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律「これも澪、あれも澪、それも澪」
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撿
‐現在・律の部屋‐
律「どうすんだよ、これ」
紬「でも、今からじゃ間に合わないし……」
菖「外で澪ちゃん待たせちゃってるし」
晶「とりあえず幸には、この事態を伝えといたぞ」
唯「……どうしようねー」
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"
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‐一時間前・律の部屋‐
律「……というわけで、まず外で澪を待たせる」
律「ただ一人で待たせるわけにはいかないから、幸に一緒にいてもらうぞ」
幸「うん、わかった」
律「そんで、日付が変わったところで私の部屋に澪を入れる」
律「そしたら一斉にクラッカー鳴らして、誕生日おめでとう! だ!」
晶「何だ、どこにでもあるような祝い方だな」
菖「ふんっ」
晶「ぐえっ!」
菖「澪ちゃんってさ、こういうサプライズですぐ泣きそうだよね。そこが可愛いんだけど」
律(なんの躊躇もなくエルボーいれおったぞ、こいつ)
唯「でもさ、外で待たせちゃう時点で、バレバレだよね〜」
菖「まあサプライズにはならないかー」
紬「ふふ、去年もこうして大学の皆で祝ったけど、何度やってもワクワクしちゃう」
律「おーい、祝う側が一番楽しんでどうするー」
晶「そんなもんだろ、サプライズなんてさ」
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‐十分前・律の部屋‐
晶「……ん、幸は澪と一緒にいるって。あと少しで部屋の前に来るってよ」
律「よしよし、いい感じだな。……唯がプレゼントをどこかに無くしたのを除けば」
晶「あいつ今からプレゼント買ってくるのか……」
紬「そういえば、皆はどんなプレゼントを用意したの?」
律「お、気になるか? 私は、二十歳になる澪に相応しい、そんなプレゼントを用意したぜ」
菖「……えっ?」
律「え?」
菖「い、いやね……一応聞くけど、それってどんなもの?」
律「まあ二十歳といえば、やっぱお酒だからなー。というわけで、これだ!」
律「じゃじゃーん! スパークリング清酒、“澪”だ!」
菖「……お、おー……」
律「……えっ、どうしたんだ菖? やけにテンション低くね?」
菖「まあ、うん。誰でも思いつくよね、そのプレゼント」
律「まさか」
菖「私もだ」
律「お前もだったのか」
菖「スパークリング清酒」
律「澪」
律・菖「……モロかぶりかよっ!」
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律「で、でもさ。その澪って、結構小さいサイズの瓶だよな」
律「二本ぐらいあっても、問題ないよな!」
菖「う、うん、そうだね! たった300ミリリットルが二本だもんね!」
紬「あ、あの二人ともー……」
律「どうしたんだ、ムギ?」
紬「実は私もー……」
菖「……まさか」
律「お前もなのか」
紬「スパークリング清酒」
律「澪」
菖「しかも」
紬「……750ミリリットルなの〜」
律・菖「うわあああああ!!」
菖「どうして! どうして750ミリリットルなんて買っちゃったの、ムギちゃん!」
紬「せっかくのパーティーだから、皆で飲もうと思って〜」
律「さっすがムギ! ここに限れば余計なことを!」
-
紬「ごめんなさい……」
律「い、いや、ムギは悪くないさ……」
菖「そうだよ、ムギちゃんは悪くない」
晶「……」
菖「……ねえ晶」
晶「な、なんだ?」
菖「その後ろに隠したのは、なに?」
晶「こ、これは違うぞ! なんでもないからな!」
菖「……ムギちゃん」
紬「ごめんね晶ちゃん」
晶「ちょ、離せってムギ! てか痛い、痛いから!」
律「じゃあその、隠したものを見せてもらおうか」
晶「……これだよ」
紬「こ、これは!」
菖「スパークリング清酒」
律「澪……」
晶「……」
律「しかも750ミリリットル……」
晶「……」
菖「晶、被らせてくるとかそりゃ無いわー」
律「無いわー」
晶「なんで私にだけ風当たり強いんだよ!!」
紬「晶ちゃん、私たち仲間ね!」
晶「お前はどうしてそんなポジティブでいられるんだよ……」
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"
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唯「皆〜、待たせちゃってごめ〜ん!」
律「お、おう、やっとお帰りか、全く……」
唯「うん、色々悩んじゃってね〜。
でも、二十歳になる澪ちゃんにぴったりのプレゼントを見つけちゃったからね!」
律「えっ」
菖「えっ」
唯「えっ?」
晶「一応聞いておく。唯、なに買ってきたんだ?」
唯「うん、この“澪”っていうお酒なんだけど〜……」
律「よし! 誰か時間を巻き戻してくれ!」
晶「んなこと出来たら苦労しねえよ……」
-
‐現在・律の部屋‐
律「さて諸君。今、我々の手元には計2400ミリリットルの澪がある」
晶「に、二千四百……」
菖「二千四百人の澪ちゃん……」
晶「こええよ」
