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バーチャルリアリティバトルロワイアル Log.04

122宵闇 ◆k7RtnnRnf2:2020/07/03(金) 20:00:01 ID:mqM5Fyzc0
「…………改めて訊くが、ここはずいぶんと、醜悪な場所だな。一体なんなんだ……?
 それになぜ、私のアバターがデュエルアバターから変わってるんだ?」
『それについては、僕の方から説明させていただきますね。
 おはようございます、黒雪姫さん。無事目を覚ませたようで何よりです』

 いつの間にか周りを見渡していた黒雪姫は、嫌悪感を露わにしながら呟く。
 それにレオが通信越しに応え、詳しく説明していく。
 黒雪姫の元のアバターが、酷い損傷を受けていたこと。そのせいか一向に目を覚まさなかったため、遠隔操作で学内アバターへと変更したこと。
 この場所が、ネットスラム崩壊の影響で飛ばされた未知のエリアであること。救助のためにここへ来る方法を調査しているが、やはり時間がかかること。

「……どうやら、二人には手間をかけさせてしまったらしいな。
 すまない。それと、ありがとう」
「そんな! 謝られるようなことでも、ましてやお礼を言われるようなことでもないって!
 結局俺は、オーヴァンとの戦いで、大したことは何もできなかったんだし……」
『そうですよ、黒雪姫さん。どうしても謝礼がしたければ、無事に帰還できたその時に。
 生きて帰ってくることが、僕たちにとって何よりの成果ですので』
「俺も、みんなのところに早く帰りたいよ。ここは空気も淀んでいるみたいだし、周りも不気味すぎるし……」

 本音を言えば、現実世界に帰りたいのだが、それは言っても仕方がないだろう。

「……そうだな。まずはこのエリアを調査して、脱出経路を探そう。後のことは、それからだ」

 黒雪姫はそう言うと、自分の状態を確かめるためにかメニューを開いて、なにかを躊躇うようにそのまま閉じた。
 そうして立ち上がろうとした黒雪姫だけど、すぐにふらついてしまう。
 俺は反射的に彼女の体を支え、そして気づいてしまった。
 黒雪姫の白い肌に、元のアバターに刻まれたものと同じ歪な三角の傷痕が、うっすらと痣のように浮き出ていることに。

「だ、大丈夫か黒雪姫!? 無理をしちゃダメだ! 今はここで休もう!」
「……そんな暇はないだろう!? 私達がこうしている間にも、あの男は……オーヴァンは生きているんだ!
 ユイが連れて行かれたなら、すぐに救出するべきだ! レオ達のことを待っている暇などない!」

 その事に気づいているのかいないのか、俺の言葉を、黒雪姫は怒号で弾き飛ばした。
 黒雪姫の気持ちはわかるし、俺だって今すぐにでもユイちゃんを助けに行きたい。
 でも下手に動くのは危険で、何よりも傷痕が黒雪姫にどんな影響を及ぼすのかすらわからない。
 ……けれど、黒雪姫の言葉もまた事実だ。一刻も早く助け出さないと、ユイちゃんが酷い目に遭わされる可能性は充分にあった。
 そしてそのためには、すぐにでもみんなと合流しないといけない。今の俺たちだけでは、フォルテどころかオーヴァン一人にさえ敵わないのだから。

「……わかったよ、黒雪姫。でも、絶対に無理はしないでくれよ。今は、俺がそばにいるから」
「私なら、大丈夫……と言いたい所だが、その気持ちは受け取っておくよ。ジローさんがいてくれれば、心の支えにもなるから」

 黒雪姫は弱々しく微笑む。
 でも、本当は心が深く傷付いているはずだ。オーヴァンには完膚なきまで叩きのめされて、ユイちゃんは囚われてしまい、泣き面に蜂みたいにこんな薄気味悪いエリアに放り込まれてしまう。
 今のところ、エネミーみたいな危険な奴の気配はないけど、何が起きてもおかしくない。俺はDG-0を構えながら、黒雪姫を先導するように歩いた。


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