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( ^ω^)君を探しに行くようです

1 ながらの練習に使わせてもらいます :2011/09/03(土) 00:23:09


 僕が死の眠りから目覚めると、目の前にはツンがいた。


ξ ゚⊿゚)ξ

( ^ω^)「…ツン?」


 ただし、―――彼女の感情は、全て失われていた。

2 名無しさん :2011/09/03(土) 00:40:59

 僕の身体が納められていた棺の前で、ツンは泣きも笑いもせず立っていた。

そうだ、僕は2年前に死んだんだ。

死んだ者は甦らない。
じゃあ、どうして僕は生き返ったのか…


ξ ゚⊿゚)ξ「……」

(;^ω^)「ツン、一体何があったんだお?」

(;^ω^)「何で僕はまた生き返ったんだお? どうして君は」

ξ ゚⊿゚)ξ「魔法使いが、私の中の『何か』と引き換えにあなたを生き返らせたの」

ξ ゚⊿゚)ξ「久し振りね、ブーン」

3 名無しさん :2011/09/03(土) 00:55:39

 表情も声色も変えず、ツンは淡々と説明してくれた。

僕を生き返らせる為に、色々と手を尽くしたこと。
でも、死者に再び命を吹き込むのには大きな代償が必要だ。

それこそ、ツンの命と引き換えでも足りないくらいの対価が要るのだとか。

しかし、そこまでしても死者が本当に甦るのかは分からない。

諦めかけていたある日、東の森から来た『女』がツンを訪ねてきて、言ったそうだ。

4 名無しさん :2011/09/03(土) 00:56:58



川 ゚ -゚)『あなたの恋人を、私が甦らせましょう』








_

5 名無しさん :2011/09/03(土) 01:12:26

 女は、魔法使いのクール、と名乗ったそうだ。


川 ゚ -゚)『私にかかれば、瞬きをしている間にあなたの恋人は甦ります』

川 ゚ -゚)『対価? あぁ、命はいりません』

川 ゚ -゚)『ただし、あなたの中の大事なものをを4つ、いただきます』

川 ゚ -゚)『なに、それが無くなっても、生きていく分には大して困らないでしょう』

川 ゚ -゚)『どうしますか?』


 生きていく分には、大して困らないもの。
それが『何』か、魔法使いは教えてくれなかったようだ。

それでも命を取られるよりはマシと、ツンは魔法使いと契約。

契約をしてから数日後、棺で眠っていた僕が生き返ったという訳だ。

6 名無しさん :2011/09/03(土) 01:33:03

(;^ω^)「どうしてそこまでして、僕を甦らせようとしたんだお!」

ξ ゚⊿゚)ξ「分からないわ」

(;^ω^)「分からないのなら、契約した意味がないお」

ξ ゚⊿゚)ξ「そうね」

(;^ω^)「そうね、って…」


 …そういえば、ツンの様子が変だ。
僕が死ぬ前までは、ころころと表情が変わって、感情豊かな性格だった。

それなのに、僕はさっきからツンの笑顔も泣き顔も見ていない。
一度死んだ恋人が生き返ったんだ、
笑うなり何なりしてもおかしくないはずなのに…


( ^ω^)「…何を持ってったんだお…」

ξ ゚⊿゚)ξ「?」


 思い当たる節は、僕に二回目の命を与えてくれた『魔法使い』。

彼女に会えば、何かが変わるかもしれない。


( ^ω^)「僕、魔法使いに会いに行ってくるお」


 『君』を返してもらうように、頼みに行く。

7 名無しさん :2011/09/03(土) 06:48:58
れっつながら♪

8 名無しさん :2011/09/03(土) 08:24:13
面白ろそう

9 名無しさん :2011/09/03(土) 09:35:04
導入部が上手い人って羨ましい

10 名無しさん :2011/09/03(土) 15:48:43

 『東の森の魔法使い』というのは、風の噂で聞いた事がある。

鬱蒼と木々が生い茂る森の奥で、
怪しげな薬を作りながら一人で暮らしているらしい。

何か悪さをする訳でも、良い事をしてくれる訳でもない。
時折町に出て来て、食料を買っていくだけだと。

…噂を聞く分には、ちょっと変わった人という印象だ。
そんな人が、どうして僕を甦らせてくれたんだろう?
それに、ツンから持って行った『対価』っていうのは何だろう?


( ^ω^)「じゃあ、行ってくるお」

ξ ゚⊿゚)ξ「気をつけて、行ってらっしゃい」


 それもこれも、魔法使いに会えば分かることだ。

11 名無しさん :2011/09/03(土) 17:06:11

 魔法使いの住む森までは、僕の足でだいたい3日ほどだろうか。
町を出る必要がなかった僕にとっては、ちょっとした旅のようなものだ。

ツンに手を振り、町を出て、東へと進んだ。
広い草原を、ひたすら東へと進んだ。

振り返ってみると、僕らが住む町はちらりとも見えない。
まだ全然進んでいないのだろうけど、
町が見えないだけで、ずいぶん遠くへ来た気分になる。

最初の休憩は、太陽が真上に昇った頃にとることに決めていた。
休む暇も惜しい。
なるべく早く、魔法使いに会いたいんだ。

だから、休憩の時間は最低限に抑えようと思った。


(;^ω^)「ふぅ、ふぅ」

(;^ω^)「こんなに歩いたのは初めてだお」


 額にうっすら浮かんだ汗を拭う。
靴を脱いで足の裏を見たら、まめが出来ていた。

歩くのは大変だけど、それでも、ツンの為だったら頑張れる。

12 名無しさん :2011/09/03(土) 17:29:28
読みやすいなー

13 名無しさん :2011/09/03(土) 17:37:51

 しばしの休憩をとって、僕はまた歩いた。
周りの景色は、歩く度にころころと変わっていく。

緑色の風が吹く草原から、霧の濃い森に。
一日かけて霧の森を抜けると、そこには広大な湿地があった。

一歩足を踏み出す度に、びちゃびちゃと音を立てる地面。
歩きづらいことこの上ないけど、魔法使いに会う為だ。

大きな水溜まりを何度も迂回して、ただひたすら東を目指した。

空が暗くなってくると、足元がよく見えなくなった。
これ以上、無理矢理進んでも危険なだけだ。

適当な場所を見つけて、今日はここで休むことにした。


( ^ω^)「(魔法使いのところまで、あとどのくらいだろう)」

( ^ω^)「(もう少しだと思うんだお。明日には、きっと辿り着ける…)」


 紺色の空には、宝石よりも綺麗な星がたくさん散らばっていた。

あぁ、さすがに疲れた。
身体はくたくたで、足のまめも潰れてしまっている。

それでも、気持ちだけは前へ前へと進もうとしていた。

14 名無しさん :2011/09/03(土) 17:54:53

 虫の歌に起こされ、そこで初めて、
僕は眠ってしまっていたのだと気付いた。

うっすらオレンジ色を帯びている朝霧のせいで、辺りの様子はほとんど見えない。
まだ光が差し込んでいないから、朝日より、ちょっと僕の方が早起きだったようだ。

荷物を背負い、また僕は歩きだした。

ただでさえ湿っている場所なのに、霧のせいでもっと歩きづらくなった気がする。
足元をくすぐる草にも、たっぷりと水分が染み込んでいる。
そのおかげで、ズボンはすっかりぐしゃぐしゃだ。


