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アニメキャラ・バトルロワイアルGO

1名無しさん:2016/06/17(金) 00:00:13 ID:EdILi.9c0
ここはアニメキャラクターでバトルロワイアルを行うリレーSS企画です。
企画の性質上、キャラの死亡や流血等、残酷な内容を含みます。閲覧の際には十分ご注意ください。

したらば
ttp://jbbs.shitaraba.net/otaku/17236/

投票所
ttp://jbbs.shitaraba.net/anime/10770/

wiki
ttp://www65.atwiki.jp/anirowago/

地図
ttp://imgur.com/aYmPt1v.jpg

【参加者名簿】

6/6【名探偵コナン】
○江戸川コナン/○毛利蘭/○灰原哀/○安室透/○赤井秀一/○ジン
6/6【うしおととら】
○蒼月潮/○とら/○秋葉流/○引狭霧雄/○斗和子/○紅煉
6/6【ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】
○東方仗助/○広瀬康一/○虹村億泰/○岸辺露伴/○片桐安十郎/○吉良吉影
6/6【機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ】
○三日月・オーガス/○オルガ・イツカ/○ビスケット・グリフォン/○アイン・ダルトン/○ガエリオ・ボードウィン/○マクギリス・ファリド
6/6【迷家-マヨイガ-】
○光宗/○スピードスター/○ヴァルカナ/○らぶぽん/○美影ユラ/○ナンコ
5/5【おそ松さん】
○松野おそ松/○松野カラ松/○松野チョロ松/○松野一松/○松野トド松
5/5【東京喰種トーキョーグール】
○金木研/○霧島董香/○月山習/○ヤモリ/○真戸呉緒
5/5【オーバーロード】
○アインズ・ウール・ゴウン/○アルベド/○シャルティア・ブラッドフォールン/○デミウルゴス/○クレマンティーヌ
5/5【うたわれるもの 偽りの仮面】
○ハク/○クオン/○ネコネ/○オシュトル/○ヴライ
4/4【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】
○ニンジャスレイヤー/○ダークニンジャ/○ヤモト・コキ/○シルバーカラス
4/4【ストライクウィッチーズ】
○宮藤芳佳/○リネット・ビショップ/○サーニャ・V・リトヴャク/○エイラ・イルマタル・ユーティライネン
4/4【がっこうぐらし!】
○丈槍由紀/○恵飛須沢胡桃/○若狭悠里/○佐倉慈
4/4【この素晴らしい世界に祝福を!】
○佐藤和真/○アクア/○めぐみん/○ダクネス
3/3【ガールズ&パンツァー】
○西住みほ/○西住まほ/○逸見エリカ
3/3【THE IDOLM@STER】
○天海春香/○如月千早/○星井美希

72/72

608声の形 ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:26:36 ID:2Z3gMXqM0
クレマンティーヌがそう言った瞬間、千早は椅子に縛られたままでありながら猛烈な勢いで抵抗を始める。
もちろん、無駄な努力であったが。

如月千早にとって、声は彼女の存在理由そのものと言っていい程である。
声が、歌が、彼女の中で最も重要なものになったのはその過去に起因するが、そこから何年も歌に執着し続けたのは彼女自身の努力によるもので。
更に、そんな努力の積み重ねが、何時しか何処に出しても恥ずかしくないレベルにまで歌唱力を引き上げていた。
生真面目な彼女の性格がこれを助長したのは想像に難くない。ただ、彼女はまだたかが思春期の小娘でしかなく、拘るのと同時にすがる寄る辺を歌に求めたのも無理からぬ事だ。
自身では抱えきれぬ自責の念を、歌に傾倒する事で誤魔化し騙し、どうにかやって来ていたのだ。
そんな綱渡りのような精神状態も、とある事件により改善された。その時、千早を支えてくれたのは天海春香であり、仲間のアイドル達であった。
迷惑をかけた彼女達に、千早はありったけの歌をもってそのお礼とした。その後も、彼女達への感謝を込めて、千早は歌い続けた。
千早が縋る縁であった歌は、何時しか千早自身にとってなくてはならぬものとなっており、千早もまたその事を自覚している。
何より、今こうして歌う事が出来ているのは、千早のみならず仲間の尽力によってなされたと考えている千早にとって、千早の声も歌も、彼女だけのものとは思えなくなっていた。
千早の声を取り戻してくれた、天海春香や仲間のアイドル達の為にも、歌い続けなければならないと。
断じて、奪われて良いものではない。例え操を失おうとも、声だけは、声だけは守らなければならないのだ。
『やめて! 他の何をしたっていい! でも! 声だけは許して! お願い!』
強引に口を開かれながらも声にならぬ叫びを上げる。
一度、精神のバランスが崩れた時、千早は歌を失ってしまった。
あの時の恐怖は、今も千早の脳裏にこびりついて離れない。
そして、もし又声を失うなんて事になったら、千早はどんな顔をして仲間達に会えばいいというのか。それに、コイツ等にやられたら、きっと、前と違ってもう声は戻らなくなる。
大男の粗雑な悪意も、女のぬめりつくような害意も、もうこれまでに存分にその身に味わって来た千早だ。
その二人に知られたら、絶対に避けようが無い事も。
それでも千早は、口を開かれているため聞こえるはずもない声を張り上げ、許しを請い続ける。それが万に一つ、億に一つであろうとも、助かる可能性を信じて。
そんな千早の祈りが、通じてしまったようだ。
女はその万力のような力で開いていた口から手を離してくれた。
千早の、ダクネスとは違ってまだ見える目は、女と大男がお互いで何やら話しているのを見ていた。
声は聞こえているが、意味のあるものとして千早の脳に入って来ない。
今は、助かった、助かった、と只々安堵するのみだ。
女は、千早に向き直ると満面の笑みで言った。
「じゃっじゃーん、ではではおひろめ、かなぁ」
女はその手に、小さな肉の塊を持っていた。
「こ・れ・が、貴方の舌、そうね、言うなれば貴方の声の形、って所かしらぁ」
え、と千早の時が止まる。大男が笑い言った。
「気取った事言うじゃねえか。なあおい、もうそろそろコレ、壊しちまってもいいだろ?」
嘘よ、と口の中を確認しようとしてみたが、わからない。どうしてだかわからないけど、口の中がどうなってるのかがわからないのだ。
「壊す? ぐちゃーって感じで?」
わからないという事はつまり、と考えかけて、それから先はいけないと千早は思考を閉ざす。

609声の形 ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:27:40 ID:2Z3gMXqM0
「それそれ。加減してイビるのはストレス溜まんだよ。前のはお前の好みに合わせたんだから、次は俺だろ」
今は何を考えてもきっと、考えてはいけない事を考えてしまうから、何も考えてはいけない。
「んー、ま、いっか。どうやらきちーっと壊れてくれたみたいだしね。でも、もうちょっと反応待ちましょうよぉ、ほら、朝ごはんまだだしせめてその間ぐらいは、ねぇ」
それで、千早は穏やかでいられる。そうすれば、随分と楽になる気がした。
「おめーはずっと食いっぱなしだろーが! ったく、しょうがねえな、じゃあその舌寄越せよ」
大男は、小さな肉の塊を目の前にぶらさげてきた。
「よーく見ろよきさらぎちはや。ほら、綺麗に切れてるだろ? こういう傷ってななあ、しかるべき手を使えば案外簡単にくっつくもんなんだぜ。全く、クレマンティーヌの奴ぁ無駄に器用だよな」
くっつく、に僅かに反応する千早に、大男は笑みを深くする。
「でもこーしちまうんだがな」
言うが早いか、大男はその舌を自分の口に放り込み、これ見よがしに咀嚼して見せたのだ。即座に女がつっこんだ。
「朝食ってそれ食うのかよっ!」
大笑いしながら女も、大男も、千早の表情を見て楽しんでいる。
千早の苦痛も絶望も、心底から楽しんでいる二人を見て千早は悟った。

きっと千早は、世に言う地獄とやらに迷い込んでしまったんだと。



【C-7/朝】
【ヤモリ@東京喰種】
[状態]:健康(怪我は再生した)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×3、あんこう@現実、ガンプラ@現実 歯の痛み止めの薬(かなり効きます、凄いね現代薬学) 催涙スプレー×2、ワルサーP99(残り19発)、グロック35(17+1/17、予備34発)@現実、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本方針:カネキで遊ぶため探す。主催は殺す。
1:あんていくに向かい、カネキを探す。
2:クレマンティーヌと同行し一緒に人を殺して回る。
※喰種だということを周りに話していません。

【クレマンティーヌ@オーバーロード】
[状態]:活動するにあたってはやせ我慢が必要なぐらいの怪我(HP半減程度)
[装備]:サソリ1/56@東京喰種×46
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・行動]
基本方針:
1;槍の小僧を、戦力を揃えて殺す。
1:ヤモリと同行して一緒に人を殺して回る。
※彼女が現状をどう捉えているかの描写はまだありません。

【如月千早@THE IDOLM@STER】
[状態]:具体的描写は避けますが、数時間に渡ってヤモクレの拷問を受けました。ただ、目は見えます。しゃべれませんけど。
[装備]:
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:タスケテ
1:モウナニモナイ

610 ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:28:18 ID:2Z3gMXqM0
以上で投下を終了します。

611 ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:29:22 ID:2Z3gMXqM0
アインズ・ウール・ゴウン 恵飛須沢胡桃 アクア 金木研 片桐安十郎 ビスケット・グリフォン、投下します。

612好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:30:12 ID:2Z3gMXqM0




ビスケット・グリフォンは、完全に少女の視界から外れてもまだ走るのをやめなかった。
体型は実にふくよかなビスケットであるが、そこは鉄華団でモビルワーカーのパイロットもやっている兵士である。
基本的に、パイロットなんて仕事はタフな人間でなければこなせないもので。
ましてやビスケットの従事していた作業環境は、富を搾取されている云々以前の話で、彼等の命すら顧みられてはいなかったのだ。
その象徴たる、阿頼耶識システムをビスケットも当然身につけている。
このシステム、手術の成功率が六割前後で、しかも手術自体は十才頃に行うというもの。
十才の子供に成功率六割の手術の意味がわかるはずもなく、わからぬままに四割死亡の危険な橋を渡らせる事の非道さは、少しでも想像力があれば理解出来よう。
そんなブラック通り越してダークマター覆ってそうな職場環境を生き抜いてきたビスケットが、見た目通りの動けぬデブなわけはないのである。
あっさりとらぶぽんを振り切ったビスケットは、多少息は切らしていたものの、その場で疲れて蹲るだのといったハメにもなってはいない。
さて、とビスケットは改めて地図を見る。
マルノウチスゴイタカイビルという名前の建造物付近は迂回した方が良いらしいが、ビスケットが気になる建物はその先にある。
CGS本部と書かれている場所。ビスケットがこの単語から連想するのは、現鉄華団本部である古巣の基地だ。
「でも、まさか、ねえ」
こんな所にあるわけがない。それこそ鉄華団の名前と比べれば珍しくもないもので、同名の建物が存在する可能性もそれほど低いとは思えない。
ただ、こんな名前の建物があるという事に気付いたら、オルガも三日月も気にはするだろう。打ち合わせも無しの合流場所と定めるには、悪く無いかもしれない。
遠回りすれば大丈夫、かな。とここを目指す事に決める。
まさかマルノウチスゴイタカイビルで狙撃してた人間が、CGS本部を水素爆発で吹っ飛ばしているなどと、露ほども思わないのである。
そんな考え事をしながら歩くビスケットは、その進行方向、おおよそ十メートル程先に、二人の人影を見かけた。
男と女、どちらもまだ若い。
女がにこやかに笑いながら声をかけてきた。
「こんにちわ。こちらに敵意は無いよ。良ければお話したいんだけど、どうかな?」
女は髪を二箇所で縛っている気の強そうな少女で、男の方は髪の毛が真っ白なのが気になったが、顔つきは優しそうな人に見える。
一定の距離をあけて、脅かさぬよう控えめに声をかけてきてくれたのにも、好感が持てると思えた。
ビスケットは笑い返して言った。
「こんにちわ。僕はビスケット・グリフォン。鉄華団の一員だよ。僕もきちんと話が出来る人探してたんだ。もちろん、襲ってくるような事の無い人とね。そっち、行っていいかい?」
「もちろん。……襲って来ない人って、もしかして襲って来るような人と会ったのか?」
眉根を抑えながら歩み寄るビスケット。
「いやー。何ていうか……とても一言じゃ言い表せないかな。無理にでも言うとしたら、超人と怪獣と錯乱してしょけーしょけー言う娘」
女、恵比須沢胡桃は、男、金木研と顔を見合わせる。胡桃はおそるおそる問うた。
「もしかして、怪獣って真っ黒で鼻に剣刺さってるの? 雷降らせたりとか意味わかんない事するの」
「え!? 君達も見たのかい!?」
「見たも何も。このカネキ君が襲われて危うい目に遭ったよ。良くもまああんなのから逃げられたな」
「うわ、やっぱりアレ危ない奴だったんだ。それがさ、望遠鏡で見たんだけど、似たような金色の怪獣と滅茶苦茶なケンカの真っ最中で。慌ててその場から離れたんだよ」
「あっぶな、それ大正解。ホントにアイツ危険な相手なんだから。私達も、他に二人仲間がいるんだけど、その内の一人がすっごい人で、その人が頑張って何とか撃退したんだ」
「あれを撃退? モビルワーカーにでも乗ってるのかい?」
「まま、その辺はみんなの所で話そう。いい、よな?」
「ああ、もちろんだよ」
話がまとまった所で、カネキが声をかける。
「よろしく、僕は金木研だよ」
慌てて胡桃も続く。
「っと、私もまだ自己紹介してなかった。恵比須沢胡桃、よろしく」
ビスケットは少し、反応に困っているような顔になる。

613好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:30:45 ID:2Z3gMXqM0
「あー……えっと、ごめん、カネキケンと、えび、えっとエビサザミルク?」
速攻で突っ込む胡桃。
「カネキ君はあってて私は駄目かいっ。あ、いや、そしたら私は胡桃でいいよ」
「僕もカネキってみんな呼ぶからそれでいいよ。日本語の名前、慣れてないんだよね」
「ああ、そう言ってもらえると助かるよ、カネキ、クルミ」
同世代同士という事を差し引いても、鉄火場を潜り抜け根性の据わった善人同士ならば、殺し合いを強要されている場所での初邂逅もこうして和やかに進むものなのである。

胡桃は、それをとても言い難いそうにしていた。
「えっと。向こうに残してきた二人なんだけど、その、男の人の方は、すっごく頼りになるんだ。頭も良いし、黒い獣を追い返せるぐらい強いし、それでいて私の事とかカネキ君の事とかも気にかけてくれてて、ちょっと、その、常識から外れた部分はあって、後、えっと、その、見た目が、怖いっていうか。だっ! だけど中身は良い人なんだ! ホント見た目だけなんだって!」
金木もどう説明したものか思案しながらである。
「最初は見た目にびっくりすると思う。でも、理性的で理屈に合わない事はしない人だよ。多分だけど、頭が良すぎるんだと思う。だから僕達の常識からは少し外れた事もするけど、それは僕等の発想があの人の考えに届いてないだけ、って感じなんだよ。あー、こればっかりは実際に話してもらわないと、かな。見た目は確かに怖い。っていうか、ちょっと凄いんだけど、ホント見た目だかだから、怖いのはっ」
ビスケットは何とも返答しようがないので、当たり障りの無い言葉を返す。
「あー、うん。とりあえず会ってから考えるよ。もう一人は普通な感じなの?」
即答したのは胡桃だ。
「一言にまとめるとバカ」
「く、胡桃ちゃん。それは少し言い過ぎ……」
「言い過ぎだと思う?」
「あ、あはははははははは、何ていうか、僕の口からは何とも……」
胡桃はビスケットに向き直る。
「考えが浅くて思いつきで馬鹿な事するんだ。それが、こういう場所であっても平気でやらかすわけ。まあそういう娘だから、カチンと来る事言われるかもしれないけど、大人な態度でスルーしてあげて欲しいな」
「……き、気をつけるよ。ここに来る前からの知り合いなの?」
「そんな恐ろしい事言わないでくれ。あの子連れて学校でサバイバルしろなんて言われてたら、流石に詰んでたぞ私達」
アクアの魔法がウィルスでゾンビ化した者に効果があるかどうかは定かではないので、概ね彼女の評価は正しいものであろうて。
ビスケットは呆れ半分で感想を述べる。
「だとしたら、ものの六時間ぐらいでそこまで言われる人ってのも凄いよね」
カネキは遠い目をしながら言い、胡桃も首肯する。
「……一時間もいらなかったよね」
「……そうだな」
ビスケットは妙に真顔になって襟を正す。
「うん、わかった。色々と覚悟しておく」

