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オリロワFOREVER

1 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/24(木) 22:56:18 ID:VdMxAAdk0
ここは、パロロワテスト板にてキャラメイクが行われたオリジナルキャラクターによるバトルロワイアル企画です。
キャラの死亡、流血等人によっては嫌悪を抱かれる内容を含みます。閲覧の際はご注意ください。

まとめwiki
ttps://www65.atwiki.jp/originalaforever/

したらば
ttps://jbbs.shitaraba.net/otaku/18107/

企画スレ
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/13744/1546696602/

・参加者
参加者はキャラメイクされた141名の候補キャラクターの中から
書き手枠によって選ばれた60名となります。

また、候補キャラクターの詳細については以下のページでご確認ください。

オリロワFOREVERwiki-キャラクタープロファイリング
ttps://www65.atwiki.jp/originalaforever/?page=キャラクタープロファイリング

企画スレよりキャラメイク部分抜粋
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/13744/1546696602/2-142



地図
ttps://www65.atwiki.jp/originalaforever/?page=地図

2 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/24(木) 22:59:39 ID:VdMxAAdk0
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる
生き残った一人だけが、生還することができる
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる
会場には処刑人としてJGHのヒーロー達が放送毎に3人投入される
処刑人達が残っていても参加者が一人になれば終了

【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収
(義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない)
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給される
 以下の物は「デイパック」などの鞄類、もしくはそれに類する持ち運び可能な物に詰められ支給される
「地図」「コンパス」「照明器具」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランダムアイテム」「ルールブック」

「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック
「地図」→ 大まかな地形の記された地図。禁止エリアを判別するための境界線と座標がひかれている
「コンパス」→ 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる
「照明器具」→懐中電灯
「筆記用具」→ 普通の鉛筆と紙
「水と食料」→ 通常の飲料と食料
「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている、顔写真付き
「時計」→ 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する
「ルールブック」上記の基本ルールが雑に記されている本
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが3つ入っている。内容はランダム

「ランダムアイテム」は必ずしもデイパックに入るサイズである必要はなし

【「首輪」と禁止エリアについて】
ゲーム開始前からプレイヤーは全員、「首輪」を填められている
首輪が爆発すると、そのプレイヤーは死ぬ
(例外はなし。不死の怪物であろうと、何であろうと死亡)
開催者側は、いつでも自由に首輪を爆発させることができる
この首輪はプレイヤーの生死を常に判断し、開催者側へプレイヤーの生死と現在位置のデータを送っている
開催者側が一定時間毎に指定する禁止エリア内にいると、首輪が自動的に爆発する

【放送について】
6時間ごとに会場全体で放送が行われる。
過去6時間に死亡した参加者(死亡順)、新たな禁止エリア、残りの参加者数が発表される。
指定されたエリアは放送による発表から2時間で禁止エリア化する。

【作中での時間表記】(深夜0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
  朝:6〜8
 午前:8〜10
  昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
  夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【予約について】
予約期間は5日。
一回以上作品が通っている書き手のみ2日間の延長が可能。

3 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/24(木) 23:00:24 ID:VdMxAAdk0
OP代理投下します。

4OP(作者:◇qkF3ex0Ms6氏):2019/01/24(木) 23:01:49 ID:VdMxAAdk0
どこともしれぬ暗闇の中。
こちらとあちら、別世界である事を示すように壇上に光が灯った。

そこにずらりと立ち並ぶのは、錚々たる顔ぶれだった。
個性豊かな色とりどりの衣服や背格好に統一性などまるでない。
それが果たして一つの群体であるのか、それすらも疑問に思える。
だが、一つまぎれもない共通点があるとするならば、全員がとてつもない強者であるという事だろう。

「………………ジャパン・ガーディアンズ・ヒーローズ」

どこからともつかず尊敬と畏怖が込められた呟きが漏れた。
ジャパン・ガーディアンズ・ヒーローズ。
決して悪を許さず世界を守護する正義の執行者。
一人一人が一騎当千であるトップヒーローを集めた国内、いや世界でも有数の最強のチーム。
どのような巨悪であれ彼らの前では尻尾を巻いて逃げ出すのが常である。

「全員が揃ったようだね。それでは始めさせてもらおうか」

壇上より大きくどこまでも澄み渡るような声が響いた。
カツンという足音と共に青空を想起させる紺碧の外套が翻る。
外套と同じ空色の鎧に身を包んだ騎士が仮面越しに暗闇に蠢く集団を見渡しふっと声を漏らした。
それは嘲笑か侮蔑か仮面の下の表情を窺う事はできない。

「先日の話さ、我らJGHの誇る量子コンピューター『ラプラス』がある演算を行った」

天空戦士は演説のように仰々しく説明を始める。
世界を演算して未来予知を行う『ラプラスの魔』。
世界中のスパコンを集めても追いつけないほどの超ハイスペックのJGHが誇る量子コンピュータの通称である。
これを持って彼らはより良い未来を運用するのだという触れ込みであり、事実として彼らはそうして世界の秩序を守ってきた。

「その結果、ここに集められた面々は悪、ないし将来的に悪に転ずる因子のある人間だと結論付けられた。
 故に諸君らを殲滅することが決定づけられたのさ」

世界秩序の調停者が絶望の未来を告げた。
ザワ、と動揺が波のように暗闇に伝播する。
悪の因子? 殲滅? 訳が分からない。
動揺する者もいれば激昂する者もいる、様子をうかがう者もいた。
様々な反応を見せる暗闇の動揺を収めるべく一歩、御伽話の竜を模した鎧に身を包んだ男が前に踏み出た。
竜戦士の歩に合わせ翼の様なマントが揺れる。

「――――だが、それでは罰にならない」

大きいわけではないのに、周囲のざわめきの中でも不思議と聞こえる声。
誰もがその声に聞き入る様に声を失っていた。

「悪は駆逐せねばならない、罪は償われなくてはならない。諸君らの悪逆には罰が必要だ」

聖なる祝詞のように言葉が紡がれる。
それはまるで敬虔な神の使いのようでもあった。

「故に、我らが与える。贖罪の時を。これまで犯してきた罪。これから犯す罪。それら全てを償うのだ」

己が正義を疑わない声で、正義の使者が告げる。

「――――すなわち、殺し合いだ。諸君らには最後の一人となるまで殺し合いをしてもらう」

一瞬の間。
世界が静止したのではないかという静寂の後、堰を切ったように口汚くののしる怒声が響いた。
返す波のように次々と轟く罵声。
その中でも一際強い炎の様な叫びが暗闇から湧き上った。

「ジャパン・ガーディアンズ・ヒーローズ!!」

声の主に視線が向かう。
そこには紅い男が立っていた。

「殺し合いだとぅ!? こんなことが許されると思っているのか!?

竜戦士は男の存在を認め、数秒見つめた後、横合いに立っている不死鳥を模した仮面の戦士に耳打ちするように問うた。

「…………誰だ?」
「ア、ア、ア、アンシャンジャーのディ、ディメトロレッドだ、だよ」

どもりながら返された答えを聞き、ああと興味なさ気につぶやくと竜戦士はディメトロレッドを真正面から見据える。
その視線をディメトロレッドは歯を噛みしめ悔しげに見つめ返す。

5OP(作者:◇qkF3ex0Ms6氏):2019/01/24(木) 23:02:31 ID:VdMxAAdk0
「どうしてこんなことを!? 同じヒーローとして尊敬していたのに! 憧れていたのに!
 キミ達のようになりたいと…………思っていたのに……! どうして…………本当に、残念だ」

ディメトロレッドは心の底からの怒りに拳を震わせ。
落胆を示すように視線を落とした。

「ざ、ざざ、残念なのは、こ、こっちだよ。ま、ま、まさか君たちが悪に転ぶような連中だったとはね」

不死鳥の戦士は相手を見据えず足元を見ながら呟く様に吐き捨てる。
竜戦士は何一つ堪えていないのか反応すら示さない。

「悪党の言い分に興味はない」

言って、竜戦士が片腕を掲げた。
何か攻撃が来るのか、とディメトロレッドが身構える。
だが、変化はディメトロレッドの内側からあった。

「なっ!? ご、ごぽ、ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぁぱっ!?」

腹部が風船のように膨らみ、限界を迎え内側より爆発四散する。
周囲より絶叫めいた悲鳴が響く。
血と臓物が辺りへと飛び散り、暗闇を蠢く者たちの足元を汚した。

「お黙りなさい! 汚らわしい劣等種ども! これはお兄様の慈悲と知りなさい」

それを耳障りな甲高い声が切り裂いた。
唯一素顔を露わにした魔法少女が性悪な本性を隠しもせず暗闇を見下すと、竜戦士にしなだれかかる。
竜戦士は何もかもを意に介さず続ける。

「これは正義の行いであり、君らは例外なく悪である。
 罪人の血に塗れて初めて咎人の罪悪は雪がれ贖罪は果たされるだろう」

言いたいことを言いきったのか、竜戦士が踵を返すと壇上の奥へと引っ込んでいった。

「ぁあん。待ってよお兄様ぁん☆」

猫なで声を上げると魔法少女は慌てた様にその背に続いた。
そして再び前に出た紺碧の戦士が後を継ぐ。

「見ての通り、君たち全員の体にはそういう仕掛けが施してある。罪人を野放しに出来る訳ないし当然だよね。
 それらは我々の意思一つで簡単に発動できる、つまり僕たちは君たちをいつでも処分できるという事だ。
 そうせずにいるという事は、更生の機会を与えてやっているという証左に他ならないと思わないかい?」

余りにも場にそぐわぬ涼風の様にさわやかな声に頭がどうにかなりそうだった。
こいつらは本気で、悪を断罪する事を何とも思っていない。
正義の行いだと疑いすら持っていない。

「さて改めてルールの説明といこうか。
 これより君らを孤島に送り込む。そこで君たちは最後の一人になるまで殺し合いをするのさ。
 食料や地図、あとはランダムに武器を全員に支給する。死亡者は6時間に一度、放送という形で発表するよ。
 そして我らジャパン・ガーディアンズ・ヒーローズの面々も処刑人として会場にその都度投入されるんだけど、あくまで罪人が一人になれば終了となる訳だからそう気にしなくてもいいよ。よかったねぇ」

天空から蟻を嘲るような声。
仮面の下の皮肉気な笑みが透けて見えるようだ。
説明を終えた紺碧の戦士が下がる。

壇上の中央奥に黙して坐していた局長であろう男が立ち上がった。
鋭く重々しい眼光で闇に蠢く人々を射抜くと、ゆっくりと口を開く。

「禊が果たされればその罪は許されよう。全ては正義の名の下に」
『全ては正義の名の下に――――!』

壇上の全員が声をそろて復唱する。
狂った正義。
その異様な光景に、誰も口を開くことができなかった。

【杉本恭忠 死亡】
【オリロワFOREVER―――開始】

6 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/24(木) 23:04:51 ID:VdMxAAdk0
投下終了です。
予約は今から開始で場所はしたらばの予約スレです。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/18107/1548336497/
皆様の作品をお待ちしております。

7 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/27(日) 15:45:54 ID:Bv2JL1dY0
原崎あぽろ、島原あかり、芹沢真投下します。

8裸の心 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/27(日) 15:46:16 ID:Bv2JL1dY0
島原あかりはハッピーエンドを望んでいる。
それは漫画や小説といった創作物に対してだけではない。
自分自身の人生にも幸せな結末が訪れる事を夢見ている。
従兄妹である婚約者と結婚し、家庭を築き、天寿を真っ当する…そんな未来を望んでいる。
その為に彼女は婚約者に初めてを捧げた。
幸せの為だ。
幸せな結末の為には彼女は何も惜しまない。

島原師朗はヒーローである。
地獄から現世へと攻めてくる悪魔『デモンビースト』と戦う聖竜騎士『クロスワイバーン』が彼のもう一つの顔であり、また正義の執行者ジャパン・ガーディアン・ヒーローズに数えられる一人でもある。
そして彼は島原あかりの従兄妹であった。
即ち、彼女の愛を一身に受けるその人であるという事だ。
彼は正義の為に戦う。
その正義とは彼自身のものであるのか、それとも彼の属するJGHのものであるのか。
どちらにせよ、彼は悪を許さない。

その正義の執行者達が開いた殺し合いの場にあかりは呼ばれた。
この場に呼ばれた者達は悪だと判断された。だから殺しあえ。そう婚約者は告げた。
師朗は一体何を考えているのだろうか?婚約者であるあかりも悪と断じる事に疑問を持たなかったのであろうか?
その真意は師朗自身にしか分からない事である。
しかし、この状況下に置かれてもあかりの考えは変わる事は無い。
島原あかりは変わらずハッピーエンドを望んでいる。
この異常な状況下において、ハッピーエンドとは果たしてなんなのだろうか?