( ^ω^)「おっ!」


 泥で何度も転びそうになりながら、やっとの思いで湿地帯を抜け出した。
朝日の眩しい光が、目に痛い。

手で日陰を作って、地平線を見渡す。
すると、遥か遠くの方に木々の頭が見えた。
きっとあれが、魔法使いの住む森だ。

やっと、やっと辿り着いた。

15 名無しさん :2011/09/03(土) 18:07:12

 ふらふらになりながらも、森の中に足を踏み入れる。
ギャアギャアと、得体の知れない何かの鳴き声が歓迎してくれた。

…たしかに、不気味な場所だ。
こんな事態にならなければ、きっと一生訪れることはなかっただろう。

さぁ、こんなところでグズグズしている場合じゃない。
魔法使いの家を探そう。

あまり大きな森じゃないようだし、すぐに見つかるだろう。


( ^ω^)「うーんと…」

( ^ω^)「あっ」


 思ったより早く、魔法使いの家のだいたいの場所が分かった。

背の高い木々の隙間から、煙が見えたのだ。

その煙を目印に、木々を掻き分けて僕は進む。
そして、やっと目的の家を見つけた。

一軒だけぽつんと建つ、木造の小さな家。
屋根の煙突からは、もくもくと白い煙が吐き出されていた。

16 名無しさん :2011/09/03(土) 19:00:41
こっからだなwktk

17 名無しさん :2011/09/03(土) 20:06:35

( ^ω^)「―――すいません、魔法使いさんはいらっしゃいますかお?」


 扉の向こうに声をかけた。
なんとなく、家の中からは人の動く気配がする。

どうやら留守ではなかったようで、安心した。

…それにしても、この匂いは何だ?
果実を腐らせたような嫌な匂いが物凄く漂ってくるんだけど…


<悪いけど、今手が離せないんだ

<勝手に入ってー

( ^ω^)「!」


 家の奥から、女の人の声が飛んできた。
この声の持ち主が、ツンの中の『何か』を持って行った魔法使いなのだろう。

言われた通り、扉を開けた。

すると、外にまで漏れ出ていた物凄い匂いが鼻を刺す。


(;^ω^)「凄い匂いだお…」

川 ゚ -゚)ノ「おう、こっちだこっち」


 奥の部屋から、手がひらひらと僕を手まねいた。
この匂いの発生源に、魔法使いはいるらしい。
よく鼻が曲がらないものだと思う。

18 名無しさん :2011/09/03(土) 20:25:48

川 ゚ -゚)「よく来たね」


 魔法使いは、非常にラフな姿で大鍋の中身を掻き回していた。

ちらりと見た鍋の中は、骨のようなものや巨大な目玉が浮いていた。
…何作ってんだろう、この人は…


川 ゚ -゚)「君は――アレだな、この前の死体くん」

(;^ω^)「はぁ」

川 ゚ -゚)「こんな所まで来て、どうした? 何かあった?」

川 ゚ -゚)「貴重なモノを手に入れられて、私は今ご機嫌なんだ。何でも答えちゃうぞ」

(;^ω^)「え、えーと…」

(;^ω^)「……。…な、何作ってるんですかお?」

川 ゚ -゚)「毒薬」

(;^ω^)「えっ」

川 ゚ -゚)「冗談だよ、ただの幸運を呼ぶ薬だ」


 こんな匂いを出しているものが幸運を呼ぶなんて、
あまり考えたくないけど……

まぁ、いい。
そんなことより、さっさと本題に移ろう。

19 名無しさん :2011/09/03(土) 20:44:56

( ^ω^)「ツンと、契約したんですおね?」

川 ゚ -゚)「あぁ、したな」

( ^ω^)「あなたがツンから持って行ったモノっていうのは、何なんですかお?」

川 ゚ -゚)「……」

川 ゚ -゚)「話が長くなりそうだね」


 鍋を掻き回す手を休め、魔法使いは立ち上がった。

格好や歳、どこからどう見ても、彼女は普通の女の人にしか見えない。

それでも、彼女は人知を越えた力を持つ魔法使いなのだ。
彼女の手から離れたおたまが、
一人でに大鍋を掻き回しているのを見て、そう思った。


川 ゚ -゚)「こっち来て、お茶でも飲もう」


 キッチンのある部屋で、魔法使いは指を窓に向けた。
ただそれだけで、窓は一人でに開く。
白色のカーテンが、風に揺れた。

20 名無しさん :2011/09/03(土) 21:29:53
うーん、読みやすい、真似したい

21 名無しさん :2011/09/03(土) 22:24:49

川 ゚ -゚)「―――君も、なんとなく分かってるんでしょ?」

川 ゚ -゚)「私が、君の魂と引き換えにツンから何を貰ったか」


 湯気が踊るコップを僕と自分の前に置いて、魔法使いは言う。

彼女が『対価』として持って行った、4つのもの。
あぁ、だいたいの予測はついている。
僕だって、何も考えないでただ歩いてきた訳じゃない。


( ^ω^)「……」

( ^ω^)「感情、ですかお」


 ここまでの道のりで考えた予測の答えを、今ここで聞くのだ。

そのために、僕はここまで来たのだから。


川 ゚ -゚)「ふーん。なんだ、分かってるんじゃない」

川 ゚ -゚)「人には、誰にでも4つの感情がある。【喜】【怒】【哀】【楽】の4つだな」

川 ゚ -゚)「それら4つの感情があるから、人は人でいられる」

22 名無しさん :2011/09/03(土) 22:44:15

川 ゚ -゚)「感情がない人間は、物を話したり食べたりする人形と同じだ」

川 ゚ -゚)「『君の為なら何を売り渡しても構わない』」

川 ゚ -゚)「それだけの覚悟があったから、ツンは私と契約したんだ」

川 ゚ -゚)「君が甦ったことにより、契約は完了した。もう、ツンの中身はない」

(;^ω^)「そんな!」

川 ゚ -゚)「一度失くなってしまったものを甦らせるっていうのは、そういう事だよ」

川 ゚ -゚)「簡単に捉えられてちゃ困る」

川 ゚ -゚)「…でも、別にいいだろう? 君は二回目の生を受け、恋人は死んだ訳じゃない」

川 ゚ -゚)「これ以上、君は何を望むんだ?」


 何を望むかって?
…そんなの、決まっているじゃないか。

僕は人形と一緒にいたいんじゃない。
人間としての、ツンと一緒にいたいんだ!


( ^ω^)「―――ツンの中身を、返してくださいお」

23 名無しさん :2011/09/03(土) 23:06:03

川 ゚ -゚)「……」

川 ゚ -゚)「ツンの中身を返したら、君は死ぬ」

川 ゚ -゚)「君が死ねば、ツンは私の所へ来るだろう」

川 ゚ -゚)「無限ループになる未来が見えるわ」


 あぁ、そうだろう。
そうなることぐらい、僕だって分かる。

だからこそ、魔法使いの力を頼るしかないんだ。


( ^ω^)「……」

( ^ω^)「ツンの記憶から、僕を消す事は出来ませんかお?」

川 ゚ -゚)「…もちろん出来るとも」

川 ゚ -゚)「ツンに感情を返し、ツンの中から君の存在を消せば、全て解決だな」

( ^ω^)「じゃあ!

