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平成仮面ライダーバトルロワイアルスレ4

1 名無しさん :2018/01/27(土) 23:20:27 ID:fRys9cx60
当スレッドはTV放映された
平成仮面ライダーシリーズを題材とした、バトルロワイヤル企画スレです。
注意点として、バトルロワイアルという性質上
登場人物が死亡・敗北する、または残酷な描写が多数演出されます。
また、原作のネタバレも多く出ます。
閲覧の際は、その点をご理解の上でよろしくお願いします。


当ロワの信条は、初心者大歓迎。
執筆の条件は、仮面ライダーへの愛です。
荒らし・煽りは徹底的にスルー。

2 名無しさん :2018/01/27(土) 23:21:16 ID:fRys9cx60
【参加者名簿】

【主催者】
大ショッカー@仮面ライダーディケイド

【仮面ライダークウガ】 3/5
○五代雄介/○一条薫/●ズ・ゴオマ・グ/●ゴ・ガドル・バ/○ン・ダグバ・ゼバ

【仮面ライダーアギト】 2/5
○津上翔一/○葦原涼/●木野薫/●北條 透/●小沢澄子

【仮面ライダー龍騎】 3/6
○城戸真司/○秋山 蓮/●北岡秀一/○浅倉威/●東條 悟/●霧島美穂

【仮面ライダー555】 3/7
○乾巧/●草加雅人/○三原修二/●木場勇治/●園田真理/●海堂直也/○村上峡児

【仮面ライダー剣】 4/6
●剣崎一真/○橘朔也/○相川始/●桐生豪/○金居/○志村純一

【仮面ライダー響鬼】 1/4
○響鬼(日高仁志)/●天美 あきら/●桐矢京介/●斬鬼

【仮面ライダーカブト】 4/6
●天道総司/●加賀美新/○矢車想/○擬態天道/○間宮 麗奈/○乃木怜司

【仮面ライダー電王】 2/5
○野上良太郎/●モモタロス/○リュウタロス/●牙王/●ネガタロス

【仮面ライダーキバ】 2/4
○紅渡/○名護啓介/●紅 音也/●キング

【仮面ライダーディケイド】 3/5
○門矢 士/●光 夏海/○小野寺 ユウスケ/○海東 大樹/●アポロガイスト

【仮面ライダーW】 3/7
○左翔太郎/○フィリップ/●照井竜/○鳴海亜樹子/●園咲 冴子/●園咲 霧彦/●井坂 深紅郎

30/60

3 名無しさん :2018/01/27(土) 23:21:48 ID:fRys9cx60
【修正要求について】
・投下されたSSに前作と明らかに矛盾している点がある場合、避難所にある議論用スレにて指摘すること。それ以外はいっさいの不満不平は受け付けない。
・修正要求された場合、該当書き手が3日以内(実生活の都合を考慮)に同じく議論用スレにて返答。必要とあらば修正。問題無しならそのまま通し。
・修正要求者の主観的な意見の場合は一切通用しません。具体的な箇所の指摘のみお願いいたします。

【書き手参加について】
・当ロワは初心者の方でも大歓迎です。
・書き手参加をご希望の方は避難所にある予約スレにて予約をするべし。
・その他、書き手参加で不明な点、質問は本スレ、もしくは避難所の雑談スレにでも質問をお書きください。気づきしだい対応致します。

基本ルール
各ライダー世界から参加者を集め、世界別に分けたチーム戦を行う。
勝利条件は、他の世界の住民を全員殺害する。
参加者を全員殺害する必要はなく、自分の世界の住民が一人でも残っていればいい。
最後まで残った世界だけが残り、参加者は生還することが出来る。
全滅した参加者の世界は、消滅する。

4 名無しさん :2018/01/27(土) 23:23:21 ID:fRys9cx60
以上でテンプレ終了です

5 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:29:21 ID:1FDzq.Hk0
皆様お待たせいたしました、ただいまより投下を開始します。

6 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:30:01 ID:1FDzq.Hk0

「――うぉらぁああああああああああああああああああああああああああああ――っ!!」

地を震わすような雄叫びとともに、戦士たちの間を駆け抜けていく赤い瞳の戦士。
それを受けながら、門矢士――否、今の名前はディケイド――は思わず安堵する。
この戦いが始まって未だ数十秒であるというのに激しい消耗を感じざるを得ないこちらの状況で、唯一状況を把握できていなかった乾巧――ファイズの無事と、その萎えることない闘志を確認することが叶ったため。

そして、同時に彼の今の姿にも、ディケイドは信頼を置いていた。
ファイズそのもの……にもそうだが、それ以上に彼が今装着変身しているファイズアクセル。
その力には士自身も何度も変身し助けられた覚えがあったからだ。

通常のファイズの最大の強みともいえる敵の反撃を許さない必殺技、クリムゾンスマッシュ。
それを通常の1000倍という反則じみた速度で何発も叩き込むことのできるアクセルの能力は、状況によってはその制限時間10秒というハンデを補い余りある戦果を齎す。
士自身何度も助けられ、またクロックアップなどの特殊な技能がなければ対応すら許されないその能力は、この場でも問題なく通じると。

倒すことなど叶わずとも、少なくとも動きを数秒とめることは何とか可能だろうと。
そう、“油断”してしまっていた。
眼の前に存在する金色まとう究極の闇が、その特殊な技能の集合体であると、その事実を思い出すまでは。

――ファイズに変身する乾巧にとっても、それは同じことだった。
幾度となく自身の戦いを勝利に導いたこの黒き体は、数時間前、自身がファイズとして戦いこの一年間培ってきた自信を打ち砕いたこの魔人にもある程度通用するのだろうと、そう錯覚していた。
油断など、していないつもりだった、いや、実際にしていなかった。

悔しいが、自身よりも数段強かった天道総司を以てして敵わなかった強敵に、油断する暇などあろうはずはない。
だから、自分のありったけを、最高のタイミングで叩き込んだ、というのに。


――ガシッッッッッッ!!!!!!!

7 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:30:57 ID:1FDzq.Hk0


なぜ、自分の足はいとも容易く掴まれているのだ。
高速で移動し、拘束具たるファイズポインターを都合六つも受けていながら、なぜここまで。
いや、わかっている。答えは考えるまでもなく簡単なことだ。

こいつは、この程度の拘束などあってないようなものに出来るパワーを持ち。
こいつは、常人の1000倍を誇る加速など全く意に介さぬ超感覚を持ち。
こいつは、そしてそれを容易く捉えることが出来るだけのスピードを持っている。

ただ、それだけの。
本当にそれだけの、簡単で、わかりきっていたはずなのに、絶望的な答えだった。

「巧ッ!」

ディケイドが叫ぶ。
一切の事情を知らぬ周りのライダーにとっては判断が追い付かないことでも、経験のある彼になら、今巧の身に起こっている状況が理解出来たのだ。
そして、その先に起こるであろうことも、理解出来てしまっていた。

「―――――ッッッ!!!」

ライジングアルティメットが声にならぬような声を上げたかと思えば次の瞬間にはその手に持つファイズの体は大きく円を描いていた。
自身が設置した深紅の円柱を自分自身の体で打ち壊しながら、悲鳴すら上げることもできずファイズは加速する。
自身の能力によってではなく、彼を振り回す金色まとう究極の闇によって。

「ハァッ!」

短い掛け声とともにナイトサバイブが剣を振るうが、しかしそれも空いた左手に容易く防がれる。
同時にディケイドやディエンドがファイズを解放せんと銃撃を放つも、それらは最早まったく意に介されることすらない。
そしてG4は先ほどのライジングアルティメットによるダメージによって未だに地に伏していた。

8 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:31:33 ID:1FDzq.Hk0

反撃など、意味を持つことはない。
その時、全員が悟らざるを得なかった。
ファイズが解放されるのは、この魔人が彼の命を弄ぶ残酷な遊びに飽きたときだけなのだということを。

――3

ファイズの腕につけられた腕時計型アタッチメントパーツが、加速する世界の終わりが近づいていることを告げる。

――2

その音を聞いた時、感情など見えもしないはずのライジングアルティメットの仮面の、その下から。

――1

邪悪な笑みが零れたような錯覚を受けた。

――TIME OUT

その音が鳴りやむ前に、ファイズは金色の剛腕から解き放たれていた。
急速に変形を始める全身、しかしそれ以上に彼の加速は速く――、速く――。
無論、その場にいる誰も助けられるはずもなく。

「巧ィィィ!!」

ディケイドの叫びも虚しく。
ファイズの体は何本もの大木を貫きながら、闇の彼方まで、吹き飛んで行った。

【乾巧 脱落】
【ライダー大戦残り人数 15人】

「クッ!」

ディケイドの絶叫を背に受けながらもナイトは迷いない動作でカードをデッキから引き抜き、そのまま腕のダークバイザーツヴァイへと装填する。

――BLAST VENT

どこからともなく響いた電子音と共に現れるのはナイトの使役する獣(モンスター)、ダークレイダーだ。
ファイナルベントを使用してからまだその召喚制限を果たし切っていなかったことと警戒のためミラーワールドに返していなかったのが功を奏したようだ。
と、同時にナイトは未だにこの戦いが始まってから一分も経っていないという事実に愕然とする。

9 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:32:11 ID:1FDzq.Hk0

一体こいつに倒されるより早く地の石を破壊できるのか、奴の変身制限が訪れるのか――。
そんな彼らしくもない考えが浮かぶ中、ダークレイダーはそのホイールのような翼でもって突風を発生させる。
無論そんなものはライジングアルティメットの足を止めるには少々役不足。

一瞬怯んだかのような素振りを見せた次の瞬間、ライジングアルティメットはダークレイダーよりも高く跳んだ。
そして、そのままその漆黒の翼ごと風を断たんとする勢いで拳を振りかぶり。

「――させると思ったか?」

そのまま瞬息の拳は、空を切った。
ナイトが自身の契約のカードにダークレイダーを間一髪戻したのだ。
しかし逆を言えばこれで彼らは契約モンスターにかかっている制限に関して把握する機会をみすみす逃したわけだが……。

ともかく、ナイトの狙いは、もちろん最初からライジングアルティメットの足止めなどにはない。
ならば彼の真の目的はどこにあったかというと――。

「大丈夫か、門矢、海東、志村」
「ええ、私は何とか」

仲間たちの集合、体勢の立て直しだ。
全くその為に並のモンスターならば容易く蹴散らすことのできるカードを一枚切ったのかと思うと背筋が凍る思いだが、しかしこれでいい。
出し惜しみをしていれば――あるいは乾のように現状最高の戦力を惜しまなくても――次に肉塊になるのは、自分かもしれないのだから。

「クソッ、ユウスケの奴はここまで圧倒的な能力じゃなかったぜ」
「まぁ彼なりに、洗脳されながらもお仲間である君に手を出すのに抵抗してたってことなんじゃないかな」

10 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:32:37 ID:1FDzq.Hk0

圧倒的な力を誇るライジングアルティメットに対して、ディケイドはあえていつもの調子でディエンドに語り掛ける。
それに対し、クウガとしての力量も大きく差がある訳だしね、と心の中で付け加えながら、ディエンドも自分なりの考察を述べた。

(いや、でもそれにしてもここまでの戦力差……)

しかし心のどこかで引っかかるのもまた事実だった。
小野寺ユウスケの変身したそれは生身の士を何度も殴りつけていたという。
それを前述のクウガとしての力量の差、無意識下での洗脳への抵抗だと説明しても、ならば五代はそんな洗脳にも抗えない存在なのだろうか。

なればほかに考えられる要因としては地の石を持つ者の実力か?
カテゴリーキング最強のアンデッドたる金居という男が確たる意志を持って使用しているからここまでの実力を誇るのであって、大神官ビシュム――士の妹、小夜――という元はただの一般人が、不安定な意思で使用したから脆弱とすら言われそうな実力だったのだろうか。

だがそれならば何故石の力から解き放たれたライジングアルティメットはディケイドと二人がかりでもシャドームーンに敵わなかったのか……?

「おい、来るぞ」

しかしそんな彼の膨れ上がる疑問を遮るように静かにナイトが告げる。
見れば天高くより降り立ったライジングアルティメットがこちらに向き直っていた。
気を引き締めなおさねばと、ディエンドが得意の皮肉気な笑いすらやめてディエンドライバーを構えなおした、その時。

「――!門矢さんッ!危ないッ!!」

そんな絶叫をあげて、G4がディケイドを押し倒した。
と、同時、辺りに響くはG4の背中の丁度すぐ上を通過していった巨大な弾丸がライジングアルティメットの胸元に当たった爆音だ。
何が起こったのか、一切を理解できぬまま思わず後方を振り返った戦士たちが見たものは。

先程までと何ら変わらず仁王立ちするゾルダと。
生身で俯せに横たわる橘朔也の姿だった。

11 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:33:07 ID:1FDzq.Hk0





状況は、ほんの数十秒前に遡る。
この場で知り合った戦友、響鬼がディケイドの能力によって変身した謎の怪鳥(という表現が正しいのかもわからないが)の後を追いながら、戦士ギャレン、橘朔也は思考していた。

(ディケイドが……門矢が存在するだけで世界を滅ぼす悪魔?……本当にそうだとしたら……)

それは、ディケイドという存在への、恐怖。
もしその話が本当なら、バトルファイトにおけるジョーカー以上の脅威と見るほかない。
果たして、そんな存在を今現在味方してくれているからという理由で楽観視していいものか、そんな考えが頭をよぎる。

――別にいい……俺も一真のブレイバックルを奪われたから、お互い様だ――

しかしその瞬間、脳裏を横切るは彼と会って少ししてから士が述べた、自分への謝罪。
剣崎一真という人間の死には自分に責があると……、そう隠さず伝え、彼の遺品を奪われたことを、悔やんでいたあの表情だった。
それを思うと、橘の中の彼を疑わんとする気持ちはどんどん失せていく。

そして。

――それは、今話すようなことかっ!――

――自分の仲間は、金居と門矢、どっちかって考えたら……信じるべきはどっちかなんて、俺は揺らがないよ――

あの瞬間の鬱屈した空気を一瞬でかき消し、戦士たちを鼓舞した葦原の、ヒビキの言葉が蘇る。

(そうだ……例え彼が世界を滅ぼす悪魔だとしても、少なくともヒビキや葦原はそれを信じている。それなら、俺も……信じてみたい。相川始を信じた、剣崎のように!)

橘は、自身の愚かなほどに人を信じてしまう性格を知っている。
それを何人もの大小問わぬ悪に利用され、そのたびに周りに迷惑をかけ、そして時には大きな犠牲を払ってきた。
しかし、そんな彼だからこそ、今は亡き信じられる友のように、危険な可能性を持つかもしれない男を、信じてみたかった。

組織も失い、愛する人も失い、尊敬する先輩も、信頼できる友も失った。
だが、そんな自分にも、まだ残されているものがあるとするならば。
例え世界への危険を孕もうと、それを信じたい。剣崎のように、一心に信じ続けることは、自分には、無理かもしれないけれど。

12 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:33:32 ID:1FDzq.Hk0

(だから見ていてくれ、剣崎。俺はお前に恥じぬよう信じ、そして変えてみせる。破滅の運命など、殺戮の末に得られる勝利など!)

思いを新たに走るギャレンの、遥か前方。
ディケイドの力によりヒビキアカネタカと化した響鬼は、空を自由自在に飛びながら緑の砲撃手、ゾルダの放つ大砲のような銃弾をその口から放つ火炎で打ち消す。
もう何度も繰り広げられたそのやり取りは、既に数え切れぬほどに達し、ゾルダの必死の弾幕に多少手こずりながらも、彼のもとに響鬼が辿り着くのは最早時間の問題だった。

「くっ、ディケイドめ、奇妙な技を……」

そう一人ごちるのは、ゾルダ――その鎧をまとっているキング、紅渡――である。
最早目前にまで迫った不可思議な形状をした怪鳥による接触を防げないのは明白、遅くてもあと数十秒で彼は自分と接触するだろう。
無論、そうなった場合でも負けるつもりはない、エンジンブレードにジャコーダー、加えてゾルダの鎧が破られたとしてもサガにウェザー……、自身の戦力は申し分ない。

しかし、それでは駄目なのだ。
目の前に迫る怪鳥と後方から徐々に距離を狭めつつある赤い戦士を両方相手取ったとしても、自分の望む勝利は得られない。
つまるところ、世界の破壊者、ディケイドの破壊とそれによって得られる世界の崩壊への一時的な安寧は、成し遂げられないのだ。

それにそれではライジングアルティメットと金居を結ぶ能力についても把握することが出来ない。
ゆえに何としてでもその状況は避けなければ……と、思うがしかし対処の方法も浮かばぬままついにヒビキアカネタカが自身の頭上に到達、それと同時に変形を解除して。

「タァーーー!」

掛け声とともにその手に持った音撃棒を振りかざさんと――。

――FLOAT

しかしその気合いがゾルダに降り注ぐ寸前、どこからともなく電子音声が響く。
それと同時に草陰から現れるは黒のボディにハートの意匠を施した戦士、カリス。

「こいつは任せろ、キング」
「うおっ!?なんだ!?」

仲間であるゾルダでさえ予想していなかったその登場に、全員があっけにとられている間に、カリスはそれだけ告げて絶叫をあげる響鬼をものともせずに彼方へと飛び去って行った。
だが、打ち合わせ無しのベストタイミングでの登場に対する渡のそれ以上に。
この場において一番驚きを隠せなかったのは、橘朔也だった。

13 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:34:03 ID:1FDzq.Hk0

(始……、お前やはりこの殺し合いに……)

自身でも予想していた事ではある。
あるはずだが、やはり衝撃は大きかった。
剣崎と友情を育み、人々のため戦う仮面ライダーとして戦ってくれていた、相川始、別名ジョーカー。

存在し続けるだけで全アンデッドから疎まれる彼をしかし、剣崎は友として接し、やがてそんな剣崎に始も心を開いていった、はずなのに。

(剣崎の思いは、全て無駄だったというのか……?)

人間ではなくとも友になれるはずだという、剣崎の主張。
始本人はともかく、剣崎の信じた事を自分も信じてみたいと。
少なくともこの場では彼の死によって強く意識した、そのすぐ先に、まさか彼の思いが裏切られる事態が起こってしまうとは。

(……いや、待て。あの始は本当にアンデッド、ジョーカーとしての意識で殺し合いに乗っているのか?)

しかし瞬間、浮かぶのは疑問。
もしも相川始が剣崎と出会う前、あるいは出会った当初の闘争本能のままアンデッドを倒していたころの存在であるなら、それは迷わず封印するべきだろう。
少なくともこの場で、自身が剣崎のように彼の心を解きほぐし仲間になど到底できない。

しかし、もしも自分の知る人間として生きようとし、善意から人を守ろうとする相川始なら?
もしもそんな彼が剣崎亡き今大ショッカー打倒を諦め『剣の世界』だけでも……、天原親子を始めとする彼の愛した人々だけでも守ろうと殺し合いに乗っているのだとしたら?
自分には、彼を説得し同じ大ショッカー打倒の志を掲げる戦士として戦ってくれるよう説得する義務があるはずだ。

それが自分に遺された、亡き友からの遺志ではないのか。
仮にもしそうでなく、自分の本能のまま人を襲うというのならそれはまた同時に、自分に彼を封印する義務があるはずだ!

(そうだ、俺はまだ諦めないぞ、剣崎。相川は、お前の友は俺が……)

と、そこまで考えて。
彼はこの戦場においてあまりに自分が戦況以外のことに気を削ぎすぎたことに気づく。

「――なっ!?」

――すでに目前にまで迫りつつあった、ゾルダの放った巨大な砲弾によって。
それを撃ち落とさんと、ギャレンは咄嗟に右手に持ったギャレンラウザーを構えんとするが。

(――駄目だッ、間に合わないッ!!)

銃撃手として、ギャレンとしての基礎訓練の日々が、実戦での経験が、叫ぶ。
『もう間に合わない距離だ』と。

14 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:34:35 ID:1FDzq.Hk0

(だが、もしそうでも俺は、まだ何も成し遂げていない!諦めないぞ、俺は、俺は――!)

走馬灯の効果なのか、遅くなり行く自身のその感覚の中で、しかし彼はラウザーのトリガーを引いていた。
刹那弾丸同士の接触により巻き起こるのは生けるすべてを刈り取らんとする爆風。

(俺は、まだ終われないんだ。力を貸してくれ、小夜子、桐生さん、――剣崎)

それに飲み込まれその身を焼かれながら、胸に抱くは自身の失ってしまった恋人の、先輩の、友人の笑顔。
まだ彼らのもとには行けない、行くわけにはいかないと、そう叫びながら。
ギャレンの変身解除とともに、その意識を深い闇に落として。

橘朔也はこの戦いから脱落したのだった。

【橘朔也 脱落】
【ライダー大戦残り人数 14人】






一方その頃。
カリスによって戦況から大きく離された響鬼は、無造作に森に落とされていた。

「イテテ……」

受け身をとったものの慣れぬ飛行と墜落に身体をよじる響鬼を尻目に、カリスは悠々自適に舞い降りた。
そのままカリスラウザーを構え、無言のまま、響鬼に立てと投げかける。
それを受けて、響鬼は立ち上がりつつ、しかしそのまま素直に攻撃態勢には移れなかった。

音撃棒を握りつつしかしあからさまに気の乗らない様子の響鬼に対し、カリスもまた攻撃を行うこともせず。
そんな空気の中、響鬼はふと口を開く。

「……なぁ、お前、相川だろ?橘から聞いたよ、剣崎や橘と協力して、人を襲うアンデッドを封印してるって。
……なぁ、世界が崩壊するかもしれないから殺し合いに乗ったっていうなら、こんな悲しいことやめにしないか?俺たちと協力して、一緒に大ショッカーを――」

そこまで口にして、響鬼はすかさず横に飛び退いた。
カリスが、戸惑うことなく自分に向けてその弓を引いたため。
その決断にやはり響鬼は無念を抱きつつ、しかし先ほどまでとは違う戦士の風格で音撃棒を構え直した。

15 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:35:03 ID:1FDzq.Hk0

「……わかったよ、お前がその気なら、俺もやるしかないよな。俺が真っ向から、そんなこと間違ってるって教えてやる――!」

戦意を取り戻し、油断なく構えた響鬼を目にして、カリスはそれでいいと胸中で漏らす。
自分と仮面ライダーたちの間に、もはや言葉の介入する余地はない。
殺し合い以外に世界の崩壊を止める術があるというならば、戦いでそれを示し、証明してみろ。

「――タァ!」

かけ声と共に突進してくる響鬼をその視界に納めながら、カリスは、目前の仮面ライダーを見極めようとしていた。





「これでまず障害は消えた。次はあなたです、ディケイド」

その手に持つ巨大な大砲、ギガランチャーを構えなおしながら、ゾルダはつぶやく。
自身のこの戦いで絶対果たさなければならない使命は、世界の破壊者ディケイドの殲滅であり、それ以外の参加者の殺害やライジングアルティメットのパワーの解明など、ついででしかない。
そう考え、未だギャレンを葬った弾丸を放った硝煙が残る銃口を、ライジングアルティメットと対峙する戦士たち、その中でもディケイドに向け、発射。

そうしてゾルダは、新たなファンガイアの王として世界の滅亡を防ぐための第一歩を――。

「――!門矢さんッ!危ないッ!!」

ディケイドの横にいた、謎の黒い戦士に防がれる。
と同時に弾丸はライジングアルティメットへと到来、その身を爆風が覆った。
狙いを外しあまつさえ味方に当ててしまった事に思わず舌打ちをするゾルダだが、しかしその黒い煙の中から何らダメージを受けた様子のないライジングアルティメットが現れたことで、ひとまずは安心する。

並の仮面ライダーならば変身を解除しそのまま戦闘不能に持ち込めるゾルダの弾丸を受けまるで無傷の“それ”に僅かに畏怖を覚えつつも、しかし一旦は仲間であるという事実に胸をなでおろす。

16 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:35:36 ID:1FDzq.Hk0

(しかしいつまでも金居の思い通りにさせておくわけにもいかない。この戦いが終わり消耗した彼なら始さんとの二人がかりで何とか……)

と、そんな事を考えつつ、ゾルダは装填の必要ない大砲をディケイドに向かって放ち続ける。
彼もその手に持つ銃を駆使し何とか応戦しているが、やはり我がギガランチャーの火力には遠く及ばないようで、少しずつジリ貧になっていくのが目に見えた。
爆風との距離が詰まっているのである、そうどんどんまるで彼が段々と自分との距離は狭めているかのように――。

(――いや違う!まるでじゃない、本当に奴は僕に迫ってきている!)

そう、錯覚などではない事実ディケイドはその足をこちらに向け全力で走っている。
あくまで自分が狙いなら、それに応えようというのか、ならばむしろ都合がいい、自身の手で直接殺すチャンスなのだ。

(来るなら来い、ディケイド。僕が、キングである僕がお前を破壊してやる)

それは、目の前のディケイドが、真にライダーを破壊する破壊者となった際かつての友に放った言葉に似ていた。
破壊者を殺し、世界を救うという目的を果たすため、自分こそが破壊者の名に相応しく醜く変貌している事に、若き王は気付いているのか、いないのか。





「――!門矢さんッ!危ないッ!!」

怒声とともに既に臨戦態勢にあった所を押し倒されたディケイドは、それに対し一言いう前に、辺りを支配した火薬のにおいに顔をしかめる。
と同時に今自分の状況はかなり危機一髪のところで、目の前のG4がそれを助けてくれたのだ、ということに合点がいくのにそう時間はかからなかった。

「すまない、志村、助かった」
「いえ、とんでもありません!仲間を助けるのは至極当然のことですから!」

17 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:36:04 ID:1FDzq.Hk0

暑苦しい言葉を述べるG4を押しのけながら、ディケイドは周囲の状況を大体把握する。
無傷のライジングアルティメット、未だ健在のゾルダ、倒れている橘、消えた響鬼……。
響鬼はどこへ行ったのか、橘は死んでしまったのか、一抹の希望が見えた瞬間に断ち切られたことに戦慄するディケイドだが、同時にゾルダの放った弾丸を迎撃することで意識を現実に引き戻す。

その速度と威力に思わず息をのむが、休む間もなくゾルダはその銃口を自分に向け続ける。

「狙いは俺ってわけかよ!」

絶叫しながらも横に大きく駆けながらライドブッカーをブラストモードにしてエネルギー弾を放つディケイドだが、敵の殺意もなかなかのものでその銃口は決して他者のもとに向くことはない。

「アポロガイストが君のことを随分吹聴したみたいだからね、おめでとう士。これで君は晴れてこの場でも世界の破壊者として疎まれることになったわけだ」
「あぁ、これでやっと俺らしくなってきやがった」

ライジングアルティメットに弾丸が依然全く効かないことへの八つ当たりなのか、ディエンドはディケイドに皮肉を漏らす。
それに対し同じく皮肉で返しながら、しかし内心ではディケイドはゾルダへの対処を真剣に考察していた。

(奴の狙いが俺である以上、ここは向かうのが最適……、だが残されたこいつらは……)

また一つ弾丸をエネルギー弾で打ち消しながら、ディケイドはチラと未だライジングアルティメットに対しあくせくと対処を試みる三人を見る。
三人ともが戦闘においては文句のないエキスパートであることも手伝って、防戦一方ながら未だディケイド抜きで応戦できていた。
しかし、それも長くは持つまい。誰かの緊張が一瞬でも切れたその瞬間、彼らはファイズを葬ったその剛腕によって闇に落ちるのだ。

18 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:36:28 ID:1FDzq.Hk0

(どうする、ここを任せたばかりにあいつらが死んでしまったら――)

脳裏に蘇るは、この場で死んだ仲間、夏美、一真、北條のこと。
彼らは、自分がしっかりしていれば、助けられた命なのではないのか。悔やんでも仕方がないとそう何度も飲み込んだはずの思いが、また反芻される。
もしここで自分がいなくなったばかりにまた誰かが死んでしまったら――。

「何してる士、早く彼を倒してきてくれたまえ」

とうとう堂々巡りを始めたディケイドの思考に瞬間水を差すかのように割り込んできたのは、自分にとって一番付き合いの長い海東大樹、戦士ディエンドだった。

「そうだ門矢、いつまでもこんな音が響いていたんじゃうるさくて戦いに集中できん」
「行ってください門矢さん!ここは必ず俺たちが持ちこたえて見せます!」

次々にライジングアルティメットとの攻撃をかわしながら戦士たちが声を上げる。
それを受けて、ヒビキや葦原に続き、秋山や志村が――少なくとも今は――自分を仲間として受け入れていることを感じる。
そうだ、それならば、彼らのことも信じてみよう。

そうでなければ仲間など、信頼など生まれないのだから。

「わかった、あいつは俺が破壊してきてやる。――だからお前らも、絶対に死ぬなよ」
「おいおい一体誰に言ってるんだい?僕は君よりずっと前から、通りすがりの仮面ライダーなんだよ?」

19 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:36:51 ID:1FDzq.Hk0

砲撃手ゾルダの方へ蛇行しつつ駆けながら、ディケイドは“仲間”へと言葉を掛ける。
ディエンドはいつもの調子で、ナイトは鼻で短く息を吐くことで、G4は強いうなずきで、それに応える。
それを確認するが早いか、瞬間ディケイドは最早振り返ることもなくそのスピードを上げる。

(全く、仮面ライダーってのも楽じゃないな。これなら破壊者の方がよっぽど簡単だぜ)

心の中で愚痴りながら、しかしディケイドの内心はその実、晴れやかだった。
なぜなら自分は、“仮面ライダー”なのだから。
善を助け悪を挫く、そんな正義のヒーローの名を、胸を張って名乗ることが出来るのだから。

(刻んでやるぜ一真、夏海、俺の物語ってやつを、な)

そしていよいよギガランチャーの弾丸を避けるのが難しくなったその時に。
彼は、一枚のカードを握りしめた。





当たり前のことだが、強化形態、あるいはそれに匹敵する能力を持つライダー二人を含めたとしても、たった三人で強靭無比の能力を誇るライジングアルティメットの相手をするというのは、無謀としか言いようがないことだった。
しかしそれでも何とかなっているのは、G4の持つ特殊銃、GM-01スコーピオンに込められた特殊弾――神経断裂弾――による効果が大きかった。
無論、それはこの場では制限されているのかあるいは元々連射性を優先しているのかライジングアルティメットの強固な体表には大きなダメージを与える前に回復されてしまうのだが。

ベルトを狙えばあるいはその行動を止めることが出来るかもしれないが、しかしそれでは五代雄介を奪還するという当初の目的が潰えてしまうことになる。
全く以て厄介な相手だと舌打ちしながら、明らかにスコーピオンを持つG4に対する攻撃が苛烈化しているのを受けて、ディエンドはカードを自身のドライバーに装填する。
ライジングアルティメットに対抗できる銃が一つしかないのなら、それを増やせばいいのだ、とニヒルに笑って。

20 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:37:16 ID:1FDzq.Hk0

「行ってらっしゃい」

――KAMEN RIDE……
――G3!

ディエンドがトリガーを引くと同時、そこから放たれるは多数の影。
それが一斉にオーバーラップしたかと思えば、中心でそれは重なり戦士を象る。
そして現れたのは、G4を幾分か軽量化したような戦士、G3。

彼の手に握られているのはそう、GM-01スコーピオン。
G4へ剛腕を振るわんとするそれの膝に向けスコーピオンの弾丸をまるでロボットのように的確に打ちこまむと同時、ライジングアルティメットは僅かに体制を崩す。
そしてG4の驚異的な能力と志村純一の類稀な戦闘センスを以てすればその一瞬で十分。

G4はガードを固めた腕を解きつつライジングアルティメットの闇を込めた掌を打ち抜き、暗黒掌波動と呼ばれる彼の必殺技を、見事に封じることに成功する。
そしてその隙を逃がすナイトではない、初めて怯んだそれを目掛けて剣を一閃。
肘で難無く受け止められるも、続く二撃目は厚い体表を掠った。

「ガァァ……」

無敵のライジングアルティメットが、吠えている。
それに対し戦士たちは希望を抱く。
これならば、勝てはしなくとも変身制限まで持ちこたえる位なら、と。

しかしライジングアルティメットも甘くはない、ものの数秒で今までのダメージを完全に治癒、今度はスコーピオンを持つG3へその波動を放たんと手を向ける。

「させるかっ!」

21 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:37:35 ID:1FDzq.Hk0

しかしそうはさせじと叫びつつG4とG3は同時に神経断裂弾を放つ。
狙いは的確、放たれた二発の弾丸はその伸ばされた肘に真っ直ぐに向かって。

「――ッ!」

だが刹那、ライジングアルティメットが体を大きく360度捻ったその瞬間に。
戦況は、全て覆ることとなった。

「……!」
「ぐあっ!」

ディエンドやナイトには、一切知覚すらできないスピードで放たれたそれは、一瞬でG4とG3の元に着弾。
G3は無残にもその身を貫かれたことによってカードに姿を変え、G4はその場に倒れ伏した。

「志村さん!」

思わずG4に駆け寄りそのまま彼を抱え離れていくディエンドを尻目に、ナイトは冷静に状況を把握する。
今二人を貫いたのは、ライジングアルティメットの能力である暗黒掌波動ではない。
なれば一体何を用いたのか、最早答えなど決まっている。

G3とG4が同時に放った神経断裂弾としか、考えられまい。
つまりライジングアルティメットが持つ反則的な超感覚能力と身体能力によって、二発の神経断裂弾を掴み、その勢いを殺さず、どころかその勢いを増して返したのだ。
全くもって常識を超えたという形容詞をいくつ使えばこいつについて表現できるのか、とそう考えて。

(だが、それが出来るなら最初からやっても可笑しくはない、二人が同時に放つのを待っていたのか、それとも……)

残された五代の、必死のSOSであったのか、と思考するが早いか、最早完全に回復したライジングアルティメットが地を震わせながら迫ってくる。
ディエンドもいない今、単身でこの魔人に挑むのはナイトには不可能。
そう、単身では。

――TRICK VENT

22 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:37:56 ID:1FDzq.Hk0

またも電子音声が辺りに鳴り響き、ナイトと全く同様の姿をした影が三つ現れる。
これがナイトの持つ――アドベントが最早使用できないことを踏まえると――最後の、この場での有効な手札。
蓮としては以降必ず敵にまわる戦士たちを前にしてこの札はあまり切りたくなかったのだが……いいや、贅沢など言っている暇はない。

まず大事なのは、この場を生き延びることなのだから。
同時に切りかかったナイトは究極の闇の剛腕に捉えられるその寸前に離脱する。
逃げ遅れた、一人の分身を除いて。

同等程度の力を持つ龍騎サバイブの攻撃を受けてもある程度は耐えることのできた自身と同等の防御力を持つはずのそれが、いとも簡単に戦闘不能となったのを見て改めて規格外のその実力に驚愕する。
だが、しかしそれすら押し殺してナイトは再び剣を振るった。
三つもの強力な剣劇を受けながら、しかしそれがどうしたと言わんばかりにライジングアルティメットはその腕を薙ぎ払う。

次の瞬間、同時に吹き飛ばされた三人のナイトのうち、一人がライジングアルティメットの拳から放たれる闇にのまれ消滅する。

「うおおおおおおおぉぉぉぉ!!」

しかしそれを見ても、ナイトの戦意は一切萎えることはない。
何故なら、今もずっと、彼には、自分が戻るべき唯一の理由が見え続けているのだから。

(恵里、俺は必ずお前の元に戻る、そしてもう一度お前の笑顔を見る。その為なら俺は、俺は――)

全ては、無愛想な自分に初めて純粋な愛情をくれた、あの優しい笑顔の為に。
まだ、死ねない。
記憶の中で笑う一番美しい彼女の記憶が、何度もリフレインし、その度に、思いはどんどんと強くなっていく。

一途な愛を胸に、残る二人のナイトが今度はタイミングをずらし波状攻撃を仕掛ける。
一見ライジングアルティメットの攪乱に成功したかに思えたが、しかしそんなナイトの思いを踏みにじるかのように、次の瞬間には一人のナイトが持つ剣は叩き折られ、その仮面を拳が貫いていた。
怒声と共に最後の、本物のナイトが剣を振るうが、しかし最早食らうまでもないとばかりに躱され逆にその首を掴まれる。

「ぐあぁッ!」
「――ッ!」

23 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:38:17 ID:1FDzq.Hk0

うめき声をあげるナイトを気にもせず、ライジングアルティメットはその驚異のパワーで以て易々とナイトを持ち上げる。

(俺は、ここで死ぬのか……)

ギリギリと強まっていくライジングアルティメットの込める力と、それに比例して薄くなっていく思考を感じながら、秋山蓮は自分の死期を悟っていた。
何故、海東が離脱した時に、トリックベントの分身を用いて自分も逃げることをしなかったのか。
そんな事をぼんやりと考えるが、しかしその答えは、彼にとってあまりにも、あまりにも――。

――蓮!

(こんな最後にまで出てくるなよ、城戸……)

脳裏に浮かぶは、自分が死んでも構わないと考えるほど愛した女性の笑顔、ではなく。
忌々しいほどに眩しい、一人の男の笑顔。
嗚呼。認めねばならないだろう、自分がこんな絶望的な状況で、なぜ自分の果たすべき使命すら投げ出して究極の闇と戦ったのか、その理由を。

――秋山さん!

その忌々しい笑顔と、目の前の男の笑顔を、どこか自分の中で重ねてしまっていたという、その事実を。
眼の前のライジングアルティメット――いや、今だけは五代雄介と呼ぼう――のような存在に、あの誰よりも戦いを嫌った男がなってしまったら。
そう考えてしまった時点で、殺し合いなど関係なく、あるいは、この命を捧げる覚悟を決めた愛を、果たせなくなる可能性があったとしても。

彼の中から、逃げるという選択肢など、その笑顔を見捨てるという選択肢など、消え失せてしまったのであった。

(どんなに御託を並べても、結局願いは生きて叶えなければ意味がないのにな……、恨むぞ城戸、俺は自分が思っている以上にお前のことを――)

その時、まるで鏡が割れるかのようにナイトの鎧が消失する。
今まで以上に急速に消えゆく命を確かに感じながら、しかし彼の表情は、どこか晴れやかですらあって。
そうしてその命が尽きる、まさにその瞬間。

彼はついに――誰にも聞かれぬ思いであることを知りつつも――その忌々しい笑顔を、どこか望んでいた自分がいたことを認めた。
そして、その笑顔を浮かべる男と、殺し合いなどという状況で会わなければよかったのにと、真剣に思い悩んだ自分がいたという事実も。
しかしだから、だからこそ、願おう。

殺し合いでしか想いを表現できなかった自分から解き放たれるその瞬間くらいは、自分の正直な思いを伝えても誰も文句は言うまいと、そう信じて。

24 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:38:50 ID:1FDzq.Hk0

(城戸、お前はなるべく……生きろ……)

――グキッ

鈍い音が、彼が首の骨を折られた音が、辺りに響く。
愛に生き、その思いを誰よりも強く抱き続け戦い続けた男がしかし、その最後にようやく自分に芽生えた友情という感覚を認めた、その瞬間に。
彼の命は呆気ないほどあっさりと、まるで虫けらのように、いとも容易く刈り取られたのだった。

【秋山蓮 脱落】
【ライダー大戦残り人数 13人】

ドサッと、その肉体が地面に落とされると同時、五代は、否ライジングアルティメットはその身を生身の人間の物に戻しながらもまるで何事もなかったかのようにその歩みを再開する。
変身制限を迎えてしまった事は、彼にとって懸念すべき事態でもなんでもない。
例えこの身が朽ち果てようと、地の石を持つ主人に自身のすべてを捧げるのに、変わりはないのだから。

と、変わることない機械のような思考ルーチンを終えながら、その虚ろな目で以て新たな戦場をその目に写す。
その眼の先にあるのは、自身の主人、ギラファアンデッドが二人の怪人と戦闘をする姿。
彼の念じた〝近くの参加者をキングやジョーカーと協力して殺せ″という指示に従うなら、それが一旦成された今自分が成すべきことは、主人の元に戻りその脅威を取り除くこと、そして新たな指示を授かることだ。

合理的な判断で以てその既に常人離れした足を主のもとに早めようとした瞬間、一閃。
突然の奇襲を持ち前の超感覚で以て躱しながら、その先にいる人物を視認。

「へぇ、これでも避けられちゃうか、手加減なしのつもりだったんだけどな」

シアンの鎧を身に着けた、戦士ディエンド。
彼の放つ弾丸は自分をこれ以上変身させまいと、これ以上罪を重ねさせまいとするものなのだろう。
――そんなこと、不可能であるというのに。

25 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:39:18 ID:1FDzq.Hk0

容赦なく体の中心部を狙い続けざまに放たれる弾丸は、しかし研ぎ澄まされた感覚と尋常ではない身体能力で以て難無く回避される。
ディエンドの放つ弾丸はより熾烈に、より正確にこちらに当ててこようとその精度を高めていくが、しかし、それならそれでこちらにも手段はある。
無駄のない動きでポケットから自身の切り札を取り出すと同時、そうはさせじとディエンドの弾丸が飛来するが、何のことはない。

目の前に倒れる秋山蓮の死体を盾にすることでそれをやりすごし、彼の肉体をディエンドの弾丸が貫くより早く、自分の変身を完了する。

――NASCA

首筋のコネクタに刺されたそのメモリの名を、ガイアウィスパーが高らかに宣言する。
瞬間のみ青を象ったその肉体は、瞬きの間にその身を赤く染めた。
Rナスカドーパントと化した彼はディエンドとの距離を無にせんと一気に加速。

しかしただでその接近を許すほど、ディエンドも愚かではない。

――ATACK RIDE……
――BARRIER!

瞬間、突如出現したエネルギーの壁が、Rナスカの進行を防ぐ。
それならばといわんばかりにナスカはその掌から光弾を乱射するが、いずれもエネルギーのバリアに阻まれディエンドには届かない。
そしてディエンドは、その一瞬の隙を無為にするほど愚かではなく。

――G4,RYUGA,ORGA,GRAVE,KABUKI,CAUCASUS,ARC,SKULL
――FINAL KAMENRIDE……
――DIEND!

アタックライドバリアの効果が切れるとほぼ同時、ディエンドの切り札も、その準備を完了する。
シアンの鎧をより一層強固にし、その胸には八つの世界の仮面ライダーのライダーカードが、まるで彼の力を証明するかのように飾られていた。
彼こそは、世界を股にかける怪盗ライダーディエンド、その完成形たるコンプリートフォームだった。

「さぁ、第二ラウンドの始まりだ」

ディエンドが、不敵に告げる。
そう、戦いはまだ始まったばかり。
この戦いが始まってからまだ、三分しか経過していなかった。

26 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:39:54 ID:1FDzq.Hk0



秋山という男を犠牲にしながら、なぜディエンドが戦いの場を離れたのか、その理由は数十秒前に巻き戻る。

「志村さんッ!」

眼の前に倒れる黒い鎧を見つけた男に対し、なぜ自分が成さねばならぬはずの戦いを放棄してまで呼びかけているのか、それはディエンドの鎧を纏う海東大樹自身にも全く分からないことだった。
見ればその相当に厚いはずの装甲の左胸部装甲の、丁度左胸あたりに見事な穴が開いているのが確認できた。
銃弾が突き抜けていればまだいい。

もしもその硬い装甲が災いし背中側までを貫ききれていなかったのなら……。
最悪の可能性を思い浮かべながら意を決しその体を裏返そうと伸ばした手を、しかし掴み止めたのは倒れ伏すG4その人だった。

「何やっているんですか、海東さん……。私のことなんていいですから、早く秋山さんの援護を……」

握られている手に感じる力は、彼が手加減しているのを考慮してもあまりにも弱弱しく。
ディエンドが少しでも力を込めれば、簡単に振り払えそうな程度でしかなかった。

「そんな事を言うな志村さん、早く傷を見せてくれ、今ならまだ間に合うかもしれない――ッ」

自分が何をしているのか、ディエンド自身にも最早よくわかっていなかった。
何故、この男にここまで執着しているのか、言動や行動がいくつか怪しいから?
いや、違うだろう。その答えをもう、自分は知っているはずだ。

しかし知っていてもなお……、海東大樹という男にはそんな自分の感情を純粋に受け止められるだけの覚悟が、足りなかった。
必死の剣幕でG4の装備を外さんとするディエンドに対し、しかしG4は弱弱しくその手を払いのける。

27 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:40:16 ID:1FDzq.Hk0

「いえ、もう手遅れです。どうやら、背中側まで貫通せずに、中で跳弾したようです……、私はもう、助からない」
「そんなことを言うな、頼む、僕にあなたを助けさせてくれ、目の前で死なないでくれ!」

最早、いつものように皮肉で状況を茶化す余裕すらなかった。
思ったままのことを、そのまま口にする。
そんないきなり様子が一変したディエンドに対し、G4は呆気に取られたか、口にする言葉を選別しているのか答えはしない。

すると少しの間の後、口中の血を飲み込んだような音と共に、G4はまるで最後の力を振り絞るかのように蠢いた。

「海東さん、頼みます。私の分まで戦って……下さい。仮面ライダーの力で、みんなに、希望を……」

言い切った瞬間、G4の首がガクンと垂れる。
その手に伝わるのは、変わることない鉄の冷たさ。
しかし、一つ明らかなことが、ある。

それは彼が、志村純一が、死んだという、たった一つのシンプルな答えだけだった。

【志村純一 脱落】
【ライダー大戦残り人数 12人】

「志村さん、嘘だろう……?兄さん!」

最早、声に出さずにはいられなかった。
そうだ、戦いの最中目を離せなかったのも、こうして重大極まりない戦いを放置してまで彼のところに来たのも、結局は一つの理由だけ。
彼が兄である、海東純一と同じ顔を、同じ声をしていたから、それだけに他ならない。

戦いの結果として己の判断で第二のフォーティーンになることを宣言し、自分を含むかつての仲間たちと袂を分かった兄、純一。
自身の世界を通りすがる瞬間に、その仲を修復できなかった事が心残りになってしまっていたのか。
そんな甘っちょろい感覚を持つ自分が、確かに存在することを自覚しながら、ディエンドはG4のデイパックからグレイブバックルを拾い上げる。

「・・・・・・すまないね、志村さん。僕は泥棒だからさ、あの世で存分に恨んでくれたまえよ」

28 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:40:38 ID:1FDzq.Hk0

どこか寂しげに告げながら、バックルをデイパックに仕舞い込む。
志村には悪いが、自分にとってこれは兄の物にしか思えない。
逆に言えばこのバックルを持っていれば、自分が兄とともに戦っていると、そう錯覚できるような気がしたのだ。

そんな新たな思いを抱くと同時、振り返ったディエンドの目に飛び込んできたのは、秋山蓮の命の炎が消える、まさにその瞬間。
それに向かって駆けだしながら、同時に彼は懐からタッチパネルのようなアイテムを取り出した。
まさにそれは一か八かのとっておきの切り札。

しかし今のディエンドには、それが失敗に終わるビジョンが、どうしても抱けなかった。
だって今の自分には、兄がついていてくれるような気がしたから。
そんな思いを抱きながら、ディエンドはその手に持つ端末に、一枚のカードを滑り込ませたのだった。





「ハァァァァッッ!」

雄叫びと共に、弾幕の中を潜り抜け駆けるはバーコードの意匠を全身に刻んだマゼンタカラーの戦士、ディケイド。
対するは緑のスーツに重厚な鎧を纏った戦士、ゾルダ。
彼らの距離は最早本来のゾルダの間合いではない、中距離。

そろそろこのギガランチャーの名を持つ大砲をかなぐり捨ててでもジャコーダーやアクセルブレードといった中、近距離用の攻撃手段に切り替えるべきか、と考えるが早いか、ディケイドが蛇行をやめ、その足を自分に向け真っ直ぐに加速する。
仲間を気遣ったあまりの捨て身の戦法か、それとも何か策があるのか、そのどちらにせよ最早武器を取り換えている暇はないと、ギガランチャーのトリガーを引く。

――KAMEN RIDE……
――BLADE!

これで仕留められるなら、とそんな思いを抱く暇もなく、ギガランチャーの弾丸が発生させたその爆炎の中から、青い仮面ライダーに姿を変えたディケイドが飛び出してくる。
全く持って奇妙な技を、と舌打ちしながら、最早自爆の危険性すら生じ利用価値のなくなった巨砲を手放す。
しかしまだ少し距離はある、ブレイドという名前からするなら、剣を使うのだろうその姿に対応すべくデイパックからアクセルブレードを取り出そうとして。

「やらせるかよ」

――ATACK RIDE……
――MACH!

突如その身を加速したディケイドにそれを阻まれる。
何とか一撃を胸のアーマー部分で受けることでダメージを軽減するが、アクセルブレードはもちろんデイパックには最早手を伸ばせないだろうことは明白だった。
素早く腰のギガバイザーをその手に取りながら、ゾルダは心からの憎悪を隠そうともせず目前の悪魔に向ける。

29 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:40:58 ID:1FDzq.Hk0

「ようやく会えましたね、ディケイド」
「その声……、ったく一真がああだったから違うかと思ったが、お前はどうやらあまり変わらないらしい」
「……何の話をしているかさっぱりですが、あなたの使命は、この場で破壊されすべての世界を破滅から救うこと。今からその使命を王である私の手で果たしてあげましょう」
「ふっ、そういうことなら、悪いが間に合ってる」

瞬間、場には張りつめた空気が流れる。
この近距離では、不用意に動いた方が相手から手痛い反撃を受ける。
双方ともに歴戦の勇士である両者はそれを理解しているからこそ無駄に動くことはしない。

その状態がどれほど続いたのか。
――先に動いたのは、ディケイドだった。
ヤァと掛け声を発しながらの斬撃はゾルダを下から切り上げるものだったが、その程度はお見通しといわんばかりに上半身を仰け反ったゾルダに容易くかわされる。

と同時ギガバイザーが火を吹くが、ほぼ反射的な攻撃なうえやはり相対するディケイドに比べ慣れないゾルダの鎧。
予想通りの攻撃だと言わんばかりにライドブッカーのホルダー部分で弾丸を二発受け止め、お返しといわんばかりに、放たれたのは二発の弾丸。
剣戟でしか攻撃できないとばかり考えていたゾルダはまるでハトが鉄砲を食らったように驚き、受け身すらとれぬままその体を吹き飛ばされた。

ディケイドの持つ専用武器、ライドブッカー。
その特徴は剣と銃、そしてカードホルダーの形態を自由に使い分けられることにある。
ディケイドは基本的に他のライダーに変身した際、アタックライドを使用しそのライダーの専用武器を使用しない場合でも、そのライダーの戦闘スタイル――ブレイドならソードモード、といった具合に――に忠実にライドブッカーを使用する。

それがそのライダーに対する敬意からくるものなのかはともかく、あくまでそれが他のライダーに変身しているディケイドである以上、ディケイドの専用武器たるライドブッカーの各形態を自由に使用できない理由はない。
ゆえにこの状況では、ブレイドという、名前からして――というか元の世界では実際そうなのだが――剣しか使わなそうなライダーが銃を使うという奇策で以てゾルダへの攻撃に成功したわけである。

30 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:41:20 ID:1FDzq.Hk0

だが、ゾルダとてただでやられるほど身体も精神も脆くはない。
空いた距離を好機とばかりにすかさずデッキに手を伸ばしカードをドロー、そのまま手に持つギガバイザーに装填する。

――SHOOT VENT

瞬間、ゾルダの肩にはおおよそ不釣り合いなほど巨大な二門の砲台が装着される。
その砲台の名はギガキャノン。
ゾルダの持つ二枚目の必殺の威力を持つカードである。

今度は逆に息をのんだディケイドに対し、ゾルダは砲弾を発射、と同時に彼が仲間たちに流れ弾がいかないように位置どっていることに気づくが、しかしどうでもいい。
先程のようにライジングアルティメットに自身の弾丸が当たりその行動を抑制することがない分自分にもメリットがあると思い直し、その力を思う存分解き放つ。

(チッ、野郎、考えてた以上に俺の知ってる〝奴″に近いぜ。音也や一真がああだったってのに一番厄介な奴が殆ど変らないとはな……)

対するディケイドも、自身の周辺を舞う爆炎を避けながら敵への思いを強くする。
自身へ旅の始まりを告げた、紅渡。
聞いた話では、自分が破壊者として一旦の仕事を終えた際、海東や夏海の前に現れディケイドに物語は無いとのたまったらしい。

使うだけ使っておいて本人には礼も何もなしかと苛立ちが募っていた中で、この場における音也や一真の、自分の知る彼らとの相違に一抹の希望を抱いた途端に、これだ。
破壊者としての自分を知っているだけでなくあのライダー大戦の世界のそのままの声で喋り方で自分に戦いを吹っかけてきた。
本当に自分の知る彼と別人なのかとため息を漏らすが、しかし考えていても何も始まりはしない。

31 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:41:41 ID:1FDzq.Hk0

音也への借りもあるしな、と自分を納得させると同時ホルダーと化したライドブッカーから一枚のカードを取り出し、そのままドライバーに装填した。

――KAMEN RIDE……

「早速力を借りるぜ」

――HIBIKI!

心の中で呟いた名前を復唱するかのようにドライバーが、けたたましく9つの世界の一つに存在する戦士の名を告げる。
それに応えるかのように炎に包まれたディケイドの体は、しかしそれを払いのけた瞬間にその姿を紫に塗り替えて。
刹那そこに現れたのは、マジョーラカラーが鈍く輝く戦士、響鬼だった。

その変身を確認するまでもなく、彼は続いてもう一枚のカードをブッカ―より取り出し、バックルに読み込ませる。

――ATACK RIDE……
――ONGEKIBOU REKKA!

電子音声が告げると同時、彼は背中に取り付けられた専用のホルスターから響鬼の専用武器、音撃棒烈火を取り出す。
その先端に炎が灯っているのを確認するまでもなく、まるで元々自分の技だったかのように扱いながら、掛け声と共にそれをゾルダの弾丸にぶつける。
二門の銃口から発射された巨大な弾丸は、同じく二本の音撃棒から放たれた炎弾により相殺、辺り一帯に爆風と硝煙を撒き散らした。

「くっ、小癪な……」

そして、ディケイドの目的がこの濃い煙幕であるということなど、ゾルダにとっては明白。
煙幕が晴れる前にギガキャノンを乱射する手も思いつくが、しかし爆音で知らぬ間に懐に忍び寄られる可能性を考え、相手の動きを待つことにする。
あるいはこのまま逃げられる可能性も考慮するが、自分に向けられる敵意は変わらず、どうやらあちらも逃げる気がないようであった。

32 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:41:57 ID:1FDzq.Hk0

(それならそれでいい……、どこからでも来いディケイド。どんな卑怯な手を使われても僕は必ずお前を破壊する)

右手にギガバイザー、肩にはギガキャノン、まさに要塞の異名が相応しいほどに武装されたゾルダはゆっくりと、硝煙が晴れるのを待って――。

――……DE・DE・DE・DECADE!

(――来るッ!)

構えるが早いか電子音声を言い終えるが早いか、刹那の後にはゾルダの目前にまで伸び、何重にも重なった巨大なライダーカードを目視する。
既にライジングアルティメットに対して放ったエネルギー弾を見ていたゾルダは、彼にとっては無傷のそれも、今の自分にとっては十分に致命傷たり得ることを十分に把握していた。

(ですが、これで終わりです)

恐らくはエネルギー弾の放たれるより早く、発射準備の完了していたギガキャノンから砲弾を放つ。
逆にカードを突き抜けていったゾルダの一撃は確かな手ごたえを以て爆発を発生させ、今度こそ悪魔への勝利をゾルダは確信する、が。

――FINAL ATACK RIDE……
――DE・DE・DE・DECADE!

「なっ――!」
「ハァァァァァァッッ!!」

先程と同じ電子音声を響かせながらディケイドはその巨大なライダーカードすら煙幕に隠して既に自分の懐に忍び込んでいた。
先程あたったのは一体……?あれは罠だったのか?
多くの疑問を抱えながら本能で急所である胸を庇ったゾルダを気にも留めずに、ディケイドはその剣にマゼンタの光を灯して。

的確にその緑のデッキを、打ち砕いたのだった。

33 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:42:17 ID:1FDzq.Hk0





さて、ディケイドがなぜこの攻撃に成功したのか、お察しの方もいるとは思うが解説しよう。
彼はアタックライド音撃棒烈火の効果を発動すると同時に発生した爆音に紛れ、アタックライドイリュージョンを使用。
制限により一体一体に出来ることが限られていると困ると最低限必要な一体の分身だけを生み出し、ファイナルアタックライドを使用させる。

ゾルダもその存在を知るディメンションブラストを使用することでギガキャノンの砲弾を発射させ、一層煙幕を濃くすることに成功する。
後は自分自身がもう一度ファイナルアタックライドを使用し、ディメンションスラッシュを発動。敵の死角からデッキを破壊することに重点を置いた攻撃を放つ。
それによって確実に敵の戦力を削ぐという一連の流れが彼の作戦であった。

少し前までの心の荒むようなライダー破壊の旅のおかげで身についてしまった小汚い手だが、しかしそれも自分の技なのだと、士は自分を納得させる。
強力なイリュージョンを今の今まで使わなかったのは制限を恐れたのかそれとも破壊者であった自分を一瞬でも早く忘れようとしたのか――。
その答えは、きっと士本人にしかわからないのだろう。





「ぐあッ……!」

ディメンションスラッシュによって生じた爆炎と共に後方の大木に背中を思い切り打ちつけた渡は、そのまま重力に逆らいきれず地に伏した。
全身に残る激痛と同時に今自分が何をされたのか一切わからないことによって、目の前の存在が今まで戦ってきたファンガイアとは格の違う存在であると再認識する。
やはりこいつは優先して破壊しなければとその憎悪を一層強める中で、その悪魔が目前にまで歩み寄ってきているのに気づく。

「大体わかった。・・・・・・どうやら厄介なことに、お前は俺の知る〝紅渡″じゃないらしいな」
「どういう……ことです?」

その気だるげな声に確かな嫌悪感を抱きつつも、紅渡という名を否定することすら忘れて――傷の回復を待つまでの時間稼ぎという建前で――渡は忌むべき破壊者に疑問をぶつける。

34 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:42:33 ID:1FDzq.Hk0

「いや、俺を知ってる〝紅渡″ならこの程度の攻撃、簡単に対策出来るだろうからな」

先程のディケイドの、複数のカードを用いた攻撃。
その答えは彼の能力を知る者には実に簡単、しかし知らぬ者には難解。
この策を使うことで〝この渡″が自分の知る紅渡かどうか確かめる……というところまで士が考えていたかは定かではないが、しかしこの攻撃に全く予想外だったという反応を目の前の〝紅渡″が見せたことで彼は事情を大体察する。

それは、『どうやら目の前の〝紅渡″は自分のあった音也の息子であり、正真正銘自分の知るあのいけ好かない紅渡とは別世界の同一人物どまり』だということだった。
色々面倒なことになったな、とため息をつくディケイドの前で、真剣に困惑した表情を見せるのは渡である。

「あなたの言う〝紅渡″とは一体……誰のことですか」
「さあな。ともかく、お前が殺し合いに乗っている以上音也への貸しの分くらいは〝お説教″してやらないとな」
「父さんに会ったんですか!?」

ディケイドの答えになっていない答えを追及するより早く、渡にとって聞き捨てならない名前が飛び出す。
ああ、と一瞬の間をあけて回答したディケイドに対し、渡は思う。
何故、よりによってこいつが、と。

「あいつには一発殴られたからな、その分お前には俺が――」

――すでに、目の前の男の声など耳に入ってはいなかった。
破壊者であるこの男と、父が会い、恐らくは戦ったのだ。
父が無事破壊から免れたのか、この男に聞いても碌な答えは返って来るまい。

なれば自分の役目は――ああ、もうわかりきっている――ただ一つ。
もう大事な人を殺されないように、今ここでこの男を殺すだけ。

「――世界の破壊者、ディケイド」
「あ?」

既に誰も聞いていない話を阻まれて少し苛立った様子のディケイドだったが、しかし渡の様子が先程までより一層圧迫感の強いものになっているのを見て思わず構えなおす。
目の前の渡は生身だ、変身している士が負ける道理はないが、しかし本能が告げている。
この男は、自分の知る〝渡″と同等、もしかすればあるいはそれよりも、強大な存在であると。

「お前に、王の判決を言い渡す」

背筋が凍える。
らしくはないとわかっていても、認めざるを得ない。
これは、この迫力はまさしく――。

「――死だ」

35 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:43:08 ID:1FDzq.Hk0

――王の資格。
その答えに行きつくが早いか、渡は冷たく言い放った言葉を実践せんとポケットに手を伸ばす。
しかし、さすがにそれをただ見ているわけにはいかない。

ディケイドもライドブッカーをブラストモードに切り替え変身を防ごうとするが。

「サガーク」

小さくつぶやいた渡――否、キング――の声に応じてその僕たる蛇を象ったようなモンスターが彼のデイパックから飛び出し、ディケイドの弾丸を弾き飛ばした。
無論、ディケイドの能力を以てすれば使役される小型モンスター程度難無く突破出来るだろう。
だがそれより早くキングの行動は、すでに完了していた。

――WEATHER!

野太い男の声が、気象の記憶を持つそのメモリの名を叫ぶ。
同時にキングの肉体は突如発生した竜巻によって覆われ――。
次の瞬間にはすべての変異が完了していた。

現れ出でたのは白を基調としつつ腰に金色の龍を模したベルトを巻く、まさに気象の記憶を司るに相応しい迫力を誇る怪人、ウェザードーパント。
しかしディケイドにはそれに見とれる時間すら与えられない。
ウェザーが軽くその指を天に掲げたかと思えば、瞬間ディケイドの頭上には暗雲が立ち込める。

余りに不自然なそれを目の前の怪人が発生させたのは明白――とそこまで考えるより早く、ディケイドは横に飛び退く。
直観での行動だったが一瞬の後にディケイドのいた地点から眩い閃光が発生したことでそれが正しかったことを実感する。
今まで立ち向かった敵の誰も持ちえなかった気象のコントロールという反則じみた能力にディケイドは身震いし、だがとふとあることを思い出す。

36 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:43:30 ID:1FDzq.Hk0

(そういや涼の奴が言ってたっけな、ダグバってのも天候を操れたらしいって……)

と、ふと場違いな考えが湧くも、しかしすぐにそれをかき消す。
どうにもダグバの話を聞いてから事あるごとにそれについての事が頭をよぎる自分がいる。
どちらにせよ後々相手どらねばならない相手だが、今はそれより大事なことが――。

――閃光。
渡の覚悟と怒りによりウェザーとの親和性がより高まっているのか、その雷撃はますます鋭さと威力を増し。
ディケイドは段々とその止むことのない雷撃を躱せなくなってきていた。

いずれ躱しきれなくなるのがわかっているのなら……とディケイドは未だにその手を天に翳し続けるウェザーに向け一か八かの攻撃を仕掛け――。

「――かかりましたね」
「何っ、ぐあッ!?」

不意にその手を下したウェザーの不敵な宣言に驚く暇もなく、ディケイドの視界が揺らぐ。
その原因を探るより早く、自身の背面に強い衝撃を受け、彼は呻き声をあげた。
揺らぐ視界、続く衝撃、そのどれもが殺意のこもった彼の意識を刈り取りかねない強力なものだったが、ディケイドはすんでのところで踏みとどまる。

やっとのことでそれから解放され、激しい頭痛に悩まされながらディケイドがその目にしたのは、ウェザーが金色の鞭のような武器をその腰に取り付けるところ。
まさかジャコーダー以外にウェザーそのものにも鞭状の近距離戦をも可能にするツールがついていたとは。
自分の能力の多彩さを棚に上げてウェザーを批判するディケイドだが、しかしそんな軽口すら叩けないほど自分の身体が悲鳴を上げているのは火を見るより明らかなことであった。

37 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:43:50 ID:1FDzq.Hk0

動かなければ、このままでは、やられる。
最早変身を保てているのが奇跡と言う他ない状況を押して、彼は全身に力を込めるが、ガドルとの戦いの傷が開いたのか、身体は依然いうことを聞かない。

「――終わりです、ディケイド」

――そしてついに、その時は訪れる。
その強靭な脚力で以て否応なしに仰向けにされたディケイドを踏みつけながら、ウェザーはそのデイパックより巨大な大剣を取り出す。
これが振り下ろされれば、間違いなくこの身は尽きるだろう。

(クソッ、俺の旅は、こんなところで終わるっていうのか……?)

最早録にその拘束を振りほどく力すらないディケイドは、ふとそんな事を考える。
目の前の若き王は、その余りある憎しみで以て自分を確実に亡き者にせんとその手に持つ大剣に自身の雷撃の能力を付加している。
この一撃から逃れる手段は……もう、残されていない。

今度こそ、本当にもう駄目かと、そう思いかけた、その瞬間。

「――ラァッ!」
「なっ!?」

その場の誰も予期しなかった騎士(ライダー)が、駆け付けた。
ディケイドを倒す一点のみに集中を振り切ったウェザーはその一撃に巨体を揺るがし。
まるでディケイドを守らんかとするように、騎士はウェザーの前に立ちふさがる。

「悪ィな門矢、遅くなった」

最早、言うまでもあるまい、その騎士とは――。

「……巧」

数分前ライジングアルティメットに吹き飛ばされ戦いをリタイアしたはずのファイズ、その人であった。

【乾巧 復帰】
【ライダー大戦 残り人数13人】

38 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:44:23 ID:1FDzq.Hk0





時は、ライジングアルティメットの剛腕によりファイズがその身を遥か遠くまで吹き飛ばされている最中に巻き戻る。

(嗚呼、俺ここで終わっちまうのかな……、天道、霧彦、真理――)

そんな最中、ファイズはふと思う。
あとどのくらいで、この身を包むファイズの鎧が限界を迎えるのだろうと。
どちらにせよ、もうそれも遠い未来の話ではない、恐らくはあと数秒で何本かの大木をなぎ倒しながら、自分の命は燃え尽きるのだ。

(やっぱ俺なんかじゃ役不足だったのかもな……お前らのでっけぇ夢を叶えるには)

そう考えて目を瞑る。
せめて最期くらいは、いい夢を見ていたい、と。
だが。

――妹がくれたスカーフだ。これを、乾君……君に、洗濯してもらいたいんだ
――お前の街も護ってやる。お前の妹だって死なせやしない。お前の好きな風を、世界中に吹かせてやる

霧彦が託したスカーフを受け取って、そんな大言壮語を吐いたのはどこの誰だった?

――俺の夢は、人間からアメンボまで、世界中の総ての命を守り抜くことだ

そんな自分の数倍は世界の役に立つだろう男の思いを背負って見せると言ったのはどこの誰だった?
脳裏によぎるのは、未だ自分が成し遂げていない友の夢。
彼らがまるで、こんなところで死んだら承知しないぞと言っているかのように、それは巧の脳に響き続ける。

(あぁ、わかってる、そうだよな。お前らの夢を背負っておいて、こんなとこで諦めるわけにはいかねぇよな――!)

グググ、とファイズの中に湧き上がる闘志。
何かをしなければ、この身は尽きる。
いや、この身だけならばまだいい、だが自分には、友から託された夢を叶えなければならない使命があるのだ、こんなところで倒れているわけにはいかない――!

しかしそんな思いも虚しく、彼の身は受け身すらとれぬまま大木に激突、その鎧ごと中の巧を――。

「ぐっ……」

――否、巧は……、どころかファイズの鎧をすら残したままで未だ健在。
一体何が、痛む頭を押さえながら、辺りを見渡した、その時まで。
ファイズは、自分のその現状を作り出した存在に、気づくことすらなかった。

「――バジン?」

39 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:44:42 ID:1FDzq.Hk0

その、衝撃により最早何の役にも立ちそうもない鉄塊と化した相棒を、その目にとどめるまでは。
それを目にした瞬間、ファイズの脳裏にはこの状況に至るまでのすべてが鮮明に映し出された。
ファイズのサポートマシンであるオートバジンは、もとより戦場にファイズを確認した時点で一時的な主たるG4の指示を待つまでもなく戦闘形態に移行。

その高度なAIで以てファイズの吹き飛ばされる方向を計算しファイズを先回りしつつバーニアで徐々に減速。
それでもなお殺しきれないスピードの影響を、一手に引き受け、衝撃の一歩手前でファイズより早く大木に接触し、その結果――。
自身は鉄塊と化したという訳だ。

「バジン!?お前何やって……!」

しかし一瞬のうちの献身など、ファイズにはわかりようもない。
それ故の疑問だったが、オートバジンはただウィウンと何とも形容しがたい機械音で答えるのみ。
しかしそれは巧にとって、まるで別れを告げる悲しげな声にも聞こえて。

「何で……何で俺なんかの為にまた仲間が死ななきゃなんねぇんだよ!」

ファイズは叫びながら大木に寄り添うように項垂れる愛機を揺さぶるが、しかし最早それは機械音すら返してはくれなくなっていた。
オートバジン、心を持たないはずの機械ですら、自分のために死んだ。
真理、木場、霧彦、直也、天道……そしてバジン。

心通わせた仲間たちが、次々と死んでいく。
こんな、化け物で、しかもその寿命すら既に尽きかけようとしている、自分を残して。
真理たちの死ももちろんだが、ようやく再開できた仲間、その存在を易々と奪われた事に対する怒りは、やるせなさは、凄まじく。

――辛くなったら、誰かに荷物を持ってもらえばいい……お前だって、今までみんなが背負うはずだった物をたくさん背負ってきただろ? 今更罰は当たらない

そんな時、脳裏にフラッシュバックするは、あの全てをお見通しとでも言いたげなムカつく、しかし天道たちと同じ瞳をした男の言葉。

(背負ってもらう……?俺の果たせない夢を俺は――)

と、その時だった。
前方の空に急速に集まりゆく暗雲の群れを見たのは。
ただごとではすまないかもしれない、と心では思いつつも、しかしそれに向かう以外の選択肢を持っていない自分を、確かに感じて。

40 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:45:10 ID:1FDzq.Hk0

「やってみるか、俺に何かが、出来るうちくらいは」

呟きつつ目前に眠るバジンに触れる。
きっと今を逃したら、もうこの愛機には二度と言葉をかけることは叶わないだろうと、そう感じて。
しかし自分に臭い言葉は似合わないし、歯が浮くようなセリフは苦手だ。

だから、何も言わない。
それが自分たちらしい別れなのかもな、と思いつつバジンからファイズエッジを抜いて、ファイズは駆けた。
夜を、その身に走る赤き粒子で照らしながら。

その胸に、先程までとは違う新たな思いを抱きながら。





「ディケイドの味方をするとは……、彼は存在するだけで世界を崩壊させる、破壊者なんですよ?」
「だったらどうした」

ウェザーの心底から理解が出来ないといった様子の疑問に対し、ファイズは短く答える。
瞬間手首を大きくスナップし、ファイズエッジで切り掛った。
舌打ちとともにエンジンブレードでその一撃を受け止めるウェザーだが、その一撃で悟る。

この男は、すでに満足に戦うこともままならない満身創痍だ、と。
だが、故に余計に引っかかってしまう。
なぜそうまでして、世界を滅ぼす悪魔のことを守ろうとするのだろうか?

そんな募る苛立ちとともに放たれた斬撃をしかしファイズはいなしつつ、いまだ倒れ伏すディケイドに声をかける。

「おい、門矢ァ!んなとこで呑気に寝てるんじゃねぇ!」

ピクリ、とディケイドがその指に力を籠める。

「お前、俺に言っただろ、俺の背負った夢を、誰かに託してもいいって!」

ディケイドがその両の手を、確かに地につけ力を籠める。

「確かに俺は、もうすぐ死ぬ!けど、けどなぁ!」

ディケイドがよろめきながらも片膝を立てる。

「けどやっぱり、あいつらの夢は、簡単には渡せねぇ、けど、けど……ぐあっ!」

41 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:45:28 ID:1FDzq.Hk0

必死の思いで言葉を紡いでいたファイズだったが、もはや人外故の回復能力をも失いつつある現状、ウェザーとの能力差は明白。
故に軽々とその身を打ち上げられるが――。

――無様に地面を転がる寸前でディケイドがそれを受け止めた。

「ったく、無茶しやがる」
「――門矢」

お互いその体を自分で支えきれないとばかりによろめき、肩で呼吸をする
だがそうなっても未だ、闘志は一切の衰えを見せず。
そしてそれが、ウェザーにはこの上なく苛立たしく感じられて。

「――何が、夢ですか、馬鹿馬鹿しい」

気づけば、そんな構う必要のないはずの言葉に、応じてしまっていた。

「そんなもの、呪いと同じです。そんなものを抱くから、皆、しなくてもいい後悔をする。味わわなくていい挫折を味わう!」

胸中に思い返すは、自分の大人になってからの初めての外界での友達、襟立健吾のこと。
彼は内気な自分にも明るく接し、外の世界の、そして友情の素晴らしさを教えてくれた。
だが、そんな彼はファンガイアとの戦いの最中、その指を負傷し、ギタリストへの夢を困難なものにしてしまった。

あの時の彼の絶望は、きっと自分にとって深央を失ったそれにも匹敵しただろう。
いや、結局のところ彼は戦士としての道を見つけそれに打ち込むことでその絶望を和らげることができたのだから、自分のもののほうがずっと――。
――今はそんなことを言っている場合ではないか。

大事なのは、健吾のその絶望は、彼が夢を抱いたからこそのものだということだ。
彼がギタリストの夢を抱かなければ、彼は深く絶望することもなかったはずだ。
そんな代償を背負う必要のあるものを、誰かに託すなど、そんな無責任なことは、渡には考えられなかった。

42 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:45:45 ID:1FDzq.Hk0

「――なるほどな。確かにお前の言うとおり、夢は呪いに似ている」

しかし目の前の愚者の考えを完全に否定したと、そう思っていた渡に思いがけない言葉をかけたのは、なんと他でもないディケイドだった。
仲間が必死になって伝えようとした言葉を拒絶するかのようなその言葉に、思わずそこにいる誰もが呆気にとられる。

「――きっとこの世の中には、夢に挫折して最初には思っても見なかったような人生を歩む奴の方が多いだろう。それを最期の瞬間まで後悔し続ける奴も、もしかしたら少なくないのかもしれない」

ディケイドは、ポツリポツリと、まるで赤子を諭すかのように言葉を漏らす。
それはウェザーに対して放った言葉のようでもあり、同時に横にいるファイズにも放たれている言葉のように感じられた。

「だが、それでも人がいつの時代も夢を抱くのを諦めないのは、きっとそれを抱くだけで、それを叶えようと行動するだけで、その結果に関係なく自分をより成長させると知っているからだ」

ディケイドのその言葉を受けて、ウェザーはほぼ反射的に思い出す。
自分という存在は、確かに愛する深央という女性を亡くしたことで深い絶望を味わった。
しかし、果たして本当にあの家を、あの部屋を出て自分は失うことしかしなかったのか?

恵さん、嶋さん、名護さん、健吾さん、そして深央さん。
彼ら彼女らと会えたことは、自分が外の世界を知りたいと、自分を変えたいと、自分という存在がどうやって生まれたのか知りたいと、そう〝夢”抱いたからではないのか。
と、そこまで考えて。

脳裏に横切るは、自分の手の中で最愛の人が崩れ落ちるその瞬間。
その命を自分が刈り取ったのだという、確かな、そして深い絶望だった。
――危ないところだった。

こいつは破壊者なのだ、耳を貸しては足を掬われる、そうに決まっている。
――そうに、決まっているのだ。

「そしてその夢がもし道半ばで途絶えるとしても。それを正しいと思う者が一人でもいるなら。その夢を誰かが継いでくれるなら、きっと、夢を抱いた事実は無駄にはならない」

そんな渡の思いも知らずに、ディケイドは言葉を紡ぐ。
――紡ぎ続ける。

「こいつは、それをたくさんやってきた。叶えられない誰かの夢を、代わりに叶えようと、必死に戦ってきた。それは、決して呪いの連鎖なんかじゃない。こいつが繋いできたのは……、〝希望″だ」

43 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:46:11 ID:1FDzq.Hk0

そのディケイドの言葉に、一番驚いているのは、他でもないファイズのように見えた。
それを脇目でチラと見やりながら、ディケイドは不敵に笑う。

「夢という希望は、誰かに受け継がれ、より大きな希望になる。だから、夢を抱くことは、決して無駄なんかじゃない!……知ってるか?夢ってのはな、時々すっごく熱くなって、時々すっごく切なくなるもの、なんだぜ」
「……あなた、一体何者なんですか?」

長々と告げたディケイドに対し、ウェザーは最早そんなありきたりな質問しか思いつかなかった。
この目の前に立つ男は、果たして自分が一人で敵うような相手なのか、そんなことを考えてしまうほど、目前の戦士は大きく見えて。
そしてその言葉を待っていたとばかりに、ディケイドは告げる。

自分という存在が、いくら破壊者と罵られようと持ち続ける、唯一無二のアイデンティティを。

「――通りすがりの仮面ライダーだ。……覚えておけ!」

高らかに宣言したディケイドの手にライドブッカーより飛翔するは、4枚のライダーカード。
それは、ファイズとして世界に認められた巧の信頼を勝ち得たことで、ファイズの能力を取り戻したことを意味する。
ヒビキに続き、巧という男までもが自分を信じてくれた事実を噛みしめつつも、ディケイドとファイズは戦闘態勢に入る。

相対するウェザーは吠える。
まるで、ディケイドの言葉に対し抱いてしまった自分の思いすら、すべて無かったことにするかのように。
ウェザーはそのまま勢いに任せるかのように雷撃を放つがそれをダブルライダーは同時にそれぞれ左右に飛ぶことで回避した。

44 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:46:33 ID:1FDzq.Hk0

それまでいた場所に雷撃が落ちるのを視認すらせず、彼らは同時にウェザーに切り掛った。
息の合った連携攻撃にさすがに一本しかないエンジンブレードでは攻撃を受け止めきれず、ウェザーは後退を余儀なくされてしまう。

――ATACK RIDE……BLAST!
――BARST MODE

その隙を逃す気はないとばかりにディケイドはライドブッカーを、ファイズはファイズフォンをそれぞれ銃の形に変形させ、弾丸を連射する。
これは堪らないといった様子のウェザーだが、しかしただでやられているわけもない。
雄たけびとともに突風を発生させ弾丸を防ぐと同時にダブルライダーの態勢を崩し、そのまま彼らの前方に巨大な竜巻を発生させた。

「おい門矢、なんかいい手はないのかよ?」

弱った体でなくとも致命傷は間違いないだろうウェザーの規格外の攻撃に関して、ファイズはディケイドに一抹の希望を託す。
言外に、「ヒビキにやったような奴はないのか」と尋ねるように。

「いい手ならあるぜ。――とっておきのがな!」

そして、得られた答えは、予想以上。
見せびらかすように彼が掲げたカードの絵柄を確認する前に、ディケイドはそれをドライバーに投げ込む。

――FINALFORM RIDE……
――FA・FA・FA・FAIZ!

「な、おいそれって……」
「あぁ、ちょっとくすぐったいぞ!」

ディケイドライバーから放たれた音声に抗議しようとするファイズを無視し、ディケイドは彼の背中を軽く撫で上げる。
それを受けファイズの体は問答無用でその身を大きく変貌させた。
関節など人体の構造など知ったことかといわんばかりの無茶な変形を終えて、そこにいたのは最早ファイズではなく。

45 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:47:13 ID:1FDzq.Hk0

そこにあったのは巨大な――ゾルダのそれすらはるかに上回る――大砲としか形容しようのない超大型の銃、ファイズブラスターだった。
眼前に迫る全ての生命を刈り取らんとするその暴力的な突風に対し、しかしディケイドは焦ることなくファイズブラスターのトリガーを引く。
それによって放たれたのは、まるでファイズがその必殺技、クリムゾンスマッシュを放つ時に現れるような、円錐状のポインター。

風の塊よりはるかに小さいはずのそれはしかし、迫りくる暴風を確かに受け止めていた。

――FINALATACK RIDE……
――FA・FA・FA・FAIZ!

そしてそれによってウェザーが一瞬でも狼狽したのなら、ディケイドにはそれで充分。
気合いと共にトリガーを引き絞れば、それと同時放たれるのは先ほどのものとは比べものにはならないほど巨大で強力な閃光。
それはまるで先ほどまでの脅威が嘘かのように易々と巨大な竜巻を突破し、その先にいるウェザーにまで、威力の衰えを感じさせない勢いで到達する。

「うわあぁぁぁぁ――!」

次の瞬間、彼の絶叫すら容易く飲み込んで。
ウェザードーパントは、ファンガイアの命運を握る若き王は、予想だにしなかった破壊者とその仲間との信頼の前に、敗れ去ったのだった。





「――ぐっ」

気づけば、地に付していたのは自分だった。
目の前にある最早利用価値のなくなった壊れたウェザーメモリに気をやることすらせず、渡は歯噛みする。
ディケイド、世界の破壊者の異名は伊達ではない。

ゾルダに続き、あの大ショッカー大幹部アポロガイストの真の力を容易に打ち倒したウェザーをも敗れ去るとは!
自身の持つ強力な変身能力を二つも失ったことに苛立ちを隠そうともせず、渡は変形を解き人型に戻ったファイズと共に自身に歩み寄る悪魔をにらみつける。
――まだだ、まだ諦めるわけにはいかない。

ファンガイアの未来を託された自分がこんなところで倒れるわけにはいかないのだ。
どうしようもなく痛む体に鞭打って、渡は立ち上がる。
その背中に、愛する人間の、ファンガイアの未来が掛かっているのだと、そう自分を鼓舞しながら。

「……お前、まだ立てるのか」
「何を言っているんですか、ここまでは小手調べ。本当の闘いはこれからです。――サガーク」

46 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:47:38 ID:1FDzq.Hk0

明らかに強がりだと自分でもわかっている。
それでも、目の前の悪魔だけは、なんとしても破壊しなくては。
熱い使命を胸に、渡は自身の現在一番信頼できる下僕の名前を呼ぶ。

自身が一度王と認めたものならばいつでも無条件に従うそれは、自身を呼ぶ声に即座に答え、ベルト状に変形する。
同時に渡はその手に持つジャコーダーをサガークにセットし冷たく呟いた。

「変身」

――HENSHIN

サガークが渡の言葉を復唱すると同時、その身に透明のステンドグラスのようなものが纏わりついたかと思えば、次の瞬間にはそれは多色に彩られる。
そこにいたのは、ファンガイアの王でなければその身に纏うことすら許されないまさしく王のための鎧、サガ。
今の状況で渡が持ちうる、まさしく最強の切り札だった。

そしてそのまま自身の言葉通り本当の闘いを始めようとして。
――サガは、ディケイド達の後方、自身の視線のその先で起きている事象に、その目を奪われる。
幸い自分が疲労故呻いただけだと思われたのか二人が後方を確認する様子はない、故に離れるなら今しかない。

ディケイドを一時的とはいえ見逃す事実と、視線の先にある〝それ”を、天秤にかけて。
数舜の思考の後、結局は確実に破壊できる確証のないディケイドに固執するよりも〝それ”を手にすることで後々のディケイド討伐や他世界の人間を効率よく狩れる可能性を優先する。
そうと決まってからの、彼の行動は迅速だった。

「その命、一旦預けます。ディケイド」

抑えようのない名残惜しさを感じながら、サガはジャコーダーを振るった。
ディケイドにでもファイズにでもなく、彼らの足元を目がけて。
思わず回避行動を取る彼らを尻目に、その威力故に生じた火花が収まるより早く、サガはその場より姿を消していた。

「・・・・・・逃げ足の速い奴だ」

47 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:47:57 ID:1FDzq.Hk0

その腰にライドブッカーを戻しながら、ディケイドはごちる。
あれだけ自分を破壊すると意気込んでおきながら、まさかサガへの変身そのものが逃走へのブラフだったとは。
次に音也に会った時を思うと気が重いな、などと思いながら仲間への援護のため、その足を先ほどまでのライジングアルティメットが暴れていた場所に向けようとして。

「――ぐッ!」

巧が鋭いうめき声と共に倒れこみ変身を解除したことによって、それを中断する。
――その場に蹲った巧の体から、信じられないほどの量の灰が、吐き出されるその瞬間を、目の当たりにした為。

「巧ッ!」

余裕を装う暇もない。
まさか先ほどの闘いか、それよりも前のライジングアルティメットの攻撃で、すでに限界を迎えていたのだろうか。
そう考えてしかし、巧の体からオルフェノク特有の青い炎が出ていないことに気づく。

それはある意味喜ばしく、そしてまたある意味では、下手をすれば死ぬよりも残酷な……。
数秒の時を経て、巧の身から落ちる灰は止まる。
巧は自分の両手を確認し、それらが問題なく人間の形をしていることに安堵するが、その横でディケイドは絶句せざるを得なかった。

「巧、お前――」
「――わかってる、俺の命はもうヤバいとこまで来てる」

そう告げながら、しかし巧の表情は数時間前見たあの取り乱していた彼と同一人物と思えないほど冷静で。
まるで、今自分が残された少ない時間の中で何を成さねばならぬのか、何をしたいのかわかっているかのように。
それを痛いほど痛感して、士はそれ以上その話題についての追及をやめる。

数瞬流れた沈黙の後、口を開いたのは巧だった。

「さっき、言いかけたよな。あいつらの夢は、って」
「あぁ、それがどうした」
「あいつらの夢は、簡単には渡せねぇ。それはあいつらが信じてた人間に会うまで、絶対譲れねぇ。……けど」
「……けど?」
「――俺の夢なら、俺の判断で誰かに託しても構わない、だろ?」

48 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:48:20 ID:1FDzq.Hk0

そういう巧は、覚悟を決めたような顔をして、しかしどこか物悲しげだった。
まるで彼がそのままどこかに消えてしまいそうに見えて、士は返答を迷い、しかし少し考えて短く肯定を返す。

「だからな、まず手始めに、お前に俺の夢を託す。俺の、世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに、みんなを幸せにするって夢を」

言われて士は、自分の言った「誰かの夢を背負う」ことの大変さを思い知る。
しかし、今更弱音を吐くわけにもいかないなと、息を吐いて。

「わかった。お前の夢は、確かに俺が背負う。だが……」
「――わかってる。俺だってただで死ぬつもりはない。ただもう本当にいつ死ぬかわからないからな、誰も俺の夢を聞いてもくれないのは、辛いって思っただけだ」

言いながら、巧は立ち上がる。
その体を僅かに引きずりながら、しかし確かな足踏みで、まだ戦うためにその体を動かしていた。
こいつには、何を言っても止まらないだろうし、止める気もないと考えながら、しかし士は一つだけ浮かんだ疑問を口に出さずにいられなかった。

「なぁ、一つだけいいか?」
「あん?」
「――なんで、この俺に大切な夢を託す?世界の破壊者かもしれない、俺に?」

それは、彼の中でどうしようもない疑問だった。
確かに自分は数々の世界を巡る中でいくつもの世界を代表するライダーと交流し、彼らの多くは自身を破壊者と知りつつ自分を信じてくれた。
しかし巧と会ってからの交流がそれに相応するかと言われると、流石の士でも疑問を抱かざるを得なかったのだ。

「――それは、正直俺にもよくわかんねぇ。けど、もし一つ理由があるとするなら……」
「するなら?」

――お前が何となく俺に似てるからだよ。
と、そんな臭い言葉が喉の先まで出かかって、らしくないと巧はそれを飲み込んだ。

「……やめた。こんなこと言っても何にもなんねぇ、それより早くあいつらの所に――!」

言葉を下手に切り上げながら、巧は眼を見開く。
対する士も有耶無耶にされた会話にイラつきつつその視線の先を見やり――。
――そこにあった惨状に言葉を失うしかなかった。

49 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:48:41 ID:1FDzq.Hk0





時刻は、数分前にさかのぼる。
コンプリートフォームという、文字通りの完成形と化したディエンドに対し、レベル3というこの場で園咲霧彦も乾巧も成し得なかった境地に達したRナスカが超高速で接近する。
一息のうちに目前まで達したナスカに対しディエンドは通常の形態の数倍の威力を誇るようになったディエンドライバーから銃弾を発射する。

しかしナスカはそれを手に持つナスカブレードの名を持つ剣で両断、そのままディエンドの強固な装甲にその刃を突き立てんと――。

「甘いよ、五代雄介」

瞬間、急速に加速したディエンドが後ろに飛びのいたことで空振りに終わる。
ディエンドが用いたのは、海東大樹本人が持つ驚異的な身体能力にディエンドのスペックを兼ね合わせただけの、単純な脚力による行動。
しかし元の形態の時点で、強力なライダーであるリュウガを翻弄できるそれが、コンプリートフォームになったことによってより強化。

故にその鈍重そうな見た目と反した更なる高速移動を可能としたということだ。
常に合理的な判断を下し続けるナスカにもこれは読めなかったのか、それとも何か合理的な判断をしたうえでの空振りなのかはわからないが、どちらにせよ攻撃を外したナスカもまた同様に後ろに飛びのいた。

(全く以て、このコンプリートフォームの力は素晴らしい!……が、このままじゃ埒が明かないのも事実。ここは思い切って……)

一方で激しい一進一退の攻防を繰り広げながら、ディエンドは自身のコンプリートフォームへの満足感と、この状況の打開策のことを考えていた。
目の前のナスカの能力は確かに凄まじい。
各世界を代表するライダー諸君や、先程見たナイトの強化形態程度では、かなりの苦戦を強いられる相手であるのは間違いないだろう。

だが、先程までの理不尽な暴力と比べて、随分とスケールダウンしたのもまた事実。
ライジングアルティメットフォームとの激闘を何とかやりすごしたディエンドにとって、この程度の敵でこのコンプリートフォームをもってすれば、絶望などするはずもなかった。
とそうして自身を鼓舞しながら、彼は1枚のカードをドライバーに装填する。

――ATACK RIDE……

「これは躱し切れるかな?」

――BLAST!

50 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:49:11 ID:1FDzq.Hk0

ハイテンションな電子音声とともに放たれたのは、通常のディエンドのものと比べても一つ一つの威力も、また弾幕の綿密さも増したディエンドブラストだった。
並の怪人、どころかそれぞれの世界に存在する上位怪人ですらダメージを如何に減らすかを最優先で考えるだろうそれを前に、しかしナスカは加速。
追尾し続ける弾丸の雨を前にしても、その足は止まることを知らず。

そしてその正確かつ高速で行われる疾走に、やがて弾丸はそれぞれの身をぶつけ合い、空中に大きな花火を散らし消滅する。
そのままの勢いで、次はお前だと言わんばかりに止まることなくナスカはその足を再びディエンドに向け――。
しかし機械的な判断故のその行動をこそ、ディエンドは見抜いていた。

――KAMEN RIDE……
――PSYGA!

この場に何度も響いた電子音声がもう一度鳴り響くと同時、高速で移動し続けるナスカの前に突如現れ出でたのは白と青のライダー、サイガだった。
クロックアップ対策にカブトの世界でも用いられたそのライダーは、その高度なシステムでもって高速移動をそのまま追うのではなく、補足。
突如意識外から浴びせられたその弾幕に大したダメージを追わないまでも、さしものナスカもその足を止めざるを得なかった。

だが、究極の闇を超える存在と化したナスカはすぐにその脅威を認識。
左の掌を翳し巨大なエネルギーをサイガに向け、発射。
そのエネルギー弾を避けるという思考を持たない愚かな傀儡はその炎に飲み込まれ――ない。

「――ッ!?」

僅かながら驚いたような声を漏らしたナスカは、しかし目の前にいたはずのサイガが金色のカード状に変形したのを確認して、状況を把握。
つまりは、自分の思考ルーチンを読み切ったディエンドの小癪な罠だったのだと、そう理解した。

――FINAL ATACK RIDE……

「ちょっと眠っててもらうよ、五代雄介」

ディエンドは、ライジングアルティメットの思考パターンを、もはや完全と言っていいほど把握していた。
この戦いで最初に召還したコーカサスがクロックアップスイッチを押した瞬間に対処された時は戦慄したが、今思えば逆にあの一瞬を逃せばライジングアルティメットにコーカサスが主の下に行くのを阻止できなかったゆえの行動だったのだろう。
ディケイドがゾルダの下に行くときや、先程自分が志村を抱え離脱したとき阻止しなかったのは、自分たちが離脱したのが主のいる病院と方向が異なっていたからというだけなのだろうと、そう今なら判断できた。

51 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:49:30 ID:1FDzq.Hk0

自分も、そして十中八九間違いなく士もそこまで考えての行動ではないから、全く以て運が良かったということになる。
……また同時に、主である金居の命令なのか、彼は自分にはダメージ足り得ないような攻撃でも受けるのを拒んでいた。
恐らくだが、ナイトサバイブの必殺技、疾風断程度であれば、拘束を一瞬で振りほどき逆にミラーモンスターごとナイトを殺害するのも僅かなダメージと引き換えにすれば容易ですらあったはずだ。

つまり、彼の思考パターンは常人とは全く異なる機械的な思考だからこそ、少し策を用いればこのトリックスターの異名を持つディエンドには簡単に対処できたのだ。
とはいえライジングアルティメットフォームであったならこんな簡単にはいかなかったのだろうが、と思いつつディエンドは自身の強化ディメンションブラストの威力が高まっていくのを感じ。
同時に相対するナスカがその場から動かずその掌にエネルギーを溜めているのを確認する。

なるほど、逃げられないと知ったうえで、この僕に勝負を挑んでくるか。
例えそうであっても負ける気はしないとディエンドは不敵に笑い、ナスカはただその力を高め続け。

――DI・DI・DI・DIEND!

そして両者ともに相手にその力の全てを解き放って。
――恐らくは両者ともに、直撃の寸前生じた紫の閃光に、気付くことなく――。
一瞬でその周囲は圧倒的な力によって、爆風にすべてを包まれたのだった。



「ぐっ……、一体何が……」

予想外のエネルギー量に吹き飛ばされ、無防備な姿を見せたまま、海東大樹はそう一人呟いた。
ディエンドコンプリートフォームと、Rナスカの実力は少なくともあの時点で自分の負けは考えられないほどだったはずだ。
実際、先程のインパクトの際感じたのは力で押し負けたというより何か別の介入が入ったように感じられたのだ。

52 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:49:46 ID:1FDzq.Hk0

と、混乱する頭を整理しながら立ち上がると、自分の身からディエンドの鎧が消失していた。
どうやら、ダメージだとかではなく、予想外のインパクトに自分がディエンドライバーを手放してしまったのが原因のようだ。
お宝であるドライバーを手放すなんて、僕らしくないねと溜息をつきながら、彼は辺りを見回す。

それにはもちろんディエンドライバーの発見という要素も含まれていたが、暗がりである現状、大樹はそれより先に確認すべきことがあるとその足を進めて。
そして、無事発見に成功する。
俯せに倒れたまま動かない、五代雄介を。

「全く、僕が自分のお宝よりも他人を優先するとは。感謝してくれたまえよ、五代雄介」

言いながら、大樹は五代の体を拘束する。
気絶などありえようはずもない彼がこうしておとなしくなったのは、この場での制限によるものなのか、それとも仲間の誰かが地の石の奪還、及び破壊に成功したのだろうか。
ともかく、もう僕の役目は終わりかな、とそう一息ついて、五代がもう誰も傷つけないようにと、その横に座ろうとした、その瞬間。

「――誰だッ!」

感じたのは、闇に紛れこちらを伺う気配。
様々な世界で泥棒を繰り返して身についた、咄嗟の本能による危険察知能力だ。
先程のインパクトはまさかこいつが、と思いつつ油断なくデイパックからグレイブバックルを取り出す。

「隠れていないで出てきたらどうだい、君がそこにいるのはわかっている」

言いながらグレイブバックルにカードを装填し、言外に最終警告だと告げる。
これで出てこなければ、戦闘になるぞ、と。
グレイブへの変身待機音が鳴り響く中、影はゆらりと蠢いて……。

「――俺だよ、大樹」

53 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:50:04 ID:1FDzq.Hk0

その影はささやくように呟く。
それは先ほどまで聞いていたはずの声ではあるが……、しかし彼とは違う存在でなければ、口にできないはずのセリフだった。

「……兄、さん?」

呟くと同時、彼は警戒を解いてしまっていた。
そんなこと、普段の彼ではありえなかっただろう。
例え士やユウスケ、それに死んだはずの夏美が目の前に出てきても、ワームである可能性を考えディエンドライバーで発砲すらしたはずだ。

なれば、何故。
答えは簡単だ、それはつまり、目の前にいる〝彼”と話す時、大樹は幾多の世界で恐れられたトレジャーハンターでも、通りすがりの仮面ライダーでもなく。
ただ一人、どんな世界のどんなところにだっている、一人の〝弟”になってしまう、ただそれだけの理由だった。

しかしそれでも、きっと一瞬思考する時間が与えられたなら、彼はすぐさまトレジャーハンターとしての勘を取り戻せたはずだった。
だが、もう遅い。
自分を呼ぶ懐かしい声に気を取られたその瞬間に、彼の胸は、夜を一瞬で照らすような紫の閃光に貫かれていたのだから。

「……がふっ」

自分のミスを、元の世界に置き去りにし切れなかった甘さを実感しながら、彼は冷たい地面の上に倒れ伏した。
あぁ、もうわかっている。
自分がどこでミスを犯したのかも、誰が、本当の意味で究極の闇だったのかも。

遠のき行く意識を必死に繋ぎ止めながら、大樹は最後の力を振り絞って顔を上げる。
そこにいたのは、フィリップの撮影した情報そのままの、白と赤で染められたジョーカー(鬼札)。
まさかあなただったとは、と声にすらならぬ思いを目だけで必死に訴えるが、そんな自分などお構いなしにジョーカーはその姿を偽りの皮で覆う。

――自身の兄と、同じ笑みを浮かべながら。

「ありがとう、海東。お前のお陰でこいつを易々と手に入れることができた」

――志村純一。
湧き上がる悔しさと、怒りと、そして――。

(別の世界でも〝あなた”はやはりそうなのか……)

そんな複雑に絡み合う様々な感情をごちゃまぜにしたまま。
世界を股にかける怪盗は、遂にその意識を深い闇に沈めていったのだった。

54 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:50:26 ID:1FDzq.Hk0

【海東大樹 脱落】
【志村純一 復帰】
【ライダー大戦 残り13人】





目の前で海東大樹という男が確実に死んだのを確認しながら、その下手人、志村純一はニヤリと笑った。
その肌にはアンデッドの証である緑の血が流れていたが、しかしそんなものを気にする様子もなく、彼は死人と化した大樹からグレイブバックルを剥ぎ取る。
その作業を行いながら、それにしても自分の思う以上に事が進んだな、と志村は思う。

ライジングアルティメットとの戦いにおいてまず志村が抱いたのは、G4は自分の期待以上の素晴らしいものであるという実感だった。
グレイブやオルタナティブゼロ、或いは村上の持つオーガすら圧倒しかねないような鎧、G4。
それを着用しての闘いは、正直なところ自身の元より持つ耐久性と併せてまず間違いなく死はありえないと、志村をもってそう考えさせるに足るものだった。

そのはずだというのに、ライジングアルティメットはそれを容易く超えてきた。
その実力は、この志村純一を以て「真の力を発揮しても勝てない」と考えさせるのに十分なもので。
それを認めるのにはかなりの精神的苦痛が伴ったが、しかし地の石を自分のものとすればいいのだと考え直すことで自分を何とか保った。

だが、そんな化け物と戦う愚策を、志村が取り続けるわけもなく。
適当なところで脱落したように見せかけようと、GM-01スコーピオンの弾丸を徐々に外していき、慣れない射撃を用いる戦闘の最中緊張が切れてしまったのだという風を演出しようとした……、のだが。
そう決めて間もない一撃目で、ライジングアルティメットの力で思いがけない脱落を余儀なくされたというのが実際のところである。

自分が手加減などしていない、的確に狙ったはずの一撃で、だ。
返された弾丸は先ほど言ったように跳弾をするような角度で放たれていたが、刹那の判断で身を少し捩ったことで最低限のダメージに留めることに成功。
一か所貫通したくらいでは、アンデッドの頂点に立つ自分は死なない、が、それでも本当に一時的に行動を阻害される。

この時点で志村としては敗北もいいところなのだが、しかし彼にとって幸運が二つあった。
それは、海東大樹が何故か自分を兄と呼んだこと。
呼んだ理由はわからないが――といっても彼はもう死んだのだから知る必要もないが――それによって集中を乱し、あの邪魔な海東を殺害することに成功する。

55 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:50:46 ID:1FDzq.Hk0

そしてもう一つの幸運は……。

「ありがとうジョーカー、お前のお陰で俺は今も生きられるんだ」

そう、時刻が十時十五分を回ったこと。
その時刻は西側において志村の元いた世界における最強のライダー、仮面ライダーブレイドキングフォームがその姿を現した時間。
それによって倒れ伏すだけだった志村に本能的にジョーカーへの衝動が沸き起こり急速に回復の速度を速めつつ、その身を真の姿へと変化させた。

偽りの姿でも十分高い回復力が真の力を発揮したことでより加速したことで、取りあえず動ける程度には傷を回復する。
また、G4は破壊を免れないかと思いきや、この場での制限なのかきれいにパーツごとに機能を残したまま辺りに散らばってくれた。
装着するタイプの変身と身体変化するタイプの変身は同時並行で使用できないということなのだろうか?

ともかく、そして起き上がった後はその湧き上がる殺人衝動に身を任せつつ、先程得た情報を駆使し海東を殺害。
無防備な五代雄介を手に入れ、奪われたグレイブバックルも回収できた、というわけである。

「だが、このままこいつを見張っていてもライジングアルティメットは俺のものにはならない、か。全くどうするかな」

そう、例えこいつがそのままライジングアルティメットに変身できるからと言って、彼の近くにいればその力が手に入るわけではない。
故に考える。
地の石の下に向かうか、他者に石が渡った時のデメリットを考えてここで始末してしまうか、と。

(まぁ、答えは一つ、だな)

だが、アルビノジョーカーである彼の強欲さは迷わず地の石を手に入れることを決断、近くに落ちていた割れたガラス片――元は病院の窓だろうか――にオルタナティブゼロのデッキを翳し、そのままバックルに叩き込んだ。
幾つかの虚像と志村が重なり、そのまま一つの像を結んだとき、そこにいたのは最早生身の人間ではなく。

黒のボディに金のラインの走った戦士、オルタナティブゼロであった。
そのまま彼は走り出す。
ただ自分の限りない欲望を、果たすためだけに。

邪魔者から解き放たれ究極の力をその手に収められるかもしれないという昂ぶり故に、彼は一つ大事なことを見逃している。
彼の胸ポケットを貫いた神経断裂弾によって、そのまま胸ポケットに収めていたSEAL(封印)のアドベントカードを破壊されているという事実を。
それによってそのカードが鏡の中に封じ込めていた主なきモンスターがその空腹のままに自分を襲うかもしれないという事実を、彼は見逃してしまっていた。

56 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:51:05 ID:1FDzq.Hk0

(待っていろ、愚かな人間ども……。この俺が、すべてを支配する、その時を、な)

そんな事には一切思い至らぬまま、彼は走る。
愚かな人間に格の違いを見せつけ、全てを支配するために。
……さて、ここで少し腑に落ちない読者諸君がいるだろうから、一つ説明せねばなるまい。

――『何故、志村純一はジョーカーの衝動を受けて変身してもその理性を失っていないのか?』という疑問への答えを。
諸君らはきっとここまでの物語を見てきて、こう思ったのだろう、『相川始はキングフォームの影響でジョーカー化すると理性を失うのだから志村もそうであるはずではないのか』と。
そう思っていないのなら読み飛ばしてもらっても何ら問題はないが、この疑問に対する明確な答えは、もちろん用意してある。

だが、少しだけ寄り道をさせてほしい。
それは、まず根本的な質問として、『逆に何故元々ジョーカーである相川始がその姿になると理性を失うのか』という点である。
基本的な話として、ジョーカーは元々原初のバトルファイトにおいては文字通りすべてを破壊するバーサーカーであった。

それは、現代のバトルファイトにおいて『相川始』という人間として生きる彼を見て多くのアンデッドが驚愕している点からも明らかだろう。
また、諸君も知っての通り、彼は現代のバトルファイトにおいて、またこの殺し合いにおいても人間などという脆弱な種を守るため戦っている。
彼自身は自分のことを破壊者として自嘲する節はあるが、その時点で最早古代のバトルファイトにおけるジョーカーとその性質が大きく変わっているのは疑いようもない事実だろう。

さて、ここで問題になってくるのは、彼を変えた要因である。
それはヒューマンアンデッド、彼が現代のバトルファイトにおいてジョーカーに最初に封印されたアンデッドとなり、自ら彼に心を与えたのだ。
それ以降彼は徐々に人の心を学び、自分を〝相川始”としていたいと考えるようになり、次第に自分の本来の姿、ジョーカーを忌み嫌うようになる。

実際彼はこの場に連れてこられるまで、栗原親子と出会ってから一度も自分の意思でジョーカーに変身したことはない。
それほど彼は心を愛し、それを失い暴れるジョーカーという獣を忌み嫌ったというわけだ。
さて、長々と話してきたが、ここで伝えたいのはつまり、彼のジョーカー化による暴走は彼の生み出したイレギュラーすぎる状況にのみ起こるある種の奇跡なのだということだ。

例えば生物には、一切それを発散しなくても生きることのできる欲求が存在する。
人間にとっての性欲などは、まさにそれに値するといって過言でないだろう。
我々は定期的に自身の性欲を発散しなくても死ぬわけではない。

だが、覚えはないだろうか、そう考えあまりに溜め込んでしまったために、精神的な苛立ちが激しくなり、また一度性欲に捕らわれたとき平常よりも歯止めが利かなくなる経験に。
……あまり深く言及するのもよろしくないので、わからない方はそういうものなのかと思っていただければ幸いである。
ともかく、始にとってのジョーカーは果たさなければストレスのたまっていく本能であり、発散すべき原始的な欲望なのだ。

57 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:51:24 ID:1FDzq.Hk0

しかしそれを無理やり抑え込むことによって、外部的要因――キングフォーム――によってそれを無理やり引き出されたときそれまで抑えていた分が吹いて出て、暴走してしまうということである。
それを踏まえたうえで話を元に戻すと、志村はその欲望を溜め込んでいるだろうか?

答えはもちろん、NO、だ。
この場に来てからももちろん、元の世界においてもその姿を晒すことに躊躇いはなく、むしろ誇りすら感じている。
なれば、それが強大な力によって無理やり引き出されても、暴走などするはずもない。

なぜなら彼は、ジョーカー化という原始的な欲求を、我慢することなく〝発散”しているのだから。
それこそが、彼ら二人のジョーカーを分ける唯一の違い。
そしてそれが、彼らをそれぞれアンデッドとして生きるのみか人間として生きることができるかを分ける、最も大きな違いだった。





時間はまたしても遡る。
此度語られるのは病院であったものの残骸の中で繰り広げられるこの戦いの諸悪の根源である金居から地の石を奪う戦いだ。

「ガアァァッ!!」

絶叫と共にギラファアンデッドに組みかかるのは、一見すると怪人に見間違えられそうな仮面ライダー、ギルスだった。
その腕よりはやした生態的な爪、ギルスクロウでギラファを切り崩さんとするが、ギラファの持つ双剣に容易く凌がれる。
お返しと言わんばかりに剣の片割れ、ヘルターで反撃を浴びせんと振りかぶるが。

「――させると思ったか?」

横より瞬時に現れた紫の怪人、カッシスワームグラディウスがその剣を受け止める。
思わず舌打ちを漏らすギラファだが、しかしそのまま攻撃を食らうほど愚かではなく、強引にその身を振るって二人の敵を振り払う。
ギルスはともかくカッシスワームであれば容易く押し返せるはずのそれは、ライジングアルティメットに与えられた規格外のダメージによってその力を阻害され、思うように動けない。

ゴロゴロと地面を転がったギルスに対しギラファはその双剣よりエネルギーを放つが、それは横より飛び出したカッシスの体表に吸収され、ダメージにはつながらない。
この戦いが始まってから幾度となく繰り広げられた光景、それは互いに相手を押し切るだけの力がないという事を表しているのだろうか。
いや、違う、とカッシスワームは頭を振る。

58 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:51:42 ID:1FDzq.Hk0

ギルスはともかく、自分もギラファも万全の状態であるなら相手を倒す能力は十分に備わっているはずである。
だが自分はライジングアルティメットに受けたダメージの大きさ故、残念ながらギラファとの一対一では最早押し切られる可能性のほうが高い。
だがそんな自分に対して、ギラファはこの戦いを耐えていればいずれ最強のしもべが現れ敵を一瞬で薙ぎ倒してくれるというわけだ。

無理をして自分たちを倒す必要がない以上、圧倒的に状況アドバンテージに差があると言う他ない。
流石にもう一度ライジングアルティメットが現れれば、悔しいが自分は呆気なく死ぬとそう判断せざるを得ないだろうと、そう確信できる。
なれば、やはり自分もギルスも一切のリスクなしで勝てるはずもないか、と一つ溜息をついて、カッシスはデイパックより一本の大剣を取り出した。

ギルスの攻撃が一切と言っていいほどギラファに届いていない現状、自分が持つより彼が持つほうが有用だろうと、そう考えて。

「葦原涼!これを使え!」
「これは……!」

そう言いながら投げ渡されたそれを危うく取り漏らしそうになりながら受け取ったギルスは、驚嘆の声をあげながらその黄金に輝く大剣、パーフェクトゼクターを構える。
明らかにギルスの体積に見合っていないそれは彼のパワーを以てしてなお持ち上げるのに苦労しているようだったが、カッシスはそれを見てやはりかと漏らす。
自身を一度殺したこともある強力無比な武器、パーフェクトゼクター。

それをどんなマスクドライダーでも扱えるなら、あの天道がライダーフォームで使用しない手はない。
つまりそれは、各ライダーでいうハイパーフォーム相当の形態でなければ使用に支障をきたすということを意味している。
もちろんギルスはそういった装甲には遠く及んでいないし、どころかライダーフォームよりも防御力が低いように見える上、それもあながち間違いではないだろう。

しかし少しでは済まないような無理をしなければこの目の前の強敵には傷ついた自分とギルス程度では勝ちを望めるわけもない。
そのためとはいえ自身の手に入れた最強の武器を一旦でも手放すのは惜しかったが、しかしそれもすべて勝利のためと、無理やり飲み込む。
改めてパーフェクトゼクターを構えたギルスと並び立ったカッシスに対し、ギラファは二人より幾分か余裕を以てしかし油断なく双剣を構え。

三者は、再び激突した。

59 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:52:04 ID:1FDzq.Hk0





「頼む、矢車想!彼らと共にカテゴリーキングを倒してくれないか!」
「断る……、俺はワームと一緒に戦うつもりはない」
「そうだよフィリップ君!お兄ちゃんの闘いは、お兄ちゃんの意思で決めるの!」
「亜樹子ぉ……」
「お兄ちゃん……!」

目の前で気色の悪い世界を展開するキックホッパーと亜樹子に対して、フィリップはその焦燥の思いをより一層加速させた。
キックホッパー、矢車想にはこの戦いを一瞬で終了させかねない強力な能力、クロックアップが備わっている。
だというのに、彼のやることといえば亜樹子と――ついでに――自分を守るというだけの保守的な役割。

亜樹子は自分が守って見せるからと説得をしても、彼は「俺は亜樹子を守るだけだ」と譲らない。
それに加えて、矢車が一言言うたびにそれに便乗し会話を阻害する亜樹子のこともあり思うように会話が進まないのだ。

(亜樹ちゃん……、照井竜が死んでしまって心の在りどころを彼に求めてしまったのだろうか……)

自分がこの殺し合いに呼ばれる前、照井竜は――彼自身にはきっと一切の下心はないのだろうけれど――亜樹子を花火大会に誘った。
自分は、少し前の禅空時事件の際に彼に指摘されたほど色恋には疎いが……しかしそれでも照井竜という存在に対する亜樹子の思いは――そして同時に竜から亜樹子への思いも――、十分伝わってきた。
そんな彼が死んでしまって、その時すぐそばにいてくれた矢車という男に陶酔してしまったのか、と思うと彼に亜樹子を責める気は毛頭も起きなかったのだ。

「……ともかく、君がそう言うなら僕だけでも彼らの援護をさせてもらう。ガジェットを駆使すればサポートくらいは……」
「やめとけ」

やり場のない思いを抱きつつ、フィリップはしかし自分だけが戦場へ向かいサポートに徹するのなら問題ないのではと提案する。
だが、またしても矢車はそれを否定する。
流石に自分も現在進行形で苦しんでいる五代を放っておいて地獄だなんだの話を聞くつもりはないと声を荒げかけて。

無言で、しかもそれすら気だるげにキックホッパーは虚空を指さす。
戦地とは全く違うそこには何も――。

「なっ……!」

いや、いる。
何匹とも数えきれないようなシカのようなモンスターが、鏡の中で蠢いている。
これが秋山蓮の言っていたミラーモンスターか、なるほどこれなら生身の自分が闇雲に行動するのはまずいというのも頷かざるを得ない。

と、そこまで考えるが早いか、キックホッパーが自分の口をそっと塞いだ。

60 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:52:25 ID:1FDzq.Hk0

「静かにしろ、あいつらが何に反応するのかは知らないが、音に反応するならむやみに騒ぐのはまずい」
「矢車想、君は最初からあれに気づいていたのか?なら何故皆に知らせなかった?」
「あいつらはあいつらの光を求めている。なら俺も、自分のほしい光を掴むための努力をするだけだ」
「お兄ちゃん……、カッコいいよ……!」
「亜樹子ぉ……!」

……二人のよくわからない漫才はおいておくとして、しかしフィリップは驚愕の念を抱かざるを得なかった。
ミラーモンスターがここまで近かったこともそうだが、キックホッパーがあの目まぐるしい状況下でそれにいち早く気づいていたとは。
単なる責任放棄にしか見えなかったそれは、むしろ誰よりも冷静な判断で成されたのだという事実にフィリップは何より驚いていた。

「何故、彼らは襲ってこないのだろう」
「変身している俺がいるからだろうな、或いは、ゼクト製のライダーに何か痛い目でも合わされたのか、或いは全く違う別の何かが……」

気だるげに、しかし的確に根拠の整った自分の考察を述べるキックホッパーを前にして、やはり彼もまた一人の仮面ライダーであったのだとフィリップは彼への評を改める。
だが、どちらにしても今自分には何もできないという事実は変わらない。
この歯がゆい状況を、自分はただ享受するしかないのだ。

(翔太朗……、君がいてくれれば……)

思いは、この場にいない相棒の下へ。
こんな情けないことばかり考えていては相棒に愛想をつかされると思いつつも、フィリップにはそうやって自分の非力を呪うほかなかった。





「シャァッ!」

ガキン、と鋭い音を立てて火花を散らすのはカッシスのレイピア状の武器とギラファの兄弟剣の一つ、スケルターだった。
空いた左側を見逃さんとパーフェクトゼクターを振るうギルスだが、やはり重いのかギラファが剣を少し掠らせた程度でその剣先は全く見当違いの方向へ向いてしまう。
それを横目で見ながらカッシスは剣を振るおうとするが、瞬時にギラファが飛びのいたことでそれを失敗する。

「おいおい、どうした乃木、随分と辛そうだな?」
「黙れェ!」

安い挑発だが、乃木にはもはやいつもの調子で皮肉を返す余裕すらなかった。
ライダー諸君は、自分を叩きのめしたライジングアルティメットを複数でとはいえ足止めするという仕事を果たしているのに、自分は金居に一向に有効打を与えられない。
それが、自分たちは仮面ライダーに及ばないような存在だといわれているように感じて。

ワームという種そのものが人間より上位に位置すると確信している乃木の精神を逆撫でするのである。

61 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:52:46 ID:1FDzq.Hk0

「待て、乃木!中途半端な攻撃じゃさっきまでと同じだ。同時に攻撃するぞ!」

しかしそんな乃木を咎めたのは、共に戦うギルスだった。
一人一人の力では敵わずとも、二人の力を合わせれば或いは、と。
だが、

「お前がもっと強ければもう決着はついているのだがね」
「何ッ!?」

予想だにしていなかった乃木の感情的な言葉に困惑する。
しかしそれを受けて、この場で一人だけ場違いなほどに金居は嗤った。

「フフ、どうやらそいつの化けの皮が剥がれてきたようだぞ?葦原」
「金居ィィ!」

いつもならば問題なく躱せた筈の下らない発言すら、今の乃木には見過ごせず。
思い切り駆け出した彼は、そのままガタックより奪った能力であるライダーキックを発動する。
高まりゆくタキオン粒子をこの苛立ちごとギラファに浴びせんとして。

しかしその足は、難なくギラファに受け止められた。

「なっ!?」
「甘かったな、乃木。これでチェックだ」

ギラファが発生させたバリアで大幅に威力を削られたか、と思うが、もう遅い。
カッシスのその剛脚は、ギラファの腕にがっしりと捕まれ、最早自分の意志では満足に動かすことすら叶わなかったのだから。
そして、ギラファはそのまま――乱打。

カッシスは悲痛なうめき声を漏らすが、むしろその声はギラファを喜ばせるだけだった。

「調子に乗るなよ……ライダースラッ――!」
「調子に乗るなはこっちのセリフだ」

そんなギラファの様子に対しカッシスはその右手を鮮やかな紫に染め上げる。
だがその力を解き放つ前にギラファの拘束が解かれ思い切り押しのけられたことで、その力のやり場を失ったまま病院の床を無様に転がった。

62 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:53:16 ID:1FDzq.Hk0

「乃木!」

そして受けたダメージのあまりの大きさ故立ち上がれない様子のカッシスに対し、駆け寄ろうとするギルスを前に、降ってくる声が一つ。

「待てよ、葦原。そいつに助ける価値はあるのか?」

――敵対するギラファの声である。
まるで言っている意味が分からないとばかりにギラファを睨み付けるギルスだが、しかしそれに対しギラファは大して動じた様子もなく語り始める。

「なぁ、葦原。お前たち仮面ライダーが俺に楯突く理由は痛いほどわかる。
 俺が、地の石で五代雄介という善良な仮面ライダーを操り、自身の欲のためだけに彼に殺害の罪の片棒を担がせているのが気に食わない……だろ?
 それは実に明瞭な理由だ。納得は出来なくとも、理解は出来る。俺の世界に元いた仮面ライダーやお前や乾巧がそういった人種なのは痛いほど理解しているからな」

そこまで一息に言い放って、いきなり語調を低くし、未だ地に伏したままのカッシスを指さしながらギラファは続ける。

「だが、そいつはどうだ?俺の持っている地の石、それをそいつは本当に破壊するつもりなのか?」
「何が言いたい?」

ギルスのその言葉に、ギラファは引っかかった、と笑いつつも、それを悟られないように話を続けた。

「この戦いが終わって俺を無事に倒せたら、その時、こいつは地の石を、ひいては五代を手に入れてお前たちを殺すつもりなんじゃないかってことさ。
 元々そいつは、お前が東京タワーに向かった後、自滅したいなら勝手にさせるだけだ、だの無能な者は仲間に引き入れるつもりはないだの言っていたんだぜ?
 何とそれは殺し合いに乗っている、俺と同じ考えだ。そんな物騒な思想を、そいつは持っているってことさ」

殺し合いに乗っている俺、という言葉を強く強調しながら、ギラファは続ける。
その言葉に、ギルスは一瞬カッシスを訝しむ様な目で見やる。
その時点で、ギラファの作戦は成功したも同然だったが、一つ息をついて、ギラファはなおも続けた。

「なぁ、葦原。俺と組んでそいつを潰せ、とは言わない。ただ、態々そいつを助けてやる義理はないんじゃないか?
 どうだ?ここからはバトルファイト……、いやバトルロワイアルとして全員敵という形式を取るってのは――」

63 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:53:38 ID:1FDzq.Hk0
「――ふざけるなよ」

意気揚々と話を続けるギラファに対し、文字通り水を差すようにそれを妨げたのは、やはりギルスだった。
カッシスへの疑心を持ちつつも即答された言葉に、ギラファは思わず言葉を詰まらせてしまう。

「確かにこいつは、内心じゃ俺たちを利用しようとしているのかもしれない。だが、今は俺たちと共にお前を倒そうとしている。
 そして俺は、お前が気に食わない。それだけで一緒に戦うには十分だ」
「だがそいつは俺から地の石を奪って殺し合いに乗るかもしれないんだぞ?」

「――その時は俺がこいつをぶっ潰す!」

感情的もいい所な反論を受けて、思わずギラファは苦笑する。
こいつは、底知らずの馬鹿だ。
きっと、利用されきってボロ雑巾のように捨て去られるその瞬間まで信じたいと願ったモノを信じ続けるのだろう。それを後悔などする事もなく。

溜息を一つ吐きながら、こんな猛獣を一瞬でも説得できると考えた自分が愚かだったと考え直して、ギラファはギルスを打ち倒す態勢に入る。
元々ライジングアルティメットが十二分にその能力を発揮できるだけの時間を稼ぐために始めた話だ。
決裂に終わろうが何も損はない、とそこまで考えて。

「――同時攻撃、だったな?葦原」
「……乃木」

いつの間にか態勢を立て直したカッシスが、ギルスの横に並び立っていた。
流石に長話が過ぎたか、と考えつつカッシスを確実に葬り去るため一旦ライジングアルティメットを戻そうかと考えて。

(――いやよく見ろ!奴は足を引きずっている!あれではまともな攻撃など出来ようはずもない!今の奴はただの強がりで立っているだけだ!)

自身が先ほど与えたダメージが確かな形として表れているのを視認してそれをやめる。
カッシスの右足、特にその膝の付近は固いはずの甲殻が剥がれかけ止めどなく血があふれだしていた。
これではまともな反撃など望めようはずもない、ライジングアルティメットに頼るまでもないだろう。

そしてそれは横に並び立つギルスにも一瞬で伝わる。
立っているのもやっと、という状態のカッシスに思わず声をかけようとして、あの乃木という男が自分と力を合わせるといった意味を考えてそれを噤んだ。
飲み込んだ多くの言葉の末にやっと吐き出した「わかった」、という短い言葉に、満足げにカッシスは鼻を鳴らして。

64 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:53:56 ID:1FDzq.Hk0

そうして二人は腰低く構え、それを迎え撃たんとギラファもまた軽薄な笑みをやめる。
恐らくは本気で対処せねば自分でも危うい。
ふとイタチの最後っ屁という諺を思い出しつつ、追い詰められたカッシスの行動に一切の油断は許されないとそう判断したのである。

「――!」

最初に動いたのは、カッシスだった。
彼はその右手をそこに触れたもの全てを塗りつぶすような黒に染め上げて。
次の瞬間、高まったエネルギーをそのままギラファに向けた。

それにより放たれるのは、先程の戦いでも使用したライジングアルティメットの必殺技、暗黒掌波動。
無論、並の怪人どころか高い耐久力を誇る上級アンデッドでも戦闘不能は免れない一撃だ、だが。

「甘いぞ乃木ィ!」

ギラファは動じることなくその身の前に自身の固有能力であるバリアを張ることで対応する。
それによって弾かれたエネルギーの塊は病院の床を砕き、辺りに粉塵を舞わせた。

「今だ!行けェ、葦原涼!」
「ウオォォォォ!!」

――KABUTO POWER!
――HYPER BLADE!