「私がアインズ・ウール・ゴウンだ」
アインズの自己紹介に、絶句で返すビスケット。幾ら構えていようが、そりゃ全身フードの骸骨顔を見せられればこうなる。
そんなビスケットの様子を見て、鬼の首でもとったかのように絶好調になるアクア。
「ほーら見なさい! アンタのアンデッド顔は万人が嫌がるものなのよ! この歩く猥褻物! アンデッドはそれらしくじめじめしい暗がりにでも帰りなさいっ!」
「私の何処に卑猥要素があるというのだ。せめて大人向け程度にしておいてくれ」
アクアの罵り言葉にも、いい加減アインズも慣れた様子でさらっと流してやる。
こそっと胡桃がアインズに問う。
「……もしかしてアインズさん、これはこれで楽しんでます?」
「はっはっは、元居た場所ではこうまであからさまに私に突っかかって来る者なぞおらんかったからな。慣れてくれば、苛立ちよりも新鮮さがより勝る」
大人だ、と尊敬の眼差しを向けるはカネキ君である。

614好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:31:37 ID:2Z3gMXqM0
アインズはビスケットに向け肩をすくめて見せる。
「この容姿が人間を怯えさせるものであるとの自覚はある。だからこそ、君との接触はまずそちらの二人に頼んだのだ。そういったこちらの配慮を、少しでも汲んでくれると嬉しい」
「あ、ああ、えっと、はい。その、あれですよね、知ってます。何とからいだーとかいう、娯楽番組。確か骸骨の仮面かぶってて。うんうん、いや、僕は見てないけど、何処かでそういう番宣見たような気がしますし」
「……あー、その、だな、ビスケット・グリフォン。私は人間ではないんだ。もちろんコスプレでもない。その証拠を今から見せるから、落ち着いて見て欲しい」
かぶっていたフードを外すと、もう誤魔化しようのない骸骨ヘッドが晒される。
骨々しい容貌を見せた後、手袋を外してやるとそこにも手ではなく手の骨が。骨だけでどーやって形を維持してるのかまったくもって不可思議極まりないが、何度見ても、骨だけなのである。
ビスケットの体が傾く。それは斜めから見ても変わらないか確認する為、無意識にそうしたもので。
順に左右にななめってどちらの角度から見ても骨が骨である事を確認する。
「……え? 何これ? え?」
「君もまた魔法を知らぬ世界の住人か。私はアインズ・ウール・ゴウン。飢えも疲労も病も寿命も無い、アンデッドの一種オーバーロードという種の者だ」
「あんでっど? え? ホラー映画? 魔法?」
結局、ビスケットへの説明と実証で半時間かかった。かかったが、それなりに納得はしてもらえたあたり、アインズはかなり頑張ったのである。後ビスケットも。
「……とにかく、地球には僕等には思いも付かないものがあるって事は理解したよ。ここ来てからはもう、本当にびっくりする事ばっかりだ」
ちなみにこの間、アクアがアインズに突っかかろうとしているのを、胡桃とカネキで上手く誤魔化しなだめすかしている。なので基本会話はアインズとビスケットの二人によって行われている。
アインズは話の切欠にと思ったか、ビスケットの言葉尻をとらえてみる。
「地球には? 面白い言い方をするな」
「そりゃ、僕は火星から来た口だからね。地球って所は僕の想像を遥かに超えて……」
「……火星? それは火の星と書いて火星? 太陽系第四惑星の?」
「そうだけど。そんなに火星出って珍しいんだ」
今度はアインズが絶句する番であった。
「…………珍しいもなにも、火星に人が住んでいるなんて始めて聞いたぞ。ビスケット、もう少し君の世界の話を聞かせてくれ。その上で、私がそこの三人と話し合って出た推論を君にも披露しようじゃないか」
そして再び説明しあいタイム。ここでもエライ時間を食ったのは、ビスケットの語る宇宙開発っぷりがアインズの想像を軽く超えてくれていたせいだ。
異世界であるからして、アインズ達の知る地球より技術や歴史の進んだ世界とも繋がる可能性を、アインズは不覚にも失念していたのだ。
驚いたアインズはビスケットから様々な話を聞きたがった。ビスケットが語るモビルスーツの話に、思わずワクワクしてしまったという理由も無いではないが。
ビスケットもまたアインズの語る魔法の話や、異世界の話を聞きたがり、二人は種族の違いも超えお互いを語り合う。
実はこの両者、片やアインズは元サラリーマンの営業畑出身であり、片やビスケットは荒くれ者ばかりの鉄華団における良心とも言うべきポジションの聞き上手で、この二人の会話はお互いにとって好ましいと感じられるものであった。
あまりに盛り上がり過ぎて、どちらも胡桃に突っ込まれるまで時間を忘れてしまっていた。
アインズは一端話を切った後、上機嫌でビスケットを仲間に誘う。
「是非、君にも同行して欲しいのだが、どうだろうか?」
ビスケットもまたそれを心強いとも思うのだが、ビスケットは鉄華団の一員として優先しなければならない事がある。
誘ってくれて嬉しいが、と口惜しそうにビスケットが断ると、アインズもまた残念そうにしたが、ふと思い出したようにアインズはバッグを取り出す。
「そうだ、ビスケット。私の支給品に私にはわからないものがあったんだが、もし良ければ見てもらっていいか? モビルスーツというのと似た名前のものなのだが」
「ん? いいよ。どれ?」
「えっとだな、確か、モビルワーカー、というものらしくて……確か、鍵が……」
ビスケットがその単語に驚き言葉を発しようとした所で、ソレが起こった。
アインズはバッグの中の鍵を取り出そうとしていた。説明書にはコレが機動キーになると書いてあったが、肝心の起動させるべき何かが見つからない。
まあいいか、と鍵と説明書を取り出したのだが、そこで始めて、最初に見た時は気付かなかった更なる注意書きが見えた。
注意書きはバッグの中に入っている突起物に張られていた。

615好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:32:11 ID:2Z3gMXqM0
『モビルワーカーが必要な時は、これを引いて下さい。くれぐれも、開けた場所でそうする事』
アインズは注意書きの後ろ半分を見ぬまま思わず反射的に、そうか引くのか、と突起を引っ張ってしまった。
似た現象はつい先程、奇しくもこの近くの川沿いで起こっていた。
松野おそ松がバッグから、明らかにバッグに入りきらぬ水上スキーを引っ張り出したのだ。
つまり、バッグの容量や口の大きさ如何によらず、このバッグの中身は引っ張り出す事が可能だという事で。
ならば中にモビルワーカーが入るなんて事もありうるのではなかろうか。ていうか戦車をそのまんま出した者もいるわけで超今更でもあるが。
大慌てでバッグを投げ捨て避難するアインズとビスケット。
バッグからは、気味の悪い歪み方をしながら機械が伸び出して来ている。それは何時までもそうし続けていて、アインズは胡桃達も一緒に更に後方へと下がる。
アクアが当然の如く抗議する。
「ちょっとちょっとちょっとー! アンタ一体何してくれたのよ!」
「知らん! 敵なら私が処理するからお前は下がってろ!」
臨戦態勢に入るアインズを他所に、機械は遂に全てがバックから飛び出し、三メートル半はある巨体を路上に晒す。
見た目は三脚のついた戦車といった感じか。
その威容に、アクアは真っ先に先制攻撃を主張する。
「アインズ! こら何してんのアンデッド! さっさとアンタの魔法でぶっとばしなさい! 特別に私が許可してあげるからっ!」
「ええいお前は黙っていろ。初見の敵は、まず一時撤退を頭に入れておいてだな……」
警戒する皆に、ビスケットが機械を見上げながら言った。
「多分、これ誰も乗ってないよ。アインズ、君はこれが何だかわからないんだよね。これは僕の所の、それも、前使ってた機体、モビルワーカーTK-53だ」
前使っていた、と付けたのは機体に描かれたロゴがCGS時代のものであったからだ。
ビスケットがそう言うと、真っ先にアインズが食いついた。
「まさか、ビスケット。君、これに乗れるのか?」
「うん。この型は多分阿頼耶識も使えるだろうし、これなら僕向け、かな」
おずおずと、カネキも食いついてきた。
「いや、でも操作とか物凄く複雑そうに見えるけど……」
「そうだね、コレを上手く動かすには阿頼耶識ってシステムに人間側が対応してないといけないんだ。アインズの話を聞いた感じだと、きちんと動かせるのは僕含めて三人ぐらいしか居ないんじゃないかな」
そこで、全員が一斉に押し黙った。誰も動かない。
じっとモビルワーカーを見るだけで、誰も発言しないし動こうともしない。いや、モビルワーカーだけを見ているのはビスケットで、アインズもカネキも胡桃もアクアも、モビルワーカーとビスケットを交互に見ている。
一番最初に業を煮やしたのはアクアであった。
「って、ちょっと! 何時までぼけーって見てるのよ! アンタこれ動かせるんでしょ!? だったらさっさと乗って見せなさいよ!」
それはアインズ、カネキ、胡桃の意見を代弁したものでもあったが、ビスケットはというとそんな申し出に意外そうな顔を見せた。
「いや、でもこれアインズのだよね? 僕が勝手に乗っちゃまずい……」
「いいぞ。構わないからすぐに乗るんだビスケット」
アインズは速攻で許可を出す。どうやらアレが動く所が見たくて仕方が無いらしい。何のかんの言って、アインズもまた一人の男の子であったりもするのだ。
このわくわく感を共有してくれそうな、カネキの方を振り向き見てみるアインズ。
だが、カネキはというと驚きはしているものの、その表情に隠せぬ高揚なんてものは見られなかった。ガチ系文学少年には、この感覚は理解してもらえぬ模様。
ものっ凄くがっかりしながら、残る二人を見ると、胡桃もまあ概ねカネキと同じ反応。残るアクアは、小首を可愛らしげに傾げている。
見た目は良いのだから、黙ってこうしていれば人間にはきちんとモテるだろうに、と毎度思うアインズである。
「ねえねえ、私考えたんだけど、あれの名前」
「モビルワーカーって名前だと思うが……」
「あれはね! デストロイヤーにそっくりだし! チビストロイヤーでどう!?」
胡桃が即座に答えた。
「だとしたらデストロイヤーじゃなくてデカストロイヤーになるだろ。てかモビルワーカーって名前があんだから却下だ却下」
「えー! だってモビル若って若々しくてあのゴツい見た目に合わないじゃない!」

616好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:33:49 ID:2Z3gMXqM0
「ワーカーだ! 作業用って意味でもあるんじゃないのか? ……のワリに武器っぽいのついてるけどさ」
程なくモビルワーカーが駆動音と共に動き出す。ビスケットが中で簡単な動作チェックを行っているのだが、そんな小さな動きでもアインズの失われたと思われていた男心を刺激して止まない。
三脚の下端はローラーになっており、滑るようにこれが駆動しつつ、三脚が上手く移動の衝撃を吸収する形になっているようだ。そこまではアインズにもわかったし、そんなロボットアニメなシロモノが実際に動くのを見ては、やはり興奮を隠せない。
なのだが、すぐに心が強制的に平静に戻されてしまった。それをとても残念に思うアインズだったが、その作用が反応する程に興奮していた我が身を振り返り、現状を鑑みて自省などもしてみたり。
一通りの動作を確認したビスケットは上部ハッチを開き顔を出してきた。
「うん、燃料弾薬も満タンだし、オーバーホール直後みたいに綺麗だ。でも、これどうするの? 僕、悪いんだけどCGS基地って場所に行こうと思ってるから、これ乗ってついてくって流石に難しいんだ」
そう問われて即座にアインズが答えられなかったのは、この巨大な機械が動く所が見たかっただけであって、そこから先の事は何も考えていなかった為だ。
言葉に詰まったアインズに、カネキが控えめに言う。
「あの、アインズさん。どうせコレ僕達誰も使えませんし、いっそビスケットに渡してしまうのはどうでしょう。これがあれば彼も鼻ピアスみたいなのに出会っても何とかなるだろうし。それで、ですね、これほどの物ですから、ビスケットからも、そのこういう言い方は何ですけど、代わりに何か、今後の協力なり彼の支給品なりと交換出来るんじゃないかなって」
一瞬もったいない、と思ったのも事実だが、確かにカネキの言う通りアインズ達が持っていても仕方の無いもので。
それにこれほどの道具を使わせるのなら、ビスケットのような人間である方がより望ましいだろう。きっと彼は恩義をきちんと感じられる人間であろうし。
そしてこの申し出をこちらからする、という事に意味があるのだ。この辺の機微は営業をやっていたアインズには良くわかっている。
「うむ、その通りだカネキ君。良くぞ言ってくれた、ありがとう」
「い、いえ、そんな……アインズさんなら気付いてたとは思うんですけど、余計な事じゃなかったんなら良かったです」
例え自分でそう思っていても、他者からも同じ内容の事を勧められれば迷いや躊躇いも振り切りやすいものだろう。そうしたカネキの発言の意図を、正確にアインズは汲み取っていた。この辺のスキルは日頃デミウルゴスやアルベドに鍛えられている。
『カネキ君はどうやら、思っていたよりずっと頭の回転が速いようだな。この手の助言は本当に助かる。ふむ、これは胡桃に感謝せねばならんかもしれん。あの鼻ピアスにはこうした細かな心遣いは絶対に求められんだろうしな』
モビルワーカーから降りて来ようとするビスケットに向け、アインズは大声で言ってやる。
「ビスケット! それは君が使うといい! 君がこれから単独行をしようというのなら、そういった武力は不可欠だろう! 何、こちらには私もカネキ君もいるから問題は無い!」
そう言われたビスケットはというと、モビルワーカーの値段を知っているだけに、仰天して機体から飛び降りアインズの元へと駆けて来た。
「いやいやいやいやいやいやいやいや! 使うがいいって! 幾らなんでもモビルワーカーをくれるなんてやりすぎだって!」
ビスケットの反応を見て、アインズは自分の見立てが正しかったと満足気に頷く。
「ふむ、タダで受け取るのは気が引けるかね?」
「タダでくれる気だったの!?」
「そういう事ならば、物々交換というのはどうかね? 私はどうやら私には使えないが君に極めて有用な物を持っていたようだ。ならばもしかしたらその逆もありえるかもしれんしな」
「いやー、そうは言ってもモビルワーカー相当の物とか絶対に無いと思うんだよな〜。あ、でも、アインズに見てもらいたいものはあるかも」
そう言ってビスケットはバッグから、ビスケット曰くおどろおどろしい、アインズから見ればコレクター心を刺激してやまぬ逸品、妖刀ベッピンを取り出した。
「ほほう!」

617好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:34:16 ID:2Z3gMXqM0
しげしげと渡された刀に目を通すアインズ。鞘から抜き放ち刀身を眺めると、見れば見る程素晴らしい刀だとわかる。また同時に極めて優れたマジックアイテムであるとも。
ビスケットは伺うようにアインズの骸骨顔を覗き見る。
「ど、どう? すっごく怪しいから怖くてバッグに入れっぱなしにしてたんだけど」
「素晴らしいぞビスケット。私は剣を使えないが、それでもこれが古今稀に見る逸品であるというのはわかる。いやいや、このような素晴らしき品まであるとは」
アインズの言葉にビスケットは少し落胆したようだ。
「そっか〜。アインズが使えるんなら良かったんだけど……後は変なのだけだよ。ほらこれ」
次に取り出したのは一冊のレポート。これもアインズに渡すと、アインズはタイトルを見て何かぴんと来たようだ。
レポートの序幕を斜め読みしながら、アインズはビスケットに訊ねる。
「ビスケットはこれを読んだかね?」
「ううん、時間かかりそうだったから」
「ふむ、ここに書かれている納鳴村というのは恐らく、地図にある同名の村の事だろう。我々はこの付近を通るつもりだったのだが…………何っ!!」
中の記述に、アインズの目を引くものがあったようだ。
だが、アインズは途中で本を読む手を止め顔を上げる。
「ビスケット、これは君の所有物で、如何に許可があったとはいえ私が先に全て読んでしまうのはルール違反だろう」
「あー、別にかまわ……」
「いや、構うのだよビスケット。情報とはそのように軽々に扱って良いものではない。その価値を知る智者たらんとするのなら、優れた情報には相応の敬意を払うべきだ」
重々しくアインズはビスケットに問う。
「ではビスケット。この本とあのモビルワーカーを交換しないか?」
「無理っ! 本安すぎだって! 他に何か……あー! この刀も! アインズには価値がわかるみたいだし! 後は、えっと……」
アインズはふっとビスケットから、カネキの方へと目線を移動する。
カネキは自分が見られた事に少し驚いたようだったが、すぐに意図を察して小さく首を横に振る。
アインズは鷹揚に頷いて返した。
「ビスケット、刀は君が持っているといい。君に使えなくともこうして交渉可能な相手との有用な交換材料になるだろう。この刀に素晴らしい価値がある事は、私、アインズ・ウール・ゴウンが保障しようじゃないか」
こめかみを抑えながら、参った、とばかりに俯くビスケット。
「いや、それじゃ幾らなんでも……」
「では君は仲間と合流したならば、その後でいいから我々に協力してはくれないか? もちろん君のボスの判断次第の所もあろうが、良ければ君から君のボスにそう勧めて欲しいのだが」
「それぐらいならもちろん。流石のオルガも今の状況じゃロクな選択肢も持ててないだろうし。アインズ達はここからの脱出を考えているんだよね?」
「うむ」
「なら問題無いと思う。オルガは何より、筋が通らない事を嫌うから。ただ、これだけ良くしてもらってこんな事言うのも何なんだけど、オルガがダメだと言ったらそれは本当に申し訳ないんだけど……」
「いや、それはビスケットの立場なら当然の事。むしろそうして先に口に出してくれるだけ、君の誠意が感じられる。その点は気にしないでくれ」
ビスケットは嘆息と共に、公平な取引を諦める。
「これを預けてもらえるのは正直凄くありがたいからなぁ。んじゃあ、悪いけどこのモビルワーカー、受け取らせてもらうよ。僕も出来るだけきちんとお礼したいと思うから、僕で出来る事があったら是非言って欲しい」
「ああ、その時は遠慮なく頼りにさせてもらおう」
その後、この地に招かれてから起こった出来事をお互い報告しあい、再会を約束し別れたのであった。