川 ゚ -゚)「―――でも、私としては面倒くさいからやりたくない」

(;^ω^)「!」

(;^ω^)「お願いしますお! そこをなんとか―――」

川 ゚ -゚)「まぁ待て。早まるな。私にちょっとした考えがある」

24 名無しさん :2011/09/04(日) 00:08:33

 魔法使いの言ったことは、意外なものだった。


川 ゚ -゚)「私と、ちょっとしたゲームをしようじゃないか」

( ^ω^)「ゲーム?」

川 ゚ -゚)「そう。ツンの4つの感情は、ここに保管してある」

川 ゚ -゚)「これを今から解放するから、どうしても返してほしければ探してごらん」

川 ゚ -゚)「見事に探し出せたら、君の勝ちだ」

川 ゚ -゚)「君は生きられるし、ツンは元通りになる」


 そう言いながら魔法使いは、何もない場所から小瓶を取り出してみせた。
その中には、ほんのり光る4つの何かがある。

目に見えるあれが、『感情』というものなのか。

とにもかくにも、僕に選択肢は残されていないらしい。
このゲームに勝たなければ、ツンは『人形』のままなんだ。

なら、断る理由もない。
そのゲーム、受けて立とうじゃないか。


( ^ω^)「分かったお。何年かかろうとも、絶対に探し出してみせるお」

川 ゚ -゚)「ほう…」

川 ゚ー゚)「まぁ、頑張れよ」

25 名無しさん :2011/09/04(日) 01:28:24

 魔法使いが微笑む。

そして彼女は、手の中の小瓶の蓋を開けた。
瓶の中の4つの光は、空気に溶けるように薄れていってしまった。

ゲームスタートだ。


川 ゚ -゚)「降参宣言ならいつでも受け付けるよ」

( ^ω^)「降参なんかしないお」

川 ゚ -゚)「そうか」

川 ゚ -゚)「じゃ、ちょっとしたヒントをあげよう。色んな場所に行くといい」

川 ゚ -゚)「誕生に喜べ。悲しみに怒れ。挫折に哀しめ。全てが終わったら、心から楽しめ」

( ^ω^)「…?」

川 ゚ -゚)「私から言えるのは、ここまでだ」

川 ゚ -゚)「さぁ、行きな」


 魔法使いが指差した、玄関の扉が開く。

でも、僕は動かなかった。
彼女に聞きたい事が、まだあるんだ。

26 名無しさん :2011/09/04(日) 01:44:45

( ^ω^)「あの、」

( ^ω^)「どうして僕を甦らせてくれたんですかお?」


 死者とまた会いたいと願う人なんて、探さなくてもそこら辺にいたはすだ。
それなのに、どうして僕にまた魂を吹き込んでくれたのか。

それがずっと、不思議で仕方がなかった。
死者の為なら、己の命を捧げても構わないと言う人だっていただろう。

わざわざ、契約した人の感情を抜いて僕とこんなゲームをするくらいなら、
全く別の死者と生者を探して、命を命と交換した方が分かりやすかっただろうと思う。

それなのに、どうして彼女はそうしなかったんだろう。


川 ゚ -゚)「どうして君を甦らせたか、か…」


 さっきまではすらすらと質問に答えていた魔法使いが、今は珍しく言葉を濁した。

27 名無しさん :2011/09/04(日) 02:00:04

川 ゚ -゚)「改めてそう聞かれると困るな。だって、特に理由なんてないんだから」

川 ゚ -゚)「私がよく立ち寄る町に、何度かツンが来ていた」

川 ゚ -゚)「彼女は死者を甦らせるすべを探していた」

川 ゚ -゚)「私は、その気になれば死者を甦らせる事ができる。だから、手伝ってやりたくなった…」

川 ゚ -゚)「しいて言えば……それが理由、かな?」

( ^ω^)「……」

( ^ω^)「じゃあ、どうして僕の魂と交換したのが『感情』だったんだお?」

川 ゚ -゚)「この通り、私はちょっと淡泊な性格でね」

川 ゚ -゚)「普通の生活をしている娘の『感情』を、じっくりと観察したかったんだ」

川 ゚ -゚)「それに、重要な4つの感情と交換なら、対価として釣り合うしね」

川 ゚ -゚)「まぁ、私の気まぐれだな」


 なんとも適当な答えだ。
じゃあもしかしたら、甦ったのは僕じゃなかったかもしれない可能性だってあったということか。

それを考えると、何だか死者に対して、申し訳ないような気分になる。

28 名無しさん :2011/09/04(日) 10:29:01
ふむふむ

29 名無しさん :2011/09/04(日) 17:23:35

川 ゚ -゚)「―――もう発つの?」


 呆れたように言った魔法使いの前で、僕は鞄に荷物を詰めていた。
鞄の底に詰めた干し肉やパンは、彼女に貰ったものだ。

いきなり押しかけた男にここまでしてくれるんだ、
変な魔法使いだけど、根はいい人なんだろう。


川 ゚ -゚)「一泊くらいしていけばいいのに」

( ^ω^)「一日でも早く、ツンを取り戻したいから」

川 ゚ -゚)「……」

川 ゚ -゚)「ちょっと待ってな」



 腕を組んでいた魔法使いが、奥の部屋に引っ込んでいった。

そういえば、さっきまでの悪臭がいつの間にか消えている。
鼻が慣れた…訳ではなさそうだ。


川 ゚ -゚)「これを持って行け」


 数分後に戻ってきた彼女は、手に丸い石を持っていた。

ビー玉よりも一回り大きく、ミルク色に輝くその石は、
ほのかな暖かさを帯びている。

これは一体何だろう?
宝石…には見えないけど。


( ^ω^)「これは?」

川 ゚ -゚)「さっきの鍋の中身を凝縮してみました」

30 名無しさん :2011/09/04(日) 20:51:15

 ……あの鍋の中身を凝縮しても、こうなるとは思えないけど…


( ^ω^)「そ、そうですかお…」

川 ゚ -゚)「それを持ってればいいことがあるよ」

川 ゚ー゚)「…多分ね」

( ^ω^)「はぁ」


 まぁ、幸運を呼ぶ(魔法使い曰く)薬を凝縮したのなら、御利益もありそうだ。

お守りとして持っていてもいいのかもしれない。


( ^ω^)ノ「―――じゃあ、行ってきますお。色々とありがとうございましたお!」

川 ゚ -゚)ノ「気をつけて。ま、頑張れよ」


 魔法使いに別れを告げ、僕は森を抜けた。

群青色に染まりつつある空の下を、行く宛てもなく北へと進む。

どこへ行こうか、どうしようか。

ツン、君の感情は今どこにいる?
きっと僕が、君の感情を探して帰るよ。


( ^ω^)「僕はどこに行けばいいのかな」


 魔法使いにもらった石を取り出して、手に乗せてみる。
人肌程度に暖かい石は、当然だけど何も言わない。

全て、自分でどうにかするしかないんだ。

31 名無しさん :2011/09/04(日) 21:31:55

 しばらく歩いていると、魔法使いの住む森が見えなくなり、
足元は渇いた砂が混じりだした。

ひゅう、と吹き付ける風も、どこか冷たい。
砂ばかりの土地は昼と夜の寒暖差が激しいと聞いたことがある。

このまま夜を迎えては、凍えてしまうかもしれない…


( ^ω^)「……」


 それでも、僕はこのまま進むべきだろうか。

この砂の土地に、人が住む町があればいいのだが。


( ^ω^)「よし」


 ここで悩んでいたって仕方がない。
あの大きな砂丘の上まで登ってみよう。

人がいそうな町が見えたら、そのまま進んでみればいい。
急いでいるとはいえ、時間だけは沢山ある。

そう悩む必要もない。

32 名無しさん :2011/09/04(日) 21:36:31
ヒント一つと石か。面白いな

33 名無しさん :2011/09/04(日) 22:04:01

(;^ω^)「―――ふぅ、やっと登れたお」


 一歩登る度に足元が崩れていくのを繰り返しながら、
僕はようやく砂の山の頂上にたどり着いた。

あぁ、空の川がこんなに近く見えるのか。

ツンもここにいたら。
彼女は、この夜空を見て一体どんな顔をしただろう。


( ^ω^)「……」


 …さぁ、明かりを探そう。

どこかに人の住む町は……


( ^ω^)「お!」


 良かった、ここから少し離れてるけど、明かりが見える。

オアシスか何かがあるんだろうか?
この砂丘を降りて、少し歩けば着けそうだ。

寒いけど、このくらいの距離なら耐えられるだろう。

あそこに何か手掛かりがあればいいんだけど。

34 名無しさん :2011/09/04(日) 22:44:07

 風が流れる音と、僕が砂を踏み締める音。
それ以外に音がない砂の地を、僕は町を目指して歩いている。

冷たい風が、確実に僕の体力を奪っていってるのがよく分かった。

ああ寒い。
町はまだ、見えない。

やっぱり引き返した方が良かったんだろうか。
でも、ここまで来たら引き返す訳にもいかない。


(; ω )「うぅ…」


 なるべく冷気に晒されている部分を減らしたくて、
震える手をポケットに押し込んだ。
指先が、何か固いものに触れる。

…何かポケットに入れていたっけ?

