したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

平成仮面ライダーバトルロワイアルスレ4

1 名無しさん :2018/01/27(土) 23:20:27 ID:fRys9cx60
当スレッドはTV放映された
平成仮面ライダーシリーズを題材とした、バトルロワイヤル企画スレです。
注意点として、バトルロワイアルという性質上
登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写が多数演出されます。
また、原作のネタバレも多く出ます。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。


当ロワの信条は、初心者大歓迎。
執筆の条件は、仮面ライダーへの愛です。
荒らし・煽りは徹底的にスルー。

732 ◆JOKER/0r3g :2018/11/08(木) 23:46:20 ID:tJIwqj620
長時間お付き合いいただきありがとうございました。
以上で投下を終了いたします。

ご意見ご感想、ないしはご指摘などございましたらよろしくお願いします。

733 名無しさん :2018/11/09(金) 02:23:59 ID:qIeXStqc0
投下お疲れ様です。
ブレイドを翔太郎に返さないのか…と最初は思ってたんですが、なるほどアンデッドポイズンとは…。
会場に残るマーダーの中では間違いなく最弱でありながら、豊富な情報と装備を活かしてあの手この手で攻めてくるキングはやはり厄介な存在だと再認識しました。
初代に引き続きまたしても不意打ちで倒れてしまった翔一君ですが、最後に意志を遺せた分本望なのかもしれませんね。個人的にはディケイドアギトのカードがこの先どうなるのかも気になります。

734 名無しさん :2018/11/09(金) 21:06:14 ID:6SVwhtYY0
投下お疲れ様です!
アギトの世界もこれでリーチですか…巧、良太郎、翔一と主人公がどんどん脱落していく…

735 名無しさん :2018/11/09(金) 23:19:50 ID:G8rEObY20
投下乙です

これまで幾度も場を和ませてくれた翔一くんが…もう真司とのやり取りも見れないと思うと悲しい…
キングは相変わらずの悪辣さ。こいつほんとハイパームテキでボコってやりたい(全ギレ)
そんなキングのせいで錯乱してしまった総司を何とか士が救ってくれることを願う

改めて投下お疲れ様でした!

736 名無しさん :2018/11/10(土) 06:10:14 ID:47.hvsxI0
投下乙です!
キングはまたやらかしてくれたなぁおい! キング怖いよ……
総司は剣崎の遺志を受け継いで、そして津上さんは小沢さんを始めとしたたくさんの人達の仇を取ってくれたから、燃えてきたー! けど……まさか、こんな結末になるなんて。
士と総司は再会したけど、このまま総司は救われるのか……?

737 名無しさん :2018/11/10(土) 11:54:13 ID:jb74tRpI0
キングがエボルトみたいに見えてきたな
実際にあったら外道同士で仲良くなるんだろうか

738 ◆JOKER/0r3g :2018/11/14(水) 01:38:50 ID:BhXtFuOk0
皆さんこんにちは。
たくさんのご感想ありがとうございます。一つ一つ、しっかりと目を通しこちらとしても楽しませていただいています。
これからも何卒よろしくお願いします。

さて、今回は以前から予告していたとおり次回投下となる第三回放送についてです。
といいましても今回は私しか放送案を投下する書き手がいない上本投下までに生じるラグや手間など問題がありますので、仮投下は経由せずこちらに直接投下したいと思います。
もちろん、内容に著しい違和感がある、ないしは問題なのではないか、などのご意見がございましたら仰って頂いても構いませんし、その時は迅速に修正いたしますのでよろしくお願いします。

739 ◆LuuKRM2PEg :2018/11/14(水) 19:40:52 ID:B7wFkSKY0
第三回放送の投下は本スレの直接投下で問題はないと思いますよ。
他の書き手氏の中で、放送案を投下したいという意見もないので。

740 ◆JOKER/0r3g :2018/11/15(木) 22:35:30 ID:x0zHVe060
皆さんこんにちは、9/16〜11/15期間の月報集計です。

話数(前期比)/生存者(前期比)/生存率(前期比)
133話(+3)/16/60(-2)/26.6(-3.4)

前回月報に比べ投下数1増やせました。次回月報は3〜4本投下するのを目標に頑張ろうと思います。

741 ◆JOKER/0r3g :2018/11/18(日) 00:00:13 ID:rh/2hsCU0
お待たせいたしました。
これより投下を開始いたします。

742 第三回放送 ◆JOKER/0r3g :2018/11/18(日) 00:05:04 ID:rh/2hsCU0

 会場を包む広い大空を、朝焼けが照らす。  
 輝かしいその朝日に対し、しかしこの場にいる誰も爽やかな心象は抱かなかった。
 何故なら今は、世界の存亡をかけた殺し合いの真っ只中。

 だがそれでも、恐らくこの会場で生きている参加者の全ては、今この瞬間だけは揃って空を見上げていることだろう。
 無論、陽の光を浴びるためなどではない。
 突如空を覆う様に現れた灰色のオーロラと、それから吐き出されていく無数の飛空艇を、その目に収めるため。

 そして同時そのモニターが告げる、この6時間の死者の情報と、これから先生き延びるために必要不可欠な情報を得るために。
 そう、現在時刻は6:00。大ショッカーが執り行うこの殺し合いにおいて、三回目の定時放送が行われる時間を迎えたのであった。


 ◆

 
 突然に、何らかの楽器の音が会場を支配した。
 今までの放送担当者のいずれとも違う、暗く閑散とした部屋の中で、男はただ一心不乱にパイプオルガンを演奏し続ける。
 その音に秘められているのは、並々ならぬ怒り。

 この殺し合いの参加者に向けられたものなのか、或いはもっと別の、概念的な何かに向けられたものなのか、誰にもわからない。
 長い髪で表情を隠し一心不乱にオルガンを弾き続ける男の演奏は、やがて終わる。
 感情を多分に込め、恐らくは誰が聞いても素晴らしいと評価するだろうそれを終えた男は、しかし一切の拍手を受けることもなく立ち上がり、ゆっくりとカメラの前に歩みを進めた。

 やはり長い髪が彼の顔を影で覆い、その表情は読み取れなかったが……その中で唯一、しっかりと露出した鋭い片眼がカメラの先を見据えていた。

 「――時間だ。これより、第三回の定時放送を開始する」

 男は、過分に口を開くことはなく、しかしどこまでも透き通るような不思議な声で、放送の開始を宣言する。
 つまりは彼が、大ショッカーが行う殺し合いにおいて、三回目の放送を担当する者だということだ。
 今までキング、三島正人、ラ・バルバ・デといった軒並みならぬ面子が担当したこの放送。

 だがそうした中でも、男はまるでこういった殺し合いの経過を告げるのに一番慣れているといった様子で再び口を開く。

 「――俺の名前は神崎士郎。これから、この6時間で死亡した参加者と禁止エリアについて発表する」

 その証拠に、というべきだろうか。
 今までに放送を行ったいずれとも違い、神崎と名乗った男は前置きすら話すことはなく情報を提示しようとする。
 或いは彼なりには先ほどのオルガン演奏がそうした前置きにあたるものだったのかもしれないが、ともかく。

 手元の資料をめくるどころか視線さえ一切動かさぬまま、神崎は続ける。

 「――この6時間で死亡が確認された参加者は、ン・ダグバ・ゼバ、津上翔一、浅倉威、乾巧、橘朔也、志村純一、野上良太郎……以上7名。
 これにより、多くの世界が残り参加者一人にまで追いやられた。
 ――この戦いも、終わりが近づいている」

 死亡が確認された参加者。
 これまでの放送担当者のいずれもが使わなかった表現を用いて死者の発表を行ったことに、誰か気付いたのか。
 ともかく、さした間を空ける事もなく、神崎は続けた。

 「――次に、禁止エリアの発表だ。だが、今回は別段メモを取る必要もない。
 今回の禁止エリアは、A-4からH-8エリアまでの40エリア……つまり会場内にかかる橋から以東のエリア全てだ。
 時間についてはこれから二時間後……午前8時を以て、これらのエリアを全て禁止エリアに制定する」

743 第三回放送 ◆JOKER/0r3g :2018/11/18(日) 00:07:59 ID:rh/2hsCU0

 神崎士郎が述べた言葉は、あまりに衝撃的なものだった。
 つまりは、実質的にこの殺し合いの会場が半分以下になるということ。
 それは、残り少ない参加者人数をより効率的に巡りあわせ、殺し合いをより円滑に行うために大ショッカーが編み出した、あまりにも強行的な殺し合いの促進手段であった。

 恐らくは会場内でも喧騒が予想されるその発言から少し間をおいて、神崎は改めてその眼差しで鋭くカメラを……或いはその先の参加者たちをその視線で貫いた。

 「――そして、会場に現在生存する全ての参加者がその存在を知った今、ここで改めて会場に参加者ではない存在が存在していることを公表する。
 彼らは当然参加者ではない。この殺し合いの結果には一切関係しない、イレギュラーだということを示しておく」

 彼が述べたのは、大ショッカー幹部である特権を万全に使い多くの参加者を陥れたキングのことだけではない。
 “彼ら”という言葉からも分かる通り、復活したカッシスの存在をも、我々は把握しているぞと。
 そう誰にともなく示すためのものだった。

 「――同様の理由で、今回は世界別殺害数ランキングの発表は行わない。
 イレギュラーである存在がキルスコアを稼いだ以上、最早あのランキングになんらの意味は存在しないからだ」

 そしてそこまでを一息に言い放って、神崎はこれからが本題だと言うように一つ息を吸い込んだ。

 「――また、今回の放送を以て殺し合いに積極的な行動を起こしていた参加者が著しく減少したことを受け、殺し合いの更なる促進のため、これより会場に参加者外の存在が新たに参入する」

 それは、まさしく大ショッカーからの仮面ライダーへの宣戦布告と言っていいものだった。
 キングの厄介さを知ったうえで、お前たちはまたああした災厄を相手に戦い抜けるのか、と。

 「――どういった存在がいつどこに現れるか、どれだけ現れるのかはここでは明かさない。
 そして、繰り返すことになるが彼らはこの殺し合いの結末にいかなる影響も及ぼさない。
 同じ世界の出身だからと言って協力できるなどとは考えないことだ」

 警告のようで、実質ただの脅しに過ぎないその言葉を吐いて、神崎は事務的な内容を全て言い終えたのか、大きく息を吸い込んだ。

 「――戦え」

 その末に吐き出された言葉は、極めて短いもの。
 何度も何度も殺し合いを繰り返し、その度にライダーたちに吐き捨ててきた言葉。

 「――戦え。世界が最後の一つになるまで」

 その瞳は、何を映すこともない。
 ただ虚空だけをその鋭い瞳に映して、神崎士郎はまるでゼンマイ仕掛けのカラクリのように、幾度となくその言葉を繰り返した。

 「――戦え。自分の願いを叶えるために」

 最早それは呪詛となって、参加者に降りかかる。
 ……いや或いは、神崎士郎本人にさえも。

 「――戦いを続けろ。仮面ライダー」

 “仮面ライダー”という言葉を発するその一瞬だけ、目線をわずかに揺るがせて。
 次の瞬間にはもう、放送は終了していた。


 ◆


 カツカツ、と忙しなく音を立てて、鷲のエンブレムが飾られた廊下を早足で歩く男の姿。
 見るからに肩を怒らせ苛立ちと共に進む彼の名前は、ビショップ。
 小さく何かに止めどなく文句を漏らしながらも足を止めることはない彼の姿は、その張り付いたような表情も含めて著しく不気味なものだった。

 だがその歩みは、突然に止まる。
 視線の先に、自身の上司にあたる存在を視認したためだ。

744 第三回放送 ◆JOKER/0r3g :2018/11/18(日) 00:13:35 ID:rh/2hsCU0

 「……死神博士、お探ししておりました」

 「ビショップか、放送が終わったばかりだというのに、忙しない奴よ」

 「……申し訳ございません」

 暗い通路の果て、突然に現れた死神博士の言葉に、ビショップは平謝りと言った様子で頭を下げる。
 しかし、その表情には少しばかりの苛立ちが隠しきれていない。
 それを死神博士も分かっているのか、一つ溜息をついた後にビショップへと一歩足を勧める。

 「お前の気持ちはわかる。だが、かのファンガイアの王と今会場にいるキングとの間には、首輪の有無や参加者への情報量について無視出来ない差があるのだ。
 奴がこの6時間を生き抜けたからと言って、それがそのまま絶対的な差となるわけでは……」

 「死神博士、お言葉ですがそれ以上は口をお慎みください。奴のような無礼者と、我らがファンガイアの運命を背負う王を同列に並べること自体が我らへの侮辱に他なりません」

 「……そうか、すまない」

 僅かばかりビショップの心象を思い気遣うような発言を行った死神博士に対し、ビショップは変わらず無表情のまま返す。
 これ以上そのデリケートな問題について語り合っても互いに気を損ねるだけだと悟ったか、暫しの沈黙が場を支配するが、それを掻き消すようにビショップは一つ息を吐いた。