アインズ・ウール・ゴウンは定時放送を前に自分の考えを仲間の皆に告げる。
「では確認の為も含め、連中が死者を定期的に放送する理由を考えてみよう」
同行者である恵比須沢胡桃も、金木研も、アインズを嫌っているアクアさえも、アインズが思慮深い智者であると思っている。

618好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:34:46 ID:2Z3gMXqM0
なので自然、アインズがこう発言すれば耳を傾ける。
「名簿を照らし合わせた所、各々に関係深い人間同士が呼ばれているようだ。そこに技術的な問題があるのかもしれないが、もし狙ってそうしたというのなら、殺し合いを促進させる為の手法の一つとしてこれを用いているのだろう」
友人が殺されたと聞けば、とても冷静ではいられまいという話に皆納得する。
「故にこそ、放送で嘘を告げる可能性も否定しきれん。そもそも、名簿にある人間全てが本当にこの場に招かれているかも我々には確認出来んしな。その逆、名簿に無い人間が居る可能性もまた然りだ。つまり我々側からは名簿も放送も、その真贋を見極める事が困難であるという事だ」
そこでアインズはカネキへと視線を向ける。
先もそうしたが、カネキなりの意見はあるか、といった意味だ。
カネキはアインズが言葉を待っているとわかると、すぐに口を開く。彼なりに考えていた事があるからこその速さだろう。
「設定された期間は三日です。つまり予定されている放送は全部で十一回。それだけ回数を重ねるつもりがあるのなら、それこそ最初の内はこの会場内に居る者が嘘とわかる可能性のある事は内容は言わないと思います。つまり、死んでもない人間が死んだとか、死んだ人間を死んでいないと言うとかです」
アインズはふむ、と頷いて問い返す。
「前者は言うに及ばず、後者も遺体を確認する可能性がある、という事か」
「はい。元々彼等も僕達参加者から信用されるなんて思っていないでしょうが、彼等は『最後の一人になったなら何でも願いを適えてやる』といった言葉を僕達に信じさせる必要があります。ならば、放送で正確な事実を告げ続ける事は、その為の布石となりえます」
「嘘をついてまで我等に殺し合いさせるよりは、事実を告げ我等の信用を得る方が良いという事か。それは納得のいく話だな。それに殺し合いを押し進めるための布石は、連中既に幾つも打ってあると見たが」
「その通りです。あの鼻ピアスのような怪物、それもビスケットの話だともう一体似た怪物が居たそうで。ああいう殺意に満ちた者達を混ぜておけば、自然と殺し合いは進む事でしょう」
胡桃がふむふむ、と頷いた後言葉を続ける。
「つまり、それらの意見をまとめてみると」
アインズが更に言葉を繋ぐ。
「これから行われる放送は」
カネキが最後を受け取る。
「絶対に聞き逃しちゃダメって事で」
胡桃、アインズ、カネキの三人は一斉にアクアを見る。
アクアは真顔の三人に気圧されたのか、なによー、と後ずさりながつつバッグからペンを取り出し言った。
「だ、大丈夫よ〜。ほら、書く物もあるしっ! 名簿も持ってる! 準備ばんたんっ!」

はっきりと言ってしまえば、アインズも胡桃もカネキも、放送をなめていた。
何やかやと仲間達は皆それなりに危地を乗り切ってきた者達であり、たった六時間程度で倒れるとは思っていなかったのだ。
だからまず、胡桃が我を忘れた。
『若狭悠里』
その名を胡桃から聞いていたアインズは、すぐに彼女を勇気付けようと言葉を発しかけ、二番目に冷静さを失う。
『アルベド』
これはまずい、そう危機感を抱いたカネキは、あくまで胡桃とアインズがまずいと思ったからで、我が身に降りかかるのは予想していなかった。
『霧島董香』
ここまでほぼ連続で名を呼ばれる。
胡桃もアインズもカネキも、三人共が言葉を失った。茫然自失といった体だ。
そして、少し間があいて追い討ちが。
『丈槍由紀』
その一言で、胡桃はその場に崩れ落ちてしまった。
だがアインズにはそれを気にしている余裕なんてない。
信じられぬ、と脳が情報を否定していたものが、じわじわとアインズの中に染み込んで来るのだ。

619好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:35:17 ID:2Z3gMXqM0
アインズはアルベドには、どうやったって返しようのない借りが存在する。
彼女と接する時、どうしてもついてまわる後ろめたさがあった。
だがそれは決して嫌いだのといった事ではない。アルベドは大切な者で、ギルドの長といった立場を抜きにしても、かけがえの無い女性だったのだ。
「……だれ、が、やった……」
あのアルベドが、理不尽に蹂躙される様を想像し、アインズの理性は容易く消し飛んだ。
声高らかに雄叫びをあげ、復讐を誓い、ありったけの言葉を用いてまだ見ぬ敵を罵る。
最早様子見だの警戒するだのといった思考は存在しない。何もかもを投げ捨てて、憎むべき怨敵を見つけ出し、生まれた事を後悔する程の目に遭わせてやると意気を吐く。
叫ぶだけではまるで激情が収まらない。
その腕に必殺の膂力を込め、当るを幸い薙ぎ払う。
だが、そんな暴風に向かい、か細い影が立ちはだかる。
アインズが後先を全く考えずに振るった腕を、その影は受け止めた。
アインズの目には、その影が許し難き怨敵に見えた。
「キサマか!!」
だがアインズの叫び以上の大声で、いやそれは声量ではない。心の奥底、魂より放たれたような怒声であった。
「アインズさん!」
その声の鋭さに、アインズは相手の顔を見ようという気になれた。
彼の頬からは、一筋の雫が零れ落ちていた。
その瞬間、アインズの心中に吹き荒れていた激情が一瞬で鳴りを潜める。そうなって始めてアインズは、影の正体がカネキであるとわかった。
アインズの腕から力が失われているのに気付いたカネキは、そっとその腕から手を離す。
既にアインズは完全に自らを取り戻していたが、肋骨が根こそぎ奪われたかのような喪失感は残ったままだ。
アインズは平静を取り戻した目でカネキを見る。
カネキもまた、常の彼ならぬヒドく荒れた目をしていた。
「……カネキ君。君も、か?」
「……………………はい」
アインズはゆっくりと首を回し胡桃を見る。これだけの騒ぎにも胡桃は微動だにせぬまま、座り込んで地面を斜めに見下ろしたままであった。
酷であるとわかっていながらアインズは胡桃に声をかける。
「胡桃。立てるか?」
のろのろと立ち上がる胡桃。それは主体性のある行動ではなく、ただ言われたからそうした、といったものだ。
カネキと胡桃を順に見たアインズは、無理か、と思いながらも問いかける。
「すまない、私はもう大丈夫だ。だが、君達はどうだ?」
それは義務感からか、または足を止めたら死ぬとわかっているせいか、胡桃は明らかに無理をしているとわかる顔で言った。
「だい、丈夫。動けるし、走れる」
カネキは表面的にはまっとうに行動出来るよう振舞っていたので、そのままそうであったように行動する。
「はい。もう、戦えます」
だがアインズは、二人共がやはり冷静さを失っていると判断した。今この時、最も重要であった事を、恐らく全員が失敗しているのだから。
「……いいや、私も含め、大丈夫ではないな。放送の内容、特に禁止区域まで覚えてる者はいるか?」
あっ、といった顔の胡桃とカネキ。もちろんアインズもこれを聞き逃していた。
完全に失敗した、と思いつつも三人共、今の状況ではどうしようもない、とも思っていた。次の発言が出るまでは。
「あ、あー、えっと、その、私、一応、書いておいた、けど……」
大荒れの三人を見て、めっちゃくちゃびびった様子のアクアが恐る恐るといった調子で口を開いたのだ。
三人共が、例えどうしようもなくとも、放送だけは絶対に聞き逃すべきではなかった。と心底から後悔したんだとか。
状況が状況とはいえ、定時放送の中身をアクアのみが正確に記述していた、という結果であったのだから。

アインズには一つ懸念があった。
それをアクアの様子を伺う事で確認してみた所、アクアは何かを言い出そうとしていた。つまり、アインズの推測は当たりである可能性が高い。

620好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:35:49 ID:2Z3gMXqM0
慌ててアインズは、胡桃とカネキに言った。
「胡桃、カネキ君。我々には少し考える時間が必要だろう。もしそうしたいというのであれば、一人の時間も作ろうと思うが、どうだ?」
胡桃はすがるように見つめながら、カネキは苦々しく目を細めながら、一人にして欲しいと言いそれぞれこの場から離れていった。
二人に追いすがって何かを言おうとするアクアを、アインズは肩を掴んで止める。
「まあ待てアクア。君は何か言いたい事があるようだが、その前に私の話を聞いてくれ」
「え、でも、その私ね」
胡桃もカネキもその姿が見えなくなったのを確認した後で、アインズは小声で問う。
「アクア。お前は蘇生魔法が使えるのか?」
驚き首肯しようとしたアクアの口をアインズが骨ばった、というか骨の手で塞ぐ。
「大声はよせ。その蘇生魔法は遺体が無くても即座に可能なのか?」
「ううん。それは流石に無理よ。それに死んですぐでないと」
「すぐ、とはどのくらいだ?」
「さあ? 死体が腐ったりしてたら流石に無理だと思うけど……後、担当の神様がうるさい所だと面倒なのよね、蘇生は一回だけにしろーとか」
「ず、随分と大雑把なんだな……だが今すぐ出来ないというのなら、二人の前でそれを言うのはやめておけ」
「へ? どうしてよ」
「普通の人間は蘇生するなんて言われても信じん。それを信じさせるにはそれこそ実際に生き返らせて見せんとだが、すぐに出来ぬというのであれば信じてもらえんだろう。だったら信じてもらえる確証を得てからそうした方がよかろう」
アクアはアインズの言葉に納得出来ぬ様子だ。
「で、でも出来るのは本当だし……って、アインズは信じてるのよね?」
「私はそもそも蘇生魔法が存在する世界から来たのだからな。お前程の力があればそのぐらいは出来るかもしれん、と予想していた。だが、胡桃もカネキ君もそうではないだろう。死が絶対的なものである世界から来た者にとって、生き返るなんて言葉は死者を冒涜しているとしか受け取れぬものだ」
「む〜〜、何よそれ〜〜、せっかく私が生き返らせてあげようって思ってるのに〜〜」
「さっきのを見ただろう。あの状態の二人をおちょくるような行為なんだぞ、それは。もしこの件で下手に胡桃の逆鱗に触れてみろ、お前が前に胡桃の世界の話で彼女を怒らせた時の比ではない程怒るぞ」
うげ、と大いに怯むアクア。
「カネキ君も、だ。彼は本当に賢い子だが、親しい友人の死を侮辱されたとなれば、きっとあの鼻ピアスを相手に勇猛に戦った時のように暴れ回るだろう」
そういえばカネキはそーだったー、と頭を抱えるアクア。
「納得してもらえたようだな。お前に二人への悪意があるとは思わんし、二人の大切な人の遺体が見つかったなら、お前の力を見込んでその蘇生を是非とも頼みたい。その時はこの私が伏して頼んでもいい。なあ、どうか聞き分けてはくれぬかアクア」
アインズのこの言葉に、アクアは何時もの調子で偉そうに了承した旨を伝えてきた。
それはとても友人が死んだと聞かされ苦しんでいる人間が側にいるとは思えぬような軽薄な有様で、アインズは二人を遠ざけておいて本当に良かったと安堵する。
アインズ、胡桃、カネキの三人が自分を失った様子を見て、ビビって引け腰になっていたアクアも、アインズとの会話で大体調子を取り戻して来たようで。
「ねえ、あの二人、声かけてあげた方がいい?」
絶対にやめろ、と瞬間的に思ったが、あまり長時間一人にさせておくのもよろしくはない。
そしてここには二人居て、声をかけに行く相手も二人いるわけで。
アインズは、さて、どうしたものかと思案する。
この時の選択がその後の展開に大きく影響を与えたなどと、神ならぬアインズにわかれというのは流石に無理があっただろう。

カネキが街路をアテも無く歩き回り、ふと目について何とはなしに入ったのは、外観が丸太組みのロッジのようになっている喫茶店であった。
無用心にも入り口に鍵はかかっていなかった。中は、朝の日差しが斜めに窓から入り込んでいて、照明を付けずとも不自由は無い。
カウンターの席に腰掛ける。
一瞬、コーヒーでも入れようかと思ったが、一度腰を下ろしてしまうともう動き出すのが億劫で、結局コーヒーは無しとなる。

621好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:36:25 ID:2Z3gMXqM0
ここまで離れれば、カネキの様をみんなに見られる事もないだろう。そう思った瞬間、目頭が熱くなってきた。
カウンターテーブルに突っ伏すようにして顔を伏せる。
辛い思いも悲しい思いも一杯してきたけれど、それでも辛いものは辛いし悲しいものは悲しい。
いや、怖い、だ。
まだ、董香が死んだと実感出来ていないのだ。それを、本当に実感出来てしまったらと思うと震えが止まらなくなる程怖い。
この街の何処かに、霧島董香の亡骸があるかもしれない。
そう思うと既知の場所以外を歩くのすら、避けたくなってくる。今こうして、喫茶店の中を見る事すら。
何を馬鹿な、と喫茶店を見渡す。
もちろんそこに変なものなんて無くて、見慣れたものではないが何処にでもある喫茶店な風景に安心する。
「……ん?」
なまじ喫茶店なんてものに勤めていたせいか、店内に水濡れを見つけると妙に気になって来るカネキだ。
だからって拭き取ろうと思う程でもなく、何とも収まりの悪い感じを抱えながら体の向きを変える。
直後、カネキは勢い良く後ろを振り返る。
「な、に?」
グールならではの鋭い感覚が、ソレを捉えたのだ。確かに今、水の流れる音がした。
振り向いたカネキの視界にある水濡れは、やはり先程と同様全く動きは無い。
カネキは席を立ち上がる。何処かで水が漏れているのかもしれないと、とりあえずはその水濡れの場所に向けて歩き出す。
水は近くに転がっていたペットボトルから零れたものであるようだ。
しかし、カネキはそれを不思議に思う。ペットボトルの大きさと、濡れの大きさが一致しない。濡れが小さすぎるのは、別の何処かがその分濡れているせいか。
覗き込むようにして、濡れの周辺を見るカネキ。