彼女にとってそれは、考えるまでもない事であった。



9裸の心 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/27(日) 15:46:48 ID:Bv2JL1dY0
(JGH…一体何を考えているんだ…?)

地図に記載されたエリアでいえばE-2。町。
青年・芹沢真はこのバトル・ロワイアルの主催者について考えていた。
ジャパン・ガーディアン・ヒーローズ、通称JGH。
誰もが知る正義の組織による、殺し合いの開催という倫理に外れた行い。
恐らくこの場に呼ばれた者達は皆大なり小なりの動揺を覚えている事だろう。
真自身驚いていないと言えば嘘になる。

(量子コンピューターによる演算と言っていたが、それに馬鹿正直に従う程頭の固い組織だったのか)

だが、元より真はJGHに対して絶対の信頼を寄せていたわけではない。
真の身体にはある問題が内在する。
その"問題"が元で真はJGHに声をかけられたことがある。
世界を救う英雄達の仲間になってみないか、と。

真は悪いと思いながらも断りを入れさせてもらった。
自分の身体の"問題"は人に見せびらかすものでは断じてないと真は考えている。。
確かに今、人の生命の尊厳を踏み躙る、そんな者達の集団に仇してるのは確かだ。
だとしても人々の希望の象徴になるには自分の姿はあまりにも醜い。
ディメンションナイトやシャイニングフェニックスと肩を並べる気にはなれなかった。
それよりもJGHの誇る技術力で自分の身体の"問題"を解決してくれないか、と頼んでみた。
解答は「不可能」であった。
無論、それはJGHの技術でも解決出来る水位には達していないという旨での回答ではあった。
真は些かの失望を覚えた。だが、その時はそれも仕方のない事かと納得はしていた。

(…今となっては怪しいものだがな)

もしかすると自分の身体の"問題"を惜しんだ為に敢えて解決策を取らなかったのではないか。
そんな疑念も浮かぶ。
ともかく、かつて芽生えた僅かばかりの不信感は現在確たるものとなってしまった。
JGHの考えがどのようなものであったとしても、殺し合いになど応じてやるつもりはない。

(…誰かいる!二人か!)

その時であった。彼の"触角"が何かを告げたのは。



10裸の心 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/27(日) 15:47:23 ID:Bv2JL1dY0
「死になさいよ!」
「あ…あが…っ」

それは異様な光景であった。
花の形の髪飾りを付けたショートカットの女子高生が裸の女子中学生に馬乗りになり、目を血走らせながら首を絞めている。
気道を塞がれたその女子中学生の顔は真っ赤に染まっており、このままいけば窒息死するのは間違いないだろう。
その裸の女子中学生の名は原崎あぽろ。裸族の女の子である。

「死ねっ!死ねっ…!」

そして今、あぽろの首を絞めているのは幸せな結末を誰より望んでいる女。
そう―――



島原あかりである。





「何をしているんだ!やめろ!」

芹沢真はなんとか間に合った。
あかりが何をしているのか、それは彼女を視界に入れた瞬間にすぐ分かった。
急いで二人の元に駆け寄ると力任せにあかりを引き剥がす。

「きゃっ!」

強引に離されたあかりは尻餅をついた。
だが真にそちらを気にかけている余裕はない。

「おい!君!大丈夫か!しっかり!」

あかりの腕から解放されたあぽろは、真の声に応えるかのようにひゅーっ、ひゅーっ、と音を上げながら呼吸をする。
窒息死は免れたようだ。真は一瞬安堵しかけたが、すぐに加害者の女の方へと向き直る。
その女はデイパックの中から何かを取り出そうとしている最中であった。

「待て!」
「邪魔するんじゃないわよ!」

真の静止も間に合わず、デイパックから飛び出した何かがあかりの身体へと装着される。
それは本来妖魔と呼ばれる化外の者と戦う為に開発されたパワードスーツであった。
装着が終わるや否やあかりは真とあぽろ目掛け右腕を向ける。

「レーザービーム…これね!」
「まずい!」

あかりが何をしようとしているのか、それを察した真はあぽろを抱えて駆けだした。

「消えなさい!」

あぽろを抱えて走る真の背中目掛け殺人光線が飛ぶ。
しかしそれは狙いが甘かったのか、真の脇横の空間を通過するだけに終わった。

「逃がさないわよ!」

だが発射されるレーザーは一発だけではない。
逃げる真を追いかけながら、その背に向けて何発もレーザーを撃つ。
その殆どは真の体から外れた何も無い空間へと空しく飛んでいくだけであったが、中には肩や腰を掠め、真の身体を焼くものもあった。

「ぐぅ…!」

激痛が走る。
それでも真は裸の少女を抱えたまま走る。
やがて建造物が見えてきた。
真はその物陰へと隠れるように駆け込む。
そして少女を優しく降ろし、仰向けの状態で寝かせた。

(やるしかない!)

真は一人、物陰から飛び出しあかりの前へとその姿を晒す。

「俺はこっちだ!」
「いい度胸!」

あかりは再び右腕を真へと向ける。
もう逃げる気のない者が相手であれば、狙いをつけるのに慣れないレーザーでも命中精度は上がるはずだ。あかりはそう踏んだ。

「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!」

突然、真が雄叫びを上げた。
と同時に彼の身体に変化が起き始める。
身に着けていた衣服が弾け飛び、皮膚は光沢のある黒いものへと変わっていく。
頭には体内に隠されていた触角が生え、目は1対の複眼となり、口には昆虫のようなアゴが出来ていた。

11裸の心 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/27(日) 15:47:50 ID:Bv2JL1dY0

「ゴキブリ…」

あかりは思わず動きを止める。
真の今の姿はまさしくゴキブリを模した怪人といって差し支えのないものであった。
コードネーム「ファイターG」…それが彼に与えられた名。
この姿への変身こそが彼の身体の抱える"問題"だった。

「あなたデモンビーストだったのね!やっぱり師朗は正しいんじゃない!死ね化け物!」
「…」

その言葉は事実と異なるが、しかしそれに対して返す言葉はない。
ファイターGとなった真の身体には発声器官はなく、人の言葉を話す事は出来なくなるからだ。
レーザービームの発射口を依然向け続けるあかり目掛けてファイターGは走り出した。

「くたばれ!」

発射されたレーザービームは今度は寸分違わずファイターGの胸部へと命中した。
硬い皮膚が溶け、穴が開く。これで倒れる筈だとあかりは確信していた。だが…

「嘘…死なない…!?」

レーザービームによって付けられた傷はすぐに塞がっていった。
これこそがゴキブリの怪人、ファイターGの持つ再生能力である。
彼はまさしくゴキブリのような生命力を持っているのだ。並大抵の事で殺すことは叶わない。

「…!」

あかりへと肉薄したファイターGはその拳をパワードスーツへと叩き込む。
瞬間、巨大なハンマーを叩きつけられたかのような衝撃があかりを襲う。
厚い装甲の上からの衝撃ではあったが、その威力を殺しきることは出来なかったようだ。

「…!!」

今度は強烈な蹴りが叩き込まれた。
パワードスーツを装着していなければ、あかりの内臓は破裂していたかもしれない。

「調子に…乗るな!」

あかりは左肩部に備え付けられたブレードを引き抜き、その勢いのままファイターGを斬り付ける。
右肩から左の脇腹にかけて切り傷が出来上がり、緑色の体液が噴き出した。
その傷は再生能力ですぐに塞がっていくが、あかりは手を休めることなく斬撃を続ける。

「死ね!死ね死ね!」

あかりの剣道三段の腕前はいかんなく発揮された。
ファイターGはその逞しい両腕で斬撃をガードするが、確実にダメージは積み重なっていく。

「そこ!」

咄嗟の突きがガードを避け、ファイターGの腹部へ突き刺さった。
やった、とあかりは確信を得た。流石にこれなら再生も追いつくまい。
後は上に上げて身体を引き裂いてやる。そう思って柄に力を入れた。

「う…動かない!?」

ファイターGの身体に突き刺さった刃は、ゴキブリ特有の強靭な筋肉により挟み込まれピクリとも動かすことが出来なくなっていた。

「…!」

更に間髪入れずファイターGはアゴを刃の中央へと近づけた。
鋏のようなそのアゴで刃を挟み、力を咥えていく。
元より人間の5倍の咬合力を持つゴキブリ。それが人間サイズにまで拡大されたならその力は計り知れない。
ましてや超科学の結晶で産みだされたゴキブリ人間ファイターGなら尚の事だ。
挟まれた刃にヒビが入り―――――そして砕けた。

「ブレードがっ!」
「!」

柄を握っていたあかりは反動で後ろに仰け反る。
すかさずファイターGの強烈な回し蹴りがあかりに叩き込まれた。

「あぐぅ…!」

あかりは後方に大きく跳ね飛ばされる。
なんとか立ち上がると腹部に刺さった刃を抜き取ったファイターGが迫ってくるのが見えた。

「チ…ッ!」

戦況は不利、そう判断したあかりはパワードスーツの背部ブースターをオンにした。
彼女の身体は浮き上がり、宙に舞う。

「…!!」

逃がすわけにはいかない。
ファイターGも背中の半透明の羽根を広げて飛び上がった。

「来るんじゃないわよ!」
「!!」

ファイターGが空飛ぶあかりに迫ったところで、彼女は右肩のブレードを引き抜き、振り下ろした。
その一撃はファイターGの身体ではなく、右の羽根を切り裂く。
如何に強靭な身体を持つゴキブリ人間といえど、皮の薄い羽根は弱い。
片羽根を斬られた事でファイターGは虚しく墜落していった。

「今度会ったら殺す…!」

呪詛の言葉を残し、あかりはそのまま彼方へと飛び去り、視界から消えていった。



12裸の心 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/27(日) 15:48:13 ID:Bv2JL1dY0

「…」

空飛ぶ少女を見送るしかなかった真は、これからの事について考えていた。
早速この殺し合いに乗る人間と出会ってしまった。
もっと理性的な者達が集まっていると思っていたのだが、そう甘くはなかったようだ。
ともかく、見過ごすわけにもいかないであろう。留意せねばと真は思った。

「……」

そして次に問題となるのは、こんなに早く"変身"してしまったことだ。
人を怖がらせる外見も問題だが、なにしろこの姿では言葉が離せない。
他参加者とのコミュニケーションを取るのにも一苦労する羽目になるだろう。
最悪、あの装甲服の少女が言ったように化け物としか見られない可能性だって高い。
悪い事に、この姿になると一時間は人間の姿に戻れないのだ。
衣服も失ってしまったし、先行きは怪しいぞと真は頭を抱える。

「あの…」

と、突然声をかけられた。
振り向けばそこには先程物陰へと置いてきた少女がいた。

「す、姿が変わるところは見てました…た、助けてくれてありがとうございます…私、原崎あぽろって言います…」

その少女は、相変わらず裸だった。

【E-2/町/一日目 深夜】
【芹沢真】
[状態]:ファイターGに変身中、右羽根切断、全身ダメージ(小)、全裸
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:この殺し合いを打破する。
1:逃げた装甲服の少女をなんとかしたい。
2:この裸の少女はどうするべきか…。

【原崎あぽろ】
[状態]:絞首によるダメージ(中)、全裸
[装備]なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:???
1:助けてくれた真に感謝。

13裸の心 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/27(日) 15:48:30 ID:Bv2JL1dY0


ファイターGを完全に引き離した事を確認したあかりは地上へと降り立った。
早まったな、とあかり思う。
最初からこのパワードスーツを使っていれば確実にあの裸の女の方は殺せていた。
しかしながら開始早々に無防備な参加者を見つけてしまった以上、殺そうとせずにはいられなかった。
だから焦って絞首という不確実な手段を選択してしまったのだ。
落ち着いて支給品を確認してから事に及べばよかった。その事に気付いたのはあのゴキブリデモンビーストに引き剥がされてからであった。
自分の熱しやすい性格をあかりは反省した。
また、まだ使い方に慣れていないパワードスーツでゴキブリデモンビーストと戦ったのも失策であった。
このスーツの機能をフルに使えていれば結果は違ったかもしれない。レーザービームを何度も外してしまった事からもそれは明らかだ。
次は間違えない。必ず殺す。