 「――それよりも。財団Xからの使者と交渉が終わりました。
 我々の要求通り、彼らはこの殺し合いの経過記録と引き替えにその技術力を提供してくれるそうです」

 「そうか。それは何よりだ。我らが首領は偉大な力を持ちこそするが、故にその手をこれ以上他で代替可能な事象に煩わせるのも憚られる。
 これで心置きなくあの御方はご自身の身体の修復に専念できることだろう」

 どこか満足げに、死神博士は笑う。
 その姿に姿さえ見えない首領へのこれ以上ない忠誠と献身の思いを感じて、ビショップでさえ僅かばかりその忠臣ぶりに舌を巻いた。
 だがそんな中でもビショップは自身の仕事を忘れはしない。

 咳を一つだけ吐いて、こうして放送終了後すぐに死神博士を捜し歩き続けていた最大の理由を語り出した。

 「……財団Xの使者が、今後協力を行うことへの頭金として、“彼”の完全な復活を行いました。今すぐにでも、殺し合いの会場に送り込めるかと」 

 財団Xという得体のしれない存在に対しビショップからすれば相当の功績である。
 同時死神博士もまた、かねてよりの目標でありながらも首領の手を煩わせるまでもないと後回しになっていたそれの蘇生が叶ったことに、喜びを隠しきれない様子であった。
 少しばかり興奮に息を弾ませて、その後にいつもの冷静さを取り戻した死神博士は、調子を戻すように一つ咳を吐き、続けた。

 「本当か。では早速頼むぞ。具体的な時と場所については、お前に任せる」

 「かしこまりました」

 それだけを言い残し踵を返した死神博士に対し、ビショップは深々と頭を下げる。
 やがて死神博士の姿が闇に消え、足音さえ聞こえなくなったのを確認してから、彼はゆっくりとその面を上げた。

 「……」

 ビショップはそのまま、鉄仮面のように変わらない表情を顔に張り付けてゆっくりと歩きだす。
 その心にあるのは、ひとえに首領たるテオスの偉大なる力が我が誇り高きファンガイアに注がれるまで、あとどれだけ耐え忍べばいいのだという沸き上がる不満だ。
 アンデッドのキングは、比べるまでもなく及ばないことさえ知らず我が魔王を愚弄し、そして会場で好き勝手に暴れまわっている。

 彼の自信過剰な愚かぶりについては、いずれ滅びゆく愚者に思考を巡らせるだけ無駄と断じ無視することにしたものの、同じ大ショッカー幹部として、彼と自分との待遇にさほどの差が生じていないことは如何ともしがたい不満である。
 財団Xの使者との交渉に始まり、逐一の殺し合いの経過観察なども自分の仕事なのだ。
 自分自身だけが最上の存在であるキングと種族を背負っている自分との差を考えても、よりよい待遇を望むのは当然のことだった。

745 第三回放送 ◆JOKER/0r3g :2018/11/18(日) 00:17:30 ID:rh/2hsCU0

 「……」

 だが、ビショップはそれを上司である死神博士や、身の回りの世話役として関わりのある首領代行であるバルバに訴えはしない。
 無能なキングである登太牙に文句さえ言わず仕え続けてきた実績があるのだ、この程度の苦心など、彼にとってはないも同然だった。

 (とはいえ私も、いつまでもただで使われているだけではない……)

 今こうして黙って仕え続けているのは、やがて訪れる我が種族の再興のために過ぎないのだと、何度目とも知れず自分を言い聞かせて。
 やがてその足は、一つの水槽の前に辿り着く。
 財団Xとの交渉の末、完全なる再復活を再度果たした異世界の王。

 滅びゆくその種族に、永遠の命を与える能力を持つ、ある種テオスが最も忌む存在の一つだろうそれを前にして、彼は不気味に口角を吊り上げる。
 自分の一存でこれを会場に送り込めるという、ようやく得た一つのチャンスを手にして、ビショップは一人その灰色の異形を見つめ続けていた。


 ◆
 

 大ショッカーの本部、どこまでも鷲のエンブレムがライトアップされた薄暗い廊下を、女が歩いている。
 異形が蠢くこの施設において生身である彼女は幾分か浮いた存在であったが、しかし彼女をその瞳に映した怪人たちは皆その膝を折り揺ぎ無い忠誠を示した。
 彼女の名前は、ラ・バルバ・デ。この殺し合いを主催する大ショッカーの首領代行を務める最高幹部である。

 そして彼女は、重く閉ざされた一つの扉の前で、その足を止める。
 テオスより遣わされた三人の天使らがそれをこじあける様子に一切の労いを吐くこともなく、彼女はそのままその扉の先に足を進めた。
 そしてすぐに、辿り着く。一筋の光さえ差さない、暗い独房の一つ。

 彼女が今唯一労うべき、その表情を長い髪で隠した男の部屋に。

 「第三回放送の担当、ご苦労だったな。神崎」

 バルバは、前置きもなく見下すような視線のまま男に向けて吐き捨てる。
 彼女ほどの存在がこうした雑事を伝えるというそれ自体が彼女をよく知るグロンギからすれば驚愕の事実であったが、ともかく。
 だがそんなバルバを前に、神崎はなんの感慨を滲ませることもなく少しだけ面を上げた。

 「――俺は、いつになればここから出られる。いつになれば、優衣に再び会えるんだ」

 それは、神崎という男からすれば相当に悲痛な叫びだった。
 無理もない。彼はこの場に連れてこられる前、妹の命を救うための幾度となく繰り返した殺し合いをついには諦め妹と自分の死を享受することにしたのだ。
 それこそが、妹の願いなのだと、そう悟って。

 だがそうしてミラーワールドごと自身の存在全てを消滅させたはずの神崎は、ありとあらゆる異能を超える全知全能の神、テオスによって呼び戻されてしまった。
 13のライダーデッキの提供と、そして何よりライダーバトルを幾度となく繰り返した者として、この殺し合いをより効率的に進めるノウハウを得るために。
 しかし、ここで新たな疑問が生まれる。

 何故ただの協力者にすぎないはずの彼が、こんな独房で軟禁状態に落とし込まれているのか。
 だがその答えは、単純明快なものだった。

 「分かっているだろう、神崎。この境遇からも分かるだろうが首領は、人と人とが殺し合うお前の世界の存在を……そして人がアギトにも並ぶ力を容易に得られる鎧を作り出したお前を嫌悪している。
 お前がここを出られるのは、この殺し合いが終わった時だ」

 前と全く変わらないその決まり文句を前に、神崎は大きく項垂れた。
 他の大ショッカー幹部と違い、神崎はこうして一人独房に閉じ込められている。
 首領であるテオスが掲げる『人は人を殺してはならない』という鉄則を、過去のライダーバトルにおいて自分は幾度となく破ったのだから、それも納得であった。

 もちろん、世界の存亡をかけたこの殺し合いにおいて特殊な移動手段を持つ神崎を監視し続けるのは骨が折れるという事情もあるのだろう。
 だが何時終わるともしれないこの状況は、悠久の時を妹の延命の為の戦いに捧げてきた神崎にとっては、いかんともしがたい苦痛にしか感じられなかった。
 故に黙り込んだ神崎に対し、バルバはなおも冷たく続ける。

746 第三回放送 ◆JOKER/0r3g :2018/11/18(日) 00:20:07 ID:rh/2hsCU0

 「だが、安心しろ。首領は確かにお前を嫌悪してはいるが……殺し合いが終われば、その結果がどうであれ協力の見返りとしてお前の妹を蘇生させると、首領は確かにお前と約した」

 「――あぁ」

 バルバの言葉に、神崎は短く返す。
 先に述べたとおり、テオスは神崎士郎が作り上げたライダーを、そしてライダーバトルの仕組みを嫌悪していた。
 だがそれを認めた上でなお、こうして世界選別を行う上でミラーワールドと誰にでも変身が可能なライダーシステムは魅力的だと、そう強く推薦したバルバの手によって、神崎はこうしてここにいるのだ。

 彼女からすれば、リントがグロンギと等しくなるという自身の考えに最も等しいのは神崎のいる龍騎の世界であり、幾度となく繰り返される戦いのどれもが、非常に興味深いものであったらしい。
 そしてテオスのことをも強く説得し、彼女の狙い通りに――或いはテオスの懸念通りに、龍騎の世界より来た参加者とカードデッキは、それぞれ甚大なる被害をこの殺し合いに巻き起こしたのであった。

 「……言いたいことは終わったか?ならばまた後に来る」

 しばし黙り込んだ神崎を前に、それだけ冷たく吐き捨てて、バルバはそのまま踵を返し神崎を一人残し歩き去って行く。

 やがて数秒の後、重く閉ざされた鉄の門が僅かに差し込んでいた光さえ重い扉に阻まれ消えたのを確認して、神崎は大きく息を吐き出した。
 これでいい。ライダーバトルを繰り返しても優衣がその命を受け取らないのなら、今の自分以上の、それこそ神に匹敵する存在に頼り彼女の生を揺るぎないものにすればいい。
 或いは自分はミラーワールドの存在が消滅することで今度こそこの存在を無に帰すのかもしれないが、それでも。

 優衣だけでも、勝ち残った世界で、ただどこにでもいる少女として生きることが出来るというのなら、俺はそれでいい。
 それならば、優衣も自身の命を投げ出したりなどしないはずだと、そう考えて。

 ――『ねぇお兄ちゃん。もしもう一度絵を描けたら……モンスターなんかがいる世界じゃなくて……二人だけの世界じゃなくて……皆が幸せに笑ってる絵を……!
 お兄ちゃんと、一緒に……!』

 優衣があの時、消滅する寸前に自分に向けた言葉を、そしてその手を思い出す。
 自分は優衣の差し出した手を、受け止めることが出来なかった。
 だから今度こそはと、そう思う自分がいる一方で、どこか前までの妄執にも似た優衣の生への思いがすっかり萎えている自分を自覚する。

 優衣の存在をどうでもよく思うわけではない。
 だがテオスによる力だろうがなんだろうが、彼女は自分がいない世界を望むのだろうかと。
 二人しかいないあの部屋の中で、それでも皆が笑っている幸せな世界を描けたならと望むようなあの心優しい妹が、世界の滅亡の果てに得られた偽りの安寧を、享受するのだろうか。

 「――」

 神崎士郎には、分からない。
 他者に犠牲を強い続け、代わり映えのない殺し合いの日々を……そしてその末の失敗を拒み続け人の心さえ摩耗した今の神崎には、その答えは分かるはずもなかった。
 だから、ただ待ち続ける。

 この殺し合いが終わるその時を、そして――。

 「――城戸、真司……」

 ミラーワールドを作り出した元凶であるが故に、なのか、幾度となく繰り返すループの中で絶対にライダーバトルに参戦する、龍騎の世界最後の生き残りが、いかなる結末を迎えるのかを。
 今の神崎には、待ち続けるしか出来なかった。


 ◆

 
 大ショッカーの本拠地と呼べるこの施設の中。
 一層広い広間には、しかし他とは違い一切の物音が存在していなかった。
 だがそれも当然のこと。

 ここに在する玉座こそ、大ショッカー首領がいずれ座する唯一の場。
 並の怪人は勿論幹部でさえそう易々と立ち入ることは出来ない、首領との謁見の場なのだから。

 「……ゲゲルはなおも、お前の言葉を無視して順調に進んでいるな」

 ――えぇ。

747 第三回放送 ◆JOKER/0r3g :2018/11/18(日) 00:26:44 ID:rh/2hsCU0

 無人の玉座に向け告げたバルバの声に、どこからともなく透き通るような返答が響く。
 あまりにも短いその返答は、或いはただ自身の愛した人という種が未だ殺し合いを享受していることに対する憂いに感じられるかもしれない。
 だが瞬間、表情さえ読み取れないはずの彼の、その声音の本当に僅かな差異だけで、バルバは声の主が……大ショッカー首領たるテオスが抱える繊細な感情を見抜いていた。

 「何がお前をそこまで沈ませる?
 お前の世界の参加者が滅亡まで残り一人にまで減ったことか?それとも、ダグバの――」

 ――それ以上“アレ”について話すのはやめてください。ラ・バルバ・デ。

 彼がそうまで憂う事象について思い当たる節を幾つか述べれば、帰ってきたのは先ほどのものに比べ幾らか威圧感を増した忠告であった。
 バルバ達グロンギにとっての王とでもいうべき存在、ン・ダグバ・ゼバ。
 この殺し合いにおいて強い制限を設けられてなお未だ殺害数ランキングトップを独走する彼の存在を、今バルバと話す声の主は快く思ってはいない。

