったが、梓はその空気を敏感に感じ取った。しかし肝心な対処法が思いつかない。
 >他の先輩たちを見回し、助けを求めてみる。
 >ところが硬直したのは空気だけではなく、また質問された紬だけでもなく、
 >四人ともが全く同様の状態であったのだ。

 >梓は疑問に思う。これは一体、どうしたことなのか。
 >ムギ先輩の家のことを、三人の先輩は知っている。
 >だというのに、私にそれを教えることは出来ないようだ。

  
澪「この冒頭部分には、いくつか『添わせるため』 のポイントがあると私は思うんだけど、誰か分かる
  か?」

唯「はい!わかりません!」

梓「いきなり諦めないでください!」

律「ヒント!ヒントをくれ!」

澪「要は、視点を添わせる梓と同じ(似たような) 感覚、思考を共有出来ればいいんだ。
  『梓の感覚』、『梓の思考』を描写できる部分、
  つまり『梓が何かを感じた』部分、『梓が何かを考えた』部分だな」


324 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:33:07 WlleIaxY0

ムギ「えっと……この中だと」

唯「『その空気を敏感に感じ取った』と……」

律「『梓は疑問に思う』か?」

澪「もう1つか2つあると思うぞ」

梓「……あ! 『私にそれを教えることは出来ないようだ』です!」

澪「そう、まあ少ししつこくなるかもしれないけど『しかし肝心な対処法が思いつかない』もそこに
  含めてもいいかもしれないな。
  この各所に、『梓の感覚』、『梓の思考』を描写すると……」


「そういえば、ムギ先輩のお家はどんなことをしているんですか?」


 彼女の素朴で当然の疑問が、柔らかな空気を硬直させてしまう。
 ついさっき紅茶をいれたばかりのティーカップ、そこから立ち上る湯気すらも止まってしまったように、梓以外の全ての動きが凍りついた。

 突然のことであったが、梓はその空気を敏感に感じ取った。しかし肝心な対処法が思いつかない。

 何しろ、いつも陽だまりのように暖かな微笑みを浮かべている紬が、その笑みのまま、発する温度をゼロに変えてしまったのである。それは、暖かみもないが冷たくもないまさにゼロだ。

 しかし、梓が次にどうするかによって、身を焼くほどの灼熱か、身を切るほどの極寒に変わる、そんな予感がひしひしと伝わってくるようだった。

 こんな雰囲気は入部してから初めての経験だ。
 
 他の先輩たちを見回し、助けを求めてみる。
 ところが硬直したのは空気だけではなく、また質問された紬だけでもなく、
 四人ともが全く同様の状態であったのだ。

 澪は、その綺麗な顔を前に向けたまま、無表情なビスクドールのように固まっている。
 律は、手を顔の前で組んだまま、今まで見たことのない真剣な眼差しを机に突き刺している。
 唯も、あの唯ですら、珍しく真剣な顔をしている。 が、その視線は宙を泳いでいた。
 視線は紬を最初に、澪、律と空中のプールコースを経由し、ゴールの梓にたどりつき……あ、今眼をそらした。

 梓は疑問に思う。これは一体、どうしたことなのか。
 ムギ先輩の家のことを、三人の先輩は知っている。
 だというのに、私にそれを教えることは出来ないようだ。


325 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:36:55 WlleIaxY0

澪「こんな感じか?」

唯「なんというか……言葉にしにくいんだけど……あんまりうまくな」

律「みなまでいうな!」

澪「ぐっ……そ、そんなことわかってるって!
  最後にちょっと唯で緊張をほぐしてみたけど、なんだかシリアスに傾いちゃったしさ……

  もうちょっと、思わず笑ってしまえるような馬鹿馬鹿しいような文を真剣に書くことができればまた違うんだろうけど、
  そういう地の文って相当に高度な技術だから、私にはまだ無理なんだよ……

  とは言え、そうだとしても、やっぱり添わせるべきキャラクターの視点に一定以上読み手を添わせる文章になるんじゃないか?
  ひょっとすると、梓じゃなくてナレーターがそうなるのかもだけど」

梓「ま、まあ、澪先輩の言いたいことは分かりました。
  ちょっとしつこいですし、そもそも人の文章を勝手に改変するのはどうかと思いますが、
  おかげでなんとなく理解できました」

澪「あ、梓まで……」ズズーン

律「あーあ、凹んじゃった」

ムギ「泣かないで、澪ちゃん……」なでなで


326 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:39:32 WlleIaxY0

梓「あとは、私の役割を二つに分けても良かったかもしれませんね。
  『えぇ?!』ってなるであろう、読み手に合わせたツッコミを入れるのを私にやらせて読み手の気持ちに添わせつつ、
  純にノリノリに正義の味方をやらせて、物語を進める役割を任せるとか」

唯「そうすれば、私達4人VS正義陣営3人+あずにゃんで一応人数的なつり合いはとれるもんね!」

梓「ツムギュダーのコスチュームに着替える、みたいな場面を入れて、日常からの切り替えを演出してもよかったかもしれませんね」

梓(……まあ、単純に全身黒タイツに着替える唯先輩が見たい、ってだけなんだけど)

律「他のみんなの恰好も、
  >服装は制服ではない。それぞれコートやマントやパーカー、全身タイツなどの違いはあるが、
  >総じて黒で統一されているようだった
  だけじゃなくて、初登場時にそれぞれ描写した方がよかったかもなー」

唯「それにしても、正義の味方と悪の組織、秘密結社ものってロマンだよね」

澪「惹かれる要素ではあるな。
  すごく面白い題材だしさ。この作品のような、喜劇(笑劇?)にも挑戦してみたいな」

律「あ、復活した」

梓(それって中学二年的なアレな気が……わかるけど)

ムギ「……ロマン……あるのかなぁ?」

 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:秘密結社ってロマンだと思うのです!


327 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:46:04 WlleIaxY0

三番手 … ◆gOEl3XmF6Uさん:菫「わたしとお姉ちゃん」 >>25-36

唯「あずにゃんのけいおん部の普段のふいんきが伝わってきたよ〜」

梓「先輩、ふいんきじゃなくて、雰囲気ですって」

ムギ「ほのぼのしててすごくよかったわ。
   わかばガールズのティータイムもすてきね」

澪「さらりと読めたし、『手をつないで』が最初と最後重なっているのも読後感の良さに繋がってたな。
  強いて言うなら、入部の時の話だけじゃなく、菫ちゃんから見たムギの高校時代のエピソードの裏話をもっと聞きたかったかな。
  学校や部室でのムギしか私たちや読み手の人たちは知らないから、菫ちゃんだからこそ知っている話をさ。
  各学年の学園祭のときの裏話とかな」

律「そういや、修学旅行の回で、旅館の部屋に到着したムギが、携帯触っていただろ?
  それは実は菫ちゃんにメール打ってて……とか、原作やアニメとも融和性の高い話だから、
  アニメとかに絡ませて、おおっ、と思う部分を入れてもよかったかもなぁ」


