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テラカオスバトルロワイアル

1 : 名無しさん :2016/09/19(月) 13:01:48 UjPEDzS60


テラカオスバトルロワイアルがパロロワ総合板に移転しました。


【wiki】ttp://www23.atwiki.jp/terachaosrowa/
【避難所】ttp://jbbs.shitaraba.net/otaku/15086/


2 : 名無しさん :2016/09/19(月) 13:03:19 UjPEDzS60
【基本ルール】
・ほぼなんでもありのパロロワです。現在は10期目です。
・ただし、今期では死者蘇生は禁止です。
・ttp://www23.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/405.html も読んでください。
・今期は日本全土が舞台です。

【「首輪」と禁止エリアについて】
・プレイヤーは全員、「首輪」を填められています。
・開催者側が放送で指定する禁止エリア内にいると、首輪が自動的に爆発します。
・現時点(二日目・11時)で北海道・沖縄とその他の離島全て(周辺海域含む)・中国地方・九州・四国が禁止エリアです。

【放送について】
・放送は7時間ごとに行われます。
・死者と禁止エリアの発表が行われます。

【状態表】
・SSの最後には、後続の書き手にわかりやすいよう、状態表を作って貼ってください。

【予約について】
・予約する場合は、避難所にて書きたいキャラの予約を行ってください。
・予約の際はトリップを付け、書きたいキャラの名前を書きます。ただし、フルネーム及び出展が必要です。
・予約期間は7日間です。
・予約無しでも投下可能です。

【投下作品について】
・本スレに投下後、24時間経過して意見や展開に関する修正要求がなければ作品が通った事になります。
・修正要求があった場合、避難所にて話し合ってください。


3 : 名無しさん :2016/09/19(月) 14:08:10 qxKRmQPUO
>>1
引っ越しスレ立て乙!


4 : 名無しさん :2016/09/19(月) 17:32:16 Yoo8aE660
>>1
立て乙


5 : 名無しさん :2016/09/19(月) 19:19:36 20FQR.IA0
>>1
スレ立て乙です


6 : 名無しさん :2016/09/21(水) 01:58:02 kNCylYps0
>>1
スレ立て乙です


7 : 名無しさん :2016/09/22(木) 22:44:29 3j5dO0Qw0
スレ立て乙です。
投下します


8 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part9 :2016/09/22(木) 22:45:07 3j5dO0Qw0

「私の騎乗スキルはEX……規格外です。
 これこそ、私が最優であるセイバーの証の一つです」
「ふーん」
『興味なさそうだね、熱斗君』
「いやだって、確かにすごいけどさぁ……」
「ふむ……」
「さあ讃えなさい、主に私を!」

自転車(チャリ)で移動していた。
四人乗りで自転車を漕ぐのはセ……ヒロインXさんである。
ちなみにこの自転車はそこらへんに放置されていたものを少し拝借してきたものだ。

「いいですか。私の物は私の物。
 みんなの物はみんなの物。
 では、そのみんなの中に私は入っていますよね?
 つまり、使っても問題ないですね」
「でも、この自転車は……」
「白アー……ゴホン、翔鶴さん、これは放置されてた放置自転車です」
「ですが、それは犯罪では……」
「放置自転車の問題はもはや日本を飛び出して世界中で問題になってる。
 とある某国では放置自転車が原因で多大なる人災が起こったとかネットニュースでみたことがある。
 いいか、これは慈善行為だ、この一台の自転車が私たちによって移動させられることによって大阪は救われる」
「慈善行為だったら仕方ないね」
「そうですね」
『もう無茶苦茶だよ』

ロックマンだけが常識的なツッコミを入れる。
熱斗は相変わらずネットバトル脳のためか(ロックマン自身も若干そうだが)……
翔鶴は生後一日くらいであるが、かなりこのペースにも慣れてきたのか……
シグナムはいつもどおりの通常営業というか……
そして、合流してきたヒロインXはカオスな方の型月時空から来たためか……

とにかく、(比較的)まともなのが彼一人状況であった。

「放送はそろそろか……」
「皆さん呼ばれないといいですが……」
「いや、そろそろ誰が死んでもおかしくない……覚悟はしておけ」

そして、第五回の放送が始まった。

◆ ◆ ◆

「そんな……パパ……」
「アドラーさんにシュトロハイムさん、のび太さんも……」
「やっぱりな」
「………セイバーを名乗る不届き者は死にませんでしたか」
『シグナムさんもヒロインXさんも反応が薄いですね』
「当然です。そこのピンクアーチャーはともかく私は関わりが少ないので何とも言えませんので……」
『うーん、このセイバーさんは……』

協力関係にあるとはいえ、結構薄情な反応である。
自転車を走らせ続けながらも、放送を聞いた。
その間にシグナムによってヒロインXの首輪は解除された。

「これで制限なく動けるだろう」
「ありがとうございます。これでまた一歩最優のセイバーに近づけました!」
「だったら、その証明をしてみろ」
「? どういうこ……敵ですね!」
「戦艦一隻、MS一機、来ます!」
「セイバーなら私が殺しますんで、残しておいてください」

ヒロインXの直感スキル。
翔鶴の索敵能力。
その二つにより敵が来ることとは分かった。


9 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part9 :2016/09/22(木) 22:45:32 3j5dO0Qw0

「コスモリアクター、全開!!
 支援砲撃EX!! 発動!!!
 衝撃に備えながらも1ターン待ってください」

今の精神状態では熱斗達は戦力にはならない。
だからこそ、今はシグナムとヒロインXが騎士として彼らを守護る。
詳細不明のスキルを二つ同時に発動させながらもヒロインXは構える。

「光熱斗達だな、悪いが……「丁寧に自己紹介してる場合じゃないカリバー!!!!」」
「なっ!?」

出てきた直後の支給品の乾巧にヒロインXの聖剣が抜刀された。
普通に汚い上に卑怯な気もする。
戦場だからね、あるのは敵かそうではないかである。
騎士として当然の判断である。
話としてはわりかりあれな感じであった。

光の聖剣は戦艦とガンダムに命中した。
ガンダムにもろに直撃し、コクピットごとパイロットを消し飛ばすには十分な威力であった。
何も残さないガチなタイプの必殺技だった。


【出木杉英才@ドラえもん 死亡確認】
【改造デュエルガンダム@機動戦士ガンダムSEED  完全消滅】


ホワイトベースには左翼エンジンに直撃。
ホワイトベースを物理的に落とした。
ヒロインXさんのように「砲撃での先制攻撃だべ!」とでもやっておけば状況は変わっていただろう。

「す、すごい威力ですね……」
「お姉さん……一体、どこのブリテンの王様だったんだろう?」
『熱斗君、君分かってて言ってるでしょ?』

その光は希望でもなんでもない。
ただの兵器であった。
綺麗でもなんでもない戦場だからね。

しかし……

「まだ息がありましたか?」
「お前……!」

ウルフオルフェノクと化した支給品の乾巧は避けていた。
狼は俊敏である。
そりゃもう狼だからね、速いよ。
ビュンビュン動くよ。
あぁ^〜たっくんがびゅんびゅんうごくんじゃぁ^〜

だが、止まった。
1ターン経過したんだろうか、わからないが。
支援砲撃EXが発動していた。
問答無用でスタンさせた。
戦場で動かなければいい的になる。

「隙を見せましたね!」

騎士道も何もあったもんじゃない。


10 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part9 :2016/09/22(木) 22:46:09 3j5dO0Qw0

「一歩、武内……」
 
ヒロインXは縮地が如き、足捌きで移動する。

「二歩、きのこ……」

持っている聖剣を日本刀のように構え、突進。

「三歩、セイバー!」

まるで桜セイバーのようだ。

「『無限……セイバー突き』!」

これは所謂セイバー忍法の一つである。
無数の突きをほぼ同時に放つ。
これがヒロインXの対人魔剣である。
もろパクリじゃないですかー! やだー!

その衝撃で支給品の乾巧は吹っ飛んだ。
軽く吹っ飛んだ。
今度は手加減はした。
相手はセイバーではないのだから。

「相手がライダーなら相性上、私が有利になるのは当然です」
『ヒロインXさんはセイバーなんじゃ……』
「こまかいことはいいんですよ!」

初期のFGOかな?
ライダー(騎兵)はアサシン(暗殺者)に弱いクラスである。
自称はセイバーであるが、状態表にもあるが彼女のクラスはアサシンである。

こうして、なんとか退けた。
だが、そこである異変に気付いた。

『あれ? シグナムさんは?』
「そういえば……」
「トイレじゃないかな?」

シグナムがいつの間にかその場から消えていた。
探しに行こうかと思ったが、まあシグナムだし大丈夫であろうという謎の安心感があったのでスルーすることにした。

 ◆ ◆ ◆

「熱斗君……」
「皆さん無事で……」
「ダメージは残ってますけどね……」
「フン! この悪魔将軍にダメージなどない」
「この拳王にもダメージなどないわ!」
「このディオにだってッ! ダメージはないッ!!」

悪魔将軍のはガチ。
ラオウのは普通に対抗心の強がり。
ディオのはただの虚言。

12人の生き残った拳王軍と悪魔将軍とヒロインXが集った
ヒロインXの軽く自己紹介は済ませた。
そして、すぐに東京に向かう準備を進めた。

「これが高速艇……」
「すぐに移動できるってことだな」
「ええ、それで誰が運転します?」
「それは勿論、最優のセイバーであるこの私です」

ヒロインXは悠々と操縦桿を握る。

「最初に言ったはずです……騎乗スキルはEXであると、これくらいの高速艇を動かすのは造作もないことです」
「ええー? ほんとにですかぁ?」

規格外の騎乗スキル。
元々、宇宙船を動かせるほどの騎乗スキルである。
だが……

「何故です、何故動かないんですか!?」
『そういうシステムだからだ』
「もういいです、私が動かします」

タクアンさんに操縦を変わってもらった。
こうして、拳王軍は大阪を脱出した。


11 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part9 :2016/09/22(木) 22:47:20 3j5dO0Qw0
【二日目・11時30分/大阪】
【光熱斗@ロックマンエグゼ】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除
【装備】自分のPET(ロックマン入り)
【道具】支給品一式×2、デカオ(ロックマンエグゼ3)が作ったおべんとう(腐っている)、チップトレーダー@ロックマンエグゼ、
    大量のガッツマンのチップとバグのかけら、ガンデルソル3(実物)ネオバリアブル(実物)
    各種ナビカスタマイザーパーツ、大量の金、シンクロチップ、他不明
【思考】基本:主催者たちにネットバトルを挑んで勝つ!
0:パパ……
1:プリズムとフォレストボムのチップを探す
2:その為に色んな人にネットバトルを挑む
3:大災害で死んだネットバトラーやネットナビ達のためにも、早く殺し合いを終わらせて世界を平和にし、ネットバトルの面白さを再び世界に広めたい
4:新たな家族として翔鶴は大切にしたい
※スタメン落ち確定です。野球の公式試合には一軍では参加できません。
※大山デカオ@ロックマンエグゼ、ロックマンエグゼ2、ロックマンエグゼ3(BLACK版)、ロックマンエグゼ5チームオブブルースは死国にいるようです
※熱斗やヒノケンなど一部を除く多くのネットバトラーが大災害で命を落としているようです。
 まだ生存しているネットバトラーの面子については次の書き手氏にお任せします。

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【状態】HP70%
【装備】ロックバスター、サイトパッチ&試製甲板カタパルトのデータ
【道具】なし
【思考】基本;熱斗をサポートする
0:パパ……
1:主催者たちがネットバトルを受けてくれるか、心配。
2:新たな家族として翔鶴さんは大切にしたい
3:あれ、シグナムさんは……?
※PETの中にいます

【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【状態】ダメージ(小)
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型
【道具】なし
【思考】基本:妹として熱斗達と共に戦う
0:提督……
1:襲い掛かる者たちを殲滅する
2:二人の妹として彩斗さん(ロックマン)と熱斗さんはお守りする
3:二人に何かあった場合は二人の願いを引き継ぐ
※熱斗とロックマンより、二人の過去についての話を聞き、自身を光翔鶴と名乗るようになりました


【謎のヒロインX@Fate/Grand Order】
【状態】健康、首輪解除
【装備】無銘勝利剣
【道具】ドゥ・スタリオンⅡ号(故障中)、スマホ(FGOをやってるので電池の消耗が激しい) 、自転車
【思考】基本:私以外のセイバーを殺すが、その前に対主催しておいて他の対主催者と協力関係を築いておく。
0:自分が最優最強のセイバーであることを証明する
1:宇宙の平和が第一ですね
2:DMC信者にいるらしいセイバーは確実に殺す(ついでにDMC狂信者を殺す)
※彼女のクラスはアサシンです。
※謎のヒロインXです。その正体は謎って言ったら謎です。


【ラオウ@北斗の拳】
【状態】ダメージ(中)、首輪解除
【装備】炭酸水
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:ダース・ベイダ―たちを倒す
0:主催者チームを全員屠る
1:そして、拳王が新たな時代を作る
2:東京へ行き、拳王軍を率いて都庁のヘルヘイムを屠る
3:死兆星から使者の小娘を配下にしたぞ!
4:トキ似の男を配下にしたぞ!
5:強そうな鎧の女を配下にしたぞ!
6:謎の黒猫たちを配下にしたぞ!
7:なんかいろいろ配下にしたぞ!
8:悪魔将軍たちと協力体制を取るぞ!

【琴吹紬@けいおん!】
【状態】精神的にぶっ飛んでる、左手骨折、首輪解除
【装備】超弩級戦艦『死国』、キーボード、現金1兆円ほどが入った特注ジュラルミンケース
【道具】支給品一式、たくあん@現実、その他不明
【思考】基本:生き残ることを最優先
0:死者スレに向かう悪魔将軍と熱斗組を支援するべく、都庁のヘルヘイムを打ち倒す
1:新スターティングメンバーを選考する
2:拳王とやらの配下になる
※今までとは別人に決まってんだろ!!いい加減にしろ!!
※核ミサイルは超弩級戦艦『死国』に改造されました。
※ベジータの所持していたパソコンからヘルヘイムの情報を得ました、そして都庁の世界樹をヘルヘイムによるものだと誤解しています

【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【状態】ダメージ(大)、首輪解除
【装備】テニスラケット、テニスボール×∞、諭吉一枚
【道具】支給品一式、少年ジャンプとヤンジャン、その他不明
【思考】基本:主催者達を滅ぼす
1:マーダーも滅ぼす
2:ラオウたちと行動する
3:テニスがしたいが、野球をする


12 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part9 :2016/09/22(木) 22:47:45 3j5dO0Qw0
【MEIKO@VOCALOID】
【状態】ダメージ(小)、修羅化、首輪解除
【装備】アルティメットアーマー@ロックマンXシリーズ
【道具】支給品一式、ノートパソコン@現実
【思考】 基本:『真の黒幕』及び主催者共の皆殺し
1:ラオウ達に協力してもらう
2:ヘルヘイムのインベスはとりあえず皆殺し
※今までとは別人です。
※『無限の回転』を習得しました

【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【状態】健康、全ステータスMAX、首輪解除
【装備】木の棒
【道具】支給品一式、最高級ハチミツ、その他不明
【思考】基本:ムギさんからハチミツを貰うために主催者たちを野球で潰す
1:ホームランを打つ

【川崎宗則@現実?】
【状態】健康、ウキウキ、首輪解除
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチローを倒してでも、マリナーズに連れ戻す
1:関東からイチローさんの気配がする

【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【状態】HP満タン
【装備】ジャスティスワン、ザ・ワールド
【道具】なし
【思考】基本;とりあえず、ディオたちを見守る
1:死国に対主催達を乗せて、九州ロボ及び主催者を殺す
2:ディオの奴、まだ戻らないのか?
3:恐ろしいなあ、ヘルヘイム
※高速艇のメインAIになりました。
※キン肉マン(旧シリーズ)全巻を読み、友情パワーに目覚めました。
※36巻以降の知識(完璧・無量大数軍編)以降の知識はありません。
※ベジータの持っていたパソコンから情報を抜き出し、ヘルヘイムの情報を得ました

【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【状態】疲労(小)、首輪解除、強い悲しみとホワイトベース組への強い怒り
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式 電車ごっこロープ
【思考】基本:主催者たちに野球で挑んで勝つ!
1:仲間を殺したホワイトベース組は絶対に許さねえ!
2:最低でも四国アイランドリーグが出来るくらいの仲間を集める
3:イチロー選手を仲間に引き入れたい
4:ドラえもん、のび太くん……すまねえ

【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】全身にダメージ、不幸、首輪解除、本気モード
【道具】シンクロチップ、他人のデッキ(「ぬばたま」デッキ)
【思考】基本:あのAA
1:ネットバトラーの一員として主催やマーダーと戦う
2:それにしてもあの怪しい二人組の正体は……?

【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【状態】HP半分
【装備】ムラマサ
【道具】なし
【思考】基本:新しきお館様(上条)に従う
1:敵は殺す、慈悲はない
2:ようやく乗り気になったようだな、お館様
※PETの中にいます

【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】死にかけから立ち直ったので問題ない、首輪解除
【装備】PSP(デューオ抜き) 、十徳ナイフ
【道具】支給品一式×3、シンクロチップ
【思考】基本:ネットバトルとベースボールを極める
0:主催を倒すのはラオウではない、このディオだッ!
1:ジョースター家を手に入れる
2:ジョジョより優越感を得る
3:熱斗達にネットバトルを挑むのは後回しだ!
4:デューオがいなくても、勝つのはこのディオだッ!
5:シンクロチップを手に入れたし、デューオとクロスフュージョンしたい


13 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part9 :2016/09/22(木) 22:48:15 3j5dO0Qw0

【ダイアー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】割とダメージがあるが少し回復した、首輪解除
【装備】イカ墨とパスタ@現実
【道具】支給品一式、治療道具、その他不明
【思考】基本:主催を倒す
1:ディオとかいう奴も倒す
2:ストレイツォ……
※ディオを『吸血鬼ディオ』と思っていません。
※何か見ましたが、別に物語とは関係ありません。

【悪魔将軍@キン肉マン】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除
【装備】黄金のマスク、サウザーのバイク@北斗の拳
【道具】不明
【思考】基本:主催達の抹殺
1:死者スレに向かい、死者スレの破壊及び真の黒幕である『あやつ』の抹殺
2:他の悪魔超人たちには陽動を及び危険因子の排除
3:都庁のヘルヘイムは拳王軍に殲滅させる
4:8時までに戻ってこないようなら熱斗たちは置いていく
※完璧・壱式ゴールドマンです
※フォレスト・セル(ヘルヘイムの王と誤解している)の力を感知しています


ホワイトベース内。

「南斗人間砲台みたいなことしてみたいが、出来るもんだな」

落ちた要塞に一人佇む。
そう、シグナムである。

ここに来た理由はただ一つ。

……『それ』が来た。

「拳王軍の者だな?」

貧乳歌姫。
今のところ、今期のラスボス候補。
そういう雰囲気で判断した。

「まあそういうことになる」
「ならば、メインディッシュだ」
「ここに誰もいないのは……」
「私が救った」

【十神白夜@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 死亡確認】
【腐川冬子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 死亡確認】
【アイギス@ペルソナ3 死亡確認】
【ホライゾン・アリアダスト@境界線上のホライゾン 死亡確認】
死因:捕食


14 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part9 :2016/09/22(木) 22:48:38 3j5dO0Qw0

「なるほどな」

シグナムは察した。
ストロング・ザ・武道の竹刀を静かに向ける。

「生憎だが、板移転のついでに私もそろそろかっこよく散りたいと思ってな。
 足止めついでにこのホワイトベースを落としてそのまま落ちようかと思ったが、ちょうどいい思ったんだがな」
「なんというメタ視点……」
「貴様こそなぜそれが判る?」

これは02という書き手の力である。
詳細不明だが、きっとそういう類の能力であったのだろう。
そういえば、今でも書き手を続けているのだろうか?
まあどうでもいい。

「貴様はニートではないのか?」
「? 対主催だ。主催者を倒そうとしているものは大体対主催だよ。
 私も少しカオスロワに関わり過ぎたか……まあ、不満を覚えているものが多いだろう、黒幕一撃で倒しちゃったし」
「メタ視点か……書き手の因子でも入ってるのか、貴様は?」
「お前だってその書き手をラーメンにして食ったではないか……」
「た、確かに……!」

対峙して分かった。
この目の前の奴は、救わねばならない。

「倒す……とは行かないが、その面倒なところだけ斬る」
「竹刀程度で出来ると思うのか?」
「出来るか出来ないかじゃない、斬る」

覚悟は決まった。
恐らくは負けて、死ぬ。
だが、ただで死ぬわけにはいかない。
一矢だけ報いて、死ぬ。

「行くぞぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「さぁ 来なさい!!」

シグナムが一気に間合いを詰めた!!
それと同時にテラカオス・ディーヴァも抜刀!!
両者の剣か激突した!!!

……………………

…………

……


その後、色々あった。
結果? ああ!

惨☆敗!

【シグナム@リリカルなのはシリーズ 死亡】
死因:捕食ではない。


【二日目・11時30分/大阪府 ホワイトベース内】

【テラカオス・ディーヴァ@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(極小)、首輪解除、厨二病全開、火水土風木電聖闇核耐性(強)、薬物耐性(弱)、嗅覚と聴覚強化
【装備】シンフォギア・天羽々斬?(異常に禍々しく変化)@戦姫絶唱シンフォギア?  
【道具】支給品一式 、スマホ、ストロング・ザ・武道の竹刀
【思考】基本:世界をカオスにする
0:シグナム……強敵だった……(食いきれなかった)
1:世界から全ての者を救い尽くす(喰い尽くす)
2:拳王連合軍を救う(喰らう)
3:何故皆救済を拒む? まるで意味が分からんぞ?
4:私はまだまだ弱い、もっともっと強くならねば……!
※風鳴翼・佐村ガウスフレミング02・天海春香・はるかさんの能力を継承しました
※テラカオスとしては未完成のため、テラカオスバトルロワイアル十周目の死者の能力は現在使用不能、進化すれば使えるようになるかもしれません
※風鳴翼の容姿や人格を色濃く受け継いでいます、ただし、進化するにつれて失われる可能性があります
※ダルメシマンの人間の1京倍の嗅覚、ゼブラの聴覚と音操作能力を特に強く継承しました
※02氏の書き手としての能力を消失しました
※テラカオス候補者の一人である多木、ニアラ×7を食らった結果として力が大幅に増しています


15 : 名無しさん :2016/09/22(木) 22:49:03 3j5dO0Qw0

一方、そのころ、支給品の乾巧は……

「井之頭さん、全裸の男が倒れています!」
(うーん……マーダーだったら怖いなぁ……。
 そうだ、バックの中にしまっておこう)

Wゴロウにちゃっかり保護されていた。
そして、最初のようにデイバックの中に収納された。

【二日目・11時30分/大阪府】
【井之頭五郎@孤独のグルメ】
【状態】普通、満腹
【装備】モンスターボール×4
【道具】支給品一式、調理器具一式、大量のちくわパフェ、首のないヘラジカの肉、首のない猫の肉、首のないサイボーグ猫、乾巧
【思考】基本:優勝狙いマーダー
0:優勝するためにマーダー集団の拳王連合軍に合流するべく大阪へ
1:食糧事情の都合上、マーダーとして動く
2:生き残るために吾郎と行動する
3:ネオ・クライシス帝国御一行には要警戒

【由良吾郎@仮面ライダー龍騎】
【状態】ダメージ(小)、精神不安定気味、満腹
【装備】ライダーブレス@仮面ライダーカブト、ボート(血まみれ)
【道具】支給品一式 、高級外車
【思考】基本:優勝狙いマーダー
0:優勝するためにマーダー集団の拳王連合軍に合流するべく大阪へ
1:北岡先生を殺した奴は許さない
2:生き残るために五郎と行動する
3:優勝し、殺し合いが終わった後にでも北岡先生の亡骸がある場所や下手人を調べたい
※高級外車には謎井上ワープ機能があるようです
※血まみれのボートは4935話でクロちゃん達(故)が乗っていたものです

【乾巧@仮面ライダー555】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、気絶、首輪なし
【装備】なし
【道具】支給品一式、その他不明、ファイズギア(ベルト故障)、通信機
【思考】基本:殺し合いを止める
1:市街地に残っている拳王連合軍を倒しにいく
2:ホワイトベース組の仲間を守る
※支給品だったので首輪はありません。
※支給品だったのでデイバックの中に入ることができます


16 : 名無しさん :2016/09/22(木) 22:49:21 3j5dO0Qw0
投下終了です


17 : 名無しさん :2016/09/22(木) 23:10:59 e2bwCbv2O
新スレ初投下乙!
ホワイトベース組(思ってた以上にあっさりと)壊滅・・・・・・!
拳王連合軍はギリギリで難を逃れたけど貧乳歌姫によりシグナムも空気を読んで死亡・・・・・・!
警察組に続いて一つの対主催組織がまた壊滅してしまった


18 : 名無しさん :2016/09/23(金) 20:19:13 qbBOtVog0
投下乙


19 : 名無しさん :2016/09/23(金) 23:07:31 izwDJLc20
投下乙
描写すら許されない全滅は眼鏡補正か…
まあ大尉の罠+カオスの塊の拳王連合の相手+貧乳への対策ゼロ+首輪もとれてないとどう足掻いてもどっかしらで死ぬ運命は決定づけられてたからなぁ


20 : 名無しさん :2016/09/26(月) 15:50:23 zJxD04Kk0
投下します


21 : 名無しさん :2016/09/26(月) 15:50:59 zJxD04Kk0
11時30分頃、安倍晋三は埼玉県庁周辺にいた。
九州ロボは関東に移動していた。その証拠に九州ロボに乗っていたユウキ=テルミは今東京にいる。

「えーと、これか…」

安倍は飛び散った風鳴翼の破片を回収し、それを取り込むことでパワーアップしようと思っているのだ。
生半可な者では取り込んでも力に耐えきれず死ぬだろうが、安倍はそうならないという自信があった。


話題は変わるが、安倍はなぜ相当いた主催戦闘員を殺せたのだろうか。
…安倍は既にテラカオス化していたのである。過去期のように、ナノマシンなしで。
特殊能力はないが、身体能力は著しく向上していた。
それを理解していたから、破片を取り込んでも死なないと思ったのだ。

「これを取り込めば、私はより強大に…」

安倍は風鳴翼の破片を取り込んだ。
どうやら適合したようで、その力で埼玉県庁を容易く破壊した。

「ふむ…この力があれば旧主催陣を全滅させられるでしょう」
「それと、九州ロボの完全な掌握も必要ですね。ココの死亡が確認されていない以上、九州ロボを奪還される恐れがありますしね…」

そう言った安倍はオスプレイに乗り、九州ロボに戻っていった。

【二日目・11時30分/日本・埼玉県庁跡地上空】

【安倍晋三@TCBR1】
【状態】四条化、首輪なし、火水土風木電聖闇耐性(強)
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:バトルロワイアルを続ける
1:九州ロボを完全掌握する
2:ダース・ベイダーやジャック・Oなどの旧主催陣を全滅させる
※主催を乗っ取りました
※旧主催陣を憎んでいます
※風鳴翼の能力を継承しました
※ナノマシンが自壊しても生き残る可能性があります


22 : 名無しさん :2016/09/26(月) 15:51:35 zJxD04Kk0
投下終了です


23 : 名無しさん :2016/09/26(月) 22:34:54 dcOmimMs0
投下乙
安倍さんは一発キャラかと思ったら、けっこう暴れてくれそうな予感


24 : 新作仮面ライダーのデザイン……もう少しどうにかならなかったのか :2016/09/28(水) 13:17:59 g/NYAkgY0
その頃、四人のターバンどもで編成された聖帝軍先遣隊はシマウマの集団と戦闘をしていた。
本来なら交渉のためにリニアカーに乗って都庁へ向かう予定の彼らだったが、魔窟と化した関東から関西へ避難していた難民の一団を襲っていたシマウマたちを見て、いてもたってもいられずリニアを降りて交戦することにしたのだ。

『ソイヤッ! パインスカッシュ!!』

そして、今、戦いに終止符が打たれる。
頭にターバンをつけた葛葉紘太もとい仮面ライダー鎧夢の持つ、唯一のライダーキック。
パインアームズのアイアンブレイカーが、シマウマのリーダー格であるぴんころ地蔵尊に直撃した。

(ま、待ってくれ! 私には世界のためにやらなければならないことが……)
「殺し合いに乗ってない難民を襲う奴ら、絶対に許さねぇ!!」


実のところ、シマウマ達は好きで難民を襲っていたわけではなく、たまたま進路上に難民がいたために轢き殺してしまったのである。
全ては大阪で行われている拳王連合軍とホワイトベース組による二つの対主催組織による戦争を止めて、矛先を悪の力であるテラカオスに向けさせて滅ぼさせるため、世界のためである。
……しかしだ。
彼らは先を急ぎすぎるあまり、難民の集団を迂回する選択を取らずにそのまま直進する道を選んでしまった。
結果、多くの難民をひき殺す結果となってしまい、その行いがターバンどもの怒りを買ったのである。

ついでにこの頃には拳王連合軍は半壊、ホワイトベース組は壊滅、テラカオスはとっくに大阪に到着済みである。
彼らはあまりにも遅すぎたのだ。
世界を救いたい大義名分は結構だったが、そのために彼らはあまりにも無駄な犠牲を出しすぎた。
多大な犠牲を他人に払わせながら成果を出せない者達は、五大幹部の開いたカオスロワやテラカオスのような必要悪ですらなく、単なる害悪だった。

その害悪の長であるぴんころ地蔵尊はツケを支払うように、しめやかに爆発四散した。

【ぴんころ地蔵尊@長野県 死亡確認】
死因:紘太のアイアンブレイカーで玉砕


ぴんころ地蔵尊を討ち取って間もなく、頭にターバンを巻いたクロコダインが現れる。

「紘太、そっちは終わったようだな」
「クロコダイン、みんなは無事か?」
「ああ、多少の手傷は受けたがごく軽傷だ。
シマウマ共は全滅、チルノもふなっしーも無事だ」
「そうか」

戦闘が終わるとわかると紘太は変身を解いた。


【ワンリー@かわいそうなぞう 死亡確認】
死因:ふなっしーの梨汁で滑って頭を打って死んだ

【ユキちゃん@アルプスの少女ハイジ 死亡確認】
死因:チルノのアイシクルフォールで凍死

【巨大カマキリ(緑)@ネクロネシア 死亡確認】
死因:クロコダインの獣王激烈掌で粉砕

【その他大勢の野生動物@いろいろ】
死因:聖帝軍先遣隊の総攻撃で全滅
※モブ扱いのため、キルスコアは入りません


「難民たちは……?」
「……そちらはダメだった。
生存者はたったの一人、いや一匹のぬいぐるみのような生き物だけだ。
首輪が付いてないところからして参加者ではなく支給品だろう」
「クソッ、俺たちがもう少し早くついていれば!」

難民とシマウマの死体が無造作に転がる戦場で紘太は怒りに打ち震える。
彼とクロコダインの目線の先では、ターバンを巻いた梨と氷の妖精二人と女の子を模したぬいぐるみのような小さな生き物がいた。
妖精はふなっしーとチルノ、ぬいぐるみのような生き物は魔女シャルロッテである。

シャルロッテは悲しげな目で物言わぬ肉塊となった少年少女と、小さな謎の物体を見た。
それはシャルロッテの持ち主だった、ジュンと絵里の死体と、キルステンの成れの果ての姿であるグリーフシードだった。
彼女たちは化物がひしめき合う関東から関西方面に向けて、殺し合いに乗っていない他の多くの難民たちと共に脱出したが、運悪くシマウマと鉢合わせしてしまったのだ。
戦える者は応戦したが、結局シャルロッテを除いた全員が轢き殺されてしまった。
カオスロワの間だけの短い間ではあったが、シャルロッテにとって三人の友の死は大好物のチーズを食べられない以上に悲しいものであった。


【桜田ジュン@ローゼンメイデン 死亡確認】
【水谷絵理@アイドルマスター ディアリースターズ 死亡確認】
死因:ぴんころ地蔵尊に轢き殺される
※H.N.エリー(キルステン)は消滅し、グリーフシードになりました

【アニマル浜口@野生動物 死亡確認】
死因:シャルロッテに食われた


25 : 新作仮面ライダーのデザイン……もう少しどうにかならなかったのか :2016/09/28(水) 13:20:09 g/NYAkgY0


「仇はあたいらが全部うちとったけど、それで失った人がもどってくるわけじゃないのは悲しいね……」
「この子を一人ぼっちにするのはかわいそうなっしー……
紘太、この子は殺し合いに乗ってなさそうだし、連れて行っていいなしか?」
「ああ、シャルロッテ…だったか?
おまえが望むんだったらついてきてもいいが、どうする?」

このままシャルロッテを一人にさせるのは不憫だと思った四人は彼女を聖帝軍に誘った。
シャルロッテもコクコクと頷き、ふなっしーの頭に乗って彼らについていくことにした。
こうして聖帝軍に新たな仲間が加わった。


「難民たちを埋葬してやりたいが……流石にこの数を埋めてやれる時間はないな」
「こればっかりは仕方がない。それに我々にはどうしてもやるべきことがある」

死んでしまった者達を悼む暇なく、骸を野ざらしにしておかなけらばならない理由が四人にはあった。
一大勢力である都庁の魔物たちと交渉し、味方にする必要があったのだ。
さすれば聖帝軍はバックアップにより多大な力を得て、DMC狂信者とも渡り合える戦力を得られる。
さらに救済の予言の謎解きも進み、完遂も容易になるだろう。
逆に機械文明を嫌う彼らに敵と見なされ聖帝軍の移動拠点であるきらりん☆ロボを攻撃される恐れがある。
早急に接触し交渉を成功させる必要があった。
そのためには先遣隊である彼らが都庁へ向かう必要があるのだが……

「ここどこなっしー?」
「この山々に囲まれた景色からして東京じゃないのは間違いなさそうだが……」

現在地:長野県
彼らはチルノのチンプンカンプンな運転の結果、東京に近づくどころか関東から離れていた!

「絶対にここ東京じゃねーよ!
もうチルノにゃ運転手は任せておけねえ! 俺が運転手をやる!」
「ええー?!」

というわけでリニアモーターカーごっこの運転手はチルノから紘太に交代した。残当。


「しかし、さっきの放送……貴虎が死んじまうなんてな。
ミッチーにどんな顔すりゃいいんだよ……」
「気を落とすな、おまえのせいではない。
しかし、どうやって死んだかはわからんが、都庁の魔物と争って死んだとなると面倒なことになるぞ」

先の放送で仲間であった貴虎の死を知って気が沈みこむ紘太。
更に貴虎は自身の誤解から狂信者と手を組み、都庁同盟軍に深い傷跡を残した。
先遣隊はその事までは把握していないが、貴虎がネットでの宣告通りに動いていれば都庁に攻め入ったことは容易に想像できる。
これが都庁との交渉に大きな歪みを生んでいないことをクロコダインは祈る。

「とゆーか、てっきりダース・ベイダーが放送に出てくると思ったら安倍さんが出てきたなっしー?」
「どうゆうこと? てゆーか、「ばーだっく」も死んでいるみたいだし」

野田総理が死んで以降は、放送はダース・ベイダーが担っていたハズだがなぜか新総理を自称する安倍に変わっていた。
そして第二回放送でデモンストレーションで行い、参加者に圧倒的破壊力を見せつけたバーダックの死が放送で流れた。
これはどういうことか?
超人血盟軍や安倍の主催乗っ取りの件を知らない先遣隊だが、知らないなら知らないなりにクロコダインは考察する。

「安倍やバーダックの件について、オレなりの考えで確証はないが考えられることがある」
「なんだ? 言ってみてくれ」
「放送がダース・ベイダーから安倍に変わっている理由……ダース・ベイダーがなんらかの事情で放送に出られなくなったとする。
それだけの事情として、主催の拠点である九州ロボに参加者からの攻撃もしくは主催同士の内乱でもあったのではないか?」
「「「!」」」
「?、?、?」

チルノ以外の三人は考察の意図を理解した。

「攻撃や内乱が起きて、その過程でバーダックが戦死した。だから放送で呼ばれたのか?」
「ダース・ベイダーは怪我でもしたから放送を安倍さんに交代したなっしかねー?」
「もしくは安倍もしくは別の誰かが主催を乗っ取って、ダース・ベイダーをつまみ出した可能性もある。
情報がない我々にはなんとも言えんが、そんなところだろう」
「……」コクコク
「ええと、つまり、その、うん、あべそうりが悪い!」

クロコダインの考察は概ね的を得ていたと言える。
実際に九州ロボは攻撃と内乱にあい、ダース・ベイダーらは九州ロボを脱出せざる負えず、放送どころではなくなった。
そこを安倍が乗っ取ったのである。


26 : 新作仮面ライダーのデザイン……もう少しどうにかならなかったのか :2016/09/28(水) 13:21:54 g/NYAkgY0

「なんにせよバーダックがいなくなったのは助かるぜ」
「聖帝軍の誰もあいつに勝てそうなのいなかったなしからね」
「バーダックさえいなくなれば、あたいったらさいきょーね!」

圧倒的戦闘力を持つバーダックがいなくなったのは、拳王連合軍に所属するお騒がせマーダー(勘違い)マッドサイエンティスト祐一郎が死んだことと同じくらい、先遣隊には吉報のように聞こえた。

「それは違うぞ、みんな」

だがその喜びはクロコダインの言葉によって打ち砕かれる。

「どういうことなっしー?」
「考えてもみろ。
おそらく主催の大戦力であるバーダックの名前をわざわざ放送に流すか?
主催陣が対主催と真っ向から勝負がしたい酔狂な武人だったら話も変わってくるが、普通は放送で流さない。
流せばバーダックが欠けた分、戦力を失ったと見て対主催たちが九州ロボに攻め込んでくる可能性があるからだ」
「それはつまり……」
「どういうこと? ねえ、どういうこと?」
「チルノはちょっと黙ってくれねえかな?」

主催でも大戦力であったバーダックの名前を放送で流した理由とは?

「バーダックと同じかそれ以上の実力者が主催陣にはまだいる。
クロコダインはそう言いたいんだな?」
「ああ、だから放送でバーダックの名前を流した。あれは主催陣の強気の顕れではないかと思う」
「ひいいいいいい、あんな日本を一撃で消滅させられそうな奴がまだいるなんて怖気がするなっしーーー!」

考察を理解していないチルノを除いた全員が冷や汗をかいた。
バーダック以上の実力者がいた場合、聖帝軍の力を総結集させても勝てるかどうか怪しいからだ。
実際、この考察についても安倍はテラカオス化しており、同じ頃には四条化細胞を取り込んで大幅パワーアップしている。
攻撃力以外は既にバーダックを超えてると言っても過言ではない。

「ならば一層急がねならんな」
「ああ、余計な邪魔が入る前にすぐに都庁に向かうぞ!」
「幽香も霊夢もしんでるし、もたもたしてられないね!」

これから主催やマーダーに妨害される可能性は決してゼロではない。
その前に早く一秒でも早く都庁にたどり着く必要があった。
寄り道した結果、シャルロッテを救えた点を除けば先遣隊は大幅なロスタイムをしてしまった。
すぐにでも都庁へ行かなくてはならない。
ちなみにチルノは幽香が主催陣営だとは知らず、霊夢の名前が前の放送で一回流れていたことはすっかり忘れている。

「とりあえず来た道を戻れば埼玉県には戻れるそこから東京に進路を修正すれば都庁にはたどり着けるか。
時速300キロもあれば一時間以内にはつく……バイクが命の仮面ライダーの腕の見せどころだな」
「さっそく出発進行なっしー!」

運転手を紘太に変え、チルノ、ふなっしー、クロコダイン、シャルロッテを乗せたリニアモーターごっこが出発する。


進路は関東方面である東側……の逆方向である西側へ!

なんと聖帝リニアは、前面方向ではなく後ろへ逆走し始めた!

「ちょっと待て紘太! 遊んでいるのか?!」
「なんで逆走するなっしー!?」
「ばかなの? しぬの?」

逆走するリニアに対し、運転手である紘太に非難が集中する。

「チルノ! おまえにだけはバカと言われたくねー!
……じゃなかった! 逆走してるのは俺のせいじゃねーよ!」
「なに?」
「このひみつ道具が操作を受け付けないんだ!
前身はおろか右や左にも曲がらねえ!
それどころかブレーキもできないぞ!」
「「「なん……だと……?!」」」」

紘太の言葉に全員がショックを受けた。(こればかりはチルノも理解した)
実は先ほどのシマウマたちとの戦闘のゴタゴタの中でリニアモーターごっこはシマウマに衝突され、故障してしまったのである。
もはや聖帝リニアは逆走しかできず、ブレーキもできない暴走リニアと化したのだ。

「このままだとアタイらは「とちょー」にたどりつけないじゃない!」
「それどころか、このままだと関西方面に行くことになるぞ……」
「そりゃまずいなっしー! 特に大阪はマーダー集団の拳王連合軍がいて食人鬼の風鳴翼もそっちに向かっている話なっしー!
そうでなくとも禁止エリアが……ああもう、このリニア誰か止めてなっしー!!」
(すまん、加賀美、サウザー……オレたちは都庁への交渉はもうできそうにない……許せ)

聖帝リニアは止まることなく、関西方面へと向かっていく……先遣隊の運命やいかに!?


27 : 新作仮面ライダーのデザイン……もう少しどうにかならなかったのか :2016/09/28(水) 13:22:41 g/NYAkgY0



【二日目・11:30/長野県】

【聖帝軍先遣隊】

【ターバンのガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、怒り、超不安、聖帝リニア運転手
【装備】戦極ドライバー、ロックシード(オレンジ)、ターバン、リニアモーターカーごっこ@ドラえもん(故障)
【道具】支給品一式、ロックシード(パイン、イチゴ、スイカ) カチドキロックシード
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:誰かリニアを止めてくれー!
1:DMC狂信者達、もう絶対許さねえ!!
2:救済の予言の謎を解く
3:貴虎……
4:ダースベイダーも安倍総理も、絶対に許さねぇ!!


【ターバンのガキ(チルノ)@東方project】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、やる気十分
【装備】アイスソード@ロマンシングサ・ガ、ターバン
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW
【思考】
基本:『だーすべいだー』を倒す
0:やっぱりあたいが運転手やればよかった?
1:『とうきょうとちょー』に向かうよー!
2:みんなで予言を解いて世界を救うよ!
3:せーてーは頼りないからさいきょーのあたいが皆を引っ張る


【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、超不安なっしー!、聖帝リニア車掌
【装備】野球のユニフォーム(背番号274)、ターバン、シャルロッテ@魔法少女まどか☆マギカ
【道具】支給品一式、グリーフシード
【思考】
基本:殺し合いを止めるなっしー!
0:誰か助けてなっしー!
1:DMC狂信者達を成敗するなっしー!
2:名探偵ふなっしーが予言の謎を解くなっしー!
3:本当に都庁につけるか不安なっしー!
4:ヒャッハー! 梨汁ブシャー!
5:新しい友達としてシャルロッテは守りたい


【ターバンのおっさん(獣王クロコダイン)@DRAGON QUEST ダイの大冒険】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、怒りと悲しみ
【装備】獣王の鎧、グレイトアックス、ターバン、聖帝軍の旗
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:これもう、都庁にたどり着くのは無理だろ
1:聖帝軍と協力し、DMC狂信者の軍勢を倒す、そのために都庁の魔物を説得する
2:世界救済の予言の謎を解く
3:都庁への到着については諦めモード


※聖帝リニアが故障しました、現在関西方面に向けて逆走しています


28 : すれ違いと消せない罪 :2016/09/29(木) 00:29:37 MMG9XG2Q0
投下します


29 : すれ違いと消せない罪 :2016/09/29(木) 00:30:26 MMG9XG2Q0
「もうすぐ都庁につくよ。それにしても、そこらじゅう焼野原で馬鹿でかい穴まで開いてるって、何があったんだい……」
「カ〜カッカッカ! だが見たところ、もう戦闘は終わってるみたいだな」

新たな仲間、超人達と震えるベジータを連れ、拠点としていた都庁へと戻る影薄組。
セルベリア達との激戦を繰り広げた彼女達であるが、途中現れた天子の言葉によればそれは陽動。
そして戻ってきた都庁周辺の大惨事を見れば、地上でとてつもない戦闘があったのは間違いないだろう。

「た、大変だよ! 世界樹が削れちゃってるよ!?」

あかりが思わず叫び指す方向を見れば、再生こそしているようだが何かに抉り取られたかのような世界樹の姿。
ぶらさがり続けていた謎の紫色の珍生物もいなくなっている。
いや、大規模な戦闘があったにしてはあまりにも世界樹そのものが静か過ぎた。

「何か妙だぞ。こまっちゃん、急いだ方がよさそうだ」
「フ、ハハ……な、なんだ、おも、思ったよりも都庁、怖くないじゃないか。金髪もいないしな……」
「そう思うんなら早く歩くっすよM字さん!」
「正直な所、僕たち以上に足が遅いのはどうかと思いますよベジータさん。というかまず自分の足で歩いてくださいよ」

震え笑いするベジータの背中を押して強引に進ませるのは高校生二人。
王子のプライドは崩壊寸前だが、今はそれよりも安心感の方が大きかった。
あれだけ恐ろしい場所と思っていた都庁が、実はそれほどでもなかったのだから、嬉しいに決まっている。
それはすなわち、今までへたれ続けていたベジータに活力が戻るというわけで――



「……あら、いらっしゃい冒険者さん」



「ひぃぃぃ!?」

無くなりかけた恐怖心は、都庁の入り口に咲いていた巨大な花……否、巨大な花と一体化した少女の声で一気にふき上がってきた。

「あ、あんたは確か……そうだ、みんなで集まった時にちょっと見ただけだけど、アルルーナ……だっけ」
「ええ、そうよ。長いことこの世界樹の上の方で待機してたから、他の魔物と比べたら馴染みは少ないでしょうけど。
 あなた達には、おかえりなさいね。……欠けた人もいないようだし、あなた達だけでも無事でよかったわ」

小町の問いに対して、花の少女アルルーナは小さく笑みを返す。
しかし続く言葉に、誰もが疑問を抱く。

「あなた達……だけ?」
「ええ。落ち着いて聞いて頂戴ね?
 雷竜様、それに裁断者と骨竜……誰よりも先にこの都庁、世界樹を奪還してくれた勇敢な彼らが亡くなったわ。
 それだけじゃない。地下で呉島貴虎と魔王マーラが暴虐の限りを尽くして第六階層の魔物はほぼ全滅。
 討伐隊のみんなもどんどんやられて、最終的に巫女様が倒してくれたそうだけど……
 現時点での被害報告では、生存者の9割も重傷以上。壊滅的な損害もいいところよ……」
「――ッ?!」

悲痛な面持ちで告げられたアルルーナの言葉に、影薄達は誰もが絶句してしまう。
自分たちが地下に閉じ込められている間に、何があったのか。
事情はわからないが、とにかく突き付けられたのは、大量の仲間達の死であった。


30 : すれ違いと消せない罪 :2016/09/29(木) 00:31:17 MMG9XG2Q0
「お、おい。都庁には、お、恐ろしい金髪共がいただろう。そいつらはどうしたんだ?」
「……サクヤちゃんは巫女様を庇って戦死。巫女様の救援に向かったレストさんも瀕死の重傷。
 戦力的にも、無傷のダオスさんが残った最後の砦よ」

ベジータは心の中で小さくガッツポーズをとった。
あのブロリーっぽい奴の情報がここで出てこないということは奴は既に死んでおり、今しがた残りの金髪も死ぬか瀕死に陥ったのだ。
自分に恐怖の感情を植え付けた、気に食わない金髪連中が軒並み死んだ。所詮連中は超サイヤ人もどきにすぎなかったということだ。
だが、そうは思えども口にすることはなかった。影薄たちの反応、そして目の前にアルルーナがいるのにそんな真似はできなかった。

「どう……して……」

絞り出すようなあかりの声が、嫌に響く。
ベジータだけでなく、普段はうるさい超人達もまた無言であった。


ピーンポーンパーンポーン♪


そんな空気を、場違いな音が掻き乱す。
定時放送だ。
同時にそれは、絶望の追い討ちでもあった。


 ◆ ◆ ◆ 


「嘘っすよね……先輩……?」
「ひっ……くぅ……ぅぅぅっ……!」
「……」

放送終了後、そこには更に多くの涙が流されていた。
敬愛していた先輩の死を知らされたステルスモモはただただ愕然とし、未だに現実を受け止めきれていない様子だ。
都庁の仲間に次いで親友の死まで聞かされたあかりは、必死に涙を堪えようともするが、悲しみの感情を抑えきれていない。
そんな少女達の傍で、黒子は静かに、無言のまま緑間の死を受け入れていた。
自分達のような、ただのバスケ選手がこんな魔の殺し合いで長生きができるはずがなかったのだと、自分は運がよかっただけなのだと。
冷静にそう判断し、悲しみの感情を極力排除する。今は自分よりも、きっと仲間の少女達のほうが傷ついているのだから。
まさか緑間が大量殺戮マシーンと化していたとは夢にも思わず、彼は相変わらず冷静であり続けた。

「そんな、ニンジャだけでなく、あいつらまで逝っちまったってのか……?」
「カ〜カッカッカッカッカッ! だが、主催連中も死んでいるということは、あいつらは立派にやり遂げたのだ!」

それに反するように、超人は大いに泣き、笑い、散って行った同胞の健闘を称えた。
彼らはしっかりと主催者連中を道連れにし、地獄へ叩き落としたのだ。ならば、残された自分たちも続かなくてどうする。
消えた山に乗っていたであろう残りの主催者を自分達の手で始末する決心を改めて固め、闘志を滾らせた。


31 : すれ違いと消せない罪 :2016/09/29(木) 00:31:59 MMG9XG2Q0
そんな中。
この中では冷静であったソルジャー、日之影、小町の三名はそれぞれ悲しみの感情以上に放送への疑問が大きかった。

 (安倍晋三だと……どうなっているんだ!? そして死国に何があったというのだ!?)
 (くそ、仲間や後輩をこうも助けられないなんて先代生徒会長として恥ずべきだが……
 都庁の中で見せてもらった主催者側の名簿にあった連中の多くも死んで、普通に考えりゃもうすぐ殺し合いは終わると言いたいとこだが……)
 (いくらなんでもさっきの新総理の様子は妙だ。あの風見幽香が死んだってだけでも驚きなのに、バーダックまで死んでるとはね。
 それでいて、他の参加者と同じように淡々と名前を読み上げるなんて、まるであいつらが死んだことを問題にも思っていないような……)

これが以前と同じくダース・ベイダーによる放送であればここまで彼らは混乱しなかっただろう。
しかしながら放送を行ったのは、“新”内閣総理大臣を名乗る安倍晋三という男。
彼に関する情報は、九州ロボに直接奇襲をしかけた超人達も、はやて達狸組から情報提供された都庁の者達も、誰も知らないのだ。
一体何者なのか。少なくとも放送の様子から察するに、主催幹部の多くが死んでも微塵も動揺していないことは確からしい。

 (新たな強敵ってことかい? でも、戦うにしてもこの状況じゃ……)

小町は落ち込む影薄の仲間達を見やる。しばらくはそっとしておいたほうがいいだろう。
それに同盟を組んだ都庁の魔物達も心配である。
あれだけの大戦力、この眼で確かに見た強大な力を持つ龍の一体がやられ、残りも重傷だという。
呉島貴虎と先程言われていたマーラ様の名が呼ばれていたことから、一応は勝利したことになるのだろう。
しかし多くの仲間の名を呼ばれ、加えて自分の名が呼ばれていないためにセルベリアが再度リベンジでこちらを襲撃してくる危険性もある。
半壊……いや壊滅状態まで追い込まれた都庁の戦力で、あの無限沸きに近い狂信者を止められるだろうか。
超人達の戦闘力がどれほどかはわからないが、しばらくは彼らにも手伝ってもらう必要性もありそうだ。


「改めて死を告げられると、やっぱり悲しいわね。ほら、あなた達も辛いでしょうけど、そろそろ世界樹の中に入って。
 そしてよければ……亡くなった同胞たちを弔ってあげて。カヲル君が、歌ってくれるみたいだしね……」
「は、はいっす……」
「そうだな……」

沈んだ表情のまま、影薄達はアルルーナに促されるまま、世界樹の中へと戻っていく。
仲間や友の死、新たな主催者の出現、思うところは色々とある。
だがこれから先も戦うのであれば、冷静に戦況を判断しなくてはならない。
まずは、何故こうも世界樹が致命的な損害を受けてしまったのかなどを、生き残った仲間から聞くべきだろう。

「それでは、我々もお邪魔させてもらうとしよう」














「あら――いつ、誰があなた達も通すなんて、言ったかしら?」


32 : すれ違いと消せない罪 :2016/09/29(木) 00:32:33 MMG9XG2Q0
ソルジャー達が足を世界樹内部に踏み入れようとした、まさにその瞬間であった。
あれほど沈み込んだ表情であった少女の顔が、一気に冷徹な笑みに変わっていた。

「死になさい」
「カッ!?」

凍えるような笑み、フロストスマイルを浮かべたアルルーナから放たれたのは、本当に身を刺し貫く冷気の塊であった。
冷気はアシュラマンを貫き絶命させるだけに留まらず、後ろにいたバッファローマンにさえ突き刺さった。

「き、貴様ッ!」
「きゃあっ!?」

だが、バッファローマン突き刺さったそれを握り潰し、猛然とアルルーナへとぶつかっていった。
対話だとか、そういった思考は彼から一切切り捨てられていた。目の前の少女のフリをした化物は、こちらを油断させ、そして今まさにアシュラマンを殺害したのだ。
ハリケーンミキサーでバラバラにしてやらねば、気が済まない。

「ぐぅぅ……! パ、パワーはあるみたいだけど、私の蔓も負けてないでしょう?
 これでも私は龍種を除けば樹海最強の生物を自負してるの……舐めないで頂戴っ!」
「う、うおおおおおぉぉぉぉぉ!?」

絡み付いたアルルーナの触手のような蔓が、あのバッファローマンの巨体を強引に持ち上げる。
アルルーナの言葉通り、彼女は樹海において樹海守護獣や飛龍以上の戦闘力を有している、三竜に次ぐ実力者。
先程の冷気だけでなく炎に稲妻さえ操り、触手のような蔓を振り回し、太古の呪粉すら撒き散らすその姿はさながら小型のフォレストセルだ。

「逞しい身体……あなたの精気で、この傷も治させてもらうわ」
「な、なにを――んむぅ?!」

言うや否や、アルルーナはバッファローマンの唇を奪う。
突然の行為に抵抗するバッファローマンだが、どんどんと力が抜けていく。
やがて彼は気がつく。己のあれだけ逞しかった腕が、足が、身体が、枯木のように干からびていく様子に。
――ヴァンパイアキス。アルルーナは無慈悲な吸精鬼でもあるのだ。

「ふぅ、ごちそうさま」

やがて完全に吸いつくされたそれは無造作に投げ捨てられ、アシュラマンの遺体の上に重なった。

「――ッ!」

あまりに突然の惨劇。
外見に反した恐ろしい魔物に仲間を殺されたソルジャーは、一瞬だけ我を忘れかけた。
だが彼はこれまで、冷静で的確な判断力で生き延びてきた。
【都庁を訪ねる】という判断ミスさえ除けば、その判断力は未だ健在であった。
アルルーナにとびかかろうとする寸前で、彼は咄嗟にバックステップをとった。

「神樹――ライオットランス」

直後、ソルジャーの頭上から赤い鉄槌。
あのまま激情に身を任せ飛び込んでいれば、この一撃で粉々にされていたことだろう。

「お姉さま、助かりましたわ!」
「アルルーナ、お下がりなさい。貴女でもこの殿方は手強い相手でしょう。ここは私と神樹が引き継ぎますわ」


33 : すれ違いと消せない罪 :2016/09/29(木) 00:33:06 MMG9XG2Q0
ソルジャーは敵に目をやる。
今まさに鋭く尖った蕾を叩きつけてきた、黒い怪物。その太い蔓の一つに乗って降りてきたのは、一人の人間の少女であった。
都庁軍に属している様子ではあるが、影薄達は彼女の存在を知らない。
見知らぬ少女が仲間となった筈の超人の命をいきなり奪ったのだから、彼女たちも黙っているわけにはいかない。

「な、なんなんだいアンタ!? いきなりこんな真似をして、一体どういうつもりさ!」
「初めまして、ですわね。タマムシジムのジムリーダーを務めていましたエリカと申します。そしてこちらは神樹。
 恐ろしい敵に敗れ、瀕死であったところをこちらの美樹さやかさん達に助けて頂いたのです。
 受けた恩は返すのが道理。地下での戦闘では手助けができず、多大な犠牲を許してしまいましたが、せめて地上ぐらいは死守いたします」

優雅におじぎをするエリカに対して小町は勢いを削がれてしまうが、このエリカが只者ではないことは理解できた。
横にそびえ立つ神樹とよばれた怪物も、そしてアルルーナも、どうやら彼女の配下となっているらしい。
そしてその配下に、躊躇いもなく超人達を殺させたのだ。その辺のお嬢様というわけではないだろう。

「あんたが都庁、こっち側の協力者ってのはわかった。だが、なんで超人達を攻撃する?
 俺たちは狂信者の攻撃で地下に閉じ込められていたんだが、それを助けてくれたのはこのソルジャー達だ!」
「神樹と共に警戒にあたる際、小鳥さんより危険人物の情報は既に聞かされていますわ。
 超人血盟軍、表向きは対主催組織のようですが、最悪の破壊集団である拳王連合への協力者でもあり……
 野球の試合で何故かクロスボンバーで対戦相手の首を吹っ飛ばすという、彼ら自身も危険な存在。排して然るべきではないでしょうか?」
「いやあれは――」
「野球とクロスボンバーの関係性を述べられるなら、どうぞ」

僅かに汗をかいたソルジャーだが、彼は弁明の言葉が捻りだせなかった。
見れば、本当なのかとステルスモモ達もスマホで動画確認中だ。
動画に映るは、桜色クロスボンバーで首をもがれた(故)コルド大王。
カオスロワ式野球だから! これカオスロワ式野球だから死者も出るの!
こう弁明したいところなのだが、かつてのイチローチームと大正義巨人軍の試合と大きく違うのは、野球のボールとかが一切関係ない点だ。
逃げるコルド大王への仕置きにしては、桜色クロスボンバーはあまりにもえげつない。
しかもガチレズ二人が、ちょっと冷静にみれば結構怖い外見のコルド大王の首を嬉々としてもいでいるのだ。
これでは誤解を招いても仕方がないだろう。もっと言えば、結構フェイスフラッシュに頼りすぎて怪我人も多い。主に仲間のベジータだが。

「で、でもあかり達を助けてくれたよ?」
「……油断しないで。そうやって恩を売って世界樹内部に侵入して、内部から破壊する作戦かもしれないわ。
 ラージャンとデスマンティスの件もあるし、よほど信用がおける存在じゃない限り、これ以上世界樹に誰かを招くのは危険よ」

アルルーナの言葉を受けて、あかりも黙ってしまう。

「拳王連合に脅されてるって可能性はないんっすか? って……っ!?」

なおも超人達の肩を持とうとスマホをいじっていたステルスモモの表情が一気に崩れていく。
言葉に詰まり、何も言えなくなってしまった彼女の様子が気になった小町が思わず後ろから覗きこんだ。

「――っ!」

そして、小町もまた言葉を失ってしまった。


34 : すれ違いと消せない罪 :2016/09/29(木) 00:34:57 MMG9XG2Q0
情報を確認する中、彼女が見つけてしまったのは大阪の拳王連合の略奪から逃れた避難民の助けを求める書き込みや動画。
その中の一つに、それはあった。

『む、もう映っているのか? 私は加治木ゆみ。
 少し前に大阪をジプシー・デンジャーの脅威から救ってくれた小野塚小町さんに、救援を求める書き込みをした者だ。
 恥ずかしながら、私は凡人でね。雀力を戦闘力に変えてもたかが知れている……故に助けを求めた。
 だが勝手ながら――もう救援の必要はない。もしこちらに戻ってきてくれていても、引き返してくれて構わない。
 身勝手な女だと思われても仕方がないだろう。だが、これを見てくれ……』

動画に映っていたのは、ステルスモモが敬愛する先輩であった。
だが彼女がカメラの向きを変えた瞬間に、それは映った。

――破壊の化身、バスターガンダム――

『誰かは知らないが、ロードビヤーキーを駆り我々を守ろうとする者が現れてはくれたものの、見ての通りだ。
 まるでその想いを踏み躙るように、奴らは我々の避難先を次々に砲撃してきている。ここも……時間の問題だろう。
 もし、この動画を見てくれた者がいれば、小町さんに限らず皆大阪から離れて欲しい。
 拳王連合軍は、恐ろしく強く……そして赦されざる存在だ。今無策で我々を助けようとして、このような渦中に巻き込まれてはならない。
 今はまだ……だがいつか、機が訪れたその時でいい。どうか、拳王連合軍を止めて――』

最後まで言い切る前に、轟音と共に無数の瓦礫が降り注ぐ。
バスターガンダムの砲撃が、とうとうこの避難場所にも命中したのだ。
崩壊の音にほとんど掻き消されたが、敬愛していた先輩が最期に自分の名を呼んでくれたことを、ステルスモモは確かに聞いた。

「うぇ…っく…せん、ぱい……っ!」

スマホの画面に、大粒の涙が零れ落ちて滲ませる。
日之影も、小町も、友を失い辛いはずの黒子もあかりも、かける言葉が出てこなかった。

「……」

エリカは静かに首を横に振った後、アルルーナへ目配せをした。

「……弁明の余地無しです。野球と称した虐殺だけに飽き足らず、無差別砲撃で罪もない人々の命を奪うなど、許すことはできません」
「私たち魔物も、確かに命を奪うわ。でもそれは自然の摂理であるし、生きるためには必要なこと。ここまで無差別な殺戮はしない。
 そしてね、貴方たちにたとえどんな事情があっても――多くの大地を破壊した罪――は、消えないの。
 ――拳王連合及びそれに協力する者は皆殺し――これは雷竜様の遺志にして、私たち魔物の総意……」

ソルジャーが、僅かに後ずさる。
もはや説得をする時間も残されていなければ、聞く耳すらもってくれていない。
そもそもバスターガンダムの無差別攻撃そのものも、彼には疑問が尽きなかった。

「ベジータ……ベジータ?」

そして何故か、ずっと黙り続け地面に両手をつきつづけていたベジータに対しても。
まさかここにきて、またへタレ病が再発したというのか。
一度はこちらの話を聞いてくれた影薄も、バスターガンダムの動画があっては少なからず警戒されてしまうだろう。
交戦不可避。だがそれは本意ではないし、この状況はいかにソルジャーと言えども危険すぎた。

「エリカを甘くみねーことだな。こいつはやる時はやる女だぞ? やるは勿論殺す方のやるだからな」
「私を見るなりいきなり捕獲しにかかってきたお姉さま……そんな強引なところにも惹かれちゃう!」
「こほん! 以前倒したマーダーのお二人も、あなた方も、明らかに平穏を乱すような方々であれば、私は攻撃に一切の手心はしないつもりです。
 未来に控えている破滅を皆で協力して回避するためにも、虐殺をよしとする危険な芽は摘ませて頂きます」


35 : すれ違いと消せない罪 :2016/09/29(木) 00:36:38 MMG9XG2Q0
ゆっくりとエリカの手が動くと同時に、漆黒の大樹と妖艶な花がそれぞれ攻撃体勢に入る。

「神樹、アルルーナ――」
「っ!」

その刹那ソルジャーが下した判断は、ベジータを抱えての逃走であった。
二体の植物が苛烈な攻撃を仕掛けてくる前に、既にベジータは脇に抱えている。
敵は圧倒的な力を持っているが、根という存在がある以上移動速度はそれほどでもないだろう。
初撃をかわしさえすれば、後は逃げおおせることができる。

それは実に冷静かつ、的確な判断力であった。



 ◆ ◆ ◆ 



「ち、これ以上は蕾が届かねェ。メギドフレイムとかならまだ届くが、どうする?」
「お止めなさい神樹。深追いして返り討ちにされては意味がありません。今はとにかく、ここを守ることを優先しましょう」
「……まあ、あの糞オカマとの再戦に備えて、無駄な力は使わないに越したことはないか」

しゅるしゅると、神樹の蕾と鈎爪がソルジャーの追跡を諦めて定位置へと戻る。
アルルーナの蔓も同じくだ。

「……ふぅ。とりあえずはなんとかなって何よりね。少なくともさやかちゃんがみんなの治療を終えるまでは、持ち堪えないと」
「本当に超人さん達、悪い人だったのかな……」
「忘れないで頂戴? 私たちがあなた達と同盟を組んでいるのは、あなた達が私たちに理解を示し、環境に対しての考えも改めてくれそうだからよ?
 あの超人達はそこをはき違えた。ただ主催者と敵対しているだけでここに入れるなら、拳王連合軍まで入ってきちゃうじゃない……」
「だ、ダメっすよそんなの! だって拳王連合軍は、先輩を……ただ怖くて隠れてた人たちを、あんな、あんなに……!」

ステルスモモの両肩が震える。
悲しみの感情以上に、バスターガンダムへの、拳王連合軍への怒りの感情が勝っていた。

「……モモ、一回中に入るよ。超人や拳王連合軍のことはとりあえず保留だ。今はまず、状況を把握しないといけない。
 さっきの放送が、あたいにゃどうも引っかかるんだよ」
「引っかかるといえばエリカさん、先程は未来に控えている破滅と言っていましたが、それはどういう意味です?」

改めて影薄達が世界樹に入っていくなか、ふと黒子が疑問を口にする。
そしてそれを聞いたエリカと神樹は、そうだったと言わんばかりに表情を変えた。

「す、すみません。こちらに来てから忙しくてまだ皆さんにもお話していなかったのですが――この世界はこのままでは滅んでしまうのです」
「俺達は、それを食い止めるために色々調べている最中だったんだ。さっきこのそばでなのはっぽい奴らの姿も見かけたし……
 ああなのはってのは俺達のチームのリーダーだった奴だ。そいつが、大災害による世界の滅亡を教えてくれたんだよ」
「「え゛?!」」
「驚きです」

そして投下されるエリカ達の爆弾発言。
悲しみに暮れる間もなく世界樹に集った者には、まだまだ安息が訪れそうにない。


36 : すれ違いと消せない罪 :2016/09/29(木) 00:37:09 MMG9XG2Q0
【二日目・11時15分/東京都・世界樹】


【影薄組】
【小野塚小町@東方Project】
【状態】健康、首輪解除、混乱
【装備】斬魄刀『神鎗』@BLEACH
【道具】舟
【思考】基本:もう仲間を誰も失わない為にカオスロワを終わらせる
0:え゛?!
1:殺し合い打破のためにも都庁には協力する
2:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
3:幽香及びバーダックの名が放送で呼ばれたことに疑問
4:変なの(セルベリア)に因縁つけられちまったね
5:超人達からの情報を鵜呑みにはしないが、一応ダオス達に伝える
※飛竜たちと情報交換して、主催達が九州ロボにいることを知りました。
※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました)

【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、混乱
【装備】己の拳
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を倒す
0:え゛?!
1:仲間を守る
2:混沌の騎士が遺した謎を解く
3:↑の全部やらなくちゃあならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。

【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】健康、首輪解除、深い悲しみと怒り、混乱
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、野球のユニフォーム
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:え゛?!
1:加治木先輩を殺した拳王連合は絶対に許さない
2:時間があればスマホを使ってネットで情報を探る
3:DMCファンだけど信者の暴動にはドン引き

【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、冷静
【装備】ウィンチェスターM1912
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:世界の滅亡ですか……流石に驚きました
1:友人たちと生き残るためにも、都庁に協力する
2:空気中に漂う物質への対処法を考える(世界樹が有力?)
3:狂信者には絶対に負けません

【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】健康、首輪解除、深い悲しみ、混乱
【装備】エンシェントソード@Minecraft
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:仲間と一緒にカオスロワを終わらせて主人公らしく大活躍!
0:え゛?!
1:混沌の騎士、亡くなった友人達の分も頑張る
2:まどかと同じく、人間と魔物の共存に賛成
3:オオナズチ以外の都庁のモンスターの背中に乗りたい


37 : すれ違いと消せない罪 :2016/09/29(木) 00:38:11 MMG9XG2Q0
【エリカ@ポケットモンスター】
【状態】健康、歪みし豊穣の神樹及びアルルーナのトレーナー
【装備】モジャンボ、キノガッサ、他不明
【道具】基本支給品一式、モンスターボール×2(神樹とアルルーナ)
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:世界樹に集まっている人にも世界滅亡の未来を伝える
1:ポケモンと一緒に生き残る
2:珍しい植物タイプはゲットしておく
3:世界樹の軍勢を手助けする

【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【状態】健康、蕾増加、エリカのポケモン
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:フォレストセル達が戻り世界樹が立て直すまで入り口を死守
1:なのは達、尻がどうのこうの何言ってんだ……?
※都庁近辺にいるなのは組達を既に視認しています

【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【状態】ダメージ(小)、深い悲しみ、エリカのポケモン
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明品
【思考】基本:雷竜達の遺志を継ぎ、世界樹を守る
0:神樹と共に入り口を死守する
1:お姉さま、世界の滅亡って私も聞いてないです……
2:拳王連合及びその協力者は皆殺し
※世界樹の魔物の一人です
※三竜や協力者を除き、彼女より強い魔物はもう世界樹内部には残っていません




「はぁ……はぁ……」

ソルジャーは神樹とアルルーナの攻撃をかわし、どこかに身を潜めていた。
たった一度の判断ミスで、かけがえのない仲間を殺されてしまい、逃げ出した主催者を探すこともより困難となってしまった。
だが彼には、それを悔いる余裕もなかった。

「ブルマ……ブルマ……」

脇に抱えていたベジータは、まるで幽霊か何かのように力ない声で、ひたすらにその名を呼んでいた。
そう、バスターガンダムの攻撃はベジータの妻の命も奪っており、その名はつい先ほどの放送でよばれた。
友情を築き上げつつあったアシュラマン達の死にすら反応がなかったのは、これが原因である。

「ベジータ〜〜〜〜っ!」
「ブルマ……どうして……」

前ならしゃんと背筋を伸ばしたソルジャーの一喝もまるで効果がない。
そしてソルジャーは、同時に理解していた。ここでまた判断を誤ると、さらに取り返しがつかなくなるということに。
ソルジャー――キン肉アタルは、再び冷静で的確な判断力を取り戻せるのか?

【二日目・11時20分/東京都・どこか】
【超人血盟軍】
【ベジータ@ドラゴンボール】
【状態】健康、金髪恐怖症(小)、首輪解除、深い絶望
【装備】野球のユニフォーム
【道具】支給品一式、ノートパソコン
【思考】基本:死にたくないので野球をする
0:???
※何度も瀕死状態から回復したので戦闘力が上がりました。
※心に穴が空いている状態です。クラウザーさんの歌を聞いた場合、洗脳される危険性がでてきました

【キン肉アタル@キン肉マン】
【状態】健康、首輪解除、傷心、僅かな焦り
【装備】キン肉マンソルジャーのマスク、飛竜が書いた九州ロボの地図
【道具】不明
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:まずはベジータに的確に対処


【アシュラマン@キン肉マン】 死亡確認
【バッファローマン@キン肉マン】 死亡確認


38 : 名無しさん :2016/09/29(木) 00:38:39 MMG9XG2Q0
投下終了です


39 : 名無しさん :2016/09/29(木) 05:09:00 xXu9pn1I0
投下乙
案の定、ホイホイと同盟軍と連合軍ひいては血盟軍が味方になれるわけはなかったか……
気がついたら都庁はモブ魔物含めて壊滅状態
超人血盟軍も最後の二人になりベジータは今までにないほどヘタレてる
カオスロワとは思えぬ鬱っぷり、対主催同士の足の引っ張り合いここに極まれり……

    そだ   |-''ヽー---、 ヾヾヾ
    れが   |{{{ }}}))))ヽ、}|| l||i
    が    |{{{||リリ彡ンリノノハ l|||
    い    |ミ、ヾ彡彡彡ノノノ} ||||
    い    /ヾヾヾヾヽ三彡ソ} |||
    !!    /ヾヾ}} }}ハヾヾ三彡;} || に
 \___/ハ{{ }}|l||}}}ト、ヽ}} 彡シil l| や
  {ミミリ  {{{::{{ {{{ {||||| }}ハヾ}リ 彡シ}i{   っ
 l|{ミミリ ノニミミョェ、,, |rェィ彡三ヽ1ミ}ll、ヽ
 l|,{ ミl  イエユミ、i:: iミィエフシ' lミi.} l|
 l|ト、ミl   ,,.-‐';: i !`゙゙ー-  i",イ l|
 |lトiiヽl       ; i !、    /t'/ l||
  rイ{ l     ヾく_ソ    / |ト、 l||
  (|:.:ヽ ゙、   ゙ー_‐--‐ァ'  / /:} }ヽ、
ノ"l;:;:ヾヽ:ヽ.  、二二  /::://:::l;;;;;;;
:::::;;;;;;:.:\\\       /::://:.:.:l;;;;;;;;;
:::::;;;;;;;:.:.:.::.ヽ\ヽ、__,,ノ ノ/:.:.:.:l;;;;;;;;;;


40 : 名無しさん :2016/09/29(木) 14:49:44 .44nShmU0
お二方投下乙!
クロコダインがついていながら先発隊はなんてこったい…
それでもクロコダインならなんとかしてくれそうな気がしなくもない
そしてやっぱりマップ破壊のせいで都庁と拳王連合の関係はどう足掻いても修復不可能だったわけだが、
緑間はテラカオス化のせい、のび太はドラえもん殺されたせいでマップ破壊に至ったのに対して、ダイアーさんはなんとなく破壊してんだよな…
あれ、これ全部ダイアーさんが悪いんじゃね?


41 : ◆Q.71Qfm3rk :2016/10/07(金) 17:32:00 GvMBym960
お待たせしました
カービィ、乃木怜治、サーシェス、イチローチーム+ドラゴンズ Aを投下します


42 : 侵蝕のサーシェス :2016/10/07(金) 17:33:22 GvMBym960
時刻は第五回放送前の9時50分まで遡る。
そこは千葉県の某遊園地。
かつてそこにはガンダムエピオンを駆るゼクスを中心とした対主催グループがいた。
彼らはその約一時間前には遊園地を発っていた。

今、その上空にいるのは8人と三匹の野球選手達、そして一匹の黒いドラゴンとそれに寄生した触手ヒゲオヤジである。

ナッパを除くイチローチームと、オシリスの天空竜・白光炎隼神ホルス、イドゥン達によるドラゴンズの片割れがテラカオス候補者であるサーシェスと彼に触手で寄生されたホルスの黒炎竜に追われていた。

「い、いくら神と言えどもそろそろスタミナがやべえぞ……」
「オシリスさん、頑張って!」
「体感的にそろそろ10時ホル! それまで踏ん張るホル!」

8時30分から一時間以上もサーシェス達に追跡され、飛びっぱなしだったドラゴン達のスタミナも限界が近づいていた。

「もうドラゴン達が持たないぞ」
「ゼロォ! まだなのか?」
『待ってくれ、変身に必要な力が戻ってきているのは確かなんだ……あと10分で良い! 持ちこたえてくれ』

オシリスの背の上でイチローとDAIGOはウルティメイトブレスレットの中にいるウルトラマンゼロに呼びかける。
彼らの作戦ではDAIGOがゼロに変身して、ゼロの持つルナミラクルによる浄化の力で闇の力を持つサーシェスの手から黒炎竜を解放し、黒炎竜を救い出す計画なのだ。
そのためには変身が可能になる10時まで逃げ続けなくてはいけない。


「チッ、なかなか追いつけねぇな……」
「先輩達を舐めるなっていうwwww」

一方のサーシェスも大変苛立っていた。
獲物達を捕捉しておきながら、追いつけないことに。
黒炎竜の体を使って全速力で追いかけているのだが、向こうも全力で飛んでいるので距離は一向に縮まらない。
敵が戦わずに逃げ続けるので、大好きな戦争ができないのだ。

「クソッ、せめてこいつの射程距離がもっとあれば……」

飛び道具には黒炎竜のブレス「ブラック・メガフレイム」があるが、二つのチームを狙うには射程外である。
自分の望んだ戦争ができない苛立ちにサーシェスは黒炎竜にブレスを放たせる。
無論、届くわけがないので、ただのヤケクソであるが。

「もがもがもーががー!wwwもがががwwwww
(届くわけねーだろー!www諦めろよwwwww)」
「うるせえ!」

炎を吐き出されながらも、胸に張り付いているサーシェス相手にウザイ煽りをする黒炎竜。
黒炎竜には確信があった。
オシリス達は自分を助ける策があるのではないかと。
どのような手段で自分を救うのかはわからないが、追いかけているオシリスの背中を見ればわかる。
「助けるから待ってろ」……語らずともそんな思いが伝わってくるから黒炎竜は寄生されている今でも安心して草を生やすことができた。

「待ちやがれ! 俺に戦争をさせろ!」
「もががっががwww
(無駄だってばwww)」

ピキッ

「お?」
「がww?」

その時である。
黒い炎を吐き続ける黒炎竜の下顎に縦一本の亀裂が入ったのは。そして。

ビキッ……ビキビキビキッ!!

「がああああああああああ!! もがもががあーーーッw!!
(ぎゃあああああああああ!! 俺のアゴがあーーーッw!!)」

黒炎竜の下顎が、亀裂に沿ってパックリと左右に開いて変形したのだ。
それだけではなく、吐き出され続けていた炎が縮まっていき……それはやがて細く収縮していく。
ブラック・メガフレイムのエネルギーを一点集中させるとどうなるか?
炎は科学的に一定以上の出力を持つと光線が出る……つまり炎がレーザー化するのだ。

そして、黒いレーザーが空を切り裂いた。
レーザーは速度、射程距離、殺傷力、全てが黒炎を上回っていた。
そのレーザーの向かう先は……ホルスとその背中に乗る三人のイチローチームの選手達。

「ホル!?」
「な!?」
「Holy shit!」
「かわせホルス、かわせーーーッ!」

一定の距離を離していれば、黒炎竜のブレスの射程距離には入らない……そのように油断していたとホルス、6/、ラミレス、ダイゴの四人は意表を完全に付かれていた。
ホルスはダイゴの支持によりレーザーを緊急回避しようとする。

しかし、その判断は虚を突かれたことも重なって遅いものであり、ホルスの回避も虚しく誰かに命中し肉塊と二つの血しぶきが空を舞った。

レーザーの餌食になったのは……


43 : 侵蝕のサーシェス :2016/10/07(金) 17:34:16 GvMBym960

「ぐうううう、やられたホル……」
「AIEEEEEEEEEE! 足ガ! 足ガアーーーーッ!!」
「ホルス! しっかりしろ!」
「ラミレーーース!」

レーザーは直撃こそしなかったもののホルスの脇腹を掠めて肉体の一部を抉っていた。
その前に彼の背中に乗っていたラミレスの右足を切断したのである。


ホルスと彼に乗っていた三人が攻撃を受けたことに、他のイチローチームとドラゴンズの二匹は騒然となる。

「ホルスと6/達が攻撃された!
オシリス、黒炎竜がレーザーを出せるなんて聞いてないぞ!」
「イチロー、おまえと違ってホルスの黒炎竜は口から炎と草は出せてもレーザーなんか出せねえよ!」
「なに……!?」
「あれはきっと……胸についているクソキモ触手オヤジの能力だ。
あの野郎、黒炎竜の体になんかしやがったな!」

オシリスの推察通り、サーシェスはテラカオス化の恩恵で新たに産まれた『寄生対象を生体改造させる』特殊能力を使っていた。
結果、黒炎竜の口は炎ではなくレーザーを吐き出す照射装置に置き換えられたのだ。

「『触手で寄生』『宿主に自分のダメージを伝播させる』『宿主を改造させる』
いくつ能力を持ってるんだあいつは!!」

底が見えないサーシェスの能力の数々に蛮を始め、他のメンバーも戦慄する。

「それよりもあれを見て!」
「激ヤバっス!
ホルスのスピードがどんどん落ちてるっス!」

萃香とDAIGOは示した先では、ホルスが飛行速度を落としオシリスやイドゥンから徐々に遠ざかっている姿が見えた。
今しがた受けた傷の痛みが原因でスピードが出せないのだ。
そしてホルスの背後からどんどん近づいてくるは、一行の死に神と化したサーシェスと黒炎竜である。
このままでは四人共々サーシェスに捕まって殺されてしまう。

「このままではやられてしまう!」
DAIGO、ウルトラマンはまだなのか!?」
「ゼロはあと五分、あと五分は持たせて欲しいって」
「そんなに待てるか! その前にホルス達が殺されちまう!」

チームメイトと戦友であるライバルチームの危機にイチローとオシリスは大いに焦る。
だが頼みの綱のウルトラマンゼロはあと五分待たないと変身できない。
このままでは仲間を見殺しにする羽目になるだろう。
援護しようにもイチローらの攻撃では威力が高すぎて黒炎竜まで殺してしまう危険があり、、そして迂闊に近づけばレーザーの攻撃を受ける。
特に巨体のオシリスでは弾速の早いレーザーを躱すのは至難の技であった。

「僕が……いや、僕達がいく」

そこで前に出たのはロイとイドゥンのコンビであった。

「ロイ、イドゥン、しかし……」
「オシリス、仲間を黙って見殺しにするわけにはいかない! 君だってそうだろ!」
「それに私はオシリスさんよりは小柄で機動力も上、敵を迎撃するには私達二人が適任かと」
「確かにそうだが!」
「何も触手のモンスターを倒す必要はない。
ウルトラマンが出てこれる、たったの五分だけ時間を稼げればいいんだ」
「私もロイ様を危険に晒したくはありませんが、私もロイ様の意志と同じくホルスさんや黒炎竜さんを救いたい気持ちは同じです、どうか私達をあちらに行かせてください」

仲間を死地に向かわせたくない気持ちからオシリスは選択を渋ったが、ホルスらを見殺しにしたくない気持ちも強かった。
何よりロイとイドゥンの固い信念から、二人を信じてみたいと思うようになる。

「……ロイ、何か策はあるのか?」
「ああ、イドゥンに君が持っている野球ボールを貸してくれ」
「わかった、お前たちを信じる。
ホルス達を助けてくれ、そして死ぬなよ」

オシリスは二人を送り出すことを決め、野球ボールをイドゥンに渡した。
そしてロイの「任せてくれ」の頼もしい一言と共に、彼を背に乗せたイドゥンは最大速でホルス達の下へ向かっていった。


44 : 侵蝕のサーシェス :2016/10/07(金) 17:35:02 GvMBym960


「来るな! 来るな!」
「クッソーッ! クルミボール番外技!!
クルミバルカン、クルミバルカン、クルミバルカァン!!」
「効いてねよ、ハハハハハハハハ!」

ホルスの背中に乗っている6/とダイゴが敵を近づけまいとクルミ連射や銃で迎撃するも、サーシェス相手にはほとんど牽制にもなっていなかった。
ホルスの黒炎竜の守備力は1800、デュエルモンスターとしては高い方ではないが、それでも豆鉄砲や威力を落としたクルミ程度は簡単に弾いてしまう。
それでもやろうと思えば、クルミボールやメタグロスでサーシェスを殺すことはできるかもしれないが、その場合触手で繋がっている黒炎竜も死ぬことになるので、威力を抑えた手加減同然の攻撃をするしかなかった。
しかし、このままではサーシェスの手によって全滅必至である。
そうこうしている内にサーシェスはホルスに接近し、二射目のレーザーを黒炎竜の口を使って放とうとしていた。

「ホ、ホルスサン、モットスピードヲ……」
「やってるホル! だけど、これ以上は……」

ホルスは必死に羽をばたつかせて、攻撃を逃れようとするが傷のせいで速度が出ない。
次の攻撃を躱せる機動力はホルスにはなく、間違いなくレーザーの直撃は避けられないだろう。

「いつの日か殺した女レポーターの時みたく、プチッと殺してやるぜ!」
「そうは!」「させません!」

そこへ救世主のようにイドゥンとロイが現れる。
そしてホルスへのレーザーの射線を塞ぐように中間地点に割って入る。

「死ににきたか!」
「死ぬ気はないさ!」

サーシェスはレーザーを撃つ対象を逃げるホルスから、割り込んできたロイとイドゥンに変える。
そして二射目のレーザーが黒炎竜の口から放たれた。

「準備はいいか! イドゥン!」
「はい! ロイ様!」

ロイ達はこのレーザーを避け……ようとしない。
避けてしまえば後ろのホルス達に直撃するからだ。
しかしそれではイドゥンに命中し、魔竜と言えど直撃すれば致命傷である。
なのでロイとイドゥンはこれを『迎え撃つ』ことにした。

「必殺魔球! 【闇のブレス】!!」

イドゥンの腕から野球ボールが投げられた。
先の大魔神軍との試合でも投げられた、イドゥンの竜のブレスにも匹敵する握力によって生み出された剛速球だ。
ロイはレーザー攻撃に対し、イドゥンの魔球をぶつけて打ち勝つようつもりなのだ。

そして剛速球がレーザーと衝突する。
ブレスの名を冠した一球がレーザーの威力を削っていく。

「おお……」
「このままいけるか!?」

魔球がレーザーとか競り合っている瞬間を見て、オシリスとイチローも思わず息を飲んだ。
このままいけば、レーザーに魔球が打ち勝ち、もしくは相殺できそうな雰囲気を見せていた。

「チッ、俺を舐めるんじゃねえ!」
「もががーーーーーーーーーーッ!!」

が……サーシェスもこれで終わらなかった。
黒炎竜から吐き出させるレーザーの出力を一気に上げ、威力が増大させる。
その結果、魔球は炭となり、殺しきれなかったレーザーのエネルギーが二人を襲う!

「打ち負けた!?」

自分の一球入魂した闇のブレスが負けたことに衝撃を受けるイドゥン。


45 : 侵蝕のサーシェス :2016/10/07(金) 17:35:43 GvMBym960

「くっ……だが、まだだ!」

ロイはマスターソードを取り出した。
彼は闇のブレスがレーザーに負けた、万が一の時の対策も用意していたのだ。
それは大正義巨人軍との試合でも見せたスマブラ流のカウンターを応用した凌ぎ技でレーザーを打ち返そうというものだ。
そして火を纏ったマスターソードと黒いレーザーがぶつかった。

「ぐっ……おおおおおおお!」

ロイの腕に、レーザーの重さがのしかかる。
イドゥンの投球によってだいぶ磨り減っているとはいえ、その威力はかなりのもの。
いつの日か乱闘で戦ったサムスのチャージショットの何十倍もの威力の光がロイを殺さんとしている。
マスターソードすらあまりの威力を前に刀身にヒビが入り始めている。
一瞬でも気を抜けばイドゥン諸共消し炭になるだろう。

「おおおおおおお、負けてたまるかーーーっ!!!」

だがロイは最大限の気力と渾身の力でこれを打ち払った。
打たれたレーザーが誰もいない空の彼方に飛んでいく。

「やりましたねロイ様!」
「ああ……これで――」

ロイとイドゥンはサーシェスのレーザー攻撃に打ち勝てた。
サーシェスがもう一度レーザーを撃ってこようとも、魔球とカウンターのコンボで防げるだろう。
もちろん、疲労などを考えると何度も防げるわけはなかろうが、あと数分耐えればウルトラマンゼロが顕現しルナミラクルの力によってサーシェスは浄化されるだろう。
そうなれば黒炎竜を救われて自分達の勝利になる。
このままいけば、二人にとっての勝利と言えた。

このままいけば――

「ところがギッチョン!!!」
「「!?」」

サーシェスは次のレーザーを黒炎竜に撃たせようとする。
同時に今度はサーシェスの下顎まで左右に開いたのだ。
驚くロイとイドゥン。
この時、ロイの脳裏にギムレーの言葉が反芻する。


『――寄生している奴自身も、宿主の能力を得られるんじゃ?』

(しまった……敵の能力の読みが浅かった!)


サーシェスは宿主の能力を使える。
それをロイは黒炎竜の魔法無力化能力だけを使えるだけだと思っていた。
しかし、それだけでなくサーシェスは黒炎竜の技を、しかも自分が改造した部分を込みで使える可能性を、ロイは考慮していなかったのだ。

黒炎竜とサーシェスの口から放たれた二条のレーザーは二人に向かう途中で合体し、極大のレーザーになった。

「や、【闇のブレス】!!」

イドゥンは二球目の闇のブレスを放つ。
だが今度は、二倍以上の威力になったレーザーの前に、球は一瞬で消滅してしまった。
ロイのカウンター……はできない、レーザーが太すぎて弾き返しきれないのだ。
もはやこれまでと思ったイドゥンは咄嗟に身を翻し、ロイを守るように両翼で包み込んだ。


「イドゥン!?――」
「ロイ様!!――」

そしてレーザーはイドゥンの背中に直撃し、大爆発を起こした。


46 : 侵蝕のサーシェス :2016/10/07(金) 17:36:17 GvMBym960



「MSパイロットにもよくいるんだわ。
初撃を躱しただけで油断するアホ。
敵の実力や武装を見誤るマヌケ。
助けられない味方を救いに行くバカ。
そういった奴から墜ちるんだよ、戦場では」

愉悦の笑みを浮かべながら、サーシェスは直下の遊園地に墜ちていく黒焦げになった魔竜を見つめていた。


「ロイとイドゥンがやられた!!」
「……俺達を助けようとしたばっかりに」
「Son of a bitch!!」
「ヤバいホル! 超ヤバいホル!!」

ロイとイドゥンがやられたことに、、怒りと悲しみと焦りに駆られる6/、ダイゴ、ラミレス、ホルス。
だがサーシェスは彼らの感情すらスパイスにするかのように笑顔を向ける。
次の獲物は三人と一匹。
ロイとイドゥンという後ろ盾がなくなった以上、ホルス達はもうサーシェスの手からは逃げられない。
そして、黒炎竜とサーシェスの下顎が開き、今度こそホルス達に向けてレーザーが発射されようとしていた。

「ああああ! もうダメホルゥゥゥ!!」

溢れ出てくる絶望感からホルスは思わず泣き言をあげる。



そこへ救いの手が差し伸べられた。
眩い光とハープに似た音がすると同時に、青き巨人がホルスを守るように現れ、レーザー攻撃をバリアで防いだ。
突然の巨人の出現に驚くサーシェスと黒炎竜。

「なんだこいつは!?」
「頼もしい奴がキタ━(゚∀゚)━!wwww」

時刻は10時過ぎ。
ここ埼玉の上空に光の国の巨人が現れた。

(ロイ……イドゥン、間に合わなくてごめんな……)
『だがお前達が時間稼ぎをしてくれたおかげでホルス達は助かり、俺も変身することができた。
後はこのウルトラマンゼロ・ルナミラクルに任せるんだ』

通常のゼロと違い、カラーリングに父親であるセブンから引き継いだ赤色部分がなくなって青系一色となり、口調もいつもより穏やかになったゼロ。
これはコスモスの浄化の力『ルナ』とダイナの超能力『ミラクル』を受け継いだ『守り抜く力』を具現化したルナミラクル形態である。
この姿ならば黒炎竜を傷つけずに救うことが可能……まさにイチローチームとドラゴンズの待ち望んだ姿であった。

『待たせたな、黒炎竜。今助けるぞ!』

そしてゼロは黒炎竜の周りを高速で旋回する。
ゼロの突然の行動にいつでもレーザーを発射できるように身構えるサーシェス。

「何をするつもりだ!」
『世界の歪み……そうとしか思えない力と意志を持つおまえを浄化し、黒炎竜を救うつもりさ』

ゼロがサーシェスにそう言うと、ゼロの手から温かい光が放たれた。

『フルムーンウェーブ!』

フルムーンウェーブ……コスモス(ルナモード)のフルムーンレクトのゼロ版とも言うべき浄化技。
凶暴になっていた怪獣をもおとなしくさせる技であるが、破壊力は持ち合わせておらず、光を浴びせられた黒炎竜にとっては無害だった。

「とてもwwwあったかいナリぃ……www」

逆に黒炎竜に張り付いていたサーシェスは悲鳴を上げる。

「ぐわああああああああああああ!!!」

テラカオス化によって存在自体が混沌になりつつあるサーシェスにとっては、混沌の力を祓う光の力は有害であった。
ホルスの黒炎竜と共有している魔法無効化能力も、強い光の力の前では貫通し、サーシェスにのみダメージを与える。
サーシェスの力が急速に弱まっていく様を本人はもちろん、黒炎竜やゼロ達にも
読み取っていた。

(効いてる効いてる!)
『よし、このまま一気に浄化するぞ!』

黒炎竜を救うため、ゼロとDAIGOはフルムーンウェーブを浴びせ続けた。
混沌の力を持つ以上、抗体とも言える光や秩序の属性を持つ攻撃には弱く、効果的だ。
黒炎竜のサーシェスからの侵食率が急速に落ちていく……


47 : 侵蝕のサーシェス :2016/10/07(金) 17:36:59 GvMBym960


侵食率78%


侵食率45%


侵食率36%


侵食率21%


侵食率14%







侵食率15%


侵食率16%


侵食率23%


侵食率37%!?


(あれ? 力が戻っている!?)
『なんだと!?』

失われていくだけだったサーシェスの力が急速に戻りつつあることに、ゼロとDAIGOは焦りだす。
闇の力は強い光の力には弱い……そのハズなのに一体どうして力が戻ってきている!?
その疑問はこの場の誰にもわからなかった。サーシェス本人でさえ。

「何が何だかわからねえが、とにかくおまえらの光攻撃は効かなくなったみたいだな」
「ウッソだろオイwwwwwwwいや冗談抜きで……」

ゼロは諦めずにフルムーンウェーブをかけ続けるがサーシェス相手にはまるで効果がなくなってしまっていた。
それでほくそ笑むのはサーシェス一人。

「さっきの光……かなり痛かったぞ。きっちりお返しさせてもらうからなあ!!!」
『うおわあ!!』

サーシェスは旋回を続けるゼロに向けて口からレーザーを発射し、ゼロに命中させる。
攻撃が直撃したことでゼロのフルムーンウェーブが中断されてしまった。


48 : 侵蝕のサーシェス :2016/10/07(金) 17:38:08 GvMBym960
やや離れた位置にいるイチロー達もこの様子を見ていたため、大いに焦っていた。

「まさか……」
「嘘だろ!?」

黒炎竜救出の唯一の手段であったルナミラクルの浄化技が敗れた……衝撃を受けないわけがなかった。

「あの触手男の持つ闇の力には光は有効だって言ってたじゃないか!
それがどうして急に効かなくなったんだ?!
ついさっきまではしっかり効いてたのに」

萃香が言ったとおり、ゼロの説明では闇の力は光の力が効果的だと伝えられた。
しかしサーシェスには最初は確かに効いていたものの、突然効かなくなってしまっていたのだ。
これはどういうことか?
少なくともホルスの黒炎竜の魔法無効化能力だけではこうはならないハズである。

「そうか……そういうことか!」

ただ一人、サーシェスの隠された力を理解した者がいた。蛮である。
隣にいたイチローがサーシェスに問いかける。

「そういうことってどういうことなんだ?」
「奴の能力について俺達はとんでもない勘違いをしていた。
『触手で寄生』『宿主に自分のダメージを伝播』『宿主を改造』……これが奴の能力とばかり思っていた」
「違うのか?」
「それらをひっくるめて一つの能力、いや、一つの能力から全部生まれたというべきか」

蛮の口から告げられるサーシェスがテラカオス化することで得られた能力とは?

「奴の能力はおそらく……
『環境に合わせて新たな能力を作り出す能力』だ!」
「なんだって!」





蛮の考察の答えは「大正解」である。
『イビキが爆発のエフェクトになる能力』『髭が触手になり、粘液が出る能力』『髭触手で寄生し、寄生した相手の能力と己のダメージを共有する能力』『寄生相手を改造』……今までサーシェスの軌跡を追ってきたものは、テラカオス化の影響でサーシェスが短期間の間に様々な能力に目覚めていたことを目にしただろう。

そこで気づくべきだったのかもしれない。
他のテラカオス候補者は捕食や融合などによる能力獲得を除き、一人につきに1〜2つの能力しか持っていなかったことに。
それに比べてサーシェスは運命の神に贔屓されてるのかと思うくらい、能力を増やし続けていたことに……

そう、サーシェスのテラカオス化で得た能力とは『能力を生み出す能力』だったのだ。
それも安心院のように無駄に能力を作るブックメイカーと違い、こちらは環境や相対する敵に合わせて最適な能力が生み出されるので無駄がない。

『イビキが爆発のエフェクトになる能力』……一見無駄に見えるが都庁同盟軍やDMC狂信者、仮面ライダーすら騙すほぼ完璧な擬態。爆発がただのエフェクトであると気づいたベクター以外は破裂引火したガス管か何かだと思って最後まで誰にも気付かれなかった。

『髭が触手になり、粘液が出る能力』……いずれくる攻撃の前の防御力拡大。これに高級羽毛布団による防御力が合わさればダオス達の攻撃すら死に至らしめることはできなかった。

『髭触手で寄生し、寄生した宿主の能力と己のダメージを共有する能力』……相手の能力と命を共有。能力を奪えるだけでなく、人質を手に入れることによって高い実力を持つ者でも安易に攻撃させられなくなった。

『宿主を改造』……黒炎竜の場合は長射程のレーザーを吐かせることが可能になり、逃げるイチロー達を追い詰めることができるようになった。

そして……


「環境に合わせるってことはゼロの光の力も……」
「おそらく奴は『光に対する抵抗力』をも作り出した。
もう、光の巨人であるウルトラマンの攻撃は効かないだろうな」
「もしそうなら最悪だ……まるで進化じゃないか!」

その場にいた全員が戦慄した。
ウルトラマンの技が効かないとあればもう、誰も黒炎竜を救い出すことができない。
それだけに留まらず、短時間であらゆる攻撃に対抗できる能力を手に入れれば、触手男……サーシェスは最強のマーダーになれる存在であった。
事実、光や秩序の攻撃すら効果がないということは、拳王連合軍のハクメンですらサーシェスの討伐は困難だろう。


49 : 侵蝕のサーシェス :2016/10/07(金) 17:39:07 GvMBym960


(イチローさん達が言ってることが本当なら……)
『それは厄介だぞ。下手するとベリアルより危険な存在になりかねん。
……しかし、それだけ危険な能力を持っているのなら首輪で制限されてもいいハズだが』

レーザー攻撃をバリアで凌ぎながら、ゼロは疑問に思う。
あまりにも強力すぎる能力を持つ者は、首輪にある制限装置で能力を制限されてもおかしくないハズだ。
実際、チート過ぎる能力を持ったゼロやギムレーは一度の変身につき半日は変身できない仕様になっており、もし変身し放題だったら、強すぎる者がバランスブレイカーとなってカオスロワは殺し合いとして成り立たなくなる。
あまりにも危険すぎる能力は制限して然りなのだ。

しかし……



ピーーー ガチャッ

「お?」
「え……ええwwwッ!?」
『首輪が一人でに外れただと!?』
(MDA(マジでありえねえ)!!)

サーシェスの首輪が電子音と共に外れて地上に落ちていく光景をゼロとDAIGOは目の当たりにし、驚愕した。
ユウキ=テルミのような例外を除いた参加者は知らないが、五大幹部の殺し合いの目的はテラカオスを作り出し強化することにある
よって、テラカオスが誕生した時に首輪があると制限が成長の妨げになり、首輪爆破という余計な弱点もできてしまう。
そのために首輪には参加者がテラカオス化すると自動で外れる機能がついていた。
風鳴翼を寄り代にして生まれたテラカオス・ディーヴァに首輪がないのもそのためである。


……すなわち、サーシェスは「なってしまった」のである。
始まりはクルルの作ったナノマシン入り飲料水を飲み、闘争心と殺戮衝動を刺激されたことがきっかけだった。
心身ともに高いテラカオス化への適正。
いつ死んでもおかしくないカオスロワという過酷な環境。
そんな殺し合いの中で彼の中のテラカオス因子は育まれ、成長を急促進された。

そして人という殻を破り捨てて新生したのだ。
歌姫と安倍に次ぐ、この殺し合い三番目のテラカオスにして、それでいて先の二人とは別方向から進化を果たした驚異の存在……


……闘争と混沌の神、『テラカオス・サーシェス』に。


「なんだかわからねえが、体が超軽いぜ!」
『そんな馬鹿な……なぜ首輪が勝手に!』
「あ、そうなんだ。 で? それが何か問題?
……まあやるんなら本気でやろうか!そっちのほうが楽しいだろ!?ハハハッ!!」

驚くゼロに構わず、サーシェスの口から何度目かになるレーザーが放たれた。
いままでの攻撃はゼロのウルトラバリアで防げていた。
しかし、首輪がなくなった結果、威力と成長に制限がかけられなくなったため、今度の攻撃はバリアを易々と貫いてゼロにダメージを与えた。

『ぐああああああああああ!』
「あぁぁいしてるんだぁぁぁぁ君たちをぉぉぉぉ! ハハハハハ!!」

その後は一方的に蹂躙するようにサーシェスは高笑いを上げながらゼロを攻撃し続けた。


50 : 侵蝕のサーシェス :2016/10/07(金) 17:39:35 GvMBym960



「……もうダメだ……殺すしかない」
「オシリス!?」

離れた位置からゼロとサーシェスの戦いを見ていたオシリス。
だが一方的に追い詰められるゼロを見ていられなくなったオシリスはサーシェスに寄生された黒炎竜ごと消し飛ばすべく、口から神の一撃である超電導波サンダー・フォースの発射準備に入っていた。
それを必死で止めるようとするのはイチローである。

「やめるんだオシリス!
そんなのを撃ち込んだら黒炎竜も死んでしまうぞ!」

おそらく、ではあるがサーシェスは攻撃力はともかく防御面ではそこまで進化していない。
オシリスの最大限の一撃なら確実に仕留められるだろう。
……そんなことをすればダメージ伝播で寄生された黒炎竜も間違いなく死んでしまうが。

「止めるなイチロー!
もうゼロでは……俺達では黒炎竜を救えない!
だが今のうちなら殺すことはできる!」
「君の後輩だろ!」
「後輩だからこそだ! おまえにはわからないのか? あいつが悲しんでいることを!」

オシリスにはわかっていた。
黒炎竜は台詞に常時草原を生やすウザイ喋り方をしながらも、心の中では悲しんでいることを。
寄生されていたとはいえ、これまででファーマルハウト、霊夢、ロイ、イドゥンを自分の手にかけてしまった。
さらにゼロによる救助が不可能だとわかってからは、その目には「いっそ殺してくて」という感情が見えていた。
その感情をオシリスは遠目から汲み取ったのだ。

「あのウザイ言葉じゃわかりづらいが、あいつはな……身も心ももう限界なんだよ」
「オシリス!!」
「それにあの触手野郎を野放しにすれば、もっともっと進化して多くの参加者とロリを死に至らしめる。
それどころか、ここにいる俺達でさえやつ一人の前に全滅の危険すらある。
だから、その前に……」

後輩を自分の手で討たねばならないことを、オシリスが悲しんでいないわけではない。
だが、後輩を犠牲してでもサーシェスを殺らねば、自分達を含めた参加者に未来はない。
他の仲間に仲間に殺しの罪は着せたくないので自分の手でやる必要がある。
そう思い、感情を押し殺してサンダー・フォースを放たんとする。

「やめろオシリス! こんなの絶対間違ってる!」
「方法は何かあるはずだ!」
「そうだそうだ!」
「蛮、萃香!」

イチローに同調した蛮と萃香も高い握力と怪力でオシリスの顎を押さえ込み、必死で止めようとする。

「あがががが、オイやめろ! 邪魔すんな!!」
「チームメイトがチームメイトを殺すなんてあっちゃいけないんだ!」

イチローチームの面子に妨害されて攻撃できなくなるオシリス。
仲間が仲間を殺す悲劇を回避するためにイチロー達も頑なに撃たせまいとする。
だがそれも一時しのぎであって解決策とは言えない。
無尽蔵に進化し続けるサーシェスを仕留めるには今しか無いのも事実であり、この期を逃せばチャンスはないだろう。
どちらが正しく、どちらも正しくない、諍いが発生していた。

その諍いの果てに、転機は向こうから訪れた。


51 : 侵蝕のサーシェス :2016/10/07(金) 17:40:01 GvMBym960



「もういいよ、先輩、イチロー。
仲間同士喧嘩すんなってw自分でやるからw」



その台詞を吐いたのは、サーシェスを胸に張り付けた黒炎竜であった。
言葉に草を生やしているハズなのに、どこか重い。

『黒炎竜……?』
「……ありがとうゼロ、おまえのおかげでほんのちょっとだけ体の自由が効くようになったっていうw」

ゼロによる浄化技の効果はまだ黒炎竜の体に残っていた。
それでも侵食率は90%以上。ごく僅かな部位しか動かせない。

「動かせんのは首だけか……まあ十分だなw」

しかし黒炎竜は笑っていた。
唯一動かせる首を動かし、下を見る。

「あ?」

下を見てすぐ目に入ったのは、胸にこびりついている触手男だった。

「あいつ何をするつも……まさか!?」

動かせる首、触手男を見つめる黒炎竜。
それが指し示す符号をこの場で誰よりも早くわかったオシリスは焦燥する。

「やれやれ今期も軽いノリで行きたかったのに、どうしてこうなったしwww
でもまあ、これで仲間殺しとか重いものを背負わなくて済むし、トラウマなラオウと戦わなくて済むし、何よりメンドくせー野球もしなくて済むwww
……やっほう!www考えたらいいことづくめじゃねーかwwww」

黒炎竜のアギトが開く。
その口からブラック・メガフレイムが発射されようとし、それを見て慌てふためくサーシェスと、それを嘲笑うかのように草を生やす黒炎竜。

「ちょ、ちょっと待て!! そんなことすればおまえも……!」
「つーわけで先輩www! 面倒くさいこと全部丸投げで俺は消えますわwww無責任な後輩で悪いけどwww恨まないでちょwwwバイバイキーンwwwww」

そして黒炎竜から必殺の黒い炎が放たれた。
いくら触手の粘液に守られても、何らかの追加防御手段がない限り攻撃力3000の零距離直撃をサーシェスが耐えられる道理はない。

「俺はまだ戦争を楽しみたりな……ぐああああああああああああああ!!!」

黒い炎の中で絶叫を上げながら、サーシェスは爆散した。
……それと同時にサーシェスの能力により、宿主へダメージが伝播する。
それによって黒炎竜にも全身にヒビが入り、そして爆散した。

爆炎が消え去った後に千葉県遊園地に木霊するは、遠くからでも聞こえるオシリスの悲鳴であった。







【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダム00 死亡確認】
【ホルスの黒炎竜Lv8@遊戯王 死亡確認】


52 : 戦禍は止まることを知らず :2016/10/07(金) 17:41:08 GvMBym960
サーシェスとの戦いが終わった後、生き残ったイチローチームとオシリスとホルスは地上にある遊園地に降り立った。
その遊園地は数時間前にゼクス組が潜伏していた場所である。
既に出発したゼクス達に入れ替わるように彼らはやってきた。
……先の戦闘でこの遊園地に落下した二人の仲間を探すために。


「イドゥン……」
「その声は……蛮さん?」

捜索中に蛮はイドゥンを見つけた。
しかし、サーシェスのレーザーによって全身に深い傷だらけであり、更に背にはには遊園地にある城……その頂辺部分である尖った塔部分が深々と刺さって腹部を貫通し、夥しい流血によって青い屋根を赤く染め上げている。
いくらとびきり高い生命力を誇る魔竜と言えど、この傷では助からない。
ほどなくイドゥンは死ぬと第一発見者の蛮に確信させた。

「ごぼッ…がふッ……ロイ様は……?」

自分が死にかけているにも関わらず、イドゥンの心配は愛するロイに向けられていた。
サーシェスにやられる直前で自分が盾になって庇ったが、果たしてロイは無事なのか。それだけが気がかりだった。



「僕は無事だイドゥン!!」
「ロイ様……!」

蛮の後ろからロイは現れた。ロイの声と姿を見た瞬間、痛みで呻いていたイドゥンの口元が喜びで綻ぶ。

「お怪我は……」
「ほとんどないよ、君のおかげで無事に生き延びれたよ!」

ロイが無事だった。その事実だけでイドゥンには十分だった。

「ごほッ、すいません……私の魔球が弱かったばかりに……ロイ様に迷惑をかけて……これでは予言の最良の戦士には程遠い……」
「何を言ってるんだ、あれは僕の作戦ミスだってあったんだ。君のせいじゃない。予言も関係ない」

イドゥンを優しく諭すロイ。

「……イドゥン、僕にしてやれることはないか?」

ロイも彼女の最期を悟っていたのだろう。
傷を治して命を助けることはできないが、自分ができる内で何かしてやれることはないかと彼女に尋ねたのだ。

「……それでは、最期に口づけを、お願いできますか?」
「キスか……わかった」

望みは愛する人からの接吻であった。
ロイは彼女の願いを叶えるため、迷うことなくイドゥンと口づけを交わす。
イドゥンはこれ以上にないほどの幸運を感じて……旅立った。

「ロ、イ様……愛、しておりますわ、ロイ様………」


【イドゥン@ファイアーエムブレム 封印の剣 死亡確認】







「ジャスト一分……いい夢見れたかよ……」


53 : 戦禍は止まることを知らず :2016/10/07(金) 17:41:51 GvMBym960

事切れたイドゥンを前にして蛮はそう呟いた。
そして、視線を城の下部分に映す。
それは塔に仰向けに刺さっていたイドゥンには見えない視点だ。


蛮が眼下に目を凝らすと右半身が焼けて無くなっていた死体の前で萃香がメソメソと泣きながら一升瓶を飲んでいた。
この焼死体こそ、ロイその人である。

イドゥンがサーシェスのレーザー攻撃から身を挺してロイを守った。
だが彼女の庇った甲斐はなくレーザーはイドゥンの肉体を貫通し、ロイに直撃したのだ。
そして蛮と萃香はイドゥンより先に、ロイの死体が見つけた。


【ロイ@FE封印の剣 死亡確認】


しかし彼女を恋人を守れなかったという絶望の中で死なせたくないと思った蛮はあえて真実を打ち明けず、相手に幻覚を見せる邪眼を使って「いい夢」の中で死なせてあげることにした。
魔防値カンストのイドゥンに邪眼が効くか怪しかったが、致命傷を負ったことで弱っていたのが皮肉にも功を奏した。
蛮なりの仲間への手向け……優しい嘘はイドゥンに届いたのである。

「……クソッ!!」

それで蛮の気持ちが晴れるわけもなく、蛮は苛立ちの中で手近な塔を殴りつけ、大きなヒビを入れた。



しばらくして蛮と萃香は仲間の元に戻る。

「ロイとイドゥンは……?」

イチローの問いに対して蛮は首を横に振る。
後ろにいた涙目の萃香は怪力を持って、ロイとイドゥンの遺体を抱えていた。

「そうか……」

イチローはため息をもらす。
もしかしたら二人は生きているかもしれないと一縷の望みをかけたが、蛮と萃香に徒労させるだけで終わったのだから。

イチローだけでなく他のメンバーも辛気臭い雰囲気で、さながらお通夜のようなムードを醸し出していた。
サーシェス一人を殺すためにフォーマルハウト、霊夢、ロイ、イドゥン、そして黒炎竜と五人もの仲間を一辺に失ったのだ。無理もない話である。

それだけでなくチームの心身の消耗も激しかった。

「…………」

後輩である黒炎竜を失ったオシリスはすっかり意気消沈していた。
この様子では大好きなロリを見ても元気になりそうにない。
しかも今期はどうやっても死者が生き返れない事実が、消沈に拍車をかけていた。

「大丈夫か、ホルス?」
「ありがとうダイゴ。ホルはラミレスと比べれば遥かに軽傷ホル」

ホルスこと白光炎隼神ホルスは攻撃こそ当たったが、ダメージはそれほど深くはなかった。
機動力にこそ影響は出ているものの、早急に治療しなければいけない傷ではない。

「アア、足ガ……コレデハモウ野球ガデキナイ……ウウウ」
「ラミレス……」

ホルスと反対にラミレスは右足切断の重傷だった。
片足を失った以上、野球選手としての活躍は無理だろう。
大好きな野球ができなくなったことにラミレスはすすり泣き、介抱していたダイゴはかける言葉が見つからなかった。

「ああ……どうすりゃ良いんだ?
これじゃあ試合が……ハラサンの言っていた予言の完遂だって……」

チームの損耗の前に焦燥する6/。
ウルトラマンゼロを除くと、イチローチームの生き残りは僅か10名しかいない。ここから選手として戦えなくなったラミレス、戦うには厳しい中学生のちなつを外すと戦力は8人しかいない計算になる。
仮に南方面に逃げたナッパ達が無事でなかったとしたら試合ができなくなってしまう。
ドラゴンズはもっと悲惨でギムレー達が無事でも選手は五名しかおらず、建て直しは困難である。
その事実に気づいたことが大いに6/を焦らせたのだ。


54 : 戦禍は止まることを知らず :2016/10/07(金) 17:42:42 GvMBym960

「6/!!」
「イチロー!?」

焦る6/にピシャリと言ったのはイチロー。
こんなピリピリしているムードの中で導火線に火をつけるような真似をする6/を落ち着かせなければならないと思ったのだ。

「優勝することや予言も大事だが……今はそれどころじゃない。
仲間のことも考えてあげてくれ」
「す、すまない。どうかしてたぜ俺……」

6/を諭し、一先ず落ち着かせることには成功する。
だが笑顔のない辛気臭いムードを断ち切るには至らなかった。
この流れを断ち切れそうなムードメーカーであるホルスの黒炎竜は、もういない。

「イチローさん」
「DAIGO。傷はもう大丈夫なのか?」
「動けないほど深い傷は負ってないっす」

ウルトラマンの姿から元に戻ったDAIGOは、ゼロと同化していた故に手傷を負っていた。
幸い、戦い慣れてるゼロのおかげでダメージは最小限に抑えられている。

「それよりもイチローさんに言っておきたいことがあるっス」
「なんだい?」
「……俺とゼロは確かに見たんスよ。
触手男の首輪が一人でに外れる瞬間を」
「なに?!」

参加者に制限を与え枷となっている首輪、それが勝手に外れる瞬間をDAIGOとゼロは目撃している。

「故障じゃないのか?」
「それはないと思うっス。あれは自動的に外れたようにしか見えなかった」

それはどういうことなのか?

「……つまり、首輪が外れたのは主催者の介入によるもの。そう言いたいんだな?」
「ご明察っス。少なくともゼロと俺はそう睨んでる。
あの触手髭のような闇……いや、闇も光も飲み込む『混沌』の力を持った何かを主催は、例外的に生かそうとしている。だから首輪を外させたんじゃないかってね。
そして、人口削減ではなく、触手髭みたい逸材を探し出すのが主催の目的かもしれないと」
「!?」

混沌の力を持っている者は自分達の目的に沿っているからこそ首輪を外した。そうではないかとDAIGO達は推測した。

「あくまで憶測だけど、そうじゃないとバグでもない限り首輪が外れた理由がわからないっす……いや、待てよ。
そうなると指名手配された風鳴翼も本当に自力で首輪を外したのかも疑わしいな」
「どういうことだ?」
「もしかしたら食人鬼の風鳴翼も、触手髭みたいな混沌の力を持っていた、もしくは手に入れたから首輪を外された可能性があるんじゃないでしょうか?」

イチローとDAIGOの額から冷や汗が流れる。
もしかしたら東京で暴れた食人鬼もサーシェスと同じ力や凶暴性を持っている可能性があるからだ。

「手に負えなくなったら放送にも出てたバーダックを使えばいいのに、奴らはそれをやらずに、参加者に押し付けてる。
でももし、このカオスロワ自体が混沌の力を持つのを見つけ出すことが目的なら、バーダックを使って討伐しようとしないのもわかるっス。
触手髭も戦えば戦うほど強くなってた気がするし、ひょっとすると参加者をぶつけて強くしようっていうのが目的だったりして……」
「しかし、なんのために?
あんな触手髭みたいのを生かしておいたら人口削減どころか人類滅亡だぞ。
逆に参加者をぶつけると言っても、間違って死んだらどうするつもりなんだ?
はっきり言って触手親父の実力は黒炎竜さえ人質に取られなきゃ、僕のレーザービーム一発で蒸発させることは可能なレベルだったし。
一撃必殺を心がければ妙な能力を生み出される前に倒せるだろうしな。
欲しがっているものをなんで他者に殺させる真似をする?」
「それは……わからないっス」

今まで野球と予言、そして狂信者に追われていたイチローチームとドラゴンズは主催との接点がかなり希薄である。
せいぜい同じサイヤ人同士であるナッパがバーダックのことを知っているぐらいだし、それも接点は薄い。
サーシェスはジョーカーである特務機関員だったのだが、本人はそのことを覚えてなかったので意味がない。
シックスなんてのもいたが本人はからくりドームに入る前に死に、配下の五本指もイチロー達には試合中に乱入してきたマーダー集団にしか思っていない。
テラカオス候補者に関わったのもこれが初めてであった。
主催に関してはほとんどノータッチであったと言える。
故に主催の見えない目的と矛盾する行動の数々を考察するには、これ以上は限界であった。


ピーンポーンパーンポーン♪


「定時放送か……」


55 : 戦禍は止まることを知らず :2016/10/07(金) 17:43:27 GvMBym960

答えのでない考察の最中、それを中断させるように第五回放送が始まった。
イチロー達は南に逃げた仲間の無事を祈るも、それは無残にも打ち砕かれるだろう。
監督・久保帯人とチームを支えていた少女・吉川ちなつの死を知る事になるのだから。
そしてそれは、両者の喪失でイチローチームのメンバーは選手として動けないゼロやラミレスを除くと僅か7名まで減り、どこかでメンバーを補充できない限り、試合もとい予言『九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂』はできないことを意味していた……


【二日目・11時01分/千葉県遊園地】

【イチローチーム+ドラゴンズ A】

【イチロー@現実?】
【状態】両腕のダメージ(小)、悲しみ
【装備】野球道具
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチローチームを優勝させる?
0:ナッパ達……無事でいてくれ
1:DMC狂信者を倒すために多くの仲間を集める
2:邪魔をしてくるDMC狂信者を倒すまでは試合は保留
3:ハラサンの言っていた予言とは一体……?
4:とりあえずドラゴンズは信用する
5:DMC狂信者の本拠であるビッグサイトを攻略したい
6:また大切な野球仲間が死んでしまった……
7:あの触手親父(サーシェス)は何者だったんだ?
8:主催の目的とはいったい……
※ネオ・レーザービームは使用すると腕に多大な負担がかかり、あと三球以上使用すると選手生命が終わる危険があります


【DAIGO@現実?】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)
【装備】ウルティメイトブレスレット@ウルトラマンサーガ
【道具】支給品一式、ヴァンガードデッキ
【思考】
0:イチローチームについていく
1:ウルトラマンマジ頼れる
2:ダイゴさんマジリスペクト……意思は引継ぐっス
3:黒炎竜、ロイ、イドゥン……ごめんな
4:主催の目的はなんなんだ?
※サーシェスがテラカオスになると同時に首輪が自動で外れた瞬間を目撃しました


【ウルトラマンゼロ@ウルトラマンサーガ】
【状態】ダメージ(中)、悲しみ
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】基本:殺し合いを止める
0:触手男(サーシェス)から混沌の力を感じた……アレはなんだったんだ?
1:どうにかしてDMCを止めたい
2:あと数時間待てばもう一度変身できる?
3:ホルスの黒炎竜、助けられなくてすまない……
4:触手男のような混沌の力を持つ者を見つけることが主催の目的ではないかと睨んでいる
※制限によって一度に数分までの間しか変身できません
 一度変身すると12時間は変身できません
※首輪を外さない場合二日目22時になれば再び変身ができます
※サーシェスがテラカオスになると同時に首輪が自動で外れた瞬間を目撃しました


【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【状態】健康、苛立ち
【装備】サングラス
【道具】支給品一式、マスターソード、魔竜石、リザイアの書、不明品
【思考】
0:イチローチームについていく
1:銀次を探す
2:DMC狂信者達と戦う
3:また犠牲者が出ちまったな……
※邪眼を一回使いました
※死亡したロイとイドゥンから支給品を回収しました


【伊吹萃香@しゅわスパ大作戦】
【状態】ほろ酔い、強い悲しみ と怒り
【装備】なし
【道具】支給品一式、日本酒×90
【思考】
基本:イチローチームについていく
0:仲間が次々と死んでメシマズ状態
1:監督の久保先生を信頼
2:もう野獣が死んで喜ぶどころじゃない
※悲しみを紛らわすために9本ほど日本酒を消費しました


56 : 戦禍は止まることを知らず :2016/10/07(金) 17:43:56 GvMBym960


【ダイゴ@ポケットモンスター】
【状態】疲労(小)、深い悲しみ
【装備】メタグロス
【道具】支給品一式 、コルトパイソン
【思考】
0:イチローチームについていく
1:助けてあげられなくてごめんな、ポッチャマ……
2:きれいな石集めは一時保留
3:南側に逃れたちなつ達が心配
4:仲間の多くが死んでしまった……


【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手】
【状態】疲労(小) 、悲しみと焦り
【装備】胡桃三千個
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、イチローチームを優勝させる
0:俺達、試合できるのか……?
1:ハラサン……ありがとう
2:大正義を忘れない
3:目立つことも忘れない
4:ナッパ達は大丈夫か?


【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【状態】右足切断、疲労(小)、非常に強い悲しみ
【装備】野球道具一式
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、イチローチームを優勝させる
1:コ、コノ足ジャモウ野球デキマセン……グスンッ
2:ミ、ミナサン……


【オシリスの天空竜@遊戯王デュエルモンスターズ】
【状態】ロリコン、疲労(中)、深い悲しみ
【装備】バット、グローブ、ボールを多数
【道具】支給品一式
【思考】基本:ロリにモテるために世界を救う予言の謎を解明し、ドラゴンズも優勝させる
0:意気消沈
1:ホルスの黒炎竜……
※イチローチームとの情報交換により、正式な予言の言葉を知りました
※オシリスの見立てによると魔力(生体マグネタイト)が集中しているビッグサイトへの直接攻撃は大爆発を招き、東京を巻き込む危険性があるそうです


【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、悲しみ
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:世界を救うためにオシリスについていく
0:ホルスはどうにかして助けたかったホル……
1:そういえばまだ麒麟の奴が放送で呼ばれてないホル
2:貴重なおっぱ(ryソウルセイバーと無事に合流したいホル
3:イドゥンやロイまで死んでしまったホル……




時間は少しだけ遡り、千葉県のネカフェ前。
そこには一人の怪人がいた……乃木怜治、またの名をカッシスワームである。


57 : 戦禍は止まることを知らず :2016/10/07(金) 17:44:29 GvMBym960

「ふう、怪我は治ったし、疲れも取れた。
ちゃんとした食事も取れて、情報も手に入れた。
これ以上ないほど万全だな」

ネカフェにてクリス達から受けた傷を癒し、そしてネットを繋いで情報収集をしていたカッシス。
10時間近く引きこもった結果、休憩は十全に取れ、主催攻略に邪魔な首輪を外せそうな技術者であるブリーフ博士が東京に来ていることを知った。
そしてブリーフ博士が死んだりする前に確保する必要があるとして、激戦区である東京へ向かうためにいよいよもって行動を開始した。

出発前の早めのランチとして周辺に隠れていたモブ参加者を食らうべく襲撃。
食事の途中、東京からやってきたピンク玉の一頭身の宇宙人が彼の横暴を止めるべく立ち向かうも、切歌戦での敗北による傷が原因で本領を発揮できず、返り討ちにされて吸収されてしまった。

【カービィ@星のカービィ 死亡確認】
死因:捕食


「ペポペポうるさいのは、意外といい腹の足しになったな。
それにデザインはあれだが良い乗り物も手に入れた」

カッシスは食い殺したカービィからワープスターを強奪した。
これを使って空から一気に東京までひとっ飛びするのだ。

「ん?」

いざ、ワープスターに乗って東京へ向かう前に、カッシスは道路の隅っこでウネウネと動く何かを見つけた。

「なんだこれは……何かの生き物の触手か?」

それはサーシェスの触手髭だった。
黒炎竜の手によって爆散した際に、一本だけ切れてカッシスのいたネカフェの前まで吹っ飛んできたのである。

「……まあ、非常食ぐらいにはぐらいにはなるだろ」

そう言って触手をデイパックにしまい込むカッシス。

「さてブリーフ博士が死んでからでは遅い。さっそく会いに行こう」

そしてカッシスはワープスターに乗って空へと舞い上がり、東京へと出発した。
第五回放送が流れたのは、彼が飛び立ってすぐ後であった。


【二日目・11:01時/千葉県上空】

【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
【状態】健康
【装備】ワープスター
【道具】基本支給品一式、不明支給品、サーシェスの触手髭
【思考】
基本:愚かな参加者の諸君を始末し、最後には主催者の諸君も始末する
0:首輪を外せる者であるブリーフ博士の確保
1:利用出来る参加者がいるなら利用するが、そうでないなら餌にする
2:クリスとシマリスは後回し、もう一度遭遇したら殺す
3:触手はいざという時の非常食として取っておく
※佐倉杏子、高町ヴィヴィオ、カービィの肉体を吸収しました
※時間を止める能力・フリーズが使用可能ですが、使用毎に体力を消費する制限にがついています
※サーシェスの触手をなんらかの方法で取り込むとテラカオス化と『環境に合わせて新たな能力を作り出す能力』を得られる可能性があります


58 : TCBR10第5回“追加”放送 :2016/10/07(金) 17:46:03 GvMBym960
九州ロボ内部。

「おっと、まだ死亡者がいたみたいですね」

日本の“新”総理大臣にして“新”主催者である安倍晋三は名前がズラリと並んだモニターをスクロールする。
それは今期のロワにおいて第四回放送から第五回放送前までの死亡者情報を反映したデータである。
そこには第五回放送前に死亡しておきながら先の放送で呼ばれなかった五人の参加者の名前が乗っていた。
ちなみに今期のロワに用いられているナノマシンは参加者の生体情報を読み取って信号としてスーパーコンピューター「京」へ送られ、「京」を介して死亡者情報を主催に伝える機能が付いており、首輪を外しても死者の名前は読み上げられる。
すなわち、首輪を外しただけでは主催者の監視を完全に逃れられるわけではないのだ。
事実、首輪が外れたサーシェスの名前もそこには乗っていた。
(制限と盗聴の危険はなくなり、禁止エリアに入って爆死する危険はなくなるので首輪を外すメリットがないわけではない)
もっともベイダー(アナキン)達が計画した世界滅亡回避の手段であるプロジェクト・テラカオスひいては参加者に仕組まれたナノマシンのことを知らない安倍が仕組みに気づいている様子はなく、「首輪なしでも死亡者情報が送られるのは便利だな」ぐらいにしか思われてないが。

安倍は「京」から送られた死亡者情報を一行分スクロールし忘れたことで、五名分の参加者の名前を先の放送に入れそこねたのだ。

「ううむ、第五回放送はもうしてしまったし、この程度なら次の放送に回しても良いですかね……?
いいや、ルーピー共のような先延ばしは良くない!
一時間程度ならまだまだ誤差でしょう」

というわけで放送機器に手を伸ばす安倍。
第五回放送の追加放送が始まった。


ピーンポーンパーンポーン♪

「“新”総理大臣“新”主催者の安倍晋三が追加放送を皆様に送ります。

追加される死亡者は
カービィ、ロイ、イドゥン、アリー・アル・サーシェス、ホルスの黒炎竜Lv8
の以上の五名です。

貴重な情報を一時間も遅れて放送することになって、誠に遺憾の意です。
これも九州ロボで全裸になっていた旧・主催陣のダース・ベイダーが悪いのです。

以上、放送を終わります」

第五回追加放送は終わった……



【二日目・12時00分/日本・埼玉県上空 九州ロボ内部】

【安倍晋三@TCBR1】
【状態】四条化、首輪なし、火水土風木電聖闇耐性(強)
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:バトルロワイアルを続ける
1:九州ロボを完全掌握する
2:ダース・ベイダーやジャック・Oなどの旧主催陣を全滅させる
※主催を乗っ取りました
※旧主催陣を憎んでいます
※風鳴翼の能力を継承しました
※ナノマシンが自壊しても生き残る可能性があります
※テラカオス化はしてますが、大災害の真相や五大幹部によるテラカオスを使った救済計画(プロジェクト・テラカオス)には気づいていません


59 : ◆Q.71Qfm3rk :2016/10/07(金) 17:48:23 GvMBym960
投下終了です
本当は放送後のリアクションも書きたかったけど、リアルの都合で期限に間に合わせるだけの時間がなくなったので力尽きました
すんません


60 : 名無しさん :2016/10/08(土) 01:51:49 Ckzr/LjQ0
投下乙!
最初はネタキャラでしかなかったサーシェスがここまで凶悪な存在になって、大きな傷痕残してくなんて誰が予想できただろうか
しかしイドゥンといい都庁のサクヤといい、優秀な従者ポジの子は悲劇的な死を迎えやすいのか…
同じ自己犠牲精神を見せた草仲間のオオナズチのホルスの死に対する反応も気になるところ
しかし髭がこれまた危ない奴の手に渡ったなぁ…


61 : 名無しさん :2016/10/08(土) 19:12:48 9o2Ud0og0
投下します


62 : White sanction :2016/10/08(土) 19:13:39 9o2Ud0og0

 むかしむかし

 まっくろな怪獣が現れました

 怪獣はとてもつよく

 しかも みんなをたべてしまいます

 こまった人たちは 一生懸命闘いましたが

 怪獣はとても強く だれも勝てません

 みんながこまりはてた その時

 しろいお侍さんが5人のなかまをつれて

 みんなのまえにあらわれました

 しろいお侍さんたちはとってもつよく

 とうとう怪獣をたおしてしまいました

 そしてしろいお侍さんはみんなにいいました

 『もうわるいことをしてはだめだぞ』と

 ふしぎです 悪いのは怪獣なのに

 おこったみんなは しろいお侍さんを

 まっくろな扉の中にとじこめてしまいました


 ◆ ◆ ◆


63 : White sanction :2016/10/08(土) 19:14:36 9o2Ud0og0


 黒いボディに真っ赤な目の仮面ライダー……仮面ライダーBLACKRX・南光太郎。
 緑の装甲に赤い複眼の仮面ライダー……仮面ライダーキックホッパー・矢車想。
 地獄鴉 with 八咫烏の少女……熱かい悩む神の火・霊烏路空。
 常軌を逸失した正体不明の武術の使い手……OTONA・ 風鳴弦十郎。

 単純な戦闘力は間違いなくこのロワでも上位の彼ら。
 どんなマーダーでも普通なら彼ら相手なら裸足で逃げ出すであろう。
 エリア二つくらい駆け抜けるくらいの勢いでさっさと逃げるであろう。

 しかし、今彼らの目の前にいる侍は不動。
 それに対するのは白き侍。六英雄が一人・ハクメン。
 身の丈以上の日本刀を構えて、動かない。

(おかしいほどのまでの冷静さだ。
 目の前にして分かったが相当な修羅場を潜ってきたと見える)

 弦十郎の目に狂いはなかった。
 4人同時に攻め込んで勝てる見込みなどほとんどない。
 かといってハクメン自身が攻め込んでくる素振りは見えない。
 拳にぐっと力を込めるものの先には動かない。

(先手必勝……というわけにはいかないようだな)
 
 それはアホの子・空でもわかった。
 野生の勘、地獄鴉として生存本能。
 先に空が撃つよりも、ハクメンに斬られる方が速い。
 そう直感的に感じ取った。

(ここは矢車の動きに合わせる!)

 空は矢車にちらっと視線を送る。
 その先の視線の矢車も空に視線を送る。
 アイコンタクトは出来ている地獄兄妹だからである。
 一方の矢車、やさぐれてはいるがその実力はやはり高い。

(集団での戦闘か……指示は別に俺が出さなくていいか)

 かつてのZECTの隊長で指示はどちらかといえば慣れている。
 しかし、この状況皆の個性が強すぎる。
 強すぎる個性は纏めない方がいい時もある。
 今がそういう時だ。

(……負けるわけにはいかない!)

 孤独の戦士・仮面ライダー。
 南光太郎はほぼ一人でゴルゴムと戦ってきた。
 だが、今は違う。共に戦う仲間がいる。
 こんなにも心強い仲間がいる。負けられないはそれだけで十分だ。
 手にした虫取り棒――もとい、パーフェクトゼクターにも自ずと力が籠る。


64 : White sanction :2016/10/08(土) 19:15:09 9o2Ud0og0

「……行くぞ……!」

 その場の大気が震える。
 地面が大きく揺れる。
 その放たれる闘気だけでそこまでの現象を引き起こす。

「我は空(クウ)、我は鋼(コウ)、我は刃(ジン)。
 我は一振りの剣にて全ての『罪』を刈り取り『悪』を滅する!!
 我が名はハクメン! 推して参る!!!」

 ハクメンが一歩を踏み出す。
 それと同時に光太郎、弦十郎、矢車も同時に前に出る。
 空はその少し後方、いつでも弾幕を撃てるように狙いを定める。
 超高火力、広範囲の攻撃は仲間を巻き込む可能性がある。
 故に弾の一発たりとも無駄撃ちは出来ない。

「オラァッ!」

 一番最初にハクメンを間合いを詰めたのは他でもない弦十郎だ。
 このメンバーの中で一番の年長者。
 戦闘経験値は群を抜いている。
 矢車がクロックアップをする前よりも早く辿り着いた。

 弦十郎の右拳を振り抜かれる。
 武術の使い手は今期のカオスロワには沢山いる。
 (一応、暗殺拳である)北斗神拳の使い手、ラオウ。
 その華麗なる技は超人界随一であるキレを誇る超人拳法の使い手、ラーメンマン。
 一撃で相手を倒す正統派の八極拳の使い手、ジョンス・リー。
 他にも多くいたが、弦十郎のそのどれにも当てはまらない武術。
 
 しかし、ただの人間が放つ拳としては桁違い破壊力である。
 それは鍛え方凄いとかそういう問題ではない。
 
 弦十郎の踏み込む力で地面に小規模なクレーターのような窪みが出来る。
 拳にKIを集約させ、その力を一点に一気に叩き込む。
 普通の鎧だったら、破壊できるほどの一撃。
 ものすごく固い鎧でも、凹ませるくらいは出来る。
 
「効かんな……ッ!」
「なッ!?」

 弦十郎の拳は届かない。
 ハクメンの白い鎧には傷一つない。
 三輝神ユニットの一つ『スサノオユニット』
 ハクメンの躰を構成するものである。
 その硬さたるや、あの騎士王の聖剣を受けきるほどである。
 ……騎士王とは少し前に戦ってたよ、本当だよ。
 
「ズェイッ!!」

 弦十郎はバックステップで鳴神の間合いから緊急回避。
 その切っ先が身体に触れるか、触れないかのギリギリの位置で躱した。
 しかし、横薙ぎしたハクメンの鳴神は止まらない。
 己の背後まで届くような凄まじいまでの速度で振るわれた。

 ――――鳴り響く衝突音。

「高速移動で我の背後を取ったつもりか?」 
「………チッ」

 ――Clock Over――

 キックホッパーのクロックアップを読まれた。
 これは偶然でもなんでもない。
 ハクメンの目の前に四人いたが、ハクメンの視界に映った三人になった。
 逃げたとは考えるのはまずは除外する。
 ならば、取るべき行動を仮定するならば敵の死角を狙う。
 人の目が背後に付いていない理由を考えれば、普通は後ろから狙う。 
 
 卑怯? 知らんな。
 
 だが、ハクメンはそれすらを読んでいた。
 その反応速度は1Fよりも速い。光の速度にすら反応している。
 先程の騎士王との戦いでもビームにたった一人だけ反応し、切り裂いた。
 ……騎士王とは少し前に戦ってたよ、本当だよ。


65 : White sanction :2016/10/08(土) 19:15:43 9o2Ud0og0

「矢車さん、危ない!!」

 パーフェクトゼクターを片手に二人の間に飛び込む光太郎。
 鳴神をパーフェクトゼクターで受け止めるとその左拳を振るう。
 だが、これも反応され、ハクメンの右足での中断蹴りで相殺される、
 常軌を逸した超反応をするハクメンと光太郎。 
 
「ッラァッ!」
「フン!!」

 

(うにゅ……光太郎たちが邪魔で撃てない……)

 空は撃てない。
 空は基本アホの子だが、優しい子だ。
 最大火力で撃てば恐らくはハクメンには当たる。 
 しかし、同時に光太郎や矢車、弦十郎にも当たる。
 瞬時に炎を力に変えるロボライダーになれる光太郎はともかく。
 矢車が変身するキックホッパーや一応生身である弦十郎が核の力を直撃したらどうなるか?
 
 核融合を操る程度の能力は元々空の能力ではない。
 山の神にもたらされた八咫烏の能力である。

 彼女は空(から)。
 故に神の火の力=核融合の力を取り込んで強大な力を得た。
 だが、彼女は空(から)。
 頭の中はほとんど空っぽ。
 
 だからこそ、空は考えたくはなかった。
 無い頭だが、少しでも考えたくはなかった。

(ど、どうしよう……)

 前線で三人は必死で戦っている。
 自分の少し離れた後方には戦えない響子たちと気絶したクライシス皇帝がいる。
 今、自分に出来ることは…………。

 あ、そういえば、色々戦ってる彼らは放送を聞いていません。
 僅か一分間で喋ってる安倍総理の話なんて聞けるわけないじゃん?
 それにこんな轟音めいた戦闘音じゃ、放送の声も聞こえない。
 もっともそんな隙を見せたら、どちらかが死ぬから、当然である。


 ◆ ◆ ◆


66 : White sanction :2016/10/08(土) 19:16:23 9o2Ud0og0


 戦闘してる場所からかなり遠くまで離れたところ。
 戦いの音は聞こえる。
 そう、騒がしいほどに。
 その最中に放送は流れた。

(どういうことなの……?)

 響子たちは放送を聞こうとしていたが。
 やはり、周りの戦闘音と一分間という僅かな放送時間に超高速で話す総理の話は全く聞こえなかった。
 そこで弦十郎が持っていたノートパソコンで放送内容等の状況を把握していた。
 情報化社会というの便利なものだと思う反面、この情報を一体誰が流しているのか?
 それと誰がこのサーバー等を管理しているのか? という新たな疑問も生まれた。

 だが、彼女は超高校級の???(みんな知ってるだろうけど、ネタバレになるので伏字)。
 その洞察力と推理力と冷静さはネオクライシス帝国内でも群を抜いている。
 
 放送をしたという新たなる主催者。しかもまた総理。
 日本の政治システムを知っていれば誰でもわかる。
 日本という国の総理大臣は原則として『一人』だ。
 ならば、今の安倍総理は一体何者なのか?
 このロワ内で国民の総選挙などこの状況で行われるはずもない。
 
 ならば、ある一つの可能性を考える。

 自分でもここまで発想は無理があるかもしれない。
 しかし、今までの状況を考え、受け入れる。
 根底から考え方を崩して、柔軟に物事を捉える。
 発想を転換させ、ある程度の無茶なことでもありうると考える。
 でなければ、色々と説明がつかない。

 例えば『仮面ライダー』というキーワード。
 光太郎、クライシス皇帝、矢車想が変身する者が冠する名前。
 だが、変身方法や変身した姿はまるで違う。
 これだけでもかなりの差異がある。
 
 ならば、その差異がどこから生まれるのか?
 つまり、『別世界』もしくは『IFの平行世界』。
 あるいは『過去か未来か世界』という可能性。
 
(姫川さんが自分はアイドルと言っていたけど、皆知らなかったのは……。
 そもそも、皆がいた世界が元々バラバラだったからという可能性がある)
 
 響子はちらっと友紀の方を見る。
 
 そこでは友紀が野球の素振りをしていた。
 皇帝が持っていたサタンサーベルで。

 そら、セ界の王者・大正義巨人軍のファンなのだ。
 ファンとしてこれくらい朝飯前くらいに出来て当然なのだ。

 その近くでキュゥべえ、友紀を魔法少女に勧誘しているが……
 『いやいや、アイドル兼魔法少女はイタイから無理』と、断られていた。
 ユッキの年齢を考えろ、二十歳だぞ、二十歳。
 酒が飲める魔法少女はなしだろ、常識的に考えて。


67 : White sanction :2016/10/08(土) 19:16:56 9o2Ud0og0

(いや、でも、アレは……本当にアイドルなのかしら?)

 超高校級のアイドルが近くにいたからそう思えた。
 気を取り直して再び考える。

 ゴルゴムという秘密結社は光太郎は知っていて、みんなは知らない。
 渋谷に隕石など落ちていないし。幻想郷などという秘境は知らない。
 魔法少女という漫画やアニメでしか
 ノイズという人類共通の脅威とされ、人類を脅かす認定特異災害も知らない。
 勿論、希望ヶ峰学園などという学園も響子しか知らない。
 そして、あの人類史上最悪の絶望的事件ですら。 

 もし、それら全てが別の世界でそれぞれの出来事であるならば、誰も知らなくて当然なのだ。

 だが、それでは明らかに矛盾したこと問題が発生する。
 この世界は大災害が起こり日本以外滅びて、今は日本しか残っていない。
 それなのにわざわざ別世界の人間(というか人間以外とか)を連れてくるのだろうか?
 巻き込まなければ、殺し合いをせずとも人口は明らかに減ったはず。
 だが、それをしなかった。

(もし何か別の目的があってこの殺し合い開かれて……
 この殺し合いの中にカギあるとするならば……
 カギになるのは…………………まさか)  

「姫川さん、その……『予言の書』ってのを見せてもらえないかしら?」
「……どうせ、響子ちゃんも私の言ってることなんて信じてないでしょ?」
「そうね……今のところはだけど、ね」
「ほら、やっぱり……」
「でも、今は必要なの!」
「…………わかったよ」

 友紀は渋々ながらも『予言の書』を貸した。
 そして、さっさと読み進める時間がないのだ。

・九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂
・全てを虜にする歌
・巫女の祈り
・器たりえる巨像
・不屈の精神を持った勇者
・全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる

 これが恐らく重要なポイントであろう。
 
(一番最初の文と二番目の文。
 ……これは姫川さんがずっと言ってたから知ってるけども……
 問題は残りの四文ね……はっきり言って意味が分からないわ。
 一体、何なのかしら……?)

 九人による儀式。
 これが野球という可能性はあった。
 パソコンで少し調べたら、この殺し合いの最中に何チームも野球チームが出来ているようだ。
 友紀が言っていたことがほんの少し現実味を帯びてきた。

 歌に関してもいくつか気になることがあった。
 DMC狂信者というやばい連中。
 もしくは弦十郎が言っていた歌いながら戦うというシンフォギア奏者。
 はたまた(当人曰く、有名アイドル)事務所所属のアイドルたち。
 歌だけでもこれらの多岐に渡る種類がある。

 しかし、これらの情報は全てネットにアップされた情報だ。
 問題はそれ以降。
 ほとんど情報がない。

 だが、一つだけ響子には心当たりがあった。

 響子は軽井沢の研究所で見つけた資料にあったことを思い出す。
 九州をロボに変形させ、何かを打ち出す計画書を見返す。


68 : White sanction :2016/10/08(土) 19:17:28 9o2Ud0og0

(『器たりえる巨像』というのは……まさかこの変形した九州?)

 これだけは正直分からなかった。
 だが、分かるのは巨像というのは恐らくは『人』ではない。
 他に該当しそうな情報もない。
 
 唯一の心当たりがあるとすれば、それしかないのだ。
 彼女なりにそういう結論に至った。

(予言の書に書かれている条件を満たす者がこの世界にいなかったから。
 別の世界から連れてきた……だけども、『その候補者が多くて何らか理由で減らさずを得なかった』
 と、言ったところかしら? でも…………)

 この予言の書は一体誰が書いたものだろうか?
 もし書いたものが判ったとしても、何故そんなことが出来るのにこのめんどくさい方法を取ったのか?
 彼女の疑問は尽きることはない。

 その時である。
 彼女の背後に…………。
 

「貴方は……」


 ◆ ◆ ◆


69 : White sanction :2016/10/08(土) 19:18:07 9o2Ud0og0


 この世界には『黒き者』……『ラグナ=ザ=ブラッドエッジ』はいない。

 この世界には暗黒大戦時に消滅したはずの『日本』がある。

 しかし、『世界を脅かす悪』……『ユウキ=テルミ』がいる。

 『世界に混沌をもたらす者』達がいる。

 矛盾だらけのこの世界に自分がいる理由。

 それだけは分かる。

 それはいつだって変わらない。

 それはどこであろうと変わらない。

 その行動理念は……。


 全ての『悪』を『滅』する。


 そのための『力』はある。

 振るうべき『相手』も見えている。

 だから…………。


「邪魔をするなぁッ!!」


「何!?」
「うおっ!?」
「この力はァッ!?」

 三人を鳴神の一太刀で吹っ飛ばした。 
 あまりの重く、速い一太刀が三人に入る。
 峰内とは言え、そのハクメンの剣を止めるにはかなり力が足りない。


70 : White sanction :2016/10/08(土) 19:18:38 9o2Ud0og0
 
 三方向に飛んでいく光太郎、矢車、弦十郎。
 それを見た直後に目を光らせる八咫烏が一匹。

「今だ!」

 敵を撃つ。
 敵から仲間が離れたら撃つ。
 『弾幕はパワー』を突き詰めると彼女のような戦闘スタイルになる。

 放つは焦土灰燼と化す神の火。

 狙うはいけ好かないお面野郎。


「爆符……ペタフレアァァァァァァ!!!!!」



―――――――――――――――――――――――――――――――
 CAUTION!!     CAUTION!!     CAUTION!!
―――――――――――――――――――――――――――――――
☢   ☢   ☢   ☢ ☢   ☢   ☢  
―――――――――――――――――――――――――――――――
 CAUTION!!     CAUTION!!     CAUTION!!
―――――――――――――――――――――――――――――――


 最大級の火の玉が放たれた。
 周囲のコンクリートが溶け始めた。
 文字通り、言葉通りの超絶火力。
 
「最大出力だああああああああああああああああああ!!!」

 連撃。
 火力に更なる火力を重ね合わせる。
 加速度的に弾幕の速度が跳ね上がっていく。
 

「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」 

 







「『虚空陣……』」



「………………………………えっ?」



「『……雪風』!!」


 空の視界が突然、暗転した。


71 : White sanction :2016/10/08(土) 19:19:17 9o2Ud0og0

 
 気が付いたら地面に落ちていた。
 
 斬られていた。
 あまりの速さに反応が出来なかった。
 斬られてから気付いたのはアホの子だからではない。
 飛び道具すら当身で反応するほどの超速度の超反応。
 
 戦況を常に見ていた。
 誰がどこにいて、どう狙っているかなど把握していた。

 常人では不可能。
 しかし、彼は人ならざる者。 
 人の外の理にいる存在。

「まずは一人……!」
「貴様ァァッ!」


 ――Clock Up――


 超加速するキックホッパー。
 怒りを完全にハクメンに向ける。
 
「……ライダージャンプ……!」

 ――Rider Jump――

 渾身の力を込めて、飛ぶ。
 今度はガードもカウンターもさせない。
 こいつは大切な妹(予定)を傷つけた。
 だからこそ、こいつは殺す。
 
「ライダーキック……!」

――Rider kick――

 後ろからの不意打ちなどしない。
 見えていなければ、どこからの攻撃も変わらない。

「……ズェアッ!!!」

 振り下ろされた剣が砂塵を起こす。
 辺り一面の破壊されたコンクリートの瓦礫等を巻き上げる。
 石礫でキックホッパーの視界を遮ろうとする。
 だが、石礫程度ではキックホッパーの動きは止まらない。

 キックホッパーの左足がハクメンを捉えた。
 
「まだだ……! 地獄を楽しみなァ……!」

 アンカージャッキが作動し、再びキックホッパーが飛ぶ。
 キック力20tのライダーキックを連続でハクメンに打ち込もうとする。
 複数のワームを一気に仕留める技を一体の敵に向かい複数打ち込もうとしているのだ。


72 : White sanction :2016/10/08(土) 19:19:53 9o2Ud0og0
















 
「地獄か……生温いな」 
(何……?)
 
 
 
「法陣、展開……!」


 ――Clock Over――


 ハクメンのブレイクバースト。
 これにより強制的にキックホッパーのクロックアップが解除される。
 それと同時に空中で無防備な状態で見えなかったキックホッパーの身体が露わになる。
 そこをピンポイントで狙っていた。


「『虚空陣』……」

 
 鳴神を上段に構えて、大きく振り下ろす。
 特大の衝撃波が地を這いながら、キックホッパーに向かって飛んでいく。


「……『疾風』!!」


 ものの見事に直撃した。
 空中では避けようがない。
 キックホッパーは大阪の市街地まで吹っ飛ばされた。

 あの有名な矢車さんのAAの飛び方っぽくではなく。
 どちらかといえば森崎君ふっとばされたーっ的な飛び方で。

「あと二人……!」
「空ちゃん! 矢車さん!」 

 空は落とされ、矢車は吹っ飛ばされた。
 数の差などまるでものともしない。
 あとこの場で闘えるのは光太郎と弦十郎の二人。


73 : White sanction :2016/10/08(土) 19:20:28 9o2Ud0og0
 
「もう一度だけ忠告する、そこを退け……!」
「何度も言わせるな、断る!」

 実力差は確かにある。
 だが、光太郎たちにも譲れないものがある。
 しかし、その力強い言葉とは裏腹に足は前に出ない。
 
 光太郎にとってこんなことは初めてだった。 
 数多くのゴルゴムの怪人と戦ってきたが……今感じるのは。

 『恐怖』
 
 その恐怖は正しい感情。
 絶対的力への『恐怖』。
 光太郎はいつだって恐怖に打ち勝ってきた。

 だが、今は違う。
 出来た仲間を失ってしまうかもしれない。
 それが怖かった。 

「……いや、待て! 光太郎!」
「風鳴さん……?」
「ほう、少しは聞き分けがよくなったようだな」

 

「……ここは俺一人で十分よォッ!
 光太郎、お前は空ちゃんを連れて、みんなと逃げろッ!」


 思いもよらぬ一言だった。
 これにはさしものハクメンも一瞬だけ力が抜ける。
 
「弦十郎さん……」
「なぁに、心配すんなって!
 いつだって子供を導くのは大人の仕事だ!
 響子ちゃんも、空ちゃんも、友紀は……確か二十歳だったか」
「友紀ちゃん、いや、友紀さんが俺よりも年上!?」
「ん? そうだったのか……
 まあ……なんだ、守ってやれよ、みんなを、未来を!」

 その背中は誰よりも大きく逞しく見えた。
 最悪相打ちになっても止める覚悟があった。

「行けっ! 光太郎!」
「……弦十郎さん、すみません……!」

 空をジェットスライガーに乗せ、その場から離脱しようとする。

「逃すと思ったか?」
「させねぇッ!」

 足をおもいっきり踏み込んで地面を揺らす。
 震脚とは思えないレベルのほどの地鳴りが周囲に鳴り響く。
 一瞬の隙が出来た。
 その隙を突いて光太郎たちは離脱した。

「……貴様、本当に人間か?」
「人間だ、どこにでもいる。ただの人間だ」

 嘘はいけない。
 だが、大人は嘘はつかない。
 ただ間違いをするだけなのです。

「ちぃとばかし、タイマン張らせてもらう!!!」

 意気地を固めて握られた男の拳が、三輝神ユニットに遅れをとることなどありえない。
 ……うん、きっとありえないのだ!

「戯言を……!
 それでは遅い……遅すぎるのだ!!」

 こんなところで時間を食っているわけにいかない。
 一刻も早く事を済ませる。
 
「行くぞ……!」

 幾度目かの両者の激突。
 人と人ならざる者。

 戦いの火は途絶えない。
 塵になるまで燃え続ける。
 
 灰は灰に、塵は塵に。


74 : White sanction :2016/10/08(土) 19:20:55 9o2Ud0og0

【二日目・11時40分/大阪府・街外れ】

【ハクメン@BLAZBLUE】
【状態】ダメージ(小)、unlimitedモード
【装備】斬魔・鳴神
【道具】支給品一式
【思考】基本:『ユウキ=テルミ』及び『悪』を全て滅する
0:風鳴翼を滅する前にクライシス皇帝を刈る
1:主催及び世界に災いをもたらす者を『刈り取る』
2:風鳴翼は滅する
3:話を聞かないネオ・クライシス帝国御一行には再起不能になってもらう
※unlimitedモードに入りました

【風鳴弦十郎@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】基本:殺し合いの否定
0:ハクメンを止める
1:翼に会うために大阪で待つ
2:戦えない者(主にKODOMO)たちの保護
3:拳王連合軍は許さない


 ◆ ◆ ◆


75 : White sanction :2016/10/08(土) 19:21:13 9o2Ud0og0


「響子ちゃん、友紀さん、キュゥべえ、皇帝……どこだ!」

 どこにもいない。
 逃がした方向にジェットスライガーを走らせてきた。
 最高速度1500km/hは出て、飛行能力すらあるジェットスライガーだ。
 それくらい超高性能のバイクだ。

「まさか……」

 光太郎に嫌な予感が過る。
 彼女たちの中で闘えるものは誰一人いなかった。
 唯一戦える可能性がある皇帝もあの重傷ではどうにもならない。

 と、なれば考えられる可能性は……。


「…………ゴルゴムの仕業か!?」


 恐らく違う。
 しかし、妙な胸騒ぎがする。
 嫌な予感だったら、外れてくれ。
 そう、切に思う光太郎であった。

【二日目・11時40分/大阪府】

【南光太郎@仮面ライダーBLACK】
【状態】右手にダメージ(大)、怒り、恐怖心(弱)
【装備】キングストーン、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
    カブトゼクター、ザビーゼクター、サソードゼクター、ドレイクゼクター
    ジェットスライガー
【道具】支給品一式、カラオケマイク
【思考】基本:この殺し合い、ゴルゴムの仕業だ!
0:空を連れて、はぐれた皆を探す。
1:人々を脅かす拳王連合軍は絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!!
2:俺は仲間であるクライシス皇帝を絶対に信じる!
3:あの少女(歌愛ユキ)はどこに行ったんだ?
※RXに進化しました。ロボライダーに変身可能になりました。
※バイオライダーにはまだなれません。
※パーフェクトゼクターの使い方を理解しました。


【霊烏路空@東方Project】
【状態】ダメージ(大)、気絶、悲しみ、やさぐれた……?
【装備】制御棒、地獄兄弟みたいな格好(女性用)
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:さとり様殺した奴は殺す
0:………………。
1:光太郎たちについていく
2:矢車の妹になった!


 ◆ ◆ ◆


76 : White sanction :2016/10/08(土) 19:21:46 9o2Ud0og0


「貴方……いえ、貴方たちは……?」

 響子の背後にいたのは……少年たち。
 少々小太りの少年たちであった。
 同じ顔の少年が6人ほどもいた。
 まるで最近話題の六つ子のアニメのようだった。

「俺は大山デカオ」
「俺も大山デカオ」
「俺も」「俺も」「俺も」
「俺は……大山デカオ……」
(一体、何が違うのかしら?)
「ふ〜ん、あと3人いれば野球が出来るね」
「野球か、審判は出来るけどプレイする方はなぁ……」

 彼らは熱斗たちに置いて行かれた大山デカオ達であった。
 支給品であったので、デイパックに入ることもできたが…… 
 出来なかったので、今は……

「お嬢ちゃんたちも早く大阪から出た方がいいぞ!」
「今、俺たちは大阪で一般人達に避難勧告を出して回ってるんだ」
「ほら、なんか色々大阪の街であって、そろそろやばいんじゃないかなと思ってな」
「? どういうこと?」
「ほら、俺たち6人もいるんだ」
「思考速度が6倍になったんだ」
「それで次に禁止エリアになりそうなのが、そろそろ関西じゃないかなと思ってるんだ」
「それに俺たち6人だから移動速度も6倍」
「伝達能力も6倍」
「ネットバトルの強さも6倍だよ」
「「「「「いや、それはないから」」」」」

 息がぴったりあった6人の動き。
 まさにシンクロだった。

「それで……私たちも逃げろと?」
「ああ、そうだぜ!」
「あのお面の人は敵対したら、怖いからなぁ」
「それに風鳴翼って言うなんかやばいお姉さんも来るみたいだし」
「いいから、とっと逃げた方が……」
「生憎だけど、そういうわけにはいかないの」
「でも、そっちのおじさんは結構重傷じゃん?」

 デカオの一人がクライシス皇帝を指さした。
 思考能力が6倍になっているので、状況判断の速さも6倍だ。
 ……理屈はわからないが、とにかくすごい能力だ。

「だったら、何か治療できる場所はあるかしら?」
「さっきまでいたところだったら、治療は出来るかも……」
「それはどこ?」
「『死国』だよ」
「「!?」」

 二人は驚愕する。
 キュゥべえは無反応。


77 : White sanction :2016/10/08(土) 19:22:16 9o2Ud0og0

「まさか貴方達は『拳王軍』!?」
「置いて行かれたから、多分違うんじゃないかな?」
「それに『死国』には誰もいないしね」
「誰も?」
「ああ!」
「ラオじさんもタクアンもイエスキリストもMEIKOおばさんも……」
「ホモのお兄さんも熊のぬいぐるみもダイアーさんも……」
「熱斗も翔鶴お姉さんもジョジョもディおじさんも悪魔のおじさんも……」
「いないね……俺らは置いてかれたけどな!」

 デカオたち6人は少し落ち込んだ。
 だが、そのうちの一人が立ち直ったらすぐに皆立ち直った。
 彼らはデカオだからね。 

「治療施設があるなら、当然野球場もあるよね!?」
「……いや、流石にそれは……」
「あるよ」
「あるの!?」
「うんうん、当然だよね!!
 世界にとって野球は大事だからね!!」

 友紀は目を輝かせる。
 拳王軍も野球しているということは知っていた。
 だが、まさかホームスタジアムまであるとは思わなかった。

 一方の響子は難しい顔をする。
 まさか拳王軍……強いて言えば祐一郎さん(故人)が……
 まさか予言を知っていたかもしれない。
 これは調べる必要がある。

「じゃあ、デカオくん達案内してよ!」
「「「「「「「うん、、いいよ!」」」」」」」
「ちゃんと、あの戦ってる人たちに気づかれないようにね!」
「オッケーだ!」

 響子が考えてる間に友紀は勝手に決断して、もう行動に移していた。
 デカオたちに気絶した皇帝を担がせて、デカオの一人に道案内をさせて。
 
「ああ、もうちょっと……待ちなさい」

 響子は止めようとするが、友紀は止まらない。
 
「響子、僕と契約すれば彼らを止め「それは断るわ」」

 キュゥべえの魔法少女契約を断り、その場に結構分かりやすい書置きを残しておいた。
 キュゥべえと共にすぐにデカオたちを追いかけた。

 その最中、友紀はとあることを思いつく。

(やっぱ【死国】にはすごい兵器とかあるんだろうなー!
 だって戦艦だもんね! うん、きっとある!
 それであたしがその『風鳴翼』ちゃんを倒して大阪を救えば……!
 あたしこそが『不屈の精神を持った勇者』になれるんだ!)

 かなり無理臭い。


78 : White sanction :2016/10/08(土) 19:22:43 9o2Ud0og0

【二日目・11時40分/大阪府】

【クライシス皇帝@仮面ライダーBLACKRX】
【状態】大ダメージ、気絶
【装備】オーガギア@仮面ライダー555
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:光太郎とともに主催者とゴルゴムを潰す
0:気絶中
1:戦力を集めて、『ネオ・クライシス帝国』を建国する
2:一先ず、地球人類抹殺は置いておく。(主催を潰したら取り掛かる)
3:矢車から地獄の匂いがする
4:拳王連合軍の連中はできれば臣下にしたい
5:私のカラオケマイクはどこに行ったんだ?
※参戦時期は仮面BLACKRX本編開始前です。

【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、他の個体が全滅
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】基本:女性参加者全員を魔法少女にする。
0:身を守るためにクライシス一行に保護してもらう
1:霧切響子は黒神めだか以上の素質を持っている……なんとか契約できないだろうか
2:必ず鹿目まどかとも契約してみせる
3:母星と連絡出来るまでは生き残る
4:ハクメン相手では光太郎達でも流石にマズイかも知れない。いざという時は逃げる

【霧切響子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】健康、ロリ切さん
【装備】様々な資料
【道具】支給品一式、沢山の光彦関連のスイッチ、その他不明
【思考】基本:殺し合いの打開and殺し合いについて調べる
0:『死国』に向かって、捜索and皇帝の治療
1:苗木くんに会いたい
2:予言について、調べる。
3:元に戻る方法はあるのかしら……?
※めだか以上まどか未満の魔法少女になれる素質があるようです

【姫川友紀@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【状態】健康
【装備】大正義巨人軍風のユニフォーム、サタンサーベル
【道具】支給品一式、予言の書(本物)
    大山デカオ@ロックマンエグゼ、大山デカオ@ロックマンエグゼ2、
    大山デカオ@ロックマンエグゼ3(BLACK版)、大山デカオ@ロックマンエグゼ5チームオブブルース
    大山デカオ@ロックマンエグゼ6電脳獣グレイガ、大山デカオ@ロックマンエグゼ5DS ツインリーダーズ
    大山デカオ@ロックマンエグゼ(アニメ版)
【思考】基本:予言の書通りに行動したいから、野球する!
0:デカオたちを率いて、大阪を救い、自身が『不屈の精神を持った勇者』であることも証明する
1:野球のメンバーを集める
2:光太郎達がハクメンに勝てなかったら拳王連合軍に取り入る
3:予言のことを誰も信じてくれない……
4:あれ、デカオくん、増えてない?
※予言の書は本物です。


 なお、霧切さんの書置きはジェットスライガーが来た時の風圧でどっかに飛んで行った。
 最高時速1500km/hだからね。しょうがないんだ。


 ◆ ◆ ◆


79 : White sanction :2016/10/08(土) 19:23:11 9o2Ud0og0


 その一方、ハクメンとの戦闘で吹っ飛ばされた矢車さんは……

「ホワイトベースが落ちたと思ったら……今度は人が飛んできた。
 葉隠君も起きないし……僕は一体、これからどうなればいいんだ……」

 超高校級の幸運に拾われていた。
 果たして、それは矢車さんにとって幸運なのかどうか……。
 それは……この世界にいてもロクなもんじゃない『神のみぞ知る』というやつだ。

 

【二日目・11時40分/大阪府市街地外】


【矢車想@仮面ライダーカブト】
【状態】気絶中、 ダメージ(大)
【装備】ライダーベルト&ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
0:…………
1:光太郎、空を地獄兄弟の弟、妹にする
2:上記のために、光太郎たちについていく。(率先して戦うつもりはない)

【苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)
【装備】ウィザードライバー@仮面ライダーウィザード、マシンウィンガー@仮面ライダーウィザード、専用の指輪一式
【道具】支給品一式、通信機
【思考】基本:対主催
0:ホワイトベースが……
1:街の外に退避して葉隠くんを守る
2:この気絶した人はどうしよう……?

【葉隠康比呂@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ダメージ(大)、疲労(小) 、気絶
【装備】ビーストドライバー@仮面ライダーウィザード、専用の指輪一式
【道具】支給品一式
【思考】基本:生存優先・対主催(対主催をすれば生き残ると占いで出たので)
0:気絶中


80 : 名無しさん :2016/10/08(土) 19:23:41 9o2Ud0og0
投下終了です


81 : 名無しさん :2016/10/08(土) 23:55:11 6OXRYG760
投下します


82 : 開花 :2016/10/08(土) 23:57:07 6OXRYG760
「むぅ、やはりみつからないか」

小さく溜息をつく貧乳……もとい、テラカオス・ディーヴァ。
彼女は先刻葬った巨乳……もとい、シグナムの遺体を捜索しているのである。

自分がこの世の全ての存在(食材)を救う(喰う)ことを信条としているディーヴァにとっては、極力相手は救いたいのだ。
しかしシグナムを喰いきることはできず、それにより能力を奪うこともできなかった。

「私としたことが、加減を誤るとはなんたる失態。海の藻屑となってしまっては、もう救えないではないか!」

シグナムの死因は、ディーヴァを相手にした者の中では非常に珍しく、捕食ではない。
彼女の死因は簡単に言ってしまえば、ミンチ化だ。

シグナムの攻撃力は圧倒的であり、彼女の不思議な能力を用いた攻撃はディーヴァの能力の一部を破壊するほど。
流石のディーヴァも、これまで奪い取ってきた能力を片っ端から破壊されてはたまらないと、思わず本気の迎撃をした。
その結果、シグナムの肉体は木端微塵に吹き飛び、そのまま海に沈んでいったわけである。
暴食悪食の歌姫とはいえ、海を飲み干すことは不可能である。
今後もディーヴァに喰われることが嫌な参加者は、うまいこと海付近で木端微塵になるといいだろう。

「圧倒的な攻撃力を持つ反面、耐久力がそれに見合わず低めだったのがお前の敗因だ。
 まあ、それは今の私にも言えることだがな……」

シグナムに負わされた傷を撫でながら、ディーヴァは自身の弱点を理解する。
思わずシグナムに全力を出してしまった点からも分かるとおり、現状のディーヴァの弱点は再生能力を上回るほどの圧倒的な物理攻撃だ。
これまで多くの存在を喰らってきたが、それにより得られた能力は火力増強と索敵能力の急上昇。相手を喰うことしか念頭に置いていない。

「セガール、ニアラ、シグナム……彼らは強かった。私を傷つけ、油断をすればこちらが喰らわれる程の相手。
 どうにかして、より強固な肉体となれないものか。私は何が何でも滅びるわけにはいかないのだ」

思案するディーヴァの脳に、生前の記憶が流れ込む。

「ああ、やはりあの二人はあの時に救っておくべきだった」

都庁にて、自分に土をつけた魔王と勇者の二人組。

「そういえば放送であの麒麟の娘が呼ばれたのは残念だ。是非とも私が救ってやりたかった」

主人と連携し、自分を埼玉県まで吹っ飛ばしてくれた麒麟。

「だが、あの三人はまだ生きている。実に喜ばしい、彼女らだけは、じっくりと救ってやろう」

そして。
愛する男を奪った憎き……否、テラカオスとなった今は同じく救うべき影の薄い三人組。
その筈なのだが、何故か例外的にゆっくりと救いたいという感情が芽生えてしまう。


83 : 開花 :2016/10/08(土) 23:57:38 6OXRYG760
喰いそびれた参加者はシグナム以外にもこれだけいる。
そして全てを救うべきでありながら、例外を作ってしまう感情。
まだまだ真の救世者(メシア)には遠いのだと、ディーヴァは噛みしめる。

生前の風鳴翼を色濃く受け継いだ彼女は、己を高めるという行為にも誇りを持ち、過度な慢心もしない。
故にその進化は、止まることがない。かつてダース・ベイダーから幼虫と呼ばれた彼女は、着実に大空を舞う成虫へと近づいていた。


「……むっ!?」


そんなディーヴァは、異変を感じ取った。
乗組員の全てを救い、シグナムを吹き飛ばし、無人となった筈のホワイトベース。
進化を続ける自分に対して、『狩る者』の意思が向けられる。

「――オオクノシンリュウヲホフリシモノ」

ホワイトベースの一角が吹き飛ばされると同時に、それは現れた。

「ニンゲン……コノ宇宙、最大ノ存在。ヨコセ――ソノエントロピー」

植物の種のような姿から海洋生物のような姿、変態を続けながらそれはディーヴァに対して言葉を続ける。

「我は真竜VFD……Vicarius Filii Dei
 ……お前を喰らい、エントロピーを統合することで完全なる第七真竜・セブンスドラゴンとなる存在なり」

名乗りを終える頃には、そこに白き巨竜がいた。
かつてディーヴァが喰らった真竜、その最後の存在。
本来VFDは全ての真竜を葬らねば現れない存在だが、イレギュラーなニアラの増殖によりその出現条件を満たしてしまったのである。
彼の目的は、食物連鎖の頂点である真竜をも超える存在と統合することで、完全なる存在として新たな宇宙を生み出すことだ。

「ふん、私は人間ではない。救世者(メシア)となる存在だ。
 VFD……神の子の代理か。面白い、ならば私もお前を救い(取り込み)、完全なる救世者に近づこうではないか!」

ディーヴァとVFDが、咆哮をあげる。そして戦いが始まった!










84 : 開花 :2016/10/08(土) 23:58:07 6OXRYG760
「……っ」
「……!」

二人の達人、ジョンス・リーとラーメンマンはその気配を感じ取ってしまった。

拳王は、殺し合いに乗っていなかった。
自分たちは大きな誤解をしていたのだと、戦うべき相手は他にいたのだと、真実を伝えにホワイトベースへと戻った二人。
元々、戦争状態であったのだ。ホワイトベースが大破して沈んでいることには驚きはしない。
だが感じ取った気配に、二人は冷や汗を流さずにはいられなかった。
放送内容や、安倍総理なる存在すら、今の彼らにはどうでもいいことに過ぎない。

おそらくもう、リーダーであった十神は殺されている。あの男がこの気配の中で生き延びられるわけがない。
そしてきっと……この気配を感じてしまう距離まで、ホワイトベースに来てしまった自分達も、生き延びれるとは思えなかった。

「殺るか、殺られるか、か……」

ジョンスは呼吸を整え『一撃』の構えをとる。
万一生き延びられる可能性があるとすれば、それしかないからだ。

「何か、残せるものはないのか……」

ラーメンマンは己の敗北を悟っていた。
かつてウォーズマンに敗れた時のように、後に続く仲間に何か攻略の糸口を残せないだろうか。
だがこの場にキン肉マンはおらず、ホワイトベースの仲間は死に絶えた。

ふと、ホワイトベース入り口そばのパソコンがラーメンマンの目にとまった。


――オオオオオォォォォォォ!


艦内から響いたのは、恐ろしい咆哮だった。
そしてそれは、信じられない速度で、ジョンスとラーメンマンめがけ『正確に』突進してきた。


「――そこだッ!」


それに合わせるように、ジョンスは必殺の一撃を繰り出した。


だが、彼が繰り出した拳は、いやジョンスそのものが『一撃』で消滅した。

龍の牙が彼の拳を喰い、その勢いのまま全身を喰らいつくしたのだ。


【ジョンス・リー@エアマスター】 テラカオス・ディーヴァによる完全捕食


「アハハハハハ、クァハクァハハハハハハ! 脆い、脆い! 真竜も、人間も! だが実に美味い!」


あのジョンスが一撃で敗れ去ったことに、ラーメンマンは動揺することはなかった。
言葉を交わすことはなかったが、彼は恐らく覚悟を決めてラーメンマンより先に相手に挑むことで、僅かな時間を作り上げたのだ。
二人とも、既に覚悟は出来ていた。


禍々しい翼を生やし、より鋭さをました牙を覗かせる存在……
極点の捕食者へと進化していくテラカオス・ディーヴァを前に、ジョンスと同じくラーメンマンも退くことはない。

【VFD@セブンスドラゴンⅢ Code:VFD】 テラカオス・ディーヴァによる完全捕食


85 : 開花 :2016/10/08(土) 23:58:54 6OXRYG760
「お前は、特に美味そうだ。よし――ラーメンにしよう」
「ラ、ラーメンだと?」
「ああ、そうだ。お前なら、さぞ美味いラーメンになってくれそうだ。何故かな、私とちょっと似た匂いを感じるんだ」

にたりと笑うディーヴァに対して、ラーメンマンは後ろ手で僅かにパソコンを叩く。
ジョンスのためにも、散って行ったホワイトベースの仲間のためにも、そして……拳王に悪魔将軍のために。
僅かでもいい。この捕食者に関する情報を少しでも。

「ほあっ!」

手はそのままに、蹴りを放つ。

「ふん!」

しかしそれは受け止められ、握り潰される。
激痛がラーメンマンを襲うが、彼はそれさえも計算のうちであった。
ラーメンにする……悲しいことに、ラーメンマンはそれがどういう行為であるかを『知っている』
普通の人間であればおよそ想像のつかない、残酷極まりない殺し方を、ディーヴァの他にラーメンマンだけが知っている。
ラーメンにするには、相手を殺す必要があるが……先程のジョンスの用に一撃で喰ってしまえば、ラーメンにするもなにもありはしない。

「……っ!」
「無駄だ!」

もう一方の脚も潰され、もはや逃げ道はない。
だがラーメンマンは既に覚悟を決めており、ディーヴァのこの行為もまたラーメンマンの思惑通り。
ラーメンにしやすいように、身体を延ばしやすいように。
一撃の捕食よりも工程を踏む分時間のかかるそれは、ラーメンマンにとってはまさに望んでいること。



ラーメンマンがパソコンのエンターキーを押すのと、その身体がぐしゃりと折り曲げられるのは、同時であった。





ずるずると、かつてラーメンマンであったラーメンが啜られ、ディーヴァの胃袋へと消えていく。


【ラーメンマン@キン肉マン】 テラカオス・ディーヴァによる完全捕食


「ふぅ、ごちそうさまでした」


86 : 開花 :2016/10/08(土) 23:59:37 6OXRYG760
一礼をしたディーヴァは鼻を鳴らすが、もう美味そうな匂いはしない。
圧倒的な嗅覚と聴覚、そして捕食者の頂点である真竜の頂点を喰らうことで得た、強靭なドラゴンの牙。
もはや彼女に目をつけられたが最後、哀れな参加者は喰われるのを待つしかない。

「やはり、いいラーメンであった。ジョンスも、ラーメンにすべきだったか?
 ……いやいや、慢心は駄目だ。あの類は一撃で救わねばこちらがやられるからな」

ぐっぐっと拳を握るディーヴァ。
二人の達人、それも恐怖を組み伏せ自分に向かってきた勇気ある者を喰らった彼女は、食材の能力の一部を引き継いでいた。
より深く重い、剛の拳。そして卓越した技術による、柔の拳。
物理攻撃、接近戦が弱点ともいえるディーヴァにとって、格闘能力の向上は予想外の僥倖。

「しかし……まだだ。まだ足りない。シグナムというアぺリティフ、VFDというアミューズ。
 ジョンス、そしてラーメンマンという素晴らしいオードブルを食べておいてなんだが……ああ、やはりそろそろメインを、拳王達を食したいものだ」

そしてVFDを喰らったディーヴァは当然その能力の一部を引き継いでいるが、何よりも色濃く引き継いだのは、強烈な捕食願望であった。
これは以前食したニアラ七人分のものも含めて、真竜を喰らった故の願望。
厨二病から、いいデザインの乗り物を探していた筈の彼女が、何故ホワイトベースに乗り込んできたのか?
その答えこそ、際限のないニアラの捕食願望(×7)であった。
ニアラが何かといえば、慢心と食欲の塊である。そこから慢心を切り離せば、より食欲が占める割合は大きくなる。
空腹と捕食衝動が、厨二病を上回ったのだ(無くなったわけではない)

VFDは、真竜を超えた者を……更なる高みに至るための者を取り込み、完全な存在に昇華するという欲望があった。
それはつまり、更なる強者への捕食願望。そしてディーヴァの場合……

「より強く、より高みに、より早く。
 私は真の救世者(メシア)となり、この世界を救うのだ。逃がしはしない……拳王軍。
 もはや、乗り物に拘っているような場合ではない。私は救世者、その自覚を持たねば彼らにも失礼だ。
 全身全霊を持って彼らを……いや、この宇宙全ての生命を救わねばならないのだ!」

VFDより奪った禍々しい翼を広げると同時に、ディーヴァの全身から瘴気が放たれた。
そして瘴気はやがて花の形をとった。真竜が狙いを定めた星を喰いつくす時に合図として咲き誇らせる、死の花フロワロである。
撒き散らされる猛毒は、弱者を死に至らしめ、得物足りえる強者を衰弱させていく。

「拳王軍がシグナムの仲間ならば……このシグナムの残り香を追っていけば、辿りつけるであろう」


限りなく進化の極北に近づいた捕食者が、空を舞う。

それは成虫ではない。

新たな生命を生み出す第七真竜でもない。

救いの神でもない。


この星に残る全ての存在に災いを振りまく、争いの淀みから生まれた化身、テラカオス。
その進化の終点を願い、カオスの権化へといま接近す。


87 : 開花 :2016/10/09(日) 00:01:22 GpBevtmM0
【二日目・11時50分/大阪府上空】

【テラカオス・ディーヴァ@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】健康、首輪解除、救世者としての自覚、厨二病、火水土風木電聖闇核耐性(強)、薬物耐性(弱)、嗅覚と聴覚、肉体強化、有翼
【装備】シンフォギア・天羽々斬?(異常に禍々しく変化)@戦姫絶唱シンフォギア?  
【道具】支給品一式 、スマホ、ストロング・ザ・武道の竹刀
【思考】基本:世界をカオスにする
0:拳王軍を追跡し、救う(喰らう)
1:この宇宙から全ての者を救い尽くす(喰い尽くす)
2:攻撃力だけでなく、脆い肉体を強化できる者(ダオス等)を喰い、より高みに至りたい
3:何故皆救済を拒む? まるで意味が分からんぞ?
4:私はまだまだ弱い、もっともっと強くならねば……!
※風鳴翼・佐村ガウスフレミング02・天海春香・はるかさんの能力を継承しました
※テラカオスとしては未完成のため、テラカオスバトルロワイアル十周目の死者の能力は現在使用不能、進化すれば使えるようになるかもしれません
※風鳴翼の容姿や人格を色濃く受け継いでいます、ただし、進化するにつれて失われる可能性があります
※ダルメシマンの人間の1京倍の嗅覚、ゼブラの聴覚と音操作能力を特に強く継承しました
※02氏の書き手としての能力を消失しました
※テラカオス候補者の一人である多木を食らった結果として力が大幅に増しています
※ニアラ×7及びVFDより、真竜の強靭な牙及び強烈な捕食衝動を色濃く継承しました。
 これにより、空腹時は乗り物デザイン等の厨二病よりも捕食願望が優先されます。
※同じく真竜より、毒花フロワロ散布能力を継承&発動させました。現状関西及びディーヴァが向かう先に散布されています
※VFDを喰いましたが、ニアラ×7では他の真竜全ての代わりにはならないため第七真竜にまでは至っていません
※ジョンス及びラーメンマンより、多数の戦闘技術を継承しました


※ラーメンマンが、ネット上にテラカオス・ディーヴァの情報の一部を流しました
 どの程度の情報をどこに流したかまでは不明


88 : 名無しさん :2016/10/09(日) 00:01:59 GpBevtmM0
投下終了です


89 : 名無しさん :2016/10/09(日) 12:14:37 fCowqSFMO
おお、投下がぎょうさん来たで! 乙!
クライシス一行は離散か・・・・・・てつをでもハクメンの相手は無理があったか
デカオのおかげでロリ霧さんとユッキだけは拳王軍への誤解が解けそうだが、近くに貧乳がいるのでまだまだ不安
20人以上いたホワイトベース組もとうとう苗木・葉隠・たっくんだけ
貧乳は絶賛パワーアップ中
対主催全体がだんだん押されてきたが、同時に面白くなってきた・・・・・・

つか、VFDはヘタレドラゴンの仲間入りで良いよねw?
ニアラやフォーマルハウトですら敗死時の描写はあったのに、こいつはやられた時の描写すらカットされて事実上ズガンやしww


90 : 名無しさん :2016/10/09(日) 14:04:49 9WfzCFX60
投下乙!
相変わらずハクメンは理不尽な強さだが、同刻に貧乳がバキバキに強化された挙句、貧乳に対抗できそうなOTONAを潰しかねないという最悪の悪手状態やな…
飛行速度がどんだけかわからんが、拳王連合も後ろから毒華ばら撒かれて後退不可に追い込まれて依然としてピンチ

>>89
ぶっちゃけると、VFDはシリーズ最終作のラスボスなのに本編でも扱い微妙だからね。そりゃ食われる

・ラスボスなのに見た目は普通すぎるドラゴン。ニアラやフォーマルハウトより小さい
・攻撃パターンが真竜の中で唯一完全固定かつ単調
・固有必殺技はライトニングスウォーム。ちょっと飛んで丸まって電気集めて放電。宇宙エネルギーぶつけてくるニアラ達と比べてエフェクトやサウンドも当然地味
・DLCコンテンツでは本気を出した第二真竜ノーデンスの前座扱い+ラスボス戦BGMを奪われる
・DLCやらなくてもノーデンスが本編で地球の全ての生命体を一瞬で皆殺しにするド鬱な離れ業をやらかしたため、大抵のプレイヤーの認識はノーデンス>VFD


91 : 名無しさん :2016/10/09(日) 17:26:41 4xH/K4iY0
>固有必殺技はライトニングスウォーム。ちょっと飛んで丸まって電気集めて放電
この時点でフレミングの電撃能力使える貧乳には勝てる気がしないんだよなぁ……
ロワの時間進行から察するにシグナム撃破から10分以内にやられてるし、それを考えるともはや出オチ


92 : 名無しさん :2016/10/10(月) 01:27:32 OMwBzEocO
セブンスドラゴンのボスって何で上にいくほどヘタレさが増すんだw(特にカオスロワでは)


93 : 名無しさん :2016/10/10(月) 07:41:32 JTtVhmkg0
上がへたれるわけでもないよ。一応、真竜の簡易実績まとめ

第一真竜アイオト
歳数十億のガチの創造主。本当に人間を生み出した存在(ニアラの我が人間を生み育てたは真っ赤な嘘)
終始落ち着いた言動であり、最終的に人間の力を認めてその行く末を見守る(故に戦えないが)
公式キルスコアは0
第二真竜ノーデンス
育む者。人間を愛し、その進化を望み、そのためなら自身の命もあっさり投げすてる。が、ヤンデレ。デートに誘えば来てくれるが、どうやら相当な性欲の持ち主
最後のDLCでようやく少しだけ本気を出した彼女と戦えるが、これも愛だと尋常じゃない強さでこちらをズタズタに引き裂いてくる
公式キルスコアは主人公ら数人を除いた地球の生命体全て(人間どころか猫や虫も含む。ロワでも絶対に到達不可能な数値)
第三真竜ニアラ
説明不要。ロワ中の言動がそのまま彼の残念さを表してる。体験版含めると合計9回人間を舐めてかかってボコボコにされる。
残念キャラ筆頭とか言われてるが、今期は同じ元ネタのニャル子や娘との落差が酷いファガンとかもいるし(震え声)
公式キルスコアは1000人+α
第四真竜ヒュプノス
最大のネタバレだから一応伏せる。シリーズ最初からやり続けたプレイヤーを嘆かせる存在。醜態は晒してない
第五真竜フォーマルハウト
腐敗を好む者。大体wikiのドラゴンズの項目に書かれた通り
実は木っ端微塵になった後、3の物語が始まる前に復活していたことが小説版で明らかに。でも3本編で全く出てこないということはつまりそういうこと
公式キルスコアは数十人程度だが鬱っぷりはすごい
第六真竜ヘイズ
戦闘を好む者。唯一専用曲が貰えない程に弱く、かわいそうな真竜。真竜の中では最も若いせいか、ヒャッハー系のオレ様キャラ
3でとんでもない姿になって復活するが、相変わらずの噛ませ犬。退場が早すぎて書くこともない
公式キルスコアは一国の騎士団を半壊させる程度
第七真竜セブンスドラゴン(VFD)
誕生=新宇宙の誕生。その後は新たな第一真竜となり新たな宇宙を育てるらしい
VFDはこれのなりそこないのため、厳密には第七真竜ではない。だから弱くても仕方がない
一応フォローとしてVFDはオリハルコンに貫かれない限り、ニアラ以上の生命力と再生力を持ってることは言っておく
もう喰われたけどね!


94 : 名無しさん :2016/10/16(日) 22:21:42 Ms9Ba5Rw0
投下します


95 : Silent Scream :2016/10/16(日) 22:22:23 Ms9Ba5Rw0

「あのクソ鳥野郎がッ!!」

まるでチンピラのように周囲に八つ当たりをしながら、堂々と歩く男。
その行為に注意する者は誰一人としていない。
その男から放たれる途轍もない殺気。
あの謎の鳥男にまんまと一杯食わされた。
それが彼をイラつかせるには十分であった。
例えるなら【遊ぼうとしていた玩具を直前で取り上げられた】くらいのイラつき方だった。

「クソがッ!」

テルミに蹴られた電柱が歪な形に歪む。
まるで蛇に喰いちぎられたかのように。

(オイオイ、マジかよ……すっげぇ蹴りの威力だな、おい!!)

自身でやっておいて、勝手に驚く。
対デウスの時は、前の器のハザマで出来るギリギリのレベルで動いた。
それでも確実に勝てる策があったから勝てたのだ。
ダイヤグラムでいえば9:1くらいの割合であった。

デウスの敗因は『認識不足』もあるが……
最大の敗因は『この男は主催側に呼んでしまった』ことだったかもしれない。
ハザマ単体だけであれば恐らくはこんなことにはならなかったであろう。

(『碧の魔導書(ブレイブルー)』は……まっ、後で回収でも製造でもすりゃいいか)

碧の魔導書がなくても十分に戦えるテルミ。
それはストライダーの素の身体能力の高さとマグネットパワーの脅威の性質があったからであろう。
だが、今はそんなことはどうだっていい。
散々自分(というより器の方)を使い走りにした特務機関トップのデウスは殺害に成功した。
残りの主催陣営もあとは最初の方に比べりゃ、4分の1かそこらへん。
自分に最大級の恨みを覚えてる連中だ。
どうせ今になって討伐だのなんだのに追われているであろう。

「ああッ! マジムカつくッ! 
 まっ、いいや…………適当に誰か殺すか」


殺すのは誰でもよかった。
テルミの前では全てを無価値なカス同然なのだから。


  ◆ ◆ ◆


96 : Silent Scream :2016/10/16(日) 22:23:03 Ms9Ba5Rw0


「おや、これは……」
「どうしたんだ、光秀?」
「……皆さん、殺されていますね」
「か、かにぃ!?」
「ああでも、モブ信者なんで代わりなんて沢山いますがね」

あまりにも凄惨な光景に再びデスマスクは再び素っ頓狂な声を上げる。
しかし、一方の光秀は冷静そのもの。

やり方からして都庁の魔物とかの仕業ではないと判断した。
遺体の状況からして、下手人はまだ近くにいる。
気を引き締めなければなら…………

「当たるといてーぞ!!!!」

その思考を切り裂くように怒声が響いた。
二人が声の方を向くとそこには黄色いフードの男が立っていた。
衣服に返り血が付いていることをみると明らかにそいつが下手人だった。

「オラよ!!」

超速度でのクナイの投擲。
マグネットパワーが加わり、クナイはさらに加速。
回避はほぼ不可能。
しかし、彼は曲がりなりにも黄金聖闘士。
デスマスクには回避可能だった。


「いやあ、ザンネンでした」

だが、避けた先では……

「本命は『ソレ』じゃねぇんだよな」


―――デスマスクの世界が暗転する。

黄金聖闘士は光の速度すら反応される。
ならば、反応されても問題ない行動をすればいい。

「術式、展開……!」

テルミの支配した場に術式を展開する。
デスマスクの周囲に拘束陣が展開された。
そこに誘い込むためのクナイによる牽制。
デスマスクの動きを完全に止めて捉えた。

そこから一瞬だった。

サイファーで首と胴体を分けるように斬る。
殺意だけで振るわれた光剣はありとあらゆるものを切断する。
マグネットパワーで己の筋力をあげて、振るう速度を跳ね上げている。

マグネットパワーの正体は、地球という惑星そのものが持つ生命力のようなものである。
テルミはそこからの力を引き出し、自らの肉体のブースターとして使っている。

その力を使うのはなんの躊躇いもない。
ユウキ=テルミは戦闘狂などではない。決してない。
彼は戦いを楽しむ気などはない。更々ない。

黄金聖闘士に同じ技は通じない。
ならば、一撃で殺せばなんの問題もない。

「よぉ、光秀ちゃん〜元気してた?」
「貴方は……誰ですか?」
「……ああ、面白みのねぇ反応だなぁ、おい!
 テメェの仲間を殺したってのによぉ!」
「デスマスクさんはクラウザーさん復活の生贄になっ……」
「なんねぇよ、馬鹿が!」

光秀の腹部を蹴りをぶちかます。
肋骨の数本が粉砕したと思われる鈍い音がなった。
ウロボロスで光秀の身体を拘束して、光秀の動きは封じてある。
地に伏せた光秀の頭部をぐりぐりと踏みつけながら、テルミは見下す。

争いは同レベルのものでないと起こらない。
レベル差がありすぎれば一方的に終わる。
もし一方的でなければ、手を抜いているか、只のマゾヒストか、道化かのいずれかである。

「残念でした、もうクラウザーだったか根岸だったかの『魂はこの世界から消滅』しちまったからよぉ!」
「貴方、一体何を言って……」
「ああ? まっ、言っても判らないクズ共に言っておくと、テメェらがやろうとしてることは完全に手遅れなんだよ!
 『最初の死者スレ』があのクソニートがぶっ壊した時点ですでに無駄な行為だったんだよッ!」

再び光秀の腹部を思いっきり蹴り飛ばす.
ウロボロスで拘束してあるので吹っ飛ばずに空中で急停止し、地面に叩きつけられた。


97 : Silent Scream :2016/10/16(日) 22:23:48 Ms9Ba5Rw0

「SATSUGAIだったか? 実にいいよなぁ! テメェらがやってるような特に理由がない殺害はよぉ!」
「そんなことは違い……」
「いいや、違わねぇな、テメェらは本当は欲しいだけなんだよ……適当な理由付けて自分らを正当化する理由がよ!
 だから、あのカスを適当に祭り上げて、あのカス信共全員は殺しを本当は心から楽しんでる。
 心地よかっただろう? 絶望しながらゴミみてえに死んでいく奴らの悲鳴はよぉ!!」

光秀の頭部を何度も踏みつけながら、テルミは笑いながらも光秀に告げる。
いや、これはもはや告げているとかその類のものではない。
怒りを買うようにただ単に煽っている。

「いいか、誰かを痛めつけたり、殺したりすることに理由なんていらねんだよ」
「……これ以上の私たちの侮辱は許されませんよ……!」
「許す? 誰が誰を許すんだ? あのカスにか?
 まっ、テメェら程度のカス共に許されても全然嬉しかねぇわな!!」

光秀にどす黒い殺意が沸き上がった。
ついにキレた。
ここまでコケにされておいてキレないわけがない、

「殺す、貴方だけは絶対に……!」
「いいねぇ! その態度!! その表情!!!
 俺様に対して屈辱しか感じてねぇ、テメェのその顔は!!
 だが、テメェじゃ無理だ、何故なら……ここで死ぬからなッ!!!」

サイファーで光秀の四肢を切断した。
クナイで光秀の眼球を抉り取った。
ウロボロスで光秀の心臓を喰いつくした。
ここまでする理由は特にはない。
誰かを痛めつけたり、殺したりすることに理由なんていらない。

だからこそ、思い知らせてやる。

世界を救うなどという建前で、人を殺している歌姫に。
新しい世界を作るという建前で、人を殺している野球馬鹿たちに。
自然を守るという建前で、人を殺している魔物たちに。
クラウザーを復活させるためという建前で、人を殺している狂信者たちに。
世界救済という建前で、人を殺させ合っている主催共に。


「テメェらがやってることは結局全部同じこと……ただの『人殺し』に過ぎねぇってことをよぉ!!」

 
一般人程度ならその行動に恐怖を覚えてしまうだろう。
だが、ここまで生き残っている参加者ならばその程度では怯まないだろう。
むしろ、この男の今までの外道行為に対して怒りを買うであろう。

それこそ必然。
それこそ当然。

だが、それでいい。
彼を憎めば憎むほどその力を増していく。
彼に対する憎しみこそが……

「おやぁ? こいつは……なるほどね」


98 : Silent Scream :2016/10/16(日) 22:24:28 Ms9Ba5Rw0

光秀が持っていたスマホを見る。
そこにはDMC狂信者が次にどう動くかとの情報。
その他、日本各地の情報が記されていた。

(ハクメンちゃんはまだ大阪か……いやぁ、助かったわ〜〜。
 で、あのクソ貧乳はそれを無視してすでに関西を出ているか……
 ああ、折角『あのクソ貧乳がハクメンちゃんに勝てるチャンス』をみすみす手放すか〜〜
 使えねぇ……やっぱ『出来損ないの紛い物』だったわ)

毒蛇はどこまで欲望に忠実。
己の欲のためならば、利用できるものは全て利用しつくす。
そして、用が済んだら、ザックリ切り捨てる。

「さてと、俺様はどこに行くかなぁ〜〜!」

ただ壊し、ただ殺す。
その道は人が通ってはいけない道。

冥府魔道。
それを彼は堂々と歩いていく。


【蟹座のデスマスク@聖闘士星矢 死亡確認】
【明智光秀@戦国BASARA 死亡確認】


【二日目・11時50分/東京都・どこか】
【ユウキ=テルミ@BLAZBLUE】
【状態】飛竜の肉体、首輪解除
【装備】光剣サイファー クナイ、各種オプション、蛇双・ウロボロス、光秀のスマホ
【道具】支給品一式 
【思考】
基本:テラカオスを利用して、滅日計画を遂行する。
1:邪魔をする奴は殺す。
2:あのクソ鳥野郎は絶対にこの手で殺す……草加はどうでもいい。
※飛竜の肉体を完全に奪いました。


99 : 名無しさん :2016/10/16(日) 22:24:49 Ms9Ba5Rw0
投下終了です


100 : 名無しさん :2016/10/16(日) 23:35:41 kqbfPCKoO
投下乙

ユウキ=テルミは戦闘力はともかく、行動に関する動機自体は単純な無差別マーダーって所かな?
つか、煽りじゃなければクラウザーさんの魂はやはり消滅してるんか・・・・・・


101 : ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:45:50 YnHVXta60
投下します


102 : Raise your flag ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:47:15 YnHVXta60
時刻は第五回放送が終了後まもなく。
聖帝軍の旗艦・超弩級ロボット戦艦きらりんロボは埼玉県を越え、東京へとたどり着いた。

彼らの現在の目的は『全てを虜にする歌』の歌い手の可能性がある諸星きらりのライブをスカイツリーを通して全国に流すこと。
そのための目標地点であるスカイツリーがある墨田区までは巨大なきらりんロボの機動力ではもう少しばかりかかる。

その前にきらりんロボ内部で彼らは先刻流された第五回放送について考察やそれぞれの思いの色を見せていた。


「ユミちん……」

鶴賀学園の部長、蒲原の表情にはいつものエクボはなかった。
部員にして友人の加治木ゆみが亡くなったのだ。
しかも犬牟田がネットで拾った情報によると下手人は拳王連合軍であり、彼らは大阪で略奪を行った挙句、バスターガンダムを使ってなんら戦闘力も戦意も持たない避難民たちを虐殺したようだ。
その中には加治木も混ざっていたことが、同時刻の影薄組同様、蒲原と聖帝軍の面子も彼女の最期の瞬間の動画を見ることになった。

「智美ちゃん……」
「ワハハ、豊ちん。大丈夫だよ。
ただ、モモの方が悲しんでるし……拳王連合軍は絶対に許さないけどね」

心配する姉帯に対してエクボを向けるが、その目は全く笑っていなかった。
そもそも何が「大丈夫」なのか? それを姉帯はあえて聞こうとしなかった。

彼女らの隣では魔雲天が漢泣きしていた。
仲間である悪魔超人たちの死を告げられたからだ。

「ザ・ニンジャ、ブロッケンJr、ブラックホールやスニゲーターまで……」
「天ちゃん……」
「……悲しんでばかりもいられん!
きっと奴らは男として、悪魔として勇敢に戦って死んだハズだ。
俺もそいつらに続かなくては、悪魔将軍様に笑われてしまう」

魔雲天は仲間の死をもバネに自分を奮い立たせる。
その勇姿はきらりを大いに安心させた。

「安倍の奴め、『大魔神軍』だと!?
佐々木や奴の作ったチームは一まとめかよ! 俺は葛葉じゃないが、絶対に許せねえ!!」
「高津さん! 落ち着いて!」

高津は怒っていた。
全滅したササキ様が作り上げたチームのメンバーを、めんどくさがったのか9人とも放送されずにチーム名だけで発表したことに。
元々死亡者発表とはゲームの失格者を発表するもので栄誉あるものではないのだが、それでも名前すら流されなかったのはあんまり過ぎる。
高津はあまりにも態度が悪すぎる安倍に対して犬牟田が抑えにかからないと、暴れてきらりんロボの計器を壊しかねないほどの強い怒りを見せていた。


怒りや悲しみを見せていいるターバン共の横では、冷静に放送について考察するサウザーとターバン共がいた。

「クックック、拳王連合軍の祐一郎が死んだか」
「それだけでなく、例のバスターガンダムも撃墜されて、名のあるメンバーも何人か死んで半壊まで追い込まれたようですね」
「この放送の中では唯一と言っていい吉報です。ホワイトベース組様々です」

超危険集団拳王連合軍の、おそらく技術力の要であった祐一郎やその他危険人物たちも大阪の戦線で死んでいった。
ホワイトベース組が多大な犠牲を覚悟の上で戦ってくれたおかげであろう。

「それだけでなく、主催陣のバーダックまで死んだようですね。どう思いますサウザー?」

金色の闇の振りに対して、聖帝軍の(いちおう)筆頭サウザーは。


103 : Raise your flag ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:48:01 YnHVXta60

「“ヒャッハー!
その気になれば地球破壊できそうなバーダックが死んでくれて助かるぜ!
これで九州ロボにいつでもカチコミをかけて主催陣を打破し、俺の日本支配の野望が達成されやすくなったぞー”



……とでも言うと思ったか?」

バーダックの死に対して喜んでなかった。

「意外でした。もっと喜ぶのかと思っていました」
「俺をあまりにも見くびりすぎじゃないか闇ェ……
第二回放送を見る限りとてつもないパワーを持っていたバーダックに関して考えられる点はいくつかあるが、バーダックが主催戦力の大部分を担ってたら対主催を喜ばせるだけで主催陣に放送するメリットが何もないだろうに。
放送自体がブラフか、バーダックより強い者が最初から主催陣営にいたと考えるのが普通だ」

サウザーはバーダックの死に関して(意外にも)冷静かつ慎重な考えだった。

「しかも犬牟田によると九州ロボはいつの間にか埼玉にまで移動しているではないか。
バーダックももういないのに、マーダーだけではなく対主催も多い関東において諸に自信満々な行為ではないか。
これで大した戦力もなく気まぐれで関東にやってきただけなら単なる阿呆だぞ」
「それは確かに」

聖帝軍は犬牟田がネットで集めた情報より、九州ロボが既に埼玉上空に移動していることを知っている。
少なくともサウザーにはその行動が、主催陣営から対主催に挑戦しているようにしか見えなかった。

「バーダックより強い敵……ターバンで皆強化しているとはいえ、勝てるんでしょうか」
「その時こそ野球の試合仕掛けるぞ!
いくら強いとはいえ、ルールは絶対。試合に勝てば敵の強さに関係なく切腹させられるのだ」
「……向こうはルールに従ってくれるかな?」

正太郎は将来的に戦う事になるであろう主催との対決を心配するも、野球脳にだいぶ侵されているサウザーの楽観的(本人は大真面目)な意見に呆れかえるのだった。

「しかし放送係がベイダーから安倍に変わりましたけど、正太郎とサウザーはどう思う?」
「ただ担当が変わっただけかもしれませんけど、それだけの理由としてベイダーが負傷でもしたんでしょうか?
もしくは何らかの準備をしているのかもしれません……指名手配した風鳴翼に関する何かの」
「闇と正太郎よ。実は放送の安倍がベイダーをバーダックより強かったりして、ベイダーを蹴落として新しい主催になってたりしてな」
「それはありえませんよ。とても強そうな人には見えませんでしたし」

正太郎の意見にはともかく、闇はサウザーの適当な意見をジト目で見た。
ちなみにサウザーの考察が概ね当たっていたことはここでは伏せておく。

主催の情報を持っていない聖帝軍はこれ以上、放送に関する考察はできなかった。
そして彼らを乗せたきらりんロボは目的地である東京スカイツリーのある墨田区。

「スカイツリーが見えてきたにぃ!」
「このまま行けば作戦第一段階である諸星のライブが決行できる。聖帝軍の飛翔は近いぞ!」

後はスカイツリーで電波ジャックをし、全国にきらりのライブを決行。
うまくいけば狂信者の数を減らすことができるハズだ。
そう思い、意気揚々となる聖帝軍の面子であった。しかし。

「レーダーに反応多数! 物凄い数の敵です!」

オペレーター係であった犬牟田の声で、操縦室に一気に緊張が走った。
レーダーに無数の敵性反応が映った。
さらにきらりんロボの画面にもビルの影から多くの敵――DMC狂信者達が現れた。
聖帝軍が特に目を引いたのは人型ロボットの軍団である。
そのロボット兵器の名称はヨロイ。惑星エンドレスイリュージョンでの主力兵器である。
そして中央には下半身のない大きな顔と腕が特徴的な、きらりんロボにも匹敵するほどの巨大なヨロイ――バースデイが、きらりんロボのスカイツリー侵攻を妨げるように顕在していた。
そして、そのバースデイから聖帝軍宛に通信が入る。
通信画面に映ったのは柔和な印象の老人であった。

『お待ちしておりましたよ、聖帝軍の皆さん』


104 : Raise your flag ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:49:24 YnHVXta60


彼らはクラウザーさんの洗脳ソングだけでなく、同志とうたわれる老人――カギ爪の男のカリスマ的カウンセリングによって集めったDMC狂信者に組する集団。
DMC狂信者内での俗称はカギ爪団である。
殺し合いや今までの人生に霹靂としていた参加者が集い、モブだけでもかなりの数となっていた。
その数はヨロイだけで百機、兵力はざっと見て3000人ほど。
西武ドームでの戦いの十倍以上の戦力が聖帝軍に立ちはだかっていた。

それを前にしても(ターバンやきらりんロボという大戦力を所持していることも手伝って)サウザーは強気に出て通信ごしにカギ爪団を脅し、カギ爪もまたそれに答える。

『そこの狂信者共よ! このきらりんロボに汚物のように消毒されたくなくばそこをどけ!!』
『そういうわけにはいかないのです。
ディーさんからあなたたちを一人残らず殺すように指示を受けました。
全ての人に夢を与える素晴らしき歌を歌うクラウザーさん……その復活を妨げる馬鹿なあなたたちを止めなくてはいけません』
『クラウザー一人の歌を聴きたいがために他を殺すだと?
戯言を! それから馬鹿って言った方が馬鹿なんだぞ!』
『皆さんが死んでも私や他の方々の中で生き続けるので何も問題ありません!
皆さんの魂はクラウザーさんの歌の中で永遠に生き続けるでしょう!』
『……チッ』
『……ふむ』

噛み合わない会話に苛立ちだけが募る両者。
(常識的に考えるとカギ爪の方が遥かに狂っているのだが)両者にはお互いが血迷っているようにしか見えない。

『これ以上の対話は無駄だな』
『そのようですね』

『押し通らせてもらうぞ汚物が!! 聖帝軍、突撃だ!!』
『このバカな人たちにはご退場願いましょう!! 皆さん頑張ってください!!』

サウザーとカギ爪、双方のリーダーの号令と共に、聖帝軍とカギ爪の血戦の幕は上がった。
きらりんロボに一斉に襲いかかる無数のヨロイとモブ狂信者たち。
それに対してサウザーは指示を出す。

「やってきたな。
手はず通り、亜久里、イリヤ、ターバンのガキ、加賀美は地上で戦いきらりんロボを雑魚に近づかせるな!
イオリ、レイジ、正太郎はロボットで出撃!
残りは予備戦力として指示があるまで待機! 空いている砲台に回れ!」
「「おう!」」

サウザーの指示通り、亜久里はキュアエースに、イリヤはプリズマイリヤに、加賀美はガタックに変身し、元祖ターバンのガキはお手製のナイフを持ってきらりんロボを降り、モブ狂信者に突撃する。
そして正太郎はカタパルト代わりのきらりんロボの腰についているケーキ状の収納スペース・べりべり☆べあーから鉄人28号の肩に乗って出撃する。
そしてイオリとレイジは……

「まさか僕たちが本当にガンダムに乗れるなんてね!」
「つば九郎の持ってきたナノラ様々だな! よっしゃ、燃えてきたぜ!
アリーア・フォン・レイジ・アスナ、ビギニングガンダム出るぞ!」
「イオリ・セイ、ビルドガンダムMk-Ⅱいきます!」

ガンプラで作った二機のガンダムで出撃した。
実はきらりんロボをナノラで本当のロボットにする際に、一緒に自分たちの所持していたガンプラにもかけておいたのだ。
結果、ガンプラは本当にガンダムになり鉄人28号同様のきらりんロボの艦載機になったのである。
これに関してはビルドファイターズコンビはテンション爆上げ状態である。

そして接敵開戦。


元祖ターバンのガキのナイフが兵隊の太ももを指し貫いて機動力を減退させ、その隙にキュアエースの体術、プリズマイリヤの魔法、ガタックの剣がモブ狂信者たちの数を減らしていく。
ヨロイの部隊もガンダム2機の機動戦闘と鉄人のパワー、そしてきらりんロボのビーム攻撃『きらりん☆びーむあい』によって蒸発され、一気に数十機が消えた。

「圧倒的ではないか、我が軍は……」

開戦僅か10分足らずでにカギ爪団の総戦力の1/4を減らすことができた。
このまま行けばカギ爪団を殲滅することができると確信したサウザーだった。

だが、その確信は早すぎた。


「調子に乗んなよオイオラァ!!」
「いいのかい? 僕たちをホイホイ怒らせて?」

カギ爪の乗るバースデイの後ろから2機のガンダムが現れた。
そのガンダムは片方は白い塗装と赤く輝く内部の装甲に金色の二本角、もう片方は黒い塗装に内部の金色の装甲と金色の大きな二本角。
その白と黒とガンダムを見た時、ガノタであるイオリは戦慄する。

「ユニコーンとバンシィ……しかも両方ともデストロイモードだって!?」


105 : Raise your flag ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:50:33 YnHVXta60

宇宙世紀ものガンダムでもオーパーツ級のガンダム、ユニコーンとバンシィ。
カギ爪団はヨロイに限らず、これらの戦闘MSも所持していたのである。
そしてユニコーンとバンシィは空を縦横無尽に舞う聖帝軍のロボット3機に向けてライフルからビームを発射した。

「まずい! レイジ、正太郎くん、奴らのビーム攻撃を絶対に避けて!」
「なに!?」
「避けろ鉄人!!」

イオリの指示より、3機は緊急回避に入る。
二条のビームをイオリとレイジのガンダムは躱しきるが、2機と比べると機動力に劣る鉄人28号は直撃こそしなかったものの、脚部に掠めてしまった。

「くッ……大丈夫だ、掠っただけ――」

足の装甲を少しばかり熱で溶かされただけ、鉄人の戦闘行動に支障はないとタカをくくった正太郎。
……だったのだが、次の瞬間、鉄人28号は大爆発を起こした。
当然、鉄人の肩に乗っていた正太郎も爆発に飲み込まれ、体は鉄人と同じくバラバラに砕け散った。

「しょ、正太郎ーーーッ!!」
「……ユニコーンシリーズのビームマグナムは、他の宇宙世紀ガンダムのビームとは出力が桁違いなんだ。
掠っただけでも機体が爆散するレベルなんだよ……」

正太郎の死に悲しみの声を上げるレイジとイオリ。
聖帝軍のブレインだった正太郎だが、彼はどれだけ重装甲を持っても直撃すれば爆発させるビームマグナムに関する知識がないことが死を招いたのだ。
彼の忘れ形見である黒焦げになったターバンが宙を舞う。


【ターバンのガキ(金田正太郎)@太陽の使者 鉄人28号 死亡】


「僕は当てられなかったよ、一機撃墜できたなんてさすがは遠野くんだ」
「うん(タメ口)」

ちなみにユニコーンとバンシィに乗っているのはカギ爪団の一員である道下と遠野のホモコンビである。
なんでニュータイプでもないクソホモ共がユニコーンシリーズなんて高尚なもんに乗っているんですかねぇ……と思ったそこのアナタ。
おそらくコイツのせいです↓


アア アアア〜 ア〜♪
 アア アアア〜 アー♪
             r‐┬ 、
               「И」__」ヽ
            〉ゞチシノ
           x′  /´
          、/   li
          ,    iキ
          ;i    .|そ     _   _
             l;    ',彡、 /   `ゝ `ヽ
          ‘:.    ヾ彳/八..::  ,: : : :. ∨ヽ
           \    V:;;:{   ,ィエヽ ,イヾ l__,イ
            '.;:    .l ;i::.. ..;ハ汐ノ .lヒ汐)`Y   /`7
             \;   ', `  `¨y⌒ヾ=': : : 廴 ノ  l
               i;   \    、ヽ┯リ: : :     ..: :/
                ':.   .\    ̄ ..: ::   .: :/
                ヾ: : : : : :.. : : : :: : : ::    ./
                 '.: : : : :: : ..... : : : :      ヾ
                  \::::::::::::::::......       };
                   i; : : : : :: : :       i;


「いいこと思いついた。
次はデカブツのケツの穴に向けてビームマグナムしよう」
「聖帝軍は地獄行って……シコれ(迫真)」

ホモを乗せた二機のユニコーンは正太郎と鉄人28号が抜けた穴を突き(非性的な意味で)、ビルドファイターズコンビが耐性を立て直すより早く、ビームマグナムを撃ち込んだ。
二条のビームがきらりんロボに向かっていく。

「まずいぞ! きらりんロボが!」
「落ち着いて! 大丈夫だよ、レイジ」

きらりんロボにカバー仕切れなかったことに焦るレイジっだったが、イオリは彼ほど慌てた様子なく制止する。
実はイオリにはビームマグナムできらりんロボが撃ち貫けない理由を知っていた。
その理由通り、ビームはきらりんロボに届く前に霧散し、なんら被害を与えなかった。

「「ファ!?」」
「ビームが消えた?」

高出力のビームが跡形もなく掻き消えたことに驚くホモパイロット二人、そして同じく驚くレイジにイオリは解説する。

「こんなこともあろうかと高出力のIフィールドジェネレーターをきらりんロボに組み込んでおいた。
ビームには無敵になった以上、これならビームマグナムでもハイメガキャノンでもきらりんロボがやられることはない!」


106 : Raise your flag ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:51:18 YnHVXta60

きらりんロボのツインテール部分にあるリボンには、どんなビーム攻撃でも無力化するGP03・デンドロビウムのIフィールド発生装置が組み込まれていた。
Iフィールドはエネルギーをドカ食いする欠点があるが、ホワイトベース組のデュエルのようなガス欠の早いSEED系MSと違い、きらりんロボは宇宙世紀ものと同じ核融合炉で動いているのでかなり長持ちする。
図体もデカいので実質、ア・バオア・クー並の激戦でも乗り越えられるだろう。
そして実弾は堅牢な装甲で弾く。
実際にヨロイ軍団の攻撃を受けてもきらりんロボはビクともすることなく前進している。
ビームにも実弾攻撃にも無敵ならきらりんロボが敗れることはないだろう……イオリはそう思っていた。


「――それはどうかなぁ?」
「なに!?」


どこか嫌らしい声がしたと同時に、イオリ機とレイジ機のモニターの中で赤い閃光がきらりんロボの頭部に向かっていく。
そして弾幕をすり抜けてそれらはきらりんロボに二つあるリボンに直撃し、爆発させた。
リボンから黒焦げになった円筒状の装置がポロリと落ちる。

「リボンがやられたぞ!?」
「しまった……あれはファングル!」
「ククク……ビームを無効化するIフィールド自体は強力だが、発生装置自体は極めて脆弱。
しかも実弾属性もあるファングルの前ではIフィールドは突き抜けられてしまうなぁ!」

聖帝軍のガンダムの前に赤いガンダムが現れる。
このガンダムこそリボンを破壊した下手人、ヤークトアルケーガンダム。
このガンダムの使うファングルは直接敵機にぶつければ実弾攻撃になり、しかもファンネルやドラグーンのように精密な誘導が可能。これによりリボンにあるフィールド発生装置だけを正確に射抜いたのだ。
そんなアルケーガンダムを駆るのは特務機関員を裏切り、さらにカギ爪のカウンセリングによってDMC狂信者に鞍替えしたベクターこと真月零である。

「Iフィールドが消えたってことは……」
「道下くん、チャンスだよ」

ベクターがきらりんロボの装置を破壊したのを見計らって、ホモ二人はきらりんロボに向けてビームマグナムを放とうとする。

「「させるかぁ!!」」

当然、レイジとイオリがそれを黙って見過ごせるワケもなく、レイジ機はビームサーベルで、イオリ機はビームライフルで発射を妨害させようとする。
しかし、それも新月機のGNランチャーでイオリは牽制され、遠野機もきらりんロボへの攻撃を中断して装備されたクロー系武器であるアームド・アーマーVNでレイジとつばぜり合うことで迎撃する。

「うわあ!」
「こいつら邪魔を……!!」

結果として聖帝軍のガンダムはバンシィにこそ撃たせなかったものの、ユニコーンガンダムは完全にノーマークになってしまった。

「暴れんなよ…暴れんなよ……」
「今だ、撃て! 道下!!」
「ありがとう、遠野くん、新月くん!」

味方が支援してくれている隙に、道下はビームマグナムをきらりんロボの操縦室がある胸部へ向けて発砲。
死のビームは止めるものは何もなく、きらりんロボの胸に吸い込まれ……そして大爆発した。


「ああ……きらりんロボが……」

その光景に思わず、絶望しかけるイオリだったが、レイジは違った。

「……いや、きらりんロボはまだ生きてるぞ!」

ビームマグナムの直撃を受けたきらりんロボはまだ動き、カギ爪団に向けて砲撃を繰り返している。
ロボの非常に堅牢な装甲によって轟沈を免れたのだ。

「チッ……流石に一撃じゃあ沈められないか。だが!」

一度は舌打ちした新月だったが、それもすぐに嫌らしい笑みが戻る。
確かにきらりんロボは轟沈こそしなかったが、動きは鈍っていた。
更に操縦室のある胸部から火の手が上がっている。
確実に大打撃を受けていた。

「次こそ沈めるぜ、道下! 遠野!」
「ああ……次は轟沈だ」
「あー、いいっすねー!」
「そんな真似させねえよ! いくぞイオリ!」
「ああ! 僕たちは伊達じゃない!!」

墨田区の空では聖帝軍のガンダムと、DMCのガンダムが激突する……


107 : Raise your flag ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:52:13 YnHVXta60



一方、地上、きらりんロボの足元では。
カギ爪団の大量の雑兵と戦う四人のターバンであったが、四人もきらりんロボが打撃を受けた瞬間を目撃していた。

「キュアハート! きらりんロボが!」
「落ち着いてイリヤちゃん!」
「クソッ、サウザーたちとレイジたちを信じるしかできない」

旗艦が打撃を受けても四人に狼狽している暇はなかった。
何せ大量の狂信者が襲いかかってくるのだから。
今もまた、敵が波のように飲み込んできた。
元々戦闘力の高い四人には一山いくらの雑魚だったが、それでも油断すれば敵の波に溺れて死ぬだろう。


「ぐあああ」
「足がーーッ!」

敵の海の中で元祖ターバンのガキは黙々と敵の左太ももをナイフで刺しまくっていた。
足さえ使えなくなってしまえば、どんな敵でも戦闘力が激減する。
後はイリヤたち三人に任せれば良かった。

そのような調子で、よし、次だ。と敵の太ももを刺しまくっていたターバンのガキだったが……

「キャッ!?」
「!?」

あやうく仲間であるイリヤの太ももを刺してしまうところであった。
敵をかき分けて進んでいる内に、かち合い、殺気だっていたために間違えて刺すところだったらしい。

「気をつけてよ、もう……」

怒るイリヤに元祖ターバンのガキは謝ろうとし――

「あれ?」
「イリヤちゃんが二人?」

突如、背後から頭にターバンを巻いたキュアハートと、イリヤの声がした。
咄嗟に後ろを振り返る元祖ターバン。

そういえば片方のイリヤには頭にターバンを巻いてなかったなと思い出し……元祖ターバンのガキの意識はそこで途切れた。

【ターバンのガキ@北斗の拳イチゴ味 死亡】


「い、いやあああああああ!」
「ターバンくんが!!」

戦場で二人のターバンの少女の悲鳴が上がった。
元祖ターバンのガキの首から上がなくなっていた。
その後ろではイリヤの姿をした何者かが、口元を血で赤く染めつつ、ターバンのガキの頭をバリバリと咀嚼していた。
そして、咀嚼が終わるとプッと血まみれの布――ターバンを吐き出し、偽物のイリヤは白い毛並みをした恐ろしげな妖怪へと姿をかけた。

「久しぶりに人肉を喰ったが……やはりてりやきばっかの方がうめえな」

妖怪の正体はカギ爪団の一員・とらであった。
変幻の能力を持つ彼は、乱戦の中でイリヤに化けて油断したターバンのガキの頭を喰ったのだ。

「まあ、ターバンは巻こうと所詮はガキの脳みそ。
ちっせえオツムじゃ絡め手にゃあ弱いってな」
「貴様……よくも!」

仲間を殺され、さらにコケにされたことに怒り心頭なのはガッタクこと加賀美。
彼はとらへの報復とターバンのガキへの手向けのために、とらを討ち取らんとする。

「クロックアップ!」
『クロックアップ』

まずはクロックアップによる高速化でとらに一気に詰め寄る。
ワームやゼクト系ライダーのように時と時の狭間で戦える力を持たないとらはこれに反応することはできない。
そして加賀美はとらの胴体に双剣・ガタックダブルカリバーを挟み込むように向ける。
仕掛ける技は一撃必殺。大妖怪とて避けるすべはない。

「正太郎とターバンの仇だ! ライダーカッティング!!」
『ライダーカッティング』

ガッタクカリバーにタキオン粒子が流れこまんとする。
次の瞬間にはとらは爆死しているだろう。

「!?」

しかし、その瞬間。
加賀美は背中に違和感を覚えた。
何かズッシリとしたものが背中に現れたのだ。
そして目を向けると――そこにはあからさまに爆弾らしきものが……

次の瞬間、加賀美はウンメイノーという幻聴と共に背中の地雷は爆発し、その肉体はターバンを除いて爆散した。


【ターバンの青年(加賀美新)@仮面ライダーカブト 死亡】


108 : Raise your flag ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:53:05 YnHVXta60


「ガッタクが……加賀美さんが!」
「何が起きているの!?」

少女たちの視点からすると、それは一瞬の出来事だった。
ガッタクがとらに攻撃を仕掛けた次の瞬間には、ガッタクが爆死したのである。
呆気にとられる少女たちと対照的にほくそ笑むとら。
そのとらの手には獣の槍とは別に一枚の爆弾の絵が書かれたカードが握られていた。

「『万能地雷グレイモヤ』……ベクターの言ったとおり、なかなかどうして使えるじゃねえか。
一番厄介そうな仮面らいだを殺すことができたしな」

カードの名前は万能地雷グレイモヤ。
表側攻撃表示敵1体を破壊する効果を持つ罠カード。
とらは自分でも対抗できないであろうクロックアップ能力を持つ仮面ライダーを抹殺するために、わざと敵を挑発して自分に攻撃を仕掛けるように仕向けたのだ。

「ん? カードが黒く……」

使用して数秒経つと万能地雷グレイモヤは真っ黒に変色、力を失って使い物にならなくなった。

「制限か……だあすべいだも余計な真似しやがる。まあ、想定の範疇だが」

自分に攻撃を仕掛ける者を問答無用で爆死させられるようでは殺し合いにならないと思われたのか、グレイモヤには一回使うと使用不能になる制限が主催によって施されていた。
ただの紙くずとなったカードをとらはポイ捨てして、槍を構えてキュアエースとイリヤのいる正面を見据える。
二人はとら以外にも、カギ爪団のモブに囲まれていた。

「囲まれた!」
「どうやらそのようね……」
「さて、おめえらの肉も食うとするか。
でえじょうぶだ、おめえらの魂は儂の中で生き続ける……」

いくら能力を向上するターバンを装備しているとはいえ多勢に無勢。
モブだけならまだしも、とら相手には二人だけで勝てるかどうかはわからなかった。

「ぬ!?」

そこへ、二人の少女を守るように、とらやカギ爪団のモブにバットと野球ボールの雨が降り注いだ。
とらはすんでで躱すも、大量のモブはそうはいかず、肉体にバットとボールが貫通し、物言わぬ肉塊になった。

「これはいったい……」

イリヤがバットとボールが降り注いだ方向――きらりんロボの双肩部分を見ると、そこに二人の男がそれぞれバットとボールを持って立っていた。

「援護する! おまえたちは一旦下がって態勢を立て直せ!」
「プロ野球選手の力、DMC狂信者にもみせてやるぜ!」
「サウザー!」
「高津さん!」

サウザーは西武ドームでも見せた世紀末槍投げの要領でバットを投げまくり、高津は投球でモブを撃ち貫く。
二人の援護射撃によってカギ爪団によるイリヤたちへの包囲網は解かれ、きらりんロボへの退路ができた。

「私もきたよ」

きらりんロボから少女、金色の闇もイリヤたちの加勢に現れる。

「闇ちゃん!」
「心強い……けど、きらりんロボの砲台を手伝わなくていいの?」
「さっきのガンダムの攻撃できらりんロボの武装が一部を残して使い物にならなくなりました……だから、サウザーと高津さんが砲台の代わりになっている。
私もロボの中にいるより外でイリヤと亜久里の手伝いをした方が良いとサウザーの指示できました」

闇から、無敵と思われたきらりんロボが打撃を受けたことにイリヤと亜久里は少なからずショックを受ける。

「きらりんロボがそんなことに……」
「カギ爪の男を中心にして戦うこの人たち……はっきり言ってかなり強いです。
少なくとも西武ドームで襲いかかってきた連中よりは遥かに……
今後のために戦力をある程度、温存するつもりでしたが、もはやそれどころではないというのがサウザーやみんなの判断となりました」
「きらりんロボにこれ以上敵を近づけないためにできれば魔雲天か姉帯さんを追加で送って欲しいけど……ちょっと厳しいかな?」
「……」
「闇ちゃん?」

もっと援軍が欲しいというイリヤの要望を聞くと闇は押し黙ってしまった。
そしてひと呼吸分間を置いた後に衝撃の事実を二人に伝える。

「……魔雲天はともかく、姉帯さんたちはもういません」
「え!?」
「それってまさか……」

姉帯がいない。
闇のその言葉を聞いた瞬間、イリヤとキュアエースは嫌な予感を感じながら、きらりんロボの操縦室がある胸部分を見た。
そこはまだ黒煙が上がっていた……


109 : Raise your flag ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:53:56 YnHVXta60



きらりんロボ内部の操縦室。
そこでは各所から火の手が上がっていた。

「たった一撃でこっぴどくやられた……!
一部回路が焼失で機能低下。
武器はビーム・アイとロケットパンチ以外、全部使用不能だ!」

自分の操縦席でいつもの冷静さを失い、焦っていたのは犬牟田である。
彼はきらりんロボのオペレーターを担っている。

【煙が邪魔でろくに操縦できないぞ!! 犬牟田、早く消火してくれ!!】
「やってるよ!! 回路がやられて消火装置がまともに動いてくれないんだ!!」

きらりんロボの操縦手であるつば九郎は犬牟田に消火を催促するも、先のユニコーンガンダムによる射撃による機械の損傷で操縦室の消火装置が作動しないほど、追い詰められていた。


そんな操縦室の端では、諸星きらりと智美が誰かの遺体の前でメソメソと泣いていた。
手には血のついたターバンが握られている。

その遺体はこの殺し合いで友人になった姉帯豊音。
既に事切れていた彼女の背中はひどく焼けただれていた。


道下の乗るユニコーンガンダムのビームマグナムが操縦室に直撃した際、胸部装甲をも貫いた爆発エネルギーからきらりを庇ったのである。
魔王すら屠れる雀力を秘めた姉帯だったが、雀力を戦闘力に変換できる技によって得た圧倒的防御力があってしてもビームマグナムのエネルギーはそれを上回り、彼女の背中を焼き、内臓を炙って殺したのだ。
最期に二人はきらりに「きらりちゃん……タッグ組めなくなってごめんね」「モモによろしく……あと拳王連合軍は全員殺して……」と言い残し、この世を去った。

【ターバンのガキ(姉帯豊音)@咲-Saki- 死亡】


「……ワハハ……あいつらぶっ殺してやるゥーーー!!」

友の死に、いつもの笑顔に怒気をプラスして智美は砲座につき、生き残ったビーム兵器であるきらりん☆びーむあいでカギ爪団を粉砕していく。

一方のきらりの心はいつもの明るさを忘れ、その心は悲しみと恐怖が支配していた。

(また、友だちが死んじゃったにぃ……
他の人やきらりんもタバサちゃんや正太郎ちゃん、加賀美ちゃんやターバンちゃん、豊音ちゃんのように死んじゃうの?
そんなのヤダにぃ! 怖いにぃ!)

友や自身の死への恐怖。それが彼女を動けなくしていた。

「……きらり!」
「……」
「きらり!!」
「……」

このカオスロワが始まって以来、行動を長らくしてきた魔雲天の呼びかけにもきらりは応じる様子がない。

「しっかりしろぉ! きらりぃ!!」
「へぶッ!?」

呼びかけに応じないきらりを正気に戻すべく魔雲天は彼女の頬を叩いた。

「天ちゃん……?」

きらりの頬が少し打撲で赤くなってしまったが、きらりを正気に戻すことには成功した。
彼女が正気に戻ったところでさらに魔雲天は呼びかける。

「きらり、おまえのライブのために聖帝軍のみんなが必死になって戦っているんだぞ!」

きらりは予言にある『全てを虜にする歌』を歌えるかもしれない歌手。
それを見定めるためにも聖帝軍はこうしてスカイツリーを目指し、カギ爪団と戦っている。

「おまえの可能性に聖帝軍の連中は賭けているんだ! おまえはがそんなんでどうする!」

故に一人弱気になっているきらりが許せなかった。
友の死が辛い気持ちはわかるが、それを言い訳に戦いから逃げようとするきらりが許せなかった。

「でも……でも……」
「……おまえの歌でみんなを『ハピハピ』にするんだろ?
おまえ自身が『ハピハピ』じゃなくてどうするんだ?」
「……」
「おまえに暗い顔は似合わないぞ……
大丈夫だ、怖くなったら俺がタッグでもセコンドでもなんでもいい。近くにいてやるからな?」
「天ちゃん……」

いや、ただ逃避するきらりが許せなかっただけではない。
暗い顔をしているきらりが、魔雲天にとってはしっくりこないというか嫌いなのだ。
だから魔雲天はきらりに前を向いて欲しかった。
そして、彼女が立ち上がれない時は支えてやろうと思ったのだ。

「……天ちゃん! きらり負けないにぃ!」
「そうだ! その意気だ!」

魔雲天の意思を汲み取ったきらりは笑顔を取り戻す……まではいかないものの、戦う意思を取り戻し始めた。
直後、肩に登っているサウザーから通信が入る。


110 : Raise your flag ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:55:17 YnHVXta60

『クソッ、地上で闇たちも善戦しているが手が足りん!
魔雲天、すぐにきらりんロボを降りて闇たちに加勢してくれ!』
「わかった」
「じゃあ、きらりんもいくにぃ!」
『おまえはこれからライブを行う身だぞ! おまえまで最前線に出てどうする!?』
「で、でも……」

魔雲天の出撃に合わせてきらりもきらりんロボを出ようとしたが、サウザーはそれを許可しなかった。
聖帝軍にとってはきらりは最優先で護衛しなければならず、仮に死んでしまえば元も子も無いのでそれは無理もない話であった。

「大丈夫だ。おまえがいなくても俺一人いけば戦況は好転するさ」
「天ちゃん……」
「俺は戦場で全力で戦ってくるから、おまえはライブで全力で戦え。犬牟田! ハッチを開けろ!」
「はい!」
「……後で必ず会おう、きらり」

犬牟田の操作により操縦室と外界を繋ぐハッチが開き、魔雲天はそこから飛び降りた。
魔雲天が戦場に降り立つと同時に、ハッチはすぐさま閉鎖された。


「天ちゃん……」

戦友である魔雲天が戦場に向かってしまったことにきらりは不安を覚える。
魔雲天の腕を信頼していないわけではないが、それでも万が一死んでしまったことを考えると、怖くて仕方なかった。
だがきらりはライブのために戦うわけにはいかず、彼についていくわけにはいかなかった。
故にきらりは魔雲天が通ったハッチの前で、彼の無事を祈った。


「必ず。
必ず。
必ず――


――イキテカエッテキテネ?」



殺し合いによるストレス。
特に短い間に多くの友を失った彼女は、悲しみにより体内のテラカオス因子を急成長させていた……
きらりの身長は既に2m50cmを超えており、更に彼女のうなじのあたりにはピシッとヒビが入りだしていた。
ところが、犬牟田もつば九郎も智美でさえ、自分たちの戦いに必死だったので誰も異常に気付かなかった。

安倍総理による第五回追加放送が流れたのは、この直後である。



【二日目・12時00分/東京都・墨田区】

【新生聖帝軍 きらりんロボ内部】
※きらりんロボ状態:胸部操縦室にダメージ(中)、Iフィールド破損、機能低下


【サウザー@北斗の拳】 状態:きらりんロボの左肩の上から支援砲撃(世紀末槍投げ)、左太ももボロボロ
【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】 状態:きらりんロボの右肩の上から支援砲撃(投球)
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】 状態:オペレーター
【ターバンのガキ(諸星きらり)@アイドルマスターシンデレラガールズ】 状態:待機中、戦闘のストレスによりテラカオス化急進行中
【ターバンのガキ(蒲原智美)@咲-Saki-】状態:砲手
【ターバンのツバメ(つば九郎)@ヤクルトスワローズ】状態:操縦手、旗色が悪くなったら逃げる


【新生聖帝軍 白兵戦部隊】
【ターバンのガキ(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】 状態:健康
【ターバンのガキ(円亜久里)@ドキドキプリキュア!】 状態:疲労(小)、キュアエースに変身中
【ターバンのガキ(イリヤスフィール・フォン・アインツベルン)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】状態:疲労(小)、プリズマイリヤに変身中
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】状態:ビルドガンダムMk-Ⅱに搭乗中
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】 状態:ビギニングガンダムに搭乗中
【ターバンのレスラー(ザ・魔雲天)@キン肉マン】 状態:健康


共通思考
1:DMC狂信者の完全鎮圧
2:救済の5つの予言の解読及び遂行、野球チームの保護
3:主催者及び危険勢力の討伐

※超弩級ロボット戦艦・きらりんロボを完成させました。元はガンプラですが性能は原作以上です。
※DMC鎮圧作戦の第一段階として東京スカイツリーに向かっています。
 カギ爪団を倒さないときらりのライブを始められません


111 : Raise your flag ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:55:48 YnHVXta60



【DMC狂信者 カギ爪団】

【カギ爪の男@ガン×ソード】状態:バースデイに搭乗中
※不明支給品→バースデイ
【ベクター(真月零)@遊戯王ZEXALⅡ】状態:ヤークトアルケーガンダムに搭乗中
【道下正樹@くそみそテクニック】 状態:ユニコーンガンダムに搭乗中、デストロイモード発動
※不明支給品→ユニコーンガンダム
【遠野@真夏の夜の淫夢】状態:バンシィに搭乗中、デストロイモード発動
※不明支給品→バンシィ
【とら@うしおととら】状態:健康
※不明支給品→万能地雷グレイモヤ
※万能地雷グレイモヤは制限により一回使うと破棄されます

残存モブ戦力:ヨロイ70機、兵隊約2200人

共通思考:聖帝軍を全滅させる


112 : ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 10:56:19 YnHVXta60
投下終了です


113 : ◆lgy5dogjeQ :2016/10/27(木) 11:00:07 YnHVXta60
>>109
あ、いけね
ここだけ間違えて修正前のものを出してしまった

wikiに転載する時は

最期に二人はきらりに「きらりちゃん……タッグ組めなくなってごめんね」と言い残し、この世を去った。

のくだりにある「モモによろしく……あと拳王連合軍は全員殺して……」は削除でお願いします


114 : 名無しさん :2016/10/28(金) 14:37:46 MFJPAyN20
投下乙!
あぁ、とうとう聖帝軍まで壊滅の危機が…
聖帝がここに来てかなりカリスマ性出てきたのは唯一の救いだが、どうなるやら
しかしいよいよもってもう野球できる気がしない


115 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 17:54:35 l4pO7rps0
拳王連合軍が一部例外を除いて誰もいなくなった死国。
その内部ではネオクライシス帝国御一行の一人と一匹、拳王連合軍に取り残された複数のデカオが探索していた。
ロリの霧切は、祐一郎ならばカオスロワの謎、予言の謎、ひいてはこの世界に起きている謎について何か知っているのではないかと思い、医務室にいる友紀にクライシス皇帝を任せて探索に踏み切ったのだ。

まずは手近な個室から調べたが、ここまで収穫はなし。
これから入るのは死国の格納庫である。
格納庫――そこは拳王連合軍の主力兵器であるバスターガンダムが配備され、高速艇が作られていた場所。
……そして祐一郎ら漢達が果敢に戦い、散っていった場所でもある。


「「「ううううう……」」」

格納庫にはバラバラになった死体やパーツがいくつも転がり、凄惨を極めていた。
放送で既に知っていたとはいえ、知り合いである祐一郎・シュトロハイム・アドラーの死にデカオ達は改めて大いに悲しむ。

「デカオくん……悲しんでいるところで悪いんだけど、手がかりを探すのを手伝って」
「泣いたりしてる時間が勿体ないよ」
「「「うん、わかった!」」」

霧切は酷だとは思いながら、キュゥべえは特に何とも思わず、デカオに泣くのを止めさせて探索を手伝わせる。
デカオも思考速度が6倍になっているので、立ち直りの速さも6倍になっていた。
あまりに早すぎて霧切がちょっと呆れたのは秘密である。

そして霧切達は探索を始める。
これから兵器や道具を作るために集められた資源やガラクタ。
先刻破壊されたバスターガンダムに積む予定だったMS用新兵器の数々。
翔鶴の他に建造される予定だった新型艦むすの設計図数枚(ほとんど焼失)。
後は焼死体とジャンクになった漢達の亡骸。
色々なものが目を引くが残念ながら、ここにも霧切の求める手がかりはなしかと思われた。

「ん……何かしらコレ?」

しかし、霧切の観察眼が祐一郎と雷電が爆死してクレーター状になった床の上に光るものを見つけた。
黒くて小さな箱であり、霧切がそれを手に取る。
見ると箱には『祐一郎の大事な黒箱(はぁと)』と書かれている。

「え……なにこれ?」
「「「ああそれ、祐一郎さんのブラックボックスじゃん!」」」
「ブラックボックス!?」

箱を拾って見た霧切は困惑したが、デカオによるとこれは旅客機や戦闘機に積んでいるものと同じ記憶収集装置であるブラックボックスだそうだ。

「「「祐一郎さんが俺に言ってたよ!
保険として脳内にブラックボックスを仕込んでおくって。
そうすれば万が一自分が死んだ時に、自分の技術や記憶を後世に残せるんだってね」」」
「へぇー」
「な、なるほど……」

祐一郎はサイボーグ化していたが故に脳にブラックボックスを仕込むことができた。
自分が死んでも技術と記憶は遺せるようにするために。
雷電に脳みそを真っ二つにされて自爆した祐一郎だが、このブラックボックスだけは奇跡的に破損を免れたようだ。
残念ながら息子の熱斗やラオウ達は脱出で忙しかったために見逃してしまったが、巡り巡って霧切に発見されるのだった。

「なんにせよ記憶を内包しているってことは私の知りたい情報もあるかもしれないってことよね」
「「「拳王連合軍の無実も証明できるかも?」」」
「とりあえずの目的は達成だね」

ブラックボックスには祐一郎の記憶が詰まっている。
ということはこの殺し合いの謎を解く鍵になるかもしれないのだ。
それだけでなく祐一郎の記憶を再生してネットに流せれば対主催の拳王連合軍がマーダー扱いを受けている誤解や風評被害を解くことができるとデカオ達は大いに期待する。

「響子、よく見て。このブラックボックスの端子になっている部分が持っているノートパソコンに繋がりそうだよ」
「本当ね、これなら……」

祐一郎はブラックボックスをどんな端末でも繋げるように端子をUSBと同じものを用いていた。
霧切の所持しているノートパソコンと繋ぐことも不可能ではない。
さっそく情報をみるために霧切はディパックからノートパソコンを取り出し、ブラックボックスと繋ごうとする。



その時である。
死国の外で凄まじい轟音が鳴り響いたのは。

「なに?!」
「外からだ」
「「「嫌な予感がする。ユッキおばさんのいる医務室まで戻ろう」」」

突然の轟音に霧切はノートパソコンとブラックボックスを繋ぐ作業を中断する。
外で何かが起きている。
そう、確信した一人と一匹とデカオ達は大急ぎで医務室、及び、死国の甲板に作られたドームに向かった。


116 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 17:55:27 l4pO7rps0





時間は少し遡り、甲板に作られた死国ドームに付随された医務室。
そこではハクメンによって傷を負い、患部に包帯が巻かれ、未だに眠っているクライシス皇帝を看病している一人のデカオ(霧切と一緒に死国探索に出かけたデカオ達と分離した個体)がいた。

「……ユッキおばさん、どこまで行っちゃたんだよ」

その医務室にはいるはずのユッキこと友紀の姿はなかった。
なんでも霧切とは違う探し物があると言って、クライシス皇帝の介抱をデカオに押し付けて医務室から勝手に出かけてしまったのだ。
十数分経っても戻ってこないユッキに愚痴をたれるのも無理はなかった。

「おまたせーー! はぁ〜重かった」
「遅いよ、どこまで行ってたんだよ」

愚痴を漏らしていたらすぐにユッキは戻ってきた。
手に大きなバズーカらしきものを抱えて。
それを見た瞬間、デカオの目が見開く。

「ゆ、ユッキおばさん、それ持ってきちゃったの?」
「なんで? これからのことを考えたら武器は必要でしょ?
てゆーか、おばさんゆうな。まだ二十歳よ」
「いや、それは……」

ユッキは予言にある歌姫や最良の戦士のみならず、風鳴翼(テラカオス・ディーヴァ)を倒して予言の不屈の勇者になる野望を抱いていた。
翼は仲間である弦十郎が必死に止めようとしている姪なのに殺しても大丈夫なのかというツッコミは彼女は聞かない。正当防衛を言い訳に殺す気なのだから。
そのために死国で強力な武器を探し求め、霧切達には秘密で探索した。
だが、主砲はホワイトベース組のラーメンマン達の手によって全て大破しており、使用不能であった。
しかし艦橋の隅っこで一つのやたら大きなバズーカを発見した。
何やらテープで厳重にグルグル巻きされていたが、故障している様子もなく、ユッキは巻かれていたテープを全部外して艦橋から持ち出したのだった。
デカオはその武器に何やら見覚えがあるのか、何やら口どもっているが。

『二人共』
「ん? どうしたガッツマン?」
『静かに身を潜めているでガス。奴がくるでガス』
「奴って?」
『……風鳴翼でガス』
「「!?」」

ユッキが戻ってからすぐだろう。
上空を飛んでいた風鳴翼をガッツマンが捕捉したのは。
ガッツマンの指示通り、二人はクライシス皇帝ごと医務室の壁に身を隠す。

「おい、ガッツマン。風鳴翼が飛べるなんて聞いてないぞ!?」
『いや、ワガハイに聞かれても……』
「でもあの顔と貧乳っぷりは弦十郎さんから聞いていた通り……食人鬼の風鳴翼ちゃんで間違いないわ」

上空を優雅に、そして飛んだあとの地上にフロワロという毒花を撒き散らしながら風鳴翼――テラカオス・ディーヴァは翼をはためかせて大阪の上空を飛んでいた。

「……こっちに気づいてないのか?」
『あるいはあえてこっちを無視しているでガスな』

ディーヴァは死国にいるこっちに見向きもしている様子がなかった。
彼女の探知能力なら捕捉自体はできているだろうが、デカオやユッキ達の戦闘力が低すぎるのと、メインディッシュである拳王連合軍を急いで追わなくてはならないので、あえて無視しているのだ。
それは戦闘力の低いデカオ達にとっては都合が良かった。
上手くいけばこのままやり過ごせるだあろう。
彼女の通った後に咲いている花が気になるが、屋内である死国に引きこもっていればおそらく害はないだろう。
デカオは安全のためにひたすら目立たず隠れていることに決めた。

「熱斗もラおじさんもいないし、無視してくれるならありがたいぜ。
後はアイツの気を引かないように……」
「よ〜し、今だ!」
「って、ユッキおばさん何やってんの!?」

隠れてやり過ごそうとしたデカオに対し、ユッキは拾ってきたバズーカを手に持って医務室から屋外の野球ドームへと飛び出した。

「やめるんだユッキおばさん! そのバズーカは撃っちゃいけない!」

デカオは食人鬼に見つかる危険(ついでにバズーカの危険性を知っていたために)を考慮してユッキを医務室へ戻そうとするが、彼女は一切聞く耳を持っていなかった。


(私が予言の中にある勇者になれるこのチャンスを逃してたまるもんですか!
志半ばで散ったハラサンのために……


117 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 17:55:49 l4pO7rps0





時間は少し遡り、甲板に作られた死国ドームに付随された医務室。
そこではハクメンによって傷を負い、患部に包帯が巻かれ、未だに眠っているクライシス皇帝を看病している一人のデカオ(霧切と一緒に死国探索に出かけたデカオ達と分離した個体)がいた。

「……ユッキおばさん、どこまで行っちゃたんだよ」

その医務室にはいるはずのユッキこと友紀の姿はなかった。
なんでも霧切とは違う探し物があると言って、クライシス皇帝の介抱をデカオに押し付けて医務室から勝手に出かけてしまったのだ。
十数分経っても戻ってこないユッキに愚痴をたれるのも無理はなかった。

「おまたせーー! はぁ〜重かった」
「遅いよ、どこまで行ってたんだよ」

愚痴を漏らしていたらすぐにユッキは戻ってきた。
手に大きなバズーカらしきものを抱えて。
それを見た瞬間、デカオの目が見開く。

「ゆ、ユッキおばさん、それ持ってきちゃったの?」
「なんで? これからのことを考えたら武器は必要でしょ?
てゆーか、おばさんゆうな。まだ二十歳よ」
「いや、それは……」

ユッキは予言にある歌姫や最良の戦士のみならず、風鳴翼(テラカオス・ディーヴァ)を倒して予言の不屈の勇者になる野望を抱いていた。
翼は仲間である弦十郎が必死に止めようとしている姪なのに殺しても大丈夫なのかというツッコミは彼女は聞かない。正当防衛を言い訳に殺す気なのだから。
そのために死国で強力な武器を探し求め、霧切達には秘密で探索した。
だが、主砲はホワイトベース組のラーメンマン達の手によって全て大破しており、使用不能であった。
しかし艦橋の隅っこで一つのやたら大きなバズーカを発見した。
何やらテープで厳重にグルグル巻きされていたが、故障している様子もなく、ユッキは巻かれていたテープを全部外して艦橋から持ち出したのだった。
デカオはその武器に何やら見覚えがあるのか、何やら口どもっているが。

『二人共』
「ん? どうしたガッツマン?」
『静かに身を潜めているでガス。奴がくるでガス』
「奴って?」
『……風鳴翼でガス』
「「!?」」

ユッキが戻ってからすぐだろう。
上空を飛んでいた風鳴翼をガッツマンが捕捉したのは。
ガッツマンの指示通り、二人はクライシス皇帝ごと医務室の壁に身を隠す。

「おい、ガッツマン。風鳴翼が飛べるなんて聞いてないぞ!?」
『いや、ワガハイに聞かれても……』
「でもあの顔と貧乳っぷりは弦十郎さんから聞いていた通り……食人鬼の風鳴翼ちゃんで間違いないわ」

上空を優雅に、そして飛んだあとの地上にフロワロという毒花を撒き散らしながら風鳴翼――テラカオス・ディーヴァは翼をはためかせて大阪の上空を飛んでいた。

「……こっちに気づいてないのか?」
『あるいはあえてこっちを無視しているでガスな』

ディーヴァは死国にいるこっちに見向きもしている様子がなかった。
彼女の探知能力なら捕捉自体はできているだろうが、デカオやユッキ達の戦闘力が低すぎるのと、メインディッシュである拳王連合軍を急いで追わなくてはならないので、あえて無視しているのだ。
それは戦闘力の低いデカオ達にとっては都合が良かった。
上手くいけばこのままやり過ごせるだあろう。
彼女の通った後に咲いている花が気になるが、屋内である死国に引きこもっていればおそらく害はないだろう。
デカオは安全のためにひたすら目立たず隠れていることに決めた。

「熱斗もラおじさんもいないし、無視してくれるならありがたいぜ。
後はアイツの気を引かないように……」
「よ〜し、今だ!」
「って、ユッキおばさん何やってんの!?」

隠れてやり過ごそうとしたデカオに対し、ユッキは拾ってきたバズーカを手に持って医務室から屋外の野球ドームへと飛び出した。

「やめるんだユッキおばさん! そのバズーカは撃っちゃいけない!」

デカオは食人鬼に見つかる危険(ついでにバズーカの危険性を知っていたために)を考慮してユッキを医務室へ戻そうとするが、彼女は一切聞く耳を持っていなかった。


(私が予言の中にある勇者になれるこのチャンスを逃してたまるもんですか!
志半ばで散ったハラサンのために……


118 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 17:56:59 l4pO7rps0






そして! アイドルの私が救済の予言を完遂して世界から敬われ、知名度急上昇大人気アイドルになるために!!)

ユッキが予言の内容を完遂しようとしているきっかけは、彼女が大正義巨人軍及びハラサンのファンであり、この殺し合いで死んでしまったハラサンの意思を引き継ぐためであるのは間違いではない。
だがそれはきっかけに過ぎなかった。
彼女の真の目的は救済の予言の完遂して世界を救った偉業による、知名度と人気爆上げである。
確かに世界を救ったと救世主であれば敬われるのは間違いではない。

実は彼女は現役アイドルの中では知名度・人気共に低く、そのことに悩んでいた。
売上や実力などでは諸星きらりの1/10にも満たないと言われ、ボーカロイドの中では歌の実力と素行が最低クラスに位置するMEIKOにすら人気で劣ると言われていた。
ついでに彼女の同人誌も手が二本あれば数え切れるほどしかない。
このままでは事務所をクビになるか枕要員になるのは自明の理であるとわかった彼女は救済の予言に縋ったのである。
要するに彼女は世界を救いたいのではなく、世界を救った実績が欲しいのである。

そのような野望を胸にユッキはそれを飛ぶ風鳴翼をロックオンし、気合と共にバズーカを発射した。

「かっ飛ばしていこーーー!!」

ちなみに彼女の持っているバズーカ砲の名前は『チサオ砲』。
ダイアーさんの波紋を込めた大山チサオを弾丸にしたことで、実は死国では最強の秘めた兵器だった。
しかし「威力が高すぎる」という理由で祐一郎自らが封印していたのである。
その封印はユッキに解かれ、最凶のマーダーである空飛ぶ食人鬼に使われた。
ちなみに弾丸にされて飛んでいく弟の姿を見てデカオは絶叫する。

「チサオおおおおおおおおおーーーッ!!」


マッハを超える速度で上空の風鳴翼に向かっていくチサオ弾。
風鳴翼ことディーヴァは突然発射されたチサオを避けられ



ひょいッ

「あれ?」



――ないわけがなかった。
ただでも多くの参加者を喰らって運動能力が増してる上に人類を遥かに超越した嗅覚や聴力による索敵能力を持つ彼女には戦闘の素人が撃った弾を体をちょっとひねって躱すぐらい簡単だった。


しかし、飛んでいったチサオ弾はそのまま京都方面に落ち。


「「「あ」」」


轟音と共に大阪からでも見えるくらいの大きなキノコ雲が京都から上がった。
京都消滅の瞬間。
それを見た三人は思わず開いた口が塞がらなくなった。

【京都】 消滅
【京都にいたモブ参加者】 全滅


「あちゃー……やっちゃった」
「やっちゃったじゃないでしょ!? どうすんの!!」
「姫川さん! 何があったの?!」
「あそこで上がっているキノコ雲、なんだか嫌な予感しかしないんだけど」
「「「あー! チサオ砲を使いやがったな!?」」」

チサオ砲の威力に呆気にとられるユッキに、騒ぎを聞きつけた霧切とキュゥべえにデカオ軍団が探索を中断して医務室に駆けつける。

「それよりもヤバいよ!
ファッキューユッキのせいでこの場所が食人鬼にバレた!」
「なんですって!?」
「ファッキューユッキって何よ!」
「「「正当な評価だろ!!」」」
「喧嘩してる場合じゃないよ、奴が空にいる内に逃げなきゃ」

ユッキの奇襲失敗のせいで死国に潜伏している自分達の所在がバレてしまった。
風鳴翼は自分を殺そうとした霧切達に対して報復してくるだろう。
ここには南光太郎もお空も矢車も弦十郎のような戦える者がいない。
戦闘要員のクライシス皇帝は未だに気絶中である。
デカオ? 何匹いても戦力にならん。
霧切達にできるのは逃げるだけであった。


「ええい、まだ予言の一つも成してないのにこんなところじゃ死ねな……がはッ!?」
「「「!?」」」

一目散に逃げようとしたユッキだったが、その首根っこが後ろから何者かに掴まれた。

「さっきから聞こえてきた会話からして、私を撃とうとしたのはおまえか?」

ユッキの首根っこを掴んだのは風鳴翼――テラカオス・ディーヴァであった。
彼女が目の前に現れた瞬間、動けないユッキを除いた全員が彼女から距離を取った。


119 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 17:58:04 l4pO7rps0

「風鳴翼!?」
「馬鹿な! 今さっきまであそこにいたハズ……」
「「「超スピード!?」」」

上空にいたディーヴァがいつの間にか自分達の目の前に現れたことに霧切達は驚く。
ディーヴァには一秒間ずつだけ時と時の狭間を移動できる能力を持っている。
そこに捕食で爆上げした機動力が備われば、常人が瞬するほんの僅かな時間の間に上空から地上の死国へ降り立つことも可能であったが、霧切達はそれを知らない。

「あの……ひょっとして怒ってます?」

首根っこを掴まれているユッキの体から大量の冷や汗が床に落ちる。
自分の行動のせいでディーヴァが怒らせたと思ったからだ。
本能的な自分の死の予感を感じて冷や汗が止まらなかった。
しかし、ディーヴァの抱いている感情は怒りでは決してなかった。

「怒ってはいないさ……グスッ……」
(……え? 泣いてる?)
「私が先に京都の人間を救ってやるべきだったか、それともさっきの弾丸を避けずに切り裂いていれば京都の人間達を救えたのか……どちらにせよ私が救えなかった者達が増えてしまったことに変わりはない」

ディーヴァは泣いていた。
チサオ砲の直撃で蒸発した京都の者達を救えなかったことに。
テラカオスと化した彼女のこと知らない霧切達には全く意味のわからない話であったが、彼女にとって捕食とは喰われた者が救われる手段だと信じている。
しかし、喰らう前に死体が消失した者や食えない状態になってしまった者は捕食することができない。
食えなかった者は永久に救われることがないと思い込んでいるのだ。
自分を救世主と信じてやまない彼女にとって、自分が殺されかけたことの怒りより、二度と助けられない者が増えたことによる悲しみの方が遥かに心痛かった。

「それじゃあ、私めを見逃してくれたりは……」
「ああ……良いだろう。





なんて、言うわけないだろうに」
「ですよねー」

殺されかけた怒りより救えなかった悲しみの方が勝っていた。
だからといって、目の前の獲物達を見逃す理由がディーヴァにはなかった。

「私にも問題があったが、軽はずみに私に挑んだ貴様にも問題があった」
「ひいいいい! 許してぇ!」
「許してるさ。だが喰う。喰って救う」

先ほどの威勢は何処へやら。ユッキは泣いて懇願するが、ディーヴァは彼女を喰う気満々であった。

「「「そうはさせるかあ!」」」

仲間のユッキを救うためにデカオ軍団はディーヴァに吶喊する。

「邪魔」
「「「ぎゃああああああああああ!!!」」」
「くッ……」
「きゅっぷい!?」
「おまえ達は後で喰うからちょっと待っていろ」

だが、ディーヴァの蹴り、及びそれによって発生した衝撃波によってデカオ軍団は蹴散らされ、それどころか彼らの後ろにいた霧切やキュゥべえまで余波で吹き飛んで全員ドームの壁に叩きつけられた。
そして、ディーヴァはユッキの食事に取り掛かろうとする。

「しかし、このまま救っても先に救った者達の魂が納得しない。
だからおまえはただ救うのではなく、オシオキする」
「お、オシオキって、何をするの!」
「こういうことさ」

そういうとディーヴァは、ユッキの纏っていたユニフォームを

下着ごとビリビリと破いた。

一糸まとわぬ姿のユッキが白日のもとに曝される。

「ッ!?」
「何を……する気なんだ?」
「「「うッ!」」」

ディーヴァの突然の行動に眉をひそめる霧切とキュゥべえ。
思わず前屈みになるデカオ集団。

「きゃあああああああああああ!
もうアイドルとして食べていけないじゃない!
エロ同人みたいな真似はやめて!!」

剥かれたユッキは赤面してディーヴァの手の中でジタバタ暴れる。
きっとディーヴァは自分を殺す前に在り来りな陵辱ものエロ同人みたいに辱めるつもりなんだろうと彼女は思ったからだ。

だが、彼女はこの直後に後悔することになる。
同人誌のような陵辱展開の方がまだ救いはあったのだから。



これから起こるのは有害図書指定級の処刑である。



「いただきます」

ブチッ


120 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 17:58:55 l4pO7rps0

「え」
「肉が麦汁臭い……ビールの飲みすぎであまり質の良くない肉だな、モグモグ」
「い、いぎゃああああああああああああ!!!」

ディーヴァは最初にユッキの右腕を素手で引きちぎり、食らった。
右肩から先から鮮血を吹き出し、恐怖と激痛で顔を歪ませ、絶叫するのはユッキ。
肉を食い、口元を赤く染め上げるのはディーヴァ。

「しかし旨い。
狩りの際、獲物を恐怖させた方が肉が美味しくなるとどこかで聞いたことがあるが、正にその通りだな」

ユッキを食い殺すだけなら、一秒足らずでできる。
だがディーヴァは軽はずみな行動で結果的に京都の参加者を虐殺したユッキを「ゆっくりと」喰らうことで、恐怖させて食い殺すことにした。
ディーヴァ本人としては悪ガキのお尻を叩いてペンペンするのと同じ感覚であったが、ユッキにとっては拷問そのものだった。

「姫川さんが殺される……!」
「「「うおおおおおおおーーーッ! ユッキおばさんを離せー!!」」」

仲間が喰い殺されかかっているのを霧切達が黙って見過ごせるわけがなかった。
デカオ達が再度、ディーヴァに向けて突撃する。
先ほどと違い、食事中ならディーヴァでも隙だらけという判断であった。
が。

「「「ぎゃああああああああああああ!!」」」
「トラップ!?」
「これは……電気の壁だ!」

デカオ六人のうち、最前列を走っていた三人がディーヴァの能力の一つである電撃技……それの応用である電磁防壁に当たって人型の焼肉になってしまい、それを見た残るデカオ達は突撃を中止する。
ディーヴァはあらかじめ周囲に電磁防壁を張って食事の邪魔をさせないようにしていたのだ。
少なくともデカオ程度の実力では何人束になっても、この壁は突破できない。
防壁に守られたディーヴァは外野に構わずに食事の続きをする。

ブチブチブチと、ユッキの肉体を取っては口に運ぶ食人鬼。
腕の次は足、足の次は乳房が喰われた。
しかもギリギリまで死なない程度に計算されて。

「も……もうやめて…助け、て。
予言なんて……勇者や歌姫になんてなれなくていいから……」

もはやユッキの心は耐え難い痛みの中で、救済の予言で名声を得る野望などどうでもよくなっていた。
その心はとうに折れていたのである。
ただただ、助かりたいとだけ願った。

「ぐぎゃ! げぎゃあ!!」

だがディーヴァはユッキの懇願を無視。
乳房の次には眼球を、眼球の次には性器を食らった。

「う……ッ」
「「「おええええええええ!」」」
(あ〜あ、まどかや響子には遠く及ばないけど貴重な資源(魔法少女候補)が……)

ユッキのあまりにも惨い拷問処刑に、流石の霧切も吐き気を覚え、デカオ達は嘔吐する。
感情のないキュゥべえだけが対して動じなかった。
しかし彼らにはユッキを救う手立てはなかった。

「さてとメインディッシュだ」

ディーヴァはそう言うと、ユッキの腹部に爪を突きたて、ズボリと肉を抉って中を探るようにかき回す。

「ひぎゃああああああああああああああ!」

ユッキの一番大きな悲鳴が死国のドームに響き渡った。
そしてディーヴァの手には腹から引き抜かれた彼女の柔らかい腸が握られており、ソーセージでも食べるような感覚で、口に運ばれた。
ディーヴァはご満悦な様子で微笑む。

「やっぱりこの歯応えが最高だな。何度食べても飽きが来ない……ん?」
「――」
「おや、もう死んでしまったか。まあ、救われる前に反省はしてくれただろう」

腸を喰われた瞬間と同時にユッキは痛みのショックで死亡していた。
抱いていた野望とともに彼女の命は潰えたのだ。
これ以上は食事に時間をかけるだけ無駄だと思ったディーヴァは一瞬でユッキの骸をたいらげた。


121 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:00:01 l4pO7rps0

「ごちそうさまでした。さて、次はおまえ達だ」
「く……ッ」
「「「ちくしょう……」」」

ユッキが処刑されれば次の獲物は霧切達五人である。
しかし、彼らは基本的に戦闘力は微々たるもの。
それどころから彼女らの足では逃げることもできない。
ディーヴァには絶対に敵わないだろう。

「響子! 今こそ契約で魔法少女に……」
「遅いな。この世のすべての救済者(しょくざい)に感謝をこめて――――――い た だ き ま」

キュゥべえは現状を打開できるかもしれない策として今まで断られ続けてきた契約を響子に迫るが、それよりも早くディーヴァの牙が五人に迫る。

その時であった。
時速1500キロで誰も乗っていない大型バイク――ジェットスライガーがディーヴァに向けて、突っ込んできた。

「――ッ!」

ディーヴァは自分に向かってきたジェットスライガーを剣で四分割して対処する。
分割されたジェットスライガーの部品は慣性でディーヴァの横から背後まで走った後に大爆発を起こすだけで終わったが、これによって彼女の行動が阻害され、霧切達は九死に一生を得た。

「今のは……!」

霧切がバイクが走ってきた方角を見ると、そこには二人の男女がいた。

「光太郎さん! 霊烏路さん!」

南光太郎――仮面ライダーBLACK RXと霊烏路空であった。



前回の話で光太郎達は霧切の残した書置きを、ジェットスライガーの風で飛ばしてしまって読んでいない。
なのにどうして霧切らが死国にいることがわかったのか?

答えはユッキが放ったチサオ砲によって京都が吹き飛ぶ瞬間を目撃したからである。
チサオ砲が発射された死国には危険集団・拳王連合軍がいると思い、霧切とユッキを合流するのもまず大事だが、拳王連合軍を止めなくてはならないと思った光太郎は急いで死国に向かうことにした。
皮肉にもチサオ砲は撃ったユッキ自身に死を招いただけでなく、頼れる仲間を呼び寄せる狼煙となったのだ。

ちなみにお空はチサオ砲が放たれる寸前に気絶から醒め、ちょっとお腹が空いたので、レモングミ(状態表でその他不明になっていた支給品)を食べた。その結果、ハクメンに負わされた傷の大半が回復した。
お菓子喰って回復とか意味わからねーと思うが、グミとはお菓子のことではなくテイルズシリーズにおける薬品のことである。
そのうちレモングミはHPを60%回復する効果があるのだ。
お空はレモングミをオヤツだとばかり思っていたので今まで気付かなかったが、これにより空は戦えるレベルまで回復したのである。


「響子ちゃん、キュゥべえ。これは一体……拳王連合軍は?」
「ユッキは? ユッキはどこにいったの?!」

死国は霧切達やディーヴァを除く人間がおらず、拳王連合軍の面子はいない状態で放棄されていた。
そしてあからさまに危険な気を放っているディーヴァの存在とユッキの姿が見えない件や同じ顔の少年が三人もいる件などが、光太郎とお空を混乱させていた。

「拳王連合軍はもういない。放送のあとにここを放棄したらしい」
「姫川さんは今さっき死んだわ……彼女に食べられて……」
「なに!?」
「そんな……ユッキ!」

キュゥべえと霧切の言葉に光太郎とお空は少なからずショックを受けた。
拳王連合軍の不在はまだしも、仲間であるユッキの死に。
そして仲間を食い殺した下手人であるテラカオス・ディーヴァを見る。
よく見ると牙や翼が生えている相違点を覗くと放送で指名手配され、仲間である弦十郎が探し求めていた風鳴翼の特徴そのままであった。

「その顔立ちや弦十郎さんの言っていた貧乳ぶり……まさか、おまえが風鳴翼なのか?」
「風鳴弦十郎……まさか司令にして私の叔父だった男を知っているのか?」

OTONAである弦十郎の名前が出た瞬間、ディーヴァも流石に驚いていた様子であった。
そして、そのディーヴァの反応から光太郎も彼女が風鳴翼であると確信する。
弦十郎の願いのためにも、風鳴翼ならば食人行為を止めさせる必要があった。

「ああ、食人鬼と化した君を止めるために、あの人は俺達と一緒に大阪にやってきたんだ」
「そうか……だが残念だが、風鳴翼は既に死んでいる。
ここにいるのは風鳴翼の魂をベースにして生まれた救世主、喰らうことで全てを取り込み救う存在、混沌の歌姫(テラカオス・ディーヴァ)だ」
「なんだって!」

だが、ディーヴァの返答は風鳴翼の死であった。
全容が掴めていない光太郎達の視点からだと意味のわからない話だが、実際に風鳴翼の肉体はディーヴァ誕生の瞬間と同時に弾け飛んでいる。
彼女にとって風鳴翼は卵の殻に過ぎないのだ。


122 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:00:37 l4pO7rps0

「……彼女の説得は考えない方がいいよ光太郎」
「キュゥべえ、しかし……」
「彼女は完全に狂っているわ……食人を救済と同列に考えている時点で」
「エントロピーもさっきのハクメンには及ばないけど、かなり危険なレベルだよ。
強力な電磁防壁や矢車のようなクロックアップ紛いの能力まで持っていた。
少なくとも君が手加減して勝てる相手じゃない」
「!!」
「弦十郎さんには悪いけど、彼女はもう……」

彼女の実力と狂気を目の当たりにしたキュゥべえと霧切は、ディーヴァの説得を諦めるように光太郎に促す。

「ふむ、おまえ達の肉もとても美味そうだな。
拳王連合軍のカオスさに勝るとも劣らぬその力、私がいただこう。
おっと、私に救済の道(ロード)を妥協させるなんて生ぬるいことは考えるな。
全力で来い。手を抜かれてもつまらないからな」

ディーヴァ自身も光太郎が何を言っても食人行為を止める気はなかった。
剣を引き抜き、次の標的を弱い霧切達から強者である光太郎とお空に向ける。

「……わかった。
できれば殺さずに済むのがベストだが、説得も通じず、手加減できない相手なら仕方ない。
風鳴翼……いや、テラカオス・ディーヴァ! おまえはこの仮面ライダーBLACK RXがここで倒す!!」
「弦十郎には悪いけどマーダーなら殺す! ユッキを殺した奴は殺す!」

光太郎とお空もディーヴァと戦うことを決めた。
そして両サイドが敵を討ち取るべく駆け出した。
この死国ドームにて混沌の歌姫と二つの太陽の力を持つ者達の戦いが始まった……


一方、光太郎達がディーヴァを引き受けている間に霧切達は医務室まで後退する。
戦えない自分達は光太郎達の戦いの邪魔をしないためにも気絶しているクライシス皇帝を連れて、死国から脱出する必要があった。

「ねえ、響子。今、契約すれば光太郎達の戦いが有利に……」
「しないわよ。
デカオくん、悪いけど寝ているクライシス皇帝を運び出せない?」
「「「待っててくれ、今減った分を補充するから。そうすれば皇帝のおじさんも運びやすくなるハズ」」」

デカオは大災害の折に浴びたエネルギーTCによって分裂する能力を得ている。
その力でさっき死んだデカオ三人分を補うために分裂して数を増やそうとしていた。
力持ちのデカオが六人揃えば、蟻が大きな食べ物を巣に運ぶ要領でクライシス帝国を速やかに運ぶことができるからだ。
そしてアメーバのように三人から六人に増殖するデカオ。

しかし、デカオが増えきるよりも早く、クライシス皇帝は気絶から覚めた。

「う〜ん、むにゃむにゃ……ここはどこだ?」
「クライシス皇帝!」
「目覚めたみたいだね。ここは死国だよ皇帝」
「死国……拳王連合軍の拠点に私達はいるというのか!?」
「「「熱斗やラおじさん達はもういないけどね。てか、俺達ってひょっとして増え損?」」」

医務室での治療の甲斐もあり、クライシス皇帝は自力で立ち上がれるまでは復活したのだ。
そのクライシス皇帝はまだ覚束無い足で、医務室の窓から死国内で戦いを繰り広げる光太郎とお空と風鳴翼らしき女の戦いを見ていた。

「光太郎達と風鳴翼が戦っているのか?」
「ええ」
「ハクメンに刺されてからずっと気絶していたから状況が飲み込めていないみたいだね」
「悪いけど細かく説明している暇はないわ。
逃げながらでも教えるから、今は退きましょう」
「……」

霧切達よりは遥かに強いとはいえ、クライシス皇帝は病み上がりだ。
とてもディーヴァのような強敵と戦わせられる状態ではなかった。
響子は窓ごしに見える戦いの光景をぼんやりと見つめいるクライシス皇帝の手を引っ張った。


123 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:01:29 l4pO7rps0



場面は死国のドームに移る。そこでは剣と弾幕が飛び交う死闘が繰り広げられていた。

「先手必勝だ! パーフェクトゼクター!!」
「援護するの!」

お空が弾幕でディーヴァの足を止めている内に、光太郎ことBLACK RXは虫取り棒であるパーフェクトゼクターを取り出す。
その威力はミカルゲ戦で折り紙つきだ。
いかなる猛者でも直撃すれば分子レベルで分解される一撃を放たんとする。

「喰らえ、マキシマムハイパーサイクロン!!」
「ふむ、虫取り棒ならあの力を使おう。『虫を操る程度の能力』!!」

マキシマムハイパーサイクロンという竜巻状のエネルギー波が放たれる寸前に、ディーヴァはパーフェクトゼクターに向けて手をかざした。
その瞬間、パーフェクトゼクターは放つべきエネルギーを撃たずに止まってしまった。

「なんだ? ゼクターが動かなくなった……うわ!」
「光太郎!?」

それだけでなく、パーフェクトゼクターに引っ付いていた四つのゼクターが外れて一斉に光太郎に襲いかかり、ダメージを負わせ、自分達が集っていたパーフェクトゼクターをへし折った。
ディーヴァがかつて食らって簒奪したリグルの虫を操る力は虫型の機械であるゼクターにも有効であった。
ちなみに虫がベースの仮面ライダーであるBLACK RXはキングストーンの力に守られているので、操られることはない。

「くッ、仕方ない。パーフェクトゼクターの力を失うのは惜しいが……」

光太郎が光に包まれると黒い仮面ライダーからメカメカしい黄色が基調の仮面ライダーに変わる。

「俺は悲しみの王子、ロボライダー! そしてボルティックシューター!」

ロボライダーにチェンジした光太郎の装甲にゼクター達の攻撃は一切通用しなかった。
そして備えられた銃・ボルテックシューターでゼクターを撃ち落としていく光太郎。
カブトゼクター、ザビーゼクター、サソードゼクター、ドレイクゼクター全てに弾丸が命中し、鉄屑に変えた。

「む? フォームチェンジ能力か。だが、その程度で救世主は止まりはしない!」
「くッ……ボルティックシューター!」
「核熱『核反応制御不能』!」

剣を構えて突撃してくるディーヴァに対し、光太郎とお空は弾幕を張って迎撃する。

「遅い遅い遅い!!」

だが、ディーヴァはその高い機動力で弾幕を回避し、僅か数瞬で光太郎に肉薄する。

「は、速いッ!」
「懐に入れさせてもらったぞ。そして、見せよう。
フレイング、ジョンス、ラーメンマンの力を一つにした我が奥義を!!」

ディーヴァの刀をしまって空手になる。
すると両の拳に電気が宿り、僅か0.01秒にも満たない間に構えを取る。
その構えは独自の理論で新しい格闘術を生み出したフレミングの構えにも、発勁の達人であるジョンスの構えにも、中国の正義超人ラーメンマンの構えにも見えた。

「雷神発勁百烈拳!!」

放たれるはかつてディーヴァ(風鳴翼)が食らった三者の格闘術を融合した拳打。
超人のスピードをもった百の拳の前にロボライダーは避けることもかなわない。

「ロボライダーの装甲が通用しない!?
ぐあああああああああああああああああああ!!」
「光太郎ーーーッ!」

スピードだけでなく、威力も超人のパワーと雷・発勁の力が合わせっている分だけ大幅に向上しており、ロボライダーの圧倒的防御力を上回る拳によって光太郎に打撃を与えていく。
しかし、彼はここでやられるヤワな仮面ライダーではない。
拳の嵐の中で光太郎はたった二発の拳だけでも動きを見切り、そこから両手でディーヴァの両腕だ。

「なんと!?」
「……肉を切らせて骨を断つだ」

初めて使った技とはいえ、常人はおろか並の超人でも見切れまい奥義が破られ、捕まえられたことに驚くディーヴァ。
一瞬の攻防の中で光太郎は、機動力を大幅に上回る敵に対してあえて殴らせて敵を捕まえる作戦に出たのだ。
されど光太郎は両の手が塞がっていしまい、これではディーヴァに攻撃ができない。
そのため光太郎がディーヴァを抑えている間に、彼の代わりに攻撃できる者が必要だった。
そこで霊烏路空の出番である。

「今だお空! 俺ごと最大威力で彼女を撃て!」
「え!?」
「貴様、自分ごと私を討つつもりか!」

光太郎から自分ごと敵を撃てという言葉にお空は戸惑う。

「でも、そんなことしたら光太郎だって……」
「俺は、大丈夫だ! 気にせず撃ってくれ!」


124 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:02:55 l4pO7rps0

光太郎としてもただディーヴァと心中するつもりで仲間に撃てと言ったのではない。
今の彼は熱や炎のエネルギーを吸収できるロボライダーだ。お空のスペルカードの直撃を受けても耐え切れる自身が光太郎にはあった。
それを口と意図がディーヴァにバレてしまうため、お空には説明しなかったが、代わりにアイコンタクトを送った。
お空の頭では光太郎が何を考えて自分に撃たせるのかわからなかったが、彼の赤い複眼の先にある自信を信じることにした。

「わかったよ光太郎! いくよ! 私の必殺技!」

お空はスペルカードを取り出す。
それは先程はハクメンには破られた技である。
しかし今度は状況が違う。
敵であるディーヴァは光太郎に押さえつけられ、防御も回避もできない絶好の状態だ。
必ず直撃させられるとお空は確信する。


「爆符 ペタフレアアアアアアアーーーッ!!」


放たれるは核融合を操る程度の能力、太陽神・天照大神の使神である八咫烏の力を全力全開で解き放ったもの。
その熱は死国ドームの大半を焼き尽くし、容易に溶解させていく。
その炎は光太郎もディーヴァも飲み込んだ。


やがてお空から放たれた核の炎が鎮静に向かうと、死国のドームは煙に包まれていた。

「光太郎ーーーッ!? 無事!?」

ディーヴァは直撃を受けた瞬間をこの眼で確認したのでまず間違いなく死んだだろう。
心配なのは光太郎の方だ。
何やら自信有りげな様子だったが、本当に全力全開の核熱を喰らって生きていられるのだろうか?
それだけが気がかりだった。

だがお空の心配は無用であった。
数瞬後に彼女の視界にロボライダーの姿があった。
光太郎はロボライダーの熱エネルギーを吸収する力とキングストーンの加護の下で核熱に守られ生きていたのだから。
そしてその光太郎は――


「うわあああああああああああああああ」
「光太郎!?」


――煙の中から弾かれるようにお空の側面を高速で横切って、死国ドームのベンチの中に突っ込んだ。
それを目で追い、ベンチに振り向いたお空だったが……


ガブリッ

「かはッ!?」

次の瞬間にお空の喉元に牙が深々と突き刺さり、喉元から夥しい血が溢れた。
ベンチから這い出た光太郎はそれを見て絶叫をあげる。

「残念だったな。核攻撃耐性は既に手に入れていたのだよ」

ディーヴァは核物質を主食とするムートーを食らった時点で核耐性を手に入れていた。
故にロボライダー同様ほとんど無傷だったのだ。

「では、太陽神の力、いただこうか!」
「さ……さとり様……ア゛ッ」

ディーヴァは獲物を喰らう冷酷な猛獣のように、お空の喉元に突き立てた牙をさらにめり込ませた。
それによってお空の喉にある頚動脈と髄が断ち切られ、お空は即死させた。
死国ドームにて二つの内、一つの太陽が落日を迎えたのだ……


「おくううううううううううううううーーーッ!!」

長く付き合ってきた仲間の死に光太郎は叫ぶ。

「う、旨い! まるで太陽を食べているかの如き暖かさだ!」

逆にディーヴァは今しがた殺したお空の肉体を素手で上半身と下半身に引き裂いて分断し、断面からモリモリと肉と臓物を頬張り、ご満悦な様子だ。
八咫烏の力を持つ少女の味と力はディーヴァをも唸らせていた。


「テラカオス・ディーヴァ……友紀さんだけに関わらず、お空まで……」
「!?」

食事を楽しんでいたディーヴァだったが、その途中で光太郎から言い知れぬ殺気と無視できない力の増大を感じた。
それはもう少しゆっくり楽しむつもりだった八咫烏の食事を、時の狭間を移動する能力を応用して肉の全てを口の中に掻き込まなけらばならないほどに。
光太郎を見ると太陽のような光が彼を包み込んできた。

仲間を殺された残酷な敵への怒り、仲間を守れなかった自分の弱さへの怒りが光太郎の体内にあるキングストーンに新たな力を発揮させたのだ。


「貴様だけは絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!!!」


125 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:03:49 l4pO7rps0



――その時、不思議なことが起こった!



光太郎の体が光に包まれたかと思えば、その光はロボライダーと化していた光太郎の体のつくりを一瞬で変えてしまい、青い仮面ライダーへの変貌を遂げさせたのだ。

「さらに姿が変わっただと?!」
「俺は怒りの王子、バイオライダー!
ディーヴァ! この力でおまえを倒す!!」

仲間の死により新たな力に目覚めた光太郎とディーヴァは互いに構える。
光太郎はもう完全に狂気に染まってしまったテラカオス・ディーヴァの説得は完全に諦めている。
そして手加減どころか120%の力で戦うつもりでなければ勝てない相手だと判断し、全力で殺しにいくつもりだ。

「面白い、新たな力がどれほどのものか見せてもらおうか! ボイスミサイル!!」

手始めにディーヴァは口から音の衝撃波を吐き出し、光太郎に発射する。
光太郎はこの攻撃を避けようとしない。
直感で喰らっても大丈夫だと悟ったのだ。
そしてボイスミサイルが直撃する寸前でバイオライダーは不定形の生きた水のようになり攻撃を躱した。
ついでにゲル化した瞬間、首輪も外れ、これで100%の実力で戦えるようになった。

「体が溶けただと?」
「これがバイオライダーの力! ゲル化能力だ!」

バイオライダーの代名詞的能力であるゲル化能力を発動した光太郎。
ディーヴァは続けて電撃やブレス攻撃で光太郎を撃とうとするが、体がゲルと化した光太郎にはビクともしない。
いかに強力な攻撃を持っていようとも当たらねばどうということはないのだ。

「この!」
「今だ!」

そしてゲル状のまま、光太郎はディーヴァに飛びかかる。
刀でディーヴァは切り払おうするが斬撃ではゲルを斬れる道理もなく、ゲルはディーヴァの肉体にへばりつき、体を完全に拘束した。

「くッ……やる!」
「どうだ! このままおまえを倒してやる!」

身動きの取れないディーヴァは反撃も防御も回避もできない案山子同然だ。
体外からの圧殺、口と鼻を塞いで窒息、体内に侵入しての破壊。あらゆる手段を講じて光太郎は彼女を倒そうとする。

ピキピキ……

「!?」
「己の体をゲル状に変化させる能力には驚いたが……なんということはない。
斬れないほど柔らかいなら、斬れるほど硬くしてしまえば良いだけの話だ」

突如、ディーヴァに触れていたゲルの部分が急速に金属化してしまった!