 首輪による制限を以てして頭を抱えるほどの災厄をもたらしたダグバは、しかし先ほど様々な事象が噛み合ったために未だその生を止めてはいないのである。
 どころかむしろ首輪による制限からさえ逃れ不死の存在となったのだから、彼が好き勝手に歩き回ればこれまでを上回るほどの惨劇が繰り広げられてもおかしくはなかった。
 他世界の者であっても人という種そのものを溺愛する声の主にとって、今のダグバはまさしく天敵で……本来ならどんな大義名分があったところでその視界に入れたくない存在のはず。

 故にバルバはテオスを彼女なりに気遣ったのだが、しかしその名前を耳に入れるのさえ煩わしいとでも言いたげに彼はそれを否定した。
 であれば一体何が気がかりなのだ、と空席の玉座に対して眉を顰めたバルバはしかし、すぐに一つの可能性に思い至る。

 「アギト……か」

 バルバが述べた小さな単語に、声の主は押し黙る。
 聞こえなかったわけではあるまい。ただその名前について、声の主は並々ならぬ因縁があるというだけのことだ。
 それをバルバも理解しているから、彼の返事を待つこともせず、続けた。

 「確かお前は、かつて人の側からアギトを滅ぼすための使徒として蘇らせた男に言われたのだったな。
 人はアギトを、人間の無限の可能性として受け入れるだろう、と」

 ――えぇ、その通りです。しかし……アギトは結局、滅びを迎えました。

 声の主は、どこか寂しげに呟く。
 結局の所、人間とアギトはやはり、交わう事のない異なる種だということ。
 かつての使徒がその二度目の生を絶やす瞬間まで信じた人間とアギトの共存という可能性が、こうも容易く消え去ったというその事実は、彼の心に僅かばかりのしこりを残したのである。

748 第三回放送 ◆JOKER/0r3g :2018/11/18(日) 00:27:11 ID:rh/2hsCU0

 ――人が私の愛に足る存在なのか、見極めるのはともかく……少なくともアギトは、人と共に生きていけない。それはこの殺し合いで、明らかになりました。

 「……さぁ、それはどうだろうな」

 だが悟った風な言葉を吐いたきり黙り込んだ声の主を前に、バルバは一人視線を会場のモニターに映しながら独りごちた。
 彼はアギトが滅びたというが、果たしてそうだろうか?
 アギトが本当に人間の可能性の顕現だというのなら、こんな苛烈な環境の道半ばでこうも簡単に消え失せるものだろうか。

 むしろこの殺し合いこそが、人を極限まで成長させる可能性の大輪を咲かせるに足る舞台だとするのなら……。
 或いは木野薫、津上翔一の死もまた、その先にあるアギトの存在が滅んだという結論には、辿り着かないのではないのかと。
 ただの推論に過ぎない故に、玉座から降る声には告げぬままに。

 ラ・バルバ・デは、モニターに映る一人の男を注視していた。



【全体備考】
※禁止エリアはA-4エリアからH-8エリア、俗に言う東側エリア全域です。
※今後、殺し合いに主催者戦力が加入することが明かされました。どこにどの程度投入されるかは後続の書き手さんにお任せいたします。
※主催側には、今までに明らかになった存在以外に【神崎士郎@仮面ライダー龍騎】がいます。参戦時期は原作終了後、殺し合い終了後の神崎優衣の復活を条件にミラーワールド、仮面ライダーについての研究成果を渡したようです。現在は独房に軟禁されています。
※【財団X@仮面ライダーW】は大ショッカーのスポンサーとして殺し合いの経過観察の報告を条件に以後も殺し合いに協力するようです。
また、協力の頭金として【オルフェノクの王@仮面ライダー555】を五体満足の状態で復活させました。その扱いについては【ビショップ@仮面ライダーキバ】に一任されています。※世界別殺害数ランキングは、【キング@仮面ライダー剣】がキルスコアを稼いだために公表されなくなりました。恐らくこれ以降も同様だと考えられます。

749 ◆JOKER/0r3g :2018/11/18(日) 00:29:07 ID:rh/2hsCU0
以上で投下終了です。
第三回放送以後の本編SSについては、この投下終了宣言を以て解禁にしようと思います。
ご指摘やご意見等ございましたらお願いいたします。
特に今回は仮投下を経由していない分色々自由にやっちゃった側面もありますので、何か気になった点があったらお気軽にどうぞ。

750 名無しさん :2018/11/18(日) 01:39:43 ID:AoxKERM20
投下乙です。ただでさえ厄介なマーダーがまだいるというのに、ここにきてさらなる強敵に加えて半分が禁止エリアになるとは…ライダー達の苦難はここからが本番なのでしょうか。
しかし絶望的な状況でも真司、そしてモニターに映る男から微かな希望も残っていますし、ここからの展開に期待です

751 名無しさん :2018/11/18(日) 06:26:38 ID:oc2sY01Y0
第三回放送投下乙です!
今回の放送案担当が彼になるとは、どこか初代ライダーロワを思い出させてしまいますね……でも、心が荒みきっている姿は悲しくもあります。
そして会場の禁止エリアも一気に増えて、今後は追加戦力が徐々に投入されるとなると、ますますヤバいことになりそう。

752 名無しさん :2018/11/21(水) 03:02:33 ID:sEOjbJec0
大ショッカーのメンバーが新たに追加されたな。
これで残すは電王と響の世界だけだな。

753 ◆LuuKRM2PEg :2018/11/23(金) 21:39:39 ID:zLh1vBWA0
◆JOKER/0r3g氏、第三回放送の投下お疲れ様です。
既に残り参加者数が16人となったことで会場の大半が禁止エリアとなってしまい、新たに追加戦力が投入されることが彼の口から語られてしまえば、更なる波乱を呼び込みそうですね。
大ショッカー側でもビショップも新たに戦力を手に入れて、果たして何をしでかすか……? 


ttp://or2.mobi/data/img/216129.jpg
そして>>265,>>558に続いて支援イラストを投下させていただきます。
◆MiRaiTlHUI氏による第122話『夢よ踊れ』にて、三原が変身したデルタがルシファーズハンマーを浅倉に放つシーンをイラストにさせて頂きました。
仲間達との絆を胸に、みんなを守るためにたった一人で浅倉を相手に立ち向かい、打ち勝った場面が非常に印象深かったので。
巧や良太郎の死など、立て続けに起きる悲劇で心は不安定ですが、みんなを思いやる優しさを持ち続けている三原を応援していきたいです。

754 ◆JOKER/0r3g :2018/11/24(土) 13:23:38 ID:UkL6HfXM0
◆LuuKRM2PEg氏(記念すべき753レス目ですね)支援絵ありがとうございます!
涼やたっくんに引き続いて支援絵をもらえるのが三原だなどと、恐らく誰も思わなかったことでしょう
当ロワのアイドル三原、その伝説はどこまで続くのか、今後とも見守っていきたいですね

755 ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:16:29 ID:ZlcWppgI0
これより、投下を開始いたします。

756 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:20:28 ID:ZlcWppgI0

 月明りだけが差し込む暗い廊下の中、嫌悪感を伴うツンとした鉄のにおいが鼻腔を刺激する。
 そのにおいの発生源たる男、津上翔一は、既に事切れ物言わぬ死体となっている。
 専門家が見るまでもない。端正な顔が青白く変貌し、体の末端に至るまでも徐々に熱を失っていく様を見れば、それは誰の目にも明らかなことであった。

 だがそれでも、その血だらけの死体を強く抱きかかえ、自分自身も返り血に赤く染まりながら咽ぶ男が一人。
 男、一条薫にとって、津上翔一は取りこぼしてはならない希望であった。
 無論、彼にとってはどんな人間であっても守るべき存在であることは疑いようもない。

 だがそのうえで、今は亡き友である五代雄介を思わせる自由な翔一の命が、今度は自分の手の中で失われてしまったという事実。
 それは、冷静さが売りである一条を心の命ずるまま慟哭させるに足るものだったのである。
 そして同時、絶望に沈む一条を前に、左翔太郎はあまりの居た堪れなさに帽子を伏せた。

 「クソ……どうしてこうなんだよ……」

 どうしようもなく漏れたその言葉は、実際のところ自分の不甲斐なさを呪うものでしかない。
 木場に音也、そして今度は翔一だ。
 半人前だとしても自分は仮面ライダーなのだと、すぐ目の前の仲間を守れるだけの力はあるはずだとそう考えて戦ってきたというのに、実際はどうだ。

 相川始に、ダグバに、そしてキングを名乗ったあの胸糞悪い大ショッカー幹部に。
 自分は毎度良いようにやられているだけではないか。
 問うまでもなく平和を願い戦った戦士たちが、自分の手の届くはずの距離で消えていく。

 それがどうしようもなく悔しくて、そしてどうしようもなく苦しかった。

 「総司君……」

 名護が、ポツリと消え入りそうな声で呟いた。
 自身の弟子としてその罪さえ受け入れた男が、その意に反してまたも殺人の罪を犯してしまったという事実は、この名護啓介という人間を以てしてもどうしようもなく辛い。
 翔一が死んでしまった事実も、当然辛いことではあるし、下手人が違えば名護は正義の名のもとに断罪を下したとしてもおかしくはなかったはずだ。

 だが総司は、翔一の死を望むような男ではない。
 少なくとも……今はもう、違うはずだ。
 彼は前までの自分から変わることを望み、そして運命もそれを受け入れ彼を仮面ライダーに”変身”させたのだから。

 もちろんかつての名護であれば、罪を犯した人間はすべからく裁かれるべきという思考で以て、今まで弟子だと考えていた存在にさえ迷いなく剣を振り上げたかもしれない。
 だが今の名護は、もう昔の様な視野の狭い愚か者ではない。
 罪を犯した存在の心に、再び罪を犯そうとする意志がないのなら、そしてまた罪を犯したとしても悔い改めやり直したいと心底から願う限り、神はそれを受け入れるのだと、そう思っている。

 だからこそ、そうして罪を悔い、全てがいい方向に回りかけていた総司の運命の歯車が音を立て崩壊する様を目の当たりにするのは、やはりやりきれなかった。


 男たちの間に、緩やかに絶望が流れる。


 防げなかった仲間の死に、不甲斐ない自分自身への積もり積もった自責の念に、そして一人絶望に駆られ外に消えた弟子の本心を思って。
 義憤に転換させることさえ叶わないその絶望を、男たちはただ漫然とした時間の流れと共に消化しようとする。
 だがここは世界の存亡をかけた殺し合いの場。そんな甘えは……許されない。


 ――パイプオルガンの音が、彼らの思考をかき乱す。


 近くから聞こえる、とも言い難い音量で流れ出すそれを前に、男たちは目を見合わせる。
 最早この会場に訪れて18時間、これから何が起きるかは知っていた。
 その視線に未だ芯が戻っていないとしても、それでも今から始まるそれを聞き逃すわけにはいかないと。

757 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:22:15 ID:ZlcWppgI0

 歪ながら我に返った男たちは、そのまま病室の窓から空を見上げる。
 果たして彼らの予想の通り、陽が顔を覗かせ灰色に染まり始めた空を、無数の飛空艇が所狭しと埋め尽くしていた。
 恐怖さえ覚えそうな、今にも落ちてきそうな空そのものにしかし、もう怒りしか覚えないままに。

 放送が、始まった。


 ◆


 「橘……」

 放送を終え、オーロラに消えた飛空艇を見届けて、名護は俯き呻く。
 名護が最初にこの会場で出会った異世界の戦士、橘朔也。
 可能性を十分に検証せず先走ったり、考えがすぐに口に出てしまったり、危なっかしい部分もあったが、しかし彼は決して悪意からそれを行っていたわけではない。

 だからこそ自分やヒビキは彼の仮説を信じたし、同時に彼を信じて分かれることが出来たのだ。
 首輪についても、他人についても、真っ直ぐすぎるほどに真っ直ぐだった彼の死を告げられた事実が、名護の心をまたしても後ろ暗い悲しみに包んでいた。

 「乾さん……死んじまったのか……」

 一方で、放送で告げられた死者の名前に対し反応を示したのは、翔太郎も同じだった。
 だが名護のそれとは違い、翔太郎にとっての乾巧は、自分が死を看取った木場が知り合いとして述べていた存在の一人という程度の繋がりでしかない。
 巧がファイズであることさえ知らなかった木場の死を告げられたとしても、巧にどれだけの意味があったのかさえ、今となっては分からなくなってしまった。

 だがそれでも、翔太郎は巧と話してみたかった。
 木場が信じた巧の善性と、木場が憎んだファイズの悪性の境目が、一体どこに存在するのか、自分の目で確かめてみたかった。
 だがそれは、もう叶わない。

 名護や三原が伝える伝聞での「乾巧」でしか、自分はもう彼を理解できないのである。
 それを思えば、第二回放送を前にようやく解けたファイズへの怒りや憎しみさえもが、今となっては名残惜しくさえ思えた。