328 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:50:26 WlleIaxY0

唯「あと、

  >純「おっ、もし会うならどこかのスタジオでやりたいね……スミーレの家ってスタジオとかあるの?」

  >純「おっ、じゃあ決まりだねー!」

  >純「おおっ! というか、せっかくだから直にもボーカルやってほしいなー。 ……梓だけじゃ不安だし」

  って純ちゃんがおっおっおおって連呼しててちょっと笑っちゃった。
  でも純ちゃんはかわいいから、何してても許される感があるね!」

梓「純が……かわいい……? ぷぷっ」

 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 4点

 ひとこと感想:お姉ちゃんなムギちゃんと、妹なスミーレ。
        漫画やアニメでは見られない二人の関係がうかがえてほっこり。


329 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:53:21 WlleIaxY0

四番手 … ◆GGEU0vsSgcさん:ウィーンの百合 >>37-58

律「テーマの『ムギ(ちゃん)の家』から、ムギと菫ちゃんのご先祖様の話をもってくる発想のスケールには驚いたな」

澪「オーストラリア、音楽の都ウィーン、サラエボ事件、第一次世界大戦。
  作中に散りばめられたキーワードも魅力的だった」

梓「ご先祖様だから当たり前なのかもしれないけれど、ムギ先輩のそっくりさんと菫のそっくりさんが
  抱き合ったり、キスしてたのはドキドキしちゃいました」

唯「ちょっと難しい部分だけど、当時のキリスト教圏からすればあり得るだろうなぁってところにも踏み込んでいて、すごかったなぁ」

澪「それだけに、もう少しウィーンの雰囲気を感じることが出来たら、もっと雰囲気の得点が高くなったかもな」

ムギ「当時の何か有名なエピソードを入れてみたり、当時のお菓子について触れたりとか?」

唯「お菓子?!」

梓「唯先輩、そこに反応しないでくださいよ」


330 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:54:54 WlleIaxY0

ムギ「ウィーンで有名なのは……えーっと……ザッハ・トルテね。

   フランツ・ザッハーが作ったチョコレートケーキで、1814年のウィーン会議の時か1832年に、
   オーストラリア宰相のメッテルニヒの依頼で作られたと言われているわ。

   そのザッハ・トルテを出していたホテル・ザッハーは、当時世界でも最高級ホテルの一つで、
   貴族や外交官が宿泊するのに使っていたそうよ。

   ……私も、昔泊ったことがあるみたい。
   きっと、シルキやフィオラも食べたんじゃないかしら?」

唯「……じゅるり」

ムギ「それじゃ、今度のお茶受けはザッハ・トルテにするね」

唯・律「「やったー!」」

梓(……ん? 確か、ホテル・ザッハーのザッハ・トルテは現地でしか買えないから
  取り寄せになる、って聞いたことがあるんだけど……)携帯ぽちぽち

梓(12cmの4号サイズが20.5ユーロで、1ユーロ141円だから2,890円で、さらに送料が……
  2週間後着で115.49ユーロ?!)

梓(いや、同じく有名なデメルブランドのザッハ・トルテなら日本にも支店があるみたいだから……
  って、それでも3,150円?!)

梓(……き、きっと、普通のお店のだよね)

ムギ「?」にこにこ


331 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 22:57:15 WlleIaxY0

澪「まあ、話がそれてしまったけれど、そういった細かく小さな部分を話すことで、ラストの伏線になってたと思う」

律「ああ、あのラストも印象的だったな」

唯「あれはどういうことだったの?」

律「あー、よくわかんないけど、彼女たちが二人の中で生きている、みたいな感じゃないか?」

澪「過去部分は全て三人称でムギの語りとして書かれていたけど、段々視点がシルキのものに重なっていったしな」

梓「シルキの心情や染まる頬みたいな描写を伏線にしていたのは上手かったですね!」

澪「聞き手(読み手)の物語の没入と、語り手のムギからシルキへのシフトを結びつけたラストはすごく良いアイデアだったと思う。

  あとは、微妙に混じるシルキ(視点人物)以外の心情とかをあえて描写せずに、
  シルキの視点から見たものだけを書くようにすれば、もっと効果的だったかな」

唯「当たり前のことかもしれないけど、私やみんなにもご先祖様がいて、
  ずっと昔から続いているからこそ今があるんだよね。なんだか不思議」

ムギ「……そうね。本当にそう。
   そう思う。
   そんな時間の流れを感じさせてくれたからこそ、
   読み手の人たちはこの作品の雰囲気を高く評価したのかもね」

 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 4点

 ひとこと感想:まさか前世(?)の話を持ってくるとは思わなかった。
        過去の物語への没入をラストに結び付けたのはすごいと思う。


332 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:00:23 WlleIaxY0

五番手 … ◆IDiYMzl2Lsさん:菫「私とお姉ちゃんの日々」 >>59-69

梓「なんだか家でのムギ先輩を見ているようでしたね」

唯「うん! 今回の作品の中で、一番私が知ってるムギちゃんって感じだったよ」

澪「メイド体験にラーメンに銭湯。どれも実にムギ『らしさ』があったな。
  この作品に出てきたエピソードは、実際ムギが一度はやったんじゃないか、って思えるくらい、どれもありえそうなものだしさ」

律「ムギっていうと、高一と高二以降では大分、キャラ……っていっていいのか?が違う感じだったけど、
  この作品のように、家では今に近い感じだったのか?」

梓「菫から聞いた話だと、今のムギ先輩の方がイメージに近いですけど……」

唯「ムギちゃんの中学時代の友達が、私たちが3年の時の学園祭ライブを見に来てて、
  今のムギちゃんを見て驚いたって聞いたことあるよ」(公式ガイドブック情報:未確認)

澪「一番最初に会った時は、本当にお嬢様、って感じだったっけ。
  でも、別に演技してたって感じじゃなかったし、なんか不思議だな……」

ムギ「……」

唯「不思議と言えば、この作品のムギちゃんは『夢』って言わないんだね」

律「おおっ!ほんとだ!
  ムギお得意の、夢のバーゲンセールがない!」

ムギ「バ、バーゲンセール……」

梓「ちょっと、律先輩!」

律「ご、ごめんな、ムギ」

ムギ「バーゲンセールって一度行ってみたい!」きらきら

律「たはは……さすがはムギだな」

唯「ムギちゃんはいつだってムギちゃんだよ! ねー?」

ムギ「……えへへ。 ねー?」


333 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:03:25 WlleIaxY0

澪「まあ、ムギと言えば『夢だったの』イメージだけど、実際には『一度でいいから○○したかったの』の方が多いんじゃないか?
  そこまで詳しく数えたことはないけどさ」

梓「そっちはこの作品内でもありますね!」

澪「そういう細かいところが、本当に上手いなぁって感じたよ。
  電気風呂のところとか、ラーメンの食べ方とか、キャラクターの動かし方というか、演技というか振る舞いというか」

唯「セリフだけでも、動く絵が浮かんできたもんね!」

梓「文によって想起の連続を起こして動かすというよりは、なんというか、アニメーションの動画の作り方、見せ方ですか?」

澪「前のセリフと次のセリフがアニメで言うところの動きの始点と終点という感じで、その間のセリフが
  動きのモーションを想像させる『動きの止め絵』というか……ひょっとすると、イラストを描ける書き手の方に特有のものなのかもな」

律「絵と言えば、最後の絵にはビビったな!」

梓「この作品の魅力はそれだけじゃないですし、もしもあの挿絵がなくても評価は変わらないとは思いますが、
  それでもやっぱり別次元の破壊力はありましたね」

唯「このお話の象徴っていうか、空気がぜんぶつまってたもんね。
  あんなふうに『具体化』できるって、挿絵の大きな力なんだろうな、って思うなぁ」

ムギ「……なんだか、ちょっとだけうらやましくなっちゃうな」

澪「そうだな。私も歌詞だけじゃなくて、絵心もあったらなぁ、ってつくづく思うよ」

ムギ「そうね。 そっちも……かな」

 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 4点
 作品の展開    … 5点
 作品の読後感   … 5点
 作品の読みやすさ … 4点

 ひとこと感想:ああ、いいなあって思える作品だった。挿絵もいいし、とにかくムギちゃんが可愛かった。お父さんへの差し入れのエピソードとかは実際にやってそう。
         いやあ良い作品だった。


334 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:05:10 WlleIaxY0

六番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「かくれんぼ」 >>70-80

>紬「受けて立つわ!りっちゃん!!」ヨシキター!