「辿り着くんだ…幸せな結末に」

それにしても彼女は何故このような凶行に及んだのだろうか?
答えは一つ。
ハッピーエンドに到達するためである。
この殺し合いにおける彼女にとってのハッピーエンドとはなんなのか。




決まっている。優勝する事だ。





愛する師朗の開催するこの殺し合いに呼ばれた事をあかりは喜んでいた。
これは島原師朗が島端あかりに与えた試練なのだ。
JGHでヒーローとして戦う自分に並び立てる事のできる女になれ、という。
その為だけに自分とそれ以外の有象無象を集めてこの殺し合いは開かれたのだと、彼女は確信していた。
師朗の言う事に間違いがあるはずはない。
この場に集められた者達は間違いなく「悪」なのだろう。
ならば殺しても何の罪にも問われない。
いや、それどころかむしろ殺さない事の方が罪であろう。
全ての悪を殺し、このバトルロワイアルを征する事が出来た時、自分は島原師朗だけではなく、聖竜騎士クロスワイバーンとっても相応しい女となるであろう。
師朗がただの女以上の存在である事を求めてくれた。その事があかりにとっては何よりも嬉しかった。
なら優勝するしかない。いや優勝する事を師朗だって求めている。
この事はあかりの中では最早事実となっていた。

…師朗が告げた「悪」の中にはあかりも含まれているはずなのだが、その事についてはあかりは公平性を期すための師朗のヒーローらしい言葉選びだと受け取っていた。

「待っててね師朗!私、みんな殺すから!それで、あなたの元に帰るから!」



彼女は狂っていた。

【E-1/町/一日目 深夜】
【島原あかり】
[状態]:全身ダメージ(中)
[装備]:パワードスーツType78(エネルギー残量60%、左ブレードロスト、装甲ダメージ(中))
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2
[思考]
基本:参加者を皆殺しにして優勝し、師朗の元へと帰る。
1:ゴキブリデモンビーストと裸の女は次に会ったら殺す。
2:パワードスーツの使い方に慣れなくては!

【パワードスーツType78】
島原あかりに支給。
三東唄乃の属する組織が開発したパワードスーツ。
レーザービームやミサイル、ブレード等を装備しており、ブースターで飛行も可能。
装着自体は誰にでも可能だが、完全に使いこなすには習熟が必要。

14 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/27(日) 15:49:18 ID:Bv2JL1dY0
投下終了します。

15 ◆.ksO9nG.ek:2019/01/27(日) 16:48:37 ID:fQGiTnnQ0
投下乙です。
あかりちゃん、乗っちゃったかぁ〜。
やはり、ヤンデレの気があるキャラはこうなる宿命なのか・・・。

16 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/28(月) 12:51:51 ID:1FNQr9SA0
里中二十一、我聞浩二投下します。

17黒い弾丸 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/28(月) 12:55:06 ID:1FNQr9SA0
我聞浩二は今の状況に苛立っていた。
自分の意思とは無関係にこんな場所に連れてこられて殺し合いを強要される。それはまあいいとしよう。
浩二は血肉を削るような闘争を求めている。
故に殺し合いそのものには抵抗はない。
しかし、その殺し合いの主催者が自分が最大の敵として見据えているJGHであったなら話は別だ。
JGH…そこはかつて浩二が所属していた組織である。
浩二はJGHのヒーローとして悪と戦い、内なる闘争欲を満たしていった。
だが気付いてしまった。己の闘争欲を最も満たす事の出来る巨大な相手は他ならぬJGHであるという事に。
何人ものヒーローを有するJGHは強い。ならばそれを潰した時の達成感は如何程のものか。
だから浩二はJGHを裏切った。そしてヒーロー殺しのヴィランとなったのだ。

(ま…思ってた以上に奴らは強かったって事かな…)

だが、そのJGHによって自分は呆気なく殺し合いの場に召喚された。何故、いつ、どうやって連れてこられたのかすら皆目見当もつかない。
何の抵抗も叶わず生殺与奪権も握られてしまっている。
これはもう完全に敗北したと言ってもいいだろう。
この否定しようもない事実。それが原因で浩二は苛立っていた。

(いつまでもグチグチ言ってたって始まらねえか)

気持ちを切り替えよう。
ともかく自分はまだ生きている。
一ラウンド目は敗北を認めざるを得ないが、これから巻き返せばいい。
自分を生かしておいた事を後悔させてやるのだ。
そう浩二は決意を新たにした。
打倒JGH、その目標は変わらない。
その為の第一歩として浩二はまずは支給品を確認することにした。

「チッ、なんだこりゃ」

デイパックの中身を見た浩二は落胆した。
所謂「ハズレ支給品」だったようだ。
無造作にそのデイパックを放り、次の支給品も確認すべきか浩二は思案する。
もっとも、支給品になど頼らなくても自分は負けないという自信はあるのだが、何しろJGHに一度負けたばかりだ。
慎重になり過ぎるということはないだろう。

「デスバズラー!」

と、次のデイパックを開けようとした時、声が響いた。
声のする方に目を向ければ、眼鏡をかけた白い着物に袴姿の青年がいた。

「田外の付き人か…」

その青年を浩二は知っていた。
JGHのオカルトヒーロー田外甲ニのサイドキック、里中二十一である。
浩二はJGHに属していたが故にそこにいるヒーローや関係者について概ね把握している。
二十一もその一人だ。
彼は明らかに浩二に対して敵意を向けていた。

「なんだ、お前さんてっきり主催の側にいるのかと思ってたら参加者にされてたのか、気の毒に」
「黙れ!」
「サイドキックだからヒーローにはカウントされてなかったって事か。どうだ、師匠のいる組織が開いた殺し合いに呼ばれた感想は?」
「…確かにJGHの判断を絶対としていいのかどうかは分からない。だがこの場にはお前のような"悪"がいたのもまた事実!ならば僕はJGHを信じる!この殺し合いは貴様らを滅ぼす為の聖戦だ!」
「お前もまた"悪"の一人と断じられているのにか?」
「悪を滅ぼすのに善である必要はない!僕自身がどうであるかは貴様らのような"悪"を消してから決めさせてもらう!」
「成る程な、まあ俺達にはこんな問答自体不要なものだ。決めるなら腕で決めようぜ」

18黒い弾丸 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/28(月) 12:57:14 ID:F5vozymg0
その言葉を合図に浩二の姿が変わる。
全身をブラックカラーの硬い強化服に包んだ戦士へと。
その名は銃戦士バズラー…否、それは昔の名だ。
今の彼の名は「デスバズラー」、テロ組織「デストラッシュ」のリーダーである。
そのヴィランの腰部には長銃身の大口径の拳銃が備え付けられている。
これこそが何人ものヒーローを屠ってきた最悪の銃、「バズショット」なのだ。

「覚悟しろデスバズラー!」

変身した浩二に対し、二十一は臆することもなく突進を敢行する。
彼には最大速度マッハ50の超高速移動能力がある。
まさに二十一のスピードは電光石火。
この速度であれば弾よりも速い。
如何に最悪の銃が相手でも当たらなければどうという事はない。
バズショット恐るるに足らず。
そしてマッハの速度のパンチであればデスバズラーにもダメージは通ると二十一は踏んでいた。

「ハズレでもなかったな」

しかしデスバズラーは構わずバズショットをを腰から抜き、素早く発砲した。
二十一の能力はデスバズラーも把握している。
ならば何故撃ったのか?まぐれ当たりに期待したのか?
そうではない。彼が撃った弾は二発ある。
内一発は二十一へ目掛け飛んでいく。これは避けられるだろう。それは重々承知している。
もう一発は二十一ではなく、先程放ったデイパックへと飛んで行った。当然、弾丸はデイパックを突き破り、中身が溢れ出す。
その溢れ出した中身は…ビー玉だった。

「うわっ…!」

自分目掛け飛んでくる弾の回避に専念していた二十一は、足元に転がるビー玉に気がつかなかった。
何個ものビー玉を意図せず踏みつけてしまった二十一は態勢を崩し…転んだ。

「僕と…したことが…!」

ただ転んだというだけではない。
弾丸すら躱せるスピードで走って転んだのだ。
受ける反動はただ痛いの一語で済むようなものではない。致命的だ。
二十一は立ち上がる事が出来なかった。

「じゃあな」

駄目押しにデスバズラーは倒れた二十一の頭部目掛けバズショットを撃ち込んだ。
弾は二十一の頭蓋を貫通し、脳漿が辺りに飛び散る。
里中二十一の生命活動が停止させられたのは、誰が見ても明らかであった。

19黒い弾丸 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/28(月) 12:57:40 ID:F5vozymg0







(早速『首輪』のサンプルが手に入ったのは幸先いいが、俺一人じゃどうにも出来ねえ)

デスバズラーから元の姿に戻った浩二は二十一の遺体の前で考えを巡らせる。
兎に角、JGHに生殺与奪権を握られている今の状態はマズい。
叩き潰そうにもなにも、反抗すればスイッチ一つでボン、では話にもならない。
打倒JGHの為にはまず制限をかける『首輪』を解除する事が何よりも先決だ。
しかし、浩二にはそれを可能とするだけの知識を有してはいない。

(…アテはなくもない)

『首輪』を解除できる知識を持った人物。
それを探す事が浩二の行動指針となった。
幸い、それを可能と出来るやもしれない人物を浩二は知っている。
その人物がこの場にいるかが問題だが…。

(いるにせよいまいにせよ、可能性に今はかけるしかないか…)

浩二は歩き始めた。JGHを討ち滅ぼす為に。
正義が狂ったとか、量子コンピューターのバグの可能性とか、そんなものはどうでもいい事だ。
JGHを倒す。それが変わることのない浩二の夢だ。

【里中二十一 死亡】

【F-5/平野/一日目 深夜】
【我聞浩二】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2、ビー玉、里中二十一の『首輪』
[思考]
基本:JGHを倒す。
1:『首輪』を解除出来る人物を探す。
2:邪魔になる相手は殺す。
3:デストラッシュのメンバーはいるのだろうか…?

20 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/28(月) 12:58:11 ID:F5vozymg0
投下終了します

21 ◆7PJBZrstcc:2019/01/29(火) 17:49:23 ID:TybiQHoY0
ジョン・セラミック、カオス投下します。

22勢い任せで掴んだ手が ◆7PJBZrstcc:2019/01/29(火) 17:50:16 ID:TybiQHoY0
 G-5、みなと入口の駅構内にて金髪の少年が椅子に座って頭を抱えている。
 少年の名前は、ジョン・セラミック。
 ジョンは思い悩んでいた。一体どうすればいいのかと。
 無論、どんな理由があれど殺し合いがいいとは思えない。
 だが、殺し合いの開幕で告げられたJHGのこの言葉が忘れられない。

『悪は駆逐せねばならない、罪は償われなくてはならない。諸君らの悪逆には罰が必要だ』

 悪。ジョンは自身がそう扱われても否定が出来ない。
 何故か。

 かつてジョンは突然、球体割りの異能に目覚めた。
 その力を使いヒーローの真似事をしていたが、能力が暴走し多くの罪なき野次馬を殺した。
 さらには地球すら割りかけた。結果として未然に防がれたものの、彼は地球を滅ぼしかけたのだ。
 その時止めたヒーローの言葉に傷つき、ヒーローを恨んでいるものの半分くらいは逆恨みだと自覚はしている。
 言われるだけの事をしたとは思っているのだ。

 ならばいっそ誰かに殺されるのか。そんなことはしたくない。

『故に、我らが与える。贖罪の時を。これまで犯してきた罪。これから犯す罪。それら全てを償うのだ』

 あの時、JHGはこうも言っていた。
 贖罪。犯した罪に対する対価。それを払うことが出来る。
 これからは知らないが、これまで犯した罪を打ち消せる。

 ……だから殺すのか?
 人殺しの罪を償うために、更に人を殺すのか?
 もし仮に殺して、償えたとしても

「僕は、どうすればいい?」

 大量殺人、地球を滅ぼしかけた事。それらが償えたとして彼はどうすればいいのか分からない。
 大手を振って生きていける気がしない。もう一度ヒーローごっこなんてしたくもない。