 既にいない存在に思いを馳せ黄昏れた翔太郎は、その視界の端に思案に沈む一条を捉える。
 ふとすれば、彼もまた死者に対し悲しみを抱いているのかと見過ごしてしまいそうになるその一瞬。
 しかし一条の表情に潜む感情が、ただ仲間の死を憂うだけのそれではないことを、名探偵は見抜いていた。

 「……どうした、一条」
 
 「いえ……第零号が、死んだと」

 「あぁ……」

 言われて初めて、翔太郎はその事実に気付いたような心地だった。
 今の放送で告げられたのは、決して辛い死別だけではない。
 ン・ダグバ・ゼバや浅倉威、この殺し合いに乗り多くの参加者を殺めた邪悪たちが、死を迎えたのである。

 この会場に来る前の浅倉であれば司法の手に判決を委ねるのが筋というものであったが、彼は最早法の手に負える存在ではなかった。
 メモリの専門家である自分でさえお目にかかったことのない『メモリを喰らい力を取り込んだ史上初めての存在』になってしまったのだから、いわば国家ではなく自分たちが裁かなければならない領域に踏み込んでしまったのである。
 ある意味で言えばそれは浅倉の最大の進化で……そして同時、彼と戦うもの全てが抱いていた彼への人間としての手加減を取り払う、最大の愚策だったのかもしれないと、翔太郎は思った。

 だから、翔太郎は、浅倉の死にもう一切の同情を抱くことなく、グロンギのように身勝手な殺戮を繰り広げる“怪物”が死んだものとしか、その死を捕らえることが出来なかったのである。
 ともあれ、この会場に残っていたはずの最悪の化身が二人とも滅んだという事実は、あまりに深い喪失感を差し引いてもなお、喜ぶべき事象であるはずだった。
 だからこそ……翔太郎には一条の表情が不可解でしかない。

758 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:23:09 ID:ZlcWppgI0

 その表情が、喜色よりは不安を多大に含んだ物憂げな表情であったのだから。

 「なんか、気になることがあんのか?」

 「えぇ、自分でも理由は分からないのですが、その……第零号は、本当に死んだのかと……」
 
 「何?」

 割り込んで返答を吐いたのは、名護であった。
 その声に僅かばかり怒気が含まれていたのは、勘違いではあるまい。
 とはいえ、それを責めることは出来ないだろう。

 彼にとっての恩人である紅音也を殺めた最悪のグロンギの死という、今の放送で唯一実感を伴って喜ぶべき事象が、否定されようとしているのだから。
 だが、ここで整理のつかないまま感情を乱雑にぶつけるほど、名護は取り乱してはいない。
 自制の意を含めた息を一つ吐いて、努めて冷静に言葉を紡いだ。

 「……一条、気持ちはわかる。
 俺や翔太郎君とも違い、君は目の前で二人もの仲間をダグバの手にかけられ亡くし、小野寺君を暴走させてしまったのだろう。
 ダグバに対して並々ならないトラウマを抱いていたとしても、それは恥ずべきことではない」

 「それは……」

 名護は、あくまで一条の心因的外傷が生みだした一種の強迫観念としてその可能性を排除しようとする。
 そして一条もまた、それに強く反論することはしない。
 自分の中にダグバの生存を決定づけるだけの根拠が“直感”という自分らしくもないあやふやなものだけであるのにも加え、気付いているのだ。

 名護がそうまでしてダグバの死を願うのは、一種彼が翳す究極の闇を恐れているのだと。
 ユウスケからの伝聞で、あの橘もヒビキも全く手も足も出ずダグバに敗北したことを、伝え聞いているから。
 何よりそんな存在がついには大ショッカーの目さえ欺きこの会場を我が物顔で歩き回っているなどと、考えたくもなかった。

 そしてそれは、翔太郎にとっても同じこと。
 二度に渡ってぶつかったあの巨悪は、翔一を亡くし総司が一人飛び出した今の自分たちでは手に余る。
 いや、そんな表現も手緩いか。

 短くなった自分の変身制限さえ正確に把握し、仮面ライダーという存在がどれだけ遊べば壊れてしまうのか、それを理解したダグバを前に、もう一度同じ勝利の結果を導ける自信はない。
 つまりは一条が吐き出した不安を、あくまで恐怖やトラウマからくる妄想なのだと断じ切り捨てるしか、ここに残った者たちに残された道はないのである。
 こうして頭ごなしすぎるほどに否定されてようやく冴えてきたのか、その思いを受け止めた一条は、そのまま頭を下げ謝罪の言葉を述べた。

 「申し訳ありません、根拠のない憶測を述べて、悪戯に不安を煽ってしまいました。
 これはきっと、私の考えすぎだと思います」

 「いや、それならいいんだ……」

 一転して罰が悪そうに視線を逸らした名護。
 再び沈黙が支配したその状況の中で、本領発揮とはいかない様子の名護に代わり、翔太郎は気を引き締める意味も込めて帽子を深く被りなおす。

 「放送については一旦置いておくとして……今大事なのは、俺たちがこれからどうするかってことだ」

 これからどうするか。
 その言葉に内在される、ある人物について、名護からは話題に出しにくいだろうと、翔太郎は堰を切る。

 「取りあえず当面の目標は、総司ともう一回合流して説得するってとこだろうが……」

759 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:25:50 ID:ZlcWppgI0

 その名前を聞いて、やはりというべきか名護は目を伏せる。
 信頼できる弟子、総司。
 紅渡の記憶さえ忘却した今、名護にとっての最高の弟子となった未熟な彼を――状況が切羽詰まっていたとはいえ――キングなどという彼よりも一枚も二枚も上手の相手と単身で戦わせてしまったために、先の悲劇は起こったのである。

 解放したアンデッドと自分たちを戦わせること自体キングの策略通りだとしても、名護の心に総司とキングの戦いを後押ししてしまった悔いは残り続けるだろう。
 だが、その後悔に沈み続けるほど、彼は愚かではない。
 迷い嘆くだろう弟子の為にも、自分の行いを悔いるのは後回しにしなくてはならないと、名護は気合を入れなおす。

 「そうだな……彼を追う、というのは現実的ではないだろう。
 どうやらバイクこそ置いていったようではあるが、この広い市街地で彼がどう動くかは予想もつかない」

 チラと時計を見やってみれば、放送が終わってもう10分ほどが経とうとしている。
 総司が出ていった時間から考えればもう20分近くたっているのだから、彼が一心不乱に走り続ければどこまで行けるのか、考えも及ばなかった。
 そんな彼を追いかけてむやみやたらに会場を走り回るのは、あまり賢い選択とは言えない。

 となれば、残された合流のための手段は、自ずと限られてくる。

 「ここで、待つしかないっていうのかよ……。戻ってくる確証もないってのに……!」

 翔太郎の悲痛な声が、響く。
 無力感に苛まされ続けた挙句、総司が自分からこの病院に戻ってくるのを待つのが、賢い選択とでも?
 自分が弟分のように扱ってきたあの無垢な青年を、自分はただ信じ待ち続けることしかできないというのか。

 「いや、心配することはない。彼はきっと、ここに戻ってくる」

 そうして漫然とした絶望感に目を伏せた翔太郎を、しかし名護はいつものように確たる口調で遮る。
 名護が一番総司を心配でたまらないだろうとばかり思っていた翔太郎は、自分の口があんぐりと間の抜けたように開くのを自覚した。
 しかしそんな彼の動揺さえ気に留めることもなく、名護は毅然とした態度で続ける。

 「総司君は、他ならぬ俺の弟子だ。正義を信じ、悪を倒す強さを持った、自慢の弟子だ。
 例え今は道に悩み自分を見失ったとしても、必ず正義の炎を灯し、ここに戻ってくる。
 俺はそう信じている」

 「名護さん……けどよ……」

 名護の言葉を受けた翔太郎の顔からは、しかし釈然としない思いが透けて見える。
 だがそれも当然か、と名護は思う。
 自分には最早記憶もないが、紅渡という男について、自分は今と同じように弟子を信じ裏切られたことを、翔太郎ははっきりと覚えているのだ。

 恐らくは、紅渡を説得するというときも今と同じような大言壮語を宣っていたのだろうことを思えば翔太郎の表情にも頷けたが、それでも名護は考えを曲げる気はなかった。

 「翔太郎君、確かに俺は、かつて弟子と認めた男の善性を見誤り、説得に失敗したかもしれない。
 だがそれでも俺は、信じることをやめたくない。それに、彼が自身の罪を背負い、戦士として目覚ましい成長を果たしたことは、君もよく知っているだろう」

 「それは……」

 その話題を出されると、翔太郎も辛いところだった。
 総司の初印象を、今でも鮮明に覚えている。
 情けない、情緒不安定な青年。なんだこいつというのが、正直な感想だった。

 だが総司は、そんな印象をぬぐい去って強く成長した。
 他者を打ち倒すための力だけではなく、他者と共に歩むことのできる心さえも。
 半人前から一人前に向けて、自分さえも抜き去る勢いで突き進んでいく彼を、羨ましくさえ思うほどに。

760 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:26:56 ID:ZlcWppgI0

 だが、それでも。
 目覚ましい成長を果たしたとしても、彼は半人前なのだ。
 もし今の不安定な彼がキングを始めとする悪意に誑かされ本当にまた世界をすべて破壊する破滅論者に戻ってしまったら。

 この身を内側から食い破らんとする焦燥に、居ても立っても居られなくなり翔太郎は立ち上がる。
 
 「どこに行く気だ、翔太郎君」

 「決まってんだろ名護さん、あいつはまだ半人前なんだ。放ってなんておけるかよ」

 逸る気持ちを抑えられず今にも走り出しそうな翔太郎の一方で、名護はあくまで冷静な顔を崩さない。
 それにさえ苛立ちを露わにし、翔太郎はいよいよもって一人でも駆けだそうと名護に背を向けるが、その足が次の一歩を踏み出すより早く、彼は名護に呼び止められていた。

 「待ちなさい、翔太郎君」

 「離してくれよ名護さん、俺は一人でも総司のことを――」

 「君が初めて俺たちと出会ったとき、自分をなんと呼んだか、覚えているか?」

 その問いを聞いて、翔太郎は罰が悪そうに帽子を被りなおす。
 背中越しにでも貫かれるような名護の真っ直ぐな視線を感じたのだ。
 委縮したのか、途端に勢いをなくした翔太郎はそのまま、溜息一つ吐いて名護に向き直った。

 「半人前。多くの仲間を目の前で亡くした君は、確かに自分をそう呼んだはずだ」
 
 「……あぁ」

 10時間ほど前。
 名護と総司の前に翔太郎が現れたとき、彼は紅音也を殺したダグバへの憎しみと自責の念故、それまで嫌悪していた半人前を自称した。
 それから紆余曲折を経て翔太郎は一人前の仮面ライダーとして自分を認められるようにもなったが……しかしふとすればこうしてすぐ熱くなってしまう欠点はすぐ直るものではないらしい。

 その時に反省した、自分の一人で突っ走りがちな点がまたも表出してしまったことを理解して、翔太郎は冷静さを取り戻したのである。
 結局は自分もまた、総司と同じく未だ半人前の範疇だということだ。
 こんな風に周りを見ずに突っ走っているようではその誹りを受けても当然か、と萎えた様子の彼を前に、しかし名護はあくまで諭すように続ける。

 「だが翔太郎君、君はこうも言ったはずだ、『半人前でも俺は仮面ライダーだ』と。
 総司君もそうだ。確かに未だ完成こそされていないし、危ういところもあるかもしれない。
 だがそれでも俺は、彼の心に確かに灯った正義の炎は、決して消えず燃え続けると、そう思っている」

 どこまで行っても、名護はまっすぐな男だった。
 総司のことを軽んじているわけではない、むしろ最大級に尊重しているからこそ、彼は総司を追わないのである。
 全く総司は良い師匠を持ったものだと、しみじみそう思った翔太郎のもとに、届く声が一つ。

 「半人前……か」

 名護のものではないその声に振り向けば、そこには思わず思考が口に出た、といった様子で佇む一条がいた。
 翔太郎と名護、二人から向けられた視線に気づいたのか、一条は我に返ったように小さく頭を下げる。

 「――話を遮ってしまい申し訳ありません。ただ少し、父の言葉を思い出したもので……」

 「父?」

 「えぇ、『中途半端はするな』。……それが、私の父が生前よく言っていた言葉でした」

 「どういう意味だ?」

 「一度やると決めたなら、最後まで絶対にやり遂げろ。
 ……そういう意味だと、私は思っていました」

761 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:27:55 ID:ZlcWppgI0

 一条はそう言って、視線を彼方へ走らせる。
 父の言葉を絶対の信条として信じていた自分にとっては、半人前であるということを自称するなど、許されがたい中途半端であるように感じられたことだろう。
 だが目の前で死なせてしまった小沢を、京介を、そしてまたしても一人にしてしまったユウスケを思えば、今の自分を一人前だと名乗ることの方が、一条には耐えがたかった。