梓「このムギ先輩の『ヨシキター!』がかわいすぎましたね!!」

律「そ、そうだな」

梓「菫に対するお姉さんのようなムギ先輩と、唯先輩たちと一緒にいるときに時々見せる
  ちょっと子どもっぽいムギ先輩の両面がしっかり両立していて、すごくよかったです!」

澪「あ、梓? ちょっと落ちついた方が……」

梓「子どもの頃の律先輩と澪先輩もかわいかったですよ!!」ふんす!

唯「あずにゃ…」

梓「あ!もちろん!唯先輩も!!ショボーンってする先輩は本当にかわいかったです!!!」

ムギ「梓ちゃんが興奮するのもわかるわ。
   梓ちゃんも含めてみんなかわいらしかったし、とても自然だった気がするもの」

梓「そうなんですよ!私は、この作品を読んでいて、
  私や先輩方の楽しそうな声が何度も聞こえました」

律「やっぱり、自然な発言にはキャラクターの声が聞こえてくる気がするよな」

唯「うんうん、読んでて頭の中でみんなの声が聞こえると、それだけで嬉しくなっちゃうもん!
  そんなSSってすっごく素敵だよね!」


335 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:07:18 WlleIaxY0

澪「しいて言うなら、唯梓のところはもうちょっとタメがあったらもっと良かったと思うな」

梓「確かに『……捕まえますよ』の台詞までの流れがやや早かったかもしれませんね。
  三点リーダーで沈黙、というかタメを演出していますが……
  澪先輩や律先輩の場面では、回想が挟まれていることで、少なくとも読み手の中にはタメが生まれていますし」

律「でも、台本形式って、時間の経過とか台詞の間とかの空白の部分を出すのがちょっと難しいよな」

梓「基本は掲示板で読みますから、レスを区切るというのも一つの手だとは思いますが……」

澪「中の人は、自作では視点変更時にレスを変えてみたけど……」

ムギ「区切りが消えた時には、同じになっちゃうものね」

唯「うーん、むずかしいね」

梓(あの顔はあんまりよくわかっていないんだろうなぁ)

ムギ「……かくれんぼ。 いつかやってみたいなぁ」

 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:楽しそうなみんなの声が聞こえた。それだけで嬉しくなる。
        やっぱり、自然な発言にはキャラクターの声が聞こえてくる気がする。
        そんなSSってすごく素敵だと思う。


336 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:11:04 WlleIaxY0

七番手 … ◆IxdIiBIF62さん:紬「コトブキ・サクラメント」 >>81-91

>紬「確かに、私達の中で一番デジカメ使いこなしてるの澪ちゃんだもんね〜」ツンツン

梓「ツンツンスキンシップなムギ先輩が可愛いかったです!」

律「それはもういいから!」

ムギ「すごくきれいなお話だったわ」

梓「はい! 前半のまち歩きも、後半の桜もきれいでしたね!」

澪「単に中の人の見てる作品が少ないだけかもしれないけれど、
  あんまり私のカメラを使った作品ってみたことないから新鮮だったな」

律(えーっと……ああ、私と梓のあの話くらいか……)

唯「修学旅行の時は忘れちゃったけど、私もカメラ持ってたんだよね」

ムギ「写真は思い出を切り取る、みたいな感じがあるから不思議ね。
   一枚一枚の写真の積み重ねが、記憶を、思い出を重ねている感じがして、私好きだな」

澪「このお話も、まるで写真の一枚一枚って感じだったな。
  作品の中の唯や私のアルバムを見てるみたいというか」

梓「中の人と仲の良い方が『唯澪は映像性が大事だと思う』、
  『澪関連のカップリングを好きな人って、みんな画になる光景を求めている気がする』、
  『背景の画素数が高いこと、一枚絵として美しいことも条件に入ってる気がした』とおっしゃっていましたが、
  この作品を見るとなんとなく分かる気がしました」

律「ずっと咲いているっていう万年桜はちょっと怖い気がするけどな」

唯「えー、きれいだったよ?」

梓「満開の桜、特に夜桜は一種の神秘的な雰囲気とともに、どこか不安を呼ぶような妖しさがありますからね。
  ずっと咲き続けている万年桜には、美しさとともにどこかアンバランスなものを感じてしまうのかもしれません」


337 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:13:36 WlleIaxY0

澪「ちょっと話がずれてきてないか?
  えー、こほん。 他に、私がこの話で面白いと思ったのは、直感とか感性についての描写だな」  

>実際のところ、他にもカメラを持っている友人はいるにも関わらず唯が澪を選んだのは前述の理由以外にも似通ったセンスをしていることを直感で感じ取っているからかもしれない。

>澪もまた、そんな唯に自分の知識を貸すことを厭わない。そうすればもっと素晴らしいものを唯は自分に見せてくれる。それを同じように直感で感じ取っているから、かもしれない。


>わからない、が、唯は自身の直感を信じることにした。


>澪「……いい笑顔しちゃって」

>唯「もう暗いけど、見えた?」

>澪「なんとなくわかった。よっ、と」

澪「私も、『なんとなく』しかわからないんだけど、冒頭から唯は直感を信じてるというか、
  感覚とか感性に委ねているというか、従っているというか……」

律「澪は、あれだよな。 常識的な部分というか理性的な部分と感性的な部分の両方あるんだけど、
  大体は常識的な部分が前に出るよな」

ムギ「澪ちゃんはその感性の部分の爆発が可愛いわよね。
   普段しっかりしてるから余計」

梓(爆発……はじける……どこかで聞いたような……)


338 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:16:11 WlleIaxY0

唯「『かもしれない』っていうのが、私の主観なのか、書き手の人の主観なのかはよくわからないけど、
  ちょっとまだ感性の部分が前に出きっていないよね。
  それが、私やムギちゃんと一緒にまち歩きをして、桜を見て、その感性の部分がどんどん前に出てきたのかもなって」

梓「『なんとなくわかった』っていう澪先輩はカッコイイですね」

ムギ「澪ちゃんは、理性と感性のバランスがどちらかに寄りすぎると脆いというか、押されるとよろけたり倒れちゃいそうだけど、
   どちらかをどちらかが受け入れてる時とか、バランスが取れてる時は、すごくかっこいいと思うわ」