かじかんで言うことを聞かない指先で、それを取り出してみる。
出て来たそれは、魔法使いに貰った石だった。

石だけは、この寒さの中でもほんのりとした暖かさを持っている。
その微かな温もりにすら縋りたくて、石を握りしめた。

35 名無しさん :2011/09/05(月) 01:27:39

 石の暖かさが、じんわりと身体中に広がった気がする。

『この石を持っていれば、なんとかなるかもしれない』。
そんな思い込みが生んだ、幻の暖かさだったのだろうけど、
それでも僕には充分だった。

なにも足が動かない訳じゃない。
怪我をした訳でもない。

まだ何ひとつ見つけちゃいないんだ、
こんな場所で怯んでなんかいられない。


( ^ω^)「よし、大丈夫だお。きっと後少しだお!」


 自分を鼓舞する為に挙げた声は、誰の耳にも届くはずがない。

と、思っていた。


「誰か…いるのか?」

( ^ω^)「!」


 不意に、風に消え入りそうな程にひどく弱々しい声が聞こえた。

声が聞こえたのは、近くにあった岩の向こう側。
まさか、こんな場所に人がいるなんて…


(;^ω^)「誰か、いるのかお?」

「あぁ…悪いんだが、助けてくれねぇか? 動けないんだ…」


 声は確かに、助けを求めていた。

慌てて声が聞こえた方へと回ってみると、


(;,,メд )


 大怪我をした男が、砂の上に倒れていた。

36 名無しさん :2011/09/05(月) 01:31:55
ここまで書くのに時間かかり杉ワロタ
レスとかありがとう、ニヤニヤしながら読んで糧にしてます

ここはギスギスしてなくて本当にいいね、居心地いい

そして、ながら難しいよ
こんなんじゃVIPでながらなんて夢のまた夢だよ('A`)

とりあえず、こんな感じで続けていきます
支援?とかありがとうございました!

37 名無しさん :2011/09/05(月) 08:48:22
乙、ペース早い位だよ。まあ、VIPじゃ…って感じになるけど、無理はしないほうがいいよね。
頑張ってねー

38 名無しさん :2011/09/06(火) 01:09:28

 男は、自分ではもう動けない程に衰弱していた。

何があったのか聞くよりも先に、手当てが必要そうだ。

的確な手当ての知識があまりない僕でも、
ちょっとした応急処置くらいなら出来るだろう。

それに、声を挙げるだけの力が残っているのなら大丈夫。
心配いらなさそうだ。


( ^ω^)「―――これで大丈夫かおね?」

(,,メд゚)「あぁ…悪いな兄ちゃん、あんたは命の恩人だ…」

( ^ω^)「いいんだお。それより、町に向かおうお」

( ^ω^)「立てるかお?」


 「大丈夫だ」

男はそう言ったけど、どう見ても歩けそうにない。

包帯を巻いた足は、立つことすら辛そうに震えていた。

…どうしたものか。

39 名無しさん :2011/09/07(水) 21:43:50

 一度町へ行ってから、誰か人を呼んでまたここに戻って来るか?
…いや、また確実にここに戻って来られるとは限らない。

周りに目印になりそうな物は何もないし、旗代わりになる物もない。
こうして考えている間にも、彼の体力は削られていく…

残された方法は、一つ。


( ^ω^)「よし」

( ^ω^)「僕が君を町まで連れていくお」


 一番シンプルな方法だ。

町はそう遠くないはずだし、出来ないことはないだろう。


(;,,メд゚)「え…いや、でも」

( ^ω^)「大丈夫だお」

( ^ω^)「さぁ、行こうお!」


 ボロボロの男の体を、何とか背に移した。
鞄よりも相当重いけど、歩けないほどではない。

これなら何とかなりそうだ。

僕の体力がなくなる前に、さっさと町へ行ってしまおう。


(,,メд゚)「本当に、何から何まで悪いな…」

(;^ω^)「お…。まぁ、気にするなお」

(,,メд゚)「…向こうに着いたら、うちに来てくれ」

(,,メд゚)「何か、礼をしたいんだ」

40 名無しさん :2011/09/07(水) 22:37:22
週刊誌のやり方を模倣して10レスに1つの内容を盛り込んで投下するか、盛り上がるポイントや次の展開を期待する場面で切る方が読者は楽しみがもてる

41 名無しさん :2011/09/10(土) 09:17:26
あげ

42 名無しさん :2011/09/10(土) 11:12:42

(;^ω^)「お? あんたの故郷はあの町なのかお?」

(,,メд゚)「あぁ、生まれも育ちもあの町だ」

(,,メд゚)「嫁も子供もあの町に住んでる。だから、どうしても帰りたいんだ」

(;^ω^)「家庭持ちかお…。なら、絶対に帰らないとだおね」

(,,メд゚)「……あぁ」


 …それにしても、さすがに辛くなってきた…。

踏み出す足が、一歩進むごとに重くなっていく。
あとどのくらいで着くのか、彼に聞けば分かるだろうか?

あぁでも喋る体力すら、もう…


(,,゚д゚)「…あ」

(,,メд゚)「―――! 町だ! 町が見えた!」

(,,メд;)「本当に…本当にありがとう、何て礼をしたらいいのか!」


 背中の男が指差した方を見ると、たしかに町明かりが見えた。

人間というのは、目標が見えていると頑張れるものらしい。
あとすこし、あとちょっと踏ん張れ、僕!

ここで倒れたら、もう立ち上がれなくなる。

もう町は見えてるんだ、本当にあと少しじゃないか。


(,,メд;)「……っ」


 声を抑え、男が泣く。

故郷に帰れるのが嬉しいと感じられることは幸せだろう。
僕は、一体いつ故郷に帰れるだろう。

…ツン、君に会いたいよ。


(; ω )「ふぅ、はぁ、はぁ、」


 あんなに遠かった町が、今、こんなにも近くに見える。

町の入り口まで、あと10メートルくらいか。
夜更かししている人達の談笑すら聞こえる。

あとすこし、……あと―――


(; ω )「……あ」

(;,,メд゚)「!」

「おい、大丈夫か?! 誰か助けてくれ、誰か!」

「誰か!!」


 ―――――――

――――――

――――

43 名無しさん :2011/09/10(土) 11:27:36
>>40
盛り上がりかー、ちょっと色々考えてみるわサンクス

44 名無しさん :2011/09/15(木) 00:01:42


ξ#゚⊿゚)ξ『―――もう、アンタはいっつもそうやって話をはぐらかすんだから!』


 …ツン?


『―――そ、そんな事言われたって別に嬉しくなんかないんだからね!』ξ(゚△゚*ξ


 感情が、戻ったのか…?


ξ ゚ー゚)ξ『―――今回は失敗しちゃったけど、また一緒に作ればいいじゃない』


 …違う、これは夢だ。


『―――……』

『―――何で……』


 ……ツン…


ξ ;⊿;)ξ『―――ブーンの、バカ』

ξ ;⊿;)ξ『バカ! 私に黙って死ぬなんて何考えてんのよ!』


 ごめん、ごめん。

僕が死ななければ、君が感情を無くすこともなかった。
今すぐにでも、ツンに会いたいと思う事もなかった。

全ては僕のせいだ
だから、何があっても君の感情だけは絶対に持って帰るよ。

だから、もう少しだけ待っててほしいんだ―――


 ―――――


―――――


―――――

45 名無しさん :2011/09/15(木) 01:26:23
応援的支援

46 名無しさん :2011/09/15(木) 22:13:39

( ^ω^)「……」


 ―――目を開けると、見知らぬ天井が見えた。

ここはどこだろう?
そういえば、あの男はどうなったんだ?

