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オリロワ2014 part3

11悪党を継ぐ者 ◆H3bky6/SCY:2018/01/14(日) 01:26:33 ID:/mu.QANY0
「あんだテメェら、双子かぁ?」

眉にしわ寄せ少年が、訝しげな声を上げる。
それは奇妙な光景だった。
同じ顔をした男が、同じ声、同じ仕草で対峙している。
一卵性双生児であればそれもあり得るのだろうが、よもや生き別れの兄とここで出会ったいう事もあるまい。

どちらにも対処できるよう、それぞれを頂点にして三角形を描く位置へと距離を取る。
苦戦を強いられている中、同レベルの敵が増えたとなれば、さしもの達人とはいえ少々厳しい状況となるのだが。
ちらりと先程まで争っていた方の様子を窺うが、どうやら乱入者にこちら以上に驚いている様子である。
少なくとも味方の増援を待っていた、という雰囲気ではなさそうだ。

「…………君は、誰だ?」
「尋ねずともわかるだろう? 悪威を着ている以上、幻覚や幻影ではないという証明は成されている」

悪威の万能耐性は精神耐性まで含まれる。
逆説的に目の前の存在が夢幻でないという証明となっていた。

目の前に現れた『自分』を見る。
失ったはずの右腕も健在。
体の傷もかつて刻まれた古傷ばかり。
それはこの会場に来たばかりの森茂の姿その物だ。

幸いと言うかなんというか三種の神器まではないようだ。
と言うより衣服すらなく、加えて言うなら首輪もない。
体内ナノマシンを表面化させ、全身を黒い鎧で覆っているようである。

「クローン? それともコピーか、まさかドッペルゲンガーやスワイプマンという訳じゃあないんだよね?」
「さて、そんなことはどうでもいい事だろう」

その言葉の通りだ。
過程など意味がない。
こうして目の前に立ち塞がっていると言う事実の前には全てが無意味だ。

「俺が、俺の前に立ちふさがるのかい?」
「そういう事だね」
「俺なら俺のしようとしている事が理解できるはずだろう?」
「出来るとも。だが、お前にも俺が理解できるだろう?」
「……そうだね。その通りだ」

互いが互いを誰よりも理解している。
己の事なのだから当然だ。
どれほど頑ななのかだって嫌になるほど理解している。
その上で譲れないのだから、殺し合うしかないのだろう。

二人の森茂の間に剣呑な空気が流れる。
分身体は、さりげなく風上へ移動しており悪刀の粒子化対策も万全だ。
なにせ相手もモリシゲなのだ、当然のように三種の神器の特性も弱点も誰よりも理解している。

だが、足りない。
知識程度で覆せるほど、装備の差は小さくはない。
素手では完全装備たる三種の神器に及ぶはずがない。

「なにせ俺は凡才だったからねぇ。装備に頼るしかなかったのさ」
「そうだね、だからまあ今は、数に頼るさ」

拳正がザッと地面を踏み鳴らし、三種の神器を構える森へと向き直た。

「よくわからねぇが、そっちの色眼鏡のねぇ方は味方ってことでぇいいんだな?」
「そうなるかな。共闘はお嫌いかい?」
「いや、構わねぇさ」

本来の師匠の気質なら断っていたのかもしれないが、弟子はその辺に拘りがない。
勝利に対する認識の違いだ。
それがこの師弟の一番の違いである。
目の前に立ちふさがる二人を眺め、森がサングラスの奥の眼を細める。

「まったく次から次へと、何者かの意思を感じるねぇ」

学生三人を殺すだけの話が、いつの間にやら伝説の拳法家を相手取り、自分の分身まで出てくる始末だ。
雪だるま式に状況が悪くなる、まるで天の意志が自らを殺そうとしているようだ。
こうも想定外の邪魔が入るとそのようなものを感じざる負えない。

「……さて、そう言えばアイツ曰く俺は倒される側だったか。
 とするならば、アイツが望んでいるのはこういうものか。
 そうなると、誰のためのという事になるが…………まあいい」

得体のない思考を打ち切る。
あの男の目的など、探ったところで得るものなどない。
だが思い通りになるのも面白い話ではない。

「そう思い通りにいくと思うなよ」

ここにいない誰かに向かって悪態をつく。
確かに二人掛かりと言う点は脅威だが、既に悪威は達人の技を学習し、装備のない森茂は脅威ではない。


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