「俺の体の一部が金属に!?」
「地獄のジャタールの『触れただけで敵をブロンズ像に変える能力だ』!!」

ゲル化した光太郎に対してディーヴァは触れただけで敵をブロンズ像に変える力を使ったのだ。
全身をブロンズにしてしまうと食べられなくなってしまうので滅多に使わなかったが、体を極限まで不定形にできる相手には有効な攻撃手段であった。

「まずい、離れなければ!」
「アハハ、遅い!」
「ぐわッ!!」

全身がブロンズにされてしまうのは危険だと感じた光太郎は急いでディーヴァから離れようとするも、ディーヴァが隙を見逃すハズもなく、ブロンズになった部分だけを狙って切断する。
ディーヴァから脱出しようとした光太郎は無様に転がり、ダメージを受けた影響かバイオライダーからノーマルフォームであるRXに戻った。
さらにRXにはブロンズにされた部分……左腕が肩の付け根から綺麗になくなっていた。

「くッ……」
「諦めろBLACK RX。おまえはVFD以上の強者ではあったが、私には勝てない」

ディーヴァの高い戦闘能力と多彩な技の応酬によって、光太郎は今の今まで彼女にダメージらしいダメージを与えていない。
ブロリーやWゴローといった強マーダー達を簡単に倒し退けてきた仮面ライダーにしてもディーヴァは高い壁であった。

「……諦めるものか。
この世に悪がある限り、仮面ライダーは戦いを諦めはしない!」


126 : 黒く塗れ! 〜希望の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:05:30 l4pO7rps0

だが、正義の戦士である光太郎は立ち上がった。
欲望のままに人を食い散らかすディーヴァは許せなかった。
それだけでなく、ここで逃げたり敗北を認めてしまえば、ディーヴァは仲間達に襲いかかるので、負けるわけにはいかなかったのだ。
体はボロボロでも心の中に正義で燃え上がる太陽がある限り、仮面ライダーは何度だって立ち上がるのだ。

「この輝きは!」
「正義の光だ!」


そのような光太郎の意思に呼応するようにキングストーンは再度輝き出し……



その時不思議なことが起こ





             ザクッ!!





「がッ?!」
「!?」

RXに奇跡をもたらす『不思議なこと』はキャンセルされ、正義の光は立ち消えた。
光太郎の背中からキングストーンのある腹部を貫いた一本の剣によって。

剣を刺した下手人はディーヴァ……ではない。ディーヴァは光太郎の正面にいて、彼女自身も背後から刺された光太郎の姿に面食らっている。
ではいったい誰が?
その答えを知るべく、マスクごしに血反吐を吐きながら光太郎は後ろを振り向く。
すると、目を疑うような者がそこにはいた。











「クライシス皇帝?!」
「今までご苦労だったな、南光太郎。だが、おまえ達とはここまでだ」

光太郎を刺したのはサタンサーベルを持った仮面ライダーオーガ。
仲間だったハズのクライシス皇帝であった……


127 : 黒く塗れ! 〜落日の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:06:35 l4pO7rps0
クライシス皇帝はこのカオスロワ10期で光太郎が初めて出会った仲間にして相棒であった。
高慢だが間抜けな部分もあり、それでいて仲間としては頼もしい男だった。

……だのに、なぜ、クライシス皇帝は仲間である自分を刺しているのか?
光太郎にはすぐには理解できず、混乱する。

しかして答えはすぐにわかることになった。

「光太郎……さん……」
「光、太郎……」
「響子ちゃん、キュゥべえ!?」

医務室から死国から逃げているハズの霧切とキュゥべえが現れた。
……響子は腹から腸を垂れてそれを漏れないように支えながら、キュゥべえは腹に風穴を開けて、息も絶え絶えの様子で。

「これは……どういうことなんだ……?」

信じられない様子で光太郎は尋ねる。その声はどこか恐れで震えていた。

「皇帝は裏切ったのよ……」
「皇帝が……いきなり僕らに斬りかかってきたんだ」

響子とキュゥべえは絞り出すように声を出し、答えを教えた。
医務室は血の惨状であり、六人にいたデカオはほとんどがバラバラ死体となっていた。
それをやったのもクライシス皇帝である。

「嘘だよな……嘘と言ってくれ皇帝!」

響子達から告げられた話を否定するために背後の皇帝に問いただす光太郎。
しかし皇帝の口から返ってきた答えは無慈悲なものであった。

「全て事実だ」
「本当に裏切ったのか!?」

皇帝は次に光太郎から愛刀であるサタンサーベルを引き抜き、蹴って地面に転がす。
そして、もうおまえは仲間ではないと言いたげに彼を足蹴にした。
皇帝の視線は既に光太郎には向いておらず、彼と戦っていたディーヴァに向いていた。

「テラカオス・ディーヴァよ。
おまえの戦闘能力と残酷さこそ、ここにいる誰よりも我が臣下に相応しい」
「……いちおう理由を聞こうか」
「地球全人類を抹殺し、地球に臣民50億人を移住計画にはうってつけの逸材だからだ!」
「なんだと……!」

続けられる皇帝の話をあくまで冷静に聞くディーヴァ、衝撃を受ける光太郎。
彼はクライシス帝国を築き上げた怪魔界の支配者にして帝国の皇帝である。ここまでは光太郎達も知っている。
だがそのクライシス帝国は文明発達の弊害による環境汚染で窮地に立たされていた。(実際は皇帝の失政が原因なのだが)
そのために地球の全人類を抹殺して臣民である怪魔界の住人を日本に移住させる計画を立てていたと言うのだ。
皇帝は殺し合いを打破した後にこの計画を実行する予定だったが、その前にうってつけの逸材を探していた。
先ほどまでは拳王連合軍に目をつけていたが、デカオにより拳王連合軍はあくまで風評被害と誤解の犠牲者であり、彼が考えていたほどの破壊集団ではないことがわかってしまった。
その代わりにテラカオス・ディーヴァは舞い降り、医務室の窓から彼女と光太郎・お空の戦いを眺めていた。
ディーヴァの実力や攻撃性は光太郎達が霞むほどであり、今までの光太郎達との関係を無に帰してでも臣下にしたいと考えたほどであった。

「主催やその裏にいるゴルゴムを倒す……その話も嘘だったのか!?」
「それは嘘ではない。嘘ではないが、ゴルゴムを倒すと言ったのはおまえ達のためではなく、日本支配に邪魔だからというだけの話だ」
「お、おのれ……」
「安心しろ、おまえ達亡き後も裏にいるゴルゴムは必ず倒すよ。我が支配を盤石なものにするためにな!」

光太郎は怒りと悔しさで地面を叩いた。
今まで皇帝と紡いでいきた絆はまやかしだった。
先ほど、皇帝を邪悪と断定し襲いかかってきたハクメンの方が正しかったのだから。
結果として自分達全員が窮地に立たされた。
ハクメンと戦っているであろう弦十郎もきっと悪を庇った者としてハクメンに処断され、無駄死にするだろう。
全ては皇帝の手の中で転がっていたのだ。


128 : 黒く塗れ! 〜落日の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:07:27 l4pO7rps0


「さあ! 私とともに来いテラカオス・ディーヴァ!!
私の臣下になるなら日本の1/5、いや、1/4の支配権を褒美として遣わすぞ!!」

声たかだかにディーヴァを勧誘する皇帝。
もはや、光太郎達など眼中になかった。
彼にはディーヴァがダイヤなら光太郎達は道端の小石同然に思えたのだ。
傲慢で邪悪な暴君は、手を差し出す。
その手を握って握手すればディーヴァは皇帝の臣下になり、暴力と支配の道へ進めるだろう。

そして死に体の光太郎達が見守る中、彼女の答えは――
















        ズドッ!













「ほえ?」
「断る。私が望むのは『支配』ではない。
苦しみに満ちたこの世界からの人々の『解放』だ」

――NOだった。
ついでに皇帝こと仮面ライダーオーガの額に一本の竹刀を突き刺し、引き抜くとそこにストロー口のような穴ができた。
皇帝の手からサタンサーベルがカラリと地面に落ちる。

「貴様の脳汁は美味そうだな」
「な、なにをするれ……はぎゃ!!」

さらに死国のドームに転がっていた鉄パイプを手に取り、そのパイプを皇帝の額にできた穴にぶっ刺した。
そしてストローの要領でディーヴァは中身を吸っていく。

「あっ あっ あっ あっ」

鉄パイプを介して脳みそだけでなく、身体中の肉という肉を吸われていくクライシス皇帝はどんどん痩せていった。
最後には中身が全てなくなって紙のようにペラペラになった仮面ライダーオーガが風に吹かれてお空に飛んでいった。
クライシス皇帝の潰えた野望のように。

「うむ、ちょっと石っぽい味がしたが、ジューシーで芳醇だった」

ストロー代わりに使っていた鉄パイプをその辺に捨てて、ディーヴァは地面に倒れている光太郎の前で屈みこむ。


129 : 黒く塗れ! 〜落日の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:08:03 l4pO7rps0

「さて、正義のヒーローよ。次はおまえだ」
「……ぐッ、クソッ!」

光太郎は苦し紛れに残った片手でディーヴァの貧乳にパンチ放つが、それはあまりにも弱々しく虚しい音だけが鳴っただけであった。

「まだ戦うのか?」
「そうだ正義の意思がある限り、仮面ライダーは決して諦めない……!」

光太郎の眼には闘志はまだ宿っていた。

「正義か……司令から聞いていると思うが、私も風鳴翼だった時は貴様と同じ正義の味方側だったよ……」

ディーヴァは瀕死の光太郎を喰らうのは一瞬でできた。
だが、その前に光太郎と問答を始めた。

「だが、灰を浴びて食人鬼になり、人を喰らい続けて、ぼのぼの……愛する獣を殺されてその肉を喰った時、わかったんだよ。
正義では人は救いきれないと!」
「正義で人を救いきれない? そんなことはない!」
「戯言を抜かすな!
たった一人の悪人に騙され仲間も自分自身でさえ死にかけているのに、正義で人が救えるとまだ現実逃避するつもりか!」
「ぐぬぬ……」
「これまでは貴様の掲げる正義で多くの人が救えたのかもしれないが、それは今までが上手くいきすぎただけのこと。
その程度では私のような実力を大きく上回る者や背後から斬る者が現れれば容易く壊れてしまう」

光太郎は何も言い返せなかった。
事実、クライシス皇帝のせいで仲間の響子達も死にかけている。
もしディーヴァが皇帝の勧誘を受け入れ皇帝を殺さず、主催を打倒した暁には日本に残った人類が皇帝によって抹殺されるのは想像に苦しくない。
全ては皇帝の野望に気づかずに仲間と信じ、連れ回した自分の責任であった。

「しかし、私は違う。
私の中に全てを取り込むことで、全てを一つにし、全ての者を争いのない世界に招くことができるのだからな」
「争いのない世界だと……おまえに喰われた者は皆死んでいるだろ!」
「いや、生きている。
確かに肉体は滅んだが、魂は私の中で生きていて、共存している。
姫川友紀、霊烏路空、そしてクライシス皇帝。その魂は私の腹の中に確かに存在している」
「なんだと……!」

事実、今までディーヴァに食い殺された者は冥府(死者スレ)に行かず、彼女の腹に収まっていた。

「私に喰われた者は皆、浄化される。
悪人のクライシス皇帝の魂も、罪を洗い流されて清潔な魂と生まれ変わり、私という楽園の中で他の魂と共に暮らせるのだ」
「う、嘘だ……」

ディーヴァは自分の腹の中に楽園が広がっていて全ての魂はそこで生きていると信じている。

「既存の正義で何が守れた?
悪人を倒してもまた悪人が出てきて被害を及ぼす……それでは単なる一時しのぎに過ぎない。
そして戦い守るだけの正義では、今の日本に置かれている食糧危機や難民問題を解決できはしない。
主催やマーダーを倒した所で、しがらみは消えることはない。きっと少ない食料や土地を巡って新たな争いが始まるだけだ」
「それは……」
「私はそれを終わりの見えない悲しみを終わらせるためにも、全てを喰って救うのだ。
私の腹の中なら誰も悪意を抱くことなく、格差や民族問題、誤解や風評被害による争いだって消えるのだ。
こんなに素晴らしいことはないだろう? さあ、私に差し出せ。おまえの肉と魂を!」
「誰がおまえなんかに……」

あくまで食人で人を救えると信じるディーヴァ。
それでも光太郎は、例え勝てる道理はないと頭ではわかりながらも、戦いを続けようとした。

「……は」


130 : 黒く塗れ! 〜落日の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:08:38 l4pO7rps0

しかし、光太郎の視界の隅にひと振りの剣が見えた瞬間、彼の闘志が確実に鈍った。
その剣はサタンサーベル。
クライシス皇帝……ではなく、秋月信彦の剣であった。
信彦とは穴兄弟だったが運命は残酷で、信彦はゴルゴムによってシャドームーンに改造されて殺し合う敵同士になってしまった。
ゴルゴムとの決戦の折には最期に彼を死なせてしまう結果となってしまい、RXとなった今でも悔やんでいる。
今考えるとその心の穴をクライシス皇帝に突かれたからこそ、あからさまに怪しいクライシス皇帝と手を組んでしまったのかもしれない。

もし、信彦のような友情を築いた者と殺し合わずに済むならどれほど幸せか。
今後、仮面ライダーとして戦い続けると信彦に限らず、大切な人と望まぬ戦いをさせられる可能性だってあるのではないか?
それが自分だけならまだいい。
だが自分のように強くない人々が、その悲しみに耐えられるのか?
自分ではその全てを救うことはできない。悪を倒しても根絶はできない。
でも、自分を遥かに凌駕するディーヴァだったらどうだ?
と、光太郎は考えてしまった。


「光太郎さん……ダメ……」

瀕死の響子は光太郎に向けて必死に言葉を絞り出す。
テラカオス・ディーヴァの言葉は根拠のない狂人の理論だ。そう言いたいが息も絶え絶えで声が出ない上に、小さすぎて忠告が光太郎の耳に届いていない。
横にいるキュゥべえは皇帝が殺された前後に沈黙して動かなくなってしまった。死んだのだろうか?

そんな響子の忠告も虚しく。


「……俺の敗けだ。テラカオス・ディーヴァ」


光太郎は敗北宣言をした。
クライシス皇帝の裏切りと、それを防げなかった己の失態。
そして仲間を守りきれなかった己の無力さから、自分がもうぶっちぎれないことを悟ってしまったのだ。
心の中にある正義で燃え上がる太陽はもう輝かない。

「よろしい。
その黒い太陽。感謝を込めて い た だ き ま す」

光太郎の返答を聞いたテラカオス・ディーヴァは彼に笑顔を向けた後に、光太郎を喰らい出した。

「あああ……ああ……!」

霧切は光太郎の死の瞬間を見てしまった。
食事は一瞬で終わったが、その一瞬の中でBLACK RXのスーツが消え、その下の怪人体が消え、肉が消え、血が消え、骨が消え、最後には血のついたマスクを残して全てが消えた。
正義の黒い太陽が、混沌の歌姫に全て飲み込まれたのだ。


「アハハハハハハハハハハ、クァハクァハクァハクァハ!
なんだこの味は! 今まで食らった中でも最っ高じゃないか!
あまりに旨すぎて味わって喰うつもりが一瞬で平らげてしまったぞ!」

死国ドームに木霊するはディーヴァの高笑い。
光太郎の肉は今まで食べた中でも極上だったのか、笑顔が止まらない。
さらに彼女の貧相な胸の間にはBLACKの象徴であったキングストーンが生えていた。


131 : 黒く塗れ! 〜落日の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:09:16 l4pO7rps0

「ふう、さて」
「ひっ!」

歯を血で汚した笑顔のまま、ディーヴァはグルリと首を向ける。
歌姫と響子の眼が合った。
その瞬間、響子の体が確実に震え上がっていた。

「こ、このままでも私はもうじき死ぬ……み、見逃しても害はないわよ」
「いや、一人ぼっちは可愛そうだ。
確かに光太郎ほど味は期待できなさそうだが、このまま死なせて放置すると死体が腐って『救済』できなくなってしまう。だから救ってあげよう」
「や、やめ……」
「大丈夫だ。痛みは一瞬で済ますからね」

ディーヴァは最後に響子とキュゥべえまでも喰らおうとし、両の手で動けない一人と一匹の首根っこを掴む。

響子は今までの殺し合いで恐怖をそれほど感じたことはなかった。
光太郎などの理不尽級の強者が一行に集っていたこともあるが、元々芯の強い子だったからに違いない。
しかし、その心の芯も仲間達がいとも容易く殺されてしまったことに折れかけていた。
その証拠に響子は失禁し、ドームの土を腹から漏れる血とは違った液体で汚していた。

あ〜ん、と自分に迫るディーヴァの口。
そこから見える闇……否、混沌にいつものクールさを忘れて目を見開き恐怖していた。
ただ殺されて死ぬよりも、この女に食われて死ぬ方が遥かに怖いを思うほどに。

「い、嫌だ! あなたにだけは……」

モツが飛び出て、大量出血でろくに動かず冷たくなっていく体。
もう口を動かすだけでも億劫だったが、響子は最後の力を振り絞って叫んだ。


「私! あなたにだけは絶対に殺されたくない!!!」
















「けいや、く……成立だ」


132 : 黒く塗れ! 〜落日の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:10:00 l4pO7rps0



響子の魂からの叫び、死んでいた思われていたキュゥべえの言葉が合わさった瞬間――不思議なことが起こった。
眩い光が響子に発生したかと思えば、ディーヴァは謎の力によって響子達を腕から離してしまった。
更に光はディーヴァを押しのけてるように、どんどん響子達から引き離していく。

「なんだこの光は!?」

光は光太郎すら簡単に倒したディーヴァの力をものともせず、彼女の体が死国から離れていった。

「うおわああああああああああああああああああああ!!」

最後に物凄い力に押し出され、ディーヴァは死国はおろか大阪、更には四国すら超え、海の彼方まで消えていった……


ディーヴァがいなくなると同時に光が消え、死国ドームは静寂が支配した。
それからしばらくした後、血まみれの医務室から少年が現れた。

「今のはなんだ!?」

デカオである。
ほとんどが裏切ったクライシス皇帝によってバラバラにされた彼らだったが、約一名だけボロボロではあったが、気絶していただけで急所は外れていたので死なずに済んだ。

「響子ちゃん、キュゥべえ、一体何が……」

彼は気絶していたため、状況がわからなかった。
まずは状況を知るために気を失っている響子とキュゥべえを起こそうとするデカオだった。
光太郎やお空、裏切った皇帝や自分達を食べようとした貧乳までいなくなったのが気になるが、とにかく周辺の空気からして安全になった気はする。

「あれ傷が治っている?」

キュゥべえは腹に風穴が開いたままだったが、腹から腸を出すほどの致命傷を負っていた響子は完全に治っていた。
デカオは知るよしもないが魔法少女として肉体改造される際に、修復されたのであろう。

「何が何だかわからないけど、とにかく医務室へ」
「待て!!」
「なんだ?」

響子達を医務室へ運ぼうとしたデカオの前に、ドームの出入り口からバイクに乗った、ルビーのようなマスクをした仮面ライダーが突如、現れた。
仮面ライダーウィザード・苗木誠である。

「その娘は霧切さん!?」
「響子ちゃんの知り合いか、助かった……手を貸してく」
「おまえは確か……拳王連合軍の大山デカオだな!」
「はい?」

現れた苗木の言葉には、怒りがこもっていた。
そして、苗木は有無を言わさず銃をデカオの腹に向け、その大きな腹に銃弾を撃ち込んだ。

「がはっ……! ま、待ってくれ、俺は殺し合いに乗っていない」
「それは違うよ!!
他の県に飽き足らず、僕らのいた京都まで滅ぼした拳王連合軍の手先は死ね、死んでしまえ!!」

苗木は拳王連合軍を憎んでいた。
彼もまたディーヴァや光太郎と同じく、死国から放たれたチサオ砲で京都が消滅する瞬間を見ていた。
京都と言えば彼の所属するホワイトベース組が停泊していた場所であり、縁がある場所である。

そこを、拳王連合軍はホワイトベース組を匿った件として報復のために滅ぼしたのだ。
罪のない参加者も多くいただろう京都の消滅に苗木は拳王連合軍への強い憎しみを募らせていた。
死国にはなぜかデカオしか残っていなかったが、ならばそのデカオが砲撃を行ったのだろうと苗木は解釈した。
それが憎しみで目を曇らせたが故の間違った解釈であることに気づかず、デカオを殺そうとする。

「くそう、こうなりゃ分裂で……」
「させるか!!」

分裂術で増えることで抵抗しようとしたデカオに対し、苗木は彼の腹を蹴り、医務室まで一気にノックバックさせた。

「うわあ!!」
「トドメだ!!」
『シューティングストライク! 火ッ火ッヒーッ!!』

苗木は魔法による火炎放射で医務室ごとデカオを炎上させた。

「熱、斗……」

豪炎の前にデカオの分裂も間に合わず、医務室に残っているデカオの死体も全て焼かれ、デカオはひとり残らず全滅した。


133 : 黒く塗れ! 〜落日の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:10:43 l4pO7rps0

「……霧切さん!」

ゴミでもみるような目で敵だと思っていた少年を焼き殺した苗木は急いで気絶している霧切の下に走り声をかけた。
実は苗木は死国が京都を滅ぼしたからわざわざ敵地である死国に乗り込んだわけではなく、風に飛ばされてきた霧切の書置きを偶然見つけたのだ。
そこには「死国へ向かいます 霧切」とだけ書かれていた。
死国は危険な場所であり、苗木一人で向かうには無謀とも言えたが、希望ヶ峰学園のクラスメイトを見捨てるわけにはいかなかった。
大阪の街には直感的に嗅ぐとヤバそうな花(フロワロ)が生えていたので、苗木は手近なマンホールを開けて気絶している葉隠と矢車を地下に隠し、ひとり霧切救出のためにバイクを走らせてきたのである。
彼が死国に到着したのは光太郎とディーヴァとの決着が着いた直後であり、死国はなぜかほぼ無人だったが、それにより想定していた戦闘もなく無傷で死国ドームに到着し、今に至る。

霧切を見ると見慣れない宝石を手にもち、加えてロリ化していたが、あえてつっこまないようにする。カオスロワの中で色々あったんだろう。
とにもかくにも霧切が無傷だったことに苗木は安堵する。
問題は……横にいる猫だか兎だかわからない生き物だ。

「……やあ、君は誰だい?」

動物が喋ったことには苗木は今更驚かない。大事なのは敵か味方かだ。

「僕は苗木誠、霧切さんのクラスメイトだ。君は?」
「僕はキュゥべえ。響子の仲間さ」
「彼女の仲間なら助けなければ……待っててくれ、霧切さんと一緒に今ここから連れ出すよ」

霧切の仲間なら助けねばと、苗木は響子をバイクの後部座席に乗せて体から離れないように紐で縛り、フロワロの花粉を吸わないように適当な布で口と鼻を巻く。
キュゥべえはディパックに入れて、死国からの出る準備をする。

「……響子の願いのおかげで奴はここからいなくなったみたいだね」
「霧切さんの願い? 奴? なんのことだ?」

キュゥべえのつぶやきに苗木は首を傾げるが、疑問が形になる前に、突如死国の各所が爆発した。

「な、なんだあ?」
「僕らが来る前にこの空母の船体はかなり傷ついていた。
それに加えてさっきまでの戦闘……船が耐久性が限界を迎えて連鎖的に崩壊しだしてるんだ」

ラーメンマンらホワイトベース組の潜入班による破壊工作や、ガチレズの暴走、そしてディーヴァの襲来によって死国はとうとう限界を迎えたのだ。

「事情は後で説明するから今は脱出を!」
「わかった!」

キュゥべえに催促され、苗木はバイクで崩壊する死国から脱出する。
幸い、希望ヶ峰学園でパンツを交換するほどの仲になった大親友・大和田によるバイクの手ほどきが活かされ、苗木は死国から無事に脱出し、港に降り立った。
背後では爆発炎上し、海に沈んでいく死国の姿が見えた。


「これから僕はどうするべきなんだ……」

苗木は途方に暮れる。
ホワイトベース組の仲間はほとんど死んでしまった。
熱斗組に挑んだホワイトベースも落とされて十神や乾達の生存も絶望的。
ラーメンマンとジョンスは放送で呼ばれていないので生きてるかもしれないが、いるべき死国にはいなかった。

「いや、僕がしっかりしなくてどうする。霧切さんや葉隠くんを僕が守らなくちゃ!」

苗木は自分の中にある不安を責任感で払拭し、立ち上がろうとする。
ホワイトベース組は拳王連合軍に負けたが、それで終わりじゃないハズだ。
死んだ者に変わって自分が戦えない人々を守らねばと強く誓うのだった。

まずは気を失っている霧切とキュゥべえを葉隠のいる地下まで送り届けようとする。
キュゥべえに至っては早急な治療が必要だろうと思いつつ。
希望を捨てずに苗木はバイクを走らせた。


だが彼の手にしたのは本当に希望だったのか?
霧切は魔女化のリスクがある魔法少女となり、そのソウルジェムは彼女の抱く混沌の歌姫への恐怖で既に半分も穢れを溜め込んでいた……

















一方、その頃、沖縄では。


134 : 黒く塗れ! 〜落日の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:14:42 l4pO7rps0

「なるほど……結界か」

テラカオス・ディーヴァは浜辺にちょこんと座っていた。
響子の願いは『テラカオス・ディーヴァにだけは殺されたくない』だった。
死の間際にそれを願ったことでキュゥべえとの契約が成立し、響子はとうとう魔法少女になった。
更に願いが叶えられたことによってテラカオス・ディーヴァだけを阻む結界が彼女の周囲に生み出されたのだ。
それによってディーヴァは沖縄まで一気に押し出されてしまったのである。

「かなり強力で広大な結界だな。今の私のエントロピーではあそこに侵入はできまい」

周囲と言ってもそれは大阪どころか近畿地方をスッポリ覆うほどの広大な結界である。
さらに侵入だけでなく、攻撃も通らないだろうとディーヴァは推察する。
ワルプルギスの夜を一撃で葬れる上、概念と貸せるまどかほどではないが、響子も絶大な才能(エントロピー)を秘めていた。
そして響子はディーヴァ限定のプチ概念を生み出したのだ。


「はあ……拳王連合軍を追うつもりが結局遠回りだ。世の中上手くいかないものだな」

半ばアクシデントもあったとはいえ、彼女は寄り道をしてしまい、大阪から移動したらしい拳王連合軍との距離も大幅に離れてしまったことに溜息をつく。

「とはいえ収穫は大きい、八咫烏に怪魔界の力は二つの意味でおいしいぞ!」

されど見返りも大きかった。
霊烏路空の強大な核熱の力とクライシス皇帝の強大な闇の力を手に入れた。
これによって核・闇耐性が進化し、無効化できるに留まらず、吸収さえできるようになった。
闇属性と核による攻撃は彼女にとって攻撃ではなく餌である。

「何より一番大きいのはこれだな」

ディーヴァはキングストーンと貧乳の目立つ胸を叩く。

「この石は時間が経つ度に私に力を与えてくれるのがわかる。
空腹感はそのままだが、いつかはあの結界も破れるだろう」

キングストーンは徐々にではあるが、捕食していないにも関わらずディーヴァに力を与えていた。
自分の中のエントロピーが増大してくるのがわかる。
そのエントロピーはいつかは霧切のそれを凌駕し、結界を打ち破れるようになるだろう。

「さて、新たな力も手に入れたし今度こそ逃がさないぞ拳王連合軍!」

沖縄からでもシグナムの残香を纏った拳王連合軍の位置はわかる。
今度こそ逃すまいと浜辺から立ち上がり翼を広げ、追いかけようとした。

「おっと、良い剣だし、これも持っていくか」

出発前に浜辺に刺さっていた王の剣、サタンサーベルを拾う。
どうやらディーヴァと一緒に巻き添えでここまで飛んできたらしい。
厨二心をくすぐるデザインに強い力を感じた剣をありがたく使わせてもらおうとディーヴァは思う。

「おや? これはなんだ?」

余談だが浜辺に飛んできたのはディーヴァとサタンサーベルだけではない。
一つの書物も一緒に飛ばされてきたのだ。


「『救済の予言書』?」


135 : 黒く塗れ! 〜落日の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:15:37 l4pO7rps0



【二日目・12時30分/大阪府 轟沈した死国の外・港】

【苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、ウィザードに変身中
【装備】ウィザードライバー@仮面ライダーウィザード、マシンウィンガー@仮面ライダーウィザード、専用の指輪一式
【道具】支給品一式、通信機
【思考】基本:対主催
0:一先ず、 霧切さんとキュゥべえの保護。葉隠くんと男の人のいる地下へ向かう
1:まだ生きているホワイトベース組の仲間と合流したい
2:これから僕らはどうすればいいんだ……
3:霧切さんがロリ化していた件は今は無視
※ラーメンマン、ジョンスの死に気づいていません


【霧切響子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ロリ切さん、ディーヴァへの恐怖心(特大)、魔法少女化、ソウルジェムの汚れ(50%)、気絶中
【装備】様々な資料
【道具】支給品一式、沢山の光彦関連のスイッチ、ノートパソコン、祐一郎の記憶を内包したブラックボックス、その他不明
【思考】基本:テラカオス・ディーヴァにだけは殺されたくない
0:気絶中
※まどかには及ばないものの強力な魔法少女になり、肉体・戦闘力が大幅に強化されました
 クライシス皇帝から受けたダメージも回復しています
※テラカオス・ディーヴァに殺されたくないと願った結果、ディーヴァ限定で侵入できない結界が張られました(広さは近畿地方全体がスッポリ収まる程)
 ただし霧切が死亡・魔女化した場合は結界が消滅し、ディーヴァが捕食などで霧切のエントロピーを上回ったりしても結界は破られます


【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ(特大)、他の個体が全滅
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】基本:女性参加者全員を魔法少女にする(ディーヴァは例外)
0:身を守るために苗木に保護してもらう
1:ディーヴァ……あれはいったいなんだったんだ?
2:念願の霧切響子と契約できたが……
3:必ず鹿目まどかとも契約してみせる
4:母星と連絡出来るまでは生き残る
※気絶していたのでデカオが苗木に殺される瞬間を見ていません


【姫川友紀@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【霊烏路空@東方Project】
【クライシス皇帝@仮面ライダーBLACKRX】
【南光太郎@仮面ライダーBLACK】 以上四名全員完全捕食・死亡


【ネオ・クライシス帝国】 消滅


【大山デカオ@ロックマンエグゼ】 全滅により分裂ができず、これ以降登場不可。支給品扱いなので放送で呼ばれず、苗木のキルスコアも増えません。

※死国は完全に轟沈しました

【二日目・12時30分/大阪府 市街地外地下】

【矢車想@仮面ライダーカブト】
【状態】気絶中、 ダメージ(大)
【装備】ライダーベルト&ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
0:…………
1:光太郎、空を地獄兄弟の弟、妹にする
2:上記のために、光太郎たちについていく。(率先して戦うつもりはない)


【葉隠康比呂@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ダメージ(大)、疲労(小) 、気絶
【装備】ビーストドライバー@仮面ライダーウィザード、専用の指輪一式
【道具】支給品一式
【思考】基本:生存優先・対主催(対主催をすれば生き残ると占いで出たので)
0:気絶中

※二人共地下に隠されているため、大阪府に咲いたフロワロの毒素の影響を受けません


136 : 黒く塗れ! 〜落日の太陽〜 :2016/11/09(水) 18:16:04 l4pO7rps0



【二日目・12時30分/沖縄県】

【テラカオス・ディーヴァ@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】健康、首輪解除、救世者としての自覚、厨二病、火水土風木電聖耐性(強)、薬物耐性(弱)、闇核属性吸収、嗅覚と聴覚、肉体強化、有翼、キングストーンにより徐々に能力向上
【装備】シンフォギア・天羽々斬?(異常に禍々しく変化)@戦姫絶唱シンフォギア?、キングストーン、サタンサーベル
【道具】支給品一式 、スマホ、ストロング・ザ・武道の竹刀、予言の書(本物)
【思考】基本:世界をカオスにする
0:予言の書? なんだこれは?
1:拳王軍を追跡し、救う(喰らう)
2:この宇宙から全ての者を救い尽くす(喰い尽くす)
3:攻撃力だけでなく、脆い肉体を強化できる者(ダオス等)を喰い、より高みに至りたい
4:何故皆救済を拒む? まるで意味が分からんぞ?
5:私はまだまだ弱い、もっともっと強くならねば……!
6:高いエントロピーを持つ霧切はいつか救いたい(喰いたい)
※風鳴翼・佐村ガウスフレミング02・天海春香・はるかさんの能力を継承しました
※テラカオスとしては未完成のため、テラカオスバトルロワイアル十周目の死者の能力は現在使用不能、進化すれば使えるようになるかもしれません
※風鳴翼の容姿や人格を色濃く受け継いでいます、ただし、進化するにつれて失われる可能性があります
※ダルメシマンの人間の1京倍の嗅覚、ゼブラの聴覚と音操作能力を特に強く継承しました
※02氏の書き手としての能力を消失しました
※テラカオス候補者の一人である多木を食らった結果として力が大幅に増しています
※ニアラ×7及びVFDより、真竜の強靭な牙及び強烈な捕食衝動を色濃く継承しました。
 これにより、空腹時は乗り物デザイン等の厨二病よりも捕食願望が優先されます。
※同じく真竜より、毒花フロワロ散布能力を継承&発動させました。現状関西及びディーヴァが向かう先に散布されています
※VFDを喰いましたが、ニアラ×7では他の真竜全ての代わりにはならないため第七真竜にまでは至っていません
※ジョンス及びラーメンマンより、多数の戦闘技術を継承しました
※キングストーンによって徐々に能力が向上しています(ただし空腹は収まりません)
 時間が経てば、霧切の張った結界も破れます


137 : 名無しさん :2016/11/09(水) 18:17:07 l4pO7rps0
投☆下☆終☆了
途中で操作ミスで多重書き込みしてごめん


138 : 名無しさん :2016/11/23(水) 20:52:58 L.JJOX1I0
wikiの項目更新乙
壊滅したクライシス帝国御一行の内容を読むとユッキが変な真似をしなけりゃ貧乳にスルーされて、てつをやお空も死なず、皇帝も裏切らなかったよなこれ・・・・・・


139 : 名無しさん :2016/11/23(水) 23:34:00 plvzmYsU0
そしてユッキが余計なことしなきゃ京都も滅ばなかったし、苗木が荒ぶることもなかったわけで…
さらに言えばハクメン他の貧乳を抑えこめそうな参加者も核吸収と核攻撃は流石にきついだろうしで、行動理由もアレだし、全対主催から恨まれても文句言えないレベル


140 : 名無しさん :2016/12/17(土) 19:25:01 Y7cKx6.U0
投下します


141 : 英雄故事 :2016/12/17(土) 19:25:55 Y7cKx6.U0

 風を斬る拳。
 力強く握られた拳は空気を裂く。
 誰よりも強い男の拳。
 KIを纏った拳で、真っ直ぐ一直線に向かっていく。

 風鳴弦十郎は屈強の漢だ。 
 
 その強さは肉体だけではない、
 その精神力も強い。
 絶対的強者にも決して屈したりしない強さを持っている。
 
 しかし、それだけでは届かない。
 強き肉体を持っていても……。
 強き技を持っていても……。
 強き精神を持っていても……。

 目の前の白き侍に、その拳が届くことはなかった。

「……諦めが悪いな……」
「悪いな、それが俺の性分でな!
 けどよ、そんな俺でもな、足止めくらいは出来るさッ!」
 
 HAKKEIを用いて、防御は出来ている。
 ハクメンの攻撃は防げている。
 今は届かない攻撃ならば全部を防御に振る。

 幸いハクメンには弦十郎に対して殺意がない。
 それは完全に舐められていると言っても過言ではない。
 それくらい出来る力量差があることは認めざるを得ない。

 もし殺意があった場合。
 きっとただではすまなかっただろう。

 人と人の理の外の者。
 どれくらいの時間が経ったか、戦っている当人にはわからない。

(やべぇな……勝てる気がしねぇッ!)

 諦めなければ勝機はいつか来る。
 だが、それはアニメや漫画などの話だ。
 ヒーローはいつだってやって来る。
 しかし、今は来ない。

 両手にKIを込めて、全力で鳴神の斬撃を受け流す。
 所謂、武術でいうところの『化勁』呼ばれる行為。
 全神経を攻撃を流すことだけに集中する。
 
「オラァ!!」

 攻撃を流して、素早く反撃に移ろうとするが。
 
 だが、届かない。
 物理による外部破壊も。
 気功による内部破壊も。

 一刀のもとに薙ぎ払われる。
 
(時間は十分に稼げた……はずだッ!)
 
 自分ではこれで精一杯。
 もう体力が持たない。
 息が上がり始めた。
 それでも自分の四肢に空気を送り続ける。 
 
 少しでも止まってしまえば、確実に取られる。
 だからこそ動き続ける。

 全神経をハクメンを止めることだけに集中させる。


142 : 英雄故事 :2016/12/17(土) 19:26:38 Y7cKx6.U0

 一方の目の前の白い侍は。
 最初と何も変わらない。

「……貴様、それ以上やれば死ぬぞ?」
「構わねぇ……ッ!」

 それは常人でも感じ取れるレベルの重圧。
 いや、重圧(プレッシャー)などという生易しいものではない。
 人間の本能を直接刺してくるような鋭い〝圧”がある。

「…………………」

 無駄な言葉はいらない。必要ない。
 だが、その僅かな言葉で弦十郎は気づいてしまった。
 己の肉体の限界は確実に近づいてることを。

 大きく息を吸い込む。
 次の一撃が確実に

『目指すは常に……敵の正面』

 八極拳士のようにはいかない。
 あくまで自分が使うのは自己流の拳法。
 趣味の映画を見て覚えた。

 八極とは『大爆発』の意である。

 弦十郎の震脚でコンクリートに小さなクレーターが出来る。
 そこから身体を反転させて、背中からおもいっきりぶち当たる。

 所謂、靠撃(こうげき)。

 その中でも特に有名な【貼山靠】。

 別名【鉄山靠】。

 その一撃は敵の防御の上から吹っ飛ばせるだろう。
 さらにOTONAの持つ謎身体能力ならば、その威力は言うまでもない。
 もしかしたら不動の山すら動かすかもしれない。

 だが、それは……

「『虚空陣奥義』…………」 

 相手がまともな者であったらの場合だけである。

 ハクメンはドライブ能力『斬神』で受ける。
 そして、当然のように当身からの発動。
 

「――――――『悪滅』」


 雷撃。
 間桐雁夜に放った『悪滅』ではない。
 アストラルヒートではない方の『悪滅』。
 BLAZBLUE REVOLUTION REBURNING版の方の『悪滅』である。
 
 周囲に響く雷鳴。
 謎の雷がハクメンの周囲に発生し、ほぼランダムに落ちていく。
 どういう原理で発生しているのか、さっぱり分からない。
 
 
「……終いだ、強き人間よ」


 大阪の市街地はボロボロだった。
 今までの戦闘で壊れなかったのがおかしかった。
 だが、今の戦闘で確実に街の耐久度の限界を超えた。

 その今にも崩壊しそうな街でハクメンは鞘に鳴神を納めて佇む。

(『凶』の気配が一つ消え、一つはどこかに飛ばされた……といった所か?)
 
 残った拳王軍は東に向かった。
 シグナムという女が死者スレを破壊したという。
 ならば、恐らくは拳王軍に同行するかもしれないが……まだわからない。
 
 だが、行く方向は『東』と同じだ。


143 : 英雄故事 :2016/12/17(土) 19:28:04 Y7cKx6.U0

(行くか……)

 強者同士は惹かれあう。
 ならば、もうここには用はない。

 ハクメンが歩を進めるは『東』。
 だが、ゆっくりはしていられない。
 














「…………待、ち、な」
「…………!」














 男はボロボロになりながらも立ち上がった。
 だが、かなりの時間休めば、OTONAの回復力なら生き残ることはダメージ量だ。
 それでも 男は立ち上がった。

「何故、立ち上がった?」
「……意、地があんだろうよッ! 大人にはッッ!!」
「…………意地か」

 男の着ていた服の一部は焼け焦げている。
 
 男はどんな逆境でも屈しなかった。
 男はどんな状況でも弱音を吐かなかった。
 男のその姿はまさに不撓。
 
 ハクメンは弦十郎を『倒すこと』は出来ても『勝つこと』は出来ないであろう。
 『負けること』はないが『勝つこと』もできない。
 
「さぁ……続けよう、じゃ、ねぇか……ッ!」
「…………いいだろう」

 ハクメンは構える。
 弦十郎も構える。

 両者構えて、大きく息を吐く。

 果たして先に動くのはどちらになるのか?

 その緊張感と疲れからか、不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。

「……ぬかった」

 否、黒塗りの高級車に追突したのではない。

「やりましたね、井之頭さん!」
「ええ。由良さん!」

 いや、それも不幸などではない。 
 マーダーコンビであるWゴローが完全に隙を狙っていた。

 真剣勝負? これ殺し合いだよ?
 馬鹿なの、死ぬの? つうか死ね。
 それくらいの勢いで突っ込んできた。


144 : 英雄故事 :2016/12/17(土) 19:28:55 Y7cKx6.U0

 弦十郎は吹っ飛ばされた。
 いつもの彼だったら発勁なりなんなりで止めたりも出来ただろう。
 だが、出来なかった。させてもらえなかった。

 一方のハクメンは……

「これで一気に二人も倒せましたね!」
「ええ。この調子でいけば……」



「残念だが、貴様らにその先はない」



「「!?」」

 高級外車の車体の上に白い侍が立っていた。
 言うまでもなく、殺気をガンガンにだして立っていた。

「ズェェェアッッ!!!」

 そして、次の刹那には……。
 黒塗りの高級外車は真っ二つに斬られた。
 ギャグマンガだったら、真っ二つになって止まる。
 だが、そんなことは起きない。

 黒塗りの高級外車は二人を乗せたまま炎上した。
 慈悲などない。 

「行くか……」

 今度こそハクメンは駆け出した。
 大阪を背にし、向かう先は東の都『東京』。
 

【二日目・12時30分/大阪府・街外れ】

【ハクメン@BLAZBLUE】
【状態】ダメージ(小)、unlimitedモード
【装備】斬魔・鳴神
【道具】支給品一式
【思考】基本:『ユウキ=テルミ』及び『悪』を全て滅する
0:東京に向かう
1:主催及び世界に災いをもたらす者を『刈り取る』
2:風鳴翼は滅する
※unlimitedモードに入りました


【井之頭五郎@孤独のグルメ 死亡確認】
【由良吾郎@仮面ライダー龍騎 死亡確認】


 ……

 …………

 ………………


 OTONAは生きていた。
 まさに命からがら、食いしばっていた。
 寸でのところで急所を外し、受け身を取った。
 

『生きるのを諦めるなッ!』


 かつて「ガングニール」適合者が今の「ガングニール」適合者に言った言葉である。
 
 男もまた諦めなかった。
 どんなに意地汚かろうが、生きることだけは諦めなかった。
  
 この身が1ミリでも動く限り、彼は戦い続けるであろう。

 だが、今は……そんな彼を少しは休ませてあげたい。

【風鳴弦十郎@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】ダメージ(極大)、疲労(極大)、気絶
【装備】
【道具】支給品一式
【思考】基本:殺し合いの否定
0:…………
1:翼に会うために大阪で待つ
2:戦えない者(主にKODOMO)たちの保護
3:拳王連合軍は許さない


145 : 英雄故事 :2016/12/17(土) 19:29:22 Y7cKx6.U0




 一方、Wゴローが持っていた残ったデイバックは燃えずに残った。
 たっくん? ああ、生きてるよ。

 独力じゃデイバックから出られないけどな!

【乾巧@仮面ライダー555】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、気絶、首輪なし
【装備】なし
【道具】支給品一式、その他不明、ファイズギア(ベルト故障)、通信機
【思考】基本:殺し合いを止める
1:市街地に残っている拳王連合軍を倒しにいく
2:ホワイトベース組の仲間を守る
※支給品だったので首輪はありません。
※支給品だったのでデイバックの中に入ることができます


146 : 名無しさん :2016/12/17(土) 19:29:59 Y7cKx6.U0
投下終了です。


147 : 名無しさん :2016/12/18(日) 12:32:13 NA00/U7kO
投下乙!
他期に比べても外道さの目立ったWゴローにも鉄槌が下ったか
瀕死寸前までハクメンと戦ったOTONAは頑張った方だけど、皇帝が裏切った上に守ろうとした集団は壊滅状態と知ったらどうなることやら・・・
あと、たっくん


148 : 名無しさん :2016/12/18(日) 12:47:41 NA00/U7kO
波乱の大阪乱戦もこれで終了やな
しかし

特務機関員×4名+協力するネットナビ1名(全滅)
Wゴロー×2名(全滅)
裏切りガチレズコンビ×2名(全滅)

拳王連合軍×11名+デカオ(半壊)
ホワイトベース組×16名(ほぼ全滅)
ネオ・クライシス帝国×4名(壊滅)

対主催の方がマーダーや対主催に比べて被害が倍以上も大きい件


149 : 名無しさん :2016/12/19(月) 00:28:07 UTu9Z05o0
これで西の争いはほぼ集結、沖縄の貧乳を除くと残るは東だけど…

聖帝連合→鉤爪団と交戦、きらりんロボ含め半壊状態。きらり暴走の危険あり
都庁連合→マーラ様との戦いで死傷者続出。FOEもアルルーナで打ち止めの壊滅状態
イチロー&ドラゴンズ→サーシェスや師匠との戦いで半壊状態。テラカオスの存在には気がつけた?
なのは組→位置的に都庁は目の前?ユーノが貞操の危機
血盟軍→事実上崩壊。誤解から都庁と敵対した挙句ベジータが危険なことに

こっちも対主催ダメージの方がでかいな…


150 : 名無しさん :2016/12/19(月) 20:06:26 hnSFTjvgO
ホワイトベース組、主任組、警察組、ネオ・クライシス帝国他etc
次々とグループが壊滅しているな


151 : 2017年迎えたので投下 :2017/01/06(金) 20:30:08 EuXjAJjU0
ここは九州ロボ内部。新・主催者の安倍は主催者としてあるまじき事を思いついた。

「さらなる強化の為にそこら辺の参加者を取りこみましょう」

しかし、埼玉県では大規模な戦闘が行われており、現状の安倍では巻き込まれての死亡もありうるだろう。
ということで安倍は茨城県に移動。モブ参加者を大量に捕食したが、モブでは物足りない。
安倍は千葉県に移動し、九州ロボから地上を眺めていた。

すると星形の飛行物体に乗った怪人を見つけた。

安倍は砲撃を行った。
墜落させ、その後とどめを刺して捕食するつもりだった。

「うぉ!?」

が、砲撃の威力が強すぎた。
怪人は地面に叩きつけられ、ミンチと化した。

【乃木怜治@仮面ライダーカブト 死亡確認】
死因:砲弾が直撃し、墜落死

「やりすぎてしまいました…」

仕方なく安倍は彼のデイパックを漁り、テラカオスの波動を発する触手髭を見つけた。僥倖!
触手髭はサーシェスのものだろう。安倍は躊躇せずにそれを取りこんだ。

「強化もしたし九州ロボの掌握作業を再開しましょう」
九州ロボに戻った安倍は重要なフォルダを探った所、あるフォルダにたどり着いた。

「…異様にプロテクトの固いフォルダがありますね…」
画面には、"Project Terachaos"というフォルダが映し出されていた。

【二日目・12時30分/日本・千葉県上空 九州ロボ内部】

【安倍晋三@TCBR1】
【状態】四条化、首輪なし、火水土風木電聖闇耐性(強)
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:バトルロワイアルを続ける
1:九州ロボを完全掌握する
2:ダース・ベイダーやジャック・Oなどの旧主催陣を全滅させる
※主催を乗っ取りました
※旧主催陣を憎んでいます
※風鳴翼の能力を継承しました
※サーシェスの能力を継承しました
※ナノマシンが自壊しても生き残る可能性があります
※テラカオス化はしてますが、大災害の真相には気づいていません
※五大幹部によるテラカオスを使った救済計画(プロジェクト・テラカオス)の存在を知りましたが、中身は知りません


152 : 名無しさん :2017/01/06(金) 20:30:42 EuXjAJjU0
投下終了しました


153 : 謝肉祭 :2017/02/12(日) 16:30:56 Sq83TM1I0
ここは都庁にほど近い、東京都のどこか。

そこには超人血盟軍のリーダーにして最後の生き残りである、キン肉マンソルジャーことキン肉アタルと、妻に死に絶望し完全にヘタレと化したベジータ王子がいた。
時間は影薄組及び都庁同盟軍と決別してからさほど経っていない。
とにかく敵対してしまった都庁から少しでも遠くへ離れることと、ベジータを正気に戻すために安全地帯を探す必要があった。

「「SATUGAIセヨ! SATUGAIセヨ!」」
「くっ……DMC狂信者か!」
「ブルマ……ブルマ……」

しかし、アタルたちは都庁から離れたところでモブ狂信者たちと出くわし、囲まれてしまう。
都庁の支配区域の狂信者は全滅したが、その外側にはぐるっと包囲するように狂信者たちが配備されているのだ。
相手はモブなのでアタル兄さんの戦闘力と冷静で的確な判断力なら簡単に倒すことはできるものの、モブ狂信者はほぼ無限湧き、そして騒ぎを聞きつけた戦闘力の高いネームドエネミーこと指揮官級の狂信者に当たってしまえば結果はわからない。
今のベジータはまったく戦力にならず、仲間である以上は守らねばならない以上、守りながら戦う羽目になる。
そうなればアタルと言えどジリ貧であり、ベジータごとやられてしまう可能性が高い。

(引き返すか? いや、後ろには敵対してしまった都庁の者たちがいて退けない!
どうすれば良い……?! 考えるんだ、冷静で的確に!)
「「SATUGAIセヨーーー!!」」
「くっ!!」

前門の狂信者、後門の都庁……どこへ進み、どう戦い、どう逃げるか考えるアタルだったが、彼が判断を待たずにモブ狂信者は一斉に攻撃を仕掛ける。

だが、モブ狂信者たちの攻撃がアタルとベジータに届くことはなかった。

「ジャイアントスイング!」
「地獄のシンフォニー!」
「螺旋懐体搾り!」
「アトランティス・ドライバー!」
「ミイラ・パッケージ!」
「タワーブリッジ・ネイキッド!」
「キン肉バスター!」
「!?」

モブ狂信者の背後をつくように、突如、複数の男たちが現れ、各々の肉体を使った技……いずれもアタルにとって見覚え聞き覚えのある技で狂信者を瞬く間に粉砕していった。

「まさか、君たちが来てくれるとは……」

嬉しい誤算、地獄に仏と言うべきか、頼れる味方が現れたことにアタルの表情は仮面の下で綻ぶ。

駆けつけた男たちは七人、皆超人であった。
先に亡くなったアシュラマンに並ぶ悪魔六騎士の一人で実力者、黄金色に輝く角ばった巨大なボディが特徴なヘビー級悪魔超人。

「サンシャイン!」

カセットデッキの体を持ち、理論上無限の超人技を使用できる機械の悪魔超人。

「ステカセキング!」

一見するとギャグ漫画のような見た目だが、高い弾力を持ち、関節技には無類の防御力を持つ、金属バネの悪魔超人。

「スプリングマン!」

半魚人の体を持つ、水辺では実力を何倍にも上昇させられる誇り高き海の悪魔超人戦士。

「アトランティス!」

相対する敵をミイラに変える残虐性を持つ者だが、味方にすればこれ以上頼もしいものはいないエジプトの悪魔超人。

「ミスター・カーメン!」

鎧を模した外見だけでなく優れた知性と戦闘力、紳士としての誇り高さはまさに騎士と呼ぶにふさわしい正義超人のリーダー格。

「ロビンマスク!」

そして!
男なら憧れる筋骨隆々なマッスルボディと気高き優しさにより豚のような不細工なマスクとニンニク臭さすら帳消しにする我らがヒーロー――キン肉マン。

「大丈夫か! アタル兄さん!」
「スグル……弟よ、来てくれて助かった」

弟は生きており、その弟が仲間を引き連れて命を救ってくれた感動の再開……こんな殺し合いの場でなければ熱い抱擁をしたいぐらいだったが、冷静なアタルは的確に情報を把握しようとする。
まずはこの中では悪魔超人側の代表格であるサンシャインに目を向ける。

「スグル、正義超人であるロビンマスクはともかく、悪魔超人であるサンシャインたちは?」
「兄さん、彼らに関しては心配しなくて良い。彼らも私たちと同じ対主催で、今は味方同士だ」
「あのお方からの命令によるものもあるがな。キン肉マンが言った通り対主催として動いている。
よりマーダーと主催を駆逐しやすくするために同じ対主催や本来は敵対関係にある正義超人とも手を組んで良いというおたっしだ」
「兄さんもアシュラマンやBHと手を組んでいたところからしてそれも知っていると思ったが」
「ああ、まあな」

アシュラマンたちが悪魔将軍からの命令を受けて対主催として動いていることは知っていた。
ともすれば悪魔超人は味方である。
殺し合いという非常時故に超人オリンピックを除くと本来はありえない悪魔超人と正義超人の同盟を組むことができるのだ、超人血盟軍のように。


154 : 謝肉祭 :2017/02/12(日) 16:31:46 Sq83TM1I0

「ところで、放送で流れていたザ・ニンジャとBHは仕方ないとして、アシュラマンとバッファローマンはどこに行った?」

サンシャインはまだ放送で流れていない二人の超人の姿がないことに疑問に思った。
その答えをアタルはなるべく冷静に、しかしどこかすまなそうに悪魔超人たちに話した。

「すまない……私の判断ミスのせいで、二人は都庁の手の者に殺されてしまった」
「なんだと!?」

アタルの言葉に超人たちはどよめく。
悪魔超人の中でも猛者である二人の仲間が都庁の者に殺された……悪魔超人たちが衝撃を受けないわけがなかった。
正義超人の二人もバッフォローマンは盟友であったがために、殺されたことには大きなショックを受けていた。

「おのれぇ〜! 都庁め!」
「奴らめ! 仲間を殺した償いをさせてやる!」
「全員ミイラにしてやるぞ!」
「それに何が機械嫌いだ! 文明の進歩と進化を否定する畜生どもが!」
「おまえたち落ち着け!」
「流石にこの戦力で真正面からでは無理だ!」
「アシュラマンとバッフォローマンほどの強者を一撃で殺せる者がいた。無策に突っ込めば二の舞だぞ!」
「悔しいが、怒りも悲しみも今は堪えるない」

スプリングマン、アトランティス、カーメン、ステカセキングは怒りの矛先をアタルには向けず、殺した下手人である都庁に向ける。
その勢いは比較的冷静だったサンシャインとロビンマスク、キン肉兄弟がなだめなければ、すぐにでも都庁に突っ込みかねないほどであった。

「マーダー集団の都庁の屑共はいずれ皆殺しにする、だが今は耐えるんだ」
「……ま、待て、都庁の者たちは……」
「オイ、奴らが来るぞ!」

サンシャインは都庁同盟軍に明確な殺意を抱きつつも冷静に悪魔超人たちをまとめる。
アタルは都庁の者たちもこちらを勘違いしているだけで、本来は志を共にする対主催であることを仲間に伝えようとするが、それよりも早く遠くから声が聞こえてきた。

SATUGAIセヨ SATUGAIセヨ!

――DMC狂信者だ。

「チッ、またきやがったか」
「奴らは何人殺してもまた湧いて出てきやがる」
「しかし戦ってもキリがないぞ。どうする?」

超人が8人も揃っている彼らならモブ狂信者程度が束になってもやられることはまずない。
しかしモブと言えど狂信者は上層部のシゴキによって強化されており、足止めぐらいはできる。
足止めを食らうとモブよりも遥かに強い指揮官級の狂信者を呼び寄せたり、都庁同盟軍の追撃部隊が来る恐れがある。
そうなると彼らでも危険である。

「突破するしかないか!」
「待てスグル、みんな! 私にいい考えがある」

そこで冷静で的確な判断ができるアタルは妙案を思いついた。
すぐさま最寄りの文房具屋から白と黒の絵の具を手に入れ、まずベジータの顔にクラウザーを模したフェイスペイントを施した。
額にはもちろんチャームポイントである“殺”の字も描く。
そこまで来てようやく周囲もアタルの考えが見えてきた。

「まさかソルジャー、狂信者に偽装して突破しようというのか?」
「そのまさかだ。狂信者も同じ狂信者は襲わない。
ならば狂信者を装えば余計な戦闘をせずにこの場を脱出できるだろう」
「「「なんという冷静で的確な判断力なんだ!!」」」

アタルの名案に周囲はお決まりの賞賛を送った。


155 : 謝肉祭 :2017/02/12(日) 16:32:40 Sq83TM1I0

「みんなもベジータと同じように顔を塗るんだ。
……これだけでは味付けがもの足りないな。
ステカセキングはDMCの曲を流してくれ! 少しでも偽装を完璧にする」
「あいわかった!」

ステカセキングは所持していたDMCのカセットを、己の体に入れて曲を流した。
曲はDMCを象徴する曲「SATUGAI」である。

―― 殺せ殺せ親など殺せ 殺せ殺せすべてを殺せ ――

「……うわぁ、相変わずひでえ曲だな」
「私は聞いてきただけで吐き気がしてきたぞ……」
「お、おい、大丈夫かキン肉マン」
「そういえばキン肉マンはDMCの曲が大嫌いだったな」
「すまないスグル……狂信者の包囲網を抜けるまでは我慢してくれ。顔色の悪さはフェイスペイントでごまかそう」
「ああ、気持ち悪い。これでは牛丼もしばらく胃に入らんぞ」

キン肉マンはクラウザーの曲を聞くだけで気分が悪くなるDMCアンチであり、ステカセキングから流れた曲を聞いただけで顔を青くしていた。
クラウザーさんは魔王や大天使すら惹きつけるほど信者を量産したが、逆に彼の歌を毛嫌いする者もいるのだ。




「おいおまえ、今クラウザーさんの歌が気持ち悪いと言ったか?」
「え?」


―― 思い出を血に染めてやれ 未来など血に染めてやれ ――



――それは突然だった。
閃光が瞬いたと思ったら、キン肉スグルの豚面が首ごと弾けて消し飛んでいた。

あの伝説の超人ヒーロー・キン肉マンがあっけなく死んだのだ。


その下手人は――仲間であるハズのベジータ。


「べ、ベジータ?!」

突然過ぎるスグルの死とベジータの裏切りに、周囲の超人たちは、アタルさえも脳内の処理が追いつかず、呆気に取られていた。
そしてDMCのペイントが施された顔でベジータがニヤリと笑いかけたかと思うと、超人たちに向けて掌から大出力のエネルギー波を放った。



「ぎゃああああああああ」
「うおおおおおおおおお」
「ニーブラァ!?」

いかな超人と言えど、惑星すら簡単に破壊できるほどの絶大な火力を誇るサイヤ人の攻撃を凌げるわけもなく、閃光は超人たちを容赦なく飲み込み、蒸発させた。
ただ一人、ベジータの異常に誰よりも早く気づいて躱したアタルを除いて。

「ベジータ〜〜〜〜っ! なんのつもりだ!?」

仲間と弟を一瞬で皆殺しにしたベジータの裏切りに、怒りと驚きを交えて怒鳴るアタル。
だがベジータはさっきまでのヘタレさは何処へ、極めて冷静かつ冷酷なスマイルを浮かべてアタルに言ったのだった。

「妻のブルマが死んだ以上……俺はもう、サイヤ人の王子だとか、生き残ることだとか、カオスロワだとかどうでもよくなったんだよ」

キン肉マンソルジャーことキン肉アタルの考案した偽装による狂信者突破は実に理に適っていた。
……だが彼はクラウザーさんの歌の特性を知らなかった。
それは今までDMCの歌に興味がなくても、強い悲しみでぽっかり穴が開いた心をその滅茶苦茶な歌が埋めてしまうのである。

「俺の傷ついた心を癒してくれるクラウザーさんの歌を除いてなあ!!」
「ベジータッ!」

ベジータは妻を失った絶望を味わっている時にクラウザーの歌を聞くことで狂信者に身を堕としたのだ。
そしてスーパーサイヤ人と化し、かつての仲間であることも忘れてアタルに襲いかかった!


【キン肉スグル@キン肉マン 死亡】
【ロビンマスク@キン肉マン 死亡】
【サンシャイン@キン肉マン 死亡】
【スプリングマン@キン肉マン 死亡】
【ミスター・カーメン@キン肉マン 死亡】
【アトランティス@キン肉マン 死亡】
【ステカセキング@キン肉マン 死亡】
【ダンシングフィッソン族@お笑いネタ 死亡】
※こいつはその辺に隠れていただけですが、ベジータの攻撃の巻き添えで死にました


今、虐殺で祝われる「謝肉祭」が始まる。


―― SA TSU GAI! ――


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


156 : 謝肉祭 :2017/02/12(日) 16:33:58 Sq83TM1I0

地下から都庁を目指していたなのは組だが、彼らの歩行速度は恐ろしく牛歩になっていた。
主になのはのせいで。

「やだやだやだ!! 私以外にユーノ君の体が弄られるのはヤなの!!」
「ちょっと、なのは! そんなこと言わないで!」

なのはが都庁へ向かうのを嫌がる理由……それは支給品の千年タクウでユーノがフォレスト・セルに陵辱(実際は治療)される未来を見たがために、彼をそんな目に合わせたくないがためにだだをこねているのだ。
今、彼女は桑原とレオリオによって、両腕を引っ張られて引きづられている。

「まったく、都庁はもうすぐだって言うのに全然前に進まねえぞ!」

なのはが暴れるせいでほとんど前に進まない現状にレオリオは愚痴をたれる。

「しかし、なのはの話も一理ある気がするな……」
「桑原お兄ちゃんどうして? ……ユーノさんのお尻がいじられるから?」
「バッ……そうじゃねえハス太。
どうにも都庁に近づくたびに嫌な予感がするんだぜ」

桑原は生まれつき霊感が強く勘も鋭い。
並の霊能力者が手こずる迷いの森すら最短ルートで抜けてしまうほどに。
そんな彼の勘が悪い予感がすると囁いているのだ。

「都庁の魔物や協力者たちはやはりネットで囁かれるような危険な連中で、エリカと神樹があいつらと一緒に戦っていたのも脅されたていたか洗脳されていたから……とも考えられるか」
「確証はねえが、その可能性は捨てきれねえな。ユーノはどう思う?」

都庁の者たちに疑問を持ち始めるレオリオと桑原の視線がユーノに向く。
彼は一行の行動を左右するリーダー格だ。
グループの最終判断の決定は知力に優れた彼の役目である。

「いや、このまま都庁に向かう。
都庁に存在する参加者が志を共にする対主催の仲間ならそれでよし。
違っても無理やり協力させられているエリカさんと神樹を助け出さなくちゃいけない。
今から引き返しても現状の僕らの戦力じゃ神樹を倒したオカマにやられるだけだ。
仮に僕がなんらかの事情で陵辱させられる羽目になったら、あらゆる手段を講じて脱出するだけさ」
「おう、そうだな」
「どちらにせよ都庁に向かうしかねえってことか」

ユーノは都庁が白でも黒でも突き進むことに決め、リーダーの判断になのは以外の全員が従った。

(まあ、もし都庁の奴らがなのはに危害を加えるんだったら、コノ手デ殲滅スルケドネ)

ユーノのなのはを守りたいと想いと、都庁が敵だったらとの想像が合わさった爪が一瞬だけ獣のように伸びたが、それもまた一瞬で元通りになり、地下の暗さも手伝って誰も気づかなかった。

「嫌だよ、行きたくないよ。ユーノ君が他の誰かに取られるなんて!」
「大丈夫だよ、なのは。僕は死ぬ気はないし、君以外に抱かれる気もないから」
(うわあ〜バカップル)
(ラブラブだね)
(羨ましいぜ。俺も雪菜さんとあれぐらいイチャイチャしてえな〜)

だだをこねるなのはとそれをなだめるユーノ、二人を生暖かく見つめる三人の男の一幕があった。


だがそれも唐突に終わりを告げる。
地上からなのはたちのいる地下へ、天井を何枚もぶち破ってそれは現れた。
……血まみれの超人と、黄金の気を纏い金髪をしたM字ハゲの狂信者らしき男が。

「きゃあ!」
「いったいなんだ!?」
「ぐふッ……逃げるんだ……」

天井から降ってきた瓦礫を避けたなのは一行のなのはとユーノにボロボロの超人アタルは目があった時に危険を知らせ、逃げるように促す。
だが次の瞬間、アタルの右半身がエネルギー波によって消し飛び、絶命させた。

「ベジ……貴様――」
「前にアシュラマンが言っていた俺には『戦うという覚悟』が足りないという言葉をようやく理解したよ。頭ではなく心で。
こんな怖いものだらけの絶望的な世界でもクラウザーさんの歌を聞けるなら『戦うという覚悟』なんていくらでも湧いてくる!!
その証拠に金髪なんてもう怖くもなんともない!!」

世界に絶望し、クラウザーさんの歌を聞いたために、金髪であるユーノやハス太を目の前にしてもベジータは恐れることはもうなくなっていた。
代償としてその心は狂気に染まってしまい、サイヤ人の誇りなど微塵も残っていないが。

もし人類が後に来る大災害を打破し、後世があるのなら歴史家はこう言う。
キン肉アタルの最大の失敗は、野球をしたことでもなく、ガチレズを仲間にしたことでも、都庁に無警戒で入ろうとしたことでもない。
野球の数合わせのためにベジータという男を仲間に招いてしまったことであると……



【キン肉アタル@キン肉マン 死亡】


157 : 謝肉祭 :2017/02/12(日) 16:34:37 Sq83TM1I0


スーパーサイヤ人であるベジータから放たれるオーラ。
それはかつてユーノたちが戦ったOVERや戸愚呂兄、下手をすると天魔王すら凌ぐ、今まで戦った中で最強最悪の部類のマーダーであると全員に肌で感じさせた。
戦慄する一行に対して、ベジータは獲物を見つけた猛獣のような笑顔を見せる。

「おまえらも逃がさんぞ。全員まとめてSATUGAIし、クラウザーさんへの貢物にしてやる」

なのはたちに、ジャンプ漫画最強のクラスに位置するスーパーサイヤ人が容赦なく襲いかかる!!


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

それは影薄一行と神樹とアルルーナを率いるエリカたちは都庁の世界樹へ入ろうとした時であった。

「なに!? なのはたちが襲われている!」
「神樹、それは本当なんですか!?」

神樹とエリカの本来の仲間であるなのは組が、ここからそう遠くない地下で襲われている……超巨体故に感覚にも優れていた神樹がそれを感じ取ったのだ。

「エリカの仲間を? 襲ってるのはどこのどいつだい!?」
「DMC狂信者か! 天魔王軍か?」

これから仲間になるかもしれない者たちのピンチに焦る影薄組の小町と日之影が神樹に敵の正体を聞くと、以外な答えが返っていた。

「いや……この声は……超人血盟軍のベジータだ!」
「ベジータだって!?」

ベジータと言えば、つい先ほど別れたばかりの超人血盟軍の一員だ。
桃子の憧れの先輩さえも殺した最悪の集団・拳王連合軍と同盟を持つだけに信用してはならない集団の超人血盟軍の一員でもある。
しかし、先ほど会った時はヘタレた背の低い小男にしか見えなかっただけに、小町には襲撃にギャップを感じさせていた。

「でも、なんでだ?
仲間のハズのソルジャーとかいう奴を殺しただと……?」
「キン肉マンソルジャーが殺されてる? いったいどういうことだい?!」
「神樹、小町さん。今はそんなことよりなのはさんたちを助けにいかないと!」

神樹によると仲間であるハズのアタルはベジータに殺されたらしい。
いったい何があったのか疑問にどよめいた小町と影薄組だったが、エリカは疑問を後回しにさせてとにかくなのは組の救助とベジータ討伐を優先させる。

「しかし、俺の巨体じゃ地下には入れねえし、深さ的に攻撃も届かねえ。
どっかにベジータが開けただろう穴があるからそこから――みんな伏せろ!!」

体が大きすぎる神樹では地下に向かうことができない。
戦闘力があり、狭い地下でも戦えるサイズの者はエリカとアルルーナ、小町と日之影に向かってもらう……そう言いかけた時だった。


突如、地面に大穴が開くと同時に眩い閃光――ベジータの気が詰め込まれたエネルギー砲・ファイナルフラッシュが地下を焼き溶かして神樹に直撃したのだ!
その威力はダオスがハザマ・大和戦で見せた小鳥とサクヤ、都庁の魔物たちの協力で放たれたハイパーダオス・レーザー……の約二倍!!
その一撃だけで神樹の幹を真っ二つに折り、断面から鮮血のような大量の樹液を放出させる。
最大の幸運は神樹が障害物になったことで超濃密なエネルギーの塊は世界樹自身に当たることはなく、真横に逸れたことであろう。


「ぐああああぁああああぁあああ!!!」
「神樹!!」

神樹の頭の上に載っていたエリカが一撃で倒された神樹に声をかけるも、幹から折られた神樹が自由落下によって地上に落ちようとする。
その落ちる先にはアルルーナと影薄組がおり、小町は勢いよく自分たちに落ちてくる神樹の巨体に対し急いで能力で対処し、圧殺から自分と仲間を守ろうとする。

「ヤバイ……『距離を操る程度の能りょ…‥」
「こまっちゃん!! また来たぞ!」
「!!?」

しかし、小町が能力を神樹に向けて放つよりも早く、地下から二発目の光弾が地上にいる小町たちと世界樹に向けて放たれた。
小町はその時、咄嗟に能力を神樹にではなく光弾に向けて使用。
結果、光弾は小町たちや世界樹に当たることはなく明後日の方向へ飛んでいき、世界樹は窮地を免れた。
……世界樹を救う引き換えに神樹は地上に落下した。

新宿全体を揺さぶる振動と高く舞う土煙。
小町たちの命運はいかに?

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


158 : 謝肉祭 :2017/02/12(日) 16:35:22 Sq83TM1I0

「きゃああああああああああああ!!」

神樹の頭上にいたエリカだったが、神樹地上落下の衝撃で彼女は投げ出され、ベジータの攻撃で開いた穴によって地下へと入ってしまった。

「くッ! モジャンボ!!」
「モジャーッ!」

普通の人間ならば落下でぺちゃんこになって死亡していたが、幸い彼女は強い精神力の持ち主で、手持ちのポケモンにも恵まれていた。
全身に蔓を生やした植物ポケモンのモジャンボを呼び出し、エリカがその背中に捕まる。
そしてモジャンボの蔓を壁に引っ掛けて落下を防いだ。

「ありがとうモジャンボ、ゆっくり降下して!」
「モジャ」

エリカは地上にいる倒された神樹や影薄たちも気になったが、それよりも今は地下にいるなのは組の救助とベジータの討伐が先だと思い、降りて地下へ向かう。
何より神樹すら一撃で叩き折ったベジータの攻撃力は世界樹にとっても危険であり、早急に倒す必要があると思ったのだ。



エリカがモジャンボの力を借りて地下に降りると、そこには信じられない光景が広がっていた。

なのは組のリーダーにして防御面では多くの魔道士の中でも秀でているユーノ。
中身は9歳児だがエースオブエースの将来を約束された魔法少女なのは。
風を操り、潜在能力は邪神級の少年ハス太。
全てを切り裂く次元刀の使い手である桑原。
ハンターであるレオリオ。

並のマーダーならひとひねりにできる五人が、たった一人の逆だった金髪を持つ男にボロボロにされ、地面に膝をついていた。

「みなさん!?」
「エリカさん……きちゃダメだ……」

大怪我を負い、気絶したなのはを抱えるボロボロのユーノがエリカに逃げるように促すも、もう遅い。

「さっきの女か……SATUGAIしてやるぜぇ!」
「……ッ!」

ベジータの視線がギロリとエリカに向く。
一時間も立たない内に何があったというのか。
今のベジータは先程まではなかった覇気と狂気に塗れていた。
それはエリカすら思わず後ずさりしたくなるレベルである。

「キノガッサ! モジャンボ!」
「キノー!」
「モジャーッ!」

それでもエリカは逃げずに戦うことを選択する。
モジャンボ追加でモンスターボールから呼び出したポケモンはカイリキー並の格闘能力と多彩な補助技を持つボクサー型キノコポケモン・キノガッサ!
盾の役割を担う防御力特化型のモジャンボに対し、こちらは攻撃力に特化したエリカの矛である。
エリカもポケモンもベジータに臆することなく、群れバトルで挑んでいく。

「まずキノガッサはキノコの胞子を……」

エリカはまず、キノガッサに命中100%の睡眠技「キノコの胞子」をベジータに浴びせて眠らせ、必殺の「きあいパンチ」で一気にカタをつける鉄板戦法を取ろうとする。
だが……

「フンッ、遅いな」
「キノ?!」
「モジャッ?!」

ベジータの機動力はキノガッサの機動力を遥かに上回っており、それこそ一定の動体視力を持たぬ者には瞬間移動をしているようにしか見えない。
キノガッサが胞子を放つ前にベジータは一瞬で詰め寄り、キノガッサの頭部を拳で大穴を開けて一瞬で絶命させた。
更に隣にいたモジャンボも気の力で一気に焼却し、こちらも一瞬で灰にして殺した。

「キノガッサ! モジャンボ! ……くッ、ですが私にはまだ!」

瞬く間に殺された手持ちのポケモンの死に衝撃と悲しみを覚えるも、エリカは戦いをやめるわけにはいかないと新たなポケモンを召喚しようとするが、しかし、残りのモンスターボールを握る右手ごと、そして中身のポケモンごとベジータが握り潰した。

「くああああああああッ!」
「フンッ」

これでエリカは右手を手持ちのポケモンを全て潰された。
戦闘力を大幅に失ったのである。
ベジータはそのままエリカにトドメを刺そうとし、拳を振り上げる。


159 : 謝肉祭 :2017/02/12(日) 16:36:10 Sq83TM1I0

「うおおおおおおッ! 往生せいやーッ!!」
「エリカを……やらせるかよ!」
「チェーンバインド!」
「エリカさん! こっち!」
「みなさん!」

今にも殺されそうだったエリカを、桑原、レオリオ、ユーノ、ハス太が救うべく、奮闘する。
まずユーノが魔法の鎖を召喚してベジータに絡ませ、ハス太が風の力を使ってエリカを自分たちの元へ手繰り寄せ、レオリオが放出系念能力による不可視の攻撃をベジータに浴びせ、桑原が何もかもを切断できる次元刀で斬りかかった。

だがユーノの鎖は2秒程度の時間稼ぎにしかならずパワーで引きちぎられ、レオリオの念攻撃は圧倒的防御力を誇るスーパーサイヤ人にはほとんど効いておらず。
桑原の次元刀はベジータの防御力さえも両断できるが、当たらなければどうということはないと言わんばかりにミリ単位で躱していく。
幸いなのはエリカはハス太の風で手繰り寄せられベジータのトドメを受けずに済んだことだろう。

「クソッ! 化物め! 避けるんじゃねえ!」
「ハッハッハッ。無駄だ。
俺はアシュラマンとソルジャーのおかげで高い戦闘力が更に強化されている!
おまえたちなど逆立ちしても俺の足元にも及びはしない!」

元々戦闘力の高いサイヤ人であるが、その戦闘力は首輪の有無の差と、アシュラマンによる首コキャとアタルによるフェイスフラッシュによる回復のコンボ……すなわち死地に至って回復する度に強くなるサイヤ人の特性により、ベジータは今期でもトップクラスの戦闘力をお手軽に手にしていたのだ。
強化された戦闘力がマーダーや主催にではなく、対主催に振るわれるとは流石の冷静で的確な判断力を持つアタルでも予期していなかっただろう。

「戦力を失ったおかっぱは後回しだ。
リーゼント、おまえからまず仕留めてやる!」
「ぐはぁッ!!」
「桑原ーーーッ!」
「桑原さん!」

ベジータは標的を仲間を助けるために突出した桑原に変え、まず腹に膝蹴りをお見舞いする。
ハス太が風による結界で桑原を防御したが、結界は高すぎる攻撃力を持つベジータの前に破られて桑原の腹に蹴りが直撃して吐血させる。
結界は致命傷を避けさせるのが精一杯であった。

「さあ、汚い花火になりな!」
「やっべ……」

そしてベジータのエネルギー弾による非情な一撃が、ゼロ距離で桑原に炸裂しようとする!
腹に一撃をもらった桑原では避けることはかなわない。
ハス太とユーノによる結界は気休めにもならず、先ほどエリカにしたようなハス太の風による手繰り寄せも今からでは間に合わない。
桑原の死は決定的だと思われた。


「……そうは、させないよ!」
「ダニィ!?」

ベジータは聞き覚えのある女の声と同時にエネルギー弾が放つが、その直前に桑原の姿が目の前から消え、弾は床に穴を開けただけに留まる。
気を辿ると、そこには桑原と斬魄刀を構えた少女がいた。

「小野塚小町!」「小町さん!」

小野塚小町の突然の登場にベジータは獲物を殺し損ねた怒りを、エリカは仲間が来たことによる喜びから、彼女の名前を呼ぶ。

「ベジータ……アンタに何があったのか知らないけど、仲間を殺そうとするならあたいが許さないよ!」
「邪魔をするな小町! これでも喰らいやがれ!」

ベジータはエネルギー弾をぶつけて現れた小町を横にいる桑原ごと殺そうとする。
しかし、彼女が手をかざした瞬間、エネルギーは距離を操られることによって明後日の方向に飛んでいき、彼女や桑原たちに当たることはなかった。

「無駄だ! あたいには『距離を操る程度の能力』がある!
タイマンではあたいを殺すことはできないよ」
「クソッ、厄介な奴がきやがったか!」

どんな攻撃でも当たらなければどうということはない。
そして小町には敵に攻撃を当てさせない能力の持ち主であり、地の戦闘力はベジータより遥かに下でも攻撃が命中しない以上は攻撃力が機能しなくなる厄介な敵であった。


160 : 謝肉祭 :2017/02/12(日) 16:37:08 Sq83TM1I0

「あの能力と赤毛で巨乳……間違いない! あの人はネットで噂されている対主催の人だ!
大阪から姿を消して行方知れずと言われていたけど、まさか関東に、都庁にいたなんて!」
「おや、坊や。あたいのことを知っているのかい?」
「ええ、ネットである程度の情報を見てましたから」

機械に詳しいハス太は、首相官邸にいた時にカオスロワちゃんねるのようなネットにも目を通していた。
ネットには三大巨悪と言われる拳王連合軍やDMC狂信者、都庁の軍勢の他にもイチローチームやホワイトベース組などの対主催の噂も少なからず書かれており、小町の情報もある程度は書き込まれていた。

「大阪では騎士姿の男と共に超巨大ロボのジプシー・デンジャーを倒した女傑と噂されているんですよ。
他にも拳王連合軍の砲撃を防いだり、有名なプリキュアと交友を持っていたり、見えない敵と戦えたり、一人なのに五人分の戦闘力を持っているなど噂されています」
「小町さんてそんな凄い人だったんですか?」
「ジプシー・デンジャーを倒したのは確かにあたいだが、なんかほとんど噂がひとり歩きしているような……?」

見えない敵と戦えるようになったのは嘘ではないし、ジプシー・デンジャーを倒したのは確かに小町の力だが、混沌の騎士や影薄組の助力(彼らは影が薄すぎたので他の参加者に認識されなかった)もあり、拳王連合軍の砲撃を防いだのは小町ではなくハクメンである。
ラブたちプリキュアとは最初から交友を持っていたわけではなく、一人で五人分の戦力というのも影薄たちが認識されていないためのことだろう。
風評被害の逆というか誇張と誤報が混じっていることには小町は眉を潜めるが、いつの間にかなんやかんやで他の参加者から頼られているのはわかった。
拳王連合軍に襲われる大阪で自分に対する救援要請が来ていたのも頷ける。
なのは組側としては小町が都庁についているということは、都庁の軍勢もネットで噂されているような悪党たちではなにのだろう。

「大阪の多くの参加者を窮地から救った英雄……
その名も『三途の川からやってきた 正 義 の 乳 神』!!」

迫真の表情でハス太は言ったが、その瞬間、小町と桑原とレオリオはズッコケた。

「なんだい乳神って!? あたいは乳神じゃなくて死神だよ!」
「だってネットではそう書かれていて……小町さん! 前! 前!」
「よそ見してる場合かああああ!!」
「ええい、こなくそ!!」

どこぞのグラビアアイドルみたいなふざけた自分の二つ名にズッコケてた小町だが、ベジータが襲いかかってきたので気持ちを切り替えて、攻撃を躱していく。
なお、小町は死神なのだが彼女を目撃した多くののモブ参加者が彼女の巨乳っぷりに目が行き、いつの間にか死神→乳神になってしまったらしい。

「神樹とアルルーナは、影薄組の皆さんは……?」

エリカは小町以外の他の仲間の安否が気になり、心配しつつ彼女に仲間の無事を聞く。
そしてベジータと戦いながら、小町はエリカに応えた。

「大丈夫だ。皆生きてる……」
「!! 良かった……」
(無事とは言い切れないけどね……)

地上にいるポケモンや仲間の無事に安堵するエリカに対して、小町の表情は訝しげだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


161 : 謝肉祭 :2017/02/12(日) 16:37:46 Sq83TM1I0

地上。
小町と黒子、モモ、あかりの四人が倒れてくる神樹に潰されかける寸前に、日之影とアルルーナが彼女ら四人を庇ったために、日之影とアルルーナが潰される羽目になった。
幸い、人間としては鬼耐久力の日之影と魔物でも強い部類に入るアルルーナは死なずに済んだが、両者は決して小さくはないダメージを負い、巨木である神樹と地面に体を挟まれて身動きが取れなくなってしまった。

「日之影さん、アルルーナさん……」
「ごめん、私たちを助けたばかりに……」
「なに、良いってことよ」
「私としては自分の身よりもお姉さまと助けに向かわせた小町さんが心配で仕方ありませんわ」

黒子とあかりは傷を負ってまで自分たちを助けてくれた二人に感謝と罪悪感を覚えるも、二人共、自分が傷を負ったことには特に気にした様子はなく、むしろ仲間に死人が出なかったことに喜び、エリカや小町の心配をしていた。
ついでにモモはというと……

「……」
「モモちゃん……」
「ごめんなさい東横さん……冷静さを失った今のあなたを戦わせるわけにはいかないんです」

モモは神樹が折られた直後、先輩である加治木を殺された怒りと相まって、ベジータの攻撃に怒りを覚えて彼を殺しに行こうと斬鉄剣片手に突撃しようとしていた。
しかしそれは怨恨に狂った故の判断であり、そもそも雀力込みでも超理不尽級のスーパーサイヤ人に彼女一人で勝てる道理はない。
明らかに普段の冷静さを失い、このままではベジータに殺されて犬死にするだけだったので小町がエリカの下に向かう前に当身をして気絶させたのだった。

「おい、アルルーナ。神樹の奴がまったく喋らねえんだが、こいつはまだ生きてるのか?」
「……ええ、気を失っているようだけど幹の中に鼓動を感じる。
それも弱くなっているけど、ギリギリで持ちこたえているわ」
「生きちゃいるが楽観視はできねえってことか」

天魔王に引き続き、幹をゴッソリ折られた神樹であるが、彼はまだ生きていた。
ここまでやられた以上、回復には再びレストクラスの術師が必要だろうが……

「黒子、あかり!
何にせよ身動き取れないこのままじゃ俺たちもこまっちゃんもまずい。
ここは良いからモモを担いで早く都庁に戻って動けそうな仲間を呼んでくれ!」
「はい」
「うん、わかった!」

黒子やあかりの力では巨大な神樹の幹を動かすのは到底不可能である。
日之影とアルルーナを助け出すにはFOEのような力ある仲間を呼び、動かしてもらうしかない。
また神樹がやられたので狂信者が再び攻めてくる危険性もあり、すぐにでも応援を呼んで神樹の穴を埋める必要があった。
ベジータと戦っているであろうエリカと小町に仲間を送る必要もあり、応援は必要不可欠である。
日之影の指示通り、黒子とあかりは気絶したモモを都庁へ向かった。

(こまっちゃん、あのベジータとかいう奴はマジでやべーぞ。ぶっちゃけめだかよりも段違いに強ぇ。
仲間がくるまで生き延びてくれよ……)

日之影はただ、自分の身より送り込んだ仲間である小町のことが心配だった……

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


162 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:38:47 Sq83TM1I0
地下。
小町はベジータとの交戦をしていた。
小町が戦っているうちに、彼女の指示で負傷したなのは組は都庁方面へ退避させられた。
というより繰り広げられる戦いは光と光がぶつかり合うような激しすぎる攻防であり、全員手傷を負っている上に首輪も外れていないなのは組では足でまといになると思い、小町が逃がしたのである。
ベジータはそれだけの強敵であり、誰かを守りながら戦う余裕など無いのである。

「クソッ! 攻撃が届かない気持ちの悪い能力を使いやがって!
大人しく俺とクラウザーさんのためにSATUGAIされやがれ!」

小町は先の戦いでセルベリアに使ったように距離を操る程度の能力を使って、ベジータの拳や蹴り、エネルギー弾を自分やなのは組に届かないようにしたのだ。
いくらスピードを出して攻めても、距離を操る彼女の前で止まるか逸れてしまう。
いくら強力な技でも当たれなければどうということはないのである。

だが……

(クソッ! やっぱりここでも火力不足が目立ってやがる!
あたいの銭や斬撃が当たっても全く効いてねえ!)

小町側にしてみれば、ベジータの異常に高い防御力の方が驚異であった。
セルベリアのヴァルキュリアとしての防御力も異常だったが、ベジータの場合はそれを遥かに上回っており、弾幕も斬撃もダメージゼロである。
これでは当たっても意味がない。
セルベリアの方は首輪の制限によりヴァルキュリアの力を使えば使うほど急速に疲弊していったが、ベジータの場合は首輪が外れているので戦闘による疲労はほとんどない。

(しかもこいつ、防御力だけじゃなくて、パワーとスピードもセルベリア……いや、レストすら上回ってる!
一瞬でも隙を見せたらこっちが殺されちまう!)

都庁の戦力の要であるレストは確かに理不尽級の強者だが、ちょっと本気を出せば惑星など簡単に消せるスーパーサイヤ人には届かない。
更にこれ以上強くなれないレストと違い、サイヤ人は戦いがある限り際限なく成長をし続けるのだ。
これまでロワを通じて幾多もの戦いを生き延びた小町にはベジータの実力が今まで戦ってきた参加者の全部を上回っていることを肌で理解していた。
それでもこれまでのベジータは金髪恐怖症が足枷となって実力を発揮できなかった。

が、クラウザーさんの歌によって狂ったことにより恐怖症を克服。
枷から解放されて実力を100%発揮できるようになってしまった。
もはやダオスやレスト、悪魔将軍すら彼の中では怖くないのだ。

そんな相手を前にして小町が臆すことなく戦えたのは幻想郷において場合によっては死人も出る弾幕ごっこで動体視力と回避能力を鍛えられていることと、影薄組や同盟軍などの仲間の存在と、いくつもの死線を突破していったために胆力がついたおかげだろう。
もし序盤のように殺し合いでサボることだけしか考えていなかったら、ベジータを前に足がすくんで逃げることはおろか何もできずに塵にされていただろうと小町は考える。

そして弾幕の飛ばしあいと刀の斬撃と拳による打撃の渦の中。
一瞬でも集中力と能力を切らせば一気に攻め入られ、殺されるかもしれないギリギリの戦いの中で小町は、ベジータを倒せるか追い払えるだけの実力を持つ仲間の救援を待った。

……しかし救援は間に合わず、代わりにピシッと音を立てて不運がやってきた。

「神鎗が!?」

これまでロワで小町の相棒として戦ってきた斬魄刀が、ベジータの鉄壁の防御力の前に耐久性に限界が来てしまい、その刀身に大きなヒビが入ったのである。
更にセルベリア戦の倍は能力を使っている小町の疲労も重なり、一瞬の動揺が付け入られる隙を与えてしまった。
その機を見逃さなかったベジータが、ニヤリと笑い、能力を張り損ねた小町に対して鉄拳を放つ。

「ッ!?」

ベジータの攻撃に対して、小町は咄嗟にディパックから小舟を出して盾代わりに防御する。
舟は大破したが小町への攻撃の直撃だけは防がせた。

「うわああああああ!!」

しかし余波までは防げず、キイーーーンというジェットのような音を立てて、彼女を大きく後ろに吹っ飛ばしたのである。


163 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:39:29 Sq83TM1I0



なのは組は小町の指示通りに都庁への退避をしていた。
しかし全員負傷がひどく、どうしても速度が出ないのである。
なのはに関してはベジータの攻撃による負傷で頭にダメージを受けたのか、ユーノの手の中でずっと意識混濁状態だった。

「ユー…ノ君……どこ?」
「なのは、しっかりするんだ! 僕はここにいる!」
「チッ、まずいな。この様子だと頭を打ったみてえだな」
「なのはが死んでしまったら、僕は…ボクハ……!」
「落ち着けユーノ! なのはは死に直結する怪我は負ってねえよ!」

医学生であるレオリオによりなのはの容態を知るが、それでもユーノは落ち着かずに焦燥していた。
これまでユーノをリーダーとして見てきたなのは組一行に取っては、こんなに困惑したユーノを見たのは初めてだった。
今のユーノは恋人を殺されかけていつもの冷静さを失っているのだ。
とにかくユーノは小町がベジータを引き付けている内になのはを都庁同盟軍の仲間に治療させる必要があった。
(レオリオは医大生だが短い時間で仲間を治療するスキルは持っていない)

だが彼らの希望は潰えるが如く、後方から凄い勢いで吹き飛ばされてくる小町の姿があった。

「小町さん!?」
「危ねえ!」

あの勢いでそのまま壁面に激突すれば小町の肉体は粉々になってしまう。
直感で気づいた桑原が彼女を受け止めるべく飛び出し、彼女の体をキャッチする。

「うおおおおおッ!?」
「がはッ!!」
「桑原!!」

しかし勢いそのものはほとんど殺せず、小町を受け止めた桑原の体が小町ごと壁面に激突する。
桑原が緩衝材となったおかげで小町は粉々の肉塊になって死ぬ惨事は防がれたが、体中から血を流して気を失い、彼女のメインウェポンであった斬魄刀は折れてバラバラになってしまった。
彼女のクッションになった桑原はそのタフネスさ故に死ぬことはなかったが、こちらも小町同様に体中から血を流して気を失ってしまった。
頼れる仲間が一辺に二人も戦えなくなったこと……特にベジータのパワーに唯一対抗できていた小町が戦闘不能に陥ったことに残されたユーノ、ハス太、レオリオ、エリカは戦慄する。
そしてスーパーサイヤ人という名の絶望が彼らに追いついた。

「手こずらせやがって、俺様の手で直々にSATUGAIしてくれるわ!」
「そんな……」
「畜生、こんなところで!」
「まだ諦めてはなりません! 何か打つ手があるハズ……」

敵の攻撃をほぼ確実に外させる能力を持つ小町と、敵の防御力を無視する霊剣を持つ桑原は気絶した。
エリカは手元にポケモンがおらず、護身術程度ではサイヤ人には敵うまい。
ハス太とレオリオの実力でもベジータに敵わないのは先に立証済み。
せめてハス太が限定解除状態になればワンチャンスあったかもしれないが、首輪が外れていない現状ではそれもできない。
そんななのは組をまとめて花火にするべく、ベジータは気を練り始めた。
必殺技のファイナルフラッシュで一気にトドメを指すつもりなのだ。
それを感じ取ったなのは組は内心では生存を諦め自分たちの最期を確信した……



気絶している者たちと、ユーノを除いて。


164 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:40:07 Sq83TM1I0

ただ一人、ユーノだけがベジータに平然と向かっていく。

「ユーノさん?」
「ユーノ?」
「ユーノ……さん?」

気を失っていたなのはをゆっくりと地面に下ろし、レオリオたちの呼びかけにも応じずにベジータに向かっていくユーノ。

その心の中では、様々な感情が渦巻いていた。





――ドクン

一つはなのはを失うかもしれないという恐怖

――ドクンドクンドクン

一つはなのはに怪我をさせてしまった自分の無力さへの怒り
一つはなのはを確実に守るための力への渇望

――ドクンドクンドクンドクンドクンドクン

一つはなのはを傷つけた怨敵への殺意
一つはなのはを悲しめたあらゆる者への憎悪


仲間たちにこれまで見せたことのない瘴気のような禍々しい魔力を噴出するユーノ。
そんなユーノに気絶から覚めかけていたなのはが彼の背中を見てうわ言のように呟く。


「ユーノ君……?」

――ド ク ン ッ

最後に感じた思いはなのはへの愛。
ユーノの中で様々な思いがかき混ぜられた時、ユーノは混沌への扉を開いてしまった。




「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!」
「なんだ!? こいつの気が膨れ上がって……」

ユーノはまるで野獣のように叫んだ。
周辺をビリビリと揺らす咆哮に、レオリオもハス太も、精神力の強いエリカでさえ思わず立ちすくんでしまい、ベジータをも驚かせた。
そして咆哮と同時に彼の体に変化が現れる。
瘴気じみた魔力を吹き出しながら金色の毛皮を全身を覆い、加えて胴が細長くなり長い尻尾が長くなった。
シルエットだけは彼がよく変身するフェレットの姿に似ている。
しかし、全体的なサイズは大柄な桑原やレオリオの何倍もあり、牙も爪も一目で危険とわかるくらい鋭く、目は赤い複眼の恐ろしい姿だった。
ユーノは一瞬でフェレットによく似た怪物になってしまった……
テラカオス化進行による変身である。

突然、怪物に変身にこの場にいた誰もが混乱している。

「フリーザのような変身能力か!
さっきの40倍か50倍は気が大きくなってやがる!
だがスーパーサイヤ人にしてサイヤ人の王子である俺の足元にも及ばねえな!」

ベジータはユーノが変身と同時に力を大幅に増したことに一時は驚くも、気の差は未だにベジータが大幅に上回っており、勝てると見込んで再びなのは組にファイナルフラッシュを放とうとしていた。
ユーノの実力の元の50倍程度では圧倒的戦闘力を誇るベジータを殺すのはまだまだ立ち内のだ。

「俺のレ○プを喰らいやがれ!
ファイナルフラァーーーーーッシュッ!!!」

巨大な閃光が地下の壁面や床を削りながらなのは組に襲いかかる。
このロワで上位の実力者だった神樹をも倒した一撃が、なのは組と小町に襲いかかる!


165 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:40:49 Sq83TM1I0

しかし、その一撃に対しユーノはなのはたちの前に躍り出て、巨大な防御結界を張った。
ユーノは防御面に関してはスペシャリストだ。
だがそんな彼の結界による防壁もいとも容易く破られたことは先ほど証明されている。
その50倍硬い結界を張ってもやはり破られるだろう……

ただしそれは、単純に防御力を上げただけの場合である。


結界とファイナルフラッシュが衝突した瞬間、目のくらむような眩い閃光がなのは組を襲う。
されど閃光はなのは組や小町を蒸発させることはなく、結界から先へ進むことはないまま霧散した。

「ダニィ!?」

驚くベジータだが、これで終わりではなかった。
今度は怪物化したユーノの口に光が集まり出した。

テラカオス化進行によって得たユーノの能力……それは!

(こいつ…空気中に漂っている俺の放ったファイナルフラッシュの気の残滓を吸ってやがる!
それだけじゃなく、倍近くも奴の気の力が強まっているだと!?)

――結界で弾いた攻撃のエネルギーを吸収し、それを倍以上にして敵に返す。
敵の攻撃が強ければ強いほど強力になる……それが、テラカオスに近づいたユーノの能力であった!

「グラアアアアアアアアッ!!!」

攻撃を凌いだユーノ君が反撃に出る。
口からシュートバレットによく似た光弾がベジータに向けて吐き出されようとしていた。

「あれを喰らうのは流石にまずい!避けねば……ハッ!?」

さしものスーパーサイヤ人ベジータも自分の必殺技の倍以上ある攻撃は避けねばまずいと判断する。
ところが、彼が攻撃を避けようとした瞬間、ユーノによってチェーンバインドで手足を縛られ、身動きを取れなくしていた。
このチェーンバインドも50倍以上の強度があり、常人はおろかチート級の参加者では脱出不能であるが。理不尽級に位置するベジータなら2〜3秒あれば破壊して脱出できるだろう。
……もっとも、2〜3秒あれば今のユーノには十分であったが。

そしてとうとう吐き出された光弾。
ベジータの放ったファイナルフラッシュの倍以上の閃光であり、もうなのは組の面子は目を開いていられなかった。
その光弾の威力も速度も、なのはのスターライトブレイカーが花火に見えるレベルであろう。
ベジータは光弾が直撃する前にバインドを力技で破壊して脱出を試みるも、バインドの破壊と同時に閃光に包まれた。

「サイヤ人の……王子であるこの俺が……」



閃光が収まった後にはベジータの姿はなく、ユーノの攻撃でできた瓦礫と燃えかす、地下の空洞があるのみであった。
なのは組は、ユーノの手によってベジータに勝利し生存を掴んだのである。


166 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:41:26 Sq83TM1I0

「やりましたね、ユーノさん!」
「こいつめ、こんな隠し玉あるんなら最初から使えよ」

敵を倒したユーノをハス太とレオリオは賞賛し、彼に近づきながら褒め讃えた。
ハス太とレオリオはユーノが強力な変身能力を持っていてそれを今まで奥の手として隠し持っていたとばかり思い込んでいた。
そうでなくとも最凶の敵であったベジータを倒したことで緊張の糸が切れたのかもしてない。

「なのはさん、桑原さん、小町さん! しっかり!」
「う……うん……エリカ……さん」

エリカは気を失っている三人の介抱に向かう。
ユーノも気になるが今は倒れている味方を優先しての判断であった。
ちょうどその時に意識が混濁状態であったなのはも正気に戻りつつあった。

なのはが目覚めるのがあと10秒早かったら、この後に起こる惨劇は防げただろう。
もしくは『参加者を怪物に変える謎の瘴気』の情報を知る小町が気を失ってなかったら、エリカが三人ではなくユーノの方にもっと疑いの目を向けていたら。
情報は知らずとも鋭い勘を持つ桑原が倒れていなければ未来は変わっただろう。

だが運命は残酷だった。

なのはは覚醒した瞬間と同時に目を見開いた。
重傷を負った仲間たち。
跡形もなく消えた強敵。
巨大フェレット型の怪物と化したユーノ。
その光景全部が、千年タクウがなのはに見せた未来そのまんまであったのだ!


「ダメ!ユーノくんから離れてーーーッ!!」

なのははユーノの傍にいる二人組に声を絞り出すように警告を発した。
それは暗黒の未来を変えるための、彼女の最後の足掻きであった。

「え?」

……しかし、全ては遅かった。
なのはの言葉に何事かと思った二人はなのはに振り返るが、それこそが致命的な隙になってしまった。
よそ見をした瞬間に、テラカオス化進行によって敵と味方の区別がつかなくなったユーノは、二人のうち一人に牙を向き、首根っこにガブリと噛み付いた。
そして一瞬のうちに鋭い牙によって体と頭を切断させた。
ここまでで0.1秒にも満たない時間であった。
体が外れてしまった頭が地面に落ちてコロコロと私の足元まで転がってきた。
……その首の持ち主は――

「いやあああああああああああああああああああああ!!!ハス太くーーーーーん!!」
「ハス太……!?」
「ハス太さん!」

ハス太の首に映る表情には、一瞬で味方に殺されたがために何が起きたのか理解していない呆気に取られた表情をしていた。
邪神級の力を持つ少年のあまりに呆気ない最期と、ユーノの突然の暴走にレオリオとエリカは怒りと悲しみを覚えるよりもただただ驚愕していた。
一方、この未来を知っていて皆に話さなかったなのはの表情は、とうとう惨劇の未来を変えられなかったことにより絶望に歪んでいる。
そして怪物ユーノの視線がギロリとなのはに向いた。


167 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:42:15 Sq83TM1I0

「グウウ……」
「ひッ!?」

おどろおどろしい怪物の複眼に、相手が恋人であるユーノであることも忘れてなのはは腰を抜かしてしまう。
そして怪物はハス太の首のない骸をその辺に放り投げ、なのはに向けて一直線に駆けた。

「ゆ、ユーノ! やめろ! ぐあ」
「ユーノさん! うッ」

ユーノの次の狙いがなのはだと気づいたレオリオとエリカが止めに入ろうとするも、傷ついた二人では止めることも叶わず、ユーノの突進によって突き飛ばされて床に転がった。
そうしてユーノはなのはの下にたどり着いてしまった。

「あ、あああ……」
「ナノハ……」

恋人の変貌に怯えるなのはを前にしたユーノはなのはに向けて牙を向けて食い殺す。

「マモル……」
「え……? わ!」

などということはなく、口でなのは首の襟をくわえ込んだと思いきや、そのまま他の獲物に目もくれずに駆け出し、ベジータが神樹及び都庁を破壊する際に開けた穴の壁面を爪を使ってスイスイとよじ登って地上へと出て行った。

残されたのは静寂とレオリオとエリカと、まだ気絶から醒めない桑原と小町、ユーノに連れていかれる際になのはが置いていったディパックにハス太の惨死体だけだった。

「畜生! いったい全体、何が起きてんだよ」

状況の読めないレオリオが吠える。
そして冷静さを取り戻そうとしていたエリカがようやく、主催がばら撒いたと思われる瘴気のことを思い出し、口にする。

「まさかユーノさんも瘴気に当てられて……!」
「瘴気!? 神樹の言ってた奴か!
それとユーノが怪物になるのと関係あるのか!」
「ごめんなさい、私が仲間に気を配りきれなかったばっかりに……!」

自分たちよりも情報を知っているエリカを問いただそうとするレオリオの視線と、情報を持っていながら兆候を目撃していなかったからとはいえ仲間が瘴気に感染発症する可能性を考慮していなかった自分にエリカは強い自責の念を覚える。
だが立ち止まってばかりもいられなかった。
こんな時こそめげるのではなく、動き続けなければいけないのだ。

「今は都庁に戻りましょう」
「ユーノを追わなくて良いのか!? 今のあいつじゃなのはの身の安全も危険だぞ!」
「わかっています。私だってそうしたいです。
ですが、私たち全員がボロボロであり気絶した桑原さん小町さんを抱えて追いかけるのも止めるのもまず不可能……ここは治療も兼ねて都庁に戻るしか――」
「いいや、おまえらはもう生きて都庁に帰れねえぜ?」
「「!?」」

突如、聞き覚えのある声が聞こえたと思った瞬間……レオリオの上半身が背後から飛んできたエネルギー弾によって消し飛び、下半身だけを残してこの世を去った。

「なッ――」
「レオリオさん!」
「下半身だけあれば良いってな、まずは一匹SATUGAIしたぜ」

レオリオの命が消し飛んだあと、嘆きたい気持ちも抑えてレオリオを殺した下手人を視界に捉えると、そこはあらゆる意味でいてはならない男がいた。


168 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:43:01 Sq83TM1I0

「ベジータ!! あなたは死んだハズじゃ……」
「一度の戦闘で惑星破壊規模の戦闘を行うサイヤ人を舐めるな。
今までに都市が一瞬で蒸発するような攻撃くらい何度も食らっている。
本気の必殺技だったら東京など軽く消し飛ぶが、そんなことをすれば狂信者の本拠であるビックサイトも吹っ飛んじまうからな。
そうならないように今まで威力をかなり落として撃っていたんだよ。
あのガキには驚かせられたが、俺を殺すには手加減しまくったファイナルフラッシュの倍と+α程度の威力じゃ足りなかったな」
「そんな……」

ベジータは死んでいなかったのだ。
跡形もなく消し飛んだように見えて、実は少々遠くへ飛ばされただけ。
多少の手傷と出血は負わされたものの、スーパーサイヤ人を殺すには程遠い。

「どうやらあのガキは俺が見ていない間にどこかへ行ったようだな。
能力的に俺を殺せそうな奴はいなくなってちょうどいい。
次の一撃でおまえと都庁ごと吹き飛ばしてやる」
「くッ……」

ベジータの腕に再び、気の力が宿る。
今度はエリカごと都庁ごと消し飛ばすつもりなのだ。
都庁にはまだ無傷の戦力にダオスやフォレスト・セルも残っているが、バーダックよりも遥かに格上なスーパーサイヤ人を倒せる保証はない。
さらに地下にいるベジータの攻撃を察知できているかまでは不明であり、フォレスト・セル辺りは生き残れても魔物と対主催の希望である世界樹や他のメンバーはアタルやレオリオのように消滅させられる危険がある。
対してエリカは手持ちポケモンを失い、ベジータの攻撃を阻止できるだけの戦力は持っていない。
今度こそ最悪の状況、万事休す。
エリカも今度の今度こそ終わりを確信する。









「『距離を操る程度の……能力』&死価『プライス・オブ・ライフ』!!」


169 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:43:53 Sq83TM1I0

エリカが諦めかけたその時、一人の女傑は目覚め、立ち上がり。
ベジータに向けて不意打ちによる能力の付加によって回避絶対不可能の無数の銭弾幕を放つ。

「うおおおおお!?」

今までは届かなかった弾幕は全てベジータがユーノによって付けられた傷口に吸い込まれていき、食い込ませる。
いかなスーパーサイヤ人でも体の内部までは鍛えられないという判断だろうか?
硬すぎる肌と筋肉を避けた体内攻撃により、小町による攻撃で初めてベジータにダメージが入り込む。

「こいつ傷口に攻撃を!
だがこの程度でスーパーサイヤ人が死ぬと思うな!!」

確かにダメージは入ったが、ダメージそのものは微々たるもの。
殺すには威力が足りなすぎた。

「いいや、アンタはここで死ぬんだよ。死神の剣でね」
「!?」

しかし相対する小町は冷徹な視線をベジータに向けていた。
実力差は蟻と象並の差があり、自分にボロボロにされた相手のものでありながら、恐れを抱かずに相手を殺そうとする視線。
ベジータはその視線に、金髪キャラに睨まれる以上の恐怖を一瞬でも感じ、ゾクリと脊椎を震わせた。


「――死(ころ)せ 『神鎗』」


そして死神によって刑が執行された。
次の瞬間、ベジータの全身に耐え難い激痛が走り、口や鼻や目などのという穴という穴から血を噴き出した。

「がはあああああああ!!」
「ベジータが!?」

ユーノの攻撃ですら倒せなかったベジータが、悶え苦しんでいた。
その彼の苦しみ方はポケモンバトルで、特に状態異常を得意とする植物系ポケモンを扱うので見覚えがあった。

「これは毒! それもかなりの猛毒!」
「そうさね。神鎗には奥の手として内部に死に至る強力な毒が仕組まれている。
刀の一部を相手の体に植え込み、解合すれば発動するって仕組みさ」
「き、貴様、さっきの銭の中に刀の一部を……!」
「ああ、銭はただのカモフラージュ。傷口を通してアンタの体内に神鎗の破片を入れさせてもらったよ」

ユーノが開けた傷口。小町はそれを利用してベジータの体内に銭弾幕に混ぜた砕けた神鎗の破片を侵入させた。
これまではベジータの高すぎる防御力によって体内に侵入させる前に阻まれるが、ユーノが手傷を負わせたことで、破片の体内侵入が可能になったのだ。

「直接攻撃が効かないなら毒ならどうだと思って咄嗟にやったことで、毒が効かない相手ならあたいらは詰んでいたが……
どうやらサイヤ人は高い戦闘力と引き換えに毒への耐性もないみたいだね」
「お、おのれぇ〜、ごふッ!」

かつて戦った仲でもあるレストには状態異常に耐性を持つ故に神鎗の猛毒を使っても効果はなかっただろう。
同様に強敵のセルベリアは抗菌作用を持つラグナイトに守られているので効果は薄かろう。
しかし毒や病気に耐性を持っていないサイヤ人のベジータにはまさにクリティカルヒットだったのである。

「クッソたれ〜! 死ぬ前におまえらだけでも道連れにしてやる!」

毒による死を確信したベジータは、最後の抵抗として小町とエリカだけでも殺そうとする。
毒のせいで気が上手く練れないのでギャリック砲以上の強力な技は使えない。
そのため、無数のエネルギー弾を放つ弾幕攻撃、通称グミ撃ちで二人を殺そうとする。
しかし小町はエリカを抱えた後、冷静にベジータの弾幕を躱していく。

「こちとら幻想郷の弾幕ごっこで鍛えてんだい!
満身創痍のアンタの弾幕じゃ、止まって見えるんだよ!」
「クソッ! 大人しくくたばりやが「くたばるのはテメーの方だ! ベジータァーーーッ!!」

さらにベジータは毒と攻撃を躱される苛立ちにより気の察知能力が弱まり、それによって気絶から醒めた桑原の側面からの奇襲を許してしまう。

「ぐああああああ!!」

なんでも両断できる桑原の次元刀によってベジータの両腕と両足が切断された。
今まではベジータに掠らせることもできなかったが、今度は当てられる状況下だったために次元刀が効果を発揮し、スーパーサイヤ人の高い防御力を無視して切り裂いたのである。

「ハス太、レオリオ、すまねえ……だが一矢報いたぜ……う」


170 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:44:42 Sq83TM1I0

桑原が目覚めた時にハス太とレオリオの死体が目に飛び込んだために二人がベジータに殺されたと思い(ハス太は違うが)怒りのままに桑原はベジータに斬りかかった。
その直後に疲労とダメージにより再び気を失って地面に倒れ伏すが、彼の一閃によってベジータは戦う手段も逃げる手段も失ってしまった。

「がふッ……俺の…何が間違っていたんだ……教えて、くれ……」

とうとうベジータにも死の瞬間がきた。
なぜ愛する妻が死なねばいけないのか、なぜ自分より格下の相手に負けて虫けらのように毒にもがき苦しんで死なねばいけないのか、なぜクラウザーさんの歌を聞く願いは届かないのか疑問を投げかける。

だが答えは返ってこない。
毒をも癒すフェイスフラッシュの持ち主で、疑問を答えてくれる冷静で的確な判断力を持った仲間はつい先ほど自分が裏切って殺してしまったのだから。
せめて金髪にビビらず、人に流されず、妻の死にもめげず、クラウザーさんの歌に逃げない強い心を持っていたら運命は変わったかもしれないが、もはや後の祭りである。

「ブル…マ……」

最期に愛する妻の名を言い残し、サイヤ人の王子にしてZ戦士、誇り高き超人血盟軍の一員……だった狂信者は逝った。


【ベジータ@ドラゴンボール 死亡】


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「勝てたか……だけど」

小町たちはスーパーサイヤ人に勝利した。
だが小町が周囲を見るととても喜べる状況ではないのがわかる。
エリカと桑原は重傷、ハス太とレオリオは死亡、ユーノは怪物と化しなのはをさらってどこかへ消えた。
自分もアタルによって回復した分が帳消しになるほどの手傷と消耗を負ったのだ。
ここにいない日之影やアルルーナも負傷し、神樹は再び死地に立たされている。
狂信者軍団と貴虎・マーラによる襲撃でただでも大打撃を受けたのに、ベジータ一人のせいでさらに打撃を被ることになってしまった。
仲間を誰ひとりとして失わないつもりで戦っているが、現実はこの有様である。

「すまないね、神鎗。今までありがとな……」

これまで小町のメインウェポンだった神鎗もベジータに折られたばかりに柄しか残っておらず、斬魄刀を直す技術のない小町では修復もできなかった。
ある意味相棒であるとも言えた神鎗の喪失に小町は憂いの感情を覚える。

そんな彼女たちにカマキリに似たFOEが現れた。
地震でダンジョンの構造が変わってなかなか地上の世界樹に戻れずダンジョンを彷徨っていたアイスシザーズである。
仲間の出現に小町は喜ぶが、どうやら仲間は彼一匹しかいないようであり、状況を読めてなさそうな雰囲気からしてあかりたちがよこした救援ではなさそうだ。

『死神! 大丈夫か!』
「アイスシザーズか!」
『騒ぎを聞いて駆けつけてみれば、この惨状は一体……そこにいる和服の女ととうもろこしみたいな頭をした男は誰だ?』
「大丈夫、この二人は仲間だ。
地下にずっといたアンタは知らないだろうがレストとダオスもエリカのことは知っている」
『そうか……』
「それよりアイスシザーズ、すぐにでも地上の世界樹に戻ってエリカと桑原の治療を行いたいんだ。その大きな背中を貸しておくれ」
『人間は好きではないが、同盟の者ならいちおう信用しよう。
死神、敵がまたこないとも限らない。早く人間たちを背中に乗せるんだ』

とにかく重傷を負ったエリカと桑原を安全地帯である世界樹に運ぶ必要があった。
エリカの話によると自分が気絶している内に怪物化したユーノと拐われたなのはの行方も気がかりだが、アイスシザーズ込みでもユーノを止められる気がしないのでそちらは断念する。それよりもとにかくダオスや他の仲間にこの事を報告すべきだろう。
小町はアイスシザーズの背中に気絶した桑原を背負わせ、そのあとに続いてエリカも乗った。
それだけでなく……

「小町さん、それは……」
「仲間をこんなところに置いていくのは寂しいだろ?」

頭と首が別れたハス太と下半身しかないレオリオの亡骸を小町は抱えていた。
死んだ彼らも弔ってやるつもりなのだ。

「アイスシザーズ、死んでる奴は背中に乗せちゃダメか?
ダメならあたいが連れて行くが」
『……死者を弔いたい気持ちは俺にもわかる。良いだろう、乗せていけ』
「いいってさ、エリカ」
「本当にありがとうございます、小町さん、アイスシザーズさん……」

小町とアイスシザーズの厚意にエリカの目は涙で潤んだ。
そして二人の亡骸と、ついでになのはが置いていったディパックを回収すると、小町たちは地上の世界樹に向けて出発した。


そこには両手足をもがれたベジータの死体だけがポツンと残った。


【二日目・12時00分/東京・都庁近辺】


171 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:46:21 Sq83TM1I0

【小野塚小町@東方Project】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、首輪解除
【装備】斬魄刀『神鎗』@BLEACH(破損して柄のみ)
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:もう仲間を誰も失わない為にカオスロワを終わらせる
0:ひとまず桑原とエリカを連れて都庁へ
1:殺し合い打破のためにも都庁には協力する
2:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
3:幽香及びバーダックの名が放送で呼ばれたことに疑問
4:変なの(セルベリア)に因縁つけられちまったね
5:超人達からの情報を鵜呑みにはしないが、一応ダオス達に伝える
6:世界に二度目の大災害が起こるだって?
7:神鎗に変わる強力な武器が欲しい
※飛竜たちと情報交換して、主催達が九州ロボにいることを知りました。
※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました)

【エリカ@ポケットモンスター】
【状態】右腕潰傷、ダメージ(大)、深い悲しみ、歪みし豊穣の神樹及びアルルーナのトレーナー
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、モンスターボール×2(神樹とアルルーナ)
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:ユーノさんが怪物化したなんて……
1:世界樹に集まっている人にも世界滅亡の未来を伝える
2:ポケモンと一緒に生き残る
3:珍しい植物タイプはゲットしておく
4:世界樹の軍勢を手助けする
5:死なないで神樹……!
6:ハス太くん、レオリオさん、モジャンボ、キノガッサ……ごめんなさい

【桑原和真@幽遊白書】
【状態】気絶中、ダメージ(大)、疲労(大)、深い悲しみ
【装備】なし
【道具】支給品一式、大量の食糧
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:(気絶中)
1:ハス太、レオリオ、すまねえ……
※ユーノの変貌を把握していません


【アイスシザース@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)
【装備】無し
【道具】ちりとり、支給品一式、タイムふろしき@ドラえもん、ガソリンの入った一斗缶、医療道具一式、ノートパソコン、ハス太とレオリオの死体
【思考】
基本:都庁を住処にしたモンスター達と協力して生き残る
0:小町たちを守るべく護衛しながら都庁へ撤退
1:雷竜様(雷鳴と共に現る者)の意思を引き継ぎ、都庁の世界樹は死んでも守る
2:魔物を奴隷にする人間は嫌いだが、同盟の人間なら一応は信頼する
3:デスマンティス達の裏切りに未だにショックを受けてるが、戦いに私情は挟まないようにする
4:雷竜様だけでなく多くの仲間までやられるとは……
※貴虎の持ち物であったノートパソコンにはヘルヘイムの情報が載っています



【ハス太@這いよれ!ニャル子さん 死亡】
【レオリオ・パラディナイト@HUNTER×HUNTER 死亡】




【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】ダメージ(大)、首輪解除、神樹に挟まれて身動き取れず
【装備】己の拳
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を倒す
0:こまっちゃんとエリカは無事か?
1:仲間を守る
2:混沌の騎士が遺した謎を解く
3:大災害による世界の滅亡を阻止する
4:↑の全部やらなくちゃあならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。
5:大災害と怪物作り(テラカオス)……何か因果を感じるんだが

【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】気絶、首輪解除、深い悲しみと怒り、混乱
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、野球のユニフォーム
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:気絶中
1:加治木先輩を殺した拳王連合は絶対に許さない
2:時間があればスマホを使ってネットで情報を探る
3:DMCファンだけど信者の暴動にはドン引き
4:世界が滅びるなんてそんな……
5:超人はもう殺す


172 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:47:09 Sq83TM1I0

【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、冷静
【装備】ウィンチェスターM1912
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:都庁から応援を呼ぶ
1:友人たちと生き残るためにも、都庁に協力する
2:空気中に漂う物質への対処法を考える(世界樹が有力?)
3:狂信者には絶対に負けません
4:世界の滅亡ですか……流石に驚きました

【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】健康、首輪解除、深い悲しみ、アイスシザースの背中に乗っている
【装備】エンシェントソード@Minecraft
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:仲間と一緒にカオスロワを終わらせて主人公らしく大活躍!
0:都庁から応援を呼ぶ
1:混沌の騎士、亡くなった友人達の分も頑張る
2:まどかと同じく、人間と魔物の共存に賛成
3:オオナズチ以外の都庁のモンスターの背中に乗りたい
4:みんなの力で世界の滅亡を阻止する!

【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【状態】ひんし、幹が半分に折れている、エリカのポケモン
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:(意識混濁)

【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【状態】ダメージ(中)、深い悲しみ、エリカのポケモン、神樹に挟まれて身動き取れず
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明品
【思考】基本:雷竜達の遺志を継ぎ、世界樹を守る
0:お姉さまはご無事なの!?
1:お姉さまと世界の滅亡を阻止する
2:拳王連合及びその協力者は皆殺し、絶対皆殺し






 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


173 : たどり着いてしまった未来 :2017/02/12(日) 16:47:52 Sq83TM1I0

ショッピングセンター、渋谷109。
かつて二人のテラカオス候補者もとい食人鬼の男女が一時滞在していた施設である。

そこには今、テラカオス候補者の男と、彼の怪物化を防げなかった一人の女がいた。

ユーノ・スクライアと高町なのはである。

「ぐ、ぐ、グアアアアアアアア!!!」
「ユーノくん!?」

なのはを拐いつつ地下から渋谷109内まで逃げ込んだユーノだったが、そこで大きな雄叫びをあげたかと思いきや、見る見るうちに小さくなり、怪物フェレットの姿から元の人間の姿に戻った。
丸裸にハス太を殺した時に浴びたのであろう返り血で体は汚れていた。
表情もまた、自身の体の変貌や暴走していたとはいえ仲間を自分の手で殺めてしまったことに、未だに信じられない表情をしていた。
そんな彼になのはは涙を流しながら抱きついた。
とにもかくにもユーノに謝らなくてはいけない……そんな罪の意識がなのはを支配していた。

「なの、は……僕はいったい……僕の体はどうなってしまったんだ!?」
「ユーノくん、ごめんなさい……みらい、変えられなかった……」


混沌の力に翻弄されていたとはいえ、怪物となり仲間を殺めてしまったユーノ。
一つの未来は信じず、そしてもう一つの未来は恐れたばかりに最悪の未来に進んでしまったなのは。
二人は意図せず罪人になってしまった……


【二日目・12時00分/東京・渋谷109】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、19歳の身体、混乱、深い悲しみ
【装備】レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、千年タウク@遊戯王
【道具】なし
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:ごめんなさいユーノくん……
1:死んでしまったヴィヴィオたちのためにもこの殺し合いを終わらせる
2:ユーノ君がいれば何も怖くない……と思っているけど……
※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました。
※未来の自分が使っていた技の一部が使用可能です
※レオリオの死をまだ把握してません

【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、全裸(血まみれ)、19歳の身体、混乱、テラカオス化進行度(大)
【装備】なし
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:僕の体に一体何が!?
1:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい
2:大災害の情報を集める
3:野田総理の死の原因を探りたい
4:なのはを悲しませた主催者たちは絶対に許さない
5:僕の手でハス太を殺したというのかよ……!
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※PSP版の技が使えます
※怪物化(テラカオス化進行)に気づきました
※首相官邸にて、いくらか主催陣営の情報を手に入れた可能性があります
※後ろの初めてを奪われる未来が存在するようです
※テラカオス化進行によって巨大フェレットに変身する能力を得ました
 あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます
 ただし現状では変身すると暴走状態に陥り、敵味方に関係なく襲い掛かります
※レオリオの死をまだ把握してません


174 : 名無しさん :2017/02/12(日) 16:48:15 Sq83TM1I0
投下終了です


175 : 名無しさん :2017/02/12(日) 23:27:24 Sq83TM1I0
>>172のあかりの状態表にある
アイスシザースの背中に乗っている はただの修正ミスなのでwiki掲載時にここだけ消していただくと助かります


176 : 名無しさん :2017/02/13(月) 23:58:17 7vQme4WM0

アタルが逝ったか…
恐るべしベジータ
なのは組も半壊と最近は対主催にとって厳しい展開が続くな


177 : 名無しさん :2017/02/14(火) 08:36:54 QdI02mQc0
投下乙!
タイトルからして嫌な予感しかしてなかったが、想像以上の大惨事になったな…
なのな組も壊滅していよいよ万全な対主催はゼロ、対してマーダーは貧乳に安倍さんにテルミにDMCに天魔王と極悪揃いっていうね
ベジータが最終的にこんな最期を迎える原因も大元は金髪恐怖=ラージャン=DMCなんだからなんの因果やら…


178 : 名無しさん :2017/02/15(水) 15:43:32 f0yAhZZ2O
対主催レ○プ!最悪の裏切り者と化したベジータ!

今期のベジータの行動を最初から読み返すと
○貴虎のパソコンを置き引きしたことに始まり、そのパソコンのデータから拳王連合軍を誤解させる
○妻が殺されたからとはいえ最後に裏切った挙げ句に超人虐殺、都庁となのは組にでかい損害を与えて有力対主催だったユーノのテラカオス化を招く
○戦果はマーダー殺害数0、対主催殺害数8(ハス太の死亡した間接的な原因であることを含めたら9)
○ヘタレ脱却が遅すぎ。対マーダーや主催陣との戦闘はしていない、野球にも参加させてもらえない

マジで対主催にとってマイナスなことしかやってないことに気づいた
7期とは逆の大戦犯プレイだよw


179 : 名無しさん :2017/02/15(水) 16:56:19 2DVU7Q/20
>>178
こいつぁひでぇや……

主任→最期まで勘違いを貫き、強力対主催の警察組全滅と都庁に大損害を引き起こす
ユッキ→欲望全開放。強力対主催のネオクライシス帝国を壊滅に招くだけで飽き足らず、京都マップ破壊(+拳王軍へ更なる誤解)に歌姫超強化

やってることが強力対主催の超人の全滅となのは組の壊滅だし、下手すりゃベジータの戦犯ぷりは上記2名すら上回るか?
あと一人駄目対主催いたら、悪い意味で四天王が生まれそう


180 : 名無しさん :2017/02/17(金) 13:34:37 rcFlSSbUO
>>179
一部例外を除いてチーム全体をかませ犬にした十神・・・・・・
と言いたいところだが、こいつの場合は運の要素も大きいし、他の三人が加害者型ダメ対主催ならこいつは被害者型ダメ対主催か


181 : 名無しさん :2017/03/16(木) 12:18:04 bmcUWrig0
改めてアタルにいさんの行動を読み直すと、冷静で的確な判断が全部裏目に出てる感が半端ない

野球チームに扮して主催本部に潜入→ぶっちゃけ主催にはバレバレなので偽装する意味なし、さらにフリーザ軍と試合して倒した結果、都庁から誤解を買う
拳王連合軍と手を組むや


182 : 名無しさん :2017/03/16(木) 12:35:40 bmcUWrig0
途中送信失礼

拳王連合軍と手を組む→誤解が集中しまくている拳王連合軍の風評被害の巻添えを食う
ガチレズを死国に残す→二人がテラカオス化で暴走して裏切る
九州ロボを奇襲する→今期の主催は世界救済が目的なのでマクロ的にはマイナス しかも飛竜に憑依したテルミを将軍とハクメンの目の届かないところで解き放ってしまう
ベイダー卿を追いかける→もっと危険な安倍の台頭を許す
都庁に入る→仲間を失う
狂信者に扮する→王子が狂信者になり、弟と仲間を手にかけられ、自身も死亡
ベジータを仲間にする→最 大 級 の 失 敗 積み上げられた成長フラグは全部対主催に向き、有力対主催に


183 : 名無しさん :2017/03/16(木) 12:40:19 bmcUWrig0
スマホに慣れてないせいかまたやっちまった・・・

ベジータを仲間にする→最 大 級 の 失 敗 積み上げられた成長フラグは全部対主催に向き、有力対主催に向けられ、多大な被害をもたらす
そもそもこいつが貴虎のパソコンを置引しなければ拳王連合軍の都庁への誤解も起こらなかった


184 : 名無しさん :2017/03/21(火) 10:01:49 wTWR8kiE0
まあ拳王連合と都庁の誤解に関しては、将軍様が遠距離からセルの気配警戒してたからパソコン無くても生じたかもしれないが…確かに他は裏目具合が凄いな
まあ大体ベジータが悪い。ナッパと比較すると本当にどうしてここまで差がついたのか


185 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part10 :2017/04/22(土) 04:13:27 hLpSBrSE0

 昼の海を高速艇は切り裂くように進む。

「パパ……」
「熱斗さん……」
『熱斗くん……元気を出して』

 その片隅で膝を抱えて、俯く少年が一人。
 偉大な父親が自分が居ぬ間に死んでしまったのだから。

「隣、いいですか?」
「貴方はセ……Xさん」
「熱斗さん、その言い方は少し如何わしいかと思います」
『うん、それは翔鶴さんの言い分が正しい』

 落ち込む熱斗の横にジャージの女・ヒロインXがどっさりと座り込む。
 
「私の騎乗スキルはEXという規格外だったんですがね。
 あのムギさんがいうには『EXはAの上じゃなくて、規格外だからEX』という理論を突き付けられてしまいましてね」
「つまり、操縦席から追い出されたんですね」
「端的に言えばそうです」

 ワープできないポンコツ宇宙船をワープできるくらいの騎乗スキルであるが、それだけである。

「私にも息子がいました……ええ、どうしようもないほどの不良息子でしたがね」
「そうなの……?」

「ええ、キャメロット城の窓ガラスを壊して回り、盗んだ名馬で走り出し……。
 私がこっそりマーリンから永遠に借りていった砂糖菓子のつまみ食いまでやらかし――――。
 挙げ句に『この支配から卒業する』と言い出して叛逆して、国を滅ぼした不良息子でしたがね」
『それって円卓物語のモードr……』
「駄目だ、ロックマン、それ以上言ってはいけない!」
「そうです! この人はXさんです! そもそもあのイングランドの有名な王様が女性なわけないです!
 こんな人が! ね、こんな人が!!」
『翔鶴さん、それは言い過ぎだと……』
「うっ……それは流石の私でも少し傷つきます……」
『ほら!』

 その時である。
 大きく高速艇が揺れた。
 何事だと思い、熱斗たちは窓から外を見た。
 すると、そこには………

「あれは……『戦艦煉獄』!?」
「あの志々雄真実が全財力の5分の3を費やした、あの『戦艦煉獄』!?」
「あの御旗は……『DMC』と書いてありますね」
 

 一方、DMC煉獄外部。


「いいですか、私は裸がユニフォームです」
「流石右京さん! 英国紳士だ! そうだよね! セイバーのお姉さん!」
「私の国が誤解されますから服を着てください」

 DMC煉獄は海路で大阪に向かっていた。
 主なメンバーは杉下右京さんを筆頭に。
 円堂守、セイバー、その他数百人ほどのモブである。

「皆さん、いいですか海路というのは比較的安全です。
 しかし、それは先程までです。もうすぐです。
 復活したクラウザーさんがこの海をも真っ赤に染めるでしょう。
 ですから、我々で先に迎えに行きましょう」
「右京さんが言うんだったら、間違いないな!」
「ええ! キリツグよりも信頼できますからね! 右京さんは!」

 その時である。

 鋭い回転が掛かった硬球は右京さんの剥き出しになった局部に直撃した。
 ボールはそのままポトリと右京さんの足元に静かに落ちた。
 野球の死球は打者に当たって大きく跳ねるより、静かに地面に落ちた方が危険なのだ。

 跳ねるということは。つまり、まだ運動エネルギーが残っている状態である。
 しかし、その場に落ちるということはボールの持つエネルギーを全て体で受け止めることになるのだ。

 ましてや、10期において数々の強敵と(野球で)戦い、(野球の)特訓で培ったボール。
 メジャーリーグなんて尺じゃその威力は計り知れない。

 まあ、ということで……

【杉下右京@相棒 死亡確認】

 チ○コがもげたら死ぬ。


186 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part10 :2017/04/22(土) 04:14:08 hLpSBrSE0

「おい、右京さんのチ○コがもげたぞ!」
「くっそー! どうなってやがる!」 

「いや、それよりもどこから砲撃が……!?」
「あれは拳王軍の船だ!」
「拳王軍ってデカデカと書かれてやがる!?」
「舐めやがって!」
「拳王軍絶対許さないぞ!!」

 双方の距離はざっと1km以上離れている。
 普通なら当たらない。 
 そう、普通ならば……

「あー……無性に高速回転する野球ボールを当てたくなる的だったから、つい、ね……」
「あの時の遠投特訓が役に立つとは……」
 
 MEIKOの(相手にぶつけることに関しては)正確無比なコントロールならそれが可能だった。
 
「オラァ、もう一発ッ!!」

 MEIKOの砲撃のような投球が放たれた。
 なお、さっきの揺れの原因はこのMEIKOのせいである。

「ゴッドハンド!」
「約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

 が、今回は防がれた。

「あれは『円堂守』という世界一……いえ、宇宙一のサッカー馬鹿だ、そうです」
「何、宇宙一だと!?」
「あのバンダナのガキが!?」
「サッカー馬鹿だか○○○ー馬鹿だか知らないけど、邪魔するなら……」
「打ち倒し、突き進むだけですよね?」
「うむ」

 野球とサッカー。
 決して相容れぬ二つのスポーツが激突しようとしていた。
 素直にキックベースやれよ。
 
「ああ、あのセイバーらしき女は私が殺ります……
 あんな外道と仲がよくて、パチモン臭がするセイバー死ね」

 セイバーを見るや否や、ヒロインXの眼の色が変わっていた。
 とりあえず、拳王軍は直接殴りに行く班と待機班に分かれることになった。

「ところで悪魔のおじさんは?」
「悪魔将軍さんだったら、途中下車しましたよ、あのバイクで」
「一人で?」
「全く困った人です」

【二日目・13時00分/太平洋(大阪東京間の静岡辺り)】
【拳王軍高速艇内部】
【光熱斗@ロックマンエグゼ】
【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【琴吹紬@けいおん!】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】


【拳王軍高速艇外部】
【謎のヒロインX@Fate/Grand Order】
【ラオウ@北斗の拳】
【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【ダイアー@ジョジョの奇妙な冒険】


【DMC戦艦『煉獄』】
【円堂守@イナズマイレブン】
【セイバー@Fate/Zero】
【その他多くのDMCモブ狂信者】


187 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part10 :2017/04/22(土) 04:15:06 hLpSBrSE0


「……来たか」
「貴様は……何者だ?」

 富士樹海の最奥。
 バイクで突っ切り、ここまで一直線に向かってきた男。
 対峙しているのは槍を持った男。

「……今は訳あってここの守護を任されている者だ」
「それは『あやつ』の命か?」
「………………そうだな」

 将軍の進路を立ち塞がる男。
 一目では青年にも見える。
 しかし、見た目のわりには落ち着きがある。
 
 何よりも悪魔将軍と対峙しても全く動じていない。

「来い……!」
「ふん、小僧が……!」

 ダイヤモンドソードを両腕に装備し、将軍は回転しながら突撃する。
 しかし、その回転を男は受け流すように槍を振るう。
 
「くっ……」
「どうした?」

 接近戦。
 超人レスラーにとっては得意分野と言っても過言ではない。
 しかし、目の前の男は異常とも思える槍捌きで全ての攻撃を防ぐ。
 
 それどころか神速とも思える踏み込みの速度で悪魔将軍との間合いを詰める。
 そのまま轟風を巻き起こし、砲弾のような刺突を放つ。

 音速にも近いほどの斬撃が両者から放たれる。

「……貴様、不死身の肉体か?」
「そういう、貴様はダイヤモンドの肉体だな」 


 ――槍が大気を切り裂き咆哮する。


「――――貴様、インドの大英雄・『カルナ』だな」

 キン肉マンの世界にはロクでもない神様が沢山いる。
 だが、そんなロクでもない神様の中にもまともなのもいる。
 
 それが太陽神・スーリヤ。
 金髪に3つの目、そして4本の腕を持つ姿の神。
 そして、そのスーリヤの息子の一人が……


 【施しの英雄】と称されるこの男・カルナである。



「武器など前座。真の英雄は眼で殺す……」


 カルナの右目から炎を纏ったビームが出た。
 悪魔将軍を追尾し、迫りくる。

 だが、それは必滅の炎。
 神だろうと悪魔だろうと燃える。

 その炎。
 太陽の火。
 ダイヤモンドをも焼け焦げる。
 破壊したのは悪魔将軍の超人硬度調節機能。


188 : 光熱斗の奇妙な冒険 Part10 :2017/04/22(土) 04:15:27 hLpSBrSE0

 さらに燃える炎。
 
「死者の魂がこの扉の奥にある……『窯』の中にあるのはわかっている。
 ……貴様は『あやつ』の傀儡になっているだけだ……」
「確かにオレは貴様が言う、『傀儡』かもしれんな。
 だが、今は…………」

 自身に掛けられた呪いはこの場にはない。
 全力で存分に自分の武を振るえる。

 自身の命あるかぎり、この槍を振るうだろう。

 そして、ここ(死者スレ)の出入り口の守護を任された。

 自信を召喚したあの黒い青年(10/)がもうこの場にいなくても。

 そう、燃え尽き灰になった悪魔の躰を見て強く思った。 


【悪魔将軍@キン肉マン 死亡】



【二日目・13時00分/静岡県・富士樹海】
【カルナ@Fate/Apocrypha】
【状態】ダメージ(小)
【装備】自身の槍、黄金の鎧
【道具】不明
【思考】基本:何人たりともここを通しはしない


189 : 名無しさん :2017/04/22(土) 04:16:10 hLpSBrSE0
投下終了です


190 : 名無しさん :2017/04/22(土) 15:54:55 Eb0m50WM0
投下乙
右京さんはともかく悪魔将軍まで逝ったか……
全力全開のカルナなら仕方ないが

それよりも悪魔将軍生きてたらスニゲーターの上司ということで都庁との説得ルートもあっただろうが、死んじゃって本気で潰えた感が半端ない
更に部下も出ているのは魔雲天しか残ってないし、そろそろカオスロワで超人が絶滅しそう……


191 : 名無しさん :2017/04/25(火) 23:13:55 WHSv9qwk0
投下乙ー
流石に将軍様もゆで理論が通じないガチでやばいカルナ相手じゃ相手が悪かったか…
そう考えると、カルナと戦わずに済む(正規ルート外侵入)黄泉レイ○システム作ったディーと狭間は先見の明があったんだな。這い寄る変態のせいでそっちも使えないみたいだけど

>>190
一応まだ、MEIKO姉さんとフェイが会えれば…と思ったが、あの人有無を言わさず野球ボールで都庁狙撃しかねないんだよなぁ…


192 : 名無しさん :2017/05/05(金) 23:53:48 PzFaNcxM0
投下します


193 : ある戦艦での話をするとしよう :2017/05/05(金) 23:54:56 PzFaNcxM0

 戦艦『煉獄』。
 志々雄一派が全財産の5分の3をつぎ込んだ戦艦。
 だが、この『煉獄は』原作において手榴弾で沈んだ戦艦とは違う。
 どれだけ違うかといえば漫画版と実写映画版くらい耐久力が違う。
 まあ、それくらいの差があるので簡単には沈まない。

「ぬん!!!!」

 ラオウはその剛拳を振るう。
 直接当たったモブ狂信者は勿論、その近くのモブ狂信者も吹っ飛ぶ。
 拳王とモブ程度じゃ“格”が違いすぎるのだ。
 
「馬鹿め! 後ろが隙だらけのガラ空きィ!!」

 そんなラオウの背後で銃を構えたモブの歩兵隊が構える。
 引き金に指を掛けて、引く。
 銃弾は放たれ……
 
「それがどうした?」
「ぬぅ、平等院……いや、その動きはトキィ!!」
「だから、俺はそのトキという男ではない」

 打ち返された。
 瞬間移動にもような動きでその場に現れ、その手に持ったラケットで。
 その動きはまるで激流に身を任せ同化するような動きであった。

 テニスのラケットを持った老け顔の男に。
 銃弾はピンポイントに放たれた銃口に入った。
 
 それが出来るからこそ日本No.1のテニスプレイヤー。
 いや、テニヌプレイヤー・平等院鳳凰。

「滅び去れ……」

 100球近くのテニスボールを同時に放つ。
 今までは10球同時が限度だったが、このロワにおいて彼も確実に成長していた!
 
 100球同時に放たれたテニスボールが戦艦のモブにぶつかる。


194 : ある戦艦での話をするとしよう :2017/05/05(金) 23:55:45 PzFaNcxM0
 
「くっ、皆!」
「円堂さん、ダメです……俺たちじゃ止めきれないです!!」
「バカヤロウ!! あの頃のSATSUGAIの気持ちを思い出せ!!」

「……いや、アンタこそその自分本来のスポーツを思い出しなさいよ……!」

 剛球が一閃する。
 凄まじいまでの回転量を伴ったボールは円堂の近くのモブに被弾した。

「今のは……まさかこのおばさんが、右京さんを……!」
「裸でいる方が悪い……馬鹿なの? それと私はおばさんじゃない……!」

 再び放たれる剛球。
 今度は円堂の手元でホップアップし、顎に被弾した。
 円堂は脳震盪に似た感覚が襲い、そのまま気を失……

「甘いわね……!」
「ゴハァ……」

 その寸前、今度は鳩尾にボールが直撃。
 そのショックで円堂は意識を取り戻した。

「ほら、アンタ? 宇宙一なんでしょ? これくらい止められないの?」
「くっ、怒りの鉄拳!!!」

 再び放たれるホップする球を上から叩き潰すように止めようとする。
 しかし、その程度の必殺技じゃ止められない。
 またしても顎に被弾し、円堂の意識が飛び……

「まだよ……!」
「ぐはぁ……」

 また鳩尾にボールが直撃した。
 痛みで再び円堂の意識が覚醒した。

「あんまり私を失望させんじゃないわよ!」
「ちくしょう!! こうなったら、マジン・ザ……」

 しかし、円堂のマジンさんは出ない。
 マジンさんは化身である。
 化身は人の気が目には見えないが、その気が極まった時、その姿が形として現れるものである。

 では、その気が極まるときとは何か?
 答えは簡単。

 【サッカーへの思いである】。

 SATSUGAIに現を抜かしたことにより、円堂は忘れてしまったのだ。
 サッカーへの熱い思いも、サッカーが好きということも。
 
 その後、何度も脳震盪で意識が飛び、鳩尾へのダメージで意識を取り戻した。
 そして、何度も試した。
 マジン・ザ・ハンドも。
 ゴッド・キャッチも。
 グレイト・ザ・ハンドも。
 しかし、全て失敗した。
 その度にMEIKOはがっかりした。
 宇宙一のサッカー馬鹿じゃこの程度のものであるということに。

「な、んで……で、ない……んだ……」
 
 MEIKOはそのボロボロになった円堂の様子を見て、大きく息を吐いた。
 そして、最後のMEIKOボールで上半身と下半身を真っ二つに引き裂いた。

「それはね、アンタが……本来の自分を忘れたからよ。
 自分が好きだったもののことすらね……」

 宇宙一のキーパーですら止められない。
 その野球への思いはきっと宇宙一に近いのだろう。

「私は……歌も好きだけど……それと同じくらい野球が好きになったよ」

 それはもう誰にも伝えられない。
 だが、心の奥底には確かにあった。
 歌を歌うのが彼女……VOCALOIDなのだから。
 そこらへんはまだ忘れてはいない。
 

【円堂守@イナズマイレブン 死亡確認】


195 : ある戦艦での話をするとしよう :2017/05/05(金) 23:56:37 PzFaNcxM0


「貴様は……?」
「最強のセイバー……ヒロインX……」

 聖剣を構える少女が二人。
 奇しくも同じ同じ構え。
 そして、何故か知らんが同じ顔。

「私以外のセイバー……死ね」
「…………何を言って!?」

 青いマフラーが靡く。
 魔力放出で一気に間合いを詰める。
 聖剣同士の激突で凄まじい風圧が起こる。
 激突するたびに近くのモブが吹っ飛ぶ。

「その剣(エクスカリバー)の間合いならよく知っている……」
「くっ……」

 風王結界(インビジブルエア)で聖剣は隠している。
 だが、目の前の青ジャージの少女はそれを完全に見切っている。

「その太刀筋……まさか……」
「ほう、流石に気付きましたか?」
「新手のアサシンですね、わかります」
「死ねぇッ!!!!」

 ヒロインXさん、ブチギレ案件である。
 そして、対セイバー用にとっておいたとっておきを発動する。

「"十三拘束解放"シール・サーティーン──"新・円卓議決開始"ニュー・デシジョン・スタート!」
『──承認。ライオンヘッド。ネームレスレッド。バベジン。…………あと何人か』
「是は、セイバーを倒す戦いである」
『ヒロインX……で、ボクはこんな役回りでいいのかな?』

 どこか胡散臭い青年のボイスが流れた。
 魔力全開になったヒロインXが一気にかたをつけに来る。
 ノーマルな聖剣と反転した聖剣を併せ持つことで強そうに見える。

「セイバー、討つべし……」右の聖剣の斬り上げ。
「セイバー、討つべし」左の聖剣の斬り下ろし。
「セイバー、討つべし」右の聖剣の斬り上げ。
「セイバー、討つべし!」左の聖剣の袈裟斬り。
「セイバー、討つべし!!」右の聖剣の袈裟斬り。
「セイバー……討つべしッ!!!!」両方の聖剣による……


「無銘(エックス)……」

 対セイバー特攻とアルトリア顔特攻が乗った……

「………勝利剣(カリバー)ッッッ!!!!!!」 


 謎ビームとX状の十字斬り。
 完全なオーバーキルである。

「この流星剣に断てぬものはありません……多分」

 霊基が消えかけているセイバーを見下してヒロインXはその聖剣を向ける。

「貴女は……本当に一体……」
「あるときは宇宙を駆けるストレンジャー……
 またあるときはサーヴァント界最強のセイバー……
 はたまたあるときは謎の長宗我部ヒロインX……
 そして、その正体は……!!!」
「あ……時間切れです」
「へ……? ちょっと私の真名はアルトr……」
「私の時間切れです」

 そして、セイバーは消滅した。
 彼女はまたカムランの丘に戻った。
 彼女はまた聖杯に願う。
 今度は『まともなマスターと巡り会いたい』。
 そして、願わくば……『まともな聖杯戦争』に参加したい。


【セイバー@Fate/Zero 死亡】


196 : ある戦艦での話をするとしよう :2017/05/05(金) 23:57:41 PzFaNcxM0


「まあ、いいでしょう……私が最強のセイバーであるということに変わりはないでしょう」

 だが、そんな最強セイバーでも倒せなかったセイバーが二人ほどいた。
 一体一ならきっと負けなかった、うん、きっと勝てた。
 二対一で。しかも理不尽級&理不尽級だったからね、仕方なかったのだ。

 一方、その後ろで……

『……ほ、本部へ入電、セイバーが裏切って、拳王軍に着いたぞ……』

 モブの一人が最後の力を振り絞り、そのメッセージを伝え、力尽きた。


 ◆ ◆ ◆


「『ドーモ。DMC狂信者=サン。イマジンスレイヤーです』」
「アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?」

 イマジンスレイヤーはDMC狂信者に向かってオジギをする。
 実に律儀である。

「おい、ジョジョ! この掟はニンジャにとっての掟であり、ニンジャではない者には全く関係ないぞォ!!」
 
 それに対して、ディオは冷静に物陰に隠れつつ、解説する。
 男三人(+ネットナビ一体)は操縦室に向けて突き進む。

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
「波紋疾走(オーバードライブ)!!!」「ぐわあああああああ!!!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 道中も槍術室もモブしかいなかった。
 ので、ダイアーさんたちだけでも楽勝だった。
 恐く、右京さんがこの船のトップだったのだろう。

 頭を取ればあとは雑兵しかいない。
 戦いの大局は始まった瞬間にすでに決していたのかもしれない。

「クロスフュージョンしたジョジョとダイアーさんに勝とうするなんぞ、無駄無駄ァ!!」

 テンションは高いがディオは何もしていない。
 していたのは、リアクションと解説だけである。
 ……彼が何しにきたのか、さっぱりわからぬ。 

 こうして、煉獄のブリッジを何もなかったかのように彼ら三人で制してしまった。
 そして、ダイアーさんは高速艇に連絡を取る。
 
「こちら、ダイアー! 紬お嬢、相手の操縦室を制圧した! 」
「はい、分かりました……先ほど拳王さんからも連絡がありました。
 『甲板の敵を全滅させたそうです』」

 案外あっさり終わってしまった。
 ので、テンションが高くなったディオも適当に電話も掛けた。
 適当に電話番号を押して、テンション高く電話を掛けた。

『はいはい……こちら、ビッグサイトDMC本部コールセンター』 
「僕の名はディオ!! 貴様らDMCの外道どもはダイアーさんとジョジョが倒す、今から行くから、覚えておけ!!」
『は? てめぇ、何言ってんだ?』
「ふはははははははは!!!!」

 テンションが高いまま、ディオは電話を切った。
 電話の相手のことを何も知らないまま。


197 : ある戦艦での話をするとしよう :2017/05/05(金) 23:58:55 PzFaNcxM0

【二日目・13時30分/太平洋(大阪東京間の静岡辺り)・DMC戦艦『煉獄』】
【謎のヒロインX@Fate/Grand Order】
【状態】健康、首輪解除
【装備】無銘勝利剣
【道具】ドゥ・スタリオンⅡ号(故障中)、スマホ(FGOをやってるので電池の消耗が激しい) 、自転車
【思考】基本:私以外のセイバーを殺すが、その前に対主催しておいて他の対主催者と協力関係を築いておく。
0:私こそがセイバー・ザ・セイバー!!
1:宇宙の平和が第一ですね
※彼女のクラスはアサシンです。
※謎のヒロインXです。その正体は謎って言ったら謎です。


【ラオウ@北斗の拳】
【状態】ダメージ(中)、首輪解除
【装備】炭酸水
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:ダース・ベイダ―たちを倒す
0:主催者チームを全員屠る
1:そして、拳王が新たな時代を作る
2:東京へ行き、拳王軍を率いて都庁のヘルヘイムを屠る
3:死兆星から使者の小娘を配下にしたぞ!
4:トキ似の男を配下にしたぞ!
5:強そうな鎧の女を配下にしたぞ!
6:謎の黒猫たちを配下にしたぞ!
7:なんかいろいろ配下にしたぞ!
8:悪魔将軍たちと協力体制を取るぞ!


【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【状態】ダメージ(大)、首輪解除
【装備】テニスラケット、テニスボール×∞、諭吉一枚
【道具】支給品一式、少年ジャンプとヤンジャン、その他不明
【思考】基本:主催者達を滅ぼす
1:マーダーも滅ぼす
2:ラオウたちと行動する
3:テニスがしたいが、野球をする

【MEIKO@VOCALOID】
【状態】ダメージ(小)、修羅化、首輪解除
【装備】アルティメットアーマー@ロックマンXシリーズ
【道具】支給品一式、ノートパソコン@現実
【思考】 基本:『真の黒幕』及び主催者共の皆殺し
1:ラオウ達に協力してもらう
2:ヘルヘイムのインベスはとりあえず皆殺し
※今までとは別人です。
※『無限の回転』を習得しました

【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】全身にダメージ、不幸、首輪解除、本気モード
【道具】シンクロチップ、他人のデッキ(「ぬばたま」デッキ)
【思考】基本:あのAA
1:ネットバトラーの一員として主催やマーダーと戦う
2:それにしてもあの怪しい二人組の正体は……?

【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【状態】HP半分
【装備】ムラマサ
【道具】なし
【思考】基本:新しきお館様(上条)に従う
1:敵は殺す、慈悲はない
2:ようやく乗り気になったようだな、お館様
※PETの中にいます


198 : ある戦艦での話をするとしよう :2017/05/05(金) 23:59:54 PzFaNcxM0

【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】テンションが高い、首輪解除
【装備】PSP(デューオ抜き) 、十徳ナイフ
【道具】支給品一式×3、シンクロチップ
【思考】基本:ネットバトルとベースボールを極める
0:主催を倒すのはラオウではない、このディオだッ!
1:ジョースター家を手に入れる
2:ジョジョより優越感を得る
3:熱斗達にネットバトルを挑むのは後回しだ!
4:デューオがいなくても、勝つのはこのディオだッ!
5:シンクロチップを手に入れたし、デューオとクロスフュージョンしたい

【ダイアー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】割とダメージがあるが少し回復した、首輪解除
【装備】イカ墨とパスタ@現実
【道具】支給品一式、治療道具、その他不明
【思考】基本:主催を倒す
1:ディオとかいう奴も倒す
2:ストレイツォ……
※ディオを『吸血鬼ディオ』と思っていません。
※何か見ましたが、別に物語とは関係ありません。


「……ったく、ンだ今のは?」

 ディオから電話を受けた主はビッグサイトDMC本部コールセンターの者ではなかった。
 今しがた『スタンド【シンデレラ】』の持ち主、辻彩を恐喝及び殺害し、飛竜の顔を作り替えた。
 …………ユウキ=テルミであった。

「まぁ、いつまであの顔じゃ格好がつかねぇからな、ヒヒヒ」

 元の顔に。
 いや、どちらかといえば寄り代にしていた躰の【ハザマ】の顔にした。

(あのサイコマンって野郎はマジでサイコだからな……
 能力見ただけで何者かわかっちまう、マジで化物か?)

 自分のマグネット・パワーの師ながらそれなりに認めると同時に警戒もしていた。
 サイコマンの本来の実力なら悪魔将軍と同等に近い。
 ならば、DMC狂信者の幹部の誰よりも強い可能性がある。

(まっ、俺様には関係ねぇことだがな)

 そして、テルミは考える。
 このまま拳王軍がDMC狂信者の本部を襲撃するとなれば確実にどちらかが潰れる。
 そうなれば、カオスロワのパワーバランスはまた変化するだろう。

(さて、先に潰れるのはどちらかなァ?)

 毒蛇はこの二つの台風に干渉はしない。
 今はそんなことより、自分のこと優先である。

(やべぇのはハクメンちゃんとクソ貧乳、そして、『自分を首相だと思い込んでるカス』だけ。
 こいつらが勝手に潰しあってくれるのが一番楽っちゃ楽なんだけどよぉ……
 あっ、あとあのクソ鳥野郎は絶対殺す) 

 策を練る時間はまだ少しある。
 だが、その時間も限られていることにはまだ気づいていない。

【辻彩@ジョジョの奇妙な冒険 死亡確認】

【二日目・13時30分/東京都のどこか】
【ユウキ=テルミ@BLAZBLUE】
【状態】首輪解除
【装備】光剣サイファー クナイ、各種オプション、蛇双・ウロボロス、光秀のスマホ
【道具】支給品一式 
【思考】
基本:テラカオスを利用して、滅日計画を遂行する。
1:邪魔をする奴は殺す。
2:あのクソ鳥野郎は絶対にこの手で殺す……草加はどうでもいい。


199 : 名無しさん :2017/05/06(土) 00:00:43 z26sTRCo0
投下終了です


200 : そして誰もいなくなる :2017/05/07(日) 11:18:17 qb5Vqjt.0
「さーって、次はどう動くか…」

肩をコキコキと鳴らしながら、テルミはおぞましい笑みを浮かべて次の方針を考える。
邪魔者やウザい奴、そしてあのクソ鳥を始末しつつ、最終的には自身の計画を完遂する。
それは変わらないのだが、そこに至るまでの過程をどうするか?
遊び、戯れに過ぎないのだが、ストレス発散も必要だ。
ハクメンらをおちょくってもいいが、いかんせんあのクソ鳥への殺意が思考の結構な割合を占めてしまっている。
何しろ草加を持ってるせいで、カイザの日にまで遭遇できない可能性があるのがまた腹立たしい。

「ッあああぁぁ!思い返したらまた腹立ってきたァ!」



「そうか。実は俺も同じ気持ちだ」


「あン!?」
「フル・ダークネス・スーパーノヴァッ!」



突如、テルミを暗黒の破壊エネルギーが呑み込んだ。

「…カードを3枚伏せる」

冷徹に配下のサイバーダークwith冥竜に砲撃を命じ、自身は冷静にカードで身を守る男。
DMC狂信者、ヘルカイザーである。

「光秀達を殺したのはきさ
「きぃかねぇなあッ!?クソゴミカスがよおぉ!?」
「っ!冥竜を破壊し、代わりにサイバーダークの破壊を無効にする!さらにトラップ発動、新たなドラゴン族をサイバーダークに装備っ!」

不意打ちを受けたテルミだが、僅かなダメージのみでサイバーダークへと肉薄する。
手に持つサイファーの切れ味の前には、機械竜程度は紙屑同然だ。
相対するヘルカイザーも瞬時にそれを理解し、冥竜を犠牲にしてサイバーダーク本体を守る。
一瞬にして切り刻まれる冥竜。抜け殻とはいえ最高ランクのドラゴンを容易く始末するこの男の危険性は、計り知れない。
光秀からの連絡が途絶え、スマホのGPSが本来の予定とは異なる位置に向かったのを怪しんだのは失策だったか。

(いや、この男の存在は確実にクラウザーさん復活の妨げになるっ!この命を賭して、SATSUGAIせねば!)

ヘルカイザーは意を決して、墓地からドラゴン族を選択する。


(冥竜が破壊されるのでは、都庁で討ち取った雷竜でも結果は同じ!ならばここは…!)


201 : そして誰もいなくなる :2017/05/07(日) 11:19:17 qb5Vqjt.0
〜〜同刻、冥府〜〜


「いや、やめてください…!お父様、正気に戻って…!」
「ハァハァ、オチ○ポはいいぞサクヤ!儂らは性の喜びを知らなかった!親子仲良くマーラ様と繋がったのだ!儂らも仲良く繋がって、共有すべきじゃ!」
「っ!確かにあの時肉体こそ屈しましたが、この魂までは穢されてない!お父様、堕ちないで!」
「何故快楽に抗うサクヤ!お前とて、先程から何やらもじもじと物欲しそうなそぶりを見せているではないか!」
「そ、それは、私の身体がレスト様と一緒になってて、その…」
「人間の若造なぞより、マーラ様を崇めよ!」
「この身も心も、あの方のものです!断固拒否します!」
「お前ももっと激しいテクで責められればマーラ様のよさが…ん?なんじゃこのコード?」

「サイバーダーク、黄龍ファガンを墓地から引き摺り出せ!」


「んほおぉぉぉ!?こ、コードが全身をこしゅってんギもちィィィ!?おひりにもぶっといのきたぁぁぁ!し、触手プレイも素晴らしいものだったのかぁぁあはぁぁん!?」
「お父様ーっ!?」

〜〜〜〜

「…おい、俺がいうのも変だが、別のもん呼んだ方がよかったんじゃねぇか?」
「言うな」

地上での戦闘の中、テルミはらしくない程に呆れた表情を浮かべ、殺す対象に思わず同情の言葉を投げかけてしまう。
確かにエネルギーは感じるのだが、サイバーダークに装備された瞬間に白目を剥いて痙攣する生き物を見てしまえば当然の反応だろう。

「サイバーダークの攻撃!」
「無駄だって言ってんだろぉが!その屑鉄と変態諸共、光秀ちゃんとこに送ってやんよぉ!!!」

「○○○○ーッ!」
「うおキモッ!?」

全身にマグネットパワーを巡らせ、ヘルカイザーらを殺そうとするテルミ。
しかしまさかサイバーダークごと尻をこちらに向けて突進してくるとは思わなかった。
そのおぞましさに対する感情は、生理的な殺意100パーセントである。

「死ねやカス野郎がっ!」

ヘルカイザーは後回し。今はこの眼前の奴を完膚なきまでに叩きのめす。
ウロボロスでまとめて全てを喰らい尽くす。
断末魔の悲鳴を残すことも許さない。

「んおぉぉ!?マ、マーラ様ばんざああぁぁぁい…!!!」

残された。


「クッソがぁッ!」

堪らなく不快な気分だ。これを見越してアレを召喚したのであれば、大した奴だ。
あの鳥野郎に次いでぶち殺し確定。光秀以上に無様な最期を晒させてやろう。
ウロボロスで執拗なまでにオーバーキルを決めながら、テルミは決心した。



「決闘は熱く、しかし冷静であれ。相手の次の一手を考る、そのためにも相手から注意を逸らすな」


202 : そして誰もいなくなる :2017/05/07(日) 11:20:41 qb5Vqjt.0
「ンだと…!?」

冷静に響くヘルカイザーの声に、テルミは思わず青筋を浮かべる。何本か血管をやったかもしれない。
しかしその直後、表情にこそ出さないが僅かに驚愕した。
今しがた、奴の操るサイバーダーク及びそれの装備品となったドラゴン共は破壊した。
だというのに、奴の前にはサイバーダークが存在している。
決闘者は同じカードを3枚まで操るという以上、サイバーダークが追加召喚されていてもおかしくはないのだが、今度は何を装備した?
冥竜と黄龍、闇と光のドラゴンは、テルミが理解している範囲では墓地の(死んだ)ドラゴンの中では最上位だ。
さらに強力なドラゴンもいることはいるが、彼らはドラゴンズに所属したりと現在も生存している。

「お前の速さは驚異的だ。お前が今、2体目のサイバーダークを無視して俺にも攻撃をしかけていれば、カードの発動より先に俺は死んでいただろう」
「ヒャハ、雑魚がいきがんなよ。つまりその3体目がテメェの最後なんだろうが」
「…ああ、最期のカードだな。だが、悔いはない。俺はクラウザーさん復活の、確かな礎となれたと、確信できたからな」
「はあ?テメェも光秀ちゃんと同じかよ。クラウザーの馬鹿は魂ごと消滅…」

煽ろうとしたテルミだが、ヘルカイザーの眼を見た瞬間に思わずたじろいでしまう。
それは光秀のものとは違っていた。死の覚悟を決め、かつ何かをやり遂げたような…そんな感情が見て取れる。

「これは、俺の最後のサイバーダーク。そして同時に発動した、このカードの名は…」

「っ!?」

「トラップカード【輪廻独断】!このカードの効果は、墓地に存在する全ての死者を対象にできる!
ああ、俺には見えたぞ、クラウザーさんの名前が!あの方はまだ墓地で復活を待っていた!」
「なっ!?」
「だがそれは俺の役目ではない。ディーの、他の仲間達の役目だ。俺の役目、それは彼らの妨げとなるような者全てのをSATSUGAI!
輪廻独断の効果により、俺は墓地のカードをドラゴン族に変更できる!墓地全域の効果を全てこいつ一人を対象とすることで、ようやく呼び出せたぞ!
サイバーダークの装備対象!それは…魔王マーラだ!」


「フォッフォッフォッ!まさか、このワシを契約に縛り付けるとは、この世界の若造はみなやりおるのぉ!」
「!?!?」

御立派様が顕現した。
その光景を目の当たりにしたテルミは、かつてないほどに震える。
形容し難い、自分とは性質の違う悪の化身。
装備品の身に成り果てながら、自我を保っているというか、むしろ触手がサイバーダークを絡めとっている。
あれではどちらが装備品となっているかわかりゃしない。
加えて灰になっていくが効果は発動した輪廻独断のカード。その効果により、魔王マーラはドラゴン族になっている。
ただでさえ御立派な逞しボディだったのが、ドラゴンの強靭な生命力とそそり立つ鋭さまで手に入れ、より凶悪さを増している。
言うなれば、今の彼は龍王マラゴン。


203 : そして誰もいなくなる :2017/05/07(日) 11:22:47 qb5Vqjt.0
「さて、契約内容はあやつを昇天させればお主も昇天させて構わないということでOKじゃな?」
「ああ、それでいい」

暴力的な御立派がぶるんぶるんと荒ぶれば、サイバーダークが悲鳴をあげる。
カードを構えるヘルカイザーも汗をだらだらと流している。
とてもではないが、まとまに制御できる相手ではないのだから当然だろう。

(ち、明らかにアレはやべぇ相手だ。早いとこカードを操る決闘者を始末して…)



「遅すぎるのぉ、お主」
「な、ぐガアアアアァアアアァアッ!?」




だが気がつけば、テルミは貫かれていた。

「ぬほっ、いい締まりじゃな。
しかし勿体無い。ストライダーの屈強な肉体に、この星の力ともいえるマグネットパワー…いい材料を持ちながら、お主はそれを使いこなしきれていない。
借り物の力は所詮借り物。本来の碧も持たぬ…いや造るのを後回しにしたのがお主の敗因じゃな」
「が、がが、く、そ、ガアアアアッ!?」
「自身の強さに胡座をかきすぎたのぉ。お主が思っている以上に、この世界の運命に抗う者達は強く、襲いがいがあるものばかりじゃったぞ」
「アア、アアアアアアアア!?」
「この世界の行く末が気になるか?ならば天より見守ろうではないかっ!いざ昇らん、めくるめく官能の天国!」
「アッ、アッ、アッーーーー!!??」

吐き出される特濃の白濁液。
それはテルミの思考や精神、彼そのものを快楽で埋め尽くすには十分過ぎた。
艶のある断末魔の嬌声を最後に、彼はピクリとも動かなくなった。膨大な快楽が精神を破壊し、憑依の間もなかったのだ。

「ふぅー。さて、次はお主の番じゃぞヘルカイザー」

すぐさまマーラ様は標的を変える。

「俺にDMCを教えてくれた光秀たちの仇は討てた。恐らくクラウザーさん復活の妨げとなっただろう黄龍も処理できた…
野球チームの始末もしてやりたかったが…俺もクラウザーさん復活の生贄となろう。さあ、来るがいいマーラ!」
「いざ!」
「クラウザーさアッーーー!!!」

覚悟を決めていたヘルカイザーすら、嬌声を抑えることはできなかった。
しかしずっと握り締めていたカードを、脳が焼き切れる前に発動していた。

トラップカード【亜空間物質転送装置】

「ぬおっ、こ奴と繋がった瞬間に発動とな!?」

次の瞬間、マーラ様と繋がったヘルカイザーとサイバーダークは亜空間へと転送され、この世から消滅した。
決闘者が死ねば、カードモンスターやカード効果は消滅する。
しかし相手は規格外の化物マーラ様である。念には念を入れて、自分諸共亜空間へと連れさる。
ディーとの会話で、マーラ様がクラウザーさんを狙う危険性を危惧していたヘルカイザーの、最後の障害排除の戦法がこれだったのだ。



後には白い液体に塗れた男の屍が残されるのみ。手を下した者は元は既に死者。
それをカードの力でドラゴンとして蘇らせる奇跡のような力の持ち主も、亜空間。
ここで何が起きたのか、誰も知りえない。
そして誰もいなくなった。
ただ冥府にて、魔王の復活が近づいたのみ。


【二日目・13時40分/東京都】

【ユウキ=テルミ@BLAZBLUE】死亡確認
※支給品や装備などは遺体の周りに残されています
【ヘルカイザー亮@遊戯王GX】 死亡確認
※支給品や装備なども亜空間のため、回収は不可能です


※輪廻独断の効果選択時、クラウザーさんが死者スレにいることが確認されました
※冥闇に堕した者、星輝の黄龍帝・ファガン、マーラ様はそれぞれこの戦闘の影響で一時的に死者スレ外送りとなっています
※これにより、ディーたちが再度黄泉レ○プシステムを使い死者スレに乗り込んだ場合、クラウザーさん発見の可能性が高まりました


204 : 名無しさん :2017/05/07(日) 11:24:23 qb5Vqjt.0
投下終了です


205 : 名無しさん :2017/05/07(日) 21:14:47 RpGW4PVs0
お二方投下乙!
あっさり終わったDMC煉獄戦とマーダーがファインプレイを働く珍しい展開
なんかラスボス臭を匂わせてそんなことなかったテルミ合掌w
何気に適当に見えて負ける理由がちゃんと書かれてるところがすごいな
そして例の親父は……もう何も言うまい


206 : 名無しさん :2017/05/08(月) 21:20:33 zwwhR2LE0
・駄目親父による近親○姦を阻止→倫理的にファインプレー
・駄目親父を死者スレから除外→DMC的にファインプレー
・テルミを討ち取る→主催者及び対主催的にファインプレー
・死したマーラ様に昇天対象追加→マーラ様的にファインプレー
・ヘルカイザー自身も死亡→野球チーム的にファインプレー

よくよく見るとヘルカイザーの行為が全方位にファインプレーだった件
というか狂ったマーダーが凶マーダーと相討ちでファインプレーする中

・のび太、緑間、ダイア―さん→拳王誤解の原因の一端。各地方マップ破壊で甚大な被害
・呉島主任→色々な人を巻き込み死亡させ、主催者に大金を貢ぐ
・ユッキ→ネオクライシス帝国崩壊+貧乳強化+マップ破壊+拳王誤解追加の四重奏
・ベジータ→開幕犯罪行為+万年ベンチ+拳王と都庁の誤解+豆腐メンタルからの裏切り+対主催虐殺のフルコンボ

何やってんだよ対主催?これもうどっちがマーダーかわかんねえな……


207 : 名無しさん :2017/05/09(火) 00:54:31 kKtHs01Q0
あいかわらずwiki項目の補完が神がかってるな
テルミの電柱破壊の話とか、現実視点で考えたら確かにすごいが、冷静に考えたらこのロワだとモブの狂信者すら電柱ぐらい余裕で破壊できるのを忘れてたわ


208 : 名無しさん :2017/05/09(火) 14:09:16 2OcHCDV20
項目読んでたらなんだか急にユウキ・テルミが小物っぽく見えてきたゾ……マジで不意打ちか武器・能力頼みの戦いしかしてねえw


209 : 名無しさん :2017/05/09(火) 18:55:38 cjiz/uWs0
デウスエクスマキナ→機械仕掛け(金属)相手にマグネットパワーの磁力で強制バインドからの惨殺(マグネットパワー頼り)
四次元殺法コンビ→バーダックを討ち取った直後のBHを不意打ちウロボロス。慌てたペンタゴンはサイファーで処理(不意打ち+サイファー)
白黒魔法少女→二人共ほぼ戦闘不能状態。なんなくウロボロスで処理(負ける要素がそもそも0)
光秀デスマスク→不意打ちからのサイファー+マグネットパワードーピング。光秀はウロボロスバインド+サイファー(全部盛り)
バド→バインドする暇もなく逃げられる
サイコマン→警戒して喧嘩を売らなかった
辻彩→シンデレラは戦闘向きのスタンドじゃない(負ける要素0その2)

いつも自信満々でオラオラヒャッハーしてたから全く気がつかなかったが、改めて振り返るとこれ、
全部サイファー(飛竜)とマグネットパワー(サイコマン)のおかげじゃね!?


210 : 名無しさん :2017/05/09(火) 23:00:21 nWfXIOqU0
原作じゃ、不意討ちでハクメン倒して、体奪ってラスボスになるやっぱりだから、まっ、多少はね?


211 : 名無しさん :2017/05/09(火) 23:02:28 nWfXIOqU0
×なるやっぱり
○なる奴


212 : 名無しさん :2017/05/10(水) 11:46:04 L8Uz6ajc0
ユウキ=テルミは最凶キャラに見せかけた残念キャラだった……?


213 : 名無しさん :2017/05/10(水) 11:54:20 9j86DB4.0
原作での性能面も設定の割には残念な性能だったからある意味原作再現と言えるな。


214 : 名無しさん :2017/05/10(水) 12:22:54 1An.f3ac0
設定上はメチャクチャ強くて、いつも自信たっぷりで、基本的に自分以外を見下している、でも実は残念な奴……
どっかで見たぞそんな奴。ああ、テルミはニアラと同(ry


215 : 名無しさん :2017/05/10(水) 15:18:03 uTyrRDcg0
強さだけでなく、九州ロボ戦でもバレないと息を巻いていた裏切りも結局監視カメラには写っていたし、そもそもニャル子がダークザギ窃盗やらかさなければテルミ含む血盟軍は撃退されてた可能性がある・・・一歩引いたところから見るとマジ真竜並の残念さ


216 : 名無しさん :2017/05/10(水) 16:59:51 N5G2Gtfc0
凶悪マーダーが対主催以上に貢献してるとかもう分け分かんねぇな


217 : 名無しさん :2017/05/10(水) 23:04:46 HuAwMNVA0
>>215
監視カメラとかはアレ、完全に後付け設定だから……ディスりしすぎはいかんよ


218 : 名無しさん :2017/05/10(水) 23:18:45 o9225pIU0
今だから言えるけど、実はテルミが関東に来た直後の当時、油断と傲慢が凄そうだったので都庁に喧嘩売りに行って返り討ちに遭う話考えてました
流れ的には
テルミvs小町(攻撃あたんなくてイラつくテルミ。小町にばかり集中してしまう)
その間に残りの影薄のステルスに気がつかずに追剥に定評のある黒子にサイファーとウロボロス盗られる

テルミ、マグネットパワーに移行するもマグネットパワーは地球=大地のパワー。まどか世界樹の干渉で吸い出せるパワー減少(ついでに中の人的にテルミのイラつき更に増加)

テルミ、格ゲーキャラらしく格闘モードに移行するも、物理効かないダオスに凹される
ゲージを貯めたいところだが、神樹はゲージを貯めようとする奴のゲージを前もって減らす習性がある(ついでにテルミはゲージ技が生命線)

飛竜の肉体捨てて精神体になるが、レストに殴り飛ばされる(霊体攻撃可能のため)
飛ばされた先にフォレスト・セル。美味しく食べられてテルミ浄化(消滅)

なんかうまい具合にテルミの各能力潰せる面子が揃ってたんで思いついたんですが、やっぱ今期はテルミがラスボスかな?と思って没にしました
でもこうしていざテルミの行動を改めて見てみると、小町だけでも勝ててたんじゃないかなとすら思えてくる


219 : 基地にて英霊二人 :2017/05/11(木) 01:23:08 28rkhgAg0
ここは主催がもしもの為に作った東京都伊豆大島基地。
そして基地の指令室にて一人の男が紅茶を飲みつつ指令室を見渡す。
司令室で世話しなく働く者達すべては紅茶を飲んだ男以外全員クローンヤクザだった。
そう、この基地には何割か特殊調整されたクローンヤクザが配備されていたのだ。

「やれやれ、同じ顔ばかりと言うのは参ってしまうね」

うんざりとして男は帽子を外して頭をかく。
そうやっていると隣にクローンヤクザが現れた、
どうやら空になったカップを見て新しい紅茶を持ってきたのだ

「オカワリを」
「ああ、お願いするよ」

そう言って新しく紅茶が淹れられるのを待つ、
同じ顔ばかり見るのは飽きるが彼らの淹れた紅茶は美味しいと思いながら。

「どうぞ」
「ありがとう、君も持ち場に戻ってくれ」

そう言うと紅茶を持ってきたクローンヤクザは規則正しくお辞儀をして戻っていく。
再び彼はとても暇な時間を過ごすと思っていた時、
指令室の自動扉が開き、もう一人の基地幹部が入ってきた。

「やあ、キャスターじゃないか。仕事は終わったのかい?」
「ええ、貴方に指示された地点にトラップの配置とシャドウサーヴァントの召喚をね」

キャスターと呼ばれた女は、報告を続けつつ男の隣に歩いてくる。
しかし、男はそれを気にせずに相変わらずモニターを見続けていた。

「それでコマンダー、状況はどう?」
「相変わらず平穏そのものさ、と言っても油断ならないけどね」

お互い名を言わずクラスのようなもので呼び合っている、何故か?
なぜなら、この二人はヒロインXやアルトリアと同じサーヴァントなのだ。
コマンダーと呼ばれた男の真名はヤン・ウェンリー、自由惑星同盟の名将と名高い男だ。
そしてもう一人、キャスターと呼ばれた女はメディア 、コルキスの魔女と呼ばれた女だ。


220 : 基地にて英霊二人 :2017/05/11(木) 01:23:55 28rkhgAg0
彼等はこの基地の建設と守備の為、秘密裏のココが呼び出していたのだ、なおサーヴァントであるため無給である。
なお、彼等が主催に付いていかなかったのはここ、建設途中の伊豆大島基地を依り代として召喚されたため、
伊豆大島基地周辺から離れられないのだ、これはココに依り代の役割が出来なかったためである。

「そうね、この基地がある範囲は禁止エリアだと言っても首輪を解除した連中がいつ来るか分からないもの」
「とは言え気を張り詰めすぎるのも疲れるものさ」

紅茶がもう一つ出される、メディアはそれを見てからヤンの顔を見た。

「いい茶葉があってね、一つどうだい?」
「……そうね、いただくは」

少し考えてからメディアは紅茶を受け取り飲む。
その様子を見たヤンは再びモニターに顔を向けた。

「それで、貴方は主催の敵対者の戦力をどう見るの?」

唐突にメディアが切り出してきた

「どうとは?」
「主催と敵対している中で危険な連中を知りたいのよ」
「ふむ……そうだね、なら私が脅威と感じた勢力を言って行こうか」

メディアの疑問にヤンは考えながら答えていく。

「まずは、都庁同盟軍。はっきり言ってここが来た場合勝てる可能性はないと言っていいだろう」
「なぜ?確かに彼らは強力、けれど幾度の襲撃によって多くの犠牲者を出し、疲弊しているはずよ」
「確かに彼らは幾度の襲撃で戦力は削られた、だけどまだ彼等は強力だ。特にフォレスト・セルや都庁同盟軍の幹部などだ」

ヤンが言った者達の顔写真が次々とモニターに映る。

「さらに厄介なのは協力者がいると言う点だ、ダオスやレスト、
 歪みし豊穣の神樹とそれを従えるエリカ、後は小野塚小町率いる集団などだね」

一息に要注意人物たちの名前を言った後に紅茶を飲んだ。

「特に小野塚小町率いる集団はこのバトルロワイヤルで未だに欠員を出していない集団だ、
 最も油断できないのは彼女たちかもしれないね」
「…………………」

ヤンの分析を静かにメディアは聞いていた、
そして静かな司令室に再びヤンの声が響く。


221 : 基地にて英霊二人 :2017/05/11(木) 01:24:34 28rkhgAg0

「そして次はクラウザーさんを崇めている狂信者達だね」
「……貴方もさん付けするのね」

メディアのツッコミをヤンはスルーした。

「正直、彼等にも攻められたら勝ち目はないだろうね。
 まず組織力と言う点ではこのロワイヤルトップとも言っていいだろう。」
「そうね、はっきり言ってあいつ等の数の多さには辟易したは」

画面にはDMC狂信者達の画像が映し出された。

「そうだね、数の多さゆえに玉石混交状態とは言え、それは人員補給がやりやすいとも言える、
 彼等も都庁襲撃で大分戦力は減っただろうがすぐに補充されるだろう」
「今はおとなしくしているとは言え油断できないというわけね」
「そういうことだ、幹部は何人かやられたとは言え幹部並みの実力者がいたとしても可笑しくないだろう」

DMC狂信者の中でも要注意な人物たちの画像が写し出された。

「特に注意しなければいけないのは上層部のメンバーは無論カギ爪の男率いる集団だろうね
 彼のカリスマは強力な面々を狂信者に変化させ、狂信者達の物資の豊富さも相まって凶悪だ」
「一人のネームドがいたら後ろには万の狂信者がいると、ほんと嫌になるわ」

メディアが嘆息を吐いて紅茶を飲んだ。

「それで次が天魔王軍」
「天魔王?あの小集団のこと?」
「ああ、いまだに首輪が付いてはいるがそれを感じさせないほど脅威と言っても良いだろう」

メディアの疑問の声をヤンは冷静受け止めて応えていく。
そして説明するためにまずは天魔王軍の首魁オルゴ・デミーラを映し出した。

「まずはこの集団の首魁たるオルゴ・デミーラだろうね、彼は歪みし豊穣の神樹すら圧倒した、それも魔法も使わずにね、
 だから消耗した都庁幹部なら倒せるかもしれない、それに頭も回るしカリスマもあると言うおまけ付きだ」
「なんとも厄介な存在ね、彼自身が変な美学に傾倒していて良かったわ、
 アレで大勢力になっていたら手も付けられないわね」
「ああ、彼にその気があったら都庁や狂信者達と互角に戦える勢力を生み出せたかもしれない」

そして次に映し出されたのは二人組、ミケ・ザカリアスと平山幸雄だ

「さて、この二人だがデミーラの部下として良く補佐していると言ってもいいだろう、ミケは戦闘力で平山はその頭脳と言ったところかな、
 しかも装備を獲得してその戦闘力に磨きがかかっている目を放していると痛い目を見るだろうね」

ふぅと一息吐いて紅茶のお代わりを頼むとすぐにクローンヤクザがかわりを持ってきた
それに満足しながら話を続ける。

「そして三体のマシンモンスター、凶悪と言ってもいいほどの強さだね」
「核に物理に魔法封じとんでもないマシンたちね、特に魔法封じが私には致命的だわ」

二人とも溜息を吐く、こっちの戦力は一個大隊とシャドウサーヴァントなのに戦力が強大すぎる連中がいることに。
だが天魔王軍に関してはまだ希望があると言えた。

「けれど彼ら最大の弱点は未だに首輪を外せてないという所だ、それがある限りこちらには来れない
 だけどそれを解除されたら、とても厄介なことになるだろうね」

そう言ってから紅茶を飲み干した。


222 : 基地にて英霊二人 :2017/05/11(木) 01:25:01 28rkhgAg0
「それで他に危険なグループはどこかしら?」
「そうだね、最も近い危機は拳王の連合軍かな、今彼等は高速艇に乗って東京を目指しているが、
 その途中でここを見つけるかもしれない、そうなってしまったらもうお終いだね」

あっけらかんとした様子で語るヤン、その様子にまたメディアはため息をついた

「本当に、戦力が足りないわね」
「ま、マスター達の本命の拠点が襲撃されて人数も減らされてしまったから仕方がない、
 どこも疲弊状態だけど最も疲弊しているのは主催陣営かもしれないね」

特にココたちを責めることはせずに紅茶を飲み干すヤン。
流石のミラクルヤンと言えどあんな手で襲撃されたのでは防ぎようもないと思っているのだ、
とは言え出来れば生き残ってほしかったのも本音である。

「さて、これで私からのレクチャーはお終い、納得してもらえたかい?」
「ええ、とても、とにかくどいつもこいつも危険な連中と理解できたわ」
「話し合える人物もいるんだけど、やっぱり主催陣営だから敵対は避けられないだろうね」

空になったカップを静かにおいて、司令室の椅子に奥深く座り込んだ。

「とは言え召喚された以上義理は果たさないといけない」
「あら、義理堅いのですね」
「禄を組んで貰ってもいるしね、無給ではあったけど、美味い紅茶を飲ませてもらったし
 それに他に行くあてもない、君はどうなんだい?」
「……そうね、私もほかに行く当てもないのだしここにいるわ
 しばらくは模型でも作っていましょうかしら」

そう言ってメディアは司令室から出ていく、その様子を見ながらヤンは少し嬉しそうに笑みをこぼし、
再びモニターを見始めた、さてこの平和は何時まで保たれるのやら。

【二日目・13時50分/東京都・伊豆諸島基地】

【ヤン・ウェンリー@銀河英雄伝説】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:サーヴァントとして召喚され、禄を組まれたためそれなりの義理は果たす
1:伊豆諸島基地の守備
2:出来れば平和が続いてほしい
※サーヴァントとして呼ばれましたが宝具が使えるのか不明です

【メディア@Fateシリーズ】
【状態】健康
【装備】破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)@Fateシリーズ
【道具】不明
【思考】
基本:マスター(ココ)の指示に従い伊豆諸島基地を守備する
1:部屋に戻って模型でも作ろうかしら?
2:

※二人とも基地を依り代として召喚されたため基地周囲から離れられません
※二人ともプロジェクト・テラカオスのことについて知らされているのか不明
※基地はメディアの力によってシャドウサーヴァントを配置しました。


223 : 名無しさん :2017/05/11(木) 01:25:18 28rkhgAg0
投下終了です


224 : 名無しさん :2017/05/11(木) 22:24:36 xPq1nAyw0
投下乙
こういう外側から見るような勢力確認回も良いね


225 : ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:17:13 GB0qvFhM0
投下します


226 : 狂えし者たちの巣窟 ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:18:33 GB0qvFhM0
ここはDMC狂信者の本拠地ビックサイト。
クラウザーさんを文字通り狂うほど愛して止まない者たちが集う場所。
その場所には数千単位の人員が集まり、外敵から身を守るために要塞化されていた。
中は人間をはじめ、様々な種族が入り乱れており、全員が多大な生贄を捧げてクラウザーさんを復活させる目的の下に共存していた。
とある老人は種族や人種の壁を超えて、互いに差別することもなく手を取り合う姿に感動を覚えるだろうが、彼のような狂人や同じ狂信者以外の目線で見ると、悪鬼蔓延る伏魔殿にしか見えないだろう。
何せ狂信者以外が入ればSATUGAIされる未来しかないのだから。
余程の実力者であっても準備がなければ内部に入り込もうとは思わない要塞が確かに存在している。



「右京さん……円堂さん」

ビックサイトの敷地内から海を心配そうに見つめる少女の名前は暁切歌。
彼女は鬼灯率いるグループを殲滅する際に絶唱と使い、その消耗によって一時的に意識を失ったが、本拠地であるビックサイトに右京たちが運び込んだことによって治療を受けて無事に回復した。
拳王連合軍討伐のために発進した煉獄には数時間前まで行動を共にしていた右京と円堂が乗っていたが、上層部からの指示により彼女と松本は乗せてもらえなかった。
右京も円堂も強者だが相手は理不尽級の拳王連合軍であり、カギ爪団からセイバーも来ているとはいえ、決して生きては帰れないという意味では決死隊である。
せめて戦友二人が生きて帰れないとしても多大な戦果を残して、クラウザーさんに貢献して欲しいと切歌は見えなくなった船に願うのだった。

「切歌……例の二人が心配なの?」

切歌の後ろから優しく声をかけてきたのはレジーナであった。
彼女はターバン集団である聖帝軍に敗れて命からがらビックサイトまで逃げてきた。
本来なら敵前逃亡で仲間の狂信者に処刑されてもおかしくなかったが、この時にカギ爪の男の弁護によって上層部が考えを改めて処刑を見送った経緯がある。
カギ爪曰くレジーナは聖帝軍と戦闘することで貴重な情報を得た生き残りであり、聖帝軍もまた自分たちカギ爪団が対処するので見逃して欲しいと頼んだのだ。
上層部にしても信者を増やすカギ爪の男の機嫌を損なうと流石に苦しいので処刑を見送った。
ちなみに切歌とレジーナはその際に知り合い、切歌がカギ爪の男同様に弁護側に回ったので友達になったのである。

「レジーナ……ええ、あの人たちに死ぬまで会えないとなるとちょっと悲しいデス」
「切歌も同じなんだね。私も友達のマナを失ったからその気持ちはわかるよ……」
「でもウジウジもしてられないデス!
 私もクラウザーさんのためにSATUGAIを続けて死ねれば、右京さんたちに会えるデスから!
 上層部の人たちからこんなに良い物ももらったことデスしね!」

悲しみの表情から陽気な表情に変わった切歌の手には一つのデバイスのようなものが握られていた。
それはシンフォギアの暴走状態の力を制御することで装者を強化するアイテム、イグナイトモジュールである。
本来なら彼女が手にするのは先(参戦時期のGではなく次期のGX)なのだが、狂信者には科学者も多くいるためにずっと早く手に入ったのである。

「ホラ! レジーナも装者に選ばれたのデスから頑張って!」
「ええ、プリキュアの如く生贄を蹴散らしていっぱいSATUGAIするわ!」

レジーナの手には切歌の持つギア「イガリマ」の姉妹品と言えるギア「シュルシャガナ」が握られていた。
レジーナもまたシュルシャガナに適合できる装者であると発覚したのである。
おそらくこのような戦力として増強できる理由があったのもレジーナが処刑されずに生かされた要因であろう。
なお、歌はDMCの曲でいい模様。

(シュルシャガナ……調のギア……)

シュルシャガナを感慨深そうに見つめる切歌。
というのもこのギアは元々は切歌の親友であった月読調の装備であったが、モブ狂信者によって見つかったそうだ。
その際には持ち主の調本人は見つからず、回収されたギアには血痕がついていた。
血痕のついた時期はカオスロワが開催される前に付着したものらしく、おそらく大災害直後のゴタゴタで調は――と考えた方が自然であろう。
加えて切歌にとって姉に近しい存在であったマリアも死亡し、母親代はりのナスターシャ教授も見つからず、切歌は一人ぼっちになってしまった。
この精神的に追い詰められたことが処刑されかけたレジーナを調に見立てて救いたいと思ったのかもしれない。


『おや、ここにいたんか、お嬢ちゃん』
「探したぞ」
『ふふ、仲がいいね二人共』

二人の前に狂信者である騎士っぽい鎧とソードが印象的な少女とエヴァ初号機、初号機と同サイズの巨人が現れた。


227 : 狂えし者たちの巣窟 ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:19:14 GB0qvFhM0

「シンジ、なにその装備?」
「松ちゃん、天子さん、イカしてるデスね!」

初号機に乗っているのはもちろんパイロットである碇シンジである。
初号機には拘束具の上から更にゴツゴツした鎧を追加された決戦用兵装であるF型装備に換装されていた。
中のパイロットであるシンジの火傷もビックサイトに大量に備蓄されている回復アイテムによって回復していたが、生々しい火傷痕だけは残っていた。
西武ドームでやられた屈辱を忘れないためにわざと残したのである。
その闘志を刺激されたためかはわからないが、シンクロ率もかなり高まっているようだ。

天子にはガラントアーマー+1一式を装備することによって、ただでさえ高い防御力と騎士っぽさが増していた。
天子曰く「ナイトがいない組織に未来はにい」とのこと。

松ちゃんこと松本には巨人の脊髄液を注射され、50m越えの巨人になった。
そこらの巨人と違って理性を保っていられるのは狂信者の技術と狂気じみた浜田愛からくる精神力とDCSの賜物であろう。
また、DCSによって突然変異を起こしたのか見た目は松本が過去に自分が監督・主演を担当した映画「大日本人」さながらであった。
パワーアップさせられた松本だが、それで狂信者に恩を感じていることはなく、仮にビックサイトに都庁同盟軍か拳王連合軍が攻めてきたら混乱に乗じてクラウザーさんに使われるらしい蘇生手段を奪うつもりである。

『これはF型装備って言うんだ。これなら聖帝軍のロボだろうがなんだろうがSATUGAIできる!』
「鎧とSATUGAIは謙虚な騎士の嗜みだからな。軽装で良いと思っている汚い忍者と乳垂らしな汚い死神とは格が違う」
『ワイは強くなって生贄を殺害できるならなんでもええけど……それよりも上層部とやらがワイらみたいなネームド狂信者は広場に集まるように言ってたで?』
「何かしら? そろそろこの邪魔な首輪を取り去ってくれたりとか?」
『だったら良いんやが、変に期待しない方がええかもしれへんな』
「この時間にクラウザーさんが復活するって噂もあったが、早まったモブ狂信者が言いふらしたデマだったそうだからな」
「誰が言ったのそれ?」
「ディーだ。もちろんその狂信者は処刑されたらしい」

会話をしながら上層部の指示通りに中央の広場へ向かうネームド狂信者一行。
その後ろには遅れて切歌がついてきており、彼女らの背中を見つめていた。

(私はクラウザーさんが生き返ったら死ななければいけない身……でもレジーナや松ちゃんたちには是非生きていて欲しいデス)

切歌は未だに自分が世界を滅ぼす存在・フィーネであると信じていた。
完全にフィーネになればクラウザーさんの身も危ないので、復活と同時に命を断つつもりなのだ。

(でも、私が死んでも復活したクラウザーさんの歌は残る。
 この命を削ってでもより多くの友にクラウザーさんの歌を聴かせるために、心身を燃やすデスよ)

友とクラウザーさんのために己が身の消滅も辞さない悲壮な決意を胸に抱く切歌であった。
……致命的な勘違いには気がつかぬまま。


 ※ ※ ※


228 : 狂えし者たちの巣窟 ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:20:57 GB0qvFhM0

時間は少し遡り、ビックサイト地下にある格納庫。

「これがレイヴンに変わる新たなる私の新たなる機体か」

格納庫には整備士やパイロットなどのモブ狂信者に混じって上層部の一人であるドリスコルと栗毛色の少女がいた。
彼の眼前にはこれからの超激戦にはついていけないであろうヴァンツァー・レイヴンに変わる機体、八卦ロボ・グレートゼオライマーがあった。
次元連結システムを使う天のゼオライマーに八卦ロボ全ての力が集約された本機の性能はオリジナルを凌いでいる。
その戦闘力は最弱武器ですらチート機体の代名詞であるフリーダムガンダムのハイマット・フルバーストを超えた威力を持っており、まさにスポロボJのバランスブレイカーに相応しい特機であった。
ちなみに元ネタと違ってレイヴンを意識しているためか、ゼオライマーは黒く塗装されている。

「このカタログスペックならあるいは……」
「戦闘力の高さだけでは都庁の軍勢には勝てないぞ、ドリスコル」

理不尽級の機体を手に入れて悦に浸っていたと思われるドリスコルに釘を刺すように女の声が聞こえた。
振り返るとそこには上層部の一員であるセルベリア「らしき」女がいた。

「わかっているさ、これまでの戦闘データから奴らや拳王連合軍その他対主催と対等以上になるには相応の作戦が必要だということは。
 だが、その作戦を実行するためにも大前提として理不尽級の力は必要だ。
 『性能こそが戦力の絶対的差ではない』が通用しないのがこのカオスロワだからな」
「ああ、私も自ら前線に出て、奴らの強さが身に染みてわかった。
 より強大な力も、力を抑え込めるだけの高度な作戦も必要だとな。
 ……そのためにも私は肉体を改造して悪魔の体を手に入れた」

セルベリアの姿を見てみると本来の白銀の神と爆乳っぷりに加えて、小町戦の時にはなかった体には碧に輝く黒い刺青とうなじには黒い角が生えていた。
小町と彼女の率いる影薄組相手に屈辱的な敗北を喫したセルベリアは、都庁の軍勢……特に能力による超回避能力を持つ小野塚小町を倒すために、人間を悪魔「人修羅」にするマガタマを取り込み、パワーアップを果たしたのだった。

「マガタマと言えばヒノケンが燃き払った病院から見つかったマロガレか。
 適合しなければ死ぬと言われたマガタマを装備してよく死ななかったな」
「実際にマガタマを体内に注入する際は死ぬほどの苦痛があったが、そこはヴァルキュリア人の肉体とクラウザーさんへの愛と根性で乗り切った。
 もし死ぬ気でもやらなければ私はクラウザーさんのファンを名乗る資格のないただの脇見せ爆乳オバさんと化すからな。
 それでも苦痛に対する見返りは大きい……特にマロガレには純粋な肉体強化の他に貫通というスキルがある。
 これがあれば物理攻撃を無効化するあらゆる耐性や防壁を無視して敵にダメージを与えることが可能だ。
 レストやダオスにはもちろん、特に相手の攻撃を寄せ付けない能力を持つ小町にはカウンター能力になるだろう」
「ずいぶんと小野塚小町にこだわっているようだが」
「これは私の直感だが、奴は目に見える以上の爆発力がある。
 一介の死神だと侮っているととんでもない大物食いするだろう。
 そんな女を身も心も性も乳もレ○プの限りを尽くすのが、クラウザーさん復活の次に私が望むことだ。
 あの女だけは他の誰でもなくこの手で死ぬまで輪姦(まわ)して蹂躙しつかさないと気がすまん」

先の戦いで小町と影薄組に事実上の敗北を味合わされたセルベリアは一方的に小町をライバル視していた。
悪魔化の影響も手伝い、今の彼女にはクラウザーさんへの愛と一緒に別の狂気が彼女の中で孕んでいる。

「士気を上げるのは結構だが、敵は小野塚小町やステルス性に優れた例の集団だけじゃないぞ。
 データによると火力不足らしい小町一人で都市をも吹き飛ばすような相手を殺せるわけはないだろうに」
「……ふん。
 しかし、ドリスコル。その女は誰だ?
 先ほどビックサイトから出撃する時にはいなかったぞ」

ふと、ドリスコルの隣にいた少女が気になったセルベリアはドリスコルに正体を問う。

「これはグレートゼオライマーに可能なアンドロイド・氷室未久……だったものだ」
「だった?」
「ゼオライマーの起動には彼女が必要だったのだが、大災害の影響か電子頭脳が壊れていた。
 そこでカレン・ミューアをマテリアルにしたブレインデバイスを脳としてボディに移植した。
 ここにいるのはカレンという名のグレートゼオライマー稼働キーだ」


229 : 狂えし者たちの巣窟 ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:21:40 GB0qvFhM0

ゼオライマーは単体では肝である次元連結システムが起動できず、起動にはアンドロイドである氷室未久の協力が必要だったが、彼女の電子頭脳は故障していたのでドリスコルはカレンデバイスを脳にするという手段に出たのだ。
その結果、ドリスコルはグレートゼオライマーという戦力を手に入れることに成功する。
ちなみにパイロットに木原マサキ(秋津マサト)を据えないと稼動しない件の方は狂信者の技術で何とかなった。

「ただ……脳をカレンにすることによって別の問題も発生したがな」
「?」
「いや、忘れてくれ。些細な問題だ」

氷室未久ボディのカレンは、元になった未久よりもどこか生気がなく、ドリスコルに絶対服従の人形のようであった。

「アンドロイドの件はまあいい。
では、ゼオライマーの横にある首のない赤いMAみたいなものはなんだ?」

セルベリアの興味はドリスコルの人形から、赤くて大きいMAらしきものに移る。

「ネオ・ジオングを改造したネオ・ジオングスーツ。
 完成次第、ウィツァルネミテア化したディーがこれを着て戦うらしい。
 なんでも思考を力にすると言われるサイコフレームが扮だんに使われているようだが」
「実力は未知数、そもそも完成できるかどうかも問題だな」
「その前にクラウザーさんの復活が早いだろう」

時刻は13時半。
本来の予定ではあと一時間半でクラウザーさんが復活する予定だ。
完成するかどうかもわからないディーの衣装よりも、そっちの興味の方が二人の中では大きかった。

『ドリスコル、セルベリア。話がある。
 すぐに私の所まで来てくれ』

それは唐突であった。
ディーからビックサイト館内に上層部二人あて緊急の放送が入ったのだ。
ドリスコルはディパックにアンドロイドをしまい、セルベリアと共にディーがいる場所――黄泉レ○プシステムの設置場所も兼ねられた会議室へ向かった。


 ※ ※ ※

会議室にやってきたドリスコルとセルベリアにディーは現状で話すべきこと話した。
先に行った二回目の都庁攻略作戦は、実はハザマやヤマトなどの上位クラスの狂信者が死ぬことも計算に入れて行った上層部にも秘密にしていた作戦の裏があったこと。
それによりヘルカイザーから借りたカードで龍脈の龍を召喚し、莫大なエネルギーで予定よりも早く黄泉レ○プシステムを作動させたということ。
……そして拳王連合軍のシグナムの手によってクラウザーさんがいるべき死者スレが破壊されていたことと、逆レ○プしてくる変態竜親父が邪魔をしてきて探索もままならなかったということ。
特に死者スレが破壊された件は普段は冷徹怜悧なドリスコルすら絶句し、セルベリアはあからさまに狼狽していた。

「馬鹿な……死者スレが破壊されていただと?
 クラウザーさんの魂はどうなったのだ?!」
「クラウザーさんほどの魂が瓦礫に潰されて消滅したとは思いたくないが、例の変態が邪魔で探索する暇がなかった」

詰め寄ってきたセルベリアに質疑応答するディーであったが、彼の表情も暗い。

「ならば、黄泉レ○プシステムを稼働させてパワーアップした私やゼオライマーを手に入れたドリスコルを派遣すれば良い。
 変態に成り下がった黄龍くらいなら倒せるハズだ」
「現状では不可能だ。
 一度システムを使ったために今まで貯めた生体エネルギーの大半が消費され、システムの再起動には龍脈の龍を使っても数時間はかかる。
 エネルギーの貯め直しが必要なのだ」
「そんな……おのれ、シグナム!! ついでにファガン!!」

ディー同様に自分たちの悲願達成の邪魔をした二者に怒りの矛先を向けるセルベリア。
少しでも冷静さが残っていなかったら、会議室を飛び出してそのまま単騎で海上にいる拳王連合軍の高速艇へと突撃していったであろう。

「幸い、クラウザーさんの魂が消滅した証拠はどこにもなく、計算したところシステムが再起動できるだけのエネルギーとなる生贄はまだ日本に一回分は残っている。
 先の戦いで失った戦力もカギ爪の男が作戦の裏でネットを用いたカウンセリングを使うことで、現時点までで損耗した戦力の9割が補充された。
 拳王連合軍の度重なるマップ破壊、特に死国によるホワイトベース組全滅と京都破壊が決め手となって現世に絶望し、クラウザーさんの美歌とカギ爪の男の揺さぶりによって信者はグッと増えたのだ。
 流石にハザマや一八クラスの、大部隊を指揮できる猛者(ネームドキャラ)になると厳しいが、我々の望みはまだ尽きていない……しかし」

神妙な面持ちでディーは二人に語る。
ここから話されるのはディー個人のある決意であった。



「仮にクラウザーさん蘇生が無理な場合は……私は黄泉レ○プシステムを暴走させて、クラウザーさんを死なせ復活させまいとするこの世界を粛清しようと思う」


230 : 狂えし者たちの巣窟 ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:22:37 GB0qvFhM0



ディーの決意とは、クラウザーさん復活の悲願が達成できないと判断された時にはシステムを自爆させて全ての信者や参加者を皆殺し――無理心中を図ることであった。
この言葉に衝撃を受けたのはセルベリアであった。

「なん……だと……!?」
「言葉通りの意味だ。
 現状のエネルギーでも関東一円は吹き飛ばせるが、日本全土を巻き込むにはまだかかるが……」
「爆発の威力を聞きたいわけではない! 諦めるのかと聞いている!」

セルベリアは自爆の件には断固反対であった。
今までの狂信者たちの努力が水の泡になり、何よりクラウザーさんへ申し訳ないと思ったからだ。
彼女のクラウザー愛は彼を復活させることで報われると信じており、それを諦める行為は裏切りに他ならないと思い込んでいる故の怒りであった。

「私はディーの意見に賛同だがな」
「ドリスコル!?」

怒れるセルベリアに対し、これまで黙っていたドリスコルはディーの意見に賛同した。

「システムはあと一度しか起動できず、万が一に作動できない可能性もある。
 信じたくはないがクラウザーさんの魂がシグナムの破壊によって消滅している可能性もゼロではない。
 ならば世界にクラウザーさんを復活させる意思は無しと見なし、このような最低で価値のない世界は消し飛ばすべきだろう。
 我々信者もまた、クラウザーさんを復活させるに至らなかった不届者としてすべからく消え去るべきだ、違うか?」
「しかし……」

クラウザーさんの復活を阻む世界や成し遂げられない信者に存在する価値など無い。
それがディーとドリスコルによるクラウザーさんへの盲信の答えであった。
セルベリアも狂信者故に死ぬこと自体は恐れてはいないが、これまでの努力が無駄になることと失敗を視野に入れたくないことが、他二人との大きな差であった。

「まあ、まだ失敗すると決まったわけでもなく、失敗したくもない。
 ただ、クラウザーさんのためにも自爆も視野に入れておくべきことを二人にはわかってほしい」
「了解だ」
「クッ……」

ディーの言葉に相槌を打つドリスコルと納得していない様子のセルベリア。

「いいえ! あなたたちの虐殺も無理心中も許すわけには行かないわ!」

突如、会議室に少女の声が響き渡った。
セルベリアが声の主を目線で探すと――ドリスコルのディパックから一人の少女の顔がはみ出していた。

「おまえは……カレンか! さっきまで人形のようだったのに!」
「待ってなさい、すぐにディパックから抜け出して……」

声の主は未久の体を持たされたカレンその人であった。
さっきまで無表情でドリスコルの奴隷のようであったアンドロイドが突然感情を発露して怒号を上げたことに驚くセルベリア。
カレンはブレインデバイスの素材にされたことでありたいに言えば死亡しているのだが、大災害時にTCを受け、未久のボディを与えられことで復活したのだ。
野比玉子症候群患者や祐一郎さんや草加と同じく、死者復活ができない今期カオスロワにおける数少ない例外の蘇生であった。
余談だがクラウザーさんはグルドの攻撃で脳を破壊されているので同じ方法の蘇生は不可能である。

「チッ……カレンの人格が表に出たか。ディー、ラジオの音量を最大に上げてくれ!」
「ああ」

ディパックから逃げようとするカレンをドリスコルが押さえ込んでいる内にディーがラジオをいじり、音量をMAXにする。
ラジオのスピーカーから放たれる爆音はもちろんDMC。
その鼓膜を破りそうな爆音は狂信者である三人には非常に心地良いものであったが、カレンにとっては。

「いやああああああああああああああああああ!!!
 やめてえええええええええええええええええ!!!!
 私、この曲大嫌いなのおおおおおおおおおお!!!!!」

聞いた瞬間、殺虫剤を喰らった虫の如く悶え苦しみ、今にも死にそうな叫びを上げる。


231 : 狂えし者たちの巣窟 ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:23:34 GB0qvFhM0

「これはいったい……」
「カレン・ミューアは時々こうやって人格を表に出して暴走する。
 その時はこうやってクラウザーさんの歌を聴かせると人格が引っ込むようになる。
 ……彼女は極度のDMCアンチなのだ」

カレン・ミューアはDMCの曲を聞いただけで絶叫するほどのアンチだったらしい。
DMC嫌いにはとある正義超人や武器商人の社長令嬢が有名だが、カレンの場合はそれ以上であった。
それを知ったセルベリアがカレンと彼女を使おうとするドリスコルに怒りを向ける。

「クラウザーさんのアンチだと! そんな奴をグレートゼオライマーに載せるというのかドリスコル!」
「私だってクラウザーさんを認めないこんなビッチなど使いたくないが、彼女以上の性能を持ったブレインデバイスも手元にないのだ。
 グレートゼオライマーの性能をフルに発揮するためにもこいつの力がどうしてもいる。
 とりあえず、クラウザーさんの曲を聴かせれば人格は引っ込むようだ。
 出撃時には常にクラウザーさんの曲を流し続ければ暴走の危険もないだろう」

やがて大人しくなったカレンにドリスコルは冷たい視線を向けて吐き捨てるように言う。

「う……うう……」
「もう諦めろカレン、貴様は私の……引いては全宇宙を支配するクラウザーさんの所有物だ。
 大災害でハフマン島も沈み、おまえを追っていたキャニオンクロウのロイド・クライヴも死んだ……おまえにはもう何もない。大人しく機械でいろ」
「……ロイドはまだ死んでいない、あなただってロイドが死ぬところを見てないじゃない……」
「ヴァンツァーに海を渡れる能力はない、島ごと沈んでいるに決まっている」
「……――」

DMCの曲と恋人の死をドリスコルに言われたことによる精神的なダメージにより、カレンの人格は引っ込み、元の人形のようになった。



「さて、ハプニングによって多少脱線したが引き続き今後のことについて話そう」

まとめ役であるディーが今後の方針を伝えるために仕切り直し、情報を整理する。

「悪いニュースとしては九州ロボが関東まで移動してきたところだろう。
 主催もベイダーから安倍に交代したようだが、どうせ主催なら滅ぼすので特に意味はない。
 情報によると安部も某食人鬼と同じく参加者を食い散らかせる相応の力を持っているようで油断はできない。
 まだ東京にはこないようだが、当初の予定よりも早く戦うことになるやもしれん。
 
 次に拳王連合軍討伐に向かわせた煉獄も敗北し、全滅したようだ。
 全滅を予測しての派遣だったが、一方で裏の目的である時間稼ぎなど戦闘データ収集は達成した。
 送られた情報によると一部の兵は技量が増している一方でホワイトベース組との戦いで死国を失い、大きく損耗しているようであり、消耗を隠せていない。
 特に主力である光熱斗が父親である光祐一郎を亡くしたことで精神的ショックから立ち直っていないようで煉獄との戦闘には全く参加していない。
 強くとも所詮は小学生と言うべきか、付け入る隙はあるように思える。

 煉獄による30分の時間稼ぎも功をなし、我々やネームド信者の装備も一新し、もしくはパワーアップさせることもできた。
 できれば私の装備であるネオ・ジオングスーツ完成まで煉獄に持って欲しかったが、贅沢も言っていられまい」


232 : 狂えし者たちの巣窟 ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:24:36 GB0qvFhM0

 悪いニュースの後に、ディーは二つの良いニュースを伝える。

「良いニュースと言えば、何者かによって都庁の主力の一角であった神樹が何者かの手によって折られたことだな」
「できれば折れた直後に攻め込みたかったところだったが……」
「焦るわけにもいかないぞドリスコル。
 更に強大なフォレスト・セルとダオスは無傷で健在だ。
 ネームド信者強化の前に攻め込んだら戦力を無駄に消耗していただろう」
「ところで神樹を叩きおったのは誰だ?」
「セルベリア、今はまだ調査中だが我々狂信者の誰かではないのは確からしい。
 近くにいたとされる超人血盟軍もおそらく都庁の手勢によって全滅しているようであり、誰がやったのかはまだわからない。
 私が考えるに官邸にいる天魔王軍なる集団の仕業だろう。彼らは少し前に一度神樹を倒しているからな。
 ……拳王連合軍の勢力を増やさず、よりヘイトを向けさせるためにネットには拳王連合軍の仕業であると流したが」

ディーは抜かりなく、自分たちと敵対するだろう拳王連合軍(というかシグナム)を滅ぼすためにネット工作で都庁を攻撃したように仕向けていた。
ついでに超人血盟軍は都庁同盟軍の手によって全滅したことにしており、正義超人を敬っていた参加者の怒りを都庁に向けさせてもいる。
そんなディーは実は超人血盟軍を全滅させたのも神樹を折ったのも同一人物であり、「いちおう」狂信者であることを知らない。


「そして我々にとって現状で最も良いニュースはこれだろう。サーフ、入ってきてくれ」
「はい」

ディーが指示を出すと扉の奥から黒髪でM字型の髪型(ハゲではない)のインテリ系科学者がひと振りの剣と複数のカプセルを持って入ってきた。
その首には首輪はついていない。

「こいつは?」
「何者だ?」
「紹介しよう。今は亡きハザマの友人である科学者のサーフ・シェフィールド博士だ。
 彼は支給品扱いで参加させられており数時間前までディパックから出られなかったが、モブ狂信者が瓦礫から発見したことで救助された。
 今はハザマに代わる技術者や科学者をまとめる主任を任せている」
「だいぶ遅れたけど僕も君たちの生贄殺害を手伝わせてもらうよ……クラウザーさん復活のために」
「……ん?」

ふと、サーフの台詞に何か違和感を感じたセルベリア。
そんな彼女の様子に気づいたサーフは飄々と返す。

「おっと、いきなり出てきて、しかも支給品枠の人間が出しゃばるなって顔をしているね」
「いや、私にそんなつもりは……」
「多くのネームド狂信者を強化できたのは僕の技術のおかげなんだ。
 君はまだ知らないだろうけど、君が人修羅になってパワーアップできたのも僕の手によるものだぞ。
 グレートゼオライマーの調整や開発中のネオ・ジオングスーツだってな!」

働いたのに疑われて腹が立ったのかやや語気が荒いサーフだったが、仲間と揉めるのはまずいと思ったのかすぐに気を取り直してニッコリを笑いセルベリアにひと振りの剣を渡した。

「……悪かった。
 一日半近くもディパックに閉じ込められてて鬱憤が溜まっていたみたいだ。
 お詫びの印にこのプレゼントで気を取り直して欲しい」
「これは?」
「竜殺剣ドリス……真竜を殺すとされる物資・オリハルコンによって作られた剣さ。
 この剣ならば竜に対して特攻ダメージを与えられる。
 主力が竜である都庁同盟軍や、竜化したレスト、ドラゴンズの竜もそれさえあれば耐性に関係なく屠ることができるだろう」
「ヴァルキュリアと人修羅のマロガレのスキルも合わせれば、理不尽級の竜にも対抗できるな。
 良いだろう、大事に使わせてもらう」

サーフへの疑問を持っていたセルベリアだが、吸い込まれるような青く輝く名剣を手に持っていると、疑問はすっかり洗い流されてしまった。

「僕からのプレゼントはこれだけじゃない。
 塗るだけで首輪を外せる魔法の薬を持ってきたよ」
「なに?」
「首輪を外せる?」

首輪を外せるという言葉にドリスコルとセルベリアは飛びついた。
首輪さえ外せれば主催から遠隔操作で爆破される危険がなくなり、特に制限によってヴァルキュリアの力を抑制されていたセルベリアにとっては首輪解除は大きな意味を持っていた。

「魔王マーラがこのビックサイトに訪れたことはもう知っているかな?
 僕はマーラがカウパー腺液で自分の首輪を外したことを知って、その液をこっそり採取・培養して塗るだけで首輪を外せる薬を作ったのさ」
「でかしたぞサーフ」


233 : 狂えし者たちの巣窟 ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:25:22 GB0qvFhM0

これにはディーもニッコリであった。
空蝉であるハクオロの死体が見つからないので完全には実力を発揮できないものの、それでも多大な力を持つウィツァルネミテア化は可能であり、ネオ・ジオングスーツが完成すればハクオロなしでも鬼に金棒になる。

「まあ、培養には時間がかかるから現状では君たち上層部とビックサイトにいるネームド狂信者分しか薬を作れないけどね」
「それで、十分だ。
 首輪解除による主催への反抗、制限解除による実力の発揮……他勢力の打破とクラウザーさんの復活がより現実的になった」

サーフから塗り薬を配られる上層部の者たち。

「サーフのおかげで準備の一つは整った。
 あとはシステム再起動に向けて他の勢力を全滅させるだけだ。
 目下の敵として、高すぎる火力で防衛より破壊に向くドリスコルのグレートゼオライマーは三度目の都庁攻略部隊の司令を任せる」
「了解だ、今まで誰にも成し遂げられなかった都庁攻略を今度こそやってみせる」
「セルベリアはビックサイトの防衛部隊を指揮しろ。
 君の持つ殺竜剣は竜を戦力とするあらゆる勢力へのカウンターになる」
「わかった……できれば小町と戦いたかったが私情は挟めないか……」
「運が良ければ小町やその集団がここにやってくるかもしれない、君はそれを祈れ。
 ……あとは誰を攻略部隊と防衛部隊に回すかだな」

サーフよりもたらされた塗り薬を首に塗りつつ、脳裏の中で誰を攻めに回し、誰を守りに回すか、作戦はどうするのか頭を悩ませる三人であった。


「ぐふッ……」
「イカ臭いぞこの薬……」
「耐えるんだドリスコル、セルベリア。
 この臭いはクラウザーさんへの貢献の証だぞ」

薬の臭いに愚痴を垂れながらも、効能は確かにあったようで首輪は三人の首からヌルっと外れた。
上層部同様にネームド狂信者の首にも薬が塗られて首輪はヌルっと外れた。
こうして名前付き限定であるが、とうとう狂信者サイドからも首輪解除者が出たのであった……



【二日目・14時00分/東京都 ビッグサイト】
※死者スレに居座っていた変態(ファガン)がいなくなったことで黄泉レ○プシステムの起動によるクラウザーさん復活の可能性が高まりましたが、それに気づいていません。
※黄泉レ○プシステムの再起動にはエネルギーが必要であり、起動そのものもあと一度だけが限界です。
※クラウザーさんの蘇生が無理と判断され次第、装置を自爆させて日本にいる全ての参加者と無理心中を図るつもりです
 上層部のディー・ドリスコル・セルベリア、支給品のサーフとカレン以外はこのことを知りません。
※マーラ様のカウパー腺液を解析した結果、ビッグサイトにいるネームド狂信者の首輪解除が可能になりました。


【ディー@うたわれるもの】
【状態】健康、首輪解除
【装備】刀
【道具】支給品一式、クラウザーさんクローン×300、ネオ・ジオングスーツ(未完成)、サーフ・シェフィールド@DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー2
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
1:黄泉レ○プシステムをさらに盤石にするため、引き続きマグネタイトは回収する
2:セルベリアを中心としたビックサイト防衛部隊、ドリスコルを中心とした都庁攻略部隊を編成する。
3:できればシグナムは自分の手で討ちたい
4:大災害などに疑問はあるが、今は後回し
5:ネオ・ジオングスーツの完成を急がせる
6:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する
※首輪解除によりウィツァルネミテアの力をある程度解放できますが、空蝉であるハクオロの死体が見つかってなにので完全には実力を発揮できません
 また、蘇生関連の能力制限だけは首輪とは別の力が働いていると見ています
※パワーアップのためにネオジオング@機動戦士ガンダムUCを改造したスーツを開発中です


【ドリスコル@フロントミッション】
【状態】健康、首輪解除
【装備】グレートゼオライマー@スーパーロボット大戦J
【道具】支給品一式、カレンデバイス(氷室美久ボディ)
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
1:都庁攻略部隊を指揮する
2:都庁が体勢を立て直す前に攻略できる作戦を考え、進軍する
3:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する
※グレートゼオライマーに乗り換えました、本機にはなんらかの改造が施されているようです
※次元連結システムは氷室美久のボディにカレンデバイスを入れることで制御が可能になりました
 またカレン・ミューアの人格も上書きされました
 本人は善人ですが、極度のクラウザーアンチでDMCの曲を流されると人格が引っ込んで人形のようにドリスコルに従ってしまいます


234 : 狂えし者たちの巣窟 ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:25:51 GB0qvFhM0


【セルベリア・ブレス@戦場のヴァルキュリア】
【状態】人修羅化、やや動揺、首輪解除
【装備】マロガレ@真・女神転生Ⅲ、竜殺剣ドリス@セブンスドラゴン
【道具】支給品一式
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、自爆はしたくない
1:ビックサイト防衛部隊を指揮する
2:小町はいつか、この手で必ずレ○プ(倒す)する
3:自爆による心中は反対、最後まで諦めたくない
4:サーフに謎の違和感
※マガタマを取り込むことで人修羅化し、物理攻撃を無効化する敵にも物理攻撃でダメージを与える貫通のスキルを得ました
※竜殺剣を所持している限りは竜や龍に対して特攻ダメージを与えられます
※影薄組のことを組織に伝えました
※自爆による無理心中の件には納得がいっていない様子です




【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】健康、決意、首輪解除
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:指示があるまでビックサイトに待機
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については大いに失望
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】健康、首輪解除
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:指示があるまでビックサイトに待機
1:クラウザーさんの為にすべての人や魔物をSATSUGAIする
2:切歌に友情を感じている
3:マナ………
※ターバンの集団(聖帝軍)の危険を知らせました
※月読調のギアの装者になりました


【比那名居天子@東方project】
【状態】健康、謙虚、首輪解除
【装備】グラットンソード@FF11、ガラントアーマー+1一式@FF11
【道具】支給品一式
【思考】
基本:SATSUGAI
0:指示があるまでビックサイトで待機
1:小町が都庁に組みしていたとは……汚い、さすが死神汚い
2:小町と、彼女の率いる影の薄い連中を強く警戒
3:従者が死んでも、ここは謙虚にポーカーフェイス


【松本人志@現実】
【状態】健康、DCS状態+大日本人化、首輪解除
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形、グラコスの槍
【思考】基本:浜田の蘇生
0:狂信者のフリをしつつ、浜田蘇生の機を伺う
1:狂信者が関東を統一した後にビッグサイトの内部に侵入し、蘇生方法を奪って浜田を蘇らせる
2:浜田を生き返せないようなら一人でも多くの参加者をあの世に送る
※巨人の脊髄液@進撃の巨人を取り込んだことで大日本人に変身できるようになりました
 DCSの効果などで原作の大日本人よりは遥かに強いです


【碇シンジ@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】全身火傷痕、気分高揚によるシンクロ率アップ、首輪解除
【装備】エヴァ初号機 F型装備
【道具】支給品一式
【思考】基本:同志の夢を叶える
0:指示があるまでビックサイトで待機
1:取り合えずSATSUGAIしてクラウザーさんとやらを生き返らせる
2:スカイツリー前で聖帝軍と戦っている同志(カギ爪の男)はきっと大丈夫だよね?
※初号機がF型装備に換装されました


235 : 狂えし者たちの巣窟 ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:26:45 GB0qvFhM0


【斎藤佑樹@現実?】
【状態】健康、仮面ライダー黒影・真に変身中、空気
【装備】野球道具、ゲネシスドライバー、エナジーロックシード(マツボックリ)
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】基本:同志の夢を叶える
0:指示があるまでビックサイトで待機
1:取り合えずSATSUGAIしてクラウザーさんとやらを生き返らせる
2:俺もいたんだけど、地の文の描写なしって……
3:しかも一人だけ地味に首輪解除もパワーアップも一切なしだし


236 : ◆ULOzKd9bIc :2017/05/13(土) 12:27:17 GB0qvFhM0
投下終了です


237 : 名無しさん :2017/05/13(土) 13:50:15 Ahv7Pv.U0
投下乙
サーフが爆弾になるのか否か気になるところだ


238 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:21:46 KIyz8tx20
投下乙です
予約していた都庁、魔法少女、歌組で投下します


239 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:22:34 KIyz8tx20
「滅びよ!」

もう何度目かわからないレーザーが、DMC狂信者を焼き尽くす。
世界樹の天辺から放たれる射程無限のレーザーの前に、狂信者は一切の手出しができない。
一方的な虐殺、圧倒的な優位。

「おのれっ……」

しかしレーザーを撃ち続けるダオスの顔は、怒りと憎しみが入り混じっていた。
少し前に行われた定時放送。そこには多くの仲間達の名があった。

呉島貴虎の名もあった。つまり仲間達は勝つことはできたのだろう。
だが多大な犠牲の上に成り立った勝利。
仲間達は皆強かった。その仲間がこれ程までに犠牲になってしまったのは、自分の采配ミスが原因なのではないだろうか。
怒りの感情は、己自身にも向けられていた。

世界樹を中心に円範囲が薙ぎ払われ、流石の狂信者達も撤退を進めている。
しかし天辺から見下ろすダオスにはわかってしまう。撤退しつつも、輪形の陣を維持したまま、包囲網を形成しつつ退いているということに。
無論ダオスのレーザーであれば、撤退した先にも届き、焼き払える。
しかし世界樹の力が及んでいる支配エリア外ともなれば、別の参加者がいる可能性もある。
かつての影薄組のように、話し合いを求めてくる参加者も今となってはゼロではない。
狂信者以外の参加者も次から次へと殺してしまっては、天魔王軍の情報操作が事実のものとなってしまう。
あくまで貫くは、専守防衛。これ以上敵を増やすリスクと狂信者の徹底的な殲滅を天秤にかけた結果、ダオスは前者を選んだのだ。

「……周辺の狂信者は粗方片付いたか。早く、皆の報告を聞かねば」

苦い表情のまま、ダオスは世界樹内部へと戻る。
伝えられる情報の山に奔走することとなるのは、このすぐあとのことである。
そして後の12時、専守防衛を常としてきた世界樹にて初めての決断を下すことになるのを、彼はまだ知らない。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇


240 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:23:12 KIyz8tx20
「すぅー、ふぅー……よし。ありがとうまどか、もう十分だよ」
「え、でも……」
「君も疲れているだろう。ある程度まで回復できたら、あとは僕一人で回復できるよ」

一方天辺とは真逆、地下中心部ではまどか達が傷を癒していた。
瀕死の重傷を負ったレストも、まどかの献身的な回復魔法と自身の力で通常戦闘が可能なまでには回復している。
本来であれば風呂に入れば一発で全快するのだが、流石にまどかの前で服を脱ぎ捨てるわけにもいくまい。
それに服は強力無比な防御能力の一端を担い、入浴中は完全に無防備になってしまう。
またいつ敵襲があるかわからない状況ではリスクが重すぎるため、時間をかけて回復に専念していたのである。

「エーテルリンク、氷河の再生」
「その魔法、随分と便利そうだけど私にも使えるかな?」
「いや、止めといた方がいいよ。本来これはこんな使い方をする術じゃないし、正規の使い方でも禁術なんだ。
 こうやって一部分だけリンクできるようになったのは、あの混沌の力に侵されてからだし……」

氷嵐の支配者の能力で、魔力消費無しで体力の回復をはかるレスト。
まどかの提案を却下し、一呼吸おいて言葉を続ける。

「どんな優れた術者が使って、その姿を完全に模したとしても。それはクローン、トレース、紛い物に過ぎない。
 ある程度は真似できても、模した者が最も得意とする技は絶対に使えないし、そこに模した者の精神も存在しない。
 どれだけ真似たところで……僕は雷竜さんの代わりにも、サクヤの代わりにもなることなんてできないんだ」

あくまで、借り物の力。
癒えていく腕の傷と金色の逆鱗を眺めながら寂しげに呟かれる言葉に、まどかは俯いてしまう。

マーラ様との死闘が終わった直後、地下にも定時放送は響いた。
突き付けられる仲間達の死。その中には、この世界樹の長であった雷竜の名もあった。
彼の遺体が今どこにあるのかはわからない。跡形も残っていなければ、託されたこの一枚の逆鱗が、彼の形見ということになる。

「守るべきものを全然守れなくて、本当に情けなくなってくるけど、それでも立ち止まっている暇はない……そうだろう、サクヤ?」

本人のものではない紛い物とわかっていても、レストは形見の角も一撫でした。

「サクヤさん、みんな……どうか、ここから見守っていて。私は、私たちは、諦めない!」

多くの仲間が犠牲となった。
今後も必要性が高そうなサクヤのスマホのみ形見として預かり、まどかは多くの荷物が供えられた墓標の数々を見渡す。
敵対していた貴虎とスラリンも、あまりにも酷い最期であったためまどかの手で埋葬されている。
世界樹地下に出来上がった悲しみの墓標の前で、まどかは決意を新たに固めるのであった。



そんな時。

『おおーい、主、無事か!?』
「ウォークライ?」

あの死闘を生き延びたウォークライが、焦った様子で戻ってきた


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


241 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:24:02 KIyz8tx20
「どこかで聞いた名とは思ったけど、そうだ君の元主人の名前だったね」
『ああ。何故七人も呼ばれたのかは若干疑問なのだが』
「レストさんが持ってる鱗の分とあわせると、8人だよね? 何者なのそのニアラさん……」

話を聞けば、定時放送で呼ばれたニアラ(×7)はウォークライのかつての主人、真竜であるという。
その名が呼ばれたということにウォークライは焦り、こうして戻って報告しにきたというのだ。

「でも君の話では、真竜(笑)じゃなかった? いや、狂信者戦でちょっと力借りといて失礼かもしれないけど」
『いや、あれが生ゴミなのは事実だ。アレの教育で、多くのドラゴンは自分達こそが絶対であるという誤った知識を植え付けられた。
 実際には主のような強者……いや、まどかも、他の者も、多くの人間は強き存在であり、俺の認識は改められた。
 今では主たちのような者と出会え、共に戦えることを、誇りに思っている。だが……』
「そのニアラさん達が殺されたことが、信じられない、のかな?」

まどかの言葉に、ウォークライは静かにうなずいた。
自分達ドラゴンが絶対でないということは理解している。それでいて真竜が殺されたことは信じられない。
矛盾するかのような言葉にレストとまどかは僅かに首を傾げるが、ウォークライは言葉を続けた。

『流石に主たちも知らないだろうが、実はニアラは遥か過去にもこの星を狙い、撃退された過去を持つ』
「撃退……撃破ではないのか」
『その通り。当時の海洋国家の者に不覚をとったと聞いている。文明も決して大きく発展していたわけではない。
 では何故、ニアラはその後も人間を家畜、餌に過ぎないと吹いて回ったのか?』
「たまたま負けちゃった、そう思ったとか?」
『それもある。だがその傲慢さの根拠たる力、俺たち帝竜を顎で使えるだけの理由が、真竜にはある。
 真竜は――敗れることはあっても完全に滅びることはない。限りなく不死に近い存在なのだ。
 それがいくらニアラとはいえ、七人まとめて呼ばれる……つまりおそらくはまとめて滅ぼされるなど、我ら竜の知でも想像もつかない化物でなければ不可能。
 そして主は、おそらくその化物に心当たりがあるだろう?』
「風鳴……翼か」

吐き出されたその名は、忘れたくても忘れることができない。
今やこの世界に、知らぬ者はいない。主催者に指名手配された、食人鬼。

「となると、最悪真竜七匹分の能力を彼女が奪っている可能性があるわけだ」
『ニアラはとにかく外見が派手で、本人も自己顕示欲が強い。おそらく誰かしらがその姿を見てはいると思うが……』
「ちょっと待っててね、今すぐ調べるよ!」

まどかが慌ててスマホを操作する。
そして目当ての情報はすぐさま見つかった。

「あ、金色の煩いのが七匹俺の上でなんか言ってるって書き込みが」
『間違いなくニアラだな』
「巨大なドラゴン七匹が一か所に集まって騒げば、そりゃあ目立つだろうね」

そして……

「あれ? この書き込みついさっきの新しいもの? 全部ひらがなだけど…しょくじんき、おおさかほわいとべーす……」
「ちょうそくど、しんりゅうの、きば、つばさ、におい、たんち、らーめんにs……まさかあいつと戦いながら情報を残そうとしたのか、この人は……」

掲示板に残されていた、全てひらがなの書き込み。
おそらくこれを書き込んだと思われる、大阪ホワイトベースの者の決死の覚悟をまどか達は感じ取った。
そして同時に、やはり件の真竜は食人鬼に取り込まれているであろうことも。


242 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:24:45 KIyz8tx20
『超速度に、真竜の牙に翼、それに匂い探知ときたか。書かれていないが、おそらく我らの毒花・フロワロを咲かせる能力も……』
「待って。大阪に突然紅い花が咲き乱れて、気分が悪くなってきたって書き込みもあるよ?」
『やはりか。フロワロは毒に耐性が無いものが触れたり、花粉を吸いこむと徐々に衰弱し、やがて全身が結晶化して死に至る。
 刈り取ることもできるが、その過程で錯乱、発狂する者も現れる。それに根源たる真竜を滅ぼさない限り、フロワロは決して払いきれない。
 この場合は風鳴翼か。フロワロの浸食速度は真竜により個体差があるとはいえ、地下にも海上にも及ぶ。これでは大阪は勿論、いずれはこの関東も……』

「にしゃあーっ! にしゃあーっ!」

「わわ、セルちゃん落ち着いて? でも、確かに心配だよ。セルちゃんや世界樹の浄化能力にも限度があるし」
『一応、帝竜として俺もフロワロは咲かせられるが……』

ウォークライが軽く息を吐き出すと、ごく少量ながら紅の花が咲き誇った。
ドラゴンの支配が及んでいる証明でもある、件のフロワロそのものである。

「これがフロワロか。……むぐむぐ、なんかパリパリしてて全然生命の力を感じないね。僕の魔力も回復しないし」
『……見るなり食すとは恐れ入ったぞ主。生命の力は感じなくて当然だ。いわばフロワロは死の体現、他生物を駆逐する存在。
 流石に主クラスともなると毒もまるで意味をなさないが、常人が花粉を吸ったり食べたりすれば狂い死ぬ』
「わ、私普通の中学生だったんだけど大丈夫かな!?」
「世界樹の力が守ってくれてるんじゃないかな。というか、多分まどかから溢れてる魔力がフロワロ浄化してるよ、これ」

しかし咲き誇ったフロワロは哀れ数秒で食われ、浄化されて塵と消えた。
少なくとも世界樹においてはフロワロの被害がでることはないだろう。

『まあ、見ての通りだ。フォレストセルでなくとも、ある程度の強さを持つ者なら花を処理する手立てはいくらでもある。
 いずれ風鳴翼と戦うことになっても、この能力はさほど脅威となることはあるまい』
「でも戦う力がない、世界樹の外にいる人にとっては、脅威になるんだよね……?」
『そうなるな。しかしそれ以上に、大量の真竜を取り込んだ存在はこの星の全ての生命の脅威となるぞ。
 ……だが幸か不幸か、フロワロの能力を有し、牙と翼も持っているとなると、風鳴翼は限りなく真竜に近い体質となっている。
 それはつまり、真竜唯一にして最大の弱点も継承しているということだ』

真竜、ひいては今や全国手配の風鳴翼の弱点。
その言葉に、まどかもレストも思わず喉を鳴らした。

『真竜は通常の武器や魔法でも傷をつけることは可能。だがそれでは死に至らしめることはできず、真竜の持つ強靭な生命力でいずれ再生される。
 真竜を完全に滅ぼせるのは、稀代の刀匠が作り上げた伝説の金属『オリハルコン』の武具のみ。
 かつて作られたオリハルコンの剣は、刀匠の技術が未熟だったがためにニアラを滅ぼしきることはできなかったが……
 その生命力、再生能力の根絶には成功し、数万年経った現在もニアラの右翼は欠損したままだ。
 オリハルコンの武具であれば、風鳴翼にも効果があるだろう。もし滅ぼしきれずとも、元から持っている再生能力もろとも再生を阻止し、大きく弱体化はできるはずだ』

オリハルコン。
蒼白い輝きを放つ伝説の金属。
戦いに身を置かない者でも、名前ぐらいは聞いたことがあるであろう存在。
世界を揺るがす食人鬼、いまや真竜すら食い尽くす雑食鬼だが、それへの有効打になるというのだ。

「オリハルコン、か……」

しかしそれを聞いたレストの表情は、渋いものとなっていた。


243 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:25:33 KIyz8tx20
「オリハルコンは勿論知っているよ。僕も前にオリハルコン製の武器を使っていた。
 僕の住んでいた街周辺でもオリハルコンは次々採掘できたよ。でも、今はもう……」
『……済まぬ、主。確かにこの状況下では、まずオリハルコンの入手経路がなかったか……』

理由は単純。オリハルコンは伝説の希少金属。そう易々と入手できるものではないのである。
中にはレストが住んでいた国やらもりもり動くスライムの国周辺やら、オリハルコンを掃いて捨てる程に採掘できる場所もあるが、
今はどこもかしこも海の底。少なくとも残された日本の土地にオリハルコン採掘所は存在していない。

「待って! あるよ、オリハルコン!」
『なんだと!?』

そんな時、まどかの声が大きく響く。
まどかだけは知っていた。今この場に、オリハルコンが実は既に存在していることを。


――「オリハルコンを舐めないでください! そんな矢なんて弾きとばしちゃいますから!」――


ほんのごくわずかな時間。けれど確かに仲間となった正義のおまわりさんは確かにそう叫び、悪へと挑んでいった。

「……ごめんなさいキルコさん。でも、どうか私たちに力を貸して!」

まどかは詫びながら、墓標の前に形見として突き刺していたキルコのトンファーブレイドを引き抜く。
長大なトンファーブレイドはまどかにとって引き抜くだけでも困難な筈だが、まるでその言葉に呼応するかのごとくするりと抜けた。

「この輝き方は、間違いない。確かにオリハルコンだ!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇


244 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:26:08 KIyz8tx20
「錬成開始。素体のオリハルコンを超高熱で熱して、より強固かつ耐久性を高めて……
 この世界樹から採掘した不思議な鉱石と、僕が持ち出せるだけ持ち出した僕らの国の素材も混ぜて……」
「だ、大丈夫レストさん? セルちゃんの炎、熱くない?」
「なんのための属性耐性だと思っているんだい。それに僕の鍛冶スキルレベルは99、神話武器だって数秒で作れるんだから任せときなって」

キルコの形見のトンファーブレイドが、セルの炎で熱せられながら、レストの手によって新たな武器へと姿を変えていく。

「うーむ、もう少し、強力な素材が欲しいな。オリハルコンそのものの強さはあくまでそこそこだ。これに掛け合わせられる強靭な素材は……」

「……。……にしゃぺっ!」

「うわっ!? 急に炎じゃないものを吐かないでくれよ! ってなんだこの見るからに危なそうな物体!?」
「え、えと、セルちゃんが言うには『魔神の礎。私のパワーがたっぷり詰まってる。特別に使わせてやるから毒花ばら撒く害虫を滅ぼせ』だって」
「確かに今まで見たことも無いほどの極上の素材だけど、これを使うとなると掛け合わせをこっちにして……」

セルから吐き出された球体も素材として使用され、炎の中で更に鍛え上げられていく武器はより光を増したように見える。

『……』

その様子を、汗を流しながらウォークライは黙って見つめていた。
既に、帝竜である自分が恐怖の感情を隠しきれていない。炎の中で、絶対の殺竜兵器が出来上がっていることは確信できた。
それでも満足しないのか、錬成は続けられていく。まどかが世界樹より呼び出した水が、一度武器を冷却させている。

『運命とは、わからぬものだ』

思わず呟いたその言葉はウォークライの本心であった。
元々自分は、人間を餌としてしか見ていなかった。この都庁に来たのも、魔物と協力して安全に人間を食べるためだった。
そんな帝竜筆頭である自分が、人間を主と呼び、今や多くの人間や魔物と共闘している。
もし、自分がこの都庁に来なければ。きっと彼らは真竜の弱点がオリハルコンであるということを知ることはできなかっただろう。
もし、キルコがこの都庁に来なければ。或いは彼女は生き延びることができたかもしれないが、都庁にオリハルコンを残すことはなかっただろう。
もし、レストがこの都庁に来なければ。稀代の名工でもある彼がいなければ、知識と材料だけを持て余して竜殺剣は造れなかっただろう。
もし、まどかがこの都庁に来なければ。セルの制御もできず、真竜をも取り込んだ怪物以前に、あのマーラに皆殺しにされていたことだろう。
もし、を言い続けるとキリがない。志半ばで死んでしまった仲間達も、もしかしたら助かったのだろうか。

『……やはり俺は、物事を考えるより力を振るう方が得意だ。とにかく、主たちは作り上げたのだ』

「――完成だ」

スラリと、青く光り輝く長大な剣をレストが宙にかざして見せる。
その光を見るだけで、ウォークライは自分が容易く木端微塵に粉砕されそうな感覚を覚えた。
紛れもない、魔神の力さえ宿る完全なる殺竜兵器。ニアラが忌々しげに語った剣とは比較にならない。

「なんだろう……これを持った瞬間から、この剣の名前が一つしか思いつかないや」



「竜殺剣―― 天 羽 々 斬 ――」



呟かれたその剣の名は、各地の世界樹が誇る伝統、最強の武器の名であり。
同時に、この剣が作られた目的でもある、風鳴翼の武器の名でもあった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


245 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:26:57 KIyz8tx20
「うん、使った素材が規格外だったのも大きいけど、我ながらいい出来だよ」
『見事だ、主。竜殺剣は所持しているだけでも、敵対するドラゴンやそれに近しい種族を大幅に弱体化させ、一部特殊技能も封じる。
 直接振るって斬るともなれば、さらに絶大な威力となるだろう』
「えへへ、私とセルちゃんも力を流し込んだおかげか、この剣の光にも世界樹の力を感じるなぁ」
『俺はむしろより凶悪さを増した光にしか見えないんだがな。ああ、あと主、その剣を振るうときはドラゴンとのエーテルリンクは控えた方がいい』
「わかっているよ(そういえばサクヤ、あれだけドラゴンっぽかったのにドラゴンじゃなかったんだね……まあ今じゃそれでよかったのかもだけど)」

ウォークライにはあまりよろしくない代物のため、天羽々斬は一度しまわれた。
所持するだけでも効果を発揮する程の武器は、来るべき時に備えて切り札としておく意味もある。

「さて、久々にいい仕事をしたけどそろそろ戻ッ――!? まどか、ウォークライ、伏せるんだっ!」
「にしゃあっ!」

しかし、天羽々斬がしまわれた瞬間にレストとセルが叫ぶ。
同時に発動されたミラーシールドとセルメンブレンは、まどかとウォークライを保護する。
突然の二人の行動に、これ以上ない絶対防壁に守られたまどか達は理解が追いつかない。

直後、轟音と振動。

「えっ……何が……?」
「まどか、まだその防壁の中から出ちゃ駄目だっ!」

ばらばらと降り注ぐ落石を適当にあしらいながらも、再びレストが叫ぶ。
見れば、セルの方は完全に臨戦態勢となっている。
ここにきてようやく、まどか達は世界樹が再び未曾有の強敵に襲われたのだということを理解した。

「っ、なんだ今の膨大な力は……! まどか、セルをモンスターボールに戻して! 僕の魔法ですぐに地上に戻る!」
『まさか、風鳴翼か!?』
「膨大な力って、あのマーラみたいな?」
「単純な破壊力って点だけで見れば、そいつらよりも危険な相手だよ! 多分今の音と振動は神樹がやられたんだ!」
「!?」

思わずまどか達は絶句する。
あの殺戮の魔王すら上回る相手になど、勝てるのだろうか。
こちらの仲間達は減り、もし本当に神樹すら倒すとなれば、敵の攻撃出力は桁違いだろう。
サクヤが生き延びていれば可能性があったかもしれないが、今となってはそれもできない。
彼女の力を継いでいるレストも、先程の言葉通りなら四源の舞までは使いこなせない。
純粋な個人の力量で、挑まなければならない。

「わ、私が、頑張らないと……!」
「悪いけどまどかは下がっててくれ。君の攻撃力なら確かに対抗できるだろうけど、君は防御面がまだ甘い。
 今感じた力を続けて受け止められるのはダオスさんと僕、それにセルぐらいだ。それでもまともに受け続けたらただじゃ済まないだろうね」
「そんな!」
「とりあえず地下でこれ以上暴れられるのは不味いよ。神樹がやられたなら、恐らく攻撃は一度地上に飛び出ている。
 地上に戻ったらすぐにその攻撃の跡、穴に飛び込んで犯人に接近戦を挑むしかない。流石に溜めくらいは必要だろうからね」

まどかが慌ててセルをモンスターボールに戻し、ウォークライと手を繋ぐ。
それにレストが手を触れれば、彼女達は一瞬にしてその場から消え去った。
退くに退けない敵を前に、悩んでいる時間はない。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


246 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:27:40 KIyz8tx20
時は少し遡り、場面は再び地上の世界樹。

「ううっ……」

カヲルが奏でるレクイエムの中に、魔物や人のすすり泣く声が混ざる。
多くの仲間が、死んでしまった。
理解しあえそうな人間が、魔物が、帰らぬ人となった。
激しい戦闘の中で巫女を守り抜き、生きて帰ってきた者もいた。

『済まぬさやか。私はもう大丈夫だ。他に傷を負っている者を治してやってくれ』
「他のちっこい魔物にこうやって押されてあんたらの治療完遂しろって訴えられてんのよ!
 ああもう、わかったから! このドラゴンはさやかちゃんが責任持って治すから! そんなつぶらな瞳で見ないで!」
「こんなことになるなら、私もマミさんからちゃんとした回復魔法教わっておけばよかったかしらね……」
「ほむほむも無茶は駄目だからね!? さっきまで結構危なかったんだし!」
「ひぃひぃ……! 回復の泉の水と、薬草とって来ましたよぉ!」
「シャアアァァ!」

地上に残っていた面々は、ボロボロになって帰還した仲間や、龍脈の龍の襲撃で傷を負った魔物の治療に奔走していた。
皆それぞれ、少なからず悲しみの感情を抱えている。
だが悲しいことに、悲しんでばかりもいられないのだ。
気がつけば戦える者はだいぶ減ってしまった。しかし狂信者を始め、敵対勢力がどれだけの人数残っているのかはわからない。
動き続けなければ、歩みを止めれば、滅ぼされる。

「グオオオオオン!」
「キューキュー!」

第二階層守護獣、ケルヌンノスは部下のヒーラーボールを総動員させ負傷者の治療にあたる。
名も無き無数の魔物も、駆け回って薬草類をかき集めている。
戦場には出れない者も必死に戦っていた。



「……状況はどうなっている、小鳥」
「ダオスさん……やっぱり、みんな我慢してますけど、辛いですよ。
 フェイちゃんもさっき大丈夫って言ってましたけど、あの着ぐるみの中ではきっと……」

俯く小鳥に対して、ダオスはそれ以上言葉を続けない。
地下の戦場で偶然出会った警察組は、フェイの仲間であったという。
カヲルの話では彼女らも仲間になってくれたそうだが、その直後に殺されてしまったらしい。

せめて、もう少し早く話せていれば、運命は変わったのだろうか?

「……酷なことを言うようだが小鳥、情報収集を早急に頼む。
 治療は私が代わろう。これでも、キュアやリザレクションの術も程々には使えるからな」
「わ、わかりました!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


247 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:28:30 KIyz8tx20
音無小鳥は、ダメ呼ばわりされたり、働けと言われたり、結構な扱いを受けてきた。
戦うことはできない。ただの事務員なのだから。
初めてカヲルと赤竜に出会った時は、これだけ強い人がいるのだから安全だという気持ちが、正直なところあった。
都庁に着いてからもそれは変わらなかった。
ダオスに天ぷらをパスするだけの簡単なお仕事で、特等席からあのDMC狂信者の大軍団がまとめて吹っ飛ぶ光景を目の当たりにした。

そんな強い彼らは今、背水の陣に立たされている。
意外と気さくであったスニゲーターにロックオンも殺されてしまい、カヲルと赤竜もかなりの傷を負って帰ってきた。
フェイは心の傷が大きいだろう。あと少しで再会できただけに、余計に。

自分だけが、傷らしい傷を負っていない。
もちろん仲間が死んでしまい、とても悲しい。しかしそれはここに集まっている全員に言えることだ。
自分は戦えない。さっき泉の水や薬草を運ぶ仕事さえ、魔物達やラゴンの手際の良さには負けていた。
お茶汲んでる場合でもない。
妄想なんてしている暇はもっとない。

「出来ることといったら、本当にこれぐらい……」

スマホで見慣れたカオスロワちゃんねるのページを開く。
溢れかえる膨大な情報。
天魔王軍のことがある以上、虚偽の情報も紛れていることだろう。
それらに騙されず、有益な情報を集めなくてはならない。
戦えないのであれば、働けないのであれば、これに全力を尽くすしかない。

「……やってやりますよ! 私だって、皆さんの役に立ってみせる!」

己を鼓舞し、掲示板を流し読みする。
目につくのはやはり助けを求めるものが多い。
強者が多い世界に見えるが、それは彼らが動き回れる強さを持っているからだ。
力を持たず、ただ隠れて助けを待っている弱者の方が圧倒的に人数は多い。

(うぅ……碌な情報がない。というより、あの狂信者はあれだけ消し飛んだのにまだ全国に散らばっているの!?)

現在も都庁外を囲むDMC狂信者はしかし、全国各地で暴れているという。
信者が多くいると見せかける虚偽の書き込みかもしれないが、実際にここが大群に襲われている以上、真実なのだろう。

(ホワイトベース組の命を賭けた奮闘で拳王連合にもダメージ、これはいいニュースだけど……)

現状、DMC狂信者と並んで討伐対象である拳王連合の弱体化。
一見いい情報に思えるが、逆に言えばホワイトベース程の力があっても倒すことができず、彼らは無念の中で死んでしまったことになる。

(それにしても、ちょくちょく野球の話題が出てくるのには何の意味が? ……あれ? このチームは!?)

その時、小鳥の目に一つの野球チームの名が飛び込んできた。
それはいい情報と悪い情報を半々に含んだもの。
しかし決して無視することはできない情報だった。

「あ、あの!」

思わず小鳥は叫び、その場にいた多くの者から注目を浴びるのであった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


248 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:29:16 KIyz8tx20
小鳥が叫んでから、僅か数分後のこと。


「聖帝軍を助けに行く!? 正気なの!?」

今度はさやかが叫び声をあげる。
さらに彼女の叫びにあわせるように、なんと魔物達までもが困惑の鳴き声をあげている。

『現在聖帝軍も、我らと同じように狂信者共に襲われている。
 情報によれば彼らは野球スタジアムで一度狂信者を撃退した後、再度襲われたとのことだ』
『襲撃人数は世界樹を襲った連中よりは少ないが、明らかに各地に散っている狂信者よりもしっかりと編成が組まれている』
「そもそもこの世界樹が抱え込む全体の人数と聖帝軍の人数の差を考えれば、聖帝軍の方がより深く狙われていると言っても過言ではないだろう」

突然の、聖帝軍なる組織の救出発言。聖帝軍の情報を伝えたのは小鳥であるが、
それを言ってのけたのが赤竜に氷竜、そしてダオス。雷竜亡き今、全てのトップがこれに賛同していることになる。

「私は美樹さやかと同意見よ。あの恐ろしい魔王マーラ達に勝てたとはいえこっちはボロボロ。とても他所に救援を回すほどの余裕はない」
「で、でもほむほむ、同じ境遇の人を見捨てるのもちょっと……」

「お前達の意見も尤もだ。しかし、連中の話をを統合すると奴らはとにかく大量の生物の死を願っている。それでいて何故聖帝軍を狙うのか。
 これは私の推測だが、聖帝軍は……狂信者にとってなんらかの都合の悪いものを持っているのではないか?」
『仮にそうでなかったとしても、聖帝軍と狂信者は徹底的に対立しているのは疑う余地もない』

ダオスらの言葉に、さらに部屋はざわつく。

「そして、ここが一番重要なことです。聖帝軍を率いるリーダーは、聖帝サウザーという男性なそうですが、
 彼は、幼い子供達を集めて野球チームを作ったらしいんです」

―― 子供? ―― 野球? ―― ギャーギャー ――

『ざわつかないでくれ。野球の意味は我らもわからないが、しかし聖帝は拳王とは違い……誰も殺めていないのだ』
「!!」
『どうやら聖帝は拳王とも敵対関係にあるらしい。その一環で野球チームを作ったのかもしれない。
 大事なのは、子供達を集めたという点だ。聖帝は、か弱い子供達を守ろうとしている。これは私に言わせれば表彰ものだ』
「!!!」
「巨大な兵器を造り上げたというのは、私としては腹立たしいのだが……子供達を守るため、そう考えれば理解できぬこともない」
「その巨大兵器も、拳王連合のバスターガンダムとは違い虐殺は行っていません。現在戦闘中の狂信者のみに使われているようです。
 さらに凄いことに、この聖帝軍には一切の黒い噂がありませんでした。
 他の野球チームからは少し馬鹿にされていましたが、本当にそれだけ。あの掲示板ですらここまで悪評がないのは聖帝軍だけです」
「!!!!」

DMC狂信者と戦えるだけの力を持ちながら、巨大兵器を作りながら、拳王のように虐殺は行わない。
さらには子供達を保護するなど、聖帝の名に恥じぬ行動。煙が立たないということは火種もない。

「まだ、残ってたんだ……そんな、正義の味方みたいな人……」

明かされた聖帝軍の情報に、思わずさやかの瞳は潤んでいた。

「お前達と同じく、聖帝も非常に貴重な信用にたる人物であろうというのが、我々の見解だ」
『あいつの、雷竜の遺志でもある、後の世のための人と魔物の協力や共存。子供を大切にする聖帝であれば、私も可能だと思う』
『可能性のある人間を失うのは痛い。何より彼らが襲われているのは、墨田区。
 我らが飛べば、ものの1〜2分で救援に迎える距離だ』


249 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:30:05 KIyz8tx20
赤竜の言葉に、再びどよめきが起きる。

「え、あんた達が直接行くの!?」
『ことは急を要する。飛行以外の手段では、さすがに少し時間がかかってしまうからな。
 そして同時に、相手は狂信者の大軍勢。救援足りえるよう、戦える者が行かねば意味がない』
『そして……万が一があった場合。我らならば、まだ代わりがきくからな。
 巫女であるまどかが無事であれば、世界樹は、存続できる』

二竜の言葉には、己の死の覚悟があった。
それを聞いた魔物達はさらにざわついていくが……


『聞け!』


「!?」

『認めなければならない! このままこの世界樹を守り続けても、いつの日か限界が来る!
 どれだけこちらに強力な戦力がいようと、相手はもはや無限に近い沸き方をしている!
 手を拱いている間に、またマーラレベルの者を送り込まれれば、さらに死傷者は増えるだろう!』
『巫女達は生き延びるだろう。だが、お前達のような小さな魔物は巻き込まれて死ぬ!
 いくら世界樹が無事であろうと、そこに住むべきお前達が死に絶えては、意味がないのだ!
 だからこそ雷竜も! 裁断者も! 大王も! 骨竜も! 皆が命を賭けた! 我らもそれに続くだけのこと!』
『無論、死ぬ気はないがな!』
『我々は聖帝軍とも共同戦線を張り、あの狂信者共を、二度と湧いて出てこないように完全に叩き潰す!』
『多くの仲間を殺された恨みもあるが、それを抜きにしても、まずは連中をどうにかしないことには主催者達を相手取るのは不可能だ!
 我らは生き延びるため、勝つために飛ぶのだ!』

傷の癒えた二竜は翼を広げる。
回復を優先された彼らは、他の者とは違い万全の状態だ。
いつだって救援に飛び立つことが出来るだろう。

「……待ってくれ」

そんな二竜に、カヲルが声をかける。
彼の落ち着いた瞳は、今ばかりは怒りの色に染まっていた。

「僕らも、連れて行ってくれ」

さらにカヲルの背から姿を現したのは、フェイにラゴンであった。


250 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:31:03 KIyz8tx20
『お前達……いや、だがしかし』
「君たちだけじゃないんだ。あのDMC狂信者の凶行に、もう我慢ができないのは……!
 バサラ達も、ロックオン達も、そしてキルコさん達も……! みんな、僕の前で、DMCの手先に殺された!」
「……みんなが殺されたって聞いた時、凄く悲しかった。
 でももし、アニキ達が生きていたなら、やっぱりこうしたと思う。助けられる命なら、助けるんだゼーット!……ってね!」
「シャアアァァ!」

DMC狂信者の凶行を止めたいという彼らの願いは、確かなものであった。
仲間の多くを殺されてしまったこともそうだが、歌で世界を平和にしようと考えるカヲル達と歌で歌いながら虐殺を続ける狂信者とでは、
根本的に相容れない存在なのである。
そしてさらに、もう一人。

「あたしも、行っていいかな?」

桃園ラブ、魔法少女+プリキュア組の中では最後のプリキュアである。
彼女もまた、DMC狂信者には怒っていた。目の前で、狂信者のラージャンに大切な友人達を惨殺されたのだから。

「ラブ、貴女……」
「ごめんねほむほむ。でも大丈夫! あいつらぶっ飛ばして、聖帝さん達をきっと連れてくるよ!」

シュッシュッと拳を振るって、意気込みを見せるラブ。
その動きは魔法少女(プリキュア)としてどうなのかと思いつつも、ほむらは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
一度は殺そうとした相手だというのに、彼女は自分を許してくれた。
それだけでなく、彼女がいなければ今頃自分は地下の戦いで命を落としていただろう。
感謝してもしきれない、この混沌の世界で新たに生まれた数少ない友人。
今度は自分が彼女を助けてやりたいのだが、溜め込んでいた武器は既に使い果たしてしまいどうしようもないのだ。

『……わかった。確かに我らだけでいくよりも、人間がいた方が聖帝軍も狼狽えずに済むか』
『だが、そうなるとここの防衛が少し弱くなるな。……赤竜、今こそ『アレ』をみんなに使うぞ』
『そうだな。皆でここを守り、生き延び、あのマーラさえ倒したのだ。受け取る資格は十分にあるだろう』

突如、赤竜の額と氷竜の胸部から激しい光が放たれる。
彼らはその光を手に取ると、それを天へとかざした。

「「!!」」

その瞬間、この場にいた魔物も人間も、突然力が溢れてくることを感じた。
己の身体能力の限界を超えたような、今ならば新しい技も使えるのではないか、確かな強くなったという感触。
大量の狂信者に魔王マーラの討伐分の経験値が、一気になだれこんだのである。

「それは?」
『ドラゴンハート。我らを屠る強者へ与えよと神竜より命ぜられた、竜の力の結晶のようなものだ』
『より強き存在に挑む強者の制限や限界を突破する力を与える。そして……』

ごうっと吹雪と炎が巻き起こる。
それは天にかざした、仲間達へ託した加護のドラゴンハートとは違う。敵対者を消し飛ばす、攻撃のドラゴンハート。

『マーラ相手にははあまりにも規格外故に使えなかったが、共鳴し、我らの攻撃を強力に補助する役割もある』
『これで我らが力は常にお前達と共にある。後でで構わぬが、雷竜の奴の遺体があれば、あいつのドラゴンハートも使ってやってくれ。
 位置は額の奥だ。きっとあいつも、それを望んでいるだろうからな……』
『さて、ではそろそろ向かうぞ……心優しきロリを――聖帝を助けに!』
「「氷竜さま! 本音がだだ漏れです!」」
『じょ、冗談だ。行くぞ!』

猛々しさを増したを増した二竜に、カヲル達が搭乗する。
今度こそ、DMC狂信者に屈指はしない。
確固たる意志のもと、聖帝軍救援隊は空を急行する。


251 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:31:54 KIyz8tx20
【二日目・11時58分/東京・世界樹上空】

『聖帝軍救援隊』

【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】健康、首輪解除、怒りと悲しみ、ドラゴンハート蒼起動
【装備】無し
【道具】とけないこおり@ポケットモンスター、支給品一式
【思考】基本:都庁同盟軍と共に生き残る。DMC信者は殺す
0:仲間達と共に聖帝軍を救出し、同盟を組む
1:鹿目まどかは必ず守る
2:実はやっぱりちょっとだけ聖帝軍のロリに興味がある
※一定の魔力を有する相手であれば、テレパシーで会話可能
※ドラゴンハート蒼は本体の攻撃にあわせ、時間経過と共に威力の上がる氷全体攻撃を繰り返します

【偉大なる赤竜@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】健康、首輪解除、怒りと悲しみ、ドラゴンハート紅起動
【装備】無し
【道具】もくたん@ポケットモンスター、支給品一式
【思考】基本:歌で自然環境の保護を世界に訴える
0:仲間達と共に聖帝軍を救出し、同盟を組む
1:都庁の仲間達、カヲル達を守る
2:仇であるDMC狂信者は確実に根絶やしにする
3:許すまじ天魔王軍に拳王連合軍!!
※ドラゴンハート紅は本体の攻撃に合わせ、時間経過と共に威力の上がる炎全体攻撃を繰り返します

【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除、怒りと悲しみ、キュアピーチに変身中
【装備】リンクルン@フレッシュプリキュア!、キュアスティック・ピーチロッド@フレッシュプリキュア!
【道具】基本支給品一式、大量のドーナツ
【思考】
基本:絶対に殺し合いを止めて、みんなが助かる方法を探す。
0:仲間達と共に聖帝軍を救出し、同盟を組む
1:都庁同盟軍のみんなと一緒に殺し合いを止める
2:ほむほむとは仲良くなれたかな?
※9期とは関係ありません。

【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除、傷心、怒りと悲しみ
【装備】キーボード@楽器
【道具】支給品一式
【思考】基本:バサラの遺志を継ぎ、彼の歌を届けて殺し合いを終わらせる
0:仲間達と共に聖帝軍を救出し、同盟を組む
1:シンジ君を探して一緒に歌う。
2:DMC狂信者や天魔王軍は許さない
3:しかし僕にバサラの代わりが務まるのか……?
※使徒だからか、偉大なる赤竜と会話が可能です。


252 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:32:34 KIyz8tx20
【フェイ・イェンHD@スーパーロボット大戦UX】
【状態】ダメージ(小)、等身大、右腕破損(処置済み)、ミクジャナイヨーフェイダヨー、怒りと悲しみ
【装備】ジェイド・フォーキー 、ミクダヨーさんの着ぐるみ@現実
【道具】支給品一式、ドラムセット、獣電池(トバスピノ) 、ガブリチェンジャー、ザンダーサンダー 、獣電池(プテラゴードン×2)
【思考】基本:殺し合いを止める
0:仲間達と共に聖帝軍を救出し、同盟を組む
1:死んだアニキ達や『あの子』のためにも必ず殺し合いを終わらせる
2:最悪この着ぐるみは外から誰かに壊してもらう
3:あの歌は一体……?
※アニキの持ち歌はほぼマスター済みです
※獣電池にブレイブインできるかは不明です
※天魔王軍に死んだものと誤解されています
※都庁軍を偽る天魔王軍の存在に気づきました
※獣電池から太古の祈り歌を聞きました。半覚醒なのでまだ1番までしか聞けません。
※着ぐるみを着たままだったので、首輪が解除できていません

【海底原人ラゴン@ウルトラQ】
【状態】健康、首輪解除、悲しみ
【装備】なし
【道具】支給品一式、メカ救急箱@ドラえもん、冷凍マグロ、大量の薬草や回復水(世界樹産)
【思考】基本:シャアア!
1:フェイ達に協力する
2:いい歌が聞きたい
※雌です。


※ドラゴンハート紅と蒼の効果により、全員のレベルが限界を超えて上昇しました
※レベルアップに伴い、何かしら新たな力に目覚めた者もいるかもしれません
※ドラゴンハート輝を入手すれば、さらに上昇する可能性があります

◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「……歯がゆいけど、ラブ達に任せるしかなさそうね」
「まどかには悪いけど、あたしもDMC狂信者は絞めなきゃ気が済まなかったんだけどねぇ。
 でもあたしがここに残らなきゃ、みんなの怪我治せないっていうか、治し過ぎて疲れたっていうか……」
「疲れたなら我の顔面に腰掛けるといいんですぞwwwwwwww」
「ってオオナズチいたの!? そして座らないからね!」
「おうふwwwwww折角外に群れてた狂信者からアイテム盗んできた我に辛辣な仕打ちですぞwwwwww」
「……貴方も、結構頑張ってくれてるのよね」
「なんかほむらオオナズチに対して若干丸くなってない?」

飛び立つ仲間達を見やりながら、参加ができなかった者達は他愛のない話をする。

「お前達、あまり気を抜くな。ドラゴンハートは予定外の僥倖であるが、未だ私達の状況は決していいものではない」
(うぅ、私だけそのドラゴンハートとかいうものの恩恵受けれてない気がします……)

ダオスは警戒を続け、小鳥は内心ちょっとだけ凹んでいた。
そんな時。


「ぐああああぁああああぁあああ!!!」


外からの絶叫が辺り一帯に響き渡った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


253 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:33:13 KIyz8tx20
その瞬間、魔物達はみな震えあがった。
絶叫と破壊音、そして新宿全体を揺さぶる振動。

「くっ……!?」

真っ先にダオスは膨大な力を感じた方角へレーザーを放とうとするが、その出所が地下であることに気がつく。
仮に地上で撃てたとして、十分な溜めのない自分のレーザーでは敵わないと確信してしまう程の濃密なエネルギー。
あまりにも強すぎるその力は、周囲への考慮をほとんどしていないようにも思えた。
まるで、この星そのものが壊れなければ、他の全て壊れようとも構わないと言わんばかりの。

(そんな身勝手な連中は、狂信者共しかいない! だが、この力は……!)

「ダオスさん!」
「っ、まどかとレストにウォークライか! まずはこれを使え!」

転移魔法で地上に帰還してきた三名に、ダオスはすぐさま託された二つのドラゴンハートを使用する。

「「!!」」
「手短に言うぞ。二竜と一部協力者が信用できる聖帝の救援に向かい、私達にこれを託していった矢先、襲撃だ」

空を見れば、飛んで行った二竜が戻ってこようとしているが、ダオスは手を振り構わずに救援に向かえの指示をだす。
今下手に戻るよりもそのまま飛び立った方が、彼らの身は安全だろう。

「今の力は――っ!? あ、あれ?」

今度はまどかも敵の異様な実力をその肌で感じ取る。
同時に再び世界樹を狙う力も感知するが、それの軌道が大きくそれたことも感じ取った。

「今の感じは……小町さんの能力か!」
「確かに奴の能力であれば、襲撃者を抑え込むことはできる。不幸中の幸いと言うべきだが……
 いくら抑え込めても、奴は強力な能力の代償に通常火力が低い。レスト、病み上がりを悪いが行けるか?」
「……ドラゴンハートの恩恵は確かに凄まじい。もしかすれば対抗できるかもしれませんが、今はそれよりも神樹の救出が先でしょう。
 小町さんの能力なら確かに勝てずとも、しばらくは持ち堪えられる。
 神樹や他の影薄の子達を助けきってから、地下に向かった方がいいと思います」
「そうか。しかし……神樹が倒れて好機と見た狂信者どもがまた動き始める可能性が高い。私はまた頂上から動けぬぞ!」
「いえ、僕の方こそ申し訳ありません。遠距離広範囲を薙ぎ払えるのはダオスさんだけですから。よろしくお願いします」

頭を下げるレストに対して、わかったと呟いたダオスは再び世界樹の頂上へと向かう。

「あわわわ……」
「何をしている小鳥! いいから天ぷらだ!」
「は、はいぃ!?」

そしてそんな彼に急かされるように、小鳥もついていく。
彼女は役に立っているという認識をあまりしていなかったが、天ぷらは十分な貢献なのである。


254 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:34:35 KIyz8tx20
「んんんwwwwwww次から次へとやばい敵が来るとかしゃれになってないんですぞwwwwww」
「……私は逃げない! この世界樹を、みんなを守らなきゃ!」
「ま、まどか落ち着いて! 申し訳ないのだけれど、今の私は貴女を守れない。さやかも見ての通りグロッキー状態よ」
「たはは……ちやほやされてみんなを回復しまくってたらこの様だよ」

「セルちゃん、さやかちゃんのソウルジェムの穢れを食べて」
「にしゃ」
「うおおおぉぉぉう!? ボールから触手だけ出てきた!? あ、そしてまたソウルジェムが綺麗に」
「やったねさやかちゃん! こ れ で ま た 回 復 魔 法 使 え る よ ! 」

純粋なまどかの笑み。そこに一切の悪意はない。
だがしかし、美樹さやか14歳は初めて親友の笑顔に恐怖した。
頭の中には、何故か馬車馬という言葉が浮かびまくっていた。

「あの音からして神樹が倒壊しているのは間違いない。
 僕が倒れた神樹を担いでおくから、まどかとさやかはその間に傷の部分に回復魔法を使ってほしい」
「その後に、今のでたらめな力を持った襲撃者を倒しにいくのね。ところでレスト」
「なんだいほむ――!?」
「絶対に、何があってもまどかを守り抜いて。もし守れなかったら、貴方の尻にこの対艦ミサイルを叩き込むわ」
「!?」
「え、やっぱりお尻に何か太いもの入れられるのって気持ちいいの?」
「っ!?!? あ、貴方まどかになんてことを教えているの!?」
「待って待って待って! 僕じゃないから! 本当に対艦ミサイルを押し付けて来ないでくれるかな!? これ以上の異物はごめんだよ!」
『……主、急いだ方がいいのではないか? 走ってきているのは影薄たちだろう?』

ウォークライの言葉で、一同はそちらを見る。
走ってきているのは、影薄の中でも特に戦闘力の低い学生二人。
彼らが生きているのは幸いだが、そこに小町達の姿が見えない以上、やはりまだ戦っているのだろう。

世界樹防衛組もまた、各々の戦いをすることとなる。


【二日目・12時00分/東京都・世界樹】

『世界樹防衛隊・頂上』
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【状態】健康、物理攻撃無効、雷耐性低、詠唱速度上昇、激しい怒り、首輪解除
【装備】ダオスマント、七王のグリモア
【道具】支給品一式、不明品
【思考】
基本:都庁の軍勢を守りつつ星の自然環境改善
0:世界樹頂上からテトラスペルとレーザーで外敵排除
1:都庁の軍勢を束ね、主催者及び敵対者を葬る
2:機械兵器は嫌いだが聖帝軍は一応信用
3:警戒すべき相手への対策を練る
※ほむらとの情報交換により、インキュベーターが都庁全体での殲滅対象になりました
※天ぷらにより、詠唱速度が上昇しました
※世界樹で戦う限り、魔力切れの心配はありません

【音無小鳥@アイドルマスター】
【状態】健康、深い悲しみ、首輪解除
【装備】なし
【道具】支給品一式、スマホ、大量の天ぷら
【思考】基本:殺し合いを止める
1:死んだ社長や765プロのみんなの分まで生きる
2:自分にできる精一杯でみんなを助けたい
3:再び天ぷら量産体制に入る
4:赤竜とも話したい
5:私だけドラゴンハートの恩恵がない!?
※赤竜と会話できません
※一般人かつ戦闘不可のため、ドラゴンハートの恩恵がありませんでした
 戦闘経験を積んだりパワーアップをすれば恩恵を受けられます


255 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:35:36 KIyz8tx20
『世界樹防衛隊・地上』
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、世界樹の巫女、首輪解除
【装備】世界樹の衣、モンスターボール(フォレスト・セル)
【道具】支給品一式 その他不明、サクヤのスマホ
【思考】基本:自分も戦い、みんなで生き残る
0:まずは神樹の治療
1:クラウザーさんのためにも、DMC狂信者の暴走を止める
2:マーラの残した巫女と予言の言葉が気になる
3:……お尻にアレを入れられるのって気持ちいいのかな?
※巫女の祈りにより、魔法少女に近い存在へとなりました
※ソウルジェムなどはないので、肉体が致命傷を負えば普通に死亡します
※衣装はアルティメットまどかのものを2Pカラーにした感じです。戦闘力もそれの劣化版
※世界樹の王@世界樹の迷宮と同じスキルが使用可能です
※ダオス直伝のハイパーまどかビームを習得しました
※現在セルはモンスターボールの中です


【レスト@ルーンファクトリー4】
【状態】ダメージ(小)、魔力消費(中)各種超耐性、エーテルリンク(サクヤ)、首輪解除
【装備】最大錬成世界樹ノ剣、最大錬成防具、草原のペンダント、グングニル
【道具】支給品一式、不明品、封じられた闇核、三竜の逆鱗、ニアラの逆鱗、竜殺殺『天羽々斬』
【思考】
基本:サクヤのためにも、人間としてこの殺し合いを終わらせる
0:神樹の治療後、襲撃者への対処
1:影薄三人と同盟軍の味方は助ける
2:謎の物質や能力低下攻撃への対抗策を早く見つけたい
3:二竜やダオスが信じるのであれば、聖帝軍は一応信用
4:鬼灯が死んだのは驚き
5:あわよくば竜と結婚できる世界を作りたい
6:天魔王軍とDMC狂信者、拳王連合軍は絶対に許さない
※ブリーフ博士の技を覚え、首輪解除が可能となりました
※現時点で、フォレスト・セルとの長時間のリンクは不可能です
※竜殺剣は所持しているだけでも竜やそれに近い種族に特効性能を持ち、結界や再生などの特殊能力も無効化することができます
 テラカオス・ディーヴァや真竜などには特に高い効果を発揮します
 また巨大な外見に反してとても軽いため、小柄な少女でも振り回したり投擲することができます

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)首輪解除
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ(穢れ0パーセント)
【道具】支給品一式、ベレッタM92(残弾0)、レミントンM870(残弾0)、ミニミM249(残弾0)、M16クレイモア×5、M84 閃光手榴弾×15、88式地対艦誘導弾、長ドス、ゴルフクラブ
【思考】基本:まどかを守りつつ、主催者を倒す
0:まどかを守るためにも、なんらかの武器の確保がしたい
1:まどかは命にかえても守る
2:ビームはすごかったけど、まどかのネーミングセンスはちょっと……
3:お尻の件はまどかになんて言えばいいのよ?許すまじマーラ

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、過労、首輪解除
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ(新品同然)
【道具】基本支給品一式、不明支給品
【思考】基本:マミさんの為にも、殺し合いを止める。
1:頼られちゃ仕方ないので、魔物や神樹の治療をする
2:これが、馬車馬の気持ち……!
3:魔物以上に拳王連合への不快感
4:聖帝への羨望
※8期、9期とは関係ありません。
※放送の内容をラブ達から聞きましたが、上条恭介の死を知りません。
※奮闘し、世界樹の一般の魔物の回復も頑張っていました。よって過労気味です
 しかしソウルジェムが元に戻ったため、再び魔法は使えます


256 : ロイヤル・ロリコン・クエスト(嘘) ◆FqLJI5ihhE :2017/05/13(土) 17:36:13 KIyz8tx20
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除
【装備】不明
【道具】支給品一式、狂信者から盗んだ色々なアイテム
【思考】基本:美少女とエロ同人誌みたいなことしつつ都庁で暮らしたい
0:大天使さやかを守るためにも、都庁に残る
1:正直、友や仲間の死には心を痛めている
2:やっぱり草を生やしてこそ我ですなwwwwww
3:そういえばホルスの奴はどうしたんですかなwwwwwなにか嫌な予感がしますがねwwwww
※尻尾も破壊された場合、ステルス能力を失います
※狂信者から盗んだアイテムの詳細は不明です

【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除、攻撃力1.5倍、被ダメージ半減
【装備】無し
【道具】支給品一式、余った真竜ニアラ
【思考】
基本:世界樹の防衛
0:主人や仲間達と共に戦う
1:レストを信頼
2:これで巨根ランキングはまた俺が一位だな……
※レスト直属の魔物のため、装備の恩恵によりステータスが上がっています


※ラーメンマンの書き込みにより、テラカオス・ディーヴァの能力の一部を知りました
※キルコのトンファーブレイドは竜殺剣の素材になり、消滅しました
※ファガンの卵だけは埋葬されず地下に放置されています
※ドラゴンハート紅と蒼の効果により、全員のレベルが限界を超えて上昇しました
※レベルアップに伴い、何かしら新たな力に目覚めた者もいるかもしれません
※ドラゴンハート輝を入手すれば、さらに上昇する可能性があります


257 : 名無しさん :2017/05/13(土) 17:37:13 KIyz8tx20
投下終了となります
しかしまさか竜殺剣がかぶるとは……


258 : 名無しさん :2017/05/13(土) 17:38:58 Ahv7Pv.U0
投下乙
都庁も安全とは言えないのでーす


259 : ◆ULOzKd9bIc :2017/05/14(日) 13:22:57 7eOkXtjw0
>>257
こっちも竜殺剣がかぶるとは思っていなかったw
投下乙です
さりげない部分の伏線すら回収して竜殺剣を作り出す話に繋げたのは本当に見事です


260 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:21:34 zPjWslYg0
第五回放送も過ぎた頃とあるMSが飛行していた。
それはガンダムエピオン、ゼクスが操る機体だ、その中はギュウギュウ図めである。

「………だぁー!なんで男三人でこんな狭いところにいなくちゃならねぇんだ!」
「仕方ないだろう、他に方法がないのだから」
「そんなに嫌ならデイパックの中に入りますか?」
「這入れるかぁー!!」

ちょっとした漫才がガンダムエピオンのコックピットで行われていた、
一方でクリスはエピオンの掌に座りながら今までのことを振り返る。

(……先輩は指名手配で響もマリアも死んじまった……)

数々の騒動によりクリスは落ち着く暇もなかった、だが今ようやく余裕ができたのだ。
目をつむれば様々な感情が己のうちの中でごちゃまぜになって暴れ狂う、
無意識にクリスは歯の奥を食いしばった。

「クリスちゃん、どうしたでぃす?」
「うわ、シマリスかよ驚かすな」

いつの間にか自分の肩に登ってきたシマリスを見て驚く、それくらいに集中していたのだ。

「それはごめんなさいでぃす、ですけどクリスちゃん何か悩んでたようなのでついつい出てきてしまったのです」
「心配させちまったか、そいつは悪かった、けどあたしは大丈夫さ」

クリスがシマリスにニヒルに笑いかける、しかしシマリスにはその笑顔は無理をしているよう見えた。

「それはうそでぃす」
「あっ?」
「だって、今クリスチャンの顔は――」

その言葉を紡ごうとしたその時、
ズドンと一つの爆破音が、近くに響いた

「な、なんだ!?」
「なんでぃす!?」

その一つが合図になったのか次々と、ズドンズドンと連続して響く、
その一つをクリスは見た。

「ありゃ、こっちを狙ってきてるのか!」
「どうやらそのようだな」

ゼクスがクリスの言葉に応じ、答えた。

「こりゃ、恐らく対空砲だな、それも第二次大戦に使われていた頃の」
「……そんなものでこの機体を狙うとは、なめられたものだ」
「いや、相手もそれは分かってるだろうよ、だからさらに何か仕掛けてくるかもしれないぜ」
「なにかとは?」
「そりゃ、アレよ、例えばミサイルとか――」

ベルナドットかそう言いかけたとたん、ミサイルが飛んできた


261 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:21:50 zPjWslYg0
「んなろぉ!!」

しかしそれをクリスはイチイバルで迎撃する、迎撃されたミサイルはそのまま撃墜された。
だが、それでは終わらずさらに何発ものミサイルが飛んでくる。

「チッ、さすがに数が多すぎる、これじゃあたしの迎撃にも限界が来るぞ!」
「……やむを得んか」

ゼクスは顔を顰め、操縦桿を動かす、するとエピオンは下に向かい始めた

「下に行くので?」
「仕方なかろう、ここで落とされるわけにもいかんからな、クリス君!しっかり掴まっていたまえ!」

そう言うと一気に高度が下がっていく、クリスは手の指に掴まった、シマリスもしっかりデイパックの中に入った、
正直クリスは文句を言いたい気分だなぜなら翼の所に行くのが遅くなる、だが今それを言っても仕方ない。

(糞、やっぱりあたしにもっと力があれば!)

