したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

変身ロワイアルその6

85980 YEARS AFTER(5) ◆gry038wOvE:2018/03/09(金) 18:45:09 ID:H/vzgqzw0

「……」

 おれは、城を見るのをやめて、足元の立て札の方を見た。
 そんなおれの目の前には、ある立て札が地面に突き刺さっていて、名前も知らない真っ白な花が添えられている。



『らんまとあかねさんのはか』



 目の前の立て札には、そう書いてあった。つまり、おれは、今、乱馬とあかねさんが眠っている墓の前にいるようだ。
 方向音痴なおれがここに辿り着けたのは、間違いなく天がおれに味方しているという事だった。
 永遠の時間と予知能力まであるというのに、方向音痴ばかりはまったく改善されないのだ。……これは呪われた宿命と言ってもいい。

 これまでも何度もこの場所に向かおうとして、何度も迷った。ひどい時はこの場所に来ようと決めてから辿り着くまで、一ヶ月や二か月かかる事があったくらいだ。
 どうせ、今日もここに辿り着く事はないだろうと、おれは内心で少し思っていたのだが――おれは今日という日には、迷う事なくここに辿り着いていた。

 この狭い島でも、いつも一人で遭難してばかりだったこのおれが……。
 かつて乱馬やつぼみに誘導されながら動いていて、ようやく行きたい場所にいけたこのおれが……。

「――どれだけ前だったかな。ここで、おれはあかねさんと戦い、救えなかった事がある。そして、つぼみとここで二人、泣いた日だ……」

 いまの俺は泣かない。何度流したかしれないが、とうに乾いた。
 ……それに、こうして運命の日に迷う事なくここに辿り着けた。運が良い。涙を流すには向かない日だ。

 おれは戦う――そして、間違いなく勝つ。
 そこまでがおれの予知した未来であり、これは確実な話なんだ。

「乱馬……あかねさん……今日でお別れだ。悪いが、もう二度と、こうして墓に花をやる事もできない。おれは、この後、最後の戦いをしに行く……」

 乱馬。おれはお前より強いが、今日は少しお前の力を少し貸してくれ。かなり久しぶりの戦いなんだ。腕が鈍っているつもりはないが、うまく動かす自信が少しない。倒さなきゃならない敵は簡単にはいかない相手だ。

 ……そうだ。それから、もう一つ。

「――待っていろ、乱馬。次に会った時、今度は間違いなく、おれはこの手でお前に勝つ。次にこの墓が作られるとしたら、その時おまえの息の根を止める事になるのは、このおれだ」

 そこでおまえがあかねさんと眠っている間中、おれは毎日……とても長い間、一人で“永遠”と戦い続けてきた。
 このおれが二度とお前に負ける事があるはずがない――久しぶりに戦う事になった時、おまえは間違いなくおれの強さに怖気づく。
 必ずおまえともう一度会い、今度こそぶちのめしてやる。

「――それより……まずはお前だ!」

 おれは空を見上げた。
 乱馬よりも先にぶちのめす相手がいる。
 おれたちをかつて戦いに巻き込んだあの化け物――そう、あのカイザーベリアルをもう一度倒さなければならないのだ。

 おれたちの周りに音楽が鳴る。
 オルゴールから流れる温かいメロディが、かつて競い合ったおれたち三人を取り囲んで、少しの間だけ癒した。
 今日ですべてが終わる……。






新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板