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中学生バトルロワイアル part6

631 ◆7VvSZc3DiQ:2016/11/03(木) 23:05:47 ID:ju7RNNqk0
思えば、アスカがいてくれたからこそ、初春は自分を閉じ込めていた固い殻を破り、自分だけの現実を見つけることができた。
罪の重さに潰れそうになる初春を支えてくれたから、ここまで自分の足で歩いてくることができた。
アスカは、優しい人とは言えないかもしれない。優しさ以上に厳しさがあって、周囲の妥協を許そうとしない。
だけどそれもまた、隣の誰かを奮い立たせるやり方の一つではあった。実際に、初春はアスカに救われたのだから。

「今までありがとうございました。――今度は、私の番です」
「……言葉は、見つかった?」

御手洗を説得するための言葉。それは見つかったのかと、アスカは問う。
生半可な言葉では、人間は害悪なのだと断じ、自らの命すら投げ出す覚悟を決めた御手洗には届かない。
アスカの問いに対して、初春は、小さく首を振った。だがそれは、肯定を表す頷きではなく、否定を示す横の振り。

「せっかく式波さんに時間をもらえたのに、私はまだ言葉を見つけられません。でも、やり方は思いつきました」

そう言って、初春は微笑んだ。
あぁ、とアスカは感嘆する。自分のことを無力だと卑下して、あれだけ固執していた正義を投げ捨てて、なのにこれだけ美しい笑みを浮かべられるのだから――初春飾利が、弱い人間なはずがなかった。

「――初めて私達が出会ったときのことを、覚えていますか? きっとあのとき、こうやって私たちが手を握り合う未来なんて、想像もできなかったと思うんです。
 でも今、私たちは一緒にいる。考えは違っても、思いは違っても、傍にいて、隣にいて、互いを支え合うことだってできる。
 だからきっと、彼とだって、同じことができるはずなんです。私はそう信じてるんです。信じたいんです。それが幻想なんかじゃないって、証明したいんです。
 ゆっくりと時間をかけて、たくさんの話をしましょう。一つの言葉で彼の心を動かすことができないなら、十でも百でも、千でも万でも、たくさんの言葉を届けましょう。
 ――そのための時間を、私たちで作りましょう。式波さん、ごめんなさい。もう少しだけ、あなたの力を貸してください」

繋いだ手から、初春の熱が伝わってくる。本気の熱だ。アスカの視線と初春の視線が、交わった。
こちらをじっと見つめてくる初春の瞳に、混じり気はなかった。この殺し合いの舞台で幾度も叩きのめされて、剥がされて、それでも残った純粋な感情。
単純で、だからこそ綺麗で。周りの人間すべてに疑念を向けて、ただひたすらに自分のために生きてきたアスカですら、思わず信じてしまう慈愛が、そこに在ったから。
――アスカは、素直に自分の負けを認めた。

「ま、発破かけたのもあたしだし。ここまで来たら最後まで付き合うわ」
「……ありがとうございます!」
「さ、それじゃさっさとすませるわよ。このままじゃ、あたしたちが止める前にアイツが死んじゃうわ」


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