そう、やるせない気持ちを抱きながら、エピオンは地上に向かって行った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


262 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:22:06 zPjWslYg0
とある指揮装甲車にて一人の男が指揮官席に座り報告を聞いていた

「人型機体は地上に向かい、ついでにミサイルを撃破したと」

男の声に部下は頷きながら再度答える。

「はい、その通りですワイルドハント隊長」

ワイルドハント、この男の名前だろうメンポで頭部を覆い、チャップス付きのニンジャ装束を着用。
手足と腰に手のひらサイズのコマをびっしりと装着している、そうこの男、ワイルドハントはニンジャなのだ。
なぜニンジャたる彼が隊長と呼ばれこの場にいるのか、それは彼がDこの福生市のDMC狂信者達を指示する側であるからだ。

「……ふむ」

腕を組み装甲指揮者にてワイルドハントは考える、相手は中々優れたパイロットだ、
それに己の勘が囁く、強敵なのだと。

「やはり現れるか」

彼は過去の苦い経験を思い出す、今だザイバツ・シャドーギルドが存在し所属していた頃に現れた赤黒のニンジャ!
そのおかげで自分は死に何の因果か蘇りクラウザーさんを復活させるために活動している。
他の信者ほど狂信的ではない、だがクラウザーさんの生歌を再び聞きたい、それ位には虜なのだ。

「分からぬものだな人生と言うものは」

しかしその回想も一瞬で済ませ、再び指揮官の顔に戻った。

「A1、A2の部隊を向かわせろ、偵察ドローンも飛ばせ」
「アイアイサー」

そう、この部隊は様子見。相手がどのような実力の持ち主か計る為の物だ。
ワイルドハントに油断はない、あの時もそしてこの時にもだ。

「それと、時と場合によりお前達にも働いてもらうぞ」

後ろに控えていた、三人の人物に声をかけた。

「ええ、分かっています」

一人は鬼道有人、サッカー界では天才ゲームメイカーとして名をはせた男。
年少の頃からクラウザーさんの歌は聞いていた、だからサッカーへの思いと同じくらいクラウザーさんの歌が好きなのだ、
それ故に彼は選んだ、即ち殺人者になるということを。

「おう、その時は任せとけ」

一人はAKYS、迫真空手部の師範を務めていると男だ。なんでも野獣先輩も通っていたとか。
そんな彼もまたクラウザーさんの歌を愛し稽古終わりに必ずその歌を聞いていたほどだ。

「あっ、いいっすよ」

一人は葛城蓮、一日目に死んだ虐待おじさんの親戚だ。
なぜ彼がいるのか?それは当然クラウザーさんの歌が好きだからだ。
なおAKYSとは互いにライバル兼親友らしく、お互いに実力をぶつけ合い茶をする中だ。

「よろしい、しばくはお前達もこの近くで待機だ、追って指示を出す」

立ち上がりそう指示を出す、すると三人は頷き指揮装甲車から出て行った。
基本的にあの三人はまとめて行動させている、それは鬼道が指示役を担当、二人が直接戦闘担当だからだ。

「しかし、タイミングが悪い、こちらが任務遂行中に現れるとは」

そう、ワイルドハントはこの地域、福生市に存在するDNC狂信者に敵対的な集団を殲滅するために派遣されたのだ、
上層部は何度かSATUGAIを妨害された福生市に討伐するための部隊を送ったが撃退された、上層部が動くほどでもない、しかし無視はできない。
そこで前経歴が指揮もこなし実力も高かったワイルドハントに白羽の矢が立ったのだ。
彼の率いる集団が軍隊並みに統率されていたのも選ばれた要因だろう。

「だが、その集団も見つからず詰まっていたたところだ、これが何かの転機になればいいのだがな」

ワイルドハントはそう呟きながら、指揮官席深くに座り込む。
その姿はザイバツ所属時代にはなかった余裕を感じられた。

「何はともあれだ、ようこそ俺の狩場、福生市へ」

不敵な笑みを見せ、呟いた。
それは、今だ姿が見えない敵に対する挑戦心だった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


263 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:22:23 zPjWslYg0
エピオンは地上に無事着陸したゼクス一行、まず掌からクリスが下りた。
次にコックピットからベルナドットが下りてきた。

「ふぃー、頭がガンガンするぜ、まるで二日酔いだ」
「おっさんはこういうのに慣れてなさそうだからな」

次にシマリスがデイパックから出てくる

「お、落ちるかと思ったでぃす」
「死ぬかと思いました……」

Lもまた出てきた、顔色はいつにもましてひどい、
彼は別に運動神経が悪いわけではないがこういうのは初体験であったためにこうなってしまったのだ。

「すまないな、少しばかり手荒になってしまった」
「……まぁ、仕方ねーよ、あそこから落とされてたらあたしでも死んでたからな」
「流石のMSもミサイルにゃ敵わないからな」

ゼクスが謝罪したが、あのことに関しては仕方ないと受け止めていた、
あのままミサイルにあたっていたら落ちていたかもしれない、クリスが掌にいる故に、
エピオンの高機動を生かせないからだ、むしろそのまま地上に向かいミサイルの射程圏内から離れる選択をしたのは正しいだろう。

「しかしここはどこなんでぃすか?」
「……どうやら福生市と言われる場所のようですね」

Lは近くの看板を見た、そこには福生市と書かれていた。

「福生市………東京じゃねぇか!」
「ずいぶんと飛んだと思ったのだが、どうやら遠回りをしていたらしいな」

そうなっても仕方がないことである、彼等は日本の地理に詳しくないのだ。
唯一詳しそうなLも男三人はさすがにきつかったらしく指示を出せるほど余裕はなかったのである。

「しかし、これからどうすんだ、あたし達は空から大阪には行けなくなっちまった」
「誰が撃ったか分からない以上、下手に飛ぶのは危険だしな」
「もしかしたらこの街にいるのかもしれませんね」

Lの意見にゼクスも同意を示した

「そうだな、対空砲は動かせないと聞いている、ならばミサイルを撃った者達もここにいるだろう」
「でも、ここを探して果たしてみつかるでぃす?」

シマリスの発言に一同は押し黙った、
福生市は地図から見れば狭いと思うが、しかしやはり市である、広いのである。
そこから探し出すとなればとても時間がかかる、何よりその敵も大人しくはしていないだろう

「……とにかく一旦落ち着ける場所に行きたいところですね、情報収集もやっていませんし」
「確かにな、あの機体にいる間は狭くてパソコンも開けなかったし何より時間もだいぶ過ぎている
 その間に状況が動いてるのは確実だろうよ」

そう言い切った直後にベルナドットは何か違和感を感じた。
それはゼクスも同様だった、何か感じるのだ、そう、例えるなら戦いが始まる前の予感

「おい、お前ら、気を付けろ何か嫌な予感が――」

そう言い切る前にベルナドットが走り出しLを抱えた直後、ベルナドットに銃弾が掠った


264 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:22:38 zPjWslYg0
「チィ、敵襲か!」
「くそ!シマリスはデイパックに!」

クリスは撃たれた方向に銃型のアームドギアを向け撃つ。
そして撃ってきた者は建物ごと吹き飛んだ!

「よっし」
「ヒューッ、やるじゃないか嬢ちゃん」
「あたしは嬢ちゃんじゃない!」

ベルナドットの嬢ちゃん呼びが気に入らないクリスはそう言う
しかしベルナドットが気にすることはないようだ。

「それより早く退いてもらえませんか」
「おっと、悪かったな」

ベルナドットが身を引きLが出てくる

「それよりもです、ここはどうやら」
「ああ、敵地みたいだ、Lの旦那はガンダムのコックピットにゼクスの旦那も問題ないよな」
「仕方あるまい」
「すみませんね」
「いいってことよ、それよりも嬢ちゃん分かってるか」
「ああ、こっちに来てるやつらがいる!」

クリスが言えば何人かの武器を構えた人間が現れる
そしてその者達はそろって言った。

『SATUGAIせよ!!!』

そういった直後にベルナドットが持っていたM16によって一掃された。

「ベルナドットさん、これを」
「あん、こりゃあんたに振り分けられた奴じゃないか、いいのか?」
「ええ、隠れている私では宝の持ち腐れですから」

渡されたのはひらりマント、ゼクスがもしもの時の為にとLに配分されていたのだ。

「L、はやく乗ってくれ、敵がいつ来るか分からん」
「はい、それではご武運を」

そう言ってLはエピオンのコックピットに乗り込んだ。
ベルナドットはひらりマントを構えて拳銃に武器を切り替える

「シマリス、お前はいかなくていいのか?」
「今のクリスちゃんを放ってはけませぃんから」
「……ありがとな」

不器用にクリスは笑った

「また来たぞ!次は100人前後ってところだな!」
「多すぎだぞ!」

ベルナドットの言にクリスが悪態を付き、イチイバルのアームドギアを構える、
こんなところでくたばってたまるかと心の中で思った。
これは始まり、のちに続くゼクス組の死闘の始まりであった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


265 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:22:48 zPjWslYg0
「おう、アイツらもなかなかやるじゃねーか」

ワイルドハントからの指示が下り、彼等は一足先にゼクス組を見に来ていた。
そう、鬼道、AKYS、葛城の三人だ。
彼らが見ている先はゼクス組と

「……なるほど」
「何かわかったのか?」

葛城の疑問に鬼道は答えていく。

「いや、アイツらが手練れだと思った、それだけだ」
「えぇ……(困惑)いや、俺も見ればわかるが何かそれ以外分かったことはないのか?」
「そうだな、……あいつらは、あの赤い色のアーマーを付けた女を中心に戦っている」
「ほう」

鬼道が指さしたのはクリスだ。

「あの女は本人の実力もさることながら広範囲殲滅技が多い、
 それを一人と一機体は把握して立ち回っている」

見ればクリスに注意を向きすぎた敵をベルナドットが攻撃、クリスの技からこぼれた敵を飼っている。
他にエピオンは建物から狙撃しようとする敵を建物ごと破壊、更に建物の残骸で他のルートから来る狂信者達を足止めする。
とにかく彼等はクリスを中心として動いていた。

「だが、かれこれ戦いが始まって何時間かたっている、あいつらも疲労が蓄積したころあいだ」
「あんま、そういう所を付くのはこのみじゃねぇんだがな」
「だがこれぇはクラウザーさんを復活させるためのもんだ、手段は選んでられねぇよ」

葛城の言葉にAKYSも頷く。

「…………そうだな、それでは俺達もそろそろ出るとしよう」
「おう、ちゃちゃと終らせてクラウザーさんの歌でも聞こうぜ」

AKYSの言葉を聞きながら鬼道は思ったこれは正しいことだと、クラウザーさんの歌を聞くためにと。
だが、心の奥でこうも思う、果たしてこの行為はクラウザーさんが喜んでくれるのかと。
だがその思いをすぐさま振り払い、自らも戦場を向かった。
全てはクラウザーさん復活の為に。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


266 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:23:12 zPjWslYg0
「だー!!、多すぎんだろうが!!!」

クリスはBILLION MAIDENを使用し、真っ正面から突っ込んできた大量の狂信者達を撃ち殺した。
しかしそれを予期し、上空から仕掛けてくる狂信者――だがそれは叶わない。
銃の発射音が響き、上空から仕掛けてきた狂信者を撃ち殺した

「サンキュー、おっさん」
「おっさんじゃねぇ!」

二人は軽口をたたきながら迎撃する、だがベルナドットは気づいている
長くは持たないということを。

(クッソ、さすがに数が多すぎる)

そう、とにかく数の連打が押し寄せてくるのだ、
10人やったら50、50人やったら250と増えて行っている。

(弾も何時まで持つ?こっちも走って体力も下がってるしよ、これは積みか?)

嫌な考えがよぎる、しかしその思考を振り払い目の前の敵に集中する。
だが、思考外からの攻撃が飛んできた

「死ねぇ!」
「!?」
「おっさん!!」

ベルナドットは、死んだと思っただが、銃弾はあっさりと防がれた。
防いでのはエピオンの右腕。

「油断するなよベルナドット」

無造作に右腕を動かし、攻撃してきた狂信者とついでに後ろにいた狂信者もミンチにする。

「わりぃな助かったぜ、だがアンタは後方で殿していたはずじゃ」
「いや、どうやら後ろの狂信者達が引いていったようでな妙だと思ったがとりあえずこちらの救援にな」
「引いた?」

引いたと聞いてベルナドットは疑問に思った、なぜ有利なアイツらが引いた?
犠牲を嫌った?、確かにベルナドット達は多くの狂信者を屠った、だがそれがアイツらの退く理由になるのか?
連中は実に狂信的だ、アレは殺さなければ気が済まないたちだ、だがそれで引くとはどうしてだと思う、
だが今は戦闘中、目の前にいる敵に集中しなければと思い目を向ければ敵がいなくなっていた。

「おい、俺たちを襲ってきてた連中は?」
「さあな、あたしにも分からない、だけど途中から明らかに引いて行ってたな」

クリスがそう証言する、ますますおかしいと思った。

「なあ、速くここからいいた方がいいんじゃないか?」
「なんでだ?」
「明らかに不自然だ、敵がっさりひくってのも、そうだろゼクスの旦那」
「……確かにな」

違和感がある、そう途中で引くのは違和感が――

「狙撃兵、目標赤い色の女、撃て!」

無線機から鬼道の指示に従い、クリスに向けて銃を発射する。
少し気が緩んでいたクリスにこれを回避するすべはなく――

「嬢ちゃんあぶねぇ!」

ベルナドットが庇った

「――おっさん!!」
「狙撃兵、まだいたか!」

ゼクスがエピオンを動かし狙撃兵がいた位置の建物を破壊しようとして。


267 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:23:56 zPjWslYg0
「やらせねぇよ――オッラァ!!」

AKYSの飛び蹴りが、エピオンの腕に直撃し、腕を破砕した

「なにぃ!」
「人間ですか!?」

乗っていたゼクスとLが驚く。
ゼクスの場合は己の機体の腕がどこからともなく表れた男に壊されたことに、
Lの場合は、そもそも頭脳でならともかく生身で鉄の塊をぶっ壊せる人がいたことに。

「よっと、さて楽しませてもらおうか!」

それに対しAKYSはガンダムに挑戦的な笑みを向けた。
自分よりもどでかい相手を倒す、それは一つのロマン故に。

「Lよ、私が一瞬のスキを見出すだから」
「分かっています、ベルナドットさんの看病ですね」
「ああ、頼む」

そしてエピオンはAKYSと向かい合う、そして両者ともに動きだす。
異種どころではない戦闘が始まった。

そしてクリスはベルナドットの傍に駆け寄っていた

「おっさん、しっかりしろよ、おっさん!」
「ああ……そんな大声出すな……傷に響くだろ……」
「意識はまだあるようでぃすね!」

いつの間にかシマリスがデイパックの中から出て来ていた、
その手には救急セットと書かれた物を手に掴んで。

「シマリス」
「クリスちゃんこの人のことは僕に任せるでぃす、それよりも後ろ!」

シマリスに言われ後ろを見れば、一人の男が立っていた。

「――おじさんはねぇ」
「ッ!」

クリスがアームドギアを向け、撃った、
しかしその男はそれを回避して。

「よけた、チッ」
「おじさんはねぇ!」

男が駆け出す、それに合わせてクリスもアームドギアを二丁拳銃型に変え、迎撃する。
だが男はすべてそれを回避し。

「君みたいな可愛いねぇ、子が苦しむ姿が大好きなんだYO!!!!」

一閃、高速の居合がクリスに迫った。

「なっ!?」

ギリギリでクリスは回避する、だが男、葛城は次の行動をしていた。
それ即ち刀から二丁拳銃に切り替え、照準をクリスに向ける。
だがクリスが速かった、拳銃に切り替えたと同時にクリスが射撃する。
しかし葛城は発射された銃弾すべてがスローモーションに感じ、それらを巧みに回避する

「おっせぇんだよぉ!!」

走りながら照準をクリスに合わせたまま射撃する、だがクリスも相手の弾道の斜線を見抜いて回避する。
そしてそのまま双方高速に移動しながら打ち合いになる、走り撃ちまた走り壁やガラスやガードレール、車すら利用しながら。

「やるじゃねぇか!!」
「お前に褒められてもうれしくねぇよ!!」

クリスと葛城が極端までに接近する、そしてまず葛城が銃を向ければクリスが右腕で向けた銃の手をはじき次にクリスがアームドギアを向ける、
しかし次は葛城がその手をはじく、次に葛城は相手の肩を掴み腹に一発当てようとするがクリスはそれを予期し下がる。
まさしく一進一退、気を抜けばどちらかが死ぬ、鍛えたガン・カタを

「ああ……くそ情けねぇ……」
「黙ってるでぃす!血がもっと出てしまうでぃす!」

一方、シマリスはベルナドットの治療にあたっていた、だが体が小さいため苦戦を強いられていた。

「私も手伝いますよ」
「Lさん!?どうやってコックピットから」
「ゼクスさんが一瞬のスキで何とか降ろしてくださいまして」

そう言いながら救急セットから包帯やなどを取り出し応急処置をしていく。
Lが施す応急治療は鮮やかなものでありてきぱきと施していく

「Lさんすごい、どこで習ったでぃす!」
「一応、孤児院にいたとき習いました」

Lたちが治療を施している頃、ゼクスとAKYSの戦いにも目を向ける。


268 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:24:13 zPjWslYg0
「オッッラァァ!」

AKYSの気合を込めたシャウトとパンチがエピオンに向かって来る。

「チィ!」

しかしそこはライトバロンと呼ばれた男、攻撃を仕掛けてくる部位を見抜き回避する。
回避されたAKYSのパンチはコンクリート道路周辺を破損させた。

「とんでもないな、来るか!」

ビームソードをAKYSが飛び込んでくる地点を予想し、前もって置く、
来たのは置いたと同時だった。

「!?」

これにはさすがのAKYSもびっくりである、ビームソードに触れる数センチ前に横に建物を蹴り、
横に跳躍することで回避した、しかし勢いは考えてなかったらしく横にあった建物に衝突した。

「へっ、やるじゃねぇか」

しかしそれでもぴんぴんとした状態で、突入した建物の瓦礫を除けて立つが。

「はぁッ!」

その隙を見逃す程ゼクスは甘くなくビームソードで追い打ちを計る。

「またか!!」

AKYSは再び今度は調整して跳躍し、ビームソードを回避する。
この田高、どちらも受けることはなく回避するのが主となっている、
AKYSの圧倒的破壊力はエピオンに使用されているガンダニュウム合金すら壊しえるものだ、
現にエピオンもかすり傷が多く存在する。
しかしガンダムエピオンにはビームソードがありその威力はAKYSと言えど即死は免れないものであった。
ヒートロッドの方は最初の奇襲で壊せたから、そこは気にしなくていいというのはAKYSにとって幸いだろう。

「オッラァ!!」
「ハァ!」

エピオンはLが下りたことにより本来の性能を発揮できるようになり、縦横無尽に動き回る。
それに対しAKYSも驚くべきことにエピオンの縦横無尽な軌道に着いて行っているのだ。

「つくづく驚かされるな!」
「オッラッオッラァ!」

ジグザグに移動するエピオン、しかしその先を予想したAKYSは先回する、
先に行ける建物を蹴り、空中にて大気の塵を足場にしてさらに跳躍しその先へと行く!
その速さはエピオンを上回り、エピオンの真上へとたどり着く。

「何ィ!?」
「こいつで終わりだぁ!!オッラァ!!!」

真上から繰り出されるのAKYS渾身の技、ポン・パンチだ!
何故ジュー・ジツの技を習得しているのか?それは迫真空手部が統合格闘技部だからである!
あらゆる格闘技を収めてこそ真の格闘家の道がある、それがAKYSの信念だ、それ故に彼はあらゆる格闘技技を覚えているのである!

「舐めるなぁ!」

だがそこはゼクスマーキス、伊達や酔狂でエースをやっているわけではない!
回避は不能であれば急所から外すまで、そう一瞬で判断し機体を動かし、AKYSのポン・パンチが炸裂した!

「ぬぅぅぅぅ」

ポン・パンチ確かに炸裂した、しかし、おお、エピオンはいまだ健在ではないか!
それもそのはず、咄嗟に動かしたのは急所とダメージを軽減させるのが目的であったためだ!
だがパンチの威力はすさまじくエピオンはそのまま落ち、地面を勢いよくこすっていく、
そして最終的に止まった所はLとシマリスがベルナドットを治療している最中の場所の近くであった。


269 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:24:38 zPjWslYg0
「……やはり他の者たちを下げておいて良かったな」

そしてその戦況を俯瞰していた鬼道は事前に信者を下げていたことが正しいと判断する。
この戦闘、激しすぎたからだ。
片や激しすぎる銃撃の応酬、ガン・カタで競い合い再び銃撃戦となっていた。
そして片やMSと超人の大決戦である、ここに信者を突っ込んでしまっていたら被害がさらに拡大しただろう。

「とはいえ、これで終わりだ、葛城、AKYS下がれ、一斉攻撃にて決着をつける」

そう言うや否や控えていたDMC狂信者殲滅部隊が姿を現した、どいつもこいつもヘルガスト兵の格好に身を包んだ兵士たちである、
そしてMSのジェガンも何機か確認された、そうこの者達による一斉射撃で決着をつけるのだ。

「おいおい、止めは俺にさせろよ!」
「OK牧場」

AKYSは文句を言いつつ跳躍し場を離れ、ちょうど遠距離で撃ち合いをしてた葛城もまたクリスの銃撃をいなし下がった。
クリスは葛城が下がった際、膝をつきそうになるが次に出てきた部隊を見て何とか食いしばった。

「どうやら……年貢の納め時か?……」
「……打開策はありませんね」
「むっ、むぅぅぅ」

ベルナドットとLは覚悟し、シマリスは悔しさに一杯だった。
こちら側の戦力であるクリスは葛城との戦闘の疲労がたたり攻撃できず、
ゼクスは機体を動かそうとしているが先ほどの衝撃で動かなくなっているのだ。

「ク……ソ……」

息を吐きだしながらアームドギアの技を使おうとするがやはり疲労が濃く使えない。

(終わるのかあたしは……まだ何もできてないのに!)

心の奥底で歯ぎしりする、まだ諦めてはいないだが覚醒などそのようなことは起きるはずもなく。

「全員攻撃用意!攻撃――」

その言葉が響きゼクス組が目をつむり最後の時を迎えようとした、その時!



「――おたくらに死なれたらオレが困るんですわ」



その声が響いた当時に、DMC狂信者達の足場が崩れていく!

「な、なに!?」
「何で足元が!?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」

それぞれ狂信者達の悲鳴や困惑した声が響き混乱する。

「チィ」

しかし鬼道はその混乱から素早く離脱する、
超次元サッカー選手である彼ならばここからの離脱はおちゃのこさいさいなのだ。
葛城とAKYSもまた離脱していた。

「あっ?」
「どうやら……俺達にもまだ運はあったらしい……」
「そのとおりだぜ、おたくらも運がいいもんだなぁ」

クリスやL、ベルナドットとシマリスの隣に緑のマントを身にまとった男が現れる。

「貴方は誰でぃす?」
「自己紹介はあとだあと、それよりさっさと逃げるぞ」
「ですが、仲間を見捨てては」

そう、Lが言いかけたとたん地面が振動した。

「な、なんだ地震か!?」
「ようやくご到着か、ずいぶんと遅かったもんですねぇ」

その振動には狂信者の方の三人組も反応する。

「いったいなんだこれは!?」
「何かが来るってことだな、よし見ておこうぜ」
「おじさんちょっと疲れたなぁ」

驚く鬼道に余裕そうなAKYS疲れている葛城はおそらく来るであろう所から目を離さない、
更に偵察ドローンから見ているワイルドハントもまた何が現れるのか待っていた。

そして、地震が一旦止まったと思えば、再び振動が起きる、L達のすぐ近くで、

「な、なにが」
「そろそろ出てくるぜ、おたくらもよく見ておけよ、とんでもねえもんが出てくるからな」

そう男が言ったとたんに地中から道路のコンクリートを壊して――MSすら入りそうな物置が出現した。

「んんんんんんんんん??????」
「えぇ……(困惑)」
「(大爆笑中)」

鬼道混乱、葛城は困惑、AKYSは笑っていた。

「……なるほど、見つからぬわけだ」

ワイルドハントは冷静に状況を理解し、目標と断定した。


270 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:25:21 zPjWslYg0
そしてゼクス組もまた、ポカンとした表情をしている。
ただ一人緑のマントの男はその顔を見て笑って、

「そ、そりゃそんな反応にもなるわな……ブフォ」

そうしているうちに物置のシャッターが開き人が出てきた。
数人の武器を構えた者達が出て来る。

「君たち大丈夫か」

随所に青い塗装が施された装甲服を着た男が駆け寄ってきた。

「無事じゃありませんね、レックスの旦那、早く回収をして引き揚げましょうや」

ロビンがそう提案してベルナドットの肩を持ち上げ、自分の肩を貸す。

「文句は言いっこなしだぜ、こっちも時間が惜しいからな」
「ああ……分かってる」
「あんたらもな」
「……行きましょうシマリスさん、クリスさんは?」
「それならあそこにいるでぃす」

シマリスはクリスがいる方に指さす、そこには片膝をついているクリスがいた。
どうやら疲労が限界にまで達しているようだ。
そこにLが駆け寄った。

「大丈夫、ではないようですね」
「馬鹿にすんなあたしはまだ動ける」

そう言って動こうとするが、思うように動けなかった

「あまり無理はしないでください、手を貸しますから」
「自分も手を貸そう」

Lとレックスと呼ばれた男がクリスに手を貸して物置に向かった。
そしてゼクスの方はと言うと。

「よし、再起動に成功だ」
「ならばこちらへ」

急な無線通信にゼクスは驚く、

「……何者だ?」
「この物置の所有者です、貴方の仲間は保護しましたですから貴方も」

目の前にある物置の所有者だという声からして男、ゼクスは怪しむ、
だが今この局面を乗り切るにはこの言葉に従うしかない、これ以上の戦闘は危険だからだ。

「分かった、MS語ごと物置に入らせてもらうぞ」
「はい、では人がいない区画がありますのでそこにお入りを」

そう言って通信が切れ、代わりに人がいない区画の地図が送信された。

「やれやれ、後は野となれ山となれだ!」

やけくそ気味にブースターを吹かし物置に入る、その区域はちょうど仲間達が運び込まれた直ぐ近くだった。


271 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:25:31 zPjWslYg0
そしてゼクス達の収容が終わるとシャッターが素早く閉じられ、地中に潜航する。
何とか体勢を立て直した狂信者達の軍勢も攻撃するが、まるで利いていない。

「なんて硬さだ、アレでは壊すのは難しいぞ」
「俺の奥義でもぶっ壊すのは難しそうだな」
「あっ、無理っす」

そう、それくらいに硬いのだ、あの物置は。
どんな素材を使用しているのだ、構造もどうなっているのか分からない。
そしてそうこうしているうちに物置は完全に潜航していったのであった。

「逃がしたか、あと一歩だったというのに……!」
「戻ってこい三人とも」
「隊長」

無線機からワイルドハントが撤退命令を出す。

「潜られてしまっては俺達にどうすることも出来ん、今は機を待て」

そう言って無線は切られた

「んじゃ、戻るか、俺も疲れたしな」
「何か食べて寝たいな〜おじさんもな〜」
「……………」

三者三様にしてワイルドハントがいる本部に戻っていく、
次に彼らと相まみえることになるのは何時になるのか。

【二日目・13時50分/東京・福生市】

【ワイルドハント@ニンジャスレイヤー】
【状態】健康
【装備】親ゴマ 子ゴマ(中ゴマ)孫ゴマ(小ゴマ)
【道具】支給品一式 指揮装甲車 
【思考】
基本:クラウザーさんを復活させるために行動する
1:上層部から与えらえた任務を遂行する。
2:どうやら敵は強敵らしい慎重に事を進めなければな。

【鬼道有人@イナズマイレブンシリーズ】
【状態】疲労(小) 迷い(小)
【装備】どこでもボール射出ベルト@名探偵コナン ゴーグル イナズマスパイク@イナズマイレブン さいきょうミサンガ@イナズマイレブン
【道具】支給品一式  おにぎり
【思考】
基本:クラウザーさんを復活させるために動く。
1:今は隊長(ワイルドハント)の指示にしたがう
2: SATUGAIして復活してもクラウザーさんは喜んでくれるのか?

【AKYS@COAT作品】
【状態】疲労(中) ダメージ(小)
【装備】柔道着 
【道具】支給品一式 リボン@FFBE 
【思考】
基本:クラウザーさんを復活させるために動く。
1:アイツら中々強敵だったなまた戦いたいぜ。
2:隊長の命令には従っておく、頭は良くないしな。
3:鬼道の命令にも従う的確だし悪くないやつだし。


【葛城蓮@ACCEED】
【状態】疲労(大)ダメージ(小)
【装備】二丁拳銃 雷切 
【道具】支給品一式  
【思考】
基本:クラウザーさんの復活のために行動する。
1:隊長と鬼道の命令を聞く。
2:AKYSと共闘できてうれしい
3:休めるところで休みたい、あの女強かった。


272 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:26:00 zPjWslYg0
そして、ところ変わり地中に潜り移動する物置。

「……こいつ移動できるのかよ……」
「ああ、オレもそれ聞いて動いた時は驚いたは」

緑のマントの男、改めロビンフットと名乗った男とベルナドットが会話している。
どうやらここに戻ってからやることはなく、同じアウトローのベルナドットの所にいっているのだ。
なお今ベルナドットは包帯を巻かれ簡素なベッドに寝かされていた。
Lはこの広い物置を見て回り、レックスはその案内をしている

「驚きましたね、物置とは思えないほど色々なものが置いてありますね」
「このロワイヤルに巻き込まれた人たちも乗っていますからね、その為に必要なものも入れているのですよ」

周りを見渡せば他にも人がいる、レックスが言った通り保護された人たちなのだろう。

「……まだ生き残れている人たちもいたのですね」

Lはポツリとつぶやいた、
自分も生き残っているし、情報も書き込まれてはいるから生きている人はいるとは思っていた、
だが改めて生きている人達を見ると実感がわいてくるというものだ。

「どうかされましたか?」
「いえ、何でもありません、それより先へ行きましょう」

そうして、二人は色々見て回った。

シマリスはクリスの見舞いに来ていた。
クリスは葛城との激戦によって体調を崩し寝込んでいるのだ。

「クリスちゃん、大丈夫でぃすか?」
「ああ、なんとかな」

おでこに湿布を張られた状態のままシマリスの方に顔を向ける。

「なっさけねぇよな、今こんな時だからうごかねえとならないのに」
「何言ってるでぃす!クリスちゃんはよく頑張ったでぃす!」
「はは、ありがとなシマリス」

情けなく思ってるクリスにシマリスはクリスを励ます。
その言葉にクリスはお礼を言った。

「お礼には及ばないのでぃす、友達を元気付けるのは当たり前のことでぃすから」
「友達、そっか友達か」

シマリスの友達と言う発言、それを噛みしめるようにクリスは確認する。
友達と言える存在は今どこにいるか分からないか、それか死んでいる、それがクリスにストレスを与えていた。
だがシマリスが友達と言ってくれたおかげである程度ストレスがある程度和らいだ気がした。

「そうでぃす、ベルナドットさんにちゃんとお礼を言っておきましょう!」
「そうだな、あのおっさんが庇ってくれたからな」

体調治ったら行くよとシマリスに伝えた。

「そう言えば、ゼクスのおっさんは何してるんだ」
「ゼクスさんなら、ここのリーダーの人とお話しするようですよ」


そして、ゼクスはリーダーの元へと案内された。
簡素なテント、そこにレックスと同じような装甲服を着た者達が入り口を守っていた。

「ずいぶんと厳重なようだな」

比較的であるが。

「どうぞ中へ」
「ああ、ありがとう」

案内してきた男がテントの入り口を開けてゼクスを通した、
そしてゼクスの目の前にいるのは中年と言っていい顔立ちの男だ。

「どうぞお掛けください」
「ああ」

男の勧めに従い、ゼクスはパイプ椅子に座った

「まずは、今回の救援感謝する、アレのおかげで私たちは助かった」
「いえいえ、感謝には及びませんよ、私達も人がほしかったところでしたしね」

そう、目の前の男はいう、分かってはいたが助けたのは善意だけではないようだ。
だがそちらの方がある程度、交渉しやすいというものである。

「そうか、だがそれでも貴方達が来なければ私たちは死んでいた、全員を代表して感謝をさせてもらう
 ありがとう、そう言えばまだ名乗っていなかったな、私はゼクス・マーキス一応彼等のリーダーと言うことらしい」
「ご丁寧にどうも、ありがとうございます私はイナバ製作所の社長でございます」

そう、この物置の所有者はイナバ製作の社長(以下社長)だったのだ、ならばあの硬さも納得だ。
まさしくイナバの物置はカオスロワでも大丈夫!
それからしばらく情報交換を行った、なんでも社長は物置を趣味で改造していたところカオスロワが開催、
それで緊急的に物置を起動させ社員などを避難させ、しばらくは地中にこもっていたが他にもこのロワに巻き込まれた人を助けるために、
地上に出たりした、その際、野良サーヴァントであったロビンフット、
住人の救出保護などをしていたレックスクローントルーパーを助けたのである
それらの情報交換を終え水を飲んだのちに社長の方から切り出してきた

「それでは本題に入るとしましょう」
「本題ですか?」

社長の言う本題、それは――

「世界を救うための協力をしてくれませんか?」


273 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:26:13 zPjWslYg0

【二日目・13時50分/東京・福生市・地中】


【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】体調を崩す ダメージはあったが治療された 変身解除
【装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:翼を見つけ出し食人について問いただす
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:もっと強くなりてぇ
4:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
5:友達か……
6:おっさん(ベルナドット)にお礼言わなきゃな


【シマリス@ぼのぼの】
【状態】健康
【装備】胡桃×いっぱい
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間と共に生き残る
0:クリスに協力する
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
4:クリスちゃんは友達でぃす!


【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW 】
【状態】疲労(小)ダメージ(小)
【装備】ガンダムエピオン@新機動戦記ガンダムW (左腕破損 ダメージ多数)
【道具】支給品一式 そのほか不明   ウルトラストップウォッチ マスターボール
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
1:クリスたちに協力する
2:殺し合いを止める意志のある仲間を集めたい
3:世界を救う?
※ウルトラストップウォッチには制限があります


【ピップ・ベルナドット@HELLSING】
【状態】重症 寝たきり
【装備】自動式拳銃×2 M16
【道具】支給品一式
【思考】基本:バトルロワイヤルを生き残る
1:生存確率が上がりそうなので今はゼクスについていく
2:譲ちゃんを見捨てたら後味悪いだろ?
3:ひどい目にあったぜ


【L@DEATH NOTE】
【状態】健康
【装備】自動式拳銃 ヒラリマント
【道具】支給品一式 手榴弾×25 ノートパソコン
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
0:クリスたちに協力する
1:主催の目的とは何でしょう?
2:まず物置内を知る。
3:ひとまずここでゆっくり情報収集でもしましょう


274 : バトルフィールド :2017/05/15(月) 02:26:23 zPjWslYg0
【ロビンフッド@Fateシリーズ】
【状態】健康
【装備】祈りの弓 顔のない王
【道具】支給品一式 
【思考】基本:契約した社長に従って動く。
0:出来る限り人は助けたい
1:アイツらよく無事だったな
2:ベルナドットとは仲良くなれそうだ

【レックス@スターウォーズシリーズ】
【状態】健康
【装備】ブラスター・ピストル ブラスター・ライフル 装甲服
【道具】支給品一式   
【思考】基本:無害な人々の保護及び臨時コマンダー社長に従う
1:Lを案内する。
2:物置内の治安維持に努める。

【イナバ制作所社長@現実?】
【状態】健康
【装備】イナバ物置 
【道具】支給品一式 他不明
【思考】基本:世界を救う
1:協力者を集める
2:ゼクスに賛同してもらいたい
3:大丈夫!
※イナバ物置は地中に潜り移動できるようです。

※マスターボールの使用方法を誰も知りません


275 : 名無しさん :2017/05/15(月) 02:26:34 zPjWslYg0
投下終了です


276 : 名無しさん :2017/05/15(月) 08:16:13 .30Ssvm60
投下乙
減ったと思ったらまた増えた狂信者ども(しかも強い)
今まで目立たなかったけど、ゼクス組は謎解きも兼ねてようやく対主催の主力足り得るか?


277 : それは虚構より出でるもの :2017/05/17(水) 20:43:42 PDoO3Vn20
沖縄、今現在とある人物専用の結界が張られ、出られることはない地

その地で一人探索する存在がいる、その名はこの結界の主要封印対象である存在。
そう、テラカオス・ディーヴァだ。結解の中に入れられていらい沖縄を探索していたのだ、

「はぁ、分かっていたことだが何もないな」

何もない、本当に何もないのだ、人はおろか道具もないのだ、きれいさっぱりに。
それもそのはずだ沖縄は禁止エリアに指定されていらい秘密裏に主催陣が道具を全部回収していったのだ。

「とはいえこれでは結界が消えるまで何もできることがないではないか」

12時30分も過ぎてもなお残る結界はディーヴァの力をもってしても破れないのだ、
とは言えこのまま弱まっていけば破れるようになるわけだ、
しかもそのことはディーヴァもわかっているため大人しくしている。

「…………ほんと、どうしようか」

予言の書は海にポイ捨てしてしまったため暇を潰すものすらなくなっている、
まぁ、彼女にとって予言の書は自分が救済するというプライドを持っているディーヴァにとって邪魔でしかなかったのだ、
それで少しは清々しているがやはり暇なものは暇だ。

「うーむ、やはり救世主たる者もっとかっこいい登場の仕方をするべきか?」

そして完全に暇になってしまったディーヴァは厨二病が出てきていた。
別段空腹と言うわけではないので捕食願望が鳴りを潜めているためでもあり、
暇を紛らわせるためでもある、だが少しは本音も混じっているだろう廚二病だし。

「だとすればあれだな、かっこいい登場にはかっこいいセリフも必要だろう」

そうして登場の仕方やら、セリフやらをまじめに考えるようになり、時にはポーズも取ったりする。
更にセリフと共にポーズを決めたりと色々とやりたい放題だ、
その中には手に入れた力を使って演出し登場するパターンもある。

「こう……いやこうか」

なかなか納得できるものが作れないのか苦戦しつつ作り上げていく、
今この瞬間は彼女が救世主ではなくただ一人の存在として過ごしている時間でもあった。

「……ん、空が?」

しかし何か異変を感じ取ったのかディーヴァは空を見上げる、
いつもいつも同じような空が今は違うような感じがして、
だが、そらは変わらない、晴天、この殺し合いが行われているとは思えないほどの晴天であった。

「空は変わらないな」

そう呟き、自分の異変は勘違いであったのだと思い再び練習に戻る、
だが、彼女は、それにまだ気づいていなかった。
彼女が観ずいた異変は決して間違いではなかった、だがあまりにも一瞬過ぎたので彼女は間違いだと思ってしまったのだ、
それこそが『ソレ』が確実に生まれるには必要なことだったのである。
そう、彼女のミスは一瞬でもその異変に気付いてしまったことだろう、
だがそれをミスと言うにはあまりにも理不尽であった。


278 : それは虚構より出でるもの :2017/05/17(水) 20:43:53 PDoO3Vn20
◇ ◇ ◇ ◇ ◇

沖縄のとある場所に、それは生まれた。
全身が黒い黒い存在、今はまだ形を作っているのかもやもやとしている。
そのもやもやは色々な形に姿を変えていく、それは動物であったり植物であったり機械であったり、人であったりだ。
だがどれも気に入らないのかすぐに崩れて再び再構築する。

そしてそれから何分か経過して、それはついに形を得た。
選ばれた姿は――テラカオスディーヴァだった。なぜソレがディーヴァの姿を選んだのかは不明だ。
段々とテラカオスディーヴァの姿を構築していく、そして構築していく中で沖縄に不思議なことが起きたのである!
まずは地が震えた!それもただの震えではない、それは東北地方に起きた巨大地震のごとき震えである!
そしてさらに、沖縄を中心とした空に異変が起き始める。
空が、それはそれは黒く黒く、おぞましいほど黒に染まっていく、沖縄の空の黒は本州からでも目視が可能だった。
そしてディーヴァの為にはられていた結界も軋みを上げる、結界の崩壊速度が速まってしまった。

だが最も注目すべきところがある!読者の皆さんの中にTC計測装置を持つお方はおられるだろうか?
いるのならば計測装置を見てもらいたい、そこには驚くべき数値が記録されている!
否、否である!その計測器のTC値はもはやメーターを振り切れているではないか!

なぜそうなったか!そう、それはすべてこの存在が顕著したからだ!この存在こそが元凶なのだ!!
そしてその者が完全に姿を構築するだが、その姿は確かにディーヴァの物だ、だが、だが!その色は人の物ではない、全てが黒くおぞましいものだった。

「…………………」

ゆらりとその者はテラカオスディーヴァがいる方向を見定める。
その顔も黒く塗りつぶされて、表情をうかがい知ることはできない、
ただ無表情に歩き、加速し、一気に音速を突破した。
そしてこの存在が完全に表れたことにより、沖縄の崩壊速度が速まった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


279 : それは虚構より出でるもの :2017/05/17(水) 20:44:21 PDoO3Vn20
「なんだ……あれは……」

異常に気づいたディーヴァは空を見上げ驚く、
それも当然だろう、そらが黒く黒く塗りつぶされているのだから。
本来であるならば青い青い空、だが今は見るも無残すぎる姿をさらけ出していた。

「……このままではこの島が滅ぶな」

ディーヴァは少し考えてそのように結論を出した、だが結論の根拠は勘である、
ではなぜ勘だったのかは、彼女がテラカオスであるかかもしれない。

「だが、その前に、やらなければな」

そう、何故か結界の崩壊が加速したことによりもはやディーヴァが壊せるほどに弱まっていた。
だが今回、ディーヴァは外に出ようとはしなかった、
本来であればありえない行動だ、だがディーヴァは感で分かった、自らに向かう存在のことを。
それは一瞬であった、一瞬で己の目の前にその存在が現れた。

「………………」

それは自分と同じ姿であり、だが何もかもが違う存在。
ディーヴァはその存在に油断することなく、剣を構える。

「お前は何者だ」
「…………………」

ディーヴァがその者に問いかける、だがそのものは答えない。
いや答えられるかもわからない、だがディーヴァは一応確認の為に言ったのだ。

(この存在、シャドウと名づけよう、だが何だこの違和感は)

ディーヴァが油断せず直ぐに戦いに入らないのはこの存在から何か感じるのだ、
それは同じテラカオス?確かに同じテラカオスのような気配もある、だが何かが違うのだ。
そう、同族意識を持てない、それどころかこの存在とは相いれないような気すらするのだ。

(なぜだ?何故この存在とは相いれないと思う?)

ディーヴァにすらこの感情は分からなかった、なぜシャドウと相いれないのか分からないの奇妙な感情。

(……ああ、だがそんなことはどうでもいい)

ディーヴァはそれらの感情全てをどうでもいいと切って捨てたのだ。
それは自らの感が言っているのだ、シャドウの存在を許すなと。

(シャドウは危険だ、何故か分からない、だが!ここで滅さなければならない!!)

ディーヴァがそう決意を固めていく、シャドウだけは放置してはならないと滅さなければと。
徐々に心の感情も、理性すらもそう叫んできた。

「お前は食わない、お前を食らうことはない、何故ならお前を殺すからだ
 いや、殺さなければならない」

ディーヴァが食らわないとすら言った、救済を捕食として実行しようとしている存在がである。
それほどまでに、シャドウの存在を危険視しているのであろう、それほどまでに生かしておいてはならないのだろう。
ディーヴァがサタンサーベルを構える。


280 : それは虚構より出でるもの :2017/05/17(水) 20:46:23 PDoO3Vn20
「…………」

だがシャドウはそれにおびえる様子も見せず、悠々と立っている。
それがさらに不気味さを滲ませていた。

「………」
「………」

双方動かずに、睨みあっている、先にどちらも動かずに睨みあう。
ディーヴァは脚を少しずらし、動きやすい形を作る、それは格闘家たちの技術を自己流にアレンジしたものだ。
幸い剣に関してはディーヴァの元となった風鳴翼が使っていた記憶があったためなんとかなったのだ。

「……はぁッ!」

先に動いたのはディーヴァだった、前述していたように構えを作っていたのは先制攻撃をするためだったからだ、
そのかまえてディーヴァの基礎身体能力により一瞬と言っていいほどの速さでシャドウに接近する。
しかしシャドウは変わらず悠然と突っ立っている。

「…………!!」

それに油断せず、喜びもせず自身の最大級の振りかぶりによる斬撃をシャドウに食らわせようとして――
ディーヴァが吹き飛ばされた。

「なに!?」

シャドウが吹き飛ばす動作も何もなく唯々吹き飛ばされた、それにディーヴァは唯々驚愕をする。
そして姿勢を制御し着地しようにもできなかった、それほどまでに吹き飛ばす力は強大だった。
更にその吹き飛ばしが発生した直後TC値がまた異常な指数を記録したのだった。

「グッ……!」

地面に勢いよくぶつかったディーヴァであったが地面からジャンプするようにして体勢を立て直す。
そしてシャドウを見てみれば、左手に何かを生成しているように見えた。
そして生成されたのは剣、ディーヴァが持っているサタンサーベルと同じ形をした剣が生成されていた。

「……無茶苦茶な」

それは無茶苦茶の権化であるディーヴァですら悪態を付くほどの、ものであった。
だがこれを見たことによりディーヴァは相手が自分を摸写しているとそう思い至った。

(だとすれば厄介だな、相手は私の能力を模写したことにもなる
 ならば私が今まで捕食した者の能力も使えるということになるな)

そう、自らが食らってきた者たちの能力、それらすべて合わさっているとなれば自分ですら厄介と思える
だがそれと同時にディーヴァはもう一つのことを思った。

(だが、シャドウを倒せば私はさらなる力を得ることが出来る、確実に!)

そう、何故だかそう確信するのだ、シャドウを倒せばディーヴァはさらなる力を得られると、
そのような確信が生まれている。

「…………」

シャドウが剣を試すように振った、すると振られた方向にあった海が割れた。
割れた時間はごく数秒であったが、それは確かなことだった。

「容易ではないがな!」

シャドウとディーヴァが勢いよく動き出す、ここに災害と言っていいほどの戦いが本格的に開始された。
そして沖縄県は何時まで持てるのだろうか。


281 : それは虚構より出でるもの :2017/05/17(水) 20:46:57 PDoO3Vn20
【二日目・14時00分/沖縄県】


【テラカオス・ディーヴァ@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】健康、首輪解除、救世者としての自覚、厨二病、火水土風木電聖耐性(強)、薬物耐性(弱)、闇核属性吸収、嗅覚と聴覚、肉体強化、有翼、キングストーンにより徐々に能力向上
【装備】シンフォギア・天羽々斬?(異常に禍々しく変化)@戦姫絶唱シンフォギア?、キングストーン、サタンサーベル
【道具】支給品一式 、スマホ、ストロング・ザ・武道の竹刀、予言の書(本物)
【思考】基本:世界をカオスにする
0:シャドウを殺す。
1:拳王軍を追跡し、救う(喰らう)
2:この宇宙から全ての者を救い尽くす(喰い尽くす)
3:攻撃力だけでなく、脆い肉体を強化できる者(ダオス等)を喰い、より高みに至りたい
4:何故皆救済を拒む? まるで意味が分からんぞ?
5:私はまだまだ弱い、もっともっと強くならねば……!
6:高いエントロピーを持つ霧切はいつか救いたい(喰いたい)
※風鳴翼・佐村ガウスフレミング02・天海春香・はるかさんの能力を継承しました
※テラカオスとしては未完成のため、テラカオスバトルロワイアル十周目の死者の能力は現在使用不能、進化すれば使えるようになるかもしれません
※風鳴翼の容姿や人格を色濃く受け継いでいます、ただし、進化するにつれて失われる可能性があります
※ダルメシマンの人間の1京倍の嗅覚、ゼブラの聴覚と音操作能力を特に強く継承しました
※02氏の書き手としての能力を消失しました
※テラカオス候補者の一人である多木を食らった結果として力が大幅に増しています
※ニアラ×7及びVFDより、真竜の強靭な牙及び強烈な捕食衝動を色濃く継承しました。
これにより、空腹時は乗り物デザイン等の厨二病よりも捕食願望が優先されます。
※同じく真竜より、毒花フロワロ散布能力を継承&発動させました。現状関西及びディーヴァが向かう先に散布されています
※VFDを喰いましたが、ニアラ×7では他の真竜全ての代わりにはならないため第七真竜にまでは至っていません
※ジョンス及びラーメンマンより、多数の戦闘技術を継承しました
※キングストーンによって徐々に能力が向上しています(ただし空腹は収まりません)



【テラカオス・ディーヴァ・シャドウ@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】テラカオス・ディーヴァと同じ
【装備】サタンサーベルを摸写した剣
【道具】不明
【思考】基本:??????
0:???????
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています。
※ディーヴァの捕食した能力もこみで持っているようです。

※沖縄にて異常気象が多発しています、更に空が黒に染まり本州からでも確認できます
※沖縄の道具は主催が回収したようです


282 : 名無しさん :2017/05/17(水) 20:47:15 PDoO3Vn20
投下終了です


283 : 名無しさん :2017/05/17(水) 21:04:06 SdfDPARI0
投下乙ー、なんだが…
確か対ディーヴァ結界は沖縄に張られたわけじゃなく、霧切さんを中心とした高円範囲じゃなかったっけ?
(喰われたくないから、近寄らせない限定結界)


284 : 名無しさん :2017/05/17(水) 21:06:10 PDoO3Vn20
>>283
あー、確かにそう書いていますね、修正してきます


285 : それは虚構より出でるもの :2017/05/17(水) 21:16:08 PDoO3Vn20
>>277の修正です

沖縄、早期に禁止エリアにされたため誰も来ることがなく静かだった場所。

だがその地で一人探索する存在がいる、それは霧切響子を中心とする結界によって沖縄まで押し出された人物。
そう、テラカオス・ディーヴァだ。結解の外にはじき出されて以来沖縄を探索していたのだ、

「はぁ、分かっていたことだが何もないな」

何もない、本当に何もないのだ、人はおろか道具もないのだ、きれいさっぱりに。
それもそのはずだ沖縄は禁止エリアに指定されていらい秘密裏に主催陣が道具を全部回収していったのだ。

「とはいえこれでは結界が消えるまで何もできることがないではないか」

12時30分も過ぎてもなお残る結界はディーヴァの力をもってしても破れないのだ、
とは言えこのまま弱まっていけば破れるようになるわけだ、
しかもそのことはディーヴァもわかっているため大人しくしている。

「…………ほんと、どうしようか」

予言の書は海にポイ捨てしてしまったため暇を潰すものすらなくなっている、
まぁ、彼女にとって予言の書は自分が救済するというプライドを持っているディーヴァにとって邪魔でしかなかったのだ、
それで少しは清々しているがやはり暇なものは暇だ。

「うーむ、やはり救世主たる者もっとかっこいい登場の仕方をするべきか?」

そして完全に暇になってしまったディーヴァは厨二病が出てきていた。
別段空腹と言うわけではないので捕食願望が鳴りを潜めているためでもあり、
暇を紛らわせるためでもある、だが少しは本音も混じっているだろう廚二病だし。

「だとすればあれだな、かっこいい登場にはかっこいいセリフも必要だろう」

そうして登場の仕方やら、セリフやらをまじめに考えるようになり、時にはポーズも取ったりする。
更にセリフと共にポーズを決めたりと色々とやりたい放題だ、
その中には手に入れた力を使って演出し登場するパターンもある。

「こう……いやこうか」

なかなか納得できるものが作れないのか苦戦しつつ作り上げていく、
今この瞬間は彼女が救世主ではなくただ一人の存在として過ごしている時間でもあった。

「……ん、空が?」

しかし何か異変を感じ取ったのかディーヴァは空を見上げる、
いつもいつも同じような空が今は違うような感じがして、
だが、そらは変わらない、晴天、この殺し合いが行われているとは思えないほどの晴天であった。

「空は変わらないな」

そう呟き、自分の異変は勘違いであったのだと思い再び練習に戻る、
だが、彼女は、それにまだ気づいていなかった。
彼女が観ずいた異変は決して間違いではなかった、だがあまりにも一瞬過ぎたので彼女は間違いだと思ってしまったのだ、
それこそが『ソレ』が確実に生まれるには必要なことだったのである。
そう、彼女のミスは一瞬でもその異変に気付いてしまったことだろう、
だがそれをミスと言うにはあまりにも理不尽であった。


286 : それは虚構より出でるもの :2017/05/17(水) 21:16:41 PDoO3Vn20
>>278の修正

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

沖縄のとある場所に、それは生まれた。
全身が黒い黒い存在、今はまだ形を作っているのかもやもやとしている。
そのもやもやは色々な形に姿を変えていく、それは動物であったり植物であったり機械であったり、人であったりだ。
だがどれも気に入らないのかすぐに崩れて再び再構築する。

そしてそれから何分か経過して、それはついに形を得た。
選ばれた姿は――テラカオスディーヴァだった。なぜソレがディーヴァの姿を選んだのかは不明だ。
段々とテラカオスディーヴァの姿を構築していく、そして構築していく中で沖縄に不思議なことが起きたのである!
まずは地が震えた!それもただの震えではない、それは東北地方に起きた巨大地震のごとき震えである!
そしてさらに、沖縄を中心とした空に異変が起き始める。
空が、それはそれは黒く黒く、おぞましいほど黒に染まっていく、沖縄の空の黒は本州からでも目視が可能だった。
そして霧切響子を中心とした高円範囲の結界も軋みを上げていた。

だが最も注目すべきところがある!読者の皆さんの中にTC計測装置を持つお方はおられるだろうか?
いるのならば計測装置を見てもらいたい、そこには驚くべき数値が記録されている!
否、否である!その計測器のTC値はもはやメーターを振り切れているではないか!

なぜそうなったか!そう、それはすべてこの存在が顕著したからだ!この存在こそが元凶なのだ!!
そしてその者が完全に姿を構築するだが、その姿は確かにディーヴァの物だ、だが、だが!その色は人の物ではない、全てが黒くおぞましいものだった。

「…………………」

ゆらりとその者はテラカオスディーヴァがいる方向を見定める。
その顔も黒く塗りつぶされて、表情をうかがい知ることはできない、
ただ無表情に歩き、加速し、一気に音速を突破した。
そしてこの存在が完全に表れたことにより、沖縄の崩壊速度が速まった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


287 : 名無しさん :2017/05/17(水) 21:17:20 PDoO3Vn20
修正終了です、ご迷惑をおかけしました


288 : 名無しさん :2017/05/18(木) 09:05:16 Sf0XumO.0
投下乙
なんかブレイブルーで言うところの黒き獣みたいなのが出てきたな
貧乳とシャドウ、どっちが勝っても対主催的にはまずい気がする……


289 : 名無しさん :2017/05/28(日) 03:30:47 U5AzQ6/M0
投下します


290 : You kill tell me. :2017/05/28(日) 03:32:24 U5AzQ6/M0

「……さて」

白い衣装に身を包んだ男が一人考える。
モブの部下は今は誰一人としていない。
ここは国際展示場近く。

国際展示場……つまり、東京の地理未把握民に伝えるならば『ビッグサイト』。
そう言った方がわかりやすいいだろう。
ここで前回のカイザの日を祝っていたわけであるが……。
何故、いまさらここにユウキ=テルミが現れたのかをサイコマンは考える。

可能性の1=DMC狂信者を皆殺しに来た。
これはNOだ。

出来るならすぐにやっている。それくらいの実力はある。
少なくとも無量大数軍クラスはあると見切っていた。
だが、その程度だ。
名有の狂信者には勝てる。
しかし、幹部クラスになると勝つのは厳しいくらいだ。
勿論、サイコマン自身も奥義を出さざるを得ない程度には苦戦はするだろう。
だが、自身は負けない。何故なら彼は完璧超人なのだから。

可能性の2=DMC信者をただ煽りに来た。
これもNOだ。

彼は口は悪いが、ただのチンピラではない。頭は相当キレている。
他人を煽るのが大好きで、苦しむ姿を見るのが大好きで、意味もなく殺すのが大好きなだけだ。
だが、そんな彼が何の策もなく他人を煽るためだけにこんなところに来るだろうか?
裏切りを得意とする男が無警戒で裏切るだろうか?
どちらもNOだ。

ならば、何から何まで計算づくで動いていた行動だった?

「まさか……彼の真の目的は……!」

これはYESだ。
どんな行動も因果はある。
意味のない行動をとるなど決してない。

「彼は……『自分が死ぬ』ために……」

サイコマンは一瞬だけ嫌な予感が過る。
だが、そんなことはない。
ありえない。
決してありえるはずがない。

「いや、念のために……『ユウキ=テルミには手を出さない』ほうがいいでしょうね」

結論は出た。
すぐにそう進言すべきだった。
殺してしまった場合。
何をしでかすかわからない。

何によりも彼は『誰も知らないこと』を知っているはずだ。
生きたまま捉えることが出来れば……

『全狂信者へ通達、裏切り者【ユウキ=テルミ】はヘルカイザー亮によって討取られました』

「……………………はい?」

一瞬、時が止まった。
時間にして……ほんの少し。
だが……

「ニャガ……ニャガニャガ……ニャガニャガニャガ……」

サイコマンは顔を覆いながら笑った。

「ニャガニャガニャガニャガニャガニャガ……本当……
 本当に腹が立ちますよ、あなた方のすぐに感情に流される直情さにはねーーーーーっ!!!!」

あの冷静なサイコマンでもキレた。
自分の報告が遅れたのもあったが、それでもキレた。
近くにあったコンビニを近くに放置されていたトラックをマグネットパワーで浮かして突っ込ませた。
それくらいにブチギレた。

「これは早急に【ユウキ=テルミ】の情報を持っている者を探す必要がありますね」

サイコマンは一先ずキレながら、ビッグサイトの本拠地に戻った。
まずは説教からしよう。そう決めた。


291 : You kill tell me. :2017/05/28(日) 03:33:04 U5AzQ6/M0

【二日目・13時50分/国際展示場近く】
【サイコマン@キン肉マン】
【状態】ブチギレ
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
基本:クラウザーさんを生き返らせるためSATSUGAIする
1:『ユウキ=テルミ』については狂信者上層部と相談
2:できればシルバーマンさんも勧誘したい
3:そういえば、草加さんは……まっ、いいでしょう。
※狂信者です


『……よう、アンタが黒幕なんだって?』
『そうですね、黒幕と名乗りましたので黒幕です』
『クソニートに一撃でやられたんだってな、クソダセーな、オイ』
『いえいえ、黒幕=最強というわけはありませんのでね、悪しからずに。
 むしろ九期の私だったら今期のテラカオスに対する特攻持ちですよ。
 前に単騎で全死者の能力持ちのチートを殺しましたからね』
『チッ……で、ここはどこだ、新死者スレか?』
『いえ、永久退場者ルームです』
『……オイオイオイオイオイそんなとこにいたらテメェも……』
『ええ、復活できませんよ、貴方も私も……勿論ここにいる何人かの方々も』
『テメェ、マジでふざけんなッ!!』
『ふざけてなどいません、それが今回のルールですのでね
 ……【今期のカオスロワは死者の復活】は禁止というルールがね』
『その通りだ、ユウキ=テルミとやら、復活など考えずに大人しくしていろ』
『テメェはクソニート!!』
『クソニートではない、クソフリーターだ、ここで私の方が先輩だ。敬え、養え、労え』
『断るっての……
 つーか、あのキャカス女は特に理由なく復活したじゃねぇかッ!!! 俺様は知ってんだぞ!!!』
『『あー……』』
『あー……じゃねぇよ!!! テメェ、死者スレの責任者だったんだろ、オイ!!』
『いやー、最初の四国の窯(死者スレ)には入っていたんだけどね。
 悪魔将軍様とハクメンの戦いで壊れちゃったから、その時に出たのかな?』
『なるほど、あのクソかませが見たのは壊れた窯か……いや、なんでその後に死者スレ移動してんだよ!』
『あれです、板移転みたいなもんです』
『じゃあ、なんであの鉄仮面のおっさんは富士樹海奥にあることを知っているんだよ!!!』
『それは悪魔将軍の肉体が書き手だったんですよ……それでその悪魔将軍様の頭脳の記憶と混じってですね……』
『無茶苦茶言ってんじゃねぇッ!!』
『そうしないと辻褄が合わなくなるだろ!!』
『逆切れしてんじゃねぇ!! というかあのクソインド人どうやって呼び出した!!』
『カルナさんは頼んだら来ました……呼札で』
『FG○じゃねぇんだぞ!!!!』
『そうだ、呼札で☆5鯖は都市伝説だ!!!』
『そういう問題じゃねぇ!!!!! あのクソ燃費悪いのにどうやって魔力供給してるんだよ!!
 並みのマスターなら10秒で干からびんぞ、あのクソインド人!!!!』
『そりゃ、私の十期補正と黒幕補正で余裕でいけます』
『まあ、黒幕っていうのは私がそう【観測し(み)】たからね』
『クソニート……まさか、テメェ……【眼の力】を……』
『ああ、私がどうやって地の文で話して分かっているか?
 ただのモブのどうでもいてもいなくてもいい奴のことをあのウォーズマンもどきたちが今になって思い出したくらいだしな』
『この世界の【蒼の継承者(カラミティ・トリガー)】とでも言いたいのか?』
『だから、アイツから切り取った。地の文を見ることができるメタ視点の力を』
『……で、ここは本当になんなんだ?』
『最初に言った通り永久退場者ルームです。勿論やる人はいないでしょうが貴方が復活などできないようにするためにね』
『ここから出ようとしても、表側にノー制限十全カルナさんいるし基本無理ゲーだ!!!』

『………………クソがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

黒き破壊神スサノヲになってそこら辺りのものを破壊しつくすテルミ。
だが、ここから出ることは出来ない。

もはや、彼らは登場人物のところにも載らない。
【いない筈の者(クロノファンタズマ)】なのだから。

『はいはい……暴れるのは結構ですが静かにしてくださいね』
『それにいい諺がある【死人に口なし】だ』


※ユウキ=テルミは復活できません。


292 : 名無しさん :2017/05/28(日) 03:33:58 U5AzQ6/M0
投下終了です。


293 : 名無しさん :2017/05/28(日) 05:34:23 qqs/z0EY0
何が書きたかったのかようわからん……
だいたいテルミは精神壊されてなかったか?


294 : 名無しさん :2017/05/28(日) 07:13:22 Xg2iODgU0
サイコマンの下りは良かったんだが ......
カオスロワなんだから重箱の隅をつつくように無理に辻褄合わせしなくて良いよ


295 : 名無しさん :2017/05/28(日) 11:19:45 yYZWS1Pc0
サイコマンの件だけ見ると確実にテルミ復活フラグでしかないけども、
後半部分でそのフラグを自分で叩き折って、かつ今までの辻褄が合わなかった部分の整合性を整えてるように見える。


296 : 名無しさん :2017/05/28(日) 12:34:15 j4EO28X20
整合性を取ろうという意気込みは感じるんだが
俺がバカなだけなのか余計に意味がわからなくなってる...とりあえず眼の持ち主だったシグナムが観測したから10/はやっぱり黒幕じゃなかった(シグナムによって後付けで黒幕になった)でOK?


297 : 名無しさん :2017/05/28(日) 12:40:16 yKZGL1zk0
ヘルカイザーがテルミと相討ちになったのが13時40分で、ディー達が色々動いてたのが14時
そもそもヘルカイザーとテルミの戦闘を誰も見ていないし本人も異次元に死体が飛んでるから、13時50分で信者全体にヘルカイザーがテルミ討ち取ったって伝わるのも妙に感じるが

まあそっちはともかく、後半はいらんだろ。メタが酷いし永久退場ならここに出てくるのもおかしな話
無理に辻褄合わせようとしてるが、そもそも黒幕とやらの存在自体が主催陣営の話と食い違うし、次から次へと帳尻あわせなきゃいけなくなってくる
あとすっごい今更なこと言っちゃうと、放送で名前が呼ばれてない死者って10/以外にもう一人いるしな……


298 : 名無しさん :2017/05/28(日) 13:06:33 YYdFGWVo0
大元辿ると唐突に死者スレ壊したシグナムの行動から辻褄合わせなくちゃいけなくならない?
そもそも黒幕じゃありませんでしたーだと、崩壊に巻き込まれた人はとばっちりもいいとこだし
眼だの観測だののよくわかんない用語も解説欲しい。大抵SS中やwikiが補完してくれるけど、ブレイブルー関連と思われるものは補足少ないし


299 : 名無しさん :2017/05/28(日) 14:10:55 FHPCYOCI0
テルミは精神ぶっ壊されて死者スレ送りになったしなぁ、復活できんと思うが


300 : 名無しさん :2017/05/30(火) 16:52:46 l.4YBjG60
サイコマンの下りだけwiki登録になったか
メタ的に見るとテルミが復活できないのを知らないサイコマンが勝手にテルミを過大評価している的な展開になるなw


301 : 名無しさん :2017/05/30(火) 17:03:16 7FTcaWHs0
まあサイコマンだってたまにはミスするよ
しかしよくよく考えるとテルミ、精神快楽堕ちして死者スレ送りとなると、ファガンみたく四つん這い徘徊してる可能性あるのか……


302 : ◆i4dM20cHLo :2017/06/20(火) 14:17:24 iDmdhC1U0
予想外に早く出来たので投下しまーす


303 : 悲しみを繰り返し、僕らはどこへ行くのだろう? ◆i4dM20cHLo :2017/06/20(火) 14:18:29 iDmdhC1U0
ここは大阪の街。
そこはかつて拳王連合軍とホワイトベース組、そして裏で暗躍していた特務機関員、ホワイトベース組に加勢しようとしたネオ・クライシス帝国。
そして、拳王連合軍の預かり知らぬところでホワイトベース組とネオ・クライシス帝国を壊滅に追いやった貧乳歌姫が闘争をしていた場所だ。
その戦争は正に地を揺るがすほどの勢いであり、チート級と理不尽級……二体のガンダムの攻防、飛び交うメガ粒子砲と野球ボール、無駄に強いシグナム、ハクメン、貧乳などの参加者が暴れまわったこの街はいつ崩壊してもおかしくはなかった。
もはや日本の第二の首都という機能を失ったほど、大阪はボロボロだった。

そんな主戦場となった大阪の街の少し離れた街外れの地下には参加者である矢車と葉隠がいた。

「ムニャムニャ……俺の作った麻婆豆腐の味はどうだ、お空、光太郎……」
「やったべぇ……俺、占いを信じたら生還することができたべぇ……Zzz」

二人はハクメンや黒狸と一戦交えた結果敗北し、苗木によって保護されて地下へ匿われたのだ。
今は二人は呑気に夢の中である。
……自分たちが所属していた組織がほぼ全滅したことを知らずに。
だが、それもこれからの彼らには関係なくなるのだろう。


今、大阪に一つの風が吹き、今にも崩れそうだった一つのビルが倒壊し、更にドミノ倒し的にビルがビルを押すことで倒壊していき、それは矢車と葉隠の隠れていた場所へと向いていた。
凄まじい轟音を立てて崩れていくビル群。

「ハッ!?」
「もう食べられないべえ……」

その轟音に矢車は目覚め、一方で葉隠はまだ寝ていた。
目覚めたばかりの矢車には状況がわからないがこの場所が揺れていることから、とにかくまずいことだけはわかり、半ば本能的にゼクターに手を伸ばす。
少なくとも窮地を脱出するためには仮面ライダーに変身する必要があると思っての判断であった。
……が。

「ゼクターが無い!?」

あるはずのゼクターがなくなっていることに焦る矢車。
いったいどこへ行ったのかと視線を泳がせると……自分と一緒にいたもう一人の参加者、葉隠の口元へと辿りつく。

「苗木っち……このエビなんか硬い……Zzz」
「わー!!? 食うな馬鹿! それは食べ物じゃないんだぞ!?」

寝ぼけた葉隠が食べ物と勘違いしてホッパーゼクターを口に含んでいた。
焦る矢車は涎塗れになったそれをすぐに取り出して、すぐにベルトにはめ込んだ。

「……変身できない!?」

ここから脱出するための変身は叶わなかった……葉隠が一部のパーツを食べたり、涎で内部の機械を汚すことでゼクターが故障したのである。

万事休す……何が起きているのかわからないが、このままでは生きて妹であるお空と弟候補である光太郎に生きて会うこともできないだろう。
そう思うと自分に変身不能に追い込んだ葉隠を撲殺したい感情に駆られそうになった。

だが二人のいた地下に響くほどの轟音と振動は……収まった。

「……?」

いったいどうしたと思って天井を見上げる矢車であった。
矢車は知る由もないが、彼らは今、街外れの地下にいる。
彼らを隠した苗木は、戦場になった大阪の街のビルが倒れて二人が生き埋めにならないように街外れの地下へ移したのだ。
こうなればビルの瓦礫に潰れることはなかろう。
事実、ビルはドミノ倒しにはなっても矢車と葉隠の場所に届かず、振動と轟音が襲ってきたが、ビルの瓦礫に押しつぶさることはなかった。
そうならないように苗木が計算したからである。





……だが、世に計算外の事象というものは付き物である。


304 : 悲しみを繰り返し、僕らはどこへ行くのだろう? ◆i4dM20cHLo :2017/06/20(火) 14:19:15 iDmdhC1U0

苗木の計算通り、ビルによる瓦礫の被害は確かに受けなかった。
だが、戦争による大阪の地盤が受けた被害までは計算外であったのか、瀕死状態だった地盤が多数のビルが倒れたことの重みと衝撃によってトドメを刺されて地盤沈下を引き起こし、ビキビキと大地に亀裂を走らせた。
その大きな亀裂は、街外れにまで届き、それは不幸にも矢車と葉隠のいる場所にも届いていた。

「う、うおおおおおおお!!」
「借金帳消し!? ありがとう十神っち! ……すぴー」

そして、先ほどのものすら超える振動と轟音が地下に鳴り響いた。
それはかつてはZECTの隊長として鍛え上げられた矢車すら立てるものではなく、にも関わらず葉隠は相変わらず眠っていた。
そんな彼らに地盤沈下によって生じた地下の瓦礫が襲いかかる!

「お空……光太郎!!」

せめて仮面ライダーに変身できれば窮地を脱することもできたのかもしれないが、後の祭り。
自分が岩塊に潰される寸残に矢車は妹と弟になれるかもしれなかった者たちの顔を思い出し、葉隠は最期まで自分が生還した夢を見ていた。

そして二人の男が天井から降り注ぐ岩塊によって潰れて混ざり合った麻婆豆腐のようになった。



【矢車想@仮面ライダーカブト 死亡確認】
【葉隠康比呂@ダンガンロンパ 死亡確認】

※二人の支給品は瓦礫に押しつぶされて全て使用不能になりました




今回の物語はもう少しだけ続く。
次は概ね同時刻で起きた二人の男の物語を見てみよう。


305 : 悲しみを繰り返し、僕らはどこへ行くのだろう? ◆i4dM20cHLo :2017/06/20(火) 14:20:27 iDmdhC1U0





ハクメンと弦十郎が戦った場所の跡地。
そこには敗者である弦十郎が瓦礫に囲まれてポツンと倒れていた。
装者以外は倒すことができないノイズなど相性さえ悪くなければ、原作最強格の力を持っていた風鳴弦十郎。
しかし、そんな彼も自分を遥かに上回る実力を持つハクメンと、車が突っ込んでくるという予期せぬアクシデントにより満身創痍の怪我を負っていた。
ダメージ・疲労、共に極大。
治療する手段と長く休む時間がない死んでしまうレベルであった。
今の彼相手ならばモブ狂信者三人いればでも確実に殺すことは可能である。
それほどまでに弦十郎は弱っていた。

そんな彼が覚醒したのは大阪内の、彼がいる場所からは程遠い場所で多数のビルが崩れた瞬間だった。
その轟音により朦朧とした意識の中、弦十郎は半覚醒し、遠くで崩れていくビルを視界にいれる。

(ビルが崩れ……あそこに人がいるなら……助けに行かねば……だが、体が……)

朦朧とした意識の中でも彼の正義感とOTANAらしさは人命救助を優先しようとしていた。
だが、消耗しすぎた体の方が言うことを聞いてくれない。
今動けば確実に死ぬぞと、体が警告を発しているのだ。
弦十郎の意識は再び疲れから来るまどろみの中へ沈もうとしていた。



が、しかし。
そんな閉じかけた視界に一つのディパックが映る。
ハクメンに処断されたWゴローの置き土産であるそれはモゾモゾと動いていた。
中に生き物が、もしくは噂に聞く支給品として分別された人間が入っていると、弦十郎は予測する。
実際、中には支給品扱いでロワに参加させられた男、乾巧が中に入っていたのだ。
……それだけなら、この場は無視すれば良かったのだが、問題はディパックの周囲にあった。

燃えているのだ。
Wゴローが乗っていた車が両断されたことで爆発したが、それによって燃えた部品などの火種が周辺に広がり、誰かが入っているであろうディパックの周囲をメラメラと燃やしていた。
それだけでなくハクメンとの戦闘の過程で壊れた車や家屋……その中にあるガソリンやガスボンベにも引火しようとしていた。

(まずい……あのままではディパックの中にいる者が!)

彼に燃料やガスに引火しても距離が空いているため、弦十郎は巻き込まれる危険はない。
このまま寝ていて運が良ければ対主催に拾われて彼は助かるだろう。
動けば死ぬ可能性もある。
だが、炎で熱いのか、ディパックの中でジタバタしているであろう者を見ていると、自分だけ助かろうとする気には彼はならなかった。
弦十郎はOTONA故に。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

弦十郎は気迫と血反吐は吐きながら、疲労から倦怠感や眠気、己が肉体から来る危険信号さえ吹き飛ばして、脳内にアドレナリンを流して立ち上がった。
そして、燃え盛る炎に囲まれたディパックに向けて走り出し、一秒後にはディパックを両手で抱え込んでいた。
次の数瞬後、鍛え上げらた肉体と直感により炎がガソリンとボンベが爆発すると感じ取った彼は、高く跳躍した。
彼の直感通り、乾が入っていたディパックのあった場所は大爆発を起こした。
救い出すのがたった一秒でも遅ければ乾はディパックの中で爆炎に飲み込まれていたであろう。
弦十郎は次になるべく火事になりそうにない、地盤も崩壊しなさそうにない、マーダーもいなさそうな安全地帯を探し、そこへ降り立った。


306 : 悲しみを繰り返し、僕らはどこへ行くのだろう? ◆i4dM20cHLo :2017/06/20(火) 14:21:13 iDmdhC1U0
安全地帯と思わしき場所へ降り立った弦十郎はそこでディパックのチャックを開けて、中から全裸の男……乾巧を救い出した。

「ゲホッ、ゴホッ……助かった……アンタが助けてくれたのか」
「ああ……良かった、無傷……ではないようだが、見殺しにせずに済んだみたいだな……」

乾が無事なのを確認すると弦十郎は浮かべた後にそのまま位置が切れた人形のように倒れた。

「お、おい!
……アンタ、すげえ傷じゃねえか。こんな体で俺を助けてくれたのか! 死ぬ気かよ!?」
「無問題、だ。それに「生きるのを諦めるなッ!」と弟子は言っていた。だから俺も死ぬ気はない」

乾が弦十郎の体を見ると、常人ではとても立っていられない傷を負っていることを知り、驚愕する。
こんな体を根気一つで動かしたのも驚きだが、何より死に体同然の肉体で見ず知らずの自分を救い出そうとしたことがもっと驚きであった。

「本当は自己紹、介とでも行きた、いところだが……流石にもう動、けそうにない。
少、し……休、ませてくれな、いか?」
「ああ、わかった。アンタはもう休んでくれ……本当にありがとな」

無茶をしすぎた反動なのか、弦十郎は今度こそ眠りについた。
自分を助けてくれた名も知らぬ恩人に乾も普段のぶっきらぼうさもなりを潜めて素直に感謝して、彼を地面に横にさせた。


まどろみの中で弦十郎は起きてからのことを考える。
今の時刻は何時なのかわからないし、暴走した姪が既に大阪にたどり着いているかもしれない。
だが光太郎たちは見込みと可能性のある若者たちだ。
さっき跳んだ時に一瞬ではあるが、港にあるはずの死国が沈んでいたのを確認したので、きっと自分の見ていないところではぐれた霧切たちと合流し、ホワイトベース組と連携して拳王連合軍を倒しているのかもしれない。
姪の翼に関してはどうなったか不明だが、ひょっとしたらこちらも既に光太郎やクライシス皇帝の活躍で止まっているかもしれない。
翼も優しい子なのだから、暴走して食人鬼化したのも何か理由があるのかもしれない。
願わくば元のSAKIMORIに戻って欲しいと願う。
だが、ここまでは憶測に過ぎない。
自分にできることは仲間を信じることのみであろう。

キュゥべえ、霧切、友紀 、矢車、お空、クライシス皇帝、そして南光太郎。
皆、殺し合いを止めるという一つの絆と正義を元に動いて戦い、きっと生き延びているだろう。
彼らは誇りある若者。
彼らなら絶望に挫けずに希望を持って戦い続けていると信じなくて何がOTONAだろうか。
――そう、弦十郎は思い、今度こそ弦十郎は眠り付いた。起き上がったらもう一度OTONAとして戦うために、戦士は休息に入った……

























そして、弦十郎はそのままグズグズに腐って、死んだ。


307 : 悲しみを繰り返し、僕らはどこへ行くのだろう? ◆i4dM20cHLo :2017/06/20(火) 14:21:43 iDmdhC1U0




「なっ……!」

恩人が見る見る内に腐りだしたことに驚嘆し絶句した乾だったが、周りを見てすぐに合点がいった。

「この花のせいか……!」

短時間で腐乱した弦十郎と乾は多数のフロワロが包囲していた。
弦十郎は跳躍中という僅かな思考時間で火事も崩落もマーダーとの接触の危険も考えた結果、毒華が密集するここに着地してしまったのだ。
弦十郎はフロワロのことを知らず、元々意識が朦朧としていたので第六感が上手く働かなかったのだろう。

しかも、時間経過と主であるテラカオス・ディーヴァが南光太郎を食らった結果、エントロピーが増大して成長し、比較的古くに撒いた花は赤から黒へと変色していた。
赤でも十分危険だが、こちらは薬や抗体が間に合えば花粉を吸ってしまっても希望はまだある。
だが、黒は耐性のないものが吸ったり触れてしまえば、容易に腐ってしまうほどの猛毒性を持っているのだ。

弦十郎は原作一期ラスボスの攻撃すら渡り合える強靭な肉体を持っている。
もし健全な状態ならばフロワロの花粉も気合でどうにかできそうなほどだ。
だが、彼はハクメンらとの戦いで大いに消耗しすぎていた。
とてもフロワロの毒に対抗できる体力は弦十郎に残されていなかったのである。


「……本当にすまねえ、俺のせいでアンタを殺すハメになっちまったらしい」

乾は表情に涙こそ浮かべなかったものの、あからさまな悲しみを感じていた。
自分を助けたせいで恩人を死なす結果に繋がってしまった……乾と言えど、悲しくないわけがなかった。


「重ねてすまねえ……アンタに助けられたこの命も……もう持ちそうにない」

もはや腐乱して骨さえ見えてきた弦十郎の死体に謝ると、乾の裸体からも青白い炎が湧いてきた。
……それはオルフェノクである者が死ぬ時のサインである。

進化した人類であるオルフェノクはフォトンブラッド以外の毒への耐性も人間よりは遥かに勝さるだろう。
だが、今の乾巧は裸であり、ヒロインXに付けられた傷口もあちこちに残っている。
そこに黒フロワロの花粉を吸ったり、傷口から毒が血管に侵入されたりすれば、いかなオルフェノクとて死期を早めてしまう。
せめて体を外気からシャットアウトできる仮面ライダーのスーツがあれば防げたのもかもしれないが、ファイズギアは紫龍に破壊されており、変身はできない。
むしろ弦十郎に助けられずにディパックから出されずに爆発に巻き込まれた方がオルフェノクである彼が爆発によるダメージを耐え切り、ディパックも燃えて脱出を可能にし、弦十郎ともども生き延びれた可能性もある。
たった一つの頑張りすぎで、双方が死ぬ結果をもたらしてしまったのだ。

(苗木……俺はどうやらここまでみてえだ。
こんな滅茶苦茶な殺し合いでヒーローになれ、とは言わねえ。
……ただ絶望に負けずに生き延びろよ)

自分の死期を悟った乾は最後に、一人の少年の顔を思い出し、彼の無事を願った。
そして青白い炎が乾巧の体を包み込み、一気に灰と化して地面へとばら蒔かれた。
黒い花に囲まれた場所に残ったのは今も溶け続けている腐乱死体と灰、そしてファイズギアなどの支給品であった。




ある少女は『生きるのを諦めるなッ!』と言った。
ところが諦めずに戦い続けても、赤髪で巨乳持ち以外の死神は人の命を容赦なく奪い、耳元で囁くのだ。
『おまえは運に見放され、選択も誤った。命運は尽きたのだから諦めて死ね』と……


自分の死を含む悲劇を変えられなかった者たち……彼らにこの世界で行ける場所などなく、ただ因果という名の死神によって冥府に誘われるのみ……



【二日目・13時00分/大阪府 市街地】


【風鳴弦十郎@戦姫絶唱シンフォギア 死亡確認】
【乾巧@仮面ライダー555 死亡確認】

※大阪の街にばら蒔かれれたフロワロがテラカオス・ディーヴァの成長によって赤→黒へ進化し、毒性が増しました
※たっくんと弦十郎が死亡した場所に不明品、ファイズギア(ベルト故障)、通信機などの支給品が散らばっています


308 : ◆i4dM20cHLo :2017/06/20(火) 14:22:21 iDmdhC1U0
投下終了です


309 : 名無しさん :2017/06/20(火) 22:34:50 i9L5.urY0
投下乙ー
うへぇ、難を逃れたと思ったメンツが貧乳の置き土産で全滅か…
フロワロの殺傷力も一気に上がったが、ここまで強力になるもんか
しかし貧乳に対抗できそうなOTONAもこれハクメンが手出ししなきゃ生き延びたよな
凶を断つとか言っときながら有力対主催間接的に潰すし、テラカオス探知も微妙に遅れて緑間とガチレズの暴走許してるし、ハクメン思ったより仕事してないんじゃ…


310 : 名無しさん :2017/06/21(水) 00:08:51 M1o5Z3gU0
真竜は本体は間抜けが多いが能力そのものは鬱の塊だから仕方がない。一応出展元のフロワロ殺傷レベルは
赤→一般人〜中級冒険者は衰弱し錯乱。抗体の作成に成功すれば誰でも踏み散らせる。毒耐性あれば無問題
青→赤の進化個体。赤に完全抗体を持つ者や、それなりの腕前を持つ冒険者でも触れれば体力を結構持って行かれる
黒→作中では赤抗体持ちのキャラが花弁に掠っただけで右腕がその場で腐り落ちる凶悪さ。特別鍛えた人間でも僅かな時間しか行動できず、相当な毒耐性かなければ生存は困難
白→触れるとか嗅ぐ以前に咲いたら地球が死ぬ。毒完全無効化、竜の力を持つ者など以外は文句なく即死

霧切さんの結界ももう咲いちゃってるフロワロには効果ないし、このままだと自己繁殖で関西は勿論のこと関東の参加者でも多分半数以上死ねる
そしてそうなった場合毒耐性や環境的に一番やばいのは主催陣


311 : 名無しさん :2017/06/21(水) 16:49:02 wFPxvqHQ0
今生き残ってる参加者で、この猛毒に耐えられるか、都合よく毒無効バリアとか張れる奴ってどんだけいるんだ……?


312 : 名無しさん :2017/06/21(水) 20:49:35 KDTKC0Bo0
>>309
ハクメンさんは仕事しようとしたら、主催者からワープさせられた過去を持ってるから自重してるんたよ。


313 : 名無しさん :2017/06/22(木) 12:36:18 s4W.bKNM0
ネオ・クライシス帝国も残り二人、20人以上いたホワイトベース組に至っては苗木でラス1
大阪からさっさと脱出しないとこの三人もお陀仏ですな


314 : 名無しさん :2017/06/22(木) 19:27:00 PR3b4pzY0
苗木とQBほぼ詰みかこれ?地上に出ずに地下ルートで関東まで退避すれば逃げれそうだが
魔法少女は肉体腐ってもソウルジェム無事なら大丈夫だが、ジェム単体じゃ動けないしなあ


315 : 名無しさん :2017/06/27(火) 02:46:30 KFKpowV.0
投下します。


316 : 聖帝軍先遣隊・大阪地獄変 :2017/06/27(火) 02:48:05 KFKpowV.0
拳王連合軍とホワイトベース組による血で血を洗う死闘、そしてとある野球アイドルによる余計な行動の
せいで勃発したテラカオス・デイーヴァの大暴れによって、現在大阪の街は壊滅的被害を被り半ば廃墟と
化していた。
現在でもビルの倒壊は時間差で起き続け、またテラカオス・ディーヴァがまき散らした毒花フロワロは
次々と花を咲かせ、着実に土地を死の沼へと変貌させていた。

と、そんな死地に突っ込んでくる影がここに一つ。



「「「うわあああああああああああああああああああああああああ!?」」」



時速300kmという猛スピードで後ろ向きに突っ込んでくる電車ごっこの集団。
運転手の迷走とリニアモーターカーごっこの故障で関西まで逆走してしまった聖帝軍先遣隊である。
無論この場までくる間に先遣隊の面々はなんとか事態を打開しようと必死だった。
最初はリニアモーターカーごっこを破壊して止めようとしたが、地磁気を利用した凄まじいスピードで
疾走している状況で無理に止まれば後方に投げ出されて大惨事は免れないためやむなく却下された。
何とか強引に地面に踏ん張ろうにも構造上地磁気で足元から浮いているため不可能であり、飛行可能な
スイカアームズで退避しようにも迂闊に手を離せば車両から投げ出されかねないので危険である。
その後も様々な策を講じようとしたがどれも決定打にならず、立ちはだかる障害物をクロコダインの
獣王会心撃で破壊、もしくは衝撃による強引な方向転換で回避しながら逆走を続けているうちに、大阪
まで巡りついてしまったのである。


「つ、遂に大阪まで来ちゃったなっしー! もうおしまいなっしー!!」
「諦めんなふなっしー! 最後まで希望を捨てちゃダメだ!」
「くっ……だが有効打になり得る手がもはや俺達にはない、一体どうすれば……」
「くっそぉー! どうしてとちょーを目指してただけのあたい達がこんなことに!!」
「「「だいたいお前のせいだ!!」」」


と、一同がチルノに突っ込んだと同時に、リニアモーターカーごっこから何やらバチバチと火花のような
物が噴き出し、次いで煙までもが上がり始めた。
ぴんころ地蔵尊に蹴り飛ばされて故障した状態で最高時速を出し続けた結果、遂にオーバーヒートを起こし
て爆発しかけているのだ!

「うわあああああ、なんかやばい火花と煙が出てるなっしー!?」
「こ、これは本格的に危険だ! みんな、俺に捕まれ! いざとなれば俺が盾になって皆を守る!!」
「馬鹿言うなクロコダイン! いくらタフなあんたでも、このスピードで投げ出されたらひとたまりも……」
「俺を見くびるな紘汰! 俺はかつてギガブレイクを二度も受けて死ななかった男だ! なぁに、今回も
 必ず生き延びて見せるさ!」
「で、でもよ……」
「く、クロコダイン……」


ボガァァァァァァン!!


「「「ぎゃあああああああああああああああ!?」」」


だが、遂に負荷に耐えきれず、リニアモーターカーごっこは爆発を起こし千切れ飛んだ!
それと同時に先遣隊一同は300kmの勢いのまま衝撃で後方へと投げ出される。
指示通り咄嗟に全員がクロコダインの身体にしがみつくようにまとまったが、誰もが激突による死を内心
覚悟していた。


317 : 聖帝軍先遣隊・大阪地獄変 :2017/06/27(火) 02:49:08 KFKpowV.0




吹き飛ぶ中、チルノの脳裏に浮かぶのはこれまでの記憶だった。
「これ走馬灯よー! 走馬灯だわー!」(CV:京水さん)

いつものようにいつものごとく、湖で蛙を凍らせたり光の3妖精やバカルテットの仲間と戯れたりしながら
幻想郷での暮らしを満喫していた矢先、大災害は起きた。
あらゆる場所が縦に横に引き裂かれ、霊夢を始めとする住人達も散り散りになってしまい、気が付いたら
外の世界に投げ出されていたのを何とか覚えている。
とりあえず殺し合いが起きているらしい事は把握し、知り合いを探しながら降りかかる火の粉を払いつつ
飛び回っているさなか、出会ったのが聖帝サウザーであった。
最初はなんかやたら偉そうな態度でムカついたので冷凍してやろうかとも思ったが、既に聖帝に同行していた
亜久里や正太郎達の説得でなんとか矛を収め、他に行く当てもなかったので聖帝軍とやらに参加してみた。
その後はSATSUGAIがどうのこうの言っているヤバそうな人間の大群にビビったサウザーがしばらく建物の中
に引きこもり、急に「やきゅー」とやらを始めると言い出し興味を持ちつつドーム球場までついていくと
ふなっしーや紘汰やクロコダイン達に出会った。
ルールは教えてもらったが半分以上は覚えていない。
SATSUGAIを叫ぶDMC狂信者とかいう集団が自分達にも襲い掛かってきたので貰ったターバンを巻きつつ全員
迎撃したが、途中何回かサウザーも攻撃したような気がした。
そしてロボットを創ったり「とちょー」の魔物を説得しに行くために別れたりで、結果的にはまだ一度も
「やきゅー」をやらせてもらっていない。
いつだかやったサッカーよりも面白いかどうかも定かではない。
なのに今自分は吹っ飛ばされて死にかけている。
始めの頃はどうせピチューンして一回休みになるだけだろうと思っていたが、どうやら今はどんな種族も生き
返るのは不可能な状態になっているらしい。
本来妖精にはないはずの死への不安に、チルノの背筋は一瞬凍った。
氷の妖精だが凍る物は凍った。

このまま「とちょー」に行けぬまま死ぬのか?
「やきゅー」が何なのかすらわからぬまま死ぬのか?
幻想郷を滅茶苦茶にした(であろう)だーすべいだーを成敗せぬまま死ぬのか?
何よりあの聖帝軍の愉快な仲間たちの元に戻れぬままみんな死ぬのか?


絶対にNO!!


そう拒否した直後、チルノのディパックの口から何かが飛び出してきた。
そしてそのままチルノの後頭部に見事に突き刺さり、音を上げて彼女の中へと侵入していった。






「………………みんな、無事か?」
「……ああ。どうやらここはあの世じゃねえみてえだけど………」
「……ていうか、なんでふなっしー達凍り付いてるなしか? 冷凍梨になっちゃうなっしー……あと地味に
 痛いなっしー……」


死を覚悟していたクロコダイン達だったが、彼らがいる場所は断じて死者スレではなく現実の大阪だった。
だが状況は異様である。
自分達は軽いビルにも匹敵するレベルの大きさの氷塊の中に上半身だけ出したまま閉じ込められた状態で
動けなくなっていたのだ。
何故こんな状態になってしまっているのか3人と一匹には皆目見当もつかない。
あと地味に寒いし痛かった。

「ん? 氷……そういやチルノは?」

ふと氷を見てチルノの姿が見当たらない事に気づき、紘汰は周囲を見回す。
他の3人も動ける首を回しながら彼女の捜索を行った、その直後である。


318 : 聖帝軍先遣隊・大阪地獄変 :2017/06/27(火) 02:50:22 KFKpowV.0


「やれやれ、どうやら上手くいったみたいだね……みんな無事でホントよかったよ」
「チルノ!!」
「無事だったか!!」
「いや、ていうか、なんか雰囲気変わってないなっしー?」


彼らを閉じ込める大氷塊の上に、探していたチルノは立っていた。
だが、明らかに姿が自分達の知るチルノではなかった。
何というか、色々と成長しているのだ。
身長的にも、胸部的にも。

「チルノ、一体その姿は!?」
「成長期なしか?」
「この姿に関しては話せば長くなるけど……どうやらあたいの身体に支給品が入ったおかげみたいだね」
「短いだろ!!」


たぶんお気づきの方もいるだろう。
先ほどチルノの後頭部に突き刺さって体内に侵入したのは、彼女の支給品であるガイアメモリである。
しかも『氷河期の記憶』を内包したアイスエイジメモリ。
ついさっきまでチルノ自身も存在を失念していたこのメモリが『死にたくない』という強い思いに感応し、
T2ガイアメモリ並の惹かれあい方を起こした結果、勝手に彼女に刺さったのだ。
本来であればメモリを挿入した者はドーパントへと変身するのだが、自然そのものの具現ともいうべき
妖精である彼女は異形の姿へと変化することなく、メモリとの抜群の相性もありその肉体を成長させるに
留まったのである。
さらに能力が向上した結果、⑨だった知能もだいぶ改善され、仲間達を救出するための方法を閃き瞬時に
行動できるほどにまで引き上げられた。
彼女は高速で吹っ飛ぶクロコダイン達を減速させるために雪の壁を何層も作り、停止可能なまでに速度を
落とした後、氷塊に閉じ込めることでなんとか止める事ができたのである。
よく見ると氷塊の後ろには穴が開いた雪の壁がいくつもあった。


「……まあ助かったのはいいが、もう少し威力は抑えられなかったのか? 色々と凄いことになってるぞ?」
「いやーごめんごめん、あたいもさっきパワーアップしたばっかりで加減が効かなかったんだよ。最強の
 氷精とて必死だ、それくらいするだろう!」
「自分で言うな自分で!」
「と、とにかく早く出してほしいなっしー……冗談抜きで凍死しちゃうなっしー……へっくしっ!」


その後、氷漬けだった一同はクロコダインの特技である灼けつく息で無事に解凍され事なきを得た。
改めて落ち着いて周囲を見回すが、誰が贔屓目に見ても大阪は廃墟同然の状況だった。
聖帝軍はネットでの情報でしか惨状を知り得なかったが、こうして見るとこの街で行われた闘いの凄惨さが
嫌でも身に染みた。

「罪もねえ人は殺す、日本の土地は壊す、街まで壊す……拳王連合軍の奴ら、もう絶対許さねえ!!」
「流石に今回ばかりは紘汰に同意せざるを得ん。どんな理由があったか知らぬが、ここまで派手に暴れては
 連中はもはや核兵器とやらと同じだ! このままでは戦いが終わった後の住むべき土地までも焦土と
 化してしまうぞ!!」
「例の食人鬼もいたらしいから全部が拳王連合軍の仕業ってわけでもないと思うなしが、流石にこれは
 ひどいと言わざるを得ないなっしー……」
「これだけボロボロになっちゃ、もう生き残ってる人もそんなにいないんじゃ―――――!?」


街を見渡していたチルノは、目に入った物体を見て即座に手をかざし、冷気を放った。
妖精としてのスパイダー感覚……もとい直感が騒いだのである。
『アレはヤバイ!』と。
瞬間、その物体は即座に冷却され氷細工と化した。


「ど、どうしたんだチルノ、いきなり!?」
「みんな、急いで口を塞いで! あの花は危険だよ!!」
「花だと?」
「ゲェーッ、言われてみればそこかしこにヤバい色の花が咲いてるなっしー!」


チルノに指摘され、紘汰達は大阪の街に咲き乱れるフロワロの花の存在に気付く。
フロワロの毒性に関する知識は彼らにはなかったが、紘汰はヘルヘイムの森の植物と同種の危険性を
直感で感じ、クロコダインやふなっしーも魔物や妖精としての感覚から同じく危険性を感じ取った。
紘汰は急ぎ仮面ライダー鎧武へと変身し、残る3人も巻いていたターバンをほどいてマスク代わりにして
花粉を吸わぬように努めた(ちなみにシャルロッテもディパックに避難させられた)。


319 : 聖帝軍先遣隊・大阪地獄変 :2017/06/27(火) 02:51:18 KFKpowV.0


「何なんだこりゃ? これも拳王軍の仕業……なのか?」
「いや、この花からは何か別の力を……言ってみれば『竜』や『混沌』に近いような属性を感じ取れる気が
 する。果たして誰が撒き散らしたのかは窺い知れんが……」
「何にしてもこれはほっといたらヤバイタイプの植物だよ。ふなっしーならわかると思うけど、花である
 以上花粉が飛ぶ。すると黙っていたら大阪から飛び出して……」
「ひぃぃー――ッ! このままだと関東までこの花が咲くかもしれないなっしー!?」
「いや、ふなっしーじゃなくても分かるぜ。俺もこの手の植物には覚えがあるからな」

紘汰は改めてヘルヘイムの植物の事を思い出し、フロワロの危険性を肌で感じた。
強力な力を持った外来種の植物が元いた植物を駆逐する恐怖。
その恐ろしさを彼は沢芽市で嫌というほど思い知らされている。
ヘルヘイムの果実は捕食した生物をインベスへと変貌させる力を持つが、この花は純粋に生物を死に至ら
しめる力を持っている分遥かに質が悪い。
早急に対処しなければ、いずれこの毒花は日本全土を埋め尽くすかもしれない。
そうなれば待っているのは『全滅』の二文字である。


「だが、どうやってこの大量の毒花を駆逐するのだ? 俺達の力だけではとても刈り取り消えるとは……」
「なんの、ここはあたいの出番!」

するとチルノはディパックに手を伸ばしもう一つの支給品、殺してでも奪い取りたくなることに定評のある
武器・アイスソードを装備した。
そして両手で構え、一閃。


「E.F.B(エターナルフォースブリザード)! あいてはしぬ!」


猛烈な勢いで吹雪(艦娘に非ず)が巻き起こり、たちまち彼らの視界に広がる大阪の市街地の一部が凍り
付いてしまった。
その影響でフロワロは廃墟と化したビルもろとも完全に凍結された。
まさに大阪氷河期である。


「おお、すごいパワーなっしー!」
「ビルも凍らせたからしばらくは崩れる心配はなくなったよ! この調子でこの街の分だけでも……」
「おい待て待て、花を凍らせるのはいいが、まだ生き残ってる奴まで凍らせちまうぞこれじゃ! 加減しろ
 加減!」
「う、うごご……」
「……ここまで来てしまった以上仕方あるまい。しばらくこの街を散策して生き残りの参加者を救助する
 事にしよう。ただし制限時間は1時間だ。この毒花の花粉の毒性がどこまであるかわからん以上迂闊に
 長居は出来んからな」
「よし、それじゃ手分けして……」
「待て紘汰、捜索は全員で固まって行う」
「えっ、何でだ?」

広い大阪を探すのだから手分けするのが当然かと思っていた紘汰は驚いた。
クロコダインはそれを予測していたように冷静に説明する。

「よく考えてみろ、俺達には今連絡手段もカオスロワちゃんねるを見る端末もない。果たして俺達が出発
 してから今までの間に大阪で起きた状況を知る術があるか? 件の食人鬼もいまだにこの街に巣くって
 いる可能性も捨てきれん以上、下手に単独行動するのは非常に危険極まりない。それに俺は……これ以上
 仲間が目の前で無残に殺されるのを見たくはないのだ。わかってくれ……」
「クロコダイン…………」

西武ドームでの惨劇を思い出し、クロコダインの辛い心境を理解した紘汰は彼の意見を承諾し、全員での
要救助者捜索を始めることにした。
チルノがフロワロを凍結で無力化することに専念し、残る面子が救助者の捜索という役割分担を決め、早速
散策は開始された。


320 : 聖帝軍先遣隊・大阪地獄変 :2017/06/27(火) 02:52:04 KFKpowV.0


――――約20分後。


「くっ……キリがないよホントに!」
「まともに生きている参加者の気配が見えん……見つかるのがこうも死体ばかりとは!」
「おーい! 誰でもいい! 生きてたら返事をしてくれー!」
「これもう大阪完全に全滅してるんじゃないなしか………ん?」


大阪の街のあらゆる場所で咲き乱れるフロワロを片っ端から冷凍しながら生存者を探す聖帝軍先遣隊だった
が、無尽蔵に見つかる花と死体というコンボが続くことで流石に疲労の色が見え始めた。
紘汰までもが半分ほど諦めかけていた、その時である。
ビルの瓦礫の一部から、ふなっしーは何かの気配を感じた。


「紘汰! この瓦礫の中に何かがいるっぽいなっしー!」
「本当か!?」

ふなっしーの報告に喜び勇んで紘汰は瓦礫へと近づく。
近くに咲いていたフロワロをチルノに冷凍してもらってから、クロコダインと協力して瓦礫をどかしていく
と、何やらモゾモゾと動く影が見えてきた。
果たして人間だろうか、それともそれ以外の種族だろうか?
そして最後の瓦礫を撤去し、中から姿を現したのは――――――



「ムロロ〜ン」



なんかよくわからない白い生物だった。


「って、誰だこれー!」
「まさか、新手の妖怪!?」
「ウドラ! ウドラじゃないなっしか!」
「知っているのかふなっしー!?」


東京都立川市の市民達の立川愛が特産品の立川うどを突然変異させ、怪獣化させた存在。
そして立川市の公認なりそこねゆるキャラ。
それがウドラである!!
……という事がふなっしーの口から語られた。


「……非公認ゆるキャラって、こんなんばっかなのか?」
「失礼な事を言うんじゃないなっしー!!」
「ていうか立川のゆるキャラがなんで大阪に?」
「ムロ…ムロ…」
「なに、殺し合いが始まってから逃げ回ってたらここにたどり着いていた? あと立川は無事かって?
 安心するなっしー、東京はまだ壊滅はしてないなっしー……やばい連中は溢れてるなしが……」
「まあ何にせよ、生存者がいて何よりだが……」

などと会話していると、ウドラは短い腕をディパックに突っ込み、何かを探し始めた。
そして取り出されたのは何かというと―――

「ムロロ」
「なっ……こいつは極ロックシード!! お前が持ってたのか!!」
「助けてもらったお礼にあげると言っているなっしー」
「ありがてえ! こいつがあれば百人力だぜ!!」

ヘルヘイムの黄金の果実の断片にして鎧武の最強形態・極アームズへの変身の為の鍵。
これが手に入っただけでも大阪に来た価値はあったと紘汰は思った。
まかり間違って拳王連合軍やDMC狂信者、風鳴翼などの手に渡っていたらと思うとゾッとしたが、こうして
手元に戻ってくれたのは僥倖だった。


『フルーツバスケット!』
『極アームズ! 大・大・大・大・大将軍!!』


神々しい銀色の甲冑に身を包んだ鎧武・極アームズは、早速とばかりに手を正面に伸ばした。
自在にクラックを開くオーバーロードとしての力を用い、東京へワープする道を開けるかどうか試すため
である。
だが目の前には何も現れない。


321 : 聖帝軍先遣隊・大阪地獄変 :2017/06/27(火) 02:53:23 KFKpowV.0

「くっ……やっぱりこの手の力は制限されてるか……せめてこの首輪が外せればなぁ……」
「案外石けんとか油とかヌルヌルした物で外せるかもしれないけどね」
「いや、流石にそれはないだろう」

死者蘇生などはともかく、おそらくこの手の能力は首輪で制限されている。
聖帝軍には首輪を外せる技術者がいなかった以上仕方ないが、できる事なら今後の闘いの為に外して
おきたいとは思うが、現実はそうはいかない。
ちなみに先ほどのチルノの発言はマーラ様の粘液の件もあって半分くらい当たっているのだが、それを
彼らが知るよりもなかった。


「ムロロ〜ン」
「えっ、向こうのマンホールの中に誰かが入っていくのを見たなっしー?」
「そうか、地下ならばこの毒花の花粉を避けることも可能かもしれん。案外他の参加者も地下に逃げている
 のかもしれんな」
「そうとわかりゃ地下を探してみようぜ! まだ30分くらいならあるし、ウドラだって生きてたんだ、まだ
 誰かが生きてるかもしれねぇ!」
「うむ……よし、残る時間は地下の探索に割り当てよう。だが時間になったらすぐに大阪を離れるぞ。
 もはや都庁との交渉は無理だろうが、それでもサウザー達の元には戻らねばな」
「よっしゃ、急いで探しに行こう! 生きてる奴がいるなら待っててくれよ!!」
「ムロロ〜ン。コウタ…つイてく…。ムロ〜」
「って喋れるのかよお前!?」
「ヒャーッ!? 頭が入らないなっしー!?」
「こらーっ、あんたが先に入るな!!」


かくして、新たに人外枠を引き連れて聖帝軍先遣隊の面々は一路地下へと歩みを進めた。
だが一部を冷却したとはいえ、依然として大阪には多くのフロワロの花が咲き続けている。
そしてフロワロはあらゆる場所に咲く性質を持っていることを彼らはまだ知らない。
果たして彼らを待ち受けているのは希望か、それとも絶望なのか。




【二日目・13:00/大阪府 市街地】

【聖帝軍先遣隊】

【ターバンのガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、仮面ライダー鎧武・極アームズに変身中、主に拳王連合軍への怒り
【装備】戦極ドライバー、ロックシード(カチドキ&極)
【道具】支給品一式、ロックシード(パイン、イチゴ、スイカ)
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:必ず生存者を見つけて関東へと戻る
1:DMC狂信者達も拳王連合軍も、もう絶対許さねえ!!
2:救済の予言の謎を解く
3:貴虎……
4:ダースベイダーも安倍総理も、絶対に許さねぇ!!

※オーバーロードとしての力を行使するには首輪解除が必要です。


【ターバンのガキ(チルノ)@東方project】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、やる気十分、色々成長
【装備】ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW、アイスソード@ロマンシングサ・ガ、ターバン (マスク代わり)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:『ダースベイダー』を倒す
0:大阪で生き残りの人々を探し、関東に戻る
1:何かいろいろパワーアップしたよ!
2:みんなで予言を解いて世界を救うよ!
3:聖帝は頼りないから最強のあたいが皆を引っ張る
※アイスエイジメモリを刺した事によって成長、能力及び知力が向上しました。


322 : 聖帝軍先遣隊・大阪地獄変 :2017/06/27(火) 02:54:07 KFKpowV.0


【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、超不安なっしー!
【装備】野球のユニフォーム(背番号274)、ターバン(マスク代わり)
【道具】支給品一式、グリーフシード、シャルロッテ@魔法少女まどか☆マギカ
【思考】
基本:殺し合いを止めるなっしー!
0:要救助者を探すなっしー!でも大阪は地獄絵図なっしー!
1:DMC狂信者達を成敗するなっしー!
2:名探偵ふなっしーが予言の謎を解くなっしー!
3:本当に都庁につけるか不安なっしー!
4:ヒャッハー! 梨汁ブシャー!
5:新しい友達としてシャルロッテとウドラは守りたい



【ターバンのおっさん(獣王クロコダイン)@DRAGON QUEST ダイの大冒険】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、怒りと悲しみ
【装備】獣王の鎧、グレイトアックス、ターバン(マスク代わり)、聖帝軍の旗
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:仕方ないのでとにかく今は大阪で人命救助に専念
1:聖帝軍と協力し、DMC狂信者の軍勢を倒す、そのために都庁の魔物を説得する
2:世界救済の予言の謎を解く
3:都庁への到着については諦めモード



【ウドラ@ゆるキャラ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、フロワロの毒ダメージ(極軽微)
【装備】紘汰のターバン(マスク代わり)
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
基本:ムロロ〜ン
0:紘汰達についていく
1:人助けする
2:立川が無事か心配



※リニアモーターカーごっこ@ドラえもんは大破しました。
※大阪のだいたい1/4のフロワロがチルノによって凍結されました。


323 : ◆MoyrepToUg :2017/06/27(火) 02:55:07 KFKpowV.0
投下終了です。


324 : 名無しさん :2017/06/27(火) 08:01:02 kBMeGGDI0
投下乙ー
大阪にたどり着いた聖帝軍も花の餌食になるかもと思いきや、まさかの戦力増強
花を氷で封じて苗木・霧切の救助への希望も見えてきてファインプレイかもしれない
地味にターバンも役に立ってるしw
惜しむらくはロリが一人減ったのとOTANAたちの救助は間に合わなかったこと、こいつらも拳王軍を誤解し始めたことか


325 : 名無しさん :2017/06/27(火) 09:29:44 6OQUKsnY0
投下おつ。まさかのチルノ大活躍である
2020本編見る限り一応フロワロは氷の上にも咲くが、氷の内部までは咲けないっぽいし、氷の壁作りながら逃走ってのはありだな
なんだかんだで戦力と感知能力と頭脳とバランスとれてるなこのチーム


326 : 名無しさん :2017/07/17(月) 03:30:51 w0ikn9YM0
投下します


327 : 地下会談 :2017/07/17(月) 03:31:44 w0ikn9YM0
「世界を救うための協力をしてくれませんか?」

イナバ社長のこの言葉、ゼクスは絶句した。

「………………」
「そうなるのも無理はありませんね」

イナバ社長もゼクスが絶句するのを予想していた、
いきなり世界を救うのに協力してほしいと言われれば誰でもこうなる。

「…………………」

正面から社長と相対しつつ、ゼクスはクリスとシマリスが合流した際に言った言葉を思い出す。
日本にも世界を崩壊させた天変地異が来るということを。
これが社長が言う事と合地するのではないかと。

「……分かりませんね、何故この殺し合いの中で世界を救おうと?」
「無論、この世界の未来の為にです」
「ならばこの殺し合いを止めてからでも遅くはないのでは?」
「いいえ、それではあまりにも遅い遅いのですよ」

社長は落ち着きを払って喋ってはいる、しかし最後のセリフには落ち着きながらも気迫がこもっていた。
それにゼクスはただならぬものを感じ取ったのだ。

「何故遅いと?」
「これを」

社長がテーブルに一つの本を置いた。
その本は古ぼけており、かなり昔の物であると分かる。

「これは?」
「それは私がまだこの殺し合いが始まる前に偶然手に入れたものです」
「なるほど……しかしなぜこれを?」
「お読みいただければわかると思われます」

そう、社長に促されたゼクスは本を手に取り開けた、
ゼクスは驚いた、なぜならこの本の内容は何一つわからない文字で構成されていたからだ。
しかしその本の文字は不思議と神秘的に感じた。

「……分かりませんな……貴方は解読できたので?」
「はい、正しくは私の友である考古学者であるのですがね
 ですがその解読できた内容も一部でしかありません」
「なるほど、では解読できた内容を教えてもらっても?」

社長は、頷く、それを了承と受け取ったゼクスは黙る。
そして社長が口を開いた。

「考古学者の友が言うにはその文字は古代グンマー語で構成されているとのことです
 そしてその内容でありますが端的に言えばこの世界の滅びについて書かれた予言の内容であります」
「……滅び、天変地異と何か関係が」

ゼクスは小声でそのようにつぶやいた。

「最初はあまねく世界を襲い、壊しつくす大災害について
 この内容はこの世界を襲った大災害と内容はほぼ合致しております」
「……なんと」
「そして次に限られた土地で行われる聖別……おそらくこれは今行われてるバトルロワイヤルについてです
 ですがこの部分に関してはそこまで解読は出来ませんでした、分かったのは最初の部分何者かが聖別を始めるという部分だけ」
「最初の部分、野田総理が開始宣言をし、見せしめとして何人か殺したことですか?」

こくりと社長がうなづき水を飲んだ。

「そしてもう次のこう書かれていました、聖別によって抑止の神は生まれ、しかし滅びの化身との戦いに敗れ
 抑止の神の力を奪い取った滅びの化身は三千世界を滅ぼし尽くすであろうと」
「…………………」

ゼクスはその内容の途轍もなさに言葉を失っていた、
しかしだからと言ってこの内容が間違っているとも思えなかった。
なぜなら今までの内容で当たっている物が多かったからだ。
無論作り話であるかもしれないということは頭の片隅に置いておくことにした。


328 : 地下会談 :2017/07/17(月) 03:31:54 w0ikn9YM0
「これが、友と解読できた滅びの内容です、ですが滅び以外の所で解読できた一つの事があります」
「それは一体?」
「九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂、全てを虜にする歌、巫女の祈り、器たりえる巨像、不屈の精神を持った勇者。
全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる」

そう、それは今は亡きハラサンが言った予言と同じものであった。
彼等には知る由もないことであるが。

「これはおそらく先ほどの滅びに対するカウンター、つまりは滅びを回避する方法だと私は思います」
「……なるほど、つまりあなた方はこの回避する方法を実行しようと?」
「今の所は、それでどうでしょうか協力していただけませんか?」

社長はそう言った後、二人に静かな静寂の時が訪れた。
社長はゼクスの返答を待ち、ゼクスは社長に返答するために考える。
考え、考えて、思考をまとめ社長に言った。

「……さすがにこのことは私の一存では決めかねる故、仲間たちと相談しても?」
「ええ、構いませんよ」
「ありがとうございます、では少しばかり相談してきますのでまた後で」

そう言ってゼクスは立ち上がり、テントから出て行った
そして入れ替わりにロビンフッドが入ってきた。

「やあー、やあー、イナバの旦那、首尾はどうで?」
「分かりませんね、私が知っていることを全部話しましたが……仲間内でどうなるかです」

そう言って社長は水を飲み干した。
今回の話し合い、社長本気なのだ、本気で世界を救おうと思っているのだ。
古文書を手に入れたのは偶然かもしれない、だがしかし世界が滅ぶのを黙って見ているわけにはいかないのだ。
だからこそ、仲間を集めなければならない、そして時間もまた押しているのだから。だから予言の内容をゼクスに教えた。

「しかしまぁ、滅びを回避するための方法、ちょっとは分かったんですかい?」
「いいえ、さっぱりですね……正直お手上げ状態ですよ」

社長の頭は決して悪くはない、だからと言って何のヒントもなしにこの予言は分からないのである。
と言うか、儀式と言われても色々あるしそれがスポーツの野球であるとは普通思い付かない、そも野球で世界を救うとはだれも思いつかないものである。

「はぁ、頭のいい人、こないものですかねぇ」
「そりゃちょっと虫が良すぎかもしれないなぁ」

社長は愚痴をこぼしつつ、テント内で待つことにした


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


329 : 地下会談 :2017/07/17(月) 03:33:38 w0ikn9YM0

そして所変わり、ゼクスは仲間を集め相談する。
なお相談する場所はクリスの所であった、これは風邪をひいているクリスのための配慮であった。

「――と言うのが社長の言ったことだ」
『………………』

一同は黙ってゼクスの説明を聞いていた。
そして各々、考えをまとめた。

「……世界を救うか、壮大過ぎて追いつけねぇな」
「ですねぇ」

シマリスとベルナドットはそのように言った、理解が追い付いていないのである。

「私としては気になるのは予言の方ですね、特に滅びの預言ではなく滅びを回避する方の」
「あたしはさっぱりだぜ、正直胡散臭い」

Lは滅びを回避する方の預言に興味を持ち、クリスは予言自体を胡散臭く感じていた。

「まぁ、俺もそうは思うな、とは言え予言が時に当たると時もあるし一概には何とも言えねぇな」
「……うーん、世界の天変地異は言及されているのに日本の天変地異がないのはきになるでぃす」
「もしかすれば、その衣玖と言う人物は日本の滅びについて分かりやすくするために天変地異と言ったのではないかな」

ベルナドットが否定も肯定もせずに言って、
シマリスの疑問にゼクスが答えれば、シマリスもそれはあるかもしれないと思い頷いた。

「そう言えばL予言に気になることがあると言ったな、それはなんだ?」
「ええ、実は色々と情報を集めていたのですが興味深いことがありまして」
「それは一体?」
「野球場にて謎の呪印を目撃したと言う投稿がありましてね、それを調べていました」

Lはパソコンをいじりながら、野球場の件について報告した。

「野球場でぇ?誰かのいたずらじゃないのか?」
「まぁ、普通はそう思いますよね、現に私も先ほどの預言を聞くまではそう思ってましたし」
「さっきの預言、確か滅びを回避する予言でぃしたね」

こくりとLが頷き言葉を紡ぐ


330 : 地下会談 :2017/07/17(月) 03:33:57 w0ikn9YM0
「野球場で基本的に呪印は目撃されています、なら野球場でやることは一つだけ野球です、
 他のこともあるかもしれませんが今は無視します、そして野球と言えば基本九人でやる物ですよね?」
「………予言の内容と一致するが戦士って言われてるんだから他のこともあるんじゃないか?」
「ではなぜ最良と書かれているのでしょうか、九人で他のことをさせるなら態々最良の九人を選ぶ必要はないはずです」
「まぁ……そうかもしれないが」

色々と納得できないが、Lの意見に言いくるめられていったん自分の意見を引っ込める

「つまりです、最初の儀式とは野球を指し示しているのかもしれません」
「ふむ……それは頭の片隅に置いておくとしよう、他の解釈もあるかもしれんからな
 それでL他に分かることはあるか?」
「うーん、そうですね、正直巫女の祈りと器たりえる巨像、全てを虜にする歌についてはさすがの私にも分かりません
 で、不屈の勇者については……一人ではないと考えます」
「ふむ、それはどうしてだ?」
「勇者とは勇気ある者事を基本的に言われます、そういう人たちはこの殺し合いにおいて多数いると思われます
 ですから正直一人に絞るなんて愚かなことだと思いません?」

この殺し合いにおいてLは不屈の勇者が一人だと思えなかった。
ここにいる仲間達は確かに勇気を持っていると感じれているからだ。
それから思ったこの殺し合いにはこの人たち以外にも勇気を持って立ち上がっている人はいるのではないかと、
だからこそ勇者が一人ではないという推論に達したのだ。

「この推論は私の願望も含めての事ではあります、ですが人の、生きている生命の可能性を私は信じたいのです」
「…………推理に願望を取り入れるのは良いことではないな――しかし可能性を信じることは良いことだ」
「Lの旦那のこと俺ちょっと見方変わりそうだ」
「でぃす、こんなに熱い人だとは思いませんでしたよ!」
「へへ、根暗だと思ってたけどこういう所もあるんだな、知れてよかったぜ」

各々、Lに対し言うことを言った。
それをLは気恥ずかしく感じたのだった。

「さて、そろそろ本題に戻るとしようわたしたちが彼等と協力するか否かだ」
「……私は協力しても良いと思います、ここは活動拠点ともなりますし」

まずLが賛成の意を示した。

「そうだな、休める場所は必要だろうし、何より俺もまだケガが完治はしていないからな落ち着ける場所はあった方がいい
 つまり賛成だ」
「シマリスも賛成でぃーす、クリスちゃんの風も治ってないのに動くのはダメでぃーす!」
「なっ、シマリスお前な……!」

シマリスの言を否定しようとするが、やはり熱は引いておらず頭がくらっと来た、
それをシマリスは見ておりクリスの肩に乗った。

「クリスチャン!無理は禁物でぃす!!」
「うっ、分かったよ……気は進まねぇけど、私も賛成するよ」

ゼクス組のほぼ全員が賛成と言う結論に達しゼクスは頷いた。

「分かった、では私は社長に協力するという旨を伝えてこよう
 みんな集まってくれてありがとう、今はゆっくりと休んでいてくれ」

そう言ってゼクスは社長のテントへと向かって行った、
そして残された者達はそれぞれ話したのちに、各々自由に動き出した。

そしてゼクスはレックスの案内で再び社長のテントへと向かった。
テントの中にはロビンと社長が待っていた

「では、結論を聞きましょう」
「はい、わたしたちは貴方達と協力することに同意します」
「――ありがとうございます」

そう言って社長は手を前に出した、握手をしようとしたのだろう。
それにゼクスは答え社長と手を合わせ握手をした。

ここに、一つのチームが生まれた、このチームがどのようにこの混迷とした殺し合いに関わるのか、
今はまだ誰も知る由はない。


331 : 地下会談 :2017/07/17(月) 03:34:26 w0ikn9YM0
【二日目・14時30分/東京・福生市・地中】



【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
状態】体調を崩す ダメージはあったが治療された 変身解除
装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:翼を見つけ出し食人について問いただす
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:もっと強くなりてぇ
4:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
5:友達か……
6:おっさん(ベルナドット)にお礼言い損ねちまった


【シマリス@ぼのぼの】
【状態】健康
【装備】胡桃×いっぱい
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間と共に生き残る
0:クリスに協力する
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
4:クリスちゃんは友達でぃす!

【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW 】
【状態】ダメージ(小)
【装備】ガンダムエピオン@新機動戦記ガンダムW (左腕破損 ダメージ多数)
【道具】支給品一式 そのほか不明   ウルトラストップウォッチ マスターボール
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
1:クリスたちに協力する
2:殺し合いを止める意志のある仲間を集めたい
3:社長と協力し世界を救う
※ウルトラストップウォッチには制限があります

【ピップ・ベルナドット@HELLSING】
【状態】重症 寝たきり
【装備】自動式拳銃×2 M16
【道具】支給品一式
【思考】基本:バトルロワイヤルを生き残る
1:生存確率が上がりそうなので今はゼクスについていく
2:譲ちゃんを見捨てたら後味悪いだろ?
3:ひどい目にあったぜ

【L@DEATH NOTE】
【状態】健康
【装備】自動式拳銃 ヒラリマント
【道具】支給品一式 手榴弾×25 ノートパソコン
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
0:クリスたちに協力する
1:主催の目的とは何でしょう?
2:ひとまずここでゆっくり情報収集でもしましょう
3:予言の答えの材料探しをする

【ロビンフッド@Fateシリーズ】
【状態】健康
【装備】祈りの弓 顔のない王
【道具】支給品一式 
【思考】基本:契約した社長に従って動く。
0:出来る限り人は助けたい
1:アイツらよく無事だったな
2:ベルナドットとは仲良くなれそうだ

【レックス@スターウォーズシリーズ】
【状態】健康
【装備】ブラスター・ピストル ブラスター・ライフル 装甲服
【道具】支給品一式   
【思考】基本:無害な人々の保護及び臨時コマンダー社長に従う
1:物置内の治安維持に努める。

【イナバ制作所社長@現実?】
【状態】健康
【装備】イナバ物置 
【道具】支給品一式 他不明
【思考】基本:世界を救う
1:協力者を集める
2:ゼクスに賛同してもらってよかった
3:大丈夫!
※イナバ物置は地中に潜り移動できるようです。


※マスターボールの使用方法を誰も知りません


332 : 名無しさん :2017/07/17(月) 03:34:39 w0ikn9YM0
異常となります


333 : 名無しさん :2017/07/17(月) 03:35:49 w0ikn9YM0
>>331の修正
【二日目・14時30分/東京・福生市・地中】



【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
状態】体調を崩す ダメージはあったが治療された 変身解除
装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:翼を見つけ出し食人について問いただす
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:もっと強くなりてぇ
4:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
5:友達か……
6:おっさん(ベルナドット)にお礼言い損ねちまった


【シマリス@ぼのぼの】
【状態】健康
【装備】胡桃×いっぱい
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間と共に生き残る
0:クリスに協力する
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
4:クリスちゃんは友達でぃす!

【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW 】
【状態】ダメージ(小)
【装備】ガンダムエピオン@新機動戦記ガンダムW (左腕破損 ダメージ多数)
【道具】支給品一式 そのほか不明   ウルトラストップウォッチ マスターボール
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
1:クリスたちに協力する
2:殺し合いを止める意志のある仲間を集めたい
3:社長と協力し世界を救う
※ウルトラストップウォッチには制限があります

【ピップ・ベルナドット@HELLSING】
【状態】重症 寝たきり
【装備】自動式拳銃×2 M16
【道具】支給品一式
【思考】基本:バトルロワイヤルを生き残る
1:生存確率が上がりそうなので今はゼクスについていく
2:譲ちゃんを見捨てたら後味悪いだろ?
3:ひどい目にあったぜ

【L@DEATH NOTE】
【状態】健康
【装備】自動式拳銃 ヒラリマント
【道具】支給品一式 手榴弾×25 ノートパソコン
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
0:クリスたちに協力する
1:主催の目的とは何でしょう?
2:ひとまずここでゆっくり情報収集でもしましょう
3:予言の答えの材料探しをする

【ロビンフッド@Fateシリーズ】
【状態】健康
【装備】祈りの弓 顔のない王
【道具】支給品一式 
【思考】基本:契約した社長に従って動く。
0:出来る限り人は助けたい
1:アイツらよく無事だったな
2:ベルナドットとは仲良くなれそうだ

【レックス@スターウォーズシリーズ】
【状態】健康
【装備】ブラスター・ピストル ブラスター・ライフル 装甲服
【道具】支給品一式   
【思考】基本:無害な人々の保護及び臨時コマンダー社長に従う
1:物置内の治安維持に努める。

【イナバ制作所社長@現実?】
【状態】健康
【装備】イナバ物置 
【道具】支給品一式 予言が書かれた古文書 他不明
【思考】基本:世界を救う
1:協力者を集める
2:ゼクスに賛同してもらってよかった
3:大丈夫!
※イナバ物置は地中に潜り移動できるようです。


※マスターボールの使用方法を誰も知りません


334 : 名無しさん :2017/07/17(月) 10:23:23 JBRn2mVM0
投下乙
予言を知るグループがまた一つ増えたね
このグループはアナキンたちの思惑に気づけそうな気がしないでもない
それからLの>勇者は一人である必要がない の考察も良いね


335 : 名無しさん :2017/07/17(月) 11:02:07 x0wzl3AE0
投下乙
予言の勇者の解釈はここまで生き延びた参加者全員とも考えられるな
問題なのは、他はともかく貧乳とフロワロを誰かが長時間足止めしないと野球が出来そうにないことだが


336 : 東京タワー暁に散る! :2017/08/16(水) 17:08:29 hiktHHI20
「腹減ったな〜」

そう思っているのは新・主催者の安倍総理である。
テラカオス化により多くのエネルギーが必要になったのである。

(そうだ、さっきミンチにした怪人の肉を食べよう)

という事で千葉県某所に降り立ったのだ。
ふと見るとそこら辺に一つの新鮮なミンチが飛び散っていた。
ウホッ!いい肉…
そう思いながら怪人─乃木怜治─のミンチ肉をハンバーグにして食べた。
すると、体中に力が湧いてきた。

「…これは…」
「時よ止まれ!」

止まった。
そう、乃木怜治の能力、時間を止める能力・フリーズを継承したのだ。
使用毎に体力を消費する制限などこの男には無視できる程度。
うかれポンチになった安倍総理は時間停止の乱用で高速移動しながら東京タワーまで向かった。

「…いい案が思いつきました!これで都庁と狂信者はおしまいだ(小声)」

〜〜〜

「ハァっ!!」

そう言うと彼はTCを放出した。
旧主催ザコ兵士を全滅させた必殺技である。
終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②によると、テラカオス化していない生物がTCを浴びると、肉体が耐え切れず爆死する。
その原理を応用し、彼は旧主催ザコ兵士を爆殺していったのだ。

そしてたった今、東京タワーが崩壊を始めた。
TCに汚染されると生き物だけではなく土地も崩壊するのである。


安倍総理は東京都にてデモンストレーションを行ったのだ。
参加者に自分の力を誇示するため、そして【都庁とビッグサイトの中間】のこの場所に都庁軍とDMC狂信者をおびき寄せ、争いを起こすため。
その争いに乗じて自身を強化し、東京の2大勢力の力を削ぐつもりなのである。
なお、九州ロボは放置されたもよう。

【二日目・14時05分/東京都港区・東京タワー跡地】

【安倍晋三@TCBR1】
【状態】四条化、首輪なし、火水土風木電聖闇耐性(強)、消耗なし
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:バトルロワイアルを続ける
1:都庁軍とDMC狂信者の争いを起こさせる
2:争いに乗じて自身を強化する
3:ダース・ベイダーやジャック・Oなどの旧主催陣を全滅させる
4:九州ロボを完全掌握する
※主催を乗っ取りました
※旧主催陣を憎んでいます
※風鳴翼の能力を継承しました
※サーシェスの能力を継承しました
※ナノマシンが自壊しても生き残る可能性があります
※テラカオス化はしてますが、大災害の真相には気づいていません
※五大幹部によるテラカオスを使った救済計画(プロジェクト・テラカオス)の存在を知りましたが、中身は知りません
※乃木怜治の能力を継承しました
※九州ロボは千葉県上空で待機状態です。


337 : 名無しさん :2017/08/16(水) 17:18:13 hiktHHI20
以上です。


338 : 名無しさん :2017/08/17(木) 03:09:48 1LudV2cE0
残念だけど東京タワーは既に折れているし、スカイツリーの間違いだとしても聖帝軍と狂信者軍団が激突してるからおかしい


339 : 名無しさん :2017/08/17(木) 03:13:36 1LudV2cE0
間違えて中途半端に送ってしまった

流れ的におかしいんだよなあ...と言いたかった


340 : 名無しさん :2017/08/17(木) 11:44:34 oyJkSNeA0
流石にTC使用はダメだろ
これを使われると現状で貧乳歌姫しか立ち向かえないし、やるにしても段階を踏むべきでしょうに
というか安倍総理をいくらなんでも簡単に強くしすぎ


341 : ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:44:02 XJ8rqxZ20
予約した天魔王軍、狸組、アナキンニャル子、投下しまーす


342 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:45:54 XJ8rqxZ20
狸組と天魔王軍が接触したのは12時頃の首相官邸跡地でのことである。
双方最後の登場話から5時間以上経っているが、その間に遊んでいたわけではない。

天魔王軍は先の神樹戦で受けた傷を治すことに集中していた。
なのは組の追撃も考えたが、肝心の敵は地下へと逃げ出してしまい、地下の狭い空間はマシーンモンスターしかおらず、壁を無視して移動できるのは亜空間移動能力を持つヴァルゴ・ゾディアーツのミケしかいなかったので、深追いは危険と判断して追撃は諦めた。
仮に追撃を選んだら今頃ベジータの餌食になっていたであろう。
ここに来ると思わしき首輪解除ができる狸組のブリーフ博士との入れ違いを避けるためでもあり、これが結果的に功を成すのだった。

狸組は都庁からこの殺し合いの手がかりを得るために首相官邸を目指すことになったが、都庁の世界樹をグルッと包囲したDMC狂信者の抜け穴を突くように慎重に移動するために時間がかかったのだ。
狸組もモブ狂信者なら軽く一掃できる猛者揃いではあるが、モブでも一万以上を相手にすると流石に消耗は避けられず、幹部クラスや強マーダーを呼び寄せる危険があったので、不要な戦いは可能な限り避ける必要があった。
仮に交戦を選んだらマーラの肉便器になっていたであろう。
また、首相官邸も巨大な神樹が倒されたり、「本当に官邸に行って大丈夫か?」と疑問視させたり、と思ったら都庁からまた生えてきたりと狸組を大いに混乱させた。
結局は殺し合いに関する手がかりの重要性や、風鳴翼の右腕から殺し合いの謎を解き明かすものを抽出するための機材ぐらいはあるだろうと思い、悩んだ挙句に首相官邸に向かうことになった。
途中で定時放送で主催が交代した件を知り、ブリーフ博士の娘であるブルマの死を知った時に博士が大いに落ち込む事態もあったが、仲間の励ましにより彼は持ち直した。
ここで立ち止まっていたら亡くなった娘に申し訳ないと彼は立ち直り、科学者として戦う道を選んだのである。
そうして狸組は漸く首相官邸跡地にたどり着き、天魔王軍とエンカウントした。


さあ、同じ対主催グループである狸組と天魔王軍は仲良くできるか?
答えは「NO」である。
生粋の対主催グループである狸組と、実質的にマーダーと謙遜ない危険対主催である天魔王軍が手を取り合えるわけもなく、ブリーフ博士を巡って、この首相官邸で何度目かの戦争が巻き起こるのだった。



官邸から少し遠巻きにある瓦礫の影から両陣営の交戦を覗くのはブリーフ博士。
彼は両陣営にとって大切な人材であるため、攻撃に巻き込まれる心配はほぼない。
だが、狸組が敗北すればそのまま戦闘力皆無の彼は天魔王軍に間違いなく捕まってしまう。
老科学者にできることは狸組の武運を祈ることであった。

「頼む……誰も死なずに勝ってくれ!」

ブリーフ博士の祈りが通じたのか、それとも武運が傾いていたためか、天魔王軍と狸組の戦いは狸組が優勢だった。




「巨木すら焼き払った核攻撃を喰らえ! ウルトラマン!!」

デスマシーンに乗る平山は、一度は神樹すら退けた必殺の核爆弾一斉射撃でウルトラマンタロウを焼き払おうとする。
タロウに巨体に降り注ぐ無数の核爆弾。

「無駄だ! タロウスパウト!!」

タロウは迫り来る核攻撃に対して体を高速回転させることで竜巻を発生させる。
竜巻によって核爆弾は持ち上げられて上空へと昇っていき、最後は誰もいない大気圏外で爆発した。

「馬鹿な……!?」
「ピンチの時はとりあえず回転すればなんとかなる……ウルトラ警備隊の暗黙の了解だ。
続けていくぞ! ブルーレーザー! タロウカッター! 塩漬け攻撃!!」
「ぐわあ!! チッ……まだ俺は負けたわけじゃないぞ!」

角から出る光線、三日月型の光のカッター、塩の入った巨大な桶を使った塩揉み攻撃でデスマシーンにダメージを与えていくタロウ。
彼は久しぶりに巡ってきた出番に対しての鬱憤を晴らすように、大暴れしまくった。
なお首輪は外れてもその身の呪いであるスパークドール状態そのものは解除できないので、ウルトライブが解除される前に急いで敵を倒す必要があるということもある。


343 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:47:44 XJ8rqxZ20



「ふむ、タロウのやつめ、久々の出番ではりきっておるな。これは儂も頑張らねばならんのぉ」
「余裕のつもりか! たぬきババアめ!」
「失礼な若造め。キツイお灸を据える必要がありそうじゃな。それに儂は幻想郷の妖怪の中では若輩者じゃ」
「キラーマジンガ、挟み撃ちだ!」

マミゾウが相対するのはヴァルゴ・ゾディアーツことミケとキラーマジンガのコンビである。
両者による防御力無視の光弾の弾幕と刃が迫るが、マミゾウはこれを飄々と躱していく。

「ほう、体が軽い。首輪が外れるとこうまで変われるものなのか」
「ど、どうしてここまでヒョイヒョイ避けられる?!」
「弾幕ごっこで日夜動体視力を鍛えている幻想郷の妖怪を見くびるなよ。この程度の弾幕と突撃を避けるのは初歩中の初歩じゃ」

これはミケとキラーマジンガのコンビネーションが稚拙なのではなく、弾幕ごっこで鍛えている幻想郷の妖怪、その中でも非常に強い部類に入るEXボスであるマミゾウの回避能力がズバ抜けているのである。
反撃にマミゾウはミケに弾幕をお見舞いする。
キラーマジンガには弾幕が直撃し、ミケはヴァルゴの転移能力で避けようとするが、避けた先で弾幕が命中する。

「ぐはッ!?」
「お主の転移能力は恐ろしいが、だったら逃げ込む先がないくらいに弾幕で埋めてしまえば良いというものよ」
「おのれ……!」

マミゾウの弾幕をミケが避けるには戦闘区域を離脱できるほどの長距離転移をすればいいが、それでは自分が戻ってくるまでの間に天魔王や平山たちに欠けた戦力で戦うことを強いてしまう。
敵前逃亡は忠誠を誓った天魔王への裏切りになってしまうというミケなりのプライドもあった。

「だが、キラーマジンガにはおまえの攻撃はほとんど効いちゃいない!
キラーマジンガ! ダメージには構わずに突撃しろ!」
「おっと!」

ミケにはそれなりのダメージが入ったようであるが、一方でプテラのステルスロックすら凌ぐ装甲を持ったキラーマジンガには効果が薄く、ミケの命令通りに執拗にマミゾウを攻撃する。
マミゾウはキラーマジンガの攻撃を躱していきながら、思考する。

(あのオカマみたいな奴はともかく、この一つ目の人形は厄介じゃな。
こいつの防御力の前ではスペルカードも大した打撃にはならん。
どうするかの……)



そして、デスマシーンとタロウ、ミケとマミゾウ、その両サイドに挟まれる形で戦っていたのは天魔王オルゴ・デミーラとエビルエスターク。
天魔王に立ち向かうのは大妖怪の息子・殺生丸と狸組のリーダーであるはやてであった。
はやてはなのはやフェイトをも上回るSSランク魔道士であるが、それを見抜いたデミーラによってエビルエスタークのあやしいきりで魔法を使えなくさせられており、はやてにとっては苦手な肉弾戦しかできなくしている。
だがそれを補うのがアタッカーである殺生丸であった。
デミーラの拳とエビルエスタークの剣の攻撃を軽やかに躱し、剣で捌いていく殺生丸。

「フンッ……」
「2体1でここまで……天魔王相手にやるわね、このブサイクが」

殺生丸の実力は、初登場で弟にやられた時以外は作中で穴らしい穴がないというほどであり、耐久力は弟より低めだが、その分攻撃力に優れている。
防御力が低いということは、天魔王やエビルエスタークの攻撃が当たれば確かに大打撃を受けるが、言い換えれば当たらなければいいのである。
敵の肉弾戦能力は確かに優れていれるが、殺生丸もまたそれは同じである。

それでも上記だけでは天魔王を相手にするには不利であったが、そこで二つが条件が殺生丸に味方する。
一つはレストから先刻託された天ノ村雲ノ剣である。
天ノ村雲ノ剣は性能は勿論、デフォルトで相手をスタン状態にするなど特性もあり、最高の鍛冶師であるレストによってさらに性能も大幅に拡張されている。
その剣は天魔王やエビルエスタークの攻撃にも耐え、彼らに手傷を負わせられるほどである。
そこへ更に首輪による制限によって天魔王は弱体化しており、実力差は互角近くまで持ち込むことができた。

「天魔王というだけに多少は期待したが、からくりを伴ってもこの程度か」
「ブサイクが言ってくれじゃないの!
出し惜しみはもういいわエビルエスターク! ジゴスラッシュ」
『了解シマシタ』
「来るか……ッ」

それでも敵は神さまレベルの力を持った邪装機神。
首輪がないために制限されていない、ジゴスラッシュは殺生丸の天ノ村雲ノ剣で上乗せされた戦闘力でも、奥義ジゴスラッシュを防御することも避けることも叶わない。
直撃すれば万事休すだろう。


344 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:48:42 XJ8rqxZ20
だがそこへ、今まで殺生丸の後ろにいたはやてが前に出る。

「殺生丸さん下がって! ここは私の出番や!」
「魔法を使えない魔道士が前に出る!? あの狸娘は何を考えているの!?」

はやては確かにSSランク魔道士だが、あやしいきりの効果によって魔法が一切使えない以上は攻撃力も防御力もほぼ皆無になる。
そんな彼女がジゴスラッシュによって切り込まれれば細切れ確定であるのに対し、自ら殺生丸の盾となり、そして直撃した。



「なん……ですって……!?」



オルゴ・デミーラは驚愕した。
次の瞬間にはタヌキはやての挽肉ができあがっているあろうと予想していただけに、もしくは盾なりなんなり何らかの防御手段があるぐらいの予想もあった。
だからこそ――


――はやてが「お地蔵さん」になって、ジゴスラッシュを防いだことは斜め上過ぎて予測できなかった。

ボンッ、と元の姿に戻った無傷のタヌキはやてがこのことについて敵味方に教える。

「タヌキスーツの奥の手である地蔵化能力や! 地蔵はやてになればあらゆる攻撃を無効化できるんやで!」
「アストロンに似た能力……厄介な!」

タヌキマリオがそうであったように地蔵に変身している間はあらゆる攻撃を無視できるのだ。
デミーラの知るアストロンも似たような魔法であり、象への変身が解けるまで全ての攻撃が効かなくなる。
それはジゴスラッシュだろうが、マダンテだろうが同じである。

「くッ……だけどアストロンは術が解けるまで一切動けなくなるデメリットも存在する。
エビルエスターク、私は狸を抑えとくから、あなたは犬の方を徹底的に攻めなさい」
『……』
「エビルエスターク……?」

デミーラは次に攻め手を変えてはやてと殺生丸を分断させる策を思いつくが、エビルエスタークは動く様子がなく、そのまま地面に倒れてしまった。

「エビルエスターク!?」
「漸く俺の毒の爪が効いてきたようだな。からくり人形に効くか疑わしかったが」

エビルエスタークは猛毒が弱点であり、殺生丸は毒の爪を体内に隠し持っている。
その毒を斬り合いの中でエビルエスタークにこっそり注入していたのだ。

「馬鹿な……対策として破毒のリングを予め装備させていたのに……!」

デミーラもまた前回の戦闘でエビルエスタークが毒にやられたことを念頭に入れて、モブから奪った支給品の中から毒を100%無効化する破毒のリングを指に装備させていた。

「破毒のリングとはあれのことか?」
「砕かれてる?!」
「妖力のようなものを感じ、曰くつきだと思ったから破壊させてもらった」
「結果は御の字だったみたいやね」
「おのれブサイクども!!」

破毒のリングは戦闘中に砕かれていた。
弱点となる装備をされても、その対策となる装備自体を破壊すれば意味はない。

「さあ、大分手こずったが、このからくりは破壊させてもらうぞ」
(今、あやしいきりを使えるエビルエスタークを失うのはマズイ……全力で阻止を……!)
「させへんで! 地蔵アタック!!」
「ぎゃあああああ!! 私の美しい腰がああああああ!!」

殺生丸が剣を振り上げた時、デミーラは天魔王の要であるエビルエスタークを守るべく駆け出すも、それは空中で再度地蔵化して落下してきたはやてによって背中にのしかかられたことによって阻まれる。
そして刃は振り遅され、倒れていたエビルエスタークの頭部を穿ち、黒煙を吐き出させた。

『機体大破、戦闘不能……ガ、ピ、プ、プ――――』
「私のエビルエスタークがあああああ!!」

【エビルエスターク@DS版DQ7 破壊確認】


345 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:49:38 XJ8rqxZ20



デミーラの慟哭と共に狸組は一気に攻勢に入る。

「一番邪魔な奴は決めた今や! タロウ!!」
「おう! ウルトラ念力!!」

タロウがウルトラ念力で残っていたあやしいきりを吹き飛ばし、はやてやマミゾウは術が使えるようになった。

「よし、次はこれや! セットアップからの……クラウ・ソラス!!」

さっそくはやては地蔵化を解いて本文である魔道士へと変身し、高威力の直射型砲撃魔法を放つ。
その矛先は平山のデスマシーンと、ミケ・キラーマジンガのコンビである。



「うわあああああああ!!
あっ! 今の衝撃で核爆弾のハッチがひしゃげた!?」

はやての放ったクラウ・ソラスはデスマシーンに直撃するが、これ一発で倒すには至らなかった。
しかし、発射口を潰して攻撃能力を奪うことは可能であった。

「今だ! ウルトラスパウト!!」
「眼、眼が回るうううう!」

敵の核攻撃が止んだと同時にタロウはウルトラスパウトによって発生した嵐でデスマシーンを空の彼方にまで吹き飛ばし、そして追い打ちをかけるように必殺光線を放つ。

「ストリウム光線!!」
「嫌だああああ、まだ死にたくない!!
助けてください天魔王さまあああああああああ!!!」

上空のデスマシーンにタロウは七色に光る光線を浴びせた。
それにより内蔵していた核爆弾に引火し、泣き叫ぶ平山とデスマシーンは熱と放射能による閃光の中に消えていった。

【平山幸雄@アカギ〜闇に降り立った天才〜 死亡確認】
【デスマシーン@FF・SaGaシリーズ 破壊確認】



「時間切れか……後は任せたぞみんな!」

ウルトライブの時間切れにより、タロウは元のソフビ人形になり、マミゾウの手の中に戻った。
マミゾウは手の中のタロウに頼もしく微笑みかける。

「ああ、後は儂らに任せろ!」


346 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:50:19 XJ8rqxZ20


はやてはクラウ・ソラスでマミゾウへの援護射撃を続ける。
デスマシーンと比べると的が小さいミケとキラーマジンガであり、直撃は難しかったが着弾時に発生した衝撃波でダメージを受けていた。

「クソッ、俺は一時的に亜空間に避難する!
キラーマジンガはダメージを無視して化け狸に突撃しろ!!」
『了解』

キラーマジンガの装甲ならば砲撃にも耐えられると判断したミケは、自分は攻撃が晴れるまで亜空間に隠れ、キラーマジンガを衝撃波で土煙立つ戦場に突っ込ませた。

(攻撃が晴れた瞬間に挟み討ちで化け狸を仕留めてやる!)

ミケもただ逃げるだけでなく、挟撃できるように位置を取り、マミゾウの隙を探す。
そして、その時は来た。
はやての砲撃と土煙が晴れると、中から対峙するキラーマジンガとマミゾウの姿が見えた。

「今だ! ガオンとくたばってしまえ!!」

ミケはマミゾウがこちらに気づく前に背後を取り、至近距離で必殺の光弾を発射した。

「!?」

そしてマミゾウの首からガオンと亜空間の中に消え、粉微塵になった。

「フッ……見たか! 天魔王軍ナンバー2の力……を?」

勝利を確信し鼻を鳴らすミケであったが、それは早計であった。

なぜならば殺したと思った首のないマミゾウの姿が地面に倒れた瞬間にキラーマジンガに変わったのだから。



一方、ミケがキラーマジンガだと思っていた者が彼の背後を取った。

『ワシノ能力ヲオシエテシンゼヨウ』
「!?」

次の瞬間には煙と共にキラーマジンガは一人ののじゃロリ少女に変わった――マミゾウだ!

「化けさせる程度の能力じゃ!」

マミゾウはタロウ以外の火力ではキラーマジンガの防御力を突破するのは難しいと思っていた。
はやては全力を出しすぎると必要以上の破壊をもたらして周辺やブリーフ博士に被害を及ぶすかもしれなかった。
なので利用させてもらったのだ。
防御力無視、当たれば確実に穴があくヴァルゴ・ゾディアーツの光弾をキラーマジンガに向けさせるべく、あやしいきりがなくなって術が使えるようになったことを思い出し、自分は土煙というドレスルームの中でキラーマジンガに化け、キラーマジンガを自分の姿に変えた。
こうすることで戻ってきたミケにキラーマジンガを倒させるように仕向けたのである。

「まずい! 亜空間へ」
「もう遅いわ! 変化『分福熱湯風呂』」

マミゾウに背後を取られたことに気づいたミケは慌てて亜空間に逃れようとしたが、それよりも早くマミゾウは術で巨大な釜のような風呂を呼び出し、ついでに風呂の中で裸になって湯を浴びながらミケを押しつぶした。
ついでに彼女の手の中に握られていたタロウソフビの鼻の下が伸びていたのは秘密である。

「ぎにゃあああああああ!! 痛い!! 熱い!!」

重量と熱による特大級のダメージを受けつつもミケはゾディアーツの防御力に救われ、なんとか亜空間に逃れて脱出するも、再び亜空間から戻ってきた時にはダメージ過多で変身が解けており、倒れ伏す中で乙女座のホロスコープススイッチで再変身を図るも、先にマミゾウに拾われて弾幕でバラバラになった。
ミケにもう、勝機はない。

「ほほう、正体は人間だったか。お主も相当な化け狸だったな」
「クソッ…クソウッ……」
「察するにその姿で魔物のフリをして、都庁の魔物たちに自分たちの悪行の濡れ衣を被せておったのだな。
普通の人間には魔物と魔族の違いがわからないとはいえ……痴れ者どもめ」
「な、なぜトドメを刺さない?!」

マミゾウは風呂から上がり、変化を解いて元の服を着た姿に戻り、膝をついていたミケの顎髭を掴む。

「貴様には人間と魔物たちの前で証言台に立ってもらう。
この殺し合いで人間と魔物の対立を煽り、無用な憎しみを生み出した犯人として真実を洗いざらい吐いてもらう。
真実を吐いたおまえは間違いなく人間からは唾を吐かれ、魔物に惨殺されるだろう。それまでは命は取らん」
「ヒィッ!」
「おっと、黙っとれば助かると思うなよ?
妖怪には本当のことを喋らせる術などいくらでもあるのだからな!」

マミゾウの睨みは、どんな巨人よりも恐ろしく、瀕死のミケを震え上がらせた。

【キラーマジンガ@DS版DQ7 破壊確認】


347 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:51:04 XJ8rqxZ20




「なんということなの……私の天魔王軍が!」

未だにはやての地蔵アタックのダメージが抜けずに無様に地面に倒れていた天魔王オルゴ・デミーラは、自分の軍団が壊滅している惨状に驚愕した。
マシンモンスターは全滅、平山は死亡、ミケは瀕死、戦闘員であるベビークラウド部隊も殺生丸やはやてによってほどなく全滅した。
まるでかつて壊滅寸前にまで追いやった警察組のように、ほとんど一方的に天魔王軍はやられたのだ。
この敗北に屈辱を覚えていたデミーラに殺生丸とはやてが近づく。

「多少は楽しませてもらったが、神を名乗るには程遠かったな」
「どうして……私の無敗の天魔王軍が……装備も実力も優れていたのに!」
「アンタと私たちとじゃ、背負ってる物が違うねん。
あくまで自分本位のアンタと多くの人を救いたいと願う私たちじゃね」
「今まで勝てたのも単に運と巡り合わせが良かっただけだ、それに……」

殺生丸がデミーラにトドメを刺すために、天ノ村雲ノ剣の切っ先を天に向ける。

「本当に神の頂きを目指すものは、小賢しい策など使わなくとも上にいける。
策を弄して真正面から戦わぬ者など器が知れている」

このまま振り下ろされれば、デミーラは首を撥ねられて死ぬだろう。
天魔王軍の犯した罪に関する証人はミケ一人いれば良いので、天魔王にはここで死んでもらおうというのが殺生丸の判断であった。

(まずい、ここは物凄く嫌だけど真の姿を開放するしか――!!)

デミーラは刃が下ろされるより早く、その醜さから今まで出し渋っていた真の姿へと変身しようと魔力を開放せんとする。
少なくとも窮地を脱出するにはあの姿に戻りざるおえないという判断だったが、その判断は僅かに遅く、殺生丸の刃の方が早かった。

(――間に合わない!?)

その場にいる誰もが、デミーラ本人ですら、天魔王の終わりを悟った。



だが。















スポッ

「えッ?!」
「なにッ!?」
「は!?」



なんという不運か。
天ノ村雲ノ剣はデミーラの首に当たる前に、振りかぶっていた殺生丸の手からすっぽ抜けて飛んでいったではないか。

そしてその刃は、ある人物の胸に突き刺さった。
その人物とは……


348 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:52:05 XJ8rqxZ20




















「は、はやて…どの……」
「マミゾウさん!?」

はやての相棒であるマミゾウその人であった。
マミゾウは胸から血を出し、口からは夥しい血を吐き出す。

惨劇はこれで終わらない。

これを好機と見たミケは次の瞬間には、マミゾウの胸に刺さった剣を引き抜き、その剣でマミゾウの首を切断した。
いかな生命力に優れた妖怪と言え、首まで落とされれば絶命は確定的である。
さっきまで自分に対して優位に立っていた妖怪を殺せたことに、ミケは狂気の悦を含めたスマイルを浮かべる。

「天魔王様! 今日の晩餐は狸汁ですよ!!」
「マ、マミゾウーーッ!!」
「平山の仇だ! 貴様も死ねえ!」
「ぐぎッ、がはあッ!!」

首がなくなって地面に倒れたマミゾウの遺体の手に握られてタロウは友の死に嘆くも、スパークドール故に何もできないまま、ミケの逆恨みの剣によってその身に何度も刃を受ける。
事が終わった時には、タロウの肉体はグシャグシャの真っ赤なソフトビニールの残骸へと成り果てていた。


【二ッ岩マミゾウ@東方project 死亡確認】
【ウルトラマンタロウ(SD)@ウルトラマンギンガ 死亡確認】



「マミゾウさんとタロウが……殺生丸さん、なんてことを!」
「待て、俺は――」

気が緩んでいたのかはわからないが、殺生丸のミスのせいでかけがえのない仲間が命を失ったことにはやては責めずにはいられなかった。
殺生丸は何か弁解をしようとするが、それよりも早く、突然現れた大きな腕が殺生丸を掴んだ。

「――がッ!?」
『よくも美しい部下たちを殺し、あまつさえ私……いや、われにこの醜い姿を曝け出してくれたな!!』

はやてとミケが振り返るとそこには、巨大なムカデの下半身を持つ、巨大で醜悪なる魔王のゾンビがいた。
はやてと殺生丸が仲間の死に注意を向けている隙に闇のルビーを使って天魔王は本来の姿に戻ったのだ。

「オルゴ・デミーラ!?」
「天魔王様!?」
「そうだ。わが名は オルゴ・デミーラ。
万物の王にして 天地をたばねる者。
だが勇者との戦いに一度は敗れてこのような醜い姿に身を落とした。
この臭くて美を感じさせぬ姿は本当の本当に最後までなりたくなかった……」

目の前にある恐ろしき姿と先程の人間形態とは格段に違う魔力を肌で感じ、はやてには足がすくみそうになる恐怖を覚え、ミケはやはり天魔王は世界を統べるべきお方だと畏敬した。

「この不細工な犬と狸めが!! 絶対に許さんぞ!! 天魔王の神罰を受けるがいい!!」

天魔王の腕の中で膨大な魔力が燃え上がる。
その魔力で直に炙られ殺生丸の体も燃え上がる。


349 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:52:45 XJ8rqxZ20

「殺生丸さん!」
「はや…て……博士、を連れ…逃げ……」
「これで終わりじゃないぞ! 天魔王に刃向かった罰を命をもって贖え!」

魔力を極限まで高めたデミーラにより――暴走した魔力が爆発を起こす!
次に起こる大魔法に対してはやてとブリーフ博士は身構え、ミケは立体機動装置を使って緊急退避、最後に残された天魔王の腕に捕まっている殺生丸のみ回避する手段はない。



 マ ダ ン テ



その時、千代田区全域を揺らすほどの大爆発が発生し、首相官邸は地下の豪邸すら残さず消滅した。





「ふん、マダンテすら防ぐアストロンと同じ能力を持つ衣を持つおまえだけは」

煙が晴れた後に戦場に残っていたはタヌキスーツの力で地蔵になったはやて一人だけであった。

「な、なんて魔力なんや……殺生丸さんは!?」

その威力はSSランク魔道士である自分すら凌ぎかねない威力。
恐る恐る地蔵姿のままのはやてが周囲を見ると、爆発に巻き込まれたマミゾウとタロウの骸は蒸発。そして絶大な魔力をゼロ距離で浴びた殺生丸もまた、天魔王の腕の中で灰と化しており、天魔王が握りつぶすと同時に崩れ去った。


【殺生丸@犬夜叉 死亡確認】


「そんな、そんなーーーッ!!」

僅かな時間に起きた僅かな歪みによって瀕死だった天魔王軍の逆転を許し、三人もの仲間を失ったことにはやては絶望するしかなかった。
更に絶望は終わらない。

「天魔王様、ブリーフ博士を捕らえました」
「ごくろう、我が側近ミケ・ザカリアスよ」
「すまない……はやてくん」
「博士!」

殺生丸の願いすら叶わず、ブリーフはミケによって捕縛されてしまった。
狸組の敗北は決定的である。

「君だけでも逃げるんだはやてくん!」
「……できません! 私にはまだタヌキスーツがある!!」

はやては全参加者の希望になるかもしれないブリーフを、天魔王という悪しき者に渡したくはなかった。
天魔王オルゴ・デミーラは間違いなく首輪解除とTC及び風鳴翼の腕を悪用し、他の参加者に災いをもたらすからだ。
幸いなのは敵は首輪解除に必要な博士を傷つけることはできないので、博士の命は確実に保証されているということ。
アストロンと同じく絶対無敵の防御力を持つタヌキスーツの地蔵化ならば天魔王とミケに勝てずとも博士を連れて逃げることはできるだろうと踏み、地蔵化を解いて戦闘を続行しようとするはやて。

それがまずかった。


350 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:53:36 XJ8rqxZ20

地蔵化を解いた瞬間、纏っていたタヌキスーツが灰と化して崩れたからだ。

「なんやて!?」
「フフフ、やはりな。
鉄壁のアストロンと同じく強力な能力……なんの代償もなしに使えるハズがない」
「まさか、地蔵化には回数制限が!?」

実は主催陣営(五大幹部)の仕掛けた制限もとい調整により、タヌキスーツは地蔵化を三回やると消滅する仕組みになっていたのだ。

「お気に入りだったのに……だけど武器はまだ!」
「いや貴様は終わりだよ」

タヌキスーツはなくともシュベルトクロイツや夜天の書といったデバイスは残っているので戦闘を続けようとしたはやてだったが、ミケが放った立体機動装置のアンカーが手に握られていた夜天の書を弾き、彼に奪われた天ノ村雲ノ剣の硬度がシュベルトクロイツを叩き折った。

「武器が!」

デバイスを無力化された結果、はやては変身が解けて一糸まとわぬ裸体を晒すことになる。

「くッ……」
「貴様、痴女か?」
「う、うるさいねん! さっき壊れたタヌキスーツの着心地が良すぎて今まで地肌に纏ってたんや!」

顔を真っ赤にするはやてであったが、こうして狸組の敗北は決定的になり、逃走も許されなくなった。
生き残った少女も老人と同じく捕縛され、さあ、楽しい楽しい戦後処理が始まる。

「八神はやて、貴様も先の犬妖怪と同じくこのわれの手で直々に処刑してくれる!」
「待て、オルゴ・デミーラ!! はやてくんと殺したらおまえの望む首輪の解除を断固拒否するぞ!」
「無駄だ、ヒゲがチャーミングなブリーフよ。
貴様が拒否しようとも、われには魔力に抵抗のない人間の意思を無視して操る術などいくらでもある」
「なに?!」
「相手は幾万もの術を操る天魔王様だぞ、浅はかだったな」

博士の抵抗も虚しく、天魔王ははやてを殺した後に魔法でブリーフを操るつもりだった。

「天魔王様、戦友の平山のためにもただ殺すだけでは足りません。
この女はできるだけ肉体も精神も苦しめて殺し、協力したらしい都庁に死体を箱詰めで送りつけて私たちの力を見せつけるべきかと!」
「よかろう……拷問しようが慰みものにしようが好きにするがいい。我はここで見物している」
「御意……フッ」

もはや人類の尊厳を守る気のない、心だけなら知性を失った巨人と大差ない元調査兵団分隊長の下衆な笑顔が敗北者たちに近づく。


351 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:55:01 XJ8rqxZ20

「痛い、イダイッ!! やめろ……この外道、ひと思いに殺れや!」
「嫌だね。天魔王様の美しいお体を俺ごときが汚すわけにはいかないが、おまえなら折りたたんでも良さそうだな。
博士も早く天魔王様の首輪を外しにいった方が良いぞ。この女の命を五分は延長できるかもしれんからな!」
「なんということだ……せめてベジータくんがいてくれたなら……!」

平山は己の剣をはやてに突きつけ、天魔王はこれから起こるショーを愉悦の表情で見ている。
嘆く博士と、体をミケに揺さぶられながら無念の悔し涙を流すはやて。

マシンモンスターの全滅と平山の死、本当の姿への解禁は手痛い出費だったが、首輪解除ができれば世界征服の夢も現実的なものになる。
確かにフォレスト・セルの魔力は天魔王の前でも危険だが、この真の姿の持つ魔力を無限に全回復する『邪悪な祈りの力』があればマダンテを無制限に撃つことができ、ミケの持っている大量の不明支給品と組み合わせれば可能性は無限であり、勝機は見えてくる。
天魔王軍は自分とミケしか残っていないが、まだまだ戦っていけるというのがオルゴ・デミーラの見通しであった。



だが、そこへ膨大な闇の力と殺気を感じ、天魔王の第六感を刺激した。

「殺気!? 上だミケ!!」
「はッ――」

天魔王の指示通りに上を見上げたミケは、ローブの男が白と赤の二つの剣を持って自分に切りかかろうとしているのを確認する。
ミケは処刑を中断し、すぐに天ノ村雲ノ剣で防御する。
カオスロワ最高の鍛冶技術を持つレストが打った剣である天ノ村雲ノ剣の硬度は並大抵どころか、多少優れた程度の剣を防ぐことは容易い。

しかしローブの男が持っている剣は持ち主によっては世界を滅ぼすことも可能な邪剣と、それに対抗するために作られた同等の力を持つ聖剣。
単純計算で世界を二回滅ぼせるパワーは触れた天ノ村雲ノ剣を粉々に叩き割り、ミケの両腕を肩の付け根から切断した。

「ミケ!?」
「俺の腕がや、やぁだああああああああああああ――」

腕を両断されたことで肩口から噴水のように血が噴き出したミケはパニックに陥るも、すぐにローブの男の鋏状に交差した二本の剣で首を落とされた。
首のなくなったミケの死体から吹き出した血ははやてと博士の体を赤く汚し、絶句させた。


【ミケ・ザカリアス@進撃の巨人 死亡確認】


352 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:55:45 XJ8rqxZ20



「ミケ!! おのれ、貴様何奴!?」
「あなたはいったい……」

突然現れてミケを斬殺したローブの男に、天魔王は激昂し、はやては驚く。
天魔王はまだしも、敵か味方かわからないことにはやてたちは戦々恐々だったが、彼女の問いかけに対して男は優しい笑顔を投げかけながら、はやてと博士の拘束を剣で解き、裸体のはやてには纏っていたローブを渡して被せた。

「僕の名前はアナキン・スカイウォーカー。大丈夫、君たちの味方だよ」

それだけ言うとアナキンは巨大なデミーラに向けて走っていく。

「ミケを殺したな?! 許さんぞアナキン!! 渾身のメラゾーマに焼かれて死ぬがよい!!」

天魔王はアナキンが現れるより前に邪悪な祈りで魔力を全回復し、最大級の威力を持つメラゾーマで焼き尽くさんとする。(本当はマダンテを使いたかったが肝心のブリーフ博士が近くにいるのでそれはできない)
しかしメラゾーマの炎柱はアナキンのフォースによって弾かれ、ダメージを与えるには至らなかった。

「馬鹿な!?」
(天魔王オルゴ・デミーラ……せめて若返る前の僕だったら容易く倒せたろうに、ピーク時の肉体と邪剣と聖剣を取り戻した僕に当たったのが運の尽きだったな!)

今のアナキンはソウルエッジとソウルキャリバーによって何倍もフォースを強化されており、首輪も外れていない天魔王の魔力に抗うことも可能だった。
マダンテのような最大威力の技ではないとはいえ、こうも簡単に防がれたことに天魔王も驚きを隠せない。
しかも天魔王の不運はこれだけに留まらない。

「ならば麻痺攻撃で……って変身が解けたーッ!? こんな時に時間切れ!?」

首輪が外れていないことが枷になり変身の制限時間により真の姿から人間形態へと戻ってしまい、弱体化したデミーラ。
魔力が大幅にダウンし、もうマダンテなどの強力な技を放つことができない。

「これで終わりだ!」
「まだ終わらないわよ、この天魔王の野望は絶対にィ!!」

双剣を持って突撃していくアナキンと、優れた肉体から繰り出される正拳突きで仕留めようとするデミーラ。
剣と拳が交差し、どちらかからの血が噴き出して地面に溢れる。
軍配が上がったのはどちらか一方のみ。


「がふッ……」
「僕の…勝ちだ」


デミーラの拳はフォースの見えない壁で阻まれてアナキンの眼前で止まり、デミーラの肉体は二つの剣で胸を串刺しにされた。
アナキンに剣を引き抜かれて力なく地面へと倒れていくデミーラ。天魔王の年貢の納め時である。

一方、死にゆく天魔王は確かに見た。

アナキンの黒いスマイルと、どこかで見たような黒づくめの男の面影を。


(そうか、あなただったのね、ダース・ベイダー……あなたなら支給品の制限回数や変身の制限時間を知っていてもおかしくない。
不自然だったさっきの事故や、タイミングが良すぎる救援……裏で糸を引いたのがあなただったら合点がいく……)

天魔王は直感でアナキンの正体が旧主催であるダース・ベイダーであることに気づく。
そして一連の出来事にアナキンが関わっていることにも……

天魔王は最後までアナキンの掌で踊っていたことを悔いつつも、ソウルエッジに魂を喰われたことで野望と共に肉体はドロドロに溶けて潰えるのだった。


【オルゴ・デミーラ@ドラクエ7 死亡確認】


353 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:57:41 XJ8rqxZ20



――時は天魔王軍と狸組の交戦中まで遡る――


伊豆諸島基地をXウィングで発ったアナキンだったが、どこの対主催組織に行くか決めあぐねていたところ、最終的に決定したのが狸組だった。

「それはどうしてです、ベイダー卿?」

その考えについてデイパックの中のニャル子は質問する。

「ブリーフ博士は今は亡きビアン博士並の科学者だ。
彼の頭脳が予言の謎を解き明かすために必要になるかもしれない。
なんとか手元に置いておきたい」

知力だけなら現存の主催陣営でジャック、ココ、メフィラスも高いが、ブリーフ博士には遠く及ばない。
狸組に正体を悟らせないようにその知能を利用できれば、科学的な面から予言の謎を解き明かせる可能性がある。
またブリーフ博士はこのロワで二番目に首輪解除方法を見つけた対主催で放置すると解除して欲しくない者の首輪まで外してしまう危険があったが、逆に手中に収めることで首輪解除できる対主催を管理してしまおうと考えついたのだ。
これからテルミと戦うために、首輪を外して制限のなくなった対主催の戦闘力が必要かもしれず、殺し合いを停滞させたり世界に害を及ぼす者以外は外してもいい頃合というのがアナキンの判断である。
首輪を外せる博士自体を手土産にすることで他の対主催とも接触しやすくなるだろう。
もちろん自分の正体に気づかれたりしたら狸組には消えてもらうが。

(狸組は確かギンガスパーク持ってましたよねえ……もしアレが手に入ることがあれば真尋さんを憎っきココの手からウヒヒヒヒヒヒ……)
(ニャル子ェ……僕のフォースの力でおまえの悪だくみが丸聞こえだぞ。
まあ、僕の正体やテラカオス計画を最後まで黙っていたら褒美としてくれてやるか)
「では、決まったからにはさっそく行きましょう」
「はいはい」

ニャル子としてはスパークドールとなっている真尋をココの手から取り戻す算段として狸組のギンガスパークを手に入れたいと考えていたが、心の声を聞けるフォースの力によってアナキンにはバレバレであった。
そしてアナキンとニャル子を乗せたXウィングは首相官邸のある千代田区に降り立った。

そして遠巻きから狸組と天魔王軍との戦闘を隠れて見ていたアナキンとニャル子。

「天魔王デミーラ……今の僕の戦闘力なら勝てない相手ではないけど、後でテルミとの戦いに備えて消耗は抑えたい。
それにこの戦況なら狸組が十中八九勝てるだろう。
ニャル子を差し出せば主催の一員を捕まえたとして狸組に取り入ることもできるかもしれない。
だが、もし正体がバレた時に狸組から総攻撃を受けて無駄な消耗をすることも面白くない」
「じゃあどうするんですか?」
「僕が偶然を装ってピンチの時に現れた救いのヒーローを演出させるために、狸組には壊滅寸前になってもらう」
「うわ、悪い顔……」

戦況は狸組勝利目前であり、もうすぐデミーラの首が殺生丸によって撥ねられる寸前でアナキンはフォースを使用。
殺生丸のミスによる事故に見せかけて彼の手から天ノ村雲ノ剣を離し、偶然飛んでいったように見せかけてマミゾウの胸を刺す。
結果的にマミゾウとタロウは死に、殺生丸も真の姿を見せたデミーラによって殺され、優勢だった狸組は一気に窮地に陥る。

アナキンは主催陣営ゆえにはやての来ていたタヌキスーツの地蔵化に回数制限があることや、首輪の外れていないデミーラの変身制限時間があることも知っており、狸組のピンチとデミーラの変身の時間切れが迫った時を見計らってアナキンは出陣する。

そして見事に最小限の労力でデミーラを討ち、狸組を救い出して信頼を得ることに成功する。
ギリギリまで追い詰められていたはやてと博士の目にはアナキンの勇姿は英雄のように映っただろう。

だが、二人は知らない。
全てはアナキンが二人から信頼を得るために行った演出に過ぎない、一番『狸』を演じたアナキンにだけが勝者として利益を得るマッチポンプ劇場であることに。



――時は現在に戻る――



「マミゾウさん、みんな……ごめん……守ってあげられなくて」

地面に膝をつき、亡くなった三人の仲間に謝罪の涙を流すはやて。
三人の遺体は先のマダンテで消失しているので墓すら立てることができなかった。

「いや、君のせいじゃないよ。僕がもっと早くたどり着いていれば悲劇は防げたろうに……」
「アナキンざん゛……うわああああああああああん」

悲しみと自分の不甲斐なさによりはやての顔は涙と鼻水でグショグショだった。
そんな彼女にアナキンは優しく胸を貸して抱きつかせ、気の済むまで泣かせてやることにした。
ついさっき会ったばかりだが、はやてにとってアナキンは窮地の時に自分と博士を救った彼は恩人に他ならず、大敗とミケにsenkaさせられたことによる精神不安定補正により、なおさらアナキンが輝いて見えていた。


354 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:59:06 XJ8rqxZ20


(あ〜あ、見事に悪い男に騙されちゃってますねえ……)

その茶番を端から見ていた真実を知るニャル子ははやてを鼻で笑った。
そんなニャル子に話しかけたのはブリーフ博士である。
ちなみにニャル子はアナキンに捕まっているという設定なので体にロープが巻きつけられている。

「君は特務機関員のニャル子だね?」
「ええ、そうですよ。今はアナキンに捕まってこの様です。
主催が安倍に交代していなければ機密保持のために今頃ベイダー卿に殺されているでしょう」
「よければ、主催の目的についてなにか教えてくれまいか?」
「言っときますけど、私はかけがえのない人であり将来のダーリンの真尋さんを人質に取られているから仕方なく主催に従ってただけで、他に知ってることはありません。
他の特務機関員の情報なら狸組はとっくに握っているでしょうし」
「そうか……」

ニャル子ならば主催の目的も見えてくるだろうと思ったが、情報を何も持っていないことに落胆するブリーフ博士。もちろん、ニャル子が主催陣営の目的を知らないのは嘘であり、アナキンの正体がベイダーだと教えなかった。
喋れば、戦闘力のほとんどを失った狸組ではアナキンを止めることもできずに間違いなく殺されるからだ。

(まあ、真尋さんが人質に取られているのは嘘じゃないし)



「博士、僕は対主催の一員として首輪を外せるあなたがここにいると聞いて馳せ参じました。
これから危険なマーダーやベイダーや安倍と戦うためにも首輪を外して欲しい」
「わかった、外してあげよう」

そして、情報交換(大半はアナキンは既に知っている)の後に、アナキンの首輪も外された。
この時、ブリーフ博士がもう少し冷静であれば首輪が偽装であると見抜けたかもしれないが、彼もまた仲間と娘の多くを失ったために精神的なダメージを受けており、偽物を見抜くことができなかった。

「ありがとう、博士。これで百人力だ」
「儂とはやてくんを救ってくれた例じゃよ……しかし、殺し合いの手がかりになるかもしれなかった官邸が戦いで跡形もなくなってしまったな」
「これでは食人鬼の腕から何かを抽出する機材も回収できそうにないですし、どうすれば……」
「一先ず、有名な対主催組織に合流するのはどうかな? 聖帝軍とイチローチームはまだ健在なハズ」

今後の方針を話し合う三人だったが、三人とは離れた位置で企むニャル子がいた。

(頼みますよシャンタッ君、ギンガスパークを回収してください! オナシャス!)

アナキンは三人で話し合っている間にシャンタッ君に使える支給品の回収を命令した。
ほとんどが戦闘の過程で消失してしまったが、もしギンガスパークが残っていればニャル子の真尋救出の夢が見えてくる。

そのためにマジマジとシャンタッ君の作業を見ていた。

「みー、みー」

そして、瓦礫の中からシャンタッ君は何かを見つけた。
瓦礫の下にあったのはマダンテの熱で溶けたビニールになったスパークドールと、辛うじて無傷だったギンガスパークだった。

(やったあああああああああああ!! あれさえあれば真尋さんをココのNTRから解放できる!
後は隙を見て逃げ出すチャンスと奪うチャンスがあれば……)

ひょっとしたらギンガスパークも消失しているのではないかと恐れていたニャル子だったが、無事を確認できて心の中でガッツポーズを取る。
後はどうにか脱出と簒奪のチャンスを伺うだけであった。



ズガンッ ズガンッ



「みィ!?」
「へ?!」

そこへ無情の発砲音が聞こえたと思いきや、銃弾がシャンタッ君の頭を吹き飛ばし、ニャル子の胸に大きな風穴を開けた。

「なんじゃ?!」
「敵襲だ!」
「DMC狂信者……!」

銃声が聞こえてアナキンたちが振り返るとそこには頭のなくなったシャンタッ君と、胸から夥しい血を流して倒れるニャル子。
少し離れた位置からこちらを狙撃したと思わしきモブ狂信者がいた。


355 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 16:59:59 XJ8rqxZ20

「生贄がいたぞー! SATUGAIせよレ○プせよ!」

獲物を見つけた一人のモブ狂信者が仲間を呼ぶと、数分も立たない内に蟻のようにモブ狂信者が集まっていき、アナキンらに銃弾を浴びせる。
幸いにもアナキンのフォースで防がれたために銃弾が三人を貫くことはなかった。

(厄介な……モブ程度なら簡単に全滅させられるが戦っている内にテルミを呼び寄せる危険がある。
戦力が整わない今は逃げた方が良さそうだ)

フォースと剣で銃弾を弾きつつ、アナキンははやてとブリーフ博士を説得してある場所へ連れて行こうとする。

「今後の為にも無駄な戦いをするわけにも行きません!」
「では、どうするんです?」
「この先に僕が隠した戦闘機があります。それに乗って逃げましょう!」

速度に優れたXウィングに乗ればモブ狂信者を振り切ることも可能だろう。
一先ず、隠した場所へ逃げることにするが、そこへ待ったをかけるブリーフ博士。

「じゃがアナキンくん、ニャル子くんはどうするのかね?」
「非情ですが、あれは連れて行ったところでろくな情報はない……それに、あの傷じゃもう助からない」
「しかし……」

元は主催の手先とはいえ倒れたニャル子を置いていくことに難儀をしめす博士だったが、そこへはやてが進言する。

「彼女は可愛そうですが、今は置いていくしかありません。
マミゾウさんたちに続いて私たちが死ぬわけには行きません。
特にこの殺し合いの鍵を握るかもしれない……あなたは」
「はやてくん……わかった、不本意だが、従おう」

はやての言葉により博士も重い腰を上げてアナキンの意見に従う。
アナキンはシャンタッ君の集めた闇のルビーやギンガスパーク、その他諸々の不明支給品をフォースで吸い寄せた後に、二人を連れて狂信者軍団から逃げ出す。

一方、置いて行かれたニャル子は一部のモブ狂信者に囲まれていた。
皆殺気だっており、今にも大量出血で動けないニャル子を殺そうとしている。
致命傷なれどなんとか助かりと願ったニャル子は、ダメ元でモブ狂信者に懇願する。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!待って!助けて!待って下さい!お願いします!」

もちろん、それは無駄な足掻きであった。

「「「SATUGAIせよ、レ○プせよ!!」」」
「アアアアアアアア!(発狂) 助けてベイダー卿!真尋さぁーーーん!!」



数分後、跡形もなく消えた首相官邸のあった場所には、一人の銀髪少女の生首が名状しがたきバールで串刺しにされて放置されていた。


【ニャル子@這い寄れ!ニャル子さん 死亡確認】




ニャル子を囮にすることで結果的に追っ手の数を減らしてXウィングにたどり着いた三人は、さっそく乗り込んで飛び立ち、千代田区から脱出する。
(ちなみにXウィングは一人乗りだが、博士とはやてをR2-D2を載せる上の部分の穴に乗せることで解決した)
その時、一つの地下から現れた眩い閃光が巨大な神樹を貫き、叩きおった。

――ぐああああぁああああぁあああ!!!

「なんじゃと、あれは……」

ブリーフ博士が驚くのも束の間、間髪入れずに都庁の世界樹に向けて同じ閃光が地下から放たれる。
何かの力で世界樹に閃光が当たることはなかったが、二度にわたって放たれた閃光にブリーフ博士は何かを確信する。

「間違いない、あれは……」
「どうしたんです、ブリーフ博士?!」
「あれはベジータくんの技の一つ、ファイナルフラッシュじゃ……あそこにベジータくんはいる!」
「なんですって!?」

ブリーフ博士は信頼している男にして娘の夫、サイヤ人のベジータがいることをエネルギー弾の形から確信する。
しかしおそらく対主催であろうベジータがなぜ同じ対主催の都庁を攻撃しているのか?

「まさか多くの参加者と同じく風評被害に騙されて都庁を攻撃しているのか……」
「それなら止めなアカン! アナキンさん、すぐに都庁に向かって!」
「それはダメだ。都庁は今、狂信者たちに囲まれていて対空砲火が激しい。
この戦闘機の性能じゃ確実に撃ち落とされてしまう」

はやての提案を拒否したアナキンだが、弾幕を突破して都庁にたどり着けないのは嘘ではない。
それはエースパイロットであるゼクスが乗るエピオンすら突破できないレベルであり、強行突入は危険を伴う。
撃ち落とされた際はアナキンとはやてなら大丈夫だろうが、一般人であるブリーフ博士の命の保証はないだろう。

「すまないが現状は無理だ……あの包囲網を突破できる戦力を手に入れるまで後回しにするしかない」
「くッ……ベジータくん、頼むから都庁は味方だと気づいてくれ」
「都庁のみんなも無事でいてや……」

アナキンの操る戦闘機の上で、博士とはやては遠くから都庁の参加者の無事とベジータの誤解が晴れることを信じるしかなかった。
だが、運命はかくも残酷であった……


356 : 勝利の鍵は…狸さん!!! ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 17:01:50 XJ8rqxZ20



【二日目・13時00分/東京・千代田区上空】

【八神はやて@魔法戦記リリカルなのはForce】
【状態】ダメージ(中)、魔力消費(中)、精神不安定、非処女、全裸にローブ一枚、死んだ仲間たちへの深い悲しみ、首輪解除
【装備】アナキンから借りたローブ
【道具】基本支給品一式、夜天の書@魔法少女リリカルなのは、携帯電話、USBメモリ
【思考】基本:死んだ仲間たちや赤い翼のMSのパイロットの為にも主催を倒す
0:今はアナキンに従い、ブリーフ博士を守る
1:主催者打倒のため、情報と仲間を集める
2:TC値に謎の物質に、まだまだわからんことばかりやな……
3:恩人であるアナキンを全面的に信頼
4:みんな、守れなくてゴメン……
5:タヌキスーツ、お気に入りだったのに
※主催側が大災害について何か関与していると考えています(細かい部分は分かっていません)
※PSP版の技も使えます。
※カオスロワちゃんねるより、風鳴翼の情報を少し入手しました
※アナキンの正体に気づいていません


【ブリーフ博士@ドラゴンボール】
【状態】精神疲労(大)、白衣が血で真っ赤、深い悲しみ、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、機材一式、風鳴翼の右腕
【思考】基本:対主催
0:今はアナキンと行動を共にする
1:TC値と謎の物質の調査のために、自分以外の科学者とも合流したい
2:対主催参加者と出会えたら、首輪を外す
3:都庁に放たれたあのビームはベジータくんのものだが……一体何が……
4:恩人であるアナキンを信頼
5:亡くなったブルマや殺生丸くんたちのためにも技術者として戦い続ける
※首輪解除が可能となりました
※風鳴翼の右腕は四条化細胞とナノマシンの塊です。うまくいけば抽出できるかもしれません
※現在所持している道具では抽出不可。どこからか調達するか設備のある場所を訪問する必要があります
※情報交換により、風鳴翼(テラカオス・ディーヴァ)の能力の一部を知りました
※情報交換により、謎の物質(ナノマシン)の存在および危険性を知りました
※アナキンの正体に気づいていません


【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【状態】疲労(微小)、若返り、ジェダイ風衣装、首輪解除
【装備】邪剣ソウルエッジ&聖剣ソウルキャリバー@ソウルキャリバーシリーズ
【道具】支給品一式、四条化細胞入りカプセル、Xウィング・ファイター@STAR WARS、ライトセーバー@STAR WARS、闇のルビー、ギンガスパーク@ウルトラマンギンガ、大量の不明支給品
【思考】基本:世界を救うためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:更にどこかの対主催勢力と合流し予言の調査及びユウキ=テルミの討伐
1:対主催への信頼を得るためにブリーフ博士を利用する
2:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは消す
3:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
4:ユウキ=テルミを殺す前に、テラカオスや救済の予言について知っているなら吐かせる
5:いざという時は四条化カプセルで新たなテラカオスを作る
6:合流する対主催グループはイチローチームか聖帝軍が妥当か?
※タイムふろしきで若返ったのでピーク時の姿と力を取り戻しました
※現状の戦力や装備では狂信者によって都庁に仕掛けられた包囲網を突破できません
※この時点ではまだテルミの死を知りません


357 : ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 17:03:08 XJ8rqxZ20
投下終了です


358 : ◆MFwWKSsHwQ :2017/09/04(月) 17:05:24 XJ8rqxZ20
あっ、今さらながら誤字ってたので修正

>>342
地下の狭い空間はマシーンモンスターしかおらず ×

地下の狭い空間はマシーンモンスターが入れず  ○


359 : 名無しさん :2017/09/04(月) 17:26:43 iCZDZhKA0

アナキンが黒いパワー全開だ


360 : 名無しさん :2017/09/04(月) 19:31:48 yelXO6Xw0
投下乙。若返ってハッスル状態のアナキンドス黒過ぎて笑えない
叢雲や天魔王すら一撃粉砕する攻撃力にフォース防御まであっちゃハクメンすらボコボコにされそう
そして狸組壊滅でとうとう残った対主催は都庁と聖帝、イチロードラゴンズだけか?


361 : 名無しさん :2017/09/04(月) 23:26:43 tkqOWv0E0
乙ー
予想以上の大惨事でびっくりだよ……
ミケさんはガードしないで刺し違え狙いしてればまだチャンスあったのになぁ
(天ノ村雲ノ剣はかすりでもすれば機械以外の相手を50%の確率で即死させる)
しかし今季はクラウザーさんのせいもあるのかsenkaやレイ○被害者多いなおい


362 : 名無しさん :2017/09/04(月) 23:39:53 5voh4I6k0
>>361
あとは剣が当たればね・・・>即死率50%

そりゃ知らない男に純潔奪われた挙げ句に殺されかけたところを助けられたら信用もしますわ


363 : 名無しさん :2017/09/09(土) 08:21:34 .RePkxZw0
10期のキャラ項目、図鑑を読んでるみたいでいつ読んでもおもしれー
何人で書いてるか知らないけど今度も期待


364 : 名無しさん :2017/09/13(水) 00:09:18 IJtpeI160
投下します


365 : 9月13日はカイザの日 Part5 :2017/09/13(水) 00:11:22 IJtpeI160

      `i}:::::::::::::::::::|                   _,. .ィ
       ,、:::::::::::::::l_                 /::/
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          `^i::::::', _             ∠_,r:::i´/
           ゞ:::::',ヽニ_ー-_-___--、    `  ^ ̄
            >ヘハ   .弋::ノ_>
            ノフ:::∧
         _,,..r::: ̄:::::::::::',               i
     _ ..':´:::::::::::::::::::::::::::::ヽ             l   ,
    /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\       ー-   ´  イ′   <今年もこの日が来たぞ!
  /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、  -、   __, ェt7 ´/   /
 ./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ  ヽ、   ̄  ./   /
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『邪魔なんだよ……カイザの日を祝わないものは全て!』

その頃、草加さん(今年も眼魂状態)は今年もまたカイザの日を祝おうとしていた。
……去年も一昨年も三年前も四年前も同じことを言っていたが、彼にとって大事なことなのだ。

『それで君が今年のカイザの日を祝ってくれるのかい? 鳥臭いのに』
「…………ああ」

草加さんとして、薄汚いオルフェノク臭がするバドは信少しばかり用できなかった。
しかし、彼の容姿が草加さんにちょっと似たイケメンだった(具体的に言うと草加さんが少し渋くなった感じだった)ので妥協した。
仕方なくだ、うん、仕方なくね。

『君は何故あんなところにいたのかなぁ?』
「それは……DMC狂信者を名乗る者達があまりにも不審な点が多すぎたから偵察をしにね」
『不審な点だと?』


「まず、彼らはクラウザーのライブも見ずになぜこんなところに集まっているのか?」
『確かにね、大阪でライブをしてたはずのクラウザーさんとやらのライブも見ずにこんなところに集まっているなんてね』

狂信者と言え、ファンなのだ。
それも莫大な情報網も確かにあるはずだ。
しかし、彼らはクラウザーさんのライブをスルーしてビッグサイトに拠点を置いた。

『でも、今の時代だったらライブビューイングだって……』
「いや、彼らは狂信者だ……彼らだったら……」
『チケットを殺してでも奪い取ってでも現地でライブを見るか』
「その通りだ、そして、五大幹部と呼ばれていた者たちは全員ビッグサイトに集まっていたらしい」
『そうか……じゃあそれ以上の存在がいたのでは?』
「そうなるとその存在もクラウザーさんを見殺しにしたことになるだろ?」

お気づきであろうか?
五大幹部の誰一人として、クラウザーさんのライブを見に行っていないのだ。

この時点でDMCのファン失格なのだ。

それなのに彼らはDMC狂信者を名乗っている。おこがましいにもほどがある。
例え見に行ってたとしても、それはクラウザーさんを見殺しにしているのと同義だ。


366 : 9月13日はカイザの日 Part5 :2017/09/13(水) 00:12:49 IJtpeI160

「それとクラウザーさんの名前を呼ばれていないのに狂信者達は全員死んだと思っている。
 しかも、『クラウザーさんの死』が最初から分かっていたかように蘇生の方法を知っていた」
『それは確かにあるな』
「それにクラウザーさんの本名はファンは知らないはずなのに彼らは知っているようだ。
 なんせ今までの放送でクラウザーさんの名前を呼ばれていないのにな。
 しかも、それは芸能界でも知ってる人間は少ないらしい……おかしいと思わないか?」
『確かに』

放送で名前を呼ばれたのは「根岸崇一」である。
クラウザーさんの本名を知っているファン……そんなものは存在しない。存在してはならない。
というより、存在してしまうとデトロイト・メタル・シティの物語が破綻してしまう。
多分そういうことが面白いマンガだと思われる。

だが、DMC狂信者はまるで『ヨハネ・クラウザー二世=根岸崇一』と知っているような動きをしている。

これは明らかに……頭おかしい(本来の意味)のである。
つまり、

・大阪のライブにも行かずに遠く離れた東京ビッグサイトに引き籠ってる。
・クラウザーさんのために人を殺す連中なのにその上層幹部の誰一人ライブに行かない。
・クラウザーさんの名前も呼ばれていないの、まるで死んだかのように扱っている。
・もしクラウザーさんの本名を知っていた場合、それはファンではない。
・自分たちの命が惜しくないと言いつつも、積極的に死なないように戦力を増強している。

軽く求めるとこんな感じである。
只の頭おかしい集団だったら問題はなかった。
しかし、彼らは集団(群れ)を作った。作ってしまった。

群れの統率者は頭おかしいならば、すでに瓦解する。
だが、彼らは未だに統率が取れている。

本当は頭おかしいわけではないのかもしれない。

そして、彼らが崇拝しているのはクラウザーさんである。
だからこそ、クラウザーさんこそが『絶対』なのである。
そんな彼らがその『絶対』の本当にファンなのかもどうかも怪しい幹部連中に素直に従っている。


『頭おかしい(誉め言葉)』は決して『何をしても良い』と許されるという免罪符ではない。


もしかすると彼らは『クラウザーさん=根岸崇一』の蘇生などはなっから考えていないのかもしれない。
最初から別の目的があり、都合の良いDMC狂信者の名を借り動いているのではないのだろうか?

『ここから考えるられるのは恐らく裏にいるのは……』


――乾巧って奴なんだ。ほぼそう考えて間違いない、と。


言おうとした時であった。


367 : 9月13日はカイザの日 Part5 :2017/09/13(水) 00:13:40 IJtpeI160

「おっと、着いたようだ」
『ここは……?』

ここは今年のカイザの日の会場、都内某所のIT企業『ウエムラ』。
その社長のウエムラがカイザの日を祝ってくれるらしいのでそこに赴くことになった。

「俺としては、DMC狂信者の実態よりも大和たちが守ったこの世界の『繋がり』を守る方が大事だと思うがな」

バドはこれ以上、DMC狂信者関連に深入りはしない。
ここから先は他の対主催に任せる。
そのための情報は既に全世界に流した。

きっと誰かにこの情報は届くはずだ。

しかし、何故、バドがそんなことをしたのか?
それは今日は一年に一度しかないカイザの日だからだ。
当然である。

決して、誕生日などではない。
『カイザの日』は『カイザの日』なのである。

『それでなんで俺が必要なのかな?』
「それは君がこの世界との繋がりが強かったからな」
『……へぇ、意味がわからないな』

そんな会話をしつつも会場に赴く二人(一人は眼魂)。
そして、ついについたパーティ会場。
大きな扉の前には『カイザの日 おめでとう!!』とデカデカと書かれていた。
これには眼魂の草加さんはご満悦だった。
身体はなくてもご満悦。
もっとも身体があったら、この会場に真理を呼んだだろう。
乾くんは絶対に呼ばないよ、当たり前だろ?
一方のバドさんも少しご満悦顔だった。
彼がご満悦な理由はよくわからないが、まあそういうことなのだろう。
きっとカイザの日関連の人物なんだろうね。

だが…………

「シザァァァァァッ!!!」

何やら妙な掛け声と共に扉がぶち破られた。
ぶち破ってきたのは今回のカイザの日を祝おうとしていたIT社長のウエムラ社長。
もう既に息がない。

さらに扉の先にさっきまで命だったものがあたり一面に転がっていた。

【IT社長・ウエムラ@仮面ライダーカブト 死亡】
【勇魚洋@ウルトラマンメビウス 死亡】
【中条有次@キューティーハニー THE LIVE 死亡】
【カイゼル@ジュエルペット きら☆デコッ! 死亡】
【ボクスター@レディ ジュエルペット 死亡】


368 : 9月13日はカイザの日 Part5 :2017/09/13(水) 00:14:17 IJtpeI160

「一体、誰が……?」
『わからないのかなぁ? どうみてもあの悪のザリガニの仕業だろ』

バドの前には全長1mほどのザリガニがいた。
ならずものポケモン・シザリガーである。
みず・あくタイプが示す通り、悪いポケモンである。
上記の死者は全てシザリガーのクラブハンマーでやられた。
その結果シザリガーのPPは全部切れた。

「悪のザリガニだと!?」
『いや、ザリガニ自体は悪くない、それは君もわかってるだろ?』
「それは分かっている!」

ポケモンならばトレーナーがいるはずだ。
きっとこの近くに……。

「本能覚醒!」

王者の資格が変化したジュウオウチェンジャーファイナルに『9・1・3』と入力はしない。
バドは普通に変身した。
その変身したオレンジ色の戦士……その名は!

「天空の王者! ジュウオウバード!!」

変身すれば視力が覚醒する。
まさに『鷹の眼』である。

「そこか!!」

剣が鞭のようにしなる。
その伸びた刀身がそのそのポケモントレーナーを捉えた。

「お、お前は……」
『ま、まさか……』

「君たちの力、試してやろう」
「シザァァァァァッ!!!」


カイザの日は終わらない。


369 : 9月13日はカイザの日 Part5 :2017/09/13(水) 00:14:56 IJtpeI160

【二日目・14時09分13秒/東京】
【バド@動物戦隊ジュウオウジャー】
【状態】健康、ジュウオウバードに変身中
【装備】ジュウオウチェンジャーファイナル、草加雅人眼魂
【道具】支給品一式、大量のザリガニ、ゴーストドライバー
【思考】
基本:この世界の「繋がり」を守る
0:邪魔なんだよ。俺の邪魔をする奴はすべて……

【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】草加市の市長に当選した、草加雅人眼魂
【装備】カイザギア@仮面ライダー555、サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】ケーキ、支給品一式
【思考】
基本:生き返る方法を探す
0:どうして俺が死んで、碌に出番もない奴らが生きてるのかなぁ?
1:とりあえず、乾巧の仕業にする
2:来年のカイザの日も祝いたい
※眼魂(アイコン)に魂を封じられています。ドライバーがあればあるいは……
※生き返れるタイムリミットは(作中時間で)残り99日です。

【仮面ライダーカイザ@仮面ライダーディケイド】
【状態】健康
【装備】カイザギア@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、大量のザリガニ
【思考】
基本:邪魔なんだよ。俺の邪魔をする奴はすべて……
1:シザリガーと組んでマーダーする。
※物語上面倒なので別にどこの組織にも属していません。

【シザリガー@ポケットモンスターシリーズ】
【状態】全ての技のPPを使い切った、残りHP91.3%
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
基本:シザァァァァァッ!!!
1:仮面ライダーカイザと組んでマーダーする。
※物語上面倒なので別にどこの組織にも属していません。


370 : 名無しさん :2017/09/13(水) 00:15:30 IJtpeI160
投下終了です


371 : 名無しさん :2017/09/13(水) 08:35:49 v4YjslgQ0
投下乙ー
あと、重箱の隅をつつくわけじゃないがちょいとバドの言葉についてツッコミ

・大阪のライブにも行かずに遠く離れた東京ビッグサイトに引き籠ってる。
→狂信者がビッグサイトを占拠したのはクラウザーさんの死後
・クラウザーさんのために人を殺す連中なのにその上層幹部の誰一人ライブに行かない。
→単に距離がありすぎて間に合わなかったのでは? その時点では狂信者じゃないし
・クラウザーさんの名前も呼ばれていないの、まるで死んだかのように扱っている。
・もしクラウザーさんの本名を知っていた場合、それはファンではない。
→ライブ映像は定時放送とは別にテレビで放送されている(?)のでそこで知ったのでは?
 本名を知らなくてもクラウザーさんが殺される瞬間はテレビで目撃している
・自分たちの命が惜しくないと言いつつも、積極的に死なないように戦力を増強している。
→他の組織が一騎当千の実力を持っている上に全滅すると目的が達成できない

まあこの辺はバドの思い違いだろうけど
個人的には草加にまつわる謎が気になる
というか機会があれば続きを書きたい


372 : 名無しさん :2017/09/13(水) 14:21:53 AN61iD7k0
DMC狂信者はクラウザーさんの本名は『ヨハネ・クラウザーⅡ世』だと信じてるよ。
だから、本名は根岸だといきなり言われても「は?」ってなるよ。
それと本当にファンなら遠くだろうが、生ライブは見に行くものなんじゃね?


373 : 名無しさん :2017/09/13(水) 15:48:45 v4YjslgQ0
いや、そうじゃなくて
本名を知らず定時放送なんて聞かずとも死んだ時の映像を見りゃクラウザーさんが死んだ事はわかるべ
各地で殺し合いが起きているのに、いきなり始まっていきなり死んで終わった生ライブにどうやって間に合わせるのか
むしろビッグサイトに集まった連中はクラウザーさんをお守りする連中だったハズが、大阪に向かう直前にクラウザーさんが死んじゃったので狂信者化したのでは
と妄想してみる


374 : 名無しさん :2017/09/13(水) 16:57:51 dIQoNL4c0
ロワ中のクラウザーさんのライブは響を取り込んだ告知無しのゲリラライブだったんだから、いくら熱狂的なファンでも急遽長距離を移動して聴きにいくのは不可能だろ
あの人原作開幕からして路上のDMCファンのギターぶんどって、俺が手本を見せてやるとその場で生演奏するような人だったし
まあ細かいことは後続の書き手に任せたらいい


375 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:40:29 95fheLY60
「よ、い、しょおおおおぉぉぉぉぉぉぉッ!」

倒壊した神樹を、レストが強引に担ぎ上げる。

「ありがとよ、っと」
「助かりましたわ、レストさん」

その瞬間、挟まれていた日之影とアルルーナは素早く脱出。

「オーライ、オーライ、よしそこで止まって。
 うっわ、ごっそりやられてんねー……まあ回復はこのさやかちゃんにお任せあれってね!」
「さやかちゃん、私も手伝うからね」

そして損傷した位置をあわせ、そこにまどかとさやかの回復魔法が施される。
流石に即全快とはいかない。世界樹を庇う形であのベジータの攻撃をまともに受けたのだから当然だ。
さて断面をあわせ治療を続けるためには担ぎ役も回復役も身動きがとれなくなる。

「折角倒れた怪物がもう治療されているだとぉ!?」
「やらせるな! ドリスコルさんのためにも今が攻めるチャンスだ! 奴らをまとめてSATSUGAIせよ!」

当然、都庁を包囲していたDMC狂信者はそれを許すはずもない。
万が一神樹が復活した場合、彼の巨体から繰り出される全体攻撃を耐えられる者はモブ狂信者の中にはいないのだから。

「SATSUG――ほげぇ!?」

だが彼らは叫ぶ前に消し飛んでいく。
上空から降り注ぐのは魔王ダオスの極技。まずはこれを突破できないことには狂信者は都庁には近寄れない。
まどか達もこの支援攻撃があるからこそ、治療に集中できるのである。

「う、うぅ……」

そして僅か数刻で、神樹の意識は戻った。

「ちくしょおおおおおぉぉぉぉぉぉ! なんてザマだよ俺ぇぇぇぇぇぇぇぇ!
 不甲斐なくて不甲斐なくて……思わず 深 緑 の 聖 棺 が も れ ちゃ う ぅ ぅ ぅ ぅ ! ! 」

そのまま彼は八つ当たり気味に必殺攻撃をぶっ放し、目の前に群れていた狂信者を公園もろとも消し飛ばした。

まただよ(笑)ちゃんと修復してね……(byメガボスゴドラ)

そんな幻聴が聞こえたとかなんとか。
都庁に集まった参加者はどれだけ消耗しようとも、生き延びているのは特に猛者達なのだ。
神樹も復活し、こうして都庁は再び万全に安全な地域に戻った。

……そんなわきゃない。

彼らは知らない。知っていても今までそれどころではなかった。
しかし狂信者よりも遥かにやばい『爆弾』が投下されるのは、このすぐ後のこと。

「ありがとうございます皆さん。ところで知ってましたか? もうすぐ世界が滅ぶそうで。驚きですよね」
「「ゑッ!!??」」

それも、助けを求めてきた味方の黒子による投下である。






376 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:41:19 95fheLY60
その後、地下より帰還した小町達も合流。
ベジータとマーラ様、カオスロワにおいても超理不尽級の強者との地下死闘は甚大な被害をもたらし、影薄達は遠方でも友人達を殺された。
身も心もボロボロで誰もが休みたい状況であり、また休んでも誰も文句は言わなかっただろう。

「お姉さまぁ! ご無事なようでご無事じゃないいぃぃぃ!」
「エリカさん凄いね……あたしと違って痛覚遮断できないのに、よく生身でここまで無茶できるよ」
「私は、直接戦闘はできません。ポケモンや皆さんが負う傷に比べれば、この程度の怪我は耐えてみせますわ」

「小町さん、よく一人であの力の持ち主倒せましたね……」
「いやぁ、はっきり言ってあんた以上の化物であたいも今度こそ死んだかと思ったよ。
 まあ倒せたのはあたいだけの力じゃない。この桑原や、殺されちまったけどその仲間達のおかげさ」
「桑原和真だ。まずは俺の回復と首輪解除、仲間達をちゃんと弔ってくれたことに礼を言わせてくれ」

都庁を目指していたなのは組と呼ばれるチームにおいて、無事にここまでたどり着けたのはエリカと桑原の僅か二人だけ。
それさえも重傷であったためすぐさまさやかが治療を行い、ようやく一息がつける状態になったかと思えばそうもいかない。
黒子の投下した『未来の大災害』の情報は、元々はこのなのは組が持っていた情報なのだから。

「とりあえず、さやかちゃん的にはその未来の話の詳細教えて欲しいんだけど!?」
「まあ落ち着きなって。あたいらが閉じ込められてる最中に、そっちも何があったか教えてくれないかね?」

そして『未来の大災害』だけではない。都庁を守り続けた者達もまた、色々な物を抱え込んでいる。
龍脈の龍や狂信者との死闘に雷竜の死。
マーラ様の顕現、それによる多くの仲間の凌辱死。
悲しきすれ違いにより手を取り合うことができなかった主任組と警察組の存在。
そしてドラゴンハートを解禁し、聖帝軍なる信用できる一団を救うために飛び立った魔物の長と仲間達。

ここに集まり、生き延びてきた者達は皆が多くのものを抱えつつもそれを乗り越えてきた。

語られる情報に、聖帝の存在以外はプラスなものなどありはしない。

止まらない死の連鎖。死神ながら仲間の命を守ろうとする小町の願いは未だ叶わない。

狂信者よりもさらに恐ろしい滅びの未来、二度目の大災害。

誰もが休みたいと願いつつも、休んでいる場合でもないことを理解している。

きっとこれからも、犠牲者は出てしまうのだろう。

それでも全員が覚悟を決めていた。この中ではもっとも一般人かつ子供なあかりすら決意した表情なのだから。

やがて影薄組、なのは組、都庁の軍勢、魔法少女組の生き残り達はそれぞれが口を開き、耳を傾けた。






377 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:42:11 95fheLY60
「……簡潔に、状況をまとめるわ」

都庁入り口に近い一室で、一同は集まっていた。
片隅に廃棄処分予定で転がされていたホワイトボードを持ち出し、ほむらがペンを握る。

「ちょっと待って、あたし頭パンクしそう」
「ならしばらく黙りなさいさやか。未曾有の存在を相手にする時は、全体の統計をとってしっかり対策すべきなの。
 そして統計すらできないなら、とにかく今ある情報を纏めるしかない。安心しなさい、私を含めて多分ここの全員が情報処理しきれてないわ」

語られた多くの情報は、とても一瞬で処理したり流せるものではなかった。
仲間達の死をもう少し悼みたいところだが、やはり大災害の未来は無視できない。
桑原もなのは達が気がかりではあったが、ようやく辿りついた共に未来を変えてくれるかもしれない人間達を前に私情を持ち出すことはなかった。

ちなみにこの一室が使われているのは、万が一の際すぐに外に飛び出せるようにするためである。
狂信者がきがかりではあったが

「ちょっと初心にかえってちゃんとレベリングする」

という神樹の意思も尊重し、彼と頂上のダオスに任せることとなった。
すぐに救援には向かえるし、ドラゴンハートの恩恵で限界突破した神樹は確かに狂信者を一定数始末するたびにレベルアップ音が鳴っている。
これならば残ったメンバーは落ち着いて情報を整理できるだろう。

「とりあえずまずは、この時間軸この世界。
 過去に大災害があって日本以外は全滅。現在においてこの悪夢のような殺し合い。そして……未来における滅びの大災害」
「なのはの話じゃ、見れる未来の内容は本当に近いうちに起きる未来のことらしい。勿論変えられるわけだが……
 くそ、だがユーノが掘られる未来がどうしてあんなことに……!」

大災害の未来は変えられるという桑原だが、未来を変えてしまった結果仲間達があんなことになってしまった苦い経験をしたばかりだ。
そんな桑原の言葉に、レストがぴくりと反応を示した。

「なるほど、そういうことか。多分、そのユーノという子は謎の物質に相当蝕まれていたんだろうね」
「ど、どういう意味だ? 確かに神樹も瘴気だなんだとか言ってはいたが」
「あ、前にあかり達で話してたやつだね。空気中や飲み水にも含まれる、人を作り替えちゃう怖い物質だよ……」
「結局僕らはまだ正体はつかめていませんが、ここ世界樹及びまどかさんが懐かせたフォレスト・セルなら浄化可能なのは確かですよ」
「まじかよ!? だがちょっと待て、それと掘られるのに関係性が見えてこねぇんだが」
「その一番確実かつ最速の治療法があいつにお尻を「ねえ、やっぱりお尻は気持ちいいの?」「まどか、それは嘘なのよ!?」あーもう……」

途中で発言を遮られたが、桑原は全てを察した。
都庁の者が嘘をつく理由はない。つくにしてももう少しまともな嘘を考えるだろう。
つまりあの時なのはが見た未来は『珍しくいい未来』であり、何も知らなっかった自分達がそれを勘違いした結果『最悪の未来』となってしまったのだ。

(だがそんなんわかるわきゃねぇだろうが!?)

だが桑原はたまらず心の中で叫ぶ。
流石にこの件に関しては桑原もなのはも、誰も悪くないだろう。

「こほん、私も理解しましたわ。ユーノさんは主催者が撒いた『何かの』せいで、あのような姿になってしまった。
 ですがあの時のユーノさんはなのはさんだけは識別していて、彼女を守るように去って行った。つまりはまだユーノさんの意思は残っている。
 そしてその口ぶりからしてレストさん、あなたも同じ症状を患いながらもこうして無事でいる。それはユーノさんにも可能性が残っているということでは?」
「ご名答。僕の経験上、あの混沌の力は戦闘を重ねる度に進行が進んでいた。
 僕と同じように感染したことに気がついて、一番優先される思考がそのなのはって子を守ることなら無駄な戦いもしないだろう。
 それなら完全に手遅れになるまでにしばらく時間の猶予はあるはずだ。ユーノを見つけて事情を説明さえすれば、十分戻ってこられると思うよ」
「そうですか、ありがとうございます。やりましたわね、桑原さん」
「お、おう!(でも結局尻は犠牲になっちまうんだな……)」
「可能性があるとわかっただけでも大分気が楽ですわ。そうなるとやはり、今はこの未来の大災害への対策を少しでも考えるべきです」

ユーノが元に戻れる可能性を聞き、なのは組の二人は僅かに表情を和らげるがすぐに引き締まったものへと戻る。
いくらユーノを救えようとも、大災害の未来までの猶予は下手をするとそれ以上に短いのだ。


378 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:42:57 95fheLY60
「しかし対策って言ってもどうすりゃいいんだ。悪いが俺は影が薄いのとちょっと腕っぷしが強いぐらいしか取り柄が無いぞ?」
「そもそも自然災害に人が真正面からぶつかって勝てるわけがないですよ」
「あ、小町さんの力で災害の距離を操ってどこかに飛ばしてもらうとかどうかな?」
「あかり、あたいを殺す気かい? しかし実際問題、大災害はこれまでの敵と違って絶対に倒すことができない相手だ。
 あたいにゃ無理だが、なんとかかわすか耐えきるかの二択しかないんじゃないか?」

実体も意思も持たない大災害は、当然倒すことなど不可能。
生ける災害のようなベジータの方が、あれでも数段マシなのだ。この世に突然降りかかる災害よりも怖いものは存在せず、どんな強者も勝てはしない。

「ほむら、あんたの能力でみんなまとめて安全な時空に飛んだりとかは?」
「愚かね。私の魔法少女としての強さはそれほどでもないのは前に教えたでしょ。フォレスト・セルに浄化させ続けてもそんな魔法は使えないわ。
 そもそも何故か、今は過去や未来への時空干渉ができなくなっているとダオスも言っていたから、彼に頼るのも無理よ」
「逃げ出すのは無理と。なら耐える、まどかやフォレスト・セルのパワーで地球全体に結界みたいなものを張るとかどうよ!?」
「さやかちゃん、無茶言わないでよ! 仮に結界を張れても守れるのは世界樹周辺が限度だろうし、他の場所が災害で滅んじゃ意味がないよ」
「うへぇー……ちょっとちょっと、突然未来が滅びるとか言われて、いざ考えてみても対策思いつかないってシャレになってないんじゃない?」

さやかがつとめて明るく振舞い周りを眺めるが、誰しもが押し黙ってしまう。
世界樹の巫女たるまどかの結界でだめならば、他の魔物の力でも駄目だろう。
時を駆ける少女と魔王すら時を駆けられないのでは、時空魔法での逃走もできない。

『待て、過去と未来が無理でも現在での逃走ならばどうだ? 要はこの星の外、宇宙に飛び出てしまうのだ。
 もともと我らドラゴンを率いる真竜は宇宙の旅団であり、多くの文明が芽生えた星を見てきた。
 かつての災害は宇宙にも及んだというが全ての星が滅びたわけじゃないだろう。大災害が終わるまでそちらに避難するのだ』
「んんwwwwwwお前らみたいな外来ドラゴンと古龍を一緒にしないでほしいんですぞwwwwww
 そんなおふざけ飛行できそうな奴なんてバルファルクくらいしか思いつかないし、多分そいつでも宇宙空間まで飛び出たら死にますぞwwwww」
「あ、でも宇宙船とかなら?」
「なるほど、九州をロボにするような技術があるんだ。巨大な宇宙船を短時間で作る技術も……」

ウォークライの言葉により、宇宙への逃走の可能性が示される。
確かにこちらも難題が山積みではあるが、この星の大災害から逃れるという観点からすれば一番理にかなっている。
若干名がそちらの路線で話を続けようとするが、


「あー……みんなごめん、ちょっと話の腰を折るかたちになっちゃうけどいいかな?」


弱弱しく、レストが手を挙げた。

『どうした主? 確かに宇宙船とかは機械仕掛けで主やダオスは嫌うかもしれないが』
「そういう次元の話じゃないんだ。真面目な話で、でもまだ僕の推測の域はでていない。
 そんな不確実なものだけど、万が一この推測が当たっていた場合は宇宙に逃げるのも無理なんだよ」
「はぁ!? 宇宙ですら駄目ってどういうことよ!?」
「だから落ち着きなさいさやか。その様子からするに、そうは言ってもその推測は結構根拠のある推測なのでしょう?
 正直宇宙脱出計画もなかなか無理があるし、よければ話してもらえるかしら?」
「わかった。ただ、ちょっと長くなるし、結論に辿りつくまで遠回りすることになるよ?
 これには、主催者の用意した首輪や謎の物質のことも絡んでくるからね……」

誰もが思わず言葉を失い、何名かは喉をならす。
空気でわかる。これから語られるのは、絶対にいい話ではない。
だが、それがわかっていながらも全員がその話に耳を傾けた。






379 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:43:27 95fheLY60
「ほむらの言葉通り、情報の整理は必要だ。だから順を追って話すね。
 とりあえず、まずは主催者の用意した首輪からだ。もうみんなの首輪は僕が外したけど、これをみんなはどう考える?」
「どうって……主催者に刃向う奴を拘束し、力も制御するためのものなんじゃないのか?」
「盗聴器もついていましたからね。よからぬ考えの人を粛清、あるいは監視するためのものなのは間違いないのでは?」
「うん、多分それで間違ってはいないね」

仲間達の解答にマルを出すレスト。

「そんなんさやかちゃんにだってわかるっての!」
「へえ? じゃあ、首輪を外した今の君は?」
「そりゃ邪魔なものがなくなったんだし、もう主催者からも邪魔されない本来の強さを持ったスーパーさやかちゃんに決まって……」


「僕は、みんなの首輪を『確かに外した』んだよ? そして外したにもかかわらず『殺されたみんなの名前は放送で呼ばれた』んだ」
「……へ?」

さやかの間の抜けた声が響くが、一気に周りはざわめいた。
今まで死闘続きで気にする余裕もなかったが、言われてみれば確かにその通りなのだ。
首輪を外したにも関わらず、放送で名前を呼ばれる。つまりは主催者側に生死の判断が未だにわかっていることになる。
偵察機などで確認しているという線は薄いだろう。何しろ犠牲者の多くは世界樹の地下で死んでいるのだ。
膨大な情報を誇るカオスロワちゃんねるにも情報がろくに挙がらない世界樹のそれも地下ともなれば、外に漏れるわけがない。

「ここから僕の推測になるけど、この件に関しては多分さっき言った謎の物質が原因だろう。というよりも他に考えようもない。
 首輪と同じように全参加者にまとわりついて、かつ首輪と違って完全に取り除ききれないとなるともうこれしかないよ」
「まさかその物質に識別番号でもついてるってのか? 冗談じゃないぜ……」
「そうだとすると、濃度の差とかも確認されている可能性がありますわ」
「てっことはあれかい、主催者はその物質で殺し合いを促進させつつ、化け物になりそうな奴や他の参加者の生死の情報を管理して、
 さらに首輪をつけてより正確な位置や音声を確認してた……つまるところ二重の監視ってところかい?」
「そうなるね。とんでもなくいやらしい連中だよ。でも今はこれはさほど重要じゃないし、今は対処のしようもない。
 首輪を外したら力が戻ったのは事実だし、この会話も聞かれていないだろう。
 とにかくここで覚えておいて欲しいのは、この物質は『参加者の変化と管理目的』で『首輪のような強力な制限能力はない』っていうことだ」

一同が頷くと、一呼吸おいて話は続けられた。

「これを踏まえた上で、次はちょっと僕らの扱う禁術を紹介しよう」
「え、あんたの術とか別に興味「黙ってさやか」しょぼーん……」

少し距離をとり、レストが術の詠唱をすると、大きな力が発現する。
見た目にこそ変化はないが、力の流れが変化したというべきか。

「禁術、ドラグキャリバー。龍殺しの力を術者に付与させる魔法だ。これなら小学校低学年の子でも太古の神竜をボコボコにできる」
『主やめてください死んでしまいます』
「我、この戦いを生き延びたら女の子をどんどんアへ顔ダブルピースにするんだ、ですぞ……」
「やばいやばい、オオナズチの顔がとても放送できないもんになってる!」

すぐさま術は解除されたが、ドラゴンへの影響は甚大なようだ。
オオナズチの表情を見る限り、禁術なのも納得である。

「次、禁術エーテルリンク。これはまどかには何回か見せているというか、今も使っちゃている術だね。
 部分的な変化はあの物質に侵された時の名残だけど、要は自分以外の誰かや何かと融合して力を高めたり……大切なモノを守るための術だ」

撫でられた角の形を見た一部の者の表情が僅かに暗くなる。
黒子やあかりなどは、生前彼女が撫でられて尻尾を揺らしていた光景を思い出す。
どのような最期であったのかは……何故か聞かない方がいい気がした。それはきっと、その光景を見てしまった者の心の傷を抉るのだから。


380 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:44:17 95fheLY60
「見ての通りだ。禁術といえど、今の僕にはしっかりと使えている。
 それじゃあ最後の禁術。……ゲートリジェクトッ!」

その術が唱えられた瞬間、みしりと空間が歪む。
膨大な魔力が、強引に何かをこじ開け別の道を形成しようとしている。

「っ、この人間界と魔界の境界を繋ぐのに似た感じ、次元干渉系の術か!?」
「その、通り! この世界と、…………こことは違う、普通の人間には絶対に行けない世界とを繋ぐ魔法さ……!」
「す、すごいじゃん! それじゃあその魔法でみんな移動すれば!」

だがその時、異変は起きた。

「ぐっ……!」
「な、なんだこりゃ!?」

開かれた筈の道が、滅茶苦茶に歪み始めたのである。
術者が行っているわけではない。外部の何かが邪魔をしているのだ。
レストの技術が未熟なのではなく、彼の力を遥かに上回る『強大な力』が確かにそこに存在している。

「っ……っ!!」

そして開かれた門はひしゃげ潰れ弾け飛び、術者であるレストはそれに巻き込まれて大きく叩きつけられる。

「レストさん! そんな、酷い……エタニティツリー!」

慌ててまどかが駆け寄るが、彼の手を見て絶句し、即座に回復を施す。
門の生成をしていた両手は、暴発の寸前に引き抜いたにもかかわらず全ての指がぐしゃぐしゃに潰れてあらぬ方向へと曲がっていたのだ。

「いてて、ありがとうまどか。まあ……ご覧の通りさ。別世界へ道を繋ごうとすると、空間を捻じ曲げられて押し潰される。
 僕程度の力じゃ、あの力には到底敵わない。それこそ無数の命の力やこの星の力そのものを消費でもしない限り……別世界への道は開けない」

実はマーラ様との死闘が終わった直後、レストはまどかには内緒で既にこの禁術を使っていた。
今の説明の際には伏せたが、これは死後の世界にも向かえる術。失ったサクヤを取り戻せないかと密かに試し、失敗していたのだ。
ドラゴンハートの力で更にレベルが上がった今、駄目元で再度使用したが結果は数秒持ち堪える時間が伸びた程度。
結論として、どれほど優れた高レベルの術者であっても単独では世界を跨ぐような術は現環境下では使えないということになる。

「ちょっと待ってくださる? おかしいですわ、レストさんは他の禁術は問題なく使えていましたのに……
 首輪も外れて、謎の物質も能力制限の力は無くて、それなのに今の光景は明らかに大きな力で妨害されていましたわ。
 世界樹という大いなる加護のあるこの地なのに、それさえも意に介さない。まるで……そう、世界そのものに拒絶されたような……」

「そう、そしてこの力はさっきの謎の物質とはまた違う。というより、この力は主催者とは関係ないだろう。
 もしこの力を自在に操れるなら、外される危険性や莫大なコストがかかる首輪なんて作らなくてもいつでも誰でもを潰せるだろうからね」
「なるほど。しかしそうなると今の力は……」
「これに関しては思い当たる節があるよ。ブリーフ博士達が教えてくれた『TC』という存在だ」


381 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:45:04 95fheLY60
「ああ、パソコンに記録されてたけどあの時はよくわからないからって、主催陣営の名簿の確認を優先したんだっけ」
「ちょっと待ってくれ、俺とエリカはそれは知らないぞ?」

未来の大災害を知るなのは組も、謎の物質の詳細や『TC』までは把握していない。
この情報は、狸組が主催の本拠地から命がけで持ち帰ったものだ。
謎の物質は影薄組と混沌の騎士がもたらし、都庁にて考察されたもの。
今ここに対主催の持ち寄った重要な情報が集まり、未来の謎が解き明かされていくこととなる。

「とりあえず『TC』はブリーフ博士も知らない未知の物質らしいけど、それの計測値は宇宙が最大値でこの日本が最低値だった。
『謎の物質』は主催者が最近作り出した人工物。だからフォレスト・セル達には異物として感知されて警戒もできた。
 対して『TC』は宇宙から降り注ぐ未知の物質。多分昔から存在はしていたんだろう。だからフォレスト・セル達にも異物として感知されない」
「……あまりその先を聞きたくないわね」

重要そうな言葉をまとめて、ほむらがホワイトボートに書き連ねていく。
だがその冷静な表情とは裏腹に汗が止まらない様子だ。

「『TC』の多い地域が大災害の被害に遭い、最低値の日本だけは無事だった。だけど最低値とはいえ日本も少なからず影響は受けていたんだ」
「あー、待っとくれ。もしかしなくてもその少ない影響ってのが、あの馬鹿げた圧力かい?
 さっきの様子やほむらやダオスの話をあわせりゃ、『TC』は時空間を捻じ曲げて潰すエネルギーってことになるよ」
「少ない影響でそれだからね。より強い影響がどんなものになるかなんて考えたくもないよ。
 映像を見る限りでは高い『TC』の地域は大災害で沈んでいた。これが一般的な天変地異じゃないとなると、その地域は『TC』に空間ごと潰されたことになる」



「つまり、迫っている未来の大災害は……
 少なくとも時空間を容易く捻じ曲げるだけの威力を持ち。探知能力に優れた魔物にもわからない不可視の存在で。
 この星全体に宇宙から一斉に降り注ぐ『TC』による防御も回避も不能な宇宙規模の災いってことになるんじゃないかな。
 しかも近未来予知ともなると、数時間後からよくて1日程度で現実になる可能性がある。こんなのお手上げだよ……」



「―――ッ!?」

誰もが、言葉を失う。
外した首輪、危険性はあるが少なくとも弱体化効果はない謎の物質。
ドラゴンハートで限界突破した最高レベルの術士の、全力の禁術をも文字通り一瞬で捻り潰す力。
目の当たりにしたその力さえ、言ってしまえば過去の大災害の名残、搾りカス。
それを遥かに上回るであろう力が、遥か宇宙から等しく降り注ぎ、それは視ることも感じることもできない。
一口に大災害と言っても、それは間違いなく人類史上類をみない災いの極地。



「一大事ですね」



「「なんでここまできてもそんな冷静なの!?」」

思わず素直な感想を漏らした黒子は、その場全ての者から総ツッコミを受けた。






382 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:45:37 95fheLY60
「すっごい鋼メンタル……」
「もし魔法少女になっても絶対ソウルジェム濁んないでしょこの子……」
「はははは、顔の皮引っぺがされても感想が痛いだったしなぁ。
 だが、いつも変わらないその冷静さは俺達もちっとは見習うべきだな。おかげで少しは楽になったぜ」
「そうだね、多分この未来の大災害を知ってるのはあかり達だけだもん。時間がないなら、なおさら主人公がしっかりしないと!」

黒子の言葉で僅かに空気は弛緩し、仲間達は元気づけられる。
しかし問題は何も解決していないし、その問題はあまりにも強大である。

「とはいえどうすれば……」
「とりあえず信頼できる人にはどんどんこのことを伝えた方がいいんじゃないかな? やっぱり人が多い方が色々なことができるし」
「ダオスさん達にも後で急いで伝令をいれよう。あとは何故かさっきからずっとぐったりノビてるモモにも」
「あー、ちょいとこの子色々あってね。あたいが結構急いで叩いちゃったからかな……」
(実はもう起きてはいるっすよ……)
「……こんなどうしようもない未来の話をして余計なショックにならないといいな。
 あと逆に考えられる対策は主催者陣営の幹部クラスを生け捕りにするとかかな。元々この情報は主催者が持っていたんだし」
「そうね、高度な技術力や優秀な人員も数多くいる彼らなら、今ある情報以上に詳しいことがわかるかもしれないわ」

どう足掻いても、ここにいる参加者だけでは解決不能。
それならば後はさらに仲間を増やすか、何かしらは知っているであろう主催者側の高位の存在を尋問するしかないだろう。
だがここにきて、更なる疑問が生まれる。

「だがよ、主催者達は何が目的でこんなクソみたいな殺し合いを開いたんだ?
 よくよく考えりゃ、なのはの未来予知アイテムも支給品だ。つまり主催者が先にあれで未来の破滅も見ていたかもしれねえってことじゃねえか。
 正直まだ想像もできない大災害が迫ってるってのに、こんなことをするメリットがねえ」
「ああ、桑原とエリカはまだ知らないのか。さっきレストが言ってた『謎の物質』は取り込み過ぎた奴を化物に変える力がある。
 ユーノはまだその途中の状態、完全に化物になったのがあの『風鳴翼』ってことらしい」
『奴はいまや真竜の力さえ奪い、関西方面に致命的な打撃を与えている。報酬を餌に参加者をぶつけて更なる強化を図る……恐ろしい主催者共だ』
「ばら撒いた物質と放送の内容からして、この殺し合いの目的は人口削減じゃなくてその過程で生まれる化物とその強化なのはほぼ間違いないだろう。
 ただ、確かにこの目的と大災害とがどうしても繋がらないんだよね」
「私達の持っている情報が、まだ足りないのかな。多分あと少しのピースで完成しそうなんだけれど……」

傀儡主催者であった野田総理はともかく、幹部のダース・ベイダー達の目的は風鳴翼の強化。
しかしながら、大災害とは一切の結びつきを感じられないというのがこの場の誰もが感じることであった。
ただ単に人を殺め絶望する光景を眺めたいだけならば、少し待てばまさに絶望の象徴の大災害が起きるのだ。
面倒なものを作りばら撒き、候補者から完全な化物になるまで待ち、それに餌を与えて育てるなど手間でしかないだろう。

「ここまで来たのよ。そして時間もない。どこかで、この殺し合いの中で見落としている情報があるはずよ……」

集った者達は懸命に知恵を絞り、これまでを振り返る。
自分達だけではなく、この殺し合い全体をだ。

大災害、殺し合い、首輪、謎の物質、TC、滅びの未来。
主催者、風鳴翼、DMC狂信者、拳王連合、超人血盟軍、天魔王軍、マーラ様、都庁の軍勢。
影薄組、なのは組、魔法少女組、歌組、狸組、警察組、主任組、ホワイトベース組、聖帝軍。
出会い、別れ、和解、死闘、共闘、野球。

「おい、やっぱり野球だけ異様に目立ってないか?」

そしてふと、影の薄い英雄は自身と対極に位置する目立ちまくりなパワーワードに行きついた。


383 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:46:55 95fheLY60
「確かにそうですね日之影さん。これがバスケならわかるんですけど」
「あたいならサッカーを推すね」
「そういえば、こんな時なのに各地で野球してるチームがかなり多いみたいだよね」
「正義の味方の聖帝さん達も野球チームなんだっけ。あの最低最悪な拳王のところも野球チームらしいけど」

どうして野球なんだろう……
誰もが疑問に思うところである。
これが少ないチームだけならそのまま流せるのだが、言われてみれば確かに妙にチームが多い。

「それも普通の野球じゃありませんわ。クロスボンバーで対戦選手の首をもいでいたのですよ?」
「見た見た。酷かったよね……」
「そいつらの頭がおかしいだけじゃねえか? ルールも知らない馬鹿なんじゃないのか」
「間違ってはないかもですなwwwww実は我の知り合いのオシリスも『ドラゴンズ』という野球チーム作ったみたいですからなwwww
 ……そんな馬鹿なことしておきながら死んでしまったホルスは、本当に馬鹿なヤツですぞ、まったく。
 お前に負け越していた草を生やした数勝負、このままじゃいずれ我が追い抜いてしまうぞ……wwww」

オオナズチが僅かに声のトーンを落とすなか、一部の者は『ドラゴンズ』の存在が気になった。
この都庁を統べる三竜、叫帝ウォークライ、霞龍オオナズチ。
やれ熟女だロリだ巨根だ同人誌だと、かなり頭の悪い発言が目立った彼らではあるが決して愚かではない。
人を超える力や知識を持つ、多くの人間にとって恐怖と憧れの象徴たるドラゴン。
そんなドラゴンが集って、この殺し合いの中で人間の作った文化である野球をわざわざ始めるなど、違和感しか感じないだろう。

「どうしてそのドラゴンさん達は野球を始めたのかな?」
「オシリスのことですからなwwwwどうせロリにモテたいとかそんなですぞwwwwwww
 と言いたいところですが、あいつの性格上モテるには大ボス倒すとかで打倒主催に動くはずですぞ。確かに妙ですなwwwww
 よし、最近使ってなかったドラゴンネットワーク、久々に起動してみますかなwwwwww」
「「ドラゴンネットワーク?」」

まさかのここに来ての新ワード。
誰もが?を浮かべる中、オオナズチは笑いながらドラゴンネットワークの解説をする。

「んんwwww簡単に言えば、高位ドラゴン限定のネット掲示板が頭の中に常設されてると思えばいいんですぞwwwww
 まあ普通のネットと同じように、間違った情報も溢れているしwwwww大きな魔力とかで回線不安定もたまにありますしwwwww
 なによりエロ画像が貼れない致命的バグあるしでwwwwww緊急連絡がしやすい利点以外ははっきりいってスマホ使ったほうが早いんですぞwwww」
「ドラゴンがどうやってスマホ使うんだ?」
「意外と頑張れば行けますぞwwwwwタブレットならさらに確実wwwwww」
「自然界でも最高位のドラゴンが、現代社会にかぶれているなんて……」
「いや多分オオナズチとその仲間が特殊なんでしょこれ」
「まあとりあえずオシリスを煽って……。……。あの野郎wwwww我をアク禁にしやがってますぞwwwwww
 ネットワーク中毒者めwwwwww多分情報に踊らされて我らをマーダーと勘違いしてますなwwwwwふざけんなwwwwww」
「嘘ぉ!?」

しかしまさかのアク禁が判明した。
この時の彼らは知る由もないが、都庁の三竜もアク禁されていたりする。

「くっそwwwwwwこりゃ多分他のドラゴンズの面々からも拒否されてますなwwwwwww
 仕方がないwwwww誰でも自由に書き込めるフリーエリアでも覗いてみますかなwwwww」
「あ、そんなのもあるんだ」
「アク禁ないから無法地帯でもあるんですがなwwwwwここ見ると馬鹿になるってからって理由でネットワーク退会するドラゴンもいたりwwwww
 さてさて、うまくいい情報があればいいんですがなwwwww」





384 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:47:27 95fheLY60
→log

シャガル「なあ、そんなことより白ゴマ食べようぜ」
アカム「今日もマーラ様のフィギュアを輝かせる仕事が始まる」
ウカム「死ねガチホモ野郎。時代は百合に決まってる」
ダレン「んおおおおおぉぉぉぉぉんぶっとい撃龍槍欲しいよぉぉぉぉ!」
ミツネ「みんなのアイドルタマミツネちゃん参上☆」
ディノ「オカマは帰れ」
ボレアス「貴様ら……もう少し龍種としての誇りをもってだな……」
シャガル「そんなことより白ゴマ食べようぜ」
ゼクス「みんな聞いてくれ。リオレイアNTR成功したぜ」
クシャル「こりゃまたあのチキンが荒れそうな話題を」
シャガル「強く推奨!白ゴマ!」
アカム「マーラ様を崇めるんだ皆」
ブラキ「崇めるべきは自分の肉体だろ。今日も俺の拳が美しすぎてprprしちゃう」
シャガル「白ゴマ舐めようぜ」
グラビ「なあ、俺とティガの尻尾の断面どっちが美味しそうに見えるよ?」
テオ「どちらかといえば尻尾よりも胸肉派」
シャガル「もちろん白ゴマ派」


→100単位で飛ばす


「不毛にもwwwwwww程があるwwwwwwwですぞwwwwwww」
「一体どんな内容なんだ……」
「雷竜様と同じく高位のドラゴンの方々の会話なのでしょう? きっと実は深い会話に違いありませんわ」
「オオナズチの同類が固まってるんでしょ? 本当に不毛な内容なんじゃないの?」
「ぐはwwwwwwさやかちゃんの言葉のナイフが我を抉るwwwwでも悲しいことにそっちが正解ですぞwwwww
 時間ないし流し読みで行きますぞwwwwwww」

→log

★オシリス
「すまないみんな。どうやら野球だけじゃ世界は救えなかったらしい。正確には
【九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂】(野球で優勝)
【全てを虜にする歌】(???)
【巫女の祈り】(???)
【器たりえる巨像】(???)
【不屈の精神を持った勇者】(???)
【全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる】(???)
 ってことらしい。あのイチロー本人から聞いたから、今度こそ間違いはない。
 はっきり言って俺もまだ予言の内容は野球で優勝する以外のところは見当もついていない。
 だが、俺達ドラゴンズは必ずや野球で優勝し、この予言の謎も解いて世界を救って見せる。
 ほんの少しでも興味を持ってくれた奴は、いつでも俺のアドレスに入団希望のメッセージ残してくれよな」


「ってあったんですぞwwwwwwwwとんでもないものwwwwwwww
 そしてメッセージ送ろうにもアク禁してちゃ意味ねーぞドジリスこの野郎wwwwww」
「待て待て、俺達には脳内は見えないんだからちゃんと説明してくれ」

そして、ついにそれは見つかった。
かつてイチローチームと出会い、自分達の勘違いに気がついたオシリスが慌ててネットワーク全体に向けて発信した、
『正しい救済の予言』の内容が。
これこそ、都庁の者達が得ていなかったパズルの1ピース。
そしてこの情報もまた、扱われ方に抗いながらも奮戦する対主催、ドラゴンズがもたらしたものである。
対主催の思いは、繋がれていく。





385 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:48:14 95fheLY60
「――これがログにあった救済の予言の内容ですぞ。オシリスじゃなくイチローの情報なら信憑性も高いですな」
「これ……多分本当のことなんだと思う。マーラ様が私と出会った時にも巫女の器とか言われたもん」
「おそらく、予言の一節『巫女の祈り』はまどかの祈りと目覚めたフォレスト・セルで間違いないだろう。
 僕もマーラ様が最期にまどかが予言の巫女なのかと叫んでいるのを聞いてるからね」
「そんなことって、まどかにまだ重い運命を背負わせるというの!?
 でも確かにまどかの祈りはインキュベーターの野望を間接的に潰しているし、フォレスト・セルの能力はこれ以上ない救いではあるけど……」

オオナズチが記した救済の予言を見た一同は驚くと同時にある一節に食いついた。
まさに祈りにより巫女となり、本来は災厄であったフォレスト・セルを味方としたまどかが目の前にいるのだから。

「あのイチローが無駄なことをするわけがない。あの人は俺とは違う、誰もがその名を知る野球界の大英雄だからな」
「……合点がいきましたわ。世界の破壊を良しとする拳王連合軍にとって、この救済の予言を達成されては困る。
 だからこそ野球の試合でクロスボンバーを使ったり、対戦相手のチームを皆殺しにしたのですね。大災害を知らないのであれば納得できます」
「最っ低っ! でも逆に言えば阻止に必死ってことはやっぱりこの予言が本物ってことになるよね?」
(……こうなるとやっぱり拳王連合と超人の話を鵜呑みにするのは危険だね)

そしてオシリスに情報提供をしたというイチローはそもそもの信頼が厚かった。
殺し合いが始まる前から野球に打ち込み続け数々の伝説を残した彼が、根拠もなくちみどろのカオスロワ野球をするわけがないだろう。
そういった理由から、この予言は本物であるという認識が広まった。
迫る未来の大災害に対して、ここにきて明らかになった世界救済の予言。これはきっと偶然ではない。

「『不屈の精神を持った勇者』これはレストさんなのかな。凄く強いし肩書きも勇者なんだよね?」
「はは、まさか。僕の本職はただの農家。守りたいものも満足に守れない勇者とは程遠い存在だよ……
 勇者ってのは、ただ強ければいいわけじゃない。誰もが恐れる物事に対して勇気を奮わせ果敢に挑む、強い心を持つ人こそが勇者だ。
 そう言った意味ではここにいるみんなが、いやこの殺し合いを否定して予言を解明しようとする人全員が勇者と言えるよ。
 ……勇者が一人なら黒子を推すけどね。不屈の精神がこれ以上当てはまる人いないでしょ。というかどうやったら君は驚くんだい?」
「流石に照れちゃいます」

「『器たりえる巨像』これはあの九州ロボなんじゃないか?」
「『争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる』これは話を纏めてみるとまさか風鳴翼?」
「『未来の大災害』を知った主催者が『巨像』と『化身』を用意して世界を救おうとしていたってのかい……?
 いや、そうとは言い切れない。あたいだったら最初にせめて野球チームと巫女候補ぐらいは念入りに保護してるよ」
「予言なら意図せずそうなった可能性もあるけど、確実に主催者は何か重大な秘密を握っているわね」

考えを巡らせるが、やはりすぐに答えなどでるわけがない。
しかしこれまで生き延びてきて、候補まではあがっている。
もっと手がかりを集め、思考をまとめて予言の謎が解ければ……大災害も回避できるのかもしれない。
それは確証のない微かな希望。誰も口にはしないが、藁をもすがる思いだった。
途方もない手の施し用がない大災害には、途方もない謎の救済の予言くらいしかもう道がないように思えたのだ。
そして……

「『全てを虜にする歌』ねぇ……」
「ま、まっさかDMCなんてことは……」
「あっはは、ないってないってクラウザーの歌なんかじゃ全てを虜になんて……」



「クラウザーさんのことを、悪く言わないで!


誰もがあえて後回しにしていた予言の一節に触れた瞬間、予想外のまどかの怒声が飛んだ。


386 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:48:45 95fheLY60
「ま、まどか?」
「いい、さやかちゃん? クラウザーさんは確かにレイプと叫ぶし怖カッコいい恐怖の魔王かもしれないけどっ!
 本当は私達のことを大切に思っていてくれたんだよ? この殺し合いが始まってすぐ、まだみんなが不安だった頃……
 普通ならまず見られない生ライブを、ゲリラでやってくれたの。他のメンバー、ジャギ様達がいない状況でも、
 その場で才能のある子に直にテクニックを教え込んで、ライブを盛り上げてくれた。あの時確かに、みんなクラウザーさんに勇気をもらったんだ」
「で、でもそのクラウザーの狂信者が、みんなを殺して……!」
「わかってるよ! 私だって、狂信者は絶対に許せない。みんなを殺したことは勿論だけど、クラウザーさんのファンでありながら、
 クラウザーさんの言葉を忘れたことも、許せないんだよ」

沈みこむまどかの言葉に、思わず誰もが注目してしまう。
あの狂った信者共が崇めるクラウザーさん。レイプを連呼するメタルモンスター。そんな彼の言葉とはなにか?

「クラウザーさんはね『オレは音楽に感謝している。ミュージシャンにならなければ猟奇的殺人者になっていたから……』って言葉を残してるの。
 それに産まれた直後に自分の危険性を理解して『殺してくれ!』って頼んだんだって。結局間に合わなくて両親を殺してレイプしちゃったけど。
 大人になってからも、ポリ殺ししちゃったりレイプしちゃったりもするけど、それはお高くとまった雌タワーとかそういうのだけだよ。
 クラウザーさんは……意味のない殺しは望んでいない筈なの。本当にクラウザーさんが大切なら、猟奇的な殺しなんて一番やっちゃいけないのに……」

つぅっとまどかの瞳から涙が零れ落ちる。
現在進行形で神樹にバラバラにされ、ダオスのレーザーで塵となっている狂信者達。それとDMCファンであるまどかは紙一重な存在だ。
一歩間違えれば、彼女も狂信者となっていたのかもしれない。
クラウザーさんを失った悲しみで彼が音楽に感謝をしていたことを忘れてしまった忘れてしまったか、そうでないか。その程度の違いしかないはずなのだ。

「わ、わるかったよまどか……(ほむらが死んだ魚のような目になってるし、もうこの話題切り上げよう)」
「だがしかし、どうあれそのクラウザーさんには良くも悪くも多くの人を惹きつける力があったわけだ」
「せめてそのクラウザーさん本人だったらまだしも、狂った信者達の歌じゃとても全てを虜にする歌にゃならないのは明らかだけどな。
 あたいらはこうして、狂信者にならずに済んでいるからね。まあ、あのベジータすら狂信者に引きずり落としてるから油断できないけど」
「ブリーフ博士の話じゃ相当頼れる男ってことだったからね。まさか小町さんが相手取ったのがベジータだったなんて驚きだよ」

先の死闘で桑原と小町が討ち取ったベジータは、本来であれば頼れる対主催だった筈だ。
そんな彼をも狂信者にしてしまうクラウザーさんの歌は確かに限りなく全てを虜にする歌に近いだろうが、予言の歌ではないだろう。

「歌と言えば、カヲル君達も上手かったけど……」
「あの赤竜も、歌に目覚めたと言っていたわ。歌に大きな力があるのは間違いないけど、ここばかりは見当もつかないわね」
「『首輪と謎の物質』『TCと未来の大災害』『野球や歌を含んだ救済の予言』色々わかりはしたけども……」

もう、時間がない。
無言のまま誰もが頷き、ホワイトボードがひっくり返されて裏の白面を現す。

「ここまで来たら、やるしかない」






387 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:50:18 95fheLY60
「改めて、纏めるわよ」

○首輪は外れて盗聴や監視は無い。謎の物質も皆の体内には残留してるけど現状では害はなく、世界樹とフォレスト・セルがいれば浄化は可能。
 時空干渉系の魔法、蘇生魔法以外ならほぼ使用できる。
 メガザルの腕輪など強力な装備品も効果に制限があり、私達が最初から揃えていた道具以外は主催者の手で弄られている可能性が高い。

○未来に迫る大災害は暗黒物質とも言える『TC』が原因の可能性が高くて、もはや私達が通常行使できる手段じゃ防ぎようがない。
 この二回目の大災害までの猶予はほとんど残されていない。
 
○世界救済の予言の存在。拳王連合以外の野球チームはこれを知っている対主催の可能性が高い。
 巫女の祈りがまどかの祈りという線が濃厚だけど、他の節は候補止まりで未だ不明。

○上記の全ての問題を把握しているであろう『主催者陣営の名簿』もこちらにはある。
 だが新・主催者を名乗る安倍総理の情報はなかったため、この情報も不完全なものである可能性が高い。
 追加放送の内容から、ダース・ベイダーは露出狂の変態である。
 また安倍総理は主催陣営の者であっても律儀に死者の名前を読み上げている。
 これより五大幹部の残り三人は生存し日本のどこかに潜伏している可能性が高く、いずれかの人物の捕縛及び尋問が不可欠。

「こんなところかしら?」

多く血が流れるこの殺し合いにおいて、対主催組織がそれぞれ得た情報が纏め上げられる。
持ち寄られた材料はそれぞれ形を為したが、大災害に対抗できるかもしれない救済の予言に関しては不明瞭なところが多い。

「そうだねぇ……これを踏まえて、今後あたいらがとりかかるべきなことも纏めようかい」

○桑原達の仲間であるユーノとなのはの説得及び治療。予言の考察のために少しでも切れ者の味方は欲しい。

○図らずも聖帝軍にはもう救助隊が飛んでいるので、イチローチームやドラゴンズも説得し、共に予言の考察をしたい。

○大災害に備えての協力がとれないであろうDMC狂信者・天魔王軍・拳王連合との戦闘準備及びこれの殲滅。
 可能であればこの途中でも主催者幹部を捕まえたい
 
○『全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる』
 これを風鳴翼と仮定しても、予言の中身が揃わない限りは化身のままに過ぎない。どうにか揃うまで奴を大人しくさせる手段を見つける

「ま、纏めたところで今までとやることはかわらないけどね。少しでも仲間を集めて大災害の解決手段を見つける。
 それを邪魔する連中を蹴散らして進む。あはは、なんだか博麗の巫女になった気分だよ。
 あたいなんかのガラじゃないんだけどねぇ。――安心しなって。こんな大仕事、誰がサボるもんかい!」

やることは、これまでと本質的には変わらない。ただこれまで以上に困難な道となっただけ。
しかしそれでも立ち止まることは許されない。それはつまり大災害による死を待つことであり、それでなくとも狂信者あたりに先に殺されるかもしれない。
たとえどんな厳しい状況でも、知ってしまった彼らの退路は既に断たれている。それならば……


「「――やるしかないっ!」」


戦わなければ、生き残れない!





388 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:50:54 95fheLY60
『む、どうやら話は纏まったらしいな死神』
「アイスシザース、あんた戻ってくるなり何処行ってたんだい?」

対主催が各々覚悟を決める中、いつの間にか姿を消していたアイスシザースが戻ってくる。

『……受け取れ。雷竜様のドラゴンハート『輝』だ』
「「!!」」

そして彼が持ってきたのは、亡き雷鳴と共に現る者が持つ最後のドラゴンハートだった。
構造の変化した地下迷宮において、彼が亡くなった場所を把握できているのはアイスシザースだけだったのだ。

『きっと雷竜様がご無事でも、こうしただろう。
 それと少しばかり文句を言いたいのはこちらの方だ。仲間達の弔いに品を残すのはいいが、危険物は回収しておけ』
「あ、それ貴虎さんの荷物……」
「中身はってこれN2爆弾じゃない!? こんな危険なもの使おうとしてたのあの仮面ライダーは……。そして凄くメロン臭いわ。
 確かにこれはとりあえず危ないから私の盾の中にいれておきましょう」
『あと転がされていた卵も一応回収してきたが、なんなんだこれ気持ち悪い……』
「(あ、あれは確かサクヤさんのお父さんの卵だ。それなら……)これはレストさんが持ってた方がいいね」
「なんで!? うわぁぁ……痙攣してるしぬちゃぬちゃだし、こればかりは叩き割りたい!(でも割ったら何か大惨事が起きそうだ……)」

さらには地下から危険物の回収も済ませていた。
そして危険物の管理をそれぞれに任せた後、アイスシザースは一同の前で服従の構えをとる。

『……話を聞かずとも、その顔を見れば更なる大事を抱え込んだのはわかる。
 雷竜様は亡くなる直前、お前達への謝罪の言葉を遺された。
 俺は力は遠く及ばないが、雷竜様の遺志を継いだ。あの方が信じられたお前達を、俺も信じよう。
 世界樹を守るためにもはや如何なる手段も問わない。必要とあらば俺の命も、世界樹の素材も、どうか好きに使ってくれ』
「あらアイスシザース、貴方だけにいい格好はさせませんわよ?
 私もいまやお姉さまのモノですが、この世界樹やそれを今まで守ってくれた貴方達を守りたいという気持ちにも嘘はありませんの」
『主……いや、強き人間達よ。星を喰らうドラゴンの身なれど、俺もこの牙と爪を未来のために振るうと誓おう』
「やれやれ、悠々自適な性活を送るつもりがどうしてこうなったんですかなwwwwwwww
 ……あの予言は聞いたことがないが、巫女の祈りの件を考えると古代グンマ―か或いは当時交流があった古代ミヤザキが怪しい。
 これでもグンマ―の古龍、記憶を遡りネットワークも駆使し出処と内容に目星をつけてみよう。
 自然界に生きる覇者の一角としても、偶には真面目に世界の事も考えなくてはな……ですぞwwwwww」

それに続く形で、他の魔物達も誓いを立てる。
今は亡き雷竜と、まどかの祈りたる人と魔の共存は実現した。
この関係を未来でも続けていくには、大災害を回避するしかない。
その鍵を握るかもしれない救済の予言。

「おおぃ、エリカ―! ようやく連中の増援が減ってきたぞー!」

外から轟音と共に響いてくる声は、反撃のチャンスを知らせてくれる。

「これだけの時間、神樹とダオスさんが奮闘しても全滅しないなんて何万人いるのさ。
 まあいいや、僕も見習おう。久しぶりのレベリングと洒落込もうか」

未来への一歩。
聖帝の救出にしろ、野球にしろ、主催者を捕まえるにしろ。


まずは全ての障害となる狂信者を蹴散らさなくては。





389 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:51:23 95fheLY60
【二日目・13時30分/東京・都庁】

【小野塚小町@東方Project】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、首輪解除
【装備】斬魄刀『神鎗』@BLEACH(破損して柄のみ)
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:もう仲間を誰も失わない為にカオスロワを終わらせる
0:やること多いが、どれから手をつけたもんかね?
1:殺し合い打破のためにも都庁には協力する
2:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
3:変なの(セルベリア)に因縁つけられちまったね
4:超人達からの情報を鵜呑みにはしないが、一応ダオス達に伝える
5:神鎗に変わる強力な武器が欲しい
※飛竜たちと情報交換して、主催達が九州ロボにいることを知りました。
※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました)

【エリカ@ポケットモンスター】
【状態】ダメージ(小)、深い悲しみ、歪みし豊穣の神樹及びアルルーナのトレーナー、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、モンスターボール×2(神樹とアルルーナ)
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:ユーノさん達が無事だといいのですが……
1:仲間達と一緒に生き残る
2:珍しい植物タイプはゲットしておく
3:世界樹の軍勢を手助けする
4:ハス太くん、レオリオさん、モジャンボ、キノガッサ……ごめんなさい

【桑原和真@幽遊白書】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、深い悲しみ、首輪解除
【装備】なし
【道具】支給品一式、大量の食糧
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:なのはを説得するにしてもどうすればいいんだ?
1:溜まった鬱憤解消のためにも俺もレベリングすべきか?
2:ハス太、レオリオ、すまねえ……
※ユーノの変貌及び治療方法を把握しました

【アイスシザース@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)首輪解除
【装備】無し
【道具】ちりとり、支給品一式、タイムふろしき@ドラえもん、ガソリンの入った一斗缶、医療道具一式、ノートパソコン
【思考】
基本:雷竜様(雷鳴と共に現る者)の意思を引き継ぎ、都庁の世界樹は死んでも守る
0:戦力で劣る俺ができることはなんだろうか……?
1:魔物を奴隷にする人間は嫌いだが、同盟の人間なら一応は信頼する
2:デスマンティス達の裏切りに未だにショックを受けてるが、戦いに私情は挟まないようにする
3:死んだ仲間達の分まで、世界樹のために働く
※貴虎の持ち物であったノートパソコンにはヘルヘイムの情報が載っています
※ハス太とレオリオは都庁一階にて埋葬されました


390 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:51:52 95fheLY60
【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除
【装備】己の拳
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を倒す
0:混沌の騎士が遺した物質の謎が解けたかと思ったら増えただと……
1:仲間を守る
2:大災害による世界の滅亡を阻止する
3:救済の予言の謎を解く
4:↑の全部やらなくちゃあならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。
5:大災害と怪物作り(テラカオス)の関係がやはり気になる

【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】気絶のフリ、首輪解除、深い悲しみと怒り、大混乱
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、野球のユニフォーム
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:話の内容がトンデモで気持ちの整理が追いつかないっす……
1:加治木先輩を殺した拳王連合は絶対に許さない
2:時間があればスマホを使ってネットで情報を探る
3:DMCファンだけど信者の暴動にはドン引き
4:先輩のことでもっと泣きたかったけどそれどころじゃない
5:超人はもう殺す

【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、冷静
【装備】ウィンチェスターM1912
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:なんで予言に必要なのはバスケじゃなくて野球なんでしょうね?
1:友人たちと生き残るためにも、都庁に協力する
2:空気中に漂う物質への対処法を考える(世界樹が有力?)
3:狂信者には絶対に負けません
4:僕だって驚く時はありますよ

【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】健康、首輪解除、深い悲しみ
【装備】エンシェントソード@Minecraft
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:仲間と一緒にカオスロワを終わらせて主人公らしく大活躍!
0:主人公らしく考察も頑張るよ!
1:混沌の騎士、亡くなった友人達の分も頑張る
2:まどかと同じく、人間と魔物の共存に賛成
3:オオナズチ以外の都庁のモンスターの背中に乗りたい
4:みんなの力で世界の滅亡を阻止する!

【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【状態】健康、エリカのポケモン、首輪解除
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:都庁を包囲するDMC狂信者を一掃する
1:今からでも遅くねえ、レベリングだ!
2:見下ろす形でなのはとユーノを探してみるか


391 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:52:27 95fheLY60
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【状態】健康、深い悲しみ、エリカのポケモン、首輪解除
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明品
【思考】基本:雷竜達の遺志を継ぎ、世界樹を守る
0:世界樹の加護すら通用しない『TC』の正体が気になりますわね
1:お姉さま達と世界の滅亡を阻止する
2:拳王連合及びその協力者は皆殺し、絶対皆殺し


【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、世界樹の巫女、首輪解除
【装備】世界樹の衣、モンスターボール(フォレスト・セル)
【道具】支給品一式 その他不明、サクヤのスマホ
【思考】基本:自分も戦い、みんなで生き残る
0:私が予言の巫女なら、もっと頑張らないと!
1:クラウザーさんのためにも、DMC狂信者の暴走を止める
2:マーラの残した巫女と予言の言葉が気になる
3:……お尻にアレを入れられるのって気持ちいいのかな?
※巫女の祈りにより、魔法少女に近い存在へとなりました
※ソウルジェムなどはないので、肉体が致命傷を負えば普通に死亡します
※衣装はアルティメットまどかのものを2Pカラーにした感じです。戦闘力もそれの劣化版
※世界樹の王@世界樹の迷宮と同じスキルが使用可能です
※ダオス直伝のハイパーまどかビームを習得しました
※現在セルはモンスターボールの中です

【レスト@ルーンファクトリー4】
【状態】健康、魔力消費(小)各種超耐性、エーテルリンク(サクヤ)、首輪解除
【装備】最大錬成世界樹ノ剣、最大錬成防具、草原のペンダント、グングニル
【道具】支給品一式、不明品、封じられた闇核、三竜の逆鱗、ニアラの逆鱗、竜殺殺『天羽々斬』、ファガンの卵
【思考】
基本:サクヤのためにも、人間としてこの殺し合いを終わらせる
0:狂信者一掃を手伝って久々のレベリングもしておこう
1:影薄三人と同盟軍の味方と共に大災害回避の道を探る
2:謎の物質や能力低下攻撃への対抗策を早く見つけたい
3:二竜やダオスが信じるのであれば、聖帝軍は一応信用
4:あわよくば竜と結婚できる世界を作りたい
5:天魔王軍とDMC狂信者、拳王連合軍は絶対に許さない
※ブリーフ博士の技を覚え、首輪解除が可能となりました
※現時点で、フォレスト・セルとの長時間のリンクは不可能です
※竜殺剣は所持しているだけでも竜やそれに近い種族に特効性能を持ち、結界や再生などの特殊能力も無効化することができます
 テラカオス・ディーヴァや真竜などには特に高い効果を発揮します
 また巨大な外見に反してとても軽いため、小柄な少女でも振り回したり投擲することができます
※ゲートリジェクト(異空間移動)使用不可


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、首輪解除
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ(穢れ0パーセント)
【道具】支給品一式、ベレッタM92(残弾0)、レミントンM870(残弾0)、ミニミM249(残弾0)、M16クレイモア×5、M84 閃光手榴弾×15
 88式地対艦誘導弾、長ドス、ゴルフクラブ、ホワイトボードとペン、夕張メロン×55、N2爆弾×3
【思考】基本:まどかを守りつつ、主催者を倒す
0:全ての謎を解くためにも、主催者幹部を捕まえたいけど……
1:N2爆弾は強力だが通常使用する武器も欲しい
1:まどかは命にかえても守る
2:ビームはすごかったけど、まどかのネーミングセンスはちょっと……
3:お尻の件はまどかになんて言えばいいのよ?許すまじマーラ


392 : 対主催「材料持ち寄って鍋やろうぜ!」 :2017/09/17(日) 21:53:46 95fheLY60
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、過労、首輪解除
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ(濁り20パーセント)
【道具】基本支給品一式、不明支給品
【思考】基本:マミさんの為にも、殺し合いを止める。
1:実感が湧かないけど、みんなと協力して大災害を阻止するよ!
2:まどかにDMCを語らすのはやめとこう……
3:魔物以上に拳王連合への不快感
4:聖帝への羨望
※8期、9期とは関係ありません。
※放送の内容をラブ達から聞きましたが、上条恭介の死を知りません。
※奮闘し、世界樹の一般の魔物の回復も頑張っていました。よって過労気味です
 しかしソウルジェムが元に戻ったため、再び魔法は使えます

【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除
【装備】不明
【道具】支給品一式、狂信者から盗んだ色々なアイテム
【思考】基本:美少女とエロ同人誌みたいなことしつつ都庁で暮らしたい
0:真面目に救済の予言について考えるとしようか
1:正直、友や仲間の死には心を痛めている
2:やっぱり草を生やしてこそ我ですなwwwwww
3:一応ドラゴンネットワーク全体に都庁が敵ではない情報は流しておく
※尻尾も破壊された場合、ステルス能力を失います
※狂信者から盗んだアイテムの詳細は不明です
※現在オオナズチ側からではドラゴンズメンバーへのドラゴンネットワークは使用できません

【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除、攻撃力1.5倍、被ダメージ半減
【装備】無し
【道具】支給品一式、余った真竜ニアラ
【思考】
基本:仲間達と共に大災害を阻止する
0:宇宙も駄目となると他の真竜も駄目だなこりゃ
1:レストを信頼
2:これで巨根ランキングはまた俺が一位だな……
※レスト直属の魔物のため、装備の恩恵によりステータスが上がっています


※集まった情報により、『首輪と謎の物質(ナノマシン)の効果』『TCと未来の大災害』『救済の予言』について把握しました
※『TC』は世界樹でも浄化はできず、魔物による通常探知も不可能です
※ドラゴンハート三種の効果により、全員のレベルが限界を超えて上昇しました
※レベルアップに伴い、何かしら新たな力に目覚めた者もいるかもしれません
※狂信者を蹴散らしていた神樹とダオスの両名は特にレベルが上がっています
※狂信者の包囲網を完全に崩すにはさらに30分ほどかかります。桑原等実行部隊が増えれば殲滅速度は上昇します


393 : 名無しさん :2017/09/17(日) 21:54:24 95fheLY60
投下終了です


394 : 名無しさん :2017/09/17(日) 21:54:52 h1wY1h/I0



395 : 名無しさん :2017/09/18(月) 10:59:20 XrCHn0cQ0
投下乙です
この書き手氏すげー
タイトル通りに鍋作るみたいにいろいろぶちこみつつ、対主催による謎解きを綺麗にまとめおった

謎解き要員として期待されていたなのは組と狸組が悲惨な目にあった分、考察面では都庁がダントツ的にリードですな
一方で余計に誤解が加速した拳王連合と、さらっと変態扱いされるアナキン...


