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平成仮面ライダーバトルロワイアルスレ5

163加速せよ、魂のトルネード ◆JOKER/0r3g:2020/09/06(日) 16:29:45 ID:6c9iHJDY0

重ねられたディケイドの言葉に重ねるようにして、一条の口から遂に声が漏れる。
それは疑問とか問いだなんて大層なものではない。
ただ子供の駄々のように答えの存在しないもので、それでいて彼からすればどうしようもなく譲れない事象であった。

究極の闇になってしまったという事実を、ユウスケはずっと後悔し苦悩し続けていた。
ダグバを倒す為とはいえ、心を手放しただ暴れまわるだけの異形と化すその戦い方が、彼の望む戦士のそれであるはずがない。
橘朔也やヒビキに恐怖を植え付け、牙王やダグバに追い回される要因となり、挙句の果て小沢や京介を守れなかった、何の意味も持たぬただ強いだけの血の通わぬ力。

もう彼にあんな思いをさせたくはないと、自分にだって何か出来ることはあるはずだとそう考えたから、辛い特訓にだって打ち込んだはずなのに。
その力は大ショッカーを前にはあまりに無力で、そしてまたユウスケはあれだけ辛い思いを飲み込んででも、再び究極の闇にその身を堕とそうとしている。
先の病室であれだけ戦いへの恐怖を如実に語ったばかりだというのに、それでも誰かの笑顔を守りたいという、それだけの思いを抱いて。

そんなのは、あまりに苦しくて、悲しすぎる。
この世界ではクウガだけが戦う力を持つわけではないのに、何故そんな思いを彼だけが引き受けなければならないのか。
どうしようもない無力感から漏れだす思いは、もう一条自身にも止めることは出来なかった。

「あなたは、小野寺君の笑顔を守ると言ったんじゃないんですか!?彼が究極の闇にならなくても済むように共に戦うと、そう言ったんじゃないんですか!?」

「あぁ、言ったさ」

「なら――!」

「――だから俺は、お前を死なせるわけにはいかない」

一条の怒涛の勢いにぴしゃりと水を打ったのは、ディケイドのそんな言葉だった。
何故今、自分の話が出てくるというのだという困惑に、思わず一条は声を失う。
そして、その当惑を予想していたかのような調子で、ディケイドはまるで言い聞かせるように続ける。

「ユウスケの願いは、もう誰の笑顔も失わないことだ。特にお前が死ねば……あいつはきっと、もう笑うことは出来ない」

「俺が……?何故、そんな……」

「似てるからさ。お前と、あいつの戦う理由だった女が」

告げるディケイドの瞳は、戦いを続けるクウガの姿を映す。
一条にとって、それは初耳の話だった。
小野寺ユウスケの、もう一人のクウガの戦う理由となった女性の存在。

果たしてそれは親類なのか、恋人なのか、それとも或いは自分と五代と同じように、未確認との戦いなどなければ出会うはずもなかったなんとも呼称し難い間柄なのか。
思わず思案に沈んだ一条に対し、変身すら解いて隣に座り込んだ士の表情はどこか寂しげにも見えた。

「だから俺は、お前を守って……あいつの笑顔を守る。それが俺とあいつの、約束だからな」

行くぞ、と差し伸べられた士の手とその先の顔を、一条はただ見上げる事しか出来ない。
結局自分は、ずっと誰かに守られて生き延び続けているだけではないか。
本当は、五代だってユウスケだって京介だって翔一だって士だって、自分が守るべき市民であるはずなのに。

自身を顧みず使命を果たした父や照井のように、警察官としての職務を果たせないばかりか、むしろ彼らの命を踏み台に生き残ってしまっている。
それが何より情けなくて中途半端に思えて、一条は無力感と共に己の身体を見やる。
だがその行為を繰り返す度その目に一番に映るのは、やはり傷だらけの己の身体などではなく、破壊されたアクセルドライバーだけだった。

果たしてフィリップでも復元することなど叶わぬほどの亀裂を走らせた、赤いドライバー。
その喪失が齎すのは、何もその戦力を失ってしまったという単なる事実の再確認だけではない。
寧ろそれを自身に与えてくれた命の恩人への、絶えぬ後悔と謝罪の念の方が、よほど大きかった。


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