「なんだ、僕は結局どうしようもないのか」

 したいことなど何も無い。あったとしても出来やしない。
 いっそ自殺でもしてしまおうか、それほどに追い込まれたタイミングで

「第一村人発見!」

 少女がこっちを見て何かを叫んでいた。
 ジョンが声のした方向を見ると、メイド服と紫髪ツインテールが特徴的な美少女がそこには居た。
 彼は一瞬だけさっきの気持ちすら忘れて見惚れる。

「なんかいかにもクソナードって感じでちょっとマイナスな気がしないでもないですが、考えてみればそれ位の方が私の都合によろしいですね!
 だってナードは童貞で、童貞はとりあえず美少女メイドが大好きって相場が決まってますし!
 それもただの美少女じゃありませんし? 私の存在を知ってしまえば風俗で性行為するより私で自慰行為することを選んでしまう程の超絶美少女ですからねえ!!
 これもう存在がフェミニスト団体に喧嘩激安大特価セールですことね! 私ってマジ傾国の美少女! いやもう傾世界の美少女!!
 世界はもう私という唯一財産を共有し合う共産主義に目覚めるほかありませんね!!」

23勢い任せで掴んだ手が ◆7PJBZrstcc:2019/01/29(火) 17:50:47 ID:TybiQHoY0

 そして少女の長台詞で、ジョンは一瞬だけとはいえ見惚れたことを激しく後悔した。
 長台詞の内容がジョンを軽く罵った挙句、徹底して自分を持ち上げ続けるのだから。
 一方、少女は自分を見続けるジョンに何を思ったのかこう話しかけた。

「なんですかクソナードさん、私に見惚れているのですか? いやまあ仕方ありませんよね、私ですし!
 別に好きなだけ見てもらって構いませんよ、私ってば見ての通りメイドですから!
 なんだったら見抜きでもします? 5分くらい待ってますからその間トイレでも行って来たらどうですか?」
「君は、えっと……。何?」

 少女の台詞を無視してジョンは質問する。
 この圧倒的な長台詞である種異様な存在感を示しているが、彼はまだ少女の名前すら知らないのだ。
 少女もそれに気づいたのか、軽く手を叩きながら質問に答えた。

「おっと、これは失礼を。
 では名乗りましょう。括目して聞きなさい! ドライアイ以外は瞬き厳禁です!!」
「……ドライアイなら瞬きしてもいいんだ?」
「聞き手のことまで考える私って気遣いの天使!
 見た目、能力、さらには性格まで恵まれているんですから私って本当完璧美少女ですね!! クソナードさんもそう思いますよね?
 ……おっとっと、自己紹介を忘れるとは。可愛すぎるのも問題ですね」

 そこで少女は咳払いをしてから自己紹介を始めた。

「私は大導寺コンツェルンにより制作されたメイドロボ!
 AIを搭載し、人間と変わらない思考、会話が可能。さらには戦闘機能を付け高機動、高火力、そしてその他機能を高水準で揃ったアンドイド!!
 見た目、知性、能力全てに恵まれたメイドロボとして量産され、売り出されるはずでしたが、なぜか販売が中止となり私1体だけになってしまったガイノイド!!!
 そんな現在主募集中の私の名は、カオス!!」
「メ、メイドロボ……!?」

 カオスがメイドロボという事に驚くジョン。
 正直言われてもロボットだとは微塵も思えない。それ位カオスは人間に近い外見をしているのだ。
 しかし彼女は彼が驚いた理由を凄まじい方向に解釈した。

「驚きはもっともです。不気味の谷を飛び越えてこんな、美の化身と言っても支障が無いレベルの美少女を人間は作れるのか?
 いやむしろ作りだしたこと自体が神に対する冒涜ではないのか? そう思ってしまうのも無理はありません。
 ですが私はここにいる! 外見、性格、能力を兼ね揃えた究極美少女メイドロボとして、ここに確かに存在している!!」
「あ、うん……」
「なんですかさっきから生返事ばかりして?
 ……成程、分かりました。確かにナードであるあなたは、私みたいな可愛い女の子と話す機会なんてありませんよね?
 でも大丈夫です! 私の主様になればそんなコンプレックスは全て消し飛びます!!」
「ちょっと待って、主様ってなに!?」

 今までの妄言は聞き流せても、流石に自分に関わることにはツッコミを入れるジョン。
 そんなジョンにカオスは説明を始めた。

「私は見ての通りメイドです。メイドとは主に尽くす者です。
 しかし私、実は主が存在しないのです! 大導寺コンツェルンが私を売り出さないせいで!!」
「いや、そりゃ君を売ろうとは思わないだろうけど」
「私が可愛すぎるせいで手放せなくなったと!? なら仕方ありませんね」

24勢い任せで掴んだ手が ◆7PJBZrstcc:2019/01/29(火) 17:51:39 ID:TybiQHoY0

 その性格のせいで売れないんだよ、とジョンは強く思う。
 なにをどうすればこんな性格のメイドロボを売ろうと思うのか、ジョンは激しく疑問だった。実際はバグの結果なのだが、彼にそれを知るすべはない。
 一方、そんなジョンの内心をカオスは考慮などしない。

「私の主になるとお得ですよ!
 まず私が傍に居て、誠心誠意尽くします。もし主様に危機が迫っても、戦艦一隻分の戦闘力を誇る私がお守りします。
 そしてなんと、私にどんな命令も出来ます。服を脱げと言われたら脱ぎますし、敵を殺せと言われたら幾人でも殺します。
 あ、性行為は申し訳ありませんが出来ません。私全年齢対象の商品ですので機能が搭載されていないのです。
 でもここまで聞いたら私の主になる以外ありえませんよね? どういたしますか?」
「え、いやその……」

 カオスの言葉にジョンは狼狽える。
 当たり前だ。いきなり戦艦一隻分の戦闘力を持った存在を自分の意思で好きにできると言われて、狼狽えない人間が居るのだろうか。
 もしいたら、それは余程の強者かある種のサイコパスだ。
 そしてジョンはどちらでもない。

「主とか、いきなり言われても……」
「いい加減にして下さいカス野郎。男の仕事は9割が決断ですよ。
 あなたは私の主になるかならないか、それを決めればいいだけなのにそれすら出来ないのですか?」

 あまりにも無情なカオスの言動。
 その言葉に、ジョンは今までの態度をかなぐり捨てて激情をさらけだす。

「うるさいっ! お前に僕の何が分かるんだ!?
 沢山の人を僕は殺したんだ! この地球を滅ぼしかけたんだ!
 そんな僕にこれ以上力なんかいらないんだ! それに僕はこの殺し合いを終えたって行くあてなんかない!
 だからお前の主になんかならない! なった所でどうせ何もならない!」
「馬鹿馬鹿しい」

 しかし、ジョンの激情すら凍りつきそうな冷たい声がカオスの口から飛び出す。
 その今までとはあまりにも異なる声色に、彼は思わず怯んでしまった。

「沢山の人を殺した? 地球を滅ぼしかけた?
 たかだかその程度が私に何の影響を及ぼすと?」
「そ、その程度って……」
「いいですか? このスーパーウルトラハイパーミラクルロマンチックな美少女メイドロボがあなたに仕えるとなれば、勝利は確定されたも同じ。
 あなたの過去にどれ程の罪があろうと、あなたの未来にどれほどの障害があろうと、私が全て消し飛ばすからです。
 私はメイドです。メイドである以上主の望みを叶え、主の命に従います。だからどうにもならないなんて道はありえません。私が切り開くからです」
「なんだよ……、なんなんだよ君は……」

 カオスの言葉でジョンの心はぐちゃぐちゃだ。
 言動が最早アナーキー、無政府状態と化した彼女の言葉に常人の理屈は通用しない。
 だからだろうか。本来なら絶対言わないであろうこんなことを言ってしまったのは。

「じゃあやってみせてよ」
「はい?」
「主にでもなんでもなるから、僕の人生を切り開いて見せろよ!!」
「かしこまりました。ではまずあなたのお名前を教えてください」
「……ジョン・セラミック」
「了解いたしました。では次に遺伝子情報の採取をさせて頂きます」
「え?」

 その瞬間、ジョンはいきなりカオスにキスをされる。
 それも、唇同士のディープキスだ。
 突然の事にジョンの混乱は止まらない、加速する。
 その後、たっぷり10秒程キスをしたところでカオスは離れた。

「遺伝子情報を採取を確認。これより、ジョン・セラミックをあなたが死亡するまで主様と認定します。
 あとナノマシンを主様の体内に埋め込みましたので、死亡した場合すぐに知覚できます」
「な、なんでいきなりキス……?」
「……最近の童貞はこういうのがお好きと情報を得ましたので。
 ファーストキスが私という超絶美少女で良かったですね主様は。この宇宙で1,2を争う幸せ者ですよ!
 まあそんなことはどうでもよろしいのです。さあ主様」

 そこでカオスは言葉を一瞬区切り、こう告げた。

「あなたの人生を切り開くために、私は何をすればよろしいですか?」

 カオスの言葉に、ジョンは答える為必死に考え始めるのだった。

25勢い任せで掴んだ手が ◆7PJBZrstcc:2019/01/29(火) 17:52:11 ID:TybiQHoY0


【G-5/駅/一日目 深夜】
【ジョン・セラミック】
[状態]心が荒れている
[装備]なし
[道具]支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:カオスの力で僕の人生を切り開く
1:僕は何を指示すればいい……?

【カオス】
[状態]通常、ジョンを主と認定
[装備]内蔵装備のみ
[道具]支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:主様(ジョン)に従う
1:現在指示待ち
[備考]
※ジョンを主と認定しました。これはジョンが死亡するまで固定となります。
主が死亡した場合、新たな主を探します。

26 ◆7PJBZrstcc:2019/01/29(火) 17:52:45 ID:TybiQHoY0
投下終了します。

27 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/29(火) 23:43:22 ID:yHC03swc0
投下乙です。
カオスちゃん、ぶっとんでますね。
ジョン君のように振り回されるかもしれませんが、私はこういうメイドに守ってもらいたいと思うところがあります。
何気に励ましてくれてますしね。
では神谷無了、五十嵐千里投下します。

28CODE NAME「Ϝ」 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/29(火) 23:46:13 ID:yHC03swc0
「ねぇ!あんた大導寺翔っしょ!大導寺コンツェルンの社長の!」
「誰だそいつは。俺は神谷無了だ」

人気の無い森を一組の男女が歩いている。
長身で黒髪が特徴的な男はたった今名乗った通り神谷無了といい、赤髪のショートヘアーの女子高校生の名は五十嵐千里といった。胸はまあまあある。
先を行く無了を千里は後から追い、一方的に言葉を投げかけていた。

「そりゃ世間のニュースにそんな詳しい訳じゃねーけどさ、あの会社の顔ぐらい知ってるっての!
 あんた大導寺っしょ?ウチのパパだってあんたんとこで働いてんだから!」
「違う。名簿を見ろ。神谷無了の名は載ってる筈だ」
「んな事言って煙に巻こうとして…あれ、ホントに載ってる…」
「分かったか」
「…いーや、あんた嘘ついてる!面倒くさいからって偽名使って誤魔化そうとしてんでしょ!」

歩きながら名簿を確認する千里に振り向くこともなく無了は歩き続ける。
無了は声をかけられる事を特に鬱陶しいと思う事は無かったが、さりとて真剣に答えるという事もなく、関心自体を持っていないという状態であった。
しかし、千里は特にめげる事無く会話を続けようとする。

「ねえ、なんで私ら呼ばれたの?あのヒーロー達はここにいる奴らは皆悪!って言ってたけどさ」
「知らん」
「そりゃ私は自分がいい人間だなんて思っちゃいねぇよ?ヤニだって吹かした事あるし…。
 でもさ!いきなり訳わかんねぇとこに連れてこられて殺しあえーって意味分かんねぇよ!
 あいつらヒーローとか名乗ってるけどカスっしょカス!ウチのクソ姉貴と同レベルのカス!
 大導寺コンツェルンってデカい会社なんだからさ、当然じぇーじーえいちの事も詳しく知ってんでしょ?
 教えてってば!」
「俺が知ってるわけないだろう」
「いーや!あんた社長なんだからなんか知ってる筈!
 よく分かんねぇけどこーどな政治的判断?とか経営方針の転換?とかでさ!
 あんたも会社やってく上であいつらの恨みとか買ってたんじゃない?」
「俺は社長じゃない」

ぶっきらぼうに答えながらも、無了自身この殺し合いには頭を捻っていた。
あの竜騎士は贖罪の為だと言っていたが、一体全体何故こんな回りくどい事をするのだろうか。
本当にここに呼ばれた者達が悪だったとして、制裁を加えるのであれば招集した時点で全員殺せばよかった筈だ。
しかしそれをしなかった。そこには何か意味があるのだろうか?