396 : 名無しさん :2017/09/18(月) 11:20:34 mV88g5Ig0
投下乙
あちこちの対主催がズタズタだったけど、気づけばちゃんと考察材料は各方面から揃ってたんだな
問題なのは流石に肝心要の予言がまだわかんないってところか
そしてシャガルはどうしてそうなったし


397 : 名無しさん :2017/09/19(火) 14:40:06 sY7.JMUQ0
しかしこの予言が達成できる気がしない
残ってる野球チームが多分どこも欠員だらけで即試合は無理だろうし、試合中は狂信者の乱入の可能性が高い
仮に試合が安定して出来ても、拳王を追う貧乳が高速飛行しながら腐食猛毒を撒き散らしてくるとかどうしろと


398 : 名無しさん :2017/09/19(火) 16:41:19 nUr7xM9M0
貧乳については突然現れた謎の敵と霧切結界が頼みの綱かもしれん

ま、俺は救いようのないバットエンドも断然OKさ


399 : 名無しさん :2017/09/19(火) 18:49:27 Djz54ppg0
結界は耐久値の半分は持ってかれてるし、シャドウはまんま貧乳の能力+αだしでとても頼りにはならんよ…
貧乳倒すだけならハクメンと竜殺剣二本あるから割と出来そうだけど、殺したら予言達成できないからな
やはりここはクロコダインに踏ん張って貰うしか


400 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:24:07 GfcUmOac0
第五回放送及び追加放送はイチローチームを絶望させるには十分であった。
主催者がベイダーから安倍に交代したり、主催の主戦力であると思われたバーダックが脱落したりなどあったが、政権交代や首輪を外したイチローならなんとかなりそうなサイヤ人の死は今はどうでもいい。
心を揺さぶったのは仲間の死であった。

「そんな……更に二人もの犠牲が出るなんて……」
「ちなつ……!!」
「久保先生ーーー!!」
「チームはゼロを除くと七人……もうダメだ、予言を完遂できない……」

仲間の死は各々に衝撃を与えたが、特にイチローとダイゴと萃香、6/は大きいものであった。
支えあってきた少女や尊敬していた男の死、世界を救えるかもしれない予言とチームの優勝が達成できないという無念が重くのしかかっていた。
ドラゴンズのリーダーであるオシリスも後輩の死に相変わらず落ち込んだままであり、仮にかつて戦ったヘルカイザーがもう一度攻めてきたら確実に全滅すると言っても過言でないくらいのメンタル的な打撃を受けていた。

幸いにもDMC狂信者に対する嫌悪感があったことによって狂信者化する者は誰ひとり存在せず、サーシェスとの死闘によって消耗していたことで遊園地に隠れていたことによって狂信者やマーダーの襲撃を受けることなく、12時まで過ごすことができた。
だが、イチローチーム・ドラゴンズの双方の試合不能状態や膨大すぎる戦力を持つDMC狂信者や底知れぬマーダー、新しく現れた得体の知れない安倍の存在もあり、集団はそれらに対抗する目処が立たなかった。
そんな彼らにある大集団が迫る。


「イチロー、DAIGO! あれを見ろ!」

蛮に呼ばれたイチローとDAIGOが遊園地の城を出て空を見ると、大量のドラゴンがこちらに向かっていた。
その数は500を上回っている。

「あれは味方っスか?」
「いや、オシリスからドラゴンネットワークでこの辺にドラゴンの大軍がいる話なんて聞いてない。
いたら触手ヒゲの時に応援を呼んでいたハズだ、つまり……」
「都庁に巣食うドラゴンか狂信者のドラゴンか」

ドラゴンネットワークに応じない、もしくはこちらからシャットアウトしているということは敵である都庁か狂信者所属のドラゴンである可能性が濃厚である。

「どうする? 隠れるか?」
「……いや、迎え撃とう。
今回は人質を取られていないし、敵は空にいる。
今なら周辺の被害を気にすることなく、僕のレーザービームで一気に殲滅できる!」

遊園地に隠れていれば襲撃されるリスクも低いだろうが、仮にやり過ごせても敵は他の参加者を襲う。
それを黙って見過ごすわけにもいかないと思ったイチローはレーザービームを使って敵ドラゴンを一挙に殲滅しようと投球の体勢を取る。


「お待ちなさい! いきり立つオ○ンポを収めて……じゃなかった。いきり立たないで矛を収めて!!」

必殺のレーザーを放つ直前に聞き覚えのある声がイチローに待ったをかけた。
そして次に翼を持った青い影と美巨乳がイチローたちの前に顕になる。

「ソウルセイバー!」

青い影の正体はサーシェスに追われる際に南側に逃れて散り散りになった仲間の一人、ソウルセイバー・ドラゴンであった。

「落ち着いて聞いて、あのドラゴンは全部味方よ。あなたたちと別れている間に運良く合流できたの」
「あれ全部味方? マジパネェ!」
「そうか……ふう、危うく蒸発させるところだった……ナッパとギムレー、リオレウスは?」

溜息をつき、武器であるボールを下ろしたイチローはソウルセイバーに残る二人と一匹のドラゴンについて尋ねる。
すると竜の群れの中に紛れていた1機の赤い飛行型ロボットが腕に一人の男と緑の液体がつまったポットを持ってイチローたちの傍に折りたった。

「やあ。無事……ではなさそうだが、なんとか触手の怪物は倒したようだね」
「良かった、おまえたちだけでも生きていて……」
「ギムレー、ナッパ!」

ロボットの腕にはギムレーとサイヤ人の使う回復用ポットの中に入ったナッパがいた。
双方が互いの生存を素直に喜んだ。
そして赤いロボットからは一人の女性、和服らしき衣装を着た翼と尻尾のある黒髪の女が出てきた。
こちらはイチローたちに見覚えのない者だ。

「お初にお目にかかります、イチロー様」
「君は?」
「私はサラマンディーネ。空を飛んでいる同胞・アウラの民の指揮官を務めるフレイアの一族の巫女。
そしてここにある龍神器「焔龍號」とこの世界に迷い込んでしまったアウラの民と共にイチロー様たちの助太刀に現れた対主催です」


―― ―― ―― ―― ――


401 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:26:14 GfcUmOac0

ナッパ、ギムレー、ソウルセイバー、リオレウスと共にサラマンディーネことサラ率いるドラゴンの群れ・アウラの民と合流した一行は、情報交換や今後どうするかを考えるために代表者で城の中で話し合うことにした。
具体的に話し合うのはイチロー、DAIGO、6/、ギムレー、ソウルセイバー、そしてサラである。
残りはアウラの民がかき集めた回復薬でダメージと疲労の回復に専念していた。
傷はない者でも、オシリスや恋人を失って傷心状態のリオレウスの精神ケアに回ったものもいる。
ドラゴンズのリーダーであるオシリスも相変わらず落ち込んでいるので、代理人としてギムレーが出た。


「久保先生が裏切ったなんて……」
「良い人そうだったのにちなつちゃんを殺したなんて信じられないっす……」
「信じられないかもしれないけど、全部事実よ。
あのホモ○ンポは己の欲望のために予言の破綻を願っていた卑劣漢よ。
そのホモからちなつを守れなくて……本当にごめんなさい」
「完全催眠にドラゴンネットワークの封印と、非常に恐ろしい敵だった。
野獣追跡隊の面子が異様に奴を慕ってけど、おそらく完全催眠を使った洗脳によるものだろう」
「萃香がさっきから外でヤケ酒をしているのはそれを教えられたからか」

まず一行はちなつと久保帯人が亡くなった経緯を聞き、そしてイチローたちは衝撃を受けた。
久保帯人の裏切りの犠牲者になったちなつには悲しみを、身勝手な陰謀で彼女を殺した久保帯人には怒りと驚きの感情を抱く。
特にほかの仲間から久保帯人の裏切りを知った萃香は絆が偽りのものであったという怒りを忘れるために城の外で自棄酒をしている。

「仇はナッパとちなつ自身がとってくれた。
久保帯人に勝つためとはいえ彼女を屍兵にした僕が言えたことじゃないかもしれないが、彼女は僕らを救ってくれたよ」
「ギムレー……それはお互い様だ。僕らもロイにイドゥン、黒炎竜を守れなかった。お互い様だ。
少なくともどちらもチームメイトを守るために最善は尽くしたハズだ」
「すまない」

ちなつを守れなかったことに自分を責めるギムレーに、イチローは優しく諭す。
イチローチームもまた仲間を失っているため、南に逃れたグループを責めることはできず、むしろその悲しみを分かち合った。

「さて、いつまでも悲しんでいてはちなつちゃんたちに申し訳ない。今後のための話をしよう」
「ああ。サラ、君やアウラの民のことをイチローたちにも教えてくれ」
「わかりましたわ」

イチローたちは気持ちを切り替えて新たなる仲間、サラに目を向ける。
彼女の話によると、アウラの民は元いた世界の物質(ドラゴニウム)をその身に代々受け続けてきた結果、遺伝子の変異でドラゴンに変身できるように進化した人間である。
即ち一般のドラゴンとは違い、「人間から進化したドラゴン」という特殊な存在であるためにドラゴンネットワークを使うことができず、今までドラゴンズや都庁はその存在を知らなかったのである。
ちなみに先程まで飛んでいたドラゴンの群れは人間に変身できないオスを除いて人間の女の姿を取っている。
マムクートと同じく翼と尻尾さえ隠してしまえば普通の人間にしか見えないのだ。
サラが戦力がしっかり整うまで存在を秘匿するようにしていたため、これまで目立つことなく戦力集めや情報集めに集中できたのだ。

サラは予言の件はギムレーたちに聞くまで初耳であり、他のマーダー組織や主催のこともイチローチームほどは知らないようだが、二チームにとって嬉しい情報がいくつかあった。

「サラ、君は野球に歌まで歌えるんだって?」
「ええ、かつて戦友のアンジュと闘技場で競い合い、宇宙を支配する法則をメロディーに変換した……永遠語りを歌うことができます」
「野球の腕と歌は僕が保証する。
細身だが彼女は良い肩を持っている。
それに歌も今まで聞いたことないくらい美しかった」
「ナッパもアレをギンギンに滾らせていたほどよ」
「この痴女ドラゴンの言葉は無視してくれ。
まあ、ナッパも久保帯人との戦いで瀕死の怪我を負っていたところを彼女やアウラの民に助けられたし、恩は感じてるだろうね」

実際にサラはクロスアンジュ本編で闘技場(ラウンドワン)で野球対決をしている。
歌に関しても中の人がラクスと同じだけに美声である。
この件に関して飛びついたのが6/である。


402 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:27:20 GfcUmOac0

「すげえ、予言の中にある全てを虜にする歌はこれでバッチシだぜ。
あんたが野球ができるってことは他のアウラの民も……」
「残念ですが野球ができるのは文献から闘技場を再現できた私一人だけです」
「そうか……くそ」

もし他の民も野球ができるならと期待した6/であったが、サラによって打ち砕かれる。
仮に外にたくさんいるアウラの民(モブ)の内にサラ並に野球ができたらメンバー不足で試合不能になっているイチローチームとドラゴンズの選手を補充できると睨んだが、糠喜びであった。
サラ一人ではどちらのチームに入るにせよ、八人と六人でメンバーが足りないのだ。


「私自身もあなたたちの集団に合流するつもりでここに来ましたが、それは同じ対主催組織として行動を共にしたいからであって、野球をしにきたわけではありません」
「なに?」
「どういうことっすか?」

さらにサラの放った次の言葉が代表者たちに衝撃を与える。

「歌や野球自体は私も好きですし、できれば参加したいのですが一つの懸念材料があるのです。




救済の予言……それは本当に私たちを救済するのでしょうか?」

サラは予言について非常に懐疑的であった。
それは滅んでしまったネオ・クライシスのように予言そのものを信じないのではなく、その予言を達成した先に待つものに疑問を持ったのである。
そして彼女は自分の持論を伝えた。

「予言の内容は“九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂、全てを虜にする歌、巫女の祈り、器たりえる巨像、不屈の精神を持った勇者。
全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる”とありますわよね?」
「ハラサンから教えられた分はそうだけど……」
「では、救いの神は具体的に私たちを何から、どうやって救うんでしょうか?」
「何ってそれは……」

DAIGO他全員が具体的な答えが出せずに言葉に詰まる。
TCホールによって二度目の大災害が迫っているなど、旧主催や邪神ぐらいしかまだ知らないので答えられないのも無理はない。

「予言の文章だけでは情報が足りないのです。
この世界は大災害で日本以外の土地が沈み、殺し合いで人口削減をしないといけないほど追い込まれているのは知ってますが、救いの神はそんな世界を救ってくれるのでしょうか?
仮に大災害で荒れ果てたこの世界を救うにしろ、『救い方』がわからないのです」
「救い方?」
「ええ、救いの神は足りない食料を出したり、失われた土地を取り戻してくれるのかもしれません。



――逆に、降臨した瞬間に我々の代わりに多くの人を殺めて世界が存続できる数まで人口を削減したり、飢えて苦しむぐらいなら全員仲良く安楽死させる可能性もあるのではないでしょうか?」

サラの提示された予言の可能性に全員がゾッとするも、6/が反論をする。


403 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:29:56 GfcUmOac0

「ま、待て、そりゃアンタの拡大解釈だろ?」
「ええ、ですが可能性として十分にありえます。
予言を完遂しても私たちの望む救いの神が現れるとは限らないのでは?
そもそも予言を考えたのはどこの誰なのか? どうして予言は救いの神が現れてからの内容が記されていないのか?
疑問点はたっぷりあります」
「確かに……僕も信者集めに腐心してて救いの神そのものに対して深く考えてなかったな……」
「いや、それでも……」

予言の穴をついていくサラに同調するギムレー、言い返したいが言い返せない6/。
サラの持論はまだ終わらない。

「何より予言の最後の一節である“争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる”……皆様にこの『化身』に何か見覚えはありませんか?」
「化身……そんなもんにはまだ会ったことはねえが……」

サラに言われて6/と他の仲間たちは化身らしき存在を記憶を辿るが、特に該当しそうなものはなかった。

一人を除いて。

「いや、いたっスよイチローさん。争いの淀みから生まれた化身の一人に俺たちは既に会っているっス!」
「DAIGO……まさか……」

DAIGOの言葉により、ようやくイチローや仲間たちも化身がなんなのか頭に浮かんだ。
それはつい先ほどまで自分たちを襲い、多くの仲間を殺した恐るべき存在。

「触手ヒゲ男……!
奴は戦うたびに強くなっていった争いの淀みから生まれた化身と言っても過言じゃない。
それに普通の存在には持ち得ないウルトラマンの光の力すら飲み込む混沌の力を持っていた。
ヒゲ男はもう倒したけど、サラはあんな奴が化身だと言いたいのかい?」
「ええ、先ほどのあなた方の話から私もそうだと思っています」

テラカオス・サーシェス。
闘争がある限り進化していく様はまさに争いの淀みから生まれた化身と言っても過言でもない。

「でも触手プレイ男は死んだのよね? じゃあ化身ももういないことになるんじじゃないの?」
「ソウルセイバー様、あくまで噂であり我々アウラの民はまだ接触していませんが各地で触手男と同じように変異している参加者もいるようです」
「変異?」
「突然豹変するものや、なんの前触れもなく本当なら持ち合わせていない力を持った者。
中には見た目まで変化したものもいるそうです。
これも噂ですが風鳴翼も食人鬼として騒がれる前は東京で逃げ遅れた民を逃がしていた善人だったそうです。
……何かこの殺し合いと因果関係を感じませんか?」

サラは直接接触したことは一度もないとはいえ、変異者=テラカオス候補者のことを各地を巡るうちに耳にしていた。
それらは少なくともカオスロワが開始する前にはいなかったハズだ。
殺し合いが始まってからしばらく経ってからその存在を耳にするようになったので、殺し合いが風鳴翼のような変異者を生み出した原因としか思えない。

「その上にDAIGO様とゼロ様は触手男の首輪が自動で外れるのを目撃したのですよね?」
「ゼロの憶測だけど主催の殺し合いの目的はああいった混沌の力を持つ奴を作ることじゃないかって……でもそれだと、奴みたいなのが跋扈して人類が滅亡してしまい、主催も自滅することになるんじゃないっスか?」
「それはこう考えることもできませんか?
実は主催者……ダース・ベイダーもしくは安倍が予言のことを知っていて、予言を完遂させるために殺し合いで『化身』を生み出そうとしているとか」
「「「なんだって!?」」」

サラの出した主催が予言を知った上で変異者を生み出している説に全員が釘付けになる。
ちなみに主催はテラカオスによる世界救済はともかく、予言そのものは殺し合いが始まる前から予言を知っていたわけではないので、サラの説は半分当たりでハズレでもある。
だがイチローたちにそれを知る由はまだない。

「確かにどんな方法を使ったのかわからないけど変異者がいて、何らかの条件を満たすと首輪が外れるのも事実。
この殺し合いを開いた主催者たちが予言を知っていて参加者たちを殺し合いで争わせ、化身を生み出そうとしているのもわかる」
「じゃあひょっとして主催は救いの神を生み出すためにこの殺し合いを開いたってことスか?
実はこの殺し合いも世界を救うために行っているとか……」
「ありえねえよ、仲間を虐殺した野原ひろしみたいな奴が誰彼を救うなんて」

イチローは説にそれなりに納得しつつ、DAIGOは主催の目的は人口削減ではなく救いの神にあると思い、6/は否定する。
特に6/はハラサンの求めた救いの神がサーシェスのような虐殺者であるとは納得が行かない様子だった。


404 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:31:16 GfcUmOac0

「予言や変異者、主催の目的についてはまだわからないことだらけですが、もし私の懸念が合っていれば世界に救済ではなく、破滅をもたらすかもしれません。
予言に関してはもっと慎重な姿勢で見ていくべきだと思います」
「だ、だが俺はハラサンの信じた予言を信じてイチローチームを優勝させたい……あの人ができなかったことを叶えてやりたいんだよ」
「しかし、主催も絡んでいる可能性がある以上は予言を完遂するのも危険です」
「モタモタしている内に予言を完遂できなくなって、救いの神が欲しい時に召喚できない事態になっても手遅れじゃないか!」

予言に対してひどく懐疑的なサラに対し、6/は道を示してくれた恩人の願いである予言に盲信気味であった。
だが情報が足りない現状では、予言の先が破滅か救済かもわからないのでこの場で言い争い続けても平行線であろう。
そう思ったイチローは一先ず6/に制止をかけた。

「落ち着くんだ、6/」
「……すまん、つい熱くなっちまった」
「こちらこそ。ですが、どのみち私がイチローチームに入っても、ドラゴンズに入ってもメンバー不足で試合ができません。
私たちは最良の九人の戦士にはなれないでしょう」



「そうでもないホルよ」

城の中で会議をしていた六人の前にホルスと、彼に乗った片足のないラミレスがやってきた。

「ホルスとラミレス、怪我はもういいのか?」
「ああ、アウラの民の娘さんたちが持ってきてくれた薬でほとんど完治したホル」
「失ッタ足ハ戻ッテキマセンデシタガ、止血ハ十分デス」

サーシェスによって手傷を負わされた一人と一匹だが、回復薬のおかげでホルスは傷が治って本来の機動性を取り戻している。
ラミレスの足は戻らなかったが、その代わりに目には先程までの濁りがなくなっていることをイチローは確認する。

「しかしホルス、僕たちは両チームともメンバーが足りない現状だ。
ここから試合のためにメンバー集めするにも狂信者が日本中に跋扈していて難しい。
サラ以外のアウラの民は野球ができないし、数合わせのために無理やり引っ張って無駄死にさせたくもないし、ここからどうするつもりなんだ?」
「簡単ホルよ、イチローチームとドラゴンズを一つのチームとして合併するホル」
「合併?」

首を傾げるイチローたちにホルスとラミレスは話を続ける。

「そう、これはラミレスの案ホルけど、イチローチームもドラゴンズも単体ではもはや立て直しが困難ホル。
だから両チームを同盟から一つのチームにくっつけるホル。これなら選手は13人になって試合可能ホル」
「なるほど……」
「既二外二イル方々ニモ許可を取ッテアリマス。後ハアナタタチダケデス」

ラミレスは合併の件を既に外の人間と話し合い、オシリスたちから許可をもらっていた。
後は城の中にいる面子が納得するか否かである。

「このままダラダラ新しい選手を探してたら時間増しに力を伸ばしているDMC狂信者に都庁の魔物に、拳王連合軍に対抗できなくなるホル。
ドラゴンズなんてもう竜縛りで選手を探している余裕ももうないホル」
「ダカラコソ2チームヲ1ツニシテ、チカラヲ合ワセレルンデス」
「確かに、それなら即試合もできるようになるだろうし悪くない提案だと思うが、チームを合併させるなんて予言的には大丈夫なのか?」
「6/、それを言ったらおまえとラミレスとナッパは負けたチームから無償トレードで来たメンバーホル。
それに予言は最良の九人の戦士による優勝が必要だから、ちゃんと九人揃っていれば多分大丈夫ホル」
「多分かよ……でも元々予言自体もあやふやだし、可能性にかけるのは悪くないと思うぜ。みんなはどう思う?」

野球選手は狂信者に狙われる節があり、これから探すのは骨が折れる上に最悪探す過程で死人も出る。
それよりはこの遊園地に集まっているメンバーを一つにした方が安全である。
メンバー間の絆もヘルカイザーやサーシェスとの死闘も経て深まっており、合併しても特にヒューマンエラーが起きるような障害はなかろう。
合併による優勝は許されるのかどうかの問題はあるが、ホルスとラミレスの意見はもっともであると全員は考えた……サラを除いて。


405 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:32:02 GfcUmOac0

「いけません、まだ予言が私たちに益をもたらすと決まったわけでは……」
「サラサン、否定シテバカリデハイケマセン」
「考えを変えるんだサラ。
予言は九人の最良の戦士の儀式、歌、巨像、巫女、勇者が揃うことで完遂する。
逆を言えば一つでも欠ければ予言を完遂できないということだ。
もし予言が危険なものだったら、歌、巨像、巫女、勇者のどれか一つを揃えなければ良い。
だが6/も言ったけど、予言はやはり世界を救うものだった場合で必要な時に救いの神を呼び出せないのは痛い」
「予言ノ真相ガワカルマデハ5ツノ内、4ツハ揃エテオクベキデス」
「ラミレス様、ギムレー様、つまり最悪の事態を想定してどちらにも転べるようにしておくということですね」
「「YES」」

予言に否定的なサラであったが、ラミレスとギムレーの考えを聞き、そして考えを改めた。

「わかりましたわ。私も野球選手として力を貸しましょう」
「ありがとうサラ」
「6/様、あくまで予言の真実が判明するまでですよ。
危険とわかったら即刻全ての野球チームを解体させます」
「それで構わない」

こうして新たなに加わったサラマンディーネを含めて二つのチームが合わさり、一つのチームが産声を上げたのだった。


「コレデイイ、コノ14人ナラ優勝モ夢デハアリマセン」
「14人じゃないぞラミレス」
「イチローサン?」
「ゼロとあなたを含めて16人のチームだ」

自分(とDAIGOと融合しているゼロ)を頭数に入れていないラミレスに優しく声をかけるイチロー。
だがラミレスは視線を落とす。

「デモイチローサン、私ハコンナ足デハ野球ハモウ……」

ラミレスは先の戦闘で片足を切断している。
アウラの民の治療で止血は済んだが、失った足までは戻ってこなかった。
選手生命を奪われてラミレスはひどく落ち込んでいるのだ。
選手生命は野球選手としてのアイデンティティであり、野球も戦闘もできなくなったラミレスは自身の存在価値を低く見積もっていた。

「確かにあなたは足が失くなって選手は無理だろう。
だったらその豊富な経験を活かして僕らの監督になってくれないか?」
「監督……デスカ?」
「ああ、誰よりも野球を愛しているあなたなら久保帯人よりは遥かに信頼できる。
チームを一つにし、サラを説得できたのもあなたの提案のおかげだ。
あなたは人を纏める力はあると僕は思う」
「イチロー……」

イチローはラミレスの能力と経験の高さを理解している上でラミレスにポストを与えた。
これならば片足のないラミレスでもチームメンバーとして「戦う」ことができる。

「ドラゴンズのリーダーはオシリスホルけど、野球の経験そのものは浅いし、今は落ち込みモードホルからなあ」
「このギムレーも頭は回るつもりだけど、野球経験はオシリスと同程度だ。ラミレスが監督でも意義はない」
「ミ、ミナサン……ワカリマシタ、任命サレタカラニハ、コノ人ト竜二ヨル新球団『イチリュウチーム』ノ監督トシテベストを尽クシマス!」


「チーム名、もう決まってたの?」
「他ノ方ヤアウラノミナサンカラ募集シタラコレガ一番無難デシタ」
「『幼女ガーディアンズ』とかマジふざけんなホル」

こうしてラミレスを監督とした『イチローチーム』『ドラゴンズ』が交差して生まれた『イチ 龍』もといイチリュウチームであった。

【イチローチーム・ドラゴンズ 合併】
【イチリュウチーム      新生】


406 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:32:49 GfcUmOac0



「私も正式にチームの一員になりましたが、まだ話は終わりません。
あなたがた対主催に取って良い報せがあります」
「何かしらサラ?」
『ここからはちょっと筆談で……私は首輪を外す技術を持っています』
『それは本当かい!?』

サラは個人でラグナメイルを元にしたロボット・龍神器を組み上げられるほどの才知を持っており、アウラの民の中では抜きん出た機械技術を持っており首輪解除への可能性も持っている。
首輪解除は対主催にとっての悲願であり、主催の監視・遠隔爆破や能力的な制約まで首輪を外せば取り払えるのである。
チート・理不尽級揃いのイチリュウチームならば大幅な強化が約束されており、現状のイチローたちに取っては喉から手が出るほど欲しかった。

『ただ、まだ解析度は80%ほど……外すまではあと二時間ほど誰にも妨害されずに城で研究したいです』
『すぐには無理か……』
『いや、首輪を外せる者自体が希少だろうし十分だ』

残念ながらサラの技量を持ってしても解析に長い時間を要するようだ。
シグナムはコツさえわかればすぐ外せると言ったが、そのコツを探すのが大変なのである。
むしろサンプルなしで即外した祐一郎さんや、サンプルありでも小一時間足らずで外したブリーフ博士が異常なのである。
狂信者のサーフに至っては完全に裏ワザであり、解除のコツそのものは発見できてない。
なんにせよ、イチリュウチームにとってサラの存在は良いニュースであった。

『首輪解除二2時間……トナルトヤルコトハ』「セッカクデスシ、ミナサンデ練習デモ――」
「みんなぁーーー!! ちょっと聞いてくれぇーーー!!」

時間が空いている間にラミレスが練習を提案するが、それより早くオシリスの大きい頭が城の扉をぶち抜いて皆を驚かせた。

「うわッ! マジでビクッた!」
「藪から棒にどうしたホルかオシリス!!」
「ソウルセイバー、ギムレー! 早くドラゴンネットワークを繋げ!」

何やら慌てている様子のオシリスの言うとおりにソウルセイバーやギムレーが頭の中でドラゴンネットワークを繋ぐと、驚くべき光景が広がっていた。

「これは……まずい!」
「どうしたホルか? ホルスは神鳥だからドラゴンネットワーク使えないホルけど」
「聖帝軍が東京で狂信者に襲われているの!
それだけじゃなくて都庁からの一団も向かっている……このままでは挟み討ちにされてしまうわ」
「聖帝軍がピンチホル!?」

ドラゴンネットワークに映るのはきらりんロボを主軸にしつつもカギ爪団の前に窮地に陥った聖帝軍の姿であり、その聖帝軍に向けて狂信者とは別の悪の手先である都庁の一団が向かっていた。
狂信者はともかく、都庁の方は聖帝軍を救援に向かっているのだが、悪のレッテルを貼り付けているイチリュウチームに取ってはどちらも大差なく見えるのだ。

「最終情報は一時間前……狂信者や都庁に積極的に近づきたがるドラゴンがいないからか」
「尚更まずいわ! すぐにでも助けに行かないと聖帝軍は嬲り殺しよ!」
「しかし、その場合は首輪解除が後回しになります。私は移動と研究は同時にはできません」
「狂信者も都庁も強そうホル、ヘルカイザーもいるかもしれないし有利に戦うには首輪を外した方が良さそうホルが、でも首輪解除を待ってたら聖帝軍は全滅するかもしれない……ううむ」

首輪解除を優先か、聖帝軍救援が先か、二択の内、片方は選べない。
そんな頭を悩ませるチームにオシリスは懇願する。
「頼むみんな! 後生だ。聖帝軍を助けることに力を貸してくれ!」と。

「オシリスあんた、黒炎竜を見捨てようとした癖に何言ってんスか!」
「確かに同じ球団である聖帝軍は助けてえが、首輪解除しないとチームに被害が出る!
俺たちはまだしも戦闘力で劣るアウラの民はバタバタ死ぬだろうな、それでも良いのかよ?
まさか聖帝軍にロリがいるから幼女にモテたいために助けに行きたいとかいう動機じゃないだろうな?」

オシリスは先の戦闘で後輩を助けるつもりであったとはいえ、その命を断とうとしている。
仲間を殺そうとした矢先、今度は犠牲を覚悟でロリの多い聖帝軍を助けにいけと言われれば身勝手にも聞こ得るだろう。
それに怒ったDAIGOと6/である。

「待ってくれ、俺は確かに黒炎竜を殺そうとした……そっちは謝らねえ。
あの状況じゃ死以外で黒炎竜を救う手段はなかった、そもなくば黒炎竜以外が全滅だ」


407 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:33:44 GfcUmOac0



「だがよう……黒炎竜の死で心を痛めているのに嘘はねえ。
それでいて聖帝軍も俺と同じようにかけがえのない仲間の死による悲しみを味あわせてくねえんだ」
「オシリス……」

オシリスは泣いていた。

「聖帝軍にロリがいるとか云々は関係ねえ。
球団同士なら拳王軍のような外道以外はみんな仲間も同然だ。
大魔神軍のように全滅なんてもってのほか、できるだけ早く救援をして一人でも多く救えるなら俺はその可能性にかけたい……今度は見捨てたくねえんだよ!!」

漢泣きを交えたオシリスの心からの言葉に先程までオシリスを非難していたDAIGOと6/も静まる。
モテる云々よりも野球仲間として聖帝軍を助け出したいのだ。



だが、イチリュウチームが選択を決意するよりも早く次なる事件が発生する。



「やろうぶっ殺してやらああああああああああ!!!」
「なんだ!?」

今度はリオレウスがベネットのような叫びを上げながら、今までに見せたことのない速度で飛翔するのが城の窓から見えた。
突然の出来事にイチローたちは驚きを隠せない。

「イチロー……」
「ダイゴ! どうしたんだその傷は?」

窓の外にはメタグロスに担がれた負傷したダイゴがいた。

「この動画を見たリオレウスを制止しようとしたら思いっきり尻尾で叩きつけてきた……それよりもこれを見てくれ」
「!?」

ダイゴが見せたのは遊園地の事務所から拝借したノートパソコン。
彼はイチローがチーム合併の話をしている間にネットで情報収集をしていた。
その際にエリカによって影薄組も見た、加治木ゆみの悲痛なる最期と拳王連合軍の大阪での非道を撮した動画に行き着いたのだが、偶然通りがかったリオレウスは見てしまったのである。
パソコンのモニターに詰め寄るイチローたちの視線が一点に集中する。

「この画面端にいるガンダムに撃ち落とされたリオレウスに似たドラゴンがいるんだが、これって……」
「……リオレイアだ。それを知った途端奴は暴れだして、拳王連合軍へ復讐に行っちまった……」

恋人の死を聞いて抜け殻になっていたリオレウスだったが、偶然にも拳王連合軍が恋人を殺した下手人だと知ってしまったことで、悲しみは怒りに裏返り、憎悪により暴走したドラゴンは単身で拳王連合軍が乗る高速艇に向けていってしまった。

「行くって一匹で? 無茶ホル! リオレウスのばかやろー!」
「拳王連合軍と言えばホワイトベース組すら全滅に追い込んだ最凶のマーダー集団。リオレウスさんじゃ勝ち目はありませんわ」

リオレウスは機動性はチーム随一だが、それで拳王連合軍に勝てる見込みは薄い。
故に無謀な暴走であると一部のものには思われた。

「いや……あいつの支給品なら拳王連合軍の包茎どもを全滅に追い込める勝算はあるわ」
「え?」
「あいつには毒ガスを支給されていたのよ、毒ガスを大タル爆弾に詰め込んだのを!」

毒ガスによって耐性のない参加者なら殺すことは不可能ではない。
今までの戦闘で使わなかったのは周辺や仲間にも危害が及ぶからである、そのような強力な支給品だからこそ拳王連合軍を一匹で皆殺しにできるとリオレウスは思ったようだ。
少なくとも己の機動性でカミカゼ特攻で刺し違えるつもりなら勝算は0ではない。

「使わせて拳王連合軍が全滅するなら御の字だけど、リオレウスは多分命を落とすわ。
おまけにあの暴走具合だと周辺の被害を考えないだろうから、関係のない参加者が巻き込まれる可能性が大きいかも」
「リオレウスの死も関係ない奴の巻き添えも避けてえ……だが、全員でリオレウスを追うと聖帝軍を見捨てることになっちまう」

アクシデントに悩み焦る仲間にサラと6/は提案する。

「私の龍神器の機動力ならば今から追えばリオレウス様が拳王連合軍と戦闘になる前に追いつけるかもしれません。その間に他の皆様は聖帝軍を救いに行くのはどうでしょうか?」
「ナッパも機動力で追いつけそうだな。動ける程度には治っただろうし回復ポットから出して追わせるのはどうだ?」
「サラ、君がいなくなったら合流するまでの間に首輪解除が大幅に遅れてしまう。
サイヤ人であるナッパは毒に耐性がないし、最悪の場合ガスを撒かれてナッパを失うことになる。
どっちを送るにしろリスクが高すぎる! 戦力分散でマーダーに各個撃破される危険もある」
「くッ……」
「しかしギムレー! リオレウスを見捨てるわけにもいかねえだろ」

提案はギムレーにより一蹴される。
首輪解除が先か、聖帝軍が先かの問題にリオレウスを追うか見捨てるかの問題まで加わり、チームを大いに悩ませた。
だがモタモタしているとリオレウスを見失ってしまう。


408 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:34:21 GfcUmOac0


「ワカリマシタ、ミナサン冷静二ナッテ。首輪ガ先カ、聖帝軍ガ先カ。監督デアル私ガ决メマス」
「ラミレス」
「出シャバルツモリハアリマセンガ、最終決定ヲ私二任セテクダサイ」

混乱するイチリュウチームをまとめるために、ラミレスは監督として最終決定を下さんとする。
選手たちでまとまらないなら監督が舵を取るのが責務である。
その責務は、チームの命運を左右しかねいだけに非常に重い。
ラミレスの帽子の下は緊張によって汗でびっしょりである。

何より首輪解除、聖帝軍、リオレウス。分散か集団で動くか。
どの選択肢を取ってもかけがえのない誰彼を見捨てるジレンマを抱えていた。

(ヒョットシタラ私ハ残酷ナ決断をシテシマウカモシレナイ。
ハラサンモコンナプレッシャーヲ、1ツ決断スル度二抱エテイタノデスネ)

それでもラミレスは決断せねばなるまい。
瞼の裏でかつて自分を導いてくれたハラサンならどうするかを考えつつ、ラミレスはカッと目を見開いた。

「腹ハ決マリマシタ。
イチリュウチームがまずすべきことは――」





【二日目・13時00分/千葉県遊園地】

【イチリュウチーム】
【共通】
※イチローチームとドラゴンズが合併して一つのチームになりました
※予言の中にある、争いの化身=殺し合いの中で混沌の力を身につけた参加者(=テラカオス)であると結論づけました
※主催は予言のことを知っていると断定しています


【イチロー@現実?】
【状態】健康
【装備】野球道具
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチローチームを優勝させる?
0:首輪を外す? 聖帝軍を助けに行く? 先にリオレウスを追う?
1:DMC狂信者を倒すために多くの仲間を集める
2:邪魔をしてくるDMC狂信者を倒すまでは試合は保留
3:予言に対しては慎重に考える
4:DMC狂信者の本拠であるビッグサイトを攻略したい
5:主催者は予言のことを知っているんだろうか?
※ネオ・レーザービームは使用すると腕に多大な負担がかかり、あと三球以上使用すると選手生命が終わる危険があります


409 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:34:37 GfcUmOac0


「ワカリマシタ、ミナサン冷静二ナッテ。首輪ガ先カ、聖帝軍ガ先カ。監督デアル私ガ决メマス」
「ラミレス」
「出シャバルツモリハアリマセンガ、最終決定ヲ私二任セテクダサイ」

混乱するイチリュウチームをまとめるために、ラミレスは監督として最終決定を下さんとする。
選手たちでまとまらないなら監督が舵を取るのが責務である。
その責務は、チームの命運を左右しかねいだけに非常に重い。
ラミレスの帽子の下は緊張によって汗でびっしょりである。

何より首輪解除、聖帝軍、リオレウス。分散か集団で動くか。
どの選択肢を取ってもかけがえのない誰彼を見捨てるジレンマを抱えていた。

(ヒョットシタラ私ハ残酷ナ決断をシテシマウカモシレナイ。
ハラサンモコンナプレッシャーヲ、1ツ決断スル度二抱エテイタノデスネ)

それでもラミレスは決断せねばなるまい。
瞼の裏でかつて自分を導いてくれたハラサンならどうするかを考えつつ、ラミレスはカッと目を見開いた。

「腹ハ決マリマシタ。
イチリュウチームがまずすべきことは――」





【二日目・13時00分/千葉県遊園地】

【イチリュウチーム】
【共通】
※イチローチームとドラゴンズが合併して一つのチームになりました
※予言の中にある、争いの化身=殺し合いの中で混沌の力を身につけた参加者(=テラカオス)であると結論づけました
※主催は予言のことを知っていると断定しています


【イチロー@現実?】
【状態】健康
【装備】野球道具
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチローチームを優勝させる?
0:首輪を外す? 聖帝軍を助けに行く? 先にリオレウスを追う?
1:DMC狂信者を倒すために多くの仲間を集める
2:邪魔をしてくるDMC狂信者を倒すまでは試合は保留
3:予言に対しては慎重に考える
4:DMC狂信者の本拠であるビッグサイトを攻略したい
5:主催者は予言のことを知っているんだろうか?
※ネオ・レーザービームは使用すると腕に多大な負担がかかり、あと三球以上使用すると選手生命が終わる危険があります


410 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:35:58 GfcUmOac0


【DAIGO@現実?】
【状態】ダメージ(小)
【装備】ウルティメイトブレスレット@ウルトラマンサーガ
【道具】支給品一式、ヴァンガードデッキ
【思考】
0:ドラゴンイチローチームについていく
1:ウルトラマンマジ頼れる
2:ダイゴさんマジリスペクト……意思は引継ぐっス
3:主催の目的はなんなんだ?
※サーシェスがテラカオスになると同時に首輪が自動で外れた瞬間を目撃しました


【ウルトラマンゼロ@ウルトラマンサーガ】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】基本:殺し合いを止める
0:聖帝軍も助けたいが、リオレウスも止めたい
1:どうにかしてDMCを止めたい
2:あと数時間待てばもう一度変身できる?
3:ホルスの黒炎竜、助けられなくてすまない……
4:触手男のような混沌の力を持つ者を見つけることが主催の目的ではないかと睨んでいる
※制限によって一度に数分までの間しか変身できません
 一度変身すると12時間は変身できません
※首輪を外さない場合二日目22時になれば再び変身ができます
※サーシェスがテラカオスになると同時に首輪が自動で外れた瞬間を目撃しました


【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【状態】健康
【装備】サングラス
【道具】支給品一式、マスターソード、魔竜石、リザイアの書、不明品
【思考】
0:ドラゴンイチローチームについていく
1:DMC狂信者達と戦う
2:銀次は後回し、つーか今期カオスロワにいない気がする
※邪眼を一回使いました


【伊吹萃香@しゅわスパ大作戦】
【状態】ほろ酔い、強い悲しみと怒り
【装備】なし
【道具】支給品一式、日本酒×50
【思考】
基本:ドラゴンイチローチームについていく
0:仲間が次々と死んでメシマズ状態
1:久保先生を信頼していたのに……
2:もう野獣が死んで喜ぶどころじゃない
※悲しみと久保帯人の裏切りに対する怒りを紛らわすために日本酒を大量消費しました


【ダイゴ@ポケットモンスター】
【状態】ダメージ(大)、深い悲しみ
【装備】メタグロス
【道具】支給品一式 、コルトパイソン
【思考】
0:ドラゴンイチローチームについていく
1:助けてあげられなくてごめんな、ポッチャマ、ちなつ……
2:きれいな石集めは今は忘れる


【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手】
【状態】健康、悲しみ
【装備】胡桃三千個
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:新生したイチローチームで予言の完遂を果たす
1:ハラサン……ありがとう
2:大正義を忘れない
3:目立つことも忘れない
4:予言に対して盲信気味


【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【状態】ダメージ(中)、野球脳、激しい怒り、回復用ポットの中
【装備】なし
【道具】一人用のポッド
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:早く傷を治して対主催を助けに行きたい
1:野球を邪魔するDMCは許さない
2:あのガキ(光熱斗)にはいつか報復する、野球で
3:ベジータはそのうち探す
4:また多くの仲間が死んじまった……自分の無力さが不甲斐ない
5:早まるなリオレウス!
6:サラマンディーネに気がある
※回復した場合、戦闘力が大幅に上昇します
 現在は回復用ポットの中にいるので出られません


【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【状態】右足切断(処置済み)、監督といて生きていく決意
【装備】野球道具一式
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:聖帝軍ガ先か、リオレウスサンガ先カ、監督トシテ決断ヲ下サネバ
1:コレカラハ監督トシテガンバッテイク
2:リ、リオレウスサン……
※イチリュウチームの監督になりました


411 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:36:35 GfcUmOac0


【オシリスの天空竜@遊戯王デュエルモンスターズ】
【状態】ロリコン、深い悲しみ
【装備】バット、グローブ、ボールを多数
【道具】支給品一式
【思考】基本:ロリにモテるために世界を救う予言の謎を解明し、ドラゴンイチローチームも優勝させる
0:聖帝軍を助けたいが、リオレウスはどうすべきか
1:ホルスの黒炎竜……
※オシリスの見立てによると魔力(生体マグネタイト)が集中しているビッグサイトへの直接攻撃は大爆発を招き、東京を巻き込む危険性があるそうです


【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【状態】健康、悲しみ
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:世界を救うためにオシリスについていく
0:こんな時に……リオレウスのばかやろー!!
1:死んでしまった奴らのためにも頑張るホル!
2:麒麟もとうとう呼ばれてしまったホルか……素直に喜べない
3:新顔のサラは良い横乳持ってるホルね


【ソウルセイバー・ドラゴン@ヴァンガード】
【状態】ダメージ(小)、巨乳
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:世界を救うためにも、オシリスについていく
0:リオレウス……
1:人間のオチ○ポには絶対に負けたりしない
2:都庁軍討伐は後
3:都庁軍は絶対に信用しない
※♀です


【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒】
【状態】ダメージ(小)、魔力消耗(小)、人間形態
【装備】トロンの書、鋼の剣、邪竜の鱗
【道具】支給品一式、不明品
【思考】基本:野球で優勝して、自分の信者を増やす
0:リオレウスを止めたいが、今は聖帝軍を優先すべきか……
1:試合の邪魔をするDMC狂信者を倒すために、本拠であるビッグサイトを攻略したい
2:予言に対して少し懐疑的
※外見はデフォルト設定の銀髪青年です
※制限により、しばらく邪竜形態でいることはできません
※首輪を外したとしても、屍兵は簡単には生み出せません


【サラマンディーネ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
【状態】健康
【装備】焔龍號
【道具】スクーナー級×500、ガレオン級×30、首輪×10、首輪のスクラップ×40
【思考】基本:対主催
0:焔龍號の機動性ならリオレウス様を追えますが……
1:ドラゴンイチローチームについていく
2:滅亡を止めたいとは思うものの、予言に関しては懐疑的
3:首輪解除のためにゆっくりできる時間が二時間ほど欲しい
※予言には主催者も関わっていると推測しています
※首輪解除技術を持っていますが、技術面で祐一郎さんやブリーフ博士を下回っているため、解除方法を見つけるまでに最低二時間以上かかります

―― ―― ―― ―― ――


412 : クロスイチロー〜球と竜の輪舞曲〜 :2017/09/20(水) 01:37:29 GfcUmOac0



「殺す殺す殺す! 刺し違えても拳王連合軍は皆殺しにしてやる!!」

千葉県の上空、まだ遊園地が見える距離では復讐に狂ったリオレウスがいた。
リオレウスはもはやヘタレ払拭のために野球を続けるつもりはなく、世界を救う予言の件もどうでもよくなっていた。
ただ恋人を奪った拳王連合軍に一泡吹かせるならそれで十分である。
そのために自分が死のうが他の誰が死のうが関係なかった。

この復讐心がリオレウスの絶望によって空いた心の穴を埋め、皮肉にも狂信者堕ちを防いでいるのである。
それほどまでに恋人がビームで焼かれる映像はリオレウスの心に憎しみの炎を煽ったのである。

「悪いなダイゴ、みんな……だがもう俺はもう戻らねえ!
拳王連合の奴らを殺さないとレイアの魂が報われない気がするんだよ」

おそらく自分の実力では復讐の過程で拳王連合軍に殺されるだろうが、それでも復讐を遂げられるなら構わなかった。
リオレウスが足の爪に握っているのは毒ガス入り大タル爆弾、そして死への片道切符であった。



【二日目・13時00分/千葉県 上空】

【リオレウス@モンスターハンターシリーズ】
【状態】ダメージ(小)、激しい怒りによる暴走
【装備】毒ガス入り大タル爆弾
【道具】支給品一式
【思考】基本:(暴走中)
0:刺し違えても拳王連合軍はぶっ殺す!!
1:リオレイアのためにも……!
2:復讐のためならもうヘタレ払拭とかどうでもいい


413 : 名無しさん :2017/09/20(水) 01:38:05 GfcUmOac0
投下終了です


414 : 名無しさん :2017/09/20(水) 01:39:07 Rr9YqmP20

さらなるケオスへと


415 : 名無しさん :2017/09/20(水) 19:13:33 0Xgm24Mo0
投下乙
合併と本来の監督がついて野球チームとしては再起したが同時に問題が多発したなぁ…
しかし拳王軍は一応対主催なのに気がつけば霧切さん以外の全対主催から極悪マーダーと思われてんのもすごい話だ


416 : ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:03:18 R.Kq/aRY0
予約の拳王連合軍を投下しまっせ


417 : 光熱斗の奇妙な冒険 ネットオーシャン ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:04:42 R.Kq/aRY0
DMC狂信者の煉獄を下し、激戦区東京に向かう拳王連合軍の高速艇。
ついでに煉獄は戦力として使えそうなのでパクった。
こちらの操縦はシャドーマンである。

ところが、彼らは急に進路を変更し横浜に向かう。
彼らのパワーアップに協力したいという男が横浜港で待っているというのだ。
拳王連合軍の高速艇+戦艦は横浜港に着港した。

拳王連合軍を待っていたのは怪しげな博士とKKK団を紫色にしたようなローブを被った助手であった。
ダイジョーブ博士とゲドーくんである。
彼らは巷で極悪マーダー扱いされている拳王連合軍に対しても、しっかりと言い分を聞いた上で好意的に受け入れた。

※なお、原作の博士はカタコト口調だが、読みにくくなるのと喋り方がラミレスと被る問題を考慮してここではひらがなを使わせてもらいます。



「なるほど、そういうことですか」
「ギョギョ」

拳王連合軍のネットで流された悪い噂を一つずつ、解き明かしていくと。

○主催との関わりによる首輪解除
 →首輪解除は祐一郎さんの独力によるもので主催との関わりは一切ない。

○祐一郎さんによる九州のロボへの改造
 →元は主催本拠地を探すためだけであり武装もついてなかった、主催に奪われたために兵器を後付けで取り付けられた。

○祐一郎さんによるチサオ投棄による女性死亡
 →悪いのは操縦の邪魔をしていたチサオの方であり、女性については完全に事故。

○度重なるマップ破壊
 →ほとんど関与していない。
 兵庫県を破壊したのは緑間だが、彼は突然仲間を裏切ったのであり、破壊は彼が勝手に行ったものである。
 京都破壊に関しては本当に誰も知らず、どこかのマーダーが無人になった死国に乗り込んで兵器を奪って破壊を行い、罪を擦り付けたものだと思われる。
 (その他のマップ破壊は距離が遠すぎて認識できていない)

○野球という名を借りた暴挙
 →仕掛けてきたのは大体敵チーム。
 カオスロワ式野球は死人が出るのは当たり前で、切腹に関しては頼んだわけでもないのに負けた相手が勝手にやってる。

○同盟である超人血盟軍の野球という名を借りた暴挙
 →ガチレズどもは裏切ったが、それ以外の血盟軍は立派な対主催である。
 フリーザ軍を虐殺したと言っているが、フリーザこそ指一本で星一つを滅ぼせるほどの悪の権化であり、細かいルールに縛られた状態で挑むと血盟軍の方が虐殺されていたと思われる。

○大阪へのサテライトキャノン攻撃
 →ホワイトベース組に攻撃を仕掛けられたことによって起きた流れ弾で単なる偶然。
 そして(なぜか小町の功績になっているが)サテライトキャノンを防いだ侍も今では仲間である。

○大阪での略奪
 →食料を探していただけであり、もらった分はお金をちゃんと支払うつもりだった。
 住民が先に逃げてしまったが、レジや戸棚にはちゃんと相場より高いお金を入れている。

○大阪での虐殺 
 →バスターガンダム(のび太)の暴走は、事前に何者かに仲間の死(特にドラえもん)を見せつけられたことによりものであり、飛んでいった流れ弾が人々を襲ったのは偶然である。
 ネットではロードビヤーキーの方が人々を守ろうとしたとして英雄視されているが、真実は逆で攻撃を仕掛けてきたのは向こうであり、拳王連合軍は迎撃を行っただけ。
 攻撃のタイミングが良すぎるところからして仲間を惨殺したのもロードビヤーキーの仲間だと思われ、民間人を庇ったように見えたのは墜落地点がたまたま避難民の前だっただけであり、盾になったのではなく起き攻めを喰らって動けなかっただけである。
 そもそも攻撃されなければのび太が暴走することもなかったのだ。

○ホワイトベース組全滅
 →二度に渡る襲撃はいずれも向こうが勝手に勘違いをして襲撃してきて、こちらは反撃しただけである。
 反撃しなければこちらが全滅していた。
 その後は誤解も晴れてラーメンマンを通して和解したハズである。
 その後のホワイトベース組の全滅は感知してないが、大阪を離れた拳王連合軍の手によるものではない。


緑間・ガチレズの裏切りに気付けなかったことやクソレフトのび太暴走の件は過失が全くないとは言い切れないが、大半はネットの風評被害による誤解であり、真っ当な対主催であるとタクアンは主張した。
その主張を飲み込んだ上でダイジョーブ博士は彼らを受け入れたのだった。


「風評被害に囚われず、私たちのことをわかっていただけて助かりました」
「いや、なに。私は科学者として自分の見たもの聞いたものしか信じないのデース!
何より、友人である祐一郎くんの息子や仲間が殺し合いに乗っているなんて信じられなかったのデース!」
「え? ダイジョーブ博士はパパと知り合いなの!?」

死んだ父・祐一郎と親交があると語った博士に熱斗が飛びついた。


418 : 光熱斗の奇妙な冒険 ネットオーシャン ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:05:36 R.Kq/aRY0

「ええ、研究分野も違うですし年はだいぶ離れていますが、私と祐一郎くんとサーフくんはブリーフ博士に並べると謳われた科学界の三本柱にして、三人は最良の友にして競い高め合う良きライバル同士だったデース。
それだけに祐一郎くんが汚名を着せられたり、挙句に死んでしまうのは悲しいものでした。
ここにいないサーフくんもきっとライバルの死にはどこかで泣いているでしょう」
「………」
「私は友の真実を知りたいがために、そしてもし対主催であれば力を貸すためにここに馳せ参じました」

ダイジョーブ博士は眼鏡の下でうっすらと涙を浮かべていた。



「さて、あなたたちが悪者でないと知った上で本格的に協力をいたしましょう。
まずはこれを見てください。今の東京の惨状デース」
「これは……!?」

博士が持っていたタブレットから映されたのは、それは午後二時現在までの東京の戦況である。
そこはマーダーと狂信者と怪獣が跋扈した激戦区ならぬ修羅の国。
特に都庁の魔物と協力者、そして悪魔将軍ですら存在を脅かされると評したフォレスト・セルは郡を抜いた戦闘力を持っている。
書かれた情報によると同盟の超人血盟軍も都庁の手のものによって全滅したらしい。
すぐに瞬殺されそうなM字ハゲはともかく、冷静で的確な判断力を持つアタルと猛者悪魔将軍の配下でも優秀な悪魔超人二人が倒されたとあらば、都庁の戦闘力と残虐性はわかるものである。

「これが東京……そしてヘルヘイムの実力」
「この拳王が負けるつもりはない……しかし」

その凄まじさに拳王連合軍全員が冷や汗を流す。
拳王やタクアンすら「これは流石にまずい」と肌で感じていた。

「ん? ヘルヘイムってナンデース?」
「ダイジョーブ博士、まずはこれを見てください」
「……これは!」

ヘルヘイムが何か知らずに首を傾げる博士にタクアンはデューオの入ったPSPを博士に見せる。
そこには世界を滅ぼしかねない悪魔の植物ヘルヘイムの詳細が書かれており、特徴の一致から都庁の世界樹=ヘルヘイムという誤解を伝播させた。

「ここにいるセイ……ヒロインXさんも世界が滅ぶのはヘルヘイムのせいだと疑っています」
「ええ、間違いないでしょう。私としては食べると変な生き物になる果物しかない世界なんて真っ平御免ですのでさっさと焼き払っておくべきだと思います」
「これはまずい。ゲドーくん、すぐにネットにヘルヘイムの情報をコピペして緊急拡散デース!」
「ギョギョ!」

そしてダイジョーブ博士によってヘルヘイムの森の情報がカオスロワちゃんねるに拡散された。
もちろん都庁の世界樹=ヘルヘイムという誤情報を添えて。

「ホワイトベース組も一部例外を除くと強者揃いだったけど、こいつらは奴らの何十倍も強いね……ぶっ殺しがいがあると本当なら武者震いしたいところだけど……」
「そのホワイトベース組に俺たちは半壊させられている。
今の実力と怪我の具合からしても東京に踏み込めば全滅すると分かる。
黒幕の元に向かった悪魔将軍のための陽動もできなくなる」
「あの……黒幕でしたら、シグナムさんが倒したと言ってましたが、悪魔将軍様は聞いてくれませんでしたけど」
「「「いや、それたぶんニートが適当についた嘘でしょ」」」
「ワープが突然現れてそれがラストダンジョンにたまたま繋がっててラスボス倒して帰ってきましたとか、ご都合主義にもほどがあるだろ?!
ニートがホワイトベース戦をサボった言い訳を適当に作っただけだと見抜けないおまえの頭はモンキーなのかァ? 翔鶴ゥ!」
「うう……ごめんなさい、やっぱりそうですよねー」

血の気が多いMEIKOや平等院すら東京の魔境ぶりに頭を悩ませるほど。
ちなみにシグナムの黒幕打倒の件は翔鶴が口にしても誰も信じてくれず総ツッコミを受けた。
ついでに煽りすぎて翔鶴を涙目にしたディオは直後に彼女の兄二人にしばかれた。


419 : 光熱斗の奇妙な冒険 ネットオーシャン ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:06:21 R.Kq/aRY0

「だがどうする? 怪我を治す時間も修行する時間も惜しいぞ?
クソッ、ホワイトベース組の馬鹿どもがいらんことしなければ……」

クロえもんの意見は最もである。
ホワイトベース組との戦いで受けた傷は未だに治りきっておらず、今から修行を積むにも時間がない。
むしろ時間を与えれば与えるほどヘルヘイムもDMC狂信者も強化されてしまう。
そうすればいつかは両勢力が東京を飛び出して富士山麓にて黒幕打倒中の悪魔将軍の邪魔をしかねない。
ホワイトベース組の襲撃は人命のみならず、貴重な時間をも奪っていた。

「ダイジョーブデース!
そんなあなたたちに打って付け機会もとい機械を持ってきました!」

頭を悩ませる拳王連合軍に解決策を持ってきたのはダイジョーブ博士であった。
外道くんがディパックから電気椅子みたいなマシンを取り出す?

「ダイジョーブ博士、これは?」
「この椅子に座ると10分で肉体を刺激することであなたたちの戦闘力を今の30倍以上まで高める装置デース!
しかも野球に関する能力に限定すればメジャーリーガー級まで上昇することができマース。
さらにネットナビもロボットも関係なく強化できマース。」
「たった10分で戦闘力が最低でも30倍は跳ね上がる、野球の腕はメジャーリーガー級……イチローレベルにまで上がるだって?」

MEIKOもこれには驚きである。
イチローと言えばレーザービームの使い手でその気になれば地球爆破もお手の物だ。
メジャーリーガーとはスーパーサイヤ人に匹敵するほどの力を持っているのだろう。
理不尽級揃いの拳王連合軍が超理不尽級の力を得るのだ。

「だったらアタシたちにその装置を早く使え!」
「ちょっとお待ちくださーい。
努力なしに力を得るほど世の中甘くアリマセン。
代価として死ぬほどの激痛が襲い、失敗すると最悪死にます。
生きていても、戦闘力が0.01倍まで激減します」
「なんだと!?」

博士が言ったとおり、タダで力がもらえる道理はなかった。
激痛の果てに失敗すれば死亡のリスク、生きていても戦闘力は1%まで下がり、モブ狂信者にも勝てなくなるギャンブルである。

『して、成功率は?』
「常人なら40%と言ったところデース。
私やゲドーくんのような戦闘と一切無縁の者なら乗っただけで死ねマース」
『いくらなんでも成功率が低すぎる。お館様、やめた方が身の為でしょう』
「ああ、そうだな……」

上条とシャドーマンは半分未満の成功率に引き気味であった。
激痛の果てに失敗して力や命を失うぐらいなら多少無茶でも今のまま戦った方がいいと思えたのだ。
上条だけでなく他数名もそう思えた、が、一人だけ装置に歩み寄るものがいた。

「どいてろジョジョ」
「ラオウ?」
「博士、外道、時間が惜しい。早く装置を起動するのだ」

拳王連合軍の長であるラオウである。
ラオウは悠然と椅子に座り、催促する。


420 : 光熱斗の奇妙な冒険 ネットオーシャン ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:07:10 R.Kq/aRY0

「やめておけラオウ! 60%で何もかもを失うかもしれないんだぞ!」
「言い換えれば40%もあるのだ。
天への道は目の前にあるかもしれないのに、こんなところで怖気づいて引き下がるわけにはいかん」

平等院が止めにかかるが、ラオウは彼を振り払い、ドカッと装置に座る。

「……いいんですか? 運が悪ければ死にますよ?」
「能書きは良い。早くやるのだ」

博士の最終確認にも怯えた様子を見せずに拳王は悠然と座り、頭には怪しげな装置が巻かれた。

「ラオウ……」
「止めるなよ、MEIちゃん。
拳王連合軍の、いや、人類の底力を野球を通してヘルヘイムに、DMC狂信者に、マーダーに、主催者に、黒幕に見せつけねばならん。
そのためにも俺は命を懸けて力を得るのだ」
「止めないさ、アンタはそういう奴だからね。
それでこそ私の恋女房にふさわしい……本気でアンタとの子が欲しいぐらいさ。
……だから死んだら殺すからな」
「ああ」

MEIKOのみがラオウが装置を使うことに一切反対しなかった。
これはラオウへの信頼の表れであった。

「覚悟はとっくに完了済み……さすがは拳王を名乗るだけはある。では装置を起動するデース!」
「うむ」
「……努力せずに力を得る。
それがどんなに苦痛を伴うことか、身を持って知るがいいデース!
神でも悪魔でも好きな方に祈るがいいデース!」
「ひとつ言っておくが、俺は新たなる世界を気づくために努力ではなく死力を尽くす。
そして天を目指すこの拳王は神にも悪魔にも祈らん!!」

死刑宣告じみた博士の言葉を聞いてもラオウは臆した様子を一切見せず、装置を起動させた。
装置からバチバチと電撃のようなものが出てラオウの肉体に激痛が走る。
それは北斗神拳伝承者候補すら叫ぶレベルであった。

「う……ぬおおおおおおおおおおおおお!!」
「ラオウ!!」
「止めんな! 奴の覚悟が無駄になる!」

悲鳴を上げるラオウを見て思わず装置を止めようとした拳王連合軍の面子に待ったをかけるMEIKO。
MEIKO、タクアン、博士と助手を除いた全員ががラオウが死ぬのではないか、そして本当に強くなれるのか疑問に思いつつ、時間が経つのを待つしかなかった。



そして10分後……



装置が止まると、ラオウは白目を向いて力尽きたように装置の椅子に座っている姿が見えた。

「ラオウ……」
「博士、拳王様は……」

装置が止まっても動く様子のないラオウに不安の目を向ける面々。
だが、すぐに拳王はパチリと開眼し、眼を周囲に向けると始めにMEIKOとタクアンの顔が見えた。

「ラオウ!」
「拳王様!」
「北斗真拳の修行が遊びに思えるほどのかなりの激痛であった……だが! 力の漲りを確かに感じるぞ」

装置から立ち上がったラオウの纏うオーラは誰が見てもわかるほどに増大していた。
肉体の治癒スピードもアップしたのか、ホワイトベース戦で受けた傷もあらかた治っている。

「MEIちゃん、頼む」
「ああ!」

ラオウの言葉と眼差しから何かを汲み取ったMEIKOは笑顔を向けるやいなや、ラオウに向けて投球のフォームを取った。

「MEIKOおばさんそれって」
『MEIKOボール!?』
「それも全力バージョン!?」

光三兄妹が驚いたのも無理はない。
なんとMEIKOは暴走緑間戦で見せた無限の回転を利用した全力版MEIKOボールをラオウに向けて投げつけたのだ。
いくらラオウとて殺人球をまともに受ければ粉々に吹っ飛ぶであろう。


421 : 光熱斗の奇妙な冒険 ネットオーシャン ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:07:42 R.Kq/aRY0

「ぬうんッ!!」

……今までのラオウであればだが。

「マジかよ……」
『MEIKOボールを』
「ああも簡単に!」

全力版MEIKOボールをラオウは片手で止めたのだ。
直撃すればどんなチートキャラでも無残な骸を晒すであろう殺人球を傷一つなく片手で。
それに対して驚かない者はこの場にはいないだろう。
さらに拳王は自らが実験台になることでダイジョーブ博士の実験の成果は本物であると証明したのだ。

「すごい! 今のラオウさんは間違いなくメジャーリーガー級の力を持っている!」

メジャーリーガーであるムネリンのお墨付きである。

「礼を言うぞ、ダイジョーブ博士」
「ふむ、こちらこそ痛みに耐えて感動しました。嘘とは言え40%にかける覚悟、見事デース」
『嘘、え?』
「おいおい、60%で死ぬとか嘘とかは嘘だったのか?!」
「幾多もの実験を繰り返した私の経験値はMAXデース。成功率は99%で失敗は誤差レベル。失敗しても死亡はしません。
流石に激痛のために肉体や精神力の弱い常人には装置に耐えられませんが、あなたたちの大半の選手は耐えること
ができます。
ですがそれを言ってしまうと安易に力を得ようとしてしまうと思い、あなたたちを試すために成功率は40%と嘘をついたのデース」
「つまり私たちの覚悟を試すためだったということですね?」
「Exactly(そのとおりでございます)」

全ては拳王連合軍の覚悟を知るためであった。
力を与えるにしても覚悟の力、黄金の意思は必要なのである。
ちなみに実験を繰り返して博士の経験値(内部値)が上がるのはパワプロ2016仕様である。

「もし怯えてしまっても装置を使わせるのは危険と思い、別の対主催にでも使うつもりでしたが、良いものを見せてもらいました。
拳王様の勇気に免じてこの装置をあなたたちに差し上げましょう」
「いいのか?」
「拳王様、あなたなら力を正しく使えるでしょう。
私とゲドーくんはこれから会わねばならない方……対主催のイナバ社長がいるのでこれでおいとまさせてもらいます。
それからパイプのあるイナバ社長にはあなたたちの無実の件を伝えておきましょう」
「イナバ社長とは誰だ?」
「イナバ社長……あの有名なイナバ物置製作所の社長で、冷静に物事を精査できる人。
その人の力添えがあれば私たちの無実証明に繋がりやすくなりますね」

令嬢故にタクアンはイナバ社長のことを知っている。
あくまで民間人の保護優先かつ地下で動いているので小野塚小町やイチローチーム、聖帝軍ほどの知名度はないが、ロワ開始前から人格と経営手腕共に信頼されている数少ない男である。


「では私は件の社長に会うために一足早く東京へ向かいます。
イナバ社長にはあなたがたの力になれるように私から説得しておきます。
では、生きていたら東京で会いましょう」
「ギョギョ!」

外道くんはホイポイカプセルから支給品の車を出し、ダイジョーブ博士は外道くんが運転する車に乗って出発した。
近いうちに拳王連合軍と再開できる時が来るのだろうか。


422 : 光熱斗の奇妙な冒険 ネットオーシャン ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:08:26 R.Kq/aRY0



そして装置を手に入れた拳王連合軍は彼の残した装置をラオウに続いて使おうとする。
少なくとも死にはしないとわかれば、力を得るために我先にと装置に乗ろうとする。

「おいおい、邪魔すんなよディオ」
『ここはお館様に譲れ』
「どけいJOJO! というか俺もそろそろクロスフュージョンしたいんじゃ!」
『……肉体強化するだけでクロスフュージョンってできたっけ?』

今の上条とディオのように、ひとつしかない装置を巡って喧嘩になりそうな一行をまとめあげるのはタクアンの役目である。

「待ってください皆さん、ここは私が順番を决めます」
「「タクアンさんがそう言うなら」」
「その言い方怒りますよ、二人共」

そしてタクアンによって順番、そして装置を使えない人間が決まったのだった。
装置による強化が終わった暁には、拳王連合軍はこれまで以上の超野球戦闘集団になるだろう。






数分後の、横浜の波止場。
そこには一人寂しくデカオの残した弁当を食べる熱斗の姿があった。

「はあ……みんなは良いなあ。強化できる体を持っていて」

熱斗は残念ながら装置による強化枠から外されてしまった。
理由は熱斗はネットバトルは最強レベルであるが、肉体そのものは年齢相応の少年であり装置に肉体が耐えられないとのタクアンなりの判断であった。
同じくいちおう腕力以外は一般人レベルのタクアンも装置は使わなかった。
また、最初からメジャーリーガーであるため強化の見込めないムネリンや、バッティング以外はしたくないプニキも装置の使用を拒否した。
強化できるのはロックマン、翔鶴、MEIKO、平等院、上条、シャドーマン、ディオ、デューオ、クロえもん、ダイアーさん、謎のヒロインだけである。
強化が終わるまで暇なので熱斗は横浜港で遅めのランチタイムとシャレ込んでいたのだ。

「彩斗兄さんと翔鶴がパワーアップするならこれはいらないかな」

熱斗の手には数枚のダークチップが握られていた。
これは煉獄を手に入れた時に倉庫から見つかった代物である。
非常に強力なチップで使い方次第では探し求めているプリズムとフォレストボムによるコンボすら凌ぐ力を発揮する。
ただし……

「これは使えば使うほどロックマンが、彩斗兄さんが悪に染まっちゃう……使うわけにはいかないな」

多用するほどロックマンの心が闇に染まってしまう呪われたチップなのだ。

「確かに強力だけど、拳王連合軍はこれからもっと強くなる。
前に進む覚悟さえあればこんなものに頼らなくても強くなれるとラおじさんが教えてくれた。
……やっぱりこれは捨てよう」

弁当を食べ終わった、熱斗はダークチップを海に捨てる決意を固める。

「見ててパパ、俺と兄さんと翔鶴はこんなのなくたって戦っていける。
人類を脅かすヘルヘイムとかを倒して未来を必ず平和する。
だから安心して眠ってて、パパ……」

熱斗およびロックマンと翔鶴は、父である祐一郎さんの死によって一時的に塞ぎ込み、煉獄戦にも参加できなかった。
しかし先ほどのラオウが見せた勇気によって励まされたために、再び戦う意思を固めたのだった。
父は天国で子供と仲間を見守っていると信じて、投球フォームを取り、悪しきチップを海へ投げ込もうとする。

ぐぎゅるるるるるる
「ぐはあ!?」

ところがチップを海に捨てようとしたその時に、腹に激痛が走った熱斗は投擲を中断する。

「お、お腹が痛い。デカオの弁当が腐ってた!?」

お弁当ができたのが10期序盤(一日半前)だし、腐っているのも無理はない話である。
食べ物の消費期限には気を付けようね!

「早くトイレに……!」

チップを捨てるのを後回しに熱斗は急いでトイレを探し、運良く仮説便所見つけた彼は駆け込んだ。
なんとか社会的な死だけは免れたようだ。


423 : 光熱斗の奇妙な冒険 ネットオーシャン ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:08:58 R.Kq/aRY0



一方その頃、煉獄内部。

「WRYYYYYYYYYYYY!!! 見るが良いJOJO!!! 俺様の肉体が最高にハイって奴だ!」
『俺もPSPからPSVITAにアップグレードしたぜ! ……何がすごくなったのかわからんけど』

装置を使った結果、ディオは三部みたいなムキムキマッチョマンになった(紛らわしいが吸血鬼化はしてない)。
デューオの筐体もPSPから次世代機のVITAになった。
絆とかも出来てそうだし、そろそろクロスフュージョンできるんじゃね?(適当)

「では次は、ロックマンさん、その次に翔鶴さんで行きましょう」
『翔鶴さん、僕を装置の上に』
「ええ、わかりました兄さん」

翔鶴が装置の上にロックマンの入ったPETを置き、装置の端子がPETに接続された。

(見てて、パパ。僕が強くなって熱斗も翔鶴も絶対に守れるようになる!
そのために僕はどこまでも強くなる!!)

熱斗の兄であるロックマンも決意していた。
父がいなくなった分も弟と妹を守る。
そのためにどんな痛みを伴っても力を欲したのである。
装置が起動するとロックマンにも強い痛みが走ったが、弟と妹への愛でこらえていくのだった。



また同時刻への東京へ繋がる海沿いの道路。
拳王連合軍と別れたダイジョーブ博士はタブレットを使ってイナバ社長とメールを取ろうとしていた。

「これこれこういうわけで拳王連合軍は信頼できまよっと……ポチッとな」

イナバ社長に直接会う前に、先に自分たちが彼の隠れているシェルターに向かっていることと、拳王連合軍が風評被害に踊らされた対主催であることを知らせるメールを送った。
電話を使わなかったのは向こうが立て込んでいることを考慮したためである。

「転送完了、あとはシェルターにたどり着くだけだっと……おや?」
「ギョギョ?」
「いや、たったいま行方不明になっていたサーフクンからメールが届いたようデース。
無事でなによりデース……なになに?」

そのメールは友人であった研究者のサーフ・シェフィールドから届いたメールであった。
ダイジョーブ博士はさっそくアイコンをクリックしてメールを開いた。



「あれ? タブレットが照れてる……というかなんか光ってるデース!?」
「ギョギョーーーッ!?」


次の瞬間、タブレットが光ったと思いきや爆発し、車内にダイジョーブ博士とゲドーくんの血肉が飛散した。
そして運転手を失った車はそのまま暴走してガードレールを突き破り、断崖絶壁から海へとダイブして消えていくのだった……


【ダイジョーブ博士@パワプロシリーズ 死亡確認】
【ゲドーくん@パワプロシリーズ 死亡確認】


424 : 光熱斗の奇妙な冒険 ネットオーシャン ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:09:58 R.Kq/aRY0




【二日目・14時30分/神奈川県 横浜港】
※ダイジョーブ博士の残した装置に座れば10分の所要時間でメジャーリーガー級の力を得られます
 ただしプニキは拒否、宗則は元からメジャーリーガーなので意味なし、熱斗と紬は肉体的な理由から使用できません
※協力していたダイジョーブ博士によりヘルヘイムの情報がネットで拡散されました
 内容は都庁の世界樹=ヘルヘイムと誤解しているものです
※同じく拳王連合軍が無実であることを綴った旨のメールがイナバ製作所社長のシェルターに送られました
※大阪戦でWBがばら撒いたミノフスキー粒子が邪魔だったのでカオスロワちゃんねるのテラカオス・ディーヴァのレスに未だに気づいていません
※シグナムの黒幕打倒の話を誰も信じていません

【光熱斗@ロックマンエグゼ】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、食中毒、首輪解除、仮設便所の中
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、チップトレーダー@ロックマンエグゼ、
    大量のガッツマンのチップとバグのかけら、ガンデルソル3(実物)ネオバリアブル(実物)
    各種ナビカスタマイザーパーツ、大量の金、シンクロチップ、ダークチップ一式
【思考】基本:主催者たちにネットバトルを挑んで勝つ!
0:お腹が痛いので今はトイレに専念……デカオめえ……!
1:プリズムとフォレストボムのチップを探す
2:その為に色んな人にネットバトルを挑む
3:大災害で死んだネットバトラーやネットナビ達のためにも、早く殺し合いを終わらせて世界を平和にし、ネットバトルの面白さを再び世界に広めたい
4:新たな家族として翔鶴は大切にしたい
5:ダークチップを早いとこ捨てたい
※スタメン落ち確定です。野球の公式試合には一軍では参加できません。
※大山デカオの死を知りません
※熱斗やヒノケンなど一部を除く多くのネットバトラーが大災害で命を落としているようです。
 まだ生存しているネットバトラーの面子については次の書き手氏にお任せします。


【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【状態】装置による強化中
【装備】ロックバスター、サイトパッチ&試製甲板カタパルトのデータ
【道具】なし
【思考】基本;熱斗をサポートする
0:パパのためにも熱斗と翔鶴は僕が守る!
1:主催者たちにネットバトルを必ず受けさせる!!
2:新たな家族として翔鶴さんは大切にしたい
※PETの中にいます
※ダイジョーブ博士の残した装置で強化中です。強化が終わるまで10分かかります


【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【状態】ダメージ(小)
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、熱斗のPET(ロックマン入り)
【道具】なし
【思考】基本:妹として熱斗達と共に戦う
0:提督……
1:襲い掛かる者たちを殲滅する
2:二人の妹として彩斗さん(ロックマン)と熱斗さんはお守りする
3:二人に何かあった場合は二人の願いを引き継ぐ
※熱斗とロックマンより、二人の過去についての話を聞き、自身を光翔鶴と名乗るようになりました


【ラオウ@北斗の拳】
【状態】超強化、首輪解除
【装備】炭酸水
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:ダース・ベイダ―たちを倒す
0:主催者チームを全員屠る
1:そして、拳王が新たな時代を作る
2:東京へ行き、拳王軍を率いて都庁のヘルヘイムを屠る
3:死兆星から使者の小娘を配下にしたぞ!
4:トキ似の男を配下にしたぞ!
5:強そうな鎧の女を配下にしたぞ!
6:謎の黒猫たちを配下にしたぞ!
7:なんかいろいろ配下にしたぞ!
8:悪魔将軍たちと協力体制を取るぞ!
9:イナバとやらとも協力したいぞ
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました


【琴吹紬@けいおん!】
【状態】精神的にぶっ飛んでる、左手骨折、首輪解除
【装備】超弩級戦艦『死国』、キーボード、現金1兆円ほどが入った特注ジュラルミンケース
【道具】支給品一式、たくあん@現実、その他不明、ダイジョーブ博士の残した装置
【思考】基本:生き残ることを最優先
0:死者スレに向かう悪魔将軍と熱斗組を支援するべく、都庁のヘルヘイムを打ち倒す
1:新スターティングメンバーを選考する
2:拳王とやらの配下になる
3:同盟だった超人血盟軍の仇を取る
4:別行動を取った悪魔将軍とシグナムさんは強いし、たぶん大丈夫でしょう
5:これからチームは強くなるし今までの調子でも大丈夫でしょう
※今までとは別人に決まってんだろ!!いい加減にしろ!!
※ベジータの所持していたパソコンからヘルヘイムの情報を得ました、そして都庁の世界樹をヘルヘイムによるものだと誤解しています
※DMC狂信者による工作で超人血盟軍全滅の下手人がヘルヘイム(都庁)であると思い込んでいます


425 : 光熱斗の奇妙な冒険 ネットオーシャン ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:11:01 R.Kq/aRY0


【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【状態】ダメージ(大)、首輪解除
【装備】テニスラケット、テニスボール×∞、諭吉一枚
【道具】支給品一式、少年ジャンプとヤンジャン、その他不明
【思考】基本:主催者達を滅ぼす
1:マーダーも滅ぼす
2:信頼するラオウたちと行動する
3:テニスがしたいが、野球をする
4:超人血盟軍を全滅させたヘルヘイムは必ず滅ぼす


【MEIKO@VOCALOID】
【状態】ダメージ(小)、修羅化、首輪解除
【装備】アルティメットアーマー@ロックマンXシリーズ
【道具】支給品一式、ノートパソコン@現実
【思考】 基本:『真の黒幕』及び主催者共の皆殺し
1:ラオウ達に協力してもらう
2:ヘルヘイムのインベスはとりあえず皆殺し
3:ラオウへの特別な感情
※今までとは別人です。
※『無限の回転』を習得しました


【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】全身にダメージ、不幸、首輪解除、本気モード
【道具】シンクロチップ、他人のデッキ(「ぬばたま」デッキ)
【思考】基本:あのAA
1:ネットバトラーの一員として主催やマーダーと戦う
2:それにしてもあの怪しい二人組の正体は……?


【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【状態】HP半分
【装備】ムラマサ
【道具】煉獄
【思考】基本:新しきお館様(上条)に従う
1:敵は殺す、慈悲はない
2:お館様を守る
※普段はPETの中にいますが、煉獄のメインAIになることも可能


【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】超強化、テンションが高い、首輪解除、クロスフュージョンできるかも?
【装備】PSVITA(デューオ入り)、十徳ナイフ
【道具】支給品一式×3、シンクロチップ
【思考】基本:ネットバトルとベースボールを極める
0:主催を倒すのはラオウではない、このディオだッ!
1:ジョースター家を手に入れる
2:ジョジョより優越感を得る
3:熱斗達にネットバトルを挑むのは後回しだ!
4:デューオがいなくても、勝つのはこのディオだッ!
5:シンクロチップを手に入れたし、デューオとクロスフュージョンしたい
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました


【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【状態】HP満タン
【装備】ジャスティスワン、ザ・ワールド
【道具】なし
【思考】基本;とりあえず、ディオたちを見守る
1:九州ロボ及び主催者を殺す
2:ディオの奴、ムキムキになったなあ
3:恐ろしいなあ、ヘルヘイム
※高速艇のメインAIになりました。
※キン肉マン(旧シリーズ)全巻を読み、友情パワーに目覚めました。
※36巻以降の知識(完璧・無量大数軍編)以降の知識はありません。
※ベジータの持っていたパソコンから情報を抜き出し、ヘルヘイムの情報を得ました
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さとPSVITAの筐体を得ました


426 : 光熱斗の奇妙な冒険 ネットオーシャン ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:11:31 R.Kq/aRY0


【謎のヒロインX@Fate/Grand Order】
【状態】健康、首輪解除
【装備】無銘勝利剣
【道具】ドゥ・スタリオンⅡ号(故障中)、スマホ(FGOをやってたせいで電池切れした) 、自転車
【思考】基本:私以外のセイバーを殺すが、その前に対主催しておいて他の対主催者と協力関係を築いておく。
0:私こそがセイバー・ザ・セイバー!!
1:宇宙の平和が第一ですね
2:世界が滅ぶのはヘルヘイムのせいだと思うので、平和のためにも打倒します
3:ヘルヘイムの方がセイバー多そうだし
※彼女のクラスはアサシンです。
※謎のヒロインXです。その正体は謎って言ったら謎です。
※世界が滅ぶ原因がヘルヘイムであると思い込んでいます


【ダイアー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】割とダメージがあるが少し回復した、首輪解除
【装備】イカ墨とパスタ@現実
【道具】支給品一式、治療道具、その他不明
【思考】基本:主催を倒す
1:ディオとかいう奴も倒す
※ディオを『吸血鬼ディオ』と思っていません。
※何か見ましたが、別に物語とは関係ありません。


【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【状態】健康、全ステータスMAX、首輪解除
【装備】木の棒
【道具】支給品一式、最高級ハチミツ、その他不明
【思考】基本:ムギさんからハチミツを貰うために主催者たちを野球で潰す
1:ホームランを打つ
2:バッティング以外はマジでやりたくない
※強化しなくともバッティングの腕はメジャーリーガー級です


【川崎宗則@現実?】
【状態】健康、ウキウキ、首輪解除
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチローを倒してでも、マリナーズに連れ戻す
1:関東からイチローさんの気配がする
2:早く会いたいなあ、イチローさん


427 : ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:11:57 R.Kq/aRY0
投下終了デース


428 : ◆bvudrb.vA2 :2017/10/10(火) 23:19:46 R.Kq/aRY0
クロえもんだけコピペミスで状態表抜けてたので追加

【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【状態】健康、首輪解除、強い悲しみとホワイトベース組消滅に対する強い喜び
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式 電車ごっこロープ
【思考】基本:主催者たちに野球で挑んで勝つ!
1:まずはヘルヘイムを潰す
2:最低でも四国アイランドリーグが出来るくらいの仲間を集める
3:イチロー選手を仲間に引き入れたい
4:ドラえもん、のび太くん……すまねえ
5:みんなには隠してるが、仲間を殺したホワイトベース組が全滅したことには超メシウマ状態w


429 : 名無しさん :2017/10/13(金) 21:37:53 kq6/C8Cc0
ボロボロだった拳王軍に大幅パワーアップフラグ立ったけど向いている矛先が矛先だけに嫌な予感しかしねぇ...
内外へ不穏なフラグばらまいてるし


430 : ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:36:50 jpU1HXBs0
投下します


431 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:38:26 jpU1HXBs0
墨田区、スカイツリー前。
ここでは狂信者の一派であるカギ爪団によって聖帝軍が窮地を迎えていた。

聖帝軍の残存戦力は10人と巨大ロボ一機、ガンダム二機。
対するカギ爪団の戦力は、カギ爪の男の乗るバースデイを中心にガンダム三機、大妖怪であるとらを筆頭にヨロイ70機、兵隊約2000人以上。
西武ドームを襲撃してきた数とひと握りの強者の力任せに物を言わせた烏合の衆とは違う、本物の戦闘力そして結束力に聖帝軍は大いに苦しめられる。
ボロボロの聖帝軍に対し、カギ爪団にはまだまだ余裕がある印象だ。


「へ、下の毛も生え揃ってねぇような娘っ子なんてこんなもんよ」

地上ではとらと兵隊に囲まれた、イリヤ、キュアハート、金色の闇が倒れ伏していた。
先の戦いでターバンのガキとガタックを一辺に失ったことが戦力にとって痛手になっていた。
辛うじて全員まだ生きているものの全員が流血しており、早々に治療しないと命が危険である。
それでもなんとか命を繋いでいたのは一重に悪魔超人である魔雲天が守護っていたおかげである。

「貴様は絶対に許さん! この魔雲天が粉々に打ち砕いてくれる!」
「チッ、この硬い岩っころめ! 爪も槍もまともに入りゃしねえ」

魔雲天の防御力が三人の少女をとらや兵隊の攻撃から守っていた。
とら側も岩に対しての電撃は当然として、爪も獣の槍もなかなか貫徹しない。
しかし……

「マウンテンドロッ……クソッ、また躱された!」
「のろいのお、儂はまだ一撃足りとも喰らってないぞ」

数多の人外の中で比較すると防御力と引き換えにスピードは決して早い方ではない魔雲天。
素早い挙動をするとらとは相性が悪かった。
また、飛び道具を持っていないこともとらを捕まえられないことに繋がっている。
さらにいくら防御力が高いとは言え、1ダメージも千発喰らえば1000ダメージ。
岩が削れていくようにダメージは徐々に蓄積していった。

「いいかげん早く死ね、そして儂の心の中で生き続けるのじゃ!」
「意味のわからんことを……仮に死ぬにしても悪魔超人はタダじゃ死なないんだぜ」


悪魔超人と妖怪が死闘を繰り広げている中、空中で粘っていたガンダム組も窮地に陥っていた。
ホモの乗るデストロイモードのユニコーンとバンシィ、そしてアルケーガンダムとそれに乗るベクターの召喚したデュエルモンスターに四方を囲まれており、そんな実力と数の相手をたった二機で相手どる様はまさにアラモ要塞のようであった。

「クロスディメンションのボルク大尉の気持ちがわかった気がする……」
「なに弱気なことを言ってんだ! 俺たちが粘らないときらりんロボが危ないぞ」
「うん、そうだねレイジ! あんなホモたちにガンダムを汚されたくない!」
「ビルドファイターズ魂を見せてやろうぜ!」

鼓舞によって立ち直ったイオリと共に、レイジは自分たちやきらりんロボに近づくモンスターをビームライフルやバルカンで掃射していく。

ところが、あるモンスターを倒したところで彼の乗るビギニングガンダムのスラスターが爆発した。

「レイジ!」
「なに!? 攻撃は食らってないはずだぞ!」
「バカめ、おまえが今破壊したモンスターの中には『ジャイアントウィルス』がいた。
こいつの効果は戦闘によって破壊された時、 相手ライフに500ポイントダメージを与えること。
倒せば倒すほどダメージが入るんだよ!」

レイジは敵の罠にはまり、遊戯王特有の俺ルールによってガンダムにダメージを与えさせてしまった。
スラスターを失って飛行能力を失い、地上に落ちていくレイジ機をイオリ機が支えようとしたが、それこそが致命的な隙になってしまった。

「今だ! 殺るぞホモたち!!」
「発射するよ……」
「この一撃で終わり! 閉廷!!」

「ファングル!」
「「ツイン・ビーム・マグナム!!」」

ベクターが援護にファングルを放って二機の退路を立ち、身動きできなくなった二機のガンダムがユニコーンとバンシィによる連携技による攻撃を浴びせる。
容赦ない二条のビーム・マグナムはビギニングとMk-Ⅱに命中し、爆散させた。
しかし、その直前に二機はコアファイターでガンダムから分離し、正太郎の二の舞になることだけは防いでいた。

「……おや? 寸前で脱出したか」
「やりますねえ」


だが。

「フフン、エンジンから火が吹いてやがる。待ってればすぐに獲物は落ちるな」

男狩りのレザーモヒカンのような口調で道下が嘲笑したように、二機のコアファイター自体もビーム・マグナムの余波を受けたのか機体から火を吹いており、そのまま機動を失って地上へと墜落した。
仮に二人が生きていてもモブのカギ爪団の兵士が処理してくれるだろう。
こうして聖帝軍ガンダムが一掃されて制空権はカギ爪団が握り、聖帝軍はますます窮地に追い込まれた。


432 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:39:44 jpU1HXBs0


「イオリとレイジが!」
「おのれ!」

きらりんロボの肩の上で憤るサウザーと高津。
彼らも投球とバット投げ、きらりんロボの砲撃で味方を援護している。
……しかし、それも限界が近づいてきた。
きらりんロボに備蓄していたバットとボールがそこを尽きかけている。
きらりんロボ自体も幾多のダメージで機能が大幅に落ち込んでおり、出力が上がらないのか、ビームの一撃でヨロイ軍団を倒すことも困難になっていた。

「皆さん、もう少しですよ〜! 頑張りましょ〜う!」

ボロボロの聖帝軍に対してカギ爪団の頭目であるカギ爪の男はバースデイの中から鼓舞しつつ、光線攻撃――G-ER流体を雨のように降らした。
一撃でも
機動力の低下したきらりんロボや、傷つき倒れたターバンのガキどもでは避けることは叶わない。


「うおおおおおお!?」
「サウザー!?」

きらりんロボにG-ER流体が直撃し、各所から爆炎を上げる。
サウザーと高津は直撃自体は避けたものの、足場にしていたロボの肩が崩れたことによりサウザーが地上に落下してしまった。

一方、地上では。

「まずい!」

とらと構成員と戦っていた魔雲天であったが、流体が倒れていている闇たちに降り注ごうとしていたのに気づいて戦いを中断して、彼女たちの盾になるように高くジャンプし、流体から庇ったのだ。
魔雲天の献身の甲斐もあり、三人の少女に流体が落ちることはなかった。
……引き換えに流体が魔雲天の岩の体を貫き、決して小さくないダメージを与えた。

「グッ……だが味方は守れ――」

血を吐き、傷による己の死を覚悟しつつも味方を守れたことを飛んでいる中で確認しながら、魔雲天は瓦礫の中へと突っ込んでいった。





「くッ……この聖帝サウザーと聖帝軍が敗れるというのか……」

地上に落下したサウザーはうまく着地し、死を免れていた。
だが戦況は絶望的であり、機動部隊は全滅して制空権を奪われ、地上部隊は皆瀕死。
きらりんロボも沈黙し、将である自分自身もここまでの戦闘で大ダメージを負った。
敗色濃厚である。
そんな聖帝軍を囲うようにカギ爪の構成員とヨロイ、三機のガンダム、そしてバースデイが迫る。

「皆さんの犠牲でクラウザーさんは生き返る。世界は彼の歌で平和になり、あなたにとってもこの星にとっても、素晴らしくご都合のよろしい世界になるのです。
彼が復活した後にはきっと苦しみのない世界が待っているでしょう。
さあ、祝福を受け入れるのです!」

まるでカルト宗教の教祖のように、聖帝軍に死刑宣告をするカギ爪。



「ふざけるなよ……キサマらの宗教に付き合って死ねるか!」

その宣告を真っ向から否定するのはサウザーであった。


433 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:40:46 jpU1HXBs0

「大丈夫、死者蘇生ができなくなった世界らしいですが、皆さんの魂は私たちやクラウザーさんの歌の中に生き続けます。永遠に」
「好きでもないキサマらやクラウザーさんの中に俺たちが生き続けるなど、御免こうむる!
いいか……俺は愛という言葉が大嫌いだ! そして!貴様らの愛は俺が嫌いな愛の中でも最低の部類だ!!」

聖帝は吠える。カギ爪団の愛を否定するために。

「大好きなクラウザーが死んだから、大切な人を失ったから、この世界に絶望したからクラウザーに縋り、復活のために本当にあるかどうかもわからない儀式のために生贄を捧げるだと?
殺した生贄が誰かの大切な人であることを考えたことはないのか!?
貴様らの押し付けがましい愛のせいで多くの人間が迷惑しているのだよ!
狂信者ども、そしてカギ爪、貴様の掲げる愛はただの依存だ!」
「なにを……ですが、クラウザーさんの歌で人間や人間以外の種族もひとつになり、彼が復活した後に平和な世界が来るのは事実なのです!
そうすれば未来の悲しみや苦しみも――」

「愛ゆえに 人は悲しまねばならぬ! 愛ゆえに 人は苦しまねばならぬ!!
愛や情は哀しみしか産まぬ!!

失うのも愛なのだから、耐えられるなら受け入れろ!
受け入れらないなら俺のように捨ててしまえばいい!
だが……

受け入れることもできない捨てることもできない、おまえらみたいな迷惑なカスは、ただの最低野郎だ!」


彼は慕っていた師であり父親代わりであったオウガイを南斗聖拳の継承のためにこの手で殺してしまい失ったために「愛など要らぬ」という境地に達していた。
サウザーもまたオウガイの愛から逃げているとも言えるが、師への敬いの心は残っていても依存はしていない。
オウガイの墓である聖帝十字陵も己の愛や情といった感情と決別するための手段である。

悲しみや苦しみから逃げるために生贄を殺してクラウザーを復活させようとする、言い換えればクラウザーを免罪符にしており、罪をクラウザーに擦り付けているのと同じなのだ。
狂信者が参加者を殺すたびに関係ない筈のクラウザーの名声は落ちるのである。
そんななかで仮に復活できてもクラウザーは嬉しくもないだろう。
愛嫌いな彼にとって、狂信者の、特にカギ爪の掲げる愛はもっとも唾棄すべき最低の愛であると見たのだ。



「そうか、わかりました!君はつまり、バカなんだ!」

サウザーの罵りをカギ爪の男は理解などしていない。
ただ自分にはない要素であり相容れない「バカ」であるとだけわかり、喜々として言い放つ。
そしてめいっぱい愛そう(=殺そう)と決めた。
カギ爪団の聖帝軍へのトドメの総攻撃が始まろうとしている。
この攻撃を喰らえば瀕死の聖帝軍は確実に全滅するだろう。


434 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:41:25 jpU1HXBs0


(金色の闇……まだ動けるか?!)

総攻撃が始まる前にサウザーは倒れていた少女たちの中でただ一人、少し前に意識を取り戻していた闇に小声で呼びかける。

(かなり痛めつけられました……でも、なんとか動ける……)
(そうか……俺が囮になる。
余力があるならばイリヤと亜久里を連れておまえたちだけでも逃げろ)

サウザーの口から出たのは逃走の指示であった。
闇はこれに対して反対するが……

(サウザー、私はまだ戦ます!)
(ダメだ。仮に俺やおまえが総攻撃を凌げたとしても気絶している残りの二人は助からん。
四人とも死ぬか二人生き延びて二人死ぬより、四人中三人は生き延びた方がマシだろう?)
(だったら、サウザーも一緒に……)
(この状況では誰かが囮にならねば誰も逃がすことはできん!
それに……例え負け戦でも帝王に逃走はないのだ。これは宿命……仮に逃げれば俺のために命を散らしたお師さんに泥を塗ることになる!
俺は退かぬ、媚びぬ、省みぬ……だが、仲間を逃がすことは帝星として最低限の名誉にはなるはずだ)

闇にはわかった、サウザーは戦いの中で死のうとしていることを。
仲間である彼には死んでもらいたくないが、状況的にも彼のプライド的にも許されないだろう。
それを理解できるからこそサウザーの悲壮な覚悟が悲しく、悲しくても受け入れるしかなかった。

(悔しいがこいつらに挑むには戦力差がありすぎた。先の戦いの勝利から敵を過小評価した俺のミスだ。
正太郎、加賀美、姉帯、ついでにターバンのガキの死の責任は俺にある。
せめてもの償いとしておまえたち三人だけでも生き延びてくれ……)
(サウザー……わかりました)
(そんな顔をするな、俺の底力でひょっとしたらここから奇跡の大逆転できるかもしれんぞ?)
(勝てる要素もないのに、どこまでも馬鹿な人……)

口では罵りつつも、サウザーの想いを受け取った闇は腕をカギ爪団に悟られないように伸ばしてイリヤと亜久里を掴み、退路に目星をつける。
闇の撤退準備は完了だ。
聖帝軍の無念は彼女らが引き継いでくれるだろう。
惜しむらくは高津やきらりんロボの搭乗員は逃げきれないだろうが、せめて最期まで戦ってくれるだろう。

そして、ヨロイやガンダムたちの砲撃が始まったと同時にサウザーと立ち上がった闇は駆け出した。
サウザーは敵の集団へ、闇はイリヤと亜久里を抱えて包囲が薄いところへ向けて走る。



「心残りがあるとするならば聖帝軍で一試合ぐらい野球がしたかったな……」

敵の砲撃の雨が降り注ぐ寸前に、サウザーはそう呟いた。











その時である。
金色の闇の耳に確かに声が聞こえた。
聖帝軍のものではない、人ならぬ者の声が。


『噂に偽りはなかった』


『負け戦と知りながらも自分は敵から退くことも、敵に媚びることもせず、後悔ばかりを省みることで足を止めることもしない』



『そして自分を囮に幼子を逃がすその勇ましさ』





『まさに紳士の中の紳士、漢の中の漢!!
サウザー、聖帝の名はおまえにこそ相応しい!!』


435 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:42:32 jpU1HXBs0

「「!?」」

聖帝軍の、そしてカギ爪団の誰もが、驚いていた。
無数の砲弾が届く寸前にサウザーと闇の前には巨大な三つ首の青い竜が、きらりんロボの前には同サイズの白い巨大ロボが、盾を展開して砲撃を防ぎ、聖帝軍を守ったのだ。
青き竜――氷嵐の支配者の姿を見てサウザーとカギ爪は同じ言葉を呟いた。

「こいつは……」
「彼らは……」
「「都庁の魔物!!」」

サウザーとカギ爪の言葉通り、都庁からの救援部隊が到着したのだ!

『間一髪』
「間に合ったね」

ミラーシールドを展開していた氷嵐の支配者と、A.Tフィールドを展開していた白いロボ――エヴァ四号機に乗っていたカヲルは新たなる仲間を守れたことに笑顔になる。
四号機は原作エヴァだと実験の失敗で消滅してしまうが、こちらはPS2ゲームのエヴァンゲリオンで人類の味方になったルートでカヲルが召喚して呼び出して乗り込む機体である。
これまでは首輪による制限と、マーラ戦では狭すぎる地下だったので召喚できなかったが、屋外に出て満を辞して召喚が可能になったのだ。
さらに二者に続いてカギ爪団による包囲網を外側から崩すように赤竜とそれに乗ったキュアピーチ、ミクダヨーもといフェイ・イェン、ラゴンも現れる。

『今こそドラゴンハートの真価を見せるときだ!』
「シャー!」
「いくよ! フェイ・イェン!」
「うん、巨大化&開幕エモーショナル・モード!」

空挺隊のように赤竜の背中からキュアピーチとフェイが上空へと飛び出す。
空中でキュアピーチはドラゴンハートの恩恵により強化フォームであるキュア・エンジェルピーチへと変身。
白き翼を生やしたそれはまさに天使のようであった。カワイイ。

一方でフェイは巨大化し、元のヴァーチャロンサイズに戻り、さらにオーバーブースト「エモーショナル・モード」となり、金色の姿になる。
……がなぜか、ミクダヨーの着ぐるみも一緒に巨大化したせいで、無駄に威圧感を出している。コワイ。

そして二人は着地していくと同時に闇たちに襲いかかろうとしていた構成員やヨロイをパンチやビームで蹴散らしていく。
そこに上空から赤竜の炎のブレスが落ち、カギ爪団を次々と灰に変えていった。


「すごい……なんて力なの……」

救援隊の戦いぶりを見て闇は思わず感想を漏らした。
カギ爪団は確かに西武ドームの狂信者よりは格段に強かった。
だが、首輪解除による制限撤廃とドラゴンハートによるレベルキャップ開放&パワーアップの恩恵を受けた救援隊はそれ以上の実力を誇っていた。
戦闘の最中、彼らの力に驚く闇の前にラブことキュアエンジェルが降り立つ。

「そこの子、聖帝軍の人だね、大丈夫?」
「都庁の人たち……助かりました」
「そこにいるのはキュアエース!?
それにみんな、怪我をしてるんじゃない! すぐに治療をしなきゃ!」

傷ついた聖帝軍と何度か共闘したこともあるプリキュアの怪我に気づき、キュアエンジェルはすぐに飛行中だった赤竜を呼び、彼に乗っていたラゴンによって世界樹産の傷薬がきらりんロボに乗っている者を除いた全員に使われると、見る見るうちに傷は治っていき、亜久里ことキュアエースとイリヤも目覚め、感謝の言葉を述べる。

「キュアエース!」
「指一本動かせなかった体が動く……ブラボーですわ、キュアピーチ」
「本当にありがとう。
紘汰たちによる交渉が成功したのね……本当に良かった〜」

「こうた? 誰それ?」
「「「え」」」
「え」

イリヤの言葉から紘汰という知らない人物の言葉を言われて頭上に?マークを浮かべるキュアエンジェルと、彼女らが紘汰たちを知らないことに?マークを浮かべる聖帝軍の三人娘。
それもそのはず、都庁と同盟を組むために遣わした紘汰ら先遣隊は不運によって都庁へ向かうことができず、都庁側は先遣隊の存在など知らない。
それでいて都庁が聖帝軍の一部勘違いも混ざった良き噂から自発的に助けにきたことなど思って夢にも思ってないのだから。


436 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:43:23 jpU1HXBs0

「何か行き違いがあるようだが、まあいい。とにかく俺たちの味方であることには変わりないようだ。
都庁も畜生ではないことは十分にわかった」
「サウザー、無事だったんですね」
『ウホッ、これは良いロリ天国!』

サウザーが敵をかき分けて鼻の下を伸ばした氷嵐の支配者と共に闇たちの元に歩み寄る。
さらにもうひとつの嬉しいニュースが聖帝軍にやってきた。
赤竜が二人の傷だらけの少年を口に咥えてやってきた。

『おい! 壊れた戦闘機の中に二人の小僧どもを見つけたがおまえたちの仲間で間違いないな?』
「レイジとイオリ! 生きていたのか!」
「……死ぬかと思ったが運良くな」
「コアファイターを作ったテム・レイ氏万歳!」

死んでいたと思われたビルドファイターズ組も運とコアファイターの安全性に助けられて死を免れていた。
サウザー・レイジ・イオリもまたラゴンが持っていた薬で全快まで回復する。

『ラゴン! 彼らの首輪を解いてやれ! やり方はレストから教わっているな?』
「シャー!」
『これはお嬢さんたちとのお近づきの印に……ドラゴンハート蒼!!』
『そしてドラゴンハート紅!!』

それでだけでなく、六人の首輪の解除をし、これから共に戦いゆく聖帝軍にドラゴンハートの恩恵を授けた。
死線をくぐり抜けた聖帝軍は恩恵を受ける条件は満たしており、本来の実力を越える力を得られた。

「凄まじい! 体の奥から力が漲るようだ!」

サウザーの闘気が大幅に膨れ上がる。
キュアエースのパワーが急上昇する。
プリズマ☆イリヤの魔力が溢れ出る。
パイロットであるレイジとイオリは流石に生身での戦闘力はさしたるものではなかろうが、機体があればニュータイプやSEED並みの操縦技術を発揮するだろう。

最後に残った金色の闇は――


「……大人になってしまいました」
『うわああああああああ! ドラゴンハートが裏目に出ちまったーーーッ!?』
『うおおおおおおおおお! これで鎧をつければ金髪美女騎士の完成だ……フヒヒヒヒヒヒ』
「なんか後ろから凄まじく邪な、落胆とえっちぃ視線を感じますが、抹殺してもいいですかサウザー?」
「お、抑えろ闇」

ドラゴンハートの影響によって彼女の中のトランス能力に変化が現れたのか、幼児体型から一気にクローン元であるティアーユに似たボンキュッボン体型になっていた。
パワーアップと引き換えにロリが減ったことを後悔する氷竜と、興奮で鼻息を荒くする赤竜。

なんにせよ、聖帝軍は復活しパワーアップを果たしたのだ!



「すごい!お友達がいっぱいですね!!」

予期していない援軍にカギ爪は慌てるでもなく、ただただ喜んでいた。
夢であるクラウザーさんの歌による世界平和へ邁進するための生贄が増えるのを喜んでいるのか、本当に遊び相手が増えるのを喜んでいるのか。

「笑っていられるのも今のうちだぞカギ爪! 首輪を外しパワーアップした俺たちの力を見せてやる!! 聖帝軍!! 突撃せよ!!」
『我ら都庁同盟軍も奴に続け!!』

カギ爪の男へ啖呵を切ったサウザーを筆頭に聖帝軍と同盟軍が突撃を開始する。
大群・猛者ぞろいであるカギ爪団相手に先程までの戦力であれば、それは無謀とも言えただろう。
だが今は違う。
物語を戦いの結末を迎える一時間後まで飛ばそう。



 ◆


437 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:44:04 jpU1HXBs0


「馬鹿な! たったの十数匹だぞ!?
それなのに二千はいた兵隊はもう数えるぐらいしか残っちゃいねえだと!?」

とらは驚愕していた。
首輪を外し、竜の力の恩恵を受けた敵の力は想像以上であった。
サウザーが北斗無双ならぬ南斗無双で次々とヨロイや地上の兵士をバラバラにしていく!
ドラゴンハートというバーターを得た氷竜と赤竜の息吹が凍死体と焼死体を増やしていく!
キュアエンジェルとキュアエースの拳が兵隊を彼方へとぶっ飛ばしていく!
金色の闇が引き裂き、プリズマ☆イリヤの魔力が蒸発させる!
エヴァ四号機と巨大ミクダヨーが蹂躙する!

もちろんカギ爪団も黙ってやられていたわけではない。
とらもベクターもホモ二人もカギ爪の男だって応戦している。

だが彼らの攻撃はあまり敵に届くことはなかった。

「攻撃が当たらねえし届かねえ!」
「道下さん、まずいですよ」
「(敵が)死ーにましェーン!!」

ベクターとホモどもが慌てるのも無理ではない。
戦術面の話をするとフェイ・イェンはエモーショナル・アタックという技を持っておりこれは命中・回避・格闘・射撃ダウンの効果を持っている。
少しでも被弾すれば能力が下がるのだ。

次にエヴァ四号機によるA.Tフィールド。
カヲルはドラゴンハートの恩恵で四号機とのシンクロ率を%にしており、その分だけフィールドが強固になっている。
それはビーム・マグナムでさえ弾き、I・フィールドと違って実弾・ビーム関係なく弾くのである。
敵の攻撃力が下がっているので尚更鉄壁である。
これが沈黙していたきらりんロボを守っていた。

トドメは氷竜によるミラーシールド。
万能攻撃すら跳ね返すチートカウンタースキル。
ここまで来ると正攻法で勝つ方法はない。
グレイモヤのようなチートカードを加賀美に使ってしまったことがここにきて仇になってしまった。


以上の戦いを一時間繰り返した結果、カギ爪団は壊滅寸前にまで追い込まれていた。
地上で戦い続けていたとらもボロボロである。

「せめて大将首だけでも……!」

とらは最後の力を振り絞り、聖帝軍を牽引している指導者のサウザーだけでも殺そうとする。
さすれば戦況は好転、最悪カギ爪の男だけでも撤退させられると睨んだのだ。
魂を削られる覚悟で、槍に巻かれた赤布を解くとらだった。

「サウザーは!」
「やらせない!」
「砲撃(フォイア)!」
「エースミラーフラッシュ!」
「な!? こいつら!!」

しかしとらがサウザーを襲うよりも早く、イリヤが砲撃で足止めをし、その隙にキュアエースが三昧の鏡を召喚してとらを囲う。

「こいつら邪魔を……だが! 儂と獣の槍を舐めるなよ!」

とらは赤布を開放した獣の槍を振るい、攻撃される前に強引に鏡の檻を破壊する。
脱出そのものは可能だった。

「!?」

鏡を破壊した先に待っていたのは大人になった金色の闇であった。
彼女は鏡の裏側でずっと身構えていたのだ。
とらは檻を脱出するために鏡を壊す必要があるが、その際の槍を振った直後の僅かな硬直時間を闇は狙ったのだ。
対するとらは鏡の裏側までは見ることができず、敵は手練の暗殺者故に気を辿れなかったために待ち構えることもわからず。

「いかん、これは罠――」
「終わりです」

とらが反撃のために槍を振り戻すより早く、闇は髪の毛で作った鎌でとらの首を切断し、念を押してその首をさらに縦に両断した。
首輪も外れてない以上、大妖怪とてこれほどのダメージを受けていれば死なない道理はない。

「加賀美、ターバンのガキ、仇は取ったよ……」
「私たちナイス連携だったね!」
「野球で学んだ仲間に合わせることの大切さ……あの練習は無駄じゃありませんでした」

とらを討てたのは単に首輪解除とドラゴンハートのおかげではない。
野球を通じて培った連携が生きた故であった。
闇らは獣の槍を回収し、再び戦場に舞い戻った。


438 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:44:44 jpU1HXBs0




カギ爪団の切り込み隊長であるとらが討たれた時と同じくしてロボットバトルもまた決着が尽きかけていた。
モブヨロイの掃討はエヴァとフェイの力を持ってすればワケもなかったが、ガンダム相手となるとそうはいかない。
エヴァがパレットライフル、フェイ・イェンがビーム、高津が投球を発射するが、ユニコーンとバンシィのサイコフィールドによって弾かれる。

「ところで僕のアクシズを見てくれ。こいつをどう思う?」
「すごく……大きいです」

「攻撃が入らない。せめてあらゆる防御を貫くロンギヌスの槍があれば……
それにしても男同士で気色の悪い連中だ」
「……なんとなくあなたが言うと『おまいう』って言いたくなる」

カヲルとフェイ・イェンが呆れるほど硬いバリアが道下と遠野の乗るユニコーンとバンシィが張られているのだ。
向こうの攻撃も効かないがこちらの攻撃も届かないと、互いに消耗を強いられる泥仕合になっていまう。

「どうにか突破する方法はないの?」
「ユニコーンとバンシイは想いを力にするサイコフレームで作られている。
あのホモたちがどれだけのNT能力を持っているか未知数だけど、サイコフレームによって放出されるアクシズショックは全力なら一機で巨大隕石を押し返したり、大量破壊兵器のコロニーレーザーさえ防いでしまうほど……」
「くッ……どうすりゃ良いんだ」

エヴァの足元でキュアエンジェルがイオリ・レイジと共にチートガンダムへの打開策を探すが、打つ手なしという結論に至りかけた。

「想いを力にする……だったら!」
「キュアエンジェルさん、なにを!」

『想いを力にする』という言葉にピンと来たエンジェルは翼をはためかせてユニコーンとバンシィの元に飛び立ち、必殺のビームを放つ。


「ラビングトゥルーハート!!」


すると、今まで弾かれるだけだった攻撃が、バリアを押しだしたのだ。

「えっ、それは…(困惑)」
「は、はひっ!」

「効いてる?! こりゃあ一体どういうことだ!?」

驚くレイジに対し、しばらくしてキュアエンジェルの思惑に気づいたイオリが回答を出す。

「そうか! 『ソフトチェストタッチ』」
「俺に分かるように説明してくれ!」
「いいかい? サイコフレームは人の想いを力にできるけど、逆に言えば他者からの思念の影響を受けやすいんだ。
つまり、想いを力に変える技なら奴らに届く!」

そこまでくればレイジも理解したようであり、暴力ではなく想いの力こそがホモのガンダムを攻略する方法だと気づいた。

「じゃあ、あいつはそれに気づいて……」
「たぶん……!」

ラビングトゥルーハートは想いを力にする技であり、単純な破壊力よりもサイコフレームには有効であった。
だが、プリキュア一人ではまだ足りないようだ。
バリアを押し出すことはできるが、それ以上はできない。

そこでキュアエンジェルと同じく心の強さを武器にできる2機のロボットが加勢する。

「心の強さが鍵ならば、心の壁であるA.Tフィールドで!!」
「心にエモーショナル・チャージ!」

キュアエンジェルを援護するように四号機は高くジャンプしてA.Tフィールド全開で突撃し、フェイは桃色に輝きつつ歌姫L9で最大威力の心を秘めたハートビーム エモーショナル・ウェーブ IBSを放つ。
二つの心と三つの心、勝敗を分けるのは心の強さ。
勝ったのは――


「阿部さん、愛しておりました……」
「アン!アン!アン!アッーンン!!」

三人の心がサイコフィールドを破り、ユニコーンとバンシィに攻撃が直撃。
ホモを乗せたガンダムはスパークを上げながら明後日の方向へと墜落していき、遠くで爆煙を上げた。
三人(の心)に勝てるわけないだろ!


439 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:45:42 jpU1HXBs0



「畜生、ホモたちが……!」

盟友である道下と遠野がやられ歯噛みするベクターにも、いよいよ引導が渡されようとしていた。

『あの赤いガラクタを落とすぞ氷竜』
『応! 赤竜』

ベクターの乗るアルケーガンダムを落とそうとする氷竜と赤竜の前に無数の召喚モンスターが現れる。
その中には聖帝軍のガンダムを落とすきっかけを作ったジャイアントウィルスなど混ざっており、倒すと氷竜のミラーシールドを無視してカード効果によりダメージを与えた……が、氷竜と赤竜は全く意に介していない。

『ダメージは数字に換算すると500そこいら』
『そんなダメージなど今の我らには豆鉄砲も同然!
……しかし、倒すと特殊な効果を持つ敵は厄介だな。
なのでここで一曲……クラウザーなんてくだらねえぜ! 我の歌を聞けーーーッ!!』
『えっ? 歌をおまえが!? ちょっと待ってくれ』

突然歌いだすと言い出した赤竜の言葉を聞くと氷竜は慌てて前足と首を器用に使って耳を塞いだ。
すると……ジャイアンソングが周辺に鳴り響いた。

『ボ エ ー ー ー 〜 〜 〜 !!!』

解説しよう。
赤竜の歌、もとい唸りには攻撃力を著しく低下させた挙句錯乱させるという強烈な効果があるのだ!
それによって唸りを聞いた召喚モンスターの大半が錯乱し、同士討ちを始めたのだった。

「なにい!? モンスターたちが命令を受け付けない!?」

倒すと怪我を負うなら倒さねばいい状況を作り出す。それが竜の答えであった。
勝手に自滅していくモンスターたちに焦るベクターに、二匹の竜とドラゴンハートが迫る!

『『墜ちろガンダム!!』』
「しまっ……」

慌てて回避行動を取ろうとするベクターだったが、せめて馬鹿にしていたクラウディウスほどの腕があれば良かったのだが、残念ながら彼程度の技量では竜たちの攻撃を凌ぐことなどできなかった。

『二匹の仲良しドラゴンによるコンビネーション新必殺技!』
『名づけて』
『『超 ・ 竜 ・ 神!!!』』

氷竜の口から氷のブレスが、赤竜の口から炎のブレスが、ダメ押しに二つのドラゴンハートが二種類のブレスを放つ。
その威力は戦闘を一時間以上も続けたこともあってとてつもないものになっており、アルケーガンダムの装甲をを容易く溶かし、もしくは絶対零度で破裂させた。

「うああああああああ遊馬ああああああああああああ!!!」

熱と冷気に耐えられずに爆発を上げるコクピットのコンソールやモニター。
ここまで破壊されるとコアファイターによる分離脱出もできない。
同時にデュエリストの生命線であるディスクも破壊され、カードが燃えていく。
そうして真月零ことベクターを乗せたアルケーガンダムは撃墜され、地上へと落下した。

『即席で考えた技にしては良い出来じゃないか氷竜』
『先のマーラとの戦いで思いついんだ、名前も厨二じみててイカスだろ?』
『ああ、イカスイカス。今後もどんどん使っていこうぞ!』

合体技の出来栄えに満足する氷竜と赤竜。
ちなみに技名はとある勇者ロボの名前と被っていることは秘密にしておこう。



『皆の衆! 制空権を奪ったぞ!!』

赤竜が声たかだかに宣言する。
残るは大将であるカギ爪が乗るバースデイと僅かな雑兵だけであり、勝利は目前に迫っていた。

「あとは全員の総攻撃で一気にカタを……」
「いや、闇、みんな。奴は俺が討つ」
「サウザー?」
「……他の誰でもなく、俺が討たねばいかんのだ。
先に死んだ者たちを安心して眠ってもらうために、帝王たるこの俺が示しをつけなければならん」

全員で攻撃をしかければ確実に勝てる戦いであった、聖帝はそれを良しとせずに一人でカギ爪を討つことにこだわった。
単なる我儘ともとれるが、彼の背中には威圧めいたオーラを放っており、それが都庁同盟軍や聖帝軍を止めた。
少なくともこの前までのイチゴ味なヘタレではない、漢がそこにいた。

「……やるなら徹底的に、お願いします」
「ああ、わが拳にあるのはただ制圧前進のみ!!」

闇の信頼と思わしき微笑みを背中に、サウザーは制圧前進を始めた。
その速度はドラゴンハートの補正もあって、文字通り目にも止まらぬ速さであった。


440 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:46:57 jpU1HXBs0



「シャ!?」
「早い!?」
「本当に人間の早さなのか!?」
「この早さ、レストよりも上?!」

バースデイから放たれたG-ER流体の雨すらスイスイと躱し、質量を持たぬ残像すら残した。
ラゴン、カヲル、フェイが驚愕するほどであったが、特にラブはかつてレストと一線交えたことがあり、記憶にあるそれ以上の速度をサウザーは持っていたと確信する。
ドラゴンハートの加護によるものだとしても、向こうがレベルカンストしているのに対してこちらは伸びしろがより多く残されている発展途上であることを考えたら速度の才能はサウザーの方が上だ。

そして瞬く間に距離を詰めて巨大なバースデイに肉薄したサウザーは、次の行動に移る。

「この距離ならばアレが使えるな!」

闘気を高め、南斗鳳凰拳の裏ワザと言える技をサウザーは解き放った。


「 雷 霆 !!」


それは闘気を高め、周囲の敵に雷を落とす。オウガイ殺害直後に雷が轟いた光景の再現した雷。
ゲーム北斗無双におけるサウザーの必殺技の一つだ。
そのままではモヒカンを焼く程度の威力しかなかった、パワーアップした聖帝の雷霆はバースデイの装甲を易々と突き破り、大穴を開けさせた!

『お、おい。あの雷の威力、雷竜のブレスを容易く超えていたぞ!?』
『ああ、しかも雷はダオス殿の弱点と聞く、すなわち――』
『……あの速さと雷すら呼ぶ恐るべき南斗鳳凰拳……聖帝軍が敵でなくて良かったな』
『まったくだ赤竜。巡り合わせが悪かったらあるいは……』

どこぞの野菜王子と同じくサウザーはへたれて都庁に攻め入らなかったが、レストをも凌ぐスピードと、ダオスの弱点である雷を彼は持っていた。
場合によっては聖帝によって都庁が滅ぼされていた可能性もあると思うと竜たちは背筋が寒くなった。


バースデイに空いた大穴からサウザーは内部に侵入。
そこには柩のようなヨロイの操縦席に入ったカギ爪の男がいた。
カギ爪の男は全てを諦めたのか、それとも状況をわかっていないか、慈悲によく似た眼差しで迫るサウザーを見つめている。



「サウザー君、私はあなたを、愛していま」


「いいや、全てを愛して何も憎まないと言う貴様は本当は何も愛してはいない。
愛があるから憎しみも哀しみも味わうのだ。
俺はおまえの仲間をたくさん殺したが、そんな俺を憎まないということは殺した奴らに哀しむだけの価値がなかったと貴様は見なしているんだよ。
憎しみと哀しみ、どちらも持たぬ貴様が図々しく愛を語るな!!」



サウザーはカギ爪からのラブコールを拒絶し、極星十字拳で文字通り切って捨てた。
カギ爪の男が入った柩が斜めに切れて床に落ちた。

自分が開けた大穴から外を見渡すと仲間たちが残るカギ爪団の雑兵を殲滅していく光景が見えた。
やがて戦場に残存する敵は0になり戦いは終わる。
狂信者内でも一大勢力となっていたカギ爪団も消滅の時を迎えたのだ。



「サウザー、無事でしたね」
「おお、おまえたちか! 親玉は俺の手で討ち取ったぞ!」

大穴から闇、亜久里、イリヤ、レイジ、イオリが入ってくる。
そんな少年少女(一人だけ少女じゃなくなったが)に胸高々に戦果報告をするサウザー。

「苦しい戦いだったけどなんとか勝てましたね」
「これで魔雲天たちも浮かばれるな!」
「みんなの犠牲は無駄じゃなかった」
「都庁同盟軍という新しい仲間もできたしね!」
「おまえたち見てたかー? 本気を出した俺の活躍を!
この俺様の神の肉体と南斗パワーがあれば救済の予言や拳王だって……あべし」
「またすぐに調子に乗るのがあなたの悪い癖です……まあ、ちょっとカッコよかったけど」
「ん?」

いつものイチゴ味な調子に戻ったサウザーにツッコミのパンチを入れる闇と、そのやり取りを見て笑う子供たち。
失った者は多く戻ってこないが、その犠牲を無駄にしないように聖帝軍は制圧前進し続けるだろう。
聖帝軍は絶望的な状況下でも退かぬ媚びぬ省みぬ連中なのだから。


441 : 南斗の拳 ドラゴン味 ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:47:35 jpU1HXBs0







……ただしそれは、この直後に起こる惨劇を生き残ることができれば、だが。







同時刻、きらりんロボの肩の上では高津がラゴンの手により首輪解除と怪我の治療を受けていた。
これまでは激しい戦闘の最中ではきらりんロボの肩に乗る暇がなくてできなかったが、戦闘が終わったことでできるようになったのだ。

「体が軽い。これなら十二分に戦えそうだ、ありがとよ半魚人」
「シャー」
「ついでで悪いんだが中の連中の手当もお願いできるか? そこのハッチから中に入れるぞ」
「シャー」

高津はきらりんロボの内部のメンバーの治療も頼み込む。
きらり、犬牟田、つば九郎、蒲原も中で怪我をしている可能性がある。
もしそうならすぐにでも手当をしなければいけない。
特にきらりは予言の歌姫である可能性がある以上、最優先で守らなくてはいけない。
怪我がなければすぐにでもスカイツリーで全国放送ライブである。
それで状況が動けば良いと思うのが、聖帝軍の理想であった。

ラゴンがハッチを開けようとした瞬間に、今まで沈黙を保っていたきらりんロボの首が動いてラゴンと高津を見た。

「シャ?」
「大丈夫だ半魚人、おまえたちのことは味方であると既に知ってるハ――」

きらりんロボの目は輝いていた。
エネルギーが収束している。

「――ズ。なに!?」
「!?」

第六感でまずいと思ったラゴンはエネルギーが放たれる寸前に、呆けていた高津を押して肩から落下させる。

「お、おまえ――」

ジェットマンでもある高津は飛行能力を持っているため宙に投げ出されても大丈夫だったが、飛べないラゴンはきらりんビームアイの光に飲み込まれて蒸発してしまった。


「嘘でしょ……ラゴ――」

まさかの味方からの攻撃、まさかの仲間の死を目の当たりにして思考の処理が追いつかなかったフェイ・イェンにもきらりんロボのビームが直撃し、大爆発させた。

「フェイ・イェン!!」
「おい、カヲル! これは一体どういうことだ!?」
「いきなりあなたたちの持ってきたロボがラゴンとフェイを撃ったんだ!」
「なんだと!」

バースデイの中にいたサウザーたちも騒ぎを聞きつけてやってきたが、返答は聖帝軍の仲間が都庁の救援隊を殺し始めたという衝撃の事態であった。


「おいやめろ! 都庁の奴らは俺たちの味方だ!
中からあいつらが共に戦ってくれたのを見てねえのか!?」

高津はきらりんロボの周囲を飛び回りながら、必死に呼びかける。
都庁を敵と誤解したのか、それとも内部で深刻なヒューマンエラーが生じたのか。
なんにせよ止めなければならないと高津は思っていた。

……しかし、事態は高津が思っているよりも遥かに深刻であった。

突如、バリバリときらりんロボの顔面装甲が破れた。

「!?  !!!」

そして中から巨大な諸星きらりの顔が現れた。
だがその顔は可愛げな顔ではなく、機械と臓腑が生々しく合わさっているようであり、ギョロギョロとした目玉は見るものを恐怖させる。
なにより理解の追いつかない事態が高津を一層混乱させ、吠えさせた。



「なんじゃこりゃああああああああああああああああああああああああ!!!」


442 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:49:33 jpU1HXBs0
時は一時間前、都庁の救援隊が到着する前までに遡る。
ヨロイやホモガンダムに続き、バースデイの放った流体攻撃の直撃を受けたきらりんロボ。

「うわあ!」
「犬くん!?」

爆発したコンソールによって犬牟田が吹っ飛ばされ、壁に背中から衝突する。
コンソールの破片が顔に当たったらしく、頭部は血だらけである。
蒲原が助け起こそうとするが、治療の宛がないきらりんロボの内部ではどうしようもなかった。



「天ちゃん……そんなぁ……」

モニターの前ではきらりが泣きじゃくっていった。
彼女は見てしまったのだ。
この殺し合いで最も信頼していた男であるザ・魔雲天が味方を庇って流体に貫かれて死んでしまう瞬間を。
タバサ、姉帯に続き、魔雲天まで失ったことを心優しい少女であるきらりが耐えられるハズがなかった。

そしてそれが致命的な瞬間になり、腹黒マスコットの奇襲を許すことになる。


つば九郎が急に看板を振りかざすときらりを背後から襲い掛かり、彼女を殴り倒したのだ。
悲鳴を上げる暇もないまま、首をあらぬ方向へと曲げて倒れるきらり。
その惨劇に気づいた蒲原はいつものエクボを忘れて怒声を上げるしかなかった。

「つば九郎! なんできらりを!!」
『もう勝敗は決した。聖帝軍の負けは確定。
だが囲まれていて逃げるのも無理そうだ。
だから、おまえらを貢物にして狂信者に取り入ろうと思う』
「このクソペンギン! きらりはスワローズのファンなんだぞ!」
『知るか。ファンなんて選手は見てもマスコットなんて見ちゃいないだろう。それから俺は燕だ』

つば九郎は裏切り、聖帝軍の仲間を殺すことでカギ爪団に取り入ろうとしているのだ。
底知れぬ狂信者に勝てないという思いが、彼の腹黒さを悪い方向に発露させてしまったのだ。
蒲原はきらりんロボの操作も忘れて、雀力を開放し怒りのままに裏切り者を殺すべくつば九郎に挑まんとする。
きらりが死んだ時点で作戦は失敗し、聖帝軍に勝利はないのだが、それでも友を殺した最悪の裏切り者だけは自分の手で討ちたかった。



その時である、きらりのうなじにあった亀裂がピシピシと音を立てて割れだした。
今まで気づかなかった蒲原・つば九郎も、きらりの異変にようやく気づいた。
……よく見るときらりの遺体が2mどころか3mぐらいの巨人になっていたことに。


443 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:50:11 jpU1HXBs0

殺し合いのストレス。
次々と死にゆく仲間たち。
そして仲間の裏切り。

上記によって彼女の中にあったテラカオス因子が増大し、急成長したのだ。
そして首の骨が折れて死んだと思われたきらりはテラカオス化によって得た生命力によってまだ生きていたのである。
だが死んでいた方がマシだったろう。
彼女はこれから惨劇を産むことになるのだから。


「きらり……うわあ?!」
『おおおお!?』

きらりのうなじにあった亀裂から肉のようなものが飛び出し、それは膨張して一気にきらりんロボのコントロールルームの大半を飲み込んでいった。
当然、きらりの近くにいた蒲原とつば九郎も、抵抗する暇もなく肉に飲み込まれることになる。



『ぎゃあああああああ   ひでぶ』 

きらりの肉と壁に挟まれたつば九郎は圧力に耐えられず、ブシャリと潰れた。

「よかった……生きてたんだねきらり……ワハ、ワハハハハハハハ」

蒲原はありえない状況の前に頭が追いつかずに、ハイライトの消えた瞳で笑っていた。
しかしその笑いも潰される痛みの中で悲鳴に変わる。

「……痛い、痛いよきらり、やめてえええええええええええええ!! ぷぎゃッ」

きらりの肉の押しつぶしてくる圧力に負けた蒲原の肉体が、口から内臓と目から眼球を飛び出させて潰れた。



「こ、これは一体……」

犬牟田が気絶から覚める。
彼だけはきらりから離れた位置にいたおかげで助かった。
だが、彼が見たものは巨大な肉の塊によってつば九郎と蒲原、姉帯の遺体が原型を留めずに潰れている地獄の光景だった。
そしてきらりから産まれた肉はなおも膨張を続ける。

「う、うわああああああああああああああああ!!!」

犬牟田が悲鳴を上げながら、コントロールルームの外へと走り出した。




――こうして、聖帝軍の知らない水面下で進行していたテラカオス化は、ここにきて一気に成長し、とうとう姿を見せたのだ。

『NYOWAAAAAAAAAAAA!!!』

きらりだったものが、人ならぬ叫び声を上げる。
そして再度のきらりんビームアイの発射で遠くにある立川市を蒸発させてキノコ雲を上げさせた。

きらりはテラカオス化の急進行の過程で巨大化だけでなくきらりんロボを鎧とするように融合していた。
合わせて自我もほぼ残っておらず、本能のみで敵を屠る危険な存在と化している。
もはや巨大怪獣である。

聖帝軍の誰もが恐れ、信じられないという目できらりを見ていたが、テラカオス化した参加者など初めて出会ったので無理はないだろう。
それも仲間であり、聖帝軍の歌姫であったきらりならば尚更である。
対してテラカオス化した風鳴翼と何度か交戦し、戦力の要であるレストも一度は羅患した症状を知っている都庁の軍勢はきらりの状態から事を察した。

「きらりさんは人知れず瘴気に当てられてたのか……」
「瘴気、なんだそれは!?」
「主催がバラ撒いたらしい人を怪物に変えてしまう瘴気さ」
「なんと……きらりは助かるのか?!」

カヲルとの会話で初めて『瘴気』の存在を知り驚くサウザーら聖帝軍一同。
明らかに異常な状態にある仲間を助けられるかが心配そうにカヲルに問いかける。

「大丈夫、僕らにはフォレスト・セルというああなってしまった人を治療できる宛がある」
「そうか……よかった」
「だけど、彼女は明らかに暴走している。まずは彼女を止めないといけない」
「ああ。内部にいる犬牟田たちの安否も気がかりだ。聖帝軍! もうひと踏ん張りするぞ!」

変わり果てた姿になったきらりであったが、まだ助けられるという希望の言葉から聖帝軍一同は都庁の仲間と共に怪獣化したきらりを止めようとする。
まずは彼女を無力化する必要がある。
そもないとラゴンにフェイ、炎上した立川市のようにきらりは破壊を繰り返して犠牲者を増やすのだから。

「胴体と首はダメだ! そこにはコントロールルームがあって中で生きている仲間たちも被害を受ける!
狙うなら手足を狙え!」
「了解!」

サウザーはカヲルを通じて都庁同盟軍に指示を出し、手足だけを狙うように指示を出す。
総員が攻撃に移ろうとする際、きらりの口が開く!

「〜♪ 〜♪ 〜♪」
「これは歌……?」


444 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:51:26 jpU1HXBs0

きらりは歌いだしたのだ。
その歌はおぞましい姿とは不釣り合いなくらい、なんとも気の抜ける、そして可愛らしい歌であった。
肩の力が抜けるくらい、何もかもがどうでもよくなるくらい……

「うお? なんだ!?」

突如、エヴァの巨体が転倒したことにサウザーたちが驚く。
否、エヴァだけでなく空を飛んでいた赤竜に氷竜、キュアエンジェルやブルースワローまで地上に落下。
ダメージによってラブと高津の変身が解けてしまう。

「一体何が……くッ、体から急に力が抜けて……!」

地上にいた聖帝軍全員までもが、きらりの歌によって力を奪われて地面に膝をつく形になってしまった。
亜久里、イリヤの変身も解けてしまい力の尽くを奪われてしまった。
もはや聖帝軍も同盟軍も這いずるぐらいしかできない。

『これは……状態異常攻撃か?』
『だがこの感覚は麻痺やスタンとも、まして毒とも違う……何なんだこれは?』

竜たちによるとこれは単なる状態異常攻撃ではないらしい。
では一体何なのか?

『これは……』
「ルビー、どうしたの?」
『きらりさんの歌からとんでもないマイナスエネルギーが出ています! あらゆる生物を尽く弱体化させてしまうほどの!』
「なんですって!?」

答えを出したのはイリヤの喋る杖、マジカルルビーであった。



ここでネタばらし。
かつてきらりは歌うで姉帯と蒲原の二人を「どうでもよくなる」気持ちにさせて狂信者から足を洗わせた。
実はこのどうでもよくなる歌は、きらりが身長上昇&肉体強化と共にテラカオス化進行によって得た能力であり、二人の闘志を歌の中に含まれたマイナスエネルギーで鈍らせていたのである。
しかし、この頃はテラカオス化がそこまで進行していなかったので闘志を鈍らせるだけに留まっていた。

ところがテラカオス化が特大級に進行した現在の歌は、含まれたマイナスエネルギーが桁違いである。
歌を聞いた者全てが力を失うほどである。
今まで聖帝軍は、彼女の歌を聞いたことがなかったのでルビーによる探知も遅れたのも惨状の原因であった。


『つまりあの歌の正体は超々強力なステータスデハブ攻撃……!』
『耐性や防御を貫通する弱体化攻撃。かつてレストが戦った魔神皇もそのような技を持っていたそうだが……話を聞く限りそれとは比べ物にならんぞ!?』
「まるでVガンダムのエンジェル・ハイロウじゃないか! きらりさんの歌はラクスやマリナ姫のようなものじゃなかったんだ!!」

狂信者上層部のハザマの放つデハブ技ランダマイザとは比べ物にならない威力をきらりの歌は持っていた。
言うなれば全ステータスを強引に一桁にしてしまうようなもの。
これではいくらレベルを積み、アイテムで強化して、完全な耐性を手に入れても意味がない。
力を奪うという意味ではイオリの言う、人類を退行させる兵器エンジェル・ハイロウとほぼ似ていると言っても良い。

そうして力の何もかもを奪われた一向に巨大きらりは近づき、容赦ない攻撃を加える。


445 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:52:09 jpU1HXBs0

「NYOWAAAAAAAAAAAA!!」
「がはッ!」
「NYOWAAAAAAAAAAAA!!」
『左の次は右かーーー!?』
「NYOWAAAAAAAAAAAA!!」
『があああああああ!!』

四号機と氷竜はA.Tフィールドとミラーシールドを張って防御しようとするが、弱体化しすぎたせいで防壁はガラス同然に破られる。
次に四号機を背負い投げで投げ飛ばして地面に叩きつけて、エヴァとシンクロしているカヲルにもダメージを与える。
その次には蹴りで氷竜の三本ある内の右の首を弾き飛ばした。
最後に鋼鉄の拳が炎竜の腹を殴りつける。

「やめてきらりさん! やめて!!」

なけなしの力でラブはきらりに大声で必死に呼びかけようとする。
それはきらりの中に自我が残っていると信じての行為だった。

「NYWA?」
「あ……」

だがそれがいけなかった。
結果的にきらりの注意を引く羽目になってしまった。
きらりはラブの体をつまみ上げられ、潰れない程度に握られる。
そしてラブは巨大な腕の中できらりと目があった。
何か嫌な予感が、その場にいる全員やラブ自身に感じさせた。

「キュアピーチ……!?」
「ごめん、キュアエース、みんな……私はここまでみたい」

何かを悟ったラブは諦めに似た表情で仲間たちに告げる。
仲間たち全員が助けに行こうとしたが、超弱体化のせいで誰も助けに行くことができない。


「ほむほむ、帰れなくてごめんね……

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――!!!」


きらりは可愛い人形さんでも愛でるようにラブを頬ずりした。
しかし今のきらりの肌は鋼鉄よりも硬くなっており、変身の解けてしまった生身のラブが耐えられるはずがなかった。
ラブの肉体は人参のように紅葉おろしにされ、きらりの顔面を赤く汚した。
そしてラブだった赤いものが地面にボタボタと落ちた。

仲間たちの悲鳴の言葉が聞こえてないかのようにきらりは玩具がなくなったことに疑問に思いつつ、次の玩具を探そうとする。
次に巨大きらりの興味を唆ったのは地面に転がる連中ではなく、高々と自己主張する東京スカイツリーだった。
そしてドシンドシンと巨体をスカイツリーに向かわせる。


446 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:53:23 jpU1HXBs0

「スカイツリーに向かっている?
……まずいぞ!! 奴は自分の歌を全国に飛ばすつもりだ!!」

サウザーはきらりがスカイツリーを通じて電波ジャックをし、自分の歌を配信するのだと推測する。
そうなればネットのある環境全てが彼女の歌に犯されて弱体化を余儀なくされる。
もちろんネット環境は都庁にもあるので下手をすると同盟軍も弱体化で今の聖帝軍やカヲルたちの二の舞になってしまう。
耐性や防御を貫通するきらりの歌は都庁最高戦力のフォレスト・セルですら耐えられるかも怪しいので、歌われた後に都庁に攻めこまれたら確実に都庁は破滅する。
元々きらりの歌は電波ジャックで配信するつもりだったとはいえ、現状の彼女の歌を世界に流すわけにはいかないとサウザーたちは必死に止めようとする。
しかし、今の彼らの体では一メートル前進するだけでも億劫であり、とてもきらりに追いつけるものではなかった。

「きらりさんがもうスカイツリーの目の前に……もう間に合わない!」

そうこうしている内にスカイツリーにたどり着いてしまったきらりに闇は感嘆の声を上げる。
何か配線のようなものが機械と融合したきらりの体から出ているので、サウザーの読み通りにきらりは歌を全国配信するつもりのようだ。
対主催・マーダー問わない日本全国の危機を前にして万事休すになった一行。
もはやこれまでと思ったその時、一筋の赤い閃光がスカイツリーに直撃し、爆破・倒壊させた。

「今のは……?」
「レイジ! あそこにさっきの赤いガンダムが!」


スカイツリーを倒壊させた者は頭部両手両足を失い、残ったGNキャノンで射撃した重装型アルケーガンダム。
そして中にいるベクター・真月零であった。

「テラカオスか……まさか聖帝軍の中にいるとはな」

コクピットの中で独り言のように呟くボロボロのベクター。
彼はアルケーの重装甲に助けられ、撃墜こそしたものの命だけは無事であった。
最初はそのまま死んだふりをして都庁・聖帝軍をやり過ごす気であったが、彼もまた変貌したきらりの歌の危険性に気づき、全国配信を阻止するためにスカイツリーを破壊すべく砲撃したのだ。

ネット環境は都庁以上に狂信者も扱っているので一気に無力化される危険がある。
ベクター自身は破滅を願った世界がどうなろうが知ったことではなかったが、同志カギ爪の夢であるクラウザーさんの復活が妨げられるのは我慢ならず、自分の命を捨てる覚悟で砲撃を行ったのだ。
そして巨大暴走アイドルの視線がベクターの乗るアルケーガンダムに向く。明らかに敵意を持っていた。
脱出するなり、ブースターを吹かせば初撃くらいは躱せるだろうが、ベクターもまた歌の影響で体がいうことを聞かず、さっきの引き金を一回引くだけで限界であった。

「他人など道具ぐらいにしか思ってなかった俺が、他人のために……
しかも先に死んだ奴のために動くとは……ね」

アルケーガンダムにビームが直撃し、爆発四散。
今度こそ元特務機関員にしてカギ爪の同志であるベクターは消滅した。
彼は死ぬ瞬間まで自嘲気味に笑っていた……


「スカイツリーはなんとかなったか……」

嬉しい誤算によって全国配信の危険は免れた。
だが、聖帝軍と都庁の救援隊が助かる見込みはない。
都庁からの援軍も今からでは間に合わないだろう。
この場にいるきらり以外はおそらく全滅する。

「すまない……犬牟田、蒲原、ついでにつば九郎。助けてやりたかったが……俺たちではどうしようもない」

嘆く高津にきらりが向かってくる。
どうやら次の標的は俺らしいと最期を悟った高津であった。


「高津さんをやらせはしない!!」
「!? 犬牟田!!」

突如、高津にとって馴染みのある声が聞こえたと思えば格納庫であるべりべり☆べあーがビームサーベルによって切り裂かれ、中から一機のガンダムが現れた。

「スタービルドストライク!! 中に乗っているのは犬牟田か!?」

きらりんロボもとい巨大きらりから脱出したガンダムが、きらりに踏み潰されそうになった高津を寸前で掴んで脱出。
動けない高津をコクピットの中に入れた。

「すいません、脱出に時間がかかりました!」
「犬牟田……おまえ、耳が……!」
「ごめんなさい、今の僕には何を言っても聞こえません」

他の者と違い、犬牟田はきらりの歌の影響を受けなかった。
その理由は犬牟田はコンソールが爆発して気絶する際に鼓膜が破裂しており、音が聞こえなくなっているのだ。
手傷は負っているがなんとか動けた犬牟田はうまくきらりの内部から脱出して温存されていたガンダムに乗り込んだのだ。


447 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:54:07 jpU1HXBs0

「聞こえなければ歌の影響を受けない……そうか、だったら!」

通信の犬牟田より聞こえなければ歌の影響を受けないと気づいたカヲルは、すぐに四号機の聴覚機能とのシンクロをカット。
まだエヴァの拘束具の裏から聞こえてくる歌によって体が鉛のように重いが、それでも動くことはできるようになった。
聞こえなければきらりの歌は聞こえないので弱体化しない……まさに犬牟田の怪我の功名であった。


「それと高津さん……残念なお知らせですが、脱出できたのは僕だけです。蒲原とつば九郎はもう……」
「そうか、聞こえてないだろうが言わせてくれ。おまえだけでも助かって良かった。
サウザー!! スカイツリーも壊れ、他の二人が死んでいるならこれ以上の戦いは危険だ!
いったん、都庁へ退こう!」
「帝王に逃走は……」
「これは逃走じゃなくてきらりを助けるためにあえて都庁へ前進するんです。
きらりは敵じゃなくて仲間ですから退くことには値しないはずです」
「それもそうか……今は都庁へ向かおう。そこならきらりを元に戻せる宛があるかもしれん」

高津の言葉と闇の助言により、サウザーは都庁へ向かうことを決める。

『だが、誰かが足止めしないときらりに追いつかれるぞ? それはどうする?』

氷竜の意見も最もだった。
相手の機動力を考えると誰かが足止めしないと確実追いつかれてしまう。
他が動けないので囮になるのは四号機かスタービルドが適当だが、四号機はカヲルが歌の影響が抜けきっていないせいで戦闘力はさほど戻っておらず、スタービルドに乗っている犬牟田は元々パイロットじゃないので動かすだけで精一杯だ。
足止めに残れば死ぬ確率が高く、そもそも今のきらりの戦闘力の前では手負いと即席パイロットでは足止めにもならないかもしれない。

「その役目は私がやるわ」

誰かが答えると巨大ミクダヨーがいた瓦礫の中から死んだと思われていたヴァーチャロイドが現れた。

「フェイ・イェン! 生きてたんだね!」
「ごめんなさい……再起動に時間がかかっちゃって……」

不意打ちを喰らったフェイ・イェンだったが、ミクダヨーの着ぐるみが破壊と一時的な機能停止と引き換えにチョバムアーマーの要領で守ったおかげで直撃は避け、大破炎上は免れたのだ。

「おい、ミクダヨー……じゃなかった、フェイはきらりの歌の影響を受けてないのか?」
「たぶん、彼女は人間ではなくロボットだからじゃないかな? あの歌は生物にしか効かないのかもしれない」

イオリの考察通り、きらりの歌は生物にしか効果がない。
もし非生物にも効くならガンダムもエヴァも動かなかっただろう。
フェイは非生物であるヴァーチャロイド故に歌の影響を受けないのだ。


『フェイ……貴様、ロボットだったのか……』
「ごめんなさい、騙すつもりはなかったんだけど機械嫌いな都庁の魔物たちを刺激したくなくてずっと着ぐるみを着ていたの」

フェイの正体がロボットと知り、思わず訝しげな顔になる氷竜。
文明と機械は自然とそこに住む魔物を脅かす存在だったので無理はない。

『氷竜……例外というものもある。少なくとも彼女は自然を食い荒らす心無い機械ではない』
『……そうだな。彼女もまた自然と魔物を理解し、我々に味方してくれた仲間だ』
「ありがとう、赤竜、氷竜」
『どのみち現状ではおまえぐらいしか足止めを任せられん』
『殿を頼むぞフェイ』

竜はフェイを憎むべき機械ではなく、信頼できる仲間として認めたのだった。

「フェイさん」
「キュアエース……」

次に声をかけたのは亜久里であった

「きらりはあなたを傷つけ、あなたの仲間であるラゴンや私にとっても仲間だったラブを殺した。
……でも元は悪い人じゃないんです。どうか憎まないで」
「……大丈夫よ。私は仲間を失ったことは悲しいけど、きらりを憎んではいないわ。
少なくとも殺す気はないから安心して」

亜久里だけでなく他の聖帝軍の子供たちの真摯な眼差しを感じ、フェイはきらりの人となりを理解した上でフェイは優しく答えた。
きらりが慕われていなかったらこんな瞳で願いを請われることはなかったのだろう。


448 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:54:42 jpU1HXBs0


それらのやりとりも今のきらりには理解できないのか、歌いながら真っ直ぐに集団に向かってくる。
フェイはそれに対してネギを構える。

「みんな! ここは私に任せて早く都庁に行って!」
「フェイとやら! ここは任せるぞ!」
『待っていろ! 可能な限り早く対応策を見つけて救援によこすからな!』

足止めを任せ、サウザーと氷竜の号令と共にエヴァ四号機はすぐに聖帝軍や竜たちを拾い、犬牟田のガンダムと共に戦線離脱する。

「NYOWAAAAAAAAAAAA!!」
「今のあなたを都庁へは行かせない!!」

獲物を逃すまいとするきらりの突撃をフェイが押し留める。
その内にエヴァとガンダムは墨田区から離脱したのだった。


 ◆

「これはいったいどうなってるんだ? あれはきらり……なのか?」

墨田区のとある瓦礫の中で魔雲天は目を覚ました。
実は魔雲天は仲間を庇って流体に貫かれて仲間に死んだとばかり思われていたが、流体は致命傷を外れており、大怪我と気絶しただけで辛うじて生きていたのだ。
しかも彼は岩なのできらりの歌の影響も受けず、弱体化しないまま起き上がることができたのだ。
だが気絶から覚めてみれば、敵と仲間がいなくなっておりスカイツリーは倒壊。
そして戦場に残っているのはおぞましい姿になったきらりんロボ(きらり?)と見覚えのない緑の長おさげを持ったロボットだけであり、その二つが戦い合っている。
悪魔でも混乱し叫ぶのも無理からぬ話だった。

「何がどうなっとる!? 誰か説明してくれーーー!!」

 ◆

フェイの助力によって墨田区を離脱した一行。
歌は距離を話すと効力が落ちるのか、だんだん弱体化によって下がった能力が元に戻りつつあった。
あとは都庁に帰って負傷者は治療。
動けるものは対策を練り次第、練馬区に戻ってフェイときらりを救いに行くべくであろう。

しかし都庁へ続くまでの道のりで赤竜が夥しい血を吐き出した。

『ゴフッ ガハッ!!』
「赤竜?」
『赤竜!?』

赤竜の顔色は悪く、今にも死にそうなくらい苦しそうである。
竜のテレパシー共に弱々しく呼びかける。

『すまん、氷竜、カヲル……俺も雷竜とバサラのところへ行くらしい』
「そんな……!」
『赤竜、貴様あの殴られた時に……フェイ・イェンを安心させるために今まで怪我を隠していたな!?』

赤竜は先ほど巨大きらりに殴りつけられた時にいくつかの内臓が破裂し、致命傷を負っていた。
仲間の士気、特に音楽仲間であるフェイに心配させないために黙っていたのである。

「す、すぐに治療を! 都庁に行けば回復する宛なんていくらでも!」
『もう間に合わん……クソッ、目も見えなくなってきた……
金色の闇が鎧を着て金髪美女騎士コスを着ているように妄想しながら視姦したかったのに』
「……えっちぃ竜は嫌いです」

地面に反し、闇の顔には悔しさが滲み出ていた。
一行だけでは赤竜を回復できる手段がなく、回復係だったラゴンは回復薬ごと蒸発した。
都庁へ着く前に確実に命を落とすだろう。
その前に赤竜は伝えられるだけのことを仲間に伝える。

『氷竜、みんな聞いてくれ……
フェイも言っていたが、きらりを恨まないでくれ。
俺はきらりの歌を聞いた時に力が抜けると同時に哀しみの感情が宿っているのを感じた。
彼女もこの殺し合いを憎み悲しんでいるんだ……
憎むべきは殺し合いであって彼女ではないんだ……』
『赤竜……』
『この哀しみを終わらせてくれよ、みんな。
もう魔物だとか人間だとか、まして機械かだなんて関係ない。
俺とバサラとカヲル……魔物と人間と使徒の相容れぬものも一つになれたんだ。
俺は仲間と歌の力を信じている……――』

――そして偉大なる竜は福音の名を持つ決戦兵器の腕の中で息を引き取った。
その散りざまに聖帝軍の多くは悲しみの涙を流し、救援にきてくれたことに感謝を述べたという。
特に彼の親友である蒼い竜と使徒の少年は大粒の涙を流したという……


 ◆


449 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:55:33 jpU1HXBs0

ここは聖帝軍一行とは対極の位置にある墨田区の外。

「遠野くん、バッチリ撮れた?」
「ああ、(撮影具合が)いいっすね〜」

そのビルの上には大破寸前のユニコーンガンダムと、ホモ二人がいた。
こいつら死んだだろ、いいかげんにしろ!と言われるかもしれないが、彼らが撃墜される瞬間を振り返って欲しい。
「撃墜され」「遠くで」「爆煙を上げた」とはあるが、「死んだ」とは書かれていないのだ。

カラクリを説明すると彼らを救ったのはユニコーンとバンシィに内蔵されたサイコフレームである。
サイコフレームは人の想念を力にするが、これは生者だけでなく死者の残留思念をも力にするのだ。
すなわち道下と遠野はたった二人で戦っていたわけではなく、先に死んだカギ爪団ととら、おまけに都庁で殺されて命を落とした野獣先輩の遠野を守りたいという想いが彼らを守ったのである。
結果的にユニコーンは大破寸前に追い込まれ、バンシィは修復不能なほど大破。
しかし中にいた道下と遠野は怪我もなく一命を取り留めたのだ。

そんな二人は一度は戦場に戻ろうとしたが、きらりの歌を聞くとまともに動けなくなることを知り、これでは捨て身の特攻もできないとして戦線復帰は断念。
その代わりに死に体のガンダムで戦うよりもっと効果的に聖帝軍と都庁を追い込む方法を思いついたのだ。

「よし、送信完了です。あの巨大メスガキが立川市を滅ぼす瞬間や、無抵抗の少女を惨殺する瞬間を動画配信しました」
「おっとあのデカメスが都庁と聖帝軍の連中を攻撃するところは流しちゃダメだよ?」
「大丈夫、あいつらにとって+になる部分は編集でカットした。これで聖帝軍も拳王連合軍の悪逆非道軍団の仲間入りだ」

遠野はタオル並に柔らかいスマホを使って暴走したきらりが暴れまわる姿を撮影し、まともな対主催だと世間に思われていた聖帝軍が善人を装っていたマーダーであるように見せかけるように動画を配信したのだ。
都合の悪いところは全てカットし、事情を知らない者にはまるで化けの皮が剥がれたように見えるよう誤解を促そうと言う悪魔の計画を思いついたのだ。ラブは狂信者はともかく、世間一般にはまだ都庁の仲間であるとは知らされてないので、きらりこと聖帝軍があたかも惨殺したように見える。
こうなれば都庁と同じく聖帝軍も誤解により対主催から孤立する。
少なくとも成功する見込みのない特攻よりは狂信者に対してできる限りの最大の支援だろう。


「さて、用は済んだしビックサイトに戻ろうか」
「真月くんが死ぬ間際に言ったテラカオスという言葉も気になるしね。
彼……何か知っていたみたいだし、上層部のディー店長やセルベリアおばさん、それからDRSKL兄貴に知らせなきゃ」

道下と遠野はユニコーンの通信機からベクターが死に際に呟いた「テラカオス」という言葉が引っかかったらしい。
明らかに異常な状態になったきらりを見ての一言であり、テラカオスこそこの戦いを握るナニカだとホモの直感が呟いていた。
敵前逃亡は処刑される危険があるが、それを覚悟の上で上層部の三人に知らせる必要があるだろう。
ホモ二人はユニコーンに乗り込み、ビックサイトへと向かった。
去り際に墨田区から撤退する四号機を見て二人は暗い瞳で

「ふふふ……カギ爪の同志は死んでしまったけど彼の魂は僕らの中で生き続けている」
「あそこには同志の集めた予備戦力もあるしね、墨田区に集まったのが同志が集めた人数の半分にも満たないと知ったらあいつらが驚くね道下さん」
「聖帝サウザー、僕らと同志の愛を最低の依存だとこき下ろしたことを後悔させてやろうよ遠野くん」

「同志は世間に疎まれがちなホモに手を差し伸べてくれた尊い人」
「恋人を失って傷心した僕らを救ってくれた恩人を貶した罪を悔い改めて」



           火 死
「「ぼくらの 復讐の ひでしね 聖帝軍」」






【カギ爪の男@ガン×ソード 死亡確認】
【ベクター(真月零)@遊戯王ZEXALⅡ 死亡確認】
【とら@うしおととら 死亡確認】
【蒲原智美@咲-Saki- 死亡確認】
【つば九郎@ヤクルトスワローズ 死亡確認】
【海底原人ラゴン@ウルトラQ 死亡確認】
【桃園ラブ@フレッシュプリキュア! 死亡確認】
【偉大なる赤竜@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 死亡確認】



【二日目・13時45分/東京都・墨田区】
※東京スカイツリーは倒壊しました
※暴走したきらりの攻撃で立川市が消滅しました
※またきらり暴走による立川市消滅の瞬間と少女(ラブ)惨殺の瞬間がネットで配信されました(彼女がその他の都庁、聖帝軍と戦っているところは編集でカット)


450 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:56:38 jpU1HXBs0


【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【状態】テラカオス化進行(特大)、暴走、きらりんロボと融合
【装備】きらりんロボ
【道具】なし
【思考】基本:世界をカオスにするにぃ!
0:NYOWAAAAAAAAAAAA!!
1:とにかく目の前の敵を鏖にするにぃ!
2:天ちゃん……天ちゃん……
※テラカオス化の進行によってきらりんロボと融合しました。さらに聞くと気力と能力を極端に低下させる歌を歌えるようになりました。
 この歌はあらゆる耐性を貫通しますが、距離を取ると効果が薄まり、何らかの手段で音を聞かなくする、非生物系参加者なら回避可能。
※テラカオス化が大きく進行してしまったため、フォレスト・セルによる治療を受け付けない可能性があります


【フェイ・イェンHD@スーパーロボット大戦UX】
【状態】ダメージ(小)、巨大化中、怒りと悲しみ、首輪解除、歌姫L9
【装備】ジェイド・フォーキー
【道具】支給品一式、ドラムセット、獣電池(トバスピノ) 、ガブリチェンジャー、ザンダーサンダー 、獣電池(プテラゴードン×2)
【思考】基本:殺し合いを止める
0:救援がくるまでに暴走したきらりを止める
1:警察組や赤竜たちの死を無駄にしないために頑張る
※アニキの持ち歌はほぼマスター済みです
※獣電池にブレイブインできるかは不明です
※獣電池から太古の祈り歌を聞きました。半覚醒なのでまだ1番までしか聞けません。
※ロボットなのできらりの歌の影響を受けません
※赤竜の死をまだ知りません


【ターバンのレスラー(ザ・魔雲天)@キン肉マン】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)
【装備】柔道着、ターバン
【道具】なし
【思考】基本:悪魔将軍の命に従い主催を抹殺する。
0:きらり……いったい何が起きている!?
1:聖帝軍のみんなはどこへいった?
2:他の悪魔超人達と合流する(できればミスターカーメン)
3:邪魔者はすべてマウンテンドロップでペシャンコにする。
4:仮に風鳴翼と出くわしたら倒す。
5:関東に超人の軍団ができたという話だが、どこにいるんだ?
※気絶していたために状況を把握できていません
※岩なのできらりの歌の影響を受けません


【二日目・13時45分/東京都・墨田区付近】

【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【状態】疲労(中)、ダメージ(小)、混乱、首輪解除
【装備】バット
【道具】支給品一式、ノートPC、ターバン
【思考】
基本:予言を完遂して世界を救済して日本を手に入れる。そしてラオウも倒す
0:不服だが今は都庁同盟軍に従って都庁へ向かう
1:きらりはいったいどうしたというのだ!?
2:試合をぶち壊したDMC狂信者達を粉砕する
3:野球チームは保護する
4:愛などいらぬ!
5:退かぬ!媚びぬ!省みぬ!


【ターバンのガキ(円亜久里)@ドキドキプリキュア!】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、混乱、首輪解除
【装備】ラブアイズパレット、ラブキッスルージュ、ターバン
【道具】支給品一式、アイちゃん
【思考】
基本:殺し合いを止める&予言を完遂する
0:今は都庁同盟軍に従って都庁へ向かう
1:DMC狂信者を倒す、レジーナは可能であれば何とか説得したい
2:世界救済の予言を完遂させる
3:マナ、ラブ達の死を無駄にはしない


451 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:57:13 jpU1HXBs0


【ターバンのガキ(イリヤスフィール・フォン・アインツベルン)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、混乱、首輪解除
【装備】マジカルルビー、ターバン
【道具】支給品一式、クラスカード全種、魔法少女マジカル☆ブシドームサシDVD-BOX
【思考】
基本:殺し合いを止める&予言を完遂する
0:今は都庁同盟軍に従って都庁へ向かう
1:きらりさん、どうして!?
2:とにかくDMC狂信者を止める
3:お兄ちゃんやミユ達が心配


【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、混乱、首輪解除、大人化
【装備】ターバン、獣の槍
【道具】支給品一式、たい焼き×大量
【思考】
基本:主催者を打倒する&予言を完遂する
0:今は都庁同盟軍に従って都庁へ向かう
1:きらりさんは予言の歌い主ではなかったようですね……
2:DMC狂信者達をどうにかする
3:世界救済の予言……ですか
4:美柑達が無事か気がかりですね
5:不覚にもサウザー相手に一瞬ときめいた自分が恥ずかしい
※ドラゴンハートの影響により、大人(ティアーユ似)の体型になりました


【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【状態】疲労(中)、混乱、首輪解除
【装備】ターバン
【道具】支給品一式、ガンプラ用工具一式
【思考】
基本:殺し合いを止める&予言を完遂する
0:今は都庁同盟軍に従って都庁へ向かう
1:きらりさんの歌がエンジェル・ハイロウだったなんて……
2:ごめんよ、ビギニング、Mk-Ⅱ……
※テラカオス化が進行したきらりの歌はエンジェル・ハイロゥ@機動戦士Vガンダムと同質のものであると思っています


【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【状態】疲労(中)、混乱、首輪解除
【装備】ターバン
【道具】支給品一式
【思考】
基本:主催の連中をぶっ潰して殺し合いを止める&予言を完遂する
0:今は都庁同盟軍に従って都庁へ向かう
1:畜生、何がどうなってやがる!
2:スタービルドストライクガンダムが最後の砦か……


【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、混乱、首輪解除
【装備】クロスチェンジャー、ジェットスワロー@鳥人戦隊ジェットマン、ターバン
【道具】支給品一式、ボロボロのグローブ
【思考】
0:今は都庁同盟軍に従って都庁へ向かう
1:犬牟田すまねえ……
2:ああなっちまったきらりちゃんは元に戻れるのか!?
3:DMC狂信者をぶっつぶす


【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【状態】ダメージ(大)、鼓膜破裂、
【装備】HGスタービルドストライクガンダム、だいぶ古い型のノートパソコン@現実、ターバン
【道具】支給品一式
【思考】
0:今は都庁同盟軍に従って都庁へ向かう
1:諸星さん……
2:鼓膜が破れて何も聞こえないが、都庁同盟軍が味方なのはわかる
3:もうちょっとまともなパソコンがほしい
4:皐月様、なんとか生きている内に活躍できましたよ……


452 : あるこる! ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:57:40 jpU1HXBs0
【聖帝軍救援隊】

【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(大)、右の首喪失、首輪解除、激しい怒りと悲しみ、ドラゴンハート蒼起動
【装備】無し
【道具】とけないこおり@ポケットモンスター、支給品一式 、ドラゴンハート紅
【思考】基本:都庁同盟軍と共に生き残る。DMC信者は殺す
0:救出した聖帝軍と共に都庁に戻る
1:鹿目まどかは必ず守る
2:聖帝軍のロリを守った聖帝は漢の中の漢!
3:死ぬな、フェイ・イェン……
4:金龍に続いて赤竜までも……
※一定の魔力を有する相手であれば、テレパシーで会話可能
※ドラゴンハート蒼は本体の攻撃にあわせ、時間経過と共に威力の上がる氷全体攻撃を繰り返します


【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】ダメージ(中)、首輪解除、傷心、怒りと悲しみ
【装備】エヴァンゲリオン四号機(ダメージ中)
【道具】支給品一式、キーボード@楽器
【思考】基本:バサラの遺志を継ぎ、彼の歌を届けて殺し合いを終わらせる
0:救出した聖帝軍と共に都庁に戻る
1:きらりさんの暴走の件を急いで都庁の皆に伝える
2:シンジ君を探して一緒に歌う。
3:DMC狂信者や天魔王軍は許さない
4:しかし僕にバサラの代わりが務まるのか……?
5:赤竜……ごめん
6:フェイ・イェン、仲間が来るまで無事でいて!
※使徒だからか、偉大なる赤竜と会話が可能です。
※ドラゴンハートによってPS2版エヴァンゲリオンと同じく、エヴァ四号機を召喚して戦えるようになりました
※A.Tフィールド展開中のエヴァに搭乗していればきらりの歌の影響を受けません




【DMC狂信者 カギ爪団残党】

【道下正樹@くそみそテクニック】
【状態】健康
【装備】ユニコーンガンダム(大破寸前)@機動戦士ガンダムUC
【道具】支給品一式
【思考】
基本:同志のためにもクラウザーさんを蘇らせる。
0:いったんビックサイトに戻る
1:SATSUGAIする。
2:阿部さんや同志は僕の中で生き続けているんだ……。
3:狂信者仲間にきらりの変貌およびべクターの言っていたテラカオスのことを伝える


【遠野@真夏の夜の淫夢】
【状態】健康
【装備】やわらかスマートフォン
【道具】支給品一式
【思考】
基本 基本:同志のためにもクラウザーさんを蘇らせる。
1:SATSUGAIする。
2:先輩や同志は僕の中で生き続けているんだ……。
3:狂信者仲間にきらりの変貌およびべクターの言っていたテラカオスのことを伝える


残存モブ戦力:全滅
       ただし、予備兵力はまだまだいる模様


453 : ◆lgy5dogjeQ :2017/11/07(火) 23:58:36 jpU1HXBs0
投下完了です


454 : 名無しさん :2017/11/08(水) 10:42:54 D8mlU/4c0
投下乙
サウザーがカッコイイ反面、情報操作含め聖帝軍も都庁もかなりの損害だな。そしてきらりんは間に合わなかったか
しかしサウザーがこうやってしっかり信念を持って行動してカリスマ発揮すると、相対的にベジータの株が……


455 : 名無しさん :2017/11/09(木) 20:40:22 3t5LrTmA0
鍵ツメ撃破はでかいけど、それ以上に対主催の損害が...つば九郎は裏切るタイミングが早すぎたな
そしてスカイツリーを破壊することでヘルカイザー同様下手な対主催より対主催に貢献しているベクターな件


456 : 名無しさん :2017/11/09(木) 20:45:36 nGfP60Lg0
投下乙です
ホモの恨み恐いなー戸締りすとこ


457 : 名無しさん :2017/11/09(木) 22:12:51 eyRn5rbc0
オウフ書いてるパート被ってたけど投下乙です
聖帝のカリスマがハリボテじゃなくて何よりだがつば九郎ェ……
しかしまさかカヲル君がホモを全否定するだと!?


458 : 名無しさん :2017/11/09(木) 22:57:51 Kp0iz6TM0
パート被っちゃった人の分も避難所とかで見てみたいなあ、とは思う
書きかけ・プロットのみだけでも先に投下された方との差分とか楽しめそうだし


459 : 名無しさん :2017/11/10(金) 00:00:57 A6Dlnagw0
>>458
救援隊と合流した聖帝軍、カギ爪団を押し返す
→ホモが自爆特攻、魔雲天味方を庇い死亡→支えを失ったきらり暴走、カギ爪団の機動部隊を蹴散らせるようロボと一体化
→ビームアイでカギ爪死亡、しかしその後もバスターガンダムの如くビーム乱射で世界樹に飛び火
→ダオス迎撃レーザーの応酬→聖帝達、仲間であり予言的にもきらりを失いたくない
→救援隊経由でダオス達にもきらり不殺指示。どうにかセル治療を行うための戦い開始
てな流れでした。きらりロボ合体とか被ってるし、少し弄れば後ろの方はこの話の続きとしてリサイクルできるかも
……今度はちゃんと予約します


460 : 名無しさん :2017/11/10(金) 10:35:53 opDOJuJU0
こっちだと魔雲天とホモが死んでいたのか
カオスロワに限ったことじゃないけどパートは同じでも展開がどう転ぶかわからんもんだ


461 : 名無しさん :2017/11/12(日) 20:08:18 Y8lhIrzo0
ここまでで生き残ったテラカオス候補者を上げると

☆捕食により能力を吸収しつづける貧乳歌姫 ディーヴァ
☆無限に進化成長し弱点のハズの秩序の力が効かない 安倍
☆敵の攻撃が強いほど強力なカウンターを放てる ユーノ
☆敵を極限まで弱体化させる歌をもつ きらり

見事にどれも凶悪な能力だな……


462 : 名無しさん :2017/11/12(日) 22:28:34 NZ86wBHM0
一応そいつらの弱点をあげるなら
歌姫→肉体防御力は風鳴翼時代と大差ない(ただし電磁バリアと真竜再生力持ち)特効武器の竜殺剣も二本ある
安倍→戦闘力はともかく、おそらく技術と知識はさほどでもない
ユーノ→カウンターできるのがエネルギー系のみで接近戦には効果無し
きらり→非生物か耳を潰せばいい(ただし超硬い装甲と高威力ビームもある)

現時点で即戦闘の可能性があるきらりの能力が普通に対処キツイし、倒すだけなら遠距離まどかレーザーとかで楽できそうだが、救いだすとなるとなぁ…
やはり魔雲天が鍵か


463 : 名無しさん :2017/11/12(日) 23:09:51 iVqDd5vQ0
ディーヴァは今シャドウと戦闘中だからなぁどうなることやら


464 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:17:19 rCF0Iv.U0
久々に投下


465 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:18:20 rCF0Iv.U0
ウドラの情報により、大阪の地下へと足を踏み入れた聖帝軍先遣隊。
その先で彼らはとある少年少女と一匹の獣と出会った。

少年は落盤によってできた瓦礫の壁の前で泣きながら地面に膝をついており、少女は何かに怯えるようにガタガタと体を震わせながら地面に座り込み、白い小さな獣は虫の息で地面に倒れていた。
少年はホワイトベース組の最後の生き残りである苗木、そして少女は魔法少女となった霧切、獣はクライシス皇帝の裏切りによって死ぬ寸前までの手傷を負わされたキュゥべえ。
彼らこそウドラの言っていた地下を出入りしていた大阪の生存者である。

「すまねえ苗木……」
「元々はアクシデントでここに来たとはいえ、もっと我々が早く着いていればもっと助けられただろうに……」

瓦礫によってできた壁の下からは大量の鮮血が漏れていた。
苗木が地下なら安全であると考えて避難させていた二人の人間が、落盤という僅かな計算違いによって押しつぶされて死亡したのだ。
霧切救助のために地下を離れた苗木だけが幸運にも生き延びてしまったのである。
己の判断ミスによって友人と友人の仲間(名前も知らなかった矢車についてはキュゥべえから知った)の死に苗木が自責の念を覚えているのは想像に苦しくない。
せめて苗木が絶望で押しつぶされないように紘太とクロコダインは声を掛けるが……

「……いいえ、紘太さんたちは何も悪くありませんよ」

涙を手で拭うと苗木はスクッと立ち上がり、血の漏れる壁から先遣隊に顔を向ける。

「な、苗木…!」

その表情は恐ろしいものになっていた。
苗木は嗤っている。
だがその眼光は渦を巻くように見え、明らかに異常な――絶望と殺意を宿らせていた。

「葉隠くんや矢車さんのように多くの人が絶望的な目にあったのは、全部拳王連合軍が悪いんだ!!
奴らさえ来なければ大阪の人たちは……ホワイトベースの皆は……外に生えている毒の花だって!!」
「落ち着け! 外の花はたぶん拳王連合軍の仕業じゃ……」
「いいや、あんな酷いことをするのは奴ら以外にありえない!!」

少なくともフロワロだけは拳王連合軍の所業ではないと直感で感じているクロコダインは苗木を落ち着かせようとするが、今の少年はどんなコトダマを突きつけても聞く耳を持たなかった。

「たくさんの人の希望を奪ったあいつらには絶望を……仮面ライダーウィザードである僕が奴らに相応しい絶望を与えてやる!!!」

今の苗木は拳王連合軍に報復することしか考えられない復讐の鬼と化していた。
皮肉にも復讐そのものが彼の生きる意味……希望にもなっていたので、絶望で死ぬことを二つの意味で防いでいたのである。

「あ、ぐ……」
「苗木!?」
「大丈夫だ、引きつけを起こしただけだ」

拳王連合軍への復讐宣言をした苗木だったが、そんな彼はすぐ後に立ちくらみが襲い、そのまま倒れてしまった。
肉体疲労と精神疲労がピークに達している時に頭に血が昇ってしまったため、気を失ってしまったようだ。

「……暴走気味であったから動けなくなった今の方が都合が良いか。紘太、こいつをおぶってやれ」
「ああ、任せてくれ」
「さて……ぬ!?」

クロコダインは残る生存者である霧切とキュゥべえに目を向けると驚くべき光景があった。


466 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:19:18 rCF0Iv.U0


『〜〜〜!!!』
「やめなさいシャルロッテ!? いったいどうしたって言うの!?」
「シャルロッテによるとキュゥべえを見てると何かムカつくとか言ってるなっしー! 理由は本人も覚えてないらしいなしが……」
「ええい、やめんかシャルロッテ!! せっかく見つけた数少ない救助者だぞ!」

見るとシャルロッテは可愛らしいぬいぐるみのような姿から黒い鰻に似た本来の顔を出しており、今にもキュゥべえに噛み付こうとしている。
持ち主であるふなっしーとチルノ、ウドラが必死に抑えているが、詐欺的に魔法少女にされて結果的に魔女になった原因であるキュゥべえを本能的に覚えているシャルロッテは止まることなく、キュゥべえを齧ろうとする。
瀕死のキュゥべえにひと噛みでもすれば死んでしまうだろう。
救助者にして貴重な情報源であるキュゥべえをむざむざ殺させるわけにはいかないので、クロコダインも加わって猛るシャルロッテを抑えようとする。
そこへ今まで座り込んでいた霧切が立ち上がり。

「キュゥべえを……いじめないで!!」

霧切がバリツ仕込みのパンチでシャルロッテを殴りつけた。
シャルロッテは衝撃で後ろに吹き飛び、さらに彼女を抑えていたクロコダインたちをも余波で岩壁にぶつけた。

「なにい!?」

そのパワーは圧倒的で巨体で怪力を持つクロコダインすらも軽々と弾き飛ばすと言えば、その力の凄まじさがわかるだろう。
いったい小さな体のどこからそんなパワーが出るのか疑問に思う先遣隊にキュゥべえは答える。

「魔法少女となった響子の魔力は、最高の魔法少女になれるかもしれないまどかに数段劣る程度……ワルプルギスの夜すら一撃……とはいかないけど、楽勝で勝てるレベルさ」
「ワルプルギスの夜と言えばかなり前に放送で呼ばれていたけどそんなに強いの?」
「そのワルプルギスの夜が一回暴れれば千人単位の死傷者が出るんだ。
そんな災害じみた奴を簡単に倒せると言えばどれだけ強いかわかるだろう?」
「その気になれば街一つ滅ぼせるレベルか……」
「すごいなっしー!」

霧切はキュゥべえと契約した結果、魔法少女となり莫大な力を手にしたのだ。
概念そのものにすらなれる鹿目まどかに劣るとはいえ、現状では最強クラスの魔法少女と言える程の存在になれたのである。
バリツ一つあれば仮面ライダーBLACK RXにすら並ぶことさえ可能である。


467 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:19:56 rCF0Iv.U0

「……まあ、現状の彼女ではその力を100%発揮できないんだけどね」
「え? どういうことなしか?」
「よく見ろふなっしー。この子は何かに怯えている。手足がさっきから震えっぱなしだ」
「何らかの恐怖症を抱えているようだな」
「ああ、そうさ。
本来の彼女はもっともっと理知的だったけど今は見る影もない。
ある存在への恐怖心から幼児退行を引き起こし、さらに部分的な記憶喪失すら陥っている。
辛うじて苗木のことは覚えているみたいだけど、最近まで行動していた仲間のことや殺し合いでの出来事なんて軒並み覚えてないよ」

霧切が元は高校生であると知らない先遣隊には分からないが、霧切の言動には幼稚さが見えていた。

「キュゥべえ、おしっこ」
「響子、話が終わるまで今は我慢して。
……この通り、思考力も下がっているから、実力を発揮できない。
特にある存在への恐怖心が色濃く残っていて、そいつと仮に接触したらまず間違いなく殺されるね」

せっかくの超魔力も思考力が低減している現在では宝の持ち腐れである。
彼女が正気に戻るまで時間はかかるだろうし、それを待ってる余裕はない。
キュゥべえの口調から霧切は本来は気丈な娘だと悟ったクロコダインは神妙に話を聞く。

「この娘をこんな風にした存在、それは何者だ?」
「風鳴翼……いや、テラカオス・ディーヴァと彼女は名乗っていた。
そいつが僕の仲間だった者の大半を食い散らし、地上に出ている毒花を撒き散らしたのさ」
「食人鬼……やはりここに来ていたのか!」
「実は彼女の叔父に当たる人物と行動を共にしていたんだけど、もはや顔立ちと貧乳以外は面影なかったし、ほとんどのマーダーを撃破・撃退してきた強い仲間もあっさりと彼女に食い殺された」
「怖いなっしー! そいつは今、どこにいるなしか!?」
「幸い、響子が魔法少女への契約を代価に彼女に殺されたくないと願ってくれたおかげで彼女限定の結界が張られた。
その結界の力で沖縄方面まで吹き飛ぶのを見たし、結界のおかげで響子のいる場所を中心に数百キロ四方は彼女は入ってこれない」
「とりあえずは安心……できるのか?」

生み出された結界によって食人の歌姫は海の彼方にある沖縄まで弾き飛ばされた。
歌姫のエントロピーが霧切のエントロピーを上回らない限りは結界による安全が保証されていると言っていい。
……あくまで貧乳歌姫限定の安全であり、他のマーダーや彼女の生み出した毒花には効果がないようだが。

「キュゥべえ、先程のアクシデントはすまなかった。
シャルロッテの無礼は許して欲しい」
「ホラ、シャルロッテも謝るなっしー!」
「謝罪代わりある程度の傷を治せるアモールの水を使ってムロロ〜ン」
「ありがとう。大丈夫、僕は怒ってないよ」

シャルロッテの突然の暴走を、クロコダインが謝罪し、ウドラが支給品の回復薬をキュゥべえに使用する。
これによって動くこともままならなかったキュゥべえは立ち上がれるようになった。


468 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:20:34 rCF0Iv.U0


「うむ、そろそろ時間だな。約束通りに探索を打ち切るぞ」

クロコダインはそう言った。
先遣隊が地下を探索してからおおよそ一時間が経過した。
地上には黒い毒花も咲いている以上、これ以上の探索は危険である。

「しかし、クロコダイン、まだ苗木とキュゥべえの仲間がどこかにいるかもしれない。
苗木たちだって生きてたんだからきっと」
「残念だけど紘太、苗木には黙っていたけど弦十郎や乾巧らしきエントロピーは君たちが大阪にたどり着いた前後に消失しているんだ。既に死んでると見るべきだね」
「そんな……」
「エントロピーがいきなり消える様子からして街から離れたようには思えない。もし街を離れただけなら拳王連合軍のように遠のいていく。
つまり、残念だろうけどそれが事実さ」

キュゥべえの口から淡々と告げられた真実は苗木らを残した、ホワイトベース組・クライシス御一行が全滅という残酷なものであった。
だが、これによって撤収を渋っていた紘太も悔しいと思いつつも流石に参加者の救助を諦めたのである。

「それにしてもどうやって大阪から出るべきか……」
「この花、地下にも生えてくるし、増殖スピードも早い。
あたいらが東京に着くまで凍らして沈めるにしても、その前にあたいの魔力が先に尽きてしまう」
「そもそも徒歩で東京へ向かっていたら何日かかることか……まだ俺のワープ能力は使えないし、せめて車の一台でもねえか?」
「早急に大阪から脱出する手段が必要だね」

暗い地下の中で増殖し続けるフロワロの毒花粉から逃れるために、そして聖帝軍本隊への合流を急ぐために東京へ迎える足を探す先遣隊。
しかし、地上にある車両は先の戦いで大破しているか毒花に覆われておそらく使用不能。
ならば地下で探す他ないが、大柄なクロコダインが乗れる乗り物は限られている。
そんな乗り物は見つかるだろうか……?

一行がそう思っていた矢先にふなっしーとウドラが幸運にも何かを発見した。

「ムロ?」
「どうしたなしかウドラ?」
「この先に何か空気の流れを感じるムロ〜」
「向こうに何かあるのか? 壊してみるか」

積み重なった瓦礫の間から漏れたわずかなスキマ風を感じ取ったゆるキャラたち。
そこでクロコダインは周囲が崩れない程度に豪腕で瓦礫を破壊する。
すると中から広い空間と、先遣隊+αが乗る分には問題ない大きさの乗り物が現れた。

「これは……」
「『のぞみ』……新幹線だ!」

現れたのは白い新幹線、のぞみの先頭車両。
瓦礫に巻き込まれて後部車両こそ全滅しているが、主軸となる先頭車は生きているので問題ない。
速度に関してても最低で200キロは出すことができ、大阪から東京まで二時間半でたどり着く計算である、
少なくともフロワロの増殖スピードよりは早く東京に向かうことができるであろう。

「助かったぜ! これなら放送前には東京に着くぜ」
「……待て、喜ぶのはまだ早い」
「……新幹線の前に何かがいる!」

新幹線の前には先遣隊に敵意を持った生物がいた……

青と銀の体を持った虎型ミラーモンスター・「デストワイルダー」と、白いサーベルタイガー「千早」である。


469 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:21:59 rCF0Iv.U0



ん、ちょっと待て。
この二匹は5190話でジョーカーの新城と一緒に死んだだろうって?

ところがどっこい。この二匹は死んでなどいない。
書き手が入れ忘……ゲフンゲフン、イマジンスレイヤーにフルボッコにされて飼い主である新城を失って敗走し、たまたま地下へと逃げ込んだ結果、二匹は拳王連合軍の追撃やフロワロによる腐敗死を逃れたのだ。

「チッ、どういうわけかだいぶ気が立っているな……やるしかないのか?」

目の前の二匹は苗木たちに次ぐ大阪の貴重な生き残りと言えたが、明らかな殺気と牙を向けていた。
殺気立っている理由はわからないが、先遣隊にしても大阪脱出の手段として新幹線が必要なため、邪魔をするならば戦うしかないと思われた……が。

「ガフッ!?」
『!!?』
「いきなり血を吐いたなっしー!!」
「なんだ!? 俺たちはまだ何もしてないぞ?」

突然、血を吐いて倒れた千早に驚く先遣隊の一同。
千早の横にいたデストワイルダーも戦いをそっちのけで心配そうに千早の体を揺さぶる。
クロコダインのみが、冷静に千早の身に起きた事態を察した。

「いや、これはおそろく……」

クロコダインは武器を下ろし、ついさっきまで襲いかかろうとした相手に臆することなく、歩み寄り耳を傾ける。

『千早の姐さん、こんなところで死んじゃダメだ〜!』
『く、くそ……毒で体が言うことを聞きはしない……』
『外の花の毒を吸ったな』
『アンタ…‥モンスターや獣の言葉がわかるのか?』
『見ての通りリザードマンだからな。獣の言葉はよくわかる』

さらにクロコダインは獣の言葉を使って、二匹との対話に入った。
近づいてきたクロコダインにデストワイルダーは近寄るなと言わんばかりに爪と歯を向けるが、冷静に話し合うスタンスをクロコダインは崩さなかった。

『そ、それ以上俺たちに近づくな! 毒消しでも寄越してさっさと失せろ』
『悪いが、手負いの貴様ら程度なら俺一人でも殺すことは容易い。
それにメスの虎を助けたいようだが、毒消しなど一時しのぎしかならん。
あの毒の花は地下にも生えるようだ。ここで治してもまたすぐその毒にかかる』
『馬鹿な……地下は安全じゃないのか!?』
『まだほんの少しだが地下に生えているのを見かけた。
このまま地下に引きこもっていてもまた毒状態になって朽ちて死ぬか、餓死して死ぬかのどちらかしかないぞ』
『ぐぬぬ……だがどうすれば』

千早は地下に向かう過程でフロワロの花粉毒に侵されてしまっていた。
その度合いは極軽微であるウドラの比ではなく、立つこともままならない有様だ。
(デストワイルダーは鏡の世界にいたので毒は喰らわなかった)
なし崩し的に地下へ避難したは良いが、フロワロが地下に咲くことを知らなかったらしく、一時しのぎにしかならなかった。
このまま放っておけば先遣隊が手にかけなくても二匹は後に死んでいただろう。

『生き延びたいか? ならば俺たちと共に来い』
『おまえらの軍門に降れと? ご主人が死んでいるとはいえ、そんなことできるわけが!』
『後ろにある新幹線……あれさえ動けば大阪から脱出できる。
俺たちは毒消しは持ってないが、脱出できればその毒の治療する宛はある。
だが操縦に適していないおまえたちの腕では操作は無理だ。
ここは無駄に命を散らすより、協調し合って大阪から脱出できた方が賢明だろう』
『確かに……だが』

クロコダインは知る由もないが、千早とデストワイルダーは特務機関員・新城直衛の意思持ち支給品。
ひいては主催の手先なのだ。
本来、潜入以外が目的で対主催と手を組むべきではないだろうが、ここで先遣隊に加入しなければ二匹とも死ぬ事になる事実にデストワイルダーは迷う。

『……わかったわ、アタシたちはあんたらと一緒に行くよ』
『姐さん……しかし!』
『ご主人様を殺した拳王連合軍を皆殺しにするまで、死ぬわけにはいかないからね。
デストワイルダーだって、死ぬならこんな場所じゃなく、拳王連合軍の忍者に一矢報いてからの方が良かろう?』
『確かに……あの契約者は前の正義厨よりかは遥かに俺を大事にしてくれた……仇は討ちたい』
(こいつらも拳王連合軍の犠牲者か……)


470 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:22:40 rCF0Iv.U0

千早とデストワイルダーが誰かの支給品で、その慕っていた誰かを悪しき拳王連合軍に殺されたことをクロコダインは察し、利害が一致していることを理解し、なおさら仲間として引き入れるべきだと思わせた
一方、千早とデストワイルダーは先遣隊に聞こえないように小声で話す。

(しかし、良いんですかい姐さん? 勝手に対主催に手を貸すような真似をしちゃって)
(本気で手を貸すんじゃない。これは手を貸すフリをした潜入だ。
ご主人様である新城様は死に、主催もなぜか安倍に交代しているが、新城様の姉君である蓮乃様が捕らえられている事は変わらん。
蓮乃様の首が飛ばないようにいざという時は裏切るさ)
(なるほど……)
(だが裏切りは拳王連合軍への報復が終わってからでも遅くない。それまでは奴らの支給品として従うフリをするさ)

黒い考えを先遣隊に悟らせないようにさせつつ、回答を渋っていたデストワイルダーはクロコダインに言った。

『わかった、大阪の脱出のために手を組もう』
『わかってくれたか、俺は聖帝軍のクロコダインだ』
『俺はデストワイルダー、姐さんは千早だ』

「よし、話はまとまった。こいつらも今から聖帝軍の仲間だ」
「無駄な戦いは避けられたようね」

クロコダインによって二匹とは平和的な解決がなされたことで安堵する先遣隊一行。

「時間が惜しい、すぐにでも脱出の準備をするぞ!」

そして千早とデストワイルダーを加えた一行は新幹線のぞみに乗り込み、潰れた後部車両を切り離して発車する。
運転手は紘太、クロコダインはグレイトアックスのイオ系呪文による線路上の敵や瓦礫の除去、チルノは殺し合いの過程で破壊された線路を氷を生成して即席補修、ふなっしーは怪我人の介抱の役割が与えられた。
線路に氷使ったら滑って脱線するんじゃね?
科学的には乾いた氷は滑らないので問題ない。今の大人になったチルノならばそれくらいの魔力制御はお手の物である。


そして先遣隊を乗せたのぞみは地下から地上に出て大阪を出た。
するとそこには驚くべき光景があった。
背後の大阪の街、そこに生えていたフロワロが赤から黒へと変色し、瓦礫の街を闇色に染めていた。
文字通りの意味で死の街と化しており、なおさら弦十郎らの生存が絶望視できる。

それだけでなく、海の方向――沖縄の辺りを見ると空が異様に黒く染まっており、見ただけで世界の終わりが近づいているように思わせた。

「なんだありゃあ……いったい何がどうなってんだ」
「最強のあたいだけど……あれはホントにまずい気がするよ」
「キュゥべえが言うには沖縄には風鳴……いや、テラカオスとやらがいるらしいが、そいつが引き起こしているのか?」

この世の終わりのような光景には、
オーバーロードである葛葉紘太。
氷精として進化したチルノ。
元獣魔戦団長のクロコダインすら本気で寒気を覚えた。
そして予言の中にある「救いの神」の召喚のために、早く予言を完遂しなければならないという共通認識が生まれていた。



一方。


471 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:23:20 rCF0Iv.U0

「い、嫌ああああ! あいつが、あいつが来るううううう!!」
「急にどうにかしたなっしか!?」

唐突に叫び声を上げる霧切に驚くふなっしーたち。
霧切はガタガタと震えて理性を失ったように叫び続け、失禁で椅子と床を汚している。

「まずい、結界がダメージを受けている。それに響子のソウルジェムが早くも限界スレスレだ!」

キュゥべえはエントロピーから響子が張った結界が突然現れたエントロピー(テラカオス・シャドウ)によって大幅なダメージを受け、響子自体が恐怖を抱くディーヴァの存在を感じ取ったためか、ソウルジェムの濁りが急加速していることに気づいた。
まだ満足に大阪を離れていないのに、ここで魔女化されるとまずいと思ったキュゥべえはふなっしーに言った。

「ふなっしー、グリーフシード持ってるよね?」
「グリーフシードってこの石のことなしか?」
「そう、それ。早く響子のソウルジェムにあてがってあげて、早くしないと魔力の枯渇で霧切が死ぬことになるよ!」
「それは大変ムロ!?」

キュゥべえは『嘘』は言っていない。

「でもこれはシャルロッテの友達だったもので……シャルロッテも嫌がってるなし」
「その気になれば聖帝軍を食らいつくせる食人鬼を寄せ付けないための結界とせっかくの救助者を失っても良いの?」
「魔法少女のことはキュゥべえが一番分かっているムロ。ここは専門家に従った方がいいんじゃないかムロ?」

グリーフシードを渡すことを渋っていたシャルロッテとふなっしーだが、キュゥべえの煽りとウドラの提言、そして苦しむ霧切を見てとうとう折れて、元キルステンのグリーフシードを霧切に渡すことを決めた。
結果、霧切のソウルジェムの汚れは大幅に浄化され、霧切の精神も大分落ち着きを取り戻した(幼児退行はそのままだが)。

また、魔力が回復したために半壊寸前に陥った対ディーヴァ用結界も修復された。
ついでに汚れを吸い取ったグリーフシードもといエネルギーはキュゥべえに回収された。
そして、仲間を増やした聖帝軍先遣隊を乗せたのぞみは県境を越えて奈良県へと到達。
死の世界となった大阪からの脱出に成功する。
向かうは東京、仲間が待つ聖帝軍本隊との合流である。


【二日目・14:05/奈良県】

【聖帝軍先遣隊】

【ターバンのガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、仮面ライダー鎧武・極アームズに変身中、主に拳王連合軍への怒り
【装備】戦極ドライバー、ロックシード(カチドキ&極) 、新幹線のぞみ
【道具】支給品一式、ロックシード(パイン、イチゴ、スイカ)
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:のぞみを操縦して関東へと戻る
1:DMC狂信者達も拳王連合軍も、もう絶対許さねえ!!
2:救済の予言の謎を解く
3:ダースベイダーも安倍総理も、絶対に許さねぇ!!
4:なんだったんだ沖縄のあれは……
5:苗木が一時期のミッチーを思い出させて恐ろしく不穏
※オーバーロードとしての力を行使するには首輪解除が必要です。
※テラカオス・シャドウによって生じた沖縄の天候の変化を見ました


【ターバンのガキ(チルノ)@東方project】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、やる気十分、色々成長
【装備】ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW、アイスソード@ロマンシングサ・ガ、ターバン (マスク代わり)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:『ダースベイダー』を倒す
0:関東に戻る
1:何かいろいろパワーアップしたよ!
2:みんなで予言を解いて世界を救うよ!
3:聖帝は頼りないから最強のあたいが皆を引っ張る
4:大阪の毒花と沖縄の天候変化は明らかにヤバイ!
※アイスエイジメモリを刺した事によって成長、能力及び知力が向上しました。
※テラカオス・シャドウによって生じた沖縄の天候の変化を見ました


472 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:23:53 rCF0Iv.U0


【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、不安なっしー!
【装備】野球のユニフォーム(背番号274)、ターバン(マスク代わり)
【道具】支給品一式、シャルロッテ@魔法少女まどか☆マギカ
【思考】
基本:殺し合いを止めるなっしー!
0:大阪は地獄絵図だったなっしー!
1:DMC狂信者達を成敗するなっしー!
2:名探偵ふなっしーが予言の謎を解くなっしー!
3:本当に都庁につけるか不安なっしー!
4:ヒャッハー! 梨汁ブシャー!
5:新しい友達としてシャルロッテとウドラは守りたい
 

【ターバンのおっさん(獣王クロコダイン)@DRAGON QUEST ダイの大冒険】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、怒りと悲しみ
【装備】獣王の鎧、グレイトアックス、ターバン(マスク代わり)、千早@皇国の守護者(フロワロの毒ダメージ・中)、デストワイルダー@仮面ライダー龍騎&ただの手鏡、聖帝軍の旗
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:関東へと戻る
1:聖帝軍と協力し、DMC狂信者の軍勢を倒す、そのために都庁の魔物を説得する
2:世界救済の予言の謎を解く
3:大阪と沖縄の異変……予言の究明を急がねばならんか
4:いちおう、千早とデストワイルダーは連れていくが警戒は怠らない
※千早とデストワイルダーが主催の支給品であることを知りません
 また、ただの支給品扱いなので狸組が奪った主催リストにも載っていません
※テラカオス・シャドウによって生じた沖縄の天候の変化を見ました


【ウドラ@ゆるキャラ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、フロワロの毒ダメージ(極軽微)、謎の胸騒ぎ
【装備】紘汰のターバン(マスク代わり)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:ムロロ〜ン
0:紘汰達についていく
1:人助けする
2:な、なんか物凄く嫌な胸騒ぎがするムロ……


【苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ダメージ(中)、疲労(特大)、気絶、拳王連合軍への復讐心(特大)
【装備】ウィザードライバー@仮面ライダーウィザード、マシンウィンガー@仮面ライダーウィザード、専用の指輪一式
【道具】支給品一式、通信機
【思考】基本:対主催→拳王連合軍は皆殺し
0:(気絶中)
1:必ず拳王連合軍に相応しい絶望を与える
2:キュゥべえと聖帝軍の皆は信頼している
※ラーメンマン、ジョンス、たっくんの死に気づいていません


【霧切響子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ロリ切さん、ディーヴァへの恐怖心(特大)、魔法少女化、ソウルジェムの汚れ(5%)、一時的な幼児退行と記憶喪失、度重なる失禁でパンツぐしょぐしょ
【装備】様々な資料
【道具】支給品一式、沢山の光彦関連のスイッチ、ノートパソコン、その他不明
【思考】基本:テラカオス・ディーヴァにだけは殺されたくない
0:奴に殺されるのはヤダヤダヤダヤダヤダ……
1:苗木くんは守る
2:友達のキュゥべえも守る
3:(幼児退行と記憶喪失により思考能力が大幅低下している)
※まどかには及ばないものの強力な魔法少女になり、肉体・戦闘力が大幅に強化されました
 クライシス皇帝から受けたダメージも回復しています
※テラカオス・ディーヴァに殺されたくないと願った結果、ディーヴァ限定で侵入できない結界が張られました(広さは近畿地方全体がスッポリ収まる程)
 ただし霧切が死亡・魔女化した場合は結界が消滅し、ディーヴァが捕食などで霧切のエントロピーを上回ったりしても結界は破られます
※沖縄でのディーヴァとシャドウとの戦いで結界がダメージを受けましたが、グリーフシードにより回復しました


473 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:24:42 rCF0Iv.U0



戦力となり、現状でのテラカオスを避けることができる霧切の喪失・魔女化を防いだ後にキュゥべえは窓を見て考える。
視線の先は黒い雲に覆われた沖縄方面である。

(あれはテラカオス・ディーヴァの仕業……?、いや違う。
ディーヴァよりも遥かに危険なエントロピーを持つ者と、ディーヴァが戦っていると感じられる)

エントロピーを感じることのできるキュゥべえは、間近でディーヴァを見たので彼女のエントロピーを感じることができた。
その一方で、言うなれば魔法少女化した鹿目まどかですら相対すれば一分持たずに弾け飛ぶ危険で異質なエントロピー渦巻く環境の中でディーヴァは平然と戦っていると感じ取れた。
はっきり言って、ディーヴァが沖縄にいなければ『何者か』によって残った参加者が全滅しかねないと言っても過言ではない。
これはディーヴァと直接会ったことのない者にはわからない事象である。

(より危険な存在を、危険な存在であるディーヴァが偶然抑えていると見るべきか……いや、待てよ、本当に偶然なのか?)

そこで心がないために、冷静かつ冷徹に物事を見れるキュゥべえの頭脳が何かに気づく。



(主催が危険な何かと戦うために、テラカオスが必要だとしたら……?)

まるでスロットにリーチが掛かるように、答えの尻尾を掴んでいく。


弦十郎の姪である翼は絵に描いた善人だったが、突然食べれば食べるほど強くなる食人鬼になった。
わけがわからないよ。
首輪を外したのに指名手配しただけで、そもそも首輪を解除される前に強者のバーダックを派遣しなかった。
わけがわからないよ。
もっと早くに首輪を外した拳王連合軍にはバーダックを派遣しなかった。
わけがわからないよ。
風鳴翼を生かせば人口の大半が食い尽くされるかもしれないのに、徹底して放置して毒花などによって地上に大被害をもたらした。
わけがわからないよ。
そもそも殺し合いによる間引きは終わった後の社会体制やインフラがボロボロになるし、そんな杜撰な人口調整をするぐらいならニートとか使えない奴らを優先的に処刑して数を減らした方がいいのに。
わけがわからないよ。


一見すると矛盾だらけで計画性のない杜撰な殺し合い。
だが全てがテラカオスを軸とした措置であると見方を変えると、それは一変する。


風鳴翼は殺し合いを媒介にした何らかの方法によってテラカオスになったとしたら?
テラカオスの誕生の妨げにならないためにバーダックなど強すぎる戦闘員は派遣できなかったとしたら?
拳王連合軍は各所からマーダーと誤解されており、争いの火が大きくなるほどテラカオスの成長要因に繋がるために、存在自体が争いの火種になるのであえて放置されていたとしたら?
殺し合いが終わった後の社会体制やインフラなど気にならないほどの破滅が迫っているために、より大事な「生存」一点のために殺し合いが開かれたとしたら?
「危険なエントロピーを持つ存在」は地球上に残った生命を根絶やしにしかねないために、人口の99%を生贄にする覚悟で、辛うじて世界を存続できる1%を残すためにテラカオスが必要だとしたら?
仮にテラカオスが世界を滅ぼしうる存在になっても、抹殺できる手段が主催に残されているとしたら?

そして。



(危険な存在……世界を破滅に誘うエントロピーに対抗できるのは、テラカオスだけだとしたら……)




キュゥべえの答えはほぼ正解であった。
大災害を巻き起こしたTCホールから放たれる破滅のエネルギー「TC」を受けて立っていられるのはテラカオスのみであり、テラカオスの誕生・成長・完成こそがベイダーたちの目的である。
自分を含めた生命を資源ぐらいにしか思えないキュゥべえことインキュベーターだからこそ、この発想にたどり着いたのである。


474 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:25:19 rCF0Iv.U0

(確証はない……でも、そうでなければこの殺し合いはあまりにも合理性を欠きすぎている。
テラカオスが危険な存在とあそこで戦っている理由にも説明がつく)

テラカオスこそが主催の至上目的であり、破滅をもたらす存在に対抗しうる存在がテラカオスだと見抜いたインキュベーターはこれからの方針を変更する。
それはひどく残酷なものであった。

(対主催に紛れて…この殺し合いを可能な限り助長しよう。それが僕の生存戦略だ)

今よりインキュベーターは主催の手伝いをすることに決めたのだ。
主催が目指す先に自分が生き残れる可能性があると信じての結論である。
しかし、それは単にステルスマーダーになるわけではない。

(デカオと苗木の口ぶりからして拳王連合軍とホワイトベース組は互いが対主催と気づかずに内ゲバを起こしていた。
ひょっとしたら他の対主催も同じようなことが誤解による諍いが起きているのかもしれない。
……もし、、そうならその誤解を解かせないままマーダーのみならず対主催同士で殺し合わせてみよう)

インキュベーターの思惑とは、誤解を徹底的に加速させて殺し合いを助長させようとするものだった。

(まずはその一環として、コレは預からせてもらうよ響子)

インキュベーターは誰にも気づかれぬようにこっそりと祐一郎の記憶を内包したブラックボックスを霧切のディパックから盗み、自分のディパックにしまいこんだ。
このブラックボックスさえあれば拳王連合軍の誤解も一発で解けるだろうに、インキュベーターはこれを封印して拳王連合軍の冤罪を隠すつもりなのだ。
幸いにも苗木はデカオに霧切とインキュベーターが攫われたから死国にいたのだと思い込んでおり、当事者である霧切は部分的な記憶喪失によりデカオから話された話を覚えていない。
仮にクロコダインたちに死国にいた理由を教えられてもはぐらかしようはあるのだ。

(デカオには悪いけど、拳王連合軍には僕の……いや、世界のために犠牲になってもらうよ。
テラカオスは鹿目まどか以上に重要な存在になりそうだからね)

インキュベーターに感情や心はない。
だがもし、それらがあったとしたら、どこまでも黒くほくそ笑んでいたであろう……




【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ(中)、他の個体が全滅
【装備】なし
【道具】支給品一式、祐一郎の記憶を内包したブラックボックス
【思考】基本:殺し合いの助長・対立煽り、おまけで魔法少女を増やす
0:身を守るために聖帝軍に保護してもらう
1:対主催の影に隠れて参加者同士の殺し合いを助長する
2:ひとまず聖帝軍には拳王連合軍=悪の認識を持たせる(誤解を解かない)
3:テラカオスは鹿目まどかの契約より重要になるかも? 
4:沖縄のエントロピーからディーヴァとより危険な存在(シャドウ)を感知
5:母星と連絡出来るまでは生き残る
※クロコダインと会う前に苗木の口からデカオを殺した下手人は苗木であると知りました
※殺し合いがテラカオスを生み出すために必要な措置だと気づきました
※沖縄から感知できるエントロピーから「TC」を放つテラカオス・シャドウの存在を感知しました


475 : 名無しさん :2018/01/05(金) 23:26:21 rCF0Iv.U0
投下終了
タイトルは「名前のない怪物」でお願いします


476 : 新たな終わりの始まり :2018/01/08(月) 16:40:35 ThKSU.ZI0
投下させていただきます


477 : 新たな終わりの始まり :2018/01/08(月) 16:41:03 ThKSU.ZI0
沖縄――TCエネルギーが満ち人の生存領域ではなくなった場所。
気候は安定せずに荒れ狂い、時間は人々が感知できぬほどに乱れ、物理法則は意味をなさなくなった。
このような場所になった故に動植物は死に絶え元々あった道具すらも壊れ果てた。
幸いこの異常は霧切響子の張った結界により今の所外に漏れだす気配はない、これは結界が再構築された際TCエネルギーも吸収したことによるものだろう。

そして、この魔境にて相争う二人の影が舞っている。

一人はテラカオス・ディーヴァ、狂った救世主にしてすべての希望になりえる最初のテラカオス。
もう一人はテラカオス・ディーヴァ・シャドウ、何もかもが不明なTCエネルギーを纏いしディーヴァが滅ぼすべき存在。
そのような強大な二人が終わる地沖縄にて激戦を繰り広げていた。

「ハァ!!」
「……………」

ディーヴァの気合いの入った鋭き掛け声とともに繰り出される無数の技。それら全てが一撃必殺の威力を誇る。
それに対しシャドウはサタンサーベル・摸写を無尽蔵に振った、ただそれだけだった、しかしその後に不可思議な現象が起こった、
無数の斬撃がディーヴァの無数の技を迎撃したのだ。

「ッ!!」

全ての技が迎撃されディーヴァは奥で歯ぎしりしながらも後方に飛びのいた。
それをシャドウは迎撃することもなくただ見ていた、そして変わらず悠然と立っている。

(途轍もなき存在だ……私が思っていたほどにな)

幾度も行った交差の数秒の攻撃の連続、されどその全てをシャドウは迎撃し、すべてを無効とした。
己の摸写存在であるシャドウに有効な技をこの刹那の攻防で作り上げた技をだ。
最初に放った一撃を余裕で防ぎきられ心にかすかに残っていた摸写存在に対する慢心すらも捨て去ってもこれだ。

(ああ、だが感じるぞ私がこの戦いで成長する感覚を)

そう、この時間が狂った世界での戦いはディーヴァの実力は天才すら超える速度で成長していった。
刹那の中で生み出した技がその成長の一つと言ってもいいだろう。
だが、その成長ですらも未だシャドウの実力には到底及びはしていなかった。

「…………」

ディーヴァをじっと見ていたシャドウが動く気配を見せた。
それを感じたディーヴァは咄嗟に警戒態勢を取った、だがそれは何ら意味をなさなかった。
なぜなら、その警戒態勢ですら反応できないほどに速く、見れば顔が触れられるほどに距離を詰められていた。

「おおッ……!!」

しかし、コンマ一秒でディーヴァがシャドウに対し必死の攻撃を仕掛けた。
突飛ばし、ディーヴァが放ったその攻撃はシャドウを見事に突き飛ばすことに成功し、シャドウは勢いよく吹っ飛ばされた。
だが、ディーヴァはそれに対し少しの違和感を感じた。


478 : 新たな終わりの始まり :2018/01/08(月) 16:43:20 ThKSU.ZI0
「……どうゆうことだ」

そう、自分の無数の技を防いできたシャドウがここに来てディーヴァの攻撃をもろに食らってしまったからである。
普通であれば防ぎ、そこから攻撃を食らわせることができるだろう、ましてやシャドウほどの存在であるのなら。
だがシャドウはディーヴァの反撃になんらの行動を示さずに受けたのだ。

「もしや経験は模倣していないのか?」

そう思い至り、ディーヴァはシャドウと戦った刹那の記憶を引き出していく。
そして気が付いたのだ今までの戦いでシャドウの攻撃は今までの自分の模倣であるということに。
あの無数の技を迎撃した無造作な剣の振りも己がやった振りとそっくりであったのだ。

「まだ生まれて間もない赤子のようなものか、それならば好都合だ」

ディーヴァはほくそ笑んだ、勝機はまだあるのだと思えたがゆえに。
素のスペックでは恐らくシャドウの方が上だろう、その事に関してはディーヴァは異論を持たない。
しかしである、経験は生まれながらに持てる物ではなく、ならば経験と言う一点ならばディーヴァは相手を上回るのだ。

「だがそうなるとすれば決着は早く済ませなければならないか」

そう、少しの興奮を抑えてディーヴァは結論付ける。
何故かと言われれば、シャドウもまた己と戦うことにより経験を得るだろうという確信があったからだ。
シャドウはまだまだ強くなる無限に――ならば阻止しなければならない。

「……終わらせよう、次の一撃にて」

ディーヴァは決意した、必ずやあのおぞましき存在を次の相対するとき、一撃で葬り去ると。
そうしてディーヴァは動き出す、シャドウが吹っ飛ばされた方向へと。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「……………」

吹き飛ばされながらシャドウは思考する、そう思考する。
本来、破壊の化身としてこの地に顕現した存在であるシャドウには本来必要のない機能だ。
だが、シャドウにはその機能が備わっていたのだ、そしてその機能がディーヴァとの戦いの末に完全な形で機能し始めたのだ。

「…………」

シャドウは思考する、なぜ自分がディーヴァに吹き飛ばされたのかと、スペックでは自分が上回っているはずなのにと。
高速で接近しぶつかる、そうすればディーヴァは死なずとも途轍もない重傷を負ったはずだ、シャドウの単純な力はディーヴァを上回っているのだから。
だが現実はそうならずディーヴァは無傷で自分が吹っ飛ばされている有様だ、幸いダメージは負わなかったが。
何が駄目だった、何がいけなかった、そう思考を続けに続ける。

「…………」

だがダメだ、思いつかないのだ何がダメだったのかが。
しかしそれは当然だった、何せシャドウは生まれたばかりの赤子に等しいのだ、それが経験であると気づけるはずではないのだ。
ならばと、シャドウに一つの思い付き浮かんできた。
そう、ディーヴァを徹底的に模倣することだ。そうすれば何か掴めるかもしれないと思い至った。

「…………」

最初に吹っ飛ばされているこの状況からの復活方法をディーヴァが行ったことをやってみることにした。
まず空中にて態勢を整え地上に足が付くように調整して、地上に足を付けた。
そしてそこから勢いを殺すためにしっかりと足に力を入れる、しかし足に力を入れてもなお勢いを殺しきれずに勢いよく後ろにスライドする。
沖縄の大地に大きなダメージを与えつつも更に足に力を入れて勢いを殺しきりスライドが止まった。

「…………」

完全に止まった後にそのスライドの後をなんとなしに見つめる。
そしてこう思った、もっとうまく止まれなかったのかと。
そこからシャドウは脳内でシュミレートし始める、どうやればもっとうまく止められたかを。
なぜこの思いが出てきたのかはシャドウにも分からない、だが必要だと何故かそう考えてしまう、シュミレートすることが。

「…………」
「――ようやく見つけたぞ」

ディーヴァの声が聞こえた直後にシュミレートを一時中断し前を見る。
そうすればディーヴァの姿が見えた。


479 : 新たな終わりの始まり :2018/01/08(月) 16:45:55 ThKSU.ZI0
「ここで終わらせる」
「…………」

その言葉とともにディーヴァは構えを作る、剣を主体とする構えだ。
それに対しシャドウもまた見様見真似でディーヴァの構えをまねる、その構えは完全に同じものだった。

「なるほど、今度はこれを模倣したか」
「…………」

ディーヴァがポツリとこぼし、シャドウは変わらずに何も答えない。
剣の構えと同時に静寂の時間が訪れた、その時間は数分か数時間か、壊れた時間の中の沖縄には正確に測れぬことだ。

「………ッ!」
「………!」

瞬間、二人同時に動いた、ディーヴァは己の今までの場数による勘にて、シャドウは相手に合わせて。
それは再びの一瞬の交差、しかし今までのように無数の技が飛び出すのではなくそれ唯の一撃で決まる交差だ。
ディーヴァは己の経験全てとTCエネルギーを吸収したが故に、シャドウはそのスペックゆえに。

「…………」
「…………」

そして、もはや人の領域を脱した一つの交差が終わり、両者ともに相手が立っていた位置に立っている。
暫くの静寂、その間二人は相手に振り向かずにいた。
そして暫くの地に体勢を崩し倒れる――シャドウ。

(紙一重であった)

そう心の中で呟くディーヴァ。
剣の構えの摸写、されどその模写によって己が使った剣のやり方をもすべて摸写しきったのだろう、あの一瞬ですべて理解できた。
そうあの一瞬、ディーヴァがシャドウとの戦いでの最高の一撃をシャドウは繰り出し再現してきたのだ。

(だがそれ位予測できることだ、それを形作ったのは己なのだから)

ディーヴァはシャドウがどの技を繰り出してくるのか分かったのだ、その技を繰り出す専用の構えをシャドウをしていたのだから。
だから、ディーヴァはあの一瞬の交差でシャドウがその技を繰り出した際、その技を最小限の動きで躱し、躱した直後に一撃を叩き込んだのだ。
しかしリスクはあった最小限の回避も動きを出来るかと言うことだ、二人の格闘家捕食していたとはいえこのような超高速戦闘では早々にできない動きだからだ。
だがそれを成し遂げ、ディーヴァは勝利者となったのだ。

「ああ、だがこの戦いとても良きものだった」

そう言ってシャドウの方を振り返る、振り返った先のシャドウは倒れた時から何とか片膝を付いている状態だ。
そこから動く気配も感じられない、しかし地とは違う黒色の水分を含んだものを流れ出していた。

「感謝しよう、この戦いで私はさらなる力を手に入れられた」

そう言って、一歩一歩シャドウに向かって近づいていく、今までの戦いを噛みしめるかのように。
今までの戦いの経験を己の者にするかのように。

「その感謝としてこの手で止めを刺そう、もっとも聞こえているとは思えないがな」

得意げに、余裕ありげに、しかし体に出ていないだけでその肉体は結構なダメージを負ってしまっている。
だがそれを覆い隠しての救世主だとディーヴァは思う。
そして、シャドウの近くにより。

「――さらばだ」

――そのサタンサーベルをシャドウの首に向けて振るった


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


480 : 新たな終わりの始まり :2018/01/08(月) 16:47:10 ThKSU.ZI0
シャドウの意識は混濁していた。
己が死んだのか、それともまだ生きているのか判断できないのだ。
だが一つわかることがある、己はあの一撃で今この状況に陥っているのだと。

「…………」

シャドウはその状況になっても一言もしゃべることはない、そのような存在であるからだ。
そして思考する、思考する、思考する。
この状況になって何の役に立つのか、だがそれでも思考をやめることはない、それが癖になってしまったのかとシャドウ自身は思う。

「…………」

諦めるという言葉をシャドウは知らない、それが破壊の存在として不必要だから、故に思考する思考する。
すると、何か見えてきた――それは光だった。

「…………?」

光――シャドウはそれに向かって歩き出すイメージをした、するとどうだろう光に向かって一歩前進したのだ。
コツを掴みシャドウはまた一歩、また一歩、前進する。
そして光のその先へとたどり着いたとき、シャドウは見た――生き生きとする者達を。

「…………………?」

シャドウは理解できなかった、なぜ人がいるのか、なぜみんな楽しそうにしているのか。
そうしてあたりを見回しているとピンクのロングヘアの女子が現れた。

「あら、新入りかしら?」
「…………?」

シャドウはその女性が言ったことが理解できなかった、自分がいた場所は人っ子一人いない場所だったからだ。
そんな場所にいた自分がなぜ人と出会っっているのかわからない、そうやって色々と困惑していると。

「あー、そりゃそうゆう反応もするわね私もそうだったし、……単刀直入に言うわあんた死んだのよ」
「…………!?」

死と言う単語が出てきてシャドウはさらに困惑した、そして納得もしたディーヴァの一撃はシャドウを殺しうる最高の一撃だったからだ。
だがそれならばなぜ自分は意識を保ってここにいるのかと次の疑問が沸いた。
そう考えるとピンクのロングヘアの女性が考えているのに気づかずに話しを続けた。

「そしてここは死者スレ、死んだ人たちが集まる場所らしいわ、……一回壊されたけど」

そのようにして語っていくピンク色のロングヘアの女性、しかしシャドウが死者スレの単語に反応した。
そう――ないはずの胸の奥がドクンと鼓動が鳴ったのだ。

「けれど安心して、死者スレに引っ越してた冥府の神様たちがここを再生させたからもう安全よ……って聞いているのかしら?」

聞いているように見えないシャドウにピンク色のロングヘアの女性は怪訝な顔をしてシャドウを見る。
シャドウは胸の奥の高鳴りがさらに大きくなっていくのを感じる、そしてこの胸の高鳴りがなぜ起こるのか、それを本能で理解した。
――ああ、そうゆうことか。

シャドウが笑みを浮かべた。

そしてシャドウはピンクのロングヘアの女性の腕を掴んだ。

「ちょっ、私が可愛いからっていきなり掴むとか――」

ピンクのロングヘアの女性は気づいた、シャドウの掴まれた方の腕が黒く染まっていくのを。

「へっ……」

何故だか理解できぬままピンクのロングヘアの女性は一気に黒に包まれた。
そして、ピンクのロングヘアの女性の女性を黒く包み込み終わってから一気にシャドウから黒きものが放出された。
それは死者スレを飲み干すほどの黒きものだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


481 : 新たな終わりの始まり :2018/01/08(月) 16:47:46 ThKSU.ZI0
――ディーヴァがサタンサーベルをシャドウの首に向けて振るった直後、シャドウが黒く光った。

「なに!?」

ディーヴァは驚き一目散に後方へと飛んだ。
そしてディーヴァが見たものは――シャドウが黒き光を纏ってゆく姿だった。

「なにが……起きている……」

ディーヴァにとっても理解不能だった、なぜ瀕死であったシャドウがこのようなことになったのかと。
だから見守ることしかできなかった。
そして徐々に徐々に光が一つにまとまっていき、一瞬大きく光り――散った。

「…………貴様は………誰だ……」

散った黒の光の先でディーヴァは驚愕しながら問うた、己が見た先の存在、シャドウだった存在に。
その顔はディーヴァの元となった人物風鳴翼とそっくりでありながら髪は黒く、肌は灰色だ。
シャドウだった存在はしばし沈黙し、口を開いた。

「私はテラカオスエネルギーの一部であり、自身を形作った者」
「自身を形作った……?」

そうディーヴァはオウム返しに聞いた。

「左様、概念のままではこの世界に干渉できぬゆえに」
「…………何が目的だ」

ディーヴァは目的を問いかける、気を許さず、警戒していつでも仕掛けられるように。

「無論――世界の破壊と再構築」

その一言が出た瞬間にディーヴァは一瞬にして動き出す、この敵を存在を殺すために。
だが、それと同時にシャドウだった存在は無表情のまま、手を動かす。
するとディーヴァの周りに影が出来――ディーヴァは叩き落された。

「ガハッ……!?」
「無意味なりや」

そうしてシャドウだった者の近くに二つの人影が現れた。
それは、死したはずの存在、風鳴弦十郎とウルフオルフェノクだった。
ディーヴァに反応しそうな風鳴弦十郎なにも反応せずそこに立っていた。

「この……気配……まさか、死人を……!?」
「左様」

ふっ、とシャドウだった存在は笑った。

「私は貴様の一撃で生死を彷徨った、だが私はそのおかげでたどり着いた死者スレに」
「死者スレ……」
「左様、このロワイヤルにて戦い散って行った者達が集う場所だ」
「まさか……!」
「その通り、貴様のおかげで私はさらなる力を手に入れた、そう死者を召喚し意のままにすることができる」

ディーヴァは驚愕した、まさかそのようなことが起こるとはまったくもって思ってもいなかったのだ。
だが、それは仕方のないことだまさか死してそのような能力を得るなど普通は考えられないことだ。

「……もしくは私は死者スレを掌握するために生み出されたのかもしれぬな」

そうぼそりとシャドウだったものは呟いた直後、
ディーヴァは立ち上がった、なんとしてでもこの存在を滅するために。

「…………お前は生かしておけない」
「ほう、それはなぜか」
「私は多くの者を救済せねばならないからだ」
「そうか、ならば乗り越えてみよ」

そう言ってシャドウだった者は武器を生成して見せた、それは聖約・運命の神槍――死したラインハルト・ハイドリヒが使用していた武器。
それをディーヴァに向け、黄金の光線を発射した。

「……ツッ!?」

ディーヴァはその光線が自信を滅ぼして有り余るものだと勘ずき全力で回避した。
だがその回避した先で使役されている風鳴弦十郎とウルフオルフェノクが襲い掛かってきた。

「クッ」

それを危い動きで回避し、反撃として核攻撃を光線として発射した。
ドォンと言う派手な音共にディーヴァは体勢を立て直した。
そして撃った方を見れば、二人は今だに健在であった。

「……どうやら、仕留め損ねたようだな」
「だが見事、ギリギリの所で回避し二人が被弾する場所を一瞬で狙うとは」

そう、よく見れば二人は回避しきれなかったようでボロボロであった。

「クク、その実力と私の力の半分を持っている者達を此処までにするのはさすがと言ったところだ」
「ありがたいものだ」

そう言って警戒する態勢を崩さずに油断せずシャドウだった者を観察する。
どこかに逆転できるところはないかとじっと見つめる。


482 : 新たな終わりの始まり :2018/01/08(月) 16:48:45 ThKSU.ZI0
「無意味なり、いくら見たところで逆転は叶わず」
「……それはどうかな?」
「ほう?」

ディーヴァが発した一言にシャドウだった存在は興味深く反応した。

「疑問に思っていたんだ、なぜ力を得たお前が一気に勝負を付けずこんないたぶるような真似をするのかと」
「それが私の趣向だからではないのか?」
「いや、それはない、なぜなら貴様は破壊する存在だだから私は救わず貴様を滅すると決めた」
「ほほう、それで?」
「お前が持っている感情、だがお前の本質は破壊だ、決していたぶるなんて感情は出てこない」

一息、ディーヴァが言いを吐いて吸った。

「そしてその力を得たお前ならば私など一瞬にして滅ぼせる、そしてその二人の従僕も私を滅ぼせるほどの強化できるはずだ、だがそうはなっていない」
「ふむ」
「だからこう考えた――お前は死者スレを完全に掌握できていないのではないか?」

そう言った瞬間、シャドウだった者が大きな声で笑った。
見破られたと、そのような思いを込めながら。

「見事見事、短時間でよくぞ見破れた、それもまた私の対存在でもあるからかな?」
「どうだっていいそんなことは」
「うむうむ、確かに私は死者スレを完全に掌握できていない――死者スレで抵抗されているからだ」
「抵抗か」
「うむ、だがその抵抗も時間の問題よ、なんせ私のリソースの大半を死者スレ掌握に使っているからな」
「そうか、ならば勝機は見えた」

そう言ってディーヴァは二っと不敵な笑みを作った。
強がりだ、ただの。

「大半のリソースを貴様は作っているのだならば私でも滅せる」
「ふふ、やってみるが良いさ」

そう言ってシャドウだった者は風鳴弦十郎とウルフオルフェノクの二人を前面に押し出し自身は後方援護をする構えに入った。
ディーヴァは今ここに存在するTCを体を壊さないギリギリまで吸収する。

(ああ、そうか何故私が今ここに居るのか、わかった気がする)

そう思い、TCを吸収しきった直後に、二人が攻撃を仕掛けてくる。
まずウルフオルフェノクがディーヴァですら捉えられないスピードで接近する。
それに対しディーヴァは静かに接近する瞬間を待ち――吸収したTCをエネルギーに変換。

「フッ!!」
「!?」

変換したエネルギーを放出し、一時的に能力を向上させてディーヴァはウルフを捉え接近してくる場所を先読みし。
そのまま到着するのと合わせるようにしてサタンサーベルを振りぬいた。
ウルフはその攻撃をもろに受け、切られた真っ二つに。

「!!」
「クッ!」

だがその手ごたえを感じる前に弦十郎が急接近し発勁の一撃、正拳突きを放つ。
その攻撃をディーヴァは紙一重で回避する、だがこれは読まれ弦十郎はすぐにキックを放つ。
この攻撃を回避しきれずディーヴァは吹っ飛ばされる、しかし空中で姿勢を立て直し両手をフレミングの法則に変え。
その両手から接近せずに使用できる飛ばしフレミング法則から発生する電撃を飛ばした。

「…………」

その電撃を冷静に弦十郎は回避する、だがそれこそが狙いだった。
回避する場所が予測道理の位置であることを把握したディーヴァは再びエネルギーを放出。
回避場所に両手がフレミングの法則のまま突っ込んでゆく、そして弦十郎にフレミングの法則が直撃した。

「フン!」

そのままディーヴァは電撃を発生させ弦十郎を殺そうとし――黄金の光線が発射された。

「チィ!」

再びエネルギーを放出し光線の範囲外まで高速で後退する。無論ディーヴァとの戦いで重傷を負った弦十郎は回避できずに巻き込まれた。

「ひどいことをするものだな」
「死者ゆえに、私が呼べばまた復活する」

そう、この戦いで召喚された者は死人であり再召喚もたやすいためこのような方法を取れるのだ。
所謂支給品と同じ扱いのため放送でも呼ばれることはない。

「ではこのまま続けてゆこうか」
「チッ!」

シャドウだった者は聖約・運命の神槍から次々と黄金の光線を連射した、それをディーヴァは回避していく。
そうしながら徐々に接近していく、が。

「なるほどでは、これはどうであるかな」

そうしてシャドウだった者は四源の舞を発動、それで強化されたのは無論黄金の光線。

「やって、見せるともぉ!!!」

それに対し極太となった黄金の光線をディーヴァは翼を広げ空を飛ぶことで回避に移る、極太光線が当たらぬ場所まで。

「ツッ!!」

ギリギリであったが光線を回避することに成功、だが完全にとはいかなかった。
極太であり尚且つ強化された光線はその余波でディーヴァを着実に削ったのである。


483 : 新たな終わりの始まり :2018/01/08(月) 16:53:18 ThKSU.ZI0
「だが、空を飛んだことは無駄ではない」

空を飛ぶディーヴァはシャドウだった者に対し翼をはためかせ一気に急降下を開始した。
急降下しているときに捕食したお空のスペルカード強烈に発光させてを発動させる、それは「ヘルズトカマク」。
発動した直後、シャドウだった者の左右をふさぐ巨大な恒星弾を出現させ、そこから全方位に光弾をまき散らす。

「ハッ、笑止」

しかしシャドウはそれに対し慌てることなく神槍をまるで血を落とすかのように振るう。
すると、全方位にまき散らされた光弾も巨大な恒星弾もその振るいにより霧散させられてしまった。
だが、シャドウだった者は気づいたディーヴァがいないことに。

「むっ、どこへ?」
「………!!!」

ディーヴァは無言の気合と共にサタンサーベルをシャドウの後ろから横向きに振った。
その行動はシャドウだった者の不意を確実についた。
サタンサーベルが大きくシャドウだった者の体に傷を付けた。

「クッ……!」
「逃がさん!!」

そのまま離脱しようとするディーヴァにシャドウだった者はサーシェスの触手髭を展開、そのままディーヴァを捕らえる。
ディーヴァを捕らえて触手髭を左右自由自在に操り、ディーヴァを連続で地面にぶつけまくった。
さしものディーヴァも連続でしかも勢いよく地面にぶつけられたて無事なわけもなく。
全身から血があふれ骨は骨折した、驚異的な自己再生能力が追い付かないほどに。

「さあ、終わりにするとしよう」
「…………」

シャドウだった者がそう呟き触手髭にディーヴァを己の元へ連れてこさせた。
それにディーヴァは無抵抗だった。
ディーヴァの体をシャドウだった者は手を使って浮かせる、その動作は嘗てのアナキンのジェダイそしてシスが使っていたフォースの使用方法だ。

「感謝しよう、貴様のおかげで私は己の本分を果たせそうである」
「ああ……そうかい……!!」

この状況になっても不敵に笑うディーヴァにシャドウだった者は疑問に思う。
なぜそんなに笑っていられるのかと。

「……いや、詮無きことだ」

そう言って神槍をディーヴァに向ける。

「貰うぞ、貴様の魂」

そして、神槍をディーヴァに突き刺す前にディーヴァから膨大なエネルギーを感じた。
だが、シャドウだった者が気づいた時にはすでに遅く――ディーヴァから金色の焔が発射された。

「!?、ガァァァァ!?」

ディーヴァの全身全霊をこめた一撃は何もできないと思っていたシャドウだった者に直撃した。
シャドウだった者が金色の焔に飲まれ、数分性質ディーヴァは地上に落下した、あたりに煙が立ち込める。

「ふっ……最後の最後に油断したのがお前の敗因だ」

ディーヴァがそう金色の焔を発射した場所に目を向けながら言った。
だが、ディーヴァも無事ではないあの焔を放った反動のせいでまともに立ってなどいられない。

「このまま自己再生するのを待つか……しかし、ここまで消耗されるとはな」
「――ああ、私も予想外だとも」

その言葉が聞こえディーヴァはぎょっとし、すぐさま顔を上げる。
すると煙が晴れた場所そこには全身ボロボロながらも歩いてくるシャドウだった者がいた。

「なぜだ……」
「あの一撃は確かに効いた、私が消滅を覚悟するほどにな」

そうディーヴァを称賛する。

「だが、私は死者スレに割いていたリソースの多くを私が模倣した貴様の能力、そのうちの自己再生に当てたがゆえに耐え切った」
「…………」
「おかげで死者スレの掌握がさらに遅れるが致し方なしよ」

シャドウだった者は手をかざし自分がいる場所に引き寄せるように手を動かした。
するとディーヴァが一気にシャドウだった者がいる方向へと引き寄せられる。
そして、ディーヴァはシャドウだった者が取り出した聖約・運命の神槍によって串刺しにされた。


484 : 新たな終わりの始まり :2018/01/08(月) 16:53:46 ThKSU.ZI0
「ガッ……!!!」
「頂くぞ、その魂」

神槍に魂を吸い取られる感覚をディーヴァは感じた、そしてそれがまずいことも。

「グゥ……な、ガハッ……!」
「抵抗は無意味だ、大人しく吸収されるが良い」
「だ、れがぁ!」

激しい感情を発露したディーヴァにTCが集まってゆく。
これにはさすがにシャドウだった者も驚愕した。

「まだ、まだこれほどのことができるとはな!」
「うおぉぉぉぉぉ!!」

だが、どれほどTCを集めようと最早ディーヴァに勝ち目はなく、だからこれ以上の強化を防ぐ。
即ち、己の肉体を破棄し魂を飛ばす術を実行する。

「ハッ、無意味、そのようなことをしたところで結局のところ私に吸収されるだけなり」
「それはどうかなぁ!!」

ディーヴァがやろうとすることの意図を見破り、無意味と嗤うシャドウだった者。
だがそれでもディーヴァはやめることはない、救世するものである自分がこのような破壊の権化ともいうべき存在の力になるのはごめんだからだ。

「ハアァァァァ!!」
「クッ、まさか本当にやり切ると言うのか」

少しばかりシャドウだった者が動揺する、そして魂を吸い取るスピードを速めた。
だが、それでも間に合わずに。

(道半ばに倒れるのは無念だ、ならば次に託すとしよう、次の『私』よ成し遂げろ)

その思いと共にディーヴァと言う存在は消え去った。

【テラカオス・ディーヴァ@テラカオスバトルロワイアル十周目 消失確認】


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「………ああ、まったく最後の最後までやってくれたものよ、怨念の集合体にして混沌と殺戮と言う存在では私に敵わぬというのに」

シャドウだった者が愚痴をこぼす。
ディーヴァ最後の抵抗により魂の吸収は規定の3分の1になってしまったからだ。
これでは完全に力が発揮できるようになるまでどれだけ時間がかかるのやら。

「死者スレの掌握に自己回復、やれやれリソース管理が面倒になってしまったがやむを得ないか」

そう言って椅子を生成し座る、この程度の生成ならばシャドウだった者は容易になしえるのだ。

「さて、あの存在が放出した魂いずれ実体化しどこぞへと落ちるだろう……その前に潰しておく必要がある」

呟きチラリと沖縄の外を見る、シャドウだった者は忌々しそうな顔をした。
そう、霧切響子によって張られた結界が再生し更に強固になっていることに。

「ああ、忌々しきかなこの結界はあの者を模倣し魂を吸収した私にも反応するとはな、それにTCを吸収し強固になっておるわ」

吐き出した、ふぅと一息つく。

「テラカオスエナジーは本来中立的な物、善も悪もなし強き思いに反応するが、これほどとはな」

今のシャドウだった者ではこの結界は壊せない、そう感じるほどに強固になっていたのだ。だからこそあの激しい戦いにも耐えたのだろう。
だが力を取り返したならば分からないが。

「だが、私以外の者には無効と言う事らしいな、ならば」

指をパチンとならす、すると三人の死者が召喚された。


485 : 新たな終わりの始まり :2018/01/08(月) 16:54:22 ThKSU.ZI0

「行け、あの者の魂を破壊せよ、ただし単独行動は控えよ貴様たちは私の眷族になり強化されたがそれでも殺されることがあるからな」

召喚された死者たちはその言葉に頷き、そのまま魂の追跡を始めた。

「これで今は良しか、だが召喚できる死者が三人だけとは参ったものだ」

椅子に座りながら呟き空を見る。

「さて、私が世界を滅ぼすかそれとも時間切れとなり大災害が世界を滅ぼすか、それとも人が勝つか、結末はどうなるか」

【二日目・15時30分/沖縄県】

【シャドウであった者@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、休憩中、弱体化
【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 他不明
【道具】不明
【思考】基本:世界の破壊
0:あの者の魂の破壊
1:死者スレの掌握
2:体力と傷の回復
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています。
※ディーヴァの捕食した能力も込みで持っているようです。
※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。
※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。
※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。

※テラカオス・ディーヴァの魂はどこかでいずれ実体化する模様。
※それを召喚された死者が追跡中、召喚された死者は道具扱いの為アナウンスされない。
※召喚された死者は誰かは不明。


486 : 名無しさん :2018/01/08(月) 16:54:33 ThKSU.ZI0
投下終了です


487 : 名無しさん :2018/01/09(火) 00:18:17 zy0aLm0s0
投下乙です
苗木と霧切は助かったけど違う意味でもうダメそう...キュウベエも裏切りを企て始めたし


そして貧乳歌姫敗死か......魂切り離しで復活フラグは立ってるけど
さらにシャドウ登場と死者スレも窮地で割りと本気でバットエンドが現実的になってきたな


488 : 名無しさん :2018/01/09(火) 12:22:18 9mLyWask0
これってつまりシャドウの能力は
貧乳のこれまでの全能力+死者の能力に加えて、死者の自我を潰して強化傀儡として自由に動かせる挙句潰されても瞬時に再召喚或いは別の死者の装填ができるってこと?
こんなん詰みやん


489 : 名無しさん :2018/01/09(火) 15:53:35 nqP07n0o0
よく読むと、死者スレ全域は支配してないので全員の能力は使用できない
使用・消耗は無限でなく消耗する
そもそも霧切結界によって本体は日本には近寄れない
いちおう貧乳が頑張ったので弱体化している
まあ、カルナ・ハクメンぐらいかね

死者の装填による消耗はなるべく雑魚なら軽微で、悪魔将軍みたいな強キャラほどドでかくなる程度は欲しい
もしくは回数制限とか


490 : 名無しさん :2018/01/09(火) 15:59:20 h9OErTM.0
そこら辺は次の書き手次第かな


491 : 名無しさん :2018/01/09(火) 16:04:16 nqP07n0o0
どちらにせよTCがあるだけでも驚異だし、ラオウだろうがレストだろうがイチローだろうがアナキンだろうが
ましてやハクメンだろうが近づかれれば問答無用で死ぬ
貧乳復活フラグは立っているとは言え、テラカオスがいない現状では誰も勝てないのは事実だな


492 : 名無しさん :2018/01/10(水) 09:07:18 OLmQl6z20
キュゥべえの思惑とか普通は背信行為なのに、テラカオスがいない現状ではそれが最適解という皮肉
ナノマシンから生まれたわけじゃないテラカオス安倍は制御ができないし


493 : 名無しさん :2018/01/10(水) 13:07:05 pbJ1xJtQ0
対主催は完全に板挟み状態だな
テラカオス候補のきらりやユーノは放置したくない(放置できない)が、テラカオスまで進化してくれないとTCぶち込んでくるシャドウに問答無用で殺される
時間かけて対策しようにも大災害のタイムリミットつきだし。アナキンはシャドウの存在に気づけるかね


494 : 名無しさん :2018/01/10(水) 13:17:45 EvtxtK1E0
そういや、キュウべえ達がこのまま聖帝の本体と合流となると必然的に都庁組と合流となるか、そうするといずれまどか達とも会うよなぁ


495 : 名無しさん :2018/01/10(水) 13:26:47 pbJ1xJtQ0
ああそういやそうか
QBもだが主任がいろいろやらかした末に都庁で死んでるのも火種になりかねないな


496 : 名無しさん :2018/01/10(水) 14:28:50 JYp/afUk0
QB、都庁にたどり着いたらフォレスト・セルに喰われるやん
と思ったら強キャラ化したロリ霧に守られている上に
今のこの子だとQB殺したら一気に魔女化して貴重な結界を失う危険があるか


497 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:47:49 2m8m8EwA0
勘違いとすれ違い、そしてテラカオス化という不幸によって仲間を殺してしまったユーノと、その結果を招いてしまったなのは。
その二人は今、渋谷109にいる。

都庁の地下を抜け出してからかれこれ二時間以上経つ。
だが二人は動くことができなかった。
理由はいくつかあり、まず激戦区である東京は強力なマーダーやDMC狂信者が跋扈しており、接触すれば戦闘はまず避けられない。
戦闘そのものはともかく、開戦と同時にユーノが再び怪物となってしまう危険性があった。
なのはとしてはユーノが恐ろしい怪物と化すことは認めることができず、ユーノとしてはもう一度怪物化した場合になのはを殺さない保証がないので変身するわけにはいかなかった。
……そして何よりも仲間であるハス太を殺してしまった/死なせてしまったという罪の意識が二人にはのしかかっている。

それでも時が来れば戦わざるおえないだろう。
そうなれば都庁へ向かったエリカたちの救援は、周囲がDMC狂信者に包囲されている以上は期待できない。
ついでに言えば自分が未来を伝えなかったことで仲間を殺させたことをエリカたちに恨まれている恐れやユーノの尻が掘られる恐怖がなのはにはあって、とても都庁に戻る気がしなかった。


そして、109に来客者が現れた。
無用な戦闘を避けたい二人は即座に大量の衣服によって構成された森の中に隠れた。
コツコツコツと複数の足音が聞こえる。

(どっちだ……? 対主催か? 殺し合いに乗ったマーダーか?)
(お願い、今はユーノ君を戦わせたくない。早くどこか行って……!)

身を潜ませてやり過ごすことを望んだ二人の男女だったが、侵入者の内の一人の若い男の声が耳に入った。

「隠れたって無駄だぞ。そこに二人分の気配を感じられるからな」
「「!?」」

ものの数分も経っていないにも関わらず、侵入者はこちらの存在に気づいていた。
動揺を隠せないユーノとなのは。

(クソッ……ヤるしかないのか!)
(ユ、ユーノ君!?)
「!!」

ユーノが戦闘を考慮した瞬間、体内のテラカオス因子が反応したのかユーノの指から怪物の如く長い爪が生えており、目は複眼、黄色い体毛もビッシリと生えていた。
驚くなのは、そして敵意を感じ取った侵入者の一人も急ぎ剣を構える。
ユーノ自体は抑えようとする意思が見えるが、それよりも戦意となのはを守らねばという意識が強まり、とうとう交戦に踏みきってしまう。

「ウグググ……なのはヲ……マモル!!」
「ダメッ! ユーノ君、ダメェ!!」

半獣人のような姿になったユーノを抑えようと叫ぶなのはだったが、敵わずに衣服の茂みから飛び出すユーノ。










「ユーノ君? なのはちゃん?」
「え……」
「その声は……」

飛び出したユーノであったが、侵入者の一人を見た瞬間に戦意が抜け落ち、怪物化は徐々に解除されて人間の姿に戻っていた。
ユーノに続いて出てきたなのはも、覚えのある姿を見た瞬間、安堵感から思わず涙を流しつつその女性に抱きついたのであった。

「はやてちゃん!!」
「なのはちゃん!!」

その女性、八神はやてもまた親友が無事であったことを知り、先の戦闘の悲劇も相まって涙して抱き合うのであった。
お互い心身共にボロボロであり、ここに行くつくまでに悲しく辛いことがあったんだと推察できた。

「はやてがいるって事は……あなたたちは敵ではないのか?」
「そうなるだろうね」

先ほどまでの戦意が抜け落ちたユーノは、はやてと行動を共にしていた二人の男に声をかける。
若い男であるアナキンは構えていた双剣を下ろし、柔和そうな老人のブリーフは肩から荷を降ろしたようにため息をついてから笑顔になる。

「友達同士であるはやては説明するまでもないね。
僕の名前はアナキン、アナキン・スカイウォーカー。こっちはブリーフ博士」
「よろしくじゃな」


天魔王軍を撃滅した後に狂信者の集団から逃げるためにXウィングに乗って空へと飛んだはやてたち。
都庁への合流を一時は考えるも周辺をモブ狂信者が弾幕でガードしているために侵入できない。
ならば違う対主催組織との合流を考えるが、飛行中にはやてが覚えのある魔力を渋谷上空で感知し降り立ったのだ。
結果としてはやてはなのは・ユーノとの涙の再会を果たすのだった。


 ◆


498 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:48:36 2m8m8EwA0

アナキンは天魔王軍から奪った支給品の中から回復アイテムを使って一行の傷を治し、なのはとユーノはブリーフ博士によって首輪が解除された。
その後に、婦女子が裸にローブ一枚のままでは可哀想であるというアナキンの提案によりはやてはなのはと一緒に適当な服を探し、試着室で着ることになる。
その際になのはは、治療の時にはやての裸をたまたま見てしまうのだが……

「はやてちゃん……あの血の跡って……」
「あちゃー、見られてもうたか……」

返り血にしては明らかにおかしい位置にある股からの血。
そして軽めの口調に反してはやての浮かない顔。
これが意味するものを想像することがなのはには怖かった。
ただただ親友が汚されたことを思うと悲しく怒りがこみ上げてくる。

「……」
「そんな顔せんといてなのはちゃん。
少なくとも私に酷いことをした奴らは全員死んでるんや。
なのはちゃんまで恨む必要はあらへん」

友に向けてそう言ったはやてだが、やはり好きでもない男に抱かれたのは精神的にこたえているのか、悔みの涙は出ていた。
支給された飲料水で返り血の汚れを洗い流す手も止まる。

そこへフヨフヨと宙を浮きながら、手のひらサイズの物体がはやてとなのはの下へやってくる。

「なにあれ?」
「大丈夫やで、あれはアナキンさんのフォースで浮いているだけや。
……私の下へ向かってきてるちゅうことはアレを私に取れってことやねんかな?」

自分に向けてゆっくりと飛んでくる物体をはやては手にとった。
それは避妊薬の入ったピルケースであった。
好きでもない男の子供など産みたくないだろうと、アナキンなりの気遣いらしい。
その気遣いにはやては悔しさとは違う涙を流した。

「――!」
「はやてちゃん」
「なのはちゃん、私はここに来るまでこの殺し合いで付き添ってくれた多くの仲間を失ったんよ。
マミゾウさんにタロウ……その人たちを失ってブリーフ博士を奪われかけ、私自身も汚されていく屈辱の中で殺されかけたその時に、ある人が流星の如く現れて私と博士を救ってくれたんや」
「その人がアナキンさん?」
「そうや、絶望しかけた私に希望を与えてくれたんや。
あの人がいなかったから私はさっき死んでいて、首輪を外した天魔王軍が横暴を振るっていたに違いあらへん。
……今があるのは全部、あのジェダイの騎士様のおかげや」

アナキンと会ったのは一時間ほどしか経っていないが、既に強い信頼感を抱いていた。
そんなはやてを見て、なのはは一言。

「はやてちゃん……ひょっとしてアナキンさんに恋してる?」
「ちょ、何を言い出すんやなのはちゃん!?」
「にゃははははは」

常に飄々としていて狸女と言われるほど掴みどころのないはやてであったが、そんな彼女が顔を赤くしてうろたえている姿を見て面白く感じ、久しぶりの笑顔を見せるなのは。

「恋する気持ちって素敵だよね。私もユーノくんに恋してるから」
「え、なのはちゃん……今なんて」
「うん、あの人を本気で愛してる」

なのはの恋のカミングアウトにギョっとするはやて。
ユーノとは確かに親しげであったが、どちらかと言えばフェイトの方に気があるように見えるくらい男っけのないと思われた友人がユーノを確かに愛していると言ったのだ。

「私もあの人の知恵がなかったら危ない場面は多々あったし、彼がいなかったらフェイトちゃんやヴィヴィオの死に立ち直ることもできず、殺し合いを止めようとする気さえ起きなかったかもしれない」
「……」
「ちょうど、あなたに対するアナキンさんのようにね」

実際になのははユーノのおかげで心身共に支えられてきた。
彼なしではどこかで命を落とし、そうでなくとも心を壊していただろう。
今のなのはにとってユーノはかけがえのなく、誰よりも尊い存在に見えていた。
……恋かどうかは別として、少なくともはやてのアナキンを見る目は同じである。

「恋……なんかなあ? でもアナキンさんは信用できるし、あの人には死んで欲しくないって気持ちは確かにある」
「その気持ち、大切にね」
「そうやな……おっと、お喋りに夢中で時間食いすぎてもうた。早よ着替えてアナキンさんのところに戻らなきゃ」

これ以上待たせるとアナキンたちに失礼だと思い、はやては新しい服を着て試着室を出る。
そしてなのはと共に男たちの待つ部屋に向かった。
はやての手にはアナキンから渡されたピルケースが大事そうに握られている。

 ◆


499 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:50:36 2m8m8EwA0

中身9歳児の19歳魔法少女と25歳の魔道士が着替えている最中に、男たち三人は別の部屋でそれぞれのすべき事をしていた。
ユーノとブリーフは互いにこれまでのことを情報交換し、アナキンはその横で倒した天魔王軍の不明支給品を調べて使える支給品や使えない支給品を仕分けし、使えない支給品を火にくべて処分していた。
……というのは表向きであり、アナキンの謀略はここでも動いていた。

(よし、あの女は上手いこと騙せているみたいだな。
ピンチの時ほど優しそうな男に惹かれるようになる……吊り橋効果というものはあながち眉唾じゃなさそうだ)

シスの暗黒卿でもあるアナキンはフォースで他の四人の心の動きをこっそりと読んでおり、少しでも信頼度を上げるために普通はハズレアイテムである避妊薬をフォース越しに渡すことで、あたかも気を効かせたように演出。
さりげない気遣いとして四人からの好感度を上げる。
特に八神はやての心が大きく揺れるのを感じ取っていった。
まさか先ほどの仲間たちの喪失はアナキンが大きく絡んでいることも知らず、狸が狸に化かされているのだった。

(僕としてはあの女がどうなろうと知ったことじゃないが、今後のためにも仲間を作って置くことは無駄じゃないだろう。
乙女心を弄びたいってわけじゃないが、僕のために頑張ってもらうよ。
結果的にこの世界のためにもなるんだから、悪く思わないでくれ)

側にいるユーノとブリーフはそんなアナキンの思惑など知らずに話を続けている。
アナキンとしてはどうしてもユウキ=テルミ退治と救済の予言の謎を解くまでは仲間が必要なので、好意も信頼も利用できるものは何でも利用する必要があった。
もっとも、ユウキ=テルミは常人には二つの意味で及びも付かない敵と方法で二時間前に死んでいるのだが、他の対主催に悟られる危険を考慮してココら主催仲間からの情報を絶っているので、知るのは次の放送になるだろう。


「なるほどのう……そういうことがあったのか」
「じゃあ博士、僕の体はその瘴気に侵されて……!」
「可哀想に……それにしても第二の大災害が迫ってるとはね」

お互いに情報交換をし、驚きを隠せないユーノとブリーフ、そしてアナキン。
ちなみに主催の人間であるアナキンは概ねのことは当然理解しているため、目新しい情報は特になかったので驚いているのは演技である。
しいて言うなら、これまで遅々として進まなかったユーノのテラカオス化進行度が暴走したベジータとの戦闘により急上昇して因子が開花したことくらいか。

「ベジータくんが……そんなまさか」
「ブリーフ博士、気をしっかり」

ブリーフは衝撃を受けていた。
信頼していたベジータがマーダー化して都庁となのは組に牙を向いたこと。
見覚えのある光線を見た時の最悪の懸念が現実になってしまった。
ユーノによってベジータが殺されなければ(ユーノが一度倒した時点ではまだ生きていたが)、同盟を組んだ都庁が壊されかねなかったと思うと、なおさら心が痛くなった。
状況から察するにベジータは妻であるブルマの死に心を痛めて狂ってしまい、狂信者の真似事を始めたのだろう。
信頼していた男の暴走と落命は、ブリーフ博士にとって娘の死と同じくらい受け入れがたい事実だった。

「すいません……ブリーフ博士」
「……君が謝ることはない。君が彼を殺さねば都庁が壊滅し、なのは君たちも犠牲になっていただろう」

謝るユーノを宥めるブリーフだったが、その顔に元気はない。
状況が状況だけにユーノを憎んでこそいないが、娘・仲間・義理の息子の死という悲劇が立て続けに起きていたので頭ではわかっていても心で割り切れないのだろう。

「……クソッ!! これも全部ダース・ベイダーたちが瘴気をばら撒いたせいだ!
瘴気さえなければ、ハス太が死ぬことだって……!」

一方でユーノは怒りに打ち震えていた。
主催が支給品の飲み水に混ぜてばら撒いたらしい瘴気のせいで自分の肉体は変化し、仲間を殺すハメになってしまった。
怪物にならなければベジータによって全員が死んでいた、は結果論である。
そもそもの話として殺し合いそのものがなければ誰も死なず、ベジータも暴走しなかったのだ。
ユーノの中で自分やなのは、多くの罪のない参加者を殺し合いの渦に巻き込んだ怒りが膨れ上がっていく、

「ぬ!?」

ブリーフ博士はユーノの腕が一瞬のうちに毛がびっしりと覆われ、鋭い爪が生えていくのを見て驚く。
どうやら怪物化は彼の怒りに反応して発言するようだ。


500 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:51:09 2m8m8EwA0

「落ち着くんだユーノ」
「アナキンさん……」
「悪いのは全てダース・ベイダーたちであって君は何も悪くない。
無論、ベジータだって殺し合いの犠牲者だ……だが、今は怒りや悲しみに飲み込まれてはいけない。
獣になっている自分の手をよく見てみるんだ」
「あ……」
「どうやらその力は君の怒りに反応するみたいだ。
怪物になるとなのは以外は認識できないんだろ?
君はもう仲間を傷つけたくないだろうし、僕らも君と戦うのは御免こうむるよ」
「すいません……」

ユーノの憤りを感じ取ったアナキンが彼を諭す。
別に彼自身を助けたいわけではないし、ユーノが新たなテラカオスになるのは望むところだが、少なくとも今はそのタイミングではない。
暴走の結果、誤って予言解明のための頭脳であるブリーフが失われでもしたら大損害であるからだ。
ユーノの手綱はしっかりと握っていく必要がある。
続けてアナキンは悲しみに暮れているブリーフにも揺さぶりをかける。

「ブリーフ博士も家族の喪失や暴走への悲しみは痛いほど理解していますが、今は堪えて欲しい。
あなたの頭脳が主催がばら撒いた瘴気を晴らし、日本にいる全てのものを救う手立てになるかもしれないのです。
心に鞭を打つようで恐縮だけど今は伏せている暇はないんです」
「……すまない。アナキンくん。
私は科学者として人々のために立ち続けなけらば先に死んでいったブルマたちに申し訳が立たんしな」

このまま朽ちるまで悲しみ続けるやもしれなかった老科学者もアナキンの助けにより心の息吹を吹き返したのだった。
怒りや悲しみで我を失いかけたユーノとブリーフは、正気に戻してくれた男へ感謝の目線を送る。
まさか、その男こそ主催の実質的リーダーであるダース・ベイダーであるとは気づかずに。

「おまたせ、ユーノ君」

男たちがひと悶着あった直後に、なのはとはやてもやってきた。
新しい服を手に入れたはやては借りていたローブをアナキンに返却しつつ小声で例を言う。

(……ありがとうアナキンさん)
(ん? なんのことかな?)
(ふふ♪ アナキンさんたら)

わざとらしくすっとぼけるアナキンにはやては微笑み顔を浮かべるのだった。
五人全員が揃ったところで再び一行は情報交換を始める。

 ◆


501 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:51:49 2m8m8EwA0

ユーノとなのはから、瘴気によって怪物化したユーノ自身のこと、千年タクウによって見た未来における世界滅亡――二度目の大災害。(ついでにユーノが都庁のセルに尻を掘られる件)
はやてとブリーフから、主催がばら撒いた瘴気及び大災害の原因と思われる謎のエネルギー「TC」。
アナキンからは「噂で耳にした」という名目で救済の予言。
天魔王軍が情報操作で自分たちの罪を都庁の魔物に擦り付けていた件も話された。
捕虜にしたニャル子についても話されたが、死んでしまった上にろくな情報がない……強いて言うなら特務機関員は人質を取られてやむなく従っている者もいるくらいか。



まずは大災害の真偽を確かめるために、はやて・ブリーフ・アナキンの三者が未来を見ることのできる千年タクウに触れる。

「なんていうことや!」
「これは恐ろしい……まさか二度目の大災害も来るとは」
「……」

タクウの見えるヴィジョンの中ではかつての日本以外の土地と同じく、最後の生存の砦である日本が沈む姿が映された。
まさに阿鼻叫喚であり、はやてとブリーフは思わず声を荒げる。
次の大災害が来るとは知っているアナキンでさえも「絶対に阻止しなくては」という意思を再確認するのだった。

「でも博士、これで大災害がなぜ起こるのかわかりました。
地殻変動のような天災じゃなかったんだ!」
「このTC値が原因なのね」

一方で大災害の原因までは掴めてなかったユーノとなのはは、はやてたちのもたらした過去の大災害の映像もといTC値を見ることで頭の中でようやく一つの符号ができあがる。

「大災害を起こしたのは主催なの?」
「知っているのは確かなようじゃが、それは考えにくい……
自分たちにも必要な土地やその他諸々を失うかもしれないのに、TCを使って日本以外を滅ぼすメリットは全くない。
逆に世界を滅ぼしたいのなら日本だけ残した理由がわからん。
そもそもこのTCを制御できるようなら首輪などつけずとも反乱した参加者をひとまとめに殺害することもできるだろう。
TCは宇宙から来ているらしく、対抗策なしでは宇宙船を作って他の星へ脱出するのも危険じゃし。
未知のエネルギーを弾く材質を探すなど、たった数日で見つけて作り出すなど土台無理な話じゃ」
「僕が聞いた噂によると日本間の移動に限ったワープ移動はまだしも、異世界やタイムスリップもできないようだ」
「そんな……それじゃあどこへも逃げられないじゃないですか!」

参加者を怪物に変える例の物質『瘴気』は主催による手のものである可能性は濃厚だが、破壊のエネルギーと思わしきTCは主催の手によるものでないことは五人の考えの中で固まる。
TCの強大さも理解できるがために焦りが募る……特になのはの慌てようは目で見てわかるレベルだ。
焦りが募る中、続けてアナキンが口を開く。

「みんな落ち着いて、希望になるかどうかはわからないけど僕が噂で聞いた救済の予言……
【九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂】【全てを虜にする歌】【巫女の祈り】【器たりえる巨像】【不屈の精神を持った勇者】
【全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる】というものが一部の参加者の中で広まっている」
「そのままだと荒唐無稽で意味不明、眉唾にも聞こえるんやけど」
「だが少なくとも、野球チームが試合をすると浮かび上がる謎の紋章の目撃例もあり……そして試合後の会場の土には高濃度の生体エネルギーらしきものが溜まっているのをフォースで確認した。
これはそこらの術師では取り出せないようになっているらしい」
「誰かの悪戯と切って捨てるにはあまりにも凝りすぎているな」
「予言がどこまで信用できるかは疑問だけど、大災害を避けるための手立てとして探る余地はあるかもしれない」

アナキンが持ち出した救済の予言。
それについての考察を始める一行。


502 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:53:48 2m8m8EwA0

「全てを虜にする歌はDMC狂信者を大量に生み出したクラウザーとか当てはまりそうな気がするんやけど……」
「それはなさそうだよ。
僕の知り合いには彼のアンチがいるし、ヒーローとして有名なキン肉マンも吐き気がするくらい大嫌いと公言している。
億単位の信者がいる一方で彼の歌を嫌っている人も相当多いんだ。
クラウザー当人は既に死んでいるし、全てを虜にする歌は最低限彼を上回る歌でないとダメらしい」
「そんな歌うたえる人おるんかなあ……」
「そして器たりえる巨像」

次にアナキンがはやてから借りた携帯の画像から都庁に現れたフォレスト・セルや上空から東京を見下ろしている九州ロボ、他にもオーバーデビルやガメラなど突如殺し合いに現れた巨像っぽいものを見る。

「探せばまだありそうだけど、該当しそうなのはこれくらいか?
また伝承によるとこいつらを動かせるのは女性もしくは巫女である必要があるらしいから、制御できた女性は巫女の祈りの部分にも当てはまるかもしれない」
「都庁から出た怪物は戦い方を見るに都庁の味方なのは確かやし、都庁の誰かが巨像を制御できたのかもしれへんなあ」

最後に勇者。

「あとは不屈の勇者……これはちょっとわからないな。
解釈次第では誰でも該当しそうな気はする」

こうして【九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂】【全てを虜にする歌】【巫女の祈り】【器たりえる巨像】【不屈の精神を持った勇者】までの節がアナキンの口から説明される。
突然現れた野球チームや試合に伴う呪紋の出現、明らかに異常なDMC狂信者の誕生、各地で現れた巨像またはそれらしき生物……それらが殺し合いの後に現れたのはユーノたちには偶然とは思えなかった。
故に予言を荒唐無稽とするにはあまりにも存在が大きするのだ。

「何より僕が気になるのは【全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる】だ」
「争いの淀み……まさにこのカオスロワの状況そのもの」
「そこから生まれた化身ってまさか食人鬼の風鳴翼や今のユーノ君みたいな……!?」
「ユーノ君やなのは君の懸念通り、可能性はゼロとは言い切れん」
「救いの神に転じる……まさに次の大災害で滅びようとしている私たちにとっちゃ必要不可欠な存在やで」

そして最重要と思わしき予言最後の一節。
争いの淀みから生まれた化身、おそらく怪物に転じた参加者が儀式・歌・巫女・巨像・勇者を揃えることで大災害から人々を救う神に変化させられると四人が共通認識ができた。
隠れ主催であるアナキンの場合はTCホールから放たれるTCを防げるのはテラカオスだけだと知っているので、なおさら争いの淀みより生まれた化身・救いの神はテラカオスを指すのだとわかる。
もちろん、必要以上に口出しすると正体がバレる危険や、目的達成までは計画を口外すべきでないとアナキンはわかっている上、予言がどこまで宛になるのかもわからないのでそれ以上口にしなかったが。


「となると、この殺し合いは大災害と予言を知っていた主催が救いの神を呼び出すために開かれたってことやろか?」
「人を怪物に変える瘴気や九州ロボが主催の手によるものの件もそれで説明がつきそうだけど……」

大災害から世界を救うために必要悪的に殺し合いを始めたのではないか?
とはやて・なのはの頭によぎるが、その件は男性陣によって否定される。

「いや、それなら他はまだしも、野球チームを保護しない理由がわからない。
予言を知っていれば放送で野球チームを攻撃した参加者の首輪を爆破するなり宣言して守ることもできたハズだけど、奴らはそれをしていない」
「確かに巨像は九州ロボ、歌・巫女に該当している者は我々の知らないところで殺し合いが始まる前から主催がどこかで確保しているとも考えられるが、儀式を妨害するDMC狂信者のようなマーダーがいるのに主催が守ろうとしない意味がわからんな」
「殺し合いだって何も日本全国を巻き込まなくても、やりたい奴だけ一箇所にかき集めてやっても良かったハズだ。
そうすれば争いの淀みから化身だって無駄な犠牲もなく生み出せたかもしれない……ヴィヴィオやフェイト、ハス太だって死ぬ必要はなかった。
主催はなのはやはやてが考えるような必要悪なんかじゃない、むしろ人を怪物に変える瘴気は偶然予言に当てはまっただけで、参加者を怪物に変えて自分たちの戦力に加えて日本の支配を強固にしようと考えてるのではないかと僕は考えている。
アナキンさんだってそう思わないですか?」
「そうだよ(便乗)」

要となる野球チームを保護しない点やあまりにも犠牲を強いすぎている殺し合いの点からブリーフとユーノは主催の必要悪説そして予言を知っている件に対して否定的な見方であった。
大切な人を失ったり自ら手にかけてしまったこともあって、主催への憤りがあったことで彼らが世界のために頑張っていると思いたくなかったこともある。


503 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:54:37 2m8m8EwA0

一方、ユーノの意見に便乗したフリをしたアナキンは、もちろん主催の事情を知っている。
世界を救うテラカオスはただ生み出すだけではなく莫大なTCに耐える強度が必要なので、殺し合いをやりたい連中だけかき集めた最小限の犠牲の殺し合いではとても足りなかったのだ。
テラカオスで世界を救う気であったのは確かだが、予言を知ったのはつい最近であるし、先に知っていれば野球チームに歌手や巫女候補の保護にも走った。
だが安倍に本拠地を乗っ取られている現状ではそれもできない。
二人の推理は半分合っていて半分外れていると言える。
ユーノもブリーフも知能面では優れているが、この世で唯一TCを吸収できるテラカオスの特性を知らないために答えが見えてないのである。

「主催の目的と救済の予言……繋がるようで繋がらへんな」
「確証を得るための情報が足りんようだ。
ニャル子を見る限り配下である特務機関員はほとんど何も知らんようじゃから、安倍かリーダー格であろう五大幹部を捕まえる必要があるな」
「安倍の放送に嘘がなければ残っているのはダース・ベイダー、ココ・ヘクマティアル、ジャック・Oの三人か」
「真実を知る鍵はその三人……できれば八つ裂きにしたいけど」
「ユーノくん、あなたをそんな体にしたベイダーたちに憤る気持ちはわかるけど今は抑えて」
「ごめん、なのは」

奇しくも同じ対主催である都庁同盟軍と同じ答えにたどり着いた五人。
真実を知りたいのならばまずは主催のトップ陣営を捕獲する必要があると結論づけた。

「しかし、三人の捕獲は一筋縄じゃいかんじゃろ。
更なる状況整理と戦力を整えるためにも一旦都庁に戻ろうと思う」

ある程度、状況を整理したところでブリーフ博士は都庁に戻ることを提案する。
都庁はモブ狂信者に包囲されてアナキンのXウィングですら突破不可能の弾幕が張られていたが、都庁側も先ほど反撃に出て数を減らしているらしいと携帯のネットに書かれていた。
今頃、モブ狂信者は掃討されているかもしれない。
五人はアナキンを除いて戦力的に疲弊しており、これ以上の探索は困難だ。
次の大災害はエリカ・桑原両名のおかげで知ってるだろうが、予言の件は知らない可能性が高い。
少なくともあちらとの敵対はありえないので戻った方が良いだろう。

「ええ、都庁に戻るの!? そんなことをしたらユーノ君のお尻が!!」
「ど、どうしたん、なのはちゃん!? おしり?!」
(あー、ひょっとして……)

都庁に戻ると聞いて焦ったのはなのはである。
都庁に行くとユーノの尻が掘られて怪物(セル)に寝取られる未来をタクウに教えられたからだ。
それはユーノのテラカオス化を治す治療なのだが、なのはは恋人がア○ルファックされるインパクトがでかすぎて覚えていない。
他の四人はセルの触手プレイこそユーノ治療の鍵とは知る由もない。

「僕も都庁に戻るのは反対だ」
「アナキンさん、僕はなのはの安全のためなら自分のお尻の穴ぐらいは犠牲に……」
「ダメだよ! いや、でも、それを渋ったからユーノ君が怪物になっちゃったんだっけ。でも、でもお! ユーノ君の心とお尻が奪われるのは」
「ユーノ! 君の恋人が話の腰を折ってくるんだが、少し黙らせてくれないか!」
「はい……」

都庁帰還によるNTRを恐れるなのはの口にユーノは手を当てて静かにさせる。


「都庁に戻る危険があるのはユーノの穴がほじられるからじゃない。
今、自分たち以外の情勢を知るために携帯でカオスロワちゃんねるを開いて見つけたんだが、これを見てくれ」

アナキンが四人に見せたのは一つの情報。
ダイジョーブ博士によって各掲示板に緊急拡散された都庁の世界樹=ヘルヘイムの森という誤情報であった。
もちろん、この五人は世界樹がヘルヘイムではないことや、都庁の魔物がインベスでないことは承知している。
だが掲示板には多くの参加者が今までとは比べ物にならないほどの大バッシングを都庁に行っていた。


504 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:55:22 2m8m8EwA0


【拡散】都庁の大木=ヘルヘイムの森スレ【希望】 16

14:名もないサッカー部員
おい、やべえやべえよ……なんだよコレよ
都庁のアレとヘルヘイムの特徴が見事に一致してんじゃねえかゴルァ!!

15:名もない死神代行
おまえら、怪物が怖い怖いと引きこもっている場合じゃねえぞ
都庁の大木をぶった切らねえと世界が終わんぞ!!

16:ドリアン
これであの人……呉島貴虎が狂信者と手を組んでまで都庁を破壊しようとした意味がわかったわ
早急に戦力を集めましょう
ヘルヘイムは拳王連合軍やDMC狂信者以上に放置できるものではないわ!
いかなる犠牲を払っても潰さないと!

17:名もない自分をひろしと思い込んでいる精神異常者
俺には家族がいるんだ……家族をヘルヘイムから守るためなら俺は怖くても戦うぞ!!




「なんていうことや……」
「いけない! 大半の人が都庁をヘルヘイムと思い込んどる!!」

都庁同盟軍にとっては最悪の展開であろう。
自分たちや狸組を除いたほぼ全ての参加者が今まで以上に敵意を向けている。
今まではセルを含めた超大な戦力を持つために、弱者は怯えて戦おうとしなかったが、ヘルヘイムによる世界の滅亡をチラつかせた途端、自爆覚悟でも都庁の魔物と関係者を殺そうと決意しだしたのだ。
そうでなければヘルヘイムをどうにもできない世界に絶望してDMC狂信者になっている。
誰も致命的な勘違いに踊らされているとも気づいていない。

「ブリーフ博士、この情報を流したダイジョーブ博士が嘘をついている可能性は!?」
「アレは変わり者だが少なくとも嘘をつくタイプではないし、最初の内はともかく最近はメキメキと実力を上げて強化手術成功率ほぼ99.9%の手腕でスポーツ業界に貢献していた。
それだけに彼を知る者なら信頼されている人物なのだ。
彼がどこでヘルヘイムとやらを知ったのかは疑問だが……」
「とにかくみんなの誤解を解かんと! 対主催同士で殺し合うハメになってまう!」

はやては急いでネットに都庁の世界樹はヘルヘイムではないことをレスする。
ところが、世間の反応は冷ややかであった。
誰も話を信じてもらえず、逆に叩かれる始末であった。




001:名もない狸
都庁はヘルヘイムなんかじゃない! 立派な対主催組織や!

059:名もないブルーベリーアイ
>>1
こいつ、ヘルヘイムの回しもんじゃね?
ヘルヘイムには人間の協力者もいるらしいでアイ

081:名もない長岡
>>1
都庁のクソ野郎!!
大阪を守ってくれたおっぱい……プリキュアと都庁に向かったらしい正義の乳神様をどこにやりやがった!!
放送には流れていないからたぶん死んではいないだろうけど、地上には出ていないところからして協力者になったとも思えん
つまり……

720:名もない生徒会役員共
>>081
慰み者にされているなら助けにいかねば……
望まぬプレイを強要されているなら尚更だ


809:名もない狸
ちょ、ちょっと待って、スレが炎上しすぎて書き込む暇が……
1から解説するからちょっとレスを止めてや!

810:名もないレの兄貴
>>809 F〇CK YOU ヘイ構わん、殺すぞ

900:名もない炭酸
>>809
前からグリーン豆とか、シー猟犬みたいなエコテロリストって好きじゃなかったんだよなー
俺も過去にテロリストに赤っ恥かかされた経験あるし

自然があーだこーだ言ってもどうせ自分たちの利益が目的の破壊集団だろ
死ね 氏ねじゃなくて死ね


505 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:56:42 2m8m8EwA0



「ダメや! みんな頭に血が昇っていて話を聞いてくれへん!!
ん……? なんだか携帯が照れてるみたいに急に熱くなったで?」


1000:名もないネットナビ
>>1
ムカつくからハッキングでこいつの居場所特定と同時に端末ぶち壊しとくぜ


「まずい……携帯を離すんだはやて!!」
「え?」
「早く!」

携帯の異変に気づいたアナキンははやてに指示を出し携帯から手を離すとフォースで携帯を109の外まで飛ばす。
すると携帯は人間の腕くらいなら軽く吹き飛ばせそうな爆発を起こした。

「携帯が爆発した!」
「高度なハッキングで携帯端末を爆破するように仕向けられたらしい」
「あの携帯には主催陣営やTCのデータも入ったUSBメモリも挿してたんや!
あれも破壊されたらネットで謎の物質や大災害のことを拡散することもできへん! 本当に……なんてこった!!」

携帯爆破と同時に貴重な情報が入ったUSBも消失。
主催陣営やTCのことは五人の頭に入っているとはいえ、他の参加者にネットごしでヘルヘイム退治よりも大事な大災害の事実を教え、真実を探るために主催陣営の面子を手伝ってもらうことはできなくなってしまった。


「最後のレスに居場所特定とか不穏なことが書かれていたけど、ひょっとするとこのまま109に留まると対主催に襲撃される危険もあるかも……」
「狂信者やマーダーはまだしも同じ対主催と戦いたくはない……しかし、このまま都庁に戻っても僕らもヘルヘイムの協力者として対主催の敵に思われる危険が有る……」

都庁に帰還すること自体はできるが、マミゾウの時のように化けさせる程度の能力で正体を隠しながら都庁に接近しない限りは対主催から敵視されて攻撃される。
マミゾウは先の戦いの時に戦死しており、前と同じように誰にもバレないように都庁と接することはできない。
今戻れば、自分たちまで人類の敵と認識される。
仮にユーノの治療ができても、他の対主催全てが敵になる危険があるので救済の予言解明に乗り出せる余裕がなくなってしまう。

「都庁はダメ、ここに留まってもダメ。いったいどこに行けば良いんだ……」
「……いや、大丈夫そうなところがまだある」
「アナキンさん、それはどこ?」
「千葉県のどこかにいるらしいイチローチームとドラゴンズだ。
さしたる危険性もなく一定の実力を持ち、疑われていない真っ当な対主催集団。
何よりも予言に必要な最良の戦士たち……野球チームだ」
「接触する価値はありそうですね」
「……というか、ここがぐらいしか接触できるところがないんだけどね」


イチローチーム&ドラゴンズ(現在は併合してイチリュウチーム)。
彼らは度重なる戦闘で大きく疲弊はしているが、人格面では間違いなく危険のない野球チーム。
何より首輪さえ外せばユウキ=テルミですら余裕で勝つこともできるかもしれない強豪ぞろいである。

都庁を除く集団で、極悪集団であるDMC狂信者・拳王連合軍との接触は論外。
地下に隠れたイナバ製作所社長率いる対主催集団はあまり存在を知られていない。
戦力面でも人格面でもまともと思われた聖帝軍は、先ほど巨大なロボットを使って立川市に対して大量虐殺を行ったらしく、対主催の皮を被ったマーダーであると動画で発覚(この映像はホモどもの工作混じりだが)、真偽は不明だが都庁=ヘルヘイムに次ぐバッシングがネットで行われているので接触は危険。
消去法的にイチローチームしか安全に合流できる集団がないのだ。

「そうと決まれば時間が惜しい。さっそく出発しよう」
「待ちたまえアナキン君、Xウィングに五人も乗れるスペースはないぞ」
「僕となのははセットアップすれば飛べるけどデバイスは一個しかないし、僕が戦闘で怪物化してしまう危険もある。
それに複数人で飛ぶとそれだけ敵に発見されやすくなってしまうよ」
「その点は大丈夫だ、博士とユーノとなのはにはこの亀の中に入ってもらう」
「なんで亀って、ええ?!」

アナキンが支給品の中からXウィングと同時に一匹の亀を出して甲羅に鍵を挿すと、亀の中に三人が吸い込まれた。

「アナキンさん、その亀は?」
「ココ・ジャンボ。Mrプレジデントというスタンドを使う亀で、中に複数人を収容できるスペースがあるらしい。
さっき、天魔王軍から奪った支給品の中に混じっていたんだ。
この亀の中にしまえば五人を乗せられるし、中はディパックよりも遥かに快適だ。
はやてはさっきと同じく、Xウィングの上にある穴に入ってフォローを頼む」
「了解や……それとさっき携帯が爆発する時、助けてくれて本当にありがとう」
「仲間なら当然さ」
「助けられてばかりで本当にすんまへん」
(……君にはまだ利用価値があるからな)

しれっとはやての好感度を上げたアナキンはXウィングに乗り込み、109の屋上から飛び立った。
それから間を置かずに109は名もない対主催集団か、それらのタレコミを受けた狂信者による砲撃で爆散し炎上した。


506 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:57:48 2m8m8EwA0

「ッ……!」
「早々と脱出して正解だった」

居城にしていた109が一瞬で廃墟と化したことにゾッとするはやてとアナキン。
元々天魔王軍による情報操作によって勘違いされていた都庁の魔物だが、ダイジョーブが拡散した情報によって多くの参加者の勘違いがピークに達しており、もはや危険な領域に突入している。
都庁の誤解を解くためには都庁にいてはいけない。
外張りを埋めるようにイチローチームの説得から始めないといけないようだ。


そして渋谷上空からイチリュウチームがいる千葉へ向かうXウィング。
その時、アナキンは強く禍々しいフォースの流れを感じた。

「ぐわっ!! なんだこれは!」
「アナキンさん大丈夫……ってなんやアレ!?」

アナキンの次にはやてが気づく。
沖縄方面の空がいつの間にか暗雲に包まれており、あからさまにヤバイ異常気象を起こしていたことに。

「異常なフォースを感じる……とてつもなく危険な奴だ」
「あれは次の大災害の予兆なんやねんか!?」
「わからない……だが、おそらく」

同時刻、世界を破滅に導くTCを纏ったテラカオス・ディーヴァ・シャドウが出現。
危険な力を持つそれをフォースとしてアナキンは感じ取ったのだ。

「世界を救うこと……本当に急がなくてはいけないな」

それははやての気を引くための演技ではなく、主催であるベイダーとしても参加者アナキンとしても嘘偽りのない本音であった。


一方、ココ・ジャンボの内部。
ホテル並に快適な空間の中でユーノに異変が発生する。
敵もいないのにユーノの顔から冷や汗が吹き出し、体は既に半獣化していた。

「ユーノ君!?」
「ユーノ君、いったいどうしたの!?」
「ワ、ワカラない……ケド、敵が迫ってイルノヲ本能で感じルんだ!!」

テラカオス候補者であるユーノは内部に宿す因子から遠くに居るシャドウの危険を感知したのである。
ちょうどテラカオス・ディーヴァが本能的にシャドウを敵視したように。

「南西ホウメン……距離テキには沖縄のアタリ……ソコニ敵ガイルとホンノウが告げている!!
がはっ!!
これ以上ハダメだ!! 怪物にナッテシマウ!!
麻酔を……アナキンさんからもらった睡眠薬をボクにクレ!!!」
「ユーノ君! しっかり!!」
「わかった口を開けてくれ、今から薬飲ませるぞい」

シャドウ出現に呼応して暴れだしたテラカオスの本能に飲み込まれんと必死に足掻くユーノだが、このままでは限界を超えてなのは以外の仲間を皆殺しにしてしまうと悟り、自身を薬で眠らせるように獣化した口を開けて懇願した。
催眠薬入りアイスティーがブリーフによって流し込まれ、お茶の仄かな甘味を感じつつユーノは昏睡。
昏睡と同時にみるみる内に人間の姿に戻っていった。

「ユーノ君!」
「大丈夫だ、眠っただけじゃよ。しかし……外で何が起きてるのじゃ?」

眠ったユーノに抱きつくなのはを尻目に、ブリーフはココ・ジャンボによって作られた部屋の天井を見上げる。
ココ・ジャンボに入っている自分たちの様子からしてアナキンとはやてが誰かと交戦状態に入ったとは思えない。
そしてユーノは沖縄に敵がいると言った。
禁止エリアに指定されたハズの沖縄にどんな敵が出現したのか、それがブリーフには気がかりであった。



【二日目・14時45分/東京・渋谷上空】
※現状ではネットを使って都庁=ヘルヘイムの誤解を解こうとしても、モブ参加者は信じてくれません
※渋谷109が倒壊しました


【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
【状態】健康、19歳の身体、深い悲しみ、首輪解除
【装備】レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、千年タウク@遊戯王
【道具】なし
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:今ははやてちゃん・アナキンさんについていく
1:死んでしまったヴィヴィオたちのためにもこの殺し合いを終わらせる
2:救済の予言で世界を救えるのかな?
3:都庁に行ったエリカたちが心配
4:ユーノ君がいれば何も怖くない……と思っているけど……
※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※未来の自分が使っていた技の一部が使用可能です
※レオリオの死をまだ把握してません
※TC値と救済の予言の内容を知りました


507 : ファントムメナス :2018/01/30(火) 13:58:24 2m8m8EwA0


【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
【状態】麻酔により一時的昏睡、19歳の身体、テラカオス化進行度(大)、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:昏睡中
1:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい
2:救済の予言の謎を解く
3:野田総理の死の原因を探りたい
4:いかなる理由があってもなのはを悲しませた主催者たちは絶対に許さない
5:沖縄に『敵』がいると本能で感じている
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※PSP版の技が使えます
※テラカオス化進行によって巨大フェレットに変身する能力を得ました
 あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます
 ただし現状では変身すると暴走状態に陥り、敵味方に関係なく襲い掛かります
 またTCを扱うシャドウの危険を本能的に察知できます
※レオリオの死をまだ把握してません
※TC値と救済の予言の内容を知りました


【八神はやて@魔法戦記リリカルなのはForce】
【状態】健康、精神不安定、非処女、死んだ仲間たちへの深い悲しみ、アナキンへの好感度(大)、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、夜天の書@魔法少女リリカルなのは、アナキンからもらったピルケース
【思考】基本:死んだ仲間たちの為にも主催を倒す
0:今はアナキンに従い、仲間を守る
1:主催者打倒と大災害阻止のために、情報と仲間を集める
2:他の参加者の都庁=ヘルヘイムの誤解を解きたい
3:恩人であるアナキンを全面的に特別な感情
※主催側が大災害について何か関与していると考えています(細かい部分は分かっていません)
※PSP版の技も使えます。
※カオスロワちゃんねるより、風鳴翼の情報を少し入手しました
※アナキンの正体に気づいていません
※世界滅亡(次の大災害)と救済の予言の内容を知りました
 また、沖縄の天候がおかしくなっていることに気づきました


【ブリーフ博士@ドラゴンボール】
【状態】精神疲労(大)、深い悲しみ、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、機材一式、風鳴翼の右腕
【思考】基本:対主催
0:今はアナキンと行動を共にする
1:TC値と謎の物質の調査のために、自分以外の科学者とも合流したい
2:対主催参加者と出会えたら、首輪を外す
3:ユーノ君は沖縄から何を感じ取ったんじゃ?
4:恩人であるアナキンを信頼
5:亡くなったブルマや殺生丸くんたちのためにも技術者として戦い続ける
※首輪解除が可能となりました
※風鳴翼の右腕は四条化細胞とナノマシンの塊です。うまくいけば抽出できるかもしれません
※現在所持している道具では抽出不可。どこからか調達するか設備のある場所を訪問する必要があります
※情報交換により、風鳴翼(テラカオス・ディーヴァ)の能力の一部を知りました
※情報交換により、謎の物質(ナノマシン)の存在および危険性を知りました
※アナキンの正体に気づいていません
※世界滅亡(次の大災害)と救済の予言の内容を知りました


【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【状態】健康、不安、若返り、ジェダイ風衣装、首輪解除
【装備】邪剣ソウルエッジ&聖剣ソウルキャリバー@ソウルキャリバーシリーズ
【道具】支給品一式、四条化細胞入りカプセル、Xウィング・ファイター@STAR WARS、ライトセーバー@STAR WARS、闇のルビー、ギンガスパーク@ウルトラマンギンガ、ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、大量の不明支給品(アナキン確認済み)
【思考】基本:世界を救うためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:イチローチームと合流し予言の調査及びユウキ=テルミの討伐
1:対主催への信頼を得るためにブリーフ博士を利用する
2:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは消す
3:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
4:ユウキ=テルミを殺す前に、テラカオスや救済の予言について知っているなら吐かせる
5:いざという時は四条化カプセルで新たなテラカオスを作る
6:沖縄のフォースから世界の破滅の危機を察知。色々と急がねば……
※タイムふろしきで若返ったのでピーク時の姿と力を取り戻しました
※まだテルミの死を知りません
※沖縄のフォースの乱れからテラカオス・ディーヴァ・シャドウ(後のシャドウだったもの)の存在を感知しました


508 : 名無しさん :2018/01/30(火) 13:58:50 2m8m8EwA0
投下終了


509 : 緊急クエスト:リオレウスを追え! :2018/02/12(月) 12:53:26 FbrIZkVQ0
イチローチームとドラゴンズの合併により生まれた新チーム「イチリュウチーム」。
発足直後に、聖帝軍のピンチとリオレウスの暴走という事件が発生した。
それらに対処すべく、監督であるラミレスは決断を下した。

「首輪解除ハ大事デスガ、人命ト仲間ハモット大事デス。
ヨッテ、サラサンの首輪解除ハ後回シニシ、リオレウスサンニハナッパサンとサラサン、ソウルセイバーサンヲ割当テ。
制定軍救助ニハ、イチローサン、オシリスサン、蛮サン、萃香サン、ソシテ6/サンヲ派遣シマス。
残リノ選手トアウラノ民ノ皆サンハ負傷者ヲ守ルタメ二コノ城二残ッテクダサイ」


ラミレスの考えはこうだ。
高い機動力を持つリオレウスを追跡するには次ぐらいに機動力かつ飛行能力があるナッパ、サラ(焔龍號)しかいない。
ソウルセイバーは追いつけるか怪しいがオシリスよりは早いため、いざという時のドラゴンネットワークによる連絡係としては必要不可欠であった。

聖帝軍救助には単純に戦力になるものと、ドラゴンネットワークと同時に巨体故に聖帝軍の面子を背中に乗せて運搬できるオシリスが有用であると思えた。

残りは負傷しているため遊園地に残り、ダイゴの持つパソコンやギムレーによる情報収集・連絡係を任せる。
アウラの民は戦闘力はあるが、イチローらに比べると見劣りするために最悪、狂信者や拳王軍・都庁軍の『おやつ』になってしまう危険が有るため、遊園地に残った選手の護衛を任せた。

一方、サラによる首輪解除による戦力増強は大きいが彼女の技術力では二時間かかってしまうため、解除を待っていてはリオレウスや聖帝軍を見捨てることになってしまう。
ナッパもポッドの中で回復途中であったが、リオレウスを捕まえるにはどうしても彼の戦闘力と機動性が必要であった。
ここでどちらかでも見捨てれば自分たちは拳王連合軍と同じく非道な連中と変わらなくなってしまう。
多くの人命を助けたければ多少のリスクは承知の上で飲み込むしかないのであった。

また、「首輪というハンデを乗り越えればイチリュウチームは予言の中にある最良の九人の戦士に近づくことができるのではないか、というのがラミレスの考えもあるのである。
選手は苦境を乗り越えてこそ強くなるのだ。
イチリュウチームにも試練を与えなければならない。


ラミレスの指示を受けてさっそく飛び立つリオレウス追跡班と聖帝軍救助班。
彼らの帰りと吉報を信じて待つ遊園地班とアウラの民であった。




遊園地を発ち、日本海上空からリオレウスを追うナッパ、サラマンディーネの焔龍號、ソウルセイバー。

「ナッパ様……お怪我の方は大丈夫なのですか?」
「心配すんなサラ、サイヤ人にこの程度の傷でへこたれるクズはいねえ。
それに今回は戦いじゃなくてリオレウスの阻止が目的だ。
過剰な暴力は今は必要ねえし、拳王連合軍ともまだ戦わないつもりよ」

回復ポッドに入っていたので飛べるぐらいには回復したナッパだが、それでもまだ無視できない痛みが体にズキズキと残っている。
無茶をしての飛行であったが、チームメイトの暴走とリオレウスを含んだ犠牲を食い止めるためならラミレスの指示も本望であった。
高速飛行できる者の中で拳王連合軍と戦闘に陥っても安定して戦えそうな人材がナッパしかいない点もある。

「サラこそ、チームに入って早々トラブルに突き合わせちまって悪いな。下々のことも気になるだろう」
「私やアウラの民のことはお気になさらずに。
アウラの民たちはしっかりした者たちですし、万が一の時のためにギムレー様に作りかけの首輪解除法とアウラの民の指揮を任せています」
「万が一、って事態にはならないようにするよ。アンタほどの美し……優秀な選手が死ぬ事は避けたいしね」
「お優しいのですね、ナッパ様」

サラは龍神器の機動力がリオレウスを追いかけることに適していることに加えて状態異常耐性を持たないナッパをフォローするために必要な人材だった。
流石に本人に毒ガスに対する耐性はそこまでないだろうが、焔龍號が人型形態を取ればコクピットは守られるため、リオレウスが毒ガスを放っても対抗する策はあった。
最悪の場合、焔龍號に内蔵された空間破壊兵器・ディスコード・フェイザーで毒ガスや拳王連合軍ごと消し去る使い方もできるので、彼女しか焔龍號に乗れないことを懸念すると正にうってつけであった。


510 : 緊急クエスト:リオレウスを追え! :2018/02/12(月) 12:54:50 FbrIZkVQ0


「まったく、二人でイチャイチャしちゃって……オ〇ンポとオ〇ンコを重ね合わせるような破廉恥は私が許しませんよ!
……ちょっと、早漏すぎる……じゃなくて早すぎるわよ!? ナッパは本当に怪我人なの!?」

ギリギリどころかアウトな言葉を吐きながら二人を必死に追従するのは、巨乳ドラゴンのソウルセイバーである。
彼女は怪我人であるナッパには追いつけないほど機動力に劣るが、オシリスには巨体故の用途があり、ホルスは病み上がり、ギムレーは邪竜化できないと飛行できないので他にリオレウスを追跡できるものだいなかった。
また、機動性にこそ問題があるが、電話の代わりになるドラゴンネットワークの使用ができる利点や、ナッパやサラよりはリオレウスとの付き合いが長いので説得できるということもあった。



「……畜生、あいつら追ってきやがったか!」

リオレウスがチラリと後ろを振り向くと、追ってくる仲間たちの姿があった。
飛行速度そのものはリオレウスがダントツであり、まだまだ距離はあったが、リオレウスによる特攻もとい毒ガス攻撃を阻止するには十分な射程であった。
この事態に焦るリオレウス。

「どうする俺……このままじゃ拳王連合軍に攻撃ができねえ。
戦うにしてもあの三人に勝てるのはスピードだけだ。
言いくるめたり騙し討ちをする? ダメだ、俺の頭じゃ捕まる未来しか思い浮かばねえぞ」

機動力以外は三人一辺に太刀打ちできる要素がないリオレウス。
相手が相手なので捕まっても自分を殺しはしないだろうが、復讐は間違いなくやりづらくなる。
どうしても捕まるわけにはいかない

「どうすりゃいい……どうすりゃ……ん?」

そこでリオレウスは思い出した。
人間の諺にある『急がば回れ』という言葉を。
急遽リオレウスは針路を神奈川の横浜港に直進するルートから北向きへと進路を変えた。


「なんだ? 急に針路を変えたぞ?」
「復讐を諦めて私たちの方に戻ってくればいいけど」

リオレウスの突然の行動に首を傾げるナッパとソウルセイバー。

「……いや、あの向きは! すぐに止めないと!」

だが、聡いサラだけが危険を察してリオレウスに向けて射撃を行った。

「お、おい仲間に向けて何してんだサラ」
「ただの牽制と威嚇です! それよりもナッパ様とソウルセイバー様も早く彼を止めてください!
この先にあるものを考えると、彼を行かせるのは尚更危険です!」
「この先にあるもの……まさか!?」
「止めろって言われても私は射程外で何もできないんだけど!?」

サラに言われてようやく危険を悟ったナッパもリオレウスに威嚇射撃のエネルギー弾をグミ撃ちで発射する。


「はっ! どうせ威嚇射撃だ。当ててくるわけがねえ」

ナッパとサラの攻撃を涼しい顔で躱していくリオレウス。
彼の目線の先にはDMC狂信者の本拠地、ビッグサイトがあった。

「クソッ! 間に合わねえ!」
「遅いぜ、もうここは奴らの領内だ」

ブレスの射程内ギリギリに要塞化されたビッグサイトが入り次第、リオレウスは発射する。
モブ狂信者の魔法による迎撃等でブレスはあっさりと防がれてしまうが、それもリオレウスの計算の内。
すぐにリオレウスは目的地である横浜港へ針路を変更し、最大速でビッグサイト領内から脱出した。
そして飛行できる能力を有したモブ狂信者や飛行型MSが蜂の巣をつついたようにワラワラと現れた。


511 : 緊急クエスト:リオレウスを追え! :2018/02/12(月) 12:55:36 FbrIZkVQ0

「あの野郎、やりやがった!」
「狂信者がこっちに来るわ!」
「やられました……狂信者は足の早いリオレウス様より、機動力で劣る我々を狙ってきています」

ビッグサイトを守るために迎撃に出た狂信者はサラの言ったとおり、早すぎて追いつけないリオレウスより十分に追いかけれられるナッパたちに的を絞って攻撃を加えてきた。
リオレウスは追跡を逃れるためにビッグサイトという蜂の巣を啄き、中から飛び出た鉢の大群をナッパたちに押し付けたのである。
訓練または強化されて油断できない存在になっているとはいえモブ狂信者は三人の敵ではなかったが、それでも時間稼ぎをさせるには十分であった。

「こいつらうぜえ!」
「倒しても倒してもキリがありませんわ」

ビームでモブ狂信者の集団を次々と撃墜していくナッパとサラであったが、モブ狂信者はビッグサイトから次々と迎撃に出てくる。
そうこうしている間にリオレウスはどんどん距離を離していった。

「リオレウスが行っちまう!」
「このままでは彼を見失ってしまう……更に言えば狂信者の中から強者の増援が現れて、我々も危険に陥ってしまいます」

戦いが長引いてモブ狂信者よりは遥かに強いネームド狂信者が出撃すれば、勝てても戦闘にかかった時間によってリオレウスを見失う。
更にイチリュウチームはまだ知らないが、この頃狂信者はネームド限定で首輪解除も可能になっている。
相手によってはこの三人さえ凌ぐ戦闘力を持った狂信者が現れる危険が有るのだ。
首輪を外していない現状ではそれらの交戦は危険極まりない。


「ナッパ!サラ!私が粗チ〇ポどもの囮になるわ!」
「おまえ一人でか!?」
「いくらあなたとはいえ危険です!」
「あの様子だとリオレウスにもう口での説得は通用しない!
でもアイツを止めるにはあなたたちのスピードが必要よ。
口での説得ができない以上、スピードで劣る私は残り、勝るあなたたちが追跡を続行すべきでしょう」

ソウルセイバーは一匹でモブ狂信者たちの囮になり、ナッパとサラを引き離してリオレウスの追跡を続行させようと言うのだ。
もちろんそれは相応の危険が伴い、二人は難色を示したが、ソウルセイバーは二人を行かせようとする。

「ここは任せて早く行きなさい!
私は狂信者やおチン〇に負けるほどヤワな雌じゃなくってよ!!」
「くッ……わかったソウルセイバー。だが絶対に生きて浦安に帰れよ!」
「危険だと思ったらドラゴンネットワークでアウラの民を読んでください、彼女らもモブ狂信者なら互角の戦闘力を持っています」
「ええ、ありがとう。必ずリオレウスのオバカチンチンを連れ戻してね」

苦渋の決断の上でソウルセイバーの案に乗ったナッパとサラは彼女を残してすぐに戦線を離脱。
何人かは二人を追いかけようとしたが、すぐにソウルセイバーの攻撃によって撃ち落とされた。
モブたちの矛先は完全にソウルセイバー一匹に絞られ、彼女はできる限り仲間を支援するためにビッグサイトからもナッパたちからも距離を取った。



「……俺の邪魔をするおまえたちが悪いんだぜ。
まあ、あいつらならモブ程度の敵は何匹束になっても十分もありゃ倒せるだろう」

追っ手を巻くためとはいえ、狂信者との戦闘を押し付けたことに罪悪感を覚えるリオレウスであったが、仲間たちならばモブ狂信者に負けはしないだろうという自身もあった。
そしてニヤリと微笑む。

「十分も稼げりゃ、俺の復讐は果たせるがな!! 横浜が見えてきたぜ!!」

リオレウスの視界に輪郭が顕になった横浜が映る。
横浜港は広いがそのどこかに妻を殺した拳王連合軍がいるのは確定的に明らかだ。
見つけ次第、腕に持っている毒ガスを奴らにぶちまけてやる。

殺意と復讐心を滾らせるリオレウス。
阻止を目指すナッパとサラは間に合うのか?


