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変身ロワイアルその6

85780 YEARS AFTER(5) ◆gry038wOvE:2018/03/09(金) 18:44:17 ID:H/vzgqzw0

「……」

 おれの方を睨む花華の視線は耐え難いものがあったのだ。――それは、厳密にはおれの肉体を借りて好き勝手に念話を公開スピーチしてくれているHARUNAに向けられたものだが――彼女の心中はおれとしても察するものであった。
 確定性のない動機による響良牙の暗殺計画。拒む機会こそ与えられたが、入り込んだらもはや問答無用で承諾をさせるやり口。更には、その動機から推察できる花咲つぼみの身に起こりうる危険――つまり、響良牙の殺害で花咲つぼみが優勝者となった時に願いを叶えさせる権利を行使するのを同様の形で止めるのではないかという危惧――。
 あらゆる事を考えてみれば、HARUNAという少女に向けられる感情は決してやさしくは在れない。おれも同様だ。

 綴られた日記を目の当たりにした以上、おれだって心が動くのは止められない。
 しかし、彼女の持つ権限がなければ、おれは世界と世界を行き来できない。つまり、職場に帰れない。どうあれHARUNAとの関係の構築は重要な急務だ。

「……そこに、まだ響良牙が残っているんだな」

 おれは、そう訊いた。
 しかし、質問に答えないのがこのHARUNAである事は承知している。ただのつぶやきだった。案の定、明確な答えが返ってくる事もなく、おれの言葉は拾われる事もなく投げ出された。
 続けて、おれはもう一度口を開いた。

「――そうだ、ところでもう一人、ここに先客がいるんだろう。早くそいつを呼んでもらおうじゃないか」

 今度は質問ではなく、提案を呼びかけたのだ。
 良牙については、改めて確認せずとも、彼女が一度断定した以上、「良牙はここにいる」としか言いようがない。仮に彼女が答えてくれたとしても、それ以上の答えは返ってこないだろう。
 対して、彼女が散々言っていた“彼”なる人物についてはまだ詳しく聞けていないし、どこにいるのかもまったくわかっていなかった。
 ここにいないとすればどこにいるのか、率直に気になった。

『――“彼”ならこの基地のどこかにいるはずよ。出ないようにとは言ってある。外に出たところで何もないから』
「そんなんで大丈夫なのか」
『彼も人間よ。無理に鎖で繋がなくても、単なる指示で十分。……だって、世界の外を行き来できるのは私だけなんだから。彼が元の世界に帰るための力は私にしかない』
「……そうだな、きみの許可なく好き勝手に動き回るのは、誰にとっても損ばかり。おれたち同様、その“彼”とやらも、とっくに弱みを握られているという事だな」
『その通り』

 嫌な状況である。まるで騙されて入ったブラック企業から抜け出せなくなったような気分だ。尤も、今回は安易に知らない美女についていったおれにも、自業自得のきらいはある。彼女に憎しみを向けても仕方がない。
 何にせよ、本来おれと花華はオーロラに飛び込んだ事をもっと深く後悔すべきであるし、後悔しても事態が解決するまではどうしようもない状況であるという事だった。
 気がかりな事はいくつもあるが――そのうちボロを出してくれればおれたちにもわかってくるはずだ。無論、彼女が敵でなければの話に違いなく、常時不安しか伴わない会話だった。
 そんな折で、彼女の方もべらべらと話し出した。

『――ゲームオーバーの後の閉じたこの世界とのゲートをつなげられるのは、今は私だけよ。花咲つぼみだけじゃなく、時空管理局も、おそらくウルトラマンたちも……あらゆる人々がここに再び足を踏み入れようとしたけど、叶わなかった。それはわかっているでしょう?』

 ここにもやはり、疑問があった。
 彼女がどうして、こういう風に特殊であるのかという事だ。八十年間誰も見つけられなかった砂漠の中の一握の砂を、何故彼女は見つけ出せたのか。そして、何故彼女だけがそこに向かえるのか。
 時空を移動する能力を有し、それ以外のあらゆる知識を持った彼女は、一体どこから現れた何者なのだろう。それはもはや、確信的なまでに怪しい存在であった。
 それを疑問に思わないわけではないが――あまり迂闊に聞けなかった。

「なるほど……」


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