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オリロワ2014 part3

5悪党を継ぐ者 ◆H3bky6/SCY:2018/01/14(日) 01:23:14 ID:/mu.QANY0
「そうだね、侮っていたわけじゃないが、認識を改めよう。人間の五体はそこまで至れるのか」

人のまま己が五体を練り上げた達人の技量。
それは兵器に頼った森とも、人を捨て去った龍次郎とも違う。
規格外の怪力を持った怪物とはまるで違う強さの質だった。

「なに、これでもまだ頂には至らぬ身さ。未熟未熟」

正義でも悪でもない。
目的のために力を求めるのではなく。
ただひたすらに己を磨き練り上げることそのものを目的とした狂気。

人を破壊する事だけに特化した、世界を破壊する事ない人間と言う規格内の怪物。
悪威の抗体リストには世界を焼き尽くす炎や全てを切り裂く刃は登録されていても、達人の拳などというデータは入っていない。
こういう怪物もいる、という事だ。
規格外の怪物ばかりに目を向けていたからその足元を掬われた。

森茂の人生が世界を壊す怪物を倒すために捧げた56年だったとするならば。
この拳は人体を効率よく破壊するために四千年練り上げられた拳。
人と人との戦いとなれば勝てぬのは道理である。

「だが、――――――――」

だが、その道理を覆してこその森茂だ。
勝てぬのらば勝てる手段を作り出すまでである。
そしてその手段は既に完成しつつある。

魔拳士が構える。
悪威の特異性に気付いたからには狙うべくは漆黒の悪威に守られていない頭部だ。
身長差から狙いを付けるのが困難であるが、上背の相手に対する技も当然存在する。
この域に達した達人に捨て技など無い。
放つ全てが一撃必殺に足る絶招である。

流れる様に拳士が駆ける。
踏み込みは突風その物。
風の動きを予期できないように、意を消した動きは人の知覚を凌駕する。

制空権にて放つ絶招。
人の首など容易く吹き飛ばす一撃が無防備な頭部へと襲い掛かった。

だが、しかし。
森はその一撃を回避した。
これまで反応すらできなかった敵の動きに、ここに来て始めて対応した。

想定を変えたのだ。
ただの体術だとは思わず、時間や空間を吹き飛ばす異能使いの相手だと想定して対応する。
事実はどうあれ結果としてそうなるのなら森にとっては変わりない。
達人は初見でも、そう言う類の相手ならばむしろ得意分野である。

身を躱した悪党は反撃の拳を振りかぶる。
漆黒を固めた悪刀の拳

しかしその一撃は両腕と体全体で描く円、大纏に包みとられる。
そのまま一足で背後に回り込まれ、背中合わせとなった。
両手を広げた様から鳳凰双展翔と呼ばれる反撃技。
高めた勁を背に叩きこまれる。

「む――――っ」

不可解さを示す声は、攻撃を受けた方ではなく、攻撃を放った方から漏れた。
その手応えに違和感を感じた。
否、違和感自体は初撃から感じていた。
その違和感が徐々に強まってきている。

森は幾分か吹き飛ばされたものの、遂に倒れることなく体勢を立て直した。
拳正はその違和感を払拭すべく、追撃に奔る。

迎え撃つ裏拳を避け懐に入り込むと、双手による双撞掌で相手の胸部を強かに打つ。
敵を貫くその衝撃はしかし、相手を僅かに一歩、後退させるに止まった。


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