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変身ロワイアルその6
860
:
80 YEARS AFTER(5)
◆gry038wOvE
:2018/03/09(金) 18:45:50 ID:H/vzgqzw0
【『探偵』/プチ・マレブランデス内】
おれたちは、気まずい空気のままでマレブランデスの中身を歩いていた。
部屋はいくつもあり、とにかく中身には不気味な空気ばかりが染みついていた。何しろ、八十年も無人なのにいまだシステムの生きている管制室に加え、妙な趣向の要人の部屋やら化け物向けの異文化的な部屋やらがあって、そこには時折、骸骨と化した死体が放置されているのである。誰か獣にでも荒らされた痕跡も残っていた。
廃墟の方がまだずっと、恐怖は薄い。
そこにまだ誰かが残っていそうな雰囲気さえあり、少し震える花華の隣でおれも息を飲みながら歩いていた。もしかするとおれも震えていたかもしれない。
そんな折、花華が震えた声で言った。
「探偵さん、ここ少し……怖くないですか……?」
「……少しで済むなら立派だ。おれからすれば、ヤクザの事務所に話をつけに行って素っ裸にされた時よりか、ずっと怖いな」
「それを聞くと、探偵さんの経緯も怖いですが……」
「きみはその手の輩を相手取る仕事が怖いらしいが、おれにとってみれば超常的な戦いを強いられるきみの仕事の方が怖いね。きみは慣れていて、今も少し怖い程度で済むかもしれないが、おれの場合は、この状況は超怖いわけだ」
「まったくそうは見えませんけど」
「怖さを押し殺さなきゃ探偵なんてやっていられないさ。怖さをどう超えるか、どう対策して怖さを最低限に抑えるか、それも仕事のうちだよ。ましてや、あの街の駆け込み寺のおれにとっては、頼りのあるところを見せないと顧客も安心してくれまい」
おれの場合、少女ふたりの手前でビクつくのは嫌なのもあるが、元々顔に出ない性質なのだろう。十分に情けない顔をしているつもりだったが、周囲からみれば全くそんな事はないだころか、厳めしいとさえ思えるらしい。
そんな状況の中で宝さがしでもさせられているような気分だが、少しすると、目立つ大きなドアがあった。
「なんだこりゃ。HARUNA、この部屋は――?」
『開けてみるといいわよ』
言われるだけで、教えてくれなかった。
舌打ちしたいような気持ちでふてくされながらそこを開けると、今度は奇妙なほど暗くて広い場所に辿り着く事になった。
数十人が並んで寝転べる、学校の体育館のような場所――それは、何か、嫌な予感を醸している。
見覚えはないが、何となく近い場所を想起できる。
「――ここは、まさか」
唖然としているおれだった。
そこの空気だけ異様に冷えていて、これから何か始まってしまいそうな悪寒を募らせた。オカルトではないが、そういう風な心理的衝動を煽る作りが成されているのかもしれなかった。
ここは、そう、おそらくかつて……すべてを始める暗闇だった場所なのだ。
加頭順という男が、八十年前にここに立っていた。
――――本日、皆様にお集まり頂いたのは他でもありません。我々の提示するルールに従い、最後の一人になるまで殺し合いをして頂く為です。
かつて六十九名に告げられたその言葉は、まぎれもなくこの空間に響いたのだ。
おれたちは思わず、自分の首の周りを爆弾が囲んでないか触りたくなってしまった。
楽観的な気分ではいられない、入り込んだだけでも背筋が薄ら寒い場所だったからだ。誘われるようにここに来たおれにとっては、おれの中の女がだまして再び殺し合いをさせようとしているんじゃないかという考えさえ過った。
だが、ここには誰も寝転んでいないし、おれたちの首に首輪が巻かれる事もなかった。
八十年経った今となっては、この殺し合いの舞台のどこもかしこもが立派に安全圏である。同じ宿命を負った仲間に狙われる心配はどこにもない。
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