 「思っていましたって……本当は違ったってのか?」

 「いえ……まだ自分でも分かりません。ただ、津上君が言っていたんです。
 『人は誰でも生きている限り中途半端で当たり前だ』と。
 それを聞いて、自分は父の言葉を都合よく解釈していただけなのかもしれないと……」

 翔太郎の問いに対し、伏し目がちに一条は続ける。
 自分は、父が幼子への教育の一環として放っただけの言葉を、父の死によって生涯背負わなければいけないものとして都合よく捻じ曲げ自分に課していただけなのではないかと。
 刑事という仕事を中途半端にはしない、と言えば聞こえがいいものの、突き詰めてしまえば自分は、他の大事にしなければいけないことを蔑ろにして仕事に逃げていただけではないのか、そんな不安が一条の中をよぎるのである。

 今までは疑いさえしなかった自身の信条がこうまで揺らいだのは、もう一人のクウガとの出会いや自分が仮面ライダーとして戦える力が自分を変えた為なのだろうか。
 ともかく、その答えを共に導ける仲間となるはずだった翔一の死が、自分にとってこれ以上ないほどの悲劇だったことは、疑いようもないことだった。
 だがそんな一条を前に一歩進み出たのは、やはり名護だった。

 「一条、一つ聞きたい。もし君のお父さんの言葉の真意が君の意図するところと違っていたとして、何がそこまで問題だというんだ?」

 それは、翔太郎が見てきた名護の中でも特に真剣な瞳だった。
 今の一条の話のどこにそこまで彼の中で見逃せない部分があったのか、翔太郎にさえ分からない。
 だが、この話をこのまま終わらせることは名護にとっても許せないことに違いないと彼は思った。

 「私は……父のその言葉を常に胸に抱いて生きてきました。
 刑事としての姿勢も、同じく刑事だった父の中途半端にしない姿勢を見習っていると言って過言ではありません」

 今度は、一条が胸の内を晒す番だった。
 自分の中で当然だと思っていた部分に疑問を持つ経験が、一条の端正な顔を不安に歪ませる。
 だが言葉は澱むことはなく、彼は言葉を詰まらせることはない。

 「しかし私は、その言葉をあいつにも……五代にも背負わせてしまった。
 そのせいでただの冒険が好きな一般人に過ぎなかった五代は、一人戦いに明け暮れ……挙げ句こんな戦いに巻き込まれて命を落としました。
 本当はあいつには、ずっと気ままに冒険を続けていて欲しかった。その為にも俺が、あいつの責任を一緒に背負ってやらなくちゃいけなかったというのに……」

 いつの間にか一条の一人称が、“俺”になっていた。
 胸の内を吐露する内、言葉遣いに気を払う余裕もなくなったのだろう。
 だが名護も翔太郎も、それを気にすることはない。

 どころか、こうして一人で背負い込もうとし続ける彼が仲間として自分たちを信頼してくれている証だと受け取って、ただ黙って一条の言葉を待っていた。

 「だから、考えてしまうんです、父は、今の俺をどう思うのかと……。
 一番中途半端に過ぎない俺が、自分の言葉を勝手に解釈し人を結果的に死に至らしめたと知ったら、彼は……」

 言って一条は、自身の手を強く握りしめる。
 自分の無力さを、強く噛みしめるように。
 だがそうして俯いた一条に対し、名護は動ずることなく彼の肩を叩き再びその面を上げさせる。

 「一条、君の気持ちはよくわかる。俺も父の言葉を勝手に解釈し、今となっては愚かとしか言いようのない罪を犯したことがある」
 
 「罪!?名護さんが!?」

 「あぁ……」

762 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:28:51 ID:ZlcWppgI0

 翔太郎の驚愕に静かに答えながら、名護啓介は思い出す。
 代議士であった父、啓一は、社会的正義に燃える、幼い時の自分にとって心底尊敬できる人物であった。
 間違ったことは許さない、啓介の中に根付いたその正義感も、元を正せば父への憧れに由来するものだ。

 だが……いやだからこそ、啓介は父が過ちを犯したのが許せなかった。
 例えそれが書類上の小さなミスであっても、それは父である啓一の罪であり、許しがたい悪だと……そう感じたのだ。
 故に啓介は父を汚職で糾弾し、自殺にまで追い込んだ。

 だから啓介は、それ以来正義の名のもとに多くの殺戮を繰り広げた。
 彼にはもうその記憶がないが……渡に公園で告白したように、ファンガイアが悪でないのなら自分は正義の人ではなくなってしまうという、強迫観念に駆られて。
 そんな風に父親の言葉や姿勢を曲解し、尊敬していたはずの父でさえ死に追いやった自分でも、目の前で悩める男に何か力を与えられるならと、名護は続ける。

 「一条、君のお父さんがどんな人物だったのか、俺にはわからない。
 だが君の様な正義の為、市民の為に自分を犠牲にできるような男を育てた人だ。
 そんな人の言葉は、少なくとも今までの君にとって間違いなくプラスのものだったに違いない」

 「はい……」

 「だが、もし君がその言葉のせいで思い悩んでいるというのなら、それは君のお父さんも望むところではないだろう」

 名護のその言葉に、一条はハッと息を呑む。
 何より家族を大切に思っていた彼が、自分の言葉で苦しむ息子を見れば、それは何より心苦しいことに違いない。
 そんな一条を見やり、悩んでいた時期の愛弟子を重ねたか、名護は微笑を携えながら言葉を紡ぐ。

 「その考えを悪戯に捨てろとは言わないが……俺が君に言えることがあるとすれば、君はあまりに真面目すぎる。
 遊び心が足りない、と言い換えても良いかもしれないな」

 「遊び心……ですか」

 言いながら一条はしかし、今までと打って変わって腑に落ちないという表情でムッとしたようであった。
 だが、それも当たり前だろう。
 言ってみれば彼を始めとした警察が、そして五代雄介が繰り広げてきた未確認生命体との戦いは、決して遊びではないのだ。

 そんなところに遊びを持ち込むような心構えでは、市民の前に胸を張って立つことなど出来ないと彼が考えても、それは仕方のないことだった。
 だがそんな一条の対応を見据えてか、名護はどこか懐かしげにフッと笑う。

 「そうだ、余裕のない心は張り詰めた糸と同じ。いずれ、ふとした拍子で容易く切れる。
 丁度、今の君が使命と無念の板挟みになり自分自身を縛り苦しめているように」

 それは、かつて22年前の過去に飛んだ際、先代のイクサである紅音也から名護が学んだことだった。
 あの時は、命を賭け戦う戦士を前にこのちゃらんぽらんは何を言うのだ、と軽蔑さえしたものだが……恋を知り、そして愛を知った今となれば、分かる。
 戦士と言えど、帰る場所、心の安らぎは不可欠なのだ。

 見たところ、目の前の男もあの時の自分と同じく恋を知らないと見える。
 果たしてこの場所で恋を知れる可能性は限りなく低いが……ともかくそうした精神的余裕は決して自分を腐らせないと言うことを、彼に伝えなくては。

 「かつて俺に、遊び心を持つ大切さを教えた男は言った。
 心に余裕を持てば、人の気持ちが分かるようになる。そうすればもっと強くなれる、と。
 君が誰かを守る為、より強くなりたいと望むなら……まず、遊び心を学びなさい」

 「しかし……一体どうすればそんなものを学べると?」

 未だ眉間にしわを寄せたまま、難しい表情で一条は問う。
 遊び心を学べなどと、なにせ難しい相談である、困惑するのも仕方のないことだ。
 だが対する名護は、動じることなく自信げに息を吐き出して。

763 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:29:55 ID:ZlcWppgI0

 「そのことなら安心しなさい。俺が知る中でも有数の、素晴らしい遊び心を持つ男が、ここにいる」

 唐突に、話の蚊帳の外に追いやられていた翔太郎の肩を、強く叩いた。

 「って俺かよ!」

 「君からは、どんなときでも何か欠けている自然な抜け目を感じる。
 俺でさえ見習うほどに君の心は隙だらけだ、胸を張りなさい」

 「全然褒められてる感じがしねぇ……」

 どこか決まらず帽子を被り直しながら、しかし翔太郎にとっても名護の言葉を強く否定することは出来なかった。
 探偵としての仕事を中途半端に行ったことこそないが、翔太郎は時たま依頼を私情で受けることがある。
 例えば、風都警察署の真倉刑事が照井の鼻を明かすため、そして超常犯罪捜査課に異動してきた九条刑事の気を引くためだけに依頼を持ち込んできたときも、彼の不純な動機に心から同意し、ノリノリで依頼を引き受けたこともあった。

 そもそも自分のあだ名になってしまったハーフボイルドだって、ハードボイルドを目指しながら非情になりきれない自分に対する愛称の一種だ。
 それが決して揶揄として自分を貶す意味で放たれていないことは、亜樹子やフィリップの目を見れば分かる。
 なれば名護の言う遊び心が生来から備わっている自分のそれは、確かに仕事に対して一種の余裕を生み、人を引き寄せ探偵としての仕事にプラスに働いていると言われても、なるほど納得する心地であった。

 「だが、目標もなくただ修行しろと言われても難しいものがあるのも事実だ、一体どうすれば……」

 「それなら、これがあります」

 名護の言葉を待っていたとばかりに、一条は懐から通常のガイアメモリより一際巨大なメモリを取り出す。
 青くTの字が刻まれたそれはまさしく、翔太郎が先ほど彼に渡したトライアルのメモリであった。

 「それは……?」

 「これはトライアルメモリです。特別な特訓をしなければ扱えないと、左さんは言っていました」

 「そうか、なら丁度いい。それを扱えるよう修行をする中で、翔太郎君から遊び心も自然と身につくことだろう」

 名護は腕を組み首を縦に振りながら満足げに呟く。
 自身がライジングイクサの完全な習得によって実感として遊び心の重要さを学んだように、一条もトライアルを使いこなせるようになればその重要さが分かることだろう。
 だがそうして完結しそうになった話を、しかし翔太郎が黙って見過ごすはずがなかった。

 「ちょっと待てよ一条、それに名護さんも!
 トライアルの特訓はな、照井でさえ死にかけたんだ。今のお前じゃやりきれるわけ……」

 「いえ、俺ならもう大丈夫です。十分、休みましたから」

 「んなわけねぇだろ!」

 翔太郎の絶叫が、場を静まり返させる。
 思わずと言った様子で胸ぐらを掴んだ翔太郎の威圧に圧されたか言葉を飲んだ一条に対し、翔太郎は熱くなったままの頭で言葉を紡ぐ。

 「……そんなボロボロの身体で何が出来るってんだ?
 周りを見て見ろ、お前が死んだら悲しむ奴が大勢いるだろうが!
 突っ走んのも大概に――」

 「――そんなことはもう分かってる!」

 翔太郎の説得に対し、今度は一条が、大声を出し沈黙を作り出す番だった。
 かつて一人で井坂という強敵に挑もうとした照井を諫めた時の言葉を容易く覆されて、翔太郎も思わず二の句を紡げない。

764 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:30:39 ID:ZlcWppgI0

 「皆の笑顔を守る……そう言って自分の笑顔を守ることを後回しにし続けた男を、俺は一番よく知っている!
 彼が死んでしまったことを、最も深く悲しんだのは俺だ。
 だからこそ俺は彼を……小野寺君を、五代の二の舞にさせるわけにはいかない。そう決めたんだ!だから――!」

 そこまで言い切って、一条は先ほどまでとは違い自分が翔太郎の襟首を掴んでいることに気付いた。
 一般人がどうだとか、刑事がどうだとか、この場では既に形骸化した観念が今更蘇ってきて、彼は罰が悪そうにその手を離す。

 「すみません。つい熱くなってしまって……」

 「いや……俺こそ、軽はずみな発言だった。許してくれ」

 互いに自分の発言を悔い、そして相手の発言の正当性を認めているからか、二人の間には再びただ沈黙が流れた。
 だが、決して無駄な時間ではない。
 それは男と男が、どこまで意地を張り合えるのか、或いは互いにぶつかることを拒み逃げるのか、試すような重い沈黙であった。

 だが、仮にもしこれを勝負の一環だとするのなら……勝者は既に決していた。

 「……俺の負けだ、一条」

 「え……?」

 ぽつりと、昔を懐かしむような声音さえ込めて、翔太郎が呟いた。
 今の口論をそんな堅苦しい勝負だなどと意識さえしていなかった一条は一瞬反応が遅れたが、しかし翔太郎はそんな彼の様子を気に留めることもなく続ける。

 「ったく、お前と話してると、あいつを思い出してつい熱くなっちまう。
 さっきも、お前がやりたいことをサポートするのが俺の仕事だって、そう思ったばっかだってのにな」

