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平成仮面ライダーバトルロワイアルスレ5
168
:
加速せよ、魂のトルネード
◆JOKER/0r3g
:2020/09/06(日) 16:31:14 ID:6c9iHJDY0
「まさか、ラ・バルバ・デ。あなたが彼らを戦わせたのは、最初からこうなると知ってのことだったのですか……?」
故に首領から漏れたのは、アギトの力そのものの脅威への感情などではなく。
人間への理解を深めるため、という名目で自身の側近としただけの目の前で立つグロンギへの、底知れなさの再認識だった。
「いや。ただ私はアギトが真に人間の無限の進化の可能性だというのなら、あんな形で潰えるはずはないと、そう思っただけだ」
「無限の進化の、可能性……」
呆気ないバルバの返答に歯ぎしりした首領の顔は、見る見るうちに蒼白となっていく。
その威厳さえ失せさせる本能的なアギトへの恐怖心こそが、彼から人類を理解する機会を奪っているのではないかと思いながら。
観測者であるラ・バルバ・デの視線は、ただ再び発現した人類の進化の可能性を、新たなアギトの姿を見つめていた。
◆
「アギト……!」
水のエルが、ただ譫言のように呟く。
創造主たる彼の主ほどではないにしろ、アギト殲滅の責務を長年務めてきた水のエルにとって、この再会はあまりにも予想外の出来事だった。
自身の身体に何が起こったのか分からない様子で己の身体を眺め見るアギトを前にしながら、水のエルはただ憎しみに表情を歪ませる。
「何故だ……何故人であることを捨てる……!」
彼の憎悪はやがて、アギトそのものからアギトへと変じた愚かな人間にまで及ぶ。
人は人でありさえすれば、それだけであの方の寵愛を受けられるというのに。
如何にそれ以外の生物を迫害しようと、何らあの方から罰せられることなど無いというのに。
何故そうまでして人でなくなろうとするのだ。
何故そうまでしてその身を過ぎた力を得ようとするのだ。
数万年前、大洪水で全ての人間を洗い流した時と同じだけの憤りを、彼は目前のアギトへ向け解き放とうとする。
「人間であることを捨てた……か。アギトは人間じゃないってか?」
だがそれを妨げるようにして悠然と現れた士が、アギトを庇うように立ちはだかる。
自身の怒りを嘲笑するようなその口調に耐え難い憤怒を覚えて、水のエルはすかさず口を開く。
「当然だ、アギトと人が交わることはない。アギトの存在はやがて、人を滅ぼすのだ」
「……違うな」
「何……?」
だがその言葉を、士はすぐさま否定して見せる。
まるで迷う様子すらなく、紛れもない確信を抱いて。
「例え姿がどう変わろうと、誰かの為に戦う限り……人は人でいられる。そしてこいつは、それが出来る男だ。それも……たった一人のちっぽけな笑顔を、守るためにな」
後方のクウガを振り向きながら、士は僅かに口角を上げる。
ちっぽけってなんだよ、とぼやく声は無視して、彼は続けた。
「そして、お前が思ってるほど人はヤワじゃない。アギトだろうが何だろうが真正面からちゃんと向き合って、また前に歩き始める――それが、人間って生き物だからな」
「貴様……一体何者だ」
超常の存在たる自身を侮る士の言葉に、思わず問うた水のエルに、士はニヒルに笑って見せる。
幾度となく答えてきたその名を名乗ることに、最早何の迷いがあるはずもなかった。
「通りすがりの仮面ライダーだ……覚えておけ!」
――KAMEN RIDE……DECADE!
カードを読み込んだディケイドライバーが、高らかに彼の名を叫ぶ。
変身を完了した彼の手に握られているのは、仲間と心を通わせたことで力を取り戻した三枚のカード。
ふと横を見れば、そこには今色を宿したカードの絵柄と同じライダー、アギトと彼が身を賭してでも守ろうとした笑顔を持つライダー、クウガが並んでいた。
どうやら流れは、自分たちに向きつつあるらしい。
そんな確信を抱きながら、ディケイドはライドブッカーの刀身を撫で上げて見せた。
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