澪「そ、そんなことないって……」

律「澪ちゅわーん、お顔が真っ赤でちゅよー」

澪「う、うるさい!」

ムギ「りっちゃんの場合も澪ちゃんと似てるところがあるかも。
   普段の『あたし』と乙女な『私』がいて、それが安定しているとすごくかっこいいもの」

律「そ、そんなことねーし!」

澪「律、顔真っ赤だぞ」

梓「そういえば、今気付いたんですが、澪先輩、ムギ先輩、唯先輩って、HTTの感性担当って感じですね。
  作詞兼ボーカル、作曲、ボーカル兼作詞ですし」

律「そう考えると、私たちが登場しないというのもある意味必然なのかもな」

唯「でも、やっぱりみんなであの桜を見てみたいなあ」

律「そうだな」

梓「はい!」

澪「ああ、今度はみんなで見よう」

ムギ「うん、きっとね!」

 作品の雰囲気   … 5点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:綺麗な作品だった。読んだ人の多くが、この作品に綺麗な絵のイメージを持つんじゃないかなぁ。
         それって大きい強みだと思う。


339 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:20:09 WlleIaxY0

八番手 … ◆6nSiQG3K46さん:律「許嫁?」 >>92-101

律「え?」

唯・梓「え?」

ムギ「え?」

澪「……とまさしくこんな感じだったな」

梓「ここまで読み手と律先輩をシンクロさせたのは、本当にすごいと思いました」

澪「実際、この作品を読んだ大半の人がみんな同じ感覚になったんじゃないか?」

梓「そう考えると、書き手の人がまさに仕掛け人って感じですね」

唯「はんにんはおまえだ!」

ムギ「あ、ずるい唯ちゃん!私もそれやりたかったのに!」

澪「ひょっとすると、それも狙いだったのかもしれないけれど、
  なんとなく作中の律と同じで、流されるままに状況が進んでしまったって感じで、
  『???』と疑問符が途中から連続したままだったな」

律「どうせムギも騙す側なんだから、ムギも私と一緒になって騙されるフリを徹底的にやって、とかの方がよかったかもなー
  例えば、私を読者と同じく流される役割を与えるとしたら、ムギは私(読者)の当然抱えるであろう疑問(ツッコミ)等の代弁者になるとかさ」


340 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:22:47 WlleIaxY0

梓「役割と言えば、ムギ先輩のお父さんは上手いなぁ、って思いました。
  トリックスターというか、ひっかきまわすというか。
  ただ、ひっかきまわし過ぎて、そのグルグルに翻弄されちゃいましたね」

唯「でも、いくら騙すためだからって、本人に黙って気持ちを伝えちゃうなんてひどいよ」ぷんすか!

ムギ「うんうん!まったくもってそうね!」こくこく

律「まあ、あれは少し親心でもあったような気がするけどな。
  お父さんが単なる憎まれ役というか、意味不明な理屈で律とムギを振りまわしているだけ、って感じだから、
  『ちょうどいい機会じゃないか。一歩踏み出すための』みたいな父親としての部分も『演技でした』にもってかれちゃって惜しい気がする」

澪「読み手としては、神の立場にいるから、あれもちゃんと娘のことを思っているんだろうな、とフォローは出来るんだけど、最後の「演技でした」のぽかーんの衝撃でけし飛んじゃうというか」

梓「あともう1レスか2レスくらい入れて、律先輩にちゃんとみんなで謝って、律先輩に笑って許してもらって、
  その後に『……本当にあの結末でよかったのか?』みたいな父親としての顔を出してあげれば、もうちょっと読後感も変わって来たのかもしれませんね」

澪「ただ、そうなると、あそこまで作中の人物と読み手のシンクロが起こらないだろうな。
  それはそれで、この作品の良さを減らしてしまう気がするけどさ」

唯(……あれ、一番たち悪いのは澪ちゃんだよなあ)

 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:あのラストには、誰しもが律っちゃんとシンクロするんじゃなかろうか。
         あそこまで作中の人物と読み手のシンクロがなされるのはすごい。


341 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:52:42 TzWvRF8Q0
ひとまず前半乙
濃度の高い語りだな

ドヤ顔で「オーストラリア」とかいう澪ちゃんきゃわわ
ただの誤字なんだろうけど


342 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/04(金) 23:56:55 wk3Wag7U0



343 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/05(土) 23:51:22 u.g3hiqM0

九番手 … ◆udPNnC.01Iさん:唯「そっくりさん!」 >>102-103

澪「うーん、1レスでここまで書けるんだな」

唯「短いのに、きれいにきしょーてんけつがまとめられたね!」

澪「……で、だ。 私と梓ってそんなに似てるか?」

梓「私もあんまり似てない気がするんですが……」

ムギ「実は、私もそんなにあの子と似てるとは……」

律「そういや、この作品の中でやったみたいに、髪下したら唯と似てるって言われたことあったっけ」

唯「えー!? りっちゃんと私似てるかなぁ?」

梓「作中でも菫が言ってましたね」

唯「うーん、私みたいにあんまり同じには見えないと、初めから最後の菫ちゃんのようになっちゃうかも」

澪「これも読み手の感じる当然の疑問に対してある程度の予測と疑問の受け止めをしないと、やっぱりさらさらって読み流されちゃうかもなあ。
  だから、やっぱり最初に読み手より早くツッコミを入れておいた方がよかったかもしれないぞ」


344 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/05(土) 23:52:28 u.g3hiqM0

律「ギャグならギャグでぶっ飛んだ確かめ方をする、って方が、『いやいやいやwww』ってツッコミを入れながら読めて楽しいかもな」

>律「おいムギ、乳見せろ」

梓「この律先輩の確かめ方とか面白かったですね!」

澪「乳って……」

唯「ちちって言い方がいいよね。ちち!ちち!」

ムギ「そういえば、澪ちゃんと梓ちゃんも胸の大きさでわかるわね!」

梓「いや、それ以外でも分かりますよね!?菫が言うように、背とか色々ありますよね!?」

澪「コホン! ともかく、私と梓、ムギと菫ちゃんのように似てる、ってネタは結構思いつくから、
  そこからの飛躍を見たかったな。

  例えば、そのままどちらがどちらか分からないまま(もちろん、読み手は分かってる)話が進んでいくとか、
  面白がった唯や律の発案で私と梓、唯と律、ムギと菫ちゃんを逆にしたままで普通に過ごしてみるとかさ」

律「書き手の方が言うとおり、憂ちゃんと風子も混ざったところも見たかったな」

ムギ「風子ちゃんは澪ちゃんと似てるもんね」

律「風子の胸ってどれくらいだっけ……澪のは覚えてるんだけどなー」わきわき

澪「そ、その手、やめろって!」

梓(覚えてるんだ……)わきわき

 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 4点

 ひとこと感想:作者の方もおっしゃっていたけれど、憂ちゃんと風子ちゃんが出なかったのが残念。もともとの想定だった部室で、という方も読んでみたいなぁ。


345 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/05(土) 23:53:52 u.g3hiqM0

十番手 … ◆ym58RP.VtEさん:純「突撃!隣の一軒家」 >>104-128

唯「『1143円って税込1200円ですよね』って感想を見て、『ああ!?』って驚いちゃった。
  りっちゃんもすごいけど、気づいた人もすごいね!」

ムギ「どうなるのかな?どうなるのかな?って思いながら読んでたわ」

梓「最後は、え、ええ〜?そ、そこ行っちゃうの??って感じでびっくりしちゃいました」

律「お化け屋敷だもんな。ありゃ驚くわ」

唯「でも、澪ちゃんに叩いて(スキンシップして)もらえて良かったね」

ムギ「うん!」

律「ところで、あの設定だと菫ちゃんたちはどこに住んでいるんだ?2世帯同居?」

澪「マリオカートをプレイしてるのが律と梓の二人でだけで、『ゲーム機とられちゃった』のコメントがあるけれど、コントローラーの数はいくつなんだろう……
  まさか家にはあまり友達が来ないから、菫の分の2つしか持っていないなんてことがあったら……」ぶわっ

