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梓「ナイショのはなし」
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律「あーずさっ」
梓「にゃっ?」
律「へへっ、驚いたな」
梓「そりゃ驚きますよ。急に脇腹をくすぐらないでください」
律「いいじゃん、スキンシップだよ、スキンシップ」
梓「私、脇腹弱いって何度も言ってるじゃないですか」
律「知ってるから攻めてるんじゃんか」
梓「もう……。それでどうしたんですか、今日は?」
律「どうしたんですかって、部長が部室に顔出したら悪いのかよ?」
梓「いえ、そうじゃありませんけど、今日は来ないって言ってたじゃないですか」
律「梓の顔を見に来てやったんだろー?」
梓「はいはい」
律「何だよ、その気の無い返事はー?」
梓「だから脇腹をくすぐらないでくださいってばー!」
律「部長権限だ。後輩の梓くんは甘んじて私の攻撃を受けるように!」
梓「大声で抵抗しますよ?
梓「先生とかに見られたらどうなるでしょうね?」
律「はいっ、すみませんっ!」
梓「分かって頂けたようで何よりです」
律「どんどん余計な知恵を着けていくよな、梓は……」
梓「この二年間で鍛えられましたから。それで今日は何の用事なんですか?」
律「あ、それよりはまずこの前のお祝いのバレンタインのチョコありがとな」
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梓「いえいえ、大学合格おめでとうございます」
律「ありがとさん」
梓「本当に裏口入学じゃないんですよね?」
律「だからしつこいっての!」
梓「分かってますって、脇腹の仕返しです」
律「ったく……」
律「それでチョコは嬉しかったんだけどさ、忘れてた事があったのを思い出したんだよ」
律「二重の意味でちょっと遅れちゃったけどな」
梓「二重の意味で……? 何ですか?」
律「祝福のハグだよ、ハグ!」
律「おまえ、結局うやむやになって、私には抱きついてこなかったじゃんか」
梓「律先輩の方からねだるからですよ……。ねだられるとやりづらいじゃないですか」
律「まあ、それは分かってるけどな。
律「だけど昨日ハグされてない事に気付いてから、もうずっと気になり出しちゃってさ」
梓「いえ、私も気になってないわけじゃなかったんですけど……」
律「だろ? 思い残した事があるなんて、落ち着いて卒業出来ないじゃんか」
律「それで、ほい」
梓「ほい……、って」
律「ハグのやり直ししようぜ?」
律「今なら誰も居ないから恥ずかしくないぞ」
梓「……」
律「梓?」
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梓「ちゅーは無しですよ?」
律「分かってるって」
梓「では、お言葉通りにぎゅっと……」
律「ぎゅーっとな」
梓「……」
律「……」
梓「大学合格、おめでとうございます、律先輩」
律「ありがとう、梓」
律「受験シーズンまで部室で付き合ってくれてサンキュな」
梓「律先輩の事だから、留年してもう一年部長やるのかと思ってました」
律「そうしたい気持ちは山々だったんだけどな」
梓「そう……なんですか?」
律「うん、結構そんな気持ちはあったよ。でもさ」
梓「でも?」
律「前にさわちゃんが風邪を引いた時、お前が純ちゃん達と演奏してた事があっただろ?」
梓「はい」
律「あれを見たらさ、上手く言えないけどこれでいいんだよなって思ったんだ」
梓「これでいい、ですか?」
律「ああ、私もいつまでも部長をやってられるわけじゃなくて、おまえもしっかりしたきて、これでいいんだって」
梓「よく……分かりません……」
律「あははっ、私もだ」
梓「でも私頑張ります」
梓「律先輩が言うみたいに、これでよかったんだって皆さんに思ってもらえるように」
律「そっか……。うん、頑張れよ」
梓「はい」
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律「それとバレンタインチョコもありがとな」
梓「それは全然。私が贈りたくて贈ったものですし」
律「でも嬉しかったよ、美味しかったしな」
梓「それは何よりでした。そういえば……」
律「何だ?」
梓「律先輩は誰にもチョコを渡さなかったんですか?」
律「何だかんだで受験シーズンだからな」
律「皆で話し合って今年の友チョコとかは無しにしようって事にしたんだ」
梓「そうだったんですか」
律「ホワイトデーにはちゃんとお返しするけどな。楽しみにしてろよー?」
梓「あははっ、期待してます」
梓「でも友チョコも無しなんて寂しいですね」
律「いやいや、そうでもないぞ? よく考えたら友チョコって変な習慣じゃん?」
梓「そうですか?」
律「悪いとは言わないんだけど、バレンタインってそもそも一番好きな人にチョコをあげる日だろ?」
梓「まあ、確かにそうですね……」
律「だからこれから先はともかく、受験シーズンの今年だけは本命チョコだけ渡す事にしたんだ」
梓「本命の人……いるんですか?」
律「気になるか?」
梓「そりゃ律先輩の本命なんて想像も出来ませんし」
律「ナイショだ……なんてな。ははっ、方便だよ、方便」
律「今年渡すのは本命チョコだけって言っておけば、本命も用意しない言い訳が出来るだろ?」
梓「もう……、律先輩らしいですね」
律「私らしいって何だよー。まあ、我ながら分かっちゃうけどさ」
梓「はい……」
-
律「……」
梓「……」
律「梓、震えてないか?」
梓「寒いだけですよ」
律「そっか、じゃあもうちょっとだけ温めてやるな」
梓「くすぐったいから結構です」
律「ありゃ……」
梓「でも律先輩がどうしてもって言うなら……」
律「素直じゃないなー、梓ちゃんは」
梓「うるさいです」
律「はいはい」
梓「いいからもっと強くハグしてください」
律「立場が逆になってないか?」
梓「うるさいです」
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-
♪
律「じゃあ、そろそろ行くな」
梓「もう行かれるんですか?」
律「思い残した事を終わらせに来ただけだしさ。ま、明日は皆で部室に来るし」
梓「そうでしたね。それでは、また明日」
律「おう」
梓「あの、律先輩……」
律「何だ?」
梓「今日の事、皆さんにはナイショですよ?」
律「どうしてだ?」
梓「だって……、恥ずかしいじゃないですか……」
律「そうか? まあ、梓がそう言うんなら今日の事は内緒な」
梓「ありがとうございます」
律「その代わり」
梓「はい?」
律「来年も美味しいバレンタインチョコ頼むな?」
梓「あははっ、分かりました」
律「んじゃ、またな」
梓「はい、また明日」
律「寒いから気を付けて帰れよ」
梓「はいっ!」
梓(律先輩行っちゃったな……。本当にハグだけしに来たんだ……)
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梓(恥ずかしかったけど、ちょっと嬉しいな)
梓(律先輩とハグ出来なかったの、私も気になってたし)
梓(それにしても律先輩の本命って誰なんだろう?)
梓(方便だって言ってたけど本当に居ないのかな?)
梓(……)
梓(私ももうちょっとしたら純達誘って帰ろうかな)
梓(?)
梓(ポケットの中に何か入ってる?
梓(ひょっとして律先輩が脇腹をくすぐった時に入れたの?)
梓(えっ? こ、これって……)
梓(……)
梓(純達を誘いに行くのはもうちょっと後にしよう……)
梓(今、私きっと……)
梓(顔中を真っ赤にしてるだろうしね……)
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おしまい!
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乙!
そういやそんな事あったね
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