電子音声が響くと同時、暗黒よりギルスが黄金の剣を構えて空中へと飛び出すのを視認する。
恐らくはこの状況を利用してギラファに大技を決める算段なのだろう、だが。
その程度の単純な攻撃にやられるようでは、カテゴリーキング最強の名を語ることなどできはしない。

「その程度の攻撃で、この俺を倒せると思うなよ!」

この程度の単純な攻撃で自分を倒そうなど考えが甘すぎると言わんばかりにギラファは空中で身動きの取れないギルスに対して双剣よりエネルギーの刃を放つ。
まともな防御態勢すら取ることができずにそれはギルスに見事命中、彼の悲痛な叫びとともに大きな火花を散らした。
深い闇に阻まれよく見えないが、恐らく吹き飛ばされたギルスはもう戦闘など叶うまい。

なれば、後はこのまま暗黒掌波動を放つカッシスの体力が尽きたとき、自分の勝利は確定するのである。
乃木怜司という強敵にしては呆気ない終わりだな、とギラファが再び笑みを浮かべたその時だった。
――目の前を覆いつくしていた闇が、突如現れた紫の疾風によっていきなり切り開かれたのは。

65 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:54:43 ID:1FDzq.Hk0

「金居ィィィ!!」
「何ィィィ!?」

あれほどの攻撃を足に受けながら何故こいつがここまでのスピードで動けているのか、とギラファにしては珍しく素っ頓狂な感想を抱く。
そして次に目につくのは、その手に持つ黄金の大剣、何故だ、それはさっき葦原と共に落ちたはずでは。
様々な疑問が沸き上がる中、それすらをも切り裂くようにカッシスは眩い光を放つ大剣を大きく振るって。

「ハイパーブレイド!」

そんな掛け声とともに、カッシスはギラファの巨体を持ち上げ、そのまま振り切り――。
諸悪の根源である男は、ついにこの場で初めての敗北を喫したのだった。



そして、その光景を目に焼き付けながら、カッシスは確信する。
自分は勝ったのだ、と。やはりワームは人間やアンデッドなどという存在と一線を画すような高次の存在なのだ、と。
やはり自分の主張は間違っていなかった、いや、間違っているはずなどなかったのだと胸中でつぶやいて、やっと彼らしいいつもの調子を取り戻す。

だが、喜んでいられるのもそこまでであった。
傷ついた右足が限界を迎え、ついに曲がるべきでない方向にその関節を曲げたのだ。
それによって否応なしにその身を大きく崩し最終的には仰向けに横たわりながら、しかしカッシスは考える。

(ただでさえ傷ついた体にクロックアップとパーフェクトゼクターを使用したことによる反動……、こうなって当然、か)

元々ライジングアルティメットとの戦いで大きく傷ついたこの体に、無視できないほどの足への執拗な攻撃。
元来から身についた能力とはいえ、そんな状態で足を酷使するクロックアップを使用した上、反動の大きいパーフェクトゼクターによる必殺技の使用を断行すれば、この惨状も当然か、とカッシスは案外冷静に思考していた。

(まぁ、この俺がここまでやったんだ。後は任せたぞ?仮面ライダー諸君……)

その脳裏に今回の活躍で善良な仮面ライダー諸君からの信頼が得られるだろうというような冷静な思考は存在していたのかどうか。
ともかく、カッシスワーム、乃木怜司という男はこの戦いを巻き起こした諸悪の根源に大打撃を与える大金星を上げて。
そのまま、気を失ったのだった。

【乃木怜司 脱落】
【ライダー大戦 残り人数12人】

66 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:55:07 ID:1FDzq.Hk0





「グッ……!」

静かにその肉体を擬態した乃木怜司のものに変異させながら眠ったカッシスの一方で、ギルスはうめき声を上げながらその重い体を起こした。
一体何が起こったのか、ギルスには皆目見当もつかないが、しかしあの瞬間、自分が空中より叩き落されるあの瞬間にカッシスが何らかのアクションを起こしただろうことだけはわかっていた。

「そうだ……乃木は……」

瞬間、沸き起こるのは、乃木への心配、そして金居との戦いが終息したのかどうかという関心だった。
そして少しあたりを見渡し、濃い緑の血に染まった乃木を発見する。

「――乃木ィ!」

慌てて駆け寄るが、血の池に転がるズタボロの乃木からか弱いながらも呼吸の声が聞こえたことで、とりあえずは胸をなでおろす。
しかし、安堵してばかりもいられない、この戦いの本来の目的である地の石の奪還、及び破壊を成し遂げなければ乃木の献身は一切の無駄と化してしまう。
そんなのは、絶対に嫌だった。

そうして乃木を呼吸しやすいように気道を確保させたうえで、ギルスは辺りを注視し、遂に発見する。
こんな状況を生み出した真の諸悪の根源、地の石を。

(さっきの戦いで乃木が金居のデイパックを破壊してくれていたのか……、抜け目ない奴だ)

と同時に辺りに散らばる雑多な支給品を見て、乃木の抜け目なさを再実感する。
それに恐ろしさではなく頼もしさを感じながら、ギルスはその闇に埋もれてもなおも輝きを放つ青の鉱石に近づいていく。
例え傷ついた体であろうと、変身をしている以上この石を破壊することは造作もないはずだ。

67 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:55:26 ID:1FDzq.Hk0

(これで、全て終わる……。五代の、四号の呪縛も、これで……)

ダメージを負った体を引きずりながら遂に石の前に辿り着いたギルスは大きく腕を振りかぶる。
まるで、今までの五代の恨みをもその一撃に込めるかのように。
そして、次の瞬間ギルスは迷いなくその拳を石へと真っすぐ振り下ろした。

――地の石が辺りを反射する鏡でもあるという事実に、気づかぬまま。

「――GUAAA!!」
「なにッ!」

刹那、その緑の剛腕を受け止めたのは、地の石に反射された世界より吐き出されてきた鹿のようなモンスターだった。
あまりに唐突なその出現に、思わずギルスは素っ頓狂な声をあげ、鏡より出現するモンスターの勢いに大きく弾き飛ばされてしまう。

――ギルスが知る由もないが、彼らは数時間前、自身たちが契約を交わした主がそのデッキ毎契約を破棄してしまったために野良と化した、ゼールの名を持つ群体型のミラーモンスターであった。
その体には東京タワー崩落の際刻まれた無数の痛ましい傷が刻まれ、空腹も相まって一定の戦闘力を有する仮面ライダー相手では通用しそうもない。
それならば、同じく傷ついた仮面ライダーなら?あるいは、変身のできない無力な者なら、元の世界と同じようにこの空腹も満たすことができるのでは?

幸か不幸か、主から餌を与えられるだけだった畜生たちは、この場においてその種族を大きく減少させることにより生き残るための知恵を身に着けたのだ。
そして戦いを最初より観察していたゼールたちは傷ついたギルスと、容易に食すことができそうな生身の人間――乃木――が現れたことでその空腹を満たすために数時間の沈黙を破り行動を開始したということだ。

68 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:55:55 ID:1FDzq.Hk0

そんなこととは露知らず、突如出現した新たな敵に対し、困惑を隠せないながらも傷ついた体を押して、ギルスは意図せず地の石の前に立ちふさがったモンスターに対峙する。
敵は黒と紫の体色をしたモンスターと金色のモンスター、それに銅と緑の体色をもつモンスターが各一体ずつ。
それぞれ名をギガゼール、メガゼール、マガゼールと言った。

相手も傷ついているとはいえ、満身創痍のギルスに比べれば幾分かマシ、故に三対一では押し切られる可能性が高い。
だが、それでも。

「――ウゥ、ウオオォォォッ!!」

ギルスの戦意は、収まるところを知らず。
邪魔をするならお前たちごとぶっ潰すだけだと言わんばかりに。
目の前に存在するモンスターと遜色ないような咆哮をあげて戦闘を再開した。





当たり前のことではあるが、少し前まで病院の一部であった白い壁によりかかりながら戦況を観察していたフィリップたちにも地の石を巡る乃木たちの戦いは視認できていた。
乃木の変異した――というより本来の姿――であるカッシスがギラファアンデッドを打ち倒したときには、フィリップは――それを横で同じく見ている二人が、その状況にいたく渋い顔を浮かべているのすら気にせずに――その溢れる喜びを声に出さずにはいられなかった。

しかし、喜んでいられたのも、ほんの数舜のみ。
今まさに危惧していたモンスターがギルスに襲い掛からんとする状況を見るまでの、短い間だった。

69 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:56:14 ID:1FDzq.Hk0

「クッ!こんなタイミングでモンスターに邪魔されるなんて……!」

三対一という危機的状況を考えずとも、ギルスに変身している葦原涼の体力は既に限界を迎えているはずだった。
突然の奇襲を受けたことも相まってギルスという戦士がそのすぐ後ろに倒れる乃木ごと彼らに捕食されるのは最早時間の問題だった。
ギラファを倒すという大義を成し遂げてくれた二人を見殺しには出来ないと、そう逸る気持ちをフィリップは遂に抑えられなくなって。

「矢車想!頼む、葦原涼の援護に行ってくれないか、ここは僕が何とかしてみせるから」
「葦原のことなら心配いらない。あいつにはまだ〝価値”があるからな」
「――〝価値”だって?」

ただ目の前でモンスターに打ちのめされ続けるギルスを助けたい一心で懇願するフィリップに対し、やはりキックホッパーは冷静に返す。
そして浮かんだフィリップの疑問に対し、溜息を交えながら先ほどと同じ鏡を指さした。
そこには、未だ三体ものモンスターが蠢いているのがはっきりと視認できて。

「――恐らく、俺たちの誰かが葦原たちを助けに行くのを待っているんだろう。俺が行けばお前も亜樹子もあいつらの餌、お前が動けばお前が餌。つまり葦原は俺らのうち誰かを誘き寄せる餌として利用価値があるから遊ばれてるってとこだろうな」
「そんな、そんな事って……」

そういう価値があるうちはあいつらも葦原を食ったりはしないだろ、と冷静に続けるキックホッパーに対し、フィリップは反比例するかのように胸の中が熱くなっていくのを感じる。
ふと、自分も随分あの半人前探偵に影響されたものだと改めて実感しつつ、フィリップはしかし思う。
もしも、葦原涼が自分たちのうち誰かを誘き出すための餌だというのなら、乃木怜司にその価値はあるのだろうか、と。

もちろん、これは彼に対する侮辱ではない。
ただ、同じ役割を持つ人質など二人もいらないのは、こういった状況では当たり前のことである。
むしろ、片方を殺すことでこちらの動きを扇動できるのなら、乃木怜司が持つだろう役割は――。

70 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:56:32 ID:1FDzq.Hk0

「やめろォ!」

そう思い至ると同時、思考の渦に沈んでいたフィリップを呼び戻すかのようなギルスの悲痛な叫びが響く。
一体何事かとそちらを顧みれば、ついにギルスがその膝を地に着き、それによって生まれた隙に緑、そして金の二体のモンスターがギルスを超えて横たわる乃木にゆっくりとその歩を進めていた。

「矢車想!」
「……」

このままでは彼が食べられる、と焦りを隠せないフィリップに対し、キックホッパーはただ無言で返す。
ワームであるあいつを助ける必要などないだろう、だからじっとしておけ。
そう言外に伝えるかのような圧迫感を伴う沈黙を受けながら、やりきれない思いを胸にしかしフィリップは再びギルスを顧みた。

そこには、その身から赤い血を散らしながら、尚も立ち上がりモンスターたちに立ち向かわんとするギルスの姿。
それに、自分を助けるため、何度もエターナルに打ちのめされても立ち上がった自身の相棒の姿が重なって。
彼が目の前で戦っていたら自分はどうするだろうと、そう考えてしまった。

――きっとその時点で、フィリップの心に、冷静な選択肢など残されてはいなかったのだろう。
ついに乃木怜司にモンスターの魔手が伸びんとする寸前、フィリップは、ようやく覚悟を決めるかのように、勢いよく息を吐いた。

「矢車想、亜樹ちゃんのこと、頼んだよ」

そんな、ありきたりな言葉だけを残して。
フィリップは真っすぐ駆け出していた。
ただひたむきに身体一つになっても敵に食らいついて悪を倒さんとする、仮面ライダーの下へ。

71 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:56:52 ID:1FDzq.Hk0

「ちょっと、フィリップ君!」

亜樹子は思わず――その心の中にはここで呼び止めなければ自身の壁が減ってしまうという邪な考えが含まれているが――叫ぶ。
しかし、そんな亜樹子に対し、キックホッパーは静かにその手で彼女を静止させて。
ようやくその重い体を起こしながらどこか落胆したかのように大きく溜息をついた。

「――やはりあいつは、俺達には眩しすぎる。」

――BAT
――SPIDER

後方で行われているやり取りなど露知らず、フィリップはその手に抱いた二つのガジェットに、ギジメモリを挿入する。
すると今まで時計とカメラを模していたそれらがまるでそのまま蝙蝠と蜘蛛のような形態に変形し、今まさに乃木怜司に襲い掛からんとする二体のモンスターに襲い掛かった。
二体のメモリガジェットによる超音波と糸による攻撃でゼールたちは面食らったようだったが、次の瞬間にはまるで彼を嘲るような鳴き声を発した。

――かかった、と言わんばかりに。
刹那、フィリップから見て右側の鏡面より、三体のモンスターが飛び出してくる。
きっと数秒の後に、自分は彼らに食い殺される。

こんな状況で、こんな無鉄砲。
褒められた行動ではないなんて、わかりきっていたはずなのに。
そんな言葉や思いが次々に沸いてくるが、しかしその実、フィリップは自分の行動に後悔はしていなかった。

(だって、半人前でも、僕は仮面ライダーだから……、そうだろう?翔太朗)

きっと放送で自分の死を知ったら、彼はいたく怒り、悲しむだろう。
それを想像するのはもちろん辛いが、こんな状況で助けられる命を見捨てるような行為を取れば、その時点で自分は彼の相棒を名乗れなくなる。
それだけは、決して嫌だった。

(翔太朗、僕の好きだった、街をよろしく頼むよ……)

そうして、覚悟を決めたようにその瞳を閉じて――。

――CLOCK UP!

電子音声とともに発生したインパクトと、来るべき瞬間がいつまでも訪れないことに、思わず目を開いた。
ふと見れば、自身に襲い掛かろうとしていたゼールたちは、壁に衝突したようで煉瓦とガラス片の中でまるで芋虫のようにのた打ち回っている。
状況に理解が追い付かぬまま、フィリップはふと目線を動かし、この状況を作り出しただろう張本人を発見する。

「矢車、想……」

自身のすぐ後ろで驚いたような声をあげたフィリップを振り返ることすらせずに、代わりと言わんばかりに今までで一番大きな溜息をつく。
それを受け、乃木を襲わんとしていたモンスターたちも、今は食欲を満たすより先にこの敵を倒すべきかとキックホッパーを囲った。
五種類五体のモンスターを前にして、しかしキックホッパーは冷静そのもののまま、しかし怒りに震えるかのような声で呟いた。

72 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:57:12 ID:1FDzq.Hk0

「――今、誰か俺を笑ったか?」

こうして、地獄を彷徨い続けるバッタが、ついにその進軍を開始したのであった。

――元々、彼はフィリップも乃木も助ける気など毛頭なかった、それは紛れもない事実である。
だがフィリップが死を目前に迎えているのに浮かべた安らかな表情を見たとき、そしてゼールたちの鳴き声を聞いたとき、彼は自分が無性に馬鹿にされているように感じたのだ。
何故かはわからない。誰にも、きっと彼自身にも。

そして生まれた苛立ちを思い切り誰かにぶつけるため、という理由は、彼には十分戦いに赴く理由たり得た。
苛立ちと共に彼は腰のクロックアップスイッチを押し、通常とは異なる時間軸に突入する。
そして一瞬の間にフィリップに追い付いたキックホッパーはそのまま、鏡より飛び出し彼に襲い掛からんとする白い体色のモンスターを蹴り飛ばしたのだ。

そのモンスター――正式な名称はネガゼールという――が後方より続いた二体のモンスターごと無様に壁に激突すると同時に、世界は通常の速度に戻ったというわけだ。
矢車想という男が動いた理由など、フィリップには理解どころか見当もつかない。
しかし、それでも彼が今モンスターを留めていてくれているというのは、紛れもない事実。

ならばこの状況を善しとしない手はないと、フィリップは一言だけ礼を残して駆けた。
――亜樹子にはもちろん何らかの対処を施しているのだろうと、そう疑いもせず。

「何でいきなり行っちゃうのよ……、私聞いてない……」

そんなやりとりの遙か後方で、亜樹子は一人ぼそりと呟いた。
やはりあの男はただイカレているだけなのだ、頭のおかしい奴なのだと心中で毒づくが、その苛立ちをぶつける相手はどこにもおらず。
そうして、置き去りにされた亜樹子は、結局は所在なさげに壁に凭れ掛かるしかなかった。





「――ウオォォォォッ!!」

雄々しい雄たけびを上げながら、ギルスは自身の下に残った最後の黒と金の体色のモンスター、ギガゼールに対峙する。
フィリップを襲おうとしていた三体のモンスターと、更に乃木に襲い掛かろうとしていた二体のモンスターをもキックホッパーが請け負ってくれたおかげで一対一の状況を作り出すことに成功する。
だが、それでも相手の持つ槍によるリーチの差を埋める手段が――パーフェクトゼクターは乃木が手に持ったまま気を失っているが、その重さ故結局意味はないだろう――ない現状、苦戦していることに変わりはなかった。

73 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:57:39 ID:1FDzq.Hk0

しかしそれでも、諦める理由にはならない。
あの矢車がモンスターを五体も引き受けてくれたのだ、自分がこんなところで手こずる訳にはいかなかった。
一瞬の沈黙の後、モンスターがギルスに向け突貫してくる。

向かってくるというのなら、叩き潰すだけだ、と再度ギルスが吠え――。
――ギルスの背中を超えていった小さな恐竜のようなガジェットが、モンスターに攻撃したことで激突を回避する。

「葦原涼!無事か!?」

聞き覚えのある声に振り返れば、そこにはフィリップがいた。
なるほど彼が言っていた護身用のガジェットを飛ばし自分を支援してくれたというわけか、と納得し礼を言うより先に、ほぼ反射的にギルスは叫んでいた。

「フィリップ、俺のことはいい!それより地の石を、五代のことを頼む!」

それだけを言い残して、ギルスは再びモンスターへと猛進していく。
そしてそれを受けたフィリップも、彼がこの状況で地の石の破壊という大任を自分に任せた意味を理解し、ただ一心に駆け抜けた。
地の石を破壊し、五代の、眩い笑顔を取り戻すために。

――そうして、少し走った後、フィリップは金居のものと思われるデイパックの中身が散乱しているのを発見する。

「草加雅人……」

その中で、目についた唯一見覚えのある支給品であったカイザドライバーに対して、彼はやはり草加雅人という男が金居に殺されてしまったらしいことを認識する。
しかし、彼には悪いが、今はその死について物思っている場合ではない。
そして改めて暗がりを探し、発見する。闇の中でなお妖しく光る、地の石を。

「これを壊せば五代雄介が……」

意を決し、近くに落ちていた手頃な岩を手に取り、力を込めて振り下ろそうとして。
――瞬間、真横から発生したインパクトに大きくその身を弾き飛ばされたことでそれを防がれる。
どうやら突如発生した衝撃波をファングが身を挺して庇ってくれたようだ。

74 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:58:11 ID:1FDzq.Hk0

短い悲鳴と共にファングが病院の壁にぶつかりそのまま動かなくなったのを見てその威力に戦慄を覚えるが、瞬間聞こえてきた声に、その意識を呼び戻す。

「……チッ、余計な邪魔が入ったか」
「カテゴリーキング……」

瓦礫の中から重い体を引きずりだすかのように這い出したその黄金の怪人を見て、フィリップは思わず握り拳を作る。
そこにいたのは、五代雄介を操り、先ほど乃木怜司と葦原涼の必死の攻撃によりその身を沈めたはずのギラファアンデッドその人であったのだから。
アンデッドの耐久性の恐ろしさを改めて実感するフィリップだが、暗がりでもわかるほどその身に数多の生々しい傷が刻まれていることで、彼らの攻撃は決して無意味でなかったのだと悟る。

だが、そうやって正義による成果を実感できたのもそこまでだった。
なぜなら、どれだけ傷だらけだろうとギラファはその身を強靭な甲殻に包んでおり、また自分はファングという唯一の護身さえ失った、生身の人間なのだから。
恐らく彼がどれだけ弱っていようと、力の籠っていない剣の一振りで、自分の命はたやすく刈り取られる。

それは、変えようのない事実であった。

「――どうやら思っていたよりも仮面ライダーというのはタフらしい。君が逃げるというのなら深追いはしないよ?俺としてもこんな戦場とはさっさとおさらばしたいんでね」

どんどんとその身を死の恐怖によって固くしていくフィリップに対し、ギラファはまるで友人に話しかけるように気安く話しかける。
その言葉には、恐らくこれ以上の戦闘になるかどうか、また自分がそういった手段を持っているかどうかを見極めるという目的が含まれているのだろうが、生憎自分には今のギラファにすら対抗する術は何もない。
故に彼の言葉通りその足を仲間たちの下へと向かうため、つまりは逃げるためのものへとしようとして。

「そう、それでいい。その地の石だけ置いて行ってくれれば俺は君の命を取りはしない」

75 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:58:31 ID:1FDzq.Hk0

――その言葉に、足を止める。
自分が、今ここでこの場を離れ彼に地の石を与えるという意味。
それはつまり、今この場で戦ったすべての仮面ライダー、いやすべての殺し合いに反発せんとする者の思いを無碍にすることを意味する。

あぁ、やはりこれもあの半人前の探偵のせいか、と自嘲して、しかし死の恐怖を前に、この場を離れる選択肢が自分の中から失せているのを、フィリップは確かに感じた。
地の石をただで渡すこと、それはつまりあの彼の、海東大樹ですら宝と認めた彼の笑顔を失うことを意味する。
それでは、駄目なのだ。それはきっと、この身が亡びるよりも辛いことなのだ、と彼は思った。

『――フィリップ君』

笑顔と共に自身に向けられた笑顔を思い出して、フィリップは、その足を確かにギラファと地の石との間に置く。

「変身手段すらなく、まともな戦いすら望めない状況で、なおも俺に楯突こうとするとはな、そこまで死にたいのか?」

そのフィリップの覚悟に対し、嘲笑するかのような笑いをあげるのはもちろんギラファである。
よろめきつつもなお確かに双剣を構えたギラファに対し、しかしフィリップはもはや恐怖など抱いていなかった。
むしろ沸き上がってくるのは善良な仮面ライダーを利用し、そして他者の命などどうとも思っていないこの怪人への怒りのみであった。

「――その目、あの男と同じだ」

そんなフィリップに対し、ギラファは興味深そうに呟く。
あの男、というのが誰なのか、フィリップには確信が持てない。
だがそれでも、きっとギラファの言う男もまた一人の仮面ライダーとして悪に立ち向かったのだろうとそう思った。

76 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:58:47 ID:1FDzq.Hk0

「……まぁいい。それなら――死ね」

先ほどまでの柔和な態度から一変、殺意を隠そうともせずにギラファは突撃する。
それに対して咄嗟の判断で懐からバットショットとスパイダーショックを取り出し放つ。
時間稼ぎ程度にはと考えたが、二体のメモリガジェットがそれぞれ放った超音波と糸は、ギラファのバリアで容易に防がれてしまう。

何か手はないかと辺りを見渡すが、見つかるのは足元の一切のツールを持たないカイザギアのみ。
だがもちろんのこと、草加雅人、乾巧の両者がどちらも常人が使用すれば死に至るといっていたベルトを使う気など毛頭起きはしない。
しかし或いは彼にただ殺されるくらいなら相打ち覚悟ででも、などという考えさえ浮かんだ、その時。

「あれは……!?」

不意に暗夜の中で輝く見覚えのある〝それ”が目に入った。
まるで、「俺を使え」とそうフィリップに言っているかのようにさえ感じて、彼は迷わず〝それ”の下に駆け出していた。

「――何?!」

狼狽えた様子のギラファをさえ無視して、フィリップは遂に〝それ”を掴む。
多くの〝仮面ライダー”が使用したそれは、本当に多様な目的で用いられた。

ある者は、愛する街の人間にも、愛する娘にさえ存在を知られぬまま町を泣かせる悪と戦い続けるために。
ある者は、かつて愛した街を壊しそこに住む住民すべてを不死として、その街の新たな希望となるために。
ある者は、奪われた自分の愛する街を、そして信頼できる相棒を取り戻すために、そして相棒を亡くしても尚愛する街を守るために。

――ロストドライバー。
失われた左側のメモリスロットを寂しく思いつつも、しかし今の状況でこれほど心強いものもないと、フィリップはドライバーを腰に装着する。
次いで慣れた手つきで懐から取り出すのは――迷う必要などどこにもない――運命の、自身の最初の(ビギンズ)メモリ。

77 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:59:15 ID:1FDzq.Hk0

――CYCLON!
――MAXIMUM DRIVE!

ダブルと同じく右腰に備え付けられたマキシマムスロットにメモリを装填すると同時、ガイアウィスパーが野太い声で叫ぶ。
瞬間全身に力が満ち、更に溢れ出したエネルギーが周囲に疾風を巻き起こした。
それを右手に収束させると、そのままサイクロンは自然と手刀の形を取った。

あぁ、翔太朗が今これを見ていたら、このマキシマムにどんな名前をつけるのだろうか。
最後の力を振り絞り立ち上がったらしいギラファがそのまま双剣を手に突進してくるのに合わせ駆け出しながら、サイクロンはそんなことを考えていた。
決して余裕なわけではない、どころか、きっと今自分は一人きりでこんな強敵に立ち向かうのが怖くてたまらないから、少しでも相棒のことを考えて気を紛らわしたいのだろう。

ならば、叫ぼう。彼の相棒として、それが少しでも悪を倒すための力となるのなら。
自分が放つのは手刀。彼がつけるだろう技の名前など、とっくのとうにわかっている。
仮面ライダーが放つ手刀、それにつけるべき名前は――。

「――ライダーチョップ!」
「シェアァァァ!!」

――一閃。
夜の闇を照らすように交差した彼らは、そのまま少しの距離を走って静止する。
そのまま、どちらも数舜の間動くことはなかった。

刹那の後、その体を大きく崩したのはやはりギラファアンデッドだった。
それを振り返り見つつ、サイクロンはその身に確かに届かんとしていた刃を思い出していた。

彼が万全であったなら。きっと考えるまでもなく、自分と彼とで立っている勝者は変わっていただろう。
恐るべき敵であり、同時に許されざる悪であったが、しかしサイクロンは今この時ギラファを悪く言うつもりにはなれなかった。
彼が貶される要素など、少なくとも自分と彼の戦いのどこにあるというのだろうか。

彼というアンデッドは自身の種を繁栄させることのできる唯一の王として、最後まで全力で抗いぬいた、誇り高い一人の勇士であったのだから。

78 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:59:32 ID:1FDzq.Hk0





「シッ!シェア!」
「GUAOOO!!」

一方で、鏡より現れ出でた異形の怪人たちと仮面ライダーの戦いも、終わりを迎えようとしていた。
痛まし気な悲鳴を上げたオメガゼールは、戦慄する。
敵の体調が万全であるという事実はもちろん存在するとはいえ、たった一人の仮面ライダーに自身を含め五体もの同族で立ち向かってもまるで歯が立っていない。

どころか、一体でも戦況を抜け生身の餌を喰いに行こうとすれば、それすら防がれむしろ痛手を食らう。
なれば鏡の中に戻れば、と思うかもしれないが、所詮彼らは主を失った家畜。
長時間を鏡の中で過ごした現状で、限界を迎えた空腹は、生存本能を超えて彼らにただ食うためだけに戦えと訴えかけていた。

そしてそんな心を亡くした野獣に、キックホッパーが引け目など取る理由は何一つ存在せず。
いつの間にかモンスターの輪の中に誘き寄せられていたとしても、ただつまらなそうに溜息を漏らすだけであった。

「GUAAAA!!」
「……ライダージャンプ」

――RIDER JUMP!

一斉に組みかかったゼールの間を縫うように、キックホッパーは〝跳ぶ゛。
そしてその体が重力の支配によって再度地に堕ちる前に、彼は自身のバックルに取り付けられたガジェットの足を下した。

「ライダーキック……!」

――RIDER KICK!

主の声をゼクターが復唱すると同時、彼の足に赤きタキオンの光が漲っていく。
そのまま彼は掛け声と共に一体のゼールにその足を振り下ろして。
しかしそれで終わるわけがないとばかりに彼の足のアンカーが作動、まるでそのまま飛蝗の様に、彼は今蹴りを浴びせたモンスターを足場に再度〝跳ぶ”。

そして蹴り、また跳び、また蹴り……。
都合5発のライダーキックを終えて、彼が着地すると同時にその命を無残に散らしたゼールたちに対し、彼はただ、溜息を捧げるだけだった。

79 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 14:59:53 ID:1FDzq.Hk0





「ウオォォォォ!!」

そしてまた、そこから少しの距離を開けて行われていたギルスとギガゼール、最後のゼールの生き残りの戦いもまた、終わりを迎えようとしていた。
猛獣のごとく猛攻を仕掛けるギルスの連撃に、ギガゼールが対応できていたのは一体いつまでの話だったのか、もはやそれは誰もわからないことだった。
その身をボロ雑巾の様に地に滑らせながら、ギガゼールは全ての終わりを察する。

ギルスが雄たけびと共に、その踵を鋭く変貌させたのを、視認したため。
――何故、こんなことになってしまったのか。
同胞たちと共に戦いの混乱を縫って容易に喰えそうな餌を食べて悠々と鏡の中に戻る。

ただそれだけ、ただ自分たちの身の程を知ったうえで出来ることをして食欲を満たしたかっただけなのに。
どうしてこんなに上手くいかないのだろう、どうしてあれほどいた仲間たちが、自分を残してすべてその命を散らしてしまったのだろう。
あぁ、あぁ。俺は、いや、俺たちはただ。

――幸せになりたかっただけなのに。
そんな、多く存在した種がその母数を多く減らしたことによってようやく身に着いた知恵の為に、以前は抱くはずなどなかった思いを胸に抱きながら。
ゼールモンスター最後の生き残りは、その生を儚く散らしたのだった。

【ゼール軍団 全滅】

80 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:00:10 ID:1FDzq.Hk0




「俺の負け……か」

傷だらけの体、はっきりとしない意識、そして自身を見下す緑の仮面ライダー。
そんな状況を省みて生み出された一つの戦いの結果を、ギラファは口に出していた。
あぁ、何故こんなことになってしまったのか、俺は無益な戦いを避け、勝利できると確信できる状況でのみ自身の能力を使うはずだったというのに。

この敗色濃厚な状況で何故新たな戦いに挑もうとしてしまったのか、自分でも実のところ分かっていなかった。
現世で行われた歪なバトルファイトに嫌気がさしたのか、それとも放送でスペードのキングがいた時点で、この殺し合いにも胡散臭さを感じたからか、それとも――。

(あの石に魅入られていたのは、五代ではなく俺の方だったか……)

あまりにも強靭な力を誇るライジングアルティメット、その力が自身の掌中にあるという事実に、彼は自分では慢心していないと思っていた。
しかし、実際にはその力を使うたび、その力を目にするたび、ギラファは例えようもないほどにその力に依存していっていたのかもしれない。
草加雅人はともかく、後に現れた二人の仮面ライダー、そしてまた、この場で初めて自分を凌駕する実力を誇ったカッシスを、まさに赤子のように捻り潰したその力に、いつの間にか、弱い人間のように依存していた自分がいたのかもしれない。

だからといって、その力の為に引き際を見誤り死んでしまっては元も子もないと誰かが言うだろう。
しかし、今のギラファには断言できる。
それは、あの力を手にしたことのないもののいう言葉だ、と。

そんなことを思うギラファの前に、自身を倒した緑の仮面ライダー、サイクロンが佇んでいた。
だが、怒り心頭かと思われた彼には、先ほどまでとは明らかに違う迷いの色が見て取れた。

81 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:00:28 ID:1FDzq.Hk0

「カテゴリーキング、君のしたことは絶対に許されないことだ、だが……自身の種の繁栄を望むのは、どんな生物だって同じだ。その権利を独り占めしようなんて考えなければ、君も……」
「おいおい、やめてくれよ、勝者の特権で敗者を見下すどころか同情しようって?冗談じゃない。森の中で隠れてお仲間たちと樹液を吸い続けるなんて、君たちには羨ましくて想像もできないだろうね?
……結局それを言えるのはお前たち人間が勝者だからだ。俺たち敗者に同情して〝保護してやろう″っていう人間の傲慢な態度から生まれる感情なんだよ」

それを聞いて、やはり分かり合えないのか、とばかりに首を項垂れたサイクロンは、しかし次の瞬間戦士としての覇気を取り戻した。
それでいい、最後の最後に殺される相手がずっと自分に同情してたなんて死んでも死にきれない、いや、俺は死ねなかったな。
ともかく、次のバトルファイトの時に死んでいる奴になんのかんのの感情なんて残したくないからな。

……こいつら仮面ライダー諸君が、俺の世界まで死守してくれればの話だが。
と、そんな皮肉まみれの思考に意識を染め上げながら、ギラファは新たに自身の胸が貫かれ鮮血がほとばしるのを感じる。
今まで以上に急速に薄れゆく景色と自身が敗北したことを示す封印の光をその瞳に宿しながら、この場での戦いの理由の重きを占めた男は、ここでその殺し合いに尽くした生を、一旦終わらせた。

【金居 封印】
【ライダー大戦 残り11人】





その右手を、人ならざる緑の血に新しく染めながら、サイクロンは深く息を吐いた。
アンデッドを封印しなければならない理由も、彼を許すべきでない理由も、いくらでも浮かんでいる。
しかし、それと自分が全くその生を止めてしまうことに戸惑いがないかと言えば、それは全くの別問題であった。

82 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:00:47 ID:1FDzq.Hk0

しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。
停止しかけた思考をいったん切り替え、ダイヤのキングのカードをその右手に握りつつ、サイクロンはそのまま地の石を拾い上げた。
こんなちっぽけな石が、ここまでの戦いを生み出してしまったのか。

苦々しい思いと五代がこれで解放される喜びを胸に、その手に力を込めようとした、その瞬間だった。
――黒と赤の一閃が、同時にサイクロンを襲ったのは。

「なッ……!?」

大きく揺らぐ視界、そして一瞬のうちに与えられた許容外のダメージに何も思考の纏まらぬまま。
サイクロンはその身体を生身のものに変えながら、気を失った。

【フィリップ@仮面ライダーW 脱落】
【ライダー大戦 残り人数10人】

どさり、と情けのない音を立てながら地に落ちたフィリップの姿を尻目に、その意識を刈り取った張本人たちもまた、自分以外にこの瞬間を待ち望んでいた存在がいたことに驚きを隠せずにいた。
黒の戦士はオルタナティブ・ゼロ、フィリップがカテゴリーキングに勝利したのを見てアクセルベントを発動、キングのカードと地の石を一気に手にいれるつもりであった。
そして赤の閃光を走らせたのは仮面ライダーサガ、オルタナティブと同じく地の石を漁夫の利を手にいれんとこの瞬間を待ち望んでいたのだ。

83 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:01:04 ID:1FDzq.Hk0

金居とは所詮一時の共闘関係、ディケイドを打倒するのに重要な戦力ではあったが、緑の戦士の油断を招くには、あの瞬間がベストであり、金居を切り捨てるのにさほどの迷いは生じなかった。
が、犠牲を払って得られたものはと言うと――。

「チッ」

オルタナティブが、誰にも聴かれないように小さく舌打ちした。
その手に握られているのはダイヤのキングのカードのみ、高速移動の瞬間に、突然現れたジャコーダーの一閃をかわしつつ必死に掴んだものであった。

「……やってくれましたね」

一方で、サガもまた怒りを隠さず呟いた。
その手には確かに地の石が握られていたが、その表面には小さな亀裂が走っている。
的確に地の石を狙い放たれたジャコーダーは、オルタナティブの介入によって、わずかに狙いをはずれ、それ自体にダメージを与えてしまっていたのだ。

――SWORD VENT

女性の声によるシステム音声が、オルタナティブの腕の機械より放たれる。
音声からしてどうやらゾルダと同世界のものであるようだが、一方でどこか異質でもあった。
ともかく、鏡からはき出されてきた黒の大剣を構えたオルタナティブは、殺意を隠すこともなくサガへと駆けだしてくる。

地の石を自分のものにするためだ、むろんサガもそんなことは重々承知。
そのまま手に持つ地の石に念じる。
「自分を助けろ」、と。

(……当たり前だけど、すぐに来るわけじゃないか)

強大な力を持つとはいえ、ワープを出来るわけでもない。
他の仮面ライダーを圧倒しこちらに来るまで、自力でこの状況をやりすごす必要がありそうだ。
と、デイパックからエンジンブレードを取り出し、そのまま大剣を受け止める。

どちらにせよ、自分は数分持ちこたえれば勝利を約束されたようなものだ、地の石の奪還にのみ気をつけていれば――。

84 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:01:22 ID:1FDzq.Hk0

「ぐわあぁぁぁ!!!」

と、その時、また戦況は大きく揺らぐ。
絶叫と共に病院の残り少ない壁を破壊し転がり込んできた響鬼と。

「グゥ、ウオオォォォォォォォォ!!!!」

獣のような咆哮をあげる、緑と黒の死神によって。





時はしばし遡り。
ライジングアルティメットたちとも乃木たちとも離れた場所で行われていた響鬼とカリスの戦いは、両者ともに攻めあぐね、均衡状態が続いていた。
理由は二つ。

一つは、カリスが自身のAPを回復できるカードを持っていないために、ラウズカードによる攻撃のタイミングを注意深く観察していること。
そしてもう一つは、響鬼の必殺技である音撃の型による数々の技は、素早く、かつ音撃棒よりリーチの勝るカリスラウザーを持つカリスには仕掛けることが厳しいこと。
つまりは、お互いの攻め手が限られているが故、また当然ながら両者の実力が拮抗しているが故の状況であった。

しかし、その状況で、最初にお互いの手札を察したのは、カリスであった。
この場において数多くの仮面ライダーを見てきた始は、自分たちと異なり必殺技を何度も無償で発動できるライダーがいることを知った。
故に自分の手札を先に切ることは悪手であり、最初は相手の手札を読む必要があると判断したのだ。

だが数分間の均衡状態の間、響鬼は別段目立った能力を使わなかった。
もちろんその手に持つ音撃棒から火炎弾を発射したりこちらの弓に対する反撃手段を講じたりはしているのだが、大技という面で言えば、出し惜しみをしているというより、出せないのだと判断できた。

なれば、こちらからカードを切らせてもらうのみ。
思考が終わると同時、都合二回カリスラウザーから空気の矢を放つ。
それを響鬼が回転と同時に避け、そのまま音撃棒より火炎弾を放った。

85 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:01:43 ID:1FDzq.Hk0

――CHOP

先ほどまでは律儀に交わしていたところだが、もはやその必要もない。
ラウズ音声と共に力を得た右の手刀で、それらを容易く切り裂いた。
ギャレンのものでラウズカードへの理解があったらしい響鬼も、今までの流れを一変させるようなカリスの動きに一層警戒を強めたようだった。

そんなことは百も承知と駆け出すカリスに対し響鬼もまた接近を拒まんと火炎弾を連打する。
響鬼自身は接近戦を得意とするが、今まで遠距離攻撃を主としていた相手の急接近を喜んでいるわけにはいかないのだ。
次々と放たれる火炎弾をその手刀で打ち消しながら、カリスはそのまま二枚のカードを立て続けにラウズする。

――DRILL
――TORNADO

――SPINING ATTACK

二枚のカードによるコンボの発生と、それを身に宿し速さを増したカリスの猛進に、響鬼も覚悟を強いられずにはいられなかった。
もう、避けるには距離が近すぎる。
――なればむしろ、受け止めるまで。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

疾走から一転全身を回転させこちらに飛び込んでくるカリスに対して、響鬼は音撃棒を胸の前に重ねて構え、必死にガードの体制を作った。
大地の結晶である屋久杉と猛士による最高峰の技術によって作られた音撃棒が、響鬼ですら聞いたことのないような悲鳴を上げる。
遂に左の音撃棒がダメージに耐えきれずその身を二つに折るが、しかし先ほどよりカリスの勢いは衰えているように見えた。

それを見て、狙い通り、とばかりに響鬼は腰の音撃鼓を取り外し、カリスの足に向けてそれを設置する。
完全には動きが止まらないまでも、それによって明らかにカリスは動揺したようだった。
そして、大型の魔化魍に暴れられつつも音撃打による清めの音を叩き込んできた響鬼には、これで十分。

86 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:02:02 ID:1FDzq.Hk0

「音撃打、一気火勢の型!!」

右手にのみ残った音撃棒で、一心不乱に音撃鼓を叩き、清めの音を発生させる。
魔化魍に対し開発されたそれはしかし、別世界の存在においてもインパクトという意味では効果的なようであった。
しかし、それをただ享受するカリスではない。

「その程度で、俺を止められると思うな――!」

徐々に緩まりつつあった回転を、気合いと共に再開、むしろ高速化させていく。
つられるように響鬼もまたその連打を早めていき――。

「はあぁぁぁぁぁぁ――!!!!」
「――――――――ッ!!!!」

お互いのそれが頂点に達した瞬間、爆発が巻き起こった。
両者共にその身体を大木に叩きつけられるも、すぐに立ち上がる。
しかし、響鬼の様子は、先ほどまでとは大きく異なっていた。

その両手に持つ音撃棒が、どちらも持ち手の部分を除いて破壊されてしまっていたのだ。

「――どうやら、得物がなくなったようだな、仮面ライダー?」
「……らしいね、参ったなこりゃ」

もはや意味を持たなくなった音撃棒の残骸を投げ捨てながら、響鬼は力なく言い放った。
しかし、文字面だけを見れば戦意を喪失したようにも見える彼は、しかしその戦意を萎えさせてはいなかった。
その証拠に、彼は素手のまま、その両の拳を握りしめ、カリスの前に立ちふさがっていた。

「――なぜまだ諦めない、仮面ライダー?」

カリスは、そう問いかける。
答えはその実既に知っている。
仮面ライダーが悪を前に諦めることなどないことも、そうした存在を友に持てたことを誇りに思っていたのは、他でもない自分なのだから。

87 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:02:20 ID:1FDzq.Hk0

しかし、それに対し響鬼はその疑問を不思議に思う様子もなく、口を開いた。

「なんでって、決まってるだろ。戦えない全ての人のために、俺が、俺たちがやれることを全力でやりたいからだよ」

――あぁ、これでいい。
これでこそ、剣崎の遺志を継ぎ、大ショッカーを打倒しうる存在だ。
その手に力がなくとも、誰かのためにとその身を張る、それでこそ仮面ライダーだ。

自身が見定めんとした仮面ライダーのあるべき姿とその強さにある種の安堵を抱きつつ、一つ息を吐くカリスに対し、それと、と響鬼が続けた。

「俺の名前は響鬼、仮面ライダー響鬼。以後、よろしく、シュッ」
「仮面ライダー響鬼、か。覚えておこう」

今更ながらの自己紹介に対して、カリスもまたそう返す。
戦いながら訪れた不思議な空気をどこか自然と受け入れつつも、しかしまだ戦いは終わっていないとカリスはその眼差しを尖らせる。
さて、剣崎の遺志を継ぐに相応しい仮面ライダーがいることはわかった。

だが、実力はどうだ?
カリスとしての自分にすら負けるようでは、大ショッカーなど夢のまた夢。
得物さえないその腕で、成せるものならば成してみろ。

その思いと共にカリスラウザーを改めて構え――、次の瞬間、沸き起こった謎の違和感に思わず胸を押さえた。
――時刻は22:15。
王による暴力が、人々を脅かし始める時間であった。

「なッ……!?」

突然呻きだしたカリスを前に、流石の響鬼も困惑を隠せないようだったが、しかし次の瞬間にはカリスを助けださんと駆けだしていた。
一方でカリスはその衝動を抑えようとする自分を尻目にどんどん膨れあがっていく自分の中の忌むべき存在を自覚せずにはいられなかった。
何故、今。

88 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:02:38 ID:1FDzq.Hk0

(何故だ、剣崎は死んだはず。俺の中の■■■■■が暴走するはずは――)
「おい、相川!大丈夫か!?」

混乱する思考を妨げたのは、響鬼である。
まずい、今の彼では奴を、いや俺を止めることなど――。

「逃げろ、響鬼……。このままでは、全てが――」

カリスが、自分の言葉で何かを話せたのは、もはやそこまでであった。
瞬間、急激にその衝動が、爆発したのである。
――もちろん、彼のすぐそばにいた、もう一人の死神が力を解き放ったため。

思考と視界を一瞬のうちに闇に飲み込まれながら、最後に始は思った。

――むしろ、このまま目が覚めなかったのなら。
――ジョーカーに仮面ライダーが勝てるというのなら、それで全て問題はないではないか。
――仮面ライダーたちの実力の真価を計るには、いい荒治療かもしれない。

――あぁ、そう思っているのは確かだというのに、何故だろうか。
――生まれたままの自分の姿で死ぬというのが、ここまで嫌に感じるのは。

そこまで考えて。
始の思考は、全て破壊で満たされた。





「矢車、亜樹子、無事か?」
「うん、涼君!私たちは無事だよ!――って、うわ!」

一旦の戦いを終えキックホッパーと鳴海亜樹子の下に、ギルスが駆け寄ってくる。
傷だらけになりながらも一応は安全であるらしいその姿を確認し亜樹子は安堵したような声を出すも、次の瞬間その肩に背負われている乃木怜司を見てギョッと目を細めた。

「何でこいつを連れてくる?言っただろ、こいつはワーム。文字通り宇宙から来た、ただの虫けらだ」

亜樹子の心の声を代弁するようにキックホッパーが嫌悪感を隠そうともせずに告げる。
しかし、それに対しギルスは予想通りであるといった様子で大した動揺もしなかった。

89 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:03:07 ID:1FDzq.Hk0

「例え元の世界でどんな奴でも、俺にとってこいつはここで俺と一緒に戦ってくれた仲間だ。助ける理由はそれだけで十分だ」
「……ハァ」

まっすぐに目を見据えて告げられた言葉にキックホッパーは折れた様で、溜息を残してその場に座った。
それを確認して、今度はギルスは亜樹子をまっすぐに見据え。

「亜樹子、こいつを頼んだぞ。俺はフィリップを助けに行ってくる」

その言葉だけを告げて、そそくさとギルスは未だ戦いを繰り広げているオルタナティブとサガの下で生身のまま放置されているフィリップの元へ向かおうとする。
――この展開は、不味い。
亜樹子の直感が、そう告げていた。

このままでは、自身の優秀な“壁”がいなくなってしまう。
キックホッパーは先ほどまで優秀な“壁”であったが、意味のわからない理由で自分を置き去りにした時点で頼りにしすぎるのも危うい。
なれば、ここでギルスを手放すのは惜しい、と亜樹子の冷静な部分が叫んでいた。

「待って、涼君!そんな傷じゃ危ないよ!」
「そんな事言ってられるか!フィリップが危ないんだぞ、俺が行かなきゃ――グッ!」

傷だらけのギルスを気遣うふりをしてどうにか時間を稼ごうと大声をあげる亜樹子に対し、そんな事情など露程も知らずギルスは声を荒げる。
しかしそれが響いたのか、腹を押さえてそのままうずくまってしまった。
それを見て、亜樹子は想像以上だと口角を吊り上げる。

「ほら!やっぱりそんな傷じゃもう戦えないよ!フィリップくんだけじゃなくて涼くんまで死にに行くなんて、私――!」
「亜樹子……」

そこまで言って、思わずといった様子で彼女は顔を押さえた。
まるでフィリップが既に死んでしまったかのような口ぶりだが、ギルスはそれをそこまで不審に思う様子もないようだった。
それでもなおフィリップのことを諦めきれない様子のギルスに対し、あと一歩だと亜樹子はまた口を開こうとして。

90 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:03:31 ID:1FDzq.Hk0

「ぐわあぁぁぁ!!!」
「響鬼ッ!」

後方から絶叫と共に聞こえた爆発音に、それを遮られる。
一体何事か、と亜樹子が振り返るよりも早く、ギルスはその絶叫の元へ駆けだしていた。
先ほどまでの様子と違い弱々しくうめき声を漏らす響鬼に一種の戦慄を抱きつつ、ギルスは響鬼を弾き飛ばした影に視線を向けた。

そこには、夜の闇にも負けないほどの黒と、ギルスのそれを大きく超えるような眩い緑の閃光を放つ謎の怪物がいた。
フィリップが撮影していた園田真理殺害の怪物と似ている、しかし明確に違う。
新たに現れた存在に誰もが息を呑む中、真っ先に行動したのはオルタナティブだった。

――WHEEL VENT

鏡より現れた彼の契約モンスターがバイクのような形に変形すると同時、それに跨がり、何故か地面に転がっているフィリップを抱え上げた。
そして、そのまま見当違いの方向へと駆けだしたのだ。
地の石を欲しがっていた彼の突然の逃亡にサガも驚きを隠せなかったが、しかし、そんなサガを尻目に“それ”は突然に吠えた。

「グゥ、ウオオォォォォォォォォ!!!!」
「――亜樹子、伏せろッ!」
「きゃっ……!?」

らしくなく全力で回避をしたキックホッパーに驚きつつ亜樹子が悲鳴を上げる。
――一瞬の後。
黒と緑の怪物から放たれた衝撃波はそこにいる全てを破壊した。

響鬼を庇うように立っていたギルスを大きく吹き飛ばし、その遙か後方にいたサガにも、その衝撃波は直撃する。
その余波で既に半壊していた病院が轟音と共に砕け散る中、死神はまだ満足できないと言わんばかりに大きく咆哮した。

「……その声、始さんですか?一体何のつもりです?まさか地の石を狙って、僕のことを倒そうと――」
「ウオォアァァァ!!!!」

決して小さくはないダメージを押して疑問を投げかけたサガに対し、ジョーカーの返答は攻撃。
手の鎌より実体化したエネルギーをサガに向けて放ち、その存在をも破壊しようとする。
だが、それを二度も食らうサガではない、手に持ったエンジンブレードで何とかやり過ごし、ジャコーダーで反撃に移った。

91 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:03:47 ID:1FDzq.Hk0

「……利用関係解消ですね、なればあなたの裏切りに、私から下す判決はただ一つ。死、のみです――!」

――WAKE UP

首に巻き付けたジャコーダーにジョーカーが困惑するうちにサガはウェイクアップフエッスルをサガークに認識させる。
頭上に大きな紋章が浮かぶと同時、それに飛び、てこの原理でジョーカーの身体を持ち上げた。
これこそがスネーキングデスブレイク、サガの、唯一にして必殺の技であった。

「ウォォ、ウオォアァァァ!!!!」

しかし、ジョーカーはそれに対しまたも咆哮。
むやみやたらに暴れ、遂にはジャコーダーの鞭を切り裂き、無理矢理にスネーキングデスブレイクより脱出する。
流石のサガも、これには驚きと、そして恐怖を隠しきれず。

そしてその動揺はジョーカーの格好の餌食であった。
一瞬のうちにサガに駆け寄ったジョーカーはその鎌でもって、サガを大きく打ち上げたのだった。

「なに……なんなのよこれ……。私、こんなの聞いてない……」

目の前で行われるあまりにも常識離れした状況に、亜樹子はそんな当たり前の言葉を吐き出していた。
それに対し、全く同意見だと言わんばかりに呆れたようなため息を吐くのはキックホッパー。
彼はそのまま立ち上がり、変身の解けた様子の涼の元へと歩んでいく。

「おい、ここじゃ何時あいつに目をつけられるかわからん。俺たちは逃げるぞ」
「ふざけるな!それじゃ五代は、フィリップはどうなって――グッ!」
「その傷じゃどっちにしろ足手まといだ。亜樹子のこともある、あとのことは他の奴らに任せるべきだ」
「なら、俺だけでも――!」
「――いや、矢車の言うとおり、お前らはここから逃げた方が良い」

あの暴力の化身のような存在の注意が自分たちから離れた隙に、この場を去るべきだと進言するキックホッパーに対し、一歩も引かない涼。
そのまま水平線を辿るかと思われた議論にトドメを指したのは、ギルスが庇ったためにまだ変身状態を維持している響鬼だった。

92 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:04:03 ID:1FDzq.Hk0

「響鬼、お前――!」
「俺のことなら大丈夫、鍛えてますから。シュッ」
「別に心配をするわけじゃないが、本当に逃げなくて良いのか?」

言外に武器もないのに、という意を含んだキックホッパーの言葉に、響鬼は苦笑いしつつ答える。

「大丈夫だよ、さっきまでは隙もなくて使えなかったけど、とっておきがあるから。……絶対に、後で会おう、葦原、矢車、鳴海」
「……絶対だぞ、響鬼」
「――行くぞ」

その言葉と共に、キックホッパーは亜樹子を、涼は傷ついた身体を押して乃木を抱きかかえ病院の跡地から去って行ったのだった。

【矢車想 離脱】
【葦原涼 離脱】
【鳴海亜樹子 離脱】
【乃木怜司 離脱】

【ライダー大戦 残り7人】

四人の去りゆく背中を見守って、その姿が夜の闇に呑まれ一端の彼らの無事を確認した響鬼は、また戦場へと目を向けた。

「――さぁて、俺は俺のお仕事、だな」

かちゃり、と懐から取り出したのは、響鬼の武器、装甲声刃。
先ほどのカリスとの衝撃の瞬間、デイパックから漏れ出していたのを響鬼は見逃さず入手していたのだ。
悲鳴と共にサガが吹き飛ばされ、その変身が解除されると同時、響鬼は装甲声刃に向けて気合いを高める。

「――響鬼、装甲」

唐突に高まる気と共に全身から溢れ出す炎が、ジョーカーの視線をこちらに向けさせた。
その一方でサガに変身していた青年が命からがらといった様子で逃げ出すのを見て、響鬼は安堵する。
これで、始が望まぬ殺しをしなくて済んだ。

きっと彼は、大ショッカーを前にして、仮面ライダーとして戦うべきなのか、まだ悩んでいるのだ。
大事な人を守るために戦おうという思いは、すぐに伝わってきた。
その手段がわからないというのなら、自分が教えてやるべきではないのか、確固たる仮面ライダーの力で以て。

93 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:04:20 ID:1FDzq.Hk0

ハァ、と気合いを吐き出すと同時、響鬼はその身を赤く染め、どこからともなく現れたディスクアニマルたちと、その身を一体化させた。
これこそが、アームド響鬼と言われる、仮面ライダー響鬼最強の形体であった。

「さて、行きますか」
「ウオォアァァァ!!!!」

アームド響鬼とジョーカー。
彼らの戦いの第二幕が今、また切って落とされた。





ところ変わって病院のすぐ外で、乾巧とディケイドは、その惨状に声を漏らさずにはいられなかった。
そこにあったのは先ほどまで共に戦っていた仲間たちの変わり果てた姿。
全身を穴だらけにされた秋山蓮と、胸に大きな風穴を開けた海東大樹の姿であった。

「なんで……なんでこんなことになっちまうんだよ……!?」

その状況に対し、あまりのやりきれなさ故に声を漏らしたのは、巧であった。
ライジングアルティメットの驚愕的な実力は知っていたつもりだった。
しかし、ほんの数分目を離した間に、相当な実力者であるこの二人がやられてしまうとは。

一方で、海東は士にとってはこの殺し合いに参加させられる前からの、元々の仲間だったはずである。
いつも何を考えているのかわからないような顔をしている士だが、今回は更にディケイドの仮面によって物理的にその表情を見ることは叶わない。
しかし海東の死体を見つけてから何も言わないところを見ると、流石に堪えたらしいことは表情を見るまでもないことだった。

「--!待て、志村の死体はねぇ!もしかしたらあいつはまだ――」
「……あぁ、もしかしたらあいつは……いや、まさかな」

僅かな希望を見いだし、そのまま口にした巧に対し、ディケイドは意味深な呟きを返すのみだった。
何を考えているのか巧には正直掴みきれないが、このまま相手をしていても埒があかないと、周囲を見渡す。
するとその耳に微かなうめき声が聞こえてきた。

94 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:04:49 ID:1FDzq.Hk0

「おい、聞こえたか、今の」
「あぁ」

ディケイドと共に警戒を深めつつ歩を進めると、すぐにその声の主を見つけることに成功する。
それはボロボロの服で、どうやら地面に顔をこすりつけ啜り泣いている様子の、青年であった。
この凄惨な状況を見れば泣くのも仕方ないのかもしれないが、そもそもこの戦地で無事を貫いた時点で、単なる一般人とは考えがたいだろう。

「おい。お前、何者だ、名前をいえ」

警戒を緩めぬまま、ディケイドは問いかける
それに対し、男は一瞬泣き止み、どうしたらいいかわからないといった様子のまま、しかし身体を起き上がらせた。
その姿を見て、巧がハッとした表情を浮かべたのを、ディケイドはもちろん見逃さなかったが。

「……俺の名前は雄介。五代……雄介、です……」

その名前を聞いて、二人は表情を強ばらせる。
まさか、この戦いの目的であった五代雄介の奪還を、ここでこうして成せるとは。
必要な犠牲だった、などとは口が裂けても言いたくないが、しかし海東や秋山の犠牲は決して無駄ではなかったのである。

95 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:05:18 ID:1FDzq.Hk0

「その……あなたたちは……?」
「門矢士と、乾巧だ」
「……あなたが士さん、それに巧さん……、俺、俺海東さんと草加さんを……、ごめんなさい……!ごめんなさい……!」
「……落ち着け、五代雄介。お前は、ただ操られてただけだ。あいつらを殺したのは、お前の意志じゃない」

そこまで言うと、五代は荒く呼吸を数回繰り返し、そのまま真っ赤になった瞳をこちらに向けてくる。
襲ってくる気配はないという意味ではひとまずは安心して良さそうだと、二人が胸をなで下ろそうとした瞬間、五代が口を開いた。

「……俺、皆を傷つけました。それどころか、草加さんも、秋山さんも、海東さんも、あのカブトムシのライダーの人も……俺が、俺が……!」
「おい、だからそれはお前の意志じゃ――!」

言葉を紡ぐたび不確かになっていく五代の言葉を受けて、思わずディケイドはそれを止める。
地の石などというアイテムと、こんな殺し合いに乗った屑の手中で彼は踊らされ続けたのだ、これ以上、無駄に苦しむ必要などあるまい。
しかし、そんなディケイドの思いと裏腹に、五代はなおもその口を止めることはない。

「俺、ずっと誰かの笑顔を守るために戦ってきました。戦いなんて大嫌いだけど、でも俺がやらなきゃ、あんな奴らのせいで誰かが悲しむ姿なんて、見たくないって」
「……」

それまでずっと途切れ途切れだった彼の言葉が、急に饒舌になった。
その表情にはなおも辛い様子が見て取れたが、しかし先ほどまでとは違うのがはっきりとわかった。
その様子に安堵の思いを抱きかけたディケイドと巧だったが、でも、と五代が続けたことで眉を潜める。

「でも、あのカブトムシのライダーの人が死ぬとき、笑ってたんです。そうしなきゃ、生まれ変われないって。その戦いの間、ずっと苦しそうだったのに」
「……五代?」

彼の表情には、先ほどまでと変わった様子は見られない。
だが、何故だろう。
とてつもなく不穏な流れが訪れているのを、二人は確かに感じた。

「それに、秋山さんも。最後の最後に笑ったんです。それまでずっと笑顔なんて見せたことなかったのに」

それを話す五代の表情は楽しげで、先ほどよりその笑顔は輝きを増していく。
流石の二人も、フィリップやあの秋山ですら認めた聖人君子のような五代とのイメージと話している内容の剥離に、不気味さを感じずにはいられなかった。
――なおも、五代は言葉を紡ぎ続ける。

96 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:05:35 ID:1FDzq.Hk0

「――もしかして、俺って間違ってたのかもしれません。もしかしたら、人が一番良い笑顔を浮かべるのは――!」

そこまで言って、五代の目はギョロリと巧のものと合った。
怖いもの知らずの巧であったが、その闇そのものとすら言える深い黒の瞳と、それに反するように眩い笑顔のミスマッチに、流石に一歩退いた。

「――なんで、ですか?」
「え?」
「なんで、笑顔にならないんですか――!」

そこまで言うが早いか、それまでの傷が嘘のように飛び起きた五代は、そのまま巧の首に掴みかかった。
傷ついた身体に、全く予想しなかったところからの攻撃で、さしもの巧もそれを避けきれず。
そのまま、易々と彼の身体は宙に持ち上げられてしまった。

「やっぱり、こうしなきゃ駄目なんですかね?死ぬ寸前にならなきゃ、あなたは笑顔になってくれないんですかね?」
「――やめろッ!五代雄介!」

絶叫と共に彼の腕を掴み無理矢理巧から引きはがすのは、もちろんディケイドであった。
必死に気道を確保する巧を尻目にディケイドは今度こそ油断なく五代の前に立ちふさがる。
そして、それを見て五代の顔は笑顔から驚愕の顔へと急変した。

「俺、そんな……ごめんなさい、ごめんなさい……!」

まるで、自分が何をやったのか、信じられないといった様子で顔を覆いもみくちゃに顔を掻きむしる五代は、誰が見ても明らかに正気ではなかった。
ユウスケの時はここまで酷くはなかったぞと困惑するディケイドを気にもせず、五代はそのまま外聞もなく泣き続けた。

――五代がこのような不安定な精神状態になってしまったのには、もちろん地の石の支配のみではない理由がある。
それは、他ならないガイアメモリ、その中でも支配性の強いゴールドメモリを使用したためだった。
いや、もしも五代が自身の強い意志で以て、ナスカのメモリを用いていたなら、あるいは毒素をも打ち消して彼は正義の戦士として立ち上がっていたのかもしれない。

97 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:05:51 ID:1FDzq.Hk0

しかし、地の石による支配で身体の自由を奪われながらも、彼は一部始終をその目に焼き付けていた。
草加を叩きのめし、その後目の前で彼の命が奪われる際も、彼は必死に抗おうと、絶叫したのだが、それは誰にも届くことはなく。
灰となって消えた彼の死に責任を感じていたが、もしもここまでで支配が終わっていたなら、きっと彼は数時間の苦悩の後仮面ライダーとして再起できたはずであった。

だが、そこからが彼にとって本当の地獄の始まりであった
銃声を聞きつけやってきた巧とカブトムシのライダー、天道総司に対し、地の石を持つ金居は全力で応じることを命じる。
五代の抵抗が全くの無意味であったのは既に述べた通りだが、更にここで最悪の出来事が起こる。

巧から奪い取ったナスカのメモリを、あろうことか彼は首輪に直に挿入、結果としてRナスカとして覚醒するが、それにより元々強い毒素が更に上昇。
自身の意志による変身ではないのに加え、草加、天道の命を奪ったという事実に対する虚無感が、彼の毒素に対する抵抗を著しく弱めてしまっていた。
つまり、ほとんど一般人と変わらない精神状態と化し、抵抗もままならぬまま毒に晒された五代の脳裏に、最悪の考えが浮かぶ。

――死の瞬間の笑顔こそが、その人の最高の笑顔なのではないか、と。

もちろん、平素の五代であれば、至るはずのない思考。
しかし、身動きも取れぬまま直に強力な精神毒に晒されそれを外部に逃がすことも叶わない四時間ほどの時間は、彼の思考を醜く変貌させるのに十分であった。
そしてその考えを拭いきれぬまま病院に着いた彼は、半ばそれの真偽を確認するかのように、人々を殺害していった。
秋山蓮は自分と会ってから一度も笑わなかったというのに、最後に何かを悟ったような笑顔を浮かべていた。
それに対し自信が否定しなければいけない仮説が、しかしより信憑性をもって自分を染め上げていくのを、確かに彼は感じたのだった。

そして、海東との戦いの際に二度目のナスカの使用。
これにより先ほどまでの黒い思考は、より五代を毒して――。
今、彼の中に、彼がもっとも否定していたグロンギのような思考が、確かに生まれていたのだ。

98 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:06:13 ID:1FDzq.Hk0

つまり、“死の瞬間にこそその人の最高の笑顔が生まれるなら、自分がそれを殺すべきなのではないか”、と。
しかし、毒に侵され精神に異常を来しつつも、五代は未だに自分をつなぎ止めていた。
地の石による支配によって埋め込まれた数多のトラウマと、未知の精神毒に、なお彼は抗う意思を、確かに持っていたのだ。

――この時までは。

「うぁ……うあぁぁぁぁぁ……!!」

瞬間、彼は胸中にどす黒い感覚が沸き上がっていくのを、確かに感じた。
忘れるはずもない、先ほどまで自分を支配していたあの闇だ。
誰か、新しい主人が自分を呼んでいる、助けに来いと。

しかしその声から先ほどの主に似た殺意と敵意を感じて、五代は必死に抗おうとする。
先ほどよりは抵抗を出来るように感じたが、しかし自分に根付いた毒が、その抵抗を阻もうとする、誰かを殺し、そして笑顔にしろ、と。
断固としてそれは間違っていると主張する自分を、静かに、しかし確実に蝕んでいくその声を聞きながら、五代は自分に対し声をかけ続ける仮面ライダーを一瞥する。

(あぁ、そう言えばずっと考えてたっけ……。俺がもし究極の闇になっちゃったらって……)

それは、本来ならずっと共に戦い自分を信じてくれた一条刑事に言う言葉のはずであった。
彼ならばきっと情よりも自分が本当にしたいことを理解してくれるはずだと、そう信じたから。
しかし、ここに今彼はいない。

なれば、彼に頼むしかあるまい。
元々覚悟は出来ている、誰かの笑顔を奪う悪魔になるくらいならば、自分は――。

「門矢……さん、お願いが、あります」
「……」
「お願いします。もうこれ以上誰かを傷つける前に、俺を……殺して――」

目から涙を流し訴える五代だったが、彼の言葉が紡がれたのはそこまでであった。
瞬間、彼の瞳から光は失せ、先ほどまでのものを大きく凌ぐほど、暗い闇が、その眼孔の奥に広がった。
と、同時、五代、否“ライジングアルティメット”は既にボロボロになった病院へ向かおうと――。

99 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:06:29 ID:1FDzq.Hk0

「待て!」

それを止めようと思わず駆けだしたのは、もちろんディケイドであった。
変身能力も持たぬまま戦場へ駆け出せば、彼の命運はすぐに尽きてしまう。
変身している自分であれば幾らライジングアルティメットといえど変身をしていない以上容易に彼を抑えておけるはずであると、そう考えた上であった。

だが、その考えはまたしても甘かったと、ディケイドは身を以て知らされる。
目前に立ちふさがったディケイドを邪魔者として判断したライジングアルティメットは、そのまま彼に対し猛打をしかける。
幾ら変身しているとはいえ、傷ついた身体に、自分の身体へのダメージを顧みないライジングアルティメットの猛攻に、ディケイドは一瞬体制を崩してしまった。

その瞬間、ライジングアルティメットはディケイドの腰に備え付けられたライドブッカーを奪取し、それをソードモードに移行、見境なくディケイドに斬りかかったのである。

「ぐぁ……!」

元々満身創痍の肉体に自分の武器と、カードすらも奪取されて、ディケイドに為す術はなく。
そのまま、数秒と経たぬ内に彼の身体は地に吐き捨てられた。

「門矢ッ!」

それを見て吠えたのは、流石にもう見ていられないと飛びだした巧であった。
そんな巧を見て、やめろ、とディケイドは小さく呻いたが、その声は届くことなく。
掴みかかった巧が何とかライドブッカーを引きはがしたところまでは良かったが、しかし彼の健闘もそこまでであった。

先ほどまでと同じように、いや、先ほどよりも明らかに力を込めて、ライジングアルティメットは巧を持ち上げた。
うめき声と共に持ち上げられた彼を見て、ディケイドの脳裏に先ほどの“五代”の言葉が蘇る。

『お願いします。もうこれ以上誰かを傷つける前に、俺を……殺して――』

その悲しげな声と、自身の仲間である小野寺ユウスケの笑顔、そしてその笑顔を守ると誓ったときのことを、次々とディケイドは思い出す。
もしも、ユウスケが同じ状況になってしまったら。
俺は、あいつに何をしてやるのが相応しいのだろうか?

100 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:06:46 ID:1FDzq.Hk0

――『士、お前だけを逝かせない……。俺も一緒に逝く……!』

自分が真の世界の破壊者となったとき、ユウスケが言った言葉を思い出す。
その時確かに自分は、彼に対し友情を感じたはずだった。
なれば、そのパラレルとも言える五代の望みを果たすのは、やはり自分であるはずだ、と。

今にもその命の炎を絶やそうとする巧を目にして、ディケイドにもう迷いはなかった。
あたりを見渡すと、ふと手にぶつかるものがあった。
シアンの色をしたそれは、自分も見慣れた仲間のもの。
まるでそれが、素直でなかった彼の、精一杯の協力の申し立てのように感じて。

(――あぁ、そうだな海東。これ以上、あいつに罪を背負わせるわけにはいかない。せめて少しくらい、俺が背負ってやるよ……!)

ダメージのために地に伏せたまま、ディケイドはその手にしっかりとディエンドライバーを構える。
そしてそのまま、彼の背中に向けて、引き金を、引いた。





どさり、と全身から力が抜けていくのと同時、自分の心を占めていた深い闇がくっきりと晴れていくのが、五代雄介にははっきりと理解できた。
しかしそれに対し、もう深く喜びを感じることも出来ない。
なぜなら、その腹には大きな穴が開いていたのだから。

ふと横を見やれば、仰向けに横たわる乾巧の姿が見て取れる。
死んでしまったかと絶望しかけるが、弱々しいながらも呼吸の音を聞いて、どうやら命に別状はないようだと、今度こそ本当に胸をなで下ろした。
そうして空を見上げるうち、その視界の隅には先ほど自分を撃ったディケイドが足を引きずりながらも自分に近づいてくるのが見えた。

「あ……ぃ……が……ぉ……ぅ」
「――それ以上言うな、もう何も考えなくていいんだ」

101 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:07:04 ID:1FDzq.Hk0

ありがとうございました、と礼を述べたかったのだが、どうやら口中に血が絡んでそれどころではないらしい。
精一杯の思いは伝わったようで、ディケイドの表情はわからないが、嗚咽を我慢しているらしいことだけは、何とか理解できた。
あぁ、本当に彼には申し訳のないことをしてしまった、海東さんの命を奪ったも同然の自分を、ここまで思ってくれるのだから、きっといい人に違いなかった。

――と、ふと彼の頬を冷たい夜風が撫でた。
それにつられて視線を空に移すと、自分が暴れたために周囲の木々が崩壊し、一面の星空をそこに映し出していた。
雲一つない、その空に、五代は微笑みを浮かべる。
こんな凄惨な状況でも、太陽は必ず昇るのだ、今は雨や曇りでも、世界のどこかに太陽は昇っている。

だから、心配することなど、何一つも存在しなかった。

(あぁ、きっと明日は青空の下で、皆笑顔になれる日が来る……。大ショッカーも未確認も4号もない、平和な世界で――)

そうして、満足げに彼は瞳を閉じて。
きっと、空を彩る眩しい青の一部となったのであった。

【五代雄介 脱落】
【ライダー大戦 残り人数 6人】

もう二度とライダーを破壊しない、そう誓ったはずなのに、自分は結局五代を殺すことでしかこの悲劇を終わらせられなかった。
これでは結局、金居や渡たちの言う破壊者から、何も変わっていない。
遂にその瞬間、ディケイドは膝を折って。

「--うあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

絶叫と共に、その拳を振り下ろすことしか出来なかった。
失意に沈むディケイドの元に、五代の足下に置かれたライドブッカーより、カードが飛び出してくる。
仮面ライダークウガの力を取り戻したことを意味するそれを、ディケイドは流石にいつもの調子で掴むことは出来ず。

102 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:07:22 ID:1FDzq.Hk0

そのまま力なく落下したカードを一瞥することもなく、ディケイドは五代の先に転がる巧を見る。
――息はある。
なれば自分がここでするべきは、戦場であるこの場で生身の仲間を差し置いて悲しみに暮れ絶望することではないはずだ。

まだ自分を仮面ライダーと信じてくれる仲間のためにも、ここで立ち止まることは最も許されないことであった。

「そうだよな、――雄介」

笑顔のまま逝った彼にもう一度視線を送り、彼は再度歩み出した。
巧を抱きかかえ、ディエンドライバーをデイパックに仕舞い、クウガのカードをしっかりと納めて。
全ての罪が許されなくとも、自分には立ち止まっている暇などないと。

仮面ライダーディケイドは、未だその旅を続けるのだった。

【門矢士 離脱】
【乾巧 離脱】

【ライダー大戦 残り人数4人】





ディケイドが取り戻したクウガの力。
それが死の間際五代雄介に仮面ライダーとして信頼を受けたから取り戻すことが出来たのか、それとも破壊者として仮面ライダークウガを破壊したために得られたものなのか。
もはやそれは士にも、恐らくは誰にもわからないことだった。





「どれだけ念じても来ないと思えば、やはりこういうことだったのですね……」

ディケイドたちが去ってから数分の後。
キング、紅渡はそこに横たわるライジングアルティメットの死体を見て、そう呟いた。
ディケイドたちとの戦いの最中、彼らの背中の先に横たわるギラファアンデッドを見た渡は、そのまま戦いから離脱し、ライジングアルティメットを操る術を見極めようとその姿を影から見ていた。

その結果、緑の戦士二人が次いで破壊しようとし、また金居が発した「地の石さえおいていけば危害は加えない」という言葉から、その石がライジングアルティメットを操るのに必要なものであり、そしてその石を奪えば彼の支配権を得られることを理解したのだった。
そして、緑の戦士と金居の決着を見届けた後、地の石を奪い、そこに現れた黒い仮面ライダーと戦闘に突入。
適当なところで離脱するべきかと判断したところで、豹変した相川始の乱入を許したということである。

103 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:07:39 ID:1FDzq.Hk0

「始さん……いいえ、相川始。貴方もまた僕と利用し合うだけの関係、でしたね」

そう呟く声には怒りも込められていたが、しかし一方で寂しげな表情を浮かべていたことに、彼は気づいたのだろうか。
ともかく、と彼は先ほどの戦利品であるひび割れた地の石を握りしめる。
クウガは死に、この石の意味は最早なくなったも同然、この戦いでスコアもあげられず、得られたものは実質ないように彼には感じられた。

「とはいえ、確実に参加者は減りました。これで、僕の世界の平和も――」

そこまで口にして、名護たちと出会った時、この惨状を引き起こしたのが自分だと知ったら彼らは悲しむだろうなとふと胸をよぎった。
しかし、と彼は大きく頭を横に振って。

「いえ、僕は新しいファンガイアの王。こんなところで立ち止まっているわけにはいきません」

――結局のところ、結論を先延ばしにすることで、その思考を終わらせる。
そのまま、ここにいる意味もないと相川始が乗ってきたハードボイルダーに跨がって。
未だ迷う若き王は、戦場を後にした。

【紅渡 離脱】
【ライダー大戦 残り人数3人】





「ハァァァァァァ!!!!」
「ウオォアァァァ!!!!」

病院に残った参加者のうち、未だに戦い続ける男が二人。
一人はその思考を破壊に染め上げられた死神、ジョーカー。
そしてもう一人はその狂気をその一身に受け止めようとする仮面ライダー、響鬼。

104 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:07:56 ID:1FDzq.Hk0

しかしその戦況は、先ほどまでと変わらず少しばかり響鬼の不利のようであった。
理由は単純。
純粋に、仮面ライダー響鬼の最強形体であるアームド響鬼を以てしてもジョーカーの全力には僅かに及ばないのだ。
むろん元より彼らの間にはダメージの差が存在したが、それを差し引いても戦況は響鬼のジリ貧のように思えた。

しかし、響鬼の目的はジョーカーの封印ではない。
彼の狂気を止め、その身を相川始に返してやること。
故に、彼は自身最強の一撃を出し渋っているのであった。

「グアァ、グアァァァァァ!!!!」
「――相川、苦しいのか?」

しかし、そんな中、ジョーカーが突然頭を抱え暴れ出す。
それがまるで響鬼には、早く止めてくれとそう懇願するように見えて。
このまま彼を暴れさせ続けるよりも、全力の一撃で強制的にその活動を制止させた方がいいのではという考えが、響鬼に浮かんでいた。

「わかったよ、それなら--鬼神覚声!」
「グアァァァァァ!!!!」

響鬼がアームドセイバーに向け気合いを高めるのと同時に、ジョーカーもまたその腕の鎌にこれまでで最高のエネルギーを高めていく。
どちらにせよ、これで終わらせる。
その思いと共にアームドセイバーを構えると、その短剣の先から、響鬼の何倍もあろうかという炎の剣が象られた。
さしものジョーカーも緊張を高める中、両者は一斉にそのエネルギーを相手に向けて――。

「タァーーー!!!!」
「ウオォアァァァ!!!!」

瞬間、あたりは爆発に包まれた。

105 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:08:15 ID:1FDzq.Hk0





「ってて……」

インパクトの数秒後、あたりを包んだ煙が晴れた中で、響鬼――否既に日高仁志の姿を晒している――は一人呟いた。
余りの衝撃であったが、ジョーカー、相川始は死んではいまい。
さて一体どこへ、と全裸のまま歩き出そうとした、その瞬間だった。

「――ご無事でしたか。ヒビキさん」

後ろから、妙にヒヤッとする声をかけられ、ヒビキは思わずといった様子で振り返る。

「……って何だ志村か。驚かすなよ」
「申し訳ございません、そんなつもりはなかったんですが」

そこに立っていたのは仲間である志村純一、故に警戒は必要ないとヒビキはそのまま前を向く。
と、流石に一人ならともかく人前で全裸のままでいるのは小っ恥ずかしいと、ヒビキはデイパックから着替えを取り出し、それに着替えていく。
その間会話がないのも何なので、ヒビキはいつもの調子で後方の志村に語りかける。

「今のところ、他に誰と会った?」
「いえ、自分も先ほどから気を失ってしまっていて、ヒビキさんが見つけた一人目です」
「そうなのか……、実は俺も五代とか金居から離れたところで戦ってたからさ、皆がどうなってるのか心配なんだ。
あ、でも鳴海と矢車、それから葦原と乃木は逃げたのをちゃんと確認したぞ」

それを聞いて、そうですか、と短く済ませる志村。
それに何か違和感を覚えつつも、ヒビキは会話を続ける。

「そう言えばさ、相川ってお前の世界の住人なんだよな?確か、橘のいた時代より三年?だか未来から来たらしいけど、あいつはどうなったんだ?」
「……聞くまでもないでしょう。アンデッドは一旦全てを封印されました。ジョーカーも例外なく。それが解放されたから俺たち所謂新世代ライダーが生まれたんです」
「へぇ……」

……やはりだ。
先ほどから何か、志村から異様な雰囲気を感じる。
まさか、とは思いつつも、ヒビキはその四肢に布を纏い、一つ息をつき、先ほど彼が現れ、その顔を見てからの最大の疑問を投げかけた。

106 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:08:32 ID:1FDzq.Hk0

「ところでさ」
「……はい」
「――何でお前の血緑色なの?」

――それは、彼の鼻や頭から流れ出る血の色が、人間のそれと明らかに違うこと。
それに対し、志村はいつもの笑顔を絶やさぬままゆっくりとヒビキの元へ歩んでくる。

「あぁ、それなら気にする必要はありません」
「そうなのか?でも――」
「――すぐにあなたの血で、赤く塗り直しますから」

その言葉と同時、一瞬で膨れあがった殺意を感じ取ったヒビキは、そのまま大きく後ろに飛び退こうとして――。

――OPEN UP

一瞬で間合いを詰められた。
そのまま自分の身体をグレイブラウザーが貫いていくのを感じて、流石のヒビキもすぐに立っていられなり、力なくグレイブによりかかってしまう。

「最後に一つだけ教えておいてやるよ。天音あきらを殺したのは、俺だよ、ヒビキ。
あいつもお前も最後の最後まで人の悪意を疑うことすらしないなんて、全く最高の世界だな、お前らの世界ってのは」

そこまで言って、一気にグレイブは剣をヒビキの身体から引き抜いた。
そのまま徐々に遠ざかっていく足音を耳にしながら、ヒビキはその震える手で以て最後のメッセージを遺す。
それが出来るのはグレイブの油断ではなく、ヒビキの鍛え抜かれた身体と精神力のためであったが、修行を途中で諦めたあきらのみしかしらないグレイブには、それに気づくことなど出来るはずもなかった。

107 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:08:53 ID:1FDzq.Hk0

(皆、後のことは・・・・・・、頼んだぜ)

『頑張れ、仮面ライダー。 ヒビキ』

地面に刻むその言葉は、志村へのダイイングメッセージ・・・・・・などではなく、仲間たちへの鼓舞。
なぜなら、どんな巨悪であろうと仲間たちは必ずそれを打ち倒してくれると、そう信じているから。
自分が最後に残す言葉は、本当に自分が言いたいことであるべきだと、彼はそう思ったのである。

ありきたりでも、きっと自分の思いは十二分に彼らに伝わるはずだ、とそう信じて。
と、瞬間胸中に去来するは数少ない未練。

(少年、最後まで成長、見届けてやれなくてごめんな……。京介、こんな師匠で本当ごめん、何とか、生き延びてくれ)

元の世界で帰りを待っているであろう弟子と、この場でまだ戦っているはずの弟子を思いながら、目をつむることだ。
――その弟子である京介が、自分より遙か未来、鬼となった時代より来ていて、そして数分前にその命を落としたことなど、もちろん知るよしもないまま。
歴戦の音撃戦士は、他人を疑う、ということと無縁であったために、その命を悪に刈り取られたのだった。

【日高仁志 脱落】
【ライダー大戦 残り人数……1人】





かくして、病院を舞台とした大激戦の結果は、凄惨たる状況と主たる目的であった五代雄介の死、というある種最悪の形で、その幕を下ろした。
しかし、彼らに悲しんでいる時間はない。
限られた時間は動き続けるのだ、そう、今も――。





「ハァッ、ハァッ……、俺は、また……、ジョーカーに――!」

彼、相川始は、F-4エリアにある川のほとりで、先ほどまでのジョーカーの姿を変身制限によるもので強制的に相川始のものに戻しながら、大きく息をした。
あの時、響鬼と自身の攻撃のぶつかり合いによる爆発による衝撃が収まる前に、ジョーカーはなおもその本能のまま破壊を続けんと進軍を再開しようとした。
しかしそれは、すぐに止まる。

108 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:09:11 ID:1FDzq.Hk0

自身の元に近づく、もう一人のジョーカーの存在を、感覚で把握したため。
そのイレギュラーへ本能的に危機感を覚えたジョーカーは、そのまま戦場から駆けだし、そのまま変身制限いっぱいまで、こうして逃げてきたようである。
そんな最中にも、頭の中に、どうしようもない疑問は沸き上がり続ける。

何故、キングフォームに唯一なれるはずの剣崎が死んだのに、自分の中のジョーカーが刺激されたのか。
何故、ジョーカーがもう一人いるのか。
何故、何故、何故――。

「剣崎、俺は――!」

今はもう亡き友に、思わず縋ろうとして。
次の瞬間には、彼の意識は闇に消えていた。
疲労と、何よりジョーカー化の反動によって。

彼が再び目を覚ましたとき、その頭には、一体何があるのか。
それはまだ、誰にもわからないことだった。


【一日目 真夜中】
【F-4 川のほとり】


【相川始@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編後半あたり(第38話以降第41話までの間からの参戦)
【状態】ダメージ(中)←回復中、罪悪感、若干の迷いと悲しみ、仮面ライダーカリスに1時間55分変身不可、ジョーカーアンデッドに1時間50分変身不可
【装備】ラウズカード(ハートのA〜6)@仮面ライダー剣、ラルクバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE
【道具】支給品一式、不明支給品×1、
【思考・状況】
(気絶中)
基本行動方針:栗原親子のいる世界を破壊させないため、殺し合いに乗る。
0:俺は、また暴走してしまった……。
1:この殺し合いに乗るかどうかの見極めは……。
2:再度のジョーカー化を抑える為他のラウズカードを集める。
3:ディケイドを破壊し、大ショッカーを倒せば世界は救われる……?
【備考】
※ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。
※時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。
※ヒューマンアンデッドのカードを失った状態で変身時間が過ぎた場合、始ではなくジョーカーに戻る可能性を考えています。
※左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄叫びで木場の名前を知りました。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。
※キバの世界の参加者について詳細な情報を得ました。

109 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:09:30 ID:1FDzq.Hk0





「どうやら、戦いは収まったようですね?野上君」
「そうみたいだね、村上さん。とはいえ、あんな大きい病院を壊せちゃうなんてここには本当に予想のつかないことがいっぱいだよ」

眼鏡を持ち上げながらそう返すのは、野上と呼ばれた青年、より細かく言えばそれに憑依しているウラタロスであった。
30分ほど前に病院が崩壊したのを見て、そちらに向け走っている最中、良太郎に身体を任せていては何度躓けば済むかわからないという意見でウラタロスが主導権を握ったのだ。

(それにしても、本当、信じられないね。東京タワーが倒壊したかと思えば、今度は病院だ)
(けど、ウラタロス、東京タワーの時と違って、爆弾じゃないみたいだったよ)

脳裏で良太郎が不安そうな声を上げるのを聞きながら、ウラタロスは思う。
あの倒壊が、東京タワーのものと同じく爆弾によるものならばまだ良い、だが個別の参加者によるものだったとしたら――。

「もしそんな奴と出会ってたなら、流石の先輩でも厳しいか」
「……何か言いましたか?」
「いえ、何も――って、言ったそばから」

チラとウラタロスと村上が視線を前に送れば、そこにいたのは男を背負った見知らぬ男。
あちらもこちらに気付いたようであるが、手負いの参加者を背負っているために、無防備にこちらに歩み寄ることが出来ないようであった。
であれば、と村上を右手で制して、ウラタロスは一歩前に出た。

110 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:09:47 ID:1FDzq.Hk0

「こんばんは、あなたは病院の方向からやってきたように見えますが、もしかしてあなたは先ほど何故病院が倒壊したか知っているんじゃないですか?」
「……」

返答はない。
らしくなく焦りすぎたか、とウラタロスは自省し、ふっと一つ息をつき、努めて冷静であろうと気持ちを切り替える。

「すみません、自己紹介もまだなのに。……僕の名前は野上良太郎、彼は村上峡児さん。よければあなたたちの名前も――」
「良太郎か、それで合点がいった。お前、ウラタロスだろ?」

――ぴしゃりと、この場では未だ誰にも言っていなかった名前を言い当てられて、さしものウラタロスもその口を止めてしまった。
しかし、一体何故?モモタロスやリュウタロスと交流していればその名を知れる可能性はあるが、それでも表に出ている人格を初対面で当てられるはずもあるまい。
後方で村上が「ウラタロス……?」と怪訝な声を上げ、自身の背中に刺さるプレッシャーが膨れあがるのを感じると同時、すっとぼけても無駄かとウラタロスは思考を入れ替える。

「――確かに、僕はウラタロスだよ。でもそれを知ってるってことはせんぱ……、モモタロスやリュウタロスと会ったってことで良いのかな?」
「いや、あいつらにはここでは会ってない。それより、お前がいるってことはキンタロスも一緒にいるんだろ?もしかしてあの白鳥野郎も一緒か?」

(どういうことやウラの字!あいつ俺らのことどころかジークのことまで完全にしっとるのにモモの字やリュウタには会ってないって言うてるで!)
(――キンちゃん、ごめん、少し静かにしててくれる?僕にもよくわからないんだ、もしかしたら良太郎の言うとおり侑斗が来てるのかもしれないけど――)

驚きの名前を連呼し、しかも自分の仲間たちに――この場では――会っていないと宣う目の前の輩への疑問と注目が否応なしに高まる良太郎の脳内を尻目に、思考停止したように見える良太郎に呆れたのか、村上が前に歩み出る。

「お話の途中で失礼します、彼とお知り合いのようですがお名前は――」
「いや、俺は良太郎とは初対面だ。――いや、このウラタロスたちとも初対面なのか?」
「――お名前は?」

意味のわからない言葉を自分のペースで喋り続ける男に声が思わず怒りの色を帯びるのを隠しもせず、村上は問う。
それに対し、相手はようやく、ああ、と小さく呟いて。

「俺の名前は門矢士、そして背負ってるこいつは乾巧だ。知ってるだろ?村上」

111 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:10:04 ID:1FDzq.Hk0

その名を聞いて、村上もまた、その表情を確かに強ばらせた。

――一方で、会話を意図的に混乱させている士の胸中も、決して穏やかなものではなかった。
野上良太郎に村上峡児。
志村によって殺し合いに乗っていると告げられた二人の男と、傷だらけの身体で巧を庇い戦わなければいけないかもしれないのだ。
余裕など、持っていられるはずもない。

(とはいえ、ウラタロスたちがそうおめおめと殺し合いに乗るとも思えない。もしかすると、俺の考えた通り志村の方が・・・・・・)

と、先ほどの死体の中で志村だけがいなかったことと併せて考えながら、士は今、今一度ディエンドライバーの所在を悟られぬように確かめた。


【一日目 真夜中】
【D-5 高原】


【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、決意、仮面ライダーディケイドに1時間30分変身不可
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド、ディエンドライバー+ライダーカード(G3、サイガ、コーカサス)@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×2、不明支給品×2、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、キバーラ@仮面ライダーディケイド、
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
0:どんな状況だろうと、自分の信じる仮面ライダーとして戦う。
1:良太郎たちに対処。本当に園崎冴子と天美あきらを殺害していた場合は……。
2:野上良太郎は本当に殺し合いに乗っているのか?
3:友好的な仮面ライダーと協力する。
4:ユウスケを見つけたらとっちめる。
5:ガドルから必ずブレイバックルを取り戻す。
6:ダグバへの強い関心。
7:音也への借りがあるので、紅渡や(殺し合いに乗っていたら)鳴海亜樹子を元に戻す。
8:仲間との合流。
9:涼、ヒビキへの感謝。
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、クウガ、ファイズ、ブレイド、響鬼の力を使う事が出来ます。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※参戦時期のズレに気づきました。
※仮面ライダーキバーラへの変身は光夏海以外には出来ないようです。
※亜樹子のスタンスについては半信半疑です。

112 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:10:22 ID:1FDzq.Hk0




【乾巧@仮面ライダー555】
【時間軸】原作終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、気絶中、深い悲しみと罪悪感、決意、自身の灰化開始に伴う激しい精神的ショック(少しは和らいでいる)、仮面ライダーファイズに1時間25分変身不可
【装備】ファイズギア(ドライバー+ポインター+ショット+エッジ+アクセル)@仮面ライダー555
【道具】支給品一式×3、首輪探知機@オリジナル、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:打倒大ショッカー。世界を守る。
0:(気絶中)
1:天道の遺志を継ぎ、今度こそ誰も死なせない……はずだったのに。
2:『仲間』である士達を護る。
3:ディケイドが世界の破壊者であるとしたら自分が倒すが、それまでは信じていたい。
4:園咲夫妻の仇を討つ。
5:全てが終わったら、霧彦のスカーフを洗濯する。
6:後でまた霧彦のいた場所に戻り、綺麗になった世界を見せたい。
7:信頼できる相手に、自分の託されたものを託しても良い……?
8:仲間達を失った事による悲しみ、罪悪感。それに負けない決意。
9:乃木怜治を敵視。
【備考】
※天道の世界、音也の世界、霧彦の世界、志村の世界の大まかな情報を得ました。
※参加者達の時間軸に差異が出る可能性に気付きました。
※志村の血の匂いに気づいていますが、それはすべて村上たちのせいだと信じています。
※オルフェノクの寿命による灰化現象が始まりました。巧の寿命がどの程度続くのかは後続の書き手さんにお任せします。
※士に胡散臭さを感じていますが、今現在は信頼しています。





【野上良太郎@仮面ライダー電王】
【時間軸】第38話終了後
【状態】強い決意、疲労(中)、ダメージ(中)、目の前の青年(士)への困惑
【装備】デンオウベルト&ライダーパス@仮面ライダー電王、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:モモタロスの分まで、皆を守る為に戦いたい。
0:極力自分の力で、自分に出来る事、やるべき事をやる。
1:今は村上さんと一緒に、目の前の二人に対処する。
2:亜樹子が心配。一体どうしたんだろう…
3:リュウタロスを捜す。
4:殺し合いに乗っている人物に警戒
5:電王に変身できなかったのは何故…?
6:橘朔也との合流を目指したい。相川始を警戒。
7:あのゼロノスは一体…?
【備考】
※ハナが劇中で述べていた「イマジンによって破壊された世界」は「ライダーによって破壊された世界」ではないかと考えています。確証はしていません。
※キンタロス、ウラタロスが憑依しています。
※ウラタロスは志村と冴子に警戒を抱いています。
※ブレイドの世界の大まかな情報を得ました。
※ドッガハンマーは紅渡の元へと召喚されました。本人は気付いていません。
※現れたゼロノスに関しては、桜井侑斗ではない危険人物が使っていると推測しています。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。

113 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:10:51 ID:1FDzq.Hk0




【村上峡児@仮面ライダー555】
【時間軸】不明 少なくとも死亡前
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、バードメモリに溺れ気味
【装備】オーガギア@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト
【道具】支給品一式、バードメモリ@仮面ライダーW 不明支給品×1(確認済み)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いには乗らないが、不要なものは殺す。
0;まずは目の前の二人への対処、最悪殺す。
1:良太郎の同行は許すが、もしもまだ失態を重ねるようであれば容赦しない。
2:志村は敵。次に会った時には確実に仕留めるべき。
3:亜樹子の逃走や、それを追った涼にはあまり感心が沸かない。
4:冴子とガイアメモリに若干の警戒。
【備考】
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。
※オーガギアは、村上にとっても満足の行く性能でした。





「ぐ……、あれ、俺は……」

痛む身体を押し上げるようにして、彼、橘朔也は一人焼け野原と化した木々の中で目を覚ました。
あの時、自分はゾルダの弾丸に飲み込まれ死んだはずでは?
一体何がどうなっているのか、とあたりを見渡す橘の元に一つの足音が近づいてくる。

「――誰かいるのかッ!?いるなら返事をしてくれ!」
「その声……、橘チーフ!?俺です!志村です!」

114 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:12:03 ID:1FDzq.Hk0

元の世界が一緒であり、未来の自分の部下らしい志村が“その顔についた赤の血”を拭うこともなく現れたことで、橘の緊張は一気にほぐれる。
もちろん、こんな戦場で仲間に会えたからと言って笑顔を浮かべるほど、彼は楽天家でもなかったが。

「チーフ、無事だったんですね!」
「あぁ、どうやらそうらしい……。戦いはどうなった?皆は?」
「その、俺も途中で気を失ってしまって、気付いたら全てが終わった後だったようなので、そこまで詳しくは……」
「そうか……」

申し訳ございません、と続ける志村を尻目に、橘は深くため息をつく。
せめてこの場で得た仲間を守ろうと戦いに赴いた途端に、これだ。
激しい戦いではあったようだが、不意打ちで戦況から離脱するなど、仮面ライダーとして失格も良いところだった。

「ですが、周辺を散策する内にフィリップくんは見つけました。傷ついていたようだったので、今は病院の無事なベッドに寝させていますが」
「……そうか!フィリップは無事だったか!」

思わずといった様子で仲間の無事を喜ぶ橘だが、それを告げる志村の顔があまりに暗いために、どうやら今のは俗に言う“良いニュース悪いニュース”の“良いニュース”であったらしいことを理解する。
そして、迷うような表情を浮かべたままの志村に言葉を促すように橘が頷くと、彼は遂に重い口を開いた。

「……周辺を見て、死体を見つけられたのは海東さん、秋山さん、ヒビキさん、そして腰につけていたベルトから推測するに恐らく――五代雄介さんです。他の皆さんのものは支給品まで含めても見つからず――」

――橘が言葉として理解できたのは、そこまでであった。
ヒビキが、秋山が、海東が、そして五代が、死んだ?
では、自分たちが犠牲を払ってまで得ようとした成果は何一つとして得られなかったというのか、全て、この手からすり落ちていったと言うのか。
では、では一体自分たちは何のために――。

――茫然自失とする橘をその目に納めながら、死神は気付かれぬよう口角を吊り上げていた。

115 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:12:24 ID:1FDzq.Hk0





橘朔也、仮面ライダーギャレンがゾルダのシュートベントの一撃を食らってなお命があったのには、もちろん理由がある。
それは、彼が持っていたザビーブレス、それに付随するザビーゼクターによるものであった。
ザビーゼクターがこの場に来てから何度も主を選定しようとし、その度に様々な事情からその機会を奪われてきたのは以前述べられたとおりである。

さて、では今選定を受けている橘朔也という男、彼はどうだろうか?
仲間のためを思い、自分を投げ打つことが出来る覚悟と、他人を率先して行動を起こそうとする行動力、決断力は確かに持ち合わせているらしい。
だが、この男には恐怖が潜んでいる。

以前自分が選定しようとした北條という男を殺したダグバという怪人に対し、またそれを打ち倒そうとその身を闇に染めた小野寺という男に対し、彼は危惧を通り越して単に恐怖を抱いているように感じたのだ。
自身を使い、子分蜂を率いる女王蜂となる資格者には、敵への恐怖など部下の士気を下げるだけなのである。
故にその後彼をデストワイルダーが殺害しようとしても、ザビーゼクターは一切の力を貸さなかった。

ではそのまま彼を見捨てたか、と言われれば、その答えはNo。
病院に着き、未来の部下と出会い、確かに多くの仲間を前にして自分に出来ることを、死んだ部下の分まで成そうとするその意志は、確かに自分を用いるのに相応しい資格者の風格であった。
その後ほどなくして始まった戦いの中、彼はその命を儚く散らそうとする。

――こいつをここで死なせるのは、惜しい。

それが、その時のザビーゼクターの思いであった。
故にそのままギャレンを爆発から僅かに反らし、直撃を躱したためにその命を救うことに成功する。
打ち所が悪かったらしく今の今まで伸びていたが、まぁ今後に大きな障害となるような怪我もないようだし、よしとするべきだろう。

さて、この男は仲間の死を知ってどうするのか?
ただ無力感にうちひしがれるのか、その無念に報いるため戦士として戦うのか。
どちらにせよ、ザビーゼクターの決断は、まもなく下されようとしていた。

116 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:13:26 ID:1FDzq.Hk0


【一日目 真夜中】
【E-4 病院跡地】


【橘朔也@仮面ライダー剣】
【時間軸】第42話終了後
【状態】精神疲労(大)、全身に中程度の火傷(手当済み)、仲間の死に対しての罪悪感、自分の不甲斐なさへの怒り、クウガとダグバ及びに大ショッカーに対する恐怖 、決意、仮面ライダーギャレンに1時間25分変身不可
【装備】ギャレンバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(ダイヤA〜6、9、J)@仮面ライダー剣、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣、ガイアメモリ(ライアー)@仮面ライダーW、、ザビーブレス@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×4、ゼクトルーパースーツ&ヘルメット(マシンガンブレードは付いてません)@仮面ライダーカブト、ディスクアニマル(アカネタカ)@仮面ライダー響鬼
【思考・状況】
0:仮面ライダーとして、人々を護る。
1:まずは今後の方針を考える。
2:首輪の解析は、事態が落ち着いてから取りかかる。
3:志村純一と共にみんなを守る。
4:小野寺が心配。
5:キング(@仮面ライダー剣)、(殺し合いに乗っていたら)相川始は自分が封印する。
6:出来るなら、亜樹子と始を信じたい。
【備考】
※『Wの世界万能説』が誤解であると気づきました。
※現状では、亜樹子の事を信じています。
※参戦時期のズレに気づきました。
※ザビーゼクターに見初められたようです。変身もできるのか、保留扱いで生かされただけなのかは後続の書き手さんにお任せします。





【志村純一@仮面ライダー剣MISSING ACE】
【時間軸】不明
【状態】全身打撲、ダメージ(大)、仮面ライダーG4に――時間変身不可、アルビノジョーカーに1時間25分変身不可、オルタナティブ・ゼロに1時間30分変身不可、仮面ライダーグレイブに1時間35分変身不可
【装備】グレイブバックル@仮面ライダー剣MISSING ACE、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎、ラウズカード(クラブのJ〜K、ダイヤのK)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×4(ただし必要な物のみ入れてます)、ZECT-GUN(分離中)@仮面ライダーカブト、ファンガイアスレイヤー@仮面ライダーキバ 、G3の武器セット(GM-01スコーピオン、GG-02サラマンダー、GK-06ユニコーン)@仮面ライダーアギト
【思考・状況】
基本行動方針:自分が支配する世界を守る為、剣の世界を勝利へ導く。
0:後々地の石を奪い逃げた白い仮面ライダー(サガ)を追い、地の石を奪う。
1:バットショットに映ったアルビノジョーカーを見た参加者は皆殺しにする。
2:人前では仮面ライダーグレイブとしての善良な自分を演じる。
3:誰も見て居なければアルビノジョーカーとなって少しずつ参加者を間引いていく。
4:野上と村上の悪評を広め、いずれは二人を確実に潰したい。
5:フィリップを懐柔し、自身の首輪を外させたい。
6:首輪を外させたらすぐにフィリップを殺す。正体発覚などで自分の首輪を解除させるのが困難になっても最優先で殺害。
7:乃木を警戒。何とか潰したい。
8:ライジングアルティメットを支配し、首輪を解除したら殺し合いに積極的になるのもいいかもしれない。
【備考】
※555の世界、カブトの世界、キバの世界の大まかな情報を得ました。
※電王世界の大まかな情報を得ました。
 ただし、野上良太郎の仲間や電王の具体的な戦闘スタイルは、意図的に伏せられています。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
 ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。
※放送を行ったキングがアンデッドである事に気付いているのかどうかは不明です。
※封印(SEAL)のカードは破壊されました。
※オルタナティブ・ゼロのデッキは極力秘匿するつもりです。
※現在、目立つ箇所についた血を拭ってその上からヒビキの血を塗りたくっています。

117 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:13:48 ID:1FDzq.Hk0





彼、フィリップが目を覚ましたとき、目前に広がるのは視界いっぱいに広がる星空であった。
しかし一方で自分の周りには白の掛け布団とベッドが見え、どうやら奇跡的に残った病室の一部であるようだということが理解できた。
一体皆はどうなったのか、と痛む身体を起き上がらせると、瞬間全身に鈍い痛みが走りそのままベッドに逆戻りしてしまう。

どうやら、先ほどの戦いにおけるダメージは、馬鹿にならないようだ。
枕元にダメージを回復したらしいファングを視認して、今は少し休むべきか、と彼が再び目を閉じようとした、その瞬間だった。
その右手に、違和感を覚えたのは。

「――ん?もしかしてこれは……」

触り心地に覚えのある、妙にしっくりくるそれをそのまま持ち上げるように目前に構えると、それは、見覚えのある緑に輝いた。
全てが、彼の持つ運命のメモリ、サイクロンそのものであった。
――そう、ただその端子が青色である以外は。


【フィリップ@仮面ライダーW】
【時間軸】原作第44話及び劇場版(A to Z)以降
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、照井、病院組の仲間達の死による悲しみ、仮面ライダーサイクロンに1時間30分変身不可
【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW、ファングメモリ@仮面ライダーW、ロストドライバー+(T2サイクロン+T2エターナル)@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2、ダブルドライバー+ガイアメモリ(サイクロン+ヒート+ルナ)@仮面ライダーW、メモリガジェットセット(バットショット+バットメモリ、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW)、ツッコミ用のスリッパ@仮面ライダーW、エクストリームメモリ@仮面ライダーW、首輪(北岡)、首輪の考案について纏めたファイル、工具箱@現実 、首輪解析機@オリジナル
【思考・状況】
0:亜樹子が殺し合いに乗っているのなら何としてでも止める。
1:志村純一を待つ。皆が心配。
2:大ショッカーは信用しない。
3:友好的な人物と出会い、情報を集めたい。
4:園田真理を殺したのは白い化け物。
5:首輪の解除は、状況が落ち着いてもっと情報と人数が揃ってから取りかかる。
6:出来るなら亜樹子を信じたいが……。
7:乃木怜治への罪悪感と少しだけの信用。志村純一は信用できる。
【備考】
※バットショットにアルビノジョーカーの鮮明な画像を保存しています。
※今のところは亜樹子を信じています。
※園咲冴子と天美あきらを殺したのは村上峡児と野上良太郎だと考えています。
※鳴海亜樹子と惹かれ合っているタブーメモリに変身を拒否されました。
※T2サイクロンと惹かれあっています。ドーパントに変身しても毒素の影響はありません。
※病院にあった首輪解析機をエクストリームメモリのガイアスペース内に収納しています。

118 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:14:05 ID:1FDzq.Hk0





F-6エリアにある住宅街、その中にある一見すると見逃してしまいそうな小さな廃工場の中で、彼らは休息を取っていた。
中にいるのは乃木、矢車、葦原の三人。
中でも葦原は、一人落ち着きなく建物内を歩き回っていた。

「……いい加減やめたらどうだ?どうせもう病院には禁止エリアの関係で戻れん」
「例えそうでも!俺はヒビキを助けに戻りたいんだ!あいつは俺たちのために――!」
「……はぁ、葦原涼、病院の方面に戻り彼らと合流するかを決めるのは放送を聞いて、俺たちの変身制限が解除されてからだってことで解決したと、何度も説明しただろう」
「それでも俺は――!」

先ほどからずっとこの調子だ。
何度合理的に説明しても、だだをこねる子供のようにフィリップを、ヒビキを助けに行くと聞きはしない。

「……全く以てうるさいやつだ」
「……貴様と意見が合うなんて、最悪だな」

葦原に聞こえぬように漏らした乃木の愚痴をどうやら聞いていたらしい矢車と顔を見合わせ、深くため息をつく。
どうせならこの場から逃げ出したいのだが、生憎右足が真反対にへし折れてしまっているためにそれも叶わない。

(いや、ここまでのダメージならば、いっそ――)

と思考をして、ふと葦原に気を取られ気付かぬ内に消えていた存在を思い出す。

「矢車想、そう言えば鳴海はどこだ?」
「あぁ、お花摘み、ってやつだ」
「小便にしちゃ長すぎないか?」
「……葦原、お前、デリカシーないってよく言われるだろ?」
「言われるが……それがどうかしたか?」

なんてことのないように返す葦原に対し、今度こそ二人は同時に深いため息をついた。

119 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:14:28 ID:1FDzq.Hk0





「あぁ、タブー……!」

廃工場の中で男三人が不思議なコントを繰り広げる一方で、亜樹子はもちろんトイレなどという理由でその場を離れたわけではなかった。
それは、あの病院で手に入れた自分の力、タブーを味わうため。
亜樹子の脳裏にリフレインするのは、幾多というガイアメモリによってその人生を壊されたものたちと、その家族の姿であった。

子供の使用により泣き崩れる母親、妻の使用により崩壊する家族、そして能力の犠牲となった人々の遺族――。
そうしたガイアメモリの悪意をこれでもかと目の当たりにしてきた亜樹子は、本来ならばこんな形でガイアメモリと呼び合うことなどなかったはずであった。
しかし重なる不運にその強い心は折れ、それをまた立て直したときは、誤った方向に向いてしまったのだ。

それを自分でも薄々感じつつ、しかしもう後戻りも出来ないと、彼女は唾を呑んだ。
美穂を見殺しにし、東京タワーに多くの人間を生き埋めにし――。
今更自分が何を許されようというのか。

――TABOO

覚悟と共に、惹かれ合うお互いを求めるように、彼女は“禁忌”を首輪へと挿入する。
一瞬の後、彼女の身体は異形のものへと変貌する。
その胸に、もはや迷いはない。

この強大な力を持ってすれば、倒せない相手など存在しない。
そう、自分は間違っていたのだ、最初から、こうして力で仮面ライダーどもをねじ伏せれば、迷うことなどなかったというのに。
全ての参加者を殺し、この力の前にひれ伏させる。

今の自分ならそれが出来ると、そう確信して。
そのままタブーは廃工場の中へと進軍していった。





「……葦原じゃないが、それにしても流石に遅すぎないか?」
「誰かに襲われたのかもしれない、俺が行って――」

と、駆け出そうとする葦原に対し、矢車はその足を引っかける。
受け身も出来ず倒れた葦原だが、流石にその顔には怒りの表情が見て取れた。

「一体何のつもりだ、矢車!」
「亜樹子の覗きをしようったって、そうは行かない。妹は、俺が守る」
「何を馬鹿なことを言って――!」
「――矢車、葦原!どけ!」

と、その瞬間絶叫をしたのは、意外なことに乃木であった。
片足が利かないままにもう片方の足で葦原たちを蹴り飛ばしたのだ。
一体何のために、と吹き飛ばされながらそちらを見やれば、乃木はその瞬間まさに火の玉に飲まれようという瞬間であった。

120 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:14:46 ID:1FDzq.Hk0

「――乃木!」

思わずといった様子で叫ぶ葦原に対し、乃木はその状況に不釣り合いな笑みを浮かべる。
――これで第二の命ともお別れだ、と。

(まぁ、温存できるならするべきだが、ここまでの傷を負っては一度死んで第三の命を使った方が得策だろうからな)

そう、彼は自分の最後の能力である三つの命を使って、この足の傷を強引に治そうとしていたのだった。

自分に対し事情も知らず絶叫する葦原を見ながら、乃木は思う。
首輪に制限を設けられているというなら、それごと焼き払ってしまえば復活に制限もあるまい。
これこそが、自分の考え出した最高のストーリーなのだ、と。

(仮面ライダー諸君にも十分媚は売れただろうしな、次の命の時は、是非とも利用させてもらうよ――)

その身を巨大な火の玉に焼かれながら、彼は笑う。
次の命の時にこそ、最後に勝者となるのは自分なのだ、と。
そうして、一瞬のうちに、ワームの王はその肉体を一片も残さず世界より消滅した。

「――乃木ィィィィ!!!」
「静かにしろ、お前も殺されたいのか」

何度も絶叫する葦原を戒めつつ、矢車はその手にゼクトマイザーを握りしめる。
だが一方で、なぜ自分たちの居場所がバレたのだ、と思わずにはいられなかった。

(周辺には簡易的だが罠も張っていた……、もちろん少しでもそういった知識を囓ったことがあれば容易に対策も出来るが……)

この襲撃者が自分の設置した『無造作に近づけば中の人物にその接近を知らせる仕掛け』をくぐり抜け、自分たちを攻撃した、だけならばまだいい。
もし、罠の場所も自分たちの居場所も全て知っている参加者があの怪物の正体だったなら?もしそうなら自分は――。

(いや、今はそんなことを考える場合じゃない、今考えるべきは――)

――どうやって“今”を生き残るか、それだけだ。

121 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:15:08 ID:1FDzq.Hk0


【一日目 真夜中】
【F-6 工場地帯】


【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、困惑、仲間を得た喜び、ザンキの死に対する罪悪感、仮面ライダーギルスに1時間変身不可
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品×2(確認済)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す!
0:剣崎の意志を継いでみんなの為に戦う。
1:取りあえず、目の前の怪人に対処する。
2:亜樹子は無事なのか……?
2:人を護る。
3:亜樹子を信じる。
4:門矢も信じる。
5:ガドルから絶対にブレイバックルを取り返す
6:良太郎達と再会したら、本当に殺し合いに乗っているのか問う。
【備考】
※変身制限について、大まかに知りました。
※現状では、亜樹子の事を信じています。
※聞き逃していた放送の内容について知りました。
※自分がザンキの死を招いたことに気づきました。
※ダグバの戦力について、ヒビキが体験した限りのことを知りました。




【矢車想@仮面ライダーカブト】
【時間軸】48話終了後
【状態】全身に傷(手当て済)、闇の中に一人ではなくなったことへの喜び、仮面ライダーキックホッパーに1時間変身不可
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、ゼクトマイザー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式
基本行動方針:弟を殺した大ショッカーを潰す。
1:取りあえず目の前の怪人に対処。もしやこの怪人は……。
2:五代雄介に興味。可能なら弟にしたい。
3:士の中の闇を見極めたい。
4:殺し合いも戦いの褒美もどうでもいいが、大ショッカーは許さない。
5:亜樹子の思惑がどうであれ、妹として接する。またその闇を見極める。
6:音也の言葉が、少しだけ気がかり。
7:自分にだけ掴める光を探してみるか……?
【備考】
※ディケイド世界の参加者と大ショッカーについて、大まかに把握しました。
※10分間の変身制限を把握しました。
※黒いカブト(ダークカブト)の正体は、天道に擬態したワームだと思っています。
※鳴海亜樹子を妹にしました。
※亜樹子のスタンスについては半信半疑ですが、殺し合いに乗っていても彼女が実行するまでは放置するつもりです。
※目前の怪人(タブー・ドーパント)が亜樹子の変身したものではと疑っています。

122 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:15:25 ID:1FDzq.Hk0




【鳴海亜樹子@仮面ライダーW】
【時間軸】番組後半(劇場版『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』直後)
【状態】ダメージ(小)、極めて強い覚悟 、ガイアメモリ使用による気分高揚、タブードーパントに変身中
【装備】ガイアメモリ(タブー)@仮面ライダーダブル
【道具】無し
【思考・状況】
基本行動方針:風都を護るため、殺し合いに乗る。
0:例え仲間を犠牲にしてでも優勝し、照井や父を生き返らせて悲しみの無い風都を勝ち取る。
1:最高の気分。この力で目の前の二人をぶっ殺す。
2:他の参加者を利用して潰し合わせ、タブーの力で漁夫の利を得る。
3:できるなら、地の石やエターナルのメモリが欲しい。
4:当面は殺し合いにはもう乗ってないと嘘を吐く。
5:東京タワーのことは全て霧島美穂に脅され、アポロガイストに利用されていたことにする。
6:首輪の解除は大ショッカーの機嫌を損ねるからうまく行って欲しくない。
【備考】
※良太郎について、職業:芸人、憑依は芸と誤認しています。
※放送で照井竜の死を知ってしまいました。
※タブーメモリの過剰適合者でした。現在声は変声機能を使っているためくぐもっています。





焦土と化したD-2の元市街地から、逃げるように飛行する不思議な物体が一つ。
その名をレンゲルバックルといい、この場では最早珍しくもない意志をもった支給品の一つであった。
こうして彼が逃走している理由はただ一つ、規格外の能力を持つダグバ、そしてクウガから少しでも遠くに離れるためだ。

あんな存在と戦っていては命が幾つあっても――レンゲルバックルを操るスパイダーアンデッドは不死身だったが――足りはしない。
故に誰か自分を拾った参加者にクウガとダグバの危険性を伝え、そのままここから離れるよう進言することこそが、自分が生き残るのに大事なことである、とそこまで考えて。
彼は、真横に白の円盤のような飛行物体がいつの間にか並んでいることを認識する。

123 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:15:40 ID:1FDzq.Hk0

あっ、と思ったときにはもう遅く。
レンゲルバックルの身体は、そのまま地表に向けて真っ逆さまに落下――しない。
その身を、赤い鞭のようなものに絡み取られたため。

「――ありがとう、サガーク」

鞭を操る男は、そのまま先ほどの円盤に向けて礼を述べる。
どうやらこいつが俺の新しい宿主らしい、態度は気に入らないがまぁいいだろう。
俺の見てきた悪夢を、お前にも見せてやる――。

男がレンゲルバックルをその手に直接掴んだ瞬間、一気に映像が流れ出す。
クウガとダグバ、その圧倒的な実力と絶望的な暴力の恐ろしさを。
さぁ恐れおののけ、そのままUターンして向こうの参加者を皆殺しに――。

「……ライジングアルティメット?」

と、小さく男が呟いた言葉にその暗示を遮られる。
そのまま怪訝そうに一瞥をくれたかと思えば、レンゲルバックルは彼のデイパックの奥深くに仕舞い込まれてしまった。
戻れ、戻れと脳内に念を送るが、先ほどの牙王という男と同じく精神干渉に耐性があるのか、それともよっぽどクウガたちに対する特攻策があるのか、その声に従う様子は一切見られなかった。

――仕方ない、プラン変更だ。

ここまでくれば、いっそどうとでもなれ、だ。
ダグバにでも何でもとりついて、最後の最後まで殺し合いを進めてやろうじゃないか。
半ばやけくその覚悟を決めながら、レンゲルバックルと、それに収められているスパイダーアンデッドは、またしても西側へUターンを開始したのだった。

124 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:15:58 ID:1FDzq.Hk0


【一日目 真夜中】
【D-3 橋の中央】

【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、地の石を得た充足感、相川始の裏切りへの静かな怒り、仮面ライダーゾルダに55分変身不可、ウェザードーパントに1時間変身不可、仮面ライダーサガに1時間5分変身不可、ハードボイルダーを運転中
【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、ゼロノスベルト+ゼロノスカード(緑二枚、赤二枚)@仮面ライダー電王 、ハードボイルダー@仮面ライダーW、レンゲルバックル+ラウズカード(クラブA〜10、ハート7〜K)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×3、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、アームズモンスター(バッシャーマグナム+ドッガハンマー)@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0〜1)、地の石(ひび割れ)@仮面ライダーディケイド、ディスカリバー@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:王として、自らの世界を救う為に戦う。
1:レンゲルバックルから得た情報を元に、もう一人のクウガのところへ行き、ライジングアルティメットにする。
2:何を犠牲にしても、大切な人達を守り抜く。
3:ディケイドの破壊は最低必須条件。次こそは逃がさない。
4:始の裏切りに関しては死を以て償わせる。
4:加賀美の死への強いトラウマ。
5:これからはキングと名乗る。
【備考】
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キングを知りません。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※放送で冴子の名前が呼ばれていない事を失念している為、冴子が死亡していると思っています。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。
※相川始から剣の世界について簡単に知りました(バトルファイトのことは確実に知りましたが、ジョーカーが勝ち残ると剣の世界を滅ぼす存在であることは教えられていません)。
※レンゲルバックルからブレイドキングフォームとクウガアルティメットフォームの激闘の様子を知りました。またそれによってもう一人のクウガ(小野寺ユウスケ)の存在に気づきました。
※地の石にひびが入っています。支配機能自体は死んでいないようですが、どのような影響があるのかは後続の書き手さんにお任せします。





こうして、長い長い病院での大乱戦は終わりを迎えた。
だが、地の石も、ディケイドも、この戦いの現況であったそれらはまだ存在している。
これが意味することはただ一つ。

――殺し合いはまだ、始まったばかりだと言うことだ。

125 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:16:14 ID:1FDzq.Hk0


【五代雄介@仮面ライダークウガ 死亡確認】
【秋山蓮@仮面ライダー龍騎 死亡確認】
【金居@仮面ライダー剣 封印】
【日高仁志@仮面ライダー響鬼 死亡確認】
【乃木怜司@仮面ライダーカブト 死亡確認】
【海東大樹@仮面ライダーディケイド 死亡確認】

【響鬼の世界 崩壊確定】

【残り24人】


【全体備考】
※E-4大病院が崩壊し廃墟となりました。
※Gトレーラー内にはG4の充電装置があります。
※G4は説明書には連続でおよそ15分使えるとありますが、実際どのくらいの間使えるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※G4を再度使用するのにどれくらい充電すればいいのかは後続の書き手さんにお任せします。
※及びG4システムはデイパック内ではなくGトレーラー内に置かれています。
※F-4エリアにGトレーラー、E-4エリアにトライチェイサー2000Aが停車されています。

※木製ガイアメモリ(疾風、切札)@仮面ライダーW、参加者の解説付きルールブック@現実 、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト、ブラッディローズ@仮面ライダーキバ 、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー超電王、カイザポインター@仮面ライダー555、変身音叉・音角+装甲声刃@仮面ライダー響鬼、ナイトのデッキ+サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎、カイザギア(ドライバー+ブレイガン+ショット+)@仮面ライダー555、デザートイーグル(2発消費)@現実、変身一発(残り二本)@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト、五代の不明支給品×1、草加の不明支給品×1、ガイアドライバー(五代)@仮面ライダーWがE-4病院跡地付近に散乱しています。

※五代雄介に植え付けられていたアマダム@仮面ライダークウガは破壊されました。
※乃木怜司@仮面ライダーカブトが死亡しました。第三の命に掛けられた制限がどのようなものなのか(原点通り二人になって復活するのか、どの程度の時間で復活するのか、そもそも復活できるのか等)は後続の書き手三にお任せします。

126 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:17:49 ID:1FDzq.Hk0
以上で投下を終了します。
色々意見はあると思いますが、書いてて凄く楽しかったです。

ご意見ご指摘ご感想などありましたら是非ともお願いいたします。

127 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 15:24:07 ID:1FDzq.Hk0
忘れてました、タイトルは『Kamen Rider: Battride War』でお願いします。

128 名無しさん :2018/01/28(日) 17:39:36 ID:fTieHSGw0
投下乙でした!
ライダー大戦にふさわしい迫力満点の大乱戦は熱く、見どころ満載です!
それぞれが死力を尽くして戦い、勝利と敗北が繰り返されて、そしてまさかの決着に度肝を抜かれました!

129 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/28(日) 18:22:22 ID:1FDzq.Hk0
>>128さん、ご感想ありがとうございます。
見返していたら>>76>>77の間に抜けがあったので訂正します。
以下本文です。

――CYCLONE!
「変身!」
――CYCLONE!

ロストドライバーがそのメモリの名を復唱すると同時、フィリップの姿は一瞬で緑の戦士へと塗り替えられる。
パージした緑の結晶がその身を完全に異形のものへと変貌させ、変身の完了を告げるようにその瞳が赤く輝いた。
フィリップ自身がかつてその名を付けた、大地を、自然を守るため戦う戦士、仮面ライダーサイクロン。

その名を象徴するかのように吹いた一陣の風にマフラーを靡かせて、彼はその右手を真っすぐギラファへと向けた。
そして告げるのは、街を泣かせる悪人たちに、〝仮面ライダー”が投げかけ続けるあの言葉。

「さぁ、お前の罪を数えろ。カテゴリーキング!」
「自身の種の繁栄を望むことの……何が罪だというんだ!」

その言葉を境に、彼らの戦いの火蓋は、幕を開けた。
先ほどまでと同じく手負いと思えないほどのスピードで突貫するギラファに対し、しかしサイクロンは思う。
――遅い。

変身したためか、それともこの姿に対して自分が抱いている安心感のためか、今のフィリップには先ほどまでと違ってギラファの攻撃が手に取るように見えた。
剣筋を縫うように躱す彼は、まるでそのままそよ風のように優雅ですらあって。
思わずといった様子でギラファが呆気に取られた隙に、そのまま渾身の後ろ回し蹴りを背面に浴びせる。

ぐぅという情けない悲鳴と共に床を転がったギラファに対して、サイクロンは必殺の構えをとる。
彼にはこれ以上この男をのさばらせておく理由など何もなかった。

130 名無しさん :2018/01/28(日) 19:11:26 ID:t.THHWUQ0
数年越しの復活に相応しい大作、投下お疲れ様です!
16人もの参加者で行われるライダー大戦の中、外しちゃいけない要素を丁寧に拾った傑作でした。
数々の熱いバトルの中でも、特に前年のラスボスであるジョーカーと翌年の最強フォームである装甲響鬼が互いの初変身で対戦カードが大トリで組まれるのは熱いことこの上ない!

