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オリロワ2014 part3

172エピローグ -それからとこれから- ◆H3bky6/SCY:2019/10/15(火) 22:15:06 ID:o0vlMkng0
「そうだね。その通りだ」

お父さんの意思を付いで会社の運営を頑張っているのも、訃報を遺族に届けたのも。
どちらも辛い役割だったけれど、自分がそうしたかったからしただけだ。
誰のせいでもない。

「だいたい俺の場合は、あの先輩とかと違って生き方を選べるほどたいそうな人間じゃねえからな。必死でやるしかねぇのさ。
 警察だって俺なりに頑張ってはみたものの、試験の結果がどうなるかなんてまだわかんねぇしよ」

強がるように笑うが不安そうな表情は隠しきれていない。
どれほど強大な的にも怯まなかった彼も、試験と言う壁は恐ろしいようだ。

「仮に受かってたら警察学校に半年だ。そうなったらしばらく会えなくなるかもな」
「そう…………なんだ」

半年も会えなくなる。
決して彼の失敗を望む訳ではないけれど、それは、寂しい。
ただの友人でしかない私に言えるは言葉ないのだけれど。
寂しいと。彼も僅かでもそう思ってくれているのだろうか。

窺うように彼を見る。
すると、彼もまた私を見つめていた。
視線が絡まり、心臓が高鳴る。
まるで戦う前の様な真剣な瞳に吸い込まれそうになる。

「俺ぁ半端な野郎だから、色々とケジメ付けてからって思ってたんだが。
 だから、合格して、帰ったらお前に話が、「たッ……だいまあああぁぁぁl ユッキーッ!!」

拳正くんの言葉は途切れ、背後から勢いよく突撃してきた謎の影に踏み潰された。

「いやぁ! 公演終わって後はゆっくり泊りの予定だったけど、一人で旅館に泊まるの寂しくて新幹線でとんぼ返りして来たよぉ!」

物凄い息を出で捲し立てながら、私に抱き着いてくるのは、言わずもがな、我が親友一二三九十九である。
しばらく九十九は私に抱き着き続けるが、恒例行事なので私はなすがまま、どうどうと背を撫ぜた。
そうして堪能したのか、ようやく九十九は足元に注意を向けた。
踏みつけていた存在に今気付いたとばかりに言う。

「あれ? なんで拳正がいるの?」
「九十九……テメェ」

下敷きになっていた拳正くんが勢いよく立ち上がる。
九十九も慣れたモノで、しがみついた私を軸にそのまま飛び退いた。

「ほれほれ。羨ましいか? お? おぉん?」
「このアマ…………ッ」

そして見せつける様に私に頬ずりしてくる。
もう。この二人は5年経っても相変わらずだ。
変わった物もあれば、変わらない物もある。

「九十九、拳正くん」

仲良くケンカを続ける二人の名を呼ぶ。
呼びかけに、二人が同時に振り返った。

人生は続く。
神様が去った終りの後の物語を私たちは生きる。

その道のりを共に歩む、愛すべき人たちに向けて。
私はありったけの笑顔と心を込めて。


「これからもよろしくってこと」


【オリロワ2014 完】


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