【二日目・14時00分/東京湾上空】


【リオレウス@モンスターハンターシリーズ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、激しい怒りによる暴走
【装備】毒ガス入り大タル爆弾
【道具】支給品一式
【思考】基本:(暴走中)
0:刺し違えても拳王連合軍はぶっ殺す!!
1:リオレイアのためにも……!
2:復讐のためならもうヘタレ払拭とかどうでもいい


512 : 緊急クエスト:リオレウスを追え! :2018/02/12(月) 12:56:10 FbrIZkVQ0


【イチリュウチーム・リオレウス阻止班】

【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【状態】ダメージ(中)、野球脳、激しい怒り
【装備】なし
【道具】一人用のポッド
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:リオレウスを止める
1:野球を邪魔するDMCは許さない
2:あのガキ(光熱斗)にはいつか報復する、野球で
3:ベジータはそのうち探す
4:また多くの仲間が死んじまった……自分の無力さが不甲斐ない
5:生きていてくれソウルセイバー!
6:サラマンディーネに気がある
※回復した場合、戦闘力が大幅に上昇します
 中途半端な回復具合で回復ポッドから出てしまったので、戦闘力上昇の幅はその分少ないです

【サラマンディーネ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
【状態】健康
【装備】焔龍號(EN消費:小)
【道具】なし
【思考】基本:対主催
0:リオレウス様を止める
1:イチリュウチームについていく
2:滅亡を止めたいとは思うものの、予言に関しては懐疑的
3:後で首輪解除のためにゆっくりできる時間が二時間ほど欲しい
※予言には主催者も関わっていると推測しています
※首輪解除技術を持っていますが、技術面で祐一郎さんやブリーフ博士を下回っているため、解除方法を見つけるまでに最低二時間以上かかります
 焔龍號の操縦に専念している現状はもちろん無理

【ソウルセイバー・ドラゴン@ヴァンガード】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、巨乳
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:世界を救うためにも、オシリスについていく
0:リオレウスを止めさせるためにも狂信者の足止めをする
1:人間のオチ○ポには絶対に負けたりしない
2:都庁軍討伐は後
3:都庁軍は絶対に信用しない
※♀です
※囮となるべく、モブ狂信者と戦闘中です
 長々と戦っているビッグサイトからネームド狂信者が派遣される危険があります





一方その頃、浦安市の遊園地。
そこで待機しているDAIGOたちも遊んでいるわけではなく、パソコンやドラゴンネットワークで情報収集を行っていた。
そこで一行はダイゴのパソコンからある情報を見つけた。

「これは……マジっすか」
「ギムレーサン! ドラゴンネットワークデスグニ連絡ヲ!」
「……もうやっている」
「ホルゥ……ホルたちしかまともな球団はいないでホルか!?」

その映像は聖帝軍保有の巨大ロボが虐殺を行う映像であった。


513 : 緊急クエスト:リオレウスを追え! :2018/02/12(月) 12:57:01 FbrIZkVQ0



同時刻、千葉県から東京江戸川区へと侵入したイチローとオシリスら、聖帝軍救助班。

「待ってろよ、もうすぐ助けてやるからな聖帝軍!」
「あれ? スカイツリーはどこへ行った? 見えないぞ」

オシリスの背中から墨田区の目印にもなるスカイツリーを探すイチローであったが、なぜか無くなっていることに気づく。
代わりに墨田区からは黒いモヤが高々と上がっていた。
そこへドラゴンネットワークを通じてオシリス宛にギムレーから連絡が届いた。

「なん……だと……!?」

この前死んだ裏切り者が好きそうな口調を吐きつつ、チームを乗せて飛行していたオシリスが急に止まった。

「うわわ、落ちる落ちる!」
「おい!急に止まんな!急ぐんじゃなかったのか!?」
「どうしたの急に? KBTITとかいう北京原人みたな言葉を吐いてさ!」

急に止まったことで6/、蛮、萃香から顰蹙を買ったオシリスだが構わずに言葉を吐く。

「たった今、ギムレーから映像が届いたんだ。
聖帝軍がついさっき虐殺を行ったとな……ネットは大炎上状態らしい」
「「「なん……だと……!?」」」

聖帝軍は対主催の皮を被ったマーダー集団だという話に他の仲間たちの口調もオサレ化する。

「しかも聖帝軍のロリショタの正体も大人が子供に化けていただけだって……個人的にショックだ」
「そっちはどうでもええわ! 胡桃ぶつけんぞ!」
「いや、それが真実ならガキを装って他の参加者から同情を誘い騙し討ちを仕掛けようとしたクソどもということになる。
あながち無視はできねえ事柄だ」

ちなみにチルノの大人化は大阪で辛うじて生きていた監視カメラから偶然撮られたものらしい。
金色の闇の大人化はガンダムのモニターに写った一瞬映像を狂信者のホモ共が不信に繋がると思ってオマケに流したものだ。
大人が子供に化けていたのではなく、実際は子供が大人になったのが正しいのだが、仲間内以外でそれを知るものはおらず、聖帝軍への不信を加速させた。

「偽情報の疑いは?」
「ギムレーやラミレスもそうなんじゃないかと疑ったが、現在進行形で聖帝軍の巨大ロボが暴れているのは事実らしい。
少なくとも立川市での無差別攻撃は目撃者の多さから工作じゃないのは確かだそうだ」
「そんな……」

信じていた球団は拳王連合軍と同じ悪しき集団であった。
その事実に一行はショックを受ける……自分たちの球団以外は世紀末的ヒャッハー集団だということになるのだから。


「そんでもって、ラミレスから二つの指示がきた」



「一つはすぐに浦安にすぐに引き返すこと。
もう一つは、俺たちで『可能ならば』聖帝軍を殲滅することだ……」



【二日目・14時00分/東京江戸川区】


【イチリュウチーム・聖帝軍救助(⇒殲滅)班】
※ドラゴンネットワークにより聖帝軍のきらりんロボによる虐殺(工作込み)を知りました


【イチロー@現実?】
【状態】健康
【装備】野球道具
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチリュウチームを優勝させる?
0:聖帝軍を倒す?
1:DMC狂信者を倒すために多くの仲間を集める
2:邪魔をしてくるDMC狂信者を倒すまでは試合は保留
3:予言に対しては慎重に考える
4:DMC狂信者の本拠であるビッグサイトを攻略したい
5:主催者は予言のことを知っているんだろうか?
※ネオ・レーザービームは使用すると腕に多大な負担がかかり、あと三球以上使用すると選手生命が終わる危険があります


514 : 緊急クエスト:リオレウスを追え! :2018/02/12(月) 12:57:54 FbrIZkVQ0

【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【状態】健康
【装備】サングラス
【道具】支給品一式、マスターソード、魔竜石、リザイアの書、不明品
【思考】
0:聖帝軍を倒す?
1:DMC狂信者、その他マーダーと達と戦う
※邪眼を一回使いました


【伊吹萃香@しゅわスパ大作戦】
【状態】ほろ酔い、強い悲しみと怒り
【装備】なし
【道具】支給品一式、日本酒×50
【思考】
基本:イチリュウチームについていく
0:聖帝軍をぶっ飛ばす?
1:KBTITとかいうクソホモは忘れる

【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手】
【状態】健康、悲しみ
【装備】胡桃三千個
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:新生したイチリュウチームで予言の完遂を果たす
1:ハラサン……ありがとう
2:大正義を忘れない
3:目立つことも忘れない
4:予言に対して盲信気味

【オシリスの天空竜@遊戯王デュエルモンスターズ】
【状態】ロリコン、とても深い悲しみ
【装備】バット、グローブ、ボールを多数
【道具】支給品一式
【思考】基本:ロリにモテるために世界を救う予言の謎を解明し、イチリュウチームも優勝させる
0:聖帝軍がマーダーってマジかよ……
1:リオレウスの方は大丈夫だろうか?
2:ホルスの黒炎竜……
※オシリスの見立てによると魔力(生体マグネタイト)が集中しているビッグサイトへの直接攻撃は大爆発を招き、東京を巻き込む危険性があるそうです


【二日目・14時00分/千葉県浦安市遊園地】

【イチリュウチーム・待機組】
※ネットにより聖帝軍のきらりんロボによる虐殺(工作込み)を知りました

【DAIGO@現実?】
【状態】ダメージ(小)
【装備】ウルティメイトブレスレット@ウルトラマンサーガ
【道具】支給品一式、ヴァンガードデッキ
【思考】
0:イチリュウチームについていく
1:聖帝軍がマーダーってやばくないっすか?
2:ダイゴさんマジリスペクト……意思は引継ぐっス
3:主催の目的はなんなんだ?
※サーシェスがテラカオスになると同時に首輪が自動で外れた瞬間を目撃しました


【ウルトラマンゼロ@ウルトラマンサーガ】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】基本:殺し合いを止める
0:聖帝軍のマーダー化は何かの間違いだと思いたい
1:どうにかしてDMCを止めたい
2:ホルスの黒炎竜、助けられなくてすまない……
3:触手男のような混沌の力を持つ者を見つけることが主催の目的ではないかと睨んでいる
※制限によって一度に数分までの間しか変身できません
 一度変身すると12時間は変身できません
※首輪を外さない場合二日目22時になれば再び変身ができます
※サーシェスがテラカオスになると同時に首輪が自動で外れた瞬間を目撃しました


515 : 緊急クエスト:リオレウスを追え! :2018/02/12(月) 12:58:59 FbrIZkVQ0


【ダイゴ@ポケットモンスター】
【状態】ダメージ(大・処置済)、深い悲しみ
【装備】メタグロス
【道具】支給品一式 、コルトパイソン
【思考】
0:イチリュウチームについていく
1:助けてあげられなくてごめんな、ポッチャマ、ちなつ……
2:きれいな石集めは今は忘れる


【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【状態】右足切断(処置済み)、監督といて生きていく決意
【装備】野球道具一式
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:情報ヲ集メテ、飛ビ立ッタ仲間ヲフォロースル
1:コレカラハ監督トシテガンバッテイク
2:リ、リオレウスサン……
3:虐殺ガ真実ナラ ファッキュー聖帝軍
※イチリュウチームの監督になりました


【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【状態】健康、悲しみ
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:世界を救うためにオシリスについていく
0:リオレウス阻止と聖帝軍のために旅立った仲間の無事を信じるホル
1:死んでしまった奴らのためにも頑張るホル!
2:聖帝軍まで……他の球団はもう信用できないホル
3:ええ乳持ち(ry ソウルセイバーとサラの無事を祈る


【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒】
【状態】ダメージ(小)、魔力消耗(小)、人間形態
【装備】トロンの書、鋼の剣、邪竜の鱗
【道具】支給品一式、不明品、スクーナー級×500、ガレオン級×30、首輪×10、首輪のスクラップ×40、首輪解除方法(未完成)を書いたメモ
【思考】基本:野球で優勝して、自分の信者を増やす
0:情報を集めて飛び立った仲間をフォローする
1:試合の邪魔をするDMC狂信者を倒すために、本拠であるビッグサイトを攻略したい
2:予言に対して少し懐疑的
3:聖帝軍の情報に関しては一部は工作も疑ってるが……
4:サラが死亡した場合はアウラの民の指揮と首輪解除法を引き継ぐ
※外見はデフォルト設定の銀髪青年です
※制限により、しばらく邪竜形態でいることはできません
※首輪を外したとしても、屍兵は簡単には生み出せません


516 : 名無しさん :2018/02/12(月) 13:01:14 FbrIZkVQ0
投下終了です
予約されている今日か明日中には投下される聖帝軍+都庁・ハクメンのSSが楽しみだゾ


517 : ◆oPHlHmFqMg :2018/02/12(月) 23:13:00 FpnMZ7X20
投下乙です
予約していた聖帝軍、都庁軍勢、ハクメンで投下します


518 : ◆oPHlHmFqMg :2018/02/12(月) 23:13:53 FpnMZ7X20
「馬鹿な、こんなことが……」

一人のDMC狂信者の男は思わず呟いた。
クラウザーさんを復活させるには大量の生贄が必要。
敵は既に二度の大襲撃を凌ぎきった強力無比な軍勢。
だが少なからず損害は受け、特に三匹の竜の一角を落としているのはでかい。
加えて連中はこの拠点そのものの防衛に力を入れており、外に救援を呼びに出ることはない。
どれだけ強かろうが、狂信者と違って補充がきかないのであれば、いつかはパワーバランスも傾くはずだ。
だからこそ、大量の信者で都庁の世界樹を包囲したはずだった。

「メギドフレイムー! おーし、ようやく黄昏エナジーも溜まってきたが、こいつらに使うのはもったいねぇ。
 もっともっと鍛えなおして、いざというときの切り札にしないとな」

だが状況は最悪を通り越していた。
狂信者側からすれば僥倖だった、地下からの光線で黒い怪物が真っ二つになった事件。
これを好機と見てより深く踏み込んだのが完全に仇となった。
その怪物はものの数分で復活したばかりか、何故だかさらに強くなっている始末。

「いい加減に去ね愚者共。いよいよもって、私達には貴様らを相手にしている暇はないのだ」

それはこの都庁攻略の難易度を跳ね上げている魔王にも適用されていた。
もはや片手間なレーザーでさえ、狂信者の部隊が複数まとめて遺品も残さず消し飛ぶのだ。

「ああ、もう一度クラウザーさんのライブ、見たかったなぁ……」

また一人、狂信者が消し飛んだ。
狂信者と呼ばれる彼らも、流石にもう勝ち目がないことは理解している。
理不尽な火力で滅茶苦茶な範囲を攻撃してくる怪物と魔王が十分な脅威だというのに、まだ連中はあのにしゃにしゃ鳴く触手も抱え込んでいるのだ。
勝てるわけがない。
僅かにでも抱いてしまった諦めの感情と、自分が死んでもクラウザーさんの生贄になれると信じ込んでいる彼らに、もはやハザマ達のような連携はとれない。
ただ無謀な突撃を繰り返し、消えていく。
都庁側からすれば、溜まり溜まった埃や塵の大掃除。

「ヒャッハ―、レベルアップだー」

いや、フィーバータイムと言うべきか。
せめてハザマか大和が生きていれば。この場にまだセルベリアがいてくれたならば。
どうして彼らの攻撃がさらに凶悪になったのかを考え、そこから敵が大幅なレベルアップをしたからという結論に辿りつけるような冷静な頭の持ち主がいれば。
無謀な突撃などせずに、大人しく逃走していれば。(それでも背後から半数は焼かれる可能性が高いが)
まさか幹部からしごかれ、狂信者の中でもかなり強くなった自分達が、そのままおいしい経験値扱いされているなんて、モブの誰が考え付こうか?
今は絶対逃げないメタルキングの群れが我先にと突っ込んできて刃の鎧に突き刺さって勝手に自滅する……そんな状況なのだ。

そしてここにさらに都庁の協力者が雪崩れ込んできたともなれば。

「クラウザーさん……」

ものの数分で、彼らが完全に狩り尽くされるのは自明の理と言えた。



【狂信者都庁包囲軍 全滅】


519 : ◆oPHlHmFqMg :2018/02/12(月) 23:14:45 FpnMZ7X20
「っしゃあ! こいつで最後だ!」

最後の狂信者を遥か彼方にぶっ飛ばした桑原が勝ちどきをあげる。
首相官邸から鬱憤が溜まっていた彼に、狂信者への慈悲などありはしない。

「しっかしスゲェなドラゴンハートってのは。あいつらに追いつこうと頑張った修業とかでももうこれ以上は強くなれねぇかもと思ってたんだがな」
「僕もだよ。これがレベル50000の壁を越えた世界なんだね」
「俺も久々に影の薄さを忘れて暴れた気がするな。まだまだ経験が積めるってのはいいことだ」

そして桑原と同じく人間の枠組みを軽く飛び出ているレストと日之影も充足感を得ている。


(かなりスタミナが増えた気がします)
(黒子、なんでちゃっかりあんたもステルス狙撃で経験値荒稼ぎしてんだい……)
(今こそ落ち着いてますけど、東横さんが雀力解放して拳王連合に無謀な突撃をしかける可能性ありますし。
 いざというとき彼女を止められないのは嫌ですからね)
(……安心しなって。仮にそうなってもまたあたいも止めてやるから。あんたらを殺させやしないよ)


そしてもう一人、抜け目なく追加のレベルアップをしている影薄の一人である黒子。
彼らの協力もあり、ダオス達は予定よりも早く包囲網を形成していた全ての信者を黙らせることに成功したのだ。
これにより、少し前に発覚した救済の予言の考察に本腰を入れることができる。


「ん? ありゃあ……氷竜達か?」


そんな時、日之影が世界樹の長たる竜の姿を視認する。
先刻聖帝軍を助けに行ったばかりの彼らがもう戻ってくるとなると、救助は無事に成功したのだろう。
これでおそらく予言を知るであろう聖帝軍とも意見をかわすことができ、予言の考察をさらにすすめることができる。


……そうであれば、どれだけよかったことか。


僅か数分後、聖帝は世界樹の地を踏むこととなる。
だが聖帝が率いる軍勢はその数を減らし。
また救援に向かった仲間達にいたってはその数を半分以下にしているのだ。


狂信者の包囲網を崩すといういいニュースは、それ以上の絶望によって黒く塗り潰されることとなった。









520 : ◆oPHlHmFqMg :2018/02/12(月) 23:15:28 FpnMZ7X20
「……俺が、聖帝サウザーだ。この度は我が軍勢への救援、誠に感謝する」
「私はダオス。かつての魔物の長より引き継ぐ形でこの都庁、いや、世界樹の軍勢を率いる身となった者だ。
 聖帝よ、私と魔物達はお前達を迎え入れよう」

聖なる帝と魔の王が、握手をかわす。
聖帝軍と世界樹の同盟が正式に結ばれた瞬間である。

しかしながら、そこに喜びの感情は少なかった。
無論双方にとって協力者が増えたことは喜ばしいことなのだが。
聖帝軍の救助と同時に、世界樹側にもたらされたのは絶望そのものだったのだから。

「すみません、私たちを助けたばかりに……」
『……気にするな、子供達よ。私もあいつも覚悟は決めていた』
「カギ爪団そのものは壊滅させたが、その後に身内にまさか瘴気の感染者がいるとは誰も思うまい。
 救援隊を出すと決めたのは、私に赤竜と氷竜だ。そちらが気に病む話ではない。
 今はとにかく、そのきらりという少女にどう対処するかが肝要だ」

サウザーを含め、聖帝軍の面々は沈み込んだ様子であった。
救援にかけつけたこの世界樹の軍勢に多大な犠牲を出してしまい、自分達も仲間を失い、さらにきらりをも失いそうなのだから。
しかしそれに対して、世界樹の面々は思った以上に寛容であり、そして冷静であった。
魔物の長たる竜と魔王、冷静さを持ち合わさねばトップとして君臨できないのは理解できるが、それ以上の何かを感じさせたのだ。
まるで、もう僅かたりとも立ち止まることを許されていないかのような。

「すまねえな……ところで、そっちのカヲルが教えてくれたんだが、ここには化物になっちまった奴を救える手段があるそうだが」
「だからこそ我が聖帝軍は前進した。これは後退ではなく、我が軍の一員を救い出すための前進なのだ!」

「それは、セルちゃんのことですね。初めまして、聖帝さん達。私は鹿目まどか。未熟だけど、この世界樹の巫女をやらせていただいています」

高津とサウザーが求めていた情報を聞けば、ダオスの後ろから桃色の髪の少女が姿を現す。
見た目こそ聖帝軍の子供達に近いが、その佇まいや決意の表情に一同はただただ驚いた。
彼女こそいまやダオス以上の世界樹の要ともいえる、まどかその人である。

「ヌゥ……せ、聖帝軍に欲し「自重して下さいサウザー」へぶっ!?」
「ただ者ではありませんわね。しかし巫女というとまさか予言の……?」
「やはり救済の予言とやらをそちらも知っていたか。その他のことも色々と話し合いたいところだが、あいにくと今はその時間もない。
 とりあえずは最低限の事を話し次第、きらりを止めに向かわねばならぬ」
「えっと、そのきらりさんを救えるかもしれないセルちゃんは見て貰わないと駄目だよね?」


(セルちゃんって、ルビーみたいな感じかな?)
(あの子もプリキュアや魔法少女といった空気でしたし、可愛いマスコットなのでは?)
(きらりさんのエンジェル・ハイロウに対抗できるとなると、やっぱり歌姫な女の子?)
(セルちゃんって呼んでたからな。女の子なのは間違いないだろ)
(な、何故でしょうか? 頭の中にニュルニュルえっちぃ光景が……)



ぼむんっ




「にしゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!!!」


「「「「「うわあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!??」」」」」


無垢な少年少女の夢を木端微塵にぶち砕き、災厄にして救済者であるフォレスト・セルがモンスターボールから飛び出てきた。




521 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:17:15 FpnMZ7X20
「「都庁怖い」」

聖帝軍の子供達に若干のトラウマを植え付けつつも、時間がないので作戦は押し進められることに。

「都庁怖い」
「サ、サウザーも混じって何震えているんですか! さっきまでのカッコいい貴方はどうしたんですか!」
「そういうお前も震えているぞ闇ェ……仕方がないだろう、いきなりボールからセルちゃんといった名前からかけ離れた存在がでてきたんだぞ?」
「確かにそうなのですが……鹿目まどか、恐ろしい人です」
「アレで本当にきらりが治せるのか?」

「思っていた以上に都庁はヤベェとこだったな……」
「レイジ、助けて貰ったのは確かなんだ。そんなことを言っちゃいけないよ。怖いけど」
「青髪の子が僕の耳やみんなの怪我を治してくれましたし、十分信頼できますよ」
「しかし俺達じゃどうしようもねぇのはわかっているが、休んでるだけで作戦は全部あっち任せってのも申し訳ないんだが……」

「これは、お墓? ……っ! そうでしたの、マナ……
 みんなの想いは引き継ぎますの。だからどうか安らかに……」
「都庁には魔物以外にも沢山の人がいて、みんなで必死に戦ってたんだね……
 でも紘汰はいなかったし、う〜ん?」

聖帝軍は新たな都庁の同盟として迎え入れられ、まずは世界樹で休息をとる運びとなっていた。
それぞれ思うところや聞きたいことは山ほどあったが、事態は急を要する。
聞けば既に都庁に集った多数の同盟軍も半壊状態であり、救援隊も連続出動は不可能。
限られた減った戦力で、迅速にあのきらりを止める方法を考えなければならないダオス達の苦労は推して知るべきだろう。

「――しかしそれでは」
「――これしかないでしょう」
「でもそれじゃあ――」
『いや、最も可能性が高いのは――』

「ううむ、やはり俺も話し合いに参加せねば示しが……」
「座りましょうサウザー。悔しいですが、疲労した私たちではきらりさんを止める戦力とはなりません」

悔しげに呻くサウザーを闇が留める。
きらりは聖帝軍の一員だ。予言の歌姫ではなかったのかもしれないが、だからと言って聖帝軍ではないというわけではない。
できればサウザー自分の手で、彼女を助け出してやりたかったのだ。

「それでは、各自配置について貰おう。一刻の猶予もないぞ」

そんな中でいつの間にか都庁同盟たちの話し合いは終わったらしい。
ロリコンという業を背負っているが氷嵐の支配者の頭の回転は速く、魔王たるダオスの状況判断能力も高いということなのだろう。
この短時間で、本当にきらり救出作戦を考え付いたというのか。

「サウザーさんと、えっとそちらは……闇ちゃん?闇さん?」
「……好きに呼んでいただいて構いません。貴方は……姿に変化が見られますが、ネット上でも話題だった風鳴翼を退けたという?」
「レストです。これから件のきらりさんを僕が止めに行くので、できれば融合したというきらりんロボの性能を教えて頂きたいのですが」
「待てィ!? 貴様のような若造が一人でアレを止めるだと!?」

しかし都庁同盟軍が練り出した救出作戦はまさかのものであった。





522 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:18:04 FpnMZ7X20
「むうぅぅぅ……」

サウザーは項垂れながら、しかし同盟軍が出した作戦に縋るしかなかった。

いわく、今のきらりはあの風鳴翼に限りなく近い状態であるとのこと。
そして彼女が持つエンジェル・ハイロウのような歌の前には何人送り込んでも犠牲者を増やすだけ。
機械を嫌っていた都庁に機械の味方はフェイのみであり、また非生物な魔物も当然のように存在しない。
犬牟田のように聴覚を一時的に破壊する手段も、やはりいつどこからきらり以外の敵に襲われるかわからない危険性の中では実行は難しい。
最大戦力であるフォレスト・セルさえデバフ耐性は無く、万が一にも彼を失うことは避けたいというのが正直な話らしい。

「信じましょう、サウザー」

だがきらりの存在がとても放置できるものではないというのも事実であり、きらりを止めることには全面的に協力はしてくれるらしい。
ここに来て初めて知ったが、魔物達という存在は認めた者には協力は惜しまない性格のようだ。
あの氷竜が声高々に『偽りはなかった!聖帝は後にも先にもこの漢、サウザーのみだ!』と宣言すれば、魔物とあと何故か青髪の少女が称賛の言葉をサウザーに投げかけたのだから。

しかしいくら協力しようにも、都庁の同盟軍は半壊状態。
世界樹の魔物は主戦力のほとんどを失い、人間の対主催も激闘の果てに倒れ続け、無事なのは影の薄い集団だけだという。
彼らはいずれもここまで生き延びてきた強き肉体と精神を持つが、やはり生物である以上きらりの歌から逃れる術はない。
そんな中で白羽の矢がたったのが、先程の青年だという。
都庁の番人を務め風鳴翼を撃退したともなればその実力は高いのだろうが、彼も生物でやはりデバフ耐性はないそうだ。
しかしながら唯一、飲食によりデバフ状態を反転させることができる体質の持ち主でもあるらしい。
さらにはデバフ以外には冗談じみた無類の防御性能を誇り、万が一きらりが他の能力を使用してきた場合でも耐えられる可能性が高い。

そして何より、彼自身も志願したのだという。
自分と同じ『症状』を患ったきらりを、助けたいと。

「その、急でしたのでその辺の草を磨り潰した青汁とその原料の草だけなんですけど……」
「十分です。ありがとう小鳥さん」

デバフ解除のための食材をしこたま受け取り、いよいよ作戦の決行が伺える。

「それでは、行ってきます」

と、ここで聖帝軍の誰もが疑問に思う。
一人で、どうやってあの場まで行くのだろうか。エヴァと氷竜も無しに行くには、少々距離がある。

「神樹にエリカ、よろしくね」
「かしこまりましたわ」
「任せときなって。目標、あのデカブツだな」

「おい……都庁の人たちは一体何する気なんだレイジ……?」
「わからないよ、全容までは聞かされてないし」

不穏な言葉に、聖帝軍の子供たちはみな不安げな表情を浮かべる。
ついでに言えば、でかい黒い樹まで動いて喋っているのだ。あらためてこの場所が魔境なのだと再認識させられる。


「風向きは、大丈夫そうですね。神樹!」
「距離よーし、角度よーし……行ってこぉぉぉぉぉぉぉい! ウオラァッ!」


「「投げた――――ッ!?」」
「こ、こいつは……天性のピッチャーか!?」

そしてきらりの元へ行く手段がまさかの『神樹による投擲』であると判明した瞬間、彼らは声を揃えて叫んだ。
だが高津の漏らした言葉通り、神樹の投擲力とコントロールは抜群であった。
かつてエリカも、その才能に助けられ生きて都庁に辿りついたのだから。
いまや全快しレベルも上がり、この距離で投擲物を目的の場所に叩き込むことなど神樹にとっては朝飯前だ。


523 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:18:50 FpnMZ7X20
「ちょ、大丈夫なんですの!?」
『問題ない。それよりも下がっていろ子供達。ここもすぐさま危険域となるぞ』
「え? それはどういう意味?」
『先の戦いでのきらりの反応を見る限り、あ奴に自我はほとんど残っていない。視界に映った惹かれるものになんらかのアクションを起こしている。
 さてスカイツリー無き今、同じように高層のこの世界樹から、高速の弾丸が投擲されたのだ。ともなればつまり……』



『NYOWAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』



「げ!?」
『奴の次のターゲットはこの世界樹となり! あの熱線も飛んでくるというわけだ!』
「どうなってるの!? ビームアイの出力が桁違いよ!?」

遠方から放たれたビームアイに一気に場は騒然となる。
氷竜はミラーシールドを展開したいところだが、首の傷が癒えていない今はまだアイスシールドの発動が限界だ。
そしてミラーではないアイスシールドは、限度を超えた超高熱には耐えきれないのはマーラ戦で判明している。


「ゆくぞ、まどか!」
「はい!」


だが氷竜は慌てることはなかった。
この事態は既に想定済みであり、世界樹の中腹には既に魔王と巫女が移動している。

「ハイパーである必要はない! 私を真似て、速射式を憶えよ! ダオスレーザー!」
「よ、よし……! まどかレーザー!」

直後、異色の師弟が放ったレーザー光線がきらりのビームと空中で激しくぶつかりあって相殺される。

「あのビームを正面から止めた!?」
「だがネーミングセンスゼロだ!?」

聖帝軍は二つの意味で驚きの声をあげた。
きらりんビームアイはきらりんロボのメイン攻撃手段であり、異形と化した現在はさらにその性能を上げている。
それを二人がかりとはいえ、難なく相殺してみせたのだ。口ぶりからしてまだ余力を残しながら。

『世界樹の巫女となったまどかに魔王たるダオスの魔力は我々を遥かに凌駕している。
 きらりをただ殲滅するだけならば、この離れた世界樹から二人の最大出力でレーザーを放てばすぐに勝負はつくだろう』

氷竜の言葉に一同は震えあがる。
元々敵対するつもりはなかったが、万が一都庁の軍勢と敵対していれば聖帝軍は全滅していただろう。
サウザーの当初の行動は敵からの逃亡、へたれとも見られるが結果として聖帝軍はその恐るべき力の持ち主と同盟を結べたのだ。

『だが、あいつの遺言でもあるが……我々はきらりを殲滅することはしない。お前達も黙っていないだろうからな』
「当たり前だ! 聖帝軍に牙を向けるということはすなわちこの聖帝サウザーへの反逆!」
「……本当に、感謝いたしますわ」
「ですが、それは」
『ああ。あの凶悪な歌を持つきらりを殺さず無力化にとどめ、治療を行う。それははっきり言って難題極まりない』

見上げれば、二発目のビームとレーザーが衝突する。
殺さず、殺されないように。少しでも判断を誤れば崩れ去ってしまうような危うい綱渡り。

「万が一に備えてあたいの『距離を操る程度の能力』もあるが、過信は禁物なのはベジータとの戦いで思い知ったよ」
「僕のフィールドも同じくだ。今の状態のきらりさんが、予想外の行動をとらないとも限らない」

防衛の要として小町とエヴァに乗るカヲルが身構えているが、彼女達が言うようにそれも絶対ではない。
この殺し合いの場において、人智を超えた強敵相手に殺さずに無力化などという無謀な作戦は予断を許すことなく続いていく。





524 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:19:24 FpnMZ7X20
「危ない、もう少しでビーム同士の衝突とかちあうところだった」

世界樹の防衛隊が奮戦する中、神樹に投げ飛ばされたレストは空中で旋回してきらりんビームアイを回避。
そのまま降下すれば、目的の人物はすぐに見つかった。

「よっと。なるほどこれが君の本来の姿なのか、フェイ
 まあ今はそんなことは置いておこう。みんなを逃がしてくれて、ありがとう」
「レスト!? どこから飛んできたの!? いや、それよりも!」
「くぅ……!?」

きらりを足止めしていたフェイの肩に着地するも、その場でレストは膝をつく。
見ればきらりはその姿に似つかわしくない歌を歌っている。
生きとし生ける生命全てを超弱体させる無慈悲な歌を。

「っ、これは、話に聞く以上に強烈だな……!」
「だ、大丈夫!? やっぱり私があの子をどうにかしなきゃ!」

フェイはネギを構えるが、その構えに攻めの姿勢は見受けられない。
既にフェイの身体はところどころが傷つき、きらり相手に押されていたことは明らかだ。

「っ! ふぅ、無茶だよフェイ。いくら君の正体が機動兵器とはいえ、相手との体格差は歴然だ。
 それに見たところ相当に装甲も硬そうだし、あの風鳴翼に近いとなると……」
「それはわかってるよ。でも、あの子を助けたいの。あんな悲しい歌を歌う、あの子を」
「勿論そのつもりで僕もここに来たし、皆も待機している。とはいえ……これはアゼルが苦労したっていうネイティブジャイアントよりさらに厄介そうだ」

フェイは確かに人間から見れば機動兵器、巨体である。
しかしながら彼女のフルサイズは表記に直してしまえばいわゆるMサイズ止まりにしてヴァ―チャロイド故の歩行タイプ。
対するきらりんロボこときらりの全長は200メートルを超え、フリルスカートのジェット機能により飛行も可能。
文句なく超ド級のスーパーロボットにして、今や融合によりその性能はさらに上がっている。
元のきらりの性格なのか、幸いにして動きが緩慢であったからこそここまで凌いでこれたが、機体差は明らか過ぎる。

「とりあえず、きらり救出の作戦は考えてきているよ。この歌も……これでほんの僅かな間だけど耐えられる。
 まさか僕が機械と共闘するとは思わなかったけど、フェイ、君には援護を頼みたい。どうにかして、僕が彼女を弱らせる」
「わ、わかった!」

草を飲み込み、きらりの超デバフを解除するレスト。
しかし剣を構えた瞬間には、もう強烈な倦怠感が全身を襲ってくる。
攻撃と防御、回避。それぞれにあわせてタイミングよくデバフを解除しなければ、それは即座に致命傷へと繋がる。
こちらもまた厳しい綱渡りの果てに、ようやく対峙ができるのだ。


「NYOWA? NYOWAAAAAAAAAAAA!!!」


世界樹と激しい光線の撃ちあいをしていたきらりの眼が、ぎょろりと向きを変える。
単調な撃ちあいが面白くなく、火力をあげて立川市のように消し去ってやろうかと思った矢先。
自分の足元で邪魔をしてきた羽虫に、さらに小さな羽虫がくっついたのだ。
それでいて羽虫は力なく這いつくばるではなく剣を構え――愚かにも立ち塞がってきた。
脳の奥底から来る命令。世界をカオスに。そして目の前の立ち塞がる敵を塵に。

「来るよ、フェイ!」
「ええ!」

「NYO、WAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

かつての面影などない眼で獲物を捉え。
かつての面影を残した咆哮をあげてきらりだった少女は再び羽虫へと手を伸ばした。





525 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:20:09 FpnMZ7X20
その光景は、ほとんど人目に触れることは無い。
立川市を蒸発させた怪物相手にわざわざ近づくような命知らずはいない。
この殺し合いは数多の参加者を淘汰し、狂信者を除けば殺し合いを良しとする者もそれに立ち向かう者もその数を多く減らした。
今なお隠れて震えるのはどちらにもつけない無力な者達。早くこの悪夢が終わってくれと願う者達。
そんな者達も大きく数を減らしている……つまりはこの星の人口そのものが淘汰され、野田総理の謳っていた人口削減が既に達成できていると誰が思えようか。
北の地は凍結。九州はロボ化。関西は腐毒の海。残された関東の地を焼き払うロボは誰が見ても脅威そのものであり、あえてその姿に注視するわけがない。

「せりゃあ!」

ただそれでも、こんな世の中でも情報を発信したがる無謀な人間は少なからず存在し、彼らだけはその戦いを見ていた。

「NYOWAAA!?」

そんな光景を言い表すならば……それは泥沼の消耗戦だろう。

鋭い斬撃が、易々ときらりの超合金装甲やあらゆる兵装を破り肉体を切り裂く。
巨体過ぎる故の鈍重さに加え、きらりの戦闘経験の少なさはそのまま反応速度に直結していた。
能力は強力であるが戦闘そのものは素人に毛が生えた程度。
対する相手は戦闘経験の塊。絶対に埋まらない実力差がそこにはあった。

「NYOWAAA……!!」
「させないよ!」

飛んで空中から押し潰す……頭の中によぎったマウンテンドロップという技をしかけようにも、飛ぼうとした瞬間にネギがしばいてくる。
これが剣ならば装甲が弾いたのだが、あのネギは鈍器の部類であるがため内部に衝撃は蓄積されていく。
それでなくとも既に無数の斬撃で装甲を剥されてエンジンはネギで打ちつけられまくって機能がダウンしている。
そしてそれを止めようとと動けば、再び鋭い斬撃が上から飛んでくる。
1対2。この状況にきらりはなれておらず、優秀なセコンドがいなければ戦い方もわからない。

ではきらりは一方的に打ちのめされて敗けたかといえば、そうでもない。

「NYOッ!」
「くそっ、またか!」

きらりが拳を振るえば、相手は回避行動をとる。
そこから再攻撃まで、幾ばくかの猶予。
その間にきらりの傷口は、溢れだした新たな肉によって塞がれていた。
きらりの持つ肉体の成長はそれ即ち細胞の増殖と成長。これが風鳴翼とは異なるがそれに類似した再生能力となっていたのだ。

(どうやら、この子の能力は固有の歌と高速細胞分裂による再生と機械を取り込んでの融合らしい。
 風鳴翼は捕食による能力の略奪。エリカの情報ではユーノの能力はエネルギーや魔力を取り込んでの増幅反射。
 そして僕は、元来持っていたエーテルリンクの強化。つまりは人や物を取り込んでの姿や能力の模倣。
 瘴気の感染、肉体の変調。その本質は『何かを取り込む』ことなのか? いや、仮にそうだとしてもこの状況は……)

草を磨り潰し飲み込むが、倦怠感が拭いきれない。
きらりの歌は超凶悪なデバフである前に、やる気を失わせる歌なのだ。
身体のデバフは解除できたところで、精神のデバフまでは早々回復できないだろう。
いくら身体が十全でも精神がそれに追いつかねば、やはり動きは鈍る。

「NYOWAッ!!」
「っ! はぁっ!」

もう一方のきらりの拳は切り裂いてかわす。
しかし少しだけ前にうちあった時よりも反応が遅れた。

「危ない、一回下がって!」
「まいったね、本当に……!」

じりじりと、フェイ達はきらりに押されていた。


526 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:20:41 FpnMZ7X20
「NYOWANYOWA―――ッ!!」

きらりが足を振り上げ、ビルを蹴り砕いて飛ばす。
それはさながら散弾の様であり、容赦なくフェイを傷つけていく。

「くうぅ……!」
「僕よりも自分のことを心配した方がいい! 君だってかなり不味い状態だろう!?」

レストが風の魔法で散弾を押し返すも、有効範囲外の散弾までは防げない。

「ん?」

だがそんな散弾の処理中に異物が目についた。
岩だ。何故か柔道着を着こんだ。

「ゲヘァー!?」
「しまったあれ岩じゃなくて生存者だ!?」
「え、どこどこ!? ……アレ、じゃなかったあの人!?」

柔道岩が突風を耐えているのを見て、ようやくあれは岩ではなく生存者だということに気がつく二人。
まさかきらりがこれだけ暴れる地において、岩みたいな生存者がいるとは流石に予想はできまい。



この時この岩――魔雲天こそが勝利のカギであるとは、本人も含めて誰も知る由はなかった。









「いや、本当に失礼しました魔雲天さん」
「ゲヒヒヒ……謝る必要はねぇ。今はそんなことより、あいつのことだ。貴様ら何か知っているんだろう?」

フェイが即座に拾い上げ、レストが治療し首輪を外した魔雲天という男は、聞けば聖帝軍の一員であるという。
思わぬ収穫であったが、彼は自分が死にかけたことよりもきらりのことを優先していた。
そんな魔雲天に現在のきらりの状況が伝えられると、彼は低く唸る。

「グムムー……なんということだ」
「なんとか僕らも彼女を止めたいところなんだけど、予想以上に歌と再生が厄介で力加減が難しい」
「世界樹からのレーザーであの子も気が散ってるから、私たちの退避はできても攻め入るとなるとね……」

きらりも装甲が破壊され飛行能力を失っている今は確実に弱体化している。
その気になれば、倒すことは十分可能。
まどかとダオスのレーザーでも、レストが溜めた斬撃を飛ばすでもいい。
遠距離からの強力な攻撃を、サウザーから聞いたきらり本体がいるであろう場所に打ち込めばそれで勝負はつく。
だが強力すぎる攻撃は、確実にきらりの命を奪う。


527 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:21:14 FpnMZ7X20
「……オレは諦めが悪くてなぁ。どれだけ絶望的と言われようが、必ずきらりは取り戻すぜ」

そんな厳しい状況の中でも、魔雲天はただ一人不敵な笑みを浮かべていた。

「何か策があるの?」
「いいや、正直まだ理解もおいついてねぇ。だが、オレはあいつと約束した。
 あいつが怖くて動けないようなそんな時は……傍にいてやると。オレが、あいつを支えてやるんだ。
 ゲヒヒヒ……姿こそ変わっちまったが、あいつはあいつのままだ。また暗くめそめそしてるような奴には、気合をいれ直してやらんとなぁ?」

魔雲天は異形と化したきらりをしっかりと見据える。
策など無い。しかし揺るがぬ信念がそこにはあった。

「……魔雲天さん、今の彼女は残念ながら巨大な怪物だ。あなたの力では、彼女を止めることはできない」
「ムグゥ……!?」
「でもきっと……彼女を助けられるのは、彼女を想うあなただけだ。
 僕らも彼女を、きらりを助けたい気持ちは同じです。遭ったばかりの僕らを信用するのは難しいかもしれませんが、
 これから決行する作戦に何も言わず、僕らを信じてついてきてくれますか?」

そんな魔雲天に対して、レストは静かに言葉を投げかける。
世界樹内部で決めた作戦は緊急故に、手荒である。
魔雲天にとっても、全容を聞かされていない聖帝軍も、そのままでは確実に反対するだろう。

「きらりが少しでも助かる道があるというならば、オレはそれに乗るまでよ。
 聖帝達が既にお前達を味方と認めているなら問題はねぇ。アイツはああ見えて、人を見る目はあるからなぁ」

しかし魔雲天は快諾する。
きらりを助ける。これこそが最優先であり、魔雲天自身も今の自分ではあのきらりに接近することも難しいことはわかっていた。

「でもレスト、どうするの? あの子は私のエモーショナル・アタックを受け付けないし、弱らせて治療するのは……」
「……それだよ、フェイ」
「え?」
「戦っていて妙だと思ったよ。君のエモーショナル・アタックもあの歌も強力なデバフ技だ。
 いくら機械と融合しても彼女本体は人間。それがデバフの影響を受けないってのは――彼女の歌の能力に併せて発現した『デバフ無効化能力』だと思う」

フェイは機械、魔雲天は岩。だからこそきらりがいるこの場においても生き延び、足止めを実行できた。
しかしそのきらり自身は人間であり、本来であれば歌の影響を受けてしまうだろう。
だが強大な力を持つ者は、自分自身がそれに滅ぼされないよう進化し、対策を施す。
自然界であれば猛毒などがわかりやすいだろう。自分の毒には抗体を持ち、獲物だけをしとめる。
きらりの歌もこれと同じであり、テラカオス化が加速する中で能力に併せて歌への抗体、すなわちありとあらゆるデバフへの完璧な耐性を得ていたのだ。
今は亡き偉大なる赤竜も攻撃力を著しく下げる歌(という名の咆哮)を持っていたが、もし彼がきらりを前に歌えていればもっと早く判明しただろう。

「なるほどね。でもそれがわかったからって――」


「――エーテルリンクッ!」


フェイが止める間も無く、レストは禁術を唱える。
拾い上げていたのは、斬り飛ばしたきらりの肉片。
禍々しい混沌の欠片を彼は躊躇いなく取り込み、きらりへと挑みかかって行った。





528 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:21:50 FpnMZ7X20
(……身体が動く。やはり彼女の肉体の能力はデバフ無効化か)

きらりの歌の影響を受けなくなったレストは、きらりへと突き進んでいく。

『NYOWAHT!?』

突然動きの変わった獲物に、きらりも動揺する。

(……今ならわかる。これは全てを歪め飲み込み取り込む混沌の力。
 でもフォレスト・セルによる治療と抗体、そしてサクヤの闇を払う光の力……もう、こんな力に負けるものか!)

身体から僅かに漏れていた瘴気は掻き消え、きらりの肉の力が完全な制御下に置かれる。
正直再び暴走の危険性がある賭けではあったが、実行せずにはいられなかったのだ。

「きらり、君は恵まれているよ。魔雲天さんにサウザーさん、聖帝軍の誰もが君の帰りを待っているんだ」

振るわれるきらりの拳は、もはや危なげなく回避できる。

「魔雲天さんは君がそんな姿になろうとも、君を支えると言った」

――誰がなんと言おうと、私はあなたにつきます。万が一、闇に呑まれてしまったとしても――

脳裏によぎる、守り切れなかった大切な少女からの言葉。
今のきらりと魔雲天は、過去の自分と似た境遇なのだ。
一歩間違えれば、自分がきらりの様になっていたのかもしれない。
もしそうだったとして、ならば彼女は魔雲天のようにに生き延びることができたのか。

「……」

首を振り雑念を払い、かわした拳を足場にして跳躍。
きらりの正面へと飛び出ながら、言葉は続けられた。

「……手放しちゃ、いけないよ。自分を想ってくれる大切な人を。……僕は間に合わなかったけど、君はまだ間に合う!」
「NYOWAWA―――ッ!!」

接近を許した相手に対して、きらりのビームアイがエネルギーを溜める。
しかし同時に世界樹にも二つの大きなエネルギーが収束するのをきらりは感知した。

「NYO、NYOWAA……?」

そして思わず、動きを止めて迷ってしまう。
ビームアイはその性質上、一直線にしか撃つことができない。
眼下で動き回る羽虫を撃てば、その間に世界樹からのレーザーを迎撃することはできなくなる。
上を向き世界樹のレーザーと撃ちあえば、今度は羽虫を潰すことができなくなってしまう。

「NYOWAッ!!!」

そして僅かな迷いの後、きらりは世界樹へと狙いを定め、顔を上げた。


この行動は、そのまま勝敗へと繋がることとなる。


529 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:22:26 FpnMZ7X20
「っ、今だ!!!」



きらりが上を向くと同時に、レストはその拳に力を込めた。
きらりの判断は間違ってはいなかっただろう。レーザーの直撃を受けた方が、確実にきらりの全身に致命傷を負うこととなるのだから。
対してレストの斬撃は強力とはいえ一撃一撃で破壊される部位は少なく、だからこそ再生で応戦できた。

相手が対人、1対1の戦闘を得意とし、広範囲攻撃が苦手なのに対し局所的な点の破壊に優れているということを、きらりは知らない。


「NYo゛゛――


振り上げられた拳、レストが所持するスキルの一つスターダストアッパーは、きらりの顎を捉えると同時に彼女の顔を抉り飛ばした。
悲鳴すら許されない、上への凝縮された力はきらりの肉も機械も星屑のごとく空へと飛散させて、やがて恐ろしい血肉と鉄の雨として地へ降り注がせる。

「!?」

流石の魔雲天もフェイも思わず絶句する。
他の地方にまで降り注ぐ細やかな血肉の雨に、顔を抉られた巨大少女。非常に衝撃的かつグロテスクな光景だ。
しかし、この行為に意味があることも同時に理解できた。
顎から上の口まわりは完全に破壊され、拳が振るわれた際の衝撃波で喉も損傷している。

とてもではないが、これではもう歌うことはできない。

「よし! フェイ、魔雲天さんをこっちに投げて!」
「ええっ!? わ、わかった!」
「ゲェ―――!?」

しかし作戦はこれで終わりではなかったようだ。
矢継早に出された指示に思わずフェイは従ってしまうが、突然投げられた魔雲天はたまったものではない。

「今から僕の魔法できらりと魔雲天さんを都庁に連れて行く! フェイ、悪いけど少しだけここで待ってて!」
「う、うん!?」

なにやらとんでもない言葉が聞こえた気がするが、フェイは頷いてしまう。
おそらくは意味があり、かつ一刻を争う作戦なのだということは理解できた。

「待て、流石に説明を――」

魔雲天が喋り終える前に、転移の光に包まれる。
レストが扱える転移魔法は微妙に使い勝手の悪い、特定のポイントへの仲間二人まで同行可能なテレポートというもの。
受け取った魔雲天でまず一人。
そして『同じ混沌の力に侵された者』と認識することで、きらりも仲間として扱い二人目。

あのきらりの巨体も光に包まれ、一瞬で消える。



彼らが転移した先は――世界樹の前方にあった新宿中央公園前だ。






530 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:23:02 FpnMZ7X20
光が集まったかと思えば、公園跡地の上空には顔を失ったきらりんロボが現れた。



「えっ?」



突然のことに、世界樹で待機していた聖帝軍は誰もが驚いてしまう。



「きたね――距離を操る程度の能力っ!」

そして次の瞬間には、小町の能力で一気に真下――ベジータの砲撃でぽっかりと空いていた大穴へときらりは暴れる間もなく叩き落とされる。

「神樹、今です!」
「おうよ。増えた俺の蕾、威力を遥かに上げたライオットランスを味わいな!」

顔を失い、何が起きているのかきらりにはわからない。
半身が埋まった状態で拳を振り回そうとするが、無数の蕾がきらりの両腕を次々に貫いていき、地面に縫い付ける。

「ごめんね、サイクロンルーツ!」

腕が動かない。ならば足はと思った頃には既にまどかの操る世界樹の根が伸ばされ、地下深くで雁字搦めにされていた。

「また歌われては厄介ですわ。念には念を。これもおつけしますわよ?」

ふーっとアルルーナが吹きつけたのは太古の呪粉。
フォレスト・セルも操るこの世界樹の呪粉は、敵対者に死以外のあらゆる異常を与える。
今回アルルーナが選んだのは最も凶悪な石化の粉。全身の動きを封じられたきらりにこれから逃れる術はない。
瞬く間に損傷部位が石化し、肉の再生を阻害した。

「う、うおおぉぉ……」

目の前で繰り広げられた光景に、サウザーは思わず身体を震わせながら声を漏らした。
いくら暴走したきらりと融合したというよくわからない状況とはいえ、きらりんロボは聖帝軍が誇った死国を超える最終決戦兵器だったのだ。
それが一瞬のうちに完全に無力化された。
今となってはありえないことだが、もし自分が調子に乗り都庁も畜生と決めつけて攻め込んでいたら?
このように連携であっという間に無力化され、そしてこの後総攻撃を浴びて聖帝軍は全員星になる……そんな運命になっていただろう。

「サウザー!」
「お、お前は魔雲天!? 無事だったのか!」

そんなサウザーの前に、魔雲天が舞い降りる。
殺されたと思っていた聖帝軍の一員が無事だったことに、思わず笑顔を浮かべてしまうサウザー。

「いくぞ! かなり恐ろしい光景だったが、あいつの動きは完全に止まった。きらりを救い出すなら、今しかない!」
「わ、わかっておるわ! 我が聖帝軍にあるのは制圧前進のみよ!」

しかしすぐさま聖帝の顔となり、きらりの下へと駆けていく。


531 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:23:38 FpnMZ7X20
「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

叫び進む二人の漢。
その気配を感じたきらりは迎撃を試みようとするが、既に装備は破壊されている。
頭も、腕も、脚も、全てが封じられている。
せめてもの抵抗として行えるのは、石化していない部位から肉を急成長させて相手を押し潰すことくらい。

「ええい、きらりの奴め! 聖帝に刃向うなど本来は厳罰なのだからな!
 嫌ならば俺の前で、ちゃんとした歌を歌ってみろ! それで不問にしてくれるわっ!」

だが伸ばされた肉は全てサウザーが振るう手刀で切り飛ばされていく。
聖帝の制圧前進を止めることはできない。
その間に魔雲天は、一際大きな肉の塊がある場所へと辿りついていた。

「きらり、そこにいるんだろう?」

静かに響く魔雲天の声。

「ッ!?」

その瞬間に、全てのきらりの肉が震えた。

「いつまで悲しい歌を歌って引きこもっているつもりだ? お前が歌うべきなのはハピハピできる歌だろうが!」

怪力を発揮した魔雲天が、きらりの肉を割り開いて奥へと侵入する。
そしてついにそれは見つかった。

「―――」
「きらり!」

肉に埋もれ、半ば同化しかかったように見えるきらり。
光の無い虚ろな瞳はしかし静かに涙を流していた。

「―――天――ちゃん――?」
「ああ、そうだとも! どうした、そんなに泣いて。
 いつまでもうじうじしてないで立ち上がるんだ。まだちゃんとお前の歌も戦いも披露していないのに試合終了だなんて、早すぎるだろう?」
「でも――」
「一人で立てないなら、オレが立たせてやる。言っただろう? 怖くなったらオレが近くにいてやる。だから安心して……
 さあ、この手を掴めきらり!」
「――天ちゃんっ!」

震えながら伸ばされた本来のきらりのしなやかな手を、魔雲天は離すまいとしっかりと掴んだ。
そして魔雲天は無意識のうちに、己の超人強度をきらりに分け与える。
繋がれた手と手。流れる誇り高き戦士の力は、きらりの中のテラカオスの力を一時的に押し出す。
淡くきらりの身体が光れば、混沌の肉は力なくボロボロと崩れてきらりの身体から離れていく。
やがて、きらりの首の傷も塞がっていった。

「もう、大丈夫だからな。きらり!」
「て、天ちゃんっ―――!」

肉の呪縛から解放されたきらりを、魔雲天は強く抱きしめる。
きらりもまた泣きじゃくりながらもしっかりと抱き返してそれに応えた。







「にしゃ〜ん」


532 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:24:22 FpnMZ7X20
「「――え?」」

そんな光景に、化物の声が割って入った。
いや、声だけではない。

「にぇ!?」
「ぬおっ!?」

圧倒的な速度で伸ばされる、フォレスト・セルの逞しい触腕。
それはきらりを捕えたが、抱き合っていたために魔雲天までもが巻き添えで捕まることとなった。

「なん――!?」

有無を言わさない。
触腕は再び高速で引き戻され――フォレスト・セルの顔面へともっていかれる。

「ひぃっ!?」
「だ、大丈夫だきらり! オレがついているぞ!」

突然とんでもない化物と目があったきらりは、直前までのことも何もかもを忘れて純粋に恐怖する。
魔雲天はそんなきらりを励ますが――



「にしゃしゃしゃ(いただきます)」



二人は何もできずそのままフォレスト・セルの口の中へ。
そして――












「ひにゃああぁぁぁぁ♥ お尻気持ひよくてアタマがハピハピすゆぅぅぅぅぅ♥♥♥」
「きらりぃ――――! しっかりしろぉ――! 耐えるんだアッ――――♥♥♥」


仲良く治療という名の官能世界に飲み込まれた。



「「うわぁ……」」

都庁軍も聖帝軍も、目の前の光景に声も出ない。
なんという台無しっぷりだろうか。

「サ、サウザーのせいですよ。貴方もカッコいいのにすぐ台無しにするから……!」
「流石に横暴だぞ闇ェ……」
「こ、こんなえっちぃ……えっちぃの……」
「連呼するな。俺だってまさかこんなことになるとは思わんわ!」


533 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:25:32 FpnMZ7X20
「やっぱりお尻は気持ちいいんだね!」
「だああ、まどか落ち着いてってば! とりあえずその、アレだけどこれできらりさん助かるんでしょ!?
 なら次の事考えるべきだと思うのですよさやかちゃんとしてはね!? ちくしょー、ほむらなんでこんな時に傍にいないのよぉ!?」

『……恐るべしフォレスト・セル。しかし巫女様をどう止めたものでしょうか、氷竜様?』
「あの……きらりさんはどうしてあんな声を?」
『君たちにはまだ早いぞ子供達。大人になって欲しくないが、大人になってから調べるといい……』

「お、俺には雪菜さんがががが……」
『どうしたことか、この俺の巨根が滾ってしまいそうだ……』
「アイドルの初体験がいきなり青○で獣○のアナ○プレイとか同人誌でもなかなかありませんぞwwwwwwwうっ!……ふぅー」
「きらりさんはともかく、あのホモ達もそうだがやっぱり男の人の喘ぎ声はちょっとキツいね……」
「何前屈みになってますのあなた達……。アレは凌辱ではなく、ちゃんとした治療ですのよ?」
「一体どういう進化を遂げたら、治療法があんなになるってんだ!?」
「大自然の神秘ですの」

詳細は割愛するが、ぐちょぐちょと言った水音にフォレスト・セルから漏れ聞こえる二人分の嬌声は一向に収まる気配がなかった。
かなり重度の進行だった様子のきらりの治療にはやはりそれなりに時間を要するのか、はたまた単純にきらりの味が気に入ったからなのか。
なんにせよそのBGMはこの場の者には刺激が強すぎた。全体的に年齢が若すぎるか変質者が揃っているのだから当たり前である。

「お前達、騒いでいないで次は予言の情報の交換をだな……」
「あー……流石にこれじゃあ難しくないか? 大人しくあのとんでもない治療が終わるまで待った方がよさそうだぞ」

高津の言葉にダオスは頭を抱えるが、止む無くその意見に従う。
誰がどのような情報や発想を持っているかはわからない。もしかしたらきらりか魔雲天が大きなヒントを持っているのかもしれない。
ならば治療が終わり、本当に全員が揃ってからでも予言の考察は遅くはないのではなかろうか。

「……小鳥」
「はひぃ!? な、なななんでしょうか!?」
「騒音が気になるのはわかるが落ち着け。情報収集はどうなっている?」
「カオスロワちゃんねるですか? 確かに小まめに見てはいますけど」
「恐らくだが、大多数の人間はあの機動兵器の暴走と瘴気の因果関係には全くの無知であり、説明しても無駄だろう。
 そうなれば聖帝軍は息を潜めていた殺戮集団と受け取られても止むをえまい。それを相手にし破壊した我々もな」
「うっ……お察しの通り、まだ皆さんには伏せていますが既に聖帝軍の皆さんへは掌を返したようなバッシングの嵐ですよ。
 正直見ていて気持ちのいいものではありません。誤解だってスレ建てした方がいいですかね?」
「全くいつの時代も人間は愚かよ。私がかつて魔科学を止めるように人間に提言した時もそうだったが……
 少数派の意見は、数の力には勝てぬ。真実がどうあれ、多数がそれを是と唱えてしまえばそちらが正しくなってしまうのだ。
 ここで聖帝や我らが何を思って動いたかを書き込んでところで火に油を注ぐだけよ。当に聖帝にも我らにも、退路も味方もありはしない」

言葉と共に息を吐きだし、落胆する小鳥を見やりながらダオスは言葉を続ける。

「生き残れそうだからと、我らの陣営についたことを後悔しているか?」
「い、いえそのようなことは!?」
「ならば前を向け。誰に何と言われようとも何と罵られ敵視されようとも。己が為すべき信念を折らず只管に抗え。
 行き過ぎた科学の排除、世界樹の存続……私の信念には当然敵対者が生まれ、理解されないことも多い。
 だがここに集まった者の信念……予言の解明と大災害の回避はこれだけの理解者がいる。
 電脳世界に入り浸り自ら動かず真実を探そうともしない連中など、動向に警戒こそすれまともに相手をしてやる必要もない」
「閲覧はともかく一々書き込んでる暇があれば、予言を考えて皆さんを助けろってことですね?」
「そういうことだ」

置かれている状況に猶予はない。
予言の考察はまだ進められずとも、互いの状況整理はできる。
魔王は美女と戯れていた聖帝へと歩みより、聖帝軍の風評被害の件を伝えるのであった。





534 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:26:12 FpnMZ7X20
「……」
「あら、こんなところでどうしたのかしら?」
「さすがにあの場は居ずらいっすよ……」
「そう? マーラの凌辱劇はあんな可愛いもんじゃなかったわよ。
 まあ治療だからあの程度だけど、アレが凌辱に動いたらとマーラ以上に恐ろしいことになるんでしょうけど」

騒ぎの地から少し離れた所で、桃子は膝を抱えて座っていた。
それに声をかけたほむらは、彼女の横へと座る。

「……貴女、予言の考察の時起きてたでしょ?」
「バレてたっすか。まあ正直……色々気持ちの整理がつかないんですよ。今も、ぐちゃぐちゃなままっす」

膝を抱く腕に、力が込められる。

「大好きな先輩が殺された。そして犬牟田さんから聞いたっすけど……蒲原部長も聖帝軍にいて、あのきらりさんに殺されたそうっす」

その言葉にほむらの眉が僅かに動くが、口を挟むことはしない。
それを知ってか知らずか、桃子の言葉は続いていく。

「わかるんすよ。悪いのはきらりさんじゃなくて、瘴気のせいだって。主催者や拳王連合、そして超人こそが悪者なんだって。
 だからそいつらを殺さなくちゃって思ったんすけどねー……みんなに止められたっす。
 そこに予言だとか大災害とか途方もないことを言われて、そしてさっききらりさんと一緒にいたのは超人で、でもあの人はちゃんときらりさんを想ってるいい人で……
 もう、何を信じて何を敵と見なせばいいのか、どうすればいいのかわからない。先輩という大きな支えを失った私はもう……」
「なるほど、そういうことね。……じゃあ悪いけど、今度は私の話を聞いてもらえるかしら?」

髪をかきあげ、桃子と視線を合わせるほむら。
あまり自分を語らない少女の予想外の言葉に、桃子は思わず頷いた。

「貴女達には言ってなかったけどね、私は実はばりばりのマーダーだったの」
「えぇっ!?」
「貴女に大切な先輩がいたように、私にも同じような大切な存在がいた。それこそがまどか。まどかを生き延びさせるにはどうしたらいいか考えて……
 私が規定人口になるまで邪魔者を殺して回れば、まどかは何もせずとも安全に生き延びられるって結論に達したわ」
(えぇー……愛が重いっていうか、この人クールビューティーっすけど、あのドジョウ顔総理の言うこと真に受けるとかもしかしてポンコツさんっすか?)
「貴女も、先輩以外の人間殺して回ろうとか思わなかった? 爆弾でまとめて始末しようとか」
「い、いやー……武器に恵まれてなかったすからね! 斬鉄剣は後から手に入りましたし!」
(もう発想がテロリストっすよ。今こうして一緒に話せてるのって結構な奇跡だったんすね……)

人は、自分より重度にぶっ飛んだ同族を見てしまうと、途端に冷静になってしまうものである。

「それで、ある時一人の女の子を殺した。正確には殺しきれてなかったんだけど。それが……ラブだったわ」
「!!」
「彼女が生きていたのには驚いたけど、彼女が私を許し、友達になろうとまで言ってきたのにはもっと驚いたわ。
 私にとって、まどかは全て。まどかが私の全てを構築していると言っても過言ではないわ。まどか以外の友達なんていらない……
 そう思っていたのに、邪険にしたのに。ラブは構わず私と馴染もうとしてきた、してくれた……」

声が震え始めたのは二人ともわかっていた。
だが、止めることはしない。一度大きく息を吸った。


535 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:26:43 FpnMZ7X20
「ほむほむなんて妙なあだ名つけられてね。オオナズチからも何故かそう呼ばれて定着したみたいだったけど……
 あの子は、私には眩しすぎた。自分を殺そうとした相手を許し、あだ名をつけてまで仲良くなろうとして、私を庇って助けてくれて……
 でも……さっき殺された。あの諸星きらりに」
「……」

ほむらの言葉に、桃子は返す言葉が出てこなかった。
自分よりも年下ながらに冷静で強き魔法少女であった彼女が、今は年相応に見える。

「最期にラブは私に謝ったそうよ。戻れなくてごめんって。本当にあの子は、どこまでも馬鹿よ。
 まだちゃんと、私と友達になってくれたことにお礼も何も言えてなかったのに……!」

静かに頬を伝う涙は、すぐさま拭われる。
しかし確かに見たその光景は、桃子の心を揺さぶった。

(そうだ。私だけじゃない、みんな大切な人を失って……それでも気丈に振舞って前を見ようとしてるんすね)
「そう……確かにラブの死はとても辛いわ。それだけじゃない、マミさんだって杏子だって私の大切な人だった。
 時を繰り返す中で荒み果てて、たった一つの約束に拘り続けて周りが見えなくなって、久しく忘れていた感情。
 本当にこの殺し合いと、この後に待つ大災害には反吐が出るわ」
「それには同感っす……」
「でも……こんな最悪な時間軸、逃げ場のない絶望的な世界でも、いいことはあったわ」
「え?」

予想外の言葉に、目が丸くなる。
見れば泣いていた筈のほむらが、微かな笑みを浮かべている。

「ラブにもだけど、私は貴女たちにも感謝しているのよ東横桃子?」
「うぇっ!? ど、どうしてっすか!?」

そして追撃の言葉に、思わず顔が熱くなるのを感じた。

「貴女たち影薄は、遭ったばかりの私を信じて一緒にまどかを助けに来てくれたじゃない。
 こんな殺し合いの環境下でそんな風に動ける人、珍しいのよ? 信じて貰えないかもしれないけど、本当に感謝しているの。
 この最悪な世界でも、最悪な世界だからこそ……色々な人と知り合えた。失うことは辛いけれど、それでも、新たに信じられる人たちを見つけられた」

その言葉には重みがあった。
確かにこの殺し合いの世界は最悪と言っていいだろう。先輩も部長も殺され、どうしようもなく辛い。
しかし確かに、こんな世界だからこそ動き回り……小町たち影薄の仲間や、この都庁に集った仲間とも出会えたのだ。

「……さやかにからかわれそうだから、一度しか言わない。私は貴女たちを、ここに集まったみんなも……まどかに次いで、大切な友達と思っているわ。
 みんなを守るためにも殺し合いだろうが大災害だろうが、絶対に乗り越えてみせる。ラブ達のためにも、折れたりなんかしない!」
「な、なんか照れるっす。でも、確かにそうっすね。
 先輩も、最期に私の名前を呼んでくれたけど……その最期の時まで、拳王連合軍の危険性をみんなに伝えようと頑張っていたっす。
 部長も聖帝軍で拳王連合軍に対抗しようとしてた。ここで私が折れたら……その頑張りも無駄になってしまう」
「そうよ。大切な人だからこそ、その想いは無駄にできない。
 ほら、そろそろ立ちなさい。死を悼んだり悩んだりは後でもできる。今はみんなで、立ち向かう時よ」
「そうっすね。いつまでも情けない格好じゃ、先輩も安心できないっすよね。ありがとうっす――ほむほむさん」
「…………貴女も、その呼び方なのね。別にもう慣れてしまったからいいのだけども」

差し出された手を握り返し、桃子は立ち上がる。
その姿は揺らぐものの、瞳の奥には新たな揺るがぬ信念が生まれていた。


536 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:27:49 FpnMZ7X20
「おやおや、あたいらはお邪魔だったかね?」
「こ、小町さん!?」

そんな二人の元に、小町たちも訪れる。

「もう大丈夫そうだけどモモ、改めて言うよ。あたいも、あんた達が大切だ。この身にかえても守ってみせるよ。
 辛く悲しいことも多いが、そんな時は溜め込まないでどーんとこの胸にぶつかってきな! 一緒に頑張ってきた仲じゃないか」
「ははは、こまっちゃんみたく柔らかくはないが、俺の胸にも飛び込んできていいぞ」
「あかりも受け止めてみせるよ!」
「僕も頑張ります」

「皆さん……ありがとうございます。随分と心配かけちゃったみたいっすね」
「んんwwwwwww元気が出たならなによりですが、まだ辛いなら我の胸にも飛び込んでいいですぞwwwwwww」
「あ、オオナズチは結構っす」
「まさかの差別wwwwwwwでもこの流れが嫌いじゃない我もいるwwwwwww」

見れば、いつのまにか影薄の仲間が全員揃っていた。
オオナズチの笑い声がうるさいが、不思議と今はそれも不快には感じない。

(ああ、そうだ。ほむほむさんと同じっす。先輩ばっかりを見て、忘れそうになってしまったけども……
 この人たちも、私と一緒に笑って泣いてここまで一緒に頑張ってきた、かけがえのない大切な人たちだ)
「もう、大丈夫っすよ。影が薄いだけで未だ何の活躍もできていないっすけど、予言の考察で一旗あげてやるっす!」

決意も新たに桃子が叫ぶが、それを見た小町が思わず噴き出した。

「ちょ、人の決意表明笑うって流石に酷くないっすか?」
「くくっ、ああごめんごめん。いやさ、自覚無いのかなって思ってついね。ほむら、あんたからも言ってやっておくれよ」
「仕方がないわね。モモ……というよりも、そこの二人も含んだ三人組。あなた達の功績ってかなり大きいのよ?」
「「??」」
なおも気がついていなさそうな桃子たちに、小町は助け舟を出す。

「最初にあたいらがここに来た時を憶えているかい? そう、レストにボッコボコに叩きのめされたあの時さ」
「未だにあの時の恐怖は残っているわ。足が竦んで、銃もろくに構えられなかった。そんな相手に、貴女たち三人は挑んでいった」
「あ、あの時は無我夢中というか、結局失敗したし」
「いやあ、あたいは結構嬉しかったね。ちゃんとあんたらもあたい達を仲間って認めてくれてるってのがわかったし、勇気があるのもわかったしね」

からからと笑う小町に、賛同するようにほむらが静かに頷く。
確かにあの時に動けたのは三人だけであり、こうして称賛されるのであれば悪い気はしない。
とはいえその程度では活躍とは言えないのもまた事実であり、疑問符はまだとれない。

「ま、それも大きいんだけどさ。あんたらはそのレストも救ってるのさ。
 それが後々にこうやって、世界樹に色々な人材が集まる基盤にもなってるんだ。誇っていい立派な功績さね」

小町の言葉に、今度こそ戦えない三人の影薄は驚きの表情を浮かべる。
自分達は彼に一撃を与えこそしたが、無傷でかわされ後は他愛のないことを話した程度だ。


537 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:28:29 FpnMZ7X20
「あいつ自身が口をすべらせてたからね。なんでもない無い会話が久々で、楽しいってさ」
「……結局のところ、彼も私と根底は同じなのよ。魔物を庇い強すぎた為に人から迫害され、荒み果ててやがて誰かを信じることなんて忘れてしまった。
 でも貴女たちは、魔物にも彼にも怯えることなく接した。誰にも頼れない孤独の中で、久しく忘れていた人との触れ合いは大きな救いとなるわ」
「うーん、あかりにはあんまり実感ないなぁ……」
「それも大きいだろうねぇ。あたいらじゃどうしてもあの戦闘能力を警戒しちまって本心では話せなかっただろうさ。
 無意識の行為。嘘偽りのない、純粋で真っ直ぐなあんた達だからこそ、あいつもまた人を信じてくれるようになった」
「僕たちは、助けになれていたのでしょうか?」
「ああ、間違いなくね。あの子、サクヤも大きな支えだったろうが、それを折られてもあいつはまだ戦ってくれている。
 あいつもあたいもあんたらもみんなも……悲しみを背負いながら前を見れている。それは支えが一つだけじゃないってことさ」
「そもそも貴女たち三人をなんとも思っていないのであれば、貴女たちは風鳴翼にまとめて食い殺されていたでしょう?」

その言葉にはっとする。
確かにあの時、自分達は狂気に染まった風鳴翼に狙われた。
人とも獣ともつかない恐ろしい姿の化物の接近。恐怖で身体は竦んで動かなかった。
そんな時に彼は身を挺し庇い、今でこそ癒えたが深手を負わされてしまったのだ。
自分達のような戦力にもならないたった三人の人間を捨て置けば、十全な状態で風鳴翼と対峙できていたかもしれないのに。

「……そうっす。あの人は、大怪我をしても私たちを助けてくれたっす」
「そういうことよ。たとえ戦えなくとも、誰かを救うことはできる。貴女たちも、誰かを救える手を持っている」
「勿論、あんたらの存在はあたいにとっても救いだし、戦う原動力でもある。柄じゃないってか? はは、大いに結構!」

再び笑う小町の言葉に、三人の影薄は照れ臭そうにする。
そんな中で、英雄だけは少しだけ気まずそうに頭を掻いていた。

「戦わず誰かを救う、それも立派な武器だ。まぁ、俺は影が薄いのと腕っぷししか取り柄がないからそんな真似は難しそうだがな」
「我の記憶が正しければ一番強そうなお前が一番凹されてますがなwwwwwwもっと頑張れですぞwwwwww」
「よーしオオナズチ、歯ァ食いしばれ。ま、冗談はさて置き、俺もドラゴンハートの恩恵を受けている。言われずとも頑張るさ」

「そういえばオオナズチ、貴方も地下で結構色々喋ってたわよね? 草も生やさずにに私たちのことを色々と……」
「え、何それあかり気になる!」
「えちょwwwwww」
「僕も興味があります」
「勿論私もっす。草を生やさないオオナズチとかかなりレアなんじゃないすか?」
「やめてほむほむwwwwwww我の築き上げたキャラ壊れちゃうwwwwwwそんなことより今は予言のことですぞwwwww」
「あら、てっきりきらりの嬌声をまた聞きに行くと思ったのに。やっぱりあっちが本当の貴方なのかしらね?」
「オウフwwwwwwあまり苛めないでほしいんですぞwwwwwミヤザキの話教えてやんねーぞですぞwwwwwww」
「ミヤザキ?」
「やっと食いつきましたなwwwwwwまあ確証はないけど予言と無関係とも言い切れなくて――」


未だ外で響くきらりと魔雲天の嬌声を掻き消すように笑いながらオオナズチの言葉は続けられていく。
失ったものも多いが、とにかくきらりという大きな脅威は去ったのだ。
戦えずともできることはある。立ち止まれない理由がある。
それを再度確認した少女たちは、他の仲間よりも先に予言の考察をするのであった。






538 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:29:07 FpnMZ7X20
「なんとか上手くいったか。魔雲天さんがとばっちり受けたのは想定外だけど」
「レストさん、お疲れ様でした」
「きらりがフォレスト・セルに飲み込まれてからこのロボはピクリともしなくなったな。もう蕾を抜いても大丈夫だろ」

その頃、レストは神樹に登っていた。
見下ろす格好となったきらりんロボは完全に静止し、神樹が突き刺した蕾が引き抜かれた瞬間に両腕は音をたてて崩れ去った。

「なんかあっちで聖帝さんと子供達がすごい落胆してるね……」
「結構自慢のロボだったらしいからな、これ。仕方がなかったとはいえここまでやっちまったらもう粗大ゴミよ。
 まあ俺自身も学習させられたことだが、どんだけ強い奴でも弱点突かれたり束になって攻め込まれたらキツイって教訓にしてもらおうぜ。
 ところでどうよエリカ? その俺の弱点の一つ、もやしみてえなボディも今じゃレベルアップでこんな黒々と太く逞しくなったぜ?」
「とても素敵ですわ、神樹」

神樹の肌を撫ぜて満足気にするエリカ。
手持ちのポケモンを全て殺されてしまった彼女ではあるが、まだ神樹が残されている。
そんな神樹もエリカのために戦い傷つき、異形と人間の少女の奇妙な信頼関係がそこには確かにあった。
お互いの存在そのものが救いであり、この二人はお互いに救いの手を伸ばした結果、この都庁に辿りつけている。

(この二人が互いの救いであるように、やっぱりきらりにとっての救いは魔雲天さん。そして魔雲天さんの救いもきらりだったんだね)
「無事にきらりさんが救えて何よりですわ。これならユーノさんも助けられますわね」
「……そうだね」

レストが僅かに言い淀んでしまったのは、今回のきらり救出作戦が実は失敗しかけていたことを知っているからである。
自分よりも遥かに混沌の侵攻が進んでいたきらりは、限りなく風鳴翼に近く見えた。
不幸中の幸いだったのは、元から戦闘経験を多く積んでいた風鳴翼と異なり、きらりは戦闘経験が浅かったことだ。
強力な歌とビーム、触れれば何でも壊せる拳に脚。大きすぎる力に振り回されていたというのが正直な印象である。
もし彼女がもっと経験を積んでおり、ビームや拳の使い方が上手くなっていたら。
それこそ、こちらがデバフを解除する瞬間を狙い撃ちにされていた可能性もある。
時間をかけられないと踏んだからこそ、きらりの肉を取り込むという強行突破手段を用いたのだ。

そしてその選択は正しかった。
先程サウザーと魔雲天が救出したきらりの姿を目視した瞬間、実は諦めかけていたのだ。
あの時点できらりと肉と機械の融合侵攻具合は、エーテルリンク以上であった。
あれでは無理に引きはがそうとすれば、きらりの本来の身体も傷ついてしまう。
あの状態ではきらりの尻を狙うことはもちろん、全身を舐めまわすこともフォレスト・セルにはできなかっただろう。
ほとんど残されていなかったであろう自我の中、魔雲天の声に反応し手を伸ばしたきらり。
見たことも無い力で、一時的とはいえ混沌の力を退けてみせた魔雲天の力。
二人の強い絆があったからこそ、今回の救出は上手くいったと言える。
だからこそ、彼女達を救えた喜びもひとしおだ。

「さて、そろそろもう一人の功労者を迎えに行ってあげないと。神樹、さっきと同じ位置に頼むよ」
「任せときなって。そいやっ!」

そして再び神樹に投げられ、レストは空を飛んだ。
今回の救出作戦において、魔雲天と同じくらい重要であった機械の少女。
彼女が足止めをしてくれていなければ、救援隊も聖帝軍も皆殺されていただろう。
彼女も早く労い、治療してやらねば。




そう思いながら飛んでいて、何故だか全身が強く震えた。






539 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:29:54 FpnMZ7X20
「フェイ……?」

本当は、神樹に投げ飛ばされた瞬間からその違和感は感じていた。
投げられて数秒、その正体にも気がついた。
同じ位置に投げて貰った。その筈なのに、着地地点のフェイの肩がなかったのだ。

彼女も移動はしているから全く同じ位置にないのはわかる。
だが彼女のサイズからすれば、目視できなくてはおかしい。

ああ、きっと戦いが終わったから人のサイズに戻ったんだ。
そう考えた。そう思いたかった。

共に戦ったのだ。彼女は狂信者がいくら束になったところで蹴散らせるだけの力はあった。
だから大丈夫。

仮に強敵がいても、きらりを足止めできる立ち回りがある。エモーショナル・アタックもある
逃げることはできるはずだ。



余程の――理不尽でもない限り。



「フェイ――」






「ズェェェェェェアァッッ!!!」








スカイツリー跡地。
その残骸に埋もれるように沈んでいたフェイの姿を見つけるのと同時。
上空から振り下ろされた斬撃は、そのまま相手を流星のごとく地へと墜とした。







540 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:30:28 FpnMZ7X20
「……」

飛ぶ、という行為は非常に便利かつ強力である。
しかし地上で戦う以上にできることは制限されてしまう。

容赦なく空中から獲物を叩きつけたのは白き侍、ハクメンであった。
彼は『凶』を追い東へとひたすらに走っていた。
かつて見せたように時間を斬り、道中立ち塞がった悪も、狂信者も、何もかもを斬り、この東京へと辿りついていた。

「……」

そんな彼は、東京の異質さをすぐさま肌で感じた。
大量に湧き出て、もはやハクメンですら完全に滅するには相当な時間を要すると判断したDMC狂信者。
そして風鳴翼に類似した気配を持つ『凶』が、複数個所に確認できたのだ。
あまりの異常事態。
最終的に全て滅するのは変わらないが、優先順位はハクメンの中には存在する。
関西でクライシス皇帝を無視できなかったように、捨て置ける『凶』と捨て置けない『凶』がある。

そして彼が目をつけたのは――圧倒的な速度で膨れ上がる『凶』、諸星きらりであった。

そしていざ断罪処分を下そうと向かったところで、きらりの頭部が破壊された。
何事かと思えば、それをやってのけた存在もまたきらりと同じ気配……いやきらりの一部を取り込んだ更に凶悪な『凶』だった。

そんな二つの『凶』が、一瞬にして転移したのだ。
勿論気配でわかる。それほど距離は離れていない。東京都庁だ。
あそこには既にユウキ=テルミすら上回りかねないとてつもない『凶』がいることは遠方から感知していた。
都庁に集まる複数の『凶』はとても無視できるものではない。
渋谷や九州ロボ付近にもやはり強大な『凶』を感じたが、一体のみだ。
優先順位は、決まった。


ただ黙々と、ハクメンは『凶』を滅するために動く。
たとえその直後、かつてのOTONAの様に『凶』ではないが行く手を遮る機動兵器が現れたとしても。
彼女が必死に言葉を投げかけ、止めようと奮戦しても。







ハクメンは容赦なく、そんな彼女を斬り伏せた。

殺意は無かった。だが抵抗の激しい彼女に重い一撃を放ったのは事実。

彼女が生きていようが死んでいようが、信念の前には無意味。

全ては『凶』を滅するために。

それこそがハクメンの道なのだから。


541 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:31:33 FpnMZ7X20
「……っ!」

そんなハクメンに、突如として竜の尾が叩きつけられる。
最早確認するまでもない。先程の一撃で仕留めきれなかった『凶』のものだ。


「ぬん!」


横薙ぎのそれを、受け止めて受け流す。
この程度の攻撃で傷を負う程、ハクメンは甘くない。


「よくもっ……!」


『凶』は、空中で対峙した時よりもさらに異形の姿となって瓦礫より舞い上がってきた。
竜の尾に爪に翼。それぞれ色の異なる様相なのが、より異形らしさを引き立たせている。
さらにいずれの竜とも合いそうにない、独特な形状をした角も目を惹く。

その瞳に宿るは憤怒の感情。
しかし『凶』はそのまま突っ込んでくるかと思えば、軌道を変えて先程沈黙させた機動兵器の元へと飛んで行った。

(くそ、僕じゃ機械の彼女が無事かどうかなんて判断できないし、治せない……! どうか無事でいてくれフェイ!)

そして触れたかと思えば、機動兵器は光に包まれ消え去った。
彼女の気配は辿れないが、先程と同じ術だとしたら行先は決まっている。『凶』の根城たる東京都庁だ。

「どうして彼女を斬った……! お前は一体……!」

『凶』が口を開くが、ハクメンの答えは決まっている。

「貴様ら『凶』を滅するため。あの地に集いし『凶』は、貴様が転移させた『凶』は無視できる存在ではない」

淡々と、しかし鋼の意思でもってそう返した。

「……っ!? 彼女は、間に合ったんだ! 彼女を支えとする人のためにも、そんなことさせてたまるか!」

『凶』が吠える。
成程『凶』は『凶』同士で通ずるものがあるとでもいうのか。

「……戯言だ。安心するがいい。まずは、貴様からだ」
「っ!」


ハクメンの刃は、一瞬にして『凶』へと届いた。


542 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:32:29 FpnMZ7X20
「ぐっ……!?」

それは一瞬であった。
ハクメンの刃は確かに『凶』の身体を捉えた筈だった。

『秩序』の力は『混沌に対しての絶対的な特効を持つ。
それ故にかつて対峙した緑間という男も、ガチレズコンビも殺処分できた。
目の前の『凶』もまた紛れもない『混沌』の力を持っている。本来であれば秩序の一撃の前には為すすべもないはずだ。
いや、一つ。一つだけ混沌が秩序に対抗する手段を持ち得ることもあり得なくはない。
忌むべき邪法だ。

捉えた筈の刃が弾かれ、追撃として振り下ろされた『凶』の刃をかわしながら、ハクメンはその結論に至る。

「貴様……その人と竜が混ざり合った姿。それに飽き足らず『光』をも取り込んだか。
 やはり先程の『凶』以上に、貴様の方がより滅すべき存在のようだな……!」

光太郎やOTONA達に向けた殺気の非ではない。
確実に相手を滅するという『凶』にのみ向けられるハクメンの鋭き刃の如き殺気。
秩序の特効がなかろうが、滅しきってみせるという気迫。

その気を受けてなお『凶』とされたレストは退くことをしなかった。
いや、退けないといった方が正しいか。
ハクメンの言葉から、彼のおよその目的はわかってしまったのだから。

(奴の言う『凶』は、あの混沌の力に侵された者のことだろう)

(つまり奴は、きらりやユーノ達を狙っている。それだけじゃない、おそらくきらりを守るために立ち上がったフェイすら手にかけたんだ)

(つまり聖帝軍やエリカ達、そして都庁のみんなも……攻撃対象とされる)

(僕は一度侵されたとはいえ、抗体はできている。僕自身にもう影響は出ないとはいえ、さっき取り込んだきらりの欠片が仇になったかな?)

「ははっ」
「何がおかしい?」

(いやいや、やっぱりあの選択は正しかった。取り込んだからこそ、こいつはきらりより先に僕を狙ってきたんだから)

(……『凶』か。確かにいくら抗体を得たとはいえ、滅茶苦茶なエーテルリンクをしている僕はほぼ風鳴翼と同じかもね)

「僕は『凶』で結構。でも彼女達は『凶』なんかじゃない」

(でもあいつの反応からするに、サクヤの力があいつの力の一部を弾いてくれているのは間違いない)

「そう簡単に滅せると思うな、怪物。ここから先は、通さないっ!」

『凶』とされながらも、竜と光の気を持って向かい合う。

滅するために、世界を『凶』から救うために次の地に手を伸ばすハクメン。
『凶』とされた仲間を滅びの手から守るために抗うレスト。
相反する信念を持った大きな力が、スカイツリー跡地にてぶつかり合う。




お互いの殺気で、沖縄県の異変に未だ気が付けていないことは、果たして二人にとって幸か不幸か?


543 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:33:45 FpnMZ7X20
【二日目・14時30分/東京都・世界樹】

【都庁同盟軍】
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【アイスシザース@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【小野塚小町@東方Project】
【日之影空洞@めだかボックス】
【東横桃子@咲-Saki-】
【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【赤座あかり@ゆるゆり】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【桑原和真@幽遊白書】

【聖帝軍】
【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのガキ(円亜久里)@ドキドキプリキュア!】
【ターバンのガキ(イリヤスフィール・フォン・アインツベルン)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】

【共通思考】
0:きらりの治療が終わるまで休息の後、双方の陣営と情報交換
1:予言の考察を進める

※新宿中央公園跡地にきらりんロボの残骸が残っています
 相当な技術がないと修復は困難です
※世界樹入り口にフェイ・イェンが生死不明の状態で転送されました

【二日目・14時30分/東京都・フォレスト・セル】

【フォレスト・セル@新・世界樹の迷宮】
【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【ターバンのレスラー(ザ・魔雲天)@キン肉マン】
【共通思考】
0:キモチイイ……
※現在、フォレスト・セルの治療を受けています。だいたい30分くらいで終了すると思われます
※治療が済み次第、きらりと魔雲天にテラカオス抗体が作られます
 またテラカオス化によって手に入れた能力も制御され、きらりはデバフ歌(弱)とデバフ耐性と再生(弱)の能力を引き継ぎます
※治療に使われているのは後ろの方なので、アイドル的にはまだ大丈夫です

【二日目・14時30分/東京都・スカイツリー跡地】

【レスト@ルーンファクトリー4】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【共通思考】
0:互いを滅する
※殺気の影響で、まだ沖縄の異変(シャドウの存在)に気が付けていません


544 : 伸ばされる救いの手/滅びの手 :2018/02/12(月) 23:35:42 FpnMZ7X20
投下終了となります


545 : 名無しさん :2018/02/13(火) 00:17:13 rcwZAgn60
力作乙です
散りばめられたフラグの昇華具合が最高に気持ちええんじゃ
で、一難去ったと思ったら痛恨のハクメーーーンッ!!
マジでハラハラしました


546 : 名無しさん :2018/02/13(火) 19:28:16 YHF8RNy.0
お二方投下乙
イチリュウチームはラミレスらしい判断だが依然として緊迫状態
聖帝と都庁はうまい具合にきらりも助けられて立て直せたかと思った矢先にハクメンとかシャレにならんわ……
小町がいればギリ対話できるかねぇ


547 : 名無しさん :2018/02/14(水) 00:08:14 /wJuDdCQ0
きらりの大救出劇
テラカオスロワでここまで感動したのは初めてかも

SS投下します


548 : 盲目の土竜たち :2018/02/14(水) 00:10:23 /wJuDdCQ0
情報を秘匿していたユグドラシルも腹が黒そうでいけ好かない企業だが、ここまでできすぎてるジョーク作りに時間を無駄するほど馬鹿な連中ではない。
特徴の一致からして都庁の大樹及び何匹かの魔物はインベスであると考えられる。
そうでなくとも、こうまで成長が早すぎる植物はいずれ我々の生活圏を脅かすだろう」

ゼクスがまず目を通したのはヘルヘイムの情報。
それによると、あと数日もすれば日本の植物全部がヘルヘイム産に塗代わり、魔の果実を食したことによって生きとし生けるものがインベスと化す。
そうなれば日本は滅亡してしまうだろう。
情報が真実ならば大災害の次ぐらいの驚異だ。

「しかし、おかしくねえか?
世界が滅ぼされるかもしれないのに、人間の協力者も何人かいるらしいんだが」
「いえ、それについては知性を持ったインベスの上位種……オーバーロードインベスの存在により説明が付きます。
自分たちの保護もしくは権力の拡大、または隷属・洗脳によって生かされている可能性があります」
「うげえ、洗脳は仕方ねえが自分たちの私腹を肥やすために化物に協力している連中がいんのかよ」
「お嬢ちゃん、世の中にはそういう下衆連中が多いんだぜ? 金のためなら犬のように戦う傭兵さんとかな」

インベスに人間の協力者がいる理由に引っかかったクリスだが、すぐに他の情報とLの推理により覆される。
実はその推理も間違っているのだが、都庁の情報露出が少なすぎるのでいかに天才探偵であるLとて真実に辿りつけてないのだ。
結局、都庁の人間はベルナデットの皮肉じみた煽りのように、悪党か洗脳されているとしか現状では処理できなかった。

「胡桃が食べらなくなる世界なんて僕は嫌でぃすよ」
「はは、そうだなオチビちゃん。
森の守り手と言われた俺の目線からしても、あの樹木の成長はあまりにも過剰すぎる。
社長、植物は多けりゃ良いってもんでもない。
大地自体への毒になっちまう前に外来種は間引きした方がいいと思います」
「君もそう思うかロビン」

精霊と契約したロビンも都庁の大樹は危険だと言った。
せめて世界樹に肉薄する機会があれば感想も変わったのかもしれないが、彼はほとんど地中にいたため仕方ないのである。

「私としては“これ”が気になるのだがね?」
「これ、とはこの巨大な怪物のことか?」

イナバ社長が指し示したのはヘルヘイムの要と思わしき生物フォレスト・セルであった。
その破竹の強さはネットを通してゼクス組とこの物置にも知れ渡っている。
ゼロ・システムを搭載したモンスターマシンであるエピオンでも勝機は薄く、どこぞのヒゲのガンダムでも持ち出さない限り勝てる気はしないというのがゼクスの正直な感想であった。

「私はこれを予言の中にある【器たりえる巨像】の一つではないかと思っている。
もし、そうなら是が非でも手に入れたい」
「おいおい、こんなグロテスクな物体が予言の巨像だって〜? Lの旦那はどう思う?」

ベルナデットが呆れるのも無理はない。
フォレスト・セルは世界を救うにしてはあまりにも怪物的すぎる見た目をしていた。
無論、セルにテラカオス因子の浄化という能力があるのを知らないのだから、余計に醜悪な怪物にしか見えぬであろう。
とりあえずベルナデットは自分より格段に頭の良い男であるLに意見を求めた。

「候補の一つとしてなら、捕獲はありだと思います。
あれが予言に必要なものかどうかまではわかりませんが、どちらにせよ驚異には変わらないので捕獲・殺処分・封印は視野に入れるべきだと思います」

Lの意見は最もであろう。
大災害ほどではないがセルを放っておいて東京の外にでも歩かれたら、人類滅亡はそれだけ早くなる。
イナバ社長の思惑はともかく、セルを手元に置くか最悪殺す必要はあると判断した。


549 : 盲目の土竜たち :2018/02/14(水) 00:11:28 /wJuDdCQ0

「しかし、こんなのどうやって捕まえるでぃすか?」
「ううむ、そこが問題ですね。
我が社が保有する物置は高性能ですが、流石にコレの戦闘力の前ではあっさり破られそうですね……」
「どっかにどんな実力を持っていようが、異能力を持っていようが関係ない夢のような捕獲装置ないっすかね〜
それこそ惑星を余裕で破壊できそうな奴や突破不可能な障壁すら無視して閉じ込める檻のようなもの」
「そんな都合のいいもんあるわけねーだろ」

シマリスの最もな疑問に首を傾げるイナバ社長。
社長を飄々と茶化すロビンにツッコミをいれるクリス。
実はそれを実現できるかも知れない魔法のようなアイテム“マスターボール”をゼクスが所持していることをここにいる連中はまだ知らない。

「ただ、戦力の宛だけはありますね」
「悪逆集団と言われていた拳王連合軍か……」

イナバ社長とゼクスがヘルヘイムの次に注目したのは拳王連合軍。
戦力の高さや早期の首輪解除など目立ったチームだが、一方で核兵器ばりの横暴・破壊行為が目立つ集団で、最悪の集団と風潮されていた。
だが、その大半は誤解と風評被害であるというのがあちら側の意見だった。
まずはLが拳王連合軍から渡された情報や、ネットに流れた情報・映像の数々を精査する。

「……なるほど、確かに拳王連合軍の言い分も合ってますね。
緑間など参入させる際にマーダーかどうか気付けなかった、戦力不足とはいえ引き金が軽くなりがちな子供を機動兵器に乗せた等過失もありますが、少なくとも故意に行った破壊活動はない。
全部鵜呑みにするわけではありませんが、ホワイトベース組のようにろくな調査もしないまま、単に暴力集団と割り切って排除しようというのは早計ですね。
……まあ、何でもかんでも力任せというか、野球やネットバトルで解決できると思い込んでいる脳筋臭さは目立ちますが」

それがLなりの拳王連合軍への分析であった。

「まあ、イナバ社長のご友人を信じないわけではないですが、実際に会ってみないとわからない部分もあります」
「まともな対主催集団がイチローチームぐらいしかない現状では、一つでも増えてくれると助かるのだがな……」

ちなみに物置の人間たちも聖帝軍のきらりんロボによる虐殺映像は見た。
L曰く、動画内に意図的に大事な情報を削って編集した工作の痕跡はあったものの、きらりんロボが立川市を焼いたのは紛れもない事実であるようだ。
ひょっとすると直近で戦っていたDMC狂信者に内部を制圧されて乗っ取られたのかもしれないし、拳王連合軍にマーダーの緑間が混じっていたように深刻なヒューマンエラーが発生したのかもしれないが、いずれにせよ聖帝軍との合流は危険になった。
ネットは炎上しており、迂闊に接触すれば物置の対主催まで危険人物のレッテルを貼られる。
誤解を解こうにもヘルヘイムが近いのでインベスがやってくる危険も考慮すると、飢えた虎のいる虎穴に入りこむようなもの。
ゼクスやクリスのような戦える者はまだしも、物置にいる非戦闘員まで危険に晒すことはできなかった。

「実を言うと私は、拳王連合軍に直接会ってダイジョーブ博士が言った通りの人物ならば同盟を組もうと考えている」

イナバ社長のその言葉に一同が騒然とする。

「大丈夫なんすか社長。それよりも千葉のどこかにいるらしいイチローチーム辺りと接触を急いだ方が良くないっすか?」
「イチローチーム及びドラゴンズは純対主催らしいが、逆に言えばマーダー以外からは狙われない。
一方で拳王連合軍はレッテル貼りによって同じ対主催の中でも孤立している。
予言にも通じる野球チームかもしれないのに、集中砲火を受けて潰されるのは惜しい……野球の試合は二チームいないと成り立たんしな。
今までの悪評が誤解によるものならば、すぐにでも間違いを正してやるべきだろう……他でもない彼らの情報を知る我々がな」

拳王連合軍は世界を救済できる予言を叶える鍵の一つだ。
多少のリスクを冒しても無くすわけには行かない、イナバ製作所社長の硬い意思であった。

「コマンダー社長」
「レックス」
「東京と神奈川の県境に着きました」
「ご苦労、後はダイジョーブ博士を待つだけだな」

今まで会話に混じっていなかった青いクローントルーパーのレックスは、社長の指示により物置を東京と神奈川の県境まで密かに移動させていた。
拳王連合軍と接触をはかった同志であるダイジョーブ博士とゲドーくんを迎えるためである。
地中から物置を出し、博士の乗る車を搭載せんと待機する。


550 : 盲目の土竜たち :2018/02/14(水) 00:12:22 /wJuDdCQ0

……ところが、いくら待ってもダイジョーブ博士の車がやってくることはなかった。


「……おかしいですね、そろそろやってきても良いはずなのですが」
「まさかとは思うけど、やっぱり拳王連合軍の連中に殺されたんじゃ?」
「いや、そんなはずはない。
例の拳王連合軍の情報は横浜港から離れた位置から発信されていた。
つまり拳王連合軍からは十分に距離を離しているんだ。
もし殺すだけなら横浜港内で事足りるハズだぞ」

イナバ社長の推理が正しければダイジョーブ博士が拳王連合軍に殺されていることは無いハズだ。
だが、一向に戻って来る気配がない。
ついにはイナバ社長の方から連絡を入れるが、返信はなかった。

「連絡に応えないのはおかしい……何があったのか?」
「コマンダー、拳王連合軍はないにしろ、狂信者や他のマーダーに襲われた危険は十分あります。
私がスピーダーで調査をしてまいります」
「頼みましたよレックス」

明らかな異常事態を悟ったレックスは浮遊バイクと言えるスピーダーに跨り、調査へと出かけようとする。

「待つです、一人は危険ですから僕もついていくです」

そう言ったのはシマリスであり、レックスの兜の上に乗る。

「おい、オチビちゃん、危険な任務なんだぞ」
「いや単独で行動するよりツーマンセルで行動をした方が良いのは一理ある。
彼は怪我も疲労もほぼない上に、身体が小さく身軽な分攻撃されても避けられる。
しかもそんじょそこらのモブ狂信者を凌ぐ戦闘力も持ち合わせている、連れて行く分には問題ないだろう」
「ははあ…イエッサー」

「レックスさん、これを持っていってください。
ヒラリマントというほぼ完全に敵からの攻撃を弾く外套です」
「ミスターL、支援に感謝いたします」
「シマリス、レックスにあまり迷惑をかけるなよ?」
「ゼクスさんは心配性でぇすねー、クルミマイスターである僕なら全然大丈夫ですよ」

出発前に仲間に見送られるレックスとシマリス。
一時間足らずで戻ってくる予定とはいえ、たった二人での行動は危険が伴う。
しかし、物置の参加者で動ける人間は限られており、MSの無いゼクス・L・イナバ社長の強さは一般人を超えない。
クリス・ベルナデットは負傷中。
ロビンは住人の護衛のために残らないといかず、騎乗スキルがないのでスピーダーのような機械には乗れない。
この状況では一人と一匹しか調査に出せないのである。
誰かが危険を承知で行かねばダイジョーブ博士とゲドーくんが生きていた場合、見殺しにする形になってしまう。

「危なくなったら戻って来いよー」
「レックス、シマリスくん、無理はなさらず」
「怪我なく戻るでぃす」
「では、出発します」

クリスとイナバ社長の言葉を最後に、レックスとシマリスを乗せたスピーダーは発進した。
合わせて巨大物置も二人が返ってくるまで存在を隠蔽するために地下へと沈んでいった。

「しっかし、腹減ったなあ〜」
「クリス、食欲があるみたいだが本当に風邪を引いているのか?」
「熱があるのは確かだよ……だけど、さっきからものすげー腹が減って仕方ねえんだ。
さっきの話し合いの席の時は我慢してたけど、そろそろ限界だぜ」
「やれやれ……」

風邪を引いているハズなのに食い気だけはやたら旺盛な小娘のクリスに半ば呆れるゼクス。


551 : 盲目の土竜たち :2018/02/14(水) 00:12:53 /wJuDdCQ0

「ははは、仕方ありませんね。この物置の備蓄食料をクリスさんに分けてあげましょう」
「ホントか? でも食料は貴重品だろ?」
「これから世界を救うために頑張ってもらう身です。
世界が滅びたら食料を貯めていても無駄になる……少しぐらいなら大丈夫ですよ」
「社長ありがとうな!」

「ところでさー、我儘言ってすまねえと思うけど少しリクエスト良いか?」

「今は肉……大量の肉が食いてえんだ」

瞬間、クリスの八重歯が人一倍長くなったように見えたゼクス。
だが瞬きの間に八重歯は元のサイズに戻っており、いつもどおりのお転婆娘の笑顔があった。
きっと自分はまだ疲れているのだろう……だから変なものが見えたのだとゼクスは思い込んだ。

果たして本当にクリスが感染したのはただの風邪なのか、腹が減っているのは偶然なのか。
歯が伸びたように見えたのはゼクスの錯覚だったのか?
答えは地の底で眠っているのかもしれない。

【二日目・15時00分/東京と神奈川の県境・地中】

【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】風邪(…?)、謎の空腹感(大)、変身解除
【装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:なんかすげー腹減ったな、肉食いてえ肉
1:シマリスの無事を祈る
2:翼を見つけ出し食人について問いただす
3:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
4:もっと強くなりてぇ
5:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
6:拳王連合軍にはちょっと懐疑的
※風邪以外の疾患か、テラカオス化が進行しているのかは次の書き手氏にお任せします

【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW 】
【状態】ダメージ(小)
【装備】ガンダムエピオン@新機動戦記ガンダムW (左腕破損 ダメージ多数)
【道具】支給品一式 そのほか不明   ウルトラストップウォッチ マスターボール
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
0:今はシマリスたちの帰りを待つ
1:クリスたちに協力する
2:殺し合いを止める意志のある仲間を集めたい
3:社長と協力し世界を救う
4:人格に問題がないのなら拳王連合軍とも協力する
5:ヘルヘイム・巨像(セル)退治・捕獲も視野に入れる
6:クリス……本当に風邪なのか?
※ウルトラストップウォッチには制限があります

【ピップ・ベルナドット@HELLSING】
【状態】重症 寝たきり
【装備】自動式拳銃×2 M16
【道具】支給品一式
【思考】基本:バトルロワイヤルを生き残る
0:今は何もできないので休む
1:生存確率が上がりそうなので今はゼクスについていく
2:拳王連合軍と組むのは有りだと思っている

【L@DEATH NOTE】
【状態】健康
【装備】自動式拳銃
【道具】支給品一式 手榴弾×25 ノートパソコン
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
0:シマリスくんたちが戻るまで情報収集しましょうか
1:主催の目的とは何でしょう?
2:ひとまずここでゆっくり情報収集でもしましょう
3:予言の答えの材料探しをする
4:拳王連合軍に対しては自分で見てから決めるスタンス


552 : 盲目の土竜たち :2018/02/14(水) 00:13:27 /wJuDdCQ0

【ロビンフッド@Fateシリーズ】
【状態】健康
【装備】祈りの弓 顔のない王
【道具】支給品一式 
【思考】基本:契約した社長に従って動く。
0:出来る限り人は助けたい
1:無事で帰ってきなよレックス
2:ベルナドットとは仲良くなれそうだ
3:自然は自然でもヘルヘイムはちょっとやりすぎだぜ
4:社長がOKを出せば拳王連合軍にも協力する

【イナバ制作所社長@現実?】
【状態】健康
【装備】イナバ物置 
【道具】支給品一式 予言が書かれた古文書 他不明
【思考】基本:世界を救う
0:地下でレックスたちの帰りを待つ
1:協力者を集める
2:ダイジョーブ博士は無事だろうか?
3:拳王連合軍とは協力したいが、まずは会ってから
4:ヘルヘイムは可能なら潰しておく
5:ヘルヘイムにいる巨像(フォレスト・セル)を予言のために手元に置きたい
6:大丈夫!
※イナバ物置は地中に潜り移動できるようです



【シマリス@ぼのぼの】
【状態】健康
【装備】胡桃×いっぱい
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間と共に生き残る
0:レックスの調査に協力する
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
4:クリスちゃんは友達でぃす!
5:拳王連合軍、悪い奴じゃなければ良いんですが

【レックス@スターウォーズシリーズ】
【状態】健康
【装備】スピーダー、ブラスター・ピストル ブラスター・ライフル 装甲服、ヒラリマント
【道具】支給品一式   
【思考】基本:無害な人々の保護及び臨時コマンダー社長に従う
0:ダイジョーブ博士を捜索する
1:万が一の場合はシマリスだけでも逃がす
2:帰ったら物置内の治安維持に努める。ロビン任せじゃちょっと不安だ


※マスターボールの使用方法を誰も知りません
 なお、フォレスト・セルだろうが、テラカオスだろうが、参加者だろうが何でも捕獲できますが、
 例外的にTCを纏う存在(シャドウだったもの、など)は捕獲できません


553 : 名無しさん :2018/02/14(水) 00:13:49 /wJuDdCQ0
投下終了です


554 : 名無しさん :2018/02/14(水) 14:50:03 I3R2eoSA0
おお、まさかの連続投下か。みんな乙
しかし聖帝と都庁はこれで完全に四面楚歌状態か
特に聖帝はつば九郎さえ裏切らなきゃって話だしかなり悲惨

ところでマスターボールだが、流石に人のポケモンは取れなかったんじゃないか?
(神樹とセルはエリカの持ってたボールで一度捕獲されてる。多分アルルーナも)
逆に言えばシャドウとかも捕獲できるのかもしれないが


555 : 名無しさん :2018/02/14(水) 16:27:53 /wJuDdCQ0
>>554
私見だけど、その場合はトレーナーが殺された場合はOKだと思う
もしくはシステムの書き換えとか
SSの最後の方に捕獲できない理由を書いたけど、シャドウは例外中の例外で捕まえちゃったらメタ的に話にならないから捕獲は×


556 : 名無しさん :2018/02/15(木) 00:04:17 Dcm8X3pw0
対主催チームが滅んだり、だいぶ情勢が動いたので現状まとめ

【東京・都庁】
☆都庁同盟軍+影薄組+聖帝軍
メンバー:ダオス、レスト、氷嵐の支配者、まどか、ほむら、アイスシザース、ウォークライ、フォレストセル
     カヲル、フェイ、ピヨちゃん、小町、黒子、桃子、あかり、日之影、オオナズチ、さやか、桑原、
     エリカ、神樹、アルルーナ
     サウザー、亜久里、イリヤ、金色の闇、イオリ、レイジ、魔雲天、きらり、高津、犬牟田、(+フェイ)

〇きらりの救助に成功するも、今度はハクメンが襲来
〇最も主催・予言考察が進んだ集団
〇ヘルヘイムや聖帝軍の虐殺など誤解と風評被害は全対主催中最悪レベル
〇オオナズチがドラゴンネットワークでテルミの破壊した九州の遺跡「ミヤザキ」の情報をゲットした模様
〇フェイの生死は不明

【東京・スカイツリー跡地】
☆レストVSハクメン

〇絶賛交戦中
〇殺気が強すぎて沖縄の異常気象にまったく気づいていない

【東京・江戸川区】
☆イチリュウチーム 聖帝軍殲滅班
メンバー:イチロー、蛮、萃香、6/、オシリス

〇聖帝軍の虐殺映像(工作込み)を知る
〇ラミレスから撤退or聖帝軍の殲滅指令がきた


【東京・ビッグサイト】
☆DMC狂信者本部
メンバー:ディー、セルベリア、ドリスコル、カレン(支給品)、サーフ(支給品)
     切歌、松本、天子、シンジ、斎藤佑樹、レジーナ

〇首輪解除&ネームドキャラが強化された(ハンカチ王子以外)
〇黄泉レ〇プシステムによる蘇生のチャンスはあと一回だけ
 失敗すれば自爆して全参加者と心中予定
 ちなみに死者スレは15時30以降、シャドウだったものに支配される
〇松本が虎視眈々とクラウザーさんの蘇生方法を奪おうとしている
〇サーフは友人であるハズのダイジョーブ博士の暗殺を行った…?


【東京・渋谷】
☆半壊なのは&狸組
メンバー:なのは、ユーノ、はやて、ブリーフ博士、アナキン

〇主催のベイダー卿もといアナキン潜伏中
〇都庁同盟軍の次か同じくらいに考察の進んだ集団(主催のアナキンいるから当然だが)
〇現在はイチローチーム(イチリュウチーム)と合流するために千葉へ
〇沖縄の異変に気づいた


【東京のどこか】
☆遠野、道下

〇ビッグサイトへ帰還中
〇工作込みのきらりんロボによる虐殺映像を流して聖帝軍の評判を落とした
〇死に際のベクターから「テラカオス」という言葉を知る

【東京・福生市】
☆ワイルドハント、AKYS、鬼道さん、葛城蓮

〇ゼクス組と交戦し、ほぼ優勢に立っていたほどの実力者たち
〇ビッグサイトへ帰還中


【東京湾】
☆イチリュウチーム リオレウス阻止班
メンバー:ナッパ、サラ、(ソウルセイバー)

〇リオレウスを追って神奈川方面へ
〇モブ狂信者の囮になるためにソウルセイバーが一時離脱中

☆リオレウス

〇絶賛復讐心暴走中 毒ガス抱えて拳王連合軍に神風特攻予定


【東京・伊豆諸島基地】
☆旧10期主催
メンバー:ジャック、ココ、メフィラス、飛影、ヤン、メディア

〇九州ロボ奪還を予定 生き残りの特務機関員をかき集めてる
〇ヤンとメディアは諸事情により伊豆諸島から一歩も出られない


【東京上空 九州ロボ】
☆安倍総理

〇新10期主催
〇風鳴翼の細胞&サーシェスの触手を取り込んで、めっちゃパワーアップ


557 : 名無しさん :2018/02/15(木) 00:05:42 Dcm8X3pw0
【東京と神奈川の県境】
☆ゼクス、クリス、ベルナドット、L、イナバ社長、ロビンフッド

〇地中を移動できる巨大物置の中で仲間の帰りを待つ
〇ダイジョーブ博士経由で誤情報である都庁の世界樹=ヘルヘイムを知ってしまう
〇現状、唯一拳王連合軍の誤解を知ったグループであり、協力予定
〇クリスにテラカオス化感染疑惑

☆シマリス、レックス

〇行方不明になったダイジョーブ博士を探しに行った(ダイジョーブ博士はサーフの手で死亡済)


【神奈川県・横浜港】
☆拳王連合軍
メンバー:ラオウ、タクアン、MEIKO、ムネリン、平等院、プニキ、クロえもん
     熱斗、ロックマン、ディオ、デューオ、ジョジョ(そげぶ)、シャドーマン
     ダイアーさん、翔鶴、ヒロインエックス

〇ダイジョーブ博士が残したマシンで強化期間中(一部例外を除く)
〇強さと引き換えに対主催で一番考察が進んでない集団
〇ベジータが持ってきた情報のせいで都庁=ヘルヘイムと勘違い、しかもダイジョーブ博士によって拡散された
〇熱斗が腐ったデカオの弁当を食べて食中毒に


【千葉県・浦安遊園地】
☆イチリュウチーム 待機組
メンバー:ラミレス、DAIGO、ウルトラマンゼロ、ダイゴ、ホルス、ギムレー

〇浦安のあの遊園地でアウラの民と共に待機中
〇聖帝軍の虐殺映像を知った。たぶん都庁=ヘルヘイムの情報も知る。


【山梨県・死者スレ前】
☆カルナ

〇死者スレの入口を守護している
〇なお、裏技を使っての素通りは可能
〇つーか、シャドウに死者スレが支配されている時点で入口を守る意味がない


【奈良県】
☆聖帝軍 先遣隊
メンバー:クロコダイン、チルノ、ふなっしー、紘太、ウドラ、霧切、キュゥべえ、苗木

〇無事に大阪を脱出し、東京へ向かう。沖縄の異変も知った
〇キュゥべえが扇動ステルス化、霧切は記憶喪失で拳王連合軍の無実を証明できない(しない)
〇霧切が死ぬと結界が無くなってシャドウだったものが攻め込んでくるのでバッドエンドに直行する(と思う)


【沖縄県】
☆シャドウだったもの

〇死者スレの一部を支配し、貧乳歌姫を撃破 擬似的なテラカオスと化す
〇負傷&死者スレ支配、そして霧切結界があるために沖縄から動けない
〇破壊エネルギーであるTCを纏っているので戦闘となるとテラカオス以外勝ち目なし

【日本のどこか】
☆テラカオス・ディーヴァの魂

〇シャドウに敗れたが、魂を1/3切り離して日本のどこかで復活予定
〇ディーヴァではなくなったので霧切結界を通り抜けできる

☆シャドウが派遣した死者×3

〇シャドウが召喚した死者三名で貧乳歌姫の魂を追跡している
〇シャドウ本人ではないので霧切結界の通り抜けができる


558 : 名無しさん :2018/02/15(木) 09:54:24 Dcm8X3pw0
>>547だけどすいません
たった今読み返したら>>548の前が抜けてたことに気づいたので今から差分を投下します


559 : 盲目の土竜たち(>>548の前) :2018/02/15(木) 09:56:43 Dcm8X3pw0
時刻は14時30分、東京都の地中。
もとい物置という名前の超ハイテク移動式シェルター内部。

そこではイナバ社長と他複数名が一つのテーブルを囲いながら、拳王連合軍に会いにいくと言った同志であるダイジョーブ博士から受け取った情報の精査を行っていた。
その内容とは都庁に現れた木々が危険植物ヘルヘイムであることと、拳王連合軍がネットで噂されるような悪逆集団ではないとのことだ。

「イナバ社長、これは信頼できる情報源なのですか?」
「ダイジョーブ博士はマッドサイエンティストだが嘘つきではない。
>>548へ)


wiki登録時に修正お願いします


560 : 名無しさん :2018/02/20(火) 10:03:02 VPy66Ghs0
そろそろ予約の投下がくるか……
>>556>>557を勢力別に分けると
都庁同盟軍(影薄組+聖帝軍、拾われた霧切たち含む)
拳王連合軍
イチリュウチーム
DMC狂信者
イナバゼクス組
アナキン組(アナキン、はやて、ブリーフ、なのは、ユーノ)
第十期主催陣
安倍
ディーヴァ(復活予定)
シャドウ

だいぶスッキリしたね


561 : 名無しさん :2018/02/20(火) 12:37:21 phl02VpY0
それでは投下します


562 : 戦力集結/動き出す者 :2018/02/20(火) 12:38:32 phl02VpY0


ここ、東京都伊豆大島基地にある主催者用のルーム。そこには生き残りの主催であるジャック・Oとココ・ヘクマティアル、
ついでにメフィラス星人が居た。
今彼、等が何をしているのかと言うと生き残った特務機関員の確認と招集、つまり九州ロボに乗り込むための戦力集めである。
しかし、その戦力集めであるが中々うまくは行っていなかった。

「………ダメね、彼の反応も消失しているわ」
「こちらも同じだな、有力な者の反応を確認してみたが消失している」

そう言って二人ともそろってため息を出した。
まぁ、それも仕方のないことで招集に応じないのは予想していたし死んでいることも予想していた。
だが、確認して分かったことだが多くの特務機関員が死亡している状態なのだ、これでは安倍討伐し九州ロボ奪還どころではない。

「皆さん、お茶が入りましたよ」
「ああ、すまないメフィラス頂くとしよう」

戦力招集が詰まっている中、メフィラス星人がお茶を持ってきたことにより二人とも作業を一旦やめ休憩することとなった。

「ふぅ、中々おいしいわねこのお茶」
「うむ、今までの疲れが和らいでくるな」
「おほめにあずかり光栄です」

何だかんだ特務機関員探しで疲れた二人には、メフィラス星人の持ってきたお茶は癒されるものであった。
そして二人がお茶を飲む終わりメフィラス星人が紙パックをクローンヤクザに渡し終える。

「それで、どうでしたか他の特務機関員の招集は?」
「あまり芳しくないわね」

メフィラス星人の疑問に対してココが答えた。

「多数の特務機関員の反応が消失していたのを確認したわ、恐らく死んでいるわね」
「……そうでしたか」

メフィラス星人はここの答えにがっくりと肩を落とす。
ここで戦力の補充が出来なければ少人数で安倍の所に向かわなければならない事態になるからだ。
安倍の実力が未知数な以上、それだけは避けたいのだ

「そう肩を落とすなメフィラス、生き残りこちらの招集に応じた特務機関員もいるのだからな」
「本当ですか?」
「うむ、紫いるのだろう?」

ジャックが虚空に向けて呼びかける。
すると、何もない空間に穴が開き一人の女性が現れた。

「呼んだかしら?」
「分かっているだろうに、メフィラス彼女は八雲紫、特務機関員の一員だ」
「よろしくお願いいたしますね」

優雅にメフィラスに対して挨拶をする、メフィラスもまた彼女に挨拶を返した。

「彼女は幽香の同じ場所の出身でな、幽香が接触、我々と協力していると聞き彼女もまた協力を申し出たのだ」
「だから貴方達に話したプロジェクトカオスの全貌も知っているわよ」
「最初は驚きましたけれどね、けれど世界ひいては幻想郷の滅亡を避けるために全力を尽くす所存ですよ」

本心からの言葉である、紫も与えられた情報で賢者と言われたほどの頭脳を駆使しプロジェクト以外の方法で滅亡を回避できないものかと試算した。
だがその方法は思いつけなかった、だからこそ彼女は幻想郷の住民すら全滅するかもしれない殺し合いに乗ったのだ、主催陣として。

「ですけど、今の私の戦力は大幅にダウンしていますけどね」
「と言いますと?」
「私には境界を操る程度の能力という強力なものがあるのですが、それが上手く操れなくなってしまっているのですよ、
 幸いスキマと呼ばれている移動に際する応用に関しては問題ありませんでしたが」
「恐らくは大災害の影響だろう、アレのせいでTCが多量に散布され、彼女の事象を操る系の能力が上手く作用できなくなったのだろう
 まぁ、ここら辺は説明が難しいゆえに強力な能力が使用に制限がかかった程度に考えてくれ」
「分かりました、それだけ強力な能力が制限されたのは残念ですが」

メフィラス星人は頷いた、詳細は省かれていたが聡明な彼には境界を操る能力がどれだけ強力なのか理解できた。
そしてそれが制限された残念さも。なお、これが彼女以外にも発生したのかは定かではない

「では、今まで何をなされていたんですか?」
「そうですね、このTCBRが始まる前にココ嬢に呼び出されまして、私の能力でこの伊豆基地の資材搬入などの諸々をしてほしいと言われたので、
 それを行っていました」
「姿を見せないと思っていたらそんなことをやらせていたのかココ……」
「しょ、しょうがないじゃないの!下手に船とかで運ばせたらバレるかもしれないでしょう!」

ココがあたふたと言う、実際このことに関しては紫を使ったのは間違いとは言えない。
何故ならここが先程言った通り何かしらの建築資材などを船などで運べばTCBR以前に基地がばれてしまう可能性もあった。
だが、紫のスキマは空間の境界を操り離れた場所同士を繋げることが可能なのでバレずに物資搬入などの諸々が行えるのだ。

「……まぁ、その件に関してはここで終わらせよう、それで紫こちらの招集に応じた特務機関員たちは?」


563 : 戦力集結/動き出す者 :2018/02/20(火) 12:39:16 phl02VpY0

「彼等なら潜水艦でこっちに向かってきているわよ、スキマで直接こっちに送ってもよかったのだけどね」
「なるほど、分かったそれでこちらの招集に応じた者達のリストは」
「それなら、はい」

少しスキマを漁った後に二枚の紙を渡してくる、ここに書かれている者達が今回招集に応じた者達なのだろう。
ジャック・Oとココは二枚の紙を読み確認していく。

「ふむ……特に思想面では問題なしか、性格他も問題はなしと」
「実力にも問題はないようね、本音を言えばもう少し人数はほしかったけれど」
「そのような贅沢は言っていられんさ、この状況でこれだけ二人でも集められただけでも僥倖だろう」
「まぁ、そうだけど」

ジャックの発言に渋々と言った感じに同意するココ。

「どのような人物なのですか?」
「見てみればわかるさ」

そう言ってジャックは質問してきたメフィラス星人に紙を渡した。

「ふむ、ライダー変身者に機械生命体ですか」
「うむ、機械生命体の方は紆余曲折あり契約という形で特務機関に入っている」
「ライダー変身者の方は?」
「……いつの間にか特務機関員に入っていたのだ、いつの間にか」
「えぇ……」

ジャックから今回招集に応じた特務機関員たちの事を聞いたメフィラス星人は納得と困惑を受けた。
機械生命体の方は一応の納得でありライダー変身者の方は困惑である。

「ああ、彼……彼女?ね、よく分からない存在よ、変なこと言ってるし」
「は、はぁ?それはまた変わった人ですね」
「実際、会ってみればココ嬢やジャックの困惑も理解できますわよ?私も困惑しましたし」
(この言われよう、ほんとどのようなお方なのでしょうか)

ジャック、ココ、紫までもが困惑する人物にメフィラス星人の興味も上がってきたのであった。
そのようにして会話していると電子音が響く。
ココがポケットに手を入れ電子音が鳴っていたスマホを取り出しす、電話だったようだ。

「はいはい、なにヤン?」
『……マスター今すぐこっちに来てくれないか?大変なことが起きたんだ』
「大変なこと?……何が起きたの」

尋常ならざるヤンの雰囲気を感じココもその声を強張らせる。
そして、ココが声を強張らせたことを感じた三人も身が引き締まった。

『――ディーヴァの反応が消失した』
「!?」

ヤンが言ったその一言はココを大きく動揺させるに十分であった。
ディーヴァの戦闘能力は他のテラカオスに比べれば強大なものであり危なっかしい所があったもののその戦闘力は例え理不尽級であっても、
蹴散らせるほどのものがあった、だからこそそのディーヴァの反応が消失したことに動揺を隠せずにいた。
そしてその動揺を見て取ったジャックが並々ならぬことが起きたと感じた

「ココ、お前がそこまで動揺するということは何やらとんでもないことがおきたのか?」
「……ええ、ディーヴァの反応が消失したわ」
『!?』

その一言は三人にとても大きい衝撃を与えた、ディーヴァの強さはこの三人も知るところであるからだ。

「分かったわ、今すぐそっちに向かう」
『ああ、待っているよ』

そう言って電話が切れた、そしてココがジャック達三人の方向に向きを変える。

「そう言うことだから詳細な情報を聞きに司令室へ行くわ、ジャックは無論、メフィラスも一緒に付いてきてもらうわ」
「分かった」
「分かりました」
「紫は引き続き他の特務機関員の捜索と招集をお願いするわ」
「はい」

ココがテキパキと指示を出した後、ジャックとメフィラス共に部屋から出る。
その足取りは自然と速くなっていた。


◇ ◇ ◇


そして一方その頃、伊豆大島基地に向かう潜水艦内。
忙しなく動き回るクローンヤクザ達、その中でも一風変わった者達が潜水艦の待機室にいた。
それは紫が言った特務機関員の二人、機械生命体とライダー変身者だ。

「……遅いものだな」

そのように零すのは機械生命体の方、その名をメガヘクスと言う。この個体は機械惑星が大災害によって崩壊し緊急バックアップにより生き残った存在である。
そして今は契約という形で特務機関に入っている人材である。

「まったく、メガヘクスの技術力であればもっと早く出来たものを」

そのように愚痴をこぼしながらも大島基地に向かう潜水艦の中で待機する。

(それにしても……)

メガヘクスはチラリと自分の隣にいる存在を見る。
その容姿は魂魄妖夢にそのまんまそっくりであるが雰囲気が本人に似ても似ついていないのだ。

「タイマーストップ、今回の記録は7分40秒でした」
(誰に向かっていっているのだ?)


564 : 戦力集結/動き出す者 :2018/02/20(火) 12:39:45 phl02VpY0


ゲームをクリアしタイマーをストップさせてゲームクリアした時のタイムを言うということをやる存在。
RTAをやっているこの人はbim兄貴と呼ばれたRTA走者である。
それがなぜかバグスターとなった上に人の遺伝子が存在する為、ゲーマードライバーを使い変身できるようになっているのだ。

「今回の完走した感想ですが――」
(……やはり理解が出来んな)

メガヘクスはbim兄貴と一緒になってから話しかけてはいない、話しかけてもこちらを無視する可能性が高いからだ。
まるでこちらを見ていないかのように。

(まったく、なぜこの者と一緒になってしまったのか)

そのようにして心の中でため息をつく。
そして数分が経過したところでメガヘクスは立ち上がった、bim兄貴とは一緒に居づらかったのだ。
気まぐれにに潜水艦内を散策するメガヘクス、すると一人のクローンヤクザが目の前を通り過ぎようとしていた。

「そこの」
「ハイ、何でございますか?」
「この潜水艦は何時、臨時基地につくのだ?」
「ハイ、あと三分でございます」
「そうか、分かった」

そう言い終えて再び散策を再開するメガヘクス、クローンヤクザはそれをお辞儀して見送った。

「しかし、主催の者達も情けないものだまさか本拠地を守れずに撤退する羽目になりさらには主催自身からも死亡者を出すとは」

先の九州ロボ陥落は当然メガヘクスも目撃していた。
その事に関してはメガヘクスは呆れていたのだ、しっかりとした戦力があった本拠地を何故守り通せなかったのかと。
攻めてきた戦力が超人血盟軍+αの精鋭ので致し方のないことだったのだがメガヘクスに戦力までの情報は渡っていない、
故に今のメガヘクスにあるのは主催への若干の失望だ、若干に留まっているのはもしものための基地を用意しておいたからだ。

「……とは言え、あの契約をしてしまった以上見捨てるわけにもいかんか」

メガヘクスが主催陣と交わした契約それはTCBRを終えた際、彼等の本体であった機械惑星再構築のための資源の提供であった。

(機械惑星の再建、それは確実になさねばならぬことだ全ての生命体を統一するためにも)

とは言えメガヘクスも馬鹿ではない、TCBRが終わった後の資源提供では機械惑星再建をすぐに成し遂げられるわけではない、
だからこそまずは宇宙船を作り機械惑星に相応しい星を見つける腹積もりである。

「だが未来の事ばかり考えていても致し方あるまい、まずはこの殺し合いを乗り切らなければな……何かきな臭いものを感じるがな」

メガヘクスもまた今まで集められた情報などによってこの殺し合いが唯の殺し合いではないと薄々感じている。
だが、その事に関しては頭に入れておく程度であり余り真相については聞こうとは思っていない、何故ならば消されるかもしれないからだ。
その事だけは避けねばならない、唯一生き残ったメガヘクスとして。その目的を果たすために。

【二日目・15時35分/東京都海底・潜水艦内】

【メガヘクス@仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル】
【状態】健康
【装備】太極図@封神演義、ライドブッカー@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、ネクロノミコン@クトゥルフ神話 、その他不明
【思考】基本:契約の為に主催の命令に従う
0:基地に着くまで待機。
1:本拠地陥落による主催に対する若干の失望。
2:この殺し合いなんだかきな臭いものを感じるが問い詰めはしない。

【bim兄貴@現実?】
【状態】健康、完全体バグスター、魂魄妖夢にそのまんまの容姿。
【装備】ゲーマードライバー@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド
【道具】支給品一式、ガシャコンパラブレイガン@仮面ライダーエグゼイド、エナジーアイテム各種@仮面ライダーエグゼイド、じゅうべえくえすと
【思考】基本:RTA走者として誰よりも早く任務をこなす。
0:みなさまのためにぃ、こんな動画を用意しました。
1:ちょっと潜水艦おそすぎんよぉ〜
※人の遺伝子があるためライダーの変身可能です。

※潜水艦はあと三分で大島基地に到着します。


◇ ◇ ◇


565 : 戦力集結/動き出す者 :2018/02/20(火) 12:40:13 phl02VpY0


そして舞台は潜水艦から戻り、伊豆大島基地その司令室。相変わらず基地はクローンヤクザが忙しそうに動いていた。
そのような場面であってもヤンは紅茶を欠かすことなく、沖縄方面を注視していた。

「……今の沖縄は何もかもが異常だ、そしてその異常の原因は――」

ヤンが一つの紙を見る、そこには沖縄のTC計測値が記されていた。
ディーヴァ及びシャドウだった者が激闘を繰り広げた沖縄のTC値は異常なほど高かった。

「やれやれ、これだけ高ければ沖縄の全てがおかしくなるのもわかるよ、厄介なことになった」

そう言ってヤンは座っている椅子にてため息をこぼした。
そしてヤンが再び沖縄の画像を注視した時に司令室のドアが開いた。

「おっ、来たね」
「ええ、それでディーヴァの反応が消失したってどうゆうことなの?」

そのまま早足でヤンもとに歩いて行ったココは直ぐにディーヴァの件をヤンに聞いた。すぐ後ろにメフィラス星人とジャックもいる。

「それはこの映像を見てくれ」

そう言ってヤンは映像担当のクローンヤクザに目配せを送る。
すると一つの画面が切り替わり、録画していた監視映像が映し出された。

「これは?」
「13時50分、沖縄で捉えた健在だった頃のテラカオスディーヴァの映像だ」
「ふむ、……なぜディーヴァは沖縄から出ようとしていないのだ?」
「それに関しては分からない、なんせ捉えられたのがこの時間帯だったからね、けれど私の勘だが何等かの要因で出られないようになってしまったと私は思うね
 その要因がまだ分からないんだけど」

ジャックの疑問にヤンは己の勘による推測を話した。

「勘か、……今は名将の勘を信じてみるか、それに本題はそれではないのだからな」
「そうですね、何時頃、何故シャドウの反応が消失したのかが我々が知りたいことです」
「ああ、それならこの先の映像を見てもらえばわかるさ」

そうして映像が早送りとなりディーヴァが暇を持て余して救世主らしい登場の仕方などをしていた様子は早送りで流された。
ある程度早送りが流れた後にヤンが早送りを止める。

「さて、ここからがとても重要な場面だ、目を離さずしっかりと見てくれ」

ヤンの前振りに、三人は静かに頷いた。
その頷きを確認したヤンは映像を再生した。
最初はやはりディーヴァの暇つぶし映像であり、特に変わった様子はなかった、だが突如として変化は現れる。
空が黒く黒く染まりつつあった

「……空が?」
「まるで世界の終りのようね」
「冗談になっておりませんよココ嬢」

三者三様に反応する、そして映像が進み――テラカオス・ディーヴァ・シャドウが現れた
その瞬間三人に言い知れぬ悪寒が走る。

「なに、アレは」
「分からん、だが少なくともアレは私達の敵だ」
「ええ、侵略者であった私が言うのもなんですがアレは侵略者以上の存在でしょう」

三人ともシャドウの事を本能敵に敵として認識した、それくらいあの存在は全ての生命にとっての脅威なのだ。
そして、暫くの睨み合いの後にディーヴァがシャドウに仕掛けた、だがシャドウが吹き飛ばしを発動したと同時に映像が途切れた。

「……これが観測できた映像の全てだ」
「つまり、ディーヴァはアレにやられたってことね?」
「恐らくはね」

ココの疑問にヤンは肯定する。沖縄が禁止区域であり尚且つ人がいないことからそれしか考えられないのだ。
このことにココとジャックは頭を痛めた。

「この重要な局面でディーヴァがやられたのがとても痛いわ」
「そうだな、それにあの存在……敵性存在はディーヴァを倒した、それならばとても危険であり強敵だ、今の私達では対抗できるんだろう」
「全くだね、いや、主催陣営が全員揃っていて尚且つベイダー卿が若返った状態ですら怪しいと思うよ」

ヤンがそのように言う、そもシャドウはTCを纏った存在でありTCを突破するものがなければどのような理不尽級でさえシャドウであった者には勝てないだろう。
ならばヤンの戦力評価も間違ってはいない。

「まったく、安倍から九州ロボを取り返さないといけないこの時期になんて存在が出てきたのよ」
「愚痴を言っていても仕方ないよマスター、起きてしまったことはどうにもできないからね」
「その通りだココ、遺憾ではあるが敵性存在はしばらく放置するしかないだろう」
「九州ロボを取り返さないと始まりませんからね」

九州ロボの奪還に予言の調査、それともう一つ敵性存在に対する対策も必要となった。
その事にココは愚痴り、他三名がそれを宥めた。

「とは言え、今の所招集できた機関員は二人だけ、もっと数がほしい所ですね」
「期待が薄いけれどね〜」

飄々とそう言ってヤンは紅茶を飲んだ、すると。

「アイエエエエエ!?」
「ブッ」

突如として上がったクローンヤクザの悲鳴に驚き紅茶を吹き出してしまった。

「何があった!」


566 : 戦力集結/動き出す者 :2018/02/20(火) 12:40:40 phl02VpY0
ジャックが悲鳴を上げたクローンヤクザに向かって即座に反応した。

「ハイ!九州ロボが移動を開始しました!!」
「なんですって!」

突如とした九州ロボの移動開始の報告、それに対しココが驚きの声を上げた。

「クッ、まさか安倍があそこまで九州ロボを掌握しているなんて、ファクターの私でしか九州ロボは動かないはずよ……」
「ああ、だがそれと同時に九州ロボがどこに移動しているのか問題だ」
「今すぐ移動する場所の予測を」

ヤンの発言を受けてクローンヤクザ達が九州ロボの移動予測地点の検索に入る。
暫く、カタカタと電子音のみが響き四人はそれをかたずをのんで見守った。
そしてその電子音が止み、一枚の紙が出てきてそれをクローンヤクザが手に取った。

「これを」
「ありがとう……ふむ、なるほどね」

ヤンがその紙に目を通し、ココ達にその紙を渡した。

「……まさか、沖縄に!?」
「何を考えているのだ」

そう、九州ロボが行く先、それは沖縄だった。
その事に関して三人は訝しんだ、なぜ今になって沖縄に向かうのかと。

「今の沖縄にいそうなのは敵性存在だね、もしかしたらそれを感じたのかも?」
「だとすればさらに厄介なことになるわ、……早く決断しないといけないのかもね」

ココがそう呟き、モニターを見た。
もう、時間は残り少ないとそう感じながら。

【二日目・15時35分/東京都・伊豆諸島基地・司令室】

【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
【状態】リンクスに改造
【装備】フォックスアイ(ネクストに魔改造)@ARMORED CORE、拳銃
【道具】ヒトマキナ・MS・TIEファイター×100
【思考】基本:世界滅亡を阻止するためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:残りの特務機関員を招集し、九州ロボを安倍の手から取り戻す
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは抹殺する
2:四条化細胞に多大なる期待
3:九州ロボを奪還次第、宮崎にある遺跡を調べる
4:なんとも厄介なことになったものだ。

【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン
【装備】ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギン、スパークドールズ(ダークザギ)、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×1000、
     主催倉庫から持ち出した無数の支給品、カプセルサイズのASO-3、力を失ったドラゴンボール
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:残りの特務機関員を集め、九州ロボを安倍の手から取り戻す
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:織莉子、キリカ、ごめんなさい……
4:真尋キュンprpr(テラカオスを完成させるまではニャル子に返さない)
5:どうやら決断の時は迫っているようね。
※スパークドールズ化した八坂真尋を戻すには、ダークスパークもしくはギンガスパークが必要です

【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品、ラッキョウ
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:ジャック達と共に安倍の手から九州ロボを取り返す
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:アナキン達の計画で本当に世界を救えるのか見極める
3:救済の予言、果たして本当なのですかね?
4:なるべく暴力は使いたくない
5:この状況、どうしましょうか。
※特務機関員です
※プロジェクト・テラカオスの全貌を知りました

【飛影@忍者戦士飛影】
【状態】正常
【装備】武装一式
【道具】なし
【思考】
基本:主催陣営の命令に従う
1:待機する
2:ランカ殺すべし、慈悲はない
※支給品なので首輪はありません
※合身すると何故か忍殺語になる時があります。
※裏切者を感知すると自動で攻撃するようプログラムされています


567 : 戦力集結/動き出す者 :2018/02/20(火) 12:41:10 phl02VpY0


【ヤン・ウェンリー@銀河英雄伝説】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:サーヴァントとして召喚され、禄を組まれたためそれなりの義理は果たす
1:伊豆諸島基地の守備
2:出来れば平和が続いてほしい
3:さて、どうするマスター?
※サーヴァントとして呼ばれましたが宝具が使えるのか不明です。

※テラカオスディーヴァの死亡を把握しました、それによりシャドウだった者の存在も把握しました。

◇ ◇ ◇


そして、舞台は変わり基地のデッキ、そこに二人の女子、メディアと紫がいた。
二人は沖縄の空を見上げていた。

「……何、あの空はまるでこの世の終わりみたい」
「ええ、まったく、この世のものとは思えませんね……」

二人は沖縄の空を見て悪寒を感じていた、この世が終わるのではないかという悪寒を。

「あの辺りには近づきたくないわね、何が起こるのか分かったもんじゃない」
「ですがいずれ近づかないといけなくなるかもしれません」

その紫の言葉にメディアは目を丸くした。

「冗談、なわけないか、嫌なものね……」
「おや、貴方は諸事情によりこの地を離れられない故に気にしなくても良いのでは?」
「……アレが沖縄だけで済むと思うのかしら?」

逆にメディアに聞き返された紫はメディアが指さした方向、沖縄の空を見る。
そして首を振った。

「いえ、恐らくはさらに広がってゆくでしょうねアレはこの世を終わりに導くかの如く」

その紫の言葉にメディアは肯定するのかのように頷いた。

「マスター達はどこまで対抗できるのかしらね」

そうメディアの口からこぼれた言葉を聞いて紫はスキマを介して移動した。
この世を終わらせない為に、幻想郷を守りとおすために。


【二日目・15時35分/東京都・伊豆諸島基地・デッキ】

【メディア@Fateシリーズ】
【状態】健康
【装備】破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)@Fateシリーズ
【道具】不明
【思考】
基本:マスター(ココ)の指示に従い伊豆諸島基地を守備する
1:部屋に戻って模型でも作ろうかしら?
2:マスター達はどこまでやれるのかしらね。


【八雲紫@東方Project】
【状態】健康
【装備】傘、扇子、スペルカード@東方Project
【道具】ソロモンの指輪、仙豆×55@ドラゴンボール、ネビュラスチームガン@仮面ライダービルド、ギアエンジン@仮面ライダービルド
【思考】基本:幻想郷を守る為に主催を手伝う。
1:特務機関員たちの招集を行う
2:どのような事をしても幻想郷を守る
※境界を操る能力に制限がかかっています

◇ ◇ ◇


568 : 戦力集結/動き出す者 :2018/02/20(火) 12:41:31 phl02VpY0


そしてここ九州ロボにて安倍は悩んでいた、己の強さにである。
確かに彼はテラカオスになったことによりその強さはそこらの参加者を蹴散らせる程度には強くなった。
だがしかしまだ足りない、まだ足りないのだ、この程度の強さではまだ負ける可能性が残る、だからこそもっと力が必要だと考えているのだ。
しかし、あいにく今の所自身を強化する手立てはない。

「さて、どうしましょうか」

九州ロボ掌握に関して一先ず区切りがふと浮かび上がってきたこの問題についてとても真剣に悩んでいた。
なお、救済計画のフォルダはそのプロテクトの硬さから後回しにされた。

「ううん、参加者たちを取りこめば済む話なのですが、今この九州ロボを離れるわけにいきませんしね」

そう、この九州ロボは主催の本拠地、バトルロワイヤルを運営をしていく中で絶対に誰かの手に渡すわけにはいかない。
旧主催陣もここに乗り込んでくるだろうからなおさらである。
それ故に安倍は積極的に外へは出ようとはしなかった、バトルロワイヤルの運営という思考が足を引っ張った形だ。

「………ふむ、参りましたね」

万事休すである、乗り込んでくるであろう旧主催陣を取りこめばいいのだろうが彼等もそれ相応に準備してくるだろう。
その時万が一にでも負ける可能性はある、だからこそその前に強化を終えなければならない。

「支給品も大部分を旧主催に取られてしまいましたし、まったく許しがたい行為ですよ」

支給品を奪った罪で辱めてやろうかと思い始めた時、安倍に何かが走った。

「これは……何でしょうか?」

そう言って安倍は沖縄の方へと向く。
それが何かは分からない、しかし強力なプレッシャーを感じる。
感じるのも当然だろう何故なら安倍はテラカオスである、ならばシャドウだった者を感じるのも当然なのだ。

「……ふむ、この方角を進めばその原因が分かるのですか?」

この強力なプレッシャーに当てられ、一つの事が思い浮かんだ。

「もしかすれば私を誰よりも強く出来るかもしれない」

確かにシャドウだった者は強力であり安倍が倒すことさえできればとてつもない力を手に入れられるだろう。
しかしだ劣化ディーヴァと言える安倍でどこまでやれるか不明なところであるが。

「それに、何やら見過ごせませんしね」

テラカオスの本能である、テラカオスとなった故に安倍もまたシャドウだった者を見過ごせぬ存在と認識したのだ。

「何はともあれ善は急げですね、いつ旧主催の連中が来るかも分からないですし」

そう言って安倍は九州ロボの移動を開始した、掌握作業に集中していたため移動に関しては自在に行えるようになったのだ。
この試み、はたして上手くゆくのだろうか、それは今は誰にも分からぬことだ。


【二日目・15時35分/九州ロボ】

【安倍晋三@TCBR1】
【状態】四条化、首輪なし、火水土風木電聖闇耐性(強)
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:バトルロワイアルを続ける
1:九州ロボを完全掌握する
2:ダース・ベイダーやジャック・Oなどの旧主催陣を全滅させる
3:沖縄に向かい、プレッシャーの正体を探り自身を強化する
※主催を乗っ取りました
※旧主催陣を憎んでいます
※風鳴翼の能力を継承しました
※サーシェスの能力を継承しました
※ナノマシンが自壊しても生き残る可能性があります
※テラカオス化はしてますが、大災害の真相には気づいていません
※五大幹部によるテラカオスを使った救済計画(プロジェクト・テラカオス)の存在を知りましたが、中身は知りません
※シャドウだった者の存在に気づきました


569 : 名無しさん :2018/02/20(火) 12:41:50 phl02VpY0
投下終了です


570 : 名無しさん :2018/02/20(火) 15:21:30 weIUBcxU0
投下乙。
安部さんそっちに行くのか......
なんか対主催集団が足を引っ張りあいどんどん地力を失ってるなかで風前の灯火だった主催陣営が安定して立ち直ってきたな(生き残れるとは言ってない)


571 : 名無しさん :2018/02/20(火) 17:58:14 phl02VpY0
すいません、名前間違えていたので訂正させていただきます


572 : 戦力集結/動き出す者(>>564) :2018/02/20(火) 18:00:13 phl02VpY0

ゲームをクリアしタイマーをストップさせてゲームクリアした時のタイムを言うということをやる存在。
RTAをやっているこの人はbiim兄貴と呼ばれたRTA走者である。
それがなぜかバグスターとなった上に人の遺伝子が存在する為、ゲーマードライバーを使い変身できるようになっているのだ。

「今回の完走した感想ですが――」
(……やはり理解が出来んな)

メガヘクスはbiim兄貴と一緒になってから話しかけてはいない、話しかけてもこちらを無視する可能性が高いからだ。
まるでこちらを見ていないかのように。

(まったく、なぜこの者と一緒になってしまったのか)

そのようにして心の中でため息をつく。
そして数分が経過したところでメガヘクスは立ち上がった、biim兄貴とは一緒に居づらかったのだ。
気まぐれにに潜水艦内を散策するメガヘクス、すると一人のクローンヤクザが目の前を通り過ぎようとしていた。

「そこの」
「ハイ、何でございますか?」
「この潜水艦は何時、臨時基地につくのだ?」
「ハイ、あと三分でございます」
「そうか、分かった」

そう言い終えて再び散策を再開するメガヘクス、クローンヤクザはそれをお辞儀して見送った。

「しかし、主催の者達も情けないものだまさか本拠地を守れずに撤退する羽目になりさらには主催自身からも死亡者を出すとは」

先の九州ロボ陥落は当然メガヘクスも目撃していた。
その事に関してはメガヘクスは呆れていたのだ、しっかりとした戦力があった本拠地を何故守り通せなかったのかと。
攻めてきた戦力が超人血盟軍+αの精鋭ので致し方のないことだったのだがメガヘクスに戦力までの情報は渡っていない、
故に今のメガヘクスにあるのは主催への若干の失望だ、若干に留まっているのはもしものための基地を用意しておいたからだ。

「……とは言え、あの契約をしてしまった以上見捨てるわけにもいかんか」

メガヘクスが主催陣と交わした契約それはTCBRを終えた際、彼等の本体であった機械惑星再構築のための資源の提供であった。

(機械惑星の再建、それは確実になさねばならぬことだ全ての生命体を統一するためにも)

とは言えメガヘクスも馬鹿ではない、TCBRが終わった後の資源提供では機械惑星再建をすぐに成し遂げられるわけではない、
だからこそまずは宇宙船を作り機械惑星に相応しい星を見つける腹積もりである。

「だが未来の事ばかり考えていても致し方あるまい、まずはこの殺し合いを乗り切らなければな……何かきな臭いものを感じるがな」

メガヘクスもまた今まで集められた情報などによってこの殺し合いが唯の殺し合いではないと薄々感じている。
だが、その事に関しては頭に入れておく程度であり余り真相については聞こうとは思っていない、何故ならば消されるかもしれないからだ。
その事だけは避けねばならない、唯一生き残ったメガヘクスとして。その目的を果たすために。

【二日目・15時35分/東京都海底・潜水艦内】

【メガヘクス@仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル】
【状態】健康
【装備】太極図@封神演義、ライドブッカー@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、ネクロノミコン@クトゥルフ神話 、その他不明
【思考】基本:契約の為に主催の命令に従う
0:基地に着くまで待機。
1:本拠地陥落による主催に対する若干の失望。
2:この殺し合いなんだかきな臭いものを感じるが問い詰めはしない。

【biim兄貴@現実?】
【状態】健康、完全体バグスター、魂魄妖夢にそのまんまの容姿。
【装備】ゲーマードライバー@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド
【道具】支給品一式、ガシャコンパラブレイガン@仮面ライダーエグゼイド、エナジーアイテム各種@仮面ライダーエグゼイド、じゅうべえくえすと
【思考】基本:RTA走者として誰よりも早く任務をこなす。
0:みなさまのためにぃ、こんな動画を用意しました。
1:ちょっと潜水艦おそすぎんよぉ〜
※人の遺伝子があるためライダーの変身可能です。

※潜水艦はあと三分で大島基地に到着します。


◇ ◇ ◇


573 : 名無しさん :2018/02/20(火) 18:00:56 phl02VpY0
wiki登録時に修正お願いします

それでは失礼いたします


574 : 名無しさん :2018/02/21(水) 05:55:46 tN74lqx60
安倍さん楽しそうっすね
主催サイドも建て直してるけどもう間に合わない感が半端ないぞ

自分も投下します


575 : 名無しさん :2018/02/21(水) 05:58:21 tN74lqx60
「テラカオス、だと……」

セルベリアは道下、遠野から聞いた情報に驚いていた。
しかもその発信源があのベクターであることから情報の信憑性と重要性は高い。

「うん、最期のベクター君の行動はちょっと異常だったな。セルベリアおばさん」
(私は……おばさんなのか?)

道下は頷きながらベクターがスカイツリーを倒壊させた時の事を語りだす。
ベクターが焦って壊すほどに駆られた理由とは何なのか。

(待て、私達もクラウザーさんの曲を流し戦力を増強している……それと同じことをしたのか)

セルベリアおばさんはベクターの一件と自分たちの共通点を発見した。
それが何らかの音を拡散させるという事だ。

(テラカオス……もしもそれを拡散させたとなれば……DMCどころか世界が、危なかった?)

この際言うのもなんだが、DMC狂信者も早々世界を滅ぼしたいと考える者は少ない。
セルベリアを筆頭にクラウザーさんの降臨する世界がなければSATUGAIの意味がないからだ。
だが、もしもベクターが警戒する程の存在だったのだとすれば。

(不味いな。もしディー達に知られれば)

幸い、今のセルベリアの近くにディーはいない。
ホモ達の報告をわざわざ三人で聞く必要はない。セルベリア一人で十分という判断だったが、これは不幸中の幸いだとおばさんは考える。
もしもディーがこの話を聞けば心中用の別プランとして、テラカオスを利用しようとするのは目に見えているからだ。

「この事は他の者には内密にしてくれ」
「どうしてですか、おばさん!」
「おば……それは……」

さてどうしたものかとセルベリアおばさんは悩む。
恐らくだがホモたちはカギ爪の意思を継ぐために世界の存続を選ぶだろうが、絶対とは言い切れない。
もしもクラウザーさんが生き返らなかった場合は、どんな解釈で馬鹿をやらかすか分からない。

「お困りのようですね。セルベリアさん」

だが突如、聞き覚えのない声が響き渡る


576 : 名無しさん :2018/02/21(水) 05:59:37 tN74lqx60

「何者なんだ!?」

「申し遅れました……我が名はゼロ!」

セルベリアに対しその黒い仮面にコートをマントを着込んだ男はそう答えた。

「ゼロだと? どうやって、この場に入り込んだ」

ここは狂信者の総本山、ビッグサイトである。部外者が容易く侵入できる場所ではない。
対してゼロは遠野と道下を交互に見ながら呟いた。

「正面から堂々と……なあ道下君、遠野君」
「うん」
「そうだね」

遠野と道下は笑顔で頷く。その二人の目が赤く光っていたように見えたのは気のせいか。

「失礼ですが、テラカオスのお話は全て聞かせていただきました。
 その上で提案がある。私と共犯者になるつもりはないだろうか?」
「何?」
「少なくとも、貴方は世界の存続を望む者なのでしょう。そして他の上層部たちはそうとも限らない」

心が読まれているかのようにゼロによってセルベリアの心情が当てられた。

「万が一に備え、奥の手を用意すべきではありませんか? そう……不穏分子を排他し、貴方がこの狂信者を牛耳る事も視野に入れるべきだ」
「貴様! 何を―――」
「諦めを前提とする者に事を成すことなど不可能だ」

ゼロの口調が強まった。セルベリアは武器に回した手を止めてしまう。

「古来より優れた指導者は例外なく奇跡を起こしてきた。それは何故か? 
 奇跡とは願うから起こるのではない。
 念密な情報の収集、作戦の立案……何より諦めという逃げを一切捨てた猛者どもの執念があらゆる盤上を引っ繰り返し、結果を手にしてきたからだ。
 そう、奇跡とは起こすものなのだよ。セルベリア」
「私を抱き込もうとしているのだろうが、そうはいかない。ゼロ、お前はここで始末する」

人修羅と化し竜殺剣ドリスを突きつけるセルベリアに対しゼロは微動だにしない。

「望んだのだろう? あの歌声をもう一度」

初めて聞いた時、あの歌声はいかれた阿呆にしか聞こえなかった。
それでも聞いていく内にセルベリアの中身をクラウザーさんはレ〇プしていった。
気付けばクラウザーさん抜きでは生きてはいけない体になった。

「決意したのだろう? あの歌声を拒む世界ならば、ねじ伏せてみせると」

殺し合いが始まり、クラウザーさんの死を知りセルベリアは決意した。
何を犠牲にしても、どんな方法を以てしても必ずクラウザーさんを蘇生させると。


577 : 名無しさん :2018/02/21(水) 06:01:04 tN74lqx60

「誓ったのだろう? 再び世界をあの美声で包み直すと」

例え狂気の中にあろうともセルベリアの強き信念はクラウザーさんへと向けられていた。
最早、狂気を超えた気高き忠義だ。

「選べセルベリア。
 貴様は世界に屈した敗者か、それとも神すら下し奇跡を起こす救世主(メシア)となるか!」

悩むまでもない。

「愚問だな。私に敗北はない」

セルベリアは敗者など天地がひっくり返ろうとも御免だ。
必ずや、如何な手段を用いてもクラウザーさんを蘇生させる。

「では、どうする?」
「……ディー達を裏切れというのか、この私に」
「その用意はすべきだ。私も貴方と同じ、クラウザーさんを必ず取り戻したい。
 この世界で、もう一度あの声を浴びるように享受したい……それだけだ。
 私は……そう、貴方が内密に隠し持つ、切り札と考えていただければ良い」

切り札、確かにもしもディーが暴挙に出た場合は彼らですら知らないカードを持つことは重要だ。
とはいえだ。はっきり言って、いきなり現れたぽっと出の怪しさ丸出しの変な仮面の男など信じられない。
恐らく仮面を取れと言っても外すことはない上に正体も一切不明だ。

「一つ。私をカギ爪団に配置していただきたい」
「何?」
「私が貴方に信頼を買わせるには功績が必要だ。
 その機会を頂きたいのです。それに、今はポーンを指揮する王が必要では?」

カギ爪団の戦力はまだ数でいえば半分も減ってはいないが、ネームドキャラに関してはまだ把握していない者もいたりとかなり把握が曖昧だ。
それも指揮官のカギ爪が死亡したことも痛い。

(ホモ共の報告でカギ爪は死んだ……。彼らは純粋なクラウザーさん信望者とは些か経緯が違う所がある。
 見張りは必要か?)

このゼロという男を見極めるにも持ってこいかもしれない。
もしも不穏な動きがあるのなら即座に殺し、万が一にもセルベリアが信頼を置けるとなれば……。

「分かった。お前を通常の狂信者として、カギ爪団に配置しよう」
「ありがとうございます。必ずや、貴方のお役に立ってご覧に入れましょう」

ゼロという男はそのままマントをはためかせ、セルベリアの元を去っていった。


578 : 名無しさん :2018/02/21(水) 06:01:35 tN74lqx60

「道下、遠野……」
「分かってます。この事は黙ってます」
「はい、同志もきっと世界の崩壊は望んでないと思うので」
「そうか、それと―――」

ホモ共もそう言いながら去っていった。
ホモ達もまたベクターと同じく、カギ爪の意思を尊重し世界の崩壊は避けたかったのだ。

そして誰もいなくなった部屋に一人。


「私のやっていることは……裏切りなのか」

クラウザーさんへの想いは皆が同じだったはずだ。
けれども、どうしてこうもすれ違い合ってしまうのだろうか。

「いかんな。またクラウザーさんの歌を聴き、精神を落ち着かせよう……最近動揺することが多いぞ」

更年期障害かもしれない。


【二日目・16時00分/東京都 ビッグサイト】

【セルベリア・ブレスおばさん@戦場のヴァルキュリア】
【状態】人修羅化、やや動揺、首輪解除
【装備】マロガレ@真・女神転生Ⅲ、竜殺剣ドリス@セブンスドラゴン
【道具】支給品一式
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、自爆はしたくない
0:現段階ではテラカオスについては内密に調査する。他の連中には知らせない。
1:ビックサイト防衛部隊を指揮する
2:小町はいつか、この手で必ずレ○プ(倒す)する
3:自爆による心中は反対、最後まで諦めたくない
4:サーフに謎の違和感
5:最悪の場合はディー達を……?
6:ゼロという男に対して今は保留
※マガタマを取り込むことで人修羅化し、物理攻撃を無効化する敵にも物理攻撃でダメージを与える貫通のスキルを得ました
※竜殺剣を所持している限りは竜や龍に対して特攻ダメージを与えられます
※影薄組のことを組織に伝えました
※自爆による無理心中の件には納得がいっていない様子です


579 : 名無しさん :2018/02/21(水) 06:01:52 tN74lqx60



「テラカオスについて調査しろか」

道下は緊張気味に呟く。
セルベリアから下された指令の一つがテラカオスついてのの隠密な調査である。
はっきり言って、他の連中にそれをさせた場合、絶対に隠密どころか超目立つ方法で操作をする。
それにセルベリアの身近な人物ではディーに感づかれる可能性もある。
よって、それなりに距離感がありかつディーの意見に賛同しないであろうホモ達が調査に適任だった。

「重要な任務だしやり遂げないとね」
「まあ、セルベリアおばさんじゃモチベは上がらないけど、本当に世界が滅ぶなら同志ならそれは絶対に阻止しようとするしね」


【DMC狂信者 カギ爪団残党】

【道下正樹@くそみそテクニック】
【状態】健康
【装備】ユニコーンガンダム(大破寸前)@機動戦士ガンダムUC
【道具】支給品一式
【思考】
基本:同志のためにもクラウザーさんを蘇らせる。
0:テラカオスについて調査する
1:SATSUGAIする。
2:阿部さんや同志は僕の中で生き続けているんだ……。
3:テラカオスについては黙っておく

【遠野@真夏の夜の淫夢】
【状態】健康
【装備】やわらかスマートフォン
【道具】支給品一式
【思考】
基本 基本:同志のためにもクラウザーさんを蘇らせる。
0:テラカオスについて調査する
1:SATSUGAIする。
2:先輩や同志は僕の中で生き続けているんだ……。
3:テラカオスについては黙っておく

※カギ爪に影響されてDMC入りした狂信者達は少なくとも世界を滅ぼす心中には反対の可能性が高いです。
※一応カギ爪の男の目的はクラウザーさんの歌を使った世界平和なので。
※しかし個人差や解釈の違いもあるでしょう。実際は後の人にお任せします。

残存モブ戦力:全滅
       ただし、予備兵力はまだまだいる模様


580 : 名無しさん :2018/02/21(水) 06:02:34 tN74lqx60
(馬鹿ホモ共と羊水の腐った行き遅れの未婚の独身ババアが……お前らはボロ雑巾のようになるまで利用して捨ててやる)

ビッグサイトから離れた場所で、ゼロの中身ことルルーシュは邪悪な笑顔を浮かべていた。

(俺があんなつまらないバンドにハマる訳がないだろう……お前らのせいでナナリーさえ死ななければ……!)

今から数時間前の事である。
ルルーシュはたまたま聖帝軍の近くを通っていたのだが、DMC狂信者との戦いの流れ弾でナナリーは死んでしまったのだ。
もうこうなった以上ルルーシュはDMC狂信者達への復讐を思い立った。

【ナナリー・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】死亡

(とにかく、セルベリアに近づき、カギ爪団に入れたことで最低限の条件はクリアした。
 理想はセルベリアにギアスを掛ける事だったが、あの容姿を見るに通用するかは分からない。
 ほかの連中もギアスが通じない存在がいないとも限らない。安易な使用は危険だな……)

ルルーシュの持つ絶対順守王の力は、対象に一度のみどんな命令をも従わせる王の力だ。
だが確証はないがセルベリアを初め、上層部連中はギアスが通じない可能性がある。
これはDMCに限らず殺し合いの参加者達にも言えることだ。
下手に過信すれば命取りになる。

(だがカギ爪団への配置は大きい収穫だ。所詮カギ爪のワンマンチーム、要を失った集団程、脆いものはない)

カギ爪団は強力で膨大な戦力を持ってこそいるが、反面カギ爪の圧倒的カリスマによって統制されているのも事実だ。
勿論クラウザーさんへの忠誠もあるだろうが、その垣根にはカギ爪に人心掌握があることに間違いない。
故にカギ爪を失ったカギ爪団が求めるのは新たな同志の存在、より正確には同志の意思を継いだ新しいカリスマだ。
黒の騎士団を率いていたこともあるルルーシュだ。そんな集団ならば容易に心を掴み、上手く利用できるかもしれない。

(残党とはいえ、DMC狂信者でも一際目立った組織であることが間違いない。
 カギ爪の思想を振りかざせば、それに染まる者は出てくる。そこから戦力を補充してもいい。
 みんな、愛なんて言葉が大好きだしな)

カギ爪の思想で厄介なのは、死後もその心に残るというサイコ理論だ。
だが逆を返せば死人の意思を勝手に引き継ぎ、代弁することも可能という事だ。
それらしい理屈をつければ奴らは、縋る者に引き寄せられていく。

(とはいえ、やはり一枚岩ではないか……フフ、同宗教間であっても争いが起きることは歴史が証明している。
 ましてや殺意に満ちた野人の集まりとなれば当然、付け入る隙はありそうだ) 

あれほどの人数が集まれば思想の違いが起こるのは自然な事だ。


581 : 名無しさん :2018/02/21(水) 06:03:26 tN74lqx60

(クラウザーを生き返らせる方法があるのなら、それを利用してナナリーを生き返らせる。 
 それまでカギ爪団は俺が利用してやるさ……フフフ……アッハハハハハハハハ!!!)

「ねえ、お兄ちゃん。どうしたの、そんな怖い顔して」

その時、ルルーシュに声を掛ける褐色ロリの女の子が現れた。
イリヤを黒色にした女の子、クロエである。
細かいことは置いておいてイリヤの姉妹だ。

「何でもないよクロ……怖がらせちゃったかな」
「怖くないよ、お兄ちゃんが心配だっただけだから」

しかしそのクロエの様子はおかしい。彼女のお兄ちゃんは世界で一人しかないのだ。
だが親し気に呼ぶそれは本当の兄弟である。
それもその筈、何故ならルルーシュはナナリーを失った傷を癒すためにクロエに俺の妹になれとギアスで命じていた。
それも一人ではなく妹キャラを見つけ次第掛けてしまった。

「お兄ちゃん」

美遊・エーデルフェルトがルルーシュに抱き着く。

「ルルーシュ……ううん、お兄ちゃん」

結城美柑が照れながらお兄ちゃんと呼ぶ。

「流石お兄様」

司波深雪が褒める。

「にぃに」

橘美也が抱き着く。

「イリヤも見つけてあげないとね」
「そうだな……イリヤも早く探してやらないと、寂しがってるだろうしな」

どの口が言うのかあまりにも自然で当然といった口調でルルーシュは答えた。

「流石の私もドン引きだぞ」

他人の妹とイチャコラしてる後ろでC.C.は呆れながら呟いた。
正直、この光景はめちゃくちゃ気持ち悪い。
自分の妹が死んだので他所の妹を洗脳してその代わりにするなど、気持ち悪さの極致にいると言ってもいいだろう。

「黙れ、魔女が! 俺だって、こんなこと良くないのは分かってる……それでも、それでも俺にはナナリーが必要なんだよ!!」
「お前、この光景をそいつらの身内が見たら殺されるぞ」

ルルーシュもそれは分かっていた。他人の妹を自分の妹にするなど許される事ではないのだ。
しかし、例え間違っていようとルルーシュには妹が欲しいのだ。
それが偽りであったとしても。

「お兄ちゃん大好きだよ」
「お兄ちゃん、抱っこして」
「もう、お兄ちゃんったら仕方ないんだから」
「流石ですわ、お兄様」
「にぃに、ナデナデ」

「ああ……俺もお前たちが大好きだ!!」

その空虚で楽しそうな笑みを見ながら、C.C.は冷ややかな視線を向けていた。

「は、ハレンチだわ!」

その時、古手川唯が偶然通りかかりルルーシュ率いる妹ハーレムを見てしまった。
ただの妹ハーレムなら古手川もハレンチおっぱいを揺らしながら立ち去っただろう。
しかし、その妹ハーレムのなかにリトの妹の美柑がいるのであれば話は別である。
あまりの光景に咄嗟に声があがってしまった。


582 : 名無しさん :2018/02/21(水) 06:03:52 tN74lqx60

「あ、貴方……何をやって……」
「くっ……“お前は俺の事が大好きな妹になれ”!!」

ルルーシュはギアスを発現させてしまった。
こう見えて、古手川も兄を持つ妹なのである。

「あっ……またやってしまった……俺としたことが!」
「おいおい、あのバカは片っ端から妹を増やすつもりか」

ルルーシュは自らの行いを悔いていた。
こんな偽りの妹を増やすなど、ナナリーに対する裏切りだというのに。
そんなルルーシュにC.C.は更に冷ややかな視線を向けた。

「お兄ちゃん……なんか人前だと恥ずかしいね」

(この声、ナナリー!?)

古手川のお兄ちゃんという声にルルーシュはナナリーとの共通点を見出していた。
そう、非常に声が似ているのだ。というか中の人が一緒である。

「お兄様と呼んでくれないか、唯」
「早速呼び捨てか、馬鹿じゃないのかあいつ」

ルルーシュの事が大好きな妹になった古手川は勿論それを拒むことはない。

「お兄様……これでいいの?」
「は、ハハハハ……最高だよ唯!」
「そうだ、美遊。君もお兄様と呼んでくれないか?」
「お兄様、どう……?」
「お前達は最高の妹だよ!!」

余談だが美遊も同じ声である。

「ズルい。私もお兄ちゃんに褒められたいのに」
「にぃに! 私も」
「流石ですわ、お兄様」

「ハッハハハ、みんなヤキモチを焼かなくていいぞ。全員大事な俺の妹なんだからな」


「気持ち悪いなこいつ」


583 : 名無しさん :2018/02/21(水) 06:05:07 tN74lqx60


【二日目・16時00分/東京都】


【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、ゼロの服装、妹への欲求(超極大)
【装備】ゼロの仮面、ガウェイン@コードギアス 反逆のルルーシュ(後部座席)
【道具】支給品一式
【思考】基本:ナナリーを生き返らせる
1:カギ爪団に混じりながらDMC狂信者のクラウザー蘇生方法を探る。
2:ギアスの使用は慎重にする。
3:1の為、ゼロとして行動する。
4:こうなった以上、妹達は責任持って俺が幸せにする。

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、ルルーシュにドン引き
【装備】ガウェイン@コードギアス 反逆のルルーシュ(操縦席)、スマホ@スマホ太郎
【道具】支給品一式
【思考】基本:ルルーシュの共犯者として行動する。
1:気持ち悪過ぎる。
2:この黒いの(クロエ)似たような奴をネットで見たぞ

【クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
【状態】ギアスによりルルーシュを大好きな兄として認識中
【思考】基本:お兄ちゃん好きぃ。
1:イリヤを探す。

【結城美柑@ToLOVEるダークネス】
【司波深雪@魔法科高校の劣等生】
【橘美也@アマガミ】
【状態】ギアスによりルルーシュを大好きな兄として認識中
【思考】基本:お兄ちゃん好きぃ。

【古手川唯@ToLOVEるダークネス】
【状態】ギアスによりルルーシュを大好きな兄として認識中、想像妊娠中
【思考】基本:お兄ちゃん好きぃ。
1:お兄様の子を妊娠したかもしれない……


584 : 名無しさん :2018/02/21(水) 06:06:03 tN74lqx60
投下終了です
タイトルは交差する狂気でお願いします


585 : 名無しさん :2018/02/21(水) 12:59:25 cbygChFA0
投下ラッシュが嬉しい 乙
また狂信者が増えたと思ったら、松ちゃんに次ぐ爆弾か
セルベリアは心中には大反対だったし、仕方ないね
それとしれっとセルベリアの状態表の名前までおばさん扱いされてて草


586 : 名無しさん :2018/02/21(水) 13:55:26 v0h89xTo0
前半と後半の差がひでぇw
更年期やおばさん扱いされてるが、セルべリアって何歳だっけ?


587 : 名無しさん :2018/02/21(水) 14:23:26 e2DyUu0.0
前半は狂信者を手玉に取る新手の巨悪かと思ったけど
このルルーシュ、色んな意味でダメくさいw

>>586
22歳……実はピヨちゃん・はやて(Force仕様なので25)より若いのだ


588 : 名無しさん :2018/02/21(水) 14:29:32 e2DyUu0.0
ついでにヴァルキュリアプレイしてたから思い出したんだけど
ルルーシュの中の人、マクシミリアン(セルベおばさんの上司)と同じなんだよなあ
ちなみにディーとドリスコル(厳密には別ゲーのコラボだが)の中の人は同じ池田秀一


589 : 名無しさん :2018/02/22(木) 04:57:25 9AUTJ9sU0
地味にクロエと美遊、美柑と古手川がいるので聖帝軍のイリヤと闇が戦いづらいですね…
個人的にはおばさん呼ばわりされて戸惑っても怒らないセルベリアがツボw


590 : 名無しさん :2018/02/22(木) 23:29:22 y5xCh9PM0
そういや、クラウザーさん復活するとどうなるの? ロワ終わるの?


591 : 名無しさん :2018/02/22(木) 23:36:29 x1GimUV20
それは書き手次第。
いちおう、そうなった時の展開は考えてる。


592 : 名無しさん :2018/02/22(木) 23:40:37 u.kaAHkI0
まぁ、クラウザーさんがシャドウに取りこまれてないと良いな……


593 : 名無しさん :2018/02/23(金) 11:49:32 uCAqf19c0
クラウザーさんが復活するよりしない方がディーの自爆テロ誘発で怖いのに、死者スレが掌握中じゃシステム使って乗り込めないからなぁ
一応死者スレ側も抵抗はしてるらしいから、仮にクラウザーさん取り込まれても狂信者の誰かが身代わりになったりとかしてそうだが


594 : 名無しさん :2018/02/23(金) 13:17:47 Neox7mZg0
これもう実質クラウザーさんも被害者やろ


595 : 名無しさん :2018/02/24(土) 10:48:54 O1KAtp7E0
DMC信者見てるとリアルでもよくあるアイドルとファンとの軋轢・かみ合わなさを感じるなw
まどかとモモみたいな信者はまとも……と言いたいが、実のところ原作的にはクラウザーさん(根岸)的には嬉しくないという罠
本人的にはココやルルーシュみたいなアンチの方が望ましいのが笑える


596 : 名無しさん :2018/02/25(日) 18:31:32 JJDLUFJY0
ビッグサイトにクラウザーさんの代わりにシャドウが降臨する可能性が…?


597 : 名無しさん :2018/02/25(日) 18:36:35 9ojorSso0
もしくはシャドウの傀儡となったクラウザーさん


598 : 一より二 :2018/03/04(日) 12:09:45 6aT7ClYw0
「ズェア!」
「はあぁ!」

振り抜かれる鳴神と世界樹の剣が激しくぶつかり合う。
その衝撃だけで、スカイツリー近辺は次々に崩壊していった。
きらりんロボに蹂躙された観光地は、さらなる激闘により見る影もない凄惨な状況となっている。

だが諸悪の根源たる二人の剣士はそんなことを僅かたりとも気にしていない。
一言で言えば『滅』である。お互いに目の前の『悪』を滅ぼさなければ気が済まないし、それしか見えていない。
そもそも相手に集中し続けなくては、あっという間にやられてしまう危険性があるのだから、仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。

「おのれぇ……!」

常に冷静であったハクメンは、苛立ちから徐々に意外と熱く激昂しやすい面を見せ始める。
この男、実は割と人の話を聞かない性格でもあり、これはネオクライシス帝国とのやりとりでもお解り頂けるだろう。
もはやこの戦いを第三者が止めることは不可能。止めようとする物好きもいないだろうが。

「ズェァ「くらえ!」ァァァアアァ!」

バックステップをしながら、ハクメンは似つかわしくない叫び声をあげる。
そう、彼は苛立っている。かつてない程に。

「どうしたんだい、さっきから躱してばかりじゃないか!」

理由は当然、目の前にいる『凶』ことレストである。
彼は対マーラ戦で見せたアビリティ『鋼身之構』を常時使用してハクメンと戦っているのだ。
このアビリティの効果はハイパーアーマー、格ゲーなどでも見かけることは多いだろう。
何をしても仰け反らない浮き上がらない、鋼の身体。
いやらしい能力だが、弱点として多段ヒットする攻撃をモロに全部くらう点などがある。
だが当然メリットもある。何をされようが怯まないということは、相手のコンボ攻撃を強引に止められるということになる。

ハクメンが一太刀を振るえば、それを受け止めてダメージを受けながらも前に出て肉薄できる。
ハクメンは中距離に対して絶大な制圧力を誇るが、その反面超近距離への対応できる技は少ない。

「無駄だ!」

思い通り、普段通りの戦いができないというのは非常に不快だ。
しかし元々ハクメンの強みはドライブ能力、当身技にある。レストの攻撃のほとんどは、ハクメンに届くことは無い。
それでいて尚、ハクメンが苛立つ理由は至って単純。

「無駄なのはそっちさ。この程度でここを退くわけにはいかない!」

攻撃を無効化され、反撃を受けても気にする素振りもなくゴリゴリと接近し続けてくるレスト。
この男、とにかく出鱈目に硬いのである。
もはや通常手段では測定不可能な防御力と体力に、錬成装備の防御と特性、エーテルリンクによる三竜とサクヤ分の追加補正。
全属性吸収に全異常無効、物理と無属性のみが通るが、その軽減率は半分の半分の半分、驚異の87.5%軽減。
そこに氷嵐の支配者の能力である氷河の再生が加わる。毎分最大体力の5%自動回復。
たった5%と思う人もいるだろうが、本家氷嵐の支配者が使うだけで邪魔なスキルなのだ。その支配者より遥かに硬い奴が使えばどうなるか。


599 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:12:26 6aT7ClYw0
「ズェアズェアズェアズェアズェアズェアァァァァ!!!」

玉を消費しての常人なら文句無く即死コースのコンボも潰され、再生しながら突っ込んでくる馬鹿みたいに硬い吹っ飛ばないサンドバッグ。
道を遮る障害物としては、これ以上邪魔なものはないだろう。
加えていまや『凶』認定の原因となったきらりの耐性まで引き継ぎ、致命的だったデバフにまで完全耐性ときてる。
これを真っ向から落とすとなると、ハイパーアーマー状態の時に超多段ヒットする広範囲無属性攻撃を延々当て続けるしかない。
宿敵のテルミにも同じ事が言えるのだが、所謂ゲージ技やそれによるコンボを使えないとハクメンの火力は大幅に下がってしまう。
コンボが繋がらないハクメン一人では、再生を上回る速度でこの防御を削り切ることはできない。

「く……はは、やっと捕まえた」
「ちぃ!?」

そしてハクメンのもう一つの弱点。基本の当身は投げ技には対応できない。

「ずぅぇりゃあああぁぁぁ!」
「がぁっ……!?」

剣を戻し、拳を伸ばしたレストはハクメンを初めて掴むことに成功する。
そこから繰り出されのは、担ぎ上げからの拳奥義、ジャンピングパワーボム。

勿論ハクメンは投げに警戒するし、投げに対する反撃手段も持っている。
しかしレストは威力はともかく所持している攻撃アビリティが豊富であり、また変則的な動きも含まれているのだ。
その全てに対応する当身を使いつつ投げを警戒するのは、ハクメンとて楽ではない。

「そこだっ!」

剣から拳、担ぎ上げからの叩きつけ、そこからさらに瞬きの間もなく武器は神の槍グングニルへと変わっている。

「……!」

「グランドインパクトッ!」

だが槍はハクメンに向けて放たれるのではなく、地面に叩きつけられた。
対ハザマ戦でも見せた、大地を揺るがしさらに吹き上がる衝撃で敵全体をカチ上げる大技だ。
しかしながらこれは本来はハンマーアビリティ。
変則的なのは武器とアビリティの関係にも当てはまり、使用武器で油断させつつ別種武器のアビリティを発動させることもできるのである。

「小細工をっ!」
「ぐぅ……!」

しかし今度はハクメンが読み勝った。
槍が地面を揺るがす前に既に空中に飛び立ち、衝撃波の範囲外から技の発動直後で硬直したレストに強烈な咢刀を叩きこむ。
本来ならばこのまま空中行動に移りたいが……

「羅閃ッ!」

即座に別アビリティでの反撃。
迂闊に欲張り攻め込めば、余計な攻撃を受けてしまう。
しかし攻め続けなければ、再生を許してしまう。

「く……」

ハクメンは表情こそ変えないが、『凶』に対して焦りを覚えていた。
相手は防御寄りの能力。先程は手痛い投げを受けたが、他の攻撃は躱すか掠める程度で済ませられている。
このまま戦っても自分が油断をし、『凶』の持つ高威力の技をまともに受けでもしない限り、敗けることはないだろう。
だがこの『凶』を滅せられるかと言えば非常に怪しい。
コンボが使えず硬すぎる挙句に再生。正直『悪滅』を直撃させても仕留めきれないかもしれない。
さらに全能力を解放すれば或いはだが、敵はこの『凶』だけではない。まだ複数体も残っているのだ。
悪魔将軍にも言われたが、まだここで余計な力を使うわけにはいかない。
しかしこのままずるずるとこの男を相手にしていたら、確実に大幅なタイムロスだ。他の『凶』を増長させる危険性もある。
素通りしようにも相手がこうも攻め込んできてはそれもできない。ハクメンはただ悩みながら、戦い続けた。


600 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:14:55 6aT7ClYw0
(くそ……厳しいなぁ、これ……)

だがハクメンが悩む以上に、接近戦を挑み続けるレストは悩んでいた。

ハクメンは知る由もないが、そもそもこの戦いは最初からハクメンの勝利が確定していたのだから。

確かにレストの硬度は異常であり、あのマーラすら攻撃力と防御力は自分以上だと称賛する程。
しかし同時にマーラは、スピードと持久力は自分に及ばないと評価している。
ハクメンに勝つことができないのも、ここに起因している。
スピード面、これは決してハクメンも優れているとはいいにくい。どころか単純な機動力ならレストが上回るだろう。
ここでいうスピードとは『技の速度』である。
ハクメンを倒すには、強大な一撃を叩き込む必要がある。体力を削ることはできるだろうが、ある程度負傷すればハクメンは退くだろう。
それでは時を斬られ、逃げられる。逃げらては、いつまたきらりが狙われるかわからない。
だがレストの必殺の一撃はいずれも範囲は正面扇型な上に僅かな溜めを要する。見てから当身余裕でしたな反応が可能なハクメンとは致命的に相性が悪い。

そして持久力。
今やデバフ耐性すら得て、正攻法での打破は不可能といっていいほどの防御力を得たレスト。
しかし彼にはデバフ耐性とは違う、仲間にも伝えていない本当の致命的な弱点が存在する。

攻撃のために剣を振り、拳で殴り、槍で突く。
防御のためにアビリティを使う、回復魔法を唱える。
自分のため、仲間のため、装備や料理を作る。
そのいずれの行為にも彼はルーンの力、所謂魔力を逐一消耗する。
そして消耗した魔力は、食事か大地の力の溢れた地で休息しなければ回復することはない。
どれだけ強くなろうが、ドラゴンハートの恩恵を受けようが、こればかりは変えられない生まれ持った体質。
魔力が尽きれば、もう剣の一振りもできない。完全な置物と化すのだ。
世界樹なら話は変わるが、今の戦場は焼け焦げ崩れ去り、大量のヨロイ達が散らばる自然とは無縁の地。
そしてハクメンを前に、僅か数秒にも満たないとはいえ食事という無防備な隙は許されるはずも無い。
加えて今はエーテルリンクの維持にも魔力を割いているため、時間経過と共に魔力は減り続ける。
対してハクメンの勾玉は、時間経過で上昇を続ける。

持久力の差は、あまりにも明らかだった。


601 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:17:01 6aT7ClYw0
(きらりとの連戦、それに鋼身之構とエーテルリンクの長時間維持、残り25%もないかな。この状況を僕一人でどうにかするのは……)

自身に残された魔力を考えながら、レストはひたすら攻め続ける。
それは即ちさらなる魔力の減少、いわば己の死に近づく行為だが、ハクメンに自身の体質と限界が近いことを悟られるわけにはいかない。

本来であれば、魔力が切れても耐久力は変わらない以上、それこそサンドバッグの様に殴られ続けるだろうが死にはしない。
ハクメンの秩序の力がどの程度のものなのか。それは詳しくはわからないが、ハクメンの反応から混沌に対しては絶対の力を持つのだろう。
魔力が空になればエーテルリンクは解ける。だが完全に制御可にしたきらりの力は果たして分離するのか?
そして秩序の力を抑え込むサクヤの光。こちらは確実に分離する。本人の同意もなくその身体を取り込んだのだから当たり前だ。
きらりの混沌が残ったままサクヤの光が離れる。それはつまり、ハクメンの秩序の特効を受けるということになる。

(ああ、くそ。結局僕は、一人じゃ何もできないままじゃないか。どれだけ強くなろうと穴が塞がりきらない)

「ズェ「無心剣ッ!」ッッ!?」
「はは、僕も当身技は持ってるんだ。今度はもっと確実に撃ち込む!」

ハクメンの攻撃を、当身のアビリティで防いで反撃するレスト。
表面で余裕を装い、互いが当身を警戒して殴り合いが少し減っても怪しまれないようにする、苦肉の策。
内心では、己の無力を呪う。

(いつしか人との繋がりを自ら捨てた僕が、今更になって……また誰かを欲するなんて、笑えないよ)

「ならば、これでどうだ?」
「くっ!?」

ハクメンの『椿祈』が当身を読み切り打ち込まれる。
コンボが繋がらないのならば、単発で大きく削りきるしかないだろう。

(いや、とっくに前からか。この殺し合いの世界において僕は確かに強者の部類だろうけど、誰かの力を借りなきゃ、勝てなかった)

かつての風鳴翼とぼのぼのとの戦いは、影薄がぼのぼのを倒してくれたのが大きい。
狂信者の大軍勢との戦い。メタられ、ダオスがいなければ取り巻きはともかくハザマと大和は倒せなかった。
地獄のようなマーラ戦。疲労していたとはいえ、真っ向勝負で敗北した。まどか達がいなければ、昇天コースだっただろう。
さっきのきらりとの戦いもそうだ。みんなの協力が無くては、魔雲天がいなければ救出は失敗していた。
そして今。セルとサクヤの力が無ければ、こうもハクメンと殴り合うことはできなかっただろう。

(一つの個が、修練の末、届きうる限界。それを卓越して個の極地に達せたとしても……個であることは変わらない)

「ズェアアァ!」
「はああぁぁ!」

(僕も、こいつも。守りは硬いが穴はある。あのベジータだってそうだった。誰にだって苦手とすることはある。一人じゃ、限界がある)

「ぬん!」
「くっ!」

至近距離からのハクメンの蹴りを受け止めながら、レストは結論に近づく。



(そう……忘れようとしていた。でもやっぱり人と人の繋がり、支えてくれる人は大切だなんだなぁ……)



ドラゴンハートの恩恵も受け、個の極地すら踏み越えた男は、同じく踏み越えた目の前の秩序を前にそれを悟るのであった。


602 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:18:25 6aT7ClYw0
(でも、駄目だ。大切だからこそ!こいつをみんなのところには行かせられない!ここで僕が食い止めないと!)

思い浮かぶ仲間の顔。
かつての仲間は大災害で人間も魔物もほとんどが死んでしまった。
紆余曲折を経た今の仲間も数をどんどんと減らし、ハクメンの侵攻を許せば確実に犠牲者は増える。

(今の僕一人じゃ、こいつを倒しきることはできない。でも、二人なら……)

(サクヤ……)






ーー


「ソウル?」
「はい、私やホルスさん……自分で言うのも変ですが、ある程度の地位にいる神々やドラゴンはみんな持っているんです」
「魂とは違うのかい?」
「そうですね、意思を司る非物質が魂で、力を司る半非物質がソウルと言えばいいのでしょうか?」
「なるほどね。それでそのソウルがどうかしたのかい?」
「……私たちは召喚されると、契約主が死ぬか契約を破棄するまで契約には逆らえません。
ですが本当に心から信頼できる人であれば、死後も力になろうと、己の力の結晶であるソウルを遺します」
「……死後も酷使するのは、あまり気持ちのいいものじゃないね」
「いえ、これは私たちの遺志でもありますし、誇りでもあります。
ホルスさんもよく、『ホルもいつかはソウルを遺す相手に会いたいホル。ホルは主人公タイプホルから、その人もきっと主人公になれるホル!』
とか言ってましたからね。主人公タイプというのがちょっとよくわかりませんが……
とにかく、私たちの自らの遺志で遺すのです。このソウルは、その信頼できる人と一体となって初めて真価を発揮します。
本来は特殊な器具を使いますが、レスト様ほどの遣い手ならば……」
「待ってくれサクヤ。それはつまり君が……」
「勿論、この身のままでお仕えしたいです。ですがこの世界は神々さえ容易に屠られる世界……」
「そんなこと、させやしない」
「ありがとうございます。ですがどうか憶えておいてください。ソウルを手にしたならば、解号はーー」



ーー

「……僕は、君の信用に足る主人であれたかい?」
「貴様、何を言っている?」
「お前に言ったんじゃないよ。ああ、本当に最後まで使いたくなかったよ忌々しいお面野郎め。
……でも、まだ残されてる大切なものを守るためだ。サクヤ、どうか許してくれ。そしてどうか、その力をッ!」

「『クロスオン』ッ!!!」
「ッ!?」

突如、『凶』が似つかわしくない眩い光を放つ光景に思わずハクメンは息を呑む。


603 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:19:47 6aT7ClYw0
「……ありがとう、サクヤ。この力で、君と僕とで、こいつを討つッ!」

そして光が晴れた。
光より現れた『凶』は……

主従の完成形とも言える、エーテルリンク以上の一心同体『ソウルアーマー』に身を包んでいた。

「…………『凶』なうえに『変質者』だったか。どこまでも救えんな」
「黙れぇ!?こうなるのは僕も予想外だよ!」

しかし何故かその格好はベースとなっているサクヤと同じミニスカートであった。
良心なのかスパッツは履いているがだったら背中のふりふりリボンもとってせめて男物の衣装で来いというのが、ハクメンの場違いで正直な感想であった。





「この程度、サクヤが受けた辱めに比べればなんともない!『彼女の』力をその身で受けろ!」
「!?」

しかしハクメンの意識はすぐさま死闘のものに引き戻される。
予想外の格好の変身を繰り出してきたが、予想外なのはその力もだ。
『凶』でありながら、まるで黒き闇の力を感じない。『凶』でありながら、強き光の加護を持っている。

「四神乱舞!」

レストが叫びサクヤの力を行使すると、周囲の魔力が騒めき始めた。
主従一体となったソウルアーマーは、ベースとなったモンスターのスキルとは同名でありながら、その力も大きく変化する。

「これは……!?」

ハクメンが驚くのは無理もないだろう。
周囲から闇の気配が次々に根絶されているのだから。
その身をソウルアーマーとさせたサクヤの闇を払う力はさらに強化され、周囲の魔力を闇以外の四属性に強制変換させるものとなっていた。

「何故だ、何故『凶』に光が加護を与える……!?」

そして闇以外の力が、光の名の下に吸い寄せられていく。
流石にハクメンも即座に身構える。この闇を排除した魔力の収束は、間違いなく予備動作だ。
そしておそらく、これは見てから当身余裕とはいかない。
当身やガードすら強引に貫通するような、度を超えた危険な一撃の気配。歴戦の勘が警鐘を鳴らし続けている。

「く、ら、え、ぇ……ッ!!!」

ミニスカートをはためかせながら、舞い踊るように動く『凶』
しかしハクメンはそれに動じることはない。動じてはいけない。この攻撃はマズイと、嫌でも感じ取ってしまう。


「彗光・四源の舞ッ!!!」


直後、これ以上ない程の暴力的な光を纏った拳がハクメンに迫る。

サクヤの能力であった四源の舞は闇以外の四属性が周囲に揃った時、その攻撃力を『5倍』にするというもの。
だがソウルアーマーとなり、彗光四源となった現在の攻撃上昇率は……


『40倍』である。


「ぐっ……!?」

しかしまさにハクメンに迫ろうとしたレストは、突如胸に内側から激痛が奔った感覚に襲われ、僅かにその体勢を崩した。

「ッ……!?ならば、こちらも終いにするまでだ!」

そしてハクメンはその隙を見逃さない。

繰り出されるは虚空陣奥義『悪滅』
投げさえも受けられる当身は、当然体勢を崩した拳も受けられる。
直後に放たれるは、何人も回避不能な絶大な攻撃の嵐。
発動すれば相手に待つのは『死』のみだ。


604 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:21:37 6aT7ClYw0

「ッ……はははは!この、程度か……!まどかのレーザーの方が、痛かったねぇ……!」

「く……!!!」

しかしここにきて、『悪滅』は初めて耐えきられた。
『悪滅』を受けた相手は死ぬ。
しかしそれは確定即死判定ではなく、常人なら何度も死ねる程の回避不能の超オーバーキルダメージを与えるからだ。
規格外の攻撃は、規格外の防御で耐えられたのだ。






防御越しに勿論『悪滅』は大きなダメージを与えている。
しかしハクメンは当初より『悪滅』でもこの『凶』を倒しきれない可能性は考慮していた。
だからこそ、ここは屈辱極まりないが驚きこそすれ予想の範囲内ではあり、即座に防御態勢に移ることができた。


「貴様はーー」


言い終える前に、ハクメンは彗光四源の一撃を受け、遥か彼方へと吹き飛んだ。






「げほげほっ……くそっ、体勢崩したうえに今のは入りが浅かった……!
あいつめ、最初から耐え切られるのわかって身構えてたな……」

咳き込み吐き出した血を拭いながら、しかしレストはようやく僅かばかりの安息の時を得た。
今の一撃ではあの侍は仕留めきれていないだろうが、少なくともある程度の傷は与えて遠方までは吹き飛んだ筈だ。
例えまた即座に攻め込んできても、数秒の余裕はあるだろう。その間に小鳥印の青汁でそれなりに消費した魔力は回復できる。

しかし。

この場からハクメンの脅威が去ったことは、彼により大きな絶望を与えることとなる。

「ーーッ!?」

流しこんでいた青汁を思わず噴き出しそうになるのを堪えて強引に飲み下す。
しかしそうすれば今度は吐き気に襲われる。
どうして今まで気がつかなかったのか?
答えはわかりきっている。ハクメンと自分の殺気のせいだ。

「なんだ、この禍々しさは……!?」

くしくもきらりの混沌を宿し、同時に闇の気配に敏感なサクヤと一体化した影響で、遠方のその気配は感じるなという方が無理なレベルだ。
先程の侍、ハクメン以上の威圧感と禍々しさを放つ何かがこの世界に存在する。
そしてそれは本来、存在してはならない。本能的にそう察してしまうほどの、形容し難い禍々しさ。

「サクヤ……?」

そしてもう一つ。
先程胸に奔った激痛。あれは攻撃を受けたのではない、内側からの痛み。
とっくにあらゆる異常を受け付けない身体だ、病気の筈がない。金属を練り込んだ料理も喰えるほどの悪食だ、食あたりでもない。
考えられるのは『彼女』の、サクヤの痛みだ。

「……」

レストがサクヤをソウルアーマー化させなかったのは、女装装備になるからでは勿論ない。
狂信者が考えるように、彼もまた心の何処かでサクヤの蘇生を考えていたのだ。
身体を取り込みある種の保存状態とすることで、いつか彼女の魂を見つけてあるべき身体に戻す。
完全な一心同体となってしまった今ではその方法ももう使えなくなってしまったが、レストは何故だか嫌な予感がして再びその禁術を唱える。

「ゲート、リジェクト」

勿論、既に都庁で二度に渡り失敗している術だ。魔力が減った今使っても絶対に失敗することはわかっている。


605 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:23:50 6aT7ClYw0
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ……!!!」
「うっ!?」



数秒だけ開かれる、死後の国へのゲート。それが開かれた瞬間、苦悶の声と共に見知らぬ無数の手が伸ばされてきた。
そしてそれを掴んだり振り払うより先に、さらに奥から拡がってきた『影』によって腕は捕縛される。

「ッ!」

目の当たりにした瞬間、レストは即座に自分の意思でゲートを破壊する。
助けを求めるような存在を無碍にするのは心が痛んだが、あの『影』は解き放ってはいけないのだと本能が叫んだ。
僅かに吸い寄せられるほどの、取り込めば更に強くなれるかもしれない『影』の力。
だが身の程を弁えず大きな力を取り込み、肉体が耐えきれずに死んでいった哀れな老王をこの目で見たこともあるのだ。
今の『影』の力もその類。そしてそんな力が死後の世界に蔓延しているのだとしたら。

「はぁ……はぁ……前はあんな力はなかった……!
それに今の『影』はさっきから感じるこの禍々しい気配と同じだ……!」

全身から嫌な汗が止まらない。
紛れも無い恐怖。ハクメンを前にしても感じなかったそれを、確かに今感じていた。
死者を絡め取る影、そして遠方の気配。本来ならばこれらは繋がらない。
だが仲間たちと情報を共有し意見を交わした今なら話は変わる。

「ダオスさんの時空干渉すらまともに発動できない程、今の世界は歪められている。死後の世界なんて、特に干渉が難しい世界だ……
それをあの『影』は、意思を持って死者を襲っていた。『影』と同一の存在は確実に現世にいるのに、そんな真似ができるのは……
ああ、あの『影』が、この気配が、時空をそもそも歪めてる原因、大災害……『TC』なのか……」

思わず乾いた笑いすら漏れてしまうような、圧倒的に禍々しき力。
まだ世界全土は大災害に見舞われていない。それでいて死後の世界にすら干渉しているのだ。
大災害本体は死後の国を絡め取るどころか完膚なきまでに破壊し尽くすのは想像に容易い。

「魔物や妖精には自然を司る存在が多い。古龍ともなれば、自然災害の厳しさを具現化したような存在も多くいる……
どうして考えられなかったんだ。いわば『小さな大災害』、大災害の具現化だってありえない話じゃない……!」





『小さな大災害』
言わば意思を持つ災害。
それは今に限った話ではなく、それこそ世界樹の三竜やフォレストセルも当てはまる。
天災と称される古龍も生ける災害であり、ベジータやマーラといった存在もこれに含んでもいいだろう。

今まで見つかっていなかっただけで、『TC』を司る生物も存在していた。それだけのことなのだ。

「大災害が近づいて降臨したのか、あるいは目覚めたのか。それはわからないけど……
時間は刻一刻と迫っていて、あの『小さな大災害』すらどうにかできないようじゃ、本当の大災害は止められそうにないね……」

言わば片鱗であの力。片鱗でここまでの恐怖を感じるのだ。
大災害への恐怖もより大きくなったとしても誰も咎めることはできない。
心が折れそうになるほどのそれは、落胆の声と共に吐き出される。

(でも……僕も魔雲天さんと同じ様に諦めは悪い方なんだ)

しかし、こんな世界でも決して諦めずに戦う者はいた。
どんな絶望的状況でも彼は笑い、言葉通りにきらりを救い、支え、取り戻してみせた。

(一人では限界がある。そんな時は仲間に頼る。誰か支えて貰う。初歩的で当たり前だったことだけど……今こそ、これ以上にない大切なことだね)

震えはいつの間にか止まっていた。

(意思があるってことは生きているということ。それならば攻略の糸口、穴も もある筈だ。
そしてそれはきっと、本体の大災害の解決にも繋がるだろう。立ち止まらず、みんなにこれを伝えよう)

(それに、サクヤ。あの痛みは、君の魂が影に囚われたからなんだろう?駄目じゃないか、僕より先に君が闇に堕ちちゃ。
……今度は僕の番だ。君の魂は、必ず救い出してみせる)

遺された力と想いは無駄にできない。
これまでに倒れてしまった多くの存在のためにも、大災害は止めなくてはならない。
死後の世界の危機でもあるのならば、それは決して比喩や誇張でもない。


606 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:25:52 6aT7ClYw0
「なんてこった!騒がしいから何事かと思えば、こんなとこにヘルヘイムのオーバーロードがいやがるぞ!」


「なっ……」

「殺せ殺せ!なんとしてでも!」
「お、おい……でもあいつまさか、風鳴翼さえ倒したって奴じゃ?」
「構うもんか!よく見ろ、あいつは女装趣味の変態だ!」
「変態オーバーロードなんかより、俺らの方が背負ってるもんが大きいんだ!負けるわけがねぇ!」

だがいきなり響くハクメンのものではない、何者かの怒声。
それに続くように、次から次へと多くの怒声がレストを瞬く間に取り囲む。
その殺気は並々ならぬものであり、手には各々何かしらの武器を持っている。どえ考えても殺す気だろう。

「……狂信者?いやーー」
「死ねぇ!害獣がぁぁぁぁぁ!!!」

あまりの事態に、レストは彼らが狂信者なのではないかと考える。
しかしその答えを導き出すよりも、彼らがそれに応えるよりも、何よりも先に剣が振り下ろされる。

「ふざけているのかい?狂信者なら、こんな唯の鋼の剣なんかじゃ僕には1のダメージも入らないってわかってーー」

「ヘルヘイムのバケモンが!」
「世界はわたさねぇぞこの変態が!」
「俺、乳神様を助けて乳揉ませて貰うんだ!」

「ちょ、待ちなよーー」

振り下ろされた剣は一瞬で粉々に砕け散った。そしてそれを繰り出した男の腕も衝撃で同じく砕け散った。
男は絶叫した。だがその絶叫を搔き消し、別の人間達が連続で襲いかかってくる。
数の暴力が恐ろしいことは誰もが知っている。

だが彼らはハクメンと比べて……いや、これまで出会ってきた参加者誰と比べても、比べるのが失礼な程に、余りにも。

ーー弱かった。









「「「うぎゃああああぁぁぁぁ!?」」」

今度はしっかり絶叫が響く。
殴りかかった拳は潰れ、振りかぶった斧は砕けた刃が持ち主に突き刺さり、銃弾は跳ね返り別の人間を貫いた。

「少しは落ち着ーー」

「「「「「怯むな!なんとしてでもこいつを殺せ!」」」」」

雨あられと降り注ぐ様々な攻撃。
だがそのどれも弱く、致命傷どころか1のダメージも入りはしない。
代わりに無謀な突撃をしてくる人間に致命傷が跳ね返り、辺りにはあっという間に骸の山が出来上がった。

「う……強ぇ……!」

ようやく波がおさまる。
まだ何もしていない、喋れてもいない。それでいて自分の周りに死体が増えている。
とてつもない異常事態。ハクメンや大災害と比べればとるに足らない存在たち。そんな存在に、レストはある種の恐怖を感じ始めていた。

「少しは話を聞け!君らはっ……げほっ、何がーー」

「いや、効いてる!効いてるぞ!吐血したぞ!俺らの攻撃は効いているんだ!」
「なんでえ、オーバーロードっても大したことねえんだな!」
「おい、動画録れ!俺らの勇姿とこいつが惨く死ぬ様を残せれば、他の連中のヘルヘイム狩りの士気も高まるぞ!」
「安心しろ、最初からもう撮ってるよ!」
「カオスロワちゃんねるにも『変態オーバーロード狩り』でリアル配信してるぜ!」

にわかに盛り上がる人間達。
その異様な光景にレストはもはや口を開くことを辞めた。
力み、むせ混み、血を吐いたのは事実だ。しかしそれはハクメンの与えたダメージからであって、この様な有象無象からは一切のダメージは受けていない。

(こいつら、DMCの狂信者じゃない。余りにも弱すぎるしおめでた過ぎるし、何よりクラウザーさんの名を一言も口にしていない)
「おらぁ!」
(だけど、なんなんだ。これは?)
「いけいけいけぇぇぇ!」
(見ればわかるだろう?君らじゃ僕には勝てないどころか全くダメージを与えらない!慢心とかじゃなくて、これは事実だ!)
「へへ、秘蔵の岩鉄斬剣の出番だぜ!」
(武器も貧弱だ!最低限ダイヤやオリハルコン斬れるレベルを持ってきなよ!)
「見ろよ、オーバーロードの奴俺らにビビってるぞ!」
(……今更だけどモモ達、斬鉄剣折らずに僕にちゃんと突き立てられたんだよなぁ。黒子曰く一般人らしいけど、凄く頑張ってるじゃないか)
「戦車もオシャカにするスーパーバズーカだぜ!」
(それに対してこいつらは、ホントもう、なんなんだよ……)
「俺たちが、ヘルヘイムから世界を救うんだ!」
(ヘルヘイムに、オーバーロードか。僕はそれに勘違いされて襲われているのかな?)
「やれる!やれるんだ!」
(やれないよ。オーバーロードがどんなものか知らないけど、ここまでお粗末なレベルと装備に技術じゃあね)
「ウホッ!いい男の娘!」
(ヤらせないよ!)
「思い知れ、人類の力を!」
(……いつまで続けるつもりなんだろう?)


607 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:28:50 6aT7ClYw0
(普通、これだけ死体が積み重なったら、諦めるなり動揺するなり、せめて少しは作戦考えてからまた攻撃してくるだろう!?)

様々な武器を構え、言葉を吐いてきた人間達。
だが彼らは一人の例外もなく武器を完全に破壊され、反動で身体のどこかしらを吹き飛ばされながらそこら中に転がっていた。
相手は無抵抗なサンドバッグだ。それを一回殴っただけで殴った側が死ぬのだ。明らかに異常だ。
そしてそんな異常を目の当たりにしても何も変わらず攻め込んでくる人間は、もっと異常だ。

「ーー狂ってる」

レストはようやくその一言を口に出せた。





「いいぞ!この調子でーー」
「調子に乗るな」



突然の暴風が、群がっていた人間と骸の山を吹き飛ばす。発生源はレストであり、彼の表情は呆れの色が濃かった。

「いい加減に悟りなよ。その力じゃ僕は倒せない。これだけ犠牲者出してまだわからないのかい?」
「野郎、お前が同志たちを殺したんだろうが!」
「みんな、騙されるな!同志の死も私たちの攻撃も無駄じゃない!現に奴は傷つき血を吐いている!」
「今の風だって、俺らは耐えれた!生きてる!オーバーロードの攻撃だって耐えられんだ!」
「急に話かけてきたのは、分が悪いからなんとかこっちを騙そうって算段だ!このまま行けるぞ!」
「「「うおおおおおおぉぉぉ!!!!!」」」

「…………っ」

心底、絶句した。
そっちが身の程わきまえずに殴ってきて自滅したんだろう。
この傷は前の戦いの傷だ。
哀れすぎるから死なない程度の風を頑張って調整して出したんだよ。
少しは人の話を聞けよ。
言いたいことは山程あるが、もう何を言っても無駄だとこっちが悟ってしまった。
何がなんだかわからないが、この連中は狂信者以上に狂っていて、まともな会話すら成り立たない。
そのくせ脆すぎて何もしなくても勝手に死んでいく。狂信者の死が100歩譲ってクラウザーさんのためになってもこの連中の死はザ・犬死だ。

(昔、僕や魔物を迫害した人間と同レベルの話の聞かなさ具合だなこれ……。グランドインパクトで全員土に還してやりたいけど)
「みろ、図星でオーバーロードの奴だんまりだぜ!」
「変態オーバーロード、論破されるwwwも継続配信www」
(あーもう面倒だな!なんだよ動画だのネット配信だの!土に還したらそこも全国配信というか、既にこれだけ僕はやってないけど結果的に殺った光景も配信されてるのか!?しかもこの格好で!?)

呆れ哀れみ怒り。様々な感情が渦巻くが、ギリギリのラインで皆殺しは堪える。
これ以上、世界樹の悪評を加速させるわけにはいかないという判断だ。
これが全くの無駄な努力だと気がつくのはもう少し後の話。

(ここで僕が世界樹に戻れば、このめでたい連中は『僕がたまらず逃げた』って思って余計に調子に乗りそうなんだよなぁ……)

かといっていつまでも無駄な時間を費やせる程、暇ではない。最初から選択肢は一つしかない。

(ダオスさんすみません。僕じゃこいつら処理しきれないんで、後はお任せします。『小さな大災害』の情報持ち帰るんで許してくださいよ……)

心中で頼れる魔王に謝りながら、レストは帰還魔法で世界樹へと戻る。
新たな覚悟と新たな脅威の情報を持って。

「に、逃げやがった!?」
「いや、これは俺たちが優勢な証だ!このままヘルヘイムに乗り込むぞ!」

そして危惧した通り、世界樹をヘルヘイムと盲信した暴徒はより勢いづき、敵の本拠地を目指す。
沖縄の脅威も、後の大災害も知らず、自分たちこそがこの世界を救うのだと信じて疑わずに……


608 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:32:42 6aT7ClYw0
【二日目・15時30分/東京・スカイツリー跡地】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【状態】中ダメージ、中魔力消費、各種超耐性、ソウルアーマー・サクヤ、首輪解除
【装備】最大錬成世界樹ノ剣、最大錬成防具、草原のペンダント、グングニル
【道具】支給品一式、不明品、封じられた闇核、三竜の逆鱗、ニアラの逆鱗、竜殺剣『天羽々斬』、ファガンの卵 、小鳥印の青汁×沢山
【思考】
基本:サクヤのためにも、人間としてこの殺し合いを終わらせる
0:仲間たちにお面野郎(ハクメン)、死後世界にも干渉する小さな大災害(シャドウ)、そして暴徒の存在を伝える
1:影薄三人と同盟軍の味方と共に大災害回避の道を探る
2:サクヤの魂を救い出す
3:あわよくば竜と結婚できる世界を作りたい
4:天魔王軍とDMC狂信者、拳王連合軍は絶対に許さない
※ブリーフ博士の技を覚え、首輪解除が可能となりました
※現時点で、フォレスト・セルとの長時間のリンクは不可能です
※竜殺剣は所持しているだけでも竜やそれに近い種族に特効性能を持ち、結界や再生などの特殊能力も無効化することができます
 テラカオス・ディーヴァや真竜などには特に高い効果を発揮します
 また巨大な外見に反してとても軽いため、小柄な少女でも振り回したり投擲することができます
※ゲートリジェクト(異空間移動)使用不可

※沖縄のシャドウの存在及び、シャドウによる死者スレへの攻撃を知りました。シャドウの存在はきらりも感知してる可能性が高いです
※ネット上に『変態オーバーロード』の一人として動画を晒されました




ーー







「……」

同じ頃。
吹き飛ばされたハクメンもまた、殺気が薄れたために沖縄の異変を感じ取っていた。
かつてない程の『凶』の気配。この気配の前では、先ほどの変質者の『凶』も本来追っていた少女の『凶』も可愛いものだと言えた。

「ち……」

ハクメンは、己の行動を悔いていた。
気配を感じるのは沖縄だ。大阪から東京に来て、また沖縄まで引き返す?なんと無駄な。
そして引き返している間に先ほどの『凶』達がより凶悪な存在になったら?
思うようにいかないのはさっきの戦いに限らず、もっと根本的な基本方針からだ。
『悪』を『滅』せない。なんということだろうか。
『悪滅』を耐えきられ、不完全と思われる一撃を受けかなりの距離を吹き飛ばされた。
『凶』に。それも女装趣味の。

「忌々しい…………しかしこの気配、この『凶』だけは、なんとしてでも滅さねばならない!」

想定外の痛手は受けたが、戦うぶんには支障はない。ハクメンは再び時を斬り沖縄へーー


609 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:36:49 6aT7ClYw0
「……」

行かなかった。
静かに刀を納めると、彼は頭をおさえる。

「だが、我では勝てぬか……」

それは悪を許さない絶対秩序の、初めての弱音ともとれた。

「少し、急き過ぎたか。あの『凶』すら滅せられずこのザマ……沖縄へ向かったとして、同じ過ちを繰り返すのみ……」

ハクメンにとって、『凶』を討ち漏らすことはあってはならないことだ。
先ほどの『凶』も、拠点は割れている。追えば追撃は十分できるだろう。

『……ありがとう、サクヤ。この力で、君と僕とで、こいつを討つッ!』

「……『凶』の言葉を考えることなど無意味だ」

だがハクメンには、その『凶』の言葉が特に強く残っていた。
君と僕とで。あの『凶』は最後に『一人』から『二人』で攻めてきた。
あの衣服や『彼女の力』と言ってのけた『凶』、そしてあの光の加護の強さ。
おそらくは、あの『凶』にとって大切な少女がいたのだろう。そしてそれはなんらかの理由で命を落とした。

「……ツバキ……」

自分にも、そんな存在はいたのだ。
とても、大切な。

「……ここは一度、拳王達と合流すべきか」

彼女は今はいない。だが代わりに仲間はいる。ハクメンは『凶』の討伐を踏み止まり、仲間との合流を優先した。

「一人で届かぬならば二人で、か……」

それでも駄目ならば、さらに多くの仲間と。
ハクメンは知る由もないが、忌み嫌う『凶』と同じ結論に達していた。

(そうだったな……)

そう、英雄と呼ばれた彼にもかつて仲間がいた。
痛み分けに終わった『凶』との戦いは、ハクメンにも大切なことを思い出させていた。

「……行くか」

ハクメンは立ち上がり、『凶』ではなく『仲間』の元へと歩みだす。
だがハクメンの行動はこれまでなかなかうまくいかず、大なり小なり何かしらの壁にぶつかってきた。
そういう星の元なのかもしれない。だから今回も、ぶつかってしまった。
それは『凶』との遭遇。

「……む?」
「ーー」
「なっ……!!??」

その『凶』と遭遇した瞬間、沖縄の『凶』に匹敵する恐怖をハクメンは感じた。
思わず反射的に飛びのいてしまう。認めたくないが、確かな恐怖がハクメンに逃げを選択させたのだ。

「し、死んでいるのか……?」

おそるおそると言った様子で、ハクメンは動かない『凶』に近寄る。
こいつのことだからどんな汚い手を考えるか、わからない。どれだけ警戒してもし足りないことはない。
ハクメンが見つけたのは、因縁ある『凶』、ハクメンの存在意義でもあった滅ぼすべき『凶』
ユウキ=テルミだった。
本来ならばかつてない死闘が繰り広げられたのだろうが。

『アヘェ……』

「うっ……!?ぐ、おおぉぉぉ……!!!?」

ハクメンはテルミの顔を見た瞬間に謎の幻聴を拾い、猛烈な吐き気に襲われた。

あいつは精神体だ。仮に死んでいてもそれは器だけかもしれない。だがこの顔は間違いなくあいつの顔で。

『アヘェ……』
「うっぷ……」

確認のために嫌々ながらテルミの遺体に近づくハクメン。
見た目も酷いが臭いも酷い。
何があったらこうなるのか?やはりこいつは別人なのではないか?
こんな蕩けきった幸せそうな表情のテルミなど、誰も見たことがないだろう。
感涙の痕跡、口からも多量の唾液の痕跡。だらしなく出されたままの舌。こんなだらしないテルミの顔も、誰も見たことがないだろう。
見ればなんだか両手もおかしい。何故か両手でピースサインを作っている。
何かを隠し持っているのかとその手を元に戻そうとしたが、頑なにピースは崩れなかった。

「…………どうやら先程の攻撃で視覚と嗅覚にもダメージを負ったらしい。そうに違いない。早く拳王達と合流せねば」

そしてテルミの尻が大変なことになっているのを目撃した瞬間、今度こそハクメンは逃げた。
自分に言い聞かせるように、時を斬るのも忘れて必死に走った。
あれは、テルミじゃない。
よく警戒してみれば周囲にテルミの気配を感じなくなっているが、きっと他の『凶』の気配に埋もれているのだ。
偉いことだ。これは早く新たな『凶』を狩らねば。
だからひとまず、あれだけ意気込んだけどテルミを滅するのは後だ。
そういうことにしよう。
これ以上やる事なす事全部裏目に出るのは御免被る。
沖縄の『凶』を滅する。これだけは成し遂げなくてはならない。
ハクメンはひたすらに駆け続けた。


610 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:37:35 6aT7ClYw0
【二日目・15時30分/東京・???】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【状態】中ダメージ、unlimitedモード 、吐き気及び若干混乱
【装備】斬魔・鳴神
【道具】支給品一式
【思考】基本:『悪』を全て滅する
0:拳王達との合流後、沖縄の『凶』への対抗策を考える
1:主催及び世界に災いをもたらす者を『刈り取る』
2:風鳴翼は滅する
3:東京の『凶』は警戒を続けるが後回し
4:あれはテルミではない……テルミではないんだ……
※unlimitedモードに入りました

※沖縄の『凶』(シャドウ)の気配を察知しました。能力から他の参加者よりも具体的な位置がわかります
※結界でシャドウが動けないことまでは知りません


611 : 名無しさん :2018/03/04(日) 12:39:29 6aT7ClYw0
投下終了
当初は相討ちで二人とも死ぬ予定だったけど、シャドウにこいつらが操られると詰みかねないんで痛み分けということに


612 : 名無しさん :2018/03/04(日) 16:00:32 KNtBIapk0
投下乙
和解はならずに痛み分けか...
都庁の誤解は最大レベルでもう誤解を解くのは無理っぽい
そしてライバルにすらライバルと見なされないぐらい終わってたテルミさん...


613 : 名無しさん :2018/03/04(日) 22:32:28 2kFW0gl60

とりあえず戦力的には減らなかったが、誤解しっぱなしだし都庁はもうこれヘルヘイム疑惑払拭不可能だし
厳しい状況なのは変わらんな。てかこいつらすら単騎じゃシャドウに歯が立たないってのが……
そして同じマーラ様に貫かれて死亡でも、主人に色々な面で貢献し続けるサクヤと因縁のライバルに吐きながら逃げられるテルミの差よ
あの顔でアへ顔ダブルピースとか確かに怖いけど。てか元々のボディの飛竜は何を思うのか


614 : 名無しさん :2018/03/05(月) 11:18:32 SUe5wKTE0
シャドウの何がアレって、TCで防御性能トップクラスのこいつらすら貫通して一撃死させかねないうえ
殺した相手を完璧な駒として強化した上で使役してくるのがね……
ハクメンらはどうにかなったが、それこそテルミや悪魔将軍、マーラ様とか使役されたらヤバいのが既にいるし


615 : 名無しさん :2018/03/05(月) 12:01:24 3VEbIiQ20
マーラ様は亜空間送り、テルミは魂的に死亡(&対して強くなかったのが発覚)しているだけでも救いか……

というわけでSS投下!


616 : Meeeeaaaat! Processing Plant :2018/03/05(月) 12:02:49 3VEbIiQ20
東京のどこか……というか八王子にてバドとカイザは襲いかかってきたディケイドカイザを難なく撃破した。

「馬鹿なああああああ!!」
「二つの王の力を持つ俺に勝てるわけがないだろ」
『紛い物が本家に勝てるわけないんだよなあ……』

バドの姿をよく見るとジュウオウバードのスーツの上から黄色と黒のパーカーベストを上から纏っていた。
戦闘中にゴーストドライバーと草加雅人眼魂を使ってジュウオウバードクサカゴーストに変身したのだ。
その結果、戦闘力が単純計算で二倍以上になり、カイザとシザリガーを押していく。
何よりカイザの癖を知っており、中の人の関係でザリガニの生体に詳しい草加のフォローによって敵の攻撃は尽く弾かれ、最後はゴルドスマッシュを喰らって爆発四散するのだった。

【仮面ライダーカイザ@仮面ライダーディケイド 死亡確認】



カイザを撃破したバドは惨劇の場所となったパーティー会場を見回す。
そこにさっきまで戦っていたシザリガーがいない。

『バド、さっきのザリガニはどこにいった?』
「俺たちに勝てないと思って逃げたんだろう」
『俺たちに歯向かった罰として今すぐ殺してやりたいところだが……』
「祝い手も皆殺しにされた以上、このパーティー会場にも用はない。すぐに追いかけるぞ」

自分たちに歯向かった罰としてすぐにでも追いかけようとするバド及び草加。
だがその時、たまたま足元に転がっていたリモコンのスイッチが入ってしまった。
TVがついて一瞬驚くバド。

「なんだ?」
『落ち着け、テレビの電源が入っただけだ、そんなことよりも早く敵を追いかけ……ん?』

画面をよく見るとついさっき殺された自分似のイケメンもといIT社長ウエムラの顔があった。
そして、画面の中のウエムラは筆談で語りだす。

『この映像を見ているということは私が死んだということらしい。
もしこの場に生存者がいるなら、是非聞いていって欲しい。
頭がおかしいと思われるかもしれないが、戯言やジョークなんかじゃない本当のことなんだ。



――大災害は自然災害で起きたものじゃない。
人為的なものなんだ。
何より私はあの大災害の原因になった事件の現場……そのすぐ近くに居合わせていたんだ』
『「なに?」』

映像の中のウエムラは大災害の起こりを知っていると語る。
その言葉にはバドも草加も聞き耳を立てざるおえなくなる。
バドとしては単なる自然災害だと思っていた大災害が人の手によるものだと言う話には興味があったし、草加としては自分の死と真理と離れ離れになった原因である大災害を起こした元凶には憤りを感じていた。

そして二人はウエムラのビデオレターを視聴することに決めた。
シザリガーは放置で良いのかって?
あんなのはいつでも殺せるので無視することにした。
これも乾巧って奴の仕業なんだ。

 ◆


617 : Meeeeaaaat! Processing Plant :2018/03/05(月) 12:03:48 3VEbIiQ20

その日、IT社長である私はニルヴァーナという土地に足を運んでいた。
ここは簡単に言えばあらゆる分野の研究がなされている巨大な科学都市であり、ネットナビを生みだした光祐一郎などの天才も生みだしたアカデミーもある。
最近では麻雀の強さを戦闘力に変換する技術を生み出して女子高生への痴漢対策に大きく貢献したことが有名か。
ともかく私は営業のためにその土地へ向かったんだ。

事件が起きたのはその夜だった。
突如、ニルヴァーナが何者かの襲撃を受けた。
襲撃者は僅か数名だったらしいがかなりの力をもっているらしく、ニルヴァーナの防衛隊は壊滅的な損害を受けたらしい。
私も社員と共に避難しようとしたが途中で道に迷ってしまった……


そして、私は見たんだ。
大爆発音と共にニルヴァーナのある施設から膨大な光が天に向かって伸びていくのを……


更にその直後に、一人の超人と一人の少女がこちらに向かってズタズタになって飛んできた。
超人の名前はストロング・ザ・武道、少女の名前は長門有希。
この二人こそニルヴァーナを襲撃した者の一味だったのだ。

だが、二人共こちらに危害を加えようとはしなかった。
ただ諦めたように「もう世界は終わりだ」と言っていた。


恐る恐る話を伺うと、ニルヴァーナの一部には人体実験など禁忌に触れるような裏で行っていたのだという。

そしてこの世界のあらゆる者に影響を与えるエネルギー「蒼」、そのエネルギーの源泉を手に入れようとした悪しき者がいて、そいつを討伐するために最強クラスの超人や宇宙人が向かったらしい。
だが寸前で阻止に失敗し、蒼の源泉の暴走を招く事態に繋がってしまった……


ちなみに蒼や源泉については本来はひと握りの神とか、それに準ずる存在しか知り得ない情報らしい。
トップシークレット中のトップシークレットで本当に選ばれた存在しか知ってはならない代物。
にも関わらずに二人はただの人間である私に話してくれた。
……親切心からじゃない、むしろ片方は無量大数軍を率いて人類の味方である正義超人をも粛清しようとしていたと言っていた。
長門の場合は今までなら知ってしまった人間から蒼の記憶の抹消を逐一行っていたとか。
全ての終わりが近いからこそ、蟻にも等しい存在の記憶を消さず、独り言のように声をかけているんだ。

蒼の暴走は宇宙の終焉。
源泉の暴走は本来は数十億年先の話、それだけの余裕があれば別の世界へ移住するなり対処する方法はいくらでもあった。
ところが何者かが強引に源泉を暴走させて、滅びを予定よりも早く手繰り寄せてしまった。
じゃあ我々はどうすればいいんだという問いかけに対し、ストロング・ザ・武道はこう答えた。


「こうなれば『聖別』しかあるまい。
聖別によって生まれた『争いの淀みから生まれた化身』テラカオスならば、事態を収集できる。
ただしこれは全ての者を救うことはできない上に極めて部の悪すぎる賭けだ。
しかも、テラカオスが持つ三千世界をも手に出来る真の性質を知ったが最後、生存のための戦いから欲望剥き出しのテラカオス争奪戦が始まる。
蒼による自然死を是とした古代グンマーのエゴと、生き延びるために蒼の力を我が物にしようとした古代ミヤザキのエゴが噛み合わずに互いを滅ぼしあったように、人間は決して分かり合えない。
そうなれば世界は蒼に飲み込まれて『滅日』を迎えるか、テラカオスに飲み込まれて滅ぶかの二つしかなくなる」と……

それだけ言うと武道は彼らを追ってきた黒い悪魔――私の直感ではこの事件の元凶になった存在に向かっていった。
武道は世界への被害をなるべく抑えるために消滅を覚悟の上で長門に施設の光を止めるように指示し、その前に長門は私を……超能力のようなもので日本へと転送してくれた。
転送間際に武道が攻撃を反射されてほとんど何もできないまま真っ二つに斬られる瞬間を見た……おそらく武道は死んだのだろう。


日本へ転送されたすぐ後に、世界では大災害が発生した。
更に人口削減という名目でだが、世界で最後に残った日本で殺し合いが発生した。
そこで私は荒唐無稽な話だと思っていた武道と長門の話が真実みを帯び、大災害が「蒼」が世界に降り注いで起こった災害であり、聖別とは世界を救えるらしいテラカオスを生み出すための殺し合いであると理解した……

 ◆


618 : Meeeeaaaat! Processing Plant :2018/03/05(月) 12:04:38 3VEbIiQ20

「俄かには信じがたいが……」
『たしかテルミの奴が蒼だのなんだの言ってた気がする。奴は大災害について知っている風だった』
「嘘ではないかもしれない……ということか」
『……もし本当なら大災害の元凶になった奴を生かしておけないな』

眼魂になってユウキ=テルミに奪われている間に草加はテルミが蒼=TCのことを口走っていたのを思い出した。
その時は何を言ってるのかさっぱりだったが、ウエムラの話により漸く世界を大災害を引き起こした原因であることを知った。
なお、元凶を倒したいという草加の言葉は義憤によるものではなく、単に真理との生活を奪われた恨みである。

『そうと決まれば真理のためにも蒼を止めて……ん? まだ続きがあるのか?』

情報を得て立ち去ろうとした草加とバドであったが、ビデオにはまだ続きがあった。

 ◆

――とはいえ、人命が奪われる殺し合いを認められなかった私は日本全国に蒼の源泉の暴走やニルヴァーナで起きたことなどを発信した。
知恵と人員を集めれば殺し合いに頼らない解決策もあるのではと思ったからだ。
そしてこの世に残った最後の掲示板、カオスロワちゃんねるに事の真相を書き込んだ……



ところが、検閲によって書き込みはできず、それどころかパソコンが爆発したり、居場所を特定されてマーダーなどに命を狙われる事態になった。
おそらく殺し合い……聖別を邪魔されたくない主催の差金であると私は考えた。
それでも殺し合いを止めたかった私は殺し合いの乗った奴らから逃げつつIT社長としての知恵を使い、決死の覚悟と沢山の犠牲を払ってカオスロワちゃんねるにハッキングした。
あわよくば掲示板の管理権を奪い、それができなくとも30秒でも私のレスが誰かの目に止まれば殺し合いを止めるきっかけができるかもしれない。



そして知ってしまった。
違ったんだ。

カオスロワちゃんねるの管理人権を主催が握っているのは表向きだけ。
実際に削除や検閲、そしてハッキングによる端末破壊・居場所特定を行っていたのは別にいたのだ。
そもそも蒼の件を隠したいのならばパソコン爆破ではなく首輪爆破で私を殺害した方が手っ取り早い。

このことから推測するとカオスロワちゃんねる管理人は私の首輪の爆破ができない=野田総理ら主催陣営じゃない、繋がりを持っていない。
そして蒼やニルヴァーナの件など知られたくない不都合な情報の発信者をあの手この手で攻撃している=主催にも知られたくない事情があるのではないかと思う。

結局、向こうの技術の方が上手で管理権を奪うことも真実を一レス書き込むすらできなかったが、わかったこともある。



カオスロワちゃんねるは管理人にとって都合が良くなるように操作されている。



ニルヴァーナや蒼の件だけじゃない、これまで特定の参加者へのバッシングが助長されていたり、殺し合いを止める決定的な何かを書いたレスもとい参加者は攻撃または削除された可能性がある。


私の予感が正しければこんなことをするのはニルヴァーナにいた大災害の元凶になった悪魔ぐらいにしか考えられない。
カオスロワちゃんねるはこの世に残った最後の情報掲示板だが、すぐにでも使用を中止して欲しい!
真実はあの掲示板によって歪められ……

 ◆


619 : Meeeeaaaat! Processing Plant :2018/03/05(月) 12:05:36 3VEbIiQ20

ウエムラによるビデオレターが終わりかけた瞬間、巨大な丸サボテンに手足が生えたような怪物が壁をぶち割って現れ、テレビを木っ端微塵に叩き潰した。

「インドラ〜」
「なんだこいつは!?」
『さっきのザリガニが……!』

インドラと鳴く悪魔、メーガナーダの口には先ほど草加たちと戦ったシザリガーの死体が殻ごとバリバリと喰われていた。
おそらく、逃げ出した先でこのメーガナーダに捕まって殺され、喰われたのだろう。

【シザリガー@ポケットモンスターシリーズ 死亡確認】

そしてシザリガーを咀嚼して飲み込んだメーガナーダの食欲は留まることなく、バドことジュウオウバード・クサカゴーストにも向けられていた。

『いささか登場のタイミングが良すぎないか?』
「おそらくウエムラが警告していたカオスロワちゃんねる管理人の差金……かもしれんな!」
『なんにせよ俺たちに歯向かった奴は誰であれ消えてもらう』

敵意を向けてくるメーガナーダに草加とバドはそれ以上の敵意を向けて先制攻撃を浴びせる。

『レディ エクシードチャージ!』 CV:m.c.A・T

デカすぎる図体に狭いパーティー会場では避けることもできずメーガナーダにゴルドスマッシュが直撃した。

『「なんだと……!?」』

ところが現れるハズの黄色いX(サイ)の文字は出ることなく、代わりにBLOCKの文字が敵の頭上に現れた。
メーガナーダはバットステータス無効であり有毒なフォトンブラッドが効かず、殻を閉めている時は物理攻撃も無効なのだ。
必殺技を放って硬直した瞬間をメーガナーダは見逃さず、ボクサーの如きパンチのラッシュをバドに浴びせる。
クリティカルヒットだ。

「ぐはあ!!」
『しっかりしろバド!! おまえが死んだら俺まで……』
「インドラ」

さらにメーガナーダは追撃として混乱効果を与える光線テンタラフーをバドに浴びせ、混乱状態に。

『おい、早く逃げろ! やられてしまうぞ!!』
「俺は王の……」
『この役立たずが!』

混乱状態に陥り、攻撃も逃走もできずに金をバラまくバドに悪態をつく草加。
そうこうしている内にメーガナーダは必殺技の準備シークエンスと思われる動作・黒きバクティを発動。
メーガナーダの体に力が集まる!
対するバドはまだ混乱中だ。

『クソッ、こんなのところでこれも全部乾巧のせいなんだーーーッ!』

完全な八つ当たりに乾巧を責める草加。
もうどうにもならない事態に草加は頭が真っ白になる感覚を覚えた。


そして、メーガナーダの胴体を守っていた殻が開き中から五つの黒いワラスボのような口が飛び出してバドとゴーストドライバーを噛み砕いた。
メーガナーダの必殺技の一つ、防御不能な物理万能スキル――ヴィラージュの剣だ。


『ぐああああああーーー……ッ!!!』

パキメキ グシャ(バドと眼魂が折れる音)


こうしてジュウオウバード・クサカゴーストは大量のザリガニとケーキとゴーストドライバーごと喰われてメーガナーダのアートマポイント(栄養)と化した。

【バド@動物戦隊ジュウオウジャー 死亡確認】


620 : Meeeeaaaat! Processing Plant :2018/03/05(月) 12:06:38 3VEbIiQ20


ウエムラから大災害の起こりになったニルヴァーナの真実を知ったバドがメーガナーダによって葬られた後に、少女の声が響く。
彼女は姿を消せる石ころ帽子を装備していることで姿を消していた。

「よくやったわメーガナーダ、戻って」
「インドラ〜」

少女が持っていたモンスターボールによってメーガナーダが回収された。
メーガナーダは彼女の持ちポケであり、支給品だったのだ。
彼女の姿を解説すると巫女装束風の色合いの弓道着を身に着け、背中には艦橋と煙突の付いた赤い矢筒を背負い、胸には黒の胸当てを付け、脚には主機と対空機銃の付いたブーツを履き、飛行甲板を肩に付けている。
……拳王連合軍の艦むすの翔鶴じゃないかと思った人もいるかもしれないが、彼女は現在横浜におり、ここにいる少女は黒髪ツインテールなので違う。

黒髪の艦むすは周囲を一頻り索敵した後に、通話を他人に傍受されない違法改造されたスマホで誰かに連絡を取る。

「提督さん、ニルヴァーナからの最後の生存者であるウエムラの死亡を確認したわよ。
ウエムラを殺すために差し向けたマーダーも殺害、関係者一同も抹殺できたわ」
『ご苦労、主催の連中に知られないように僕が作った妨害電波発生装置はちゃんと使ったか?』
「バッチリよ、提督さんが運営している掲示板の真実を知った者は誰もいないわ」
『……よし瑞鶴、念のため施設に火を放て』
「了解」

瑞鶴と言われた黒髪の艦むすは指示通りに矢から変化させた爆撃機で施設を焼き払った。
ただの火事ならば激戦区東京ではありきたりな光景なので誰も気に止めず、石ころ帽子の力で見えなくなっている瑞鶴はさらに誰にも気づかれぬまま、施設を離れていった。

「提督さん、都庁の地下で質の良いお肉を手に入れました。
ちょっと死毒が滴ってますけど提督さんなら食べられますよね?」

瑞鶴のディパックには毒殺されたベジータの遺体が入っていた。
小町たちが立ち去った隙に都庁の地下に忍び込んで、アイスシザーズに気づかれる前に回収したのだ。

『サイヤ人の肉か、毒はあってもBSデストロイアを習得している僕なら食べられるね。
でかしたよ瑞鶴。さすが僕が復元した古代ミヤザキの機械生命体・艦むすだけはある。
さっき死んだタバサよりはずっと使えるね』
「あなたとケッコンしてますからね、これくらい頑張っちゃいますよ」

受話器の先にいる誰かに褒められて顔を赤らめる瑞鶴の指には結婚指輪がはめ込まれていた。

『それじゃあ、そろそろ合流しよう。場所はビックサイト。
今はわけあってそこにある格納庫から離れられないけど作業が終わり次第、君とメーガナーダの強化、そしてサイヤ人の肉でディナーと洒落こもう。
あ、今から教えるルートは通るなよ? セルベリアが侵入防止の罠を張り巡らせている。
それからビッグサイトの周囲に妹キャラを洗脳しまくる危険人物がいるらしいから絶対に接触するな』
「はい!」
『全ては古代ミヤザキの末裔で蒼の資格者である僕が全てを手に入れるために』
「その横には私もいますよね?」
『もちろんさ。さあ、これから忙しくなるぞ』

親兼夫である者の嬉しそうな顔が見たくて瑞鶴はルンルン気分でこの地区……八王子市を後にした。



【二日目・15時00分00秒/東京・八王子市】

【瑞鶴@艦隊これくしょん】
【状態】健康
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、石ころ帽子、違法改造スマホ、妨害電波発生装置、結婚指輪
【道具】モンスターボール(メーガナーダ@アバタールチューナー2入り)、ベジータの遺体
【思考】
基本:提督『カオスロワちゃんねる管理人』に従う
0:ビッグサイトへ向かい、提督と合流する
1:提督の目的の邪魔をする奴は容赦なく殺す
2:提督とのディナー楽しみだな〜
※『カオスロワちゃんねる管理人』とケッコンカッコカリ済みです


【二日目・15時00分00秒/東京・ビッグサイト】

【『カオスロワちゃんねる管理人』@???】
【状態】???、瑞鶴の提督、首輪なし
【装備】???
【道具】???
【思考】
基本:???
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※蒼の資格者で古代ミヤザキの末裔です
※TCホールを暴走させて大災害を引き起こした元凶(武道を殺した悪魔)です
※何らかの事情で今はビックサイトから動くことができません


621 : Meeeeaaaat! Processing Plant :2018/03/05(月) 12:07:31 3VEbIiQ20

 ■

瑞鶴とメーガナーダが立ち去った後、施設は豪炎によって崩れ去った……


だがその瓦礫の中で蠢くものがあった。
しかし一体誰が?
施設の中の生存者は間違いなくゼロだったはずだ。
瑞鶴も入念な索敵で生き残りがいないことは確認済みだ。
では一体何がいるというのか?

瓦礫の下から現れた、バトルモードに変形した鋼鉄の怪物、サイドバッシャーであった。
だがバドも死んでいる以上サイドバッシャーの操り手はいないハズだ。
じゃあ誰が動かしているのか?

「やれやれ、ひどい目にあった……これも全部乾巧のせいだ」

サイドバッシャーから放たれたその声は草加雅人その人であった。

「よくわからないが、俺にはいつの間にか機械とか無機物に備わっていたらしいな」

実は草加もまた、主催のバラ撒いたナノマシンによってテラカオス因子に目覚めており、テラカオス候補者となっていたのだ。
そもそもサイボーク化以外では生き返れない今期において原作(というかムービー大戦)さながら呪縛霊とはいえ、現世に長々と留まれるのはおかしい。
生き返れる代わりに死にまくる野比玉子症候群にも感染していない。
となると、テラカオス化が発症していると考えるのが妥当だろう。
二度目の死になるかもしれない瞬間に因子が覚醒して、無機物に憑依できる能力が開花したのだ。

「しかし、魂の力が大きく削られた気がする……多様はできないな」

代償として生き返れるタイムリミットはそのままであり、能力を使用すれば寿命の大部分を喪失する。
残りは55日と半日……とてもじゃないが多様はできない。
最悪次こそは死んで死者スレ送りになる可能性がある。

「それにしてもあの女……話しぶりからしてカオスロワちゃんねるの管理人と話していたようだな。
カオスロワちゃんねるには裏がある……少なくともそこは嘘じゃないようだ」

自分が眼魂からサイドバッシャーに取り憑き先を変えたことに瑞鶴が気づいていないことを良い事に、草加は通話を聞いていた。
大災害の元凶と原因を知っているウエムラを殺そうとしたことや、妨害電波や違法改造のスマホでわざわざ主催に知られないようにしている辺り、主催とは違う陰謀が働いているのは確かなようだ。
カオスロワちゃんねる管理人……何者かまではわからなかったが、自分や真理や草加市を脅かす危険な人物には違いあるまい。

「必ず見つけ出して殺してやる!」

怒りに燃える草加バッシャー。
とはいえ、サイドバッシャーの戦闘力ではメーガナーダにはまず勝てないだろうし、そもそも瑞鶴は石ころ帽子を被っていたのでどこへ行ったのかはわからない。
ここは強力な武器や利用できる仲間を集めるべきだろう。
メーガナーダに負けない戦闘力を有した武器や、肉壁になってくれそうな仲間を。

「とりあえずこっちへ向かってみるか」

ディパックから無事だったカイザギアを回収し、草加は一先ず仲間になってくれそうな者たちがいそうな場所を目指す。
ニルヴァーナの件などを話せば、安い正義感から仲間になってくれる奴もいるだろう。
そう思って草加バッシャーはバイクに変形し、八王子から走り出した。

カイザの日はまだ終わっていない……


622 : Meeeeaaaat! Processing Plant :2018/03/05(月) 12:08:13 3VEbIiQ20


【二日目・15時09分13秒/東京・八王子市】

【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】サイドバッシャーに憑依、テラカオス化進行(小)
【装備】サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】カイザギア@仮面ライダー555
【思考】
基本:生き返る方法を探す
0:どうして俺が死んで、碌に出番もない奴らが生きてるのかなぁ?
1:とりあえず、乾巧の仕業にする
2:今年のカイザの日も祝いたい
※テラカオス化によって得られた能力として無機物への憑依能力を得ました
※生き返れるタイムリミットは(作中時間で)残り55.5日です。
※再憑依のペナルティとして、蘇生タイムリミットが9.13〜55.5日まで減少します。
※テラカオス因子によって魂を現世に繋いでいるため、フォレスト・セルの治療を受けると問答無用で死にます
※カイザの日はテラカオス因子とは関係ありません



※ロワ開始前に死亡確認
【ストロング・ザ・武道@キン肉マン】


623 : 名無しさん :2018/03/05(月) 12:09:37 3VEbIiQ20
投下終了です
前々から参加者をテラカオス化させるナノマシンが悪魔化ウィルスっぽいと思ってた(小並)


624 : 名無しさん :2018/03/05(月) 12:59:02 3VEbIiQ20
あ、いけね
草加の状態表の思考欄修正忘れてた

>>622の草加の状態表を変更

【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】サイドバッシャーに憑依、テラカオス化進行(小)
【装備】サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】カイザギア@仮面ライダー555
【思考】
基本:生き返る方法を探す・カオスロワちゃんねる管理人を殺す
0:メーガナーダを倒せるだけの武器や仲間を探す
1:とりあえず、乾巧の仕業にする(カオスロワちゃんねる管理人以外)
2:今年のカイザの日も祝いたい
3:大災害の原因や蒼(TC)の件を他者に喋るかどうかは人に会ってから考える
※大災害発生の原因とカオスロワちゃんねるの危険性を知りました
※テラカオス化によって得られた能力として無機物への憑依能力を得ました
※生き返れるタイムリミットは(作中時間で)残り55.5日です。
 ※再憑依のペナルティとして、蘇生タイムリミットが9.13〜55.5日まで減少します。
※テラカオス因子によって魂を現世に繋いでいるため、フォレスト・セルの治療を受けると問答無用で死にます
※カイザの日はテラカオス因子とは関係ありません


625 : 仮面ライダーカイザ正伝 希望の花々 :2018/03/06(火) 04:56:19 QE.DI3jU0
「何処なんだよ……ここは」

オルガ・イツカは困惑していた。
確かヒットマンからライドを庇った際に自分は銃弾を受けてから、何とか適当に銃を乱射して反撃して連中を撃退した。
その後にちょっと歩いた後、それから一言呟いて意識を失った筈だ。
だが気づけば訳の分からん場所に飛ばされて、殺し合いを強要されているとはどういうことだ。

「大災害だとか訳わからねえぞ」

周辺の建物を見渡してみるが、どれもオルガの知るものからかけ離れている。
本当にここは地球なのか、火星とも違う景観に驚きを隠せない。
とにかく誰かしら捕まえて情報を聞き出すべきだ。

「おいアンタ、ここが何処だか……」
「のびちゃーん!!」
「何言って―――ヴァアアアアアア!!」

次の瞬間、オルガは射殺された。

キボウノハナー

【オルガ・イツカ@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 死亡】
【野比玉子@ドラえもん 銃が暴発して死亡】






「俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ! だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

「うるさいなあ、少し黙っていてもらえないかなあ」

数分後、生き返っていたオルガと草加さんは接触していた。
位置的に考えてあの女に殺害されていたのだと推測した草加さんはオルガから情報を引き出そうと試みる。

「きみを殺した奴、多分女だろ? 何処に行ったか分かるかな」
「あ、ああ……確かに女だったな。あの丸眼鏡した奴か」
「外れだよ。使えないなあ……」

出会いがしらから使えない扱いされてムカつくオルガだが、怒りを収めて自分に起こったことを冷静に見極めようと努める。
先ほど確かに殺されたのに何故か生き返っている。

「何が何だかさっぱりなんだ……説明してくれよ」
「さあ、俺も何で君が生きてるかまでは知らないな」

こんな変な前髪の男といつまでも喋っている暇はない。
草加さんは忙しいのだ。やることが一杯なのでオルガとの会話を適当に打ち切り先へ進もうとする。 

「復活したところで次話で生き残れるほどカオスロワは甘くないのだよ」

ショットガンを持った男、カオスロワでお馴染みのルーファウスの久々の登場である。
この男は今期カオスロワのマーダーの大半がDMC狂信者に所属しているなか、終始一徹してソロマーダーを貫いていた真のズガン師である。
そして目についた二人組を相手にショットガンをぶっ放す。


626 : 仮面ライダーカイザ正伝 希望の花々 :2018/03/06(火) 04:57:36 QE.DI3jU0

「ヴァアアアアアア!!」

キボウノハナー

だが草加さんへと向けられた射撃は何故か全て全弾オルガへと吸い寄せられてしまった。
これには歴戦のルーファウスも驚嘆である。


「俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ! だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」


【オルガ・イツカ@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 死亡確認】
【クマ吉@ギャグマンガ日和 巻き添えで死亡】
【タケシ@ポケットモンスター 巻き添えで死亡】


『レディ エクシードチャージ!』

狼狽するルーファウスの隙を突き草加さんはカイザへと変身しゴルドスマッシュを打ち込んだ。
前回の例もあるので油断せずルーファウスの様子を伺う。
いつものX(サイ)の文字が浮かんだのを見て草加さんは微笑んだ。

「邪魔なんだよ。俺をズガンする奴は全員」

ルーファウスは灰化し消失した。

【ルーファウス@FF7 死亡】
【野比セワシ@ドラえもん 巻き添えで死亡】

「何なんだよ一体……」
「不思議な体質を持っているみたいだね」

さてはてこの男が噂に聞いた野比玉子症候群というやつだろうか。
草加さんもそういう妙な病に犯された者たちがいるとは聞いているが今期カオスロワでは出現数が比較的少なかったはずだ。
見る限り症候群とも様子が違う。

「のびちゃああああああああああああああああああ!!!」

キボウノハナー

「俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ! だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

【オルガ・イツカ@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 死亡確認】
【野比玉子@ドラえもん 死亡】


爆弾を持って特攻してきた玉子に巻き込まれオルガは死んだ。

「……勘弁してくれよ」

「そういうことか」

恐らくこの男は症候群には感染していない。
異世界転生したことで新たなスキルを与えられたのだ。
この再生能力がオルガの得た能力なのだろう。

「のびちゃああああああああああああああああああ!!!」

キボウノハナー

「俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ! だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

【オルガ・イツカ@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 死亡確認】
【野比玉子@ドラえもん 死亡】


爆弾を持って特攻してきた玉子に巻き込まれオルガは死んだ。


627 : 仮面ライダーカイザ正伝 希望の花々 :2018/03/06(火) 04:58:11 QE.DI3jU0

「またかよ」

「のびちゃああああああああああああああああああ!!!」

キボウノハナー

「俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ! だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

【オルガ・イツカ@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 死亡確認】
【野比玉子@ドラえもん 死亡】


爆弾を持って特攻してきた玉子に巻き込まれオルガは死んだ。

「もういい加減にしてくれ」

辟易するオルガの横で草加さんは考察を進める。
更に突出すべきはあらゆる死を引き寄せる特異体質というべきか。
この男がいればある程度の攻撃は防げる。これ以上ない肉壁役ではないか?

「丁度いい。俺と一緒に行動し「危ねえ!」

次の瞬間、機関銃を持って特攻した野比玉子の襲撃から草加さんを覆うようにしてオルガが庇った。

「ヴァアアアアアア!!」
「おい、何やって」

流石の草加さんも驚きである。
わが身を犠牲にして他人を守るその姿は正しく―――

「母さん……?」

「俺は鉄華団団長オルガ・イツカだぞ。こんくれぇなんてこたぁねぇ……」

キボウノハナー

「俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ! だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」

【オルガ・イツカ@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 死亡確認】
【野比玉子@ドラえもん 暴発して死亡】

ほんの一瞬、草加さんはオルガに母性を見出してしまった。
振り払うように草加さんが考えを改める。
これは何かの間違いの筈だ。こんなことがあり得ていいはずがない。

「真理以外が俺の母親になるなんて有り得ないんだよ……!」
「あんた正気か?」


628 : 仮面ライダーカイザ正伝 希望の花々 :2018/03/06(火) 04:58:32 QE.DI3jU0

【二日目・16時09分13秒/東京・八王子市】

【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】サイドバッシャーに憑依、テラカオス化進行(小)
【装備】サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】カイザギア@仮面ライダー555
【思考】
基本:生き返る方法を探す
0:どうして俺が死んで、碌に出番もない奴らが生きてるのかなぁ?
1:とりあえず、乾巧の仕業にする
2:今年のカイザの日も祝いたい
3:オルガを壁役として使う。
※テラカオス化によって得られた能力として無機物への憑依能力を得ました
※生き返れるタイムリミットは(作中時間で)残り55.5日です。
※再憑依のペナルティとして、蘇生タイムリミットが9.13〜55.5日まで減少します。
※テラカオス因子によって魂を現世に繋いでいるため、フォレスト・セルの治療を受けると問答無用で死にます
※カイザの日はテラカオス因子とは関係ありません


【オルガ・イツカ@機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ】
【状態】止まるんじゃねえぞ……
【装備】エアガン
【道具】BB弾
【思考】
基本:止まらない。
1:ここは何処なんだよ。
※時折母性を発揮します。


629 : 名無しさん :2018/03/06(火) 04:59:28 QE.DI3jU0
投下終了

やっぱ草加さんにはお母さんが必要なんやなって


630 : 名無しさん :2018/03/06(火) 22:19:21 adtUAoAM0
ルーファウス、かなり前に死んでるよ。
ちゃんと今期投下された話くらいは全話読んだの?


631 : 名無しさん :2018/03/06(火) 23:20:21 QE.DI3jU0
じゃあいいわ破棄で
カオスロワ一期から七期までの年数グダグダしたもんを主要以外で一々把握出来んわ


632 : 名無しさん :2018/03/06(火) 23:26:15 yF/XhOxc0
400話以上前の話だから流石に覚えてられなかったやな
個人的にはサイドバッシャーになっている現状の草加が変身できるのかが疑問(堅すぎ?)
その辺りの修正は必須かな


633 : 名無しさん :2018/03/06(火) 23:31:14 QE.DI3jU0
いや破棄でお願いします
ここで言うのもあれだけど前話の即リレーでやらかしたとは思ってたので丁度いいですから


634 : 名無しさん :2018/03/08(木) 16:21:37 M.aLyGrw0
wikiのキャラ紹介項目、ボトムズの次回予告並にすき
レストチート過ぎと思ったら意外とあのキャラ・このキャラがいないと死んでた局面もあったんだなー
そしてテルミが飛竜の体を奪った結果、肉体が半端なく鍛えられていたことが仇になりご立派様によって精神までアヘったって解釈はワロタw


635 : 名無しさん :2018/03/08(木) 19:27:34 .w.7f4Ns0
>>634
そのあのキャラこのキャラも逆にレストいなかったら死んでるしな。都庁は本当に上手い具合に連携というか、キャラ同士の補い合いが噛み合ってる
そしてテルミの項目で思ったんだが、要はマーラ様に通常よりも長時間ズコバコされたからああなったってことだろ?
ボロクソ言われてるファガンも、ヤラレる→卵再生→ヤラレるのループで長時間マーラ様にズコバコされたからああなったんじゃないか?

……つまり今頃テルミも死者スレで四足歩行(ry


636 : 名無しさん :2018/03/09(金) 11:47:59 qRcmT5jQ0
Meeeeaaaat! Processing Plantの修正版を仮投下スレに投下したけど、大丈夫そうなので今から再投下します


637 : Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版) :2018/03/09(金) 11:49:36 qRcmT5jQ0
東京のどこか……というか八王子にてバドとカイザは襲いかかってきたディケイドカイザを難なく撃破した。

「馬鹿なああああああ!!」
「二つの王の力を持つ俺に勝てるわけがないだろ」
『紛い物が本家に勝てるわけないんだよなあ……』

バドの姿をよく見るとジュウオウバードのスーツの上から黄色と黒のパーカーベストを上から纏っていた。
戦闘中にゴーストドライバーと草加雅人眼魂を使ってジュウオウバードクサカゴーストに変身したのだ。
その結果、戦闘力が単純計算で二倍以上になり、カイザとシザリガーを押していく。
何よりカイザの癖を知っており、中の人の関係でザリガニの生体に詳しい草加のフォローによって敵の攻撃は尽く弾かれ、最後はゴルドスマッシュを喰らって爆発四散するのだった。

【仮面ライダーカイザ@仮面ライダーディケイド 死亡確認】



カイザを撃破したバドは惨劇の場所となったパーティー会場を見回す。
そこにさっきまで戦っていたシザリガーがいない。

『バド、さっきのザリガニはどこにいった?』
「俺たちに勝てないと思って逃げたんだろう」
『俺たちに歯向かった罰として今すぐ殺してやりたいところだが……』
「祝い手も皆殺しにされた以上、このパーティー会場にも用はない。すぐに追いかけるぞ」

自分たちに歯向かった罰としてすぐにでも追いかけようとするバド及び草加。
だがその時、たまたま足元に転がっていたリモコンのスイッチが入ってしまった。
TVがついて一瞬驚くバド。

「なんだ?」
『落ち着け、テレビの電源が入っただけだ、そんなことよりも早く敵を追いかけ……ん?』

画面をよく見るとついさっき殺された自分似のイケメンもといIT社長ウエムラの顔があった。
そして、画面の中のウエムラは筆談で語りだす。

『この映像を見ているということは私が死んだということらしい。
もしこの場に生存者がいるなら、是非聞いていって欲しい。
頭がおかしいと思われるかもしれないが、戯言やジョークなんかじゃない本当のことなんだ。



――大災害は自然災害で起きたものじゃない。
人為的なものなんだ。
何より私はあの大災害の原因になった事件の現場……そのすぐ近くに居合わせていたんだ』
『「なに?」』

映像の中のウエムラは大災害の起こりを知っていると語る。
その言葉にはバドも草加も聞き耳を立てざるおえなくなる。
バドとしては単なる自然災害だと思っていた大災害が人の手によるものだと言う話には興味があったし、草加としては自分の死と真理と離れ離れになった原因である大災害を起こした元凶には憤りを感じていた。

そして二人はウエムラのビデオレターを視聴することに決めた。
シザリガーは放置で良いのかって?
あんなのはいつでも殺せるので無視することにした。
これも乾巧って奴の仕業なんだ。

 ◆


638 : Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版) :2018/03/09(金) 11:51:00 qRcmT5jQ0
 ◆

その日、IT社長である私はニルヴァーナという土地に足を運んでいた。
ここは簡単に言えばあらゆる分野の研究がなされている巨大な科学都市であり、ネットナビを生みだした祐一郎氏などの天才も生みだしたアカデミーもある。
最近ではサーフ氏が麻雀の強さを戦闘力に変換する技術を生み出して女子高生への痴漢対策に大きく貢献したことが有名か。
ともかく私は営業のためにその土地へ向かったんだ。

事件が起きたのはその夜だった。
突如、ニルヴァーナが何者かの襲撃を受けた。
襲撃者は僅か数名だったらしいがかなりの力をもっているらしく、ニルヴァーナの防衛隊は壊滅的な損害を受けたらしい。
私も社員と共に避難しようとしたが途中で道に迷ってしまった……


そして、私は見たんだ。
大爆発音と共にニルヴァーナのある施設から膨大な光が天に向かって伸びていくのを……


更にその直後に、一人の超人がこちらに向かってズタズタになって飛んできた。
超人の名前はストロング・ザ・武道、彼こそニルヴァーナを襲撃した者の一味だったのだ。

だが、彼はこちらに危害を加えようとはしなかった。
ただ諦めたように「もう世界は終わりだ」と言っていた。


恐る恐る話を伺うと、ニルヴァーナの一部には人体実験など禁忌に触れるようなことを裏で行っていたのだという。

そしてこの世界のあらゆる者に影響を与えるエネルギー「蒼」、そのエネルギーの源泉を手に入れようとした悪しき者がいて、そいつを討伐するために最強クラスの超人や宇宙人が向かったらしい。
だが寸前で阻止に失敗し、蒼の源泉の暴走を招く事態に繋がってしまった……


ちなみに蒼や源泉については本来はひと握りの神とか、それに準ずる存在しか知り得ない情報らしい。
トップシークレット中のトップシークレットで本当に選ばれた存在しか知ってはならない代物。
にも関わらずに彼はただの人間である私に話してくれた。
……親切心からじゃない、むしろ彼は近々無量大数軍を率いて人類の味方である正義超人をも粛清しようとしていたと言っていた。
今までなら知ってしまった人間は良くて蒼の記憶の完全抹消、場合によっては殺害していたらしいが、全ての終わりが近いからこそ、蟻にも等しい存在に独り言のように声をかけているんだ。

蒼の暴走は宇宙の終焉。
源泉の暴走は本来は数十億年先の話、それだけの余裕があれば別の世界へ移住するなり対処する方法はいくらでもあった。
ところが何者かが強引に源泉を暴走させて、滅びを予定よりも早く手繰り寄せてしまった。
じゃあ我々はどうすればいいんだという問いかけに対し、ストロング・ザ・武道はこう答えた。


「こうなれば『聖別』しかあるまい。
聖別によって生まれた『争いの淀みから生まれた化身』テラカオスならば、事態を収集できる。
ただしこれは全ての者を救うことはできない上に極めて部の悪すぎる賭けだ。
しかも、テラカオスが持つ三千世界をも手に出来る真の性質を知ったが最後、生存のための戦いから欲望剥き出しのテラカオス争奪戦が始まる。
蒼による自然死を是とした古代グンマーのエゴと、生き延びるために蒼の力を我が物にしようとした古代ミヤザキのエゴが噛み合わずに互いを滅ぼしあったように、人間は決して分かり合えない。
そうなれば世界は蒼に飲み込まれて『滅日』を迎えるか、テラカオスに飲み込まれて滅ぶかの二つしかなくなる」と……

それだけ言うと武道は彼を追ってきた黒い悪魔とそいつの連れているサボテンみたいな化物――おそらく、この事件の元凶になった存在に向かっていった。

ストロング・ザ・武道は確かに強かった。
だが悪魔と怪物は武道に対して何らかの対策を取っていたようで、武道のプロレス技の大半が無効化され、ニルヴァーナの科学の力で生みだしたと言っていたカピラリア七光線(昔見た、キン肉マンも参加した王位継承サバイバル・マッチでプリズマンが使ってた覚えがある)を発射する装置でダメージを与えていった。
それでも武道は光線から逃げずに施設に特攻し、自分の命と引き換えに例の光を放っていた施設を破壊した。

この直後、世界で大災害が発生した。
悪魔と怪物はニルヴァーナごと地割れに飲み込まれるのを見たが、私は命からがら生き残り救助された。
武道が施設を破壊しなければ甚大な被害を出した大災害がもっとひどいものになり、私を含むもっと多くの死者を出していただろう。


更に人口削減という名目でだが、世界で最後に残った日本で殺し合いが発生した。
そこで私は荒唐無稽な話だと思っていた武道の話が真実みを帯び、大災害とは「蒼」が世界に降り注いで起こった災害であり、聖別とは世界を救えるらしいテラカオスを生み出すための殺し合いであると理解した……

 ◆


639 : Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版) :2018/03/09(金) 11:51:58 qRcmT5jQ0

「俄かには信じがたいが……」
『たしかテルミの奴が蒼だのなんだの言ってた気がする。奴は大災害について知っている風だった』
「嘘ではないかもしれない……ということか」
『……もし本当なら大災害の元凶になった奴をこの手で殺して起きたかったな』

眼魂になってユウキ=テルミに奪われている間に草加はテルミが蒼=TCのことを口走っていたのを思い出した。
その時は何を言ってるのかさっぱりだったが、ウエムラの話により漸く世界を大災害を引き起こした原因であることを知った。
なお、元凶を倒したいという草加の言葉は義憤によるものではなく、単に真理との生活を奪われた恨みである。

『そうと決まれば真理のためにも蒼を止めて……ん? まだ続きがあるのか?』

情報を得て立ち去ろうとした草加とバドであったが、ビデオにはまだ続きがあった。

 ◆

――とはいえ、人命が奪われる殺し合いを認められなかった私は日本全国に蒼の源泉の暴走やニルヴァーナで起きたことなどを発信した。
知恵と人員を集めれば殺し合いに頼らない解決策もあるのではと思ったからだ。
そしてこの世に残った最後の掲示板、カオスロワちゃんねるに事の真相を書き込んだ……



ところが、検閲によって書き込みはできず、それどころかパソコンが爆発したり、居場所を特定されてマーダーなどに命を狙われる事態になった。
これは殺し合い……聖別を邪魔されたくない主催の差金であると私は考えた。
それでも殺し合いを止めたかった私は殺し合いの乗った奴らから逃げつつIT社長としての知恵を使い、決死の覚悟と沢山の犠牲を払ってカオスロワちゃんねるにハッキングした。
あわよくば掲示板の管理権を奪い、それができなくとも30秒でも私のレスが誰かの目に止まれば殺し合いを止めるきっかけができるかもしれない。



そして知ってしまった。
違ったんだ。

カオスロワちゃんねるの管理人権を主催が握っているのは表向きだけ。
実際に削除や検閲、そしてハッキングによる端末破壊・居場所特定を行っていたのは別にいたのだ。
そもそも蒼の件を隠したいのならばパソコン爆破ではなく首輪爆破で私を殺害した方が手っ取り早い。

このことから推測するとカオスロワちゃんねる管理人は私の首輪の爆破ができない=野田総理ら主催陣営じゃない、繋がりを持っていない。
そして蒼やニルヴァーナの件など知られたくない不都合な情報の発信者をあの手この手で攻撃している=主催にも知られたくない事情があるのではないかと思う。

結局、向こうの技術の方が上手で管理権を奪うことも真実を一レス書き込むすらできなかったが、わかったこともある。



カオスロワちゃんねるは管理人にとって都合が良くなるように操作されている。



ニルヴァーナや蒼の件だけじゃない、これまで特定の参加者へのバッシングが助長されていたり、殺し合いを止める決定的な何かを書いたレスもとい参加者は攻撃または削除された可能性がある。


私の予感が正しければこんなことをするのはニルヴァーナにいた大災害の元凶になった悪魔ぐらいにしか考えられない。
カオスロワちゃんねるはこの世に残った最後の情報掲示板だが、すぐにでも使用を中止して欲しい!
真実はあの掲示板によって歪められ……

 ◆

ウエムラによるビデオレターが終わりかけた瞬間、巨大な丸サボテンに手足が生えたような怪物が壁をぶち割って現れ、テレビを木っ端微塵に叩き潰した。

「インドラ〜」
「なんだこいつは!?」
『さっきのザリガニが……!』

インドラと鳴く悪魔、メーガナーダの口には先ほど草加たちと戦ったシザリガーの死体が殻ごとバリバリと喰われていた。
おそらく、逃げ出した先でこのメーガナーダに捕まって殺され、喰われたのだろう。

【シザリガー@ポケットモンスターシリーズ 死亡確認】


640 : Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版) :2018/03/09(金) 11:52:48 qRcmT5jQ0

そしてシザリガーを咀嚼して飲み込んだメーガナーダの食欲は留まることなく、バドことジュウオウバード・クサカゴーストにも向けられていた。

『いささか登場のタイミングが良すぎないか?』
「おそらくウエムラが警告していたカオスロワちゃんねる管理人の差金だろう!
サボテンのような怪物を見たとか言っていたしな」
『なんにせよ俺たちに歯向かった奴は誰であれ消えてもらう』

敵意を向けてくるメーガナーダに草加とバドはそれ以上の敵意を向けて先制攻撃を浴びせる。

『レディ エクシードチャージ!』 CV:m.c.A・T

デカすぎる図体に狭いパーティー会場では避けることもできずメーガナーダにゴルドスマッシュが直撃した。

『「なんだと……!?」』

ところが現れるハズの黄色いX(サイ)の文字は出ることなく、代わりにBLOCKの文字が敵の頭上に現れた。
メーガナーダはバットステータス無効であり有毒なフォトンブラッドが効かず、殻を閉めている時は物理攻撃も無効。
これを初見で見抜けなかった敵に決定的な隙を生み出す。
必殺技を放って硬直した瞬間をメーガナーダは見逃さず、ボクサーの如きパンチのラッシュをバドに浴びせる。
クリティカルヒットだ。

「ぐはあ!!」
『しっかりしろバド!! おまえが死んだら俺まで……』
「インドラ」

さらにメーガナーダは追撃として混乱効果を与える光線テンタラフーをバドに浴びせ、混乱状態に。

『おい、早く逃げろ! やられてしまうぞ!!』
「俺は王の……そぉ〜れそれ〜」
『この役立たずが!』

混乱状態に陥り、攻撃も逃走もできずに金をバラまくバドに悪態をつく草加。
そうこうしている内にメーガナーダは必殺技の準備シークエンスと思われる動作・黒きバクティを発動。
メーガナーダの体に力が集まる!
対するバドはまだ混乱中だ。

『クソッ、こんなのところで……これも全部乾巧のせいなんだーーーッ!』

完全な八つ当たりに乾巧を責める草加。
もうどうにもならない事態に草加は頭が真っ白になる感覚を覚えた。


そして、メーガナーダの胴体を守っていた殻が開き中から五つの黒いワラスボのような口が飛び出してバドとゴーストドライバーを噛み砕いた。
メーガナーダの必殺技の一つ、防御不能な物理万能スキル――ヴィラージュの剣だ。


『ぐああああああーーー……ッ!!!』

パキメキ グシャ(バドと眼魂が折れる音)


こうしてジュウオウバード・クサカゴーストは大量のザリガニとケーキとゴーストドライバーごと喰われてメーガナーダのアートマポイント(栄養)と化した。

【バド@動物戦隊ジュウオウジャー 死亡確認】



ウエムラから大災害の起こりになったニルヴァーナの真実を知ったバドがメーガナーダによって葬られた後に、少女の声が響く。
彼女は姿を消せる石ころ帽子を装備していることで姿を消していた。


641 : Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版) :2018/03/09(金) 11:54:10 qRcmT5jQ0

「よくやったわメーガナーダ、戻って」
「インドラ〜」

少女が持っていたモンスターボールによってメーガナーダが回収された。
メーガナーダは彼女の持ちポケであり、支給品だったのだ。
彼女の姿を解説すると巫女装束風の色合いの弓道着を身に着け、背中には艦橋と煙突の付いた赤い矢筒を背負い、胸には黒の胸当てを付け、脚には主機と対空機銃の付いたブーツを履き、飛行甲板を肩に付けている。
……拳王連合軍の艦むすの翔鶴じゃないかと思った人もいるかもしれないが、彼女は現在横浜におり、ここにいる少女は黒髪ツインテールなので違う。
石ころ帽子を被っているので参加者には見えないが。

黒髪の艦むすは周囲を一頻り索敵した後に、通話を他人に傍受されない違法改造されたスマホで誰かに連絡を取る。

「提督さん、ニルヴァーナからの最後の生存者であるウエムラの死亡を確認したわよ。
ウエムラを殺すために差し向けたマーダーも殺害、関係者一同も抹殺できたわ」
『ご苦労、主催の連中に知られないように僕が作った妨害電波発生装置はちゃんと使ったか?』
「バッチリよ、提督さんが運営している掲示板の真実を知った者は誰もいないわ」
『……よし瑞鶴、念のため施設に火を放て』
「了解、全機爆装! 準備でき次第発艦! 目標、カイザパーティー会場!」

瑞鶴と言われた黒髪の艦むすは指示通りに矢から変化させた爆撃機で施設を焼き払った。
ただの火事ならば激戦区東京ではありきたりな光景なので誰も気に止めず、石ころ帽子の力で見えなくなっている瑞鶴は誰にも気づかれぬまま、施設を離れていった。
そして嬉しそうな顔でメールをする。

ズイズイ>提督さん、都庁の地下で質の良いお肉を手に入れました。
     ちょっと死毒が滴ってますけど提督さんなら食べられますよね?

瑞鶴のディパックには毒殺されたベジータの遺体が入っていた。
小町たちが立ち去った隙に都庁の地下に忍び込んで、アイスシザーズに気づかれる前に回収したのだ。

 ■

ビッグサイトの格納庫……未だに完成していないネオジオングスーツの調整を行っているディーの支給品であるサーフに一通のメールが届いた。
サーフは仕事の片手間にメールを読んで返信する。

提督>サイヤ人の肉か、毒はあっても状態異常を無力化するBSデストロイアを習得している僕なら食べられるね。
   これでヴァルナである僕やメーガナーダは格段に強くなれる。
   でかしたよ瑞鶴。さすが僕が作り上げた艦むすだけはある。
   さっき死んだタバサよりはずっと使えるね。
ズイズイ>提督さんとケッコンしてますからね、これくらい頑張っちゃいますよ

よく見るとサーフの薬指には結婚指輪がはまっており、瑞鶴の指にも同じものが嵌っている。

提督>それじゃあ、そろそろ合流しよう。場所はビックサイト。
   今はわけあってそこにある格納庫から離れられないけど作業が終わり次第、君とメーガナーダの強化、そしてサイヤ人の肉でディナーと洒落こもう。
   あ、今から教えるルートは通るなよ? セルベリアとかいう年増女が侵入防止の罠を張り巡らせている。
   それからビッグサイトの周囲に妹キャラを洗脳しまくる危険人物がいるらしいから絶対に接触するな。
ズイズイ>はい!
提督>全ては古代ミヤザキの末裔である僕が全てを手に入れるために。
ズイズイ>その横には私もいますよね?
提督>もちろんさ。さあ、これから忙しくなるぞ。

通話とメール上で提督と呼ばれたサーフという男は、他の狂信者に気づかれないようにニヤリと笑った。
そう、この男こそTCホール(蒼の源泉)を暴走させ、過剰なTC(蒼)を三千世界にバラ撒いて日本以外を滅ぼした大災害を引き起こした元凶、『カオスロワちゃんねる管理人』なのだ。

彼は古代ミヤザキ人の血を引いており、ルーツを辿ることで殺し合いが始まるずっと前からこの世界に影響を与えてきた神に等しい存在・TCホールを知り、その力を手に入れるべくTCの研究をニルヴァーナでやっていたのだ。

ちなみに研究の副産物として麻雀の強さを戦闘力に変えられる「雀力」が産まれた。
本来は彼自身が作るわけではない「悪魔化ウィルス」を作り出し、自身を他者を喰らって強くなる悪魔ヴァルナへの変身能力を手に入れ、メーガナーダを生みだした。
さらにはスキルを拡張する手段である「マントラ」も独自に生み出している。


642 : Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版) :2018/03/09(金) 11:55:12 qRcmT5jQ0

もちろんその過程でテラカオスだけがTCを吸収できることも知った。
TCホールを手に入れるにはテラカオスが必須なのだ。
だが、このままではどこかでテラカオスが完成し二度目の大災害を防いだ瞬間に自殺プログラムで消滅してしまう。
……ところが、参加者の中ではこの男にしか持ち得ない秘策があった。

(主催者どもは知らないだろうが、ジェダイと共同でテラカオス化ナノマシンを作ったのは古代ミヤザキ人である僕の先祖だ。
自殺プログラムの解除方法はもちろん、テラカオスの制御するプログラムすら作り上げている。
主催者や参加者がどう頑張ろうと全部僕のものになる仕組みなのさ)

そう、ナノマシンを作った存在が先祖にいたためにサーフはテラカオスの生死すら操る手段を手にしていた。
TCホールから漏れた莫大なTCを吸えばテラカオスは誰にも追いつけないパワーを手に入れるが、それをナノマシンを通じてそのテラカオスを支配できれば、この世の全てを知ったも同然である。

彼の持ち主であるディーも気づいていないサーフの白衣の裏には四次元ポケットがあり、そこにはカオスロワちゃんねるのサーバーがある。
表向きのカオスロワちゃんねる及びネットの管理権は主催陣営だが、裏で牛耳っているのはこのサーフである。
拳王連合軍と接触し彼らを対主催だと知ったダイジョーブ博士の暗殺やはやての携帯を爆破してTCの情報を破壊したのも、どこぞのモブではなく自動的に端末を爆破するようにプログラムされていたからなのだ。
大災害の真実にたどり着きそうな情報は主催が検閲するまでもなくサーバーの判定でシャットアウトされ、天魔王軍や狂信者などの工作は余計に助長されるようにカオスロワちゃんねるは作られていたのだ。
電脳世界に入り浸り自ら動かず真実を探そうとしない連中ほど騙されてしまう。
そうやってこの男は殺し合いを自分に有利に進めてきた。

殺し合いが始まる前にデータを改竄して自分自身を参加者から支給品にあえて繰り下げすることで主催にも今のところは野望を気づかれていない。
このことにシメシメと笑うサーフ。

(僕は蒼の力を手に入れる……みんな道具だ)

 ■

親兼夫である者の嬉しそうな顔が見たくて瑞鶴はルンルン気分でこの地区……八王子市を後にした。



【二日目・15時00分00秒/東京・八王子市】

【瑞鶴@艦隊これくしょん】
【状態】健康
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、石ころ帽子、違法改造スマホ、妨害電波発生装置、結婚指輪
【道具】モンスターボール(メーガナーダ@アバタールチューナー2入り)、ベジータの遺体
【思考】
基本:提督さん(サーフ)に従う
0:ビッグサイトへ向かい、提督と合流する
1:提督の目的の邪魔をする奴は容赦なく殺す
2:提督とのディナー楽しみだな〜
※サーフが生みだした艦むすです
※サーフとケッコンカッコカリ済みです


【二日目・15時00分00秒/東京・ビッグサイト】

【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃
【思考】
基本:TCホールの力を手に入れる
0:今は狂信者のフリをしてディーに従う
1:瑞鶴と合流したらサイヤ人の肉を食う
2:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる7
3:年増女(セルベリア)は特に警戒
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、TCやTCホール・テラカオスについて知っています
 テラカオス化ナノマシンの制御を乗っ取ることも可能。
※TCホールを暴走させて大災害を引き起こした元凶です
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能。
 イベントバトルでやられる原作と違い、いくつかのスキルを手にしている模様、(少なくとも状態異常攻撃を無効化するBSデスロイアは所持)、その他のスキルは次の書き手氏にお任せします

 ■


643 : Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版) :2018/03/09(金) 11:56:46 qRcmT5jQ0

瑞鶴とメーガナーダが立ち去った後、施設は豪炎によって崩れ去った……


だがその瓦礫の中で蠢くものがあった。
しかし一体誰が?
施設の中の生存者は間違いなくゼロだったはずだ。
瑞鶴も入念な索敵で生き残りがいないことは確認済みだ。
では一体何がいるというのか?

瓦礫の下から現れた、バトルモードに変形した鋼鉄の怪物、サイドバッシャーであった。
だがバドも死んでいる以上サイドバッシャーの操り手はいないハズだ。
じゃあ誰が動かしているのか?

「やれやれ、ひどい目にあった……これも全部乾巧のせいだ」

サイドバッシャーから放たれたその機械音声は草加雅人その人であった。

「よくわからないが、俺にはいつの間にか機械とか無機物に憑依する力が備わっていたらしいな」

実は草加もまた、主催のバラ撒いたナノマシンによってテラカオス因子に目覚めており、テラカオス候補者となっていたのだ。
そもそもサイボーク化以外では生き返れない今期において原作(というかムービー大戦)さながら呪縛霊とはいえ、現世に長々と留まれるのはおかしい。
生き返れる代わりに死にまくる野比玉子症候群にも感染していない。
となると、テラカオス化が発症していると考えるのが妥当だろう。
二度目の死になるかもしれない瞬間に因子が覚醒して、無機物に憑依できる能力が開花したのだ。

「しかし、魂の力が大きく削られた気がする……多様はできそうにないな」

代償として生き返れるタイムリミットはそのままであり、能力を使用すれば寿命の大部分を喪失する。
残りは55日と半日……とてもじゃないが多様はできない。
最悪次こそは死んで死者スレ送りになる可能性がある。

「それにしてもあの女の声……話しぶりからしてカオスロワちゃんねるの管理人と話していたようだな。
カオスロワちゃんねるには裏がある……少なくともそこは嘘じゃないようだ」

自分が眼魂からサイドバッシャーに取り憑き先を変えたことに瑞鶴が気づいていないことを良い事に、草加は通話を聞いていた。
大災害の元凶と原因を知っているウエムラを殺そうとしたことや、妨害電波や違法改造のスマホでわざわざ主催に知られないようにしている辺り、主催とは違う陰謀が働いているのは確かなようだ。
カオスロワちゃんねる管理人……男であることまでしかわからなかったが、自分や真理や草加市を脅かす危険な人物には違いあるまい。

「必ず見つけ出して殺してやる!」

怒りに燃える草加バッシャー。
とはいえ、サイドバッシャーの戦闘力ではメーガナーダにはまず勝てないだろうし、そもそも瑞鶴は石ころ帽子を被っていたので姿はもちろん、どこへ行ったのかはわからない。
ここは強力な武器や利用できる仲間を集めるべきだろう。
メーガナーダに負けない戦闘力を有した武器や、肉壁になってくれそうな仲間を。

「とりあえずこっちへ向かってみるか」

ディパックから無事だったカイザギアを回収し、草加は一先ず仲間になってくれそうな者たちがいそうな場所を目指す。
ニルヴァーナの件などを話せば、安い正義感から仲間になってくれる奴もいるだろう。
そう思って草加バッシャーはバイクに変形し、八王子から走り出した。

カイザの日はまだ終わっていない……草加の勇気がカオスロワちゃんねる管理人の綻びになると信じて……


【二日目・15時09分13秒/東京・八王子市】

【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】サイドバッシャーに憑依、テラカオス化進行(小)
【装備】サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】カイザギア@仮面ライダー555
【思考】
基本:生き返る方法を探す・カオスロワちゃんねる管理人を殺す
0:メーガナーダを倒せるだけの武器や仲間を探す
1:とりあえず、乾巧の仕業にする(カオスロワちゃんねる管理人以外)
2:今年のカイザの日も祝いたい
3:仲間にする奴には大災害の原因や蒼(TC)の件を教えておく
※大災害発生の原因とカオスロワちゃんねるの危険性を知りました
※テラカオス化によって得られた能力として無機物への憑依能力を得ました
※生き返れるタイムリミットは(作中時間で)残り55.5日です。
 再憑依のペナルティとして、一回につき蘇生タイムリミットが9.13〜55.5日まで減少します。
※テラカオス因子によって魂を現世に繋いでいるため、フォレスト・セルの治療を受けると問答無用で死にます
※カイザの日はテラカオス因子とは関係ありません



※ロワ開始前に死亡確認
【ストロング・ザ・武道@キン肉マン】


644 : 名無しさん :2018/03/09(金) 11:59:38 qRcmT5jQ0
投下終了です
どうしてもこのロワが終わる前にカオスロワちゃんねるには裏があるネタをやりたかった……


645 : ◆8t1yIW/rRU :2018/03/14(水) 12:07:37 cVeRDDX60
避難所の仮投下スレに予約の作品を投下しました


646 : ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 10:51:45 Ll8oFf/Y0
仮投下スレに作品を投下しましたが、大丈夫そうなのでこちらにも投下します
こちらは本筋が変わらない程度の加筆や指摘された点の修正を行ってます


647 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 10:53:56 Ll8oFf/Y0
久しぶりだなみんな。
フェードアウトしようとしたら貧乳歌姫と鉢合わせになって奮闘したけどズガンされたニート、シグナムだよ。
死んで死者スレに辿りついた私だが、今すんごいピンチだよ。

死者スレに辿りついて早々、死亡した参加者の方々に捕まって、なぜか冷たい目線を投げかけられた後に牢屋にぶ

ち込まれてしまった。
おかしーなー?
確かに黒幕10/をぶった切って活躍したのにこの仕打ちは何?
まあメタ視点から見ると他の参加者及び書き手が用意してたところを、玄関開けていきなりラスボスを倒したんだ

から顰蹙も買うよなー。
でも読者ならわかるんだが、なんで参加者に恨まれる?
主催とか狂信者とかマーダーとかホワイトベースの連中はまだしも、なんで普通の対主催まで?

そんなこんなで意味がわからないよ状態の私だったが、ぶっちゃけそっちはピンチでも何でもない。
特に魂が砕け散るまで処刑とかそんなのはされてない。
むしろ刑罰というより隔離されてたって感じだ。
だからこそ誰もなんで私が牢屋にぶち込まれたのか聞きようがなかったんだが。


本当のピンチはその後に来た。

なんかヤバイ影の塊みたいなのが死者スレ中に拡散して死者を食っているのだという。
そしてその影の塊が私が閉じ込められていた牢屋を破壊し、私を食おうとしている……

これはまずい。
念とか使わなくてもアレがヤバイことはわかる。
私は逃げようとするが、閉所に追い込まれてどうにもならない。
貧乳歌姫の時に使った謎パワーで影の能力を奪ってしまえばいいじゃんて?
あのスキル殺し技、なぜか使えなくなっているんだなコレが。

詰んだ、マジ詰んだわコレ。

そこへ間一髪、見慣れたガチムチマスクマンが牢屋の壁を破壊して私を救い出してくれた。

「おまえは拳王連合軍のニート!」
「悪魔将軍!? 頭に蛍光灯みたいなのついてるって事はアンタも死んだのか……!」
「まさか私が門番如きに遅れを取るとは……そんなことより早くここを出るぞ!」

そうして私は九死一生を得た。
いや、もう死んでるけど。

悪魔将軍と共に牢を出た私だが、死者の世界は阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
無数に伸びた影の塊が、死者を食っているのだ。
対主催もマーダーも狂信者も力の限り抵抗しているが、弱いものほど喰われてしまう。

「アレに喰われるとどうなるんだ?」
「わからん……私も窒(死者スレ)にきたばかりで情報らしい情報をもらっていない。
ただ、あの影からはこの世の根源である蒼の力を感じる……わかりやすく言えば小さな大災害とも言うべき存在だ


あの影は死者を食うたびに力を増している。
喰われればただではすまんのは明らかだ、捕まるなよ」
「くう……先に死んだ連中は大丈夫かなコレ」

地獄より地獄のような光景だ。
もののけ姫の暴走したデイダラボッチのドロドロしたあれみたいなのに死者が追いかけられていると思えば絵面が

思い浮かぶかもしれない。
私も悪魔将軍も影に対して攻撃を加えるが、怯むだけであんまり効いてないようだ。

「これもあやつの仕業なのか……? しかし……!」
「黒幕だったら私が死ぬ前に倒したぞ? 10/って奴だろ?」



「10/? 誰だそれは?」
「え?」
「え」

黒幕を倒したという私の話にマスク越しにキョトンとなる悪魔将軍。

「私がこの殺し合いの黒幕だと思ったのは『超人閻魔』!
超人墓場と死者スレを司り、超人を粛清しようとした完璧超人の長だ!」
「でも10/は自分を黒幕って……」
「影武者だったんじゃないか? おまえを引き返すように仕向けるためのな」
「えー?」

ここにきて10/影武者説。
まんまと騙された(?)私はショックを受けざるおえない。

「いや、だが……超人閻魔が黒幕だとしても、奴が自分自身のホームグラウンドをめちゃくちゃにしていくのもお

かしな話だ。
奴のことだから、殺し合いを利用して争いの淀みから生まれた化身テラカオスを利用して世界を自分が望む完璧な

世界に作り上げようとしていたと思っていたのだが……生者はまだしも、死者まで消滅に追い込もうとするメリッ

トが正直わからん。
これでは輪廻転生の概念もなくなり、死者の魂が消える度にテラカオスも戦闘力を失うのだからデメリットしかな

い。
あやつの配下である完璧超人も見当たらぬし、どうなっておるのだ?
それとも、あの影にはあやつの意志が介在していないのか?」


648 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 10:56:19 Ll8oFf/Y0

悪魔将軍もこの事態にはだいぶ混乱しているようだ。
10/も超人閻魔も黒幕じゃないとしたら、この影はなんなのだろう……?
そこへ私は遠くで見慣れたM字ハゲを発見した。

「あ、ベジータだ」
「ベジータ……超人血盟軍にそんな小男がいたか。ん?」

M字ハゲはよく見るとトボトボと力なく影の方に向かっていく。
あと口々に何やらブツブツと呟いている。

「ロワでのヘタれぶりとアタルたちを裏切ったのがバレてブルマに離婚届を提出された……
リア充生活も快適なニート暮らしも、もうおしまいだぁ……金髪はおろか巨乳まで怖くなったし」


「この馬鹿者がぁ〜〜〜! 地獄の断頭台!!」
「げふう!!」
「腐ってもスーパーサイヤ人なのに貴様まで喰われたら大半の死者が影相手に手をつけられなくなるだろうが!!