 「ということは、まさか……」

 「あぁ、お前がトライアルを使いこなせるよう、俺が鍛えてやるよ」

 言って翔太郎は、気障に指を伸ばす。
 一条がアクセルを受け継いだことはもう偶然で片付けられないことだと、そう理解したのだ。
 誰よりも強い熱情を胸に秘めながらクールに振る舞うその姿に、かつての友との数え切れないぶつかり合いを思い出したと言ってもいい。

 そうなれば後はもう、自分に残された仕事はアクセルを継いだ男を強くするため、彼を支えることだけ。
 それが正しいのかどうか、照井が望むかどうかなど、正直なところわかりはしない。
 だがどうせあの世で彼に聞いても素っ気なく返されるだけなのだ、ならば自分もやりたいことをやるだけのこと。

 どうせ自分は半熟野郎と呼ばれる運命なのだ、かつての友と目の前の男を重ねてしまったから、などという動機で動いたところで、誰も文句は言うまい。
 そう考えた翔太郎の表情はしかし晴れやかで……誰にとっても眩しい確かな“余裕”を兼ね備えていた。
 そして同時、翔太郎の言葉を受けた一条もまた、珍しく頬を綻ばせる。

 照井が死んでから、幾度となく纏ったアクセルの鎧。
 戦いの道具以上の感情を秘めたその鎧はしかし、戦場において自分を勝利にまで導いてはくれなかった。
 だが、それもこれまでのこと。

 自分が及ばなかったために不甲斐ない結果に終わり続けたというのなら、それを強くなって覆すだけのこと。
 遊び心というものを学べるかは分からないが、ともかくそれも特訓の中で身につくのであればと。
 一条薫はここに来て初めて、自分のことを認められうる可能性を見出していた。

 そしてまた、目の前で繰り広げられた短いやりとりを見ただけで、今後起こりうる二人の化学反応の結果を知り尽くしているかのように、名護は一人満足げに頷いていた。
 見込んだとおり、この二人は今よりずっと強くなる。
 自身の弟子に迎える、などと口が裂けても言えないような強さを確かに持った二人の成長の芽を目の当たりにして、自分もうかうかしていられないと名護は虚空に思いを馳せるのだった。

765 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:31:00 ID:ZlcWppgI0


 ◆


 「……本当に、一人で大丈夫なのかよ、名護さん」

 「あぁ、当然だ。俺には総司君をこの病院で待たなくてはならない使命がある。
 君も、くれぐれも気をつけなさい。この会場には未だ、大ショッカーの手先が忍び込んでいる。油断は禁物だ」

 翔一の遺体を簡単に埋葬し一息ついてしばらくしてから、ついに翔太郎たちは出発の準備を完了していた。
 少しでも早く移動するためにと、カブトエクステンダーのキーを名護から受け取り彼の身を案じた翔太郎に対し、名護はしかし強く返す。
 その表情に浮かぶ揺るぎない自信を見て、翔太郎もこれ以上の言葉は無粋かと口を噤んだ。

 ふと後方を見れば、トライアルの特訓という言葉に気合いを引き締め直したか、一条はすっかり自立してしっかりとした足取りで外に向かっている。
 どうやらこれは特訓にも精が出そうだと自分も彼に続こうとして、しかしその肩を、名護に引き留められた。

 「なんだよ名護さん、まだ何かあんのか?」

 「あぁ。君に、渡しておかなければならないものがある」

 言いながら、名護は懐より一つ、銀色の箱と無数のカードを取り出した。

 「……ブレイバックルか」

 それはまさしく、先ほど自分がダグバから取り戻した正義の仮面ライダー、ブレイドの力。
 スペードのカードだけではなくダイヤにクラブ、ハートのカードまで合わせたラウズカードの束は、文字通り片手で受け取るには手に余るほどだ。
 だがこの強力な力をこうも容易く受け取ることに、翔太郎はある種の忌避感を覚えていた。

 「けどよ、名護さん、いいのかよ?これは総司が……」

 「いいや、総司君から聞いた。君は彼に言ったそうだな。『自分はこれを拾っただけで独占する権利はない』と。
 俺もそうだ。俺はこれを拾っただけで占有する資格などない。
 それに俺には今、ブレイドへの変身に制限がかかっている。俺が持っていても意味がない、君がこれを持っていくべきだ」

 名護はやはり、どこまでも貫くような真っ直ぐな瞳をしていた。
 しかし、忌むべき記憶も存在するとはいえ、これは総司が持っていたもの。
 自分がただの力として預かるよりは名護が持っていた方がいいのではと、翔太郎は二の足を踏んでしまう。

 だがそんな翔太郎に対し、名護は一層に真面目な顔をして顔を寄せ、小さな声で囁いた。

 「……それに、ハートのラウズカードをどうするのか……、その決断を下すのは俺でなく、君であるべきだ」

 「名護さん……」

 後方の一条には聞こえないほどに小さな声で述べられたその言葉に、しかし翔太郎は息を呑む。
 ハートのラウズカード、それから類推される自分の因縁を、いやでも思い出したからだ。
 この会場に連れてこられて最初に出会った、心優しいオルフェノクを無残に殺害したあの男の処分を決めるのは、お前だと。

 つまりは名護が言っているのは、そういうことなのだ。
 あくまで彼をジョーカーアンデッドとして断じこの場で倒す道を選ぶのか、それとも今は涙を飲み説得の道を選ぶのか。
 或いはその先に和解の道があったとして……彼に多大なる力を与えるだろうこのカード群を、果たして彼に渡すのか、それとも絶対に彼の手に渡らないよう投棄するのか。

 全ての選択肢を、同行者を目の前で始に殺された自分に委ねたいと、そう言っているのである。
 その決断の難しさを、そして目の前で死んだ木場の無念を考えしばし目を瞑って、やがて翔太郎は目を開いた。

766 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:31:22 ID:ZlcWppgI0

 「……分かった。あとは任せてくれ、名護さん」

 「あぁ、頼んだぞ、翔太郎君」

 ブレイバックルを確かに受け取りながら、翔太郎はこの小さな箱に込められた“重さ”を確かに実感する。
 そこに込められた力も、受け継がれてきたバトンも、そして誤ったことに使われてきたブレイドという力自体の悲しみも。
 それに加え、殺害という許しがたい罪を犯したとはいえ、世界を、大事なものを守るため全力を尽くしただけの男の処断をも、そこに合わさっているのだ。

 なれば、その全てを一身に背負ったこのバックルが、軽いはずがなかった。
 その重みをしかし逃げずに受け止めて、翔太郎は帽子をクイと下げてその場を後にしようとする。
 だが瞬間、翔太郎は最後に一つだけ、名護に言っておかなければならないことがあったのを、思い出した。

 「またな名護さん、それから――無茶だけはすんなよ」

 「……あぁ、分かっている」

 返答までにかかった時間は、ごく僅か。
 だがそれでも確かに開いた一瞬の隙は、名護の動揺を確かに表していた。
 しかし、それを見抜いたからと言って、翔太郎にはもう予定を変える気はなかった。

 名護は自他ともに認める一人前の仮面ライダーなのだ。
 例え自身の行動で何が起こったとしても、自分の決断に自分で責任を取れる大人なのである。
 であればこれ以上自分がお小言を残していったとしても、無粋なだけ。

 故に翔太郎は、黙って去るのみだ。
 自分たちを見送るため、後ろで佇む名護の視線を感じながら、翔太郎は先にバイクの前で待っていた一条に声をかける。
 そのまま二人乗りの姿勢でカブトエクステンダーに跨がりキーを差し込んでエンジンを唸らせれば、心地よい駆動がこの体を躍動させた。

 サイドバッシャーに跨っていた時以来の感覚に心さえ躍る思いを抱きながら、翔太郎は後ろに跨る一条を振り返る。

 「行くぜ、準備は良いか?」

 「勿論です」

 一条の短い返答の中には、しかし確かに燃える挑戦の意思を感じ取れる。
 どうやら長々しい啖呵を切るよりも、よっぽど気合十分らしいと。
 友の遺志を継いだ男の、確かな強さを再度認めて翔太郎は、北へ向け一思いにアクセルを振り絞った。


【二日目 朝】
【C-1 平原】

【左翔太郎@仮面ライダーW】
【時間軸】本編終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、精神疲労(大)、キングフォームに変身した事による疲労、仮面ライダージョーカーに1時間20分変身不能、カブトエクステンダーを運転中
【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW、ブレイバックル+ラウズカード(スペードA〜Q、ダイヤ7,8,10,Q、ハート7〜K、クラブA〜10)+ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、首輪(木場)、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW、『長いお別れ』ほかフィリップ・マーロウの小説@仮面ライダーW、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。
0:一条がトライアルメモリを使えるよう、サーキット場で特訓する。
1:名護や一条、仲間たちと共に戦う。 今度こそこの仲間達を護り抜く……はずだったのにな。
2:出来れば相川始と協力したいが……。
3:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。
4:村上峡児を警戒する。
5:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。
6:ジョーカーアンデッド、か……。
7:総司……。
8:相川始にハートを始めとするラウズカードを渡すかどうかは会ってから決める。
【備考】
※大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。
※仮面ライダーブレイドキングフォームに変身しました。剣崎と同等の融合係数を誇りますが、今はまだジョーカー化はさほど進行していません。
※トライアルメモリの特訓についてはA-1エリアをはじめとするサーキット場を利用する模様です。

767 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:31:45 ID:ZlcWppgI0



【一条薫@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話 未確認生命体第46号(ゴ・ガドル・バ)撃破後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、五代たち犠牲者やユウスケへの罪悪感、強い無力感、カブトエクステンダーの後部席に搭乗中
【装備】アクセルドライバー+アクセルメモリ+トライアルメモリ@仮面ライダーW
【道具】食糧以外の基本支給品×1、名護のボタンコレクション@仮面ライダーキバ、車の鍵@???、おやっさんの4号スクラップ@仮面ライダークウガ
【思考・状況】
基本行動方針:照井の出来なかった事をやり遂げるため『仮面ライダー』として戦う。
0:今度こそ誰も取りこぼさない為に、強くなりたい。
1:サーキット場に向かいトライアルの特訓を行う。
2:小野寺君……無事でいてくれ……。
3:第零号は、本当に死んだのだろうか……。
4:五代……津上君……。
5:鍵に合う車を探す。
6:一般人は他世界の人間であっても危害は加えない。
7:小沢や照井、ユウスケの知り合いと合流したい。
8:未確認への対抗が世界を破壊に導き、五代の死を招いてしまった……?
9:遊び心とは……なんなんだ……。
【備考】
※現在体調は快調に向かいつつあります。少なくともある程度の走行程度なら補助なしで可能です。


 ◆


 (見透かされていた、か……)

 翔太郎と一条の姿が見えなくなった後。
 名護は残された病院の中で、ただ一人自省していた。
 翔太郎のあの瞳、そして「無茶だけはするな」という言葉。

 そのすべてが、自分の考えていることを見抜かれているように思えて、名護は自身の未熟さを自覚する。

 (だがやはり今の総司君を、一人にするわけにはいかない……)

 しかし。
 そうして仲間に内心を見透かされていたとしても、もしもそれが誰から見ても無茶を行おうとするただの蛮勇に過ぎないとしても。
 今の総司を一人放置することは、名護には耐えられない。

 (今の彼は、人間とネイティブとの狭間で揺れ動いている。
 このままでは彼は心を二つに引き裂かれ、自滅の道を辿ることになる……。
 そうなる前に、俺が彼を救ってやらなくては……!)

 それは師匠としての名護に与えられた義務であるのと同時、仲間として彼を救いたいという純粋な思いから来るものだった。
 かつてファンガイアと人間との狭間で揺れ動いた渡を救うため尽力したのと同じように、弟子の危機において、名護啓介にじっとしている選択肢はない。
 渡との思い出が残っており彼が一人でその運命を覆したことを覚えていればまた別の結果もあったのかもしれないが、ともかく。

 反省を終えた名護は、懐から一本の小さなUSBメモリの様なものを取り出す。
 Sの字が刻まれたそれはスイーツのメモリ。
 出来れば使いたくこそないが……イクサが制限にかかった今、危険があれば使用も止むを得ない。

 翔太郎から言わせればお粗末な品らしいが、それでも時間稼ぎの捨て石にはなるだろうと、名護は高を括っていた。

768 restart your engine ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:32:04 ID:ZlcWppgI0

 (待っていてくれ、総司君。君を一人にはさせない。
 俺が必ず、師匠として迷える君を救って見せる。……必ず!)

