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バーチャルリアリティバトルロワイアル Log.04

124宵闇 ◆k7RtnnRnf2:2020/07/03(金) 20:05:41 ID:mqM5Fyzc0
「……は、ハルユキ君…………!?」
「は、ハルユキ!? ハルユキって、まさか……!?」

 黒雪姫は答えてくれないけど、その名前に俺は一瞬で気付く。
 有田春雪(ハルユキ)……黒雪姫が最も信頼したシルバー・クロウのリアルでの名前だ。
 つまり、ここに囚われている少年こそが、黒雪姫にとって一番大切な人だ。

『『牢獄』……『電子』……ま、まさか……!?』

 通信から聞こえてくるレオの声は、明らかな驚愕と動揺が感じられる。

「な、何だよレオ!? 何に、気付いたんだよ!?」
『……まだ、確定ではありませんが……この黒い樹に吊るされた人たちは、デスゲームで敗退したプレイヤー達の……電子化、いえ、霊子化された魂です!
 だから、ジローさん達が見たハルユキさんやレインさんは……敗退後、魂だけがここに、囚われたのでしょう…………。
 きっと、このデスゲームに始まって以来、全てのプレイヤーは……敗退と同時に『黒い森』に魂を囚われるシステムになっているはずです……』

 震えるレオの推測に、俺は絶句した。
 そして、レオから聞いた『牢獄』というワードの意味を、ようやく理解する。
 このデスゲームで命を奪われたプレイヤーは、ただ消えるのではない。オカルトテクノロジーで人間を電脳世界に引きずり込むように、魂だけがデータ化されて囚われる仕組みになっているのだろう。
 俺が巣のようだと思っていた鳥かごは、文字通りの『牢獄』だったのだ。

「何だよ、それ……何が、どうなっているんだよ……!?
 どうして、ニコ達がこんな目に……遭わなきゃいけないんだよっ!?」

 しかし、そんな理屈など納得できない。
 答えの出ない疑問と、ニコ達を愚弄した者への憤りで、俺の心は掻き乱されてしまう。
 俺がどれだけ叫んでも、ニコと渦木さん、そしてハルユキが目を覚ますことはない。どす黒く染まった全身の肌で、一目見ただけでニコ達の死を痛感するが、とても受け入られなかった。

「は、ハルユキ君ッ! 私だ! 黒雪姫だ!
 私はここにいるぞ! キミは私のことをずっと探していたのだろう!? こうしてここに来たから、早く目を覚ましてくれ! ハルユキ君!
 私もキミを探していた! だから、こうしてここまで来たんだ! キミと話がしたい……キミとまた毎日を過ごしたいんだ! ハルユキ君!」

 そして、俺とレオの通信が聞こえていないように、黒雪姫は叫び続けた。
 明らかに正気を欠いている彼女の姿に、俺は何も言えない。レオから黒雪姫のケアを頼まれたが、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
 大好きな人の変わり果てた姿を見せつけられて、落ち着ける人間がどこにいるのか?
 もしここにパカが囚われていたとしたら、とても冷静でいられる自信が、俺にはなかった。だから、今の俺がどんな言葉を投げかけても、黒雪姫の耳に届くわけがないのだ。

「……シルバー・クロウ」

 唐突に、足音と声が聞こえてくる。

「っ!?」

 振り向いて、俺は驚愕した。
 いつからそこにいたのか。一目見ただけで、”赤い”、という印象を与えてしまう少女が、まっすぐに歩いてくる。
 見たところ、年齢はまだ12歳か13歳程度で、ニコと同じか少し上くらい。
 プラチナブロンドのボブヘアには赤いメッシュが入っていて、ワンピースもケープも、陰鬱な世界にはそぐわないほどに赤い。
 一方で肌はすけるように白く、そして何故か、彼女は裸足だった。
 ひたひたと、小さな足音が静止した世界で響き渡る。


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