「この大マヌケがああああああああ!!」

濡れが、まるで意思を持つかのようにカネキへと飛び掛って来た。
前かがみになっている姿勢のカネキの顔めがけ、正確に飛び掛る水。体勢も悪く、そもそも完全な不意打ちである。
これを仕掛けたアンジェロは、自らのスタンド、アクアネックレスがカネキの喉に飛び込む未来を信じて疑わなかった。
だが。
「なんっ!?」
飛び上がった水は空を切り、何も無い空間をへろへろと飛んだ後、べしゃりと床に落下した。
そして、濡れから小さな人型が上半身のみをずるりと這い出す。
「おい、マジかおめぇ。あのタイミングでかわすかよ」
上半身をひねって水をかわしたカネキは、首をこきりこきりと鳴らしながらアクアネックレスを見下ろす。
「……やる、かい? 今の僕はちょっと洒落が通じないからやりすぎちゃうけど、いいよね」
そして、誰かさんがやるのと同じように、指を鳴らした。
瞬間、アクアネックレスの上半身が消し飛んだ。
飛び込んだカネキが、これを蹴り飛ばしたのだ。
跳ねる飛沫。
その内の一つが、空中でアクアネックレスとなり、カネキの頭部へ飛び掛る。
裏拳一閃。
アクアネックレスがどういったスタンドなのか、どんな真似が出来るのかなど何一つ知らぬカネキは、ただ反射神経のみで迫るアクアネックレスを弾き飛ばしていた。
エラク小さいが見た目は人型っぽいからそうしたのだが、アクアネックレスは裏拳でぶっ飛ばされた壁面にべしゃりと張り付きながら、けたけたと笑う。
「無駄だ無駄! 俺のアクアネックレスは水そのものよ! オメーの拳も蹴りも、水が相手じゃ濡れるだけだぜ!」

622好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:36:58 ID:2Z3gMXqM0
とくに焦った様子もないカネキ。
「そのワリに、飛ばされてるよね、君。確かに水は液体で固体程安定はしてないけど、だからってはじけないわけじゃない。しかも君の跳躍、悪いけど凄く遅いよ。それってきっと、床を蹴る力が弱いせいだよね。その程度の力しかない君じゃ、確かに、体の内から壊すぐらいしないと僕は殺せないだろうなぁ」
もっとも、とクスリと笑う。
「君程度の力じゃ、僕の体内どうこうするのは無理だろうけどさ」
あっという間にアクアネックレスの威力を見抜く。この知能の高さこそが、何度も激戦の最中にありながら金木研を生きながらえさせて来たものだろう。
こうした瞬間的な判断能力もそうだし、またカネキはその知能の高さ故、準備、訓練の重要性を正しく理解しており、喰種であると受け入れた後は、そんな自分を鍛える事に余念が無かったのだ。
「ほざけザコ助がああああああ! 気持ち悪い赤眼しやがってよおおおおおお! なめんじゃねええぞおおおおおおお!!」
カネキの言葉にブチきれたアクアネックレスは、正面よりカネキに突っ込んでいき、その眼前で大きく飛び上がる。
大して跳べないと言われた事に抗議するかの如く、カネキの頭上より襲い掛かる。
カネキ、上体をひねりながらのアッパー。水は水であるが、その衝撃力は水のような液体をすら弾いて飛ばす喰種ならではの剛力で。
アクアネックレスは天井に向かって殴り飛ばされる。そこでカネキはふと、この喫茶店の天井が妙に高い事に気がついた。
そして、そんな高い高い天井にまで飛ばされたアクアネックレスは、にたりと意地悪そうに笑った。
「あ〜〜〜りがとよーーーーーー!! おめーの言う通り! 俺のジャンプじゃここまで届かなかったんでなあああああああ!!」
カネキの知能も高いが、アンジェロもまた高い知能で幾多の犯罪を成功させて来た男。
そして、天井のその場所に、アクアネックレスは体内に確保しておいたライターを近づける。それは、スプリンクラーであった。
以前に仗助にも仕掛けたコレは、アクアネックレスというスタンドが使うのはやはり極めて有効な戦術である。
喫茶店の水道も電気も通っているのは最初にメーターで確認しておいた。そして部屋中に、雨のように水が降り注ぐ。
もし、カネキに敗因があるとすればそれはたった一つ。
スタンドへの理解不足。それだけだ。
アクアネックレスは雨に紛れ、遂にカネキの口に中へと侵入を果たす。カネキはというと、してやられたとは思っていたが、だからとあの程度の力なら喰種の体細胞をどうこう出来るとも思えず、無理矢理えづいて吐き出せばいい、程度に考えていた。
だが、体内に侵入された瞬間、カネキは自らの浅慮を悟る。
『んなっ!? かっ! らだがうごかないっ!?』
アクアネックレスはカネキの口からにょろりと顔だけを出して笑う。
「ウププッ、クケッ、ウプププププ。たまんねえな、お調子に乗っちまった色男を出し抜く瞬間ってのはよぉ。ウププププッ、いいかい色男、これから俺がどうするかを教えてやるよ。なあ、お前には仲間が居たよな、そいつらはよぉ、こんなスプリンクラーは回るは立ち回りでばたつくわな音を聞いて、どうする? どおおおおおおするよ?」
カネキは全力でアクアネックレスの支配に抵抗しようとするが、スタンドの支配力は別格だ。
その能力で規定された事柄を、力づくで覆すのは普通の人間には不可能。いやさ、同じスタンド使い同士ですら、能力を覆させるのは至難の業だ。
スタンドとの戦いはただパワーが強ければ勝てるものではない。どんな弱いスタンドにも、十分な戦略と準備があれば、勝利の可能性は存在するのだ。
「ほらほら、足音、聞こえてこねえか? 走って来てるなあおい、誰だ? 誰だろおおおなあああああああああ!?」

アインズは、意を決して胡桃の前に姿を現す。
胡桃は銀行入り口前の階段部に、ちょこんと腰掛け膝を抱えていた。
アインズが現れると、胡桃は顔をあげるも特に言葉を発さぬまま、また下を向いてしまう。
アインズは鬱陶しくない距離を保てるよう気を配りながら、胡桃の隣に並んで座る。
「落ち着いたか?」
「……どうだろ。自分じゃわかんないよ」
あまり気を遣いすぎると逆に声をかけられなくなる。なのでアインズは、胡桃の落ち込みに巻き込まれぬよう何時もの口調であるよう心がける。
「佐倉慈という女性の事だ。この人は胡桃の記憶通りならば既に亡くなっている、そういう話だったな」
胡桃は複雑そうに顔を歪める。

623好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:37:28 ID:2Z3gMXqM0
「正直、意味がわからない。名簿に載ってる名前にしたって、私達全員がって事なら、納得は出来ないけどわからないでもない。でも、一人足りない。足りないのに、死んだはずのめぐねえの名前が代わりとばかりに載ってる。こんな意味のわからない名簿を出して来る連中の言う事なんて、本当に信じられるのかってさ」
アインズは言葉を選びながら答える。
「あくまで例え話だが、もし、私やカネキ君がこれを主催した側であったなら、まず間違いなく第一回目の放送は正確に起こった出来事を報せる」
胡桃の表情が強張るが、アインズは話を続ける。
「だが、もしそうであった場合、こんな死んだはずの人間を名簿に書くような真似はしない。本当にこの死んだはずの人間が生きていてこの場に居るのだとしても、今胡桃がしたような疑念を抱かずにはおれぬだろうし、殺し合いをさせたいというのが趣旨であるのなら、全くもって目的にそぐわぬ選択であろう」
何を言いたいのかわからない、という顔をしながらも、胡桃はアインズの言葉に耳を傾け続ける。
「お前が単純に悲しんだり怒ったりせず悩んでいるのは、そういったちぐはぐさが原因ではないか、と私は思うのだが」
胡桃は素直にこくんと頷く。
「……うん」
「だとすれば、今ここでそうしていても何の解決にもなるまい。動くべき道筋は示されており、歩く為の足はほら、そこに二本無事に残っているのだ。ならば為すべき事は明快だろう」
やはり胡桃は複雑そうに顔をしかめた。
「そんな風に、簡単に割り切れないから悩んでるんじゃないか」
「確かにな。私もあまり偉そうな事は言えん。カネキ君が居なければどうなっていた事か」
くすっと噴出す胡桃。
「またダメダメだったよな、アインズさんも私も」
「ああ、またダメダメだったんだ」
アインズの骸骨顔がかしゃりと音を立てる。
胡桃はその場に勢い良く立ち上がる。
「よしっ! 落ち込むのヤメっ! まずは動いて確認して色々考えるのはそれからっ!」
アインズも並んで立ち上がる。
「その意気だ。何、お前にはこのアインズ・ウール・ゴウンがついているのだ。必ずや真実はお前の前に姿を現すだろうさ」
「うん、頼りにしてるっ」
二人の耳に、大きな叫び声が聞こえたのはこの直後の事である。

「ねえ、カネキー! 何の騒ぎよ一体ー!」
そんな暢気な声がカネキの耳に届く。明らかな修羅場気配を全く感じぬ超がつく程鈍感な人間は、カネキのチームにたった一人しかいない。
『アクアさん! 来ちゃダメだ!』
そう叫ぶのだが声は出ない。代わりにカネキの口は、下卑た嫌らしい笑いを浮かべる。
「ウプププププッ、お、女かよ。最高のシチュじゃねえか。ウププププププププププ、なあ色男、お前の体で、お前の意識そのままで、女、甚振ってやろうか? ウププッ、たまんねえなぁ、おい。惜しむらくはお前がどんな顔してるのか俺にゃ見えないって事か」
だが、と逆説を繋げるアンジェロ。
「てめえの役目はもうお終いなんだよ!」
そう叫ぶや否や、アクアネックレスに憑かれたカネキは片腕を振り上げ、自らの腹部へと突き刺した。
「ぎゃーっはっはっはっはっは! 俺は確かに非力だよ! だがなぁ、おめー自身の力を使えばこの通りよ!」
挙句それでは飽き足らず、腹の中の臓物をつかみ取り、引っ張り千切りながら外へと投げ出す。
ちょうど女、アクアが喫茶店の扉を開いた瞬間だ。
カネキの腹から噴出す血飛沫に紛れ、アクアネックレスは一気にアクアへと迫る。
アクアには、カネキに出来たような超反射神経は望むべくもなく、アンジェロが拍子抜けする程あっさりと、アクアネックレスはアクアの体内への侵入を果たした。
「もっ! もがぶがぶぼべがぶべー!」
そんな美少女にあるまじき叫び声が聞こえたのも束の間、アクアの体を乗っ取ったアンジェロは、アクアの顔で下卑た笑いを浮かべて言った。
「見たか色男! まだ見えるか!? 残念だなぁ! お前のポカのせいでこの女も死んじまうぜ! 他の仲間もだ! 次から次へとくたばっちまうのさ! ぜええええええんぶ! てめえのせいなんだよ! ははっ! わかったか? そいつを理解したらくやしそおおおおおにおっ死ねや!」
倒れるカネキの目からは、まだ闘志の光は消えていない。

624好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:37:58 ID:2Z3gMXqM0
絶望の気配も無いその瞳にアンジェロは不快感を覚えるも、現状を考えれば強がりとしか思えず、せいぜい笑って貶してやるだけだ、とアクアの体でカネキを嬲りにかかる。
「おらっ! どうしたよ! 反撃してみろ! ああ!? お仲間さんを助けてみろよ! あー、この女の中あったけぇ……マジいいわ、これ。刺激的って奴? やっべ、こいつ殺す前にいっぺんヤっとくか? ぜってー具合も絶好調だろ」
カネキは腹から大量に血や臓物を溢しながらも、腕を支えに立ち上がるともがく。そんなカネキをアクアの体は何度も踏みつけるが、カネキは止まらず。
そんな往生際の悪さが、アンジェロには愉快で仕方が無い。
「すげぇすげぇぞ人間! お前そんなになってもまだ動けるとか人間ってな大した生き物だなぁええおい! えー、ただいまー、女の体内奥深くでーございまーす、なんてーかここまで内部がリアルに見えると、色気とか全部ふっとぶな……ちょっと失敗だったかもしれねえ。それに、なんだよ、妙にぴりぴりしやがって。何だ? 腕でもつったか?」
アクアの体がよろよろとカネキの側から離れていく。
「おい、おい、おいっ! 何だよこりゃ! 体が痺れ……って痺れるどころじゃねえ! 痛ってぇ! めちゃくちゃ痛ぇ! 何だ? 本体か? いや、スタンドの方だろ!? ここは、とにかくやべええええ! すぐに出ねえと……」
アクアの体が前かがみになり、まるで何かを吐き出すかのような姿勢に。
「でっ! 出れねえ! ち、力が入らねえぞ! 何が起きた! クッソ痛ぇんだよ! うっ、うおおおおおおおおお! と、融けてやがる! 俺が! 融けちまってるじゃねえか! こ、こんな事今まで一度もねえ! この女体内に硫酸でも流してやがんのか!? た、たすけっ! ……おいっ! マジ、……死ぬって、……はや、く、……出、ねえ、……と」
呆気に取られるカネキの前で、声は段々弱弱しくなっていく。
「……こんな、バカ……、な……」
そして消えてなくなって数秒後。
「ぷっはー! 一体何なのよ今の! あー気持ち悪い! 人の体の中に入るなんてサイテー! それにねえ! 体の中なんて入っても気持ち悪いだけであったかいだのなんだのなんて良い印象あるわけないじゃない! バカなんじゃないのコイツ!」
何時ものアクアに戻っていた。
カネキは恐る恐るといった調子でアクアに問う。
「えっと……アクアさん? 本人?」
「もちろんよ! 女神であるこの私を何時までも操れるわけないじゃない!」
「い、いや、でもどうやってアイツを?」
アクアはもうこれでもかって勢いで胸を逸らす。
「ふふーん! 私はね、水の女神なの! だから私が触れた不純な水は綺麗に浄化されちゃうのよ! あんな気持ち悪い水モドキなんて一発よ一発!」
何とも、わかったんだかわかんないんだか、な理由である。
ともあれアクアは無事らしいし、窮地は潜り抜けられたようだ。カネキは安心し、力を抜く。
そして叫ぶアクア。
「ってカネキーーーーーーー!! アンタすっごい怪我じゃない! どうしたのどうしたのどうしたのよそれーーーーーーー!」
怪我、というか致命傷なんだけどね、とカネキは、最後は苦笑で終わるのかー、と何ともいえない顔になった。
「しかーーーーし! この私女神アクアが居る限り! アンタに安らかな来世なんて訪れないわよ! さー復活して私の為にキリキリ働きなさーい!」
と、とても女神とは思えぬ叫びと共にヒールの魔法を唱える。
カネキは、全身が冷たくなっていく感覚を、これが死か、と感じていたのだが、体中が一気に温かく、いやさ熱くなっていく。
「あれ?」
ぶちまけた腸やら噴出した血潮やらでとんでもない事になっていたカネキのお腹は、傷一つ無い綺麗なものへと戻っていた。
「あれあれ?」
もしかして、とカネキは立ち上がる。一切の抵抗無く立てた。
「……いったいなにごと?」
すぐに動けるようになったカネキに、アクアはにへらにへら笑いながら擦り寄っていく。
「ねー、この偉大なる女神アクア様に感謝の言葉は? 怪我を治してくれてありがとうございましたアクア様ー、って崇め奉りなさいよー」
信じられない、と我が身を見下ろすカネキ。
「君の、魔法? 魔法なの、これ?」

625好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:39:03 ID:2Z3gMXqM0
「そーよー! 女神様特製ヒールなんだから! そんじょそこらの野良ヒールとは品格が違うのよ品格が!」
カネキは顔を上げると、首を何度も横に振りながらも、アクアをまっすぐ見つめながら言った。
「うん、ありがとうアクアさん。本当に、本当に駄目かと思ってたんだ。おかげで助かったよ、ありがとう」
率直な感謝の言葉に、アクアはまたこれでもかって勢いでのぼせあがる。この地に来て何かと馬鹿にされて来たが、遂にアクアの力が認められたのだ。
かくして、カネキに勝利したアンジェロは、そのカネキに与えた怪我から何からまで全部ひっくるめて、完膚なきまでにアクアに敗北した。
確かに、スタンドの能力は強力だ。だが、それは、神の力に抗しうる程のものでもなかったようだ。