律「いや、ちょっと待て、その後に『澪先輩とムギ先輩と一緒にゲームしよっと』って言ってるぞ?」

澪「あれ、でも人生当てもんゲームの可能性も……」


346 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/05(土) 23:54:49 u.g3hiqM0

唯「そんなことより、バナナはおやつだよね?」

梓「え?デザートって感じじゃないんですか?」

ムギ「食材かしら。あんまりバナナだけ食べるってのは少ないような」

律「おーい、聞いてんのかー?」

澪「だめだ。なんだか気になるところがあり過ぎて、話題が分散してる感じだな」

梓「冒頭はぐぐっと引きこまれたんですが、後半は展開が急すぎて……」

唯「お化け屋敷で暮らすムギちゃんのお話をもっと見たかったなぁ」

ムギ「お化けさんたちと唯ちゃんたちの絡みももっと見たかったわ!」

律「ムギの家がお化け屋敷ってのは、なかなか出ないアイデアなんだから、
  そこを生かした次回作があれば読んでみたいな」

澪「私たちの会話とか、全体的にはすごくクオリティ高かったし、
  続きをまた読んでみたいな、って思う作品だな」

梓「……純も、もうちょっと先輩方と絡みたかっただろうなぁ」

 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 4点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:佐々木さ、じゃなかった、鈴木さんのお家の大きさにびっくりした。
        ネタで終わらすんじゃなくて、もうちょっと長めで、そのお化け屋敷的な家で暮らすムギちゃんとお化けたちがけいおん部の日常とどう絡むのか見たかったなぁ。


347 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/05(土) 23:57:09 u.g3hiqM0

十一番手 … ◆ZPguhvsw0Aさん:律「ああっ紬さまっ」 >>129-148

唯「ムギちゃんは天使だったんだね!」

梓「ちょっと待ってください、それは私じゃ……」

律「違うぞ唯、女神だ、女神」

唯「じゃあ、えいっ」

ムギ「きゃっ」

唯「えへへ、女神にふれたよ!」

梓(ぐぬぬ)

澪「『はいはい。聞いてます』とか言っちゃうムギは本当に可愛いな」

梓「……はっ! 確かに、この作品のムギ先輩は可愛いですね。
  私と一緒の時には絶対に見えなかった、先輩方が1年生の頃を見せてもらえた気がします」

梓「……ひょっとすると、こういう『私の知らない物語』もあったのかもしれませんね」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

梓「そう考えると、自作と通じる部分があるかもって思ったりします。
  あれも『私の知らない物語』ですし。
  そして、その『私の知らない物語』の中にこそ『私の知っている物語』があるのかも……なんてことを考えてしまいました」

梓「とは言え、こちらの作品の方がまだ『私の知っている物語』と近いのかもしれませんね。
  自作や蛸壺の中のような、じめじめとした暗さや冷たさ、しめっぽさとは違う、あたたかさややわらかさがありますから」

梓「こうやって、『私の知っている物語』の中に『私の知らない物語』を見せてくれる眼鏡のようなものは好きです。
  まあ、そのレンズの度の強さは作品によって違うかもしれませんが。

  梓唯、唯梓、律澪、澪律、律紬、紬律……エトセトラ、エトセトラ。
  恋愛に悲恋、喜劇に悲劇、希望に絶望……エトセトラ、エトセトラ。
  色々なレンズがあって、それらを重ねるたびに『私の知っている物語』のプリズムの中のスペクトルが見えるようになって、すごく素敵だと思います」

梓「どこかの誰かが書いた偽史、遠い遠い『月日の先』というのも、その眼鏡をかけて今の私たちを覗けば見えるものなのかもしれませんね」

梓「ただ、なんとなく、眼鏡をかけるのは読み手でも、語るのは私だったり澪先輩、和先輩が多い気がしますけど。
  うーん、これはどうしてなんでしょうね?」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


348 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/05(土) 23:59:29 u.g3hiqM0
唯「あずにゃん……あずにゃん?」

梓「あ、すみません。ちょっと考え事をしてまして。
  そう言えば、原作などでは、いつごろから明確に『軽音楽部』は『けいおん部』になったんでしょうか。私が入部した時にはもう『けいおん部』でしたよね?」

唯「アニメでは、1話の冒頭からりっちゃんが『澪、クラブ見学に行こうぜ!』『軽音部だよ!軽音部!』って言ってるね」

ムギ「決定的なのは、2話の澪ちゃんの「やっとスタートだな」の後にりっちゃんが「私たちの『けいおんぶ』」って言ってたからここかもね」

澪「この作中での『けいおん部』ってのは『私たち』のもの、ってことで律の主観性の現れを示しているのかもな。

  もっと深読みすれば、女神が叶える願いは

  >『けいおん部をつくること…4人部員を集めてけいおん部を作って…
   バンドをやりたいッ!それが私の願いだッ!』

  だから、律の『けいおん部』に関わろうとする人は『軽音楽部』じゃなくて『けいおん部』として認識するようになるのかもしれない」

梓「そう考えると、斎藤さんの『軽音楽部の設立』という願いの認識と、ムギ先輩の『けいおん部を作る』という願いの認識のズレも筋が通りますし」

律「さわちゃんが『けいおん部』と認識しているのも、かつて『私たちのけいおん部』にいたせいなのかもな。
  実際、アニメの1話冒頭から、さわちゃんは『頑張ってね、けいおん部』って言ってるし」


349 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:01:03 VVhf4lvU0

唯「強いて気になったところを言うなら、『私、あなたのことただの嫌なうるさい使用人だって思っていたわ』かなぁ。
  ちょっと言い方にびっくりしちゃったよ」

澪「いや、これは親しいからこそ言える言葉なんだし、直後に

  >そうだ、私認めてもらいたかったんだ。誉めてもらいたかったんだ、斎藤に。

  >他の誰でもない、斎藤に誉めてもらいたかったんだ。

  ってあるから、おじいちゃんとかに甘える感じと言うか、そういった素直になれない部分なんだってのは分かるんだけどな」

律「たとえば『私、あなたのこといつも口うるさいことばかり言うって思っていたわ』みたいに変えるとか?」

澪「そんなところかな。唯の言うとおり、『嫌な』『うるさい』『使用人』ってのはちょっときついしさ」

唯「でも、女神なムギちゃん、すっごくよかったね!」

ムギ「ふふっ、ありがと。 私はこのお話の中の唯ちゃんにすごく助けてもらったわ。

   >ムギちゃんはね。ムギちゃんであればいいの。それでいいんだよ。他にはなにもいらない。
   >女神様だとか人間だとか、そんなことどうだっていいことだよ
   
    って言われて、すごくすごくうれしかったもの」


350 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:02:16 VVhf4lvU0

澪「あれは良い場面だったよな。
  主役?の律がかすんじゃうくらいにさ」にやにや

律「わ、わたしだって、その……」ごにょごにょ

ムギ「うん!もちろん、りっちゃんも。それに澪ちゃんも。
   みんな本当にありがとう。
   さわちゃんもだけど、私みんなに会えてよかったわ」

律「そうだな!」

澪「ああ!」

唯「うん!」

梓(わ、私だって出演していれば……)ぐぬぬ

ムギ「梓ちゃんもよ。
   いつも一緒にいてくれてありがとう」

梓「……えへへ、はい!」

澪「書き手の方が続編を書いてくれると言っていたし、きっと次は梓の出番もあるさ」

梓「そうですね!」

唯「次はどんなお話なのか、今から楽しみだよ〜」

 作品の雰囲気   … 5点
 作品の冒頭    … 5点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 5点
 作品の読みやすさ … 4点