夢の守り人であったたっくんを前に、夢が呪いであると吐く渡に対して、彼が繋いできたのは「希望」であると、後年の映画を知ればニヤリとできるような熱くて格好良い説教をするディケイドも最高
惜しくもここでは終始善良な仮面ライダーであってくれた海東が人間臭さを見せながら退場し、もう一人のクウガである五代を彼のために破壊するなど、まるで物語の主人公みたいだ……
また総勢六人もの脱落者の中でも、散り際が特に印象に残ったのはやはりその五代さん。彼を救うための大乱戦だったのに、結果は本当に辛いものになってしまった。
けれど、ひとりきりで戦ってきた彼がある意味で自由になれた瞬間だったのかもしれない。

仮面ライダー以外にも、種族の守護者として勇士と認められた金居、傍目には最後まで有能で良い人のまま亡くなっちゃったなんだか美味しい乃木さんに、大戦の後半を完全に持っていったWジョーカーなど見せ場は充分。
ヒビキさんも最後まで仮面ライダーらしい格好良い姿を見せてくれたけれど、果たして彼らの世界はどうなってしまうのか

改めて、この1レスでは言い切れないぐらい面白くて濃厚な大作でした。本当にお疲れ様です!

131 名無しさん :2018/01/28(日) 20:07:32 ID:qS5d91Jc0
投下乙です!
これだけの大乱戦、見事に書ききって、お疲れ様でした!
遂に全滅作品が出たが、響鬼の世界はこのまま破壊されてしまうのだろうか…

132 名無しさん :2018/01/28(日) 20:26:12 ID:BRqZ1cdk0
投下おつでした!
これぞまさにバトルロワイヤルと言わんばかりにスピーディーに脱落していく参加者たち!
ライジングアルティメットのあまりの力に、脱落表記なのも気にしないでもうみんな死んでったものだとばかり思ってた!
だからこそのあるものは目を覚まし駆けつけ、またあるものは暗躍しが始まってもすごいわくわくした。
いやまあ志村脱落あたりで察してはいたんだけど。響鬼のことといい暴れまくったなこいつ。
でも最後の最後まで誰が本当に死んで誰が生きてるのかにもドキドキしながら読みました。
五代が危うくダグバみたいな事になったときはうわああって思ったけど、

>きっと、空を彩る眩しい青の一部となったのであった

がほんま美しい文章で泣いた。
海堂や蓮もなあ、ほんまお前ら情がなあ。
ギラファはかなりの諸悪の根源なのにかっこよく倒されやがって……。
意地もあって志村と違い乃木が一見いいやつみたいに死んだけどこいつどうなるんだろ。
復活できませんでしたオチかと思いきやそこも含めてお任せなので楽しみだけどこのまま死んだら死んだで美味しいな。
まさかの生きてた橘さんや終わった後にやってくる人たち、キングフォームジョーカー2体に揺さぶられる始。
完全にタブー踏んじゃった人。
この後も楽しみがいっぱいだ!

133 ◆.ji0E9MT9g :2018/01/30(火) 02:04:42 ID:jo5OzecY0
皆様、長文でのご感想本当にありがとうございます、励みになります。
必要ないかとは思いましたが、一応本作をwikiに登録させていただいたことをご報告いたします。

一応、今のところ第三回放送くらいまでの内容はぼんやり浮かんでいますので、今後とも投下は続けていけると思います。
リレー企画でこういった発言も本来控えるべきかとは思いますが、投下が続くのか心配なさっている方が多いようだったので、一応ご連絡させていただきました。

それと、ご相談という形になるのですが、放送前に必ず片付けなければいけないパート一つを投下した後、放送を投下しようと思っています。
次回投下パートを投稿した後また第一回放送のときのようなコンペ期間を設けるべきかどうか皆様どう思われますか?
もちろん、このパートを書いておきたい、書かなければいけないだろう、などの理由で放送前に書き手として参加されたい方は大歓迎ですので、遠慮なくコンペ期間の開催や作品投下を申し出てください。

まだ次回作の執筆には時間がかかると思いますので、その投下後長くて二日間ほど何も反応がなければ私がそのまま放送を投下して、話を進めようと思いますので、一応参加を希望される方はお早めに申し出ていただけるとありがたいです。

134 名無しさん :2018/02/03(土) 06:45:12 ID:sOjmfQSI0
また予約がキターーーーーー!!

135 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/04(日) 03:02:06 ID:tan.18bA0
想定外に時間が出来て早く完成したので、ただいまより投下を開始いたします。

136 悲しみの果てに待つものは何か ◆.ji0E9MT9g :2018/02/04(日) 03:02:42 ID:tan.18bA0
時刻は23:15、空には星が輝き、この殺し合いの場も静まりを見始めた時刻。
そんな中でしかし彼らは未だに熱い闘争の真っ只中にいた。
宙を浮遊する得体の知れぬ赤い怪人に対し、相対する男二人、葦原涼と矢車想は生身のまま。

この場において設けられた変身制限によって、二人には怪人に対し真正面からの抵抗手段を失ったも同然であった。
しかし、そうした状況でも一切の戦意を喪失しないまま、彼らはその鋭い瞳で先ほど同行者であった乃木を焼き殺したその怪人に睨みを利かせる。
どうやら敵はこの状況に高揚感を抑えられないらしく笑い続けていた。

その反動で乃木を殺した後、廃工場内という狭い範囲にいるにもかかわらず二人を見失ったようであり、これは好機だと二人は思う。
しかし、だからといってこの状況で彼らに逃走の手段はない。
いや、本来なら迷うことなく逃げるのだが、タブーが廃工場内を徘徊しながらしかし唯一の出口には油断なく注意を払っているために逃げるという作戦は実質封じられたも同然であった。

かといってこちらに有効な手段もない、ではこのまま変身制限を迎えるまで逃げ切るか、と涼が考える、が。

「・・・・・・葦原、奴はここで潰すぞ」

その状況でなお、先ほどまで戦意の一切を見せず死んだ目をしていた矢車が、らしくなく戦闘への意欲を見せたのだ。
涼としても自分たちと共に戦ってくれた乃木を焼き殺した目の前の怪人に反撃が出来るのならそれを望んでいた。
矢車が賛成してくれたことにはいささか動揺を隠せなかったが、しかし彼も何らかの考えがあるかもしれず、また彼の考えの大半は葦原には理解も及ばなかったので、そのまま黙っておくことにする。

しかし、戦意があったとして、問題は自分たちの手札が少ないことだ。
涼のデイパックには奴の気を一瞬反らせるだけの手はあるにはあるが・・・・・・。
と、そこまで考えて、矢車が首で何らかを指し示した先を、涼は見て。

「あれは・・・・・・パーフェクトゼクター!?」
「あぁ、どうやらさっきの攻撃の中でも問題なく焼け残ったらしい。・・・・・・あれがあれば奴に有効打を与えられるはずだ」

それは、先ほど乃木が握りしめたまま気絶し、故にそのまま共に持ち運んできたパーフェクトゼクター。
確かにアレならばいかに強力な敵であろうともダメージを与えることが出来るだろう。
目前に迫る赤い怪人は防御力に優れているようにも見えないし、不意さえつければ一撃で勝負をつけることも可能だろう、しかし――。

「アレは変身している俺でも扱うのが難しかったんだ、今の俺たちじゃとても扱えない」

涼はそれを扱うには既に自分のコンディションでは事足りないと確信していた。
実際に扱った涼が言うのだから、それは恐らく間違いではないだろう。
しかし、そんな中で矢車は涼にその手につけていた謎のモジュールを手渡してくる。

「……これを使って俺を援護しろ。俺はアレを使って上から奴に斬りかかる」

と、矢車が指さした方向に目を見やればそこには上階に繋がる階段と恐らくいつもは器具を操作する際上るのであろう場所が見えた。
なるほど自分の役目は矢車を援護しつつあの怪人をその真下まで誘導することか。
なればこの手に渡されたゼクトマイザーで隠れながら攻撃するのが最適だろう。

「すまないな、俺のダメージが大きいばかりにお前に危険な役目を任せてしまって」
「……いや、気にするな。俺には俺の事情がある」
「……?そうか、それなら構わないが」

137 悲しみの果てに待つものは何か ◆.ji0E9MT9g :2018/02/04(日) 03:03:10 ID:tan.18bA0

自分のダメージのために矢車に危険な役目を任せてしまったことを謝ると、矢車はいつになく真剣な様子でそう返してきた。
先にも述べたとおり涼には矢車の言っていることを理解するのは困難なので、それ以上深く追求することもしなかったが。
――数瞬の後、乃木を殺害した高揚感も覚め自分たちを見失ったことに対する焦りを見せ始めたタブーがパーフェクトゼクターと反対の方向を見た瞬間に、彼らの行動は開始した。

先ほどまでのけだるそうな彼が嘘のように飛び出した矢車は、そのまま苦もなくパーフェクトゼクターの元へ到達、そのままそれを拾い上げる。
しかし、音の反響するこの工場の中で矢車の足音は余りにも大きく。
一気に振り返ったタブーはその手の内に先ほど乃木の命を刈り取ったのと同じ火球を――。

「させるか!」

その瞬間、涼はその手に持つゼクトマイザーから一気にザビーボマーを発射する。
勢いよく吐き出されたそれはそのままタブーに向かっていき、着弾。
その瞬間にボマーはその身体を爆発させ、タブーはたまらず身を捩った。

そしてその隙を見逃す矢車ではない。
パーフェクトゼクターをもったまま階段を駆け上る。
タブーもいつまでもボマーによる攻撃に怯んでいるわけではなく、頭上の足場に向けて火球を放った。

「矢車ッ!」

思わずと言った様子で涼が叫ぶが、火球により生じた爆炎をも自身の推進力に利用して、矢車が飛び出してきたことで、笑みを浮かべる。

「――ハアァァァァァァァァッ!!」

絶叫と共にパーフェクトゼクターの重量をも威力に利用して、そのまま矢車はタブーに対してその刃を振り下ろす。

「きゃあッ!?」

しかし瞬間、くぐもった声で悲鳴を上げたタブーに気を取られたか、当初の想定より大きく威力を殺したために、タブーに大きなダメージを与えられなかったようだった。
それに対しやはり彼らしくないと訝しげな表情を浮かべる涼だが、しかしそんな時間も長く与えられなかった。
気付いたときには矢車はタブーの手によって高く持ち上げられていたのだから。

そのままタブーは、矢車を持ち上げる手とは逆の手に火球を発生させ――。

『くるくるくるくる風車がまーわる!くるくるくるくる君がくるー!』

廃工場内に響いた爆音の聞くのも苦痛な、耳障りを体現したような曲にその動きを止めた。
それは、涼に支給されていた品であり、彼がダムで支給品を確認したとき五秒と持たずに再生を終了し二度と聞くこともあるまいとデイパックの奥深くに仕舞い込んだ逸話を持つ、ジミー中田のCDとラジカセのセットであった。
あまりにも酷い歌だったために一生聞く気も起きなかったが、こういった状況であればむしろ敵の気を反らすのに最適かと思われた。

そして、その目論見通りに気を反らしたタブーの腹を思いきり蹴り上げて、矢車はその拘束から脱出し、闇に姿をくらます。
一瞬でもタブーの気を反らせたのだから、あの酷い歌にも意味はあった。
逆に言えばそれ以上の働きを期待できるはずもない、はずだったのだが。

『しるしるしるしる君を知りたい!しるしるしるしるお味噌汁―!』

「……」

タブーはそのまま、二人を探すことすらやめてその歌に聴き入っているかのように見えた。
誰が聞いても酷いこの歌に一体何か理由があるのか、と困惑する涼だが、気にしていても仕方ないと予め決めていた矢車との合流地点に急ぐ。
その周辺にまでたどり着くと、物陰からいきなりグイと袖を引っ張り込まれた。

反射的に拳を握る涼だが、そこにいたのが矢車であったために、それをやめる。
と、瞬間的に矢車はその口を開いた。

「お前に一つ聞きたいんだが、あの歌の題名は何だ?」
「確か『風都タワー』……だったか、それがどうかしたか?」
「……いや、何でもない」

そこまで聞いて意味深な顔をする矢車を見やりながら、しかしあんな電波曲に構っている暇などないと涼は話題を切り替える。

「……それで、どうする?変身制限まではあと五分以上ある、奴を倒すなら何か考えないと」
「……俺に考えがある。その為に葦原、お前にこれを持っていてもらいたい」
「これはお前のデイパックだろ?お前が持ってるべきだ」
「……いや、この中に今俺が使える支給品はない。余計な荷物は置いておくべきだと思ってな」

俺が使える支給品はない、という言葉にわずかな引っかかりを覚えながら、しかし涼は言うとおりにデイパックを受け取った。
彼は一体、何をしようとしているのか?
元々理解の困難だった矢車が、更につかめない存在になって、涼は困惑した表情を浮かべた。

138 悲しみの果てに待つものは何か ◆.ji0E9MT9g :2018/02/04(日) 03:03:29 ID:tan.18bA0

「……とりあえず、具体的な作戦を教えてくれ、それに合流場所は――」
「いや、そんなものは必要ない。お前はここで黙って見てろ。一部始終、漏らさず、な」

そう言って、真っ直ぐに涼を見つめる矢車の瞳は、澄んでいた。
それはまるで、先の見えない彼をそのまま体現したような先ほどまでの暗い瞳とは異なる、綺麗な瞳だった。
矢車の言うことを引用するのなら、その瞳には闇の中に確かな光があるように見えて。

それ以上何も言えなくなった涼は、そのまま矢車のやることを見届けるしかなくなってしまった。
その様子に対して、満足げな表情を浮かべた矢車は、ラジカセの曲が鳴り止むと同時、そのまま物陰から飛び出して。
涼のいる物置から少し離れた地点で、わざとその足に散乱するように鉄の棒を引っかけた。

「――みぃつけた」

それを聞いてタブーはくぐもった声であっても一瞬で理解できるほどの愉悦の声を発する。
そのまま手に火球を発生させ、矢車に放つが、しかしその程度でやられるほど彼は甘くない。
右に左にとまるでこの廃工場を自分の庭であるかのように縦横無尽に飛び移る。

変身していなくてもバッタのような男だ、と涼は思う。
だが、しかし生身で無限に発生する火球を変身制限まで続けるのは、流石の矢車も厳しいだろう、とそう思考した瞬間。
彼は思いきりタブーに向かい飛びかかった。

その手にろくな武器もないままに敵の懐に飛び込むとはその場の誰も理解できず、涼も、そしてタブーも驚きの声を漏らした。
なるほど、そうして油断させた末に何らかの切り札で奴に反撃するのか、と涼は感心しかけて。
次の瞬間、矢車が先ほどまでの病院での戦いの時のように急激に戦意をなくしたのを見て、思わず身を乗り出した。

彼が一体何をしているのか、結局自分にはわからないが、しかしこのままでは死は確実、故にゼクトマイザーをその手に装着。
そのままボマーを発射しようとする涼に対しタブーもまたこの機を逃さず彼を殺そうとその手の火球を――。

「……お前、亜樹子だろ?」

矢車のその言葉と共に、両者ともにその動きを止めた。
彼の口から告げられた衝撃の発言に怒る暇もなく涼は呆然とするが、しかし先に動いたのはタブーであった。

「……いつから気付いてたの?」

否定して欲しい。
その涼の願いを容易く打ち砕くタブー――いや、亜樹子――の発言を受けて、矢車はその重い口を開く。

「……まず、最初にお前が現れた時点から怪しかった。俺の仕掛けた罠を見抜き、あの亜樹子を悲鳴の一つもあげさせず殺すような奴は、今更生身の乃木を殺した程度であそこまで興奮しない」

言われてみればその通りだった。
人智を越えた聴覚を持つ自分と乃木を差し置いてあの状況で一切の声を出させず亜樹子を殺すやつは、生身であり足もへし折れた無力な人間にしか見えない乃木を殺した程度であそこまで喜ぶはずもあるまい。
精々が彼の脅威を元々知る人物であった可能性だが、乾の話では間宮麗奈は乃木の仲間であり、天道に擬態したワームは突発的な行動が多く、ステルスキルなど出来ようはずもなかったということだ。

ではこの場で彼の脅威を知ったもの、という括りを適用するなら――もっとも、乃木の言葉を完全に信用する前提だが――病院にいたもの以外にその可能性はない。
であれば、封印された金居を除けば亜樹子と精々ライジングアルティメットとなった五代雄介だけである。
ここまで来れば、絞り込みとしては上々だろう。

しかし状況証拠でここまでの考察をした上で、なお矢車はもちろん別の可能性を模索していた。
しかし、タブーとの戦いの最中、その思いも否定する出来事が起こる。
それは――。

139 悲しみの果てに待つものは何か ◆.ji0E9MT9g :2018/02/04(日) 03:03:50 ID:tan.18bA0

「……さっきお前はあの電波曲に聴き入ってた。お前のセンスがぶっ飛んでるんじゃなければ、それは曲そのものを前に聞いたことがあったから、だろ?お前の街のシンボルを題名にした『風都タワー』を」

告げる矢車に、タブーはなおも無言。
もちろん、彼の指摘は完全に当たっている。
風都を拠点に活動するスピック(フォークソングにロックンロールとラップの高揚感をブレンドした新ジャンル)シンガー、ジミー中田の歌う、『風都タワー』。

過去に担当した事件の中でそれを聞いた亜樹子は、その酷い曲を二度と聴きたくないとそう思いつつも、しかし確かに忘れられない街での大切な思い出の一つとして記憶していた。
そしてこの場で彼女が戦うのはあくまで自分の世界を、風都を守るため。
故にこの会場にいる全ての参加者の中で恐らくは一番その曲に対して敏感に反応した。

この曲と、そしてそれに付随する自分の思い出が詰まったあの街を消させるわけにはいかないと。
そしてその動揺を首を持ち上げられていたとはいえ至近距離にいた矢車が見逃すはずもなく。
先ほどの条件と合わせて、タブーの正体を確信するに至ったのである。

「ハハッ……ご名答だよ、『お兄ちゃん』」

しかしそんな矢車の言葉を受けて、しかしタブー、否その内の亜樹子は笑う。
いつの間にか変声機能を解除したようで以前の彼女の声が聞こえるために涼は一層その絶望を深めながら、しかし目を離しはしなかった。
矢車に言われたから、ではない。

きっと涼も薄々気付いていたのだ、彼女の中の悪意に。
しかしそれでも彼は信じたかった。
彼女の中の善意と、そして彼女自身の強さを。

しかしその思いはあっさりと裏切られる。
他でもない、亜樹子自身の手によって。

「翔太郎くんも顔負けの推理だったけど、それがわかってどうするっていうの?今更そんな事実をばらされて私が動揺すると思った?」
「……」
「それを知っても無駄よ。ここでお兄ちゃんも涼君も死ぬ……ううん、私が殺すんだから!」

その言葉と共に今までで一番大きな火球を生じさせたタブーは、そのまま頭上にそれを構える。
あの至近距離では矢車に逃げようもない、いや、自分が絶対に逃がすのだ、その思いと共に駆け出そうとして。
他でもない矢車が、自分に背を向けたままその手を大きく広げたために、それを中止する。

それはまるで、タブーの攻撃を受け止めるかのようでもあり、涼の行動を戒めるようでもあった。
死を目前に迎えた矢車の行動に覚悟を決めたタブーですら一瞥を向ける。
だが、それを受けて矢車はしっかりとタブーを見据えて。

「いいぜ、殺せよ」
「……言われなくても――そのつもりよ!」

言葉と共に放たれた火球の轟音にかき消されるのも気にせず、涼は叫んだ。
それが、制止を呼びかける言葉だったのか、回避を呼びかける言葉だったのかは、最早定かなところはないが。
――廃工場内を一瞬にして輝かせた火球に飲み込まれながら、矢車は思う。

これが、本当に自分の掴みたかった光なのだ、と。

――この会場に連れてこられる直前、矢車は弟である影山をその手に掛けた。
それが彼の望むところであったとはいえ、しかし自分と同じ全てから見捨てられた一蓮托生の兄弟を、彼が殺したのは揺るぎない事実であった。
そして、それはこの会場に来てからも彼の心を逃さず。

何故か蘇らせられたかした影山をもう一度殺した大ショッカーに怒りを覚え潰すために動き出したものの、違和感は否定しきれなかった。
――これが、自分の求める、自分だけの光なのか、と。
大ショッカーの打倒は、ほとんどの仮面ライダーや、そしてあまつさえワームである乃木でさえ望むものだ。

そんなものを地獄に堕ちた自分の光として掴もうとするのは、彼にとってどうしても納得がいかず。
その態度が、弟としたいと願った五代を取り戻すための戦いでもある病院戦でも如実に表れていたと言えるだろう。
しかし、ことここに至って、自分はようやく見つけたのだ、自分にしか見つけられない、地獄の闇を見た自分だけの光を。

140 悲しみの果てに待つものは何か ◆.ji0E9MT9g :2018/02/04(日) 03:04:15 ID:tan.18bA0

(――弟を殺した俺が、妹に殺される。これ以上に幸せなこともない)

そう、それは、彼自身が認めた闇を持つ妹に、その命を絶たれること。
兄弟殺しという禁忌を犯した自分に許される、最後の、そして最高の地獄への招待状だった。
あるいはこの為に、自分はこの場で新しい弟や妹を探していたのかもしれない、とそう思うほどに。

だから、亜樹子が殺し合いに乗っているかもしれないという危惧を抱いたとき、矢車の胸にはその道を正そうとする自分と、相反する自分が生じていた。
それに気付いたときから、きっと彼はこうなることを薄々予想し、そして期待してもいたのだ。
これが、自分の光なのだ、と。

(安心しろよ、お前の仇は、他の奴らが嫌でもとってくれる。なぁ、相棒)

弟を殺した大ショッカーへの恨みは、決して消えたものではない。
しかしそれを成すのは自分ではなく、この場にごまんといる仮面ライダーやその協力者の管轄であった。
彼らには問題なくそれを成せる力があり、そしてそれは自分には掴むのが困難なほど眩しい目標だと、彼は病院での乱戦を経て理解したのだった。

(相棒、今から行く。また一緒に、俺たちだけで掴める光を探そう。――今度は、三人で)

だから、何も気負わず、彼はここで逝ける。
その背中にかつてその闇を見込んだ、しかし自分たちとは明確に違い、光に生きる男の絶叫を聞きながら。
そして彼に、自分のもう一つの光を、確かに託した実感を抱きながら。




「アハハァ、アハーハッハッハッハッ!!殺したぁ、私が、お兄ちゃんを……!」

その手から放った業火によって廃工場がその姿を大きく変容させ、周囲にある残った鉄もその身を液体に変える中、それを巻き起こした女は熱気の中で高く笑った。
自分の生み出したスコアと、そしてまた一歩自分の世界が勝利に向かったことに対して。
しかし、喜んでばかりもいられない、と一瞬で笑いをやめ、彼女は身を翻す。

「涼くぅん?どこぉ?出てきてよ、私が、殺してあげるから!」

そこまで言って、また彼女は笑う。
あからさまに狂気にとりつかれた彼女を尻目に、しかしそれを受けて呼ばれた本人である涼はその場から動けぬままであった。
また騙されたことがわかったから?矢車も乃木も目の前で死んでしまったから?

そのどれもが正解で、そして不正解であった。
亜樹子に騙されていたことは、もちろん悲しい。
しかし、彼女を信じた自分を、彼は決して否定したくはなかった。

そして目の前で仲間たちが死んだことは、確かに彼に怒りを生んだ。
しかしそれ以上に、亜樹子にそれをさせてしまった、そしてそれを止められなかった自分に対する怒りの方が強く。
自分の中に渦巻いた複雑な感情に促されるまま、彼はそのままタブーによって翳される死の瞬間を――。

「……けるな」
「ん?」
「ふざけるな!」

自分の中にわき出た感情を否定するように、彼は思いきり立ち上がる。
やけになったわけではない。
ただ、死を享受するのは、絶対に間違っている。

そして、これ以上彼女の手を血に染める必要もない。
ここで、止める。
他でもない、この自分が。

そこまで考えて涼はタブーがその手に最早見慣れた火球を発生させるのを見る。
しかし、確信があった。
矢車はここまで考えた上で、自分にこのデイパックを託したのだ、と。

――瞬間、タブーに攻撃を加える緑の閃光が一つ。
予想通り、などとは言えようはずもない、しかし涼はその存在が現れるのを知っているかのようであった。
タブーが怯んだのを確認した緑のそれは、そのまま涼の左手に収まった。

そして、涼はデイパックから取り出したバックルに、それを叩き込んで。

141 悲しみの果てに待つものは何か ◆.ji0E9MT9g :2018/02/04(日) 03:04:37 ID:tan.18bA0

「変身ッ!」

その言葉を思い切り叫んだ。
それと同時に涼をヒヒイロノカネの装甲が包む。
緑のそれが彼の全身を包み、変身を完了した合図として、その複眼が赤く光った。

――CHANGE KICK HOPPER

そのライダーの名は、最早言うべくもあるまい。
矢車の残した、ホッパーゼクターに認められたものだけが纏える、ネイティブへの切り札。
仮面ライダーキックホッパーに、涼は変身していた。

彼が認められた理由など、語るまでもない。
矢車本人が亜樹子を任せられる眩しい仮面ライダーの代表として彼を選定したこと、そして彼自身が抱いた様々な感情からなる絶望ゆえであった。
しかし、それは矢車の抱いていた絶望とは、明確に異なっていた。

確かに裏切りへの悲しみや仲間の死への怒りや不甲斐なさを感じながらも、それをバネにまた強い光をその瞳に宿す男の、その光を色濃くするための、いわば前座としての絶望であった。
だが、そんなこと目の前のタブーには察せられるはずもなく。

ただただこの土壇場での新たな変身能力の開花に、苛立ちの声を上げるだけであった。
そして、キックホッパーに、これ以上の彼女の蛮行を許す理由など存在せず。
彼は、そのバックルに収まるホッパーゼクターに手を伸ばした。

――RIDER JUMP

瞬間その足に集まったタキオン粒子が臨界点を迎えると同時、彼は大きく跳んだ。
そして、予想外の展開に驚くタブーには、まともな抵抗など望めようはずもなく。

――RIDER KICK

彼はその左足を、タブーの胸に確かに叩きつけた。





パキン、と乾いた音が響く。
それは、彼女の用いていたタブーのメモリが破壊された音だと言うことは、彼にも分かっていた。
これでいい、と彼は思う。

急所を外した蹴りだったのだから、いかにキックホッパーのライダーキックが強力であれど、タブーに変身していた以上彼女の命を奪うことはないはずだ。

「おい、亜樹子、大丈夫か!?」

その思いと共に変身を解除しつつ、涼は最早生身を晒している亜樹子の元へ駆け寄る。
声と共に数回揺すると、彼女はゆっくりと目を覚ます。
その目に先ほどまでの狂気を孕んでいないことに安堵しつつ、続けて彼女に声をかけようと――。

「……竜、くん?」

先に、亜樹子が呼んだ名前によってそれを妨げられる。
放送で死を伝えられたはずのその名前に動揺を隠せない涼に対し、亜樹子はしかしその目を輝かせる。

「竜くん!よかった、私今、とっても怖い夢を見てたの、……皆が、殺し合う夢」

息もつかず続ける亜樹子に対し、涼はしかし掛ける言葉を見つけられない。
元より女の扱いは苦手な涼だが、今の彼女に対しては特段掛ける言葉を見つけられなかった。
夢からたたき起こし罪を自覚させるべきなのか、それとも先ほどまでの狂気を夢として許すべきなのか。

142 悲しみの果てに待つものは何か ◆.ji0E9MT9g :2018/02/04(日) 03:05:03 ID:tan.18bA0

そんな思考に至った涼を尻目に、亜樹子は言葉を紡ぎ続ける。

「その夢の中でね、私とっても酷いことしたの、色んな人を騙したし利用しちゃった。良太郎君に、美穂さん、それに――」
「もういい!全部夢だったんだ、亜樹子!」

いつの間にかその瞳を潤わせる亜樹子に、彼は先ほどまでの思考を放棄してそう声を掛けた。
殺し合いに乗った大きな理由の一つであっただろう、照井竜の死。
そんな彼の幻覚を見ながら、しかしいのいちに自分の非道を反省し涙を流すのだから、彼女が本来はどんな人間かなど、涼にはもう論じるまでもないことだった。

自分の瞳から涙が亜樹子の頬に落ちるのも気にせず絶叫する涼に対し、亜樹子はその目を向ける。
その対の瞳は焦点が合ってはいなかったが、最初に涼が見たそれよりもよっぽど純粋に光り輝いていた。
そしてそのまま、彼女は力なく笑い。

「夢……?なら、私は、……皆を傷つけずに済んだんだ、そうだよね?」
「あぁ、そうだ……!だから安心しろ……!」
「よかった……、ねぇ、竜くん、安心したら……また眠くなっちゃった。……起きるまで側にいてくれる?」
「いつまでだって俺がいる。だから安心して、眠って良いんだ……」
「よかった……。じゃあ、少し、寝るね……」

そう言ってそのままその瞳を閉じようとして。
しかし亜樹子は、どうしても謝っておかなければいけない人が夢の中にいたことを思い出した。
彼には本当に悪いことをしたから、一時の夢であって例え現実ではないとしても、忘れないうちに、どうしても謝っておきたかった。

「ごめんね、涼君……。ありがとう……」

思わず告げられた自分の名に驚きを隠せぬままの涼を置いて、彼女はその瞳を閉じる。
そして、どれだけ名前を呼ばれても、揺さぶられても、もうその目を覚ますことはなかった。





鳴海亜樹子がその命を落としたのは、決してキックホッパーのライダーキックによるものではない。
彼女の使用していたタブーのメモリを直で使用したために生じる強い反動が、彼女の過剰適合体質により加速したために生じた、一種のオーバードーズであった。
つまり、彼女は結局、このメモリを使用した時点でその生命を終わらせることが確定していたのだ。

そして、メモリに犯された彼女の善意を最後に取り戻し、その凶行を押しとどめたのは、紛れもなく涼の尽力によるものであった。
だからきっと彼女は彼を責めはしない。
だって最後に彼は彼女の信じた仮面ライダーとして、悪を倒してくれたのだから。





「あれ……私……ここは?」

深い暗闇の中で、鳴海亜樹子は目を覚ました。
もしかして死に損なったのか、と一瞬身構えるが、しかしどこまでも続くような目前の闇を見て、それは間違いだと理解する。
きっと、これこそが地獄。

矢車という男が言っていたような、無限に続く闇が、これから先ずっと自分に付きまとうのだ。
しかしそれも仕方あるまい。
信じてくれた誰しもを騙し利用し、そして最後には殺人まで犯した自分と、共に歩もうとするものなどいるはずもあるまい。

と、自嘲しながらその歩を進めようとした、その時だった。
後方にも無限に広がる闇の中から、確かに誰かが自分の肩を掴むのを感じたのは。

「――一人で地獄を楽しむなんて、つれないこというなよ、亜樹子」
「……お兄ちゃん」
「お兄ちゃん、だってさ、いいよな兄貴は。妹まで手に入れて、羨ましいよ」
「拗ねるなよ相棒、俺たちの妹だ、そうだろ?」

143 悲しみの果てに待つものは何か ◆.ji0E9MT9g :2018/02/04(日) 03:05:21 ID:tan.18bA0

たった一人進むのみだと思った闇の中に、しかし自分の他にも人はいた。
それは確かに、彼女の心を打つ。
あぁ、そうかやっと彼の言うことが理解できた。

同じ闇を持つとは、兄妹とは、つまりこういうことか。
全てを察した彼女は、彼らと同じ笑みを浮かべる。
闇を帯びた、しかし光を求める者の笑顔を。

「行こうぜ、相棒、亜樹子。俺たちだけの地獄の中の光を探しに」
「いいよ兄貴。兄貴とならどこまでも」
「ちょっと影山お兄ちゃん、私も一緒でしょ!?」

もしかしたらこれは間違った愛の形なのかもしれない。
そう思う自分も確かにいるが、しかし今はこの感情を強く否定する気にもなれなかった。
自分と共に歩んでくれる兄たちを得たことを、彼女は今、確かに喜んでいたのだから。

彼らの歩む先の闇は確かに深く。
しかし、彼らにしか見えない光もまた、その中で鈍く輝きを放っていた。


【一日目 真夜中】
【F-6 工場地帯】


【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、亜樹子の死への悲しみ、仲間を得た喜び、ザンキの死に対する罪悪感、仮面ライダーギルスに45分変身不可、仮面ライダーキックホッパーに2時間変身不可
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す!
0:剣崎の意志を継いでみんなの為に戦う。
1:亜樹子……
2:人を護る。
4:門矢を信じる。
5:ガドルから絶対にブレイバックルを取り返す
6:良太郎達と再会したら、本当に殺し合いに乗っているのか問う。
【備考】
※変身制限について、大まかに知りました。
※聞き逃していた放送の内容について知りました。
※自分がザンキの死を招いたことに気づきました。
※ダグバの戦力について、ヒビキが体験した限りのことを知りました。
※支給品のラジカセ@現実とジミー中田のCD@仮面ライダーWはタブーの攻撃の余波で破壊されました。
※ホッパーゼクター(キックホッパー)に認められました。

【矢車想@仮面ライダーカブト 死亡確認】
【鳴海亜樹子@仮面ライダーW 死亡確認】
【残り人数 22人】

144 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/04(日) 03:06:31 ID:tan.18bA0
以上で投下終了です。
ご指摘、ご感想、ご意見などございましたらいただけますと励みになりますのでよろしくお願いいたします。

145 名無しさん :2018/02/04(日) 10:31:42 ID:Ol/hjp3k0
投下乙です!
前回の引きでどうなるかと冷や冷やしましたが、最後に地獄の兄妹が光を掴むことができてホッとしました!
所長も道を間違えてしまったものの、根底にあるのは自分の世界を守りたいという願いだったので、この結末は感動的です!
遺された葦原さんがどんな道を行くのか、そして風都の探偵達が所長の死を知ったら何を想うのか……?

146 名無しさん :2018/02/04(日) 14:05:57 ID:tH1BBQHI0
投下お疲れ様です!!
相棒を殺されて一時は自暴自棄になった兄貴と風都を守りたくて狂気に走った所長が救われて本当に良かった……!!!

147 名無しさん :2018/02/04(日) 15:29:32 ID:jwvN54Gc0
投下お疲れ様です!
両者変身不能の状況で襲われた葦原さんと矢車さん、やはり無事に勝利するとはいかず……
ただ、「自分だけの光」を見出した矢車の兄貴が一抹の救いを見出したこと、錯乱を重ねていた亜樹子も最期には本来の善性を取り戻せたことが本当によかった
関わった女が次々と死んでいく呪いが健在であるかのような葦原さんはホッパーゼクターに認められるだけの絶望を懐きながら、なお折れぬ強さを持つものの、ここまで重なれば流石に堪えたかもしれない
それでも矢車さんが大ショッカーの打倒を成し遂げてくれると信じたように、照井ばりの不死身っぷりで今後の活躍に期待です 負けるな涼くん

148 名無しさん :2018/02/04(日) 16:13:13 ID:SPiCqTyM0
投下おつ!
涼の言うようにあんた複雑すぎるよ矢車さん!
最初っから分かってるんだろなあとは思ってたけどそれでいて尚否定したいと願ってたが故の詰めの甘さ。
そして確定してからのWばりの推理劇と矢車さんの抱いていた想いと本当の光。
三人で、と願ったとおりに、矢車さんの読み通りにもう一つな光な涼が所長を救って。地獄兄弟妹が光を探し続けて。
熱く切ない話でした。
ジミー中田のCDさえこう使うとはなあ。

149 名無しさん :2018/02/05(月) 18:20:54 ID:AHMHKgsQ0
>>133
無反応も悪いので。
個人的に、コンペ期間は別に不要で普通に放送投下でいいと思います。
ただし、万が一にでも他に書きたい人がいればまた別かもしれませんが、
このまま無反応が続けば「書きたい人はいない」っていう事で間違いないかと。

150 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/05(月) 18:36:40 ID:l80uRzY.0
皆さんご意見ご感想本当に感謝いたします。
矢車さんの思考は色々大変でしたが、単純明快な涼君が相方で助かりました。
亜樹子は原作の彼女が好きなのでどうにかそれも見せられたなら嬉しいです。

と、それはさておき>>149さん、ご返答ありがとうございます。
最初の宣言通り明日の朝ぐらいまで待って、何もなければ放送パートに入らせていただこうかと思います。
それ以降は放送前パートの執筆予約や放送のコンペは開くつもりもないので、それらを書きたいのであれば出来ればそれまでにご反応いただければと思います。

それでは引き続き拙作などについて何かございましたらお願いいたします。

151 ◆LuuKRM2PEg :2018/02/05(月) 20:10:38 ID:9Hp5CW7.0
諸々の事情があって、反応ができずに大変失礼致しました。
そして◆.ji0E9MT9g 氏、2度に渡る素晴らしい大作の投下お疲れ様でした。
『Kamen Rider: Battride War』では仮面ライダーと怪人問わず、大戦に参加した全ての人が輝いていて
その後の『悲しみの果てに待つものは何か』で描かれた矢車さんと亜樹子が影山と共に光を掴んだ最期が感動的で、そしてキックホッパーの後継者に選ばれた涼の姿が素晴らしかったです。

放送パートの執筆に関しては、特に異論はありません。このまま投下でも大丈夫と考えております。

152 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/06(火) 10:42:51 ID:mJ0e/tbo0
◆LuuKRM2PEg氏、ご反応ありがとうございます。
トップ投下数の氏にそう言っていただけると本当に励みになります。

では、特に放送を書きたいというような声もなかったので、自分がちゃちゃっと書いちゃいますね。

153 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/06(火) 14:13:50 ID:mJ0e/tbo0
放送書きましたのでしたらばで確認お願いします。
拾って欲しいネタでもこういうのはどうかとかでも構いませんのでよろしくお願いいたします。

154 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/06(火) 19:38:31 ID:lxzuC33U0
>>153
反応が遅れてしまって申し訳ございません。
仮投下スレの放送案、確認させて頂きました。企画を離れて長くなった身のため断言はできないかもしれませんが、目を通させて頂いた限りでは問題ないと思います。

また今更となってしまいましたが、傑作二本の投下、お疲れ様でした。
ライダー大戦は入り乱れたフラグを見事に活用した、ロワならではの凄まじい作品でした。
全く気が抜けないものを分量たっぷりで読んでいても気が抜けない激しいバトルの中、そのキャラらしさやリレーによる味付け、後発のお祭り作品などの小ネタまで活かし、企画の復活の狼煙に相応しい素晴らしい作品でした。
個人的にはやはりファイズの力を取り戻した流れからの、他者から託されたものは無責任に手放せないとしながらも、士に自分の夢は継いで欲しいと漏らす巧の描写がぐっと来ました。他にも見所がありすぎるのが逆に困ってしまいます。

悲しみの果てに待つものは、それぞれの光に辿り着く明るくも切ない名退場SS。
思考が怪人物なのに妙に納得させてくる矢車さんの原作再現度の見事さと、ロワで歪んでしまったことも含めての亜樹子のキャラの決着が素晴らしく、彼らのファンとしてその最期を氏に描いて頂けて本当によかったと思いました。

自分が続きを書くとしたら、と構想していた場合と重なる場面もあれば全く違う展開もあり、一読み手としてと同時、久しく忘れていたリレーならではの感慨の二重の面白さを堪能させて頂きました。

どちらも大変素晴らしいSSで、恥ずかしながらかつてのようには執筆できない身ですが、この企画を応援したい気持ちを再燃させられました。
折角なので、自分も当時構想していた放送案を供養の意味も兼ねて仮投下させて頂きたいと思います。ご確認の上でご意見頂ければ幸いです。

155 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/06(火) 23:36:17 ID:mJ0e/tbo0
◆cJ9Rh6ekv. 氏、長文でのご感想本当にありがとうございます……!
氏の作品はどれも素晴らしいものばかりで、それをリレーしたい、というのもこの病院戦を書いた理由の一つでもあります。
もしも拙作が気に入っていただけたのなら今更と言われようがこの企画を再度立て直そうと書いた甲斐があるというものです。

そして、ここからは放送に関してのことなのですが、内容に関しては全く以て素晴らしいの一言。
拙作では三島と喧嘩し、貴作ではビショップと喧嘩し両方とも死神博士に止められるキングの奔放さには笑いました。
第一回放送の案で◆7pf62HiyTE氏も書いてらっしゃいましたがビショップが原作通りキングに尽くしまくって同じく原作通りそれが報われないのも面白いですね。

さて、結局のところなのですが、氏の作品と私の作品で投票か何かを行い、放送案を決定する、ということでよろしいのでしょうか?
であれば、あまり期間を設けて企画全体のスピードを落とすのも何ですので、2/8の深夜0時まで(つまり2/9になる瞬間まで)の間で投票を行い多い方が本放送となる、という形で如何でしょう。
もし私の解釈違いや期間へのご要望(短すぎる等)などございましたらお手数ですがご反応いただけると幸いです。

156 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/07(水) 00:23:11 ID:ziLR.qwI0
>>155
◆.ji0E9MT9g氏、誠に嬉しいお言葉ありがとうございます!
また、事前の告知に対して遅すぎた反応であるにも関わらずそのように受け入れて頂けたこと、誠にありがとうございます。
氏の述べられたお考えに異存ありませんことをお伝えします。投票に賛成いたします。

なお、恥ずかしながら以後の反応が今回のように遅れてしまう場合もあるかもしれないので、もし投票結果が同数となった場合には議論を挟むことなく拙作の方を取り下げる旨を予め申し出ておきます。
勝手なことばかり述べて大変申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。

157 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 01:29:34 ID:M4JnH8wI0
>>156
◆cJ9Rh6ekv. 氏、投票に賛成してくださいましてありがとうございます。
さて、したらばの方に投票の件について書き込んで参りましたので、ご興味おありの方は是非とも参加をお願いいたします。

158 ◆LuuKRM2PEg :2018/02/07(水) 05:34:32 ID:4DVj480M0
両氏とも放送案仮投下お疲れ様です!
どちらの放送案でも大ショッカー内部で内輪揉めが起きて、その裏で徐々に明かされていく真実に胸が躍りました。
一方は三島さん、もう一方はバルバが放送を担当して、前回の放送役のキングとは真逆のテンションでいる点でも共通しておりますね。
そして投票についても把握しました。私も異論はありませんので、当日はよろしくお願い致します。

159 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 09:19:36 ID:M4JnH8wI0
>>158
◆LuuKRM2PEg氏、ご感想ありがとうございます。
もしかしたら誤解があるかもしれませんので言っておくと、一応もう投票は開始しています。
期限は2/8深夜0時”から”ではなく”まで”です。よろしくお願いいたします。

160 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 13:52:27 ID:M4JnH8wI0
皆様こんにちは、度々申し訳ございません。
この度はお願いがあって参りました。
放送後パートを書いていましたら、放送前に書かなければならないパートだけで一話書けそうになってしまい、放送後パートと合わせると作品としての空気感といいますか、全体的なテンポが損なわれる可能性が生じてしまいました。

そこで、もしもお許しをいただけるのであれば、放送の本決定までの間で放送前までのその作品を完成させ(というか恐らく今日中)投下してしまいたいのですが、よろしいでしょうか。
もちろん、自分で放送前パートは放送案投下後はなし、と言った後なのでお見苦しいのも百も承知ですし、お許しいただけなければ放送後パートと混ぜてそれで終わりなのですが、出来ればご一考いただけると幸いです。

161 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 13:57:25 ID:M4JnH8wI0
あ、もちろん当然ですが死人は出ません。
放送案には一切変更は必要ありませんのでそれはご安心くださいませ。

162 ◆LuuKRM2PEg :2018/02/07(水) 19:38:02 ID:4DVj480M0
誤解をしてしまい失礼致しました。
そして放送前パートの執筆も入って大丈夫だと思いますよ。私個人の気持ちとして、◆.ji0E9MT9g 氏の作品をもっと読んでみたいという感情もあるので。

163 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/07(水) 20:06:37 ID:ziLR.qwI0
>>160
お疲れ様です。
またも反応が遅くなってしまい申し訳ございません。
放送前の投下の件ですが、それ自体は全く問題ないかと存じます。

それと反応するついでと言ってはなんですが、放送案について少し見落としがあったことに気づいたのでこちらで要望を一つ。
禁止エリアの案についてそのまま拝借しておりましたが、もし不都合なければ【F-7】以外の場所を禁止エリアにはして頂けないでしょうか?
主要な施設をほぼ禁止エリアとする、という形を変えたくない場合にはせめて時間を1時ではなくもっと後の時間帯の禁止エリアに回すなどして頂けると助かります。
実はまだきちんとした構想が全然できていませんし、放送以後の展開次第では結局形にできるとも限りませんが、そのエリアに立ち入りが可能なら一つ使い道があるかもしれないネタを考えたものでして……

後出しで勝手なことばかり申しているとは思いますが、放送案が本投下されてしまう前に、もし不都合でなければご一考頂ければ幸いです。

164 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 21:15:57 ID:M4JnH8wI0
お二方とも、ご反応ありがとうございます、そしてお優しい言葉にも感謝いたします。
では、今から予約して参ります。
それと放送の件ですが拙作の禁止エリアのF-7をG-7と変更いたします、まだどうなるかわかりませんが氏の作品が形になりまたそれを読めるのを今から楽しみにしております。

165 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:32:26 ID:M4JnH8wI0
ではこれより、滑り込みで放送前最後の本編を投下したいと想います。

166 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:32:56 ID:M4JnH8wI0
「リュウタ、皆さん、本当、ごめんなさい!」
「ううん、麗奈が帰ってきてくれたから全部許す〜」
「……ありがとう」

放送を目前にして、翔一と真司、麗奈は病院に戻ってきていた。
達成感に溢れている翔一たちを見て、病院を守り預かっていた翔太郎と名護、そして総司もまた笑みを浮かべた。
唯一一人、三原だけは、その場にいてもなお、顔を引きつらせたままであったが。

「……あの、三原さん」

言われて三原は、背けていた目をゆっくりと麗奈に向けた。
その瞳には隠しようもない怯えが含まれていたが、しかしそれに対し誰も咎めることなどしない。
人外に友好的な存在がいると知っていることと、自分で制御できない人外の力を持っているものを受け入れられるかは、似たようで全く異なる話だからだ。

もしも、三原がどうしても恐怖でいても立ってもいられなくなってしまうようであれば、麗奈を特別視しすぎず、彼を尊重して麗奈と物理的距離を離さなければならない。
少なくとも、こんな状況に巻き込まれた一般人に今の麗奈を文句もなしに受け入れろ、という方が、よほど悪であり、傲慢な考えであった。
故に待つ。

三原の答えと、そして自分たちが取るべき彼女への接し方を見極めるために。

「俺……やっぱり今の間宮さんは怖いです」

そんな空気を感じ取ったのか、三原は震える身体を押さえながらそう声を絞り出した。
真司や総司は一瞬残念そうな顔を浮かべたが、しかしそれが世間の当然の声なのだ、とやるせない気持ちを飲み込んだ。
では、このまま麗奈と翔一を別室待機にするべきか、と場の空気が固まり始めるが。

「でも……怖がってばかりじゃ、何も始まらないと思うから。だから……俺も麗奈さんと一緒にいます」

その目は潤み、今にも涙が溢れ出しそうだったが、しかし三原はしっかりと麗奈を見据えてそう言った。
それに対し、誰しもが呆気に取られる。
先ほどまで恐怖していただけの一般人が、何をどうしてこんな言葉を言うようになったのか、と。

「修二、すごーい!僕が鍛えただけあるねーやっぱり!」
「……そうでもないよ」

伏し目がちにそう言って、彼は再び所在なげにそこに座り直す。
未だに彼に仮面ライダーとしての覚悟やもちろんそれになりたいというような気は一切見られないし、総司と異なり不満などを戦いにぶつける気もないようである。
しかし、それに対し苛立ちをぶつける者などもう誰もいない。

こういった戦えない人々を守ることこそ、自分たち仮面ライダーの仕事であり、逆に彼が望まない限り戦わなくて住む世界こそが、自分たちの目指す世界なのだから。
――無論、今がそんな甘い状況か、という疑問は拭いきれないのだが。
そうして、今この場で人間に受け入れられた麗奈は、嬉しそうな笑顔を翔一に向けて、翔一もそれに笑顔で返した。

ここまでは、全く以て順調にことが運んでいる、だが次が一番の問題であった。

「総司……さん」
「うん、わかってるよ、間宮さんの中のワームが暴れ出さないように僕は別の部屋にでも――」
「いいえ、総司さんも側にいてください」

言いながら寂しげな表情で立ち上がった総司をそう留めたのは、他でもない麗奈であった。
えっ?と困惑する表情を浮かべる総司に対して、麗奈の後ろで様子を見守っていた真司がゆっくり歩を進めてくる。

「……さっき、戻ってくる間にさ、話してたんだよ。それで、間宮さんが人間としていたいって感じる中で、自分のせいで輪から外れる人がいたら絶対に嫌だって、そう言ったんだよ」

真司の言葉に対し、麗奈はこくりと頷いた。
つまりは自分を人間と同じように扱って環境も前のままがいい、ということであろうか。
しかし、と総司が立場上言葉を出しにくいながら口にしたのを受けて声を出したのは未だにベッドに座ったままの名護であった。

167 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:33:23 ID:M4JnH8wI0

「しかし、それはあまりにも危険じゃないのか?ワームとしての“間宮麗奈”をあなたが制御できない以上、俺としても総司君にリスクを負わせるわけにはいかない」
「……それなら大丈夫です。俺が、麗奈さんも、総司さんも守りますから」

ここに来て初めて甘い考えではないかと咎めるような発言をした名護に対して、そう言い切ったのは翔一であった。
その表情には自信が満ちあふれていて、不可能なことなど何もないと言っているようであった。
だが、とはいえそれはあまりにも温い考えでは、と名護が口を開き掛けたその時。

「……いいじゃねぇか名護さん。間宮さんだって、変わりたいって思ってんだ。ワームだかって怪物に乗っ取られちまうにしても、今の間宮さんは人間で、そのままでいたいって願ってんだからよ」
「だが、翔一君の注意がずっと続くわけでもない、気を抜いた隙に、ワームが現れる可能性も――」
「名護さんらしくないね。僕なら大丈夫、だって貴方の弟子で、一人前の仮面ライダーだから。……でしょ?」

そう言って笑いかけてくる総司を前にして、もう名護には言葉を紡ぐことなど出来なかった。
弟子可愛さに無用なリスクを避けるべきかと気負いすぎたが、自分の考えが間違っていた。
彼はもう天道総司でさえ認める一人前の仮面ライダーであり、自分と対等な存在なのだ。

そして精神的に不安定な状態の間宮麗奈を連れ戻してきた、ヒビキと知り合いのライダー、津上翔一もまた一人前の仮面ライダーだ。
であれば、自分がこれ以上世話を焼くのは、ただのお節介に過ぎない、と彼は首を振る。
総司君のコーチとして頑張るというのと彼のしたいことを余計なお世話で封じ込めることは全く異なるのだ。

(先ほど翔太郎君に首輪解除について聞いた時に、にべもなく否定されたことを、少し引きずってナーバスになっていたのかもしれないな)

橘から聞いた、ガイアメモリのある世界の参加者であれば首輪を解除できるかもしれない、という説。
大ショッカーの天敵であるディケイドもいる手前、そんな存在がいてもおかしくないか、と考えてしまったのもまた事実。
しかし彼の相棒のフィリップであればあるいは、程度の返答であったことに、自分でも気付かないほどダメージを受けていたというのだろうか。

しかし、そんなことを考えていてばかりではいけない。
息を一つ吐いて、彼は気持ちを切り替える。

「……そうだな、俺らしくもない。君たちを信じよう、翔一君、総司君。間宮君がワームとしての心で誰も襲ったりしないように、俺たちでしっかり守ろう」
「……ありがとうございます、皆さん、本当に、ありがとう……!」
「あ〜、麗奈さん泣かない泣かない。ほら、俺の作ったおにぎりありますから、ね?」
「お前一体何時作ってたんだよ……」
「さっき、何かないかな〜って病院の中探してたときに炊飯器見つけちゃって。
もしかして!って思って覗いてみたらおいしそうな炊きたてのごはんがあったんです、だからそこから拝借してきました。あ!いっぱいあるんで、翔太郎さんたちも、どうぞどうぞ」

言いながら先ほどまでの緊張感が嘘のように失せていく空間の中で、その中心に翔一はいた。
それを見ながら、やはりこの男には敵いそうもないと真司は思う。
自分も大概雰囲気を壊すだとか、緊張感がないだとか言われるが、この男は段違いだ。

もし彼が自分の世界のライダーバトルに参加していたら、きっと三日も持たずに皆戦いなど馬鹿馬鹿しくなるだろう。
翔一という男は、城戸真司を以てそう感じさせるような空気を放つ男であった。

「うまっ!何だこれ、ただの具なしおにぎりなのにうめぇぇぇぇッ!?」
「えへへ、一応これでもレストラン持ってますんで、簡単な料理でもこだわりがあるんです」
「確かにうまい、……大ショッカーを倒したら、妻と一緒に君のレストランへ行こう」
「どうぞどうぞ、もっと大人数でも大歓迎ですよ。あっ何だったら皆でいらしてくださいよ」
「そうだな……って名護さん妻帯者なのかよ!?道理で年齢の割に落ち着いてると思ったぜ」
「何を失礼な、俺は新婚だぞ、式の途中でここに連れてこられた……」
「……色々凄い話だなおいッ!」

空腹の中にうまい食事を取ったことで、傷だらけの戦士たちはいつの間にか笑顔で話し出していた。
全員その翔一が握ったおにぎりを笑顔で――。
否、一人すすり泣いているものがいた。

それは――。

168 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:33:46 ID:M4JnH8wI0

「総司君、どうしたの?もしかして、おにぎりは嫌いだった?」

総司だ、笑顔の周囲の中で一人だけその目から涙を流し続けていた。
その様子を受けて先ほどまで笑い合っていた名護たちもそれに注目するが、それを受けて総司は涙を拭いながらえへへと笑った。

「だって、今までこんな楽しい時はなかったから。……皆で一緒にご飯を食べるってだけなのに、こんなに楽しいんだね」

そう言った総司の目はなおも涙を流していたが、しかしそれは決して悪い涙ではなかった。
まるでそれは、世界は自分を拒絶するのみなのだ、と決めつけて全てを壊そうとしていた過去の自分を戒めるような涙であった。
世界にはこんな素晴らしいことがあるのだ、ただ気の置けない友達と食事を囲むだけでこんなに楽しいのだと、彼は今の今まで全く知らなかったのだ。

「あ……ふふっ」
「何だ、何故俺の顔を見て笑う」

と、それまで泣いていた総司が、名護の顔を見て笑った。
それにつられたように周囲の真司も、翔一も自分の顔を見て微笑みを浮かべているのに気がついて、名護は困惑する。
それを受けて、横のベッドに座ったままの翔太郎が、仕方ねぇな、といった表情でキザに指を指して。

「名護さん、気付いてねぇみたいだけど、あんたも今、泣いてるぜ」
「なッ……?」

驚いて自分の頬を触れば、僅かに濡れた感触が伝わった。
どうやら、自分の尽力で幸せを当たり前に享受できるようになった彼の言葉を受けて、思わず目頭を熱くしてしまったようだ。
しかしそれも、仕方あるまい。

数時間前までの彼は、仮面ライダーがなぜ人を守るのかすらわからないただの子供であった。
だというのに、今の表情には世界を、弱い人々を守りたい、という強い信念が込められている。
こんな短時間で目を見張るほどの素晴らしい成長を見せたのだから、コーチ冥利につきるというものだ。

とはいえ、涙を流したままではしんみりした空気に浸ってしまうというものだ、ではむしろ自分の今の役目は――。

「これは涙じゃない、ただ目の洗浄作用が……」
「ふーん、じゃあ僕のことはどうでもいいんだ、僕が泣いてても関係ないんだー?」
「い、いや、そういうわけでは――」

名護がそこまで言うと、総司は思い切り笑った。
今まで見た中で、最高の笑顔だ。
それにつられるように、翔一も、真司も、翔太郎も、あの間宮麗奈と三原でさえ声を上げて笑っていた。

そうだ、これでいい。
皆を笑顔に出来るのなら、皆が持つ、心の中の音楽をよりよいものに出来るなら、この程度のおどけ位進んでやるというものだ。

(見ているか、紅音也。これが俺の遊び心だ。貴方から学んだから、こうして彼を、皆を笑顔に出来た、そのことに本当に感謝する)

昔の自分ではプライドが邪魔をして出来なかっただろう行動。
過去に行き、ちゃらんぽらんに見えて信念を持った紅音也と交流したことで、今の自分があり、今の総司がいる。
それに対する感謝を心の中で呟くのに対し、きっと奴は「男に感謝されてもうれしかねーよ」と悪態づくのだろうとそう思ってまた少し笑う。

あぁ、きっと自分は、この思い出さえあればどこまでだって行ける。
この場にいる誰もがそう思う中、この瞬間を失いたくないと、彼はまた一口おにぎりを口に運んだ。

169 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:34:05 ID:M4JnH8wI0





皆がおにぎりを食べて少し経った後、放送まであと30分を切った時点で、名護たちはついに起き上がっていた。
先ほどまで翔一たちの留守を預かる間起きていたせいで眠気が覚めた、というのも理由の一つだが、何より放送までの短い時間を利用して少しでも情報交換を行うことが必要だ、と考えられたためだ。
そして、まずは最も短い時間で行える変身制限に関する確認が行われた。

名護から告げられたのは十分の変身制限、そして一度利用した力は同一人物は二時間使用不能になるということ。
逆に言えばアイテムには制限はかからないので誰でも使える能力を持っているとチームで効率的だ、ということも付け加えられた。
そして、意外なことに翔一からも進展があった。

それは通常の形態より強化された形態を使用すると変身可能時間が半分になる、ということであった。
これには名護も目を輝かせ、ライジングイクサの使用にも注意すべきか、と一言呟いていた。

そして、それで変身制限に関するものは大体出尽くしたので、次に支給品の整理が行われた。
まず翔太郎の荷物の開示であった。

「あ、そーいやこれ借りっぱなしだったな、ありがとよ名護さん」
「あぁ、君こそ約束を守って無事生きていてくれたことに感謝する」
(……まぁ僕が過去に戻って助けなかったら死んでたんだけど、それは別にいっか)

そう言いながらイクサを手渡す翔太郎に対して、総司は内心複雑な感情を抱いたものの、別に空気を壊してまで言う話ではなかったため、口を噤んでいた。
と、次に彼が取り出したのは子供が描いたような、男の子と女の子が並んでいる絵、使い道はなさそうだが……。

「それ……草加が子供の頃描いた奴だ」
「草加……草加雅人か、確か乾君が仲間だと言っていた」

それは、草加雅人が流星塾にいたころ、描いた絵であった。
男は草加、そして横にいるのは……。

(真理、なんだろうな、やっぱり)

絵を見つめながら、三原は複雑な感情を抱く。
幼年期よりの彼のあこがれの女性、園田真理。
この場で第一回放送を前にして死んだ彼女に対し、彼はどうしたのだろうか。

過去の同級生への懸念を抱く三原を尻目に、翔太郎は次の支給品を取り出す。
そこにあったのは、銀に輝くZECTのマークの入ったバックルであった。

「これは、まぁ十中八九総司の世界のものだよな、ゼクター、だか言うガジェットで変身できる、っていう」
「そうだね、でもそれをさっきの戦いで使ってないってことは……」
「あぁ、お察しの通り、どうやら俺じゃこいつには認められないらしい」

全く困ったぜ、とキザに帽子を触る彼だが、その実表情はそこまで明るくない。
認められさえすれば力になるのは確実なのに、この12時間ほぼ片身離さず持っていたのに認められないところを見ると、もう自分には扱えないと判断するべきだろう。
と、それを欲しい人がいれば譲る、という空気の中で一応全員が手に持ってみてゼクターを呼んでみるが、しかし誰の元にも現れない。

であればこの状況では誰が持っていても変わらないのと同じ、誰か手を挙げればそのまま譲るという状況で、誰も率先してそれを受け取らないか、と思われたその時、おずおずと手を挙げる者が一人。

「……あの、それ、私がもらってもいいですか?」

意外なことに、それは間宮麗奈であった。
本来ワームを倒すために作られたライダーシステムを彼女が受け取ろうとする動きは流石に怪しく、眉を潜めるのを抑えることは出来なかった。
そんな空気を察したのか、麗奈は申し訳なさそうにして、しかしその手を下げることはしなかった。

170 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:34:26 ID:M4JnH8wI0

「あの、私、ずっと守られてるだけは嫌なんです。もう一人の私にも勝てる力を私自身が手にすれば、もしかしたら彼女は出てこないかもしれません。だから誰も欲しくないなら私がって……思った、ん、ですけど……?」

自分なりに理由を述べる彼女に対し、周りの仮面ライダーは目を丸くしていた。
何かまずいことでも言ったか、とそう身体を強ばらせるが。

「やっぱり麗奈つよーい!自分と戦うなんてかっこいいしー!」
「俺も、リュウタの言うことに賛成です。格好良いじゃないですか間宮さん、翔太郎さんさえよければ、そのベルト、渡してあげてください」
「そうだな、逆にいやぁ、ワームになった時の間宮さんにはガジェットも力を貸さねぇかもしれねぇしな」

本来ワームを倒すための装備なのだから、ワームを認めることなどないだろう、とそう翔太郎は判断して彼女を信じてベルトを渡す。
――本当は、特殊な条件下であれば、例え資格者がワームであっても、その本能を取り戻しても、ゼクターは問題なくその力を貸すのだが。
短い時間で、かつそのようなレアケースはこの場で起こりえないだろうと判断した天道によって、そのような事例が起こりうるとはこの場の誰も知ることはなかった。

「さぁて、俺の支給品はこれで終わりだな、次は――」

そうして、その後も順調に支給品の交換は進んでいった。
名護から翔太郎にメタルメモリの譲渡があり、修二、翔一のものは何ら――精々翔一がデイパックにつけていたふうと君キーホルダーに翔太郎が反応した程度で――他の参加者の者ではなかったと言うことだった。
次にデイパックを開けたのは真司だ。
てるてる坊主はなにやら思い出の品らしく大事に仕舞い込んでいたが、続いて自分のカードデッキを取り出し――。

「おい、それ俺前に似たようなのを紅を殺した奴が持ってたのをみたぞ」
「それは本当か、翔太郎君!」
「あぁ、間違いねぇ、ここに入ってるカード全部黒にしたみてぇなのだった」

このドラゴンの黒い版にやられたんだ、と悔しそうに呟く翔太郎に対し、真司は驚きの顔を浮かべる。

「ちょ、ちょっと待て、13人の仮面ライダーは、俺が最初に持ってたアビスで全員じゃなかったのかよ!?」
「……そういうことになるな、俺としては君の言う神崎士郎がルールを破っていた、という方がしっくりくる。いつの時代も、殺し合いなど強要するような輩には嘘がつきものだ」

だから大ショッカーも信用ならない、と呟く名護に対し、真司もまた複雑な表情を浮かべたまま、しかしそれ以上話を続けはしなかった。
続いて開示されたのは麗奈のもの。

厚くてこの場ではとても読む時間のない本の束を翔太郎が愛読書であると欲し、素直に譲渡する。
続くのはファンガイアバスターの名を持つ銀色のボウガンのようなものであったが――。

「それは……ファンガイアバスターか」
「名護さん、知ってるんですか?」
「いや、俺が使ったこともあるが、それより妻がいつも使っていた……」

どこか遠い目でそう呟く名護に対し、麗奈は無言でそれを差し出した。

「……やめなさい、俺は別に感傷に浸りたいわけでは――」
「そんな話じゃないですよ、ただ、好きな人のものくらい、自分で持っていたいじゃないですか」

そう言って、彼女は薄く笑った。
その笑顔は儚かったが、しかし美しく、妻帯者である名護でさえ一瞬目を奪われてしまう。

(いやいや、そんなところまであの男のちゃらんぽらんさを真似る必要はない!俺は妻一筋だ、恵一筋なんだ!)

それをこの場で彼の妻となった恵が聞いていたらやはりいつもの調子で「馬鹿じゃないの」と言って笑っただろうか。
そんなことを考えるが、しかしこれは感傷ではないだろうと彼は思う。
いつか必ず帰る場所、待つ妻の物を持つのは、決して戦士に許されぬ甘えではないはずだ。

171 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:34:51 ID:M4JnH8wI0

と、自分をそう言い聞かせて、彼は一言の礼とともにデイパックにそれを仕舞い込んだ。
それを見て総司と翔太郎は完璧に見える彼の弱点を見つけたような気分で顔を見合わせて笑っていたが。
そして、次にデイパックを開いたのはリュウタであった。

「これとー、あとこれは良太郎のでしょー?だから気になるのは――」
「――それ、風間さんの……!」

リュウタロスがデイパックから取り出した中で、一番小さいただのグリップのようなものに、麗奈は反応した。
マークなどから考えるに、恐らくはこれもカブトの世界のものなのだろうが――。

「ごめん、リュウタ、それ、間宮さんに渡してあげられない?」
「えー、でもこれ元々僕のやつー」

言って足をばたつかせ駄々をこねる紫の怪人に対し、翔一はそんなことなど日常茶飯事、といった様子で近づいて、耳打ちする。
すると、

「麗奈、はいこれ」
「リュウタ、いいの……?」
「うん、もちろん!大事にしてね!」

すぐに彼は麗奈にそれを渡したのだった。
嬉しそうにまた座り直すリュウタロスを見て翔一もまたその頭を撫でる。
そんな様子を見て、真司は翔一に密かに耳打ちした。

「おい、お前なんて言ったんだよ、まさかまた間宮さんは風間さんを好きだってことバラしたんじゃ……」
「やーだなぁ、勘違いしないでくださいよ城戸さん、俺はただ『ここで我が儘言わないで渡したら格好良いぞ』って言っただけですよ」
「な、なんだ、俺はてっきり……」
「本当にもう、デリカシーないんだから城戸さんは」
「誰がだよ、誰が!大体お前はなぁ――」
「……う“っう”ん!」

思わず声が大きくなっていた真司を咎めるように、名護がわざとらしく咳払いをする。
それを受けてすんません……と塩らしく小さくなる真司を見て、翔一はまた一つ笑顔を浮かべるのだった。
といったところで、気持ちを切り替えてリュウタが最後に取り出したのは、SMARTBRAIN社のロゴの入った大きなトランク型ツールであった。

「これは……仮面ライダーファイズ、つまり乾巧君の強化ツールか、ここに彼がいれば……」

それに反応したのは名護である。
純粋に仲間に対する無念を口にしただけだったのだが、それに対して反応したのは翔太郎であった。

「……ちょっと待てよ名護さん。今あんた、ファイズの正体を知ってるって言ったか」
「あぁ、一度俺と行動を共にしてもいたが……」
「人類に味方するオルフェノクを殺すような奴とか!?」

怒声と共に立ち上がった翔太郎を見上げながら、しかし名護は困惑した表情を浮かべるのみであった。

「……一体何を言っているんだ翔太郎君、一から説明してくれないか」
「俺が最初、木場さんって人と一緒にいたのは言ったよな。……その木場さんが言ってたんだ、ファイズは善良なオルフェノクを傷つける悪魔みてぇな存在だってな」
「……それは、多分違うと思う」

いきり立つ翔太郎に背後から声をかけたのは、意外なことに三原であった。
そう言えば彼も木場と同じ世界の住人であったか、と思うと同時、名護も口を開いた。

「……彼の言うとおりだ。乾巧は我々と同じ種族などで他者を判断しない、善良な仮面ライダーだった、この目で見た俺が言うんだから間違いない」
「でも木場さんは――!」
「巧君もオルフェノクだ」

思わず熱くなりかける翔太郎に対し、冷や水を指すように名護は言う。
それに対しえ?と間抜けな声を出したのを聞いて、名護はやはりか、と目を伏せた。

172 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:35:12 ID:M4JnH8wI0

「翔太郎君、この場に参加させられている参加者には、その参戦時期にばらつきがある、というのは言ったな。……巧君は以前は勇治君とお互いの正体を知らぬまま傷つけ合った時期があったと言っていた。
恐らく君が出会った勇治君はそういった時期から連れてこられたんだ」
「じゃあ、ファイズは敵じゃないってのかよ?」
「あぁ、君にとってはもちろん、そして勇治君にとってもな」

言われて、翔太郎は帽子を押さえた。
一体、自分はこの12時間ほどを意味のない恨みと共にいたというのか。
全く以てそれでは彼の無念を晴らしようもないではないか、と彼はため息をついた。

しかし、そんなことに気を取られていては時間がなくなってしまうと、支給品の開示は続けられた。
最後にデイパックを広げたのは総司であった。
自分の使うゼクターやベルトを取り出した後に、彼はもう一本の銀色のベルトを――。

「あー!それ電王のベルトじゃん!なんで総司がそれを持ってるの!?」
「え、これは、その……」

それは、第一回放送前、自分が病院を訪れた際に最初に殺した黒い鬼が持っていた物だった。
それを使うところすら見なかった総司には全く使い方もわからなかったのだが、まさかここでリュウタがそれを知っているとは。
もしかすれば彼の仲間を殺してしまったかもしれない、と口の中の水分が一瞬で蒸発していく総司に対し、しかしその視線の先で名護は自分を見つめていた。

『正直に話せ。例えそれで君が非難されようと、俺は君を支える』

目だけでそう語るかのような強い眼差しに彼は根気負けして。
一度ゆっくりと唾を飲み込んでから、その口を開いた。

「……これは、黒い鬼みたいな怪人から取ったんだ、悪の組織がどう、とか言ってたけど――」
「鬼!?もしかしてそれって、モモタロス!?総司、モモタロスのこと、殺したの!?」

――あぁ、やってしまった。
剣崎一真といい、モモタロスといい、自分が殺したものは皆善良な仮面ライダーとその仲間ばかりではないか。
一斉にリュウタからの敵意が膨れあがるのを感じつつ、彼はただ過ちを謝罪するだけしか――。

「待てよリュウタ、モモタロスって、赤い鬼だったんじゃないのか?それなら、総司さんの見た黒い鬼っていうのは、お前も知らないって言ってたこの名簿のネガタロスって奴かもしれないじゃないか」
「あ!そう言えばいたねそんな奴!僕も全然知らないの」

しかしそんな総司に助け船を出したのは、三原だった。
彼は名簿の中で彼が知らないと言ってすぐ忘れていた参加者のことまで覚えていたのだ。
もしかすれば自分の行為は現在であっても咎められるものではないのでは、と総司は胸をなで下ろした。

が、そんな総司の後ろで、あの、とらしくなく暗い声をあげる者が一人。

「俺、その赤い鬼みたいな奴、……モモタロス、でしたっけ?見たかもしれません」
「え、本当に!どこでどこで!?」

はしゃぐリュウタロスに対して、翔一はここに来て初めて俯いた。
それに対して、先ほどまで同じ表情をしていた総司でさえ不審に感じる。

「ここから南の方の――G-1、でしたっけ、工場があるところです。そこで……多分モモタロスの遺体を俺は見ました」

告げられた言葉は、あまりにも重く。
しかしそれだけでは、正直ここまで翔一が沈む理由が分からない。
もう少し早く着ければ救えた命だったということか?とその場にいる者が納得しかけて。

「それで、モモタロスを倒したのは誰だか知ってるのー?僕そいつやっつけたい〜」
「それ、は……」

そう言って、彼は横にいる真司を見た。
今の今まで理解の追いついていなかったところが、いきなり氷解したようで、真司は翔一がそれ以上言葉を紡ぐのを止めようと――。

173 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:35:50 ID:M4JnH8wI0

「俺、多分モモタロスを殺しただろう人と、ずっと一緒に行動してました」
「――え?」

その言葉に、誰しもが言葉を失った。
明るく、誰にでも心を開かせることの出来る彼が、殺し合いに乗った参加者と共にいたというのか、一体何のために?
膨れあがる緊張感を受けて、翔一は覚悟したように、その口を開いた。

「その、モモタロスもリュウタも、見た目はわかりやすく怪人、って感じじゃないですか。だから俺、それを倒したその人はきっといい人なんだろうって、勘違いしちゃって……」

字面だけ見ればいつもの彼らしい軽い言葉に見えるかもしれない。
しかし、それを告げる翔一の顔はとても暗く。
だが彼と会話している張本人は、そんなことを気にすることすらない。

「ふざっけんなよ!モモタロスがそいつに殺されたのにお前そいつのこと倒してもくれなかったのかよ!」
「……いいえ、俺が倒しました」
「……え?」
「俺が倒しました。あの人は、未確認って言って、人を無茶苦茶な方法で、……ゲーム感覚で殺す、そんな奴らの一人だったんです」

そう言って、今度は翔一がリュウタを見据えた。
きっと、彼はこれで許してもらう気などない、どころか、ここでリュウタが怒りを覚えて自分にぶつけてくるなら、甘んじてそれを受けるつもりでいる。
流石のリュウタも、そんな相手には何も言えなくなって、やりきれない思いを抱いたまま、総司に向かってずんずんと向かっていく。

「……これ」
「え?」
「これ、ちょうだい。これがあれば僕も電王になれるから」
「もちろん、良いけど……」

そう言うが早いか、リュウタは少々乱暴に総司の手からデンオウベルトを取って、そのまま背を向けて椅子に座った。
翔太郎の次はリュウタロスか。
ここに集まった8人にこの12時間だけでどれだけのドラマがあったのか、と思うが、しかし今はそれに気を取られている場合ではないと総司は支給品を取り出す。

「それは……ラウズカード、ダイヤということは、橘のものか」

それに反応したのは、名護であった。
仲間の強化に必要なアイテムがここに集まっているもどかしさを抱きながら、それを回収しようと――。

「……ちょっと待て、それってあの黒と赤のハートの目をした仮面ライダーの使ってたやつと同じじゃねぇか」

そのカードに見覚えがあったのか、翔太郎が口を挟んでくる。

「黒と赤で目がハートの仮面ライダー?それがどうかしたのか?」
「あぁ、木場さんを殺した奴だ、なぁ名護さん、もう俺が木場さんの為にしてやれるのはそのライダーを倒すことだけだ、もしなんか知ってるなら教えてくれ」
「橘から聞いた話で、君の言う特徴と一致するのは仮面ライダーカリス、相川始だろうな」
「なるほど、カリス……って、え?」

そこで、ついに彼の思考は停止した。

174 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:36:14 ID:M4JnH8wI0





「あー、ったくこんなことしてる時間じゃねぇのはわかってるんだけどなぁ」

こういうところがハーフボイルドって言われんだよな、と自嘲しつつ、翔太郎は一人別室で夜風を浴びながら黄昏れていた。
こんなことをしている時間でないのはわかっている。
しかし翔太郎は今の状態でもう一度仲間たちと情報を交換する気にはなれなかった。

自分がガドルから助け、そして少しの間行動を共にした相川始。
名護が話を聞いた橘朔也の話では、彼はその世界にいるアンデッドの頂点、ジョーカーであり、しかし最近では仮面ライダーとしてアンデッドの封印のために戦っている、という話であった。
故にこの場でも仲間として接することが出来ればそれに越したことはない、と橘の話では友好的な人物として捉えられていた。

だが、結果としてはどうだ。
この殺し合いが始まってまだ一時間も経たない内から彼は木場を殺した。
翔一のように勘違いによるものではない。

自分たちはどちらも生身であったところを襲われたのだから。
それに、自分の顔も知っているはずだというのに、その後も自分と何もなかったかのように行動を共にし、謝罪の一つもないなど、悪意を認めざるを得ないだろう。
であれば、始は完全に敵なのか、そう考えて。

『その亜樹子とかいう女は、お前が生きる世界の住民だろう。このままだと、殺されるだろうな』
『お前は運命を変えると言ったな、それは嘘だったのか』
『嘘じゃないなら、早くしろ。お前が本当に世界を守るのか、見届けさせて貰う』

だが、思い浮かぶのは亜樹子による放送の後彼が呟くように言った言葉。
本当にただ殺戮のために殺し合いに乗っているのなら、あんな言葉を自分にかける必要はないはずだ。
そもそも、最初の戦いで自分の方が強いのはわかりきっているのだから、変身制限が解けた時にそのまま自分を襲えば良かったではないか。

であれば、やはり彼は自分の世界の平和のためにこの殺し合いに乗っていることになる。
とはいえ木場を殺したことに対する恨みは、そんな大義名分でなくなるものではなく。

「――俺は一体、どうすりゃいいんだ……、なぁ照井?」

デイパックから取り出したトライアルメモリにそう語りかける。
意味などない、どころかますます虚しくなるような行為だが、しかし彼はふっと笑って。

「あぁ、わかってる。『俺に質問をするな』だろ?」

今この場にいなくても返答が聞こえるような気がして、翔太郎はそう呟いた。
彼であれば、きっと橘からの情報も、自分で見た彼のどちらの姿も飲み込んだ上で、もう一度会ったときに結論を出すのだろう。
それが例え、厳しい決断であっても。

悔しいが自分よりもハードボイルドであったあの男なら、そうするはずだ、とそう考えて。

「けど俺はやっぱ信じてみてぇよ、あの言葉を、さ」

運命を変える。
気安く呟いたその言葉を、今一度自分の胸に刻み込んで。
殺戮で得られる世界の安寧など、絶対に間違っているとそう新たに決意して、彼はまた仲間の待つ部屋へと踵を返していた。

175 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:36:39 ID:M4JnH8wI0





「翔一君、未確認、といったか、その話を詳しく聞かせてもらいたい」
「いいですけど……あんまり楽しい話じゃないですよ」
「構わない」

そういった名護を受けて、翔一はリュウタに麗奈と三原を連れて少し離れたところで彼らを守るように指示をした。
それを受け三人が遠ざかったのを視認して、翔一はやっと重い口を開いた。

「未確認っていうのは、さっきも言いましたけど数年前まで現れてた謎の怪人集団です。ゲームみたいな規則性を持ってターゲットを襲ってたので、今でもアングラなところでは結構人気があったりするみたいですけど、一般の場では名前を出すのも憚られるようなタブーになってますね」
「それで、君が倒した男も、未確認だった、と」
「はい、小沢さんがそう言ってました、それが何か?」

言われて名護は少し考えるようなそぶりをして、それから口を開く。

「ただの思いつきなのだが、もしかしてその男はリントだとかクウガだとか言っていなかったか?」
「……!言ってた言ってた、翔一のことクウガって、なぁ?」
「……確かに、言われましたけど……」
「ということは、彼が名簿のズ・ゴオマ・グと見て間違いないだろうな」

そう言って、彼は名簿に目を落とす。
第一回放送で脱落を放送された、ズ・ゴオマ・グ。
彼が助け、また最終的に倒したのは彼でほぼ間違いないだろう。

「えっと、その悪いんだけど、なんでそうなんの?」
「……僕が倒したガドルって男もそんなことを話してたからだよ」

真司の素朴な疑問に答えたのは総司である。
グロンギ語と言われる特殊な言語を解析することは出来なくても、特徴的なフレーズであれば耳に残っているのではないか、と名護は考えたのだ。
特に、未確認の説明にあったゲーム感覚で他者を殺す、という点が強者のみをターゲットとして狙うガドルに重なって見えたのも、この考察の理由の一つであった。

「……ということは、残るはこのン・ダグバ・ゼバ、か」

そう言ってその名前を見つめる。
実力はわからないが、あるいはガドルよりも強いのだろうか。

「でも、翔一はゴオマって奴を倒したのにまだ全力じゃないらしいし、総司だってこんなボロボロなのにガドルってのを倒したんだろ?なら俺たちが力を合わせればダグバってのも倒せるんじゃないか?」

そう言うのは真司、その表情は決して楽観的なものではなかったが、しかしそこまで悲観しているわけでもないように見えた。
と、そんな中、会話に割って入るものが一人。

「……いや、わからねぇぜ。そいつは多分、紅を殺した奴だ」

先ほどまで一人で考えさせてくれ、と別室に移動していた翔太郎である。

「翔太郎君、大丈夫なのか、君は相川始に勇治君を殺された上……」
「心配は無用だぜ、名護さん。もう吹っ切れたしな、ここでうじうじ考えてても何も始まんねぇ、次会ったときに全部聞くさ」
「――やはり頼もしいな、君は」

176 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:36:57 ID:M4JnH8wI0

言われて翔太郎はキザに帽子を下げる。
どうやら、先ほどまでの彼に戻ったらしい、と名護は一つ息をついた。

「……ところで、その紅さんを殺したらしいっていうのは、一体どういうことなんです?」
「あぁ、放送前からずっと一緒に行動してた紅……、紅音也と街を歩いてたら白い服の奴が来てな、言ったんだよ『リントの戦士』ってな。
そんでさっき話してた城戸のデッキを黒くしたようなのを使って変身したのと戦って、俺はドラゴンに咥えられて気を失って――気がついたら紅が死んでそいつは消えてたってことだ」

リント。
それは、確かに先ほど未確認の言葉として判明したものであった。
であれば、ダグバが紅音也を殺したらしいのはまず間違いない。

憎むべき宿敵の名前が判明したことで一気に闘争心が沸き起こる名護だが、ふと時計を見やるともう放送まで二分を切っているところであった。

「まだ、色々と情報は交換すべきだと思うが、まずは放送を聞く方が先だな」

と、そうぼやいて先ほど遠ざけた三人を呼び寄せ、放送に備える。

(渡君、無事だろうか、そして万が一にも変な気を起こしていなければ良いが――)

名護が、その思いが裏切られ渡がスコアを上げていることを知るまであと二分。

(亜樹子、フィリップ、無事でいろよ――!)

翔太郎が、その思いと裏腹に亜樹子の死を知るまであと一分三十秒。

(草加、変なこと考えてなきゃ良いけど――)

三原が、狂気に染まったために見捨てられた自分の同級生の死を知るまで、あと一分。

(小沢さん、無事でいてください――)

翔一が、この病院に留まった理由の一つでもある小沢澄子の死を知るまであと三十秒。

(黒い龍騎……ミラーワールドの成り立ちから考えると、もしかしてそれって優衣ちゃんが俺を描いた絵が――って今はそれどころじゃないか。――無事でいろよ、蓮)

複雑な思考に至りかけた真司が想った相手が、最後の瞬間自分を想いその命を絶ったのを知るまであともう数秒――。

――深夜0時。
彼らの思いを裏切る放送が、今始まろうとしていた。

【一日目 真夜中】
【D-1 病院】

【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 霧島とお好み焼を食べた後
【状態】強い決意、翔一への信頼、麗奈への心配
【装備】龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、優衣のてるてる坊主@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの命を守る為に戦う。
1:翔一と共に誰かを守る為に戦う。
2:モンスターから小沢を助け出す。
3:蓮にアビスのことを伝える。
4:ヒビキと合流したいが、今は小沢の救出を優先する 。
5:この近くで起こったらしい戦闘について詳しく知りたい。
6:黒い龍騎、それってもしかして……。
【備考】
※支給品のトランプを使えるライダーが居る事に気付きました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解していますが、翔太郎からリュウガの話を聞き混乱しています。
※アギトの世界についての基本的な情報を知りました。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
※再変身までの時間制限を大まかに二時間程度と把握しました(正確な時間は分かっていません)
※天道総司の提案したE-5エリアでの再合流案を名護から伝えられました 。

177 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:37:15 ID:M4JnH8wI0


【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終了後
【状態】強い決意、真司への信頼、麗奈への心配、未来への希望
【装備】カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、コックコート@仮面ライダーアギト、ふうと君キーホルダー@仮面ライダーW、医療箱@現実
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの居場所を守る為に戦う。
1:城戸さんと一緒に誰かを守る為に戦う。
2:モンスターから小沢さんを助け出す。
3:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触。
4:木野さんと北条さんの分まで生きて、自分達でみんなの居場所を守ってみせる。
5:もう一人の間宮さん(ウカワームの人格)に人を襲わせないようにする。
6:ヒビキと合流したいが、今は小沢の救出を優先する 。
7:南のエリアで起こったらしき戦闘、ダグバへの警戒。
8:名護と他二人の体調が心配 。
【備考】
※ふうと君キーホルダーはデイバッグに取り付けられています。
※響鬼の世界についての基本的な情報を得ました。
※龍騎の世界についての基本的な情報を得ました。
※医療箱の中には、飲み薬、塗り薬、抗生物質、包帯、消毒薬、ギブスと様々な道具が入っています。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
※再変身までの時間制限を大まかに二時間程度と把握しました(正確な時間は分かっていません)
※天道総司の提案したE-5エリアでの再合流案を名護から伝えられました
※今持っている医療箱は病院で纏めていた物ではなく、第一回放送前から持っていた物です。


【間宮麗奈@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第40話終了後
【状態】 ウカワームに35分変身不可、他人に拒絶されること及びもう一人の自分が人を傷つける可能性への恐怖、翔一達の言葉に希望
【装備】なし
【道具】支給品一式、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、ドレイクグリップ@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
1:自分に出来るだけのことをやってみたい。
2:もう一人の自分が誰かを傷つけないように何とかする。
3:……それがうまく行かない時、誰かに自分を止めて貰えるようにする。
4:照井が死んだのは悲しい。一条と京介は無事? どこへ行ったのか知りたい。
【備考】
※『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると、推測しています。
※生前の記憶を取り戻しました。ワームの方の人格はまだ強く表には出て来ませんが、それがいつまで続くのか、またワームの人格が何をどう考えているのか、具体的には後続の書き手さんにお任せします。


【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW 、ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ、キバットバットⅡ世@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)、ラウズカード(ダイヤの7,8,10,Q)@仮面ライダー剣
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:可能な限り休養を摂り、少しでも疲労を軽減する方針
1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
2:総司君のコーチになる。
【備考】
※時間軸的にもライジングイクサに変身できますが、変身中は消費時間が倍になります。
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしていましたが、翔太郎との情報交換でそういうわけではないことを知りました。
※海堂直也の犠牲に、深い罪悪感を覚えると同時に、海堂の強い正義感に複雑な感情を抱いています。
※剣崎一真を殺したのは擬態天道だと知りました。

178 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:37:55 ID:M4JnH8wI0


【左翔太郎@仮面ライダーW】
【時間軸】本編終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)
【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、トライアルメモリ@仮面ライダーW、首輪(木場)、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW、『長いお別れ』ほかフィリップ・マーロウの小説@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。
1:名護と総司、仲間たちと共に戦う。 今度こそこの仲間達を護り抜く。
2:出来れば相川始と協力したい。
3:浅倉(名前を知らない)、ダグバを絶対に倒す。
4:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。
5:『ファイズの世界』の住民に、木場の死を伝える。(ただし、村上は警戒)
6:ミュージアムの幹部達を警戒。
7:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。
8:もし、照井からアクセルを受け継いだ者がいるなら、特訓してトライアルのマキシマムを使えるようにさせる。
9:ジョーカーアンデッド、か……。
【備考】
※555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。
※オルフェノクはドーパントに近いものだと思っていました (人類が直接変貌したものだと思っていなかった)が、名護達との情報交換で認識の誤りに気づきました。
※ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。
※また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※総司(擬態天道)の過去、及びにカブトの世界についての情報を知りました。ただし、総司が剣崎一真を殺してしまったことはまだ知りません。


【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません)
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+カブトゼクター@仮面ライダーカブト、ハイパーゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王
【道具】支給品一式×2、753Tシャツセット@仮面ライダーキバ、ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
基本行動方針:天の道を継ぎ、正義の仮面ライダーとして生きる。
1:剣崎と海堂、天道の分まで生きる。
2:名護に対する自身の執着への疑問。
3:名護や翔太郎達、仲間と共に生き残る。
4:間宮麗奈が心配。
【備考】
※天の道を継ぎ、総てを司る男として生きる為、天道総司の名を借りて戦って行くつもりです。
※参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。
※カブトゼクターとハイパーゼクターに天道総司を継ぐ所有者として認められました。
※タツロットはザンバットソードを収納しています。

179 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:38:16 ID:M4JnH8wI0


【三原修二@仮面ライダー555】
【時間軸】初めてデルタに変身する以前
【状態】強い恐怖心
【装備】デルタドライバー、デルタフォン、デルタムーバー@仮面ライダー555
【道具】草加雅人の描いた絵@仮面ライダー555
1:巨大な火柱、閃光と轟音を目撃し強く恐怖を抱く。逃げ出したい。
2:巧、良太郎と合流したい。草加、村上、牙王、浅倉、蓮を警戒。
3:オルフェノク等の中にも信用出来る者はいるのか?
4:戦いたくないが、とにかくやれるだけのことはやりたい。けど……
5:リュウタロスの信頼を裏切ったままは嫌だ、けど……
6:間宮麗奈を信じてみたい。
【備考】
※リュウタロスに憑依されていても変身カウントは三原自身のものです。
※同一世界の仲間達であっても異なる時間軸から連れて来られている可能性に気付きました。同時に後の時間軸において自分がデルタギアを使っている可能性に気付きました。
※巧がオルフェノクであると知ったもののある程度信用しています。


【リュウタロス@仮面ライダー電王】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(小)、ダメージ(中)、額と背中に裂傷(手当て済み)、35分イマジンとしての全力発揮制限
【装備】デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王、リュウボルバー@仮面ライダー電王
【道具】支給品一式、ファイズブラスター@仮面ライダー555、デンカメンソード@仮面ライダー電王、 ケータロス@仮面ライダー電王
1:良太郎に会いたい
2:麗奈はぼくが守る!
3:大ショッカーは倒す。
4:モモタロスの分まで頑張る。
5:修二が変われるようにぼくが支えないと
【備考】
※人間への憑依は可能ですが対象に拒否されると強制的に追い出されます。
※自身のイマジンとしての全力発揮も同様に制限されていることに何となく気づきました。


【全体備考】
変身制限に関して、完全に把握しました。
キバットⅡ世、タツロット、レイキバットは病院周辺を手分けして参加者を探しています。

180 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/07(水) 22:40:38 ID:M4JnH8wI0
以上で投下を終了します。
タイトルは『最高のS/その誤解解けるとき』でお願いします。
色々ばたついて申し訳ないです、引き続きしたらばの投票の方もお願いいたします。

また、拙作についてご意見ご感想、ご指摘などございましたら是非ともよろしくお願いいたします。

181 ◆LuuKRM2PEg :2018/02/07(水) 23:06:37 ID:4DVj480M0
投下乙でした!
放送直前となり、緊迫した雰囲気が迫っていましたが、冒頭の帰還から始まる日常パートは穏やかでした!
みんなでおにぎりを作る翔一くんの姿や総司さんの微笑みと涙、そしてワームと知った上で麗奈さんと向き合う皆の姿はとても素敵です!
ゴオマとネガタロスの脅威、そして始の真意をそれぞれは知り、そこからまた前に進もうとする姿もまたカッコよかったですけど、放送を聞いてから一同はどうなるのか……?

182 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/08(木) 00:00:21 ID:92U/Nv/U0
投下お疲れ様です。
また、>>164でこちらのワガママにお応え頂きありがとうございます。すぐにとはいかないとは思いますが、是非ご厚意に応えた作品を用意できればと思います。

さて、『最高のS/その誤解解けるとき』についてですが、これは良い情報交換回。
皆でおにぎりを頬張る際に総司が流す涙にこちらも釣られてしまいそうです。良かったね、本当に……
そんな彼を見る目がおそらく最も読者に近い名護さんも、結婚式の最中に連れて来られたとか面白いネタも振りつつ、音也に感謝したり本当に素敵。
少しずつ男を上げる三原や、各々の罪や誤解と向き合う主役ライダーズ、最早参加者の紅一点と化した麗奈さんと可愛いリュウタ、全員の描写がとても魅力的でした。
……とはいえデルタギア使いまわしたりしない? 大丈夫? と心配になったり、こっち側にはガチの危険人物だらけだけども変身用モンスターたち大丈夫? とか不安要素もあってロワらしさも欠かさない素晴らしい塩梅でした。
第二回放送前の〆に相応しい作品、改めて執筆お疲れ様でした。

183 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/09(金) 00:56:13 ID:4tUbJ/ro0
皆さま、夜分遅くに失礼致します。
現在、第二回放送案について、仮投下を行った修正版の是非を求めております。
皆さまのご意見をお待ちしておりますので、投票スレおよび仮投下スレにお目通しくだされば幸いです。

184 名無しさん :2018/02/09(金) 18:33:58 ID:X5vgIs.E0
投下乙です
リンクを貼ってもらえると有難い……

185 名無しさん :2018/02/09(金) 18:58:02 ID:8hrDpGG.0
完全にズレた感想で申し訳ないのですが、
名護さんが皆のまとめ役や総司の師匠を
立派にやっている事を嬉しく思う反面、
今の所、かつて父親を自殺に追い込んだ事に
一切触れていないのが少し気になる…。

186 名無しさん :2018/02/09(金) 22:24:16 ID:Pp1c5dOQ0
それを書く書かないは書き手の自由なんだから、貴方が一々触れる必要ないですよね?
見方によっては名護さんの父親の件も今後書けと要求しているようにも見えますよ

187 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/09(金) 22:30:11 ID:4tUbJ/ro0
>>184

こんばんは。反応が遅れてしまって申し訳ございません
こちらが仮投下スレになります。

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/14262/1289400059/l50

188 185 :2018/02/09(金) 23:00:54 ID:8hrDpGG.0
>>186
すみません、ふと気になった事を軽はずみに
書き込んでしまいました。
強要するつもりなどはなかったのですが、
不快にさせて申し訳ございません。

189 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 08:09:52 ID:NNgpreaA0
これより、第二回放送を投下します

190 第二回放送 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 08:11:52 ID:NNgpreaA0



 日付が変わる、その寸前。天に生じた灰色のオーロラ――のような光の壁から、何隻もの巨大な飛行船が吐き出された。

 空を駆けるその飛行船に刻まれたコンドルのマーク……それは六時間前、第一回放送が行われた時と同じく、宙を浮くそれらが大ショッカーの所有物であることを示していた。
 やはりそれらの飛行船には、液晶の巨大モニターが幾つも取り付けられていた。六時間前の再現と言わんばかりに、全施設と民家、街中の大画面液晶、店先のテレビ――種類を問わず、ありとあらゆる情報媒体が勝手に起動を始める。

 それに伴い、音声も会場中のあらゆるスピーカー……参加者の首輪に供えられたそれも例外ではなく、放送の態勢に入る。

 参加者が何処に居ようと、意識を保っている限り。大ショッカーからの情報を、本人の意思を無視して届けられる状態が、再び完成したのである。







 そうした影響を一切受けない場所――すなわち、放送を行う大ショッカーの本部にて、背広姿の男が大ショッカーのエンブレムを背に立っていた。

「時間だ。これより第二回放送を開始する」

 手前のテーブルに資料を広げた彼は、眼鏡越しにカメラを――否、その先の会場にいる参加者を見据えると、厳しい表情のまま口を開いた。

「俺は今回の放送を担当する幹部、三島正人だ――まずはこの十二時間を生き延びた参加者諸君には、賞賛の意を述べさせて貰おう。君たちの活躍は、我々にとっても想定外といえるほど目覚ましいものだ」

 告げる男の声は、まるで古い機械音声のように酷く抑揚を欠いていた。
 死んだ魚のように濁った目からは、言葉とは裏腹に生き残っている参加者への興味が一切感じられない。

 何の面白みもない三島の様は、殺し合いという状況を愉しんでいたキングとはまるで正反対――あるいは、対照的な人物が揃って従属する大ショッカーという組織の強大さを示す意図があるのか。
 そんな人事の真相にも興味がなさそうに、三島は仏頂面のまま言葉を続けた。

「早速だが、第一回放送からここまでの脱落者と、禁止エリアについて伝える。

 死亡者は、ゴ・ガドル・バ。五代雄介。小沢澄子。秋山蓮。草加雅人。金居。天美あきら。桐矢京介。日高仁志。乃木怜治。天道総司。矢車想。牙王。紅音也。アポロガイスト。海東大樹。園咲冴子。鳴海亜樹子。

 以上十八名だ。これでこの会場に残る人数は二十二名となった」

 死亡者の名前に何の感慨も込めず、淡々と告げた彼はつまらなさそうに資料をめくる。

「続いて禁止エリアの発表だ。第一回放送と同じく、二時間ごとに二つのエリアを立ち入り禁止とする。

 一時からエリア【G-7】と、エリア【D-8】。
 三時からエリア【H-5】と、エリア【C-2】。
 五時からエリア【E-1】と、エリア【B-6】。

 以上が、次回放送までの禁止エリアだ。
 気付いたと思うが、次回放送までに主要な施設はほぼ禁止エリアとなる。籠城などというくだらない考えはいい加減捨てることだな」

 そうして、一通りの伝達事項を読み終えた三島が、追加された業務を消化しようと次の資料に手を伸ばした、その時だった。

「失礼。まことに急ですが、今回のあなたの出番はここまでです」

191 第二回放送 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 08:12:12 ID:NNgpreaA0

 三島の隣へと急に降って湧いた金色の粉――それが結実した、僧服に純白のストールを掛けた神父風の男が三島の手を制止したのは。

「……どういうことだ、ビショップ」
「我らが主の意向です。この場はこれより、首領代行が引き継ぎます」

 ビショップという男に告げられたその時。初めて、無感動だった三島の顔に驚愕が浮かんだ。

「まだ納得頂けませんか?」
「いや……了解した」

 そうして頷くや否や、三島はテーブルの上に残してあった持参の資料を掴み取る。

「悪いな、参加者の諸君。担当者が交代することとなった。一旦放送を中断する」

 それだけをマイクに吐き捨てると、机の上を綺麗に空けた三島はそのまま、踵を返してカメラの前から姿を消した。

 ――彼が立ち去ると同時、複数の影が画面の奥から姿を顕した。

「首領代行。資料はこちらに整えてあります」

 接近する影に頭を垂れ、恭しく新たな書類を差し出したビショップもまた、三島と同じく大ショッカーの幹部の一人だ。
 現在の組織において大幹部と呼ぶに相応しい地位にある彼が――仮に表面だけでもここまでの敬意を見せる相手は、最古参の大幹部である死神博士ですらない。

 影より歩み出で、無言で彼の手にした書類を受け取ったのは、三つの異形を侍らせた女だった。
 エキゾチックな黒いドレスの上に、あるいはバラの群れにも見える真紅のファーを纏う長身の美女。その冷徹な美貌の額には、白いバラのタトゥが存在していた。

 先行したビショップの整えた席に、彼女は優雅に腰掛ける。
 異形達の隙間から離れて行ったビショップを一瞥することもなく、バラのタトゥの女は、己の座ったテーブルの前にあるマイクを手に取った。

「――これより、第二回放送を再開する」

 怜悧な印象に反して、その唇から紡がれた日本語は――ほんの少しだけぎこちなかった。
 カメラを向けられて、そこで彼女は初めて表情を動かした。
 先の違和感を忘れさせるほど蟲惑的な、謎めいた微笑を浮かべるために。

「前任どもに倣うとするか。
 私の名はラ・バルバ・デ――大ショッカーの最高幹部、首領代行だ」

 艶然と微笑む美女の背後には、それぞれ鯨、獅子、鷹を想わせる――どこか姿が歪んで見える異物感を漂わせた三体の怪人が、まるで彫像のように直立していた。

 あるいはその声に覚えのある者もいるかもしれない。
 あるいはその玲瓏な姿を知る者もいるかもしれない。
 あるいはその従える異形の姿を忘れられない者もいるかもしれない。

 だがそう言った因縁あるだろう相手へ何ら興味を示さず、大ショッカーの最高幹部を名乗った女は言葉を続けた。

「今回は三島が放送を担当して終わるはずだったが……先に告げた通り、我々の想定以上に今回のゲゲル、バトルロワイアルが進行している。故に生じたおまえたちへの言伝を、首領より預かって来た」

192 第二回放送 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 08:12:38 ID:NNgpreaA0





「――首領?」

 そう驚いたような声を上げたのは、空白の玉座の前の広間で、大幹部の威厳もなく尻餅を着いていたコーカサスビートルアンデッドが化身した少年――キングだった。

「へぇ、首領なんて本当に居たんだ」
「――あなたは新参ですから、御存じなくとも仕方ないでしょうね」

 そう放送を行うバルバの下から広間へ戻って来た大幹部――ビショップの声はしかし、いくらか嘲りの色が隠し切れていなかった。

「我らが首領は、偉大なる存在。今は我らの前に現界するための御身を喪っておられますが、いつでも我らを見ています――カテゴリーキング、あなたのその軽薄な態度もね」

 眼鏡の奥から、鬼気迫る瞳がぎょろりと自分を睨んだのを見て、しかしキングは挑発を失笑する。

「身体がないのに……へー、凄いね。じゃあ良かったね、君のとこの王様も、さ。そんな偉大な首領様と比べられたんなら、大事な臣下に捨てられても仕方ないよね」

 自分に投げ返された挑発に対し、ビショップの頬に音を立ててステンドグラス状の模様が走った。

「あれ、やる気? 良いよ、遊んであげても……」
「――やめろ!」

 そう笑いながらキングが立ち上がろうとした時、一喝する声が広間に響いた。
 現れたのは白いスーツにマントを付けた白髪の老人――死神博士だった。

「仮にも首領代行が任務に就いている時に、幹部同士でくだらぬ争いなどをしている場合か。――ビショップ、財団Xより使者が見えている。対応は君に任せる」
「――承知致しました」

 醜態を見られたことを恥じ入るように、ビショップはそう殊更丁寧に頭を下げ、僧服の裾を翻して広間を去って行った。

 これといった職責も与えられず面白おかしくしているだけで、このバトルロワイヤルが開始される寸前に大ショッカーに招かれたキング。対して、このようにスポンサーの歓迎、バトルロワイアルを管轄する首領代行の補佐などの激務に追われるビショップは、それだけでもキングに対して恨み言の一つも持っていたのかもしれない。
 だが、彼とキングの決裂が決定的になったのは六時間前の第一回放送が原因だろう。
 自身と同じ名を持ちながら早々に脱落したファンガイアのキングに対する言及が、同じファンガイアのチェックメイト・フォーの一員であったビショップの不興を買う結果になった――もっともキングは、ビショップを怒らせることも遊びの一環として楽しんでいるわけだが。

 無論、同じキングの名を持ちながら情けない結果となったファンガイアの王を嘲笑ったのは、単純にそんな輩と同一視されたくないという気持ち――主催側であるビショップに肩入れされ、最初から適正のある強力な支給品を与えられ、餌となる参加者の近くに配置され、さらにキバの世界において彼と敵対していた闇のキバの鎧をキングから最も遠くのエリアへ送るなどの根回しをされ、なおもあっさり敗退した魔族の王を純粋に見下す心情からだが。

 しかし去って行ったビショップへの興味は既になく、キングは死神博士に尋ねていた。

「ねぇ、死神博士なら首領のこと知ってるんでしょ? どんな奴なのか教えてよ」

 それは本来大幹部であるキングが、組織の長である首領について尋ねるにはあまりにも思慮の足りない口の利き方であったが――そんなキングの態度を今更気にするでもなく、死神博士は鷹揚に頷いて見せた。

「良かろう。思えば貴様はまだ何も知らなかったな」

 死神博士の言うように、キングは殺し合いの真意や参加者に語られた事実の正誤すらも把握していない。混血である紅渡がファンガイアのキングから次代のファンガイアの王として認められたことも業腹な種族主義のビショップに、代理人に過ぎないバルバのような異種族の女を敬わせるほどの存在――キングにも少し興味があった。

 尊き主を讃える信徒のように、陶然とした様子で死神博士は口を開いた。

「偉大なる我らが首領の名は――」

193 第二回放送 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 08:13:00 ID:NNgpreaA0





 そうして幹部達がやり取りをする少し前――大ショッカーの最高幹部が名乗りを終え、何故このような些事に彼女自らが出向いたのかを説明したその直後。彼女はまず、部下の渡して来た書類に目を通していた。

「首領の伝言の前に、おまえたちに伝えるべき事柄がまだ残っていたな」

 バルバが優雅に手を上げれば、その背後に巨大なモニターが出現する。
 並んでいたのは、『クウガの世界』、『剣の世界』、『キバの世界』……前回の放送で提示されたそれと同じものだ。

「まずは世界別の殺害数の序列だ。上から順に、現在はクウガの世界が十二人で一位、次いで八人の剣の世界、その下が四人のキバの世界とWの世界となっている」

 三島同様、大した感慨も見せずに女は原稿を読み上げる。
 背後のモニターは、女の呼び声に呼応するかのように各々の世界の名を強調していたが……『Wの世界』から下の列の名は、黒く塗り潰されていた。

「……一つ、死神博士から提案があってな。今回開示するランキングはここまでとなる。理由は各々、好きに考えを巡らせると良い」

 資料に目を落とし、淡々と読み上げていたバルバはしかし思い出したかのように、ふと背部モニターの方を振り返った。

「だが……そうだな。一つ、ついでに話しておいてやろう」

 黒塗りにされながらも名を連ねた、合わせて四つの世界の内。その末席に記された文字列へと、女は白魚のような指を這わせた。
 途端、文字列の一つを覆っていた黒がまるで拭い取られ――その下に隠されていた正体を明らかにした。

「ここにある『無所属』の参加者についてだが……説明をまだ行っていなかったな」

 現れたのは、クウガや剣と言った名前を冠さない――世界ですらないグループの名前だった。
 第一回放送時点ではランキングに上っていなかったその名の横には、彼らによる犠牲者数を示す『二人』という文字が輝いていた。

「彼らは世界の代表者ではなく、彼ら自身の生死はこのゲゲルにおける世界の存亡に影響はしない。言うなれば、勝敗の条件から切り離された存在だ。故に、我ら大ショッカーの一員であるアポロガイストも名簿上はそこに属していた」

 自らの仲間だという、先程三島によって読み上げられた死者の名の一つを口にしながらも、バラタトゥの女の表情はまるで感情が籠らず、人形の様であった。
 だがそれが不意に、可笑しそうに口角を歪める。

「――もっとも、勝敗に関わらずとも……世界の存亡に無関係というわけではないがな」

 多分に含みを持たせて言葉を区切った後、バルバは再びカメラに向かって艶然と微笑んだ。

「現に、つい先程参加者の全滅が確認された『響鬼の世界』の参加者の一人は、無所属の者の手で殺された」

 そうして告白されたのは、経緯の明かされぬ罪の在処と――一つの世界の滅亡だった。

『響鬼の世界』が――そこに生きる七十億の人口を抱えて、崩壊する。

 そんな、想像すら困難な規模の破滅の未来とその引き金を伝えながらも。美貌の最高幹部は余韻を挟むことすらなく、次の話を――首領代行としての本題を切り出した。

「放送の本来の役目は終えた。それでは、おまえたちに首領の言葉を伝えるとしよう」

 そうして彼女の口から伝えられる言葉を、カメラの向こうにいる者達はどう受け取るのだろうか。
 ただ、参加者も、大ショッカーの構成員も、その全員が、その言葉には度肝を抜かれることだろう。

「……人が、人を殺してはならない」

194 第二回放送 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 08:13:29 ID:NNgpreaA0





「――オーヴァーロード・テオス。闇の力。闇のエル。無数の名を持つ……とある世界の創造主、神そのものだ」

 死神博士から厳かに告げられた名とその正体に、キングはへえ、と相槌を打った。

「神様なんだ」
「そうだ……当然彼の世界に比べれば微々たる物だが、それでも異世界に対しても大きな影響力を持ち得る偉大なる神……バルバとも、首領が世界を渡った先で出会ったらしい」

 死神博士曰く、数多の世界を旅する通りすがりの仮面ライダーやその仲間達によって、一度ならず二度までも大ショッカーは壊滅させられたという。
 仮面ライダー達の目を逃れ、時空の狭間を彷徨っていた残党の前に、ラ・バルバ・デは現れた――オーヴァーロード・テオスの代弁者として。

 オーヴァーロード・テオスもまた、ある仮面ライダーの手によって肉体を砕かれていた。だが彼は精神だけの存在となっても滅びず、そしてその神としての奇蹟の力もまた健在。
 そんな彼と、彼と行動を共にするバルバの傘下に収まるよう求められ、逆らうこともできず大ショッカーの残党は従ったと言う。

 そうして彼らに導かれるまま、このバトルロワイヤルを行うための準備を推し進めた。テオスはその力で、従来の大ショッカーでは到底連れ去ることなどできなかったダグバを始めとした参加者を用意し、時空を完全に超越して様々な時代の様々な世界から参加者を集め、アポロガイストのような死者を蘇生し、さらには儀式によって失われたはずのファンガイアのキングの心を呼び戻しさえした。挙句、その能力でバトルファイトの統制者の役割を代行したのか、不死であるアンデッドを殺し合いに参加させると言う、キングすら驚嘆させる冗談のような事態を現実の物としている。

 参加者の力を縛る首輪の効力も、それがあれほどの戦いでまるで傷つかないというのも、大ショッカーの世界を股にかけた技術力だけでなく、会場そのものを創世したテオスの力の影響を受けているからだという。

 実際には大ショッカーの組織力と技術力を重用し、さらに財団Xというスポンサーまで必要としているということから、テオスにとってもここまでの道筋は決して楽なものではなかったのかもしれない。
 だがなるほど、全知全能ではないにしても、キングの知る限り最もそれに近い所業を果たしている存在であることは間違いない。

 ここまで手の込んだ真似をしたとなれば、本当にテオスにその気があるなら、敗退した世界を本当に消し去ることも、優勝者の願いを叶えることも――それこそキングを、この退屈な生から解放することも容易く行える準備は終えているのだろう。
 これでビショップの態度も得心が行った。元のキバの世界で敗れ、蘇生されたという彼は――自らに新たな命を与えたテオスという神の加護を、誇り滅び行く己が種に得ようと必死なのだろう。
 同じような理由で組織へ忠誠を誓っている者も、決して少なくはないはずだ。
 例えば種族に、ではなく、自己に限るとしても――ちょうど、姿を現した同僚のように。

「そして既に死んでいた俺やビショップ、ついでに封印されていたおまえを復活させたように、組織の人員補充を兼ねた聖別も首領御自ら行われたわけだ――何が起きたのかも、我々外様ではわからないほどの御力でな」

 如何にもその力に御執心と言った様子で割って入って来たのは、本来第二回放送を担当していた三島だった。

「あっ、お疲れグリラス。放送役のやる気なさ過ぎたの、お目玉なくてよかったね」
「……くだらないケチは止して貰おうか。俺は自分の仕事を全うしていた」
「わかってないなぁ。遊び心がないとつまらないだろ? 仮にも大幹部様が、さ」
「遊び、か……キング。貴様こそ、幹部としての自覚があるのか?」
「あるよ? 偉大なる首領様に選ばれたおかげで僕はこうして自由なわけだし、ほらバルバだって情報の公開は工夫してるじゃん。それとも首領の人選が信じられないわけ?」

 苛立ったような三島の返しに、キングはへらへら笑いながら挑発を重ねた。
 そうして最高幹部の振る舞いと、何より首領の御名を出されては何も言い返せないのか、苦虫を噛み潰したような顔で沈黙する三島を見たキングはわざとらしく驚いたような表情を作った。

「わ、グリラスが黙った。首領ってやっぱり凄いカリスマだなぁ」

 口先ばかりで自分達の主を讃えながら、けらけらと笑ったキングはついでに、ふと思い至った疑問を零してみた。

195 第二回放送 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 08:13:55 ID:NNgpreaA0

「……でも、そんな偉大な神様でも世界の崩壊は防げないんだ?」
「貴様……っ!」

 神を試すが如き不敬な発言に、押し黙っていた三島が眼鏡のフレームに手をかけた。
 そのまま怪人としての姿に変身しようとする彼を制するように、白い衣服に包まれた腕が翳される。

「さあ、どうだろうな」

 三島を止めた死神博士が、そのまま余裕ぶってはぐらかすのを見て、キングは一瞬むっとする。だが直ぐに頭上のモニターに映る、その神である首領の言伝を口にするバルバの姿を見て、また口の端を歪めた。

(わかるよ、神様……こんな面白いゲームを考えた理由がさ)

 自分のその考えが間違っている可能性など夢にも思わず、キングは内心呟いた。

(やっぱり退屈だよね、長生きしているとさ)

 自らの同類を得たと思い込み、キングは今までより少しだけ、大ショッカーの主催するこのゲームへの興味が湧いて来た。

「――ねえ、死神博士。僕も今から、このゲームに飛び入り参加しちゃ駄目かな?」







「……これは、あくまで首領の言葉に過ぎん」

 人が人を殺してはならない――殺し合いを強要した組織の長が口にするには、あまりにもふざけているとしか思えない言葉を伝えたバラタトゥの女は、部下の纏めていた書類をテーブルの上に投げ捨てると、再び口を開く。

「だが、おまえたちが気にすることはない。首領は最終勝利者が出ればその者の世界を存続させ、その者どもの望みを叶えるという契約を私と交わしている。首領の思惑などとは無関係に、死神博士が約束した報償は必ずや勝者に与えられる」

 優勝の褒美――それを信じることで心を繋ぎ止めている、それを信じることで殺し合いに乗ろうとする参加者が存在すると見越して、バルバはそう続けた。

「戦いを続けるが良い。そして見せてみろ。おまえたちの可能性が選ぶ、その行く末を――それがどんな答えだろうと、我々はその選択を受け入れよう」

 それをたとえ自身の望まぬ形だろうと、受け入れると首領は認めたのだから。
 それは代弁者である彼女もまた、同じ。

「以上で、第二回放送を終了する」

 そうしてバルバは踵を返し、放送室を後にする。その背には、三体の怪人――水、地、風。三種のエルロードが、静かに続いて行った。

 そうして事後処理を――キングの参戦希望すら、三島と死神博士に一任し、彼女は広間へと歩いて行った。
 人払いは済ませてある、静かな空間で――無人のはずの大首領の玉座に向けて、三体のエルロードが恭しく礼を取る。

「ゲゲルは、おまえの望まぬ方向に進んでいるな」

 バルバもまた、誰もいないはずの玉座に向けてそう告げた。

「だが、放送でも口にした通り――約束は、果たして貰うぞ」

 ――無論です。

 誰もいないはずの玉座から、そう静かな――しかし明瞭な声がバルバの中に響いた。

 ――私は、かつての使徒の言葉を見極めるのみ……

「おまえはリント――いや。人間を創りながら、それを何も知らない……か」

 対話の相手が語った、自らを使徒として選んだ理由を、バルバはもう一度口にする。

196 第二回放送 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 08:14:16 ID:NNgpreaA0

 ――ええ。私は、自らの使徒にそう断罪されるほど……視野が狭い。だから、あなたが必要なのです。ラ・バルバ・デ。

 超越者からの告白に、だがバルバは泰然とした様子を崩さなかった。

 ――人間がどのような結論を選ぼうとも……私は、それを受け入れて……彼らの選んだ世界を、信じましょう。

 たとえ、互いに滅ぼさねばならぬ運命のままに、最後まで傷つけ合うとしても。
 その運命すら打ち破って――他者を受け入れ、共に生きて行くとしても。

 創造主は、己が子ら自身の選択を尊重し、人間という存在を見極めると、そう宣告した。

 そのための舞台。極限の状況下に在ってこそ現れる、人間の真の姿。そして真の可能性。

 数多の世界の滅亡を前にして、大いなる力を持つ神は――敢えて全てを、人間に委ねた。

 人は彼が愛するに足る存在であり得るのか。彼がその力で救うべき者なのか。
 そしてそもそも――本当に彼の力を、人が必要とするのか。

 ――それを見届けるために……もう少し、私に協力してください。

「言われるまでもない」

 それこそ、彼女もまた望むことなのだから。

 オーヴァーロード・テオスは、人が人を殺してはならないと説いた。
 しかしラ・バルバ・デは、リントが争いを覚えたことを肯定する。

 進化とは、生存競争だ。より進化した者が、劣る者を狩る――グロンギがリントを狩る権利を持ったように。
 進化したリントの戦士達によって、多くのグロンギが討ち果たされたように。

 たった一つだけ世界が残るのなら、闘争の果てに残された世界こそが、無数の世界の中で最も進化した在り方なのだろうと、そう考えていた。

 だが、彼女もまた一つの奇蹟を目にしていた。

 ダグバと等しくなったあのクウガの、慈愛を湛えた赤い双眸を――
 リントが恐れた伝説を塗り替える、その姿を。

 聖なる泉を枯れ果てさせることなく、クウガはダグバを上回った。
 彼より劣るはずのリントを滅ぼす闇となるのではなく、彼らを護るために――助け合い、支え合ったことで。

 そして奇しくも同じ疑問を持ち、世界の融合に気付いたばかりのテオスに見初められ、教えられた……滅びつつある、無数の世界の存在を。そしてそこに存在する、他者を狩るのではなく、護るために無限に進化して行く者達を。

 ――仮面ライダー。

 それが数多の世界に共通する、救世主の御名。

197 第二回放送 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 08:14:38 ID:NNgpreaA0

 果たしてその存在が、結局彼女の信じる進化に劣るのか――それとも、真に勝る可能性であるのか。

 その可能性を見届けたい――その一点で、二人の目的は一致した。
 だが争いを是とし、それこそが本来あるものだと考えるバルバと――それを人に望まぬテオスの価値観は、同じ願いを抱きながらも異なる物だ。

 だからこそ手を取り合う価値があると、テオスはバルバに言う。彼の言う通り、互いの視野を拡げるために。

 また、グロンギにおいてゲゲルの管理者であったバルバは、此度のバトルロワイヤルの管理者としても適任――テオスにとっては、これ以上とないパートナーだったのだろう。

 それはまた、バルバにとってのテオスも同じこと。

 ……そうは言っても結局、テオスには未だ己の思うが通りになって欲しいと自制を欠く面はある。だが想定を遥かに越え、わずか半日足らずで世界の一つが滅びた現状に対し、先の言伝のように彼がぼやき一つで済ましたことは許容範囲だと考えたからこそ、バルバもその依頼に応じた。言うなれば今のバルバの役割は、受肉していないテオスに代わっての実務担当と共に、テオスが行き過ぎないよう見咎めることなのだから。

「――それでは、共に見届けるとするか」

 そう同志に告げて、バルバはまた踵を返し、広場を後にする。
 極限状態の中で戦い続ける、人の見せる可能性を見極めるために。
 三体のエルロードは無言のまま、主より与えられた任を果たすべく、美しき代行者の後に続いた。






【全体備考】
※主催者=大ショッカー首領は、【オーヴァーロード・テオス@仮面ライダーアギト】でした。彼は肉体を失っているため、【ラ・バルバ・デ@仮面ライダークウガ】が最高幹部として首領代行を行っています。
※主催側には、さらに【水のエル@仮面ライダーアギト】、【地のエル@仮面ライダーアギト】、【風のエル@仮面ライダーアギト】、【三島正人(グリラスワーム)@仮面ライダーカブト】、【ビショップ@仮面ライダーキバ】がいます。
 また、【財団X@仮面ライダーW】からの使者が来訪しているそうですが、その正体、および以後も主催陣営に留まるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※参加者に支給されたラウズカード(スペードのK)はリ・イマジネーションの剣の世界出展です。
※キング@仮面ライダー剣がバトルロワイアル会場への飛び入り参加を希望していますが、どのような展開を迎えるかは後続の書き手さんにお任せします。
※世界別殺害数ランキングは、上位三位まで、および『無所属』(=仮面ライダーディケイド出典の参加者)のキルスコアのみが明示され、他の三つの世界の名称および内訳は伏せられています。

198 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 08:20:43 ID:NNgpreaA0
以上で第二回放送の投下を完了します。
放送後の話の予約については既に解禁でも問題ないかと考えておりますが、 ◆.ji0E9MT9g氏のご意見を伺えればと思います。
ただ、午前中に席を外す用事が入ってしまったので、お返事できるのは本日のお昼頃以降になることをご了承頂ければと思います。

199 ◆LuuKRM2PEg :2018/02/10(土) 09:16:42 ID:BRnC/EBY0
第二回放送投下乙です!
ついにこのライダー大戦の首領の正体が明かされ、そして大ショッカー内部でも様々な思惑が渦巻く中で会場に乱入しようと企むキングとか、見所が満載でした。
ダグバを打ち破った赤い目のクウガを思い出しながら、数多の世界に生きる仮面ライダー達を見届けようとするバルバの姿には、恐ろしくありながらもやはり美しさに溢れていますね……

私も、放送後の予約解禁については行っても大丈夫と意見します。

200 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/10(土) 11:48:00 ID:WwriJcP.0
投下乙です!
感想はひとまず置いておくとして私も放送後パートの予約解禁をもうしてもよいと思っております。
そうですね、区切りがないのも締まりませんので、今日の正午から予約解禁で行きましょう!
……まぁ2月末までにかけて少し忙しいのでご期待いただいているほどの数は投下できないと思いますが、ともかく。
これに関するご意見は不要ですので、よろしくお願いします。

201 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/10(土) 13:12:48 ID:NNgpreaA0
>>199->>200
お二方、ご意見ありがとうございます。それではもう解禁されましたので、早速一組予約させて頂きました

202 名無しさん :2018/02/10(土) 14:12:27 ID:jpKUJG0k0
遅れて申し訳ありませんが、投下乙です。
主催陣の内部が明かされたり、見届ける事を決めたバルバ。
長すぎる時を生きたキングのだからこそのゲームへの興味など
見応えのある放送でした。
予約解禁は、私も可で良いと思います。

203 名無しさん :2018/02/11(日) 12:37:49 ID:t/S58fQw0
久々来たらロワが再開されてて嬉しい

204 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:13:13 ID:ZMKv5vOk0
ただいまより投下を開始いたします。

205 更ける夜 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:13:51 ID:ZMKv5vOk0
秋山が、海東が、ヒビキが、そして五代雄介が死んだ。
その志村の報告を受けて、橘朔也の胸には後悔と無念が押し寄せていた。
自分が先の戦いで情けない隙を見せたことと、彼らの死。

決して自分が戦いを続けられていれば助けられた命であった、などと驕る気はない。
ジャックフォームにすらなれない今の自分では、彼らと対等にならともかく、彼らを守る戦いなど、出来ようはずもなかった。
元々合理的な思考を広げる橘にはこんなIFを考えても意味がないことなど分かりきっていたが、しかしそれでこの惨状を受け入れられるほど、彼は達観して等いなかったのである。

「チーフ、お気持ちはお察しいたしますが……、もう間もなくこのエリアは禁止エリアになります。……G4とGトレーラーと遺品の回収と、フィリップくんを移動させないと……」

ふと見上げれば、志村が告げるのすら苦しそうにしながら、そう言い切った。
自分がこうして途方に暮れている間、彼はじっと待ち、そして自分を奮起させるために彼の性格からすれば言いにくいであろう遺品の回収、などということまで言ってくれたのだ。
未来の部下であり、自分にとって面識のない男ではあるものの、この場に来てからずっと変わらず自分を上司として尊敬し続けてくれている彼に、これ以上気を遣わせるわけにも行くまい。