「…本当に社長じゃないの?」
「だから何度もそう言っているだろう」
「…分かったよ、認めるよ。
 そんな無愛想じゃ社長なんて務まるわけないもんね!」
「分かればいい」

本人は知る由もないことだが、実は千里の推察はある意味正しかった。
神谷無了…それは確かに今の彼の名である。それは間違いない。
だがその名を彼に与えたのは親ではない。
創造神と呼ばれる上位存在が、ある人物とエネルギー生命体を合体して作られた存在。
それが神谷無了であり、その名は創造神から送られたものなのだ。

29CODE NAME「Ϝ」 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/29(火) 23:47:27 ID:yHC03swc0

では、その"ある人物"とは誰なのか?
そう、大導寺翔だ。
ある事件をきっかけに命を落とした大導寺翔、彼が素材となって神谷無了は産まれた。
当然姿形は合体前の大導寺翔と同じものである。
神谷無了が大導寺翔でもあるという事は一概には否定出来る事ではない。
…だが、神谷無了には大導寺翔であった記憶はない。
また、大導寺翔本来の人格もない。
彼は神谷無了なのか?大導寺翔なのか?
その是非はともかく今はひとまず無了と千里の会話に戻ろう。

「つーかさ、あんたいくつよ?
 私より年上みたいだけどさ、社長じゃないにしてもその歳でその無愛想さはヤバいっしょ」

その言葉に無了は一瞬だけ考えたが、すぐに事もなげにこう言った。

「1だ」
「…は?」
「1歳だ」
「…あんた馬鹿にしてんの?」
「事実だ」
「はぁ、もういいわ」

無了は嘘は言っていない。
実際、創造神によって無了が産みだされたのは1年前であるのだから。
無論そんな事を千里に分かるはずもなく、彼女はただただ呆れるばかりであった。
そんな彼女の反応を気に留める事もなく無了は歩き続ける。

(量子コンピューターの出した結論か…"主"の意思は影響しているのか?)

無了は改めてこの殺し合いについて考えていた。
果たして自分は如何様に動くべきか?
創造神は何も単なる慈悲で大導寺翔を神谷無了として蘇らせたわけではない。
エネルギー生命体と合体した事で彼は二つの姿を得た。
一つはいうまでもなく神谷無了の姿。
そしてもう一つは…世界の守護者、「神装戦神ザイガーϜ」である。
彼はザイガーϜに変身し、「世界の敵」を狩ってきた。
それが創造神より彼に与えられた使命だからだ。
何故、そのような使命が与えられたのか。
その真意は分からないが、無了はそれを疑問に思った事は無かった。
ただ産まれた時から自然とそうであったとして受け入れている。

(仮に"主"の出した結論がこの殺し合いの開催なのだとしたら、「世界の敵」は俺達の方だ)

無了は「ラプラス」の演算そのものは大して信用してはいない。
だが、その演算結果に創造神が介入した可能性は0ではないと考えていた。
自分がそうであるように、JGHもまた世界の守護者であった。
ならば彼らJGHをシステムとして用意したのもまた創造神であるかもしれない。
だとすればこの殺し合いを用いて、「世界の敵」を纏めて排除しようと踏み切られてしまったという事なのだろう。
無了はそれならばそれでいいと考えていた。
自分が「世界の敵」だと言うのであれば、迷わずこの世から消える道を選択しよう。

30CODE NAME「Ϝ」 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/29(火) 23:48:49 ID:yHC03swc0

(だが…不確かだ。奴らこそが「世界の敵」であるかもしれない)

そこで湧き上がるのは最初に挙げた疑問だ。
何故奴らは殺し合いなどという回りくどい手段をとった?

「あいつらマジ趣味悪いっての、なんなの殺し合いって。
 出来るわけないじゃん。そんなもん見て楽しいのかね?」

ふと、千里の言葉が耳に入ってきた。
そう、考えられるのは"娯楽"のためだ。
殺し合いを見て楽しむ。そして自分達もまた殺し合いに介入して楽しむ。
非常に不合理で理解したがたい考えだが、そう考えれば一応の辻褄はあう。

(問題はこの殺し合いの過程で与えられる、世界への影響だ)

最悪この殺し合いの参加者全員が死んでも、数十名が消えるだけで世界が破壊されるわけではないのであれば無了は動かない。
だが主催者からは娯楽目的の可能性といった悪意を感じる。
殺し合いを通して世界の破壊がなされるのかもしれない。
例えば、この殺し合いが全世界に中継されていて世界的大混乱が引き起こされる。
例えば、世界の根幹に関わる人物を優勝させる事で狂わせてから元の社会へと帰す。
だとすればJGHは…「世界の敵」だ。

「ねーねー、さっきからずっと思ってたんだけどさ。
 そもそもどこ行こうとしてんの?」
「図書館だ」
「なんで?本読みたいの?」
「電子機器がある可能性が高い。そこで主催者の情報が得られるかもしれない」

ともかく今はJGHが「世界の敵」であるか。
それを見極めるための情報が欲しい。
その為に無了は足を進めているのだ。

「にしてもさー、あの開催の時にいた鳥のお面付けてたヒーロー。
 あいつキモかったよねー。めっちゃどもっててさ。
 あれ絶対ドーテーだよドーテー。しかも女どころか男ともまともに話した事ねーってアレ。
 アンタ無愛想だから言うけどさ、あんな風になるんじゃないよ?」
「善処する」
「あの魔女っ娘も引くよねー!
 あれで多分私と同い年っしょ?いやー高校生であれはねぇって
 あんなんウチらの仲間どころかフツーのクラスでもハブっしょハブ」

それにしてもこの女子高生は何故こんなに自分に話しかけてくるのか。
ここまで声をかけられ続けると流石に無了も疑問に思った。
そこで初めて無了は歩みを止め、千里の方へと振り返りこう言った。

「お前、もしかして心細いのか?」

その言葉を聞いた途端、千里の口調は早くなった。

「ちっちっちっち、ちげーし!誰が心細くなんか!」

しかし、その言葉はすぐに弱くなる。

「心細くなんか…」

五十嵐千里。16歳。
彼女は布津有高校に通う女子高生であり、所謂不良娘である。
優秀な姉を持ったことがコンプレックスとなり、荒んでしまった。
だが、荒んだなら荒んだなりの自信というものは持っていたはずであった。
どんな奴が来ようがシメてやる。そんな暴力的な自信が。

…この場に呼ばれるまでは。

あの開催を告げる場で、彼女は不幸にも―彼女よりもっと不幸だった―ディメトロレッドの真後ろに立っていたのである。


―だから見てしまった。肉が弾け、酷く残酷に死んでいく人の姿を。誰よりも間近で。


―だから聞いてしまった。人間が上げた声とは思えない、聞くに堪えない断末魔を。誰よりもすぐそばで。


その時、彼女の中で何かが折れた。
悪ぶってた自分など、所詮小さな存在に過ぎなかった。
呆気なく人が死ぬ、勿論自分も例外ではない、狂った環境に投げ込まれたのだと嫌でも分からされてしまった。

「…付いてきたいなら好きにしろ」
「…」

だからせめて、一人にはなりたくなかった。

31CODE NAME「Ϝ」 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/29(火) 23:49:56 ID:yHC03swc0
【C-4/森/一日目 深夜】
【神谷無了】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:JGHが「世界の敵」かどうかを見極める。敵であるなら倒す。
1:図書館に向かい主催者の情報を収集。
2:「世界の敵」が参加しているなら倒す。

【五十嵐千里】
[状態]:不安
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:死にたくない。
1:怖いので無了に付いていく。

32 ◆1GoF/Ci/hk:2019/01/29(火) 23:50:24 ID:yHC03swc0
投下終了します。

33 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/01(金) 15:34:44 ID:p1tpgSfw0
スティルバー、五十嵐万理投下します。

34家族ノカタチ ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/01(金) 15:35:41 ID:p1tpgSfw0
ガン、と音が響く。
五十嵐万理はショーケースを蹴り飛ばす事で苛立ちをぶつけていた。
ここはE-5。デパートの中である。

「ふざけないでよ…!」

万理が苛立っているのは当然この殺し合いについてである。
彼女が殺し合いに巻き込まれるのはこれが初めてではない。
五十嵐万理。17歳。
颯獄高校三年生。胸は大きい。
彼女の通う颯獄高校は、表向きは高い偏差値を誇る優良進学校となっている。
万理もまたそれを信じて疑わず、将来を見据えて入学したつもりであった。
しかし実体は違った。
颯獄高校はその実、暴力が蔓延する無秩序な学校であった。
学校行事として生徒達による殺し合いが開催され、一年の内に何人の生徒が死んだか分からないという狂った世界がそこにはあった。
どういう訳かは知らないが、この事実を社会が知る事は無い。恐らく情報統制が敷かれているのであろう。

何も知らずに入学してすぐに万理は後悔した。そして恐怖した。
逆らえば殺されるのは分かっていた。逃げ出した同級生が首を刎ねられ殺される姿を見たからだ。
いつ自分もああなるか分かったものではない。だから必死に足掻いた。
幸いと言うべきか、彼女は強かった。
元より優等生であった万理のバイタリティは、皮肉にも颯獄高校に入学した事で飛躍的に開花した。
持てる知識を、体力を使って彼女は二年間あの颯獄高校で生き残ってきたのだ。
代償として、誰からも好かれるようなその性格は歪んでしまったが。
その矢先に巻き込まれたのが、今回のJGH主催の殺し合いである。

「ちさちゃん達を…私の家族まで巻き込むなんて…!」

彼女が怒っているのは自分がこの殺し合いに参加させられた事ではない。
自分はいい。あの学校に通っている以上は今更だ。
あの竜の戦士が言ったように自分も「悪」であるのかもしれない。それは認める。
だが、名簿には「五十嵐千里」の名前がハッキリと載っていた。
千里は万理の妹である。そして彼女はあの狂った颯獄高校ではなく、一般の学生が通う布津有高校の学生だ。
万理は妹を含め家族が好きだった。辛い時、嬉しい時、悲しみや喜びを分かち合えるあの家庭が。
だから颯獄高校の事も家族には話していなかった。
それは無論、言えば自分だけでなく家族にも危害が及ぶ可能性も考慮したからであるが、それ以上に心配をかけたくなかったからという面もある。

その家族を、巻き込んだ。
自分と同じような世界に引き入れたのだ。奴らは、ジャパン・ガーディアンズ・ヒーローズは。
万理にとってそれはどうしても許せない事であった。
名簿には最初、誰も名前も載っていなかった。
だが、どういう仕組みかは分からないが、時間の経過と共に次々と名前がその紙面に浮き上がってきたのだ。
そこには自分の名前があったし、千里の名前もあった。
そして名簿にはまだまだ余白がある。
となれば、千里だけではない。父や母がこの場に呼ばれている可能性もあるのだ。
万理の脳裏には最悪のビジョンが過ぎった。
父が、母が、妹が、誰かの手にかかって死んでいく最悪の光景が。

「くっ…!」

どうあってもこの不安は消せない。
その焦燥感が苛立ちへと繋がり、再び万理は怒りをショーケースへとぶつける事にした。

「物に当たるのはやめた方がいい」

その時であった。
突然、背後から声が投げかけられる。
振り向くとそこにいたのは、どう見ても人間ではない者であった。

35家族ノカタチ ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/01(金) 15:36:24 ID:p1tpgSfw0
「スティルバー…」