 ひとこと感想:全然ベクトルは違うんだけど、何となく自作に通じるものがある、『けいおん二次創作』としての佳作だと思う。
        女神なムギちゃんが原作のお嬢様なムギちゃんと二重写しになって、上手いなぁって思った。
        どうしてこういうふわふわなものが僕には書けないのかなぁ……


351 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:05:03 VVhf4lvU0

十二番手 … ◆K0TON1AIBgさん:唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」 >>149-160

澪「今回の企画の中では、この作品の出来が突き抜けてたな」

ムギ「全体のレベルが高かったし、短編の見本みたいだもね」

唯「私とあずにゃんのやりとりも、きゃっきゃっ、って楽しそうな声が聞こえてきそうだったもん」

梓「律先輩や澪先輩が、読み手の入れるであろうツッコミを的確に入れてましたし、
  
  >律「私ら、友達の家に遊びに行くんだよな・・・?」

  >澪「そうだろ律。……たぶん。きっと。そう願いたい」

  みたいに、物語の構成を設定(整理)しつつ、これからの展開へのラインを引くところとか、
  細かいところもすごく上手でした」

律「あとはもう、個人的な好みって感じかなあ」

梓「なんだか、ひっかかる言い方ですね。
  その『個人的な好み』ってのはたとえばどの辺りですか?」

律「たとえば、37時間かかった、というなら、
  その間、私たちは学校とかどうしていたんだ?ってなるだろうから、
  先回りして2レス目で、『連休だから泊りに行こう』とか『春(夏、冬)休みも残り×日だし、思い出作りで泊りに行こう』みたいな
  ある程度自然な流れを作っておいた方がよかったかもな。

  ギャグは非日常のまま突き抜けても面白いけれど、それってどんどんどんどん加速しなきゃいけないから、『置いてかれる日常』って結構大事な気がするんだ。

  特に、この作品のオチは、非日常から日常に戻るときの落差を落としどころとしているから、戻るべき日常は大事にした方がいいかもなーって」


352 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:06:23 VVhf4lvU0

澪「あと、オチが
  憂ちゃんが発熱→唯の自宅に帰らなきゃ→『ムギの家から(最寄り)駅まで車で15分』
  ってなっているけど、ちょっとタイトルの『唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」』から少し離れちゃった気もするな。

  作中では、通学とか登下校が繰り返し出てきているだろ?
  だから、意識としては『家は遠いなあ』は『学校から家が遠い』訳だ。

  そこで、『家から(最寄)駅の距離』の近さをオチにもってくるのは、少し遠いというか……」

律「だから、例えば前述のお泊り云々を使って、泊まるついでに課題、宿題をやる予定だったみたいな風にして、
  学校に課題を忘れちゃった→取りに行かなきゃ→紬「唯ちゃん、それなら大丈夫!ここからなら学校まで車で20分くらいだからっ!とか、
 『〇〇(着替え、課題など)、家に忘れちゃった』→取りに行かなきゃ→紬「唯ちゃん、それなら大丈夫!ここからなら唯ちゃんの家まで車で15分くらいだからっ!」
 とかにすれば、よりそれっぽくなるかもなー」

唯「私の家、学校から徒歩圏内だもんね」

梓「……なんだか重箱の隅をつついているような気がしないでもないですが」

澪「私たちの中の人は好きな作品ほどつっこみたくなる面倒くさい性格だから仕方ないな」

律「初読の時から、多分この作品が1位とるなーって書いた方に言ってたくらいだし」

ムギ「でも、ずるい!私もみんなと一緒に世界旅行したかったのに!」

律「いや、あれは……」

澪「……なあ?」

梓「……はい」

唯「……うーん」

ムギ「むー!」

 作品の雰囲気   … 5点
 作品の冒頭    … 5点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 5点

 ひとこと感想:冒頭の掴みから一気に引きこむテクニックがすごい。
        正直最初に読んだ時、総合的に段ちな筆力を感じた。


353 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:08:53 VVhf4lvU0

十四番手 … ◆SPYbqROGM2さん:「聖童女よ、門を越えて行かん」 >>178-184

律「12番手もだけど、今回は短編が光ってたな」

澪「色んなツッコミどころを吹っ飛ばす勢いがあったしな」

梓「やっぱりコメディには勢いが必要ですよね」

律「ただ……さ、しょ、処女って、なあ?」

澪「ま、まあな……コメントが……その難しいな」

梓「で、ですよねー」

唯「?? えーっと、結局、みんな彼氏いないんだよね?
  よかった、私あせってウソついちゃったよ」ぺかー

ムギ「そうね。私もびっくりしちゃったわ」にこにこ

律「うっ、まぶしい……」

澪「なんだか二人を直視できない」

梓「唯先輩はいつまでも清らかでいてください」はぁはぁ

唯「そういえば、『寿吹家の超技術』で納得して悩んじゃったけど、実際に何かウソがばれた、なんてことはなかったよね?」

梓「ああ、よく考えたらそうですね」

澪「まず最初に何か簡単なウソを暴いてみる、とかだったら、その後の流れがより自然だったかもしれないな」


354 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:10:16 VVhf4lvU0

ムギ「たとえば……そうね。
   唯ちゃんはキスしたことある?」

唯「キス? したことないけど……」

ブーブーブー

唯「ええっ!?なんの音?」

ムギ「私の家がとある機関に依頼して開発した嘘発見器よ!」

梓「ゆ、唯先輩!誰と、誰とキスしたんですか?!」

唯「ちょ、ちょっと、あずにゃん!めが、目が怖いよ!?
  し、したことないってば!」

ブーブーブー

ムギ「いいえ、キスしたことあるはずよ?」

梓「ほら!ムギ先輩もああ言ってます!!さあ、きりきり吐いてください!!」

唯「けっぱく、けっぱくだってばぁ!」

律「あーわかった」

澪「何がわかったんだ、律?」

律「憂ちゃんだよ。
  たぶん、憂ちゃんが赤ちゃんのころに頬っぺたとかにしたんじゃないか?」

唯「あ」

ムギ「はい、大正解」

梓「……で、ですよね!そうだと最初から思ってましたよ!」

澪「そういえば、聡が本当に小さいときに律もよくやってたな」

律「ぶっ?!
  な、な、何言ってるんだよ?!」

澪「いや、本当のことだろ?」

律「澪だって、赤ちゃんのころの聡にキスしてただろ!知ってるんだからな!!」

ぎゃあぎゃあ

梓「つまり、こんな感じですか」

梓(聡くん……うらやまけしからんです)

唯「そういえば、憂とはよくちゅーしてたなぁ」

 作品の雰囲気   … 5点
 作品の冒頭    … 5点
 作品の展開    … 5点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 4点

 ひとこと感想:12番手もだけど、今回は短編が光ってたと思う。
        このアイデア。色んなツッコミどころを吹っ飛ばす勢い!実にいいなぁ!