ここまで情けない醜態しか見せていない自分をここまで気遣ってくれるのだから、彼はきっと未来でも自分の信頼を一身に受けているに違いない。
そんな真っ直ぐな未来の部下の言葉を受けて、橘はようやく立ち上がった。

「……そうだな、すまない、志村。ただ、時間はあともう15分ほどだけだ、フィリップとGトレーラーに遺品、俺たちで二手に分かれるべきだと思うが……」
「それなら、俺がGトレーラーと遺品を回収します。チーフと違って俺は一度彼らのその、遺体を見てますし場所もわかっています。
ショックもきっと、チーフが今から彼らを探して見つけた時に受けるそれに比べれば……、あってないようなものだと思いますから」
「……本当に済まない、志村、君には辛い仕事を押しつけてばかりだ」
「いえ、俺が未来でチーフに受けた恩に比べればこのくらい当然です、では、時間もないので……」

言って、志村は踵を返して早走りで駆けていった。
その背中を見送りつつ、自分がいつまでもへこたれていては、彼に申し訳が立たないと橘もまた、先ほどまでと大きくその様相を変貌させた病院であった残骸に向けて歩き出した。





「全く、あの男は何時の時代もああなのか?」

一方で、橘から少し離れたところでため息と共にそう吐き出したのは志村であった。
自分たちの時代で自分たち新世代ライダーを率いていた過去の仮面ライダーの一人、橘朔也。
自分をまんまと信用し、利用するのが容易い性格もあいまって志村からすれば一種の“理想の上司”であったのだが、まさかあの状況で茫然自失として座り込むとは思わなかった。

先ほど、病院で二人の参加者を殺し、意気揚々と残った弱り切った参加者を探すため歩いていた矢先にその声を聞いたときは、流石の彼も橘の悪運に初めて羨望のような感情を抱きかけた。
だが、周辺で見つけた死体――うち二人は志村のスコアだが――について報告したところ、いきなりフリーズしてしまった姿を見て、確信した。
――これでこそ我らが“橘チーフ”だ、と。

無論その感情に尊敬など一切存在しない。
先ほど殺さなかったのも、この戦いのルール上、彼を殺しても利には繋がらないためだ。
もちろん、正体を知られた時に彼が立ちはだかる可能性を考慮すれば殺すメリットもなくはないが、しかし志村は確信している。

橘はどこまで言っても、自分の障害にはなりえないということを。
と、そこまで考えて、彼は最初の遺体を発見する。
体中を銃創で穴だらけにされた秋山蓮の死体を。

「……」

本来彼が演じている志村純一という男が本当に存在していたとしたら、きっと秋山の痛ましい遺体に手を合わせ、そして泣きながら彼の近辺に何か元の世界で彼の帰りを待つ人にその死を伝えられる装飾品でも探したのだろう。
しかしここにいる男は、もちろんそんな殊勝な感情など持っているわけがない。
故に、その目には涙の一つすら浮かばせず、いつもの笑顔もなしに、その遺体を蹴り飛ばす。

もう死んだ男の前で演技などする意味もなく、またもうすぐに禁止エリアになるここに他の参加者が来るわけもあるまい。
故に彼は完全に素の状態で、彼の周りに何か役立つものはないかと容赦なくまさぐっていく。
するとすぐに、その遺体の下に固い感触が伝わって、彼は不気味に笑った。

206 更ける夜 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:14:11 ID:ZMKv5vOk0

――そこにあったのは、もちろん彼が死の寸前まで身につけていたナイトのデッキ。
中に問題なくサバイブのカードがあることも確認して、彼はそれを懐に収める。
これはオルタナティブのデッキと同じく、極力秘匿するべき手札で、かつ手持ちの中ではジョーカーに次いで強力なものであると彼は確信していた。

これが一番の収穫だ、と彼は笑ってその場を立ち去ろうとし――。

「あぁ、そう言えば、大事なこれを取っていくのを忘れてたな」

デイパックより取り出したGK-06ユニコーンで彼の首を掻き切った。
窒息死であったために凝固を始めていた彼の筋肉と血液の抵抗をものともせず両断された首と胴体の間、そこにあった銀の首輪を満足げに眺めて。
彼は、Gトレーラーの元へと急いだ。





「橘朔也……、無事だったのか、すまない僕は途中から気を失っていて、どうなったかよくわかっていないんだ。もし知っているなら教えてくれ、五代雄介は、皆はどうなったんだ?」
「……あぁ、もちろん教えるのは構わないが、ここはあと10分ほどで禁止エリアになる。E-5エリアの方に移動するのが先だ」

そう言って瓦礫の山に歩いて行く橘を見て、しかしフィリップは決してこの戦いが自分たちにとって最高の終わり方をしなかった、ということを察してしまっていた。
だが、もしもその結果が最悪なものであったとしても、自分にはそれを聞く義務がある、と思う。
そうして失われた命と向き合いそれを継ぐことこそが、自分たちにできる死者への最高の手向けだと思うから。

そう考えて、彼は重い覚悟を抱きながら橘の後を追った。





「――恐らく、ここまで来れば大丈夫だろう」

歩き出して数分後、自分の前を歩く橘がそう呟いたことで、フィリップは立ち止まる。
それを受けて、橘は数俊の迷いを見せた後、その重い口を開いた。

「今、俺以外に生存が確認できた仲間は志村だけだ。それと、実は俺も志村も戦いの途中で気を失い、最終的な戦いの顛末はわからなかった」
「――それだけじゃ、ないんだろう?」

苦しいながらに絞り出したその言葉を受けて、橘は一瞬目を伏せ、しかししっかりとフィリップを見据えて、言った。

「あぁ、志村によると、周辺に遺体が確認できたのは秋山、海東、ヒビキ、そしてこれはベルトからの推測だが五代雄介の4人、他は持ち物まで含めて誰の痕跡も見つからなかったらしい」

無事に、逃げられていればいいんだがな、と口にすると、フィリップはやるせない表情を浮かべ拳を握りしめていた。
ライジングアルティメットとなった彼しか知らない自分と比べて心優しい、仮面ライダーの鑑ですらあったらしい五代を見ているフィリップからすると、そのショックもより大きいに違いなかった。
顔を伏せ、いくらかの間深く深呼吸をしていたフィリップは、はっとしたように顔を上げ、周りを見渡した。

「橘朔也、志村純一はどこだ?君と合流したんじゃないのか?」
「あいつは、今禁止エリアになる前にE-4エリアでG4とGトレーラー、それに彼らの遺品を回収している。本来はこんな仕事ばかり押しつけたくはないんだが……」
「そうか……彼には、助けられてばかりだな、僕は」
「――チーフ!フィリップ君!」

207 更ける夜 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:14:30 ID:ZMKv5vOk0

寂しげに呟いた二人の声を待っていたように、志村がそこに現れる。

「遅かったな、大丈夫だったか?」
「バイクとGトレーラーを移動していたので……、心配させてすみませんでした。遺品は全てGトレーラーに乗せてあります」

言って彼はいつものように笑う。
その手に持っていたのは――。

「それは……、首輪か」
「えぇ、急いでいたので血塗れで申し訳ありません。お二人の首輪解除のサンプルに必要かと思いまして」

冷静を装ってはいるものの、自分で首を切り落としたことに流石にショックを隠しきれない、と言った様子の志村を受けて、二人は顔を見合わせ、しかし言わなくてはならないだろう、と口を開く。

「志村……、すまないが、首輪の解析は既に終わってるんだよ、お前も知っていると思ったがもし伝わっていなかったなら、辛い思いをさせてすまなかった」
「いえ、それは知っています。でも、その時解析した首輪って確か、ネガタロス……って参加者のでしたよね?」

申し訳なさそうに余分に辛い思いをさせたことを謝罪する橘に、志村はしかし何か確信でも持っているかのようにそう返す。
その自信がどこからわき出るのか分からず、二人は困惑した表情を浮かべた。

「あぁ、確かにそうだが……、それがどうかしたか?」
「野上良太郎が言っていたんです、彼の世界に存在するイマジンは人に憑依し、その人格を奪うことも出来る、と。それで、ネガタロスの首輪にはその制限に使われる技術が余分に使われているかもしれないとそう思ったんですが」
「こういっては何だけど志村純一、君は君を騙し冴子姉さんたちを殺した野上良太郎の言葉を信じられるのかい?」
「ええ、奴の嘘を見抜けなかった俺が言っても説得力がないかもしれませんが、あの言葉には嘘はないと思います」

真っ直ぐにこちらを見つめそう言う志村に、橘は感嘆の声を上げる。
自分がこの惨状へのショックを隠し切れていない中で、彼はこの犠牲をも飲み込んで次に出来る何かを探している。
その為に涙を飲んで遺体から首輪を回収し、騙された相手の言葉さえも信じてでも大ショッカーに抗う仮面ライダー全員の為になることを行おうとしているのだ。

これを頼もしく感じなくて何だというのだろう。
改めて自分の不甲斐なさを確認し、しかしこれ以上志村にばかり気を遣わせることなど出来ないと彼は面持ちを引き締める。

「わかった、そういうことなら……フィリップ、首輪解析機を出してくれ。俺は再度首輪の解析をしてみる。恐らく今からなら放送の直後には解析が終わるはずだ」
「チーフ……、ありがとうございます!」

そう言って勢いよく志村が頭を下げるが、しかし感謝したいのはこちらの方だ、と橘は思う。
未来でも変わらない仮面ライダーの雄志と受け継がれる魂を、彼を通して見たのだから。
なれば、彼がそれを学んだと思っている自分がへこたれていては、彼にも失礼だった。

そのまま、首輪解析機に秋山から採取してきたらしい首輪を入れ、慣れない戦闘でのダメージを引きずるフィリップには休息を、志村には周辺の参加者が近づいてこないかの見回りを命じる。
こうして、解析を待つ橘の目には、もう一度再起の炎が宿ったのであった。





深夜0時。
オーロラのような光から吐き出されてきた無数の飛行船を見て、三人は今一度首輪解析機の置いてあるエントランスへと戻ってきた。
それぞれの表情は決して明るくない。

病院戦での生存者が戻ってくるのではと見回りをしていた志村が一人もそれを見つけられていないことが、自分たちの知らない場所で彼らが全滅したのでは、と危惧させることに繋がっていたのだ。
しかしどちらにせよその答えはこの放送で出る、とメモとペンを構えるのだった。

208 更ける夜 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:14:48 ID:ZMKv5vOk0

『時間だ。これより第二回放送を開始する』

そう言って長身の眼鏡の男――曰く三島正人――は放送を始めた。
感情の起伏が一切見られない三島にフィリップはNEVERを無意識に重ねたが、しかし彼がNEVERかどうか考えても結論は出ないとそれを切り上げる。
そして短い挨拶の後、死者の名前が告げられる。

五代雄介、秋山蓮、草加雅人、天美あきら、日高仁志。
その死を既に知っていたはずの名前が告げられるのが、辛い。
一人告げられるごとにその手を止めてしまいそうになるが、これ以上の迷惑はかけられないと各人は手を動かし続けた。

――乃木怜治。
――矢車想。
――鳴海亜樹子。

「……えっ?」

最後の名前を聞いたとき、フィリップの手が止まるのを、橘は確かに見た。
彼が言うには、病院での戦いの際、上記の三人と葦原を含めた五人で金居と戦い、そしてフィリップは勝利したらしい。
その後すぐに意識を刈り取られたので詳しいことはわからない、とはいいつつも死体も見つからなかったことから彼ら四人の生存はほぼ確実だとそうどこかで甘く見ていたのだ。

――実際、亜樹子が殺し合いに乗っていなければ彼らは無事を貫いていられたのだが。
しかし、そんなことを知るよしもなくショックを受けたフィリップを気にすることもなく、放送は続く。
禁止エリアを述べ、取りあえずはE-5から動かなくていいと安堵したのもつかの間、放送は意外な展開を見せる。

『失礼。まことに急ですが、今回のあなたの出番はここまでです』

突如現れた、三島と同じく不気味な男となにやらボソボソと話をしたかと思えば、三島はここに来て初めて顔色を変えてそそくさと画面外へと消えていった。

「一体、何が始まると言うんだ……」

定時放送という場で起こった主催でさえ把握し切れていない突然のイレギュラーに、橘はそう漏らす。
そして、彼の言葉を受けるかのように先ほどまでとは段違いの迫力でもって――怪人を三人も連れ添って――現れたのは、謎の風格を持つ女であった。
生身であるように見えて、しかし普通の人間ではないことが画面越しの雰囲気からしても伝わる。

その不可思議な女はラ・バルバ・デと名乗った。
そして、それよりも彼らに衝撃を生んだのは――。

「首領代行……だと!?」

大ショッカーの最高幹部、そしてその後に続くその肩書きだ。
首領代行。
もしも言葉通りに信じるのなら、今回の放送には首領が直々に出向きたかったところを彼女が代わりに出てきた、ということである。

つまり、首領が自分たちに何か告げることがある、という暗黙の了解がその場にあった。
彼女は首領からの伝言を預かってきたと言い、その前に、と殺害数ランキングを公開した。
しかしそこにあったのは4つの世界の名前のみ。

クウガ、剣、キバ、W。
奇しくもここにいる三人の世界はそれぞれ含まれている。
フィリップがその数に首を傾げるのと同時、誰にも気付かれないようにしつつ志村は安堵したようにも、嘲笑うようにも見える不思議な表情を浮かべた。

ともかくそれを終え、彼女は首領からの言伝とやらを伝えるために間を置いて――。

『人が、人を殺してはならない』

確かにそう、口にした。

209 更ける夜 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:15:13 ID:ZMKv5vOk0





放送を終え、先ほどまでの張り詰めた空気が一旦解放されると同時、フィリップはその場に膝をついた。

「亜樹ちゃん、照井竜に続いて、君まで……」

この危険な状況でようやく合流できた元の世界の仲間、鳴海亜樹子。
そんな彼女が、一瞬自分が目を離した隙に死んでしまったという事実は、フィリップの胸を打った。
そのフィリップの横で、橘もまたなにやらもの思いに沈んでいるようだったが、それに水を差す男が一人。

「チーフ、フィリップ君、お気持ちはお察ししますが、どうやら首輪の解析が終わったようです」

その言葉には放送によるショックは見受けられない。
しかしきっと彼にも色々と思うところがあるのを押して自分たちのやらなければいけないことを思い出させようとしているのだ、と橘は好意的に解釈する。
思考を一旦中断し、首輪解析機から吐き出された秋山の首輪解析の結果をまじまじと見つめた橘は、しかし次の瞬間に驚嘆の声を上げていた。

「違う……ネガタロスのものとは全くの別物だ……」

そうして吐き出された言葉に、傷心のフィリップもゆっくりと立ち上がり、その目に浮かんだ涙を袖で拭った。
赤くなった瞳で画面を見つめると、そこには確かにネガタロスの首輪を解析した際の結果と大きく異なる図解があった。
そして何より彼らを熱くしたのは――。

「この構造なら……、或いは一度分解して詳しく内部を観察できれば参加者のものも解除できるかもしれない」

未知の技術の集合体であったネガタロスのものとは違い、自分たちでも理解できる部品が多く使われていることだ。
これならば、あるいは幾つかの首輪を犠牲にするかもしれないが、先ほどのネガタロスのものに比べれば解除に希望を持てるというものだ。
武器の解析もこれには必要ないかもしれない、と希望を持つ橘だが、しかし今度は別の問題が頭をもたげてくる、それは――。

「ということは或いは参加者に応じて首輪に種類があるかもしれない、ということか?」

それは、首輪の種類が参加者の種類に合わせ用意されているかもしれないという危惧。
最悪の状況を考えれば、一人一人別の首輪を用意されている可能性も考えられる。
であれば、首輪の解除など夢のまた夢、まさかこの絶望を味わわせるために首輪の解析機を置いたのか、とも思うが。

「……いや、この構造は北岡秀一のものと同じに見える。ネガタロスという参加者のものとは違っても、あるいは生身の人間に用いられている首輪は同種のものかもしれない。何にしても、もっと首輪を集めて解析しないとはっきりしたことは言えないだろうね」

その首輪の数には同じだけの死が伴うという事実を噛みしめながらフィリップは口に出す。
そんな残酷なことをすることに対する忌避感ももちろんあるが、しかし首輪の解除には既に散った参加者たちから更にその尊厳を奪うことをしなくてはいけないのだ。
全く大ショッカーは悪趣味の塊だ、と苦虫を噛み潰したような顔をするが、その後ろで志村も思考に沈んでいるようだった。

それをチラと見やって、フィリップは何か違和感を覚える。
しかしそれをうまく言葉に出来ないまま、志村は持っていたもう一つの首輪を差し出した。

「すみません、時間がなくて他に回収できたのは既に封印され回収が容易だったカテゴリーキングのものだけです、何か役に立てば良いですが……」
「いや、十分だ。データが増えるならそれに越したことはないからな」

言いながら橘は首輪解析機に金居の首輪を入れる。
これで深夜一時過ぎにはこの首輪の解析も出来るだろう。
しかしその間また待つだけというのも、と橘は立ち上がる。

「すまない志村、少しここに残っていてくれ、俺は遺品を整理してくる」
「一人で出歩くのは危険だよ、橘朔也。僕もついて行く」
「わかりました、二人が戻るまで俺がここを守ります」

210 更ける夜 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:15:30 ID:ZMKv5vOk0

そう言って笑いかける志村を背に、二人は廃墟と化した病院から移動する。
全く以て頼もしい男だ、と志村への信頼を一層深める橘に反して、フィリップはどこか物思いにふけっているようだった。

「橘朔也、こんなことを言うのは何だけど、放送前から志村純一の様子がおかしいとは思わないか?」
「……?そうか?俺にはいつも通りのように見えるが」
「そうか、僕の考えすぎかもしれないな……」

そう言ってもう一度深い思考に沈んだ様子の彼をみやりながら、橘は思う。
きっと、彼は元の世界からの仲間が死んでしまったショックで少し疑心暗鬼に陥っているだけだ。
探偵という職業も相まって、疑うことが多かったからこその一種の職業病なのだろうが、きっとすぐに志村を疑うことをやめるだろうと橘はそれについて考えるのを止めた。

(それよりも……放送の女、ラ・バルバ・デと言ったか。やはり門矢の戦ったガドルやあのダグバと仲間なのだろうか……)

思考を切り替えた彼が思うのは、先ほどの放送の女。
ラ・バルバ・デと名乗った女の名前は、名簿にあるガドル、ダグバのそれと非常に似ている。
であれば、恐らくは彼らと同じ世界の存在であろう。

数時間前までの橘なら、恐ろしいダグバの仲間というだけでその存在にも恐怖を抱いていただろう。
しかし。

(先の放送で、ガドルは死んだということは分かった。門矢と葦原でさえ勝てなかった相手を倒せる仮面ライダーもこの場にはいるということだ……)

彼の今の胸には、死んでいった仲間への弔いの気持ちと、何より共に戦える仲間たちの強さを信じられる思いがあった。
であればダグバや、バルバに自分が恐怖し縮こまっている暇などない。
そうしている間にヒビキや矢車と言った仲間がまた失われるのは、もう我慢ならなかった。

それに、彼の胸を熱くするものはそれだけではない。

(人が人を殺してはならない、だと?一体どの口がそれを言うと言うんだ……!)

ダグバの所属する、通称クウガの世界。
そこに存在する参加者がこの12時間で12人もの参加者を殺しているというのに、同郷の彼女は人を殺してはならない、などとほざいた。
それが橘の脳裏に焼け焦げていく東條の、死にゆく北條の姿と重なって、彼の恐怖を打ち消していた。

人をゲーム感覚で殺しながら、他者には偉そうにそれを禁ずるなど、その言葉の意味を理解していないサイコ野郎だと彼は思う。
きっと、自分たち仮面ライダーはそんな理不尽に屈してはいけないのだ、と
そうして着いたGトレーラーでその手にヒビキの音角を拾い上げながら、彼は思う。

もう自分に、立ち止まっている時間などないのだ、と。
自分に出来る全力を、これまで以上に惜しんではならないのだ、と。
そうして一層その覚悟を強めた彼の横で、フィリップはまた思考に沈んでいた。

(志村純一……僕の勘違いならいいんだけど……)

それは、先ほどGトレーラーを持ってきた時からの彼に感じる違和感。
乃木といたときには感じなかった謎の違和を、ここに来て強く意識せざるを得ないのだ。
それが何を指すものなのかは正直まだわからない、しかし首輪の解除の話題に関して、彼は何か焦っているようにすら感じる。

それに何かよくない感情が沸いて、フィリップを困惑させるのだ。

(……亜樹ちゃんが死んでしまって疑い深くなっているのかな、本当は仲間を疑うべきじゃないんだろうけど……)

どうしても拭いきれないそれを抱きながら、フィリップはまたしても志村の待つ首輪解析機の元へと歩いて行った。

211 更ける夜 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:15:50 ID:ZMKv5vOk0





「首輪の種類が異なる……、か」

橘たちがGトレーラーに向かった後で、一人になった彼は小さく呟いた。
当たり前だが、もしも首輪がその参加者の種族ごとに分けられているなら、自分は人間のそれでは解除できないと言うことになる。
解除中にアンデッドだと看破されれば、流石の橘も自分の首輪を解除することをやめるだろう。

何かうまい言い訳を考えなければ、と思考する一方で、同時に懸念も浮かぶ。
もしカテゴリーキングの首輪よりもジョーカーのものの方が首輪の設計が複雑だったなら、と。
であれば、今解析している金居の首輪では自分の首輪の解除には不十分である、必要なのは――。

「相川始のもの、か」

先の放送でも呼ばれなかった自分と対になるその名前を呟く。
最悪の場合、彼の首輪を手に入れなくてはなるまい。
全くそうしても解除できない可能性もあるとなれば、今フィリップを殺すのも一つか、と彼は考えるが。

「いや、結論を急ぐのはまずい、今はこのまま奴らに好きにさせておく方が良いだろうな」

結果を急いで解除できるものを解除できなくしてしまっては意味がない、と彼は思考を切り替える。
そうだ、殺すのは奴らに首輪の解除が出来ない、と判明したときでも遅くはないはず。
どちらにせよ奴らの実力では自分には勝ちようもないのだ、今はまだ泳がせておいて何の問題もあるまい。

と、首輪に関する思考をそこで中断し、彼は先の放送について考える。

「殺害数ランキングの下位が紹介されなかったのは、俺の嘘が一瞬で明るみに出されるから、か?」

それは、殺害数ランキングの下位の不紹介について。
バルバと名乗る女は様々な理由がどうのと言っていたが、恐らくは間違いなく自分がついた嘘である天美あきらと園咲冴子殺害の犯人が野上良太郎と村上峡児のものであるという嘘がバレてしまうのを避けるためだ。
全く世界単位でキルスコアを二人も上げられないとは情けない、と彼は鼻で嗤う。

ともかく、これで奴らが自分に優位に立ち回れる可能性もなくなった。
悪評も随分と広がったし、彼らの名前が次の放送で呼ばれるのも、そう可笑しくないだろう。
首輪の解除が可能な参加者を手中に収め、主催すら仲間につけて最早この殺し合いを制したのも同然だと、彼は不気味に笑って。

次の瞬間、戻ってきた二人の駒を、いつもの好青年の笑顔で出迎えた。

212 更ける夜 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:16:14 ID:ZMKv5vOk0


【二日目 深夜】
【E-5 病院跡地】


【橘朔也@仮面ライダー剣】
【時間軸】第42話終了後
【状態】精神疲労(大)、全身に中程度の火傷(手当済み)、仲間の死に対しての罪悪感、自分の不甲斐なさへの怒り、クウガとダグバ及びに大ショッカーに対する恐怖(緩和)、仲間である仮面ライダーへの信頼
【装備】ギャレンバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(ダイヤA〜6、9、J)@仮面ライダー剣、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣、ガイアメモリ(ライアー)@仮面ライダーW、、ザビーブレス@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×4、ゼクトルーパースーツ&ヘルメット(マシンガンブレードは付いてません)@仮面ライダーカブト、ディスクアニマル(アカネタカ)@仮面ライダー響鬼、変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼
【思考・状況】
0:仮面ライダーとして、人々を護る。
1:まずは今後の方針を考える。
2:首輪の種類は一体幾つあるんだ……。
3:志村純一と共にみんなを守る。
4:小野寺が心配。
5:キング(@仮面ライダー剣)、(殺し合いに乗っていたら)相川始は自分が封印する。
6:出来るなら、始を信じたい。
【備考】
※『Wの世界万能説』が誤解であると気づきました。
※参戦時期のズレに気づきました。
※ザビーゼクターに見初められたようです。変身もできるのか、保留扱いで生かされただけなのかは後続の書き手さんにお任せします。
※首輪には種類が存在することを知りました。


【志村純一@仮面ライダー剣MISSING ACE】
【時間軸】不明
【状態】全身打撲、ダメージ(中)、仮面ライダーG4に――時間変身不可?
【装備】グレイブバックル@仮面ライダー剣MISSING ACE、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎、ナイトのデッキ+サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎ラウズカード(クラブのJ〜K、ダイヤのK)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×4(ただし必要な物のみ入れてます)、ZECT-GUN(分離中)@仮面ライダーカブト、ファンガイアスレイヤー@仮面ライダーキバ 、G3の武器セット(GM-01スコーピオン、GG-02サラマンダー、GK-06ユニコーン)@仮面ライダーアギト
【思考・状況】
基本行動方針:自分が支配する世界を守る為、剣の世界を勝利へ導く。
0:後々地の石を奪い逃げた白い仮面ライダー(サガ)を追い、地の石を奪う。
1:バットショットに映ったアルビノジョーカーを見た参加者は皆殺しにする。
2:人前では仮面ライダーグレイブとしての善良な自分を演じる。
3:誰も見て居なければアルビノジョーカーとなって少しずつ参加者を間引いていく。
4:野上と村上の悪評を広め、いずれは二人を確実に潰したい。
5:フィリップを懐柔し、自身の首輪を外させたい。
6:首輪を外させたらすぐにフィリップを殺す。正体発覚などで自分の首輪を解除させるのが困難になっても最優先で殺害。
7:ライジングアルティメットを支配し、首輪を解除したら殺し合いに積極的になるのもいいかもしれない。
【備考】
※555の世界、カブトの世界、キバの世界の大まかな情報を得ました。
※電王世界の大まかな情報を得ました。
 ただし、野上良太郎の仲間や電王の具体的な戦闘スタイルは、意図的に伏せられています。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
 ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。
※放送を行ったキングがアンデッドである事に気付いているのかどうかは不明です。
※封印(SEAL)のカードは破壊されました。
※オルタナティブ・ゼロ、ナイトのデッキは極力秘匿するつもりです。

213 更ける夜 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:16:40 ID:ZMKv5vOk0


【フィリップ@仮面ライダーW】
【時間軸】原作第44話及び劇場版(A to Z)以降
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、照井、亜樹子、病院組の仲間達の死による悲しみ
【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW、ファングメモリ@仮面ライダーW、ロストドライバー+(T2サイクロン+T2エターナル)@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2、ダブルドライバー+ガイアメモリ(サイクロン+ヒート+ルナ)@仮面ライダーW、メモリガジェットセット(バットショット+バットメモリ、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW)、ツッコミ用のスリッパ@仮面ライダーW、エクストリームメモリ@仮面ライダーW、首輪(北岡)、首輪の考案について纏めたファイル、工具箱@現実 、首輪解析機@オリジナル
【思考・状況】
0:亜樹子が殺し合いに乗っているのなら何としてでも止める。
1:志村純一……、僕の勘違いならいいけど……。
2:大ショッカーは信用しない。
3:友好的な人物と出会い、情報を集めたい。
4:園田真理を殺したのは白い化け物。
5:首輪の解除は、状況が落ち着いてもっと情報と人数が揃ってから取りかかる。
6:出来るなら亜樹子を信じたいが……。
7:志村純一は信用できる……?
【備考】
※バットショットにアルビノジョーカーの鮮明な画像を保存しています。
※園咲冴子と天美あきらを殺したのは村上峡児と野上良太郎だと考えています。
※鳴海亜樹子と惹かれ合っているタブーメモリに変身を拒否されました。
※T2サイクロンと惹かれあっています。ドーパントに変身しても毒素の影響はありません。
※病院にあった首輪解析機をエクストリームメモリのガイアスペース内に収納しています。



【全体備考】
※E-4大病院が崩壊し廃墟となりました。
※Gトレーラー内にはG4の充電装置があります。
※G4は説明書には連続でおよそ15分使えるとありますが、実際どのくらいの間使えるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※G4を再度使用するのにどれくらい充電すればいいのかは後続の書き手さんにお任せします。
※G4システムはデイパック内ではなくGトレーラー内に置かれています。
※E-5エリアにGトレーラー、トライチェイサー2000Aが停車されています。

※ブラッディローズ@仮面ライダーキバ 、ディエンド用ケータッチ@仮面ライダー超電王、カイザポインター@仮面ライダー555、装甲声刃@仮面ライダー響鬼、カイザギア(ドライバー+ブレイガン+ショット+)@仮面ライダー555、デザートイーグル(2発消費)@現実、変身一発(残り二本)@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト、五代の不明支給品×1、草加の不明支給品×1、ガイアドライバー(五代)@仮面ライダーWがE-5エリアのGトレーラー内に置かれていますが、志村がどこまで回収したかは不明です。
もしかするとE-4エリアに置き去りのものもあるかもしれません。

214 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/13(火) 14:18:02 ID:ZMKv5vOk0
以上で投下終了です。
ご意見ご感想、ご指摘などございましたら是非ともよろしくお願いいたします。

215 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/13(火) 19:42:57 ID:.vgtk6FE0
投下お疲れ様です。
原作からしてプロのステルスマーダーである純一ニーサンと、原作からして彼に騙されている橘さん、feat.フィリップのチーム。
おそらくは東の参加者たちの中で最も緊張感の漂っていたパートでしょうが、まだニーサンが利用価値を見出しているので一安心しました。
相変わらず、敵に騙される時にはどこまでも相手を信じてしまう橘さん、会って数時間なのに「いつもと同じに見える」とかあまりにも好意的に解釈し過ぎですが、一方でグロンギに対する恐怖心を乗り越えてくれた点は頼もしい。
確変時の橘さんは誰もが認める強キャラキラー。原作における死亡フラグである橘さんを騙すアンデッドを満たしたニーサンと、平成ライダーロワ屈指の死亡フラグであるニーサンを信頼しきっての同行状態、どちらのフラグが勝利するのか楽しみですね。
フィリップも心に傷を負いながら探偵としての感覚を取り戻しつつあり、さらに首輪解除を現実的なラインに持ち込むなど頭脳派としての魅せ場が多く巡って来そうで楽しみです。
そしてここに来て明かされる衝撃の真実、参加者の種族ごとに首輪が違うとは! 必要とされる機能が別なのだから当たり前ですが、これは主催の難攻不落さを端的に表す素晴らしい演出。一方で、だからジョーカーは二人参加していたのかと膝を打つ思いです。
よくよく振り返るとかつてディケイド関連キャラに限って拙作で触れた要素でしたが、さらに面白い設定に昇華して頂けたと思います。本当にありがとうございます。

自分も続いて、予約分を投下いたします。

216 喪失 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/13(火) 19:44:43 ID:.vgtk6FE0



 暗い夜闇の中を、ぽつんと行進する影があった。
 ずんぐりとしたシルエットはデイパックと、人間一人を背負ったことで大きく膨れたもの。重い足取りで進むのは、一条薫を背負った小野寺ユウスケだった。

「……すまない、小野寺くん」

 背後の一条から囁かれたのは、何度目かになる謝罪の言葉だ。

 応急手当を済ませてから、ユウスケは一人で彼を背負い、病院を目指し歩いていた。
 直後、意識を取り戻したかと思えば何度か遠のきもしているらしく、繰り返される謝罪は軽く前後不覚の状態故か。

 ……あるいは、一刻も早い治療が必要な身でありながら、冷たい夜風に今も体力を奪われながらも、彼もまた無力感から際限なく自分を責めているのかもしれない。

「構わないですよ。俺が、無駄に元気なだけですから……」

 止血を終えた後から、ユウスケが一人、彼を背負って歩く形になったのは、ひとえに体力差の問題だ。
 良きにせよ悪しきにせよ、今のユウスケは二度に渡って凄まじき戦士に転じた身。
 あれだけ消耗していた肉体も、未だ万全とはいえずとも、一条を背負って長距離移動するのは問題ないほどに回復していた。

 それでも歩みが遅いのは、一条への負担を気遣うばかりではなく――やはり先の戦いが心に残した爪痕が深すぎたせいだ。

 一条やキバットがいくら慰めてくれても、肯定してくれても。事実として自分が、他人を巻き込む虐殺兵器と化しながら、ダグバを討つことをできなかった事実は覆せない。

 ――そして一条もまた、やはり文字通りユウスケに重荷を背負わせた形になった居心地の悪さと、己の不甲斐なさへの憤りとを抱えていた。

「……ちょっと待て、二人とも」

 そんな負の感情に沈んでいた二人を呼び止めたのは、隣を飛行し追随していたキバットバットⅢ世だ。
 彼の様子を見てみると、キバットは片方だけ残った目で夜空を見上げていた。

 その、星空を見るには険しすぎる視線に倣ってみたユウスケは、見た。
 天空に生じたオーロラから吐き出された巨大な飛空船の群れ。そのうち一隻が、自分達の頭上を通り過ぎていく様を。



『時間だ。これより第二回放送を開始する』



 ゾッとするほど静まり返っていた会場に響き渡る、冷徹な男の声により――ユウスケたちは、殺し合いの開始から十二時間の経過を知った。

 そして、取り返しのつかない喪失の数々と――漫然と絶望に浸っていられる時間が終わりを告げたことを。

217 喪失 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/13(火) 19:46:05 ID:.vgtk6FE0





「何が……何が人が人を殺してはならない、だっ!!」

 第二回放送が終わった後。去っていく巨大な影に向けて、耐えきれなくなったようにキバットが叫んでいた。

「こんなこと仕向けておいて、どの口でそんなこと言ってやがる! バカにしやがってこのヤローッ!!」

 首領代行を通じて伝えられた、大ショッカー首領――すなわちバトルロワイアル主催者の言葉に、キバットは逆上したように悪態を吐く。

 だが、どこまで参加者たちを虚仮にしたようなその言葉に対して、怒りを抱く余裕はユウスケの中にはなかった。

 あまりにも――あまりにも多く、そして受け止めきれないほどの大きな喪失に、打ちのめされてしまっていたから。

「海東……みんな……」

 海東大樹。第一回放送で名前を呼ばれた光夏海と同じ――というには、時に危うすぎるほどに気ままではあったが、ユウスケにとって旅の仲間と呼ぶべき男が死んだ。何度も助けてくれたあの通りすがりの仮面ライダーが。
 日高仁志、すなわちヒビキ。共に殺し合いに立ち向かった頼もしい仲間にして、ユウスケが……殺めてしまった桐矢京介の師匠であった彼も、また。
 それも、彼らの属する『響鬼の世界』ごと――全員、殺されてしまった。

 急激に、口の中が乾いて来た。ともすれば吐きそうになるほどに。

 響鬼の世界の参加者は全滅した。それにより、彼らの世界に残る人々も滅亡を決定づけられた。
 文字通りに、世界中の人々の笑顔が奪われた――その一因に間違いなく自分が居る、という途方もない罪悪感に、膝が折れてしまいそうだった。

 ――だが、今のユウスケにはそうもできない理由があった。

 彼らだけではない。紅音也も、鳴海亜樹子も、もっと大勢が死んだ。
 そんな犠牲者を読み上げる放送の中で、あったのだ。彼の名が。

「五代……」

 背中が震える。ユウスケ自身の意志ではなく、そこに触れている人物の感情で。

 友の――五代雄介の死を知った、一条薫の声には。聞くだけで胸が張り裂けそうになるような、悲嘆がそこに含まれていた。

「一条さん……」

 背負っている、という体勢の都合上。ユウスケは彼の顔を伺うことができない。

 今、彼は――どんな表情を浮かべているのだろう?

「……すまん、小野寺くん。急かすようで申し訳ないが、もう進もう」

 だが――悲痛に沈んでいるかと思われた一条の声には、既に芯が戻っていた。
 もちろん、万全の張りとは言えないが、それでも。

 思わず、ユウスケは問うていた。

「……良いんですか?」
「……良くはない、だろうな――だが、止まっていることはもっとできない」

 絞り出すような返答の裏からは、確かな決意の程が感じ取れた。
 つい先程、ユウスケを優しくも力強く励ましてくれた時のように――彼の信じる正義に殉じようとする、強い意志が。

218 喪失 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/13(火) 19:47:20 ID:.vgtk6FE0

「奴らは、大ショッカーはこの殺し合いで最後に残る世界を決めると言った……君が言うように、世界の滅びは確かに起こっているのだとしても。これから参加者の全滅した『響鬼の世界』だけを狙って破壊するのは、大ショッカーが実行することのはずだ」

 一条に言われて、ユウスケはハッとした。

 彼の言うことには一理ある。大ショッカーの放送の中では、あくまで参加者の全滅しか告げていない。
 ならば一条の言うとおり、彼らの世界は未だ健在で、この先に大ショッカーが破壊を試みるのだとしてもおかしくはない。
 ……事情も知らずに遺された、京介の家族や学友たちごと。

「そんなことを許すわけにはいかない。だからできるだけ早く、奴らの計画を阻止して、全ての世界を救う方法を見つけなければ……」

 そのためには、バトルロワイアルすら止められていないうちに、足を止めてはならないと――一条は、暗に告げていた。

 あれだけ親愛の情を示していた、五代雄介を亡くしても。

 それこそがきっと、皆の笑顔のために戦った彼の遺志でもあるはずだと信じて――中途半端な真似だけは、しないために。

「……っ」

 そんな気持ちに押されるように、ユウスケは一歩踏み出した。
 移動の再開に気づいたように、キバットとガタックゼクターもまた追いかけてくる――ユウスケに仮面ライダーの力を託してくれた、仲間たちが。

 ……そうだ。
 今は、嘆いてばかりいられる時ではない。

 五代雄介は――もう一人の偉大なクウガは、志半ばにして息絶えた。
 ダグバにも対抗できると目された、大きな希望が。

 だったら……もう、お終いなのか?

 このまま次々と参加者が脱落し、滅亡する世界が続々と増えていき――ダグバや大ショッカーのような暴虐無道だけが生き残る悪夢を受け入れるしかないのか?

 そんなの――――諦めてしまって、良いわけがない。
 そんな中途半端な真似、できるわけが、ないではないか。

「……一条さん」
「どうした?」

 前触れのない呼びかけに、一条は穏やかな調子で応じた。

「……あんなことをしておいて、何を言うんだって思われるかもしれませんけど」

 問いかけに答える声が、震える。
 まだ、罪の意識は拭いようもなくこの身に纏わりついている。完全には迷いを振り切れない。
 それでも、言葉にしなければ、内に抱えたままでは、いつまで経っても変わらないから。

「俺……俺、戦います。五代さんの分も。今度こそ、皆の笑顔を守るために」

 それを叶えられる見込みのある者が最早、自分しかいないのであれば。
 膝を着き、ただ悲嘆と絶望に沈んでいる暇など、この身に許されるはずがない。

 そもそもこれは、誰かに任せて良い話ではない。
 姐さんと約束したのは――他でもない、小野寺ユウスケなのだから。

219 喪失 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/13(火) 19:48:32 ID:.vgtk6FE0

「変わってみせます。今度こそ……今度こそ、ちゃんと、クウガとして」

 そして会ったこともないあの人の――五代雄介の意志もまた、継いでみせると、密かに決意を固めながら。

「中途半端は、もう、しません。だから……安心して、ください」

 大ショッカーを倒すまでは、もう自分から逃げている場合じゃない――ユウスケはその覚悟を、一条へと言外に伝えた。







 小野寺ユウスケの――もう一人の戦士クウガの背に揺られながら、一条薫は複雑な心境を抱えていた。

 思い煩うことはいくつもある。守れなかった同行者たちの無念も、出会う間もなく死んでしまった鳴海亜樹子への疑惑も、ユウスケに語ってみせた世界崩壊を止めるための手段の模索も。
 大ショッカーの首領代行という立場で現れた、未確認生命体B-1号のことも。

 だがやはり、多くの考えるべきことにもなかなか集中させて貰えないほど、一条の胸の中を占めるのは、二人の戦士クウガに対する感情だった。

(五代……すまん……)

 胸中で詫び続けるのは、あの冒険家のこと。
 旅を愛する彼を、ずっと縛り付けてしまった。誰より暴力を嫌う彼に、ずっと戦いを強いてしまった。
 他に、未確認に対抗できる戦力がなかったから。一条が、警察が無力だったから、彼を危険に晒し続けてしまった。

 そんな寄り道のせいで、こんな恐ろしい戦いに巻き込ませてしまって……とうとう、その命を喪わせてしまった。

 同僚の殉職なら、聞かない話ではない。

 だが五代は、民間人だったのだ。
 本当は、もっと、素晴らしい青空の広がる景色をたくさん見られたはずの彼の生涯を、こんなところで。

 誰より正義感が強く、けれど悪意と対峙することも、義憤に身を燃やすことにも慣れていなかった五代を死に追いやってしまったのは、自分たちの無力――そして己の発した言葉こそが呪縛になっていたのではないかと、一条は悔やまずには居られなかった。

 重傷の身の、どの痛みよりも響く喪失感と罪の意識――そしてそれをさらに膨れ上がらせるのは、その再演に対する恐怖だった。

(俺は……小野寺くんまで)

 第零号との死闘で、精神に深い深い傷を負ったもう一人の――若きクウガ。
 五代と同じように、皆の笑顔を守りたいと戦う青年。辛うじて生き延びてくれた彼にもまた、自分は呪いをかけてしまったのではないか。

 中途半端な真似をするな、と――

 人の身と心で背負いきれるはずもないものを、またも一個人に押し付けようとしているのではないかと――文字通り今、お荷物と化した己を背負う青年に対しても、一条は罪悪感を覚える。

 ただ……ただ。一方で、自らを気遣う彼の声が、先程のように自決へと一縷の望みを託したような末期的な物ではなかったことには、軽率にも安堵してしまっている自分のことも、一条は認識していた。

 彼の精神は、やはり仮面ライダーの――戦士クウガの物だったのだ。
 追い詰められても、だからこそ甘えられなくなる。己の持つ強大な力、その責任から逃れられなくなる。
 それが土壇場で、自らの命を放棄するという選択肢を先延ばしにさせたことを――素直には喜べなくとも、今はただ、先に繋がったことこそを最後の希望として。

220 喪失 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/13(火) 19:50:08 ID:.vgtk6FE0

 それでも、その正義の魂がユウスケを立ち直らせたのだとしても。その業と責任を、彼一人に背負わせるわけにはいかない。
 守るべき皆の笑顔の中には、彼自身の笑顔だって含まれていることを……確かに彼が守れたものと同じように、忘れないでいて欲しいのだ。

(そうだろう……五代)

 贖罪になるとは思わない。五代雄介と小野寺ユウスケは別人であり、何の因果関係もない。
 それでも、きっと、五代は悪い意味で自分の後を誰かが追うのは嫌うはずだから。

 共に背負えるだけの力がない一条がこんなことを考えるのは、いっそ無責任かもしれないが、せめて――せめて、彼と並んで戦える仲間のところまで、その希望を繋ぐまでは、諦めることはできない。

 ……それが正しいことだとは、頭ではわかっているのに。
 諦めるべきはないというのに、どうしても引っかかってしまうのはやはり、喪ったものが大きすぎるからだろうか。

 結局は五代をそこまで導くことのできなかった自分への、拭い取れない不信のせいか。

 五代雄介も、小野寺ユウスケも、同じく奮起してくれた父の言葉を――何より果たせていないのは自分ではないかという、疑念のせいか。



 ――この闇を抜ける頃には、そんな迷いも晴れるだろうか。

 柄にもなく、そんな感傷を懐きながら。一条はせめてもの回復と、考察すべき事柄への集中に意識の切り替えを務めた。





【一日目 深夜】
【???】



【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】第30話 ライダー大戦の世界
【状態】疲労(極大)、ダメージ(大)、左脇及びに上半身中央、左肩から脇腹、左腕と下腹部に裂傷跡、アマダムに亀裂、ダグバへの極めて強い怒りと憎しみ、仲間の死への深い悲しみ、究極の闇と化した自分自身への極めて強い絶望
【装備】アマダム@仮面ライダーディケイド 、キバットバットⅢ世@仮面ライダーキバ、ガタックゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】無し
【思考・状況】
1:一条を死なせたくない、何としても助けたい。
2:これ以上暴走して誰かを傷つけたくない……
3:……それでも、クウガがもう自分しか居ないなら、逃げることはできない。
【備考】
※自分の不明支給品は確認しました。
※『Wの世界万能説』をまだ信じているかどうかは後続の書き手さんにお任せします。
※アルティメットフォームに変身出来るようになりました。
※クウガ、アギト、龍騎、響鬼、Wの世界について大まかに把握しました。
※変身に制限が掛けられていることを知りました。
※アマダムが損傷しました。自壊するほどではありませんが、普段より脆くなっています。
※ガタックゼクターがまだユウスケを自身の有資格者と見なしているかどうかは、後続の書き手さんにお任せします。
※キバットバットⅢ世の右目が失われました。またキバット自身ダメージを受けています。キバへの変身は問題なくできるようですが、詳細は後続の書き手さんにお任せします。

221 喪失 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/13(火) 19:50:49 ID:.vgtk6FE0

【一条薫@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話 未確認生命体第46号(ゴ・ガドル・バ)撃破後
【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、額に怪我、腹部表面に裂傷、その他全身打撲など怪我多数(応急処置済)、出血による貧血、五代たち犠牲者やユウスケへの罪悪感、強い無力感、ユウスケに背負われて移動中
【装備】アクセルドライバー+アクセルメモリ@仮面ライダーW
【道具】食糧以外の基本支給品×1、名護のボタンコレクション@仮面ライダーキバ、車の鍵@???、おやっさんの4号スクラップ@仮面ライダークウガ
【思考・状況】
1:第零号は放置できない、ユウスケのためにも対抗できる者を出来る限り多く探す。
2:五代……。
3:例え何の力にもなれなくても、ユウスケを一人には出来ない。
4:鍵に合う車を探す。
5:照井の出来なかった事をやり遂げるため『仮面ライダー』として戦う。
6:一般人は他世界の人間であっても危害は加えない。
7:小沢や照井、ユウスケの知り合いと合流したい。
8:未確認への対抗が世界を破壊に導き、五代の死を招いてしまった……?
【備考】
※『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると推測しています。
※麗奈の事を未確認、あるいは異世界の怪人だと推測しています。
※アギト、龍騎、響鬼、Wの世界及びディケイド一行について大まかに把握しました。
※変身に制限が掛かっていることを知りました。
※おやっさんの4号スクラップは、未確認生命体第41号を倒したときの記事が入っていますが、他にも何かあるかもしれません(具体的には、後続の書き手さんにお任せします)。
※腹部裂傷は現在深刻ではありませんが過度な運動をすると命に関わる可能性があります。


※以下の支給品は、ガタックゼクターが運んだデイパックの中に入っているはずの物ですが、デイパックが破損しているためいくつかはE-2エリア、E-1エリア、F-1エリア内に落ちているかもしれません。または、やはりいくつかは攻撃に巻き込まれて消滅した可能性もありますが、詳しくは後続の書き手さんにお任せします。

@ガタックゼクターが運んだデイパック内にあるはずの支給品:照井の不明支給品、アタックライドカードセット@仮面ライダーディケイド、ガイアメモリ(スカル)@仮面ライダーW、変身音叉@仮面ライダー響鬼、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ガルルセイバー(胸像モード)@仮面ライダーキバ 、ユウスケの不明支給品(確認済み)×2、京介の不明支給品×0〜1、ゴオマの不明支給品0〜1、三原の不明支給品×0〜1
【備考】
※カードセットの中身はカメンライド ライオトルーパー、アタックライド インビジブル、イリュージョン、ギガントです
※ライオトルーパーとイリュージョンはディエンド用です。
※インビジブルとギガントはディケイド用のカードですが激情態にならなければ使用できません。
※ただし、上記の支給品の内ライダーベルト(ガタック)@仮面ライダーカブトは確実にガタックゼクターに確保されています。



【共通備考】
※『響鬼の世界』は参加者が全滅しただけで、世界そのものは大ショッカーがこの後で破壊するのではないか、まだ止められるのではないかと考えています。
※一条の治療のため、病院を目指して移動しています。ただしそれがD-1かE-5か、つまり出発地点のF-1エリアから見て北か東か、および現在地がどこになるのかは後続の書き手さんにお任せします。

222 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/02/13(火) 19:57:06 ID:.vgtk6FE0
以上で拙作の投下を完了します。
先述のとおり、以前ほどのペースでは執筆できないため次回の予約までは間隔が空いてしまうかもしれませんが、問題点や修正箇所のご指摘等にはもちろん出来る限り迅速に対応させて頂きたいと思います。
よろしくお願いいたします。

223 名無しさん :2018/02/13(火) 22:16:28 ID:RIC57FVw0
お二人とも投下乙です!
フィリップはニーサンの正体について疑問を抱き始めるけれど、果たして間に合うかどうか……!?
ニーサンは密かに装備を整えつつあるし、また首輪の解析が進むごとにとんでもない思考が芽生えつつある。
確かに首輪の仕組みが違っても、下手に始を殺害したらその時点で自分の世界が不利に繋がってしまうでしょうし……


一方でユウスケと一条さんも五代さんや海東の死を知ったけど、それでも覚悟を決める姿は頼もしくもあり、そして切ないです。
二人にとってクウガである五代さんの遺志を継げると良いですけど、もう一人のクウガであるユウスケは渡に狙われそうになっているのですよね……
でも、キバットがいれば渡のことを説得してくれるはず!

224 名無しさん :2018/02/14(水) 02:39:41 ID:9Wer98/.0
投下乙です。

>更ける夜
騙し上手な志村、騙され上手な橘、正しいのか疑心暗鬼なのかもわからなくなっているフィリップ。
三者それぞれ、ステルスに翻弄されるチームとしては凄く面白い描かれ方でした。
確かに志村が狡猾なのもあるんだけど、橘さんが一見優秀で冷静な年長者だからこそ、フィリップは騙されてる橘をある程度信頼して巻き添えのように騙され半分になっているような…。
橘さんがアレなところがある人だと切り捨てられればもう少し冷静に他人を疑えるのかもしれませんが、優秀なところは優秀で一見まともな人だからなぁ…。
それでもフィリップの持つ疑念も決して潰されるようなものでもないので、もしかしたら大きな活路はあるかもしれませんね。
という事で、志村がバレても相変わらず騙されても、今後が楽しみですね。

>喪失
五代の死という結果に、元の世界での行動ごと悔やんでしまう一条さん。
本編最終回も浮かびつつ、それをまたユウスケに対して繰り返さざるを得ない立場の葛藤が絶妙です。
「もう民間人は巻き込まない」と完全に振り切れるなら、あるいは、逆に「民間人を巻き込むのもやむを得ない」と割り切れるなら、彼もすごく楽なんでしょうが状況的にも立場的にもそうも行かず。
過ちや責任を悟りながらも繰り返す形になる、必然的にそれを見送る事になってしまう、悲しい立場です。
もう一人、こちらは他人とはいえ五代の優しさと覚悟に近づいていっているようなユウスケ。
彼は小野寺ユウスケではありますが、五代雄介を知る事も、五代雄介をなぞったような言葉や覚悟を示す事も、またユウスケとしての成長なのかなと思います。
五代と重なる一面が増えたからこそ、これから先、決定的なところでこのロワの五代と違う道のりを歩んで、五代と一条を救ってほしい気持ちです。もちろん、すべては命運次第ですけど…。

225 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/14(水) 18:16:05 ID:GYwRogog0
◆cJ9Rh6ekv.氏、ご感想ありがとうございます。
首輪に関しては氏のディケイドには余分な制限が云々を拡大解釈したものなので、ご本人にそう言っていただけると嬉しいです。
『喪失』ではユウスケと一条さんが五代の死に物思い。
地の石で操られてガイアメモリの毒に嬲られてと詳細を知ったら卒倒しそうですね。
それからユウスケ、E-4方向に向かうと鬱ルートほぼ確定だからやめてよ?本当にやめてよ?

226 名無しさん :2018/02/15(木) 22:35:30 ID:dhGhDwwk0
今残ってるマーダーって

・ダグバ(キングフォームへの変身が可能)
・浅倉(王蛇のデッキは失ったもののテラードーパント、ヘラクス、ファム、ランスに変身可能)
・始(手持ちのカードではワイルドカリスにはなれないものの三つの変身手段あり)
・志村(橘達に隠しているものも含めれば四つも変身手段がある)
・渡(二つ変身手段があって尚且つ地の石を所持している)

五人だけなんだな

227 名無しさん :2018/02/16(金) 00:27:16 ID:otF2XOF20
そもそも残ってる参加者が22人だけだからね
そこに更にウカワームがマーダー入りしたら4分の一以上マーダーになっちゃうしむしろ多いまであるよ

228 名無しさん :2018/02/17(土) 08:01:42 ID:3KLB4YV.0
おおおお! 凄い予約きたね!

229 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:10:51 ID:BdiVsGB60
皆様おはようございます。
ただいまより投下を開始いたします。

230 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:11:22 ID:BdiVsGB60

「小沢さん、ヒビキさん……そんな……」
「蓮……嘘だろ」
「草加、お前……」
「亜樹子……すまねぇおやっさん……!」

死者の名前が呼ばれる度、この場に集まった参加者の顔が陰っていく。
前回の放送から更に18人という驚くべき数を減らした参加者を思いながら、名護は口にはしないものの、少しの安堵も覚えていた。
自分の弟子であり最高の仲間、仮面ライダーキバである紅渡が未だにその名前を呼ばれていないため。

リュウタロスも敵対する牙王の名前だけが知り合いの中で呼ばれたことに多少喜びの声を上げていたが、しかし周りの雰囲気に合わせてそれを大きく口にはしないようだった。
以前までの彼であれば周囲など気にせず大声で喜んでいたであろうことを考えると、大きな成長であったが、しかしそれを確認してくれるものはこの場にはいない。
ともかく、死者の放送が各々に生じさせた衝撃は大きかったものの、比較的この場ではまともに放送を聴ける自分が放送の内容を的確に覚えておくべきだと一層意識を集中させ――。

『――失礼。まことに急ですが、今回のあなたの出番はここまでです』

その言葉と共に現れた男に、この放送が始まってから初めて動揺を見せた。





放送が終わってからも、数分の間そこにいる誰も声を上げなかった。
18人。
6時間で死ぬには、あまりにも多すぎる数字。

あるものは死者との思い出に耽り、あるものは名も知らぬ死者への黙祷を捧げていた。
その中でやはり重い口を最初に開いたのは、この場を仕切る名護であった。

「……皆、辛いのは分かるが、今の放送でわかったことを話し合いたい」

その言葉に翔太郎は沈んだ瞳を向け、先ほどまであれほど明るかった真司たちも見るからに気乗りをしない様子だった。
その気持ちは痛いほど分かる。
翔太郎にとっての鳴海亜樹子の存在が、翔一にとっての小沢が、真司にとっての秋山がどれほど大きい存在か、名護にだって察しはつく。

しかしだからといってここで足を止めては、ヒビキを始めとする死んでいった全ての仮面ライダーに申し訳がたたないではないか。
しかしそうはいってもいきなり意識を切り替えるのは酷か、と名護は自分から切り出す。

「先ほどの放送にいた、放送の中断を宣言した男。俺は奴を知っている。ビショップと言って、既に元の世界で倒したはずだが……ともかく主催に協力しているらしい」

その言葉に反応する者はいない。
最早貴重な主催の戦力の把握であるはずだが、やはり今の放送で失われた命はあまりにも大きかったらしい。
しかしその空気の中で、名護にいち早く気付き対応したのは、彼の弟子である総司であった。

「……それなら僕も。最初に放送してた三島って人、多分普通の人じゃないと思う、何か感じたんだ」
「私もそう思います……、それと、その……なんとなくあの人は総司さんと同じ感じがしました」

自信なさげに呟いた総司に続いたのは意外なことに麗奈であった。
その事に驚きを示したのは、もちろん名護だけでなく。

「え、てことはあの正人って奴もねいてぃぶ?だってことー?」
「そう、いうことになるのかな?」

素朴な疑問を述べたリュウタに総司はそう返す。
彼とて自分がネイティブであることは知っていても、他人がどうかまではわからないのだろう。
そう言う意味で言えば、ここに至って麗奈の感覚は非常に頼りになる。

大ショッカーに普通の人間がいるはずもないか、と一同が納得する中、次に声を上げたのは翔一だった。

231 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:11:44 ID:BdiVsGB60

「……俺、もしかしたら大ショッカー首領っていうのが誰か、知ってるかもしれません」

確信は持てない様子ながらもそう言った翔一に、一同の注目が集まる。

「それは本当か、翔一君!」
「多分、ですけど。あのバルバって女の人の後ろにいた奴らと前戦ったんです。それに、『人は人を殺してはいけない』って言葉にも、何か聞き覚えがあって」

彼の言葉に、名護も、翔太郎も目を見張っていた。
このチームのムードメイカーであるだけかと思われた翔一だが、変身制限の更なる一面や、主催の首領を知っているなど、情報においても大きく貢献している。
決して翔一を軽んじていたわけではないが、ここまで色々と役立ってくれるなどとは思いもよらなかった。

「それで……、翔一君、その首領っていうのは結局誰なんだ?」
「はい、……俺も名前は知らないんですけど、そいつは何か皆が言う分には、人間を作った奴なんじゃないかとか、何とか」
「それって、神様ってこと!?」
「まぁ、そういうことになるんですかね」

思わずといった様子で大声を上げる総司に、翔一は困ったようにそう返す。
彼の様子からして嘘をついているわけでもないのだろうが、あまりにも突飛すぎる発言に一同は言葉を失ってしまう。
そんな空気の中、堪らずといった様子で立ち上がったのは三原だった。

「神様が相手なんて、そんなの……そんなの勝てっこないじゃないか!」

その言葉には動揺も含まれていたが、何より不安が大きいようだった。
世界の滅亡など大ショッカーの妄言だと言う名護たちの言葉を信じて三原なりに頑張っていたというのに、相手が神ではその言葉を信じざるを得ないではないか、と。
しかしそんな三原に対して、やはりこの場に似つかわしくない表情を浮かべるのは翔一だ。

「うーん、勝ち目ってのはどうかわからないですけど。一度そいつが人間を滅ぼそうとした時、俺、そいつを蹴り飛ばしたんです。だから皆さんもそこまで気負う必要ないと思います」
「蹴り飛ばした……って神様をか!?」
「えぇ、まぁ」

真司の衝撃に対し、へへ、と気恥ずかしそうに笑う翔一を見て、今度こそ全員が絶句した。
事もあろうに、彼は神を一度蹴り飛ばしているらしい。
なんと罰当たりな、とも思うが。

「……いや、こんなふざけたゲーム開く奴だぜ、俺たちの信じる神様とは、腐っても別人に決まってる」
「そうだな、俺も、俺や人々が信仰する神がこんな命を弄ぶことを進んでするなど考えたくもない」

ずっと黙っていた翔太郎の言葉に、名護も合わせる。
今までファンガイアの魂を捧げていた神が、こんな殺し合いを開くような親愛に欠けた存在などと、口が裂けても言いたくはなかったし、考えるのもごめんだった。

「――進んでじゃ、なかったら?本当に神様でもどうしようもなく世界が壊れようとしてて、それを防ぐための必死の手段だったら?」

しかしそんな名護の言葉に、水を差したのはまたも三原だった。
もちろんその可能性には名護も思い至っている、しかしそれを今議論するのは、士気の低下に繋がりかねないと、意図的に避けていたのだ。
しかし触れられた以上は反論せねばなるまいと――。

「……そんなわけ、ないよ」

しかしそんな三原に名護より早く反論したのは、総司であった。
俯きながら吐き出された否定に、流石の三原も苛立ちを隠しきれず。

「なんでそんなこと言い切れるんだよ!?神様が関わってるんだぞ!どうしようもない可能性の方が高いじゃないか!」
「そんなわけないよ、だって……」
「だって、何だよ!言ってみろよ!」
「――だって、それなら僕を参加させる理由がないもの」

そう言った総司の瞳には、覚悟が満ちていた。
その目に見つめられて三原は一瞬怯むが、しかし今度は翔太郎が疑問を口にする。

232 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:12:05 ID:BdiVsGB60

「おい、それどういうこったよ総司。お前が参加する理由がないってのは」

言われて、総司は一瞬だけ俯いて、しかし今度は名護を見ることなく、真っ直ぐに前を見据えて。

「だって僕は最初、自分の世界を崩壊させるために殺し合いに乗ってたんだもん」

えっ、と誰かが呟いた。
一歩分、総司から物理的に離す一同を尻目に、総司はしかし堂々と息を吸い込んだ。

「……僕は最初、世界全体から見放されてると思ってた。僕を受け入れてくれた唯一の存在のひよりも僕から離れていって、僕には本当にどこにも居場所がなくなったって思ったんだ」

ぽつりぽつりと吐き出す彼は、しかし以前までと違って憑き物が落ちたような顔をしていた。
そのままぎゅっと拳を握って自分の目の前に掲げ、月明かりに照らす。
その拳に込めた思いがなんなのか、誰にも分からなかったが、しかし総司は満足げに笑って。

「だから、この殺し合いに最初に連れてこられた時、僕はまず全部の世界を壊して、最後に自分も死ぬことを考えた。そうすれば、僕を拒絶した世界も、何もかも否定できると思ったから。……そんな存在、神様からすれば絶対に邪魔でしかないよね?」

そう言って悲しげに笑うが、それに笑みを返せる存在は誰もいない。
だが、とそれに異論を唱えるのは、やはり三原だ。

「……でも、結局総司さんは殺し合いに乗るのをやめたんだろ?それに結局ガドルって奴とかネガタロスって奴とか、悪い奴しか殺してないじゃないか。今ではどうとでも言えるけど、結局前から悪い事なんて出来なかったんだろ!?」

言いながら、三原にも何が正しいのかよくわからなくなっていた。
首領の神様が正しいのか、この場にいる仮面ライダーが正しいのか。
しかしそんな三原に、以前の自分を重ね合わせたか総司はしっかりとした目で名護を一瞥し、それから三原に向き直った。

「ううん、僕はそれ以外にも一人殺してる。――剣崎一真っていう、正義の仮面ライダーを」
「剣崎一真だと!?」

それに驚愕の声を上げたのは、翔太郎だった。
相川始から知り合いとして紹介された仮面ライダーブレイドである、剣崎一真。
彼のことを話す始はどこか穏やかで、きっと友人であるのだろうと翔太郎は思っていた。

その名前が放送で呼ばれた時、始の顔を思い浮かべもしたが――。
きっと、カリスとしての彼が守りたかった世界の一員にも、彼は含まれていたのだろうと、翔太郎はそう感じていた。
始にすらそこまで信用される仮面ライダーを殺したのが、他でもない総司だと――?

「だから、僕は一生をかけてその罪を贖う。そして、剣崎や天道の分まで、仮面ライダーとして生きていかなきゃいけないんだよ」

言い切った後で、生きていきたいんだ、と総司が小さく続けたのを、翔太郎は確かに見た。
先ほど、身体が例えネイティブという怪人になっても、変わりたいと思い続ける限り総司は変われるのだと熱弁したのは、一体どこの誰だったか。
こんな程度で意見を変えるようでは、全く半人前もいいところだ、と彼は大きく息を吐き出して。

「そうだな、お前がどんな罪を犯していようと、それを数えようっていう気持ちが消えない限り、お前は変われるんだ。……首領だってよ、さっきも言ったけど神様はこんなゲーム感覚で人を選別しようなんてしないはずだぜ」

これで納得してもらえねぇか、三原さん、と翔太郎が続けたのを聞いて、三原は思いのやり場を失ってそのまま座り込んだ。
不安が消えたわけではないだろう。
しかしここでそれについて話し続けても、きっと答えはでない。

であれば、詭弁であってもこの殺し合いを止め、直接主催に会いに行くのが最優先だ。
それにしても、と翔太郎は思う。
総司の顔つきが自分と会ったときからも、麗奈が暴走した時からも大きく変わっている。

きっと、これからも彼は変わり続けるだろう。
師匠である名護や、仲間である自分たちの助けは、まだ必要かもしれないけど。
彼は、もう決して自分が総司に不安な思いを抱くことはないだろうと、そう思った。

233 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:12:31 ID:BdiVsGB60





放送から少しして。
名護は、テーブルに大きな白紙を広げ、そこに名前を記入していた。

「――何してんだよ、名護さん」

と、そこに現れたのは放送後から妙に口数の少ない真司だ。
彼なりに考え事をしていたようだが、元来より苦手な考え事を一時切り上げてこちらの動きが気になったらしい。

「……これは、今の時点での参加者の詳細をまとめたものだ。後は、一応主催者の情報も少しはまとめているが、いかんせん翔一君に聞いても名前がはっきりしなくてな」

そう言って見せられた紙には、多くの名前が書かれていた。
しかし参加者の欄にはもう22人しかいないことを痛感して、真司の胸はまた痛んだ。
こんなところで考えごとをしている場合ではない、と真司は切り替えて。

「名護さん、俺にもこの表を完成させるの、手伝わせてくれよ」
「もちろんだ。翔太郎君たちにも、手伝ってもらいたい」
「あぁ、構わないぜ、えぇとまずは――」

そうして、彼らはこの場での情報をその表にまとめていった。





「……こんなものだな」

数十分後、そこには現生存者の立派な詳細名簿が完成していた。
以下は、その表に記されている内容である。


――現生存参加者詳細――
一条薫:対主催。警察。照井竜から仮面ライダーアクセルの力を受け継いでいると思われる。麗奈と面識あり。状況から判断するとワームとしての麗奈を見ている可能性もある。

ン・ダグバ・ゼバ:超危険人物。紅音也を殺害。主催のバルバについて知っている可能性あり。翔太郎と面識あり。

津上翔一:対主催。仮面ライダーアギト。首領についての情報を知っている。

葦原涼:対主催(推測)。仮面ライダーギルス。参加時期によっては翔一を敵と認識している可能性あり。

城戸真司:対主催。仮面ライダー龍騎。

浅倉威:超危険人物。仮面ライダー王蛇。木野薫、霧島美穂を殺害(推測)。翔太郎と面識あり。テラーメモリの能力を取り込んでいる可能性あり。(※テラーメモリの能力については別記)

乾巧:対主催。仮面ライダーファイズ。オルフェノクにも変身が可能。名護と面識あり。

三原修二:対主催。一般人。

村上峡児:危険人物。オルフェノク。ファイズ、カイザ、デルタのベルトを狙っている可能性が高い。

橘朔也:対主催。仮面ライダーギャレン。名護と面識あり。首輪を解除できる可能性あり?

相川始:危険人物。仮面ライダーカリス。木場勇治を殺害。ジョーカーアンデッドにも変身が可能。翔太郎と面識あり。

志村純一:不明。

間宮麗奈:対主催。ワーム。ワームとしての間宮麗奈のスタンスは不明。

234 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:12:59 ID:BdiVsGB60

擬態天道総司(便宜上こう記しますが作中では名簿の名前で記されています):対主催。仮面ライダーカブト。剣崎一真、ネガタロス、ゴ・ガドル・バを殺害。ネイティブワームにも変身可能。

野上良太郎:対主催(推測)。仮面ライダー電王。恐らくウラタロスとキンタロスという二体のイマジンが憑いていると思われる。

リュウタロス:対主催。仮面ライダー電王。

紅渡:スタンス不明。仮面ライダーキバ。前回放送よりスコアをあげているので警戒はするべき。参加時期によっては名護を敵と認識している可能性あり。

名護啓介:対主催。仮面ライダーイクサ。

門矢士:対主催(推測)。仮面ライダーディケイド。大ショッカーのことを知っていると思われる。総司と面識あり(士は総司の顔を見ていない)。総司が一真を殺害した場に居合わせ交戦したため敵と認識されている可能性大。

小野寺ユウスケ:対主催。仮面ライダークウガ。名護と面識あり。

左翔太郎:対主催。仮面ライダーW並びに仮面ライダージョーカー。参加者の一人であるフィリップと合流できれば仮面ライダーWに変身できる。

フィリップ:対主催(推測)。仮面ライダーW。同上。首輪を解除できる可能性がある?


※テラーメモリの能力について。
テラーメモリはそれを使用するだけで周囲に恐怖を強制的に植え付けられる能力を持つガイアメモリ。
朝倉威はこれを食ったらしく、専門家の翔太郎でさえ対処出来ない可能性がある。
実際に対峙した翔太郎曰く能力は発動されているらしいが、ドーパントに変身できるかは不明。
※※ガイアメモリについての詳細は別記『各世界の基本的情報』にて記載。


――主催陣営詳細――
神(?):首領。黒い服を着た青年だと思われる。翔一とは面識があり、以前一度倒したこともあるらしいが、詳細は不明である。

ラ・バルバ・デ:大ショッカー最高幹部。首領代行。第二回放送にて首領の言葉を代弁。恐らくはダグバやガドルの仲間だと思われる。

アンノウン三体:第二回放送時ラ・バルバ・デの後ろについていた怪人たち。翔一と交戦経験あり。以前一度倒したが、それぞれ警戒すべき強敵。

ビショップ:大ショッカー幹部。ファンガイア。

三島正人:大ショッカー幹部。第二回放送担当。麗奈によるとネイティブワームである可能性が高い。

キング:大ショッカー幹部。第一回放送担当。あるいは橘、相川であれば何か知っている可能性あり。

死神博士:大ショッカー大幹部。最初の会場にいた老人。


――これより下には、各世界の基本的な情報などをまとめたページが続いていたが、それはこの場では割愛する。
ともかく、総勢22名の参加者についてと、知りうる可能な限りの主催陣営の情報をまとめ終え、名護は大きく息をついた。
その表にそれぞれが目を通しながら、しかし翔一と真司が注目したのはある名前であった。

235 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:13:18 ID:BdiVsGB60

「この浅倉って人、木野さんを殺したかもしれないってどういうことですか?」
「あぁ、東京タワーで戦ったときに紅がアンなんとかとアギなんとかいうグラサンの男を追って倒したって話をしててな。この霧島って人のファムも、浅倉が変身した仮面ライダーの特徴と一致する。城戸の世界の仮面ライダーは戦うのがルールってことも、確か似たようなこと言ってたしな。多分こいつで間違いないはずだぜ」
「浅倉……元々凶悪犯罪者だったけど、やっぱり倒さなきゃ駄目なのか……」

そう言って、三人は沈んだ表情を見せる。
音也の情報によれば、木野はアギトを殺そうとしていたらしい。
自分の知る最初の仲違いしていた頃の彼だったのだろうが、だからといってこんなところで凶悪犯罪者に殺されてしまうなど、許されるはずもなかった。

一方で、真司の表情もまた暗い。
自分とお好み焼きを一緒に食べていた、霧島美穂。
結婚詐欺をしていたり自分のデッキを盗もうとしたりろくな女ではなかったが、浅倉に恨みを抱いたばかりに返り討ちになったのだろうか。

真司は彼女がライダーバトルに参加する詳しい事情など知らないが、それでも彼女は根は悪い奴ではなかったと思う。
そんな存在を簡単に殺し今もなお闘争を求め続けているだろう浅倉への思いは、真司とて決して穏やかなものではなかった。

「――にしても名護さん、本当にいいの?渡って人のこと、自慢の弟子だって言ってたのに、警戒すべきだ、なんて」

その後方で、そんな疑問の声を上げたのは総司だ。
それを受ける名護の表情も、決して明るくはない。

「……無論、俺だって渡君を信じたい。俺の知る渡君ならこんな殺し合いに乗るはずはないが……、有り体に言えば、彼はかなり危うい時期が多かったからな。前回の放送から彼が誰かを殺めてしまったのはランキングから分かっている。ガドルを倒した君のようなケースであれば良いが、そうだとも言い切れないからな……」

放送で一部発表された殺害数ランキング。
世界毎の発表ではあるが、キングが死に、音也は放送からずっと一緒だった翔太郎の証言で殺害を行っていないとなると、唯一の候補は彼となってしまうのだ。
その数は一つではあるものの、もしそれが殺し合いに反するものの命を奪うものであったなら。

総司のように説得を出来る相手だとも思っているが、彼と接触するのは早いほうがいいだろうと、彼はそう思考していた。

(――照井、お前は託せたんだな、一条って刑事に、お前のアクセルを)

一方で、翔太郎はその手にトライアルメモリを握りしめながら名簿の一条薫の名前を見る。
麗奈がこの場で初めてワームに変じる前、照井からアクセルを譲り受けたらしい、一条薫。
照井と同じように刑事であった彼がアクセルを受け継いだという事実には些か驚きもあるが、しかし彼が認めるような立派な刑事だったらしいことは、麗奈から聞いている。

この殺し合いの進行スピードではトライアルを用いた修行は難しいかもしれないが、しかし照井の遺志を継いだ男に、自分が何もしないというのも、些か寂しいものである。
であれば何を彼に出来るのか、と翔太郎が考え込んだところで。
周囲の探索に回していたタツロットたちの為に開けっぴろげにしていた窓から、一つの影が入り込んでくる。

236 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:13:50 ID:BdiVsGB60

「――キバット君か」

それは、より一層深くなった夜の闇に溶け込んでいる黒のコウモリ。
放送前からずっと周囲の参加者を探していただろう彼が戻ってきたと言うことは、と一同の緊張感も高まる。

「――あぁ、お察しの通りだ。東側から参加者がバイクに乗ってやって来ている。しかも名護、お前も知っている参加者だ」
「……渡君か」

その名護の言葉に、キバットはその大きな瞳を閉じることで応対する。
対する名護は、思考する。
どうすれば、一番安全に、かつ彼を説得できる状況を作り出せるのか、と。

数秒考え、周囲を見渡した後、彼は意を決したようにその口を開いた。

「……俺が、一人で行く。彼がどういったスタンスであったにしろ、同じ世界の俺であれば被害を最低限に抑えられる。……皆、その間ここを頼む」

彼のその言葉には、もちろん元の世界からの知り合いである、という意味も含まれていたが、この殺し合いのルールでは同じ世界の参加者を殺す理由がないという意味も含まれていた。
もしも彼が殺し合いに乗っているにしても、考え得る最悪のケース――彼がファンガイアの心に支配されている場合――でない限り、見境なく利すらなく人を殺すような真似はするまい。
であれば、このまま病院に迎え入れ彼らを危険にさらすより、自分が単身で出向くべきだろうと彼は考えたのだ。

そうして翔一からバイクのキーを受け取り、キバットに道案内を頼んだところで、彼は振り返る。
総司も、翔太郎も、未だボロボロであるのは否定しきれない。
しかし、それから離れることを、彼は不思議と不安には思っていなかった。

翔一と真司がいるから、もそうだが、何より半人前の仮面ライダーを名乗っていた翔太郎と、仮面ライダーがなんたるかすら理解していなかった総司の目が、どちらも一人前のそれに変わっていたからだ。
もし今後何かが彼らの身に起こるとしても、決して諦めはしないだろう、と名護は思う。

であれば、そんな存在にずっとついているのではなく、自分がしたいことをする間、彼らに留守を任せるのも、信頼の形ではないか。
と、そこまで思考して、名護は総司が自分をじっと見つめているのに気付く。
一瞬、不安や、未だに自分が見捨てられるのではと怯える瞳かと心配するが、それは杞憂であったようだ。

その瞳は、強かった。
自分の考えたことをしっかりと理解した上で、絶対に帰ってこいと言っているかのようだった。
であれば、そんな弟子に返せるものは、彼には一つしかあるまい。

――絶対に帰ってくる。その代わり、ここを任せたぞ。

深い頷きと共に、瞳だけでそう訴えることだ。
それを受けて、総司は少し笑って、嬉しそうに頷いた。
短い時間ではあったものの、彼も随分と成長したものだ、と名護は嬉しくなり――。

また目頭が熱くなってきたのを感じて、そそくさと病院を後にした。





レンゲルバックルから得られた情報を頼りに、市街地をバイクで進むのは、紅渡――またの名をキング――である。
橋から渡ってすぐの市街地が一面焦土と化しているのを見て、彼はこの場での戦いをライジングアルティメットによるものだと推測。
激しい戦いの後には休養を取るだろうと先ほどと同じく病院を目指した。

前回と違うのは、今回は彼一人だけ、ということだが。
と、そんな最中、突如頭上にオーロラのような光が見えて、彼は思わずバイクを止めた。
ふと時計を見やれば、時間は深夜0時、定時放送の時間であった。

237 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:14:12 ID:BdiVsGB60

『時間だ。これより第二回放送を開始する』

その言葉と共に三島と名乗る男が、放送を開始する。
――多くの名前が、死者として呼ばれていく。
病院で死んだものは、この中に何人含まれているのだろうか、などと今更抱くべきでない思いを抱いたことを恥じつつ、彼は放送に集中する。

死者の名前などその大半は最早単なる雑音だ。
自分の世界が生き残るために必要な犠牲。
呼ばれる名前が多ければ多いほど、自分の世界は勝ちに繋がる。

そう、大事なのはもうたった二つの名前だけ。
自分の知るその二つの名前さえ呼ばれなければ、この放送に意味など――。

――紅音也。

「えっ」

と、自分でも驚くぐらい間抜けな声が出た。
キングとしての威厳などない、ただの息子として、彼は今、父の死を知った。
元の世界ではもう死んでいるとはいえ、ここでもう一度生を受けたというのに、その命は刈り取られてしまった。

――覚悟はしていたつもりだった。
放送前にディケイドが父に会ったと聞いたとき、自分は自然とその死を推測したはずだ。
しかし、話に聞く彼ならば。

或いは世界の破壊者を前にしても生き残るのではないか、とそうどこかで甘えがあった。
それが間違いであったことを自覚しつつ、彼は一層ディケイドへの恨みを膨らませ――。

――園咲冴子。
――鳴海亜樹子。

告げられた二つの名前によって、現実に引き戻された。
鳴海亜樹子。
東京タワーで仮面ライダーの善意を弄ぶような放送を行い、自分とキバットの怒りを買った馬鹿な女。

その名前を聞くだけで嫌悪感が沸くというのに、自分の前で泣いていた彼女がもう死んでしまったという事実に、何か引っかかるものがあるのも事実だった。
そして、園咲冴子。
第一回放送前に自分を庇い死んだはずの彼女の名前が、何故今呼ばれたのだろうか。

もしかすると、彼女は生きていて、第一回放送を終えた後に本当に死んだのだろうか。
であれば自分は、最後まで彼女に騙されていたのか?
それに対し怒りも沸くが、それ以上に生きていたならそれでよかったのにと思い、同時に彼女が本当に死んだのだと告げられたことに対するやるせなさの方が勝った。

別の世界の参加者に今更そんな思いを抱いたことに今一度気を引き締めつつ、彼はそのまま放送に意識を――。

『――失礼。まことに急ですがあなたの今回の出番はここまでです』

そうして突如現れた男に、渡は見覚えがあった。
以前、自分の中のファンガイアの血を目覚めさせたチェックメイトフォーの一員、ビショップ、と言ったか。
あんな存在まで大ショッカーに協力しているのか、と呑気に考えて、しかし彼であれば太牙の障害でもある自分の存在を消すという願いを、嬉々として受け入れるだろうと渡は思った。

238 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:14:28 ID:BdiVsGB60





放送は終わった。
それから以降、市街地という状況では籠城していたり罠を張っている参加者も多いだろうと彼はバイクから降りていた。
放送前に殺したアポロガイストのように、誰しもがバイクを建物の外に止めるほど愚かでもあるまい、と彼は考え、入念に一つ一つの建物を観察していく。

サガークすらも捜索に回しているのだが見つからないところを見ると、やはり病院まで一気に走った方がいいのかもしれない、と渡がそう考えると同時。
彼は、遠くから、エンジンの音が近づいてくるのを感じる。
周囲の捜索にサガークを割いたためにより広い範囲での索敵を怠ったか、と渡は思うが、しかし焦ることもないと思考を切り替えた。

向こうがどんな参加者であれ、ライジングアルティメットについての情報を聞き出し、利用できそうなら利用を、戦闘になるなら戦闘を、と気付かぬ内に好戦的になった思考で考える。
右手にはジャコーダーを握ったまま、彼はバイクのライトで自分が照らされるのすら気にせず、相手を視認、男はゆっくりとそのヘルメットを外して――

「……名護、さん?」

そこに現れた顔に、渡は、またもキングとしての風格を失った。


【二日目 深夜】
【D-2 市街地】

【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW 、ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ、キバットバットⅡ世@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)、ラウズカード(ダイヤの7,8,10,Q)@仮面ライダー剣、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:渡君と話す。殺し合いに乗っていた場合は……。
1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
2:総司君のコーチになる。
【備考】
※時間軸的にもライジングイクサに変身できますが、変身中は消費時間が倍になります。
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしていましたが、翔太郎との情報交換でそういうわけではないことを知りました。
※海堂直也の犠牲に、深い罪悪感を覚えると同時に、海堂の強い正義感に複雑な感情を抱いています。
※剣崎一真を殺したのは擬態天道だと知りました。

239 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:14:57 ID:BdiVsGB60


【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、地の石を得た充足感、精神汚染(極小)、相川始の裏切りへの静かな怒り、ハードボイルダーを運転中
【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、ゼロノスベルト+ゼロノスカード(緑二枚、赤二枚)@仮面ライダー電王 、ハードボイルダー@仮面ライダーW、レンゲルバックル+ラウズカード(クラブA〜10、ハート7〜K)@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×3、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、アームズモンスター(バッシャーマグナム+ドッガハンマー)@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0〜1)、地の石(ひび割れ)@仮面ライダーディケイド、ディスカリバー@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:王として、自らの世界を救う為に戦う。
0:名護さん……?
1:レンゲルバックルから得た情報を元に、もう一人のクウガのところへ行き、ライジングアルティメットにする。
2:何を犠牲にしても、大切な人達を守り抜く。
3:ディケイドの破壊は最低必須条件。次こそは逃がさない。
4:始の裏切りに関しては死を以て償わせる。
4:加賀美の死への強いトラウマ。
5:これからはキングと名乗る。
【備考】
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キングを知りません。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。
※相川始から剣の世界について簡単に知りました(バトルファイトのことは確実に知りましたが、ジョーカーが勝ち残ると剣の世界を滅ぼす存在であることは教えられていません)。
※レンゲルバックルからブレイドキングフォームとクウガアルティメットフォームの激闘の様子を知りました。またそれによってもう一人のクウガ(小野寺ユウスケ)の存在に気づきました。
※地の石にひびが入っています。支配機能自体は死んでいないようですが、どのような影響があるのかは後続の書き手さんにお任せします。





名護がいなくなって数分後。
総司は外が気になって仕方ないようで、そわそわと窓の外を見ていた。
先ほど見送る瞬間は頼もしく見えたが、しかしまだ俗に言う“お留守番”に慣れていない子供のように焦る彼を見て、翔太郎は小さく笑った。

ふとあたりを見渡すと、翔一が必ずその視界に麗奈を入れているのを見つける。
そう言えば彼女のワームへの変身制限がもう解ける頃だ、いつ総司に牙を剥くのかわからなくなったのだから、彼の不安も相当なものだろう。
俺も人ごとじゃいらんねーよな、と翔太郎も感づかれないように彼女を見るが、麗奈は先ほどまでにはなかった漠然とした違和感に、敏感に反応したようで、所在なさげに何度も座り直していた。

放送前には軽々しく口にしたが、しかし彼女への対応は一体どうしたものか、と翔太郎が思考に落ちかけたその時。
キバットが飛び込んできた窓から、またも飛び込んでくる影が二つ。

「たたた、大変でーす!白い服の人が、こっちに向かってまーす!」
「俺様も見たぜ。見た目で判断するべきじゃないとは思うが、奴は……あからさまにやばい」

大慌てで捲し立てるタツロットと、らしくなく懸念を漏らすレイキバットに、一同は顔を見合わせる。
――ダグバだ。
残っている参加者の情報や、恐らく未だこちらのエリアにいるだろうことから踏まえると、その可能性は高い。

この場で自分たちに選べる選択肢は少ない。
バイクという足もなしに、全員でダグバから全力で逃げるか?
駄目だ、ダグバという凶悪な参加者を、これ以上のさばらせておく理由もない。

240 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:15:12 ID:BdiVsGB60

総司も翔一も真司もその思いは同じようで、暗黙の了解としてダグバをここで倒すべきだと彼らは考えていた。

「……どうする、名護さんを待つか?」

高まる緊張の中で、一番に口を開いたのは翔太郎だ。
ダグバの危険性を交戦し、一番味わっている彼が、この事案については仕切るべきだと判断したのだろう。
しかし、その提案に首を振ったのは総司である。

「……いや、名護さんは渡君のことで忙しいはずだし、僕たちだけで対処しなくちゃ」
「嘘だろ!?ダグバってそんなやばい奴と、俺に戦えって言うのか!?」
「ダグバって奴そんなに強いのー?戦ってみたいー」

不安を口に出す三原と、好奇心を見せるリュウタ。
先ほどから口を開かない麗奈も明らかな嫌悪を見せていることなども含めて、絶対にダグバと会わせるわけにはいかないだろう。
であれば、残された手段はあと一つだけ。

「二手に分かれて片方はダグバへの対処、もう片方は三原さんと間宮さんを逃がすことになるだろうな……」

言いつつ、翔太郎の脳内にてざっとしたチーム分けが行われる。
三原と麗奈、双方が安心感を抱いている、という面で彼らにリュウタは不可欠。
しかしそれだけでは麗奈が暴走した時の戦力が不十分、総司がついていっては逆効果なことを考えると真司か翔一かをそこに当てるべきだと思われるが……。

「城戸さん、間宮さんのこと――」
「――翔一、間宮さんについていってやってくれよ」

その思考の中で、候補に挙がった真司が、翔一にそれを頼んだことでその思考を中断する。
言われた翔一も同じ事を言おうとしていたようで、呆気に取られた表情を浮かべた。
それを見て、ようやく一本もらったなとでも言いたげな表情を浮かべつつ、真司は表情を引き締めて。

「俺、やっぱダグバって奴を許せないしさ、何より俺より翔一の方が、間宮さんを守るのには相応しいと思うんだよ」
「城戸さん……」

そう言って、翔一はまだ何かを言いたげだったが、少し考えてそれを飲み込んだようだった。

「――わかりました、俺ずっと待ってますから。ダグバを倒して、皆で、また絶対会いましょう」
「決まってんだろ、だって俺たちは人類の愛と平和を守る仮面ライダー龍騎と――」
「――仮面ライダーアギト、ですからね」

言って、二人はへへ、と笑い合う。
きっと、この二人にとって今の会話は字面以上の意味を持つのだろう。
それは決して翔太郎には理解が及ばないが、彼らの間に深い絆があるのだけははっきりと理解できた。

「――それじゃあ皆さん、どうかご無事で」
「あぁ、お前もな、翔一」

そうして、数分の後、荷物を纏めた翔一らは、去って行った。
渡たちとも、ダグバとも違う方向に。
その先にまた何か危険が待っているかもしれないが、きっと翔一ならうまくやり過ごすだろう。

「さて、俺たちも行くか」
「うん、行こう翔太郎、真司」
「あぁ」

そして、ここに残った三人もまた、先ほどまでの表情とは打って変わって真剣な眼差しをしていた。
紅音也を殺害し、人の命をゲームの材料程度に考えている最悪の生物、未確認。
ダグバがどれほど強大な力を持っていようと、そんな悪に仮面ライダーが屈してはいけない。

三者ともに強い思いを抱いて、彼らはタツロットたちに先導されるままに闇の中を歩いて行った。

241 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:15:29 ID:BdiVsGB60





「バルバ……、君もこのゲゲルに関わってたんだね」

一方で、放送直前にこの焦土の真ん中で目覚めたダグバは、放送を聞いてそう呟いた。
このゲゲルで散った参加者の数などどうでもいい。
ダグバの感覚からすれば、ここまでは自分にとってのゲリザギバスゲゲルだ。

弱い参加者が淘汰され、あのクウガやガドルを倒した仮面ライダーを始めとした強くて自分に恐怖を与えてくれる存在だけが、ここに残っているはずである。
それなら、これからのゲゲルは一層面白くなるに違いない、と彼は不気味に笑って。

ふと、視界の先にこちらに向かってくる三人の男がいることを確認する。
目をこらせば、その内二人は見たことがあり、また自分をそれなりに楽しませてくれたものであった。
前よりも強くなっていればいいが、と思いつつ、彼もまた彼らに向かい歩を進める。

そして数秒後。
お互いの顔が夜の闇の中でもしっかりと視認できる中で、四人は足を止めた。

「――探したぜ、ダグバ。紅の仇、取らせてもらう」

第一回放送の後、戦った帽子の男がそう言って苦々しげにこちらを見据える。
紅というのは彼と同行していた、死んでもなお自分に一撃を浴びせた男であろうか?
彼は面白かった、と思わず笑みを浮かべるが、しかしそれを気にした様子もなく次に口を開いたのはその横の男。

「未確認ってのがなんなのか、俺には正直よくわかんないけど……人の命をゲーム感覚で奪うなんて、許せない。だから……俺がここで止める」

言葉とは裏腹にその顔は苦しそうでもあったが、しかし覚悟は十分なようだ。
と、最後にダグバが目を移したのは、この中で一番興味がある、以前戦えなかった男。

「ガドルは僕が倒した。お前も倒す。……今、ここで!」
「――へぇ、君がガドルを倒したんだ。じゃあ楽しめそうだね。……君こそ今度は、逃げないでね?」
「……?何の話を――」
「変身」

――TURN UP

思わず疑問を吐き出した総司を尻目に、ダグバはその身に鎧を纏う。

「それは……!」

――そのバックルに、総司は見覚えがあった。
以前、剣崎を殺した時、彼が変身に使用しようとしていたものだ。
であれば、これが仮面ライダーブレイドか。

まさかこんなところで自分に牙を剥くとは、やはり自分は許されないのか、と一瞬考えて。

(ううん、違う。ブレイドは、こんな奴の為にあるんじゃない。きっと、剣崎は僕たちにこれを取り返してくれ、って言いたいんだ……!)

剣崎はその力が、こんな悪魔に使われてまで自分に復讐を望むような男ではないとその思考をやめる。
むしろきっと、ここでダグバがこの鎧を纏うのは、ブレイドを仮面ライダーの元に返して欲しいという、剣崎の想いが繋がったものなのだろう。
であれば、自分に悩んでいる時間など、あるはずもないではないか。

――JOKER

翔太郎の持つジョーカーメモリから、ガイアウィスパーの声が響く。
それと同時に自分も上空より飛来したカブトゼクターを手に取り、真司は病院から持ち出してきた花瓶にデッキを翳す。
それと同時Vバックルが現れたのを受けて、翔太郎もまた、メモリをドライバーに装填した。

「「「変身!!!」」」

――JOKER
――HENSHIN

同時に叫んだ男たちの声に応えるように、その身に鎧が纏われていく。
龍騎、カブトの世界をそれぞれ代表する二人の仮面ライダーと、Wの世界を代表する片割れである、仮面ライダージョーカー。
相対するブレイドもまた世界を代表する仮面ライダーであることを考えれば、この場の光景は壮観であった。

「――っしゃあ!」

気合いを入れるように握り拳を作った龍騎に対し、ブレイドとカブトはその手に得物を構えて。

「――さぁ、お前の罪を数えろ!」

ジョーカーのその言葉が、開戦の合図となった。

242 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:15:46 ID:BdiVsGB60


【二日目 深夜】
【D-1 市街地】

【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 霧島とお好み焼を食べた後
【状態】強い決意、翔一への信頼、麗奈への心配、仮面ライダー龍騎に変身中
【装備】龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、優衣のてるてる坊主@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの命を守る為に戦う。
0:ダグバを倒す。
1:翔一たちが少し心配。
2:この近くで起こったらしい戦闘について詳しく知りたい。
3:黒い龍騎、それってもしかして……。
【備考】
※支給品のトランプを使えるライダーが居る事に気付きました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解していますが、翔太郎からリュウガの話を聞き混乱しています。
※アギトの世界についての基本的な情報を知りました。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
※再変身までの時間制限を大まかに二時間程度と把握しました(正確な時間は分かっていません)
※天道総司の提案したE-5エリアでの再合流案を名護から伝えられました 。


【左翔太郎@仮面ライダーW】
【時間軸】本編終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、仮面ライダージョーカーに変身中
【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、トライアルメモリ@仮面ライダーW、首輪(木場)、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW、『長いお別れ』ほかフィリップ・マーロウの小説@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。
0:ダグバを倒す。
1:名護と総司、仲間たちと共に戦う。 今度こそこの仲間達を護り抜く。
2:出来れば相川始と協力したい。
3:浅倉、ダグバを絶対に倒す。
4:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。
5:乾巧に木場の死を知らせる。ただし村上は警戒。
7:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。
8:もし、照井からアクセルを受け継いだ者がいるなら、特訓してトライアルのマキシマムを使えるようにさせる。
9:ジョーカーアンデッド、か……。
【備考】
※555の世界について、木場の主観による詳細を知りました。
※オルフェノクはドーパントに近いものだと思っていました (人類が直接変貌したものだと思っていなかった)が、名護達との情報交換で認識の誤りに気づきました。
※ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。
※また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※総司(擬態天道)の過去、及びにカブトの世界についての情報を知りました。ただし、総司が剣崎一真を殺してしまったことはまだ知りません。

243 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:16:02 ID:BdiVsGB60


【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません)
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、仮面ライダーカブトに変身中
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+カブトゼクター@仮面ライダーカブト、ハイパーゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王
【道具】支給品一式×2、753Tシャツセット@仮面ライダーキバ、ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
基本行動方針:天の道を継ぎ、正義の仮面ライダーとして生きる。
0:ダグバを倒す。
1:剣崎と海堂、天道の分まで生きる。
2:名護や翔太郎達、仲間と共に生き残る。
3:間宮麗奈が心配。
4;放送のあの人(三島)はネイティブ……?
【備考】
※天の道を継ぎ、総てを司る男として生きる為、天道総司の名を借りて戦って行くつもりです。
※参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。
※カブトゼクターとハイパーゼクターに天道総司を継ぐ所有者として認められました。
※タツロットはザンバットソードを収納しています。


【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後以降
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、もう一人のクウガ、浅倉との戦いに満足、ガドルを殺した強者への期待、仮面ライダーブレイドに変身中
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣+ラウズカード(スペードA〜13)+ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
【道具】なし
【思考・状況】
0:ゲゲル(殺し合い)を続ける。
1:恐怖をもっと味わいたい。楽しみたい。
2:もう1人のクウガとの戦いを、また楽しみたい。
3:ガドルを倒したリントの戦士達が恐怖を齎してくれる事を期待。
4:またロイヤルストレートフラッシュの輝きが見たい。
5:バルバもこのゲゲルに関わってるんだ……。
【備考】
※浅倉はテラーを取り込んだのではなく、テラーメモリを持っているのだと思っています。
※ダグバのベルトの破片を取り込んだことで強化しました。外見の変化はあるかやどの程度の強化なのか、また更に進化する可能性はあるのかどうかは後続の書き手さんにお任せします。
※怪人体は強化されましたが、それが生身に影響するのか、また変身時間はどうなっているのかということなども後続の書き手さんに任せます。
※制限によって、超自然発火能力の範囲が狭くなっています。
※変身時間の制限をある程度把握しました。
※超自然発火を受けた時に身に着けていたデイパックを焼かれたので、基本支給品一式は失われました。
※キングフォーム、及び強化された自身の力に大いに満足しました。
※仮面ライダーブレイドキングフォームに変身したことで、十三体のアンデッドとの融合が始まっています。完全なジョーカー化はしていませんが、融合はかなり進んでいます。今後どうなるのか具体的には後続の書き手さんにお任せします。
※一条とキバットのことは死んだと思っています。
※擬態天道を天道総司と誤認しています。

244 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:16:26 ID:BdiVsGB60





市街地でダグバと仮面ライダーたちの戦いが始まったのと同じ頃。
安全な場所を求めて移動している翔一の顔は、決して晴れやかではなかった。
自分がここにいなければいけない理由はわかっているつもりだ。

しかし、それと真司たちを超危険人物の下にみすみす向かわせてしまったことに対し想うことがないということは、全くの別問題なのである。
ふと横を見やれば、リュウタが上機嫌で麗奈の横を陣取っている。
最初はダグバへの執着を隠しきれないようだったが、麗奈を守れるのはリュウタだけだ、と説得したところ、すぐにダグバのことを忘れたようだった。

扱いやすいなぁとも思う反面、この無邪気な怪人の好意を受けている麗奈の中のワームをどうにかしなくてはいけないという懸念も捨てきれるものでもない。
翔一自身はどうにかなるだろうとも思うのだが、三原やリュウタを預かる手前、ずっと自分らしく何も考えず、ではいられないのも、また事実であった。
キバットがいてくれたらなぁとぼんやり考える中、ふと寒気が身を撫でる。

夜だし冷え込むのかな、などと思うが、それだけでは説明の聞かない何か嫌な予感が、徐々に近づいてくるのを、確かに自覚せずにはいられなかった。
何か似たようなことを、先ほど聞いたような……と考えて。

「翔一!あれ見て!」

そうして顔を見上げれば、そこにいたのは上裸の男。
その男は何か近寄りがたい笑みを浮かべているのもそうだが、何故だろう、人付き合いには特に不自由したことのない翔一を以てして、関わり合いになりたくない、と感じさせる独特の雰囲気を放っていた。
しかしいつまでも不気味がっていては相手にも失礼か、と翔一は持ち前の怖いもの知らずな性格で一歩足を踏み出し――。

「お前ら、仮面ライダーか?なら俺と戦え」

その言葉に、彼と、そして発せられる嫌な雰囲気の正体を察した。

「お前……まさか浅倉!?」
「ほう、俺の名前を知ってるって事は、城戸か秋山から聞いたか……まぁ、誰でもいい。それより俺と戦え」

言いながら、彼は懐から白いカードデッキを取り出す。
それは、翔太郎も戦ったというファムのもの。
――霧島という女性のことを話す真司は、どこか嬉しそうだった。

例えるならそう、小学校で初めて気になる子が出来たのに、その子が意地悪ばかりしてくる、ということを話す子供のような。
相手を仕方のない奴だ、と言うくせに、どこか頬が緩んでいる、あの感じだ。
それを聞いて翔一も麗奈の時ほど確信を持てないながらに、きっと真司が美穂に言葉ほど敵意を抱いていないことを見抜いていた。

245 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:16:44 ID:BdiVsGB60

いや、あるいは敵意とは真逆の感情すら――。
――これ以上は無粋か。
ともかく、そんな相手を容赦なく殺し、木野を殺し、今やガイアメモリを取り込んだ彼を、翔一は人間とはどうしても思えず。

未確認であったゴオマや、アンノウンに向けるそれを、浅倉に向けていた。

「間宮さん、皆下がってて。俺がこいつを倒す。木野さんの、霧島さんのためにも!」
「木野?……あぁ、あのグラサンの男か。良い殴り心地だったぜ、イライラが少しは晴れた」
「――変身!」

浅倉の挑発を聞くこともなく、翔一は叫ぶ。
瞬間光が辺りを包んだかと思えば、次の瞬間そこにいたのは最早生身の人間ではなく。
人間の無限の可能性を象徴する仮面ライダー、アギトであった。

その姿を見て、浅倉も満足げに笑って――。

「――変身!」

その腰に巻き付けられたVバックルに、白のカードデッキを叩き込んだ。


【二日目 深夜】
【E-2 焦土】

【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終了後
【状態】強い決意、真司への信頼、麗奈への心配、未来への希望 、恐怖(小)、仮面ライダーアギトに変身中
【装備】なし
【道具】支給品一式、コックコート@仮面ライダーアギト、ふうと君キーホルダー@仮面ライダーW、医療箱@現実
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの居場所を守る為に戦う。
0:浅倉を倒す。
1:ダグバと戦っている皆や、名護さんが心配。
2:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触。
3:木野さんと北条さん、小沢さんの分まで生きて、自分達でみんなの居場所を守ってみせる。
4:もう一人の間宮さん(ウカワームの人格)に人を襲わせないようにする。
5:南のエリアで起こったらしき戦闘、ダグバへの警戒。
6:名護と他二人の体調が心配 。
【備考】
※ふうと君キーホルダーはデイバッグに取り付けられています。
※医療箱の中には、飲み薬、塗り薬、抗生物質、包帯、消毒薬、ギブスと様々な道具が入っています。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
※再変身までの時間制限を大まかに二時間程度と把握しました(正確な時間は分かっていません)
※天道総司の提案したE-5エリアでの再合流案を名護から伝えられました
※今持っている医療箱は病院で纏めていた物ではなく、第一回放送前から持っていた物です。

246 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:17:04 ID:BdiVsGB60


【間宮麗奈@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第40話終了後
【状態】 他人に拒絶されること及びもう一人の自分が人を傷つける可能性への恐怖、翔一達の言葉に希望、恐怖(中)
【装備】なし
【道具】支給品一式、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、ドレイクグリップ@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
0:何か……怖い……。
1:自分に出来るだけのことをやってみたい。
2:もう一人の自分が誰かを傷つけないように何とかする。
3:……それがうまく行かない時、誰かに自分を止めて貰えるようにする。
4:照井が死んだのは悲しい。一条は無事? どこへ行ったのか知りたい。
【備考】
※『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると、推測しています。
※生前の記憶を取り戻しました。ワームの方の人格はまだ強く表には出て来ませんが、それがいつまで続くのか、またワームの人格が何をどう考えているのか、具体的には後続の書き手さんにお任せします。


【三原修二@仮面ライダー555】
【時間軸】初めてデルタに変身する以前
【状態】強い恐怖心
【装備】デルタドライバー、デルタフォン、デルタムーバー@仮面ライダー555
【道具】草加雅人の描いた絵@仮面ライダー555
0:目の前の浅倉への恐怖。
1:巨大な火柱、閃光と轟音を目撃し強く恐怖を抱く。逃げ出したい。
2:巧、良太郎と合流したい。村上、浅倉を警戒。
3:オルフェノク等の中にも信用出来る者はいるのか?
4:戦いたくないが、とにかくやれるだけのことはやりたい。けど……
5:リュウタロスの信頼を裏切ったままは嫌だ、けど……
6:間宮麗奈を信じてみたい。
【備考】
※リュウタロスに憑依されていても変身カウントは三原自身のものです。
※同一世界の仲間達であっても異なる時間軸から連れて来られている可能性に気付きました。同時に後の時間軸において自分がデルタギアを使っている可能性に気付きました。
※巧がオルフェノクであると知ったもののある程度信用しています。


【リュウタロス@仮面ライダー電王】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(小)、ダメージ(中)、恐怖(小)
【装備】デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王、リュウボルバー@仮面ライダー電王
【道具】支給品一式、ファイズブラスター@仮面ライダー555、デンカメンソード@仮面ライダー電王、 ケータロス@仮面ライダー電王
0;何かこいつ(浅倉)やだ。
1:良太郎に会いたい
2:麗奈はぼくが守る!
3:大ショッカーは倒す。
4:モモタロスの分まで頑張る。
5:修二が変われるようにぼくが支えないと
【備考】
※人間への憑依は可能ですが対象に拒否されると強制的に追い出されます。
※自身のイマジンとしての全力発揮も同様に制限されていることに何となく気づきました。

247 対峙 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:17:27 ID:BdiVsGB60


【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版 死亡後
【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、満足感、体の各所に火傷(治癒中)、仮面ライダーファムに変身中。
【装備】ライダーブレス(ヘラクス)@劇場版仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE、カードデッキ(ファム)@仮面ライダー龍騎、鉄パイプ@現実、ランスバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE、
【道具】支給品一式×3、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎、大ショッカー製の拡声器@現実
【思考・状況】
0:取りあえず目の前の仮面ライダー(アギト)でイライラを晴らす。
1:あのガキ(ダグバ)は次会ったら殺す。
2:イライラを晴らすべく仮面ライダーと戦う。
3:特に黒い龍騎(リュウガ)は自分で倒す。
4:殴るか殴られるかしてないと落ち着かない、故に誰でも良いから戦いたい。
【備考】
※超自然発火能力を受けたことにより、デイパックが焼けた可能性があり、そのまま走ったので何かおとした可能性があります。 また、おとした場合には何をどこに落したのかは後続の書き手さんにお任せします。
※カードデッキ(王蛇)@仮面ライダー龍騎が破壊されました。また契約モンスターの3体も破壊されました。
※テラーメモリを美味しく食べた事により、テラー・ドーパントに変身出来るようになりました。またそれによる疲労はありません。
※ヘラクスゼクターに認められました。
※変身制限、及びモンスター召喚制限についてほぼ詳細に気づきました。
※ドーパント化した直後に睡眠したことによってさらにテラーの力を定着させ、強化しました(強化されたのはドーパント状態の能力ではなく、非ドーパント状態で働く周囲へのテラーの影響具合、治癒能力、身体能力です)。今後も強化が続くかどうか、また首輪による制限の具合は後続の書き手さんにお任せします。


【D-1病院組全体備考】
変身制限に関して、完全に把握しました。
第二回放送時点での生存者の詳細について、志村純一のもの以外把握しました。
参加している全ての世界についての大まかな情報を把握しました。

248 ◆.ji0E9MT9g :2018/02/17(土) 11:20:36 ID:BdiVsGB60
以上で投下終了です。
ご意見ご感想、ご指摘などあれば是非ともよろしくお願いします。
また、3月になるまで投下できないと思いますが、その後はまた投下できると思うのでよろしくお願いします。

249 名無しさん :2018/02/17(土) 19:45:11 ID:3KLB4YV.0
投下乙です!
それぞれの因縁となる相手が巡り会い、これから大規模の戦いが起こりそうですね!
翔一くんは浅倉と、総司や翔太郎はダグバとそれぞれ深い因縁がありますし。そして名護さんは渡を説得できるのかどうか?
そしてダグバ戦は何気に主人公ライダーが4人も集まっているという絵が、熱いのですけど凄く複雑な気分になります。変身しているのはダグバなので。

250 名無しさん :2018/02/17(土) 22:55:05 ID:gkvi6rzM0
投下乙です。
偶然にもほぼ同時に現れてしまったマーダーを追い、それぞれ分散する対主催チーム。
主人公格も多い中で果たして誰がどう活躍し、そして誰かが脱落してしまうのか。
特に注目なのは同世界同士での話になる渡と名護さん。
考えてみればまだ第二回放送を過ぎたばかりとは思えないくらいクライマックスな展開。
次以降の予約はどれも戦闘話になりそうで楽しみですね。

251 名無しさん :2018/02/23(金) 03:53:53 ID:InpOVpx60
投下乙です。
終盤に向けて加速して来ましたね。

252 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/02(金) 23:30:46 ID:vJUEDXCQ0
皆様、お久しぶりです、こんばんは。
さて、今回こうして顔を出したのは、この2週間ほどずっと悩んでいたことを皆様にご相談させていただこうと思ったためです。
それは拙作『対峙』における、真司くんと翔一くんの場所についてでございます。

今後の展開を構想するに至って、今のままでも特に不備はないのですが、個人的に「二人を入れ替えた方が面白いのでは?」という考えが生まれてしまいまして、それを修正していいものか否か皆様にお尋ねしたい次第でございます。
もちろん現在の展開をリレーしようと構想を繰り広げてらっしゃった方がいましたら完全な裏切りになってしまいますし、本来はこういった修正を避けるべきだとは思うのですが、もしお許しいただけるようでしたら修正を受け入れていただけると幸いです。

また、修正案を見てから判断したいという声もあると思いますので、したらばの修正用スレに迅速に修正案を投下しますので、こちらのスレでもあちらのスレでも可否を意見していただけたらなと思います。
展開の強引さ、指摘などはさることながら、純粋に修正前の方が面白かったなどの意見でも参考にしたいと思いますのでお気軽にご意見くださいませ。

253 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/03(土) 00:51:52 ID:UG/8aeEY0
したらばの方に上記の修正案を投下しましたのでご確認、また何かございましたらご意見いただけるとありがたいです。

254 名無しさん :2018/03/03(土) 01:18:49 ID:9wTpiw7c0
まずは言うタイミングを逸していたので投下乙と感想を
情報の整理とそれに関連した振り返りが丁寧に描写されていて非常に読みやすかったです
ダグバと浅倉、この二箇所で同時に起こる戦いで今後のパワーバランスも大きく変わりますし、バトロワで言う杉村vs桐山の如き一大決戦となりそうで楽しみです

さて修正についてですが、個人的には修正するなとは思いませんが、その場合は当該話の修正の可否について反対意見があるか確認と合意を得るためある程度の期間を置いたほうがよろしいかと思います
一週間後である9日までに特段の反対意見が無ければ、修正話に差し替えても問題は無いと判断するに足ると考えます

255 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/03(土) 01:24:49 ID:UG/8aeEY0
なるほど、確かにご意見の通りかもしれません。
長い期間該当パートを腐らせておくのもいけないかと思い期間を狭めすぎました。
では別段反対意見がないようであれば9日までの期間で判断させていただこうと思います。

256 名無しさん :2018/03/03(土) 01:55:20 ID:nnCjitik0
折角続き書ける状態になったみたいだし、別に一週間もいらないと思う
丁度土日だし、三日間だけ待って6日とか7日あたりまでの返答でいいんじゃない?

257 名無しさん :2018/03/03(土) 02:01:18 ID:Hf.IQK120
そこは無名の意見よりも書き手さんの意見を尊重しましょうよ

258 名無しさん :2018/03/03(土) 05:17:04 ID:B/Kdgo3M0
個人的に自分も気になっていたし入れ替えた方が双方ともに因縁の対決にもなるから面白くなると思う。

259 ◆LuuKRM2PEg :2018/03/03(土) 10:27:24 ID:f8rCT9NI0
修正投下乙です。
現時点では特にリレーされた訳ではありませんし、位置を入れ替える形で修正に取りかかっても大丈夫だと考えます。
そしてこちらの修正の形も、ロワ内だけでなく原作での因縁も丁寧に拾っていると感じたのでとても素敵でした。
日程に関してもそこまで必要ないですし、短くて24時間・長くても今週の日曜までが妥当だと思います。

260 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/03(土) 16:48:10 ID:f1jOscYM0
お久しぶりです。
◆.ji0E9MT9g氏、本投下および修正版の執筆、お疲れ様です。
遅れながらの感想になってしまいますが、遂に判明した首領との因縁を昔蹴っ飛ばしたからそんな気負わなくて良い、なんて言っちゃえる翔一くんがとてもらしくて頼もしいですね。
そして遂に訪れた渡と名護さんの遭遇に、それぞれダグバや浅倉と遭遇する仮面ライダー龍騎チームと仮面ライダーアギトチーム。因縁深い強マーダーとの決戦が楽しみです。

さて、修正案ですが、本投下と合わせてどちらもそれぞれの因縁からのやり取りが面白く、どちらかを選ばなければならないとすると惜しい気持ちもありますが、逆にいえばどちらの形でも不備はなく現状予約も入っていないなら、個人的には修正されても問題ないかと存じます。

ただ、本投下版からのリレーを既に執筆中である方がいらっしゃる可能性も考えますと、一週間は言い過ぎでも明日いっぱいまでは様子を見た方が良いかな、と考えております。ご一考頂ければ幸いです。

261 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/03(土) 16:58:58 ID:UG/8aeEY0
◆LuuKRM2PEg氏、◆cJ9Rh6ekv氏、ご返答と拙作への感想ありがとうございます。
お二方がそう仰ってくださるのであれば、>>255での意見を撤回するようで気が引けますが明日いっぱいまで意見を伺う形にしようと思います。
もしまた何かご意見がございましたらお願いいたします。

262 名無しさん :2018/03/04(日) 23:23:51 ID:0BZNXmaQ0
合意も取れましたしもはや修正話に差し替えることに問題は無いと考えます
氏のより一層のご活躍を心待ちにしております

263 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/05(月) 00:20:25 ID:wwEgGQUo0
皆様、たくさんのご意見ありがとうございました。
意見を求める期間が終わりましたのでwikiにて拙作『対峙』の修正を行いましたことをご報告いたします。
さて、皆様に煩わしい話を聞かせてしまった代わり……と言っては何ですが予約をしましたので投下まで少々お待ちくださいませ。

264 名無しさん :2018/03/05(月) 06:08:27 ID:Fxyk9Hio0
お疲れ様でした。投下をお待ちしております。

265 名無しさん :2018/03/05(月) 07:01:00 ID:JtMfvykY0
修正および予約お疲れ様です。そして予約の方も凄いメンバーになっているので、何やら一波乱が起こりそうで胸がドキドキします……


ttp://or2.mobi/data/img/196444.jpg
そして◆.ji0E9MT9g 氏が執筆した『悲しみの果てに待つものは何か』における涼のキックホッパーへの変身シーンをイラストにしてみました。
矢車さんや乃木の死に怒りを燃やしつつ、それでいて所長を止めようとする決意が微塵にも揺れなかった彼の姿が印象深かったので。

266 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:50:31 ID:1mUuHQx20
>>265さん、支援絵ありがとうございます!
自分がこうしたものを形にしていただくのが初めてのことなので、とても嬉しいです。
自分も話を考える中で脳内に思い描いているはずなのですが、改めて絵として表現されると葦原さんはやっぱり格好良いなと思いますね。
この支援絵を糧にしつつ、今後も頑張って行こうと思います、本当にありがとうございました。

さて、それはそれとして今回予約分を投下したいと思います。

267 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:50:56 ID:1mUuHQx20


「君は……一体何者なんだい?」

D―5エリアの平原にて集った四人の男。
幾らか続いた沈黙の後、最初にそれを破ったのは眼鏡をした青年であった。
それを発言したのは野上良太郎、より正確に言えばそれに憑依するウラタロスである。

「……言ったろ、俺の名前は門矢士――」
「――すっとぼけないでよ、そういう事を言ってるんじゃないって、わかるでしょ?」

言った彼の言葉は、少し鋭かった。
未知の存在に何故か一方的に自分を知られている上に話を意図的に混乱させられているのだから、その苛立ちも当然だろう。
それを受けて、士と名乗った男は背に負った男を一瞥してから、何かを観念したかのようにため息を一つついて、それから言葉を吐き出した。

「……俺は、色んな世界を通りすがっててな、お前のことがわかったのは、その中で『電王の世界』にも通りすがったことがあるって、それだけのことだ」
「……納得すると思う?そんな説明で」
「まぁ、そういうだろうな。だが嘘好きなお前なら俺が嘘を言ってるかどうか位わかるだろ?」
「……」

言われて、ウラタロスは思考する。
確かに、嘘はついていない。
志村純一のそれのように、嘘をついている気配すらない。

であれば、やはりこの男のいうことは正しく、様々な世界を渡り歩く中で平行世界の自分、あるいは未来の自分と出会ったことがあるということか。
あり得ない、などと一瞬思うが、自分たちが成してきた時の運行を守る戦いと、常識外れの時をかける列車のことを思い出して、それをやめる。
自分が嘘好きな性格であることまであの二人は言わないだろうし、どうやら彼の言うことは信じても良さそうだ、とそう考えて。

「わかったよ、門矢さん、僕は君のいうことを信じ――」
「言っとくが、俺はお前らをまだ信用してないぞ」

しかし得られた返答は、未だ敵意に満ちたもの。
それに困惑を隠しきれず、ウラタロスは眉を潜める。
自分のことを知っていると言ってきたというのに、信用が出来ない?