町に入った覚えがないから、多分途中で力尽きたんだと思うんだけど…

…町まで運ぶって言ったのに、それすらも出来なかったな…


(;^ω^)「お、痛たたたたた…」

(;^ω^)「足も腰も痛ぇお…」

「そりゃあ、人ひとり抱えて砂の上を歩けば全身も痛くなるよ」

( ^ω^)「お?」

(*^ー^)「―――ギコくんを助けてくれて、ありがとうね」


 広い部屋の真ん中に、椅子に座った女の人がいた。

お腹が大きいから、妊婦さんだろうか。


( ^ω^)「おー…あなたは?」

(*゚ー゚)「私はしぃ。あなたが運んできた人の嫁です」

47 名無しさん :2011/09/21(水) 22:03:48

( ^ω^)「お、どうもですお。僕はブーンです」

(*゚ー゚)「ブーンさん、ね。ギコくんを連れて来てくれて本当にありがとう」

(*゚ー゚)「何かお礼をしたいんだけど…」

( ^ω^)「おー、お礼なんていらないですお」

( ^ω^)「それより、ギコさんは大丈夫ですかお?」

(*^ー^)「うん、もうすっかり元気だよ!」


 元気だというなら、ギコをこの町(直前で力尽きた訳だけど)まで背負ってきた甲斐がある。

何かお礼を、と、しぃさんは言った。
でも僕は、ちゃんと彼をこの町まで送れた訳じゃない。

むしろ、助けてもらったのは僕の方だ。
お礼なんて、とんでもない。

それに僕は、ツンの感情の手がかりを探しに来ただけなんだ。


( ^ω^)「―――お礼と言っちゃなんですけど…」

( ^ω^)「ちょっと聞いてもいいですかお?」

(*゚ー゚)「なに? 分かる事なら何でも答えるよ」

( ^ω^)「『感情』を、探してるんだお。何か知らないですかお?」

(*゚ー゚)「…感情?」


 しぃさんが首をひねる。

…ちょっと説明が足りなかったな、と、自分でも思った。

48 名無しさん :2011/09/21(水) 22:21:43

(*゚ー゚)「―――なるほど、そういう事もあるんだねぇ」


 大体の経緯を説明すると、しぃさんは丸い目をさらに丸くさせていた。

そりゃあ、滅多にある話じゃないだろう。
魔法使いの気まぐれで起きた、前例のない出来事だ。

だから、誰かにアドバイスを仰ぐこともできない。
全て自分の力で解決するしかないんだ。

手探りで、探していくしかないんだ。


(*゚―゚)「ごめんね。初めて聞いた話だから、私じゃ力になれそうにないや」

( ^ω^)「そうですおね」

(*゚―゚)「そういうのに詳しそうな人もいないだろうから、紹介出来ないの」

(*゚―゚)「本当にごめんね」

( ^ω^)「いえ、地道に探していきますお」

( ^ω^)「それじゃ、僕はこの辺で―――」

(;*゚ー゚)「この辺で…って、あなたまだ動ける程回復してないでしょ?」


 彼女の言うことは、最もだった。

筋肉痛のせいで、まともに立つ事すらままならないぐらいだ。
こんな足じゃ、町の中に出たって途中でぶっ倒れるだろう。

それに、恥ずかしい話だけど、宿に泊まるお金もない。


(;^ω^)「えーと、えーと」

(*^ー^)「あはは、その様子じゃあお金もないのね?」

( ´ω`)「……その通りですお…」

(*^ー^)「なら、うちの部屋を使いなよ! その方が、きっとギコくんも喜ぶよ!」

49 名無しさん :2011/09/23(金) 22:15:42
話しが動いた支援

50 名無しさん :2011/11/21(月) 18:13:57

(;^ω^)「え、でも」

(*^ー^)「決まりね!」


 人のいい笑顔でそう言って、
しぃさんは僕の答えも聞かずにさっさと部屋を出て行ってしまった。

……まぁ、宿に泊まるお金も持ってなかったし、これで良かったんだと思おう。
体力が回復したら、何か自分に出来る事をすればいい。


( ^ω^)「……」


 あぁ、ツンの『感情』は一体どこにあるんだろう。

人の多い場所なら、何か手がかりが見つかると思ってここまで来たけど…
この町で何も手がかりが無かったらどうしよう?


