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オリロワFOREVER
53
:
母から子へ、愛をこめて
◆ujD3wLD35k
:2019/02/22(金) 21:30:56 ID:F6x5VS6w0
スモーキーピンク髪が風に棚引く。
何もない夜の空を一人の青年が『飛行』していた。
正確には、それは跳躍である。
木々の頂点から頂点に飛び移るムササビの如き身のこなし。
余りに華麗な連続跳躍は、一繋ぎの飛行のようにすら見えるだろう。
天空を支配する青年の名はジヴ。
砂の惑星を切り開く探索者の一人。
もちろんただの探索者ではない。
探索者の中でも最高位にまで上り詰めた者にのみ与えられる二つ名を二つ与えられた前代未聞の大天才。
『自由』なる『天空』のジヴ。
砂の惑星で、彼はそう呼ばれていた。
ご自慢の飛行装置がなくとも彼が行くは空の道だ。
障害物の回避。視野の確保。
探索において制空権を取るアドヴァンテージは計り知れない。
警戒すべきは狙撃と言った不意打ちだが。人間にとって真上というのは死角であり、夜に紛れれば発見される危険性も少ない。
誰よりも早く砂の惑星を飛び回ったジヴにすら見覚えのない場所だった。
砂の惑星に置いて緑化指定都市でもない場所に、これほど木々が生い茂っているのは異常である
一刻も早く自分のまきこまれた事態を正確に把握する必要がある。
まずは状況の把握。
次に状況への対策。
最期に状況への勝利。
いつどこであろうと変わらない彼の行動方針である。
「ん?」
森の切れ間に、泣いている幼子の姿を捉えた。
ジヴは冷徹な男ではあるが、こんな危険な場所に子供を放置するほど情がない男でもない。
跳ぶ勢いを緩め、木々の頂点から音もなく着地すると、先ほど見かけた幼子がいた場所まで徒歩で引き返していった。
「嗚呼…………何という事でしょう」
少女は蹲るような体勢で顔を覆い大量の涙で頬を濡らしていた。
年の頃は10にも満たないように見える。
身に纏っているのは年に見合わぬ見るからに高級そうな着物なのだが、ジヴにとっては見慣れない衣服である。
どこぞの辺境集落の民族衣装か何かだろうという程度の認識だが、高級感というものは伝わっているのか、その集落の貴族か何かかもしれないなどと考えていた。
「お嬢ちゃん大丈夫かい?」
装着していたゴーグルを額に上げて出来る限り警戒させないよう声をかける。
その声に少女がゆっくりと顔を上げた。
「失礼いたしました。お見苦しい所をお見せしてしまったようで。どうかお忘れ下さい」
涙を拭い、照れたように身を起こす少女。
その妙に落ち着いた丁寧な物腰は、少女の外見には見合わわない。
ジヴはそのギャップに僅かに戸惑った。
「あ、ああ。大丈夫そうならいいんだが。
まさか君の様な子供まで巻き込まれているとはな、全くあのJGHとやらも何を考えているのか」
呆れた様に漏らすジヴの言葉を少女がきょとんとした顔で見つめ返す。
その表情がこれまで以上に幼く見えた。
「私(わたくし)これでも子供もいる、30を超えたおばさんですのよ」
「……マジか」
信じ難い言葉ではあるのだが、女の纏う雰囲気と言うべきか。
完成された女を感じさせる仕草に妙に納得させるものがある。
「それは失礼をしたマダム」
「いえ、よく間違われますので。慣れていますわ」
着物の裾で口元を隠し上品に笑う。
童女そのものの外見でありながらその所作は貴婦人その物である。
敵意には敵意を、礼には礼をがジヴの主義である。
相手が貴婦人であるのならこちらも紳士としての礼を尽くすまでだ。
「それでマダム。いかがなされました。忘れろとおっしゃられた所で先ほどの涙見て見ぬふりなどできません。
この物騒な催しに不安を覚えているのでしたらこの私が、」
「いえ…………いえ違うのです」
ジヴの言葉が遮られる。
再び、少女の――――否。女の頬を滴が伝った。
「――――我が子を、想っていたのです」
「お子様、ですか…………?」
先ほど子がいると言っていた。
最悪の展開がジヴの頭をよぎる。
「まさか、お子様も巻き込まれている、と?」
だが、その問いに女は頭を振った。
最悪の予測が否定されて、安堵の息を漏らす。
だが、事実は最悪の予測を下回っていた。
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