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中学生バトルロワイアル part6
641
:
◆7VvSZc3DiQ
:2019/05/06(月) 02:42:44 ID:c.bgJDYw0
◇
手を伸ばせば届きそうなほどに、二人の距離は近づいていた。初春が手を差し伸べる。だが御手洗は、その手を、初春がもたらす救いを振り払った。
初春の言葉は、御手洗にとって悪魔のささやきだった。自分が――人間が犯してきた罪を赦され、幸せになる。それはあまりにも甘美な誘惑だった。
それはかつて御手洗が信じていた『正しさ』に、限りなく近い。正しく、美しく、誰もが幸せになるハッピーエンドだ。これ以上はない、最高の、理想の結末――
だからこそ。御手洗はその理想を、幻想だと断じた。
理想はあくまでも理想だ。現実はそんなに甘くはないんだ。罪を投げ捨てて幸せになるんだなんて烏滸がましいことが許されるはずがないんだ。
ヒトは、犯した罪に対して罰を受けなければならない。いくら罰を受けても償いきれないほどの罪を、人間は積み重ねてきたのだから。
御手洗は人間が犯してきた罪の数々を、黒の章に収められた映像という形で目の当たりにした。あれを見てもなお人間の存在を許容するなど、御手洗には到底出来ることではなかった。
御手洗にとって初春の言葉は全てが薄っぺらい虚飾だらけの戯言。初春の救いを肯定すれば、彼が今まで行ってきた全てを否定することになる。
かつて御手洗を襲った、人間の奥深くに棲む悪意こそがどうしようもなく現実で。自分を助けてくれなかった救いは幻に過ぎないのだと、御手洗は叫ぶ。
「幻想なんだよ! そんなもの、救いなんかじゃない! その手を取って救われるのは僕じゃない! お前なんだ! お前が罪から目を背けるために、僕を利用しようとしているだけだ!
――もう僕は選んだんだ! 人間という存在を、この世界から消し去ってしまうことを! お前が言う救いなんて、この世界にはないんだから!」
「……それは、違いますよ」
御手洗の叫びを聞いてなお、初春はそう言い切る。
「私は、救われたんです。だから此処にいるんです。私を救ってくれた人たちのことを――否定なんてさせません! 幻想だなんて、言わせません!」
初春の手を引いてくれた人たちが、初春の背中を押してくれた人たちが、初春の隣を歩いてくれた人たちがいた。
忘れられない人たちの存在を、忘れてはいけない人たちの思いを、初春は背負っている。だから何度でも、幾ら振り払われようとも、初春は手を伸ばす。
故に、両者の意見は平行線。交わることのない意思が、ただぶつかり合うのみ。
「だったらお前は、人間は罰を受ける必要なんかないと思ってるのかよ! あれだけの罪を重ねてきた人間たちがのうのうと生きるのを、見過ごせるのかよ!」
「私だって、罪をそのまま見過ごしていいだなんて思いません! でも……っ! 貴方がやろうとしていることは、私がしようとしていたことは、罪無き人に罰を与える行為です。
きっとそれは、間違っている。私は貴方の間違いを見逃すわけにはいかないんです。私もそうやって、間違えてしまった人間だから!」
初春は自分と御手洗を重ねていた。夥しい悪意に飲み込まれ、正しさを、正義を見失ってしまった初春と御手洗は、よく似ている。
だからこそ分かることがある。見えてくることがある。伝えられることがある。
「貴方の質問に、答えてませんでしたよね。――桑原さんを殺してしまったとき、私が何を考えていたのか。何を感じていたのか。
……そこには、何もなかった。人を殺したのに、何もなかったんです。真っ暗で、真っ黒で――ただひたすらに、『無』だった。
私は貴方に、同じ思いをさせたくない。だから私は何度だって、貴方を救うために、この手を伸ばします!」
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