355 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:11:17 VVhf4lvU0

十五番手 … ◆XksB4AwhxUさん:紬「一ヶ月前に予約とらないといけないの」 >>185-186

澪「一番手と七番手を書いた◆IxdIiBIF62さんに引き続き、紬「かくれんぼ」を書いた◆XksB4AwhxUさんの二作目だ」

梓「うぅ、ド遅筆な中の人からすれば、多作な方の生産力は羨ましくて仕方ないみたいです」

律「何かの素敵な物語の始まりを感じさせる冒頭って感じだな」

唯「10番手の方の作品もだけど、面白そうな状況が設定されて、続き!続き!って気になるなぁ」

澪「そうだな。たとえば、ムギが私たちの家に1軒ずつ泊ってまわるとか」

律「おー、んで最後にムギの家にみんなで泊るとか?」

ムギ「そ、それすごくいいわね!」

梓「執事の斉藤さんを、菫に変えて、わかばガールズオチを天丼に持ってくるとかもいいかもしれませんね」

わいわい きゃっきゃっ


唯「あっ、そうだ!ふと思ったんだけど、今回の企画の短編みたいなSSって四コマ漫画みたいだね」

梓「あぁ、特にこの作品みたいに起承転結がはっきりしてると、特にそれっぽいですね」

澪「前に、別の所で小説とSSの違いを比較することで、SSの演劇性について語ったことがあって、
  『演劇的発想』がSSを書く上で重要になる、みたいなこと言ってたけど、それはどちらかというとやや長めな作品だろうしな」

ムギ「数レスみたいな短い作品は『4コマ漫画的発想』が重要となる、ってことね」

澪「この作品のように1レスに起承転結が書かれていて、1本の4コマ漫画みたいになっていると、
  『けいおん!』のような1つの4コマ漫画が連続して1作品をつくりあげているものとの親和性についても注目しても面白いかも、なんて思ったな」

梓「ちょっと作品の感想からはずれちゃったけど、そんなことをこの作品を読んで考えました」

 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:1レスの中でこの起承転結をまとめあげたのがすごい。


356 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:15:05 VVhf4lvU0

十六番手 … ◆H2u4HYHizsさん:聡「初恋」 >>187-192 >>198

澪「今回投稿されたSSの中で、私が1番、2番を争うくらい好きなのがこれだ。

  >大きな門に捕まり空を見上げていた。

  これを見た瞬間、ヤバイ!!って叫び出しそうになったよ」

律「ん?これって『掴まり』の誤字なんじゃないか?」

澪「その可能性もある
  でも、これは『1人称の作品』なんだ」

唯「1人称がどうかしたの?」

澪「釈迦に説法かもしれないけれど、1人称の特徴はなんだか分かるか?梓」

梓「えっと……簡単に言うと、主観人物の視点、つまりその人物の主観に従って書かれる、ですか?」

澪「そうだ、つまりこの文章は、主観人物である聡の見たままが記されているんだ」

梓「あっ、だから『掴まり』でも、ダブルミーニングを表現できる『つかまり』でもなく、『捕まり』なんですね!!」

>僕の胸は大きく高鳴り、彼女とお話をしてみたい。

>彼女がどんな声をしてどんな声をしていて、どんな性格をしているのか知りたい。

澪「これも、『僕の胸は大きく高鳴った。彼女とお話をしてみたい。』の方がわかりやすいかもしれないけれど、
  聡の意識からすれば、『高鳴り、』から『彼女とお話をしてみたい』という風に『思考の飛躍』があっても自然だし、
  むしろ1人称の文章としては誠実なんじゃないかな」


357 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:16:21 VVhf4lvU0

梓「じゃあ、同じように『もっと彼女の瞳に僕を写していたかった』の『写していたかった』も、
  『映していたかった』の誤字ではなく、聡くんの願望がまじっていたってことでしょうか?」

律「……そりゃ深読みのしすぎだって」

澪「(無視して)こんな風に、この作品は主観を大切にしているんだ。
  だから、

  >「あ、あの・・・いつも外を見てましたよね?」

  >「えぇ、見てたわ。そしてあなたは私を見てたわね」

  >「(前略)ねぇ、私がいつも空を見ているって言ったよね?何でだか分かる?」

  >「あ、空が好き・・・だから?」

 この『外を見てましたよね?』と『私がいつも空を見ているって言ったよね?』の一見矛盾に見えるやりとりも、ムギの主観を考えれば理解できる」

ムギ「この私にとって、『外』というのは『空』なのね」

澪「ああ。作品にちゃんと書いてあることを口に出すのは無粋だけど、その直後に自分を籠の中の鳥に喩えて『私は空は上手く飛べない』って言ってるからな」

唯「この辺りの文章は、ムギちゃんの曲『Humming Bird』から取っているのかな?」

ムギ「唯ちゃん、覚えていてくれたの?」

唯「えへへ、もちろん!」

ムギ「ありがとう。 ……すごく……すごくうれしい!」

梓(わ、私だっておぼえてたのに……ぐぬぬ)

梓「あっ、私、この後の『遠い道』と『近い道』の部分が好きです!
  作品の最後で、聡くんは『遠い道が音を立てて消えた』って言ってますが、
  先ほど唯先輩が挙げたムギ先輩の『Humming Bird』には、後半に

  本当に大事なもの 見えなくて触れないけど
  だから壊さないで 永遠にもできる

  きらり眩しい笑顔には 自分からあゆみ寄って
  その一歩が未来 出逢いはかけがえない宝石

  ひかり輝く奇跡なら ドキドキの向こうに 果敢に挑戦 

  という歌詞もありますし、『初恋』だからといって――いいえ、『初恋』だからこそ、大切にしてほしいですね」


358 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:17:54 VVhf4lvU0

澪「梓……良い!すごく良いよ!! あ、なんか次の曲の歌詞が浮かんできた!!!」

唯「『遠い道が音を立てて消えた』って部分、私も好き!
  『消えた』ってどちらかと言うと、静かなイメージあるけど、『音を立てて』がついていて、それにこの時のショックを考えると結構大きな衝撃なのかなぁって。

  それとも、消えることはもうある程度分かっていたんだろうから、自然に崩れたって感じなのかな。
  でも、『音を立てて』なんだよね。

  なんだか静かなんだけど、静かじゃないというか。すごく不思議な感じ。
  その音って、どんな音なんだろうなぁ」

ムギ「消えたものが、2年から3年、ひょっとすると4年も前の『遠い道』っていうのがいいよね。

   『消えた』と『音を立てて』で、イメージの矛盾というか齟齬というかズレのようなものを演出するとともに、
   『遠い道』が消えるときに立てる『音』が聞こえる、しかもそれは『今、ここで』聞こえる。

   『遠い道』と言いつつ、それは果てしなく遠い距離ではなくて、今でも『音が聞こえる距離』なのね。

  このイメージの距離のやっぱり矛盾というか齟齬というかズレのようなとしか言えないものを書けているのはすごいと思うわ」

梓「中の人が読後感に5点をつけたのは3作ですが、その中でも1番の読後感だと言っていましたが、そこの辺りも大きく影響しているんでしょうね」

律「偶然……というか、深読みのしすぎな気もするけどなぁ……
  だいたい、自分の弟の初恋話なんて、どう反応すりゃいいんだ!」

 作品の雰囲気   … 5点
 作品の冒頭    … 5点
 作品の展開    … 5点
 作品の読後感   … 5点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:今回で一番、二番を争うくらい好きな作品。
         惜しむらくは、本当に惜しむらくは、投下の部分と推敲不足(「見て『だ』わね」とか)かなぁ。
         ううう……完璧なver.をみたかったなぁ。