 瞬間名護は、もう立ち止まっている時間もないとばかりに駆け出した。
 広い市街地に向けて、ただ一人この空の下で彷徨っているだろう弟子を探すため。
 その手に握るは洋菓子の記憶。あまりに心もとない装備を手に、しかし心だけは菓子さえ溶かすほどに熱く煮えたぎらせて。

 誰よりも強く弟子を思う男はただ一人、街へ勢いよく飛び出した。


【二日目 朝】
【D-1 病院前】

【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、精神疲労(大)、左目に痣、決意、仮面ライダーイクサに1時間20分変身不能、仮面ライダーブレイドに1時間25分変身不能
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW 、ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:総司君を探す。絶対に一人にはしない。
1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
2:総司君のコーチになる。
3:紅渡……か。
4:例え記憶を失っても、俺は俺だ。
5:どんな罪を犯したとしても、総司君は俺の弟子だ。
6:一条が遊び心を身に着けるのが楽しみ。
7:最悪の場合スイーツメモリを使うことも考慮しなくては。
【備考】
※ゼロノスのカードの効果で、『紅渡』に関する記憶を忘却しました。これはあくまで渡の存在を忘却したのみで、彼の父である紅音也との交流や、渡と関わった事によって間接的に発生した出来事や成長などは残っています(ただし過程を思い出せなかったり、別の過程を記憶していたりします)。
※「ディケイドを倒す事が仮面ライダーの使命」だと聞かされましたが、渡との会話を忘却した為にその意味がわかっていません。ただ、気には留めています。
※自身の渡に対する記憶の忘却について把握しました。

769 ◆JOKER/0r3g :2018/12/15(土) 16:37:22 ID:ZlcWppgI0
以上で投下終了です。
毎度のお願いではありますが、ご指摘ご感想、ご意見等ございましたら是非ともお願いいたします。
後ちなみにですが、今日はパロロワ毒吐き別館、パロロワ企画交流雑談所スレにて平成ライダーロワ語りを行っております。
もしよければスレに行ってかつてのこのロワの思い出でも、最近の展開についてでも、或いは今後の展開についてでも、好きに語って盛り上げてくれると嬉しいです。

770 名無しさん :2018/12/15(土) 17:03:06 ID:AvOO96fs0
投下乙です!
キングの悪行によって総司は心を壊されて、そして翔一すらも失って残された3人はどうなるか不安でしたけど……やっぱり名護さんは最高でしたね!
名護さんは自分の過ちを振り返りながらも、一条さんと翔太郎の支えになって、そして二人に道を示してくれましたし。

771 名無しさん :2018/12/15(土) 18:29:45 ID:gNLfkRhc0
投下乙です。
マーダーはほぼいないとはいえ、スイーツ一本で単独行動に出た名護さんの死亡フラグが心配で心配で……。
使いこなすのが容易ではないトライアルの特訓、再び翔太郎に戻ったブレイバックルと今後の布石が盛りだくさんな話でした。

772 ◆JOKER/0r3g :2018/12/22(土) 00:00:29 ID:zqe4Ovek0
皆様ご感想ありがとうございました。
これより予約分の投下を開始いたします。

773 リブートpf答え、見つからず ◆JOKER/0r3g :2018/12/22(土) 00:01:18 ID:zqe4Ovek0

 D-2エリアに存在する民家のうちの一つ。
 灯りさえつけない、薄暗いその部屋の中で、一人の青年が膝を抱え虚空を見つめている。
 いや、その言い方さえ今の彼には相応しくないか。

 彼の瞳は、今や何も宿してはいない。
 光も闇も、そして生きる気力さえも。
 かれこれ1時間ほどの間、ずっとこうして無気力に塞ぎこみ続ける彼にいい加減嫌気が差したのか、天井にずっと釣り下がっていたキバットバットⅡ世は、その足を離しゆっくりと彼の前の前に降下し滞空する。

 「……いつまでこうしているつもりだ、キング」

 「その名前で、僕を呼ばないで……」

 消え入りそうな小さな声で、青年は膝に顔をうずめながら蚊の鳴くような声で囁いた。
 正直なところ、それだけで怒りを露わにこの場を後にしてもいいような陰気臭い言葉だったが、しかしキバットはまだ彼を見捨てるには早いと感じていた。

 「……ならば、何と呼べばいい?お前は名前を捨てたのではないのか?」

 「そうだよ、だから僕は何者でもない……紅渡でも、キングでも……」

 予想していた返答ではあるものの、キバットは思わず溜息を漏らす。
 こうまで彼が塞ぎこんでしまった最大の理由は、自身の息子でもあるキバットバットⅢ世の死に所以するものだ。
 生まれてからずっと一緒に暮らし、時には共に戦ってきた相棒の死が、世界の為戦うと冷たい決断を固めていた王の決意を揺るがしてしまったのである。

 或いはその下手人が適当な他世界の参加者で、かつ自分の至り知らぬところでの出来事であったなら、彼もキングとして非情に徹し続けることが出来たのかもしれない。
 だが、彼を殺害したのが他ならぬ『キング』を名乗る大ショッカー幹部であったことに加え、相棒は自分の手の中で、その命の火を絶やしたのである。
 更にはその死に際に「今のお前は自分の心に逆らっているだけだ」などと言われてしまっては、固く冷たい王の決意が溶けてしまったとしても、仕方のないことと言えるかもしれなかった。

 とはいえそんな仕方のないこと、で済ませられるほど事態は甘くないのだ。
 溜息一つ吐き出して、キバットは彼を叱咤するために適当な台座に着地する。

 「ならば……お前。このままここでじっとしているだけでは、世界は滅びに向かう一方だぞ、それでいいのか?」

 「それは、駄目だけど……」

 小さく答えた彼の目に、僅かばかり気力が灯る。
 自分が悲壮な覚悟を決めて殺し合いを完遂する決意を固めた時のことを、思い出したのだろうか。
 ともかくこの調子でうじうじした彼の根性だけでも叩き直さなくてはならないと、キバットは気合を入れなおす。

 「それに名護も。お前がこうして座り込んでいる間に、奴もまた誰かに殺されているかもしれないが、それでいいのか?」

 「それも駄目、だけど……」

 ああ言えどこう言えど、でもでもだっての連呼ばかり。
 なるほどこれは息子も付き合うのに難儀するわけだと呆れた様子のキバットを前に、彼は未だ目を泳がせる。

 「でも……僕にはわからないんだ、今の僕にとって、何が一番大事なのか……」

 ぼそりと、消え入るように声を漏らした。  
 或いは自身の息子であれば根気強くこの男の悩みに付き合ったのかもしれないが、しかし自分は生憎と彼の相棒でも友達でもない。
 極めて冷たい瞳で以て、キバットは彼と視線を交わす。

 「自分が自分でいられる状況じゃない、そういったのはお前のはずだぞ。
 俺たちの世界を存続するために、必要な罪は全て自分だけで被る。
 そのために名護の記憶も消したんじゃないのか?」

 「そうなんだけど……」

774 リブートpf答え、見つからず ◆JOKER/0r3g :2018/12/22(土) 00:01:48 ID:zqe4Ovek0

 言外に、これ以上手間を取らせるなら俺も勝手にさせてもらうぞ、という圧を込めたつもりだったのだが、彼は未だ踏ん切りがつかないようで駄々をこねている。
 まったく以て面倒なこと極まりないが、同時にキバットは思う。
 まだこいつを見限るには、早いのではないかと。

 断じて情ではない。情ではないが……息子の死を受けてここまで沈みこんだ男が、再びキングとして戦う決意を決めたなら、それはまさしく歴代最強の王に違いない。
 その可能性を未だ捨てきれないがゆえにこの男をさっさと見限れないあたり、やはり俺も甘さが移ったのかもしれないなと、キバットはすっかり丸くなった自分に嘆きつつ溜息を吐いた。
 果たして一体、どうすればこの男はこの場から動く気になるのだろうか。

 らしくなく熟考を重ねようとしたキバットの思考はしかし、瞬間終わりを告げる。
 部屋に備え付けられたテレビ……電源さえ入っているのか怪しいそれに、唐突に光が灯り、けたたましい音楽が彼らの耳を刺激したのである。
 或いは大ショッカーが籠城を良しとせず警告しに来たのかと警戒するが、しかし違う。

 時計を見れば、時刻は既に6時を指している。
 そう、つまりは三回目となる定時放送の始まりであった。


 ◆


 「戦え……か」

 放送が終わり、神崎士郎と名乗った男が画面から消えてしばらくの後、彼は一言そう呟いた。
 胸に響いたわけではあるまい。
 ただ実感として、今が戦わなければ何も得られない状況であるということを再び理解したのである。

 戦わなければ、何も得られない。
 自分の中で呟いただけのその言葉を、彼はもう一度反芻する。
 望み。……思い返してみれば、自分は果たして一体何が望みだったのだろう。

 最初は、自身の手で殺してしまった深央を生き返らせるため、そして皆に幸せになってもらうため、自分が生まれたことさえ消し去るつもりだった。
 だがこの世界存亡を懸けた殺し合いに呼ばれ、そんな心構えではいけないと、自分が守りたい人々をなんとしても守らなくてはならないとそう考えて、自分の死を後回しにした。
 ファンガイアの王を倒しその跡を継いだ後は、ファンガイアの未来を守るという目標を持って非情に徹する王になりきるため自分を捨てさえした。

 紅渡の名さえ捨て、キングと他者に呼ばせることでそんな“役割”を完遂しようとして……その為に、師と呼んだ男の記憶まで消して。
 世界を破壊する悪魔も、他世界の善良な命の数々も、全てを殺し自分だけがそれらを記憶して、逆に自分に関する仲間達の記憶は全て消し去る。
 そうすることで自分は、一人修羅の道を往こうとした。

 それが、自身の最大にして唯一の望みだと、そう信じていた……はずなのに。

 『結局お前はそれらしいことを言って全部から逃げてるだけだろ!
 紅渡としての人生からも、キングとしての責任からも、人間とファンガイアが共存できるっていう夢からも!』

 先ほど世界の破壊者、ディケイドの仲間を名乗った男が、真っ直ぐに自分を見据え放った言葉を思い出す。
 あの男の言葉を頭ごなしに否定できなかった事実が、今の彼にとって最大の懸念だと言っても良い。
 何故、自分はあそこまであの男の言葉を聞いてしまったのだろう。

 名護の言葉は全て聞き入れた上でキングの道を進む覚悟を崩さずいられたというのに、何故見ず知らずのあの男の言葉に、ああまで心乱されたのか。
 そう考えて彼は、しかしすぐに思い当たる節を見つける。

 『その石を通じて全部聞こえたよ。それに、お前が感じた感情だって、全部伝わった』

 それもまた、あの男が言った言葉だった。
 自身の使った地の石に操られかけた男が、もしも彼の言うとおり自分の心さえ見通していたというなら。
 あの問答は、あの男と自分のものではなく自分が心の奥底に押し込めた『紅渡』との対話だったのかも知れない。

775 リブートpf答え、見つからず ◆JOKER/0r3g :2018/12/22(土) 00:02:06 ID:zqe4Ovek0

 もしそうだと仮定するのなら……あの時、“あのキング”が乱入してこなかったなら、自分はどんな道を選んでいたのだろうか。
 目の前に座する『紅渡』を刺し殺し、絶望しか待っていない王の道を往く。
 今となればそれが自分のキングとしての覚悟を裏付ける、最高の選択肢だったと思う。

 だが、実際には、自分はそれを選べなかった。
 目の前の無防備な男に対し、自分は手に持ったジャコーダーでいつでも殺意を行動に起こせたはずなのに。
 何故か彼の言葉に聞き入り、そして真剣に迷ってしまった。

 『紅渡』として、未だ自分は生きていて良いのだろうか、と。
 それこそが、自分の心が命ずる思いから逃げず立ち向かう手段なのかも知れないと、そう思ってしまった。
 もう後戻りは出来ない、積み重ねたはずのその決意さえ、一瞬消え去ってしまうほどに。

 (逃げ……か)

 自分の中に生まれた言葉を、もう一度考え直してみる。
 一体ここから何をすれば、逃げずに自分の心に従うことになるのだろうか。
 自身の世界と大切な人たちを守りたい、それを確定事項として、なればそのやり方は何を選べば良いのだろう。

 すぐに思いつく選択肢は、主に二つだ。
 一つは、ファンガイアのキングとして、使命を果たすため心を殺し、立ち塞がる敵を全て殺すこと。
 情が移る可能性を考慮して利用出来る関係さえも持たず、ただ一人かつての師さえ敵と見なしてこの会場の全てを敵に回すのだ。

 名護の記憶を消したとき、確かに決意の一つに存在した選択肢で……今までの自分が成してきたことを思えば、この道を取るのが今の自分には相応しいのだろうと思う。
 だが同時に……この選択肢を取ったとして、結局それは今までと変わらない。
 名護やあのもう一人のクウガを前にしたとき、殺害を戸惑ってしまった弱い自分自身さえも消し去らなければ、それは相棒にも指摘された『逃げ』でしかないのである。

 そして残されたもう一つの選択肢は……『紅渡』として、自分の心が命ずるままに自分のしたいことを……他の世界の住人のものさえも、誰かの心の中に流れる音楽を守ること。
 相棒の死を無駄にしないためにも、これまでの全ての過ちを悔いながら大ショッカーを倒す為、もう一度仮面ライダーとして戦う道である。
 相棒がああまで望んだ道、きっとその道を選ぶことを彼も望むだろうとぼんやり考えて、しかしその後すぐ彼は自嘲気味に虚しく笑った。

 (そんなの……許されるわけないじゃないか。今の僕に……)

 思わず、自身の両手を握りしめる。
 加々美という男の音楽を閉ざし、病院にいたはずの数多の命を散らせる手伝いをし、そんな自分でさえもかけがえのない友と呼んでくれた師の記憶さえ消して……挙げ句の果てに、相棒の命さえ、失ってしまった。
 これほどまでに後戻り出来ない過ちを繰り返した自分が、今更目的を完遂するのに恐怖を感じたから受け入れてくれと?