全身が青く輝くメタリックな装甲のロボット。その名は超兵器スティルバー。
万理はこのロボットの事を知っていた。
否、万理「も」知っていたと言い換えるべきであろう。

スティルバー…犯罪者や怪人から世界を守る謎のロボット。
彼の正体を知る者はいない。しかし彼の存在を知る者は多い。
ニュースや新聞で彼の活躍は幾度も報道されている。
万理もまたそうした情報源からスティルバーの事を知った。

「正義の味方がなんの用です?JGHの命で殺しにでも来たんですか?」
「私はJGHには属していない」

万理は悪態をつきながら、しかし謎のロボットであるはずのスティルバーがこの殺し合いの場にいる事には驚きはしなかった。
いや、初期配置が自分と同じくデパートであった事には驚いてはいるが。
先に目を通した名簿に千里だけではなくスティルバーの名も浮かび上がっていたからである。
何故彼もまたJGHに「悪」と判断されたのか。そんな事は真理の知る由もないことだし、別に知ろうとも思わなかったが。

「知ってますよ。属してるなら処刑人とやらの役を充てられてるはずですからね。
 でもね、今はヒーローって役職だけで信じるに値しない存在になるんですよ。
 それだけの事をあの人たちはしたんです」
「私はヒーローを名乗ったつもりはない。
 そう呼ばれるのは光栄な事だが、その定義をするのは私ではなく人々だ。
 だが、君も私をそう認めてくれるならそれは嬉しい。
 彼らによって受けた汚名を雪げるようにするつもりだ」
「言い繕ったってあの人達もあなたと同じような人達だった事に変わりはありません。
 まあ、せいぜい名誉挽回を頑張ってみて下さいね」

万理の言葉にスティルバーは動じる様子はない。
スティルバーは言葉を続ける。

「五十嵐万理さん。君の妹もこの殺し合いに参加している事は知っている筈だ。
 君は一体どう動くつもりだ?」

スティルバーもまた、万理の事を知っていた。
『定食 英雄亭』でバイト活動をしている時に彼女は客として度々訪れていたからだ。
アルバイト店員として働く正体不明のロボットヒーローの姿に、万理は一体何の冗談だ、と思っていたが。
スティルバーとしてはヒーロー達との交流の為にその場を利用する意図があり、物が食えないロボットの身のため客ではなくバイトという形でしか関われなかったという事情があるのだが、今は関係のない事なので割愛させてもらおう。

「守るために他の参加者を殺して回る…って言ったらどうします?」
「止めさせてもらう。殺人者を出すわけにも死者を出すわけにもいかない」
「冗談ですよ。ヒーロー達まで敵に回ってるのに、みんな殺していくなんて非合理的すぎます」

でも、と万理は言葉を付け加える。

「妹を…家族を守りたいっていうのは本当ですよ。
 他の誰かに殺させてやるなんて許しません。
 …世界を守るヒーローさんは当然私の家族も守ってくれるんですよね?」
「無論だ。君の家族だけじゃない。
 この殺し合いに参加させられてしまった無辜の人々を助け出す。それが私の役目だ」
「無辜?JGHに悪だと認定されたのにですか?
 あの人達は政府直轄のヒーローですよ?仮にこの殺し合いを切り抜けたとして、社会全体を敵に回すことになるかもしれません」
「だとしても構わない。
 人の命が失われていくのを黙ってみているつもりはない。
 JGHがそれを脅かすというのであれば、私は敵になろう」

36家族ノカタチ ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/01(金) 15:37:34 ID:p1tpgSfw0
スティルバーの意思は硬かった。
目の前のロボットの表情の無い筈の顔から、万理は決意じみた感情が読み取れるような気がした。
ロボットなのに感情があるなんて、変だなとも思ったが。

「…私だって敵になってやるつもりですよ。
 家族まで巻き込んで…許せないです。あいつら」
「だったら生きて帰るんだ。それこそが奴らに対する最大の反抗になる。
 私も君の家族を探すのを手伝う。だから自棄を起こすのはやめてくれ」
「…ありがとうございます」

万理は素直に例を述べる。
実際、スティルバーが家族探しを手伝ってくれるならありがたい。
自分ひとりで探すより効率もいいし、何より彼の戦闘力も当てにできる。
この提案は素直に嬉しかった。
だが―

(でも、殺人者を出さないっていうのは無理な相談かもしれませんね…)

万理は家族を守るためならば、殺人も辞さない覚悟であった。
それを可能とするだけの経験は積んでいる。
妹に、父に、母に刃を向けるような者がいれば、暴力を持って排除しなければならない。
例え正義のロボットに止められようとも、彼女の決意は揺らぐことは無いだろう。

(死者を出さないっていうのも、無理かも)

そして何より、万理は自分自身の事は省みていなかった。
家族を生還させられたなら自分はどうなっても構わない。
あの学園で汚れた自分にはそれが相応しいのではないかとすら彼女は考えていた。

(…危ういな)

そんな万理を見て、スティルバーは一抹の不安を覚える。
彼女の心中が読み取れたわけではないが、あまり良い考え方をしてはいない事は見て取れた。
ともかく、開始早々に彼女と合流出来たのは幸運であったという事だろう。
この幸運を無駄にしてはならないのだ。彼女を死なせるわけにはいかない。
勿論、死なせるわけにはいかないのは彼女だけではないが、目の前にいる人さえ救えないのであれば自分のこの身はただの鉄屑と変わりなくなってしまう。

(今の俺は…いや、"私"はスティルバーなんだ。例えJGHが相手でも負けるわけにはいかない)

超兵器スティルバー、彼の正体は一体なんなのだろうか。
それを今明かそう。
彼は大導寺コンツェルンの御曹司、大導寺翔が秘密裏に開発していたロボットである。
翔は純粋に正義を信じていた。大導寺コンツェルンが…否、『アルワーズ』が世界に安寧をもたらす存在であると。
アルワーズ…それは大導寺コンツェルンのもう一つの顔、世界を裏からコントロールしようとする巨大組織である。
兵器開発、医療研究、人材育成…様々な分野に手を出すその組織で育った翔は、それらは世界平和の為に利用されるものだと思わされていた。
それこそ、ジャパン・ガーディアンズ・ヒーローズの手助けになるような。

だが、ある時彼は知ってしまった。
アルワーズは世界平和の為の組織などではなく、むしろその逆の為にある組織なのだと。
それを知ってしまった翔に対する組織の対応は早かった。
離反の意思ありと見なされた翔は粛清され、致命傷を負ったのである。
しかし、翔もただで死ぬ訳には行かなかった。
組織にすらその存在を明かさず製作していたロボット、スティルバーへと己の人格・記憶を全て移植したのだ。
それを終えると彼は息絶えた。…否、スティルバーになった。
JGHのヒーロー達と肩を並べられるような…世界の為に戦う願いを込めた鋼鉄の身体に、自らが宿る事になった。

37家族ノカタチ ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/01(金) 15:37:54 ID:p1tpgSfw0
(この殺し合いもあなたの考えなのか…父さん)

そして彼は自らが育った組織に弓を引いた。
血を分けた父が束ねるその組織に。
翔の中でアルワーズは巨大だった。スティルバーとなった今でも常に影となって纏わりついてくる。
それはそうだ。アルワーズは彼にとって間違いなく、"家族"だったのだから。
もしや主催には我が父大導寺昇の息がかかっているのでは…そんな疑念が拭えないでいた。

(この身を…スティルバーを殺し合いの道具にしちゃいけないんだ。
 アルワーズに組していた事が罪だとしても、咎を受けるべきは自分だけだ)

翔はアルワーズの為にスティルバーを作った。
それだけではなく、持てる知識を組織の為に捧げてきた。
それがどんな恐ろしいものを産み出すのかも知らずに。
幸い最高傑作スティルバーが組織の手に渡る事は防げた。
ならば、これからもスティルバーを悪に染めてはいけない。

「行こう万理さん。ここにいたって千里さんは見つからない」
「そうですね、貴方と問答してるよりは足を動かす方がよっぽど有意義です」

そう言って、二人は歩み始める。
…と思いきや、万理は突然踵を返した。




ガン、と音が再び響いた。
万理は今度こそショーケースを蹴り飛ばしていた。

「ふー…ちょっとスッキリ」
「…」

スティルバーも流石にこれには呆れた様子であった。


―"家族"を救うために戦う女

―"家族"の業を背負って戦う男

彼らは"罪"を抱える者達なのだろうか?それとも―――

【E-5/デパート/一日目 深夜】
【五十嵐万理】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:家族を守る。その為には殺人も辞さない。
1:まずは妹を探す。

【スティルバー】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:この殺し合いを打破し、無辜の人々を生還させる。
1:万理と共に千里を探す。
2:アルワーズの動向が気にかかる

38 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/01(金) 15:38:18 ID:p1tpgSfw0
投下終了します。

39 ◆mfnif6ghpc:2019/02/02(土) 22:29:20 ID:2qy2PKOM0
緋色喜一、海老原愛投下します。

40睡魔には勝てない ◆mfnif6ghpc:2019/02/02(土) 22:32:00 ID:2qy2PKOM0
緋色喜一は完璧な人間であった。
容姿端麗、頭脳明晰、文武両道。
綺麗に三拍子そろっている上に、学校では生徒会長を務め、
さらに実家はあのジャパン・ガーディアン・ヒーローズの出資社に名を連ねる緋色財閥という、
生まれまでパーフェクトである完璧超人であった。

もはや彼を知る誰もが、緋色財閥の次期当主は喜一をおいてほかにないと、心から思っていた。


「まさか、ここに来て梯子を外されるとはね…」


病室で喜一はそうつぶやいた。

次期当主と目されていた喜一は、当然その出資先であるジャパン・ガーディアン・ヒーローズの面々と顔を合わせることも多々あった。
それなりに良い友好関係を築けていたと思っていたのだが、まさか殺し合いに参加させられてしまうとは夢にも思わなかった。

(いや、俺の目的を知っていたら、そうでもないかな)

喜一はそう思考する。

確かに喜一は完璧な人間であった。

次期当主にふさわしい人間になるべく、現状に満足せず、努力し続けてきた。
だがそれは決して彼自身が善良な人間であることを示さない。

むしろ彼自身は人の嘆きにこそ悦を見出す悪であった
次期当主にふさわしい人間になろうとしたのも、当主となった後で財閥面々の見る眼のなさを指摘してやりたいがためにすぎない。
そうして自分たちの愚かさ、財閥の終焉を嘆く姿が見たいがために頑張ってきたというのに。


「ついてねえなぁ…伊達にヒーローを名乗ってないってことかねぇ」

はぁ、とため息を吐きながら、喜一はどう行動するのがこの場における最善か思考する。

喜一自身に戦闘能力はない。
そりゃ一般人レベルで考えるならば、そこそこやれるほうだろうという自負はある。
だがヒーローはここに集っているのは「悪」とされるものだと言っていた。
ヒーローの視点で言う「悪」とはすなわち「怪人」や「怪物」総じてヴィランと呼ばれる者らだ。
つまりこの会場にはそういった「悪」がいることが容易に想像できるわけで、それと比べると喜一など相手にならないわけだ。

(まぁ俺が巻き込まれていることを考えると「悪」の基準も割とあいまいなようだが)

ともあれ、戦闘能力がない以上、喜一は他者との接触には慎重にならねばならない。
考えなしに接触して、命を落としてしまうのでは洒落にならないからだ。
理想は信用できる相手を見つけて、協力してもらう展開に持っていければベストだ。

「…まずはともあれ、誰かしらと接触しなきゃならないわけで、つまりベッドで寝ている暇はない
 ………ないんだけどなぁ」

この結論には実は殺し合いが始まった時点からたどり着いていた。
いたのだが、すでに殺し合いが始まって1時間。彼は未だに一番初めに配置された場所にいた。
それは以下の要因が絡み合ってしまったがためであった。

ひとつ。彼の生き甲斐がなくなってしまったこと。
主催者がJGHである以上、当然出資社である財閥も喜一が殺し合いに参加する事に気づいている筈である。
つまり彼は次期当主としての資格を剥奪されてしまったのだ。
例え自分が死んでも財閥の面々は嘆かないだろうし、人々もむしろせいせいしたと思う事だろう。
彼が命を賭してもかまわないと思っていた事柄が全てなくなってしまったのだ。
結果現在の彼は割と何に対してもやる気がおきない状態であった。


