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仮面ライダーオーズバトルロワイアル Part4

342交わした約束と残した思いと目覚めた心(後編) ◆z9JH9su20Q:2016/08/21(日) 18:21:45 ID:UHAKG6eE0

「えっと……『全て遠き理想郷(アヴァロン)』だっけ。衛宮切嗣って人が治療に使ってるの」

 ユウスケに散らばったメダルを集めろ、と命じたネウロ自身は、今この場には居ない。
 コアメダルを一枚渡したところで、確認することがあるから引き続きメダルを回収しながら暫く待っていろと言い残し、早々に南東の方へと向かってしまったのだ。
 何をしているか気になるが、さておき。結果今は、気絶したアンクを除けばさやかと一対一。故に簡潔に留めた内容だったが、その中からもさやかは必要な情報を取捨選択し、必死に思考を束ねていた。

「どんな傷でも治せる伝説のアイテム……それがあれば」
「ああ、もし今のアンクが大変な状態だとしても、元に戻せるかもしれない」

 言い終えると共に、ユウスケは腰掛けた自分達の間に横たわったアンクに視線を向ける。
 さやかを助けるために、その身を削った――キバの世界に生きる多くのファインガイア同様、人間と共に生きる怪人に。

 彼に対しても、操られる以前からユウスケは酷いことをしてしまった。目覚めれば居心地の悪さが増してしまうだろうが、逃げるわけにはいかない。
 しかし、さやかの窮地に託したメダルが、彼の持つ最後のコアメダルだったようで……彼らにとっての生命そのものであるメダルを一度全て吐き出したアンクの意識は、今も戻ることがなかった。

 色が抜けるのとは逆に、金から黒に染まっているのだが――髪の色が変わるほど衰弱しているのは只事ではないと、グリードをよく知らないユウスケにも予想できた。
 グリードの血肉がオーメダルだというのなら、一度バラバラにされた物を戻されたところで果たして治癒できるのかは定かではないが、そこは怪人の生命力を信じるしかない。

 本当なら手持ちのメダルを全て彼に渡したいところだが、この状況では彼の護衛も含め、戦闘用にメダルを確保しておく必要がどうしてもあった。
 改めて忌々しい制限だと、ユウスケは臍を噛む。

「あっ、いや……それはそうなんだけど……そうじゃなくて」

 しかし、何故かさやかは言い淀み、視線を泳がせた。
 アンクを心配していない、というわけではないだろうし、そう思われたいわけでもないはずだ。
 理由を推察する前に、さやかは一つ小さく咳払いする。

「とにかく。ネウロが戻ったらあたし達もそっちにお邪魔しても良いかな、ユウスケ。ネウロが何考えているかわかんないけど、元々行く宛もなかったし」

 何かを露骨にはぐらかされたのを感じながらも、それが自分との距離を置きたい故でなかったことに、回答することに安心を伴ってユウスケは頷いた。

「ああ、こちらこそ。きっと皆歓迎してくれるよ」

 今は、互いに表面を取り繕ったままでも。
 同じ思いを残された、同じ結末を願う者同士なら、きっと手を取り合えると信じて。







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「そろそろ手を離してくれないかな」
「おや、何故だ? これまでの疲れを思えば、自分で歩かずに済むなど快適だろうに」

 己が五指で掴み、ぶらぶらと振り回していた白い塊が発した抗議の声に、ネウロは嗜虐心も隠さずすっとぼけた。

「爪が食い込んで痛いじゃないか」
「また、勝手に逃げられても困るのでな。まぁ暫くは我が輩の奉仕をありがたく受け取っておけ」
「こういうのは奉仕じゃなくて、虐待と言うんじゃないかな」

 E-4で回収した、自らの支給品だったインキュベーターと懐かしい調子の会話を交わしながら、ネウロは気分良く夜道を歩いていた。
 もちろん、インキューベーターと仲良く散歩することが目的ではなく、ウヴァを追う手掛かりであるこの異星獣を確保することが当初の予定だった。
 しかしもう一つ、確認すべき――否、確認できる事柄が増えたために、ネウロは少しだけ、さやか達への直線から逸れたルートを進んでいた。


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