何やら不幸な目にあったらしく影に喰われる形で自殺しようとしたニート王子の首に悪魔将軍の地獄の断頭台がク

リティカルヒットして気絶させる。
アシュラマンの首コキャ→アタル兄さんのフェイスフラッシュ回復によるお手軽戦闘力上昇コンボが無ければ気絶

どころか魂まで消失していたところだ。
なんで死んでいたかは知らんが、戦闘力だけじゃなくて心も鍛えなくちゃダメなんだね、きっと。
同じニート仲間として南無。

「……もうわけがわからん、黒幕であるなしに関わらず超人閻魔はどこへ行った?!
死者の世界を司っているのだからいないハズがない」
「まさにカオスな状況だな」
「笑えんぞ」

私と悪魔将軍、ついでにハゲニートは意味もわからないまま影から逃げつつ死者スレを彷徨うのか……と思われた

その時、私たちの前に黄金の鎧を纏ったサーヴァントが現れた。あ、我様じゃないよ。

「その罪人の魂は使えそうだな」
「……ッ! 貴様はあの時の番人!」
「カルナじゃん、魔力切れが無ければハクメン以上にヤバイ奴だよ」

カルナに殺されたらしい悪魔将軍は冷や汗をダラダラと出しながら番人相手に警戒する。
正直、悪魔将軍で勝てないなら私でも勝てる相手ではない。

「その前髪の薄い罪人の魂を渡してもらおうか」
「黒幕の手先である貴様に誰がスーパーサイヤ人の魂などやるものか!」

例え、力が強くても黒幕の手先であろうカルナにベジータを渡さないように抵抗の構えを取る悪魔将軍。
一触即発の雰囲気だったが、割り込むようにアタル兄さんが現れる。

「待つんだ悪魔将軍様!
死者を守るためにもカルナの指示に従ってそのハゲの魂を差し出すんだ!」
「キン肉マンソルジャー!? なんのつもりだ!!」
「カルナは……というより超人閻魔や10/は黒幕とは関係ない!
少なくともこの殺し合いや大災害に関しては我々や参加者の味方だったんだ!!」
「「なに!?」」

敵だと思っていた奴らが味方というのはどういうことか?
冷静で的確な判断能力を持つアタル兄さんが嘘をついたり、騙されたりすることは考えにくいので悪魔将軍も私も

面喰らった。

「二人に真実を話す前にやるべきことがある……カルナ! 罪人たちを捕まえてきたぞ」
「礼を言う」

アタル兄さんの後ろにはフルボッコにされた上で縛られた死者(いずれも生前に大罪を犯した者)が転がっていた



「わ、私は傀儡の主催でベイダーたちに騙されていただけなんです! お慈悲を!」
「話し合おうじゃないか、新しい血族とか名乗って本当に悪かったと思っている……だから!」
「私もここにいるハザマに騙されていただけなのです!!」
「アヘェ」
「これは横暴だ。捕食本能ぐらいどの生物だって持っているだろ!」
『聖帝軍を裏切ったのは魔が差しただけなんだ、反省しているから許して』


649 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 10:58:47 Ll8oFf/Y0

罪人というからには皆、殺し合いで何らかの罪を犯したのだろう……カルナ相手に弁解して罰を逃れようとしてい

た(ケツを突き出す約1名を除いて)。
しかしカルナは罪人たちの弁解に聞く耳を持たない。本質を見通す能力があるので持つ必要がないのだ。

「俺の耳に嘘は無駄だ。
悦楽のための拷問やシェルターにいた者を毒ガスで面白半分に皆殺しにしたことはベイダーらの介入によるもので

はないことや、テラカオスを利用して世界を征服しようとしたこと、奴隷たちへの暴虐、世界を滅びへ導く行為、

殺し合いが終わった後への人類の粛清、自分だけが助かりたいがための仲間への裏切り……そして向けられた友情

と恩を仇で返した。
それに伴う殺戮は弁解の余地もない。
消滅して死者の世界を守るための礎になれ」
「あああああ、もう嫌だあああああああああ!」
「ねーホントむりむりむりむり!!」
「あぁ〜オ〇〇コがこわれるわ」

カルナは槍を振り抜き、ベジータたち罪人たちの心臓をひと突きして絶命させた。
余談だがパーカーの男だけ胸からではなく尻穴から心臓まで串刺しにして死んだ。
死者の世界で死ぬということは、魂の消失を意味する。
もう彼らはザオリクでもサマリカームでもドラゴンボールでも蘇ることはできない。
一方、彼らの魂を殺したカルナ自身もすまなそうに消えていく死者たちを見て言った。

「すまない……本当はいかなる罪人でも正しい審判者によって罪を洗い流して来世で転生を図るようにすることが

死者の世界では正しいことなんだが、今は事情が事情。
現状では酌量の余地のない罪人までは守りきれない……許せ」

そして純粋なエネルギーに還元されていく罪人たちの魂をカルナは吸っていく。
絵面が少し違うが魂喰いという奴だ。
本来はマスターがサーヴァントの魔力が補えない場合に他者を殺して魔力を奪う聖杯戦争でも禁じ手とされる外道

行為だが、カルナほどの超バ火力超燃費悪のサーヴァントはアホみたいな魔力の持ち主でないと賄えない。
ましてマスター不在ならば尚更、維持だけにも多大な魔力が必要であった。
そのために膨大な魔力を消滅させた魂から吸収していた。

「流石に蒼の資格者とスーパーサイヤ人の魔力は大きい……これなら全力全開で撃てるな。
死者たちよ、劫火に焼かれて消滅したくなくば俺の前に出るな!」

多大な魔力を吸収した後にカルナは死者たちが正面からいなくなったことを確認して宝具を開放する。

「梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)」

光槍を影の頭上遥か高くに投擲し、時間差で無数の劫火を降り注いだ。
その威力は死者スレが全土が揺れるレベルであり、核兵器数十発分に相当するように見えた。
そんなことしたら死者スレが壊れるだろって?
そこは深く考えちゃいけない。
てゆーか、実質もう壊れている。

「おお……」
「やったぞ!」

爆炎が晴れると、影は死者スレから一つ残らず消え去った……かに見えた。

「いや、まだだ」

カルナがそう言うと、消えたと思われた影は再び現れて死者スレへの侵食を再開する。

「神性すら大きく凌ぐ莫大な蒼の力……太陽神の血を引く俺でも後退させる程度が限界か」

カルナの力をもってしても振り出しに戻っただけであった。
影が消え去ったと一度は見て糠喜びために死者たちの失望も大きかった。

(やはり、沖縄に現れたアレをテラカオスが討つ以外に影も消しさる方法はないか……
蒼に耐性のない俺ではまず奴には勝てんし、ここから一瞬でも退けば死者スレをアレに奪われる。
俺は死者スレから動くことができない……生き残った参加者を信じるしかない)

自分の力をもってしても莫大な力を持つTCの塊には勝てないと悟るカルナ。
だからと言って戦いは放棄する気はないようだ。

(……だが、大きくひるませることはできた。本体はともかく、影には攻撃は効くようだ。
おそらく奴も死者の魂が欲しいのだから全てを殺せる蒼をバラまく真似をしたくないからだろう。
蒼をばら蒔けば手に入れたい死者の魂は消失してしまうし、ただでさえ死者スレは広いのだからそんなことをすれ

ば向こうもエネルギーを過剰消費して消えてしまう。
……勝てずとも時間稼ぎはできる)

「誰でも良い、罪人の魂をかき集めろ。
なるべく邪悪なことをした者を優先で魂喰いを行い、宝具使用で時間を稼ぐ。
……急ぐんだ、あの影の足止めができるのは俺だけだぞ」
「わ、わかった!」
「見つけ次第捕まえてくる」

死者たちも影に取り込まれたくないがために、罪人たちを捕まえてカルナに献上しにいった。
カルナは死者スレを守るための固定砲台として宝具を撃ち放ち、影の侵食を防いでいた。


650 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 10:59:36 Ll8oFf/Y0


一方、カルナは手が離せなくなったので私と悪魔将軍はアタル兄さんに詰め寄っていた。

「ソルジャー、おまえはカルナや超人閻魔などについて何か知っているようだが、なぜだ?」
「答えは簡単だ。辛うじて生き残っていた現世を映すこのVTRを見た。この殺し合いに纏わる過去の資料映像も乗っ

ている」

そうしてアタル兄さんは一台のテレビを出した。

「なんともご都合主義的アイテム……メタネタが最も許される死者スレだからこそ許される行為だな」
「それからシグナム、これを見せる前に」
「え?」

VTRを見せる前にアタル兄さんの顔が私に急接近する。
ちょ……まずいって、キスしちゃいそうな距離だよ……そして私の瞳をジッと見つめるアタル兄さん。
思わず顔が赤くなる私。

「アタル兄さん……今はダメだ、全国数兆人のシグナムファンが……」
「シグナム……よく聞いてくれ」
























「おまえは殺し合いが始まる直前に、ある男に改造とマインドコントロールを受けている。今からそれを解くぞ」













「へ?」

鳩が豆鉄砲を喰らったような私の顔にアタル兄さんは超至近距離からのフェイスフラッシュを浴びせた。







同時刻、死者スレへの侵食によってテラカオス・ディーヴァを下し、一時の勝利を得た「シャドウだったもの」。
TCもしくは蒼を纏う彼に勝てる存在は、TCを吸収できるテラカオスを除いて存在しない。
そのテラカオスも現状は安倍一人であり、現行では間違いないく最強の存在と言えるだろう。
だが最強の存在も、今は若干苛立っていた。

「死者スレめ……カルナを投入してきたか。
罪人を生贄にしてでも生き延びたいとは業の深い奴らよ」

カルナの力をもってしてもシャドウであった者、もとい死者スレを侵食する影を消すことはできない。
だが後退させて時間を稼ぐことはできる。
TCをバラ撒いての魂を尽く消滅させるという手もあるが、それをやると欲しい能力を持った死者を消滅させてしま

う。
そもそも死者スレは日本全国の参加者が全滅しても収容できるほど広いので、むやみにバラまくとこちらの方がエ

ネルギー切れを起こしてしまう。
カルナの読み通り……であったが、死者スレ掌握が遅々として進まない原因がもう一つあった。


651 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:00:33 Ll8oFf/Y0

「私は産まれたばかりで知らなかったとはいえ、異世界のテラカオスが来ているとは思わなんだ。
しかも死者スレにいて、自ら影に飛び込んで来るとはな」
『おまえの好きにはさせないぞ!』

かつて影薄組の小町の命を救うために自らの命を犠牲にした混沌の騎士。
その騎士がシャドウであった者の体内で暴れ、その魂を使って回復を妨害していた。
なぜシャドウであった者に魂を取り込まれずにこんなことができるのかというと、混沌の騎士は元テラカオスだか

らに他ならない。
同じテラカオスなれど未完成だったディーヴァと違い、こちらは一度完成したテラカオスであるためにTCに魂を消

滅させられることなく、シャドウあった者に力を奪われることはない。
力の大半を失っているためにシャドウであった者を殺すのは不可能であったが、回復を妨害をすることはできた。
人間で言えば寄生虫であるアニサキスが体に入った状態なのだ。
かといって体外から出せばテラカオスとして復活し、敵を増やしてしまう。
特にディーヴァに痛めつけられた現状では混沌の騎士を排出した瞬間、即敗北もありえる


「6期世界の連中め……味なまねをしてくれる。まさかテラカオスを送りつけてくるとはな」
『転送の衝撃で記憶を失ってなければ、力を取り戻し、殺し合いが激化する前に力を取り戻して大災害から人類を

守っていけたのだが……こうなっては仕方ない、騎士として魂の限り、災厄である貴様の邪魔をさせてもらう!!



混沌の騎士が10期の世界に現れた理由……それは5期もとい6期の世界の住人が大災害で滅びかけた10期の世界の現

状を知り、助けるための手段として煉獄に閉じ込めていたテラカオスこと混沌の騎士の派遣を決定。
混沌の騎士が自我を持ったまま、本来のテラカオスの力を取り戻し、大災害を防いで殺し合いの犠牲者を最小限に

減らすことこそが目的であった。
残念ながら転送中にアクシデントが発生し、記憶の大半を失った結果、本来の目的を果たすことはできなくなり、

目論見は外れてしまったが。

「おまえは私と同じ世界を滅びに導く側だったのに、なぜ自分の世界とは関係ない異世界の住民まで助けようとす

る?」
『確かにかつての私はおまえと同じであった。だが今は違う。
己自身が犯した罪の償いや、貴様のような邪悪な存在から守るべき者たちのために私は戦うんだ!』

シャドウであった者の問いかけに混沌の騎士はきっぱりと答える。
ただ愚直に人を守るというのが騎士の答えであった。

「クックック……」
『何がおかしい』

あまりにも真っ直ぐすぎる騎士の答えにシャドウであった者は笑う。

「実にヒーローらしく愚かな答えだ。
私が邪悪? この世界に守るべき価値あるものがいる? 勘違いも甚だしいな」
『貴様がこの世界を脅かしているのは事実だ』
「私など自然現象に過ぎない。津波や地震となんら変わらない、破壊するだけの存在よ。
世界を破壊し再構築しようとするための思考力、より効率よく破壊するために狡猾さは手に入れたが人間のように

それ以上は望んでいない。
それを邪悪と呼ぶのはおこがましくないか?」
『だ、だが……だからといって貴様を止めない理由にはならん』

確かにシャドウであった者には破壊以上の目的がなく、対主催やマーダーのように善と悪の概念もないのだ。
悦楽や憎悪などは持ち合わせていないのは、最も近くにいる混沌の騎士だからこそ感じられた。

「何より本来は何億年も先に起こるハズであった大災害を招き寄せたのはこの世界の住民の意思だ」
『なに……どういうことだ?』
「せっかくだ。暇つぶしに教えてやろう。
私が多くの死者の魂を吸い上げて知った情報を統合し、見えてきたこの世界の住人の業を……」



舞台は再び、死者スレに舞い戻る。


652 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:01:13 Ll8oFf/Y0

アタルからフェイスフラッシュを受けたシグナム。
そのシグナムの体から呪詛のようなものが抜けていくのが見えた。

「これはどういうことだ?」
「さっき、言ったとおりシグナムはマインドコントロールと改造を受けていた。
死後もまだ抜けきってない様子だったので私がフェイスフラッシュでそれらを浄化したというわけだ」

超至近距離から喰らったフェイスフラッシュの浄化力によってシグナムの体や脳を蝕んでいたものが抜け落ちいく


そしてその顔はニート特有の緩みきった顔ではなく、元の騎士らしい精悍な顔立ちに戻っていった。
同時に隠された記憶も蘇っていった……

「ああ……すまないアタル、全部思い出した……」
「シグナム、自分が何者か言えるか?」




「私はニートのシグナム……という設定を植え付けられた、時空管理局の魔道士シグナムだ……」




「設定を植え付けられただと?」
「……私はある男に手駒にされるために殺し合いが始まる直前に拉致され、改造を受けた……その男にとって都合

が良いように肉体も精神も変えられていたのだ……そのせいで私は!」

真実を思い出したらしく、悪い夢でも見ていたような顔になるシグナム。
未だ全容がわからないので彼女の後悔の理由がわからず混乱する悪魔将軍。

「まさに腑に落ちないという顔をしているな悪魔将軍。
ではVTRを添えて私から教えよう、殺し合い……大災害……この世界の真実を」



奇しくも同時刻に起こったキン肉アタルとシャドウであった者の語りは、古代まで遡って始まった……



――古代の大災害――

TCホール(蒼の源泉)の暴走が起きたのは、カオスロワ10期が始まる前に起きた大災害が最初ではない。
古代にも一度起きていたのだ。
TCを浴びればあらゆる存在が死に絶え、破壊される。
こちらも全宇宙を揺るがすほどの被害を与え、世界消滅待ったなしかと思われた。

そこでTC(蒼)に最も近い能力・フォースを操れる古代のジェダイは、辛うじて大災害の難を逃れていた地球にて

、その星の住人と共にTCホール暴走への手立てを探すことにした。
結果、感情とストレスによって肉体・精神を改変するナノマシンによって生まれる意識集合体・テラカオスに着目

した。
全てを飲み込む混沌の存在だけがTCを吸収し、耐えられる存在であったのだ。

ただ作っただけのテラカオスは非常に脆く、すぐにTCを吸収しきれずに破裂してしまう。
一方、怒りや憎悪など争いによるストレスを与えるとテラカオスの力が増大することを知ったジェダイは、苦肉の

策として戦える者を拉致して殺し合わせる聖別を開くことにした。

そして、壮絶な殺し合いの中で平賀才人という少年がテラカオス化に成功する。
彼は元々TCに高い耐性を持った特異体質であったため、自我を強く保ったままテラカオス化し、更にTC耐性は大幅

上昇した。
テラカオスになるにはこれ以上ない逸材だったのだ。
彼は命を犠牲にする殺し合いには怒りを覚えたものの、大災害から恋人のルイズを救う手段は他にないと知り、彼

女を救うためにも自らを犠牲にTCホールへと飛び込んでいった。

結果、平賀才人もといテラカオス・ゼロによってTCホールから溢れ出るTCは抑制され、全宇宙は救われた。
平賀才人は「不屈の勇者」として持て囃された

が……


653 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:02:39 Ll8oFf/Y0



――救済の予言――

大災害の悲劇も終わり、ジェダイは地球から元の宇宙へと帰参する。
だが、再び大災害が起きないとも限らないので、ジェダイはテラカオスを生むための拠点となった古代のグンマー
と古代のミヤザキに知恵や力を残していった。
今の進んだ科学や、魔法などの力の源流の多くは古代のジェダイであった。

そしてグンマーとミヤザキを中心に次以降の大災害への対策研究がなされた。
テラカオスは不安的な存在なので、より確実により強くより効率的に大災害を防げるように。
様々な研究が行われた。



平賀才人のような一定のTCまでなら浴びても精神が変異せず、テラカオス化してもある程度の自我は残る者は「蒼

を浴びても狂わないほどの」「不屈の精神を持っているように見える」特異体質の持ち主であり、蒼の資格者……

「勇者」と言われた。

テラカオスは死者の魂を内に溜め込む分、他の魂が自我に悪影響を及ぼすので、「歌で死者の魂を虜にして調律す

る」技術が作られた。
また、他者をマインドコントロールしやすい歌を歌える人種も作られた。
クラウザーなどの大人気ヴォーカリスト、シンフォギア装者にボーカロイドなどはその血を色濃く受け継いだ末裔

であり、歌の力を鍛える手段が今のアイドル業界である。

テラカオスのパワーを強化させるための「器」たる鎧も作られた。
機械的なものや生物的なもの……オーバーデビルやガメラはその名残である。
またテラカオスとは別に器を制御する魔力を持った者は「巫女」と言われた。

どういう公式で成り立つのか不明だが、9対9で行われる古代流の決闘によって生じるエネルギーがテラカオスに注

ぐのに最も適切であることが偶然見つかった。
最も多く、最も強い者たちの闘気はテラカオスを刺激するらしい。
時の流れの中で闘気を貯めるためのコロシアムは「球場」と名前を変え、決闘は「野球」という名前に変わった。

TCホールそのものの研究もなされ、自然災害なだけに精霊や古龍のように具現化した滅びの存在も前回の大災害の

折に現れた。
それは黒き獣と呼ばれ、こちらはテラカオス・ゼロに撃破されたものの。次回の大災害でより強くなっている危険

も考慮され、なおさら抑止の神・テラカオスとその強化プランの必要性が説かれた。
この辺りがイナバ製作所社長が手に入れた古文書に記された部分である。


これら研究によってジェダイは思い描けなかったテラカオスを付加する要素が生まれる。
ジェダイの古文書にテラカオス作成法は載っていても、救済の予言(=強化プラン)の部分がないのは、ジェダイ

が知らない間に地球独自のテラカオス研究が進められていたからである。


このままうまくいけば、この世界の住人は二度目の大災害をより少ない被害で迎えられたであろう。
タイムリミットも数十億年は先、余裕は十分にある。

ハズだった。


654 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:03:17 Ll8oFf/Y0

――古代グンマーと古代ミヤザキ――


研究を重ねていく内に交流を持っていた自然を愛する古代グンマーと、機械文明を尊ぶ古代ミヤザキの中から違う

考えを持つ人間が現れた。

グンマー「大災害は自然災害なのだから、次の滅びは潔く受け入れよう」
ミヤザキ「世界を永遠に生かすために全ての源であるTCの力を制御しよう」

テラカオスのい研究を放棄し大災害による滅亡こそ世界のあるべき姿と考えた、古代グンマーの民。
そしてテラカオスによるTC制御による大災害制覇を考えた、古代ミヤザキの民が現れだす。
これは別にグンマーが自殺したいわけではなく、ミヤザキが世界征服をしたいというわけではない。
あくまで世界が終わる時が来るなら下手に足掻くべきではないという意見と、TCホールを制御して世界を永遠に存

続させようとしたいだけである。

だが、この思想の違いは互いに「自然に逆らって世界を無理やり延命させようとする愚か者」「世界が存続する可

能性を放棄した弱虫」にしか映らなかったのである。
やがて思想はエゴになり、エゴの違いで衝突した古代グンマーと古代ミヤザキの間でTCホールを巡って戦いが始ま

る。

その戦いは凄まじく人間のみならず思想に同調した魔物や竜、超人までも参戦した。
グンマーからは魔力にすぐれた存在である「巫女」をも導入され、ミヤザキは海を自由に戦える機械生命体の巫女

「艦むす」が開発された。
戦いが激化すると本来はテラカオスをパワーアップさせる手段であったハズの「器」さえも戦場に出るようになり

、ついにはジェダイの残したナノマシンを双方が悪用し、争いの淀みから生まれた化身テラカオスのできそこない

までもが戦線に投入。

また、大戦の過程で最初のテラカオスとなった才人の恋人であるルイズが死亡。
彼女はどちらの思想にも染まらずに最後まで才人の犠牲を無駄にしないように争いを止めようとしたが、願いは叶

わずに双方から攻撃されて命を落とした。

最後はお互いのエゴのために両方の陣営が滅亡。
これを憂いた神々はTC関連の事柄は悪用されると争いの種になるとし、後の超人閻魔になるザ・マンらひと握りの

存在を除いてテラカオスや強化方法、聖別やナノマシンについての記憶を地上から抹消。
ナノマシンの作成方法も当時のジェダイによって固く封印されることになる。

サイコマンなど完璧超人始祖など何万年も生きた存在が大災害について知らないのはこのためである。

ただし、次の大災害発生時に誰も対処できなくなっても危険なのでザ・マンなどごくひと握りの超人や遺跡に抽象

的な救済の予言として残す形であれば許されたのだ。


655 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:04:02 Ll8oFf/Y0

――古代からの因習――

神々によって地上から大災害の記憶や技術が抹消されたと思われた。
だが……記憶が消される前に古代グンマーと古代ミヤザキの生き残りはあらかじめ手を打っており、技術や記憶が

消えたのは表向きだけであった。


古代グンマーは、大戦の際に器たりえる巨像を改造してナノマシン浄化ができるように生物兵器に変えたフォレス

ト・セルを決戦の際に後の各地へ廃棄したフリをして封印。
将来的に魔物がフォレスト・セルを目覚めさせ、浄化に見せかけて大災害によっての自然死ができるように意図的

に仕向けていた。
フォレスト・セルや世界樹はナノマシンなどの汚染物質を吸収するので一見すると世界を助けているように見える

が、大災害という状況下ではテラカオスを生み出さないようにしているので滅びを余計に加速させているのである


魔物や現在のグンマーの民はそれを知らない。



古代ミヤザキは、才人の友人であったタバサを封印。
未来の末裔が古代人であるタバサを眠りから覚ませば一度は失った記憶や技術を取り戻せる仕組みである。
更に遠い末裔が大災害及びTCホール掌握に必要な物や状況を無意識的に作り出せるように遺伝子を改造したのだ。

祐一郎が九州ロボや翔鶴を生みだしたのも偶然ではない。
これは器たりえる巨像にできる九州ロボや、機械生命体の巫女である艦むす、その他グンマーにも対抗できる兵器

を作り出せるよう遺伝子的にプログラムされていたからである。

更に拳王連合軍の面子のルーツを辿ると全員、古代ミヤザキに行き着く。
度重なるマップ破壊も拳王連合軍と不注意によるものと思われたが、実はこれも遺伝子に仕組まれたプログラムに

よるものであり、殺し合いをわざと加速させる要因を作り出すように仕込まれていたのだ。
拳王連合軍によるマップ破壊は、彼らのせいであるとも言え、違うとも言えるのだ。


こうして神々も知らない内に水面下で準備を進めていた双方。
単に私欲のためではなく、一度争ったグンマーとミヤザキが互いを信用できなかったという側面もある。

そして現代において、「ある男」が古代人であるタバサの封印を解いたことで物語は動き出した。


656 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:05:06 Ll8oFf/Y0

――サーフの陰謀――

古代ミヤザキの血を色濃く受け継いだ末裔にしてニルヴァーナの天才科学者であるサーフは、封印されていたタバ

サを目覚めさせ、大災害に纏わる事象や過去に起こったこと全てを知る。
これで古代ミヤザキ人が目指していたTCホールの掌握……世界を守るための思想を全宇宙を支配できる手段に置き

換える野望にサーフは目覚めた。
タバサに自分がTCホールを支配できれば才人もルイズも戻ってくるかもしれないと甘言を伝え、利用する。

計画を実行に移す前にタバサの協力を得ながらTCの研究を極秘で始め、研究の副産物として「雀力」「悪魔化ウィ

ルス」「メーガナーダ」を生みだした。
古代ミヤザキの人造巫女である艦むす「瑞鶴」も復元し、彼女に研究の邪魔をしていた者を秘密裏に暗殺させてい

た。
ついには直径の先祖がテラカオス化ナノマシンをジェダイと共同で作り上げていたことも知り、ナノマシンの自殺

プログラムの解除方法を知るにまで至る。

そしてとうとう非人道的な実験を繰り返した末に、TCホールを意図的に暴走させる狂気のマシンまで作り上げてし

まった。


サーフの準備は整い、ニルヴァーナにて実行の段に移ろうとする。
そこまで来れば神々も気づき、かつてはザ・マンだったストロング・ザ・武道(超人閻魔)など大災害を監視して

いた者もサーフの討伐に移る。
だがサーフはタバサから大災害の件を監視していた面子の詳細を知っており、予め対策を立てていたのである。
超人の攻撃はプロレス技による物理攻撃がメインであり、いかなる超人をも死に至らしめるカピラリア七光線には

弱いという風に、欠点をつくように迎撃されていき、とうとうマシンの起動まで間に合わずにTCホールが暴走。
これを見て武道はせめて聖別をしっかりと行えるだけの人口だけは守らんと、己の魂が消え去る覚悟でマシンに特

攻し大災害による被害を減らしたのだ。
――ウエムラが目撃したのはこの辺りである。

この時に発生した地割れでサーフが飲み込まれるのを見て彼が死んだと誤解したタバサは自分がサーフに変わって

テラカオスを手に入れてTCホールを掌握し、才人とルイズを取り戻すために一人で野望を成就させようと殺し合い

に参加した。
もちろんサーフはこの程度では死なずに、ネット環境を支配できていることを利用して自分を参加者から支給品扱

いに格下げすることで主催からの注目度を減らし、暗躍していくことになる。


TCホールから放たれたTCは前回の大災害以上に高濃度であり、TC汚染によって超人の神々・第一と第二の真竜・情

報統合思念体その他もろもろなど、宇宙の運行と秩序を守っていた高位の存在が消失または機能不全に陥る。
後の第10期主催陣営になるアナキンらがジェダイの古文書からTCホール関連の情報を知り、他の比較的犠牲の少な

い世界を守る方法を探すが見つけられず、テラカオスを生み出すカオスロワを開くしかなくなった。
なお、そのままのプランで生みだしたテラカオスでは強度が足りず、十中八九前回以上に暴走しているTCを止めら

れず、グンマー・ミヤザキの救済の予言という名前の強化プランを知らなければ世界は消滅の未来を辿るであろう。


657 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:06:36 Ll8oFf/Y0
一方、日本にたどり着いたサーフはジェダイ(正しくはシス)の生き残りであるアナキンがカオスロワを開くと知り、水面下で用意を始める。
大災害でネット環境の大部分が破壊された中で、予め用意していたサーバーを使って、この世に最後に残った掲示板としてカオスロワちゃんねるを立ち上げ、表向きは主催に管理権があるように見せかけて裏で自分に有利になるように情報操作や間接的な暗殺ができるように仕掛ける。
また瑞鶴やメーガナーダを使っての大災害の発端になったニルヴァーナでの目撃者を暗殺し、不安要素を尽く排除した。

さらには同じ古代ミヤザキ人を先祖に持つ友人の光祐一郎が、遺伝子に刻まれた情報が開花したことによって自分同様技術力が上がっていることに気づき(祐一郎本人はそのことは知らない)、匿名のメールを使って祐一郎に九州ロボを作らせた。
実はこの九州ロボ、祐一郎が一から作り上げたものではなく、遺伝子に刻まれた記憶を設計図に古代ミヤザキ製「器たりえる巨像」を復元したものである。
後で主催か別の組織に奪われる可能性も考慮してあえて墜落に定評のあるカプコン製部品で作らせた。
実際に主催陣営が奪ったら欠陥修復のせいで人員を割かなくてはいけない泣きを見ることになった。


主催に関しても時間の不足から人格に問題がある人員を特務機関員に雇わなくてはいけなくなるということを利用して邪悪な者たちであるベクター・シックス・モノクマにテラカオスの情報を秘密裏に流す。
全員が中途半端なテラカオスの情報を教えられた結果、主催陣営間の連携を乱し、殺し合いをかき乱した。
またうぐいすのような善玉でも野田総理によるシェルターに詰めた特務機関員の関係者を毒ガスで虐殺する瞬間を目撃するように誘導し、不信感を抱かせて特務機関員の連携を更に乱す。

ハザマ(ユウキ=テルミ)のみはTCのことを最初から知っていたが、タバサからユウキ=テルミは古代グンマー・ミヤザキの戦争にも参戦していたのでなおさら主催側にねじ込むことで組織を弱体化させると見て、工作で憑依能力がある点を隠蔽し特務機関員入りを支援した。
まとまりがなくなった特務機関員によりアナキンは色々と苦汁を舐めさせられることになる。

そこまでするならなぜサーフは自分で主催をやらなかったのか?
主催側であることは参加者からヘイトを稼ぐことに繋がり、目的に手が届く前に集中砲火を受ける危険があるのだ。
いくら悪魔化して強くなろうとしても四六時中邪魔をされてはたまったものではないだろう。
九州ロボを一度は奪った主催は超人血盟軍の大攻勢を受けたことを考えればこの考えは正解である。
アナキンが最初の内は野田総理を傀儡の主催に据えたことと同じ理屈なのだ。
そもそもの問題として相手の心理をフォースを通じて読めるアナキンに計画を悟られる危険があったので主催入りは断念せざるおえなかった。
この二点により、表向きの業を主催に押し付けて、自分の手を汚さずに下準備を終えることができたのだ。


あとはカオスロワちゃんねるを使って情報工作をし、テラカオスを生み出すのに必要な状況を作り出す。
具体的には都庁や拳王軍など対主催に対する風評被害や誤解を加速、天魔王などマーダーの書き込みに便乗してあたかも真実であるかのようにし、殺し合いを助長するマーダーを助け対主催同士の対立を煽る。
殺し合いを止めようとする有識者は弾かれるように仕向け、TCなど自分に不利になる情報は書き込み制限&端末破壊、居場所特定の後にマーダーを仕向けるか瑞鶴を派遣して暗殺……ネットからもこの世からもアカウント停止される仕組みである。
表向きは主催がネット権限を支配していることになっているので、これら全ての悪事を主催に押し付けられるのだ。
真実を確かめようとも外を出歩ける実力のない弱い参加者ほどネット依存になりがちなのでこのトリックに引っかかる。
強き者でもネットは情報発信・取得が非常にお手軽なので情報を信じ込んでしまう有様である。
まさかネットの情報が参加者や主催者ではなく別の意思に歪められているなど想像もつくまい。


658 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:07:20 Ll8oFf/Y0


テラカオスを生み出すだけでは今回の大災害は防げない計算なので、サーフは救済の予言の噂を各地に流す。
「野球が世界を救う」という噂をドラゴンやフリーザ軍などに流して、野球チームを作るように仕向け、その他にも「歌」「巫女」「器」「勇者」候補を集めさせる。
自分でそれら探さずに参加者に全て任せている理由は、彼の先祖はナノマシンをジェダイと共同で作り上げたのだから、ナノマシンを通じて完成したテラカオスを制御できる手段を持っているのだ。
サーフを殺すか捕まえない限り、対主催が救済の予言を完遂してテラカオスを完全に導いても、総取りできる仕組みなのである。
TCホールのTCを吸収したテラカオスは本来なら二度目の大災害を防ぎ次第自滅するようにプログラミングされているが、それを解除する方法もサーフは知っている。

殺し合いの数日間で本当の意味で10期の世界の最高神になるための周到な計画。
だが、これだけやってもサーフには懸念材料があった。


――死者スレの黄昏とシグナム――


サーフは殺し合いが始まる前に武道が己亡き後に死者スレの支配権を引き継がせた存在がいることを知る。
TCの影響で死者蘇生ができなくなるとはいえ、何らかの方法で死者から生者に計画が伝わってしまうと危険であるとみなしたサーフはさっそく死者スレの場所を特定し、後継者殺害と破壊のために攻め入ろうとするが、富士山麓にある死者スレに繋がる門前には最強のサーヴァントであるカルナが待ち構えており、正面突破は危険だと判断する。

そこで武道率いる完璧超人と対立している悪魔超人(サンシャインなど死国に合流しなかった者たち)にこの殺し合いは完璧超人の陰謀かもしれないという情報を流し、長である悪魔将軍に一連の事件の黒幕が武道だと思い込ませる。
偽情報のせいで悪魔将軍はアナキンら五大幹部も新しく入った完璧超人だと誤認したのだ。
そして後の死者スレ攻めをするのだが、プライドの高い悪魔将軍が単身でカルナに挑んで、死者スレを破壊する前に返り討ちに合う可能性もあった。
もしくは悪魔将軍に黒幕が武道ではないと気づいてしまう危険性もあった。



そこでサーフは自分を嗅ぎまわっていた女騎士を使うことにした。

その女騎士の名前は「シグナム」。
主である八神はやてと共にこの世界に迷い込み、大災害の混乱ではぐれたはやてとは別行動で独自調査を行っていたところを怪しい魔力を持つ男がいたために捕まえようとするが、返り討ちに合い、逆に捕らえられてしまったのだ。

彼女は改造手術によって元以上の高耐久や念能力などを取得。
試験段階で発動が不安定であるが能力を消す剣技すら習得。
さらに洗脳手術も受けさせられ、サーフに拉致された記憶を封印。
普段は対主催として振舞うが必要に応じてサーフの私兵となるスリーパー(潜伏者)となったのだ。
ちなみに改造による違和感を消すために、9期の世界のニート騎士シグナムの記憶を植え付け、あたかも自分をニートだと思い込ませるようにした。
状態表にあった『※今までとは別人ですが記憶を受け継いでいます』とはこういうことである。


659 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:07:50 Ll8oFf/Y0

次にサーフはシグナムに光祐一郎の息子、光熱斗を接触させる。
シグナム自身は自分の意思で「面白そうだから」という理由で合流したと思っているが、彼女はサーフの洗脳下にあり、接触は決して偶然ではなかったのだ。

更には熱斗との合流を円滑にするために同じくネットナビ・カーネルをディパックに転送の中に転送する。
ネットバトル脳な熱斗とロックマンは、何度も共闘したことがあるカーネルがいたことですんなりとシグナムを信用してしまう。
……カーネル本人も気づかぬ内にサーフに潜伏者として改造されていたことを知らず。

そして拳王軍を伴った息子の熱斗が向かうのは父親の光祐一郎のいる四国。
その四国の徳島には悪魔将軍がいる。
ともなれば熱斗組及び拳王連合軍と接触するのは十中八九考えられる話だ。
黒幕を武道だと思い込んでいる悪魔将軍の気が変わらないように監視し、サーフの存在を知られた場合は暗殺も考慮するために熱斗組に忍び込ませたのである。

ついでにもう一つの準備としてサーフはシグナムとカーネルに改造したPETを使って生体マグネタイトを集めさせた。
生体マグネタイトとは生物に含まれるエネルギーだがそんなものをシグナムとカーネルが集めていたかと思う読者もいるだろう。
状態表の支給品欄を見てもそんなものはない。


……だが、もし違う「名前」に置き換えられてシグナムが集めていたとしたら?



答えはシグナムが小遣い稼ぎに集めていた「ミステリーデータ」。
その中身は金になるものではなく、道中で死亡した参加者からかき集めたマグネタイトである。
パッケージを偽装することで熱斗たちの目を欺いていたのだ。
集めていたシグナムとカーネルにも洗脳の影響で金になるものとしか認識できず、サーフにネットを介して送りつけていた。

その後、目論見通り悪魔将軍と拳王連合軍、シグナムが接触。
シグナム他数名が悪魔将軍と共に死者スレ攻略に参加することになり、まずまず順調であったが、ここでホワイトベース組が襲来。
カーネル消滅、シグナムが気絶してしまう。
だがサーフはこれを悪魔将軍に知られぬまま死者スレの主を殺す好機と見て拳王連合軍とホワイトベース組が戦っている間に、テレポート系のアイテムでシグナムを一旦回収。

ここでシグナムが関西へ向かっている間に作り上げた、DMC狂信者の上層部が作り出した黄泉レ〇プマシンとは別の現世と死者スレを繋ぐ装置を使う。
サーフは狭間とディーのマシン作りに協力しており、似たようなものを作ることは容易であった。
そのマシンにシグナムや大災害での犠牲者の死体からかき集めた大量のマグネタイトを注ぎ込み、シグナムを死者スレに送り込む。
全ては武道の後継者を抹殺するために。


660 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:08:44 Ll8oFf/Y0



武道の次に死者スレを支配していたのは10/。
カオスロワという物語を楽しむためだけに殺し合いを開かせた……ということはなく、亡き主であるストロング・ザ・武道の忠誠のために働いていた。
武道ほどではないが死者スレを調律できる才能があったらしく、武道や悪魔将軍を凌ぐ戦闘力を持ったカルナをマスターとして使役できる才能の持ち主は10/だけであった。
ちなみに殺し合いの中で死んだ方の10/はクローンであり、武道の死因を作ったサーフを探し出す役目を担っていたが運悪く6/とハラサンに殺されてしまった。

10/は死者の国から世界を俯瞰できたためにカオスロワの裏側は大方知っていたが、TCの影響で現世と死者スレの交信が不安定であったということもあり、心の中・裏の裏までは読むことはできなかった。
シグナムについてもニート対主催としての表向きの部分しか見れなかったためにサーフの手先であると気づかずに
潜伏者として目覚めた彼女の不意打ちによって魂を破壊されてしまう。
全ては10/を油断させて暗殺するためにシグナムを利用したのだ。


「主催者共が作った『怪物(テラカオス)』に全てを飲み込まれるか、『蒼』に飲み込まれて『滅日』を迎えるか……
 このロワはどちらか片方のエンディングしかないのさ……だから、これ以上のあがきは……」

魂が消える間際に10/が最期に放った台詞であるが、これは嘆きの言葉であった。
どれだけ死者スレで足掻いても武道への忠義を果たせず、現世で生きている者に何もできないまま果てる自分へ言い聞かせた悲嘆だったのだ。
洗脳されたシグナムには悪党が泣き言をほざいて死んでいくようにしか認識できないが。

10/の暗殺に成功したシグナムは続けて死者スレにある現世への交信手段やそれに準じた能力を持つ参加者を尽く破壊・消滅させ、自分の計画が参加者や主催にバレる可能性を尽く削除。
止めにかかった死者も消滅させ、マシンのエネルギーが切れたことでシグナムはサーフのいる現世へと戻る。

死者スレでの出来事はサーフの更なる洗脳で改竄された。
実際には合ってない本部のことを知っていたのは、たまたま死者スレ入口で死んでいた本部のことを知らないのはおかしいと思ったために付加されたのである。
全裸で戻ってくるのも絵面的におかしいので服とマスク(キン肉マングレート)と、ニルヴァーナでの武道の置き土産である竹刀を渡しておく。
そして死者スレを潰してきたという真実と、黒幕は10/だったという虚偽を土産にシグナムは熱斗たちの元へ帰還した。


10/亡き後も冥府関係者によって死者スレはいちおう再建されたが、残った者に武道や10/ほどの調律能力がないためか非常に脆弱であった。
特にカルナ以外の死者スレの防衛能力が激減。
本来なら弾かれるべき「シャドウであった者」の侵入を許してしまうほどガバガバな警備状態となってしまった。


帰還したシグナムだが、ここでサーフが傍受したナノマシンからの情報から貧乳歌姫ことテラカオス・ディーヴァの能力に第四の壁を認識する能力が備わったことが発覚。
これはサーフの計画をテラカオス自身に知られる危険がある地味に厄介な能力であった。
そこでシグナムにもはや真実を知る方法はなくし、勝ち目のないカルナにぶち当たって死ぬであろう悪魔将軍の監視の任を解き、特攻覚悟で貧乳歌姫と戦わせることにした。

目的は貧乳歌姫の殺害ではなく、02から受け継いついだ第四の壁能力の破壊。
そのために持たせたスキル殺しの剣で破壊し、シグナムは肉体をひとかけらも残すことなく弾けとんだ。



シグナムの手により真実を知る武道の後継者10/は討たれ、後にシグナム自身も死亡。
拳王連合軍が戦いで痛手を受けたため、死者スレに単身で向かわざるえなくなった悪魔将軍もカルナの手によって死亡。
マスターを失ったカルナは死者スレの中に引っ込むことになり、増長したユウキ=テルミはご立派様に貫かれて死んだ。

カオスロワちゃんねるの力によって対主催間で足を引っ張りあいは歯止めが効かないまま加速し続け、混沌な状況を生み出し続けている。
管理人や掲示板の真の目的に気づいたのは草加だけであり、その草加も管理人の顔までは知らない。

サーフは今、DMC狂信者の根城であるビックサイトに身を寄せているが、おそらく予言の中にある「戦士」「歌」「器」「巫女」「勇者」には目星をつけており、後はテラカオスの完成を待つだけなのだろう。
ほぼ全てがこの男の目論見通りに進んだのだ……



そして、今に至り――


661 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:09:19 Ll8oFf/Y0


――死の国にて――


真実を知ったシグナムは突然、上半身の赤ジャージを破いて裸になった。
裸体を周囲に晒したいわけではなく、確認のためだ。

「……これでは息をするのもつらくなるわけだ」

シグナムの首から下は生々しい手術痕だらけであった。
サーフが能力を植え付けるために色んな装置や呪詛を施したためである。
シャワーを浴びた際には裸を見たが、シグナム・カーネル両名はマインドコントロールを受けていていつもどおりの裸にしか見えなかったのだ。

「少しでも自分の行動に疑いを持つべきだった……
私は悪人の手助けをして多くの者に不幸を……クッ、騎士として情けない」

真実を知り、巨悪の手駒になって無実の10/や死者スレの数名を消滅させてしまった事実にシグナムはひたすら嘆く。
先ほど牢屋に閉じ込められても暴行を加えられなかったのはむしろ、シグナムも操られていたという真実を知っている死者たちの有情だったのだ。
穴があるならそこに入って引きこもっていたい、刃物があるなら自刃して償いたい気分であった。

一方で悪魔将軍も困惑していた。


「こんなことが……この悪魔将軍たる私がたった一人の人間に踊らされていた、というのか?
だが私はTCホールとやらのことなど知らなかったし、逆にテラカオスのことをある程度知っていたのはなぜだ?
あやつ(武道)と元同僚だった以上は全部知っているか、超人の神々に全ての記憶を消されているにが普通ではないのか?」

その謎を解き明かすのは冷静で的確な推理ができるアタルである。

「あなたが一式・ゴールドマンの時は武道と同じく、世界の運行を守るためにTCホールについての記憶を消されない数少ない存在に神々から選ばれていた。
ところが悪魔将軍として身を落としかけた寸前で、神々はこっそりと記憶を封印したのだ。
それもTCを浴びたことで封印が解けてしまい、部分的にだけ思い出した……TCやテラカオスが危険なだけの存在という部分だけな」
「中途半端に思い出してしまったということか!
そのせいで部下たちに要らぬ闘争をさせてしまった……」

己の不甲斐なさを恥じるシグナムと悪魔将軍。
どこかで自分の行いに疑問をもっていれば……そのようなタラレバ思考が心の中に浮かび上がる。
意気消沈する二人であり、アタルとしても本当なら

「二人共……消沈する気持ちはわかるが、ここは落ち着いて欲しい。
今、死者スレはシャドウであった者の影によって風雲急の事態と化している。
カルナが魔力切れで倒れれば、死者スレは今度こそ終わりを迎え、現世の者たちを苦しめる」
「この落ちぶれた騎士に具体的に何をすればいい?」
「カルナと共に影と戦うか影と戦える仲間を集める。
もしくは彼の魔力の補充をするために一人でも多くの極悪人をかき集めてくれ。
後者は生贄を捧げるみたいで気分の良い仕事ではないが、この死者スレでカルナが魔力を手に入れる手段が他にない」
「わかった……罪人を集めてこよう。
私の罪滅ぼしや、主はやてと仲間であった熱斗たちに報いる手段は他にない」

シグナムに続いて悪魔将軍も立ち上がる。

「私は最前線に立ち、影と戦うものらを指揮しよう」
「ありがたい悪魔将軍……」
「私の場合もシグナムと同じく罪滅ぼし……とは考えん。
この事態はあやつのような過去の記憶を持つ者がサーフとかいう下衆如きを止められなかった結果だと思っているからな。
だがザ・マン――超人閻魔が魂を捨ててまで守った世界が本当に価値あるものか見定めるまではむざむざと影に喰われるつもりはない。
それに小童に踊らされていたままの将として終わるのも面白くない。
下衆がいつかここに来た時に首根っこを叩き折るまでは何が何でも死者スレを存続させてやる!」

悪魔将軍はライバルに恥じない戦いをするために、手前勝手な野望のために世界を窮地に立たせた悪漢をこの手で処刑する瞬間を迎えるために、悪魔将軍は再度立ち上がった。

アタルが仲間を集め、悪魔将軍が指揮を取ることで死者スレの戦力に統制が生まれ、最大戦力であるカルナにシグナムが集めてきた罪人の魂を注ぐ。
こうして戦いは膠着状態までもつれ込んだ。


第10期カオスロワの戦いは死してなお終われない。


662 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:10:28 Ll8oFf/Y0



――混沌黙示録の始まり――


『……そういうことだったのか』

シャドウであった者の体内で真実を聞かされた混沌の騎士は、大災害を起こしたサーフに憤りを覚える。

『サーフ・シェフィールド……そいつさえいなければ、あやのさんような多くの犠牲者が出ることも――』
「違うな」
『違う? どういうことだ!?』

憤りを否定するのはシャドウであった者。
大災害を引き起こしたのはサーフで間違いないのにこれはどういう意味か?

「奴は外道には違いないが、古代ミヤザキの血筋をたまたま濃く受け継いだだけ。
古代人であるタバサを拾ったのも偶然だ。
宝くじで大当たりを引いてここまで順調でいるだけなのと同じだ。
大災害の発端ではあるが、別に他の存在でも十分に起こりえた事態だ。


発端がサーフでなくとも。
武道が心変わりして完璧な世界を作り上げるために大災害を起こしていたかもしれない。
悪魔将軍が全てを思い出し、理想の世界を作るために大災害を起こしていたかもしれない。
ユウキ=テルミが滅日のために大災害を起こしていたかもしれない。


もしタバサを手に入れた者がサーフでなかったとしたら。
光祐一郎が興味本位のためにTCへの興味本位から大災害を起こしていたかもしれない。
ラオウが拳による世界を気づきあげるために大災害を起こしていたかもしれない。
レストが人類に絶望していたために大災害を起こしていたかもしれない。
ダオスが恒久の平和を手に入れるために大災害を起こしていたかもしれない。
デミーラが天魔王として全てを手に入れるために大災害を起こしていたかもしれない。
アナキンが妻や母を取り戻すために大災害を起こしていたかもしれない。
DMC信者がクラウザーの歌を永遠に響かせるために大災害を起こしていたかもしれない。
クライシス皇帝が支配力を高めるために大災害を起こしていたかもしれない。
小町が公的にサボりたいために大災害を起こしていたかもしれない」


『他はまだしも小町さんがそんなことをするわけないだろ!?』
「いや、ある。
今でこそまともだが、あの女は自分のサボり癖が原因で幻想郷の異変を長引かせたこともある。
確率としては確かに低いが、絶対ないとは言い切れない。

……話を戻すが、単にTCとそれを知るタバサという当たりくじを引いたのはサーフだった。
だが宝くじを誰が引いても大災害が起こりえたのだ。
そもそもくじが無ければ大災害は起こらなかったのにも関わらず、くじを設置したのは誰だと思う?」

悲劇の原因の原因はサーフとは別にある。
では彼に大災害を起こさせたのは誰なのか?
混沌の騎士は先程まで教えられた話を思い出し、その答えを述べる。

『――古代ミヤザキ』
「それは半分正解だ。
確かにタバサや後世への遺伝子改造などはミヤザキの所業だが、それも古代グンマーが彼らの思想を理解し同調すれば、そんなことをする必要がなかった。

答えはわかり合おうとせず、自分たちの思想と欲望を押し付けようとする「人のエゴ」!
争わねばTCの研究は現代でも続けられ、次の大災害を被害なしで乗り切ることもできたろうに。
それどころか手を取り合うべきミヤザキとグンマーは争いを起こし、それが巡り巡って二度目の大災害を止められない事態に繋がったのだ」
『人と人が分かり合えないから、こんな事態が起こっただと?』
「左用。
サーフなど用意されたスイッチを押しただけで、遅かれ早かれ誰でも大災害の元凶になれたのだ。
そのスイッチを用意したのは他でもないこの世界の住人……全ては生きとし生ける物の業のせいなのだ。
テラカオス・ゼロとなって一度は世界を救った平賀才人もこれでは報われない。
タバサが人に絶望してサーフにすがったこともわかる」

真の敵は人の中にあった……その言葉に困惑する混沌の騎士に畳み掛けるようにシャドウであった者は話を続ける。


663 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:10:56 Ll8oFf/Y0

「業がなければ大災害が起きずに私が生まれることもなかった。
これは因果応報……世界を滅びに導いているのはこの世界の者に他ならない。

貴様も人の業に関しては経験しているだろう?
その最たるものがバトルロワイアルで、それによって生み出された貴様なんだからな!」
『ぐぬぬ……だが、人は分かり合えるハズだ』
「綺麗事を言うのは簡単だが、分かり合えない結果として私は来たのだ。
それにサーフがテラカオスを通じてTCの力を手にしようとしているように、大災害を防いだテラカオスが全てを支配できる力を得ると知った時、果たして何人が誘惑に負けずに世界のために戦えるだろうか?」
『テラカオスを巡って争奪戦が起こるというのか!?』
「可能性は十分にある。
実際、対主催同士で殺し合いをしているぐらいだ。
全ての根源たるTCの力なら失われた自然や土地を戻すこともできる。
死したものも……既に魂が砕け散った者以外は復元・複製ができる。
誰が欲望に負けてテラカオスを自分だけのものにしようとするか見ものだな?」
『……』

TCの力を掌握したテラカオスは理想の世界を自在に作れるだけの力を有する。
例え対主催でも、手のひらを返して仲間を裏切る可能性は十分にある。
私欲や自分だけの生存のために仲間を売る輩がいるのだから、考えられない話ではない。

「この世界はおまえが考えているほど高潔な代物ではない。
一度全て破壊してしかるべきなのだ。
手を貸せとまでは言わんが、部外者が邪魔をしないでくれるか?」
『……しかし』
「もう楽になるんだプロトタイプのテラカオスよ。
貴様のこの世界での役割はとうに終わった。
あとはTCという情報の巡回に身を任せよ。
……安心しろ、管轄外である貴様のいた6期の世界まで破壊しようとは思わん」

確かにサーフだけでなく醜い人間や存在が殺し合いの中には沢山いた。
それを死者スレから現世を見てきたために、シャドウであった者の甘言に乗りそうになる。

『いや』

されど混沌の騎士は人の業ばかりを見ていない。
醜いものの次に思い浮かんだのは、元の世界での仲間である春香たちの笑顔。
そして悲劇を終わらせるために戦い続ける影薄組の背中であった。

『少ない悪人のために善き人全てを犠牲にするわけにはいかない。
私は人々の正義を信じて自分の戦いを続けさせてもらう』
「……あれだけ見せてまだ信じるというのか、愚かな」
『なんとでも言うがいい。
大災害を引き起こした人の仕業なら終わらせるのも人の手で終わらせられるハズだ。
それを生き残った彼らが証明してくれるだろう……貴様やサーフと倒してな!
この世界に関わった以上は私も部外者では決してない!
魂が砕け散るその時まで戦わせてもらう!』

意志は挫けることなく、シャドウであった者の妨害を続ける混沌の騎士。
懐柔に失敗してシャドウであった者はどことなく面白くなさそうな様子だ。

「フンッ、だが貴様やカルナが頑張っても再生能力は私のほうが若干上。
魂喰いに使える罪人の魂も無限ではないのだから持って12時間……それ以上は善人の魂を犠牲にせざる負えなくなる。
死者スレが終わればテラカオスも力を行使できなくなる……それまでに私を倒せるものが現れると良いな?」
『ああ、できるさ。彼女らなら』


この殺し合いもいよいよ佳境。
この混沌の黙示録の中でここまで生き延びた参加者がどのように戦い、どのような結末を世界が迎えるのか。
どうかあなたの眼で見届けて欲しい……


664 : 真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:11:23 Ll8oFf/Y0



【二日目・16時30分/静岡県・富士樹海・死者スレ内部】
【カルナ@Fate/Apocrypha】
【状態】宝具ぶっぱで常に魔力消費
【装備】自身の槍、黄金の鎧
【道具】不明
【思考】
基本:使命に従い、死者スレを守る
1:罪人を魂喰いで魔力をチャージし、宝具コンボでシャドウであった者の影から死者を守る
※死者スレにいる罪人(特に酌量の余地がないもの優先で)を魂喰いすることで魔力を補っています
 ただし、罪人だけの魂では12時間しか持たず、それ以上は善人の魂を消費しなければいけません
 死者スレで魂喰いされた存在は物語がどんな結末を迎えても、二度と復活できません
 魂がないのでサイボーグ化復活も不可




【二日目・16時30分/沖縄県】

【シャドウであった者@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、休憩中、弱体化
【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 他不明
【道具】不明、混沌の騎士の魂
【思考】基本:世界の破壊
0:あの者(テラカオス・ディーヴァ)の魂の破壊
1:死者スレの掌握
2:体力と傷の回復
3:混沌の騎士の魂がとにかく邪魔
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています。
※ディーヴァの捕食した能力も込みで持っているようです。
※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。
※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。
※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。
 更に死者スレ内の防衛にカルナが投入され、一度はテラカオスとして完成したこともある混沌の騎士の魂に内部から妨害を受けることで掌握速度が停滞。 
 完全掌握に12時間以上の時間を要します。
※混沌の騎士のように一度は完成したテラカオスの魂は性質上、取り込めません



※以下のキャラの魂が完全に破壊されました
 物語がどのような結末を迎えても、二度と復活できません

【ベジータ@ドラゴンボール】
【野田総理@現実?】
【シックス@魔人探偵脳噛ネウロ】
【バット星人グラシエ@ウルトラゼロファイト】
【ユウキ=テルミ@BLAZBLUE】
【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
【つば九郎@ヤクルトスワローズ】


665 : ◆8t1yIW/rRU :2018/03/15(木) 11:13:02 Ll8oFf/Y0
投下終了です


666 : 名無しさん :2018/03/15(木) 14:51:44 u9SRG2mE0

色々と壮大だが一番言いたいのは……
テルミ激烈に悪化してんじゃねえかよぉ!


667 : ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅ :2018/03/15(木) 21:49:07 YCo/cNcE0
「ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
 あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!!
 あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
 んはぁっ!ルイズ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
 間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
 小説最終巻のルイズたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
 アニメも原作も完結して良かったねルイズたん!あぁあああああ!かわいい!ルイズたん!かわいい!あっああぁああ!
 新作フィギュアが制作決定されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
 ぐあああああああああああ!!!フィギュアなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら…
 ル イ ズ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
 そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ハルケギニアぁああああ!!
 この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のルイズちゃんが僕を見てる?
 表紙絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!ルイズちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!!
 アニメのルイズちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
 いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはルイズちゃんがいる!!やったよケティ!!ひとりでできるもん!!!
 あ、コミックのルイズちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
 あっあんああっああんあアン様ぁあ!!セ、セイバー!!シャナぁああああああ!!!ヴィルヘルミナぁあああ!!
 ううっうぅうう!!俺の想いよルイズへ届け!!ハルケギニアのルイズへ届け!」

その頃、唐突にルイズが過去回想で死んだのを見たルイズコピペは怒っていた。

【二日目・16時35分/日本:愛知県】

【ルイズコピペ@2ch(今は5ch)】
【状態】ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
【装備】不明
【道具】不明
【思考】
基本:ルイズを殺したカオスロワを滅ぼす。
1:ルイズの新作フィギュアを買う。

【ルイーズ@遊戯王】
【状態】健康
【装備】剣と盾
【道具】支給品
【思考】
1:うるせえなこいつ。


668 : 名無しさん :2018/03/16(金) 21:33:22 YUzmO7sQ0
>>666
テ ル ミ こ わ れ る
これがラスボスになれなかった中ボスの末路というのか……


669 : 名無しさん :2018/03/16(金) 22:07:52 RkXSgJDk0
テルミもはや人語を放棄してるし、ファガンとどっちの方がより酷いんだろうな……
と思ったが、かつて仲間だったアタル兄さんから、いいからそのハゲの魂渡せ!とまで言われるベジータも大概悲惨


670 : 名無しさん :2018/03/16(金) 23:02:10 YUzmO7sQ0
テルミは魂が消滅したので名誉挽回不能&これ以上落ちぶれない
ファガンは機会が経てば死者スレに復活するかもなので汚名返上可能or恥の上塗りができる
ベジータ? 自業自得ゾ


671 : ◆tAezoeTGjM :2018/03/23(金) 23:50:22 bjf7bzLA0
予約の拳王連合軍・リオレウス・ナッパ・サラマンディーネを投下します


672 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/23(金) 23:52:22 bjf7bzLA0
潮騒の香る、ここは神奈川県の横浜港。
その港には拳王連合軍の船舶が停泊しており、一部を除いた全員が港の倉庫の中で超短期強化合宿中である。
強化合宿を受けられない(受けない)熱斗・ムネリン・プニキは倉庫からほど近い場所で停泊している煉獄もしくは高速艇の上で見張りについていた。
熱斗はさっき腹を下して少し離れた場所にある仮説便所に駆け込み、必然的に見張りはムネリンとプニキである。

「イチローさんイチローさん……ハァハァ」
「ハチミツうめえ」

……ホワイトベース戦で全く見張りの仕事をしなかったこいつらに、また見張りを頼むムギちゃんのセンスはどうかと思うが、たぶんいないよりはマシだったのだろう。
とはいえ、関東のどこかにいるイチローへのラブを振りまくムネリンとハチミツを食べ続けるプニキであったが、今回は少し違った。

「イチローさ……ハッ!?」
「殺気!?」

唐突にどこからか自分たちに向けられる殺意を感じ、すぐさま迎撃耐性に入る。
現在、煉獄にはシャドーマンやデューオのAIが入ってないので迎撃のための砲台は動かないが、問題ない。
煉獄の砲台よりはメジャーリーガー宗則の投球の方が威力があり、かつ高精度だからだ。
ついでに言えばプニキのバッティング力はあらゆる攻撃を跳ね返すことができる。

生きた砲台であるムネリンと、バリア役のプニキはさっそく敵を探す。



「…………上だ!!!」
「見つけたぜええええ!拳王連合ぐうううん!!!」

真っ黒い殺意を抱き、輝く太陽を背に煉獄に向かって急降下してくる飛龍・リオレウス。
リオレウスは妻の仇を見つけた怒りと喜びによる狂気の咆哮を上げた。
とにもかくにも勧告をするまでもなく向けられた殺気から相手は敵であると察したムネリンは構えを取る。

「空からの急襲のつもりですか……だけど、僕にはイチローさん譲りのレーザービームがある!!
空にいるのはむしろ好都合。民間人の犠牲を考えずにコレを放つことができる!」

イチローには劣るものの、ムネリンもレーザービーム投球の使い手だ。
ちょっと早く硬いだけの飛龍など撃墜は容易い。
普段は威力過多で味方や民間人まで巻き込んでしまうので封印しているが、敵は空にいるので被害を気にすることなく使うことができた。
そして、光速となった野球ボールがレーザービームと化してリオレウスに命中、蒸発させる――

――そのハズだった。
光速のレーザービームをリオレウスは回避したのだ。

「おい、どうした? 外してるぞ!?」
「太陽で目が……それに足場も……」

リオレウスの背後には人間が直視するには厳しい太陽。
さらに足場は波に揺れる高速艇。
視覚へのダメージと足場の不安定さなどの複合的な要因により渾身のレーザービームを外してしまったのだ。
その決定的な隙を見逃さずに射程内に入り次第火炎を吐きつけようとするリオレウス。

「来る! だったら俺のバッティングで……!」
ベキッ ベキベキッ!!
「なにィ!?」
「船が!」

プニキはリオレウスの火炎をバッティングで迎え撃とうとするが、ここで不運が起きる。
元々時間の不足で一回の航行しか耐えられない高速艇の耐久性に限界が生じており、さらに多大な威力を誇るムネリンのレーザービームの足場になったことがトドメになり、船にヒビが入ったことで浸水、そして一気に転覆して二人が海に投げ出されてしまう。
その直後に転覆した高速艇と煉獄に火炎が直撃。
まともな船員やネットナビがサポートAIについてないことでダメコンもクソもない船の耐久性はスペック以上に脆くなり、燃料や火薬に引火して爆発を起こし、高速艇と戦艦は轟沈した。


673 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/23(金) 23:53:08 bjf7bzLA0

拳王連合軍の船舶を一度に二つ片付けたリオレウスだが、それで満足せず、むしろ不満すらあった。

「太陽を背にした完璧な奇襲とはいえ簡単すぎるぜ……あの二匹以外は乗ってなかったと見るべきだな」

もともと数撃で船舶を片付けられないとは思っていただけに、あまりにも呆気なさ過ぎた。
迎撃に出たのはたった二人であり、砲台も動いてなかった。
となると、拳王連合軍は船を乗り捨てていた途中か多くの人員が港への略奪に走ってるとリオレウスは考える。

「こんなに簡単に全滅されては俺の腹の虫が収まらねえ!
まだ港にはいるハズだ……見つけ次第、毒ガスをバラ撒いて苦しみのたうち回るところを見てやる!」

高速艇と煉獄には拳王連合軍の面子はほぼ乗っていなかったと見て、港を探すリオレウス。
見つけ次第、毒ガス入り大タル爆弾を叩きつけてやるつもりだ。
もちろんそれは拳王連合軍とは関係ない参加者を巻き込む外道の所業だとはわかっているが、復讐に狂っているリオレウスに後先など考えられない。
そもそも汚名を被ることは承知の上、拳王連合軍に一矢報いた後は死んでもいい覚悟できたのだから。

「殺してやるぞ、拳王連合軍。どこだ!?」

妻の仇を血眼になって探すリオレウス。
仇は向こうの方から居場所を示してくれた。

「何やら外が騒がしいようですが、一体何が……」

ある倉庫のドアから金髪太眉の女子高生――琴吹紬が顔を出した。
その背後には複数人の気配を感じる。
リオレウスはようやく見つけた仇たちの姿を見てニヤリと笑って空から爆弾を落とした。

「ムギちゃん下がれ! とてつもない殺気を感じる」
「え?」

強い敵意を感じたラオウはすぐさま倉庫の外に出た紬に注意を促すが、一歩遅く――



彼女の頭上から大きな樽が落下してグシャリと潰し、直後に樽から膨大な毒ガスが倉庫内外に充満した。
倉庫の中から男女様々な悲鳴が聞こえたのを見て、リオレウスは狂喜をあげる!

「やったぜえええ!! ざまあみやがれ拳王連合軍!!」

毒ガスは更に港の外にまで広がり、隠れていたモブ参加者までも襲いかかろうとしている。

「おおっと喜んでばかりもいられねえ……まだ隠れている拳王連合軍のクソどもはいるかもしれないし、アイツラまで被害を受けるかもしれねえ。
……ドラゴンネットワーク!!」

リオレウスはここでSNSにでも投稿するノリでドラゴンネットワークに拳王連合軍がいる港に向けて毒ガスを放ったことを自慢げに投稿する。
ただし、内容に少しの嘘を織り交ぜて。



>都庁の一魔物であるこのリオレウス様が、拳王連合軍がいる港に毒ガスをお見舞いしてやったぜ!



拳王連合軍を殺すためとはいえ、周辺の被害を無視して毒ガスをバラまく行為は外道中の外道。
だがリオレウスはイチリュウチームもとい、仲間の名誉を守るために自分を都庁に居座る魔物であると出身を偽った。
リオレウスは他のドラゴンズのドラゴンと違ってグンマー出身なので違和感はない。
世間の視点では都庁軍は最悪のマーダー集団の一つであり、罪を被せても問題はない。
都庁と自分だけに罪を被せることでイチリュウチームの名誉と将来を守るつもりなのだ。

「これで良い……あいつらは俺の復讐に何も関係ないんだ。
死ぬのも唾を吐かれるのも俺だけで十分さ」

それはリオレウスなりの優しさのつもりであった。



「彩斗兄さん、翔鶴さん……みんな!?」

ふと、背後から声が聞こえて振り向くとバンダナと頭に巻きつけた小学生――光熱斗がいた。
熱斗のみデカオの弁当で腹を下して船舶や倉庫から離れている仮説便所に駆け込んだこと、そして便所の位置が風上にあったことで毒ガスによる被害を受けなかったのだ。
熱斗と言えば拳王連合軍の要……復讐のためにも逃がすわけにはいかない。
リオレウスは呆然とする熱斗の前に降り立ち、殺意の咆哮を上げた。


674 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/23(金) 23:54:04 bjf7bzLA0



遅れて神奈川県の沖上空にたどり着いたナッパと焔龍號に乗るサラは横浜港の惨状を遠目で見ていた。
拳王連合軍の船舶が轟沈している……のはまだ良い。
むしろ最悪の連中の兵器をリオレウスの健闘で破壊されたのは喜ばしい事態だ。
ところが横浜港の大半を覆いかけている毒々しいガスの色が、ナッパとサラを大いに焦らせる。

「遅かった……俺たちは間に合わなかったのか……」

リオレウスをとうとう止められなかった。
毒ガスは拳王連合軍のみならず、モブ参加者をも襲うだろう。
そんな受け入れがたい事実にナッパは肩を落とした。

「……ああなっては仕方ありません。ディスコードフェイザーの準備をします」

せめて毒ガスがこれ以上広がらないようにガスを港ごと消し飛ばそうとするサラ。
使えば拳王連合軍はおろか港もなくなり、リオレウスさえ巻き込んでしまうかもしない。
しかしサラとナッパの持つ対処法の中で最も参加者に被害が及ばない方法はそれしかなかった。
焔龍號の肩が変形し、サラが永久語りを歌いながら準備を整える……





「こいつ、よくもみんなを!!」
『リオレイアを殺ったてめえらが吠えてんじゃねえええ!!!』
「クソッ……」

倉庫そのものや配置されたコンテナを掻い潜るようにリオレウスから必死に逃げ惑う熱斗。
嵐のように障害物を破壊しながら熱斗を追いかけるリオレウス。
さながら死の追いかけっこであった。
ちなみに熱斗に魔力がないのでリオレウスの怒声はただの咆哮にしか聞こえない。
熱斗からしてみればリオレウスの怒る理由がわからず、理不尽に兄たちを毒ガスに晒した悪の竜にしか見えないのだ。

「ガンデルソル3!!」
『効かんわ!』
「ネオバリアブル!!」
『だからどうした!』

熱斗もただ逃げるだけではなくディパックの中からガンデルソル3(実物)ネオバリアブル(実物) を使用するがほとんど効果がない。
というのもPETがないために元通りの威力が出せないのだ。

「ダメだ……彩斗兄さんがいないと威力がまるで……うわあ!!」

いくら世界一のネットバトラーとはいえ、ネットナビがいないとここまで弱くなる……その事に熱斗が嘆く暇もなく飛竜の尻尾の一薙によってガンデルソルとネオバリアブルは破壊され、余波で熱斗は壁に叩きつけられた。

「痛っえぇ……」
『追い詰めだぞ。死ね死ね死ねシネシネシネしねェーーー!!!』
「ここまでなのかよ!」

壁際に追い詰められた熱斗は死を覚悟する。
兄妹や仲間の安否もわからず、死んだ父の想いを遂げられないまま、死ぬのは悔しかった。



瞬間、手のひらに乗るサイズの小型戦闘機がリオレウスに向けて機銃を放って流血させ、熱斗への攻撃を中断させた。

『がああああああああああ!!』
「あの戦闘機は!」

小型戦闘機は紫電改二。
紫電が飛んできた方向を見ると、そこには弓を構える翔鶴がいた。

「兄さん! 翔鶴さん! 無事だったんだね!!」
『熱斗! 間に合って良かった……』
「ダイジョーブ博士の装置で強化された私の力はいかがですか?」

翔鶴と彼女の持っているPETの中にはロックマンの顔があった。


675 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/23(金) 23:54:43 bjf7bzLA0

『クソっ、まだ生き残りがいやがったか。だが、俺はまだ倒れちゃ……』
『「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!」』
『が!?』

血を吐きつつもまだ戦意の衰えていないリオレウスの顔面に、やかましい男の拳がめり込む。

「ディおじさん! ……その格好は」
『「ディおじさんではない! もはやクロスフュージョンはおまえたちやジョジョの専売特許ではない。
この俺もザ・ワールド・デューオーバーヘブンとして新生したのだ!!」』
「ザ・ワールド・デューオーバーヘブン……長っ!」

ディオの今の姿はデューオと融合したことでアイズオブヘブン(PS4ジョジョゲーム)に登場する天国DIOをベースにデューオのような鈍色の鎧を纏った神々しい姿をしていた。

さらに熱斗を喜ばせる事態が起きる。
ディオに続くように次々と仲間が現れたのだ。

『「ドーモ、ドラゴン=サン、イマジンスレイヤーです」』
「この拳王の配下たる貴様がこの程度で死ぬとは思っていなかったが、無事のようだな」
「後は任せろ」
「その竜をギッタギタに殺してやんよ」
「俺のブラックホール打ちを見せてやる」
「なんだドラゴンか……セイバーじゃないとやる気でませんね」
「ジョジョ! シャドーマン! ラおじさん! 平等院おじさん! MEIKOおばさん! クロえもん! ついでにアルトリアなんドラゴンさん!」

ゾロゾロと現れる仲間に熱斗は喜び、さらに三人が遅れて現れた。

「全く……あなたたち二人は本当に何をやってたんですかね……プンスカ」
「本当に面目ないです……」
「そんなことより最高級ハチミツ入れてたツボが潮に浸かっちまったんだけど……」

高速艇が転覆した結果、海に落ちてびしょ濡れになったムネリンとプニキ。
しかし海に落ちたことが逆に幸運になり、海上の煉獄の爆炎に巻き込まれることもなかったのだ。
そんな二人に見張りをまともにこなせなかった二人を叱りつける紬。

『な……こんなに生き残っていやがったのか!?
いや、沢庵眉毛が潰れるところはさっき見たぞ!?』

殺したと思っていた拳王連合軍の面子が大半生き残っており、特に樽で潰して殺したハズの紬が生きていたことにはリオレウスは大きく焦った。

『よく見ると毒ガスが晴れてやがる!? どういうことだ』

いつの間にか横浜港を覆いかけていた毒ガスが綺麗さっぱりなくなっていたことにも、リオレウスの焦りを大きく加速させていた。


「……あれ?ダイアーさんは?」

ここで熱斗は波紋戦士であるダイアーだけいないことに熱斗が気づく。
熱斗の質問にイマジンスレイヤーこと上条は首を横に振った。

「……まさか!?」
『「彼の犠牲のおかげでみんな助かったんだ。俺たちも、この横浜もな……!」』

嫌な予感を感じて涙目になる熱斗の肩に、ディオは同じく涙目になりながら手を置いて語った。


676 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/23(金) 23:55:37 bjf7bzLA0




リオレウスが毒ガス入り大樽爆弾を投下した直後に、ディオはデューオとクロスフュージョンした。
時を止めるスタンド、ザ・ワールドの力を使って紬が樽に押しつぶされる寸前に救い出す。
その際に潰れたのは彼女が持っていた愛用のキーボードだった。


しかし倉庫の入口から出てくる毒ガスの流入は止め用がなかった。
脱出自体は倉庫の壁を破壊すれば可能だったが、まだ翔鶴が強化装置を使っている最中であり、装置から動けない彼女を見捨てることになる。
このロワの設定上では機械なんだから毒は効かないだろというツッコミが来そうだが、天魔王軍のエビルエスタークも毒が弱点だったし、機械だから大丈夫とは限らない。
翔鶴を装置から無理やり引きずり出したり、装置ごと動かすことも考えたが、その際にどのような弊害が起きるかもわからなかった。
そうでなくとも毒ガスにより横浜港周囲の民間人にも被害が出る……どうすれば対処できるのか悩んでいた時、一人の男が命を捨てる覚悟で前に出た。

ダイアーは横浜港を汚染する毒ガスを吸って吸って吸いまくった。
常人の肺ならば吸いきれる量ではないガスだったが、波紋使いの極意は呼吸。
修行の段階で1秒間に10回の呼吸と10分間息をすいつづけて10分間はきつづけられる波紋使いならば回収しきれる量であった。
……だが波紋戦士とて不死身ではない。
代償として致死性の毒をその身に全て受ける事になる。
ディオら仲間が止めようとするがダイアーは聞く耳持たず、仲間や民間人を守るために吸い続けた。
そして、横浜港から毒ガスはなくなった……

体内から毒で溶けかけたダイアーはとうとう倒れるが、それを看取ったのはディオであった。

「ダイアーさん!」
「ディオ……他のみんなは…無事、か?」
「あんた以外はな……」
「それは良かった……ディオ、私が死ぬ前におまえに言いたいことがある……」

「――なに?それは本当なのか?」


ダイアーに死ぬ寸前に教えられたことはディオは近い将来、石仮面を被って吸血鬼となり多くの人々に災いを及ぼすというものだった。
ディオがこの世界に招かれた時間軸は吸血鬼化するより前らしいが、もし邪悪であったら抹殺するつもりであった。

実際、出会って見れば、やはり悪人には違いなかった。
ただし、邪悪では決してなかった。
ネットナビにハマり、熱斗ら多くの友人がついていた。
単に上辺だけの付き合いならあそこまで楽しそうにはできないはずだ。

ディオは生まれ持っての悪人には違いないが未来でプッチ神父を友としたように、「友情」を育むことはできるのだ。
本来ならば吐き気を催す邪悪になっていた精神が、友との巡り合わせによって変わりかけていたのをダイアーは確信。
そこでダイアーは思った、善き方面に変わりかけているディオを殺すことは決して勇気ではないと。
ディオの友となり、彼の未来を変えることこそが真の勇気であると。

ダイアーは彼の友になり、邪悪の道にだけは走らせないようにしていた。
せめて悪事を働くにしろ、吸血鬼ではなく人間として誰かのための悪党であって欲しいと。


「そういうことだったのか……」
「本当ならば……殺し合いが終わるまで見届けたかったが……私にはそれができそうにない……ゴフッ、ゴフッ!!」
「もう喋るなダイアーさん」

血反吐を吐きながらもダイアーは話を続ける。
ディオの目には演技では決してない涙が流れていた……

「最後、に、一言……言わせてくれ」

「ディオ……おまえとの野球楽しかっ――」

偉大なる波紋戦士は、友に笑顔を向けて逝くのだった……


【ダイアー@ジョジョの奇妙な冒険 死亡確認】




「ダイアーさん……!」

ディオから話されたダイアーの献身と死には熱斗も涙を禁じ得なかった。


677 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/23(金) 23:56:42 bjf7bzLA0

「私も……あのお方がいなければ今頃……」
『あの人にはいくら感謝しても感謝したりないぐらいさ……』

翔鶴もまた涙をこぼす。
ダイアーが命を投げ出さなければ確実に死んでいたのだから。
ロックマンにとっても妹の恩人として、きっと忘れられない存在になっているであろう。


「さて……このクソドラゴンをどう料理してやるか」
「ダイアーを殺した罪、死んで贖ってもらうぞ」
『ク、クソッ、話からして殺せたのはたった一人かよ……!』

リオレウスは大いに焦る。
彼は拳王連合軍の面子に包囲されていた。
死ぬ気の吶喊だったとはいえ、このままでは集中砲火でなぶり殺しである。
せめて主力をあと一人殺せれば御の字なのだが、リオレウスの実力ではいくらなんでも厳しい。

『「待て、ラオウ、MEIKO。ここは俺にやらせてくれ」』
「ディオ」

今にもリオレウスに飛びかかろうとした仲間を抑えて一人前に出たディオ。
その眼には明確な怒りを宿していた。

『なんだ?一人で俺を殺せるつもりなのか?……舐めやがってぇ!!!』
『「吠えるなトカゲ。おまえは俺が殺さないと気がすまん」』

リオレウスは死なばもろともと言わんばかりに、ディオに突撃を仕掛ける。
対するディオは焦る様子もなく、スタンドを出し、唱えるのだった。

『「ザ・ワールド・デューオーバーヘブン」』

瞬間、ディオ以外の時は止まる。


『「ザ・ワールドでも時間を止められるのは五秒そこらが限界だった……だがメジャーリーガー級の肉体と強化されたデューオの力が合わさると、最大でどれだけ止められると思う?」』


キッと、ディオの瞳に漆黒の殺意が宿る。

『「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄――」』

そしてリオレウスに浴びせられるガトリングのような拳の嵐。
時を止められる故にリオレウスには避ける術はない。


『「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄――」』

9秒経過……時間停止はまだ終わらない。


『「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄――」』

30秒経過。リオレウスが受けた拳の回数は500を越えた。

『「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!! 
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
  無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無…無駄ァアアアアア!!」』

ラッシュの回数が1000回を越え、ようやく時間停止は終わる。
1000連発もの無駄無駄ラッシュ、そして驚くべき時を止める時間は――

『「―― 一分だ」』


678 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/23(金) 23:58:12 bjf7bzLA0

『ヤッダーバァアァァァァアアアアア』

ザ・ワールドが解けた瞬間、リオレウスの鱗という鱗がべこべこになって血を噴き出し、翼や足や尻尾が千切とんだ。

『い、いったい何が……?!』

知覚できない瀕死のリオレウスには停止した時間の中で1000発も攻撃を喰らったなどとはわかるまい。

「トドメは時を止めずに貴様の首を直接……ぐう!?」
『無茶だディオ!流石に一分の時間停止は体に負担がかかりすぎる』

今度こそトドメだ、時間を止めないことでダイアーの受けた苦痛を倍返しで味わせてやるという時に、ディオは膝をついて転倒し、融合が解けてしまう。
驚異的な時間停止能力を持つザ・ワールド・デューオーバーヘブンだが、流石に何の代価もなく一分も時間を止められるわけではない。
5秒代の頃とは比べ物にならない疲労がディオの体に襲いかかるのだ。
二回連続で使えば確実に過労死するほどの諸刃の剣。
それはメジャーリーガー級の肉体を手に入れた後でも関係なく、むしろ強化装置で肉体をパワーアップしてなかったら時間停止中に自滅するほどの超疲労であった。

「ぜえぜえ、ダイアーさんの仇を友である俺が討たねば……」
「気持ちはわかりますけど」
『後は僕らに任せるんだディオ』

一時的に動けなくなったディオの代わりに、翔鶴がリオレウスの前に躍り出る。
彼女にもダイアーの仇を取りたい気持ちがあった。

「ダイアーさんは提督のご友人にして私の命の恩人。
本当に素晴らしい人でした……そんな素晴らしい人を奪ったあなたを私は許せません!」

リオレウスの眉間に矢が向けられる。
その一撃は間違いなくリオレウスの命を奪うだろう。


クンッ


翔鶴が弓を引きかけた瞬間。
拳王連合軍のいた地面が突然爆ぜた。

『「なッ……!?」』
「なんだなんだ!?」
「奇襲だーーーッ!」

高く上がった煙が拳王連合軍の視界を遮った。
熱斗はその時、空を見上げると見覚えのある男が沖から急速接近しているのが見えた。

「あいつはあの時のオッサン……!」

黒が主体の戦闘ジャケットを纏ったイカツイ顔のマッチョマン……イチリュウチームのナッパであった。


679 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/23(金) 23:59:03 bjf7bzLA0


ナッパとサラはどういうわけか毒ガスが消えていく奇怪な様を見ていた。
毒ガスが民間人に及ぶ危険は回避されたようだが、同時にリオレウスのピンチも目撃する。
今にも殺されそうなリオレウスを見捨てられないナッパはサラにいざという時のためにディスコードフェイザーを用意を頼み、危険を承知でリオレウス救助に向かう。
その一環として威力を抑えたジャイアントストーム(クンッ)を使用。
威力を抑えては拳王連合軍にはおそらく効かないだろうが、重症を負ったリオレウスを保護するためであり、目くらましぐらいにはなるつもりで放ったのだ。
それにより矛先がリオレウスから接近している自分に向けばなお良かった……ハズであった。




「ムギちゃん!!」
「油断……しました……せめてキーボードを持っていれば……」

ナッパは狙ってやったわけではないが、紬の胸には深々とリオレウスが先程壊したコンテナの破片が刺さっていた。
爆炎が起きた際に破片が跳ねて彼女の胸に刺さったのだ。
拳王連合軍で強化装置に入ったものはノーダメージ、そうでなくとも戦い慣れているために大したダメージにはならなかった。
……だが紬だけは戦闘力が低かったために破片を防ぐことも避けることも叶わなかった。
鋼のような精神だけでは解決できない事柄・不運。
ラオウを始め、拳王連合軍を引っ張ってきた存在が致命傷をおったことに全員が慌てふためく。
誰しもが死に体のリオレウスのことを忘れ、瀕死の紬かこちらに向かってくるナッパに集中しすぎていた……



(ああ、ナッパ……港に毒ガスをばら撒いたこんな俺でも助けてくれるというのか……)

リオレウスもまた、ナッパが自分を助けるために自身を危険に晒してまで助けにきてくれたことを理解していた。
上手くいけばナッパとサラの手で救助されて自分は助かるだろう。
しかし。

(残念だけどなナッパ、おまえの期待には添えない……今、絶好のチャンスが目の前にあるんだからな!!)

リオレウスの目の前には自分を殺そうとした翔鶴が目の前にいる。
彼女は突然の襲撃によりリオレウスから目を離していた。
拳王連合軍の面子をさらに一人、PETにいるロックマンまで勘定に入れれば二人殺せるまたとない機会である。
敵が泡を食っている一瞬の隙をリオレウスは逃したくはなかった

(どうせ俺が戻ったところでこの足と翼じゃ野球はできないし、ドラゴンズが毒ガスをばら撒いた俺を保護したことでオシリスたちが汚名を被るだけだ。
俺はもう、ここで死ななきゃならない宿命なんだ!)

翔鶴を殺せば自分は間違いなく殺される。
だがそれによって将来戦うであろう拳王連合軍の戦力は削がれ、その分対主催は有利になる。
自分がここで死ねば毒ガスを撒いた汚名は自分だけのものだ。
生存を諦めることはリオレウスなりの仲間を助ける手段であったのだ。

(白髪の女、地獄への道連れにしてやるぜ!!)

ナッパが牽制の爆発を起こしてからここまでで僅か数秒。
手足のなくなったリオレウスは手足も翼ももうないが、腹の筋肉で芋虫のように這うこと……特に数m離れていない相手に噛み付くのは難しいことではなかった。

「え?」
『翔鶴!離れ――』

気配に気づいて翔鶴が横を振り向くとリオレウスのアギトがすぐそこまで迫っていた。
ロックマンが注意を呼びかけるがもう遅い。
避けるよりもリオレウスに噛みつかれるのが早いであろう。


680 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/24(土) 00:00:04 ADKMh64Q0


「危ない!!」


咄嗟に近くにいた熱斗は妹の背中を押した。
そして翔鶴の身代わりに牙を肉体に受け、肉を抉らせて骨を砕き血を噴き出させた。

「――がはあッ……」
「熱斗さん!?」『熱斗!?』

翔鶴が振り返ると兄が竜に喰われかけていた。
熱斗の赤い血が翔鶴の肌とヘルメットを汚す。
驚愕していた翔鶴とロックマンはすぐに熱斗を救うために手を伸ばすが一歩遅く……

『てめーらも仲間が死んだり傷ついたりして悲しいだろう……?
それこそ俺からリオレイアを奪った痛みだ!!
遠慮せずにありがたく受け取りやがれ!!!』

リオレウスは熱斗を咥えたまま豪火炎を発射。
肉体は一般的な小学生と大差ない熱斗が耐えられるハズがない。










「彩斗兄さん……翔鶴……未来を守――」













熱斗は自分はもう助からないと悟って兄妹に全てを託し、火炎に焼かれて炭化し、更に噛み砕かれてバラバラになった……

「あ……ああ……」
『熱斗ぉぉぉーーーーーーーーッ!!!』

兄の死に呆然となる翔鶴。
弟の死に絶叫をする彩斗。
一瞬の内に熱斗に起きた悲劇を他の仲間が見た時も同様の反応であった。


【光熱斗@ロックマンエグゼ 死亡確認】


681 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/24(土) 00:01:22 ADKMh64Q0




『ははははははははははははははは!!殺ってやったぜええええええええええ!!
拳王連合軍の、邪悪な祐一郎の息子、光熱斗は俺が討ち取ったぜえええええええ!!』

妨害によって殺した相手は熱斗になってしまったが、結果的には翔鶴よりも強いであろうネットバトラー熱斗を殺すことができた。
拳王連合軍の主力を挫いたことにリオレウスは狂喜する。
竜語のわからない者にもリオレウスが嘲笑っていることを理解できた。

「よくも……よくも……!」

熱斗を失ったことに対する悲しみと、竜への憎悪が収まらない翔鶴。
足元を見るとシンクロチップなどを含む数枚のチップ――熱斗が死んだ時にディパックから零れたもの――が落ちていた。
翔鶴は般若のような目つきでリオレウスを睨みつつ、チップを拾ってロックマンのいるPETにスロットインした。

入れたチップの名前は、ダークソード。

「翔鶴?!これはダメだ!」

使えば使うほど悪の心になるダークチップを入れられたロックマンは翔鶴に警告するが、怒りで耳に入っていない。
ロックマンの警告虚しく闇のオーラと共にダークソードが翔鶴の腕の中に具現化された。
その刀を持って翔鶴はリオレウスに斬りかかろうとする。

『おまえも死ね小娘!』

更にもう一人殺せるチャンスだと思ったリオレウスは火炎を放つが、翔鶴はこれを高く跳躍して躱し、そのままリオレウスの背面に乗った。

「熱斗さんの仇!!」
『ぐわああああああああああああああ!!!』

リオレウスの背面にダークソードの刃が深く刺さる。
恨みの強さに比例してドンドン刺さっていく剣の痛みにリオレウスは悲鳴と血を吐いた。


「バカ野郎リオレウス、俺が来るまで動くんじゃねえ!!」

急速接近するも未だ横浜港にたどり着けていないナッパは、目論見通りにジッとしてくれなかったリオレウスに悪態を突きつつも、苦しむリオレウスを助けるために更に速度を上げる。
ナッパに気づいた拳王連合軍のメンバーが迎撃体勢を取るも、最も早く気づいたのは索敵能力に優れた翔鶴であった。
翔鶴はまたもダークチップをスロットインし、ダークバルカンを具現化させてナッパに向けて放った。

「なに?!うおおおおおお!!」

元より高威力のダークバルカンに二人分メジャーリーガー級の力が付与された弾丸の威力は尋常ではなく、ナッパの着ていた戦闘ジャケットを易々と切り裂き、その下の堅牢なサイヤ人の皮膚すら抉って流血させ、ナッパを海へ墜落させた。

「ナッパ様!くっ!」

沖上空で待機していたサラは横浜港の拳王連合軍に向けてディスコードフェイザーを放つ。
リオレウスも巻き添えになるが、もはやリオレウスは助けられず、ここでやらねば更なる追撃を受けてナッパも死ぬという判断から放った攻撃であった。
焔龍號の変形した肩から次元をも破壊しうる嵐が吹き荒れる。
直撃すれば拳王連合軍は粉微塵になる……実際、迎撃の翔鶴のダークバルカンやMEIKOボールすら渦に飲み込まれて消滅していた。
範囲の広いMAP兵器(範囲攻撃)だけに上条の幻想殺しやプニキのバッティングによるでは点による迎撃では防ぎようもない!

「北斗・超・剛掌波!!!」

そこへ拳王たるラオウは得意技である剛掌波を放つ。
流石のラオウでも元の能力では絶対に次元破壊砲など防げなかったが、メジャーリーガー級に底上げされた闘気の塊は、次元破壊の渦さえもかき消した。

「次元破壊砲が相殺され、きゃあああ!!!」

否、相殺ではない。
超・剛掌波の威力はディスコードフェイザーさえも上回り、放った焔龍號に届き、決して堅牢とはいえない機体の装甲にヒビを入れ、大破炎上させた。

「お、恐ろしい……これが拳王の力!」

まさに理不尽の権化。
操縦不能になり墜落していく機体の中で自身の体がコクピットから吹き出した熱や炎で炙られながらサラは恐れを抱き、機体ごと海に墜ちていくのだった。


682 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/24(土) 00:02:35 ADKMh64Q0

「サラ!」

海坊主の如く海から頭を出したナッパは黒煙を上げて海に墜落した焔龍號からサラのピンチを悟り、彼女を助けるために踵を返し海から飛び出した。

「逃がさない……今度は視界も足場も大丈夫、100%完璧なレーザービームだ!」

敵を逃すまいと、ムネリンは追撃の光球をナッパと焔龍號に向けて放つ。

「!?」

背後から迫る破壊の球に気づいたナッパはサラへの攻撃を防ぐために両の手でレーザービームを受け止めようとする。
それは極めて無茶な行為である。
全力なら惑星すら破壊しうるレーザービームの威力は首輪の外れていないサイヤ人でとても防げる代物ではない。
だがやらねばかけがえのない仲間であるサラが死ぬと思い、動かずにはいられなかったのだ。

そしてレーザービームとナッパの腕が衝突する。

「ぐおおおおおおおお!!!」

もはや鎧の役目を果たしていない戦闘ジャケットは一糸も残さず蒸発し、ボロボロになったディパックも明後日の方向へ飛んでいった。
サイヤ人の証である尻尾もちぎれ飛び、ナッパの体を強力な熱と衝撃でダメージを与えていく。
あと数秒もすれば彼の肉体は消滅するだろう。

(イ、イチローみたいな野球選手はこんな球を毎日のように打ちあっているのか!?
この星の野球選手が強いわけだよ!)

ムネリンのレーザービームを受けたナッパの最初の感想は、意外にも関心であった。
関心の次に出てきたのは自分への情けなさであった。

(戦闘力4000程度で弱い奴を見下し、もっとベジータやフリーザに媚びへつらっていた時の自分がバカみてえだ。
優れているのは体力とスタミナだけ、もっと強い奴なんて野球界ではゴマンといるんだ。
そんな俺がイチローのレーザービームによく似た球を防げるなんて無理だったかもしれねえ)

刹那の間に自分の矮小さを自覚する。
だがただ自分を卑下するだけでなく、助けられなかった仲間と助けたい仲間の顔を思い浮かべ使命感を思い出す。

(だからと言って、ちなつたちの時のように、サラやイチローたちを守れない結果を俺は望むのか!?
――絶対にNO!弱気はサイバイマンの肥やしにでもしちまえ!
根気を見せろナッパ!仲間を守れない弱い自分を許すな!!)

負けそうな自分に喝を入れるナッパ。
仲間を……サラを亡くす結果を想像すると、それを成し遂げられなかった自分に強い「怒り」がこみ上げてくる。
野球はより仲間が多い方が楽しい、仲間を傷つける者への「怒り」を原動力にナッパは立ち向かう。



「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」



その時である。
ナッパ自身は必死だったので気づいてなかったが、確かに髭が金色に変化し、纏う気も金色になったのだ。

ナッパはこれまでの死闘と野球を通じて知った絆・誇り・自分本位ではない怒りや悲しみを知り、精神的に磨かれた結果、仲間を守れない自分への怒りによってスーパーサイヤ人へと覚醒したのだ!!

戦闘力も50倍まで膨れ上がり、戦闘力20万+これまでの死闘で増えた分×50!!
そのパワーで莫大な威力を持ったレーザービームの威力をも殺しきることができたのである。


683 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/24(土) 00:03:13 ADKMh64Q0


「馬鹿な!?僕のレーザービームがイチローさん以外に防がれた??!」

イチローほどではないにしろ、メジャーリーガーレベルではないと防げないレーザービームを受け止めたことに驚愕したムネリンは思わず膝をついた。
イチロー以外には防げない絶対の自信があったために。

「へへ……やったぜ……」

だがナッパの肉体も限界を迎えていた。
というのも首輪の制限装置の作動によってほんの一瞬しかスーパーサイヤ人になれなかった上に、変身後は多大な疲労が肉体に襲いかかる。
ダメージと体力の限界を迎えたナッパは金髭から元の黒ひげに戻った後に海へと再び落下しようとする。

「宗則が防がれた、だったらアタシが!」

ムネリンが失敗したところを見て、今度はMEIKOがMEIKOボールでナッパを仕留めようとする。
単純な威力ではレーザービームには劣るが、自由落下しているナッパを殺すにはわけがないという判断であった。

「ん?なんだあの玉は!」

MEIKOが投げようとした寸前に落ちていくナッパを受け止めるように機械の玉らしきものが彼を受け止めた。

「一人用のポッド……サラか!?」
「ナッパ様!しっかり掴まって息を止めて!」

中にはサラが乗って操縦していた。
ナッパがレーザービームを引き受けてくれたおかげで大破した焔龍號を海中で乗り捨て、千切とんだディパックがたまたまサラの元へと落下し、中からサイヤ人が使うポッドを出して乗り込んだのである。
そしてナッパを上に乗せたポッドはMEIKOが追撃するよりも早く海中を潜行し、拳王連合軍の視界から消えていった。

「くそう、取り逃がした!!」

流石の黄金の回転を駆使するMEIKOボールも投げる前に視界から消えた相手は追撃できない。
広大な海で懐中に沈めばなおさらどこへ行ったかわからないのだ。
仇を取れなかった悔しさを足元のコンクリートに野球ボールをぶつけてクレーターを作った。



「…………スロットイン、残敵排除を開始します」

敵が消えたと見て、ダークソードを片手に翔鶴は残敵であるリオレウスを処する、処する、処する。
既に息も耐え耐えだったリオレウスにザクザクと刻んでいく刻んでいく刻んでいく。
翔鶴の眼はほの暗く、兄を奪ったリオレウスを斬り刻むことしか考えていない。

「その辺にしておけ!」
『「やめるんだ翔鶴=サン!」』

そこへイマジンスレイヤー上条や平等院が止めに入るが、復讐心に狂った翔鶴は聞き入れない。

「止めないでください……兄を……熱斗さんを奪った仇を討たないと」
『「仕方ない……目を覚ませ翔鶴!!」』

ダークソードを振り回し続ける翔鶴の顔面に上条は男女平等パンチを入れる。
超強化によって装甲も強化されているのでほとんどダメージはなかったが、驚かせて正気に戻すことには成功する。

『「ブッタファック!殴った手の方が痛え」』
「何をするんですかジョジョさん!」
『「おまえこそこれを見ろ!」』
「…!!?」
『「あのドラゴンは……もうとっくに死んでいる」』

正気に戻った翔鶴の目に映ったのは血だまりと334の肉片としてバラバラになったリオレウス。
リオレウスは最初にダークソードを突き立てた時に死んでいたにも関わらず、怨みに身を任せた翔鶴は死後の竜を捌いていたのだ。


【リオレウス@モンスターハンターシリーズ 死亡確認】


684 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/24(土) 00:04:00 ADKMh64Q0


『それだけじゃない!ロックマンは無事か?』
「デューオさん……?彩斗さんがどうしたって……」

呆然としていた翔鶴に対してデューオが焦ったように問いかける。
それには理由があった。

『おまえが使ったのはダークチップ!超強力な代わりに使えば使うほどロックマンに悪影響を及ぼす禁忌のチップなんだ!特に心を蝕むものだ』
「そんな!」

ヒトの悪の心をデータ化して作られたダークチップが使用するほど副作用としてライフ減少などの弊害と共にロックマンに悪の心を植え付ける。
翔鶴は知らなかったとはいえ、使用を強行したことにショックを受ける。
翔鶴たちがPETの画面を見ると少しカラーがダークになったロックマンがいた。

「彩斗さん……」
『大丈夫だよ翔鶴……僕のココロウィンドウの汚染度はまだまだ軽度だよ。
正義の心は失われていない……ただ……』

弟の死とダークチップ使用に伴うバグで憔悴しているように見える。

『熱斗の死のきっかけを作ったハゲ頭を殺したくて殺したくてしょうがないんだ!!
僕が人間のままで!足があったらすぐにでも追いかけられるのに!!
熱斗の仇を取れないのが苦しい…胸が張り裂けそうだ……』
『クッ……正義や優しさは辛うじて失われていないが、憎悪という悪の心が宿ったか……!』
「そんな……私のせいで彩斗さんを……あああ!」

まだロックマンに善の心は残っていたが、弟や仲間を失った悲しみはダークチップによって憎悪に転化されており、ナッパへの復讐心に燃えていた。
こんな暗い瞳をしたロックマンなど誰も見たくなかった……特に翔鶴は自分の暴走のせいで兄の心を汚したことの責任感に押し潰され、地面に膝をつき、両の目から止まらない涙を流した。


拳王連合軍の悲劇は終わらない。
辛うじて息のあった少女も胸からの失血により今まさに息絶えようとしていた。
せめて医療にも転用できる波紋使いのダイアーが生きていれば生きながらえたかもしれないが、ダイアーは先に他界している。
ディオが彼女に治療道具を使うが、心臓を一発で治せるほど効力のあるものはない、腕の立つ名医も拳王連合軍にはいない。
ただ地面に倒れた彼女の体をラオウが抱きしめて、仲間たちが看取るしかできなかった。

「死ぬなムギちゃん……うぬまでいなくなったら俺たち拳王軍はどうなる?
監督であるおまえがいなくなっては……」
「……ごめんなさい、拳王、様……ご期待にはもう、添えないみたいです……」

息も耐えたえのまま、死が近いことを自覚した紬は胸ポケットから一枚のメモをラオウに渡す。

「これは?」
「先程私が考えたスタメンのメモ……ダイアーさんの抜けた穴は、謎のアルト、リアさんで補ってください……」

紬自身の血で汚れたメモをラオウは受け取る。
紬の顔は血の出しすぎで白くなっており、もう長くは持たない。
自分が旅立つ前に仲間たちに自分への思いを打ち明ける。
残りの力全部を注ぎ、苦しくても我慢して。

「みなさんなら、監督なんていなくても大丈夫……
あなたたちが主催を、マーダーを、ヘルヘイムを、駆、逐して……勝利を掴み取ることを信じています……」


【琴吹紬@けいおん! 死亡確認】


「ムギちゃん……」
「ムギ……」

これまで拳王連合軍を引っ張てくれた女子の死に、残された仲間たちは涙した。
ラオウとてそれは例外ではなく、仲間内の中で最も泣いていた。

「ラオウ……」
「止まらぬ!涙が止まらぬのだ!
俺は確かに強くなった筈なのに、なぜおなご一人守れぬのだ?」

いつもの調子ならばメソメソ泣いているラオウを蹴り飛ばしているところだが、MEIKOはそうはせずラオウを抱きしめた。
MEIKOもまた紬の死には涙を流しているのだから……


へたりこんだ翔鶴は地面に落ちていた熱斗の忘れ形見であるバンダナを拾い、握り締める。
大阪での悲しき戦いにより祐一郎ら多くの人命が失われ、リオレウスの襲来によってダイアー、熱斗、紬までもが命を奪われた。
この理不尽に翔鶴は憤り悲嘆し、絶叫する。


「私たちは何のために強くなったの……?
私たちは何のために戦っているのぉーーーッ!!!」

さりとて、叫ぼうとも答えは返ってこない。
風評被害という毒に侵され修羅に身を落とされた者を祝福してくれる存在はこの世界にはいないのかもしれない……


685 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/24(土) 00:06:11 ADKMh64Q0


【二日目・15時30分/神奈川県 横浜港】
※ダイジョーブ博士の残した装置に座れば10分の所要時間でメジャーリーガー級の力を得られます
 ただしプニキは拒否、宗則は元からメジャーリーガーなので意味なし
※戦艦煉獄と高速艇は轟沈しました


【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【状態】超強化、悪の心(軽度)、深い悲しみと憎悪
【装備】ロックバスター、サイトパッチ&試製甲板カタパルトのデータ
【道具】なし
【思考】基本:???
0:熱斗が死ぬきっかけを作ったハゲ(ナッパ)を必ず殺したい
1:熱斗……!
2:翔鶴さんは絶対に失いたくない……
※PETの中にいます
※ダイジョーブ博士の残した装置で強化されました。全ステータスが格段に上昇しています
※ダークチップ使用により悪の心に少し汚染されました


【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【状態】超強化、絶望的に深い悲しみ
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、熱斗のPET(ロックマン入り)、シンクロチップ、ダークチップ一式
【道具】熱斗のバンダナ
【思考】基本:???
0:提督に続いて熱斗さんまで……
1:私のせいで熱斗さんと彩斗さんが……
※熱斗とロックマンより、二人の過去についての話を聞き、自身を光翔鶴と名乗るようになりました
※超強化の影響によりステータスが大幅上昇しました


【ラオウ@北斗の拳】
【状態】超強化、首輪解除、今まで最大の悲しみ
【装備】炭酸水
【道具】支給品一式、その他不明、ムギのスタメンメモ、現金1兆円ほどが入った特注ジュラルミンケース、強化装置
【思考】基本:ダース・ベイダ―たちを倒す
0:ムギちゃん……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました
※都庁をヘルヘイムであると誤解しています
※紬の支給品を一部受け継ぎました


【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【状態】ダメージ(大)、首輪解除、悲しみ
【装備】テニスラケット、テニスボール×∞、諭吉一枚
【道具】支給品一式、少年ジャンプとヤンジャン、その他不明
【思考】基本:主催者達を滅ぼす
0:なんてことだ
1:マーダーも滅ぼす
2:信頼するラオウたちと行動する
3:テニスがしたいが、野球をする
4:超人血盟軍を全滅させたヘルヘイムは必ず滅ぼす
5:ハゲ(ナッパ)も滅ぼす、仲間がいればそちらも滅ぼす


【MEIKO@VOCALOID】
【状態】ダメージ(小)、修羅化、首輪解除、強烈な悲しみと殺意
【装備】アルティメットアーマー@ロックマンXシリーズ
【道具】支給品一式、ノートパソコン@現実
【思考】 基本:『真の黒幕』及び主催者共の皆殺し
0:ムギ……
1:ラオウ達に協力してもらう
2:ヘルヘイムのインベスはとりあえず皆殺し
3:ラオウへの特別な感情
4:ハゲ(ナッパ)を見かけたら嬲り殺す、仲間がいたら皆殺し
※今までとは別人です。
※『無限の回転』を習得しました


【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】全身にダメージ、首輪解除、本気モード、 強い悲しみ
【道具】シンクロチップ、他人のデッキ(「ぬばたま」デッキ)
【思考】基本:あのAA
0:熱斗たちを守れなかった俺は無力だ……
1:ネットバトラーの一員として主催やマーダーと戦う
2:大阪で見かけたあの怪しい二人組の正体は……?


【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【状態】HP半分
【装備】ムラマサ
【道具】なし
【思考】基本:新しきお館様(上条)に従う
0:気負うな親方様……
1:敵は殺す、慈悲はない
2:お館様を守る


686 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/24(土) 00:07:18 ADKMh64Q0


【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】疲労(大)、超強化、首輪解除、悲しみ
【装備】PSVITA(デューオ入り)、十徳ナイフ
【道具】支給品一式×3、シンクロチップ、治療道具、その他不明
【思考】基本:ネットバトルとベースボールを極める
0:ダイアーさん……これが友を失った悲しみなのか?
1:ジョースター家を手に入れる
2:ジョジョより優越感を得る
3:熱斗が死ぬ前にネットバトルを挑みたかった……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得て、デューオとクロスフュージョン可能になりました
 新技として一分時間を止められるデューオーバーヘブンを習得しましたが、一度の使用によって強烈な疲労を伴います
※ダイアーの支給品を受け継ぎました(イカ墨パスタ等食料は毒で汚染されたので除外)


【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【状態】超強化、HP満タン
【装備】ジャスティスワン、ザ・ワールド
【道具】なし
【思考】基本;とりあえず、ディオたちを見守る
0:ああ……ダイアーさん、ムギさん、熱斗まで……
1:九州ロボ及び主催者を殺す
2:ダークチップに汚染されたロックマンが気がかり
※キン肉マン(旧シリーズ)全巻を読み、友情パワーに目覚めました。
※36巻以降の知識(完璧・無量大数軍編)以降の知識はありません。
※ベジータの持っていたパソコンから情報を抜き出し、ヘルヘイムの情報を得ました
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さとPSVITAの筐体を得ました


【謎のヒロインX@Fate/Grand Order】
【状態】健康、首輪解除、困惑
【装備】無銘勝利剣
【道具】ドゥ・スタリオンⅡ号(故障中)、スマホ(FGOをやってたせいで電池切れした) 、自転車
【思考】基本:私以外のセイバーを殺すが、その前に対主催しておいて他の対主催者と協力関係を築いておく。
0:く、空気がありえないほど重い!
1:宇宙の平和が第一ですね
2:世界が滅ぶのはヘルヘイムのせいだと思うので、平和のためにも打倒します
3:ヘルヘイムの方がセイバー多そうだし
※彼女のクラスはアサシンです。
※謎のヒロインXです。その正体は謎って言ったら謎です。
※世界が滅ぶ原因がヘルヘイムであると思い込んでいます


【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【状態】健康、全ステータスMAX、首輪解除、ずぶ濡れ
【装備】木の棒
【道具】支給品一式、その他不明、塩漬けで食べられなくなったハチミツの壺
【思考】基本:ムギさんからハチミツを貰うために主催者たちを野球で潰す契約だったが……
0:ムギさん死んだし契約解消かな?
1:ホームランを打つ
2:バッティング以外はマジでやりたくない
3:それよりハチミツが塩漬けになっちまったな
※強化しなくともバッティングの腕はメジャーリーガー級です


【川崎宗則@現実?】
【状態】健康、首輪解除、ずぶ濡れ、ショック
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチローを倒してでも、マリナーズに連れ戻す
0:僕のレーザービームがイチローさん以外に取られるなんて……


【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【状態】健康、首輪解除、非常に強い悲しみと黒い殺意
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式 電車ごっこロープ
【思考】基本:主催者たちに野球で挑んで勝つ!
0:チームの仲間が!
1:まずはヘルヘイムを潰す
2:イチロー選手を仲間に引き入れたい
3:みんなには隠してるが、仲間を殺したホワイトベース組が全滅したことには超メシウマ状態w
4:てゆーか風評被害に踊らされるクズは死ね、氏ねじゃなくて死ね


687 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/24(土) 00:07:59 ADKMh64Q0





東京湾、ビッグサイトを迂回するような位置でナッパを上に乗せた一人用のポッドは浮上した。

「迷惑かけてすまねえ……サラ……助かったぜ」
「ナッパ様も無事で良かったです」

辛くも拳王連合軍の追撃を逃れたナッパとサラ。
生存を喜びたいところだが、素直に喜べなかった。
拳王連合軍に痛手は与えたものの、それは当初の目的ではない。
リオレウスの暴走を結局止められず、リオレウスを死なせる結果になってしまった。
監督であるラミレスの要望と仲間たちの希望を叶えられなかった敗北だ。
おまけにナッパもサラもボロボロであった。

「サラ……あんたその傷……」
「……ナッパ様ほどではございません。肩や手足足腰は無事なので野球には支障ありませんわ」
「すまねえサラ……俺がもっと強ければアンタもリオレウスも……」
「いいえ、あなたがあの時レーザービームから私を庇ってくれなければ、骨も残さず果ててましたわ」

ナッパがポッドのガラスから内部を覗き見ると、サラはいくつかの火傷と同時に両羽を喪失し、生々しく出血していた。
脱出の際に焔龍號炎上によって両羽をもがれたのだ。
これではドラゴンに変身して飛ぶこともできない。
背中を刺すような痛みも精神力で堪えているのだ。
ナッパもサイヤ人の証である尻尾を喪失し、ダメージ・疲労共に危険レベルでモブ狂信者一人すら戦って生き残れるか怪しいほど消耗していた。

「本当ならばソウルセイバーの援護に向かいたいところですが、この負傷では無理ですね……」
「ポッドに戦闘用の武器は積まれてねえ……向こうの無事を祈るしかねー俺の無力さが不甲斐ねえよ」
「現状は浦安に戻るしかありません。それもビッグサイトからなるべく距離を話す形で」

拳王連合軍相手にほとんど何もできず、まだモブ狂信者に追われているかもしれないソウルセイバーの助けにも迎えない。
ナッパは本当ならば無茶でも助けに行きたいのだが、本当に体が言うことを効かないほど疲れているため、ポッドの上から動けないのだ。
狂信者からは距離を取る安全策を取るほかなかった。


「それにしても恐ろしい連中でしたわ……拳王連合軍。
時空すら破壊できる兵器をあっさりと覆すほどのパワー、各地で破壊を行えるだけの攻撃性と噂に違わぬ凶暴さを持ってましたね」
「……本当にそうなんだろうか?」
「え?」

拳王連合軍の危険性を肌で感じ取り、必ず滅ぼさなければいけないと恐れを覚えたサラに対し、ナッパは違う答えを出す。

「サラは沖に待機していたから見えてねえかもしねえが、俺はリオレウスを救うために接近したんだが、その時に見えたんだよ。
あいつらが仲間をかばい合い、そして仲間を失えば涙を流しているところを」

ナッパはしっかりと見ていた。
自分の攻撃で少女が怪我を負った際、助けに回る者たちの姿を。
攻撃に乗じたリオレウスから妹を守るために献身した熱斗の姿を。

「本当に冷酷な奴ら……それこそ昔の俺みたいな奴だったら仲間を守りあったり死んで悲しむことはなかったハズだ。
そんな奴らが平気で無差別攻撃を行うとは思えねえ……リオレウスが撒いた毒ガスだって奴らが止めてくれたのかもしれない」
「ナッパ様は彼らが悪人ではないとお考えで?」
「確証はねえし、俺がそう思い込みたいだけかもしれねえが……」

拳王連合軍の互いに助け合う姿勢はイチリュウチームに通ずるものがある。
もし拳王連合軍が悪玉に見せかけられた善玉だとしたら、自分は攻撃という形でしてはいけないことをしたのかもしれないと複雑な気分になるのだった。

そして、ナッパには気がかりがあった。

「あんときのガキ……拳王連合軍にいたんだな。
俺を叩きのめした憎たらしいおまえとは野球で決着をつけたかったぜ……畜生」

光熱斗。
カオスロワ10期序盤はマーダーであったナッパをネットバトル魔法で叩きのめして気絶させ、ハラサンに拉致されて野球という人生の転機を与えることになり、今のイチリュウチームの一員にして対主催のナッパに繋がったのだ。
少年がいなければ今のナッパはおらず、どこかで野垂れ死んでいるか、生き延びていても野球も仲間の大切さも知らない金と暴力だけのつまらない人生を送っていただろう。
だからこそ、彼が善であれ悪であれ、野球で決着をつけたいとナッパは願っていた。

その願いとライバルを自分の手で壊してしまったことが、ナッパにはただただ悔しかった……


688 : ネットリオン ◆tAezoeTGjM :2018/03/24(土) 00:08:28 ADKMh64Q0



【二日目・15時30分/東京 東京湾】

【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(特大)、尻尾切断、全裸、野球脳、激しい怒りと悲しみ
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:今はサラに任せる
1:野球を邪魔するDMCは許さない
2:ベジータはそのうち探す
3:また多くの仲間が死んじまった……自分の無力さが不甲斐ない
4:生きていてくれソウルセイバー!
5:サラマンディーネにも迷惑かけちまった……
6:拳王連合軍は本当に悪逆集団なのか?
7:あのガキ(光熱斗)には野球で報復したかった
※回復した場合、戦闘力がとても大幅に上昇します
※一瞬だけスーパーサイヤ人化しました
 首輪解除ができればいつでも覚醒できますが本人は気づいていません


【サラマンディーネ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
【状態】ダメージ(中)、両羽喪失
【装備】一人用のポッド
【道具】なし
【思考】基本:対主催
0:ナッパ様を連れて浦安遊園地に戻る
1:イチリュウチームについていく
2:滅亡を止めたいとは思うものの、予言に関しては懐疑的
3:後で首輪解除のためにゆっくりできる時間が二時間ほど欲しい
4:リオレウス様……
5:ナッパ様の髭が一瞬だけ金色になったのを目撃しましたがあれは一体……
※予言には主催者も関わっていると推測しています
※首輪解除技術を持っていますが、技術面で祐一郎さんやブリーフ博士を下回っているため、解除方法を見つけるまでに最低二時間以上かかります
 負傷&ポッドの操縦に専念している現状はもちろん無理


689 : ◆tAezoeTGjM :2018/03/24(土) 00:08:58 ADKMh64Q0
投下終了です


690 : 名無しさん :2018/03/24(土) 23:59:52 NQEkoUkU0
投下乙です
すれ違いと風評被害でここまで対主催が互いを潰しあうってなかなかないよね……
ナッパが少し違和感覚えたみたいだけど、拳王側からはもう抹殺対象にされてるしなぁ
しかし改めてベジータとナッパを比較するとほんとどこで差がついたし


691 : 名無しさん :2018/03/26(月) 11:52:55 6wnYaOBE0
運と言えばそこまでだけど、精神の差かな
金髪怖いの自己保身から始まって血盟軍に流されるままだったベジータと、最初の内はともかく窮地にもめげずに仲間のために戦い続けたナッパのどちらの心か強くなるかって話だと思う
首コキャからのフェイスフラッシュによるお手軽過ぎる戦闘力強化コンボもベジータの慢心を招いて格下のユーノと小町に殺される結果に繋がったのだと言うのが個人的推測


692 : ◆aoWfjuljUw :2018/03/27(火) 02:35:20 4t3bqJ1w0
予約の物置組とテラカオス・ディーヴァの魂とシャドウだった者に召喚された死者を投下します


693 : 目覚めの時 ◆aoWfjuljUw :2018/03/27(火) 02:37:29 4t3bqJ1w0


一つにスピーダーが東京と神奈川の県境のとある町に留まる。
それに乗っているのはシマリスとレックス、二人はダイジョーブ博士探索の任についている。

「見つかりませんねぇ」
「全くだ、これは最悪の展開を考えなければならないかもな」

そう言いながら二人は少しの休憩を取っている。
ダイジョーブ博士を捜索して早数分、今だに二人ともその痕跡を掴めてはいない。

「もっと捜索範囲を広げたいところだが、下手に広げれば物置から離れすぎて危険なのが悩ましい所だ」
「あんまり離れてるとすぐに戻れないでぃすしね」

そう言って、二人ともこれより捜査範囲を広げるかどうか迷っていた。
物置から距離を取っている手前、これ以上範囲を広げれば時間通りの合流は難しくなるからだ。

「とは言え時間もまだある、もう少し捜索してみるとしよう」
「はい。でぃす」

レックスに同意してからシマリスはこの街を見渡す。

「……何か便利な物とか落ちていませんかねぇ」
「あったとしても探す時間がない、ダイジョーブ博士達の探索が最優先だからな」

レックスの発言にシマリスは同意するように頷いた。
しかし、少し諦めきれず再びあたりを見渡した、何か落ちていないかを探すように。
すると、何かが視界内に入ってきた。まるで日記帳みたいなものだった。

「レックスさん」
「なんだ、おチビちゃん?」
「アレ何でぇす?」

シマリスが指をさした方向をレックスも見れば日記帳が視界に入った。

「日記帳か」

そう言ってレックスは落ちていた日記帳を拾う。
日記帳の表紙にはこう書かれていた「TCホール観察日記」と。

「…………ダメだな、タイトル以外全く分からん」

日記帳を拾ったレックスはさっそくその中身を見てみたが非常に難解な文章と字で書かれていた。
そのため全く何を書いてあるのか分からなかった。

「一応、持ち帰ってみるとしようコマンダー社長やミスターLなら何か分かるかもしれんからな」
「でぇす」

そう言って日記帳をデイパックにしまった。

「ところで、TCホールって何でぇす?」
「俺にも分からない」

そもそも物置組にはTCの情報がないためTCホールなどと言ったことは知らないのでありこの日記帳がどれだけ役に立つか不明である。
その前に解読できるかも不明ではあるが。

「さて、そろそろ捜索を再開するとしよう」

そう言ってレックスがスピーダーにまたがりシマリスはレックスのデイパックに入った。
そうして出発しようとした直後――

「アレなんでぇす?」

シマリスが空に指をさす、それに釣られてレックスが空を見てみれば。
空が光り、その光りが人の姿を構成していき、レックス達の所にゆっくりと落ちてきた。


◇ ◇ ◇


残滓は夢にいた、夢の中で残滓は彷徨い、そして夢を見た。
それはとても喜ばしいものであったり目をそむけたくなるような悲惨なものまで、様々だ。
そしてその中を彷徨って彷徨って、ゴールなんて分からずに彷徨い続けて。
――声が聞こえてきた。

――君は……そうか、君は俺と同類なんだな。

夢の中でその声は彼女にはっきりと鮮明に聞こえた。

――時間がないから率直に言わせてもらう、君は世界を救えるほどの力を持ってる。

唐突にそのようなことを言われて首をかしげる、ようなことをしたと思う。
世界を救うなどただ彷徨ってる自分には分からないことだからだ。

――ああ、今の君にはそれを自覚できないか。

その声は少し困ったよう喋った。
暫くその声は聞こえなかった何を言うか迷うかのように、そしてある程度たった後再び聞こえた。

――それを伝えるには時間が足りない、今はこれだけを伝えておくよ。

一瞬の間が空き、伝えてくる。

――テラカオスの因子を集めるんだ、そして無くしてはならない。

そう伝えられたと同時に意識が遠のいていく。


694 : 名無しさん :2018/03/27(火) 02:38:49 4t3bqJ1w0


最後の力を振り絞り聞くべきことを聞く――貴方は何者なのかと、
そうすると声の主はすぐに返した。

――俺は、平賀才人、最初のテラカオスだ。

その言葉を聞くと同時に意識は黒い海に引きずり込まれた。


◇ ◇ ◇


「レックスさん!空から女の子が!」
「見えている」

シマリスが空を見て、降りてくる女の子に向けて指をさして言ったがとっくにレックスはその子を視界に収めていた。
そうしているうちに降りてくる女の子を受け止めようとレックスは一旦バイクを下りて女の子の落下地点に行く。
幸い、その女の子が落ちてくるスピードは遅く余裕をもって落下地点へと向かい、女の子をキャッチした。

「……やれやれ、このような状況でも女子が降ってくるとなると少し驚くな」
「でぇすね、それでこの子どうするですか?」

女の子の扱い、これに関してレックスは少しばかり悩んだ。
無害な人々の保護を目的とするならば確かにこの少女は保護せねばならないと思う。
しかし、光によって構成された少女は果たして無害な存在なのかと、本当に助けていいのかと悩んだ。

「レックスさん、どうしたでぇす?」
「いや、すまない、この子を保護すべきか悩んでいてな」
「どうして悩んでいるでぇす?」
「彼女は普通ではないからさ」

そう言ってさてどうしようかと悩むレックス、その時ふと少女の顔を見る。
するとはっとした顔になった、何故ならこの少女の顔にレックスは見覚えがあったからだ。

「確かこの子は指名手配されていた子か?」
「でぇす!?」

その一言にシマリスも驚き、急いでレックスの肩まで行きその顔を確かめる。

「……確かにこの顔は指名手配されていたクリスちゃんのお友達にそっくりでぇす」
「参ったな、これではますます保護すべきかどうか」

さらに頭を悩ませることとなったレックス。
それに対しシマリスが一つの意見を言った。

「……とりあえず連れて行かないでぇすか?ここで悩んでても始まらないですし」
「…………だが、むぅ」

じーっとシマリスがレックスを見る、この子を見捨てないでと目で訴えてきたのだ。
これに対しレックスはさらに頭を悩ませ、数分が経過した後に結論を出す。

「……はぁ、仕方ない、連れて行くとしよう」

そのレックスの一言にシマリスはほっと胸を撫でおろした。

「だが、まだ信頼はできん故何かしら拘束しなければな」
「その前に服を着せてあげてほしいでぇす」

そう、今の少女の姿は何の服も纏っていない全裸なのだ。
レックスはそう言う系の感情はクローンとして生まれる際に削除されており、シマリスはそもそも種族が違うので興奮とかはしないのであった。

「ん、ああそうだな、なら服をまず探さないとなとは言えダイジョーブ博士も探さねばならぬし……やれやれ」
「なんか、申し訳ないでぇす」

そう言って少女をレックスがお姫様抱っこをしながら二人共、服を探し始める。
幸いなことに服は時間をかけずに見つけることが出来た。

「これで良しと、さてこの少女を一旦送り届けるか、それとも少女と共にダイジョーブ博士を探すか」
「無ずかしい所でぇすね」

そうして少々二人が悩むその時に――

「ッ!!」

長年の戦士であるレックスの勘が確かに捉えた、一瞬にして増幅されていた殺意に。
その方向に向けてひらりマントを向ければ銃弾が様々な方向へと跳ね返って行った。

「おチビちゃん!今すぐここから逃げるぞ!」
「分かったでぇす!」

レックスは強引に少女をそこら辺にあったロープで早業で括り付けるとスピーダーバイクに跨る。途中で解けず落ちない結び方でもあった。
シマリスもまた急いでレックスのデイパックに入り込み、スピーダーが急発進した。

「チッ、逃げたか」

そして、レックス達がいた場に現れる存在――それはシャドウであった者が送り出した刺客の一人。
全身の色が黒みがかった灰色、ディパインアーマーは金色で縁取られた存在、ディケイド、否ダークディケイドだ。
そう、初期に死亡した門矢士の魂を利用し強化を施された存在、意思を持つのは死者のリーダーとして任命されたからだ。無論シャドウであった者には逆らえない。

「だが、これを使えばまだ追いつけるが」

そう言って取り出したの一枚のカード、それはクロックアップのカードだ。
これをベルトにセットすれば以下にスピーダーであろうと追いつくのは容易であるしかし。

「……無駄だと思っていても希望は捨てられないか」

例えその魂がTCに汚染されようと仮面ライダーであり意志を持つ故に希望が捨てきれていない。
クロックアップのカードをしまい、自身のマシンを呼び出す。その色もまた本来のディケイドカラーとは違いダークディケイドカラーとなっていた。


695 : 目覚めの時 ◆aoWfjuljUw :2018/03/27(火) 02:39:57 4t3bqJ1w0


「さて、行くか」

そう言ってマシンディケイダーに跨り発進する、そのスペックは本来であれば低いものであるがこれもまた強化が入っている。
その為少なくともスピーダーには何とか追いつける速度になっているのだ。
これより数分後、レックス達とディケイドによる猛烈な追跡戦が始まったのであった。


◇ ◇ ◇


一方その頃、超ハイテク物置の中で待機しているしている者達。
その中でLはカオスロワちゃんねるをじっと見ていた。

「どうしたL?何故カオスロワちゃんねるをそんなに見ている?」

そこに偶々通りかかったゼクスが話しかけてきた。
Lはゼクスの方に向かいあった。

「いえ、少しばかり考えていたのですよ、この掲示板は管理人に有利だとね」
「……どういうことだL?」

Lから出てきた発言にゼクスは聞き返す。

「常々思ってはいました、ほとんどのチャット系のサイトが使用不能になりました、その為唯一の掲示板であるカオスロワちゃんねるに人は殺到しています」
「ああ、多くの人々が情報を手に入れ書き込んでいるな」

ゼクスもまたそのように言ってからカオスロワちゃんねるを覗く。
今もまたひっきりなしに書き込みが続いていた。

「そして、このちゃんねるの管理人はある意味で情報王と言えるでしょう、だからこそ思ったのです――管理人は情報操作しやすいとね」
「それは!」

ゼクスがはっとしたような顔でLを見る、Lもまたゼクスを見て頷いた。

「そう、ここの管理人はこのちゃんねるを使い自分に有利な情報工作が出来るのですよ」
「それは……本当に可能なのか?この膨大な情報量の中でそんなことが出来るのか?」

ゼクスはLにそのような疑問をぶつける、その疑問に対しLは答える。

「可能ですよ、そのような仕掛けなどを行い、その後は適切に情報などを読み取ってその都度、誘導すればいいんですから」
「……だが、そのような事を出来る者達は限られる」
「ええ、そうですね、このような事を出来るのは主催のような存在だけでしょう……ですがね」

Lが一旦言葉を区切り、静かに息を吐いた。

「探偵の勘というものでしょうか、この管理人は他にいるかもしれないと思っているんですよ」
「勘か、いまいち信用できんな」

ゼクスがそう言って肩をすくめればLもまた苦笑する。
己の勘というものは重要ではあるが、しかし人を納得させるには難しいからだ。

「まぁ、管理人が誰であるかは一旦置いておきましょう、今はそこよりも重要な対策があるのですから」
「ああ、早速社長に対して君の推理を聞いてもらい情報工作などの対策を講じよう、とは言えどこまで出来るか」

そう言って二人とも立ち上がり社長の元へと向かう。
丁度、社長もまた外に出ていたようで、社長のテントに行く前に合流できた。
社長と会ってからはゼクスがLに促し先程の推理を聞かせた。

「……なるほど、確かにその可能性はありますね」
「ええ、ですから対策などを講じようと思ったのですが」
「それは、やはり難しいでしょう、精々鵜呑みにしないように気を付けることでしょうか」

その発言にLもゼクスも少し残念がった、分かっていたこととはいえ残念に思ってしまうのだ。
だが、その様子を見たイナバ社長が一つ提案した。

「では、そのパソコンを改造しませんか?」
「改造?」
「はい、書き込み制限の対策やもしもの時の為の居場所がばれないようにしたり、弾き飛ばしに対する対策ですね」
「出来るのですか?」
「ははは、私はこの物置を作った男ですから、こと機械関係に関してはブリーフ博士以上のものと自負していますよ」

そう言って胸を叩くイナバ社長、ならなぜ首輪を外していないと思われる方々もいるだろう、それは仕方のないことだ。
イナバ社長自身も首輪に関しては外したいと思っているが、首輪に関するデータがないため下手に触れることが出来ない故に放置するしかないのだ。

「さて、そうと決まれば機材などを用意しなければなりませんね、幸いにも機材などは私のテントにありますからそこに行きましょうか」

二人もイナバ社長の発言に同意し、社長のテントに向かおうとしたその時だった。
社長の胸元からアラーム音が聞こえてきたのだ、それを社長がとる、すると小さかった物が無線機になったのだ。

「どうしましたレックス?」
『コマンダー社長!すぐに基地を浮上させることは可能でありますか!』
「……緊急事態が?」
『ハイ、厄介な存在に目を付けられただいま追われています』

うぉっとレックスが少し慌てたような声を出す、そこから社長も尋常ではないものを感じた。

「相手は?」
『かなりの手練れです、恐らく私とおチビちゃんでも歯が立たない相手かと思われます、しかも厄介なビークルも持っています』
「そうですか、振り切ることは?」
『恐らく不可能かと、相手のスピードも速いですから』


696 : 目覚めの時 ◆aoWfjuljUw :2018/03/27(火) 02:40:53 4t3bqJ1w0


社長は迷った、ここにいる多くの者達すら危険に晒すのかそれとも多くの人たちを危険から守る為にレックス達を切り捨てるか。
その事を察したゼクスが言う。

「社長、確かに多数を救う際、小を切り捨てなければならない時があります、ですが今はその時ではないと考えます」
「ゼクスさん……」
「彼は貴重な戦闘要員であり、私達の仲間であります、それに仲間内でも信頼を得ています、
 そのような人物を見捨ててしまうと無用な疑心暗鬼を招きかねませんからね」
「そうですね」

ゼクスの言葉にイナバ社長は頷いて無線機にしゃべる。

「分かりました、今どのあたりに居ますか?」
『基地から数十分ほどの道のりです、とと、今度はミサイルか』
「ではすぐに浮上させます、急いで向かってきてください」
『了解しました』

そう言って無線が切れる、そして社長が二人に向き直った。

「それでお二人ともご協力願いたいのですが」
「この緊急時です、私は異論ありません」
「私もです」

二人が協力するという旨の返答を得たことで社長は頷き指示を出す。

「それではゼクスさんにはレックスが率いていたトルーパー達に指示を、Lさんは一般の人たちの避難をお願いします」

その言葉を聞いた二人は慌ただしく動き出す、それを見届けた社長もまた急いで動き出した。
こうしてレックス達を助けるために各々が動き出す。


◇ ◇ ◇


「これはどうかな」

そう言ってダークディケイドが一つのカードを取り出しカードを挿入しバックルを閉じた。

《ATTACK RIDE GIGANT》

すると、多目的巡航ミサイル「ギガント」がダークディケイドの手に召喚された。
それをレックス達に向ける。

「全く、多芸にもほどがあるな……!」

レックスがそう毒づいてからミサイルが発射される。
誘導式ではないものの的確にレックスがいる場所から回避する場所を予測して撃たれている。
しかしレックスもクローン戦争を駆け抜けその後の銀河帝国に対する反乱を戦い抜いた歴戦の戦士である。
それらをすべて見切り、ミサイルが来ない場所へと高速で移動しミサイルをすべて回避した。

「なるほど、油断の出来ない相手のようだな」

ダークディケイドがそのように呟き次のカードを選び挿入しようとする。

「おチビちゃん、基地まであとどのくらいだ」
「えーと、あと……すこしでぇす!」

シマリスがそう言ったと同時に急激に速度を上げる。
それを見たダークディケイドもスピードを上げて行く。しっかりと攻撃できる距離を保ちながら。

「これじゃきりがないな、ならこれだな」

そう言って取り出すカードは仮面ライダーWが使っていた武器、トリガーマグナムだ。

《ATTACK RIDE TORIGAMAGUNAMU》

召喚されたトリガーマグナムを手に持ちレックス達に向けて構え発射する。
発射された複数のエネルギー弾をレックスは避ける、だがそれだけでは終わらなかった。

「ッ、追尾式か!」

一度避けたエネルギー弾が機動を変え再びレックスの所へ迫ってきたのだ。
だが、それすらもレックスは避けて見せたが何発か掠ってしまった。

「クッ、流石に完全に回避とはいかんようだ」
「でも直撃していないのはさすがでぇすね」

だが、それでもダークディケイドの追撃は終わらない。
再びレックス達に照準を合わせるために銃を向ける。それに対しレックスは攪乱するように動く。
しかしそれはダークディケイドに見切られていた。

「これで終わりだな、見込みはあるかと思ったが……まぁ、言っても詮無いことだな」

そう言って次に行く場所を予測し、そこに狙いを定めて引き金を引こうとしたその時。
大きな地鳴りが起きた。

「ッ!?」
「よし、このまま全速だ!」

その地鳴りに驚愕しスピードを落としたダークディケイドを尻目にレックスはさらに加速を駆ける。
目標は自分達の拠点である物置だ。

「やれやれ、また引き離されちまったか、だがここで終わらせるつもりもない」

そう言ってダークディケイドもまたマシンディケイダーを加速させる。
レックス達に引き離されたとは言えいまだその姿を捉えられている、ならば追いつけずとも付く場所までに行くだけだ。


697 : 目覚めの時 ◆aoWfjuljUw :2018/03/27(火) 02:41:27 4t3bqJ1w0


「あと少しでぇす!」

シマリスが叫ぶ、目の前には浮上してきた物置、その入り口が現れるまでもう少し。
レックスはスピーダーに最後の加速を駆ける。
そして、レックス達の更なる後方には追い付いてきたダークディケイドがいた。

「なるほど、あそこが拠点ってわけか」

浮上してきた物置を見てダークディケイドが見定めた。
とは言え今は攻撃を加えられはしない、レックス達も拠点の距離も遠いからだ。

(あともう少し近づければ行けるんだが、その前にあいつらが拠点内に入るのが先か)

そう思いながら次に使うカードを考える、拠点に攻撃を何かしらの損傷を与えればチャンスが巡ってくるからだ。
ディーヴァの後継の抹殺のチャンスを。
そのような思惑を露知らず物置が最後までせり上がり、入り口が開いた。

「行くぞおチビちゃん!」
「はい、でぇす!」

勢いを調節し、物置に入りバイクの後輪をスライドしスピーダーを停止させる。
スピーダーが物置に入ったと同時に同時に入り口が閉まっていく。

「ふぅ、生きた心地がしなかったな」
「でぇす」

そう言ってレックスがスピーダーから降り、背中のロープを外し少女を降ろした。
シマリスはデイパックから出て、地に足を付けた。

「おお、無事だったかレックス……その子は?」
「色々とあって保護した少女です、今はこの場から頼脱を」
「うむ、そうだな、潜航急げ!」

イナバ社長が無線機で部下に向けて指示を出す。
そして再び物置が地中に向けて潜航を始める、しかし地中に行く速度は物置のその大きさ故に少々ゆっくりである。
その隙を見逃すほどダークディケイドは甘くはない。

「生半可なものだと効かない可能性がある、ならこれだな」

そう言って取り出したのは本来なら必殺技、最後の止めに使用されるカードだ。

《FINAL ATTACKRIDE DECADE》

音声が流れると共に物置との間にカードがずらりと並んだ。
そして真上に飛び上がると同時にカードもまた斜め一直線に並んだ。

「何をする気だ」
「なんだかやばいぞ」

物置の操作室にいるオペレーターたちが何やら不穏な予感を感じ取る。それは当たってほしくない予感の類だった。
それを知る由もなくダークディケイドは飛び蹴りの体制に入る。

「ハァ!!」

気合の籠った掛け声を掛けたと同時にカードに引かれるようにディケイドが物置にめがけ一直線に降下する。
カードの中を通り過ぎながら右足のフットストンパーにエネルギーを蓄え、物置に対し蹴りを叩き込んだ。
その飛び蹴りの威力はすさまじかった、それは当然だ元の素体の優秀さもさることながら強化も入ったからだ。
物置の中もひどい衝撃に襲われ激しく揺れた。その事に多くの人々が戸惑う

「ッッ、被害報告!」
「各部損傷!ただいま被害を確認中、それと地下航行機能に異常が発生しました!」
「なんということに……」

操作室に入ってきていた社長がその報告に唖然としたがすぐにその状態から回復する。

「こうなればやむを得ません、緊急離脱装置は?」
「はい、そこは無事です」
「……では、緊急離脱装置を作動させこの場から離脱します、行けますか?」
「ただいま上がってきた被害報告から可能かと」
「よろしい、では準備が出来た後に即実行を」

そう社長が言えばすぐにオペレーター達は緊急離脱する作業に入る。
一方、必殺を食らわせたダークディケイドは地上に着地して物置を見た。

「なるほど、俺一人じゃ無理があるってわけか」

そう一人心地に呟いて、物置を見据える、蹴られた場所はへこみ、余波で所々傷がついていた。

「だが問題ないな、そろそろアイツらが来るしな……ん?」

物置を見据えていたダークディケイドが物置の変化に気づく。
何やら、ものすごい勢いで物置の各部に様々なものが現れていたのだから。

「……まさか!」

物置から出てくるもの、それらをよく観察したことによりダークディケイドは次に何が起こるか予想が付いた。
そしてそれを迎撃する時間はもう過ぎたということも。

「チッ、こっちが噴射を受ける側か、ならこれだ」

そう言って取り出したカードをバックルに挿入し閉じた。

《ATTACK RIDE INBIZIBURU》

発動と同時にダークディケイドの姿は掻き消えた。

「行けます社長!」


698 : 目覚めの時 ◆aoWfjuljUw :2018/03/27(火) 02:42:14 4t3bqJ1w0


その言葉が聞こえると同時に社長は緊急離脱のボタンを押す。
すると、とてつもなく速いスピードで物置は離脱していった。


◇ ◇ ◇


「まさかあんな隠し玉を持っているとはな」

物置が離脱した後にダークディケイドは再びその姿を現した。
インビジブルのカードの効果は自身の姿を消す他にも攻撃を避けることすら可能、それが出来るからこそ利用したのだ。
姿を現してからダークディケイドは物置が飛んで行った方を見る。

「それでアイツらが向かった方向は……都庁がある方に行ったか」

そう、物置組が離脱して言った方向は都庁方面だった。
その事に対し少々ダークディケイドは頭を悩ませた。

「参ったな、あそこの連中に俺達の存在に気が付かれると厄介だ」

彼等、シャドウであった者に召喚された存在はシャドウであった者の記憶も引き継がれるのだ。
そのシャドウであった者もテラカオス・ディーヴァの記憶も保持しておりそのため都庁の戦力の事に関しても知っている。
だからこそ警戒するべき対象なのだ、いくら強化されているとは言え負ける可能性が高いのだから。

「アイツらも戦力を増やして強化しているかもしれないし、とは言え目的を果たす以上は避けて通れないか」

そのようにブツブツと呟きながらどうするか考える。
すると、何者かが歩いて来た。

「遅いぞ、ディエンド」

きたのはディエンド、ダークディエンドと同様に初期に死んだ海東大樹の魂を利用し強化された存在だ。
ディエンドの姿なのはそちらの方が戦力になるとシャドウであった者に判断されたからだ。これはダークディケイドも同様である。
とは言えディエンドはダークディケイドのように意思を持たない為、話しかけられ手も簡単な反応しか返さなかった。

「さて、もう一人は……来たか」

ダークディエンド達のもう一人の仲間それは――風鳴弦十郎であった。
風鳴弦十郎は死者スレがシャドウであった者に浸食された際、呑み込まれそうになった立花響を庇い代わりに呑み込まれた。
その際にシャドウであった者が風鳴弦十郎の高い戦闘能力を知った、それ故に今回もまた召喚されてしまったのである。
だが、今回はそれだけに止まることはなかった。

「風鳴弦十郎、お前は変身しておけ、何時戦闘があるか分からないからな」

ダークシャドウの言葉にこくりと頷き、弦十郎は一つの物、それはキバットバットⅡ世、だが本来あるべき意思が感じ取れない。
それもまた当然だ、このキバットバットⅡ世はディケイド世界の存在である為、
支給品として配られそして壊された為に死者スレにあったのをシャドウが取りこみサルベージしたのだ。

「ガブリッ!」
「変身」

弦十郎がキバットバットⅡ世に腕を噛ませ装着する、するとその姿が変わっていき、仮面ライダーダークキバとなった。
本来であれば普通の人間や適合者以外が変身すれば即死に至るが、弦十郎の場合はシャドウであった者に召喚されているため、
その問題を克服している、だから何のリスクもなく変身できるのだ。

「さて、どうやってディーヴァの残骸を壊すとするか」

そう言って、ダークディケイドは物置が飛んで行った方を睨み見るのであった。

【二日目・15時45分/ 東京と神奈川の県境】

【仮面ライダーダークディケイド@仮面ライダークライマックスヒーローズ】
【状態】健康、強化状態、
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライドブッカー@仮面ライダーディケイド
【道具】トイカメラ、マシンディケイダー@仮面ライダーディケイド、その他不明
【思考】基本:シャドウであった者の命に従いディーヴァの残骸を殺す。
1:希望を捨てきれないか。
2:都庁の方向か、厄介なことになったな。
※ディケイド激情態と同じく他のライダーにカメンライドせずとも能力が使用でき主役ライダー以外の能力も行使できる模様。
※平成二期のライダーたちの能力も使用可能。

【仮面ライダーディエンド@仮面ライダーディケイド】
【状態】健康、強化状態、意思なし。
【装備】ディエンドライバー@仮面ライダーディケイド、カードケース。
【道具】不明
【思考】基本:シャドウであった者の命に従う。
1:今はダークディケイドの命に従う。

【風鳴弦十郎@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】健康、強化状態、ダークキバに変身状態、意思なし。
【装備】闇のキバの鎧@仮面ライダーキバ、キバットバットⅡ世@仮面ライダーディケイド。
【道具】不明
【思考】基本:シャドウであった者の命に従う。
1:今はダークディケイドの命に従う。
※ダークキバの情報はシャドウであった者からインプットされています。

※召喚された死者は道具扱いの為アナウンスされない。
※死者の装備や道具は回収できません。


699 : 目覚めの時 ◆aoWfjuljUw :2018/03/27(火) 02:42:36 4t3bqJ1w0


◇ ◇ ◇


一方、窮地を脱出した物置、イナバ社長は今行ったことなどの説明を避難民たちに話した。
幸いなことに窮地であったと理解してもらえ、特に目立ったことは起こらなかった。

「しかし驚きましたね、まさかこの物置にそのような機能があったとは」
「ええ、私としては使う機会がないことを祈っていましたがね」

再びゼクスとLとイナバ社長が集合し話し合っていた。
現在の物置は少しばかり揺れるだけで、本来であれば起きる諸々の障害なども起こらずに地上と同じように動けるのだ。
これもまたイナバ物置の機能によるものだ、空に飛ぼうとイナバの物置は大丈夫なのである。

「ですが、安心ばかリはしていられません、予測到着地点が都庁の近くというのですから」
「窮地を脱したと思えば、また窮地と中々安心できない状況ですね」
「ええ、弁明するならばあの時は離脱の事ばかり考えていましたからそこまで考えが及びませんでした」

そう、三人ともこの物置の到達地点が都庁の近くと言うことに頭を抱えている。
その為の対策を三人で話し合っている一方でレックスとシマリスは少女の様子を見に行っていた

「まだ目を覚まさないか」
「そうらしいでぇす、あのスピーダーの追いかけっこでも目を覚まさないとは驚きでぇすね」

そう言って二人ともいまだに眠っている少女に目を移す。
丁度その時、少女の目が覚めた。それを見た二人は驚いて目を合わせた。

「………………」
「おい、嬢ちゃん気分はどうだ?」

レックスの言葉に反応せず静かに周りを見渡す少女。それに対しレックスは黙って見守った
そして一頻り見渡してレックス達の方を向く。

「あの……」
「どうした嬢ちゃん?」
「ここはどこですか?」

問うてきた少女にシマリスが答える。

「ここはイナバ社長の物置で安全な場所でぇすよ」
「そうなんですか」

シマリスからの簡単な説明を聞いて再び辺りを見回す少女、先程と違い忙しなく人が動いてるのが見えた。
そして再び少女はレックス達の方に向いた。

「あの……私は何者なんでしょうか?」
『えっ』

レックスとシマリスがシンクロした、いきなり自分が何者かなんて聞かれたためである。
そして、どう返答するか迷った、なんせ少女については何も知らないのだから。

「……どうする?」
「……どうしましょう?」

二人とも目を合わせてどうすればいいのか途轍もなく迷った。
しかし、その時慌てて走ってくるクローントルーパーがレックス達の元へときた。

「どうした、そんなに慌てて?」
「はい、至急クリス氏の元へ来てほしいとロビン氏からの伝言です!」
「なに?」
「なにがおこったでぇす!?」

二人の疑問にクローントルーパーはクリスの様子がおかしいのでもしもの時に備えるために来てほしいと答えた。
聞いた二人は頷いてクリスの元へと向かう、無論少女は放置せず今来たクローントルーパーに少女の面倒を命じて走って行った。

「…………」

しかし、少女はクローントルーパーが気付いたころには寝台からいなくなっていた。


◇ ◇ ◇


「………………」
「やれやれ、一難去ってまた一難とはこのことだ」

ロビンが吐き捨てるように言ってクリスの方へと向く。
そのクリスは終始無言で不気味に歩いている、先程から何を言っても返してこない。
これはまずいと思ったロビンはクローントルーパーを集合させ警戒態勢を敷かせた。

「ロビン氏、どうしますか?」
「どうしますかと言われてもねぇ、どうもできねぇよこれじゃ」

そう言ってクリスを見る、ロビンの勘が下手に攻撃したらまずいと警告していた。
そのためクリスト戦闘集団の睨み合いが発生していた。
因みにベルナドットは重傷から回復したが未だに戦闘はできない為、避難させられた。

「ロビン、どうしたんだねこれは?」
「おっ、社長達にレックス達も来ましたか」

イナバ社長、L、ゼクスとレックス、シマリスが現場へと到着した。

「そうでぇす、なんでクリスちゃんのことを警戒してるでぇす?」
「なんだかやべぇ雰囲気なんだよ、クリスの嬢ちゃんがな」

そう言ってロビンがクリスを指さす、その指差しに来た者達は見た。
クリスをそして感じた何かクリスの雰囲気が今までと違うということを。


700 : 目覚めの時 ◆aoWfjuljUw :2018/03/27(火) 02:43:14 4t3bqJ1w0


だが少なくともそこにはいつものお転婆娘の面影はない、それを今来た者達は感じ取った。
すぐさまレックスが前に出た。

「……なるほど、いつものクリスさんではありませんね」
「でしょう、だから今こんな感じにしてるんでさぁ」
「…………クリスちゃん」

シマリスはいつもと違うクリスの元へ行き何時ものクリスに戻したいと思っていた。
だが、どうゆう訳か動けなかった、クリスの元へと行くという動きが出来なかった、それは生存本能が叫んでいたから、アレは危険だと。
だから動けなかった。

「それで、どうしますか社長?」
「……………………皆さん」
「出来れば、殺すことだけは避けてほしいです、彼女は一緒に戦ってきた仲間ですから」
「ええ、それに今戦力をなくすことは避けたい事態ですし」

ゼクスとLの意見に社長が頷く、そして生け捕りを命じようとして。
一人の少女がふらりとみんなの間を縫ってクリスへと近づいて行った。

「なっ」
「いつの間に、と言うかどうしてココに!?」

今この場にいる者達は驚く、クリスに集中していたとはいえ気づかなかったことに。
そして、少女がクリスに近づくことに。

「まて!今近づくのは危険だ!」

レックスが言って少女を止めようと動き出すその時だった。
少女とクリスの目が合い、少女がクリスに対して手をかざした。
すると、黒いものがクリスから出てきて少女に吸収されていくそれもただで吸収されていない。
その黒いものがまるで浄化されるかのように白くなり少女が吸収していったのだ。

『!?』

この不可思議な現象にこの場にいる者達は驚きを隠せず、見守ることしかできなかった。

「ッ!アレ、あたしは、いったい……」

そうしてクリスが気を失った、今のクリスにはあの近づきがたくやばい雰囲気はなかった。
終ったことを見届けたいる者達は少女に注目する。

「……君は、一体?」
「私は……テラカオス・ディーヴァその残滓です」
『えっ、なにそれは』

皆、一様に揃って疑問を口にした。

【二日目・15時45分/東京県内・物置空中】

【テラカオス・ディーヴァの残滓@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】健康、完全TC耐性。
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:テラカオスの因子を集める。
1:えっと、その、えっと。
※ディーヴァが持ってほとんどの能力を失い使用不可になっています。
※一度、テラカオスになったことにより完全なTC耐性を保持、テラカオス候補者のTCを回収できます。
※死んだことによりディーヴァの性格を引き継いでいません、これからどうなるかは不明。
※どこまで記憶を保持しているかは次の書き手氏にお任せします。

【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW 】
【状態】ダメージ(小)
【装備】ガンダムエピオン@新機動戦記ガンダムW (左腕破損 ダメージ多数)
【道具】支給品一式、そのほか不明、ウルトラストップウォッチ、マスターボール
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
0:都庁の対策を立てる。
1:クリスたちに協力する
2:殺し合いを止める意志のある仲間を集めたい
3:社長と協力し世界を救う
4:人格に問題がないのなら拳王連合軍とも協力する
5:ヘルヘイム・巨像(セル)退治・捕獲も視野に入れる
6:えっ?
※ウルトラストップウォッチには制限があります

【L@DEATH NOTE】
【状態】健康
【装備】自動式拳銃
【道具】支給品一式、手榴弾×25、ノートパソコン
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
0:皆と協力する。
1:主催の目的とは何でしょう?
2:ひとまずここでゆっくり情報収集でもしましょう
3:予言の答えの材料探しをする
4:拳王連合軍に対しては自分で見てから決めるスタンス
5:ロワちゃんねるには注意を払う。
6:えっ?


701 : 目覚めの時 ◆aoWfjuljUw :2018/03/27(火) 02:44:32 4t3bqJ1w0


【ロビンフッド@Fateシリーズ】
【状態】健康。
【装備】祈りの弓、顔のない王。
【道具】支給品一式
【思考】基本:契約した社長に従って動く。
0:出来る限り人は助けたい
1:えっ?
2:ベルナドットとは仲良くなれそうだ
3:自然は自然でもヘルヘイムはちょっとやりすぎだぜ
4:社長がOKを出せば拳王連合軍にも協力する

【イナバ制作所社長@現実?】
【状態】健康
【装備】イナバ物置
【道具】支給品一式、予言が書かれた古文書、クローントルーパー×450、他不明
【思考】基本:世界を救う
1:協力者を集める
2:ダイジョーブ博士は無事だろうか?
3:拳王連合軍とは協力したいが、まずは会ってから
4:ヘルヘイムは可能なら潰しておく
5:ヘルヘイムにいる巨像(フォレスト・セル)を予言のために手元に置きたい
6:大丈夫!
7:えっ?
※イナバ物置は地中に潜り移動できるようです

【シマリス@ぼのぼの】
【状態】健康
【装備】胡桃×いっぱい
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:仲間と共に生き残る
0:無事に帰れてよかった。
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
4:クリスちゃんは友達でぃす!
5:拳王連合軍、悪い奴じゃなければ良いんですが
6:えっ?

【レックス@スターウォーズシリーズ】
【状態】健康
【装備】スピーダー、ブラスター・ピストル、ブラスター・ライフル、装甲服、ヒラリマント
【道具】支給品一式、TCホール観察日記。
【思考】基本:無害な人々の保護及び臨時コマンダー社長に従う
0:ダイジョーブ博士を見つけられなかったのが気がかり。
1:治安維持活動を再開する。
2:えっ?

【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】気絶、変身解除
【装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:なんかすげー腹減ったな、肉食いてえ肉
1:シマリスの無事を祈る
2:翼を見つけ出し食人について問いただす
3:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
4:もっと強くなりてぇ
5:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
6:拳王連合軍にはちょっと懐疑的
※テラカオス化が進行していましたがディーヴァの残滓によって回収され正常に戻りました。

【ピップ・ベルナドット@HELLSING】
【状態】中傷。
【装備】自動式拳銃×2 M16
【道具】支給品一式
【思考】基本:バトルロワイヤルを生き残る
0:今は何もできないので休む
1:生存確率が上がりそうなので今はゼクスについていく
2:拳王連合軍と組むのは有りだと思っている
3:アイツらが無事だと良いが。


702 : 名無しさん :2018/03/27(火) 02:44:49 4t3bqJ1w0
投下終了です


703 : 名無しさん :2018/03/27(火) 11:24:14 sVO76K0U0
投下乙です
まだ直感の段階だけどカオスロワちゃんねるに裏があることに気づけたか
貧乳歌姫も賢者モードというか一時的にも浄化されたみたいだし
一方で拳王連合軍との合流はならず
物置組が都庁にいけば双方の誤解が解ける…というのは簡単すぎるか


704 : 名無しさん :2018/03/27(火) 15:18:55 slyG.c9s0
都庁は物置組知らないし、戦力的に物置組も都庁に喧嘩はふっかけないだろうし、対話の可能性はあるな
ただ貧乳がな……。なんかの弾みでディーヴァの記憶戻ったら内側から喰い散らかしそう


705 : 名無しさん :2018/03/27(火) 19:40:23 GThPheiw0
つ 霧切
つ 苗木


706 : 名無しさん :2018/03/28(水) 11:14:47 OWXpc..g0
当面は大丈夫でも貧乳歌姫恐怖症の霧切と拳王連合軍アンチの苗木が物置組と後で接触するのもまずいよなあ……
後者は揉めてもなんとかなりそうだが、前者は魔女化でもされたらシャドウがテラカオスの準備が整う前に攻めてきて死活問題になるし


707 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:44:20 4NxgwyFM0
予約は無いようなので、イチリュウチーム待機組で投下します


708 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:45:24 4NxgwyFM0
「……ラミレス、オシリスからの返事が来たよ。
『直接聖帝軍の凶行及びその力量を把握したい。スカイツリー近辺までは向かい、無理なら撤退する』
 これはオシリスというより、慎重なイチローの考えだろう」
「ソウデスカ……ワカリマシタ」
「しかし聖帝軍まで世紀末って、かなりやばいっすよね?」

イチリュウチームの待機組は、某遊園地にて息を潜めつづけていた。
聖帝軍救出の予定で飛び立った仲間達は、衝撃の事実により事実上の討伐隊となった。
これまで目立った破壊行動をとっていなかったということは、つまり戦力と武器が潤沢な状況だろう。
いくら討伐隊にイチローがいるからといって、安心することはできない。
ラミレスとしても仲間を危険域に送り込むことはしたくなかったが、聖帝軍を野放しにするのも危険である。
オシリスからの返事は要約すれば深追いはしないということ。
ラミレスは少しだけ、胸を撫で下ろした。

「しかしこの動画は……」
「むごいホル……」

ダイゴとホルスは思わず目を背ける。
聖帝軍の動画は、立川市を消滅させたものだけではない。
一人の少女が、生きながらにすりおろされるという残酷なものもあった。
カオスロワちゃんねる上でも大炎上、聖帝軍が世紀末集団であることは瞬く間に拡散されている。
それでいて直接確認したいというのは、慎重なイチローらしい判断と言えるだろう。

「……」
「どうしたんすかギムレーさん?」
「いや、どうにも違和感が拭えなくてね。だが……っ?!」

その時、ギムレーが突然膝をついた。

「ちょ、本当にどうしたんすかギムレーさん!?」
「ぐ……ごほっ……! はぁ……はぁ……」
「ちょ、マジやばくないっすか!? 監督―! ギムレーさんがなんかやばそうなんで運びまっす!」

ギムレーの身体は震えていた。
邪竜としての強大な力と神軍師としての頭脳を持つ彼の突然の異変に、仲間の誰もが心配する。
DAIGOがギムレーを担ぎ上げ、寝台へと運ぶ。
元々はダイゴの療養も兼ねての待機。さらに追加で一人や二人倒れてもやることは変わらないのだが……

「ギムレーサン……」

ラミレスには、ギムレーの不調の理由がわからない。
監督として頑張っていこうと決意しても、選手のコンディションを完全に把握することは困難だ。
ましてやこんな状況下では。

「ぐ……」

そんなラミレスの苦悩は知らず、ギムレーはしばらくの間震え続けていた。


709 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:46:21 4NxgwyFM0
それからしばらくして。

「……情けないところを見せたね」
「ギムレー、もう大丈夫なのか?」

万全とは言えない様子で、ギムレーは起き上がってきた。

「命に関わることじゃなさそうでなによりっす」
「けどギムレーが寝てる間に、またネット上はとんでもないことになってるホル」
「都庁ガヘルヘイムノ森ダト、アノダイジョーブ博士ガ拡散シテタンデスヨ」

ギムレーが休んでいる間、残りの仲間は変わらず情報収集を続けていた。
聖帝軍の大炎上はさらに燃え広がっていたが、数分前にさらに別の燃料が投下されたのだ。

東京の都庁の急激な森林化、それの正体はヘルヘイム。
そこに巣食うインベスとオーバーロードインベス。放置すれば、この世界は完全に侵略されてしまうのだと。
発信源はスポーツ界でも有名なダイジョーブ博士。
脅威ではあるが、イカれた世紀末集団の聖帝軍はまだ人間の集まりだ。
対する都庁は種族からして脅威なオーバーロードと他を駆逐するヘルヘイムの植物。
聖帝軍の炎上は僅かに治まり、代わりにヘルヘイム騒動は超炎上を起こしている。

「ヘルヘイム……? 邪悪なオーバーロード……? はは、笑わせてくれるね」

だがその話を聞いたギムレーは、何故か笑い始める。
そして疑問の表情を浮かべる仲間達に、ギムレーはなんとも言えない表情で応えた。

「仮に都庁が本当にそのヘルヘイムだとしても、あの脅威の前には可愛いものさ」
「あの脅威? 聖帝軍?」
「違うよ。ここより西の方角かな……
 この僕が、破滅と絶望を司るはずの邪竜ギムレーが……初めて、そう初めて恐ろしいと感じた。
 僕すら想像もつかないような、どす黒く淀み濁った、得体のしれない破滅の象徴……」
「「なん……だと……!?」」

まさかの発言に、誰もがオサレになり言葉を失ってしまう。
自分達は何も感じないのだから、それをすぐに信じることは難しい。
しかしギムレーの反応と様子からして、ただ事ではないのも間違いない。

「信じられない程の禍々しさだよ。数千年を生きる僕も、ここまでの悪意に出逢ったことはない」
「さ、参考までにギムレー自身と比較してどんだけやばいホル?」
「……嫌がらせかホルス。アレと比較したら、悔しいが僕がもたらす破滅なんて児戯にも満たないだろうよ。
 そもそも僕に限らず、世界を滅ぼすとか征服するといった存在は、必ず己に忠実な存在は生かすんだ。
 神性の者は信仰が必要だから。そうでない者も、崇められて優越感を得たり、弱者を意のままにすることに喜びを感じるからね」
「確かに世界を制圧しても自分一人だけでは寂しいからな……」
「だがアレはそんな生易しいものじゃない。完全なる真の破滅……この世界の存在そのものを抹消するだろうね」
「「……?!」」

もはやオサレな言葉も出てこない。
本来であれば容易く世界を破滅に導けるだけの力を持つ、半不死身の邪竜にここまで言わしめる程の存在。
同類故に遠く離れた地の波動を拾ったのかもしれないが、なおさらその存在の底が見えない。

「まさか……救済の予言は……」
「ああそうだ、予言があったね……
 確かに、あのレベルになれば予言だ神だにも縋っても誰も文句は言わないだろうね。
 今この場に僕の信者がいて、アレを鎮めてくださいギムレー様と言われても、無理だって即答するけど」

ここに来て、救済の予言が話題に上がる。
謎の予言ではあるが、一番の謎は何が何から世界を救済するのか?その部分が謎だったのだ。
ギムレーすら想像もつかない邪悪の存在ともなれば、確かにそれから救済する予言と考えることもできる。


710 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:47:23 4NxgwyFM0
「まあ予言は今は置いておこう。予言を考察するには相変わらず材料が少なすぎる。
 とにかく今の僕に言えるのは、現状でアレと出くわしたら僕やイチローでも勝てない。
 幸いなのは、気配を感じるのが相当遠くだから僅かに猶予はあるってことぐらいだよ」
「それってそんだけ離れててもやばい気配するマジヤバイ奴ってことっすよね!?」
「シカシタシカニ今ハ、ギムレーサンシカ感知デキナイ存在。コレ以上ハムズカシイデスネ」

恐るべき破滅の象徴、確かにイチリュウチームにも無視できる存在ではない。
だがあまりにも突然現れた存在であるため、これ以上の考察は不可能。
仲間が揃っていない現状でできる対策は、気配を感じたら逃げることぐらいだろう。

「さて、悪かったね。今は目の前の問題の話に戻ろう。都庁がヘルヘイムの森だったんだっけ?」
「ああ、ダイジョーブ博士の緊急拡散。炎上具合は聖帝軍の正体判明よりも凄い」
「ふーん、正直アレを感知した後だといまいち恐ろしさが伝わってこないや」
「いや、ホルも一回行ったホルけどあそこはあそこでマジでヤバいホル」

続いて彼らは本来の話題、新たに収集したヘルヘイムの話題に戻る。
元々は都庁から敗走し、そのままなし崩し的にドラゴンズに加入したホルスは特にその話題に敏感であった。

「ダイゴ、ちょっとパソコンを貸してくれ。一応ドラゴンネットワークでオシリス達に流しておこうと思う」

連絡係でもあるギムレーは、さっそくカオスロワちゃんねるに目を通す。
かなりの世紀末状態であるのが、一目でわかる状況だ。

「ぐぐ、もう駄目だと絶望した者がなんでクラウザーの信者に転身してるんだい! 僕の信者になれよ!」
「あ、やっぱまだ信者は欲しいんすね」
「当たり前だろう。あとは誰かが倒してくれることを期待する者……このやたら信仰されてる乳神とやらも腹立つな。
 そして今まで怯えていたが、状況が状況だけに立ち向かうことを決意した者、おおまかにわけてこの三種かな。
 ん、リアルタイム配信だと……?」

そんな時、カオスロワちゃんねるに一つの動画が投稿された。
生放送のその動画のタイトルは『オーバーロード発見!』というものであった。
ヘルヘイムの森の中でも特に優れた力を持つというオーバーロード。
いずれはちあわせる危険性もゼロではない相手であり、どのような存在なのか、誰もが気になった。
ギムレーは仲間達に一応目で確認をとり、全員が頷いたあとに動画のリンクを踏んだ。





『ヘルヘイムのバケモンが!』
『世界はわたさねぇぞこの変態が!』
『俺、乳神様を助けて乳揉ませて貰うんだ!』



『うぎゃああああぁぁぁぁ!?』




動画は途中からであったが、武装した大量の参加者が武器を構えて、一斉にオーバーロードに突撃する瞬間であった。
そしてその参加者の多くが血飛沫をあげて次々に倒れていく。
動画内の参加者は互いを鼓舞しあい、勇猛にオーバーロードに挑んでいるようだ。


711 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:48:10 4NxgwyFM0
動画を開いたまま新規ウインドウでカオスロワちゃんねるを開けば、動画へのコメントが次々に書き込まれている。
勇気ある者への称賛、応援の言葉。あるいは彼らを次々に虐殺するオーバーロードへの非難の言葉。

「コレハマタ、ヒドイ動画デス……」
「……この動画を投稿している連中は馬鹿なのかい?
 画面越しにオーバーロードの戦闘力を計測したけど、なんなんだこいつは!?」
「え、そんなにやばいってか、ギムレーさん計測できるんすか?」
「ああ、正確には器のルフレの力だけどね。相手を見れば、相手のおよその戦闘力、持っている道具、スキルを見抜けるんだ。
 首輪のせいでその神軍師のとんでもない眼力もかなり曖昧な計測になってるけど、それでもこいつが普通じゃないのはわかるよ。
 なるほどホルスの言った通り、距離から考えればオーバーロードも確かに無視できない存在だね」

動画に映るオーバーロードは、さらに周囲に惨殺死体を量産している。
その恐るべき力に誰もが震えあがるが……

「これは……」

ただ一人、ホルスだけが不思議そうにその動画を見ていた。

「ん、どうしたんだホルス?」
「こいつホル。ホル達が戦って……そしてホルの主人をバラバラにしたのは」
「マジっすか!?」
「でも、この格好は……」




『初めまして。麒麟のサクヤと申します』
『ふん! 新入りの小娘がホルに勝てると思うなホル! しっしホル!』
『そ、そんなこと言わずに仲良くしましょうよ。ね?』

『ホルスさん、お願いですからせめてお話だけでも……私達、同じ系統の能力じゃないですか』
『そう言って、お前も内心はあの太陽神ラーみたく見下してるんだろうホル』
『そんなことはありません!』

『……お前も相当しつこいホル。それで隠れてるつもりホル?』
『ば、ばれてました?』
『お前のそのみょうちくりんな角は変だし光ってるしで嫌でも目立つホル! 覚えたくもないのに覚えてしまったホル!』

『……麒麟、お前何してるホル?』
『今度は角を隠そうとしたらひっかかりまして、身動きがとれません……』
『無様ホルね。頭に行くべき栄養が胸に行ってるホルか?』
『ホルスさん、セクハラですよ? でも訴えませんから、降ろしていただけると……』
『では駄賃としてその胸をちょっと揉ませるホル。最近ハトホルとあってなくて」
『え、ちょ、やめてください!? いやぁぁぁ!?』
『ホ、ホルゥ! この柔らかさとハリの良さ、悪くないホル! 隼だけど思わず鷲づかみしたくなるいいおっぱいホルゥ!』

『……もう、ホルスさんなんて知りません』
『最初からそうしとけばよかったホル。ふっ、内心はホルにびびって逃げたホルね。でも……いいおっぱいだったホル。
 しょうがないホルねぇ、あいつにつきあっていたらいつの間にかあいつの角どころか格好や戦い方まで覚えてしまったホル。
 あのおっぱいが見れるなら、一緒に戦うのも……たまになら許してやるホル』



「あの麒麟の、サクヤのものホル……」
「おいホルス。今、僕の邪竜レーダーが真後ろから結構な邪念をキャッチしたんだけど?
 まあいいや。何か知っているなら話してくれ」

ジト目を向けながらも、ギムレーはホルスに話を促した。
手は動かしつつ、動画の保存も忘れない。


712 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:49:04 4NxgwyFM0
「この男は、間違いなくホル達と戦った都庁の奴ホル。
 でもこの男が着てるのは、麒麟のソウルアーマーホル。どういうことホル? あいつは都庁で捕まって……」
「ホルス、まずはお前の言うソウルアーマーと麒麟の関係を僕らにも話してくれ」
「麒麟の奴はいいおっぱいを持っ……ホルの仲間だったホル。あの時ホル達は負けて、あいつだけ都庁に掴まったんホル」
「それで?」
「そいつも……前の放送で名前が呼ばれてたホル。あのおっぱいホルから、都庁の連中にマワされて愉しまれた後に殺されたんだと、
 そう思っていたホル。でも、おっぱいを好き勝手にされて殺されたなら、ソウルアーマーには絶対にならないホル……
 今更ホルけど、あいつがそもそもあんなおっぱい見せる格好してるのが悪いホル! ホルがおっぱい揉みたくなったのも当然ホル!」

「おっぱいおっぱい五月蠅いぞこの鳥が! 喰い殺してあげようか!?」
「ギムレーサンオチツイテ!」
「おっぱい……略すとOPIっすかね?」
「略せてない!?」

合間合間に入るホルスの煩悩のせいでいまいち内容が頭に入ってこない仲間達であったが、
とりあえずホルスの仲間にいいおっぱいの女の子がいて、都庁で命を落としたということはわかった。
わからないのは再び出てきたソウルアーマーという言葉である。

「次におっぱいって言ったら脇腹にトロン刺すからね?」
「わ、悪かったホル。……ソウルアーマーは簡単に言ってしまえば、ホル達が死んだ後も仕えたいと思えるような、
 そんな人に残す忠誠心の現れみたいなものホル。あの独特な角に白と金の服は、間違いなく麒麟のものホル」
「忠誠心の現れ……あれ、それって変じゃないっすか? 都庁で捕まっていやいや従っていたなら忠誠心なんてないっすよね?」
「あるいは……洗脳されて?」
「それは無いホル。洗脳でどうこうできる程、ソウルアーマーは安くないホル。本当に……心の底からの信頼が必要ホル」

はて、と誰もが頭を悩ませる。
混じりけ無しの信頼が無ければ、ソウルアーマーは生まれない。
しかしそのソウルアーマーを着ているのは、ホルスの主人を殺したとされるオーバーロードだ。
ホルスの主人ということは、その麒麟の主人でもあるはずだ。自分の主人を殺し、あまつさえ虐殺を行うオーバーロードが信頼できるだろうか?

「んー……てかそもそもこのオーバーロード、妙じゃないっすか?」
「妙?」
「ホルスの話だとメチャクチャパナい強さ見たいっすけど……動画見る限りほとんど微動だにしてないんすよね」

そしてそんな時DAIGOが動画に違和感を覚える。
圧倒的な力と残虐性を持つはずの都庁の軍勢、ヘルヘイムのオーバーロード。
しかし帯剣こそしているがそれを抜くことは無く、摩訶不思議な能力を使うでもない。
確かに参加者を次々に葬っているのだが、そのアクションが見受けられないのである。

「確かにそうだ。ホルス、このオーバーロードが剣を抜いて一振りした時はどれぐらいの威力になる?」
「首輪をつけてる時で人間をあっという間に切り刻める奴ホル。今振れば、普通の人間はまとめて何人もバラバラになりそうホル」

改めて動画を確認する。
確かに参加者は身体を千切れ飛ばされたり、砕け散ったりと凄惨な最期を迎えてはいるが……
注視してみれば、死んでいくのは一人ずつだ。一人ずつ凄まじい速度で死んで行っている。

「……こいつらの死因は、オーバーロードの攻撃が原因じゃないね。硬すぎるオーバーロードを攻撃した際の反動で吹き飛んでいる。
 この程度の雑魚どもなら一瞬で片づけられるであろう力を持ちながら……これだと、無抵抗で殴られているということになるな」

ギムレーのその言葉は、イチリュウチームを揺るがすには十分すぎた。
恐るべきオーバーロードが無抵抗。これが意味することはなんなのか。


713 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:49:47 4NxgwyFM0
「ホルス、最初にこの男と戦った時はどうやって逃げたんだい?」
「逃げたというより、見逃されたホル……。もう一人、こいつよりもヤバい火力の奴がいたホルが、そいつも撃ってこなかったホル」
「ふぅむ……これは……」

ギムレーは額に手をあてると、考え込む仕草に入る。
この場にいる者では間違いなくもっとも頭が切れるギムレーが悩むような問題なのだ。
誰もが口を挟まず、彼が言葉を返してくるのを待った。

「いや……違う……これが……そして……そうなると……むむ……
 …………これは、多分そういうことなんだろうねぇ。神軍師の器を持つ僕が、なんて体たらくだ」

やがてギムレーは思考を終えると、自虐混じりの溜息をついた。

「ど、どういうことホルか!?」
「なに、凄く簡単な話だ」


「都庁はヘルヘイムでもなければ、僕らが思っていた凶悪な集団でもなかった。それだけのことだよ」


「「え!?」」

ギムレーのまさかの言葉に、驚きの声があがる。
ネットをこれだけ炎上させる、これまでもそうしてきた都庁が凶悪でないというのはとてもではないが信じられない話だ。
仲間達はギムレーに詰め寄り、説明を求める。

「近いって。そんな目をしなくてもちゃんと順を追って説明するよ。
 まず、ホルス。どうして都庁に攻め入った?」
「え? 殺された主人が都庁攻略しにいくぞーって言ったからホル」
「成程。魔物が集まった都庁は確かに人間からすれば危険地帯。だが誰だって拠点を攻撃されれば迎撃はするよね。
 そして都庁の連中は、麒麟はともかくホルスは見逃している。殺戮集団ならば、皆殺しにしても問題はなかったんじゃないか?」
「それはホルが優秀で……」
「さっき言ってた火力のヤバい奴はおそらく都庁の魔王だろう。異様な射程のレーザーを得意とするらしいし、追撃は可能だったと思うよ」

若干悔しがるホルスをよそに、ギムレーは仲間を見渡しながら話を続ける。

「そして僕らが都庁を警戒する理由になった、魔物による警察組の惨殺。
 これはイドゥンの情報だったが、彼女も直接見たわけではなく、ドラゴンネットワークで拾ってきた情報だ。勿論僕らも見てはいない。
 この件はちょっと横において、次は都庁が召喚した危険生物、名称はどうやらフォレスト・セルらしいが……
 オシリスも言っていたが、イチリュウチームの総力でぶつかっても勝てるか怪しい相手だ。
 さて、そんな危険生物は地上に召喚されてからそれなりの時間が経ったけど……何をした?」
「何も……してないみたいっすね。襲ってきた狂信者はどんどん返り討ちにしたみたいっすけど」
「そう。本気で暴れ狂えば、確実にこいつも世界に破滅と絶望をもたらせることができる。だがやっていることは迎撃だけだ。
 さっきのオーバーロード動画の男に至っては、もう迎撃すらしていない。攻勢にまわれば、もっと多くの存在を殺せるのに、だ」
「都庁ハ、ズット自分ノ身ヲ守ッテイルダケトイウコトデスカ?」
「そういうことだ」

その気になれば、もっと多くの被害をもたらせるという都庁の戦力。
だが状況をまとめると、彼らはホルスが挑んだ時点から迎撃に力を入れ、追撃をしていない。
オシリスやイチローが勝てるか怪しいほどの怪物を呼び出しておいて、やらせることは変わらず迎撃。
しかしこうなると今度は、突然の警察組惨殺の方がおかしなことになってくる。


714 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:54:08 4NxgwyFM0
「警察組の時だけ自ら攻め入ったのはなんでなんだ……?」
「簡単さ。今も以前も迎撃が基本の戦闘スタイルの都庁が急に攻勢に回ったと考えるからいけない。
 これはつまり、都庁の魔物とは別の魔物が警察組を襲撃したとみるべきだ。
 これに関しては完全に僕の落ち度とも言える。だってよく考えれば僕らドラゴンズだって、普通の人間からみれば怪物の集団だったんだからね」
「た、確かにホル!?」
「え、つまり魔物=都庁って先入観持った人の勘違いだったってことっすか!?」
「多分ね。あるいは本当に警察組を殺した魔物が、都庁に罪をなすりつけたかのどっちかだろう。
 迎撃とはいえ都庁が圧倒的な戦力を持ち、多数の参加者を葬っているのは事実である以上、どちらの線も考えられる」

語られるギムレーの話の内容は、これまでの考えを真正面から否定するものだった。
進んで虐殺を行っておらず、怪物を召喚してもなお迎撃だけに留めているのがもし本当なのだとしたら、確かに都庁の危険度は格段に下がる。
極端な話、弱い参加者も近寄らなければ死ぬことはないということにもなるのだから。

「そしてヘルヘイム、これも違うだろう。確認してみたが、確かに都庁の植物の急成長具合とヘルヘイムの特徴は一致するが……
 そもそも都庁が迎撃しかしないのであれば、侵略性は低い。魔物=インベスやオーバーロードの式は成り立たない。
 肝心の植物の浸食、これも都庁の植物はヘルヘイムに比べれば明らかに遅すぎる。この情報通りなら、とっくにこの遊園地も森の中さ。
 さて、ここからが大事だ」

念押しをするギムレーに、イチリュウチームは思わず固唾を飲みこんだ。

「ヘルヘイムでもない、大量の魔物を内包した大樹。その戦闘スタイルは、ネットの評判とは真逆の迎撃スタイル。
 そこに、対主催として評判だったらしい乳神が向かったが以後は音信普通。だが放送で名前はよばれていない。死んでいない。
 カオスロワちゃんねるではきっと凌辱されてるとか乳を揉まれてるとか散々な言われようだったけど……
 さっきのホルスの麒麟の話、彼女もいい乳を持っていたそうだが、そんな扱いを受けていればソウルアーマーにはならない。
 拷問を受けて生かさず殺さず?それはないだろう。都庁は敵に対する迎撃は容赦がない。攻め込まれた時点で確実に迎撃が行われる。
 そして彼女が都庁に着いてから、既に相当な時間が経っている。大量の魔物を掻い潜り戦い続けるというのは非現実的だ。
 考えられるのは、この乳神も都庁と協力関係にある……つまりは、都庁も対主催となっている可能性があるってことだ」
「「なん……だと……!?」」
「それ好きだねぇ君たち」

ギムレーが辿りついた結論は、まさかまさかの都庁対主催説であった。
この場にソウルセイバーがいれば猛反論したであろうが、幸か不幸かここにいるメンバーは良識者が多い。
そしてなにより発言者は頭の切れるギムレーであり、都庁を元々警戒していた彼が至った結論だからこそ頭ごなしの否定もできない。

「むむむ……にわかには信じられんホル」
「まあ当然だろう。現時点ではあくまで僕の推測にすぎないしね。
 だが、ありえない話でもないんだよ。だが対主催だったと仮定すれば、納得いく部分も出てくる」
「迎撃ノミ、余計ナ殺シヲシナイトイウノモ……」
「さっきの動画で、無抵抗だったのも……」
「ソウルアーマーの件も、対主催の人なら信頼できたって可能性も出てくるっすね」
「そもそも振り返ると僕らは、情報に便利な情報……ドラゴンネットワークとインターネットに頼り気味だった。
 オシリスの予言も最初は全然足りなかった。ハラサンから直接聞いたイチローチームからの伝聞でようやく全てを知れた。
 ネット上にもドラゴンネットワークにも、触手髭男の首輪が勝手に外れる情報はない。直接見たDAIGOとゼロだけの情報だ。
 情勢が凄まじい勢いで変化するこんな世界だ。ネットは便利だが……直接見聞きした情報よりはどうしても信憑性は下がってしまう」
「た、確かに」
「都庁の情報で確かなのは、直接行ったホルスの情報のみ。そしてそのホルスが同一人物だという男は、力はあるが無抵抗だった。
 これも対主催と仮定すれば納得できる行為だ。どうにか危険集団だと誤解されないよう、無抵抗を貫こうとしたんだろう」

ギムレーの言葉に各々が過去を振り返り、納得したように頷く。
確かに思い返せば、ネットワーク情報をすぐに鵜呑みにしていたかもしれない。

「勿論それは僕らだけじゃない。こうやってヘルヘイムと誤解した連中は都庁の者に襲い掛かり、拡散されていく。
 直接見たわけでもないのに知った気になり、さも真実の様に広めていく。受け取った者はさらに誤解を深めて行く。
 ……大魔神軍の佐々木様も言っていただろう?」


715 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:55:14 4NxgwyFM0
――実際に見もせず、お前たちを否定した俺の浅はかさが、この敗北の原因だな――

イチリュウチームには覚えがあった。志半ばで散った、大魔神軍の佐々木様の己への戒めの言葉。

「実際に見もしないで、相手を否定する……まんま今の状況っすね……」
「勿論、まだ都庁が本当に危険な可能性も残っている。だがいずれは、みんなと直接改めてこの眼でみる必要性はあると思う。
 ラミレス、君は監督としてどう思う?」
「……ソウデスネ。確カニソノ必要性ハ高イデショウ。シカシ都庁ノ誤解ノ可能性ガアルトナルト、聖帝軍モ?」
「ああ。元々あまりに突然のことで怪しんでいたが、聖帝軍も都庁と同じような可能性はある」
「立川市の件は……」
「あの動画を見る限り、女の子を摩り下ろしたのも立川市を消したのも、巨大ロボの仕業だ。
 巨大ロボが聖帝軍の持ち物だからといって、その時ロボを操縦していたのが聖帝軍とは言い切れないだろう?」
「っ、そうか! DMC狂信者!」
「直前までは交戦状態だったんだ。ロボを奪われた可能性もあるだろう。
 それとさっきの話でちらりとあがっていたが、洗脳の可能性。高名だって言うダイジョーブ博士も洗脳するか脅迫されるかすれば?」
「ホルァ……疑い始めたら、ますます何にも信用できなくなってきたホルゥ!?」

都庁に次いで、聖帝軍へも誤解の可能性。
ますますイチリュウチームは混乱するが、確かに都庁も聖帝軍も危険だという情報は全てネット由来のものだ。
かつてのドラゴンズが戦う前からディすられていたように、誹謗中傷の言葉はネット上で膨れ上がりやすい。
 
「これも当然、本当に聖帝軍が危険な可能性が残っている以上、直接聖帝軍の様子を見る……イチローの選択は正しいだろう。
 僕の考えは確証はない。聖帝軍も都庁も、僕らが直接眼にしない限りはもうその真実もわからない。
 オシリス達が戻ってから、西の脅威も含めて改めて話し合うべきだろう。ドラゴンネットワークに流すのもそれからだ」

ギムレーの推測。
これが果たして当たっているかどうかはイチリュウチームにはまだわからない。
だが彼らは、できることならばその推測が当たっていて欲しいと願っていた。
絶大な戦力を持つ都庁とは争いが回避できるかもしれない。
そして聖帝軍とは……野球ができるかもしれないのだから。



「ソウイエバホルスサン、他ノ都庁ノ情報ハ何カアリマスカ?」
「ホル……ああ、やばい火力の魔王はぴっちり黒タイツで正直キモかったホル。ああいうぴっちりタイツはおっぱい大きい子が着てこそ映えるホル。
 ああ、あとホルスの黒炎竜が遺した情報だと、さっきのオーバーロード扱いされてた奴がドラゴンフェチ、
 グンマ―出身のオオナズチが黒炎竜と同じ草を生やす変態、オシリスの昔馴染みの氷竜がロリコンってことみたいホル」
「……都庁のヤバいの意味が、違う意味でのヤバさっすね」
「なるほど、合点がいった。性的に危険な連中が暴れれば、まともな性癖の奴が暴れるよりも危険視されるのは道理だろう」
「あ、ネット上の動画のタイトルが『変態オーバーロード狩り』になっている……」
「ソウルアーマーは男用もあるのにわざわざ女用な時点で、女装趣味の変態なのは確定ホル」
「女装趣味のドラゴンフェチと、全身タイツで自分の肉体を激しく主張する魔王、そしてロリコン竜がトップとなれば他の魔物も同類の可能性は高い。
 ネットはこうやって、時に真実を交えてくるから性質が悪いね」

なお、ギムレーは神に近しいが神ではない。
それ故彼の鍛え抜かれた眼力だって、全てを見通せるわけではないのである。


716 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:55:55 4NxgwyFM0
【二日目・15時30分/千葉県浦安市遊園地】

※ギムレーが、沖縄のシャドウだった者の気配を感知しました
 しかしどのような存在かまでは把握できていません
※全体が都庁と聖帝軍の正体に疑念を抱きました

【DAIGO@現実?】
【状態】健康
【装備】ウルティメイトブレスレット@ウルトラマンサーガ
【道具】支給品一式、ヴァンガードデッキ
【思考】
0:イチリュウチームについていく
1:聖帝軍と都庁の件が本当に誤解ならいいんっすけどね
2:ダイゴさんマジリスペクト……意思は引継ぐっス
3:主催の目的はなんなんだ?
※サーシェスがテラカオスになると同時に首輪が自動で外れた瞬間を目撃しました

【ウルトラマンゼロ@ウルトラマンサーガ】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】基本:殺し合いを止める
0:聖帝軍のマーダー化は何かの間違いだと思いたい
1:どうにかしてDMCを止めたい
2:ホルスの黒炎竜、助けられなくてすまない……
3:触手男のような混沌の力を持つ者を見つけることが主催の目的ではないかと睨んでいる
※制限によって一度に数分までの間しか変身できません
 一度変身すると12時間は変身できません
※首輪を外さない場合二日目22時になれば再び変身ができます
※サーシェスがテラカオスになると同時に首輪が自動で外れた瞬間を目撃しました

【ダイゴ@ポケットモンスター】
【状態】ダメージ(小・処置済)、深い悲しみ
【装備】メタグロス
【道具】支給品一式 、コルトパイソン
【思考】
0:イチリュウチームについていく
1:助けてあげられなくてごめんな、ポッチャマ、ちなつ……
2:きれいな石集めは今は忘れる

【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【状態】右足切断(処置済み)、監督といて生きていく決意
【装備】野球道具一式
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:情報ヲ集メテ、飛ビ立ッタ仲間ヲフォロースル
1:コレカラハ監督トシテガンバッテイク
2:リ、リオレウスサン……
3:聖帝軍ト都庁ノ噂ガ誤解ナライイデスケド……
※イチリュウチームの監督になりました


717 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:57:12 4NxgwyFM0
【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【状態】健康、悲しみ、若干混乱
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:世界を救うためにオシリスについていく
0:リオレウス阻止と聖帝軍のために旅立った仲間の無事を信じるホル
1:死んでしまった奴らのためにも頑張るホル!
2:もう一度都庁に行くときは、覚悟を決めなきゃいけないかもホル……
3:ええ乳持ち(ry ソウルセイバーとサラの無事を祈る
4:ホルもソウルアーマーを遺したくなるよう人に会ってみたいホル
5:できればそれは巨乳の女の子が(ry

【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒】
【状態】健康、人間形態、シャドウだった者へ若干の恐怖心
【装備】トロンの書、鋼の剣、邪竜の鱗
【道具】支給品一式、不明品、スクーナー級×500、ガレオン級×30、首輪×10、首輪のスクラップ×40、首輪解除方法(未完成)を書いたメモ
【思考】基本:野球で優勝して、自分の信者を増やす
0:『正確な』情報を集めて仲間をフォローする。確定したのは都庁=変態巣窟だけだが
1:試合の邪魔をするDMC狂信者を倒すために、本拠であるビッグサイトを攻略したい
2:予言に対して少し懐疑的
3:聖帝軍と都庁の情報に疑問。やはり自分達の眼で見なくては駄目かもしれない
4:サラが死亡した場合はアウラの民の指揮と首輪解除法を引き継ぐ
5:西の邪悪な気配は警戒を続ける
6:ネット上の乳神に若干嫉妬
※外見はデフォルト設定の銀髪青年です
※制限により、しばらく邪竜形態でいることはできません
※首輪を外したとしても、屍兵は簡単には生み出せません


718 : 心眼!ギムレーアイ!! :2018/04/01(日) 00:57:45 4NxgwyFM0
投下終了です


719 : 名無しさん :2018/04/01(日) 05:28:52 XJMVSpfQ0
投下乙です
ギムレーすげえ……チーム内限定とはいえ都庁と聖帝軍の誤解を見事に解いちまった
それにとっくの昔に滅んだチームの佐々木様の台詞が伏線として使われるとは思わなんだ


720 : 名無しさん :2018/04/01(日) 17:39:19 XJMVSpfQ0
それぞれの組織がどれだけ知っているかを俺なりにまとめてみた
間違ってたらごめん

【都庁同盟軍】
首輪解除:〇 救済の予言:〇 次の大災害発生:〇 TC:〇
瘴気/ナノマシン:〇 テラカオス:〇 シャドウ出現:〇 カオスロワちゃんねるの裏側:×
拳王への誤解:× 最悪レベル


【拳王連合軍】
首輪解除:〇 救済の予言:× 次の大災害発生:× TC:×
瘴気/ナノマシン:× テラカオス:× シャドウ出現:× カオスロワちゃんねるの裏側:×
都庁への誤解:× 最悪レベル
聖帝への誤解:? まだ不明
※たぶんナッパ・リオレウス絡みでイチリュウチームとも敵対する


【イチリュウ】
首輪解除:△(サラが解除技能有) 救済の予言:〇 次の大災害発生:× TC:×
瘴気/ナノマシン:× テラカオス:△ シャドウ出現:〇 カオスロワちゃんねるの裏側:△(ギムレーが鵜呑みにしてはいけないとは気づいた)
都庁への誤解:△ 解けかけてる
聖帝への誤解:△ 同上
拳王への誤解:△ 敵対したナッパが何かに気づいたが… 


【DMC狂信者】
首輪解除:△(ネームドキャラのみ) 救済の予言:× 次の大災害発生:× TC:×
瘴気/ナノマシン:× テラカオス:×(セルベリアが黙殺) シャドウ出現:× カオスロワちゃんねるの裏側:×


【物置組】
首輪解除:× 救済の予言:〇 次の大災害発生:〇 TC:×
瘴気/ナノマシン:× テラカオス:△(クリスが一時テラカオス化、貧乳歌姫の残滓をゲット)
シャドウ出現:× カオスロワちゃんねるの裏側:△(気づきかけている)
都庁への誤解:× ヘルヘイムと誤解中
聖帝への誤解:× 誤解中
拳王への誤解:〇 いちおう解けた


【十期主催陣】
首輪解除:主催だから無い 救済の予言:〇 次の大災害発生:〇 TC:〇
瘴気/ナノマシン:〇 テラカオス:〇 シャドウ出現:〇 カオスロワちゃんねるの裏側:×


【聖帝先遣隊】
首輪解除:× 救済の予言:〇 次の大災害発生:× TC:△(QBがエントロピーを感じた)
瘴気/ナノマシン:× テラカオス:△(QBがエントロピーから必要であると察した)
シャドウ出現:〇 カオスロワちゃんねるの裏側:×
都庁への誤解:△ 元々交渉するつもりだった
拳王への誤解:× 酷い 特に苗木。真実が映されているブラックボックスをQBに黙殺された


【狸なのは組】
首輪解除:〇 救済の予言:〇 次の大災害発生:〇 TC:〇
瘴気/ナノマシン:〇 テラカオス:△(ユーノがテラカオス化) シャドウ出現:〇 カオスロワちゃんねるの裏側:×
都庁への誤解:〇 接触して対主催だと知る
聖帝への誤解:× 聖帝軍のきらりんロボ暴走のせいで都庁に戻るに戻れない
拳王への誤解:× マーダー集団とみなしているが、他ほど敵視していない


【ハクメン】
首輪解除:〇 救済の予言:× 次の大災害発生:× TC:×
瘴気/ナノマシン:× テラカオス:〇(凶として感じ取れる) シャドウ出現:〇
カオスロワちゃんねるの裏側:×
都庁への誤解:× 何かに気づきかけているが…


【草加】
首輪解除:〇(支給品に憑依したからね) 救済の予言:× 次の大災害発生:× TC:×
瘴気/ナノマシン:× テラカオス:△(自分がテラカオス化) シャドウ出現:×
カオスロワちゃんねるの裏側:〇(襲撃された。これも管理人って奴の仕業なんだ)


※死者やネットを通じて全部知っているであろうシャドウ、カルナ、サーフと瑞鶴はカット
※何も知らない安倍総理もカット
※狸なのは組にいるアナキンは十期主催陣として扱う
※影薄組と聖帝軍本隊は都庁同盟軍に含む、聖帝軍はまだ情報共有されてないがもうすぐできると思うので省略


721 : 名無しさん :2018/04/01(日) 19:23:49 N9CBrLrY0
投下乙
鋭い考察で二ヶ所への誤解に気がついたのは流石だが、最後の最後で微妙に勘違いするあたりがギムレーらしい
ホルスも考察の一端を担ってくれたが……お前もうソウルセイバーに会う前からアウトじゃねぇか!


722 : 名無しさん :2018/04/01(日) 23:57:34 l3MXG3WA0
こうしてみるとDMC狂信者達はなにもしらないんだなぁ、シャドウの出現はさすがに気づくかもしれないけど


723 : 名無しさん :2018/04/02(月) 01:03:58 CLRoHy4k0
DMCはディーら自爆派には予言などは不必要だし、あまり影響はない。セルべリアのみ調査してて今後色々知る可能性がある
都庁も拳王に関しては誤解ってより、マップ破壊実績(結果的に)から敵視してるし、サーフの陰謀以外の材料は揃ってる
問題なのはここまで来て首輪以外何にもできてない拳王。挙句ダークチップの追い討ちとダイアーさん死亡で残ったメンツが揃って脳筋ばかり
ナッパからは誤解が解けそうだが、恨みからイチリュウチームとの衝突はほぼ不可避
ハクメンと合流出来てもわかるのはテラカオス探知とシャドウのことだけって、ぶっちぎりで最悪の状況である


724 : 名無しさん :2018/04/02(月) 07:12:40 vv.wbRJA0
終盤に向かうほど運気が落ちていく鉄華団状態やな


725 : 名無しさん :2018/04/02(月) 12:21:58 GVmqHx8A0
つまり拳王軍だけが未だにカオスロワをただの殺しあいだと思い込んでるのか...


726 : 名無しさん :2018/04/02(月) 12:53:44 keChiVg60
拳王がフリージアするのか


727 : 名無しさん :2018/04/03(火) 11:53:22 .vr2vymA0
読み返して思ったんだがもしレストが暴徒化したモブに一発でも反撃したら投稿された動画によってギムレーでも都庁を完全に敵と見なしていたんだろうか……
もう一つ、ヘルヘイムの森の情報の出処がダイジョーブ博士ではなく拳王連合軍(に渡ったパソコン)からだと気づかれたら拳王連合軍が今まで以上に袋叩きに会いそう
あくまで推測の域だけどギムレー側から博士の洗脳・脅迫説が出てきたし


728 : 名無しさん :2018/04/14(土) 01:57:09 GUPRSxKQ0
予約がなさそうなので投下します


729 : アベンジャー :2018/04/14(土) 01:58:27 GUPRSxKQ0
時刻は16時。伊豆諸島基地の司令室。
先刻到着したメガへクスとbiim兄貴を加えて、主催陣は安倍から九州ロボを奪還するために作戦会議を開いていた。

「ぐっ……」
「大丈夫なの、ココ?」

会議の椅子に座っていた一人であるココは白い肌を青くするほど辛そうに見えた。

「ジャック……おそらく、安倍は何らかの力を使ってファクターである私からマキナである九州ロボの主導権を奪っているわ。
 ファクターだからわかる……安倍はどんどん力をつけて九州ロボを我が物にしていることが」

今のココ・ヘクマティアルはマキナとなった九州ロボのファクター(パイロット)である。
本来マキナはファクターがいないと動かせない代物なのだが、超人血盟軍によってダメージを負い、テルミとグラシエが使っていたあらゆる機械を配下に置く装置を使って一部ブースターと砲台のみは動かせるようにしていた。
さらに捕食で能力を強化する四条化細胞と紆余曲折を経て「環境に適応する」「無限の進化」をするテラカオス・サーシェスの力を手に入れ、前述の装置なしでも本来のファクターを偽って九州ロボを操作する能力を手に入れたのだ。
安倍に侵食度は時間増しに上がっており、このままでは九州ロボからファクターと認められなくなったココは死んでしまうだろう。

「ココのためにも急ぐ必要があるな……では、私・ヤン・メディア・紫・biimの考えた作戦通りに――」

アナキン不在の旧主催陣では代理のリーダーであるジャックが話を纏めようとした時、伊豆諸島基地に多数の砲弾が落ちた。
基地の各所で爆発が起こり、一回の攻撃で50人程度のモブ主催兵士が死亡した。

「飛影!」

司令室にも直撃弾が当たりそうになるが、それを咄嗟に感知した飛影が壁をぶち破って庇い、事なきを得た。

『サヨナラ!』
「すまない……」

自分たちの代わりに犠牲となって爆発四散した飛影に謝るジャック。
機械とはいえ、あの忍者ロボも立派な主催の仲間であったのだから。


【飛影@忍者戦士飛影 爆散・修復不能】


この後に50余名の命を奪った砲弾の嵐が止んだ。
攻撃を止んだのを見て紫とジャックはオペレーターのクローンヤクザに訪ねた。

「今の砲弾はどこから?!」
「九州ロボからのようです」
「居場所がバレて先制攻撃を受けたのか?」

基地を襲ったのは九州ロボに積まれていた砲弾数発。
安倍がこちらの所在に気づき、先に攻撃を仕掛けてきたというのか?

「流石はビアン博士が改造しただけはある……あまりにも砲弾が早すぎてレーダーに反応なし、キャスターが張った結界がなければ50人と飛影だけでは済まなかった」
「関心している場合か!? すぐにでも第二派が来るぞ」

表面上は余裕そうに見えるヤンは冷静に分析し、メガへクスは焦る。
いちおう生き残った幹部や特務機関員は戦闘力もしくは兵法に優れている。
とはいえ、九州ロボをまるごと相手にできるほどの総合戦闘力は有していない。
実際、九州ロボは時間停止程度では回避しきれないほどの濃密すぎる弾幕を張れる。
時間停止能力に慢心していたカッシスワームはそのために安倍に屠られたのだ。

「これ以上のガバは嫌ですよ〜、すぐにでも作戦開始を」

ガバ(無駄な時間ロスもとい犠牲)を嫌がるbiim兄貴がすぐにでも奪還作戦の開始を提案する。
ところが事態は思いもよらぬ方向へと進む。

「……ちょっと待ってください!九州ロボの攻撃にしては何かが変です!」

はやるbiim兄貴を止めたのは、ずっと画面を見ているメフィラスであった。

「……確かに妙だな」
「ああ」
「どういうこと? メフィラス、ジャック、ヤン」

頭に疑問符を浮かべる紫にメフィラスは九州ロボを映したモニターに指を刺す。

「九州ロボもとい、その砲台はこっちを向いていません。
 現在地は静岡ですが、地上の何かを砲撃しているようです」
「静岡……確かあそこには――」


 ◇


730 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:00:14 GUPRSxKQ0


時刻は遡って15時45分。静岡県。
そこにはリアルタイムで作られていく氷のレールの上を走る一台の新幹線があった。
その中に乗るのはクロコダイン率いる聖帝軍先遣隊と、元クライシス一行の魔法少女と宇宙生物、ホワイトベース組最後の生き残りと主催側であることを隠している二匹の獣である。

キュゥべえは大阪を発ち、静岡県へ向かうまでの間に死国での出来事や拳王連合軍のことを話した。
と言っても殺し合いを助長させなければいけないので拳王連合軍が対主催であること、テラカオス・ディーヴァがこの殺し合いに必要かもしれない、ということは伏せておいた。
具体的に先遣隊の仲間に話したのは

〇自分や霧切がクライシス一行に入ってからの経緯
〇拳王連合軍のハクメンに襲われたこと
〇ハクメンによって負傷した皇帝を連れて避難する途中で拳王連合軍の一員であるデカオに出くわし、争うのもまずいので死国へ「行かざるおえなくなった」こと
〇拳王連合軍はホワイトベース組に手酷くやられたせいか、既に死国を放棄して関東に向かったこと
 デカオは乗り遅れて取り残されたらしい。
〇姫川と「デカオ」がうっかり京都を滅ぼした死国の兵器を使ったことが原因で喰人鬼テラカオス・ディーヴァを呼び寄せてしまったこと
〇ディーヴァは恐ろしい程強く、自分と霧切以外は全滅した。裏切ったクライシス皇帝も殺された
〇そのディーヴァは霧切が魔法少女として契約したことで結界が張られて撃退することができたこと
〇その直後に苗木に拾われ今に至ることである

――である。
嘘をつく最も効果的な方法は嘘の中に真実を織り交ぜることと、真実を隠すことである。

「京都まで滅ぼした拳王の奴ら、絶対に許さねえ!!」
「クライシスって奴が悪党なのは本当だったけど、それは結果論だね。
 本当にハクメンが悪い奴じゃなければ大阪や京都を破壊する奴らに手を貸す意味がわからない」
「関東方面に向かってるから一安心……って今、ふなっしーたちが向かっている場所じゃないっかっしー!?」

拳王連合への怒りと恐れは強く、先遣隊に刻まれたようだ。
キュゥべえ自身は感情が理解できないが、他の生物の感情の動きのようなものはこれまでの学習で理解していた。
拳王連合軍に関しての感情操作はキュゥべえの目論見通りである。
霧切が正気を取り戻した際に嘘がバレる危険もあるが、その時は対主催と知らずにデカオを殺害してしまった苗木を庇うためや拳王連合軍と行動を共にしたことで聖帝軍か苗木に殺される疑いがあったからだと言い訳をすればいい。

「なるほど、風鳴翼……いや、テラカオス・ディーヴァとやらが大阪に毒花をばら撒いたのか」
「恐ろしい奴ムロ……響子ちゃんが魔法少女になってなければ今頃ウドラたちも……」

ディーヴァに関してもまた、恐れを抱かせた。
ただこの世界に必要かもしれないという自分の考えはまだ伏せておく。
後で殺し合いを加速させる際に動きづらくなるからということもあるが、テラカオスに関して知っている情報も少ないので主催の思惑がわかるまで伏せておいた方が無用な混乱を避けられるという考えだった。


こうして気絶している苗木、正気を失っている霧切以外は嘘の混じった真実を知ることとなる。

その一方でキュゥべえは自分が先遣隊に大阪での出来事を話している内に沖縄のディーヴァと敵(シャドウ)のエントロピーに変化があったことを察する。
双方エネルギーを大きく消費したところから互いに痛み分け……いやディーヴァの方が及ばずに大半のエントロピーを失って関東方面へと飛んでいくところが見えた。

ボロボロとはいえ敵に対抗できるのはテラカオスだけ。
幸い、ディーヴァは完全には消滅していないので、いつかどこかで再起できるだろう。
ディーヴァがダメでも関東方面から彼女と似て非なるエントロピーを感じているので、このまま殺し合いを激化させれば新たなるテラカオスも生まれてくれるだろう。
こうして見るとやはり主催の目的は人口削減ではなくテラカオス誕生による世界の防衛であることが感じ取れるのだった。


「……ん?」
「キュゥべえ、どうしたなしか?」
「いや、何かが……迫ってきているような?」

ふと、キュゥべえはテラカオスのエントロピーを纏うものが関東方面からこちらに向けて迫ってきていることに気づいた。
エントロピーの質からしてディーヴァではない。
だが確実に大きなものがこちらに迫っていることがわかった。
直後、新幹線を操縦していた紘太が空を見上げて声を上げた。


731 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:01:00 GUPRSxKQ0


「九州ロボだ!」
「なんだと!?」
「で、でかいなっしー!」

主催本拠地にして超巨大兵器である九州ロボが、新幹線の上を漫然と飛行していた。
九州そのままの大きさがロボになった機体は、下から見るものを恐怖させた。
そして……

「まずい! 砲台がこっちを向いているぞ!」
「紘太! 全力で避けろ! チルノ! 氷の障壁を――!」

砲撃を察したクロコダインは紘太とチルノに回避と防御の指示をだし、自分もまたグレイトアックスから発せられるイオ・メラ系呪文で砲弾を焼き払おうとする。
そして、九州ロボから新幹線に向けて砲弾の雨が降り注いだ。
紘太の仮面ライダーとしての運転テクニック、精霊として進化したチルノの氷結能力による防壁、クロコダインの優れた肉体と技術による防御力によって被害は最低限に抑えられた。

そう、最低限の被害。
新幹線の一番後ろの部分が吹っ飛んだだけ……命が一つ、炎の中に消えただけであった。

「ウドラッ! 立川市へ戻る前に死ぬなしなんて……」
「畜生!」

ウドラは車輌の一番後ろにいたために運悪く爆発に巻き込まれ、粉々のウドになってしまった。
同じゆるキャラ仲間が死んだことにふなっしーは悲しみの涙を流し、紘太は極ロックシードを恵んでくれた生存者の死に怒りで吠えた。


【ウドラ@ゆるキャラ 死亡確認】


「チ、チルノ……大丈夫か?」
「なんとかね……でも最強のアタイと最硬のアンタでも、こんな攻撃何発も防御できないよ」

車輌を守るために上に立っていたクロコダインとチルノは命を落とすことはなかったものの、一回の砲撃に耐えるまでのダメージと消耗はかなりのものだ。
次も確実に防げるという保証はない。


そして、九州ロボ内部。
コクピットルームでは現総理にして九州ロボと10期の主催権を乗っ取った安倍総理がほくそ笑んでいた。

「ふむ、この九州ロボの砲撃に耐えますか。
 ですが、いつまで耐えられるでしょうか?」

安倍はテラカオスの本能から敵とみなしたシャドウを討伐するために沖縄に向かっていたが、その前に美味しそうなエントロピーを放っている聖帝軍先遣隊を発見し、シャドウを確実に討伐するためにも先に先遣隊の面子を食らって強化しようと画策したのだ。
捕食による強化が可能な四条化細胞の恩恵により、獣王クロコダイン、大精霊チルノ、オーバーロードにほど近い鎧武、魔法少女霧切の力を取り込めば、弱っている現状のシャドウを殺すこともわけないと見たのである。
ちなみに九州ロボはサーシェス譲りの触手寄生能力で操っており、ウネウネした触手をコクピットに刺すことで本来のファクターでなくとも九州ロボを操ることができた。

「さて、二撃目行きますよ」

安倍は先の攻撃で食べようとしたカッシスを粉々にしてしまった失敗があるので、今度は獲物が弱る程度までに手加減した砲撃を浴びせる。
それでも直撃すれば新幹線が大破し、内部の人員の大半は死ぬが、それでも強者である約四名は生き残る計算である。
生き残った連中は確実にボロボロであり、そこを食べようと計画しているのだ。
そして遺憾の意など一切込めてない無慈悲な大砲撃が九州ロボから放たれようとしていた。


(まずい、どうすれば……)

放たれた砲撃にどう対処すべきか悩むクロコダイン。
このままでは耐えていく内に疲弊して先遣隊が全滅するのは目に見えている。
そこへ、ひょっこりと新幹線の中から霧切が顔をだし、そのままクロコダインの隣に立った。

「霧切? 何をやっている!」
「早く中に戻りな!」

クロコダインとチルノは急いで霧切を新幹線の中に戻そうとするが、キュゥべえがそれを止める。

「いや、彼女にやらせてみてよ」
「キュゥべえ? 何を言っているんだ?」
「大丈夫だよ」

「この世界でNo2とも言える魔法少女として覚醒した彼女なら、あの程度の攻撃凌げるさ」


732 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:01:38 GUPRSxKQ0

紘太・チルノ・クロコダインの三人でも防ぎきれなかった砲撃を霧切なら防げるとキュゥべえは余裕を見せる。
そして霧切とキュゥべえを車輌の中に戻す暇もない内に二射目が放たれた。
弾幕じみた砲撃はチート級、下手すると理不尽級すら凌ぎきれる攻撃ではない。

「ともだちの……苗木くんとキュゥべえはぜったいにまもる!!」

だが魔法少女として変身した霧切は両手袋に魔力を纏わせて、かつて名探偵ホームズが使っていた格闘術・バリツで砲弾を尽く弾き飛ばした。


「なんですと!?」

これには九州ロボ内のモニターから砲撃の様子を伺っていた安倍総理もビックリである。


「これが響子の力!?」
「凄まじい……」

戦いなれた自分たちでも完全には防ぎきれなかった砲弾の嵐を拳一つで捌いていく様には先遣隊の皆が驚きであった。
その中でキュゥべえはただ一人、冷静に状況を見る。

(響子のエントロピーは宇宙一の魔法少女になれるまどかには及ばないものの、魔法少女になれば光太郎……仮面ライダーBLACK RXの三倍の戦闘力を持てる因子を最初から持っていた逸材だ。
しかも、三倍は“最低値”の話。
いくら幼児退行で思考力が減退している響子でも、ワルプルギスの夜は余裕で倒せるし、それと10倍程度の破壊力しかない砲撃くらいじゃ倒せはしないさ)

先にキュゥべえは、精神崩壊状態の霧切では魔法少女の力を使いこなせないと言ったが、全ての能力が使えないわけではなく。
あのチートライダー代表格であるBLACK RXを凌ぐ戦闘力を最も弱っている段階で持てるのである。
最高値ならハクメンと同格ぐらいにはたどり着ける……楽に勝てるのは魔法少女化したまどかぐらいだろう。


安倍総理は負けじと続けて何度も九州ロボで新幹線を砲撃するが、その度に霧切に打ち返されてしまった。
この内、霧切に殴り飛ばされて流れ弾になった砲弾の雨が伊豆諸島にある主催基地を襲撃することになるのは秘密である。

「ダメですね……こうやって遠巻きからチクチクやっても、野党の牛歩戦術並に時間の無駄です。
 直接乗り込みますか!」


733 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:02:26 GUPRSxKQ0

砲撃では埓があかないと思い痺れを切らした安倍総理は触手を一旦引っ込めて九州ロボとの接続を断ち、直接新幹線に乗り込まんと、九州ロボから出て飛び立った。
そして佐村ガウスフレミング02譲りの一秒ずつなら停止した時間で行動できるクロックアップもどきの能力でたった10秒の内に新幹線の内に降り立った。

「安倍!?」
「ふふ♪」
「クロコダイン!」

主催である安倍総理が迎撃に移る暇もなくいきなり眼前に現れたことにはクロコダインも驚き、次の瞬間にタメのようなものが見えたので急いでデストワイルダーが入っている手鏡入りのディパックをチルノに投げた。

その結果、次の瞬間にはサーシェスが死ぬ寸前に習得した黒いレーザー攻撃(攻撃力3000オーバー)によってクロコダインの首から上が吹き飛んだ。
「ぐああああああああ」と叫ぶ暇もなく、仲間たちが彼の名前を呼ぶテンプレート展開より早く、クロコダインの亡骸は重力に引かれて新幹線のぞみの上から落ちていった。

「クロコダインッ!?」
「クロコダイーーーンッ!!」
「クロコダインのおじさん?!」
『ーーッ!!』
『旦那!!』
『おおう……クロコダイン……』

聖帝軍の仲間は信じられなかった。
クロコダインほどのタフネスで戦慣れした男が、あまりにも呆気なく安倍総理に滅ぼされたことに。


【獣王クロコダイン@DRAGON QUEST ダイの大冒険 死亡確認】


「おや、彼のお肉が新幹線の屋根から落ちてしまいましたね。
 あなたたちを皆殺しにした後に取りに行きましょうか」
「ふなっしー! 少しの間だけ操縦を代われ。
 安倍……おまえだけは絶対に許さねえ!!」

ウドラに続いて仲間が死んだことに憤る紘太であったが、絶大な力を持ったオーバーロードである極アームズ形態ですら安倍の時を止めて移動する能力との相性が悪い。
その点はチルノも同じであり、おそらく霧切も同じであろう。
せめて仮面ライダードライブのような重加速能力の持ち主がこの場にいたら対抗できたかもしれないが、今はいない。
万事休すであったが、紘太たちは奇跡を信じて戦うしかない。
だが、相手は決して甘い相手ではなかった。

次に安倍は擬似時間停止能力を使って最も強いと思われる魔法少女を背後から捕まえる。

「いや!」
「響子!」
「さっきは手こずりましたが、こうやって捕まえてしまえば簡単です」

霧切の手首は安倍総理によって掴まれており、これではグローブに魔力を流し込んでも力を引き出せない。
チルノと極アームズ鎧武が助け出そうとするために武器や魔法を構えるが、人質が邪魔で撃てない。
そもそも安倍総理は四条化細胞とサーシェス細胞によって火水土風木電聖闇全てに耐性を持っており、物理・万能属性攻撃も粘液によるガードがあるので効果が薄く、致命打になる攻撃は時間停止移動能力で躱せばいい。
人質になど取る必要はなかった。
それよりも霧切を喰えば確実に沖縄に現れた敵を殺すことができる。
そのためにも安倍総理は嫌がる霧切の喉元を噛みちぎって殺そうとした。

「「響子!」」

自分たちが対応するよりもずっと早く殺されそうになる霧切にチルノと紘太は同時に声を上げる。
そして響子の隣にいたキュゥべえは――

(ああ……これは……)




(勝ったな)


734 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:03:14 GUPRSxKQ0


仮にキュゥべえが感情というものがあったのならば、ニヤリを笑っていたのだろうか。
彼は勝利を確信していた。
そしてキュゥべえの目論見が当たったのか、安倍総理の歯は幼女の柔肌を貫くことなく粉々に砕けた。

「なッ……歯が!?」

激痛と共に血塗れになった自分の歯に驚く安倍総理。
少なくともテラカオス化による強化で鋼鉄ぐらいなら簡単に噛みちぎられた筈なのだから。

「こ、のお!!」

さらに霧切は安倍総理が驚いている一瞬の隙の内に、掴んでいた腕を強引に折った。
安倍総理は両の腕があらぬ方向に曲がる。

「かけいいいいいいいいいいいいい!!
 なんですかこのデタラメな防御力とパワーはああああ!?」

今度はバリツによる足払いを霧切は安倍総理に叩き込む。
安倍は今度はヌルヌルした粘液による防御によって威力を抑えようとするが、なぜか威力を殺しきれず、今度は両足が折られた。

「なんて強さだ……」
「クロコダインを一撃で殺した敵をこうも簡単に……」

ただ一方的に安倍総理を鳴じっていく霧切の強さにチルノと紘太は驚くばかり。
対するキュゥべえは、霧切が総理に対してここまで強くなった理由を知っていた。

(安倍総理……君がどこでテラカオス・ディーヴァと“似た力”を手にしたのか知らないけど、それが仇になったね。
 どうやら響子はディーヴァにだけは殺されたくないと願って魔法少女化した結果、結界だけじゃなくてディーヴァや似たような存在に対する特攻能力を得たみたいだから)


霧切響子は貧乳歌姫に殺されたくないと願った結果、貧乳歌姫が侵入できない巨大結界が敷かれた。
それだけではなく、もう一つの防衛手段として貧乳歌姫にほど近い存在……すなわち“四条化細胞の持ち主”に対しては攻撃力・防御力が特化する魔力を得たのだ。
今の精神状態では貧乳歌姫自体に面と向き合って出くわしたらトラウマから発狂して魔女化するリスクはあるが、それよりも下の四条化細胞のキャリアなら、どれほど強くても殺すことができるのである。

せめて欲を出して四条化細胞を取り組もうとせず、ただのテラカオスのままであれば霧切を殺せる可能性はあったかもしれないが後の祭り。
四肢が折れたことにより時間停止でも避けることができなくなった瞬間に霧切は容赦のない顔面パンチを総理の鼻っつらに叩き込んだ。

「あっちに行ってーーーッ!」
「ほげえええええええ!!!」

四条化細胞持ち相手に特化した霧切の拳によりぶっ飛ばされた安倍総理はそのままいくつものビルを貫通して飛んでいき、数10キロ離れた先の岩盤に某M字ハゲのように追突するのだった。


735 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:04:04 GUPRSxKQ0


「よし! このままトドメを刺しに!」
「待つんだ紘太!」
「キュゥべえ! どうして止める?」

紘太はぶっ飛んでいった安倍総理に追撃を加えるべく、新幹線をUターンさせようとするがキュゥべえがそれを止める。

「深追いは厳禁だよ。僕らの戦力は既に疲弊している」
「しかし、ウドラとクロコダインの仇を! ここで奴を倒せば殺し合いだって早く終わるかもしれないんだ」
「安倍がまだ実力を隠し持っていたら危険だし、逃げられる内に逃げた方が良い。
 安倍を倒しても九州ロボやダース・ベイダーたちはまだ残っている……彼を倒して殺し合いが終わるなんて安直な考えは持たない方が身の為だ。
 響子のソウルジェムも少し濁ったしね」

霧切のソウルジェムを見ると既に二割ほど濁り出していた。
退行状態なので魔力のセーブができずに戦ったために、魔力消費がその分早くなったようだ。

「キュゥべえの言うとおりだよ。
 あたいだってクロコダインたちの仇は取りたいけど、あたいらの当初の目的は安倍を倒すことじゃなくて都庁へ向かうことだったはずだ。
 東京がどうなっているかわからないけど、目標の時間になってもきらりの歌がどこからも聞こえない」
「サウザーたちの作戦が失敗したって言うのか?」
「わからないが何かあったかは確実……それを確かめるためにも一秒でも早く都庁へ向かうべきなんだ。
 死んだクロコダインだってそうするよ」
「……ああ、そうだな」

キュゥべえとチルノに説得された紘太は追撃を諦め、この場一帯からの脱出に専念した。
幸い、安倍総理は追ってくる様子はなく九州ロボもなぜか沈黙していたので移動は決して難しくはなかった。


 ◇

四肢を複雑骨折し、岩盤に突き刺さった安倍総理は生きていた。
粘膜防御だけでなく擬似ファクターとしての再生能力によって生命力が強化した総理は死なずに済んだのだ。

「し、してやられましたねえ……だが!」

霧切は四条化細胞に対して特攻能力を持っていたが、ならばサーシェスの環境に適応する無限の進化の力によって免疫を作ればいいだけのこと。
さっそく攻撃を食らったダメージから分析し、新たに霧切の魔力に対する免疫能力が作られようとしていた。

「次は負けませんよ〜」

どこまでも前向きに、総理は殺し合いをエンジョイしようとする。
怪我が治り次第、九州ロボに戻って先遣隊を追撃して今度こそ食らうつもりなのである。



「いや、あなたに次はないわよ」
「ッ、あなたたちは!?」

声が聞こえて周囲を見ると、総理は集団に囲まれていた。
五大幹部が一人、ココ・ヘクマティアル。
天才宇宙人、メフィラス。
幻想郷の賢者、八雲紫。
機械生命体、メガへクス。
仮面ライダーパラドに変身したbiim兄貴。
総理の視点からすると“旧”第10期主催陣に包囲されていたのだ。


736 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:04:52 GUPRSxKQ0

「く……私から主催権限を奪いに来たのですか?」
「フフーフ♪ その通りよ、あなたのように無軌道な破壊を目的にする主催は計画の邪魔なのよ。
 殺し合いをそれなりに加速させてくれたのは嬉しいけどここで消えてもらうわ」
「本当はゲイヴンとヤンと私が九州ロボ最速奪還計画を練っていたんですけど。
 棚ぼた的な幸運で無駄になったし、何よりもこっちの方が速いのでここで決めにしますた」
「biim兄貴、カッコよく決めたかったんだからちょっと黙って」

総理にとっては手足が折れて動けない中で敵に襲われる最悪の展開であったが、それでも総理は表面上は余裕を崩さずに強気に出る。
最低でも動けるまで再生するための時間稼ぎが必要であった。

「ふふ、無駄ですよ。
 私はテラカオスの力と九州ロボによるファクターの力で無限に近い生命力を持っています。
 どれだけ火力を持ったとしても私を殺すことなんて不可能です!」

実際、生半可な攻撃では安倍総理は死ぬことはないだろう。
故に言い切った。

「あら、できるわよ?」
「へ?」

更にココは絶大な回復力を持つ総理を殺せると言い切った。
直後、紫のスキマ能力で五人が移動したと思いきや、入れ替わるようにネクストAC・フォックスアイが安倍の目の前に降り立った。

「こいつを見てくれ、どう思う?」<『不明なユニットが接続されました』
「すごく大きいです……じゃなくてなんですかそれは!?」

フォックスアイを見ると、機体を覆うようにいくつものキャノン砲がついた謎の装置が組み込まれていた。

「ビアン博士が私のために遺した切り札。一撃必殺兵器オーバードウェポンの一つ、マルチプルパルス。
 130門のパルスキャノンの一斉発射が貴様を焼くぞ」
「130門ですって!?」

生前のビアンはジャック用の特別装備にオーバードウェポンをネクストAC用に作り上げていた。
直撃すれば大半の敵を抹殺できる兵器であるが、威力が高すぎるために九州ロボ内じゃ使えず、超人血盟軍戦では味方への被害への影響から使うことができなかった。
マルチプルパルスは全方位攻撃用パルスキャノンであり、前方の敵を蒸発させるには十分であった。
その異様な見た目から直感より危険を悟った総理も、流石に焦りだす。

「くっ……何がプロジェクト・テラカオスだ!
 何か難しい計画だの思惑だのあるようだが、そんなのカオスロワに相応しくない!
 殺し合いのためだけの殺し合いこそ至高!
 それこそカオスロワなんです!
 1期はそんな感じだった……難しいことは何もない。
 1期はただ殺すだけだからこそ殺戮が楽しかった。
 それをあなたたちは奪った……殺戮に余計な理由をこじつけた。
 あなたたちがいなければ……物語だってもっとスムーズに進んだはず!」
(やれやれ……変なことを言い出しだぞ。噂に聞くメタ発現か? それとも単なる発狂か?)

唐突に喚きだした総理に呆れ顔のジャックは、チャージが完了したパルスキャノンの引き金を引く。
その前に。

「だから、どうしたと言ってやろう。
 ご高説のつもりなんだろうが、1期の世界からやってきた部外者の意見など聞く気はない」
「なに?」
「それに……仮に私が運命を操作できる神のような存在であれば、理由のない殺戮劇など直ぐに飽きる。
 しばらくはそれで十分だろうが。その内にどこかで味付けが欲しくなる。
 もしかすると神が味付けしたカオスロワが今期の世界かもしれんな」
「だとするとこの物語は複雑すぎ、長すぎ、キャラ多すぎです!!」
「複雑すぎる展開、長すぎるシナリオ、多すぎる登場人物。
 実に個性的で良いではないか。
 私だったらあえて書ききってみたくなるがね」

それはジャックなりのこのカオスロワを乗り切る宣言であった。


737 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:05:34 GUPRSxKQ0

「さあ、長くなったが貴様は任期満了だ。
 あとは我々主催と参加者一同が内閣(カオスロワ)を引きつぐ。
 あの世で隠居するがいい」
「くっ、ここで終わってたまるかああああ!!」

ジャックが引き金を引く寸前に片足の再生だけは終わった総理が岩盤を抜けて跳躍する。
そのままマルチプルパルスの射程外まで逃げていった。

「私の内閣(カオスロワ)は終わらない、終わらせないのです!!!」
「飛んだか……だが都合が良い」

ジャックは構わずに引き金を引き、パルスキャノンを発射した。
射程外にも関わらずに。

「あなた、頭ルーピーですか?
 そんな離れたところから当たるわけがありません!
 その武器を使った直後の隙を狙って殺してあげましょう!」

と飛びながら息を巻いていた総理であったが、そこへ無数のスキマが総理の四方八方を包囲した。

「あれ?」

同時にマルチプルパルスを放ったフォックスアイの目の前にもスキマが配置された。

「援護感謝するぞ、紫」

紫のスキマによって火線が全て総理に集中。
130発全てがスキマを通して異次元を通り、総理に直撃する。
囲まれた総理は全ての攻撃を逃れることはできない。

さて不老不死と思われファクターだが、実は再生には限度がある。
再生不能レベルにまで細切れにするとファクターは再生できずにそのまま死亡する。
マルチプルパルスの威力ならそれくらい余裕である。
パルス一発の威力は64823。理不尽級の参加者なら余裕で出せそうな数値である。
しかしこれが130発全弾命中だとどうなるか?



 64823 × 130 = 8 4 2 6 9 9 0 ダ メ ー ジ!!!




「ま、まだだ、アベノミクス発動!!」

総理は最後の悪足掻きとして粘液を使って防御する。
これに羽毛布団さえあれば魔王ダオスの砲撃すら凌いだ粘液の防御力である。
粘液にダメージを代替わりさせることで一撃だけだったら防げる筈なのだ。


 ◇

ただ



オーバードウェポンは全て多段HITなので



(盾を使っても)死にます


by高橋D

 ◇

「あきよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

やっぱり防げなかったテラカオス・安倍は全身くまなくパルス光線に焼かれて蒸発した。


【安倍晋三@TCBR1 死亡確認】


738 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:06:05 GUPRSxKQ0



「ふう……うまくいったか」

安倍を倒したことを確認したジャックは安堵のため息をだし、フォックスアイの戦闘モードを切った。
ちなみにオーバードウェポンは強力だが一回の使用だけでのACのシステムにダメージを与える諸刃の剣であり、フォックスアイは一度整備に回す必要があった。
戦いが終わったのを見て他の五人の主催陣営も戻ってくる。
ジャックに最初に声をかけたのはメフィラス星人であった。

「ジャック? 本当によろしかったのですか?
 安倍はエネルギー反応からしてテラカオスでした……殺さずとも捕獲するべきだったのでは?」
「いや、安倍は確かにテラカオスだったが、自滅プログラムを仕込んだナノマシンの反応もなかった。
 これではテラカオスとして完成しても世界を救えず、死んでもくれない破滅の存在になってしまう。
 細胞だけでも残すことを考えたが、細胞ひとかけらで復活する危険もあったのでマルチプルパルスで焼くしかなかった」
「左様ですか」
「我々が欲しいのは世界の破滅を止める手段であって、それがたまたまテラカオスであっただけのこと。
 大災害を乗り切った後にテラカオスは必要ない。
 テラカオスには消えるべき時に消えてくれなければ困る」

安倍はテラカオスにしては危険すぎた、故に抹消する必要があった。
目的を達成すると自滅するナノマシンが体内に入っていない時点でテラカオス・安倍は不要な存在だったのである。

「テラカオス計画? 自滅プログラム? なんのことだ?」
「いちおう、私たちは命令には従うつもりですが、今後のためにも説明願いたい」

基本的に任務に忠実なメガへクスとbiim兄貴であったが、流石に今のジャックとメフィラス、そして死んだ総理の会話から疑問点は出る。

「そりゃ疑問に思わないわけないわよね」
「ココ、現状で彼らを失うのは惜しいわ……少なくともベクターよりは信用できるでしょうし」
「そうね……紫には九州ロボに戻ってから二人に事の説明をお願い」

ココの判断により、メガへクスとbiim兄貴にはメフィラスと同じく情報を開示することになった。

そして10期主催陣によって再占拠される九州ロボ。
参謀であるジャックは同僚と部下たちに指示を出す。

「ココ! 九州ロボを操りバリアを張り直せ。
 紫はメガへクスとbiimに最高機密を教えた後に特務機関員集めに戻れ。従わない連中は機密保持のために粛清していい。
 説明を受けた後にメガへクスは九州ロボの各所修繕を、biimはモブ兵士の訓練強化を頼む。
 メフィラスは私と共に、宮崎の遺跡の調査へ行くぞ」
「ジャック、今調べたところ、宮崎の遺跡はテルミか血盟軍に破壊されているそうよ」
「メフィラスにタイム風呂敷とビックライトを貸してくれ。
 あの二つがあれば遺跡の修繕ができる!」

『ふう、私たちはしばらく楽ができそうですね』

幹部と特務機関員が慌ただしくやっている中で、伊豆諸島から動けないヤンとメディアはのほほんと紅茶を飲んでいた。

「いや、君たちにもちゃんと仕事があるぞ」
『仕事? なんですそれは?』

ヤンの元へベクターがかつてクリーニングに出したダース・ベイダーの衣装とスペアのヘルメット、何かの機械が送られた。

「放送係だ。ベイダー卿の衣装とボイスチェンジャーを送った。
 内容はそちらに任せるが、できるだけベイダー卿らしく演じてくれ」
『了解』
「次の放送は18時だ。沖縄の何かを倒せるだけの新たなテラカオスを作成するためにも頼む」

ジャックの指示により伊豆諸島基地を含めた主催陣営は一斉に動き出した。
彼らの戦いはこうしてリスタートを切ったのである。


【第10期主催陣営 九州ロボ及び主催ポジション奪還成功】


 ◇


739 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:06:43 GUPRSxKQ0

「ウドラ、クロコダインのおっさんすまないっしー……でも二人の意志はオイラたちが引き継ぐなっしー」

クロコダインの支給品は、意志と共にふなっしーが受け継いだ。
中には一見すると役に立ちそうもない大粒のダイヤらしき指輪が入っていた。

「宝石なしか?」
「いや、これは魔石の類……それもかなり強力な部類。
 苗木のベルトの魔力と共鳴しているところからして、ウィザード専用装備なのかもしれない」
「ブッシャー、それじゃあ苗木に上げるなっしー、きっとおじさんに似て強靭な装備なっしー」

精霊として魔力がわかるチルノの言葉により、指輪は未だ疲労で意識がない苗木に託された。
その指輪の名前はインフィニティーウィザードリング。
仮面ライダーを平成史上最硬の存在に変える指輪である。


その隣ではロリ霧と彼女にぬいぐるみのように抱きしめられているキュゥべえがおり、キュゥべえは安倍がいた方角を見つめながら、思惑を巡らせていた。

(安倍のエントロピーが途絶えた……彼は死んだようだね。
 響子の一撃で死んだのか、他の参加者に殺されたのか、それとも……
 まあ良い。ディーヴァを始めテラカオスのエントロピーを持つものは関東方面にゴマンといる。
 大小の差異はあれど代えはいくらでもある。
 僕は僕なりのやり方でテラカオス作りを手伝うだけさ)

特に死んだ安倍に関しては興味もなく、キュゥべえは関東にてどう殺し合いを加速させるか考えるのであった。

新幹線の運転手である紘太は、人外の親友を失った悲しみを感じながらもそれで運転を止めることはせず、今度こそ都庁にたどり着くために黙々と新幹線を走らせるのだった。


【二日目・17:00/静岡県】

【聖帝軍先遣隊】

【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【状態】ダメージ(小)、仮面ライダー鎧武・極アームズに変身中、拳王連合軍への怒り、悲しみ
【装備】戦極ドライバー、ロックシード(カチドキ&極) 、新幹線のぞみ (後部破損)
【道具】支給品一式、ロックシード(パイン、イチゴ、スイカ)
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:のぞみを操縦して関東へと戻る
1:DMC狂信者達も拳王連合軍も、もう絶対許さねえ!!
2:救済の予言の謎を解く
3:ダースベイダーも安倍総理も、絶対に許さねぇ!!
4:なんだったんだ沖縄のあれは……
5:苗木が一時期のミッチーを思い出させて恐ろしく不穏
6:ウドラとクロコダインを守れなった自分を許せねえ!!
※オーバーロードとしての力を行使するには首輪解除が必要です。
※テラカオス・シャドウによって生じた沖縄の天候の変化を見ました


【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、やる気十分、色々成長
【装備】ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW、アイスソード@ロマンシングサ・ガ、ターバン (マスク代わり)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:『ダースベイダー』を倒す
0:関東に戻る
1:何かいろいろパワーアップしたよ!
2:みんなで予言を解いて世界を救うよ!
3:聖帝は頼りないから最強のあたいが皆を引っ張る
4:大阪の毒花と沖縄の天候変化は明らかにヤバイ!
5:ウドラ、クロコダイン、ごめんね……
※アイスエイジメモリを刺した事によって成長、能力及び知力が向上しました。
※テラカオス・シャドウによって生じた沖縄の天候の変化を見ました


【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、悲しいなっしー!
【装備】野球のユニフォーム(背番号274)、ターバン(マスク代わり)
【道具】支給品一式、シャルロッテ@魔法少女まどか☆マギカ、千早@皇国の守護者(フロワロの毒ダメージ・中)、デストワイルダー@仮面ライダー龍騎&ただの手鏡、聖帝軍の旗
【思考】
基本:殺し合いを止めるなっしー!
0:大阪は地獄絵図だったなっしー!
1:DMC狂信者達を成敗するなっしー!
2:名探偵ふなっしーが予言の謎を解くなっしー!
3:本当に都庁につけるか不安なっしー!
4:ヒャッハー! 梨汁ブシャー!
5:新しい友達としてシャルロッテと千早、デストワイルダーは守りたい
6:死んだ仲間の代わりに聖帝軍と立川市を守るなっしー!
※回収できる範囲でのクロコダインの支給品を受け継ぎました
※千早とデストワイルダーが主催側の意思持ち支給品であることを知りません


740 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:07:21 GUPRSxKQ0


【苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ダメージ(中)、疲労(特大)、気絶、拳王連合軍への復讐心(特大)
【装備】ウィザードライバー@仮面ライダーウィザード、マシンウィンガー@仮面ライダーウィザード、専用の指輪一式、インフィニティーウィザードリング@仮面ライダーウィザード
【道具】支給品一式、通信機、
【思考】基本:対主催→拳王連合軍は皆殺し
0:(気絶中)
1:必ず拳王連合軍に相応しい絶望を与える
2:キュゥべえと聖帝軍の皆は信頼している
※ラーメンマン、ジョンス、たっくんの死に気づいていません


【霧切響子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ロリ切さん、ディーヴァへの恐怖心(特大)、魔法少女化、ソウルジェムの汚れ(20%)、一時的な幼児退行と記憶喪失、度重なる失禁でパンツぐしょぐしょ
【装備】様々な資料
【道具】支給品一式、沢山の光彦関連のスイッチ、ノートパソコン、その他不明
【思考】基本:テラカオス・ディーヴァにだけは殺されたくない
0:奴に殺されるのはヤダヤダヤダヤダヤダ……
1:苗木くんは守る
2:友達のキュゥべえも守る
3:(幼児退行と記憶喪失により思考能力が大幅低下している)
※まどかには及ばないものの強力な魔法少女になり、肉体・戦闘力が大幅に強化されました
 戦闘力は最低でも仮面ライダーBLACK RXの三倍です
 また、四条化細胞を持つ敵には特攻能力を得ています
 (シャドウのみ、先にTCを取り払わないと不可)
※テラカオス・ディーヴァに殺されたくないと願った結果、ディーヴァと力を受け継いだシャドウ限定で侵入できない結界が張られました(広さは近畿地方全体がスッポリ収まる程)
 ただし霧切が死亡・魔女化した場合は結界が消滅し、シャドウが死者スレ掌握などで霧切のエントロピーを上回ったりしても結界は破られます
 テラカオス・ディーヴァの残滓は力の大部分が違いすぎるので侵入自体は問題ありません


【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ(中)、他の個体が全滅
【装備】なし
【道具】支給品一式、祐一郎の記憶を内包したブラックボックス
【思考】基本:殺し合いの助長・対立煽り、おまけで魔法少女を増やす
0:身を守るために聖帝軍に保護してもらう
1:対主催の影に隠れて参加者同士の殺し合いを助長する
2:ひとまず聖帝軍には拳王連合軍=悪の認識を持たせる(誤解を解かない)
3:テラカオスは鹿目まどかの契約より重要になるかも? 
4:沖縄のエントロピーからディーヴァとより危険な存在(シャドウ)を感知
5:母星と連絡出来るまでは生き残る
※クロコダインと会う前に苗木の口からデカオを殺した下手人は苗木であると知りました
※殺し合いがテラカオスを生み出すために必要な措置だと気づきました
※沖縄から感知できるエントロピーから「TC」を放つテラカオス・シャドウの存在を感知しました
※先遣隊に拳王連合軍に関する嘘を交えた情報を流しました



【二日目・17時00分/静岡県 九州ロボ】


【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
【状態】リンクスに改造
【装備】フォックスアイ(ネクストに魔改造/再出撃に整備必須)@ARMORED CORE、拳銃
【道具】ヒトマキナ・MS・TIEファイター×100、オーバードウェポン一式
【思考】基本:世界滅亡を阻止するためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:まずはメフィラス星人と共にミヤザキの遺跡探索
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは抹殺する
2:四条化細胞に多大なる期待
3:アナキンは上手くやっているだろうか?


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギン、スパークドールズ(ダークザギ)、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×950、
     主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:九州ロボの操縦、防衛
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:真尋キュンprpr(テラカオスを完成させるまではニャル子に返さない)
4:アナキンは大丈夫かしら?
※スパークドールズ化した八坂真尋を戻すには、ダークスパークもしくはギンガスパークが必要です


741 : アベンジャー :2018/04/14(土) 02:08:31 GUPRSxKQ0


【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、ラッキョウ
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:ジャックと共に宮崎の遺跡を探索する
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:アナキン達の計画で本当に世界を救えるのか見極める
3:救済の予言、果たして本当なのですかね?
4:なるべく暴力は使いたくない
5:ニャル子さんはまだ大丈夫ですかね?
※特務機関員です
※プロジェクト・テラカオスの全貌を知りました
※まだニャル子の死を知りません


【八雲紫@東方Project】
【状態】健康
【装備】傘、扇子、スペルカード@東方Project
【道具】ソロモンの指輪、仙豆×55@ドラゴンボール、ネビュラスチームガン@仮面ライダービルド、ギアエンジン@仮面ライダービルド
【思考】基本:幻想郷を守る為に主催を手伝う。
0:まずはメガへクスとbiim兄貴にテラカオス計画の概要を教える
1:特務機関員たちの招集を行う、従わない奴は粛清
2:どのような事をしても幻想郷を守る
※境界を操る能力に制限がかかっています


【メガヘクス@仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル】
【状態】健康
【装備】太極図@封神演義、ライドブッカー@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、ネクロノミコン@クトゥルフ神話 、その他不明
【思考】基本:契約の為に主催の命令に従う
0:紫からテラカオス計画について聞く
1:紫の話次第では契約を打ち切る
2:問題がなければ契約を続行し、九州ロボを修復する


【biim兄貴@現実?】
【状態】健康、完全体バグスター、魂魄妖夢にそのまんまの容姿。
【装備】ゲーマードライバー@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド
【道具】支給品一式、ガシャコンパラブレイガン@仮面ライダーエグゼイド、エナジーアイテム各種@仮面ライダーエグゼイド、じゅうべえくえすと
【思考】基本:RTA走者として誰よりも早く任務をこなす。
0:みなさまのためにぃ、こんな動画を用意しました。
1:まずは紫さんからぁ、テラカオス計画のことを聞く。
2:ジャックたちと考えた作戦が無駄になったけど〜、結果的にタイムを短縮できた気がする
※人の遺伝子があるためライダーの変身可能です。



【二日目・17時00分/伊豆諸島基地】


【ヤン・ウェンリー@銀河英雄伝説】
【状態】健康
【装備】ダース・ベイダーの服とヘルメット、ボイスチェンジャー
【道具】不明
【思考】
基本:サーヴァントとして召喚され、禄を組まれたためそれなりの義理は果たす
0:18時にベイダー卿に成りすまして定時放送を行う
1:伊豆諸島基地の守備
2:出来れば平和が続いてほしい
3:考えた作戦無駄になったけど、まあ良いか
※サーヴァントとして呼ばれましたが宝具が使えるのか不明です。


【メディア@Fateシリーズ】
【状態】健康
【装備】破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)@Fateシリーズ
【道具】不明
【思考】
基本:マスター(ココ)の指示に従い伊豆諸島基地を守備する
0:18時の定時放送を手伝う
1:部屋に戻って模型でも作ろうかしら?
2:マスター達はどこまでやれるのかしらね。


742 : 名無しさん :2018/04/14(土) 02:09:00 GUPRSxKQ0
投下終了です


743 : 名無しさん :2018/04/14(土) 12:21:09 X1L70wPs0
投下します


744 : 悲しい時ー! 誰かが死んだときー! :2018/04/14(土) 12:22:10 X1L70wPs0
>「あきよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「あきよ……誰?」

 一方、その頃、宇宙空間では夫・晋三が盛大に嫁の名前を間違えたことを嘆く女性がいた。
 しかし、ここからでは地球は遠すぎる。
 皆さんご存知文章改竄問題で隠していたこの【機動要塞『森友学園』】の攻撃も届きはしない。
 だから、彼女は干渉できない。

 さらに言えば大好きな兄ルルーシュを守るために宇宙から迫りくる脅威から守らなければならない。
 だから、彼女はここから動くことすらできない。

「でも、美しい国をつくるために私が頑張らなきゃ……」

 美しい国・日本。
 皆さんご存知TCBR1で晋三が掲げていたスローガンだ。

 TCBR10じゃ安倍はそんなこと一言も発していなかったけどな!!

【二日目・17:00/宇宙空間】

【安倍明恵@TCBR10】
【状態】テラカオス化(進行中) ニュータイプ能力覚醒、ギアスによりルルーシュを大好きな兄として認識中
【装備】スマホ太郎@スマホ太郎
【道具】機動要塞『森友学園』(因果律操作装置@スーパーロボット大戦Xを装備)
【思考】
基本:晋三と美しい国を作るつもりだったけど……
1:ルルーシュを守る
※テラカオス化の影響で登場機体の『自己修復、自己増殖、自己進化』を得ました。


745 : 名無しさん :2018/04/14(土) 12:22:57 X1L70wPs0
投下終了です


746 : 名無しさん :2018/04/14(土) 16:10:41 GUPRSxKQ0
ぎゃああああああ、素で夫人の名前間違えたああああ!!
でもこっちの方が面白そうだからそのままにしとこっと


747 : 名無しさん :2018/04/14(土) 22:44:19 UHfrKZus0
ルルーシュ何やってんねん……


748 : 名無しさん :2018/04/14(土) 22:57:35 S1IUNk9c0
クロコダインが死んで悲しいはずなのに、最期の台詞で絶叫しながら嫁さんの名前間違えた安倍さんのせいで笑いしかでてこない……


749 : 名無しさん :2018/04/15(日) 21:45:00 Kjj24QvU0
投下します


750 : 野望の終焉! :2018/04/15(日) 21:46:39 Kjj24QvU0
前々回にてパルス砲による飽和攻撃で蒸発した安倍総理だったが、TCBRにて死んだらどこに行くか?
そう、死者スレである。


…━…━…━…━…━…━…━…━…━


「ぐうっ!」
「まだ逃げる気か!」

その死者スレにて、安倍総理は逃げていた。
誰から?と言うと、悪魔将軍からである。

安倍総理はどこからどう見ても罪人である。
ベジータ・ 野田総理・シックスなどを遥かに凌ぐほど罪人である。
その上、魂のエネルギーも絶大。
こいつの魂を使えば、再び増大しつつあるシャドウの影を大分後退させられる事は間違いない。

だが、安倍総理はかなり強かった。アタル兄さんでは返り討ちにされ、逆に彼の魂が消滅してしまう可能性がある。
そこで安倍総理を捕縛するため、悪魔将軍が駆り出されたのだ。
そして、十数分に及ぶ追撃の末、ついに追い詰めたのだ。

「追い詰めたぞ!大雪山おとし!」
「フフ…」

しかし、安倍総理はサーシェスから引き継いだ触手ヒゲを放出!
そのヌルヌルにより悪魔将軍のプロレス技から抜け出したのだ!

「グムム…スピンダブルアームソルト!」
「甘いわ!」

髭のヌルヌルにはスネーク・ボディ並みの効果があった。
今の安倍総理に固め技は通用しない。


751 : 野望の終焉! :2018/04/15(日) 21:48:15 Kjj24QvU0
前々回にてパルス砲による飽和攻撃で蒸発した安倍総理だったが、TCBRにて死んだらどこに行くか?
「では、これならどうだ…地獄のメリー・ゴーラウンド!」
「何っ!?」

地獄のメリー・ゴーラウンド。
それはかつての地獄の九所封じの1つであり、自分の体を硬度10に変え、両手に剣を出現させ前方宙返りで突進する技だ。

「があああああ!!!」

安倍総理は両腕を合わせる構えで防ごうとしたが、因果応報。
ヌルヌルにより剣が腕の間を滑りぬけてしまい、胴体を串刺しにされた。

「ぐがっ…」
「もう、終わりだ…消滅して死者スレの礎となるがいい」

安倍総理は致命傷を受けた。
このままだと、死者スレでの死亡により魂が消滅してしまう。
追撃している内に、シャドウの影の近くに来てしまった。
これは早くカルナに突き出さねば、と悪魔将軍が思っている内に…

「魂まで…消滅する…ぐらい…なら…ば…」

そう言って安倍総理はシャドウの影に身を投げた。

「何だと!」

『グ ゴ ゴ …』

こうして安倍総理はシャドウに取りこまれた。

まあ、他の罪人と違い魂が破壊されたわけではない。
シャドウが死んだら審判者によって罪を洗い流され来世で転生できるんじゃないんですかね(小並感)

「ここまで影が迫ってきているとは…」
そして、悪魔将軍も戻っていった。


…━…━…━…━…━…━…━…━…━


一方、沖縄では…

「む、新しい魂が入ってきたか」

実は、安倍総理のテラカオスとしての力は、『同化』であった。
すなわち、四条化と同質。
ゆえに、シャドウであった者が新たな特殊能力を得ることは無かったのだった。
が、消耗は多少回復したのだった。

【二日目・17時30分/沖縄県】

【シャドウであった者@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、休憩中、弱体化
【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 他不明
【道具】不明、混沌の騎士の魂
【思考】基本:世界の破壊
0:あの者(テラカオス・ディーヴァ)の魂の破壊
1:死者スレの掌握
2:体力と傷の回復
3:混沌の騎士の魂がとにかく邪魔
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています。
※ディーヴァの捕食した能力も込みで持っているようです。
※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。
※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。
※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。
 更に死者スレ内の防衛にカルナが投入され、一度はテラカオスとして完成したこともある混沌の騎士の魂に内部から妨害を受けることで掌握速度が停滞。
 完全掌握に12時間以上の時間を要します。
※混沌の騎士のように一度は完成したテラカオスの魂は性質上、取り込めません


752 : 名無しさん :2018/04/15(日) 21:48:32 Kjj24QvU0
投下終了です


753 : 名無しさん :2018/04/15(日) 23:57:13 Y7M//HdM0
>>752
投下&総理の能力補完乙
安倍総理がシャドウに取り込まれたらまずくね?と思ったけどそこまで悪い展開にはならなかったか
あと、キャラディスするつもりじゃないけど、安倍を取り逃がしたり黒幕間違えたり、悪魔将軍って案外ドジっ子...?


754 : 名無しさん :2018/04/16(月) 23:51:28 0LSFIS.60
>>748
ネタキャラってさ、たった一行のミスで生まれるもんなんやなw


755 : 名無しさん :2018/05/10(木) 21:21:54 2SPjDuqI0
近々投下考えてるけど、予約するとそれ自体が展開のネタバレになりそう
そんな時はどうすれば良い?


756 : 名無しさん :2018/05/10(木) 21:22:34 IjSkUmnA0
そのまま予約せずに投下するしかないんじゃない?


757 : 名無しさん :2018/05/10(木) 21:44:02 2SPjDuqI0
ぐええ、こうなりゃ次の投下や予約が来る前に急ぐしかねえ


758 : 名無しさん :2018/05/10(木) 21:46:58 IjSkUmnA0
がんばれがんばれ


759 : 名無しさん :2018/05/10(木) 21:50:23 2SPjDuqI0
かなり厳しいけど応援されたので一週間以内に仕上げられるように頑張る


760 : 名無しさん :2018/05/11(金) 13:53:24 xw6enrug0
ゲリラはどこが来るかわからないワクワクあるよね
少しでも被り回避したかったら、登場予定のキャラ名一人だけ書いたらどうかな?
ちょっとずるいが、そのキャラ周辺や近場で接触の可能性あるキャラの話の投下待ってもらえるかも


761 : 名無しさん :2018/05/15(火) 23:14:00 6PWt1Ybw0
>>759だけど、完成したんで投下します


762 : 『衝撃』 :2018/05/15(火) 23:14:54 6PWt1Ybw0
辛くもシャドウが送り込んだ死者たちの魔の手から逃れた物置内。
物置の操縦室では、イナバ製作所社長とゼクスが今後どうするか考えていた。

「さて、これからどうすべきか」
「今、この物置が向かっているのはヘルヘイムの森と化した都庁の近く……危険ですね」

ディケイドから逃れるためとはいえ、緊急脱出装置を使った弊害として都庁の近くに落ちようとしていた。
まさか都庁がヘルヘイムではなく対主催組織になっていることなど知らない物置組にとっては、都庁の近辺に落ちるということはヘルヘイムのインベスを刺激して攻撃される恐れがあると思い込んでいる。

「ネットで飛び交う情報だけでもかなりの戦闘力を有している……少なくともネームド狂信者に敗れた私のエピオンで倒すことも不可能だろう」
「格納庫に秘蔵のミレニアム・ファルコン号……武装を装備した宇宙船があり、あれの機動性なら都庁の攻撃を受ける前に急速離脱できるかもしれません。
 ただし、乗員は無理につめこんでもたかだか30名くらいが限界……とても避難民やクローントルーパーまで載せきれません」
「むう……どうにかならないものか」

一行のリーダー格であるイナバ社長とゼクスは打てる最善の策を探して思い悩んだ。
あと20分もすれば都庁の近くに着陸する。
それまでに決断を出さねばならない。

「このままでは埓があかない。私がエピオンのゼロシステムを使って未来を占ってみよう」

ゼクスが提案したのは戦場を超高度な情報分析によって最適な未来を割り出すゼロシステムの使用であった。

「アレを使うとあなたは消耗するのでは?」
「少しぐらいなら平気だ。
 そうでなくとも有事に備えてエンジンを暖める必要がある」
「わかりました。まだエピオンは万全とは行きませんが稼働率80%まで修理が済んでいます。
 何かわかりましたら格納庫から伝えてください」
「了解」

そしてゼクスは格納庫で眠る愛機の下へ向かった。

---

一方、物置内の居住ブロック。
医務室には怪我をしているベルナドットと、とある事情からほんの一瞬だけ怪物になりかけたクリスがいた。

「やれやれ……Lの旦那からざっくりと事情を聞いていたとはいえ、お嬢ちゃんの身に何があったんだか」

話によると、クリスが突然吸血鬼のようになり避難民を一人食ってしまったらしい。
シンフォギアも装備していたのでどうするか考えあぐねたところ、食人鬼・風鳴翼にそっくりな少女がクリスを人間に戻した。
その後、彼女は気絶し、医務室にて眠っている。
そんな眠り姫の寝顔は安らかで、とても食人に走った怪物には見えなかった。
ヘルシング機関で怪物を殺し、怪物と肩を並べたベルナドットだからこそ、それがわかった。

ちなみに犠牲になった避難民は野比玉子症候群を患ったタケシであり、クリスは実質誰も殺めてないのも救いであった。

【タケシ@ポケットモンスター 死亡】
死因:クリスに捕食された

---


763 : 『衝撃』 :2018/05/15(火) 23:15:41 6PWt1Ybw0

場面はまた他の一室に移り、そこではテラカオス・ディーヴァの残滓を名乗る少女はLを中心にシマリス、レックス、ロビンから尋問を受けていた。
尋問と言っても堅苦しいことはなく単に話を聞くだけであり、都庁近辺にたどり着くまでに正体について可能な限り話してもらわないといけなかった。
とにもかくにも彼女には謎が多すぎるのである。

「それじゃあ『ツバサ』さん……話を聞きましょうか」
「ツバサって……私はテラカオス・ディーヴァの残滓であって風鳴翼では……」
「残滓が名前というのは少し可哀想そうでしょう。
 あなたの正体がどうであれ、名前がないのならば指名手配された風鳴翼に似ている以上、ツバサさんと便宜上呼ばせていただきます」
「……わかりました」

残滓はこの場ではツバサという名前を与えられ、尋問は始める。

「ではツバサさん、いくつか質問します。
 あなたは大半の記憶を失っているという話ですが、どこまで覚えていますか?
 そっくりな見た目をしてしますが風鳴翼の行方は?
 答えられる範囲で答えてください」
「わかりました」

ツバサは偽ることなく素直に答えていき、シマリスたちはそれを頑なに見守った。

「私がディーヴァから継承した記憶は少ないです。
 はっきりわかるのは私を生み出したのは指名手配された風鳴翼……テラカオス・ディーヴァであること。
 朧げに覚えているのは彼女は世界を救おうとしていたこと。
 都庁で何やら悪い想い出があった気がすること。
 沖縄でこの世界に生きるもの共通の敵が現れて風鳴翼が敗れたこと。
 ……残滓として復活する前に夢の中で誰かに世界を救うために因子を集めるように言われたこと。
 私の記憶にあるのはそこまでですね」
「ふむ、都庁の下りはヘルヘイムに何かひと悶着あったからとして、風鳴翼はどうして食人行為で人を救えると思ったのです?」
「そう思うようになった経緯は覚えてませんが、彼女なりの大義を持っていたと思います。
 たぶん、今の私のように人に触れただけで因子を吸収する力がなかったので、やむを得ず食べて因子を蓄えていたのかもしれません。
 手段は残酷ですが人を助けようとしていたのは本当です」

「先ほどから話に出ているテラカオスとは?」
「個人的な見解だと人の中に眠る混沌の因子を集められる特別な存在……でしょうか?
 ごめんなさい、私自身もあまりよくわからないのです」

「混沌の因子とは?」
「この世界に生きる人びとに必要な目に見えないエネルギー……常識を逸脱した存在ほど欠かせない物です。
 ただし、テラカオス以外は過剰に摂取すると死んでしまうようで……沖縄に現れた敵はこれを操る術を持っているようです」
「無いと困るが有りすぎても困るもの……酸素のようなものですかね」
「はい」

「クリスさんは混沌の因子に侵されたから食人鬼化したのでしょうか?」
「いえ、どちらかと言えば元々あった混沌の因子を何らかの手段で暴走させられ無理やり特別性の存在……先ほど言ったテラカオスに近いものにされていた感じがあります。
 ただ、テラカオスと言っても私と違い、強引に進化させられていた反動のせいで暴走していました。
 暴走した彼女を救うには混沌の因子と因子を暴走させる何かをギリギリ生存を保てるレベルまで私が吸収するしかありませんでした」
「……ふむ」

ここでLはいったん質問に一区切りをつけ、仲間たちと話す。

「うう〜ん、難しすぎてさっぱりでェす」
「Lの旦那、あのお嬢ちゃんが嘘をついている可能性は?」
「演技であれば自ずとわかるものなのですが、目や仕草を見る限り嘘は言っていないようです。
 本当に記憶喪失状態でわかる範囲を素直に答えている感じでしたね」

名探偵であるLの目をもってしても、ツバサは嘘を言っていないという見解であった。
彼女の持つ力や因子については先ほどクリスを救った時点で証明されている。
カオスロワちゃんねる掲示板では風鳴翼が都庁と交戦した目撃例もあり、争ったのは確か。
沖縄には現在異常気象が発生しており、人類共通の敵……イナバ社長が持っていた古文書の中にある滅びの化身の可能性が濃厚。
目の前にいるテラカオスは滅びの化身に対抗するための抑止の神または救いの神である可能性もある。
もし彼女が救いの神であるなら是非とも欲しい存在ではある。


764 : 『衝撃』 :2018/05/15(火) 23:16:24 6PWt1Ybw0


「ミスターL、彼女の話で少し気になることが……」
「どうしましたレックス? これは?」

彼女の話の中で何かが引っかかったレックスはLに一冊の書を見せる。
それはシマリスとの捜索中に偶然拾ったTCホール観察日記であった。

「まさかとは思いますが、これを少しだけ読んだ時に気になることがありまして……専門的なものはさっぱりわかりませんが、この項……世界には必要不可欠であるが浴びすぎると死に至るエネルギー……『TC』、彼女の話にある混沌の因子と似てませんか?」
「TC? 聞き覚えのない言葉ですが、共通点があるのも気になりますね。 ちょっと見せてください」

Lはレックスが持ってきた書を手に取り、パラパラと流し読みをする。

「いかがですか?」
「……いや、内容が専門的かつあまりにも難解で私が完全に理解するには半日近く時間が必要です。
 理解はできてもこのTCと彼女の言う混沌の因子が同一かを確かめる技術が私にはありません。
 探偵より科学者や技術者を連れてきた方が早いですね」
「そうですか……」

Lは優れた頭脳の持ち主であるが、日記の完全解読には相応の時間を有し、かつ解読以上の成果は得られないようだ。


「ただ、気になることが一点あります。
 この日記の著者が阿笠博士氏とヒート・オブライエン氏であることですね」
「阿笠とヒート? 誰ですかそりゃあ?」
「アガサの方はかなり前の放送で呼ばれていた気がするですけど……」

聞き覚えのない人名にロビンだけでなくシマリスとレックスも首を傾げる。

「科学都市ニルヴァーナというものがありまして、ありたいに言えば光祐一郎やダイジョーブ博士などの数多くの天才科学者を排出したところです。
 阿笠氏とヒート氏はその都市の出身者で師弟関係にありました……が、ヒート氏は大災害が起こる数週間に何者かにニルヴァーナにて暗殺され、阿笠氏はその直後に知り合いの少年たちと謎の失踪をしており、ヒート氏殺害の容疑がかけられています。
 暗殺と失踪の真相は定かではないですが、日記の最後にはこう書かれています」
「「「!」」」

Lは三人に日記の最後のページを見せる。
その部分の内容は簡単で専門家でなくとも簡単に理解できた。



――「もしも」のことが起きた時のために、対処法になるかもしれない暗号文を別荘に置いてきた。
  私とヒート君の身に何かあった場合は回収して解き明かして欲しい。



それは殺し合い前と最中に死んだ二人の科学者からメッセージであった。
Lたちは会ったことがないので知らないが、阿笠は自身を黒幕と謳い(クソザコナメクジだが)テラカオスを作っていた。
だが洗脳を受けていたシグナムと同じように、果たしてそれが本当に彼の真実の姿だったのか?


「ニルヴァーナは科学都市、ひと握りの人間ぐらいなら混沌の因子に関して知らない者がいないとも限らない」
「そのひと握りが阿笠とヒートなんでぃすね?」
「これはあくまで探偵の勘ですが、この日記とツバサさん、次の大災害は無関係とは思えません」

「だが確証を得ようにもヒートも阿笠も既に死んじまってるぜ?」
「別荘まで行って確かめるしかないということか」
「阿笠の別荘は確か長野県に合ったハズ……あそこは過疎地で東京ほど危険性は高くない。
 エピオンの機動力なら往復2・3時間で行けるでしょう」

Lは探偵の勘から重大な鍵と見なした日記をしまい、それ以上に未来を左右するかもしれないツバサを見る。
できれば真実の追求のために尋問を続けたいが、もうすぐ危険地帯である都庁の近くに着陸するので今は時間が取れず後回しにするしかなかった。

「風鳴翼、混沌の因子、TCとTCホール、テラカオス、沖縄の敵……それから救済の予言、解かなければいけない謎が一杯ですね……なんとか解き明かせれば良いのですが」

そして、ツバサを連れた男たちは社長が待つブリッジへ向かった。


765 : 『衝撃』 :2018/05/15(火) 23:16:54 6PWt1Ybw0



『こちら格納庫のゼクス! 緊急事態発生だ!!』
「ゼクスさん!?」

それは五人がブリッジに入った瞬間に巻き起こった。
格納庫のエピオンのコクピットにいるゼクスが、非常に慌てた様子で物置全域に注意を勧告したのだ。
どうやらゼロシステムで未来を読み取ったらしいが……?
尋常でない様子のゼクスにイナバは理由を聞く。

「ゼクスさん、一体何が……」
『説明している暇はない! 総員対ショック防御! 居住ブロックにいる避難民はすぐに――「なんだあれは!?」

ゼクスが言い切る寸前に巨大物置の前に、巨大な黒い鋼鉄の影が転移してきた。
――黒く塗装されたグレートゼオライマーだ!!

物置内の全員が「あれはまずい」と思った瞬間にはもう遅い。
機体の前に「雷」の字が浮き出ると同時に必殺武器の一つ、原子核破砕砲(プロトン・サンダー)が容赦なく物置に放たれた。
ダークディケイドとは桁違いの威力の前に物置は一瞬にして2/3が蒸発。撃墜されて地上に落下した。


---

撃墜後の物置のブリッジの中は惨憺たるものであった。
運良く、L、シマリス、レックス、ロビン、そしてツバサは無傷か軽傷で済んだが、彼らが見たものは飛び散る部品の数々に噎せ返るような香りの黒煙。
そして衝撃から身を守るのが間に合わなかったか運悪く破片に当たってしまった死体が散乱している。
その死体の中に。

「コマンダー!コマンダー社長!」
「……ダメだ死んじまっている」
「イナバ社長……」

物置組のリーダーであり、ゼクスたちにとっては恩人であるイナバ製作所社長は落下の衝撃で首の骨が折れてしまっていた。
即死である。
彼の死は生き残った者に大きな悲しみを与えるが、絶望はそれで終わらない。
オペレーターが驚きの声を上げながら、モニターの情報を報告する。

「い、今の攻撃で避難民を収容していた居住ブロックが蒸発! 格納庫からも応答がありません!」
「蒸発だと……避難民は?!」
「……全滅です」
「そんな……そこにはクリスちゃんにベルナドットさん、ゼクスさんが……!!」
「なんてひどいことを……」

オペレーターから発せられた残酷な事実に5人は衝撃を受ける。
特にシマリスとツバサは悲しみにより泣き崩れるのだった。
しかして状況は彼らを待ってはくれなかった!

「物置を攻撃した敵からエネルギー反応! 再攻撃を仕掛けてきます!!」
「悲しんでいる暇じゃねえ! すぐに物置から脱出するんだ!」

もはや物置は地に落ちたスクラップと化し、塹壕としての役割もゼオライマーの攻撃を防げなかった時点で果たせない。
ロビンの指示通り、生き残った5人とクローントルーパーは物置から脱出した。
脱出直後にゼオライマーのJカイザー(レーザー攻撃)が放たれ、物置は大爆発を上げて地上からも消え去った。

「生き残ったのは……これだけか!」
「あんだけたくさんいたのに、よくも……!」

最終的に脱出できたの5人とクローントルーパーが30名程度、避難民や残りのクローントルーパーは死亡である……
その惨劇を生み出したゼオライマーにレックス・ロビンは怒りの目を向ける。

「待ってください! あれを!」

今にもゼオライマーに攻撃しかねなかった者たちにツバサは待ったをかける。
彼女が指を差した先には、物置組とは別の人員が倒れていた。

「あれは……イチローチーム!?」

全員ではないとはいえ、このロワでも強豪対主催チームであるイチローたちがボロボロになって地面に倒れていた……
メジャーリーガーのイチローだけではない。
天空竜であり神の一柱であるオシリス。
幻想郷・山の四天王の一人である伊吹萃香。
邪眼とアスクレピオスの使い手である美堂蛮。
カオスロワを代表する胡桃使い・6/すら体のあちこちから血を流し、倒れていた。
対する黒いグレートゼオライマーは無傷であった。

「弱すぎるな。首輪の外れていないメジャーリーガーなど、こんなものか」
「くッ……」

辛うじて息のあるイチローチームもといイチリュウチームを、グレートゼオライマーのコクピットの中でドリスコルは侮蔑の表情を向ける。

---


766 : 『衝撃』 :2018/05/15(火) 23:17:38 6PWt1Ybw0

物置が撃沈される数時間前、イチローたち聖帝軍救助班もとい殲滅班は墨田区の近くにいた。
しかし、聞いただけで大幅な弱体化を強いられる怪獣ロボきらりの歌のせいで迂闊に近づくことができず、遠巻きから戦いを観戦するしかなかった。
その間にイチローはオシリスのドラゴンネットワークを介して浦安の仲間に連絡を取った。
きらりんロボが立川市を焼き尽くし、少女を惨殺したのは本当のようだが、ロボを狂信者に奪われただけかもしれないので聖帝軍を悪しき軍勢と見なすのは早計すぎるというイチローなりの判断であった。
ひとまず、悪の巣窟である都庁が近すぎるのと歌に対して対策が取れない(耳を塞ぎながら被害なしで戦えるほど都庁の軍勢やきらりんロボは弱くない)ので江戸川区から様子を見るしかなかった。

「しかし、ここからだと遠すぎるな……」
「戦いそのものは見えるけど、何を言ってるかはさっぱりだ。
 聞こえたら歌の餌食になって、動けなくなってしまうんだけど」

江戸川区の空の上からならきらりんロボと都庁の軍勢(フェイ・レスト)の戦いが見えないこともない。
しかし、音や言葉だけはどうしようもなかった。
激戦区東京は様々な戦闘による音が邪魔でかなり近づかないと聞き取れないのだ。
聞こえる距離まで近づければレストの口から都庁の軍勢や聖帝軍がマーダー集団でないとわかるかもしれないが、今はきらりんロボの超弱体化歌のせいで近づくこともままならない。
歌を突破しようとすればダオスレーザーやまどかレーザーが飛んでくるだろう(実際にそんなことはないが)。

今のイチローたちにわかっているのは、ロボ以外の聖帝軍がこちらがたどり着く前にどこかへ引っ込んだことと、都庁の仲間である金髪の男とどこからか現れた初音ミクみたいなロボと暴走したきらりんロボが戦っているところぐらいである。

「あのおさげがクソ長いロボットは警察組の仲間じゃなかったのか?」
「ああ、確かに……なんで都庁の奴と一緒に戦っているんだ?」

フェイはかつて都庁に滅ぼされたとされる警察組の仲間であったハズだ。
それがなぜ、都庁の者と共に肩を並べて戦っているのだろうか?
イチローチームの疑問はつきない。


「ん!? まずい!!」

その最中に何かに気づいたイチローはオシリスの背中から空中へとダイブ。
そしてきらりんロボから放たれたビームの流れ弾をバットで打って、誰もいない明後日の方向へと飛ばした。
身を乗り出し自由落下していたイチローはオシリスが長い尻尾でキャッチし、転落死は免れた。

「無茶をするな!」
「すまない……だが、今の一撃は止めないと関東もまずかった」
「生体エネルギーの集積場所になっているビッグサイトか」

ビームの向かっていた先はビッグサイトであった。
ビッグサイトは今、溜まりに溜まったマグネタイトのせいで高威力の爆撃を行うと暴走で関東が消滅しかねない危険な集積所にもなっている。
イチローが防がなくては関東にいた全ての参加者が全滅していたであろう。

「しかしそうなるとあのロボットが狂信者に乗っ取られた線がなくなるな……」
「ビッグサイトは自分たちの最大拠点なんだろ? いくら狂ってるとは言え流れ弾がいかないように気にはするだろ」

狂信者に乗っ取られているならビッグサイトの安全ぐらいは守ろうとするハズだ。
仮に事故だとしてもきらりんロボは気にも止めずに戦いを続けている。
ロボが狂信者に乗っ取られた線はないと考えるべきだろう。

「やはり聖帝軍はマーダー集団なのか?」
「せめてもう少し近づければ何かわかるかもしれねえが」

聖帝軍の正体が見えてこないイチロー。
せめて接近さえできれば何かがわかるかもしれないが、これ以上近づけないことに苛立つ6/。
そこへ一つの転機が訪れる。


767 : 『衝撃』 :2018/05/15(火) 23:19:09 6PWt1Ybw0

「あ、イチロー! 都庁の金髪と聖帝軍の岩みたいなのと話をしているぞ!?」
「本当か?」

オシリスたちが目撃したのは都庁の番人であるレストと悪魔超人ザ・魔雲天が会話をしている様子である。
彼らはきらりの暴走を止めて救う術を話し合っていたのだが、これが風評被害に騙され会話が聞こえない第三者から見ると。

「おい、なんであいつら仲良さそうに会話してやがんだ?」

都庁の軍勢と言えば警察組を全滅に追いやるほどの最悪の集団。
確認できただけでも都庁にいた都知事らや彼らを救いに来た人間たちを殺し、氷嵐の支配者は大阪の一部を氷漬けにして参加者を殺している。
警察組や貴虎たちも彼らの餌食になった。
そんな奴らとなぜ聖帝軍の者が争いもせずに会話を交わしているのか。
そして戦いの末にきらりんロボはある程度のダメージをレストに負わされた後に、レスト・魔雲天共に都庁へ転移した。
都庁の魔王によるレーザーが飛んでくるかもしれないので、都庁までは近づくことができなかった。
戦場に残されたのはフェイのみであり、イチローたちに聖帝軍の素性をこれ以上確かめる手段はなかった。



「これではっきりしたな。聖帝軍はやはり噂通りの悪逆集団。
 そして最悪の連中である都庁の軍勢と最初から組んでやがったんだ!」

それを言ったのはオシリスであった。
彼は怒りの目線を聖帝軍もいる都庁へと向けている。

「待ってくれ! 聖帝軍の岩人間もあのロボと戦っていたじゃないか!
 まだ真実を決め付けるに早すぎる!」

イチローたちは怒れるオシリスを止めようとするが、彼は聞く耳を持たない。

「ああ、確かに……だがビッグサイトへの攻撃から考えて狂信者に乗っ取られた線はねえ」
「関係ない他のマーダーに乗っ取られた可能性は?」
「いや、戦場になった墨田区には聖帝軍と狂信者、後から来た都庁の奴らしかいなかったとドラゴンネットワークにはある。
 となると考えられる線は聖帝軍の『内ゲバ』だ」
「仲間同士で殺し合った……と言いたいのか!?」

オシリスはきらりんロボの暴走を聖帝軍での内部抗争によるものと断定した。
内部抗争の理由は定かではないが、内ゲバを起こした搭乗者を粛清するために予め仲間同士であった都庁の軍勢が協力していたとも考えられる。

「だが奴らの無意味な抗争のせいで関係ないロリや立川市が犠牲になった!
 理由はどうあれ関係ない奴らを巻き添えにし、幼い子供のフリをして他の参加者を騙して助けにきた俺たちの気持ちを踏みにじった行為……万死に値するぜ!」
「ちょ、ちょっと待て、じゃあなんで警察組のロボットが都庁と一緒に戦ってんだよ!」
「おおかたあのロボットは警察組を裏切って自分だけ生き残ったんだろ。
 もしくはAIでも弄られて仲間にされた可能性もある」

オシリスは完全に頭に血が昇っていた。
多くの仲間や後輩を殺されて時間があまり立っていなかったこともあり、彼の視野はかなり狭まっているのだ。
勘違いによって生じたと自分では気づいていない義憤にオシリスに駆られていたのだ。

「うわ!」
「オシリス、何を!」
「今度は止めんなよ、イチロー」

怒れるオシリスが次に行動は長い尻尾を使って四人の仲間を動けなくし、口からサンダーフォースの発射準備を始めることであった。
黒炎竜の時は背中に乗せていたことで邪魔をされてしまったが今度は妨害されない形を予め作った。

「何をする気だ!」
「本当は都庁を撃ちたいところだが首輪の制限が効いてる今じゃ化け物ばかりのあそこには通用しないかもしれねえ。
 だが、せめてあそこに残っているおさげがクソ長いロボットだけでも破壊しておく。
 都庁と聖帝軍の戦力を削げる内に削いどくんだよ」
「やめろオシリス! やめておけ!」

オシリスはお礼参りに戦場に一機取り残されたフェイだけでも殺すつもりであった。
そんなことをすれば都庁の怒りを買うのは確定的に明らかであり、都庁の善悪のどちらにしろチームを危険にさらす危険行為であったが、今のオシリスにはそれがわからない。

「第一、自然至上主義を気取っておきながらロボットなんて使ってんじゃねえよエセエコテロリストどもが!
 くたばれ、サンダー・フォー――」


768 : 『衝撃』 :2018/05/15(火) 23:19:52 6PWt1Ybw0


怒り狂った神の一撃、気づいていないフェイに放たれようとした瞬間であった。

「デッド・ロンフーン」
「って、のぎゃあああああ!!!」

フェイを殺すことばかりに気を取られたがための不意打ち。
文字通りの意味で嵐のような強烈な一撃……それもブルーアイズの攻撃力を倍以上凌ぐ、7000ダメージの一撃がオシリスの長い胴体に直撃。
サンダーフォースは不発になると同時に、オシリスの上半身と下半身が分断されて江戸川区を大量の血で汚した。
力を失ったオシリスの上半身はそのまま地面に落下、イチローたちを巻きつけていた下半身も合わせて落下するが尻尾の肉がそのままクッションになったために仲間へのダメージはほとんどなかった。
余談だが、同時刻にフェイ・イェンがハクメンに両断されたのは同時刻の出来事であるも、状況が状況だけに誰も確認する暇がなかった。



「お、オシリス!?」

不意打ちを受けて真っ二つになったオシリスは仲間の呼びかけにも答えず、穴という穴から血を出して沈黙していた。
イチローたちの中で最悪のケースが頭を過り、襲撃した黒いゼオライマーに敵意を向ける。

「フンッ……冥王の前には神とて所詮この程度か」
「てめえ、よくも!」
「私の名前はドリスコル、クラウザーさんの復活を強く信望するものの一人だ」
「クラウザーの? クッソたれのDMC狂信者か!」
「私含む信者共をなんと言おうが構わないが、クラウザーさんにはさんをつけろよ胡桃野郎、とだけ言っておこう」

そう言って機体を地上に下ろしたのはDMC狂信者の上層部の一人、ドリスコル。
つい先ほど本拠地であるビッグサイトに向けてきらりんロボからの攻撃を確認された(イチローが防いだが)ために、完成したグレートゼオライマーのテストも兼ねて単身で出撃したのだ。

「一人で来たのか」
「ああ、他の信者がいるとこの機体の実力を図る試験にならないからな」
「試験だと……一人できたことを後悔させてやるぜ! クルミボール2号!!」

狂信者はイチリュウチームに取っては不倶戴天の敵。
そして野球仲間を殺されたことにチームの中で最も怒りを顕にしていた6/は必殺のクルミ投球をゼオライマーのコクピットめがけて放つ。

「『ディフェンドボディ』」

しかし、クルミの弾丸はコクピットを貫くことなく、両腕によって防御され腕パーツに多少のヒビを入れる程度にとどまった。

「なるほどそれなりの威力はあるようだが火力が足りなかったな」
「だがクルミボールを防いだことで!」
「おまえの両腕は使えなくなった!!」

クルミボールを防ぐために両腕を使った瞬間を狙って萃香と蛮が追撃を仕掛ける。
小柄な見た目に関わらず山の四天王と言われた鬼にしてパワーだけなら幻想郷でも指折りの力を持つ萃香。
アスクレピオスの力を使って悪魔の腕を手にしチートバッカーズとなった美堂蛮。
純粋な火力ではイチローやナッパには劣るがイチリュウチーム屈指のパワーファイター二人のの前ではいかなゼオライマーの装甲とて耐えられぬだろう。
実際、ゼオライマーは数あるスーパーロボットの中では鈍重な部類であり、回避力は決して高い方ではなかった。


そう、回避力だけならば。


769 : 『衝撃』 :2018/05/15(火) 23:20:30 6PWt1Ybw0


「『ファースト』&『タックル』」
「な……!?」

ファーストとは格闘攻撃選択時、自分が後攻になる状況でも必ず先手を取れるようになるフロントミッションシリーズの皆勤賞スキルである
タックルとは体当たりをして敵を転倒させる技であり、敵はこの攻撃を避ける事が出来ず、必ず命中する。
最初に仕掛けた萃香の拳の一撃が入る前に、萃香の肉体はあまりにも巨大すぎるグレートゼオライマーの回避不能体当たりによるカウンターを受けて後方にあったビルに体を突っ込ませることになる。

「この野郎!」
「『分身』」
「くっ!」

分身は素早く動くか敵の目を欺いて攻撃を避けるグレートゼオライマーのデフォルトスキル。
発生確率は50%だったり違ったりとまちまちだが、発動さえしてしまえば命中率100%の攻撃すら回避可能。
分身して悪魔の腕を躱すグレートゼオライマー。
だが、その先に三人目の追撃者であるイチローが蛮の背後から飛び出し、バットを持ってグレートゼオライマーに叩きつけようとする。

「まだだ!」
「なかなかの連携だが、甘い。 『フットワーク』」

バットの威力はレーザービームほどはないが、それでもメジャーリーガーの打撃だけに直撃すればゼオライマーの重装甲とて破壊しただろう。
分身についてもイチローの動体視力なら追えており、直撃かと思いきや今度は敵の格闘攻撃を絶対に回避するスキル、フットワークによる身躱し脚にて躱されてしまう。

「入ったと思ったのに!」
「今度はこちらの番だ。トゥインロード&『バラージュ』」

攻撃を尽く弾かれ隙が生まれたイチローたちに対し、ドリスコルは弾丸をばら撒いて周囲の敵を一辺に攻撃できる射撃スキルであるバラージュで攻撃を仕掛ける。
ゼオライマーの腕にはバラージュに必要なマシンガンなど装備されていない。
そのため、バラージュの代わりにゼオライマーを分身させてプラズマ火球光弾と冷凍光線を同時に発射することで発生した対消滅エネルギーでイチローたちを葬らんとする。

「死ぬが良い」
「!?」

分身して2体になったゼオライマーがぐるぐると回転し、熱と冷気による破壊エネルギーを周辺にバラまく。
その凄まじさは嵐の如く、江戸川区にあるビルは一瞬で全て瓦礫に変わった。


「……ほう、あの攻撃を受けてまだ生命反応がある。なかなかしぶといな」
「ハァハァ……助かった6/」
「クルミボール防御技、クルミシールド……これは無数のクルミを圧縮して強靭な盾を作り出す……クルミが多ければ多い程効果が増すんだ!」

トゥインロードは6/がクルミを投げて作った盾により、6/で一枚、イチローと蛮に一枚、萃香に一枚ずつ使うことで死を免れた。
身代わりになったクルミの盾が灰になって崩れ落ちる。

(……だがまずいぞイチロー、今のでクルミを使い切っちまった。
 そもそもクルミシールドでも……ダメージを完全に防げるわけじゃねえ、ぐっ……)
(蛮と萃香は生きているが……もう戦えそうにないな)

代償として6/はメインウェポンであるクルミを全部失ってしまった。
しかもクルミの盾があっても攻撃力が高いゼオライマーのダメージを全て防げるわけではなく、衝撃などによる殺しきれなかった余剰ダメージをイチローたちは受けることとなった。
イチローと6/は既にボロボロ、攻撃を防ぎきれなった蛮と萃香はダメージを受けて気絶していた。
むしろイチローたちのタフネスさとクルミがあと数個足りなければ、今の一撃で全滅していたであろう。


770 : 『衝撃』 :2018/05/15(火) 23:21:07 6PWt1Ybw0


(素晴らしい……流石はグレートゼオライマー。そしてDMC狂信者驚異のメカニズムよ。
 完成に至るまでハザマや三島、カギ爪団を犠牲にしてまで雌伏の時を待った甲斐があった)

ゼオライマーのコクピットの中でドリスコルは思う。
ドリスコルの実力とヴァンツァー「レイブン」の性能ではチートキャラに到底太刀打ちできるものではなかった。
上層部に選ばれたのもエリート軍人故に狂信者軍団を指揮・運営ができるからであり、他の下っ端は戦闘力はあっても指揮スキルがなかったのだ。
戦闘力自体はロボット有りでも幹部最弱と言えた。
そこでモブにより発見されたグレートゼオライマーを手に入れた。
だがこれだけでもチートキャラの上をいくイチローのような理不尽キャラには勝つことは難しい。

だが、そこは人員だけなら腐るほどいる狂信者。
サーフを始めとした技術者が揃うことで、ドリスコルとグレートゼオライマーは超理不尽級の存在へと昇華した。
具体的にはグレートゼオライマーは狂信者が持ちうる最新鋭技術を注ぎ、元々高性能な機体が更に強化。
ドリスコル自身も戦闘シミュレーターを使うことで経験値や熟練度を獲得し本来は持ち得ない強スキルを全て獲得した。
ちなみにシミュレーターは5thに登場したものと同じで、いくらやっても時間が進行しない。
つまりフロントミッション版の精神と時の部屋を使った結果、ドリスコルは1〜5全てのスキルを手に入れたのだ。
本来、「タックル」「フットワーク」「バラージュ」は初代フロントミッションには無いスキルだが、これらも狂信者なりの技術革新により手に入れたのである。

強力なグレートゼオライマーとドリスコルが完成するまでに長い時間と多大な犠牲を要したが、その見返りとしてイチローたちを手も足も出ないほど追い込んでいた。


「ん?」
「あれは?」

そこでゼオライマーのモニターとイチロー・6/の視界に空飛ぶ巨大物置が目に入る。
三人は直感であれに人が乗っていることを察した。
物置はどうやらこちらとほど近い場所に接近しているようだ。
狂信者仲間の報告ではある対主催集団を追い詰めるも突然現れた物置によって取り逃がすということがあった。
生贄を匿う存在は狂信者にとっては敵である。

「そうだな……次は雷の力をあれで試してみるか」
「待て! ドリスコル!!」

ゼオライマーが物置の方を向いて何をするか察したイチローは剛速球を敵に投げつけるが、分身で躱された直後に物置の前に転移。
しかも転移した場所はちょうど物置をイチローの攻撃からの盾になるようにしていた。

「さあ、レーザービームを投げられるものなら投げて見ろ」
「しまった、あの位置じゃ……」
「卑怯者ッ!!」

レーザービームの直撃ならばいかなゼオライマーとて仕留められるだろう。
特に空中にいるのならば地上の被害を気にする必要がないので投げることを躊躇する必要はない。
だが人質を取られた場合は別であり、ゼオライマーに向けてレーザービームを投げた瞬間、物置も一緒に蒸発してしまう。
投げれば多くの無関係な命が失われる。

「私を殺せるチャンスかもしれなかったのに…イチロー、その優しさが命取りだ」
「やめろ、やめるんだッーーー!!!」

イチローの一瞬の躊躇を見逃さず、ドリスコルはゼオライマーに無慈悲な神雷たるプロトンサンダーを放った。
瞬間、物置の三分の二が蒸発。黒煙を上げて地上に墜落。
まだ墜落する前の物置から部品と共に燃え残った避難民やクローントルーパー『だったもの』がイチローたちの頭上に降り注いだ。
蛮と萃香を抱えて6/とイチローは急いで落下物が落ちない場所へする。


「ひでえ……俺のいた大正義巨人軍もマーダーだったが、こんなえげつない殺し方はハラサンも望んでねえ!!」
「よくも……今ばかりはスポーツマンシップとかは関係ない。僕はおまえを殺すことしか考えられないぞ!!」

6/だけでなくイチローでさえドリスコルのやり方には怒髪天ものであった。
しかし、二人の怒りさえ届かないほどの恐怖……瓦礫と死体の山の上に立ち絶望を振りまく黒い巨人はまさに魔王をも越えた冥王であった。


771 : 『敗北』 :2018/05/15(火) 23:21:57 6PWt1Ybw0

時間は戻り、現在。
物置やエピオン、オシリスと言った移動手段を失った二つの対主催集団が生き延びるにはグレートゼオライマーを倒すしかなかった。
ゼオライマーは次元連結システムを使った転移能力を使えるので徒歩程度ではどこまでも追ってこれるからだ。
そこで利害の一致から二つの対主催が手を組むのは当然と言えた。
……だが相手はあまりにも強大であった。

「クリスちゃんたちの仇討ちでぃす!! 胡桃船殺し(ナッツ・ボートキラー)!!」
「祈りの弓(イー・バウ)!!」
「撃ち方始め」

胡桃の投擲による暗殺技、正確無比な毒の矢、クローントルーパー軍団によるレーザー銃の一斉射撃がゼオライマーに浴びせられる。
だが、そのどれもがゼオライマーのバリアに弾かれる。

「効果なしか」
「そもそも俺とオチビちゃんの能力は暗殺向け、レックスたちクローントルーパーは手数と連携重視で一撃の火力が低い……相性が悪すぎるぜ!」
「せめてクリスちゃんとゼクスさんが生きていたら……」
「もう終わりか? では反撃をさせてもらう」

ゼオライマーの目の前に「地」の文字が現れ、同時に局所的な大地震が発生する。

「うおおお!」
「散開ッ! 散開だ!」

ドリスコルは大地震を発生させ、一辺に対主催集団を葬ろうとするアトミッククェイクを発動。
同時に地割れや尖った石柱が地中から現れる。
イチローやロビンたちは地震が発生した現場から退避するか反射神経を持って躱していくが、多くのクローントルーパーがそうはいかず、40人近いトルーパーが石に貫かれるか奈落の底に落ちて犠牲になった。
さらにドリスコルは容赦なく核ミサイル(戦術核)の雨を降らすが、イチローと6/がバットを使って打ち返し、全て上空で爆破させて不発に終わらせた。


「ひどい……なんでこんなことができるの……」

その戦場の中でツバサは次々と死にゆく者たちに咽び泣く。
救わなければいけない命が目の前にあるのに何もできず、そして慈悲の欠片もなく殺していくドリスコルにはどうして残酷になれるのか彼女にはわからなかった。
ドリスコルの中には先ほどのクリスのような混沌の因子もナノマシンによる汚染もない……すなわち、本当に自分の意思で殺し合いに乗っているのだ。

「ツバサさん! 悲しんでいるのはわかりますが戦闘力の低い私たちは避難を――」
「遅いな」
「「!?」」

悲しみで足を止めていたツバサの手をLが引っ張ろうとした寸前に、ツバサとLの目の前にゼオライマーの巨体が転移してきた。
そして、ツバサを助けようとしたLを巨大な鉄の足でグシャリと踏み潰す。

「ぐぁ……ッ!!」
「Lさん!」

踏まれたLは、まだ生きてはいた。

「助けに行かないと!」
「待っていろ!」

仲間のピンチに急いで駆けつけようとするイチロー、6/、シマリス、レックス、クローントルーパー10名。
遅れればLとツバサの命が確実に奪われるという判断からであった。

「待て!こいつは罠だ!!」

ただ一人、直感で危険を察知したロビンを除いて。


772 : 『敗北』 :2018/05/15(火) 23:22:42 6PWt1Ybw0

そしてロビンが察知した通りに、グレートゼオライマーは各所の球体から今まで以上に不気味な光を発した。

「一箇所に集まってくれてありがとう。
 これでグレートゼオライマー最強の兵器の威力を試せるぞ」
「なに……?!」

イチローたちは自分たちがドリスコルの罠に嵌ったと理解した。
Lをわざと即死しない程度に踏んでおくことで助けようとした者たちをかき集めて一網打尽にしよういうのだ。
ドリスコルが放たんとしているのは「烈メイオウ」。
次元連結システムにより収集されたエネルギーを無尽蔵に放出し都市一つを消滅させるほどの威力がある。その凄まじい威力ゆえ、通常はエネルギーフィールドを形成し、一点集中させて放出するのがメイオウ攻撃であるが、烈メイオウはその強化版であり、いかなイチローたちと言えど喰らって生きてはいられない。

「対抗できるのはレーザービーム……だが」
「威力が高すぎるのも問題だなイチロー……私は勝利に繋がるならクラウザーさん以外は躊躇なく撃てるがね」

同じ都市破壊級の威力を持つレーザービームなら烈メイオウを相殺もしくは打ち破って撃破できる可能性があるが、味方であるツバサとLが確実に犠牲になる。

「やむを得ません、投げてくださいイチローさん……ここで倒さないと勝機が……」
「撃てるわけがない、奴には味方を犠牲にする勇気など――」

他に打つ手がない以上、自分たちの死も覚悟の上でLはイチローにレーザービームを投げるように頼むが、ドリスコルは人命を優先させるイチローには投げられない。
ドリスコルはそのように思っていた。

「それは思い上がりだドリスコル!」

だがイチローはレーザービームを放った。
投げられた野球ボールが光を発し、物凄い速さでゼオライマーに向かっていく。
烈メイオウ攻撃発射体勢なので流石に分身や回避スキルは使えないという判断だが、直撃すれば確実にLとツバサは死ぬ。
ドリスコルを倒したいがためにLたちを見捨てたのかとここにいる全員は思った。

「いや、あれは…ネオ・レーザービームだ!」

否、大正義巨人軍の選手としてイチローとも戦ったことがある6/を除いて。

「こ、これは……!!」

レーザービームがゼオライマーのコクピットに繋がるパーツに直撃。
ゼオライマーの装甲を溶かしていくが、爆発は発生しない。
威力を調整し味方に損害を与えないレーザービームの進化系は味方を殺さずに勝つためのイチローの必殺の奥の手であった。

「いける!」
「がッ!!」

ゼオライマーの装甲を溶かした野球ボールはコクピットを守る装甲を溶かして穴を作り、同時にレーザーによる光が消える。
レーザービームの威力でゼオライマー自体を破壊すると誘爆で足元の二人が巻き添えになってしまうので威力を大幅に減衰する必要があった。
それでも人を殺すには十分な速度を持った殺人級はドリスコルの胸にめり込ませ、常人では致命傷になる窪みをつくらせた。

「やったぜ!」
「痛てててて、なんとかなったか……」

敵を倒し、歓喜の声を最初にあげる6/と安堵の溜息を出すイチロー。
ゼオライマーの足元にいるLたちを助けに行く物置の三人組。

「は、はははははは」

対して乾いた笑い声を上げるドリスコル。

「ざまあみろでぃす!」
「あの世で社長に詫びやがれ」
「待て、何か様子がおかしい」

コクピットの穴から見えるドリスコルは笑っていた。
その目にはまだ生気が宿っている。

「惜しかったな……頭を潰すか、コクピットを蒸発させるかすれば良かったものを」
「なんだと!?」
「イチロー、あれ!」

驚きの光景がゼオライマーの身に起こっていた。


773 : 『敗北』 :2018/05/15(火) 23:23:32 6PWt1Ybw0

「ゼオライマーが再生している! それだけじゃないドリスコルも!?」
「リジェネ……自己修復能力!?」
「ご名答だ。しかもゼオライマーは『搭乗者も』修復させる力を有していたのだ」

次元連結システムによる自己修復機能。
それによりイチローに貫徹させられたゼオライマーの装甲がみるみる内に再生していき、同時にドリスコルの致命傷になっていた胸の負傷も治って死に体から一気に健康体に戻った。

「馬鹿な、倒せたと思ったのに」
「所詮、仲間や己を犠牲にできない弱者たちはその程度のものよ。
 ……試験に付き合ってくれた返礼として烈メイオウでレ〇プしてあげよう」

ドリスコルの言葉と共にゼオライマーの修復は終わり、中断された攻撃発射準備が再開された。
機体の前に「烈」の字が浮かび上がり、あとは両の拳をぶつけるだけでイチローたちの全滅が確定した。

『メェェェイ――』
「クッ」

レーザービーム投球ももう間に合わない。
目もくらむような強い光の中、イチローは最期を覚悟した。



しかし、最期の時はなかなか訪れなかった。

「……あれ?」

見るとゼオライマーの球体から光が消え、合わせられようとした両拳も寸前で止まっていた。

『みんな! 逃げて! 今のうちに!』
「カレン、貴様!!」

次にゼオライマーの中から聞こえたのは女性の声とドリスコルの怒号。
ゼオライマーを動かすのに必要なアンドロイド・氷室未久の体を持っていたカレン・ミューアがイチローがネオ・レーザービームでダメージを与えたのがきっかけで一時的に自我が戻ったのだ。
事情を知らないイチローたちはゼオライマーにはドリスコル以外の搭乗者がいて、しかも無理矢理搭乗させられていると解釈した。

「このメス豚め、音量最大!」
『きゃああああああああああああ!!……』

ドリスコルはカレンの離反に対し、彼女が大嫌いなクラウザーの歌をラジオ最大音量で流して自我を失わせて従わせる。
最初からそうしろとツッコミが入りそうだが、ラジオを最大音量にしてしまうとコクピットにも音が充満して大事な警報や通信が聞こえなくなってしまう上にドリスコルが聞き入って戦闘に集中できなくなってしまうのだ。



カレンが生み出した隙をある男は見逃さなかった。

「先ほどは遅れを取ったが、今度はさせん!」

江戸川区の外側から黒と紫のガンダムが、突如として戦場に現れ、高速でゼオライマーに向かっていく。

「あれはガンダムエピオン! ゼクスさん!?」

エピオンはコクピットが半分剥き出しのような状態だったが、その勇姿は健在でありシマリスを始めとする物置組を喜ばせた。
ゼクスも物置撃墜の際にいくらか手傷を負っていたようだが、確かに生きていた。

「これを使わせてもらうぞ! ウルトラストップウォッチ!」

ゼクスはゼオライマーが機能を取り戻しきる前に、5秒だけ時を止めるウルトラストップウォッチを使用。
冥王の機体と言えど時を止めたことによる攻撃は対応できず、エピオンのヒートロッドを避けられない。
カレンのせいで次元連結システムの再起動も遅れた結果バリアが張れないので、直撃を受けた。


774 : 『敗北』 :2018/05/15(火) 23:24:16 6PWt1Ybw0

「今の一瞬の内に何が起きた!?」
(チッ、浅い!)