ふたつ。
彼の開始位置はベッドの備え付けられた病室であった。
そして殺し合いの開始時刻は深夜0時である。

ここまで言えばわかるであろう。


「ふぁ…もう無理……頭回んないわ…明日起きてから考えよう」


結論から述べる。
彼は精神的に無気力なうえ普通に眠たいので、ベッドから出たくないというだけの話であった。
彼は深い眠りへとついていった。

41睡魔には勝てない ◆mfnif6ghpc:2019/02/02(土) 22:34:04 ID:2qy2PKOM0
×××



「…眠い」

海老原愛が会場に連れてこられて最初に発言した内容である。
時間は深夜0時すぎ。
健全な中学生ならばすでに眠っていておかしくない時間帯である。
事態が事態でなければ、正常な思考である。


だが、現状が殺し合いの最中ということを考えると、この思考は狂っている。
すでに一人見せしめで死んでいるというのに、この思考回路は何かが壊れているとしか思えない。
事実海老原愛はすでに人間としてはすでに壊されつくされている。

そもそも海老原という名前は偽名だ。
偽名を名乗る前は普通のどこにでもいるモブ中学生だったのだ。


それをある日、悪の組織(名称は知らない、覚えていない)に拉致され、
身体を弄りまわされ、彼女はおおよそ人間というジャンルには当てはまらない存在になった。
そしてその状態から元に戻すことは、どのような組織をもってしてもかなわなかった。
「エビ」を「人間」にすることができないのと同じことだ。
すでに人間という枠からはみ出てしまった彼女を人間に戻すことは誰にもできなかった。

当然そんな状態の彼女を一般社会に放り出すなど、危険すぎる事だろう。
異常な再生能力のみを有しているだけだが、それでも使いようによってはなんだってできる代物だ。
通常ならば、殺処分か封印処理が妥当なところを、お情けで生かしてもらっているようなものなのだ。


(だからヒーローが「悪」として私を連れてきたなら、それはそれで構わない)


海老原自身は別にここで殺されようとも文句はない。
別にヒーローたちの言うことを全肯定するつもりはない。
だが世間が自分の扱いに困っていたことは事実だ。
ならここで人知れず死ぬというのもありではないかと考えていた。

(ま、でもそれはそれとして今凄く眠い)


路上で寝る事も考えたが、流石にそれは女の子的に憚られる。
幸い近くに病院があるようなので、そこで寝ることにしよう。


×××


「…なんでこの人寝てるの?」

病院を見つけてすぐに入った病室。
気持ちよさそうにベッドで寝ている喜一を見つけて、
さっきまで寝ようとしていた海老原は、自分を棚にあげてそうつぶやいた。



【G-2/病院/一日目 深夜】
【緋色喜一】
[状態]:健康、無気力、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:協力できる者を探す
1:とりあえず眠いので寝る。後の事は起きてから考える。

【海老原愛】
[状態]:健康、眠い
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:別に殺しまわるつもりもないけど、脱出する気もない
1:…すでに寝ている人がいるとは…どうしよう。
2:眠い。

42 ◆mfnif6ghpc:2019/02/02(土) 22:34:32 ID:2qy2PKOM0
投下終了します。

43 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/02(土) 23:03:09 ID:/NPEvysE0
投下乙です。
そりゃ深夜に連れてこられたら眠いですよね。
この状況下で寝れる辺り二人とも常人で無い事は明らかですが。
果たして目が覚めた時どうなってしまうんでしょうか。

44 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/06(水) 22:29:05 ID:TRejFjuk0
短いですが、島原俊春、チャールズ投下します。

45覚醒ダンディズム ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/06(水) 22:29:31 ID:TRejFjuk0
「ああ…だ、旦那様…何故…」

白髪をオールバックにした初老の白人男性―チャールズが、腹部を鋭い刃で貫かれていた。
彼にその致命的な一撃を加えているのは、白いスーツに白手袋という服装の口髭を生やした中老の男性。
名を島原俊春と言った。
彼の左腕は義手である。と同時に中には仕込み刀が隠してある。
俊春はこれを剥き出してチャールズを貫いたのだ。

「キエエエエエエエエエエエェェェッ!!!!」

更に俊春は刃を引き抜き、今度は大上段に構えたそれを掛け声と共にチャールズ目掛け振り下ろした。
その刃はチャールズの身体を頭から股下にかけて切り裂き、切り口からおびただしい血が噴き出される。

「だ、な…さま…あい、て…お…ま、た…」

その言葉を最期に、崩れ落ちたチャールズの肉体は二度と動く事は無かった。
それを見届けた俊春は、外していた義手を仕込み刀に被せる形で左腕に戻す。

「許せチャールズ、これも息子達の為なのだ」

たった今殺害した男の前で俊春は呟く。
彼は一体何故このような凶行に及んだのか。
それには理由がある。

島原俊春は日本有数の大企業『島原財閥』の総裁を務めており、同時にこの殺し合いの主催者であるJGHのスポンサーでもある。
そしてあの開催の場で参加者達に絶望を告げた竜騎士―クロスワイバーンこと島原師朗、そして彼の追従していた魔法少女―聖少女トゥインクル☆ゆかりこと島原ゆかりの父であった。
息子達がこの場に呼ばれた者達を悪と断じた事、それについて俊春は疑問を持たない。
ラプラスが弾き出した答えならばそれで正しいのだろう。
俊春はそれよりむしろ、JGHのヒーロー達も処刑人としてこの場に投入されるという事の方が気がかりであった。
確かに息子達は強い。だが、この会場は閉鎖された空間だ。
もし仮にそれを逆手に取られ、参加者達が一同に息子達に襲い掛かってきたならば…万が一という事もあり得る。
息子達が殺される可能性も0ではないのだ。

ならばその可能性は詰み取らねばならない。
JGHのスポンサーとして、そして島原師朗及び島原ゆかりの父として、俊春はこの殺し合いに乗る事にした。
自分の手の届く範囲でいい、参加者達を一人でも多く減らして息子達への危険を減らさねばならない。
それは信頼する執事であっても例外ではなかった。
たった今殺したチャールズという男は島原家に仕える執事である。
しかし、彼とてこの殺し合いに反抗し息子達に牙剥く可能性は0ではない。
だから俊春は情を捨てた。

「師朗よ、ゆかりよ、出来る事ならこの場には来ないでくれ…」

自分も悪だと判断された事。それも構わない。
息子達の決めた事で殺されるなら本望だ。
だが、人殺しに成り下がった自分の姿を見せたくはない…そんな僅かばかりの良心も俊春にはあった。
とはいえ、それだけである。
他の参加者たちに対して持ち合わせるべきだった情はもう無い。
かつての自分は聖竜騎士クロスワイバーンだった。だがその名は息子に譲った。
今はただの島原俊春として戦おう。

「神と子と聖霊の名にかけて・・・邪悪なるものに天罰を」

これも息子に譲った、かつての決め台詞が口から漏れた。
まるで自分に言い聞かせるかのように。

【チャールズ 死亡】

【H-4/屋敷/一日目 深夜】
【島原俊春】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:息子達の為、一人でも多く参加者を殺す。
1:次なる参加者を探す。

46 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/06(水) 22:29:58 ID:TRejFjuk0
投下終了します。

47 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/18(月) 22:51:00 ID:4XpC6S320
蓬つかさ、田外零、杉本貴美投下します。

48禁断の合体 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/18(月) 22:51:24 ID:4XpC6S320
C-2、公園のベンチに黒髪を背中まで伸ばし一纏めにし、黒いジャケットを着た少年が腰かけていた。

「メンドくせぇ〜」

そう呟く大人びた風貌の少年、田外零の心中は言葉とは裏腹に大きく荒れていた。
彼が所属するスーパー戦隊「古代戦隊アンシャンジャー」、その中心核となっていた戦士「赤き肉食獣」ディメトロレッド。
またの名を杉本恭忠はあっけなく殺された。
零は恭忠ととても親しかったというわけではない。
向こうはフレンドリーに接してくるが、理想論者の彼とは反りが合わず反発する事もあった。
しかし、それでも仲間だったのだ。
共に絶滅帝国インケラードと戦ってきた仲間だったのだ。
如何にクールな二枚目といえど戦友を殺されて動じない訳がない。

「JGH…面倒な事に付き合わせやがって…」

アンシャンジャーは正義の組織だ、と零は自負しているつもりである。
それが同じく正義の組織たるJGHに悪だと判断され、あまつさえメンバーが1人殺されるなど理解しがたい事態であった。
とはいえ、現状は現状として受け入れるしかない。
そしてこの現状を引き起こしたJGHを許す気もない。
「黒き一角獣」エラスモブラックとして、ディメトロレッドの仇を取るためにもJGHと戦う。その決意が零にはあった。

「アンシャンオーブとブレスが手元にあるのは幸運だったな…それともそれも主催にとってはハンデにはならないって事か」

アンシャンジャーに変身する為に必要なアイテムは主催によって回収される事は無かったようだ。
その事を改めて確認した零は、ひとまずこの場を移動しようかと腰を上げた。
その時である。

「嫌ァァァァァァァッ!!!!助けてぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

向こうからすみれ色の髪の少女が死に物狂いといった表情で走ってきた。
只事ではない、という事は零にもすぐに分かった。
恐らく何者かに襲われたのだろうという事は推測出来たが、それでも確認の為に零は声をかける。

「どうした!?何があった!?」
「む、向こうに…怪物が…」

怯えた顔で少女は声を絞り出した。
それを聞き、零の表情は険しくなる。
アンシャンジャーがこの場に召集されている以上、可能性は存在していたがやはりインケラードのフォールビーストも召喚されていたのか。

「俺に任せな」

即座にアンシャンブレスへとアンシャンオーブを嵌め込み、アンシャンジャーへの変身を図る。

「チェンジ・アンシャ…」

その言葉を言い終わるより先に少女の腕は零の背中へと伸びた。



それが、エラスモブラック・田外零の最期であった。



49禁断の合体 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/18(月) 22:52:11 ID:4XpC6S320

「恭忠…どうして…」

アンシャンジャー6人目の戦士、「白き恐鳥」ディアトリホワイトこと杉本貴美もまた動揺していた。
見せしめとして殺された杉本恭忠は単にアンシャンジャーの仲間というだけではなく、彼女の血を分けた実弟である。
彼女もまた恭忠動揺にJGHのヒーロー達に憧れ、故にアンシャンジャーとなった身であった。
だからこそ現状を受け止めることが出来ないでいた。
が、彼女には悩む時間さえ与えられなかった。

「VOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!」
「!?フォールビースト!?」

唸り声を上げながら、サイを模ったような容貌の怪人が突っ込んできた。
何者か、と考えている暇はなかった。
明らかに怪人は自分に殺意を向けている。
となれば、取るべき行動は一つだ。

「チェンジ・アンシャン!」

スマートフォン型変身アイテム「アンシャンフォン」にアンシャンオーブをリードさせ、貴美はディアトリホワイトに変身した。
即座に怪人に対して戦闘態勢を取り、その手に武器を出現させる。

「ディアトリハンマー!」

ディアトリマのクチバシをモチーフにしたハンマーを構え、怪人目掛け振り下ろす。
怪人はそれに対抗するように、鼻先の角を突き出した。
ハンマーと角が激突し、力比べの形となる。
が、数刻後、弾き飛ばされたのはハンマーの方であった。

「ウ…強い!」

怪人は続けざまに打撃を放ってくる。
ディアトリホワイトも手足でガードし、応戦するもパワーの差は如何ともしがたい。
徐々に態勢は不利に傾きつつあった。

「クッ…!」

このままでは危うい、そう判断したディアトリホワイトは超高速移動で怪人から距離を取り、弾き飛ばされたディアトリハンマーを回収した。

「一気に決めるわ!」

ハンマーの頭へとエネルギーのチャージを開始する。
長期決戦は不利、ならば必殺の一撃にかけるしかない。
幾多のフォールビーストを屠ってきた必殺技ならばあの怪人も倒せる。貴美にはそういった自信があった。

「ディアトリブレ…!?」

必殺技を叩き込むべく駆けだそうとした瞬間、ディアトリホワイトは違和感を覚えた。
脚が動かないのだ。
視線を落とせば自分の脚は凍り付き、地面に固定されている事に気付いた。
脚先から氷の道は続いており、怪人の立つ足場へと到達していた。
冷気だ。
怪人の身体から発せられる冷気がこの氷の道を作り、ディアトリホワイトの脚を凍らせていたのだ。

(動きが読まれていた…?でも、どうして…!?)