「……悪いな、ただこの場で会った男からお前らが殺し合いに乗ってるって聞いたんでな。それを確認するまではお前らを信用するわけにもいかない」
「……なるほどね」

言われて、ウラタロスは全てを把握する。
自分たちが殺し合いに乗っていると悪評をまくことに利益がある存在など、一人しかいない。

「志村純一、ですか」

思わずその憎々しい笑顔を思い浮かべた瞬間、彼の名前を横にいる村上が呟く。
全く厄介なことをしてくれるものだ、という思いももちろんあるが、その名前を口にした村上の殺気のほうが、今の自分にとってはよほど問題であった。
ともかく、村上の言葉に対し深く頷く士はしかし、まだ自分たちを見定めるような表情を浮かべていた。

それを見て、ウラタロスは未だ彼はどちらに対しても確信を持っていないに違いないと思考する。
つまり、自分たちと志村、どちらが殺し合いに乗っているのか、未だ彼も見極めの最中だ、ということ。
なれば、自分がその疑いを晴らすしかないだろう、とそう一歩前に出て。

「大方君は、志村純一から、僕たちが東京タワ―を倒壊させて、天美あきらちゃんと園咲冴子さんを殺した、とでも言われたんでしょ?」
「……あぁ」

だろうな、と苦笑いしつつ、ウラタロスは続ける。

268 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:51:15 ID:1mUuHQx20

「でもそれは僕たちがやったんじゃない、志村純一がやったんだよ」
「……証拠は?志村がやったって証拠を出してもらわなきゃ、信用できないな」
「志村純一がやったって証拠は出せないけど、僕がやってないって証拠なら出せるよ」
「どんな?」
「――僕は女の子を傷つけられない、それこそ、絶対にね」

言って、ウラタロスは眼鏡をくいっとあげる。
不敵に笑った彼を村上は怪訝そうに振り返るが、しかし士はその言葉に何かを思案するように頷いて、しかし視線は鋭いままであった。

「……そんな言い分がここで通用するとでも思うか?」
「例え異世界でも、僕を知ってるならこれで納得してもらえると思ったけど?」

そう言って互いに、不敵に笑う。
ウラタロスにとっては人を殺害することももちろんだが、中でも女性を殺すのなど論外であった。
別の世界であるとはいえ自分と会ったというのなら、女性の一人や二人ナンパするところを見ていてもおかしくはあるまい。

そう考えての発言だったが、士は未だに疑いの目を向けているようだった。
であれば電王としての活躍を述べようかとも思ったが、しかしそれでは志村が表面上の“正義の味方”っぷりを語るのと、全く一緒だ。
あんな胡散臭い詐欺師と一緒にされるわけにはいかない、とウラタロスは半ば意地になっていた。

ともかくこれで疑いは晴れるまでもう一歩か、とウラタロスはもう一度口を開こうとして。
士がその視線を自分から外すのを見て、それをやめた。

「お前の言い分はわかった。だが村上、お前はどうだ?こいつから散々お前の悪行は聞いてるんでな、納得のいく説明をしてもらうぜ」

次いで疑いの目を向けられたのは同行者である村上峡児。
本人も話しておりここに来てからも幾つかいざこざがあったこともあり予想はしていたが、元の世界でも中々の問題児だったようである。
今は気絶している青年――確か乾巧――は村上の話では大ショッカ―打倒の上で貴重な戦力たり得ると聞いていたが、やはり敵対関係にあったとみて間違いないようだ。

「僕はここに来てからほぼずっと彼と一緒にいたよ。前回の放送で彼の世界は殺害数ランキングにも乗ってないわけだし、彼も白ってことじゃ、満足してもらえないかな?」
「無理だな。そもそも俺はまだお前のことも完全に信用したわけじゃない。ましてオルフェノクを使って人々を襲わせてる企業のトップなんて、尚更、な」

その言葉を聞いて、ウラタロスは村上を一瞥する。
とある大企業、スマ―トブレインのトップだとは聞いていたが、まさかそんなことをやらせていたとは。
この男の言葉をどこまで信用するべきかどうか、もう一度考えるべきか、と考えるウラタロスを尻目に、村上は観念したかのように少し笑った。

「なるほど、確かに乾さんのお仲間であれば、私を敵視するのも当然ですね。ですが貴方が野上さんのことも信頼していない今、私は、私を信用してもらうための根拠を何一つ持ち合わせていません」
「つまり……自分の潔白を証明する気はないってことか?」
「そうとっていただいても結構」

にべもなく吐き捨てた村上に、思わずウラタロスは懐疑の目を向ける。
自分たちを陥れ利用した志村の策略をむしろ受け入れるような態度を取っては、この閉鎖空間で死を迎えるのも時間の問題ではないか。
目前の士と名乗った男も同じ思考に至ったようで、困惑した表情を浮かべていた。

269 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:51:31 ID:1mUuHQx20

「――そんな奴と話すことねぇぞ、門矢」

そうして彼がまたその口を開こうとしたそのとき、今までなかった声が一つ割り込んでくる。
一体誰か、と思考するが、瞬間その疑問は氷解する。

「巧、お前、もう大丈夫なのか」
「あぁ、迷惑かけて悪ぃな」

士の背中より礼と共に男――確か乾巧――が降り、一人で立ったため。
彼の眼差しは鋭く、士のそれに輪をかけて自分たちに突き刺さるようであった。

「村上、野上。てめぇらの殺した冴子とあきらの仇、俺が取らせてもらうぜ」

言いながら巧はその肌に異形の影を浮かばせる。
しかし瞬間、彼の激しい呼吸と共にそれは失せた。
先ほど自分にも起こった変身制限の類いか、と思うも、彼の表情に幾らかの疑問を残しつつ、ウラタロスはまた彼らに交渉を投げかけようとして。

「……待ってください。話し合いにしろ、戦いにしろ、今はここから離れるべきでしょう。あとものの数分でこのエリアは禁止エリアになるはずだ」

村上に、それを遮られる。
ふと時計を見やれば、時間は22時50分を回っていた。
今自分たちがいるところをD-5エリアと仮定すれば、なるほどここはそのまま禁止エリアになるだろう。

目前の二人も村上への敵意を隠せないながらも首輪の爆発で死ぬのは不本意なようで、ゆっくりと移動を開始した。
それを横目で見やりつつ村上に合わせウラタロスもまた、彼らと同じ方向に足を進めた。





「さて、いい加減教えていただきましょうか野上さん、いえ、ウラタロスさん」
「……何をかな?村上さん」
「とぼけないでいただきたい。――ウラタロス。キンタロス。ジーク。それらの名前の意味と、野上良太郎さんとの関係を、ですよ」

やはりか、とウラタロスは眉を潜める。
先ほど士との話の中で自分がウラタロスであることを自白したのだから、こうした追求は予想の範囲内だった。
いや、むしろ相手から追求されてようやく明かした真実なのだから、この程度の口調での追求であることを幸いに思うべきか。

今更何かを秘密にしても恐らくは士という男に確認を取れてしまうし、もしそうした嘘が見破られれば、ただでさえ危うい自分の信頼は地に落ち、志村に敗北することになる。
どころか村上と士、巧を相手取って戦う羽目にすらなりかねないのだから、これ以上は幾ら自分でも嘘をついている場合でもないだろうとウラタロスはため息をついて。

「わかったよ、村上さん。今度こそ全部、包み隠さず教えるよ、僕の、僕らの世界の情報と、何より良太郎、そして僕とキンちゃんについて、ね」

そうして、ウラタロスは気合いを入れるかのように眼鏡を掛け直した。

270 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:51:51 ID:1mUuHQx20





「――つまり眼鏡をかけている時がウラタロス、和服を着ている時がキンタロス、そしてタワーの時のあの彼が本来の“野上良太郎”、ということですか」
「そういうこと。あとついでに言っておくとジークは今良太郎の中にはいないよ。もしかしたらこの場には何らかの形でいるかもしれないけどね」

ご丁寧に聞かれてもいないのにジークという存在が自分の中にいないことすら交えて、ウラタロスは村上に全てを告白する。
これ以上彼に自分に対する不信感を抱かれるわけにもいかなかったし、何より志村という男に騙され陥れられそうになっているという現状で、彼と協力する意味は大きい。
何より無益な嘘で善良な仮面ライダーに見える士や巧に敵として認識されては、自分の嘘が良太郎を傷つけることになってしまう。

それでは、自分の嘘で誰も傷つけない、というモットーを持つ自分の流儀に反する。
それだけは、絶対に避けなくてはならないことだった。

「いやはや、それで納得しましたよ。妙に勘の鋭い時があるかと思えば青二才になったりと、掴みようのない性格だとばかり思っていましたが、実際に複数の人格が存在していたとは」

思案に落ちたウラタロスを引き戻すのは、心底納得した、という様子の村上であった。
それに対し訝しげな目を向けるも、しかしそれを気にもせず彼は続ける。

「正直、あなたを信用が値するのかどうかずっと悩んでいたのは、そこでした。――結論としては、私はウラタロスさん、三人の内、貴方だけは信用してもいいと感じている」
「……へぇ」

そりゃどうも、と返しながら、ウラタロスは語調が低くなるのを抑えられなかった。
先ほどまでと変わらず彼をむやみに敵に回すことも出来ないのは事実だが、彼の言っていることは裏を返せば良太郎やキンタロスは彼のお目金に適う人物ではないと言うこと。
更に言えば――巧の言葉を信じるのであれば――悪の企業の社長である彼に、自分は気に入られたと言うことになる。

元々そういった仲間も少なくはなかったし、そうした輩として考えられるのも慣れているが、嫌悪感は否めなかった。
僕もぬるま湯に浸かりすぎたかな、などと内心自嘲するが、自分の横を歩く村上が唐突に足を止めたことでそれを切り上げる。

「――時刻が23時を回りました。我々の首輪が爆発しないところを見ると、どうやら禁止エリアとやらから抜け出せたようですよ。もっとも、大ショッカーの言うことを真実とするのであれば、ですが」

そう続けて村上が後ろを振り返れば、そこにはどちらも無事なままの士と巧の姿があった。
今度は彼らに納得してもらえればいいが、と彼は息を吸い込んで。

「そっちの、門矢さんだっけ?彼にはさっきも言ったけど、僕たちは冴子さんとあきらちゃんを殺してないんだ。本当は彼女たちを殺したのは志村――」
「――ふざけんな、どの口がそれを言いやがる」

しかし最後まで言葉を紡ぐ前に、先ほど目覚めた巧という青年がそれを妨げる。
村上の話では確か、仮面ライダー555として戦っていて、大ショッカー打倒の戦力としては申し分ない、という情報だっただろうか。
元々の世界での関係を“複雑だった”の一言で切り上げられた時から引っかかってはいたが、やはり敵だったということだろう。

これは面倒な存在に志村も嘘を吹き込んだものだ、と苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるウラタロスを尻目に、村上は一歩前へ歩み寄る。

「ご挨拶が遅れましたね、お久しぶりです。乾さん」
「俺はてめぇとまた会うとは思ってなかったけどな……!」

物腰低い口調ながら静かな怒りを垣間見せる村上に、巧はよりわかりやすく苛立ちを見せる。
その言葉に村上も小首を傾げたものの、それ以上の追求はしなかった。

271 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:52:16 ID:1mUuHQx20

「さて、どうします?先ほども言いましたがあなた方に対し、私が今示せる客観的証拠はありません、私たちを信用できないというなら、それでも構いませんが」
「冴子とあきらを殺したのはお前らなんだから証拠なんてあるわけねぇだろ、下らねぇ嘘つきやがって」
「私が証拠を示せないといったのは、あくまでも“今だけ”ですよ、乾さん」

先ほど士との会話では出てこなかった意外な言葉に、三人は目を見開く。
それを受けて不敵に笑いながら、村上は時計をもう一度確認した。

「後1時間足らずで第二回放送が行われます。それが始まれば前回放送からこの6時間の間での所謂“殺害数ランキング”が公開される。
その際我々の世界からスコアが二人分出ていなければ私たちではなく志村純一が嘘をついている可能性が高いと判断できる、そうは思いませんか?」
「なんでてめぇの時間稼ぎに付き合う必要が――!」

村上の提案に対しなおも憤る巧を抑えたのは、彼の同行者である士。
彼はなるほどな、と呟きながらこちらを見定めるようにじっと見つめて。

「……確かに、お前のいうことを確かめる価値はあるかもな。だが、殺害数ランキングじゃ誰が誰を殺したかはわからない。お前らの世界から来た別の参加者がスコアを上げていた場合でも、俺たちはお前らがやったと判断していいのか?」
「もちろん、構いませんよ」

村上は、自分のあてが外れることなどあり得ない、とでも言いたげなほど自信満々に言い切る。
それに対しウラタロスは流石に抗議を申し立てたかったようだが、しかしそれを遮り村上は続ける。

「分の悪い賭けであっても、そこに多大なリターンがあるなら状況によってそれに乗ることも必要だ、ということですよ。もしも乾さん、貴方を不用意に相手取らなくて済むというなら、この賭けに乗る意味はある」
「俺がてめぇと組む事なんざ金輪際ないと思うがな」

一貫して敵意を剥き出しにする巧だが、ダメージの回復を優先したいのか村上に襲いかかる様子はなく、立っているのもやっとのようでその場に座り込んだ。
それを苦笑いを浮かべ見やりつつ、村上もまたその場に座りこむ。
そうして、そこから1時間の間、彼らの間には不思議な停戦が行われたのだった。





――24:00。
第二回放送は終わった。
巧と天道、士と涼がそれぞれタッグを組んで戦っても敵わなかったゴ・ガドル・バや、そもそも元の世界ではワームの首領として君臨していた乃木、また時の運行を妨げた牙王の死など、確かに喜ぶべきものも少なくはなかった、が。

五代雄介。秋山蓮。草加雅人。ヒビキ。矢車想。紅音也。海東大樹――。
死んでいった仲間の仮面ライダーは、それ以上に多く。
そして、巧もまた一人物思いに耽る。

巧も状況判断として五代に首を絞められていた自分が生き、五代が死んだという状況に誰がそれを行ったか察しはついているものの、それを口に出すことはなかった。
それをしてしまえば、そして士に自分の考えが認められてしまえば、後先短い自分のために死んだ五代と、そして自分を救ってくれた士に対する自分の感情に、整理がつかなくなりそうだったから。
だから今は、ただ祈る。

音也や草加といった仲間たちが安らかに眠れるように、そして彼らの思いの分まで大ショッカーを倒す、と決意を新たにして。

(音也……お前の息子のことは任せておけ、俺がお前の代わりにちゃんと叱ってやる)

一方で、士もまた死者に思いを向ける。
夏美の死に沈んでいた自分を焚き付け、大ショッカーに対する自分の心火を再び燃え上がらせた、紅音也。
彼が気にかけていた息子である紅渡が殺し合いに乗ってしまった今、それを止めることを戸惑いなどしない。

272 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:52:43 ID:1mUuHQx20

そして、彼の仲間で響鬼の世界を代表する仮面ライダーでもある、ヒビキ。
その死によって彼の世界が滅ぼされると大ショッカーは宣言したが、しかし自分がそれを止めてみせる。
例え世界の崩壊というのが事実だとしても、自分を仲間として受け入れてくれたヒビキへの恩を返すためなら、自分の全力を尽くしてその運命を破壊して見せようではないか。

そうして数え切れないほどの無念と果たしきれなかった思いを抱いて、二人が振り返ると、そこではウラタロスの憑依した良太郎が跪いているのが認識できた。

「亜樹子ちゃん……」

か細く呟いたその声には、やはり悲しみがあふれている。
それだけで彼を信用するわけにもいかない状況であるとはいえ、亜樹子と彼はこの会場に連れてこられて早い段階で出会っていたらしい。
そんな相手が死んでしまって――あるいはウラタロスとしては最早名簿上に女性と判別できる名前が一つしかなくなったこともその悲しみの一因かもしれないが――彼も、相当なショックを受けたようだった。

そんな彼を視界に入れながら、しかし村上は何ら死者の名前に感じたことなどないようだった。
その顔に浮かべている表情は彼らとは幾分か気色の違うものの、無念、と形容するのが相当であろうか。
死者に彼の知り合いがいなかったなら、何が原因で、と考えて、すぐに思い至る。

「――殺害数ランキングは上位しか発表されなかった。お前の無罪を証明することには繋がらなかったな、村上」
「えぇ、大方殺し合いに協力的な彼の嘘を暴かれないため、といったところでしょうが、しかしフェアではありませんね」
「――お前らの嘘、の間違いだろ」

殺害数ランキングの下位が明かされなかった為に自分の無罪を証明できなかった、と述べる村上に、やはり巧はかみついた。
彼の村上に対する敵意はこの1時間を経ても一切萎えることはなく、元の世界での確執の大きさを伺わせる。
しかしここで真実を述べている者を見誤れば、待っているのは、殺し合いに乗った参加者による蹂躙。

志村か良太郎たち、どちらかが嘘をついている現状、そうした感情だけで動いては、足下を掬われかねなかった。
そうして一層思案を深める士に対し、村上はため息と共に立ち上がり、元々病院のあった、E-5エリアの方向へと足を進めていく。
そしてもちろんそれは、彼らにとって見過ごせるものではなく。

「――ここで俺たちに背を向けるってことがどういうことか、わかってるのか、村上?」
「ええ、もちろん。しかし、私としても“やっていない”ことを証明するなどと無益でこの場では無理なことをいつまでも長々とやるつもりもありませんからね。であれば、病院に残っているだろう志村純一を直接殺すのが、一番手っ取り早い」
「行かせるとでも思ったか?」

言いながら村上の進路の先に立つのは、巧だ。
その手にはファイズフォン、そして腰にはドライバーが巻かれており、この場で戦闘になることを覚悟しているようである。
しかしそれを見て、村上はなおも困ったように笑い。

「そんな傷だらけの身体で、私に勝てるとでも思いますか?」
「そんなもん、やってみなけりゃわかんねぇだろ」
「いいえ、戦うまでもない。何故なら私の手には王を守る三本のベルトを大きく超える帝王のベルト、オーガもありますから」

言って、村上はデイパックより黒いドライバーと携帯型端末を取り出す。
元々オルフェノクとしての実力で万全の状態の自分と草加、三原の三人がかりで敵わなかったような男に、ファイズを超えるオーガの力。
お互いの体調差を考慮せずとも、或いはブラスターがあって五分かなお足りないような戦力差を戦わずして確信しているかのように、村上は笑う。

273 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:53:14 ID:1mUuHQx20

しかしこの男を前にして、引き下がる選択肢など残されていない、と巧はファイズフォンにコードを入力しようとして。

「――やめとけ、今のお前の望みは、こんなところで無理な戦いをして死ぬことじゃないだろ」
「門矢、けどよ……くっ!」

士のその言葉に、らしくなく戦意を失った。
その様子に彼をよく知る村上でさえ眉を潜めるが、しかし彼の事情に足を突っ込んでいる時間などない。
一刻も早く愚かな志村純一を殺さなければ、ますますこの場が不愉快な状況になる、と村上は振り返って。

「――ウラタロスさん、急いでください。このまま病院で奴を倒さなくては、或いはますます犠牲者が増えることにもなる」

その言葉に、膝をついていたウラタロスは迷いながらも立ち上がって、士と巧を真っ直ぐに見据えた。
その目にはなんとも形容しがたい感情が含まれているように思われたが、しかしこれ以上この場にいる価値がないことを飲み込んだように、ゆっくりとその足を村上に追随するものに変化させた。
少しずつ闇に消えゆかんとする背中を見ながら、巧はその無力さに拳を握るしか出来なかった。





放送より1時間が経過し、金居の首輪を解析し終えた病院のロビーで、三人の男たちは再度集まっていた。

「フィリップ、これを見てくれ。これには俺の世界のライダーシステムの技術と同じものが使用されている。恐らくはこの場でアンデッドが致命的なダメージを受けた際その場で封印されるための機能だろう」
「あぁ、ということは恐らく相川始のものにも同じ機能が流用されているとみてほぼ間違いないだろうね。この調子で首輪を解析していけば、或いは首輪の解除もそう難しいものではないかもしれない」

新しく吐き出されてきた首輪の解析図を見ながら、恐らくはこの会場で最も首輪の解除に近い二人は、喜色の声を上げていた。
首輪の解析によって、橘もよく知る技術が金居の首輪に流用されていたことが判明したため。
この調子でいけば、或いは内部構造が不明な首輪に関してはその参加者の世界のものを解析、分解すれば、解除にも繋がるかもしれない。

無差別に何が解除にどんな技術が必要なのかすらわからぬまま武器や変身アイテムを解析、分解しようとしていた数時間前を思えば、この状況は大きく歩を進めたと言えるだろう。
と、そんな二人の後ろで、大きくいつものように笑みを浮かべる男が一人。
言うまでもなく、志村純一その人だ。

「橘チーフ、フィリップ君、やりましたね。これで俺たちの首輪の解除にも一歩前進です」
「そうだね、志村純一。だがどうしても否みきれない疑問が、まだ残っている……」
「――首輪の種類が果たして種族により違うものなのか、それとも世界毎に違うものなのか、か?」

274 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:53:32 ID:1mUuHQx20

橘のその問いに、フィリップは頷く。
首輪の種類が何に依存するのか、未だそれを確定するには判断材料が足りない。
今自分たちが把握している首輪は三種類。

一つは、北岡、秋山による『龍騎の世界』の参加者で『特殊な能力を持たない一般人』の首輪。
一つは、ネガタロスによる『電王の世界』の参加者で『イマジン』の首輪。
一つは、金居による『剣の世界』の参加者で『アンデッド』の首輪。

これを世界に依存するか、それとも種族に依存するか、それともまた別の何かで分けられたものなのか……。
判断するには材料が少なすぎ、そして新たな首輪を手に入れるのは非常に困難でまた危険の伴う行為と理解できた。
故にフィリップは考える。

この病院の跡地を抜け誰かの死体を探すような悪趣味な行動を取るべきなのかどうか、と。
しかし、どれだけ自分の心がそれを忌避したとしても、首輪を解除することは大ショッカー、またダグバのような残る参加者との戦いを有利に進めるには、必要不可欠なことだった。
故に、この場を離れることを提案しようとして。

その目を向けた橘が悩み苦しむような表情で拳を握りしめていたためにそれをやめる。

「橘朔也、大丈夫か?顔色が悪いけど……」
「……すまない、フィリップ。考え事だ」

言って、彼はまたも数瞬迷ったような表情を見せた後、小さく「許せ」と呟いた。

「――俺は、このE-5エリアにもう一つ首輪があるのを知っている。それを使えば、或いは俺と志村の首輪を解除するのに大きく踏み出せるかもしれない」
「それは本当ですか!橘チーフ!」

喜びの声を上げる志村に対し、しかし橘は暗く「あぁ」とだけ返した。
その様子にフィリップも幾分か心配を抱くが、橘はそれ以上多くを語らず、元々はロビーであった広場から踵を返す。

「ついてきてくれ」

放送前、金居たちとの戦いで命を落とした仲間たちの名を告げる時のようなその口調に、フィリップは危惧を抱きつつ、意気揚々と彼の後を続く志村に、フィリップも続いた。





歩き続けて数分。
橘は一見何の変哲もないようなところで、突然立ち止まった。
一体何があるのか、とフィリップが覗き込むと、暗がりで少し分かりづらいながら、そこの土が他より少し盛り上がっているのが認識できた。

そこで、一つの可能性にたどり着く。
この病院で死亡した参加者がもう一人いたことを、フィリップも聞いていたからだ。

「……この下に、剣崎一真がいるのかい?」

橘は、フィリップの言葉に応えない。
しかしそれは無視をしたわけではなく、付き合いの長い友を、何より彼自身がその死体をこれ以上傷つけられたくないと埋めた彼を傷つけることになってしまうことが、辛く、そして葛藤していたからだ。
大ショッカーを倒すことと、友の安らかな眠りを守ること。

そのどちらもが自分にとっては最上のもので、どちらも果たさなくてはいけない使命だ。
しかし剣崎がこの場で話を聞いていたら、きっと、自分の首輪が大ショッカーを倒す大きな一歩となるなら、迷うことなくその首を差し出すだろう。
そんな友の姿が容易に想像できるからこそ、彼にこの土を掘り返すことは大きな禁忌を犯すことと同意なのであった。

275 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:54:35 ID:1mUuHQx20

「……チーフ、お気持ちは分かります。しかし、ことは一刻を争う。お話に聞く剣崎さんなら、きっと大ショッカーを倒すためにその首輪を使ってくれというはずです」

橘を故意に焦らせるような志村の言葉を受けて、フィリップが僅かに眉を潜めるのも気付かず、橘は再度その瞳を閉じる。
その瞼の裏にどれだけのドラマが流れているのか、フィリップには分からない。
しかし、数瞬の後その瞳から一筋の涙が伝ったことが、それ以上の言葉を不必要なものにした。

そうして、彼は意を決してその土に手をかけようとして。

「――見つけましたよ、志村純一」

背後から近づく異様な気配とその声の主にそれを妨げられた。

「村上、野上……!」

対する志村は、苦々しげに二人の名を吐く。
それを受けて、橘とフィリップの顔も、先ほどまでの正義の仮面ライダーの死に対する弔いの顔から、戦士のものへと豹変する。

「お前たちが、ヒビキの仲間を……!」
「冴子姉さんを殺したのか……!」

血がにじむ勢いで拳を握りしめた二人が志村に並び立つと、対する二人の男も戦闘態勢に入った。
スーツの男、村上が気合いを入れたかと思えば、その姿は一瞬にして異形のものへと変じる。
薔薇の能力を持ち上の上たる実力を誇る、ローズオルフェノクに、彼は変じていた。

それを受け、横の良太郎も、その腰に巻いたベルトの青いボタンを押す。
軽快な音楽が流れる中、彼は黒いパスケースのようなものをベルトに翳して。

「変身」

――ROD FORM

良太郎の声を受けてベルトが変身する形態の名を告げる。
すると一瞬のうちに彼の身体はオーラアーマーと呼ばれる物体を纏い、その身を青く染め上げた。
それは、『電王の世界』を代表する仮面ライダー、電王の槍捌きを得意とする形態、ロッドフォームへの変身を完了したことを示していた。

「チーフ、フィリップ君」
「あぁ、分かっている」

――CYCLONE

一方で、三人の戦士たちもまた自身の戦闘態勢を整える。
懐から取り出した緑のガイアメモリの名を鳴らしたフィリップに続いて、バックルにそれぞれダイヤのA、ケルベロスのカードを挿入した橘と志村の腰に、カードが展開され、それはそのままベルトとなる。
同じく腰にロストドライバーを巻き付けたフィリップも油断なく敵を見据えて。

「変身!!!」

――TURN UP
――OPEN UP
――CYCLONE

同時に叫んだ彼らは、電子音声と共に走り出す。
現れた二枚のオリハルコンゲートをそれぞれ潜り抜けた橘と志村の身に、赤きギャレンの鎧と、金色のグレイブの鎧が纏われる。
同様に緑の戦士サイクロンもまたその変異を完了させて、その瞳を赤く輝かせた。

「はあぁぁぁぁ!!!」

突撃する彼らを前に、しかし一歩前に立ち塞がるように現れたのはローズオルフェノクだった。
かけ声と共にローズが手を振るえば、周囲には夥しい数の薔薇の花弁が舞い、それは三人の内の一人、グレイブのみを狙い撃つ。

「うわあぁぁぁぁ!」
「志村!」

悲鳴と共にグレイブが彼方へと飛ばされるのを見てギャレンは思わず声を上げるが、しかしそんな暇はないとばかりに電王が彼らの前に立ち塞がる。

「君たちの相手は僕。村上さん、そっちは頼んだよ」
「えぇ、もちろん」

言いながらローズは浮遊して吹き飛んだグレイブの方向へと向かう。
それに対しギャレンラウザーによる射撃を行おうとするも、それは目前の電王が持つ棍棒に阻まれる。

「どけ、お前の相手をしてる暇はない」
「そんな釣れないこと言わないでよ。って言ってもまぁ、僕が君たちを釣るんだけどさ」

そう不適に告げる電王に改めて二人は構えを取り――。
そうして、彼らの戦いが始まりを迎えようとしていた。

276 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:54:53 ID:1mUuHQx20





「ぐぁッ!」

薔薇の大群による少しばかりの移動を終えて久しぶりに地面と対面したグレイブは、思わず呻き声を上げた。
オーガという鎧がありながら何故最初からオルフェノクとしての能力を用いるのか疑問に思ったが、何てことはない、能力を利用して自分とフィリップたちを分断しようと言うことか。
しかし移動させることに重きを置いたためか今の薔薇によるダメージはない、故に存分に戦うことが出来ると言うことだ。

「お久しぶりですね、志村純一」
「村上……!お前は今ここで俺が――」
「そんな見え透いた芝居はやめたらどうです?どうせここには貴方の“仲間”もいない」

仲間という言葉を強調しつつも、その丁寧な口調と裏腹に怒りを隠そうともせず、ローズは告げる。
それを受け、志村もまたこの愚か者に自分の愚かしさをわからせてやるのも悪くはないか、と意地悪く笑った。

「それもそうだな。……今を逃すと何時言えるかわからないから、最初に礼を言っておいてやるよ村上。お前が元の世界で人類と敵対していたおかげで、俺はすんなり仮面ライダー共に受け入れられたんだからな」
「何を勘違いしているかわかりませんが、この状況で貴方に勝ち目はない。そして私にここで貴方を逃がす選択肢も、ありません」

告げるローズに対し、グレイブはクツクツと笑う。
それに対し怒りより先に苛立ちと不愉快さが浮かんで、ローズの影に現れた村上は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

「それはこっちの台詞だ、村上。お人好しの野上は無関係の奴らに手加減するだろうが、姉と仲間の知り合いを殺されたと思っているあの二人にそれはない。今にでも奴を殺してここに駆けつけてくるだろうよ」
「思っている、ということはやはり、二人を殺したのは貴方だったのですね」
「ふん、思っていたより察しの悪い奴だ。決まっているだろう、俺が殺したよ、二人ともな」
「下の下ですね……!」

珍しく人の死に憤りを見せるローズは、そのままグレイブに向かって薔薇の花弁を飛ばす。
そこに込められた殺意からそれを無防備に食らうのはまずいと判断したグレイブが横に転がって避けると、先ほどまで後方に立っていたはずの木が消え失せていた。
一体どれだけの威力が、と戦慄しかけるが、しかしライジングアルティメットの脅威を見た後であれば可愛らしいものだ、とグレイブは仕切り直す。

その手に馴染んだグレイブラウザーを構え直すと、そのままローズに斬りかかった。
避けるまでもないとばかりにそれを白羽取りの要領で受け止められるが、構わずローキックを見舞う。
しかしそれすら予想通りと言わんばかりにローズが足を上げたために、結局待ち受けるのはその強固な膝によるカウンター。

それに対し小さく嗚咽が漏れるが、その程度だ。
無理矢理にラウザーを引きはがし、今度は至近距離から切り上げる。
流石にこれは受け止めきれないと判断したか大きく上体を反らしたが、しかし予想通り。

277 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:55:10 ID:1mUuHQx20

返す刀で突きを放てば、剣先はローズの右手に掠った。
本来ならもっと深々と突き刺さるはずだったが、どうやらそれを見越して後ろに飛び退いたようだ。
しかしオーガが非常に優れたライダーギアだっただけで、全力の自分が纏うグレイブで今のこいつの相手は十分か、と志村は仮面の下でまた笑う。

それを仮面越しに読み取ったかローズは不快そうな声を上げて、その掌に青いエネルギー弾を生じさせた。
二撃、三撃、続く青の衝撃をやり過ごしつつグレイブはその手に自身の持つ切り札を握る。
怒り故か、随分と読みやすい軌道で放たれるエネルギー弾を躱し、時にはラウザーでかき消しつつ、彼は切り札をラウズする。

――MIGHTY

瞬間目前に生じた金色の壁をラウザーで突き破れば、彼の剣に宿るは最強のアンデッド、ケルベロスの力の一片。
カード一枚のみのラウズながら3800AP、つまり旧式のライダーにおけるコンボ相当の威力を持った剣を、逆手に構えて。
明らかな必殺の一撃を避けようとローズは光弾を乱射するが、しかしそれさえも切り裂いて彼はローズに肉薄する。

「くッ!」

ローズは短い嗚咽と共に後ろに飛び退くが、それすらも読んでいたとグレイブはその距離分をきっちり詰めるように跳んだ。

「――甘いぞ、村上」
「なッ――!」

嘲るような笑いを浮かべるグレイブに対し、最早ローズは碌な回避手段も取れず……。
そして最高の間合いでその黄金の剣を横凪に振るったのだった。

「ぐぁぁ……!」

マイティ・グラビティの衝撃でその身を木に打ち付けながら、ローズは呻く。
その身を必殺の剣で切り裂かれながら彼はなおも存命であった。
どうやら直撃の寸前で彼が薔薇を生じさせたことで少々狙いがずれたようだが、しかし問題ない。

オーガを装着する隙も与える気など全くないし、今の彼なら容易く殺すことが出来るだろう。
一方で死神による首の両断を待つのみとなったローズは、寄りかかる木の影に生身の村上を映した。

「志村純一、あなたは、この場で一体どれだけの参加者を殺したというのですか」

下らないことを聞く奴だ、とグレイブは思う。
オーガギアを装着する為に自分の注意をそらす時間稼ぎか、或いは純粋にプライドの高さ故に生じる死への拘りか。
そのどちらであってもこいつの話に付き合う理由もないが、しかし自分をいたぶってくれたこの男の死に際を惨めなものに出来るなら、それは面白いかもしれない。

「正直、数えてないな。ただまぁ天美あきらの仲間のヒビキも殺した。2人も俺が殺したんだ、あの世界の滅亡は俺の手柄みたいなもんさ。――あぁ、それから言ってて思い出したがな、お前の世界もこれで二人目だ。園田真理、あのお人好し女にお前の情報を聞いていたおかげで対処が楽になったよ。あっちで礼でも言ってやってくれ」

告げつつ、グレイブは自分の声音が弾んでいるのを自覚する。
その世界の参加者の内半数を殺し一つの世界を滅ぼした後に、またこうして一つの世界が滅亡に向かう。
残る乾巧と三原とかいう男はいつでも殺せるだろうし、既に555の世界も滅亡と同義だ。

世界毎に首輪が別れているなら自分の首輪解除には何ら躊躇はされないだろうし、最早この殺し合いに自分は勝利したも同然だった。

「……っと、いけない、いけない。お前を殺し損ねるわけにはいかないからな」

一瞬意図して作った隙を逃がさず利用するだろうローズを見越して、意地悪く笑う。
しかし自分の意図に反して木に凭れたままのローズを見て、諦めたか、とグレイブは嘲笑した。
まぁ、それならそれでこの男のプライドも砕けたはずだし、“仲間”が来る前にさっさと終わらせるか、とラウザーを構え。

278 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:55:27 ID:1mUuHQx20

「――あなたへの評価を改めましょう、志村純一」

突然のローズの言葉に耳を傾けることもなくそれを振り下ろした。

「やはりあなたは、下の下……以下ですね」

しかし瞬間、その言葉と共にローズがかき消える。
残されたのは、大量の薔薇のみ、一体奴はどこへ……?

「――こちらですよ」

背面から聞こえた言葉に思わず振り返れば、それを迎えくるのは狙い澄ました裏拳。
堪らず後ずさったグレイブに、ローズはその手を翳して。

(ふん、どうせ光弾か薔薇かの単調な攻撃。どちらにせよ回避は容易い)

そう考え、笑みすら浮かべて彼の攻撃を軽く回避――出来ない。

「なッ、何ィィィ!!」

先ほどまでの攻撃とはまるで練度の違うそれに、最早視界すら封じられながら、彼は薔薇の中、火花を散らしながら舞う。
やっとのことで視界が晴れた、と思えば、それはどうやらグレイブの鎧がダメージにより解除されただけのようであった。
呻き声と共に地に伏せながら、彼は思う。

一体、ローズのどこにこれほどの力が。
その答えを掴めぬまま、彼は悠然と自身のデイパックより黒い携帯電話型ツールを取り出す。
ローズの変身も解けていないというのにオーガに変身するというのか。

制限を知らないというなら、それも好都合か、とまた笑みを浮かべて。
そうして、ローズはオーガフォンの名を持つそれを開き、そのまま――自分の耳に持って行った。

「――事情は彼が今、全て述べた通りですよ。ご理解いただけましたか?乾さん」

その言葉に、志村純一は初めて血の気が引くという言葉を、身を以て理解した。





時間は、数十分前に遡る。
放送で亜樹子の名前が告げられた時、良太郎の身体は自然と膝を折った。
その時の身体の主導権は前述したようにウラタロスのものだったが、恐らく誰が主導権を握っていてもそうなっただろう。

自分がこの場で初めて会った参加者、鳴海亜樹子。
自身の憑依体質を芸として紹介したことで、大阪人の彼女はこんな状況ながら気丈に振る舞いツッコんでくれた。
欲を言えば彼女の笑顔を見られればもっとよかったのだが、こんな惨状ではそれも無理な話かとそう納得した。

今思えば、あのファーストコンタクトから。
自分は、この場で信じるべき人を信じられていなかったのではないか、とウラタロスは思う。
IFの話に意味はないが、もし彼女を嘘でごまかさず特異点の話から憑依するイマジンのものまで正直に語っていたなら。

或いは「私聞いてない」と連呼しながらも、最後には飲み込み、彼女が自分の“芸”に怒りチームを離脱するなどという結果を、避けられたのではないか。
彼女を探しに行った葦原を責めることなど出来はしない。
元々彼が彼女を探しに行かなければいけない理由を作ったのも、全て自分たちが、いや、自分が悪いのだから。

(ウラタロス、そんな風に抱え込んじゃ駄目だよ)
(せやで亀の字、お前が悔やんだところで、何にもならんやろ)

消えない後悔を悔やみ続ける自分に声をかけるのは、宿主である野上良太郎と、仲間のキンタロス。
彼らだって辛いはずなのに、必死に戦おうとしている。
それをいつもは心強いとしか思わないはずなのに、何故だか今は少し鬱陶しかった。

そもそも彼らがいなければ。
自分がモモタロスやリュウタロスの代わりに実体化して参加していたなら、自分だって芸などという苦しい言い訳を使わずに済んだはずだ。

279 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:55:48 ID:1mUuHQx20

(おい、亀の字、何か物騒なこと考えてへんやろな。お前が黙ってるときは碌な事がない)
(……やだなぁ、人聞きの悪いこと言わないでよキンちゃん。僕はいつも通りの僕、嘘好きで磯の香りが女性を魅了する、そんないつものウラタロス――)
(無理しないでよ、ウラタロス)

キンタロスの追求にお得意の嘘で乗り切ろうかと思ったが、あの良太郎にさえ見破られてしまう。
良太郎が嘘の見分けがつくようになったのか、自分の嘘が衰えたか。
そのどちらでもないことは、ウラタロスにだってすぐにわかっていた。

「――ウラタロスさん、急いでください。このまま病院で奴を倒さなくては、或いはますます犠牲者が増えることにもなる」

思考に落ちるウラタロスを現実に引き戻したのは、同行者である村上の声だった。
望みの綱である殺害数ランキングさえあの男の味方をした以上、もうこの場で士たちを説得するのは不可能だと判断したのだろう。
そしてそれは、さほど見当違いでもないだろうとウラタロスは思う。

自分にとって読み切れない要素である村上と巧の確執を、より知っているだろう村上が“相容れない”と判断したなら、それに逆らってまでここに残っても彼を一人で行かせるだけ。
ならば、あちらの二人が自分たちに襲いかからない今のうちに、自分も離脱するのが正解ではないか。

そうした思考を終えて、彼は立ち上がる。
ふらふらと、まるで芯のない足取りながら、ゆっくりと志村への怒りのみをその胸に抱いて。

(何考えとるんや亀の字!お前かて士と巧っちゃー二人を置いて志村を倒しに行ったらあいつの思い通りやってわかってるやろ!)
(当然でしょ、キンちゃん。それでも今ここで僕らにやれることはもうない。それなら、あきらちゃんと冴子さんを殺した志村だけでも僕が――)
(……駄目だよ、それじゃ)

半ばやけになった思考でキンタロスと口論を繰り広げるウラタロスの耳に入ってきたのは、自分の宿主である野上良太郎の声。
それは、何度か自分も聞いた、弱々しいながらも、彼が絶対に自分を曲げない時の声。
第一回放送の時も聞きながら、しかしあの時より強い気さえするそれに思わず身構えながら、ウラタロスはあえていつもの調子で軽く返した。

(駄目って、何が駄目なのさ?志村は人殺しで、僕たちを騙したんだよ、それを倒すのが駄目なわけ?)
(違うよ、そうじゃなくて……、でも、駄目なんだ)
(だから何がさ?良太郎の身体を粗末に扱おうとしてるように聞こえたなら謝るけど――)
(それも違うよ、でも駄目なんだ、僕が言いたいのは――)

「このままで終わるのは、駄目えぇぇぇぇ!!!」

瞬間、良太郎の身体から青いオーラのようなものが弾き飛ばされる。
思わぬ大声に村上も巧も士も、その場にいる全員が振り返った。
しかし、その姿に対し既に事情を知っている村上は苦々しい表情を浮かべた。

「野上さん……ですか。早くウラタロスさんを出してください。貴方ではまた志村のような男に足下を掬われるだけだ」
「嫌……です」
「ほう、何故ですか」
「僕は、決めたんです。自分に出来ることは、できる限り自分でやるって……!」

そう言って拳を握りしめる良太郎は、しかし頼りない印象を受けた。
所在なさげに身体は震えているし、その声も震えている。
だが、その瞳だけは唯一、村上を見つめて離さない。

そんな存在に会うことが珍しいのか、村上もまた良太郎から目を反らすことはしなかった。

「貴方の思いは理解しました。しかしそもそも何が気に入らなくて貴方は今出てきたのですか?まさか志村純一を殺すことを今更反対することもないでしょう」
「それは……確かに、志村さんは倒さなきゃいけないと思います」
「なるほど、では何がご不満なのですか?」
「このまま、志村さんの嘘が、皆に信じられ続けることと、それで僕たちがあの人に負けることです」

真っ直ぐに村上を見据えて良太郎が、今度は声を震わせずにそう言い切った。
それにさしもの村上も不機嫌そうな表情を浮かべて、鼻で一つ笑う。

280 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:56:12 ID:1mUuHQx20

「何を言い出すかと思えば、私が志村純一に敗北するとでも?……東京タワーでは確かに逃しましたが、私の実力を以てすればあの程度の男に二度目の敗北はない」
「そういうことじゃないんです。僕が言いたいのは、今志村さんの嘘を信じている人たちの誤解を解かないままであの人を倒しちゃったら、きっと志村さんは志村さんを信じた人たちの中で、正義の仮面ライダーとして“記憶”されたままになる。それは多分、間違ってます。……本当に皆のために戦った人たちと志村さんが同じように扱われるなんて、僕には耐えられない」

そう言って、彼は拳を握りしめる。
彼の脳内によぎるは、あの親友であった赤いイマジンのこと。
あのぶっきらぼうであったが心優しい彼のような存在と志村のような嘘つきがどちらも善良な存在であったと記憶する人は、出来ればいてほしくなかった。

良太郎なりに必死に述べた言葉を聞いて、村上は失笑する。
全く以て、彼の言う言葉に何の意味も見いだせないとでも言いたげに、彼はわざとらしく目線を彼方へと走らせた。

「あなたのご意見はわかりました。しかし、私には彼の他者からの評価など正直、全く以てどうでもいい。企業を背負うならともかく、この場で私にとって最も重要なのは私の判断だ。そして私を利用するという愚を犯した彼には、私自らが死をもたらす……、それで何も問題ないのではありませんか?」
「駄目です。それじゃ結局、志村さんの嘘の通り、僕たちは人殺しになっちゃう。志村さんを倒すなら、まずあの人の嘘を暴かなくちゃ、僕たちはあの人に負けたってことになる」

会話を続ける内徐々に膨れつつある村上の殺気に、外野として見ているだけであった士と巧すら警戒を強いられる中、良太郎はイマジンの力も借りず、その圧に一人堂々と立ち向かっていた。
しかしそんな彼を前にこのやりとりに疲労しか感じないと言いたげに目元を抑えた村上は、その瞳を仲間に向けるものから邪魔な弱者に向けるそれへと、静かに変貌させる。

「――もう結構です。あなたとの会話に恐らく両者が求める終着点は存在しない。早くウラタロスさんを出してください」
(そうだよ良太郎、村上を相手に意地を張っても意味ないって!今は僕に任せて!)
「嫌です。あなたが志村さんの嘘を暴くのに協力するって言うまで、僕はウラタロスには変わらない」

村上と、脳内のウラタロス。
両者に向け明確に否定を宣言した良太郎の目は、しかし未だ真っ直ぐに村上を貫く。
それを聞いて村上は数瞬考えるように顔を伏せたものの、しかしすぐにその顔を上げた。

――その瞳を、興味を一切失った対象に向ける、冷酷な目へと変えて。

「残念ですよ、ウラタロスさんとは良い関係が築けると思ったのですが。……あなたがそうまで言うのなら、私の貴重な時間を奪った罰として、ここで死んでいただきます」

そう言って、村上はその掌に青い光弾を発生させる。
制限により生身の状態では幾分かその威力は抑えられているようだが、しかしそれでも生身の良太郎を殺すのには十二分。

「ではさよならです。野上さん」

放たれた光弾を前に、しかし良太郎はその場から大きく動くことはしない。
脳内でイマジンたちが叫ぶのが聞こえるが、彼らが身体に入ることすら拒否して、彼はその場に堂々と立ち尽くしていた。
そして、その身に光弾は一瞬にして到達――しない。

「――そこまでだ、村上」

言いながらその手に持つシアンの銃で光弾を打ち消しながら良太郎の前に悠然と現れたのは、士であった。
敵であるはずかもしれない良太郎を庇うような行為に、思わずその場の全員が目を見開く。

「……一体、何のつもりです。あなたは先ほど彼を信用していないと言い切ったはず」
「俺が信用してないって言ったのはこいつにじゃない、こいつの中のウラタロスにだ」

悠然と村上に告げる士に対し、しかし村上は呆れたようにため息をつく。

「それは結構。しかし、先ほどの彼の弱々しい、理論の欠片もないような言葉のどこに、貴方が心動かされたのか、是非ともお教え願いたいものですね」
「俺が信じたのはこいつの言葉じゃない。こいつの……目だ」

281 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:56:31 ID:1mUuHQx20

皮肉を述べる村上に何てことのないように返しながら、士は振り返り良太郎の目を見つめた。
困惑の色を隠しきれない良太郎の、しかしその奥に何かを見たかのようで、彼は満足げな表情を浮かべ、続ける。

「俺には正直、ウラタロスとお前、それから志村の誰の言葉のどれが正しいのかわからない。だが、こいつの目は、お前らの語った全ての言葉を大きく上回るほどに俺に訴えかけてきた。それは、こいつが元々持っているものだ。……確かに、こいつはお前たちより口は巧くないかもしれない。それでも、こいつのことを俺は信じる」

それを聞いて、村上はこの場に来て初めて驚愕と興味の入り交じったような、複雑な表情を浮かべた。

「それだけで、貴方が助けなければ死んでいたような愚かな彼を信じると?全く以て理論が破綻しているとしか言い様がない」
「――何か勘違いしてるみたいだな、お前」

すっ、と指を地面と平行に持ち上げて、士は村上を指さす。
村上はそれに特別動揺もしなかったが、しかしその表情にはより強い困惑が浮かんでいた。

「確かにこいつは、俺が助けなければ死んでいたかもしれない。だが、助けを求めればすぐに助けてくれる、そんな仲間が身体の中にいるのに、それをせずお前に立ち向かったのは、こいつの弱さじゃない。こいつの……“強さ”だ」

士の告げる言葉に、村上は何も言わない。
呆れ果てているのか聞き入っているのか、そのどちらなのかは見当もつかないが、しかし何も言わない。
そんな村上を尻目に、士は言葉を紡ぎ続ける。

「こいつが仲間を頼らなかったのは、頼りっきりなままじゃなく、自分の力で出来ることを成し遂げたいとそう考えたからだ。自分より強い奴を前にしてそれが出来るこいつは、強い。……少なくとも、自分の邪魔者は全部消してしまえばいい、なんて考えるお前なんかより、ずっとな」

士の途切れぬ言葉を受けて、村上はその顔を真っ直ぐに向ける。
それは良太郎に向けていた、侮るようなそれを撤回するような真剣な眼差しだった。

「そして俺は、そんなこいつの瞳を信じる。少なくとも、こいつの言う志村の嘘とやらの真偽を確かめてやってもいい、そう考えてる」

そこまで良太郎を振り返りつつ言い切って、今度は村上をしっかりと見据え。

「――お前はどうだ、村上。ここまでこけにされた礼に、俺らと戦うか、それとも、志村の嘘を暴いて、お前の身の潔白を示すか、どちらを選ぶ」

明らかな挑発を、言い放った。
先ほどまでなら戦わなくて済んだ相手とわざわざ戦闘を望むようにも聞こえるそれに後方に控える巧が僅かに抗議の声を上げるが……。
しかしそれを遮って、村上はゆっくりとその顔を持ち上げた。

「――私を相手にここまで言い切るとは。貴方は一体、何者なんですか?」

そうして口から出た疑問は、純粋なものだ。
オルフェノクの総統としての一面も持つ自分を相手にここまで言い切るこの男は、果たしてただ者ではないだろう。
しかし、それを受けて士は幾分覇気なくその手を左右に払って。

「通りすがりの仮面ライダーだ、今は覚えなくて良い」

いつもの決め台詞を言い放った。
しかしそれに対し、村上は噛みしめるようにもう一度小さく復唱して。

「……いえ、通りすがりの仮面ライダー。その名前、覚えておきましょう」

そうして士に一瞥をくれたかと思えば、彼はそのまま彼の後方に待つ良太郎の元へ歩み寄る。
しかし今度は士も止めはしない。
村上の出した結論を、知っているかのように。

282 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:56:47 ID:1mUuHQx20

「――野上さん」
「はい」
「貴方の言う考えは本来甘く無駄なものだ。しかしこの閉鎖空間を考えれば一理あるかもしれません。……私も、貴方の言う、志村の嘘を白日の下に晒す考えに協力しましょう」

その言葉を聞いて、良太郎は静かに微笑む。
村上が意見を変えたのは士の力もあるとはいえ、自分の意見をウラタロスたちに頼らず貫き通せたのだから。

「……おい、門矢、お前まさか本当に志村を疑ってるんじゃねぇだろうな」

一瞬和やかな空気が流れかけた瞬間、それに静かに割り込んできたのは巧だった。
それを士はしっかりと見据えて、しかし動じはしなかった。

「何も、志村が犯人だって決めつけたわけじゃない。俺はどっちが嘘をついてるのかはっきりさせたいだけだ」
「んなの考えるまでもねぇだろ!こいつはオルフェノクを使って人を襲わせてる企業の社長だったんだぞ、こいつが霧彦の嫁とあきらを殺したに決まってんだろうが」

思わず語調が強くなるのを自覚しながら、巧は吠える。
正義の仮面ライダーであり、あきらと冴子を守るため戦ったという志村と、元の世界から並々ならぬ人間への憎悪を剥き出しにしていた村上。
どちらを信じるべきかなど、巧には論ずるまでもないことだった。

しかしそれに反論を述べようとする士を制したのは社長“だった”という言葉を特に気にすることもなく一歩前に歩み出た村上であった。

「……乾さん、確かに我々には大きな確執があります。しかし、この際それは一旦水に流しませんか。この場に巣くう卑怯者を炙り出すまでの間だけ、あなたの力をお借りしたい」
「答えなんざ聞かなくてもわかってんだろ、俺はてめぇとは絶対に組まねぇ」

そうして取り付く島もなくそっぽを向いた巧に、村上は数瞬考えるように視線を走らせて、それから息を大きく吸い込んだ。

「それならそれで結構ですが……、あなたは、私に一つ返していない借りがあるはずだ」
「借り……だと?」

その言葉に心底予想外という風に表情を強ばらせた巧に対し、村上は続ける。

「――園田真理さん。彼女は以前ここに連れてこられるより早くに一度死亡し、そして私どもスマートブレインの技術でそれを蘇らせてさしあげた。それを、忘れたとは言わせませんよ」
「……俺も言ったはずだぜ、お前らを騙したところで全く心が痛まねぇってな」

巧はなおもつっけんどんに返すが、しかしそれを横で聞いている士は何かを疑問に思うように顔を歪めた。
それを横目で見やりつつも村上は続ける。

「ええ、確かにそう仰ったのも覚えています。しかしこう考えたことはありませんか?あなたがスマートブレイン、いえ上の上たるオルフェノクの集まりであるラッキークローバーの一員になりながら、我々の敵で居続けられたのは私のおかげでもある、と」
「はぁ?どういう意味だ」

それを聞いて、村上は余裕を滲ませながら一度唾を飲み込み口調を整える。

「あなたがラッキークローバーに入った時点で、私は人間や、木場勇治の殺害を依頼して園田さんの蘇生を先延ばしにしてもよかったのに、それをしなかった。そう言った行為をした後であったなら、あなたはどう足掻いても人間には受け入れられなかったはずだ」

その言葉に幾分かの後悔を含ませつつ、村上は言う。
それを受けて巧はしかしこの会話が始まってから始めての動揺を見せた。

「……もちろん、それはあなたを信用しすぎた私の瑕疵だ。本来敵同士だと認識しているあなたの行動ももっともではありましたが、しかしそれをした時の私には、あなたへの敵意よりも同族としてあなたの苦しみを早く和らげて差し上げたいという気持ちしか存在していなかった。そうでなければ実利主義の私がそのような行動を取るはずがない」
「……結局、何が言いてぇんだよ」
「――私には私なりの、果たさなくてはならない義務と正義がある、ということですよ。それがあなたたち仮面ライダーと決して交わらないとしても、ね」
「こうして巧を説得するのも、その正義のため、ってことか」

283 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:57:03 ID:1mUuHQx20

村上の長々とした宣言に横から入ったのは、士だった。
彼の言葉からは、確かに村上を敵の一人としてだけではない存在として認めているのが見て取れる。
それに対し裏切られたと感じたか巧は一層声を荒げて。

「門矢、お前本当に志村を疑ってこいつらを信じてんのか?……それともそれは、お前が世界の破壊者とかいう奴らしいことと関係あんのかよ」
「……その話は後だ。さっきも言ったが、俺はまだどっちも信頼しきったわけじゃない。けどこいつらの話を端っから否定する理由もないだろ、今はただ確かめるだけだ、真実をな」

仲間と信じた男の行動に納得がいかないと巧は声を荒げ、思わず世界の破壊者という先ほど金居が発したワードを口にする。
それに村上が一気に興味の瞳を向けてきたのを感じて、士はあからさまにため息をついた。
そしてそんな仲間の様子を見て、流石の巧も今この状況で冷静でないのは自分だけであることを察したのか、少し俯いて。

そんな巧を一瞥して、だめ押しとばかりに村上は大きく息を吸い込む。

「園田さんが元の世界で生き返られた時、以前の彼女と何か代わりはありましたか?それこそ王を守るベルトを使用できるようになった、性格が変わったと言った症状は」
「……ねぇよ。前のあいつのまんまだ、何から何までな」
「何度も言うようですが私にあのタイミングで彼女を蘇生させるメリットはなく、そしてもし私が用心深ければあなたが逆らったとき彼女を遠隔操作で殺せるようにでも出来た。それこそ、今の私たちのようにね」

首にずっとその存在を主張してくる冷たい銀の輪を指しながら、彼は言う。
それを聞く巧は、村上の話術に圧倒されたか、それとも話をするだけ無駄だと断じたか何も言わない。

「園田さんの無償、かつ安全な復活。そしてあなたに人や仲間を殺す罪を犯させなかったこと。そのどれかに少しでも恩義を感じるというのなら、少しの間だけ、私のことを信じていただけませんか、乾さん」

そう言い切って差し伸べられた手を、巧は掴まない。
しかし数瞬目を閉じ、葛藤するかのようにその拳を強く握った後、彼は決意を固めたように目を見開いて、一歩足を進めた。

「……先に言っとくが、お前らのじゃない、志村の身の潔白を明白にするためだ」
「結構ですよ。願わくば、もっと早く貴方と手を取り合いたかった」
「勘違いすんな、俺が信じたのはお前じゃない。野上と門矢だ」

そこまで言って、巧はつまらなそうに顔を背けた。
それをしかし満足げに見やりながら手を戻す村上が考えているのは、果たして言葉通り巧を仲間として受け入れられたためか、駒として利用できるためか。
そのどちらか判別はつかないながらも、士は一歩村上に歩み寄る。

「……うまくいったようだが、もちろんお前らの装備は必要最低限まで没収させてもらうぞ。村上、お前のオーガギアもな」
「……仕方ありませんね」

流石に幾らかの躊躇を含ませながら、村上はオーガドライバーとポケットのメモリを投げる。
同様に良太郎もベルトとパス以外の装備を士たちに渡した。
だが、それを受けてなお士は村上に警戒の目を向ける。

「おい、誤魔化せると思うなよ、オーガフォンもよこせ」
「いえ、これは私が預かっておきます。幾ら私が上の上たるオルフェノクとはいえ、乾さんにオーガを纏われれば危うい。最低限の装備ということなら、これで構わないでしょう」

それに、と村上は続け、画面と液晶を士たちに公開しながら、数桁の番号をオーガフォンに入力する。
最後に通常の携帯電話にも見られる通話ボタンに手をかけると、周辺から軽快な音楽が流れ出す。
何事かと辺りを見渡せば、巧がデイパックから驚いた表情でファイズフォンを取り出していた。

「……おわかりいただけましたか?これこそが志村純一の正体を暴く切り札というわけですよ」

そうして村上は自信に溢れた敏腕社長の笑みで、三人を見渡した。

284 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:57:38 ID:1mUuHQx20





村上の説明した作戦は、解き明かせば簡単なものだった。
村上はタワーで垣間見た本来の志村の性格を、相手を追い詰めた際自分の功績をしゃべり出す、そういった自尊心の塊だと判断し、全ての罪を彼に自白させることを考えた。
もちろんそれを又聞きで巧たちに伝えたのでは意味がなく、またその場に彼らがいては話すはずもない。

故に考えたのだ、“その場にいないままに、彼らが話を聞けたなら、と。
そんな奇跡を可能にする手段は、既に彼らの手の内にあった。
そう、ファイズフォンと、オーガフォン。

ただの変身アイテムでなく通話機能を持っている携帯電話としても使用できることを志村は失念、或いは覚えていても自分と巧が繋がっていると考えもしない以上思考にも浮かばないはずだと、村上は確信していた。
そうして、オーガフォンを持った自分は志村のみを引きつけ、残るフィリップと橘、そして涼を一瞬でも良太郎が引き受け、本格的な戦闘になる前に巧と士が現れて止める。
その場で良太郎が変身を解除しもう変身手段がない状況になった上で志村と村上の会話を聞き、天美あきらと園咲冴子の殺害犯を特定、シロであった参加者の援護と或いは生身の良太郎の殺害という形になることを、全員が同意した。

そして作戦を決めて一時間ほど経ち、病院近辺についた彼らは、病院に残るのが志村、橘、フィリップの三人のみであることをキバーラによる偵察で把握した後、手順通り良太郎と村上のみでその姿を現した、ということである。

「準備はいいですか?ウラタロスさん」
「もちろん、ドッキリは大得意だしね」

小声で確認を取る村上に同じく小声で茶化しつつ、ウラタロスは答える。
今度こそ誰も失わない、その決意だけは嘘ではないとそう決意して。

「――見つけましたよ、志村純一」

一世一代の大化かしが、始まった。
志村も敵ながら見事としか言い様がない演技で自分たちに怒りをぶつけているところを見ると、ここにいる五人の内三人が何かを演じているのは、全く以て皮肉だと思う。
しかしそんな中で誰にも見透かされず自然体を装いつつ、ウラタロスは自身に憤りをぶつけてくる二人の仮面ライダーに視線を送る。

姉である冴子と、友の仲間であるというあきら。
その二人を殺されたと怒る彼らの正義心を弄んだ志村への怒りがぶり返し思わず叫びそうになるが、持ち前のクールを崩さず彼は静かに呟いた。

「変身」
――ROD FORM

285 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:57:55 ID:1mUuHQx20





「どけ、お前の相手をしてる暇はない」
「そんな釣れないこと言わないでよ。って言ってもまぁ、僕が君たちを釣るんだけどさ」

村上が手順通り志村のみを引きつけた後、ギャレンとサイクロン、二人を前に電王は不適に言い放つ。
その言葉に特に何を返すでもなく、ギャレンは油断なくラウザーを構え、そのトリガーに指を――。

「そこまでだ、橘、フィリップ」

かける前に、後ろから現れた巧と士にそれを阻まれた。
そして、手順通りに動いている彼らと違い、橘とフィリップはこれ以上ない困惑を見せる。
何故、冴子とあきらを殺した相手と彼らが一緒にいるのか?

状況に一切理解の追いつかないギャレンを尻目に、電王はその腰からベルトを外し、そのままギャレンたち越しに士にデンオウベルトを投げ渡す。
それを見届けウラタロスが良太郎の身体から弾かれると同時、そこにいるのは先ほどまでの余裕の欠片もないただの青年。

「……これは一体、どういうことだい?ディケイド」
「悪いが、今は説明してる時間がない。取りあえずこれを聞いてくれ。話はその後だ」

ますます困惑を深めるサイクロンの絞り出したような疑問に、しかし士は巧が手に持つファイズフォンを指さす。
何事かと良太郎から視界と銃口を外さぬままギャレンがそれに近づいたその時。

『そんな見え透いた芝居はやめたらどうです?どうせここには貴方の“仲間”もいない』

その電話越しに、しかし鮮明に聞こえる声に、彼らの中で、幾らかの疑問は自然と氷解した。

286 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:58:11 ID:1mUuHQx20





「――事情は彼が今、全て述べた通りですよ。ご理解いただけましたか?乾さん」

電話越しに小さく「あぁ」と震える声が返ってきたことで、村上は勝利を確信する。
自分を疑った者たちの誤解を解いた確信があったのもそうだが、何より目の前の愚か者に対して、完全に勝利した確信があった。
何せ、彼は自分が勝ったと自惚れその罪を自白したのだから、愚か者としか言い様がない。

そうして目の前に這いつくばる志村を物理的にも心理的にも見下しながらローズは彼の命を絶やそうとその手を翳す。
それに志村はまだ何か手でもあるのか、しかし自分への殺意を漲らせた瞳を向けて。

「――待て」

声と共に不意に飛び込んできた新たな戦士に、両者とも目を向けた。

「橘チーフ!」

それを見て先ほどまでの殺意はどこへやら一気に正義の仮面ライダーの皮を被った志村は、そのまま彼に向けて走り出す。
或いは東京タワーで良太郎にしたように彼に自分を任せここから逃げる算段なのだろう。
二度も同じ失敗をするわけにはいかないとローズは先にギャレンに攻撃するべきか思案するが――。

――パンッ

辺りに響いた乾いた銃声に、それを遮られた。
ふと見やれば、それは自分に向けてではなく志村に向けて放たれたものであった。
咄嗟の判断で急所は外したようだったが、しかし彼の狙いはその命ではなかったようで。

「その血……、お前、やはりアンデッドだったのか」

失望とも、怒りとも取れる震えを声に乗せながら、赤い戦士、ギャレンは呟く。
見れば弾丸が掠った箇所から伝った緑の血が、彼の頬を醜く染めているのが見える。
それを手でなぞり一瞥して、しかし志村は吹っ切れたように乾いた笑いを吐いた。

「ふっ、今更気付いたのか……全く以ていつの時代も笑えるほど間抜けだな、お前は」
「志村――!」

いきなり豹変した志村をしかしギャレンは油断なく撃つ。
またもすんでの所でそれを躱し先ほどと同じ展開を辿るかと思えば、しかし今度は志村の手に新しい力が握られていた。
それを周囲のガラス片に晒して、彼は冷たく叫んだ。

「変身」

妨害のためにギャレンが放った弾丸が彼の身を貫くより早く、彼の身は変わっていた。
それは、先ほどまでのライジングアルティメットとの戦いで秋山蓮が纏った鎧、ナイトそのもの。
遺品を探したもののナイトのデッキは見つからなかったとほざいておきながら、それすら自分の手元に置いておく為の嘘だったとは。
最早彼の言った言葉に真実はないとギャレンが断じるか早いか、ナイトはそのデッキからカードを引き抜く。

――SURVIVE

電子音声が新たなナイトの形態の名を告げるのと同時、彼の鎧は風に包まれ蒼く、そしてより強固に、変化した。
仮面ライダーナイトサバイブ。
殺し合いのライダーバトルに願いのため生き残る決意をした男の鎧を、今死神が纏った姿であった。

287 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:58:26 ID:1mUuHQx20

「何故さっき、お前を殺さなかったか、教えてやろうか?橘」

盾と剣が一体化した自身の武器、ダークバイザーツヴァイより剣を引き抜きつつ、ナイトは問う。
それにギャレンは答えないが、しかしナイトは愉悦の笑みを浮かべ。

「同じ世界だからじゃない。――お前なら、何時どんな時でも楽に殺せるからだよ」

そう言って、先ほどまで浮かべていた好青年の笑顔と真逆の不気味な笑い声を発する。
不愉快なその声に思わずローズすら顔をしかめる中、ギャレンはまたラウザーを中段に構え直して。

「本当にその通りかどうか、試してみるか――?」

対するギャレンも、その怒りを静かに燃えたぎらせながらそう告げた。

「……どうやら、私の出る幕は終わりのようですね」

一方で、一瞬で蚊帳の外に押しやられたローズはそう呟いた。
先ほど士たちより情報として変身制限について聞いたことの真偽を確かめる意味合いもあり変身は解いていないが、しかしその覇気は失せている。
無論、志村を逃がす気はないし、橘と呼ばれた男が敗北するなら自分が志村に引導を渡してやることに変わりはない。

しかし、わざわざ勝利の見えた戦いに首を突っ込んで疲労するなどと言う愚を、自分は犯す気もなかった。
故に、ただ見届ける。
自分を騙した罪の重さを噛みしめながら、志村が逃れようのない死から足掻く様を。

橘とかいう男に愚かだと突きつけるお前も、端から見れば同程度だと嘲笑しながら、彼は、ただ戦いを見守っていた。





「そんな……志村純一が姉さんと天美あきらを殺していたなんて……」

ファイズフォンから聞こえてくる音声で志村がその罪を自白したのを聞き終えて、フィリップはその膝をつく。
首輪を解除するという話題に対し焦りを見せていたことに違和感を覚えていたものの、しかしここまでの邪悪だなどと考えもしていなかった。
変身は解かないものの既に戦意を喪失したも同然の彼を尻目に、ギャレンは何も言わずその足を志村の下へ進める。

「橘、大丈夫なのか?お前はさっきまであいつを仲間として……」
「あぁ、確かに信頼を置いていた」

後ろから投げかける士に返しつつ、ギャレンは「だが」と続ける。

「だが、俺にはアンデッドを封印する義務がある。もしあいつが園田真理を殺害したあの白いジョーカーなら、俺がそれを倒す」

そこまで言って、これ以上の話は不要だとばかりにギャレンは駆け出した。
それに自分も追随すべきか、と懐よりカードを取り出すが。
横に座り込み茫然自失とする巧を見やって、それをやめる。

その瞳には騙されたことに対してではなく仲間を殺した相手を信じていた自分に対する不甲斐なさのような感情が見て取れる。
この状態の彼を放置するのは余りにも危険か、と考えるが早いか巧は胸を押さえ蹲った。
事情を知る士以外の二人が驚愕に目を見開くのに対し、巧はしかし悔しそうに嗚咽を漏らし拳を何度も地面に叩きつける。

「クソッ、クッソォォォォ!!!」

288 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:58:42 ID:1mUuHQx20

今まで士が二度見たそれのいずれよりも多く排出される灰に戦慄を覚えつつも、しかし巧は強く、強く吠えて。
流石の士もかける言葉を見つけられぬままに、周囲には巧の嗚咽が響き続けていた。





「はぁッ!」

かけ声と共にその怒りすら弾丸に込めてナイトに放つのは、ダイヤの意匠をその身に刻んだ仮面ライダー、ギャレン。
それを呆気なく切り落としながら、ナイトは飛びかかり、その剣を一閃する。
ギャレンを一撃で戦闘不能に持ち込みかねない威力で放たれたそれを、しかしギャレンはラウザーで強引に受け止め、空いた左腕でアッパーを放ってまたも距離を引き剥がした。

(こいつが、志村が本当にあきらと冴子、そしてヒビキと園田真理を殺害した白いジョーカーだと言うのか……)

そうして攻撃を放ちながら、ギャレンの鎧を纏う橘は思う。
フィリップより見せられた園田真理殺害の犯人は自身の知るジョーカーに非常に酷似した、しかし自身の知るそれと色が異なる怪人であった。
橘自身も、通常目にすることが出来るトランプにジョーカーが二枚存在することも珍しくないことから以前その存在を疑ったことがあった、もう一人のジョーカー。

彼の世界ではついぞ出会うことのなかったその存在が、まさかこの場に呼ばれているとは。
そしてもう一人のジョーカー相川始と同じく仮面ライダーとして、しかし彼と違いその鎧を己が目的のためだけに纏う外道であったとは。

(何が剣崎の遺志も継いで戦う、だ。何が未来でも仮面ライダーの正義は変わらない、だ……!)

今までに彼が吐いた“善良な仮面ライダー”としての言葉の全てが、橘の神経を逆なでする。
それを思い出し、そしてそれにむざむざと騙され信用した自分を思い出す度、彼の胸は今までのどんな時より熱く燃えさかり。
そして、それにつられるように、彼の融合係数は爆発的に上昇していく。

ギャレンの鎧がより強固に、そしてより威力を増していくのを感じつつ、ギャレンはまたその銃口をナイトに向けた。
しかし、それを受けるナイトは「ふん」と鼻を鳴らす。
そのまま、ギャレンの弾丸を盾でやり過ごしデッキよりカードを引き抜いた。

――SHOOT VENT

電子音声を受けダークバイザーツヴァイが弓のような形に変形したかと思えば、彼はそこからエネルギーの矢を放つ。
まさかナイトが遠距離攻撃に移行できるなどと思いもよらなかったのかギャレンはその胸から火花を散らし吹き飛んだ。
しかし無様にその身体を地に伏せることはしない。

先ほどの戦いでずっと伸びていたのだから、もう倒れている暇などないと言わんばかりに、その両足をしっかりと地面に突き立てていた。
しかし確かにその身体がふらついたのを見て、ナイトは矢を連射する。
一撃、また一撃とその身を削る度、中の橘には意識を手放しかねないほどの衝撃が襲う。

ラウザーを握るその手をナイトに向ける暇も与えられぬまま数えきれない矢をその身で凌ぎきったギャレンは、しかし今遂にその膝をついた。
だが、肩を上下に大きく動かしながらギャレンは未だ健在。
なればもう矢を放つより直接その命を刈り取りに向かうべきか、とナイトはその手に剣を取る。

「俺の言ったとおりだったでしょう、橘チーフ」

その口調を正義の仮面ライダーで未来の自分の部下、“志村純一”のものにしながら、ナイトは笑う。
結局は自分に敵うはずなどなかったではないかと言葉とは裏腹に橘を罵り嘲る意図しか持たずに。

「最後に一つだけアドバイスしてあげましょう。あなたは人を不用心に信じすぎなんですよ、ダイヤのカテゴリージャックにトライアルB、天王寺……何度騙されても疑いすらしない。本当に貴方は心優しい愚か者で――最高に扱いやすい、理想の上司だったよ」

289 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:58:57 ID:1mUuHQx20

またも口調を冷酷なアンデッドのものへ戻して、ナイトは剣を振り下ろす。
それは難なくギャレンの身に到達しその身を切り裂か――ない。

「なッ……!?」

ナイトが狼狽えるのも無理はない。
先ほどまであそこまで容易に切り裂くことが出来、またダークアローで傷ついたはずのアーマーが、今一層の堅さでこの剣を拒んでいる。
それに理解が追いつく前に、ギャレンは自身の肩に突きつけられた銀の剣を、しかと握りしめて。

「――確かに俺は、様々な存在に利用されてきた。その度に大小問わず様々なものを失い……中には取り返しのつかないものもあった」

そのまま、ギャレンはその顔を上げ、静かに語り出す。
取り返しのつかない代償、自身の恋人や、志村に殺されたこの場で得た戦友を思い出しながら。
彼の言い分ではBOARDの設立者天王寺も自分を利用することになる、或いはしていたようだが、しかしそれすらも今はどうでもよかった。

彼は剣を握る手が返す刃で鎧を貫きその手をギャレンのそれより鮮やかな赤に染まることすら気にせず、力を込め続ける。

「だが、疑うだけでは、何も始まりはしない。もし何度俺の信頼が裏切られようと、信じ続けてみせる。……ジョーカーを信じた、剣崎のように!」
「くッ、この手を離せ、離せェェェ!!!」

スペックで圧倒的に勝るナイトが全力を込めても、その剣はビクリとも動かない。
それに目の前の橘が持つ融合係数が驚異的な高まりを見せているのを感じて、ナイトは喚き、バイザーでギャレンの身体を乱打する。
しかし、そんな攻撃など意にも介さず、彼はその右手に自身の銃を構えて。

「だから俺は……疑うより、信じてみたい。何より、自分の可能性を!」

瞬間ギャレンがトリガーを引き絞ったかと思えば、放たれるのは凄まじい威力と連射生を持った彼の弾丸であった。
予想だにしなかった威力に思わず剣すらかなぐり捨ててナイトは絶叫と共に後ずさる。
真の姿であったなら或いは封印が可能であったかもしれないダメージを身に刻みながら、しかしナイトは根性とギャレンへの恨みだけでカードを引き抜いていた。

――FINAL VENT

放たれた電子音声は、彼の切り札を意味するもの。
それにギャレンも何とか立ち上がり、自身最大の一撃のためにラウザーより三枚のカードを引き抜く。

――DROP
――FIRE
――JEMINI
――BURNING DIVIDE

ダイヤの5,6,9、それぞれその手に馴染むほど使い込んだアンデッドの力が、今またその身に宿る。
同じく切り札の準備を完了させその身をバイクへと変形させたダークレイダーに跨がったナイトの放った拘束弾をジャンプで躱し、高く高く、跳んだ。
それにナイトも自身の肉体毎ダークレイダーに包み込み、音速の勢いで以て肉薄する。

宙に跳んだギャレンの身が二つに分かたれたかと思えば、次の瞬間彼はその身を翻して。

「ハアァァァァァ!!!」

その爪先と、ナイト自身を弾とした音速の弾丸が接触した瞬間。
辺りは、爆炎に包まれた。

290 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:59:14 ID:1mUuHQx20





「ぐあッ……!」

爆炎のインパクトの後、数秒続いた硝煙の嵐から先に吐き出されてきたのは、ギャレン、否生身を晒した橘朔也であった。
では、志村はどうなったのか、その疑問は、瞬間に霧散する。

「残念だったな、橘……!」

見るからにボロボロな彼を前にして、しかしその身を未だナイトの鎧に包んだナイトが、その姿を現したため。
彼らの勝敗を分けたのはただ一つ、その身に纏う鎧のスペック差があまりに大きすぎたこと。
確かにギャレンの融合係数の跳ね上がり方は元の世界でのいずれをも大きく超えかねない圧倒的なものだったが、しかしそれでもなお通常形態のギャレンでは強化形態のサバイブには及ばなかったのだ。

自身の勝利に酔いしれるナイトを尻目に、やはり自分が決着をつけるべきか、とローズはその重い腰を持ち上げかけて。
しかし傷だらけの橘がなおもその身体を起き上がらせた為に、それを中断する。

「まだだ……、まだ俺は終わってない……!」

限界を超えたダメージを背負い、しかしその瞳に宿る戦意だけは萎えることない橘を視認して、ナイトは大きくため息をつく。
自身の正体がバレた今フィリップの殺害を最優先すべきだと言うのに、その前座である橘にここまで手間取らされるとは。
この身に纏う鎧が決して弱いわけではないことが伝わってくるのも相まって、彼の苛立ちはより一層強まっていく。

「何が、お前をそこまで掻き立てる?」

気付けば、呆れ半分にナイトはそんな言葉を彼に投げかけていた。
自身の見てきた橘のいずれの顔とも違う、目の前にいる彼は、確かに自分が考えていたよりずっとしぶとい存在だったと、認めざるを得ないだろう。
だが、何故。

恋人を失い、仲間を失い、そして何度も騙されあらゆる害を被り犠牲を払ってきたというのに、何がこの男を動かすというのか。
未来で長く見、そして理解しきったと思っていた男の知らない一面に、志村はそんな言葉をかけてしまっていた。
そして、その投げかけに対し橘は思考を巡らせ、しかし最後にその顔に儚げな笑みを浮かべる。

「決まっている……、信じた組織も、愛した人も、尊敬する先輩も、友すら失ったとしても消えない思い……萎えることない思い……、それは、正義だ」

臆面もなく、橘は言い切る。
全てを失い何度裏切られようと自分が信じた正義に殉じて戦う者こそが、自分の信じる仮面ライダーなのだ、と。
しかしそんな橘を見て、ナイトはついに吹き出す。

本当にこの男は、訳の分からない馬鹿だ。
どうしようもなく馬鹿で、そして理解不能な存在だ。
全く以て、こんな男に聞いたところで碌な答えが返ってくるはずもなかったとナイトはそのバイザーを弓へと変形させて。

「なら正義の名の下に死ね。仮面ライダーギャレン」

291 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 17:59:38 ID:1mUuHQx20

躊躇なく、それを放った。
それを受け橘の身体が仰向けに倒れるのも確認せず、ナイトはその身を翻す。
その視線の先にいるのは、先ほど自分を蹂躙した村上、ローズオルフェノク。

彼に先の借りを返すのが先か、フィリップを殺害するのが先か、と自身の標的を見定めようとして。

「――待て」

不意に後方より届いた聞き慣れた声に、思わず振り返る。
そこには、自身の二の足で確かに地面を踏みしめる橘の姿。
何故、まだ立てる。

自分の矢は確かに彼を貫き、その命を刈り取ったはずでは。
そんな疑問が浮かぶ彼に対し、彼はその答えを右手で高く持ち上げた。

「何だ、それは……!」
「――変身ッ!」

ナイトの問いに答えることもなく、橘は叫ぶ。
その手に持つは、蜂型の自立型ガジェット、ザビーゼクター。
彼は今、橘のいかなる状況でも揺るがない正義を目に、自身の力を彼に与えることに決めた。

それは、影山瞬、光夏美、矢車想、北條透……数多の参加者を渡り歩きしかしその身を委ねる運命のパートナーを決めかねていた気まぐれな蜂が、遂にこの場で相棒を定めたのを意味していた。
しかし、そんなことを二人は知らない。
橘は自身の感覚が導くままその力を手にし、そしてナイトは何が起こったのかすら把握できぬままただ狼狽えるだけだった。

――HENSHIN

橘がザビーゼクターを左腕のブレスに装着すると同時、その身は銀と黄に染まっていく。
変身完了を告げるようにその瞳が闇夜に輝くと、ザビーはそのままブレスに収まったゼクターを半回転させて。

「キャストオフ!」
――CAST OFF
――CHANGE WASP

その身から重厚なアーマーが放たれたかと思えば、そこにいるのは全身を黄で染めた仮面ライダーザビー、そのライダーフォームであった。
新しい強さを手に蘇る思いを胸に抱いて、彼は構える。
全ての正義に生きた仮面ライダーの分まで、背負い戦うと決めて。

そんなザビーを前に、ナイトは苛立ちと共にカードを引き抜く。

――TRICK VENT

その音声と共に現れたのは、通算四人のナイト。
単身で、かつ素手のザビーに勝ち目はないように思えるが、しかし彼は諦観の欠片も見せずその手を腰に運んだ。

「クロックアップ!」
――CLOCK UP

電子音声が辺りに響くと同時、彼の時間は周囲から切り離される。
一気に襲いかかったナイトの動きがしかしスローモーションになった間を、ザビーは駆ける。
剣を振り下ろしてきたナイトには拳の乱打を、矢を放ったナイトには同じくザビーゼクターより針を射出。
残る二人のナイトの内、警戒のためか一人を庇い守るように立つそれを思い切り蹴り飛ばし、最後のナイトにその身に宿る切り札を発動する。

292 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:00:25 ID:1mUuHQx20

「ライダー、スティング……!」
――RIDER STING

ゼクターの中心に位置するフルスロットルスイッチを押し込めば、彼の全身に力が沸き起こった。
それが左腕の一点に集中するのを感じながら、橘は思う。

(この一撃で、全てを終わらせる。力を貸してくれ、剣崎、小夜子、桐生さん、そして、ヒビキ――!)

死んでいった仲間の、恋人の、先輩の、友の顔を思い浮かべながら、彼はその力が臨界点に到達したのを感じて。

「ハァッ!」

かけ声一つ、ナイトの鎧を深く突き刺した。





――CLOCK OVER

特殊な時間軸から弾き出されながら、ザビーは大きく肩で呼吸する。
如何にナイトサバイブの鎧が頑強であっても、先ほどの手応えであれば問題なく戦闘不能に持ち込めたはずだ。
そうして志村の下にその足をふらつかせながら向かおうとして。

「なッ……!?」

彼の胸を、紫の光線が打ち据える。
あまりに規格外のダメージを誇るそれに一瞬で変身を解除されながら、橘は大きく転がった。
一体何が、と顔を上げれば、そこにいたのは白の鬼札(ジョーカー)。

293 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:00:41 ID:1mUuHQx20

「殺す……、全員殺す……今、ここで!」
「これが……もう一人のジョーカーの姿か」

フィリップが撮影した悪魔そのものの姿から志村の声が発せられることでその正体を感化しながら、しかし橘の手には対抗する手段がない。
それを見てローズがゆっくりとその足を戦場に向けるも、しかしそれは止まる。
彼の身がその身に宿ったオルフェノクのものから人間のものへ瞬時に変貌したため。

「――これが変身制限、ということですか」

気付けば、もう十分の時間が過ぎていた。
士たちからギアを取り戻さないことには、自分も今の志村に刈られる存在でしかない。
そんな絶体絶命の二人を前に愉悦の声を上げゆっくりとアルビノジョーカーは歩を進め。

「お前らは全員殺す。まずは俺の正体を暴いた村上、それから橘。後の奴らはその後だ」

ククク、と不気味に笑うジョーカーを前に、二人は戦慄する。
しかしその手に漲らせたエネルギーを放つ直前に、そこに近づいてくる足音が一つ。

「――待て」
「乾!」

声に対してそちらを一瞥すれば、そこにいたのは乾巧。
その存在に橘は思わず声を上げるが、しかしすぐにそれは消えた。
何故ならそこにいた彼の身体からは、絶え間なく灰がこぼれ落ちていたため。

「乾さん、まさか貴方は……!」

自身に純粋な驚愕を向ける村上に一瞥だけをくれてやり、巧は白のジョーカーに向き直る。
その腰にはドライバー、その手にはファイズフォン。
それはつまり今から彼が戦おうとしていると言うこと。

満身創痍で自身の前に立つ巧を前に、嘲笑を浮かべるのはやはり志村だ。

「そんな死にかけの身体でまだ俺の前に立とうと言うのは、あまりにも愚かじゃないか?乾」
「さぁな、知ったこっちゃねぇよ」

ぶっきらぼうにそう返しつつ、彼はその手に持つファイズフォンに慣れた手つきで5・5・5・ENTERを入力。
それと共に聞き慣れた待機音声が周囲に響く中、決意と共にその右手を大きく挙げた。

「変身!」
――COMPLETE

次いでドライバーにファイズフォンを叩き込めば、その身はフォトンブラッドの粒子に包まれて。
瞬間そこに現れたのは、ファイズの世界を代表する夢の守人、仮面ライダーファイズ。
その身を暗夜に輝かせながら、彼はその手にファイズエッジを構え、かけ声と共に突貫する。

相対するジョーカーがそれを受け止めたのは、園田真理を殺したデスサイスの名を持つ鎌。
それに対し一層大きくファイズが吠えたことで、戦いの幕が切って落とされたのだった。

294 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:01:03 ID:1mUuHQx20





「クソッ……何でこうなるんだよ……!」

時間は少しの間巻き戻る。
志村の犯行自白を聞き届け橘が戦地に向かうのを見た戦士たちが彼の加勢に向かおうとした瞬間に巧が蹲ってしまったのだ。
良太郎がイマジンと契約したのかと巧を訝しげに見る中で、一人事情を知っている士は静かに口を開いた。

「見ての通りだ、こいつの命はもう、消えかけてる」
「何だって……、それはどういうことだ、ディケイド」

思わず掴みかかりそうになる拳を収めながら、フィリップが問う。
それに対しまたも説明を開始しようとした士を制したのは、巧であった。

「そのままの意味だ。俺はもう寿命で、多分何をしてももう何時間もしないうちに死ぬ。……どこまで持つかも、正直分からねぇ」

そう言って、彼は一旦灰の止まった掌を見る。
しかしもうそれが人の形を留めているのすら奇跡といえる状況で、彼が笑顔を浮かべるはずもなく。
それに対しやるせなさに息を吐き出したのは、フィリップであった。

「そんな身体で、ライジングアルティメットと二回も戦ったりしたら……寿命が縮まって当然だ……!」

言われて、巧は思い出す。
人間に捕まりオルフェノクの細胞を破壊し寿命を縮める薬を投与された後に戦った相手は、どれも強大極まりなかった。
オルフェノクとして生きる決意を固めた木場、オルフェノクの王、そしてここに連れてこられてからもテラーにユートピア、ガドルにライジングアルティメット、そしてウェザー……。

そのどれもが万全の装備を備えても勝利を確信できるような相手ではなく、またその戦闘でファイズを、オルフェノクの力を使う度に、彼の寿命は加速度的に摩耗していった。
元々ファイズの鎧を走るフォトンブラッドはオルフェノクにとって害になるものなのだから、弱り切った身体で纏えばそうした副作用が如実に出ても仕方なかったのだ。
しかし彼は文字通り命を燃やし戦い続けた。

その身が崩れ去るその瞬間まで、何かを守るために戦いたい、とそう願って。
しかし、もうそれも叶うまい。
先ほど村上に遭遇した際オルフェノクの力を使い戦闘に至らなかったのは、禁止エリアなど理由ではなく、オルフェノクとして戦えばあそこで寿命を迎えるだろうことを、理解してしまったからだ。

理屈ではなく直感での理解だったが、恐らく間違ってはいない。
その証拠として、今この瞬間に戦闘を介してもいないのにこれほどの灰がこの身から吐き出されているのだから。

「おい、フィリップ、良太郎。こいつを頼む、俺は橘を助けに行く」

295 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:01:20 ID:1mUuHQx20

ふと気付けば、士がフィリップと良太郎に言伝を残して志村と戦いに行こうとしているらしいことが見て取れた。
今の自分の感覚では橘が去ってから数十秒しか経っていないはずだが、見れば橘は変身を解除されている。
とうとう意識まで自分の思い通りにならなくなったらしいと自分を笑おうとして、乾いた声しか絞り出せなかった。

それに士も思わず振り返る中、彼の背中に隠れて今の今まで見えなかった志村の現在の姿を視認する。
それは、フィリップの撮影した通りの、白い悪魔。
その姿を見たとき、巧は自身の目にもう一度戦意が燃え上がるのを感じて。

「門矢、あいつは俺がやる」
「だが、今のお前があいつと戦えば……」
「やらせてくれ」

いつもよりずっと力の入らない足を手で支えながら、巧は立ち上がる。
その彼の姿を見て、士は諦めたようにため息をついて「わかった」とだけ短く呟いた。
その言葉と何より彼の目に込められた数々の思いをしかと受け取りながら、巧は今また橘の命を奪おうとその足を進める悪魔に向かう。

一歩一歩足を動かす度に身体から力が抜けていくのを感じつつ、しかしその胸に宿る思いは前よりもずっと熱く抱いて。

「――待て」

確かな声で、彼は戦士としてその場に立った。





ファイズが放つ未知の粒子迸る紅の剣を、その手に持つ鎌で受け止めるのは、彼に対峙するジョーカーであった。
しかし、数回の打ち合いしか成していないというのに、もうファイズの肩は上がっている。
既に限界を超えたダメージを蓄積した中で寿命をも迎えかけているのだから、それは最早どうしようもなく当然のことであった。

しかし彼の中の闘志は衰えず、むしろ高まっていく。
だがそんな彼と相対するジョーカーは嘲笑を浮かべ。

「どうしました、もう限界ですか?“乾さん“」
「――ッ!」

明らかな挑発に対しかけ声一つエッジを大きく凪ぐが、しかし難なくそれを躱されむしろその腹に蹴りを食らってしまう。
それに呻き声を上げる暇もなくその身にヘルファイアの炎が容赦なく降り注いだために、ファイズは大きく吹き飛ばされた。
その身を木に強く打ち付けながら、ファイズはそのまま力なく座り込む。

目前に徐々に迫り来る白いジョーカーを見やりながら、ファイズは二人の男を思い出していた。

『――冴子は、僕の妻でね。ここに来る前に少しいざこざはあったけど、賢く美人で、自慢の妻なんだ』

知り合いについて情報を交換している時に、どこか遠くを見ながらしかし嬉しそうにその名を言っていた霧彦のことを。
彼が街と同じほどに愛した生涯ただ一人の伴侶、それをこいつが、殺した。

『あきらは俺の弟子じゃなかったけど、よく知ってるよ。ちょっと融通聞かないこともあったけど、真面目で良い子だった』

イブキにどう言えばいいんだろうなぁとぼやきながらあきらとの思い出を考えるヒビキのことを。
彼が気にかけた友の元弟子で、既に一般人として鬼の道を諦めた、しかし心優しい彼女を、こいつが、殺した。
それを思う度、彼の既に消えかけたはずの腕の感覚が鮮明になっていく。

296 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:01:36 ID:1mUuHQx20

勢いよく顔を持ち上げそのままジョーカーの振り降ろす鎌をその剣で受け止める。
限界を超えたファイズの攻撃に狼狽えるジョーカーを気にもとめず、ファイズは自身のドライバーに手を伸ばした。

――EXCEED CHARGE

瞬間彼の身体を走ったファトンブラッドは、彼の右手に流れ込み、その赤い刀身を一層輝かせた。
それにジョーカーが反応する前に、彼は大きく剣をなぎ払い。
スパークルカットの名を持つ一撃を、デスサイスにぶつける。

それを受け数瞬デスサイスが悲鳴を上げるが、しかしそれすら気にせずファイズはエッジを振り切った。
赤いφの字が宙に浮かぶ中、ジョーカーは苛立ちと共に半分に折れたその得物を投げ捨てる。
それを機とみたかファイズはミッションメモリーをファイズショットに入れ替え、その手につけたファイズアクセルから黒と赤のミッションメモリーを抜き去って。

――COMPLETE

それをファイズフォンに挿入すれば、その身は一瞬で黒の身体に銀のラインの走る戦士、仮面ライダーファイズアクセルのものへと変貌する。

――START UP

防御力と引き替えに驚異のスピードを得た彼は、傷つき既に限界の身体をしかし加速してジョーカーに神速の勢いで肉薄。

「――ラァァァァァァッ!!!!」

咆哮と共に縦横無尽に飛び交いそしてその拳を幾度となくジョーカーに放つ。
全ての彼に騙され殺されたものたちの怒りを、その拳に込めるように。
ヒビキという、誰もを信じ心を開く誰よりも大人だった男の思いも乗せて。

「いい加減に……しろぉ!」

しかしそれを受けるジョーカーも何時までもただでやられているはずはない。
いきなり周囲を紫の閃光が支配したかと思えば、それは辺りを爆炎で包み込む。
まるで自分がその神速の勢いについていけないなら、全てを破壊すればいいと言わんばかりの乱雑な攻撃だった。

しかし、それは少なくとも攻撃のみに神経を振り絞っていたファイズが相手のこの状況では、有効であった。
ただでさえ薄くなったアーマーの、その奥のコアに衝撃が直接到来して、ファイズは形容しがたい悲痛な叫びを以て大きく吹き飛ばされた。
強かにその身を地面に仰向けに横たえながら、その身を通常のファイズのものへと変えて。

まだ倒れるわけにはいかない、まだ諦めるわけにはいかないとそう感じながらも、抗いがたい睡魔に襲われて。
巧は、遂にその瞳を閉じた。





――目を覚ますと、そこは緩やかな斜面をした緑の大地であった。
それは確かに自分がこの場に連れてこられる前、真理と啓太朗と共に寝転がっていた河原の土手。
今までの全てが夢だったのか、と巧が混乱しつつも、ここは本当に気持ちの良い場所だとその心地よさのままにその目を閉じかけるが、しかしそんな彼に対し降ってくる声が一つ。

「――乾君、良い場所を知っているものだね、ここは風都のように良い風が吹く」

ふと声のした左側に視線を移すと、そこには既に死んだはずの霧彦の姿。
どうしてお前が、そんな投げかけを本来ならするべきだろうが、それをする気にはなれなかった。

「あぁ、たまにはこうして地に寝そべり天を見上げるのも悪くない」

右側から聞こえた声に振り向けば、そこには自身や霧彦と同じく仰向けに寛ぐ天道の姿。
既に死んだものたちが何事もないように自分と会話していることをしかし不思議に思うこともなく、彼は導き出した一つの答えを口にする。

297 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:01:51 ID:1mUuHQx20

「死んだのか、俺」

遠い目をしながらそう呟くと、しかし心のどこかがすっと軽くなるのを感じた。
もうこれ以上誰かの為に戦う必要もない、痛い思いも、辛い思いもしなくていいのだと。

「――本当に、それでいいのか?」

天道が、自分の心を見透かしたようにそう問う。
その顔はいつもの彼のように自信満々といった様子ではない。
ただ、本当に問うているのだ、自分の覚悟が、その程度のものだったのか、と。

それに対し、巧は黙って空を見上げる。
多くの人を騙し殺したあの悪魔は、許されざる邪悪だ。
しかしそれに負けて死んでしまった自分が、これ以上何か出来るとでも言うのか。

あれだけ頑張ったのだからもう休んでもいいではないか、と生前には抱くことのなかったような思いを顔に浮かべつつ、しかしそれを口にはしない。
それを口にした瞬間全てが終わってしまう気がしたのはもちろん、それだけでは終わらない自分が確かにいるのを感じたから。

「乾君、君が今死んだら、僕のスカーフはどうなるんだい?一体誰がそれを洗濯するなんて思うんだ?」

黙りこくる巧に、霧彦が起き上がりつつそう問う。
その顔には笑顔が浮かんでいたが、それは本心から彼を嘲るものでなく、彼の出す答えが分かっているための悪戯な笑顔に見えた。
それを横目で見やりつつ、しかし巧は何も言わず寝そべるまま。

「――お婆ちゃんが言っていた」

そんな巧に降ってくるのは――あぁ、見なくてもわかる――その人差し指を天に向け、儚げな表情を浮かべた天道の声。

「人に足が生えているのは、天に少しでも近づこうと努力した結果だ、もし地に伏せ空を見上げるだけでは、天に届くことはない、ってな。――お前も俺の夢を継いだなら、立ち上がれ、乾」

お前が天そのものだって言いてぇのかよ、と相変わらず主語の大きい彼の言葉をしかしどこか微笑ましい気持ちで受け止める巧。
彼は黙ったままだったが、しかしその顔には先ほどのような緩やかな死に対する思いは見られなかった。

「あーあ、ったく少しの間寝させてもくれねぇってのかよ」

がばっとその身を一気に起き上がらせながら、巧はぼやく。
その髪をぼさぼさと掻きむしって、その手に灰がついていることに、最早何も感じぬままに。

「心配するな、これで終わりだ。それが終われば、彼女にも会える」

達観したようにそう呟く天道の声を聞きながら、彼の意識はぼやけていく。
いや、むしろ急速に浮上して言っているという方が、正しいのか。
ともかく、天道の言う彼女、というのが誰なのか、思考の纏まらぬままに彼はその瞳を閉じかけて。

――巧!





もう一度目を覚ましたとき、そこにあったのは先ほどとは違って冷たい大地と戦闘による嗅ぎ慣れた、しかしいつまで経っても嫌な臭いだった。
その身を先ほどより何倍も重く感じながらしかし起き上がると、目前のジョーカーは今度こそ恐怖にも似た声を上げた。
橘朔也に、乾巧、呆気なく刈り取れると思ったはずの命が、何故こうまで自分の邪魔をし続けるのか、何も理解できないと言わんばかりに彼は狼狽する。

298 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:02:09 ID:1mUuHQx20

その姿に仮面ライダーの何たるかを深い部分で理解していなかったと判断できて、巧は思わず彼を笑った。

「何が可笑しい……もう死にかけの分際で、全てを支配し永遠に生き続けるこの俺を……笑うなぁ!」

それに怒りが爆発したのか、ジョーカーは猛進する。
先ほどまでの冷静さを、どこかに置き去りにしたように吠える彼を前に、ファイズは手首をスナップさせるのみ。
思い切り振りかぶったジョーカーの拳を刹那で躱しながら、ファイズはその右手を強かに彼の腹に放った。

呻き声と共に緑の血を吐き出す彼を前に、ファイズはその手にポインターを持ちながら、ふと思い出したことを口にする。

「――そういやお前、真理がお人好しって言ってたっけな」

その言葉は先ほど自分が村上に対して放った言葉だったはずだ、とジョーカーは思い出す。
しかし何の脈略もなく放たれたその言葉に、彼はただ困惑を残して。

「あの女はなぁ、お人好しなんかじゃねぇんだよ。俺が猫舌なのを知ってて夕飯に鍋焼きうどんを出してくるような、意地の悪い女なんだ」
「……何が言いたい?」

どこか遠くを見ながらぽつりぽつりと漏らすファイズに、思わずジョーカーは問う。
しかしそれを気にもせず、彼はドライバーに手を伸ばした。

――EXCEED CHARGE

放たれた電子音声と共に高まりゆくエネルギーを感じながら彼は妨害せんと近づいたジョーカーを殴り飛ばす。
今までを大きく超えるようなその拳のダメージにジョーカーが呻く中、彼は大きくその身を飛び上がらせて。

「――あいつを何もしらねぇくせに、偉そうにあいつを語ってんじゃねぇ!!!」

かけ声一つ、その右足を真っ直ぐにジョーカーに向けた。
瞬間、彼の身体を赤い円錐と共にファイズが貫いて。
その白の身体に大きくφの記号を浮かび上がらせながら、ジョーカーは、その身をゆっくりと倒した。





「……ぐっ」

呻き声と共に仰向けに横たわるのは、この場で志村純一、正義の仮面ライダーを名乗ったアルビノジョーカーであった。
自身の正体が村上にばれた時彼は、この場で殺せるだけの人間を殺してすぐに離脱することを考えた。
その場に現れた橘に負けはないと確信を持って挑んだが、勝負は痛み分け。

どころか手にするナイトの鎧がギャレンのそれを本来大きく凌いでいることを考えれば、負けを認めなくてはならないもので。
それは橘という男を長年見下し続けてきた彼には心底納得のいかないものだった。
故に彼だけでも殺す決意を以て本来の姿に変じたが、そこに乾巧が現れた。

とはいえ既に灰を吐き出し見るからに死に体だったために容易に殺すことが出来るだろう、彼と橘、村上を始末してこの場を去ろうと考え、戦闘を開始したのだが。
その結果が、これだ。
ほぼ万全に近い装備を得ながらの敗北に、彼は全く理解の追いつくことが出来なかった。

と、ふと視線を動かせば、そこには自身をこの状況に追い込んだ村上がいた。

「何の……用だ」

息も絶え絶えにそう彼に問いかけると、村上は自分を興味深げに見つめ。

299 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:02:28 ID:1mUuHQx20

「あなたの敗因はたった一つですよ、志村純一」

そう言い放った。
自分の敗因などという言葉に、志村はただ困惑する。
そんなもの、自分が彼らの実力を見誤ったとも思えないし、彼には一切理解の追いつかない部分であった。

「――あなたは、もっとも怒らせてはいけない男を怒らせてしまった……、ただそれだけです」

それが、自身を打ち倒した乾巧のことなのか、自身のペースを掻き乱しナイトを打ち破る大金星を上げた橘朔也のことなのか、それともそもそも彼らと戦う状況にまで持ち込んだ村上自身のことなのか。
そのいずれかは全く見当のつかないものの、彼はそれ以上村上に問うことも出来なかった。
パキン、と気持ちの良い音が響いた後見覚えのある緑の光に自分が包まれ、その意識を深い闇の中に、彼の身体は封印のカードの中に押し込められたのだから。

それを静かに拾い上げながら、村上はゆっくりとその場から踵を返し静かに離れていくのだった。





志村純一がその身をカードの中に封じ込められたのを見て、フィリップは姉の敵が取られたことを実感する。
出来ればこの手で討ち取りたかったが、士から事情を聞いた巧の戦いを、自分が汚すわけにもいかないとそう思い、その戦いを見守ることにしたのだ。
戦いが終わってもなおただ天を見上げるのみで立ち尽くすファイズに近づきながら、フィリップは慎重に言葉を選ぶために思考を巡らせ続ける。

「乾巧……君は――」
「言うなフィリップ、何も言わなくて良い」

かけるべき適切な言葉が見つからないながらにその口を開いたフィリップを、ファイズは止める。
その少しの動作だけでファイズの鎧でも抑えきれぬほどの灰が全身から吐き出されて、事情を聞いていない橘にも彼に先はないことを察することが出来てしまって。
誰もが黙り続ける沈黙の中で、しかしファイズはゆっくりとその顔を上げた。

「お前らに、夢……ってのはあるか」

唐突ながら聞いたそれは、その実問いではない。
ただ彼らの胸に自分自身が聞けばそれでいい、そんな言葉であった。

「俺は、他人からたくさん夢を託されてきた。例えば、霧彦とかな」

言いながら自身の懐より彼のスカーフを取り出したファイズは、それをフィリップに手渡す。
そのスカーフには幾分か灰がついていたが、しかしフィリップはそれを払うことはしなかった。

「フィリップ、このスカーフを洗濯してやってくれ。そしてお前の街で、一番良い風が吹くところにおいてやってほしい。それが、あいつの夢だった」
「当然だ、任せてくれ」

真っ直ぐな瞳で、しかしその眼を赤く充血させ潤わせながら言う彼を見て、ファイズは少し笑った。
それがなお悟った人間の笑い方のように見えて、フィリップは思わず彼を直視できなくなってしまう。
それを気にする暇もなく、彼は今度は士の方へ振り向いて。

思えば短い間の仲だったが、色々知った口を聞かれ様々なことを思った男だった。
こいつが破壊者だとしても、信じようと決めた自分を泣かせぬ為にも、彼は一歩進む。

「それからこれは、天道総司って男の夢だ。あいつと同じ顔をした、黒いカブトに変身する男に伝えてくれ。アメンボから人間まで、全ての命を平等に守る、それが天道の夢だってな」
「――あぁ、わかった」

300 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:02:52 ID:1mUuHQx20

返答に僅かに時間を要したことを少し気がかりに思いながら、彼は最後にそこにいる全員の顔を見渡す。
フィリップ、士、橘、良太郎、全員、善良な仮面ライダーであるはずだ。
少なくともこの中に志村のような正義を利用する邪悪は存在しないと、彼は信じたかった。

だから、継いでもらおう。
自分の夢も、彼らになら任せられるから。

「それから、これは俺の夢だ、お前らに、後を任せたい。世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに、皆が幸せになれるように。……これが俺の夢だ」

そう言って目を閉じかけて、もう一つ夢を思いつく。
どうせ最後なのだから、少しくらい臭い台詞も悪くない、とそう感じて。

「そして、皆の夢が、きっと叶いますように――」

そこまで言うと、彼の身からファイズの鎧は失せていく。
変身制限を迎えたために、その役目を終えたのだ。
しかしそのフォトンブラッドによる輝きが消えた後、そこにいるはずの巧の姿はもう存在しなかった。

灰の山に置き去りになったファイズドライバーと首輪を見て、しかし誰も泣いたりはしなかった。
彼という男が自分たちに残した夢の意味を、これ以上ないほど分かっているつもりだったから。
風にさらわれていく灰はいずれ、彼の友が愛した街や天にも届くと、そう確信できたから。





「なるほど、ここにカイザドライバーがあったのですね」

乾巧の死にただ一人その場で向き合わなかった男、村上は少し離れたGトレーラーで自身もよく知る王を守るためのベルトの一本を見つける。
草加雅人に支給されていただろうそれに全てのツールを取り付けながら、他の支給品に目を移そうかと考えたその時。

「――ここで、何してるんですか」

ふと、後方から訪れた声に振り向いた。
そこには、未だイマジンも取り付いていない生身の野上良太郎の姿。
それを視認しながらも、しかし彼は別段驚いた様子もなかった。

「貴方がここにいると言うことは、乾さんは逝ってしまったんですね」

ゆっくりと空を見上げた彼に、良太郎は警戒の目を向け続ける。
その手には自分のデイパックの他にもう一つを持ち合わせているようで、恐らくは村上のものだろうことが把握できた。
自分に届けに来たのだろうそれを受け取ろうと手を伸ばせば、良太郎は抵抗するようにその手を引っ込める。

301 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:03:07 ID:1mUuHQx20

恐らくはこんなところで単身行動していたことを彼は訝しんでいるのだろう。
それに気付いたのか、村上はいつものようにふっ、と笑ってGトレーラーより舞い降りた。

「心配しなくとも、このドライバーを秘匿するつもりなどありませんよ、私は志村純一とは違い、皆さんを出し抜くつもりなど少しも持ち合わせてはいない」

恐らく問題なく私のものと認められるでしょうしね、と意味深な言葉を続けながら、彼はカイザギアを手に垂らす。
それを見てもなおデイパックを渡そうとしない良太郎に困惑の表情を向けると、彼はその瞳を先ほどと同じく真っ直ぐ向けた。

「何で、乾さんが死ぬとき、そばにいなかったんですか」

その声は、静かな怒りに燃えている。
彼の死に際にこんなところで自分の戦力を確保している動きが単純に気に入らなかったということか、と村上は思い至った。
その程度のことで、とも思うが、しかしここで彼の機嫌を損ねれば今後自分の主催戦での立場も危うい。

それは新たに抱いた自分の方針にも背くことになる、と彼は一つ息を吸い込んで。

「彼が死ぬ間際に私がいる必要はないからですよ、それに――」
「あなたが乾さんと敵だからですか?あんなになってまで戦ったのに、その人が死ぬときまで、あなたは彼を憎んでたんですか?」

記憶。
それは人と人を繋ぐなによりも大事なものだ。
電王として戦い、また記憶を犠牲に戦う侑斗を目にして、その思いは良太郎の仲で非常に大きいものになった。

だから、その人を覚えている人の記憶は、一つでも良いものを持っていて欲しかった。
例えば死に際に残した言葉などは、その人の人となりを表すようなものだ。
だからそれを聞かずもしも村上が巧を恨み続けているというのなら、それは絶対に彼にとって許せないことであった。

しかしそれを聞いた村上は何も思うところはないようにいつものような凜とした顔をしている。
それに思わず良太郎は声を荒げそうになって、しかし村上はそれを制しゆっくりと話し出した。

「――あなたは何か勘違いをしているようだ。確かに彼と私の間には深い確執がありました。しかしそれはお互いの信念に基づくものだ、それが消える死の後にまで、私は彼という有能な同族を憎んだりはしない」
「なら、なんで……」
「私がいては、彼が笑顔で逝くことが出来ないからですよ」

村上は、臆面もなく告げる。
それに呆気に取られた良太郎を気にも留めず、彼は良太郎を真っ直ぐ見据えて。

「人は泣いて産まれてくる。それは仕方のないことですが……しかし死の瞬間の表情を決めるのはその人自身だ。私は、死の瞬間浮かべる表情にこそその人物の全てが現れると思っている」

自身の人生哲学を語る彼に、良太郎は何も言えない。
それを見ながら、しかし村上は続ける。

「私の信頼に応え志村純一を打ち倒した乾さんは、上の上たる存在だ。そんな存在が死に際に私の顔を見てその表情を曇らせるというのなら、私はその死に際から潔く去りましょう」

彼の言い方からすれば死に際の志村の前に現れたのはその逆という意味か、と良太郎は思うが、ともかく。
そこまでを一気に言い切って、村上は息をつき、しかしまた顔を持ち上げた。

「――乾さんは、笑顔で逝きましたか?」
「わかりません、最後まで、変身していたので……」
「そうですか」

302 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:03:21 ID:1mUuHQx20

短く答えた村上は、そのままゆっくりと廃病院の方へ足を進めようとする。
良太郎の手から力なくぶら下がるデイパックを受けとり、その中にカイザギアとオーガフォンを詰め込んで。

「――あの!」

その背中に、思わず良太郎は叫ぶ。
それに思わず振り返りながらも、村上は意外そうな表情を浮かべた。

「何ですか、野上さん」
「何で貴方は人間とオルフェノクの共存を考えたりしないんですか、そんなにオルフェノクに優しいなら、人間と戦わない道を探すことだって――」
「――我々に戦争以外の道はない」

どこまでも甘い良太郎の言葉に対する村上の言葉は、先ほどよりも強かった。
そこに揺るがぬ彼の持つ正義を感じて、思わず良太郎は怯んでしまう。
そんな彼を見て「もう結構ですか?」と踵を返し廃病院に向かう彼を見やりながら、しかし良太郎は彼を悪と断じることは出来ぬままで。

「それでも、僕は信じたい。貴方のことも、オルフェノクと人間が共存できるってことも」

誰からも甘いと断じられそうな危うい思考を抱きながら、しかしその瞳に誰より強い意志を抱いて、彼は村上の後を追うように駆け出した。
もう、誰も死なせたくないと決意を新たに抱いて。
誰よりも弱い彼は、しかしそれでも諦めず何かを救うために今日も走るのであった。


【乾巧@仮面ライダー555 死亡確認】
【志村純一@仮面ライダー剣 封印】
【残り20人】


【二日目 深夜】
【E-5 病院跡地】


【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、決意
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド、ディエンドライバー+ライダーカード(G3、サイガ、コーカサス)@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×2、不明支給品×2、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、キバーラ@仮面ライダーディケイド、
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
0:どんな状況だろうと、自分の信じる仮面ライダーとして戦う。
1:巧に託された夢を果たす。
2:友好的な仮面ライダーと協力する。
3:ユウスケを見つけたらとっちめる。
4:ダグバへの強い関心。
5:音也への借りがあるので、紅渡を元に戻す。
6:仲間との合流。
7:涼、ヒビキへの感謝。
8:黒いカブトに天道の夢を伝えるかどうかは……?
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、クウガ、ファイズ、ブレイド、響鬼の力を使う事が出来ます。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※参戦時期のズレに気づきました。
※仮面ライダーキバーラへの変身は光夏海以外には出来ないようです。
※巧の遺した黒いカブトという存在に剣崎を殺した相手を同一と考えているかどうかは後続の書き手さんにお任せします。

303 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:03:38 ID:1mUuHQx20




【橘朔也@仮面ライダー剣】
【時間軸】第42話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、精神疲労(中)、仲間の死に対しての罪悪感、自分の不甲斐なさへの怒り、クウガとダグバ及びに大ショッカーに対する恐怖(緩和)、仲間である仮面ライダーへの信頼、仮面ライダーギャレンに1時間45分変身不能、仮面ライダーザビーに1時間50分変身不能
【装備】ギャレンバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(ダイヤA〜6、9、J)@仮面ライダー剣、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣、ガイアメモリ(ライアー)@仮面ライダーW、、ザビーブレス@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式×4、ゼクトルーパースーツ&ヘルメット(マシンガンブレードは付いてません)@仮面ライダーカブト、ディスクアニマル(アカネタカ)@仮面ライダー響鬼、変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼
【思考・状況】
0:仮面ライダーとして、人々を護る。
1:まずは今後の方針を考える。
2:乾に託された夢を果たす。
3:首輪の種類は一体幾つあるんだ……。
4:信頼できる仲間と共にみんなを守る。
5:小野寺が心配。
6:キング(@仮面ライダー剣)、(殺し合いに乗っていたら)相川始は自分が封印する。
7:出来るなら、始を信じたい。
【備考】
※『Wの世界万能説』が誤解であると気づきました。
※参戦時期のズレに気づきました。
※ザビーゼクターに認められました。
※首輪には種類が存在することを知りました。




【フィリップ@仮面ライダーW】
【時間軸】原作第44話及び劇場版(A to Z)以降
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、照井、亜樹子、病院組の仲間達の死による悲しみ 、仮面ライダーサイクロンに1時間45分変身不能
【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW、ファングメモリ@仮面ライダーW、ロストドライバー+(T2サイクロン+T2エターナル)@仮面ライダーW
【道具】支給品一式×2、ダブルドライバー+ガイアメモリ(サイクロン+ヒート+ルナ)@仮面ライダーW、メモリガジェットセット(バットショット+バットメモリ、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW)、ツッコミ用のスリッパ@仮面ライダーW、エクストリームメモリ@仮面ライダーW、首輪(北岡)、首輪の考案について纏めたファイル、工具箱@現実 、首輪解析機@オリジナル
【思考・状況】
1:大ショッカーは信用しない。
2:巧に託された夢を果たす。
3:友好的な人物と出会い、情報を集めたい。
4:首輪の解除は、状況が落ち着いてもっと情報と人数が揃ってから取りかかる。
【備考】
※バットショットにアルビノジョーカーの鮮明な画像を保存しています。
※鳴海亜樹子と惹かれ合っているタブーメモリに変身を拒否されました。
※T2サイクロンと惹かれあっています。ドーパントに変身しても毒素の影響はありません。
※病院にあった首輪解析機をエクストリームメモリのガイアスペース内に収納しています。

304 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:03:54 ID:1mUuHQx20




【野上良太郎@仮面ライダー電王】
【時間軸】第38話終了後
【状態】強い決意、疲労(中)、ダメージ(中)、仮面ライダー電王に1時間45分変身不能
【装備】デンオウベルト&ライダーパス@仮面ライダー電王、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:モモタロスの分まで、皆を守る為に戦いたい。
0:極力自分の力で、自分に出来る事、やるべき事をやる。
1:まずはここで情報を交換したい。
2:巧に託された夢を果たす。
3:リュウタロスを捜す。
4:殺し合いに乗っている人物に警戒
5:相川始を警戒。
6:あのゼロノスは一体…?
【備考】
※変身制限について把握しました。
※ハナが劇中で述べていた「イマジンによって破壊された世界」は「ライダーによって破壊された世界」ではないかと考えています。確証はしていません。
※キンタロス、ウラタロスが憑依しています。
※ブレイドの世界の大まかな情報を得ました。
※現れたゼロノスに関しては、桜井侑斗ではない危険人物が使っていると推測しています。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。




【村上峡児@仮面ライダー555】
【時間軸】不明 少なくとも死亡前
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、バードメモリに溺れ気味、ローズオルフェノクに1時間45分変身不能
【装備】オーガギア@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト、カイザギア(ドライバー+ブレイガン+ショット+ポインター)@仮面ライダー555
【道具】支給品一式、バードメモリ@仮面ライダーW 不明支給品×1(確認済み)、ラウズカード(アルビノジョーカー)@仮面ライダー剣
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いには乗らないが、不要なものは殺す。
1:人は許せない、がここでは……?
2:まずは情報を交換したい。
3:乾さん、あなたの思いは無駄にはしませんよ……。
4:世界の破壊者、という士の肩書きに興味。
【備考】
※変身制限について把握しました。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されています。
※オーガギアは、村上にとっても満足の行く性能でした。
※今後この場で使えない、と判断した人材であっても殺害をするかどうかは不明です。


【全体備考】
E-5エリアに志村純一のデイパックと首輪、乾巧のデイパックと首輪が存在しています。

305 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/08(木) 18:13:26 ID:1mUuHQx20
以上で、投下終了です。
今回のタイトルはネタバレになりかねないので下げますが、

































>>267から>>275までを『time――trick』
>>276から>>285までを『time――liner』
>>286から>>293までを『time――rebirth』
>>294から>>304までを『time――out』
としたいと思います。
……たっくんが寿命で死ぬなら、正直このタイトル以外ないと思っておりました。
では、ご意見ご感想、ご指摘などございましたら是非ともお願いいたします。

306 名無しさん :2018/03/08(木) 21:17:21 ID:jjgkPGDE0
投下乙です!
多くの仮面ライダーを騙し、そして暗躍し続けた白の鬼札がついに倒れましたか!
志村の暗躍に気付く為に取った社長の策や、そして志村に対して全力で立ち向かったたっくん達の姿が実に熱いです!
たっくんが霧彦さんや天道、そして真理から励まされるシーンも切なくて、たっくんの儚さが実に感じられました……
橘さんや良太郎もきちんとけじめをつけましたし、そして死にゆくたっくんの願いを汲み取ってくれた社長も印象的です。実際社長は、何度も敵対したからこそたっくんのことを理解できたのでしょうし

そして残された参加者もついに三分の一となりましたか……果たして、この物語はどんな決着を迎えるのか

307 名無しさん :2018/03/08(木) 23:46:03 ID:ASbTfLn60

大作の投下、お疲れ様です。
まさに、まさに「罪と罰の中 正義は勝つとまだ言えるの」に叫び返すような傑作でした。仰る通り、たっくんの最期の時間を描くのにこれほど相応しいタイトルはないかと……!

またこのタイトルだからこそ、ここまで出遅れていた感じのあった良太郎も遂に主人公の面目躍如。
志村純一の偽りの正義を、彼の真実だと「記憶」して欲しくないから、邪悪の嘘に勝たなければならない……良太郎だからこそ言える、熱い想いでした。

そんな良太郎と対になるように、乾巧の最期を慮った村上社長の哲学が素敵。ただ種族が違うだけなんですよね……それこそが大きな断絶でもありますけれど。
しかし完全にニーサン相手に優位に立ったのは流石首領格の怪人。あんなに頑張ったのに死亡を喜ばれちゃった乃木さんの後を継ぐ対主催の要枠にもなり得そうな社長の今後に色んな意味で期待ですね。

そして「橘さんを騙したら死ぬ」フラグが遂に回収されてしまった純一ニーサン。ラスボス級の強豪マーダーでしたが、確変橘さんと命、燃やすぜなたっくんとの激戦は流石に越えられなかった……ロワの牽引役としてお疲れ様。
たっくんは最期、背負いすぎたものを皆に託せて良かったね……きっと上の上な終わり。もやしはちゃんと擬態天道に伝えてあげてね(ダグバ戦の様子を見ながら)。

他にも、個人的には音也に「心火」を再燃させられたというネタにクスリとさせられたり、良太郎を後押しする形で説教用BGM timeを確保したり、ちゃんと爆殺しない相手には「覚えなくて良い」な通りすがりの仮面ライダーと、もやしの魅力が素晴らしく発揮されていたのも見所でした。

今回も結構な長文となってしまったのに、まだまだ全然感想が書き足りないぐらいの名作でした。改めて執筆お疲れ様です!

308 名無しさん :2018/03/15(木) 02:35:02 ID:oyS8okP.0
投下乙です。
ここで第二回放送後の最初の死亡者が。
初代ライダーロワでトップの登場話数だったたっくんは相変わらずの美味しさ、トップマーダーを一人倒しての退場。
良太郎や橘さんも「あれ?これは今回で死亡……?」と思うくらいに描かれていた後で、まさかのたっくんという流れに驚きでした。
タイトルも伏せていただけあって、まさかのキャラ選。本スレで追わないとわからないドキドキでしたね。

そして意外な一面を見せた村上。原作でそこまで深く描かれず、人類との共存を夢見た事があったという言葉の真偽もわからなかった彼。
そんな村上については独自解釈という形になるのかもしれませんが、過度に感傷的ではなく、チームの仲間を前にした行動としては合理的ながら情もあり、「有能な同族だったから」という至極わかりやすい理由でたっくんを慮る姿は違和感もなくカッコいい。
「原作の延長線上で似たシチュエーションがあったならこう描かれても良かったんじゃないか」と思えるくらいに素晴らしいキャラ付けでした。かっこいい。
ちゃっかり555もカブト同様、「意外な残り方」をしていて面白いです。地味めなキャラが残ってますが、それでも話を面白く展開できそうなフラグが結構残ってますね。

士もちゃっかりここまでで10名のライダーの半分のライダーカードを手に入れてるんですね。
残り人数は20名と1/3で、かなり終盤っぽくもあるんですが、まだまだ色んな展開が期待できそうな場面が多いです。
ここから先も非常に楽しみな状況です。

309 名無しさん :2018/03/15(木) 08:24:58 ID:RuJyscmk0
気になるパートがまた予約されてるな

310 ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 02:57:56 ID:gv8rKMJw0
予約分を投下致します。

311 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 02:59:27 ID:gv8rKMJw0



 ファンガイアの王となった青年――紅渡。
 彼の中の時間は、師、名護啓介と出会った瞬間に停止した。

 一方、渡と会う覚悟と正義を秘めた青年――名護啓介。
 彼の中の時間は、こうして渡と再びまみえた瞬間に再び動き出していた。

 時間の感覚が異なった二人の音は調和しない。

 お互いが出会った時の思惑も違えば、互いの主張も、立場も、ここに来た時間も、戦う手法も違う。
 しかし、渡は名護啓介という男を誰よりも尊敬しているし、名護もまた紅渡という男の優しさに光を見出している。
 ただその一点だけが、いまこの二人が二重奏を美しく奏でられる要素だった。



♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪



 渡にとってみれば、名護啓介の出現はこの場で最も忌むべき事象だった。ここに来て、殺し合いに乗り、キングとなってから……何度音也や名護と出くわす事を想定したかわからない。
 しかし、いざそうなった時にどうするかはまだ答えを出し切れていなかった。
 まるで喧嘩をして家を飛び出した後にもう一度家に帰るような、うしろめたさと気まずさが彼の心の内を取り巻いていた。

 勿論、まったく覚悟していなかったわけではない。会う事があれば前のようにはいかない事もわかっていた。――だが、想定と現実は、往々にして異なるものだった。
 こうして出会ってしまうと、非情に対処したいという想定を、何かが害してくる。
 その躊躇と引っ掛かりが渡の中の時間を止めた。

 最初の一声をかける事が出来たのは、名護の方だった。

「渡君」

 力強い呼びかけだったが、そこには敵意や怒りはなかった。何かの覚悟の込められた、正義感の名護のいつもの声色。
 しかし、その何気ないたった一声が、渡の中の返事を促す。
 渡の中の時間も、遅れて動き出す。

「――名護さん。僕の名はもう紅渡じゃありません。ファンガイアの王……キングです」

 何度となく誰かに向けた、この返事だ。こうして、渡という名前を拒絶し、この新しい名前を告げる事で、己の決意とここから先の生き方を思い返せる。
 名護の前でそれを告げる事には、渡も気持ち悪さを感じた。他人に告げるのと、親しい人に告げるのとでは、胸の内に広がる物が違いすぎる。
 だが、その決意を告げる勇気のない者には進むべき道はない。たとえ敬愛した相手の前であっても、怖じる事は負けを意味するように感じられた。
 ひとたび言葉を発する勇気を超えた後は、もう引けない。
 力強い面持ちで名護を睨みつける。

「これからは貴方も、僕の事はキングと呼んでください」

 続けて、そう告げた。
 渡の中の時間が動き出す。
 今度は名護の中の時間が止まる。

(やはり、……そうか)

 その拒絶の言葉を聞き、その瞳を見た時――名護は、記憶の中である一つの時期の渡を思い浮かべた。
 同じようにして渡が名護の前でキングを名乗ったのは、ほんの少し前、実感として一週間程度前の出来事である。

312 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 02:59:55 ID:gv8rKMJw0

 渡は、ごく最近同じようにキングを襲名し、登太牙からその座を奪還しようとした。尤も、それは太牙を守る為の彼なりの考えであり、その行動もすべて本気とは言い難かったが――今回はどうやら様子が違う。
 まぎれもない本気だ。
 あの時とは、何かまた別の事情が――本気にならざるを得ない理由があるように聞こえた。
 ナイーヴな彼がどこかで傷つき、そこから誤った考えで掬い上げられたのは何となく想像ができる。
 少なくとも、おそらく名護の訪れた時間より少し前の時間軸が彼の元の居場所な事は間違いないと思えた。まあ、理性の失せた形でないのならまだ幸運と云えた。対等以上に話し合う事ができるシチュエーションだ。

 それに、紅渡は――名護が出会ってきた中で、誰より優しい青年だ。
 思い出す。彼と、彼の父親が名護の中の何かを変えていった壮大なストーリーを。
 名護は、負けじと口を開いた。

「……君の名前は紅渡だ。キングという名は九画、字画が悪い。
 神がそんな名前の男の未来に幸を与えるわけがない。
 正式な手続きを踏む前に、紅渡という名前のすばらしさを見つめ直しなさい」
「未来を定めるのは、神じゃない。――王であるこの僕です。
 それに、幸も不幸も関係ない。たとえ不幸を負っても、世界を正すのが王の責務……」

 渡の周囲には、小さな白い円盤が――サガークが飛び回る。それは明確に戦闘の準備だった。名護は、サガークの姿に目を凝らした。太牙の用いるサガの鎧が彼の手元に渡っているのだ。
 いつものキバットバットⅢ世ではなく、無機質なサガークを従えている状況に、名護は少しばかり眉を顰める。キバットバットⅢ世はどうしたのだろう。
 そんな折、もう一体のキバットバットが、名護の耳で囁いた。

「……おい、名護。どうする? 音也の息子はやる気だ。
 この俺が面白くなるほどの悲しみ、闇を感じる。奴は限りなく本当の王の器に近づいている……」

 何かに惹かれつつも今はかろうじて名護に協力するキバットバットⅡ世。そんな彼に促されながらも、名護はイクサナックルに手をかける事はなかった。
 元より、名護もキバットも無駄な争いをしに来たわけではない。
 争いは最後の手段だ。たとえそれが選択肢に含まれているとしても、それを選ぶにはまだ早い。

「――キバット君。少し席を外しなさい。俺から、彼と二人きりで話がしたい」
「話し合いか。フンッ……どうなっても知らんぞ」
「悪い事にはならない。そんな確信がある。
 俺が名護啓介で、彼が紅渡である限り……」

 名護は覚悟の瞳でそう言うと、キバットも少し思案げな表情をした。

「……面白い。そうまで言うなら、俺は口を挟むのをやめよう。
 勿論、彼奴が王を名乗る器かどうかも考えさせてもらうがな」

 それからそう言って、キバットが高く空へ飛び、渡と名護を見下ろせるようなビルの窓枠に留まった。
 キバットバットⅡ世もまた王に仕える身だ。本当に席を外すわけにはいかない。紅渡が王たりえるかを眺め、その在り方次第では名護たちではなく彼に力を貸すというのも躊躇はしまい。
 そんなキバットの姿は下から見上げてもなかなか見えづらいものだったが、渡はいまのキバットの姿に目を奪われていく。

「キバット……? いや――」
「――彼はキバットバットⅡ世。キバットバットⅢ世の父、闇のキバの力を与えし者。
 彼には、少し席を外してもらった。ひとまず、俺が君と話す為に」

 こう言いながらも、やはりダークキバの事を知らない渡である事を再認識する。
 少なくとも渡の方からすればキバットバットⅡ世との面識はないようで、それはつまり名護の想定通り時間軸が少し前であるという事を示していた。
 渡がサガークを掴むか悩む素振りを見せたのを見て、名護は加えて言った。

「……お互い、無駄な力を使いたくはないはずだ。
 同じ世界同士で戦う事はルールの上でも利はなく、情報にも常に飢えている。
 いま、必要なのは……男と男の、語り合いだ」

 次の行動を決めかねている渡に対し、名護は真剣なまなざしで言った。
 渡も自らの周囲を飛行するサガークへと指示を出す。

「――サガーク、僕もこの男と話がしたい。退いてくれ」

313 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:00:16 ID:gv8rKMJw0

 渡の答えはそれだった。
 サガークは彼の指示通り、その場から引く。
 名護の言う通り、今こうして名護が会話を求めるのなら、それは渡にとってはマイナスではない。
 唯一避けたいのは、説得を受ける事で少しでも覚悟が鈍る事だった。
 向けられてくる言葉すべてを拒絶する事で、最初から説得させまいとする事も出来たはずだが……名護は説得の意思を直接は見せなかった。

 何より、ルールの話や情報不足の件を持ち出されると、渡は痛いところを突かれる形でもある。
 同じ世界の存在である名護を一方的に攻撃する事は自らを不利にする事であると同時に、彼らのいる世界を守るという己の信念さえ否定してしまう事にもなる。
 情報不足はまさしく渡の手痛い部分であり、キバットバットⅡ世の存在についてだけでも既に名護には劣っている部分があると言わざるを得ない。この状況ゆえ、お互い情報は惜しい。

 そんな折、名護は切り出した。

「――だが、その前に、まずは飲み物を買って一息つこう。何が良い?」

 悩む渡を前に、名護は本当に男と男、一対一での会話を望んでいた。
 名護の本気の眼差し。
 それは名護らしい、意外と古風でウェットなやり口だった。
 そんな名護の提案を拒絶するでもなく、流されるようにして、渡は名護の後を追った。



♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪



 団地に設置されているような、本当に幼い子供が井戸端会議の横で時間を潰す為のような小さな公園。
 遊具はブランコと滑り台しかない。遊具以外には、砂場と小さなベンチだけがあるだけだ。
 そこで渡と名護は、そのベンチに腰掛けて缶コーヒーを飲んでいた。渡が何も答えなかったが故のチョイスとして、二人分、同じものを自動販売機で買っていた。
 プルトップを開けて、少し落ち着けて温かいコーヒーを流し込んでから、名護は切り出した。
 渡は受け取りこそしたが、開ける様子もない。

「――渡君。いま、日本は少子高齢化という社会問題にぶち当たっている。
 未来を担う若い力が不足し、このままでは国の将来が危ういところまで来ている――」
「……それがどうかしたんですか」
「人の話は最後まで聞きなさい」

 口を挟んだ渡を諫めるように言ってから、ただ彼は、もう少し単刀直入に言い直した。

「この時間の君はまだ知らないだろうが、俺は縁あって……麻生恵と結婚する事になった。
 いずれ、子供も作るだろう。
 この日本の未来を案じれば少なくとも三人は必要だが、養育費やあらゆる負担を考えると悩ましくもある……」

 渡の動きが完全に止まる。
 脳が情報を処理するのに少し時間がかかったようだった。

「待ってくださいっ……恵さんと!?」

 コーヒーを開けて飲んでいたなら吹き出していただろう、というくらいに素で驚く渡だった。そこで、またもやキングの威厳は消え去っていた。
 仕方のない話だろう、渡は普段いがみ合っている二人の姿を知っている。記憶や、名護と恵の印象までは捨てられない。
 あの名護と恵が裏でそこまで発展していたとは、渡は思いもしなかっただろう。

「俺と渡君が連れてこられた時間が異なる。
 近い未来、俺は彼女と結ばれ、共に戦った仲間たちに祝福を受ける事になる筈だった」

 ……ただ、考えてみれば組み合わせとしては納得がいかないわけもなかった。
 恵が理想として口にした男性像は、まるっきり渡の見ていた名護啓介の特徴と合致していた。それがすぐに結婚となると話は別であるし、仮に結婚に行き着くとしてもそこまでには名護も恵ももう少し時間がかかると思えるが。
 尤も、渡も恋愛下手な方だ。他人の色恋は、聞いた限りでも意外な事尽くしである。

314 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:00:38 ID:gv8rKMJw0

「――僕のいる世界に、そんな未来が……」
「ああ。……そして、その祝福の輪の中には、君もいる。キングではなく、紅渡として。
 だから、たとえ道を違えたとしても、俺は式場から君の席を外したくはない。
 俺が結婚したら君の祝福を受け、君が結婚したら君を祝福できる……俺は君と、ずっとそういう関係でありたいと思っている」

 唖然として言葉を返せない渡だった。
 頭の中に様々な想いが湧いてくる。
 この名護という男の気持ちを裏切っている事へのうしろめたさも胸の内から噴き出してきそうになった。
 胸を締め付ける、という表現が全く偽りでない事を証明する、心臓あたりの息苦しさ。何かが抜け出そうとしてくるような痛みでも痒みでもない何か。
 だが、後に退かない覚悟が自分の中にはある。

「どうした、渡君。祝福はしてくれないのか?」
「いえ……おめでとうございます。喜ばしい事実には違いありません――」

 名護の言う通り、渡にとって名護と恵が結ばれる事は祝福すべき事実であり、そんな未来の中で自分が悩まずに祝福出来ているのなら、それほど嬉しい事はなかった。
 それは、キングとしてではなく紅渡として。

「でも」

 しかし、渡は思い出す。
 それはあくまで世界の過程でしかない。

 この先の未来が――彼らの思い描く幸福までが、大ショッカーやディケイドに奪われようとしている。だから、その世界には『強き王』が君臨している事をここで知らしめなければならない。
 幸福のその先に、その陰に、いつも世界の破壊は待っている。名護も、恵も、その先に生まれる子や、あるいは……今の自分にはまったく実感の湧かない「自分の伴侶や子」までもがその先に在るのなら、渡はファンガイアの王である事を辞めない。

 むしろ、だ。
 名護や恵の未来が具体性を帯びた時、彼は尚更――。

「――それなら、尚更、僕たちはその世界を守らなければなりません」
「その方法が、ファンガイアの王となる事だというのか……?」
「……はい」
「その為に君は――ここで誰かを殺めたのか?」
「……既に僕たちには、その手段しかありえません。
 この後も、僕は仮面ライダーではなく……ファンガイアの王として、二つの種と世界を守る。それだけです」
「誰かの世界を犠牲にして――」
「残念ながら、それが唯一の方法です」
「ならば、渡君、それは間違っている……!」

 今度締め付けられるのは、名護の心だった。
 嫌な予感はあった。だが、あの優しい渡がこうして修羅の道を突き進んでいるというのなら、名護にはそれを正す責務があった。
 名護にとって、この会話はかつてのどんな敵との戦いよりも重苦しい。
 素晴らしき青空の会の会長の座を託そうとした自分の気持ちと判断には、間違いはないと今も信じている。――むしろ、これが渡の優しさがゆえの行動であると思うと、自然と納得もできてしまうのだ。
 彼は思いを押し殺して、被る必要もない罪を被ろうとしている。
 だから、名護は彼の性格を知り、彼の優しさを知りながらにして、彼の行動を否定するしかない。
 ――最も否定したくない、仲間の事を。

「考え直しなさい、大ショッカーは我々を騙そうとしている不埒な輩!
 これ以上罪を被っても全て無駄になる! ……今からでも遅くはない! すぐに俺たちと共に大ショッカーを倒し、共にここから抜け出す道を探るべきだ! 渡君!」

 名護は思った。
 渡も気づかない男ではあるまい。
 大ショッカーに正義があるというのなら、悪戯に人の命を奪う正義などありえない。
 世界を守る為の殺し合いだとして、首輪をつけて閉じ込めゲームのように弄ぶ事に何の意味があるのか。
 別の場所で待っている“彼”のように、かつて自分の世界を壊そうとしていた者さえも参加しているくらいである。
 本当に世界の在り方を決める戦いならば、露悪な輩が覗いて楽しめるようなふざけた作りは許されないはずだ。

315 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:01:04 ID:gv8rKMJw0

 ……そして、今は神をも名乗ろうとしている。
 名護が強く影響を受けている世界観の中で、大ショッカーは最も侮辱してはならない存在を、大ショッカーは侮辱しているのだ。
 だが、頭に血が上りすぎて伝わりづらいであろう事を承知して、少し冷静に渡に言い直した。

「――俺は何人かの仲間にも情報を貰い、確信を持っている。
 悪の権化、大ショッカー……神を名乗り、我々を誤った道に扇動しようとしている集団だと」
「――そんな事は、僕も承知しています。大ショッカーの幹部、アポロガイストから情報を得ました。
 大ショッカーの真の目的は世界を征服する事であり、世界を選別する事ではありません」
「ならば何故……!」

 意外だった。
 世界を守るためではないとするのなら、何故。
 決して理性を失ったわけでもなければ、殺し合いをしたいようにも見えない。
 彼なりの正義があるとして――その理由はわからなかった。てっきり、大ショッカーの言葉に何か確信を持つような事があったのではないかと思っていたが、そうでもないらしかった。

 渡は、何か期待を込めたようなまなざしで、名護を見つめ返す。

「いくつもの世界が滅びに向かっている事は、事実です。
 それを阻止する為には、まず世界の破壊者ディケイド――彼を倒す必要があります。
 彼こそが真の世界の歪み……彼を破壊しない事には、世界の滅びは止められません……。
 僕らはもはや、手段を選ぶ事は出来ない。
 このままいけば、すべての世界は融合し、大ショッカーの言う通り破滅する」
「ディケイド……? 門矢士の事か?
 噂には聞いている。だが、彼は悪人なのか……?」
「――悪人かどうかは言い切れません。
 しかし、ディケイドはその存在そのものが世界を脅かす悪魔です」

 渡はもう一度言い換えた。

「おそらくですが、人格を持った災害……破壊という事象を人間化したものと認識してもらえれば良いと思います」

 対象が悪であるか否かは関係ない。
 ただ存在そのものが無数の世界の融合を促し、破壊へと導く混沌の悪魔――それがディケイドだった。

 仮面ライダーたちはすべからく彼を倒さなければならない宿命を負っている。
 彼の仲間になるのではなく、彼と対抗して彼を破壊する事こそが、このライダー大戦の真の意義だ。――大ショッカーと戦うとしても、それはディケイドを倒しライダー大戦で勝利し、キバの世界が狙われた後の事。
 最低限の勝利条件たるディケイドの破壊をクリアーしなければ、もとより世界を守る事など出来ない。

「名護さん、出来るのなら、あなたにも僕の考えに協力してもらいたい。
 このディケイドを倒す事に関してだけは……」
「――他ならぬ君の言葉だ。きっと嘘はない。
 他の世界を犠牲にする君の考えは相いれないが、ディケイドの件については考えておこう」
「ありがとうございます……」

 名護の中に巡る想いは複雑だった。
 渡自身の言葉には嘘はないだろうが、渡がその情報をどこから得たのかにもよる話である。つまりは、彼自身が他者からの情報に踊らされている可能性も否定はできないという事だ。
 純粋ゆえ、騙されやすくもあるのが欠点の人間もいる。

「だが、ディケイドを倒したなら――その後、君はどうする?」
「次の脅威となるのが他のライダーの世界や大ショッカーです。
 ディケイドは仮面ライダーのいるすべての世界を融合させ、そして、破壊します。
 ディケイドを破壊すれば世界は融合から免れるかもしれません――だけど、もう手遅れかもしれません。存続する世界は一つと言っていました……。
 世界が融合し、そこから先に残る世界が僅かの可能性も否定はできない状況です」
「……誰から訊いた?」
「大ショッカーの幹部、アポロガイストです。嘘を言っている様子ではありませんでした」

316 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:01:26 ID:gv8rKMJw0

 名護は、息を飲んだ。
 アポロガイスト――信頼に足るかはわからない。
 しかし、もし本当だとしたら。

「その時になったら――いや、そうなる前に、僕はキバの世界を残す為に戦うだけです。
 大ショッカーと本当に対抗するのはその後。
 まずはディケイドや他の世界を優先的に破壊し、勝ち残った僕たちの前に現れた敵を――破壊します」
「渡君……やはり君の進むべき道は間違って……――」

 名護は、渡のかつてない真剣なまなざしを前に――そして自分の中のジレンマを前に、そこから先を言いきれなかった。
 思い返せば、これまでは「大ショッカー」という明確な悪の存在を軸に団結し、対抗していたともいえる。

 だが、世界滅亡それそのものが正真正銘の真実として、それにあやかる形で大ショッカーという組織が不随してゲームを仕組んだならば、この災害めいた事象をどう乗り越えろというのか。
 正直、代案はわからない。
 そのディケイドという「破壊の人間化」を叩き潰す事を最低条件とすれば良いが、世界が何らかの事象で滅ぶとして――かつて隣にいた我が妻は。
 そして、自分の生きた世界は……どうなる。

(――)

 ――だが、名護は「敵」とされる他ライダーの世界の住人たちの顔を思い出す。
 先ほどまで一緒にいた、ここで出来た仲間の事を。
 彼らを忘れていたわけではない。忘れるわけがない。しかし、同時に駆け巡る自分の中の微かな迷いには答えは出しがたい――史上最悪の、二択。

 さながら思考実験のようなものに陥る。
 勿論、すべてはあくまで仮定だ。嘘だと考えたって良い。
 しかし、真実である前提のもとに考えたなら――?
 世界の滅びが確実だったら、本当にライダーの世界同士で戦う必要があったら、自分は果たして一体どんな答えを出す――?