倒れた人影をアインズはしゃがみこんで観察する。
死んでいる。信じられぬと絶望した表情で。
先の悲鳴の主はコイツだろう。つまり、死んだのはたった今しがたという事になる。
危ないからと胡桃を避難させておいて良かった。今の彼女は、人の死体を見てとても平静ではいられまい。
そしてそれを理由に胡桃を遠ざけておいて良かった、と思う。
「ふむ、新鮮な死体が早々に手に入るとはな。僥倖僥倖。早速、試してみるとするか。カネキ君の食料に相応しいアンデッド……となると、あの辺りか」
アインズが聞いている、アクア、カネキ、胡桃、ビスケットの知人とは似ても似つかぬ容貌である事から、アインズはコレをアンデッドにするに全く抵抗を感じなかった。
アインズのアンデッド作成スキルにより、名も知らぬ彼、片桐安十郎の遺体は全く別の存在へと造りかえられていく。
それは、贅肉で醜く肥えた、赤い肌を持つ男の姿となった。最早元の容姿など欠片も残ってはいない。
「『血肉の大男(ブラッドミートハルク)』だ、再生能力も高いし、食べる部位も多い。脂肪が多いのは、あれか、霜降りとかいう奴だ。ふふっ、後はカネキ君が気に入ってくれるかどうかだが、逆に人間らしすぎる容姿なのは彼は望まないだろうしな、きっと気に入るぞ」
じっとその場に立ち指示を待つ血肉の大男に、アインズはぞんざいに手を振って行き先を命じる。
「それ、そこの冷蔵室にでも入っていろ。外だからと鮮度が落ちるような事は無いだろうが、カネキ君には出来るだけ良い状態で試して欲しいからな」
血肉の大男は言われた通り、冷蔵室に入っていく。
ここは何処かの食堂のようで、調理場に繋がっている大きな冷蔵室があったのだ。
調理場を見て、アインズは一つ思いついた事があった。
「そうだ、直接食べるのに抵抗があるかもしれないし、血肉の大男にこの調理場で自らの肉を調理させるのはどうだろうか。かの世界ではスキルの無い者は料理すら出来なかったが、さて、ここではどうなっているか」
また色々と試したい事が増えていく。こうした探究心はアインズの長所でもあろうが、時折場も弁えずそう動いてしまうのは明確な欠点でもある。
もっとも一番の欠点は、こうした誰しもがおぞましいと思うような行為を、本気で喜んでもらえると思ってやらかしてしまう所であろうて。

626好意には友愛を、敵意には報いを ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:40:05 ID:2Z3gMXqM0
一応、このアンデッドを見たら女性陣は嫌がるだろう、というぐらいはアインズにもわかるので、血肉の大男を隠し、後でカネキ君と二人で来て食べてもらおう、と考えてはいるのだが。
「私はもう食欲というものは無くなってしまったが、彼はきっと何度も食事で苦労してきた事だろう。何としても、この件成功させてやらねばな」
そう、見知らぬ他人の死体をアンデッドに変えておきながら、アインズは友人カネキ君の身の上を本気で心配しているのだった。




【片桐安十郎@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】死亡
残り51名




【F-4/朝】
【恵飛須沢胡桃@がっこうぐらし!】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、MINIMI軽機関銃(200発マガジン。残弾6割ほど)
[思考・行動]
基本方針:
1:友達を捜し出して守るためにアインズとカネキとアクアと同行し、ナザリックを目指す。
2:愛用していたシャベルを探す。
3:アクアは一人でほっといたらエライ事になる。

※双腕仕様油圧ショベル「アスタコNEO」@現実? は港に置いておきます

【アインズ・ウール・ゴウン@オーバーロード】
[状態]:健康、魔力消費(小)超位魔法一回消費(一日四回)
[装備]:なし(装備は全没収。モモンガ玉も機能停止)
[道具]:支給品一式×2、不明支給品0〜2(確認済み)1〜3(未確認)、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン、レポート『納鳴村考察 著神山晴臣』
[思考・行動]
基本方針:
0:ナザリック及びギルド:アインズ・ウール・ゴウンに害するものを許さない。
1:シャルティア、デミウルゴスが気がかりなため一刻も早く合流したい。
2:他のNPCも心配。様々な情報を得る意味でも地図上のナザリック大墳墓に向かう。
3:ナザリックを優先した上で、胡桃、カネキ、アクアは保護。他の参加者とも理由なく争うつもりはなく友好的に接したい
4:分からないことだらけなので慎重に行動し、情報を得たい。
5:胡桃、カネキ、アクアと共にナザリックを目指す。

※自身への制限は大体理解しています。
※容姿はアニメとかでお馴染みの基本スタイルですが、アイテムとしての防御力は持ちえません。
※アニメ終了後時期からの参戦です。(対リザードマン準備中)
※見知らぬ遺体(アンジェロ)をアンデッド血肉の大男に変え、F-4の食堂奥の冷蔵室に隠してあります。後でカネキ君に食べてもらう予定です。ちなみに首輪は血肉の大男についたままです。アインズ気付いてないけどっ。

【金木研@東京喰種トーキョーグール】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考・行動]
基本方針:
1:アインズ、胡桃、アクアと同行しナザリックを目指す。
2:アクアの魔法により大怪我から回復し、大きな恩を感じている。

【アクア@この素晴らしい世界に祝福を!】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品1〜3
[思考・行動]
基本方針:
1:アインズ、胡桃、カネキと一緒になざりっくって所に行ってあげる。
2:カズマとめぐみんとダクネスを探す。


【F-4/朝】
【ビスケット・グリフォン@機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ】
[状態]:健康
[装備]:モビルワーカーTK-53 CGS仕様(阿頼耶識対応)
[道具]:支給品一式、妖刀ベッピン、そこらで拝借した双眼鏡
[思考・行動]
基本方針:仲間と一緒に帰る。
1:オルガと三日月の捜索する為、CGS基地を目指す。
2:ニンジャスレイヤーさんはきっと良い人。
3:ダークニンジャ、二匹の黒と金の怪獣、らぶぽん(発狂してると思ってる)、らぶぽんが狙撃を受けた地域(F-3)に警戒。
4:アインズ達には本当に世話になった。
[その他]
※参戦時期は地球圏降下後〜オルガと対立前。

627 ◆QkyDCV.pEw:2017/02/05(日) 19:40:52 ID:2Z3gMXqM0
以上で投下を終了します。

628名無しさん:2017/02/05(日) 21:21:08 ID:RO569nUc0
投下乙です。

アインズ様大激怒がひたすらに心配だったけど、
落ち着けたようで何より…
でも、次の放送でデミえもんも呼ばれるんだよな。
やっぱり不安しかねえ…

629名無しさん:2017/02/05(日) 22:13:00 ID:agO0N7pM0
投下乙です

マヨイガが思わぬ形で再現された!?
ななきむらの怪物たち代わりがこう来るか―
らぶぽんのリアクションが面白くてついつい乗ってしまった斗和子にワロタけどらぶぽん更にメンタル追い詰められてる……

声の形……タイトルから嫌な予感はしてました、うん
ですよねー……
歌姫から、歌姫から声が……舌……舌……

アインズ様が荒れ狂ってる時に金木くんが止めに行ったシーンで泣いた
前半のビスケットとの通じる者同士の交流や後半のまさかのアクア様大活躍もよかったけど
このシーンがやっぱ一番印象的だ

630名無しさん:2017/02/05(日) 23:12:34 ID:Mv2j5Vpw0
投下乙です!
色々と感想を書き込みたいのですがアクア様の、あまりにアクア様らしい活躍に全て持っていかれてまともに纏められない…

631名無しさん:2017/02/10(金) 02:53:11 ID:t1VXcf820
投下乙です。
あ、そういえばアクアってただポンコツなだけじゃなくて水の女神様だった、そりゃ格が違いますわ。
いや情報量の多い話なのに最後に全て持ってかれたというか、アクアを乗っ取ろうとした段階で大丈夫かこれ?と思ったら案の定大惨事でしたとさ。神秘はより巨大な神秘には勝てないのか…どことなく理不尽。

632名無しさん:2017/02/14(火) 22:33:30 ID:RiFYUjkY0
流石はアクア様です!
いや性格も行動原理もギャグだけどファンタジー世界のガチ神様だしなぁ
いくらスタンド使いでもそら無理ってもんですわ

633名無しさん:2017/02/15(水) 01:26:48 ID:n9bXsQf.0
投下乙です。

それにして心配だなアインズ様、アルベドの死に御乱心なさるは、カネキのためとはいえ勝手に死体をアンデットにして食料にしちゃうし、この先不安しかないな。

634 ◆QkyDCV.pEw:2017/02/19(日) 21:00:29 ID:BEYVrFpk0
東方仗助 西住みほ 宮藤芳佳 佐藤和真、投下します。

635佐藤和真ですが、戦車内の空気が最悪です ◆QkyDCV.pEw:2017/02/19(日) 21:01:18 ID:BEYVrFpk0



佐藤和真ですが、戦車内の空気が最悪です。
うん当たり前だけどね。俺も流石にこれをからかう気なんて無い。てか今の三人おちょくるとか俺どんな外道だよと。
正直に言う。俺、今、東方が怖くて仕方がねえ。
タダでさえおっかねえ顔(と髪型)に加えて、殺気なんてもんがそこらに漂ってる。
流石に幾らキレてても女の子殴るような事はしないだろうけど、俺には多分ヤる。後でごめんとかすまねぇとか謝って済ませる流れで、怪我しても俺が治すからいいだろーとかいう勢いで二目と見れない顔にされる。
なもんで戦車の中で一切の発言が出来ない。
こんな時頼りになるのは華やかな女の子達だけど、うん、無理。特に宮藤。何かきっかけあったら色んなもんが噴出しそうな顔してる。
残るは西住だけど、こっちも表に出てないだけだと思う。
あー、放送の前にアホな事聞かなきゃ良かったって心底後悔してる。
いやね、でもさ、気になるじゃん。それに宮藤は天然系だけど、東方と西住ってかなり頭良さそうだしさ。放送っての、どう受け止めたもんかーって、頭の良い奴に聞いておきたいじゃん。
俺もね、殺し合いしろなんて言われて流石に混乱はしてるんだよ。だから冷静に物考えられる奴に頼っても仕方ないと思うんだ。
んで、東方と西住の二人は全く同意見だったわけ。
『最初の放送で嘘ついてもしょうがねえだろ』
『最初の放送で嘘を言っても意味がありません』
かーらーのー、あの放送ですよ。
東方は親友だっていう虹村億泰が、宮藤は同じく親友のリネット・ビショップ、んで西住は前に通っていた学校の同級生で一緒に部活を頑張った仲間逸見エリカが、死んだって放送だ。
俺はさ、まだここでおっかねえ殺し屋みたいなのって東方しか見てないからわかんないんだけど、東方とか西住は戦車に乗ってても逃げるしかない(それ絶対人類じゃねえだろ)奴に出会ったみたいで。
東方の親友も宮藤の親友も無茶苦茶強いらしいんだけど、それが殺されても仕方が無い、ってぐらいの奴がうろついてるらしい。
つまり放送が本当でもおかしくないーって事で。

んで、だ。俺はこの地獄のような状況を一発解決する方法を知ってるわけだ。

アクア来てるらしいし、死体見つけてあいつの所持ってきゃいいんじゃねって話。
死んですぐじゃないと駄目だとか、もう一人の女神様曰く蘇生は一回だけとか色々あるみたいだけど、アクアならその辺すげぇ融通ききそーだしさ。
だ、が。
この空気の中でそれを言い出す勇気が持てません。ほら、だって『死んだ? ああ、魔法で生き返らせればいいじゃん』なんて言ってみ。
俺次の瞬間、東方にミンチにされてると思う。いや比喩とかでなくリアルミンチにされた挙句、おらさっさと生き返れやクソがとか言われそう。
でもな、いずれアクア見つけたら頼む気だしさ。だったら何で前もって言っておかねえんだよとかやっぱりキレられそうじゃん。
どうしたものか、って悩んでた所に、西住が声をかけてきたんだ。
アイツ、東方の方を見て何か目で通じ合ってるようなやりとりした後、まるで俺の心を読んでるかのように、話を振ってきた。
死んだ人が生き返るのかって話を。



西住みほは一度戦車を止める。
エンジンの騒音は相当なもので、完全にエンジンを切ってしまうと逆に耳が変に感じてしまう程周囲は静かになる。
みほは砲座に座る東方仗助をじっと見つめる。
仗助は一度深呼吸をした後で、みほをまっすぐに見返し、強く頷いて返す。
みほは先に宮藤芳佳の方に声をかけた。
「宮藤さん、少し重要な話をしたいと思いますので、聞いていてもらえますか」
「…………」
返事は無い。みほは構わず今度は佐藤和真に声をかける。
「佐藤君。幾つか確認したい事があるのですが、構いませんか?」

636佐藤和真ですが、戦車内の空気が最悪です ◆QkyDCV.pEw:2017/02/19(日) 21:01:46 ID:BEYVrFpk0
「ん? お、おお。いいぜ、何?」
「佐藤君は一度死んだ、と言ってましたよね。ですが今の貴方はどう見ても生きているようにしか見えないのですが、今の佐藤君は生きている、でいいんですよね?」
「ああ、転生……って事なのかな」
「それでは死ぬ前と今では肉体的に差異はあるのですか?」
「いいや、死ぬ前と一緒だよ。実際、俺死んだ時の記憶無くて、気を失った程度の感覚しかないんだよね」
「でしたら、佐藤君の体は今二つあるのですか? 既に亡くなった体と、今の転生したという体とで」
「ん? んん? それは……どうなんだろう。異世界転生物の定番じゃその辺つっこんだりしないしなぁ。元の世界に帰るって結末になるんならそりゃ体が二つあっちゃ変だろうけど……」
「あくまで仮定ですが。佐藤君が本当に死んでいたとしたのなら、一度は死からの蘇生が行われていた、という事になりませんか?」
芳佳が驚き顔を上げる。仗助の表情も硬く強張る。
そしてカズマはというと、少し考えこんだ後で、おもむろにこうのたもうた。
「……あー、そのー、だな。すげぇ言いずらい事なんだけど、今の流れなら言ってもいいか。これをどうお前等に言ったものかすげぇ悩んでたんだけどさ、俺、死んだの異世界に行く前の一回だけじゃねえんだわ」
さしものみほもポーカーフェイスは無理。カズマは続ける。
「異世界に行った後、雪山で剣持ったデカイのに俺、首飛ばされて死んだんだってよ。んでその俺を、一緒に居た女神のアクアって奴が生き返らせてくれたんだわ。ひどい怪我から治った云々じゃなくて、もう首から上が斬り飛ばされて、頭が地面を転がって首から噴水みたいに血が噴き出てたらしい」
カズマはおそるおそる仗助の様子を伺ってみたがすぐに目を逸らして、見なかった事にした。
「あ、アクアは名簿見る限りじゃここ来てるみたいだしさ。アイツ馬鹿で態度デカくて空気読めなくてどうしようもない駄女神だけど魔法の力だけはすげぇし、その、この騒ぎで死んだ奴出ても、アクアに頼めば何とかしてくれるかなって……」
カズマは今度は芳佳の方を見てみる。彼女はもう呆気に取られたなんてものじゃない大口開けた顔をしている。
そりゃ信じらんねえよなー、とか考えてるカズマにみほが言う。
「楽観は出来ません。今回のこの企みを考えた人達は、例え死者の蘇生であっても願いを叶えてやる、と言っていました。それは佐藤君の言葉の裏づけになるものでもありますが同時に、最後の一人になるぐらいしなければ蘇生はさせない、と言っているともとれます」
驚いたカズマが口を挟む。
「そりゃアクアに何かするって話か!?」
「既にした上でなければそもそもこの企みは成立しない、と思うのです。佐藤君、魔法で人を生き返らせるというのは、その女神アクアさん以外にも出来る人は居るのですか?」
「俺の知る限りじゃアクアと……後、もう一人の女神は多分出来る。そういう神様の事俺はそれほど詳しく無いんだよな。アクアもあまり話さないし。まあアイツの場合本当に知らない可能性が極めて高いんだが」
「その、言いにくいかもしれませんけど、良ければ佐藤君が亡くなった前後の状況を詳しく教えてもらえますか。恐らく、この企みを考えた人達は佐藤君の知る蘇生に関しても、何が出来て何が出来ないかをよりしっかりと把握していると思いますので」
「おう任せろ。自慢じゃないけど俺、死んだ回数なら並の奴には負けない自信あるぜ」
仗助は、下手に口を開けば自分が何を言い出すかわからないのでずっと沈黙を守ってきたのだが、ここで遂に堪えきれずにつっこんでしまった。
「……本当それ、自慢じゃねえよな……」
みほはちらっと仗助の方を向き、めっとばかりに視線と呼びかけで抗議する。
「東方君」
「わ、悪い。大丈夫だ。かなり、キレたくなる話題だが重要な事なのも理解してる。後、滅茶苦茶ムカつくけど佐藤に悪気は無い事もわかってる。わ、悪かったな佐藤。続けてくれ」
「お、おうっ」
そっかー、やっぱりキレたくなる話題な挙句滅茶苦茶ムカツいてるんだー、と心底ビクつきながらカズマは説明を始めた。