 そんな都合のいい話、あるはずがない。
 何より……そんな甘え、自分に許されて良いはずがないではないか。

 『新たな王は、貴様だ……紅、渡――!』

 先代のキングの、最期の言葉が蘇る。
 彼は息子である太牙を差し置いて、王としての格をこれ以上なく見せつけた自分を王と認め、キングとしての誇りやファンガイアの繁栄を託し死んでいったのだ。
 他世界に生きる者の心に流れる音楽すら守ると言うことは、彼の思いを踏みにじるかもしれないという、そんな葛藤を生むものだ。

 愛した人の死に塞ぎ込んでいた自分を、紆余曲折あったとはいえ立ち直らせ王としての使命さえ譲ってくれた彼に、それではあまりにも申し訳が立たないのではないか。
 そうして、自分にはやはり王として生きる以外の道はないと、またしても自分を奮い立たせようと考えて……彼の脳裏に、一つの言葉が過ぎる。

 『――俺は、今までお前と一緒にいられて、楽しかったぜ。わた……る……』

 それは、かつての相棒が、死の間際自分に残した言葉。
 説得でも、説教でも、或いは泣き言でもなく、彼は今まで自分と一緒にいられたことそれ自体を感謝して逝った。
 そんな相棒の、どこまでも変わらない彼としての生き様を見せつけられて、自分の中にこうして迷いが生じたのだ。

776 リブートpf答え、見つからず ◆JOKER/0r3g :2018/12/22(土) 00:02:35 ID:zqe4Ovek0

 もしかすれば、自分がファンガイアの王など自称せず彼と共に行動し続けていれば、最高の親友はあんな傷を負うこともなく死ぬこともなかったのではないかと。
 つまりは、自分の心に反し色んなものから逃げ続けた自分にとっての罰こそが、相棒の死だったのではないだろうかと……そう考えてしまうのだ。
 大切な人たちを守りたい。『キング』としても『紅渡』としても最優先されるべき願いを、覆すことで。

 であればこのまま修羅の道を往ったとして、よしんば世界を救い自身の愛した仲間たち全ての自分に関する記憶を全て消し去れたとして、自身の望む結果など待っていないとしたら。
 果たして自分のこの冷たい覚悟に、どれだけの価値があるというのだろう?
 そうして悩めば悩むほど、彼の身体は酷く重みを増していく。

 この場でずっと、こうして悩み続けていたい。
 願わくば、ここでこうして座っている間に、全ての出来事が平和に終わっていて欲しい。
 そんな、どうしようもなく甘い考えを、吐き出しそうになる。

 だが――。

 『ディケイドとは悪魔、世界の破壊者だ! 奴が居る限り、世界の融合は止まらないのだ!』

 瞬間、世界を破壊する悪魔への憎しみが、自身が屠った大ショッカー幹部を名乗る男の言葉と共に呼び覚まされる。
 ディケイド……存在するだけで全ての世界を存亡の危機に陥れる最悪の悪魔。
 それを破壊することこそが、この会場に集った全ての仮面ライダーが望むことに違いない、そう信じて戦ってきた……はずだったのに。

 『夢という希望は、誰かに受け継がれ、より大きな希望になる。
 だから、夢を抱くことは、決して無駄なんかじゃない!』

 思い起こされる、その悪魔と対峙した時の記憶。
 単純な力では自分に敵わない程度の、弱い仮面ライダーだったはずの彼。
 だがそんな自分の勝利は、土壇場で駆けつけた仲間と共に彼が立ち上がったその瞬間に、覆された。

 夢は呪いに過ぎないと罵った自分に対して、あまりに真っ直ぐに述べられた、夢は希望であるという言葉。
 あの時はそれを戯れ言として切り捨てた。
 少なくとも自分は、そう思っていた。いや……思い込もうとしていた。

 そんな自分の思い込みは結局ただの逃げに過ぎないのだと、ディケイドの仲間を名乗ったもう一人のクウガに看過されるまでは。

 『だから、実際に士に出会って、あいつの言葉に触れたとき、お前は困惑したんだ。
 少なくとも紅渡としてのお前は、あいつの言葉を信じたいと思ったから』

 彼が、疑う余地さえなく、それが真実だとばかりに放った言葉を思い出す。
 ディケイドをただの敵と見なしその破壊を目指す『キング』とは裏腹に存在する、ディケイドを信じたいと願う『紅渡』。
 自分の中にそれぞれ生まれた相反する”自分自身”を、意識してしまったその時点で、彼は立ち止まってしまった。
 
 そんなことは許されないと、百も承知であるというのに。

 『――もし、本当に士が破壊者だったなら、その時は俺があいつを破壊する』

 『だから渡は、自分が本当に信じたいものを信じろ。
 お前が信じたものが間違っていたときは、俺が責任を取ってやる。
 ……信じたいものを根拠なんてなくても信じ続けることが出来る、それが王の資格、らしいからな』

 先ほど聞いた、仲間が悪魔だったなら打ち倒すという覚悟を秘めた男の言葉。
 もしも彼の言葉を信じるなら、こうして『紅渡』の甘えと『キング』の強さとの間で揺れ動き、信じるべきものさえ分からなくなっている今の自分には、王の資格がないのだろうか。
 なれば、『紅渡』の心が命ずるままに、ディケイドを信じ、全ての責任をあのクウガに委ねるのが、最も自分にとって正しい道なのだろうか。

777 リブートpf答え、見つからず ◆JOKER/0r3g :2018/12/22(土) 00:03:08 ID:zqe4Ovek0

 (……いや、そんなこと、駄目に決まってる……!)

 しかしそこで、失せかけたキングとしての誇りが、彼の頭に蘇る。
 誰かに辛い選択を託し、自分はのうのうとしているだけなどと、それこそ本当の『逃げ』ではないか。
 ディケイドは善悪など関係ないただの事象に過ぎない、破壊する以外に道はないと宣ってきたのは、一体誰だったのか。

 (辛い思いをするのは、僕だけでいい……。
 仲間を殺す辛さなんて、味合わない方がいいに決まってる……)

 いつしか自分の思考が、知れずあの見知らぬもう一人のクウガを気遣うようなものに変わっていることに、彼は気付いているのかいないのか。
 そこまで思考を終えて、ようやく彼は暗い部屋の中、一人ゆっくりと立ち上がった。

 「……答えは決まったのか?」

 「ディケイドを……探す」

 暗い瞳を向けたキバットに対し、彼は未だ目を迷わせながらそう放つ。
 だが、かつて王と認めた男が行動を起こそうというその瞬間に、しかしキバットは未だ懐疑的な目を向けていた。

 「……探して、どうする?破壊する、と考えていいんだろうな?」

 「……」

 彼は、それ以上何も答えなかった。
 他世界の参加者をどうするだとか、或いはディケイドを破壊するのか大ショッカー打倒のため協力するのかだとか……つまりは、自分の名前は“どちらなのか”の答えを。
 だが、それが今の彼に出来る精一杯の決断だった。

 自分がどう生きるのか、何を信じ、誰の言葉を受け取り何を蔑ろにするのか。
 その取捨選択という、この場で出すには難しすぎる問いを一旦投げ捨てて、取りあえずは会場に潜むあの悪魔を見つけなくては。
 『紅渡』としても『キング』としても、着実に進んでいく殺し合いをこんな部屋の中で漫然と過ごすのは間違っている、そう思うから。

 故に――。

 「……じゃあね、キバット。僕も、君と会えてよかったよ。本当に……今まで、ありがとう」

 彼は、丁重に毛布に包んで葬られた最早物言わぬかつての相棒に、一言だけを残す。
 どんなに道を違えても、なおも自分を信じ運命を変えられると願い続けた真っ直ぐな親友。
 少なくとも彼の言うとおり、自分の心に嘘をつかないことだけは、絶対に貫き通そう……そう決意して。

 どこかふらついた足取りで部屋を後にした彼の背後に、続く臣下たち。
 先ほど手に入れた紫のサソリはともかく、キバットの目には主の行く末を危ぶむ懐疑心が、サガークには確かな躊躇が含まれていたのを、彼は気付かない。
 王の資格さえ危ぶまれながら、しかし確かな答えを探し……故に悩み続ける彼の名は、未だ定まらなかった。

778 リブートpf答え、見つからず ◆JOKER/0r3g :2018/12/22(土) 00:03:25 ID:zqe4Ovek0


【二日目 朝】
【D-2 市街地】

【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、精神疲労(大)、迷い、キバットの死への動揺、相川始の裏切りへの静かな怒り、心に押し隠すべき悲しみ、今後への困惑と混乱
【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、ゼロノスベルト+ゼロノスカード(緑二枚、赤一枚)@仮面ライダー電王、キバットバットⅡ世@仮面ライダーキバ、ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×3、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、アームズモンスター(ガルルセイバー+バッシャーマグナム+ドッガハンマー)@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0〜1)、ディスカリバー@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:……自らの世界を救う為に戦う。
1:キバット……。
2:大切な人達を守り抜く。
3:ディケイドの破壊は最低必須条件……?次会ったときは……。
4:始の裏切りに関しては……。
4:加賀美の死への強いトラウマ。
5:僕は『紅渡』でも『キング』でもない……。
6:今度会ったとき邪魔をするなら、名護さんも……?
7:キング@仮面ライダー剣は次に会ったら倒す。
【備考】
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キング@キバを知りません。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しましたが、ユウスケの言葉でその討伐を迷い始めています。
※相川始から剣の世界について簡単に知りました(バトルファイトのことは確実に知りましたが、ジョーカーが勝ち残ると剣の世界を滅ぼす存在であることは教えられていません)。
※赤のゼロノスカードを使った事で、紅渡の記憶が一部の人間から消失しました。少なくとも名護啓介は渡の事を忘却しました。
※名護との時間軸の違いや、未来で名護と恵が結婚している事などについて聞きました。
※仮面ライダーレイに変身した総司にかつての自分を重ねて嫉妬とも苛立ちともつかない感情を抱いています。
※サソードゼクターに認められました。
※未だキバットバットⅡ世とサガークにキングとして認められているかは不明です。

779 ◆JOKER/0r3g :2018/12/22(土) 00:03:55 ID:zqe4Ovek0
以上で投下終了です。
ちなみに、本日12/22は『仮面ライダー平成ジェネレーションズforever』の公開日です!
これまでの平成ライダー20作、主人公ライダーが全員登場とのことで平成ライダーロワの1書き手としても1ライダーオタクとしても非常に楽しみです。

また、恐らくはこれが2018年最後の投下となると思いますが、今年は平ライロワ復活に始まり色んなレジェンド書き手さんに書いていただけたりで書き手としては勿論読み手としても当企画を楽しまさせていただきました。
2019年もしっかりと完結に向けて書いていく所存ですので、皆様今後とも平成ライダーロワをよろしくお願いいたします。

それでは、毎度のことではありますが内容に関してのご意見ご感想等ありましたら是非ともお願いいたします。

780 名無しさん :2018/12/22(土) 08:37:15 ID:j58aDKMI0
平成ジェネレーションズ公開日と同時の投下乙です!
渡が実に儚くて、そして今後が気がかりになってしまいますね……多くの人を失い、そして気持ちを背負い続けたからこそ、ここまで追い詰められてしまいましたし。
士を探すとなると、進行方向的に名護さんともまた巡り会いそうな予感がしますが、果たして彼らは一体どうなってしまうやら……?

781 名無しさん :2019/01/13(日) 21:09:12 ID:/WAU6Hk60
少し遅いですが、今って加賀美開きの時期なんですよね


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

■ したらば のおすすめアイテム ■

だがしかし 1 (少年サンデーコミックス) - コトヤマ

駄菓子屋へGO!!((((((((((((((((((((*っ・ω・)っ ブ-ン

この欄のアイテムは掲示板管理メニューから自由に変更可能です。


掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板