( ^ω^)「……『感情』か…」


 ポケットに入っていた石を、手の平に乗せてみた。

ミルク色に光るこの石を、魔法使いは『幸運を呼ぶ石だ』と言っていた。
もしかしたら、この石のお陰で僕は今、こうして暖かい部屋にいられるのかもしれない。

この石が、ギコやしぃさんと引き合わせてくれたのかも。


( ^ω^)「…そうだお、きっとこの石のお陰だお」


 うじうじと悩むよりも、前向きに考えた方が、いくらか気が楽になった。

51 名無しさん :2011/11/27(日) 20:11:14
* * * * *
 * * * * *

 その日から、僕はギコとしぃさんの家の一室を借りて、
『捜し物』の手がかりを探す事になった。

とりあえず、この町の構造や規模を調べるために、
一日かけてゆっくりと町を回る。

砂の海の中、ぽつんと浮かぶ島のような町。

昼は元気な太陽が砂と風を灼き、
夜は冷たい月の光が生きるもの達を眠りへと誘う。

町に住まう人々は、人が生きるには少々不便なこの地でも、
笑顔を忘れないように過ごしているようだった。

広い道路に出れば、不思議な香りや音楽が溢れている。
歌や楽器に合わせて踊り、それを見て人々は日頃の生活の憂さを晴らすのだ。

この町には、人の『喜怒哀楽』がたくさん満ちている。

ここなら、何かが見つかるかもしれない―――

そう思わせてくれる、賑やかな町だった。

52 <削除> :<削除>
<削除>

53 名無しさん :2011/12/18(日) 04:03:59
なんか好きだ
続き気になるしえん

54 名無しさん :2012/01/09(月) 21:22:13
ゆっくりでも完結させるぞー

55 名無しさん :2012/01/13(金) 13:20:45
ぼちぼち

56 名無しさん :2012/01/14(土) 04:18:41
がんばれ

57 名無しさん :2012/01/14(土) 22:23:41
>>55>>56
ありがとう、そろそろまた続き書き出すよ

58 名無しさん :2012/01/16(月) 14:22:31

 ―――魔法使いは、いくつかのヒントをくれた。
でも、具体的なことは教えてくれなかった。

彼女にとって、これは「ゲーム」なのだ。
僕がツンの感情4つを見つけられれば、僕の勝ち。
見つけられなければ、魔法使いの勝ち。

死ぬ前の生活に戻りたければ、このゲームに勝たなければならない。


( ^ω^)「―――今日も、手がかりはなし……」


 この町に来て、早いものでもう一週間が経った。

どこを歩き、捜し回っても、『感情』の手がかりはどこにもない。

そもそも、この町に何かがあると思ったこと自体が間違いだったのかもしれない。
何もない可能性だって、充分に考えられる。

そうなれば、いつまでもここに留まっている訳にもいかない。
ずっと、ギコ夫妻の家にお世話になり続けるのも、良くないだろう。

彼らは夫婦で、僕は赤の他人なんだ。

町をぐるぐると散歩して無駄な時間を過ごすのは終わりにして、
近いうち、他の国へ行くことも真面目に考えなければ……


( ^ω^)「―――あれ? ギコさんは?」

59 名無しさん :2012/01/16(月) 15:02:47

 「近いうちに、この国を離れる」。

よくしてくれた二人に、そう言おうと思った。

でも、今日に限って部屋にいたのは、
揺り椅子に座って、お腹を撫でているしぃさんだけだった。

いつもなら、もうギコは帰ってきている時間だ。

仕事に行っていても、彼は昼には必ず帰ってきて、
しぃさんと、お腹の子供に語りかけていた。

そんな時のギコは、とても優しい顔をしているのを知っている。

そこまで奥さんと、まだ生まれていない子供のことを想っている彼の姿が、今はない。

僕がこの家にお世話になりだして、初めてのことだった。


(*゚ー゚) 「あぁ、ギコくんなら仕事だよ」

(*゚ー゚) 「ちょっと遠くの国まで行ってるの。
     少し帰りは遅くなるかもしれないけど、多分もうじき帰ってくるよ」

( ^ω^)「おー、そうですかお……」

(*゚ー゚) 「どうかしたの? 何かあった?」

(;^ω^)「いや、むしろその逆で、何もないんですお……」


 ここまで何もない日が続くと、報告するのが恥ずかしい。

二人の家の屋根を借りて、食事や洗濯の面倒まで見てもらっているのだ。
そんなによくしてくれている人たちだからこそ、これ以上迷惑をかけられない。


( ^ω^)「ギコが帰ってきたらちゃんと話をするけれど、
       僕はもうそろそろ、この国を出ようと思いますお」

60 名無しさん :2012/01/16(月) 16:15:52
支援

61 名無しさん :2012/03/09(金) 12:10:05
この話しは完結してほしいな

62 名無しさん :2012/03/09(金) 21:09:25
完結させるよ、絶対

63 名無しさん :2012/03/10(土) 01:55:33
期待してるよ

64 名無しさん :2012/07/04(水) 00:31:52

 国を出て行くと聞いたしぃさんは、かなり驚いたようだった。


(*゚ー゚) 「随分、急な話だね…。寂しくなるわ」

( ^ω^)「この家にお世話になって結構な時間が経っているけれど、手がかりは見つからないお…。
      きっと、これ以上ここに居ても無駄なんだと思うんだお」

( ^ω^)「だから、ギコが帰って来たら、僕はこの国を出ます」

(*゚ー゚) 「そう…。せめて、赤ん坊が生まれるまで待っててくれればいいのに」

(;^ω^)「お……」

(*^ー^) 「あはは、分かってるよ! ブーンくんだって、やらなくちゃならない事があるんだもんね」

(*゚ー゚) 「でも。気になるなぁ。君がそこまでして助けてあげたい人のこと。
     もし、君の大切な人が元に戻ったら、今度は―――」

(;´・ω・`)「しぃちゃん! 大変だ! シベリア国が、シベリア国が…!」


 しぃさんの言葉が、突然訪れた男の声にかき消された。
彼はたしか、ギコの同僚だったか。

顔を合わせた事はそんなにないけど、しょぼくれた眉が印象に強く残っている。
確か、ショボン…とかいう名前だったはずだ。

65 名無しさん :2012/07/04(水) 00:33:05

(*゚ー゚) 「あら、何があったんですか?」

(;´・ω・`)「シベリアとこの国の間に、盗賊が来ている。
       もしかしたら、ギコが危ない!」

(;゚―゚) 「そんな…。ギコくんが帰ってくるのは、まだ先のはずですよ!?」

(;´・ω・`)「それが、シベリアで奴隷たちが王族に宣戦布告したらしくて…
       帰る予定を早めて、昨日シベリアを発ったって…」

(;゚―゚) 「……そんな…」

(;^ω^)「あの…」


 まったく話に着いていけない。

盗賊?
王族に宣戦布告?
何だか穏やかじゃない雰囲気になってるけど、事の重大さが僕には分らない。

正直、部外者である僕が話しかけるのも憚られるような空気だけど…
ギコの身に危険が迫っているというのなら、無視する訳にはいかない。

ギコやしぃさんには、散々お世話になってるんだから。

66 名無しさん :2012/07/04(水) 00:34:26

(;^ω^)「つまり、どういう事なんですかお…?」

(*゚ー゚) 「…ここら辺にはね、行商人や旅人を襲う盗賊がいるの。
     ブーンくんがギコくんを連れて来てくれた日、ギコくんはその盗賊に襲われたんだって」

(*゚ー゚) 「この前は身ぐるみ剥がされただけで済んだけど…」

(* ― ) 「……今度は…」

(´・ω・`)「しぃちゃん…」

( ^ω^)「……」

(* ― ) 「…大丈夫。絶対、ギコくんは帰って来てくれるはず。
     私、信じて……」

(; д ) 「……っう…!」

(;^ω^)「しぃさん!?」

(;´・ω・`)「しぃちゃん!」


 大きいお腹を抱えて、苦しそうな息を吐くしぃさん。
彼女の身に何が起きたのか、全く分からなかった。

ショボンさんがいなかったら、僕はまだしぃさんの周りでオロオロしていただろう。
…我ながら、非常に情けない。

67 名無しさん :2012/07/04(水) 00:35:53

* * * * *
 * * * * *


( ^ω^)「……」

(´・ω・`)「こんな時に赤ん坊が生まれるとは、なんともタイミングが悪いね」


 ――結局、陣痛が始まったしぃさんは、病院に運ばれていった。
…主人であるギコが、不在のまま。


( ^ω^)「……こういうのって、やっぱり不安なんですかおね」

(´・ω・`)「そりゃあ、そうだろうね。
     本当は旦那が着いていてあげた方がいいんだろうけれど…」

( ^ω^)「……」

68 名無しさん :2012/07/04(水) 00:37:18

 『大丈夫』。

俯いて、しぃさんは震える声でそう言った。
本当は不安でたまらないだろうに、それでも『信じてる』と言い切った。

……ツンは、どうだったんだろう。
魔法使いの言葉を信じて、僕が生き返るのを待っていてくれてたんだろうか。

もしもそうだったとしたら、僕は…


( ^ω^)「―――僕、行きます」

( ^ω^)「僕が、ギコを連れて帰りますお」


 魔法使いとのゲームを一時止めても、この人の良い夫婦の為に何かをしてあげたい。

そう、思うんだ。

69 名無しさん :2012/07/04(水) 22:23:28
珍しく、マトモな新作

70 名無しさん :2012/07/05(木) 21:25:04
人いたのか

71 名無しさん :2013/07/30(火) 23:48:20
(;´・ω・`)「む、無茶だ! 居ても立ってもいられない気持ちは分かるけど、無茶すぎる!」

(;´・ω・`)「今、この国の捜索隊がギコたちの行方を探してくれているはずだ。彼らに任せて、僕たちは…」


 ショボンさんが慌てて止めるのも、無理は無い。

あの広大な砂漠に再び足を踏み入れて、ギコを探し出すなんて馬鹿げていると、自分でも思う。

でも、ギコがまた怪我をして動けない状況だったら?
盗賊に捕まっていたら?

そう考えたら、ただ黙って待っているなんて、出来やしない。
しぃさんだって、今、この壁の向こう側で必死に頑張っている。

お世話になった夫婦の為に、何かしたいんだ!