全ての説明が終わる頃、カズマはちらっと芳佳の表情を伺ってみた。
すがるような目でカズマを見ている。
『これでもし、やっぱり出来ませんでしたーなんてなったら洒落になんねえ。でもなぁ、アクアを頼ると絶っっっっっっ対ロクな事にならないって知ってるんだよなぁ俺。でも今更やっぱ生き返るのなしー、なんて言ったらそれこそどうなっちまうものか……』
そんなカズマの苦境を救ってくれたのはみほであった。
優しく芳佳へと語りかけるみほ。

637佐藤和真ですが、戦車内の空気が最悪です ◆QkyDCV.pEw:2017/02/19(日) 21:02:45 ID:BEYVrFpk0
「宮藤さん、まだ色んな事が不明瞭なままです。放送の真偽すら、確認は出来ていません。気持ちは……わかりますがどうかここは心を乱さず、冷静に、状況の把握に努めましょう」
色々と受け入れ難い事の続く芳佳であるが、彼女もまた幾多の死線を潜り抜けてきた戦士である。
それに、心優しい芳佳は自分を見失う程動揺していたとしても、目の前にいる女性もまた大きく傷ついている事に、気付かないなんて事はないのだ。
「うん、ありがとう西住さん。ごめんね、私ばっかり面倒かけちゃって。わ、私は大丈夫だから、西住さんも無理、しないでね」
そう返された事にみほは驚き目を見開く。その後すぐに出たみほの笑みは、何処か儚さを感じさせるものであった。
「私も、大丈夫。悩むのも、それ以外も、後にするって決めてるから」
仗助はそんなみほの笑みを見て、不覚にも一瞬全てを忘れて見惚れかけた。
見た目がどうとか、言葉がどうとかだけではない。それら全てをひっくるめた西住みほという人物に、強い敬意を抱いたのだ。
そして、そう思える相手だからこそ、彼女ばかりに負担をかけられないと思えた。
仗助は出来るだけ穏やかに聞こえるような声を出す。
「なあ佐藤。そのアクアって奴は人を生き返らせる魔法が使えるってんだよな。それも首が飛ぶような怪我でも元に戻っちまうと。それは例えば俺や宮藤のように、生き返らせるってのとは別に怪我の治療も出来るって事か?」
「あ、ああ。アクアのヒールはもんのすごく効く。他にもターンアンデッドやら結界張るやら色々と出来るみたいだけど、当人が馬鹿すぎるんで上手く活用出来てないんだわ」
「……馬鹿ってお前よりか? ああ、うん、いや、そいつはいいんだ。ただな、その生き返らせるって魔法は、怪我を治すってシロモノの延長線上にあるものなのか、って事を聞きてーんだ」
実は佐藤和真君、言う程馬鹿ではない。なので仗助が何を聞きたいのか一発で見抜いた。
「死んじまったなら、例え怪我を治しても生き返りはしない、と思う。俺は死ぬ度毎回あの世みたいな場所で別の女神に会ってんだ。その時の俺の体は、西住の言うもう一つの体なのかどうなのかはわかんないけど、ともかく、そこから俺が戻らない事には怪我が治ってても生き返る事は無いんじゃないかなって思う。思う思うってばっかりで悪いんだけど、俺も正式に勉強したとかじゃなくて経験則って奴だからそこは勘弁してくれ」
首を横に振る仗助。
「いや、お前の話は俺にも納得の行く話だった。幾ら怪我を治しても、一度死んだ人間はそれだけじゃ生き返ったりはしねえ。それは俺も以前に確認してある」
自分の祖父で確認した苦い経験ではあるが、それが表に出ないようにしながら仗助は淡々と言う。
空気を読んだか偶然か、カズマはそこには触れずすぐに別の話題へと。
「当たり前、なんだけどさ。人が生き返るなんて話、東方も西住も宮藤も聞いた事無いよな?」
三人共が頷く。
「俺もアクアに会うまではそんな事が現実に起こるなんて考えちゃいなかった。そんな事を当たり前に口にして来たのは、アクアと、今回の企みを仕掛けてきたあの坊さんぐらいだ」
そういえば、といった顔の芳佳と、その通り、と頷く仗助とみほ。予想通りの反応にカズマは、予想通りだったが故に綺麗に話を繋げ続ける。
「考えたくはないけど、アクアを連れ去るなんて真似が出来るんなら、もう一人居る俺の知ってる女神を、連中がさらったって事も考えられる。だとしたら、連中の言っている事も嘘なんかじゃないって事になる。女神ってのは地上に降りると弱くなるらしいんだけど、アイツはアクアなんかよりよっぽどしっかりした女神らしい女神様だ。それをさらうなんて……」
仗助が口を挟んで来る。
「もし、そのアクアってのに会えたら、一度俺のスタンドが効くかどうか試していいか? もし俺のスタンドで治療が出来るっていうんなら、他の悪い影響を及ぼすスタンドも通用する理屈だ。それなら、相手を支配する類のスタンドもあるってのを俺は知ってる。連中は俺達の誰より先に異世界を知ったっていうアドバンテージがある。そいつを駆使して、それぞれの世界の中じゃ当たり前な事の裏をかいて好き放題してるんじゃねえか?」
うわぁ、と頭を抱えるカズマ。
「それ完璧にやられたら勝ち目ねーじゃん」
「それが勝負事だっていうんなら、勝ち目の無い戦いなんざ間抜けのする事だ。だがな、戦いってのはそうじゃねーんじゃねえのか? 戦わなきゃならねえ時ってのは、大抵こっちの都合なんざお構いなしだ。それでも譲れないものがあるからこそ、戦おうってんじゃねえのか」
仗助はそちらを見なかったが、みほの声が聞こえて、それが嬉しそうなものであったのが、少し誇らしかった。

638佐藤和真ですが、戦車内の空気が最悪です ◆QkyDCV.pEw:2017/02/19(日) 21:04:31 ID:BEYVrFpk0
「うん」
仗助もみほも、闇雲にただ戦うような真似はしない。何処何処までも諦めず考え抜いて、勝ちの目を引き寄せようという努力を怠らない。そんな仗助が口にし、みほが頷くからこそ、この言葉は若気の至りだのといったものとは一線を画するのだろう。
そうした理屈を理解しているわけでもないのだが、宮藤芳佳もまた戦いを前に怯え引き下がるような者ではない。
「私も、もちろんそのつもりだよ。だって私、ウィッチなんだから」
カズマはそんな三人のノリに少し釣られている自分を自覚しながらも、まあ仕方ないか、と置かれた環境を鑑み自分を納得させる言い訳とする。
「おーおー、三人共かっこいいねえ。俺は真っ向からやりあうなんて柄でもないし、セコくコスくやらせてもらうけどな」
冗談めかしてそう言ったのだが、何故かみほにも仗助にもこの言葉は大層好評であった。
みほはぽんと手を叩く。
「はい、そういうので行きましょう。相手が強いという事だけははっきりしてるんですから、こちらは手間暇をかけてこそこそーって感じで」
始めて、嘲笑とかではなく楽しげにカズマに笑いかける仗助。
「そうだな、あんだけふざけた連中だ、おちょくってやるぐらいがちょうどいいだろ。おめえはそういうの得意そうだしアテにしてるぜ」
一人落ち込んだ気配の芳佳。
「わ、私はあまり頭を使うのは……で、でもセコくズルく、だね。頑張るよ。と、とりあえずはお夕飯のおにぎりの具をわさび漬けに変える所から……」
速攻でカズマが突っ込む。
「俺達にセコくしてどーする。後それ多分食ったら美味いぞ」
「だ、だって美味しくないもの食べるとかあんまりだし。でもちょっとした刺激っていうかびっくりをね」
「だから俺達にそーしてどーすんだよ」
二人のやり取りを見て、仗助とみほは同時に安堵の息を漏らす。それに気付いた二人はお互い顔を見合わせる。
何とか芳佳が元気を取り戻してくれて良かった、そんな事を二人が同時に考えていて。二人は同時に噴き出すと穏やかな笑みを浮かべる。
思いっきり笑い合える程精神状態は安定しているわけではない。それはひたすら冷静であろうとし続けているみほであってもだ。
ただそんな苦しい中であっても、ほんの少しなら笑う余裕を持てた。そして、自分でそうしてみて始めて、無理して作った笑みにも、心を安らげる効果があるのだと二人は知ったのであった。





【E-7/朝】

【東方仗助@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:
[装備]: 戦車(IV号戦車F2型)搭乗中
[道具]: 基本支給品一式、不明支給品(1〜3) 片桐安十郎の支給品一式
[思考・行動]
基本方針: 殺し合いを打破する。
1:康一たちと合流する。
2:アイツら(吉良吉影、アンジェロ、剣の男)はぶちのめす。
3:西住、宮藤、佐藤と行動する。
4:放送も名簿も蘇生の魔法もまだ真贋は不明のままで、その
※吉良登場以降からの参戦です。

【西住みほ@ガールズ&パンツァー】
[状態]: 疲労(中) 精神疲労(大)
[装備]: テーザー銃@現実 戦車(IV号戦車F2型)搭乗中
[道具]: 基本支給品一式、戦車詰め合わせセット(折る事で即座に装備出来るオーバーロードの課金アイテムの木の棒が五本。その中に、それぞれ一台づつ戦車が入っている。判明しているのはヤークトパンター、マウス、IV号戦車F2型の三種でIV号戦車F2型とヤークトパンターの分は既に折って使用済み)
[思考・行動]
基本方針: 殺し合いには乗らない
1:東方くん、宮藤さん、佐藤くんと一緒に行動する。

※ヤークトパンターはF-6の川沿い町側にある民家の敷地内に隠してあります。

【宮藤芳佳@ストライクウィッチーズ】
[状態]:
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2 遠隔視の鏡
[思考・行動]
基本方針:民間人の保護
1:501隊の仲間と合流する
2:東方くん、西住さん、カズマくんと一緒に行動する。
※劇場版後から参戦。

【佐藤和真@この素晴らしい世界に祝福を!】
[状態]:
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本方針:
1:マジで夢じゃなかったのかよ
2:東方、西住、宮藤と行動する。
※アニメ9話でサキュバスの館へ行った後ベッドに入った直後から参戦。

639 ◆QkyDCV.pEw:2017/02/19(日) 21:05:15 ID:BEYVrFpk0
以上で投下を終了します。

640名無しさん:2017/02/20(月) 10:21:26 ID:uunHKq4E0
投下乙
やっぱり異世界&蘇生体験済みのカズマが居るとこういう時話進のが早いな
ふわっとしてるところはみほと仗助で埋めたりいいパーティーだ

641名無しさん:2017/03/04(土) 18:27:32 ID:UDFa.h560
こいつらの掛け合い楽しいなあ
カズマさんもだけど仗助みほがいい

642 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:51:31 ID:VD0IupEk0
広瀬康一 松野カラ松 赤井秀一、投下します。

643納鳴村の見え方 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:52:18 ID:VD0IupEk0




最初の定時放送を聞き終えた後、松野カラ松は川を流れていくトド松の姿を思い出していた。
再び体に震えが来た。カラ松にはその震えの理由がわからなかったが、怖くて震えているというのだけは自分でもわかる。
悲しむよりも、怒るよりも、まず先に怖いとカラ松は思ったのだ。
助けを求めるようにカラ松は共に行動する広瀬康一に目を向ける。そこで、彼の見せた変貌っぷりに目を見張る。
怒髪天を突くとは正にこの事だろう。髪が逆立って見える程、康一は激怒していた。
康一は、声だけは平静なままで言った。
「ねえ、カラ松さん。例えば、ですよ。自分の大切な友達を、ロクに彼の事を知りもしないクソ野朗が、ざまあ見ろって言わんばかりに死んだとかぬかしたら、どう思います?」
「え? ええと……」
「ムカッ腹、立ちません? もし目の間にソイツが居たなら一発入れてやらなきゃ収まらないぐらい、頭に来ませんか? もし、親切心で言ってますーなんて戯言抜かしたら、起き上がれなくなるまで殴りたいって、思っちゃいますよね」
「お、おう。でもそれ俺じゃないからな、おーけい? 俺チガウ。俺コウイチの敵チガウ」
「わかってますよ。見境無く暴れたりなんてしません。けど、コレ、間違いなく、僕、怒っていいですよね? こんな事抜かすクソ野朗見かけたら、思い知らせてやっていいですよね?」
「うん、うん、怒っていいと思うぞー。でも俺じゃないからな、俺には怒らないでください、プリーズ」
滅茶苦茶怖いらしく、つい敬語になってしまうカラ松。
康一は自らのこめかみを手で抑え、三回、呼吸を行い心を整える。
「……ごめん、もう大丈夫。億泰君はまだ、きっと生きてる。だから……」
そこで言葉を区切って康一はカラ松をまじまじと見つめる。
カラ松の目の縁が小刻みに揺れている。さっきの放送で、カラ松の弟の名前が呼ばれたのは康一も知っている。その弟の死体を、カラ松は目にしているのだ。動揺も無理も無い話だろう。
康一はそんな彼に負担をかけるのは、心苦しいと思えた。
今の康一はもう、とにかく隠れてやり過ごすといった思考はない。こちらからも積極的に動いていって人を探し、敵と味方を見極めつつ味方を増やそうと考えている。
そんな道行きにカラ松を連れて行ったものか、と悩んだのだ。
カラ松はこの村に置いて、自分のみが動き回るというのが良さそうな考えに思えたのだが、康一は何故かそれを実行に移す気になれなかった。
彼を一人残していくのが心配だ、というのもある。ただ、危険さで言うのなら探索に共に出る方が絶対に危険だ。何せ人が居たらこちらから接触を取ろうというのだから。
カラ松は勇敢な青年だが、だからとスタンドも持たぬ彼では先のような人外相手では足手まといにしかなるまい。ましてやそんな相手に蛮勇を振るったならば結果は火を見るより明らかだろう。
ならば隠れられる場所に隠れていた方がいい、と思うのだが、やはり何度考えても、康一はカラ松をココに置いていくのは良くないと思えてしまうのだ。
「康一ボーイ?」
カラ松が不思議そうにこちらを見返してくる。
その仕草が康一が尊敬するちょっと変な人と被って見えた時、康一はようやく自分の違和感の正体に気付いた。
出来るだけ、不自然でないように心がけながら、康一はカラ松に言った。
「もう休憩も充分取ったし、そろそろ動こうと思うんだけど、どうかな?」
カラ松はきょとんとした顔だ。
「ん? しばらくはここに居るんじゃなかったのか?」
「んー、どうだろう。地図を見る限りじゃ、町もあるらしいから、隠れるんならそっちまで行っちゃった方がいいかもなってさ。ここも悪くないんだけど、虱潰しに村を探すとかされたら、森に逃げ込むしかなくなる。それは山歩きにあまり慣れてない僕等に有利な事とは思えないんだよなぁ」
カラ松はそう言われて、すぐに得心したように頷く。
「フッ、そうか。なら、町まで行くかい?」
「ああ、そうしよう。もしかしたらおいしいものもあるかもしれないしね」
そういたずらっぽく言うと、カラ松も僅かに笑みを見せてくれた。

赤井秀一は康一達の急な方針転換に少し戸惑う。
それまでの話の流れや、彼等が得られるであろう情報達をどう整理しても、いきなり移動しようという話にはならないはずなのだ。
可能性として考えられるのは、今聞こえてきた放送を聞き、方針を変更せざるをえなくなったという事だ。康一という少年は、虹村億泰の名が呼ばれた瞬間、劇的に表情に変化が生じていた事からこの名がキーワードとなろう。
赤井は、彼等の前に姿を現すべきかどうか、一瞬で考える。