 ――ふと、自分の言葉が止まっていたのを感じ、図星を突かれるより前に、名護はごまかすようにして続けた。

「――……どちらにせよ、君が他の世界と戦い続ける道を選ぶのなら、俺にとっては同じ事だ。
 ここで出来た多くの仲間の命を奪う事は、許されない」
「そうかもしれません。
 でも――僕にとって一番大切なのは、貴方やかつての仲間です。
 僕には、ここで仲間を作る必要なんてありませんでした。
 ……いや、やっぱり違うかもしれない。僕にもここで仲間のようなものはいました。
 ただし、彼らに騙され裏切られるばかりでした。お互い様でもありますが」
「――だとしても、それは君の運が悪かっただけだ。
 俺の仲間は、決して裏切らない。共に来てくれ、渡君」

 そう言われた瞬間に、渡の中で、そっと何かが動いた。
 名護には、多くの良い仲間がいたのかもしれない。ただまっすぐな人間が寄ってきたのかもしれない。それは悪い事ではないと思う。
 だが、名護の周りには――裏切り者が少なくとも、一人いる。
 それを渡は思い出したのだ。

「僕が……います」

 冷たい言葉を放つ渡。
 彼は名護を責めるような瞳で、自分自身を、責めていた。

 音也と名護。
 渡の中に滾る罪悪感は加速していく。
 想われている。――ような気はする。少なくとも、この名護啓介には。

 確かに、名護は良い人ではあった。
 先生のように面倒見は良く、少し厳しくもありながら面白いところや優しいところがたくさんあった。多少空気は読めないところがあるが、悪気はないし、大概は渡自身もそれを許せた。
 だが、ここまで自分を熱心に説得しようとするほど――名護が自分を仲間として意識してくれていた事など、渡は思ってもいなかった。
 てっきり、否定だけを返すとばかり――思っていた。
 そんな名護を、裏切っている自分がいた。

317 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:01:49 ID:gv8rKMJw0

「かつて仮面ライダーだった僕は……名護さんや父さんの想いを、既に裏切っています」
「馬鹿な事を言うな。君が俺を裏切るわけがない」
「僕は多くの罪を犯した。――それは立派な裏切りです」
「……いや、君は決して、俺たちの想いを裏切ってはいない。
 少なくとも俺は、そう思う」
「どういう事ですか」
「俺の進む道と、君の進んだ道は確かに違う。
 そして、確かに君の考えは間違ってはいる。
 ……だが、君なりに俺たちを想っての事でもあるのも承知している。それだけ世界に対して責任を持ってくれる人間なんて、この世の中そうはいないはずだ。
 その想いを、裏切りとして否定する事は、君をよく知っている俺には出来ない」
「――……名護さん」

 かつてのように人を強く責めたてる事のない、少し変わっていった名護。
 己を強い人間ではなく、弱い人間として向き合った後の男の言葉。

 少しだけ、渡の中の心が動く。
 認めてはくれないと思っていたところを認めてくれた喜びや感動が、渡の目頭を少し熱くした。――でも、だからこそ、余計に傍にはおけなくなった。

 名護は、決して渡と同じ道を行ってはくれない。
 一つの正義として認めつつ、ただそれぞれが別の正義として交われないのが渡と名護それぞれの道だった。

 渡は名護が好きだ。だが、同じ道はいけない。
 同じように名護も渡という男を気に入っている。だが、己の道に引き込もうとはしている。
 そちらに行く事は、出来なかった。

「君はもう、罪を負わなくて良い。これからは、俺と償えばいい」
「名護さんと――」
「ああ、弟子の罪は、師匠の罪。俺と君とは一心同体だ。
 君が間違いを犯したのなら、この俺も同じように懺悔し、同じように背負う義務がある」
「――……でも、僕が罪を犯しているというのなら、その罪をただの人間である貴方に転嫁する事は出来ません」

 渡は思い返す。――自分の罪は重い。ただの罪人ではない。
 再びフラッシュバックする――ライダー大戦の記憶。
 地の石を利用して人を操り、無理矢理戦わせて多くの者が死んでいった諍い。
 人の命だけではなく、想いさえ踏みにじる覚悟があった。

 深央の死、加賀美の死、王という運命……あらゆるものが渡を後には退かせないよう背中を押し続けた。
 名護は――缶コーヒーの残りを一気飲みすると、立ち上がり渡の方を向いた。

「――ただの人間じゃない。その言い方は、水臭くて気に食わないな」
「え?」
「俺は、君の師匠、友人、仲間だ。その絆は恋人などよりも深い。
 俺の事を指すなら、『ただの人間』ではなく、『ただならぬ人間』と呼びなさい」
「――貴方は、まだ僕がどんな罪を犯したかは知らない。
 ……だから、そんな事が言えるんです」

 渡の悩みは、消えた。渡もまた立ち上がった。
 もう一度、紅渡の眼差しを捨て、名護に向けて冷えた口調でそう突き返すだけだった。
 そう、名護は渡の罪を背負おうと告げている。――だからこそ、だ。
 責任感や正義感の強い名護が相手だからこそ、渡は罪を託せない。もっと冷徹になりえる仲間にしか、「罪」は託せないのだ。

 いっそ、裏切り者の方が仲間としては都合が良いとさえ思う。
 初めからお互い様であるのなら、傷つけずに済むのだから。

「――」

 この大戦で、渡のこれまでの経緯を全て思い返すなら、それはそれらの行動に一切関係のない、ただ師匠であるだけの名護に背負わせるにはあまりに重い。
 名護も決して軽い気持ちで言ったわけではないだろうが、名護は渡の歩みを知らない。
 一人、二人を葬ったわけではない。渡の行為によって不幸になった者は、数が知れない程である。あるいは、名護自身にも余波が来ている可能性さえ否定できないほどだった。
 それどころか、これまで名護が憎み戦ったファンガイア以上に、たくさんの人を殺め踏みにじっただろう。
 名護は、少し黙った後で、静かな声色で渡に告げる。

318 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:02:10 ID:gv8rKMJw0

「それなら――渡君。
 罪を犯している自覚があるのなら、この俺の前で……ここですべてを話しなさい。
 そして、残りの時間は、罪を重ねるよりも懺悔する事に回しなさい。
 きっと、手遅れにはならない――俺の仲間たちのように」

 そう、名護は渡の罪を知らない。
 それは、渡が直接話さなかったからに違いなかった。
 名護が知るのは、渡の考え方だけだ。スコアを上げたのも知ってはいるが、それが果たして、悪人を葬ったケースなのか、それとも無差別的なのかは名護もまだ知りえない。
 これまで――どんな物語を積み上げたのかは、渡のみが知る。
 明確な情報すら得ていない名護にとってみれば、むしろどんな形であれそれを知りたい――知る事で背負いたいとさえ思っているのかもしれない。

「……」

 渡は、そう言われて少し考えた。
 渡にとっては、嘘を告げる手段もあった。このまま曖昧にして隠す手段もあった。その方が楽には違いなかった。

 だが、そうやって閉じこもるのは渡の悪い癖でもあった。
 今の渡に必要なのは――覚悟。名護や父と向き合ったうえで、自分のやり方を貫き通さなければ、全ては、嘘になる。
 嘘じゃない――とは言い切れないが、少なくとも、そのまま逃げ続けるのは「王」の行動ではない。
 ため息のような声が思わず漏れてから、渡は語りだした。

「……そうですね。名護さん。貴方には、すべて話すべきでした。
 そうでなければ、すべてが曖昧になってしまう。
 僕は……これ以上逃げるつもりはありません。
 貴方には、まずすべてを話します。――覚悟の証明として」

 そう言ってから、名護を牽制するかのように、渡は語気を強める。

「ただ……僕がそれからどうするかは――僕が決めます」

 これはあくまで、懺悔ではなく、覚悟。
 名護の言う通り、ここから道を変えるのではなく――名護に選択肢を与える為のものだった。
 渡を許すか、やはり許さないか。あるいは、渡と背負うか、それとも渡を捨てるか。
 その選択肢は、「知る」事で初めて本当の意味を与えられる。
 王の威厳ある口調で、渡は語りだした。

「――僕は最初に、ある正義感の仮面ライダーの命を奪いました。これは偶然ですが、僕自身の行動と迷いが原因です。
 僕はそこで、世界を守る道を遂げる運命を背負った。
 やがて、かつてのキングと出会う事になりました。
 僕に襲い掛かってきたキングを倒し、僕は新しいキングとなった。そこで――この世界を守る覚悟は確固たる物となった」
「――……」
「別の世界で、僕と同じように自分の世界を保守する為に戦おうとする参加者たちとも多く出会いました。
 利用し、利用される関係と言えたかもしれませんが――その同盟はほぼ破綻しました。僕がここに一人でいるのも、それが原因です。
 ……ある時は、ある参加者を操る石を得て、多くの参加者を無差別に襲う同盟を組み、中央の病院で多くの命を奪いました。
 ――しかし、本命のディケイドは仕留めそこなった。残念ながら」

 渡はそれから、己の所業を詳しく告げた。
 ある男は、そこで散ったのは、と――あらゆる質問が名護の方から飛び交い、渡はそれに偽りなく答えた。
 まるで取り調べのようだったが、それゆえにか、名護は怒る事も嘆く事もなく、ただ冷静にすべてを聞き取った。
 それが、彼なりの渡への向き合い方だったのだろう。

 名護の内心が焦っていなかったわけではなかった。それは、名護の想像を確かに超えていた。渡が痛みを感じず、この表情でそれをやってのけたのが信じられないほどだった。
 はじめは渡が何かの事情で嘘をついている可能性さえ疑った。かつて王を名乗った時のように、何かを守るための芝居であるのかもしれなかった。
 だが、その意味がなかった。死者の名前を持ち出してまで、彼が再び庇うほどの人間はここにはもういなかったし――何より、話の辻褄は合っていた。
 誰か、もっと中央で戦っていた参加者に聞けばすぐにわかる話でもあった。

319 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:02:38 ID:gv8rKMJw0

 名護は、あらゆる事を思い返しながら、深く考えていった。
 そして、渡が全てを告げた後で、名護はもう一度口を開いた。

「……渡君。確かに、君の罪は重い。だが、やり直せないわけではない」

 名護を突き放そうとした意図もあった渡にとっては、それは意外な返答だった。

 他の参加者と出会った影響もあったのかもしれない。そんな中で、この殺し合いで参加している者たちはすべからく、「被害者」であるという意識も芽生えていたのかもしれない。
 彼が責める事をしないのは、仲間の中に「仮面ライダー」を貫いた者や「罪」を犯した者がいた――その男たちと、誰より深く関わったからだろう。
 嬉々として人を殺める者もいた――しかし、背負い、涙し、償う者もいた。
 彼らはただの加害者だろうか。むしろ、あらゆる思い、あらゆる生き方、そしてあらゆる正義を――この場所で踏みにじられた、被害者なのではないだろうか。

 特に――ここにいる、紅渡は、そうかもしれなかった。
 それに、考えてみれば、もう被害者だとか加害者だとか、そんな事さえ関係ないのかもしれない。
 もっと根源的に、名護の中には渡を見るもう一つの目があった。
 正義、という言葉を使う以前の話として。

「君のした事は、もしかすれば神には許されない事かもしれない……。
 しかし、俺と君とは師弟――そして、それ以上に、かけがえのない友人だ。
 君が罪の重さに耐えきれないのなら、共に背負い、共に歩く。
 君の召された先に、もし地獄があるのなら――俺たちが君の荷を共に背負い、隣を歩けば良い」

 そして、名護の中に、渡が見せた「友を捨てる覚悟」に勝る――友を捨てない覚悟があった。
 名護の想いは歪まない。
 彼と共に進んだ思い出や記憶がある。――ぶつかり合った事も、悩みぬいた事も、信じあった事も、すべてが捨てられない。捨てたくない。
 結局のところ、それが名護の答えだった。

 渡は少し、息を飲んだあと――言葉を返した。

「――ですが、名護さん。貴方は、これまで多くのファンガイアを倒してきました。
 それは、ファンガイアが人を襲い、罪を犯してきたからです。貴方の正義が、彼らの存在を否定した。
 だが、僕はそれ以上の罪を犯している。――だとすれば、貴方は僕の存在を否定しなければならない筈です」

 渡の罪が、今まで名護が「罪悪」の象徴たるファンガイアを憎み倒してきた以上に「罪悪」である事実。それにより名護は渡を憎み倒さなければファンガイアを倒した自分を否定されると渡は言う。

 だが――。



「関係ない。俺は名護啓介、君は紅渡だ。――その事実がある限り」



 罪を犯したか否かではない。
 それより前にある――情。
 正義でも、悪でも、罪でも、社会でも、被害でも、加害でもなく、それが優先されるべき時がある。

 紅渡を見てきたひとりである名護啓介は、たとえ紅渡が悪魔に落ちたとして、彼が弟子であり友である事を否定はできない。
 そんな自分の情動を許せるだけの想いと余裕が、本当の正義の味方には必要なのだ。
 かつて紅音也が教えてくれた遊び心――あらゆる呪縛を捨て去り、本当に心の動く場所へと歩み寄る、勇気と力、あるいは開き直りだった。

「それに、渡君。ファンガイアの事を持ち出せば、俺も同じだ」
「……」
「――俺は少し前、ここで正しい人を殺め、悪の道からはぐれ、そして今罪を償おうとしている青年を見た。
 俺も自分の人生を改めて思い浮かべた。――思っていたより、ずっと恵まれていた。だから正義の味方などと名乗って来られたんだ」

320 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:03:03 ID:gv8rKMJw0
「……」
「だが、俺は、正義の味方ではなかった。……それを教えてくれたのは君だ。
 君は、人間とファンガイアの共存を目指していた。
 考えてみれば、それが戦うよりも素晴らしい、最も理想的な未来に違いない。だが、俺にはその発想がなかった……ただ、俺が正義になるには悪が必要だった。
 だから、ファンガイアを都合の良い悪とみなし、倒してきた。
 ……そう、俺はこれまで、自分の勝手でファンガイアを殺しすぎた。平和に暮らそうとしていた者も、多くいた筈だ。俺の非、俺の弱さ、俺の罪……」
「それは、人とファンガイアの戦争の中の話。……貴方のやった事は、仕方のない事です。
 人を襲うファンガイアも多くいる。残念ながら――」
「それを言い出せば、世界と世界が争い、戦う他に生き残る術のないと言われた今この時も――同じ、仕方のない戦争かもしれない」

 渡は図星を突かれた気がした。
 そんな正当化も、一度はしたかもしれない。
 渡と名護にどんな決定的な差があり、ファンガイアを倒してきた名護と比べて、自分が罪人になれるのか――その抜け道を考えるようにさえなっていた。だが、答えを出すには思考を巡らせる必要があった。
 名護は構わず続けた。

「――だが、たとえファンガイアとの戦いが戦争だったとしても、俺はあの時の自分の行いは……紛れもない、大きな罪だと思っている。
 俺はあの時……間違いなく自分の力に溺れ、正義に酔っていた。
 己の正義の為に――父を死なせた自分の思想を守る為の言葉の為に、自分の中でファンガイアを強力な悪に見立て、戦った。
 だから、君のように共存の道を考えなかった!
 そう、もし共存してしまえば俺は正義ではなくなる……。
 倒すべき悪が消え、正義である事が出来なくなる……。
 それに、世界が変わり、人とファンガイアが交えるのなら、その時に俺がファンガイアを倒してきたそれまでの正義は否定される。
 きっと、それが怖かった。
 だから、共存を望まなかったし、共存という思考さえも封じていた。
 ファンガイアを蔑み、憎み、殺してきた。自分の中にある非や弱さ、自分の為に武装された公式、そして……父を殺した過去の罪にも向き合おうとはしなかった。
 ……そんな姿に、本当の正義はない。ただの快楽の権化、暴力性と罪悪感のジレンマを『正義』で推し隠し、逃れ、ファンガイアたちの命にぶつけた、弱虫だ」
「……」
「――そして、俺はキバである君ともぶつかった……。
 かつて俺が君に向けたのは、まぎれもない本気の殺意だった。今思うと怖くなる。
 もしかすれば、俺は君を殺め、それを誇っていたかもしれない。俺がキバを倒したと、何も知らずただ歓喜に震えたかもしれない。
 あるいは、俺は君に挑み、敗れ、偽りの正義を抱いたままみじめに死んでいたのかもしれないな……」

 そして、そういう風にして決着がついた時、敗れて死ぬのはやはり……おそらく、自分だったのだろうと――名護は思う。
 キバはあまりに強く、敵対していた時期の名護では到底勝てる相手ではなかった。今客観的に見ればそうなる。キバに勝った事を誇ったのは一つの事実だが、あの後でしてやられたくらいだ。
 本気の渡の強さは、並じゃない。
 守るべきものがあるから――そして、キバは、人類の敵ではなく、偉大な男の魂を継ぎ誰かの音楽を守ろうとする仮面ライダーだったから……。

「――」

 今もこうして瞳を閉じると映る――それは、自身の敗北のビジョンだ。
 正義に溺れ、正義を信じ、父を殺した罪に許されようとしながら――しかし本当の償いや痛みから目を背け、キバに葬られる自分の姿。
 人とファンガイアが愛し合う世界を否定し、突き進んだ『正義』に踊らされる哀れな男。
 己が暴いた罪で死んだ父が、自分の前から去っていく幻想。
 何度思い描いたかわからない。そうだったかもしれない。

「だが、俺と君は今、こうして、最高の形でここにいる!!
 ――師匠と弟子として、そして、仲間として!!
 罪を犯したのに……その先の生には価値があった。償う機会と仲間があった。
 だから――神がもたらしてくれたこの奇跡と運命を、今になって否定したくはない」

 ――それが名護の渡への想いだ。
 たとえそれが神に抗う事だとしても、渡や太牙や恵や音也……ファンガイアの戦いで奇跡的にわかりあえた仲間たちとなら、戦える。
 ここでなら、やはりここで出会った仲間と――残っている仲間たちと、それから、ここにいる渡と共に戦えば良い。

321 師弟対決♭キミはありのままで(前編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:03:24 ID:gv8rKMJw0

「――だから」

 それが、名護の行きたい道。たとえ罪を負うとしても、それが憎しみを向けられる原因になるとしても、名護は渡を庇う覚悟がある。
 罪や弱さから逃げない事こそが、そして前を向き、本当の守るべき者を守り、戦うべき者と戦うのが――今の名護の正義。

 渡もまた、思い返していた。
 名護がいなければ――支えてくれるひとがいなければ、立ち直る事のできなかった状況があった。それこそ、お互い様だった。
 僕はひとりじゃない。隣にいた仲間がいたから戦えた事。それは戦力としてではなく、心の支えとして……。
 そんな場面が、いくつもある。
 思い出される記憶。――その積み重ねがあったからこそ、こうして、自分がここにいるというのは、間違いないと思えた。
 しかし、退けなかった。

「だから、君には考え直してもらう。
 ――そして、俺にはやはり、君と償う義務がある!」

 名護は思う。――君だけが罪を負う必要はない。
 君は仮面ライダーになって良い、もう一度俺の隣で戦えば良い。
 確かに俺は、君が間違っていると言った。
 だが、もう良い。俺が言いたいのはもはやそんな事じゃない。
 正しいかじゃないのだ、君が君らしく戦える場所にこそ正義はあるのだ……。
 それがきっと、君にとって最も良い生き方なのだから。
 優しい渡君だから。

「――そんなものは、ありません。
 すべての憎しみと罪も、王のもとに捧げられるべきものです」

 渡は思う。――名護が罪など負う必要はない。
 貴方は正義であれば良い、仮面ライダーであれば良い。
 確かに僕は貴方にディケイドを倒す仲間として、戦力として加わればと言った。
 だが、もう良い。それこそが最大の過ちだ。
 貴方は、ただ幸せにあれば良い……。
 それがきっと、一番つらくなくて済むのだから。
 正しい名護さんだから。

「……これだけ話してもわからないか。
 それなら――俺たちはもう一度、かつてのように戦う必要があるのかもしれない!」
「そうかもしれません。――僕も、もう一度貴方と戦いたい!」
「不思議だ。俺も、君と戦わなければならない以上に、君と戦いたい!」

 二人は、おもむろに、同じペースで歩き出した。
 互いを見つめて、拳を握る。
 かつてぶつかり合ったその拳と拳が、震えている。
 ――その拳が震える意味は、彼らの言う通り、戦いたいからなのか、それとも戦いたくないからなのかはわからない。
 話し合いは終わりだ。ここからは本能で戦うしかないと、渡も名護も悟っていた。



♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪

322 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:03:51 ID:gv8rKMJw0



「サガーク――」

 サガークが空を舞う。
 それを見やった後に、名護は顔を顰めた。

「……渡君。一つルールを申し出たい!」
「ルール……? 構いませんが――」
「――そうか。それは、裸でぶつかり合う事だッ!」

 そう言って渡のもとに突進した名護は、そのまま渡の左の頬に体重を乗せたパンチを叩き込んだ。
 突然の一撃に、渡は困惑しながら吹き飛ばされ、倒れ転がる。

「あぐっ……!?」

 それを見つめる名護の右の拳は震えを止めていた。

 頬を抑えながら、意外そうな瞳で名護を見上げる渡の姿。
 険しい瞳で渡を見下ろす名護の姿。
 二人の目線がぶつかっている。

 仲間から向けられるにはあまりに嫌な瞳だったが、今はそれが全く不快にならなかった。
 自分の貫きたいものを貫く為の必要な戦いだと――それぞれの拳/痛みが告げる。

「キバの鎧がないのなら、今の君にイクサで挑む意味はない。
 ……それは俺の望む戦いではない……!」
「構いません……そっちがその気なら――僕にも鎧など必要ない!!」

 渡は力強く立ち上がり、大きく体を振るうようにして名護を殴ろうとした。
 だが、名護はそんな大振りのパンチをすぐに避け後退した。
 再度、名護は渡に接近し、渡へと殴り掛かる。

「くっ……!」
「渡君……これは、この俺だから、わかる……!
 俺はかつて――自分の父を死なせた自分の罪を、『正義』という言葉で逃れようとした!
 君も……ここで人を誤って死なせた罪を、『王』という言葉で逃れようとしているだけだと!」
「――ッ!」
「だが、君は俺とは違う。ただ純粋なだけだ。勿論……俺よりずっと良い意味で。
 今の生き方は、そんな君のしたい事でも……すべき事でもない筈だ……!」

 力強い一撃を放とうとするが、渡は咄嗟に背を向けて走り出した。
 渡の行った先は砂場だ。
 ここでは足を飲まれやすく、そのぶんだけ拳に威力は乗せにくい。踏ん張りが効かないのだ。バランスの悪い地形へと、無意識に誘い込んだのだろう。

「逃げるな渡君……考え直しなさい! 本当の王とは何なのか……!」

 名護は言いながら、渡を追いかけた。
 足は思いのほかふらふらと動き、砂場に入ると尚更バランスが崩れやすくなった。
 これまでの疲労は勿論の事、想いを伝えるというのは想像以上に酸素が要る。
 だが、構わない。そんな事はもはや気にしていなかった。
 名護の拳が渡のもとへと届く。

「正しく、優しく、強い者だけが本当の王を、権力者を名乗り、誰かを導く事が出来る……!」
「いや――強さだけが、王の最低条件……。
 正しさを通すには、世界を守るには非情である事が必須なんです……――!!
 そうでなければ……何も守れない!!」

 威力のない名護の拳を避け、渡は逆に名護の顔面へと拳を叩き込んだ。
 大振りな先ほどの一撃を反省してなのか、その拳は真正面へとまっすぐに突き出される。
 名護の目のあたりにそのままヒットする。体重は乗らないが、命中しやすかった。
 名護の顔に広がる鋭い痛み。思わず右手が片目を抑えそうになる。
 だが、こらえて名護はその腕を掴む。

「……それでは……たとえ世界を守れても、今以上の物に変える事は出来ない……!」

 名護は渡の脇腹を蹴った。
 長い脚を使っての美しい軌道を描いた蹴り。

323 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:04:08 ID:gv8rKMJw0

「ッ!」

 渡の身体はまたも吹き飛び、砂場に倒れる。
 名護は馬乗りになろうとするが、そこで渡の思わぬ力が名護を吹き飛ばす。
 しかし、その痛みも名護は構わない。

「変えるって……なんなんですか……! 僕はただ……!」

 立ち上がろうとする名護に、今度は渡がとびかかった。
 抱き合うようにして掴みかかった二人は、そのまま砂場で転がるようにして相手を振りほどこうとする。
 だが、ただ体が汚れるばかりだった。

「渡君……非情は、あくまで最後の手段だ……! すべてじゃない……!
 非情である事に囚われる王は……本当にあるべき世界を見失う……!
 この世界の歪みを、過ちを……困難を、導く力にはなりえない……!」
「変えたり……導いたりより先に……壊れていく世界はまず守らなきゃいけない……!
 守った後は、貴方が、世界を正せば良い……! きっとそれが……一番……!」
「俺は王なんかの器じゃない……世界を導く王の座があるなら、そこに座るのは、君でも俺でもない……!!」

 名護が叫んで、渡を振りほどいた。
 渡の身体が転がるが、そこから起き上がる。
 一足先に名護も立っていた。
 そんな名護に向けて、渡は肩を抑え、倒れそうな体で前かがみに睨むように訊いた。

「じゃあ誰だと……!?」
「名護啓介の弟子……紅音也の息子……仮面ライダーキバに変身し――紅渡の名を持つ男……かつて俺が見た君……!
 弱さと向きあい……誰かに優しくできる……そんな、かつての君だ……!! 君の中にいる、本当の君だ……」

 自分の中にある自分。――ふと、何かに気づいたように渡の瞳孔が大きくなる。
 名護に、そんな風に評価されていた自分がいた。
 だが、今は違う……。冷徹な王になろうとしている。
 名護は続ける。

「今の王にあるのは……ただのクイーンの血筋……。
 だが、もう一つの血があってこその仮面ライダーキバ……紅渡だ……!
 受け継ぐべきは……キングの名前じゃない……! 優しき君の……紅の名だろう!」
「違う――!! その名前は捨てる……! ファンガイアの王である事こそが僕の力!
 紅渡は……大事な人も守れなかった……そして、紅渡の迷いは、その手で人を殺した!
 それなら、僕はもう迷わない!! 迷いを振り切る事で――すべてを捨て去ってキングになれば、僕は……!」

 渡は駆け出し、名護へと再び大振りなパンチを叩き込んだ。
 同じように疲弊していた名護は咄嗟にそれを避ける事が出来ない。
 何より、左目が先ほど渡に殴られて反応速度が遅れたのだ。

「大切な世界を守れる――!! 失われた世界の人々を、弔う事が出来るんだ!!」

 だが、名護の身体が偶然にもよろけた。
 それは自分でも思いもよらぬほどの疲労が、足の先から彼の身体を倒そうとした為だろう。
 その瞬間に渡が間近に迫り、支えを要した名護の身体は渡の腹のあたりを抱えるようにしてぶつかった。
 渡のパンチは不発し、同時に渡の声が名護の頭上で漏れる。

「守れなかった者たちも……ここで死んだ人たちも……父さんも……前のキングも……他の世界のライダーの名も……ディケイドも……!!
 全部……僕が記憶する……! 全部、弔って、覚えて……背負う……!! 僕の世界の統べる世界の下にあった、犠牲として……!!
 それでいい……犠牲は王だけが……僕が覚えて――背負えば良いッ!!」

 名護は、そのまま体重をかけて二歩、三歩と前に歩く。
 攻撃的な意志があったが、攻撃的な意味のない動作。
 あるのはクリンチのように、相手の攻撃動作を止め回避する意味合いだが、これもまた偶然そうなっただけだった。
 渡も思わず、名護を巻き込んで数歩下がる。

324 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:04:40 ID:gv8rKMJw0

「そんなに張り詰めてどうするんだ、渡君……!
 かつて……ある男が俺に対してこう言った……!
 張り詰めた糸はすぐ切れる……お前には遊び心がない……!
 余裕がないから、たとえ強くても俺に勝てないんだ……と!
 その人の息子である君が……そんな大事な事を忘れてどうするんだ……!」

 紅音也の話だった。
 再び頭に浮かぶ父親の姿に――何かを思う。
 自分の腹を巻くようにして突進し、まだ前に進もうとする名護に向けて、渡は言い放ち――彼の身体を突き放す。

「もう……遊びじゃない……!
 僕は父さんじゃないし……!
 それに、父さんは……もういない……!!」

 名護の身体は、すっかり力を失っていて、僅かの力でもよろよろと後退した。
 バランスを失い、息も絶え絶えながら、名護はまだ渡の瞳を見て構え、言った。

「いや……彼は……君の中にいる……!
 確かに君は、紅音也じゃない……。
 だが、その人を消さずにいられるのは、君だけだ……!」

 同じようにして、ひとつひとつの言葉に動揺する渡もまた、あまり積極的に攻撃を繰り出したくはない様子だった。
 体中が、名護への攻撃を拒絶する。
 歩き出すのが怖い。前に進むのが怖い。彼に何かを言われるのが怖い。それは純粋な恐怖とは、また違う――何かその後に来る心の動きを未然に止めたい、計算の為の恐怖。
 しかし、名護の言葉は途切れない。何を言われても、名護には確固たる想いや確信が、いくらでも湧き上がるのだから。

「君が君らしくいれば……そこに、きっと、彼の姿も現れる……!
 それが……君たち親子を見た俺の――俺の、確信……! そして、この世の理だ……!!」
「世界の宿命を前に――守るべき世界を前には、誰の子でもいられない……僕が僕らしくいる事なんて許されない!! それが王の運命だ!!
 だから――自分の手が穢れるとしても……それが誰かに利用されているとしても、関係はないッ!!」
「自分を……見失うな……渡君!
 誰より……君自身が……そんな事望んでいないだろう!
 君は、やっぱり……君らしく生きればいい――君は……役職や使命なんかの為に……生きているわけじゃない……!!」
「王になる事も……僕自身が決めた運命だ……!!」
「そうじゃない……渡君!
 それは、君が自分を縛る為に定めた鎖……いつでも解き放てる、だから――」

 何かが渡の胸の中で蠢く。
 暴走する本能。怒りでもなく、欲望でもなく、悲しみでもなく、何か……欲望以上の欲するものが渡の中に聞こえた。

 これは鎖だ。
 己の中にある、何かひとつの感情を縛る鎖が、揺れ動いている。
 それがはちきれかけている。

325 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:05:08 ID:gv8rKMJw0










「――――――――運命の鎖を解き放て!! 紅渡!!」











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326 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:05:30 ID:gv8rKMJw0
 名護が叫んだ――渡が呆然とする。

 渡が名護を見た――名護が接近する。

 名護の身体が渡を包んだ――渡の身体が硬直する。

 渡の腕が居場所をなくして空を掴んだ――名護の声が聞こえる。

 名護は、渡をいとしい家族のように抱きしめていた。

「渡君……。俺は……君に、君らしくいてほしい……それだけだ……。
 だから、もう一度だけでいい、もう一度……今度は……俺の隣で戦ってくれ!
 キバとして、紅渡として……!!」
「名護さん……」
「君がそんな運命を辿るとしても、仲間として……師匠として……君と戦った日々には、まだ未練がある……!
 せめてもう一度……君が隣で戦ってくれたのなら――俺にはまだ……そのチャンスが欲しい……!」

 名護は、友として渡を抱きしめるのみだった。
 彼の中の真の想いは、結局のところそれに尽きた。
 誰かの命が渡の手に奪われるだとか、渡の行為が悪だとか、貫く正義があるだとかではなく――ただ、望まない行動を続けている渡の姿が、名護にとっては、見ていられないほど痛々しかった。
 それだけだった。

 名護から見ても――渡は、馬鹿だった。
 だが、どこまでも優しかった。
 そんな渡に対する感情は、どれだけ暴力を乗せてぶつけたとしても、憎しみにはなりきらなかった。

「……」

 そして、渡もまた同じように……名護の愚直なまでの想いや後悔、罪や友情を感じながら、彼を否定しきれなかった。
 いや、どこまでも肯定し続けた。
 そして、渡には、名護に勝つ事は叶わなかった。――この男は、どこまでも、渡の前を往く、自分の師匠だ。





「…………わかりました――名護さん。
 この場は、僕の負けです――僕も、紅渡も……負けを認めるしかありません……」





 力なく、渡がそう言うと――名護は、ほっとしたように力なく崩れ落ちた。
 名護の体重が全て地面に吸われる。

「わかって……くれたか……はは……」

 そう言って笑った後で、名護はそのまま地面に大の字になって寝転んでいた。
 心の底から湧き上がる、不気味なほどの高笑いと、彼の目に見えている夜空の星たち。
 汗まみれで痛む体と、張り詰めていた空気が抜けていく心地よさ。

「――それなら良かった……。
 正直、思ったより体がボロボロだったんだ……。
 君は強い。だから、これ以上、長引かせるわけにはいなかった……」

 そうして一人で公園の地を独り占めにするかの如く寝転び、自嘲気味に笑う名護だった。
 彼の中に到来しているのは、勝利の喜びよりも、その勝利によって渡が初めて「紅渡」である事を認め、名乗った事だった。
 彼はキングではない。――紅渡。ずっと隣で戦ってきた仲間、俺の弟子。

 運命の鎖を、解き放ってくれた。
 そんな渡が、名護を見下ろして、少し吹き出して無邪気に笑った。
 よく見た笑顔、そのままだった。名護もまたつられた。

327 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:05:48 ID:gv8rKMJw0

「……名護さん、目に大きな痣ができてますよ」
「君こそ……頬が少し腫れているじゃないか」
「そりゃ、痛かったですから……。だって、名護さん本気で殴るんですもん」
「君が言える事か。少しは手加減しなさい」
「ごめんなさい。……でも、効きました」
「俺も同じだ。だが、同じ痛みを分かち合うのも、まあ悪くない」

 それから、名護は上体を起こした。
 このままずっと寝転んでいたいほど、体は休息を欲していたが、それよりももっと向き合って、改めて言いたい事がある。

「――もう一度、共に戦おう、渡君」

 名護からは、それだけだ。
 世界の為に戦うな、とは今は言わなかった。

 ただ……隣で戦ってくれていれば……その中できっと、いつか。
 裏切る事のない名護の仲間とともに、変わってくれる。
 親しくなった相手を殺められるほど、渡は冷酷にはなりえない。
 それに――その時の為の言質を取る。

「それでも……もし、考え直すつもりがないのなら、戦うというのなら……その時は、真っ先にこの名護啓介に牙を向けなさい……。
 この俺を倒してから――それができなければ、君に彼らは倒せない。俺も、覚悟は出来ている」

 まずは自分を倒せ、と。
 これから二人で向かう先にいる、他の誰でもなく……。
 それに対して返事をする事もなく、渡は無垢な笑顔を見せて言った。
 キングではない、紅渡としての言葉を。

「……僕は、名護さんと出会えてよかった。
 名護さんは僕にとって、大事な仲間で……大事な師匠で……大事な、友達です。
 ありがとうございました、名護さん」
「……俺も同じ思いだ。……ありがとう、渡君。
 君ならきっと、やり直せる。誰よりも優しく、正しく、強い……本当の王として」
「名護さんは、最高です」
「……君こそ、最高だ」



 しかし――――。



「……」



 ――――そこで、紅渡としての時間は、終わった。



「……でも、ごめんなさい、名護さん――。
 ――これが僕の、裏切りです」



 そんな声と、何か鈍い痛みとともに、名護の意識は途絶された。
 もはや、名護は自分の身に何が起こったのかさえ、記憶していない。
 ただ、それから先――ちょっとした事が起きた。



♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪

328 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:06:11 ID:gv8rKMJw0



 名護は、夢を見た。
 目の前に現れた紅音也が、ふと告げる。

 ――生きて立っている、この男と会うのはいつ以来か。

 彼の遺体は確かに見かけた。それが彼を見た最後だった。
 だが、いつ、彼といつ、どうして会ったのか。
 それが名護の中で思い出せなくなっていた。
 しかし、そんな事は名護にとって些末な話だった。

「……名護」

 音也は、ただ一方的に、どこか切なげな表情を見せて名護に言った。
 声を返せない。名護に声を返す力はない。
 それは、夢だから。
 この夢の中で、名護に声を発する権利は与えられなかった。
 ただ、頭の中で考えたり、疑問に思ったりだけはできた。
 音也が何故、こんな時に自分の前に現れたのか――名護には全くわからない。
 そして、名護は余計に意味のわからない事を音也から告げられる事になった。

「……人の記憶は、脆くて弱い。
 だがな、それでも世の中には『どうやっても忘れられる事のない天才』というのが生まれてしまう。勿論、この俺たちの事だ」

 人の記憶……?
 それがどうした……?
 脆くて弱い、記憶……。

「――忘れんなよ。
 いつか、きっと……お前の中の強さと、あいつの強さがきっと結びついて、もう一度良い音楽を聞かせてくれる。
 こんなに良い音楽が、この世界の歴史から消えて良いわけがない。いや、神が許しても俺は許さない。……俺は信じてる」

 何を忘れるなと言った……?
 あいつとは、あいつとは誰の事だ……?

「じゃあな――後は任せたぞ」

 疑問を訊く事もなく、音也は去っていく。
 それは、あの自由気ままで勝手な男らしい、去り際だった。
 だが、音也の瞳はどこか――懐かしいような純粋さを、常に含んでいた。

 名護の中で――何かが張り裂けそうになる。

 俺は……一体。



♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪



「――――名護っ……! おい名護っ……! いい加減起きろ!」

 名護が目覚めると、キバットバットⅡ世が飛び回っていた。
 何か妙にうるさいものが叫んでいるような気もしていたが、それは彼の声だったのだろうか。
 名護は少々、煩わしく思いながら目覚めた。

「ようやく目覚めたか。
 随分と寝覚めが悪そうだが……まあ別れの言葉も告げずに立ち去るのはこちらの寝覚めが悪いんでな。
 最後にせめて、お前に伝言を授けに来てやったぞ」

 キバットの声を訊きつつも、名護は辺りを見回す。
 一人で何故、こんなところのいたのか――まったく覚えがない。
 その前までは、名護は確か病院で仲間たちと会議をしていた。その後で、何か理由があってここに来たのかもしれない。

 ……しかし、その記憶がない。
 ここに来るだけの必然性もわからないし、その事情を知っているのはキバットだけだろうと思ったが――彼は、「別れ」などと云っている。
 彼は何かを知っているのだろうか。
 いずれにせよ、何故別れなどと云うのだろうか。

329 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:06:35 ID:gv8rKMJw0

「別れる……? 最後……? 何故、俺たちと行けない……キバット君」
「残念だが、名護。俺は新たなる王の覚悟を、見届けた。
 奴の孤独、悲しみ……闇、闇、闇だ。それは確かに、かつての主を上回る。気に入った。
 俺の力を受け継ぐにふさわしいキングだ」

 名護には、彼の告げた言葉の意味がまったくわからなかった。
 ただ、何となく惨めで――何となく、歯がゆい思いがある。
 すっかり置いてきぼりで、それでも、置いていかれるわけにはいかない気分。
 いや――自分も、何か大事な事を忘れているような……。

「……何の事を言っている? それより、俺は何故こんなところで眠っていたんだ……?
 教えてくれ、キバット君。一体、何があった……?」
「フンッ、哀れだな……。とにかく、これは王の命令だ。伝言だけは授けてやろう。
 ディケイド――奴は世界の破壊者。ディケイドを倒す事が仮面ライダーの使命、もし会ったのなら奴だけは真っ先に破壊せよとの事だ。
 ……さて、俺は王のもとへと行く。悪いが、翔一たちにもよろしく頼んだぞ」

 そう言って、キバットは物憂げな顔とともにどこかへ飛び去り、夜の闇に溶けてしまった。
 果たして、彼が何を知っていたのか――それはわからないままだった。

「――待て、キバット君! ……どういう事だ。
 世界の破壊者……それに……新たなる王とは一体……!」

 立ち上がって追いかけようとしたが、体中がズキズキと痛む。
 追いかけるどころか、その行先を見つける事さえ無理だった。
 結局、何故キバットとここにいて、ここで何をしていたのかさえ――名護にはわからない。

「だが、俺は何故――。くっ……」

 頭の中で、キバットの言葉を整理する。

「――俺の……仮面ライダーの使命? ディケイドを倒す事が……?
 いや、俺には何か、もっと大事な別の何かが……」

 違和感。
 目の前に霞み消える何か。
 ここで、さっきまで誰かと話していたかのような錯覚。
 そして、何も話していないのに、何か話し足りないような感覚。

(夢、だったのか……?)

 ……なんだか、それも含めてすべて夢だったような気がした。
 そうだ、さっきまでここで気を失い眠っていたのだ。夢に違いない。
 目覚めるとともに、胸を締め付ける……そんな何か切ない夢を見ていたのだ。
 ただそれだけだ。
 今立ち向かうべきは、現実だった。

「――ッ!」

 ふと、左目に痛みが走った。
 目やにでもついているのかと思って触れると、少し腫れている。
 こんなところをぶつけたり、戦闘で負傷したりした覚えがない……物貰いだろうか。

 そんな事を思っていると、少し、涙が出た。
 それは痛みから出たのか、目のどこかが刺激されたのか、それとも何かの情動が流したものなのかは、誰にもわからなかった。
 それを気にする事もなく、名護はそれを拭った。
 視界の先に、ある物が見えた。

「缶コーヒー……? 何故こんなところに置いてある?
 ……中身が入っているが、まあ良い。ゴミはゴミ箱に捨てなければ」

 ベンチの上に置いてあった缶コーヒーだ。
 名護は不思議に思いながらも、それを近くのゴミ箱に放り捨てた。

 ゴミ箱には、既に同じ空き缶が一つ入っていた。そういえば、自分も先ほどコーヒーを飲んだのか、口の中から微かにコーヒーの香りがした。
 まさか、あそこに置いてあった缶コーヒーでも飲んだのだろうか。
 ……いや、そんなわけはないか。
 そう思いながら、名護は不思議そうにベンチを見つめた。

330 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:06:59 ID:gv8rKMJw0

「――」

 ふと、ベンチに、誰か座っていたような気がした。
 誰かが笑いかけたような気がした。
 しかし、名護はその違和感の正体を、もう気にも留めなくなっていた。
 疲れているのかもしれない、と思いながら。

「――俺は……こんなところにいる場合じゃない。
 戻らなければ……仲間のもとに……」

 名護啓介には――仮面ライダーイクサには、往く場所があった。
 ここで出来た仲間たちのもとだ。まずは、そこに戻らなければならない。

 名護は、それから辺りを見回し、カブトエクステンダーを停めた場所だけ思い出した。
 それでも、やはり何故ここにやって来たのかだけはわからず――ただ、もうそれを考える事もなく、跨り、その場を去った。



♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪ ♯ ♪



「――新たなるキングよ。確かにお前の言う通り、奴からは『紅渡』に関する記憶がすべて消えていた」
「ありがとうございます、見届けてくれて……。
 それより、貴方こそいいんですか? もともと彼らと一緒だったんでしょう?」
「構わん。俺は誰の味方でもない。気の向くままに、在るべきところに戻るだけだ。
 それから、キングよ……貴様がキングを名乗るのなら、俺への敬語もやめろ。俺は王の鎧に過ぎん」

 紅渡――いや、赤い錆色の戦士へと、キバットは告げた。
 渡の今の姿は、人の記憶を代償として変身する忘却の仮面ライダーに変わっていたのだった。
 戦う為ではなく、それは忘れさせる為の変身だった。
 名護を殴打し、気絶させた後――彼は、この姿へと変身したのだ。

「……」

 やがて、戦士の変身を解き、彼は再び紅渡という青年の姿を晒す。その手に持っていたカードは、そのまま砂となり消滅していく。
 渡が名護のもとを去る時に見せた覚悟――それは、“名護啓介の記憶の中から紅渡という青年の存在を消す事”だったのだ。

 もはや、名護は渡の名前を聞いても素知らぬ顔ができるほど、渡の存在を忘れ去っているだろう。
 これでもう二度と、彼の事を紅渡と呼ぶ人間は存在しえない。
 それでいい。
 あれが――名護啓介に抱きしめられてから少しの間だけが、紅渡の最後の時間だった。あそこでもう一度、紅渡の名前を名乗ったのは、最後の決意。
 ほんの少しだけ王の運命から解放され、もう一度、名護に本当の意味で別れを告げる為の行いだった。

(名護さん、僕は――これ以上貴方と同じ道を進む事は出来ません……。
 僕の罪を貴方が背負うというのなら……それだけ多くの人を傷つけ、苦しめる必要があるのなら、最初から僕がいなくなってしまえばいい。
 そうすれば、貴方はもうこれ以上、背負わない。苦しまない。
 そして、貴方は正義の味方――仮面ライダーイクサでいられる)

 師匠である自分が罪を共に背負うと、名護は言った。
 ならば、その事実ごと消してしまえば良いのだ。
 確かに、罪というのは誰もが無自覚に背負う物。知らない事も、忘れる事も、また罪だと云えるかもしれない。
 しかし、それでも罪はただ在るだけでは本人を苦しずには済む。知った時、背負う覚悟を持った時に初めて罪は圧し掛かり、人を苦しめるのだ。
 だから、名護にはすべて、忘れてもらう。

 師匠と弟子であった時間も、キバとイクサであった時間も、友であった時間も、先ほどの戦いも――すべて消えてしまえば、名護はきっと、一つの大きな罪から解放される。
 もし、地獄なんていうものがあるというのなら、そこで渡の隣を歩く必要はない。
 愛する妻と、天にいれば良い。
 ……それで、いいんだ。

331 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:07:20 ID:gv8rKMJw0

(でも、名護さん。
 貴方の言葉は確かに響いた。貴方への最後の言葉も嘘じゃない。
 僕は僕らしく生きたい……ずっとそう願っていた。
 今はそれが出来ない立場だけど……それをわかってくれて、本当に嬉しかった。
 ――貴方はやっぱり最高です、名護さん。
 ありがとう……僕は、忘れない)

 カブトエクステンダーを駆り、どこかへ去っていく名護の背中を、渡は潤んだ瞳で見つめていた。
 既に、彼は切り替えたのだろう。
 それから、決意を秘めてキバットへと言った。

「――行こう、キバットバットⅡ世」
「いいのか……」

 キバットバットⅡ世もまた、珍しく他者を気遣うような素振りを見せた。
 それは、単純にキバット自身もまた、翔一たちと別れた事に少々思わしいところがあったからかもしれなかった。
 しかし、彼は闇のキバの鎧。
 帰るべき場所は悲しみや闇の淵にいる、王の隣だ。
 そういう意味では、キバットにとってはうってつけの場所ともいえるが――しかし、渡はそれをどこにもぶつけなかった。

「――名護さんは……いや、彼は別の道を行くよ。仮面ライダーという道へ」

 どこか爽やかにはにかみながらも、心の奥底には悲しみが溢れていた。
 大事な人から存在が消えるという事は、これほどまでに辛い物なのかと。
 これからたとえ名護に会っても、彼は気づかずにすれ違っていくだろうし、もしかしたら今度会えば止める言葉ひとつもなしに襲い掛かってくるかもしれない。



 そう思うと……。



 ……だが、渡は――キングは去りゆく名護に背を向けながら、次の瞬間にはファンガイアの王としての毅然とした面持ちをしていた。

「……僕は、王の道へ」

 決して、振り向く事なく歩いていく渡。
 運命の鎖は、紅渡と名護啓介を引き裂き――そして、それぞれの道が交わるのを阻もうとしていた。
 ただ、どこかできっと――見えない鎖は、二人を繋げていた。

332 師弟対決♭キミはありのままで(後編) ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:08:05 ID:gv8rKMJw0





【二日目 深夜】
【D-2 市街地】

【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、左目に痣
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW 、ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)、ラウズカード(ダイヤの7,8,10,Q)@仮面ライダー剣、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:病院の方に戻る。
1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
2:総司君のコーチになる。
【備考】
※時間軸的にもライジングイクサに変身できますが、変身中は消費時間が倍になります。
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしていましたが、翔太郎との情報交換でそういうわけではないことを知りました。
※海堂直也の犠牲に、深い罪悪感を覚えると同時に、海堂の強い正義感に複雑な感情を抱いています。
※剣崎一真を殺したのは擬態天道だと知りました。
※ゼロノスのカードの効果で、『紅渡』に関する記憶を忘却しました。これはあくまで渡の存在を忘却したのみで、彼の父である紅音也との交流や、渡と関わった事によって間接的に発生した出来事や成長などは残っています(ただし過程を思い出せなかったり、別の過程を記憶していたりします)。
※「ディケイドを倒す事が仮面ライダーの使命」だと聞かされましたが、渡との会話を忘却した為にその意味がわかっていません。ただ、気には留めています。



【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、地の石を得た充足感、精神汚染(極小)、相川始の裏切りへの静かな怒り、心に押し隠すべき悲しみ
【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW、ゼロノスベルト+ゼロノスカード(緑二枚、赤一枚)@仮面ライダー電王 、ハードボイルダー@仮面ライダーW、レンゲルバックル+ラウズカード(クラブA〜10、ハート7〜K)@仮面ライダー剣、キバットバットⅡ世@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×3、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、アームズモンスター(バッシャーマグナム+ドッガハンマー)@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0〜1)、地の石(ひび割れ)@仮面ライダーディケイド、ディスカリバー@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:王として、自らの世界を救う為に戦う。
1:レンゲルバックルから得た情報を元に、もう一人のクウガのところへ行き、ライジングアルティメットにする。
2:何を犠牲にしても、大切な人達を守り抜く。
3:ディケイドの破壊は最低必須条件。次こそは逃がさない。
4:始の裏切りに関しては死を以て償わせる。
4:加賀美の死への強いトラウマ。
5:これからはキングと名乗る。
【備考】
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キングを知りません。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。
※相川始から剣の世界について簡単に知りました(バトルファイトのことは確実に知りましたが、ジョーカーが勝ち残ると剣の世界を滅ぼす存在であることは教えられていません)。
※レンゲルバックルからブレイドキングフォームとクウガアルティメットフォームの激闘の様子を知りました。またそれによってもう一人のクウガ(小野寺ユウスケ)の存在に気づきました。
※地の石にひびが入っています。支配機能自体は死んでいないようですが、どのような影響があるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※赤のゼロノスカードを使った事で、紅渡の記憶が一部の人間から消失しました。少なくとも名護啓介は渡の事を忘却しました。
※キバットバットⅡ世とは、まだ特に詳しい情報交換などはしていません。
※名護との時間軸の違いや、未来で名護と恵が結婚している事などについて聞きました。

333 ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 03:15:40 ID:gv8rKMJw0
以上で、投下終了です。
修正点、疑問点、矛盾や指摘などがあったらお願いします。

ちなみに、折角のキバVSキバの同作キャラだけの話だったので、今回キバ及び原典でクロスのある電王・ディケイド以外の固有名詞は、極力言及するのを避けて書いてみました。
ちょいちょいあんまり関係ない平成ライダーシリーズみたいなシーンや台詞があるとしても気のせいです。

また、ここまで平成ライダーロワでは書いてきませんでしたが、当時から読み手として読んでおり、他のロワで書いた際に大いに参考にしたロワでもあります。
何年か越しに復活していた件についてもこちらの酉でお祝い致します。嬉しいです。イエイ。
誰にも関係ないですが、仮面ライダーキバの10周年も重ねてお祝い致します。

334 名無しさん :2018/03/17(土) 08:39:38 ID:nuLKnJJg0
投下乙です。
キバ10周年に相応しい大作見事でした! 名護さんは渡を最後まで想い、その気持ちは確かに届いたのでしょうけど、だからこそ渡は進むしかないのですね……
渡と名護さんが男同士でぶつかり合い、その果ての忘却してしまうことが何とも切ないです……
そんな渡をⅡ世が認めてくれたのは、果たして救いとなってくれるのかどうか……? 渡はⅡ世の息子と共にいた男でもあるので。


そして指摘なのですが、渡の【状態】でゼロノス変身後の時間制限が抜け落ちているようなので、そちらを加筆した方がよろしいと思います。

335 名無しさん :2018/03/17(土) 11:11:01 ID:xjxnjFa.0
投下乙です!
渡と名護さんの殴り合いの末、”紅渡”が戻ってきたかと思えば……それが最後だなんて辛すぎるよ渡
名護さんから渡の記憶が消えてることは病院組の誰かに出会えばすぐわかるだろうけど……それより先に渡が合流してきたらヤベーイ!
渡を”仮面ライダー”に出来る存在が今一人消えて、残る希望はキバット、後は名護さんの後を継いだ総司くらい?
何にせよ先の読めない今後が気になる作品でした、本当にお疲れ様でした。


さて、それはそうとして月報の集計です。
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
118話(+ 9) 20/60 (- 10) 33.3(- 16,7)

336 名無しさん :2018/03/17(土) 12:48:42 ID:JJgdDuLU0
>>335
月報は3/15まででの集計だから最新話は含まれないのでは?

337 名無しさん :2018/03/17(土) 12:59:21 ID:xjxnjFa.0
>>336
失礼いたしました、それでは集計し直してこちらが正式な結果になります。
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
117話(+ 8) 20/60 (- 10) 33.3(- 16,7)

338 名無しさん :2018/03/17(土) 15:46:03 ID:R.OtYQcA0
投下お疲れ様です!
他の方も述べられたとおり、キバ10周年に相応しい傑作でした!
遂に邂逅した名護さんと、キングを継いだ渡。互いの想いが交錯する会話と生身の殴り合いは、井上脚本と小林脚本(こっちはオーズ含む)が融合したような前期平成ライダーらしいテイストの展開でした。
それに見合う感情描写の見事さ、自身の罪を振り返った名護さんの心象世界が小説版キバを思わせる小ネタなど、読み応え充分な描写で見せられる男同士の情。友として師匠として、渡を想う名護さんは最高です!
でも、そんな最高な名護さんを苦しめないために渡が最後に選んだ手段があまりにも、あまりにも切なく悲しい……最高のSSでした

それはそれとして、遂に闇のキバをゲットして、王の鎧への変身をコンプリートすることが可能になった渡までマーダーのまま加わった会場西側、激戦区過ぎる……仮面ライダーたちや彼らの守りたい人々はどれほど生き残れるのか
そして名護さんが忘れてしまったとしても、キバ勢のみんなが奏でた音楽の残響が渡の結末に救いを齎すことはできるのか、先の展開も楽しみです
改めて傑作の執筆と投下、お疲れ様でした!

339 ◆gry038wOvE :2018/03/17(土) 16:11:47 ID:gv8rKMJw0
>>334
指摘ありがとうございます。
忘れてました(ゼロノスだけに)。2時間変身不能で。

あと>>320の名護のやたら長い台詞ですが、

> 己の正義の為に――父を死なせた自分の思想を守る為の言葉の為に、自分の中でファンガイアを強力な悪に見立て、戦った。

というところがちょっと日本語的にアレだったので、

>己の正義の為に――父を死なせた自分の思想を守る言葉の為に、自分の中でファンガイアを強力な悪に見立て、戦った。

にwikiで修正しますね。

340 名無しさん :2018/03/21(水) 22:46:01 ID:IXm6/dRk0
仮投下きてるぜオイ。

341 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:06:27 ID:uCHFX0U.0
これより、本投下を開始します。

342 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:06:58 ID:uCHFX0U.0



 ……放送の役目を終えた飛行船が、夜空に生じたセピア色の極光の中へと帰って行く。

 F-6エリアのとある民家――廃工場から程近いその一軒家で放送を聞いていた葦原涼は、その帰路を為す術なく見送るしかなかった。
 悲しみの果てに、悪夢から解き放たれて最期を迎えた鳴海亜樹子。彼女の遺体を、最後に交わした約束の半分だけでも果たそうと、この家の寝台に安置し終えたところで、第二回放送が始まったのだ。

 最初の放送は、涼自身は意識を喪っていて直接受け取ったわけではない。内容を伝えてくれたのは門矢たちで――そして瞳を閉じていた己の傍に居てくれたのは、亜樹子だった。
 例えその心に秘めたものが、殺意だったとしても――それが彼女の本当の望みでなかったことを、涼はもう知っていた。

「――悪いな。おまえが起きるまで、一緒には居てやれなさそうだ」

 いつまでだって俺がいる。だから安心して、眠って良いんだ――

 そうは言ったが、いつまでだって亜樹子の隣に居てやることは、今はできない。

 殺し合いはまだ終わっていない。その苛烈さが陰りを見せる様子すらないことを、先の放送は告げていた。

 ――――ヒビキが、死んだ。

 あのライダー大戦と呼ぶべき病院での大乱戦の最中、皆を逃がすための殿を務めてくれた涼の仲間が。
 彼らの生きた、その世界ごと。

 恩師にも、恋人にも、次々と見放され、孤独を深めて行った涼の手を取る新たな仲間となってくれたヒビキ。
 誤解からとはいえ、彼の仲間を殺めた涼を赦し、あまつさえ迷った時には鍛えてくれるとまで言ってくれた恩人を喪った――きっと、彼一人に押し付けたせいで。

 さらに言えば、彼らの世界を滅亡に導いた罪の四分の一は、涼自身の犯した物だ。
 世界の破滅、その引き金を引いた一人となってしまった途方もない罪悪感は、本来一人の身で背負いきれるような重さではなかった。

 ――だが、今は違う。

 乃木や矢車を喪っても、亜樹子を護り切れなかったのだとしても。今の涼にはまだ、仲間がいる。
 元の世界で、同じような力を持つ津上翔一。そして門矢士や橘朔也、フィリップや志村純一と言った、この戦いの中で新たに出会った仲間たちが。

 彼らが、同じ方向を見据えて戦ってくれる。そんな確信が、涼の心に折れることのない強さを与えていた。

 過ちなど、既に数え切れぬほど繰り返してきたこの身だ。
 それでも、そこから逃げさえしなければ――そんな過ちすらも含めて、ヒビキたちは涼を受け入れてくれた。

 ならば、今は膝を着いている場合ではない。
 罪に怯える弱い自分自身さえも破壊し、彼らの分もこの、仮面ライダーの力で人を護ることが己の為すべきことだと、涼は既に理解していたからだ。

 立ち止まることは許されない。特に――首領代行を名乗った女の背後に控えた異形のことを知る、この自分は。

「行ってくる――必ず迎えに来るからな、亜樹子」

 一時の別れを告げて、涼は部屋を後にした。
 ……この会場において最も長い時間を共に過ごした女は、涼の出立を無言のまま受け入れた。

343 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:08:33 ID:uCHFX0U.0





「……もう向かっても良い頃だろう」

 亜樹子を残して家を出てすぐ、涼は北西を見据えて呟いた。
 もう、迷っている時間はない――とは思っていても、現実として与えられた情報や湧き出た感情をすぐに整理できる、というわけでもない。
 放送の情報を纏め、再び心に確かな火を灯すまで、暫しの時間が必要だった。

 おかげで、亜樹子に別れを告げて家を出た今は既に、日付が変わってから十分以上が経過していた。
 ギルスの力を取り戻すまで、残り五分程度。移動時間を考えれば、病院の方角へ歩みを進めても良いはずだ。

 この二時間で、大勢が死んだ。だが生き残った者もいる。
 戦える者が多くなれば、助けられる命も増えるはずだ――そんな考えで足を踏み出そうとした、その時に。

「おっ、ちょうど良いタイミングだったみたいだね」

 涼の前に、見知らぬ少年が現れた。

「――何者だ?」

 思わず、涼は問うていた。
 赤いシャツを金髪の少年の出で立ちそのものは、大きく奇特なわけではない。
 またガドルが放っていたような威圧感、金居の齎していた緊張感のようなものも、軽佻浮薄が服を着て歩いているような彼からは特に伺えない。

 だが――彼の姿には、明らかな違和感があった。

「それは最初の放送を聞いてくれてなかった君が悪いけど、特別大サービスで答えてあげるよ。ギルス」

 涼の、変身した後の名を一方的に知っているその少年には、なかったのだ。
 全ての参加者を等しく律する大ショッカーの権威の象徴――すなわち、首輪が。

「僕は第一回放送を担当した大ショッカー幹部のキング。名簿に載ってた奴とは別人だから、そこは誤解しないでよ?」
「――ッ、おまえが……っ!」

 誰何に答えた少年に向かって、思わず涼は吼えた。
 涼の聞き逃した、第一回放送の主。多くの脱落者を愚弄したと聞く邪悪。剣崎が封印したはずの、アンデッド――!

 全く想定していなかった、望外の遭遇。
 その事実に気づいた時、涼は無意識のうちにキングに駆け寄り、衝動のまま殴りかかっていた。

「おっと」
「――ッ!?」

 だが、軽薄な表情に向けて打ち込んだはずの右の拳が覚えたのは、皮越しに肉と骨を叩くそれではなく、硬い金属の手応え。
 ――キングを護るように、頑健な金属製の楯が、何もないはずの宙に出現していたのだ。
 その姿を視認できたのは一瞬。予想外の抵抗に、拳を痛めた勢いすらも即座に跳ね返されて、涼は無様に地を転がった。

344 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:09:12 ID:uCHFX0U.0

「あはは。バッカだなー、僕はキング。一番強いって意味のキング。君じゃ勝てるわけないでしょ?」

 痛みに呻きながら立ち上がろうとする涼を見て、キングはそんな嘲笑を降らして来た。
 ……悔しいが、一方で認めざるを得ない部分もあった。眼の前に大ショッカーの大幹部が現れたからと言って、感情的になり過ぎた。
 ギルスに変身できるようになるまでまだ数分かかる。カテゴリーキングに属するアンデッドだと聞くキングに生身で挑むのは無謀そのものであり、馬鹿と罵られても否定できない。

 そんな当たり前の前提すら忘れさせるほど、涼の中には大ショッカーへの激しい怒りが渦巻いていたのだろう。

「ふふ、いい顔してるね。君を選んでここに来た甲斐があったよ。死神博士たちを警戒させてくれたカッシスのおかげだね」
「……何?」
「細かいことは良いよ。要するに、僕もこの最ッ高に面白いデスゲームに飛び入り参加したってわけ。その最初の遊び相手が君なんだよ、ギルス」

 完全に見下した風に、キングは涼に告げる。

「君、折角僕の盛り上げた放送を聞いてなかっただけじゃなくてさ。ブレイドにも変身したでしょ? このゲームにも真面目に付き合わないまんま――気に食わないんだよね。だから面白くしに来たわけ」
「……やっぱりおまえら、一つだけでも世界を救うなんて殊勝な考えで動いているわけじゃなかったのか……っ!」

 立ち上がった涼に、キングは笑いながら答える。

「さあ? 何せ首領はすごーい神様だからね。バルバ以外、真意はだーれも知らないみたい」
「神様……だと?」
「そう。だけど、わざわざ僕を幹部に選んでるんだから……同じように、全部の世界をメチャクチャにしたいって思ってるのかもね!」

 そこまで吐くと同時、キングは姿を変えた。
 あのゴ・ガドル・バとギラファアンデッドを合わせたような、金色に鋭角的な意匠を凝らした大柄なカブトムシの怪人――コーカサスアンデッドに。
 そして変身と同時。涼の瞳に焼き付いた華奢な少年の姿、その残滓が消えるより早く、コーカサスアンデッドは手にした大剣を一薙ぎした。

 咄嗟に屈んで死の一閃を回避した涼は、しかし遅れて理解した。
 先の刃が狙っていた的が、己の命ではなかったことを。

「――ッ、亜樹子っ!」

 破壊剣の一撃は、ただ刃先の長さに囚われず。伴って放たれた衝撃波が、描かれた弧の延長線上に疾っていった。
 それはつい先程まで、涼が身を置いていた家屋を両断し――支えを喪わせることで、自重によって倒壊させた。
 逃げ場のないその重さによる蹂躙に――きっと亜樹子の亡骸は、耐えきれない。

「あーあ。安心して眠らせてあげるって約束、守れなかったね?」

 まだペキパキと、柱や板や、あるいは――――ともかく、何かの割れるような音が響く中、明確に涼を玩弄するような声で、愉悦を隠しきれないと言った様子のコーカサスアンデッドが告げてきた。

「――ッ!!」

 外道の所業に堪え切れず、涼はもう一度飛びかかっていた。
 それは先程自戒したばかりの、激情に任せた行動。未だ制限に縛られた身では、その失敗から何かを変革する術など持ち合わせるはずもなく。
 構えられた楯を突き出された勢いのまま、涼は顔面を強打して弾き返された。

345 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:10:09 ID:uCHFX0U.0

「ぐ……っ!」

 もんどり打って倒れながらも、鼻から流した血の分だけ冷静になった涼は瓦礫の山と化した一軒家に視線を向ける。

「亜樹子……、くっ!」
「おぉっと!」

 涼が起き上がろうとするのを見逃がさず、コーカサスアンデッドが手元で剣を旋回させれば、撹拌された大気が増大したような力の波が発生する。
 サイコキネシス――涼自身も何度か体験したような超能力の一種が、圧倒的な推進力と化して肉体を後方に運んだ。
 受け身も取れずに硬い路面に叩きつけられ、体の奥に蓄積された鈍い痛みを呼び覚ます衝撃に目眩を覚える。
 それでも意識の手綱を離すわけにはいかないと、涼は何とか立ち上がる。

「ほーら、逃げろ逃げろ!」

 抵抗する術を持たず、後退するしかない涼を東へと進ませるように、コーカサスアンデッドは向かって来る。
 目的は当然、万が一にも門矢たちが救援に駆けつける可能性を潰すためだろう。
 隙を見て、斜めに突破しようとしても、射程の長い念動力が涼を仲間たちとは反対方向へと追い立て続ける。

「あっはっは。ダッサ!」

 何度も飛ばされ、痛みに動きが鈍ったところをコーカサスアンデッドの剣が襲う。あのガドルのそれにも匹敵する迫力の刃はしかし、先のような飛ぶ剣撃を放ちはしない故に、紙一重の回避に成功する。
 嬲られている――それを理解するのに、さしたる時間は要しなかった。

「本当に逃げるしかできないんだ?」
「――黙れ!」

 まだ、数十秒。ギルスへの変身が解禁されるまでは時間を要する。
 コーカサスアンデッドの挑発に、身を翻して走る途中で叫び返した涼だが、音の速さで迫る言葉からは逃れきれない。

「君は僕と違って弱いよね。だからメチャクチャにされちゃうし、メチャクチャにしちゃうんだよ」

 闇の中。表情の動かない異形の貌。それでもなお、ニヤニヤと意地汚く笑っているのが筒抜けな声音で、コーカサスアンデッドは続ける。
 安い挑発から逃れようと走るが、しかしそれが事実として、仲間との合流という目的から遠ざけられていることに思わず涼は歯軋りする。

「ファム、アポロガイスト、タブー……ゲームに反対するって言いながら、乗ってるプレイヤーばっかり助けてさ。なのに自分の世界だってロクに守れてない。単に下手くそなんだよね、君は。見てて気分悪いぐらい」

 大きな反応を見せない涼をさらに突くように、主催者側ならではの情報アドバンテージを以って、コーカサスアンデッドは言葉を並べる。

「ブレイバックルだってグロンギなんかに奪われて、それでダグバ――第零号って言った方がわかり易いかな? あいつにブレイドの力を使わせちゃってやんの」
「……なんだと!?」

 予想だにしなかった展開を告げられて、涼は思わず問い返した。
 最悪の未確認、第零号。人々を守る仮面ライダーの理念と対局に位置するような怪物の手に、剣崎が遺してくれたブレイバックルが……?

 思わず、足を運ぶ速度が緩まった。
 心に加わった衝撃のほどを目敏く見定め、コーカサスアンデッドはさらに残酷な真実を明かして来た。

「――それで一気に、三人も死んだよ。ヒビキの世界からも一人。君のアシストで半分も落ちちゃってるから、君はあの世界から恨まれるだろうなぁ」
「――ッ!」

346 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:10:51 ID:uCHFX0U.0

 思わず、足を運ぶ速度が緩まった。
 心に加わった衝撃のほどを目敏く見定め、コーカサスアンデッドはさらに残酷な真実を明かして来た。

「――それで一気に、三人も死んだよ。ヒビキの世界からも一人。君のアシストで半分も落ちちゃってるから、君はあの世界から恨まれるだろうなぁ」
「――ッ!」

 思わず、膝が折れそうになった。
 痛みきったこの心身を支えてくれる、仮面ライダーという絆。
 その信念に殉じた男の最期に対して、最悪の背信を働いてしまったのではないかという恐怖が、心に通したはずの芯を萎えさせた。
 加えて倍加した、響鬼の世界の滅亡に加担したという罪の重さが、涼の足を止めさせていた。

 その様子に満足したように、悠然と歩んできたコーカサスアンデッドが、さらなる嘲笑を投げかけてくる。

「なのに、自分の世界の小沢澄子だって死なせちゃって、何がしたいんだかわかんないよね。下手くそ」

 ――何がしたいのか?

 ほんのつい最近まで、涼はずっと迷っていた。人の身で抗うにはあまりにも強大過ぎる、運命の奔流に押されるがまま。
 そんな荒海の中で漂流するような人生に与えられた、目指すべき灯。それは……

「俺は……人を守るために……」
「ブレイドの――剣崎一真の真似かな? それが口先だけの、役立たずの正義の味方ってことだよ」

 涼が絞り出した仮面ライダーの正義を一笑に付して、コーカサスアンデッドは手にした大盾で涼を痛烈に殴打した。
 路地裏に叩き込まれた身体が、空の瓶を満載したコンテナケースに受け止められる。
 当然、固定されてもいない、ただ積み上げられただけの空箱は上級アンデッドの膂力で生じた慣性を支えきれず、涼はその山を押し退けて反対の街路にまで転がってしまう。

 内側を切ってしまった口の中に溜まった血。鉄の味を吐き出している間に、その狭い道を器用に渡ったコーカサスアンデッドが、散乱したガラス片を苦もなく踏み潰しながら迫ってきた。

「そろそろ鬼ごっこも終わりかな?」

 周囲の様子を見渡し、勝利を確信しきった様子で、コーカサスアンデッドが問いかけてきた。
 その凶悪な貌を険しく睨み返しながら、涼は初めてその言葉に頷いた。

「……ああ。おまえが調子に乗るのも終わりだっ!」

 気力を振り絞り立ち上がった涼は、胸の前で両腕を交差させた。

「――変身!!」

 ……苦渋の逃走劇を繰り広げていた間に、涼に課された残り数分の制限時間は消化されていた。
 故に、仮面ライダーの一員たる力――緑の異形たるギルスへと、自らの存在を入れ替えるようにして変身を遂げることが可能となっていたのだ。

「ハァァァ……っ!」

 変身してすぐ。気合を入れる声とともに、生々しい音を立ててギルスの両腕から金色の爪が出現する。

「わぁ、痛そう」
「ウォアァッ!」

 おちょくるように呟くコーカサスアンデッドに取り合わず、ギルスはその爪を携えて駆け出した。

 急迫するギルスに対し、コーカサスアンデッドは楯を前面に構える。
 生身の時に何度も跳ね返された強固な楯。今の状態でも、ただ殴って壊すことは容易ではないだろうことはわかっている。
 だが、ギルスとなったことで格段に向上した腕力で、その防御を崩し、こじ開けることは可能なはず――!

347 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:11:28 ID:uCHFX0U.0

 くだらない悪意のままに亜樹子の遺体を辱め、剣崎を愚弄し、彼らの護ろうとした世界をメチャクチャにしたいとほざく怪人をまず一発、ぶん殴る。

 その想いを原動力に、ギルスはさらに力強く加速して――そして、見誤った。

 コーカサスアンデッドが楯を構えたのは防御のためではなく、攻撃のためであったことを。

「何――っ!?」

 ギルスが右の裏拳で払い除けようとした寸前、コーカサスアンデッドはソリッドシールドを自ら後ろに引き下げて――その影に予兆を隠していたオールオーバーの一撃、その全容を明らかとした。

 間合いを見誤ったギルスクロウは、振り下ろされる刃を迎撃する軌道への修正が間に合わず。
 不意を衝く形で叩き落とされた破壊剣は、その剣先をギルスの右上腕に食い込ませ、甲殻ごと鮮やかに両断してみせた。

 接触により、互いに屈折しながらの交錯。その疾走を停滞させる、息の詰まる灼熱。
 ぼたぼたと、己の命の一部が零れ、人造の大地に吸われる湿った音が響く。

 ――そして遂に、ギルス=葦原涼の膝が地に着いた。

「ぐ……っ、ガ、アァアア……ァッ!!」

 右腕を喪った激痛に耐えきれず、その場に倒れ込んだギルスは咆哮した。

「――だから言っただろ、ギルス? 君じゃ僕には勝てないってさ」

 その背中越しに、コーカサスアンデッドの軽薄な声が聞こえてきた。

 幾度となく激しい怒りを想起させて来たその声――だが最初の攻防で、片腕を奪われたとあっては否定できない言葉でもあった。

 こいつは強い。パワーも技術も、涼の変身したギルスを凌いで余りある。単純に見繕って、その実力は金居の変じたギラファアンデッドと同等クラスだ。
 本来は、もっと慎重に戦うべき相手だった。あるいは唯一対抗できるだろうスピードを活かして撹乱すれば、勝機も探ることができたかもしれない。

 だがここまでの言動で、変身できない涼の冷静さを奪わせ、反撃のチャンスを前に隙を生じさせてそれを潰した――あるいは全て、そのための立ち回りだったのか。

 ともかく結果として、ただの一撃で戦力を激減させられてしまった。大量出血として体力まで喪われては、アドバンテージの機動力すら低下を余儀なくされる。
 奴の言う通り――今のギルスでは、コーカサスアンデッドには勝てない。その事実を悟らざるを得なかった。

(……っ、まだだ!)

 だが、諦めるわけにはいかない。
 ここで諦めて死ねば、葦原涼はただ大ショッカーに都合の良いピエロでしかない。

 命ある限り戦う――仮面ライダーとして。
 この邪悪な怪人を討ち、大ショッカーの打倒に貢献してみせる。
 剣崎は、ヒビキは、散っていた仲間たちは、きっとそうしたはずだから。

 気力を振り絞り、ギルスは状況を再認する。
 しかし激痛に負けないよう、いくら心を強く持とうと、彼我の戦力差が覆るわけではない。再度感情に任せて飛びかかれば、今度こそ致命の一撃を受けるだろう。

348 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:12:06 ID:uCHFX0U.0

 一縷の望みは――ヤツの方が先に変身しているということ。
 キングがコーカサスアンデッドの姿に変わってから、既に数分が経っている。残り時間を持ち堪えさえすれば――

 見出した希望に賭けて立ち上がるギルスに対し、コーカサスアンデッドは肩を竦めてみせた。

「逃げたって無駄だよ。僕は君らと違って首輪をしてないだろ? だから力を使うことに制限はないんだ」

 そしてギルスの思考を事前に予測していたかのように、唯一の活路を詰んできた。
 絶望に浸されていく心地で、呆然と振り返るギルスに対し。指先で破壊剣を弄びながら、コーカサスアンデッドは問うてくる。

「これが僕のゲームメイクさ。君と違って良いプレイングでしょ?」

 無力な生身を甚振り、変身すれば冷静さを欠いた隙を見逃さず圧倒的な実力差で叩き伏せ、ダメ押しに変身制限が存在しないことを最後の最後に告げてくる。
 敵対者の心を折るための、見事な展開と言うべき事態の運び方だった。

 仮に純粋な戦闘力で及ばぬ相手がいるとしても、確かにこいつなら、それさえ覆すような戦運びをしてのけるだろう。
 そのために必要な情報も、既に主催陣営として収集し終えているのだから。
 紛れもない強者――だが、あまりにも心が醜悪な。

(こんな……ヤツに……)

 こんなところで負けて、独りで終わってしまうのか。
 受け入れがたい諦観が、それでもするりと心の隙間から忍び込んでくるのをギルスは感じた。
 その揺らぎを狙ったように、未だ止まらない出血がギルスの意識を引っ張って、深い水の底まで沈んでいくような感覚を齎し。
 葦原涼の意識は変身したまま、一瞬、闇の中に飲み込まれ――

「寝るなよ」

 消えかけた意識は、腹腔に響いた重い衝撃に覚醒させられた。
 コーカサスアンデッドから痛烈に蹴り上げられて、軽くなったギルスの身体は持ち堪えることもできず、一軒の住宅の壁に打ちつけられ、砕きながらも落下する。

 ――何という無様。

「クソ……っ、クソォッ!」

 堪らず、ギルスは絶叫した。だが片腕を喪ったことに未だ慣れない身では、ただ立ち上がることにすら手間がかかる。
 上手く動けなかったその時、不意にギルスの視覚は、闇の中に一つの物言わぬ影を見つけ出した。

349 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:12:39 ID:uCHFX0U.0

「……木野?」

 そこに転がっていたのは、あかつき号の一員にして新たなアギトに覚醒した人物――木野薫の撲殺死体だった。
 顔は手酷く殴られて変形し、髪型も乱れているが、あの体格と服装、残された輪郭や顔のパーツから言ってまず間違いない。

 この殺し合いに巻き込まれる以前から、一度はその手で救った涼自身や真島浩二を攻撃してくるという変貌を遂げた知人との想定外の再会に、ギルスは一瞬、時を忘れて硬直した。

「あー、そういえばこの辺がアナザーアギトの死んだところだったっけ」

 相変わらず、ゆったりとした足取りで追跡してくるコーカサスアンデッドが、ギルスの視線の先に気づいたように呟いた。
 涼をギルスと呼んでいたのを見るに、アナザーアギトとは木野のことを言っているようだ。単なるアギトという呼称でないのは、先にアギトに目覚めていた津上との区別を付ける意味があるのだろうか。
 とりとめのない思考の中でそんなことを考えていると、ギルスの聴覚は汚泥の煮立つような笑声を拾った。

「そいつも傑作だったよ。色々勘違いした挙げ句、支給品のメモリにあっさり呑まれちゃってさ。反動で動けないところを親父狩りされて死んでんの」
「――笑うな!」

 思わず、ギルスは声を張り上げ、怪人の言葉を遮っていた。
 残り少ない体力を、必要以上に消費してしまった呼吸を落ち着かせながら、それでもギルスは言葉を続ける。

「……こいつを笑うな。こいつは、木野は……本心はどうあれ、俺の心に最初に火を点けた、恩人だ」

 ――俺の力で、人を守ってみるのも悪くない。

 呪いとしか思えなかったこの異形の力を、涼が明確に前を向いて捉えることができたきっかけは、確かに木野薫との出会いに在った。
 そんな恩人を、幾ら強大な力を誇ろうと、見下げ果てた幼稚な心根の怪物に嗤われるというのは、ギルス――涼にとって耐え難いことであったのだ。

「いや、無理だって。君らの世界、丸ごと空回ってるピエロだし。僕じゃなくても笑っちゃうよ」

 そんなギルスの怒りもどこ吹く風と嘲笑い、コーカサスアンデッドが手の中で得物を弄ぶ。

「その、君の心の火? って奴も、まさに風前の灯火だもんね」
「そうでもない……おまえを倒せば、まだ俺は戦える。木野に貰ったこの火は消えない、消させないっ!」

 折れかけた意志が、見出した使命によって再び熱を持ち、打ち直される。
 声を発することに、もう苦痛を覚えなかった。あれだけ震えていた足がしゃんと路面を噛んで、ギルスの身体を立ち上がらせる。

 そうして隻腕のまま闘志を見せるギルスを、コーカサスアンデッドは鼻で笑った。

「バッカだなぁ、こんなにやられてまだ僕の強さがわからないの?」
「確かに俺はおまえより弱いかもしれない……だが、そんなことで諦める弱い俺を、破壊してくれた奴がいる」

 脳裏に浮かぶのは、不敵に笑う青年の顔。
 この地で新たに得た、仲間の一人。

 そうだ――涼はもう、独りではない。
 なのにあっさりと絶望に屈していては、ホッパーゼクターにも、あの世の矢車にも愛想を尽かされてしまうだろう。
 勝手に諦めて、仲間に迷惑を掛けられない――世界を滅ぼしたという罪を知らされた時にも支えてくれた、その気づきの再認が、死に瀕したはずの肉体にもう一度、力を漲らせようとしていた。

「だから木野や、ヒビキや、剣崎……もう戦えないあいつらの代わりに、俺が戦わなくちゃいけないんだっ!」

350 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:13:14 ID:uCHFX0U.0

「そういうのはもういーから……あーあ、なんか萎えちゃったなぁ。もう終わりにしよっか」
「終わらせるものかッ!」

 不屈の意志を声にして、ギルスは再び駆け出した。
 限りなく勝ち目の薄い戦いに、それでも、生存の可能性を否定する怪物を葬るために。
 これ以上の犠牲者を出さぬよう――仲間たちや、彼らの大切に想う人々の未来を護るために。

 強く、強く拳を握った、その瞬間――




 ――背にしていたはずの木野薫の亡骸から、闇を切り裂く光が齎された。







 ――とある男の話をしよう。

 かつて、その男は、一つの事故で弟を喪うこととなった。
 弟を助けることができなかったという後悔は、他者を救うという行為を代償として求め――やがては、救いを求める人間は全て自らの手で救わねばならないという妄執に取り憑かれるようになった。

 転じて、己以外に他者を救う存在は不要であるという危険思想にまで達してしまった男は、人々を襲う怪物だけでなく、人間を守護する同族にまで牙を剥いた。

 人を救う力を持つ存在――アギトであることに、男は呑み込まれた。

 だが、同じく事故で喪われた男の右腕――それが紡ぐはずだった可能性を再起させた、移植された弟の腕が、いつもその邪魔をした。

 他の善良なアギトへの攻撃を諌め続ける弟の右腕に、彼が戸惑いを覚えていた時――謎めいた人物が、見透かしたように現れて、こう言った。

「おまえは、何故アギトが存在するかを知らない。
 アギトの種は、人間と言う種の中に遥か古代に置いて、すでに蒔かれていたのだ。
 たった一つの目的のために……人間の可能性を否定する者と戦うためにだ!

 ――アギトの力を正当に使った時、初めておまえは、自分を救うことができる。おまえはまだ、アギトの力の使い方を知らない!」

 知った風な口を効くその人物の言葉を、男はすぐには受け入れなかった。

 だが、それは確かに彼の中に引っかかり続け――この世界存亡を懸けた生存戦においても、自らが力に呑まれるのではないか、という不安として、死の寸前まで胸にあり続けた。

 アギトの力を行使する暇すら与えられなかった死の際の、男の心中、その全容は決して知れない。

 ただ、それでも彼は、自身を救うことを――アギトの力を正当に使うことをきっと、求めていたはずであり。

 その意志はきっと、この殺し合いを仕向けた存在と対局に位置した、アギトの力の根源が目指した景色と、合致したものであった。



 だから、遠き神話の時代から、現代にまで続いたように――男の意志を継ぐ者のための奇跡が今、光となって輝いていた。

351 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:14:22 ID:uCHFX0U.0





 キング――コーカサスアンデッドが会場に降りてから、想定を裏切られたのはそれが二度目だった。

 そのうちの一度目は、死亡と同時に首輪が消失したことで、正しく制限が働くか不明である乃木怜治の復活。そのイレギュラーを警戒し、対処も兼ねてキングの参戦を認めた死神博士の読みが外れたこと――強敵であるカッシスワームとの対決も睨んで準備をしてきたというのに、ギルスの制限解除に至ってもその影も形も見えなかったこと。言うなれば杞憂でしかなかったことだ。

 だが、この――時間もわからなくなるほどの眩い白光は、本当の意味で、予想だにしていなかった事態の発生を意味していた。

「これは――っ!?」

 次の瞬間、強すぎる輝きから視界を庇うように構えていた左腕に、強い衝撃が走った。
 正確に言えば、その手に携えていたソリッドシールドに。

 何かが二発、ほぼ同時に着弾した。非常に強い衝撃を与えたそれは、楯に食い込んだまま離れず――あろうことか、コーカサスアンデッドの豪腕さえも捩じ伏せる勢いで、引っ張って来る。

「――ウァオォオオオオッ!!」

 野獣の如き雄叫びが、コーカサスアンデッドの聴覚を震わせた直後。三度目となる強い衝撃、そして何かの砕ける致命的な手応えが、左腕を通して伝わってきた。

「……何が!?」

 砕け散ったもの――それは鉄壁を誇った、コーカサスアンデッドの持つ盾、ソリッドシールドだった。
 それを為した触手、のようなものを伸ばした濃緑の影は、喪われていた右腕――さらにはその肩や肘から禍々しい刃を今まさに生やしながら、紅い双眸でコーカサスアンデッドを睨めつけて来る。

「その姿……まさか、進化したってこと?」

 まさに今、目の前で“変身”した敵手に対して初めて、コーカサスアンデッドは動揺の声を漏らした。

「……らしいな。おまえの笑った、木野が俺にくれた腕……継がせてくれた、人を救うための力だ!」

 答えた異形はギルス――葦原涼の声で、コーカサスアンデッドに力強く言い返した。







 彼の到達したその変身は、アギトの力を受け継いだことでギルスの限界を超えた姿――エクシードギルス。

 かつてあかつき号事件で、死亡した白き青年から沢木哲也にその力が受け継がれたようにして、木野薫の遺体からアギトの力が涼に譲渡された結果起こった奇跡。
 少し未来の時間軸において涼が受け取った真島浩二のそれとは違い、完全覚醒を遂げていたアギトの力は、今まさに必要とされるこの時に、彼の限界を越えさせた。

 それはまさに、彼らの意志を継ぐと誓った涼の背中を、死者たちが押してくれているようでもあり。
 そして新たに得た、まだこの手に残っている絆を護る力を得た事実、そのものが彼の心の火を強く、強く燃やしてくれていた。

 溢れる想いを込め、再生した右の拳を強く握りながら――幾度となく、自身の行手を阻んだ楯を遂に破壊したエクシードギルスは、その勢いのままコーカサスアンデッドへと宣言する。

「行くぞ、アンデッド……俺がおまえを封印する!」

 それが新生した仮面ライダー――儚き人の可能性を護らんとする獣と、永遠に囚われし邪悪が繰り広げる争いの、新たな始まりを告げる狼煙となった。

352 可能性の獣 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:14:54 ID:uCHFX0U.0

【二日目 深夜】
【F-7 市街地】


【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】疲労(大)、亜樹子の死への悲しみ、仲間を得た喜び、響鬼の世界への罪悪感、仮面ライダーエクシードギルスに変身中、仮面ライダーキックホッパーに1時間10分変身不可
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す!
0:剣崎の意志を継いでみんなの為に戦う。
1:キングを倒す。
2:人を護る。
3:門矢を信じる。
4:第零号から絶対にブレイバックルを取り返す。
5:良太郎達と再会したら、本当に殺し合いに乗っているのか問う。
6:大ショッカーはやはり信用できない。だが首領は神で、アンノウンとも繋がっている……?
【備考】
※変身制限について、大まかに知りました。
※聞き逃していた放送の内容について知りました。
※自分がザンキの死を招いたことに気づきました。
※ダグバの戦力について、ヒビキが体験した限りのことを知りました。
※支給品のラジカセ@現実とジミー中田のCD@仮面ライダーWはタブーの攻撃の余波で破壊されました。
※ホッパーゼクター(キックホッパー)に認められました。
※奪われたブレイバックルがダグバの手にあること、そのせいで何人もの参加者が傷つき、殺められたことを知りました。
※木野薫の遺体からアギトの力を受け継ぎ、エクシードギルスに覚醒しました。



【キング@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編34話終了より後
【状態】健康、コーカサスアンデッドに変身中
【装備】破壊剣オールオーバー@仮面ライダー剣
【道具】???
【思考・状況】
基本行動方針:面白おかしくバトルロワイアルを楽しみ、世界を壊す。
0:進化したギルスに対処する。
1:このデスゲームを楽しんだ末、全ての世界をメチャクチャにする。
2:カッシスワームの復活を警戒。
【備考】
※参加者ではないため、首輪はしていません。そのため制限が架されておらず、基本的には封印されない限り活動可能です。
※また、支給品やそれに当たる戦力を持ち込んでいるかも現時点では不明です。詳細は後続の書き手さんにお任せします。
※カッシスワームが復活した場合に備え、彼との対決も想定していたようですが、詳細は後続の書き手さんにお任せします。
※ソリッドシールドが破壊されました。再生できるかは後続の書き手さんにお任せします。

353 ◆cJ9Rh6ekv. :2018/03/23(金) 22:19:29 ID:uCHFX0U.0
以上で予約分の本投下を終了します。
また、先程までにお伝えし忘れていましたが、第二回放送案の際に◆.ji0E9MT9g氏に禁止エリアを変更して頂いたのは今作のアイデアのためでした。
形としてはあまり活かせませんでしたが、あの時に不躾な要望にもお応え頂けたこと、また今回も肯定的なご意見を頂けたこと、深く感謝します。ありがとうございました。
こちらも微力を尽くさせて頂く所存ですので、今後ともよろしくお願いします。

354 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/23(金) 22:37:46 ID:/SLjWmP20
本投下お疲れ様です。
キング@仮面ライダー剣が遂に参戦、今後の活躍と彼のしてきたらしい”準備”とやらにも注目ですね。
一方で葦原さんは主人公ムーブしながら木野さんの本来遂げたかった思いを継いでエクシードギルスへ。
ヒビキさんの死など多くを背負いながら、それでも新しい力を手にする彼の今後も実に気になるところですね。

改めて今後に多くの期待を抱ける名SSでした、これを読む為ならあの程度の修正いくらでもしますので、今後ともよろしくお願いします。

355 ◆LuuKRM2PEg :2018/03/23(金) 22:50:56 ID:i8Cb4WaU0
本投下乙です!
キングはついにこのライダー大戦に参戦して、葦原さんを徹底的に追い詰めていきますね。確かに剣崎や所長、そして響鬼の世界の件については、彼にとって本当に辛いでしょうし……
だけど葦原さんは決して絶望せず、むしろ木野さんからも力を受け継いだことでエクシードギルスにも覚醒しましたか!
果たして、ギルスはコーカサスを倒せるのかどうか……? 改めて、大作乙でした!

356 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:21:52 ID:5jiSyPos0
お待たせいたしました。ただいまより投下を開始いたします。

357 Bを取り戻せ/フィアー・ペイン ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:22:13 ID:5jiSyPos0


「総司君!!翔太郎君!!皆、どこにいるんだ!?」

先ほどまでとその一切の雰囲気を異なって静まりかえった病院の中を、一人の男が叫びながら歩いている。
その顔は焦燥に溢れていて、彼がこの場で初めてと言って良いほどの不安に駆られていることが容易に想像できた。
無理もない、守らなければいけない仲間を置いて外に出ていたというのに、彼はその理由の一切を覚えていないのだから。

彼らしくもないそうした記憶の齟齬を引き起こしたのが、他ならぬ彼がこの病院から離脱した理由である男によるものだということは、もちろん知らぬまま。
ともかく、優秀であるはずの自分にあり得ないほどの記憶の不備に焦りやまた謎の空虚感を抱きながら、名護は駆ける。
先ほどまで仲間たちが集っていたはずの場所には、誰もいない。

しかしだからといって戦闘の跡があったわけでもなく、むしろ動かされていた椅子などは丁寧に直されているところを見ると、全員でどこかに一瞬出かけているだけという可能性も考えられた。
とは言えそれなら尚更先ほどまであんなに怯えていた三原も病院の外に出向く選択肢を選ぶだろうか、と疑問に押しつぶされそうになって。
ふとキバットやタツロットたちの為に開けっぴろげにしていた窓から外を見下ろし黄昏れた、その瞬間であった。

――世界を黄金の光が包んだのは。

「なッ……!?」

思わず顔を覆うほどのその閃光は、病院をほんの僅かばかりかすって数瞬の後に消滅する。
病院がその余波で揺れる中、これがリュウタロスたちの言っていた市街地で発生したという黄金の光か、と思うが早いか名護はその足を外に向け駆け出していた。
それに思わず戦慄を抱いた自分がいたことは認めよう。

しかしそこに誰か助けを求める存在がいるというなら、そんな恐怖に負けているより先に、彼の、仮面ライダーの足は動くのだ。
故に、彼はもう戸惑うことなく、もう一度カブトエクステンダーに跨がり先ほどの閃光の発生点に向けエンジンを振り絞った。
その脳裏に、ずっと消えないぽっかりと空いた穴を自覚しながら。





やはり、目の前の男の放つ威圧は今まで戦ってきたいずれの敵よりも凄まじいと、仮面ライダージョーカーに変じた翔太郎は思う。
三対一という状況を理解しているのだろう上でなお微笑と共に余裕の様子で剣をぶらつかせる彼は、有り体に言えばヤバい。
以前戦った時はその雰囲気に飲まれ先走ったが、しかし今度はジョーカーもそんな無様を晒すことはしなかった。

ジョーカーは、そのまま自身に並ぶ二人の仮面ライダーを見る。
まずは金色のライダー、アギト。
翔一が自身を強いと自負するのに以前から疑問は拭えなかったものの今の彼を見ればそれは自分の取り越し苦労だったと断言できる。

今の翔一が発する威圧は戦闘のエキスパートと言って差し支えないほどであり、自身の知る中で言えばどことなく鳴海荘吉のそれに似ていたからだ。
少なくとも先ほどまでの緩い雰囲気が一切感じられないその気合いに驚きを感じざるを得ないが、しかしそれはそのまま心強さに繋がる。
そうして次に目を移すのは自身がその誕生を見届けた仮面ライダー、カブト。

それに変身する総司もガドルと戦い良いようにやられたあの時からは随分と逞しくなったことも相まって今ではもうあの時のように不安を感じることもなかった。
そうして共に戦う仲間に心強さを得て、ジョーカーは再度前に向き直る。
今度こそ戦いを、と構えを一層強めれば、相対するダグバもまたその剣を正眼に構えて。

「それじゃ……行くよ」

一言そんな言葉を残したかと思えば、次の瞬間ダグバ――否、ブレイドはアギトに向けて疾走する。
今まで会ったことのない戦士の実力を見極めるためか、迷いなく彼に向かって振り下ろした剣は、しかし先ほどまで空いていたその拳に新たに握られた剣によって、その身に到達するのを阻まれていた。
何が起こったか、と彼を注視すれば、そこにはその金の身体を瞳と同じ赤に染め上げて、フレイムフォームとなったアギトの姿。

358 Bを取り戻せ/フィアー・ペイン ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:22:44 ID:5jiSyPos0

特別な能力も使っていないというのに行われたその常軌を逸するスピードによる攻撃と、それを狂いなく受け止めたアギトに戦慄を抱きつつも、しかし怖じ気付いている場合ではないとジョーカーは駆け出す。
迫り合いの形でお互いの刃をぶつけ合いアギトがブレイドを抑えている間に、ジョーカーはその拳をブレイドに向け振りかぶった。
そんな動きは既に知っているとばかりにブレイドが大きく身を捩れば、その拳は空を切り、剰えその反撃の後ろ回し蹴りを背中に食らう。

「ぐあ……ッ!」

小さく呻き声を漏らしたジョーカーにそのまま止めを刺す勢いで、アギトから無理矢理身体を翻したブレイドがブレイラウザーを振り下ろそうとするが、そこに響くは一発の銃声。
危機を脱したジョーカーがブレイドの間合いから一旦離れるのを見つつ、銃声の発生点に目を見やれば、そこには銀の鎧に身を包んだ青の瞳をしたライダー、カブトの姿があった。
なるほど、アギトとジョーカーに前衛を任せ、唯一遠距離攻撃の手段を持つカブトがその援護に回る形ということか。

本来なら自分から逃げたときの赤い細身の姿になってほしいのだが、ともかくそれを望むなら今はこの二人の仮面ライダーを倒さなければいけないか、とブレイドは向きなおる。
黒い仮面ライダーは置いておくとしても、他の二人は相当に楽しめそうだ、とブレイドは思わずその笑みを深くして。
自身の剣に備わったカードを一枚、取り出した。

――SLASH

音声と共に宙に浮かんだ不死の生命体のエネルギーをその剣に宿して、ブレイドは先と同じようにアギトに仕掛ける。
その刃は先ほどと同じくアギトの持つフレイムセイバーに阻まれその身には到達しない――。

「なッ……!?」

否、先ほどよりその切れ味と威力を増したその切っ先が、今度はいとも簡単にアギトの赤い身体を切り裂いていた。
そのダメージに思わず呻き後退する彼に対しなおも追撃を試みるブレイドだが。

「やめろォォォォ!!!」

彼を守るようにジョーカーが立ちはだかり、その拳をブレイドに振りかぶる。
しかしそれすらも読んでいたとばかりに、ブレイドは既に持っていたカードを読み込ませる。

――BEAT

瞬間彼の右拳が光り輝いたかと思えば、それはジョーカーを大きく吹き飛ばした。
いきなりに威力を増したそれを予想することは出来なかったのかその身を無様に這いずらせるジョーカーを見ながら、彼は駆ける。
唯一後方で援護を行っていた、カブトの元へと。

アギトも気になるが、今は何よりガドルを倒したこの男の実力はいかなるものか、気になって仕方がなかった。
そしてそのあふれ出る好奇心に任せ何発かの銃弾を切り落とした後、ブレイドはカブトに肉薄する。
今更そんな子供だましで自分を止められないと気付いたのか、彼はその得物を斧の形に変えてブレイラウザーを迎え撃つ。

「あのガドルを倒した力、こんなものじゃないでしょ?本気を見せてよ」
「……」

しかしその一合で彼が全力を出し切っていないことを見切ったダグバは、そう問いかける。
自身がキングフォームを出さないのは、彼らが簡単に死んでしまったらつまらないからだ。
だから早くガドルを倒したライダーになって、自分を笑顔にしてほしいのだが……対するカブトは、何も言うことはなかった。

ならば力尽くで本気を出させるまでだ、とばかりにブレイドはその剣を振り回す。
一合、また一合と刃がぶつかり合う度に、鈍重なカブトの動きはブレイドに追いつけなくなっていき。
そしていつの間にか防戦一方となったカブトの、その首にブレイドは剣を突き付けた。

「……ホントに、こんなもので終わりなの?早くガドルを倒した力を使ってよ」
「言い忘れてたけど、ガドルを倒したのは僕だけの力じゃないんだ」

その首に剣を突き付けられ自身が少し力を込めればその命が消えるというのに、カブトは不適に告げる。
それに抱いた興味のために、ダグバは思わず一瞬その力を緩めて。

359 Bを取り戻せ/フィアー・ペイン ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:23:07 ID:5jiSyPos0

「それって、どういう――」
「僕たち皆が協力して、あいつを倒したんだ!――キャストオフ!」

――CAST OFF
――CHANGE BEETLE

ダグバの疑問を無視して、一瞬で到来した無数のヒヒイロノカネの鎧が、ブレイドを無理矢理に引き剥がす。
しかしその程度ではブレイドにとってはただの目眩まし、一瞬の時間稼ぎにしかならないが――。
――その一瞬を、引き延ばす力をカブトは持っていた。

「クロックアップ!」

――CLOCK UP

瞬間、彼の時間は周囲から切り離される。
1,2,3と軽快にそのベルトのボタンを押して、カブトはホーンを大きく倒し叫んだ。

「ライダーキック!」

――RIDER KICK

幾らか自身の身体から弾き飛ばされたパーツを巻き込むのすら気にせず放たれたその回し蹴りを、しかしブレイドは防御しきっていた。
一度カブトと対峙し、キャストオフとクロックアップの能力について知っていたのだから、彼の狙いがそれを利用した奇襲であることなど容易に想像できる。
ネタが分かっていればむしろキャストオフの隙を狙ってくることなど分かりきっているのだから、ダグバのセンスを以てすればその攻撃を凌ぎきることなど容易かった。

本当にこの程度のライダーがガドルを倒したのか、と疑問すら沸く中、しかしダグバの耳に新たな声が到来する。

――JOKER MAXIMUM DRIVE

「ライダーキック!――うおぉぉらぁぁぁ!!!」

ふとそちらを見やれば、そこにはその右足を紫に染めてこちらに突っ込んでくるジョーカーの姿。
流石にカブトのライダーキックを受けきったままの体勢でそれに満足な防御を行使できず、ブレイドの身体を今度こそ宙を舞った。
しかしタイミングこそ素晴らしいものがあるがやはりスペックに劣るジョーカーの一撃。

必殺技をまともに食らったといえ、未だブレイドの鎧が悲鳴を上げる様子もない、とそこまで考えて。
自身の飛んでいく先にいる黄金の影に、遂に驚愕に目を見開いた。

「ハアァァァァァ……!」

そこには、その対の角を六本に増やし気合いを高めるアギトの姿。
そしてことここに至って、ダグバはカブトの狙いを察する。
そもそも自分の蹴りが防御されるのは見切った上で、ジョーカーとアギトに繋ぐためにあえて分かりやすいタイミングでクロックアップを使用したと言うことか。

仲間という存在を知らないグロンギには、特にその頂点に立ち同格が存在し得ないダグバには想像しきれない、カブトの妙案であった。
と、アギトはそのままその身体を大きく捩り跳び上がらせて。
オーバーヘッドキックの形で、ブレイドの胸に渾身の蹴りを叩き込んだ。

今度の一撃にはもう何の防御も成せるはずもなく。
都合三発の“ライダーキック”を受けて、ブレイドはそのまま地面に接すると共に爆炎を巻き起こした。





「やったね、翔一、翔太郎!」
「えぇ、お二人とも、ナイスでした」
「まぁな……でも油断すんな、こっからが多分本番だ」

無邪気に“仲間”との連携にはしゃぐカブトとアギトに、ジョーカーはしかし緊張を緩めず呟く。
ガドルと戦いそのタフさを知ったこともそうだが、未だ消えない嫌な雰囲気が周囲から消えていなかったため。
ダグバにまだ戦意が満ちあふれていることを見抜いたジョーカーの言葉に、二人の仮面ライダーもその爆炎が晴れるのを待って。

360 Bを取り戻せ/フィアー・ペイン ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:23:29 ID:5jiSyPos0

――ABSORB QUEEN
――EVOLUTION KING

電子音声が二つ続いて鳴り響いたかと思えば、煙をその身から吐き出した黄金のカードで晴らして、ブレイドが立ち上がる。
そこにいたのは最早碧と銀のライダーなどではない。
黄金に輝く剣を持ち、その身に13の不死者を纏った『剣の世界』最強のライダー、仮面ライダーブレイド、キングフォームが、そこに立っていた。

「アハハハハ!楽しいね、仮面ライダー。……もっと僕を笑顔にしてよ」

13枚ものカードがブレイドの身体に収束し煙が晴れると同時、ダグバは笑う。
それは、今目前にいる仮面ライダーをその究極に匹敵する鎧に匹敵する敵として彼が認めたことを意味していた。
その圧倒的な威圧を受けて、カブトもまた変身制限の関係上出し惜しみをしていた自身の切り札に手を伸ばす。

「ハイパーキャストオフ!」

――HYPER CAST OFF
――CHANGE HYPER BEETLE

瞬間カブトの鎧は、より強固なものへと変貌する。
オオヒヒイロノカネの名を持つそれは彼の世界で最強の硬度を誇るもの。
本当はブレイドを打ち破った後に待ち受ける彼の本来の姿に温存しておきたかったのだが、今ダグバが変じたキングフォームの圧倒的な圧力が、それをさせなかった。

そして、この鎧を纏った以上、カブトに長期戦をする理由などなく。
最早迷うことなく、その腰に向けて手を叩きつけた。

「ハイパークロックアップ!」

――HYPER CLOCK UP

その瞬間、カブト以外の世界は、一瞬にしてその動きを途端に遅くした。
クロックアップをも大きく超える加速を可能にするハイパークロックアップ、本来は時間すら超えられるそれを単なる超高速移動のために使ったのだから、それも当然であった。
そしてもうそれに心強さ以外の何を感じるでもなく、カブトはブレイドに肉薄する。

勝負を決めるのだ、このブレイドにどんな能力があるにせよ、この加速とそれから放たれる必殺の一撃を耐えきれるはずもない。
故に、彼は全力でブレイドを打ち倒す為にその拳を今ぶつけ――。

「――間一髪、ってとこだったね」

その右腕の紋章を輝かせながら、ブレイドは制止した時間の中で呟く。
元々高速移動をその特徴とするライダーの強化態なのだから自分の知るよりずっと早いだろうと予想して早めにタイムを発動させておいてよかった。
まだ数瞬猶予があると思っていたのに既に目前にまでその拳が迫っていたところを見ると、どうやらこのハイパークロックアップとやらは自分の進化した究極の力を持ってして見切るのは無理だと考えたほうがよさそうである。

とはいえ、本来の姿であれば蹂躙されていたかもしれないそれも、この黄金の鎧が纏う力、時間の流れを無にする力さえあれば対抗も出来るというものだ。
と、そんな考えをしている内に、既にタイムの制限時間に近づいていた。
取りあえずこんなものでいいかな、とライトニングスラッシュの力をラウズなしで発動させて、ブレイドはその黄金の剣を振り降ろすと同時、時は動き出す。

「――うわあぁぁぁぁぁ!!!???」

時間停止を終えて一秒もしないうちに、自分の剣は確かな手応えと共に振り抜かれた。
それと同時加速を終え弾き飛ばされていくカブトを見て、ブレイドは笑う。
恐らく、自身の目の前に迫った剣に気付かずその勢いのまま自分から突っ込んだのだろう。

究極の力を得たクウガならともかく並の仮面ライダーであれば今の攻撃で戦闘不能に陥っても無理はない、とブレイドは落胆とも自身の鎧に対する信頼とも取れる感情を抱いて。

「わぁ、やっぱり凄いね、ブレイドの力は」
「ブレイド……だと?」

思わず漏らしたそんな感嘆の声に、ジョーカーが反応する。
総司がその命を奪ってしまったという、剣崎一真。
始とまた出会った時その死を伝える役目も抱かなくてはと新たに決意した矢先に、そのライダーが現れた。

最悪なことに、ダグバの纏う最強の鎧として。

361 Bを取り戻せ/フィアー・ペイン ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:24:00 ID:5jiSyPos0

「それが、ブレイド……総司の殺した剣崎一真って奴が変身する仮面ライダーだっていうのかよ」
「うーん、よく知らないけど。でも面白いおもちゃだよね、もっとこれで遊びたいからさ、頑張ってよ、仮面ライダー」
「――ダグバてめぇぇぇぇ!!」

その言葉を聞いて、ジョーカーは突貫する。
大方仲間をやられて頭に血が上ったとか、ブレイドが自分に使われるのが嫌だとかいうところだろうが、随分と無謀なものだ。
通常のブレイドにすら歯が立っていなかったに等しいというのに、この黄金の姿に挑もうとは。

「――まぁ、君はもういいかな」

その言葉と共に左足と左肩、マッハとビートの紋章を光り輝かせて、ブレイドは目の前の仮面ライダーを“処分”する為にその拳を音速の勢いで叩き込んだ。
ギルドラウズカードとなり通常のそれより遙かに威力を増したその拳を受けて、ジョーカーは断末魔さえ発しないまま吹き飛ぶ。
彼が夜の闇に消え焦土の果てに消えて行くのを最後まで見届けることもなく、ブレイドは最後に残った仮面ライダーに向き直る。

「……さて、最後は君だよ。少しは怒ってくれた?」
「怒る?どういうことだ」
「だって、クウガは……4号は怒ったら強くなるし。君もそうじゃないかと思って」

その視線の先の黄金のライダー、アギトは自分の言葉に応えない。
先ほどまで4号というクウガの別称を知っており、また自分を未確認と呼んだこの男は一体何者か、と考えていたが、彼が変身したライダーの姿を見てその疑問は氷解した。
その姿が、クウガに酷似していた為。

自身が襲いかかった時も赤い瞳に赤い身体の形態に変じていたから、恐らくはクウガの変種ではないかとダグバは見切りをつけ、そして楽しみにしていた。
クウガと似た、しかしあのもう一人のクウガが用いる究極の力以外の形態より強い彼が、仲間の死に怒り彼の究極の闇を見せてくれたなら。
或いはこのキングフォーム、どころかあの究極を超えた力を持つ自分の力にも、匹敵しうる存在になるのではないか、と。

しかしまだ怒り足りないのか、或いは別の要因があるのか、アギトはその身体を大きく変貌させることはなかった。
期待外れだったかな、とため息と共にブレイドはアギトへの興味を失いかけるが。

「――ふざけるな」

今までの言葉のどれよりも深く響くようなその言葉に、思わず顔を上げた。
その顔は異形になり表情も読み取れないが、しかし怒っているのは容易に想像できた。
或いは種類が違うだけでもう一人のクウガのそれにも匹敵するのではないかというほどの怒りを抱きながらなおも究極の闇に染まらない彼に思わず興味を引き戻させられて。

「4号はきっと、怒って強くなるわけじゃない。もしそれが本当でも、それは多分間違った強さの形だ」
「どういうこと?」
「俺たちが、仮面ライダーが戦うのは、悪への怒りの為なんかじゃない。皆を守りたい、その思いが、俺たちを強くするんだ!」

翔一が胸に抱くのは、この場で出会った二人の男。
放送で名前を呼ばれてしまった日高仁志は、この場で最初に出会った仮面ライダーで、自分が誰かを守りたいから仮面ライダーとしてこんな殺し合いを止めなくてはいけないと語っていた。
そしてもう一人、先ほど別れた城戸真司は、自身もよく知る小沢澄子が信用した仮面ライダーで、元の世界でもライダー同士の殺し合いを命じられながら、そんなものは間違っているに決まっていると真っ向からそれを否定し続けた男だった。

362 Bを取り戻せ/フィアー・ペイン ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:24:17 ID:5jiSyPos0

そんな異世界の仮面ライダーを前に、翔一も一度自分の思う“仮面ライダー”を考え直してみた。
アンノウンが憎いから戦う、これは違う。
別にアンノウンでなくても誰かを傷つける存在なら、翔一は躊躇なくその力を振るうだろうから。

アギトとして誰かを叩きのめしたいから戦う。
――論外だ。
一時期自分が制御できず氷川を戦闘不能にまで追い込んだこともあったが、しかしそれは翔一の本質ではない。

例えアンノウンであっても、人を慈しみその命を奪わないなら、翔一は手を取り合いたいとすら思う。
ああでもないこうでもないと、そうして翔一なりに悩み辿り着いた答えが、しかし結局はいつまで経っても変わらない、人を守りたいという答えだった。
きっとそれは、どの世界でも仮面ライダーとして必要な考えなのだ。

城戸の世界のように鎧を纏うだけで仮面ライダーを名乗れる世界もあるが、しかし本質はその身に纏う力ではなくその心に信じる思いなのだ、と翔一は思った。
だから、クウガは、4号は、決して敵への怒りで強くなるだけの存在ではないとそう信じた。
そうでなければ今目の前で確かに過去最大の威圧感で立ちはだかるこの強敵を倒せるはずなどないだろうから。

新たな覚悟と共にアギトはオルタリングを強く叩く。
翔一の思いに呼応するようにその身に炎が巻き起こり、やがてそれはその黄金の身体を先ほどより濃い深紅に染め上げる。
深い気合いと共に炎が収まれば、そこにいたのはキングフォームや、先ほどのカブトにも匹敵しうるような威圧を誇る戦士。

仮面ライダーアギト、バーニングフォームが、そこに立っていた。
その姿に――究極の闇と比較して幾らかの物足りなさを感じつつも――ダグバは歓喜する。
同時アギトが空中に発言させた物体を手に取れば、それは一瞬にして薙刀へと姿を変え、ブレイドの期待をより煽った。

それを見て、こんな面白い相手にタイムなどの力を使って一瞬で終わらせるのは勿体ないと彼はその黄金の剣のみでアギトに肉薄する。
ラウズカードの力を用いずとも並の怪人程度一撃で粉砕できる威力を誇るそれを、アギトはその手に持つシャイニングカリバーで迎え撃つ。
ガキィン、と甲高い音を響かせぶつかり合った得物は互いに一歩も譲らず、腕力だけであれば今のアギトが究極のそれにも匹敵することをダグバに理解させる。

しかしそれはあくまで腕力だけのこと、故にダグバはその右足を二度輝かせ、コンボの一つであるライトニングブラストを発動させる。
それを感覚で察知し離れようとしたアギトを、左膝のマグネットによる引力で強引に間合いに持ち込んで間合いに引き戻す。
これには流石に対応しきれず無理矢理にシャイニングカリバーで防御を試みたアギトに、ブレイドは強かにその右足を炸裂させて。

瞬間、シャイニングカリバーはその身を本来想定されていない角度で二つに折って、その役目を終えた。
そして、その程度で今のブレイドの蹴りを止められるはずもなく。
膨れあがったアギトの胸板を凹ませながら、その足に電撃が走った。

コンボを用いた攻撃であったというのにしかし膝をつかず後退したのみであったのは、その高い防御力故か、或いはマグネットによる引力で僅かばかりダグバが狙いを狂わせた為か。
ともかく、折れたシャイニングカリバーを投げ捨てて、アギトはその右腕を大きく伸ばした。
その掌に炎が迸ったかと思えば、彼はそれを握りしめ拳に力を込める。
それを受け彼の上半身全体が炎に包まれたかと思えば、炎は再度拳に集って。

スミロドンドーパントに変じたゴオマを打ち破ったその一撃の名は、バーニングライダーパンチ。
アギトの誇る必殺の拳を前に、ダグバはしかし余裕の様子でその右膝を光らせて。

「――ハアッ!」

それにしかし何を出来るわけでもなく自分に出来る全力でアギトはブレイドの鎧へ拳を伸ばす。
流石にまともな防御もなしに受けきれる威力ではなかったのか、彼はその身を大きく引きずり、しかしその膝はつかぬままで。

363 Bを取り戻せ/フィアー・ペイン ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:24:35 ID:5jiSyPos0

「うん、痛いね。でも――足りないよ」

狂喜と共にその左肩を新たに輝かせるブレイドに、思わずアギトは戦慄する。
この形態で全力を込めたこの拳は、確かに今まで全ての敵を葬ってきたわけではない。
しかし、そのいずれもが回避という形で、その拳に捉えられたものは必ず打ち倒してきた、必殺の拳だったはずだ。

それを真正面から受け止めながら、ここまで余裕とは……。
らしくなくその集中を切らしたアギトだが、もちろんキングフォームと化したブレイドとて、その身に無防備にバーニングライダーパンチの一撃を受ければただではすまなかっただろう。
彼が今もその余裕を誇れるのは、彼の身に備わったトリロバイトメタルの力によって、その鎧がより強固になったためだった。
しかし、そんなことアギトは知るよしもなく。

まともな防御すら出来ぬままに、ブレイドの拳にその身体を捉えられていた。
今度は大きく吹き飛びその背を地に這いずらせたアギトを尻目に、ブレイドは大きくため息をつく。
ガドルを倒したという仮面ライダーとその仲間に期待を抱いてこの究極に匹敵する鎧を纏ったが、結局はどいつもこいつもこの鎧の前に敗れ去った。

もちろんキングフォームの実力は今まで見てきた仮面ライダーの中でも最上級のものであるとは理解しているが、しかしこの鎧を破れぬままに今の自分の真の姿を打ち破ることなど出来まい。
であれば、やはりもう今の自分を楽しませてくれる存在などいるはずもないではないのか、と彼らしくもなく黄昏れた、その時であった。

「ダグバ……ッ!」

ふと、自分の後方より、声がした。
思わずそれに振り返れば、そこにいたのは先ほどまで戦っていた銀と赤の仮面ライダー。
仮面ライダーカブトハイパーフォームが、今また戦うために立ち上がった姿であった。

「君か……意外としぶといんだね」
「当たり前だ……僕は仮面ライダーカブト、天の道を継ぐ男だから……!」
「天の道を、継ぐ……?」

その言葉に一瞬疑問を口にするが、それ以上の会話は不必要とばかりにカブトはその手を宙に伸ばし、叫んだ。

「――タツロットッ!」
「はぁーい総司さん、これを使ってください!」

瞬間彼のデイパックから飛び出た黄金の竜が喋り出したかと思えば、それは身体から明らかにその体躯に収まりきらない大きさの剣を吐き出す。
キングラウザーの輝きに勝るとも劣らない輝きを放つその堂々たる剣は、王のための剣、ザンバットソード。
先ほどのガドルとの戦いでも用いたそれをひゅんと素振りして、ハイパーカブトはゆっくりとブレイドに向けその足を進める。

(なるほどね、派手に動けば反撃を食らうから、歩けば大丈夫、とでも思ってるのかな?)