律「これが300ミリリットルだったのであれば、プレゼントは成功を収めていたに違いないだろう」
紬「でも八倍の量だものね……」
菖「八ぱいの量……」
晶「なんだそれ」
律「今回のことは誰にも責任は問えないだろう。しかし澪のがっかりした顔は見たくない」
唯「おー、りっちゃん熱いねー」
紬「アツアツね〜」
律「う、うるせ!」
律「……そこで、その対応策を私たちで考えたい」
晶「単に新しいプレゼント用意すりゃいいんじゃね?」
菖「もう時間も時間だし、コンビニぐらいしかやってないでしょ」
晶「なら、そのコンビニで……」
菖「なにが買えるの?」
晶「……」
菖「ごめんごめん。でもコンビニで買えるものなんて、たかが知れてるからさ」
紬「今からじゃ、うちに電話しても間に合わないだろうし……」
律「そこまでしなくてもいいぞ、ムギー」
-
唯「じゃあ今からプレゼント作っちゃう?」
晶「それこそ無謀だろう……」
菖「この部屋に、なにかプレゼントになるようなものない?」
律「無いな」
唯「えー、なんでないのー?」
律「んなこと言われてもな……」
晶「おい」
律「どうした?」
晶「いま幸から返信があったんだけどよ」
菖「まさか……」
律「幸もなのか」
晶「スパークリング清酒」
律「澪」
唯「皆、息が合うね!」
律「ああ、全くだ。この場でその連帯感は活かしてほしくなかったけど」
-
紬「でもこれで、よりこのままではいられなくなったわね……」
晶「あー! どうすりゃいいんだよ、これ!」
唯「……りっちゃんをプレゼントにすればいいんじゃ」
律「……えっ」
唯「りっちゃんが澪ちゃんに、
“今年は私がプレゼントよん!”って言えば、いいんじゃないかな!」
律「はあ!?」
紬「それね!」
律「それはない!」
紬「どうして?」
律「当たり前だろ!?」
菖「でもそれ以外の方法、思いつく?」
律「少なくともこの方法は無いだろ……」
晶「酒もこれだけあるんだし、ちょうど良くね?」
律「酔った勢いに任せたらいけないことだから! これ!」
唯「お酒の澪に飲まれて、人間の澪ちゃんには食べられちゃうんだね!」
律「なに“上手いこと言った”、みたいな顔してんだ!」
菖「りっちゃん、考え直して」
律「考え直すのはお前らの方だ!」
紬「澪ちゃんの悲しんだ顔が見たいの!?」
律「今はその次元の話じゃない!」
菖「ほら一本だけさ。こう、ぐいっと」
律「そう言って750ミリリットルの方を渡してくるお前は悪魔か」
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紬「わかったわ、りっちゃん」
律「おお、やっとわかってくれたか」
紬「順序を大切にしたいのね」
律「お前はなにをわかったつもりでいるんだ」
紬「順序じゃない……? ムードの問題だった?」
律「それ以前の問題だ」
晶「まあなー、大体適当な気持ちしか伴ってないんじゃ、抵抗あるよなー」
律「あっ……」
晶「ん……?」
律「……ま、まあなー」
菖「なんだろうね、今の間は?」
律「何でもねえ、何でもねえから」
唯「ムギちゃん、これはつまり、気持ちならあるということではないでしょうか?」
紬「ふむふむ、それならお酒の力は必要ないわね」
律「待て」
菖「じゃあ今日のところはりっちゃん一人を部屋に残して、また明日、改めて祝うことにしよう!」
晶「賛成だ」
律「お、おい待てよ! 待てってば!」
晶「大体お前ら毎日夫婦かってレベルで絡んでるだろ、そんぐらいなんとかしろって」
律「日常のコミュニケーションとコレじゃあ、訳が違うと思うんだ……」
晶「ま、お前から理由話せば、澪もわかってくれるだろ」
律「え、えー……」
菖「どうせまともなプレゼントは用意出来ないんだし、日付跨いだ瞬間じゃなくても祝えるしね」
唯「あとは任せたよ、りっちゃん!」
紬「ファイトー、オー!」
律「……くそおおお! こうなりゃやけ酒だ、こんちくしょおおお!」
-
‐外‐
幸「……なるほど」
幸「澪ちゃん、長い間待たせちゃってゴメンね」
澪「ふふ、いいよ。なにで待たせてるかなんて、お見通しだからさ」
幸「それなら良かった。じゃあ、りっちゃんの部屋に行ってくれる?」
澪「幸は行かないのか?」
幸「んー……また後で、ね」
澪「え?」
-
‐律の部屋‐
澪「お邪魔します」
澪(……あれ。靴が律のものしかない?)
律「……」
澪(……部屋には律一人か)
澪「律ー? 私、来たぞ?」
律「……みおー」
澪「どうした?」
澪(って、酒臭!?)
澪「お前、なんで人のこと呼んでるのに酒飲んでるんだよ!? てか、このお酒……」
澪「……み、“澪”?」
律「たんじょーび、おめでとー……」
澪「あ、ありがとう……じゃなくて。どうした? いくら律でも、人を祝う前にお酒飲むなんて……」
律「……ぷ、ぷれぜんとー」
澪「は?」
律「おさけの“みお”にのまれちゃったわたしがー……みおへのプレゼントなのー……」
澪「……は? なにふざけたこと言って……」
律「……のまれちゃったから……、こんどは、たべられたい……」
澪「ッ!?」
律「えへへー……みおー……」
澪(…………)
澪「……よし、律」
律「なあに?」
澪「今夜は覚悟しろよ?」
【このあと滅茶苦茶アレした】
‐完‐
-
乙
面白かった
"
"
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