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中学生バトルロワイアル part6
645
:
◆7VvSZc3DiQ
:2019/05/06(月) 02:45:52 ID:c.bgJDYw0
◇
「――式波さん!」
「……生きてるわよ、なんとかね」
御手洗が放った一撃は、確かに初春を捉えていた。
だが、衝撃の瞬間――初春をかばうようにアスカが割り込み、一瞬だけ生まれた間隙を縫うように初春は『定温保存』を発動し、水兵の一撃を緩和させた。
勿論アスカ、初春ともに少なからずダメージを受けることにはなったが、両者ともに生命に関わるほどの傷を負ったわけではない。
戦闘の結果だけを見れば――御手洗は瀕死となり戦闘続行は不可能。初春とアスカはボロボロながらも生存と、その明暗ははっきりと分かれた。
初春とアスカは――勝ったのだ。
しかし初春は――呆然と座り込んだままだった。そこには勝利の余韻など欠片もなく、ただただ悲壮感と疲労感だけが、あった。
初春は元々、勝利など求めてはいなかった。初春が目指したのは、自分を逃がすために独り死地に残ったアスカを守り、自分の合わせ鏡のような存在である御手洗を救うこと。
だが――
「式波さん……私は、私は……っ! 彼を、救えなかった……!」
初春のやり方が、間違っていたのだろうか。或いは最初から上手くいく方法なんかなくて、ただ無駄に傷ついただけなのだろうか。
御手洗を救おうとしたこと自体が、初春のただの自己満足に終わってしまったということなのだろうか。
「……悪いけどね、カザリ。あたしはアンタが欲しがってる答えなんか、持ってないわ」
アスカもまた、全身を地に投げ出したまま答えた。
度重なる連戦と負傷で、アスカの身体ももう限界を迎えようとしている。
「でも、アンタの答えは、ちゃんと覚えてる」
「アンタは、こう言ってたわよ。アンタは、ヒーローじゃない。英雄でもない。主人公にもなれない」
でも。
「ただ、誰かのそばにいてあげられる、そんなやさしい人間になりたい――」
アスカは、御手洗を指さし、こう言った。
「アイツ――死ぬわよ」
御手洗は意識も朦朧としたまま、ピクリとも動かない。浅い呼吸の間隔はどんどん遠くなっていき、今にも止まってしまいそうだった。
もはや、指一本動かす力さえ残っていないだろう。今の初春とアスカに、御手洗を助けるための手段はない。御手洗の死は、確定していると言い切っていい。
「――このままアイツを死なせることが、アンタが望んだこと?」
「…………違い、ます……!」
震える足を必死に押さえつけながら、初春は立ち上がった。一歩ずつ、御手洗へと近づいていく。
救いは――そこに、ないのかもしれない。本当に、ただの自己満足のまま終わってしまうのかもしれない。
それでも、と初春は独りごちた。
ここで膝を折るのならば。ここで立ち上がらないのならば。最後に残った、ちっぽけなプライドすら捨ててしまうなら。
初春飾利のこれまでを、否定することになる。
彼女が関わってきた多くの人たちと、受け取ってきた多くの思いを、無かったことにしてしまう。
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