それを見て、ダグバは一つの結論に思い至る。
ハイパークロックアップという強力無比の能力を打ち破られた今、それを用いぬままに自分に対抗しようとするなら、なるほどこうして自分と間合いを詰めるのは悪くない。
だが、それはこのブレイドが時間停止のみをその特徴として持つライダーであった場合に過ぎない、と彼はその左足を輝かせて。

「びゅびゅーん、させませんよ!」

ザンバットソードを吐き出し役目を終えたはずのタツロットが、カブトを守ろうとその身をブレイドにぶつけようとする。
しかしそんなものは意にも介さぬままに瞬速の速さで周りを飛ぶ彼を弾き落とせば、ピギャッ、と情けない声を上げて彼は地に落ちた。
そんな使い魔に気をやっている暇もないと、ブレイドはそのままマッハの能力を今度こそ発動させる。

364 Bを取り戻せ/フィアー・ペイン ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:25:20 ID:5jiSyPos0

その重厚な鎧に似つかわしくないスピードで以て、カブトへとその足を進めるブレイドは、余りにも早い。
その能力によってマッハを使用した彼のスピードは、通常のクロックアップとほぼ同等。
どころかその鎧と剣によるごり押しが利く時点で並大抵の高速移動が可能なライダーには優位に立ち回れるはずだった。

――HYPER CLOCK UP

しかし、相手も並の能力者ではない。
ブレイドの加速を大きく上回る加速で以て強引に自分を優位に立たせ、そのままブレイドにしかし焦ることなく近づき、その剣を振るう――。
前に、再度ブレイドの右腕の紋章が再度輝いていた。

一応、マッハの能力も同時に行使していた為先ほどより余裕を持って能力を使用できたが、逆に停止している時間の感覚が狂ってしまった。
コンボを使う暇もないか、としかしその一撃で並のコンボを凌ぐ威力を誇る黄金の大剣を振るい、その身に限界まで肉薄させたところで――時間は、動き出す。

――HYPER CLOCK OVER

その音声と共にブレイドは勝利を確信し、今カブトに止めを刺すために新たにコンボ用のカードを掴むため念じようとして。
そこで、見た。
目の前でカブトがしかしその黄金の大剣をゼロ距離で受け止めている光景を。

「なッ……!?」
「残念だったね、君の能力はもうお見通しだ……!」

思わず驚愕するダグバに、しかしカブトは自慢げに呟く。
先ほど一度目のハイパークロックアップの際、彼は何が起きて自分がその時間軸からはじき出されたのか、一瞬理解が追いつかなかった。
最速を誇るはずのそれが容易に破られるなど、あり得るはずなどない、と。

しかしその身に纏う鎧が自分のマスクドフォームよりも頑強であったために変身解除を逃れた彼は、次に何故自分がその変身を未だ保てているのか考えた。
そして生み出された答えは、奴はハイパークロックアップを上回るスピードで自分に近づいた後、一撃のみしか攻撃していないからだ、という結論に至ったのだ。
或いは、先ほど自分が一撃を食らったのは自分がむしろその剣に向かっていったからなのではないか……その考えに至ってからの彼の行動は、早かった。

自分自身のダメージの大きさを押して駆けつけてみれば、そこにはアギトが吹き飛ばされている姿。
これ以上誰の犠牲も出さない覚悟で再びダグバの前に立った彼は、キングラウザーと十分やり合える剣、ザンバットソードを持ってその間合いを徐々に詰めていった。
そこで彼が左足を輝かせた時――既にカブトにとって、ブレイドの能力の全容は明かされたも同然であった。

365 Bを取り戻せ/フィアー・ペイン ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:25:36 ID:5jiSyPos0

つまりは、ブレイドはこの形態である限りアンデッドの能力をほぼノータイムで使用することが可能なのである。
しかしここで大事なのは“ほぼ”ノータイムだということだ。
自身の持つハイパークロックアップは、その一瞬を永遠に引き延ばす能力。

それを用いた上で先ほどの仮説を信じて飛び込めば、目前にまで迫った大剣であったとしても、今のカブトに防げないはずもなかった。
故に今マッハとタイム、その二つの強力な能力を制限によって失った上で動揺を浮かべるブレイドと、ゼロ距離にまでその距離を縮める事が出来たのであった。
しかし、クウガとの戦いで発揮されたその万能感をこうして防がれ少しの驚愕を禁じ得なかったダグバに対し、カブトはあくまで冷静にその腰に手を伸ばす。

――MAXIMUM RIDER POWER

「マキシマムドライブッ!」

それは、ガドルとの戦いでも用いたマキシマムドライブ……新たなる彼の必殺技、ハイパーザンバット斬。
キラキラと虹色に輝いたその刀身で以てキングラウザーに拮抗すれば、ブレイドは僅かばかりその姿勢を歪めて。
究極の力を発揮したクウガにすら起こりえなかったキングラウザーを用いた力負けという状況に、自分の剣を強化するでなく自身の身体を硬化する術を取ったダグバ。
その右膝の紋章により発生したトリロバイトメタルの力によって幾分か動きが阻害されたために、カブトは思い切りその剣を振り切って。

「ああああぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

ハイパーカブトの10トンを誇るその腕力によって力任せに振るわれたその剣は、しかしブレイドを僅かに揺るがす。
しかし後二秒もすればマッハの能力と、そしてそれに乗じてタイムの力も使用可能になる、故に自分の優位は揺るぎない……そう、ダグバは考えてしまっていた。
カブトの本当の強さはその仲間との絆にある、カブト自身がガドルに勝った理由としてあげたそれを、未だ理解し切れていなかったから。

「ハアァァァァァ……!」

メタルにより動きを阻害された為にその首を動かせぬまま、ブレイドはその背後に誰がいるのかを察する。
先ほども聞いた、アギトの気合いを込める声が、後方から聞こえてきたため。
それはつまり……先ほどと同じく必殺技の連携を炸裂させるためにカブトがこうして自分を引きつけていたと言うこと。

それについて深く理解するより早く、ブレイドの肉体にドンッ、と爆音を響かせてアギトの炎を帯びた拳が到来する。
それだけならば先ほども食らった一撃、痛くないわけではないが耐えられる。
しかしもちろん、彼らはやっと掴んだ一騎当千のチャンスを無為にするような愚か者ではなく。

「ハイパーキック!」

――RIDER KICK

既に眼前にまで迫ったカブトの全力を込めたその右足が、それを証明していた。
瞬間、今一度彼の鎧は輝いて――。
それに臆することなく伸ばされたカブトの右足は、ブレイドの身体を確かに揺らし、爆炎を起こした。

366 Bを取り戻せ/切り札は俺の手に ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:26:38 ID:5jiSyPos0





「……やった、んでしょうか」
「ううん、多分まだだよ。当たったけど、浅かったから」

アギトとカブト、二人の仮面ライダーは、肩で呼吸をしながら再び合流し未だ緊張を緩めぬままにそう呟く。
先ほどキックの寸前にブレイドの身体から光が放たれたのは、その鎧に備わった能力、マグネットの斥力を使用したためのものだ。
完全に合わせるようにして放たれた一撃も、それにより少しばかり間合いを外し彼を戦闘不能にするには至らなかった。

しかしこれまでに与えたダメージを考えれば或いは、とそんな希望を抱きかけたその瞬間。
彼らの身体に、闇が到来する。

「ぐわああぁぁ!?」

この戦いで受けた全てのダメージを帳消しにするかのようなその衝撃に思わず声を上げながら、二人は吹き飛ぶ。
これはまさか、と起き上がりその視線を闇の先に伸ばしたその時、それはその闇の中でも激しく主張する白をしていることを把握した。

「アハハ、アハハハハハ!!!本当に凄いね、仮面ライダー。キングフォームを倒しちゃうなんてさ。……でもあれはただの遊び。ここからが本当の究極の闇、だよ」

言いながら現れたその影が発する声は、紛れもなく先ほどまでブレイドに変じていたダグバのもの。
先ほどのキングフォームが可愛く思えるような威圧を持って立ち上がったその姿に、彼の言葉が嘘ではないことを身を以て実感しつつ、しかし彼らは立ち上がる。
もう誰もこんな奴に傷つけさせない、ただそれだけの行動理由さえあれば、彼らはいつまでも戦えるのだ。

「ハイパークロックアッ――」
「――させないよ」

強敵の登場に自身もその切り札を再度切ろうと腰に手を伸ばしたカブトに対し、ダグバは何の能力も使用していないというのにクロックアップ並の速度で以て肉薄する。
ダメージを一切感じさせないようなその動きに元々スピードの劣る今のアギトが対応仕切れぬ中、カブトは油断なくその手を腰からザンバットソードに移し替えて。
――瞬間、二人の距離はゼロになる。

しかし、ザンバットソードという間合いの有利があってなお、そんなものは関係ないとばかりにダグバはその刃を左手で掴み取りその右拳をカブトに容赦なく叩きつけた。
オオヒヒイロノカネの硬度が無視されまるでただの鉄のようにひしゃげるのを見やりつつ、カブトはしかしその左ストレートを叩き込む。
それは確かにダグバの身体に着弾したが……しかしその身体はもう揺らぐことすらなかった。

「なッ……!?」
「ふふ、パンチって言うのはね……こうやるんだよ!」

左手に抑えているザンバットの刃をかなぐり捨てながら、ダグバはその拳をカブトに再度叩きつける。
今度は一撃ではない、ハイパーフォームのカブトにすら一切の対処を許さないスピードで、一瞬の間に数十発の拳が一気にその身体を蹂躙していた。

「――やめろッ!」

ことここに至ってようやくその二人の間に割り込む形でその場に現れたのはアギト、パワーに優れるその拳で、しかしダグバの拳を受け止めるのが精一杯という様子ながら、何とかカブトから彼を引き剥がす。
しかしアギトと拳のぶつけ合いになるのは些か分が悪いと判断したのかダグバは一瞬で後方に退き、その代わりとばかりにその掌から闇を照射する。
暗黒掌波動、究極を超えた今のダグバになら問題なく使用できるその力がアギトと、その後方にいるカブトの身体から際限なく火花を散らさせた。

ダグバの響く笑い声をその耳に焼き付けながら、二人の戦士は膝をつく。
この本当の戦いとやらが始まってまだ数秒だというのに、こちらの戦力はもう削られ切っている。
アギトのパワーは奴には通用しないし、頼みの綱のハイパークロックアップも、今の状況では使う前にダグバに押し切られてしまう。

367 Bを取り戻せ/切り札は俺の手に ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:26:55 ID:5jiSyPos0

――これが、グロンギ最強の力か。
自分たちが想定していたそれより遙かに強いその実力にどうしようもない認識の甘さを痛感しながら、二人はそれでも立ち上がろうとする。
しかし敵も、それをすんなりさせるほど生易しくはない。

「じゃあね、仮面ライダー。楽しめたけど、これで終わりだよ」

弱り切った彼らに止めを刺すために、その掌に闇を集めて。

「――ちょっと待ちな。一人、忘れてるぜ。そいつらの仲間をな」

後方から聞こえてきた、キザな声にその身体を翻す。
聞き覚えのあるその声に誰もが注目する中、この場の緊張を理解した上でなお男はそのお気に入りの帽子をクイッと上げて、キザにはにかんでみせる。
その姿に、同時に誰もが驚愕した。

「翔太郎!?」

それは、この場で初めて戦いから離脱することとなった左翔太郎、その人であったのだから。
しかし総司のあげるその声は、決して仲間の無事を喜ぶだけのものではない。
今の翔太郎は、何一つ変身手段を持っていないはず。

それを踏まえて考えれば、生身で今のダグバの前に立つことは無謀としか言い様がない。
どころか、恐らく彼の変身するジョーカー程度であれば一瞬でその身体を消し炭にすることすら可能だろう……と再び立ち上がった仲間に対し、総司は不謹慎にも思う。

「君……何しに来たの?あんなに弱かったのに、僕の楽しみの邪魔しないでよ」

それをダグバも理解しているのか、クスクスと笑いながら、しかし邪魔者として彼を排除しようとする。
その闇が集う掌を向けられながら、しかし翔太郎はその表情を恐怖に染めることはせず。

「無茶だ翔太郎、早く逃げて!」
「ここは俺たちに任せて、早く!」

カブトとアギトが、叫ぶ。
自分たちの体力回復の為にその身を張っているのだとしたら、それは自分たちの望むことではない。
捨て身の戦法をとった彼に対し絶叫する二人に対し、しかし翔太郎は笑う。

それはいつもの彼の余裕を表したような笑みで……決してハッタリには見えなかった。
しかしその一切を無視して、戦いが出来ないなら意味がないとばかりにダグバはその闇を彼に照射する。
それは神速の勢いで以て翔太郎に肉薄し、彼を一瞬で闇に包み込んだ。

「翔太郎ぉぉぉぉ!!!!」

総司の絶叫が響く中、ダグバは笑う。
これで、一人減った。
もしこれで彼らが怒ってくれるなら、もっと楽しめるかもしれない。

事実先ほどまでずっと膝をついていた二人が再度立ち上がっているのだから、それも間違いではないのだろう。
では、改めて楽しいゲゲルを続けよう、とその足を進めようとして。

「――よぉ、ダグバ」

後方から、聞こえるはずのない声が聞こえてきたために、思わず振り返ろうとして、その頬を大きく殴りつけられる。
自身の身体を吹き飛ばしたその腕が見覚えのある金色をしていることに驚愕の声を漏らしながら、ダグバの身体は遂に地を舐め。

「翔太郎、まさか、それって……!」
「あぁ、そのまさかさ」

全身に刻まれた幾つものタペストリー、金色に輝く鎧、スペードの意匠を刻んだそのマスク。
その手に生じた大剣も、今はこれ以上なく心強く見える。
そう、それは先ほどまで悪魔が纏う最悪の敵として君臨していた仮面ライダーブレイドキングフォーム、その勇士が、今正義の名の下に再び降臨した姿であった。

368 Bを取り戻せ/切り札は俺の手に ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:27:11 ID:5jiSyPos0





時間は数十秒前に遡る。
ダグバの変じたブレイド、その圧倒的な力に敗れ去ったジョーカー、左翔太郎は、その意識を彼方に飛ばしてしまっていた。
或いはそのままであれば、先ほどの紅音也を失った戦いのときのように戦いが終わってからその意識を取り戻し仲間の死に涙する、という展開もあり得たかもしれない。
しかし、今回はとある事情が異なっていた。

「痛ッ――」

突如、その頭に何か金属の塊が到来した。
強く頭にぶつかったそれは、今翔太郎の意識を彼方より呼び戻し、覚醒させる。

「んだよ、ったく。って、俺は一体何して――」

何事が起きたのか、事情を把握しきれぬままに起き上がり辺りを見渡して、翔太郎はすぐに自分が何故ここにいるのかを思い出す。

「そうだ……、ダグバがブレイドに変身して、それで俺は……」

あの時、総司を叩きのめしブレイドの鎧を玩具と嗤ったダグバに怒りを覚え感情に任せ飛び込んだ後……その圧倒的な実力の差に自分はやられたのだ。
音也のときも同じようなことをやったというのに全く俺は半人前だ、と自己嫌悪に至りかけて、今はそんな状況ではないことを思い出す。

「総司、翔一、無事でいろよ……!」

未だ戦いの音が辺りに響いている。
例え変身できなくても自分に出来る何かをするために、例え何も出来なくても仲間のためにその熾烈を極める戦地に赴こうとその足を動かそうとして。

「――ん?」

瞬間、カツリ、とその爪先にぶつかる“何か”に気を取られる。
そう言えば、自分が目覚めたのも何かが頭にぶつかったからだった、と未だ鈍く痛む頭を抑えながら暗闇の中からそれを拾い上げる。
そしてその瞬間、彼にはそれが何なのか、一瞬で理解できた。

「これは、ブレイドの……!」

そう、それはブレイバックル。
辺りに13枚ものスペードのカードも散らばっていることを思えば、どうやら総司と翔一はあのブレイドを打ち破ったらしい。
その功績に思わず跳ね上がりそうになって、しかし今はそれよりも大事なことがあるとそれらを全て拾い上げた。

「剣崎……お前も、あんな奴に自分の力が使われて辛かったんだよな」

ふと思わず、翔太郎はそれに声をかけていた。
この殺し合いに反逆し、そして最後は殺し合いに乗っていた総司の手によってその生を終わらせた、剣崎一真。
彼には直接出会ったことこそないが、彼を大事に思っていた相川始によって、また彼を殺した総司の苦悩によって、その人となりは痛いほど伝わってきた。

それは、自分も見習わなくてはいけないほどの、正義の仮面ライダー像。
この戦いの最中ダグバにその男の鎧が良いようにされていることに、どれほどの憤りを覚えたか。
それを今論じはしないが、しかし彼がダグバなどという非道の手に渡ってまで総司に復讐を誓うような、そんな男ではないことは、既に知っていた。

いやむしろ、今ここにこうしてその力があるということは、その逆。
俺の身体を使って、正義に生きる覚悟を見せた総司を救って見せろ、という彼の言葉なのだろう。
或いはそれは、剣崎の友である相川始に騙され仲間を殺された自分に彼に対する処遇を委ねる為の意味も含まれているのかもしれないが――。

ともかく、今自分に求められているのは、剣崎が願ったのは、あの悪魔を打ち倒すこと。
それだけは、確かだった。
その思いと共に駆け出せば、案外すぐ近くに彼らはいた。

369 Bを取り戻せ/切り札は俺の手に ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:27:26 ID:5jiSyPos0

「じゃあね、仮面ライダー。楽しめたけど、これで終わりだよ」

自分も見たことのないほどの威圧を誇る新たな異形が自分のよく知る声を発したことで、翔太郎はそれの正体を察する。
しかし、問題はない。
今の自分の手には“切り札”があるのだ、ダグバを倒す為だけのものではない、この殺し合いの運命を変えるための、切り札が。

「――ちょっと待ちな。一人、忘れてるぜ。そいつらの仲間をな」

そうして、彼は切り出した。
目の前の悪魔に弄ばれた分だけ、その鎧を正義に生かすために使うと、戦えない誰かの為に自分が彼らの盾になるために。
――ダグバの掌から発生した凄まじい闇の塊をバックルから生じた金色のエネルギーの盾で凌ぎながら、翔太郎はそれに向けて歩み出す。

自分こそが今この惨劇の運命を変えられるジョーカー(切り札)なのだ、とそう確信して。





「悪かったな、遅くなっちまって」
「ううん、信じてたから、翔太郎のこと」

キングフォームの鎧を纏ったままカブトに手を差し伸べるブレイドに、総司はその手を取り立ち上がりながらそう返す。
同じくアギトも立ち上がり、今剣崎一真という正義の仮面ライダーの鎧を自分たちの元に取り戻せたことに、三者共に喜びを隠せない様子であった。
しかし、そんな空気に、水を差すものが一人いる。

「それ、僕のだよ。返してよ」
「――お前のだと?」

ダグバだ、子供のような言い草でむすくれているような声を上げた彼に、しかしブレイドは肩を怒らせる。

「――違ぇな。これは剣崎一真って仮面ライダーのもんで……俺たち仮面ライダーに繋がれてきた、剣崎からのバトンなんだよ!てめぇなんかにはもう二度と触らせやしねえよ」
「……ふぅん」

熱く告げたブレイドに対し、ダグバはしかし興味深げに呟く。
それに秘められた感情が何なのか、彼らにはわからなかったが……しかし、分かる必要もないと思った。
今ここで、自分たちがこいつを倒すのだから。

そうして並び立ったカブトとブレイドの前に一歩進み出るは、アギトである。

「――ダグバ、お前は誰かが犠牲になったときに俺たちが強くなる、そう言った。でも、それは違う。俺たちは仲間と一緒に戦って、誰かを守るために強くなるんだ。それを今から俺が証明してみせる!」

言葉と共にアギトはその手を胸の前でクロスさせる。
そのまま再び腰のオルタリングを叩けば、その身体は突如光を放ち出した。
パラパラと今まで彼の身体を強固にしていた体表が剥がれていったかと思えば、その下より白銀の新たな鎧が生み出される。

――仮面ライダーアギト、シャイニングフォーム。
今までは陽の光なくして変身できなかったその形態。
しかしこの場で多くの仮面ライダーと触れ合い、そして今この場でダグバという、今までの敵を大きく超えるような存在と戦い急速にその身体が進化を促したことによって、翔一は今この闇夜の中で一際輝く白銀の鎧を纏うに至ったのだ。

アギト自身が人類の進化の化身である以上、彼が望み、そして環境がそれを促せば翔一の身体がこうして進化するのは、いわば必然でもあった。
それぞれの最強の形態に変じ思いを新たに大きく構えるアギト、ブレイド、カブト。
それに対するは究極を超えた悪魔、ン・ダグバ・ゼバ。

彼らの戦いは、今ようやく佳境にさしかかろうとしていた。

370 Bを取り戻せ/切り札は俺の手に ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:27:48 ID:5jiSyPos0





「ハアァッ!!」

かけ声と共に先ほどと形状を変え双剣と化したシャイニングカリバーで以てダグバに斬りかかるのは、白銀のアギト。
それをダグバは難なく躱すが、しかしその先に待っているのはザンバットソードを構えたカブト。
今度は躱しきれずその手で受け止め何とかやり過ごそうとするが、それをブレイドのキングラウザーが許さない。

この身を貫きかねないその刃を、身を捩り掠らせる程度で凌いで、ダグバは大きく後方に飛んだ。
――強い。
ダグバが抱いた感情は、最早それに尽きる。

先ほどまで戦い強さを認識していたカブトも、先の形態より一撃一撃は軽いものの先を大きく超えるスピードでそれを補うアギトも、黒い仮面ライダーであった時の弱さが嘘のような動きを見せるブレイドも。
どれもがこの場で遭遇したことのないほど凄まじい実力を誇り、或いは理性を保ちその力を振るっていることを思えばクウガよりずっと戦いにくい相手であった。
しかし今のこの万全とはほど遠い体調で、さっきまでの自分なら敗北しただろうこの三人の仮面ライダーを前にしてもなお、ダグバは笑顔を絶やさない。

何故なら今の彼は既にセッティングアルティメット……究極を超えた究極に相応しい実力を持っているのだから。
そんな中、カブトの手が再度ハイパーゼクターに伸びているのを見て、ダグバは突貫する。
流石に今の自分でもあのスピードは目で追うのが精一杯だろう。

あれを許せば自身の敗色は濃厚になってしまう、とそれを防ぐため駆け出した彼に、アギトが立ちはだかる。
気合いと共に放たれた拳を受け止め片手でいなすが、しかしもうダグバに残された時間はなかった。

――HYPER CLOCK UP

既に、必殺の切り札は切られていたのだから。
――この戦いで既に三度使用した最強の能力によりもたらされる周囲との時間感覚のズレにようやく慣れながら、カブトはその足をダグバへと進める。
今回で、終わらせる。

剣崎の悲劇も、ダグバが翳した悪夢も、これで終わりなのだ。
そうして必殺技の準備を済ませながら走るカブトがふと前を見やると、ダグバが闇を照射してきていた。
つまり、奴はこの速度にある自分を感覚で捉え攻撃してきたのだ。

本当に恐ろしい敵だ、と感じながら、ハイパークロックアップの最中であるというのに容赦なくこの身に降りかかろうとしたそれをしかし危なげなく回避し、カブトは進む。
後数秒、残った時間で問題なくダグバを仕留めることが出来ると思い――。

背筋を、ゾッとするものが這いずっていく感覚を覚えた。
正体は掴めぬまま、何か恐ろしい思考に支配された彼は、振り返る。
そう、振り返り、見て、そして理解してしまった。

自身が回避した闇が、後間もなくで自身の後ろに直線上にいたブレイドに到達するということを。
それを見た途端、カブトはダグバから踵を返しブレイドの下へ……先ほど完全に回避した闇の下へと向かう。
それは彼にとって、しなくてはいけないことだったから。

翔太郎という仲間を守ること、もそうだが、今はそれ以上に。

(もう……僕のせいでブレイドが倒れるのは嫌だ!)

翔太郎が纏っている鎧、仮面ライダーブレイド。
自分が死なせてしまったその装着者、剣崎一真の分まで戦う覚悟を決めたのだ、もう二度と自分の手が届くところでブレイドが倒されるところを見たくなかった。
だから、闇に向けて剣を立て付け、絶叫する。

ブレイドを守るために、自身が死なせてしまった存在を、二度と殺させぬ為に。

371 Bを取り戻せ/切り札は俺の手に ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:28:08 ID:5jiSyPos0

――HYPER CLOCK OVER

瞬間、世界は通常の時間を流れさせる。
聞こえてくるのは、ダグバの愉悦、仲間たちの驚愕の声。
彼らには悪いことをしたとも思うが、しかしそれ以上に自分が仮面ライダーとしてようやく誰かを守れた自覚があった。

これが僕のなりたかった仮面ライダーだ、と考えるより早く、闇がその鎧に到達して。
それが晴れたとき、総司の身体は生身を晒しその膝を地についたのであった。

「――総司ィィィィ!!!」

翔太郎が、絶叫する。
突然自分の前に闇が迫ったかと思えば、それを総司が受け止めていた。
未だ使い方になれぬこの鎧、ノーラウズでのアンデッド能力の使用についてまだ疎かった為に総司という仲間が自分を守らざるを得なかったとそう考えて、彼は自信の不甲斐なさと、そして何より目の前のダグバに怒りを募らせる。

「ハアァァ……」

そして、それは翔一も同じようで、未だ笑うダグバを蹴り飛ばして、大きく構えを取った。
空中に二つアギトの頭部をそのまま映したような紋章が浮かび上がる中、ブレイドも怒りに身を任せ身体より三枚のカードを生じさせる。
掴み取ったそれらが何を意味するのかさえ感覚的にしか掴めないものの、彼はそれをキングラウザーに読み込ませた。

――SPADE FIVE SIX NINE
――LIGHTNING SONIC

身体中に力が沸き起こる中、ブレイドは駆け出す。
そのスピードは速く、アギトとの空いた距離を一瞬で無に出来るほどのものであった。
紋章へとアギトが跳び上がるのと同時、加速のついたままブレイドは飛ぶ。

強化シャイニングライダーキックと、ライトニングソニック。
二つの必殺技によるダブルライダーキック。
相当の威力を誇るはずのそれが迫る中、しかしダグバは防御の姿勢を固めるのみであった。

たった二発の蹴りが当たっただけとは到底思えないような爆音が周囲を揺らす中、二人の仮面ライダーは着地する。
今のは完璧に入った、と思うがしかし油断なく後方へと後ずさっていったダグバの方へ視線をやり。
再度その身を襲おうとした闇を回避する。

そうして闇が晴れる中現れるのは、まだ戦えるといった様子で笑い続ける悪魔の姿。
タフが取り柄の翔太郎でさえ疲労を隠しきれない中、しかしまだ戦意を途切れさせぬままに二人は立ち上がって。
――瞬間、翔一の身体からアギトの力が消失する。

「え――」

時間制限、それもバーニングからシャイニングを経たために時間減少が重なったため起こった、あまりにも早い変身解除であった。
そして、太陽の光が差さない中でのシャイニングに何らかの異常を来したのか、翔一の身体はそのまま大きく後ろに倒れる。

「翔一ッ!」

思わず声をかけるが……しかし翔一は答えない。
その疲労故か、進化の代償故か、彼は気を失っていたからだ。
総司、翔一、ようやく生まれた勝利の希望が摘み取られていく現状にやるせなさを感じつつも、しかしブレイドは一人、その大剣を確かに構えた。

それを見て、心底不思議で仕方がないという様子でダグバは首を傾げる。

「……ずっと気になってたんだ、何で仮面ライダーはそんなになってまで戦うの?君と一緒にいた彼も、最後の最後まで戦おうとしてた。もう僕に勝てないってわかってるのに」

実際には、それは彼の気まぐれで、本当に気がかりなわけではないだろう。
ただガドルがあそこまでの強さを身につけその敵であることを誇りに思うような相手を、少し彼も知ってみたかったのかもしれない。
しかしそんなダグバの言葉にブレイドはただキザにその指をダグバに伸ばして。

372 Bを取り戻せ/切り札は俺の手に ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:28:25 ID:5jiSyPos0

「わかってねぇな……仮面ライダーってのはな。人々の希望なんだよ。
その名前を名乗るからには、どんなになってでも、その身体一つグラついてでも悪を倒す、……その心そのものが仮面ライダーなんだ。てめぇが殺した紅も……その一人だったんだ」

――紅音也。
読めない男で、こんな状況でも女をナンパしたいから俺と行動するのはごめんだ、などとふざけたことを言っていた男だったが、あの名護が尊敬していたことや、こうしてダグバの思考にまで留まっているところを見ると、やはりただものではなかったらしい。
そんな男の仇を取ることを再度強く心に刻みつつ、再度両者が構えた、その時であった。

ブレイドの後方より招来した赤い鞭が、ダグバの身体を一閃したのは。

「何……ッ!?」

突如現れた援軍に思わず振り返り、そしてブレイドは見た。
赤い鞭と、自身も見慣れた友の大剣を持つ闇夜に解ける黒い仮面ライダーの姿を。





数分前。
名護の記憶を消し新たに世界のためその歩みを再開した紅渡……キングは、さした苦労もなく次の標的を発見していた。
それは、レンゲルバックルから得た情報にあった、金の鎧を着た仮面ライダーと、三人の仮面ライダーが戦闘する姿。

そう言えばうち一人、銀色のカブトムシのようなライダーは以前ライジングアルティメットと戦っていたライダーと似ている気がする。
或いはそれを受け継いだのだろうか、とも思い、しかしその声まで似ている気がして、彼は首を傾げた。
……まぁ、今は考えても仕方のないことだ。

デイパックの奥深くに押し込んだはずだというのに逃げろ逃げろとうるさいレンゲルバックルを無視しながら、キングはその余りにも常識外れの戦闘をその目で見届けていた。

「――キング、戦いには赴かないのか?」
「うん、王は挑まれた戦いからは逃げないけど……無駄に消耗するのも得策じゃないからね。彼らが制限で生身を晒した時にそれを狩れば良い」
「……尤もだな」

サガークと共に周囲を飛ぶキバットバットⅡ世にそう返すと、その答えにどこか納得しきっていない様子で彼はその足をキングの肩に乗せた。
今までこの場で一緒にいたという甘ちゃん連中、特に津上翔一と城戸真司という存在に、彼の思考も少し影響されているのだろうか。
と、そこまで考えて、彼はもう一つの可能性に気付く。

「……もしかして、あそこにいるのは君と一緒にいた人?」
「――あぁ」

幾分かの思考を交えたようで、歯切れ悪くキバットは返す。
世界のため戦う王に仕える、そう言っておいて他世界の仲間を心配してしまった自分がいることを、彼もどこか自覚しているのだろう。

「キバットバットⅡ世、一応言っておくけど僕は君の仲間だからって彼らを助ける気は――」
「――当然だ。それがこの殺し合いのルール。それに俺は奴らの仲間ではない、ただ一緒に行動していただけだ。それが殺されることに今更どうこう言うつもりもない」

いざ戦闘になった瞬間にその覚悟が消え変身を解除される、という状況に至らないように彼の覚悟を再確認しようとキングは声をかけるが、キバットは即答する。
それはまるで自分に言い聞かせているようでもあったが、しかし取りあえず裏切る様子はないようだとキングは自分を納得させる。
とは言えかつての親友に似たその身体、そしてその声、揺るぎないとは断言できないその覚悟、とキングにとってサガークほど信頼を寄せるべき相手ではないように思えもしたが。

ともかく、そんな思考を終え再び戦場に目を移すと、そこには先ほどまでとは大きく異なる戦況が現れていた。
黄金の仮面ライダー、銀と赤の仮面ライダーに、銀色のカブトムシのような仮面ライダーは先と変わらないが、一人新たに白と金の装飾を身につけた怪人が現れていた。
一目見てわかるその威圧感に胸を苦しめられながら、しかしキングの脳裏にはそれと同等の威圧を誇る存在が浮かんでいた。

373 Bを取り戻せ/切り札は俺の手に ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:28:42 ID:5jiSyPos0

「……まるで、ライジングアルティメットだ」

ぽつり、とそう呟く。
自身が見つけディケイド討伐の為に利用しようとしている存在と同程度の実力を誇ることが伝わってくるそれに視線をやりながら、キングは僅かばかり戦慄した。
ライジングアルティメット一人でもあれほどの災害を起こすというのに、そんな存在がこの場には目の前の怪人を含めまだ一人いると言うのか。

目の前の怪人はともかくもう一人は自信の手中に落とせることに安堵のような感情を抱きながら、その戦闘を見届けようと気付けば思わず前のめりになっていた。
暫くすると、まず銀色のカブトムシのライダーが敗れ、銀と赤の仮面ライダーが倒れ――、自身の変じた黄金のキバ、その真の姿に匹敵するようなライダーが次々と怪人の前に倒れていく。
恐ろしい実力を誇るそれにどうしても抱くことを禁じ得ない戦慄を抱いたまま、残る一人のライダーと怪人を見守って。

『――てめぇが殺した紅も……その一人だったんだ』

黄金のライダーが呟いたその言葉に、思わず意識を集中させられた。
今、なんと言った?
あの男が、父を殺したと言ったのか?

瞬間、キングを取り巻く雰囲気は変わった。
標的を見定め漁夫の利を狙うものから、今まさに狩りに赴かんとする王のものに。

「キバットバットⅡ世」

短く指示を飛ばせば、しかし以前の親友とは違いそれはすぐに噛み付きはしない。
何事か、と彼をみやれば、未だ迷うように空を漂っていて。

「どうしたの、キバットバットⅡ世」
「王よ、一つだけ聞きたい。今お前がこの戦いに赴くのは、王としてか?それとも――」

僅かばかり生じた、王の道具としてではなくキバットバットⅡ世としてのこの心が、キングに問うていた。
今この戦場に赴くのは、如何にキングが偉大で、そしてこの闇のキバの鎧が凄まじい能力を持つとは言え褒められたものではない。
故に、聞いておきたかった。

それを成そうとする気持ちが、世界を憂う王としてのものなのか、それとも父の敵を取ろうとする息子のものなのか。
しかし、対するキングは、既に自分の知る音也の息子としての顔は、していなかった。

「――お前は僕の、王の道具なんだろう?なら、僕に従え」

少し自分でも悩むような顔を浮かべたかと思えば、瞬間それは立ち消え王としての威厳で自分に命令を下してくる。
そう言われてしまえば、もうキバットには何も問うことは出来ない。
ファンガイアの王に仕えるのが自分の仕事。

それに、今自分がこの青年に力を貸すのは彼を王と認めたためだ。
以前三度この鎧の力を授けた男の息子だから……そんな理由など、存在しないのだから。

「お前の言う通りだな、俺は道具に過ぎん。――ガブリッ」

自身に生じた謎の空虚感を打ち消すように、彼は王に自分の魔皇力を注入する。
それと共に彼の全身にステンドグラスのような紋章が浮かび上がり、彼の腰にベルトを生じさせた。
王の手を煩わせることもないとばかりに自分からそのバックル部分にキバットが収まれば、王の身体は一瞬で黒の鎧に包まれた。

装着が完了したことを示すようにその瞳が緑に輝けば、そこにいたのはキバの世界最強の仮面ライダー。
王に仕える従者が、その比類なき力を今新たな若き王に授けた姿。
仮面ライダーダークキバ。

闇のキバの鎧を身につけたキングは、その左手にジャコーダー、その右手にエンジンブレードという、既に使い慣れた両刀を構え、ダグバに攻撃する。
自身の世界を守るため、そして今最後に出来る息子としての父への弔いのために、王はその力を振るうのであった。

374 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:29:28 ID:5jiSyPos0





突如として出現した黒い仮面ライダー。
敵か味方か判断がつかないそれにブレイドの対応が遅れたその瞬間、しかしダグバはその掌を即座に彼に向けていた。
その中で蠢く闇、相当の威力を想像させるそれが放たれるより早く、ダークキバは行動を起こしていた。

「ハアァァ……」

深い闇に飲まれ一瞬見逃しそうになる黒い輝きを放ちながらダークキバの足下に生じたキバの紋章が、凄まじい速度で地を這っていったかと思えば、次の瞬間にはそれはダグバの後方に出現していた。
これは流石のダグバも読み切れなかったか、躱しきれぬままにその紋章に磔の形で拘束される。
しかし、今や究極を超える力を保有するダグバの身体は、元の世界で誰一人、そうこの闇のキバの鎧を本来纏うはずの先代の王でさえ破れなかったこの拘束を破ろうとしていた。

しかしそれは所詮ダグバをそのままそこに拘束しようとした時の話。
もちろんダークキバにそんなことをする必要などない、彼がその手を手招きするように曲げれば、ダグバの身体は真っ直ぐにダークキバに向かっていく。
拘束への抵抗にその意識を振り切っていたダグバは簡単に王の眼前にまでその身体を無防備に晒し、そしてその蹴りを深く腹に受けた。

火花を散らしその身体が再度吹き飛んでいった先は、先ほどの紋章だ。
再度磔にされまたダークキバが手招きをする度にその身体を蹂躙されているダグバの姿は、この場で彼と戦った仮面ライダーたちにとって信じがたい光景だっただろう。

「凄ぇ……」

思わず漏れた感嘆の声と共に、ブレイドはその光景を傍観してしまっていた。
一方で、数回の蹂躙の後その拘束から解き放たれたダグバを追って、王はその手に持った剣と鞭で油断なくその生を止めに行こうとする。
しかしこれで終わる程度であれば、グロンギなどという種族の頂点であるンは務まりなどしない。

「アハハハ!最高だね、君。今までで一番楽しめるかも」

ガバッと起き上がってその身に刻まれた傷を驚異のスピードで治癒しながら、ダグバは笑う。
しかしそれに恐れを抱くことなどなくダークキバはその手に持ったエンジンブレードを振るい、その身を切り崩そうとするが。

「丁度いいや、剣が欲しかったんだよね。これ、ちょうだい」

その刃を――その手から血が流れ出るのも気にせずに――掌で受け止めたダグバは、その言葉と共に強引に刃の側からその剣を奪い取る。
思わず唖然とした一瞬を逃さずダグバがその足を強かに彼の胸にぶつければ、そこからは夥しい量の火花が散りその中のキングも思わず声を漏らした。
どうしようもないダメージに後ずされば、その剣を構え直したダグバの乱舞が待っている。

このダークキバの鎧を以てしてなおダメージになるほどの切れ味を誇るエンジンブレードを、これ以上ないパワーの持ち主が利用しているのだ。
彼に抵抗の機会など、与えられるはずもなかった。
――そう、彼自身には。

「やめろォ!」

幾度となく続いたその乱舞を受け止め自分の前に立ったそれは、仮面ライダーブレイド。
キングラウザーの刃とキングフォームの力でしかし押え付けるのがやっと、という様子の中、ブレイドはその背に庇うダークキバに声をかける。

「おい、お前!誰だか知らねぇが、ダグバを倒すんだろ!?なら力貸してやるよ!」
「……」

暑苦しいブレイドの言葉を聞きながら、ダークキバは思う。
これが、キバットバットⅡ世から聞いた、名護の新しい仲間か。
決して裏切ることのない異世界の仲間……そんな存在であることを裏付けるようにいきなり現れた自分を信頼するようなその言葉に、一つため息をついて。

375 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:29:44 ID:5jiSyPos0

ふと足下の青年が気絶したまま握りしめている、自分の所有物であった大剣、ザンバットソードを手にする。

(違う……これは利用するだけだ、父さんの仇を取るまでの間だけ、この愚か者を利用する……)

誰に聞かれたわけでもないのに心でそう言い訳じみた言葉を吐いて、ダークキバは押し切られそうになっているブレイドを援護するようにダグバに横から切りかかった。
流石にこの二人を相手に力押しは不利だと踏んだか、ダグバが後ずさる中二人は並び立つ。

剣の世界最強のライダー、キングフォームと、キバの世界最強のライダー、ダークキバ。
この会場の中でも指折りの実力を誇るそれらの鎧を身につけて、彼らは今一時の共闘で以て最悪の悪魔に挑もうとしていた。
だが、その佇まいだけで相当の実力を匂わせる二人のライダーを前に、ダグバも今までのように余裕を見せずその手に闇を集わせる。

「させるかッ!」

しかし、それを見て動き出したブレイドの左膝が輝いたかと思えば、彼以外の時間は完全に静止した。
それは、翔太郎とてやろうと思ってやったわけではない。
ただ『ダグバを止めたい』、そう思ったらこの身に纏う力が応えたというだけのことであった。

しかし、タイムの力について深く知らない翔太郎は、取りあえずダグバに追いつけるというだけの事実が分かれば十分だ、と剣を振りおろす、が。

「――なッ!?」

何か不思議な力によってキングラウザーが弾かれる。
それは彼の発動したタイムに課せられた制限のためであったが、翔太郎はそんなことを知るよしもなかった。

「でも、こんなことで……諦めてたまっかよ!」

時間を停止している限り自分の攻撃がダグバに届かないのだとしても、彼はその手を休めることはしない。
紅や、恐らくはそれ以上に多くの人間を、この男は殺している。
そんな存在を相手に、自分の信じる仮面ライダーはどんな理由があっても諦めてはいけないのだ。

――そして、その拳は遂に届く。
ただ単に時間停止の能力が制限時間を迎えただけであったが、その拳が丁度ダグバにぶつかるその直前でそれが訪れたのだ。
それはひとえに彼の持ち前の幸運のためであったが……しかし、その黄金の拳を目前に迎えてなお、ダグバは別段戦慄をしなかった。

自分が先ほどまで用いていた鎧なのだ、既にその力は大体察している。
今の究極を超えた自分にとって、ビートの力さえ用いないその拳は大した痛手にはなるまい。
そう思い、最早避けきれぬその拳を甘んじてその頬に受け――。

(――重いッ……!?)

その想像を遙かに絶する威力に、今度こそ驚愕を見せた。
今のブレイドがダグバをも絶句させる攻撃を放てたのは、ひとえにその特徴である融合係数による能力の上昇が見られたのも一つの理由であるが、しかし、それ以上に大事なことがあった。
それは、左翔太郎という人間と、ン・ダグバ・ゼバというグロンギ、それぞれが持つブレイドのライダーシステムに対する素質の差だ。

この場ではどういった存在であれスペードのカードを全て集めラウズアブゾーバーを用いれば13体のアンデッドと融合したキングフォームに変身できるというのは、以前ダグバとクウガの戦いにおいて述べられた通り。
しかし、その戦いでダグバが急速にその融合係数を高めたとは言え、所詮は正義の心を持たず13体のアンデッドとの強引な融合の促進でその力を高めただけ。
本来の装着者である剣崎一真が変身したキングフォームとの戦いになったのなら、融合係数の上がり方などから見てもダグバの変じたキングフォームは、やはりノーラウズの力を十二分に発揮して五分と言ったところか。

376 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:30:00 ID:5jiSyPos0

元よりブレイドの装着者として見込まれ自分の素質だけで13体のアンデッドと融合して見せた剣崎と、制限によるお情けでその姿と能力だけを取り入れたダグバでは、一見ダグバが勝っているように見えて、その実大きな差が存在する。
そう、剣崎が元の世界でノーラウズの力の力を用いずして数多くのアンデッドを打ち倒してきたのは、決して敵が彼の実力に見合わぬ存在だったからではない。
彼はその力を使わずしてクウガの世界における究極の闇と匹敵する力を持っていたから、それだけの理由に他ならない。

でなければダグバに匹敵しうるジョーカーアンデッド、その存在と互角に渡り合うことなど出来ないのだから。
長々と話したものの、つまり単純に話を纏めれば、ダグバの変身したキングフォームは、剣崎の変じたそれよりも弱い、ということになる。
であれば、次に重要なのは左翔太郎という人間はどういった存在なのかということだ。

彼は剣崎のように正義を信じる仮面ライダーで、例え相棒がいなくても自身の信じる存在の為に戦い続けられる存在だ。
そんな仮面ライダーはこの場にごまんといるが、しかし彼にはもう一つ特殊な事情が存在する。
それは、彼は異世界、それも大きく意味が異なるとは言え、『ジョーカー』に運命の存在として認められた男だと言うこと。

そう、アンデッドとの融合を促進し最終的にその身をアンデッドの頂点、『ジョーカー』としてしまうブレイド、とりわけキングフォームと翔太郎の融和性は異常な数値を示していたのだ。
ここまで言えば分かるだろう……つまり彼はこの場において、剣崎一真と同じく自身の力だけで13体融合のキングフォームに辿り着くことの出来る存在の一人だったということ。
であれば、ダグバが先ほどまで想定していたキングフォームとの実力は天地の差。

故にこうしてその拳は、アンデッドの力による付加価値なしでダグバの意識を一瞬刈り取りかねないほどの究極に匹敵する拳となり得た、ということだ。
だが、今の翔太郎には先ほどのダグバ以上にラウズカードに対する理解が薄く、未だその能力を使い切れていない。
またダグバと違いその融合を受け入れきるような意識も存在しなかったため、ノーラウズによるアンデッド能力の行使を未だ扱い切れてはいなかった。

だがそれを把握し使いこなすのも時間の問題、決して胡座をかいていられる状況でもあるまい、とダグバは大きく後退しその手に再度闇を集める。
しかし先ほどまでのようにそれを止めダグバを殴る、だけでは相手の回復力も相まってただ自分が消耗するだけだ、とブレイドは思う。
強化形態に変身し変身可能時間も短くなっているのだから、早期決戦を望まなければ、と彼はその手に五枚のカードを掴み取る。

翔太郎の知るポーカーの中で、同一スートのみの縛りであれば最強の役であるそれをキングラウザーに次々と滑り込ませれば、その身はたちまち光に満ちあふれて。

――SPADE TEN JACK QUEEN KING ACE
――ROYAL STRAIGHT FLASH

電子音声と共に光り輝いた大剣をブレイドが振るうと同時、ダグバの掌から闇が吐き出されていく。
キングラウザーから生じたエネルギーの波がそれとぶつかると同時、辺りに凄まじい衝撃の余波が生まれる。
並の仮面ライダーであればその足を動かせもしないその中で、しかしダークキバは生まれた隙を逃さず自身の剣に取り付けられたホイッスルを手に取った。

「ウェイクアップッ!」

キバットバットⅡ世がその笛の音を響かせる中、ダークキバはその大剣を研ぐ。
それによって赤い魔皇力がザンバットソードを染めあげると同時、ダークキバはその足をダグバに向け駆け出した。
しかしダグバもそれをただで見ているわけにはいかないと、残る右手から闇を吐き出しダークキバに向ける。

左手でロイヤルストレートフラッシュ、右手でファイナルザンバット斬をそれぞれ押え付けながら、しかしダグバはある一つの結末を悟る。
それは、自分の敗北。
究極を超えた自分に匹敵する存在などいないとばかり思っていたが、なるほどこれがガドルも認めた仮面ライダーか。

そんな事を考えた時、既にロイヤルストレートフラッシュの輝きと、赤い大剣が自身の闇を切り開いて自分に肉薄しているのを見る。
だが、まだやられるわけにはいかない、これよりもっと面白いことをずっと楽しまなくては――!
今まで抱くはずなかった意地でその身を捩り無理矢理にロイヤルストレートフラッシュの軌道から逃れたダグバの身体を、しかしその輝きが掠っていた。

377 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:30:22 ID:5jiSyPos0

思わず怯みもう片方の暗黒掌波動の勢いが弱まった瞬間、その一瞬を見逃さずダークキバはその闇を押し切り手に持つ剣でダグバの身体を深く切りつけた。
ダークキバがその剣をもう一度研ぎ魔皇力を空気中に放散すれば、それが終わりを告げると共にダグバの身体は爆炎に包まれて。
こうしてこの場で初めて、グロンギ最強の怪人は本気の状態でなお完全な敗北を喫したのであった。





自身の放ったロイヤルストレートフラッシュ、その輝きがダグバを掠り病院の方向に放たれて行ってしまったのを見て、翔太郎は勢いを相当殺されていたはずだというのになお衰えを見せなかったその威力に思わず戦慄する。
同時にそれと同程度の攻撃を片手で放てるダグバと、その闇を切り開きその刃を届かせたダークキバ、この場に集った戦士たち全ての実力にも、彼は驚愕を禁じ得なかった。
しかし、ともかく剣崎の遺したこの力がそれを弄んだ悪魔に届いた事実に、翔太郎はカタルシスを覚えていた。

だが、そうして物思いに耽るのもそこまでだった。
幾分かその勢いを先ほどより弱めてはいるものの……既に聞き飽きた笑い声が、闇と煙で遮られた視界の先から轟いたため。
あれほどのダメージを受けなお生きているダグバのその生命力に、最早驚きもせずブレイドとダークキバはその剣を構える。

「アハハ、楽しいよ、本当に楽しいよ!仮面ライダーたち!僕をもっと楽しませて――あれ?」

そうして笑い声と共にその手に闇を集わせた瞬間、彼の身体は生身に変化する。
先ほどのブレイドに変身した時にも発生した、10分と認識している変身制限が5分ほどになってしまっている現象。
それによって否応なしにこの身がリントと同じほどの脆弱なものに変わってしまって、ダグバは隠そうともせず不満な声を漏らした。

それは、セッティングアルティメットと呼ばれる形態に変じたダグバに生じた、新しい制限。
今までの力より大きく進化した対価としてその変身時間を半分に削られてしまったのだった。
戦いが終わりを迎えたことに動揺と物足りなさを抱いたままのダグバをしかし、王は許しはしない。

生身の人間に手を下す抵抗感からかその手を緩めたブレイドと対照的に、ダークキバがその手に持ったジャコーダーをしならせダグバに迫ったからだ。
またも訪れた死の恐怖にその顔を引きつらせて愉悦に浸るダグバの元に、しかし王の一撃は到達しない。
天空より舞い降りた黄金の一筋が、それを弾き飛ばしたため。

「――君は?」

その予想しなかった光景に思わず動揺したダークキバに対し、助けてもらったというのにどこか不満げにダグバは呟く。
それにその物体は応えず、代わりとばかりにダグバの手に銀のブレスレットを落とした。
そう、ダグバを今助けたその物体は、コーカサスゼクターの名を持つ自立型ゼクターの一つ。

ワームであれ人間であれ、強いものに従うそれは、以前の資格者であった牙王を打ち倒したダグバを、次の資格者として認めたのであった。
そしてカブト、ヘラクスの二人のZECT製仮面ライダーを見ていたダグバには、それの扱い方は既に知っているようなもの。
左手にそのブレスを付ければ、彼が掴むまでもなくコーカサスゼクターはその台座に自ら収まった。

「フフッ、――変身」

――CHANGE BEETLE

瞬間そこに現れたのは、ZECTが開発した最強のマスクドライダーシステムのうちの一人。
仮面ライダーコーカサス。
先ほどのダグバの怪人態と比べればどうしても見劣りするもののしかし彼が纏うに相応しい威圧を備えたその姿に思わず二人のライダーもまた構えるが。

「今度会ったときはもっと楽しませてよ、仮面ライダー。――クロックアップ」

378 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:30:37 ID:5jiSyPos0

――CLOCK UP

そして、彼の姿はかき消える。
この場で初めての、ダグバの逃走。
しかしそれをみすみす見逃すわけにもいかない、とブレイドは追いかけようとするが。

「――あっ」

瞬間ブレイドの鎧もまた、制限時間の短縮により消失した。
これではダグバを追うことも出来ないか、としかし帽子を整え、気を取り直して仲間の元に行かなくては、とその踵を返して。
――瞬間襲いかかった今まで感じたことのないような疲労に、その身体を倒した。

それは、人の身でキングフォームを纏った為に生まれた、どうしようもない疲労。
もう少し融合係数があがっていればまだしも、通常のブレイドを介さず変じたキングフォームは、高い融合係数を誇った翔太郎の意識さえ刈り取ったのだった。
そして、それと同時辺りに散らばったカードを見つめるのはダークキバだ。

サガをも超える力を持つこの闇のキバの鎧。
それに満足感を抱いた此度の戦いで、しかしそれに匹敵する力を目の前の男は放っていた。
デイパックの中からなおも力を手に入れろとうるさいレンゲルバックルにしかし今は従って、彼は手始めに自分の足下に落ちていたキングのカードを拾い上げる。

そのまま、他のカードも拾い上げようと、その足を他のカードの元へ向けようとして。

「ああああぁぁぁぁぁ!!!!」

絶叫と共に飛びかかってきた白い仮面ライダーに、それを防がれる。
何事か、とそちらを見やれば、そこにいたのはキバとよく似た、しかし明確に違う戦士。

「翔太郎は、僕が守る!」
「……」

どうやら捨て身の覚悟でこのダークキバの鎧を纏った自分を抑え仲間を逃がすつもりのようだが、しかし無理だとキングは思う。
先ほどのダグバとの戦いで消耗しているだろうこの男に比べ疲労、ダメージの蓄積も少なく鎧の性能も上の自分を、一瞬でも抑えておけるはずなどないし、男たちはどちらも気を失っている。
彼らが起きるまでの間を単身で凌ぎきれるわけがない、と彼はその剣を構えて。

「――総司くーーーん!!!!」

少し前にも聞いたバイクのエンジン音と――もう聞くはずはないと思っていた恩師の声と――共に自身の身に雨のように降りかかった弾丸に、思わずその身を退いた。
自分が退いた分生まれたレイとの間に滑り込みバイクごとそのスペースに参上した男の名は、名護啓介。
纏うその鎧の名は、仮面ライダーライジングイクサ、そう、彼の持てる最大戦力だ。

「――名護さんッ、来てくれたんだね!」
「当たり前だ、弟子の危機に師匠は必ず現れるものだからな」

自分から銃口を外さぬままバイクから降りたイクサに対し、レイは歓喜の声を上げる。
弟子の危機に師匠は必ず現れる……先ほど自分も生身の殴り合いで実感したそれを一身に受けるレイは、そのダメージすら気にならない様子ではしゃぐ。
それに抱くことをやめたはずの嫉妬にも似た感情がわき出てきて、ダークキバの仮面の下で思わずキングは顔をしかめた。

「――キバット君、君がいるということは、その鎧の下にいるのが君の認めた新たな王、ということか?」
「そういうことだ」

今までキバットの力を用い変じたダークキバを見ていなかったことと暗夜に消えるその姿故翔太郎が気付かなかったキバットが、その口を開く。
それに初めて気付いた総司も、今まで仲間だったはずのキバットバットⅡ世がこうして的として現れたことに今更ながら驚愕しているようだった。

「ファンガイアの王として君が認めた、ということはその鎧を纏っているのは俺の世界の参加者ということか?」

その言葉に、総司は目を大きく見開く。
当然に名護の脳裏に渡の姿が浮かんでいると思ったからだが、実際には違う。
実際には、名護はただ自身に大事なことを教えてくれた紅音也と“同じ名字をしているだけ”の紅渡という、自分の世界からの参加者らしい存在が変じたのかと気になっただけだったのだから。

379 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:30:55 ID:5jiSyPos0

「……そうとも限らん。俺はファンガイアの王を見定めるだけ。自分の世界がどうなろうと、俺が認めた王の資格を持つものであればこの力を貸すことに異論はない」
「つまり、装着者を教える気はない、ということか」
「そういうことだ」

実際には名護の推理は当たっているのだが、しかしキバットは予めキングと打ち合わせておいた台詞を吐き煙に巻く。
それを受けどうやら対話の意思はないと判断したか、一瞬の迷いの後イクサはそのカリバーを構えるが、それを前にしてダークキバは戦意なくその手をすっと翳した。

「――やめましょう。今の貴方たちには、僕と戦う以上に大事な役目がある」
「役目……?」

この場に現れてから初めて口を開いたダークキバの意外な言葉に、思わずレイはその構えを緩める。
イクサは既にキバットからの伝言で知ってはいるが、しかしそれを遮ることはしなかった。
それを見やりながら、ダークキバは続ける。

「えぇ、貴方たち仮面ライダーの真の使命。それは世界の破壊者、ディケイドの破壊。それを成さなければ全ての世界は殺し合いの結末に関わらず崩壊する」
「――ディケイドだって!?」

キングにとっては既に何度も口にした言葉を聞いて、しかしレイは驚きの声を上げる。
自分が剣崎一真を殺した現場に居合わせ、その身をブレイドのものへと変え自分を打ち倒した仮面ライダー、ディケイド。
彼がいなければ自分はあの病院を全て打ち壊しかねなかったことを思い、彼とはあるいは戦いになるだろうことも覚悟した上で、自分を止めてくれた感謝と共にそんな存在と仮面ライダーとして剣崎の遺志を継ぎ戦えることを楽しみにしてもいたが。

そんな存在が、この殺し合いの大前提すら揺るがすほどの文字通りの悪魔だというのか。
思わずその戦意を失ったレイを前に、しかしダークキバは言葉を紡ぐ。

「今回は、貴方たちの命は預けておきましょう。しかしまた再び私の前に立ち塞がれば、次はない。ディケイドの破壊より先であったとしても、貴方たちを破壊します」
「待て、最後に一つだけ聞いておきたい」
「……なんですか」

そうして捨台詞と共にその場を去ろうとしたダークキバに、イクサはしかし声をかける。
無視しても良いというのに、彼の記憶を消してしまった罪悪感からか、その身体は動こうとしなかった。

「君が新しいファンガイアの王だというなら、一体何を望む。世界の崩壊を防ぎ他の世界を全て破壊して……一体君は何をしたいというんだ」
「そんなこと、決まっています」

イクサの説得にも似たそんな質問に対し、しかしダークキバの答えは変わらない。
ゆっくりと振り返り、イクサの鎧越しにしっかりとその瞳を見据えて。

「――僕は、僕の守りたいものを全て守るだけです」

――貴方も含めて。
心の中でそう付け足して、ダークキバはもう対話の意思を見せずその歩を進める。
その背中は威厳に溢れていたが……同時に何故かそれに手を伸ばさなくてはいけないように、イクサには感じられて。

「待てッ」
「名護さんッ、今は翔一と翔太郎が先だよ!」

思わず彼に向かおうとしたその身体を、後ろから弟子が、レイが止める。
ゆっくりと消えていくその背中、そしてそれに抱いた不思議な感情をどうにも処理しきれないまま、名護はイクサの鎧を解除する。

「――そうだな、総司君。俺としたことが優先順位を見誤るところだった。今は危険な存在を深追いするより、仲間の保護が大事だ」
「うん、また病院に戻ろう」

総司も相当にダメージを負っているながらも、ネイティブの治癒力で何とか人一人担げるくらいには体力も戻っていた。
既に姿すら見えないというのにその存在に銃を向けたこと、そしてそれから今離れることにどうしようもなく後ろ髪引かれる思いを抱きながら、名護はその場を後にした。

380 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:31:11 ID:5jiSyPos0





津上翔一を襲った、急激な疲労感。
それがシャイニングフォームに夜間に初めて変身したために生じた反動だと簡単に結論づけても良いものなのか、誰にも分からない。
何故なら、アギトは進化の可能性。

この場において新たにその身を変える進化をしたとして、誰もそれを疑問に思うことなど出来はしない。
むしろ、彼の大きすぎる疲労がもしも、初めてバーニングフォームに変じた時にその直前まで彼を襲っていた不調と同様のものだとしたら。
仮面ライダーアギトは、あるいはこの場で新しい姿に変じようとしているのかもしれない。

或いはそれはただ翔一のアギトとしての基礎能力が向上するだけかもしれないが、それを知ることはまだ誰にも出来なかった。
本人にすら分かりきれない未知の可能性を抱いたまま、翔一は眠る。
その身を新たに進化させながら。


【二日目 深夜】
【D-1 市街地】

【左翔太郎@仮面ライダーW】
【時間軸】本編終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(極大)、キングフォームに変身した事による疲労、仮面ライダージョーカーに1時間50分変身不可、仮面ライダーブレイドに1時間55分変身不可
【装備】ロストドライバー&ジョーカーメモリ@仮面ライダーW 、ブレイバックル@+ラウズカード(スペードA〜12)+ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×2(翔太郎、木場)、トライアルメモリ@仮面ライダーW、首輪(木場)、ガイアメモリ(メタル)@仮面ライダーW、『長いお別れ』ほかフィリップ・マーロウの小説@仮面ライダーW
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、世界の破壊を止める。
0:(気絶中)
1:名護と総司、仲間たちと共に戦う。 今度こそこの仲間達を護り抜く。
2:出来れば相川始と協力したい。
3:浅倉、ダグバを絶対に倒す。
4:フィリップ達と合流し、木場のような仲間を集める。
5:乾巧に木場の死を知らせる。ただし村上は警戒。
7:もしも始が殺し合いに乗っているのなら、全力で止める。
8:もし、照井からアクセルを受け継いだ者がいるなら、特訓してトライアルのマキシマムを使えるようにさせる。
9:ジョーカーアンデッド、か……。
【備考】
※オルフェノクはドーパントに近いものだと思っていました (人類が直接変貌したものだと思っていなかった)が、名護達との情報交換で認識の誤りに気づきました。
※ミュージアムの幹部達は、ネクロオーバーとなって蘇ったと推測しています。
※また、大ショッカーと財団Xに何らかの繋がりがあると考えています。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※総司(擬態天道)の過去を知りました。
※仮面ライダーブレイドキングフォームに変身しました。剣崎と同等の融合係数を誇りますが、今はまだジョーカー化はさほど進行していません。

381 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:31:25 ID:5jiSyPos0




【擬態天道総司(ダークカブト)@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第47話 カブトとの戦闘前(三島に自分の真実を聞いてはいません)
【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、仮面ライダーカブトに1時間50分変身不能、仮面ライダーレイに2時間変身不能
【装備】ライダーベルト(ダークカブト)+カブトゼクター@仮面ライダーカブト、ハイパーゼクター@仮面ライダーカブト、レイキバット@劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王
【道具】支給品一式×2、753Tシャツセット@仮面ライダーキバ、魔皇龍タツロット@仮面ライダーキバ
【思考・状況】
基本行動方針:天の道を継ぎ、正義の仮面ライダーとして生きる。
0:翔一と翔太郎を病院に連れて行かなきゃ。
1:剣崎と海堂、天道の分まで生きる。
2:名護や翔太郎達、仲間と共に生き残る。
3:間宮麗奈が心配。
4;放送のあの人(三島)はネイティブ……?
5:ディケイドが世界の破壊者……?
【備考】
※天の道を継ぎ、総てを司る男として生きる為、天道総司の名を借りて戦って行くつもりです。
※参戦時期ではまだ自分がワームだと認識していませんが、名簿の名前を見て『自分がワームにされた人間』だったことを思い出しました。詳しい過去は覚えていません。
※カブトゼクターとハイパーゼクターに天道総司を継ぐ所有者として認められました。
※タツロットは気絶しています。
※名護の記憶が消されていることに気付いていません。
※渡より『ディケイドを破壊することが仮面ライダーの使命』という言葉を受けましたが、現状では半信半疑です。




【津上翔一@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(極大)、強い決意、真司への信頼、麗奈への心配、未来への希望 、進化への予兆、仮面ライダーアギトに1時間50分変身不能
【装備】なし
【道具】支給品一式、コックコート@仮面ライダーアギト、ふうと君キーホルダー@仮面ライダーW、医療箱@現実
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの居場所を守る為に戦う。
0:(気絶中)
1:逃げた皆や、名護さんが心配。
2:大ショッカー、世界崩壊についての知識、情報を知る人物との接触。
3:木野さんと北条さん、小沢さんの分まで生きて、自分達でみんなの居場所を守ってみせる。
4:もう一人の間宮さん(ウカワームの人格)に人を襲わせないようにする。
5:南のエリアで起こったらしき戦闘、ダグバへの警戒。
6:名護と他二人の体調が心配 。
【備考】
※ふうと君キーホルダーはデイバッグに取り付けられています。
※医療箱の中には、飲み薬、塗り薬、抗生物質、包帯、消毒薬、ギブスと様々な道具が入っています。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
※天道総司の提案したE-5エリアでの再合流案を名護から伝えられました
※今持っている医療箱は病院で纏めていた物ではなく、第一回放送前から持っていた物です。
※夜間でシャイニングフォームに変身したため、大きく疲労しています。
※ダグバと戦いより強くなりたいと願ったため、身体が新たに進化を始めています。シャイニングフォームを超える力を身につけるのか、今の形態のままで基礎能力が向上するのか、あるいはその両方なのかは後続の書き手さんにお任せします。

382 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:31:41 ID:5jiSyPos0




【名護啓介@仮面ライダーキバ】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(中)、ダメージ(大)、左目に痣、仮面ライダーイクサに2時間変身不能
【装備】イクサナックル(ver.XI)@仮面ライダーキバ、ガイアメモリ(スイーツ)@仮面ライダーW 、ファンガイアバスター@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×2(名護、ガドル)、ラウズカード(ダイヤの7,8,10,Q)@仮面ライダー剣、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:悪魔の集団 大ショッカー……その命、神に返しなさい!
0:病院の方に戻る。
1:直也君の正義は絶対に忘れてはならない。
2:総司君のコーチになる。
【備考】
※時間軸的にもライジングイクサに変身できますが、変身中は消費時間が倍になります。
※『Wの世界』の人間が首輪の解除方法を知っているかもしれないと勘違いしていましたが、翔太郎との情報交換でそういうわけではないことを知りました。
※海堂直也の犠牲に、深い罪悪感を覚えると同時に、海堂の強い正義感に複雑な感情を抱いています。
※剣崎一真を殺したのは擬態天道だと知りました。
※ゼロノスのカードの効果で、『紅渡』に関する記憶を忘却しました。これはあくまで渡の存在を忘却したのみで、彼の父である紅音也との交流や、渡と関わった事によって間接的に発生した出来事や成長などは残っています(ただし過程を思い出せなかったり、別の過程を記憶していたりします)。
※「ディケイドを倒す事が仮面ライダーの使命」だと聞かされましたが、渡との会話を忘却した為にその意味がわかっていません。ただ、気には留めています。





――こうなることは分かっていたはずなのに、名護に敵意を向けられ、容赦なくその攻撃を受けたときは、ショックを禁じ得なかった。
自分が覚悟を決める為、また名護に自分にとらわれず仮面ライダーとして戦って欲しいと思ったため、そうして彼の記憶を消したはずだったというのに、どうしようもなく胸が痛む。

「――王よ、どうした。覚悟が薄れたか」
「そんなことない……そんなことはない、けど……」

仮面ライダーと正面切って戦う覚悟。
名護啓介という男として以上に、仮面ライダーイクサとして立ちはだかる彼を、或いは倒す覚悟。
そして、自分のことを誰も覚えている人がいなくなってしまうという、悲しみを隠し続ける覚悟。

それらを抱いていたはずだというのに。
先ほどイクサに守られその登場に喜ぶ白いキバのようなライダーを見たとき。
そこに、過去の自分を幻視してしまった。

そして同時に、キバとイクサに敵意を向けられその二人の前に立つ自分が、今まで倒してきた“そちら側”になってしまったのだと、これ以上なく痛感したのだ。
それがあまりにも予想以上に訴えかけてきて、キングは一瞬“紅渡”になりかけてしまった。
だから、一旦それに背を向けた。

ディケイドの破壊の為に必要な戦力を残しただけだ、自分にさえそう言い訳して。

「なら構わないが……俺も、次はないぞキング。今度名護が敵対した時お前が尻込みするなら、その時は――」
「――わかってる。僕はもう迷わない、今度戦う時は、名護さんも」
「……ならいい」

383 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:31:55 ID:5jiSyPos0

確かに嘘ではなくそう言い放てば、望んだはずの答えを得られたというのにキバットはどこか残念そうにデイパックに戻っていった。
そう、もう迷わない。
彼はもう自分を忘れたのだ、なれば自分も王として、世界など関係なく立ちはだかる障害の一つとして彼を排除するのみ。

先代の王が自分にしたように、それこそが王としてあるべき姿だ、とそう考えて。
最後に一筋だけ――それがヘルメットに隠れ見えないことを知りつつも――彼は、涙を流した。


【二日目 深夜】
【E-1 焦土】


【紅渡@仮面ライダーキバ】
【時間軸】第43話終了後
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、地の石を得た充足感、精神汚染(極小)、相川始の裏切りへの静かな怒り、心に押し隠すべき悲しみ、仮面ライダーゼロノスに1時間30分変身不能、仮面ライダーダークキバに1時間45分変身不能
【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、ゼロノスベルト+ゼロノスカード(緑二枚、赤一枚)@仮面ライダー電王、ハードボイルダー@仮面ライダーW、レンゲルバックル+ラウズカード(クラブA〜10、ハート7〜K、スペードK)@仮面ライダー剣、キバットバットⅡ世@仮面ライダーキバ、ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ
【道具】支給品一式×3、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、アームズモンスター(バッシャーマグナム+ドッガハンマー)@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0〜1)、地の石(ひび割れ)@仮面ライダーディケイド、ディスカリバー@仮面ライダーカブト
【思考・状況】
基本行動方針:王として、自らの世界を救う為に戦う。
1:レンゲルバックルから得た情報を元に、もう一人のクウガのところへ行き、ライジングアルティメットにする。
2:何を犠牲にしても、大切な人達を守り抜く。
3:ディケイドの破壊は最低必須条件。次こそは逃がさない。
4:始の裏切りに関しては死を以て償わせる。
4:加賀美の死への強いトラウマ。
5:これからはキングと名乗る。
6:今度会ったとき邪魔をするなら、名護さんも倒す。
【備考】
※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キングを知りません。
※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。
※相川始から剣の世界について簡単に知りました(バトルファイトのことは確実に知りましたが、ジョーカーが勝ち残ると剣の世界を滅ぼす存在であることは教えられていません)。
※レンゲルバックルからブレイドキングフォームとクウガアルティメットフォームの激闘の様子を知りました。またそれによってもう一人のクウガ(小野寺ユウスケ)の存在に気づきました。
※地の石にひびが入っています。支配機能自体は死んでいないようですが、どのような影響があるのかは後続の書き手さんにお任せします。
※赤のゼロノスカードを使った事で、紅渡の記憶が一部の人間から消失しました。少なくとも名護啓介は渡の事を忘却しました。
※キバットバットⅡ世とは、まだ特に詳しい情報交換などはしていません。
※名護との時間軸の違いや、未来で名護と恵が結婚している事などについて聞きました。
※仮面ライダーレイに変身した総司にかつての自分を重ねて嫉妬とも苛立ちともつかない感情を抱いています。

384 Bを取り戻せ/闇切り開く王の剣 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:32:10 ID:5jiSyPos0





「あーあ、本当に楽しかったなぁ」

クロックアップの能力が切れた後も走り続け10分の変身制限を迎えその鎧を消失させ天に消えていくコーカサスゼクターを見やりながら、ダグバは呟く。
クウガとの戦いがこの場でも最上のものだと疑っていなかったが、彼と匹敵するものはこの場に数多くいた。
アギトに、カブトに、あの帽子の男が変じたブレイドやあの黒い蝙蝠のようなライダーも、自分の想定を超える能力を見せてきたのだ。

自分の思ったとおりこの場にはもう面白い参加者しか残っていないに違いない、と悪魔はよりその笑みを深めて。

「――誰かを守ることで強くなれるのが仮面ライダー、かぁ」

アギトの言った言葉を、再度紡ぐ。
ガドルも似たようなことを言っていたが、であれば自分のクウガの育て方は間違っていたのかもしれない。
だがまぁ悔やむこともない。

怒ってクウガが強くなったのも事実、誰かを守ってアギトやブレイド、カブトが強くなったのも事実。
そういう感情で強くなるのが仮面ライダーで、恐らくはそれぞれ強くなれる感情が違うのだろうとダグバはよく分からないながらにそう結論づけた。
今回の戦いではブレイドという玩具も失ったが、まぁいいだろう。

コーカサスという力も手にしたし、また戦う内に何か新しい玩具が手に入るかもしれないのだから。
と、そこまで考えて、ダグバはふと顔を見上げ次の目的地を定める。

「そうだなぁ、こっち側はもう大体遊んだし……」

適当に走り辿り着いた橋の前に立ち、ダグバはその表情を深い笑みに変えて。

「――こっち側に、戻ってみようかな?」

今その足を、もう一度東側に向けようとしていた。


【二日目 深夜】
【D-3 橋】


【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
【時間軸】第46話終了後以降
【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、もう一人のクウガ、浅倉、仮面ライダーたちとの戦いに満足、ガドルを殺した強者への期待(満足)、仮面ライダーブレイドに1時間45分変身不能、怪人態に1時間50分変身不能、仮面ライダーコーカサスに2時間変身不能
【装備】ライダーブレス(コーカサス)@仮面ライダーカブト、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW
【道具】なし
【思考・状況】
0:ゲゲル(殺し合い)を続ける。
1:東側に戻ってみようっと。
1:恐怖をもっと味わいたい。楽しみたい。
2:もう1人のクウガや強い仮面ライダーとの戦いを、また楽しみたい。
3:バルバもこのゲゲルに関わってるんだ……。
4:仮面ライダーは、守って強くなるんだね……。
【備考】
※浅倉はテラーを取り込んだのではなく、テラーメモリを持っているのだと思っています。
※ダグバのベルトの破片を取り込んだことで強化しました。外見の変化はありませんが、強化形態扱いとして変身時間は半分になるようです。
※制限によって、超自然発火能力の範囲が狭くなっています。
※変身時間の制限をある程度把握しました。
※超自然発火を受けた時に身に着けていたデイパックを焼かれたので、基本支給品一式は失われました。
※キングフォーム、及び強化された自身の力に大いに満足しました。
※仮面ライダーブレイドキングフォームに変身したことで、十三体のアンデッドとの融合が始まっています。ジョーカー化をしているのかどうか、今後どうなるのか具体的には後続の書き手さんにお任せします。
※一条とキバットのことは死んだと思っています。
※擬態天道を天道総司と誤認しています。
※コーカサスゼクターに資格者として認められました。

385 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/27(火) 00:33:56 ID:5jiSyPos0
以上で投下終了です。
つよいかめんらいだーがたくさんかけてすごくたのしかったです。

ご意見ご感想、またご指摘などございましたらお気軽にお願いいたします。
感想などは頂けますと励みになりますので、是非ともよろしくお願いします。

386 名無しさん :2018/03/27(火) 01:54:09 ID:h55Xm1/w0
投下乙です。

最強フォーム、最強フォーム級ボスキャラの入り乱れる乱戦。
登場ライダー(と一応怪人)は、ジョーカーとライジングイクサとレイがやや劣るかなくらいで、シャイニング、キング、ハイパー、ダキバ、ダグバ、コーカサスと脅威の最強率。三原くんなら傍観しただけで爆発するレベルかもしれません。
数年間ずっとダグバの手にあったブレイバックルも遂に別の人物のもとへと渡り、流石に今回死亡かなと思ったんですが、ぎりちょんセーフで変身手段があっての生存。この辺ほんと先が読めないですね。
でもまあ、コーカサスは、現状ハイパークロックアップできるわけでもないんで総合的には弱体化に成功したかなというところですかね。

戦闘面子は総司→翔一→翔太郎→渡と段階的にスポットが当てられた形でしたが、制限が為に順番にバトルから退場したり脇に行ったり。
110話の大戦や117話のtimeもそうでしたが、時間感覚のある戦闘ドラマが見どころです。
時間制限のある戦闘を流動的に描いて、様々なイベントをこなしつつ、今回なんかは「このキャラの話」って感じではなく全体の話になってるかなと。

今作のブレイドはファイトスタイルとかポーズの取り方とかどんな感じなんだろうとふと。
直情的でウェェェェイと叫びながらボカボカ殴ってたイメージの強い剣崎と比べると、ダグバはもうちょっと冷徹に構えて、翔太郎は案の定気取るのかなというイメージです。
それにしても原作の立ち振る舞いからはあんまり想像できないですね。
そういえば、翔太郎は初期にもジョーカーの名前とかその辺の因果で始に目を付けられてましたが、あの辺も踏まえるとわりと納得。

渡はかなしい。
ここから更にかなしい。

387 名無しさん :2018/03/27(火) 06:36:57 ID:C7Cg9Yr60
投下乙です!
ダグバの圧倒的な力を前にしても、一歩も引かずに戦い続ける仮面ライダーたちの姿は本当に素敵でした!
そしてブレイドの力もついにグロンギの手から、翔太郎が取り返してくれたことが嬉しいです……ようやく、ブレイドが正義の仮面ライダーとして戦ってくれますし。
それにしても、ジョーカーである翔太郎がブレイドを手にして戦うのは何の運命でしょう。今後、始と再会するようなことがあればどうなるか。

渡もひたすら修羅の道を歩みますが、音也の仇がダグバであることを知って、結果的に仮面ライダーと肩を並べて戦うことになったのは救いでしょうか。
もう一度だけ名護さんと出会えましたが、やはり忘れられてしまう事実はとても苦しいでしょうね……せめて、彼の行く末に幸があらんことを。

388 名無しさん :2018/03/28(水) 03:32:39 ID:mPhyXlvo0
イカレたメンバーを紹介するぜ!

◆.ji0E9MT9g氏
 新規書き手1号
 未完の平成ライダーロワをリブートさせ、デビュー作12分割、登場人物18人のパートを捌いた新規書き手
 詰まってたパートが動いた事で書き手も戻り月報上位へ
 5年以上止まっていた時計の針を進めた本ロワの最大功労者
 全作把握しているようでオールマイティに執筆をこなす有望さ
 本当に新人?どっかで書いてたんじゃない?と思わされる圧倒的新人

◆gry038wOvE氏
 新規書き手2号
 ここでは新規だが変身ロワを109話執筆して完結させたレジェンドエース
 まだ1話しか書いていないが今後はどんな話を書くのか?そもそもこの後も書くのだろうか?
 ここからトップになってもおかしくない速筆多作書き手
 でも変身の方も楽しみよ

◆cJ9Rh6ekv.氏
 出戻りの旧書き手1号
 かつて書いた話の過半数が分割話の大作という驚異の書き手
 復活からは今のところ分割話がないが、かつてと違い放送や繋ぎや少人数が多いので仕方がないか?
 復活後に精力的に書きに来ている旧書き手で今のところ唯一新作がある
 オーズロワの人の別酉ってマジ?色んな人固まりすぎじゃない?

◆MiRaiTlHUI氏
 出戻りの旧書き手2号
 渡の王としての覚醒も、擬態天道のカブトとしての変身も、すべてかつて彼が執筆したお話
 天才書き手Mとしてずっと私に行方を探されていた男
 そしてまさかの予約で平成ライダーロワ民の心をEXCITEさせた張本人
 まさか新作が見れるとは、楽しみ

◆LuuKRM2PEg氏
 出戻り旧書き手ブイスリャー
 かつてのトップ、今も酉付きで感想投下中
 ここ以外でも前作ライダーロワNEXT、パラレルロワ、なのはロワ、変身ロワ、オーズロワで見かける酉なので、どうやらライダー系ロワを渡り歩く古参の方のようだ
 ここで書き手として復活する事はあるのか否か?今のところ予約する素振りはないが果たして?

389 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:52:14 ID:LPbfQTk20
皆様お待たせいたしました。
ただいまより投下を開始いたします。

390 全て、抱えたまま走るだけ ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:53:17 ID:LPbfQTk20


放送を前にして目覚めていたジョーカーアンデッド、相川始は、その足を川から返し先ほどまでいた病院に向けていた。
もちろん戦っていたE-4エリアは禁止エリアの関係で戻れないため、F-5を迂回する形になったが。
とはいえ、彼は戦いを終え病院で休む参加者たちとの合流、また再度の襲撃などを企てていたわけではなかった。

あの戦いでどれほどの参加者が生き残ったのか、そして病院はジョーカーの、自分の暴走によりどう変貌したのか、それを確かめたかったのだ。
そしてF-4を通過し、F-5に差し掛かり、見た。
先ほどまで巨大な白い巨塔が存在していた空間は闇が占め、その大半が大きく損壊しているのを。

「……」

別に、絶望したわけでも、予想外なわけでもなかった。
ジョーカーという姿に二度とならない、その覚悟を容易く覆すほどの衝撃を受け6枚のラウズカードでは到底抑えきれない衝動に、この身は全てを破壊する悪魔と化した。
それは抗いようもない事実であったし、同時にその実力を以てすればこの程度の破壊など容易であることは、我ながら既に知っていたからだ。

そしてその残骸と化した病院を目に焼き付けて、始は再び東へ向かう。
この先には市街地もあるし、誰か参加者がいる可能性も高かった。
そういった存在を殺すかどうか、また利用するかどうかは、会ってから決めればいい、とそう考えて。

二度とジョーカーにならない、その思いを新たに強く胸に抱いて。
彼は、空に出現したオーロラと、そこから吐き出されてきた数多の飛空艇の姿を見た。





「ウオォォォ!!!」
「クッ」

緑に赤の混じった異形と、金色の異形が戦っている。
その腕より生えた赤いかぎ爪を強引に振るい金色の異形にぶつける緑の異形に、金色の異形はその手に持った大剣で対応する。
その戦闘スタイルのみを見ればむしろ金色の異形の方がスマートでこそあるが、しかし今正義のためにその力を振るっているのは、緑の異形の方であった。

その左手に元々存在していた盾が壊されてもなお癖で左腕を使い緑の異形の一撃を受け止めようとして大きくその身を揺るがしたのは金色の異形に、緑の異形は追撃を仕掛ける。

「中々やるね、ギルス。それが噂に聞くエクシードギルスってやつ?それがあればガドルにブレイバックルを取られずに済んだかもね」
「黙れッ!」

挑発とともに軽く笑う金色の異形、コーカサスアンデッドに対し、怒声とともにその腕を振るうのは緑と赤の異形、仮面ライダーエクシードギルスだ。
放送よりまだ20分も経過していないというのに繰り広げられたこの戦いは、今や当初の戦力差を覆しギルスの優位に進んでいる。
元々パワー自慢同士の彼らの戦いで、手数、戦力ともに大きく強化された今のエクシードギルスに、その強力な盾、ソリッドシールドを失ったコーカサスでは分が悪いのだ。

この戦いで新たに目覚めた力に未だ理解を示し切れていないギルスであってもそうした単純な力関係は一目でわかるというのに、コーカサスは未だその余裕を崩しはしない。
それがどうにも気に食わなくて、ギルスはまた力任せにコーカサスの剣を押し切った。
ギルスの怒りの籠った連撃を受け、遂にそのオーバーオールの名を持つ剣を彼方に飛ばしたコーカサス。

夜の闇に軌道を描きアスファルトの地面に突き刺さったそれを横目で見やり、ギルスは再度勝利を確信する。
しかし、コーカサスはそれを見てなお笑い続けるだけで。

「……何がおかしい」

思わず、ギルスはそう問うていた。
この圧倒的不利の状況、コーカサスには既に護身の盾も、攻撃の剣も残されてはいない。
残る武器はその口と念力、あとは精々がアンデッド故の生命力くらいだろうが、残る変身制限時間を考えれば今の自分であれば十分封印可能な状態にまで持ち込めるはずだ。

391 全て、抱えたまま走るだけ ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:53:34 ID:LPbfQTk20

「いやぁ、本当、知らないってのは罪だよなぁ、ってね」

そう考えまたコーカサスに向かいかけたギルスの身体を、コーカサスが漏らした言葉が引き留めた。
ダグバがブレイドになってしまったこと、その為に多くの存在が犠牲になったこと……それ以上に自分が知らない罪が、存在するというのか。

「どういうことだ」
「あー、まぁ、教えてもいいかな別に。……あのね、この場でアンデッドがダメージを受けて封印されるのは、首輪が付けられてるからなんだよ。飛び入り参加の僕には、それはない。
——この意味、流石に君でもわかるよね」

思わず問いを投げたギルスに、コーカサスは自分の首周りを指さしながら説明する。
病院での戦いで金居がフィリップによる攻撃で封印されていたためにダメージを受ければアンデッドはそのままカードになると考えていたが、実はそうではないらしい。
とはいえ、剣崎や橘、彼らが多くのアンデッドを封印しその力を身につけてきたのは事実。

であれば何か彼らに戦闘不能になったアンデッドをカードにする能力があるのか、とそう考えて。

「ブレイドやギャレンでなければ……お前を封印できないというのか」
「そう、ビンゴ!つまりあんだけ啖呵切っといて、君じゃ僕を封印することなんて絶対にできない、ってわけ」

それを聞いて、僅かにギルスは狼狽する。
剣崎や木野を侮辱し、正義の仮面ライダーを否定しようとした、キング。
木野から受け継いだ力で彼を封印し大ショッカーの殺し合いを否定し誰かを守る……その言葉を証明する第一歩を歩みだせると思っていたのに。

今の自分では、そんなことは出来ないというのか、ブレイドを奪われた無力な自分では——。

「あと、もう一つね。多分そろそろかな?3・2・1……タイムアウト、ってね」

コーカサスが指折りしながらカウントダウンを進めるが、嫌な予感を感じギルスはそれを止めようと背中より新たに得た力によって赤い触手を伸ばし防ごうとする。
が、それは叶わない。
彼の身が、まだ3分ほどの時間変身できるはずだというのに、その身をただの人間、芦原涼のものへと戻したため。

「なッ……!?」
「アハハハハ!!最ッ高!その顔が見たかったんだよね、予想通り過ぎてマジで笑えるんだけど!」

ひたすらに今の自分の身を襲った現象に困惑し続ける涼に、コーカサスは耳障りな声で嗤い続ける。
それに困惑を通り越し涼が怒りの表情を浮かべたあたりで、コーカサスもまた笑い疲れたのか腹を抑えながらその顔を上げた。

「……お前が、俺に何かしたのか?」
「僕のせいにすんの?違う違う、君が強くなっちゃったからだよ、ギルス」
「俺が強く……?」

自身の変身を解いたのはコーカサスの仕業ではないかとそう睨んだ涼に、しかしコーカサスは「ホント何もわかってないなぁ」とぼやきながらその口を開く。

「これは知ってると思うけど、その首輪をつけてる限り、君たち参加者には“人間の身を超える力”を使うことに関して制限がかかってる。変な制限のかけ方だと思うけど、主催が神様だから仕方ないかもね」

例えば、アンデッドや、イマジン。
ジョーカーなど本来はヒューマンアンデッドへの変身に制限をかけるべきでその方が面白くなるのではないかとキングは思うのだが、テオスはそれを許さなかった。
イマジンという、完全な異形についてもそう。

その全力を出し切るのは他の参加者でいう真の姿を開放するのと同じく制限の対象とし、通常時は彼らの力を人間と同等のものにまで落とし込む制限をかけたのだ。
それも全て、主催がありのままの人間の姿を愛したため。
この制限がなければ人は彼の愛したありのままの姿でなくなることが多くなり、例え世界の存亡をかけ戦い続ける殺し合いであったとしても、それを彼は良しとはしなかったのだ。

だから、一部の参加者には一見不自然な制限がかけられている。
全ては、主催であるテオスの完全な独断で以て。

392 全て、抱えたまま走るだけ ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:53:53 ID:LPbfQTk20

「で、大事なのはここからね。君たちが本来想定されてるより強い力を使うと、その変身は残りの変身可能時間の半分を対価として可能になる。
最初っから強い力を使えるクウガやアギトたちと、ブレイドや特にディケイドなんかのアイテムを集めなきゃ変身できない奴らの差を縮める為に、ね」

ブレイドは彼のよく知るライダーだからともかく、なぜディケイド、門矢の名前を強調したのか涼にはわからないが、しかしコーカサスがここまで話してきた内容は薄々と理解してきていた。
そして同時に、コーカサスがここまで自分にこうした話をする、その本当の理由も。

「まぁつまり、君は奇跡の変身が出来た、なんてはしゃいでただろうけど、実は全然制限から抜け出せてなんかないってわけ。
その首輪が本来想定された通りに働いて君は今もう生身なんだから、それも証明されたのは一目瞭然だけどね。——さて」

そこまで言って、コーカサスは自身の念力で彼方に飛ばされ地に突き刺さっていた愛剣をその手に手繰り寄せる。

「……まぁ、ここまで言ったのが君への親切ってわけじゃないのは分かってるでしょ?ギルス。君は今ここでゲームオーバー。今説明してあげたのはほんの冥土の土産だよ。次があったら、もうちょっと賢く立ち回れるように、さ」

——まぁ、僕らアンデッドと違って君たち人間に次なんてないけど。
心中でそう付け足して、コーカサスはゆっくりと涼にその足を進める。
しかし、そうして迫る死の瞬間を安らかに享受するほど、芦原涼という人間は出来ていない。

「ああぁぁぁぁ!」

悔しさと怒りを込めた裸の拳でなおコーカサスの鎧のように固い甲殻にぶつかれば、しかし盾も消えたというのにその身はびくとも動かない。

「あー、もうそういうのいいから」

代わりとばかりに剣を持たない左手でコーカサスが腕を振るえば、その体は強くコンクリートの壁にぶつかって、彼の呼吸を不確かなものにした。
——このままでは、死ぬ。
冷静にそう判断している理性と裏腹に、本能が生きろと吠える。

冷静な自分の声と共に生まれた恐怖をどうにかかき消して、涼は何か対抗の手段を模索する。
ホッパーゼクターを使って目くらましをし、その隙に逃げる。
……駄目だ、この身体ではゼクターが稼いでくれる時間程度では逃げ切れないだろう。

では、このまま生身で彼にぶつかり続ける。
……無理だ、今の一回でもうここまで身体が悲鳴を上げているのに、コーカサスへの対抗策を考え付くかキックホッパーへの変身が可能になるまでそれを続けるなど、とてもではないが体力が持たない。
では、諦めるか?

——論外だ。
剣崎を侮辱した相手が、目の前にいる。
ここで自分が死んでしまっては、この男の言う通り正義の仮面ライダーなど世迷い事に過ぎないと証明することになる。

それだけは、絶対に嫌だった。

「アハハ、立つんだ。逃げてみなよ、助けを呼んでみなよ。それに疲れて足を止めたら、君を殺してあげるからさ」

その思いと共に立ち上がった涼を、しかしコーカサスは笑う。
だがそんな安い言葉にのって、彼の言う通り逃げることも彼にとっては我慢ならなかった。

「いや……俺はお前からは絶対に逃げない」
「えー、諦めちゃったの?つまんないなぁ、君が必死こいて逃げる姿大ショッカーの皆に見てもらおうと思ったのに」
「違う、俺は諦めたんじゃない。ただお前には二度と背中を見せない、それだけだ!」

涼は、そこまで言い切ってまたその血まみれの拳を握った。
力を込めギリギリとその拳に力が漲る度溢れ出す鮮血を、そしてそれに付随する痛みを、彼はしかし気にも留めず。
ただ、その獣のような瞳でコーカサスの軽薄な笑顔を貫くように見据えていた。

393 全て、抱えたまま走るだけ ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:54:09 ID:LPbfQTk20

「……何なの?それもブレイドの影響?あのさぁ、このゲームのルールわかってる?生きなきゃ意味ないんだよ。
誰かに殺されるにしても誰かを殺すにしても、生きてなきゃゲームを面白くできないじゃん」
「俺にはこんな殺し合いを面白くするつもりなんて皆目ない、それにさっきも言ったはずだ。俺は別に、生きるのを諦めたわけじゃないってな」
「じゃあ何?逃げるわけでもなく変身して戦えるわけでもなく、この僕を相手に何が出来るっていうのさ」

いい加減にこの問答にも飽きてきた、とキングが思う中、しかしそれを聞いて涼は今まで強く握りしめていた拳を解き放って。

「——誰か、お前を倒せる奴が来るまでの、時間稼ぎだ!」
「何を……」
「——トゥアッ!」

不意に、後方から衝撃を感じて、キングは思わず振り返った。
決して軽くない一撃、そしてこの声、自分には聞き覚えがあった。
そう、今彼を攻撃し偶然にも涼の運命を変えた、その男とは。

「ジョーカー……!」
「久しぶりだな、キング……!」

忌むべき53体目のアンデッド、最強の殺し屋、ジョーカー。
それがハートのカテゴリーエース、カリスへとその姿を変えた存在であった。




時間は十数分前に遡る。
放送を聞き終え、始の胸に浮かんだのは虚無だった。
それは、自分が認めた仮面ライダー、ヒビキが死んだことを知ったから。

本名こそ知らなかったが、しかしそれを確信づけることが、放送で述べられていたからだ。

「響鬼の世界は崩壊を確定した……か」

それは、彼が名乗った名前と同じ世界が崩壊するということを、放送が伝えていたため。
自分の世界が恐らくブレイドの世界という名前であることを考えると、彼がいた世界もまた響鬼の世界であったとみて間違いないだろう。
自分が剣崎のような正義の仮面ライダーとしての資質を見出しその実力を見極めようとした、響鬼。

そんな彼が死んだだけでなく、その生まれ育ち守ろうとした世界まで破壊されてしまうという事実に、胸が痛んだ。

「だが、奴を殺したのはジョーカー、いや俺なんだろうな」

しかし、そんなことを自分に思う資格はないと考え直す。
ジョーカーとして理性を失い暴れたのであれば、あの自分にとってその時目の前にいた響鬼は格好のターゲット。
カリスとなった自分と同等の存在であるとはいえその程度ではあの悪魔を、自分を止めることなど叶わぬ夢でしかない。

だから、自分に彼を弔う資格も、それに物思う資格も時間もない。
せめて世界のために正義に生きた一人の仮面ライダーの名前を、自分だけでも覚えておこう。
それくらいしか、響鬼の死に対して今の自分に許される行為は存在しないのだから。

「……」

そのまま、始は再度病院を超え市街地に入ろうとして、目撃する。
ほんの一瞬、夜の闇に消え見えづらい中で一瞬だけ輝いた、先ほど放送の際現れたのと同じオーロラを。
市街地に意識を向け、また常人を逸する視力と感覚を持ち合わせている始だからこそ認識出来たそれに向け自然と足を速めるうち、感じる。

ジョーカーとしての本能によって察知出来る、アンデッドの気配を。

「何故だ、カテゴリーキング、金居は封印されたはず。それにこの気配、まさか……」

394 全て、抱えたまま走るだけ ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:54:30 ID:LPbfQTk20

幾重にも重なった不安の波に押し流されそうになりながら、しかし彼はそれすらも無視して走り出した。
もしも自分の感覚を信じるなら、この先にいるのは最悪の敵。
しかし同時に、自分にとって最も封印しなくてはならない相手でもあるのだから。

——そうして、数分間走り、どんどんとその気配が近づく中で、ようやく見つける。
その拳を血で染めながらなお戦意を失わない男に対峙する、黄金の異形を。
その姿に、驚きとそして或いは戦うことも叶わないかもしれないと感じていた敵に相まみえた事実への歓喜にも似た感情を抱いて、彼は呟いた。

「変身」

——CHANGE

彼の腰に生じた赤いハート型のバックルにハートのエースを通せば、その身は一瞬で黒く染まる。
アンデッド最強の戦闘力を持つというカテゴリーエース、カリスの姿に、今始は変じていた。

「——トゥア!」

そして、そのまま切りかかる。
心に生まれた苛立ちすら、彼にぶつけるように。
背後からの攻撃に流石に反応しきれなかったか、得意の盾すら生じぬままにその身から火花を散らしふらついた黄金の異形、コーカサスアンデッドに、始は憎しみを隠そうともせず立ちはだかる。

「ジョーカー……!」
「久しぶりだな、キング……!」

憎々しげに忌むべきその名を呼んだキングに、カリスもまた憎しみと共に告げる。
コーカサスが強引に振るった大剣をカリスラウザーでいなし、返す刃でその胸を切り裂いた。
苦痛と共に緑の血をまき散らした彼に油断なく間合いを詰めれば、そのまま手刀で彼の体を切り付ける。

一体なぜここまで自分の優位に進むのか、そう思いよく見れば、その左手に盾はない。
であればもう彼の戦力は他の上級アンデッドと変わらないレベル、カリスの力を以てすればパワー勝負に強引に持ち込まれなければ勝利も夢ではなかった。
しかしそんなカリスを前に、キングは未だヘラヘラと笑いながら口を開く。

「ホント、会いたかったよジョーカー。君には伝えたいことが山ほどあるんだ」
「俺にはそんなことを聞く理由はない」
「そう冷たいこと言わないでよ。例えばそうだなぁ、手始めに僕がこの場にいる理由なんか教えてあげようか?」
「必要ない」

スピード勝負で一進一退、ヒットアンドアウェイを心掛け堅実な攻撃を繰り返すカリスに、コーカサスは近寄らせまいとその大剣を振り回しつつ口を開き続ける。

「あっそ。じゃあ……ブレイドを殺した犯人と、今どこにブレイバックルがあるかでも教えてあげようか」
「……何?」
「アハハ、ようやく耳を貸してくれた。そうだよね、今の君にとってブレイドは大事な大事なお友達の形見だもんね」

ブレイド、という言葉に思わずその手を止めたカリスに、キングは嘲笑を含みつつしかし油断なく構えたまま顔を上げる。

「……ブレイドを殺したのは、天道総司、仮面ライダーカブト——に擬態してるワームくんだよ。本名教えてもいいけどまぁそいつは天道総司って名乗るだろうし、そっちだけで十分でしょ」
「それを俺に教えて、何がしたい」
「別に?分かってるでしょ。僕はゲームが面白くなればそれでいいの。誰が勝とうが負けようが、さ。
あ、あとそれを今持ってるのはダグバっていう怪人ね。そいつがキングフォームになって暴れたせいで二人も死んで、ブレイドは無事人殺しの道具になったってわけ」

これには流石に動揺を隠しきれなかったカリスを見て、コーカサスはなおも笑う。
そして、彼は今度はいやらしく顔だけを振り返りながら、涼をその視界に収める。

「で、何でブレイドがそんな奴の手にあるかっていうと、あそこにいるあいつ、ギルスのせいなわけ。あいつが弱くて負けたから、ブレイドが奪われて、巡り巡ってお前がジョーカーになる理由にもなったってわけさ」
「何故、それを……」
「やだなぁ、わかってるだろジョーカー。僕は大ショッカー幹部。これまでの君たちの戦いをずっと見てきたんだから、君があの姿になってめちゃくちゃにしたのだって見てたに決まってるじゃん」

395 全て、抱えたまま走るだけ ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:54:46 ID:LPbfQTk20

そこまで言って、コーカサスは笑う。
今思い出しても笑えてくるといわんばかりに笑って、それから何かに気づいたように不意にそれを切り上げた。

「あ、そういえばさ、ダブルの片割れ、君が『ジョーカーの男』なんて気取った呼び方してた彼だけど、君の正体知っちゃったよ。ホースを殺して自分を騙してたのが他でもない君だってことにも、ね」
「そうか」
「……それだけ?ショックでしょ?だって何だかんだで彼の横で一緒に仮面ライダーとして戦えたらいいのに、なんて考えてたのに、君」
「お前に俺の何がわかる」
「わかるよ、だって……」

そうして、顔が見えなくてもすぐにわかるほどにその口角を吊り上げて続ける。

「……ちょっとブレイドに似てるもんね、彼」

それを聞いた瞬間、カリスはこれ以上の会話は不要とばかりにコーカサスに襲い掛かった。
先ほどまでの勢いを大きく上回るような速さでもって、コーカサスの口を閉ざすため猛攻撃を仕掛けていく。
明らかに激化し、その大剣だけでは凌ぎ切れていない攻撃の嵐を受けながら、しかしコーカサスは声高らかに笑いを上げて。

「アハハ!そうそうそれそれ!それが見たかったんだよね、ジョーカー。もっと怒って僕を倒して見せてよ!」
「言われるまでもない……!」

これ以上の問答は不要とばかりにコーカサスが振るった大剣をその身をねじらせ躱して、カリスは腰のカードバックルよりカードをつかみ取る。

——TORNADO

瞬間ラウザーに満ちた風のエネルギー。
それを一気にコーカサスに向け放てば、それは同時に彼が放った斬撃のエネルギー波とぶつかり衝撃を生んだ。
互いに半歩ずつ引く中、カリスはその身軽さ故、鈍重なコーカサスよりも早くその足を動かしコーカサスに肉薄する。

「キング、お前を封印し、俺の力となってもらうぞ」
「無理だと思うなぁ、だってさ——!」

半ば勝利を確信しキングに告げたカリスに対し、しかしキングはその刃を甲殻で受け切り火花の代わりにカリスアローをガッチリと握りしめる。
それにカリスが思わず身を引くより早く、彼は右手の大剣を振り下ろしカリスの身を切り下した。
それと同時カリスがうめき声をあげ後退する中、コーカサスはカリスアローを投げ放ちつつつまらなさそうに笑い。

「だって、まだ僕は本気出してないし。それに、こんなところで終わる気もないしね」

思わず膝をついたカリスに最早見向きもせず、彼は変身を解きそのポケットに手を伸ばす。
それを隙と感じたかカリスは素手で飛び掛かるが、しかしそれを再び怪人へと変じた彼の剣が叩き落していた。

「だから、僕には制限とか関係ないから。まぁでも、このまま痛めつけてジョーカーと戦う羽目になるのもあんま面白くないし、今回はこんなもんでいいや」

——ZONE

そう吐き捨て再度人間の身に擬態した彼は、今度こそポケットより持ってきた支給品漏れの一つ、T2ゾーンメモリを起動する。
首輪に備え付けられたコネクタなしでも使用できるT2をその掌に突き刺せば、彼の身は一瞬で質量を無視し不思議な三角錐へと変貌を遂げた。

「バイバイ、ジョーカー、ギルス」

396 全て、抱えたまま走るだけ ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:55:02 ID:LPbfQTk20

ゾーン・ドーパントの名を持つ怪人に変じた彼は、未だ膝をつくカリスと、物陰に隠れる涼にそれぞれ一発ずつ目から光線を放ち一言の別れと共にその姿をかき消した。

アスファルトを焼き舞い上がった煙が立ち消える中、敵を見失いかつ変身制限が迫りつつあるのを察したカリスは、その手にハートの2のカードを掴み、バックルへと通す。

——SPIRIT

音声と共にその身をヒューマンアンデッド、相川始のものへと戻しつつ、始はその足を翻す。
もうここには用はない、そう言いたげな彼であったが、しかしその視線の先に、立つ塞がる男の存在を認めた。

「——待ってくれ」

先ほどまで隠れていた男、キングの言葉を信じれば、ギルスと呼ばれていたか。
あのキングと戦っていたということは恐らく殺し合いには乗っていないのだろう彼を、今の始が別段相手にする必要もない、故にその言葉を無視し通り過ぎようとするが、強引にその腕を引き留められる。

「責めないのか、俺の弱さのせいで、ブレイドを悪に奪われたのに」

その言葉を受け改めて男の顔を見上げれば、その顔は辛そうな表情を浮かべている。
今にも泣きだしそう、とまでいかないが、しかし度重なるショックで相当精神的に参っている様子が見受けられた。
むしろ、自分を責めてほしい、そう言いたげですらあるその顔を見て、しかし始はただその腕を振り払う。

「……今の俺に、お前を責める資格はない」

それだけ言い残し再び足を進める。
そう、友の思いを裏切り、別の世界の人間を犠牲にする覚悟で愛する誰かだけでも守ろうとした今の自分に、結果として悪の手にその力が渡ったとしても友の思いを継ぎ戦った目の前の男を責める資格など、あるわけがなかった。
始の言葉を受け、思わず俯いた男を尻目にそのまま足を進めどこへともなく消えようとするが、再びその足を止めさせたのは、やはりその男であった。

「……なら!それなら、せめて教えてくれないか。お前と、剣崎の関係について」
「何?」

どうしても自分をこのまま行かせたくないらしい男の言葉に、また始も足を止める。
それを受けこれがラストチャンスと捉えたか、男もまた必死の形相で始の前に立ち塞がった。

「橘から聞いた、お前と剣崎は、種族の差など超えた友だったと。だから、俺も知りたいんだ。剣崎が信じた友であるお前のことを、もっと詳しく」
「馬鹿馬鹿しい。それを教えることで、俺に一体何の利点がある」
「それは……」

剣崎と自分の関係について軽々しく知りたいなどと述べた男の言葉に僅かな苛立ちを抱いて拒絶を示した始に、今度こそ男は俯き黙りこくる。
その様子を見て今度こそ話は終わりか、と始は再度足を進めようとして。

「——世界の破壊者、ディケイド」

男が述べたその名前に、驚愕と共に振り返った。
その始の顔を見て思った通りか、とでも言いたげな表情を浮かべた男は、その足を再び始の前に動かして。

「やっぱり、病院にお前がいたのは、偶然じゃなかったんだな。金居と組んでディケイドを、門矢を倒そうとしてたんだろう?なぁ、お前と戦っていた響鬼はどうなったんだ、まさかお前が——!」

そこまで聞いて、男はそうじゃないと首を振る。
とはいえ、それを後々深く尋ねられても始はヒビキがどうなったかなど知りもしないのだが。

「——すまない。ともかく、俺はお前たちが破壊しようとしたディケイド、門矢士という男と一緒に戦ったし、ブレイドも奴からもらい受けたものだ」
「ブレイドを……ディケイドが?」
「あぁ、さっきキングが言っていた天道総司に擬態したワームとの戦いで剣崎が死ぬとき、門矢も一緒に戦ったんだと、そう聞いている」

397 全て、抱えたまま走るだけ ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:55:18 ID:LPbfQTk20

そこまで聞いて、始は少なくともこの男と情報を交換するのは無駄ではないと判断する。
剣崎の死の様子は既に音也から聞いて知っていたが、元々適当な彼の言葉だ、状況は判断できるもののその程度で細かい情報や固有名詞は殆ど存在しない会話だった為、今改めてこの男から詳しくそれを聞くのは、決して無益な時間の使い方ではなかった。
同時に、ディケイドと共に戦いその人となりを少なからず知っているだろうこの男を通じその話を聞けば、あるいはディケイドという存在を破壊するにせよ仮面ライダーとして信じるにせよ重要な参考材料になるはずだ。

そこまで考えて、始は一つ息を吐いた。

「……いいだろう。お前に俺と剣崎について教えてやる。だが、お前からディケイドについて詳しい話を聞いた後だ。その上でどこまで話すかは俺が判断する」
「あぁ、構わない」

始の言葉に、思わず笑みを零し喜ぶ男。
その姿にブレイドの力を用いて伝聞で彼の話を聞いただけであるはずのこの男がどれほど剣崎に尊敬の念を抱いているのかと始は思う。
そしてそんな存在と友でいられた自分と、その思いを裏切り殺し合いに乗ったことを再び胸に戒めて、始はふとあることをまだ聞いていなかったと気付いた。

「そういえば、お前の名前はなんだ?」
「俺は、芦原涼。好きに呼んでくれ。お前のことは——」
「相川始だ」
「——わかった、相川。病院に向かいながらでも……」
「俺は病院には向かえない、当然のことだがな。もしそれでもお前が病院に向かいたいなら……」
「いや、構わない。だが時間が惜しい、そこの家にでも入ろう」

男、芦原の言葉に頷いて、始は足を進める。
その瞳には自身と同じく破壊者として忌み嫌われる存在に人間性を見出せるのではないかと微かな希望が輝いている。
しかし、彼は知らない。

これからあと1時間半の後、異世界の王と自分がジョーカーの男と呼んだ男が、再びキングフォームの鎧にその身を包むことを。
この束の間の休息が、そう長くは続かないということを、彼らはまだ知らなかった。


【二日目 深夜】
【F-7 民家】

【相川始@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編後半あたり(第38話以降第41話までの間からの参戦)
【状態】ダメージ(中)、罪悪感、若干の迷いと悲しみ、仮面ライダーカリスに1時間55分変身不可
【装備】ラウズカード(ハートのA〜6)@仮面ライダー剣、ラルクバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE
【道具】支給品一式、不明支給品×1、
【思考・状況】
(気絶中)
基本行動方針:栗原親子のいる世界を破壊させないため、殺し合いに乗る。
0:今は芦原とディケイドの情報、自分と剣崎の関係についての情報を交換する。
1:この殺し合いに乗るかどうかの見極めは……。
2:再度のジョーカー化を抑える為他のラウズカードを集める。
3:ディケイドを破壊し、大ショッカーを倒せば世界は救われる……?
4:キング@仮面ライダー剣は次会えば必ず封印する。
5:ディケイドもまた正義の仮面ライダーの一人だというのか……?
【備考】
※ラウズカードで変身する場合は、全てのラウズカードに制限がかかります。ただし、戦闘時間中に他のラウズカードで変身することは可能です。
※時間内にヒューマンアンデッドに戻らなければならないため、変身制限を知っています。時間を過ぎても変身したままの場合、どうなるかは後の書き手さんにお任せします。
※ヒューマンアンデッドのカードを失った状態で変身時間が過ぎた場合、始ではなくジョーカーに戻る可能性を考えています。
※左翔太郎を『ジョーカーの男』として認識しています。また、翔太郎の雄叫びで木場の名前を知りました。
※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。しかし同時に、剣崎の死の瞬間に居合わせたという話を聞いて、破壊の対象以上の興味を抱いています。
※キバの世界の参加者について詳細な情報を得ました。
※剣崎と自分の関係についてどれほどのことを話すかは、涼の話を聞いてから判断するつもりです。
※ジョーカーの男、左翔太郎が自分の正体、そして自分が木場勇治を殺したことを知った、という情報を得ました。それについての動揺はさほどありません。

398 全て、抱えたまま走るだけ ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:55:33 ID:LPbfQTk20




【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【時間軸】本編36話終了後
【状態】疲労(大)、亜樹子の死への悲しみ、仲間を得た喜び、響鬼の世界への罪悪感、仮面ライダーエクシードギルスに1時間45分変身不能、仮面ライダーキックホッパーに50分変身不可
【装備】ゼクトバックル+ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに乗ってる奴らはブッ潰す!
0:剣崎の意志を継いでみんなの為に戦う。
1:今は相川と情報を交換する。
2:人を護る。
3:門矢を信じる。
4:第零号から絶対にブレイバックルを取り返す。
5:良太郎達と再会したら、本当に殺し合いに乗っているのか問う。
6:大ショッカーはやはり信用できない。だが首領は神で、アンノウンとも繋がっている……?
【備考】
※変身制限について、大まかに知りました。
※聞き逃していた放送の内容について知りました。
※自分がザンキの死を招いたことに気づきました。
※ダグバの戦力について、ヒビキが体験した限りのことを知りました。
※支給品のラジカセ@現実とジミー中田のCD@仮面ライダーWはタブーの攻撃の余波で破壊されました。
※ホッパーゼクター(キックホッパー)に認められました。
※奪われたブレイバックルがダグバの手にあること、そのせいで何人もの参加者が傷つき、殺められたことを知りました。
※木野薫の遺体からアギトの力を受け継ぎ、エクシードギルスに覚醒しました。
※始がヒビキを殺したのでは、と疑ってもいますが、今は信じ話を聞くつもりです。





「よっと。うんうん、予想通りの場所に到着ってね」

その身を三角錐の怪人から人のものへと戻しながら、青年、キングは呟く。
しかし、その姿を見たものは誰もいない。
なぜならここに参加者が立ち入ることは、もはや不可能なのだから。

「ホント、今の僕にとっては禁止エリアはただの休憩地だよね。盾も壊れちゃったし、ちょっと休憩タイム、ってことで」

誰も聞いていないというのにそう呟きながら、彼は次に体から排出されてきたT2ゾーンのメモリを見つめる。
幹部特権としてこの会場どこでも思った場所にワープ出来る能力を持ったゾーンメモリ。
その強力な能力と引き換えに、参加者に渡った際の保険としてエターナルのマキシマムなどを含め二時間に一回しか能力を行使できない制限こそかけられているものの、それでも十分強力な装備だった。

「僕がこのゲームで負けることなんてないんだから、そんな心配することないのにさ。……まぁ、いいけど」

メモリを懐に戻しつつ、キングはぼやく。
この程度の縛りであれば、面白いゲームを更に楽しむ為のものだと割り切りもつくというものだ。
そうして治るかはわからないが盾の復活と、一応ゾーンの能力が蘇るまでその場で休もうか、と横になろうとして。

「あっ、忘れるとこだった。首輪なしの支給品に見つかって誰かに僕の存在がバレたら面白くないしね。身を隠しとかなきゃ」

そう言って懐から取り出すのは、参加者に渡らなかった最後のカードデッキ、ベルデのもの。
緑に染められたそのデッキを周りの適当な反射物に移し、現れたVバックルに叩き込む。

399 全て、抱えたまま走るだけ ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:55:48 ID:LPbfQTk20

「変身」

瞬間その身にオーバーラップした数多の影が線を結び、やがてそれは実像となりキングの身を覆う鎧となった。
仮面ライダーベルデ、力は本来の姿に遠く及ばないそれをキングが持ち込んだのは、しかし理由があった。

——CLEAR VENT

バイザーにカードを読み込ませると、彼の身体は光を反射し透き通る。
つまり有体に言えば、透明人間になったのだ。
これで確実に誰にもバレることはないだろう、とようやくキングはその身を横にしそのまま目を瞑ろうとして、一つ思い出す。

「あ、カッシスのこと放ってきちゃったな。まぁいいか。どうせ死神博士の取り越し苦労だし、そうじゃなくても僕が相手する必要もないでしょ」

それは、自分がこの場に来た理由の一つ、カッシスワームの復活について。
しかしそれも最早どうでもいいことだ。
あんなものただの口実だったし、もし万が一そうなったとして一応対処出来るだけの準備もしてきたが、だからといって復活するかもわからない奴にずっと張り付いているのも性に合わない。

今はこの最高のデスゲームを楽しんで、後々カッシスが本当に復活して自分と会うことがあれば、相手してやればいい。

「ごめんね、死神博士。でもちゃんと仕事してほしかったなら、僕じゃなくてグリラスに頼めば何日でもそこで突っ立ってただろうに」

これを聞いていたら眼鏡を叩きつけ怒り狂っているだろう三島の姿を思い、キングは再度笑って。
次は誰にちょっかいをだしたら面白いか、ぼんやりと考えていた。


【二日目 深夜】
【???(禁止エリア)】


【キング@仮面ライダー剣】
【時間軸】本編34話終了より後
【状態】疲労(小)、ダメージ(小)、仮面ライダーベルデに変身中、クリアーベント使用中
【装備】破壊剣オールオーバー@仮面ライダー剣
【道具】ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎、T2ゾーンメモリ@仮面ライダーW、カッシスワーム・クリペウスとの対決用の持ち込み支給品@不明
【思考・状況】
基本行動方針:面白おかしくバトルロワイアルを楽しみ、世界を壊す。
0:今は休憩しながら今後ちょっかい出す奴を選ぶ。
1:ゾーンの力が戻るか、近くで何か面白いことがあったらまた遊びに行く。
1:このデスゲームを楽しんだ末、全ての世界をメチャクチャにする。
2:カッシスワームの復活を警戒……まぁホントに復活してたら会ったとき倒せばいいや。
【備考】
※参加者ではないため、首輪はしていません。そのため制限が架されておらず、基本的には封印されない限り活動可能です。
※カッシスワームが復活した場合に備え、彼との対決も想定していたようですが、詳細は後続の書き手さんにお任せします。
※ソリッドシールドが破壊されました。再生できるかは後続の書き手さんにお任せします。
※今は禁止エリアのどこかにいます。
※T2ゾーンメモリは会場内どこでも飛べますが、マキシマムドライブでの使用などの場合も含め2時間に一度しか能力を使用できません。
※この会場内の情報は第二回放送までのものしか知りません。彼の性格上面白くなりそうなこと優先で細かいことを覚えていない可能性もあります。

400 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/29(木) 12:56:57 ID:LPbfQTk20
以上で投下終了です。
ご意見ご感想ご指摘などありましたら是非お願いいたします。
感想をいただけますと喜びますので出来ましたらお願い申し上げます。

401 名無しさん :2018/03/29(木) 20:31:36 ID:H7vIPSdw0
投下乙です!
エクシードギルスはコーカサスを相手に優位で戦っていましたが、やはり制限の壁はどうにもならないことが辛いです……
だけど、始が駆け付けたおかげで助かってくれて安心です! 始が剣崎に似てきているとキングは嘲笑いますが、それが事実だからこそ葦原さんは助かったのですね
始はついに剣崎の仇についても知りましたが、果たして総司と出会ったらどうなるのか……? あと、キングフォームの影響もあるので、また暴走するリスクが近づいているのが怖いです。

402 名無しさん :2018/03/30(金) 00:39:51 ID:ZRkhprnM0
投下乙です。

ここで涼が死にかけたものの、情報不足をちゃっかり補う事が出来、グループたちに遅れていた点を少々補完できましたね。
なんというかアポロガイスト同様にべらべら喋ってくれているのを見るに、大ショッカーってそういう奴らの集いでは?
社内機密を平然と外部に漏らしてしまう、自称幹部たちの帰属意識やモラルの低さに絶句です。
しかも仕事を放って自分で勝手に移動する始末。キングくんの社会適性が疑われます。
死神博士の采配も問題だったんでしょうが……。

それから涼と始というクール&ワイルドライダーコンビ、剣崎という繋がりの他、色々と孤独な戦士としてリンクする部分も多いはず。
後に繋ぐ人にとっても非常に書きやすそう(書いて面白そう)なパスでした。

403 名無しさん :2018/03/30(金) 01:30:29 ID:ZRkhprnM0
しえん

404 ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:42:13 ID:9oSr2oo.0
投下乙です!
キングの遊び心がすごい。けどメタ的には今後面白くなりそうな要素を仕込みまくってくれてるのでこれはこれで好きです。
ゾーンメモリってのもゲーム感覚で遊んで回りたいキングにはぴったり。ロワのポジション的には自分自身が忌み嫌うジョーカーになっちゃったていうのは、キングの性格考えるとそれも皮肉が効いてて楽しみそうだなあ。
葦原さんは相変わらずストイックでかっこいい。エクシードギルスとしては決めきれなかったけど、最初だから仕方ない。
葦原さんや翔太郎との関わりで、始さんも変わっていくのか……?続きが楽しみになるよき引きでした。


ところで……
予約はしていませんが、現在空いているようですので、ゲリラ投下を行わせて頂きます。

405 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:44:20 ID:9oSr2oo.0
 赤と白、二人の仮面ライダーが、だだっ広い焦土の真ん中で剣をぶつけ合っている。激しい戦闘の余波によるものか、二人の仮面ライダーを取り巻く環境には、人工物と呼べるものはほとんど存在していない。月と星の灯りと、あちらこちらで僅かに残った瓦礫の隙間から覗く炎が、一帯を淡く照らすのみだった。
 麗奈は耳を聾する剣戟音に表情を顰め、両耳を塞いでしゃがみ込んだ。甲高い金属音が響くたび、己の内から沸き起こる耳障りなノイズが活性化して、音量を上げてゆく。耳の奥から脳を揺さぶるような頭痛に苛まれて、麗奈は小さく、唸るような悲鳴を漏らし、かぶりを振った。

「――麗奈、麗奈! 大丈夫、麗奈……!?」

 肩にリュウタロスの手が乗せられる。麗奈には愛想笑いを浮かべる余裕もなかった。額に纏わり付いた脂汗を拭う余裕もなく、苦痛に眉根を寄せたままリュウタロスに一瞥する。ほんの少しだけ意識が戦いから逸れた。己の内側から響く金属音が、僅かに小さくなった。

「きっと大丈夫だから、心配しないで。麗奈にはボクらがついてるから」

 麗奈は目線だけでなく、顔を緩くあげて、浅倉威が変じたファムと戦う龍騎を見やった。城戸真司もまた、麗奈を守るために戦ってくれている。それを思うと少しだけ勇気が湧いてくる気がしたが、同時に、それを壊してしまいかねない存在が自分の中に潜んでいることに、麗奈は言い知れぬ恐怖を感じた。

「今は信じよう、城戸さんが勝ってくれることを」

 三原は麗奈よりも人ひとり分ほど後方で、龍騎の戦いを見守っていた。腰には既にデルタのベルトが巻かれている。けれども、三原の表情にも、決して小さくはない不安が見て取れた。必要ならば戦うが、できることなら戦いたくはない、というような心持ちであろうことは麗奈にもわかった。
 戦闘自体は、互角の膠着状態が続いている。ファムが力任せに叩き付ける両刃の薙刀による連撃を、龍騎が手にした青龍刀で防ぎ、隙を見て反撃に打って出るが、ファムも上手く回避するので決定打を与えられない。けれども、攻撃の苛烈さという点では、ファムの方が幾らか優勢に見えた。
 激しい攻防の末に、龍騎が青龍刀を取り落とした。龍騎の鎧を蹴り飛ばしたファムが、薙刀を投げ捨て、龍騎の青龍刀を拾い上げる。軽く両手を天を仰ぐように振りかぶり、嘲るようにくるりと一回転したファムは、今度は青龍刀を力いっぱい龍騎に振り下ろした。