( ^ω^)「ありがとうございます、ショボンさん。でも僕、行きますお」

72 名無しさん :2013/07/31(水) 00:00:28

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「宛は、あるのかい?」


 宛なんて、あるわけがない。
僕がこの砂漠の国へ来て、まだ一週間と少ししか経っていないんだ。

国の外の地理を全く知らないし、盗賊が根城にしていそうな場所も知らない。

自殺行為だと言われても、返す言葉がない程に、宛はない。

それでも、ギコを見付けられるという妙な自信があった。
魔法使いがくれた、あの石を持っているというのも、僕の自信を後押ししてくれていたのかもしれない。

けれど、僕がギコ捜索に名乗りを挙げたのは、その自信があったから…だけではない。

ここで動けば、ツンの感情に繋がる何かが分かる……
そんな、直感があったからだ。

73 名無しさん :2013/07/31(水) 00:17:41
( ^ω^)「宛は、ないですお。でも、自信はあります」

(´・ω・`)「……」

(´・ω・`)「必ず、戻ってくると約束をしてくれ。そうでなければ、僕がしぃちゃんに怒られてしまうからね」

( ^ω^)「はい! きっと、ギコと一緒に帰って来ますお!」


 話はまとまった。

病院の窓から覗く外は、蜃気楼をくゆらせながら、橙に染まりつつある。

もうじき、月と共に凍えるような夜が来るだろう。


(´・ω・`)「すぐに発つんだろう? その格好では凍えてしまうよ。僕が持ってきた防寒着を貸そう」

( ^ω^)「ありがとうございます。お借りしますお」

(´・ω・`)「それと…もしもの時のために、これを預けておくよ。ないよりは、あった方がいい」


 そう言ってショボンさんが差し出したのは、短めの剣だった。

74 名無しさん :2013/07/31(水) 00:28:30
人いなさすぎワロタ
また明日書きに来る

75 名無しさん :2013/08/01(木) 22:18:30

 この短剣を抜かざるを得なくなった場合の事を、考えた。

ギコが盗賊に捕まっていて、話し合いも通じなかったら───

その時点で、僕もギコも、もうこの国には戻って来られないだろう。
僕は短剣を握った事すらほとんどないし、誰かと戦った経験もない。

ギコを守りながら、この国へ戻るなんて不可能だ。

殺されてしまったら、ツンの元へも、帰れなくなる。


( ^ω^)「……」


 …何故だろう。
死んでいた時の記憶も感覚も残っていないのに、
死を思うと、なんだか背筋がぞわりとした。

76 名無しさん :2013/08/01(木) 22:40:23

 弱気になってはだめだ。
ギコを連れ帰る自信があると、そう言ったばかりじゃないか。

大丈夫。僕には、やらなきゃならないことがある。
ツンの感情、まだ一つも見つけていないんだ。
こんな所では死ねない。


( ^ω^)


 ポケットの中の石を握りしめる。

幸運を運んでくれたこの石も、さすがに今回は助けてくれないかもしれない。

それでも、願わずにはいられない。
僕が選んだこの道が、ツンの感情へ繋がっていますように。
ギコが無事、生きていますように。
無事、二人で帰れますように。

大層欲張りな願いを込めて、もう一度石を握り直す。
…淡いミルク色の石が、ほんの少しだけ勇気をくれたような気がした。


( ^ω^)「ありがとうございます、ショボンさん。これもお借りしますお」


 さぁ、行こう。

探す宛はないけれど、そんなのはもう慣れた。
ツンの感情より、ギコの方がずっと見つけやすいはずだ。

77 名無しさん :2013/08/02(金) 18:48:34

 群青色の空に、ぽつりぽつりと星が瞬く。
砂の海の向こうに見える地平線では、夕日の橙が夜の色に押し潰されようとしていた。

ショボンさんの支援を受け、国を飛び出して一時間ほど。
小高い砂丘をいくつも越えて、ギコの行方を探す。

けれど、そう簡単には見つからない。


( ^ω^)「ギコさーん! どこにいるんですかお! いたら返事してくれおー!」


 ギコと初めて会った日のように、僕の声に反応してくれるかもしれない。
淡い期待を込めて、時々足を止めては大声で叫んでいる。

でも、結果はこの通り…反応どころか、ギコの行方の手がかりすらない状況だ。

この砂漠の中で、人を探す事の難しさ。
しぃの為にも、ギコ自身の為にも、早く探してやらなくちゃ、という焦り。
こっちの方向にはいないのかもしれない。
盗賊に捕まって、どこか全く違う場所へ連れ去られているのかも。
もしかしたら、ギコはもうー──

余計な考えが、僕の足を引っ張る。

78 名無しさん :2014/02/20(木) 12:18:26
待ってるぞー

79 名無しさん :2015/03/18(水) 12:46:07

 どれだけの時間、ギコを探し回っただろう。

80 名無しさん :2015/03/18(水) 13:05:16

(;^ω^)「ギコ、どこにいるんだお……」

 焦りと疲れのせいで、足が止まる。
どこを見回しても、どれだけ耳を澄ましても、ギコの行方に繋がりそうな手がかりはない。

―――もしかしたら、ギコは既に殺されてしまっているんじゃないか?

そんな考えが、どうしても僕の足を引っ張った。

( ^ω^)「……」


 もし、ギコが殺されてしまったら、
しぃはギコを甦らせようとするだろうか?

――僕が死んだ後のツンのように、己の感情と引き換えてでも。


( ^ω^)「…それは、ダメだお」


 しぃは、ツンのようになっちゃいけない。

生まれた子供と、ギコと、幸せにならなきゃいけない。

81 名無しさん :2015/03/18(水) 13:25:55

 ポケットの中の石を、ぎゅっと握りしめた。
折れかけていた心に喝を入れて、またギコを探して歩き出す。


( ^ω^)「ギコー!!」

( ^ω^)「どこだお、ギコ!」


 ギコを呼び続ける声も枯れて、何度も咳き込んだ。
だけど、声を張り上げることだけは止めない。

最初に会ったときみたいに、ギコが気付いてくれるかもしれないからだ。

足が棒みたいになっても、何度転んでも、僕はギコの名を呼び続けた。
だけど、ギコの行方も盗賊の手掛かりも見つけられないまま、

夜が終わろうとしていた。

82 名無しさん :2015/03/18(水) 16:48:32
(;^ω^)「うわっ!」


 びゅう、と一際強く吹き付けた風に耐えられず、砂に倒れこんだ。
早く起きなくちゃと思うのに、手も足も言うことを聞かない。

ダメだ、こんなところで倒れてちゃ。
ギコもツンの感情も探すって、誓ったんだ。

だから……


( ^ω^)「……お」


 朝焼けの彼方に、ラクダに乗った人の姿が見えた。
一人、二人、いや、もっと沢山の人がどこかを目指しているようだ。

あの団体が盗賊であれ、各地を回る行商旅団であれ、これを逃したら次はない。
そう思って、僕は掠れきった声で叫んだ。

何をどう叫んだかは分からない。
地平線の彼方にいたラクダたちが、こちらに向かってくるのを見て、僕は意識を手放した。

83 名無しさん :2015/05/04(月) 17:57:04
これ続いてたのか!!
ゆっくり待ってるよ

84 名無しさん :2016/03/18(金) 13:28:07
「――――」

「――……」

「……全く、何にも持っていやがらねぇな」

「持ってるものは、妙な石ころとナイフと小銭くらいか。
 まぁいい。こいつの家族にたんまり出して貰おうぜ」

( ^ω‐)「……お…」


 目を覚ますと、そこは荒れ果てた建物の中だった。
どうやら、砂漠でミイラ化することだけは避けられたらしい。

……ただし、これで僕は助かったのだと、手放しでは喜べなさそうだ。


(;^ω^)「……あの…」

  _
( ゚∀゚)「おう、やーっと目ェ覚ましたな。大丈夫か?
     砂漠のど真ん中で声が聞こえた時は驚いたぜ」

(;^ω^)「は、はぁ……。……あの」


 ――何故なら、


(;^ω^)「どうして僕、縛られてるんですかお?」


 僕の身体は、身動きが取れないよう、ご丁寧に椅子に縛り付けられていたから。

85 名無しさん :2016/03/18(金) 13:55:06
  _
( ゚∀゚)「ああ、そりゃあ逃げられないようにな。
     まぁここから逃げたところで、周りは砂と瓦礫の山だけどな」