怪人から発せられる冷気はより強められた。
脚先から膝、腰、腹とディアトリホワイトの身体は凍っていき、遂には全身が凍り付いた氷像と化した。

50禁断の合体 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/18(月) 22:52:27 ID:4XpC6S320
「エラスモ…ドリル…ブレイク…!」

怪人がくぐもった声を挙げると、鼻先の角がドリルのように回転し始めた。
そして怪人はディアトリホワイト目掛け突進する。
氷像と化したディアトリホワイトにこれを回避する手段は無かった。

そして怪人の角は氷像を貫き…ディアトリホワイトの、杉本貴美の身体は粉々に砕け散った。
後には氷の破片が飛び散り、元は人間の身体であったことを示すかのように赤い断面が覗かせられるだけであった。
ダメージで変身は解除され、ディアトリホワイトではなく杉本貴美の遺骸と化したようだ。

「まずは一人…」

物陰からその一部始終を見届けていた人物がいた。
すみれ色のショートカットの髪の少女…そう、田外零に助けを求めに来た少女、蓬つかさである。

「よくやったわ、えっと…エラスモブラックさん。今は怪人だからエラスモビーストって呼んだ方がいいのかな」

つかさは怪人へと近寄り、親しげに話す。
エラスモビーストと呼ばれた怪人はつかさに危害を加えようとする様子はなく、それどころか頭を垂れた。

これは一体どういう事なのであろうか?
それはこの怪人、エラスモビーストはまさしくつかさによって産み出されたからだ。
エラスモブラックと呼ばれた事から分かる通り、この怪人の正体は田外零である。
蓬つかさは怪物に襲われてなどいなかった。
彼女は演技によって田外零を騙し、隙を付いて支給品である「フュージョンシード」を植え付けていた。
これによって田外零はアンシャンオーブと融合して怪人エラスモビーストと化し、彼女の命令で動くマシーンへとなり下がってしまったというわけだ。

「ふみくん…私が悪だなんて、嘘だよね…」

つかさは恋慕の情を向ける少年の名を呟く。
主催の側に付いたヒーロー陽光戦士サンフェニックス…出向井文弥の名を。
彼女は文弥の力になろうとしてきた。
特訓メニューを考えたり、必殺技の名前を一緒に考えたり…とにかく彼と共にあろうとしてきた。
だからこそ、その過程で危機に晒される事もあった。
悪の怪人、ヴィラン、侵略者、そういった者によって命の危機を迎えた経験がある。
それを何とか掻い潜り生き延びてきたわけだが、今はその経験が役に立った。
怪物に襲われたという彼女の狂言は、アンシャンジャーである零でさえも騙せるものへと昇華されたというわけである。

「私は死なないよ。行こう、エラスモビースト」

杉本貴美の遺骸の傍に転がっていたアンシャンフォンとアンシャンオーブを拾い上げながらつかさはそう言った。
つかさはサンフェニックスの友である自分は特別なのだと頭の片隅で考えていた。
だから、死んではならない。
例え他人を陥れてでも。


【杉本貴美 死亡】

【C-2/公園/一日目 深夜】
【蓬つかさ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜2、アンシャンフォン、アンシャンオーブ(ディアトリホワイト)
[思考]
基本:生き残る。
1:次なる参加者を探す。

【田外零】
[状態]:健康、ビースト化
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:つかさに従う。
1:次なる参加者を探す。

【フュージョンシード】
蓬つかさに支給。
悪の組織「ドゥンケルハイト」が開発した怪人製造用のアイテムであり、無機物と有機物を融合させて一体の怪人を作り出す。
産まれた怪人はこれを植え付けた者の命令で動く操り人形となる。
今回は田外零とアンシャンオーブが融合させられ、エラスモビーストを産み出す結果となった。

51 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/18(月) 22:52:43 ID:4XpC6S320
投下終了します。

52 ◆ujD3wLD35k:2019/02/22(金) 21:29:24 ID:F6x5VS6w0
投下します

53母から子へ、愛をこめて ◆ujD3wLD35k:2019/02/22(金) 21:30:56 ID:F6x5VS6w0
スモーキーピンク髪が風に棚引く。
何もない夜の空を一人の青年が『飛行』していた。

正確には、それは跳躍である。
木々の頂点から頂点に飛び移るムササビの如き身のこなし。
余りに華麗な連続跳躍は、一繋ぎの飛行のようにすら見えるだろう。

天空を支配する青年の名はジヴ。
砂の惑星を切り開く探索者の一人。
もちろんただの探索者ではない。
探索者の中でも最高位にまで上り詰めた者にのみ与えられる二つ名を二つ与えられた前代未聞の大天才。
『自由』なる『天空』のジヴ。
砂の惑星で、彼はそう呼ばれていた。

ご自慢の飛行装置がなくとも彼が行くは空の道だ。
障害物の回避。視野の確保。
探索において制空権を取るアドヴァンテージは計り知れない。
警戒すべきは狙撃と言った不意打ちだが。人間にとって真上というのは死角であり、夜に紛れれば発見される危険性も少ない。

誰よりも早く砂の惑星を飛び回ったジヴにすら見覚えのない場所だった。
砂の惑星に置いて緑化指定都市でもない場所に、これほど木々が生い茂っているのは異常である
一刻も早く自分のまきこまれた事態を正確に把握する必要がある。

まずは状況の把握。
次に状況への対策。
最期に状況への勝利。
いつどこであろうと変わらない彼の行動方針である。

「ん?」

森の切れ間に、泣いている幼子の姿を捉えた。
ジヴは冷徹な男ではあるが、こんな危険な場所に子供を放置するほど情がない男でもない。
跳ぶ勢いを緩め、木々の頂点から音もなく着地すると、先ほど見かけた幼子がいた場所まで徒歩で引き返していった。

「嗚呼…………何という事でしょう」

少女は蹲るような体勢で顔を覆い大量の涙で頬を濡らしていた。
年の頃は10にも満たないように見える。
身に纏っているのは年に見合わぬ見るからに高級そうな着物なのだが、ジヴにとっては見慣れない衣服である。
どこぞの辺境集落の民族衣装か何かだろうという程度の認識だが、高級感というものは伝わっているのか、その集落の貴族か何かかもしれないなどと考えていた。

「お嬢ちゃん大丈夫かい?」

装着していたゴーグルを額に上げて出来る限り警戒させないよう声をかける。
その声に少女がゆっくりと顔を上げた。

「失礼いたしました。お見苦しい所をお見せしてしまったようで。どうかお忘れ下さい」

涙を拭い、照れたように身を起こす少女。
その妙に落ち着いた丁寧な物腰は、少女の外見には見合わわない。
ジヴはそのギャップに僅かに戸惑った。

「あ、ああ。大丈夫そうならいいんだが。
 まさか君の様な子供まで巻き込まれているとはな、全くあのJGHとやらも何を考えているのか」

呆れた様に漏らすジヴの言葉を少女がきょとんとした顔で見つめ返す。
その表情がこれまで以上に幼く見えた。

「私(わたくし)これでも子供もいる、30を超えたおばさんですのよ」
「……マジか」

信じ難い言葉ではあるのだが、女の纏う雰囲気と言うべきか。
完成された女を感じさせる仕草に妙に納得させるものがある。

「それは失礼をしたマダム」
「いえ、よく間違われますので。慣れていますわ」

着物の裾で口元を隠し上品に笑う。
童女そのものの外見でありながらその所作は貴婦人その物である。
敵意には敵意を、礼には礼をがジヴの主義である。
相手が貴婦人であるのならこちらも紳士としての礼を尽くすまでだ。

「それでマダム。いかがなされました。忘れろとおっしゃられた所で先ほどの涙見て見ぬふりなどできません。
 この物騒な催しに不安を覚えているのでしたらこの私が、」
「いえ…………いえ違うのです」

ジヴの言葉が遮られる。
再び、少女の――――否。女の頬を滴が伝った。

「――――我が子を、想っていたのです」
「お子様、ですか…………?」

先ほど子がいると言っていた。
最悪の展開がジヴの頭をよぎる。

「まさか、お子様も巻き込まれている、と?」

だが、その問いに女は頭を振った。
最悪の予測が否定されて、安堵の息を漏らす。
だが、事実は最悪の予測を下回っていた。

54母から子へ、愛をこめて ◆ujD3wLD35k:2019/02/22(金) 21:31:43 ID:F6x5VS6w0
「この殺し合いを始めたJGHの聖竜騎士クロスワイバーンと聖少女トゥインクル☆ゆかりは我が最愛の子、師朗とゆかりにございます」

壇上にて殺し合いを示唆した怪物。
それが彼女の子供だと言う。

「つまり、あんたは…………」
「はい。私こそ島原の母。はるかにございます。見紛うはずもありません、あれは我が子にございます」

偽物などであるはずがない
例え10年の差異があろうとも、変身した状態であろうとも、腹を痛めた母が我が子を見紛うはずもなかった。
彼女の家族愛全てに賭けて断言してもいい。
あれは間違いなく島原師朗、島原ゆかりである。

「…………それは」

流石のジヴもかける言葉が見当たらなかった。
身内がとち狂ったともなれば苦悩するのも仕方ない話である。
だが、最悪の下にはまだ下がある事を知る。

「あんなに立派になって。その姿が見られただけで母は嬉しく思います」
「な」

瞬間、女の手元が煌めいた。
月光を反射するそれは銀の刃だった。
振り抜かれる銀光を、咄嗟にジウは後方に跳躍して回避した。

「己が正義を貫く我が子たちの力にならずして何が母でしょう」
「なるほど、そういう輩か」

女が流していたのは慟哭の涙などではなく、随喜の涙であった。
狂った子供たちに振り回される不幸な母などではない。
むしろ元凶。
この女がそう育てた。
こいつらは一族郎党とち狂ってる。

「愛すべき我が子が望むのであれば喜んで贄を捧げましょう。最後にはこの命すら捧げる事も惜しくありません」

刃を手にした鬼母が迫る。
赤い鮮血が夜空に散った。

「なっ………………え?」
「――――生憎だが『俺』は『俺』の敵に対して容赦はしない」

ムーンサルト。
縦回転したジヴの足先の刃がはるかの胸元を深く切り裂いた。
紳士然とした皮を剥げばその下にいるのは獰猛な獣である。

何が起こるか予測不能な未開の地を切り開く砂の星の探索者たち。
一つの判断ミスが死へとつながる世界で生き抜き、最高位まで上り詰めた探索者に油断などあるはずもなかった。
必要があれば殺すし、外見が幼子であろうとも容赦などしない。

「げっ…………ごぷっ」

傷口は肺にまで到達しているのか、血の塊を吐いた。
喉に血を詰まらせながらそれでも女は言葉を口にした。

「……愛す、べき………………我が子……たち、よ。思う………………が侭の……正、義……を」

コマのように回って、鋭い鞭のような斬撃で喉を切り裂く。
命を奪う事に躊躇いなど無いが、あまり苦しませるのは趣味ではない。

「いつか悪になる者たちか。ここにいるのはこんなんばっかなのかね」

銀のナイフ拾い上げながらぼやく。
あの言葉はあながち嘘ではないのかもしれない。
そう少しだけ考えた。
だが、その場合、自分はどうなるのか。
自分も果たして悪なのか。

「ま、そう言う事もあるだろう」

ジヴ正義が他者の悪という事も往々にしてある。
だが、それはジヴの正義を否定するものではない事も理解している。

これはJGHと正義とジヴの正義が相容れないだけの話だ。
そうであるのならJGHを叩き潰す。
JGHにとってジヴが悪であるように、ジヴにとってJGHは悪なのだから。

【島原はるか 死亡】

【G-3/森/一日目 深夜】
【『自由』なる『天空』のジヴ】
[状態]:健康
[装備]:仕込みシューズ
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜2、銀のナイフ
[思考]
基本:JGHを潰す
1:状況の把握
2:状況への対策
3:状況への勝利

55 ◆ujD3wLD35k:2019/02/22(金) 21:31:55 ID:F6x5VS6w0
投下終了です

56 ◆1GoF/Ci/hk:2019/02/22(金) 23:08:16 ID:3vTdmv5Y0
投下乙です。
見事に全員危険人物でしたね、島原家。
ジヴの相手によって口調変える話し方好き。


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