直撃を与えて装甲に僅かなダメージを受けたものの、エピオンもこれまでのダメージのせいでヒートロッドに規定以上の出力が出ず、敵を倒すには至らなかった。
一方、衝撃でたたらを踏ませてLとツバサから退けることには成功する。

「こいつは私が抑えている内に早く! ベルナドット!」
「あいよ!」

遅れてゼクスに続くように、ベルナドットがスピーダーに乗って戦場に現れた。
その後部には気絶したクリスを乗せている。

「ベルナドットおじさんにクリスちゃんも生きてたんでぃすね!」
「ああ……命からがら、な」

物置が墜落する寸前、イナバ社長の咄嗟の判断で格納庫のハッチが開き、格納庫が吹き飛ぶ前に脱出した。
ベルナドットはゼクスからの警告を聞いてクリスを連れて医務室から慌てて飛び出し、それによってゼオライマー
から居住ブロックへの直撃を避けることができた。
それでも宙に放り出されるハメになったが、そこをゼクスのエピオンがキャッチし一命を取り留めたのだ。

「それよりも早く、ここから脱出するぜ」
「逃げるのか?」
「胡桃臭い兄ちゃん、悪いけど今の俺たちじゃひっくり返っても黒いガラクタには勝てないってのがゼクスの旦那の判断だ。
 悔しいだろうが今は逃げるしかねえ。
 ところでレックス、おまえこの円盤の操縦はできるか?」
「ミレニアムファルコンか? できないことはないが」

ベルナドットはエピオンがゼオライマーを抑えている内に、ホイポイカプセルを投げて宇宙船であるミレニアムファルコンを出す。

「ゼクスの旦那によると、こいつの機動力ならあのガラクタを撒いて逃げられるらしい」
「本当か? じゃあすぐに浦安の遊園地に向かわせてくれ、そこに仲間がいる」

ベルナドットは生存者を載せるように指示をし、レックスと気絶した蛮、萃香、クリスを背負ったクローントルーパーがまず船に乗った。


「Lさん……」
「Lの旦那、すまねえ……こいつは助からねえや」
「そうですか……わかっていたこと、ですが……」

Lはゼオライマーに踏まれた時点で下半身を潰されており出血も多く、とても助けられる状態ではなかった。
涙を流すツバサと、涙は流さないが静かに一瞥するベルナドット。

「に、荷物になるので私の屍はここに、置いていってください……」
「……そのつもりだ」
「ただ、これだけは必ず持っていてください……」
「ディパック?」

虫の息のLはディパックをベルナドットに渡す。
それは手榴弾などの武器の他に、TCホール観察日記やイナバ社長との会話で考察したネット掲示板「カオスロワちゃんねる」の疑惑やもしもの時の対処法を綴ったメモであった。

「後で必ず……見てくださ……――」
「……ああ、わかった。旦那はもう眠りな」

最期の力を振り絞って可能な限りの情報をベルナドットに託し、Lは果てた。
傭兵は名探偵の開きっぱなしの瞼をそっと閉じ、安らかに寝かせた後にツバサを連れて船へと走った。

エピオンは未だにゼオライマーと格闘を続けていた。
ビームサーベルとゼオライマーの腕がぶつかり合う。
その横でイチローと物置の残党組生存者は全てミレニアム・ファルコンに乗った。
船のエンジンもかかり、あとは戦域から脱出するだけであったが。

「旦那! 全員船に乗ったぞ、アンタも早く……」
『……いや、私は残る』

ベルナドットの呼びかけを拒否した。
通信越しのゼクスの言葉に生存者たちは騒然とする。


775 : 『敗北』 :2018/05/15(火) 23:25:10 6PWt1Ybw0

「おい、なんのつもりだ! 死ぬぞ!」
『死は百も承知だが、誰かがコイツを足止めなくてはミレニアム・ファルコンが墜される』
「そんなことを許すわけにはいかない! ゼクス、君とは今さっき会ったばかりだけど、もう十分に仲間だ。
 僕も戦場に残って戦うから待っていろ!」

ゼクスの献身に反対したイチローはすぐに船のハッチを開けて、ドリスコルと戦おうとするがゼクスは待ったをかけた。

『イチローと言ったな。
 君の気持ちはとても嬉しいが、これが最も犠牲者を少なくする手段なんだ。
 エピオンに搭載された未来を見通せるゼロシステムもそう言っている』
「しかし……」
『首輪も外れていない君ではグレートゼオライマーは……ドリスコルは絶対に倒せない。
 例えレーザービームが使えてもこの場で勝てる可能性は0%、ゼロはそう告げている』
「ぐぬぬ……」

今の自分ではドリスコルに勝てないのは理解している。
頭ではわかっているのだが、仲間を見捨てて逃げろという答えがイチローには受け入れ難かった。

『……しかし、だ。
 ゼロシステムはここで君やベルナドットを逃がした場合、ドリスコルや狂信者に勝てる可能性も示している。
 より多くの人々を救うために、今は私を踏み台にして逃げるんだ!』

イチローとゼクスが問答をしている内に、ゼオライマーの球体に光が再び灯る。
カレンの暴走によって一時は停止した次元連結システムが再起動したのだ。

『クッ、一刻の猶予もない! 早く飛び立つんだレックス!』
「……了解、離陸します」

レックスはゼクスの願いを聞き、ミレニアム・ファルコンを千葉県の浦安に向けて飛び立たせる。

「旦那!」
「ゼクスさん!」
『ベルナドット、シマリスとクリス、それからツバサを頼む。イチローチーム、幸運を祈る』

最後に期待を向けた微笑みを仲間たちに向けてゼクスは通信を切った。

「逃がさん」
「させるかああああ!!!」

ドリスコルはゼオライマーの攻撃でミレニアム・ファルコンを撃墜しようとしたが、ゼクスがビームサーベルを持って突貫し、命ある限り食い止めようとする。

「邪魔をするな!」
「貴様のグレートゼオライマー、一見すると強力だが欠点があるとゼロは教えてくれた!
 時間停止系の攻撃は防げないのと、攻撃が強力な分、エネルギー切れを起こしやすいこと!」
「!!」
「その反応、図星のようだな」

グレートゼオライマーは高性能な上に攻撃一つ一つが非常に強力だが、エネルギーを大量消費してすぐにガス欠になりがちなのだ。
次元連結システムでエネルギー自体は無限に供給できるが、現在この世界は次元をも狂わすTCに汚染されているせいか一度に大量のエネルギーは補給できない。
スパロボのように一分間に三割程度の回復が限界であった。
仮に無限に供給できるものなら生体マグネタイト集めなくてもエネルギーが手に入るのでクラウザーさん復活の目的も果たせたであろう。
無論、ドリスコルも乗る前からカタログを読んでそれに気づいていたが、平静を装って隠していた。


776 : 『敗北』 :2018/05/15(火) 23:26:31 6PWt1Ybw0

「結果、おまえは今、物置を落とした雷以上の攻撃はできず、一発でも撃てば一分間はどんな攻撃もできなくなり船を追うこともできなくなるんだ」
「……なるほど、大した読みだ。だが……『タックル』!」
「ぐはッ!」

ドリスコルは格闘戦を仕掛けてきたエピオンに対し、回避不能のタックルを仕掛けて転倒させる。
そして倒れたエピオンを背面から踏む付けて動けなくした。
重量級のゼオライマーにエピオンが耐えられず、コクピットを押しつぶしてゼクスを圧迫し、血を吐かせた。

「がはッ」
「無駄な足掻きだったがこれでデットロンフーンぐらいは撃てる、あの円盤は落とさせてもらうぞ」

風の技であるデットロンフーンはグレートゼオライマー最弱の技だが、それでも飛び立ったばかりのミレニアム・ファルコンを墜とすには十分な威力を持っていた。
エピオンはゼオライマーに踏む付けられて動けず、さらに半壊状態で仲間を守ることなどできない。

「いや、これでいい……」

と思われた時、エピオンが急に光だしたのをドリスコルは目撃する。

「何!? まさかこれは――」


――命を投げ打った自爆、それがゼロシステムとゼクスが仲間を守るために出した答えであった。
大爆発がゼオライマーを包み込み、それと同時に嵐の一撃が放たれたが、それはミレニアム・ファルコンを掠めることも外れていった。


「ゼクスさぁーーーん!!」

空飛ぶ円盤の中で、ゼクスの壮絶な最期を目の当たりにしたシマリスは泣いて叫び声をあげた。
しかしゼクスの犠牲によってイチロー以下のメンバーは助かり、希望の船は無事に東京から飛び立つことができた。
ゼオライマーも機動性とエネルギー切れの問題で、逃げる船を追ってくる様子はなかった……


(オシリス、みんな……すまない……)

多くの仲間が死に悲しみが支配する船の中でイチローは特に悔しさで胸が一杯であった。
聖帝軍については観察しかできない上でオシリスや仲間になれるかもしれない人々を多く失った。
これは敗北である。
イチローと物置組はドリスコルたった一人に負けたのだ。

(だが、みんなの犠牲は無駄にしない……首輪を外してもっと強くなって、必ずDMC狂信者は倒す!)

イチローはただ一人、決意を改めた。

---


777 : 『敗北』 :2018/05/15(火) 23:27:40 6PWt1Ybw0

「やってくれる……イチローたちの追跡はもう無理か」

ゼオライマーが自爆によって得たダメージは僅かであった。
元が重装甲であるのとバリアによってダメージを軽減され、この損害も自己修復機能で程なくして戻るだろう。
しかし足元で自爆されたせいでデットロンフーンの射線を外されてしまい、イチローたちを乗せた船を逃がした。
船は既に見失っており、ただでも移動力の低いゼオライマーが機動性に優れたミレニアムファルコンを追うのは流石に骨が折れる。
残念ながらイチローたちは逃がすしかなかった。

「だが、良いデータは取れた。
 この機体も万能ではないことはよくわかった。
 次の都庁襲撃には何人か護衛が必要だな」

今の戦いで機体に対していくつかの弱点を把握したドリスコルは脳内で対都庁作戦の練り直しを考える。
そして、残敵はいないかと視界を泳がせた時、ゼオライマーの足元で小さなボールが転がっているのが見えた。

「あれは……シルフカンパニーのマスターボールじゃないか」

それはエピオンが自爆した瞬間に運良く燃えることのなかった最強の捕獲装置マスターボールであった。
ちなみにドリスコルは狂信者仲間からマスターボールの噂を聞いており、使用方法も理解していた。
さっそく降りて、ボールを拾い自分のディパックにしまうドリスコル。
何かに使える――それもこれから巻き起こる対都庁との最終作戦には特に使えそうな気がしたのだ。

ドリスコルの拾い物はもう一つあった。
今度はゼオライマーを使って腕に持って回収する。

「ぐふッ……ロ、ロリがお花畑を走ってる……」

そんな寝言をたれていたのは不意打ちで死んだと思われたオシリスであった。
彼の下半身は千切とんだが、神故の生命力により生きていたのだ。
……と言っても、ほっとけば出血で死ぬ怪我をしているが。

「確か、こいつの特殊能力は……ブレインデバイスにすれば使えるかもしれん」

辛うじて生きていたオシリスをビッグサイトまで持っていこうとするドリスコル。
ここでトドメを刺さないのは慈悲ではない。
カレンのような生きた脳を使ったコンピューター、ブレインデバイスの素材にするためにビッグサイトまでは生きてもらいたいだけなのだ。


こうして敵となる一つの対主催組織及び大量の避難民粛清。
機体の実戦データ、マスターボール、そしてオシリスを手に入れたドリスコルはエネルギーが少し回復したゼオライマーを転移させながらビッグサイトへ一時帰還する。

「おお、クラウザーさんもお喜びのようだ」

その際、沖縄からの異常気象も目撃したが、彼はあれが死者スレで復活を待っているクラウザーさんの所業と信じ、自分たち狂信者を祝福していると勝手に思い込むのだった。



【イナバ制作所社長@現実? 死亡】
【L@DEATH NOTE 死亡】
【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW  死亡】


【二日目17時00分/東京江戸川区】

【ドリスコル@フロントミッション】
【状態】健康、首輪解除、レベル・全熟練度MAX
【装備】グレートゼオライマー@スーパーロボット大戦J、死にかけオシリス
【道具】支給品一式、カレンデバイス(氷室美久ボディ)、マスターボール@ポケットモンスター
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
0:一度、ビッグサイトに戻る
1:都庁攻略部隊を指揮する
2:都庁が体勢を立て直す前に攻略できる作戦を考え、進軍する
3:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する 
4:マスターボールとオシリスの脳は使えそうだな
※次元連結システムは氷室美久のボディにカレンデバイスを入れることで制御が可能になりました
 またカレン・ミューアの人格も上書きされました
 本人は善人ですが、極度のクラウザーアンチでDMCの曲を流されると人格が引っ込んで人形のようにドリスコルに従ってしまいます
※フロントミッション1〜5のスキルを網羅しています


【オシリスの天空竜@遊戯王デュエルモンスターズ】
【状態】ダメージ(死亡寸前)、下半身喪失、昏睡状態、ロリコン、とても深い悲しみ
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:ロリにモテるために世界を救う予言の謎を解明し、イチリュウチームも優勝させる
0:(昏睡中)
※オシリスの見立てによると魔力(生体マグネタイト)が集中しているビッグサイトへの直接攻撃は大爆発を招き、東京を巻き込む危険性があるそうです
※下半身がなくなっていますが、神故の生命力の強さでギリギリ命を保っています
※ドリスコルにより拐われました。救助が遅れるとブレインデバイス(殺害)にされてしまう可能性があります


778 : 『敗北』 :2018/05/15(火) 23:28:26 6PWt1Ybw0





【イチリュウチーム&物置残党組】

【イチロー@現実?】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中) 、非常に強い悔しさ
【装備】野球道具
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチリュウチームを優勝させる?
0:今は浦安の遊園地に帰還する
1:DMC狂信者を倒すために多くの仲間を集める
2:邪魔をしてくるDMC狂信者を倒すまでは試合は保留
3:予言に対しては慎重に考える
4:DMC狂信者の本拠であるビッグサイトを攻略したい
5:主催者は予言のことを知っているんだろうか?
6:オシリスやゼクスたちの犠牲を無駄にしない
※ネオ・レーザービームは使用すると腕に多大な負担がかかり、あと二球以上使用すると選手生命が終わる危険があります
 いかなる回復手段を持ってもこれは回復できません
※オシリスが死んだと思っています(他のチームメイトも同様)


【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、怒りと悲しみ
【装備】胡桃切れ
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:新生したイチリュウチームで予言の完遂を果たす
1:ハラサン……ありがとう
2:大正義を忘れない
3:目立つことも忘れない
4:予言に対して盲信気味
5:DMC信者は絶許
6:なんかシマリスから俺と同じ臭いがする


【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(大)、気絶中
【装備】サングラス
【道具】支給品一式、マスターソード、魔竜石、リザイアの書、不明品
【思考】
0:(気絶中)
1:DMC狂信者、その他マーダーと達と戦う
※邪眼を一回使いました


【伊吹萃香@しゅわスパ大作戦】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(大)、気絶中、強い悲しみと怒り
【装備】なし
【道具】支給品一式、日本酒×50
【思考】
基本:イチリュウチームについていく
0:(気絶中)
1:KBTITとかいうクソホモは忘れる
2:なんかロワが始まってから私全然活躍できてなくね!?


【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(小)、完全TC耐性、悲しみ
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:テラカオスの因子を集める。
0:今はイチローたちについていく
1:どうして人はあんなに残酷に殺しあえるんだろう……
2、Lさん、ゼクスさん……!
※ディーヴァが持ってほとんどの能力を失い使用不可になっています。
※一度、テラカオスになったことにより完全なTC耐性を保持、テラカオス候補者のTCを回収できます。
※死んだことによりディーヴァの性格を引き継いでいません、これからどうなるかは不明。
※記憶を大半喪失していますが、生みの親の名前、風鳴翼が捕食で世界を救おうとしたこと、都庁での悪い思い出、沖縄で敵が現れ敗北したこと、夢で出会った男(才人)のことは朧げながら覚えています。
※仮称としてツバサという名前が与えられました


779 : 『敗北』 :2018/05/15(火) 23:29:01 6PWt1Ybw0


【ロビンフッド@Fateシリーズ】
【状態】ダメージ(大)、疲労(小)
【装備】祈りの弓、顔のない王。
【道具】支給品一式、予言が書かれた古文書、他不明
【思考】基本:死亡した社長にのためにも動く。
0:出来る限り人は助けたい
1:今はイチローチームについていく
2:ベルナドットとは仲良くなれそうだ
3:自然は自然でもヘルヘイムはちょっとやりすぎだぜ
※イナバ制作所社長の支給品を受け継ぎました。


【シマリス@ぼのぼの】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中) 、悲しみで涙が止まらない
【装備】胡桃×いっぱい
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:仲間と共に生き残る
0:今はイチローたいについていく
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
4:クリスちゃんとは友達でぃす!
5:拳王連合軍、悪い奴じゃなければ良いんですが
6:ゼクスさんたちには死んで欲しくなかったでぃす……
7:6/さんを見ているとなぜかホッとする


【レックス@スターウォーズシリーズ】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、ミレニアムファルコンの操縦者
【装備】ブラスター・ピストル、ブラスター・ライフル、装甲服、ヒラリマント
【道具】支給品一式、そのほか不明、クローントルーパー×10、ミレニアムファルコン
【思考】基本:無害な人々の保護
0:コマンダー不在だが、今はとにかく仲間を浦安の遊園地に送り届ける
1:ダイジョーブ博士を見つけられなかったのが気がかり。
2:コマンダー社長……


【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】気絶、変身解除
【装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:(気絶中)
1:シマリスの無事を祈る
2:翼を見つけ出し食人について問いただす
3:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
4:もっと強くなりてぇ
5:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
6:拳王連合軍にはちょっと懐疑的
※テラカオス化が進行していましたがディーヴァの残滓によって回収され正常に戻りました。
※気絶しているので状況が把握できていません


【ピップ・ベルナドット@HELLSING】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)
【装備】自動式拳銃×2、M16
【道具】支給品一式、スピーダー、手榴弾×25、ノートパソコン、TCホール観察日記、カオスロワちゃんねるに関する考察メモ
【思考】基本:バトルロワイヤルを生き残る
0:ゼクスやLたちの仇を取ってやるためにも今は逃げる
1:生存確率が上がりそうなので今はイチローについていく
2:拳王連合軍と組むのは有りだと思っている
3:正直、ドリスコルには勝てる気はしないが……


780 : 名無しさん :2018/05/15(火) 23:29:24 6PWt1Ybw0
投下終了です


781 : 名無しさん :2018/05/15(火) 23:31:51 3sZ2TdiY0
投下乙
物置組にもついに死者が、色々と重要なメンバーが死んだのは痛い


782 : 名無しさん :2018/05/17(木) 09:38:26 50eQcMLE0
誰が残っているのかわからないという意見があったので残存している参加者を名簿風にまとめてみた

☆都庁同盟軍

【都庁の軍勢】(現在地:東京新宿都庁)
〇ダオス/〇レスト/〇氷嵐の支配者/〇アイスシザース/〇ウォークライ/〇フォレストセル/〇鹿目まどか
〇暁美ほむら/〇美樹さやか/〇アルルーナ/〇桑原和真/〇エリカ/〇歪みし豊穣の神樹
【影薄組】
〇小野塚小町/〇黒子テツヤ/〇東横桃子/〇赤座あかり/〇日之影空洞/〇オオナズチ
【歌組】
〇渚カヲル/〇音無小鳥/?フェイ・イェンHD(生死不明)
【聖帝軍 本隊】
〇サウザー/〇金色の闇/〇円亜久里/〇イリヤスフィール・フォン・アインツベルン/〇イオリ・セイ
〇アリーア・フォン・レイジ・アスナ/〇高津臣吾/〇犬牟田宝火/〇ザ・魔雲天/〇諸星きらり

【聖帝軍 先遣隊】(現在地:静岡県)
〇葛葉紘太/〇ふなっしー/〇チルノ/〇霧切響子/〇キュゥべえ/〇苗木誠



☆イチリュウチーム

【聖帝軍救助班】(現在地:東京江戸川区)
〇イチロー/〇◆6/WWxs901s氏/〇美堂蛮/〇伊吹萃香
【物置組残党】
〇テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』/〇ロビンフッド/〇レックス/〇シマリス/〇雪音クリス
〇シマリス/〇ピップ・ベルナドット

【リオレウス追跡班】(現在地:東京湾)
〇ナッパ/〇サラマンディーネ/〇ソウルセイバードラゴン

【待機班】(現在地:千葉県浦安遊園地)
〇ラミレス/〇DAIGO/〇ウルトラマンゼロ/〇ダイゴ/〇白光炎隼神ホルス/〇ギムレー

☆イチリュウチームに合流予定?
【穴狸組】(現在地:東京都渋谷)
〇アナキン・スカイウォーカー/〇八神はやて/〇ブリーフ博士/〇ユーノ・スクライア/〇高町なのは


☆拳王連合軍
【本隊】(現在地:神奈川県横浜港)
〇ラオウ/〇MEIKO/〇平等院鳳凰/〇プニキ/〇川崎宗則/〇クロえもん/〇謎のヒロインX
〇ロックマン/〇翔鶴/〇上条当麻/〇シャドーマン/〇ディオブランドー/〇デューオ

【単独行動中】(現在地:東京のどこか)
〇ハクメン


☆DMC狂信者
【狂信者】(東京都及びビッグサイト)
〇ディー/〇セルベリア・ブレス/〇ドリスコル/〇暁切歌/〇松本人志〇比那名居天子/〇碇シンジ
〇斎藤佑樹/〇レジーナ/〇サイコマン/〇ワイルドハント/〇AKYS/〇鬼道有人/〇葛城蓮
〇オシリスの天空竜(捕虜)

【新・カギ爪団】
〇ルルーシュ・ランペルージ/〇C.C/〇クロエ・フォン・アインツベルン/〇美遊・エーデルフェルト
〇結城美柑/〇古手川唯/〇司波深雪/〇橘美也/〇遠野/〇道下正樹

【カオスロワちゃんねる一派】
〇サーフ・シェフィールド/〇瑞鶴


☆第10期主催陣営
【九州ロボ】(現在地:静岡県)
〇ジャック・O/〇ココ・ヘクマティアル/〇メフィラス星人/〇八雲紫/〇メガへクス/〇biim兄貴

【伊豆諸島基地】
〇ヤン・ウェンリー/〇メディア


【これもカオスロワちゃんねる管理人って奴の仕業なんだ】(現在地:東京)
〇草加雅人


☆死者スレの守護者
〇カルナ

【世界の破壊者】(現在地:沖縄)
〇シャドウだったもの
【シャドウの下僕】(現在地:神奈川県)
〇ダークディケイド/〇ディエンド/〇風鳴弦十郎


【たぶん本筋には関わらない奴ら】
〇安倍明恵/〇ルイズコピペ/〇ルイーズ


残り121名! ガッツリ減ったと思ったけどまだけっこういるのな
終わりに向けてあと90人くらいは減らそうかね……ククク


783 : 名無しさん :2018/05/17(木) 12:07:31 50eQcMLE0
読み返すとシマリスが二匹いることに気づいた、残り120だね


784 : 名無しさん :2018/05/17(木) 17:51:09 L2XKY1qI0
あんまり減らそうとか言うもんじゃないと思う、一人で書いてるんじゃないんだし


785 : 名無しさん :2018/05/18(金) 13:36:36 V3S.kR.k0
ただ、いくつかの対主催勢力が壊滅からの吸収
ホワイトベース組や天魔王軍の全滅で勢力がはっきり分かれてきたね

都庁同盟派、イチリュウチーム、拳王連合派、DMC狂信者、主催、シャドウ、あと草加


786 : 名無しさん :2018/05/18(金) 14:44:40 7V46zD4g0
オシリスはこれ救助かなり無理くさいな
現在位置的な問題もあるが、イチリュウメンバーは待機組以外負傷
都庁はオオナズチが情報キャッチするかもしれんが、暴徒にDMCに拳王が迫り今度こそ他所に回せる戦力がない
ソウルセイバーだけがビッグサイト付近で動けるだろうが、ゼオライマーは単騎でどうこうできる相手じゃない


787 : 名無しさん :2018/05/18(金) 15:38:59 V3S.kR.k0
しかも貴重なウルトラストップウォッチは焼失
マスターボールはドリスコルの手の中
セルベリアおばさんは竜殺剣持ちというオマケ付きである


788 : ルイズコピペとか懐かしすぎて涙がで、出ますよ… :2018/05/22(火) 19:21:33 2E9Ffffc0
「ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
 あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!!

 (省略)

 俺の想いよルイズへ届け!!ハルケギニアのルイズへ届け!」


 今期はルイズが回想ぐらししか登場できないと知ってプッツンしたルイズコピペは支給品の核ミサイルに、その辺のモブを殺して手に入れたなんでも増やす薬バイバインで核ミサイルを無限増殖させて一気に点火し、カオスロワを核の放射能で日本ごと滅ぼそうとした。
 そんな恐ろしい計画を許したらただでさえ体の弱いルルーシュが確実に死ぬので、気づいたあきよさんに間違えられた明恵さんは支給品の因果律操作装置を使い、自爆しようとしたコピペ(と近くにいたルイーズ)を抹消しようと決意。


 ところが因果律操作装置は宇宙に残留した、日本よりも遥かに濃いTCによる汚染のせいで壊れており、コピペは抹消されることなくバグによって森友学園の内部に転移してしまった。

 そして核・大爆発。


「ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!」
「ルルーシュお兄ちゃあああああああああああああああああああああああん!!!」


 誰も知らない宇宙の片隅でルイズマニアと妹キャラ(55歳)の叫び声と共に、核の花火が上がった。
 いかな機動要塞とて内部からの核攻撃には耐えられず、明恵が手にした自己修復、自己増殖、自己進化も間に合わずに爆散す。

 なろう主人公のスマホ太郎はどうしたって?
 とっくの昔にTC汚染で死んどるわい。
 TCはどんなチートキャラでもテラカオス以外は耐えられない設定だから仕方ないのだ。

 あきえさんについて書いてて気づいたんだけど安倍『明』恵じゃなくて『昭』恵な!



 こんな奴らに巻き込まれて死んだルイーズくんは泣いていい。



【二日目・17時59分/宇宙空間】

【ルイズコピペ@2ch(今は5ch) 死亡確認】
【ルイーズ@遊戯王 死亡確認】
【安倍明恵@TCBR10 死亡確認】


789 : 名無しさん :2018/05/22(火) 21:57:14 aCThiZqM0
二段間違いだったのかよwwwwwwww


790 : ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:07:22 AuuUZr9.0
投下します


791 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:08:29 AuuUZr9.0
――都庁の世界樹。
墨田区でレストとハクメンによる死闘が終わって間もない頃。
レストの手によって転送されてきたフェイ・イェンの残骸を機械に詳しい犬牟田が中心となって見ている。
彼女が完全に破壊されたかどうかを確認するために。
その周囲には彼女の仲間たちも集っていた。

『フェイちゃんは、あの子は大丈夫なんですか!?』

小鳥は世界樹の天辺から携帯を使って落ち着きなく、まだ検査を終えていない犬牟田に彼女の無事を聞く。

「落ちつくんだ小鳥さん」
『小鳥、バーチャロイドは体はやられていても頭脳を担うディスクが無事なら再生できると犬牟田から聞いた。
まだ、彼女が死んだと決まったわけではない……』
『ごめんなさいダオスさん、カヲルくん……ただ私、仲間をまた一人失うかもしれないと思うと気が気でなくて……』
『気持ちはわかるが、今は犬牟田を信じる他あるまい』


バーチャロイドの本体はディスクであり、体の方は粒子をかき集めて作られた義体のようなもの。
ディスクが無事なら再生装置とも言えるV.コンバータを修理して挿入し、コンバータを動かすためのエネルギーを注げばフェイ・イェンは復活できる。
周りの者たちはこの都庁の中で最も機械に詳しい犬牟田の吉報を待つしかなかった。

しばらくして残骸の中から犬牟田が現れた。
彼はひどく浮かない顔をしている。

『あの……フェイちゃんは……?』
「…………」

恐る恐る小鳥は戻ってきた犬牟田に機械少女のことを尋ねるが、彼もまた報告をしたくないようだった。
だが黙っていては前に進めないため、犬牟田は意を決して告げる。

「ダメだった……肝心のディスクが真っ二つに割れていて修復不可能。
アイスシザースから借りたタイムふろしきで形だけは元通りだけど、彼女の人格を構成するプログラムは消えていて、ただの音楽CDになっていた……後は言わなくてもわかるね……」
「そんな……」
『ああああ!』
『小鳥!』

犬牟田の残酷な報告にカヲルは膝をつき、小鳥は半狂乱になって泣き出した。
ショックを受けながらも冷静さは保っているカヲルはまだしも、小鳥の心は明らかに悲しみで押し潰れそうだったためにダオスは彼女を自分の胸に抱擁させた。
世界樹の天辺、ダオスの胸の中で小鳥は慟哭する。
カヲルと赤竜を中心とした7人の歌組は、もはやカヲルと小鳥しか残っていない。
他の五人に二度と会えないことに二人が悲しまないわけがなかった。

「メガネ人間、そのディスクはどこだ? 地下の墓地に埋葬してくる」
「彼女は機械だけど、機械嫌いの君たちの住処に埋めても良いのか?」
「それでも我らの仲間であったことには変わりない」
「……ありがとう」
「俺とイオリにも墓作りを手伝わせてくれ!」
「あのロボット人がいなかったら俺たちは撤退できなかったんだ」

アイスシザースやモブの魔物が死したフェイを埋葬するためにディスクや残骸となったパーツを地下へと運ぶ。
犬牟田やレイジ、イオリもまた残骸を運び墓作りを手伝った。


「ダオス……ただ一言、言わせてくれ。我々のために犠牲を生み出させて本当に済まない」
「聖帝、謝罪はしなくて良い。おまえたちは瘴気のことなど知らなかった。
皆が主催の目的である『何か』の被害者なのだ。
残された者がすべきことは筋違いの相手に恨むことや謝ることではなく、生きて殺し合いを終わらせて真実を解き明かすことだろう」
「……わかった」


都庁にはもう、翠の髪のアイドルロボットの歌は響かない。
嗚咽によるレクイエムだけが無情に鳴り響く――


【フェイ・イェンHD@スーパーロボット大戦UX 死亡確認】


792 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:09:41 AuuUZr9.0


レストがハクメンとの戦闘を終え、ダオスたちの前に転移してきた。

「みんな! 彼女は?」
「レスト!? 貴様、その格好……いや、何でもない」

戻ってきたレストにダオスは何かを言いかけたが、空気的に自重する。
レストはさっそく侍に斬られたフェイ・イェンの安否を聞く。
残念ながら仲間たちは首を横に振り、また一人仲間を救えなかったことに落胆する。
彼女がいったい何の罪を犯したというのか。
ともすれば名前も知らない侍への憤りはなお強くなる。
しかし、今仲間に優先して伝えるべきはそこではない。

「悲しみに水を差すようで恐縮だけど、まずいことが起きたんです!
沖縄には大災害が具現化した存在がきていること、それによる冥府の崩壊が……すぐ近くでは狂信者とは違う暴徒集団がここに向かってきているんだ!」
「レスト、沖縄の異常気象や暴徒に関してはこちらも感知している。
冥府の崩壊の件も小町から聞いた」
「え……小町さんが?」

ダオスを始めとする仲間たちの反応は予想していたよりは冷静であった。
というより、小町から先に聞いていたがためであると言える。

「人間らしい見てくれと人格で忘れそうになるが奴もまた死を司る死神。
この前までは下っ端の船頭だったが、この殺し合いとドラゴンハートの恩恵で死神としての力が増大した結果、あの世の様子もなんとなくわかるらしい。
奴はあの世の霊圧が壊れる寸前まで乱れていると言っていたがな」
「そうなのか……」
「流石に冥府まで見る力はない我々としてはあの発言は困惑しかなかったが……なるほどレストまで言うからには間違いではないらしい」

小町の口から教えられた事実によりあの世にすら逃げ道はないと知った都庁同盟軍。
むしろ、それを知ってしまったがために都庁の空気はより重いものとなった。
金竜など先に逝った者たちの魂が危険に晒されている可能性があるからだ。
先ほど旅立ったフェイら聖帝軍救助隊の魂も今頃どうなっているか見当もつかない。

「ところでその小町さんはどこに?」

ふと、冥府崩壊の事実を教えてくれたらしい小町がいないことに気づいたレスト。
よく見ると影薄組やオオナズチもいない。
その件はダオスの胸の中で泣いたことにより、少しだけ精神が落ち着いた小鳥の口から話される。

「小町さんたちなら……暴徒を止めに行きました」
「え……彼女が?」

小町はネット上ではイチローチームと同じく数少ない信頼された主催だ。
世界樹をヘルヘイムとやらと勘違いし、暴徒を止めるにはうってつけかもしれないが……返って愚策にも思えた。

「いや、都庁の仲間だと知られれば彼女まで風評被害に付き合うことになってしまう。
そうなると小町さんまで人類の敵とみなされてしまい、攻撃される羽目になってしまうよ」

小町ならば都庁の魔物たちの誤解を解こうとするが、上手く言いくるめられなければ彼女も追われる身となってしまう。
暴徒を直に相手にし彼らの無知蒙昧さと身勝手さを知ったレストからすれば、ネットで女傑と讃えられた女が自分の意思で魔物に味方したと知ったとき、勝手に絶望して小町をも殺そうとする。
小町ならばあの程度の暴徒に殺されはしないだろうが、風評被害が巡り巡って他の有力対主催に狙われる理由になると危険である。
悪名は最悪、カオスロワが終わった後でさえ尾を引くことになるのだ。
最初からお尋ね者であり狙われ続けてきたダオスやレストのように彼女がその重圧に耐えられるだろうか?

「その心配はいりません」

レストの言葉に答えたのは、瞳の下を赤く腫らしつつつつも泣き止んだ小鳥であった。

「小鳥、もう良いのか?」
「ええ、もう大丈夫です、ありがとうダオスさん」
「小鳥さん、心配はないってどういうこと?」

小鳥は涙を拭き、キリッとした瞳で答えた。

「今後、都庁に向けられた世間からの誤解は『解きません』。
そして、小町さんには後に都庁の魔物、ここにいる魔王ダオスを『倒していただきます』」

小鳥のその言葉に、レストは短く答えた。

「は???」





793 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:11:00 AuuUZr9.0

「全ては世界のために! 走れェーーー!!」
「我々の犠牲は決して無駄にはならない!!」
「オーバーロード恐るるに足らず!!」
「ヒャッハーッ! インベスは皆殺しだぁーーーッ!!」
「ついでにここに逃げた聖帝軍も皆殺しだぁーーーッ!!」

都庁の世界樹に迫る暴徒集団。
その数はざっと30人程度。
ぶっちゃけモブ参加者の中ではかなり弱い部類であり、少しでも戦闘の心得があるネームドキャラなら一人でも一掃可能なレベルである。
そんな力のない彼らはずっとどこかで引きこもっているのが関の山であったが、度重なる殺し合いの恐怖と拳王連合軍がダイジョーブ博士を介してバラ撒いた情報により都庁の世界樹をヘルヘイムと誤解し、早急に滅ぼさねばならないと思った結果、暴徒化したのだ。
彼らを狂信者のような確固たる信念すら持たない愚か者どもと呼ぶかは、ただ弱者として情報に流されるしかない殺し合いの犠牲者と取るかは読者の判断に任せよう。

そんな彼らだったが変態オーバーロードと見なしたレストの無抵抗を勝機と勘違いし、都庁へと突っ込んでいく。
調子づいた者たちが都庁の領域に踏み入れたらどうなるか?

「ちょっと待て!?」
「あれは何の光ぃ!?」

答えは光の洗礼である。
世界樹の天辺に居座る存在による強力なレーザー攻撃が放たれることになった。
ある者は光から逃げ、ある者は盾で防ごうとするが、はっきり言って彼らの実力と装備では無駄。
先程まで都庁を包囲していた狂信者らと同じように蒸発するのが関の山だろう。
放たれた以上は叫んでももう遅い。

「あわわ……」
「やべーぞこれえ!!」



「全く、世話の焼ける奴らだねえ!」

暴徒集団が生存を諦めかけたその時、彼らの目の前に赤毛のツインテールに蒼い衣に包まれた揺れる巨乳が特徴的な女が現れた。
そして彼女は手をかざし「距離を操る程度の能力」を使ってレーザーを逸らさせ…それだけでなく能力の応用を聞かせてレーザーを押し戻し(射程距離を操作した)、送り主まで跳ね返してしまったではないか。
そして、世界樹の天辺が爆発を上げた。
暴徒たちから歓声が上がるが、赤毛の女はすぐに注意を呼びかける。

「油断するな! おまえたちは囲まれている!」
「ええ……なんだって!?」
『キシャアアアアアア!!』
「イ、インベスの大群だああ!」

いつの間にか背後をとっていたオオナズチを中心に大量の中級・下級のモブFOEやドラゴンが現れ、あっという間に包囲されてしまった。
少し遠くでは巨大な生きた黒い大木が攻撃態勢に入っている。

「か、囲まれた!?」
「あの金髪が攻撃してこないところからして油断したね。
最初から逃げるフリをしてここに誘い込むための作戦だったのさ!」
「やたら弱いと思っていたらそういうことだったのか!」

赤毛の女から自分たちが変態オーバーロードにはめられたことを知って愕然とする暴徒たち。

「こ……こうなりゃ一匹でも道連れに」
「その必要はないね、出番だよみんな!」

「はーい!」

戦場には似つかわしくない、明るい少女の声が響いたと思いきや、暴徒たちの目の前に四つの影が幽霊のように現れた。
四人は常人たちにはよく見えないが、未来的なスーツとバケツみたいなヘルメットを被っていた。

「ええええ?! こいつらいつの間に!」
「安心しな、こいつらはあたいの仲間だよ……さあ、暴れな!」

赤毛の女の指示に従い、バケツヘルメットのスーツ……デモニカを纏った四人の戦士たちは魔物に立ち向かった。
まずマッチョな男は敵陣に切り込み、魔物を殴り蹴り飛ばしていく。
銃士と思われる少年は冷静に魔物を銃撃していき、流血させ倒していく。
剣士と思われる少女は雀力を発揮して斬鉄剣で次々と敵を切り伏せていった。
特徴のない小さな少女は雷の剣で、遠巻きからくる神樹の攻撃を押しとどめていた。
止めは赤毛の女が銭の弾幕でオオナズチをフルボッコにしていく。

その魔物をものともしない鬼神の如き戦いぶりに暴徒たちも昂ぶる。
赤毛の女以外は存在が薄すぎて目に入りにくいが、とにかく五人が強いことは明らかであった。


794 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:12:18 AuuUZr9.0


「おお、すげえ、この勢いに乗って俺たちも……」
「待て」

暴徒に待ったをかけたのは赤毛の女であった。

「おまえさんたちの実力じゃ足でまといだよ。
それに天辺の奴がまだ死んじゃいない……直にさっきのレーザーが来るかもしれない」
「ええ! でもアンタがさっきやっつけたじゃないですか!」
「手応えが浅かった。レーザーを跳ね返すだけじゃ勝てない相手らしい」

赤毛の女が言ったとおり、世界樹の天辺から再びレーザーが放たれたが、女が距離を操って逸らしたことで犠牲者は出なかった。

「これじゃ埓が開かない! あたいはこいつらを連れて退くよ。
みんなはこいつらを安全圏に運ぶまでここで時間を稼いでくれ」
「応!」
「了解っす」
「任せてください」
「あかりがみんなの命を守るよ!」

四人は女の指示通りにその場に残り、魔物相手に奮闘を続ける。
その間に赤毛の女は暴徒集団を都庁の手の届かない場所まで誘導していく。
暴徒の後では舞い上がる土煙とレーザーで何も見えなくほど激しい戦いが行われた。

「さあ、こっちだよ」
「か、彼らは大丈夫なのか?」
「心配ご無用。今はあいつらに任せて逃げるんだよ!」




そして赤毛の女に導かれた集団は都庁の魔の手が届かない場所まで逃げることができた。
この頃にはひと握りの人員でも多少は思考が落ち着いたのか、一行の代表らしいモブがお礼を言う。

「まさかあなたに助けられるなんて……



『正義の乳神』様!」
「まったく……あたいは『乳神』じゃなくて『死神』だよ!」



そう、赤毛の女の正体は女傑『正義の乳神』こと小野塚小町である。


795 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:12:58 AuuUZr9.0

「しかしあなた様は半日以上前にヘルヘイムに入ったきりで戻られず、放送の死亡者リストにも流れなかったので囚われているとばかり」
「……ああ、ちょいとあいつらに捕まって厄介な洗脳を受けていたが、ある時の戦闘の弾みで解けたらしい。
さっきの仲間たちと共にうまいこと脱出できたよ」
「なんと……」
「しかし、あたいと仲間たちでさえ撃退が限界で攻略は厳しい。
どうしてあんたらは攻め入ろうなんて考えたんだい?」

小町が不思議でならなかったのは、一万を超えているモブ狂信者や数あるネームド狂信者さえ敗れ死んでいった都庁。
かつての自分たちのように知らないで飛び込んだならまだしも、都庁の実力はネットを介して周知のハズである。
そんな地獄にどう考えても戦力的に足りない集団で飛び込むのは全滅犬死に待ったなしである。
正気の沙汰ではない所業の理由を彼女は知りたかった。

「それは……あの大木が世界を滅ぼすヘルヘイムだからです」
「ヘルヘイム? 前の放送で呼ばれていたけど」
「参加者のことじゃござりません乳神様! これを見てください」

小町はモブが持ってきたパソコンから、ダイジョーブ博士によって伝えられた危険植物ヘルヘイムの概要を知る。
しばらく沈黙した後に、溜息をつきながら小町は感想を漏らした。

「なるほどねぇ」
「これこれこうだからヘルヘイムは早急に潰さないといけないんです。
世界や家族、友人たちを守るためにも自身の犠牲を覚悟の上で攻勢にでなくてはいけないのです」
「それで敵の罠にハマっちゃ世話ないけどね。
おおかた金髪のオーバーロードがボロボロでろくな抵抗もしてこないから調子に乗って攻め入っちまったんだろうが。
あたいがいなきゃ今頃あんたらインベスに食われるまでもなく、レーザーで全滅していただろうさ」
「ぐぬぬ……お恥ずかしながら……」
「正直、中途半端な実力者は足でまといだよ。
あそこを攻め落とすならイチローチームでも連れてくることだね」

小町の反応は冷ややかであったが、言っていることは正論でもありモブたちは何も言い返せなかった。

「だが、あんたたちの気持ちはわかったよ」

これまで冷淡な態度だった小町だが、今度は温情を感じさせる言葉で語る。

「あたいがあんたらの分もヘルヘイムを倒すために戦おう」
「おお!」
「無論、今はヘルヘイムの攻略方法がわからないが必ず掴んでみせる。
倒せなくとも撃退はできたんだ。望みはある」

その姿は映画の中のヒーローのような出で立ちであり、モブたちの目にはまさにネットの噂通りの女傑に映り、歓喜の声を上げさせた。
カオスロワでは正義の行動で名を挙げている対主催が少ないため、なおさら小町が自分たちのために戦ってくれるという言葉がモブたちを安心させたのだった。


「で、あんたらにもいくつか頼みがある」
「なんでしょうか? あなたのためならお命だって差し出せますよ!」
「いや命はいらないよ、今は死神の仕事どころじゃないし」

小町のお願いとは?
モブたちは耳を傾けた。

「まず一つ、ヘルヘイムに核攻撃みたいな破壊力の大きすぎる攻撃はしないよう他の対主催に伝えてくれ」
「それはどうしてですか?」
「ヘルヘイムにはあたいのように洗脳された人間やインベスに関係ない無実の生き物も数多くいる。
言ってみれば兵士兼人質みたいなもんだね」
「なんですと!」
「貴虎とやらみたいに爆弾で吹っ飛ばそうものなら罪のない人間も巻き添えになっていた。
仮に核以上の攻撃をしようものなら大量虐殺者の仲間入りだよ」


「人質? 何を悠長な、ヘルヘイムを焼かないと世界が滅ぶんすよ?」
「その程度の犠牲で世界を救えるなら安いものっしょw」
「!!」


796 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:13:49 AuuUZr9.0

一部心無いモブの発言に対してカチンときた小町は死なない程度に銭をぶつけてやろうかと思い、胸の谷間に隠している銭に手を伸ばす。

「コラッ、血も涙もないことを言うんじゃない!」
「すいません乳神様、このクズどもはキツく叱っておきますんで」
「あ、ああ……わかってくれるなら何よりだよ」

しかし小町が銭を投げるよりも早く不届きモブは他の良心的モブに取り押さえられ非難された。
一度は暴走していたとはいえ全員が全員、人の心を失っていないのは幸いだった。

「とにかく強力な攻撃で一気に吹き飛ばすのは無し。これはよく覚えといとくれ。
次にあんたらのように正義感に流されて飛び込もうとする奴らも止めること。
実力はもちろん無策で挑んで勝てるほど都庁は甘くない。
イチローチームみたいな有力対主催に出会ったら攻め入る前に遠巻きから何らかの合図をすることを教えるんだ。
合図を見たらあたいの仲間が合流し、攻め入るのに好都合な進入路を教えてくれる。
最後にヘルヘイムには最強のオーバーロードである魔王ダオスって奴がいる。
インベスの総本山で奴一人倒せばヘルヘイムは総崩れになる。
そいつを倒すのだけはあたいにやらせてくれないか……奴には洗脳された借しがあるからね」
「わかりました」
「他の対主催たちにあたいの伝言を届けるのがあんたらには似合っている。
戦闘はしなくていい……情報を伝えることでヘルヘイムの中にいる人質や無実の参加者、他の対主催の被害を減らすことがアンタたちの戦いだ」

モブたちは小町の願いをしっかりと聞く。
精神的に参ってるかとはいえ狂信者になれるほどDMCが好きではない彼らにとって、自分たちを死地から救ってくれた小町の言葉は女神のそれに聞こえたのかもしれず、すんなりと受け入れられた。


「さて、お願いしてばかりで悪いね。
せっかくだからここにいる全員にあたいからサービスしちゃうよ」
「「「サービスゥッ!!?」」」

乳神のサービスという言葉に元暴徒のモブ全員が反応した(特に股間が)。

「まずはアンタからだね」
「おおう……これは……」

何を考えているのか、衣に包まれた小町の胸の谷間が一人のモブの目の前にどアップでやってくる。
胸が大きいだけではない、肢体も素晴らしいものであった。
これまでの戦闘とドラゴンハートの恩恵によるものか、彼女の体は程よく筋肉がついてシェイプアップされている。
夢の中でも四季に叩かれていたが、どちらかといえばだらしない体型だった彼女がカオスロワという修羅場によってモデル並の体型に進化したのだ。
服の上からでもわかる爆乳と色香漂う肢体を見れば、小町のサービスという言葉に期待が高まるのも無理はない。




「ふう、終わったよ」
「へ?」
「首輪を外してやったんだよ。
ヘルヘイムのある奴がやっていた解除方法を真似たのさ」

何かを期待して鼻血を垂らしていたモブの首輪が外れていた。
これで彼は参加者ではなくなり主催によって首輪が爆破される心配はなくなった。
本来はできない禁止エリアに逃げ込むことも可能である。


797 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:14:57 AuuUZr9.0

「うう……ちょっと残念、いや、無理だと思った首輪解除と神の谷間を見れただけですごく嬉しいです」
「つ、次は俺が」
「いえいえ私が」
「アタシも!」
「おまえレズかよぉ!(驚愕)」
「全員やってやるから焦んなさんな。
狂信者もくるかもしれないからパパッとやるよ。
終わったらコツを書いたメモを渡してやるから他の連中も解放してやるんだ。
……それから見る分には良いけど触るのは無しな、手が滑って首輪が爆発するかもしれないから」

こうして小町の谷間を堪能するついでに30人近いモブの首輪が外され、表向きではあるがカオスロワから解放されたのだった。


「ついでだから煙玉とか逃走に使える道具も渡して起こう。
これで狂信者や殺し合いに乗った奴に出会っても当座は凌げるハズだ。
あたいはもう行くよ。仲間たちと一緒にヘルヘイムを攻め落とす手段を探さないといけない。
さあ、インベスや狂信者に見つかる前に早く行くんだ」
「ありがたや……ありがたや……」
「乳神様、ご武運を!」

モブたち一人一人が小町に感謝し、ヘルヘイムから離れて行く……その中で、ただ一人のモブの代表者だった男が去りゆく小町を呼び止めた。

「待ってください、乳神様! どうかこれを受け取ってください」
「これは?」

代表者モブがディパックからトンファーのような機械の刀を取り出し、小町に渡した。
ストライダーご用達武器のサイファーである。
小町にはこのサイファーに見覚えが有る。
大阪で出会ったハクメンの隣にいた忍者みたいな男が持っていた刀である。

「これをどこで?」
「ここの近くで白濁……失礼、ケフィア塗れの死体の横に転がっていたものを拝借したものです。
死体の方や他の支給品は色んな意味でひどい有様でしたが、ヤられた際に取り落としたらしいこの刀は無事でした」

このモブはマーラにやられたテルミ(飛竜ボディ)の死体をハクメンが見つけるよりも早く発見し、サイファーを拾ったのだ。
故にハクメンはこれがライバルでないと現実逃避に走ったことも手伝ってテルミの依代に飛竜が使われていたことに気付かなかった。
ちなみに蛇双・ウロボロスはマーラの様の特濃な魔力が詰まったミルクで汚染されて使い物にならなかったそうな。

小町は飛竜と同じデザインの機械刀があったのは気になったところであるが、オリハルコンなどの希少金属でできた刀剣はまだしも、こちらは機械故に複製は可能だろうし、同じ支給品が配られてもおかしくないだろうと思って一人納得した。

「見てくれはトンファーソードですが私が適当に振っただけでMSさえ両断する恐ろしい斬れ味を持っています」
「そんなもんあたいがもらって良いのか? 強力な武器は生き残るために必要だろ」
「いいえ、あなたが持っていた方がこの刀の性能を生かせるハズです。
どうかこの刀で人々のために魔王ダオスとヘルヘイムを倒してください」
「……ああ、任せな」
「乳神様、ご武運を」

代表者モブも小町に一瞥して、他のモブと共に去っていった。
去りゆく彼らを見送った後に小町は『騙して悪かった』と思いつつ、距離を操る程度の能力を応用した瞬間移動で誰にも見られないように世界樹の中へ入っていった。





「ただいま、演出ご苦労だよみんな」

小町が世界樹の中へ入ると、そこには日之影ら仲間たちの他に先程は「殺し合った」ハズのオオナズチや魔物たちがいた。
殴られ血を流し斬られ蒸発したにも関わらず、なぜか魔物は一匹足りとも欠けていなかった。

「お疲れこまっちゃん、あのモブたちは上手く騙せたか?」
「なんとか追い返せたよ」
「こまちちの姉御、当たった銭がちょっと痛かったですぞwwww
謝罪と賠償としてそのデカ乳を揉ませることを要求するwwww!」
「悪い悪い。力加減をミスってた。だがおっぱいはあげられないね」


798 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:16:14 AuuUZr9.0

負傷と呼べる負傷をした者もいない。
しいて言うならオオナズチがちょっと擦り傷を作ったぐらいである。
これはどういうことなのかは、やってきたレストの口から明かされる。

「小町さん」
「レスト、なかなか戻らないから心配だったが無事で何よりだ」
「小鳥さんから事情は聞きました。
この都庁を中心とした混乱を収めるために、表向きは僕らの敵になる『演技』をするってね」
「その通り、小鳥の提案であたいはこれからヘルヘイムと中枢である魔王ダオスを倒す勇者様になる……という『芝居』を打つことになったのさ」




小鳥の発案した計画を明かそう。
ダイジョーブ博士による都庁=ヘルヘイム情報の拡散によるネットの大炎上を小鳥は見た。
誤解はもはや止めようがない。
無理に都庁の誤解を解こうものなら、叩かれてなかったことにされるだけ。
ダオスの言ったとおり、自分の目で確かめない連中に真実を話す必要がないのは確かだが、問題なのは四六時中邪魔をされては次の大災害に対しての策を打つ余裕もなくなってしまうこと。
先ほどの暴徒のような雑魚はまだしも有力対主催に目をつけられて人員や労力を減らされるのもマイナスだ。

そこで小鳥は閃いた。「押してダメなら引いてみよう」「逆にあげちゃってもいいさと考えるんだ」。
無理に誤解を解こうとすると、こじれてしまう。
ならばいっそのこと悪い噂に便乗し、人々に都庁はヘルヘイムとして扱わせよう。
混乱を収めるためには都庁のリーダーであるダオスを悪役にし、彼を倒せばヘルヘイムは総崩れになるという設定とする。
やがて誰かがダオスを倒せば人々はヘルヘイムの驚異から解放されたと思い、安心ができる。
世界樹についてはダオスが倒せばその内に枯れるとでも言っておけば良い。
無論、実際にダオスや世界樹の魔物を殺されるわけではなく、やられたフリをするだけである。

さて、ではダオスを倒すための役者は誰が適任か?
現状では全滅・死亡または誤解によってマーダーとして扱われたりで人々から信頼された対主催は残り少ない。
イチローチームは世界樹にいない上に内部事情を知らないので省く。
魔物やレストなど最初から都庁に所属しているものは論外、レストやまどかがダオスを倒してもただの内ゲバと見なされるだけで意味がない。
聖帝軍もホモの工作のせいで多大な手のひら返しを受けているのでダメ。酌量の余地が有るとはいえ立川市を焼いた件が尾を引き不安がられてしまう。

大半が確実性にかける中、小鳥が適任として選んだのはかつて大阪の街を救いネット上で英雄視された女である小野塚小町であった。
小町ならば疑いらしい疑いもなく、信憑性も実力も高い。
英雄としてダオスを倒し、日本を安心させるにはうってつけの存在であった。

要は「勇者となった小町がヘルヘイムの魔王であるダオスを倒して民を安心させる」という筋書きの芝居である。
ダオス打倒後はヘルヘイムも大人しくなったとすれば人々は攻撃の手を緩めるだろう。
しばらく経つと嘘がバレてしまう可能性があるが、都庁としては大災害による世界滅亡を防げるまでの時間稼ぎができれば良かった。
風評被害は時間があれば殺し合いが終わった後にでも解けば良いが、世界を滅ぼしかねない大災害の方は間近に迫っており、こちらを解決するにはたった一秒間すら貴重なのである。



そして小鳥の計画発案直後に暴徒集団が襲来。
お世辞にもFOE一匹殺せるかも怪しい弱小集団で皆殺しにするのは簡単だったが、殺したところで得るものはなく、都庁のヘイトを稼いでしまうだけで美味しくない。
殺すよりは生かして計画を助長してもらった方が良いと思い、芝居を打ったのだ。

もちろん、先ほどの影薄組と魔物たちの小競り合いも演技であり、双方に殺し合う気などさらさらない。
小町はまどかの放ったレーザーを跳ね返すように見せかけたが、当たる直前で距離を操って霧散させており直撃していない。
世界樹の天辺が爆発したように見えたのはウォークライらドラゴンが火炎のブレスを使って爆発を演出しただけであり、吹っ飛んだのは未だに世界樹に引っ付いていた都庁の瓦礫である。
日之影もパンチもかなり手加減しており、黒子の撃った弾はペイント弾、モモの刀は峰打ち、あかりと神樹による戦いも互いの技で相殺しあえるように最初から打ち合わせしたものであった。
全ては暴徒集団を追い返すと同時に小町のためのお膳立てであったのだ。


799 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:16:58 AuuUZr9.0

また彼らがイチローなどの有力対主催に出会った時の対策として、人質や洗脳者がいることを言って強力すぎる攻撃の禁止を呼びかけた。
良心的な対主催ならこれで攻撃を躊躇してくれるだろう。
ヘルヘイムに味方する人間がいるのも洗脳のせいにすれば攻撃されずに済む。
あわよくば聖帝軍も都庁に洗脳されていたがために立川市を焼いてしまったことにもできるのだ。
小町が突然都庁を裏切ったことも狂信者についているセルベリアや天子が何かしてきそうだが、「洗脳されているせいだった」ということにすれば一時的に都庁の味方についたことにも説明がつく。

それでも世界樹を身一つで突破できる対主催はいるかもしれないが、そのときは合図を出すように指示をし、襲撃してくる前に進入路を教えると称して直接事情を説明できるように仕向けた。
ネット界隈のようなマクロな誤解を解くのは不可能だが、数人単位でなら難しくはないハズだ。

画して芝居は上手くいき、助けられたモブたちは騙されていると気づかずに小町を英雄視し偶像として祭り上げたのだった。



「ただ、この作戦……ダオスを倒す芝居を実行に移す前に倒さなきゃならない連中がいるんだよね」
「……狂信者に拳王連合軍、天魔王軍か」

小町はアイコンタクトで『正解だ』とレストに答える。
マーダー集団である狂信者は言わずもがな、拳王連合軍と天魔王軍も人質など関係なく攻撃を加えてくるだろう。
こいつらを先に倒さずにダオスやヘルヘイムを倒したことにしてしまうと、攻めてきた場合ダオスを表に出さなくてはならなくなり嘘がバレて計画がご破算になる。
嘘がバレたら都庁絡みの混乱が収まらず、小町と影薄組ごと世界から槍玉を喰らう羽目になり、大災害阻止に間に合わなくなる。
計画を実行に移すにはその3組織を撃破する必要がある。

悪いニュースとして拳王連合軍は横浜港に寄港しており、東京までもうすぐのところまできている。
天魔王軍が居城にしていた首相官邸は謎の爆発で吹き飛んだらしいが、デミーラたちの安否は不明。
狂信者たちは必ず次の襲撃を都庁に仕掛けてくるだろうし、おそらく一度目・二度目よりも苛烈な攻撃となるだろう。

「できることならこちらから討ってでたいところだけど……」
「貴虎の爆弾騒ぎから始まった連戦のせいで戦力を消耗しすぎたね。
今言った三つの勢力がこちらを狙い、一斉に仕掛けてくるならここを守るには聖帝軍を足しても足りなさすぎる。かといって時間も残されていない」
「せめて今のまどかに匹敵する戦闘力を持った仲間が都庁に参入したり、自分たち以外の対主催が敵となる集団を滅ぼしてくれれば、余裕ができて打って出れるのに」
「そうなりゃ願ったり叶ったりだが、あんま期待しない方が良さそうだね……」

かなりの戦力を誇っている都庁同盟軍と聖帝軍の戦力を合わせても、世界樹を守るだけで精一杯であった。
守りを磐石にできない限りはビッグサイトや横浜港に攻め込むこともできない。
何より狂信者軍団・貴虎・マーラ・ベジータ・カギ爪団・きらりと続いた戦いで皆が疲れきっており、すぐに動くには無理があった。
後に戦争となるであろうの集団への対策案も必要であった。


「フェイは……ダメだったみたいだね」

小町の視界には重苦しい空気とあかりが泣き、モモに黒子と日之影が彼女を諭している姿が見えた。
そこからフェイの死を察した。
サクヤたちに続き、今度は赤竜・ラゴン・ラブ・フェイまでも失われた。
この非情な戦いの中で仲間が死んでいくことは覚悟の上であったが、心が痛まないわけではない。

「ごめん……僕がもっとしっかりして、お面野郎をどうにかできれば彼女だけはなんとかなったかもしれないのに……」
「(お面野郎?)
あの時はアンタがいなきゃきらりは助けられなかったし、都庁で耳を塞がずに戦えるフェイが戦場に残らないといけなかった。
誰にも落ち度はないんだ……アンタにもフェイにも、きらりにもね」
「…………」
「まあ、すまないと思うぐらいならお面野郎とやらへ対策を練ってリベンジすべきだね」

その言葉は単にレストを気遣うのものではない。
悲しみや自責の念で足を止めるぐらいなら、仲間を生かすための最善手を考えるべきだという合理的な結論でもある。
かつて大阪の病院にて慕っていた上司の死を知り、周りが見えなくなった時があった小町だからこそ言える台詞であった。


800 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:17:48 AuuUZr9.0


「ところでおまえさん、その格好は……」
「君もあいつらみたいに僕を変態オーバーロードと嘲笑うかい?」
「笑いやしないよ……他の連中だって笑わなかったろ?」

ソウルアーマーを纏うレストの今の格好はサクヤ似であり、何も知らない連中からすれば女装した変態にしか見えないが、都庁同盟軍と聖帝軍は違った。
サクヤをよく知る都庁同盟軍からすれば、サクヤが死後も鎧を授けるという形でレストを助けたのだとわかり、彼女の愛の深さがわかるのだった。
サクヤを知らない聖帝軍からしても、レストはきらりや魔雲天を救ってくれた恩人であり、彼のボロボロ具合と真剣な眼差しを見れば笑うのは失礼だと多い、自重しているのだった(仲間が死んでいる空気を読んでいる、ということもある)


「それよりもモモたちがきているあの服、機械も入ってるんだろうけど、よく魔物たちが許可したね」
「デモニカって言うらしい。
狂信者が持っていたものをオオナズチが拾ってきたそうだ。
本当は魔物たちも嫌がっていたが、さっきの芝居に真実味を帯びさせるために魔物が嫌いなものを纏わせた方が良いということで特別許可されたんだよ」

小町を除く影薄組が纏ったデモニカスーツは機械の力でメインとなる悪魔召喚機能の他に、味方を強化するスキル、死以外のあらゆる状態異常を治す治癒機能、歩いているだけで微弱ながらも傷や疲労を癒すリジェネ能力、罠や隠し扉の発見など、拾った時点であらゆる機能が盛り込まれていた。
余談だがモモはようやくまともな服が手に入ったと小躍りしたという。

「ヘルメットがバケツみたいで見た目はダサいがけっこう多機能らしいし、都庁には必要な戦力だろうね」
「小町さんは着ないの?」
「四着しかなかったのと、胸のサイズに合わなかったら着れなかった……」
「モモよりでかいしね、君のおもち」

二人が話しているところに頭にターバンを巻いたボインが現れる。

「レスト、小野塚小町」
「あ、ターバンのおもちだ」
「おい、そいつぁ軽くセクハラ発言だよ。
金色の闇、だったかな? 改まってどうしたんだい?」

「きらりの治療が終わったそうです」
「!! そうか!」
「良かった、彼女の犠牲は無駄じゃなかった!」

フォレスト・セルによるきらりの治療が終わったらしい。
都庁と聖帝軍の頑張りが報われたのだ。
レストもまた、自分が戦う前にフェイがハクメンを斬られるまで足止めしてなければきらりと魔雲天は助けられなかったかもしれないと思えばそれだけで彼女の功績であり、幾分か気分が晴れた。

「……」
「闇?」
「どうしたんだい?」

よく見ると報告に来た闇の顔は晴れていない。
その理由を彼女は答えた。

「……諸星きらりはもう歌えません」
「なんだって!?」
「そりゃどういうことだい?!」




801 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:18:50 AuuUZr9.0

闇から話を聞いた小町とレストはきらりと魔雲天の下へ急いだ。
二人だけでなく、サウザーと聖帝軍女性メンバー、影薄組も後に続く。
他はフェイの埋葬か世界樹防衛に務めるか、または先にフォレスト・セルの前に既にいる。
一行がたどり着くとフォレスト・セルの前には治療が終わったきらりと魔雲天の他にさやかとアルルーナがいた。

きらりと魔雲天は戦闘と治療の過程で全裸であった。
きらりの見た目は治療が功を為して元の人間の姿と身長に戻っていた。
岩そのものな外見ある魔雲天はともかく、アイドルの中でもスタイルは悪くない部類であるきらりの一糸まとわぬ姿……それも後ろの処女開発済みでヌルヌルの粘液塗れとあらば世の雄が反応しないわけがない。
が、そこにえっちぃ雰囲気など微塵もなかった。

「――ッ!! ――ッ!!」

きらりが必死に声を絞り出そうとしているが空気しか出ず、苦しんでいるからだ。
この状況に対し、サウザーはセルや近くにいたさやかたちに問いかける。

「サウザー……聖帝様!」
「確かおまえはさやかとか言ったな。 これはどういうことなのだ?!」
「にしゃあ……」
「セルは治療は完璧だったハズ……と言っているようだわ」
「聖帝様、あたしも後から回復魔法をかけてみたけど全く効果がなかったの!
肺や喉が傷ついてたり粘液が詰まったわけじゃなさそうだし、あたしにもわからないんです!」

きらりは怪我や病気、状態異常にかかっているわけではない。
ではいったい、何が彼女の声を出させなくしているのか?

「これは……たぶん……ひょっとして」
「あかり? 何かわかるのか?」

この場で最も早く答えにたどり着いたらしいあかりが神妙に答えた。

「日之影さん、あくまで私のフィーリングだけど、きらりちゃんは心の病気にかかったんじゃないかと思うの……」
「心の病気? PTSDか!」

あかりが直感で感じた、きらりがかかってしまった病気の正体はPTSD(心的外傷後ストレス障害)である。
姉帯ら聖帝軍の仲間を多く殺され、本意でなかったとはいえ実際に蒲原やラブ、立川市の無関係な住民をその手で虐殺してしまった。
狂信者に殺された者は彼女の責任ではないが、自分が殺した者たちの感触はきらりの腕の中に残っている。
蒲原やつば九郎を圧殺し、立川市の人々を焼き、ラブを肌ですりおろした……テラカオス因子から解放されて正気に戻ったからこそ優しい性分であるきらりは自責の念によって生じた心の傷によって声を出せなくなってしまったのだ。

「なんてことだ。だとしたら幾らレベルを上げたところで治癒魔法でも治すこともできない!」
「そんな!」

レストでさえ、匙を投げるレベルである。
彼どころか、他の参加者でさえ心に関してはいかなるスキルを持っても治せるものではないのだから。
きらりが予言にある歌の持ち主かどうかは別として、アイドルである彼女が歌えないのは仲間である聖帝軍にとって悲しいことであった。
彼女は何も悪くない、なのに何でこんな仕打ちを受けなければならないのか。


「……いやサウザー、きらりは俺が必ず歌えるようにする。
最高の歌を歌えたら許してくれる約束だったが、少しだけ猶予をくれないか?」

ズイと、魔雲天はきらりの前に出た。


802 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:19:37 AuuUZr9.0

「魔雲天……何を、って割れてるじゃないか!」
「回復を……え? 効かない!?」

彼は岩でありながら漢泣きをしていた。
それだけでなく、なぜかピキピキと体にヒビが入っていた。
さやかが怪我をしたと思って回復魔法をかけるが、なぜか治らない。

「きらり、サウザー、すまん。
俺がもっときらりの体調に気を配れば、蒲原たちや都庁の連中は死ななかったのかもしれねえ。
それどころかきらりに超人の才能があると勝手に思い込み、『あのお方』のお役に立てさせられるとさえ考え、狂信者相手とは言えただのアイドルに殺しまでさせた。
一連の仲間の死は俺のせいだ、俺の迂闊さと傲慢さが招いた結果だ。
だから俺は――!」

魔雲天の岩の体がバラバラに崩れた。
しかし、中から現れたのは魔雲天の臓腑などではなく、筋肉質な裸体の男……人間であった。
これには周囲の者も驚かないわけにはいかなかった。

「魔雲天おまえ……人間になってるじゃないか!」
「理屈はよくわからんが、フォレスト・セルは瘴気の他に悪魔としての力も喰ってしまったらしい。
おかげでただの人間に成り下がったようだが、ある意味で好都合だ……心の踏ん切りがつく」

元魔雲天である男は声の出ないきらりを力強く抱き寄せて表明した。


「力を失い、多大なミスを犯して仲間を失わせた俺に悪魔超人の長たる『あのお方』に仕える資格はない!
今より悪魔超人を引退し、ただのレスラー人間として生きて死ぬことにする。
そして筋を通すために、俺なりの償い方として聖帝軍と都庁の仲間として尽力し、心に多大な傷を負ったきらりを全力で支えることを誓う!」


魔雲天は今までの自身が悪魔超人であるアイデンティティを失ってでもきらりや仲間を守ると宣言した。
これは人間で換算すれば、いきなり自分より弱い畜生や昆虫の生き様をせねばならないということでもあり、自殺よりも苦痛であるハズだ。
それだけ魔雲天は責任を重く感じているという表れでもあった。

「きらり!」
「ッ!」
「さっきも言ったが、一人で立てないなら、俺が立たせてやる。
この俺が必ず、またハピハピな歌を歌わせてやるからな」
「――……」

魔雲天の決意の眼差しに、きらりは嬉し涙を流した。
相変わらず声は出ないが最後に彼女が魔雲天の名前を呼んだのは誰でもわかった。
人間に戻った少女と、悪魔を辞めた男。
開きすぎていた二人の背丈と目線は、いつの間にやら釣り合いが取れる位置にまで近づいていた。




「あ〜オホン、感動のところ悪いが……その格好はけっこうまずいと思うぜ?」
「は」
「!」

日之影が忠告した通り、先程までの魔雲天ならいざ知らず、今の彼は裸体の男。
そしてきらりも全裸であり、そんな二人が抱き合うと性的なヤバめな光景である。
しかも男女の出っ張ってるところが互いに当たっちゃっている。
思わず顔が赤くなる魔雲天ときらり。


803 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:20:32 AuuUZr9.0
慌てて亜久里が男性陣に見せないようにし、闇は思い出したようにツッコミパンチをサウザーを入れる。
さやかが驚き、イリヤが呆れたように口を出す。

「み、みんな見ちゃダメ」
「えっちぃのは嫌いです!」
「ひでぶッ!」
「ちょ、聖帝様は関係ないでしょ!」
「大丈夫、いつものことよー(棒読み)」

とにかくいつまでも裸じゃ可哀想なので、小町は男性陣に指示を出す。

「ホラ男ども、ボーッと見ているじゃない!
早いとこオオナズチにでも服を貰ってきな!」
「男の人のアレなんてお父さん以外のもので初めて見たっす」
「黒子くんや日之影さんにもあんなものが」
「モモとあかりも人様の裸をジロジロ見るんじゃあない!!」



「道は険しそうだし、ここまでの犠牲は多かった。
でもなんとかなりそうな気はするよ……サクヤ」

世界はこうしている間にも破滅に向かっており、都庁が利き手状況なのは変わりない。
そしてフェイときらりの歌も失われてしまった。
だがきらりの歌が失われるのも永遠ではないのかもしれない。
襲いかかってきた暴徒たちも血を流さずに追い返すことができ、いずれは都庁を救う礎になるかもしれない。
そう思わせるもの……希望をレストは仲間たちから感じ取れずにはいられなかった。


『レスト』

微笑みをこぼしていたレストの後ろからに氷嵐の支配者が現れた。
レストが振り向くとその首は元の三つに戻っていた。

「その首、治ったみたいだね」
『ああ、治療のおかげでなんとかな。
次は失わないと良いが……それより緊急招集だ。
ダオスと小鳥のいる世界樹の天辺で聖帝との情報交換も兼ねた会議を行う。
ただし、戦力が減っている中でこの前のように全員が一箇所に集まると防衛力を欠いてしまうから、少人数の代表者だけとする。
故に会議に出席するのはダオス殿と秘書の小鳥、まどかちゃんと私。
レスト、聖帝と彼が纏める軍団の副リーダー金色の闇。
それから小町とオオナズチ、ほむらだけだ』
「残りの人はどうするんですか?」
『耳が良い神樹にスピーカーの代わりをさせる。残りの者は地上にいる奴から情報を貰うと良い。
さあ、天辺へと転移しよう。その前に小町は布か何かで姿を隠せ。
外から見られでもしたら例の偶像計画がおじゃんになってしまう』

そして、四人と一匹はレストの魔法で一気に世界樹の天辺へと転移し、フォレスト・セルの居座る地を後にした。




804 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:23:26 AuuUZr9.0

「どうしたのオオナズチ?」
「あ、いや……」

世界樹の天辺に繋がる階段の前でオオナズチは何やら外を見て立ち止まっていた。
ほむらは気になって声をかける。

「会議はあなたの発案でしょ?
今後の計画の練り直しと、救済の予言についてわかるかもしれない古代ミヤザキの情報が手に入ったって言うからダオスが会議の場を開いてくれたのに、言いだしっぺが遅刻したらどうするのよ」
「いやはや、一瞬こまちちの姉御関連でエロい妄想(インスピレーション)が浮かんじったもので脳内コンピュータが停止したんですぞwwwwww」
「はぁー……おほくさ。先に言ってるわよ」

呆れた様子でほむらは先に階段を昇っていった。
その後ろ姿を見送ったあと、オオナズチは再び外を見る。
呟く言葉は重く、草原は見当たらない。


「…………すまん、ホルスの黒炎竜。
今の疲弊した我々ではおまえの先輩や仲間を助けに向かわせられない……!」

そう零したオオナズチの顔はひどく悔しそうであった。
目線の先は黒煙があがる江戸川区方面。
オオナズチはドラゴンネットワークの最新情報からイチローチーム(イチリュウチーム)が江戸川区まで来ていて狂信者の巨大ロボットに襲われて窮地に立たされていると知った。
だが都庁・聖帝軍合わせても戦力的に大きく疲弊しており、送り込めば赤竜たちのような犠牲を余儀なくされてしまう。
今から救援に向かわせれば間に合うとしても相手はオシリスをも瞬殺した相手なのだから犠牲は確実である。
それでもお人好し揃いの同盟軍は人員を送り込んでしまいそうだ。

故にオオナズチは、ドラゴンネットワークが都庁では自分しか使えないことを利用し、心を鬼にして情報の黙殺を決めた。
単に仲間の喪失を恐れたわけではなく、これ以上の人員を喪失すると世界樹の防衛戦力や大災害の謎を解く人員を失って破滅しかねない故の判断であった。
後で仲間から非難されてもこれは曲げるつもりはない。

「……くッ」

とはいえ、亡くなった黒炎竜の慕っていた先輩でありオシリスや、イチローたちを見殺しにすることに対してオオナズチが心を痛めてないわけではないとだけ、ここに付け加えておこう。

【二日目・17時00分/東京・都庁世界樹】

【都庁同盟軍】
※全員がさやかたちによる治療が行われ、傷が全快しました
※地下にフェイ・イェンのディスクが埋葬されました
※戦闘に参加していない小鳥以外の全員がドラゴンハートによる強化が行われました
※作戦により表向きで小町と影薄組は都庁の敵ということになります


【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【アイスシザース@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【エリカ@ポケットモンスター】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【桑原和真@幽遊白書】

【小野塚小町@東方Project】
※支給品に光剣サイファー@ストライダー飛竜が追加されました
 飛竜が使っていたものと同一とは気づいていません
【日之影空洞@めだかボックス】
※支給品にデモニカスーツ@真・女神転生SSJが追加されました
【東横桃子@咲-Saki-】
※支給品にデモニカスーツ@真・女神転生SSJが追加されました
【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
※支給品にデモニカスーツ@真・女神転生SSJが追加されました
【赤座あかり@ゆるゆり】
※支給品にデモニカスーツ@真・女神転生SSJが追加されました

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
※江戸川区にてイチリュウチームがドリスコルに襲われている現状を知っていますが、都庁の疲弊した戦力を鑑みてあえて黙殺しました


805 : キラッ☆と偶像計画(アイドルプロジェクト) ◆juVL3k7Mkk :2018/05/29(火) 17:24:00 AuuUZr9.0




【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(円亜久里)@ドキドキプリキュア!】
【ターバンのガキ(イリヤスフィール・フォン・アインツベルン)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】

【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ】
※テラカオス化の治療が終わって汚染がなくなり、テラカオス抗体を得ました
 またテラカオス化によって手に入れた能力も制御され、きらりはデバフ歌(弱)とデバフ耐性と再生(弱)の能力を引き継がれたものの、無関係の人間を殺したことによる精神的ショックによりしばらくは歌えません

【ターバンのレスラー人間(ザ・魔雲天)@キン肉マン】
※テラカオス抗体を得ましたが、代償として悪魔超人の力も失いました(一時的なものか永続かは不明)
 外見イメージはストロング・ザ・武道の能力で一瞬ただの人間になりかけた時の姿です


806 : 名無しさん :2018/05/30(水) 00:32:38 M/OkV.8c0
投下乙!
フェイは駄目だったか…
しかしこれまた随分思い切った作戦だが、タイムリミット考えたらやむ無しか
それにしても魔雲天が主人公より遥かに目立ってるなぁ

ところで、デモニカやメムアレフのデザインが普通に素晴らしいと思う俺って異端なの?


807 : 名無しさん :2018/06/01(金) 08:57:34 /OyKuLi.0
同志よ、俺もデモニカは大好きだ
魔雲天は人間になってパワーダウン(?)したようだけど、その分きらりのPとして頑張って欲しいところ


808 : 名無しさん :2018/06/03(日) 14:52:00 4YhGJeJs0
予約していた
イチリュウお留守番、アナキンチーム、イチリュウ物置、下っ端狂信者数名
で投下します


809 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 14:53:00 4YhGJeJs0
千葉県の某遊園地。
休息を続けながら、ダイゴはパソコンで情報収集を続けていた。
イチリュウチームの中では単純な防御力は低い彼の傷は未だ完治していない。

「これは……」

歯がゆさを覚えるが、それでも自分にできることをしよう。
鵜呑みが危険なのはギムレーのおかげで理解できたが、おおまかな戦況ぐらいわかるだろう。
そうして続けている情報収集だが、数時間前と比べてその情報は減っていた。

まず掲示板が完全な炎上状態であり、冷静な書き込みが極端に減っている。
都庁をどうにかしろ、聖帝軍を許すな、クラウザーさんに縋るしかない。
そして……

「拳王軍にドラゴンズのドラゴンが特攻、痛手は与えるが白髪の女に惨殺された……」

その書き込みを見た瞬間、ダイゴは大きく落胆した。
自分のこの傷の原因であるリオレウス。だが彼を恨むことはできなかった。
大切な存在を殺されて狂おしい程の殺意に捕らわれてしまったリオレウスもまた、犠牲者なのだ。
そして彼を助けることはできず、落命してしまった。
詳細はわからないが、炎上する掲示板の中でもリオレウスを称えるコメントは多かった。

『やられちまったけど、一人で拳王軍に挑むなんて勇気あるな……』
『ドラゴンズの仲間が助けに入ろうとしたのを、拳王軍の連中は徹底的に邪魔したらしいぞ』
『そして見せしめのためにドラゴンを微塵切りだろ!? そこまでやる必要ねえだろうが!』
『ヘルヘイムと聖帝もクソだが、やっぱり最初っからクソな拳王軍は今もクソなままと』
『それと比べて、馬鹿にしてたけどドラゴンズは実はまともだったんだな……』
『やられちまったドラゴンはチキンなんて呼ばれてたらしいが、今もそんなこと言う奴いたらぜってえ許さねえ』

「リオレウス……」

察するに、リオレウスの最期は相当な惨さだったようだ。
不幸中の幸いと言うのは不謹慎かもしれないが、せめてもの救いは止めに向かったナッパ達は無事らしいことぐらいだろうか。
この情報、仲間に伝えるべきなのか否か。

『ドラゴンズはイチローチームと一緒に千葉県で休息してるらしいが、どうにか手助けできねえかな?』
『馬鹿野郎! 迂闊にまともな人達の場所晒すな! 狂信者にでも見られたらどうすんだ!?』

その書き込みを見た瞬間、ぞわりと寒気を感じるダイゴ。
自分達が情報収集に使用しているということは、敵も同じことをしている可能性が高い。
見た所珍しい善意の書き込みのようだが、それは本人の意図しない事態を引き起こすこともある。
ただでさえ、狂信者の兵量と情報伝達速度は異常なのだ。




そんな時、空から高音――戦闘機の音が響いた



そして着陸音。
いくら夢の国とはいえ、機能していない遊園地に遊びに来る物好きはいない。
高速機を用いてわざわざこんな場所に来るというのは、自分達を探しに来たもの以外ありえないだろう。
ダイゴは思わず固唾を飲んだ。






810 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 14:53:45 4YhGJeJs0
「よかった、無事やった! ドラゴンズとイチローチームの人やな!?」
「……おっと、それ以上は近づかないで貰おうか。君たちは何者だ?」
「僕はアナキン、こっちははやて。安心して欲しい、僕らは対主催だ」
「……(こいつ、あのホモ監督と同じ、いや遥かに上回るきな臭さを感じるな)
「君たちと敵対する気はないよ(驚いた、特に何もしていないのに警戒されるか)」
「……僕はギムレー。生憎とチームリーダーのイチローもオシリスも不在でね。
 代わりに僕が要件を聞こう(まともに戦えるのは現状僕だけ。事を荒立てるのは愚策だが……)」
「君たちも救済の予言を知っているんだろう?
 そのことで話があってね(凄まじい闇の力、心を読み切れないとはね。今は争うことはないだろうけど……)」
「なるほどね。わかった、とりあえず今残ってるメンバーを呼ぼう(あの戦闘機を先に落とせば、逃走ぐらいはできるか?)」
「あ、私たちもまだ仲間がおるんよ。呼んでくる!(平和な筈なのになんか妙に空気張りつめてへん……?)」

遊園地に降り立ったのはXウイング。アナキン率いるチームであった。
対応にあたったギムレーは表情は変えないまま、この突然の来訪者に警戒を強めていた。
見た所、首輪を外した相当な実力者。
しかし彼に関する情報は、掲示板でも見かけることはなかった。
鵜呑みにできない掲示板とはいえ、力を持つ対主催ならばこれまでにその活躍や評判などがあってもいい筈だ。
仮に対主催の皮を被ったマーダーだとしても、危険人物として名は上がるだろう。

(ありえるのか? あれだけの力を持ちながら、どちらの情報も挙がらないなんてことが)

歩きながら、ギムレーは思考を続ける。

(戦争地域すら実況する馬鹿が溢れる掲示板だ。対主催にしろマーダーにしろ、力を持つ者は縋られるか警戒される)
(どちらの評判もないというのは、余程の僻地で息を潜め続けでもしない限り不可能だ)
(だが地上はどこも既に破滅一歩手前の惨状。考えうるのは地下だが、あいつの力でそこまで念入りに隠れる必要があるのか?)

仲間の待つ部屋まであと少し。

(掲示板を炎上させつつも、構造や人員の情報がまともに出揃わない都庁の者? いや、なら戦闘機より龍を駆るだろう)
(狂信者? これもない。奴らはこんな回りくどい手は使わない。もっと大軍を連れてこの遊園地を狙うだろう)
(そうなると、残るのは……。……少し、探りを入れてみるか。場合によっては……)

部屋に辿りつくと同時に、ギムレーは思考をまとめ終える。
ドアノブを回す手。手袋の下では汗が滲み出ていることは自覚していた。







811 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 14:54:45 4YhGJeJs0
「これでどうかのう? 味方だと信じて貰えただろうか?」
「アリガトウゴザイマス、ブリーフ博士!」
「マジ感謝っすよ! まさかこんな時に首輪を外せるなんて予想外の僥倖っす!」

「首輪解除可能な博士を匿っていたのか。感謝するよ(これは確かに想定外の幸運だ。しかし……)」
「いや、当然のことをしたまでさ(こいつだけ首輪が外れて戦闘力が跳ね上がったが……信用を得るためだ、やむをえない)」
「予言のことも話したいけど、まずはお互いの情報交換からでいいかな?」
「ああ、構わないよ(僕としては早く予言をどうにかしたいけど)」
「助かるよ(如何にも善人な立ち振る舞い……反吐がでる。首輪が外れた神軍師の眼、甘く見るなよアナキン?)」

そしてアナキンチームとイチリュウチームはついに邂逅を果たす。
ブリーフ博士の手により首輪が外され、ラミレス達は歓喜の声を上げる。
柔和な笑みを浮かべるアナキンにギムレーも笑みを浮かべる。
両チームのメンバーは実質的なリーダー同士がいい雰囲気のため、安堵の表情。
まさか水面下で思惑が渦巻いているなど、知りもしない。

(神軍師の眼の力は、定めた相手のおおまかな戦闘力と装備品、スキル構成を見抜く。
 アナキン自身の戦闘力は確かに高いが、それ以上に所有武器もとんでもない代物。
 そして『フォース』……? 知らないスキルじゃ名前しかわからないが厄介そうだ)

「なんか久々にホルたち以外のまともな人に出逢ったホル。もうどこもかしこも怪しすぎて参ってたホルよ」
「こっちも助かったで。あ、あとネット上はあんなやけど、都庁の人も信用できるで!」
「ホルゥ!?」
(ほう、これはまた想定外だが、いい情報を持っていそうだね。少なくともここで都庁の真偽だけでもはっきりさせておきたい)

舞い降りたアナキンチームの情報は、予想外の方向からもイチリュウチームの追い風となった。
疑惑の都庁の情報を握っている参加者というのは、現在においては非常に希少だろう。

「疑う形で済まないが、とりあえずあれを見て貰おう。ダイゴ、保存した例の動画を」
「オーバーロード動画か。よし」

「なぁ!? これレストさんやないの!? なんでサクヤちゃんの格好なん!? ちょ、あぶな……おおぅ、平気なんかいっ!!」

動画を見るなり表情を忙しく変えたはやては最終的につっこみで感想を終えた後、少し安心した様子で溜息をついた。

(都庁の門番の本名、そして衣装の本来の持ち主を知っているか。この反応は、直接彼らと面識があるとみて間違いなさそうだ)
「疑って悪かったよ。だがおかげで確信が持てたよ。信頼できそうな君たちと都庁の話を聞かせてくれるかな?(一人除くけどね)」
「信頼してもらえて何よりだ。話ははやてからして貰った方がいいかな?(こいつ、相当用心深い。面倒な相手にならなければいいけど)」
「ええで。もともと私は狸組として動いてたんやけど――」

はやてはこれまでのことを語り出す。
狸組としての行動、訪れた都庁で行った情報交換。
世界の支配を目論んでいた天魔王軍との戦い。
そしてその戦いの最中、不幸な事故からブリーフ博士以外の仲間は皆殺しにされてしまったこと。
そこに颯爽と駆けつけてくれたアナキンの勇姿。
その後本来の仲間であるなのは達との合流できたこと、だが未来に控える大災害を知ってしまったこと。

「マジやべえ」

千年タクウを順繰りに渡されたイチリュウチームは大災害の情報に軽くパニック。

(妙とは思っていたが、都庁でまとめて首輪解除された原因は博士だったか。おかげで情報は少ないし、テラカオスを倒しかねない危険な存在だな)

ほぼ全てを知るアナキンだが、都庁の首輪が外れた理由を知り、テラカオスを倒すだけの戦力を持つであろう都庁への警戒を強める。

(この情報は大きい。戦局を変えるに足るいい情報だ。とはいえ、一手のミスが命取りになりそうだ……)

そしてギムレーは、己の考えをより深めるのであった。





812 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 14:55:30 4YhGJeJs0
「救済の予言は、未来の大災害を回避するためのもの……」
「ホルホル、しかし都庁がまともって、やっぱり信じられんホル。あの女装男と麒麟以外には誰かいなかったホルか?」
「えーと……あ、仲よさげに話とる儚げな巨乳の子おったよ」
「都庁に行くのも吝かじゃないホル」キリッ
「シカシ申シ訳アリマセン、コチラハ情報ラシイ情報モ、予言ノ解明モ進ンデイナクテ……」
「大丈夫さ、同じ志を持つ者が増えただけでも大きい」

「君がさっきの話にあった、怪物に変わりかけたっていう? まさか瘴気がばら撒かれてるとは思わなかったけど……
 実は俺とゼロもそんな奴を見たんすよ。しかもその瞬間に勝手に首輪まで外れてさらに驚きという」
「でも、ユーノ君の首輪はブリーフ博士に取ってもらったよ?」
「……もしその光景が事実なら、主催者はやはり意図的に怪物を作り出そうとしている。
 完成の瞬間、不要になった首輪が外れる仕組みなんだろう」
「そうか! じゃあやっぱり、まだユーノ君は元に戻れるんだね!」

アナキンチームとイチリュウチームの交流は続く。
久々の対主催同士の交流。特にイチリュウチームにとっては首輪解除に謎解きに多くの進展があった。
迫る大災害とそれに関係するだろう救済の予言。
生前、ホルスの黒炎竜が解明できればヒーローと言っていたが、冗談抜きでそうなりそうな内容だ。
アナキンチームは情報面の進展こそ少なかったが、仲間が増えたというのは大きな進展。
さらに都庁の誤解も解けたとなれば、目的の一つであった外堀埋めもできたことになる。

「ところではやて、君の仲間だったという殺生丸が使っていた刀はあるかい?」
「あー……さっき言った事故の時に小汚いおっさんに盗られてもうて、その後助けてくれたアナキンさんが叩き折ってな?
 バラバラになってもうたし、急いで逃げてきたから回収もできてへんけど、刀がどうかしたん?」
「ああ、ごめんごめん。ほら、僕の今の武器は見ての通りただの鋼の剣でね。
 この後も戦いが続くとなると、いい剣が欲しいと思っただけだよ。ないならいいよ、魔導で頑張るだけさ」

腰に差していた鋼の剣をコンコンと叩いて見せるギムレー。
その後に魔導書を握りしめる姿を見たはやては、彼が魔法寄りの魔法剣士なのだろうと気にも留めなかった。
それはアナキンチームのメンバーも、イチリュウチームのメンバーも同じく。
いい武器はすぐに諦めて、話題は別のことに移る。

「聖帝軍の情報は?」
「それはわからない。僕らも彼らが虐殺を行ったという情報はみたけど……」






(……ホルスの主人、そして風鳴翼を斬った都庁の番人、レスト。話を聞く限り、殺生丸に渡されたのはそいつの使用してた刀だ)

(食人鬼を一撃で切り伏せ、天魔王軍の首輪のない邪装兵器とも打ち合える名刀。それを叩き折った?)

(さらに天魔王すら一撃で倒すだって? 大層な武器をお持ちのようだが、それは本当にただの支給品か?)

(はやての着ていたたぬきスーツは使用制限があった。強力な支給品には制限があるんじゃなかったのか?)

(全てが妙だ。天魔王と渡り合える大妖が武器を手放すか? 救援のタイミングがよ過ぎないか?)

(――なあ、アナキン? 例えばだが君が精神支配で殺生丸の身体を操ったとかはどうだ?)

(ありえない話じゃないだろう? 僕だって……ルフレだって、ギムレーの力で無意識に操られてしまった)

(そして最も信頼する親友、半身――憎き聖王クロムをこの手で刺し殺してしまったんだから……)


813 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 14:56:03 4YhGJeJs0
会話を続ける仲間達から少し距離を置き、それとなくアナキンとはやて達を見やる。
首輪の外れた今、ギムレーは屍兵の大量生産以外の能力は自由の身だ。
先刻の神軍師の眼も、その本来の眼力を取り戻しているがその眼にはまだ秘密がある。

(……なのはとユーノは支援S相当、両想い。対してこれは初めて見るな。はやてからアナキンへのみ支援A相当。恋心に近い)

その力は支援関係の把握。
恋人や友人と共に戦う、それだけで意外と人間というものはいつも以上に力を発揮することができる。
眼ではみえない信頼、絆。本来は不可視のそれを神軍師は把握できるのである。
器たるルフレは軍の中では恋のキューピッドでもあり、その身体と記憶を継いでいるギムレーにも当然に引き継がれていたわけだ。
余談だが、見据えた相手が既婚者の場合は配偶者と子供の名前まで見抜ける。

(これじゃあ、アナキンを怪しめと言っても逆に僕が疑われるな)
(状況だけを聞けば、絶望の中に現れた希望の光。聖王のように慕われ人々を魅了するのだろう。それはわかる)
(だがこいつは、断じて聖王ではない。救援がもし本当に仕組まれていた場合、それはこの状況を実現させるためなんだろう)
(突然現れた、圧倒的力を持つ勇者。何も知らない人間なら考えもせず崇めるだろうが、少しでも頭が回る奴なら不自然さに気付く)
(はやては後者。だからこそ絶望の最中で助けた。絶望が深ければ深い程、腹立たしい程に希望もまた輝くことを我は知っている)
(盲信に近い信頼、恋心を勝ち得ることで、不自然さを塗り潰して己の居場所を作りだすか、この男は)

「どうかしたのかいギムレー?」
「いや、別に」

(その力、支給品と偽った強力過ぎる武器、これまで掲示板に一切挙がらなかった名前、女性の気持ちも利用するその狡猾さ……)

(間違いない。こいつは今まで、ほとんどの参加者が近寄れなかった九州ロボにずっといた――主催者側だ)

表情は冷静なまま、ギムレーはアナキンの存在をそう結論付けた。

(心が読めない……いや、そもそもこのギムレーという男。魂が二つ内包されているのか? 闇以上にそれが原因だと言うのか?)

アナキンも表情は変えないまま、ギムレーへの警戒を続けていた。
フォースを持ってしてもギムレーの心を覗けないが、他の仲間と比べて明らかに自分は見られている。
その原因はわからない。しかし本能的にしろ直観にしろ、警戒されているということは感じ取れた。

(何が狙いだアナキン。はやて達は主催の情報を奪ったというが、そこにアナキンの名前はなかった)
(ボロは出していない筈なんだがな。何を考えているギムレー?)

(ルフレも経験済みのことだが、軍全員の情報を一冊の名簿にまとめるとそれを盗まれた際大惨事が起きる。分割されていたとみるべきか)
(まあお前がどれだけ僕を怪しもうとも、はやて達がいる以上何もできないだろうけどね)

(僕らへの接触、考えられる一番の可能性は救済の予言。問題はこの男が予言を達成したいのか破壊したいのかどちらなのかということ)
(せいぜい僕の、世界の役に立ってくれ)

(だがこいつが主催者側なのは間違いない。警戒と監視は必須。今は無理でも、そう、都庁の者と合流し取り押さえられたら或いは……)

変わらぬ青年たちの表情。
しかしその下に渦巻くは腹の探り合い。それが語られることもない。
アナキンのチーム内における信頼は強固なもの。どれだけ切れ者であろうとも、ギムレー一人では崩すことはできない。
それ故に警戒する。
ギムレーは、腹にいくつも抱え込んでいそうなアナキンを。
アナキンは、いずれこちらに損害を与える可能性のあるギムレーを。




二人は、賢すぎたのだ。


814 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 14:56:48 4YhGJeJs0
それはいいことだ。
現にその知略でもってアナキンもギムレーもここまでやってきた。
しかしどれだけ賢い者でも、神ではない。そもそも神ですら完璧ではない。

神軍師の眼、その最大の能力は戦場を広範囲に渡って把握しきれること。
フォース、その最大の能力はそのままあらゆる力の流れを感じ取れること。
しかし眼はアナキンに集中し過ぎていた。
フォースはギムレーに集中し過ぎていた。

「あ、そういや首輪外れたってことは? ゼロ、もうルナミラクル使えるんじゃ!?」
『そ、そうだ! 行けるぞDAIGO!』
「安心してくれなのはちゃん。首輪が外れた今、ゼロの力で混沌の力は浄化できるぞ!」
『あの触手だけが特別だったんだ。今度こそ、きっちりと決めてみせよう!』
「ほんと!? やった、やったよユーノ君!」



( し ま っ た あ あ あ あ あ あ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !?!? )




明るく響いたDAIGOの声を聞いた瞬間、アナキン大絶叫。心の中で。
叫ばなかったのはひとえにギムレーの前でボロを出すまいと普段以上に気を張っていたおかげだろうか。
叫ばなかった自分を褒めてやりたい反面、殴り飛ばしたくもなった。

策士アナキン、最大のミス。
予言やテルミ、未来の大災害。決して無視できないどころか最重要課題の塊だ。
当然思考はそちらに多く割かれる。
安心して接触できる対主催はイチリュウチームしかなかった。ここまではいい。
首輪を外すのも、信頼を得るためには止むをえなかったし、そもそも止めてもブリーフ博士は絶対に首輪を外しただろう。
ギムレーに何故か怪しまれたが、すぐには行動に移せないだろう。
このイチリュウチームにおいて気をつけるべきなのはギムレーのみ。


そうではない。視野もフォースも狭まりすぎていた。
どうして忘れていたのか。
このカオスロワにおいて、テラカオスキラーは複数存在するということを。
絶対的な力で文字通りテラカオスや候補者を容赦なくをキル(殺す)ご存知ハクメン。
アナキンは詳細を知らないが、多種多様なものを浄化するフォレスト・セル。
だが片や融通効かない侍、片や見た目ヤバすぎるクリーチャー。

対して第三のテラカオスキラー、ウルトラマンゼロ。
彼のルナミラクルの力は、柔らかな光で広範囲を浄化できるのだ。
『凶』として討たれることも、尻を犠牲にする必要もない。安心と信頼のウルトラマンブランド。

最も平和的かつ確実な混沌の浄化。
その力は首輪により大きく制限されていたが、今まさにアナキンはそれを外してしまったのである。
都庁やハクメンがテラカオスを倒しそうだとか、そんなことを気にしている場合ではなかった。
目の前にいる存在こそ、プロジェクト・テラカオス最大の天敵なのだから。
本当にどうして今まで気がつかなかったのだろう?


815 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 14:57:24 4YhGJeJs0
(こ、これは迂闊だった……っ! 不味い、すぐにでもゼロを止めなければユーノどころか他の候補者まで浄化されてしまう!)

焦るアナキン。当然と言えば当然である。
全てを知るからこそ、テラカオスがこの世に必須とわかるアナキンはともかくとして。
それを知らない者からすれば、混沌の治療或いは討伐は誰もが望むことなのだ。

「ちょ、苦しいよなのは!」
「あはは、ユーノ君、ユーノ君!」

見ればなのははユーノを抱きしめて笑っている。
朱くなっているユーノも満更ではなさそうだ。
化物から人間に戻れる、恋人と共に生きられるのだ。中身はまだ若い少年、嬉しくないわけがない。

(どうする……!?)

ここに来て、勝ち取った信頼が邪魔をする。
下手に断れば、築き上げた気の利く好青年のイメージにひびが入る。ならばフォースでDAIGOとゼロを殺す?

(くそ、ギムレーの手前で手の内は見せたくない! もし防がれた場合は全てご破算だ!)

だが自分を怪しんでいるらしいギムレーの前で迂闊には動けない。
首輪を外した邪竜ギムレー。それはつまり、彼の本来の力である半不死身能力の帰化。
『TC』に汚染されている以上、おそらくはその力も弱まり、本来の唯一の死亡方法である自殺以外でも死は迎えるだろう。
だがギムレーが絶望の使者とされる所以は、半不死身以前に死ぬ気がないとしか思えないその巨体ととんでもない硬度。
たとえ邪剣と聖剣であっても、でかすぎてどこをどう斬れば死ぬのか?
さらに言えば先程感じた複数の魂。万が一小さい方の魂をダミーで食わされたら?

アナキンは確かに強者である。
だが現時点において、複数の参加者を怪しまれずに同時に始末する手段までは持ち合わせていない。
ゼロとギムレーを瞬時に無力化できない以上、下手に動くのは危険すぎる。
だがこのままでは最強安全のテラカオスキラーが降臨してしまい、それは大災害を防ぐ手段の消滅をも意味する。

(本部で何故か股間のライトセーバーを全開にした時並の窮地だ!)
(……奴め、僅かな焦りの感情が見えるが一体何を?)

「ゼロの力が自在に使えるようになったなら、これ以上頼もしいことはない。
 けどギムレー、悪い知らせだ。リオレウスが拳王軍惨殺されたと……」

アナキンはもはやギムレーだけでなく、DAIGOとゼロという最大の問題の前に思考がパンク寸前であった。
ギムレーもまた、アナキンの警戒を続ける中ダイゴからもたらされた情報に思わず耳を傾けてしまう。

知略に優れた者も完璧ではない。
そして知略は時に、暴力の前に為すすべもなく踏み躙られることもある。

ああ、どうして忘れていたのだろう?

アナキンは、はやては、渋谷にいた時点で半ばヘルヘイムの仲間として逆探知され命を狙われていた。
イチリュウチームは、休息地の場所が明かされていた。
対主催の合流。それは主催に抗ったり予言を考察する者にとっては望ましいが……逆の立場の人間からは面白くない。
それと同時に――狙い時でもあるのだ。




爆音と共に、Xウイングが大破炎上した。


816 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 14:58:08 4YhGJeJs0
「「なっ!?」」

アナキンチームも、イチリュウチームも。
余りに突然のことに目を疑った。

幸いXウイングにもう仲間は乗っていない。あの爆発で誰かを失うことは無いが――
その爆発は確実に全員の注意を惹きつけるには十分過ぎた。
直後、今度は乾いた音が連続で響き渡る。

「え――?」

それが狙撃音だとわかった頃にはもう遅い。
何が起きたのか理解するよりも前に、ダイゴが血を撒き散らして力なく倒れる。


【ダイゴ@ポケットモンスター】 死亡確認


「ダイゴ!?」

仲間の命が失われたことに誰かが叫び声をあげる。
しかしこれは惨劇の始まりに過ぎない。
そしてある男にとってこれは、千載一遇のチャンスでもあった。

無言のまま、しかし激情を滲ませたギムレーのトロン、雷の砲撃が報復として銃弾の射線上に放たれる。
狙撃手はそこにいるのだから。

「「ぐわああぁぁぁぁ!?」」
「残念、おじさんはもうこっちなんだよねぇ」

雷が炸裂する。
しかし聞こえてきたのは予想外の複数人の断末魔。
そしてそれに続く様に、人を小馬鹿にしたようないやらしい男の声。


「まずい、DMC狂信者だっ!」


複数個所への同時攻撃。徒党を組んだ対主催潰しのマーダー。
それの正体に感づいたアナキンは声を張り上げて叫んだ。


それと同時に。


「マジで――」

ごしゃりと何かが潰れる音が響く。
炎上したXウイングがさらに爆発を起こし、飛来した大きな残骸がDAIGOを叫ぶ間もなく圧し潰したのだ。
まるで狙い澄ましたようなそれはDAIGOだけでなく、ブレスレットの中にいたゼロの命までも奪っていた。


【DAIGO@現実?】 死亡確認
【ウルトラマンゼロ@ウルトラマンサーガ】 死亡確認


「……っ! くそ、狂信者めぇ!」

続け様に起きた惨劇に、アナキンは狂信者への敵意を露わに叫ぶ。


817 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 14:58:56 4YhGJeJs0
(感謝するよ、全く。どうやら天は僕に味方してくれているらしい)

そして、心の内では全く反対の感情を持っていた。
ダイゴの件は完全に想定外であり、反応が遅れた。その瞬間ではまだ敵の正体もわからなかった。
だが敵の正体などどうでもいい。大事なのは『自分達の敵』が現れたこと。
それ即ち、先刻の天魔王の様に利用し、責任をなすりつけられる存在がいればいい。

ギムレーの意識が完全に狙撃手を殺すことに偏った瞬間。
硬い彼を不意打ちで殺すことは出来ずとも、ウルトラマンになる前のDAIGOとゼロなら始末は容易い。
あたかも爆発で飛んできたかのように、フォースで操った残骸を叩きつけてやるだけでいいのだから。
結果、見事アナキンの作戦は上手く行き、最も邪魔であった二人を殺すことができた。
すぐに対主催らしく叫び、狂信者の仕業だと仲間達に刷り込むことも忘れない。

(さて……)

とはいえ、これはアナキンにとっても諸刃の刃かつ、彼にとってこの襲撃は幸運であると同時に不運でもあった。

(あの二人は仕方がなかったとはいえ、ダイゴまで殺されたのは予定外だ。人数があまりに減りすぎては、今度は野球ができなくなる!)

アナキンが狂信者に向けた感謝の感情は一瞬。以後は言葉通りに敵意を向ける。
予言の全容はわからないが、野球チームが滅び去ればそもそも予言は絶対に完成しなくなる。
そればかりは避けたいことであり、また何も知らない狂信者はお構いなしにこの場の全員を殺しにくるだろう。

「ぐおおおおぉぉぉぉぉっ!」
「駄目、ユーノ君!」

「博士、さがって!」
「いかん、囲まれておるぞ!」

「やばいホルやばいホル! とりあえず監督はホルに乗るホル!」
「ウウ、スミマセンホルスサン……!」

ユーノは怒りからか再び半獣化しかかっている。
本来であればテラカオス化の促進は望ましいことだが、今ばかりはアナキンは喜べない。
ユーノはその力をコントロールできず、なのはが戦おうとすればユーノが意地でも前に出るだろう。
ブリーフ博士は戦えず、はやても以前ならともかく今は満足には戦えない
ラミレスは片足を失っており、野球で戦うことはもうできない。ホルスも彼を背に庇っていれば動きは制限される。

(くそ、数が多すぎるぞ!? みんなを庇いながら戦うなんて、とても無理だ!)

アナキンは剣を抜くが、その額には汗が滲んでいた。
自分一人ならば、フォースで身を固めればこの場を切り抜けることはできるだろう。
しかしそれでは、折角作り上げた自分の居場所と野球チームを犠牲にしてしまう。

そしてアナキンにとって不運であったのは、この狂信者がただの雑魚ではなかったということである。


818 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 14:59:31 4YhGJeJs0
「油断はするな。この作戦には第二段階があるのだからな。先程の痴女ドラゴンの様に取り逃がすことは許されないぞ」
「奴らの機体は破壊した。偵察ドローンの情報から、現時点で飛行可能なのはあの炎隼のみ。
 体躯からして全員を乗せて飛べはしないだろう。ここで確実に仕留める」

天才ゲームメイカー鬼道有人が考案した、隙のないフォーメーション。
さらに常に冷静で油断ということをしない優れた指揮官ワイルドハント。

「任せなって!」
「可愛い子がいないのが残念だけど、これもクラウザーさんのためってねぇ?」

エピオンとすら殴りあえるという、とんでもない超人AKYS。
そして先程見事にダイゴを射殺し、一番槍をこなしてみせた葛城蓮。
そんな彼らを慕う狂信者は、近接戦闘と遠距離戦闘ができる部隊がしっかりと分けられていた。
迫真空手部に通っていたのは野獣先輩だけではないし、師範が狂信者ならその下も狂信者になるに決まっている。
葛城の戦い方に憧れた者も当然狂信者だ。

遊園地を襲撃したのは、かつて福生市で活動していたワイルドハント率いる狂信者だったのだ。
その実力は既に証明されているが、彼らが強いのは個々の力もさることながら、的確な指示と状況判断できる指揮官がいるからだ。
かつての狭間と大和が率いた部隊と同じように、彼らは狂信者の中でも特に統率のとれたエリートSATUGAI部隊と言える。

「ドリスコルさんの報告では、ヘルカイザーの報告以上に野球チームはしぶといという。
 それはたかが痴女一匹に逃げられた点からも皆が理解していると思う。彼らが分断されている今こそがチャンスなのだ」

鬼道が冷静に狂信者を鼓舞する。
渋谷に潜伏していた対主催チームの詳細は知らないが、真面目な対主催のイチリュウチームと合流するぐらいなのだ。
放置すれば、きっとSATUGAIを邪魔してくる存在なのは間違いない。

(円堂……お前は、最期までクラウザーさんのために戦ったのだろう? ならば俺も迷いは捨てる!)

友は最期まで戦い拳王軍に敗れたという。
拳王軍、野球チーム。それと同じイチリュウチームも、手負いとはいえ強敵なのは間違いない。
迷いを持ったままでは勝てないと、全力で二つの対主催組織をSATUGAIするのだと、友とクラウザーさんに誓った彼は強い。


「クラウザーさんのために!」
「「クラウザーさんのために!」
「SATUGAIせよ!」
「「SATUGAIせよ!」」


わぁっとさらに勢いを増す狂信者。
だが彼らは狂っているが、ワイルドハントの作戦は冷静だ。
このまま質と数で押し切れずとも。仮に敵が逃げたとしても。
空路が塞がれている以上、彼らは陸路で逃げる。

広大な遊園地、地理に疎ければ迷うもの。
そして様々なアトラクションは、罠や伏兵を仕掛ける場所の宝庫。

優秀な指揮官に率いられた狂信者に隙はない。









だがやはり――知略は時に、暴力の前に為すすべもなく踏み躙られることもあるのだ。


819 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:00:06 4YhGJeJs0
「――ムシケラが」

ただ一言。
たったそれだけの言葉は狂信者の咆哮すら掻き消すように、その場の全員の耳に届き、恐怖の感情を芽生えさせる。










『◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆――ッ!!!!!』






直後、耳を塞ぎたくなるおぞましい咆哮と共に辺り一帯が闇に閉ざされた。
何が起きたのかと、それを理解するよりも先に失禁している者すらいる。
それは、絶望の顕現。

『我はギムレー……破滅と絶望の竜……拳王軍、そして狂信者よ……』
『ある意味では感謝してやる。数々の破壊活動、流れた無数の血に夥しい屍の山、絶望の世界。我の力をこれ以上ないくらい高めてくれる』

関東全域を覆い闇に閉ざしたのは、邪竜化し天へと昇ったギムレーの身体であった。
その巨大さは、かつてヘルカイザーから逃れる際に変化した時以上となっていた。
首輪の制限もあったが、ギムレーは破滅と絶望を糧にその力を増していく。
この殺し合いの世界はギムレーにとってはまさに望む世界であり、狂信者は誰よりもそれを加速させたのだ。

『だが貴様らは――断じて許さん。我の、僕の仲間を殺し続けるその罪。死んで償え』

「あっ(察し)」

葛城は、いや彼に限らず全ての狂信者は己の死を察した。
残された本能から、この絶望の化身は殺せずともせめて頭数を減らしてやろうとするも。
長大にして強固なギムレーの尾はしっかりと、残された仲間達をぐるりと囲んで守っていた。


そして。

「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆!!!!!」

ギムレーの眼が赤く輝いた次の瞬間。
邪竜のブレスは尾で囲われた場所以外、遊園地も狂信者も何もかも全てに破滅をもたらし、等しく滅ぼし尽くした。

【ワイルドハント@ニンジャスレイヤー】 死亡確認
【鬼道有人@イナズマイレブンシリーズ】 死亡確認
【AKYS@COAT作品】 死亡確認
【葛城蓮@ACCEED】 死亡確認


820 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:01:35 4YhGJeJs0
「な、なんて力なんや……」

思わずはやてはそう零した。
突然現れた邪竜の尾。視界は全てそれで覆われていて、その外側がどうなっているのかわからない。
だが上空から響く怒りの咆哮と、膨大な破壊の力が降り注いでいるのはわかる。

(これがギムレー本来の力か……確かに、絶望と破滅の使者を名乗るだけの力。おかげで悔しいが助かったことは認めよう)

(だが、この力さえ大災害の前には全くの無力なんだ。なんと言われようと、僕はこの道を歩み続けるだけだ)

目の当たりにした破滅の力。
しかしそれさえ足元にも及ばないことを知っているアナキンは、ただ冷静に去った危機に感謝し次の事を考えるのであった。


【二日目・18時00分/千葉・遊園地跡地】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
【状態】健康、19歳の身体、深い悲しみ、首輪解除
【装備】レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、千年タウク@遊戯王
【道具】なし
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:DAIGOさん……
1:死んでしまったヴィヴィオたちのためにもこの殺し合いを終わらせる
2:救済の予言で世界を救えるのかな?
3:都庁に行ったエリカたちが心配
4:ユーノ君がいれば何も怖くない……と思っているけど……
※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※未来の自分が使っていた技の一部が使用可能です
※レオリオの死をまだ把握してません
※TC値と救済の予言の内容を知りました

【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
【状態】疲労(大)、19歳の身体、テラカオス化さらに進行、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:もっと力があれば……
1:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい
2:救済の予言の謎を解く
3:野田総理の死の原因を探りたい
4:いかなる理由があってもなのはを悲しませた主催者たちは絶対に許さない
5:沖縄に『敵』がいると本能で感じている
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※PSP版の技が使えます
※テラカオス化進行によって巨大フェレットに変身する能力を得ました
 あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます
 ただし現状では変身すると暴走状態に陥り、敵味方に関係なく襲い掛かります
 またTCを扱うシャドウの危険を本能的に察知できます
※レオリオの死をまだ把握してません
※TC値と救済の予言の内容を知りました
※まだ自分が完全なテラカオスにはなっていない=元に戻れる可能性を知りました


821 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:03:09 4YhGJeJs0
【八神はやて@魔法戦記リリカルなのはForce】
【状態】健康、精神不安定、非処女、死んだ仲間たちへの深い悲しみ、アナキンへの好感度(大)、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、夜天の書@魔法少女リリカルなのは、アナキンからもらったピルケース
【思考】基本:死んだ仲間たちの為にも主催を倒す
0:イチリュウチームまで犠牲者が……
1:主催者打倒と大災害阻止のために、情報と仲間を集める
2:他の参加者の都庁=ヘルヘイムの誤解を解きたい
3:恩人であるアナキンを全面的に特別な感情
※主催側が大災害について何か関与していると考えています(細かい部分は分かっていません)
※PSP版の技も使えます。
※カオスロワちゃんねるより、風鳴翼の情報を少し入手しました
※アナキンの正体に気づいていません
※世界滅亡(次の大災害)と救済の予言の内容を知りました
 また、沖縄の天候がおかしくなっていることに気づきました

【ブリーフ博士@ドラゴンボール】
【状態】精神疲労(大)、深い悲しみ、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、機材一式、風鳴翼の右腕
【思考】基本:対主催
0:なんということじゃ……
1:TC値と謎の物質の調査のために、自分以外の科学者とも合流したい
2:対主催参加者と出会えたら、首輪を外す
3:ユーノ君は沖縄から何を感じ取ったんじゃ?
4:恩人であるアナキンを信頼
5:亡くなったブルマや殺生丸くんたちのためにも技術者として戦い続ける
※首輪解除が可能となりました
※風鳴翼の右腕は四条化細胞とナノマシンの塊です。うまくいけば抽出できるかもしれません
※現在所持している道具では抽出不可。どこからか調達するか設備のある場所を訪問する必要があります
※情報交換により、風鳴翼(テラカオス・ディーヴァ)の能力の一部を知りました
※情報交換により、謎の物質(ナノマシン)の存在および危険性を知りました
※アナキンの正体に気づいていません
※世界滅亡(次の大災害)と救済の予言の内容を知りました

【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【状態】健康、不安、若返り、ジェダイ風衣装、首輪解除
【装備】邪剣ソウルエッジ&聖剣ソウルキャリバー@ソウルキャリバーシリーズ
【道具】支給品一式、四条化細胞入りカプセル、ライトセーバー@STAR WARS、闇のルビー、ギンガスパーク@ウルトラマンギンガ、ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、大量の不明支給品(アナキン確認済み)
【思考】基本:世界を救うためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:ギムレーは警戒。オシリスとイチローとは合流したいが……
1:対主催への信頼を得るためにブリーフ博士を利用する
2:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは消す
3:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
4:ユウキ=テルミを殺す前に、テラカオスや救済の予言について知っているなら吐かせる
5:いざという時は四条化カプセルで新たなテラカオスを作る
6:沖縄のフォースから世界の破滅の危機を察知。色々と急がねば……
※タイムふろしきで若返ったのでピーク時の姿と力を取り戻しました
※まだテルミの死を知りません
※沖縄のフォースの乱れからテラカオス・ディーヴァ・シャドウ(後のシャドウだったもの)の存在を感知しました


822 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:03:57 4YhGJeJs0
(ち……僕としたことが、頭に血が上り過ぎたか。ちょっと前の僕なら、仲間の死ぐらいでここまで怒りはしない)

(いや、誰かを仲間だと思うこともなかった筈だ。全く、未来の破滅に抗うだなんて……これじゃ聖王達と同じじゃないか)

(ルフレのせいか野球のせいか……まあ今はどっちでもいい。我はギムレー、我がもたらす破滅以外の破滅は認めない、それだけだ)

(しかし少し迂闊だったか。奴にこの姿を晒したこともだが、さっき名指しで破滅宣告を下した中には都庁と聖帝はいない)

(我が声は関東全体に響いているだろう。聖帝らからは運がよければ味方と判断されるかもしれないが、馬鹿どもから狙われる危険も増えた)

(どのみちイチロー達が戻り次第、予想通りなら対主催戦力の集う都庁に向かうつもりではあったが……)

上空、邪竜ギムレーの逆鱗の上にギムレーは思考を巡らせながら立っていた。
首輪に制限されていたが、ギムレーは肉体と魂を分割することもできるのだ。
従来通り、器のルフレの姿をしているギムレーが本体。
そして邪竜の方は器ギムレーの意のままに操れる巨大すぎる装備品とも言える。
いざという時の小回り、仲間を庇い傷を負いやすいのが邪竜の身体である以上、人間の姿の方が都合がいいのである。
邪竜と人間の姿のギムレーの戦闘力は同一であり、戦闘への影響もない。
何も知らない者はまず邪竜の方に攻撃を仕掛け、本体が人間の姿をしているとは気付けないだろう。

「ん?」

邪竜の首を唸らせ、狂信者を全員葬ったことを確認しつつ、器のギムレーはそれとは別の方角を眺めていた。
ここから少し離れた場所から、煙が立ち昇っている。

「あの妙なゴーグル、確か作戦には第二段階があると言っていたが、まさか……?」


【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒】
【状態】健康、人間形態、シャドウだった者へ若干の恐怖心、首輪解除、怒り
【装備】トロンの書、鋼の剣、邪竜ギムレー
【道具】支給品一式、不明品、スクーナー級×500、ガレオン級×30、首輪×10、首輪のスクラップ×40、首輪解除方法(未完成)を書いたメモ
【思考】基本:自分以外がもたらす破滅(未来の大災害)の阻止
0:イチロー達が戻り次第都庁に向かいたいが、あの煙は?
1:『正確な』情報を集めて仲間をフォローする。アナキンは要警戒だが今は誰にも話さない
2:試合の邪魔をするDMC狂信者を倒すために、本拠であるビッグサイトを攻略したい
3:予言に対して少し懐疑的
4:都庁がまともな場所と判明したのは僥倖。変態の巣窟でも文句はないさ
5:サラが死亡した場合はアウラの民の指揮を引き継ぐ
6:西の邪悪な気配は警戒を続ける
7:ネット上の乳神に若干嫉妬
※外見はデフォルト設定の銀髪青年です
※首輪を外したとしても、屍兵は簡単には生み出せません
※首輪解除により、人間の姿のまま、自分自身である邪竜ギムレーを操れるようになりました

【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【状態】右足切断(処置済み)、監督といて生きていく決意、首輪解除、深い悲しみ
【装備】野球道具一式
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:チームノ仲間ガ……ファッキュー狂信者
1:コレカラハ監督トシテガンバッテイク
2:リ、リオレウスサン……
3:都庁ノ噂ガ誤解ダッタコトダケハヨカッタデス
※イチリュウチームの監督になりました
※首輪解除により、常人よりも屈強な野球選手本来の力を取り戻しました
※足がどうにかなれば、戦える可能性があります


823 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:05:35 4YhGJeJs0
【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【状態】健康、悲しみ、首輪解除
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:世界を救うためにオシリスについていく
0:いつの間にかホル達、こんなに減ってしまったホル……
1:死んでしまった奴らのためにも頑張るホル!
2:都庁に儚げな巨乳がいるなら、向かってみてもいいかもしれない
3:ええ乳持ち(ry ソウルセイバーとサラの無事を祈る
4:ホルもソウルアーマーを遺したくなるよう人に会ってみたいホル
5:できればそれは巨乳の女の子が(ry

※アナキンチームにより、未来の大災害及び瘴気の存在をしりました
※さらに詳しい情報交換や予言考察はまだ出来ていません
※はやての情報により、都庁への誤解が解けました。聖帝軍はまだ保留中です




アナキンチームとイチリュウチームが狂信者に襲われる少し前のことである。


「よし、見えた!」
「なるほど、待ち合わせや合流場所としてはこれ以上ないくらい目立つ場所だ」


ドリスコルに大敗したイチリュウチーム、聖帝捜索隊と物置組の残党は全速力で浦安の遊園地を目指していた。
多大な犠牲を生み出し、今のままではドリスコルに勝つことはできない。
追撃を許せば今度こそ全滅は確定だ。
その恐ろしさを伝えるため、また仲間と合流し今後の計画を練り直すため。
一直線で遊園地を目指していたのである。
見えてきた遊園地に、イチローも思わず安堵の声を漏らす。







しかし追撃は、何もドリスコルだけが行うものではない。
この時のイチロー達は知らないが、彼は既にイチロー達に大量の追っ手を差し向けていたのだから。
安心して都庁と正面からことを構えるには、背後から別の対主催組織に狙われてはたまらない。
だからこそ合流地点の遊園地にワイルドハント率いる大部隊を差し向け。
そして挟撃できる形で送り込んだ狂信者は――





「 つ ぅ い げ き の グ ラ ン ド ヴ ァ イ パ ァ ァ ァ ァ ァ ッ ッ ッ ! 」





超低姿勢で地面を這うように、しかし燃え盛る剣を構えながら。
ひどく独特な言葉と共に、ミレニアムファルコンのコックピットをぶち抜いた。


824 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:06:48 4YhGJeJs0
「「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!?!?」」

突然の視界外、真下からの強襲にミレニアムファルコンは大きく揺れる。

「レックス!?」

そして運悪く、操縦を担当していたレックスは今の一撃をまともに受けてしまい、既に死亡していた。


【レックス@スターウォーズシリーズ】 死亡確認


「普通なら間に合わないところをきょうきょカカッととんずら維持したままついげきのグランドヴァイパ決めたら哀れな物置装備の雑魚が骨になっていた系の話があるらしいぞ?
 ああ、やはりやはりナイトが最強なのが証明されてしまった感」

レックスを殺害した下手人はなんでもないと言った様子で、妙な言葉を続けていた。
明らかな隙だ。しかし隙が在るはずなのに、隙がない。矛盾しているこの現象。
鎧を纏っているくせに、頭には桃をくっつけた帽子とかふざけた見てくれだが、高速飛行するミレニアムファルコンを撃墜しにきたのだ。
その実力は、疑いようがない。

「っ、イチロー! アンタらは動けない連中背負ってすぐにこの船を脱出しろ!」

ロビンフッドが誰よりも早く状況を判断し、指示を飛ばす。
レックスを失ったが、僅かなトルーパー達も銃を構えて乱入してきた騎士と対峙する。

「しかし!」
「早くしろ!」

イチリュウチームはそれぞれ仲間を担いで脱出。
ベルナドットがクリスを担ぎ、さらにロビンフッドも連れ脱出しようとするが……

「おい!」
「悪いね、オレはちょっとこの似非騎士に一発撃ちこんでから逃げさせてもらう!」

彼はその手を振り払い、目の前の少女を睨みつける。

「おいィ? 人を似非騎士とか捏造も大概にしろよカスが?」
「オレの知ってる騎士はなぁ、真下から不意打ちの奇襲しかけて来たりしねえよ!
 汚い手段を嫌い、正々堂々と戦う……それが騎士ってもんだろうが!」
「……ナイトを汚い呼ばわりとかマジで私の怒りが有頂天になりそうなんだが?
 そういうお前は汚くないのかよ緑野郎みろ見事なカウンターで返した。私のシマじゃ毒とかノーカンだからな。
 自分の汚さを棚にあげてナイトを貶めようとしてきた布装備のアーチャーは哀れにもグラットンスウィフトでバラバラになる運命が決定した」
「やってみせろよ……!」


ロビンフッドの祈りの弓が構えられると同時、騎士の漆黒の剣も構えられる。


「グラットンソードは一級廃人の証だが隔が長いから遠くの敵にも届く。遠近両対応のナイトに隙はなかった!」






825 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:07:23 4YhGJeJs0
「くそ、みんな無事か!?」

黒煙をあげて沈んでいくミレニアムファルコン。
蛮と萃香を担ぎ脱出したイチローは、他の仲間の安否を気に掛ける。

「お、俺とシマリスはなんとかな!」
「嬢ちゃんはなんとか担いでこれたぜ……」
「私も大丈夫ですけど、レックスさん達が……!」

残る6/、シマリス、ベルナドットとクリス、そして『ツバサ』は無事であった。
脱出に成功できたのは幸運であったが、レックスの犠牲と、恐らくは自分を捨てて殿を務めたロビンフッドとトルーパー達は……

「どうして、どうしてこんな……」

ポロポロと大粒の涙を零す『ツバサ』。
だが悲しみに暮れるにはまだ早い。

「いやぁ、ツイていないと思ってたけどここに来てこんな幸運に恵まれるなんてね」

現れたのは仮面ライダー黒影――斎藤佑樹率いる軍勢。
口々にSATSUGAIを唱える彼らが狂信者なのは誰もがわかることだろう。

「まさかこの僕が、あのイチロー選手と戦えるなんt

しかし黒影は口上の途中で蜂の巣にされて息絶えた。


【斎藤佑樹@現実?】 死亡確認


だがそれをやったのは、彼が戦いたがっていたイチローではない。

「松ぼっくりが胡桃に勝てるか! イチロー、俺だってまだ戦えるぞ!」
「6/!?」

無数の胡桃を投擲し、狂信者の部隊長を仕留めたのは6/。
前の戦いで胡桃を使い果たした彼であったが、ミレニアムファルコン内で仲を深めたシマリスから譲り受けていたのだ。
シマリスの所持していた胡桃の数は膨大であり、山盛り譲ってもまだまだ残っている。

「みんなの仇討ちでぃす!」

そのシマリスも6/に続く様に胡桃を投げまくり、モブ狂信者を仕留めていく。
ゼオライマーには効かなかったものの、通常装備の狂信者であれば胡桃の貫通力は問題なく発揮される。
群れている相手に対し、散弾銃のような胡桃は特効武器ともいえる。

「や、やばい!?」
「はやくきて〜はやくきて〜!?」



「黄金の鉄の塊でできたナイトが、胡桃装備に後れを取るはずがない!」


しかしその胡桃弾幕は、凄まじい速度で駆けてきた騎士に叩き伏せられる。

「もうついたのか!」「はやい!」「きた!盾きた!」「メイン盾きた!」「これで勝つる!」「松ぼっくりとナイトの信頼度は違い過ぎた!」

はしゃいだ様子の僅かに撃ち漏らした狂信者はそそくさと騎士の後ろへと退がる。
狂った彼らでもわかる程、この騎士の実力は信頼されているらしい。


826 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:08:03 4YhGJeJs0
「遅れてすまなかった感ちょっと汚い毒装備の弓とクローンに粘着され続けていたのだが全員グラットンスウィフトで上半身だけバラバラにしてやった私に隙はなかった」
「か、かっこいいタル〜」

ふんと鼻を鳴らし、騎士の少女はイチロー達の前に何かを投げ捨てる。

「くっ……!」

それは、下半身だけとなったロビンフッドの無残な死体であった。
身を挺して脱出の時間を稼いでくれた彼の死に、残された誰もが悲しみと怒りを覚える。


【ロビンフッド@Fateシリーズ】 死亡確認


「てめぇ!」

6/が胡桃を投げるが、それは騎士が持つ盾に弾かれる。

「何度も言わせるな。胡桃装備がナイトに勝てると思うその浅はかさは愚かしいな大人しくクラウザーさんのためにSATSUGAIされるべきそうすべき」

呆れ顔で告げる騎士に対して、6/は歯噛みする。
その見た目通り、騎士の装甲は硬い。胡桃での突破は難しいだろう。
白銀の鎧に豪奢な装飾の盾を構えるその様は、本当に聖騎士のようだ。
それでいてやっていることが仲間達の惨殺なのだから驚かずにはいられない。

「まさか……その特徴的過ぎる格好、衣玖さんの言っていた天子ちゃんなのでぃすか!?」

しかしシマリスは違う意味で驚いていた。
仲間を殺した騎士の正体。それはかつて仲間であった衣玖に後のことを頼まれた探し人――比那名居天子だったのだから。

「知ってるのかシマリス!?」
「衣玖さんが探していた、大切な人なのよ! でもそんな……」
「ッ、衣玖の名を、口にするな!」

あからさまに動揺が見えた天子だが、一声叫ぶとすぐさま狂信者の顔に戻っていた。

「みんな、下がってくれ。事情があるようだが、この子はもう仲間を手にかけた狂信者。僕がやろう」
「……ほう、仲間を庇って前に出るとかお前も中々メイン盾の素質があるんじゃにいか? そういった意味ではさっきの弓兵も認めてやってもいいが……
 私は唯一ぬにの盾。しかしナイトは攻撃力もかなりえごいからなお前はもうどこにも逃げられないプレッシャーを背負うことになった」

イチローがバットを構えて前に出れば、天子も狂信者を下げて一人前に出て剣を構える。
張りつめた空気に、6/達は勿論騒がしい狂信者達さえもが黙りこくる。
現存する戦力では両陣営、真正面から戦えるのはこの二人しかいない。

数々の惨劇の最中、まるで高潔な騎士の試合のように、一対一の殺し合いが始まろうとしていた。


【二日目・18時00分/千葉・遊園地付近】


827 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:08:38 4YhGJeJs0
【イチロー@現実?】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中) 、非常に強い悔しさ
【装備】野球道具
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチリュウチームを優勝させる?
0:天子ほか狂信者を突破し、仲間と合流する
1:DMC狂信者を倒すために多くの仲間を集める
2:邪魔をしてくるDMC狂信者を倒すまでは試合は保留
3:予言に対しては慎重に考える
4:DMC狂信者の本拠であるビッグサイトを攻略したい
5:主催者は予言のことを知っているんだろうか?
6:オシリスやゼクスたちの犠牲を無駄にしない
※ネオ・レーザービームは使用すると腕に多大な負担がかかり、あと二球以上使用すると選手生命が終わる危険があります
 いかなる回復手段を持ってもこれは回復できません
※オシリスが死んだと思っています(他のチームメイトも同様)

【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、怒りと悲しみ
【装備】胡桃1500個
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:新生したイチリュウチームで予言の完遂を果たす
1:ハラサン……ありがとう
2:大正義を忘れない
3:目立つことも忘れない
4:予言に対して盲信気味
5:DMC信者は絶許。本当に絶許
6:なんかシマリスから俺と同じ臭いがする

【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(大)、気絶中
【装備】サングラス
【道具】支給品一式、マスターソード、魔竜石、リザイアの書、不明品
【思考】
0:(気絶中)
1:DMC狂信者、その他マーダーと達と戦う
※邪眼を一回使いました

【伊吹萃香@しゅわスパ大作戦】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(大)、気絶中、強い悲しみと怒り
【装備】なし
【道具】支給品一式、日本酒×50
【思考】
基本:イチリュウチームについていく
0:(気絶中)
1:KBTITとかいうクソホモは忘れる
2:なんかロワが始まってから私全然活躍できてなくね!?


828 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:09:09 4YhGJeJs0
【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(小)、完全TC耐性、悲しみ
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:テラカオスの因子を集める。
0:皆さん……
1:どうして人はあんなに残酷に殺しあえるんだろう……
2、Lさん、ゼクスさん……!
※ディーヴァが持ってほとんどの能力を失い使用不可になっています。
※一度、テラカオスになったことにより完全なTC耐性を保持、テラカオス候補者のTCを回収できます。
※死んだことによりディーヴァの性格を引き継いでいません、これからどうなるかは不明。
※記憶を大半喪失していますが、生みの親の名前、風鳴翼が捕食で世界を救おうとしたこと、都庁での悪い思い出、沖縄で敵が現れ敗北したこと、夢で出会った男(才人)のことは朧げながら覚えています。
※仮称としてツバサという名前が与えられました

【シマリス@ぼのぼの】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中) 、悲しみで涙が止まらない、天子に戸惑い
【装備】胡桃×1500
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:仲間と共に生き残る
0:天子ちゃん、何があったんでぃすか……?
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:衣玖の代わりに比那名居天子を保護したかったけど……
4:クリスちゃんとは友達でぃす!
5:拳王連合軍、悪い奴じゃなければ良いんですが
6:ゼクスさんたちには死んで欲しくなかったでぃす……
7:6/さんを見ているとなぜかホッとする

【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】気絶、変身解除
【装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:(気絶中)
1:シマリスの無事を祈る
2:翼を見つけ出し食人について問いただす
3:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
4:もっと強くなりてぇ
5:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
6:拳王連合軍にはちょっと懐疑的
※テラカオス化が進行していましたがディーヴァの残滓によって回収され正常に戻りました。
※気絶しているので状況が把握できていません


829 : サンゲキトツイゲキ :2018/06/03(日) 15:09:36 4YhGJeJs0
【ピップ・ベルナドット@HELLSING】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)
【装備】自動式拳銃×2、M16
【道具】支給品一式、スピーダー、手榴弾×25、ノートパソコン、TCホール観察日記、カオスロワちゃんねるに関する考察メモ
【思考】基本:バトルロワイヤルを生き残る
0:仲間のの仇を取ってやりたいが……
1:生存確率が上がりそうなので今はイチローについていく
2:拳王連合軍と組むのは有りだと思っている
3:正直、ドリスコルには勝てる気はしないが……

【比那名居天子@東方project】
【状態】ダメージ(小)、謙虚、首輪解除、僅かに動揺
【装備】グラットンソード@FF11、ガラントアーマー+1一式@FF11、カイザーシールド@FF11
【道具】支給品一式、狂信者×30
【思考】
基本:SATSUGAI
0:イチリュウチーム及び物置組をSATSUGAIする
1:小町が都庁に組みしていたとは……汚い、さすが死神汚い
2:小町と、彼女の率いる影の薄い連中を強く警戒
3:従者が死んでも、ここは謙虚にポーカーフェイス


830 : 名無しさん :2018/06/03(日) 15:10:09 4YhGJeJs0
投下終了です


831 : 名無しさん :2018/06/03(日) 15:37:35 BAeShmE.0
投下乙です!リアルタイムで読んでてハラハラしました。
抜けてると思ったらやはり抜け目のない腹黒アナキンと
最高のブレインであるギムレーの腹の探り合い

イチリュウ・物置&DMCの死闘
まさかなキャラクターの脱落
天子VSイチローの一騎打ちなど見所満載、今後が気になる良SSでした


832 : 名無しさん :2018/06/03(日) 23:46:17 fkBTvJ720
投下乙
乱戦で一気に犠牲者出たな
アナキンの不自然さに気づいたギムレーは凄いが、まさかはやてが障害になるとは

でもギムレーって神剣でなます切りされるって前にどっかで見たような?
覚醒発売からその後に新作出てるけど、一応最強ボスの座はキープしてんのかな


833 : 名無しさん :2018/06/04(月) 00:02:51 /PbEfsR60
気がついたらイチローチームの初期面子はイチロー、蛮、萃香のたった三人だけ
物置由来のキャラは全滅
ネームド狂信者も減ったけどゼロまで失ったイチリュウと比べるとダメージが……

そろそろ放送を投下します


834 : TCBR10第6回放送 :2018/06/04(月) 00:06:28 /PbEfsR60
ピーンポーンパーンポーン♪
時刻は18時ちょうど。
六回目の放送に映ったのは多くの参加者にとっては実に14時間ぶりの黒づくめのマスクマンであった。
だが放送の地が九州ロボではなく伊豆諸島。
そしてボイスチェンジャーを使われているとは言え中身がアナキンではなくヤンと気づいた参加者は幾人いるだろうか……?

閑話休題。

彼の放送に耳を傾けて欲しい。


「コーホー。
 久しぶりだな諸君。

 前回、勝手に放送を行い、余を変態扱いした自称新総理は粛清させていただいた。
 
 そして、以前に我らに直接反抗した一集団の全滅を確認した。
 全滅の詳細は語らないが、我らに直接挑むより先に地盤を固めなかったからだとだけ言っておこう。

 背後を疎かにして我らに挑むのは愚の骨頂。
 殺し合いを終わらせたいのなら先に邪魔な敵集団を一掃してから戦うことをお薦めする。
 その頃には生存が許される規定の人口まで参加者が減っていると思うがな。



 コーホー、アドバイスはこの辺にして放送に移ろう。
 死亡者を読み上げる。



 出来杉英才、十神白夜、アイギス、ホライゾン・アリアダスト、シグナム、ぴんころ地蔵尊、ワンリー
 ユキちゃん、巨大カマキリ(緑)、アニマル浜口、桜田ジュン、水谷絵理、アシュラマン、バッファローマン
 VFD、ジョンス・リー、ラーメンマン、蟹座のデスマスク、明智光秀、金田正太郎、ターバンのガキ、加賀美新、
 姉帯豊音、姫川友紀、霊烏路空、クライシス皇帝、南光太郎、井之頭五郎、由良吾郎、乃木怜治、キン肉スグル
 ロビンマスク、サンシャイン、スプリングマン、アトランティス、ステカセキング、ダンシングフィッソン族
 キン肉アタル、ハス太、レオリオ・パラディナイト、ベジータ、杉下右京、悪魔将軍、円堂守、セイバー、辻彩
 ユウキ=テルミ、ヘルカイザー亮、矢車想、葉隠康比呂、風鳴弦十郎、乾巧、エビルエスターク、平山幸雄
 デスマシーン、キラーマジンガ、二ッ岩マミゾウ、ウルトラマンタロウ(SD)、殺生丸、ミケ・ザカリアス
 オルゴ・デミーラ、ニャル子、IT社長・ウエムラ、勇魚洋、中条有次、カイゼル、ボクスター、ダイジョーブ博士
 ゲドーくん、とら、カギ爪の男、海底原人ラゴン、蒲原智美、つば九郎、桃園ラブ、ベクター、偉大なる赤竜
 ナナリー・ランペルージ、仮面ライダーカイザ、バド、シザリガー、ダイアー、光熱斗、リオレウス、琴吹紬
 飛影、ウドラ、獣王クロコダイン、安倍晋三、イナバ製作所社長、L、ゼクス、ルイズコピペ、ルイーズ
 安倍明恵、フェイ・イェンHD、ダイゴ、DAIGO、ウルトラマンゼロ、ワイルドハント、鬼道有人、AKYS、葛城蓮
 レックス、斎藤なんとか、ロビンフッド。

 死亡者は以上。
 禁止エリアは近畿地方全域とする。

 コーホー。
 放送は以上だ、諸君の検討を祈る」



伊豆諸島より発信された偽ダース・ベイダーの処女放送は終わった……


【二日目・18時00分/伊豆諸島基地】


【ヤン・ウェンリー@銀河英雄伝説】
【状態】健康
【装備】ダース・ベイダーの服とヘルメット、ボイスチェンジャー
【道具】不明
【思考】
基本:サーヴァントとして召喚され、禄を組まれたためそれなりの義理は果たす
0:キャスター、私の変装はどうだったかね?
1:伊豆諸島基地の守備
2:出来れば平和が続いてほしい
3:今さっき知ったんだけどユウキ=テルミ、脱落してたのか……尻が痛くなってきた
4:次の放送時間(三日目、1時)まで私や伊豆諸島基地が生きていれば偽ベイダー卿として再度放送を行う
※サーヴァントとして呼ばれましたが宝具が使えるのか不明です。


【メディア@Fateシリーズ】
【状態】健康
【装備】破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)@Fateシリーズ
【道具】セイバーの模型、不明
【思考】
基本:マスター(ココ)の指示に従い伊豆諸島基地を守備する
0:放送にちょっと面白みなさすぎよ、コマンダー
1:それより見てみて! セイバーの模型が完成したわ!
2:マスター達はどこまでやれるのかしらね。
3:ユウキ=テルミ、あの世で腐男子になってそう


835 : 名無しさん :2018/06/05(火) 21:20:37 VR9kTM3k0

思考欄で遊んでるんじゃないよ二人とも!ww


836 : 名無しさん :2018/06/05(火) 23:08:16 ElGo5uyk0
ヤンにまで空気扱いされるとか不憫な……

>>832
難易度最大の邪竜と神祖竜の比較↓

邪竜ギムレー(覚醒ラスボス。実際に戦うのはロワ中も動いてる本体の人間態のみ)
HP99 攻撃力70 (魔力40)速45 (技50 幸運45) 守備50 魔防50
攻撃命中率177(保有スキル赤の呪いによりさらに+10)
必殺発動率25(保有スキル赤の呪いによりさらに+10)
攻撃回避率90
固有戦場:逆鱗補正(ギムレーの守備と魔防をさらに+3、回避率を+20)

透魔竜ハイドラ(ifラスボス。両腕と頭部、コアの全てを破壊してようやく死ぬシリーズ最も総HPの多いラスボス)
ハイドラ手(×左右)
HP63 攻撃力61 速22 守備27 魔防19
ハイドラ頭部
HP80 攻撃力66 速26 守備31 魔防23
ハイドラコア
HP80 攻撃力48(ここだけ魔法攻撃)技31 速31 幸運28 守備36 魔防28
最大攻撃命中率170
最大必殺率13
最大回避率70
固有戦場:補正無し

※両者は固有スキルにより常時被ダメ半減小数点切り捨て。ギムレーはさらに物理攻撃を常時半減させ80%の確率で攻撃力を20上げる
※FE界のルールにより、対戦相手の速を5上回った場合、追撃(同ターン中の再攻撃)が発生する
ステータスの差から、ハイドラに若干有利なようにお互い必殺無し、補正無し、攻撃絶対命中の条件で二竜が戦争した場合でも
火力と硬さの差でギムレーはかすり傷で次回作のラスボスを抹殺できる。ラスボス最強の座は死守してるってかこれ以上のインフレはやばい。
もっと言ってしまうとギムレーブレスは射程5でハイドラブレスは3。射程外から殴れるから本来ギムレーはかすり傷も負わない。
ファルシオンがあればギムレーを楽に倒せるのは確かだが、逆に言うとそれ使わないとまともなダメージ入んないのよ


837 : 名無しさん :2018/06/06(水) 08:56:11 1gEGJAjo0
見る限りギムレー攻撃力さほどないのに速くて硬いのか
空をそんなもんが飛び回って超射程ブレス吐けるって普通に地上の狂信者まとめて倒せそう


838 : 名無しさん :2018/06/06(水) 17:23:44 3IT5xFlA0
これでドラゴンハートまでキメたらオシリス・ゼロを失った分も余裕で補填できそう
……問題なのは、ファルシオン無しでも勝てそうな相性の悪い奴らが狂信者・拳王軍・主催・シャドウ側にチラホラいることだが


839 : 名無しさん :2018/06/11(月) 05:16:37 2TBrYln60
投下します


840 : 嵐の前の…… :2018/06/11(月) 05:17:38 2TBrYln60
「プロジェクトテラカオス、か……」

ルルーシュはビッグサイトの中で用意された自分のオフィスでほくそ笑んでいた。
彼は安倍明恵を洗脳するというひたすらに血迷った行為を取っていたが、その真相は主催者の情報を入手する為であった。
ルルーシュが懸念していたことは行動が些か遅れ、カギ爪団を手に入れたとはいえ情報戦に於いて遥かに劣っていたことだ。
だからこそ、現在では元であるが当時は主催と繋がりがあるであろう安倍明恵にギアスを使い、傀儡とすることで自分の望む情報を手に入れた。

本当にマジで血迷ったとか、後から後悔したけど利用価値があるから最大限利用しようと思い直したとかそういうことではない。

「なるほどな……世界を救う為にテラカオスを産み出すか」

安倍明恵は非常に有能であった。安倍さんは理解できなかったプロジェクトテラカオスを全て理解し、あらゆる情報をルルーシュに送ってくれたのだ。
何より夫人自身がテラカオスであったこともあり、テラカオスの経過観察にも役立った。
適当に宇宙がやばいからそっち守ってくれと言ったら、勝手に宇宙に行ってくれたしそこから何か変な奴らと心中してくれて始末の手間も省けたし。
とにかく、良い事尽くめであったのである。

「だが、些か眉唾物だがな」

テラカオスにによって大災害から世界を救うという名目自体は御大層だが、果たしてこれが世界を救う存在なのだろうか。
安倍明恵もだが、他にも何名かのテラカオス候補者たちの情報も手に入れたが全員が決まって好戦的になる。
そして救いどころか殺戮を繰り返しているではないか。

「確証が薄いな……奴らは明確な根拠があるのか?」

残された時間が少ないとはいえ、普通に考えればこの惨状に誰でも懐疑的になるのではないだろうか。
殺し合いの現状を見てきて、プロジェクトテラカオスを把握したルルーシュには納得がいかない。
テラカオスの経過については主催も常に監視を続けた筈だが、この計画に賭けるしかないとはいえ些か盲目的に感じる。

「しかし面倒なことになったな。ナナリーの蘇生の前に片付けねばならない問題が山積みだ」

当初は狂信者に紛れてナナリー蘇生の方法を探して、適当な頃合いに抜け出すつもりだったが世界の危機である以上、ナナリーが暮らしていける世界を確保しなければならない。
元々殺し合いも潰すつもりでゼロの仮面を使って狂信者入りしたのも、ルルーシュの顔で今度は対主催に入る為だったが、こうなるとスケジュールを大幅に変更する必要がある。

「どうする……対主催と接触してみるか」

狂信者入りしたが、大災害への対策とテラカオスの脅威に対し上手く騒動して当たらせる事は可能か考えた時、ルルーシュはクリアしなくてはならない条件が多いと舌打した。
セルベリアは場合によっては説得すれば動いてくれるだろうが、他の上層部連中が邪魔だ。
セルベリアに討たせるよう煽ってはいるが、その後に例の問題の処理をするにも組織として摩耗してしまうのは避けえない。
その隙を突いて他の対主催に襲撃を受けて、ルルーシュもろとも狂信者が滅びては意味がない。

だからこそルルーシュは危険な橋渡になるが、別の対主催に今後の危険喚起を呼びかけるべきか思案する。

当初の予定通りゼロの仮面とルルーシュの素顔を使い分ければ、マーダーと対主催の立場で動くことが出来る。

「……」

とはいえ、対主催もまた一枚岩ではない。ネットの悪評がないのはイチローチームだけだが、ドリスコルが新機体のテストに更に天子が現在は追撃中だ。
とても接触できる環境ではなく、拳王軍と都庁とかいうのは情報が錯乱し過ぎて意味が分からない。
聖帝軍もホモが悪評を流したせいで無駄に狙われていて接触は危険、一刻も早くクロの妹のイリヤを洗n……保護しなければならないのに。


841 : 嵐の前の…… :2018/06/11(月) 05:17:59 2TBrYln60

「この掲示板、情報の偏りが酷いな」

カオスロワちゃんねるがネット上で唯一生きているSNSだが、ルルーシュは即座にここに書き込まれたレスが信頼に値しない物が多数だと気づいた。
聖帝軍への掌返しのように、殺し合いの極限下にある参加者たちは常に一過性の物に囚われ流されてきている。
更に言えば何処を見ても似たようなレスしかない。例えばヘルヘイムとかいう訳の分からない樹の事は詳しく書かれていても、テラカオスなどの変異した参加者の情報はほぼ皆無である。

そしてもう一つ、ルルーシュが妙に感じたのは対主催の情報が少なすぎることだ。
これだけの人数が居て、イチローチーム以外殆ど取り上げられていない。

殺し合いに不都合な情報が隠匿されている可能性があるとルルーシュが勘繰るのに時間は掛からなかった。

ルルーシュはネットを開き、一通りのレスを確認して呆れたように溜息を吐く。

腰掛けた椅子に体を深く埋め、一瞬僅かな時間目を閉じる。

(ネットの規制、普通に考えれば日本政府を始めとした主催の可能性が高いが)

インターネットで情報を規制する者の正体はいまだ不明だが、もしもテラカオスの情報を意図的に隠し殺し合いの促進を目論むのであれば主催に属する者である可能性が高い。
しかし主催ならば随時ルールを追加し、殺し合わざるを得ない状況を作り出せばいい。
ネットでの扇動は遠回りであり、むしろ何処かからテラカオスの情報が漏れるのを考えれば、ネットそのものを廃止した方が安全だ。

(わざわざ小手先の情報網を利用しなければならない立場……)

だからこそ、わざわざネットを利用し情報を操る必要があると考えられるのは、ルルーシュがカギ爪団を乗っ取る前に所属していたベクターのような“元主催者”。
あるいはそれに近く、だが参加者以上の情報を握りテラカオスを知っていて、それを利用する理由がある。だが主催とは違いその目的は恐らくは個人的な利益である存在。

そこまで絞り込めれば、そいつは何処に潜伏するかだ。
都庁はない。奴らは自然至上主義でネット関連を弄る隙は無い。(自然至上主義から実は嘘とも考えられるが)
拳王軍もまたネットであれほど悪評の流れたチームに潜むか甚だ疑問が残る。
イチローや聖帝軍も疑うべき余地がない訳ではないが、安全地帯ではない。

(この殺し合いで恐らく、もっとも安全な場所は俺が今いる……このビッグサイトを置いて他にない)

突き詰めて考え、ルルーシュはDMC狂信者の本拠地であるビッグサイトこそがこの殺し合いの安全地帯であると断定した。
少なくとも狂信者である以上、この場で殺められることは少なくキチガイ集団として名が広まったお陰で討伐に現れる参加者は減少し、居ても圧倒的な戦力で撃退可能。

ある意味、逆転の発想だがルルーシュはビッグサイトに来てから他マーダーの襲撃など今のところ危険は感じていない。
そう、狂信者として入ってさえしまえばこれほど安全な場所は存在しないのだ。

(接触する価値はあるが、何分正体が分からない以上、迂闊な行動は危険だ……あるいは……主催にコンタクトを取るか)

対主催との接触も視野にあったが、それよりも主催と連絡を取りテラカオスを狙う第三者を告げた方が確実性と利用価値が高いと感じた。
主催もその存在を把握すれば即座に対処に当たる筈だ。その中で連中に付け入る隙もあるかもしれないし、狂信者の潜伏者への接触も主催と組むことでリスクを大幅に減らせる。
プロジェクトテラカオスを引き合いに出せば、話くらいは奴らも耳を通すだろう。

(しかし奴らの居場所は何処だ? せめて通信先が分かれば……カギ爪団の指揮もある。あまり時間が長引けば戦場に駆り出されるかもしれない……さて、どうするか)


842 : 嵐の前の…… :2018/06/11(月) 05:19:07 2TBrYln60


「随分お疲れだな。童貞シスコン変質異常性癖ナルシスト」
「C.C.今はお前に構っている暇はない」

からかいに来たC.C.をルルーシュは邪険に扱う。

「ところであの洗脳被害者達はどうした?」

「みんなは別のところに待機だ。流石に信者でもないあの娘達をここに入れる訳にはいかないからな」

「……お前、見張ってなくて大丈夫か?」

「どういう意味だ?」

「これだから童貞ボーヤは……どうなっても知らないぞ」



【二日目・18時30分/東京都】


【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、ゼロの服装、妹への欲求(超極大)
【装備】ゼロの仮面、ガウェイン@コードギアス 反逆のルルーシュ(後部座席)
【道具】支給品一式
【思考】基本:ナナリーを生き返らせる
1:カギ爪団に混じりながらDMC狂信者のクラウザー蘇生方法を探る。
2:ギアスの使用は慎重にする。
3:1の為、ゼロとして行動する。
4:こうなった以上、妹達は責任持って俺が幸せにする。
5:テラカオスと大災害への対処法を探す。
6:狂信者内の潜伏者を警戒する。出来る事なら炙りだしたいが……
7:主催とコンタクトを取りたい。
8:近い内、ルルーシュとして対主催とも接触したい。
※明恵夫人経由でテラカオスプロジェクトを知りました。
※テラカオスについてはかなり懐疑的です。
※狂信者内にテラカオスを狙う第三者の存在が居ることを推理しました

【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、ルルーシュにドン引き
【装備】ガウェイン@コードギアス 反逆のルルーシュ(操縦席)、スマホ@スマホ太郎
【道具】支給品一式
【思考】基本:ルルーシュの共犯者として行動する。
1:気持ち悪過ぎる。
2:嫌な予感がする。


843 : 嵐の前の…… :2018/06/11(月) 05:19:42 2TBrYln60




【橘美也@アマガミ 死亡】
【古手川唯@ToLOVEるダークネス 死亡】


「あんた、何やってんのよ……!」

見る影もない遺体に変わった二人を見つめ、クロエ・フォン・アインツベルンは叫ぶ。
額には脂汗が浮かび、手に持つ双剣は罅割れていた。

「お兄様に相応しいのは私だけ……」

「目を覚ましなさいよ! 洗脳されてるのよ! あのシスコンキチガイナルシスト馬鹿に!!」

クロエが正気を取り戻したのは数分前、ルルーシュに思いを馳せどうやってお兄ちゃんに夜這いを仕掛けるか考えた時だった。
冷静に考えたら妹が6人っておかしいし、そう言えば記憶も飛び飛びな気がすることに気付いた。
そこでルールブレイカーを投影しぶっ刺したところ、ギアスが解けたのだった。

「本当、気持ち悪くて反吐が出そう……もうマジ無理……」

その後、他の被害者達もルールブレイカーでザクザクし最後に残ったのが司波深雪となった時に事件は起きた。
彼女はルールブレイカーで刺される前に魔法で先述の二人を殺害しクロエを攻撃したのだ。

「お兄様の愛を受けておいて、その言い様……やはりお兄様に貴方は相応しくない」
「いや私のお兄ちゃんじゃないし、ただの変質者じゃない」
「人の敷いた法というレールには乗らない。流石お兄様ですわ」
「えぇ……」

あまりの溺愛っぷりにクロエが呆れた隙を突き、深雪は魔法を使った。

「しまっ」

クロエは吹き飛ばされ、先ほどまで全員で待機していた家屋は綺麗に消滅していた。
深雪は少しクロエの遺体を捜索するが、見つからないので早々に探索を打ち切る。

そして横たわった二人の少女を連れて彼女はあろうことかビッグサイトへと向かった。


844 : 嵐の前の…… :2018/06/11(月) 05:20:07 2TBrYln60


場面は変わり、ビッグサイト内部。
門番のモブを瞬殺し深雪は足を踏み入れた。


「なんやお嬢ちゃん?」

モブでは手に負えないとの事で待機していた松本人志が繰り出された。

「上層部の人を出して頂きませんか? 少しお話があるんです」

深雪はニヤリと笑い、全身を拘束された美遊・エーデルフェルトと結城美柑を松本に差し出した。

「この娘達、皆さんが手こずった都庁の関係者の身内らしいですよ」

松本は深雪の意図が良く分かった。つまるところ彼女達は人質に使えると、そしてその人質を捕らえた功績に自分も仲間に入れて欲しいということだと。

もっとも松本の解釈は半分正解で半分不正解だ。彼女の目的はルルーシュに相応しくない妹キャラの殲滅。
その為に先ずは、クロエから興味を抱ていたイリヤスフィールフォン・アインツベルンの抹殺に狂信者を利用しようと考えたのだ。

ルルーシュ最大の誤算とうっかりは深雪が並の妹キャラとは違った事である。

深雪の愛は非常に重く嫉妬深い。生き返るとはいえ焼き餅で本当のお兄様を殺したこともある。
そこにギアスの強制力が働き、深雪はルルーシュを独占するために行動を開始した。

「お兄様の妹は私だけで充分ですよね」



【二日目・18時30分/東京都】

【司波深雪@魔法科高校の劣等生】
【状態】健康、ギアスによりルルーシュを大好きな兄として認識中
【装備】深雪のCAD
【道具】支給品一式 サファイヤ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ(美遊の支給品で魔法で凍結中)
【思考】基本:妹キャラは皆殺し。
1:狂信者を使い、先ずは都庁を責めさせイリヤを抹殺する。

【松本人志@現実】
【状態】健康、DCS状態+大日本人化、首輪解除
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形、グラコスの槍
【思考】基本:浜田の蘇生
0:狂信者のフリをしつつ、浜田蘇生の機を伺う
1:狂信者が関東を統一した後にビッグサイトの内部に侵入し、蘇生方法を奪って浜田を蘇らせる
2:浜田を生き返せないようなら一人でも多くの参加者をあの世に送る
3:深雪を上層部に会わせる。
※巨人の脊髄液@進撃の巨人を取り込んだことで大日本人に変身できるようになりました
 DCSの効果などで原作の大日本人よりは遥かに強いです


【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
【結城美柑@ToLOVEるダークネス】
【状態】洗脳解除、拘束中
【共通思考】
1:逃げたい。
2:本当にあの人気持ち悪かった……


845 : 嵐の前の…… :2018/06/11(月) 05:20:49 2TBrYln60



「……全く、どうなってんのよ」

傷を抑えながらクロエは命を取り留めていた。
殺された二人の他に美遊と美柑という女の子がいたが、彼女たちが生きているのかどうか。

「そういえば、ネットの動画でイリヤが映ってたわね……」

クロエが思い出したのは聖帝軍が悪評を流されたあの動画だ。
少なくともあの動画のお陰でイリヤの場所だけは分かる。

深雪の目的がルルーシュの独占だとしたら、クロエが洗脳中に散々話してしまったイリヤの殺害に現れる可能性は高い。
マーダー軍団と言われていたが、それでも深雪より先回りしてイリヤと合流しなければ。

「待ってなさいよイリヤ……」

【二日目・18時30分/東京都】

【クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
【状態】重症、洗脳解除
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
1:イリヤの救出
2:美遊と美柑も助けてあげたいけど
3:本当にもうマジでアイツ無理。


846 : 名無しさん :2018/06/11(月) 05:23:57 2TBrYln60
投下終了です
ただミスったので

【二日目・18時30分/東京都 ビッグサイト】
【二日目・18時30分/東京都 ビッグサイト入り口】

ルルーシュの現在地が上で深雪の現在地を下で修正します


847 : 名無しさん :2018/06/11(月) 07:17:49 ig1ygxe.0
早朝の投下乙です
あきよさんにギアスをかけたのも主催の情報を得るため
Lやギムレーに続いて掲示板の裏にも気づけたのは流石ルルーシュ
と思ってたら妹たちが内ゲバで深雪以外のギアスが解けてしまう辺りがルルーシュクオリティ


848 : そういやこいつもDMC :2018/06/14(木) 02:57:32 ry8bN50A0
デビルメイクライ5発売決定!!!!



「楽しすぎて狂っちまいそうだ」


十年越しの新作を聞き、ダンテは早速一人でお祝いパーティを開くためにピザとストロベリーサンデーを買いに向かった。
非常におめでたい事である。何せ10年ぶりの新作だ。カプコンはようやく本気を出したのである。


「てめえに出すピザはねえ!」

だがピザを買いに行ったはいいが、実はオルフェノクの店主から卵を叩き付けられ追い出されてしまった。

「たくっ、ピリピリした野郎だ」

しかしダンテは新作発売決定で機嫌がいい。気を取り直してストロベリーサンデーを食いに向かう。

「うちはDMCお断りなんだよね」
「あ?」

だが、ダンテはそこの店でも追い出された。少し歩いてから振り返ってみるとそこのグラサンを掛けた店員が塩を巻いていた。
これはただごとではない。流石のダンテも異常事態に気付き始めた。
取り合えず下手に出歩くとヤバそうな気がするので、一先ず家に帰宅することにする。

「キチガイDMCの本拠地なんざ燃やしちまおうぜ!」「かまうこたあねえ!」「こいつはもっと殺してるんだもんな!」

だが帰宅してみると、そこは火に包まれ炎上していた。
大勢の人間が笑ってダンテ宅を取り囲んでいる。最早、新作決定とか抜かしてお祝いしている場合ではない。

「おいおい、人様の家で花火かよ」

ダンテのジョークが虚しく響き渡る。何で自分がこんな目に合うのだろうか。

帰る家もなくなったのでダンテはトボトボ歩いて彷徨っているとタイ人の男性がリンチされていた。

「このキチガイ野郎が!!」「DMCなんざ滅びちまえ!!」「レイパー集団の癖しやがってテレビに出やがって!」「名倉やないかい!」 「俺は本家のダンテを操作したかったんだよ!!」「DmCはこれはこれで名作だからやってみて」

「その辺にしときな」

ダンテはそいつらを適当に追っ払う。
しかしタイ人の男性は間に合わず息を引き取った。ダンテは哀れに思い埋葬してやった。

【名倉潤@現実 死亡確認】

そいつは何故か閻魔刀とエボニー&アイボリーを持っていたのでパクる事にした。

「このタイ人、そんな恨まれてたのか?」

しかし幾ら何でもこんなに虐げられるのは可笑しい。ダンテに思い当たる節はない。
ついでに言うと何故、先ほどのタイ人もリンチされていたのか謎だった。

「「「SATUGAIせよ! SATUGAIせよ!! SATUGAIせよ!!!」」」

ふと振り返ると先ほどのピザ屋の店主と、グラサンの店員が生首にされてそれらを掲げながらキチガイ集団が合唱していた。

【たっくんが見逃したピザ屋のオルフェノク@仮面ライダー555 死亡確認】
【マダオ@銀魂 死亡確認】


849 : そういやこいつもDMC :2018/06/14(木) 02:58:19 ry8bN50A0


すると眼鏡を掛けたババアがキチガイ集団の前に立ち塞がる。

「私は(某百貨店)で勤めてきたけど、表面的には優しいんだ。でも怒ると怖いぞー」

ババアは殺戮を繰り広げる連中を目の当たりにして怒りを露にしていた。

「なんだこのババア?」
「SATUGAIしちまおうぜ」

「―――その怖さをこれから思い知らせてやる」

ババアがオーラ―を込めた瞬間、キチガイ合唱集団が一斉に吹き飛ぶ。
血しぶきが舞い上がり、血の雨が降り注ぐ中に江戸っ子ばばは一人佇んでいた。

「アンタみたいなキチガイがあんな若くていい子を潰すんだ!!」
「なんだこの婆さん……」

更に道中、ババアに絡まれるが全く身に覚えがない。
ダンテは適当にあしらおうとするが、ババアはダンテへと肉薄し拳を放った。
身を翻しダンテは閻魔刀の峰でババアを気絶させようとするが、ババアは閻魔刀をかわし一瞬で距離を取った。

「400年前からこっちとら江戸っ子だい! まどろっこしいことやってらんないのよ。もうここでアンタを直接潰すよ」

江戸っ子ババアは返り血を浴びた手刀をダンテへと向ける。

「なあ、誰かと勘違いしてないか」

ダンテも銃を構えるが、こんな心当たりのない事で殺されては叶わない。
ババアは目を見開き、怒声でもってこう返した。

「DMC狂信者……D(デビル)M(メイ)C(クライ)って頭のおかしい宗教団体の首領はアンタなんだろ!!」

「………………店名変えるかな」



【俺@現実 DMC5に驚愕し心臓発作で死亡】



【二日目・19時00分/東京都】

【ダンテ@デビルメイクライ】
【状態】健康
【装備】エボニー&アイボリー@デビルメイクライ、魔剣・リベリオン@デビルメイクライ、閻魔刀@デビルメイクライ
【道具】支給品一式
【思考】
1:ピザとストロベリーサンデーを食わせてくれ
2:ババアに対処


【会見乱入江戸っ子ババア@日本大学】
【状態】健康
【装備】拳、財布なし
【道具】支給品一式
【思考】基本:DMCを潰し、多くの人を救う。
1:刺し違えてでもダンテを殺す。
※デトロイト・メタル・シティとデビルメイクライを勘違いしてます


850 : 名無しさん :2018/06/14(木) 02:59:41 ry8bN50A0
投下終わり
マジでDMC5はビックリしたゾ


851 : 名無しさん :2018/06/14(木) 14:52:16 Nd8Joa7I0
新作まじかー
もう出ないもんだと思ってたよ


852 : 名無しさん :2018/06/19(火) 20:37:06 zWkAqlMw0
投下します


853 : 黒き太陽は引き継がれ :2018/06/19(火) 20:37:33 zWkAqlMw0


比那名居天子とイチローの一騎打ち、先手はイチロー、構えたバッドにボールを連続で上げ打ち抜いて行く。
それに対し天子は盾を構え一気に距離を詰めようとする。
技は使えない、確かに今の天子は高い防御力を誇るが自身のダメージが大きくともそこはイチロー、その攻撃力は高い。
技を使おうとすればたちまちのうちにイチローによって自分は死ぬと予感したからだ。

「少しはやると感心するが、そんなものナイトのダメージにはならない」
「くっ」

天子は致命に至る一撃を器用に防ぎ、最小限のダメージで済ませる。
それ以外の攻撃は確かに天子に当たってはいるがダメージにはならない。

(さすがにドリスコルの時のダメージは無視できないか……!)

そう、ここに来る前のドリスコルとの戦いにより大きなダメージを負い、更に疲労しているイチローでは本調子ではない。
それ故に本来であれば致死でなくともダメージを入れられる攻撃であっても、天子の高い防御力も合わさりノーダメージとなる。
しかし、ナイトはFF11の初期ステータスでは鈍足である、ガラントアーマー+1は少しは補正できるがやはり鈍足である。
これでその速さを補正できるアイテムがあれば別であったが生憎と今は持っていないのであった。

「でもそんなの関係ニィ、そんな凡百ナイトよりも私は早い」
「そうだ!」「そうだ!」「そうだ!」

天子がそう言えば狂信者達が肯定するように叫ぶ、実際危ない所にカカッと参上したのだから。
一言で言えばあれは気合いだ、気合いで自分の移動速度を上げたのだ、さすがナイトである格が違った。
そのため今回も気合を込めたためその速度は凡百のナイトとは違い、勢いよくイチローとの間を詰めていく。

「予想よりも早い!」

イチローは歯噛みする、せめてレーザービームを投げれたと、しかしその隙を相手は見逃さない。
そうすれば自分が破れ仲間達が死んでしまう、それだけは絶対に避けなければならない。

「ふん!」
「くぅ!」

そうこうしているうちに距離を詰めた天子がグラットンソードを振りぬきそれをイチローがバットで受ける。
意外とバッドは頑丈でありグラットンソードを問題なく受け止めた。

「ふふん、だがいつまで持つかな」

天子が言ってさらに力を込めれば、イチローが押された。ここで疲労とダメージの性費が響いてきたのだ、
更に首輪解除されてパワーアップした天子である、流石のイチローも抑え込めない。
だが、それでもメジャーで活躍してきた選手である、押される鍔迫り合いから自分から一気にバッドを後ろに引いた。

「おわっ!?」

流石のナイトもこれは予想外、一気にバッドを引いたイチローは剣がギリギリのところで当たる寸前だったが柔らかい身のこなしで回避し、
バランスを崩したナイトに追撃をかける。

「!」

しかし天子も唯のナイトではない、その一撃を感で見切りダメージの薄い場所に当てさせた、ナイトだからこそできる技である。
そして、イチローがすぐさま天子から距離を取り、再び勝負は最初の盤面へと戻った。
だが、その状況は天子が有利なのは明らかだ。

(彼女はほとんどダメージを受けていなくても疲労がない、それに比べて僕はダメージも疲労も大きいこのままでは)
「ここで一気に勝負を決めるべきそうすべき」

そう言って天子は両手を重ねた構える、それは孫悟空が得意とした技かめはめ波によく似た構えだ。
イチローはその技はまずいと直感、それを阻止すべくボールを投げようとするが。

「がっ」

投げなれなかった、ドリスコル戦からすぐの戦闘によってイチローにも限界が来たのだ。
そのままイチローは片膝を付いた。

「イチローさん!」
「安心しろ、楽にSATUGAIしてやる」

そう言って、天子はその構えを最大限にまで上げて――

「 サ ァ イ コ ビ ィ ー ム ! 」

一気に両手を勢いよく前方に突き出す!その両手からビームが発射された。
その威力はイチローとその後ろにいる者達を消失させることが可能なほどに高い。

(ここまでか、すまないみんな……)

事ここに至りイチローの心に諦めが支配し、己の死の運命を受け入れる。
そして、その様子を見ていた者達もまたこのまま死にゆくと確信し悔しがった――、一人を除いて。

「変、身!」

その一言共にサイコビームがイチロー達に直撃した。

◇ ◇ ◇


854 : 黒き太陽は引き継がれ :2018/06/19(火) 20:37:48 zWkAqlMw0


イチローと天子の戦いが始まり、その戦いを固唾を飲んで見守っていたイチロー物置。
その直後、ツバサの頭の中で何か声が響いてきた。
声は小さくしかし、徐々に徐々に大きくなってくる、不思議に思いツバサは頭を触った。

「おい、どうしたツバサの嬢ちゃん?」
「ああ……いえ何でもありません」

その事に気づいたのは短いながらも同じ物置組に居たベルナドットだ。
だがツバサは他の人たちを不安にさせたくない為、その事を否定したのだった。

「…………そうかい」

少し悩んでベルナドットはそれ以上の追及を避け、イチローと天子の戦いを見守る。
やはり自分たちの命運がかかる一戦だ、だからこそ気になる度合いが違いすぎる故其れも致し方なかった。
何でもないと言ったツバサだが、その声はさらにさらに大きくなってきて、今、この場の音が仲間たちの声が遠くなってゆく。
そしてツバサは自然と目をつむって――次に目を開ければそこは何もない空間だった。

「……えっ」

理解できなかった、自分はさっきまでは確かに遊園地付近にいた、しかし今目に入る光景は何もないのだ。
それでもツバサは何かないかキョロキョロと辺りを見回して一歩ずつ歩き出す。

「ここは、どこ?……早く戻らないと」

そのような疑問を口にし、戻る為に何かがないかを探してまた一歩一歩、歩き続ける。
すると、今まで何もない空間が少しづつ、色づいてきた。
そしてその奥に見えるものがあった。

「黒い……太陽?」

そう、ツバサが見たのは黒い太陽、それがこの空間の上に存在していた。
少し先に進むことを躊躇した、しかし進まなければずっとこの空間にいることになるかもしれないと思い再び歩き出す。
一歩一歩進めば、黒い太陽へと近づいていく、それがたまらずに不安であった。

「でも……ここで止まってはいられないから」

そう言って少しづつ、少しづつではあるが黒い太陽へと近づいていく。

「……ッ!?」

しかし、その途中で強いプレッシャーを感じた、まるで自分を拒絶するかのように。
その事を感じた彼女は少し怯えたように体を抱く、そして無自覚ながらも呼吸が荒くなっていた。

「ハァ、ハァ、クッ」

それでも彼女は前に進むことをやめない、ここから出るために、仲間たちの元に戻る為に。
そうして歩いて歩いて――黒い太陽の元にたどり着いた。

「ここが、終点かな?」
「――ほう、ようやくたどり着いたか」

その重々しい声が響くと共に威圧が最高潮に達し、ツバサが少し悲鳴を出した。
コツン、コツンと足音が響くツバサの元にやってくるように。

「あな、たは?」
「私かそうだな私は――」

姿が見えた――その姿は仮面ライダーBLACKRXの姿をしていた。

「――キングストーンとでも言っておこう」
「キングストーン?」

ツバサが分からずに首をこてんと傾げた。

「……なるほど、どうやら記憶の欠陥は深いようだな」

そう、キングストーンと名乗った者は息を吐いた。

「あの、その、聞いてもらいたいことが」
「元の場所に戻してほしいであろう?」

その一言にツバサは大きく反応した。
しかしキングストーンはそれに対して首を振った。

「それは聞けぬ話だ」
「何でですか!」

ツバサの威圧すら跳ね返すほどの怒号に対しキングストーンは落ち着きを払って答える。

「貴様を危険視してるからだ、ディーヴァの残滓よ」

そう言って、一息ついてからキングストーンは話し始めた。

「貴様はテラカオス・ディーヴァから分かたれた存在、即ち貴様はディーヴァに戻りえる素質を持つ」
「だから、どうしたと言うんです」
「……ディーヴァは凶悪な存在であった、自身が多くの人を救済すると言いながら捕食と言う手段を用いるな」
「…………」

ツバサは押し黙る、ディーヴァの人を助けるという意志を否定されたように言われ腹が立ったがそれを抑える。
抗議するのは話をすべて聞いてからにしようと思って。

「救済心は本心からのものであったのだろう、だが奴のその心は暴走していたのだ」
「暴走ですか」
「ああ、たった一人で多くの人々を救済するというな」

キングストーンは一旦話を切り、再び話し始める。


855 : 黒き太陽は引き継がれ :2018/06/19(火) 20:38:06 zWkAqlMw0


「それ故にだ、奴は立ちふさがるがらずとも多くの者達を捕食し殺していった」
「………ッ」

殺すという言葉にツバサは何も言えなかった、事実ディーヴァは何人もの参加者たちを捕食で食い殺している。

「そしてその捕食は全ての者達を食らうまで終わらなかったであろう、沖縄で敗北しなければな」
「……即ち私を危険視する理由、それは」
「ディーヴァと同じように人々を救済するという大義名分を暴走させ人々を捕食するということだ、それを私は見過ごせん」
「なぜです」
「それは私が南光太郎と言う男と人類を守る為に戦ったからだ」

キングストーンは嘗ての自身の適合者たる南光太郎と共に戦った、それ故にキングストーンはその意思を尊重する。
それが南光太郎と言う男の最後の願いだった故に。

「……私はそうはなりません」
「ほう、なぜそう言える」
「私は確かにディーヴァから分かたれた存在、けれどその全てが同じじゃない」

そう言い切ったツバサ、それを興味深そうに面白そうにキングストーンは見つめる。
自身の適合者が言ったように、もしかしたら希望があるかもしれないと思い。

「いや、私は私、ディーヴァとは違う」
「ほう、何が違う?」
「……私にはディーヴァのような力も意思も理想もない、結局夢の中で言われたことをやってるだけ」

ツバサの手に力がこもった、自分が生まれて間もないがそれでも自分には何もないと思えて。
けれど、ディーヴァとは違うものが一つあった。

「けど、ディーヴァとは違って私には隣に人がいますから、たとえそれが偶然であってもそこはディーヴァと違う所です」

そう、ツバサは断言する、その瞳には一切の迷いなどはなかった。

「そうか、だが戻った所でお前はどうする?今のお前にはお前自身が言った通り力などない、それでどうやって戦う」
「……そうですね、だから頼みます」

言って、ツバサはキングストーンを再び見上げて。
姿勢よく、頭を下げた。

「私に力を貸してください」
「クッ、ハッハッハッハッハッハ、ハッハッハッハ!」

キングストーンは笑った、笑ってツバサを見る。
自らの非力を認め、己に力を貸してほしいという今は唯の少女を。

「なるほどなるほど、自身の非力さを認め力を貸してほしいか、未だかつてそのように私に言ったものはいない
 ――――よかろう、ならば存分に振るって見せるが良い」

そう言ってキングストーンは手を伸ばす、その手をツバサは取った。
すると手と手が合わさった時、中央にて光が輝いた。

(ふっ、光太郎よお前が言った通り希望が生まれるのかもな)

キングストーンは思い出す、ディーヴァが敗北しその魂が削り取られる場面を。
その中で唯一ディーヴァの取りこんだ魂の中で目覚めた光太郎が自身の力を振り絞りキングストーンをツバサの魂に投げ込む姿を。
希望は生まれると、光太郎が言ったその言葉をしっかりと心に刻んで。

そしてツバサは現実へと帰還する。

◇ ◇ ◇

煙が濃くイチロー達がいた場所に覆っていた。
サイコビームの一撃は今までの人生の中でも最大の威力であった、それ故に天子はイチロー達を殺せたと確信できた。

「中々やる奴らではあったが所詮私の敵ではなかった」
「さすが!ナイト!」「ナイト!」「ナイト!」

狂信者達が天子を褒めたたえる、それに気を良くした天子は狂信者達の方を振り向き勝利のポーズを決める。
それを見た狂信者達のテンションはさらに上がった。

「さあ、皆私達の任務は終わった、いったんビッグサイトに――」

そう言いかけて天子は背後に気配を感じて一気に振り向いた。
それに釣られて狂信者達も天子が向いた先を見た。
徐々に徐々に煙が晴れて行く、そしてその場所に立っていたのは。

「大丈夫ですか、イチローさん」
「あ、ああ、だが……君に何が」
「話はあとです、今は下がっていて」

そうツバサに促され逡巡した後にイチローは翼の言う通りに後ろへと下がった。

「おいィ、折角私がもう終わらせようと思ったのに何でまだ生きてるんですかねぇ」
「決まっています、こんなところで終わりたくないからです」

そう言ってツバサは構える、その姿はツバサの元となったディーヴァの更に元となった風鳴翼が使っていたシンフォギア、天羽々斬と似た武装を装備している。
だがしかしそのメインカラーは青ではなく白となっている。
更に今構えている武器はRXが使っていた剣、リボルケインだ。

「ふん、まぁいい、所詮は付け焼き刃あの時死ななかったことを後悔するべき」
「それはどうでしょうね」

剣呑な空気が流れる、二人ともしばし相手を見てから、動き出す。


856 : 黒き太陽は引き継がれ :2018/06/19(火) 20:38:18 zWkAqlMw0


先手は天子、超低姿勢になり剣に炎を纏わせ燃え盛させる。
この技はミレニアムファルコンのコックピットをぶち抜いた技、その威力でツバサを殺すのはたやすい。
――過去のツバサであるのならばである。

「つぅいげきのぉグランドヴァイパァ!」
「……ふぅ〜」

ツバサはその攻撃に慌てず、騒がず、その攻撃の動作をよく見る。
そして、リボルケインをその攻撃に合わせて振るえば、攻撃が相殺される。

「なに、クッ」

天子はそれに驚くがツバサが間髪入れずに接近し攻撃を仕掛けてくる。
それに対し天子は良く反応し、その攻撃をグラットンソードで受け止めた、がしかし天子は嫌なものを感じた

(下手にこのまま鍔迫り合いを行っていると何かまずいことが起きるかもしれニィ、ならここは)

そう言って天子は足蹴りをツバサに仕掛けた、しかしツバサはこれに反応し鍔迫り合いをやめ回避する。
それと同時に天子もツバサが回避したことを確認し自身も後ろへ下がった。
そしてグラットンソードを確認する。

「……ッ、罅が」
「どうやら、その剣は貴方ほど硬くはなかったようですね」

そう言ってツバサはリボルケインを再び構え成す、それを見た天子も構える。
だが、今不利なのは自身であると薄々天子は悟っている。

(ここは引くべき、けれど相手は逃がしてくれ、ない!)

今までの優位が一転、こちらが不利になったことを認識する。
何故かはわからない、だが直感がツバサが危険だとここから撤退すべきだと告げているが逃げられそうもなかった。
その隙を相手は与えず、すぐに動き出す。

「ハァァァァ!!」

気合いがこもった叫びと共にリボルケインを用いて連撃をツバサは繰り出していく。
天子もまたそれに対して対応するものの、歴代の適合者の戦闘記憶を引き継いだツバサに押されてゆく。
本来であれば記憶引継ぎなど行われない、しかしツバサの場合はキングストーンと対話したことで引き継ぐことが出来たのだ。

「くぅぅぅぅぅ」

その連撃に押し込まれてゆく天子、確かにナイトの防御力は驚異的なものだ。
しかしツバサが持つリボルケインはその防御を無視してダメージを与える。

「ナイトがやばい!」「助けるぞ!」

狂信者達が天子を助ける為に動きだす、それは狂信者としての仲間意識であり今まで助けられた故の恩もあった。
だがしかし、狂信者達は戦闘に夢中になって忘れていたのだ、ツバサにも仲間がいるのを。

「後ろの連中が出てきたな」
「よし、ならそいつらは俺達で片づけうようぜ、あのツバサって子だけに任せるわけにもいかないからな!」
「でぇす!」

先程の遭遇戦での6/とシマリスのクルミ投擲をこの戦いで頼りになるナイトがいたことですっかり忘れていた狂信者達。
その事が仇になり、天子が率いていた残り30人の狂信者達は全滅した。

「くぅ……!」
「これで終わりです、貴方も!」

そう言ってダメ押しをツバサは食らわせる、速く、されど浅く天子に斬撃を食らわせた。
ガラントアーマーが破損し、胸部からわずかな血が流れる。

「何の、つもりよ?」
「……貴方を知っている人がいますから、降伏を」

そう言ってリボルケインを向けながら言うツバサ。
シマリスが知っている人物だからこそ、狂信者の彼女を何とか出来ると思ったからツバサは止めまで持って行かなかった。

「そうでぇす!話を聞いてださい!」
「――いやよ」

シマリスが話を聞いてくれと懇願するが、天子はそれを一蹴し無造作にツバサを斬りつける。
それをツバサは余裕で回避した。

「な、なんででぇすか!!」
「決まっているじゃない、貴方達をクラウザーさんの生贄にしてクラウザーさんをよみがえらせるためよ」

迷いなく、天子はそう言った、そこにあるのは狂信者としての狂信だけでなく、純粋なものもあった。

「あの人の歌が好きだから、あの人の歌をもう一度聞きたいから、だからそうするのそれはもう決めたことよ」
「そ、そんな」
「……シマリス、ありゃダメだアレは覚悟が決まってる奴だどんなこと言っても揺らぐことはないな」

ベルナドットがシマリスに天子の説得は不可能だとそう言った。
シマリスもまた天子のその思いの強さに説得する言葉が見つからなかった。

「…………衣玖には悪いけれどね」

少々の後悔を滲ませて剣を構える天子、それを見てツバサもまたリボルケインを構える。
少しの間が空き二人は一気に距離を詰めて、一閃。

「あーあ、やっぱり……だめ、だったわ」

そう言って天子が倒れた。

【比那名居天子@東方project】  死亡確認


857 : 黒き太陽は引き継がれ :2018/06/19(火) 20:38:31 zWkAqlMw0


「終ったか……」

ベルナドットがそう言って一息ついた、そこにツバサが向かって来る。
変身は向かって来る途中で解除された。

「色々と聞きたいことはあるが、ありがとう助かったよ」
「いえ、イチローさんが時間を稼いでくれたおかげでもありますから」

そう言ってツバサは後ろを振り向く、自身が倒した存在にしばし思いを馳せその死を悼んだ。
もしかしたら仲間になれたかもしれなかったという思いを持ちながら。

「しかし、ここからは徒歩で遊園地に向かうのか、皆ボロボロだから一苦労だぜ」
「いや、そうでもないみたいだよ」

そう言ったイチローが見据えた先には強大な竜がこちらに向かってきた。

「敵か!?」
「いや、あれは味方だよ、僕たちの頼れるね」

イチロー以外の者達がギムレーの邪竜体を見てすぐさま再び臨戦態勢を取るがイチローがそれを制した。
イチローの物言いに旧物置組はびっくりしたが事実である。
そしてギムレー邪竜体が地上に着地し、器のギムレーが降りてきた。

「どうやら来て正解だったようだ、……見慣れない者達もいるが」
「その事に関しては本拠地で話すよ、僕達もクタクタだからね」
「分かった、それじゃイチロー達とその一緒にいる人たちも乗ってくれ、速くここから出たいからね」

そう言って邪龍ギムレーに乗るように促された旧物置組はしばし考えた後にその言葉に従った。
今の自分たちはイチロー達しか頼れないからである。

そうして全員乗ったことを確認したギムレーは邪龍の方を動かし上空に移動、その後無事に遊園地へと向かった。
今度の空旅は襲撃してきた狂信者達が全滅したこともあり何事もなく遊園地へと到達することが出来たのであった。

【二日目・18時25分/千葉・遊園地跡地・上空】

【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒】
【状態】健康、人間形態、シャドウだった者へ若干の恐怖心、首輪解除
【装備】トロンの書、鋼の剣、邪竜ギムレー
【道具】支給品一式、不明品、スクーナー級×500、ガレオン級×30、首輪×10、首輪のスクラップ×40、首輪解除方法(未完成)を書いたメモ
【思考】基本:自分以外がもたらす破滅(未来の大災害)の阻止
0:まずは本拠地に戻る、都庁に行くにしてもイチロー達がこうもボロボロだとね。
1:『正確な』情報を集めて仲間をフォローする。アナキンは要警戒だが今は誰にも話さない
2:試合の邪魔をするDMC狂信者を倒すために、本拠であるビッグサイトを攻略したい
3:予言に対して少し懐疑的
4:都庁がまともな場所と判明したのは僥倖。変態の巣窟でも文句はないさ
5:サラが死亡した場合はアウラの民の指揮を引き継ぐ
6:西の邪悪な気配は警戒を続ける
7:ネット上の乳神に若干嫉妬
※外見はデフォルト設定の銀髪青年です
※首輪を外したとしても、屍兵は簡単には生み出せません
※首輪解除により、人間の姿のまま、自分自身である邪竜ギムレーを操れるようになりました

【イチロー@現実?】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中) 、非常に強い悔しさ
【装備】野球道具
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチリュウチームを優勝させる?
0:一先ず休息をとる
1:DMC狂信者を倒すために多くの仲間を集める
2:邪魔をしてくるDMC狂信者を倒すまでは試合は保留
3:予言に対しては慎重に考える
4:DMC狂信者の本拠であるビッグサイトを攻略したい
5:主催者は予言のことを知っているんだろうか?
6:オシリスやゼクスたちの犠牲を無駄にしない
※ネオ・レーザービームは使用すると腕に多大な負担がかかり、あと二球以上使用すると選手生命が終わる危険があります
 いかなる回復手段を持ってもこれは回復できません
※オシリスが死んだと思っています(他のチームメイトも同様)

【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、怒りと悲しみ
【装備】胡桃1500個
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:新生したイチリュウチームで予言の完遂を果たす
1:ハラサン……ありがとう
2:大正義を忘れない
3:目立つことも忘れない
4:予言に対して盲信気味
5:DMC信者は絶許。本当に絶許
6:なんかシマリスから俺と同じ臭いがする
7:色々とあったからとりあえず回復と休息を取りたい


【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(大)、気絶中
【装備】サングラス
【道具】支給品一式、マスターソード、魔竜石、リザイアの書、不明品
【思考】
0:(気絶中)
1:DMC狂信者、その他マーダーと達と戦う
※邪眼を一回使いました


858 : 黒き太陽は引き継がれ :2018/06/19(火) 20:38:42 zWkAqlMw0


【伊吹萃香@しゅわスパ大作戦】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(大)、気絶中、強い悲しみと怒り
【装備】なし
【道具】支給品一式、日本酒×50
【思考】
基本:イチリュウチームについていく
0:(気絶中)
1:KBTITとかいうクソホモは忘れる
2:なんかロワが始まってから私全然活躍できてなくね!?

【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(小)、完全TC耐性、キングストーンにより変身可能
【装備】キングストーン
【道具】リボルケイン
【思考】基本:テラカオスの因子を集める。
0:もう悲しんでいるのだけはやめた、この力で守れるものを守る。
1:どうして人はあんなに残酷に殺しあえるんだろう……
2:Lさん、ゼクスさん……貴方達の犠牲を忘れません。
3:あの人も状況が違えば仲間にできたのかな。
※ディーヴァが持っていた能力はキングストーン以外が使用不可。
※一度、テラカオスになったことにより完全なTC耐性を保持、テラカオス候補者のTCを回収できます。
※死んだことによりディーヴァの性格を引き継いでいません、これからどうなるかは不明。
※記憶を大半喪失していますが、生みの親の名前、風鳴翼が捕食で世界を救おうとしたこと、都庁での悪い思い出、沖縄で敵が現れ敗北したこと、夢で出会った男(才人)のことは朧げながら覚えています。
※仮称としてツバサという名前が与えられました

【シマリス@ぼのぼの】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、天子を救えなかった悲しみ。
【装備】胡桃×1500
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:仲間と共に生き残る
0:天子ちゃん……
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:衣玖さん、ごめんなさいでぃす……
4:クリスちゃんとは友達でぃす!
5:拳王連合軍、悪い奴じゃなければ良いんですが
6:ゼクスさんたちには死んで欲しくなかったでぃす……
7:6/さんを見ているとなぜかホッとする

【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】気絶、変身解除
【装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:(気絶中)
1:シマリスの無事を祈る
2:翼を見つけ出し食人について問いただす
3:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
4:もっと強くなりてぇ
5:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
6:拳王連合軍にはちょっと懐疑的
※テラカオス化が進行していましたがディーヴァの残滓によって回収され正常に戻りました。
※気絶しているので状況が把握できていません

【ピップ・ベルナドット@HELLSING】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)
【装備】自動式拳銃×2、M16
【道具】支給品一式、スピーダー、手榴弾×25、ノートパソコン、TCホール観察日記、カオスロワちゃんねるに関する考察メモ
【思考】基本:バトルロワイヤルを生き残る
0:仲間の仇を取ってやりたいが……
1:生存確率が上がりそうなので今はイチローについていく
2:拳王連合軍と組むのは有りだと思っている
3:正直、ドリスコルには勝てる気はしないが……
4:とりあえず、状況を整理する時間と回復と休息をしたいもんだ
5:そういやLからもらったメモ読んどかないとな。


859 : 黒き太陽は引き継がれ :2018/06/19(火) 20:39:15 zWkAqlMw0


イチロー達がちょうど遊園地に到着した時と同時刻に遊園地近くの海上にて一つのポッドが浮上した。

「どうやら無事に遊園地にまでこれたようですね」
「ああ、後はこのまま行くだけだな」

ナッパとサラマンディーネの二人だ、あれから二時間一五分悪戦苦闘しつつも何とか遊園地まで移動していたのだ。
流石の狂信者と言えど海にいる存在を探す者達は限られており、更に都庁の決戦に備えている段階だ。
それ故に海に回す人員はいなかったのである。

「やれやれ、緊張の連続でしたね、狂信者に見つかれば私達は終わりですから」
「だが油断は禁物だ、もしかしたら敵がいるかもしれないからな」
「ええ、分かっています最後まで慎重にですね」

そう言ってポッドを動かす、だがその時上空から音が聞こえた。

「ッ!?敵か!」
「いえ、どうやら民たちが私達に気づいてくれたようです」

サラマンディーネが空を指さす、指さされた先にいるのは竜達、そうアウラの民達だ。
その種類はガレオン級とスクーナー級、その数匹だ、ギムレーから許可をもらいこちらに飛んできたのだ。

「どうやら一安心だな」
「これでようやく一息付けますね」

二人は安堵した様子でこちらに向かって来るドラゴンを見ていた。

その後、ドラゴンたちに回収され、ナッパとサラマンディーネも遊園地へと帰還した。

【二日目・18時25分/千葉・遊園地跡地・上空】

【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(特大)、尻尾切断、全裸、野球脳、激しい怒りと悲しみ
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:とにかく休息とダメージの治療がしたい
1:野球を邪魔するDMCは許さない
2:ベジータはそのうち探す
3:また多くの仲間が死んじまった……自分の無力さが不甲斐ない
4:生きていてくれソウルセイバー!
5:サラマンディーネにも迷惑かけちまった……
6:拳王連合軍は本当に悪逆集団なのか?
7:あのガキ(光熱斗)には野球で報復したかった
※回復した場合、戦闘力がとても大幅に上昇します
※一瞬だけスーパーサイヤ人化しました
 首輪解除ができればいつでも覚醒できますが本人は気づいていません

【サラマンディーネ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
【状態】ダメージ(中)、両羽喪失
【装備】なし
【道具】一人用ポッド
【思考】基本:対主催
0:遊園地につき次第、怪我の治療を。
1:イチリュウチームについていく
2:滅亡を止めたいとは思うものの、予言に関しては懐疑的
3:後で首輪解除のためにゆっくりできる時間が二時間ほど欲しい
4:リオレウス様……
5:ナッパ様の髭が一瞬だけ金色になったのを目撃しましたがあれは一体……
※予言には主催者も関わっていると推測しています
※首輪解除技術を持っていますが、技術面で祐一郎さんやブリーフ博士を下回っているため、解除方法を見つけるまでに最低二時間以上かかります


860 : 名無しさん :2018/06/19(火) 20:39:26 zWkAqlMw0
投下終了です


861 : ◆wt4weW0QG2 :2018/06/19(火) 22:22:50 KfTBEF3I0
投下乙です。
ツバサ、善き方面へと覚醒
過去にてつを喰った因縁がこーくるとは思わなかった
天子の説得は流石に無理だったか、衣玖絡みの因縁は悲しい結末になっちまったな……(ブロント語に目をそらし)

予約のシャドウを投下します


862 : 純黒のラブレター ◆wt4weW0QG2 :2018/06/19(火) 22:24:54 KfTBEF3I0
ここは沖縄。
TCの化身とも言えるシャドウが居座る場所である。
端から見ると彼(彼女?)は沖縄の砂浜に鎮座して瞑想をしているだけのように見えるが、そうではない。
シャドウは自分の内部で、日本本土への進行の準備をしているのだ。




以前、5245話で安倍総理に関してこんな話をしたな。


まあ、他の罪人と違い魂が破壊されたわけではない。
シャドウが死んだら審判者によって罪を洗い流され来世で転生できるんじゃないんですかね(小並感)


あれは嘘だ。



「く、苦しい、やめてください……」

カルナに魂を喰われることを恐れ、シャドウの影に飛び込んだ安倍総理。

前回も言ったとおり、安倍総理のテラカオスとしての力は、『同化』であった。
すなわち、四条化と同質。
ゆえに、シャドウであった者が新たな特殊能力を得ることは無かったのだった。

これはどういうことかと言うと、安倍総理が持つエントロピーこそシャドウだったものにとって魅力的ではあったが、能力の方は被るので必要がない。
故に今、魂が滅ぼされようとしているのだ。

「エントロピーは凄まじいのだが、それだけだな」
「ま、待ってください! ディケイドのように尖兵として使っていただければ私はあなた様のために働きますとも!」
「ダメだな、おまえがテラカオスである以上、体内から出した途端テラカオスとして復活し、裏切るのは目に見えている。
同化能力は既に持っているから、エネルギーに変えた方が都合がいい」

いちおう、TCを取り込めるテラカオス故に時間はかかったが、もはや安倍の魂は消えかけている。
それまでに魂を削られる苦痛を味合わされていた。

苦しむ暇もなく消されるか、消されるまで多大な苦痛を味合わされるのはどちらが楽か?
安倍は今、死者スレでの消滅の方が遥かに良かったと後悔している。

「消滅よりはマシと来世で蘇ることを期待したのだろうが、災害である私に縋ったのは失敗だったな

亡霊よ、エネルギーに還れ」

「あき」

最期に何かを言いかけた瞬間、シャドウの体内の中で安倍の魂が弾けとんだ。
完全消失した魂は輪廻転生もなく、未来永劫蘇ることはない。


『酷いことを……』

そう呟いたのはシャドウであった者に体内から抵抗する存在、混沌の騎士である。
安倍は確かに外道であったが、こんなえげつない消し方をする必要はなかった。
シャドウの行いが混沌の騎士を憤らせる。

「案ずるな。大災害が発生すれば全ての者の魂が消失する。
早いか遅いかの違いだけだ。
……さてと」
『!?』

安倍を消し飛ばしたあと、死者スレまたはディーヴァから力を奪う際に取り込んだ数名ほどのネームドキャラ、数千名ほどのモブ参加者の魂がシャドウによって混沌の騎士の目の前に現れた。
大半の者が、シャドウの中で唯一消えることのない魂の持ち主である混沌の騎士に手を助けを求めている。


863 : 純黒のラブレター ◆wt4weW0QG2 :2018/06/19(火) 22:26:17 KfTBEF3I0

「アタシは世界と野球史に残るアイドルになりたかった……それだけなのに!」
「大人を騙してごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「パパの知り合いに偉い人がいてさ……だから助けてよ!」
『お、落ち着くんだみんな!』

安倍が消し飛んだのだから自分たちがこれから何をされるか、死者も混沌の騎士も察しが付いている。
故に大半が恐慌状態に陥っていた。
そして執行者は囚われた者たちに冷酷に言い放つ。

「おまえたちは私の戦いが有利になるようなスキルを有していない。
ディケイドのように尖兵に使うにしても弱すぎる。
だから魂を潰してエネルギーになってもらおう」
「ふざけんな、ク〇二しろオラアアアアア!!」
「待て、あの十神財閥の御曹司だぞ! おまえはその魂をここで絶やすというのか!?」
「キン肉マンめ、こいつを道連れにしてから死にゃあ良かったんだ!」

「アイスシザーズ、オマエハコイツ二トリコマレルンジャナイゾ……!」
「まどか、おまえは死ぬんやないで……死んだらコイツに……!」
「ジバンさんごめんなさい、私はここまでみたいです……」


激昂する死者、諦める死者、反応は様々だが迎える結末は皆同じであった。
混沌の騎士はテラカオスの力を使って一人でも多く救おうとしたが、哀しいかな、彼の力はシャドウの再生能力の妨げになることが精一杯で誰ひとり救うことはできなかった。

『やめるんだシャドウ!』
「災害に慈悲などない、ただ環境システムの一環として破壊するだけだ」
『やめろおおおおおおおおおお!!!』

シャドウは死者たちになんの感慨も抱かず、死者数千名の魂破壊を決行。
一瞬にして、死者たちの魂が老若男女、人間非人間、善悪関係なく、全てが平等に消えた。
悲鳴をあげながらガラスのように砕け、エネルギーとしてシャドウに吸収されていった。

今消え去った死者たちの能力は使えなくなり、そして彼らはどんな力があったとしても生き返ることはできない。
混沌の騎士は誰か一人ぐらいは救えるかもしれないと手を伸ばすが、



『シャドウ……貴様ァーーーッ!!』

力不足で誰ひとり守れなかったことに対し、兜の下で涙を流す。
一方のシャドウは混沌の騎士に構わずに今しがた消滅させた死者の魂だったものをこねくり回して何かを作り出している。

『彼らの魂で何をするつもりだ?!』
「安倍のように滋養として取り込むこともできるが、食事とは別の使い道を考えついてね」

総理の魂こそ砕いて自らのものにしたが、たった今破壊した魂は取り込まずに別の何かに使おうとしていた。
なんだか手紙みたいなものに見えないことも無いが……

「時に混沌の騎士よ、ドラゴンネットワークというものを知っているか?」
『確か……竜同士で行うテレパシー通信のようなものだったか?』

ドラゴンネットワーク……竜同士で行われるテレパシーの掲示板。
竜版のカオスロワちゃんねるであり、様々なヒントや誤情報を対主催のドラゴンにもたらした。
シャドウはこれからいったい何をするつもりなのだろうか……?

「そこはまだサーフの思惑が絡んでいないだけ安全な掲示板だろうな。
なにせドラゴンにしか介入できない掲示板だ。
誤解はあっても情報操作など、 普 通 はありえない」
『何が言いたい!』
「仮に平和な掲示板にウィルスのようなものが貼られたらどうなるだろうかな」
『なに!?』

シャドウの思惑に混沌の騎士は絶句する。

『ドラゴンネットワークを破壊するつもりか!』
「そんな大それたことはしない。それをやるともっと莫大なエネルギーが必要になる。
――だが、最低限のエネルギーで竜同士をいがみ合わせて足並みを揃わなくすることはできる。
私がたった今作り上げた思念のウィルスがな」

シャドウは参加者の魂を犠牲に作り上げたコンピュータウィルスと比喩した呪いの罠をドラゴンネットワークに設置するつもりなのだ。


864 : 純黒のラブレター ◆wt4weW0QG2 :2018/06/19(火) 22:27:27 KfTBEF3I0

「このウィルスは開いた瞬間、ドラゴンネットワークを介して脳味噌に微量のTCが流れ込む。
微量といっても脳を破裂させるだけなら十分だ。
いかな硬い鱗や表皮を持つ竜とて脳への直接攻撃、そしてTCだけは耐えられまい」
『待て! それがあるぐらいなら、おまえを殺せるテラカオスを生み出さんとしているサーフのカオスロワちゃんねるを破壊した方が……』
「その手には乗らん。
奴の目的は我が天敵であるテラカオスを作ることだが、そのおかげで対主催の足並みは揃っていない。
あの掲示板を止めるには日本全土に妨害電波を垂れ流すしかないが、流石にコストパフォーマンスが悪い。
死者スレの掌握もまだなのに、そんなエネルギーは使えん」
『ぐ……』

「だがドラゴンネットワークは別だ。
竜自体の絶対数が少ないだけに竜同士限定でだが足並みを揃えやすい。
対主催たちが私への対策を練るためにカオスロワちゃんねるよりドラゴンネットワークを利用されるとように困る……だからその前に竜同士で疑心暗鬼に陥ってもらおう」


そしてシャドウは過去に貧乳歌姫が取り込んだ真竜七匹分の力を使い、強引にドラゴンネットワークにアクセス。

「初めてアクセスしたが、なるほど、まるで攻殻機動隊の世界だな」
『……なんの話だ』
「メタ発言だ。気にするな。
う〜む、さて、誰になりすまして投下しようか」

ドラゴンネットワークにアクセスしたシャドウは大いに悩む。
というのも、誰かになりすまさないとウィルスを誰も開いてくれない可能性がある。
かといってなりすますドラゴンは誰でもいいわけでもない。
影響力のないドラゴンではウィルスを開いてくれる者が少なくなる。
オオナズチなど都庁・狂信者所属のドラゴンはアク禁状態。
となると残るドラゴンは……

「奴が……適当だな」

シャドウは頭の中でキーボードをタイピングするように思念で文字を打ち込み、己の名前を偽装してウィルスを流した。
偽装にも魂のエネルギーが使われ、通常はできないと思われる名前の偽装をも可能にした。

彼が選んだ存在は……




『オシリス「死んだふりをしてビッグサイトの内部を実況なう」』




イチリュウチームの天空竜オシリスである。


865 : 純黒のラブレター ◆wt4weW0QG2 :2018/06/19(火) 22:28:02 KfTBEF3I0
オシリスはドリスコルの不意打ちによりイチリュウチームや多くのドラゴンたちに死んだと思われていたが、生きていた。
少なくとも第六回放送までは確実に生きている。
事実として死に体ではあるがビッグサイトに連行されている。

ドラゴンズのリーダー格であった彼が死んだふりをしてビッグサイトを内部偵察しているとあらば頼もしいではないか。
難攻不落な狂信者の要塞、ビッグサイトの弱点を探ることができるかもしれない……オシリスはロリコンの変態だが嘘をつくタマじゃない……信用はできる、または見る程度なら大丈夫たろう。

――そうして信じてスレを開いたドラゴンの脳みそは焼き切られるのである。

仮に本物やイチリュウチームが気づいたとしても、オシリスや仲間であるギムレーとソウルセイバーの信頼は失墜。
三匹は疑心暗鬼になった竜たちから信頼されず、運が悪ければドラゴンネットワークへのアク禁を喰らうであろう。


『そうら、投下から五分もしない内に50匹ぐらいのドラゴンが死亡したぞ』

オシリスを信じて、もしくは深く考えずにスレを開き、脳を焼かれた竜たちの魂が死者スレに到着。
そして狙いすましたかのように現れたシャドウの影によって大半の竜が魂を吸収された。


【ライゼクス@モンスターハンター】
【タマミツネ@モンスターハンター】
【ダレン・モーラン@モンスターハンター】
【ブラキディオス@モンスターハンター】 他モブドラゴン50匹・死亡確認


『この卑怯者め!』
「災害に卑怯も何もない。ただ破壊するだけだ。
違いは……生きとし生けるものの絆とやらも破壊できることだがな」

「さあ、私が撒いた種が後でどうなるか楽しみだ。
生きる者の力は絆……他者との連携にある。
だから、ここから動けない間、連携を突き崩す準備をさせてもらおう」


18時30分現在、シャドウであった者は未だに沖縄に鎮座している。
しかし、ただ座っているだけではない。
復活させた死者三名を操り、死者スレを掌握せんとしている。
あまつさえドラゴンネットワークという領域まで犯し始めた。

クロキケモノは物理的なものだけでなく、絆をも破壊し始めたのである。




――破滅が本土に侵攻するまで、あと10時間30分。



【二日目・18時30分/沖縄県】

【シャドウであった者@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、休憩中、弱体化
【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 他不明
【道具】不明、混沌の騎士の魂
【思考】基本:世界の破壊
0:あの者(テラカオス・ディーヴァ)の魂の破壊
1:死者スレの掌握
2:体力と傷の回復
3:本土侵攻に備えて可能な限り参加者間の信頼を挫く
4:混沌の騎士の魂がとにかく邪魔
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています。
※ディーヴァの捕食した能力も込みで持っているようです。
※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。
※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。
※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。
 更に死者スレ内の防衛にカルナが投入され、一度はテラカオスとして完成したこともある混沌の騎士の魂に内部から妨害を受けることで掌握速度が停滞。
 完全掌握に10時間30分以上の時間を要します。
※混沌の騎士のように一度は完成したテラカオスの魂は性質上、取り込めません

※ドラゴンネットワークを使ってオシリス名義でウィルスをばら撒きました。
 このスレを開いてしまったドラゴンの脳を焼いて殺します。
 大量の参加者(ネームド含む)の魂を犠牲にすることで名義を偽装し再度ウィルスを放つことができます。



※以下のキャラの魂が完全に破壊されました
 物語がどのような結末を迎えても、二度と復活できません


【安倍晋三@TCBR1】
【姫川友紀@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【歌愛ユキ@VOCALOID】
【骨川スネ夫@ドラえもん】
【河名コトミ@エデンの檻】
【十神白夜@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【カナディアンマン@キン肉マン】
【死を呼ぶ骨竜@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【浜田雅功@現実】
【音無キルコ@新米婦警キルコさん】


866 : ◆wt4weW0QG2 :2018/06/19(火) 22:30:45 KfTBEF3I0
投下終了です
上の人とタイトルで黒被りしてしまった……

ちなみに魂が消失した犠牲者は総理以外はサイコロ転がして選んだだけなので他意はないです


867 : 名無しさん :2018/06/19(火) 22:32:46 zWkAqlMw0

ドラゴンネットワークにも侵入かぁ、これで何人死ぬか


868 : 名無しさん :2018/06/19(火) 23:06:00 Egg1HJsY0

これはいよいよやばい……
そして地味に松ちゃんが完全暴走マーダー確定ってのと、
ドラゴンネットワークで一番馬鹿だったシャガルマガラがウイルス回避してるの笑える


869 : 名無しさん :2018/06/20(水) 22:58:13 aZCGu2m.0
イチリュウチームも怪我さえ治れば都庁や拳王をも凌ぐ最強対主催組織になりそうだな
ただ……シャドウによるドラゴンネットワークハッキングがどう響くか
主要キャラのドラゴンではオオナズチ、オシリス、ギムレー、ソウルセイバーしかドラゴンネットワーク使えないけど


870 : 名無しさん :2018/06/21(木) 02:04:25 ZZjSKQ8k0
メインドラゴンは多分みんな頭回るからウイルスは踏まないだろうが、野良ドラゴンから情報集めらんなくなるのはかなりの痛手だな
しかしユッキも砕かれると、M字ハゲに腹黒マスコットとあわせてダメ対主催上位陣が次々報いを受けてることになるな
果たして主任はどうなるやら……と思ったがマーラ様のせいでテルミみたくなってそう


871 : 名無しさん :2018/06/21(木) 07:19:44 RrGU/unI0
ソウルセイバーだけまだ遊園地に戻ってないのがなんとなく怖い
あんま関係ないけど翼の中の人はフェイトと同じだし、遊園地にいるなのはがどんな反応するか気になる


872 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:15:09 Y.b6E.ow0
都庁会議組+αで投下させていただきます


873 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:16:13 Y.b6E.ow0
草を生やさないオオナズチの声が、世界樹の天辺にて響き渡る。
周囲は彼が吐き出した濃霧により覆い隠され、さらにまどかが世界樹を操り大量の葉で二重に覆う形である。
駄目押しで氷竜の結界も施され、万が一にも彼らの姿や会議内容が外に漏れることはない。

集まったのはこれまで生き延びてきた猛者達、その中でも代表者たる者達だ。

世界樹軍勢からは、最後の竜たる氷嵐の支配者と巫女まどか。
その協力者にて最大戦力であるダオスとレスト。
影薄、魔法少女、歌組からはそれぞれ小町、ほむら、小鳥。
そして聖帝サウザーと彼を抑える役割の金色の闇。
最後にこの会議の発起人であるオオナズチ。

戦力面、思考面においても特に優れた者が集まったといえる。
そんな彼らが集まったのは、今後の方針を決めるためであり、予言の謎を考察するためである。

「まず先に言っておきますぞ。我が手にした情報は確実なものと、不確実なものがある。
 ですから当たり前ですが、確実な情報から処理していきますぞ?」
「わかった」
「まずは『救済の予言』ですが、これはやはり元はミヤザキの遺跡にあった模様ですぞ。
 情報提供者は現宮崎在住、バサルモス。しかしその遺跡は数時間前に何者かによって破壊されたそうでしてな。
『怖過ぎるから俺やっぱこのまま最後までただの岩Aとしてやり過ごす』との言葉を最後にネットワーク切られたんで救援は見込めませんな」

オオナズチからもたらされた情報に、各々は考察を開始する。
この情報で気になるのは、ミヤザキ産の予言と関わりが深そうな巫女がグンマ―産である点。
そしてそれ以上に、何者かによる隠蔽工作が行われたことである。

「遺跡を壊すってのは、予言を知られちゃ不味かったってことかね?」
「しかし妙ですね。宮崎は今は九州ロボの一部。破壊などしなくても容易には見れない筈です」
「……九州ロボは主催者の拠点。つまり主催者に感知されたくなかったということか?」

謎は残るが、確かなのは予言を妨げようとする者の存在が明るみとなった。
それはつまり、予言が本当に意味のあるものである証明でもある。

「僕が疑問に思ったのはミヤザキの遺跡に予言があって、グンマ―にはこの予言の遺跡がなかったことかな」
『私やオオナズチもそれなりに長き時を生きてきたが、グンマ―にそのような遺跡があったとは記憶していないな』
「私が予言の巫女じゃないと言えばそれまでだけど……」

不明瞭な点が多い予言において、祈りで巫女となりフォレスト・セルを制御したまどかは巫女の一節の有力候補であった。
しかし彼女が祈りに用いたのはグンマ―の秘術であり、ミヤザキのものではない。
この食い違いがある以上、巫女はまどかではないのだろうか?

「そもそも前提から質問していいかしら? 今の宮崎は機械科学の発達した文明都市。どうして群馬、グンマ―と交友があったのかしら?」
「そうですね。ここの魔物の反応からして、あまり機械文明とは仲睦まじく手を取り合うようには見えません……」

そして疑問は予言以前のものにまで行きつく。
何故グンマ―とミヤザキ、対極に位置するであろう文明に交流があったのか?

「おいお前達、脱線しかかっているぞ。この予言の出処がどこであろうと、効力のあるものなのは間違いないのだろう?
 こっちなんて梨の神のお告げとかいうよくわからないものだったのだぞ!?」

少し悔しそうに叫ぶサウザーの言葉に、金色の闇はやれやれといった表情を浮かべる。
だが事実彼の言う通りであり、出処の疑問は保留とされた。


874 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:16:58 Y.b6E.ow0
「とりあえず次に移りますぞ。
 予言の一節、9人の最良の戦士。これは野球の優勝者で間違いはなさそうですな。
 宮崎の地は野球選手が強化合宿で頻繁に訪れるそうですし、各地のドラゴンから野球場に不思議な紋章と力が集まっているとの報告もありましたからな」

「この予言はクリアしたも同然だな。我が聖帝軍が必ずや優勝することだろう」
「まだ一度も試合できていませんけど……」
「でも集めた力を一体何に?」

とりあえず理屈は不明だが、9人の戦士の一節はやはり野球で確定した。
問題なのは現状況下において野球の優勝ということは恐らく、球場にかつてない程の力が集まるであろうということ。
その集まった力を何に使うのかがわからなければ、優勝したところで意味はない。

「わかってるのは、どの節も最後に集約されるってことぐらいさね。
 全てが集いし時『争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる』
 こっから察するに、その集めた力は化身を救いの神に変えるために必要ってことだとは思うんだよ」
「そもそもこの化身とはなんなのだ一体? お前達の話を聞いている限り、きらりと似たような状況に陥った者のことのようだが……」

サウザーが首を捻りながら同盟軍を見渡す。
化身も予言の謎の一つであるが、風鳴翼やきらり等この殺し合いにおいて突如怪物に変貌した参加者は複数人いる。
殺し合いという争いの淀みから生まれる化身として、これ以上当てはまる存在はいないだろう。
同盟軍の誰もが、化身の正体をそう考えていた。

「これまでの情報を纏める限り、主催者がばら撒いた瘴気に感染して、戦い続けると変貌しちまうらしい。
 予言との関係性はわからないが、主催者がこの化身を作り強化したがっているのは間違いないだろうさ」
「なんだ、以前俺が到った『蠱毒』の考えはあっていたのか?」
「蠱毒……そうですね、規模が桁違いですけど一番わかりやすい例えと言えます」
「驚いたわ。情報が揃っていない状況でそこまで辿りついていたなんて」
「はーはっはっはっ! まあ、このくらいこの俺にかかれば造作もないことよ。……闇、何か言うことはあるか?」
「ごめんなさい!?」

反射的に闇は謝っていた。
当時は皆で馬鹿にしていたものの、実はサウザーの考察は当たっていたのだから。
しかも回りの反応を見る限りだとサウザーが答えに行きついたのは早い部類らしい。
もう少し前からちゃんと彼の話を聞いておくべきだったかと後悔しつつ、闇は咳払いの後に質問を続ける。

「しかし蠱毒のように化身を作ったとして、目的はなんなのでしょうか?
 それに食人鬼の風鳴翼と諸星きらりは同種とのことでしたが、容姿や能力に接点も見受けられませんが……」
「ああ、化身の能力については僕も少し思うところがあったんだけどいいかな?」

最大の謎の質問に対し、レストが挙手をする。
ダオスやサウザー、小町も頷き、回答が促された。

「まずは『風鳴翼』。他者を捕食して能力を奪って限界の無い成長を見せていた。これが彼女本来の力と見て間違いないでしょう。
 そして『ユーノ』。伝聞だけど、彼の能力は魔力やエネルギーを限界なく取り込んでの増幅反射。
『きらり』は歌も脅威だったけど、増殖する肉はきらりんロボを吸収して己の武器へと変貌する能力も持っていた。
 最後にこの僕『レスト』は、元々の融合魔法の強化。他の生物や道具を取り込んで身体の一部をそれに模せるようになった。
 各々が違う能力だけど、生物にしろ機械にしろ魔力にしろ『何かしらを取り込んでの自己強化』をしているように思えませんか?」

レストの推測は、きらり戦でも感じた疑問であった。
化身全体の共通能力かもしれないという、何かを取り込む力。
自身も感染し、また感染者とも戦ってきた彼の言葉であれば信憑性は高いと誰もが思い、その内容を受け入れる。
しかし問題なのはここからだ。

「なるほど。だが何かしらを取り込む能力が共通しているとして、その理由は何なのかしら?」
『わからぬ……どれもが常識外れな力であるし、他にも繋がりがあるのか……?』
「いや、着眼点は悪くないはずだ。取り込む、これに何かしらの意味はあると思うのだが……」
「う〜ん、言っておいてなんですけど、僕もここから先が考えられないんですよね」


875 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:17:59 Y.b6E.ow0
誰もが頭を悩ませる。
人より優れた知能を持つ竜、その中でも特に知識を司る氷嵐の支配者でもわからず。
知力すらカンスト値をとうに飛び抜けているレストも首を捻ったまま動かなくなり。
この軍勢の指揮官である魔王たるダオスは考え過ぎで眉間の皺が深くなるばかり。
残る同盟軍の面々も似たような状況であり、考察は暗礁へ乗り上げてしまった……





「何をそんなになやんでいるのだお前達?
 きらり達は化身としては未完成だったのだろう。ならば完全体となった化身は今挙がった能力の複合体……
 つまり『なんでも吸収』できる存在であり、先程ダオスから聞いた滅びの根源たる『TCも吸収できる』ようになるというだけじゃないのか?」




「「「……」」」
「サ、サウザー……」

きょとんとした顔で、なんでもないといった風に呟くサウザー。
そんな彼に向けられたのは集まった面々全員の呆気にとられた顔。
あまりの事態に思わず闇もいたたまれなくなりサウザーを慰めようとするが……

「それだッ!」
「サウザーさん、凄いですよ!」
『なんと、聖帝の智は竜をも超えるか!?』

だがそれよりも早く、大歓声が巻き起こった。

「「え?」」

これには闇も、別に大したことを言ったとも思っていないサウザーも目を丸くする。

「そうか、なんで気がつかなかったんだい! 滅びの原因がTCなら、救いの神とやらはそれをどうにかできるって話じゃないかい」
「本当に簡単にして単純なことですけど……」
「無理もないですぞ。相手は世界をメチャクチャにしたトンデモエネルギーですからな」
「普段属性吸収しておきながら、TCを吸収するっていう発想が全く出てこなかったよ……」
「私もだ。相手は対処不能な未知のエネルギー、取り込むことなど不可能だと、最初から決めつけていたのだな」
「すごいやサウザーさん、流石さやかちゃん憧れの人!」

「ふ、ふはは! この聖帝サウザーにかかれば予言の謎などこの程度よ! むしろ簡単すぎて欠伸がでかねんなぁ!
 お前達も馬鹿ではないようだが、常識に囚われすぎて考えが硬くなってしまっているのではないか?」
「返す言葉もない。サウザー、助かったぞ」

頭を下げるダオスに対してサウザーは笑いながら返す。
しかしその笑みはどこかぎこちのないものだ。

(おい闇、大丈夫なのかこれは……?)
(なんで貴方が一番不安そうなんですか!?)
(いやこんな反応されたの初めてだし、俺は本当に思ったことを言っただけだからな……)
(はぁ……大丈夫ですよサウザー。いつもの貴方らしく、無駄に自信たっぷりで前を見てください。他の予言も解けるかもしれませんよ?)

「そ、そうだな。よし、このまま次の予言も解いてみせよう! ふはははははははぁ!」

へたれた顔は同盟軍には見せず、すぐに聖帝の顔で高笑いをしてみせるサウザー。
そんな様子を呆れた様子で眺めつつ、言動とは裏腹に予言に大きな進展をもたらしたサウザーを闇は内心で誇るのであった。


876 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:18:46 Y.b6E.ow0
『この発見は大きい。化身がTCを吸収する存在ならば、野球や他の予言にも説明がつくかもしれぬぞ!』
「なぬぅ!?」

続け様に予言を解き明かそうとするサウザーだが、今度は氷竜が立ち上がる。

『全てが揃いし時救いの神になる……逆に言えば揃わねば化身の価値はない。
 つまりこれは、TCを吸収できる化身であってもそのままの状態では辛い、ということだ』
「どういう意味かしら?」
『如何に全容のわからぬ化身とはいえ、吸収対象は時空間すら容易に歪める力だ。そんなものを取り込めるだけでも十分だが限界はあるだろう。
 つまり他に揃えるべき予言は、化身の限界を拡張するもの……我らのドラゴンハートと似たような強化手段なのではないか?
 レストがいい例だろう。彼は当時レベル50000というふざけた値だったが、それでも十分ではなく傷つき、ドラゴンハートで限界を越えられた。
 化身といえどもやはり一個の生物。常人には十分に思えても相手がTCともなればレベルはいくつあってもいいだろう』
「なるほどねぇ、ドラゴンハートの力はあたいらが身を持って理解している。化身専用の大がかりな力ともなれば……」
「本当に大災害を防げるかもしれない……」

氷竜の言葉に誰もがざわめき、思考を巡らせる。
予言は未来の大災害を回避するものなのだろう。
そしてその鍵となるのは、大災害の原因たるTCをも取り込める化身。
その化身を救いの神の域まで強化するのが、予言の各節。

「そうなると野球はわかりやすいね」
「理屈はわかりませんが、9対9の真剣勝負で生まれる熱気とエネルギーを化身にそそぐわけですな」
「でもどうして野球なんでしょうか?」
「ふむ、おそらくだが……化身は殺し合いの淀みから生まれる存在。無法と無数の死で生まれる力はまさに淀みと言っていいだろう。
 対して野球、こちらは中には愚かな人間もいるだろうが、基本はルールとスポーツ精神に則って行われる。
 規律の上に成り立ち、かつそれぞれ違った9人の精鋭が力と知恵の限りを尽くしての決闘。いわば殺し合いの対極に位置するともいえる。
 それが明確な力となり溜まっているのだとすれば、少なくともそのような高潔な力はただ変化しただけの化身は絶対に持ち合わせないだろう」

ダオスの推測に小鳥はなるほどと声を漏らす。
無数の人間がルールもなく理不尽に殺されるカオスな殺し合い。
限られた人間がルールの上で死闘を繰り広げる野球。
熱中し過ぎて死人も出てしまうだろうが、ルールに則った上での死は、9人に選ばれるような戦士ならば覚悟もできるだろう。

「巫女の祈りと器足る巨像、これをやっぱりまどかとフォレスト・セルとした場合だけど……」
「フォレスト・セルとまどっちの魔力は尋常ではないことに加えて世界樹、自然由来ですからな。
 血生臭い淀んだ化身に、爽やかな世界樹の力を持つとかありえませんし、強化には持って来いのエネルギーではありますな。
 あ、ちなみにさっき言いそびれたんですがな、ミヤザキの遺跡には機械人形の残骸が多くあったそうですぞ。
 現在の宮崎も調べればガンダムやロボット技術が盛んなそうでしてな。これらから主催者の乗る九州ロボが器と仮定した場合でも……
 血生臭い化身に対して、血の通わない機械の力。こちらも化身が持たない力を与えるという意味では筋が通りますぞ」
「正体が絞り切れませんか……」
「いや、化身の持たない力を与えるのが目的だというのならば、今の二つはどちらも正解なのではないか?」
『流石はサウザー、柔軟な発想だ! なるほど、野球の優勝者も誰がなるかわからぬ以上、巨像も複数ある可能性があるのか』

予言の答えは一つではないのかもしれない。
巫女も祈りの後に化身に力を注ぎこむ可能性も考慮し、更なる謎へ。


877 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:19:22 Y.b6E.ow0
「不屈の精神を持つ勇者、これは……」
『こうなってくると、これは化身その人を指すのではなかろうか?
 淀みから生まれてなお自我を保ち、取り込んだ莫大なエネルギーを破壊に振りかざさないような、そんな存在を』
「……TCを取り込んだ化身は滅びを救う神、勇者かもしれません。でも、大きな力を持った存在を人は時に迫害する」
「化身となり、破壊衝動を抑え、その身で滅びの力を吸収したとして、最後は忌むべき存在とされるか……
 救われぬ、報われぬ存在。そんな存在になってでも世界を救おうなどと考えられる強き心を持つ者は、間違いなく勇者であろう……」

僅かに空気が重くなる。
未来の大災害は、もはや残された人員や道具を集結させたところで抗うことはできない。
唯一の回避方法と思われる予言の考察も進んできた。
そして進んだからこそ、気がついてしまう。

一切の犠牲無く大災害を回避する方法など存在していなかったのだと。

殺し合いの果てに生まれる化身。
それは一人ではない。複数の化身が生まれる。
そのいずれかの化身が強き心を持っていた場合、その化身を犠牲にして初めて世界は救われる。
勇者たる化身を探し出すために無数の化身が必要であり、その化身を作り出すためにまた無数の犠牲者は必要。
そしてその化身は世界を救えども居場所は残されない。
救いの予言は血に塗れたものなのだ。

それでも、かつての人類はこの予言を遺した。
多大な犠牲を払う手段でありながら、他に大災害を回避する手段が見つからなかったのだろう。
それはやはり、大災害による犠牲者は殺し合いの比ではないということでもある。

「もしかして、主催者の人達も……」
「まどか、それを判断するのは早計よ。こればかりは、誰かしらを捕まえて吐かせない限りわからない。
 連中が予言を知っていようがいまいが、私達は私達で前に進むしかないのよ……」
「うん……。そして、これが最後だね」
「全てを虜にする歌……か」

ここまでは順調に進んできた。
だが最後のこの一節だけは、解釈が難しい。
全てを虜にする歌。そんなものが実在するのだろうか?

いまも全国で猛威を振るうクラウザーを崇める狂信者。
種族年齢を問わずにあれだけの人数を熱狂させる彼の歌声は、世界に類を見ないだろう。
だが少なくとも彼の歌はこれに当てはまらない。
虜にする者の数は圧倒的だが、少数派になるが確かにアンチも存在するのだから。

「私はクラウザーさんの歌以外だと、演歌が好きなんだけどな」
「サボってたころにゃ、いい昼寝時に聞こえる鳥の囀りとかが好きだったね」
「僕はハープとそれにあわせた穏やかな歌が好きだったよ」
「我は女の子の嬌声が興奮しますな……サーセン、こっちが笑う前に睨むのやめてほしいんですぞ」

ここに集まった者達ですら、既に好みの音色が大きくわかれてしまっている。
やはり全てを虜にするともなれば洗脳に近い、脳を揺さぶるような声なのだろうか

「あの……よろしいでしょうか?」

そんな時におずおずと手を挙げたのは、小鳥であった。




「私、なんとなく全てを虜にする歌がわかったような気がするんです」


878 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:20:35 Y.b6E.ow0
『なんだと!?』
「本当なのか、小鳥?」

一斉に集まる視線を受ける小鳥は、あまり力強さを感じさせない。
しかし引き下がる様子もなく、彼女自身も今まさに気がつき、己でそれを噛みしめているのだろう。

「はい。……私は、皆さんと違って戦うことはできません。ドラゴンハートの恩恵も受けられない、本当に弱い唯の人間です。
 守られるばかり、眺めるばかり。ここにいる皆さんは、私なんかと違って戦いで身体は傷つき、心も傷ついてきたと思います」

『……』

三竜一の硬度と生命力を誇る氷嵐の支配者。
しかし彼も二度に渡り首をもがれ、親友や仲間達を失ってきた。
勿論彼だけではない。
まどかはこう見えて殺し合い直後から多くの死を見てきた。
ほむらは新しい友達に感謝を伝える前に死に別れてしまった。
小町は幾度となく仲間を失い自身も窮地に立たされ、その成長の果てにここにいる。
皆が、傷つき失いながら必死に抗い戦ってきた。

「私は、皆さんと一緒に戦っているなんて言葉を言う資格はありません。けれど、皆さんと一緒のところだってあります。
 そう、誰か大切な人や身近な人を喪った時。これはどんな人だってみんなが悲しい筈です。
 ここの魔物だってそうでした。涙を零して、お墓を作って……死を悲しみ悼むことは、種族の壁を越えています。
 だからこそ。こんな悲しい殺し合いで亡くなってしまった全ての人に対する『鎮魂歌』は、皆が聴き入るのではないでしょうか?」

鎮魂歌(レクイエム)
小鳥が告げた歌は、予想外のものであった。
虜にするとなれば、脳を溶かすような美声や他の追随を許さない力強き声が思い浮かぶ筈だ。

「……なるほど。確かに一理ある」
「カヲル君が歌っている時に魔物もみんな大人しく聴き入っているのを思い出したんです。
 アイスシザースさん達も機械嫌いだけどフェイちゃんを弔ってくれた。
 この予言が誰かの犠牲の上に成り立つものなら、せめて亡くなった人達を弔う面もあってほしいという、私の願望でもありますけどね」

悲しみの混じった顔で笑う小鳥に対して、否定する者は誰もいない。
他の予言と異なり、この歌でどのように化身を強化するのかはわからない。
だが多くの歌を知る彼女が導き出したこの答えは、的外れとも言えなかったのだ。

「そうなると、まさか予言の歌い手はきらりではなくカヲルなのか?」
「後で彼とも話してみる必要性がありそうですね」
「しかし鎮魂といえば、今は冥府に何が起きているってんだい? いくら階級が上がったとはいえ新米のあたいにゃ想像もつかないよ」

そしてふと小町が、冥府の異常を話題に出す。
死者のための鎮魂歌。しかし今、死後の世界は未曾有の危機に瀕しているのだ。

「む……予言にばかり気をとられていたが、確かにその件も無視できぬな」
「レスト、お前さんも異常を察したってことらしいが、何か掴めているかい?」


879 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:21:21 Y.b6E.ow0
「僕にわかるのは、沖縄の異常をもたらしている存在……おそらく災害と古龍の関係と同じような、大災害の化身が原因だということぐらいです」
「化身……予言の化身とは違うの?」
「アレは小さな大災害とでも言うべき存在だった。救いとは無縁、滅びの使者。そいつが、黒い影が、死者を次々に取り込んでいたんだ。
 そして少なくとも……サクヤはアレに囚われている。彼女だけじゃない、もっと多くの人がきっと……」

悔しげに吐き出されるレストの言葉に、一同は震えあがる。
小さな大災害、可愛く聞こえるが大元の規模が桁違いなのだからいくら小型化したところで危険性は変わらない。
しかもそれが死者を襲っているともなれば、いよいよ大災害が迫り予言の解明が急がれる事態でもある。

「規模が桁違いというだけで、確かに我ら古龍と同じような存在がいても不思議ではないですな……」
「だがそいつの目的はなんなのだ!? 我が聖帝軍の散った者の眠りを妨げる奴は許さんぞ!」

しかしこの存在の謎は、その行動にある。
大災害が全ての破壊を司るものだとすれば、その化身もそれに近しい行動をとるのではないか。
東京と沖縄、これほど離れていても異常を察知できるほどの存在だ。
すぐに動きだし、大災害より先に地上に滅びをもたらしていても不思議ではない。

「あたいは死者を取り込んでたってのが気になるね。
 魂ってのは人にもよるけど、大抵は生前より脆くてデリケートだ。……いいたくないが、壊して転生すらできなくすることもできちまう。
 大災害の化身、つまりあのTCの化身なんだろ? わざわざ時空捻じ曲げて死後の世界まで入り込んで、壊さずに取り込む理由は?」
「更なる力を求めて、というところかしら?」
『大災害本体を許せば、生者も死者も等しく滅ぼされるということなのだろうが……確かに、ならば化身の行為は無意味だ』
「行為だけではありません。大災害で全て片付くならば、わざわざ小型がいる必要もない筈。存在が無意味の筈ですよ」

ここでしばらく、言葉が途切れる。

無視できぬ小さな大災害、しかしそれは余りにも脅威であると同時に謎が深すぎる。
古龍のオオナズチが自然災害とは無縁な行動にはしっているのだから、小さな大災害にも同じことが言えるのかもしれない。
だがだとしても、真っ先に行うことが死者の捕獲とはやはり疑問が尽きない。

「小町さん、死んじゃった人の魂は……やっぱりもう、何もできないの?」
「それも人によるよ。中には大罪人が生き返ろうと脱走を試みたりするから、それを精鋭の死神が取り押さえることもあるみたいだね」
「つまり強者の魂が相手であった場合、激しく抵抗される可能性もあるというわけか。それでも尚狙うとなると……」
「魂を捕えて、能力を奪う……人を捕食して、能力を奪う風鳴翼のような……っまさか!?」

そんな時、レストは何かに気がついたような声をあげた直後に考え込む。
そして周りの者も、彼の口から零れた言葉に違和感を覚えた。
対象が死者の魂か生者の肉体かの差異こそあれど、小さな大災害がやっていることは風鳴翼と同じなのだ。


880 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:22:07 Y.b6E.ow0
「……これは、本当に不味いね」

やがて考えが纏まったらしいレストは、小さくその言葉を漏らした。

「おい、何かわかったのであれば説明すべきではないか?」
「サウザーさんの意見はごもっともですけど、まだ確証もない僕の推論ですよ?」
「いえ、私もさっき願望混じりの鎮魂歌を挙げましたし……」
『レスト、構わぬから言ってくれ。もしかしたら聖帝がまた何かに気がつくやもしれんからな』

促され、周りをぐるりとみた後にやがて口が開かれる。

「滅び待ったなしの大災害と、存在と行動が謎の小さな大災害。
 だけど小さな大災害が大災害の化身とするなら、大災害が発生することを望む筈。
 そんな時、大災害発生前に食い止めようとする僕らや予言、救いの神を小さな大災害はどう思うか?」
「あ!?」
『邪魔者でしかないということか……!』
「そう。それでいて死者を先に襲って取り込んだのはおそらく、化身……後の救いの神との戦いに備えてでしょう」
「大災害を救いの神が止められるのであれば、小さな大災害も止められて当然と言うことか」

小さな大災害の存在理由は、自身を生み出した親とも言える大災害の成就。
意志を持たず動けない親に代わり、親を止めようとする存在の排除。
あるいは悠久の時の中で大災害そのものが神格化し、意志を持ち、写し身のように放ったのか。
そこまではわからないが、どちらにせよ大災害を引き起こしたいというのは変わらないのだろう。

「しかし、わざわざ抵抗するかもしれない死者を取り込む必要がやはりわかりません」
「そうね。力を得るためならば、それこそ風鳴翼と同じように生きた人間を取り込んでもいい筈よ」

「……魂を、救いの神に渡さないため。サウザーさんは最初にこの問題に対する答えも出していたんですよ……」
「ど、どういう意味ですか!?」
「俺が言ったのは、完全体の化身はなんでも吸収でき……まさか、死者の魂まで吸収できるというのか!?」

サウザーが叫ぶと同時に、誰もがぎょっとする中レストだけが頷く。

「僕が戦った風鳴翼の能力は、捕食による能力の略奪。もしこれが厳密には『自身が喰い殺し体内に取り込んだ魂の能力の行使』だとすれば」
「より進化し拡がった化身の能力は己の体内に限らず、化身が生まれる原因となる『争いの中で散った死者の能力の行使』にもなりうるか……」
「……本当なら、とんでもない話ね。殺して肉体を無くし、魂という存在だけを集めに集め圧縮して一体の化身の力とする、悪魔染みた統合行為よ」

「はぁ〜……やだねぇ、完璧ないいものとは思ってはなかったけどさ、予言を突き詰める程に悲しくなってくるよまったく」

背を仰け反らせ、後ろ側に倒れこむ小町。
仰け反ったことでより強調される豊満な胸と気だるげな仕草は時が時なら世の男女を興奮させただろうが、この場の誰もそれには反応しない。
腕で覆い隠された彼女の表情は窺えない。
だが死神である彼女だからこそ、死者の魂を知る彼女だからこそ、誰よりも辛いのだ。


881 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:23:53 Y.b6E.ow0
「……多分、今の推理は当たってるよ。そうすると小鳥のさっきの答えも当たりになってくるからね」
「え、そうなんですか?」
「お前さんが期待してたもんとは似て非なる別もんになっちまうけどね。予言の全てを虜にする歌は、生者の意思の統一じゃない。
 本当に鎮魂……望まぬ死を迎えて辛いと悶える魂を鎮めるための歌。でもそれは純粋に死者を悼む気持ちだけじゃない。
 鎮めて安定させた魂に、自分が死ぬ原因となったこの殺し合いの集大成である化身にその力を貸し出させるためなんだろうさ。
 いくらなんでも取り込めるとはいえ、死者にはあの狂信者が既に何十万といるんだ。黙らせなきゃさぞ五月蠅いだろうよ」

最後に少しでも明るくしようと小さく笑ってみせる小町だが、小鳥の表情は曇ったままだ。
無理もない。ここまでの話をあわせればつまり救済の予言の正体は……

「投げ出さないさ。投げ出さないけどさ……この救済の予言や大災害ってどうにかなんなかったのかねぇ?
 血まみれの争いから生まれた化身、予言を考えてそれを集める存在、そしてその途中で死んでいった多くの存在。
 生者も死者も何もかも全部揃えてひっくるめて、言わば総力戦でぶつかって、ようやくどうにかなるってことだろ?
 せめて、死んだ連中くらいは安らかに眠らせといてあげたかったね、ほんとにさ……」

小町の言う通り、救済の予言は総力戦なのだ。
今集まっている面々も多くの死を見てきた。
だがそれはほんの少しに過ぎない。彼女らが見ていない場所で、多くの者が惨たらしく死んでいる。
この殺し合いは死んだらそこで終わりではない。死後も大災害のために、化身のために、力を残しておかなくてはならない。
殺し合いの果て、生者と死者の魂が本当に落ち着けるのは大災害を止めた先にしかないのだ。

『……月並みな言葉で悪いが、散った友のためにも我々は立ち止まれない。我々の敗北は即ちこの星の生命の敗北だ』
「わかっているよ。小さな大災害が冥府から攻めたのは、自身が強くなること以上に化身の力を削ぐため。
 予言の歌は全てを虜にとあるが、こりゃ他の予言の曖昧さから言ってあくまでものの例えだろうさ。
 実際は化身が力を発揮しきれるだけの死者の魂の数があればいい。それを小さな大災害が、化身が取り込むより先回りした。
 どのぐらいかわかりゃしないが、何にせよ規定数を下回った瞬間に予言は不成立、大災害の勝ちってなるわけだね」

頭を掻きながら起き上った小町はやるせなさを隠せない表情のまま、元の位置に座りなおした。
衝撃の連続が続くが、やはり死後も安息を得られないどころか小さな大災害からまで狙われるとは、死者もたまったものではないだろう。
こんな状況下でもあえて幸運とでも言えることがあるとすれば、予言の完遂を大災害の化身が妨害してくる……
それは逆に言えば予言を完遂さえすれば大災害を防げるということでもあるのだが。

「……きっと昔の人、この予言を遺した人も辛かったんだと思います」
「まどか?」

そんな小町に、まどかが静かに声をかけた。
ほんの数日前まで普通の子供であった彼女は、いまや世界樹の巫女であり予言の一節を担いうる巫女。
彼女も、人の生き死にには非常に鋭敏だ。なんでもない猫の死にだった悲しみを感じる。

「確かにこの予言は、誰かの犠牲の上に成り立っている。亡くなった人すら利用するなんて酷いとも思います。
 だけど……本当に酷い人ならそもそもこんな予言は残さないですよね?」
「それはまあ、確かにね」
「死者の魂も力に変えるなら、それこそ……っ、もっと沢山の人を殺してしまえばいい。
 でもそれは昔の人も嫌だった。だから生まれる化身だけじゃ足りないところを、補う形で他の強化手段を考えたんじゃないかな?」
「……そうだね、確かにそう考えた方が気が楽だ。ありがとうよ」

励まされた小町はにっと笑うと、今度は勢いよく立ち上がる。
彼女の瞳は燃えていた。
サボり死神と言われていた彼女は今、死者のためにも前を見て戦う覚悟を決めている。
思うところはあるが、これで予言の歌の意味もわかったのだ。




「これで――予言の内容は全部明らかになったんじゃないかい?」



小町の力強い言葉に、同じく全員が力強く頷き返す。


882 : Challenge to fate :2018/06/24(日) 19:25:05 Y.b6E.ow0
「改めて、まとめましょう」

ほむらが以前も使用したホワイトボードをデイパックから引きずり出し、予言と解答をまとめていく。

1『九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂』
→『野球チームの優勝及び、それに伴う化身が持ちえない高潔な力を化身に注ぐ』

2『全てを虜にする歌』
→『殺し合いの犠牲者を悼み鎮める歌で死者の魂を安定させ、死者からも化身に力を注ぐよう協力させる』

3『巫女の祈り』
→『後述の器の制御及び、器を操る力を持つ巫女自身も化身に力を注ぐ』

4『器たりえる巨像』
→『巫女以外に操れない規格外の力。フォレスト・セルにしろ九州ロボにしろ、内部に化身を入れて力を注がせる』

5『不屈の精神を持った勇者』
→『争いの淀みから生まれてなお破壊衝動を抑え、大災害に立ち向かう意志を持つ化身』

6『全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる』
→『1〜4全ての力を備え5の精神を持つものが、大災害の力を吸収しうる救いの存在となる』

「すごい、本当に予言の全容が……」
「いや、厳密にはまだだ。確かに予言が指し示すものはわかったが、その所在までは確定しきれていない」
『1は拳王は滅ぼすとして、聖帝とイチローとドラゴンズどれかが該当するか。個人的には聖帝を応援したいが……
 失礼を承知で言うぞ聖帝。今後もお前達に犠牲者が出ないと言う保証はどこにもない』
「むぐぅ……」
『その万が一があった際は、我らを使え。既に同盟を組んだ身、野球の助っ人選手としても認められるだろう』
「そのような事態は許したくないが……わかった、いざという時は宜しく頼むぞ。
 2は先程の話を聞く限りではきらりよりもそちらのカヲルの方が相応しいのだろうな。まあだからといって聖帝軍の歌が劣るわけではないがな!」
「魔物も落ち着いて聞いてくれた歌声、そして心の底から鎮魂歌を歌えていたカヲル君なら、可能性はあると思います」
「歌声が足りないというならば、我らも一緒に歌ってやるべきですかな?
 そして3と4ですが、我としてはまどっちとフォレスト・セルを推しますぞ。探さなくていいから楽というのもありますが……
 ただ操るのではなく、役目から解放しようとしたまどっちに可能性を感じずにはいられませんからな」
「えへへ、私はそんな大したものじゃないよ。予言通りなら全力は尽くすけどね。
 でも問題なのはこの5番と6番、肝心の化身が誰なのか……」
「ん……? 器足りえる巨像のフォレスト・セルが化身になりかけたものを治療……? この矛盾は……」
「どうしたのレストさん?」
「ああ、いや……化身に関してだけはもう少し調べる必要があるだろう。逆に言えば、僕らはこの場で1〜4は揃っているとも言えるね」
「これまでのどうしようもなさに比べれば、遥かに光が見えてきたと言えるね。さあ、気張ってもうひと頑張りといこうじゃないかい」







「きゅっきゅきゅー!」

「「?!」」





予言を纏め上げている大事な場面で、突如間抜けな鳴き声が響き渡った。
それはこの場にいる10人の誰のものでもない。

------


883 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:26:17 Y.b6E.ow0
「ああ、こらwwwwww大人が真面目な話をしてる時に飛び出ちゃだめですぞwwwwww」

久しぶりにオオナズチが草を生やしながら、間抜けな鳴き声の主をたしなめる。

「きゅきゅ」
「こいつはまた、えらく小さいドラゴンだねぇ」
『む、我らが森にこのようなドラゴンはいたか……? 赤ん坊のようにも見えるが、誰かの隠し子か?』

オオナズチの背から飛び出してきたのは、小さな小さなドラゴン。
青い表皮の小柄なドラゴンはこれまでのドラゴンと比べて遥かにミニサイズ。
この場にあかりが居れば思わず撫でたい衝動に駆られていたであろうほどに、愛玩動物に近かった。

「失礼しましたぞwwwww」
『オオナズチ、まさかお前の子か?』
「違いますぞwwww……こほん、実は最初に言ったミヤザキの不確実な情報。それがこのちみっ子なんですぞ。
 勿論ドラゴンネットワークも使えないわけですが、我がネットワークを駆使してる最中しきりに爪で小さく『ミヤザキ』と書きましてな」
「「?!」」

誰もが驚く。見るからに小さい、赤ん坊のようなドラゴン。
魔物ということはおそらくグンマ―の者だろうが、氷竜やオオナズチすら過去を遡らねばわからないミヤザキのことを、何故知っているのか?
オオナズチが後回しにした理由も、子供の悪戯や構ってほしさからの行動からきたのではないかという推測のためである。

「まあ、こうしてもう予言もわかって揃えるべきものもほぼ集まっていることがわかったわけですからな。
 ちょっとぐらいはこの子の話を聞いてやってもいいかもしれませんな。ほれほれ、知っていることを書いてみせて欲しいんですぞ」

オオナズチが促せば、幼竜は短い手足を懸命にばたつかせて必死に何かを書いている。

「……可愛い」
「ええ、悪くないわね」

女性陣からはなかなか好評のようだ。
しかし書きあがった文字を見た瞬間、誰もが首を捻った。


『ウォークライ』


幼竜が書いたのは、予想外の文字。

「これは、雄叫びのほうではなく……」
「いや、この子はオオナズチの言葉を理解した上でこれを書いている。
 そうなると叫帝竜の彼のことを指している筈です。ちょっと呼んできますね」


------


『むう、主に呼ばれて来てみたが、悪いが俺は頭はあまり……ん? リトルドラグが何故こんなところに?』

程なくしてウォークライがやってきたが、彼は幼竜を見るなり反応を示した。
リトルドラグ。それがどうやらこの小さいドラゴンの正式名であり、ウォークライとは同郷であることがわかる。


884 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:27:33 Y.b6E.ow0
『よくこんな弱小種がここまで生き延びれたな。こいつは見た目通り、我らがドラゴンでも下位の……っ!?』

その瞬間、ウォークライは一気に青ざめた。
よく見れば、リトルドラグが再び爪を動かしていたようだが、さっきと比べればその時間は短い。
たったそれだけの行動で、何故急にウォークライは態度を変えたのか。

『まどか……俺も確信があるわけではない。しかし巫女の力で、こいつに少し世界樹の生命力をわけてやってくれないか?』
「……」
「この子の目……うんわかった、やってみるね」

まどかも何か感じるものがあったのは、世界樹の巫女だからだろうか。
他の面々はただただ混乱するばかりである。

「んんっ……!」

まどかが念じれば、部屋の中に茂っていた葉っぱの一枚から光り輝く滴が垂れてくる。
世界樹各地に点在する回復泉の水をさらに凝縮させた、いわば生命の滴。
それを分け与えるのは言わば世界樹の身を、ひいてはまどかの身を削るのと同じことだ。
しかしながら世界樹はつい先程大量の養分を吸い取っている。
むしろカロリーオーバーにもなりかねなかったので、丁度いいタイミングであったのは誰も知らない。
ちなみにその養分の名は別名狂信者である。

「ペロペロ」
「……可愛いな」

必死に滴を舐めとるリトルドラグ。
動物の赤ちゃんが必死にミルクを舐める姿が可愛いように、それはドラゴンにも当てはまるようだ。


 そ の 時 不 思 議 な こ と が 起 こ っ た ! ! ! 


「うおっ!?」

突如発光するリトルドラグ。
その光がおさまるとそこには……




「あぁ……感謝するよ☆ 我が愛しい子達☆」




見知らぬ妙な糸目の、妙齢の女性が立っていた。





「私の名前はアリー、アリー・ノーデンス☆ またの名を――第二真竜・ノーデンス」




彼女がその名を口にした次の瞬間、ウォークライは跪いていた。


885 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:28:32 Y.b6E.ow0
「ど、どうしたのだ急に!?」
「ちょ、ちょっと驚いちゃったけど、真竜って前に話してたニアラさんと同じ?」
『あんな生ゴミと一緒にするな! 第三から第六までの真竜はどこかしらに欠陥を持った連中!
 だが、第一と第二真竜だけは次元が違うのだ……! それこそ、宇宙の創造に関わるとすらいうほど……!』
「んふふー、慣れない爪で『ND』って書いただけで伝わるか怪しかったけど、伝わって何より☆」

突然すぎる現象に、混乱は加速する。
その場でただ震えるウォークライと、彼曰く次元の違う竜らしい女性は、しかし飄々とした態度を崩していない。

「やっぱり人間はいいね! 動きやすい喋りやすい! あんな生まれた頃の姿じゃ、ちょっとした文字書くのも大変なのよー!」
「wwwwwwwwこの場にオシリスいなくてよかったんですぞwwwwww
 あいついたらwwwwww幼竜が人間化したら幼女になるに決まってんだろうが!なのにBBAなんて――」

「――消し飛ばされたいか?」
「……サーセン」

瞬間、底冷えするような殺気が放たれる。
たったそれだけで、この妙な女性が恐ろしい存在であることを誰もが悟った。

「あ、ごめごめ☆ 怖がらせちゃった? 大丈夫だよ、アリーは懐が広いからね! もう怒らないのよー!」
「……信じられないけど、貴女が高位の存在ってのはなんとなくわかったわ」
「オオナズチにミヤザキってわざわざ伝えるぐらいなんだ。そしてその正体となりゃ、あんた本当になんか知っているんだろう?
 そのふざけた態度は止めにして、真面目に話してくれないかね?」
「心外だなー☆ アリーはアリーだし、ずっとこんなだよ☆ まさかサボり死神に真面目にしろと言われるとは驚きだよー!
 でもまあ――確かにそなたの言うとおりか。よかろう……だが、これからワラワが語るはそなたらには希望にも絶望にも映ろうぞ。
 覚悟はできているか――ニンゲン?」

アリー、いや第二真竜・ノーデンスの口調ががらりと変わる。
どちらが本当の彼女なのかはわからない。
しかしオオナズチと重ねるならば、恐らくはこちらの口調が真竜としての彼女の本性なのだろうとほむらは推測する。
変わったのは口調だけでなく、空気もだ。張りつめ、息苦しい。
それでも誰も、逃げ出すものはいなかった。
第二真竜の言葉に、無言で頷いて返事を返す。

「さて、どこから話したものか……時間はないが、しかし……うむ、やはりまずは、簡単にこの宇宙のことから語ろうぞ」

そして静かに語り始める。
彼女の言葉を遮る者は、誰もいない。




そしてノーデンスは語る。

この宇宙に存在する『蒼の源泉』から溢れる『蒼』の存在を。

蒼は全ての生命に必要でありながら、過剰に摂取すれば身を滅ぼす大きな力だということを。

大災害の理由は蒼の源泉の暴走、そこから起きた大量の蒼の散布による宇宙規模の災害なのだということを。

この大災害は遥か太古にも起きており、古代の異星人ジェダイと古代の地球人達、特にミヤザキとグンマ―が奮戦したということを。

そして一人の勇者により、蒼の源泉のから溢れる蒼は抑制され、宇宙が救われたということを。


886 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:29:15 Y.b6E.ow0
「――まずはこんなところじゃな。何か質問はあるかの?」
「わかってはいたけど、大災害は過去にもあったのね。こちらもあれこれ考えていたけれど、その蒼とTCは同一の物質と考えていいかしら?」
「大正解☆……その通りじゃ。世界によってさらに呼び名は変わるが、とにかく常識外れなエネルギーと思えばよい。
 まあこのぐらいはここにいる者は十分把握しておるであろうな。それでは次じゃ」

ノーデンスは語る。勇者の正体を。

勇者は感情とストレスによって肉体・精神を改変する『ナノマシン』の影響を特に強く受けた者。

聖別――凄惨な殺し合いの果てに生まれる肉体も精神も変貌した『テラカオス』と呼ばれる存在であったことを。

テラカオスは混沌の象徴であり、滅びと繁栄双方を司る混沌物質たる蒼を唯一吸収できる存在であることを。

その過程において、自然災害なだけに精霊や古龍のように具現化した滅びを補佐する存在『黒き獣』まで現れたことを。

その黒き獣すら乗り越えた古代のテラカオス・ゼロはその身を犠牲にして宇宙を救ったということを。

「テラカオスにナノマシン、そして黒き獣。それが化身と瘴気、小さな大災害の真の名か」
「本当にサウザーの言う通り、なんでも吸収できる存在で合ってたんですね……」
「おい闇ィ!? ここにきてそれは流石の俺も泣くぞ!?」
「冗談ですよ。ここまでは、サウザーの、そして皆さんの予言の推理は正しかったということですよね」
「うむ。見事であったぞ? 愛する者を守るため我が身を散らし宇宙を救った勇者のなんと美しきことよ。
 だが当然、話はここで終わりではない。続きを話させて貰おうか」

ノーデンスは語る。その後の地球を。

源泉の暴走はいわば自然災害。次の大災害に備えてジェダイは技術と知識をミヤザキとグンマ―に残したことを。
ミヤザキとグンマ―は協力し、後の要となるテラカオスをさらに確実な存在とする研究を進めたことを。

蒼を浴びても狂わない、テラカオス化しても暴走しない、その身を犠牲に宇宙を救う『不屈の勇者』
勇者の精神に余計な負担をかけないために編み出された、死者の魂を鎮める『全てを虜にする歌』
聖別の犠牲者が最小限で済むよう、完成したテラカオスに後付で強化できる『器足りえる巨像』
そして単純な力だけならテラカオスをも上回りかねない器を安定、安全に操れる『巫女』
死者や巫女や巨像でも足りない場合に備え、古代の決闘の『最良の9人』の力も集められた。
研究は進み、これらが揃ったテラカオスは確実に『救いの神』になる域まで達したことを。

「やはり予言はミヤザキとグンマ―が共同で作った、未来へ向けてへのものだったんですね」
『予言の指し示すものも、やはり先程のもので概ね間違っていなかったということか。気になるのは古代の決闘だが……』
「ああ、これは本当にイレギュラーじゃ。強き者はいつの世も己を高めたがるからの。
 さらに武力と知力を9人でぶつけ合う戦略性。これらは特に高く評価され、予言とは関係なく『野球』として進化を続けたのじゃ」
「ふふふ……この聖帝サウザーが野球に惹かれたのも、偶然ではなかったということか」
「ということは無理に野球でなくとも、9対9の真っ当な決闘なら別に問題な「野球がやりたい!」はいサウザー、少し静かにしましょう」
「ここまでは順調にこれているが……貴様のその表情、まだこの後に何かあるというのか?」


「フフ、その通り。これで終わるはずがなかろう。――ニンゲンは醜いのだから」


ノーデンスは、愉快そうに笑った。


887 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:29:53 Y.b6E.ow0
「ある日のこと、グンマ―はテラカオスの研究を放棄した。自然災害とも言える蒼による滅びを受け入れたのじゃ。
 対するミヤザキは反発した。テラカオスをより完全に制御することで、行く行くは蒼の制御を行いこの星の永遠の存続を考えた……」
「ちょ、なんで古代グンマ―諦めてるんですか!?」
「……生物も星も、いずれは滅びるものですぞ。だからこそ、その時まで悔いのないように生きるわけですな」
「言わんとすることはわかるが、しかし来るとわかっている大災害を放置するのもどうなんだ?」
「とはいえミヤザキの思想も危ないのは事実よ。あの大災害の力を人間が御するなんて危険すぎる」
「難しい問題、だね……」
「僕ら少人数ですら意見が割れるわけですから、民族間ともなると……」
「殺し合い、戦争に発展するってところかね。認めたくはないけれどさ」
「その通り。古代ミヤザキと古代グンマ―は、思想の違いから徐々に対立し、やがて壮絶な戦争を繰り広げた。
 人間だけではない。グンマ―に同調した魔物に竜、ミヤザキが生み出した兵器に人造巫女、あらゆる種が入り乱れておった。
 そう……まるでそなたらが今経験しているような殺し合いじゃ」

ノーデンスの言葉に、誰もが口を噤む。
語られた歴史は戦争の歴史。そしてそれは、分かり合えなかった人間同士の争い。
この場にいる誰もが既に経験している。形は違えど、ここを守ろうとする世界樹の軍勢と、攻め落とそうとする狂信者は争いあっている。
人間同士が完全に分かり合う、協力し合うなど不可能なのだ。

「これを憂いた神々は、テラカオス絡みの記憶や知識を地上から一掃したのじゃが……
 完全に消し去ると今度は誰も対処ができぬ。それ故、一部の超高位存在にのみ記憶は残され、抽象的な救いの予言が地上に残されたわけじゃ」
「ふん、その話を聞く限り超高位存在とやらも大災害、つまりは滅びるのはご免だったわけだろう?」
「む……なかなか、痛いところをついてくるの聖帝。まあその通りじゃ。そこに神々の生存欲求もあったことは否定せぬ。
 そしてこの争いを踏まえて、予言こそ残せど大災害の監視は記憶を持つ上位存在が行うことになったのじゃが……」

初めて、ノーデンスが言い淀む。
苦虫を噛み潰したような、忌々しげな表情まで浮かべて。

「人間の記憶も好き勝手できて、宇宙規模の災害の監視もできるような神々でも、想定していなかった事態に見舞われたってことかい?」
「……その通りじゃ。本来ならば、ミヤザキとグンマ―の争いの時点で次の大災害はおよそ数十億年先だった。
 それがあの日……『何者か』の手で意図的に引き起こされた。一度目は『天災』であった蒼の暴走も、此度は『人災』なのじゃ……」

「!?」

衝撃的な内容ばかりのノーデンスの言葉だが、さらに大きな衝撃が集まった人間達を震え上がらせる。
あの大災害が意図的に引き起こされた。それの破壊規模は誰もが知る限りであり、狂信者やどんなマーダー以上に人の命をなんとも思っていない所業である。

「……っ」

世界樹全体がざわめく。
巫女であるまどかの静かな怒りに呼応するかのような反応。
勿論、まどか以外の誰もがこの恐ろしい真実に憤りを覚える。


888 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:30:45 Y.b6E.ow0
「……神々は警戒していたのであろう? それこそ、私達よりもずっと昔から。それでいて何故防ぐことができなかった?」
「フフ、先程痛いところを突かれたように、神々にも滅びを恐れるものはいたし、逆に受け入れている者もおった。
 そう、いくら上位存在と言えど一枚岩ではないのじゃよ。要するに……上位存在の中でも連携がとれていなかった。
 正直な所、ワラワも当時は大災害なぞ当分先故に今を愉しもうと、有明で新作ゲームの作成に忙殺されていたのじゃ……」
「ドラゴンって本当にまともなのいないわね!」
「うぐぅ、流石に返す言葉がないのよ。ごめんねー……」

元の口調に戻ってしょげかえるノーデンス。
要するに、今回の大災害はいわば上位存在たる神々の油断も重なり起きたもの。人災に加えて『神災』でもあったようだ。

「ニンゲンは時に神にも予想つかないことをする。だからこそ面白くて素晴らしいんだけど、今回ばかりは予想超えすぎて最悪なのよー……
 流石に徒党を組んで計画していたら、神々だってもっと早く気がついていたと思う。だから信じられないけど、実行犯は極少数だね。
 それでいて異変に気づき止めようと動いた神々を殺していくんだからさらに予想外だよ……」
「神々を、殺した!?」
「人間が神屠りの力を得ることは本来は喜ばしいんだけどねー?
 アリーは残念ながらどれだけの神々が動いていたかは把握しきれていない。けど、親交の多かった三神の末路はわかったよ」

ふぅ、とノーデンスの溜息が漏れる。
神々の死は、言わば彼女の友の死でもある。
人間と神々も、確かに言う程の差はないのかもしれない。

「まず殺されたのはアリーの仲間、第一真竜アイオトだよー……。
 この異変はアリーでも気づけた。復元された『竜殺剣ドリス』の力が、アイオトを狩るのを確かに感じたからねー……」
『馬鹿な、真竜の中で唯一まともとまで言われるアイオト様がそんなあっさりと……」
「アリーはまともじゃないってー? まあ竜殺剣は真竜やそれに属する存在には本当に特効武器だし、アイオトは現役からは退いてたからね。
 次にやられたのは、この星の管理者『ポラリス』と、彼の剣である『セプテントリオン』だったねー」
「星の管理者!?」
「そだよー? ついでにその管理者が万が一死んだ場合次の管理者を送り込む『根源主カノープス』と次代の管理者『アルクトゥルス』もご臨終☆」
「そんな存在すら殺られたの……?」
「ポラリスとセプテントリオンも、『悪魔の力には弱い』って弱点があったからねー。
 その時、唯一無限増殖と再生の能力で生き延びて、日本まで飛ばされてきたのが、ここにぶら下がってた紫の子『武曲星ミザール』だね☆」
『あの物体、神々の下僕だったのか……』
「なんとか何があったのか聞こうと思って頑張ってアリーが呼んだんだけどねー?
 もう大災害の蒼に毒されて、彼の頭にはぶらさがる本能しか残ってなかったのよ……。完全に無駄なエネルギーだったよ全く!」

かつて都庁に、何をしにきたのかさっぱりわからない珍生物がいた。
彼は言葉が通じない裁断者に必死にアピールしてまで都庁にぶら下がりにきたが、本来はノーデンスに会いに来ていたのである。
蒼によって歪められていなければ、ノーデンスは大災害を呼び寄せた犯人の正体を知ることができたかもしれない。

「三人目は、ある意味この世界樹では最も縁の深い神。三竜を直属で従えていた、『神竜エルダードラゴン』だよ」
「そういえば彼ら、たまに神竜に命ぜられてとか言ってたわね。彼らの手助けに来なかったのは、大災害時に命を落としたからなのね」
「それが違うのよー。三竜は結構前からエルダーに暇を出されて好き勝手自由に動いてたみたいなんだけどねー?
 暇を出した理由が、自分の趣味がばれたくないからってやつでさー。その趣味がまあ一人SMっていう高度なモノでね☆
 自分で全身縛り終えたところに蒼の直弾くらって、生き延びる生命力は流石だけどさらに性癖が歪んじゃって、
 色々あって最終的に外にいる歪みし豊穣の神樹に殺されちゃった☆ 放送で呼ばれないくらい、不安定な存在まで歪んだっぽいから仕方ないね☆」

「「まともなドラゴン下さい!」」

「アイオトはもういないのよー……くすん」
『私はノーコメントを貫かせてもらうぞ。みんなそんな目でこっちを見ないでくれ』

最後だけ些か理解に苦しむ存在だったが、それでも様々な高位存在が次々に命を落としたのは間違いないらしい。
それもあくまでゲーム作成に忙殺されて半ば神の職務を怠けていたノーデンスが感知できた分だけである。
実際には、更に多くの高位存在が犠牲になっていても不思議ではないだろう。


889 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:33:51 Y.b6E.ow0
『ノーデンス様、しかし貴女はこうして存命されています。今からでも真竜の力で……』
「無理に決まってるのよー! アリーも働いてるところを蒼にズドンされて死にかけたのよー!?
 幸い、量が少なかったから精神までは歪まなかったけど身体はもう駄目。なんとか身体を維持しようとして、生まれた頃……
 リトルドラグの姿で奇跡的に命を繋げただけ。その後は魔物に紛れて、都庁に逃げ込んで今に至るのよー☆」
『……まさか、私やニアラが都庁を訪れたのも?』
「そ、アリーが頑張って呼んだんだよ? ……貴重なエネルギー使ったのにね!? あのニアラ食欲優先したんだけどね!?」
『挙句ひげのおっさんにやられましたからね』
「『絶対あの家畜いい叫び声あげる!』って嬉しそうに突っ込んでったねー……そしてすぐ墜ちたねー……
 あの馬鹿……もとい、盟友がすぐアリーの呼びかけに応えてエネルギー分けてくれてれば、もう少し早くみんなと話せたんだけどねー」

笑いながらも青筋が浮かんでいるあたり、某第三真竜には流石に怒り心頭な様子である。
彼女の言葉通りなら、ひげのおっさんを無視していればノーデンスの復活も早まり、もっと早くにこの真実を知れたということになるのだから。

「んふふー、まあもし早く復活出来ていても……君たちに大災害の真実はすぐには伝えてなかっただろうけどね」
「え?」
「アリーからすぐに答えを言っちゃつまらないでしょう? 全てとは言わずとも多くを知る神に頼れば、ニンゲンは己の思考を放棄する。
 ふふ、アリーは見たいんだ☆ 我が子が、憎く醜いニンゲンが、もがきあがく姿をね?」

ぞっとするような、酷薄な笑みを浮かべるノーデンス。
薄く開かれた目から漏れる眼光も、非常に冷酷極まりない。
明らかにニンゲンを下に見ているようなその態度。ころころと変わる彼女の態度、どれが本性なのだろう?

