したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

バーチャルリアリティバトルロワイアル Log.04

123宵闇 ◆k7RtnnRnf2:2020/07/03(金) 20:01:30 ID:mqM5Fyzc0
「何かあったら、すぐに言ってくれよな?」
「わかっているよ」

 少しでも気を紛らわすように声をかけるけど、全然心が落ち着かない。
 どす黒い樹にぶら下がる人間はどう見ても死んでいて、呼吸をすると気分が悪くなってしまう。まるで毒ガスの中を歩いているように錯覚し、俺達はいつ倒れてもおかしくなかった。
 一応、治癒の雨は一つだけ残っているけど、それが役に立つのか。そもそも俺達は本当にここから脱出できるのか。
 前を進むたびに、俺の中で不安が湧き上がってきて、折れた心が更に折れそうになる。

(やっぱり本物の人間……だよな? でも、火傷してもこんなに黒くなるのか……?)

 何よりも、ぶら下がっている人間の姿を見せつけられるだけで、また嘔吐しそうだ。
 現実では到底ありえない光景だが、デウエスに関係するハッピースタジアムを経験し、その上でこのデスゲームに巻き込まれたから、絵空事とは切り捨てられない。
 それでも、地獄のような光景がただの夢であってほしい、そんな希望を抱きながら進んでいると――――“彼”の姿を見つけてしまった。

「…………う、渦木さん!?」

 ハッピースタジアムに捕らわれた開田君を救うため、現実と電脳世界の両方で力を合わせた刑事・ウズキが蓑虫のようにぶら下がっていた。
 しかも、呪いのゲームではなく現実の刑事としての姿で。

「渦木さん! 俺です、ジローです! 目を開けてくださいッ!」
『どうしたんですか、ジローさん!? いったい何を見つけたんですか!?』
「渦木さんが! 俺の知り合いが、蓑虫みたいに木に吊るされてて……! くそっ、この!」
『ウズキ? その名前は、確か一回目のメールで……』

 俺はウズキさんを救うため、叫びながらDG-0を取り出し、鳥かごに弾丸を放つ。
 しかし、銃声が空しく響くだけで、弾丸はあっさりと弾き返されてしまった。
 それでも、諦めずに黒く汚されたウズキさんを引っ張り出そうとするけど、びくともしない。

「……どうして!? 渦木さんが、ここに……!?」
「……に、ニコなのか!?」
「えっ!?」

 俺の動揺を煽るような黒雪姫の叫びが聞こえて、反射的に振り向く。
 すると、青ざめた顔で顔を上げている黒雪姫の姿が目に飛び込んできた。彼女の視界を追うように、俺も顔を上げた瞬間、絶句する。
 何故なら、俺やカイトを守るためにオーヴァンと戦い、そして命を散らせた少女――――ニコが無惨な姿で囚われていたからだ。

「ニコ……っ! ニコッ! ニコォッ! 俺だ、ジローだ! 目を開けてくれよ、ニコッ!」

 ニコを助けたくて、俺は必死に叫ぶ。もちろん、ニコは目を覚ましてくれない。
 ニコも渦木さんも、二人とも死んだはずなのにどうしてこんな所にいるのか? まさか、二人とも実は生きていて、ここに逃げ出していたのか? 
 いいや、ありえない。渦木さんはわからないけど、ニコは死んだということを俺は確かに実感した。だから、実は生きていたという可能性に縋れるわけがないのだ。
 だけど、それならどうして二人がこんな悪趣味な形で囚われているのか? 誰が、何のために二人にこんな仕打ちをしたのか?

「……あ、ああ、あ……!」

 ――――しかし、俺の思考は黒雪姫の震える声によって、またしても遮られた。
 思わず、俺は振り向く。いつの間にか、黒雪姫はへたり込んでいた。
 彼女が見上げている先には、小柄で小太りの少年が囚われていた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板