「――っ!」

 龍騎の鎧から血飛沫のように火花が舞い散り、その赤い体が地面に叩き伏せられる様を見せつけられて、麗奈は思わず両手で己の口元を覆った。倒れ伏した龍騎が起き上がるよりも早く、ファムがその胴体に蹴りを入れた。

「真司!」

 リュウタロスが叫んだ。もう見てはいられないとばかりに、デイバッグからデンオウベルトを取り出す。その時、辺り一帯に龍の咆哮が響き渡った。リュウタロスは変身の手を止めた。麗奈は、戦場となった荒れ地に放置された過敏から、その質量を大きく上回る赤き龍が飛び出すのを見た。
 ファムに蹴り飛ばされながらも、龍騎は一枚のカードをベントしていたのだ。赤い龍がファムを牽制し、その隙に龍騎が立ち上がる。龍騎の右腕には、龍の頭を模した手甲が装着されていた。さしものファムも一瞬動きを止めた。
 ドラグレッダーが龍騎の周囲を取り巻くと、龍騎は腰を低く落とし、右腕を勢いよく突き出した。ドラグクローから放出された炎弾が、ファム目掛けて奔る。ファムは横っ跳びに転がって回避するや、青龍刀を投げ捨て、一枚のカードをベントした。

406 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:45:43 ID:9oSr2oo.0
 
 ――ADVENT――

 彼方から飛来した白鳥が、月明かりを受けてその身を煌めかせる。ファムの使役するモンスターの出現に呼応するように、龍騎の背後に控えていたドラグレッダーは白鳥へと向かって飛び出していった。

「はははははははッ、まだまだ戦いはこれからだ! もっと楽しませろ!」
「浅倉……、やっぱり、お前だけはッ」

 心の底から現状を楽しんでいるような笑いを響かせるファムに、龍騎は右腕の手甲を装着したまま殴りかかった。上空で、ブランウィングとドラグレッダーが幾度となく交差しては、その翼と、尻尾の刀を打ち合わせて夜空に火花を咲かせている。
 ファムの右手が龍騎の手甲をいなし、逆に左の拳をその顔面に叩き込んだ。よろめく龍騎を挑発するように、ファムは両手を緩く広げて空を仰いだかと思えば、今度は右の拳で殴り付けた。動きの止まった龍騎の胴に膝蹴りを叩き込んだファムは、腹の痛みに堪らず前のめりになった龍騎の背中に拳を打ち下ろした。

「う、この……ッ」

 倒れ込んだ龍騎に追撃を仕掛けようと脚を振り上げたファムに対し、龍騎は横に転がって仰向けの姿勢になった。乱雑に脚を蹴り上げて、ファムの脚を蹴り返す。一瞬よろめいたファムの胴を、今度は龍騎が仰臥した姿勢のまま膝をたわめ、勢い付けて蹴り飛ばした。

「あ、さ、く、らぁぁぁあああ!」

 よろめく体を起こした龍騎は、落ちていた青龍刀を拾い上げ、両腕で構えると腰を落とした姿勢のまま駆け出す。徒手空拳となったファムに斬りかかると、その白の装甲に刀を叩き付ける。一撃目は甘んじて胸部の鎧で受けたファムだったが、二撃目はそうはいかない。真っ直ぐ剣を叩き付けるだけの龍騎の剣筋を読むことは容易かったのだろう、裏拳で剣の軌道を反らせたファムは、逆に前蹴りで龍騎を蹴り飛ばして距離を取った。
 ちょうどその時、上空で激しく争っていた白鳥が、その胸部に炎弾を受け止めながら急降下してきた。龍騎とファム、両者の間にブランウィングが割って入った形だ。上空での戦いは、ドラグレッダーが優勢だった。龍騎はベルトから一枚のカードを引き抜いた。

 ――FINAL VENT――

「はぁぁぁぁぁああああああああ……!」

 腰を低く落とし、構えを取った龍騎の周囲をドラグレッダーが取り巻いて、咆哮を響かせる。夜空へ向かって飛翔する相棒と共に、地を蹴り高く高く跳び上がった龍騎は、上空でくるりと身を翻すと、右足を下方へ向けて突き出した。数多のモンスターを確実に葬り続けてきた、現状の龍騎が持てる最高の手札を、ここで切ったのだ。

「だぁぁあああああああああああッ!!」

 ドラグレッダーの吐き出す超高熱の火炎をその身に纏い、己自身を燃え盛る砲弾とした龍騎は、裂帛の叫びとともに急降下した。
 一瞬と待たず、龍騎の蹴りがブランウィングの胴に突き刺さった。今や触れるものすべてを打ち砕く炎弾となった龍騎は、標的となった白鳥の巨躯を地面に叩き付け、その全身に亀裂を生じさせた。けれども、必殺のドラゴンライダーキックの勢いはその程度では済まない。ブランウィングの巨躯をアスファルトへと沈み込ませて、そのまま蹴りの威力だけで数十メートル後方まで吹き飛ばす。崩れゆく白の体から爆炎を吹き上げて、断末魔を漏らす間もなく、かつての美穂の相棒は粉々に爆散した。

407 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:47:13 ID:9oSr2oo.0
 
「っしゃ!」

 勝利を確信した龍騎は、着地すると同時に後方へと振り返る。これでもう、美穂の形見となったファムを浅倉が人殺しに使うことはないだろう。間接的にではあるが、美穂の無念を晴らした心地だった。
 鎧から色を失ったファムは、己のベルトからデッキを引き抜き、興味を失ったように放り投げた。ライダーの鎧が霧散してなお、浅倉は口角を釣り上げていた。予想していた通りとはいえ、その、人としてのあらゆる良識が破綻したような笑みは、真司にしてみれば不快でしかない。

「くく……はははははっ、やっぱりお前は面白い。イライラが少しはマシになる」
「ふざけるなッ、俺も、ここにいるみんなも、お前の遊び相手なんかじゃない! みんな生きるために必死に戦ってんだぞ!」
「だったら問題はないだろ? 俺とも戦え……必死にな」
「お前……っ」

 真司は、いつか蓮が言った、浅倉威はモンスターだという言葉を思い出した。たとえ体が人間でも、浅倉威の心は、既に人間のそれではない。この男に、まともな会話など成立しうるわけがないことを、真司は改めて痛感した。
 低く響く笑声を含んだ吐息を吐き出しながら、浅倉は右腕に装着されたブレスレットを軽く掲げた。彼方から銀色の影が飛来する。浅倉の意思に応えるように、自らブレスレットの台座へと収まったそれは、真司には銀色のカブトムシのように見えた。

「お前、それ」
「続けようぜ? 戦いを」

 ――HEN-SHIN――

 右腕のカブトムシから銀色の六角形が精製、展開され、それは瞬く間に浅倉の体を包み込んだ。月明かりを淡く反射する銀の装甲が上体を完全に覆った時、真紅の複眼が煌々と煌めいた。

 ――CHANGE BEETLE――

 鳴り響く電子音すらも煩わしそうに、銀の装甲に身を包んだ浅倉が肺に溜まった空気を吐き出し、首を捻る。どこからか取り出した斧を緩く掲げたヘラクスは、仮面の下から笑い声を零すと、やにわに駆け出した。
 龍騎もまた青龍刀を構え直し、迎撃の姿勢を取る。けれども、ヘラクスが龍騎に到達するよりも先に、銀の胸部装甲が爆ぜた。

「ぐ……、おおっ」

 一発、二発、三発。連続で撃ち込まれる銃弾が、ヘラクスの動きを止める。一撃一撃の威力が大きいらしく、弾丸を撃ち込まれるたび、ヘラクスの脚は一歩後退した。

「お前、倒すけどいいよね」

 リュウタロスの声が、闇夜に響き渡る。振り返った龍騎が見たのは、紫の龍の仮面を身に付けた仮面ライダー。軽快な足取りでステップを踏んだそのライダーは、右腕に持った銃を突き出した。
 ヘラクスは乾いた笑いを漏らし、項垂れていた首をぐりんと回して、電王となったリュウタロスに赤く煌めく複眼を向ける。

「はぁああ、お前も祭りの参加者か」
「答えは聞いてない」

 返す言葉は、最前までの子供らしくはしゃぐリュウタロスを思えば、ひどく冷淡な回答であるように思われた。声から抱く印象を裏切らぬように、電王は無遠慮にトリガーを引いた。今度はヘラクスの斧が銃弾を受け止め、弾き返す。駆け出したヘラクスに応えるように、電王は音楽にでも乗るように再度ステップを踏み始めた。
 電王の攻撃パターンが読めず、青龍刀を構えたまま戦闘に介入する隙を伺っていた龍騎も、電王がヘラクスへ向かって動き出したところで動き出した。

408 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:48:16 ID:9oSr2oo.0
 
「よし、俺も……!」
「真司は休んでていーよ。もうすぐ制限時間でしょ」
「えっ」

 はじめ、電王の言う言葉の意味がわからず龍騎は足を止めた。一瞬遅れて、変身してから十分が経過しようとしていることに気付く。最初の剣の打ち合いに存外時間を取られていたらしい。
 電王は既に龍騎に背を向け、右に左にとステップを踏みながらヘラクスへと接近していた。ヘラクスも真っ直ぐに電王に向かってくるため、両者が肉薄するに時間は掛からなかった。ヘラクスが横薙ぎに振り払った斧を、大股開きで姿勢を落とした電王が回避するのを見届けるや、龍騎の鎧は消え去った。

 ヘラクスの間合いで大股開きを晒した電王は、上体を大きく仰け反らせて、至近距離で銃弾を放った。遠距離からの射撃ならばまだしも、至近距離からの、それも無理な姿勢からの銃撃に、ヘラクスは面食らった。胸部装甲が爆ぜ、数歩後退る。
 銃撃が止むや、ヘラクスはすぐに追撃のため前進するが、電王はそのまま後方へと倒れ込んだ。戦場で仰向けに倒れ込む奴がいるかと、浅倉は仮面の下で追撃の好機を予感する。けれども、その予感は一瞬で崩れ去った。倒れ込んだ電王が、脚を振り上げた。蹴りではない。振り上げたまま、地面に接地した上体を軸に体を回転させている。

「ぐっ」

 電王の蹴りが右、左と連続でヘラクスの上体を蹴り飛ばした。三回目の蹴りには斧でのカウンターを仕掛けるつもりだったが、待ち望んだ三撃目の瞬間は訪れず。電王は、跳んだ。地面に接地していた軸の腕で体を跳ね上げ、瞬く間に体勢を立て直し、二本の脚で着地したのだ。
 
「ッ、らぁア!」

 迫るデンガッシャーの銃撃を、今度は斧で叩き落としながら、ヘラクスは再度電王へと肉薄した。斧を振り下ろすが、その一撃はやはり、命中しない。電王は片足を軸に半回転を加えながら、逆にヘラクスの間合いへと飛び込んできたのだ。
 ダンスさながらのステップでヘラクスとすれ違った電王は、裏拳をヘラクスの頭部に叩き込んだ。

「ぐ……ッ!」

 ダグバとの連戦で既に体力を消耗している今、明らかに己の動きが鈍っていることを浅倉は実感した。されどそこは腐っても浅倉威、地べたを這いつくばって生き抜いてきた浅倉にとって、この程度の疲労はどうということはない。不覚を取るのはほんの一瞬、すぐに姿勢を立て直す。体は既に限界を越えようとしていた。

「お前、なんか気持ち悪いから、そろそろ終わらせるよ。いい?」

 ヘラクスが見たのは、大股開きで片手に持った銃を構える電王の姿だった。上体は銃を構える腕以外は完全に脱力しきっており、紫の龍頭を模した仮面は僅かに傾いている。ダンスの決めポーズのつもりなのだろう。銃撃が響くと同時に、ヘラクスはベルトのバックルを擦った。

 ――CLOCK UP――

 刹那、電王の放った弾丸が急速に速度を落とした。ヘラクスを取り巻く他のすべての時間を置き去りにして、ヘラクスはひとり超加速空間へと突入した。
 停止したも同然の弾丸を斧でたたき落としたヘラクスは、電王の胴体に膝蹴りを叩き込んだ。なんの反応も示すことなく、電王の体が宙に浮かび、体が折れ曲がる。

409 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:49:43 ID:9oSr2oo.0
 
「ははぁっ」

 ここへきて久々に、ヘラクスの仮面の下で、浅倉はにやりと笑った。
 浅倉威は、戦いそのものを愛する武人では決してない。浅倉が求めるものは、果てのない暴力だ。暴力を振るえる環境に身を置きたいがため、結果的に戦いに身を投じることになっているだけで、暴力を振るえるのであればそれが戦いである必要はどこにもない。一方的な暴力を振るうことに対し、痛みを感じる心など持ち合わせてはいなかった。
 宙に浮かんだ電王の体に、横合いから斧による一撃を叩き込む。手応えのない腕や脚から狙う趣味はない。胴体に直接斧を叩きこまれた電王の装甲が爆ぜて、火花が生じる。電王の装甲から吹き出た火花が咲くまでの間に、ヘラクスは次の一撃を叩き込んだ。
 少しずつ、からだの調子がよくなってきた。限界が近いと思われていた体から、痛みと疲労の感覚が消え去っていく。麻痺していると言ってもいい。まだまだ楽しめると、浅倉は無意識的な確信を抱いた。



 その場の全員が、なにが起こっているのか理解できず、瞠目するしかできなかった。
 ヘラクスの姿が掻き消えたかと思えば、電王の体がなにかに弾き飛ばされたように宙に浮かび、あとは銀色の風と化したヘラクスから執拗な打撃を受ける、その繰り返しだ。ひとつの打撃によって生じた火花が開花するよりも先に、次の、そのまた次の打撃を叩きこまれているので、電王には休む間もない。

「な、なんだよアレっ……あんなの、どうやって戦えっていうんだよ」

 三原の声は、平時よりも増して上擦っていた。それ程気温が低い訳でもないのに、足元は震えている。最前までいざとなれば戦う覚悟を固めたつもりでいた三原も、クロックアップの驚異的な速度を目の当たりにして、戦えば殺されるかもしれないという恐怖に竦んでいるのだ。
 麗奈の内側で騒ぎ立てていた金属音が、一際強く音をかき鳴らした。己の内で、彼女が暴れ回っているのがわかる。麗奈には、何故もう一人の自分がこうも主張するのかが、なんとなく、わかる気がした。

「わ……わたし、なら」

 周囲のあらゆる音をかき消さんとがなる金属音の中、麗奈の口をついて言葉が飛び出した。無意識に近い。そもそも自分がなにを言ったのかすら、金属音にかき消されて、麗奈にはよくわからなかった。
 麗奈を気にかけた真司が、肩に手を掛ける。なにか言っているようだが、麗奈にはもう、真司の声も聞こえなかった。なにも聞こえず、なにも見えなくなった。麗奈を取り巻く世界が暗転した。辺りはしんとした静謐に包まれた。

「弱いな、お前は」

 低く、玲瓏な声が耳元で響いた。戦いの音も金属音もなにもない無音の世界にあって、その声だけが麗奈の中で凛とこだましている。それが誰の声なのか、麗奈にはすぐにわかった。
 首だけを回して振り返ると、薄暗がりの世界にひとり、喪服を着た女がぽつんと佇んでいた。よく知る顔だった。

「みんなの助けになりたい。そう思いながら、お前は怯えるばかりで、見ているだけしかできない……弱い人間」

 間宮麗奈の人間としての生を奪った張本人。自分であって、自分でないもう一人のマミヤレナ。嘲るような口調でありながら、しかし、きっと釣り上がったその眼は、麗奈を強く批判しているように感じられた。

410 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:51:28 ID:9oSr2oo.0
 
「お前はもう眠れ。お前では、なにも守ることはできない」
「まも、る……?」

 麗奈は訝しげに眉根を寄せた。マミヤレナが、一瞬顔を顰めた。
 らしくない言葉を選んでしまったと、レナがそう考えていることが、自分自身の内面ゆえか、なんとなく麗奈には分かった。

「私は……私は、ただみんなに守られるだけで、ずっと申し訳ないと思ってた。私なんかいなければ、みんなも無駄に傷つくこともないのに。結局、私は、守られるだけで」
「だから消えろと言っている。そもそもお前はもう死んだ人間だ。私が殺した。お前がここにいること自体が不自然なのだ」
「だとしたら……それは、あなたもでしょう。あなたも、一度死んだ。あの人の腕に抱かれて」

 返答はなかった。けれども、麗奈が大切なひとを心に思い描いたその時、冬の湖面のように冷たかったレナの瞳に、微かな熱が宿ったように感じられた。鉄仮面で覆い隠されたレナの心の一端が垣間見えた気がした。
 俯いていた麗奈は顔を上げ、レナに向き直った。

「あなた、ほんとうは――」
「黙れ」
「っ」

 レナの体が、白い外骨格に覆われた。彼女の表情は白い仮面に隠されて、今はもう窺い知れない。一瞬気を緩めたことで、押さえ込んでいたワームの力が彼女のもとに戻りつつある。油断した、と思った時にはもう遅い。
 今度こそ麗奈の意識は深い闇の底に沈んでいった。



 宙に浮かんだままの電王の体に振り下ろされようとしていた銀の斧を、ウカワームの巨大な右腕が弾き飛ばした。時の切り取られた世界に入門してくる者などいないと思っていたのだろう、ウカワームの不意打ちに対処をすることもなく、ヘラクスは斧を取り落とした。
 時の加速した二人だけの空間で、ウカワームとヘラクスは互いに動きを止め、押し黙る。互いが互いを、目下排除するべき敵であると認識した瞬間だった。

 ――CLOCK OVER――

「うわぁぁああああああああッ!!」
 電王の体から一斉に火花が吹き出した。悲鳴とともに地面へと落下し、体をしたたかに打ち付けたリュウタロスの体から、電王のオーラアーマーが消失する。既に戦力外となったリュウタロスを、ウカワームは表情を移さぬ白き仮面でちらりと一瞥した。

「この男は私が始末する。お前は下がれ、足手まといだ」
「……、れ、麗奈……?」

 震える声で、リュウタロスは顔を上げた。ウカワームは返事をくれてやることもせず、ヘラクスへと向き直った。

「ほお。お前、さっきの女か」
「私の名前はマミヤレナ。お前に私の鎮魂曲を聴かせてやる」
「くはっ、……はははははははっ、お前もそれなりに楽しめそうだ」

 ヘラクスは脱力しきった様子で両腕を広げると、ウカワームの頭から爪先までを舐め回すように眺めた。そして、緩慢な動きから一点、獲物に飛びかかる蛇のような素早さで、ウカワームへと跳びかかった。ウカワームはヘラクスの拳を右の巨大なハサミでいなし、左腕の拳で殴り返す。ウカワームの拳に対して回避行動は取らず、ヘラクスは顔面から当たりにきた。ぶんと唸って振るわれたヘラクスの拳が、クロスカウンターとなる形で、ウカワームの顔面を捉えた。

411 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:52:57 ID:9oSr2oo.0
 
「ッ」
「ははぁあッ!」

 一瞬動じたウカワーム目掛けて、ヘラクスは獣さながらの獰猛さで飛び掛かると、鎧に覆われていないウカワームの首元に掴み掛かって、勢いそのまま押し倒した。倒れながら、ウカワームはヘラクスの胸部目掛けて袈裟懸けにハサミを叩き付ける。盛大に火花を散らしながら仰け反るヘラクスだったが、しかし、それでもヘラクスは笑っていた。

「はははははっ!」
「ッ、この男……!」
「はあぁぁああ、最高だなぁ、戦いってのはァ!」

 ウカワームの背を地べたに叩き付けたヘラクスが、その首元に手をかけたまま、深く吐息を吐き出し、狂気に満ちた、感に堪えぬ笑みを漏らした。マウントポジションを取られている。
 今度はヘラクスの赤い複眼目掛けて容赦なくハサミを叩き付けた。

「そこをどけ」
「ッ、はははははぁ!」
「ぐっ……」

 ヘラクスは打ち据えられた顔面をがくんと揺らしながらも、ウカワームの顔面を鷲掴みにし、地面に叩き付けてきた。ヘラクスに掴まれた指圧から、白の外骨格を通じて、体内の細胞ひとつひとつへ屈辱が染み渡っていく。けれども、湧き上がる感情は、怒りとは異なるものだった。
 ウカワームは後頭部を幾度も地面へ叩き付けられながら、ハサミで二度三度とヘラクスの仮面を殴打した。四度目の打擲で、ついにヘラクスのマスクが割れた。仮面の中に垣間見える浅倉威の瞳は、人間のものではない輝きを放っていた。狂ったように笑う浅倉の顔を見て、ウカワームはひとつの確信を抱いた。

「この男……もはや、人間ではない」
「ははぁ、それがどうした。もう終わりか?」

 見開かれた浅倉威の瞳を見る内に、強烈な嫌悪感がウカワームの心のうちに芽生えた。殺されるかどうかとか、そういう類の恐怖ではない。生物であれば通常恐れるはずの痛みをものともせず、獣のように邁進するその異常な姿に対して抱く、生理的な感情だ。恐怖心と言い換えてもいい。それを自覚すると同時、沸き起こる恐怖と屈辱に体が震えた。

「麗奈から……、離れろーっ!」

 ヘラクスの胸部装甲が爆ぜて、その体が後方へと吹っ飛んだ。後方からの援護射撃だ。振り返ると、最前ヘラクスに手酷くやられたリュウタロスが、震える体でリュウボルバーを構えていた。

「麗奈、麗奈っ、大丈夫!?」

 ウカワームはリュウタロスから視線を逸らした。返答をくれてやる気にはならなかった。
 右腕のハサミを地面に突き立てて立ち上がったウカワームは、己の体もまた震えていることに気付いた。痛みや疲労による震えではない。リュウタロスの震えが、先の打擲によるものではないことを悟った。
 この敵と長期戦でやりあうのは、まずい。戦闘力云々ではなく、戦いが長引けば長引くほど、此方が精神に異常をきたしてゆく。

412 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:53:54 ID:9oSr2oo.0
 
「麗奈!」
「ッ」

 駆け寄るリュウタロス目掛けて、ウカワームは、勢い良くハサミを横薙ぎに振るった。リュウタロスは一瞬驚いたようにウカワームを凝視するが、その一瞬は、すぐに一瞬ではなくなった。
 瞠目したリュウタロスの時間が、そこで止まっているに等しい時間にまで引き伸ばされていた。ハサミを振るうと同時にクロックアップを発動したウカワームの動きを、通常空間にいる今のリュウタロスは既に追い切れていない。

「貴様の存在は厄介だ。ここで消えてもらう」
「できるか? お前に……くははっ、やってみろよ」

 果たして、ウカワームのハサミが捉えたのは、同じく超加速空間に突入したヘラクスが振るった銀の斧だった。常人には認識できない速度でリュウタロスに振り下ろされる筈だった斧を、ウカワームのハサミが受け止めたのだ。もしもリュウタロスの隣にいるのが時間流の変化を察知できる自分でなければ、などと考えかけて、ウカワームはそのとりとめのない思考を振り払った。

「はああッ」

 冷淡に鼻を鳴らしたウカワームは、ヘラクスの斧と己のハサミを打ち合わせたまま、結果的に自分が救った形となったリュウタロスからヘラクスを遠ざけるように地を蹴り、ヘラクスを押し出した。体を熱くする屈辱でしゃにむに恐怖心を掻き消して、ウカワームは進む。
 二十歩分ほど離れたところで斧を弾き上げたウカワームが追撃に出た。ヘラクスの胸部にハサミの一撃が直撃し、ヒヒイロカネで出来た装甲に僅かな亀裂が走る。けれども、怯まない。向かってくるヘラクスに、再度ハサミを叩き付けんと振るうが、しかし、大振りなその一撃を、ヘラクスはこの僅かな数回で見切ったのだろう。身を屈めることでその一撃を回避したヘラクスが、右腕のブレスを叩いた。

 ――RIDER BEAT――

 タキオン粒子の稲妻が、ヘラクスの右腕を伝って、ゼクトクナイガンへと充填された。ウカワームの間合いに飛び込むと同時に発動されたライダービート。
 不覚を取ったことを、ウカワームは悟った。咄嗟の対応に打って出ようにも、体が動かない。やられる、と瞬間的に思ってしまったその刹那、浅倉威に対して抱いた恐怖心が、ウカワームの中で異常なまでに膨れ上がったのだ。

「馬鹿な……ッ、この、私が――ッ」

 ヘラクスの強烈な一撃が、ウカワームの胴体を直撃した。甲高い破裂音が鳴り響いた。瞬時に時間流が元に戻る。瞠目したままで止まっていたリュウタロスの視界の先で、ウカワームはその腹部に眩く迸るタキオン粒子の稲妻を纏いながら後方へと吹っ飛んだ。

「えっ!? ……っ、麗奈!?」

 通常の時間流に強制的に引き戻されたウカワームが聞いたのは、リュウタロスの狼狽する声だった。
 空宙で人間としての姿に戻った間宮麗奈は、地べたをごろごろと転がって、力なく項垂れた。霞みゆく視界が捉えたのは、ぼろぼろの体で麗奈へと駆け寄るリュウタロスと、その背後で両腕を広げ月光を一身に受け止めて笑うヘラクスの姿だった。

「よくも……よくも麗奈を!」
「はははははっ、次はお前かァ!」

 最早獣同然となったヘラクスが、リュウタロスへと飛び掛かった。

413 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:55:01 ID:9oSr2oo.0
 


 戦場の傍らに身を横たえたマミヤレナは、一見致命的な一撃を直撃で受けたようで、実際にはそこまで深刻なダメージを受けたわけではなかった。強固な外骨格が、タキオン粒子の流動をある程度は防いだのだろう。
 ヘラクスは今やレナを排除対象外と認識したのか、リュウタロスを嬲ることに意識を集中させている。レナにトドメを刺しに来る気配は一向になかった。最早その必要すらないと判断されたのかと思うと、腹の底から湧き上がった屈辱が、うめき声となって漏れた。

「間宮さん、生きてるよな!? 無事だよな!?」

 確認のていをとってはいるものの、真司の言葉は、半ば願望と言って差支えはなかった。地べたに仰向けに寝そべったまま、眼球だけを動かして、レナは走り寄る真司を視界に捉える。その少し後ろで、レナから距離を取っているのは、三原だろう。気配で分かったので、わざわざその存在を確認する気にもならなかった。

「私は、こんなところで、いったいなにをしているのだろうな」

 口をついて出た弱音に、レナは一瞬遅れて、らしくもないと自嘲する。

「なあ、アンタ……間宮さん、なのか。それとも、まさか」
「そのまさかだろうな」
「なら、間宮さんの意識は」
「さて。今はもう、私にもわからん」

 人間としての心を封じ込んだ、と言い切ることは出来なかった。麗奈を心配する真司の顔を見ていると、それを口にすることが憚られた。
 こんなはずではなかった。真司やリュウタロス、三原の存在が、レナを弱くする。
 不意に、リュウタロスの悲鳴がレナの耳朶を打った。どういうわけか、胸中を掻きむしられるような心地になった。そう感じること自体が、レナにとっては異常だった。恐怖心と、屈辱感と、未だ感じたことのない得体のしれない感情が、レナの心に巣食っている。

「……アンタ、さっきリュウタロスのこと庇ったんだよな」
「違う。私はただ、ヤツの攻撃に対応しようとしただけ。偶然だ」
「偶然でもなんでも、アンタがリュウタロスを救ったんだ」
「そうか……ならば、そうなのかもしれないな」
「なあ、……なあアンタ、ほんとうは」
「仲間を助けにいかなくていいのか」

 冷徹に、そして淡々とレナは真司の言葉を遮った。

「俺が、……俺が行くよ」

 かつてアスファルトだった砂利道を踏み締めて、三原が横たわるレナの隣に歩を進めた。脂汗を額に浮かべて、恐怖に脚を震わせて、それでも三原は、戦場に向き合っている。掌には、デルタフォンが握られていた。

「ヤツが恐ろしいか」

 レナの冷徹な瞳が、三原を見据えた。

「ああ、怖い……怖いさ。けど、俺が戦わなかったせいで、あいつに弱虫って思われたまま死なれるのは、……それを二度と挽回できないのは、もっと怖い。今やらなきゃいけないことだけは、俺にだってわかるから……!」

 前かがみになって己の感情を吐き出した三原は、そのまま戦場へと駆けていった。変身、の一声と電子音に次いで、三原の体は白色光に包まれる。デルタとなった三原が、ヘラクスが暴れる戦場へと乱入したことを、レナは気配だけで悟った。

「間宮さん」

 真司に呼ばれても、レナは言葉を返す気にはなれなかった。指一本動かす気にはなれなかった。

414 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:56:02 ID:9oSr2oo.0
 
 レナは、ぼんやりとした思考を宙に漂わせていた。
 そもそも自分はいったい、なにをしたいのだったか。元の世界に戻ったとて、既にワームを束ねるマミヤレナは、身内であるワームから処刑宣告を受けている。人間でもなく、ワームからも追放された今のレナに、帰るべき場所はない。かといってもう一度人間を殺してまわり、ワームとしての居場所を再確立するのは、なにか違うように思われた。
 それがわかっているから、レナは風間大介に戦いを挑んだ。変身を拒み戦う決断を下せずにいる大介を殺すことは容易かったはずなのに、それでもレナは、仮面ライダードレイクとの一騎打ちを選んだ。それ以外に、辿れる道はないと思っていた。
 或いは、そこで終わっていたならば、幸福だったのかもしれない。
 こんな場所で蘇生されても、レナにはもう帰る場所などなく、戦う理由もない。それでも戦って、あんな得体のしれない男に負けて、恐怖心と敗北感に打ちひしがれて、はらわたが煮えくり返るような屈辱を味わわされて、その果てに、いったいなにを得られるというのだろう。

(わたしは、いったい、なにがしたいんだ)

 自分自身の心の内側から、孤独な歌声が響いていることに、レナは気付いた。
 ここへきて初めて、レナはとうの昔に押し殺したと思っていたその音楽に耳を傾けた。



 冷たくなり始めた秋の風に晒されて、体温が徐々に低下していく。全身から力が抜け落ちていく中、それでも伸ばした指先が、男の頬に触れた。とうに痺れて感覚を失いつつあった指先は、男の肌のぬくもりを確かに感じ取った。霞みゆく視界の中で、男は笑った。今にも泣き出しそうな、不器用な笑み。けれども、優しい微笑みだった。風が吹く。花から花へと吹き抜けていく優しい風が、肌を撫でていった。穏やかな風の触り心地と、男の力強い包容から伝わるあたたかさを、確かにレナは感じ取った。
 ワームとしての身で感じられるはずのないぬくもりを、やさしさを、レナは感じ取った。



 なぜこんなことを思い出すのだろう。
 あの時、風間大介の腕の中で、レナは、苦しいことも、つらいことも、すべて忘れられた。心のうちは、穏やかな歌声の中で満たされていた。
 その歌声は、今も聴こえる。自分が殺した間宮麗奈が、今も歌い続けている。人の悦ぶ顔が見たいがために歌い続けてきた麗奈が、今はレナひとりのためだけに、歌っている。

 舞台の上で歌い続ける麗奈の歌を、ホールの最前席に着席した麗奈は、自分でも驚くほどに穏やかな心地で聴いていた。大介から伝えられた、自分の中の音楽に耳を傾けて欲しい、という言葉をぼんやりと思い出す。思えば、レナは己の内側に巣食うもう一人の人格を押し込めようとしたことはあっても、その存在を認めて歌に耳を傾けたことはなかった。

(私は、私がなぜ歌うのかを、知っている)

 麗奈とてはじめから誰かの歌うことを意識していたわけではない。麗奈はかつて、ただ人よりも少しばかり歌が好きなだけの、普通の女の子だった。はじめて他人に歌を聴いて貰った時、その人が上手いと言ってくれた。それが嬉しかった。
 今度は、もっと大勢の人が聴いてくれる舞台に立とうと思った。麗奈の歌を聴いた観客は、みな悦んだ。仕事で疲れきった人も、荒んだ心に癒やしを求めてきた人も、みな穏やかな笑顔を浮かべて帰っていった。誰かのために歌えることを、麗奈は幸福であると感じていた。
 その麗奈を殺め、ささやかな夢や幸福すらも奪い、踏み躙ったのは、他でもない、ワームであるマミヤレナだ。

415 夢よ踊れ(前編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:56:50 ID:9oSr2oo.0
 
「なぜ、お前は」

 恨まれるならわかる。今まで通り、眼を背け、逃げるならばわかる。けれども、間宮麗奈に、こうして歌を歌って貰える資格は、自分にはないと思っていた。
 舞台の中心に立ち、ひとりスポットライトを浴びる麗奈が、穏やかな表情でレナに向き直った。

「あなたは、私だから」
「違う。お前を殺めたのは、私だ」

 麗奈は緩く首を振った。

「私は、今もあなたの中で生きているわ」
「私は、お前の心を消そうとしたのだぞ」
「私も、あなたが二度と出てこないようにと願った」
「なら」
「でも、あなたはあの子を庇ってくれた」

 あの瞬間、なぜかリュウタロスを庇ってしまったことは、レナも既に自覚している。否定したいところではあったが、否定しきれる程の強い理由を持たないので、自覚せざるを得なかった。

「それで、確信したの」
「なにを」
「あなたは、戦えない私の代わりに、戦うことができる」
「ワームである私に、人間の代わりに戦えというのか」

 人間として生きていく。大介が示してくれた可能性を、レナは思い浮かべた。それがひどく困難な道のりであることは、他でもない自分自身が一番よくわかっている。なにより、既に間宮麗奈という人間をその手で殺めている自分に、そのような資格があるとは思えない。

「……無理だ。そんなこと、できるはずがない」
「できるわ。だって、あなたはもう、人の心を知っているから。リュウタロスのことも、城戸さんのことも、三原さんのことも、失いたくないと思ってる……大介さんの言葉を、忘れたくないと思ってる」
「そう考えているのはお前だろう、私は違う」
「私はもう自分の心から、あなたから目を背けない。だからあなたも、もっと素直な気持ちで、自分の心の歌に耳を傾けて」

 胸が内側からぎゅうと締め付けられるような心地を覚えた。そんな感情を抱くこと自体が、ワームとしてはあり得ないことだというのに。
 自分自身が、今まで通りのワームとして存在し続けることが困難であることを、レナは既に悟っている。少しずつ、少しずつ、ふたりの心の境界が曖昧になっていく心地だった。

「リュウタロスを、私を守ってくれて、ありがとう」

 麗奈の心が、内側へと流れ込んでくる。
 数時間前、麗奈の身が危険に晒された時、表に出て戦ったことに対してすら、麗奈は感謝の念を抱いている。もう、否定する気も起きなかった。
 レナは緩やかに立ち上がると、胸を逸らして、斜め前の天井を見つめるように目を細めた。すう、と息を吸い込む。

「……きえる、こころ、もつならば」

 レナの喉から、澄んだ歌声が奏でられた。
 難しい理屈を考えるよりも、今はそうしたいと思った。

「いのる、こころ、あたえよう」

 つられて麗奈が、歌い出した。
 ひとりひとりが奏でる音楽は孤独だけれども、磨き上げられたふたつの音楽が重なり、混じり合えば、それはたちまち美しいメロディとなる。不思議なことに、レナはいつまでもこうして歌っていたいとすら思った。けれども、これは、所詮は夢だ。夢はいつか覚めなければならない。
 ふたりで奏でる夢の様なひとときが終わった時、長い夢を見ていたような心地の中、レナは舞台へと視線を送る。
 演奏を終え、深く下げていた頭を上げた麗奈が、レナを送り出すように穏やかに微笑んだ。

「あとは、お願い」

 レナは観念したようにふ、と微笑み、ゆっくりと頷いた。
 もう言葉は必要ないと思った。結局自分には、もう、こうすることしかできはしない。
 舞台にはもう、間宮麗奈の姿はなかった。舞台の出入口の扉が開かれた。外から、日の光が差し込んでくる。あの扉の向こうには、きっと多くの困難が待ち受けているのだろう。けれども、レナはもう、振り返ることはしなかった。確かな足取りで、レナは外の世界へと歩き出した。

416 夢よ踊れ(後編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 01:58:01 ID:9oSr2oo.0
 デルタが放った銃撃を、ヘラクスはリュウタロスの襟を掴み上げて、その体を盾にすることで受け止めた。短い悲鳴ののち、リュウタロスを投げ捨てたヘラクスは、斧を振り上げてデルタへと駆け寄る。慌てて銃撃するデルタだったが、狼狽しながら不確かな狙いで放たれた銃撃では、ヘラクスを止めることはできない。

「はははははははははははァッ!」

 ヘラクスの嬌笑が響く。萎縮したデルタが、思わず数歩後退る。

「どうした逃げるのかァッ!」

 瞬く間に肉薄したヘラクスが、手にした斧を振り下ろす。デルタは両手でデルタムーバーを支え、斧の一撃を受け止めるが、同時に腕が痺れて身動きが封じられる。すかさず跳ね上がったヘラクスの蹴りが、デルタの胴を抉った。

「ぐえっ」

 胴体が折れ曲がり、宙へ浮いたデルタの体へと、横薙ぎに振るわれたクナイガンが迫る。けれども、その刃がデルタに到達するよりも先に、彼方から飛来した青い影が、その刃に激突し、デルタへの追撃を阻んだ。
 リュウタロスの放った銃弾がヘラクスの背中で爆ぜて、よろめいた。地べたに片足つきながら、デルタもまたヘラクスへと銃撃を浴びせる。機械仕掛けの青い影が、ヘラクスをデルタから引き離すように体当たりを繰り返し、空宙でとんぼ返りをして、持ち主の元へと舞い戻る。
 ドレイクゼクターが舞い戻った先にいたのは、間宮麗奈だった。麗奈が、その瞳をきっと尖らせて、ヘラクスを睨み据えている。その手には、ドレイクグリップが握り締められていた。

「あァ……? まだいたのか……お前」
「私の名前は間宮麗奈。お前に聴かせてやる鎮魂曲は……ない」
「あん?」
「私は、これからも誰かのために歌うだろう。だが、それは、お前のためではない」

 晴れやかな心持ちで、麗奈は緩くかぶりを振って、そう宣言した。
 麗奈の麗奈の周囲を跳び回るドレイクゼクターが、その宣言を祝福するように、麗奈の周囲を旋回し飛び回る。
 もう麗奈は、誰にも心を縛られはしない。どちらかがどちらの心を否定し押し込めることもなく、ただ己の心に流れる音楽に従って、吹き抜ける風のように「自由」に振る舞うのみ。あらゆる枷を取り払った麗奈の心は、羽根のように軽かった。
 グリップを突き出すと、ドレイクゼクターがそこに収まった。青色のオーラとともに波状的に広がったヒヒイロカネが、麗奈の体を覆い尽くす。かつて麗奈が心を許した男の影をその身に重ね、麗奈ははじめて、仮面ライダーへの変身を遂げた。

 ――HEN-SHIN――
 ――CAST OFF――
 ――CHANGE DRAGONFLY――

「麗奈……! その姿!」
「私はもう自分自身に怯えることはしない」

 仮面ライダードレイクとなった麗奈が、両手でドレイクグリップを構え、ヘラクスへと狙いを定める。

417 夢よ踊れ(後編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 02:00:59 ID:9oSr2oo.0
 
「私は己の意思で戦う。手を貸せ、ふたりとも!」

 ドレイクの叫びに応えるように、デルタとリュウタロスが強く頷いた。それぞれの銃器を構え、ヘラクスへ向けて、三方向から銃口が向けられる。ほぼ同時に、三人が引鉄を引いた。
 異なるシステムにより開発された銃弾が、一斉にヘラクスを狙い打つ。はじめ、銃撃に晒されたヘラクスはどちらへ脚を進めることも出来ず、標的となるだけだった。けれども、それはほんの数秒だ。

 ――CLOCK UP――
 ――CLOCK UP――

 ヘラクスよりもほんの一瞬遅れて、ドレイクがベルトのスイッチを擦った。
 デルタとリュウタロスが放った銃弾の雨が空宙で静止する。固定された弾丸を掻い潜って、ドレイクを敵と狙い定めたヘラクスが斧を振り上げて迫る。露出した浅倉の片目に射竦めるられて、ドレイクは一瞬動じた。けれども、ヘラクスが間合いの内側へと飛び込むと同時、ドレイクは手にした銃を脇腹の辺りで構え、引鉄を引いた。
 連続で放たれた弾丸がヘラクスを至近距離から銃撃する。その圧力に押され、徐々に後退してゆくヘラクスの体に、ドレイクが後ろ回し蹴りを叩き込んだ。

「うおっ」
「言ったはずだ、お前にはここで消えてもらう」

 後方へと蹴り飛ばされたドレイクが着地するよりも先に、ドレイクは銃弾を撃って、撃って、撃ちまくった。空宙でヘラクスの動きが静止した。ダメージ超過によるクロックオーバーだ。

 ――CLOCK OVER――

 ドレイクの加速時間にも終わりが訪れる。斧を取り落としたヘラクスが地面に落下し、その衝撃によって嗚咽を漏らした。ヘラクスはすぐさま取り落とした斧を拾おうと手を伸ばすがそれをデルタの銃撃が阻んだ。弾丸に弾かれた斧が、ヘラクスから離れ、リュウタロスの方向へと飛ばされる。

「やーい、これはもう返さないもんね〜!」

 さっきまで震えていたリュウタロスだったが、飛ばされてきたゼクトクナイガンを取り上げると、はしゃぎ声を上げて飛び跳ねた。

「ァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 ヘラクスの咆哮が、怒りによるものなのか、理性を失った獣の叫びなのかは、誰にもわからなかった。けれども、わかる必要のないことだと、麗奈はとりとめのない思考をすぐに切り捨てる。
 デルタとリュウタロスが作ってくれた千載一遇の好機を逃す手はない。己が欲望のため多くの命を奪い、その果てに罪と向き合う機会も与えられぬまま獣と成り果てた外道に、引導を渡す時がきた。ドレイクは手にした銃の撃鉄、スロットルを力強く引いた。

 ――RIDER SHOOTING――

「ライダーシューティング……!」
 風間大介が変じたドレイクを心に思い浮かべて、麗奈が変じたドレイクもまた両手でドレイクグリップを握り締める。銃口で青い輝きが膨れ上がり、ばちばちと放電音を迸らせる。かつて身をもってこの一撃を味わった麗奈だからこそ、ライダーシューティングの威力は痛いほど理解している。

418 夢よ踊れ(後編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 02:01:57 ID:9oSr2oo.0
 この男が振りまく悲劇は確実に終わらせる。その覚悟は、この場の全員が同じ。リュウタロスとデルタの銃撃がヘラクスに浴びせられ、退路は絶たれた。ヘラクスには最早ライダーシューティングを真っ向から迎え打つ以外に道は残されていない。

 ――RIDER BEAT――

「オオオオォォォォォォァァァァァァァッ!!」

 右手のゼクター叩き、その腕にタキオン粒子の輝きを纏わせたヘラクスが、咆哮と共に飛び込んできた。同時、ドレイクが引鉄を引いた。
 放たれた青のタキオン粒子の塊に、ヘラクスは己の右の拳を叩き込んだ。瞬間、タキオンのエネルギーが互いに干渉し合って、辺りへ激しく稲妻を撒き散らす。
 拮抗したのはほんの一瞬だった。すぐにヘラクスの右腕の装甲が消滅を開始した。ライダーシステムなくして、タキオン粒子の塊を受け止めることなどできるわけがない。青の光球は瞬く間に浅倉の右腕を飲み込んだ。装着されたゼクターが火花を散らし、爆散する。

「うぉぉおぉおおぁあああああああッ!!」

 ライダーシューティングの一撃は、浅倉の右の肘から先を消滅させ、そのまま肩口を滑って彼方へと飛んでいった。幸いにもヘラクスの装甲が完全に消失しきる前に光球が通過したため、浅倉は右腕を失うだけに済んだが、それでも生半可なダメージではない。もんどり打って倒れ込んだ浅倉の右肩は、痛々しく抉られ、赤黒く焼け爛れていた。
 そこで一同は、異変に気付いた。浅倉の肌は、既に大部分が肌色ではなくなっていた。黒と紫が入り混じったような色に泡立って、全身から同色の陽炎を揺らめかせている。これが浅倉との最後の戦いになると、その場の全員が判断した。

「まだだッ、まだ足りねェ! もっとだ、もォォっと寄越せェェッ!」

 浅倉の体が変質してゆく。仮面ライダーのものではなく、倒されるべき怪人のものへと、成り果ててゆく。見るもおぞましい異形へと成り果てた浅倉威を直視したその瞬間、今まで感じていた恐怖心とは比較にもならないほどの寒気が全身を駆け巡った。
 恐怖という二文字をそのまま化け物へと作り替えたような存在。恐怖の象徴、テラーへと変質を遂げた浅倉威が、左腕で握り拳を作り、夜空を見上げ野獣の咆哮を上げた。足元から広がった黒とも青ともつかない泥が、薄く発光しながら周囲へと広がっていく。

「あ……ぁ、なん、だ……これ、は」

 心臓を鷲掴みにされたような心地のなか、ドレイクは広がる泥の中で、数歩後退った。テラーの放つ威圧感だけで、戦意などとうに喪失している。ドレイクの体から、ヒヒイロカネが剥がれ落ちた。激しい動悸の中、しかし身動きをとることも出来ず、麗奈は無様にも尻もちをついて、テラーを見上げるしかできなかった。

「な、なに、こいつ……こんなの、勝てるわけない……」

 リュウタロスが震える声で弱音を零した。リュウボルバーを取り落としたリュウタロスは、俯いて吐息を吐き出すのみで、最早己の武器に手を伸ばすことはなかった。全力発揮状態にあったリュウタロスが、強制的に能力発揮を終了させられる。誰もが皆、終わりを予感した。

419 夢よ踊れ(後編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 02:03:46 ID:9oSr2oo.0
 
 浅倉威と一体化したテラーは、この数時間の間に完全に浅倉威と同調し、本来のスペックとは異なる能力を発揮しつつあった。潜在的な恐怖を煽る本来のテラーの能力に付け加えて、暴力なしには生きてはいけぬ浅倉威の野獣のような精神性が作用し、今のテラーは暴力と恐怖の象徴たる存在と成り果てていた。
 失った右腕の断面から泥をぼとぼとと落としながら、テラーとなった浅倉はその瞳を獰猛な獣よろしくギラギラと輝かせて、次の獲物を見定める。
 ひとりだけ、変身解除に追い込まれていない仮面ライダーがいた。

「ど、どうしたんだ、みんな!?」

 仮面ライダーデルタだ。足元は相変わらず震えているものの、しかし、デルタだけはテラーフィールドの効果を受けているようには見られなかった。浅倉が変じたテラーの口元が、にやりと釣り上がった。次の標的は、こいつだ。
 テラーは狂気の雄叫びを上げて、デルタへと飛びかかった。全身から泥を吐き出しながら、化け物と化した肉体にフォトンの弾丸が撃ち込まれる。その痛みすら、今のテラーには起爆剤だった。撃たれた箇所から血液の代わりにドス黒い泥を吐き出して、瞬く間にゼロ距離に達したテラーが、デルタの首根っこを掴み、つり上げた。
 デルタがじたばたと脚をばたつかせてテラーを蹴る。

「う、この……っ」
「ははァっ、ぁああはははははははァァ!!」

 ろくな反撃もままならぬまま、デルタの体はぶんと振り回され、投げ飛ばされた。全身を泥にまみれた地面に打ち付けながら、デルタは顔を上げる。リュウタロスの顔が目に入った。

「ひっ……ひぃぃぁぁぁあああああっ!?」

 リュウタロスが情けない声を上げて、尻もちをついたままデルタから距離をとった。ここへきてデルタに変じる三原は、はじめてことの異常さを認識した。
 片膝ついて起き上がり、麗奈へと視線を向ける。麗奈も同様に尻もちをついたまま、目を見開いてデルタを凝視していた。仰け反らせた胸元を大きく上下させて、激しく呼吸を繰り返している。
 今まともに戦えるのは、自分をおいて他にはないことを悟らざるを得なかった。

「やるしか、ないのか……俺が、こいつを」
「はははははははッ、お前も俺と戦えェェエエ!!」

 デルタは、決然と銃を構えた。引鉄を引いて、光弾を放つ。化け物と化した浅倉威の体からまたも泥が噴き出す。銃撃の余波で皮膚が裂けて、ところどころから骨が飛び出ている。銃撃が喉元を撃ち抜いた時、そこからやはり、泥が溢れ出た。泥はすぐに硬化して、傷口を塞いでゆく。生物として、明らかに異常な再生速度だった。

「こいつッ、ほんとうにもう、人間じゃなくなったのか」

 相手が人間ではないのなら、戦える、かもしれない。
 他の二人が戦意を喪失しているのに対して、デルタは己の心の内に、はじめて闘志を宿らせた。どちらにせよ、ここで唯一戦える自分が戦わなければ、ここまで自分を支えてくれたリュウタロスも、麗奈も、殺されて終わる。自分が殺されることも恐ろしいが、自分のせいで仲間が死ぬのは、もっと嫌だった。
 体が熱を持って火照ってゆくように感じた。それは決して、デルタのシステムによる精神干渉ではない。大切なひとを守りたい、ちっぽけな自分でも守れるかもしれない、そういう類の感情から沸き上がる強い意思だ。いざ殺されるかもしれないというその瞬間に、はじめて三原修二は、その才能を開花させた。

420 夢よ踊れ(後編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 02:05:37 ID:9oSr2oo.0
 
 三原修二に対して、デルタのシステムによる精神干渉は意味をなさない。
 それは、精神干渉を加えたところで、元の三原の心が弱すぎるからだとか、そういう理由では断じてない。三原の心は、元より精神干渉に対する耐性を備えている。だから、デルタのシステム如きで、三原の心をねじ曲げることはできなかった。
 確かに三原は臆病者の弱虫だけれども、それでも三原は、本質的には誰よりも強く、そして優しい心を持ち合わせている。守りたいもののために守ると決めた三原には、浅倉のテラーフィールドなどは無意味だった。

 デルタは懊悩を振り払い、流星塾の仲間たちの中で、臆さずに運命と戦い続けていた友を心に思い描く。もうこの世にはいないが、彼はきっと最後の瞬間まで立ち向かっていった筈だ。手段はどうあれ、どうあっても弱音を吐いたり、挫けたりすることのなかった仲間を胸に、デルタはベルトのメモリーをデルタムーバーにセットした。

「草加……、俺の中で生きてくれ。君の強さを、俺にくれ……!」

 かつていじめられっ子だった草加だって、変わることができたのだ。自分だって。
 狂った笑みを零しながら走り寄る化け物に、デルタは銃口を向ける。

「シィィィァァアアッ!!」
「チェック!」

 ――EXCEED CHARGE――

「うわぁぁぁあああああああああああああああああッ!!」

 あの化け物よりも強く、三原は腹の底から雄叫びを上げた。
 デルタの銃口から放たれた三角錐が、ドス黒い化け物の胸元に突き刺さり、ドリルのように激しく回転する。身動きを封じられた化け物が、胸元を仰け反らせる。デルタは短い助走の末、地を蹴り、高く跳び上がった。乾巧や草加雅人がそうして敵を倒してきたように、三原もまた、デルタとして三角錐の中に飛び込んだ。蹴り足が化け物の体に突き刺さり、超高熱のフォトンブラッドそのものへと変質したデルタが、瞬間的に化け物の体内を駆け巡ると、その背中へと排出された。この間、僅か数秒の出来事である。

「ぁあァア、はは……ははは」

 残った左手をぶらりと下げて、化け物は空を見上げる。体から、赤く彩られた炎が噴き出る。青白く輝く「Δ」の文字が、闇夜にはっきりと描かれた。
 震える脚で、それでも地面を踏み締めて、デルタは背後を振り返った。
 炎の中、上裸の男は笑っていた。

421 夢よ踊れ(後編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 02:09:26 ID:9oSr2oo.0
 


 まだだ。まだ足りない。もっと、もっと、もっともっともっと、果てのない戦いが欲しい。度重なるダメージを受けて、浅倉威の体は崩壊を始めていた。けれども、最早痛みすら感じはしない。
 黒とも紫ともつかない色に変色し、ぐずぐずに崩れ始めた体で、それでも浅倉は、ランスバックルを取り出した。驚愕したデルタが、一歩身を引いた。

「ははっ、ァァぁアあはははははははぁッ! もっとだァ、もっとッ、俺と戦えェェエエエエッッ!!」

 浅倉威の裂帛の絶叫を最後に、全身の血管が体内で滅茶苦茶に暴れ回り、ドス黒く変色した肌が、本当の黒に染まった。体を泥のような黒に覆い尽くされた浅倉の体は、泥が消えると同時に、完全なる消滅を遂げた。
 かツん、と音を立てて、持ち主のいなくなったアスファルトに、ランスバックルが落下した。

 

【浅倉威@仮面ライダー龍騎 消滅確認】

 
 
 元よりガイアメモリは毒素の塊だ。通常使用ですら毒素に侵されるものを、浅倉威は自ら体内に取り込んだ。一見副作用のないように感じられたが、それは通常の使用方法を逸していたために、通常使用において見られる副作用がなかっただけだ。フグ毒を摂取して、その場で抗体を作れる人間などいるはずがないように、毒を食べた人間は体を侵され死に至る。代償のない即席の進化など、あり得るはずがない。
 取り込んだ毒素は、長い時間をかけて浅倉威の体を作り替えていった。更なる暴力を、闘争を、そういう願いに呼応して、テラーの毒素は浅倉の体を過剰に作り替えていった。
 いかに精神面が化け物であったとはいえ、ただの人間である浅倉威の体は、メモリの毒素による過剰変質には耐えられなかったのだ。その果てに、過剰なまでのダメージを受け続けたことで、ついに浅倉威の体は限界を越え、メモリのオーバードーズによって消え去った。

「勝った、のか……俺、たち」

 忽然と消えた敵を探して、デルタは周囲を見渡す。けれども、浅倉威からの襲撃は、二度となかった。
 恐怖心の根源たる浅倉威がこの世から消えてなくなったことで、この場に蔓延していた恐怖心もまた、消え去ってゆく。リュウタロスが、麗奈が、各々立ち上がった。

「なんだったの、アイツ。すっっっごい嫌な感じだった」
「それがヤツの能力だろうな。それが解けたということは……死んだと考えていいだろう」

 最前までの怯えが嘘のように、麗奈は淡々と状況を纏めた。デルタはようやく、デルタムーバーを腰に装着し、デルタフォンを引き抜いた。青白い光が霧散して、デルタの装甲から、三原が解き放たれた。即座に膝をついて、三原は深く息を吐き出す。リュウタロスが三原の元へと駆け寄った。

「それより、やったじゃん修二ーっ! まさか修二がアイツをやっつけちゃうなんてさあ!」
「あ、ああ……あの時は、俺がやらなくちゃって、無我夢中だったから」

 はじめて褒められたことがくすぐったくて、三原はバツが悪そうに目線を伏せた。勝利したとはいえ、心地のよいカタルシスといったものはない。人があんな化け物に成り果てて、あんな風に消えてなくなることに、三原は少なからず衝撃を受けていた。理性のあるオルフェノクを倒し、その体が灰となって消えるよりも、ずっと後味が悪かった。
 草加のように強くなれたら、こんな気持ちは抱かずに済むのだろうか。

「浅倉……お前、こんな最期で満足なのかよ」

 浅倉が消滅した辺りに立って、真司は苦しそうに俯いた。浅倉からの返答は、もう二度と返ってはこない。

「あの男は、最期まで望み通り戦って果てたのだ。ある意味では幸福だったのかもな」

 その場の全員の視線が、声の主である麗奈へと向けられた。
 一同が知っている、気弱な麗奈の影は、そこにはない。玲瓏な瞳で現実を淡々と見据える鉄の女が、そこにはいた。
 麗奈は、来し方を眺めている。その向こうにある病院に視線を向けているようだった。

「ねえ、麗奈……麗奈、どうしちゃったの? 大丈夫なの!?」
「なあ……アンタ、アンタ間宮さんじゃないのか」

 リュウタロスと真司が続けて問うた。
 結んでいた髪の毛をほどいた麗奈が、黒く艶やかな髪を靡かせ、振り向いた。その表情に恐れや怯えは見られない。けれども、少なくとも総司を襲った時のような敵意の類は、今の麗奈からはもう感じられなかった。

422 夢よ踊れ(後編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 02:11:03 ID:9oSr2oo.0
 
 
【二日目 深夜】
【E-2 焦土】

【間宮麗奈@仮面ライダーカブト】
【時間軸】第40話終了後
【状態】意識統合、疲労(大)、ダメージ(小)、ウカワームに1時間45分変身不可、仮面ライダードレイクに1時間50分変身不可
【装備】ドレイクグリップ@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ゼクトバックル(パンチホッパー)@仮面ライダーカブト、
【思考・状況】
基本行動方針:自分の中に流れる心の音楽に耳を傾ける。
1:病院が気になる。もう逃げる理由はない。
【備考】
※『仮面ライダー』の定義が世界ごとによって異なると、推測しています。
※人間としての人格とワームとしての人格が統合されました。表面的な性格はワーム時が濃厚ですが、内面には人間時の麗奈の一面もちゃんと存在しています。
※意識の統合によって、ワームとしての記憶と人間としての記憶、その両方をすべて保有しています。
※現状、人間時の私服+ワーム時のストレートヘアです。


【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【時間軸】劇場版、美穂とお好み焼を食べた後
【状態】強い決意、翔一への信頼、疲労(中)、仮面ライダー龍騎に1時間30分変身不可
【装備】カードデッキ(龍騎)@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、優衣のてるてる坊主@仮面ライダー龍騎、カードデッキ(ファム・ブランク)@仮面ライダー龍騎、サバイブ「烈火」@仮面ライダー龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:仮面ライダーとして、みんなの命を守る為に戦う。
1:間宮さん……? アンタいったい……。
2:翔一たちが心配。
3:この近くで起こったらしい戦闘について詳しく知りたい。
4:黒い龍騎、それってもしかして……。
【備考】
※支給品のトランプを使えるライダーが居る事に気付きました。
※アビスこそが「現われていないライダー」だと誤解していますが、翔太郎からリュウガの話を聞き混乱しています。
※アギトの世界についての基本的な情報を知りました。
※強化形態は変身時間が短縮される事に気付きました。
※再変身までの時間制限を大まかに二時間程度と把握しました(正確な時間は分かっていません)
※天道総司の提案したE-5エリアでの再合流案を名護から伝えられました。
※美穂の形見として、ファムのブランクデッキを手に入れました。中に烈火のサバイブが入っていますが、真司はまだ気付いていません。

423 夢よ踊れ(後編) ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 02:12:07 ID:9oSr2oo.0
 

【三原修二@仮面ライダー555】
【時間軸】初めてデルタに変身する以前
【状態】強い恐怖心、疲労(小)、仮面ライダーデルタに1時間50分変身不可
【装備】デルタドライバー、デルタフォン、デルタムーバー@仮面ライダー555、ランスバックル@劇場版仮面ライダー剣 MISSING ACE
【道具】草加雅人の描いた絵@仮面ライダー555
0:俺でも、戦っていけるのかもしれない……。
1:できることをやる。草加の分まで生きたい。
2:間宮さん……、敵では、ないのか?
3:巨大な火柱、閃光と轟音を目撃し強い恐怖。逃げ出したい。
4:巧、良太郎と合流したい。村上を警戒。
5:オルフェノク等の中にも信用出来る者はいるのか?
6:戦いたくないが、とにかくやれるだけのことはやりたい。
7:リュウタロスの信頼を裏切ったままは嫌だ。
【備考】
※リュウタロスに憑依されていても変身カウントは三原自身のものです。
※同一世界の仲間達であっても異なる時間軸から連れて来られている可能性に気付きました。同時に後の時間軸において自分がデルタギアを使っている可能性に気付きました。
※巧がオルフェノクであると知ったもののある程度信用しています。
※三原修二は体質的に、デルタギアやテラーフィールドといった精神干渉に対する耐性を持っています。今抱いている恐怖心はテラーなど関係なく、ただの「普通の恐怖心」です。


【リュウタロス@仮面ライダー電王】
【時間軸】本編終了後
【状態】疲労(大)、ダメージ(中)、仮面ライダー電王に1時間40分変身不可、イマジンとしての全力発揮1時間50分不可
【装備】デンオウベルト+ライダーパス@仮面ライダー電王、リュウボルバー@仮面ライダー電王
【道具】支給品一式、ファイズブラスター@仮面ライダー555、デンカメンソード@仮面ライダー電王、 ケータロス@仮面ライダー電王
0:修二、強くなったじゃん! 嬉しい!
1:麗奈……? どうなっちゃったの?
2:良太郎に会いたい
3:大ショッカーは倒す。
4:モモタロスの分まで頑張る。
【備考】
※人間への憑依は可能ですが対象に拒否されると強制的に追い出されます。
※自身のイマジンとしての全力発揮も同様に制限されていることに何となく気づきました。
 

【全体備考】
※浅倉威の体は、過剰な進化と過剰なダメージによって消滅しました。
※ヘラクスのライダーブレスはゼクターごと破壊、消滅しました。
※E-2 焦土に浅倉が所持していた支給品×3、鉄パイプ@現実、大ショッカー製の拡声器@現実 が放置されています。

424 ◆MiRaiTlHUI :2018/03/30(金) 02:13:14 ID:9oSr2oo.0
投下終了です。
なにかありましたらよろしくお願い致します。

425 名無しさん :2018/03/30(金) 02:32:35 ID:ZRkhprnM0
投下乙です。

麗奈のウカワーム化やドレイク変身など、麗奈にスポットが当たったかと思いきやの、まさかの三原くん特異体質説でささやかに浅倉を撃退。
かなり本気で前に出てきたというよりは、普通のライダーのように戦ったら漁夫の利の如くボスキャラを倒せちゃったというような感じでもあるんですが、ここまでまったく働かなかった彼とデルタが大金星ですね。
三原くんが頑張りすぎるとそれはそれでいきなり凄いなーともなるので、まだヘタレっぽさも多分彼の中にはありつつ、「なんか勝てちゃった」みたいな具合で勝つところが三原らしいというか。
彼は普通の人であるという個性もあって、こういう立ち位置が一番安定感あっていいなーと個人的に思います。
そして、ここまで全くの無傷かつ健康体で過ごしてきたのもあって、実はコンディション的にも彼は現在最強なのも「漁夫の利ライダー」に納得いく理由でしょうね(現段階でちょっと疲れてる程度で、これといって攻撃も食らってないからダメージすらないってすげえ)。
エグゼイドでトドメだけ差しに来てたニコちゃんの男版だと思うとすごく可愛いかもしれません。

麗奈の方は、これまでと打って変わって「ワームの方の人格が強まりつつも自由に、危険性はなく」といった形で、乃木さん同様にワーム勢では活躍が高まりそう?
これまでの護られキャラから、ここで一気に戦力としての活躍も見込めるようになり、発言力も強まりますしね。
これまでの麗奈と別人が成り代わったというのもあって、ちょっとひと悶着はありそうですし、仲間だった彼らには受け入れづらいかなというエンディング。
本当にこれですんなりと話が進むのか。麗奈が影を潜めてしまった事に、彼らはどう反応するのか。
次のドラマも広がりそうですね。

真司は真司で、浅倉の死にも納得いかず。苦しそうな声で浅倉の最期を見届けるのもまた真司らしい。以前の修正で真司がこちら側に来たのも話として効いてきた感じです。
更にいえば、ファムを撃退して美穂の無念を晴らすというところで軽く勝利も。早めに消えたので地味ですが、わりと勝負は見せましたね。
リュウタロスはうれしそう。

マーダー浅倉が落ちて尚、制限なしのずるしてるキングくん、チート鎧持ちの渡くん、チートのダグバといった競合揃い。
始さんはここからマーダーとしていけるの?って感じですが、この三人がいる以上、浅倉は勝ち残りの目がなさそうだったのかなぁ……。
って、龍騎の世界も真司だけじゃん……やべえよやべえよ……。
ライダーロワや多ロワやロワロワといった完結ロワは勿論、原作ですら生き残れなかった「死が似合いすぎる」真司くん。ここからいける?大丈夫?

426 名無しさん :2018/03/30(金) 07:23:37 ID:tEcxtY5I0
投下乙です!
三原がまさか特異体質の持ち主だったとは! 確かにデルタギアの毒に負けなかったですし、何よりも彼自身の人格と体質が合わさったからこそ今回の勝利があったのですよね!
レナさんも覚醒して、もうこのロワのヒロインと呼ぶにふさわしい人ですね! 真司も美穂の仇を取れましたし、リュウタロスもこれから三原ともっと絆を深め合って欲しいですね。
そして浅倉もついに最期を迎えましたか……彼らしい壮絶な死に様で、だけど当人は微塵も後悔していないのですよね。麗奈が言うように、これもまた幸福な最期だったのでしょうか。

龍騎も真司が最後の砦となり、もう彼に世界の命運が託されたのですよね……
どうにか、西のエリアでの戦いは収まりましたけど、それぞれ傷を負っているので油断はできない。

427 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/30(金) 09:23:30 ID:c.G6iZq20
投下乙です。
三原、リュウタ、麗奈の三人による対浅倉戦。
人を守りたい気持ちをしっかりと認め心の中の音楽に耳を傾けた麗奈、図らずも原作と同じ結論に辿り着きある三原、可愛いリュウタ、三人の思いがどれも魅力的でした。
浅倉は王蛇が壊れちゃった時点でまぁこうなるのは仕方ない。
残るマーダーも残り少ない中、麗奈が対主催として戦ってくれる覚悟を決めたのは実に喜ばしいですね。

そして、全世界残り二人(キング@ブレイドを除いて)な状況から最初に出た死亡者、浅倉威。
龍騎の世界の命運は真司に託され、他の世界も全く気が抜けないこの状況、次はどの世界が崩壊するのか、そもそも崩壊するのか、一読み手としても楽しみです。

また、拙作に対するご感想、支援皆様本当にありがとうございます。
一つ一つじっくり読ませてもらって励みにさせていただいております。
今後とも是非ともよろしくお願いいたします。

428 ◆.ji0E9MT9g :2018/03/30(金) 09:29:25 ID:c.G6iZq20
あ、すみません。
真司君も勿論魅力的でした!
美穂の形見のデッキを浅倉に使われるのを何とかやめさせ、その残骸を回収、これで美穂も報われるでしょう
ブランクファムのデッキを手に入れ中にサバイブがあることに気付ければ翔一と張り合ってた格好いいフォームになれるけど……どうなるか

429 ◆MiRaiTlHUI :2018/04/01(日) 02:33:16 ID:YozZkbTE0
たくさんの感想ありがとうございます!書いた甲斐があります。とても嬉しい。
ところで今回の話なのですが、収録するにあたって、細部を修正させて頂きました。

具体的には、
・細かな文章の修正、会話の追加、戦闘中の描写や動作の追加
・前編後半の麗奈の描写と会話の追加
・浅倉死亡時の描写の追加、その後の死亡理由の考察見直し
・真司が美穂のカードデッキを回収するシーンの追加
あたりになります。
ちょっとこの分量を二度読むのはしんどいと思うので、修正したわかりやすいところだけここで報告させていただきます。

430 名無しさん :2018/04/05(木) 21:43:45 ID:9u/QSp/Q0
年度末年度始で感想を後回しにしていた間に、一気に三作も溜まってしまった恐怖。
何事も後回しにしちゃいけないってことですね……とはいえ、めちゃくちゃ面白い話が連続で読めて大満足。これが嬉しい悲鳴ってか!

>>Bを取り戻せ
注目のVSダグバパート。シャイニング、キング、ハイパーと最強フォーム目白押しの超決戦!
特にジョーカーの男、左翔太郎がどう見てもヤムチャ的戦力だったジョーカーから、剣崎の意志を奪還したかのようなキングフォーム披露は燃えますねぇ!
伝聞とはいえ四号を知るアギト=翔一の仮面ライダーらしい啖呵、もう自分の前でブレイドに死んで欲しくないと身を投げ出す擬態天道も魅力充分。満を持して降臨しダグバさえハメる渡ダークキバも格好良いぜ。
そんな総力戦の末、遂にセッティングアルティメットごと最強マーダーのダグバ撃退! ……とはいえ肉体的にはまだまだ無事、勝利の最大の立役者が同じくマーダーのキング渡なので対主催楽勝ムードには遠く。
そのキング渡はおのれディケイドな悪評を吹聴しまくるものの、未だ前話の余韻が抜けない名護さんとの対峙がなんとも切ない。
彼にとって懐かしい居場所に座った擬態天道、果たして兄弟子の言葉をそうとは知らず真に受けて再びディケイドと対決してしまうのか? 先が気になりますぜ。


>>全て、抱えたまま走るだけ
こちらは勢力疲弊の目立ってきたマーダーのニューカマー、アンデッドの方のキング(紛らわしい)。
強豪怪人ながら、エクシードに目覚めたギルスの敵じゃないぜ! と言いたいところながら、主催側の特権をフルに活かしたかのような変身制限なし&自動封印なしの不死身っぷりはダグバとは別ベクトルで極悪過ぎる。
熱い逆転演出も話が変われば切れてしまったかのように涼を追い詰め、カリスに襲いかかられてもゾーンやベルデというまさにズルい支給品を活用して涼しい顔。地味に変身制限がなければミラーワールドに入らなきゃベルデも変身時間の制限がないということで透明化してやりたい放題。腹立つわぁ。
そんなキングを一旦とはいえ退けた始さんと葦原さん。剣崎の友と、彼の遺志を継ごうとする男の邂逅。
ディケイドに対するスタンスも元Dを狩る者たちの中では比較的温和なムッコロさんと、なんかすっかりもやしに攻略された感のある涼の会話で、東と違って西は世界の破壊者への悪感情は解消されるかな? でもキングフォームの影響あるからなぁ……そして対主催の要・乃木さんの復活や如何に。これまた続きの気になるパートでした。
それにしても今回の登場人物(嫌よ嫌よも好きのうちなキング含め)みんな、剣崎のこと好き過ぎるでしょ。Bを取り戻せでのブレイバックル奪還含め、自分も剣崎大好きだからほっこりしちゃう。


>>夢よ踊れ
「おかえり、(天才書き手◆)M(iRaiTlHUI氏)」
数年ぶりに◆MiRaiTlHUI氏のSSがまた読めて、とても嬉しいです。
元の世界からの、それ以上に深まった因縁で始まる城戸真司と浅倉威の激突。美穂の形見を浅倉の手から解き放つ、という決着は、これが仮面ライダー龍騎の物語であったなら真司の勝利でした。
しかし、この物語は平成ライダーロワ。ライダーデッキ以外にも絶大な暴力を複数持つ浅倉はマーダーとしてまだまだ負けていません。
そこから主役交代とばかりに真司とバトンタッチしたのはリュウタロス、が守りたいと思っていた麗奈。
人とワームの人格を統合してもなお、明らかにリュウタたちに情を抱き、ドレイクゼクターにも認められる彼女は会場内の紅一点に相応しいこの話の主役……の、はずだったのに、ラストを持っていくのはまさかまさかの三原ァ!?
デルタギアで凶暴化しないのはヘタレ過ぎたからではなく、特異体質の影響だったなんて……確かに前話の状態表でもテラーの影響が書かれてなかったけどもw!
しかもテラーの天敵は三原でも、三原の天敵が浅倉のはずなのに、真司たちが連戦で削ってくれたから戦ったらなんか勝てちゃったみたいな雰囲気なのが彼らしいけども、けども!
空気すぎる故に平和の担い手と呼ばれた三原、まさかまさかの大活躍……はっ、そういえば三原もまたM……!?
浅倉もちゃんと怖かったし何なら悲しかったのに、二人のMの放つ圧倒的な魅力に全てを鷲掴みにされてしまったようなお話でした。凄いぜ。


改めて、お二方とも投下お疲れ様でした!

431 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:03:47 ID:QHlsF8kk0
>>430
ご感想ありがとうございます!毎度励みにさせていただいております。
話の流れ上仕方ない面もあるとは言え、今回も剣崎大好き面子によるお話でございます。ご了承くださいませ。

さて、それではただいまより投下を開始します。

432 決める覚悟 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:04:21 ID:QHlsF8kk0

乾巧が灰と化し、志村純一が封印されてから、既に30分ほどが経過していた。
巧の遺体がそのまま灰となり後に首輪だけが残された為それを首輪解析機にかけている間、時間を持て余すのも惜しいと残された彼らはGトレーラー内で多くの支給品を囲んでいた。
もちろんそれをそれぞれに分配するため、そしてそれによって戦力を可能な限り平等にするためだ。

「まずは志村と巧の支給品から分けるぞ。特別必要ないものはこのデイパックに分ける」

士が、他の4人に向けそう言いながらその手に荷物の入ったデイパック2つともう一つ何も入っていないデイパックをぶら下げた。
まずは志村のデイパックが開示され、それによってフィリップを襲いダイヤのカテゴリーキングのカードを奪ったのも志村純一であったことが判明したが、姉の敵であったことがわかった後にその程度のことがわかったところでフィリップには今更それに対してどうこう言うほどの怒りも沸いてこなかった。
そして変身道具が分配され、グレイブがフィリップ、オルタナティブ・ゼロが良太郎、ナイトが橘に渡る。

 同時にラウズカードは村上の持つ志村自身が封印されたアルビノジョーカーのカードを含め橘に渡り、それ以外の志村の持っていた武器は生身で持つには危険物にしかならずまた護身用として持っていてもこれから先生き残っている参加者相手には有効打たり得ないと判断された為に不要な支給品用デイパックに纏められた。
 次に巧のデイパックが開示され、それにより首輪探知機という強力無比な支給品が明らかになったが、これはこの場でなし崩し的にリーダーを務めている士の所有物となった。
 しかし残されたもう一つの支給品に、即座に手を伸ばすものが一人。

 「……何のつもりだ、村上」

 村上峡児、彼が一切の疑問を持たぬままその手を真っ直ぐにそのベルトへ伸ばしたその手から、士はファイズドライバーを離す。
 その彼の様子に一切の理解が出来ないといった様子で笑うのは、もちろん村上だ。

 「何のつもりとは心外ですね。……ファイズのベルトは元々我が社の所有物だ。それにこの場で私以外が扱えないその鎧、持て余すにはあまりにも過ぎた力だ」
 「それは分かってる。俺が言ってるのはそこだ村上。お前は、お前にしか使えない力を余りに多く持ちすぎてるんじゃないか?」

 カイザと同じく全く問題なく自分のものになると疑わなかったそのベルトを渡すのを渋ることに村上が冷静に抗議すれば、それを待っていたとばかりに士は口を開く。
 それを言われ、村上は思わず苦笑する。
 つまりは、彼は自分が裏切り殺し合いに乗るなどしたとき、自分が持っている変身能力があまりに多いとそれがそのまま自分を抑える際の障害になるということを危惧しているのだ。

 確かに、それは必ず危惧しなければならない問題だ。
 今の自分がファイズを手に入れれば、自分とは切り離せないオルフェノクの力を含め5つもの変身能力を所有することになる。
 この首輪がなければ一切考慮の必要のなかった要素であっただけに、村上もそれについて考慮するのが遅れてしまった。

 しかし、それもここまで。
 変身能力を多く持っていることが問題だというのなら、それを減らすことで彼の懸念の一つは軽減できるだろう、と彼は懐のバードメモリを取り出す。
 そしてそのままそのメモリを全員が見ている中で士の持つ不要な支給品を纏めるデイパックに落とした。

 「……何の真似だ、村上」
 「見ての通りですよ。貴方が私の変身能力の多さを懸念するというのなら、その内の一つ、特に冴子さんとフィリップくんの両者が副作用の危険性を説いていたガイアメモリを手放すことは厭わないということです」

 実際には、冴子はガイアメモリの毒性を秘匿していた。
 が、それについて深く言及するのも仮にも彼の弟であるフィリップの気を損ねるだけだったし、同時にそれがそのままチーム内不和にしかならないことも知っていた村上は、いっそ冴子も毒性について語っていたことにしてしまおうと考えたのだった。
 と、再度士の顔を見つめれば、しかし予想通り未だ自分にベルトを渡すのに踏み切れないようだった。

 ファイズの力がバードよりも遙かに強いから?それもあるかもしれないが、本当の理由は別にあると、村上は既に見抜いていた。

433 決める覚悟 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:04:44 ID:QHlsF8kk0

「――乾さんの遺品が、私に使われるということにそこまで抵抗がありますか?門矢さん」
「……」

 全てを見透かしたような顔でそう言いながら一つ息を吐く村上を、士は睨み返す。
 彼と巧の付き合いは決して長くなかったはずだが、しかし同時に決して軽んじられるような軽薄なものではなかったはずだ。
 そんな仲間が敵対視していた男にその力を渡すことに、流石の士も抵抗があったということなのだろう。

 周りを見渡せば、強く主張はしないもののフィリップや橘といった巧をよく知る参加者も同じ心境であるらしく、やるせない表情を浮かべていた。
 それに対し全く甘ちゃんで不愉快な方々だ、と心中で皮肉を吐きながら、しかし一応はチームである現状それを悪くする必要もないと村上は気持ちを切り替える。

 「……門矢さん、お気持ちはお察しいたします。しかし、乾さんとファイズは本来同一視されるべきものではない。ベルトは所詮力。乾さんの信念によって彼の正義を果たす時もあれば、同時に私の信念によって用いられる時もある。
そこに違いは存在しません。ただ一つ間違った扱い方が存在するというのなら、それはその力を恐れ持て余すことだ、と私は思います」

 理路整然とした村上の言葉に、士は数瞬考えるような素振りを見せた後、ゆっくりとそのベルトを村上が手を伸ばせば取れる位置に置いた。
 
 「お前の言うことにも一理ある。これは、今お前に渡す以外じゃ無駄にしかならない。この力を持て余すことなんて、大ショッカーを倒す上で誰も望まないことだ」

その言葉に対しフィリップたちが些か驚愕に満ちた声をあげるも、しかしそれに取り合うこともなく士は再度伸びかけた村上の手を遮る。
 これには流石の村上も付き合いきれないとばかりに溜息を漏らしかけるが、しかしその目をしかと見つめながら士は口を開いた。

「――だが、条件がある」
 「条件……?」

 村上の言葉に、士は頷く。
 力を放棄し、その上でこの力を使うことに賛同しながら、一体何を?
 口約束だけの条件など意味がないことを、皮肉にも村上が殺し合いに乗っていないという言葉で痛感しているはずだというのに。

 「今ここでお前にファイズ、そしてカイザを渡す代わりに、巧の首輪が解析出来てからもお前の首輪はまだ解除しない。それが条件だ」
 「何を言い出すかと思えば……!」

 士のその言葉に、村上は思わずといった様子で立ち上がる。
 種族毎に首輪が異なり、恐らくは巧と村上のものは完全な同一規格のはずであった。
 故にその首輪が解析され内部構造を理解できれば、間違いなく自分の首輪は解除されるだろう、と村上は睨んでいたのだが。

 それを、本来自社の所有物であるベルトを引き渡す代わりに先延ばしにしろと?
 全く以てお笑いとしか言いようがなかった。

 「お前の怒りは理解出来る。だが、お前が最初に首輪を解除し変身制限を無視できるようになったときを考えると、悪いが他に最低後一人は首輪を解除してる奴が欲しい。……理由は、言わなくても分かるな?」
 「……えぇ、もちろん」

 言いながら、村上は自身から発せられる威圧が膨れあがっていくのを抑えることは出来なかった。
 つまりはこういった面が彼に単身での首輪解除を拒ませる理由の一つなのだろうが、しかし自分にとってそれを隠すような演技をする理由もない。
 まぁそもそも巧から自分の悪評を散々聞かされた後だろう彼らを前に、今更元の世界で人間に見せていた敏腕若手社長としての表情で機嫌を取ろうとしたところで逆効果にしかならなかっただろうが。

 故にこれは自分がどう立ち回っていたとして訪れた問題なのだ。
 自分が抱くオルフェノクを至上とする正義が彼ら別世界の仮面ライダーにも理解されなかっただけのこと。
 そう考えればむしろ下手に演技を駆使して彼らを懐柔しようとしていない分だけ、志村純一に騙された彼らに対しては「いずれこいつの首輪も解除しなければいけない」という立場に立てているだけ喜ぶべきなのかもしれない。

434 決める覚悟 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:05:06 ID:QHlsF8kk0

 であれば、今自分がすべきはこの士の提案に対し怒りを露わにし周囲から警戒されることではない。
 取りあえずは彼の提案を快く受け入れつつ念願のファイズのベルトを手にしてこれ以上の参加者が増えたところで自分の首輪解除の順番を確保することのはずだ。
 むしろ士がこうして首輪解除を他に何人か出来た後であれば自分の首輪を解除することに異論はないというような言質を取れたと、好意的に捉えるべきではないのか。

 ここまでを少し顔を俯かせた数秒の沈黙の間に思考し終えた村上は、再度士に振り返りいつもの笑顔を浮かべた。

 「……分かりました、門矢さん。私の首輪解除は後に回していただいて構いません、が私は時間の浪費が嫌いでしてね。
もしもあなた方が故意に私の首輪を解除することを先延ばしにするようであればその時は――」
「――分かってる、心配するな。俺は約束は守る。勘違いされたくないから先に言っておいたってだけだ」

 一応釘を刺しつつ、村上は士が手を退けたファイズドライバーを自身のデイパックに収める。
 カイザに続き、これで二本目。
 最早自分の持つオーガのみで十分な気もするが、しかし王を守る三本のベルトを揃えておくことはいずれ来たる王の復活と、そしてオルフェノクの未来を盤石なものにするために無駄なことではないはずだ。

 (であれば、残りはデルタ……ですか)

 最期に残ったベルトの一つの名を思い浮かべながら、村上はそれを持っているであろうこの場で最期の流星塾生の生き残りのことを考えていた。

 「すまないな、門矢。首輪の解除を村上から行う訳にはいかないとは言え奴にファイズを渡すような役回りをさせてしまって」
 「いや、気にしなくていい。村上も言ってたが、結局ベルトはベルト。力は力だ。誰が使うか次第でその性質は大きく変わる。
例えそれでファイズが巧の望まない形になるとしても、俺たちが止めれば良い。力があるのに持て余すほうがよっぽど罪深いさ」
「……なるほど」

 一方、村上との静かな戦いを終えた士は橘に受けた労いの言葉にやはり何てことのないように返す。
 それを受け少しの間の後に彼方を見やった橘は、同様に自分と同じくその視線をここではないどこかへ走らせている良太郎とフィリップを認める。
 恐らく、自分を含め三人とも今の言葉を受け、考えたことは同じだろう。

 つまりは、力は力。それを扱うもの次第で、その性質は大きく変わると言うこと。
 今橘たちの手にあるのは、先ほどまで多くの参加者を騙し続けその命を吸い続けた死神が駆使していた力だ。
 その力を纏わなければいけないかもしれない状況に、忌避感が全くないと言えば、勿論嘘になる。

 秋山という別の参加者が立派に仮面ライダーとして用いていたナイトのデッキを持つ橘でさえそう思うのだ、志村しか扱っていたのを知らないグレイブとオルタナティブを持つ彼らにはより一層そうした感情が巻き起こっているかもしれなかった。
 しかしそうして行き場のない感情を抱いていた彼らに直接言うわけでもなく、士は言った、力は扱う人によってどうにでも変えられると。
 未来の橘が作り上げたライダーシステム、とある天才がミラーワールドを閉じるため開発した疑似ライダー、そして愛する女性のため戦った一人の騎士の鎧。

 それらが本来持っていたはずの理想や或いは目指そうとして挫折した希望。
 もしも志村によってそれらがねじ曲げられたというのなら、自分たちの手でそれを成すべきではないか。
 先ほどまで鬱屈とした感情を抱いていたのが嘘のように、彼らの表情は明るいものに変わっていた。

 村上を説き伏せつつ、三人がそれぞれ抱いていたやるせない思いも同時に解消したのは、果たして狙い通りであったのか、或いは偶然か。
 門矢士という存在にこの場の空気が動かされているのを感じつつ、橘はふとトレーラー内に散乱する志村の持ってきた荷物に目をやった。

 「これは……確か、始のいる店の親子か」

 そこにあったのは、始がその正体を知らせぬまま居候している白井虎太郎の姪と姉、栗原親子と恐らくは彼女らの父であり夫の移っている写真であった。

435 決める覚悟 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:05:24 ID:QHlsF8kk0

 「それは、草加雅人に支給されていたものだね。知り合いかい?」

 何気なく目についただけの写真であったが、それを以前にも目にしていたフィリップが口を挟んでくる。

 「あぁ、まぁな……」

 その問いに僅かに返答を戸惑いつつも、橘はこれを今の状態の始に見せたときどういった反応を見せるのかで彼の状況に判断がつくのではないかとも考えていた。
 つまり自分の考えていたようなジョーカーとしての本能に支配された時期なら一切反応しないだろうし、自分のよく知る最近の彼であればこの写真を傷つけることなど考えもしないはずだ。
 であれば、或いはこの支給品は有用なものかもしれない、と彼はそのまま懐にその写真を忍ばせた。

 その最中も、手を止めている時間はないとその周辺に散らばる恐らくはヒビキの世界のものだったであろう剣やバイオリン、ショットガンを士の言う不用意なものを集めるデイパックに集めていき、ディエンド用ケータッチの名がついたそれは士の手に渡った。
 と、そんな中フィリップが二つの支給品をその手に持ったまま止まっているのを見て、橘もまたその動きを止めた。

 「どうした、フィリップ?」
 「……すまない、何でもない。この二つは五代雄介に支給されていたものだったから、少しその時の会話を思い出して」

 言いながら、フィリップは少し儚げに笑う。
 園咲邸での支給品開示の際、五代がそのデイパックより取り出した二本の飲料水のものらしい瓶と禍々しい雰囲気を持った包丁。
 普通に考えれば外れも良いところのその支給品をしかし、五代は一切気にせずどころかクウガの力があるから大丈夫だと戯けていた。

 しかしその言葉に不安を抱く前に何故か安心してしまった自分を思い出して、同時に五代の笑顔も思い浮かべてしまったらしい。
 少ししてそれが悲しく思えて、フィリップは手に持った支給品たちをそのまま不要な支給品入れに纏めた。

 「さて、これでGトレーラーの中のものは整理し終えたな。なら次は俺たちに支給されてるものを整理するか。もしかすれば、お互いの戦力になるものがあるかもしれないしな」

 少し湿ってしまった空気を払拭するように、あえていつもの調子で士が仕切り出す。
 それを受けその提案に不満はないと彼らもまたデイパックを広げた。
 とは言っても、フィリップと橘のそれは殆ど整理が完了しており、今更着る理由もないゼクトルーパースーツをかさばるという理由で、またライアーのメモリも毒性の関係と解析はフィリップがいる以上必要ないと不要な支給品に分配された以外は既に他者が入り込む隙はないように感じられたが。

 そんな中で、次に開示されたのは士のものだった。
 ディケイドやディエンドのカードやドライバーは問題なく彼のものとして認められたが、続いて出てきた二つの支給品は、その場を沸かすものであった。

 「それ、桜井さんの……!」
 「これは……、僕たち家族全員の名前が彫ってある……」

 この場に来てすぐに確認し自分には縁のないものだと放置していた二つの支給品が、それぞれ仲間の思い出の品であったらしいことを認めながら、士はそれを取り出す。
 その支給品は、それぞれ彼らの大事な存在を想起させるものであった。
 良太郎が昔姉と交際していた桜井という男からもらった懐中時計と、フィリップがもう忘れてしまった過去、家族全員の名前を書いた悪魔のしっぽ、イービルテイル。

 それらを多くの思い出と共に感謝を述べそれぞれ懐に収めた彼らを前に、村上もまた士に対しデイパックより二枚のカードを取り出し、それを差し出した。

 「これらのカードが一体何に使用するものなのか一切理解出来ていませんでしたが……どうやらあなたのカードと同規格のもののようだ。これは貴方にお譲りしますよ」

 言葉と共に差し伸べられたのは王蛇、歌舞鬼のディエンド用ライダーカードセット。
 それに一言礼を述べつつ彼もまた新たなカードを懐に収めた。
 これにより士の戦力もまた増強し、この場のメンバーの戦力は申し分ないものになったと言って差し支えないだろう。

 「橘朔也、ディケイド、そろそろ乾巧の首輪が解析出来た頃だ。一旦病院に戻ろう」
 「あぁ、わかった」

 と、時計を見やったフィリップの提案によって、この場のメンバーは全員病院に向け再度歩き出した。

436 決める覚悟 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:05:47 ID:QHlsF8kk0


 ◆


 「やはり秋山蓮と北岡秀一のもの、それにイマジンやアンデッドのものとは構造が大きく違う。これで参加者の種族が後天的か先天的かの差異ではないことが証明されたね」
 「あぁ、だがやはり問題は先ほどまでと全く変わっていない。同じ世界間でなおかつ種族の異なる参加者の首輪を解析しなければ俺たちの首輪解除には繋がらない」

 新たに得られた首輪の解析結果を二人で食い入るように見入りながらそう話す橘とフィリップ。
 士もまた首輪解除に有力な情報や技術を提供できるかもしれないと一応同席してはいるが、こういった理論詰めの話は正直聞いていて眠くなる。
 そもそもにして自分の才能の多くは“やっていた記憶もなにもないが何故かやろうと思えば出来る”といった類いのものだ。

 そんな自分が一歩間違えれば参加者の命を奪うことにもなってしまいかねない首輪解除のための要因として数えられているというのは士自身少々不安に感じてしまう。

 「――どうする?百聞は一見にしかず、百見は一触にしかずだ。二つある龍騎の世界の首輪を試しに分解してみれば、少なくとも城戸の首輪解除に役立つし、上手くいけば特殊な種族ではない参加者の首輪を解除出来る可能性もある」
 「確かに、こうしてここでずっと仮説を話していても意味はない。君の言うとおり一度首輪を分解してみるべきだろうね」

 そんな事を士が思う中、首輪解除要因としての責任感が人一倍強い二人は同種の首輪が二種類存在する北岡と蓮、二人の首輪を分解することを決める。
 それによって少なくとも一人、友好的な参加者の首輪を解除出来る可能性が出来るのだから、時間を無駄にしないためにも早くに着手するべきだった。
 と、一応の方針を打ち立て立ち上がった彼らに士も追随しようとして、後方から聞こえてきた良太郎の「アレ?」という声に振り返った。

 「どうした?良太郎」
 「――村上さんが、いない」

 サーッ、と青ざめた顔でそう言う良太郎を受けて、彼らも同様に周囲を見渡す。
 村上峡児、正直なところ、単独行動を許すのはあまりに危険すぎる彼から目を離してしまった事実に歯がみしつつ、しかし士はすぐに異変に気付いた。
 先ほどまで、接近者に誰かが気づけるようにとすぐそこのテーブルに置いてあったはずの首輪探知機が、消えている。

 「やられたな……」

 それを見て、橘は悔しそうな表情を浮かべる。
 村上が首輪探知機という有用な支給品を持ってチームから脱退したと思っているのだろう。
 士も一瞬そう考えかけて、しかし違うと頭を振る。

 こんなに早くチームから抜けてしまうなら、Gトレーラー内で自分に戦力をみすみす渡す必要はない。
 それに後回しにされるとは言え首輪を解除する約束まで取り付けたのだから、彼の言葉を信じ大ショッカーに反逆を企てているのならあまりにも無意味な行動である。
 と、そこまで考えて、士は先ほどの村上との会話を思い出し、思い至る。

 村上のやろうとしていることと、首輪探知機をこうして持ち出した理由を。

 「あいつ……!」

 そこまで考えてからは、早かった。
 仲間の制止する声をも無視して、士は村上が向かったであろう場所まで向かう。
 首輪探知機などなくても、暗闇の中でも、一直線に彼はその足を速めていった。

 そして、間もなく見つける。
 自分が思ったとおりの場所で、首輪探知機を持ち、立ち尽くしている村上の姿を。

 「――村上!」

 走ってきたために乱れた呼吸を整えながら士が叫ぶと、村上はいつものように余裕を持って振り返る。

 「門矢さんですか。心配させてしまったなら申し訳ありません。首輪を入手して、またすぐに戻ろうと思っていたのですが」

437 決める覚悟 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:06:05 ID:QHlsF8kk0

 その村上の言葉を聞いて、やはり自分の考えは間違っていなかったらしいと士は思う。
先ほどの首輪解除を後回しにするという会話の中で、自分は確かに聞いた。
『もしもあなた方が故意に私の首輪を解除することを先延ばしにするようであればその時は』という、村上の言葉を。

 あの時はそれを余りにも軽く考えていたが、村上という男の価値観から言えば、橘とフィリップの首輪の種類に関する疑問を最も早く解決し最終的に自分の首輪解除を早める為に必要なことは首輪のサンプルを増やすことだという事ぐらいすぐに理解するはず。
 そして、恐らく彼は首輪探知機を見た瞬間、それに反応する動かない点、つまり死体が側にあることなどすぐに見抜いたのだろう。
 故にこうして反対意見を述べるだろう自分たちには内緒で首輪を入手し、事後報告で済ませる気だったのだろう。

 他でもない、もう誰にも傷つけられたくないとそこに埋めた、剣崎一真の首輪を入手したことを。

 「門矢ッ、無事か!」

 ようやく士の息も整ってきた頃、後方より追いかけてきた橘たちの声が聞こえる。
 ここに来る途中で彼らも村上のしようとしていたことが薄々と理解出来たらしく、その目には焦りが見られた。

 「やれやれ、どうやら私に信頼は一切ないようですね。皆さん」

 残念です、と続けた村上に対し、しかし士はなお肩を怒らせ彼を威嚇する。

 「……村上、ここで何をしようとしていた?」
 「そんなこと言わなくても分かるでしょう。彼の首輪を頂戴しようと思いましてね。出来れば、首輪のサンプルは多い方がいいでしょう?」
 「……剣崎の首を、切り落としてか?」

 橘の静かな問いに、フィリップと良太郎も何も言わないながら無言の抗議を申し立てる。
 剣崎一真という人間の話は伝聞でしかしらないが、しかし立派な仮面ライダーだったらしい彼の安らかな死を妨げ、掘り起こした上でその首を切り落とす。
 それは余りにも残酷で彼の尊厳を無視する行為のように感じられたからだ。

 しかしそんな4人を前に、村上はしかし一切余裕を崩すことはない。
 どころか間違っているのはお前たちの方だと言わんばかりに鼻で笑い一歩足を進める。

 「――では、首を自分で切り落とさなければ首輪を手に入れることに罪悪感はないのですか?」
 「何?」

 村上から吐き出されたのは、意外な問いだった。
 それに思わず困惑した士を尻目に、村上はなおも続ける。

 「凶悪犯罪者のものであれば、首を躊躇なく切り落とせるのですか?生前の行いをその死体にまでぶつけ“彼は首を切り落としてもいい者だ、彼女は首を切り落としてはいけない人物だ”と分別をすると?私には、その方が余程汚く思える」

 知らず知らずの内思わず語調が強くなっているのに気付いたのか、村上は一度咳をし、いつもの余裕を取り繕う。

 「……つまり、私が言いたいのはあなたたちが手にし、そして希望を抱いているその首輪には、それぞれその首輪が繋いでいた首があり、その重みに差はないはずだ、ということですよ。もちろんこれは、あなた方の命に対する倫理観が一般に考えられているそれと剥離していなければの話ですが」

 息もつかせぬ勢いで、しかしよく通る声で話す村上に、4人は圧倒される。
 これが村上という男の話術なのか、と息を呑む中、村上は再び4人を見渡し、そして口を開く。

 「――あなたたちが灰の中から拾い上げた首輪と、今ここに眠る彼の首輪。そこに違いを見いだし私を批判するというなら、所詮それはあなた方自身によって形成されたエゴによるものでしかない。都合良く首輪を手に入れてくれる誰かを批判するだけで自分の手を汚していない気になるのは、あまりに都合の良い考えだ」

 そこまで聞いて、士は村上の本当に言いたかっただろうことを察する。
 つまりは、村上もまたオルフェノクの死によって生まれた灰の山、そこに自分たちと同じく感傷を抱いたのかもしれなかった。
 確かに死の際に灰化した参加者の首輪を用いるのに抵抗がないのに、誰かの首を切り落とすのには抵抗を示すというのは、自分たちが人間だからこそのエゴなのだろう。

438 決める覚悟 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:06:29 ID:QHlsF8kk0

 思わず沸いた指摘とそれによって自分の中に存在した自覚のない差別を感じて、士は押し黙ってしまう。
 しかしそんな彼の一歩前に歩み出たのは、橘だった。

 「――確かに、お前の言うとおりだ。俺たちは首輪を解除すると言っておきながらその手を汚していない気でいたかもしれない。こうして俺たちの手に首輪がある時点でその一つ一つに命があったはずなのにな」

 その手に先ほどまで解析していた巧のものを含め計6つの首輪を携えながら、橘は言う。
 少しの戸惑いの後、彼は意を決したようにその足を剣崎が埋まっている場所の真ん前にまで進めた。

 「剣崎は、誰かが傷つくくらいなら自分が盾になろうとする男だった。自分の首輪で大きく事態が好転するのに俺たちが放っておいたなら、きっと安らかに眠り続けることなんて出来ないだろう」

 そこまで言って、彼はその土をゆっくりと掘り起こしだした。
 万国共通の禁忌、死者の眠りを妨げること。
 これからそれをしなければいけない事実と、しかし一方で剣崎はこうすることでようやく安らかに眠れるのだろうことを橘は思った。

「……本当に、いいのか?橘」
「あぁ、恐らく剣崎なら……誰か別の参加者の首を落とすくらいなら自分の首輪を使えと、そう言うだろうからな」

そうして少しの時間の後、彼らの目の前には、掘り起こされた大量の土と、剣崎の遺体があった。
死後6時間以上を経過したことによりすっかりその肌からは生気が失せ、生前に比べればその顔はいささか膨れている。
しかし一方でその首に輝く銀の輪だけが変わることのない激しい主張を彼らに示していた。

今、彼らは選んだのだ。
剣崎の首を切り落とすこと、それが最も自分たちにとって苦しい選択肢だと知りながら、いやだからこそこの殺し合いを乗り越える為に自分たちがどれほどの命の上立っているのかを忘れないために。
この場にいる参加者にとって決して少なくはない大事なことを教えてくれた剣崎一真、その首を刎ね、その首輪を首輪解除への大きな一歩にすることを。

目の前に晒された遺体を見て、橘も、士も、フィリップも良太郎も、村上でさえ多くを語ることはしなかった。
橘は、ただじっとその閉じられた瞳を見つめる。
戦いの中誰かを守り死んでいったという剣崎の死に様を仲間として、いやそれ以上に友として誇りに思いこれ以上誰にも傷つけられることを拒んだために、彼をここに埋めた。

それを裏切ってしまうことは辛く避けたかったが、それ以上に剣崎は自分の首輪を無視して他の誰かの首を刎ねることの方が絶対に嫌がり否定するだろう事も、長い付き合いでわかってしまっていた。
だから、今は友でもなく、仲間でもなく、その遺志を継いだ戦士として、剣崎の首を刎ねる決意をしたのだ。
その瞳に、最早迷いはない、剣崎をよく知る存在として、これが彼の望んだことだと、確信があったから。

「……」

橘の手には、サソードヤイバーが握られている。
それは或いは死神の鎌のようにも見えただろうが、しかし少なくともそこにいる彼らには、そんな禍々しいものには見えなかった。
その首にゆっくりと刃を近づける橘を見やりながら、士は自分と剣崎の付き合いも、存外長いものになってしまったと思う。

ライダー大戦の世界で初めて出会った時はその圧倒的な実力に敗れただの強敵として認識していただけだったが、後に聞いてみればユウスケに接触しその覚悟を問うていたらしい。
橘から聞いた相川始との関係も相まって、或いは剣崎はユウスケにも破壊者である自分を仲間として認め運命に抗う意思があるのかどうかを知りたかったのではないだろうか、と思えたのである。
或いは、あの剣崎は今目の前で眠る一真とは、やはり別人なのかもしれない。

439 決める覚悟 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:06:51 ID:QHlsF8kk0

それでも彼もまた剣崎一真である以上、完全な外道ではなかったのだろうと思える分だけ、彼との交流は今の士には良いことに思えた。
そこまで士が考えると同時、橘はその剣を勢いよく振り切る。
その刃を幾分か凝固した血液と筋肉が止めようと抵抗するが、しかしサソードヤイバーの切れ味の前には溶けたバターも同然であった。

それによってゴロンと音を立て剣崎の頭が転がったのを見て、思わず良太郎とフィリップは目を背け、しかし橘と士はその行く末すら見届けようとするようにその目をしかと見開いていた。
まるで、この殺し合いのふざけたルールに翻弄され死んだ剣崎の全てをその目に焼き付けるかのように。
数秒の後、士は未だ目を背け青い顔をしているフィリップにその首輪を手渡し、しかし自分は再びその足を剣崎の埋まっていた穴へと移した。

「――フィリップ、先にこれを解析していてくれ。俺たちは一真を埋めてから行く」
「……分かった」

士の絞り出すような言葉にそこに込められた言葉の意味を察しつつ、フィリップは良太郎を連れ病院へと向かう。
その背中に、一瞬だけ土を埋めなおす音が聞こえなかった瞬間僅かに濡れた音が響いたことは、誰にも告げないことを胸に誓いながら。


【二日目 黎明】
【E-5 病院跡地】

【門矢士@仮面ライダーディケイド】
【時間軸】MOVIE大戦終了後
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、決意
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライダーカード一式@仮面ライダーディケイド、ディエンドライバー+ライダーカード(G3、王蛇、サイガ、歌舞鬼、コーカサス)+ディエンド用ケータッチ@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式×2、ケータッチ@仮面ライダーディケイド、キバーラ@仮面ライダーディケイド、 首輪探知機@オリジナル
【思考・状況】
基本行動方針:大ショッカーは、俺が潰す!
0:どんな状況だろうと、自分の信じる仮面ライダーとして戦う。
1:巧に託された夢を果たす。
2:友好的な仮面ライダーと協力する。
3:ユウスケを見つけたらとっちめる。
4:ダグバへの強い関心。
5:音也への借りがあるので、紅渡を元に戻す。
6:仲間との合流。
7:涼、ヒビキへの感謝。
8:黒いカブトに天道の夢を伝えるかどうかは……?
【備考】
※現在、ライダーカードはディケイド、クウガ、ファイズ、ブレイド、響鬼の力を使う事が出来ます。
※該当するライダーと出会い、互いに信頼を得ればカードは力を取り戻します。
※参戦時期のズレに気づきました。
※仮面ライダーキバーラへの変身は光夏海以外には出来ないようです。
※巧の遺した黒いカブトという存在に剣崎を殺した相手を同一と考えているかどうかは後続の書き手さんにお任せします。




【橘朔也@仮面ライダー剣】
【時間軸】第42話終了後
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、精神疲労(中)、仲間の死に対しての罪悪感、自分の不甲斐なさへの怒り、クウガとダグバ及びに大ショッカーに対する恐怖(緩和)、仲間である仮面ライダーへの信頼
【装備】ギャレンバックル@仮面ライダー剣、ラウズカード(ダイヤA〜6、9、J、K、クラブJ〜K、アルビノジョーカー)@仮面ライダー剣、ラウズアブゾーバー@仮面ライダー剣、ザビーブレス@仮面ライダーカブト、ナイトのデッキ+サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式×4、ディスクアニマル(アカネタカ)@仮面ライダー響鬼、変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼、栗原家族の写真@仮面ライダー剣
【思考・状況】
0:仮面ライダーとして、人々を護る。
1:まずは今後の方針を考える。
2:乾に託された夢を果たす。
3:首輪の種類は一体幾つあるんだ……。
4:信頼できる仲間と共にみんなを守る。
5:小野寺が心配。
6:キング(@仮面ライダー剣)、(殺し合いに乗っていたら)相川始は自分が封印する。
7:出来るなら、始を信じたい。
8:剣崎……許してくれ……。
【備考】
※『Wの世界万能説』が誤解であると気づきました。
※参戦時期のズレに気づきました。
※ザビーゼクターに認められました。
※首輪には種類が存在することを知りました。

440 決める覚悟 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:07:10 ID:QHlsF8kk0




【フィリップ@仮面ライダーW】
【時間軸】原作第44話及び劇場版(A to Z)以降
【状態】照井、亜樹子、病院組の仲間達の死による悲しみ
【装備】ガイアドライバー@仮面ライダーW、ファングメモリ@仮面ライダーW、ロストドライバー+(T2サイクロン+T2エターナル)@仮面ライダーW、グレイブバックル@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式×2、ダブルドライバー+ガイアメモリ(サイクロン+ヒート+ルナ)@仮面ライダーW、メモリガジェットセット(バットショット+バットメモリ、スパイダーショック+スパイダーメモリ@仮面ライダーW)、ツッコミ用のスリッパ@仮面ライダーW、エクストリームメモリ@仮面ライダーW、首輪の考案について纏めたファイル、工具箱@現実 、首輪解析機@オリジナル 、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、イービルテイル@仮面ライダーW
【思考・状況】
0:剣崎一真の首輪を解析する。
1:大ショッカーは信用しない。
2:巧に託された夢を果たす。
3:友好的な人物と出会い、情報を集めたい。
4:首輪の解除は、状況が落ち着いてもっと情報と人数が揃ってから取りかかる。
5:首輪をそろそろ分解してみるか。
【備考】
※バットショットにアルビノジョーカーの鮮明な画像を保存しています。
※鳴海亜樹子と惹かれ合っているタブーメモリに変身を拒否されました。
※T2サイクロンと惹かれあっています。ドーパントに変身しても毒素の影響はありません。
※病院にあった首輪解析機をエクストリームメモリのガイアスペース内に収納しています。




【野上良太郎@仮面ライダー電王】
【時間軸】第38話終了後
【状態】強い決意
【装備】デンオウベルト&ライダーパス@仮面ライダー電王、オルタナティブ・ゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、桜井の懐中時計@仮面ライダー電王
【思考・状況】
基本行動方針:モモタロスの分まで、皆を守る為に戦いたい。
0:極力自分の力で、自分に出来る事、やるべき事をやる。
1:巧に託された夢を果たす。
2:リュウタロスを捜す。
3:殺し合いに乗っている人物に警戒
4:相川始を警戒……?
5:あのゼロノスは一体…?
【備考】
※変身制限について把握しました。
※ハナが劇中で述べていた「イマジンによって破壊された世界」は「ライダーによって破壊された世界」ではないかと考えています。確証はしていません。
※キンタロス、ウラタロスが憑依しています。
※ブレイドの世界の大まかな情報を得ました。
※現れたゼロノスに関しては、桜井侑斗ではない危険人物が使っていると推測しています。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されていましたが、フィリップからの情報で誤解に気付きました。

441 決める覚悟 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:07:27 ID:QHlsF8kk0




【村上峡児@仮面ライダー555】
【時間軸】不明 少なくとも死亡前
【状態】健康
【装備】オーガギア@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト、ファイズギア(ドライバー+ポインター+ショット+エッジ+アクセル)@仮面ライダー555、カイザギア(ドライバー+ブレイガン+ショット+ポインター)@仮面ライダー555
【道具】支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いには乗らないが、不要なものは殺す。
1:人は許せない、がここでは……?
2:乾さん、あなたの思いは無駄にはしませんよ……。
3:世界の破壊者、という士の肩書きに興味。
4:首輪の解除に関してフィリップたちが明らかな遅延行為を見せた場合は容赦しない。
【備考】
※変身制限について把握しました。
※冴子から、ガイアメモリと『Wの世界』の人物に関する情報を得ました。
※ただし、ガイアメモリの毒性に関しては伏せられており、ミュージアムは『人類の繁栄のために動く組織』と嘘を流されていましたが、フィリップからの情報で誤解に気付きました。
※オーガギアは、村上にとっても満足の行く性能でした。
※今後この場で使えない、と判断した人材であっても殺害をするかどうかは不明です。




【全体備考】
※首輪は現在、北岡、秋山、巧、剣崎、金居、志村、ネガタロスの7つがあり、うち北岡、秋山、巧、金居、ネガタロスのものが解析済みです。現在は剣崎の首輪を解析しています。
※支給品一式×7、ZECT-GUN(分離中)@仮面ライダーカブト、ファンガイアスレイヤー@仮面ライダーキバ 、G3の武器セット(GM-01スコーピオン、GG-02サラマンダー、GK-06ユニコーン)@仮面ライダーアギト、ブラッディローズ@仮面ライダーキバ 、装甲声刃@仮面ライダー響鬼、デザートイーグル(2発消費)@現実、ゼクトルーパースーツ&ヘルメット(マシンガンブレードは付いていません)@仮面ライダーカブト、変身一発(残り二本)@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト、ガイアドライバー(五代)@仮面ライダーW、黒包丁@仮面ライダーカブト、バードメモリ@仮面ライダーW、ライアーメモリ@仮面ライダーWがGトレーラー内の不要な支給品用デイパックに纏められています。
※E-5エリアにGトレーラー、トライチェイサー2000Aが停車されています。


【支給品紹介コーナー】
【栗原親子の写真@仮面ライダー剣】
草加雅人に支給。栗原親子が三人揃って写っている写真。相川始はこれを頼りにハカランダに辿り着き居候することになる。

【黒包丁@仮面ライダーカブト】
 五代雄介に支給。料理人の間で伝わる伝説の包丁。これで料理をすると人の気持ちを自在に操れると言われ、劇中では蕎麦屋の老舗を継ぐ田所弟や、天道が師と仰ぐじいやを料理勝負で完膚なきまでに叩きのめした。

【桜井の懐中時計@仮面ライダー電王】
 門矢士に支給。現代の桜井侑斗が常に持ち歩いている懐中時計。“過去が希望をくれる”の文章が刻まれており、良太郎や侑斗(過去)がこれに勇気づけられた。

【ライダーカードセットB(王蛇、歌舞鬼)】
 村上峡児に支給。ディエンド専用のライダーカード。それぞれ龍騎の世界に存在する仮面ライダー、王蛇と響鬼の世界に存在する仮面ライダー、歌舞鬼の力が込められている。

【イービルテイル@仮面ライダーW】
 門矢士に支給。園咲一家がまだただの家族だったころ、家族全員の名前を記した刷毛。これに家族の名前を書き願いを忘れなければ家族はずっと一緒らしい。

442 ◆.ji0E9MT9g :2018/04/11(水) 23:08:25 ID:QHlsF8kk0
以上で投下終了です。
今回は繋ぎ的な面が大きくて申し訳ありません。
ご意見ご指摘ご感想などございましたらお手数ですがよろしくお願いします。

443 名無しさん :2018/04/11(水) 23:21:02 ID:u4WQvRys0
投下乙です!
村上社長の言葉はとことんまで筋が通っていて、そして冷徹ながらも実に頼りになる方だと実感します……!
ファイズギアは確かに社長が持っているからこそ力を発揮しますし、たっくんの遺志を汲み取るならこれ以外の選択肢は存在しないのですよね。
また、剣崎の首輪を手に入れようとする論理もどこまでも正しく、誰にも否定はできない。サソードヤイバーを手に取った橘さんの姿がとても悲しく見えました……

444 名無しさん :2018/04/16(月) 20:10:09 ID:j9Owk7qw0
投下乙です!
自分の首輪を解除するために皆を出し抜いて死者の眠りを妨げ、剣崎の首輪を手に入れようとするとは薄汚いオルフェノクめ……! と感じてすぐ、お、俺はオルフェノクを差別していた~!!と深く反省させられる村上社長の弁舌。
灰になったオルフェノクのたっくんから首輪を貰うのも、土葬された人間の剣崎から首輪を手に入れるのも同じ……受け入れ難いことですが、オルフェノクである村上社長が言うと無視できない事実ですね。……ただ、欲張って三原からデルタを奪おうなんて考え出したのは彼の聖域っぷりを見ると一種の危険信号のような悪寒も; どうなるやら
その社長の首輪解除後に対する抑止力として首輪解除が見えてきた橘さん、栗原母娘の写真を懐に入れるなどフラグも集まってきた感じですが、剣崎の首を落とすという行為がどれだけのショックになったのか。
士の涙含めて、繋ぎ回と思わせて実に読むのが辛い前進回でした。執筆、お疲れ様でした。

445 名無しさん :2018/05/08(火) 21:33:18 ID:lc4SEO8A0
予約来ないかな

446 ◆.ji0E9MT9g :2018/05/11(金) 16:01:11 ID:iTar0HZ60
長いことお待たせいたしました。
ただいまより投下を開始いたします。

447 紅涙 ◆.ji0E9MT9g :2018/05/11(金) 16:01:41 ID:iTar0HZ60

空は高く、星が輝く夜。
 人工的な灯りが一切存在しない焦土は、今の彼らにとってはどこまでも続く闇のように思えた。
 この足が果たして目的地である白の巨塔へ真っ直ぐ向かっているのかと生まれた戸惑いを、額の汗と共に拭って彼、小野寺ユウスケは歩き続けている。

 「……多分、そろそろ病院に着きますよ。一条さん」
「あぁ、本当にすまないな、小野寺君……」
「謝るのは俺の方です。五代さんならそもそもこんな風に一条さんに苦しい思いさせたりしないでしょうから……」
「小野寺君……」

 月明かりのみを頼りにただ黙々と歩き続けるのに嫌気がさしたのか、ユウスケはその背に負っている一条刑事に声をかけた。
 それにもう幾度となく聞いた謝罪を再度述べた一条の声に対し、苛立ちではなく安堵を抱いて、再びユウスケは足を進めていく。
 放送を聞き歩き出してから、既に二時間ほどが経過している。

普通に考えれば既に二エリアほどは歩いていてもおかしくないだろうが、ユウスケの今の体調で成人男性を背負ったまま歩くことは負担が大きかった。
それに、少しでも歩くペースをあげれば背負っている一条が苦しそうに呻くために、彼も意識して速度を緩めているのだ。
彼らが向かっているのはD-1エリアの病院。

ダグバに再度対峙した際に今の自分ではどうしようもないだろうことや、何故か先ほど戦っていたE-2エリアに戻りたくないと感じてしまうことを考慮しても、なおE-5エリアの病院は遠すぎた。
恐らくはF-1周辺だっただろうこの歩みを開始した地点からこれほどの時間を費やしてなおD-1にすら着けていないのだから、E-5の病院を目指していたらそれこそ時間がいくらあっても足りなかっただろう。
そうして自分を納得させこそすれど、しかしユウスケの足は一条を背負っていることを抜きに考えてもあまりにも遅かった。

もしも向かった先の病院に、京介や小沢のことを知っている人物がいたら。
自分は彼らに対し、何を話せばいいのだろう。
自分が無力でどうしようもないから、彼らが目の前で死ぬことになってしまったと?

どころか京介は、暴走していたとは言え自分の手によって殺してしまったのだと?
そしてそこまでの犠牲を払っておきながら、肝心のダグバを倒すことは出来ず逃げてきてしまったと?
そんなことが頭をよぎる度、ユウスケの表情は曇りその足は止まりそうになってしまう。

「——ぐっ……」

再び、背中の一条が呻いた。
恐らくは無意識に漏れてしまっただけのものだろうが、それを聞いて最早何度目になるかわからないほどにユウスケは再び認識する。
『俺が助けなければ、この人は死んでしまう』と。

そう、今はこんな事をメソメソと考えて足を止めていていい時間ではない。
残された戦士クウガとして、一条を守りダグバを倒す使命が、自分には課されているのだ。
その使命に対して、もう自分に中途半端は許されない。

今度出会った時には絶対に他の参加者をダグバから遠ざけ、誰も犠牲にしない状況を作り出してあの究極の姿に——。

「——おい、ユウスケ。お前またロクでもないこと考えてるだろ」

思案に沈んでいたユウスケの意識を浮上させたのは、自身の横を飛び続けている金色の蝙蝠、キバットバットⅢ世であった。
先の戦いで払うことになった——自分の未熟に対する大きな代償の一つ——その二度と開かない右目を一瞥した後、ユウスケはキバットを見上げる。
そして、迷いを見透かされてしまった自分の未熟さを再度自戒しつつ、彼は思い切り柔和な笑顔を浮かべた。

「心配しなくても大丈夫だって。ダグバのことなら、心配しなくても俺は——」
「——そうじゃねえよ。俺が心配してんのはお前だ、ユウスケ。ダグバを倒せるのは確かに俺の知る限りお前だけかもしれねぇ。
けどよ、皆で力を合わせることが絶対に出来ないわけじゃないだろ?お前一人が全部抱え込む必要はねぇよ」

448 紅涙 ◆.ji0E9MT9g :2018/05/11(金) 16:01:59 ID:iTar0HZ60

キバットに残った左目で真っ直ぐに見据えられながらそう言われてしまうと、もう彼に偽りの笑顔でこの場を取り繕うことなど出来るはずもなかった。
気まずそうに顔を伏せ足だけを動かし続けるユウスケに、これ以上何を言っても空気を悪くするだけだと思ったのか、キバットもまたデイパックに収まろうとする。

「……あっ、おいユウスケ!」

しかし瞬間、何かに気づいたかのようにその体を翻し声をあげたかと思えば、キバットは以前までに比べ幾分か不格好ながら飛び、ユウスケの視線を誘導する。
ようやく前を向いたユウスケの視線の先、その暗い闇の中で禍々しく光るバイクと二つのデイパックを見て、彼は思わずそれに駆け寄った。
自分の知る怪人の中ではどことなくグロンギを連想させるそれに、あの白い悪魔を重ねてしまったことに対してユウスケは自己嫌悪を抱く。

それを振り払い再びその周囲に目を移すと、バイクの近くに二つのデイパックが放置されているのが視認出来た。
まさか誰かが近くで自分たちを監視しているのかと考え耳を澄ますも、周囲からは物音一つ聞こえず、どころか気配すら一切感じることは出来なかった。
自慢ではないが今の自分の感覚を騙せるような参加者はそういまいと考えて、ユウスケは警戒を解き、一条に一言かけて彼を一旦背から降ろしそのままデイパックを拾い上げる。

誰が放置したにせよ、こうして置き去りにされてしまった以上、焼けて穴の空いた自分のデイパックの代わりとして使用させてもらうことに問題はないだろう。
そうして持ち上げたデイパックから中身を取り出しつつ、ユウスケはガタックゼクターの持つ支給品をそこに移していく。
拾い上げたデイパック、ユウスケは知るよしもないが紅音也という男のものだったそれの中には、響鬼の世界に存在するディスクアニマルの一つ、リョクオオザルと、バグンダダと言われるグロンギがスコアを記録する為のアイテムの二つが見つかった。

もう一つのデイパックからは鯛焼き名人アルティメットフォーム、というスーツが見つかったが、その大層な名前に反して装甲も薄くまた鯛焼きを焼く為の鉄板もない為に本来の用途ですらまともに利用できそうもなかった。
正直なところディスクアニマル以外は不要なものだったのでそこに置いていくことにし、ついでに自身が確認した限りの支給品が、全てデイパックの中にあるかを確認していく。

「よかった。これは落ちてなかったんだな」

そうして安堵の表情と共に破れたデイパックから彼が持ち上げたのは、自分に支給されていた友の愛用品、マゼンタカラーのカメラと、一条の同行者、照井竜に支給されていた光栄次郎の纏めた士の撮った写真を集めたアルバムだった。
士に会ったら渡そうと思ってずっと持っていたこれが、もし燃えたり紛失してしまっていたりしたら。
自分たちの旅の思い出の象徴でもあるアルバムとそれを写してきたカメラには、ユウスケとて並々ならない思い入れがある。

それが残っていた事実に隠そうともしない喜びの表情を浮かべ、彼は他にガタックのベルトと青いメモリ、ガルルセイバーといった重要な品が全てデイパックの中にあることを確認する。
そこまでを見て、恐らく消失したかもしれない物の中には取り留めて意識に残っている品はないように思われた為、彼は一つ息をついた。

「すみません。お待たせしました、一条さん」
「いや、この位構わないさ。それより君も歩き続けて疲れているんじゃないか?負担をかけている私が言うのも何だが、少しくらい休んでも……」
「いえ、大丈夫です。こうしている間にも誰かが傷ついているかもしれない。なら俺にこれ以上立ち止まっている時間はありませんし、五代さんの分まで頑張らないといけないですからね……俺に、休んでる時間なんてないですよ」
「――」

支給品の整理を終えガタックゼクターに再度デイパックを預けたユウスケは、楽な姿勢で座り込んでいた一条に声をかける。
一条は自分に休むべきだと言いたいのかもしれないが、そんなことをしている場合ではない。
もし休むとしても、一刻も早く一条を信頼できる参加者の元へ送り届けてからでなくては。

そうして話を終え再度一条を背に負ぶさろうと身をかがめた瞬間、ユウスケの耳に接近してくるけたたましい駆動音が届く。
徐々にこちらに向かってくるそれに思わず彼は身構え、一条と顔を見合わせる。
恐らくは一条も考えていることは同じだろう。

449 紅涙 ◆.ji0E9MT9g :2018/05/11(金) 16:02:16 ID:iTar0HZ60
つまりは、今向かってきているこの参加者が、殺し合いに乗っているのか否かということ。
もし相手が殺し合いに乗っていたとしたら、今の自分に一条を守りつつ戦うという器用な真似など出来るだろうか。
かといって今の一条に戦いを強いるなど論外であったし、一人で離脱をさせるというのもまたアクセルの変身が解除された後の安全は保証できず危険な賭けには変わりない。

ではやはり自分も彼と共にバイクから逃れるか?
無理だ、ドラゴンフォームであれば逃げ切れる可能性もあるが、今の牛歩の如きスピードであれほど苦しそうな一条が、ドラゴンフォームのスピードに無事でいられる保証がない。
それに下手を打って逃げ切れなかった場合、クウガという自分の切り札を制限された状況で戦わなければならない可能性も生まれる。

身を隠せる遮蔽物の一切が存在しない焦土においては、最早彼らに残された手札は既に一つしかないようなものだった。
それは、ただ向かってきている相手が友好的な参加者であることを願い祈ること。
つまりは、この状況をあまんじて受け入れただ変身の準備だけは済ませてその場で立ち尽くすだけだった。

……無限にすら思える数秒の後、彼らの顔を久々に目にした人工的な光が照らす。
それに思わず目を顰めれば、同時エンジン音は止み距離にして20mほどの余裕をもって現れた参加者はバイクから降りたった。
ヘルメットを脱いだその顔に、暗中ながら友好的な気色が見て取れないことに対し必然的に覚悟を強いられた二人。

しかしそんな彼らを尻目に、男は悠然たる態度で歩みを進める。
何かを懐から取り出した男に対し、高まった緊張故か、変身して彼を抑えようかとユウスケにも半ば覚悟が生まれた、その瞬間。
掠れた声で二人の間に入る、小さな影が一つ。

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