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中学生バトルロワイアル part6

643 ◆7VvSZc3DiQ:2019/05/06(月) 02:44:25 ID:c.bgJDYw0
仙水は言った。人間は存在そのものが悪であり、罰を受けるべきなのだと――その生命をもって、罪を償わなければいけないのだと。
これはその証拠だと、黒の章と呼ばれる映像を見た。その中で繰り広げられていた光景は、御手洗のそれまでの価値観を覆すに十分だった。
同時期に得た『領域(テリトリー)』という名の能力はそのための力なのだと教えられ、仙水に言われるがままに人間という種を抹殺するための準備を進めてきた。
その矢先、この殺し合いに巻き込まれ――やはり人間は、罪と業を背負った存在なのだと痛感した。

そして――確かに。初春飾利が言うように、それまで御手洗清志が接してきた『人間』の中にはいなかったのかもしれない。
御手洗清志という『人間』を、そのまま受け入れ、愛してくれる『人間』が。
不意に御手洗の身体から力が抜ける。張り詰めていた緊張が解け、これまで拒絶し続けてきた初春の言葉がすんなりと耳に届く。

仙水は僕を同志だと受け入れたけれど、受け入れたのは御手洗清志という一個人じゃなくて「仙水の思想に賛同する人間」だった。
仙水が僕に与えたのは使命と役割だけで、僕が本当に求めていたもの――救われたいという心は、否定した。

だけど、僕は――いつだって償いの機会を、救われる機会を待ち続けていた。
眠るたびに夢を見る。あのビデオの中で泣き叫んでいた人たちが、僕を見つめてくる。
彼らを傷つけ、殺したのは僕じゃない。そう分かっていても、毎晩うなされるたびにまるで僕がやったことのように、心を苛まれる。
もう嫌だった。すべてを終わりにしてしまいたかった。

だから、己が傷つくことを恐れずに御手洗を受け入れようとした少女の姿に、救いを見てしまったのかもしれない。
それは心の奥底で御手洗が求めていた存在だったから。できるならば彼自身もまた、そういう者になりたいと、願っていたから。

御手洗は、ようやく気付く。少女の言葉は、既に御手洗を変え始めていたということに。

「そうか……僕も、変われる……いや、もう変わり始めてたんだ……」

御手洗がこぼした呟きに、初春は答える。

「そうですよ。私達は弱い人間ですけれど――変われるくらいの強さは、持ってるんですから」

そう言って微笑んだ初春の目尻には、涙が浮かんでいた。御手洗はそっと手を伸ばして、その涙に触れる。
それは誰のために流された涙なのか。御手洗のため? 初春自身のため? 恐らくは、その両方のために流された涙は、まだ温もりを保っていて。
ありがとう、と御手洗は呟いた。僕のために涙を流してくれる少女がいたから、僕は自分が変わったことに気付いた。

そして――御手洗は、握りしめていた鏃を、己の首元へと深々と突き刺した。


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