644納鳴村の見え方 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:53:15 ID:VD0IupEk0
いや、ここから出ていく、それもあの殺人者達の居る方向とは別の方に向かうというのであれば、見送っても問題が発生する可能性は低いと考えられる。
この村で、赤井は生き残る算段をつけなくてはならない。それは、敵を倒す事と同義だ。
殺人者が徘徊している土地に放り込まれた多数の無力な人間達を、如何に救うのが一番効率的か。簡単だ、殺人者を全て駆逐しきってしまえばいい。
放送内容を信じるのであれば、先に出会った二人組の殺人者ではとても殺しきれないだろう数の死者が出ている。それはきっと、あの二人以外にも人殺しがいるという事だ。
赤井には効率的に手際良く、殺人者を始末していく事が求められる。では、どうするか。
この村を、殺人者にとってのキリングフィールドにしてやればいい。
武器? 無いなら作ればいい。必殺の殺し間をこの村の各所に用意し、殺人者を招き寄せて殺す。
幸い、ここは村で、幾つかの面白そうな道具も見つけてある。また和風家屋である為、軒下や天井裏も入りやすく、今康一とカラ松を見張っているように隠れ潜む事も容易だ。
これらを活用すれば、有効な武器も作る事が出来るだろうし、待ち伏せやら仕掛けやらにも向いている場所だろう。武器は、とりあえず弓辺りを赤井は考えている。
そんな危険な場所となるこの村には、彼等は居ない方がいいだろう。
或いは、殺人者であろうとこれを殺す事に忌避感のある者も居るかもしれない。だから、赤井がやるのだ。
何でもそうだ。出来る者がするのが、一番効率が良い。ここにどんな者が集められているのかはわからないが、殺人の訓練を受けている赤井がそうするのは至極理に適った行為であろう。
故に赤井は二人を見送る。彼等が悪意を持って赤井の情報を洩らすとは考え難いが、必殺の殺し間をより磐石のものとする為には用心に用心を重ねるべきだ。
あのバーボン、安室透ですら不覚を取る場所なのだから、ここは。

村から離れた所で、康一はこんな事をカラ松に訊ねた。
「ねえカラ松さん。あの村さあ、何か変な感じがしたとかそういうのあった?」
「え? いや、俺はそういうのは無かったぜ……」
そっか、といい、康一はこれ以上この話題を続けはしなかった。
康一が村を離れたのには、れっきとした理由がある。
それは康一が、あの村をかつて入り込んでしまった杉本鈴美の居る場所と、似ていると感じたからだ。
人が全く居ない町並みといった表面的な類似ではなく、もっと別の、肌にまとわりつくような、空気が違うとでもいうような、感覚だ。
以前に感じたその不思議な空気と、今この山中の村を取り巻く空気が似通っている、と康一には思えてならなかったのだ。
あくまで勘の範疇であり、理論的に云々なんて話ではないので、これを普通に話してカラ松を納得させるのは困難だろう。だから康一はああ言ったのだ。

645納鳴村の見え方 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:53:42 ID:VD0IupEk0
夜が明けたとはいえ、山中の移動は困難を伴うだろうし、木々が乱立する最中を歩く事になるのであるから、不意打ちへの警戒も難しかろう。
それでも康一は、あまりあの場所に居るのはよろしくないと感じていたのだった。



【C-6/朝】
【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本方針:殺し合いに反対。
1:ここに居るらしい仗助と億泰を探す。
2:ヤモリ、クレマンティーヌから逃げる。
3:カラ松を守る。
4:吉良吉影の危険性を伝え、捕まえる。
※本編終了後より参戦
※スタンドのことは「どうせ見えないだろう」と隠しています。

【松野カラ松@おそ松さん】
[状態]:健康
[装備]:H&K USP(13/15)
[道具]:予備弾薬30、支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・行動]
基本方針:帰る。
1:康一に引っ張られて移動する
※トド松の死体を見ました。
※康一のスタンドも見ましたが、その事を康一に確認する時間的余裕はありませんでした。

【C-6納鳴村/朝】
【赤井秀一@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:アーミーナイフ、支給品一式、不明支給品(1)
[思考・行動]
基本方針:主催者の調査を行いつつ一般人を守り殺し合いからの脱出。
1:江戸川コナン、灰原哀、毛利蘭の保護。
2:首輪の解除のために解析を行う。
3:ダーハラを知っている人間がいるならば接触を行う。
4:ジンへ警戒。
5:納鳴村にて、殺人者を始末する為の仕掛けを用意する。
[その他]
※参戦時期は緋色シリーズ(原作84及び85巻、アニメ779〜783話)終了以降。
※名簿の記載に疑問を抱いております。
 ・ジンのみがコードネーム記載→組織の犯行と推測。
  →しかしバーボンが安室透と記載されているため、組織の犯行とは断定できず、むしろおかしい。
 ・赤井秀一は赤井秀一として記載されている→組織時代のコードネームであるライではない。
 ・江戸川コナンは工藤新一として記載されていない→正体を把握していない。
 これらのことから主催者は「彼らの正体を把握していない」と推測→しかし、それならば何故この面子が集められたかは現段階では不明である。
※首輪には盗聴器能があると睨んでいます。
※安室透の死に様が、心にこびりついています。

646 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:54:06 ID:VD0IupEk0
以上で投下を終了します。

647 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:55:13 ID:VD0IupEk0
シャルティア・ブラッドフォールン ダークニンジャ ヴライ 月山習、投下します。

648 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:55:48 ID:VD0IupEk0



どうやらここはシャルティア・ブラッドフォールンの全く見知らぬ土地であるらしい。
とっ捕まえた戦士から聞き出した話から考えるに、ここはネオサイタマという場所の近くと思われるが、そいつも拉致されて来た口で本当にそうなのかの確証も得られなかった。
シャルティアが見つけた人間は全部で四人居た。内二人は殺してしまったので残る二人を追ったのだが、どうにも見失ってしまったようだ。
眷属まで使っての捜索に全く引っかからなかったのだから、かなり高速で移動したのだろう。最早周辺には居ないと考えるべきだ。
とにかくここが何処かがわからなければどうにもしようがなく、シャルティアは特にアテもなく人の居そうな場所を目指し歩いてみる。
この町、人の住居と思しきものは所狭しと建ち並んでいるのに、人の気配はまるでない。
建築様式も何処かで見た事あるような無いような、な感じで。それなりに進んだ文化と技術を持った国だとわかる程度だ。
高いところに上がってみても、人の気配は無い。時折、妙な違和感があって集中して気配を探ってはみるものの、やはり何も引っかからない。
よほど人が居ない土地なのだろう。いや、人は居たのだが、何処かへ消えてしまったというのがより正確な気がする。
「流石に、参りましたでありんす」
もう一度、シャルティアは現状を整理する。
恐らくシャルティアは何者かに拉致された。もしくは強制テレポートの類で吹っ飛ばされた。
その際、身につけていた装備品を悉く奪われているので、そういった魔法の罠の類でもなければ、やはり拉致されここに放り出されたと見るべきか。
「まったく、これではまるで迷子にでもなった気分でありんす」
少し考えて、シャルティアは頭を抱えてうずくまった。
「まるでじゃないしっ! まるっきり迷子そのものだしっ! ああああああああああ、なにこれなにこれ、わざわざ人をさらっておいてそのまま放置って何かの特殊プレイでありんすか!? 幾らなんでもこんな現状に性的興奮をもよおすとか難度高すぎでありんしょう!」
創造主にエロゲ設定を山盛り詰め込まれたシャルティアさんにも、流石にコレは無理らしい。
遊んでいる場合ではなかったのである。
てっきり、ここにシャルティアを拉致した者から何らかの接触があるものと思っていたのだが、見つけられたのは同じように捕まって来た者ばかりである。
確認したのは一人だけであるが、シャルティアを相手にロクに前に立つ事すら出来ぬような輩がシャルティアを拉致出来るなどとは考えられないので、アレ等も先に捕えた者と同様であろうと判断した。
ここまで接触が無いのなら、恐らくシャルティアを拉致した何者かはシャルティアと会うつもりはないのであろう。
つまり、接触して来た時にそいつから直接拉致の理由を問い質そう、というシャルティアの考えは実行出来ぬという事で。
もちろんそれでは帰る方法もわからぬままだ。転移系の術は全て、この地に結界だか封印だかがなされているらしく使用不能。伝言の魔法も駄目。小憎らしい程に、シャルティアには何も出来ない状況である。
よよよ、とその場に崩れ落ちる。
「どうして何時もわたしだけがこんな目に……この前も気がついたらアインズ様に……あああああああああああああぁぁ、またこの前のような失態を晒したらきっと……」
その時のアインズの様を想像したのか、シャルティアの全身を怖気が走る。
「いやっ! 絶対に嫌でありんす! そうよ、今回は意識がなくなってるなんて事もないのだし、わたしにもまだどうにかする目があるはずっ!」
意地でも自力で帰還して見せよう、と気合いを入れるシャルティア。ちなみに支給品やらの入ったバッグは最初に居た場所に放置したままである。
どうするべきか、不用意に動かず慎重に行動し(←既に色々と手遅れ)逆に窮地を見事乗り切ったとアインズに褒めてもらえるよう頑張って考えようと、頭を捻る。
そんなシャルティアの耳に、何やら騒がしい声が聞こえて来た。
「えー、これより第一回放送を開始します……」
シャルティアは、苛立たしげに怒鳴り返す。
「うるっさい! わたしが考えてるんだから邪魔すんな!」
そう怒鳴って音の発生源と思しき場所目掛けて、そこらに転がってる石をぶん投げる。
シャルティアの百レベルは伊達ではなく、ぶん投げた石は見事音の発生源である家の屋根の端についた魔法の装置を粉砕する。
だが、声はまだ聞こえる。シャルティアの感覚は、それは人が発する音とは似て非なるものであると感じ取っている。
別の音の元を探ると、街中に立っている石の柱の上部に付いている魔法の装置から聞こえて来る。
「……以上、十六名になります。また禁止エリアはC1、A8、H8の三箇所になります……」
小首を傾げるシャルティア。
「十六人? 何が? あーもうっ! 良く聞こえなかったでありんすよ!」
別に声は悪くない。大声で怒鳴ったり装置壊したりしていたからである。

649 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:56:21 ID:VD0IupEk0
実に馬鹿丸出しなザマであるが、これは彼女のみに原因があるわけではない。
エロゲのような設定を詰め込まれているシャルティアであるが、設定とは趣味嗜好であったり、性質だったりを定めたもので。
趣味嗜好が、戦闘に有利云々ではなくそれ以外の方向に突き抜けていったような内容であるのなら、好き嫌いは概ね当人にとっての弱点にしかなりえない。
性質にした所で、冷静沈着で常に最善の判断を下せるような性格を形成するような要素は、そのほとんどが可愛いといった要素と相反する。つまり、こちらも設定を盛られれば盛られる程立ち回りが不利になっていくものだ。
シャルティア・ブラッドフォールンはそれ以外、つまり能力的な面で言えばかなりのガチ仕様であり、総合的にはナザリック守護者達の中でも最強の部類に入ろう。
スキルや能力のバランスも良く、戦闘の際の大きな弱点もない。アインズがこれと戦うと言い出した時は、残る守護者全員が止めに入った程だ。
そういった能力の高さを活かす為の頭脳に、彼女は制限が加えられているという事。さながらガンダムの阿頼耶識を通した強力なフィードバックを、安全装置が防いでいるかのよう。いや別に、シャルティアに能力を発揮したらフィードバック食らって死ぬなんて設定は無いが。
結局、シャルティアは放送を耳にしていながら聞き逃すという素敵な失態を晒す事に。
まあ主たるアインズ・ウール・ゴウンも後半聞き逃していたようなので、きっと責められるような事は無かろうが。

シャルティア・ブラッドフォールンの能力はいずれかに特化しているわけではなく、故に様々な事態に対応出来るようになっている。
ならばこうした予測も出来ぬ緊急事態の対処において、彼女程相応しい存在はあるまい。
実際、様々な術への耐性を備え、耐久力や回復力も高い、索敵能力が少々劣るも、完全な不意打ちを食らったとしても一撃でシャルティアを打倒しきるのは至難の業だ。
そしていざ攻撃に移ったとなれば、物理、魔法、双方をバランス良く行使出来、スキルも充実している為ほとんどの防御手段への対応策をその手にしている。
彼女を殺すのは極めて難しく、彼女に殺せぬ敵はほとんど居ない。そんな存在である。
挙句、初見殺しも多数所持していて、魅了の術も数多揃えている為、敵を倒した後の情報収集も万全。スキルと能力だけ見るなら、アインズよりよほど彼女の方がこの地に向いているだろう。
また装備が奪われた現状でも、彼女はアンデッドである為疲労とは無縁で、当人が手を止めるか、行動不能になるまで何時まででも戦闘力が落ちぬままに継続戦闘が可能だ。
これまでに打倒された二人の守護者、これを倒した者達ともしシャルティアが戦うとなれば、恐らくまた別の結果になっていたであろう。
アルベドでは殺しきれなかった斗和子も、シャルティアならばすり潰す事が可能だ。デミウルゴスが耐え切れなかったオシュトルの斬撃もシャルティアならば堪えきり回復再生、しかる後反撃が可能であったろう。
斗和子やオシュトルならば、シャルティアの弱点である血の狂乱発動まで戦いきる事が出来るだろう。だが、血の狂乱はただのバーサークではない。魔法やスキルの行使も可能な、暴虐の嵐であるのだ。如何な双勇であろうとこれを耐え切るのは難しかろう。
この地に招かれた事で、計らずもシャルティアは守護者最強の証明を為し得る事となろう。当人がそれを望んでいるかどうかはさておき。



月山習、一生の不覚。
とばかりに頭を抱え、おろおろとその場でふらつく喰種月山習。
放送を聞いた結果である。そりゃ、アテにしていた喰種の二人の内の一人、霧島董香の死亡をいきなり聞かされてしまえばショックも受けよう。
習がこれまでに出会ったのは四人。学生らしき少女が二人、奇特な格好をした忍者紛いが一人、少女の容姿をしたバケモノが一人。
実に半数が人外である。これほどの者が居るというのならば霧島董香程の喰種が殺されるのも理解は出来る。
彼女とは面識もあるし、それなりに気にはかけている。一度殺されかけた相手でもあるし。ただ、彼女以上に、彼女が死んだ事で衝撃を受けるだろう人物、金木研の事が気になる習だ。
かなり真剣に、一度彼に会っておかなければと考え始める。

650最凶のバケモノ達 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:57:14 ID:VD0IupEk0
ふと、何かに気がついた習は、今居るビルの屋上から隣にビルへと飛び移る。音も無く着地をし、滑るように走る。再び跳躍、ビル端のフェンスの上に一足で飛び乗り、再び次のビルへと飛ぶ。
こんな派手なムーブ、もし他人に見られたらと思うと何時もの町ではそうそう出来ないだろう。習は少し気を良くしながらビルの屋上を飛び移りながら移動を続ける。
が、突然足が止まる。
『何っ!?』
驚いたなんてものではない。
それまでアホみたいに騒ぎ喚き、挙句隠す気配すらない死臭を漂わせながらゆっくりと移動していた対象が突然消滅したのだ。
習の鼻は喰種ならではの鋭敏さを持ち、その索敵範囲は彼が追っているゴスロリバケモノ少女の索敵範囲を軽く超えている。
別の臭いで上書きしただのでは断じてない。突如、臭いそのものが消失したのだ。
かなり壁の厚い建物にでも入ったか。いや、臭いのみならず、習の肌にひりつくように漂ってきていた死の気配までが、綺麗さっぱりなくなるというのはありえない。
だが、そうなった原因らしきものはわかるので、習は細心の注意を怠らぬままに、追跡を続けた。



ダークニンジャは流れて来た死者を告げる放送に、思う所があったのか表情を引き締める。
呼ばれた名に聞き覚えは無いが、ダークニンジャのニンジャ第六感が言っているのだ、呼ばれた名の中にも恐るべき使い手が居たであろうと。
それは直前に姿を見かけた、ニンジャならざる圧倒的脅威の存在故の事だろうか。否である。
アレの存在もまたダークニンジャが警戒を強める原因ではあろうが、だからと言ってダークニンジャのニンジャ第六感の感性にブレが生じる事は無い。
何処までも冷静に、冷徹に、現状がどうであるかを受け止める為のセンサーとしての役割に、乱れが生じる事は無いのだ。
故にこそ、ダークニンジャはこの地に複数の絶大なる脅威が存在する事を知る。
例えば江戸川コナンであっても、シャルティアのような規格外は特別である、と考えているフシがあった。
もちろん彼の知能ならばアレクラスのバケモノが複数存在する可能性にも当然思い至っているだろうが、まずはアレを対処すべしと全力をそちらに傾けてしまっている。
だがダークニンジャは違う。ニンジャならではの独特かつ超越した感性により、更なる強敵の存在をコナンよりも確かなものとして感じているのだ。
ダークニンジャは町を走る。
前述の理由により、常ならぬ警戒を周囲に張り巡らし、四方にカラテを向けながら。
そしてダークニンジャの優れた感知能力は、手にしたキルリアン感知器よりも早く、その存在をダークニンジャに教えてくれた。
これもまた、ダークニンジャがまるで出会った事のない類の気配であった。
少ししてキルリアン感知器も反応を示すが、その数値はあのバケモノはもちろん、ダークニンジャよりも大きく劣るものであった。だが、だからこそ、ダークニンジャはこの数値が戦闘力の高さではないと察する。
ダークニンジャのニンジャ第六感は、この気配の主の並々ならぬ脅威度を感じ取っていたのだ。
だがダークニンジャは今度の相手には遠くから様子を見るのではなく、自身をその脅威の前に晒しだす。
まず、ダークニンジャを前にした相手の反応を確かめる。
ダークニンジャの登場にもその大男は動じた風もなかったのは、そういったものが表に出ずらい人間であるかもしくは、ダークニンジャのニンジャソウルを感じ取っていたか。
大男は手にしたバッグより太長い棒状の武器を取り出す。
言葉は無い。あるのは肌にひしひしと伝わってくる殺気のみ。ダークニンジャは先の青年の時と同じように、僅かに眉を動かした後、お辞儀をしながら言った。
「……ドーモ、ダークニンジャです」
大男からの返事は無かった。
これは許されざる非礼であろう。だが、少しダークニンジャも予想していた事であった。
挨拶を返す事は古事記にも記されているユイショタダシキものであるが、マッポーの世においては古事記を全く知らぬ無学の徒が強力な力を持つというのはありえる話だ。
ニンジャソウルをまるで感じぬ事といい、やはりこの地にはニンジャ以外の強者が存在するのだ。それも複数。
ダークニンジャは長棒を構える大男に対し、だらりと両腕をたらした一見無防備にも見える構えを取る。だが、これを無防備と受け取る思慮の浅い者は、たちまちダークニンジャのカウンターの餌食となろう。
そんな誘いの型であったが、大男はダークニンジャの構えなぞ委細構わず、ゆっくりと前進してくる。
その覇気とダークニンジャの仕掛けなぞ意に介さぬ自信に、ダークニンジャはぼそりと問う。
「名乗れ、大男よ」
返事は無くても構わない、その程度の一言であったが意外にも相手からの答えはあった。
「……ヤマト八柱将、ヴライ」