『……お言葉ですがノーデンス様。私はここに集まっている人間達は、主だけでなく皆が強き存在であると思っています。
 あなた様の言う足掻きの果て、この世界樹で新たな竜殺剣は作成され、後の大災害と予言にも辿りつくことができたのです』
「へぇ、帝竜の長たる君がそこまでニンゲンの肩を持つなんて驚きなのよー。
 さてさて、聖別に人災と明かされた大災害を前に、君たちはまだ予言を遂行して破滅の未来を回避する気でいるのかな?」
「当たり前だろう?」
「結構結構、だけどさー? 過去の過ちを繰り返さないって言いきれる? そして君たちが未だに……過去の呪縛に捕らわれていると言っても?」
「過去の呪縛?」

意味深な言い方をするノーデンスに対し、集まった人間達の疑念は尽きない。
しかし崩されることのない酷薄な笑みは、警戒心を強めるには十分だ。
覚悟を決め身構え、生き延びた者は母なる竜の言葉を待つ。

「さっき言ったグンマ―とミヤザキの戦争。当時の戦争でも、鍵は絶対的な魔力を持つ『巫女』だった」
「まどかに頼らざるを得ない状況があったのは認めるわ。だけど、まどか一人に全てを背負わせる気はさらさらないわ!」
「んふー、その返しも読んでたよほむらー? 当時の巫女の親友達もそう言って前線に向かったからねー」

飄々と言ってくるノーデンスにほむらは僅かな苛立ちを覚えるが、己の発言に嘘はない。
だいたい友達を大切にするくらい、過去だろうが現在だろうが変わらないだろう。それだけで、同じ過ちを繰り返すとは言われたくない。

「グンマ―は強かった。けれど彼らは、大人しく静かに滅びの時を自然の中で迎えたかっただけなんだよねー。
 だからさ、死に場所としたい森からはほとんど動かなかった。対するミヤザキは、外にも呼びかけて仲間を増やしてグンマ―を囲った。
 おやおや? これまた今の状況にそっくりだねー?」
「そのぐらいでは、まだ過去に捕らわれているとは言い切れませんよ」
「あまり煽りの効きはなさそうねー。まあいいや、とにかくかつてのグンマ―も、取った戦術は質に優れた者による防衛迎撃と魔法。
 対するミヤザキは数に物を言わせた人海戦術と兵器攻撃だった。巫女は強かったけど、防御力は低めという弱点があったのよー」

まどかをちらりと見つめるノーデンスに対し、まどかは固くなったその表情を崩すことはない。
それも確かに現在にも当てはまる状況だ。しかしもう、誰もノーデンスの言葉に反論はしなかった。


890 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:35:24 Y.b6E.ow0
「その数に押され始めたグンマ―は、生体兵器の研究をして……それを完成させたんだ」
「生体兵器だって……!?」
「グンマ―の秘術や特殊調合された薬、僅かばかりだけど蒼まで投入されて作られたそれは、圧倒的な強さを誇った。
 姿は他の人間と変わらない。しかしあらゆる攻撃を受けつけず、魔物にも慕われた彼は巫女の盾となりミヤザキの軍勢を蹴散らした」
「まさか……」
「んふふー、そのまさかだよー? 君らの仲間であるレスト、アースマイト一族は古代グンマ―の生体兵器の末裔。
 永い時の果てに血が薄れてもその本質、存在意義は変わらない。刻み込まれた種族の意思が、世界樹に吸い寄せられるわけだね☆」

なんでもないといった様子のノーデンスに対して、聞かされた側の衝撃は並ではない。
仲間の一人が生体兵器の末裔であり、戦っているのも奥底にある過去の記憶から。
これを持ってノーデンスは過去に捕らわれていると言いたいのだろうかと考えるが、ノーデンスはまだ言葉を続ける。

「ミヤザキは焦った。だけど知恵に優れる彼らはアースマイト一族の弱点もすぐに見破ったんだ。
 まあこの場にいる末裔ももうわかっているだろうけど、限度を超えた数の敵を処理しきれない。広範囲の殲滅が苦手だった。
 そして一途な愛の持ち主であったために子孫の量産能力が極端に低かった。仮に子供が生まれても5〜6年は経たないと戦場には立てない」

ちらりとみやられるが、レストは腕を組んだまま何も返さない。

「ミヤザキはそこを勝機と見た。そしてグンマ―の巫女と器に対抗するために、機械仕掛けの巫女と器を独自に作り上げた。
 君たちの予想通り、予言の巫女と器はグンマ―産とミヤザキ産、二つが存在しているわけだね。
 さてその人造巫女――通称『艦むす』は巫女であるために全員女の子の外見で作られた。素質のある子は格好も巫女っぽい紅白でね」
「……」
「グンマ―の巫女の護衛に親友やアースマイトがついたように、ミヤザキの巫女も当然護衛がいた。違ったのはその護衛も艦むす、巫女候補だったってこと。
 そしてその護衛の数はグンマ―の比ではなかった。艦むす最大の特徴は『高速建造』、ものの数秒で生産される点にある。
 もうわかるよね? いくら強かろうが単騎のアースマイト。数を増やすには数年かかるのに対して艦むすは数秒。長くても数時間だ」
「……過去の僕の一族がどの程度強かったのかは知らないけど、そんな雑兵ならすぐに蹴散らせたんじゃないかな」
「んふ、半分正解。そう、正式に改造された巫女はともかく、量産型艦むすは一瞬で殺されたよ。でもね、それはミヤザキも承知の上だ。
 当時の艦むすの指揮官は『提督』と呼ばれていたけど、彼らの方がグンマ―よりも遥かに人の内面を攻めるのが上手かった。
 言ったでしょ? 艦むすはみんな女の子。そしてね、巫女の護衛の子は『駆逐艦』と呼ばれる――小さな子供達だったんだ☆
 その小さな子を囮や盾にする『捨て艦戦法』がとられた。練度の低い駆逐艦なんていくらでも生み出せるからね、消耗品だったんだ。
 考えて御覧? 何も知らない小さな子が、泣きながら銃器を撃って突撃してきたり、痛みに耐えながら同族の巫女を庇うんだよ?」

ノーデンスの言葉に、誰もが言葉を失う。
古代の戦争。それだけで凄惨なのは予想はついたが現実はさらに酷いものだ。
幼子を自らの都合で産み出し使い捨てる当時のやり方に、氷竜とサウザーは特に激しい怒りを覚えた。

『下衆が! 先にその指揮官を捻り潰してくれる!』
「うん、当時のグンマ―も勿論それを考えた。だけど艦むすはごく一部の存在を除いて、生まれた瞬間から提督を盲信するようプログラムされてた。
 つまり巫女だけじゃなく、提督を殺そうとしても数えきれない駆逐艦が庇うんだよ。どうにか突破しようにも数の暴力がそれを許さない。
 当然そんな光景を見せ続けられたグンマ―のアースマイトと巫女の精神はもうぐちゃぐちゃ。身体は無傷でも精神を先に潰されたのよー。
 そして追い込まれたグンマ―は、新たな生体兵器を生み出した。……広範囲を悲鳴も聞かずに済む遠距離から滅ぼせる、そんな存在をね。
 守ってばかりでは勝てない。盾だけでは足りない。鋼の意志で全てを殲滅するグンマ―の絶対の矛が――」
「……そして私が、その末裔だったというわけか?」

溜息とともにダオスが吐き出した言葉に、一同はただ驚く。
彼の一族もまた、古代グンマ―の生体兵器の末裔。
そして今度はノーデンスよりも早く、己の正体に辿りついたのだから。

「その通りなのよー。ミヤザキが使ってきていたレーザー兵器以上の火力を誇ったデリス一族は――」


891 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:36:08 Y.b6E.ow0
「もういい。その無駄に回る口をいい加減に閉じろ。
 その後は想像に容易い。今度は私の一族に対抗したミヤザキが器を持ち出し、後にグンマ―も器を投入。
 魔力の根源たる森を焼かれればグンマ―は滅びる。そして質に優れるグンマ―を兵器の数で焼こうとすれば、
 兵器の大量生産で環境は汚染され、それを浄化するグンマ―を焼いてはミヤザキも勝手に滅びる。戦争の愚かさや結末など、我が身を持って知っておるわ」

吐き捨てたダオスの言葉を、ノーデンスが否定することはない。
それはつまり彼の言った通り、古代の文明は当初は同じ思想を持っていた筈なのにやがては互いを滅ぼし尽くしたということ。
最悪の結末を理解してなお、ダオスは言葉を続ける。

「余程凄惨だったのであろう。おそらく巫女やその親友、ミヤザキの方の巫女などの話も碌でもない結末なのは目に見えている。
 確かに人間はいつの世も愚かだ。そして私やレスト……おそらくはまどかやほむらさえもが、過去の記憶の欠片からここに集ったのかもしれない。
 だが過去は過去であり、現在を生きる私達は過ちを正すために動くことができる。そうであろう?」

ダオスがぐるりと見渡せば、全員が頷いて見せる。
突き付けられた凄惨な過去。大災害を乗り越えたとして繰り返されるかもしれない過ち。
しかし今は過去とは違う。こうして過去の教訓も用意されているのだから。

「んふ、んふふふふー! いいね、やっぱりニンゲンは醜く愚かであり――そして愛しく美しい」

それに対してノーデンスは笑う。
今度は酷薄な笑みではない。心の底から嬉しいといった様子の、晴れやかな笑みだ。

「試すようなこと言ってごめんねー☆ ほんとはアリーもわかってたよ。
 全てのニンゲンが当てはまるわけじゃないけど、ニンゲンは誰よりも成長という素晴らしい可能性を秘めている。
 ニンゲンこそが、新たな宇宙を創る第七……もういいや☆ ここまで成長してくれた君たちが頑張る世界の方が楽しそうだしね☆」
「おい、今何か言いかけなかったか!?」
「なんでもないよ。ただ、この宇宙が終わるにはまだまだ早すぎるってだけなのよ。
 んふふ、脅すようなこと言っちゃったけど大丈夫。過去の話にも少しだけ救いはあるんだよね。
 あまりの惨たらしさに、一部のグンマ―の民に魔物や艦むすにミヤザキの民は一緒に戦地を離脱して共に生きることを誓った。
 それが現在のミヤザキとグンマ―の交流や、見滝原といった高度文明と自然が共存してる街の発展にも繋がっているんだ。
 そして今もそうだよ。君たちは見事に成長してくれた」

ノーデンスは嬉しげに、誇らしげに全員を見つめる。
まるで我が子の成長を喜ぶような、母の眼差しで。

「ダオスにレスト。古代兵器の末裔であり、艦むすとの戦争の記憶からニンゲンと機械嫌いが特に根深い君らも、今ではこうして手をとりあっている」
 氷嵐の支配者。君がグンマ―が第二の故郷と言っていたのは、さっきの戦争にうんざりして離脱した竜の末裔だからだよ。
 ……駆逐艦の保護し過ぎで、神々でも抹消できないレベルで子供好きが遺伝子に刻み込まれたみたいだけどね☆
 そして、まどか。最も濃いグンマ―の血。そして予言の巫女でありながら、それを越えたかもしれない子よ」
「え?」
「気づいてなかったのかい? 予言は巫女の祈りと器足りえる巨像。フォレスト・セルは像、生物としてカウントされてないんだ。
 過去の巫女もセルを操ったけど、そこに自我はなかった。だけど今ここにいるセルには、明確な感情が芽生えている。
 君は祈りの途中で、その優しさから内容を変えた。当時はそんな発想は出てこなかったんだよ。この時点で君は過去を乗り越えている。
 ただ気をつけて貰いたいのは、このセルはまだ過去の呪縛に捕らわれているってことなのよー」

そんな中で、ノーデンスが器足りえるフォレスト・セルに対して警告を促した。
わけがわからないと言った様子のまどかに対して、レストはようやく合点がいったとばかりにああと声を漏らす。

「そういうことか。さっき気になった矛盾点、器のフォレスト・セルがなんでテラカオスまで浄化してしまうのか……
 古代のグンマ―は自然死を望んでいた。大災害が近づくまでは穢れを除去し続ける救世主。
 けれど大災害が近づけば、器に入ったテラカオスの力を浄化して大災害を止められなくしてしまう、厄災になるってことか……」
「お見事なのよー。そう、フォレスト・セルが救済にして厄災と呼ばれる真の所以はそこなのよ。
 ここのフォレスト・セルはまだぴちぴちに若い子だけど、核のベースは古代のセルと一緒だからねー」

明かされたフォレスト・セルの真実に、一部がざわめきたつ。


892 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:36:36 Y.b6E.ow0
「ま、待ってください! ということは、フォレスト・セルは予言の器でありながら予言を壊すということですか!?」
「そうなるねー。今のグンマ―に予言が遺されていなかったのも、当時の自然死派がどっかに破棄したからだし、
 フォレスト・セルという名の世界樹の核は細胞分裂で増えたから今もあちこちの地の底で眠ってるけど、
 始原のセルがアンチテラカオスのシステム組み込まれてたら、後の子も全部そうなっちゃうのよー☆」
「待て待て、あんな化物がまだ眠っているだと!?」
「世界樹の本数=深刻な環境汚染回数=フォレスト・セルの人数だからね。古代はテラカオス研究と戦争で汚染マシマシだったし。
 ダイジョブ、ここのセルよりは弱いから☆ まあ全部終わったら巫女に頑張ってもらった方が安全かもねー。
 さて話を戻そう。もう時間なさげだしねー☆」

意味ありげな言葉を残しつつ、ノーデンスは指を立てるとそのまま説明を続ける。

「さっきも言った通り、セルは相反する性質を植え付けられている。
 元々はテラカオス強化用。その口に入れられて舐めまわされると、対象者に絶対防壁セルメンブレンに近い障壁が施されるのよー。
 これは蒼にも一定の耐性を持つ障壁。テラカオスの蒼への耐性をさらに高めることで、より確実性を高めるためってわけだね。
 ここまでは問題ないんだけど、この舐めまわし防壁の後に余計なオプションが施された。それが……」
「お尻!?」
「まどか!?」
「そう、お尻。アリーも見たことないから詳細知らないけど、なんかもうすんごいテクニックでお尻やついでに乳首を刺激するらしいよ。
 テラカオスや候補者は、その因子を本能的に集めたがり手放すことを恐れる。だから快楽漬けにして頭を真っ白にしたところを……
 お尻からこう、争いの淀みで生まれたエネルギーから邪悪な力だの穢れだのなんだのをまとめて綺麗さっぱり吸い取られて浄化。
 そして吸い取ったものの代わりにフォレスト・セルのアンチナノマシン、テラカオス抗体もお尻に塗りたくられて腸壁より吸収。
 これが今のフォレスト・セルのシステムだね。質問あるー?」
「え、え、えっちぃのは嫌いですっ!?」

闇が赤くなって叫ぶが、無理もないだろう。
明らかになった器の巨像、フォレスト・セル・システム。
古代グンマ―の願望で途中から歪められたらしいが、正規の活用法でもアレに舐めまわされる運命は確定していたらしい。
結構な人数がグンマ―頭おかしいんじゃね?と思ったのは内緒だ。
 
「最初の効能も生きてるから、ここに入ったレスト・きらり・魔雲天はある程度までは蒼に耐えられるようになっているね。
 他のみんなも今から飛び込めば、同じく蒼への耐性は得られるだろう。だけど完全ではない以上、大災害までは耐えられない。
 それに入ったら少なくとも、もう抗体のせいでテラカオスになることはできない。滅びを待つことしかできなくなるって罠だね」



「つまり舐めまわしまではよく、その後に後ろから穢れや力を吸い取られてしまうのが不味いのだろう?
 ならば、前の方に抗体じゃない世界樹の力を注ぎこめば、逆にパワーアップできるんじゃないのか?」
「「……」」


思わずサウザーが再び思ったことを口にしてしまう。
文字通りの逆転の発想。後ろから吸い取られるなら前から注ぎ込め。子供のような解答だ。
しかし流石に今度は歓声もあがらない。


893 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:37:06 Y.b6E.ow0
「い、いやー……その発想はなかったのよ……
 アリー的には、まどかのおかげでフォレスト・セルはただの道具じゃなくなってるから、穢れを吸い取るの我慢させるだけで、
 本来の器の役目果たせてやったねー☆ って話で締めるつもりだったんだけど……」
「サウザー、貴方の度を過ぎたえっちさの前に神様すらひいてるじゃないですかっ!?」
「へぶぁ!?」
『すまん聖帝、流石に擁護できぬ』
『女ならばともかく、男だと……俺の場合、この巨根が奴に扱かれるのか……おぞましい……』
「こいつで抜かないでくださいタグがつくこと間違いなしですな」
「い、いやしかし待て、サウザーの考えも一理あるのではないか?
 今の話を聞く限りでは、器の役目はテラカオスの耐久力の底上げのみ。ここに世界樹の力も注げば、更なる強化は間違いないだろう」
「た、確かにそうですけど……ま、前は流石に……恥ずかしいですよぉ……」
「いやー、オオナズチがグンマ―産なのもわかった気がするよ。大元の古代グンマ―が多分煩悩まみれだったんだね、うん」
「入ったことある僕だからいいますけど、お尻でアレなのに前の方に、それも注ぐってもう耐えきれる気しませんよ……」
「お尻よりも前の方がキモチイイの?」
「……まどか、全部終わったら一緒に保健の勉強をしましょうね」

直前までの重々しい空気はどこへやら。
なんとも間抜けで弛緩したピンク色の空気があたりに漂っていた。

「あっはっはっはっ! いやいや、本当にニンゲンは面白いねー! もうとっくに神々の意思も予言も超えているよ。
 我が子の成長は本当に、なにものにも代えがたい最高の喜びだね☆
 ああ、愛しくて愛しくて――おや?」

バキリ

ノーデンスが笑った直後、その右腕に罅が入る。

「え?」
「あははー、ガタ来てる身体でこんだけ笑えばそうなるよねー」

気にする素振りも見せないノーデンスだが、やがて罅は全身に広がっていく。

「どういうことだい!?」
「言ったでしょう? 蒼にやられたって。消耗抑える幼竜の姿で誤魔化して、世界樹の力借りてここまで保ったけど……
 真竜の力を循環させる心臓を歪められたかなー? 見ての通り、過ぎた蒼は神様でも全く歯が立たないから気をつけてねー?」
「そんな、もう一度世界樹の力を!」
「無駄なのよー。その力は大切にとっておきなさい。でもさっきはありがとね☆ おかげで最期にみんなとお喋りできて楽しかったよ!」

満足気な表情を浮かべるノーデンス。
その表情に後悔は感じられない。


894 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:37:42 Y.b6E.ow0
「何故、我らの前に姿を現した?」
「……私はノーデンス、育むもの。憎き醜き愛しき美しき我が子の行く末が気になった。
 そして君たちは私の期待に応えてくれた。いや、それ以上だね。みんなで協力して予言の謎を解くだけじゃなく、帝竜とも仲良くするとは」
『ノーデンス様……』
「ニンゲンだけじゃない。魔物やドラゴン、みんなが成長してくれた世界。まだ消えるには早いのよー。
 君たちがちゃんと過去の大災害を知っても前を見れるか試したかったのもあるけど……
 ――気をつけよ。此度の大災害を引き起こした者の正体はワラワもわからぬ。
 そして覚えておくのじゃ。もはやこの世に、神はいない。ワラワと同じく生き延びていたとして、その力は失われているじゃろう。
 神の想像を超えた悪意は、神の助けも無しに、神の想像を超えた成長を見せたニンゲン達が超えねばならぬ……」
「わかっているさ。みんなで、全てを乗り越えてみせるさ」
「そして、もし次の大災害があるなら。今度こそ、みんなで協力して後世にそれを残したいです」
「フフ……頼もしいの。さて……ここまでじゃな。どうか悪意ではなく、希望で摂理を今一度超えてみせてくれ。
 ワラワはそれを、無限にとうとうとつみ重なる影から見守ろう。そしてどこかまた、別の紡ぎにある世界で会おうぞ。
 さらばじゃ、愛しき子らよ。どうかその手で、成長の絶えぬ未来を――」


ノーデンスの全身が、ガラス細工のように粉々に砕け散る。
後には白い花びらのようなものが舞い落ちるだけで、そこに彼女がいたことを指し示すものは何も残されていない。

「……魂を感じない。ほんとに蒼、TCにやられると魂も何もかも壊されちまうみたいだね……」
「ならば尚更立ち止まれぬ。小さな大災害――黒き獣を討つにも、予言を完成させるためにも、テラカオスを見つけねばならない」
「そして、大災害を引き起こした存在の正体も、ですね」

知りたかった真実。
知りたくなかった真実。
知ってしまったからには、もう引き返せない。

「む!?」

そして突如空が暗くなる。
まだ誰もその存在を知らない邪竜ギムレーが顕現したのである。
彼の口から響いたのは狂信者と拳王への処刑宣告。
味方か敵か、まだわからない。
そしてこの直後に響くは定時放送。
多くの友や仲間の死の中に、障害であった天魔王軍全滅の報せもある。
時刻は18時。予言に辿りついた彼らは、どのように動くのであろうか。


895 : Challenge to providence :2018/06/24(日) 19:38:22 Y.b6E.ow0
【二日目・18時00分/東京・都庁世界樹頂上】

【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【小野塚小町@東方Project】
【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】

追加思考:テラカオス及び大災害の黒幕の捜索

※全員が、救済の予言に対して目処をつけました
※フォレスト・セルには古代グンマ―の罠が残されていますが、まどかの独自の祈りにより回避可能となりました
 サウザーによる予言外のテラカオス強化プランが実施されるかは不明です



※以下の存在が、ロワ開始前に死亡しています
【第一真竜アイオト@セブンスドラゴンⅢ】
【北極星ポラリス@デビルサバイバー2 ブレイクレコード】
【ミザール以外のセプテントリオン@デビルサバイバー2ブレイクレコード】
【根源主カノープス@デビルサバイバー2 ブレイクレコード】
【アルクトゥルス@デビルサバイバー2 ブレイクレコード】
※放送で呼ばれていませんでしたが、以下の存在がロワ中に死亡していました
【神竜エルダードラゴン@世界樹の迷宮Ⅲ】
※以下の存在が、蒼により魂を砕かれ消滅しました。蒼に蝕まれ消滅したため、放送で呼ばれることもありません
【第二真竜ノーデンス@セブンスドラゴンⅢ】


896 : 名無しさん :2018/06/24(日) 19:39:12 Y.b6E.ow0
投下終了です


897 : 名無しさん :2018/06/24(日) 20:52:50 SWOSlPHE0
投下超乙
避難所で見た時から凄い待ってて、投下されたSSが予想を上回る出来でビックリしました

10期の世界観の謎がこのSSで解けた……!
救済の予言の詳細、サーフがドリスを持っていた理由、古代グンマーミヤザキの具体的な滅亡理由、セルが尻穴を掘る理由まで
細かいところまで全部補完されるとは思わなんでした
全てが意味を持ち、謎が一本に繋がった時の感動が半端ないって!(某キャプテン)


898 : 名無しさん :2018/06/25(月) 07:50:33 MCrNJCIo0
投下乙。いやぁ、ただただ凄いわ。よくまとめられたな
歌がカヲルってのも盲点。そういやバサラやられた時からレクイエム歌ってたもんな
悪魔の力と竜殺剣でサーフを臭わせたりその他の回収も見事

ただ、この後に拳王と狂信者が控えてると思うと…


899 : 名無しさん :2018/06/25(月) 08:26:23 6.VuArXg0
Wikiのキャラ項目にもあったけどサウザーが考察に役立つどころかクリティカルな発想を出してて草バエル(褒め言葉)
聖帝だけじゃなく小町、ダオス、レスト、まどか、氷竜、オオナズチ、ピヨちゃんまで各方面から考えを出すことで予言を多角的に解明したのも上手い

>>898
そういや忘れがちだがカヲルくんてアダムの魂が入っててエヴァのシンクロ率も自由に変えられたな
つまり心の壁も突破できるわけだからレクイエムで死者の魂を鎮めることも可能かも知れない
聖別・救済の予言もエヴァの人類補完計画に似たものだとわかったし


900 : 名無しさん :2018/06/25(月) 14:42:46 G5VuFCmI0
サーフがセプテントリオンとポラリスを殺してる=その能力奪ってると相当やばいことに気づいた
TC防壁考えなきゃシャドウ以上だが大丈夫かな


901 : 名無しさん :2018/06/27(水) 09:59:54 DVnbKSr.0
万が一サーフがやられた上位存在全部食ってたらどんな強さになってたんだろうか
そしてwiki見て気づいたがベジータが死後も対主催の足引っ張ってらっしゃる……


902 : 名無しさん :2018/06/27(水) 14:30:53 4rhiVScQ0
誤解してる人も多いがアバチュの悪魔は強い敵を喰っても貧乳歌姫みたいに即強くなれるわけじゃなく
マントラって言うスキルツリーに応じてスキルが徐々に増えていくだけだぞ、HPとか能力値は増えない

……と思ったけど、劇中で喰いまくった結果進化した悪魔も何人かいたか


903 : 名無しさん :2018/06/30(土) 16:12:05 ZCCXcpbk0
キュゥべぇがキュウべぇになっていたので訂正します

アニメキャラ・バトルロワイヤルIF-2 鎮魂歌

7/7【ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイターズ】
◯ジャン=ピエール・ポルナレフ◯ホル・ホース◯エンヤ婆◯ンドゥール◯ダニエル・J・ダービー◯テレンス・T・ダービー◯ヴァニラ・アイス
6/6【クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
◯ヴィヴィアン◯ロザリー◯エルシャ◯クリス◯ジル◯エマ・ブロンソン
6/6【ラブライブ!】
◯綾瀬絵里◯東條希◯矢澤にこ◯高坂雪穂◯綾瀬亜里沙◯穂乃果の母
6/6【アカメが斬る!】
◯レオーネ◯マイン◯ブドー◯ボルス◯ラン◯Dr.スタイリッシュ
6/6【とある科学の超電磁砲】
◯御坂美鈴◯一方通行◯麦野沈利◯固法美偉◯湾内絹保◯寮監
6/6【鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
◯アルフォンス・エルリック◯リザ・ホークアイ◯ラスト◯グラトニー◯グリード◯スカー
5/5【PERSONA4 the Animation】
◯花村陽介◯巽完二◯久慈川りせ◯白鐘直人◯生田目太郎
5/5【魔法少女まどか☆マギカ】
◯キュゥべぇ◯鹿目タツヤ◯志筑仁美◯上条恭介◯早乙女和子
5/5【アイドルマスター シンデレラガールズ】
◯新田美波◯アナスタシア◯神崎蘭子◯三村かな子◯緒方智絵里
5/5【DARKER THAN BLACK 黒の契約者】
◯黄◯白◯エイプリル◯ジュライ◯雨霧
4/4【寄生獣 セイの確率】
◯村野里美◯宇田守◯島田秀雄◯泉信子
4/4【やはり俺の青春ラブコメは間違っている】
◯平塚静◯比企谷小町◯川崎沙希◯葉山隼人
3/3【Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
◯遠坂凜◯ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト◯バゼット・フラガ・マクレミッツ
2/2【PSYCHO PASS-サイコパス-】
◯常守朱◯チェ・グソン
2/2【ソードアート・オンライン】
◯アスナ◯シノン
4/4【転校生】
◯吉良吉影◯ヘンドリクセン◯ヒソカ◯高杉晋助

76/76


904 : 誤爆狩り世界チャンピオン ハクメンダーマ! :2018/07/01(日) 09:07:44 vSRMrfDs0
「ズェア! 悪・即・斬!」

仲間である拳王連合軍との合流を目指していたハクメンは道中で『凶』を発見。
カオスロワの最中に新たな殺し合いを考えるような悪しき者だったので見過ごすことができず切り捨てることに。
幸い戦闘力は高くなかったので一刀両断は容易であった。


>>903@誤爆?】



「しかし、まずいことになったな……」

悪しきものを斬り捨てる前にハクメンもまた多くの参加者同様に放送を聞いていた。
その内容にはハクメンさえ驚きを隠せなかった。

放送の中でベイダーに読み上げられた名前……その中には多くの仲間の名前があり、大雑把に状況を読み取ることもできた。

主催へ奇襲をしかけた同盟である超人血盟軍の全滅。
関東にたどり着いた矢先での拳王連合軍の主力メンバーの死亡。
そして……作戦上、拳王連合軍がヘルヘイムの侵攻を抑えている間に窒(死者スレ)に攻め込んだ悪魔将軍の落命。

超人たちや、ダイアーたちは一山いくらのマーダーに負けるハズがない実力者ではあった筈だ。
悪魔将軍に関しては自分と互角の戦闘ができる存在であったにも関わらず、窒に待ち構えていた何者かに殺されたということだ。
あ、宿敵のユウキ=テルミの名前も上がったけど現実逃避モードだったので放送を信じておらず、むしろ放送は間違いでテルミはまだ生きているという結論に至った。
まあ、テルミはゴキブリ並にタフな魂の持ち主だとハクメンは思っているし、多少はね?


「より強大な『凶』を仲間の手を借りて討伐しようと思った矢先にこれか……
悪魔将軍をも滅ぼす存在……なおさら、私一人での滅却は厳しいという思し召しか」

自分がレストに撃退されたように、自分より強い敵はこのカオスロワにゴマンといる。
西を見れば沖縄に突然現れた非常に強い『凶』。
東を見れば拳王連合軍と狂信者に処刑宣告をした超巨大な邪竜と二つの『凶』の気配。
ちなみに二つの『凶』とはテラカオスであるツバサと候補者のユーノである。

少なくとも硬すぎるレストはハクメン単体での撃破は不可能、相討ちが関の山。
レスト以上の強者が他にもいた場合は詰みである。
幸いなのはヘルヘイムの中にあった『凶』の気配が消えたため死んだようであるが、また『凶』を匿わないとは限らないので敵対は必須だろう。
(ハクメンはきらりが浄化されたとは露とも気づいておらず、死んだと思っている)


絶大な力を持つギムレーと『凶』として高いレベルを誇るツバサ、じわじわとだが『凶』としての力を蓄えているユーノもまた、連携を取られた場合は互角の戦いができるかも怪しい。


窒があるらしい富士山中から強者や凶の気配はしないが、悪魔将軍さえひとひねりできる存在がいるのは確実だ。
集団を分離させて勝てる相手ではなかろう。


沖縄に現れた黒き獣・シャドウだったものは論外。
力を尽くせば刃は届くであろう他と違い、接触すれば絶対に勝つことはできない。
なんらかの事情で本州に攻めてこないようだが、攻めてくる前に準備を整える必要はある。


総合的に見てもハクメンは仲間である拳王連合軍との合流は必須であった。
放送のベイダーの言葉からしても超人血盟軍の奇襲は失敗に終わったようであるし、作戦の要である悪魔将軍も敗北した。

「自分だけ単独行動をしていた身で言うのも難だが……作戦を組み直すためにも合流が必要だろう」

悪魔将軍の立てた作戦が失敗した以上、ただ合流するだけでなく、ヘルヘイム、千葉、狂信者、窒のどこから攻め落とすかも考え直す必要がある。
それがハクメンの答えであった。


「傷のせいで時を斬ることができないので時間がかかったが……ようやく近くまでこれたぞ」

足によって拳王連合軍がいる横浜港の前にたどり着いたハクメン。
数時間ぶりの再会だが多くの仲間の死によって和気藹々として雰囲気ではないのは目に見えている。

だが彼らにも戦ってもらわないといけない。
破滅に導く『凶』をひとり残らず刈り取り、この世界を平和に導きたいのならば。



【二日目・18時10分/神奈川県 横浜港前】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【状態】中ダメージ、unlimitedモード、テルミ限定で現実逃避
【装備】斬魔・鳴神
【道具】支給品一式
【思考】基本:『悪』を全て滅する
0:拳王達との合流後、沖縄の『凶』への対抗策を考える
1:主催及び世界に災いをもたらす者を『刈り取る』
2:風鳴翼は滅する
3:東京の『凶』、千葉の『凶』は警戒を続けるが後回し
4:悪魔将軍を殺した窒にいる何者かを警戒
5:テルミ? 奴のことだからどっかでまだ生きてるだろ
※unlimitedモードに入りました
※沖縄の『凶』(シャドウ)の気配を察知しました。能力から他の参加者よりも具体的な位置がわかります
※結界でシャドウが動けないことまでは知りません


905 : 名無しさん :2018/07/01(日) 09:09:59 vSRMrfDs0
投下終了です
昔のカオスロワみたいなネタを一度はやってみたかった
誤爆しているみたいなので名簿ネタはパロロワ毒吐き別館でどうぞ


906 : 名無しさん :2018/07/01(日) 10:49:14 N1yRI3CU0
投下乙です


907 : 名無しさん :2018/07/01(日) 11:02:57 N1yRI3CU0
アニifが完結しても全く動じないテラカオスロワはヤムチャ様並にかっこいいですね


908 : 名無しさん :2018/07/01(日) 12:13:13 OIjZTSuY0
ハクメンの逃避レベル思ったより深刻だな……
ご安心ください。テルミは最悪の最期の台詞を残して魂ごと消えたよ!


909 : 女竜騎士の贈り物 :2018/07/02(月) 10:01:23 zKBW/leI0
リオレウスを追跡するナッパとサラマンディーネのためにDMC狂信者の囮となったソウルセイバー。
狂信者の注意が完全に自分だけに向いたところで追撃を躱すべく撤退。
かつて自分たちが降り立った千葉県の九十九里浜まで退却した。
そして隠れるために自分の体が入るほどの倉庫に身を隠し、狂信者がいなくなるまで待つ。
そのまま遊園地に戻ってしまうと狂信者に拠点がバレてしまうからだ。


そうして狂信者をやり過ごし、見事に囮の役目を全うしモブ狂信者にむざむざと殺されることはなかったあたり、流石は高位のドラゴンであると言えたがドラゴンネットワークの情報と第六回放送により仲間の不幸を知り、彼女は衝撃を受けることになる。

「そんな……リオレウス、オシリスまで……」


リオレウスは拳王連合軍に痛手を与えるが、報復の見せしめとして彼らに惨殺されたこと。
イチローたちがDMC狂信者に敗北し、オシリスがやられたこと。
そしてダイゴ、DAIGO、ゼロといった遊園地に待機していた仲間が死亡していたこと。

横浜港が壊滅していないところからして毒ガス散布は未遂に終わり、それでいて拳王連合軍の主力戦士を何人か殺害できたようだが仲間の死のせいで素直に喜べない。
せめてもの救いはナッパとサラマンディーネが無事なことだろう。

オシリスについては放送で名前が載っていないことを確認したのでまだ死んではいないようだが、真っ二つにされた状態で敵に捕まっており、狂人ぞろいのビッグサイトでナニカサレル可能性が極めて濃厚だ。
イチローたちが逃げ帰ることしかできなかった点からして相当な強敵が現れたのは確かである。

最も悲惨なのは比較的安全と思われた遊園地の待機組。
あそこはアウラの民とギムレーに守られているとはいえ、それを掻い潜るほどのエリート狂信者に襲われたそうだ。
しかし、ギムレーが邪竜化しているところからしてサラ以外の首輪を外せる参加者と合流したと想像でき、多大な戦闘力が解禁されている。
超がつくほどの理不尽級狂信者でもないかぎり、襲ってきた狂信者の殲滅は時間の問題……もしくはもう終わっているのかもしれないが、失った仲間は二度と帰ってこない……

「私たちみんなが頑張った……なのに報われた点が一つもないじゃない……!!」

言い知れない悲しみによりソウルセイバーは涙を流す。
横浜ではリオレウスの救助に失敗、東京ではイチローたちが敗走、浦安では待機組が犠牲を被った。
全ての者が力を尽くしたハズなのに勝ち星ゼロである。

この敗北は指示を出したラミレス監督の判断ミスとは言わない。
遊園地を発った時の聖帝軍はまだまっとうな対主催と思われていたし、リオレウスも止めにいかないと毒ガスで横浜を汚染していた未来もあったかもしれない。
どちらもやらずに遊園地に引きこもってサラの首輪解除を待てば犠牲もゼロだったかもしれないが、これは結果論だろう。

仕方がなかったのだ。
イチリュウチームは仲間や無辜の民を見捨てるような外道はいない。
仕方がないからこそ痛く悔しいのだ。



「……」




「…………」




「ええい! 泣いてばかりもいられないわ!
まだ私たちイチリュウチームは全滅したわけじゃない!
これまで散った仲間たちの無念は私たちで報いなきゃならないわ!」


しばらく泣いていたソウルセイバーであったが、亡くなった仲間と生きている仲間の顔を思い出し立ち直る。

「野球はチームの連携が必要なスポーツ。
逆に言えば一人でも怠けたらチームはダメになる。
みんなが頑張っているのに私がへこたれたら、オークのオチン〇ン未満よ!」

自分を鼓舞し、青いドラゴンは再び大地を踏みしめる。
死した仲間の無念は、生きてる者が報いさせなければならない。
その想いがソウルセイバーを立ち上がらせた。



「そうと決まればドラゴンネットワークで状況確認よ」

まずは九十九里浜を飛び立つ前に冷静に状況確認に移る。

「……!?」

すると、彼女は意外なものを発見した。


――オシリス「死んだふりをしてビッグサイトの内部を実況なう」


910 : 女竜騎士の贈り物 :2018/07/02(月) 10:02:03 zKBW/leI0



「オシリス! あのバカ生きてたのね!」

ドリスコルにやられたと思われたオシリスであったが、まだ生きていたことに喜ぶソウルセイバー。
生きてるだけでなく妙にお茶らけた感じのスレタイやドラゴンネットワークに接続できるところからして怪我を負いながらも余裕はあるようだ。
彼は竜ではなく神なので生命力に優れており、下半身を失った程度では大したダメージではないのかもしれない。

「良かったわ……そうだ、きっと助けに行くから待っててとだけでも伝えなくちゃ!」

オシリスは生きているが狂信者に囚われた身。
いつ殺されるかわからない不安に負われているハズ。
明るく振舞っていても心細いだろう。
彼を勇気づけるために、希望を失って欲しくないがために、ソウルセイバーはスレタイを開き応援のエールを送ろうとした。





そして、彼女は黒き獣の罠にはまった。



「ひぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!?
脳がああああ、れいぷされてりゅうううううううううううう!!!」



倉庫の中で悲鳴を上げるソウルセイバー。
彼女の目は右と左で違う方向を向きながらグルグルと回り、目や耳からは血が、その他の穴からは汗などの汁がブワリとにじみ出る。

彼女の身に起きた悲劇。
それはオシリスに偽装したシャドウによるなりすましのスレ。
そのスレは開くとウィルスと称された呪いが発動するようになっている。
そして微量の、しかし脳を破壊させるには十分な蒼が直接頭の中に入っていき、スレの中身を見た竜を殺すのだ。

「これって脳姦?! これってノーカン!? きょレってのうきゃんらのお!」

大災害の原因にもなった蒼の汚染によって急速に破壊されていくソウルセイバーの脳。

「あたまむこ、呪いひんぽでズボズボされりゅううううううう!!!」

スレを開いてから僅かな時間であるが、彼女はもう助からない。
生存に必要な脳の機能を完全に壊されてしまったのだから……


「くひゃあ!! イグいぐいぎゅ、逝ッグーーーーーーッ!!」


そして彼女の体は倉庫の冷たい床に倒れ――




【ソウルセイバー・ドラゴン@ヴァンガード 死





(ま、まだよ!!)


911 : 女竜騎士の贈り物 :2018/07/02(月) 10:02:46 zKBW/leI0

床に倒れるまでの1秒間。
彼女の思考は、僅かな脳の機能はまだ生きていた。

(オシリスはこんなこと絶対しない!!)

オシリスがドラゴンネットワークに呪い(ウィルス)を仕込む理由がない。
彼の性格上の問題だけでなく、やれば最後、アク禁を喰らい貴重な情報源を失ってしまうからだ。
狂信者に囚われている中でそれは痛いだろうし、オシリスが裏切って狂信者入りしたと仮定しても、直接閲覧者を殺すより偽情報を流して撹乱した方がずっと狂信者に実りがあるハズだ。

(このオシリスはきっと偽物よ……気づいてギムレー、みんな!)

ソウルセイバーは最後の力を使って、ドラゴンネットワーク内にタイトルだけのスレを設置する。
スレタイは『オシリス スレ 開けるな』。

(できればもっと詳細を書きたかったけど、私はここまでみたい……)

破壊された脳の思考力ではこれ以上の書き込みは不可能。
できれば他のドラゴンがこのスレに気づき、偽オシリスのスレを開けないことで犠牲を減らしたい……それがソウルセイバーの願いであった。


(私は誰かの悪意(オチン〇)には負けなかった、わ……よね?)


そして力尽き、冷たい床に倒れた彼女。
ここまでで1秒……彼女は最期まで死力を尽くせた騎士のように、満足気な表情で果てた。



【ソウルセイバー・ドラゴン@ヴァンガード 死亡】











倉庫には青い巨乳ドラゴンの骸を中心に様々な物品があった。
ドラゴンの死によって静寂に包まれると思われた倉庫であったが、倉庫にある物品の一つである鏡の中から一人の仮面ライダーが現れた。
黒き獣の手先と化したダークディケイドである。

「ふん、この様子だとシャドウが仕掛けたドラゴンネットワークに引っかかったか」

ディケイドは親元であるシャドウがドラゴンネットワークに罠を仕掛けたのを知っていた。

「おまえの体、俺たちの目的のために利用させてもらうぞ」

ブックソードを取り出し、ディケイドは既に息絶えているソウルセイバーの腹に刃で一筋の切り口を作って捌いた。
切った腹からデロリと腸などの臓物が飛び出す。
ディケイドはそれを料理人がまな板の上の魚にするように掻き出していく。
腸に胃に心臓に肺に性器に……頭に入っている臓器以外は全部とっぱわられ、床にグチャグチャと捨てられた。
そしてスペースが出来たソウルセイバーの中に一つの弾頭……ナパーム弾を仕込み、適当な紐で切り口を縛って閉じ、そしてディパックにしまわれた。
ソウルセイバーの『加工』が済んだディケイドは鏡の世界で戦うライダーである龍騎の力を使ってミラーワールドに入ったのだった。
ちなみにディケイド版龍騎は本家と違ってミラーワールドの出入り口は入ってきた鏡限定という設定がなく、鏡になっているならどこからでも出られて移動できることを書き加えておく。




物置組の奮闘によって一度はテラカオス・ディーヴァの残滓もとい『ツバサ』を取り逃がしたダークディケイドたちは何をしていたのか?
彼はクロックアップの力により物置組を高速で追っていたが、途中でモブ狂信者の一団と交戦。
一団の中に同じクロックアップ能力を持つ怪人種のワームがいたので交戦回避は不能。
とはいえ、シャドウによって強化された仮面ライダーの敵ではなく殲滅は容易であった。
しかし、戦っている間に物置組はイチローたちと接触し、ミレニアム・ファルコンで千葉へと飛び立ってしまった。

それでもなんとか追いつこうとしたが、彼らがたどり着く前にツバサがキングストーンの力で覚醒。
キングストーンの使用者である南光太郎の記憶も引き継いでいるので、最強クラスの仮面ライダーであるBLACK RXが復活したのも同然である。
さらにはブリーフ博士によって首輪が外れたせいでギムレーも邪竜として復活。
イチロー、ナッパもすぐに首輪を外し、絶大な戦闘力を得ることだろう。
そうでなくともソウルエッジとソウルキャリバーを勝ち取ったシスの暗黒卿であるアナキン。
あらゆるエネルギーを吸収・増幅・反射能力を持つテラカオス候補者のユーノ。
上記の者たちほどでないが浦安に集った面子は猛者揃い。
世界の破壊者であるダークディケイド、ディケイドとほぼ同格のディエンド、シンフォギア最強の男をベースにしたダークキバとて真正面からの攻略は至難である。
死者なので戦いの中で全滅しても別に問題ないが、最低限の任務であるツバサの破壊ができないのはいただけない。


912 : 女竜騎士の贈り物 :2018/07/02(月) 10:03:18 zKBW/leI0


そこでディケイドはソウルセイバーを利用した罠を思いつく。
ただ一匹、イチリュウチームに合流ができていないソウルセイバーを殺害……これはボスであるシャドウがやってくれたが。
続いて彼女の骸に爆弾を仕込む。
そしてミラーワールドを移動して浦安の拠点に侵入。
イチリュウチームの真っ只中に爆弾入りソウルセイバーを投げ込み、爆破させて混乱に陥れるという寸法だ。

ちなみに爆弾に使ったナパーム弾は先ほど全滅させたモブ狂信者の一団が持っていた物を奪った焼夷弾である。
これは1000度以上の高温で燃焼し、人体等に付着するとガソリン火災用の消火器でも使わないと消火できず、大量の酸素消費によって周囲に酸欠までも引き起こすなど、極めて殺傷力が高いもの。
ブリーフ博士などの一般人が耐えられる代物ではなく、殺せずとも集団を混乱状態にすることは可能。
ただでも仲間同士の絆が強いイチリュウチームが仲間を爆弾にしたことで怒り悲しみ浮き足立つのは目に見えている。
混乱によってチームの連携が乱れている間にツバサを討つという計画である。
また、ツバサの次に危険性を持ち、第四のテラカオスになる可能性を秘めたユーノも殺害する。


ツバサとユーノを討てば任務完了であり、その後は全滅しても問題ないが、可能な限りそれ以外の参加者もディケイドは殺すつもりである。
イチリュウチームは予言に必要な野球選手、予言を解き明かすのに必要な知恵者、果ては主催まで揃っている。
シャドウの障害になるのは明白であり、全滅……それが叶わずとも数は削いでいく必要はあるだろう。



「ディエンド、ダークキバ、戦いの準備をするぞ」

ディケイドはモンスターボールの中に収納した二人の仮面ライダーに呼びかける。
心なしか、疼いているように見えなくもない。
意思はないはずだが、生前に因縁のあった者がイチリュウチームにいたからだろうか、体の方が反応しているようだ。

ディケイドはバイクに乗り、ミラーワールドで作られた千葉県を疾走する。



気高き女ドラゴンの贈り物は、多くの仲間を救うかもしれない。
贈り物となった女ドラゴンは、多くの仲間を殺すかもしれない。




【二日目・19時00分/千葉県 九十九里浜(ミラーワールド)】
※18時50分頃にドラゴンネットワークにソウルセイバーによる『オシリス スレ 開けるな』スレが立ちました。


【仮面ライダーダークディケイド@仮面ライダークライマックスヒーローズ】
【状態】健康、強化状態、 龍騎の力でミラーワールド移動中
【装備】ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライドブッカー@仮面ライダーディケイド、マシンディケイダー@仮面ライダーディケイド
【道具】トイカメラ、モンスターボール(ディエンド&ダークキバ入り)
    ナパーム爆弾入りソウルセイバー・ドラゴンの死骸
【思考】基本:シャドウであった者の命に従いディーヴァの残骸を殺す。
0:鏡の中を移動してツバサのいる浦安を目指す
1:手始めにソウルセイバーの死体爆弾でイチリュウチームを混乱させて襲撃する
2:ツバサとユーノは必ず殺す、可能な限りイチリュウチームの有力者も殺す
3:最低限の目的さえ果たせるなら自分たちの全滅も構わない
※ディケイド激情態と同じく他のライダーにカメンライドせずとも能力が使用でき主役ライダー以外の能力も行使できる模様。
※平成二期のライダーたちの能力も使用可能。
※龍騎の力でミラーワールドを移動しています


【仮面ライダーディエンド@仮面ライダーディケイド】
【状態】健康、強化状態、意思なし。
【装備】ディエンドライバー@仮面ライダーディケイド、カードケース。
【道具】不明
【思考】基本:シャドウであった者の命に従う。
1:今はダークディケイドの命に従う。


【風鳴弦十郎@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】健康、強化状態、ダークキバに変身状態、意思なし。
【装備】闇のキバの鎧@仮面ライダーキバ、キバットバットⅡ世@仮面ライダーディケイド。
【道具】不明
【思考】基本:シャドウであった者の命に従う。
1:今はダークディケイドの命に従う。
※ダークキバの情報はシャドウであった者からインプットされています。


※召喚された死者は道具扱いの為アナウンスされない。
※死者の装備や道具は回収できません(ナパーム爆弾、モンスターボール、ソウルセイバー・ドラゴンの死骸は別)


913 : 名無しさん :2018/07/03(火) 16:50:05 haaXe54w0
投下乙!
そういやこいつらまだいたんだった。現状綺麗になった貧乳が勇者最有力だしここで倒されるのは不味い

そしてソウルセイバーは最後に頑張ったけど案の定断末魔が酷…ファガンよりはマシか


914 : 名無しさん :2018/07/04(水) 12:34:02 xF3HSDto0
ドラゴンズ出身者に限ると捕まったオシリスを除くと三人
初期メンバーだけで見るともう二人しか残ってないのか……


915 : 名無しさん :2018/07/05(木) 19:21:29 Q9rblvbw0
島村卯月とセリューがまどほむオブジェみたいにされるssを書いて下さい!オナシャス!


916 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:25:47 mpumacfI0
ビッグサイトの地下格納庫。

「なにこのキモイ連中」

一人のモブ狂信者が目の前の光景を見て呟いた。
格納庫には黒と灰色の、千差万別の異形が蠢いている。
その数、ざっと200ほど。
巨大な頭だけの奴もいれば、頭にまた大きな口や角が生えた美少女の異形もいたりする。
普通の感性なら格納庫が異形集団に襲撃を受けていると思うだろうが、異形たちは格納庫にある機体の修理や改造または資材を運び込んでおり、狂信者の味方であるようだ。

「こいつらは深海棲艦というらしい」
「シンカイセイカン?」

モブの疑問に答えるは別の狂信者モブである。

「ディーがお抱えの科学者であるサーフ博士が作っていた隠し戦力らしい」
「へえ〜」
「博士がいくら天才だからって一人でビッグサイトの機体や装備を全部やろうとしたら過労死してしまう。
 クラウザーさんのために働きすぎて死ねるなら彼も本望だろうが、まだまだ強くなれる狂信者軍団がパワーアップできなくなってしまうのは些か勿体無い。
 そこで見た目はアレだが、博士の命令に忠実でロボットの修理ができるぐらいに高知能なこいつらが使われているってわけだ」
「なるほど、俺としちゃクラウザーさんのために生贄をSATUGAIできればそれでいいけど」

「……で、そのサーフ博士はどこに?」
「なんでも休憩を取らないと最良の発想が浮かばないと言って二時間ぐらい部屋に引きこもっているけど、ディーに怒られないかな?」
「深海棲艦が博士の代わりに働いているから怒られないんだろうな……」

立ち話をしていたモブに、頭に大きな黒い口をつけた美少女型の深海棲艦、空母ヲ級が向かってきて告げた。

「アナタタチノキタイ、カイゾウオワッタ」
「お、早いな。さてと生贄をレ〇プしてくるか」
「ヒャッハー! 楽しい巡回SATUGAIのお時間だぁーーーッ!」

自分の機体が直ったと知り、モブ狂信者パイロット二名は急いでMSジェスタに乗って格納庫から出撃。
巡回任務に戻った。



さて、本筋に関係ない奴らの話はここまでにして。

この世界に大災害を齎した巨悪。
そして最後に残った掲示板であるカオスロワちゃんねると使って殺し合いを操作していた管理人サーフは今、何をやっているのか?
彼の自室と企みを覗いてみよう。



■ □ ◆ ◇ ● 〇


「ふぅ〜〜……気持ちいい」


瑞鶴はサーフに与えられた室内に備え付けの浴槽に入ってゆったりとくつろいでいた。
艦むす的に言えば入渠である。
もちろん入渠と言えば全裸なわけである。

その浴室からそれほど遠くない場所でサーフはディパックの代わりにしている四次元ポケットから出したカオスロワちゃんねるのサーバーをパソコンに繋ぎ、この殺し合いの状況を見ている。
掲示板だけでなく、主催者同様に首輪やナノマシンから発せられるシグナルをキャッチし、現在までの生存者やテラカオス候補者がわかるようになっている。

「数多くの暗殺に、証拠隠蔽工作……メーガナーダと共に僕のためによく頑張ってくれたよ」
「夫である提督さんのためですから」
「ありがとう」

自分にとって不都合な存在を影で消し去ってくれた瑞鶴を労わるサーフと、微笑み返す瑞鶴。
そんな仲良し夫婦の間にとある情報が割り込んだ。

「お、これは……」
「どうしたんですか?」
「光祐一郎の息子、光熱斗が死んだみたいだ。
 掲示板やナノマシンのIDシグナルも全部確認した……間違いない」

放送だけならテラカオス化した風鳴翼のように死亡を隠蔽または改竄される前例もあったので、自分が支配している掲示板及び首輪とは別にナノマシンから発せられるシグナルを念入りに確認したサーフ。
ずらりと並んだリストの中で熱斗の名前が消えていた。
これにより最強のネットバトラーである熱斗が死んだことを確信に変える。

「ククク……」
「提督さん、良かったですね……って!」
「ああ、まったくだ。
 ざあまみろ光! 僕の夢である『艦むすたちの楽園』を奪った報いとしてあの世で後悔するが良いや!」

興奮からか瑞鶴がいる風呂場に侵入サーフ。
同時に黒い血管のような光が彼を覆ったと同時に悪魔へと変身させる。

サーフは鰭状のベールを頭に被った水棲生物をあしらった人型の異形、黒き水の神(あくま)リアルヴァルナとなった。


『はははははははははははははははははははははははははははははははは!!!』


おぞましき黒い悪魔の姿で嗤うヴァルナ。
その狂喜はまるで憎い仇が死んだ以上の、極上の喜びを現していた。


917 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:27:22 mpumacfI0

『はは……』

しかし、嘲笑は長続きしなかった。
浴槽の隅で狂喜と威圧を放つヴァルナに驚いた瑞鶴を見たからだ。
それを見たヴァルナはポリポリと後頭部を掻きながら弁明する。

『あー……すまない。嫌いな奴の息子が死んではしゃぎすぎた。
 まだテラカオスも手に入れてないのに浮かれた挙句、君を驚かせてしまったな』

ヴァルナは怖がらせてしまった瑞鶴に誠意をもって謝った。
最も、ヴァルナには瞳に当たる部分が無いので本当に誠意があるのかはわからないが。

「いいえ、あたしだって、あなたの夢である艦むすの楽園を見てみたいですから。
 それを邪魔した光一家はあたしにとっても敵ですから気持ちはわかります」
『すまない』
「でも……一声もかけずにお風呂場に入ってきた時には正直、ヒヤッとしましたよ。
 次やったら提督さんを爆撃しますからね!」
『わ、悪かった。君の爆撃は物理耐性を上げるスキルつけても痛いから勘弁してくれ……』

冗句交じりにプンスカという顔でサーフに弓を向ける瑞鶴とタジタジという動作をするサーフ提督。
そこだけ見ると仲良し夫婦に見えないこともない。


ところで、サーフと瑞鶴が目指す艦むすの楽園とはなんなのか?
それを知るためにほわわわ〜んと過去を振り返ってみよう。





野望に目覚める前、サーフは科学都市ニルヴァーナの一科学者に過ぎなかった。
ある日、自分が古代ミヤザキ人の血を色濃く受け継いだ末裔と知り、彼らが戦友として使っていた機械の巫女『艦むす』の存在を知る。
彼女らは戦争状態にあった古代グンマーに抗うために古代ミヤザキの従順な戦士として戦った。
しかも美女ぞろい。

だが、最後は何らかの理由で全解体を人類から言い渡され、艦むすは絶滅した。
解体させられた理由は不明。
事情はわからないが人々のために戦った彼女らが何の栄誉も得られずに人から忘れ去れれたのを不憫に思ったサーフは、この世に艦むすを復元することで蘇らせることを決意。

そして復元された艦むす。
海の上なら無類の強さを発揮し、魔物やテロリストなどあらゆる海の上の驚異に対処可能。
同じ人間のようにコミュニケーションができ、人間との交配まで可能。
しかも美少女揃い。
人間を模した艦むすは機械生命体レプリロイドと名前を変えて世界に売り込まれ、普及という形で世界に復活するハズだった。


しかし、サーフが友でありライバルである光祐一郎が同時期に生み出した『ネットナビ』にコンペで敗北。
艦むすの企画は中止され、ネットナビ及びPETの方に莫大な予算が注ぎ込まれ世界に普及した。

コンペに敗北した理由……艦むすがネットナビに性能面で劣っていたとかいうわけではない。
武装による問題面に関してはネットを使ったテロができる分だけネットナビの方が遥かに危険であるし、サーフの予感は的中し、実際にWWWなる犯罪組織も生みだした。
にも関わらず世界はネットナビを選んだのはなぜなのか?

答えはコストである。
艦むすは……製造コストや維持コストがかかりすぎる。
機種にもよるが作るには大量の資材が必要であり、生み出したら食事や入渠させなければならないという手間がかかる。
対してネットナビはPET稼働に必要な電力とネット環境ひとつ確保できれば十分であったのだ。
お財布事情はどっちか楽かという些細な理由で、艦むすの未来は絶たれたのである。

祐一郎は友人として彼に気をかけたりもしたが、サーフにとっては嫌味にしか感じなかった。
その後も祐一郎とネットナビは邁進し、世界に普及した。
一方のサーフは影響力の大きくなった祐一郎の影に隠れる形になり、モブのような扱いをされる。

ライバルに敗北し目指した夢も名誉も手に入れられなかったサーフは、諦められずミヤザキの遺跡で艦むすを世界に普及させるためのヒントを探す。


それが転機であった。


918 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:30:15 mpumacfI0


古代ミヤザキ人により封印され、この時代まで生きながらえていた古代人タバサを発見する。
そして様々な技術の他に、歴史に隠れた真実も知ることになった。
古代にはTCホールの暴走による大災害により世界が滅びかけ、カオスロワによって生みだしたテラカオスによって救われたこと。
その後、次の大災害がより強大だった場合に備えてのテラカオス強化プラン『救済の予言』。
艦むすは強化プランの一環で生み出された、古代ミヤザキ製の人造巫女であった。

しかし、蒼を支配することで世界を存続させようとするミヤザキの思想を認めない世界の滅びを良しとする古代グンマーから戦争を仕掛けられ、グンマーの巫女に対抗するためにやむを得ず戦場に駆り出される。
彼女らの結末はテラカオスを巡る戦争を憂いた神による抹殺であった。


ミヤザキは仲間である艦むすを皆殺しにせざるおえなかった……逆らえば自分たちごと根絶やしにされるからだ。
グンマーから離反した一部の竜種により保護された艦むすもいるが、結局ひとり残らず解体され、竜の方は記憶を消されてしまった。


……艦むすたちを復活させるには滅ぼすきっかけを作ったグンマーや滅ぼした神々が邪魔である。
こいつらがいる限り、蘇らせた端から壊されてしまう……そのためにサーフはタバサを通じてTCに纏わる情報を洗いざらい聞き出し、彼女を篭絡して世界への復讐と先祖ができなかったTCホール支配計画を実行に移した。


まずは蒼の研究によって作り出した麻雀の強さを戦闘力に変える「雀力」を作って資金と人材を集め。
グラサンのババア上司やサウザーみたいな声の大佐をうまく騙して、こっそりと施設を改造して宇宙にある蒼の源泉を暴走させる準備を進める。

裏では非人道的な研究の中で作ったメーガナーダと復元した艦むすである瑞鶴に邪魔者の排除を任せ、計画に気づきかけたヒート・オブライエンを暗殺。
ヒート博士が師事していた阿笠博士と知人の子供を拉致後に洗脳手術をして弟子殺しの罪を被せた。

実行当日、最初に第一真竜であるアイオトが計画をやめるようにサーフたちの前に警告のために現れるが、アイオト自身が現役を引退していて戦闘力はなかったこと、加えて竜の弱点である竜殺剣ドリスを復元していたことで抹殺に成功。
少なくともこの世界からは完全に消しさることに成功する。

続けてストロング・ザ・武道やセプテントリオンら神々の差金が襲いかかってくるが、タバサから事前に知りうる弱点を聞いていたおかげで時間稼げる程度には対策を練ることができた。
さらに「蒼によって滅びたい」と願う破滅思考の上位存在も工作を手伝ったため、有利に戦闘が進んだ。
具体的には10人一斉にかかってくれば確実に負けるところを、10人が一人ずつかかってくるようにして勝てるような流れに変えたのだ。
武道の特攻で装置そのものは壊されて予想以上に後の参加者たる生き残りが多くなってしまったが、蒼の源泉は無事に暴走し、計画に支障は出ていない。

目論見通り大災害の蒼によって滅んだ上位存在の協力者を除くと、たった三人と一匹で世界を滅ぼしたなど人も魔物も神も思いはしないだろう。
それだけの技術力と用意周到な計画があったのだ。



それからサーフと瑞鶴、メーガナーダはニルヴァーナから海を渡って日本にたどり着けた。
日本は地理の関係上、蒼の直撃を受けにくいので殺し合いに必要な土地として残り、聖別の地になるのは計算済みである。

そして、予め作っておいたSMS『カオスロワちゃんねる』を操作し、殺し合いを……特にテラカオスの生産と救済の予言が叶うように誘導した。
自分の手元を離れたタバサが才人を取り戻すために勝手な行動を取り出したのは肝を冷やしたが、幸いテラカオス関連の話はせずに死んでくれたために問題もなかった。
大災害による蒼を浴びたことによって敵である神々もすべからく滅んだ。
死者スレも改造と洗脳を施したシグナムによって破壊された。
ハッキングを使って殺された幹部の魔神皇・狭間の友人だと経歴を詐称し、狂信者に認められれば隠れた安全地帯であるビッグサイトに滑り込むことができた。

あとは対主催にこちらの存在を悟られないまま、テラカオスを完成させ、強化プランである救済の予言を完遂させる。
そして宇宙をまるごと滅ぼせる蒼のエネルギーを吸引させ、テラカオスを支配下に置くことでサーフは世界を我が物にすることができる。
さすれば全ての邪魔者はいなくなり艦むすの楽園を築くことができるであろう。





――瑞鶴はそう、教えられている。


919 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:30:59 mpumacfI0
瑞鶴も生みだした親である提督だから無条件で好意を持ったわけではなく、危険だからとはいえ絶滅に追い込むしかなかった神々や人々への憤りとサーフが目指している艦むすの楽園を見てみたいがために思想に同調したためである。


『瑞鶴、熱斗を始め邪魔者はかなり減ったけど、まだまだ障害は多い。最後までついてきてくれるかな?』
「ええ、喜んで」

「インドラ〜」
「メーガナーダ、お夕飯ができたですって?」

二人の入浴場にエプロンを身にまとった丸いサボテンのような悪魔が入ってきた。
瑞鶴の支給品であるメーガナーダである。

『ディナー時か、瑞鶴、そろそろ上がってくれ』
「提督さん……その格好のまま、食べるの?」
『食事する時はこっちの姿の方が落ち着く』

二人は入浴上から出た。
サーフは悪魔の姿のまま、瑞鶴は浴衣を纏って。



テーブルの上にはサイヤ人の王子ベジータの肉を使った様々な料理が置かれていた。
刺身、ステーキ、お好み焼き、デザートは『猿脳』……ちなみに神鎗による死毒が入っているので常人ではまず食べられないが、サーフとメーガナーダはBSデストロイア(状態異常無効能力)持ちなので、舌がピリつくスパイスでしかなかった。
流石に瑞鶴は食べられないため、おにぎりに秋刀魚やパフェにサイダーなど別のものが用意された。

「メーガナーダにお料理仕込んで良かったですね!」
『そうだね。でも脳みそはいらないや、ハゲが移りそう。メーガナーダにあげるよ』
「インドラ……」

ベジータだった物を食らっていくサーフとメーガナーダ。
悪魔ウィルスによって変身した悪魔は食えば食うほど体内に生体マグネタイトが溜まり、進化して新たなマントラ(スキル)を覚えていき、強くなっていく。
かつての貧乳歌姫ほど即効性や喰った敵の能力獲得はないが、強い存在を食えば食うほど早く強くなる。
そんな彼らがスーパーサイヤ人の領域に達した男の肉を食うとどうなるか?

『……!!』
「提督さん!?」
『凄いぞこれは! 肉のひと切れ食べただけで僕のマントラが埋まっていく!』

ほんの僅かな切れ端を食べただけで能力を取得していくのはサーフとて驚きであった。
肉を胃に詰め込む度に脳内でスキルツリーであるマントラが埋まっていく……美味なるサイヤ人の肉を全て平らげた時、全マントラスキルをサーフは獲得し、喜びを顕にする。

『戦闘後に自動全回復するオートソーマ。
万能攻撃以外全部無効化するマスタキャンセラが殺し合いの最中に手に入るとは思ってなかったよ。
それだけでなく攻撃力や防御力、スピードまで格段に強化された。
パーフェクトだ瑞鶴、メーガナーダ』
「感謝の極み、ってね」
「インドラ〜」

男女とペットの明るい食卓。
男とペットが悪魔でなかったり、食べてるものがサイヤ人の肉じゃなければ微笑ましい光景なのだろう。


920 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:32:29 mpumacfI0


「さて、お腹も膨れたことだし。状況を整理しよう」
「作戦会議ね」

夕食後、悪魔の姿から人間の姿に戻ったサーフは研究者然とした白衣を纏い、瑞鶴とメーガナーダと共に今後を考える。

ここまでで瑞鶴の手によってウエムラたち、科学都市ニルヴァーナの生き残りは全滅。
彼のビデオレターは見た参加者であるバドも死亡を確認。
別行動を取っていたタバサも死んだため、自分たちの計画を知る者はいない。
仮にカオスロワちゃんねるに疑惑を持ったとしても、管理人が誰かまではわかっていないはずである。
掲示板の危険を承知してところで、サーフにとって都合の悪い情報はブロック・端末爆破・接続エラーを言い訳にした遮断で他の参加者に情報は伝わらないようにサーバーに予めプログラムされている。
大勢を変えるにはDMC狂信者並の大集団でない限りは不可能なのだ。
ハッキング技術を持つ熱斗のようなネットバトラーも死に、計画の露呈はないと見ていい。



次に各組織の動き。
モブを除くと8割近い参加者の首輪が外され盗聴はまともに行えなくなったが、それでもナノマシンから発せられるシグナルによって生存確認やどこにいるかぐらいは検知できる。

掲示板の情報やシグナルから読み取った動きを見ると……


今、自分たちが所属しているDMC狂信者。
一度狂信者と認められればビッグサイトほどの安全地帯はない。
少しでも魔力の心得がある者は、膨大な生体エネルギーが集中しているビッグサイトに強力すぎる遠距離攻撃を行うと、大爆発を起こして危険と気づくからだ。
多くの狂信者が対主催組織に挑んで返り討ちにされる一方で、本拠地攻め落とすには相応の戦力や戦略が必要なため、都庁同盟軍やイチリュウチームですら未だに攻略の糸口を掴んでいない。
おかげでサーフは裏方で計画を進めやすくなった。
それでもいつかは強対主催が殴り込んでくるだろうが、時間稼ぎとしては十分であった。


主催陣営は安倍から九州ロボを奪還したらしく、一方でアナキンは対主催へと潜伏。
ジャックたちは本拠地奪還が目的だろうから自然だが、アナキンの動きは気になる。
彼らの目的はテラカオスを使った世界救済。
野球チームに接触したところからして救済の予言を完遂の手伝いをしようというのか?
祐一郎が作ったミヤザキ系の器たりえる巨像である九州ロボを保管してくれる分には嬉しいが、参加者となったアナキンの動きには留意すべきだろう。


拳王連合軍は誤解の火中にある。
戦い方いかんでは他の集団を滅ぼしうる力は持っているが、有力者の死と止まらない誤解のせいで対主催から狙われる対主催となっている。
本人たちもまた誤報をバラ撒き、ダイジョーブ博士との接触で都庁=ヘルヘイム情報をネットに拡散し、殺し合いを盛り上げてくれた。
ダイジョーブ博士は自分に関する余計な情報をバラまくかもしれないのでサーフが間接的に爆死させたが。
また本人たちは気づいていないようだがミヤザキの巫女である翔鶴を所持している。


都庁同盟軍。
ボロボロなれど底知れない集団だが、ダイジョーブ博士を介した拳王連合軍の情報によってヘルヘイム扱いされ、もはや誤解の払拭は不能。
同盟であるはずの小町が突然、都庁を裏切ってヒーロームーヴをしだしたように見えたが、シグナルが都庁の世界樹から動かないところからして、やはり裏切っていないようだ。
大方、ヘルヘイム絡みの混乱を収めるためにダオスかレストあたりをボスに仕立てあげて倒したフリをし、何も知らない一般人を安心させて騒動を一時的に止めるつもりなのだろう。
サーフとしては救済の予言の中にある器、古代グンマー産の器たりえる巨像であるフォレスト・セルがあるのが気になるところ。


聖帝軍。
シグナルの位置からして前述の都庁と手を組んだ可能性が濃厚。
きらりのテラカオス反応が消えてしまったところからして、セルに浄化されてしまったらしい。
聖帝軍もホモどもの工作動画によって拳王軍・都庁軍同様に風評被害を受けた……それも立川破壊などの情報は事実のため、誤解を払拭することはできない。
テラカオス化に関するレスはネット規制で弾かれるようにできているので、大衆を納得させることはもうできない。
生存が目的なら都庁と手を組むのは必然であろう。


イチリュウチーム。
誤解を受けていない最後の対主催組織。
半数が首輪を外され戦闘力を増大させた一方でオシリスが狂信者に囚われ、多くのメンバーが狂信者の襲撃で死亡。
午後六時前現在も戦闘が続いている。


921 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:33:17 mpumacfI0


ゼクス組残党。
イチリュウチームに吸収されようとしているが、戦力的には特筆すべき点はない。
問題なのはテラカオス・ディーヴァの残滓がここにいる点であろう。
彼女はディーヴァ時代より遥かに弱体化しているが、その代わりにTCとテラカオス因子を吸収して自分のものとする力を持っていることを確認した。
現状で最後に残ったテラカオスなので、注視していく必要がある。
こちらからの保護・捕獲は……少し、難しい。
彼女自身は弱いが回りが強すぎるためである。


沖縄に現れたシャドウだったもの。
蒼を纏っているところからして古代人タバサが言っていた黒き獣である可能性が濃厚。
対抗できるのは蒼を吸収できるテラカオスのみであり、早急に貧乳歌姫以上の戦闘力を持つテラカオスを派遣する必要がありそうだ。



「こんな感じですかね」
「そして、僕らの持つカードは……」

テラカオスによって来たる大災害から世界を救うには、六つの鍵が必要である。
『儀式』――野球チームの優勝及び、それに伴う化身が持ちえない高潔な力を化身に注ぐ。
『歌』――殺し合いの犠牲者を悼み鎮める歌で死者の魂を安定させ、死者からも化身に力を注ぐよう協力させる。
『巫女』――後述の器の制御及び、器を操る力を持つ巫女自身も化身に力を注ぐ存在。
『器』――巫女以外に操れない規格外の力。内部に化身を入れて力を注がせる兵器。
『勇者』――争いの淀みから生まれてなお破壊衝動を抑え、大災害に立ち向かう意志を持つ特殊な存在。
『化身』――テラカオス。

無論、殺し合いの発端となった大災害を引き起こしたサーフと言えど大災害で自分ごと世界が滅ぼされるのは望ましくない。
必然的にサーフも予言を叶える必要がある。

しかし、そこは計画者だけに予言に纏わる大半の準備を殺し合いが始まる前から済ませていた。


「巫女は言うまでもないね」
「ええ、私たち艦むすは人造の巫女。
特に五航戦姉妹は直接戦闘以上に巫女の力に特化させて作られてますからね」

サーフ自身が作り出した巫女、瑞鶴。
その巫女の素質はグンマーの巫女である鹿目まどかと同格である。
しかも機械なので改造である程度は力を拡張できるのだ。


「そして、器」
『インドラ〜』
「……まさかメーガナーダが元々はフォレスト・セルの劣化コピーの一つだったなんてグンマーの奴らは思わないでしょうね」
「僕としても悪魔化ウィルスを興味本位で注入したらこうなるなんて思いもよらなかった……おかげで『器』としての機能を取り戻し、戦闘力もオリジナルに近いくらい取り戻したけど」
「言うなればミヤザキで改造したグンマー産の器ですね」

サーフと瑞鶴が従えていた人食いの悪魔メーガナーダ。
その正体はオリジナルのフォレスト・セルから生まれたクローンであった。
大災害の前に手に入れたサーフだったが、所詮は劣化コピーにすぎず、器としては弱すぎるぐらいのハズレと言ってもいい代物だった。
そこで悪魔化ウィルスを流し込むで悪魔として強化・新生。
元と比べると少々小ぶりになり、汚れどころか生き物ならなんでも食べてしまう悪食になってしまった代わりに器としての力と機能を取り戻した。
なお、暴走せずにしっかりとコントロールできているには巫女である瑞鶴の力によるものである。


「歌……テクノシャーマン19号……セラは死ぬ前に良い歌を残してくれたよ」
「良い歌ですね」
「ああ……肉体に守られているならともかく、魂だけになった存在でこの歌の支配に抗える存在はいない」

パソコンからDMC以外の歌が流れる。
それは少女が歌う、子守唄のようなレクイエムであった。
かつてニルヴァーナは神を知るための研究としてテクノシャーマンと呼ばれる神との交信者が作られた。
サーフは秘密裏にセラという一人のテクノシャーマンの少女に『蒼によって滅びたがっている』神と交信させて、どんな強固な魂でも逆らえない歌を作らせた。

「聖帝軍みたいな多くの対主催がクラウザーやきらりみたいな大衆を操る歌や歌い手が必要と勘違いしているが、それは違う。
答えは荒ぶる魂を縛り、抵抗を無力化させて統一するレクイエム……呪詛なのさ。
死者の魂を縛れるなら歌い手なんて機械音声でもなんでもいい」

ちなみに人の手によって生み出されたテクノシャーマンは寿命が短く、実験を繰り返す度に命の灯火は消えていく。
テクノシャーマンであるセラは大災害の日に、蒼の源泉を暴走させるための装置に組み込まれ死亡している……最期までサーフの悪しき野望に気づかずに。


922 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:34:48 mpumacfI0



「こうして巫女・器・歌は既にあるわけだが、勇者及びテラカオス、野球選手だけは手元には入れられないな」
「勇者とテラカオスは殺し合いの中で覚醒するものですから用意はできないですし、野球選手は強すぎて保護できないですからね」
「僕は今、サイヤ人並の力を持ってるとしてもイチローやラオウが九人ずついたら勝てる気はしない……ましてや捕獲ともなると、ね……」

勇者とテラカオスだけは殺し合いが前提で生まれる存在であり、殺し合いより先に生み出したり見つけ出すことができない。
いちおう殺し合いが進行した現在ならパソコンのモニターに素体の時点でTC耐性を持ち、テラカオス化しても狂わない者たちの名前がリストアップされている。
その中には未だにテラカオス化していない者もおり、テラカオス・ディーヴァやその残滓である『ツバサ』の名前もあった。
だが戦闘力や拉致する手間を考えると確保は困難であろう。

そして野球選手は場合によっては勇者以上に確保が難しく、ただでさえ理不尽に強い者が集まりすぎてサーフと瑞鶴のたった二人では捕獲はまず不能。
第一、殺し合いが始まる前に野球選手を何チームも集めてしまうと主催や対主催に計画がバレてしまう危険があったので、自然に集まって徒党を組むのを待つしかなかった。


とはいえ、サーフも勇者や野球チーム、テラカオスを生み出すために何もしていなかったわけではなく。
カオスロワちゃんねるの管理人として情報を操作し、誤解や風評被害に誇張を手綱にとって殺し合いを激化させた。
結果として多くの勇者候補やテラカオスが生まれた。
野球チームに関してはフリーザ軍など野球で世界が救えるという『あえて中途半端にした』真実を吹聴することで戦士たちを野球選手に仕立て上げた。
誕生初期の聖帝軍やオシリスが救済の予言の内、野球しか知らなかった起因である。
ちなみに十傑衆のボスであるビッグ・ファイアは殺し合いの前、冷凍睡眠から目覚める前に蒼の直撃で死亡しており、そこにつけ込んだサーフはボスを守りきれなかった諸葛孔明を脅迫することで十傑衆チームを無理やり作らせたのだ。


「まあいい、勇者や野球チームだけは手元にある必要がない。
一番大事なのは最後まで誰にも気づかれずに、参加者や主催たちにテラカオスを作ってもらい、かつ救済の予言をなし得てもらうことだからね」

サーフとしては参加者からテラカオスが生まれ、救済の予言をなし得てもらいたい。
それは強化プランを経てパワーアップした完成体……否、暴走した源泉から来る大量の蒼を吸って究極体となったテラカオスを手に入れるためである。
テラカオス究極体を手にしたものは世界最高の権力を手に入れる仕組みである。
そのシステムとは――

「僕の先祖である提督……水無瀬 眞は本当に良いものを残してくれたよ。
テラカオスの自殺解除プログラムだけでなく、完成体のテラカオスすら特定のナノマシンの持ち主に従わせられるプログラムもね。
カオスロワちゃんねるにも使っているサーバーに仕込ませてもらったよ」

サーフの先祖である水無瀬提督はいつしか自分の子孫が世界を牛耳れるように独自の研究により、目的を達成したテラカオスの自殺プログラムの解除法を知り、特定のIDシグナルを持つナノマシンの持ち主を操れるプログラムさえ作り上げた。
テラカオスは完成した途端、特定のシグナルを持ったもの……現在ならサーフに従うようになってしまうのである。

ちなみに完成体のテラカオスはプログラムの支配に抗うことはできない。
なぜならば完成体に近いほどナノマシンの依存度が高くなってしまうからだ。
ナノマシンもまた宿主に応じて進化するためにテラカオス自身の意思でぬぐい去ることはできない。
抗えるのは未完成体や候補者止まりのテラカオスだけである。


また、直接吸収して栄養に変えてしまうセルや世界樹の浄化や、ハクメンによる秩序の力と同時に物理的攻撃力を叩き込んで殺処分する方法はともかく、ウルトラマンゼロなどによる光の力の広範囲浄化は効果が薄い。
これはナノマシン全体に仕組まれた防御プログラムとして、大規模範囲で浄化を感知するとナノマシンが「光」や「秩序」の属性を一時的に持ってやり過ごしてしまうため、ナノマシンを完全に消し去ることはできないのだ。
それでも近くにいた耐性を手に入れる前のサーシェスのように、ユーノぐらいは浄化されたかもしれないが……抗体を埋め込むことや殺害することはウルトラマンゼロにはできないので、結局後からテラカオス化がぶり返すだけである。


923 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:36:39 mpumacfI0


すなわち、救済の予言を叶えた後の究極体テラカオスが生まれた途端、サーフによる世界の統治が始まり、彼はこの殺し合いの『真の意味での』優勝者になるのだ。
参加者と主催者がテラカオスを作り出し、救済の予言を完遂したところで、全ての成果はサーフに総取りされる。
そのようなシステムが殺し合いの水面下で作り上げられていたのだ。




「――とはいえ、テラカオスの完成と救済の予言が成り立たないと、これまで努力した意味がないな」
「その両方を成し得ないと提督さんや私も大災害で死んでしまいますからね」
「特に狂信者や対主催の妨害によって、野球の試合は長いこと頓挫してる……必要なエネルギー総量からしてあとたったの二試合なんだが、これがなかなか届かない」

狂信者、ホワイトベース組の襲来、サーシェスの襲来などによってどのチームも試合ができていない。
残ったチームは拳王連合軍、イチリュウチーム、聖帝軍……後は全滅したか、他のチームの強さや狂信者の襲来に恐れおののきリタイア・解散した。
次の大災害が発生、またはテラカオス以外は戦いにもならない存在・黒き獣が本州に攻めてくる前に試合を終わらせる必要がある。
どのチームが優勝しようと構わない、とにかく早急に野球をさせる必要があった。
ではどうするべきかとサーフは思考を巡らせる。



「よし……こうしよう。
瑞鶴、これから拳王連合軍と接触して仲間として合流し試合をさせるように仕向けるんだ」
「翔鶴姉……ひいては祐一郎や熱斗がいた集団に?」
「表向きにだが僕は祐一郎と親交があった。
ダイジョーブも接触したし、思惑に気づかれずに接触できるハズだ。
都庁にいる聖帝軍、イチリュウチーム、どちらからでも良いから先に攻めさせるんだ。
もちろん、僕がテラカオスを使って世界を支配しようとしていることは内緒でね」

確かに拳王連合軍は今は亡き光親子が所属し、その光祐一郎とサーフはダイジョーブ博士の口によって親交があったと説明された。
今から裏で協力関係を結んでも違和感はない。

「僕についてはDMC狂信者に潜伏している対主催という嘘を奴らに吹き込んでほしい。
対主催が攻め込ませやすくする準備をしているからビッグサイト攻撃は後回しにしてくれ、とね」

その嘘は自分が潜伏している安全地帯を攻撃されたら困るからだけではなく、いくら強いとはいえビッグサイトを攻略している間に時間を喰い、試合をするだけの時間的余裕を失ってしまうからだ。
世に都庁の世界樹がヘルヘイムと誤情報を打診し、イチリュウチームからの攻撃によって二チームとの敵対関係をもった以上、都庁及び聖帝軍とイチリュウチームと戦う理由はある。
それを狂信者との戦いに向けさせるのはかなり勿体無い。
カオスロワ式野球自体もれっきとした殺し合いであり、テラカオスの成長の促進にも役に立つので尚更だ。

「指令に異論はないですけど、ちょっと質問が……試合中に狂信者や他の参加者から妨害を受けると思うんですけど、その時はどうするんですか?」

瑞鶴の質問も最もである。
選手の敵は何も相手チームだけとは限らない、救済の予言など知ったことではない狂信者などが妨害を仕掛けてくる可能性がある。
拳王連合軍と聖帝軍に至っては対主催も攻めてくるオマケ付きである。

「そうだな……じゃあ、これを渡そう」
「なにこのマシン?」

サーフは奇妙な形をしたスイッチ付きのマシンを瑞鶴に渡した。

「僕が神の知恵を奪って作った特注品だよ。
それを使えば周囲の参加者を異界……外の世界ではなく裏世界の球場にランダムで転送できる」

この世界の参加者は次元を犯すTCによって外の世界に出ることはできない。
一定以上の長距離ワープも不可能だ。
しかし鏡の中にあるミラーワールドなど、一部の裏世界はまだ生きている。
サーフはそれらを見つけ出し、野球ができる程度に安全かを精査して転送する手段を構築し、一つのマシンを作り上げたのだ。

「一度起動すればマシンを再起動するまでは誰も乱入することができない決闘場の出来上がりさ」
「裏世界で野球の試合をやっても、予言的には大丈夫なんですかね?」
「問題ない。マシンを介して発生したエネルギーは全て表世界にある無事な球場にリアルタイムで運ばれる。

……ただ、ひとつだけ問題があってね」

改まったように話すサーフと神妙に聞く瑞鶴。


924 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:38:05 mpumacfI0

「なんですか、問題って?」
「発見した裏世界のいくつかも蒼の影響で壊れかけているのか、表世界より不安定でね。
一度の試合に付き、平均三時間しか裏世界が持たないんだ」
「うう、なるほどタイムリミットは試合一回分ずつ、ということですね」
「使える回数もたったの二試合分だけ。
しかも、マシンの出力の都合上、負けたチームは試合中に生きていても崩壊する異世界に取り残されて死ぬ事になる。
試合さえしてくれれば誰が死のうが構わないが、瑞鶴も死地に飛び込ませることになってしまう。
いくら僕の手でも裏世界にいる間は手出しができない」

転送マシンは妨害を受けないという最大級のメリットと同時に、負ければ全滅が確定するという最大級のデメリットを持っていた。
万が一、拳王連合軍が試合に敗れたら最後、自分の作り上げた娘兼妻を失うことになる。
サーフはそれに対して悲しそうな顔をするが、瑞鶴はそんな彼に笑ってみせた。

「艦むすによる夢の未来を叶えるためにも、僕はまだ参加者たちに正体を悟られるわけにはいかない。
ビッグサイトからいきなり離れるわけにはいかないんだ」
「大丈夫ですよ、私はサーフ提督の最高傑作。負けることなんてありえません。あなたのために必ず生還しますよ」
「ああ、必ず拳王連合軍を優勝させて僕の下に戻ってきてくれ」

瑞鶴の中に死地に飛び込ませられる恐怖などなかった。
生きて帰る自信があったためであり、夫への愛のためならなんだってやれる気がするからだ。




「そうと決まれば、改造を行うぞ。
いくら強く巫女の力も成長しているとはいえ、他の拳王連合軍の面子に比べれば遥かに弱い。
だから改造して彼らにも並ぶ強さを与えよう」
「……はい、わかりました。
は、恥ずかしいからさっさと終えてください!」

サーフは手術代の上で瑞鶴の浴衣をひん剥いた。
少女を裸にしたが猥褻が目的ではない。
これから強化改造を行うために衣服が邪魔だったのだ。

そして瑞鶴の体に様々な機械や兵器が埋めこまれ……彼女は強化された。



「名づけて……瑞鶴 最終決戦仕様!!」



瑞鶴は以前のような巫女装束ではなく、侍の如き甲冑や着物を纏っていた。
そして髪型は少女らしいツインテールを下ろして凛とした黒の流れるような長髪になり、額には白い鉢巻をつけていた。
言うなれば白と赤を基調にした翔鶴を逆にしたような色合いを見せていた瑞鶴がそこにいた。
もちろん見た目だけでなく戦闘力も今の拳王連合軍メンバーと謙遜ないくらい強化されている。

「提督さん、なんだか凄まじい力を感じます」
「僕が愛情もって強化したからね。大量に課金させてもらったよ(ボーキサイトなどの材料代のこと)。
これで強さの面は問題ない……後は手土産として引き続きメーガナーダの同行とバトルチップ各種、一回で集団の傷を全回復する宝玉輪をやろう。
これだけ貢げば入れてもらえるハズだ」
「ありがとう、提督さん」

再びモンスターボールにしまわれたメーガナーダとネットバトラー御用達のチップ各種、貴重な回復アイテムである宝玉輪を手渡すサーフ。
チップの中には熱斗がずっと探していたプリズムとフォレストボムのチップもあった。

これにて瑞鶴の出発準備は整った。
サーフはパソコンを起動し、シグナムなどを回収・転送に使ったワープホールを瑞鶴の目の前に発生させた。
どうやらカオスロワちゃんねるのサーバーは掲示板の管理、テラカオスの制御プログラムの他にもこのようなワープを自在に起こす万能マシンらしい。

「瑞鶴、今から君を拳王連合軍のいる横浜港の近くへ転送する、幸運を祈るよ」
「提督さん! 必ず生きて生還し、ミヤザキの巫女として……あなたの妻としての役目を果たします!
私と後で再会するまで絶対に生きていてくださいね! 瑞鶴、出撃します!」

瑞鶴は意気揚々と、サーフに勇ましい笑顔を向けながらワープホールの中へ飛び込んだ。


■ □ ◆ ◇ ● 〇


925 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:38:42 mpumacfI0


転送された先で瑞鶴は無事に横浜港近くの海に降り立った。
先の戦闘で高速艇と煉獄が沈んだせいかやたらと焦げ臭いが、戦闘自体は当に終わっているので横浜港は静かであった。

「よーし、やるぞお! あそこには翔鶴姉も待ってるしね!」

どこかウキウキ気分の瑞鶴だが、彼女は大好きな提督の役に立てるとは別に、拳王連合軍に接触できて嬉しいことが一つあった。
同じ艦むすにしてもう一人のミヤザキの巫女、姉である翔鶴に会えるからだ。

瑞鶴はサーフからもう一人の五航戦空母にして姉妹艦である翔鶴の存在を聞いていた。
サーフは作り出そうとしたが技術的都合と運によって生み出すことができなかった。
そこで祐一郎が翔鶴を復元に成功したと聞いた時は、心底喜んだ……サーフが目の敵にしている男が作り上げたということには複雑な心境になったが。

(でも、向こうの提督である祐一郎はもういない。息子の熱斗だって死んだ。翔鶴姉は光の手から解放されたんだ!
今は目的のために騙す形になるけど、艦むす愛がある提督さんなら翔鶴姉のことも気に入ってくれるハズ。
殺し合いが終わった後にでも艦むすの楽園で一緒に暮らすとかできるはずよ)

まだ見ぬ姉と出会い、いずれ仲間として引き込めることを期待する瑞鶴。
捕らぬ狸の皮算用もあるが、それだけ翔鶴に会いたいと彼女は願っていたのだ。
そんな彼女は会場をスケートを滑るようにスイスイと移動し、港に迫る。

その途中で第六回放送というBGMを聞き流していたが、突然、放送とは違う怖気があがるような声が聞こえた。


「な、なにアレは……?」

声が聞こえた方角を見ると、拳王連合軍とDMC狂信者に向けて死刑宣告を行った超巨大邪竜ギムレーの姿があった。



■ □ ◆ ◇ ● 〇

瑞鶴が去った後のサーフの研究室。
瑞鶴が消え去り、閉じたワープホールを見送ったサーフの表情はいつの間にか瑞鶴に見せた柔和で優しい夫の顔ではなく、悪魔のような、または悪魔より恐ろしく冷酷な微笑みを浮かべていた。


「艦むすの楽園……?
おママゴトのごっこ遊びだよ。くだらない感傷と自慰の産物だ。ヘドが出る!」


926 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:39:22 mpumacfI0


実のところ、サーフに艦むすへの愛情など欠片ほど抱いておらず、目的達成のための道具にしか思っていない。
遺跡で艦むすのことを知り、祐一郎と競ったコンペで敗北して艦むすを世に復活させられず挫折したのは本当であるが、それは野望のきっかけでしかない。
蒼の源泉を掌握した後に艦むすの楽園を作るなど、瑞鶴の士気を向上させるためのでっち上げでしかない。
艦むすには作った提督を盲信するプログラムがあるので本当のことを言っても瑞鶴は従うだろうが、サーフは必ず盲信することを利用して嘘の理想を吹き込んで、カタログスペック以上の仕事をさせたのだ。
実際、騙された瑞鶴はとても働いてくれた。

では瑞鶴は捨て駒でしかないのか?
いくら強いとは言え、テラカオスに必須な『救済の予言』に必要な巫女なのに?
拳王軍に野球をさせるためとはいえ狙われ続ける者たちの場所に送るのか?
その答えはサーフが瑞鶴も知らない隠し部屋の鍵を開けたことで、「君たち」に明かされる。


そこにはズラリと並んだ、作りかけのミヤザキの巫女――艦むすの素体。
そして冷凍保存されている劣化フォレスト・セルの種があった。

「彼女は自分が特別だと思いこんでいるが、そんなことはない。

瑞鶴が失敗すれば、また次の艦むす、その艦むすが死ねばまた次の艦むすになるだけだ。
メーガナーダも、また新しく作ればいいだけだしね」

サーフは瑞鶴が失敗することも考慮して、あえて危険な任務を与えたのである。
この男にとって瑞鶴は愛する妻でもなんでもなく、道具にしか思っていないのだ。

「……しかし、悔しい。
後から作った祐一郎の方が僕より優秀な艦むすを作り上げるなんて認められるか!
瑞鶴を失った時の予備の巫女にする予定がなきゃ、僕が直接横浜港に乗り込んで壊しに行きたいくらいだ!」

翔鶴の巫女としてのエントロピーは、最新の時点で先に生まれた瑞鶴に並んでいる。
誕生から一日しか立っていないのにこの成長スピードは脅威である。
このまま行けば瑞鶴をも上回るであろう。
さらにロックマンと組んだ場合のエントロピーは、現グンマーの巫女であるまどかよりも上回っているときた。
サーフと祐一郎、技術者としての才能の差は歴然である。

「クソッ』

憎き祐一郎への嫉妬に狂ったサーフは体の一部分だけを悪魔化させ、腕に収納された骨の刀で壁に八つ当たりしようとする。
だが寸前に腕を抑え、平静に保とうとする。

「……お、落ち着け僕。
ここで暴れたら狂信者や他の連中に僕の正体を悟られる。
今はまだまずいんだ……』

なんとか落ち着き、悪魔化を解除するサーフ。
ここで下手に暴れるとディーらに計画がバレる危険が有る。
そうなると全ての参加者が敵となり、計画を妨害するか横取りを狙ってくる危険がある。
サーフは先ほどサイヤ人の肉を食べて格段にパワーアップしたが、莫大な力を持っていても迂闊な行動を取った結果、予想外の強者や格下のやられる可能性があることをユウキ=テルミ、安倍総理、ベジータが教えてくれた。
ここは慎重に行動し、イタリアンマフィアのボスのように正体は徹底的に隠すべきだろう……究極体のテラカオスを手に入れる、勝利の瞬間までは。

「だが、祐一郎。おまえの作った艦むすとロックマンはガラクタになるまで徹底的に利用させてもらうぞ。
自分の最高傑作がグチャグチャになるさまをあの世で見てろ」

心だけは既に悪魔の領域に差し掛かっている男は、もはやこの世にいない祐一郎を嘲笑った。
ひょっとすると瑞鶴を拳王連合軍に送り込み、野球による戦争を促したのは彼なりの私怨が入っていたのかもしれない。


誰ひとりいない、誰も見ていない部屋でサーフはしばし笑っていたが、その時に六時の鐘代わりである第六回放送が流れた。

「ふう……そろそろ仕事に戻るか。
ドリスコルがレアな物を拾ってきたし、少し忙しくなりそうだ」

ストレッチとして体を伸ばし、部屋を出たサーフ。
今の彼は表向きはDMC狂信者に手を貸す支給品扱い。
狂信者は殺し合いを激化させてテラカオスを強化しやすい環境を作ってくれるのでサーフもまた、やがて自分が手に入れるテラカオスのためにも様々な兵器を生み出すのであった。

「ん? あれは……?」

その時、サーフは目撃した。
千葉県に現れた超巨大な邪竜ギムレーと、彼による拳王軍と狂信者への死刑宣告を。


927 : 水の神の陰謀 :2018/07/07(土) 17:39:52 mpumacfI0




【二日目・18時05分/神奈川県 横浜港近くの海】

【瑞鶴@艦隊これくしょん】
【状態】健康、最終決戦仕様
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、違法改造スマホ、結婚指輪
【道具】モンスターボール(メーガナーダ@アバタールチューナー2入り)、宝玉輪@女神転生シリーズ
    石ころ帽子、妨害電波発生装置、チップ各種(プリズム・フォレストボムは確定)、裏世界転送マシン
【思考】
基本:提督さん(サーフ)に従い、彼の理想である艦むすの楽園を築く
0:横浜港に向かい、正体を隠しながら拳王連合軍と合流する
1:拳王連合軍にイチリュウチームか聖帝軍へ試合をするように仕向ける
2:拳王連合軍が優勝したらサーフと合流する
3:提督の目的の邪魔をする奴は容赦なく殺す
4:まだ見ぬ翔鶴姉に多大な期待
※サーフが生みだした艦むすです
※サーフとケッコンカッコカリ済みです
※『器』であるメーガナーダはミヤザキの『巫女』である瑞鶴か翔鶴にしか操れません
※裏世界転送マシンは二チームを野球ができる裏世界へ飛ばし、他参加者の妨害や乱入を防いで野球ができます
 裏世界が崩壊するタイムリミットは最大三時間。負けたチームは裏世界に取り残され、死亡します。(移籍などのケースはどのように扱われるか不明)
※邪竜化したギムレーの宣言を聞きました



【二日目・18時05分/東京・ビッグサイト 地下】

【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅、マスタキャンセラ常備(万能以外無効)
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×200、深海棲艦鬼・姫級×10
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:今は狂信者のフリをしてディーに従う
1:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
2:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
3:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
4:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
5:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※予言の中にある勇者についても参加者の内誰かが該当するか知っていますが、ツバサ以外の勇者は他の書き手氏にお任せします
※邪竜化したギムレーの宣言を聞きました

※テラカオス・ディーヴァの残滓(ツバサ)がキングストーンの力を継承したことをまだ知りません
 また、都庁にノーデンスが現れ、真実を教えたことにも気づいていません




※殺し合いが始まる前から死亡済みのキャラ
【ビッグ・ファイア@ジャイアントロボ-地球が静止する日】


928 : 名無しさん :2018/07/07(土) 17:43:23 mpumacfI0
投下終了です

裏世界転送マシンとかかなりご都合主義アイテムだけど、こうでもしないと野球できないと思って
(いちおうメガテンシリーズには裏世界ネタはよく出るけど)


929 : 名無しさん :2018/07/08(日) 12:27:18 PuvgXsxQ0
投下乙!
まあ野球は正直これくらいしないともうできなかったよね

しかしベジータお前……黒幕の耐性爆上げでもはや倒しようない化物にするってお前……


930 : 名無しさん :2018/07/08(日) 13:49:05 nAkn9nuM0
いちおうフォローすると万能属性攻撃持ちはダオスとかいるし
拡大解釈したり狂信者まで勘定に入れたらダメージを通せるキャラはけっこういそう

問題なのはテルミとかと違って完全に正面から戦わないつもりであり
勝てそうにない敵には逃走→全回復(オートソーマ)のコンボが決まれば死にはしない状態にできる
サバイバリティだけなら全キャラ最強になってしまった点か


931 : 名無しさん :2018/07/08(日) 17:55:12 cx6PYtio0
サーフ耐性(マスタキャンセラ+BSデストロイア+オートソーマ)
・物理無効(耐性100)
・全属性無効(耐性100)
・万能(無)有効(耐性0)
・戦闘終了後HP/MP100%回復
・全異常無効

レスト耐性(素耐性+錬成装備)
・物理激減(耐性87.5)
・全属性吸収(耐性110〜160)
・万能(無)激減(耐性87.5)
・全異常無効
・クリティカル無効
・確率1/3で被ダメージを1に強制変換

ギムレー耐性(邪竜の鱗+大盾+)
・物理激減(耐性75)
・全属性半減(耐性50)
・万能(無)半減(耐性50)
・全異常無効
・回避率常時上昇
・反撃、反射無効
・攻撃絶対命中

実はまだサーフの耐性は硬い連中の中では低い方っていうか、万能耐性皆無だから下手すると秒殺すらありえる
というか個人的にはマスタキャンセラは地雷スキルなんだよね。人修羅さんが晩餐モード確定で入るし……
ただオートソーマの関係上、見つけたら確殺しないと後々面倒なのは間違いない


932 : 名無しさん :2018/07/08(日) 20:54:18 kza9DcbM0
すっげぇ処理が面倒で草


933 : 名無しさん :2018/07/08(日) 21:19:36 nAkn9nuM0
もっと簡素にまとめると

サーフ=万能以外無敵 他二人より遥かに脆いが戦闘が終わる(逃げる)と自動全回復
レスト=属性魔法・状態異常攻撃に無敵でいちおう通る物理・万能にも硬い超鉄壁 殲滅力の低さと魔力切れが弱点
ギムレー=状態異常以外の耐性はレストの下位互換 だが避ける当てる反撃を受けない 欠点は本体がデカすぎて建物に入れず的になりやすい

まあ、書き手として戦闘話書く時はけっこうガバガバにしてるけどね
ツッコミを待って修正するスタンスぐらいがちょうどいい


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938 : 名無しさん :2018/07/09(月) 00:26:22 4FGghYZQ0
あー、万能にはガラ空きなのか。ダオスやまどかに限らず、安倍さん葬ったスキママルチプルパルスでも消し飛びそう
あと物理も無効止まりだとセルべリアおばさんの貫通でぶち抜かれるか
肝心の主だった敵対確実な連中に対策しきれないあたりがなんとも言えないが、逃走全回復だけは厄介極まりないな


939 : 神は死に 少年たちは次の扉へ :2018/07/09(月) 09:41:55 akRfeX2A0
「チッ、聖帝軍の奴らがあんまり死んでない……
 都庁の奴らと手を組んだみたいだし、もうちょっと死んでくれれば……」
「焦っちゃダメですよ道下くん。
 聖帝軍は……特にサウザーは僕らが殺す、その楽しみを後に取っておけると思えばいくらか気が楽でしょ?」
「それもそうだね遠野くん」
「しかし、AKYS師範も逝ってしまったか……先輩の慕っていた先生、僕の心の中で生き続けてください」
「DRSKL兄貴に続いてイチローチームへの奇襲を仕掛けに行ったんだってね、まだ戦いは続いているらしいけど、どうなるかな?」


ちょうど18時を回った頃、下北沢のハッテン場にて狂信者の中ではホモで有名な二人は放送を聞いていた。
工作動画によって憎っき聖帝軍は凶悪マーダー扱いに世間から認定されたのは目論見通りであったが、その聖帝軍は生半可な参加者では入ることのできない都庁の世界樹へと逃げ込んでしまった。
世界樹に入ってから一人も犠牲者が出ていないところからして、都庁と手を組んだものと思われる。
それでも世界樹は敵視されているのは変わらず、対主催が聖帝軍を攻撃をしてくれるなら潰しあってくれるなら狂信者は労せずしてクラウザーへの生贄ができて万々歳であったのだが。

「この乳脂肪の塊め!」
「(余計なことを言うのは)やめてくださいよ!」

約一時間前にやわらかスマホを見てホモ二人は憤慨した。
残った対主催ではイチリュウチーム(イチローチーム・ドラゴンズ)に並んで信頼を得ている小野塚小町が都庁に向けて特攻を仕掛けていたモブ参加者たちの前に現れて都庁から救い出した。
そして助けたモブたちに都庁には洗脳された人質が多数いるとして遠巻きからの核兵器などの強力すぎる攻撃の禁止、一定以下の実力の対主催は挑むなと釘を刺したのだ。
セルベリアおばさんなど一部の狂信者は小町が都庁に組みしていることを知っており、カオスロワちゃんねる掲示板を使ってこれが仲間である都庁を攻撃させないための演技であると伝えるも……

『都庁の味方になったのも洗脳を受けていたのならば仕方あるまい』
『てゆーか、なんで乳神様と戦ったことのあるような口ぶりなん?』
『おめえら乳神様を叩きたい狂信者だな!』

と言われて叩かれてしまい、聖帝軍のように小町の信頼を失わせるのは無理であった。
狂信者しか都庁にいる彼女に接触した人間がいないことも、ピンチだったモブの一団を救い出した既成事実があるせいで、余計に信頼を失墜させることは難しかった。
それでもホモ二人にとって小町が都庁の味方か敵かどうかは大した問題ではない。

理想としては対主催が核じみた攻撃の雨を都庁に降らせて、聖帝軍がのたうち回る様が見たかったのに。
小町がモブたちの信頼を得て都庁に攻撃禁止令を出したことがホモ二人には面白くなかった。

「やっぱレズは信用できない」
「セルベリアおばさん並の奇乳持ちめ、気持ち悪くて頭にきますよ!」

小町の思惑などどうだっていい。
カギ爪の男を殺した聖帝軍の地獄入りの邪魔をする死神もホモどもは殺すべき敵として認識する。
ついでに勝手にレズ認定した上にしれっとセルベリアをディスる。

「おっと……イライラしている場合じゃない、仕事仕事」
「ああ〜、そうですね〜」




そんな腹が立っていた二人であるが、セルベリアから依頼された仕事を忘れたわけではなくテラカオスに纏わる情報収集も忘れていない。
大破したユニコーンを修理に出し、その間にホモ・アビス(Zガンダムに出てきたカツが使ったグライダーみたいな奴)を借りてビッグサイトから下北沢まで移動。
そのハッテン場でウリをしながらホモ仲間から代金として情報をもらったのだ。
もちろん、狂信者やカギ爪団の一員であることは伏せている。


情報が集まるまで時間がかかるかと思ったが、意外にもどこにも安全はない不安からか性に走るホモは数多くおり、ウリは実質タダだったことも手伝って有益と思える情報は集まった。
代償として二人の尻穴がガバガバになりかけたが、もらった情報の有用性を考えると心地よい痛みに思えた。


もらった情報は都庁=ヘルヘイムや聖帝軍の正体(誤解)、どう考えてもデマにしか思えない救済の予言、沖縄の異常気象や関西地方に何もかもを腐らせる黒い花が咲き乱れているなど、道下と遠野も知っているような世間一般に知れ渡っているものではなく、まだひと握りの人間しか知らないような情報ばかりであった。


940 : 神は死に 少年たちは次の扉へ :2018/07/09(月) 09:42:52 akRfeX2A0


世のホモ曰く

〇指名手配された風鳴翼は殺し合いの始めの方は激戦区となった東京から人々を逃がしていた善玉の対主催だった。
 そもそも殺し合いが始まる前からノイズという化物から人々を守っていたヒーロー的人物であった。
 それが突然狂い出し、仲間や目に付いた人々をラッコと共に食い散らかし始めた。
 また、助けられた人々によると風鳴翼は青髪だったハズだが、指名手配された時にはなぜか銀髪であった。
 偽物か何らかの異常が彼女の身に起きたとしか考えられない。

〇そもそもの食人鬼は風鳴翼ではなく765アイドルの四条貴音を指すものであった。
 それがなぜか風鳴翼に移っている。
 また、某ラーメン三銃士なども似たような食人鬼になっていた。

〇風鳴翼だけでなく彼女のように狂いだし、見た目が変わったり、本来は持ち得ない能力を持った参加者もいたらしい。

〇水を飲んだだけでマーダー化した参加者もいる
 一部の配給された水に凶暴化する毒でも仕込まれているのかもしれない

〇拳王軍によって大阪と京都が滅ぼされた時点で、参加者の人数は日本のキャパシティで賄えるぐらいまで減っているらしい。
 殺し合いの目的であるはずの人口削減は果たされたのに、なぜか主催はカオスロワの終了宣言をしない。


これらの情報を道下と遠野はまとめあげる。
ちなみにビッグサイトに出る前に彼らにも首輪を外せるマーラ様の精液が配られており、首輪を外している。
今つけている首輪はカモフラージュ用の偽装なので、重大な会話でも主催に気づかれることはない。

「この中から一つか二つだけの情報を持っていても意味不明、せいぜい殺し合いを盛り上げるための主催のテコ入れにしか感じない」
「でも暴走した諸星きらりの件を含めた情報を統合して見ると……主催が何をしたいか見えてきますねえ!」
「一部の水に混入された何らかの毒で参加者を凶暴化、そして毒の進行がある程度進むと風鳴翼やきらりのような化け物になる。
その化け物こそ、きっとテラカオス!」
「主催の目的は人口削減なんかじゃない。
このテラカオスを作り出すことなんだ、それも云と強い奴を!」

このカオスロワ自体がテラカオスを作り出すための計画だとホモ二人は気づいた。

「……でもなんのために?」
「さあ? 日本を支配するための力が欲しいんでしょ?
放送に出てきたガチムチ兄貴のバーダックが死ぬぐらいですから力はいくらあっても良いハズです」
「所詮は権力目的か……」


「さて、もう少しウリを続けて情報を稼ぎますか!」
「正直、先輩以外に掘られるのは嫌だったけど、全ては心の中に生き続ける同志のためですから……」
「それじゃあ、次の方どうぞ〜」

同志カギ爪の男のために。
彼が守ろうとした狂信者という組織のために、ホモ二人は性を武器に情報を集めんとする。
しかし。


「マスタースパーク!!」

ハッテン場もとい公衆便所は虹色の光線によって瓦礫と化した。



「羽毛……大丈夫ですか道下さん!?」
「な、なんとか……ホモを盾にしないと即死だった……」

ホモどもは、客に来たホモを瓦礫の盾にすることで難を逃れていた。

【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱 死亡確認】


941 : 神は死に 少年たちは次の扉へ :2018/07/09(月) 09:43:28 akRfeX2A0

いったい何が起きたというのか?
ホモ共は瓦礫をどけて状況確認をすると、一人の魔女っ子っぽい服装の少女が手に持ったコースターみたいな物体から極太のレーザーを乱射して参加者を見境なく襲ってるではないか。

「魔理沙さん、どうして……」
「知り合いですか?」
「彼女、何かあったんですか!?」

どうやら近くにいた緑髪で胸の大きい高校生ぐらいの女性が、今暴れている魔理沙とやらの知り合いらしい。
ホモ共は彼女と一緒に物陰に隠れながら事情を聞く。

「さっきまで普通の……主催打倒を目指している対主催の一人だったんです。
放送で名前が出た霊夢さんの仇を取るんだって躍起になってたのに」
「どう見ても今の彼女は無差別マーダーにしか見えないんですがそれは……」
「彼女がこうなったのに心当たりは無いんですか?」

「キノコを食べたら……突然、あのように狂いだしました」
「幻覚作用のある毒キノコだったのかな?」
「いえ、ただの焼いた椎茸です……ただ……」
「ただ?」

「彼女、塩と間違えて道端で拾った魔力を含む灰のようなものをかけていた気がします」
「灰、ですか……」
「それは今どこに?」
「彼女が全部椎茸と一緒に食べてしまって……ああ!」
「「!?」」

突然、戦慄した緑髪の少女の顔から何かを察したホモどもが振り返ると、そこにはマスタースパークで焼いた参加者の肉を貪る
魔理沙の姿があった。
それだけでなく、金髪の髪が見る見る内に四条貴音じみた銀髪に変わっていくではないか。
魔理沙の同行者である少女は半ばパニックになっていたが、ホモどもは冷静であった。

(遠野くん、あれって……)
(風鳴翼と同じ症状の食人鬼……間違いなくテラカオスです!
こんなところで会えるなんて……)

先ほどまで集めた情報からホモどもは魔理沙がテラカオス化していると確信。
実際、彼女は焼いたキノコに道端で拾った四条貴音の細胞が混じった灰をかけて食べてしまった結果、かつての翼やラーメン三銃士と同じく食人鬼と化してしまったのだ。

(彼女を手に入れましょう、ビッグサイトに持ち帰ればテラカオスへの手がかりになるはずだ)
(よし、僕がやろう。ユニコーンを修理に出した代わりにちょうど良い物を借りてきたし)

道下が赤い槍を構えて物陰から身を乗り出す。
魔理沙は人肉が旨いのか食事に集中していて背を向けている。
仕留めるなら今しかないだろう。



「刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!!」

道下は宝具である鎗の真名を解き放ち、そして魔理沙に向けて投擲した。
だが魔理沙も気づいたのか幻想郷の弾幕ごっこで鍛えられた回避術があれば、戦闘の素人が投げた槍を避けることは容易い。
反撃としてマスパを放とうとするが、道下はそれを見た瞬間ニヤリと笑っていた。

「てゅわああああああああああああああああ!!!」

外れるハズの槍は誘導ミサイルのように魔理沙の心臓を穿った。
ゲイ・ボルグは因果逆転の呪いにより「心臓に槍が命中した」という結果を作ってから「槍を放つ」という原因を作る必殺必中を可能とする槍。
避けるのは回避能力ではなく幸運または槍の魔力を凌ぐ防壁のみ。
魔理沙は両方とも持っていなかった。
それでもテラカオス化による生命力の強化の為か心臓を貫かれてもまだ生きてはいたが、道下はトドメを刺す。

「メスは黙れ、そして僕らの心の中で生き続けろ」

心臓に刺さった槍を引き抜き、瀕死の彼女の脳天に槍を突き刺した。
今度こそ魔理沙は死亡する。
その時の道下の表情は狂信者のそれと何ら変わりなかった。


【霧雨魔理沙@東方project 死亡確認】


「魔理沙さん!? 何も殺すことはないじゃないですか――」
「大丈夫、君もすぐに僕らの心の中に生きることになるから」
「え?」
「(脳天に)お邪魔します」

暴走していたとはいえ仲間を殺されたことに憤慨する少女に、遠野は悪意のない笑顔と共に不意打ちで黄色い槍を彼女の後頭部から突き刺した。
槍は貫通して切先が口から飛び出し、少女は白目を向いて倒れた。脳と脊髄を破壊されたことによる即死である。
ちなみに黄色い槍の名前は必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)である。

【東風谷早苗@東方project 死亡確認】


942 : 神は死に 少年たちは次の扉へ :2018/07/09(月) 09:44:11 akRfeX2A0


「よし、彼女の死体をディパックに入れたよ」
「思わぬ収穫ですよ、彼女の死体を解析すればテラカオスの謎が解けるかもしれませんね!」

中程度のダメージは食らったが、見返りとしてテラカオスに近づくための検体を手に入れたホモども。
予想外に早くセルベリアからの依頼をこなせそうなことに意気揚々としている。

だがウカウカもしていられない。
自分たち以外の周りの参加者は魔理沙が焼き払ったが、遠くから騒ぎを聞きつけてきた別の参加者がやってくる足音が聞こえる。
魔理沙を殺した件は正当防衛で型がつき、早苗を殺害した瞬間も見られていないが、注目されると狂信者に所属していることがバレてしまう危険がある。
もう下北沢に居座ることはできなかった。

「思ったより短い滞在だったな……」
「よし、ホモ・アビスで脱出してビッグサイトに情報と死体を持ち帰りましょう!」

参加者が到着する前にホモ・アビスを装備しビッグサイトへ向けて飛び立ったホモども。

果たして彼らが持ち帰ったものがセルベリアと狂信者に何をもたらすのか。
それを知るGO(神)はノーデンスと同じく蒼の直撃を食らったことによってたぶんもういない。


GO IS DEAD & BOY♂NEXT♂DOOR



【二日目・19時00分/東京都 下北沢】


【道下正樹@くそみそテクニック】
【状態】ダメージ(中)、尻穴にダメージ(中)、偽装用首輪、飛行中
【装備】ゲイ・ボルグ@fateシリーズ、ホモ・アビス@機動戦士Zガンダム
【道具】支給品一式、四条化した魔理沙の死体
【思考】
基本:同志のためにもクラウザーさんを蘇らせる。
0:集めたテラカオスの情報と手がかりになる死体をセルベリアおばさんに持ち帰る
1:SATSUGAIする。
2:阿部さんや同志は僕の中で生き続けているんだ……。
3:テラカオスについては他の信者には黙っておく
4:遠野くんは大切なホモだち
※救済の予言を単なるデマと思っています


【遠野@真夏の夜の淫夢】
【状態】ダメージ(中)、尻穴にダメージ(中)、偽装用首輪、飛行中
【装備】ゲイ・ボウ@fateシリーズ、やわらかスマートフォン、ホモ・アビス@機動戦士Zガンダム
【道具】支給品一式
【思考】
基本 基本:同志のためにもクラウザーさんを蘇らせる。
0:集めたテラカオスの情報と手がかりになる死体をセルベリアおばさんに持ち帰る
1:SATSUGAIする。
2:先輩や同志は僕の中で生き続けているんだ……。
3:テラカオスについては黙っておく
4:道下さんは大切なホモだち
※救済の予言を単なるデマと思っています


943 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:11:07 YtyLJ3NE0
予約のイチリュウチームで予約します


944 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:11:36 YtyLJ3NE0
予約× 投下〇


945 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:12:20 YtyLJ3NE0
「クリスさん、クリスさん」
「……ん」

クリスが目覚めた時に瞳に映ったのは自分の先輩である風鳴翼とよく似た少女の顔であった。

「翼……先輩……翼先輩!?」
「良かった。目覚めたみたいですね」

クリスの次のリアクションは食人鬼として指名手配されている翼が目の前にいることに対する驚きであった。
それだけにツバサは翼にあまりにもよく似ていた。
顔はもちろん、声やシリーズを重ねる度にしぼんでいくように見える乳(フォローすると周りの発育が良すぎるだけ)は紛れもなく翼のそれである。
違いは銀色の髪を持っていること、SAKIMORIを名乗り年齢不相応にキビキビした翼よりもいくらか幼く見える雰囲気である。

「あんたは食人鬼……いや、やっぱあれは主催の嘘だったんだな。そうだろ?」
「……」

クリスの期待が混じった言葉にツバサはなんとも言えないという表情になる。
翼がテラカオスとして食人を行ったことは事実であることや、自分は翼と顔が似ているだけで彼女を素体にして産まれたテラカオスの更に分身・子供のようなもので翼本人ではないのだから。

「クリスちゃん……」

目覚めたクリスにシマリスが声をかける。
だがその声はどことなく元気がない。

「シマリス、どうしたんだよ元気ねえじゃねえか……それにここはどこなんだ?
あそこにいる連中は誰なんだ?」

周囲を見るとここは物置の中ではないことに気づく。屋外のようだ。
しかし時刻は体内時計換算で夜ぐらいだろうが、夜の暗さというには違和感の感じる暗さがあった。
いったいどこなのか?
そして周囲には覚えのない顔を持つ参加者がたくさんいた。
いずれも悲しそうな雰囲気を醸し出している。

「ゼクスや社長たちはどこ行ったんだ?」
「それは……」
「待ておチビちゃん、そこからは俺から言う」
「ベルナドットのオッサン、これはいったい……」

ツバサ、シマリスの後から遅れるようにベルナドットがクリスの前に顔を出した。
そして機械的すぎず感情的すぎずにありのままを語った。

「まず、ここは千葉県の浦安だ」
「千葉県? あたしたちは神奈川県の横浜にいる拳王連合軍に会いに行ったんじゃなかったのか?」
「お嬢ちゃんが寝ている内に事情が変わったんだ。
そいつについては後から話すが、俺たちは拳王連合軍じゃなくてイチローチーム改めイチリュウチームに身を寄せることになった」
「……ところで巨大物置はどこに行ったんだよ? ゼクスや社長たちは今どこにいんだ?」


「……物置は破壊され、ゼクスの旦那、Lの旦那、イナバ社長たちは狂信者に殺されたよ。クローントルーパーと避難民も一人残らず全滅だ。
お嬢ちゃんとおチビちゃんが探していた天子も、狂信者として俺たちを襲い、戦いの中で死んだ。
生き残ったのは俺たちだけだ」
「え……」

ベルナドットの言葉にクリスは凍りついた。


 □

クリスが気を失っている間に状況は動いていた。
まずアナキン組と物置組を含むイチリュウチームが合流を果たした。
アナキン一行、物置組など自分たちが知らない内に見慣れない仲間が増えていることにみんなが驚きつつも新たな仲間として受け入れられた。
そして自分たちの知らない内に命を落とした者たちに悲しみ悼むのであった。

暴走リオレウス制止と聖帝軍の救助及び偵察。
二つ同時に進められた作戦は事実上の失敗に終わり、待機組も犠牲を強いられた。
だがそれを責める者は誰ひとりいない。
全員がボロボロであり、誰ひとりとして遊んでいたものはいないのだ。
物置のモブ避難民1人すらも助けられなかったことに関しては皆が自分に責任があるとさえ思っていた。
ただただ犠牲になった物置組含む仲間たちの冥福を祈り、未だに帰ってきていないソウルセイバーの身を案じた。


946 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:13:03 YtyLJ3NE0




そして第六回放送の内容はアナキン一行や物置組も含んだイチリュウチームに衝撃を与えた。
ある程度はカオスロワちゃんねるやドラゴンネットワークで先に知っているとは言え、だ。
ユーノとなのはのカップルは預かり知らぬところでレオリオまで死んでいたことを悲しんだ。
サラと逃げている途中で放送に集中している余裕がなかったナッパは内容を後から聞かされ、サイヤ人の王子であるベジータの死に衝撃を受けた……彼が知る範囲での最強のサイヤ人はベジータだったために。
さらにベジータを殺した存在が目の前にいるお世辞にも強くは見えないユーノとくれば驚きも倍増である。
ユーノはサーシェスのように本来は持ち得ない力を持っていたとしてもだ。

「すまない……瘴気にやられてあの時は自分を制御できなかったんだ」
「私や仲間のみんなを守るためだったの! どうか許してあげて!」

ベジータの上司部下の関係であったナッパに謝罪するユーノとなのは。
だが、事情を聞いたナッパはそんな二人を恨むことはしなかった。

「謝るのはよせやい。
話を聞く限り悪いのはベジータだ。
おまえたちは自分の身を守るために戦うしかなかっただけじゃねえか。
ハス太ってガキもベジータが襲いかからなければ死ぬことはなかった」
「だけど……彼も妻を失って暴走していただけかも」
「女房を失って悲しいなら女房のためを思って心を強く持ち、殺し合いに立ち向かうべきだったろうに。
それがクラウザーの歌に酔いしれて仲間らしき男を裏切り殺し合いに乗るなんてプライドも女房を捨てたも同然の行為だ。
サイヤ人の恥さらしめ、奴にもう王子を名乗る資格はねえ!」
「……」
「……すまねえな兄ちゃん、嬢ちゃん。
俺の同胞の暴走を止めてくれてよ……むしろ仲間が死んだ件を謝るべきは俺の方だ」

ナッパはサイヤ人の誇りを捨ててクラウザーの歌に逃げたベジータを痛烈に非難する。
ベジータの実力を高く買っていたのだが、どうやら見込み違いだったと落胆している。
殺し合いと野球を通して人の強さや絆の素晴らしさを知ったからこそ、ベジータの弱さをナッパは許せず、ユーノに関してはベジータを止めてくれた男として敬意すら持っていた。

「レオリオさんまで死んじゃうなんて……」
「僕らが離れた後に聖帝軍の暴走ロボとの戦いが都庁にあった。
たぶんそれに巻き込まれたんだろう」

レオリオの冥福を祈るなのはとユーノ。
余談だが、彼らはレオリオを殺したのがベジータで、ベジータを本当に殺した相手が小町と桑原であることにはまだ気づいていない。


「しかし、オシリスがまだ生きていたとは驚いたぜ」

放送で拳王連合軍の主力の大半が死んだのと同じくらい嬉しいニュースがあった。
6/が今しがた口にしたオシリスのまさかの生存である。

「ホルと同じ神様ホルからね、下半身がちぎれただけで神特有の生命力で生きながらえてたのかもしれないホル」
「あの時僕たちがオシリスが死んでいると決めつけずにいたら……」
「イチローの旦那、そうは言ってもあんな巨体ミレニアム・ファルコンのどこにも積めやしない。
無理に載せたら重量オーバーで墜落しちまうぞ。あん時は仕方なかったんだ……ゼクスの旦那たちと同じでな」

オシリスの生命力の強さを知らなかったとはいえ、普通の生物なら死んでいてもおかしくない状況で生きていたことにイチローたちは驚く。
だからこそ戦地に置き去りにしたことが気がかりであったがベルナドットの意見も最もであり、船に積めないオシリスは飛行能力を失った時点で置いていくしかなかったのだ。

他にも主催が安倍から再びベイダーに戻ったなど、ベイダーの口々から(ブラフでなければ)裏切り者の安倍は粛清されたらしい。
どうやら主催も一枚岩ではなさそうだ。


「しかし、僕が一番気になるのは……」
「…………」

ユーノを始めとした視線が、指名手配されているハズの食人鬼『風鳴翼』と瓜二つである『ツバサ』に向く。
危険な食人鬼と恐れられた少女がイチローたちの窮地を救い、今目の前にいる。
疑いや奇異な視線を向けるな、という方が無理があった。
助けられたシマリスたち以外は。

「ツバサちゃんを信じて、この子は悪い子じゃないの!」
「いいの、シマリスくん……風鳴翼が食人行為をしていたのは事実なのだから」
「ん? まるで他人みたいな言い方で自分はやってないような言い方じゃありませんこと?」
「私は厳密には指名手配された風鳴翼の成れの果て、残滓なんです。風鳴翼から産まれた別個体なんです」
「??? 話ガミエマセンネ……」


947 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:13:32 YtyLJ3NE0

イチローの窮地を救った風鳴翼らしき人物……どうやら後で詳しい話を聞く必要がありそうだ。
念のため、アナキンとギムレーは別々の思惑の下、心を探るフォースと観察眼を用いてツバサの内面を探る。

(混沌の気質は持ってはいるが邪念は一切感じられない……混沌の体現である暴君テラカオスでありえるのか、こんなことが?)
(光と闇の属性を持ちながらも均衡が取れている……そんな感じが彼女からはする)

(感じられるフォースの波動……余計な不純物がなくなったせいで、内包する力は若干下がったが安定感は抜群のイメージだ。
前が放射能垂れ流しの原発なら、こちらは安定供給が約束された発電所だな)
(イチローや物置組への信頼度は高め……SやAのような愛だの恋だのはないが、彼女の方から友情を感じているのは本当のようだ)


((つまり、彼女は今のところ信用できる!))

奇しくも水面下で対立するアナキンとギムレーの答えは一致していた。



「みんな〜! 休めそうな場所発見したで〜!」

放送とツバサについて考察している途中で、一匹のモブドラゴンの背に乗ったはやてがやってきた。
彼女は他が考察に手を回している中でサラの配下であるアウラの民と共に周囲の偵察を行っていたのだ。
安全確保のための残敵の掃討や生存者の発見。
特にほぼ全員がダメージを負っているイチリュウチームは体を癒すための休憩所の確保と、ブリーフ博士による瘴気や風鳴翼の片手につまった「何か」の研究を進めるためには機材の揃った研究施設が一刻も早く必要であった。

偵察により浦安市内に狂信者の残党や危険人物がいないのは確認済みだが、同時にモブ参加者一人足りともも生存者がいないことがわかった。
ワイルドハント率いる狂信者部隊がイチリュウチームへの襲撃を完璧にするために作戦の障害となるモブをひとり残らず皆殺しにしたためだ。
街やモブが持っていた支給品も狂信者が全て回収しており、その回収した品はギムレーがワイルドハント部隊ごと焼いて灰にしてしまったので手に入らない。

その代わりアウラの民は休憩にも研究にも使える施設が一箇所だけ生き残っていることを知らせてくれた。

「アナキンさん、この先に大型の病院があるんや、そこなら休憩にも博士研究にも使えるで!」
「なるほど、でかしたよはやて。
だが、次の狂信者の襲来にも備える必要があるな」
「うう〜ん、当たり前やけど病院は砦になるように設計されてないし防備を固める必要があんねんね。
ギムレーさんもいるけど銃弾や砲弾が万が一に届かないとも考えられないし」
「手間がかかりそうだな、僕が改装して要塞化させようか」

病院は更地になってしまった浦安遊園地よりは屋根や壁がある分だけマシではあるが、砦にするには心もとない。
そこで機械に強いアナキンは防備を強化するために天魔王軍から奪った支給品を使って病院の防衛力を固めようとするが。

「いや、その必要はない」
「え?」
「ギムレー、何をするんだ?」
「みんな、ちょっと暗くなるが我慢してね」

ギムレーの器が指パッチンすると、ギムレー本体がその超巨大な体を使い丸くなるような形で浦安市を覆った。
そのようにすることでギムレー自身が狂信者やマーダーなどの外敵から仲間を守るシェルターとなり、攻撃も侵入者も入り込まないようにした。
中は光が射さないので真っ暗になるがそこは、浦安市で生き残っている施設の光でカバーすればなんとかなる。

「浦安市は完全に僕の体で覆った。
ネズミ一匹足りとも入ってくることはない。
アナキンも病院をわざわざ改装する手間が省けただろ」
「…………ああ、そうだね。仕事が減ってその分ゆっくりできるよ」

自分自身の肉体を使った完全かつ最速で防護壁を作り出したギムレーに対して仲間たちから賞賛の声が上がる。
アナキンも労力を節約できて嬉しかった。

というのは表向きは、ギムレーはアナキンが病院の要塞下を行った際、自分に有利な改装……例えば自分に不都合な参加者を抹殺できるように仕込まれる可能性があったので、回避策として自分の体を使ったのだった。
実際アナキンも目的の障害になる参加者の殺害こそ本意ではないが、自分に有理な改装を病院に施そうとしていたところをギムレーに止められた。
無理に改装を強行すれば怪しまれるので、ここでの軍配はギムレーに上がることになった。

「みんなボロボロだ。蛮に萃香、クリスちゃんもまだ伸びている。
善は急げだ。早いところ、病院に向かおう」

水面下で睨み合うギムレーとアナキンに気づかない一行は、イチローの言葉を皮切りに全員で病院へと向かうことになった。

 □


948 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:14:27 YtyLJ3NE0

病院にたどり着いた一行は病院に残された僅かな治療道具や、アナキンが天魔王軍から奪った回復薬全てを使い、体力を回復させた。
だが全員を全回復するほどの量や質はなかった。

「ホルゥ……ラミレスの足、サラの翼、ナッパの尻尾を治すのは無理ホルか?」
「残念だけど、そこまで質の良い薬がなかった」
「せめて切れた部位が残っていれば良かったんじゃが、全員なくしておるからの……傷口を塞ぐので精一杯じゃ」

「心配シナイデ、ホルスサン」
「気持ちだけで嬉しいですわ。野球をする分には問題はありませんし」
「俺は満月の光を浴びて大猿化できなくなっただけだ。
大猿化で賄ってた分の戦闘力は気合と根性でなんとかするぜ」

ラミレス、サラ、ナッパの失った部位の傷口は塞がってしまい、二度と取り戻せないかもしれないが、三人ともそれで落ち込むことはなくホルスを諭した。
そして部位の喪失などは治らないものの、怪我自体は確かに治り全員が戦闘ができるレベルには回復した。
特にナッパは何度も死にかけて回復すると戦闘力が格段に高くなる特性上、今までは感じられなかった体の軽さを感じていた。

さらにブリーフ博士とアナキンによってイチローたちの首輪も外され、戦闘力の制限はなくなった。

それにより……

「……イチロー!? ナッパ!」
「流石に首輪があるのとないのじゃ違うね。体がとても軽いよ」
「すげえぜ、元以上にパワーがみなぎってやがる」

特にイチローとナッパの纏う増大したオーラに、気を手繰れるタイプの者は思わずたじろぎそうになる。
その力はやろうと思えば地球を破壊できるレベル。
本気の投球なら地球に超巨大隕石をぶつける並の威力を発揮できる。
すなわち、超理不尽級実力者。

(この強さ、片方だけで邪竜として覚醒した僕と同格以上か! 敵でなくて良かった……)

レーザービームやジャイアントストームの最大火力は物理に75%・万能50%カットの耐性を持つギムレーすら直撃は致命傷になるレベル。
残った僅かな割合でもHPをゴッソリと持っていくダメージを叩きだすかもしれないからだ。
もし望めば残った日本の土地全てを破壊し、大災害が起きる前に世界を滅ぼすことも可能だろう。
二人が世界の滅亡を求める悪鬼ではなかったのは幸いだった。

なお高すぎる火力は味方を巻き添えにするリスクが発生するが、火力以外にも白兵戦能力・スピード・防御力も上昇している。
バットと素手だけでも生半可な実力者なら瞬殺できるだけの力はあるだろう。

「これでドリスコルのゼオライマーにも対抗できる……!」

イチローは瞳の中で冷血漢である狂信者のパイロット・ドリスコルにリベンジの炎を燃やす。
今は亡きゼクスは首輪の外れていないイチローではドリスコルに絶対に勝てないと言った。
首輪の有無による制限による実力差、理不尽級相手に対策を練られたスキル、そしてドリスコル自身の卑劣さの前に一度は敗北した。
しかし、首輪はなくなってゼオライマーと真正面から戦える力量は確保した。
後はスキルと卑劣な心に負けない作戦と勇気、仲間との連携であった。
6/やベルナドットなどゼオライマーとの戦いの恐怖を味わった者たちも、今度は勝てるかもしれないという期待の目をイチローとナッパに向けていた。


「なんだ? ここはどこだ?」
「イチロ〜、ドリスコルは、ゼオライマーはどこにいったんだ?」

イチローとナッパの強大な気を感じたためか長いこと気絶していた蛮と萃香も目覚めた。
さらに奥の方でクリスも目覚め、ツバサの存在やシマリス・ベルナドットの言葉に戸惑った後、嘔吐した。
誰しもが心配する中、ホルスが(巨乳美少女の異常事態と見て)いの一番に助けに入る。

「だ、大丈夫ホルか!?」
「たぶん、自分が人を喰っちまったことを思い出しちまったみてえだな」
「人を喰……ホルゥ!?」

ベルナドットがポロっと呟いた言葉にホルスは一瞬固まった。

「全部思い出したぜ……私は突然熱を出し、食欲が異常に湧いて、自分が抑えられなくなって糸目の避難民をこの手で殺して喰っちまったんだ……」
「クリスちゃん!」
「クリスさん、しっかり!」

思い出したくもない人肉の味を思い出し、気持ち悪さで吐き続けるクリス。
吐瀉物をよく見ると牛や豚では考えられない長い毛などが混じっていた。

「だが、アンタが……ツバサが私を助けてくれたんだ……気を失う最後の記憶にそこだけは残っているよ」
「クリスさん……」
「しかし、どういうことなんだ! 私は人の肉を食いたいなんて思ったことはない!
なのに……あの時だけ私は私じゃなかった! 誰か説明してくれよ!」

人を喰った罪悪感に苛まれるクリス。
皮肉にも食人鬼になりたての頃の翼と同じ後悔を感じていた。
違いは早々に救助されてズルズルと悪鬼の道に走ることはなかったということである。


949 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:15:44 YtyLJ3NE0


「うむ、集団全体で混乱が生じておるようじゃの。
ここで一旦、状況の整理に入るのはいかがなものかの?」

ブリーフ博士は病院のナースステーションから持ち出したであろうホワイトボードを全員がいる玄関まで引っ張り、あえて穏やかな口調でそう言った。


 □

イチロー・6/のグループは悪評を受けた聖帝軍の正体を確かめるために現場に向かった。
聖帝軍ロボットの歌のせいであまり近寄れなかったが、聖帝軍が都庁の者を手を組んでいるところを目撃。
それをオシリスが聖帝軍は悪逆集団の都庁と手を組んだとみなし、遠まきから戦場に残った手勢を始末しようとした。
その結果、ドリスコルの乗るグレートゼオライマーの奇襲を受けてオシリスがやられる。
イチローたちと物置組は必死に戦ったが勝つことはできず、大半の物置組を犠牲にして漸く逃げることができた。
浦安の手前で天子率いる狂信者部隊の追撃を受け、ロビンフッドとレックス他クローントルーパーが犠牲になるが、キングストーンの力に覚醒したツバサのおかげで辛勝した。


ナッパ・サラ・ソウルセイバーの三人は暴走したリオレウスを止めるために拳王連合軍がいる横浜港まで止めに行った。
しかしリオレウスは復讐を果たすために狂信者まで使い、足止めを行う。
この際にソウルセイバーは狂信者の囮になるために一時離脱、死亡放送は流れていないのでまだ生きていると思われるが……
結局、リオレウスに追いつくことはできず、リオレウスは横浜港に毒ガスを撒く暴挙に出る。
だがなぜか毒ガスは不発。リオレウスはボコボコにされていた。
ナッパとサラは救助に入るが、熱斗・ダイアー・タクアンと言った拳王連合軍の主力を挫くも敗走。
リオレウスも助け出すことができず、後に翔鶴に惨殺される結果になった。


ラミレス・ギムレーらは遊園地の待機組だ。
実働部隊であるイチローたちの代わりに情報収集を行っていたが、収穫は大きかった。
ギムレーが邪竜の力で沖縄に現れた驚異を感知、これに立ち向かうための戦力を作り出すのが救済の予言の目的であると推測した。
また、カオスロワちゃんねるに投稿されたレスや動画の不審点から都庁を危険のない集団だと看破する……これに関してはアナキン組との接触で大当たりとなった。
アナキン組との接触で人を怪物に返る瘴気の存在を知り、首輪解除の恩恵も同時に受ける。
そしてサーシェスを生みだしたとされる瘴気を消すためにウルトラマンゼロの力が期待されたが……狂信者の奇襲によりDAIGOとダイゴ諸共ゼロが死亡。
日本中の瘴気を消す手段はない……と思われた。


アナキン、なのはとユーノ、狸組は元々は個別のグループであったが渋谷109で合流。
合流前にユーノが都庁の地下でベジータの襲来により怪物化、なのは以外を敵としか認識できずに殺してしまう。
アナキンは主催の手先であるニャル子を捕まえて捕虜にした。
狸組は主催拠点である九州ロボに潜入し大災害の原因らしいTCや主催人員の情報を得て、都庁への接触により瘴気に纏わる情報と瘴気を解き明かすための食人鬼・風鳴翼の切断した腕という検体を得た。
都庁の協力もあって首輪解除も可能になった。
そして更なる情報を求めて国会議事堂にたどり着くが、そこで天魔王軍と遭遇戦へ。
天魔王軍は自分たちの悪行を都庁に擦り付けた集団であり、おそらく警察組を壊滅に追いやった真犯人である。
戦いは有利に進んでいたと思われたが度重なる不運により一転攻勢されはやてとブリーフ以外が猛反撃を受けて死亡。
だがアナキンの助太刀のおかげで天魔王軍は全滅した。
狂信者のせいで捕虜だったニャル子を失うも渋谷109へ退避し、そこで運良くなのはとユーノと合流。
その後はアナキンの提案でイチリュウチームと合流することに。
なお、TCや主催陣営の情報は、掲示板で都庁の世界樹=ヘルヘイムの誤解をはやてが解こうとした際にクラウチングされたらしく爆破されて無くしてしまった。


物置組の残党もといゼクス組は狂信者に襲われている中で物置という名前の高性能シェルターの司令官であるイナバ社長と出会い救われたところから話は動き出した。
イナバ社長はゼクスたちに救済の予言を持ち出し、世界を救って欲しいと言った。
またイナバ社長はイチリュウチームを始め、まだ世間には知られていない別の予言を知っていた。
一方で物置組は別行動を取っていたダイジョーブ博士は拳王連合軍が風評被害に踊らされただけの対主催を物置組に教えると同時に、都庁の世界樹=ヘルヘイムであるということを誤解を拡散してしまった。
とりあえずダイジョーブ博士と合流し、拳王連合軍が本当に安全なら同盟を組むつもりだったが、そこでツバサを追っていた謎の集団に襲撃される。
なんとか逃げ延びたものの、今度はイチローたちと戦っていたドリスコルや天子に目をつけられてしまい、多くの仲間を失った。


950 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:17:22 YtyLJ3NE0


最も謎の多い少女・ツバサ。
見た目はそっくりであるが風鳴翼とは別個体であるらしく、彼女を素体にして産まれたテラカオス・ディーヴァの残滓。
ありたいに言えば、風鳴翼の子供とも言える存在だ。
風鳴翼及びディーヴァ時代の記憶はほとんどないが、捕食で世界を救おうとしたこと、都庁での悪い思い出、沖縄で敵が現れ敗北したこと、夢で出会った男の話は覚えている。
都庁での悪い思い出は食人マーダーだったので迎撃されて痛い目を見たと思えば間違いないだろう。
問題なのは沖縄に現れた敵『シャドウ』のことであり、どうやら混沌の因子とは違う力を振りまいており、そのせいで沖縄は崩壊寸前となっていた。
おそらくTCであり、テラカオスである彼女しか対抗できなかった。
だが何らかの事情で敗北、シャドウはより力をつけて母体となったディーヴァを撃破した。
恐るべき、参加者共通の敵である。
ツバサとして転生する寸前に夢の中で最初のテラカオスを名乗る男にテラカオス因子を集めるように頼まれ、物置組と合流した。
そこでテラカオス因子が(瘴気の力も手伝って)暴走し食人鬼となっていたクリスを発見し、因子を吸収する特殊能力で元の人間へと戻した。
テラカオスとは人の中に眠る混沌の因子を集められ、TCにも耐えられる特別な存在らしい。
食人行為も因子を集めるための手段だったと思われる。
産まれたばかりで当初は状況に翻弄されるしかなかったが、ディーヴァ時代より引き継がれたキングストーンの助力により覚醒しイチローの危機を救った。
さらにキングストーンに教えられた一部記憶により、『ディーヴァ』として捕食による誤った救済の道を辿らずに『ツバサ』として別の救済の道を行くことを決めたのだという。



「――こんなところだろうかの」

ブリーフ博士が仲間たちの話を元に情報をまとめたが、場はかなりざわついた。
自分の知りえぬ情報、特に自分たちの考えを根底から覆す情報にはどよめきを隠せるわけがなかった。

「都庁がヘルヘイムじゃないって本当でぃすか!?」
「危ねえ……オシリスの奴が早とちりで女ロボットを狙撃したら危うく都庁との開戦が確定するところだったぜ……」

都庁は純粋な対主催――
イチローの部隊と物置組は都庁=悪の集団の話を真に受けていたために、都庁と直接接触したはやて・ブリーフの話には衝撃を受けていた。
物置組はしばらく交戦回避するつもりだったのでまだ良いが、6/が頭を抱えたようにオシリスが攻撃を加えたなら最後対主催同士の戦争が始まったであろう。
都庁へ向かったらしい聖帝軍に関しては情報不足なのでなんとも言えないが、おそらくこちらも風評被害のレッテルを貼られた対主催集団である。


逆に。


「拳王連合軍……やっぱりロクでもない奴らだったのか」
「私が疑っていた通りだよ!
イチローたちの仲間の竜を殺すだけじゃ飽き足らず、バラバラにするなんて人の所業じゃねえ!」
「拳王連合軍が安全という情報を物置組に、ヘルヘイムの情報を、ほぼ同時期に全国に発信したダイジョーブ博士も死んでいる。
たぶん拳王連合軍に有利、これから戦うであろう都庁に不利な情報を発信させて利用した挙句に殺されたんだろうね」

拳王連合軍は大バッシングを受けていた。
特に物置組出身のクリスは仲間が騙されたことによる怒りが大きい。
ユーノの推理では拳王連合軍に接触した時にダイジョーブ博士を騙すか洗脳するかをして利用し、自分たちはまっとうな対主催と言い張り、敵には孤立化を与えるためにヘルヘイムの情報を世界に拡散させたのだと思われる。
ダイジョーブ博士が消えたのは横浜港から離れた位置だが、時限式の爆弾を車に付けられていたと考えれば暗殺も想像しやすい。
そうでなくともリオレウスをバラバラにしたことにイチリュウチームは憤慨していた。約一名を除いて。

「俺はそうは思わねえ」
「ナッパ様……」
「みんな聞いてくれ、俺はリオレウスを助けるために奴らに攻撃を仕掛けた。
その際に俺は奴らは仲間を庇い合い、仲間の死に悲しむ様子を見たんだ。
俺は拳王連合軍が冷血な奴らとは思えねんだ」

ナッパは横浜港の戦いで見た。
深く傷ついたタクアン眉毛の少女をマッチョな男が悲しみながら駆け寄り、熱斗が白髪の少女をリオレウスの攻撃から庇う瞬間を。
ナッパにはそれを見たことで拳王連合軍が血も涙もないヒャッハー集団ではないと信じたくなった。
だが……仲間たちの反応は冷ややかであった。

「なるほど、血も涙もないってことはねえらしい」
「じゃあ!」
「だが、それだけでは拳王連合軍が悪逆非道ではない証拠になりゃしないさ」
「蛮?! だが奴らはお互いを庇いあって……」
「ナッパ、身内には優しいが部外者には排他的な汚い連中なんてわんさかいる。
仲間を守りあったのも互いの利用価値があるから今は失いたくないってだけともとれるしな」


951 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:17:53 YtyLJ3NE0

蛮はナッパの拳王連合軍善人説を否定する。
それを認めたくないナッパは自分が知った真実を突きつける。

「撒かれた毒ガスも消えたんだ。放っておいたら横浜港が壊滅するレベルのな。
きっと拳王連合軍の奴らが何かしてくれたんだ」
「自分たちにとっても危機とあらば動く。その手の事態に対処できる支給品があったんだろう。
そもそも止めた方法やメンバーがわからないということは、関係ない誰かさんが止めてくれた可能性もある」
「それは……」
「リオレウスの件は仲間を殺されたことに対する怨恨・報復と考えられないことでもない……が、それを証明する手段がないのも事実。
そして、敵とはいえバラバラ死体にすれば関してどのような心境を周囲が抱くか容易に想像がつく。
気の弱い民衆が怯えるくらい想像つくだろ……一人ぐらい止めようとしなかったのか」

一息間をおいて、蛮なりに拳王連合軍がどういう存在かを分析する。

「拳王連合軍は本当に対主催かもしれないが、俺らや都庁とは違う。
周囲への被害や世間の目をまるで気にしちゃいない手前勝手なトラブルメイカー。
確かに狂信者のような悪と戦っているかもしれないが、同時に奴らは弱者を助けていないんだ。

今までの破壊は手違いによるもの?
緑間とのび太などは明らかに奴らの過失、誤解を解くより犠牲者に謝る素振りを見せるべきだろ。
ホワイトベース組とは和解した? 集団の2/3を殺してからの和睦は制圧って呼ぶんだ。
ダイジョーブ博士が何者かに殺される可能性を考慮して護衛ぐらいつけなかったのか?

悪意がないならないであまりにも浅慮がすぎる。
どんな思惑を抱いてようとも、こんな奴らと一緒に戦おうものならイチリュウチームの評判もガタ落ちになるな」
「評判如きで拳王連合軍を切り捨てようというのかよ?」
「評判が落ちればイチリュウチームも対主催に狙われるハメになるぞ!
四六時中狙われたら野球の試合や救済の予言どころじゃなくなる!」
「う……それは……」
「これ以上、敵を増やしたくないなら例え善人であっても拳王連合軍と手を組むのは得策じゃない。
『世界のため』なら仕方ないと割り切るしかないんだろうよ……」

蛮の解答は拳王連合軍が仮に対主催であったとしても、同盟は組まずに見捨てる冷徹かつ合理的な判断であった。
実際、イチリュウチームが拳王連合軍と仲良しこよししようものなら、チームの世間的評価は間違いなくだだ下がりである。
向こうからは無実の訴えをしているが、全ての証拠は疑われる側の口から出たことであり、無実説も辻褄は合うには合うが拡大解釈をすればでまかせとも考えられる。
せめて和解したらしいホワイトベース組の誰かが生きていれば事実確認もできるが、残念ながらホワイトベースは1人を残して全滅してしまった。
もし世界を救う気があるのなら拳王連合軍は信用してはいけない……これにはナッパ以外の全員が頷いた。

「まあどのみち、向こうとの戦いは十中八九避けられないだろうがな。
最低でも二、三人ぐらいの面子をこちらの攻撃で殺している。
それでリオレウスを殺すに飽き足らず解体するぐらいに頭に血が上った連中だから報復は必ずしてくる。
先ほどギムレーが宣戦布告を行ったし、仕掛けてくる可能性は濃厚だ」
「………くッ」
「ナッパ、てめえを責めるつもりじゃねえ。
リオレウスを助けるためにあの時は攻撃するしかなかったんだろ?
ただ、拳王連合軍との戦いは避けられないとだけ思ってくれ」

ナッパだけでも不本意でありながら拳王連合軍の少女を1人殺害し、熱斗がリオレウスに殺されるきっかけを作った。
ギムレーは邪竜化に際し堂々と宣戦布告を行った。接触すれば報復戦争を仕掛けてくるだろう。
しゅんとした様子でナッパはサラのいる席の隣に座り、悔しげな表情で呟いた。

「サラ……俺は取り返しのつかないことをしたのかもしれねえ」
「ナッパ様、気を確かに」

カオスロワちゃんねるの情報は確実性に欠けるのは確かだが、拳王連合軍だけ例外的に動画による状況証拠が揃いすぎている。
動画にはきらりんロボ暴走時のように工作をされた痕跡もない。
そうでなくとも外部への配慮に欠けているのは事実なのだ。
ナッパ以外で拳王連合軍の味方につく者は誰もいなかった。


952 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:18:23 YtyLJ3NE0




――テラカオス、そして救済の予言。
そしてイチリュウチームに最も大きな進展を持ち出したのは物置組の持っていたもう一つの予言とツバサの存在であった。

「マサカ予言ハ他ニモアッタトハ……」
「『聖別によって抑止の神は生まれ、しかし滅びの化身との戦いに敗れ、抑止の神の力を奪い取った滅びの化身は三千世界を滅ぼし尽くすであろう』ホルか」
「救済の予言と照らし合わせると聖別は殺し合い、抑止の神は化身、滅びの化身は僕が感じた沖縄に現れた驚異のことだろう……だいぶ見えてきたな」

新たな予言により、頭の回る者は救済の予言の目的とテラカオスの必要性が見えてきた。

「……えっと、つまりどういうことだ?」
「さっぱりでぃす!」

混乱気味のクリス・シマリス他数名に対し、ユーノが答えを示す。

「良いかい? 今までの話をよく思い出して。
テラカオスは瘴気をばら蒔かれた殺し合いの中で産まれた。
沖縄に現れたシャドウという存在は大災害の発生原因であるTCを纏っており、これはテラカオスにしか耐えられなかった。
そして二度目の大災害が迫っている世界で必要なのは、TCを吸収できるテラカオスということになる。
まさに抑止の神というべきだろう……だけどイナバ社長の持っていた予言ではそのままのテラカオスだと滅びの化身に負けてしまうらしい……」
「事実、私の母体であるディーヴァはシャドウに負けました。
世界はまだ大丈夫ですが再戦しても勝てる気がしません。キングストーンの力があっても」
「そのための強化プラン及びコントロール手段が救済の予言なんじゃないのかな?」

奇しくも少し前に都庁同盟軍と聖帝軍が導き出した答えとほぼ同じ解答をイチリュウチームは手に入れた。

「よくわかったけどテラカオスに頼る以外の方法はないの?
殺し合いに頼らない解決策はなかったの?」
「残念だがなのはくん、そればかりは無さそうじゃ」
「え?」

テラカオスに頼る以外の解決策もあるのではないかと疑問に思ったなのはに対し、一つの日記をパラパラと捲っていたブリーフ博士が答えた。

「博士、それは?」
「難しすぎてとても読めないということでベルナドットくんから譲られた『TCホール観察日記』じゃ。
著者は科学都市ニルヴァーナ出身の阿笠博士と弟子のヒート博士。情報の信頼はできる。
彼らによるとTCとは全ての生き物に必要不可欠じゃが、過剰摂取すると大半の者が破裂。生きていても存在が狂ってしまう摩訶不思議なエネルギー。
むしろ世の摩訶不思議を可能にさせたエネルギーとも言っておくか。
非生物にも作用するようなので、これが原因で大災害が発生したのは確実じゃ。
TCホールとはTCを適量に撒くことで宇宙を安定させているホワイトホールにして源泉。
この源泉が何らかの理由で暴走したからこそ大災害が発生したと思われる」
「大災害はテラカオスしか抑えられないんですか?」
「源泉が暴走した場合、この宇宙にある全ての生き物が死滅する。
日記上ではテラカオスのことは一行も書いてなかったが、それは著者二人が知らないだけで古代人はテラカオスだけが耐えられると知っていたんじゃろう。
たぶん古代にも大災害があったんじゃろう。
現状ではテラカオスだけが大災害に対抗できる鍵と言える。
時間があれば他の選択肢もあるんじゃろうが、もう大災害は目前に迫っておる。
模索しようにも世紀末と化したこの世界で新技術の開発を行うならば百年はかかるじゃろうしね。大災害が待ってくれないのじゃ」

次の大災害がいつ発生するかまでの具体的な時間はわからないが、TCの塊である化身が地上に降り立つぐらいなのだからそんなに長く時間は残されていないだろう。
もはやテラカオスによるTCホール暴走の食い止めだけが地上に残された手段であった。

「しかし、わからないのは何で予言がこんなにばらけてんだ?
一個にしちまえば後世の俺たちも謎解きが楽だったのに、古代人も気が利かねえ。
そもそも世界規模の危機なら現代まで情報を残せよなあ」
「ナッパの旦那、古代人が大災害を食い止めた後も絶対に平和に過ごしていたとは限らねえ。
戦争で大事な物品が破損したりあっちこっちへ移動したりすることはよくあることだ。
遺物だってそれは同じだし、日本自体も世界大戦を経験済みの中で遺跡がまったく被害を受けなかったとは考えづらい。
情報が残らなかったのは……身内同士で争っている間に紛失したり、コストに見合わなくて研究を途中放棄したんだろ。よくある話だ」
「ああ、そうとも考えられるか」
「憶測の域は出てないけどな」

ベルナドットの憶測はある程度までは、当たっていた。
実際古代人同士が戦争を起こしたことが原因で予言以外を基本的に残すことができなくなったのだから。


953 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:19:04 YtyLJ3NE0

「ひょっとして、ベイダーたち主催陣はこれを知ってて殺し合いを使ってテラカオスを作り、世界を救おうとしていたホルか?」
「TCを知っているところからして考えられないでもないけど、あくまで自分たちだけ生き残るためって可能性も否定できない。
第一、予言にとって大事な野球選手を保護するルールも作ってない。
巫女や勇者みたいな他の者は揃えているとしても、野球選手を守ろうとしないのは釈然としない
救済の予言を完遂できてないテラカオスは世界を救えずとも、ほんのひと握りの人なら助かるかもしれないしね」
「(ユーノくん、えらく感情的やなあ……)
うう〜ん、主催幹部を1人でも捕まえないとなんとも言えへんなあ。
意外とテラカオスの特性や作り方だけ知っていて、救済の予言だけ知らなかったりして」
「まさか! 一番情報を持ってなきゃいけない主催に限ってそんなことあるハズない」
「…………そうだね」

主催には間接的に友や恋人の娘が殺された挙句自分が怪物にされたこともあり、ユーノの主催への目線は苛烈なものであった。
なお、はやてが適当に出した言葉は当たっており、すぐそばにいるアナキンが一瞬だけジト目になったが誰も気付かなかった。



「ここまできて漸く救済の予言やテラカオスの存在意義もわかってきたけど」
「儀式は野球しかないとして、巫女・器・歌・勇者はまだ何かわからないんだよな……」
「言うなれば数学の公式で答えだけできあがって、式を埋める正しい因数がわからない状態じゃな。」

この世界にテラカオスが必要なことや、大災害を乗り切るにはテラカオスに加えて救済の予言が必要なことはわかった。
一方で救済の予言の中身である儀式(野球)以外の答えはわかっていない。
四つは拡大解釈すればいくらでも当てはまってしまうだけに明確な答えが出ないのだ。
そして都庁と違い、彼らには答え合わせをしてくれる上位存在は現れなかった。

「都庁がどれだけ知ってるかわからないけど、合流した時にどこまで知ってるか聞くしかないか……」

救済の予言に関してはイチリュウチーム内部で解き明かすにはこれ以上は無理であった。
イチローが呟いたように、都庁が自分たち以上に予言を解き明かしていることを信じ直接会って聞くしかない。



「考察については一旦区切ろう……ツバサ、準備はそろそろできてるか?」
「ええ、整いました」

各対主催組織・救済の予言の考察が一頻り終わったところで、アナキンの言葉によって話は打ち切られ、メンバーの目線がツバサとユーノに向く。
ツバサの手にはいつの間にか太陽のような輝きを纏っていた。

「ユーノさんのテラカオス因子は根が深い。
クリスさんの時と違って受け入れ態勢に時間がかかったけど、これであなたを因子の暴走から解放できる」
「喜べユーノ、さっきはゼロが死んでできなくなってしまったが、彼女の力ならば君を救うことができるぞ」
「やったねユーノくん!」
「ああ、やっとこの体にかけられた呪いから解放されるのか……」


954 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:19:40 YtyLJ3NE0

さっきは浄化者の死という不運によりできなくなってしまったが、ツバサに因子を吸収されることでテラカオス化が治る希望にユーノもなのはも喜んだ。

ちなみに主催のアナキンはツバサによってユーノのテラカオス化が治ることには前向きに考えていた。
これはユーノの中にあるテラカオス因子が消えるのではなくツバサに移ることによって、彼女がテラカオスとしての完成体に近づけるからだ。
ユーノも有望なテラカオス候補者だったが暴走の危険が強く、今後暴走されると予言に必要なイチリュウチームを試合ができないレベルまで壊滅させられる危険が有る。
幸いにもツバサは通常のテラカオスと違い理性を保っており、暴走の危険がない。
制御できない二よりは管理できる一。
暴発する危険があるユーノより危険の少ないツバサを完成に近づけた方が無難と見て、ユーノの因子やナノマシンを吸収させることにした。


「痛くはないハズですが、動かないでくださいね」
「わかった」

周囲が見守る中でツバサはユーノに向けて手をかざす。
するとユーノの中から黒い靄――因子とナノマシンが現れ、ツバサに吸収されていた。

「……思ったより侵食が激しい、今まで暴走しなかったのが不思議なくらい」
「え?! それって大丈夫なの!?」
「いや、治しきるのに時間がかかるだけです、あと3分はかかるかも」

ユーノのテラカオス化はかなり深刻であった。
水面下で育っていった因子はベジータ戦での覚醒に始まり、蓄積された戦闘ストレスにより仲間たちが気づかない内に育っていた。
それももうすぐ終わろうとしている。

(ツバサに因子を吸引される度に体が人間に戻っていく……僕は人間に戻れるんだ)

穏やかな表情をしているユーノの瞼の裏に移るは、なのはと将来を共に歩める未来。
フェイトとヴィヴィオたちこそいなくなってしまったが、その悲しみを幸せで埋めていける、そんな未来を思い浮かべていた。













―― セ カ イ ヲ カ オ ス 二 シ ロ






「これは!?」
「なんだと!?」

ツバサとアナキンの驚くような言葉、そして周囲のどよめきが聞こえてユーノが目を開くと。
驚くべき光景がそこにはあった。

最初はツバサの方がユーノのテラカオス因子(黒い靄)を吸っていた。
それがいつの間にやら逆流し、ユーノの方がツバサのテラカオス因子を吸っていた。
まるで吸引した分を取り戻すように……


955 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:20:58 YtyLJ3NE0

「痛いッ!」
「翼先輩!?」
「吸った分の倍の量の因子が、吸収し返されてる!」

訂正、吸収した以上の量の因子がユーノの方へと流れ込んでいた。
その影響かツバサの腕にヒビが入り、血のような因子がにじみでる。

「これは……まさか!」
「ツバサ! 吸引を中止しろ! 早く!!」

何かにきづいたギムレーとアナキンは急いでツバサに因子吸引を中止させる。
指示に従うことでツバサの因子がユーノへの流出も止まった。
一方でツバサとユーノは苦しそうだ。

「ツバサちゃん、その腕……」
「大丈夫、怪我そのものはキングストーンの治癒能力でなんとかなる。
問題なのは失ったエントロピーと因子がそのままになっている……」

ツバサの腕の怪我は本人曰く大したことはなく、すぐに治る。
だがユーノに逆流した因子等が戻らずに、ユーノのものになってしまった。

「ユーノくん! ユーノくん! しっかり!!」
「世界をカオスにしろ世界をカオスにしろ……その言葉で頭が割れそうだあ!」

ユーノは床に倒れ頭を抱えて悶えていた。
なのはは誰よりも心配そうにユーノに駆け寄り、そして救い主になると信じていたツバサを責めた。

「これはどういうことなの!?
あなたならユーノくんを救えると信じていたのに!!」
「私にも何がなんだか……」

恋人が助けられるどころから余計に苦しむ様を見て感情的になったなのはに涙声混じりの罵声を浴びせられて困惑するツバサ。
そんな二人にアナキンとギムレーが仲裁するように割って入って考えを述べた。

「落ち着くんだなのは、ツバサは何も悪くない!」
「これはきっとユーノがテラカオスになることによって得られた固有能力に起因するものだ!」
「どういうことなの?」

「ユーノはエネルギーを『増幅反射』する……逆にエネルギーを吸引するような攻撃を受けるとそれを『増幅反射』する。
すなわち因子を吸い出そうとすると、吸われた倍の量の因子を吸い返すんだ」
「ユーノの意思は関係なく、体の方が勝手にね」
「じゃあユーノくんは……」

不安になるなのは、彼女についで不安になる仲間たちの視線を受けながらアナキンとギムレーは残酷な解答を提示した。



「ツバサの能力じゃ、ユーノを助けることは絶対にできない」
「それどころか吸引による浄化もおそらくダメ、ルナミラクルゼロのように外部から作用する浄化技も聞くか怪しい。
彼を救える能力者はおそらくいな――」

ギムレーが台詞言いかけた瞬間、なのはは精神的ショックで倒れた。

「なのは!」
「なのはちゃん!」
「イケマセン! 誰カ彼女トユーノサンヲ病室ヘ!」

近くにいるハズの仲間たちの言葉が、なのはにはとても遠くに聞こえた。


 □


956 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:21:32 YtyLJ3NE0

「ここは……?」
「気づいたようだね、なのは」

なのはは気が付くと、病院内のベットの上にいた。
隣のベットにはユーノが横になっている。
なのはは自分がユーノを助けられないという衝撃的な事実に卒倒してしまったことを思い出した。

「あれから何時間寝ていたの?」
「15分程度、そんなに時間は経ってないよ」
「そう……ごめんなさい」
「謝ることはないさ、僕となのはの立ち位置が逆だったら同じリアクションを取っていたと思う」

涙を流すなのはをユーノは諭すように微笑む。

「いや、全部私のせいだよ」
「え?」
「今思えば、私がユーノくんが怪物化したことを千年タクウで見たのにありえないと勝手に思い込んで黙っていた。
都庁の怪物に寝取られることばかり気にしていたせいでユーノくんを怪物にしちゃった……
都庁の方にはユーノくんの病気を治す手段があったかもしれないのに!
ハス太くんやレオリオさんが死んだのも私のせいなんだよ、きっと!」

なのははただ、千年タクウがもたらした情報を信じず、または触手レ〇プばかりに気を取られてチャンスを逃したことを後悔していた。
ユーノが今苦しんでいるのは全て自分の過失によるもの、そうとしか思えず、自分を責める。

「……なのはのせいじゃないさ、運が悪かっただけだよ」
「ユーノくんは、自分が助からないと思うのに怖くないの?」
「僕はブリーフ博士やアナキン、サラを信じてるからね」
「え?」
「なのはが気絶している間に、技術に優れた人たちが僕を助けるために瘴気や因子に効く薬を作るんだってさ」

 □


957 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:22:00 YtyLJ3NE0

ここは病院にある研究室。
過去に都庁から貰い受けた風鳴翼の片腕を検体に三人は機材を使って研究をしている。

「博士……ユーノの能力は増幅反射ですが、薬でなんとかなるものなのでしょうか?」
「できる……彼はシャドウの驚異を肌で感じとった時、暴走しかけたが睡眠薬で一時的にでも眠らせることはできた」
「ということは外部からの浄化はダメでも、薬のような何部からの浄化ならなんとかなるということでしょうか?」
「推論じゃがね。今後そのようなテラカオス化に見舞われる参加者が出ないとも限らんし、瘴気の正体解明と同時に特効薬を作り出そうとおもう」

イチリュウチームで科学知識に優れたブリーフ・サラ・アナキンの三人は特効薬を作ることを目標に研究を開始する。
大災害までに因子を集めたいツバサとしては消されると困るが、ユーノのように外部からの浄化を受け付けない存在がいる可能性を考慮して、彼女とは違う浄化の手を考え出さねばならなかった。
特効薬を使うのは最低限の人数ならばという条件で、ツバサも承諾した。

ブリーフはもちろん、サラも乗り気でありセコセコと研究のための腕を動かしている。
一方、アナキンは内心乗り気ではなかった。

(ツバサがユーノの因子を吸収してくれるなら嬉しかったが、それができないとは……
ツバサも万能でない以上、予備のテラカオスが作れなくなる特効薬作りは気乗りしないな)

テラカオスとしては最も完成に近いツバサも万が一、死亡するケースもある。
ならばユーノのような予備のテラカオスがまだ必要なのだ。
もしかするとテラカオスとして完成するのはツバサよりユーノである可能性も捨てきれないため、ユーノにはまだテラカオス候補者である必要がある。

(どうするべきか、手伝うフリをして妨害するか?
ユーノに特効薬を与えるフリをしてこっそり偽薬でも与えるか?
他の謎解明のためにも研究者であるどうするべきか……)

下手な行動をすると仲間たちに怪しまれる。
今、浦安市は邪竜の体で覆っているので正体がバレると脱出が困難。
そうでなくとも予言に必要な野球選手や、テルミが死んで情報を聞き出せなくなった以上、ブリーフやサラのような謎を解いてくれそうな研究者を手放すのは惜しい。


(それにしても……似ているな)

ふとアナキンは先ほどの、ユーノとなのはのやり取りを思い出す。
なのはの有様はまるでパドメを助けられなかった過去の自分に似ていた。
恋人を必死に守るためになりふり構っていられない様が正に過去のアナキンそのものであった。

一瞬、アナキンの脳裏にユーノのテラカオス化だけ諦めるという選択肢が現れる。

(ユーノだけ見逃し、特効薬を作り出せばイチリュウチームから信頼されて僕を疑うギムレーを攪乱できる。
だが、テラカオス候補者自体が貴重……ギリギリまでどうするか見極めるべきか)

ユーノを助けて信頼を得るか、ユーノを見捨てて未来の安全を取るか。
シスの暗黒卿の悩みどころであった。

「…………ん?」
「アナキン様?」
「どうしたアナキンくん?」
「いや、なんでも」

色々考えていたアナキンだったがフォースで何やら感知したようだ。

(見張られてるな……そんなに僕が信用ならないかギムレー)


 □


958 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:22:30 YtyLJ3NE0

病院の玄関口。
突然のなのは気絶のハプニングにより考察や今後の計画を一時中断したイチリュウチームだったが、ユーノ、なのは、アナキン、サラ、ブリーフの五人がいない中で再開する。

その前に萃香はギムレーの指示に従って『密と疎を操る程度の能力』を使用し、全身を霧にして浦安中を覆った。
彼女はかつて異変を起こした際にこのように体をして幻想郷を覆って住民を監視していたこともあり、生きた大規模監視カメラになることも可能だった。
チート能力すぎたためにこれまでは制限のせい一切できなかったが、首輪がなくなったおかげで可能になった。

「ギムレー、指示通りに浦安を覆ったぞ。今のところ怪しい影はなしだ」
「ご苦労、ユーノや博士たちは?」
「大丈夫、暴走の気配はないし、博士たちも順調に研究に励んでいるよ」
「そうか」

萃香という頼もしい警備員から異常がないことを聞くギムレー。
浦安は自分の体で覆って物理的な侵入ができないとはいえ、万が一を考えて萃香に見張りをさせた。
彼女の監視化ではマーダー一匹入り込むことはできまい。
またユーノが暴走する危険や、萃香には伝えてないがアナキンが裏切る可能性を考慮しての監視係でもある。
久保帯人の時のような遅れは取らないつもりであった。

「さてと計画を練ろうか」
「今、私たちがやるべきことはこれぐらいやな」

ブリーフからホワイトボードを借りたはやてが書記係として記入していく。


〇ブリーフ博士たちが瘴気に関する特効薬を作り出すまで待つ(確定)

〇救済の予言の更なる解明
 まだ謎だらけな『器・巫女・歌・勇者』の正体を突き止める

〇上記のために都庁との接触、主催幹部の捕獲も考える

〇拳王連合軍・狂信者の具体的な討伐計画

〇状況から察するに狂信者に囚われたと思われるオシリスの救助

〇ツバサにテラカオス因子を集めさせ、『救いの神』にする
 沖縄に現れたシャドウを撃破させ、ツバサに大災害の原因であるTCホールの暴走を止めさせて世界を救わせる


やることは多く、未だに解明できてない部分も多いが、テラカオスであるツバサの出現やTCの正体が判明しただけでも大きな前進と言えた。
式はできてなくとも解答だけは見える、あとは因数を解き明かすだけとも言え、希望はいくらか見えた。


「あー、ちょっと良いか?」

再び会議を開始する前にベルナドットが一枚の紙を持って、ホワイトボードの前に来た。

「どうしたんや、ベルナドットさん?」
「たった今、Lの旦那から渡されたメモを読んでさ、気になることが書いてあったんだ。
なんだか今度を左右し、今までの常識を覆しかねない情報もあるかもしれないから伝えておく」






「カオスロワちゃんねる、誰しも一度は使った奴がいるだろ?
――その裏にとんでもねー闇が蠢いているとしたら、おまえさんたちは信じるか?」

ベルナドットの手にはLから死に際に託された一枚のメモが握られていた。

 □


959 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:23:03 YtyLJ3NE0

場面は戻り、なのはとユーノがいる病室。
二人は今

一つのベットの上で『愛し合って』いた。


「ユーノくんは怖くないの……?」
「本当は怖いさ、今も頭の中には『世界をカオスにしろ』って言葉がうるさく聞こえてきて、気を抜くと頭が変になる……でもね!」

年不相応どころか大人並に頭が回るユーノだが、あくまで青年の姿をしているだけで中身は10にも満たない子供。
本当は怪物化が進行していく体が怖くてたまらない。

「だけど僕ははやてたちを信じている。
きっとあの人たちなら僕の病気を治し、元の人間に戻してくれると信じている。
……頑なに信じなきゃ、不安で押し潰れそうになる、君と歩む未来を失うんじゃないかと」
「ユーノくんユーノくん!」
「君は僕の希望なんだ! 君がいるからこそ僕は僕を保っていられる!」

ユーノは愛するなのはがいるからこそ、自分を見失わずに済んでいた。
少なくとも肉体は言うことを聞かなくても精神はまだ死んではしなかった。
なのはが生きている世界という現実……それだけがユーノが絶望しないための最後の砦であった。
テラカオス化はしれいないなのはにとっても、ユーノがいるからこそ自分を保てた。

「なのは、絶対に最後まで希望を捨てずに生き残ろう!」
「うん、ユーノくん!」
「全てが終わったら結婚して……二人で平和に過ごそう。
そのために僕は諦めない、諦めてたまるものかよ!」

愛しあう者を抱くたびに不安が少しずつ消えていくなのはとユーノ。
テラカオス化? そんなの知るかと言わんばかりに唇と体を重ねていく。





だが二人は気づいていない。
その病室の内装がかつて二人で抱き合った『ホテル』とほぼ同じであることに。


ついでに言うと霧になって病室を見張っていた萃香にラヴュラヴュしているところをバッチリ見られていることにも気づいていない。


【二日目・19時30分/千葉県 浦安市 病院 玄関】
※都庁同盟軍が危険な組織でないことを知りました。
※イチロー・6/・蛮・萃香・ナッパ・サラも大災害がこの世界に迫っていることを知りました
 大災害の原因であるTCについても知りました
※救済の予言にある化身の正体がテラカオス、滅びの化身がシャドウ、予言の目的がテラカオスの強化だと知りました
 ただし、器・巫女・歌・勇者に対する明確な答えがわかっていません


【イチロー@現実?】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小) 、非常に強い悔しさ、首輪解除
【装備】野球道具
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止
0:会議を続ける
1:DMC狂信者を倒すために多くの仲間を集める
2:邪魔をしてくるDMC狂信者を倒すまでは試合は保留
3:予言に対しては慎重に考える
4:DMC狂信者の本拠であるビッグサイトを攻略したい
5:主催者は予言のことを知っているんだろうか?
6:オシリスが生きているなら助けに行きたい
7:できるならドリスコルだけはこの手で討つ
※ネオ・レーザービームは使用すると腕に多大な負担がかかり、あと二球以上使用すると選手生命が終わる危険があります
 いかなる回復手段を持ってもこれは回復できません

【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、怒りと悲しみ、首輪解除
【装備】胡桃1500個
【道具】支給品一式、メタグロス、コルトパイソン
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:今は会議に集中
1:ハラサン……ありがとう
2:大正義を忘れない
3:目立つことも忘れない
4:予言に対して盲信気味
5:DMC信者は絶許。本当に絶許
6:なんかシマリスから俺と同じ臭いがする
7:ダイゴ、死んだみんな、すまねえ……
※ダイゴのポケモンであるメタグロスを預かりました
 しっかり操れるかは不明


960 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:23:39 YtyLJ3NE0

【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、首輪解除
【装備】サングラス
【道具】支給品一式、マスターソード、魔竜石、リザイアの書、不明品
【思考】
0:会議に参加する
1:DMC狂信者、その他マーダーと達と戦う
2:狂信者の中でもドリスコルだけは特に許さねえ
※邪眼を一回使いました


【伊吹萃香@しゅわスパ大作戦】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、気絶中、顔が赤い、強い悲しみと怒り、霧化中、首輪解除
【装備】なし
【道具】支給品一式、日本酒×50
【思考】
基本:イチリュウチームについていく
0:霧になって浦安を見張る
1:KBTITとかいうクソホモは忘れる
2:なのはとユーノが抱き合ってる件はみんなに秘密にしておこう


【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、尻尾切断(処置済み)、野球脳、激しい怒りと悲しみ、首輪解除
【装備】病衣
【道具】なし
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:会議に参加する
1:野球を邪魔するDMCは許さない
2:また多くの仲間が死んじまった……自分の無力さが不甲斐ない
3:生きていてくれソウルセイバー!
4:拳王連合軍は本当に悪逆集団なのか?
※回復したため、戦闘力がとても大幅に上昇しました
※一瞬だけスーパーサイヤ人化しました。これからいつでも変身できますが本人は気づいていません


【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【状態】右足切断(処置済み)、監督といて生きていく決意、首輪解除、深い悲しみ
【装備】野球道具一式
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:会議ヲ続ケル
1:コレカラハ監督トシテガンバッテイク
2:オ、オシリスサン……生キテタノ?
3:都庁ノ噂ガ誤解ダッタコトダケハヨカッタデス
※イチリュウチームの監督になりました
※首輪解除により、常人よりも屈強な野球選手本来の力を取り戻しました
※足がどうにかなれば、戦える可能性があります


【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【状態】健康、悲しみ、首輪解除
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:世界を救うためにイチローについていく
0:会議に参加するホル
1:死んでしまった奴らのためにも頑張るホル!
2:都庁に儚げな巨乳がいるなら、向かってみてもいいかもしれない
3:ええ乳持ち(ry ソウルセイバーの無事を祈る
4:ホルもソウルアーマーを遺したくなるよう人に会ってみたいホル
5:できればそれは巨乳の女の子が(ry 特にクリスやなのは、はやてみたいなええ乳の(ry
6:ツバサも乳があればなあ……


【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒】
【状態】健康、人間形態、シャドウだった者へ若干の恐怖心、首輪解除
【装備】トロンの書、鋼の剣、邪竜ギムレー
【道具】支給品一式、不明品
【思考】基本:自分以外がもたらす破滅(未来の大災害)の阻止
0:まずは会議をし、今後の計画を練る
1:『正確な』情報を集めて仲間をフォローする。アナキンは要警戒だが今は誰にも話さない
2:試合の邪魔をするDMC狂信者を倒すために、本拠であるビッグサイトを攻略したい
3:都庁がまともな場所と判明したのは僥倖。変態の巣窟でも文句はないさ
4:西の邪悪な気配は警戒を続ける
5:ネット上の乳神に若干嫉妬
6:ツバサこそ大災害から世界を救う鍵かもしれない
7:そういや最近ドラゴンネットワーク繋いでないや、そろそろ繋ぐか
8:オシリスは救助したいが少し厳しいか……?
※外見はデフォルト設定の銀髪青年です
※首輪を外したとしても、屍兵は簡単には生み出せません
※首輪解除により、人間の姿のまま、自分自身である邪竜ギムレーを操れるようになりました
※現在、邪竜ギムレーの体を使って浦安市を覆うことでシェルターとなって外敵の侵入や攻撃を防いでいます
 『通常手段』での突破は容易ではありません


961 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:24:15 YtyLJ3NE0



【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】健康、完全TC耐性、キングストーンにより変身可能、首輪なし、若干エントロピー減少により弱体化
【装備】キングストーン
【道具】リボルケイン
【思考】基本:テラカオスの因子を集める。この力で守れるものを守る。
0:会議に参加する
1:どうして人はあんなに残酷に殺しあえるんだろう……
2:Lさん、ゼクスさん……貴方達の犠牲を忘れません。
3:私にも救えない人がいたなんて……
※ディーヴァが持っていた能力はキングストーン以外が使用不可。
※一度、テラカオスになったことにより完全なTC耐性を保持、テラカオス候補者のTCを回収できます。
※死んだことによりディーヴァの性格を引き継いでいません、これからどうなるかは不明。
※記憶を大半喪失していますが、生みの親の名前、風鳴翼が捕食で世界を救おうとしたこと、都庁での悪い思い出、沖縄で敵が現れ敗北したこと、夢で出会った男(才人)のことは朧げながら覚えています。
※仮称としてツバサという名前が与えられました
※ユーノに吸収された因子とエントロピーは通常手段では回復できません
 他者の因子を吸収することによってのみ回復します


【シマリス@ぼのぼの】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、天子を救えなかった悲しみ、首輪解除
【装備】胡桃×1500
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:仲間と共に生き残る
0:会議に参加するでぃす!
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:衣玖さん、ごめんなさいでぃす……
4:クリスちゃんとツバサちゃんは友達でぃす!
5:6/さんを見ているとなぜかホッとする


【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】健康、首輪解除、悲しみ、嘔吐によって気分不快
【装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:会議に参加する
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:もっと強くなりてぇ
3:未だにツバサが翼でないと信じられない
4:寝ている間にゼクスたちが死んでたなんて……
5:天子を助けられなくてごめんな、衣玖……
6:拳王連合軍にはやっぱクソだわ
※テラカオス化が進行していましたがディーヴァの残滓によって回収され正常に戻りました。

【ピップ・ベルナドット@HELLSING】
【状態】健康、首輪解除
【装備】自動式拳銃×2、M16
【道具】支給品一式、スピーダー、手榴弾×25、ノートパソコン、カオスロワちゃんねるに関する考察メモ
【思考】基本:バトルロワイヤルを生き残る
0:会議に参加、まずはLが残した考察メモの内容を明かす
1:生存確率が上がりそうなので今はイチローについていく
2:制限がなくなったイチローやナッパを見るにドリスコルにも勝てる気がしてきた
3:予言はそれなりには解明できたな

【八神はやて@魔法戦記リリカルなのはForce】
【状態】健康、精神不安定、非処女、死んだ仲間たちへの深い悲しみ、アナキンへの好感度(大)、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、夜天の書@魔法少女リリカルなのは、アナキンからもらったピルケース
【思考】基本:死んだ仲間たちの為にも主催を倒す
0:会議に参加する
1:主催者打倒と大災害阻止のために、情報と仲間を集める
2:他の参加者の都庁=ヘルヘイムの誤解を解きたい
3:恩人であるアナキンに特別な感情
4:ユーノとなのはが心配
5:アナキンさんとブリーフ博士ならきっと特効薬を作れるで!
6:シグナムまで死んでしまうなんて……
※主催側が大災害について何か関与していると考えています(細かい部分は分かっていません)
※カオスロワちゃんねるより、風鳴翼の情報を少し入手しました
※アナキンの正体に気づいていません
※世界滅亡(次の大災害)と救済の予言の内容を知りました
 また、沖縄の天候がおかしくなっていることに気づきました


962 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:25:12 YtyLJ3NE0
【二日目・19時30分/千葉県 浦安市 病院 研究室】

【サラマンディーネ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
【状態】両羽喪失(処置済み)、首輪解除
【装備】なし
【道具】一人用ポッド、スクーナー級×500、ガレオン級×30
【思考】基本:対主催
0:瘴気を研究し、特効薬を作る
1:イチリュウチームについていく
2:滅亡を止めたいとは思うものの、予言に関しては未だ懐疑的
4:リオレウス様……
5:ナッパ様の髭が一瞬だけ金色になったのを目撃しましたがあれは一体……
※予言には主催者も関わっていると推測しています
※ブリーフ博士が首輪解除を先に行ったため貯めていた首輪やスクラップを破棄しました
※アウラの民の指揮権が戻りました

【ブリーフ博士@ドラゴンボール】
【状態】精神疲労(中)、深い悲しみ、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、機材一式、風鳴翼の右腕、TCホール観察日記
【思考】基本:対主催
0:瘴気を研究し、特効薬を作る
1:ユーノのようなテラカオス化の犠牲者はどうしても助けたい
2:対主催参加者と出会えたら、首輪を外す
3:恩人であるアナキンを信頼
4:亡くなったブルマや殺生丸くんたちのためにも技術者として戦い続ける
※首輪解除が可能となりました
※風鳴翼の右腕は四条化細胞とナノマシンの塊です。うまくいけば抽出できるかもしれません
 現在いる病院なら抽出・研究が可能
※情報交換により、風鳴翼(テラカオス・ディーヴァ)の能力の一部を知りました
※情報交換により、謎の物質(ナノマシン)の存在および危険性を知りました
※アナキンの正体に気づいていません
※世界滅亡(次の大災害)と救済の予言の内容を知りました

【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【状態】健康、不安、若返り、ジェダイ風衣装、首輪解除
【装備】邪剣ソウルエッジ&聖剣ソウルキャリバー@ソウルキャリバーシリーズ
【道具】支給品一式、四条化細胞入りカプセル、ライトセーバー@STAR WARS、闇のルビー、ギンガスパーク@ウルトラマンギンガ、ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、大量の不明支給品(アナキン確認済み/回復薬なし)
【思考】基本:世界を救うためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:瘴気を研究し、特効薬を作るをするが場合によっては……
1:対主催への信頼を得るためにブリーフ博士やはやてを利用する
2:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは消す
3:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
4:ユウキ=テルミが死んだので予言を解き明かせる科学者や知恵者はなるべく殺したくない
5:いざという時は四条化カプセルで新たなテラカオスを作る
6:沖縄のフォースから世界の破滅の危機を察知。色々と急がねば……
7:萃香に見張られていることに気づいている
※タイムふろしきで若返ったのでピーク時の姿と力を取り戻しました


963 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:25:32 YtyLJ3NE0


【二日目・19時30分/千葉県 浦安市 病院 とある病室】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
【状態】精神疲労(大)、19歳の身体、深い悲しみ、首輪解除、全裸
【装備】レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、千年タウク@遊戯王
【道具】なし
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:今はユーノくんとひたすらに愛し合う
1:死んでしまったヴィヴィオたちのためにもこの殺し合いを終わらせる
2:救済の予言で世界を救えるのかな?
3:都庁に行ったエリカたちが心配
4:ユーノ君がいれば何も怖くない……と思っているけど……
5:博士たちが作る特効薬に期待
6:落ち着いたら玄関に戻る
7:レオリオさんまで亡くなってしまうなんて
※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※未来の自分が使っていた技の一部が使用可能です

【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
【状態】疲労(中)、精神疲労(特大)、19歳の身体、テラカオス化進行度(特大)、首輪解除、全裸
    今はなのはのこと以外考えられない
【装備】なし
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:今はなのはとひたすらに愛し合う
1:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい
2:救済の予言の謎を解く
3:野田総理の死の原因を探りたい
4:いかなる理由があってもなのはを悲しませた主催者たちは絶対に許さない
5:沖縄に『敵』がいると本能で感じている
6:博士たちが作る特効薬に期待するしかない
7:頭の中で『世界をカオスにしろ』という言葉が反芻してるが、なのは愛で自己を保っている
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※PSP版の技が使えます
※テラカオス化進行によって巨大フェレットに変身する能力を得ました
 あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます
 ただし現状では変身すると暴走状態に陥り、敵味方に関係なく襲い掛かります
 またTCを扱うシャドウの危険を本能的に察知できます
 この能力のせいでツバサによる吸引やフォレスト・セルによる浄化を受け付けません(逆にエントロピーを吸収します)
 物理的破壊や薬による経口摂取は効く可能性はあります
※TC値と救済の予言の内容を知りました
※まだ自分が完全なテラカオスにはなっていない=元に戻れる可能性を知りました
※ツバサの因子を吸ったことで肉体になんらかの影響が出るかもしれません


964 : ◆LYp5adl2nU :2018/07/19(木) 12:26:34 YtyLJ3NE0
投下終了です
タイトルは I&YOU(哀と憂) でお願いします


965 : ぐだぐだ築地市場 :2018/07/24(火) 11:37:29 LmqVg4XM0
辛くも驚異のヤンデレキモウト深雪の魔の手から逃れたクロエ。
しかし狂信者のテリトリーから脱出できたわけではない。

彼女が今いる地点は築地。
ビッグサイトからあまり離れていない場所。

(クッ……狂信者が多い……隠れながら進むのは骨が折れるわ)

流石に右も左も狂信者なビッグサイト内部と比べればマシだが、狂信者の本拠地が近い位置だけに通り道になりやすく道中に狂信者は多い。
本来のクロエの実力ならばモブ狂信者など屁でもないが、今は深雪に負わされた怪我のせいで戦闘力が落ち込んでおり、モブといえど数押しで来られた場合は苦戦必至である。
故に見つからないように隠れながら移動していたが、そのせいで中々ビッグサイトから距離を取ることができなかった。

(早くイリヤのいる都庁のヘルヘイムへ行かなければいけないのに!)

時間が経てば経つほど狂信者は軍勢を整え、都庁への侵攻を始める
その時にはルルーシュや深雪も都庁攻めに加わる可能性は濃厚だ。
ルルーシュの他人を意のままに操るギアスの力や、氷を使った魔法を使う深雪の戦闘力は驚異の一言。
いくら都庁が絶大な戦闘力を持っていたとしても事前情報なしでは犠牲は確実。
特に深雪の性格を考えると確実にイリヤを殺しに来るだろう。

(都庁が三度目の侵攻を受ける前にいち早く情報を持ち帰る必要がある!
早く行かなくちゃ……)

だが一秒でも早くイリヤと合流しなければという焦りが出てしまった結果、一瞬だけ注意力を欠いてしまい、狂信者とバッタリ出くわしてしまった。

「ゲッ」
「あなたは」

桃と黒のシンフォギアを纏ったカギ爪団の1人、レジーナである。

(まずい……戦闘やむなしか!)

正面戦闘では手負いのクロエの方が明らかに不利。
それでも交戦は避けられないと思い身構えるクロエ。

「大丈夫!? 怪我しているじゃない!」
「へ?」
「誰にやられたの? 敵はどこ!」
「えっと……」

(こいつ、私を狂信者だと思い込んでる?)

ここは狂信者の勢力圏。
普通の参加者が歩けるのがおかしいのだ。
また、深雪による情報が狂信者内にまだ拡散しきっていないのか、クロエは手配されていない。
そのためレジーナはクロエを狂信者仲間だと誤認していた。

「今から回復魔法唱えられそうなモブを連れてくるから待ってて!」

これはクロエにとって嬉しい誤算である。
シメシメと思った彼女はレジーナを欺くために嘘をつく。

「その前に侵入者の排除が先よ……あの建物の屋根の上を見て」
「屋根? どこにいるの?」


966 : ぐだぐだ築地市場 :2018/07/24(火) 11:38:19 LmqVg4XM0

当然、屋根の上に狂信者の敵などいない。
全てはレジーナに背後を向かせるための算段である。
レジーナに狂信者仲間として保護されたところでビッグサイトに戻されるだけなので意味はない。
声を立てさせない内に暗殺する必要があった。

暗殺のやり方は単純明快。
適当な嘘で騙され、隙を見せたレジーナに背後から喉を切り裂くだけ。
レジーナが気づいていない内にクロエはこっそりと干将・莫耶を投影する。
周りに人影は無し。
暗殺は成功度は高い。


――ハズだった。

「え? なに!?」



彼女の失敗は目撃者となる人影がいるかいないかの確認ばかりに気を取られすぎたこと。
そして近くにあった『無人のバイク』が唐突に動き出すなどの、想像力に欠けていたことである。

「きゃあ!?」
「ええ?!」

無人のバイクはそのままクロエの側面から衝突し、クロエの体は衝撃によって築地の店の中にドンガラガッシャンと突っ込んだ。
レジーナは狂信者仲間がいたハズの背後で起きたアクシデントに狼狽す。
そこへ騒ぎを聞きつけた狂信者にして装者である切歌が駆けつけた。

「レジーナ!」
「切歌! これっていったい……」
「サイドバッシャーが言っていた『怪しい奴』ってそいつのことデスよ!」
「嘘……」
『俺がいなかったら危うく死んでいたところだぞ』

『サイドバッシャー』と名乗る喋る黒いバイクの忠告により、切歌とレジーナは築地に狂信者とは思えない怪しい奴がいることを教えられた。
夜の暗さも手伝ってレジーナは今まで気づかなかったが、最初の目撃者であるサイドバッシャーが近くにいたことで暗殺は阻止されたのだ。

「痛てててて……よくも!」

バイクにはねられたクロエであったが、なんとか致命傷だけは回避した。
正体がバレた以上はもはや戦いは避けられないと思い、半壊した店から出てくる前に英霊エミヤを模した衣装に変身。
そして短期決戦を仕掛けるべく、宝具を使った絶技『鶴翼三連』で一気に切歌たちを討とうとする。

「山を抜き、水を割――」
「遅いデスよ」
「は」

ところが、処刑鎌型のシンフォギアを操る切歌はそれよりも早かった。
ギアの暴走状態をコントロールするイグナイトモジュールの使用によって切歌のパワー・ディフェンス・スピードは通常形態よりも格段に強化されている。
少なくとも戦う前から重症、未強化、首輪を解除していないクロエでは勝てる道理はなかった。

待っているのは残酷な結末である。

クロエの眼前まで飛び込んだ切歌は手始めにクロエの右腕を鎌で切断。
次の刹那には返す刀で左腕を切断。
クロエの腕の付け根から噴水のような血(魔力)が噴き出す。

「い、いやあああああああああああ!!」
「レジーナを騙して殺そうとしたのが仇になったデスね!
私は今、ムショーに腹が立っているデスよ!」

友を騙して殺そうとした相手に切歌は怒りのまま、トドメを刺さんとする。
燃えるような殺意と狂気を瞳に宿し、イグナイトモジュールによって悪堕ちした魔法少女にしか見えないデザインのスーツ、それが自分の返り血を浴びている様子は、クロエには自分を殺しに来た死神にしか映らなかった。

「いやだ、イリヤ……」

恐怖で引きつった顔をしたクロエの首は、イガリマによる最後のひと振りにより体から切断されてポロリと落ちた。
しばらくするとクロエの遺体はただの魔力として消え去り、首輪だけがそこに残った。


【クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 死亡


967 : ぐだぐだ築地市場 :2018/07/24(火) 11:39:31 LmqVg4XM0




「危なかったわ、ありがとう切歌、サイドバッシャー」
「全てはクラウザーさんのためデスから、サイドバッシャーもそうデスよね?」
『おう、そうだな』

狂信者の敵をSATUGAIできてご満悦な切歌・レジーナコンビ。
戦果報告として二人はクロエの首輪を持ち帰り、サイドバッシャーに相乗りしてビッグサイトに帰還しようとする。


さて、読者の皆様は覚えているだろうか?
切歌とレジーナを助けたバイクであるサイドバッシャーの正体を。


――テラカオス化により無機物への憑依能力を得た草加雅人である。

そんな彼がどうして狂信者の味方をしているのか?
クラウザーさんを信望した……わけではない。

サイドバッシャーとして新生した彼は、合流できる勢力を求めて各地を走り回った。
ところが都庁・聖帝軍・拳王連合軍は悪い噂しかなさすぎて各所から狙われる、物置組は壊滅、イチリュウチームは物理的にボロボロ。
どこも接触は危険であり、生き残った対主催で草加が安心して戦力集めとできるところなどありはしなかった。

どこと合流すれば良いんだと考えあぐねていたところ、草加はイチローたちとドリスコルの乗るグレートゼオライマーの戦闘を遠目で見た。
イチローたちさえ圧倒するゼオライマーの戦闘力……あの力さえあればメーガナーダだけでなく、自分に立ち塞がる敵全てを抹殺できると思った草加は考えた。

グレートゼオライマーに憑依できれば俺って無敵じゃね? と。

戦闘力だけでなく、狂信者の目的はクラウザーさんの復活である。
その技術を奪えば自分も再び人間として復活できるだろう。
蘇生できれば寿命問題も解決である。
ついでに言うと人間として復活できないと真理と結婚できないので、乾巧という恋敵が消えた今が最大のチャンスなのである。

そして草加は対主催との合流は諦め、マーダー集団である狂信者入りすることになった。
前にバドが「狂信者って行動に矛盾点多すぎ(意訳)」とか言っていたが、草加には関係ない。
頭おかしかろうが何だろうが、利用価値があるものを徹底的に利用するだけである。
自分優先の彼によって組織の善悪やスタンスなどどうでもいいのだ。

ひとまず草加は騙せそうな狂信者を探す。
その過程でコソコソしているクロエを発見し、自分を狂信者入りさせるための『生贄』に選ぶ。
偶然を装って築地を見回っていた切歌・レジーナコンビに彼女のことを教え、クロエ殺害の手助けをした見返りに狂信者入りすることができたのだ。

なお、切歌とレジーナには自分のことを死亡したモブ狂信者が使っていた支給品で、自立AIが搭載されたロボットバイクだと吹き込み、元の持ち主のためにクラウザーさんを復活させたいと嘘を言った。
また、自分のことは草加ではなくサイドバッシャーだと名乗った。
これは本名を名乗ってしまうと放送で草加の名前が呼ばれているので怪しまれる危険があるからである。
どこにカオスロワちゃんねる管理人やその手先がいるかわからないということもあった。

何にせよ、二人の少女を騙し通せた草加はまんまと狂信者入りすることができたのである。
あとは格納庫へ向かい、ゼオライマーに憑依できれば戦闘力をゲット。
会場のどこかに潜んでいるカオスロワちゃんねる管理人を抹殺し、あわよくば狂信者による蘇生手段さえわかれば草加の天下である。



『ところでさあ、切歌ちゃんとレジーナちゃんは狂信者の中で怪しい動きをする奴はいなかった?』
「怪しい人デスか?」
『ああ、さっき殺した奴みたいに仲間を騙して入り込んでいる奴がいると怖いからね』

もしかしたら狂信者の巣窟であるビッグサイトにカオスロワちゃんねる管理人が潜んでいる危険を考慮して、二人に内部のことを聞いてみた。
ちなみに大災害の原因や管理人そのものについては切歌たちには喋っていない。
切歌やレジーナを仲間として認めていないのと、自分やバドを殺そうとした手先である可能性が捨てきれないからだ。

「う〜ん、さっきの不届きものみたいな一時的に人を騙す奴ならともかく、狂信者に長くいる人の中からは考えにくいデスね。
松ちゃんはじめ、みんなクラウザーさんのために真面目にSATUGAIしてるデスし……う〜ん」

切歌は仲間である狂信者から裏切者がいるなぞ考えたくなかった。
狂信者への裏切りは人類全ての希望(切歌目線)であるクラウザーさんへの裏切りに等しく、そんな悪い奴がいるなど考えたくもなかったのだ。


968 : ぐだぐだ築地市場 :2018/07/24(火) 11:40:02 LmqVg4XM0


「いや……私1人知ってるかも」

仲間を信じたい切歌がレジーナの発言にギョっとする。
草加もまた管理人を見つけ出す手がかりかもしれないと耳を傾けた。

「レジーナ、それってどういうことなんデス」
『教えてくれないか?』
「たった1人だけ、狂信者の中にフラっと現れてそれまで何の功績を上げたわけでもないのに不自然に慕われていた上に、いつの間にか仲間内の中で一大グループの長になった奴がいるの」




「現・カギ爪団のリーダー。仮面の男であるゼロよ」





【二日目・19時09分13秒/東京都 築地】


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】疲労(小)、決意、首輪解除
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:ビックサイトに戻る
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については大いに失望
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※サイドバッシャーを支給品と思い込んでおり、正体に気づいていません


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】健康、首輪解除
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:ビックサイトに戻る
1:クラウザーさんの為にすべての人や魔物をSATSUGAIする
2:切歌に友情を感じている
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
※月読調のギアの装者になりました
※サイドバッシャーを支給品と思い込んでおり、正体に気づいていません


【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】サイドバッシャーに憑依、テラカオス化進行(中)
【装備】サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】カイザギア@仮面ライダー555
【思考】
基本:生き返る方法を探す・カオスロワちゃんねる管理人を殺す
0:狂信者の支給品としてビッグサイトに潜入し、グレートゼオライマーに憑依する
1:0が済んだら蘇生手段も手に入れる
2:とりあえず、乾巧の仕業にする(カオスロワちゃんねる管理人以外)
3:今年のカイザの日も祝いたい
4:仲間にする奴には大災害の原因や蒼(TC)の件を教えておく。狂信者は様子見してから。
5:怪しいゼロの正体を探る。管理人だったら殺す。
6:乾巧が死んだので真理は俺のもの!
※大災害発生の原因とカオスロワちゃんねるの危険性を知りました
※テラカオス化によって得られた能力として無機物への憑依能力を得ました
※生き返れるタイムリミットは(作中時間で)残り55.5日です。
 再憑依のペナルティとして、一回につき蘇生タイムリミットが9.13〜55.5日まで減少します。
※テラカオス因子によって魂を現世に繋いでいるため、フォレスト・セルやツバサの治療を受けると問答無用で死にます
※カイザの日はテラカオス因子とは関係ありません


969 : 名無しさん :2018/07/24(火) 22:53:04 vaFW9w4o0
投下乙です
ルルーシュ本人の知らない所で徐々にピンチになってね?


970 : 名無しさん :2018/08/10(金) 20:34:43 oeN/p.7k0
ID:UjPEDzS60「ガクッ…」

ーーーーーーーーーーID:UjPEDzS60死亡ーーーーーーーーーー


971 : 名無しさん :2018/08/10(金) 21:05:03 oeN/p.7k0
俺「暴れてやるンゴwwwwwww」

【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】 死亡
【レジーナ@ドキドキプリキュア!】死亡
【草加雅人@仮面ライダー555】 死亡
【ID:oeN/p.7k0】死亡


972 : 彡(^)(^) ◆AcSt49DSmc :2018/08/30(木) 18:50:24 48MvmIr.0
彡(゜)(゜)「そろそろワイの出番やな」


973 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:19:47 wWlHLZk.0
放送が始まる直前の九州ロボの宮崎区画。
かつてテルミが破壊したミヤザキの遺跡はビッグライトで巨大化し、覆った物の時間を巻き戻すタイム風呂敷の力によって無事復元された。
そして入口に入っていこうとするジャック・Oとメフィラス星人の二人。
だがその前に二人の目線は入口近辺に放置された物体に移る。

「なにかでかい岩みたいな生物が死んでますね」
「ある任務で見たことがある、竜のバサルモスだ。
どうやら岩と勘違いされた首輪の付け忘れがこんなところにいたらしい」
「しかし、妙ですね……テルミに殺された割には切り傷も打撲も何もない……」
「死体の状態からしてついさっき死んだもののように新しすぎる」
「まさか、テルミや安倍のシンパや危険な部外者がここに潜んでいるとでも?」
「可能性は十分にある。警戒はするべきだろう」


【バサルモス@モンスターハンター 死亡確認】
死因:ドラゴンネットワークを介したシャドウによるTCの流し込み


バサルモスはオオナズチに情報を流して間もない頃、シャドウがオシリスを騙ってドラゴンネットワークにバラ撒いた、ウィルス(蒼)に脳をやられて死んでしまっていた。
そうとは知らないジャックとメフィラスはいつでもココや紫の救援が呼べるように注意しつつ遺跡の中へと飛び込んでいく。
幸いにも彼らが遺跡探索をする内は、彼らに牙を向く存在は一つもなかった。


「おや……? こんなところに隠し扉が――」











「全ての残存参加者が大阪から退避または死亡全滅しました」
「もう良いわね、フロワロに汚染された大阪を焼き払うわ。
ダークザギ、バリアで周囲を囲った後にライトニング・ザギよ」
『了解』

一方、九州ロボのコクピットではココとモブ兵士、もといダークスパークによって召喚された悪のウルトラマン・ダーグザギが黒いフロワロに覆い尽くされた大阪を見据えていた。
耐性の無い生き物の肉をも溶かす大阪にはもう生存者は一人もいない。
ココは九州ロボの砲台を操作し、ダークザギは花粉が飛ばないように大阪を障壁で囲った後に光線技を放つ。
一斉発射された暴力の嵐は大阪をフロワロごと完膚なきまでに破壊し、数分で日本の地形から消滅することになった。
そのまま焼くと飛び散るであろう花粉もまた、バリアの中で一挙に焼却された。

完全なマップ破壊であるが、これは黒フロワロを他の県に伝播させない手段である。
大阪は拳王連合軍とWB組の戦いや貧乳歌姫による黒フロワロの汚染によって殺し合いが終わった後でも復興不能。
ならば生き残っている土地を残すためにも切り捨てた方が無難だろう。
参加者も近畿が禁止エリアに制定されたために随時脱出しているため、殺し合いの影響もあまりなかった。
そして大阪府を犠牲にした見返りに黒フロワロは完全にこの世から消滅したのだった。

「これでフロワロは良しと」
「そちらは終わったようね」

九州ロボのコクピットにスキマを使って紫が現れる。

「紫、メガへクスとbiimはどうだった?」
「biimは『今更再走したくない』と二つ返事でOK。
メガへクスは裏切る素振りを見せたり、自分を捨て駒にしたら即離反する、という条件で了承したわ」

このカオスロワをゲームに見立てているbiimはともかく、メガへクスとしてはプロジェクト・テラカオスの重要性を理解しつつも、五大幹部とは壁を張っていた。
とはいえ余震だけで母星を滅ぼされた大災害の驚異への危険性はとてつもないものであり、彼の優れた頭脳を使ってもTCを唯一吸収できるテラカオスに縋るしか方法がなかったので、アナキンたちの策に乗るしかなかった。

「他の特務機関員は?」
「残念だけどさっき言った二人以外は誰ひとり戻る気はないそうよ。
やはり一度は陥落し安倍に拠点を牛耳られた件や何度も襲撃を受けて墓場に片足を突っ込む真似はしたくないって」
「残念ね……人材は惜しいけど機密をばらされて計画やアナキンの行動に支障が出たり、テルミの協力者がいる可能性もあるから……消えてもらうしかないわね」

ココは残念そうな、そして冷酷な表情でコクピットに備え付けられたスイッチを押した。
瞬間、主催陣営から離反し地上に降りた特務機関員全員の頭や心臓が爆発して吹っ飛んだ。
ココは人質の他に裏切り防止のために首輪とは別に彼らの脳や心臓部分に秘密裏に爆弾を植え付けていたのである。
ちなみにテルミに使えなかったのは飛竜の体に移し替えられたためであり、(いちおう)ベクターやシックスなどは計画に支障を与えない範囲での裏切りだったので今まで使わなかったのだ。


【宮永咲@咲-Saki- 死亡確認】
※特務機関員でした
【まだ登場していない特務機関員 全滅】
※この話以降、追加の特務機関員は登場できません


974 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:20:27 wWlHLZk.0


「元は幽香の発案だけど、えげつないやり方ね」
「メガへクスとbiimは本当に良い選択をしたわ」




同時刻、九州ロボの某所。

「……メガへクスさん、なんか今寒気がしませんでしたか?」
「私にそんな感情はない……と言いたいところだが、今、確かにそれらしきものを感じたぞ」

たった一つの選択により命拾いをすることになった特務機関員二人。
彼らは嫌な気配を感じ取りつつも、黙々と仕事を続けていた。
biim兄貴は残ったモブ主催兵士をRTA走者として肉体的にも精神的にも強化し、メガへクスは九州ロボを修復・改造を行っている。

「それにしても、こいつらは匿うだけ邪魔じゃないか」
「こいつら……ああ、九州にいた『参加者』ですね」

biimとの雑談を交えながらメガへクスが修復の過程としてとある扉を開けると、中から数千数万単位で大量の参加者が入ったカプセルが出てきた。
皆、容器の中でコールドスリープされている。
彼らはかつて奴隷として主催に働かされていたが、九州ロボが禁止エリアに指定された際に首輪を爆破されて全滅されたと思われている。
実際には九州が禁止エリアに指定されたと同時に全員眠らされ、九州ロボの奥地に封印されていたのだ。
この事実を知っている者は参加者にはおらず、九州ロボに残っていたひとにぎりの人員だけである。
biimやメガへクスもつい先ほど、紫に教えられたばかりである。

狸組のはやてたちが脱出した時にはまだ奴隷として使われていたおり、脱出の際に全滅した奴隷もごく一部。
テルミもまた飛竜への憑依して暴れている間は情報を必然的に主催からシャットアウトされていたために知らず、襲撃した超人血盟軍も隠されている彼らの存在には気づかなかった。



「これだけの人数がいるとコールドスリープにかかるエネルギーが無駄だ。
全員爆破で良かったのではないか?」
「いやいや、彼らは大災害と殺し合いで滅茶苦茶になった日本や世界を復興させるための貴重な労力です。
モブばかりでネームドキャラはいない、テラカオス化も陰性で戦闘はからっきしなクソザコナメクジですが、これだけの数がいれば復興には問題ないでしょう。
最悪、本州の参加者が全滅してもここにいる彼らだけ生き残れば世界滅亡だけは防げるんですから」
「……大災害をテラカオスで止める計画が成功すればな」

コールドスリープ中のモブ参加者を匿うことは、現状では九州ロボのエネルギーの一部を食ってしまうほどのマイナス要素とも言えた。
だがbiimの言ったとおり、計画が成功して大災害を防いでも本州サイドの参加者が殺し合いの中で全滅してしまう可能性は0ではない。
それを見越して九州に取り残されて禁止エリアで全滅するはずだったモブ参加者を、未来に必要な労力として残すことにしたのだ。

「それにぃ、彼らはいざという時は対主催への人質としても有効ですよ?
善意で動いている彼らは九州ロボを破壊しようものならここにいる人質の方々も皆殺しにするんですからね?
……まあ流石に狂信者と拳王連合軍辺りは関係なく攻撃してきそうですけど、それ以外の組織の攻勢は確実に減りますよ」 

お饅頭じみた顔で黒い笑顔を浮かべるbiim兄貴。
九州ロボのスペックは驚異だが、ダオス・ゼオライマー・イチローなどバリアや装甲を破れる攻撃力を持った存在は数多くいる。
だが、いざという時は人質がいると教えさえすれば、余程の非情な心の持ち主でない限りは攻撃できなくなるだろう。
そう言った意味でもモブを匿ったことは有用である。

「なるほど、役立たずに見えて有用性はあるのだな」
「そういうことですよ。
 超人血盟軍の時は間が悪かった……完全な奇襲であちらに教える暇はなかったし。
 そもそも教えた時点で侵入されている以上、人質が救助されてこちらが不利になるだけでしたからね」

カプセルの前で立ち話をする特務機関員二人であったが、そこへひとりのモブ兵士がやってくる。

「あの〜、biim兄貴様、水を差すようで恐縮ですがそろそろ……」
「そうですね。あなたたちを最強のモブ件RTA走者にするための強化訓練を再開しますか」
「私もそろそろ仕事に戻ろう」

biimとメガへクス、及びモブ兵士はそれぞれの仕事に戻った。


975 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:21:01 wWlHLZk.0








しばらく時間が経ち、九州ロボのコクピット。
そこにはココと紫に加えて遺跡から情報を持ち帰ったジャックとメフィラスがいた。

「ジャック、戻ってきて早々だけど悪いニュースがいくつかあるわ」

神妙な面持ちでココはジャックにそう言った。

「それは計画に支障を来すレベルか?」
「ええ……そう言ってもいいかもしれないわね。
 あなたたちは遺跡の中にいたから放送が聞こえなかったかもしれないけど、ニャル子が死んだわ」
「ニャル子さんが……」

仲間の死にショックを受けるメフィラス星人を尻目にココとジャックは話を続ける。

「アナキンは無事か?」
「そっちは上手くイチローチーム、いや、イチリュウチームへの潜伏ができたわね。
ニャル子の犠牲は無駄じゃなかった……彼女ができなかった分、真尋くんは私が愛でなくちゃ……」
「話が脱線しかかってるわよココ」
「ごめんなさい」

「ニャル子の件はまだいいとして、もっと重大なこととしてテルミの死亡が確認されたわ」
「何? 誰に討たれたんだ?」
「首輪から盗聴した内容を聞くに、ヘルカイザー亮の遭遇戦の果てに……チン…召喚したマーラに殺され、相討ちになったようね。
記録映像もあるけど……正直ここで見たくないわ」
「ちょっと羨ま……何でもない、続けてくれ」

ジャックがマーラに掘り殺された男に関して何か言いかけたが、女性陣二人の冷ややかな目線を感じてそれ以上言わなかった。

「スキマワープを使って一瞬だけ東京にある死体を見に行ったけど、魂の気配を感じなかった。
憑依のために使ったと思われるウロボロスも強すぎる魔力が染み込んだシロイブッタイのせいで故障。
テルミは完全にこの世界から消え去ったと見ていいわ」
「アナキンとの接触は? せめて接触して生き残った参加者は……」
「ないわ。テルミから情報を聞き出す道は完全に絶たれたわね」
「くっ……」

宮崎遺跡破壊などの一連の行動から主催陣営でさえ知りえない真実を知っていると思われたテルミであるが、情報を聞き出す前に死亡。
予言の真実を知る糸口が一つ失われた。

「そして、よく言えば興味深い。悪く言えばテルミ以上に計画を破綻させる事態が私たちの知らない内に起きていたわ」
「……あまり聞きたくないですが、聞くしかないですね」
「さっきスパコン『京』にアクセスして参加者を洗っていたらテラカオス反応が三名ほど消えていたわ」
「消えた? 死んだの間違いではなく?」
「ええ」

テラカオス反応が消えるということは「普通は」参加者の死が予測される。
死以外では一度芽吹いた因子から解放される術はないはずだからだ。
しかし彼らのナノマシンからは、持ち主がまだ生きているという信号を出していた。
ナノマシンやテラカオス化に必要な因子だけが肉体から排除されたというのか。

「対象者は都庁軍のレスト、聖帝軍の諸星きらり、物置組……からイチリュウチームに移った雪音クリスか」
「因子を消し去ったのはレスト・きらりの二人は都庁の奥の手とされるフォレスト・セル。
残るクリスの因子を吸収したのはテラカオス・ディーヴァの残滓ね」

モニターに移ったデータを除く四人。
首輪を外しているので映像も音声もないが、ナノマシンの情報からフォレスト・セルに因子を吸引されたわかるレストときらり、そしてテラカオス化による暴走をクリスから因子を取り払うことで救い出した残滓こと『ツバサ』の絵図がクリスの首輪から盗聴された音声を通して四人に見えた。

「残滓の方はまだ良いわ。
因子は無くなったわけではなく、吸収して自分のものにしただけだから」
「沖縄に現れた何者かに敗北し、弱体化した彼女の完成にはむしろ打って付けだ。
むしろ犠牲を減らせるならそちらの方が都合がいい」
「問題なのはフォレスト・セルね」
「残滓のような吸収ではなく、完全な滅却。
テラカオス因子がフォレスト・セルによって完全に消去されている……これはまずいですね」

因子そのものが消滅しているということは、その分だけ完成したテラカオスが手に入らなくなってしまう。
完成体であるテラカオスが手に入らない場合、世界は大災害によって滅亡する。
フォレスト・セルはジャックたちの視点で見ると完全に計画の障害に思えた。

「我々の手で情報を隠蔽してきたことや都庁軍が基本的に拠点から動かないことを考えると、都庁の魔物や人間たちがテラカオスこそ世界に必要であると気づいているとは思えない。
今はまだ、たかが二人であるが、フォレスト・セルが世界に必要分の因子を食べ尽くした場合……」
「――世界を滅ぼす間接的な要因になるわね」

浄化と言う名の破壊。
単純な戦闘力だけでは押し測れないフォレスト・セルの驚異に四人は寒気を覚えるのだった。


976 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:21:50 wWlHLZk.0



「……ニュースは以上よ。ジャックの方の収穫は?」
「あるにはあるが、どうなるかな?」
「あら、随分含みのある言い方じゃない?」

遺跡探索に出かけて無事に帰ってきたジャックであるが、何とも言えない顔をしていた。
具体的には自信がないとも言い切れず、余裕があるとも言えない表情だ。

「宮崎の遺跡にも壁画やらで救済の予言に関連する言葉が書いてあった。
だが内容は、世に出回っているものと同じでこれだけでは何のプラスにもならない。
古文書がいくつか存在した痕跡があったが持ち去られている」
「テルミは所持してなかったようだし、もっと前に持ち去られたのかしら?」
「流石に古文書そのものがないとタイム風呂敷でも復元できませんからね」

ちなみに古文書を持ち去ったものはイナバ社長や姫川友紀が所持していたものである。
それらもなくテルミも死んだ以上、紫とココは九州内部だけで真実を知る手掛かりはないと思っていた。


「……が、私とメフィラスはそれ以上の価値があるやもしれぬメモリーチップを発見した」
「メモリーチップですって? 古代にそんなものがあったなんて……」
「遺跡のあちらこちらに戦闘ロボットの成れの果てが転がってました。
太古の宮崎はそれだけ技術力に優れていたのだと思われます」
「遺跡に一つだけ原型をとどめていたメモリーチップはタイム風呂敷で復元できた。後は何が入ってるか次第だが……」

チップを手に入れたジャックはそれを本拠地に持ち帰り、知能に優れるメフィラスの手でチップの中を覗ける端末を作らせた。
ちなみにロボット自体は錆と破損がひどく、鹵獲防止のためか特殊の魔力で加工されていたのでタイム風呂敷でも修復不能だった。

そしてジャックは端末のスイッチを押し、仲間たちはモニターを注視する。
計画を進めるだけの映像が入っていない、そもそも何のデータも入っていない可能性はあったが記録映像は無事に画面に映された。



画面にはひとりの青い人型ロボットが映されていた。
このロボットには四人とも見覚えがある。



「――ロックマン!?」
「どうして古代の映像の中に?」

ココと紫が驚くのも無理はない。
映像の中のロボットは今もまだ存命中のネットナビ、ロックマンエグゼ(光彩斗)とほぼそっくりなデザインだったのだから。

「いや、よく見るとイイ男……じゃなくて細部が違う」
「似たようなデザインですが別物ですね」

ジャックとメフィラスが言ったとおり、画面の中のロックマンはエグゼと比べるといくつか年を重ねた青年型であり、顔つきやアーマーの形状なども幾分違う。
それでも青いヘルメットなど主だった部分はエグゼと共通している。

画面の中の彼は何者なのか?
今、拳王連合軍にいるロックマンエグゼとの関連性は?
その疑問を主催たちが口に出す前に、画面の中のロックマンじみた男は口を開く。



『初めましてで良いかな?
俺の名前はロックマン・エックス。
レプリロイドという簡単に言えば機械でできた擬似生命体の一人だ』

まるで穏やかな口調で語りかけるように画面の前にいる者たちに語りかけるエックス。
残念ながらこれはただの記憶映像に過ぎないので返事をしても返ってくることはない。

『諸事情により、俺の記憶は消される手はずになっている。
だがもしもの時のため、皆には過去に起きた真実や悲劇を知ってもらいたいためにこの映像を残した。
そのために俺は一連の記憶を一枚のメモリーチップとして切り離し、この基地の最奥に封印する。

本当はこれも神々から禁止されたイレギュラー行為なんだが、グンマーの勢力が影で似たようなことを行っている情報をキャッチしたため、対抗策として影で破らせてもらう。

できればこの記憶が悪しき者に渡っていないことを祈る』



少し前に真実に立ち向かう意志を持った都庁の軍勢の前には、真竜ノーデンスが褒美として真実を授けた。
第十期主催陣にとってのノーデンスはこのエックスというロボットであった。


977 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:22:29 wWlHLZk.0



そしてエックスの口から明かされる幾つかの真実。
それはこの世界に存在する蒼(TC)や蒼の源泉(TCホール)など、源泉の暴走により生じた大災害など既に幹部クラスなら知っているものに加えて、主催ですら知りえない情報も出てきた。


大災害は遥か太古……エックスが存在した時代にも起きていた。
過去にも一度、大災害は起きていたのだ。
その際に大災害の化身とも言える精霊「黒き獣」も現れ宇宙は混乱することになった。
しかし当時のジェダイと古代の地球人達、特にミヤザキとグンマ―が奮戦したということで解決される。

そして解決策として蒼を唯一吸収できるテラカオスを作り出すことになり、他に方法を見つけられなかった世界は多大な犠牲を強いるテラカオス降臨の儀式『聖別』を行うことになったこと。
その末に感情とストレスによって肉体・精神を改変する『ナノマシン』の影響を特に強く受けたがテラカオスとなり、蒼の源泉のから溢れる蒼は抑制され宇宙が救われた。

エックスの話はここで終わらず。
その後の世界のことも語られた。
それは主催陣営に取っても知りたい情報についても触れられていた。


自然災害である大災害は再び発生する可能性がある。
次に備えてジェダイは技術と知識をミヤザキとグンマ―に残していく。
ミヤザキとグンマ―は協力し、後の要となるテラカオスをさらに確実な存在とする研究を進めたのだ。

特殊な進化により蒼を浴びても狂わずテラカオス化しても暴走しない様から不屈の精神を持っているかのように見えるイレギュラーにして最高のテラカオス素材『不屈の勇者』
死者の魂を取り込むと暴走の危険があるために編み出された、死者の魂を鎮める鎮魂歌『全てを虜にする歌』
完成したテラカオスに後付で強化し、足りない能力を補う大型パワードスーツ『器足りえる巨像』
単純な力だけならテラカオスをも上回りかねない器を安定、制御する支援要員『巫女』
死者や巫女や巨像でも足りない場合に備え、古代の決闘の『最良の9人の戦士』の力も有用とされた。
現代の野球とはその決闘が形を変えてスポーツとして進化したものらしい。
研究は進み、これらが揃って強化されたテラカオスは確実に『救いの神』になるだろう……と思われた。



『ところが、グンマ―はテラカオスの研究を放棄し、自然災害とも言える蒼による滅びを受け入れることにした。
まだ何億年先に起こるかわからない大災害に莫大なコストを支払うのは勿体無いという理由もあったそうだ。

実際に研究にかかる労力や資源の量は凄まじく 投げ出したくなる気持ちもわからないでもない。
だが僕らミヤザキ側としては目先の幸福よりもテラカオスをより完全かつ安全に制御することで、行く行くは蒼に対する驚異を払拭すればこの世界は永遠の安息が……少なくとも大災害で滅ぶ未来だけはなくなると考えた。
子孫を救うための研究であり、そのまま続けていれば犠牲者ゼロで次以降の大災害を乗り切れるようになったかもしれないのに……

……だが、グンマーが研究を放棄しただけなら良かった。
続けられる意思がないのならそれはそれで仕方ない。
時間はかかるだろうけど、ミヤザキだけでも研究を続ければより良いテラカオスの生み出し方も作り出せたのだろうから。

だがグンマーはミヤザキの蒼からの驚異を取り払うことを、蒼を支配して宇宙を支配しようと企んでいると見なし、ミヤザキや関連する首都に先制攻撃を加えてきた。
これに怒ったミヤザキや交流を持っていた首都は反撃を開始。
グンマーは世界を滅びに導くアナーキストの集まりとされ、開戦の火蓋が起こされたんだ』



聖別の後に起こされたのは、また別の地獄のような殺し合い『戦争』であった。
それが当時の映像を交えてエックスから解説される。


978 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:23:59 wWlHLZk.0


技術と数で勝るミヤザキであったが、グンマーはこれに対して研究のために産みだした巫女を投入。
研究の副産物で生まれたり呼び出された魔物から進化した竜や魔族、超人なども戦線に加えさせれれた。

古代グンマーの民は大人しく静かに滅びの時を自然の中で迎えたがる謙虚なイメージがあるが、決して全員ではない。
中には法に縛られたくない、淫行をしても咎められない、税金がない、大災害は遠い未来で起きるから自分たちには関係ないという身も蓋もない理由で身を寄せた無法者もいた。
またグンマーの民自身は首都から動かなくても外部への攻撃、そして虐殺などの汚れ仕事を竜や魔族に任せることでミヤザキに勝利し滅ぼそうとしていた。

なんとか自分たちを奴隷のように扱うことに霹靂としていた一部竜や魔族・魔物をグンマー側から引き抜いたり、他の首都との連携でグンマーを包囲した時には、次世代の生体兵器であるアースマイトが投入され、ミヤザキ側に多数の死者を出した。
巫女とアースマイトによる鉄壁の防御を破れないミヤザキはレプリロイドの亜種であり魔力を持った人型女性ロボット『艦むす』をやむを得ず投入。
艦むすは『調達』に時間のかかるグンマーの巫女やアースマイトに比べて生産が容易で数を揃えられる利点があった。

が……それ以上に女性や少女のみで構成されているが故に、グンマーの人々に善意に訴えかけて武器を下ろさせるという目論見もあった。
傍から見ると卑怯な手ではあるが、ミヤザキの目的はグンマーへの勝利や殲滅ではなく、テラカオス研究を行っている都市への攻撃を中止させること。
グンマーの民とて人の子、女性や少女を大量に殺さねばいけない状況に嫌気が差し、グンマーの首都を明け渡すまではしなくとも休戦だけしてくれるだろうと上層部は判断し、苦渋の作戦を決行した。



……ミヤザキ上層部はあまりにもグンマーを楽観視していた。
グンマー側の上層部はこの頃、過激派に実権を握られており、巫女とアースマイトに大量の艦むすを殺してでも攻撃を続行するように強要。
グンマー過激派にしてもテラカオスを作らないと決めた以上、巫女は戦争がない限りは邪魔であり、アースマイトは敵に回すと面倒になるため、先に使い潰すことを決めたのだ。
結果、多くの艦むすとミヤザキ兵士が死亡。
休戦協定も破棄され、和平の使者として送り込まれたミヤザキの大使が殺されて送り返された。
都市への攻撃は休まるどころか戦いの中で力を蓄え『魔王』として進化した魔族を使い、余計に悪化した。

もはやグンマーの暴走は目に見えていると判断したミヤザキは、平和路線を捨ててグンマーの殲滅を決意。
攻勢に出るために穏健派を上層部から一掃。
エックスを含む多くの穏健派戦闘指揮官も左遷か解雇させられ、より攻撃的で質の悪い犯罪者に片足を突っ込んだ者たちばかりが新たな指揮感に選ばれた。
その一人の中に邪悪な男であるユウキ=テルミもいた。

だが戦況を左右したのはテルミのような優れた力を持つ一個人ではなく、数の力と卑劣さである。
先代提督の死亡により新しく提督に選ばれた男は、ドクターバイルや中島朱美という最悪の科学者の弟子か息子と噂されるほどの危険人物で、巫女という以外はあくまで少女型ロボットに過ぎなかった艦むすたちに、提督である自分に死んでも付き従う忠誠心を独断で受け付けた。
これにより駆逐艦という最も幼く作られた艦むすなどが提督や主力を庇う『捨て艦戦法』が生み出された……もちろんエックスや良識あるミヤザキの民はこの非道な作戦は非難したが、作戦自体は成功し、巫女とアースマイトの精神の破壊に成功。
グンマー内部への進軍を進められた。

だがグンマー過激派にしても戦争が長引く度に言うことを聞かなくなってきた巫女やアースマイトの処分は喜ばしいことであったらしく。
ダオスの先祖である種族デリスカーラーン人を投入。
戦闘の役に立たなくなった一部巫女やアースマイトごとレーザーで艦むす部隊を焼き尽くした。
また一部竜種が傷ついた艦むすを拉致し、その艦むすたちは二度と戻ってこなかったという事態も続出した。


979 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:24:42 wWlHLZk.0

その後は終戦に至るまで惨憺たるものであった。
デリスカーラーン人の有用性に気づいたグンマーはその力で自然とグンマー以外の都市を焼き払わんとする。
その暴虐をを許すわけにいかなかったミヤザキは、本来は次の大災害のために作られた器足り得る巨像・超巨大都市ロボ『九州』を投入。
グンマーもまた器足り得る巨像・生体兵器フォレスト・セルを投入。
さらには双方がジェダイから固く禁止されていたナノマシンを悪用し、未完成のテラカオス……通称なりそこないさえも使うようになっていた。
もはやミヤザキもグンマーの暴走は目に見えていた。
最終的にプロトタイプ九州ロボと始源のフォレスト・セルは相討ちになり、前者は日本の南側に沈んで広大な土地となり後者は卵をいくつか残して死亡した。
結果、土壌は汚染されつくされ、浄化の手も足りなくなりひと握りの民を残してミヤザキとグンマーは滅亡。

これを憂いた神々は地上の復活と引き換えに、蒼や大災害、そしてテラカオスに纏わる記憶を全ての抹消、さらに製法さえ知っていればお手軽に巫女を生産できる艦むすたちの全解体(絶滅)を要求された。


生き残ったミヤザキ・グンマー穏健派はこれに従うが、全ての情報を絶ってしまうと今度は上位の神々ですら防ぐ方法を確立させてない大災害への防御策がなくなってしまう。
そこで抽象的な予言という形で拠点(後の遺跡)として後世に残すことや、ジェダイが持っていたナノマシンだけは使用は大災害発生時を除いて認めないものの「所持」だけは許したのだ。


『それで丸く収まれば良かったんだが、先ほど情報部からグンマーが神々にも秘密裏にフォレスト・セルの卵を各地に隠したらしいことが発覚した。
フォレスト・セルとは本来は『器足り得る巨像』の一つでテラカオス強化用マシンなんだが、自然死を是とするグンマー過激派は浄化に見せかけてテラカオスを作成する方法を失わせて世界を破滅させる改造を施した。
具体的にはセルに一度浄化された存在はテラカオス化が完全に治り、多少の蒼の耐性がつく代わりに二度とテラカオス化できなくなる。
何も知らない後世は汚染やテラカオス化に苦しむ人々には救世主であるが、ほぼ全てのテラカオスが浄化されると世界が大災害によって滅んでしまう破滅の存在なんだ』

そのことに対して当時のミヤザキ及びエックスは抗議したが、グンマーは否定、調査に向かった神々もそんな事実はない言いがかりとした。
だが実際にフォレスト・セルは現代に蘇り、テラカオス候補者の因子を削除した。
おそらく神々の中にもグンマーの大災害による自然死に同調する存在がおり、黙認したのだと思われる。


『俺としてはグンマーの善意を信じたいが、先の戦争のせいか信じきれない。
神々も大災害で損害を受けたらしく、全能性を喪失しているからあてにはできない。

そこで俺たちミヤザキもいくつか対抗策を取らせてもらった。
外部だけでなくテルミのような危険人物には知らせてないように極秘事項だが。


まず一つは、予言とは別に今見ているこの俺の記憶が詰まったメモリーをこの拠点の最奥に隠すこと。
何百年もすれば風化してしまうが、未来にはどれだけ破損しても復元できる技術があるかもしれない。

もう一つは有志をコールドスリープさせて未来に送り込む。
君たちの目線なら過去の人とか古代人というわけだ。
彼女からも情報を聞いて欲しい』



「メモリーチップはここにあるとして古代人の入ったマシンなんてあった?」
「中にはミイラしか入っていなかった……装置が完全ではなかったのだろう」

ちなみに古代人とはタバサのことであるが、サーフが蘇らせた際にカプセルの中に同じ遺跡で見つけたミイラを入れて偽装した。
じっくり見れば気づいたかもしれないが、いかんせん大災害までの時間がなさすぎた。
仮に生きていたとしてもテルミが遺跡を破壊することで死んでいただろうとジャックは結論づけていたので、どのみち情報は聞き出せないと思ったのだ。



『これだけでは確実性に欠けていたので、ひと握りのミヤザキ人の遺伝子に細工をした。
それは子孫の代で大災害発生すなわち、一定量の蒼を浴びると発動する。
ある者は救済の予言を叶えるべく同じミヤザキの血を引く者が無意識的に集合し、決闘を行う『最良の九人』を集まりやすくする。
やたら九人以上のグループが生まれているというのは偶然ではなく、惹かれあうように作られているからだ。
ある者は歌唱力に特化し、『歌』に関しても魂を揺さぶり、歌そのものを力にして死者の魂を調律できる存在も年代を重ねれば産まれてくる計算だ。
またある者は頭脳が活性化し、戦争で一度破壊されて土地となった九州ロボを復元し『器』として再生、さらに九州ロボの制御キーである『巫女』艦むすも作成できるようになる……ん?』

記憶映像の中に神々しい光が差し込んでいく。


980 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:25:13 wWlHLZk.0

『神々による世界再生がもうまもなく始まるのか……語り足りないがこれ以上は時間を割けそうにない。
テラカオスに取り込まれた人々の魂を鎮める『歌』の歌詞を君たちにお見せする……魂を揺さぶるので誰が歌っても効果はあり、心を込められるならばミヤザキの血を引いている必要もない。
ただより効果を大きくするためには心を込めて歌うと良いらしいが、死者ではない俺には効果がわからない』

メフィラスはすぐに歌詞のメモを取る。
主催陣営は既に手元にある器とされた九州ロボに加えて、鎮魂歌を手に入れたのだった。

『もう時間が……頼む、フォレスト・セルだけは残らず破壊してくれ!
あれを器として勘違いして使用したが最後、蒼を吸収できるテラカオスがいなくなって世界が破滅する!

最後に一つ、本当に不甲斐ない先祖たちですまない……
俺たちミヤザキやグンマーがもっとしっかりしていれば、テラカオスの研究が進んで大災害に怯える必要のない未来が約束されたかもしれないのに……
殺し合いだってやる必要もなくなったはずだ。
俺にできることは大災害が起きる前に善き人の誰かがこのメモリーチップを拾ってくれることだけだ』

画面の中で後悔に似た苦い顔をするエックス。
残念ながら彼の祈りは通じず、メモリーチップは大災害で世界が破滅を迎える前に発見された。
主催陣営は知らないが、もう一つの古代の記憶を抱えた少女は現代の悪しき科学者によって悪用され、大災害を人災を産みだした。
これを悲劇と呼ばずしてなんと呼ぶか。

記憶を徹底消去する神々の光が拠点に差し込む前にエックスは急いでメモリーチップを引き抜く。

『サイト……こんな結末になってしまって本当にすまない。
俺を作ってくださったライト博士……あなたの遠い子孫たちがどうか幸せに過ごせることを……』

エックスの意味深な呟きと共に、記憶映像はそこで途絶えた。


981 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:25:54 wWlHLZk.0





「なるほど合点がいった。
救済の予言がテラカオスに必要な理由。
テラカオスによる救済法がジェダイ以外が知らなかった理由。
ジェダイとミヤザキ・グンマーで予言が共有していなかったわけ。
フォレスト・セルの真の危険性。
祐一郎や拳王連合軍などの不可解な行動の数々……全てが一本に繋がったわけだ」
「いちおう聞くけど偽情報の可能性は?」
「紫さん、チップの風化具合から計算して最低でも数千年以上過ぎています。
悪戯にしてはメリットがないですし、色々手が込みすぎです」
「実際、こうして古代ミヤザキの末裔と思われる祐一郎が復元した九州ロボに乗り、彼の手によって蘇った艦むすである翔鶴も確認できている。
フフーフ、全て、偶然なんかじゃなかったのね」

古代ロボット・エックスの記憶がもたらした情報は、主催陣営が期待していた以上の有益な情報であった。
情報源になると思われたテルミを失った分を余裕で補える程であろう。

「現代にいるロックマン・エグゼと古代のロックマン・エックスが似ているのは、ネットナビの開発者である光祐一郎がエックスを作ったライト博士とやらの先祖を持つからだろうな。
もしくは古代ミヤザキによって遺伝子に大災害に立ち向かえる戦士を作れるように最初からプログラミングされていたのかもしれない」
「ついさっき、ライト博士の血が途絶えたのはエックスにとって悲惨ですがね……
光祐一郎、その息子である熱斗は死亡……幸い祐一郎が作り出したロックマンと艦むすは無事ですが」
「蒼くてイイ男……エックスにはすまないが、世界のために最大限利用させてもらおう」


かくして全ての謎が解けた主催陣営。

「メガへクスとbiim兄貴には後で情報を共有するとして、イチリュウチームにいるアナキンはどうするの?」
「私がスキマを使って回収しようかしら?
テルミが死に予言の謎がわかった以上、会場に留まる必要はないでしょうし」
「いや、アナキンは今、邪竜化したギムレーの中にいて、イチリュウチームは皆が首輪を外している。
無理に回収しようとするとアナキンも君も危険な目に遭うだろう。
彼には回収のチャンスがくるまでイチリュウチームに残ってもらおう。
情報共有はこちらの兵士を名無しの参加者に扮させて、フォースの力で心を読んでもらうこともできるが、現状ではそれ難しそうだからな」

アナキンだけ情報共有が遅れてしまうが、ジャックの判断は正解であったと言えよう。
現在のアナキンがいる浦安市はギムレーの巨体によってドームのようになっており、内部は霧化した萃香によって見張られている。
十中八九、スキマを使って回収しようものならアナキンの正体がバレてイチローたちから総攻撃を受ける可能性も大であった。

「アナキンはテラカオスの有用性はわかっているし、現状では予言に必要な野球チームと不屈の勇者と言っても差し支えないディーヴァの残滓の護衛をしてくれるはずだ。
会場に残すだけでも価値は十分にある」

テルミがまさかの脱落+宮崎の遺跡で予言に纏わる全ての謎が解けてしまったため、アナキンの当初の任務は終わったも同然だが、それでも予言に必要なテラカオス及び勇者、野球チームは主催陣営の戦力では確保困難のため、彼らを守るためにアナキンは会場に残る必要があると判断したのだ。


「それで、予言遂行に必要になる九州ロボ・歌は図らずも確保した。
テラカオス勇者と野球チームの一つはアナキンの傍にある。
残る巫女はエントロピーからして鹿目まどかか、祐一郎が作った翔鶴。
会場には予言を遂行できる材料が揃っているけど、どうする?」
「私なりの考えだが、このあと我々は都庁軍を攻撃し、フォレスト・セルを撃滅しようと思う」

参謀であるジャックの示した、次なる行動はフォレスト・セルの破壊であった。
セルの強さを知っている残りの三人に戸惑いの顔が出る。


982 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:28:16 wWlHLZk.0

「フォレスト・セルを、ですか?」
「そうだメフィラス。
あれは予言の器に見せかけた破滅製造機。
消去法で器が九州ロボ以外なりえないとわかった以上、破壊する必要がある。
地上汚染の浄化? その程度の技術はフォレスト・セルに頼らずとも今の技術力ならば不可能ではない。
今は亡きビアン総帥も殺し合いの後でボロボロになった日本を再生できるマシンの設計図やプランぐらいは遺しているしな」

エックスもまたフォレスト・セルは必ず破壊しろと伝えていた。
世界を救うために他に方法が存在しないというのにテラカオスを生み出す手段を潰していく存在は、ジャックたちには驚異以外の何者でもなく、エックスの言葉によりそれは確信に変わっていた。

「しかし、セルを含めた都庁の戦力はかなりのものよ。
疲弊はしているようだけど風前の灯に近いほど強くなっている印象だわ。
主催陣営の全戦力を投入しても勝てる見込みは薄く、良くて相討ちがいいところね」
「それはわかっているが、やらねばテラカオスだけでなく野球チームや狂信者を殺していく。
野球チームが試合を終えるまで必要なのは言わずもがな。
イチリュウチームにはアナキンとテラカオス、拳王連合軍には巫女がいる以上、今消えてもらうと困る。
狂信者は殺し合いが終わった後の世界を考えると消えてもらった方が都合がいいが、たくさん死なれると経験値やら栄養を吸収してフォレスト・セルが余計に手をつけられなくなる」
「早急に手を打たなければならない……そういうことね」

このままでは甚大な被害を及ぼすことは紫を初め理解はしているものの、時間が経てば経つほどセルは力を増していくのだ。
モタモタしていれば主催だけでなく参加者も詰む。

「ま、待ってくださいジャック。
これまで盗聴した内容や、ナノマシンのIDが生きていることを見る限り都庁は影薄組や聖帝軍をも取り込み、機械であるフェイ・イェンすら仲間にしていたとされています。
古代グンマー過激派ほど野蛮な連中ではなく、話のわかる人々なのではないでしょうか?
セルの制御もできているようですし、話し合いで使用中止・封印してもらうのはどうでしょうか?」
「メフィラス……それはダメだ」
「なぜ?!」

メフィラスの提案は誰も犠牲にしない対話での解決。
だがジャックはそれを一蹴した。

「都庁は祐一郎や拳王連合軍ほどではないが、比較的早い段階で首輪を外し、内部事情がほとんどわからない。
人間や機械を味方につけたのも来るべき他勢力との戦争に勝つためにやむを得ず受け入れ……拡大解釈すれば洗脳した可能性だってある。
せいぜい何度も接触したテラカオスを危険だと思っているぐらいしか、我々にはわからないのだよ。
フォレスト・セルが大人しく見えるのも巫女たるまどかによって制御できているだけで、彼女が死亡した瞬間コントロールを失って再暴走する可能性だってある」

都庁の軍勢は早い段階から首輪による盗聴の危険に気づいて筆談をしたり、狸組のブリーフ博士の手助けによって首輪の解除も可能にした。
……そのせいでナノマシンの識別信号から読み取れる生死や居場所以外の情報が入ってこず、主催陣営さえよくわかっていない部分が多いのだ。

「だが盗聴できた内容だけでも自然第一主義だが決して頭の硬い連中ではなく破滅を望む悪党ではないのも読み取れる」
「ならば!」
「都庁の軍勢が戦力的な事情で影薄組や聖帝軍を味方につけたのではなく、友愛の心を持って仲間にしており機械の参加者すら受け入れた、かつ平和を願う存在だと過程しよう。
だがテラカオス・ディーヴァの前進たる風鳴翼やテラカオスになりかけていたきらり、魔獣化したユーノの襲撃を受けてなお、テラカオスが危険じゃないと思い込めるか?」
「そ、それは……」
「覚醒したが最後各地で暴虐の限りを尽くすテラカオス、その恐怖がわかるならば消し去ろうとするハズだ。
まさかそんなテラカオスが世界を救う鍵になろうなど事前情報なしでは想像できるはずがない。
都庁の軍勢が今の我々のように予言の謎を解き明かしたと思えぬし、二度目の大災害が来るとはわかっても蒼の存在はわからないはずだ。
彼らは善意を持ってテラカオスを否定し、この世界のテラカオスをセルの力で消しさらんとするだろう」

まさかテラカオスがこの世界で唯一蒼を吸収できる性質を持っているなど知らないだろう。
浴びすぎれば死ぬ蒼の危険性や存在など知識なしでわかるはずがない。
予言の謎を考察することはできても、答え合わせをする存在がいないので明確な答えなどわからない。
「普通」はそうなのだ。
『普通』は彼らが重要な情報を握っていないと予測できるのだ。


983 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:28:58 wWlHLZk.0


「だが我々にとって善悪がどうのは関係ない。
世界をテラカオスの手で大災害から守り存続させることのみ。
計画の邪魔をするものはすべからく敵だ」
「残念ですが……一理あります」
「都庁の殲滅まではしないまでも、フォレスト・セルだけは破壊する。皆良いな?」

ジャックの言葉にココと紫は無言で頷き、紳士的な対応を望むメフィラスは納得はしていないまでも仕方ないと最終的に首を縦に振った。

「とはいえさっきも言ったけど、全戦力を投入しても被害は避けられない。
最悪、九州ロボが破壊されることになるわ」
「そうなれば世界は終わりだからな。
九州ロボは戦線に出さないか安全に攻撃できる地点に配置しよう」
「不安要素が大きいですがこの際、イチリュウチームや拳王連合軍、最悪狂信者とも一時的に手を組むのはいかがでしょうか?
イチリュウチームならアナキンの手助けやテラカオスの確保、拳王連合軍なら巫女の確保もできるようになります」
「伊豆諸島にいるヤンとメディアからも知恵を借りたいところで、後でスキマを使って相談しに行きましょうかしら?」


次なる行動として都庁襲撃もといフォレスト・セル殲滅を選択した四人はさっそく作戦会議に入る。

しかし、彼らは知らない。
都庁同盟軍は幸運によって既に真実にたどり着き、大いなる神の手助けもあって答えを見つけていたことに。
確かに破滅を呼ぶ存在であったフォレスト・セルが巫女の尽力によりグンマー過激派の呪縛から解放され、同盟軍は彼らが仕掛けた罠に気づいたことに。
そして今回の大災害は天災ではなく、ある男の野望によって引き起こされた人災であることに。


赤裸々になった真実が人を良き方向に導くとは限らない。
過去の真実と現在の真実はイコールになるとは限らない。
真実とは生き物のように流動することもあるのだから。



【二日目・19時30分/東京の上空 九州ロボ】

【共通】
※予言の真実や古代に起きた出来事を知りました
※予言に必要な鎮魂歌を得ました
 九州ロボがミヤザキ産の器足り得る巨像であると知りました
 手元にはありませんが勇者が『ツバサ』、巫女が翔鶴とまどか、最良の九人が野球チームだと確信しました
※都庁同盟軍が予言や蒼、フォレスト・セルの罠について知ったことに気づいていません
※カオスロワちゃんねる管理人の存在にも気づいておらず、自分たちの手で掲示板を支配していると思い込んでいます

※光家がライト博士@ロックマンシリーズの子孫であることが判明しました
 エックスなど古代ミヤザキにロックマンがいたようです(もちろん独自設定)


984 : 蒼い追憶 ◆aA6JepGDxw :2018/09/08(土) 13:29:27 wWlHLZk.0


【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
【状態】リンクスに改造
【装備】フォックスアイ(ネクストに魔改造)@ARMORED CORE、拳銃
【道具】ヒトマキナ・MS・TIEファイター×100、オーバードウェポン一式、古代のメモリーチップ
【思考】基本:世界滅亡を阻止するためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:都庁にいるフォレスト・セルを撃滅する作戦を立てる
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは抹殺する
2:四条化細胞に多大なる期待
3:アナキンの回収は後回し、後で何らかの方法での情報共有を行いたい
4:フォレスト・セルの撃滅が終わったら残滓(ツバサ)と翔鶴も回収したい
  鎮魂歌に最適な歌い手も見つけたい


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギン、スパークドールズ(ダークザギ)、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×950、
     主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:都庁にいるフォレスト・セルを撃滅する作戦を立てる
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:真尋キュンprpr(死んだニャル子の分も愛でてあげる)
4:アナキンは大丈夫かしら?
※スパークドールズ化した八坂真尋を戻すには、ダークスパークもしくはギンガスパークが必要です


【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康、やや動揺
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:気は進まないが都庁にいるフォレスト・セルを撃滅する作戦を立てる
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:なるべく暴力は使いたくない
3:ニャル子さん……可哀想に
4:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう?
※ラッキョウはしれっとオヤツに食べました


【八雲紫@東方Project】
【状態】健康
【装備】傘、扇子、スペルカード@東方Project
【道具】ソロモンの指輪、仙豆×55@ドラゴンボール、ネビュラスチームガン@仮面ライダービルド、ギアエンジン@仮面ライダービルド
【思考】基本:幻想郷を守る為に主催を手伝う。
0:都庁にいるフォレスト・セルを撃滅する作戦を立てる
1:0のためにヤンとメディアにも知恵を借りる
2:どのような事をしても幻想郷を守る
3:後で仕事が終わったメガへクスやbiim兄貴にも情報共有を行う
※境界を操る能力に制限がかかっています


【メガヘクス@仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル】
【状態】健康
【装備】太極図@封神演義、ライドブッカー@仮面ライダーディケイド
【道具】支給品一式、ネクロノミコン@クトゥルフ神話 、その他不明
【思考】基本:契約の為に主催の命令に従う
0:九州ロボを修復改造する
1:世界を滅ぼされたら敵わないので契約続行
※エックスのメモリーチップに関する情報共有がまだできていません


【biim兄貴@現実?】
【状態】健康、完全体バグスター、魂魄妖夢にそのまんまの容姿。
【装備】ゲーマードライバー@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド
【道具】支給品一式、ガシャコンパラブレイガン@仮面ライダーエグゼイド、エナジーアイテム各種@仮面ライダーエグゼイド、じゅうべえくえすと
【思考】基本:RTA走者として誰よりも早く任務をこなす。
0:みなさまのためにぃ、こんな動画を用意しました。
1:モブ兵士を全員強化(RTA走者にする)
2:再走は面倒なので主催陣営は裏切りません
※人の遺伝子があるためライダーの変身可能です
※※エックスのメモリーチップに関する情報共有がまだできていません


985 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:00:06 DEq9DmxI0
「……」

浦安市のとある病院の一室で、ギムレーは思案に暮れていた。
ベルナドットがもたらした情報、正確には戦死してしまったLの遺した情報はイチリュウチームに衝撃を与えるには十二分。
だがそれと同時に彼らは納得することもできた。

欠かせない情報収集、その拠点となるカオスロワちゃんねる。
そこには主催者とは異なる真の管理人、黒幕がいる。

にわかには信じられない、しかしそう考えると納得できる点も多い。
ほとんどの参加者はこの掲示板の情報に頼っている。
そしてこの掲示板は、殺し合いの促進に一役買っているのもまた事実。
拳王のマップ破壊、聖帝の立川焼却、ヘルヘイムと扱われた都庁、動画の投稿もかなりのものだ。
これらの投稿を確認、或いは検閲できる立場の管理人は、情報の王と言える。
この混沌とした世界では、情報の掌握は直接的な力以上に大きな影響力を持つ。

もし、この管理人がなんらかの思惑で情報操作していたのだとすれば?

もはや敵対は不可避だが、もしも。
もしも拳王の悪評がここまで世間一般に広まっていなければ、あるいはナッパの言う通り彼らと手を取り合う未来もあり得たのかもしれない。

幸いにも直接面識のあるはやてのおかげで自分はどうにか回避できたが、99%の参加者はもう都庁をヘルヘイムと信じ込んでいるだろう。
いくら嘘だ誤解だと言葉を並べたてようが、少数の抵抗は数で圧殺される。
そもそも管理人が情報操作をするのであれば、書き込みすら許さないはずだ。

聖帝もいくらなんでもマーダーへの転向が不自然過ぎる。
動画の違和感、状況からしてこれを投稿したのは狂信者の誰かであろうが、投稿を許可したのは管理人だ。
どの状況をとっても、プラスの情報よりもマイナスの情報の方が圧倒的に数が多い。
疑心暗鬼になれば、正しい情報すら怪しいものに見えてくる。
結局のところは佐々木様の言う通り、直接見たもの以外は信用ができなくなる。

仮にこの裏の管理人が実在したとすると、こいつは相当に性質が悪いことになる。
情報操作で各陣営のマイナス面ばかりをピックアップしているとなると、その狙いは殺し合いの促進だろうか。
だがそれならば、主催者陣営として活動すればいい。

しかしLは勘だが主催者とは異なると遺している。
世界が誇ったという名探偵。そんな彼の勘は馬鹿にできたものではないだろう。
勘とは言い変えれば、その人にのみ感じ取れた違和感とも言える。

主催者とは違う、殺し合いを促進させるために情報操作を行う存在。
おそろしく性格の捻じ曲がった存在。だが決して愚かではない。
主催者にこれがばれれば、確実に粛清される。
前提として、早期に首輪を無効化する手段を持たなければこんなおおそれた真似はできないだろう。

そしてそんな危険を冒してまで情報操作するからには、何らかの目的があるはずだ。

「……救済の予言、テラカオス」

そしてギムレーは既に答えを出していた。
世界を救う存在、テラカオス。その前身たる化身は殺し合いが無ければ生まれない。
管理人の狙いがテラカオスにあるのは疑いようがないだろう。


986 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:00:56 DEq9DmxI0
「……くそっ!」

ギムレーはたまらず悪態をつく。
しかしそれは管理人がテラカオスを狙っていたからではない。

「ソウルセイバー……これは、君が遺したのか?」

誰もいない虚空に語りかけるギムレー。何も知らない者が見れば理解不能だろう。
今の彼は、目の前を見ているが見ていない。
彼の脳内に広がる、もう一つの掲示板を見ていたのだ。

カオスロワちゃんねるが危険ならば、ドラゴンネットワークはどうであろうか。
こちらは人間には介入不可能。高位ドラゴン専用の掲示板だ。
そうして開いた掲示板には二つのスレがあった。
オシリスのスレと、それを危険と警告するスレタイのみのスレ。

この二つを見た瞬間、ギムレーは即座にスレではなくオシリス個人へのアクセスを試みた。
だが彼からの返信はない。かといってアク禁をされているわけでもない。
これはつまり、オシリスがなんらかの理由でドラゴンネットワークに繋げない状況下にあるということだろう。
一応、短いながらも置手紙のようにメッセージは残してきた。もし本当に万が一無事ならば、いつかは見てくれることだろう。

だが現在、それへの反応もない。オシリスはとてもではないが、こんなおちゃらけたスレを立てることはできないのだ。
そしてもう一方。オシリスのスレを開けるなというメッセージのみのスレ。

これを見た瞬間、ギムレーは今度はソウルセイバーへとアクセスをかける。
だがこれは失敗に終わる。メッセージも残せなかった。だが唐突に彼女がアク禁をするわけがない。
これはオシリス以上に深刻な、どう足掻いても二度とドラゴンネットワークを開けない――死亡したということなのだろう。

一連の流れを纏めてしまうと、オシリスのスレは100%のダミー。
開いた対象の精神に負荷をかける、なんらかの罠が設置されている。
それを開いてしまったソウルセイバーが犠牲になり、死の際でこの警告を遺してくれたのだろう。

不可解なのはオシリスのスレには本人を証明するための印が入っていること。
とはいえイチロー達の話から、オシリスが瀕死の傷を負ったまでは間違いがないことを踏まえると、狂信者に拘束された可能性が高い。
弱ったオシリスの脳になんか科学的な装置で強引にアクセスし、彼名義のスレを立てるぐらいまでは出来ないことはないのかもしれない。

「やれやれ……ドラゴンズで優勝して、僕の信者を増やす簡単な策のつもりだったんだけどね……
 気がつけば、もうドラゴンは僕だけか。野良ドラゴンはおそらくこの罠に違和感を持たず餌食になるだろうし」

はははと乾いた笑い声をあげるギムレー。
本人は自覚していないが、そこには確かに悲しみの感情が滲み出ていた。

「カオスロワちゃんねるも駄目、ドラゴンネットワークすら介入されて、これじゃあ……」

弱音が漏れかけた、その時。

「――待てよ」

ギムレーの赤い瞳に、ギラリと光が宿る。


987 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:01:24 DEq9DmxI0
「……まだ、ドラゴンは残っている」

ギムレーは再度、ドラゴンネットワークを使用する。
もはやオシリスの例がある以上、掲示板は誰のものもあてにできない。
信用できるのは、個人同士のやりとりのみ。

しかし彼の仲間は皆死に絶えた。
邪竜という絶対の存在として君臨してきた彼には、旧知の仲のドラゴンもいない。

ただ一人だけ、信用のできるドラゴンはいる。

かつては情報操作に自分が振り回され、アクセスを拒んだ相手。
だが今ならば話は違う。
この状況下、そしてはやて達との出会い。

今は亡きドラゴンズの仲間、ホルスの黒炎竜。

そんな彼が、憎まれ口を叩きながらも呟いていた名は――





『霞竜オオナズチ。応答を願いたい』



霞龍オオナズチ。
ホルスの友人にして、ドラゴンネットワークを使える上位ドラゴン。
そして、今は都庁に属しているとされる存在。










『むむwwwww誰ですかなwwwwww?』





(ああ、ホルスの友達だってのがよくわかるよ……)



そんな存在との接触に成功できたギムレーは喜ぶとと同時に、僅かばかりの懐かしさも感じるのであった。





988 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:01:55 DEq9DmxI0
『突然悪かったね。僕はギムレー。ドラゴンズ……今は色々あってイチリュウチームの一員だ』

『初めましてですぞwwwww我はオオナズチwwwwしかしまさかそっちからアクセスがあるとはおどろきですぞwwwwwww』

『こちらもかなり切羽詰まった状況でね。こちらからアク禁していたことはオシリスに代わって謝るよ』

『wwwwwwwwwwww……オシリスはやっぱり、かろうじて生きている程度なんですな……』

『ああ。とりあえず、ホルスと違って草なくても喋れるなら生やすの止めてくれ』

『……仕方がない。こちらもふざけていられない状況なのは変わらぬからな』

『助かるよ。まずはオシリスのあのスレだが……』

『あれは確実に偽者だ。あいつの性格上、本当に切羽詰ればスレ立て前に仲間に助けを呼ぶか、死ぬ前にロリ画像くれのスレを立てる』

『やはりか……。あのスレを開けるなという警告は、おそらく僕らの仲間のドラゴンが遺したものだろう』

『開いた瞬間、ブラクラみたいなことをされるわけか。そうなるとそちらの仲間は……』

『察しの通り、純正のドラゴンはもう僕一人だ。そして何者かからの介入を許している以上、これ以上ネットワークを使うのも危険だ』

『それでいてわざわざ我にアクセスをしてきたとなると……広めるべき情報を手にいれたというところかな?』

『ああ。君たち都庁がヘルヘイムではないのは、君らの門番と面識のあるはやてから聞いた。まずはこちらの状況を簡潔に伝える』

『ドラゴンズとイチローチームは双方が狂信者の手で半壊し、合併の形でチームを維持している。ここに狸組と物置組の生存者も合流』

『そして、予言の救いの神になりえる存在……どうやらテラカオスというらしい存在も安定した状況で匿っている』

『彼女がいれば、これ以上の化身は必要ない。そのためユーノという少年の治療をしている最中だ』

『それと仲間が遺したメモによれば、カオスロワちゃんねるの裏には主催者以外の何者かの影があるらしい』

『そしてまだ仲間には伝えていないが、おそらく主催者陣営と思われるアナキンという男もいる。こちらは僕が警戒中。こんなところかな』


ギムレーは伝えるべきことだけをまとめてオオナズチへと送る。
都庁の者がどれだけ予言の解答に辿りついているかはわからなかったが、少なくともツバサの安全性とアナキンの危険性だけは伝えねばなるまい。
そしてユーノの治療のため、自分達がまだ動けないことも。

それ故、オオナズチの返信にギムレーは只々驚くばかりであった。


989 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:02:23 DEq9DmxI0
『驚いた……まさか、最後の関門だった不屈の精神を持つ勇者、テラカオスをもう所持しているとは』

『どういう意味だい?その言い方だとまさか……』

『こちらは一応、予言の解答には辿りついた。我らよりさらに太古より生きる上位竜のお墨付きだ。間違いはない』

『聞かせて貰っていいかな?』

『勿論。事の発端は、古代にもあった宇宙から降り注ぐ蒼による大災害。これを回避するためにテラカオスが生み出された』

『中心となったのはジェダイ。そしてグンマ―とミヤザキ。蒼を唯一吸収できるテラカオスの犠牲で、過去の大災害は乗り越えられた』

『その後、より確実に大災害を回避するために生み出されたテラカオス強化手段が、救済の予言とのことだ』

『なるほど……そういうことか。さっき言ったアナキンという男はジェダイの騎士らしい。これで確信に変わったよ』

『我らに末裔がいたように、ジェダイにもいたわけか。だがジェダイは、テラカオスは知っていても後付けの予言は……』

『知らない様子だった。やはり奴は自分が知りえない予言の正体を探るために僕らに接触してきたとみていいだろう』

『予言という抽象的なものになった理由は、古代のグンマ―とミヤザキの対立が原因らしい。グンマ―のテラカオスを放棄し滅びを受け入れるか』

『ミヤザキのテラカオスを制御して星を存続させるか。些細な対立からやがては戦争が始まった』

『さぞ泥沼だったろうね。大災害やテラカオスについて研究できる民族だ。力の方向性を少し変えるだけで大戦争開幕だよ』

『そのとおり……正直、我も現代のグンマ―に生きる身。かつてのグンマ―の行いにも色々思うところはある』

『こちらは古代グンマ―語で書かれた書物を持っているが……古代グンマ―も古代ミヤザキも一枚岩ではなかったということだろうね』

『おそらく。事実、両陣営とも離反者が出ているし、こちらには古代グンマ―の生体兵器の末裔までいた』

『は、自然を守るグンマ―が自然界に存在しえない兵器を造り上げるか。……まぁ、人造兵器という意味では僕も同じだけど』

『幸いなことに彼らは古代のように自然死を求める存在ではない。巫女も含めて、過去とは違う結末をもたらしてくれるだろう』

『おっと少しずれてしまったか。巫女は巨像を操る存在。そちらにいる巨像はおそらくあの触手のバケモノか?』

『その通り。器の名はフォレストセル。世界樹の核にして古代グンマ―が生み出したテラカオス強化用の存在』

『自然死を是とする古代グンマ―のアンチテラカオスシステムが組み込まれていたが、これはこちらの巫女、まどかの祈りで回避された』

『巫女と巨像は完全に揃ったか。最良の9人は野球だとは思うけど、その言い分だと聖帝軍も君たちが保護しているのかな』


990 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:02:58 DEq9DmxI0
『勿論。というよりも、その聖帝がいなければ我らは予言の謎を解明できなかった程だ』

『ほう。そうなるとカオスロワちゃんねる管理人は、予言を考察できる聖帝の抹殺のためにあの動画を許可した……?』

『残念ながら立川市を焼いてしまったのは事実だ。一人がテラカオス化し暴走した悲劇故の。現在は治療されてはいるが』

『そういうことだったか。しかしそうなると彼らの誤解を払拭するのは難しい。僕らと野球をするにしてももう少し落ち着いてからだね』

『天魔王が倒れた今、目下の敵は狂信者と拳王連合軍。まずはこいつらをどうにかしなくては、まともな野球はできないであろうな』

『そいつらは僕らにとっても倒すべき存在。可能ならば合流して備えたいところだけど……』

『こちらからでも視認できるが、千葉方面を囲んでいる巨竜がギムレーだろう? その態勢からしてまだ動けないといったところか』

『後でアナキンは少し問い詰めるが、それ以上にユーノの治療があって動けない。彼は外部能力干渉による治療を受け付けないんだ』

『こっちも動けない状況だな。予言の核たる器は巫女がモンスターボール内に隠して、巫女自身も世界樹の最深部で護衛中だ』

『おそらく近いうちに、狂信者か或いは拳王連合との戦闘があるだろう。万が一にも予言の完成を妨害されるわけにはいかない』

『僕らもほぼ同じか。そのどちらの軍勢も僕らを狙ってきてもおかしくない因縁がある。ここで彼女、テラカオスを失うことは避けたい』

『あいつらは予言を完成させるための、最後の壁と言ったところかな』

『いや、もう一人いる。大災害の化身ともいえる、沖縄に現れた黒き獣だ。理屈は不明だが、死者の魂を攻撃して取り込んでいるらしい』

『あいつか……相変わらず動いてはいないようだけど、何故死者を狙っている?』

『予言の全てを虜にする歌、これは死者を鎮める鎮魂歌。死者の力もテラカオスの力であり、それを削り取っているということのようだ』

『僕の屍兵より性質悪いな……しかしそうなると、本当に色々な意味で猶予はなさそうだね』

『色々聞きたいことはまだあるが、そろそろ終わりにしよう。あとは上手く合流できることを祈るのみ……ですぞwwwwww』

『ドラゴンネットワークがさらに掌握される可能性も0じゃない。通信もこれが最後の方がいいかな』

『それではwwwwwww』

『お互い、武運を祈ろう』

――

ログを削除▽
オオナズチがログアウトしました▽
ギムレーがログアウトしました▽


991 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:03:25 DEq9DmxI0
「……ふぅ」

額を押さえながら、ギムレーは深く息を吐きだす。
都庁側との交信は、想像以上の収穫をもたらした。
可能であれば逐一情報の共有をしたいところだが、オシリスの件があってはこれ以上のネットワーク利用は危険だろう。
伝えるべきことは伝えたし、知るべきことはしれた。

これが最後のドラゴンネットワーク。

もう僅かたりとも立ち止まることは許されない。
終末と、予言の完成。そのどちらもが目前なのだ。

「……さて、次の策はどっちをとるべきか」

最後の通信で手に入れた大きな情報。
この後どう動くべきか。ギムレーには二つの道があった。

「……」

一手のミスで戦局は傾いてしまうだろう。
そして自惚れではないが、いまや自分達も世界の命運を担う存在と言える。
イチリュウチームが倒れれば、おそらくまともに予言について動けるのは都庁しかいないだろう。
そしていくら彼らであっても、残る敵対勢力や黒幕全ての相手はできない。
都庁との合流。これが予言を完成させるための第一の関門といえる。
文字通りに力と知恵をあわせねば、大災害には敵わない。

「主催者連中はどこまで把握できているのかわからないが……」

古のジェダイの末裔たるアナキンであれば、テラカオスや大災害を知っていても不思議ではない。
そしてそんなことを知っているのであれば、この殺し合いを開く大元の理由を知っているということにもなる。
ただの潜伏者かと思ったが、予想外の大物のようだ。
先に彼を詰問する手もある。

「何にせよ、僕は僕の道を行くだけだ。大災害の滅びの運命? はっ、そんな『運命なんて変えてやる』よ。
 ……ははは、まさかこの僕が、憎くて仕方がなかった聖王の口癖を口にするとは。
 まあ、今は君のその真っ直ぐな言葉が凄く頼もしいよ。……なあクロム?」

やがてギムレーは、動き出す。







992 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:03:52 DEq9DmxI0
――結果として、ギムレーの行動は正解だったのだろう。

――『敵』を警戒する以上に、信頼する『仲間』を優先する。

――些細なことかもしれないが、邪竜たる彼が誰かを仲間と思い、それを優先するということは本来ありえない。

――破滅の世界の中で、確かに邪竜ギムレーの運命は変わっていたのだ。



「ギムレー、どこに行ってたホル?」

ドラゴンズの生き残り、鳥の方のホルス。
彼だけではない、仲間の多くが集まる部屋に戻った瞬間。


どずん


何か重たい物が、部屋の中心にどこからともなく投げ入れられた。

「え――」

誰もが混乱し、頭が真っ白になる。

「ッ!」

そんな中、ギムレーはただ一人動くことができた。
放り込まれた『彼女』が死んでいることを既に覚悟していたから。

「邪竜ギムレーが命ずッ! 君にそんな物を埋め込んだ奴らに攻撃対象を変えろッ!」

大きく響くギムレーの命令。

「オチ○ポォォォォォォォォォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛!!!」

ギムレーの赤眼が見据えたそれは既に『屍』であり、神軍師の眼は『所持する道具』を瞬時に把握できた。
かつてちなつに施したように、首輪の制限の無くなった今はより膨大な魔力を流し込むことで生前に遜色無い屍兵が誕生する。
咆哮をあげる――ソウルセイバードラゴンは、空間の歪みへとすぐさま飛び込んだ。

直後、空間内で炸裂音が響く。

「……!」

ナッパは今の瞬間で見えた光景を、何故だか瞬時に理解できてしまった。
ソウルセイバーの屍が放り込まれ、ギムレーがそれを操り、彼女が飛び込んだ直後の爆発音。
ちなつの時と同じだ。彼女は屍となりながらも、おそらくは自らの意志で自爆したのだ。
また、大切な仲間を守ることができなかった。


993 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:04:17 DEq9DmxI0
「がっ……馬鹿な……!?」

空間の歪み、ミラーワールドからたまらずダークディケイドが飛び出してくる。
それに追従するかのごとく、ディエンドとダークキバも炎を振り払い現実世界に降臨する。

(萃香の監視と僕の身体をすり抜けてこんなに……! この歪んだ世界でありながら、かなりの空間移動者か!
 いやそれ以上にこいつら……既に死者だと!? それでいて僕の屍兵の支配を弾くとなると、僕と同類の能力者の差し金!)

突然の襲撃者に驚きを隠せないが、ギムレーは既に力を発現させていた。
対話の余地は無し、自分の支配も受け付けない死者など異常な存在は排除以外の道はない。
再び仲間を操るような真似をしたのだ。彼女が作り出したこの隙を逃すことも許されない。

「ダークスパイク!」

邪悪な力が凝縮された無数の黒針が、ギムレーの手より撃ちだされる。
焼夷弾の炎から逃れるように出てきた彼らに、態勢を整えてそれを受け止める余裕は無い。

「――ッ」

断末魔の叫びも無く、闇の力で蜂の巣にされたディエンドは霧のごとく消え失せた。


(くそ、せめて奴だけは殺さねば……!)


ダークディケイドは自分達の敗北を既に悟っていた。
奇襲爆撃を仕掛けるつもりが、どうしてか一手先に打たれて逆に自分達が奇襲されるとは。
混乱状態に陥っていればともかく、いまや自分達が理不尽級の群れの中に取り残された獲物だ。
イチリュウチームの戦力を削ぐことはもはや不可能。
そうなれば当初の目的通り、ツバサの抹殺だけは完遂しなくてはならない。
幸い動けているのはギムレーのみ。その攻撃もディエンドが無意識の内に盾となってくれたおかげで、次弾までの猶予がある。
標的はこの状況に、まだ頭の整理が追いついていないようだ。
テラカオスとしてほぼ完成した彼女とはいえ、実際のところ基本のテラカオスの強さは上位陣の中では下の方だ。
予言による強化が行われない限り、彼女を殺すことは可能。

ダークディケイドは、脇目も振らずツバサへと突進した。




「ぐっ!?」
「っ!!」



だが彼は、何かにぶつかって体勢を崩してしまう。
ギムレーの妨害?いや違う。

「ダークキバ!? 何をして――!?」

裏切り?それはない。彼には意思が無いはずなのだ。
意思が無いからこそ、彼もツバサ目がけてただ襲い掛かった。
そして運悪く、お互いがお互いの動きを阻害することになってしまった。
おそらくそれだけのことのはずだ。

「あ、貴方は……」
「……」

思わずツバサが言葉を漏らすが、ダークキバがそれに応えることはない。
彼にも、ダークディケイドにも、もう言葉を残すことは許されない。


「てめえらああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」


「待て、ナッパ!」

ギムレーの静止を振り切り、その髭を金色に輝かせたナッパの拳が振るわれる。
圧倒的過ぎるその力は、仮面ライダーの装甲も硝子のように容易く砕き、その身も爆散させた。


994 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:04:43 DEq9DmxI0
(……これで……)

絶対の死。本来迎えることのない二度目のそれ。
だがダークディケイド達は確かにその瞬間に解放されたのだ。



【仮面ライダーダークディケイド@仮面ライダークライマックスヒーローズ】消滅確認
【仮面ライダーディエンド@仮面ライダーディケイド】消滅確認
【風鳴弦十郎@戦姫絶唱シンフォギア】消滅確認

※放送では名前が呼ばれません
※シャドウの手先=大元は魂のため、死亡=魂の消滅となります
※これにより、シャドウが同一の存在を再度召喚することはできません
※操作に割いているシャドウの力の一部も消滅すると同時に、遠方にいてもシャドウは彼らの死を察知可能です





「はぁ……はぁ……」
「とんでもない力だな。少し気になることがあったが……まあ今はナッパの行動の方が正しかったかな」
「す、すまねぇ。だけどよ、あいつら……ソウルセイバーを!」
「ああ。恐らく彼女は彼らに殺されたのだろう。そして体内に爆薬を抱かされていた。
 おそらく僕らが動揺してる隙に爆破するつもりだったんだろう。僕もちょっとでも反応が遅れていれば間に合わなかったよ」

戦闘は一瞬で終わった。
だがもたらされた衝撃は、遅れて一同を大きく揺るがす。
さらなる仲間の死に、安全と思われた場に突然の襲撃。

「……ソウルセイバーのことは残念だった。だが、こんな状況下でもさっきいいニュースは手に入った。
 さっき、なんとか都庁のドラゴンとドラゴンネットワークでコンタクトがとれたんだ」
「!!」
「驚いたことに、彼らは既に予言を解き明かしてそのほとんどを手元に置いているようだ。
 足りていないのはテラカオス……つまりツバサ、君だ」
「は、はい」
「都庁との合流はもはや確定事項だ。だがそれ以上に、今の敵のように連中からツバサを守る必要もある。
 今後のことを含めて、僕はちょっとアナキンと相談してくるよ。君たちは悪いけど、もう少しここで彼女を守っていてくれ」

ギムレーの言葉にナッパがわかったと告げる頃には、ギムレーは足早に部屋を後にしていた。
不意をつかれたが、警戒心を増したナッパにイチローがいれば、ツバサは大丈夫だろう。
彼らにも都庁がもたらした予言の内容を伝えたいところだが、今の襲撃は完全に想定外だ。
これにより、やはりまずはアナキンとの接触が鍵になってくる。


ギシアンギシアン……イイヨユーノクン!ナノハノオシリモキモチイイ!


「……聞かなかったことにしておこう」


途中、病室から妙な声が聞こえたが、ギムレーは研究室へと足を急がせた。





995 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:05:17 DEq9DmxI0
「アナキン、僕だ。ちょっと緊急の用件なんだがいいかな?」

研究室の戸をギムレーは軽くノックする。
耳を澄ませば、サラとブリーフ博士からは了承の返事が出ている。


「どうしたんだギムレー。治療薬の作成は――上手く行っているよ」

少しだけ間が空いた。
それをギムレーは聞き逃さなかったが、あえて今はそこに触れない。
その声色は薬に細工をしたことを感づかれないかという不安というより、仕方がないといった感情が滲んでいたからだ。

「それは何よりだ。それなら残りはサラ達に任せても大丈夫かもね。彼女達の邪魔をしないためにも、ちょっと部屋を変えよう」





やがて、ギムレーとアナキンはとある空室の中で二人きりになった。

「さて、もったいぶらずに要件を聞かせて欲しいな」
「すぐに言うさ。古代のテラカオス制作に関わったジェダイの末裔、この殺し合いの主催に大きく関わっている君には大切な話だ」

ギムレーの赤眼が鋭くアナキンを捉える。
だがアナキンはそれに臆することはない。

「ああ、安心していいよ。君が主催者側の人間だってことは今ははやて達にはばらさないことにしたから」
「……へえ?」
「そんなことを言えば余計な混乱を招くし、はやてからは確実に僕の方が敵視されるだろうしね。
 まったくよくやるよ。女と見れば節操なく声掛けする器のルフレすらここまで女を手玉にとる真似はしなかったっていうのに」
「要件は、君の憶測を伝えることだけかい?」

ギムレーもアナキンも、笑っていた。
お互いが警戒しあっていることなど、既にわかりきっていることなのだ。
この程度では、お互いの仮面は砕けない。

「もう憶測じゃないさ。流石の君も、ジェダイがテラカオスと関わりがあるということを僕が口にしたことは無視できないんじゃないか?」
「……ふん」
「まあ僕も今さっき聞いたんだけどね。過去にあった大災害と関わったジェダイ。予言は彼らに助けられたこの星の民が遺したもの。
 君がテラカオスを知ってこの殺し合いを計画しても、予言を知らなかったのは無理がない」
「聞いたって、誰に?」
「都庁のドラゴンさ。そして彼らもしっかり動いていた。僕ら以上に予言を解き明かして、答えを出して必要なものも持っている」
「!!?」

初めて、アナキンの表情が驚愕の物に変わる。


996 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:05:48 DEq9DmxI0
「これは恐らく、君にとっても喜ばしいことだと思うけど。ただ、悪い知らせもある」
「予言が本当に解明できたなら、ちょっとやそっとの悪いことじゃ帳消しにはならないと思うけどね」
「君は認めないかもしれないが、もう君が主催の上層部の人間という体で話を続けるよ?」
「好きにしなよ、もう」
「まず、名探偵Lの残した推理。カオスロワちゃんねるの管理人は主催者ではなく、黒幕がいる」
「っ!?」

ぴくりとアナキンの表情が動いた。

「これはLの憶測だし、僕も現実のインターネットには疎いから何とも言えない。
 けれど君たち主催すら欺いてカオスロワちゃんねるの支配……つまり情報の支配をするなんてのは、他に大きな目的が出てくる」
「……あの掲示板は、テラカオス絡みの情報は遮断されている。黒幕がいるのだとしたら、つまりそれは」
「テラカオス。そして図らずも、都庁の予言の情報はこっちにも進展をもたらしてくれたよ」

デイバッグから、紙とペンを取り出すギムレー。
そこに書き込まれるのは、ジェダイ、グンマ―、ミヤザキの文字。

「大元は古代のジェダイ。彼らの協力者たるこの星の原住民はその知恵をそれぞれ別の方向性に進化させた。
 ジェダイのテラカオスを、より完全なもののためにするために生み出された強化プラン、救済の予言。
 このジェダイの末裔が、君だ」
「それで?」
「グンマ―は自然と魔法を重視する道を選び、やがてテラカオスの研究を放棄――自然死、大災害による滅びを受け入れた。
 蘇った器足る巨像、都庁のフォレストセルにもアンチテラカオスシステムをつけるぐらいだから、相当だよ。
 ただこれは、同じく現代に蘇った巫女、まどかという少女の手で潰されたらしい」
「彼女が巫女……いや、アンチテラカオスにそれを解除だって?」
「情報提供者も言っていたが、古代グンマ―の末裔だからといって、現代でも自然死を望むというわけではないってことだね。
 大きいのは、巫女と器が滅びを回避しようと動いている点だ。ツバサを含めれば非常に明るい話だね」
「それには……同感だよ」

アナキンの顔に僅かに笑みが浮かぶ。
主催者である自分への感情はともかく、懸念材料の一つであった都庁が予言に挑み解き明かしただけでなく、大災害回避に動いていた。
これは非常にありがたい情報である。

「この殺し合いには多くの者が色々と思うことがあるだろう。テラカオス絡みの情報を知っているのが自分達だけならば、動かざるを得ないのもわかる。
 正直、もう少しどうにかならなかったのかとか僕も色々言いたいが、多分君らも不器用なりに……滅びを回避しようとしたんじゃないか?」
「……ああ」
「ジェダイの末裔、そしてグンマ―の末裔。様々な事情が絡み合っているけど、『滅びの回避』って大きな目的は同じだ。
 そして最後、古代ミヤザキ。彼らは古代グンマ―と真逆、最初から滅びの回避に力を注ぎ続けた」
「古代の三つの大きな一族が、現代においても滅びを回避しようと――」

言いかけて、アナキンは確かに寒気を感じた。

「君も気がついたか。そう、古代ミヤザキの最初の思想は滅びの回避。
 だが現代のグンマ―の末裔の思考が自然死から滅びの回避に変わっているのであれば、その逆もありえるんじゃないか?」
「さっきの君の話では、ミヤザキの思想も厳密には滅びの回避じゃない。テラカオスの制御だ」
「滅びを回避できるほどの存在、テラカオス」
「回避というけど、その実態は滅びの吸収だ。そんなものを制御、自在に操れるともなれば……」

「「ミヤザキの末裔がテラカオス制御の思想と手段を歪めてしまっても不思議じゃない」」


ギムレーとアナキンは、同時にその結論へと到った。


997 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:06:19 DEq9DmxI0
「カオスロワちゃんねるの支配者はミヤザキの末裔か……」
「おそらくね。とはいえこれだけじゃあまりにも情報が少ないよ。君ら主催は何か掴んでいなかったのかい?」
「こっちは予言すら知らない状態だったんだぞ? 仮に本部に戻ったとしても探すのは難しいだろう」
「ははは、もう隠そうともしなくなったね。まあそっちの方がこっちも話をしやすいけど」
「テラカオスの制御、つまりは黒幕も予言を完遂する必要性はあるはず……いや、僕らから横どる気か」
「そっちの方が安全だろうからね。だから、掲示板の裏に潜んで情報操作したってところかな」
「くそっ!」

アナキンは思わず机を叩く。
既に汚名を被る覚悟は決めていた。
自分を正義の使者などとは思っていないしなる気もない。
ただ、滅びを回避したい。その想いだけは本物なのだ。
自分だけではない。他の幹部も、まともな特務機関員も。

ここに来て、テラカオスを悪用しようなどという輩に邪魔などされてたまるか。

「この件は事が大事過ぎる。都庁と合流して、話し合う必要があるだろう。そしてもう一つ、悪い知らせがある」
「ま、まだあるのか?」
「ついさっき、僕のガードをすり抜けて……空間移動で襲撃を受けた。奴らに仲間のソウルセイバーが殺されたようだ。
 そいつらは僕とナッパで始末したけど、信じられないことに奴らは既に死者であり、明らかにツバサを狙っていた」
「なんだと!?」
「これも都庁から仕入れた情報だが、大災害の化身黒き獣は現在死者の魂を狩っているらしい。
 名称は違うが、テラカオスディーヴァが戦ったシャドウと同一の存在と見て間違いないだろう。
 死者を僕の屍兵以上に精密に動かして消しそびれたテラカオスの完全なる抹殺……
 予言の妨害、大災害の成就こそが奴の目的だろう」
「死者の魂を狩るだと? それじゃあ、ルーク達は……」
「アナキン、これでわかっただろう? 正直僕も死者の尖兵なんて僕のお株奪うような真似されるのは完全に策の想定外だ。
 君を主催者幹部として吊るすことも、はやてがいてもできないわけじゃないんだ。ただ今は、とにかく時間が無い」


「力を貸せ、主催者! もう予言の材料は揃っている! だけど敵は、狂信者に拳王! ミヤザキの末裔!
 そして最悪、この殺し合いで死んだ存在全員が、大災害の操り人形になって襲ってくる可能性だって出てきた!
 わかるだろう!? ユーノを予備のテラカオスにしようだとか考えるな! 僕らに怪しまれまいと振舞うな!
 もうそんな無駄な時間すら惜しいってことぐらいは!」

響き続けるギムレーの怒号。
さっきの通信を最後にしたのは、致命的な失策だったのかもしれない。
魂の気配から、さっきの尖兵はもう蘇らないだろう。
だがそれこそ、敵の屍兵の弾は無尽蔵だ。こっちも幾許かの屍兵は生み出せるが、数と精度に差がある。
ナッパがいても、イチローがいても、VS強化死者全員は無謀が過ぎる。
それはアナキンも理解していることだろう。

「……安心しろ、ギムレー。ユーノの治療薬は真面目に作ったよ。僕がいなくても、あの素材と博士達がいれば問題なかったけどね。
 僕は何と言われようが……ただ、未来の破滅を止めるだけだ。
 君にだけは言っておこうか。僕は……余は、ダース・ベイダー。放送は恐らく誰かが代役でやってくれたのだろう」
「っ、へえ。やっぱり大物だったか」
「傀儡の野田が死に、造反者の安倍も死んだ。いわば残された主催者のトップ。
 皆の憎しみが最も集中するであろう僕を信じて、この後も動いていけるのかい?」
「ふん、そっちこそ。我はギムレーだぞ? 貴様らのおかげで絶望の力を増した破滅を司る邪竜の今の言葉を信じれるのかい?」
「ははは、君なんて雑魚は大災害に比べれば赤ん坊みたいなもんだよ」
「これは面白いことを言う。覚えているぞ、お前主催者本部で全裸になって乗っ取られたんだろ? そんな間抜け恐れる価値もない」

ひきつった笑顔のまま、本当に軽い握手だけが交わされる。
思うことは色々ある。だが彼らは冷静であり冷徹でもある。
大いなる目的のため。この後がどうなるかまではわからないが、そんなものはその時に考えればいい。
残り時間は、後わずかなのだから。


998 : ラストネットワーク :2018/09/25(火) 00:06:58 DEq9DmxI0
【二日目・20時00分/千葉県 浦安市 病院】

【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【状態】健康、不安、若返り、ジェダイ風衣装、首輪解除
【装備】邪剣ソウルエッジ&聖剣ソウルキャリバー@ソウルキャリバーシリーズ
【道具】支給品一式、四条化細胞入りカプセル、ライトセーバー@STAR WARS、闇のルビー、ギンガスパーク@ウルトラマンギンガ、ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、大量の不明支給品(アナキン確認済み/回復薬なし)
【思考】基本:世界を救うためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:ギムレーと共に今後の策を考える
1:対主催への信頼を得るためにブリーフ博士やはやてを利用する
2:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは消す
3:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
4:ユウキ=テルミが死んだので予言を解き明かせる科学者や知恵者はなるべく殺したくない
5:いざという時は四条化カプセルで新たなテラカオスを作る
6:沖縄のフォースから世界の破滅の危機を察知。色々と急がねば……
7:萃香に見張られていることに気づいている
※タイムふろしきで若返ったのでピーク時の姿と力を取り戻しました

【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒】
【状態】健康、人間形態、シャドウだった者へ若干の恐怖心、首輪解除
【装備】トロンの書、鋼の剣、邪竜ギムレー
【道具】支給品一式、不明品
【思考】基本:自分以外がもたらす破滅(未来の大災害)の阻止
0:仲間達にも都庁やアナキンの情報の一部を聞かせ、今後の策を練る
1:『正確な』情報を集めて仲間をフォローする。アナキンの正体は今は誰にも話さない
2:試合の邪魔をするDMC狂信者を倒すために、本拠であるビッグサイトを攻略したい
3:都庁がまともな場所と判明したのは僥倖。変態の巣窟でも文句はないさ
4:西の邪悪な気配は警戒を続ける
5:ネット上の乳神に若干嫉妬
6:ツバサこそ大災害から世界を救う鍵かもしれない
7:オシリスは救助したいが少し厳しいか……?
※外見はデフォルト設定の銀髪青年です
※首輪を外したとしても、屍兵は簡単には生み出せません
※首輪解除により、人間の姿のまま、自分自身である邪竜ギムレーを操れるようになりました
※現在、邪竜ギムレーの体を使って浦安市を覆うことでシェルターとなって外敵の侵入や攻撃を防いでいます
 『通常手段』での突破は容易ではありません
※オオナズチより、予言の情報と都庁の状況の一部を把握しました
※またオオナズチ側にもイチリュウチームの情報が伝わりました
※ドラゴンネットワークを遮断しました。これにより情報は入りませんが、シャドウからも介入されません


999 : 名無しさん :2018/09/25(火) 00:07:40 DEq9DmxI0
投下終了です


1000 : 名無しさん :2018/09/25(火) 23:11:59 4EVnsmSw0
投下乙です
まさかの管理者包囲網&主催筆頭アナキンと手を組むとは
カプセルも作られてユーノ・なのはの死亡フラグも漸く回避できたかな?
欲を言えばレス数不足でギムレー・アナキン以外の状態表を作れなかったみたいなので
そこは作って欲しいところ(登場キャラだけでも)


このスレ埋まったし続きはテラカオスBR専用したらば掲示板の方で良いかな?


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