 がははは、と豪快に笑う男。

混乱していた頭が、ようやく働き出した。
辺りを見回してみると、
お世辞にも人柄の良いとは言えないような男たちが僕を取り囲んでいる。

各々の手には、ぼろぼろに刃こぼれした剣や、ささくれだった木材が握られていた。


(;^ω^)「……君たちが、ここらを根城にしてる盗賊かお?」
  _
( ゚∀゚)「おう、まぁそんな感じだ。俺はジョルジュ。お前は?」

(;^ω^)「僕…ブーンですお」
  _
( ゚∀゚)「ブーンか。ま、大人しく言うこと聞いてりゃ、殺しはしねぇ。
     さて、こんなことをするのは非常に胸が痛むが、
     こっちも色々と訳ありでな」
  _
( ゚∀゚)「お前の家族は、お前の為にどれくらい出せるかな?」

(;^ω^)「……身代金が目的かお? だとしたら、残念だったお。
       僕はあの町の出身じゃない。あの町に、家族はいないお」


 答えながら、考える。
なんとかこの場を切り抜けて、ギコのことを聞かなければならない。

幸いなことに、このジョルジュとかいう男は、
話を分かってくれそうな感じがする。
きっと大丈夫だ。多b

  _
( ゚∀゚)「あ、そうなんだ。じゃあいいや。
     おい、お前らこいつ殺していいぜ」

86 名無しさん :2016/03/18(金) 14:18:24
(;^ω^)「待って! 待ってくださいお!」

(;^ω^)「僕には絶対に、絶対にやらなきゃいけないことがあるんだお!
       魔法使いとのゲームに勝って! ツンの所に帰らなきゃならないんだお!」


 背を向けたジョルジュに、必死に訴えかける。
周りの盗賊たちが、武器を振り上げた気配がした。

まずい、このままじゃ本当に殺される。
なんとか…なんとかしないと……!

  _
(    )「……ツンってのは、お前の女か何かか?」

(;^ω^)「そうだお! 故郷に残してきた恋人だお!」
  _
(   )「……」

(;^ω^)「ジョルジュ、聞いてくれお。
       僕は過去に一度、死んでるんだお。
       今こうして生きてるのは、ツンのお陰なんだお。
       だから、僕は絶対に生きて彼女の所へ戻らなきゃ――」
  _
( ゚∀゚)「分かった分かった! ……お前ら、一度武器を下ろせ」


 ジョルジュの命令を受け、盗賊たちが振り上げた得物を渋々下ろす。

……とりあえず、話は聞いてもらえるのだろうか?
依然として油断は全く出来ないけど、
とにかくジョルジュの気が変わらないうちに、なんとか……

  _
( ゚∀゚)「魔法使いだの、一度死んでるだの、面白そうな話だな。聞かせろ」

(;^ω^)「……」

87 名無しさん :2016/03/18(金) 14:44:10

 二年前に、一度死んだこと。
恋人のツンが、僕を蘇らせる為に方々に手を尽くしてくれたこと。
東の森の魔法使いが、ツンの中の四つの感情と引き換えに、
僕に再び生を与えてくれたこと。

ツンの感情を返してもらいに行ったところ、魔法使いからゲームに誘われたこと。
宛もなく行き着いたのが、この砂漠の町だったこと。
そこで、ギコとしぃ夫婦の世話になったこと。

身重のしぃは、今、町で子供が生まれそうなこと。
仕事で外へ出かけたギコは、シベリア国からの帰途で盗賊に捕まったこと。

……僕が生き返ってからの全てを、洗いざらいぶちまけた。

こんな奇妙な話を聞いても、ジョルジュは僕の言ったことをバカにはしないで、
最後まで真面目に聞いてくれていた。
周りにいた盗賊たちも、困惑しているらしい。

ジョルジュと僕を交互に見て、次の指示を待っているようだ。
  _
( ゚∀゚)「お前の話は、よく分かった」

(;^ω^)「……じゃあ……」
  _
( ゚∀゚)「まぁ、俺らは盗賊であって殺人鬼じゃないからな。
     お前を解放してやってもいい」

(;^ω^)「……ジョルジュ。僕よりも、身代金目当てで攫った人質を、
       解放してあげてほしいお」
  _
( ゚∀゚)「そいつは出来ねぇ相談だな。お前にも事情があったように、
     俺らにも事情がある。俺らは、どうしても金が必要なんだ」

(;^ω^)「事情…?」

88 名無しさん :2016/03/18(金) 20:29:53
待ってたよ!

89 名無しさん :2016/03/18(金) 21:53:43
ここで切るか

90 名無しさん :2016/03/19(土) 05:48:02
  _
( ゚∀゚)「ああ。面白くもねぇ話だぜ」

(;^ω^)「……僕は包み隠さず、全てを喋ったんだお。
       ジョルジュも、その事情とやらを話してくれお。
       何か僕に出来ることがあるなら、何だってするお」


 ただただ、必死だった。
なんとか話を引き伸ばして、
人質を無傷で帰す糸口を探さなきゃならない。

ジョルジュたち盗賊が抱える事情とやらが、どんなものなのか。
それを聞いたとして、僕の手に負えるようなものなのか。

分からないけど、今の僕には、この細い希望に縋るしかなさそうだ。

  _
(;゚∀゚)「お前、結構グイグイ聞いてくるのな」

(;^ω^)「僕も結構必死なんだお」
  _
( ゚∀゚)「まぁ、そうだよな。……おい、お前ら。
     こいつの縄を解いてやれ」


 ジョルジュの命令に従った盗賊たちが、
僕の手足に巻き付いている縄を切ってくれた。

……とりあえず、身体の自由を手に入れられたことは喜ばしい。
あとは、どこかに捕らえられているであろう、
人質を解放しないと……。


( ^ω^)「ジョルジュ、ありがとうお」
  _
( ゚∀゚)「どうせお前には身代金の価値はねぇからな」

(;^ω^)「お……」
  _
( ゚∀゚)「冗談だよ。事情が知りたいんだろ?
     いいぜ、教えてやるよ」


 つまらない話だぜ、と前置きして、ジョルジュは言った。

  _
( -∀-)「……俺らは全員、シベリア国の元奴隷なんだ」

91 名無しさん :2016/03/19(土) 07:57:48
(;^ω^)「ど、奴隷?」
  _
( ゚∀゚)「ああ、そうだ。俺も、そいつも、こいつも、皆、元奴隷なんだよ。
     シベリア国の現国王はクソッタレな奴でな。
     奴隷に劣悪な環境で馬車馬みてぇに働かせて、
     自分ら王族は贅沢三昧。絵に描いたような最悪な国王だ」
  _
( ゚∀゚)「俺らは、家族も、友達も恋人も、みんな捨てて来た。
     当然…連れていけるのなら、連れてきたかったけどな。
     さすがに、そうもいかなかったんだ」
  _
( ゚∀゚)「でも、置いて来た連中を見殺しにする気はねぇ。
     国に残った連中と、革命を起こすんだ。
     今の国王を蹴落として、昔みたいに平和で穏やかな国を取り戻す」
  _
( ゚∀゚)「……そのために、色々と金や武器が欲しい。
     この砂漠をうろつく連中を襲ったり攫ったりしたのは、
     それが理由さ」

(;^ω^)「……」


 周りの盗賊たちが、一様に表情を曇らせた。

ここで盗賊として日々を生きる彼らにだって、愛してくれた家族がいるだろう。
悲しいことも楽しいことも共有してきた、友達がいるはずだ。
愛と将来を誓った、恋人がいるかもしれない。

そんな大切な人たちを、苛酷な環境に置いていかなければならなかったんだ。
どれだけの覚悟が必要だっただろう。
大好きな人たちと離れることが、どれだけ辛いことか、
僕も身を持って体験してる。

旅の合間や、ふとした瞬間、故郷に残してきたツンを思うと、
心が引き裂かれそうな気持ちになるんだ。

だからこそ、ジョルジュたちの悔しさや無念は、痛いほど分かった。

92 名無しさん :2016/03/26(土) 12:08:07
まだかね

93 名無しさん :2016/03/26(土) 12:08:54
紅白出るなら応援する


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