651最凶のバケモノ達 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:58:27 ID:VD0IupEk0
ヴライと名乗った大男は、その一言と共に、巨大な長棒を振り下ろして来た。

何たる豪腕、何たる威力か。
ヴライの振り下ろした長棒は叩き付けた大地を深く抉り、跳躍し距離を取ったダークニンジャを吹き上げた土砂が襲う。
ダークニンジャ、叩き付ける土砂を厭わずじっとブライから目を離さない。
当たり前にヴライはこの土砂の中を突っ込んで来た。攻撃はまたしても単純明快な、振り下ろしの一撃。
だがその振り下ろしに、珠玉の技が込められている事をダークニンジャは見てとった。
あれほどの威力。筋力だけで為し得るものではあるまい。いや、技のみでも不可能だ。類稀な鍛え抜かれた筋力を、膨大な経験に基づいた術理により運用し、早く、強くを何処までも極め尽くして初めて至る戦人の境地の一つであろう。
実際ダークニンジャも、飛んでかわさねば危うい。ギリギリでかわしあわよくば反撃などという甘えた行為の一切を拒否する、鋭さを備えた攻撃であるのだ。
太い棍棒をそのまま長くしたような、常識外の膂力でもなくば振り回せぬ武器を軽々と振り回すヴライ。だがそれは彼の戦闘力のほんの一部に過ぎない。
ダークニンジャが注視しているのは、その長棒を大地に叩き付けた動き、そのものだ。
最初の一撃は敢えて大地を叩いた。だが、次の一撃は大地に付く直前で棒先がぴたりと制止していたのだ。
それはダークニンジャの飛び道具による反撃を警戒しての事であろう。もしスリケンなどで仕掛けていても、あの長棒が跳ね上がり容易く弾かれていた。
たったこれだけのやりとりでもわかる。この大男ヴライは、ただの力自慢などでは断じてない。もちろん、ニンジャソウルを手にした事で有頂天になってしまうような浅薄な輩とも違う。
己を厳しく律し、何時でもより強くならんと切磋琢磨し続けて来た者の持つ、重厚な土台が感じられる。
これを一言で言い表すならば、見事なカラテ、であろう。
ヴライの足は止まらない。後退したダークニンジャに向かって、三度目の振り下ろし。
『否っ!』
ダークニンジャは前二度と全く同じモーションのヴライに対し、脅威は上ではなく前と感じ、その直感を信じ動く。
果たしてヴライの振るった長棒は振り下ろす挙動から一瞬で切り替わり、奥深くへと伸びていく突きとなる。もし後ろに下がる事でかわそうとしていたならば、この突きに追いすがられ致命的な一打を許したであろう。
だがヴライが稀有な武人であると言うのなら、ダークニンジャもまた古今稀に見る優れたニンジャだ。
突きの気配を感じ取り、後退ではなく左方への跳躍に切り替えこれをかわす。
ヴライの突きの威力は周辺の大気をすら巻き込み伸び行くもので、渦を巻いた風がダークニンジャを引きずりこまんと吹き付けるが、ダークニンジャはニンジャ脚力で大地を踏みしめこれを堪える。
更に、この突きの風圧で動きを制したヴライは、三種目の攻撃、薙ぎを繰り出す。
これぞ必殺の一撃であろう。前方の空間全てを削ぎ取る回避不能の剛撃だ。
地上には物理的にこれを回避する空間が存在しない。何処に居ようと薙ぎの範囲内であり、この範囲から一足で飛べる距離を、ヴライが長棒を振るう速度を越えて稼ぐのはさしものダークニンジャにも叶うまい。
それでも、ダークニンジャは歴戦を潜り抜けてきた勇士。出来ぬをこなしてこその超一流であろう。
先程大地を深く踏みしめたのは、風圧を堪えるのみが目的ではなかった。
次撃を薙ぎと予想したダークニンジャは、深く沈みこむ事で跳躍に必要な脚力を溜め込んでいたのだ。
一瞬でヴライの頭上を取るダークニンジャ。そして、何たる妙技か。空中で一回転し、ヴライの頭部を蹴り飛ばしにかかる。
咄嗟に、長棒から片手を外し、頭上に掲げて手の平で受け止めにかかるヴライ。ダークニンジャのニンジャケリキックを、彼は片手で受けようというのか。
だがここでもまたダークニンジャは、カラテならぬカラテの極地を見出す。
無造作に頭上に掲げたヴライの手は、骨格が足先にまで連動し、手で受けたとて全身と大地をもって支える事が出来る構えとなっていたのだ。
自らの必殺攻撃の直後であるというのに、即座にこれほどのウケが出来るなど、さしものダークニンジャも驚きを隠せず。実際、ケリにかかった足は振りぬく事が出来ず、逆にヴライの手で弾かれる結果となる。
しかしこの結果はダークニンジャ故の事でもある。

652最凶のバケモノ達 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 18:59:38 ID:VD0IupEk0
並のニンジャであればそのままヴライに足を掴まれていたであろう。ヴライのウケの強さを見てとったダークニンジャは咄嗟に、ケリを振りぬくケリではなく弾くケリに切り替えたが故のこの結果なのである。
さしものヴライも、片腕のみではダークニンジャ着地までの間に長棒を振るう事は出来ず、両者にとってあまり本意ではない形で交錯は終わる。
表面的に見えた動きは、ブライが振り下ろし、振り下ろし、突き、薙ぐ。これをダークニンジャが下がり、下がり、横に飛び、上に飛んで反撃するも受けられる。のみである。
これのみでも実にアクロバティックで迫力のあるやりとりであったのだが、これらの動きにはそれぞれ常人では踏み込みえぬ深い鍛錬と技術が詰め込まれており、両者の実力の程が知れようものだ。
現時点ではいずれに有利が付くといった風でもない。
だが、ここでダークニンジャは動きを変化させて来た。
戦場を広い道路上から、建物の中へと切り替えてきたのだ。
確かに、長物は建物内では不利であろうし、ヴライの得物を封じる意図でそう行動するのは正しい選択であろう。
建物の中へと走るダークニンジャを、そうとわかっていて平然と追うヴライ。
背の高いビルの一階ロビー、ここに入り込んだダークニンジャであったが、一階ロビーは上二階まで吹きぬけた広い空間になっており、ヴライが長棒を振り回すに充分なスペースがあった。
ダークニンジャは仕方が無いとでも思ったか、ロビーにそそりたつ巨大な柱を背負って構える。ヴライはやはり気にした風もなく長棒を振り下ろす。
そう、ヴライが構わず建物内に入ったのは、中に鉄筋が入ってようと大理石で覆われていようと、叩き砕く自信があったからである。
斜めに振り下ろされたヴライの長棒は、柱を袈裟に叩き斬ってしまう。その抉られた柱の傷跡は、明らかに長棒の長さよりも深い。
少し計算が外れたか、と柱の後ろに回りこんだダークニンジャは、これに同じく袈裟に手刀を叩き込む。こちらもヴライに負けじと中の鉄筋ごと深々と柱を抉り取る。
上にだけでなく、ヴライのドウジマを振り回しても問題ないぐらいに横にも広いフロアであるという事は、つまり、支えとなる柱にその重みが集中しているという事で。
ただの一本が支えたらず崩れるだけで、フロア全体の天井が細かく揺れ始めたではないか。
フロアの構造を一瞬で把握し、最適の柱に目をつけこれをヴライの力すら用いて破壊する。
ただ強いだけのニンジャには絶対不可能な戦い方だ。当然仕掛けた方のダークニンジャは即座にビルの外へと脱出。轟音と共に崩れ落ちてきた天井に、ヴライは避難が間に合わない。
だが、とりたてて彼は慌てる様子もなく、手にした長棒を深く後ろにまで引き構え、コンクリートの塊がヴライの頭上に至った瞬間、弧を描き長棒がこれを粉砕する。
細かな瓦礫は流石に避けようが無かったが、問題になるような大きな塊は全てその一閃で砕いたヴライは、頭上や肩に乗った瓦礫を払いもせずのそりとビルから出る。
ビルの外では、両腕を組んだダークニンジャが道路に立っていた。まるでヴライが出てくるのを待ち構えて居たかのように。
しかしヴライは外に出てもダークニンジャから目を離し、頭上高く、自らが入っていた十数階のビルを見上げている。
ヴライの知る建築では、ここまでの大きな破壊があれば建物全体に影響を及ぼす事必至であったのだが、このビルは一層の底が抜けた程度ではビクともしないようだ。
それを確認し、戦闘の最中だというのに何処か感心したような顔になる。
完全に無視された形のダークニンジャであるが、そもそもこの男、激情とは最も縁遠い男。怒りを顕に襲い掛かるような真似はしない。
そんなダークニンジャをせせら笑うヴライ。わかりやすいぐらいわかりやすく隙を見せてやったというのに、お互い引っ込みがつかなくなるような必殺の間合いへは決して踏み込んで来ようとしないダークニンジャの腰抜けっぷりを笑ったのだ。
「つまらん男だな。殺し合いをする気は無いか?」
本来のダークニンジャならば、敵が何をほざこうと黙殺するのであるが、どうしたものか、ダークニンジャはヴライの言葉に返事を返してやる。
「……ニンジャでもない、かといって人間でもあるまい。お前は一体何者だ」
ヴライの眉根が怪訝そうに寄る。
「まるで自分は人間ではない、と言っているように聞こえるな」

653最凶のバケモノ達 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 19:00:06 ID:VD0IupEk0
「ふむ、それだけの暴威を持ちながらニンジャを知らぬか。貴様、ネオサイタマの者ではあるまい。ヤマトと言ったか、事によれば、日本の外の者か?」
ヴライにはまるでわからぬ単語ばかりだ。それにこの男の動きは、ヴライも見た事が無いと思える程独特のものであった。
この踏み込み過ぎぬ戦い方こそがこの男の戦いで、ヴライが致命的な隙を見せるのを待ち構えている、といったヴライが最初に抱いた予測は実際に隙があったにも関わらず踏み込まなかった事で外れであったとわかった。
だが同時に、この男は隙があっても攻めない、つまり今の時点ではヴライにリスクを負ってまで大きな損害を与えようと思っていない、とも考えられる。
即ち、この男の狙いは時間稼ぎ。
ならば付き合う事もあるまい、と踏み込みかけたヴライ。その足が止まる。
ダークニンジャはそちらの気配に注意を向けながら、心の中で呟いた。
『我が策、成れり』
「あー、もうっ。この魔法、気配も消してくれるのはいいんでありんすが、こっちに気付いてもらえないのは面倒この上無いっ。あー、そこの二人、今からわらわの質問に答えなんし。その後でそっちの覆面は顔を見せて見た目が良かったらもう少し生かしておいてやりんす。そっちの不細工は自殺でもしなんせ」
周囲の大気が歪んで見える程に明白な強者気配を相手に、この超が付く見下し台詞を平然と吐けるのはこの会場広しと言えど、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンはナザリックの階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン以外におるまいて。



「うん、やっぱりあの音の所に行ったのか。さて、僕はどうしたものかな」
月山習は三者が遭遇する様を、少女、シャルティアの索敵範囲外、更にダークニンジャやヴライからも察知されぬ距離を取りながら観察していた。
漂う匂いは間違いなく戦いの匂い。あの三人がどんな会話を交わすかはわからないが、結果として戦闘は起こるだろう。
あの少女の能力を見ておきたい、出来れば実際に手合わせも、と考えていた習には願ってもない好機。しかも先程出会った忍者装束の男までヤる気でいるのだ。その上、足の遅そうな、逃げる時の囮に出来そうな者までいてくれる。
「んー、ここは僕もお邪魔するとしようか」
こきりこきりと手首を鳴らしながら、習もまた、かの人外戦場へと足を進めた。



【E-8/朝】
【シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:人を探す
1:人を見つけ、ここが何処か等の基本情報を入手する。
2:アインズ様にこの楽しい場所(トロピカルランド)を是非紹介したい。(←名簿を見ていないので、アインズが来ている事は知らないがっ)
※彼女の支給品他は、G-6付近に放置されたままです。また彼女は首輪爆破で自分は死なないと思ってますし、殺し合いのルールも何一つ把握しておりません。
※シルバーカラスよりニンジャスレイヤーの世界に関する様々な事を聞き出しました。
※どうやらシャルティアの吸血鬼の気配は、ニンジャや喰種といった鼻の利く連中には、かなりの遠距離からでも存在を感じ取られてしまう模様。


【ヴライ@うたわれるもの 偽りの仮面】
[状態]:健康
[装備]:クインケ『ドウジマ1/2』
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜1
[思考・行動]
基本方針:
1:全てを殺して優勝し、帰還する。


【ダークニンジャ@ニンジャスレイヤー】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜1、鉄華団のマーク入りペナント、キルリアン感知機
[思考・行動]
基本方針:ベッピンを取り戻す。脱出、優勝、可能性の高い方を選ぶ。
1:ベッピンを探す。役立ちそうにない者は人目につかないよう抹殺する。
2:光覇明宗総本山、501基地を調査し、十二時間後にCGS本部でオルガと合流する。
3:ニンジャスレイヤーを殺す。十三時間後、指定した場所でイクサを行う。
4:三日月・オーガス、ビスケット・グリフォンの捜索・保護。
5:キルリアン感知機とやらに、明らかにニンジャでないものも反応していた。これはよもや……
[その他]
※参戦時期は第六話『コンスピーラシィ・アポン・ザ・ブロークン・ブレイド』以後。


【月山習@東京喰種トーキョーグール】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・行動]
基本方針:喰種同士で力を合わせて脱出する。
1:ヤモリに協力を持ちかける。
2:甚だ不本意ではあるがカネキ君には手を出さない。
※この殺し合いは他所の喰種達が娯楽の為仕掛けたものだと考えており、無理矢理さらわれた者の他に狩人が居てこちらを殺しにくると予想しています。

654 ◆QkyDCV.pEw:2017/03/29(水) 19:01:16 ID:VD0IupEk0
以上で投下を終了します。

655名無しさん:2017/03/29(水) 19:13:31 ID:O/SMd8U60
投下乙です

康一もカラ松も何とか平常心を保てたか、ひと安心。
赤井は慎重だな。…まぁトラウマがあるし仕方ない。

シャルティアはやっぱシャルティアだなw
しかし不穏な空気…戦闘突入なるか?

656名無しさん:2017/04/01(土) 11:55:40 ID:aAV8MTuY0
投下乙です

どちらかが脱落すればよし
どちらも消耗してくれれば両方討ち取れて尚良
ダークニンジャ恐るべし…

しかし早くも最上級危険人?物が遭遇とか先が読めませんね
放送後に登場してない奴らも気になりますし
これは今後益々目を離せなくなりますね

657名無しさん:2017/04/05(水) 00:46:11 ID:a7tVttyg0
投下乙です。

正直シャルティアが負けるところが、想像出来ない。


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