359 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 00:19:11 VVhf4lvU0

十七番手 … ◆WNo46kS79Aさん:プロメイド---斎藤菫 >>193-197

澪「今回の作品の中で、一番笑ったのがこれだな。
  『隠し味の唾液混入も忘れない。』で思わず噴き出しちゃったよ」

律「『笑い』って評価項目があればかなり上位にいったかもしれない作品だったな。
  雰囲気が高かったのもその辺りが影響しているんじゃないか?」

梓「そういえば、これ確か元ネタがありますよね」

澪「あぁ、偶然最近見たんだ。元ネタも面白かったな」

律「まあそんな訳で、ちょっと他のオリジナルな作品とはちょっと差をつけた形になっちゃったな」

ムギ「でも、どこをどう改変してあるのか、とかそういう楽しみ方もできたよね?」

唯「うん、最後にこれが来てくれたおかげで、笑顔で企画を終えることができた気がする!」

澪「肩の力抜いて、菫ちゃんのムギへの愛?にツッコミ入れながら読めたしな」

律(……愛、だよな。いや、うん!あれは愛、愛だよ。愛ってことにしとこう)


 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:一番笑ったのがこれ。思わず噴き出してしまった。
        既存の作品の改変じゃなくて、これがオリジナルだったらもっとすごかったんだけどなぁ。


360 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 21:37:20 rct.sCsY0
感想自体が一つの作品になってる…


361 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 22:36:39 F5C.9shg0
感想がSSで書ける人すごい。面白い。書き手の鑑だなぁ…


362 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/06(日) 22:42:20 qmAzyCX60
感想乙


363 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/07(月) 00:20:27 Q17VLfWI0

ムギ「はーい!到着です!」

律「おっ、そんなこんなしているうちに着いたか」

梓「ムギ先輩の家って、結構学校から近いんですね」

唯「なんか思ったより普通だね……ってあれ?
  この台詞、前も言ったような」

律「いや、ここって……」

澪「あぁ、確か……」

梓「え?え?
  皆さん前に来たことあるんですか?」

ムギ「ふふふ♪」

律「待て待て待て、いやまだ判断を下すには早い!」

澪「そ、そうだな……まだ本当にそうと決まったわけじゃ……」

梓「?」

律「階段上がって……」

唯「4階で……」

澪「403って……」

入口に着くと、ムギは目を閉じた。それはまるで、何かを確認するかのように見えた。
少しの間だけそうした後、ポーチから合鍵を取り出す。

律「合鍵?!」

がちゃり

ムギ「ただいまー」

澪「ただいま?!」

?「今日は早かったのね……って……ええええええ?!
  どうしてあなたたちが?!?!」

律・澪・唯・梓「「「「えーーー?!?!」」」」


364 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/07(月) 00:21:46 Q17VLfWI0

律「さ、さわちゃん?!」

唯「ど、ど、どういうことなの?!」

澪「ど、ど、ど、同棲?!同棲なのか?!」

ムギ「えへへ」

梓「ほ、本当に同棲しているんですか?」

さわ子「そんな訳ないでしょ?!
    今回のお話は撮影期間が長かったし、撮影も飛び飛びだったから、いつ呼び出されてもいいように、
    学校に近い私の家に荷物とか置いていただけよ!」

ムギ「撮影の間だけ、ちょっとお邪魔させてもらったの」

唯「びっくりした〜」

律「確かに、学校が舞台だし、実際相当長い時間かけて撮ってたものな」

澪「アイデア段階からだと3年くらいかかったんだっけ?」

梓「いや、なんだか色々とおかしなところがありますよね?
  ここまでの会話でも聞き流せない部分が多々あるんですが……」

律「こりゃ、ちょっと詳しく話を聞かないとだな!」

唯「そうそう!お茶とお菓子とお話をしょもーします!」

さわ子「……はぁ、しょうがないわね。
    いいわ、みんなあがってちょうだい」

澪「あ、はい……お邪魔します」

唯・律「おっじゃましまーす!」

梓「し、失礼します。
  あぁ、もう、唯先輩、律先輩、しっかり靴を揃えてください!!」

律「うわっ、さわちゃんの下着干してある!」

唯「黒!黒だよりっちゃん!!」

澪「こ、こら!いきなり何してるんだバカ律!」

梓「ゆ、唯先輩、そんなことしちゃダメですよ!」

さわ子「ちょっと、勝手に色々といじらないでね!」


365 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/07(月) 00:23:52 Q17VLfWI0

ムギ「……あの」

さわ子「ん? どうかした?」

ムギ「突然みんなを連れてきてしまって……ごめんなさい」

さわ子「……身体の調子はどう?」

ムギ「えっ? あ……今は、まだ大丈夫です」

さわ子「……そ、ならいいわ。
    友達を連れてくるぐらい、別に平気よ。
    ただ次からは、事前に連絡ぐらい入れてね。
    軽く掃除くらいはしないと、でしょ?」

ムギ「はい……すみませんでした」

さわ子「いいのよ。
    それに、謝るようなことじゃないわ。
    ね?」

ムギ「……はい。ありがとうございます」

さわ子「そうそう。忘れてたわ」

ムギ「?」

さわ子「おかえりなさい」

ムギ「あ……えへへ、ただいま」

律「おーい、ムギ何してるんだー?」

唯「ムギちゃん早くおいでよー!」

さわ子「ほら、みんなが呼んでるわよ?
    早く行ってあげなさい」


ムギ「はい! じゃあさわちゃ……先生も一緒に!」

さわ子「いつも通り、『さわちゃん』でいいのに」にやっ

ムギ「いえ、あの、それは……その……」かあっ

梓「ムギ先輩?」

澪「さわ子先生も早く来てくれないと、律たちが……」

唯「うわあ!冷蔵庫の中に美味しそうなケーキ!!」

律「こっちには、紅茶の葉っぱがいっぱい!!」

さわ子「ちょ、ちょっと、本当に色々触っちゃだめなんだからね!!
     ムギちゃんも、早く行ってあの子たち止めて!」

ムギ「ふふっ、はーい!」

たったったった

おしまい


ムギサワーもっとふえろ!


366 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/07(月) 00:35:44 Q17VLfWI0
長々とお待たせしてすみませんでした。
これで企画の感想語りはお終いです。

頭の悪いことに、自作の4倍近い2万5千字もダラダラと書いてしまい、自分のダメさとアホさで頭を抱えています。
しかも、自作語りもあまりに長くなってしまい、蛇足の長さがキリン並になってしまいそうなのでカットさせていただきました。

最後になりましたが、企画者の方には投稿の時からご迷惑のかけっぱなしで本当にすみませんでした。
また機会があれば企画等に参加したいと思っています。

それでは、ムギサワーな作品が増えることをお祈りして筆を置かせていただきます。


367 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/07(月) 07:06:20 GRxRVVs.0



368 : いえーい!名無しだよん! :2014/04/07(月) 16:03:53 fwWcwvJkO
>>366
感想お疲れさまでした。

読んでいて楽しめました、これはもう本当に1つの作品ですね。


369 : 企画 ◆8d05h6G8ts :2014/04/07(月) 19:53:10 s3cwCI9U0
感想お疲れ様です
それではこのスレを削除依頼に出してきます
どのような形であれ、この企画に参加してくれた方々、ありがとうございました


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